ロゼッタ「マリオカートに参戦…ですね、是非!」(952)

このスレは

 ロゼッタ「マリオカートに参戦…ですか?」

を前スレとする続編となります。
前スレをご覧になられていない方はそちらを先にどうぞ。

遅い進行のスレですが引き続き頑張っていきたいと思います。
よろしくお願いします。





パルテナ「そのほか、いくつか注意点があります。

     ・スレ主のスマブラfor経験は、CPU(Lv.9)とのタイマンで
      勝ち越せない程度の実力しかありません。
      戦闘描写に過度な期待をすると酷いことになります。
      むしろ、『うわあ、この描写ニワカだな』と粗探しするくらいの気持ちで
      読むようにしてください(最重要)。

     ・前スレ同様、いろいろとパロデイ、メタ発言が散りばめられています。
      キャラが自分たちの背景情報を活用する…みたいなご都合主義は
      白ける方もいらっしゃると思います。そんな時は…
      別のスレに移って、このスレのことは忘れましょう。
      
     パルテナお姉さんとのお約束ですよ♪うふふふふ」

――長いようで短い、大会期間。
――戦いの幕開けが切って落とされ、各フィールドで乱闘が始まる…!
――特に、「3強」が出場するカードともなれば、否応なしにも人が集まるもの…!



リンクVSアイクVSフォックスVSヨッシー



ワー!ワー!
リンク、ユウショウメザセー!

リンク「ハハ、いやあ照れるなぁ…ああ、でもファイはやっぱりいないかあ。
    …本当にどこに行ったんだろう」ポリポリ

アイク「剣士として、リンクのような強敵と幾度となく戦えることは最上の喜びだ。
    今回もよろしくな」

フォックス「剣士ってわけじゃないが…分かるぞ、その気持ち!
       俺のブラスターもこの時を心待ちにしていたようだ!生半可な気持ちでは勝てないとは分かっていてもな!」

リンク「ああ、よろしくな!熱いバトルにしてやろうぜ!
    …だが、俺も俺の武器たちも日々成長しているんだ、そう簡単には負けてやらないぞ!」

ヨッシー「モグモグ…」パクパク

アイク「…いや、まあ。同じ剣士と言えど、ハイラル王国と違って時間軸が
    『だいたいは』正常に作用している俺やマルスは、その…
    世代交代のせいで獲得経験値がリンク程にはよろしくないから実力差は結構付いているんだが…」

リンク「あ、そういや最近はアイクにもマルスにも負けたことなかったっけ」

アイク「」ズーン

リンク「……なんか、ごめん」

アイク「…いいさ。…俺も鍛え方、変えてみたほうがいいんだろうか」

リンク「だったらキノコ王国に入り浸るのがマジでオススメだぞー。
    …そういや前から気になってたんだが、時間軸が正常に作用してる上に、
    アイクたちのことが伝説の英雄として語り継がれている『現在の世代』があるってことは…」





アイク「死人とか言うな」

リンク「…………」

アイク「誰が『お盆祭りに呼び出されるだけの存在』だ!
    誰が『天下一武道会にあの世から参戦したサイヤ人』だ!」

リンク「そこまで言ってない言ってない」

フォックス(…俺はまだ恵まれてるんだな)

アイク「確かに、帰る故郷なんてもうないけどな、時代って意味で…!
    ある日突然、尋常じゃない速度で時間が経過して…世代が一気に進むんだぞ!
    理解できるか!?なぜか知らないが、俺の世代から…もう千年単位で時が経ってるらしいんだぞ!?」

リンク「…すまない、ハイラル王国でその辺の…時間軸系の感覚は麻痺してるからあんまり驚かない」

アイク「…霊体になって子孫たちの活躍を温かく見守るくらいしかできないんだよ!
    あーあ、寿命や老化の概念がご都合主義でなくなる王国や、
    歴史が重なってる王国のファイターはいいよなあ!」

フォックス「アイク、キャラがぶれて来てるぞ」

アイク「なあ、俺たちの国の今の世代からの参戦者に…ルフレっていう軍師見習いがいるんだが、
    そいつは早いうちから気にかけて鍛えてやってくれないか!?
    俺みたいなことにならないように!」

リンク「それはまあ、いいけど…って、やっぱり死人じゃないか!怖いよ!
    あと、そういった人たちは俺含めてすさまじく苦労してきたからな!?」





アイク「あ、ちなみに…このスレでは、大会の開催期間的に…
    DLC組は出番がないからよろしくな」

リンク「あっ(察し)」

ヨッシー「ちょっと、リンクさん!」

フォックス「…あ、相手にしなかったからヨッシーが怒って…」

ヨッシー「あの魚、わざわざありがとうございました!中々美味でしたよ!」

リンク「おー、そっか。釣り上げた甲斐があるってもんだ!
    俺は釣りの過程を楽しめればそれで満足だからな!」

フォックス「ここに来て食い物談義をするのか…あ、さっき食べてたのって魚だったのか」

ヨッシー「今食べてたのはメロンですよ?」

フォックス「何故にメロンなんかを…え、特産品だって?」

アイク「おい、雑談は一旦やめて…みんな配置につけ。
    



    そろそろ…始まるぞっ!」

マスターハンド「それでは、今日も相変わらず――試合開始のカウントダウンですっ!」

観客「ファイブ!」

観客「フォー!」

観客「スリー!」

観客「ツー!」

観客「ワン!」



パアアアァァン!!

実況「――――さあ、試合開始――!戦いの幕が…切って落とされたー!」

フォックス「先手必勝!ブラスターを食らえ!」バビュン!

リンク「よっと」

アイク「フンッ」

ヨッシー「当たりませんっ!」

フォックス「…ま、これでいきなり当たってくれるとは思ってないが。
      開幕即撃ちは俺のバロメータサインみたいなものだからな。
     ――『フォックスイリュージョン』っ!」

リンク「置きソードで対処――」



フォックス(甘いぜっ!)スライデイング!



リンク(ぐっ!?ムーブ変化を身に付けてたか!?)

フォックス「――からの、フリップキック!」

リンク「うぉっと!コンボは許さないぞ!」ガキィン

フォックス「ちっ…単発に終わったか」ササササッ

アイク(…しかし、素早い。俺にもあれくらいの速度があれば…
    いや、無い物ねだりはやめておこう、俺には俺の戦闘スタイルがある)



リンク「よっし、サンキューフォックス、目が醒めた。最初から動くのには俺も賛成。
    さぁて、じゃあ派手に飛ばしていくぞ!」ヒョイッ

バチバチバチバチバチ……!



アイク「ふむ、バクダンか…だが、分かっていればそれほど怖くはない!」

フォックス「そ、そうか?無茶言うなよ、割と怖いぞ…
      スマートボムほどじゃないにせよ、当たったらドカンだぞ」

リンク「チッチッチ。言ったろ、『俺の武器たちも日々成長している』って」

アイク「…おい、種類違いのバクダンとか別の武器とかを繰り出して必殺技を増やすのは大会規約に逆らう反則行為だぞ?」

リンク「あれ、アイクは知らないんだ。あくまで武器の本質を変えずに『派生させる』のなら問題ないんだぞ?
    …そして、俺はそのルールの穴を…最大限、利用するっ!!」



マスターハンド「おや?リンク選手、おもむろに爆発間近のバクダンを…トン、と地面に押し付けた!」

アイク「なに?」

フォックス「…設置型?」

リンク「武器合成により強化され…更に、わざわざ出向いて、
    プロのバクダン屋に監修してもらったバクダンの使い方、見せてやるぞ…!せーの!






   下必殺派生!      『ラ イ ン ボ ム』!」ダンッ!





シュイン! シュイン! シュイン! シュイン! シュイン!

バクダン×30「」ズラズラズラズラッ

マスターハンド「なんと、足場がビッシリ…バクダンで埋まったー!!」

リンク「最大ボム袋のざっと半分だけ並べてみました」

フォックス「ハドソンッ!?」

アイク「あ、足の踏み場もないな、これは…!」

リンク「そして先頭の1個の爆発前に、自分はクローショットで逃げーる」ガシィッ

フォックス「のわぁ!?」

ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガァァァッ!

アイク「火を噴いて連鎖誘爆っ!?やることがえげつない……!それでも剣士か!
    くそっ、俺も上空に逃げるしか…!!」

リンク「はっはー!俺の場合、選択肢の一つに剣があるだけなんだよなー!
    …そして、アンタのジャンプ力の低さも踏まえて、その動きは当然読めているわけでして!下突きぃ!」ブォッ・・・ズンッ!

アイク「そんなもの――重戦車パワーの振り回しで叩き斬ってや…」



ドッズゥン――!!

【リンク  E:ヘビーブーツ】



アイク「――ぐがっ!?」

実況「いきなり大技が炸裂っ!開始早々、鮮やかな攻撃が決まりました!
   アイク選手、最初から厳しい攻撃を受けました!……しかし、挽回のチャンスはまだ十分にあります!」

ヨッシー「フウゥゥーーン!」バタバタ

フォックス「ゼェ、ゼェ…間一髪爆風は避けられた――!
      というより、ヘビーブーツ履いてたのか!?それであの速度か!?
      俺並の速度だった気がするんだが…!さすが、リンク!倒し甲斐がますます出てきた!」

リンク「俺を倒すことを目標にしてくれるのは光栄なことだけど…
    さあ、果たしてタイマンで倒せるかな?」

フォックス「……とりあえず今日は3対1で勝つことが目標だな!」

リンク「わあ潔い」

リンク(まあ俺のバクダン袋はバクダン製造能力なんてないから、
    あと1回使うとバクダンがスッカラカンになるデメリットもあるんだけどな!)



マスターハンド「お、おや!?ヨッシー選手がどこかに消えてしまいました!
         爆風に巻き込まれて大きく吹き飛ばされたのでしょうか!?」



ヨッシー「フウゥゥーーン!フウゥゥゥーーン!」バタバタ

実況「しかしヨッシー選手は空にいて当たらないっ!ヨッシー選手、どんどん加速していきますっ!
   ……もう、これ以上あがりませんっ!」

マスターハンド「…え?……い、いつの間に」ミアゲ

リンク「おーい!無限踏ん張りジャンプで『画面外』まで逃げるのやめろ!
    ええい、もうそのままバーストしてしまえ!」

ヨッシー「爆発なら、私も負けていませんよ!せーの!
      てやてやてやてやてやてやーっ!」サッ



バァン! バァン! バァン!



フォックス「あがっ!いてっ!爆撃機か何かかお前は!」

リンク「いたた…そりゃそうだよな、ヨッシーも本気になればタマゴ6連投なんて余裕だよなっ!
    結構爆発範囲広いんだよな、これっ!

    …いや、本当に広いな!?というか連投しすぎじゃないか、10発以上投げてるような!」

ヨッシー「試合直前にメロンを6個連続で食べてきました!」

フォックス「?」

リンク「……………………その後追加で、幸せなフルーツ食べたろ!?
    こらー!ドーピングするなー!薬物NO!ゼッタイ!」

マスターハンド「ヨッシー、一気に攻撃の態勢に移ります!連打が決まっています、これがじわじわと効くっ!
          リンク選手、フォックス選手、アイク選手、同時にヒットしました!」

リンク「キリがない!スカイウォードで撃墜…いや、ファイがいないと使えないな。
    よし、じゃあ弓矢で上を狙って…ハッ!ハッ!ハッ――!」グググ・・・



観客「フィールド上方でタマゴが次々と破裂して…たーまやー!!」

観客「昼間の花火も綺麗ねぇ!」

実況「両者一歩も譲らず、いきなりの乱打戦となりました!」

アイク「ぐうっ……」

実況「おおっと、アイク選手、動くことができません!ここから逆転を狙う秘策はあるのでしょうか!」

アイク(背に腹は、代えられない…恥を忍んで…!)ヨロッ

リンク(アイクが主戦場を離れたな、体力温存に出たか。まあ、追い打ちにでるまでもないだろう。なら、その隙に…残りの2人を各個潰す!そろそろ――)

ヨッシー「あ、ハッピー状態解けた」シュウ・・・

リンク「チャーンス!これで狙い放題、仕留めて見せる!」

ヨッシー(――と動かれることは、分かってました、ので!接近戦にSwitchのためヒップドロップでーす!)クルリン

リンク(来たっ!いくら急降下と言えど、わざわざ一直線に降りて来てくれるなら好都合だ!
    狙いの的だぞ、ヨッシー!)カマエ







――地球には、引力というものがあります。

――引力、引力…。

――引力、引力…。





ヨッシー「ねっ?」グニョン ゴウッ!

リンク「だぁあ!?」ガツンッ!

フォックス「不自然なほどクイッと方向転換したな…!
      まさか、ヨッシーの周りだけ一瞬重力方向が変わったのか…!」

ヨッシー「ふふーん、私のとっておきですよー。…まあ、あんまり効いてないのはちょっと想定外ですけど。
     怒涛のベロ攻撃ですー!」

リンク「ぐぐ…なんとか踏ん張れてよかったよ、今ので場外とか悲しすぎるし。って、今度は舌か!
    ほっ、よっ…!避けるのはいいけど…一度後手にまわっちゃうと、変に弓やバクダン構えたら食われそうだなあ、はは…!」バックステップ

フォックス(……!これは!チャンスか?剣をしっかり構えられる前に、ヨッシーに乗じて押し込むか!)ダッ

フォックス「どうしたリンク、俺だっているぞー!ハイ、ハイ、ハイ―っ!」ブンッ ブンッ

実況「フォックス選手、連続して攻撃を繰り出します!軽やかにヒットしました!」

リンク「こ、これは本当に…フォックスのジャブ速度にも押されて、中々、剣を振る暇がないなっ!」アトズサリ



ドンッ。



リンク「…げっ」クルリ

アイク「セコイ真似して、済まないな…でやあああぁぁぁ!!」ガキイィン!

ボオオオオォォォーー!!





実況「アイク選手、噴火が決まったぁ――!」

リンク「ぶっ!?く、クローショット復帰っ!!」

シュルルルルルルルル…!



リンク「…ふぃい、やばいやばい…いてて」

アイク「うむ、最大火力っ!油断したな、リンク!」

フォックス「俺たちが弱いせいで本気を出せないとかなら、まだまだギアは上げさせてもらうぜ!
       足元をすくわれないようにな!」

リンク「…はははっ!やっぱり皆、凄いよな!スマブラはやっぱり、こうじゃないと!
    さあ、まとめて相手にしてやるぜ、覚悟しておけよ!」

ワー ワー!!

ピーチ(控室)「あらあら、ようやくリンクも本気になったみたいね。
        全く、たるんでるんだから…。ゼルダもそう思うわよね?」

ゼルダ(控室)「……ええ。そうですね。若干慢心しているのでしょうか。あとでしっかり怒らないといけませんね。
         まあ、力を温存しているようですし…なんだかんだ言ってリンクは負けませんから」

ピーチ「ふーん…なんだか詰まらない反応ですこと。

    うーん、今日はもう参戦するつもりもないし、いつまでもモニターを眺めていないで城下町に繰り出そうかしら。
    その方が面白そうね。ゼルダも一緒に、どうかしら。懇切丁寧に案内させてもらうけど」

ゼルダ「…いえ。私は、ロゼッタの監視…いえお守りをしに向かいます。
    ちょっと目を離すと、また無理な特訓でもしかねませんから…本当に呆れますが」グッ

ピーチ「そんな、握りこぶしを作ってまで力説しなくても。お守りって、酷い言い草ね――」

キノピオ「ひ ひ ひ 姫様――!
      た た た 大変です――!」ダダダダダッ

ピーチ「…ハァ。今の私は『ピーチ選手』でしょう?
     全く、まだ完全には区別できていないのね。
    それでキノピオ、どうしたの?そんなに慌てて…」

キノピオ「そ、それが…」オズオズ

ピーチ「じれったいわね、別に敵が現れたとかでもないんでしょ?どうしたのよー?」フフフ

ゼルダ「ピーチ、子供みたいにストローでドリンクをかき混ぜないでください」

ピーチ「敵じゃなければ、多少のアクシデントはスパイスよ、暇つぶしになるのよー。
    『3強の3人が星を潰し合わないよう、中盤までは2人以上が対戦しないように試合を組む』っていうシード制度があるから、
    ゼルダの言う通り…マリオ、クッパ、リンクの試合はある程度は消化試合になることは否めないわー」

ゼルダ「そ、それは流石に他の選手に失礼なのでは…」

キノピオ「な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      なんと…
      対戦がなくて城下を散策中のマリオさんに、ピッチピチのスーツを着たグラマラスな金髪の女性が激しく迫って…
      しまいにはマリオさんの脚に抱き着いてまで泣きじゃくって、修羅場になったんですよ!……はぁっ!言えたあ!
      …あれ?姫様がいない?あれ?」

ゼルダ「な、なに?ギャルが抱き着いてきた!?一体どういうことですか!」

~キノコ城 城下~



ヒソヒソ… ヒソヒソ…



ゼロスーツサムス(以下サムス)
「グズッ……ヒック…どうして!どうしてだっ!マリオ、私を裏切ったのか!?
 お前の、こと、信じてた、のに……酷い、酷いよう…こんなことって……!」ポロポロ

マリオ「まままま待て、こここここは餅付こう餅付こう。胸が当たってる、当たってるから!?そそそ素数を数えるんだ!」

サムス「私の体くらいなら好きにしていいから、考え直してくれっ!お願いだ!」ギュウッ



マ、マサカ、ソンナコトニナッテルダナンテ…!
ウワァ、マリオッテオンナゴコロモテアソブワルイヤツダッタンダ、ゲンメツー!
オトコノカザカミニモオケナイヤツメー!

マリオ「なんか知らんが凄く悪評をばら撒かれているような気がしてならない!
   意図しないパンチラ構図フォトで難癖つけられた昔のスマブラを思い出すぞっ!?
   くっ、よりにもよって周りに仲裁できる者が誰もいないだなんて!
   ええい、スマブラはCERO:Aなんだぞっ!」

マリオ「…あっ!」



ピーチ「」ドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ

マリオ「ピーチ、ちょうどいい所に!ちょっとサムスを落ち着かせて、
    即刻、周囲の誤解を解いてほしいんだけd」

ピーチ「マリオの馬鹿ァ――――――――!」SMAAAASH!!

マリオ「」ガフッ



ピーチ「マリオ、サイテー!サイッテー!こんなのってないわ…!」グズッ

マリオ「……」ガシッ

ピーチ「何よ、言い訳する――」







マリオ「……正座」ズゴゴゴゴゴゴゴ

ピーチ「……………………アッハイ」

野次馬「「「「「…………」」」」」





ピーチ「……あのう、マリオさん。いつまで私は城下町のど真ん中で、衆目の面前で、
    惨めに正座しなきゃならないんでしょうか」プルプル

マリオ「タイマーでセットしておいた、30分が経過するまでな」

ピーチ(完全に子供へのしつけ扱い!?)

マリオ「俺だって怒るときは怒るぞー!もちろん親友の慣れ合いの範疇ではあるけれどもー!
    なんなら、舗装された道の上じゃなくて、裏道の…小石や泥が混じる土の上でもいいんだぞ。
    確かに人の目は少なくなるかもしれんが。別に痛くはないだろうし、そっちにするか?」ゴゴゴゴゴゴゴ

ピーチ「惨めすぎるのでヤメテクダサイゴメンナサイゴメンナサイ…」ガクガクブルブル

サムス「」

ピーチ「で、でも、こんな情けない姿を写真に収められてばら撒かれたりしたら、キノコ王国の威厳が…」チラッ

マリオ「大丈夫だ。カメラにベシィと叩きつけられて固まった姿のピーチの写真・動画が散々人気を博してる時点で
    今更こんな写真で威厳は落ちないって」ハハハ

ピーチ「…………………………………………
    それは、私の築いてきた信頼と実績を自画自賛すべきなのかしら。
    改めて、そんな間抜けな写真の流通を鬼の形相で食い止めるべきなのかしら。
    まあ…ともかく……それもそうね!」アッケラカーン

マリオ「皆さんっ!偉大かつ寛大な、王国民に近い目線で物事を見ることのできるピーチ姫に、
    改めて大きな拍手をお願い致します!」

野次馬「「「「「ウオオオオオオオオオオオォォォォォ!!!」」」」」パチパチパチパチ

サムス「」

マリオ「これにて一件落着…は、まだしてなかったか…」

ピーチ「…!そ、そうよマリオ!どうしてあんなことになってたのよ!?
    さあさあ、ようやく落ち着いたサムスさん?
    正座しながら尋ねるけど、一体マリオが何をしたの!
    事と次第によっちゃ、やっぱりマリオをとっちめて…!!」

マリオ「だからー!俺の関与するところじゃないんだって!」

ピーチ「マリオは黙ってて!…さあ、サムス、答えなさい!!」

サムス「――あ、ああ……グズッ、また、涙が…。
    マリオが、私を酷く、傷付けたんだ…!癒えようのない心の傷を与えたんだ…!
    ピーチも、聞いてくれ…!」

ピーチ「もちろんよ……!」





サムス「実は――」

ピーチ「…………」ゴクリ











サムス「間もなく世に繰り出される『マリオメーカー』のコース設計パネルに――
     坂道が搭載されていないというんだ!最低、最悪な……話、だろう!?」ポロポロ








ピーチ「……………………」

ピーチ「……え?もう一回お願いできる?」

マリオ「だから…俺、関係ないって言ったのに…」

サムス「だ・か・ら!高低差のある平地と平地を滑らかにつなぐ地形が…実装されていないんだ!
     シャインスパークのチャージエネルギーを維持できない、だなんて…!

     マリオメーカーが企画開始されたとき、私がどれだけ心躍らせ胸を膨らませたか分かるか!?

     何千、何万、いや何億もの…数えるのも馬鹿らしくなるほど数多の駆け抜けコースが世に産声を上げ、
     その中を縦横無尽に駆け回り、最高に恍惚とした表情と晴れやかな心意気でゴールを目指す私…
     
     というのを何年も何年も思い描いていたんだぞ!その…あまり出番に恵まれなかったというのも、あるし…。



    それが、ふらりと城下町に降りてみれば、なんだ!
    どこぞのスタッフたちが昼間から酔っぱらいながら、
    『坂道とか作ったら、どうせすり抜けや滑りでバグの温床になるだけっしょー!』とか言いながら
    ケラケラ居酒屋で飲んだくれているじゃないか!

    私は…私はぁ!!一気に、地獄へと、叩き落とされたんだっ!!
    マリオ!みんながみんな、4~5マスあれば十分すぎるだけのダッシュができるわけじゃないんだぞ!」

ピーチ「ええええ……」

マリオ「しつこいように繰り返すが、俺は全然企画に関与してないってば!」

サムス「そんなのは嘘だ、嘘に決まってる!
    …いや、仮にそうだとしたら…今すぐ開発室に殴り込んで――
    延期してでも実装させるよう直談判しに行け!
    マリオなら…マリオの影響力があれば、無碍にはできないはずだ!」

マリオ「…ったく、弱ったな。他に誰か、味方になってサムスをなだめてくれるやつはいないのか…
    おっ!あれは!」







ソニック「走るー走るー俺―たーちー!流れーる汗もそのまーまーにー!」

ネス「テレポ―テーショーン!今、時を飛ぶー!」

ピカチュウ「ピッカチュ ピッカチュ ピッカッチュウ!」ピカァ



マリオ「くそぅ碌な奴がいない!」

マリオ「と、とにかく今回は諦めてくれ!
    次に機会が有ったら、一応坂道について進言しておくから」

サムス「次とはいつだ!10年後か、20年後か!?
     私でも予想が付くぞ、こういった人気間違いなしのクリエイト物は
     互換性とか販売展開とかの関係でそうそう更新企画が出ないだろうってことくらい!」

マリオ「…5年以内になんとかしてやるから!!なっ!なっ!?」

サムス「…………本当だろうな!?
     もしも嘘だったら…ヨースター島じゅうの三角コーナーを
     奪い尽くして持って帰ってやるからな!?ふんっ!」

マリオ「三角コーナーって何さ…あ、あの赤い三角ブロックか。
    あれがないと大多数の冒険者がつまずくからやめてくれ。
    …じゃあ、周囲の誤解も解けたし、俺は散策続けるな?」

サムス「………………………………ああ、そうか。
     呼び止めてしまって悪かったな。

     あ、だったら。これも何かの縁だ、私を案内してくれな――」

ガシィッ!



ピーチ「サムスちゃんは、ちょーっと私が預かるから。マリオ、また後でねー。散策楽しんできて」

サムス「え、何を言っているのだピーチひm」ビクゥッ!

サムス「」



マリオ「…あ、30分経ってたか、わかった。じゃあ、2人仲良くなー」テクテク

ピーチ「ええ、仲良く『話し合ってくる』から、心配しないでー!
    …さぁてと、適当なフィールドで非公式戦、やりましょうー」

サムス「…せめて、スーツを着させてくれないか?」ガクブル

ピーチ「それだと衝撃が吸収されちゃうじゃない、ふふふ」

サムス「ああああああぁぁぁぁ……」ズルズルズルズル



マリオ「平和が戻ってよかったよかった」

マリオリンクと来て三強なら残りカービィかピカチュウかかと思ったけどクッパか

アイクとマルスはちょいちょい後の世代にも呼ばれてるから良かったな

マリオがスマブラで11年ぶりに切り札強化されたと思ったら時間操作やり始めたな

~数日後~

マスターハンド「それでは、今日も元気よく――試合開始のカウントダウンですっ!」



マリオVSルカリオVSネスVSパルテナ



ワー!ワー!
マリオ、ガンバレー!

マリオ「どもどもー!」ブンブン



パルテナ「こ、今回の大会…マ、マリオと相対するのはこれが初めてですね…。
      もともと、初出場の私が上の立場になれる相手などそうはいませんが…
      とりわけこの方は…強者のオーラ、やはり隠し切れていません…!」グッ

マリオ「うん?パルテナ、そんなに固くならなくてもいいぞ。悔いのないよう、精一杯楽しもうな!
    ピットが散々自慢していた女神の実力、俺も目の当たりにするのが楽しみだ!」

パルテナ「は、はいっ!よろしくお願い致しますっ!」ビシッ!



ピット(観客席)「パルテナ様が気おくれしているだなんて…!
          い、いや!弱気になっちゃ駄目です!頑張って下さーい!」

観客「ファイブ!」

観客「フォー!」

観客「スリー!」

観客「ツー!」

観客「ワン!」



パアアアァァン!!



実況「――――さあ、試合開始――!戦いの幕が…切って落とされたー!」



ダダダダッ!

ルカリオ「ハァッ!セイッ!」

ルカリオ(ダメージを受けての高火力波導弾がセオリー…。だがマリオが相手では、
     最後の最後で迂闊に繰り出してもマントで跳ね返されてこちらが大火傷するのみ。

     神速特攻、シールドを不定期に挟みつつ……
     ダメージ蓄積量に囚われず、最初から臨機応変に…動く!)ババッ

マリオ「なるほど、初っ端から動いてくるか…!受けて立つ!手数なら早々負けん!」



シュッ!シュッ!ゴウッ!…シュバババッ!



ルカリオ(…さんざん知り得てきたことだが、とにかく発生が疾い!
     ジャブからキックに至るまでの弱攻撃連携、程よく浮かせるアッパーに投げ!
     くっ、威力を主張しようとしても対応力で追いつかん!
     …いや、そもそもレベル差から威力でも負けている気がするぞ!)



ルカリオ「…一旦切り返して――ハアァァ……!」チャージ!



マリオ(む…ワンステップ引いてからの波導弾!
    跳ね返されることは百も承知か、それともブラフか?
    見極めたいとこだが、俺は三者全員から狙われる立場だし、なっ!
    期待値の高い行動を取りつつ、万が一も強引に押し通す…要するにいつも通り!)

ルカリオ「フンッ!」バッ

マスターハンド「ルカリオ選手、作り掛けの波導弾を地面に叩きつけた!」

ドカーン!パラパラパラ……!

マリオ「まさかの目くらましかよ!」

ルカリオ(神速、フルスピード!…からの――)シュタタタ

ルカリオ「八頸!……くっ!?」ガキンッ!

マリオ「よし、読み通り!ちょっと背中側が忙しいから待っててくれな!
    ――振り向きざまに、ファイアっ!」クルリ

ネス「PKファイアー!…あちゃあ、相殺されたかぁ!
   なら…PKサンダー!避けられるものならやってみてよ!」

マリオ「いいだろう…ほらほらどうした、追尾が甘いぞ!」ヒョイ ヒョイ

実況「いきなりの大乱戦となりました!まさに波乱の幕開けです!」

ネス「やるなあ!でも、まだまだぁ!」

ルカリオ(ジャストタイミングのみシールドで回避するとは…!
      おまけに、既に後ろを向いて対応しているだと、恐れ入る…!
      こうなっては、崖捕まり時に狙うくらいしか確実とならないか!

      しかし、目が逸れた今はチャンス!隙を見計らって神速で…!)グルル

ネス「いっくよー!PKフラッシュを出し……!」ボッ

マリオ「何度でも相殺してやるぞ――」



ネス「PKサンダーを自分の脇腹に最高速度で当てる!」ドゴッ

マリオ「…え、崖復帰?」



ネス「ぐふっ…そのまま吹っ飛びながら、落ちてくるPKフラッシュの光に…
   勢いそのままバット…スゥウィングゥ!!」カッキーン!

マリオ「強引だなぁ!?うわっと!」

パルテナ「リンチ状態となり心苦しいですが…!背に腹は、代えられません!
     そのPKフラッシュ、利用させてもらいます…反射板っ!!」ドンッ!

実況「おっと!攻撃を返したぁ!これは集中攻撃だ!」

マリオ「やっぱり実質1対3かぁ…チッ、中々に厄介な…!」





ルカリオ「――っ!好機!」ダッ

マリオ「お、このタイミングで――!」

ルカリオ「上に浮かせて…連続で蹴り上げるっ!オラァ!デエィ!」ドガガガガッ!
   
実況「連続して攻撃を繰り出します!」

マリオ「ぐふっ!いてっ!やったなぁー!」

ルカリオ(…いや、声の割にほとんど効いているように見えない!)

実況「このままでは耐えきれなくなります!このピンチを切り抜けることができるのか!」



マリオ「…あったり前だ!」ガシッ

ルカリオ「ま、まさか最初から脚を狙って…!?離せっ!」

マリオ「うおおおおおおおっ!ジャイアント――スイングゥ!」ブンッ ブンッ ブンッ

ルカリオ「ぐわあっ!」ブワッ

ネス「あ」

パルテナ「こ、こっちに!?きゃあっ!!」ドガッ! ゴリゴリゴリゴリ!

ネス「…うわ、フィールド端まで飛んでったなぁ、すっごい威力の投げ」

ルカリオ「…くっ、やはり慢心してしまったということか…引き際を誤ったな…ん?」

ピット「う、うわあああ!?大丈夫ですか、パルテナ様ぁ――!!」

パルテナ「――――っ!!」ガクッ

パルテナ「…お腹に……鋼の、棘が、刺さったんです、けどぉ…!
      許す、まじ、ルカリオ…!」ドクドク

ルカリオ「私のせいか!?」



マリオ「余所見してて、いいのかなっと!」キュイィィイン――! バシュッ!

パルテナ「ポ、ポンプ水流…!もう一回、反射板で…!」



ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド――!!
ピキピキピキピキィ――――ッ!!

パルテナ「!?…………え、押し返し、切れない!?
なんですかこの濁流…いえ、奔流は!こんなことって――!?」ズズズズズ・・・

ネス「レベル差の暴力で反射板がキャパシティオーバーしてるんだ!
   ただでさえ押し出し能力特化の必殺技なのに、勢いで対抗しても無駄だよ!」

パリイィン!!



パルテナ「反射板が――時間切れすら許されず、割れ、た!?――ぶふっ!?」

ピット「パルテナ様ぁー!!…
    ああ、どうにかこうにか崖に捕まることができましたか!」

パルテナ「ぐぐぐ…なんて、パワー」ブラーン

パルテナ(棄権したい、ところですが。せっかくピットが見ていることですし、
      無様なままでも頑張っているところを…見せたい、というのは…やっぱりありますね!)

パルテナ「よいしょっと」

ルカリオ「えっと…棘、大丈夫だったか?あながち軽い傷でもなさそうだな、一応謝っておく。
      ――すまない」

パルテナ「…冗談、ですよ。さあ、まだまだ参りますよ!
      あの男はやはり強い、か弱い私と言えど、味方を失うのは勿体ないでしょう?」

ネス「…だね!」

パルテナ「んもう、ちょっとは否定してくださいよ」

実況「何とか持ちこたえた!さあ、鍔迫り合いが続きます!
   何処まで反撃することができるのでしょうか!」

マリオ「…そうか、まだ鍔迫り合いと思われる程度の戦いだったか――
    じゃあ、そろそろ加速するとするか。
    ――さあ、着いて来られるかな?」

ルカリオ「――!フッ、やはり恐ろしい男だ…来るぞっ!」ゾクッ

ネス「――な、なにおー!」ゾクッ

パルテナ「――っ!この位でたじろいでいてどうするのですか、私…!」タジッ





マリオ「いっせーのー……でっ!!」シュンッ!





ピーチ(控室)「あらやだ、マリオったら大人げない」

ヒルダ(控室)「…わあ!?」

パルテナ「…………!?き、消えた!?」

ルカリオ「こ、こら!目を切るんじゃない!超スピードで攪乱しているだけだ!
      特にパルテナは、死角を掻い潜られたら終わりだぞ!」

パルテナ「そのようなことを言われましても…これがかの有名な、ヤムチャ視点とやらですか!
      ど、どちらですか一体!?」キョロキョロ

ネス「だ、大丈夫!これでもまだ、ソニックよりはよっぽど遅い!」

パルテナ「全然安心できないのです、が――」



トンッ――



パルテナ(思わず、息を飲んでしまいました)

パルテナ「…………あらあら、これは完敗ですね…呆れてしまえるほどに」

マリオ「この状況でそのセリフを吐けるのは大物だと思うぞ、もちろんいい意味でさ。
    …そんなわけで後ろを取らせてもらったぞ、ありがとな」

パルテナ(……背中に拳がトン、と当てられる感覚。…体が、ぶれる)    

パルテナ「ふふふ…なぐさ、めに、も…なりま、せん、ね――
     こんな、ことなら…せめ、て…ロゼッタと被って、でも…
     テレポートを、もっと使っておくべき、でし、た――」ガクッ

実況「おーっと!ニ撃目には耐えられなかった!ここでダウンです!」

マスターハンド「マリオ選手、気を失い地に伏せたパルテナ選手を優しく担いでステージ外に放り落としました!
          これでパルテナ選手は苦しまずにバーストできることでしょう!
          ある意味ではド外道の行為にも映りますが!」

ピット「こらあマリオ!パルテナ様に酷いことするなー!怒ったぞ、ほんとに!!」

マリオ「ルール上仕方ないだろうがー!じゃあ次の対戦の時は仇討ちに真っ先にかかって来いよー!
    約束だぞー!俺は逃げずに受けて立つからさー!」



ピット「…………………怒ってないからマリオさんは気にしないでー!
    この先も頑張ってくださーい!」

マリオ「」



ネス「…………うん。武者震いだ、そういうことにしておこうっと」

ルカリオ「…ええい、私は1対1でも怖気ずに突貫する!不屈の心、しかと見よ!」

マリオ「そうこなくっちゃあ!伊達や酔狂で映画の看板担いでないだろー!」カマエ

ピーチ「相変わらずマリオは強いわね…私も、大会中1勝くらいは…したい、なあ」

ヒルダ「そんなことが可能なのでしょうか…」



キノピオ「ひ ひ ひ 姫様――!
      た た た 大変です――!」ダダダダダッ

ピーチ「…ハァ。『ピーチ選手』って何回言ったらわかるの?
    全く、アイランドツアーの時から後退しちゃったんじゃない?
    それでキノピオ、どうしたの?そんなに慌てて…」

キノピオ「そ、それが…」オズオズ

ピーチ「まどろっこしいわね、今度は何よ?
    ふふ、マリオなら戦闘真っ最中なんだけど?

    ゼルダはロゼッタの監視役とかで全然姿を見せないし、
    ヒルダを無理やり捕まえて観戦するくらいで暇してたの。
    どうしたのよー?」フフフ

ヒルダ「自覚しているなら私の自由時間を奪わないで下さいよ…
    まあ、結果的に楽しめてはいますから感謝していますけれど…」

キノピオ「な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      なんと…対戦がなくて城下町を散策中のクッパが、持ち家…じゃなくて持ち城のことで
      デデデ大王と自慢大会を始めて…クッパ7人衆やクッパJr.やカービィがあれやこれやと煽る中、
      修羅場になったんですよ!……はぁっ!言えたあ!」

ピーチ「なーんだ、城自慢対決くらい平和なものじゃないのー。
    ちょっとした突発トークイベントとして、周囲の人たちも喜んでくれるでしょ――」

キノピオ「その…ワリオまで混ざって、大通りを陣取って、



     軍団勢力の美しい配置の仕方だとか、
  
     正しい大砲の配列の仕方とか、

     さらにはいきなりボーリング工事を行ってのマグマの掘り方とかを
 


     実演して見せているみたいですけど…」

ピーチ「」ガシャーン

ヒルダ「」

~大通り~

デデデ「ワドルディ部隊っ!高速ゴルドーを設置、設置、設置ぃ!
     更にっ!超巨大扇風機で強風を吹かせる!

    ほれ、そして――こんな感じにMトマトを置いておく!
    ハラハラさせつつ突破できなさそうでできそうで、やっぱりできない!
    この絶妙な難易度構成を見てみるぞい!」ズバババババ

ワリオ「バッカだなお前!まだまだ全然、イタズラ度ってもんが足りてないぜ!
    そんな超強力アイテムを置いておくなら、俺だったら――
    前後50メートルずつは、ゲン・コッツとドン・ガバメンの嵐だな。
    これ以上は負からねぇ!いけっ、タタンガ!仕掛けてこいや!
    オレは適当にマグマ掘っといてやるよ!」ズガガガガガッ!!

クッパ「いや、これでは鬼すぎるし、驚きが足らん。ゆけっ、パタパタ部隊!
    ワガハイの指示通りに設置するのだ!
    ――どうだ、この一糸乱れぬ的確で華麗な動き!
    コインで誘導線を描いておき、一方で忘れたころに孔明ブロックを仕掛けておいてだな…!」

観光客「うわあ、マリオメーカー発売間近なこともあるし、アトラクションの制作実演現場かあ」

観光客「アトラクションにしちゃあ本格的だなあ…あれ?
    ……このマグマ、もしかして――ほほほ本物ぉ!?」ツルッ

カービィ「ハーイ!(コースを上から眺めたい方は集まってくださーい!
     食べ物1つくれるだけで、優雅な空中旅行を提供しまーす!)」ガシッ

プリン「ぷりり!(こっちは自慢の曲を1曲聞いてくれるだけで
    空を飛んであげちゃいまーす!)」フンス

ピーチ「何やってんのよアンタたちぃーーーーーーっ!!」ズドドドドドドド

デデデ「あ、ピーチ。……え、だって看板に書かれた禁止行為に
    『キャッチ行為』『許可ない露店販売』『違法売買』『ボール遊び』
    『危険物の持ち込み・設置』『歩きタバコ・ゴミのポイ捨て』
    『その他、通行人や住民に対する迷惑行為』
    まではあるが、『ステージ作成』が禁止とは書かれてないぞい?」

ワリオ「『マグマ掘削』とも書かれていないな」ハナホジー

クッパ「通行人の安全はしっかり見張っているし、驚び喜んで貰っているし、
    『迷惑行為』ってわけでもないのだ」

ピーチ「喜んでる人ももしかしたらいるかもだけど、大多数の人は戸惑ってるでしょうが!
    …なにより一般店舗や王国公共物に対する器物破損行為よおぉぉぉぉ――!!」

デデデ「…おお!すっかり忘れていたぞい!ワシ、この王国の大王じゃなかった!」ポンッ

ワリオ「せっかく地下資源(マグマ)を掘り当ててやったってのによー。
     いくら俺様の怪力でも、数万メートルとかを一気に掘り進めるのって大変なんだぞー?」ブツブツ

クッパ「…………………………………………
    よしカメック、急ぎマグマを地底に引っ込めさせるのだ!
    トゲノコ部隊っ!掘り起こされた街道を即刻復旧させろ!
    パタクリボー部隊は、設置物を速やかに除去して回るのだ!」テキパキ

ピーチ「…………デデデとワリオ、正座」

ヒルダ「まったく、人を連れ出しておいて勝手に飛び出していくんですから…
    ピーチ姫はどちらでしょう。…見つけないと、ですね」タッタッタッ



「フンフンフーン!ようやく、僕もキノコ王国に来ることができました!
いやぁ、数多の敵相手に無双するなんて冷や汗経験、もうこりごりですよ…。
あ、でも色々と戦利品も手に入れられたからホクホクなのは確かですね!
ロウラルに戻ってから活かすことができたら…ヒルダ姫も喜ばれるだろうなあ。

さって、ヒルダ姫はどこかなあ……あ!言ったそばからはっけーん!」ダダダッ



ラヴィオ「大変遅くなりましたー!!ラヴィオですー!」ダダダッ



ヒルダ「ピーチ姫はどこでしょうかね…」スイーッ



ラヴィオ「」ピシィ

ラヴィオ「」

ラヴィオ「手を振って声を上げながら駆け寄ろうとしてたのに――
     気にも留められず無視して駆けて行かれた、だと…!?
     あ、あれ?もしかして、従者でありながら姫を一人きりにさせたこと……
     怒ってますかあ!?あわわわわわ……!?」

~喫茶店~

アイク「……というわけで、こいつがルフレだ、宜しく頼む。
    才能はあるはずだから、ビシバシ鍛えてやってくれないか!」ポンッ

ルフレ「よ、よ、よろしくおねがいいたしまふっ!!
    ぼ、僕なんかがリンク様の手ほどき受けるなんて、お、恐れ多いのですがっ!」ガチガチ

マルス「そんなに緊張しなくていいって。リンクは気さくな奴だからね。
     ……リンク、よろしく頼めるかな?できれば大会期間中……
     いや、よかったら期間を過ぎてからもいろいろと面倒を見てやってほしい」

リンク「へえ…なになに、肩書きとしては謎多き軍師、かあ。
    どっちかというと頭脳派なのかな、微妙にお門違いな感じもするんだけど…」

アイク「まあそう言わないでくれ。なんだかんだで剣を振るう機会もあるみたいだし。
    …それにお前に取っちゃ、剣は攻撃手段の一つでしかないんだろ?」

リンク「…う、揚げ足を取るのは良くないと思うぞ。
    しかし、今回の大会…FE勢の新規参戦者はDLC除いて2人と聞いてたんだが…」

ルフレ「は、はいっ!リンク様、申し上げます!」

リンク「リンク様、は止めてくれ。リンクでいいリンクで。せめてさん付けで留めてくれ。
    話し方も特に気を使わなくていいから、うん」

ルフレ「う、うう…じ、実はですね、リンク、さん。
    もともと自警団長のクロムが参戦する予定だったのですが…」

リンク「…が?」

ルフレ「出発前日に、国境付近でちょっと…戦闘がありまして。

    『ルフレ、お前はいろいろと戦術を吸収して帰ってきて、俺たちを驚かせてくれ!
    だが…悪いが、2人とも行くって話は却下だ!団の戦力が下がりすぎる!
    俺は団長として、やるべきことをやることに決めた!』

    …とキッパリ言われてしまったもので」

リンク「うわあ…そりゃあ残念だな…」

ルフレ「……でも、僕としては、皆を纏めるカリスマに溢れたクロムが頼もしくて
    非常に嬉しくもありましたけれどね。自慢の団長ですよ、はい!
 
    事前対応も非常に迅速なものであったために、任天堂さんからも
    ほとんどお咎めなしで済みました!次回はきっと出られます!」グッ

リンク「そっか。クロムって奴も、ここまで信頼されて幸せ者だなあ」

ルフレ「当然ですよ!」ムフー!

リンク(ニコニコ)

ルフレ「…はっ!?す、すいません!なんだか僕だけ、自分の世界に入ってしまいまして!」

リンク「いやいや、緊張も解けたようでよかったよ。よし、じゃあ…
    どんな特訓内容をこれからやっていくか、本題に移ろうか」

ルフレ「……………………ま、また緊張してきました…わわわわ…」

リンク「えー、面白い奴だなー」アハハ

アイク「…………」

マルス「しかし…リンクは逆に、少しは緊張感を持つべきじゃないか?
    実力があるのは認めるけど…この大会のここまでのリンクの戦績…
    微妙に取りこぼしがあるんだが。

    ほら…一昨日とか、2位に甘んじる試合が3戦もあったし、
    …………1位のときの試合もそれほどポイントを得られていない」ペラッ

リンク「どれどれ?……あ、ほんとだ。確かに勿体ないことになってるな。
    まあでも、当然他の人から集中攻撃される立場にあるし、こんなもんだろ」

マルス「……うん、どうにも釈然としない態度だね。油断とかしてるんじゃないのか?
    確実にポイントを稼ぎに来てるマリオやクッパに負けかねないよ?
    …いや、大会ももう、2週間が過ぎた。このままのペースでいくと、確実に負ける」

リンク「え、そうかな?…あんまり気にしてなかった。
    でも、お祭りなのは確かだし、楽しむこと優先でも悪くはないだろ?
    その中で優勝できるならなお良しだし、むざむざ負けてやる気もないぞ?」

マルス「…むっ。失礼な言い方かもしれないが、今のリンクには――
    少なからず慢心が見受けられるな…そんなことでは、足元を掬われるぞ?」

リンク「本当に失礼だな……まあ、怒りはしないよ。素直に受け止めるさ。
    ちょいと気合いを引き締めなおすとしますか!
    じゃあ、今度こそルフレの修行内容に移るとするぞ」

ルフレ「は、はいっ!え、ええっと、僕の希望としましては、魔法と剣技をバランスよく教えてもらいつつ、
     基礎体力の向上、スキル応用についても色々と学習したいのですが…!」

リンク「よし、じゃあ剣の素振りと魔法行使の日課をとりあえずこれだけ与えるから、毎日こなすことを前提としたうえで、
    ざっと2時間くらいの模擬戦闘を午前と午後に俺と行ってだな…」サラサラ

アイク「…………」ジトー

マルス(受け止めてる…っていうか、聞き流しているような…やれやれ。
    まあ、この明るさは今のリンクの長所でもあるのは分かってるけどね)

ルフレ「ふううううううううぅぅぅ…………つ、疲れたー…………」



まさか、伝説といってもいいくらいの存在のリンクさんに、手ほどきを受けることになるなんて。
寝耳に水だ、心の準備をさせてほしかったよ…。すでに精神疲労がやばいことになっている。

クロムが欠席のせいで、世代代表としての負担がぜーんぶ僕に降りかかってきているのは
やっぱり色々ときつい気がする。クロムの決断は間違ってなんかいない、とは分かっているけど。

ルフレ「ヘラヘラしすぎだ、とマルスさんもアイクさんも若干リンクさんに呆れていたけれど、それでも…
    僕の実力をちょっと確かめただけで、無理なく鍛えられる・なおかつ効果的なプランを、特訓計画を――
    ビシッと立てて見せるんだもんなあ…やっぱり凄いや」

軍師としてだけでも、まだまだ成長しなければならないと痛感した一日だった。
ここまでお膳立てしてもらったのだから、先輩たちに失望されないためにも、全力を尽くさなければ。

ルフレ「そ、それに、大会に参戦した以上…10戦は戦わなきゃいけないみたい、だし…はあ。
    やっぱり気が重いなあ……

    こういう時こそ――『あの力』、ちょっとは縋りたく思えてしまう…。
    ――いやいやいや!何、馬鹿なこと考えているんだ、僕!?冗談じゃないぞ!?
    取り返しのつかないことになったらどうするんだよ!?
    もう使えないはずだけど!?」

…ふう、疲れ切ってるみたいだし、日も暮れようとしているし。
お店でも見て回って…今日は休もう。



――それにしても、ほんと、栄えてる王国だな。
――どこもかしこも、明るく元気な声が響いている。
――通行人も、商人も、皆が笑顔。どこを見やっても清潔感、熱気、活気がある。

――いつかは、僕たちの国も…こんな、平和で豊かな国にしてみたい。
――できるだろうか。…いや、するんだ。僕たちの手で!
――少しずつながら、平和の糸口は見えてきているんだから!



ルフレ「…そうは言いながら、実際、まだまだ不安因子は残ってるんだけどね。
    奮闘しているみんなのために、しっかりとお土産…買って帰ろう!
    心を込めて1人ひとり、選んでいくことにしようか。
    どこから見て回ろうかな…よし、ひねくれて路地裏に迷い込んでみるか!

    …すいません、こっちって行き止まりじゃないですよね?」

住民「大丈夫、ちゃんと通り抜けできますよ。ちょっと道が悪いかもしれませんけれど」

ルフレ「僕の国に比べればよっぽど整備された通りですよ、あはは。
    よし、腕利き職人が営むような、隠れ名店の匂いがプンプンする!行ってみよう!」

テクテク、トコトコ、歩みは続く。

ウインドウショッピングしながら、買い食いしながら、のんびり観光。
…ホクホク熱い、キノコのホイル焼きつまみセット、10コイン也。
こいつは買って大正解だったかもしれない。お酒があったらなお良かったかもね。

ルフレ(本当に整備されてるなあ、ちょっと土がむき出しになってる程度の物じゃないか。
    
     賭博場はあるけれど、王国運営でキノピオが係員をやっているし。
     古めかしい佇まいの武器屋には保証書付きの立派な武器が並んでいたし。
     …帰りに、ここで何か買って帰ろうかな。

     なんか、変なアイテムがまさかの1コインで売ってたから…買っちゃったよ。
     『なにがおこるかな』って…なんだろう?ま、面白そうだからいいか!

     いやあ、愉しいなあ!時間が経つのを忘れるよ!






     
     …というか、忘れてたよ!好奇心に負けてすっかり夜中だよ!?
     ついでに言っちゃうと、道に迷ったよ!?どこ、ここ!?
     早くホテルに戻らないと野宿になっちゃうんだけど!?)

左右をキョロキョロ、前後をキョロキョロ。
…まずいぞ、土地勘が全くないというのに夜中に迷ってしまった。
居酒屋の灯りだけが、元気に煌々と輝いている。



キノコ王国のことだから、そうそう命の危険があるとも思えないけれど…
明日から早速、リンクさんから課された特訓が待っているからな…。
寝不足で調子が出ない、なんて白状した日には、皆さんから大目玉だ。

ルフレ「こ、こうなったら!恥を忍んででも、適当に居酒屋に入って…
    中央通りまでの道順、教えてもらおう!
    軍師なのに情けないけど、背に腹は代えられないよな!」





そう思い、一番最初に目に入った暖簾に向かおうとした――ちょうど、その時。

ルフレ「……ん?んん?んー?」クンクン



僕は、足を止めてしまった。
――いや、止めることができて、僥倖だったというべきか。



なんだろう。…この、臭い。
闇夜のどこかから、また闇夜のどこかへと吹いていく風に乗って、
微かに感じられる、この臭いは。

店の中から漂ってくる、酒の匂いじゃない。
そのあたりからほんのり漂ってくる、泥の臭い、ごみの臭い、とかでもない。



ルフレ「――――――――――――――――っ!」



これでも、戦場を駆け回った一軍師として――。一瞬で、五感が、冴える。
――血の、臭いだ。

たまらず、僕は真剣に駆け出した。

ルフレ(どっかの馬鹿が、酒に酔って殺傷沙汰でも起こしたか!?
    変な勢力争いでも影で起こってるんじゃないだろうな!?
    たくっ、キノコ王国といえど、全部が全部順風満帆じゃ、ない、みたいだっ!!)

ちょっとくらいのいざこざなら、僕1人で対処してしまうしかない。
こんな僕でも、一般人よりはよほど腕っぷしが強い自信はあるからね。

人間ってのは不思議なものだ。
入り組んだ裏通りに迷い込んだまま出口を見つけることができないくせに――
袋小路が怪しくないか?と闇が深まる方へ、深まる方へ進んでいくことは
案外簡単にできたりする。

……『事故現場』を見つけることは、恐ろしくすんなりできた。



ルフレ「――――――――っ!!!!」

1人の青髪の女の人が、夥しい量の血を全身から流して、うつぶせで倒れている。
まるで、ここで斬り合いが起こっていたかのような有様だ。
意識は――ない。



……ああ、でも。虫の息ながら、辛うじて呼吸はしているみたいで、よかった!



傍に血濡れの剣が落ちているのを見たところ、剣士、だろうか。…いや、そんなことどうでもいい。
一体全体、どうしてこんなことに!そして、どうして誰も気づかなかったんだ!?

ルフレ「と、とりあえず病院だ!この王国の病院なら、きっとなんとかしてくれる!」



できる限り慎重にゆっくりと、彼女を背負う。
関節の可動域としてありえない方向に…黒ずんだ腕が曲がっている気がするが、今は無視。
そのあたりも、病院に全て丸投げしてしまうことにする。僕にはそれしか術がない。

背負ってわかる、その軽さ。鎧込みなのに軽すぎる。まともに食事を摂っているのだろうか。
――おかしい。この王国で、こんな事態がそうそう起こるとは思えない。



ルフレ(だああっ!だから、余計なことを考えるなよ、馬鹿軍師っ!
    今は一刻も早く走れっ!一分一秒が命取りだぞっ!!)ダダダダダッ!!



シンプルイズベストとはよく言ったもので、
愚直に一方向だけに全力疾走することで…案外簡単に迷路を抜けられた。
若干遠回りになってしまったかもしれないけれど。
流石にもう迷わない、キノコ城へ直行だ!

もう、日付が変わってしまったのだろうか。
満身創痍の女性を背負って全力疾走する僕とすれ違う人が殆どいなかったのは、
幸運なのか不幸なのか。…間違いなく不幸だな、この女性にとっては。

ルフレ「すいません!大会参戦者のルフレといいます!
    重傷人を発見してここまで連れてきたんです、開けてください!!」ドン ドン ドン!

警備の人が僕の選手カードを…そして、背負った女性の具合を確認して、
慌ただしくどこかに連絡をしているようだ。…頼む、はやく回復してあげてくれ…!



スピーカーから、途端に女性の澄んだ声。



ピーチ『ルフレね!オッケー、おおよその状況を把握したわ、そのままその人を背負って救護室まで入ってきてくれる!?
     私もすぐに向かうから!怪我人の護送、感謝するわ!』

ルフレ「うわっ、ピーチ姫に直通連絡か、凄いなあ…でも本当にありがたいです!
    そ、それで、ええっと、救護室ってどこですか!?」

ピーチ『……ああもう!説明する時間も惜しい!じゃあ、門を入ったところで待機!
    私が全力でそっちに駆け付けた方がきっと早いっ!また後でっ!』プツッ



ルフレ「…………えっ」

~30秒後~

ピーチ「お待たせぇーーーーっ!」ドッズゥン!

ルフレ「は、はやっ!?どこから飛び降りてきたんですか!!」

ピーチ「城の上を適当に伝って…ま、そんなとこよ。私がまだ起きていてよかったわね、
    もしも寝ていたら到着が1分は遅れていたわ」



ニヤリと笑うピーチ姫だったが、たちまち顔を引き締めて見せる。



ピーチ「酷い怪我ね…!でも……うん、特異な状態異常にはなっていないし、
    私が来たからにはもう大丈夫!
    
    1UPキノコ、救護室にしかなかったから…魔法で回復させるわよっ!
    その人には悪いけど、地べたにちょっと寝かせてちょうだい!」

ルフレ「わ、わ、わかりました!はい…どうか、お願いします!」

ピーチ「それええええええええええっ!!」パアアアアアアアアア!!




ルフレ(すごい…これが、ピーチ姫の回復魔法か…!)

「…………………………………………っ!」パチッ

ピーチ「…よし!これで、もう心配はないわ。
    ねえ貴方、どこかまだ痛むところがあったら教えて頂戴ね」



――その女性は、ゆっくり、ゆっくりと目を開けていき、ボーッとした後…
――たちどころに目を見開いて、上体を起こした。
――見かけこそ全身が血で染まっているものの、今の魔法で血はとっくに止まったらしく。
――痛みだとか、動作の支障だとかもないらしい。本当にすごい回復魔法だ!

僕も一瞬で緊張が解けてしまって…つい、ヘナヘナと尻餅をついて座り込んでしまった。
一気に汗が湧き出してくる。



――固まっていた女性が、次の瞬間にまず、やったことは。



周囲の確認、状況の確認……ではなく。
身体に異常がないかの確認……でもなく。
鞘の方向に、腕をやり――何も掴めないことを知り、腕を止め蒼白になること、だった。

ピーチ「あれ?どうしたの――」

ピーチ姫の問い掛けに反射的に飛びのき、警戒心全開で戦闘の構えをとる。
…あれ?なんだか、ちっとも穏やかじゃないぞ?



「――――――――どこに」

ピーチ「え?なんて?」

「私の剣を……何処にやったァ――――っ!!!」

なんだか知らないが、ピーチ姫が自分の剣を奪った悪者と認識しているらしい!
無防備なピーチ姫の懐に、颯爽と拳を叩きこむっ!





ピーチ「てい」バシィッ



……こと叶わず、かわしてからのビンタで空高く吹き飛ばされて地面に叩き付けられた。

ルフレ「わー、人ってビンタで空を飛べるんですね」トオイメ

ピーチ「かんっぜんに剣士一本槍の崩れ体術って感じね、熟練度が低すぎるわ」ハァ

ルフレ「回復した傍から大ダメージを受けちゃってるよ…容赦ないですね」

ピーチ「事情は分からないけれど、攻撃してくる方が悪いわ」

ルフレ「まあ、それはそうかもしれないですけど…キノコ王国のお姫様、恐ろしや……!
    えーっと、おーい?君、大丈夫?生きてる……よね?これで即死とかしたら…僕泣いちゃうぞ?」



女性は、強かに打ち付けた体を押さえて鋭い眼光でよろよろと立ち上がり…
今更ながら、僕の顔を見やって…………またもや目を見開いて固まった。
あ、そういや、向かい合うのは初めてだったかな。顔にも結構な傷があって…痛々しい。
でも、固まられるのも困るんだけど。そんなに変な顔かなあ、僕の顔。傷付きます。





「――――ル…………ルフレ、さんっ!?」

ルフレ「!?」





彼女は――僕のことを、知っている!?どうして!?

……………いや、待て。

確かに、彼女の防具……なんだか、似た意匠を見た覚えがあるぞ。



ルフレ(まさか…僕と同じ世界の、大陸の…戦士…なのか?)



彼女は厳しい表情から……一転して泣き顔になって、僕のところに駆け寄ってきた。
ピーチ姫のことなど目もくれないで、僕の右手を両手でしっかり握りしめ、小さく笑った。

…不穏な空気は去ったと言えど、蚊帳の外に置かれたピーチ姫が不満そうにしています。
……なんだか後で僕がとばっちりを受けそうなので、だれか何とかしてほしい。



ルフレ「……あー、すまない。傍に血濡れの剣が転がっていたのには気付いていたんだけど、
    一刻を争う状況だったんで…とりあえず剣はその場に放置して、此処まで担いできたんだ。
    何だったら、すぐに拾ってくるよ」

「……あ、いえ!在処が分かっているということでしたら、別に急ぐことはありません!
 ルフレさんの手を煩わせずとも、私がしっかりこの手で回収しに行きます!」

ルフレ「あー、それと。勘違いしていたんだと思うけれど。
     今、攻撃をしようとして反撃されたお姫様は、実は命の恩人だったりするから。
     おまけにとっても強いんだ。しっかり謝っておいた方がいいよ?ささやかな助言だ」

彼女は慌て飛び退き、ピーチ姫の方を申し訳なさそうに見る。

「…そ、そうなのですか!?そ、それは失礼いたしましたっ!
 私としたことが、とんだ無礼を…!大変申し訳ございません!
 瀕死の状態の私を慈悲深く救ってくださり、誠にありがとうございました…!


 
私、イーリス聖王国の第一王女、ルキナと申します!貴方のお名前を伺ってもよろしいでしょうか…!」













ルフレ(………………………ん?)

ピーチ「私は、このキノコ王国の元首にしてキノコ城の城主…ピーチよ。
    ま、堅苦しいのは嫌いだから、呼び方は好きにして頂戴。
    察するに、ルフレと親しいようね。ルフレが真っ先に発見したというのも運がよかったみたい。
    …あの怪我の具合だと、5分遅かったら命は無かったわよ」

ルキナ「そうなのですか…重ね重ね、ありがとうございます…!」



――――なんだ、この感覚。
――――喜ばしいはずなのに、動揺が抑えられない、この…不安感。
――――何かが、喉の奥に張り付いたまま離れない。



ルキナ「私もあまり――どうやって、キノコ王国とやらに迷い込んだのか、
    よく把握していないのですが。
 
    それにしても、まさかルフレさんが――こちらで、生き永らえている、だなんて!
    亡くなられたと、ばかり……!

    ああ、まだ我々も……僅かな希望を捨てなくともよい、ということですね!
    久方ぶりの……吉報です――っ!!」グズッ



――――おかしい。
――――歯車が、どこかずれていて…絶望的に噛み合っていない。

ルキナ「ああ、それで、こんなことを私が言えた義理ではないのですが…。
     ルフレさんも、なにかこちらで準備を整えることに必死であることは
     容易に想像ができるのですが…!それ、でもっ!

     一刻も早く、我々の元拠点へ戻りましょう!闇を光で…照らすためにっ!」



涙を零しながらも、明るさを隠さずに、握り拳を作ってそう…宣言する、彼女。













――だが。

――非常に残念で残酷な話、なんだけれども。
――僕は…彼女に、伝えなければならないことが…ひとつ、ある。

ルフレ「…なあ。落ち着いて、聞いて、くれないか」



ルキナ「……はい?」












ルフレ「僕、いや僕ら自警団が知る限りの『ルキナ』って人は――
    自警団長クロムの愛娘で齢5つにも満たない『ルキナ』、ただ1人なんだけど。



    君みたいな姿の『ルキナ』に、僕は会った記憶がない。



    君は一体――何者、なんだい?」

リンク「ふわあああああ……さってと、今日からルフレの奴を鍛えてやるかー」ノビー



大きな欠伸ひとつして、ゆるゆると身支度を始める。
さてと、どこで朝ご飯を食べようかな。
もちろん、登録選手として専用食堂で食べるのも悪くない。
美味しいし栄養バランスはお墨付き。

でも、ちょっとつまらない気もする。
せっかくだから、この時期に張り切ってる喫茶店とかに誘われれば、
思いもよらぬ絶品コーヒーとかにありつけるかもしれない。
そんな夢を見て、城下町に繰り出すのもまた一考だ。

リンク「今日も、いい天気ですねーっと……」



ダダダダダダダダッ!!



ルフレ「ハアッ!ハアッ!ハアッ!ハアッ!…やっと、見つけましたよっ!」ゼェゼェ

リンク「うおっ!?は、張り切ってるなあ、ルフレ!?
    まさか朝一でお出迎えされるとは思ってなかったぞ!?
    そんなにやる気十分か!こりゃあ、鍛えがいがありそう――」

ルフレ「リンクさんっ!この…この通りですっ!!」ガバッ

リンク「え、なんだよ突然!?」



朝っぱらからジョギングするオジサン、にこやかに会話する主婦。
そんな周り含めて、場が凍る。
な、何を思って、いきなり土下座なんかしでかすんだ、ルフレの奴!?





ルフレ「せっかく色々と考えて頂いておきながら、申し訳ないのですがっ!
    一旦、僕の特訓の話はおいといて…!

    どうか、どうか彼女を救ってくれませんか!お願いしますっ!
    貴方だけが…頼りなんですっ!!」





――そう血気迫るルフレの前に…訳の分からないまま、
――俺は、首を縦に振ることしかできなかった。

そっちの本編とも絡むのね

先導されるまま、王国病院へ。

面会謝絶の表示を無視して、ルフレはズンズンと…とある一室に入っていく。



リンク「お、おい。いいのか?」

ルフレは、ただただ無言。



やれやれと肩をすくめて、病室へ入っていく。

アイクやマルスが辛気臭い表情で集まる中で…
何故か、医者姿のマリオがいる中で…



1人の女性が、傾斜の付いた医療ベッドに横たわっていた。



…妙に、空気が張りつめている。



そんな中でも、最初は、「ふぅん、病人か」程度に軽く考えて覗き込み……。



















ルフレ「――――や、やめ…て、ください、リン、ク、さんっ!」

リンク「――ルフレ。お前、彼女に――何を、やったぁっ!?」



気が付いた時には、刹那に振るった右腕でルフレの首を絞めている、俺がいた。

――彼女の虚ろな目は――そう。
一切の光を宿していないことが、俺には分かってしまったのだから。

Dr.マリオ「落ち着け、リンクッ!これはルフレのせいじゃないっ!」

リンク「――――っ!!」ガバッ

一気に、思考が舞い戻る。
反射的に動かしていた体を、緩和させて、ルフレを開放する。



ルフレ「ガハッ、ゴホッ……む、むちゃ、くちゃな速度、でしたよ…」

リンク「とりあえず、悪いなマリオ。どうやら俺、気が立っているみたいだ。
    現状で分かってること、洗いざらい吐いてもらうことってできるか?」

Dr.マリオ「心得た。…茫然自失状態の彼女から聞き出すの、苦労したんだぞ?
      ――彼女の名前は『ルキナ』。
      ルフレの所属する自警団の団長クロムの娘であり、
      『本来ならば』まだ幼子だ」

リンク「…さっそく矛盾が生じてるな。
    俺の経験とかから推測するに…時間経過速度の加速、あるいは未来からの時間遡行だな?」

Dr.マリオ「ご名答。話が早くて助かるぞ。

      彼女は、希望となる仲間が悉く葬り去られ、世界を闇が支配した絶望の未来から、
      『自分たちの世界の過去』に向かって時間遡行をどうにかこうにか行って…
      状況を打破しようと考えたらしい」

――俺は、ひとまず頷いて見せる。

Dr.マリオ「彼女の生きていた世界を苦しめていた張本人、『ギムレー』。
     そいつとその手下たちによって、世界全体が滅茶苦茶にされちまったらしい。
     ちなみに、ギムレーという存在は…このルフレも戦った強敵、とのことだ」



…何故か、苦虫を噛み潰したような顔をして、ルフレが頷く。



ルキナ「――――みんな、みんな、死んで…いきました。
    同期が…親たちが…支えてくれた兵たちが…ひとり、またひとり、と…
    それも、『未来』と『過去』で、2回も――」

リンク「――っ!!」



――光の無い目を開けて中空を見つめていたルキナが、
――横たわりながら…唐突に呟き始めた。
――あまりにも力弱く、か細く…誰に語り掛けようとしているのかもわからない。



ルキナ「父、上も…母、上も……ルフレ、さんも……!
    全てを投げ打って、縋って追い求めた、『過去の安寧』。
    それは結局失敗に…終わったの、でしょうか――」

そこへ、『ここにいる』ルフレが待ったを掛ける。

ルフレ「…でも、おかしいんですよ。

    確かにルキナはクロムの娘として『僕がいる時代』に生まれましたが、
    僕は護衛団の活動中に…ここにいる成長ルキナが、リンクさんが来られる前に述べていた…、

    『自警団の危機に、仮面偽装した成長ルキナが駆け付けて間一髪助ける』だとか
    『正体を明かした成長ルキナが団の一員となって行動する』とかの出来事に
    一切遭遇していません。

    その後、迫り来る危機について知らないことばかりで、後手に回りがちではありましたが、
    どうにかこうにか…その…ギムレーを封印して、決着を付けることができました」



ルキナ「そんなはずは……な、い…の、です」

ルキナは信じられないらしく、布団の裾を握りしめる。



…ええっと。要するに。

ここにいるルフレの体験としては、成長ルキナに遭遇しなかったものの…
自力で、世界をとりあえずは平和にした。つまり、ハナから絶望の未来はなかった。

一方、成長ルキナが知る『ルフレ』の体験としては…
絶望の未来が待っているうえに、そのことを伝えに来た成長ルキナの尽力があってすら
…………未来が覆らなかった?

ルフレ「そもそも、戦闘で亡くなることが滅多になかったですから。
    しっかり治癒治療に専念すれば、なんとかなりました。
    少しは僕の撤退策も功を奏したということでしょうか」

ルキナ「そ、んな…!お父様たちは、確かに、戦場で、命を次々と――」











リンク「………………………………………………ちょっと、待て」










かちり、と。
ピースが、繋がった、気がしてしまった。
…これは、マリオでは気付かない類の、ことかもしれない。

リンク「2人ともっ!ちょっと、俺の目を見ろっ!」グイッ

ルフレ「えっ!?どうしたんですか、急に?」

ルキナ「…………っ」

やや強引に腕を引っ張り、動転するルフレ、そして未だ生気のないルキナの目を見る。





見る。

見るっ!!

見るっ!!!!





そして…ああ、見えてきた。諸悪の根源が。







REFLET    難易度:ノーマル        モード:カジュアル

LUCINA    難易度:ルナティック+     モード:クラシック






リンク「…………」

リンク「…………」

リンク「…………なんて、こった」ガクッ

――それからのことは、語りたくもない、のだが…。



何か気付いたのか、と急かされてしまい…口を割ってしまったのが、まずかった。

おそらく、ルキナが時間旅行をすることをトリガーとして…
勝利の女神に愛された世界線と、運命に悉く見放された世界線…
2つの世界に枝分かれしたんだと、そう伝えてしまった。

誰が悪い、とか議論できる話じゃない。
強いて言うなら、運が悪かったとしか言いようがない。
正直、何がトリガーとなって世界線が分岐しうるかなんて、碌に研究は進んでいないらしいから。



だが、難易度だなんて概念がわかりっこないルキナは、呆然と泣き腫らすまま――

「普通に救われた結果もあったはずなのに、自分がとんでもないことを仕出かしたせいで
 親しき者たちを倍苦しめた」という、一番やっちゃいけない受け止め方をした。



慟哭し泣き叫ぶルキナを、ため息を付いたDr.マリオが手刀一発食らわせて気絶させる。

Dr.マリオ「とりあえず、点滴と鎮静剤は処方しておくぞ。
      …最後のは、あまりにも軽率だったな。リンクも悪気があったわけじゃないだろうが」

リンク「…………すまないっ!」

Dr.マリオ「お前たち、今日のところは一旦帰った方がいい。
     俺はまだ…いち患者として彼女を扱えるだろうが、
     関わりのあるFE勢や、責任を感じてるリンクが残ったところで
     頭の混乱を抑えきれないで状況を悪化させるだけだろう」

マルス「……………わかった。その言葉に甘えさせてもらうよ。…よろしく、頼む」

アイク「…たしかに、そのようだ。俺も、このやりきれない気持ちをどうにかしたくて
    壁という壁を叩き壊して回りたいくらいだぞ」

Dr.マリオ「……病棟で、絶対やらないでくれよ、それ?情状酌量してやらんぞ?」

アイク「わ、わかってるさ!

    …おいリンク、そんなに気負うな。状況解析してくれただけでも有り難いさ。
    また色々とお世話になりそうだし、今日のところは解散といこうじゃないか。
    ゆっくり頭を休ませてくれ」

リンク「……………………ああ」



…………退出する2人…いや、ルフレ含めて3人に釣られて、俺も無言で、病室を出ていく。
……ここまで自信なく、重い足取りになる時間は…何十年ぶり、だろうか。
俺は、自分自身に、途轍もなく腹を立てていた。

ピーチ「……………………ふう、たんなるオフザケ、ハプニングじゃなくて…
    誰かが不幸になるようなイベントは、勘弁して貰いたいものね…
    大会の方の進行自体が順調なのは、喜ばしいところだけど…」

ピーチ「…よしっ!とりあえず、書類は片付いたわね!
    観戦とかお忍びとかやりたいところではあるけれども、
    しばらくは責任者として城に待機しておきましょうか――」  

キノじい「有り難いお言葉でござますのじゃ、姫様…」



バーンッ!



キノじい「な、何事じゃ!?」

キノピオ「ひ ひ ひ 姫様――!
      た た た 大変です――!」ダダダダダッ

ピーチ「…………」スゥッ・・・

キノピオ「…あれ?身構えて、どうされたのですか?」

ピーチ「いい加減、身構えたくもなるわよ!…まあ、今回は『姫様』でいいのかしらね。
     …………それでキノピオ、どうしたの?そんなに慌てて…」

キノピオ「な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      なんと…窃盗事件が発生してしまいました!
      ファルコ選手のブラスターが、何者かに盗まれてしまったそうです!」

ピーチ「――なんですって!?」

…まだまだ、問題は尽きそうにない。

ファルコ「…………」イライライライラ

フォックス「ま、まあ落ち着けってファルコ。
      もしかしたら、自分でどっかに置き忘れたかもしれないだろ?
      こう…机の上にでもポン、と置いてから立ち去ったとか!
      ほかの選手を疑うのはよくないって、なっ!」

ファルコ「んなわけないだろうが!そもそもホルダーから外した覚えがねぇよ!
     バトル時だって、開始前と終了後にしつっこくチェックしてらぁ!
     待機中に…誰かに掠め取られたとしか考えられねえっ!
     どうなってんだよ、ここのセキュリティーはよぉ!」ガンガン!

ピーチ「はいはーい、物に当たるのは止めてくださる?
    とりあえず、そんなことが本当に起こったのならキノコ王国として名折れもいいところだから…
    適切かつ迅速に、全力で解決させてもらうわ。落ち着いて、状況を教えてもらえないかしら?」

フォックス「おおっ、さすがピーチ、仕事が早くて助かる!
      じゃあファルコ、今日のお前の行動…ささっと説明してみろって。
      ほい、今日のスケジュール表」バサッ

ファルコ「…フン。別に、いいけどよ。解決しなかったら承知しねぇぞ。

     ……そうだな、この時間帯は参戦中、そっからここまでは控室で観戦、
     あとはちょいと街で一服して、そのあと絡んできた不良をボコって、
     戻ってきてまた5戦ほど観戦して…」

ピーチ(ファルコクラスにボコられた不良の行く末が割と気になるわ…頭痛い…)

ピーチ「それぞれの時間帯、出会った人とかは覚えてる?
    ファルコクラスのファイターから…一般人が物を盗めるとは思えないわ。
    相当な手練れか…あまり考えたくはないのだけれど、ほかのファイター、としか正直考えられない」

ファルコ「ま、そうだろうな。他の選手とは結構すれ違ったと思うが…逐一覚えているわけじゃないからな…
     覚えている範囲でいいなら、とりあえず並べてみるけれどよ…」





ピーチ「むう……………………むむむ……………………」

ファルコ「わかったかよ、お姫様」

ピーチ「ううん、全然」

ファルコ「おい」

ピーチ「だって私、別に探偵じゃないもの。ある程度のアリバイ確認くらいしかできることがないわ。


  
    …でも、あの子ならきっと何とかしてくれる!うん!」

ファルコ「あの子ぉ?」

~とあるバトルフィールド~

ゼルダ「…!!あれ、誰か来ました、ロゼッタ」






ピーチ「…あ、いたわね!」

ロゼッタ「えいっ!えいっ!はっ!」バシッ! バシッ!

ゼルダ「まあ、この通り。私が今度こそしっかり監視しながらのもと、
    こつこつ地道にレベル上げしているところですよ、ロゼッタは」

ピーチ「…だったら貴方が直接指導してあげればいいのに。
    私が見る限り…あれ、まだまだ動きがなってないわよ?」

ゼルダ「……私が教えると、ついつい力加減を誤ってしまうもので」

ピーチ「…ふぅん……?

    あ、こんな会話をのんびりしている暇じゃなかったわ!
    ちょっとロゼッタ、一旦修業は中止してもらえるかしら!
    貴方に、やってもらいたいことがあるのよ!」

ロゼッタ「なんでしょうか、ピーチ姫」テクテク

ピーチ「こんなこと、起こってほしくはなかったのだけれど。盗難事件が発生してしまったの。
    …それも、招いた選手の持ち物を奪うという大胆な事件が」

ロゼッタ「…………ま、招いた選手の持ち物を!?なんて酷い!」

ピーチ「具体的には、ファルコのブラスターね。それで、お願いがあるのだけれど…
    ロゼッタって、空間魔法で失せ物探しとか、できたりするかしら?」

ロゼッタ「…………うーん…………失せ物探し、というわけには行きませんが…
      似たような形状のアイテムがあるなら、それと似た存在を付近から探し出す、
      そしてその場所を追い続けるという芸当なら、できなくはありませんが。

      ただ、空間転移とセットではないので、離れていた場合は…
      場所を突き止めたとしても取り返しに行く必要がありますよ?」

ピーチ「……!今回はそれで構わないわ!フォックスのブラスターを借りましょう!
     どのくらいの距離までなら追跡できる!?」

ロゼッタ「そうですね、とりあえず半径10kmといったところでしょうか。
     それで検索に引っ掛からないのなら、FPをより多く消費して
     まだまだ範囲を広げることができます!」

ピーチ「ナイス!上出来すぎるわ!それじゃあ早速、お願いするわね!!」

――控室に移動してきた、私たち。
――ロゼッタの空間魔法を一目見ようと、ファイターたちがゾロゾロと集まってくる。



ロゼッタ「ええっと、緊張してきましたが、さっさと済ませてしまいますね!」

クッパ「うむ、とっとと不届き者を炙り出してしまうのだ!」

ルイージ「えーっと、もしかして、ここに集まってきていない人の中に
     犯人がいるってことなのかなあ」

サムス「…リンクもいないんだが…まさか、アイツが…!?そ、そういえばマリオも…」

マルス「あ、いや、アイツはちょーっと塞ぎ込んでるだけですから…」

ピーチ「マリオは、今は仕事中だから…コホン。
    それじゃあロゼッタ!

    どこかに隠したのか、はたまた隠し持ってるのか…どちらにせよ、
    暴かれた犯人が逆上して暴れ出した時のことは考えなくていいから!
    サクッと答え合わせをしてちょうだい!ズルい気はするけれどね!」

ロゼッタ「は、はい!」

ロゼッタが……杖を片手に目を瞑り、詠唱を行っていき…
杖を、すぅっと一振り。

ブゥン、と鈍い音が断続的に小さく響き続けるだけの、静寂が部屋を支配する。
誰もが、固唾をのんでその様子を見守っている。



30秒ほどして、何かを悟ったようにロゼッタが目を開ける。



ピーチ「…どうだった?それとも、もっと調査範囲を広げる必要がある?」



ロゼッタは首を振り、少し悲しそうな顔をして――二、三度、周囲を見渡した。



ピーチ「…本当に、この中に犯人がいた…のね。はあ…。
    名指しされたところで、盗んだ犯人が悪いんだから。
    さあ、堂々と犯人を暴いちゃいなさい」

ファルコ「そうだぜ。万が一、逆恨みしたソイツがロゼッタに危害を加えようとしてきたら
     俺がブラスターでハチの巣にしてやるってもんだ」

ロゼッタ「…………では――」

つか、つか、つか。

皆が注目する中、ロゼッタは――ゆっくり、ゆっくり歩を進め、ある一点で立ち止まって。
持っている杖を、コツンと当ててみせた。



――虫取り網に、対して。



ガシャンと、ファルコのブラスターが零れだしてくる。
慌てて、ファルコが駆け出して、本物かどうか確かめる。

ファルコ「…間違いねえ、まさしく俺のブラスター、そのものだ。恩に着るぜ、ロゼッタ。
     で?なんか言い残すことあるかよ、お前は」

ファルコが、親の仇を見るかのような…侮蔑の目で、暴かれた犯人を見やる。
犯人とは――。





むらびと「…え?ええ??えええええええっ!?」

目を白黒させた、むらびとだった。

むらびと「ちょ、ちょ、ちょっと待って!
     僕、ファルコのブラスターを奪うなんてこと、絶対にしてないよっ!?」

ファルコ「現に…お前の虫取り網から出てきただろうがあ――っ!!!」

血が一気に上り、鬼の形相で殴りかかろうとするファルコ。

ピーチ「ちょ、ちょっと待ちなさいっ!――あ」

フォックス「ファルコ、落ち着けっ!そう出ると思ったぜ!
      お前の喧嘩っ早さは熟知してるからなっ!」ガシッ

ピーチ「フォックス、ナイスタイミング!そのまま、抑えといてっ!

    …むらびと、一応、釈明は聞いてあげる。
    一体どうして、皆を裏切るようなことをしたの?
    何か深刻な事情があるというのなら、罰を軽くすることも考えるのだけれど…」
    
むらびと「だ、だからっ!僕何も知らない!そもそも何もやってない!」アワアワ

ファルコ「往生際が悪いぞ、てめえ!」



周囲の目も、明らかにファルコを応援し、むらびとを糾弾する雰囲気を呈している。
耐えきれず、むらびとは徐々に、徐々に後ずさる。

むらびと「ぐずっ…ふええ…本当に…やって、ないもん……」

ピーチ「…はあ。子供の容姿だからって、それだけじゃ擁護することもできないのよ?
    ここまで決定的な証拠を見せつけられたら、私も主催者側として…
    厳格な対応、判断を下さざるを得ない。

    今のままじゃあ、貴方…どんどん立場を悪くしていること、わかるでしょう?」



むらびと「やって……ないもん……」ジワァ



ピーチ「私の立場も、分かって頂戴!いい加減に――」

ロゼッタ「もう、やめてあげてくださいっ!!」ガバッ



せっかくの大会を台無しにされた――そのせいか、私のボルテージまで、ついつい上がる。
そんな私から、むらびとを守るように…涙顔のロゼッタが、むらびとを抱きしめた。

ロゼッタ「どんな顛末でブラスターを持ち去ったのかわかりませんがっ!
     子供のやったことではないですか!

     もちろん、いち大会参加者として参戦している以上、
     そんな甘ったれたことを言うなとピーチ姫は…皆さんは仰るかもしれませんがっ!
 
     かといって、大の大人たちが寄ってたかって責め立てる、なんてこと…
     私には耐えられませんっ!!黙って見ているなんてこと、できませんよ!!」

ルイージ「…あー、確かに…あんまり見栄えのいい光景じゃあ、なかったよね…」ポリポリ



ロゼッタは涙目のまま、ファルコに向き直る。

ロゼッタ「ファルコさん、どうか、どうかお願いいたします!この通りです!
      私に免じて、水に流してもらうことはできないでしょうか……!」ズサッ

ファルコ「うえっ!?ななな、なんでアンタが土下座する必要があんだよ!?
     というか、それはアンタが決めていいことでもなければ、
     俺が許してそれで済むってことでもないだろ!?」アワワ

ピーチ「……ふむぅ。落ち着くのよ、私。
    私としては、できるだけ穏便に済ませられるに越したことはないから…そうねえ。

    もともと『今大会の参戦停止+成績剥奪+任天堂に報告』くらいに考えていたのを、
    『数週間の参戦不可ペナルティ』くらいに緩和するって処置にしてもいいわよ?
    被害者のファルコが、この場でむらびとを許すっていうのならね」

ロゼッタ「…ああ、それでも重めのペナルティは与えられるのですね…」

ピーチ「あったりまえよ!馬鹿にしないでもらえるかしら!
    これでもだいぶ譲歩したつもりなんだからね!?
    
    …で、どうする?ファルコ?」



皆の注目が、今度はファルコに…集まった。



ファルコ「う、ぐ…なんで被害者の俺が――こんな選択を迫られなければならねぇんだ…」

フォックス「ファルコ―、いつまでロゼッタを涙目のまま地べたに這いつくばらせてるんだー?
      男として恥ずかしくないのかー?」ニヤニヤ

ファルコ「その脅迫は卑怯だぞフォックス!……だが、やっぱり、納得がいかねえ…」ギリッ








――ちょっと、待ってくれ!








ファルコ「なんだ!?」クルリ







ピカチュウ「私だ」

ファルコ「」

ピカチュウ「私の格好が探偵っぽいって?
      確かによく間違えられるが…違うな、それは誤りだ。

      私は…探偵じゃない、『名探偵』さ!」ババーン!

ファルコ「」

フォックス「ピカチュウが…人語を話している!?」





トコ トコ トコ…。





ピーチ「あ、あなたは……!」

ポケモントレーナー「…………」スクッ

クッパ「今回は参戦していないはずの…ポケモントレーナーじゃないか。
    応援にでも駆けつけてくれたのか?いい心掛けなのだ」



ポケトレ「…………」ポイッ

ポケトレは ニャースを くりだした!▼



ニャース「ニャースでニャース!」

ピーチ「!?」



ポケトレ「…………」キラーン



ニャース「『さっきのは、ピカチュウがしゃべっているように見せかけた俺の腹話術だ』
      …と言ってるニャ!」

ポケトレ「…………」コク

ピカチュウ「まあ、そういうことにしておいてくれ。
      この謎は、ズバッと私が解決してみせようじゃないか!」



ポケトレ「…………」パチパチ



ニャース「『がんばれピカチュウ、あと俺もこの調子で頑張ろう』と言ってるニャ」

デデデ「さっきからひたすらに回りくどいぞい!?」

ピーチ(えっと、ちょっと待って。
    そもそも不参戦の彼が、どうしてこの場所に居られるのかしら?)



ポケトレ(……………)



ニャース(『もともと背景的存在だから、任天堂のさじ加減で画面内に映りこむことくらい
     わりと余裕だ』、と思ってるニャ)

ピーチ(…………………………………………あ、そうなんだ)

ピカチュウ「さて、本題に移るとするか。

       フォックス君、そこに転がってる…むらびと君の虫取り網、
       ちょっと持ってもらえるかな?
       本当はむらびと君本人に実演してほしかったのだが、
       とてもそんな雰囲気ではないのでね」

フォックス「お、おう、この虫取り網か?これでいいか?」シャキッ

ピカチュウ「知っての通り、むらびと君の虫取り網は…
       かぶせる、あるいはキャッチすることで、なんでもしまうことのできる
       便利アイテムだ。むらびと君の戦力の要だな。

       大事なものだから、ファルコ君のブラスター同様、
       常日頃から身に着けており…どこからともなく取り出せる代物だ」

フォックス「ああ、そうみたいだな」

ピカチュウ「このような仕掛けの代物は、時たま…使用者本人も知らない場面で、
      使用者と外界との界面から当該領域を露出させる可能性があってな」

フォックス「…え、なんだって?」

ピカチュウ「端的に言うと、使用者が気付かないまま当たり判定が出現していて、
      効果を発揮してしまうことがあるということだよ、フォックス君」

ファルコ「そう…なのか!?」

ピカチュウ「私の推理は、こうだ。
      
       午前中に試合を終えて、のんびりしていたファルコ君。
       一方、たしか…むらびと君も、午後に遊びに繰り出していたな?」

むらびと「…う、うん」

ピカチュウ「きままに歩き回っていたファルコ君、
       そして目新しさにはしゃぎ回っていたむらびと君。

       おそらく、ファルコ君の斜め後ろあたりから、注意力散漫だった
       むらびと君がぶつかったのさ。

       2人とも、誰かにぶつかられた・ぶつかった覚えがあったりしないかい?」

ファルコ「…確かに、大通りは凄い賑わいだったからな。
      注意してても、ちょくちょく人ともぶつかった気がするし…
      いちいち顔の確認をしたわけでもねえよ」

むらびと「う、うん!たしかに、ちょっと他の人とぶつかりすぎちゃったかも…!」ハッ

ピカチュウ「オッホン。さて、フォックス君。

       むらびと君くらいの体格を想定して虫取り網を装備したとき――
       網の先はどのくらいの高さに来るかな?」

フォックス「……あ!ちょうど、ファルコの腰のホルダーあたりに来てもおかしくない位置関係だな…!」

ファルコ「なんだと!?」

むらびと「ええっ!?」



ザワザワ……。

ピカチュウ「ま、あとは語らなくとも…お分かりだろう。
       運悪くぶつかった拍子に、運悪く当たり判定を持っていた虫取り網が…
       ファルコ君の持っていたブラスターを掠め取った。

       お互い、全く気付かないまま…
       ブラスターは、ファルコ君からむらびと君へ。その所在を移した、という寸法だ」

シーン…………!

ポケトレ「…………」グッ

ニャース「『これにて一件落着だ』、と言ってるニャ」

ファルコ「…………」

むらびと「…………」ソワソワ

ファルコ「…………チッ。言っとくが、俺は謝らねえからな。
     結局のところ、お前の不注意が主な原因でこうなったってことなんだから」

むらびと「う、うん。でも、わざと盗んだりなんかしてないってこと…
     それが分かってもらえただけでも、いいや。
     えっと…ブラスター、盗んじゃって、ごめんなさい」ペコリ

フォックス「ファールーコー?」

ファルコ「……だあああ!悪かった、悪かったよ疑いすぎたりして!
     こら!お前もとっとと泣き止め!
     このままだと逆に俺の方が悪者になるじゃねえか!」

むらびと「う、うん!…あはは」ニコリ

ロゼッタ「わあ…!これでめでたく、みんな仲直り、ですね!」

ロゼッタ「……あれ?ど、どうしたのですか、みなさん?
      急に、私を見つめられて…」

サムス「ロゼッタ、戦いが不得手と聞いていたが…お前は凄いな!
    あんな気概、凄腕の戦士でもそうは見せられるものではないぞ!」

ファルコ「まったくだな、俺を一瞬でも怖気づかせることができる女は、
     そうそう居るもんじゃないぜ!」

むらびと「本当にありがとうね、ロゼッタさん!すごく、嬉しかった!」

ピーチ「ふふふ、言ったでしょう!
     ロゼッタは凄いんだから!戦いだって…ポテンシャルを持ってるはずだし!
     今後、一層頼れる存在になっていくわよ!
     …あ。もうちょっとむらびとのペナルティ、弱くするべきかしら…」

ネス「なるほど、ピーチが自慢したがる理由もわかるなあ!」

ロゼッタ「あ、あは、ははははは…………や、やめてください、恥ずかしい、ですので…
      ……………………」

ピーチ(ロゼッタの大活躍のおかげで。
    ブラスター窃盗事件は、特に大事にすることなく…
    収束を迎えられることとなった。
    めでたし、めでたし。

                   …めでたし、よね?)

~居酒屋~

リンク「………………………………………はぁ」ガコン

アイク「…………なんだか、その、ええとだな…」

リンク「…なんだよ?」ギロッ

アイク「あ、いや、その、なんでもないぞ!?」

マルス「はは、リンク、そうアイクを睨まないでやってくれるかな。
    アイクは、自分が――いや、僕たちが、リンクの調子をすっかり狂わせてしまったことに、
    ちょっと…いや、かなり負い目を感じているのさ」

アイク「ななな、そんなわけあるかマルス!」

マルス「わっかりやすいなあ」

リンク「おいマルス、誰が調子を崩してるって?冗談も大概にしろよ」ギロッ

マルス「なけなしの集中力すらルフレの特訓で消費しつくしているせいで…
    とんでもない戦績を積み上げているじゃないか…。今はこうして、慣れないお酒をがぶ飲みしちゃってさあ。
    僕、リンクが2回も4位で終わる試合日の記憶、どれだけ歴史を遡ればいいか分からないんだけど」

リンク「…………」ゴクゴク

マルス「すいませーん!彼には今後、水だけ持ってきてくださーい!」

アイク「…本当は、FE勢のことはFE勢だけで解決すべきことだったのかもな」

マルス「…そうか?結果論になってしまうが、僕は……
    リンクがわが身のことのように真剣に考えてくれて、
    『リンクに伝えてよかったなあ』って思ってるんだけれど」

リンク「…………あの目は――昔の俺を思い出すんだ」

マルス「昔の……リンク、か。なるほど」フムフム

リンク「…いや、そんなこと言ったら、彼女に失礼かな。
    彼女は本当に――救いのない状態が、決定してしまっているし」



アイク「…なあ。今のルキナが俺たちの大陸に、王国に帰ったとして…
    そこは、『今のルフレ』が帰ろうとする王国ということになるのか?

    それとも、ルキナだけ…国境を跨ぐあたりでフッと消えてしまって、
    ルフレ含め大勢が亡くなった世界線の王国に改めて送られるのか?

    リンク、お前なら…もしかして、どっちになるか、わかるのか?」

リンク「…………お前たちも知ってる通り、ルキナが希望するなら…
    ルフレに従い着いていくだけで、『平和な方』の王国に辿り着くことはできる、と思う。
    道しるべがあるなら、時間軸を選ぶのって…そんなに難しいことじゃないんだよ。

    でも、その王国は…ルキナが守れた結果の王国じゃあ、ない。
 
    誰も…成長したルキナのことを知らない。
    自分の無力さ、周囲からの疎外感を目の当たりにし続ける拷問が待っている。

    そして、既にいる子供ルキナが順調に成長していけば
    …居座ることすらできなくなるだろうな。

    ルキナ自身、最初から選択肢にはないだろう。
    たぶん…きっと…絶望の世界線の方に、自ら舞い戻るんじゃないか、と」

アイク「それって大丈夫なのか!?」

リンク「大丈夫なわけ、ないだろう!心折れた状態でそんなことして、
    死にに行くようなもんだぞ!」ドンッ!

アイク「じゃ、じゃあどうするというんだ!」

リンク「……それが、わからない。わからないんだ…………」ガクッ



マルス「……あ、店員さん、やっぱり――お酒もばんばん持ってきちゃってください。
    彼には、逆に徹底的に飲ませて…心の底にあるもの、全部吐き出させた方が
    いいみたいですから、はい」





リンク「うー、あー、……………………頭が、ガンガンする」





ほとんどマルスに背負われる形で住居に舞い戻り。
爆睡している間に、マルスは去っていったらしい。
時計を見やれば日付変わって、午前2時。うわあ、これは酷い。





リンク「勇者だってのに、だっさいなあ、俺」





またゴロンと寝転がって、もう少し、酒の影響がなくなるのを待つ。
横目で、窓の外をぼんやりと眺める。
月が綺麗だ、以上。

リンク「…………」

リンク「確かに、調子が絶不調なんだから…参戦なんてせず、
    おとなしく精神安定に努めていた方が賢かったよなあ。
    惰性で参戦し続けたばっかりに、優勝…えらく、遠のいちゃったなあ」



リンク「……………………」

リンク「まあ、あれだよ。変に俺が絡んで、よその国に干渉するってのも…
    未来を大きく変えちゃうってのも問題だしさあ。これでよかったんだよ、うんうん」



リンク「……………………………………………」

リンク「マルスも、アイクも、ルフレだっているし…ま、なんとかしてくれるだろ、FE勢の中で」



リンク「……………………………………………………………………………………
    ……………………………………………………………………………………
    って、納得できるような奴じゃねえんだよ、俺ってさあ!!」ガバッ!

リンク「ええいっ!とりあえず頭を空っぽにするかっ!!
    とりあえず真夜中のキノコ城城下を適当にマラソンだ!
    うおおおおおおお――――っ!!!」ダダダダダダッ!!

リンク「うおおおおおおおおおりゃああああああああ!!」ダダダダッ!!





住民「馬鹿野郎っ!近所迷惑だぞっ!!」ダッ!

リンク「御免よーっ!!」ダダダッ!!





住民「どこの誰よ、下品な足音奏でてるのはっ!!」

リンク「アーアー、オレダヨ、ナクコモダマル ガノンドロフサマダヨー!!」ウラゴエ





居酒屋店主「うおおおおぉい!誰か、勝手に屋根を走ってやがるのか!?
       轟音と共に天井が陥没してるんだがっ!?
       うおっ!?玄関前の石畳まで滅茶苦茶だっ!?」

リンク「いっけねー!お宅に大緑ルピー、投げ込んでおきますからーっ!!」ブンッ!

~1時間後~



リンク「……よし、汗は結構かいたけれど…すっきりした。
    のべ100kmくらい走っただろ、うん。さすが俺、エネルギッシュ!」



まだまだ、夜は更けようとはしていない。
まあ、これ以上近所迷惑をするというのもなんだから、終わりにしておこう。
まったく、自分勝手な勇者なこった。

月灯りが、ぼんやりと頭上に。
見上げれば、すぐそばにキノコ城。そして、すこし首を後ろにやれば、王国病院。



リンク「ルキナの奴、大丈夫かな……
    えーっと、位置関係的に…病室、あのあたりだったっけ。
    ま、俺ができること、考えてみるか」



そう自分に言い聞かせて、振り返るのをやめる。
月灯りに反射して、窓際がきらりと光っていた…気がした。

~病室~

ルキナ「…………………………………………」



無表情、無感情で見つめるのは、ぼんやりと光る…お父様譲りの聖剣、ファルシオン。
血濡れた剣ではなくなり、汚れ一つなくなった剣。

私は――明かりも付けず、何も考えず、剣だけを見つめている。



涙はもう…枯れ果てた。
体力こそ回復したが、今の私は、壊れ果てているのだなと、自覚した。
自業自得過ぎて、弁解する気も起こらない。



私を庇うあまり命を落としていった人たちの…怨が聞こえてくる。



――ねえルキナ、あなた、なんということをしてくれたのですか?
――あなたを産んだこと、大間違いだったみたい。
――私の娘だなんて…クロム様の娘だなんて、あってはならないことでした――っ!

ルキナ(…………っ!)

猛烈な、吐き気。

――わたし、知ってるよー。
――ルキナお姉ちゃんみたいな…ううん、ルキナみたいな悪役は、
――ヒーローによってしっかり滅ぼされなきゃいけないよねー!

――ものども、であえー!絆の力で、あの女をやっつけるよー!
――倒したみんなが、正義の味方だー!世界の救世主だー!

ルキナ(ち、違うっ!そんなこと、言う子じゃ…ないっ!)





――ええっ?僕がギムレーに…呑み込まれることを分かってた?
――だというのに、失敗したの?うわっ、それってすっごく恥ずかしいね。
――模範解答を貰ったのにテストで0点を取ったような大馬鹿ってことだねえ。

ルキナ(あなたは、そんな悪人ではない!
    私は…抗い切ってくれることを、ただ、信じて――)









――いつまで、目を背けて生き恥を晒しているんだ?
――俺を…俺たちを二度も殺したのは、お前だぞ、おい。









ルキナ(…………………………………そう、ですね。その通りです、お父様)






完全に、心が、折れた。

月灯りが窓から差し込む中、おもむろに立ち上がって…聖剣を掲げる。
刀身にうっすら映った自分の姿は、最期だけあって…そこそこ美しく見えました。

できれば、あまり醜くならないまま――
幾多の敵を葬ってきたのと同様、私の介錯もしてほしい。
5秒と経たないうちに、腕の震えもピタリと収まった。

そして――トン、と無機質に、力を込めた。















ガッシャアアアアアアアアン!!!

リンク「こんの、バッカヤローがああああああああぁ――――――――――っ!!」

一人の勇者が、ガラスを突き破って病室に飛び込んできて、
鋼の拳で私の剣を殴打し、正確に吹き飛ばす、1秒前のことでした。

ルキナ「――いたっ……!」

ただの、パンチ。とんでもない、威力。
病室の反対側の壁まで吹き飛んだ剣は壁にグサリと突き刺さり、
持っていた腕も慣性を完全には無効化すること叶わず、強く後ろ側に反らされる。
――よくて脱臼、もしかしたら骨折しているかもしれません。

リンク「おい、ルキナっ!お前、今、なんてことしようとしたんだ!
    必死に命を助けたルフレやピーチ。
    散々心配してくれた、マルスやアイク…ついでに俺!
    その他、大勢の人たちに対する冒涜、侮辱行為だぞ、分かってるのか!?」

ルキナ「……………………」

リンク「まったく、俺が第六感で駆け付けなかったら確実に死んでたぞ…。
    おー、今更ながら…ガラスが何枚か突き刺さってるな、いってぇ。
    そんなに簡単に命を捨てるな!足掻ける間は足掻いてみろよ!」



ルキナ「あなたに……なにが、わかると、いうのですか」



リンク「…なんだって?」

ルキナ「…あなたに、何が分かるというのですかっ!私は、世界を…実質!二度も!滅ぼしたっ!
     こんな疫病神のどこに、生きている価値があるというのですかっ!」ボロボロ

リンク「だから、別にルキナのせいで世界が滅んだわけじゃないって。
    そこんところ、勘違いしないでほしいなあ。
    つーか、滅んだって言い方、やめようぜ。挽回が効かないって決まったわけじゃ」

ルキナ「決まっていますっ!
     味方は全員亡き者となり、
     ギムレーは益々勢力を強固たるものとし、
     人々は生きる気力を完全に失っているっ!」

リンク「…………」

ルキナ「私、は…っ!
     これ以上、自分だけのうのうと生き永らえることに、耐えられません…!
     後生です…もう、放っておいて…くだ、さい……」ポロポロ



――なにもかもが、どうでもいい。
――床に座り込んで俯いたまま、ひたすら女々しく泣いている。
――そんな自分が、ますます一層、嫌になる。




リンク「……………………ははっ、懐かしいなあ」ククッ



――えっ。



突然の笑い声に、思わずキョトンとなって、顔を上げる。

リンク「ああ、悪い悪い。
    俺もさ、かなり昔の話になるけれど、ルキナみたいに
    自暴自棄になってた時期があったなーって、ふと思ってさ」



ルキナ「…あなたが?」

リンク「おうよ。今や三強と呼ばれるまでになった俺でも、な。
    自分の境遇を恨んで、自分の実力の無さに泣けてきて…
    そんなときが、確かにあったんだぞ?
    ま、それも…俺がルキナをほっとけない理由の一つかな」



――信じられない。マルス様すら、実力負けを認めるというこの男が。

リンク「…で、放っておいてほしい、とは言うけれど。
    ルキナは…このまま、境遇から逃げるのか?

    ぶっちゃけると、昔の俺も似たような考えに陥ろうとしたのは事実だから
    全くもって強く言える立場じゃないかもしれないけど…
    それって、要するにただの現実逃避だよな?」

ルキナ「…………っ!」

唇を、血が滲むほど強く噛む。

リンク「自分では為す術なくなったから自ら命を絶つ、だあ?
    責任を取るといえば聞こえがいいけれど、
    ルキナを救ってきた人たちの想い、一切合切踏みにじってるよな?
    想いを無駄なものにしてしまう…それこそ大恥だと思わないか?
    
    そんなことするくらいなら、もう一度、死に物狂いで戦おうぜ。
    いきなり挑むことが余りにも無謀っていうのなら、
    希望の目が見えるまでいくらでも修行すりゃあいい。
    幸い、キノコ王国は環境が整いまくっていることだし。
    なんせ、生きた証人がここにいるしな」

ルキナ「…………無理、です。
    私は、そんなことができる才能も、甲斐性も、持ち合わせていないようですから。
    王家の血筋でありながら、このありさま…失望していただいてかまいません。
    …私1人、地獄の世界に舞い戻ったところで…何も、成し遂げられない」

リンク「…………へえ?」

ルキナ「…いま、このキノコ王国で催されている大会のこと…少し、伺いました。
    かつての英雄のマルス様や、アイク様と話をすることができたことは、
    とても光栄でした。…とても、暖かい人たちでした。

    …この大会が終われば、みなさん、元の世界に、
    元の時代にお帰りになられてしまう。

    ルフレさんに付いていくことも、私には考えられない。
    彼には…彼の、彼らの守り上げた世界がある。
    それを私が享受することなど、絶対に許されません。

    今の私には結局…絶望のままここで命を絶つか、
    足掻こうとしてみて無残に魔物たちに惨殺されるか、の二択しか残されていない。
    だったら――」



――はっと、する。
――私を厳しい目で睨んでいた彼が、とても穏やかな表情であったから。

リンク「なるほど。纏めると――」

――一旦、彼は、思案顔となり。



リンク「ルキナは…自分の置かれた絶望感に押し潰されるほど、ヤワな戦士じゃない。
    ただ…誰にも頼れない、頼っちゃいけないっていう孤独に耐えられないんだな。
    いやあ、俺にもかつてあった心情のはずなのに、気付くのが遅くなって申し訳ないっ!」ピコーン

ルキナ「えっ…?」

何かに合点がいったのか、人差し指をピン、と突き立てる姿に、目を見開く。
何を…言っているのでしょう。

リンク「わかる、わかるぞその気持ち!
    俺も、マリオやピーチの存在にどれだけ救われたことやら!」ウンウン

私の理解し切れない状況のまま――。



リンク「……よし、決めた。
    そんなに一人が怖いっていうんなら、俺がタッグ、組んでやるよ。
    魔物がなんだ!邪竜がなんだってんだ!
    みんなまとめて成敗して、ルキナの世界にも平和を取り戻そうじゃないか、なっ!」



――私は、固まることしかできませんでした。

リンク「というわけで、ルフレには悪いけれども…
    ルキナを鍛えることが最優先事項となりましたーっと。
    …あ、今の精神状態からすると、いきなりは無理っぽいか。
    まずは、ルキナが普通に笑えるくらいまで励ますことにするか。



    という訳で、抱えている不安や愚痴があったら、いつでも俺にぶつけろよー。
    変な遠慮、躊躇はお呼びじゃありません。ただの迷惑ですから。
    吐き出した分だけ、ルキナの心は絶対に軽くなるからな。
    まあ、専門知識持ってるDr.マリオやピーチにも色々尋ねてみるといい」



――景色が、歪む。

リンク「俺なんかが想像もできないくらい、辛いこと、悲しいこと、あったんだよな。
    歯痒くて、夢にまで出て、だけどどうにもならなくて。
    ルキナの性格だから、表の顔では必死に堪えて、陰で散々泣いてきたんだろ?

    …よくここまで、一人で――たった一人で、頑張ってきたな。お疲れさん。
    だけど、今後は…俺や、他の人を頼っても、いいんだ。むしろ頼れ。
    そうすりゃきっと……希望だって見えてくるはずさ」



――ポン、と頭に手を置かれる。
――限界、でした。





ルキナ「うわあああああああああああああああああぁぁぁ――――……」



――堰を切ったように感情が、爆発して、彼に抱き着いて。
――月灯りの元で、嗚咽を漏らしながら泣き叫ぶこととなったのでした。

リンク(…………俺、勇者リンク。

    昔、女性に抱き着かれたことがあったようななかったような気もするけれど、
    それほど慣れているプレイボーイじゃないんですけれどもっ!
    さすがに引き剥がすのはルキナが傷つくだろうからしないけれど、
    ファイ、これ浮気じゃナイカラネ!?そこんとこヨロシクッ!)ダラダラ









~とある一室~

ファイ「…ふむ。私は子を生せませんし、マスターに人間の伴侶が居ても…
    それはそれでよいと思うのですが。分け隔てなく接してくださるでしょうし。
    マスターの子供の才能が楽しみです」

任天堂スタッフ「…いきなりどうしたんですか、ファイさん?」

ファイ「…申し訳ございません、電波をダウジング…いえ受信してしまったもので。
    ……それで、この区画をこのように開発してですね…」ピッ

任天堂スタッフ「ほほう、これは中々思い切った改造を…」

~病室~

ルキナ「……見苦しいところを、お見せしました」カァァ

リンク「は、はは。大丈夫、当たってはなかったから」

ルキナ「なくはないですっ!!!」

リンク「…はい?なんのことだ?」

ルキナ「……ななななんでもありません!」

リンク「お、おう」

ルキナ「…………」

リンク「うん、よかった。だいぶ、元気は出たみたいだな」

ルキナ「……私の自覚としては、まだまだ絶望の中にいるつもりなのですが」

リンク「…いや、そんなことはないぞ?なんとかなるかもしれないっていう心が、
    目に光を宿らせることになってる。…もう自殺未遂なんてやめてくれよ?」

ルキナ「……はい」コク

――――でも、やっぱり。
――――視線は再び、下を向く。

ルキナ「ここまでしていただいて、本当に情けない話なのですが。
    すこし考えてみれば、あなた1人が加わったところで。
    …いくら、あなたが素晴らしい戦士だった、ところで。
    
    …状況が大きく変わることなど、ありえない。
    そう、自覚して…冷め切ってしまう自分が、いるのです」

――敵は、あまりにも強大。
――取り返しのつかないところまで、成長してしまった。





リンク「…………言ったな?」





ゾワッ…。



ビクッと一瞬恐怖して、動転して、何事かと顔を見上げて。
…彼の全身から迸る威圧であることに気付きました。

リンク「…じゃ、証明してやるとしますか。
    俺の力があれば、きっと問題を綺麗さっぱり解決できるって…
    ルキナが認めざるを得なくなるまで」

ルキナ「…そ、それは、どういう…」

リンク「じきにわかるさ。
    …身体面としては、もうどこも悪くないんだよな?
    今日は、出かける準備をしておけよ。
    明日も、明後日も、明々後日もだ」



彼が、部屋から出て行こうとします。

――よく、わかりません。
――でも、なにか…とんでもないことを、私のためにやってくれる…
――そんな気がして、なりません。



ルキナ「あなたは…どうして、私のために、そこまで…!」



私の投げかけに、彼は振り向きはせず、ただ少し立ち止まり――。

リンク「俺さー。正直、勇者って肩書き、好きじゃないんだよね。
    色々と苦難の道を強引に歩まされてきたからさ。
 
    まあ、それでも。
    勇者ってなんだろう、自分は何ができるんだろうって、
    最近は考える余裕も出てきた。
    
    …で、アバウトながら俺が出した結論がある。




    勇者ってのは、溢れんばかりの勇気を持って冒険する奴…ではあってほしくない」



ルキナ「…えっ!?」



私の驚きなど気にも留めず、背中を向けたまま。
背中の盾をビシッと親指で示してみせる。

リンク「俺が目指す勇者ってのは…

    どんなにカッコ悪くたっていい。時には怖気づいたっていい。








    『誰かに勇気を与えて、冒険したくさせる奴』だからな!!」






ルキナ「――――っ」



息を、飲む。
今度こそ、彼は…病室を出て行った。

リンク「おっ?ピーチじゃないか。見回りか?」

ピーチ「ごきげんよう。ルキナを助けてくれて、ありがとうね。よっ、この色男!」

リンク「色男は余計だ」



小悪魔的笑いを浮かべるピーチの横を、訝しみながら通り過ぎる。



ピーチ「それで?ここから、大逆転優勝でも狙うつもり?
    いくらなんでも、マリオとクッパを舐めていないかしら?
    いくら同情したくなるからって、手加減する2人じゃないわよ?」

振り返りもせず、ピーチは語り掛けてきているのだろう。
横目で悪戯っぽく様子を伺うピーチが容易に想像できた。

リンク「舐めてなんかいないさ、2人の強さは十分すぎるくらい知ってる。
    …だからこそ、だ。

    実力が拮抗しているからこそ――
    勇気を与える使命に燃えた勇者を舐めてると…
    痛い目に遭うからな?」ニヤリ

ピーチ「わあ、怖い。じゃあ、そんなリンクに…去る前に、ひとつ、言っておくことがあるわ」

リンク「へえ?」

ピーチ「ルキナに請求する訳にもいかないから…







     壊した壁代とガラス代、後で請求書出しておくからね?
     特に意匠が施されたガラスは…高くつくわよ?」




リンク「………………………………………………………
    …………………………保険とか効かない?」タラリ

ピーチ「効きません」シレッ

~翌日…観客席~



ルキナ「えっと…Qの101、Qの101…」キョロキョロ



チケットに記載されている座席番号だけを頼りに、
人波をかき分けて、あちらへフラフラ、こちらへフラフラ。
体調が芳しくないわけではなく――単純に、人が多すぎます。

…ああ、ようやく、手を振っているルフレさんが見つかりました。
よかった。間に合わないかと思いました…。



ルフレ「ルキナ―、こっちこっち!」

ルキナ「お待たせして申し訳ありません、ルフレさん。
    
     …これが、試合会場ですか。改めて、圧倒される広さですね。
     それにしても…このエリアって…初見の私でもわかるのですが、
     相当な特等席なのではないですか?」

そう呟くと、同じことを思っていたらしいルフレさんが、非常にばつの悪そうな顔をします。



ルフレ「そ、それがさ…」


・・
・・・

リンク「すいません、S級席ってまだ空席ありますか?
    1つ…いや、2つほど確保したいんですが」

受付「申し訳ございません、全て完売しておりまして…
   …って、リンクさんですか?一体どうされたのですか?」

リンク「急遽、ちょっと招待したい人たちができてですね…そこをなんとか!
    席の増築とか、できませんかね!このとーり!」テヲ アワセル

受付「い、いきなりそう言われましても…。
    と、とりあえず本日分のキャンセル待ちということで…」





リンク「あ、大会終了までの残り2カ月分、固定席が欲しいです」

受付「」

リンク「とりあえず、前金でこれだけ支払っておきますから。
    確保してくれたら更に同額払います」





大金ルピー×100「」ドドン

受付「」





・・・
・・


ルフレ「…という感じだったらしい」

ルキナ「…………そ、そうなのですか。
    …あ、確かに座席が急ごしらえっぽい感じです」

ルフレ「ぼ、僕たちのお尻の下に、
    数年は豪遊して暮らせるお金が眠っている…」ガタガタガタガタ

ルキナ「み、身の毛もよだつようなことを言わないでください!」ブルッ

――来ました。来てしまいました、リンクさん。
――指示されるまま会場に来てしまい、ルフレさんと共に縮こまりながら…
――会場の中央を、ぼんやりと眺めます。

――試合が始まるのを、待っています。




マスターハンド「さあさあ!今日も絶好の試合日和!
         いつも以上に晴れ晴れと――試合開始のカウントダウンですっ!」



リンクVSマルスVSトゥーンリンクVSブラックピット



ブー!ブー!
リンク、イイカゲン、マジメニヤレェー!!コラー!



ブラックピット「フンッ!絶不調の今なら、リンクといえど恐るるに足らず!
         徹底的にボコってやるか、クックック…!腕が鳴るぜ!」シュッ シュッ



ピット「おーいブラピさん!ご都合主義な地獄耳ってことで忠告しておくけどっ!
    お前今、変なフラグ立てたぞ!立てちゃったぞぉ!」

マリオ(控え室)「…こ、こいつは――」

クッパ(控え室)「…どうなっている」





マルス「…………」ジッ

トゥーンリンク「あ、わ、わわわわわ…」ガタガタ

マルス「…君も、感じるんだね?トゥーンリンク?」

トゥーンリンク「あ、あれの、ことだよね、うん。
        マルスさんの戦士としての直感というよりは、
        同じ『リンク』としての共鳴のおかげなんだけど、ね。

        も、もともと『本体』と『分身』の差があるから、
        勝てるとはさらさら、思ってなかった、けど……」

マルス「なるほど、『リンク』だけに共鳴ってことか、うまいなあ!」

トゥーンリンク「そ、そんなネタで笑っている暇じゃないよう…」チラッ




リンク「スゥ―…………」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…



リンクは 闘志を 燃やしている!
リンクの やる気は 満 タ ン だ!▼



ブラックピット「んー?なーにをお目々を瞑ったまま剣を突き立てて、
        微動だにしないのかなー?リンクさーん!
        もしかして、俺にビビった?ビビったかなー?」ケラケラ

トゥーンリンク「ブ、ブラックピットさーん…
        本体さんを煽ってないで…早く逃げた方が…いいよー?」コゴエ

マルス「いやまあ、しかし…不謹慎かもしれないけど、僕は幸せ者だな。
    最高のコンディションの…最強の相手の先鋒を任されるなんて。
    ぼろ負けすると分かっていても、武者震いで疼きが止まらないよ。

    ああ、アイクの羨ましそうな顔がありありと浮かんでくるよ」ゾクゾクッ

トゥーンリンク「…マルスさんも、たいがい思考が戦闘狂寄りにひん曲がってないかな…?」

マルス「ははは、何を言っているんだい。僕は何時だって戦闘狂だよ?
    相手が強ければ強いほど、ね。伊達に長生きしてないし。
    …あ、生きてるって表現は微妙に間違っているのかな?」ゾクゾクッ

トゥーンリンク「うう…そうこう言ってるうちにも、本体の覇気に、飲まれそう…
         っていうか、既にガブリと飲み込まれ噛み砕かれてるぅ…!」ガタガタ



観客「ファイブ!」

観客「フォー!」

観客「スリー!」

観客「ツー!」

観客「ワン!」

パアアアァァン!!

実況「――――さあ、バトル開始です――!」

ブラックピット「ボーっとしてるなら遠慮しないぜ!食らいやがれ!」ダダッ




リンク「……………………20秒」カッ

私には、何が起こっているのか、わかりません。
目の前で起きたことが、頭で理解できません。

…ああ、どうやら、その感想は少し、間違っていたようです。
「私には」では、ありませんでした。

手にしていた「そふとくりーむ」とやらをポトリと下に落として、
口をあんぐりと開けたままの隣に座っていたルフレさんも。

周りの…いえ、会場全体に詰めかけている観客の皆さんも。
実況解説の人…人?たちでさえも。
しぃんと、静まり返っています。理解を放棄しています。

そして、10秒ほど経ったころ。





――ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァ!!!!!!!



たちまち、会場は…爆発的な歓声に包まれました。
これでも、称賛には控えめと思わされます――!

マスターハンド「じゅ、じゅ、17秒!?…これ、は、夢ではありませんっ!
          試合開始からわずか17秒です、信じられますでしょうか!?

         リンク選手、突進体勢のブラックピット選手を小ジャンプからの神速の強弓で返り討ち!
         衝撃波を纏いながら、なんと、開始2秒で奈落の底へ!

         間隔も空けずブーメラン投擲、トゥーンリンク選手とマルス選手、辛うじて回避!…したつもりが、なんとしたことだ!
         投擲直前に繰り出されていたと思われるバクダンが括り付けられており背後で爆発ぅ!

         あまりの早業にたたらを踏んだ両選手に、今度は怒涛の勢いで正面強攻!
         トゥーンリンク選手は2合で、マルス選手すら4合で斬り伏せられたぁ!!
         最後は威風堂々、迫力満点の大回転斬りで締めましたぁーーーーっ!!

         た、たった今入った、お知らせですっ!
         初代スマブラ――マリオ選手によってもたらされた、『28秒』が1試合の最短記録でしたがっ!!
         今回、それを大幅に更新する奇跡の1戦となりましたぁ!!」バクバク



マルス「ぐふっ…………剣先鍔迫り合いなんて狙う暇すら…なかった………」チーン

トゥーンリンク「集団虐められ、はんたーい……」チーン

ブラックピット「」チーン

観客「」

ルフレ「す、すごい……!!なんて、強さだ…!」

ルキナ「…………!!」

強い、なんて表現では足りなすぎます。
…これが、勇者の、底力…!!

何か、私の心に、確かに灯るものが、有る気がします――。



ここ最近は、リンクさんの戦績がよろしくなかったようです。
…主に私のせいであるということを知り、申し訳ない気持ちで一杯です。

ま、まあ。そのこともあってか、
突然の復活に、会場のどよめきは収まることを知りません。
彼の名を連呼し続ける、観客のみなさん。
会場全体の雰囲気が、天を駆ける龍のように、躍動しています。

……さらに、リンクさんは、己を、私を、奮い立たせる行動に出ました。



マスターハンド「…あのー、リンク選手?控室に戻られないのですか?」

リンク「あー、次の試合を待っているだけの俺のことは気にしないで。
    フィールド整えたいならどうぞどうぞ、邪魔はしないから」

マスターハンド「ま、まさか休憩を取らず連戦されるつもりですか?
        リンク選手といえど、明らかに不利になってしまいますが?」

リンク「このまま気持ちを途切れさせず、テンションを維持することによるメリットの方が
    デカいと勝手に考えてるので、お構いなくー」ググッ

リンクは まだまだ はりきっている!▼


        
マスターハンド「なんと!?素晴らしい気合いの入りようであります!
          ……では、そのようにさせていただきます!」

ウオオオオオオオオオオオォォォォォ――――!!!

リンクさんの挑戦的な意志に、会場は一層沸き立ちます…!



リンク「…さあ――俺と戦いたい奴、不調に付け込もうと思ってた奴。
    いくらでも、掛かってこいやぁ!!」ドンッ!

~夕方、控え室~

リンク「どっはーぁぁぁ…………ち、ちかれた……。
    よ、よーし、今日はこのくらいにしておくかー。
    いわゆる、勇気と無謀は違うって状況だよな、うん!

    …お、マリオにクッパ!どうよ、俺の活躍見てくれたかー?
    ここ最近で最高に最強だったと我ながら思ってるんだけど」ゼェゼェ

マリオ「…滅茶苦茶なブーストが掛かってたな。
    1000ポイント以上差が開いて、もはやリンクは優勝圏外かと思ってたが。
    今日だけでポイント荒稼ぎして、100ポイント縮めやがった」ゴクリ

クッパ「あれだけ圧勝試合を繰り返したからな。…これはまだまだ油断ならんな。
    だが、リンク。別にお前が強くなったわけではない。
    一時的なテンションの高まりで戦闘力が底上げされているだけなのだ」

リンク「それで結構。理解してるし、気にしないよ。
    現に、今はこうして反動でグロッキー状態だ、しな…。

    でも、だからこそ、だ。分かっているからこそ――この底上げのおかげで――
    今回の大会、俺が、ぜぇったいに、勝ぁつっ!
    勝利に、ただひたすら、貪欲に!行ける所まで突き進んでやるっ!」ビシィッ!

マリオ「言ったな、リンク!」ゴゴゴゴゴゴ

クッパ「生意気な!その言葉、のし付けて返してやる!!」ゴゴゴゴゴゴ

リンク「なんの、それこそ返り討ちってもんよ!」ゴゴゴゴゴゴ



受付「」ブクブク

ディディーコング「」ガクブル

ルイージ「怖くない怖くない怖くない怖くない怖くない怖くない怖くない怖くない
     怖くない怖くない怖くない怖くない怖くない怖くない怖くない怖くない」

ピーチ「3人とも!さっさと覇気を鎮めなさいよ!
    強烈すぎて受付どころか他の選手まで失神者が続出してるんだけど!」

パルテナ「うう…まともに…立って、いられま…せん。
     キャプテンファルコンさんは、よく仁王立ちしていられます…ね…?」フラッ

キャプテンファルコン「」

パルテナ「……??」チョン

キャプテンファルコン「」バターン

パルテナ「……………………あ、あれ?立ったまま気絶してた?
      もしもし?もしもーし?」ユサユサ



特に取りこぼしらしい取りこぼしもなく、先を行くマリオ、クッパ。



日程の3分の1が過ぎた頃にようやく、猛追を始めたリンク。



まだまだ大勢控える、歴戦の戦士たち。



さて、栄冠は誰の手に――――

マスターハンド「相変わらず、雨知らずの天気っ!晴男でもいるのでしょうか!?
          満員御礼も相変わらずなのは大変うれしいことです、ありがとうございます!
          それでは、今一度、気を引き締めて――試合開始のカウントダウンですっ!」



クッパVSリザードンVSワリオVS Wii Fit トレーナー

ワー!ワー!
クッパ、オウエン シトイテヤルゾー!



クッパ「フンッ、生意気な声援を浴びせる市民どもだ。身の程をわきまえろ」

ワリオ「と言いつつ、内心嬉しいクッパさんでありましたとさ」

クッパ「……そこ、うるさい」

ワリオ「でもよ、俺は納得いかねーのよ。お前に対する声援の方が大きいってのがよー。
    俺様がお前に劣ってるってか?そんな評価、糞くらえってんだ」

クッパ「ほほう、ならば実力を以って知らしめれば良かろう、単純な話なのだ」

ワリオ「まー、そーゆーこったな、分かってるじゃねーか」

リザードン「グルルル…」

クッパ「おっと、リザードン。お前も、もちろん強者であることを忘れてはいないのだ。
    ぶっちゃけると、ワガハイとマリオとリンクは別格だが…
    その少し後ろから…淡々と着実に迫ってきている…くらいの実力は、しっかり認めているのだからな。
    パワータイプであったり、炎を吐いたりという共通点もあることだし」

リザードン(グッ)

ワリオ「俺より評価高くね?それ。ムカつくんだが。
    悪気はねーが、リザードンなんて所詮は…
    数多のポケモンのうちのとある1体に過ぎないじゃねーか。

    言ってみれば『通行人A』みたいなもんだぜ?
    選ばれし戦士でも、ラスボスでもないんだぞ?いやまあ赤版の顔ではあるけど」

リザードン「……」イラッ

クッパ「ワリオ、口が過ぎるぞ」

ワリオ「悪い悪い…そりゃ、俺もこいつの強さは認めてるけどよー。
    というか、なんでこいつ、こんなに強いわけ?おかしくねぇ?」

クッパ「強いものは強いでよいではないか、本人たちの努力の結果なのだ」








パルテナ(観客席)「リザードンは…というか初代ポケモン勢は、その――

            バージョン違いの本編ソフトが各世代、
            外伝ソフトも割とあり、果てにはポケスタ系統にバトレボと
            それこそキノコ王国メンツに劣らないくらい、
            プレイアブルとして出まくってますよね…」

ピット(観客席)「え、赤版とファイアレッド版以外もカウントされるんですか!?
          さすがにアーケードは含んでいないことを祈りますよ!?」

クッパ「で」

ワリオ「だ」



Wii Fit トレーナー(女性)「今日も 一日 頑張りましょう!」ビシッ



クッパ「…どちら様?」

ワリオ「表情が読めん」



観客「ファイブ!」

観客「フォー!」

観客「スリー!」

観客「ツー!」

観客「ワン!」

パアアアァァン!!

実況「――――さあ、試合開始――!戦いの幕が…切って落とされたー!」

Wii Fit トレーナー「……」スゥゥゥゥゥ

クッパ(よく分からんが、精神統一を始めたな。ヨガの類か?
    まあ、すぐに動かないというなら、彼女は放置でいいだろう)

クッパ「よし、リザードン!まずは一発景気づけに、
    灼熱ブレス対決と行こうではないか!怖気づくなら無理強いはせんがな!」ボオオオォォォォ!!

リザードン「ガオオォォォ!」ブオオオオオオォォォォ!!

リザードンの かえんほうしゃ!▼



ワリオ「うおっと、退散退散っと!バイビー!」スタコラサッサ

マスターハンド「フィールドど真ん中でブレスと火炎放射のいきなりのぶつかり合い!
          これは会場の熱気以上に、熱い熱い戦いになりそ――」ゴクリ






ワリオ「そこ、試合開始前からせっせと溜めてた――
    超可燃性ブレンドの透かしワリオっぺ(威力MAX)あるぞ」





ドッゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!

実況「大爆発が決まったぁ――――――――っ!!!!!」

クッパ「」

リザードン「」

Wii Fit トレーナー「」ガフッ

マスターハンド「一目散に退避したワリオ選手を除き、不意の大爆発で、
          全員…壁や足場に叩きつけられましたぁっ!!」

ワリオ「ガハハ…ざまあみやがれ。続けて…ニンニクの息っ!!」ムハーッ



クッパは 毒を 浴びた!▼

リザードンは そらたかく とびあがった!▼

Wii Fit トレーナーは 猛毒を 浴びた!
代謝が 良すぎて 毒の巡りが 早い!▼



実況「いきなりの激しい攻防で、状態異常の選手が続出ですっ!
    いきなりの大乱戦となりましたっ!」

クッパ「ぬおお!!ワリオ、流石に卑怯だぞ!!」ボロッ

ワリオ「いやあ照れるぜ」

クッパ「褒めてない!…うぐ、不快すぎる臭いまで充満して…」

リザードン「フッ!!」アセリ

クッパ「くそっ…そうだなリザードン。
    もうこれ以上、下品な攻撃は食らっていられないのだ!」

クッパJr.「パパ、頑張れー!そんな、いろんな意味で汚いやつなんか、
      けちょんけちょんにしちゃえー!」

ラリー「オイラ達の偉大なるクッパ様がお前なんかに負けるかー!」

ロイ「まあまあ。強者同士の対決、暖かく見守ろうよ。どっちも頑張れ!
   …あ。その前に、体操のお姉さんが…あまりにも強烈なニンニクの匂いに
   顔を一層白くして痙攣しだしてるけど…あれ、大丈夫かなあ……」

ウェンディ「ねぇイギー、ロイってこんなに身長高かったかしら?
      こんな立派な剣も持ってなかった気がするんだけど」ヒソヒソ

イギー「ん~…………イメチェン?……強そうだからまあいいんじゃない?」ヒソヒソ

モートン「オラ…あのワリオってヤツ、嫌い。ナマイキ」

レミー「クッパ様が本気を出したらオマエなんてかーんたんに吹き飛ぶぞ!」

ルドウィッグ「皆、そんなに騒ぎおって…。我々は、ただ悠然と構えて
        約束された勝利を目に焼き付ければいいだけだ」シレッ

ピーチ「あーあ、クッパが激怒しちゃってる。知らないわよ…?
    …それにしても、ゼルダもヒルダもロゼッタも付き合い悪いわね、
    ちょっとくらい観戦に付き合いなさいよー。

    というより、せめてゼルダはとっとと1戦くらい戦いなさいよ、
    なーにを日和ってるのかしら」ブツブツ

マリオ「八つ当たり気味に借り出された俺がいるけどな。
    …よし、次はどのドリンクバーを混ぜてくるかなー」

ピーチ「子供かっ!」ビシィッ

マリオ「いやいや、残さないから問題ないし。
    このくらいの糖分なら、1分足らずでらくらく消費できるしな。
 
    …それに、俺は至極真面目に挑戦してるぞ?
    HPやFPを回復する画期的な組み合わせが見つかった例もあるからな」

ピーチ「なにそれもっと聞きたい!」ワクテカ

マリオ「…また今度な」

キノピオ「ひ ひ ひ 姫様――!
     た た た 大変です――!」ダダダダダッ



マリオ「…………げげっ」

ピーチ「…………また来たぁ」ガクーン

キノピオ「すすすすいません!なんとお詫び申し上げればよいか!」

ピーチ「…………………………………………で、今度は、なぁに?
    できれば、悪いお知らせでないといいんだけれど」

キノピオ「…………」

キノピオ「えっとぉ、そのぉ。それが…」オドオド

ピーチ「……………………で、どんな悪いお知らせかしら?」

マリオ「どうせまた、ろくでもないことが起こったんだろ…?」ヤレヤレ

キノピオ「な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      なんと…
      Mr.ゲーム&ウォッチさんのハンマーが――何者かによって持ち去られてしまった模様で、
      悲しみのあまりオイルパニックになったMr.ゲーム&ウォッチさんのせいで
      修羅場になったんですよ!……はぁっ!言えたあ!」

ピーチ「また窃盗事件ですって――!?いい加減にしなさいよ!」ウガーッ!!

Mr.ゲーム&ウォッチ「」ズウウゥゥン



ピーチ「うわ、すさまじいしょげ方をしているわ。
    …しょげているのよね?間違ってない?
    表情じゃあ、ちょっとわからないんだけど」

Mr.ゲーム&ウォッチ「……」ハッ

Mr.ゲーム&ウォッチ「……」ピコッ ピコッ

Mr.ゲーム&ウォッチ「……」ピコッ ピコッ ババーン

Mr.ゲーム&ウォッチ「……」ピコッ デンッ ピコッ ピロロロロロ

ピーチ「本当にごめんなさい、言葉もちょっとわからない!
    この控室に通訳できる方いらっしゃらないかしら!?」

サムス「そもそもどうやって招集できているのか疑問なんですけど」

ピーチ「サムス、だまらっしゃい。…あれ?そういえばキノピオ?
    そもそも…ハンマーが盗まれたって情報、どうやって把握したのよ、キノピオ」

キノピオ「ああ、それなら。偶然通りがかった……」


・・
・・・

ポケモントレーナー「……?」ピタッ

Mr.ゲーム&ウォッチ「……」ピコッ ピコッ

ポケモントレーナー「……」

Mr.ゲーム&ウォッチ「……」ピコッ ピコッ

ポケモントレーナー「………………!」フムフム

Mr.ゲーム&ウォッチ「……」パアアアアア

・・・
・・


キノピオ「といった具合です。あとはニャースさんが通訳を」

ピーチ「そ、そう……ポケモントレーナー、あいかわらず一体何者…」

キノピオ「『万が一見つからないようなら、次の大会には
      自動乱数調整でジャッジ9しか出ないチートハンマーを
      新調してくるから覚えておいてよ』とも愚痴っているそうです」

ピーチ「それはやばいわねはやくみつけてあげないと」ガタガタ




むらびと「ぼくじゃないよ、あれから周囲はよく観察するようにしてるし」ムスッ



ピーチ「う、疑ってないわよ」

むらびと「呼び出しておいて?」

ピーチ「…ごめんなさいちょっと疑ってました」

むらびと「むー…まあ、いいけどさ。事故とはいえ悪いことをしちゃったのは事実だし。
     ほかに、ハンマーを盗めそうなスキルやアイテムを持ってる人はいないの?
     というより、ロゼッタお姉ちゃんにもう一度、調査してもらった方が早くない?」

ピーチ「まあねぇ。でもロゼッタったら、ゼルダやヒルダを誘って…
     観光やら修業やらに勤しんでいるみたいで。あんまり邪魔をするというのもねえ。
     今日は自分に合った戦闘用アクセサリーを探してみます、とか言ってたわ」

むらびと「う、それはちょっと…確かに頼みにくいなあ」

Mr.ゲーム&ウォッチ「」ズウウゥゥン

Mr.ビデオゲーム「とりあえず、俺の『ウルトラハンマー』貸しておくよ。
           最近使ってやれてないし、フル活用しちゃってくれ。…使い方、教えておこうか?」ジャジャーン

Mr.ゲーム&ウォッチ「」ワーイ




~フィールド~

Wii Fit トレーナー
「――腹式呼吸!  ――腹式呼吸っ!!  ――腹式呼吸っ!!!
 だ…大地よ 海よ そして会場に詰めかけているすべてのMii ファイター………
 このわたしに ほんのちょっとずつだけ 運動貯金を 分けてくれ―っ!!」ゴオオオ!!

格闘タイプMii「うおおおおお!」10プンカンブン!

剣士タイプMii「でやああああ!」30プンカンブン!

射撃タイプMii「まかせろおお!」1ジカンブン!

Wii Fit トレーナー「…ああ、感じます!みんなの、元気の力っ!!」ブウウウウウゥゥン!

ワリオ「」

リザードン「」

クッパ「回復しつつ攻撃力を複利計算で高めるなあぁー!!物言いだ物言い!」

ピーチ「ねえねえ、正直に答えてほしいの。
     彼のハンマー盗んだの、貴方だったりしないかしら?」スッ・・・





ソニック「ないない。なんでそんなことする必要があるのさ。
     そりゃあ、オレの自慢の快速なら――特殊能力なくても奪えないことはないけどな!」



デデデ「ないわー。愛用のハンマー裏切るとかないわー」ヘッ



ドンキーコング「ハンマーなど邪道、己の体で勝負だろ」ハア?



ロボット「…………」

へんけいアームに くみこめたら たのしそうだなと
ロボットは ちゅうにごころから ちょっと ほしそうにしている▼

ゲッコウガ「ゲコゲコ(変幻自在ウッドハンマー欲しいでござる)」ニンッ

ニャース「草結びで我慢しろ…というかそっちのほうがいいだろと言いたいにゃ」

ピーチ「事情聴取も無駄骨だったかあ…
    なんか、一部参考にならない供述をしてくれちゃってるけれど。
    ああ、由緒正しき大会で二度も窃盗事件とか…あたまいたい」ガックリ


Mr.ビデオゲーム「よしっ!教えたとおりにやってみろ!
           タイミングよくボタンを離せ――じゃなかった、
           地面に振り下ろせよ……せーの!」



Mr.ゲーム&ウォッチ「…………!!」ピコッ・・・ ピコッ・・・ ピコッ・・・ パーン!

ピーチ「え、ちょ、ちょっと待って、ここ控え室なんだけd」





Mr.ゲーム&ウォッチの ウルトラジシーン!▼

ピーチ「!?」




ジャッジ判定……………………マグニチュード、9!▼



ドッシイイイイイイイイイイィィィィン!

ピーチ「私はセーーッフ!!でも威力ひゃくじゅうぅぅー!?」フユウデ アタラナイ!

Mr.ビデオゲーム「でぇじょうぶだ、この建物頑丈なうえに免震機能完備だから」



ルカリオ「あばばばばばばば」グラグラグラグラ

ピカチュウ「チャァー!?」グラグラグラグラ

プリン「……ぷり?」ジブンガ フウセンデ ウイテイル!

リザードン「…………」コウカハ ナイヨウダ・・・

ゲッコウガ「…………ケロッ」ツバメガエシ マニアッタデゴザル

ポケモントレーナー「…………」ハイケイ セーフ!

ピーチ「部屋内で一部もろに食らってる選手がいるわよ」

――緊急地震速報です。
――本日午後19時02分ごろ、強い地震が発生しました。
――震源地はスマブラ試合会場付近、マグニチュードは推定9.0、
――震源の深さは地上…地上?15メートルとされます…。
――この地震による津波の心配はありません…。

――え、震度が2しかないから緊急地震速報で流す必要がない?
――た、大変失礼いたしました!誤報です!
――引き続き、スマブラの大会をお楽しみください!



ルカリオ「おいマリオふざけるな」ボカボカ

ピカチュウ「チャァ!(怒)」ポカポカ

マリオ「あ、はい調子のりましたすいません。
    彼の素質が中々の物だったもんでついついイタタタタ」

Mr.ゲーム&ウォッチ「…………!」\アラーム/

ピーチ「そして貴方は二度とやらないで」

ピーチ「ほんと、御免なさいね。折角の買い物の途中に呼び出して…
    それではロゼッタ師匠、どうかよろしくお願いいたします」

若干おどけながら、ロゼッタにバトンを渡す。
…結局、頼ることになっちゃったわね。
我ながら、他人任せとは恥ずかしい。主催サイドとして失格ね…。

ロゼッタ「い、いえいえ、お構いなく。
      ゼルダ姫とヒルダ姫のアドバイスもあって、買い物も順調に済みましたから。
      …えっと、また犯人探し…ですか。わかりました。お任せください!
      探索の参考とする類似アイテムとして…マリオのウルトラハンマーをお借りしますね。

     Mr.ゲーム&ウォッチさん、貴方のハンマーと…十分近しいですか?」

Mr.ゲーム&ウォッチ「」ポーン

ロゼッタ「…ポーン?…えっと。それでは、微力ながら頑張らさせていただきます!
     むむむむむ…………えいっ!」ポワーン

ロゼッタが…杖を片手に目を瞑り、再び行われる、詠唱。
二回目ともなれば、皆、落ち着いて観ていられる。

…そういえば、最近、ロゼッタの周りにチコたちがいないわね。
嫌に珍しい。一体全体、どうしたのかしら。

ロゼッタ「……」

ロゼッタ「…………みつかりました」ホッ

おおおおお、という驚嘆が、控え室を包み込む。

むらびと「すごいや!こんなに簡単に見つけ出すなんて!
      ロゼッタお姉ちゃんがいれば、探偵はいらないね!」

ピット「ハックションッ!……あれ、風邪かな?」

ファルコ「見事なもんだな、まったく」

ロゼッタ「あ、あはは。まあ、本当に見つかるまでは疑心暗鬼でいきましょう、ね?」

ピーチ「さすがね!よっ、人気者!…それで、場所はどちらかしら!?」



正直、若干の焦りがあるわ。さっさと解決してしまいたい。



ロゼッタ「どうやら、あっちみたいですね。ちょっと歩きますよ…………」

まあ、ロゼッタが見つけたというなら、確実ね。
さあ、みんなで安心して付いていきましょう。
問題は、誰がまんまと盗んでのけたのか、に尽きるのだけど…!



辿り着いた場所…は、意外にも程がある場所だった。



ピーチ「…………ほんと、頭が痛いわ…」コメカミ オサエ

ファルコ「……野次馬の俺だからこそ他人事で言えるが、こりゃ酷ぇな。
     自覚無しに盗みましたパート2ってか。怒るに怒れなくてなお酷ぇ」

ロゼッタ「……そうみたい、ですね」ウーン



Mr.ゲーム&ウォッチのハンマー…で合ってる、はず。
あんなに真っ黒なハンマーだし。うん、間違いない。



ピーチ「動物の本能じゃ、仕方ない…と、言いたいとこだけど。
    悪いけど、私、機嫌が悪いの。すさまじく。2時間ほどお説教ね。
    …自分でも知らずにいつの間にか拾い集めてたとか……」ジロッ

ダックハント「クウゥン……」ショボーン

――会場からちょっと離れた公園に、いつの間にやら設置された…
――犬小屋の中に積まれたガラクタの中に、紛れ込んでいた。
――え、なに?主催者の私をからかうにもほどがあるんじゃないかしら。
――神様、私のこと嫌い?

ピーチ「というか、ちゃんとした部屋を用意してあげるから!
     そこで期間中過ごしなさいよ!わかった!?ここ、公共の場所!
     どっからこの犬小屋持ってきたのよ!?…え、自作した?やるわね!」

ダックハント「クゥウン…」ションボリ

ピーチ「『ガンマンのための人用の宿泊施設がいい』ですって?
    そこまで気づかいできるなら人の物盗まないでよ!ああもうっ!」イライラ

ダックハント「クワァ!?」ビクッ

ファルコ「俺が言えた義理じゃねーが、落ち着けよピーチ」アセアセ

ピーチ「いい加減ストレス溜まってきてるのよこっちはぁーーーっ!!
    選手の間で『次は自分の所持品が無くなるんじゃないか』って雰囲気が
    漂い始めているの!神経尖らせすぎにもなるわよ!」

ピット「それより僕は、ピーチが犬の言葉を理解できてることの方が驚きだよ」

ピーチ「ピットだって、フォックスやファルコの言葉理解できるでしょ?」

ファルコ「よし、その喧嘩買った」

ピーチ「冗談よ。無口勢や不思議存在勢に比べれば…
    犬の言葉を何となく把握するくらい、たやすいものよ」イライラ

パルテナ「なんだか、ストレスで倒れそうですね…
      無責任かもしれませんが、落ち着いて深呼吸なさってください」

ピーチ「……………………そう、ね。やっぱり、そう見えるわよね。はぁ…。
    いつもはこんなときは、デイジーに助けられてたんだけど、ね」ボソッ

パルテナ「デイジー…ですか?うーん、たしか…サラサ・ランドのお姫様ですね?
     ピーチ姫と親交が深いという」

ピーチ「基本的にダメダメお嬢様で、なんともしがたい、お茶らけた人間だけど。
    絶妙なタイミングでデイジーがボケて、私がツッコミ入れて。あるいはその逆で。
    周りの人のストレスを機敏に読んで、ほどほどに発散させるのが、得意な子なの。
    それこそ、時には自分から貧乏くじ引いてまで…周りを元気にしてくれる。

    天然である可能性もあるけどね。元気はつらつな起爆剤であり続けるいい子よ」

パルテナ「わあ、本人が聞いたら照れくささに身悶えしそうな高評価ですね」

ピーチ(むしろ聞いてても許すから助けてほしいくらいだけど…
    ほんと、今回の大会に参加してくれていないこと、悔やまれるわ……)ハァ





デイジー「クシュンッ。……風邪か?――まあ、どうでもいいや。
      さあ、続けて、行ってみようか…!」ニヤリ

ピーチ「しっかし、こんな距離でも捜査可能だなんて。本当にロゼッタの空間魔法は有能ね!」

ロゼッタ「まあ得意分野ですから♪」ニヘラ

ゼルダ「…………」

ヒルダ「…………」



マリオ「…………ん~?これで一応、めでたしめでたし、なんだよなあ…?
    …うーん?」

ルカリオ「めでたくない、めでたくないぞマリオ!
     おかげで明日まで療養が必要になった、私やピカチュウの身にもなれ!
     メガ進化からのつるまい適応力インファを食らいたいようだな!」

マリオ「俺が反省しなきゃならないってのは置いておけば、だ!これでいいだろ!?」

ルイージ「この際、しっかりとしたセキュリティシステムで持ち物を預かった方がよくない?」

クッパ「心配せんでも、ルイージの持ち物は取る価値のないような物ばかりだから大丈夫なのだ」

ルイージ「そっか、それなら安心だね…ってちょっと待ってよ!」

ギャーギャー……

ピーチ(もう、みんな呑気なんだから…羨ましい。
    …………お説教終わったら…………そうね、久しぶりに……
    ゆっくりお風呂に入って、美味しい料理でも食べて…さっさと寝ましょう…)

~夜、情報管理室~

ピーチ「あ゛あ゛~」ブオオオォォ



リンク「…ワイン片手に、風呂上がりっぽい艶っぽさで、簡易着のまま…
    扇風機に『ワレワレハウチュウジンダ』宣言をしようとする5秒前の王国元首とか。
    こいつは珍しいものを見た。天変地異の前触れ?」

ピーチ「きゃあああっ!?…なんだ、リンクね。驚かさないでよ!」

リンク「んで、この部屋、何?スクリーンがいくつも並んでごっちゃごちゃだけど。
    ちなみに俺はルキナの体調報告ついでに司令部っぽい不思議部屋の探索に来た!
    明日は休養日にする予定だから、息抜きみたいなもんだな!」

ピーチ「よしきた不法侵入、逮捕よ逮捕。…まあ、冗談はおいといて。
     一応、大会を運営すべき立場として、一日の最後のお仕事よ。
    各位置に設置した監視カメラの簡易確認と、集計された報告やデータの解析。
    今はちょっと…疲れて魔が差したというか。忘れなさい。…よし、作業再開」カタカタ

リンク「うへえ、お疲れさん。なになに、どんなことが分かるんだ?
    こういう光景見ると、無性にワクワクするよな!」

ピーチ「純真すぎる勇者ね…」

ピーチ「…まあいいわ、説明してあげる。説明しつくすまで帰ってくれそうにないし」
   カタカタカタカタッ

リンク「…………タイピング速すぎない?手元、残像が見えるんですけど」

ピーチ「月で鍛えたわ」フフン

リンク「なるほどわからん」

ピーチ「まずは当然、不審者や不審物の確認。必要ならば排除を検討するわね。

    いざこざが起こったら、周囲の状況を十分に吟味して…

    フラストレーションの適度な散逸と捉えて黙認するのか、
    あるいは介入するのか決めたり」カタカタカタカタッ

リンク「なるへそ、なんでもかんでも法で裁くぞーってわけには行かないのか」

ピーチ「その通りよ。王国民にしても観光客にしても、生活しにくくなるじゃない。

    迷子の誘導や警備の巡回経路決め。

    大会に影ながら貢献をしてくれた商店があったら、
    それとなく口コミ、掲示板で紹介してあげたり。

    物、人の動きの統計を取ることで流通を操作したり、ね。

    ああ、やることが一杯よ!」カタカタカタカタッ

リンク「それ絶対1人でやることじゃないよな」

リンク「それにしても…すごいな、マジで。
    ありとあらゆる情報網も駆使して、大会運営を支えているんだな!
    とても真似できないな…



    でもマリオに聞いたんだけど、ピーチが1人で頑張りすぎると
    キノピオたちが全く成長できないんじゃ――」



ピーチ「…………」ピタッ

リンク「…………」



ピーチ「…………気のせいよ」メソラシ

リンク「…………キノセイカー、ナラシカタナイナー」

ピーチ「ほ、ほかにもね!このボタン、押してみて?」サッ サッ

リンク「……これか?」ポチッ



ババババババッ!!



リンク「…うおうっ!?画面中に…履歴がびっしりと!」

ピーチ「これは、10日前の私の行動記録ねー。

    選手カードをいろんなところにかざして、特典が得られたことがあるでしょ?
    ゲートを通過できるだけじゃなく、食事が無料になったり、
    商品が安くなったり、要管理の特殊アイテムを扱えたり…。

    それらの履歴が、全部、カードの中にしっかり残っているのよ。
    これを調べれば、各選手が求めていることを整理して
    次回以降にしっかりと活かすことができるわ!」

リンク「――へぇ」




ふむ、と俺は一思案。



選手カードがそこまでハイテクだとは、思ってもいなかった。
いや、キノコ王国の技術なら、このくらいお茶の子さいさいか。
もっと前の大会の時からある、ピーチご自慢のシステムなのかもしれない。



――もしかしたら、使えるかも。…いやいや、素人の絵空事か?



リンク「……………………」フム

ピーチ「…………どうしたの?それとも、凄すぎて声も出ないかしら?」フフッ

リンク「あ、いや。素人発想のツマラナイことだから気にしないで」

ピーチ「そう言われると気になるわよ…試しに言ってみなさいよ、ほらほら!
    私だからこそ気付かない盲点を、第三者のリンクがあっさり見つけてくれたのなら…
    それこそ万々歳ってものよ、ね?」

そうピーチはおどけて、ウインクして見せる。――ええい、ままよ。

リンク「それじゃ、言うけど。

    今までの所、盗難騒ぎが2回あったよな?
    あいにく、俺はゴタゴタしてて、あんまり関与できなかったけど」

ピーチ「うぐぅ…改めて、不甲斐ないわね、私…そ、それで?」

リンク「使用した特典の記録だけと言わずさぁ。
    いっそのこと、最低限のプライバシー保護を施したうえで、
    移動履歴まで分かれば楽だったのになーって。
    今は非常事態だし、文句言う奴はそうはいないぞ。
    GPS機能くらい…ついてないの?

    ある2人の移動履歴が同時刻に重なってたら、
    一緒に行動していたか接触があったんだな…なんてこともわかるじゃないか。
    まあ、選手がカードを常に携帯していることが前提だけど」
    
ピーチ「……………………」

ピーチ姫が、目をパチクリと瞬かせる。
…あれれ、本当に盲点だったのか?

リンク「……………………ピーチさん?おーい?」



ピーチ「……………………それよ!!!
    リンク、あなたって天才!?その手があったわ!!」ガバッ



のわっ!?…ビックリした。
がばぁっと上半身を乗り出したせいで寝間着が肌蹴かけたが、気にした様子はないようだ。
はしたないぞ、お姫様。

リンク「ま、まあ…今更って感じがあるけどな」

ピーチ「そんなことないわ!というより、GPS機能ならとっくの昔に機能中よ!
    データは全て本部…つまりここのデータベースに今でも送られてきているはず!」

リンク「そーなの?」

ピーチ「追跡するつもりはなかったから、機能をデフォルトOFFにしているけれど!
     1時間もあれば、ちょちょいとプログラム作成して全員の経路表示くらいやってみせられるわよ!!
    燃えてきたわーっ!!」ゴオオオオ

リンク「へえ、そりゃあ…。
    ……って、今から!?今から1人で取り掛かるのか!?
    抱え込みすぎだろそれ!?社畜か!?」

~1時間後~



ピーチ「ZZZZZ……」クカー

ピーチは ちからつきた▼



リンク「…というわけです」

マリオ「…ったくー。まあでも、ほんとお疲れってところだな。
    おけおけ、メイドの1人か2人呼んで、キノコ城の寝室に放り込んでもらうよ。
    リンクもサンキューな」ピポパ

リンク「そうしてもらえると助かる…」





リンク「…え、キノコ城にメイドっているの?」

マリオ「そりゃあ…いるけど?数は少ないけどな。何をそんなに驚く」

リンク(雑用含めてピーチが全部1人でこなすから知らんかった…!)

ドドドドドドドド――――!



メイド「ししし、仕事ですかぁ――――!?
    お仕事、ですかぁ――マリオ様っ!!」ドドドドドドドドド



マリオ「あ、え、うん」

メイド「広い広いキノコ城に、たった5人しか雇われなかったから!
    どれだけっ!どれだけっ!キツイ毎日になるかと思ったらっ!
    毎日毎日毎日毎日っ!1時間の水やりと、2時間の掃除をやるだけっ!

    大抵の仕事は技術班が製作したロボットや機械がやってくれるっ!
    ちょっとした応用事は、姫様御自ら…あっさりと片付けてしまわれるっ!
    気を使われているとしか思えない雑談にちょっと付き合ってっ!
    あとは寝ているだけで、美味しい料理が勝手に出てきて、高給取りっ!

    大変失礼ながらっ!!姫様は――

    私どもを、不甲斐なさと申し訳なさに苛みながら憤死させるお積りですかぁ!
    どうやら今は、デイジー様やロゼッタ様のような、気を許せるご婦人方もいらっしゃらないようで!

    1年半ぶり…いえ2年ぶりくらい?のまともなお仕事だひゃっほーい!!
    誠心誠意、丁重にキノコ城の寝室までお運びすればよろしいのですねっ!!」

マリオ「」

メイド2「その役割、譲るわけにはまいりませんっ!!」ダダッ

メイド3「私こそが、もっともっと苦労すべき堕落者なのでございますっ!!
     どうかその役目、お譲りください!」フンッ!

メイド4「倒してでも 奪い取る!」ズサァッ

メイド1「よし、では正々堂々…じゃんけんで!」

メイド2「異議なし!」



――じゃーんけーん……



メイド5「こうやってバカ騒ぎして、肝心の姫様を放置する…漫画的ノリが一番ダメ。
     というわけで、冷静沈着な私は勝手な決めごとを無視して
     姫様をさっさと運ばせていただきます。好きなだけジャンケンしておいてください」ヨイショ

ピーチ「ZZZ……」



マリオ「…なんだこのコントは」

リンク「やっぱり俺の感覚の方が合ってたじゃないかマリオさんや」

~深夜~

カタッ カタッ カタタッ…。



リンク「さってと…見よう見まねで、解析解析ぃっと。
    マリオに断ったうえで、今回迷惑をかけた罪滅ぼしも兼ねて
    ひとりぽつんと黙々と、解析を進めてるリンクさんでしたー。
    明日は休みだしなー!

    さっすがピーチ、初心者の俺でも簡単に推測できるところまで
    操作方法を落とし込んでいてくれてるぜ!助かる!
    キノコ王国が誇る頭脳とはこのことだな!」カタッ カタッ

リンク「試しに200時間くらいは、みんなの足取りを地図上で追ってみて…
    実用性を確かめてみるかあ!まずは俺の選手カードのデータから!」バッ



リンク「ここで、食事を摂ってるな…」

リンク「…あー、これは会場で暴れまくってた状態か。光点が動かないや、はは…」



リンク「ここで残機が減ってるな…っておいぃ!変な叫び声の効果音とかやめぃ!
    …シーカーストーン機能?なんだよそれは!」ウガー

~1時間後~



リンク「ようやく終わった…って、もう1時間経ってるのか。
    しみじみと思い出しながらだったから時間食ったなあ。
    次からはテキパキ確認していくか。さあ、2人目っと!」



~更に1時間後~



リンク「なるほど、マリオもクッパも、中々試合会場に入り浸ってたんだな…
    優勝条件が厳しいってのは変わらないな、気を引き締めないと。
    さあさあ、どんどん行くぞ!」



~更に2時間後~



リンク「……ふわぁ…えっと…やべっ、ちょっと寝落ちしてたか…。
    ちょっと巻き戻して、経路を追い直すか…眠くなってきた…」

~更に2時間後~

リンク「…眠い…眠すぎる…でも中途半端にやめたくない…。
    寝るな、寝るなよ、俺。こんなにすぐ寝るから、
    いっつも寝ぼけているところから冒険がスタートするんだぞ…くう…。

    えーっと、次は…ダックハントの移動がぁ……………
    なんだよコイツ、絶対このあたり、人の家の敷地か地下水路通ってるだろ…
    自由奔放すぎる奴だな………ふわぁ…」

リンク「…………あれ、また寝落ちかよ、巻き戻し巻き戻し…………
    あ、そういや…休養日では、あるけど。
    ルフレを修行してやる、約束、してたっけ……」パタリ








~明朝~

マリオ「おーいリンク、おはようさん。調子はどうだ…………」ガチャッ

リンク「ZZZZZ・・・」

マリオ「おい」

ピーチ「あらまあ」

リンク「いやー、引き受けておいて自分が途中で眠るとは面目ない。ふわぁ…
    朝食まで持ってきてもらえるなんて、至れり尽くせりだな」モグモグ

ピーチ「まったく…まあ、有難うね。本当は私の役目なのに手伝ってくれて」

マリオ「でもさ、使い勝手はチェックしたんだから十分じゃないのか?
    あとでピーチと情報共有しておけよ」

リンク「そのつもりだ…と、言いたいとこだったんだが。
    …せっかくだから、先に全員分の行動履歴を見ておきたい。
    ま、引き続き作業したいってことで、いいかなピーチ?」

ピーチ「まあ…好きにしていいけど?興味がわいたっていうんなら」

リンク「よしきた!…さてと、今日も一日頑張りますか!ルフレの特訓はあるけど!」ウーン



リンク(ちょーっと、気になることができたんだよなー…)

キノピオ「ひ ひ ひ 姫様――!
      た た た 大変です――!」ダダダダダッ



ピーチ「…………きゃああああああああああぁぁぁ!!!
    マリオ、バトンタァァァーッチッ!」ズサァァッ!

マリオ「混乱状態を引き継ぐから嫌です。
    とんぼ返りかボルトチェンジにしてください」

ピーチ「ボケてる場合じゃなーい!もう嫌なのっ!!
    私の精神摩耗がマッハなのよっ!」ウルウル

キノピオ「ににに逃げないでください姫様!
      正真正銘の一大事ですっ!!」

ピーチ「無茶を言わないでー!」ダダッ



マリオ「…………今度は」ヤレヤレ

リンク「…………何さ?」アキレ

キノピオ「あの、ええとっ!!!」マッサオ

キノピオ「な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      な
      なんと…早朝からの大、大、大事件ですっ!!
      キノコ城の一区画が突如、何者かによって襲撃を受けて…
      宿泊されていたロゼッタさん、ゼルダさん、ヒルダさんが危険な状態ですっ!
      …はぁっ!言えたあ!」

3人「「「!?」」」



――キノコ城の一画は、異様な光景に包まれていた。
――モクモクと、黒煙が無情にも立ち上る。


――構造物があちこち崩れ、モニュメントが原型を留めず消し飛んでおり…
――まるで、戦争が、あったかのよう。



――ロゼッタの後ろ姿が、見えた。
――一刻も早く駆け付けたいと、走る、走る。



――酷いくらい血まみれで這いつくばって、なおも手を伸ばしてもがく彼女の姿があった。


――手を向ける先には、立ちすくむことしかできていない、ゼルダとヒルダ。
――彼女たちも、ロゼッタ同様…満身創痍であることが見て取れる。
――位置関係からして、ロゼッタを…庇った?

――そして。

ピーチ「…なに、あれ」ゾッ

リンク「…ブラック、ホール?いや違う、時空の…ハザマ?」

直径30メートルはあろうかという、光と闇が混ぜこぜになった謎の円盤が…
ごうごうと重低音を立てて鈍く回転しながら、こちらに面を向けている。
力なく立ちすくむ2人との距離は――





たったの、1メートルくらいしか残されていなかった。





じり、じりと吸い込まれていく。

ヒルダ「―――――――」

ゼルダ「…こん、なのに。負けてやるもの、ですか。
    …ヒルダっ!死にたくなかったら足掻きなさい!早く!」

激しい陰圧に、対抗し続けていたらしいゼルダ。
しかし、離れること、叶わない。動かないよう踏ん張ることすら、限界が来たみたい。
踏ん張る足元が震え、摩擦の跡を激しく残しつつ――ずる、ずると下がっていく。

ロゼッタ「ああっ!マリオ、ピーチ姫っ!お二方を…どうかお二方を、
     助けてあげてくださいっ!私ではどうすることもっ!!」ポロポロ

ロゼッタがこちらにようやく気づき、必死の訴えを行う。
声を張り上げることすら、辛くてたまらないはずなのに。

ピーチ「…っ!よし、後は任せてロゼッタ!
    マリオにリンク、無責任で悪いけど分析なしに突っ込んで!
    回復は私がなんとかしてみせる!」

マリオ「了解っ!」

リンク「任せろ!」ザッ!







――そして、絶望的に、救出には時間が足りなかった。

「――あ」

その放心の声は、一体誰の声だっただろうか。



ヒルダの体が。
そして、間もなく、ヒルダを必死に引っ張ろうとしていた、ゼルダの体が。
吸引に、とうとう捉えられた。

ヒルダ「…い、や。死にたく、な――」ウツロ

ゼルダ「…なんとか、生き永らえてみせます、か――」ギリッ

2人の体が、円盤の中に、消えていく。
体が、光の粒になって、溶けて、いく。

ものの3秒で、完全に――消え去った。

カッと、一瞬だけ、一際眩しく光り輝いたかと思うと…
謎の回転体は――緩やかに動きを遅くしていき…
ぴしり、と音を立てたと同時にひび割れ。ぱりんと、割れた。

そこに、ゼルダとヒルダの姿は…残って、いない。



ロゼッタ「嫌あああああああああああああああぁぁっ!!!!」

病室は、あまりにも重苦しい空気が立ち込めている。

ロゼッタの治療そのものは割とすぐに終わったものの、
彼女はただひたすら泣くばかりで。己の無力さを呪う言葉を吐くばかりで。
誰も、声をかけることができない。そんなこと、おいそれと、できようがない。

むらびとが、あまりにも不安だったのか、私のドレスをクイクイっと引っ張った。

ルキナが、自分の境遇に重ねてしまったのか、既に涙目になっている。

なんとか慰めてあげてほしい、ということらしい。…わかってる、わかってる、けど…。



ロゼッタ「わ、私が…もっと強ければっ!こんなことには、ならなかった、のに…!!」ポロポロ



――私は、この王国のトップ。今回の大会の、主催者。
――感情のまま、立ち往生してはいられない。必要なのは客観的な即断力。

――城の一画の修復作業は絶賛開始中。ただ、大会中の完了は絶望的。
――事態の収拾に向けて、今ここにいるロゼッタ警護役以外の選手たちは…
   すでにグループに分けてパトロールに向かわせた。



――未だ、ゼルダとヒルダは、見つからない。
――それでも、やらなければならないことは、あるらしい。

マリオ「精神摩耗の激しいピーチにばっかり、頼ってられないな。
    ここは俺に任せとけ」ズイッ

ピーチ「…悪いわね、私自身も…一杯で」

眩暈も結構ある感じ。心も体も調子が悪すぎる、はぁ…。



マリオは小さく「気にするな」とだけ答えて、ロゼッタの傍に立つ。



マリオ「ロゼッタ、2人が何処かに囚われたのは…断じて、
    ロゼッタのせいなんかじゃない。ロゼッタは最善を尽くしてくれた。
    ロゼッタを恨む奴は…それこそ、ハイラル代表のリンク含めて、誰もいない」

リンク「ああ、その通りだぞ、ロゼッタ。
    むしろ、2人のことをそこまで想ってくれて、本当にうれしいよ」ニコッ

ロゼッタ「で、ですが――――!」ポロポロ



視線を彷徨わせながら、ロゼッタは蚊の鳴くような声で呟く。
ホント、損な性分をしているんだから。

マリオ「いいか、聞いてくれ、ロゼッタ。
    キノコ王国の、そして俺たちの威信にかけて。
    いなくなった2人は、なんとしてでも取り返す。
    だから、元気を出してくれ」ポンッ

ロゼッタ「…ふ、ふたりが、生きている保証なんて、ど、こにも――」ポロポロ

マリオ「それがあるんだよ、実は」フフン

ロゼッタ「――――――――――ほ、ほんとう、ですか!!」



一瞬固まって目を見開いた後、涙顔のロゼッタが、ようやくまともに顔を上げる。
…ロゼッタの体格が大きいせいで。ベッドに寝た状態とか関係なく。
ロゼッタの目線の高さ>マリオの目線の高さなのは気にしない。



マリオ「ほい、ピーチ解説」

……あ、ここで唐突に振ってくるの?ごめん、分かってないんだけど。
一拍遅れて、ブンブンと首を振る。

マリオ「あー…ピーチがそこまでポンコツ化しているとは重症だな…。
    いや、別に大したことじゃない。

    『あの不可思議なチカラに、ロゼッタが捉えられなかった』という事実。
    これが全てを物語っているんだ。

    どういう戦いがあったかは知らないが、ロゼッタ。
    お前も、2人と同様に攻撃を受けたんだろう?」

ロゼッタ「…は、はい!その通りです!
      朝起きて、3人で朝食を摂っているさなかに、いきなり激しい爆発音が。
      何事かと駆けつけてみれば、城のあちこちが酷いありさま。

      慌ててピーチ姫に連絡を取りに行こうとしましたが、
      その場を動くことも叶わない怒涛の攻撃と引力を身に受けて、
      あ、あのような…状態に――!」



より発言の自信を増したとばかりに、マリオが腕を組んで頷いた。

マリオ「そんなところか。…でもそれ、よく考えるとおかしいんだ。

    キノピオが気付いて、一目散に俺たちを呼びに来るまでの時間。
    俺たちがキノピオの一報を聞きつけて向かうまでの時間。
    正直、かなりの時間だけ後手を引いちまってる。それなのにだ。

    言っちゃ悪いが、ヒルダはともかく、ゼルダが太刀打ちできない攻撃に…
    ロゼッタがあそこまで対抗できるはずがないんだよ。
    ゼルダはどっちかというとヒルダを庇うのに専念してたみたいだし」

リンク「…確かに。強さ的にはゼルダ姫>>ロゼッタ>>ヒルダ で合ってるよな?」

クッパ「…ふむ」



…い、言われてみれば。でも…それって、どういうこと?
――――まさか。



マリオ「暗躍する者――何者か未だに分からんが――
    やろうと思えば、ロゼッタだって難なく亡き者にできたはずだ。
    ロゼッタ自身が思い切り白旗を上げていたしな。

    それが、満身創痍とはいえ助かった。
    これは、『あえて助けた』という考え方をするべきだ」


ざわっ…と、限られた人数しかいない病室が騒がしくなる。

むらびと「そそそ、それって、どういうこと!?」

マリオ「つまり、犯人の目的は、恨みで選手の命を奪うこと…とかじゃない。
    どっちかというと、慌てふためく俺たちをみて愉しみたいっていう愉快犯だな。
    
    都合よく、これまで事故が小刻みに起きてきただろう?
    その情報を何らかの方法で入手して、便乗してやろうとか考えたんだぜ、きっと。
    犯人の思惑通り、今の俺たちのテンションはズタボロだ」

むらびと「最悪じゃん、そんなの!」カッ

マリオ「…だが、逆に言えば、命を奪うことに執着をしているわけではない、と言える。
    いつぞやのディメーンよろしく、むしろ生かして交渉材料に使った方が
    犯人サイドとしても動きやすいからな。

    結論として、生きている可能性も割と高いと言える」



しぃんと病室が静まり返る。
各々が、マリオの言葉を一語一句、頭の中で噛みしめている。

ピーチ「…でも、今のマリオの推測自体に、わりと多分に希望が混ざってるわよね。
    確実に真綿で締めるように命を奪っていくことに悦を感じる…
    猟奇的な犯人だったらどうするの?」

マリオ「……そんな谷底に付き落とすような発言しないでほしいんですが。
    それを言われると『後の祭です、どうしようもありません』と無慈悲に返すしかないじゃん」


 
…それも、そうか。



でも、周りの皆は、マリオの意見に同調しようとしている。
ゼルダとヒルダの生存を、信じようとしている。

なら、私もそう動くだけ。



マリオ「やれやれ、ピーチの横槍が入っちゃって話の締め方が難しいけど…
    ともかく、ロゼッタ。繰り返すが…2人は、絶対、助けて見せる。
    俺に、俺たちに、任せとけ!!」

ロゼッタは、マリオを見つめる。
更に更に、大粒の涙を流し始める。
そうよね、心配しないで、ロゼッタ。なんとしてでも、彼女たちは――!

ロゼッタ「――――――――っ!!お願い、いたし、ます――っ!!」ガバッ

マリオ「へぶっ」



感極まってしまったのか。
上半身をガバッと動かしたロゼッタが、反応が遅れたマリオに――
マリオの頭を抱え込む形で、思い切り抱き着いて一層激しく泣き出した。








ピーチ「…………」



ピーチ「……………………」



ピーチ「…………………………………………
    ちょっと待ったああああああああぁぁぁぁぁ――――――――っ!!」

ロゼッタ「…はい?」ナミダメ

なぜ急に叫ばれたのかがわからないのか、顔だけこちらに向ける、涙目のロゼッタ。



マリオ「」

何気に成長してきた胸を押し付けられて、完全に石と化したマリオ。



リンク(あ、なんかデジャブ)

ルキナ(あ、あ、ああああ…)カァッ

おいそこ、なにがあった。ああ、あの夜の邂逅か。
…って、そうじゃなーい!



ピーチ「感動したのは分かったから、とっととマリオから離れなさいよゴラァ!
    マリオもさっさと引きはがしなさーい!!!」グイッ

マリオ「」



マリオは こおってしまって うごかない!▼

むらびと「よし帰ろう」クルッ

ファルコ「賛成」クルッ

クッパ「おっと持病の仮病が」クルッ

リンク「管理室で解析の続きしよーっと。あとはヒーローのマリオに任せよう」クルッ

ルキナ「あ、ええと、ええと。私も、お暇させていただきます」クルッ



ロゼッタ「ピーチ姫、痛いです!強く引っ張らないでくださいっ!」ギューッ

マリオ「」

ピーチ「抱きしめる力強くするなぁ――!
     ああもう、なまじ病人相手だから力加減が難しいっ!?
     アンタたちも手伝いなさいよぉ薄情者――!!!」



…結局、ひっぺがすのに5分程度費やしました。
益々、体がふら付いてきた気がする…。

マリオ「…………」ハッ

ピーチ「よし、とっとと退散するわよ、こんなとこ!」

ロゼッタ「そう、ですか…」ショボン



ようやく、マリオが正気に戻ったし…やってられないわ…。
名残惜しそうにするロゼッタを一切振り返さずにマリオと一緒に病室を出る。
無自覚とはいえ、ロゼッタ、恐ろしい子…!





マリオ「…………」



マリオ「…………」



マリオ「…………」



マリオ「…………………………………………やれやれ」ハァ

~情報管理室~

リンク「…………」ジーッ

……やっぱり、寝ぼけての勘違いとかじゃなかった。おっかしいなー?
うーん?何故に?どして?



コンコン。



リンク「どうぞー?」

マリオ「お、やってるやってる。どんな感じだ、リンク?」ガチャッ

リンク「お、色男のおでましだ。お疲れさまっしたー」ケラケラ

マリオ「お前だけには言われたくない」

リンク「…なんでさー。
    え、調べてきた内容?あ、マリオも聞いてくれよ。
    みんなの行動履歴を紐解いて行ってるんだけど、なんか腑に落ちないんだ」

マリオ「ほほう?どんな具合に?」

リンク「百聞は一見に如かず、だな。…ちょっとこいつを見てくれ」カタッ カタッ

パッ!!

リンク「これ、ダックハントの行動記録ね。
    道なき道を、すっげー縦横無尽に動いているのが呆れるけれど。
    選手カードをほっぽり出したりしていなくて助かった」

マリオ「うわ、あちこちで無料食事イベントに有り付いてやがる。
    食欲に忠実だなあ、ははは。…会話とかどうしたんだろ」

リンク「そんでもって……ほいっと」カタッ カタッ



パパパッ!



マリオ「あ、履歴の線が1本増えたな。これ、誰のだ?」

リンク「Mr. ゲーム&ウォッチのだよ。まあ、ダックハントに比べれば
    ずっと行動範囲は狭いな。大して施設利用履歴もないし」

マリオ「あのなりで一般施設に入ったらギョッとされるから自重してるのかな。
    だとしたら悪いことをしたな…。
    
    で、いろんなところで線が交差してるな。
    このどこかで、Mr. ゲーム&ウォッチがハンマーを落として、
    他の人に気付かれる猶予さえなくダックハントがつい拾っちゃったと」



リンク「いや、それ、違う」



マリオ「…違う?」



リンク「線だけ見ると重なってるけど、どの交点も時間帯がずれてばっかりだ。
    最低でも1時間は…ずれてる。





    ほぼ同時刻に2選手が同地点にいた形跡、なんてものは…………
    この2選手間には――存在しない」




マリオ「…………なんだって?」

リンク「あんな目立つハンマーなのに、通りかかった人が悉く無視するなんて、
    有り得るのか…?まあ気味悪がられ続けた可能性が0とは言えないけど…」

マリオ「……!!」

リンク「あ、ついでにさ。その後で、むらびととファルコの相互関係についても、
    なんか気になって調べてみたんだよ。

    むらびとは…『シロ』だ。

    さっきと同じく、同時刻同地点の状況がなかった。
    こっちについては、どう言い訳しようが『ぶつからないと』
    アイテムの移動が起こり得ないんだっけ。訳が分からなくなってきてるよ…」

マリオ「……サンキューな、リンク。
    おかげで、ほっそいほっそい俺の仮説が信憑性を増してきたぞ」

リンク「は?なんだよそれ?」ハァ?

マリオ「ときにリンク。もう、全員分の行動履歴を調べ上げたのか?」

リンク「あ、いや。プライバシーのことも考えて、とりあえず女性陣は後回しにしてた。
    ピーチに止められたらそこで素直に止めておくか…って感じで。
    まあ、ようやく男性陣および性別不明陣の解析が終わったから、
    そろそろ申し訳ないが女性1人目のサムスについて調べ始めようと…」

マリオ「そりゃあ、ちょうどいい。
    …順番変更だ。ゼルダとヒルダについて追跡を開始してくれ。
    とりあえず急ぎだから、現在の位置だけでいい」

リンク「…………!!!あ、そりゃあ、最初からそうすべきだったな、迂闊っ!!
    早速やってみるぜ!現在の2人の位置…どうぞっ!」カタッ カタッ



パッ!!パッ!!



リンク「…ああっ!!」

表示は…………なんと、大会会場を示している!



リンク「と、とりあえず、会場にいる…というか、
    どこかのフィールドに幽閉でもされているのか!?
    くそっ、さすがにこれ以上拡大はできないか…!」カチッ カチッ

マリオ「実は2人とも既に命はなくて、
    俺たちを誘導するために選手カードだけ罠設置されている、
    とかでなければな」

リンク「おっそろしいこと言うなよ…
    よ、よし!急ぎ、みんなで捜索に…!」

マリオ「いや、そのまえに、あと1つ…いや、2つだけ」

リンク「ど、どうしてだよ!急いだ方がいいだろ?」

マリオ「いいから、頼む」

リンク「……わかったよ。そこまで真剣な顔をされたら断れないよ。
    で、なにをすればいい?」フッ

マリオ「その2人の履歴、なんだが。
    ちょっと時間は掛かるけれど、今の光点の位置が動き始めるまで、
    どんどん履歴を遡っていってくれないか?」

リンク「…は?別に、いいけど。
    昨日までは普通に、ロゼッタとあちこち見て回ってただろ…?」

マリオ「いいからいいから」

リンク「無駄なことが好きだな…じゃあ、いくぞ?」カタッ カタッ



【1時間前 動きなし】

リンク「こんなの見て、なにか分かるのか…?」フゥ



【2時間前 動きなし】

リンク「…………」

【4時間前 動きなし】

リンク「…………あり?そろそろ動いてもいい頃、だよな…?」



【24時間前 動きなし】

リンク「…………え、なにこれ、おかしいだろ?壊れてるのか?ここまで見させておいて」





【1週間前 動きなし】

リンク「はああああああああ!?」






【1か月前   動 き な し 】

リンク「」

マリオ「はあああああぁぁぁ……………」タメイキ

リンク「なんだよなんだよ、なんだってんだよ、これ?
    何がどうなってるんだ!?」



訳がまるでわからない。
普通にいたよ!ゼルダ姫とヒルダ、ふっつーにいたよ!?



リンク「…ハッ!?ま、まさかその頃から、
    選手カードを会場に落としてたとか、か?
    おっちょこちょいすぎるだろ」

マリオ「ちゃうちゃう」

マリオは満足と呆れが混ざったような…不思議な顔をしている。
何か合点がいったらしい。幸か不幸か。

マリオ「混乱しているところ悪いが、2つ目のお願いだ。
    …………ロゼッタの履歴、同じように追跡してほしいんだけど」

リンク「お、おう…………わ、わかった…」



それが、マリオの仮説とやらを信じる助けになるのなら。

~数日後、とあるフィールド~

ロゼッタ「あ、あのう。怪我は完治しましたが、一体どうして私は、
     こちらに連れて来られたのですか?おまけに…」



リンク「それは、俺もマリオに聞きたい」

クッパ「全くなのだ、忙しいというのに」

マリオ「まーまー。ごねるピーチをなんとかかんとか躱して、
    ようやくロゼッタを連れ出せたんだから。

    一応一命を取り止めたとはいえ、現状で一番…
    命を狙われる可能性があるのは、間違いなくロゼッタだ。
    力の弱さを完全に理解されてしまったからな。
  
    というわけで、ちょっと俺たち『3強』が、一夜漬けででも――
    ロゼッタを鍛えてあげた方がいいと考えたまでだ」

ロゼッタ「……ええっ!?あなた方を相手に、特訓、ですか!?
     私などではとても耐えきれませんよ!?」

マリオ「なに、心配するな。思いっきり手は抜くから。
    それに、3人のうちロゼッタの相手をするのは1人だけ、と決めておく。
    残り2人は、ロゼッタの戦術・身のこなしをじっくり観察して、
    あとでアドバイスする、というスタイルを取ろうと思う」

ロゼッタ「無茶ですよね!ね!」チラッ



リンク「…まあ、3強全員が時間を奪われるなら、優勝争いに不公平は無し、か。
    いいぜ、やってみよう」

クッパ「…やれやれ、なのだ。やるからには徹底的に、なのだ」

ロゼッタ「」

マリオ「判断がおそーい!バックステップが甘―い!」ドンッ

ロゼッタ「あいたっ!…あ、でもなんとか…耐えられる」ドンッ

マリオ「手加減はするって言っただろ?でも余所見はするなよ、
    うんざりする位の攻撃は繰り返すぞ、反撃してみろ!」ダッ

ロゼッタ「わわわっ…や、やってみますっ!」

マリオ「どうしたどうした、そんなんじゃあ
    キノコ王国の平和は任せられないぞー!」ズガガガ

ロゼッタ「そのような大役、任された覚え有りませんよ!?」





リンク「…………」メモメモ

クッパ「…………」メモメモ

リンク「当たり前のことを言わせてもらうけど、
    避ける実力も十分にないのに、剣に対して正面から突っ込むなよー!
    冗談抜きで真っ二つになるぞー!俺、みねうちは得意じゃないんだ」ブンッ

ロゼッタ「ひいいいいぃぃっ!手加減の文字はどこに!?」




クッパ「…………」メモメモ

マリオ「…………」メモメモ



クッパ「炎こそが最強!全てを焼き尽くせば解決なのだ!
    ロゼッタの実力だと、掠っただけで全身に火が回るかもしれんぞ!
    服だけ燃えて裸になるとかは気にしなくていい!体ごと燃え尽きるからな!」ゴオォ

ロゼッタ「きゃあああああああああ――――っ!!
     逃げるしかないじゃないですか――!!」タタタッ





マリオ「…………」メモメモ

リンク「…………」メモメモ





マリオ「これにて特訓、しゅーりょー!!いやあ、よく頑張ったな」



ロゼッタ「はぁ、はぁ、はぁ…………」チーン



マリオ「いやあ、寝そべってピクリとも動かない」

クッパ「全く、特訓と言えどやりすぎなのだ」

リンク「俺はマリオがピーチに天誅受けないか心配だぞー」

マリオ「それは考えない方針で」HAHAHA



ロゼッタ「…で、では。皆さん、お疲れさまでした。
     私は、戻ることに…致します」ヨロッ

リンク「あ、そのまえに、ロゼッタ。
    最後の保険として、俺からこいつを、大会期間中、貸しておくよ。
    マリオからしつこく頼まれたもんでね」



キラーン!




ロゼッタ「……これは、なんですか?
     とても美しい、腕輪ですね。吸い込まれそうな…」

リンク「『いにしえのシルバーリング』って言っていう、激レア防具でな。
    手首に装着しているだけで、あらゆるダメージを10分の1程度にしてくれる
    失われたはずの国宝級産物だ。ゼルダ姫に激怒されそうではあるけどな。
    しっかり固定できるから、肌身離さず持っておけ…というか装着しておけよ?」

ロゼッタ「じゅ、10分の1!?反則級ではないですか!
      最初からこれをくださいよ!?」スチャッ

リンク「装着したところで…突然の騙し討ちぃ!」ブンッ!



ガツンッ!!



ロゼッタ「きゃっ!?ああああ、あぶないじゃないですか!?酷すぎます!」ドサッ

リンク「今の剣戟、痛かった?結構本気出してたけど」

ロゼッタ「……………………痛く、ない」

リンク「よしよし、性能はバッチリだな」

ロゼッタ「あ、ありがとうございます!!」パアア

リンク「呼び止めて済まなかったな、じゃあ、今日はゆっくり休んでくれ」

ロゼッタ「本当に、お世話になりました!」タッ タッ タッ

マリオ「…………」



リンク「…………言われた通り、あのリングを渡したけど…さてと」



クッパ「…………それで」








リンク「俺たちのいる場所と…『ロゼッタたち3人が』いる場所、
     違うのはなんでだ?」

クッパ「ログに有った『FP(フィギュアプレイヤー)』って…なんだ?」

マリオ「  『Rosalina? 再チャレンジ数:0回(3Dワールド)』  は
     いくらなんでも言い逃れできないよなあ…やれやれ…
     抱き着くことでばれるとか、本人と同じく、墓穴は掘りやすいんだなあ…」

~1か月以上、前     『とある』フィールド~



ゼルダ「はああああああっ!!…ちぃっ、びくともしない!
    こう、強い力をぶつけることで空間に穴が開いたりしないのですか!?
    精神と何とかの部屋みたいに!」バコッ ズドドド・・・

ヒルダ「ゼ、ゼルダ姫。あまり暴れ回らないでください、
    体力を、体力を消耗してしまいます!!」アタフタ

ゼルダ「こうしているっ!間にもっ!
    私たちの『ニセモノ』が、外で悪事を働こうとしているのですよ!
    落ち着いていられるものですか!!」ドガガガ


・・
・・・

ゼルダ「…!?」

ロゼッタ(分身)「…ああ、ついやりすぎちゃいました」クク

崩れ落ちる、ロゼッタの体。――分身体が、本体を、何故!?

ゼルダ「……貴方!なんてことをするのですか!
    …さては分身体として不完全だったのね、生かしておけない。
    私の全力、受けてみなさいっ!
    ヒルダ姫、緊急事態です!迂闊に動いてはなりませんよ!」

ヒルダ「は、はい!」

ゼルダ「残りの分身のお二人さんも、協力してください!」

ゼルダ(分身)「わかりました!」バッ!

ヒルダ(分身)「ロゼッタを助けるのです!」バッ!

ロゼッタ(分身)「ハ、ハ、ハハハハ――」ブゥゥン

ゼルダ「何をしようとしても、無駄ですっ!!」ダダッ

ドゴッ……!!

ゼルダ(分身)「…そう、何をしても、無駄なのです」ニヤリ



まさかの、不意打ち。



ゼルダ「がっ――!?い、一体、なに、を」

ヒルダ(分身)「…くく、うまくいきました。今です!!」



ロゼッタ(分身)「…………空間隔離《エア・ロック》――――っ!!」パアアアア



ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・!!



ゼルダ「!?」

ヒルダ「な、なんですかこの――刺さるような空気!?」




そのとき、反逆した3人の分身体が、想いも寄らぬ行動に出た。



一目散に、フィールドと外とを繋ぐ出口に駆けていく。

つい一斉に飛び掛かってくるものと思い込み、

所詮は私が本気になれば十分張り合えると冷静に判断したつもりで身構えていた、

なにより倒れたままのロゼッタ本体を放置することも出来ず、反応が遅れた。



一瞬安堵しかけて…………
敵の意図を察して、顔面蒼白になった時には、時すでに、遅し。
バタン、と扉は閉められ――――





おぞましい暗黒の結界によって、扉は姿を失った。

・・・
・・

ゼルダ「これもそれもっ!ロゼッタ、貴方が無駄に空間魔法を使えるからっ!!
    どう落とし前を付けてくれるのですかっ!」クルッ



ロゼッタ「すいませんすいませんすいませーーん!!
     絶賛、誠心誠意、解呪に努めさせてもらっておりまーす!!」パアアアアア

チコ「ママを虐めるなー!頑張ってるんだぞー!!」フヨフヨ

チコ「そうだそうだー!!」フヨフヨ

チコ「ママの力になりたいっ!」フヨフヨ

ヒルダ「ロ、ロゼッタも…あんまり無理はしないでください…
    病み上がりですのに…」

ロゼッタ「おかげさまでといいますか、してやられたといいますか…
     分身体がいなくなった途端に体調不良はコロッと治ったんですよ!
     おかげで言い訳にできませーん!」パアアアアア

ゼルダ「だいたい、話を聞けば、分身体の魔法レベルは50で頭打ちなのでしょう!?
    ずっとレベルが高い本体なら、あっさり解呪できてしかるべきでしょうが!」

ロゼッタ「発動前なら、分身体の空間魔法をインターセプトする位、楽勝ですよ!
     でも、今回は既に発動しちゃってるんですよぉー!
     秩序を乱すのに比べて、秩序を正すのは恐ろしくコストがかかるんです!

     さすが私、空間庭園《スカイガーデン》の無効化までピンポイントで
     掛けちゃってくれてますし!!ああもう!!」パアアアアア

ゼルダ「…つまり、どういうことですか?分かりやすく話しなさい」

ロゼッタ「パソコンにパスワードを設定するとしますよね!?
     十分パソコンに詳しければ1分でできる行為ですよね!?

     じゃあ、悪戯で出鱈目に設定された100桁のパスワードを
     同じ達人に『ノーヒントで解いてみろ』って命令して、
     1時間で…いえ1日2日でできると思いますか!?

     初期化による強引解除も出来ないおまけ付きです!」パアアアアア

ゼルダ「……!!」サアッ

ロゼッタ「ここまで『解きにくさ特化』の結界を張られていると、
     正直どうしようもありません!試行錯誤するしか――!」パアアアアア

ヒルダ「……そ、そんな。どの程度、掛かるのですか?」



ロゼッタは一瞬息を飲んだ後、重苦しい声で…返す。





ロゼッタ「…単純計算で、ざっと1000年以上。
     下手をすると桁数がもっと増えるかもしれません」パアアアア





ヒルダ「」

ゼルダ「」

ロゼッタ「…あ、で、でもですね!『ヒントがあれば』ずっと早くなりますよっ!」



一瞬意識を持って行かれたが、ロゼッタの言葉に息を吹き返す。



ゼルダ「…ヒント?」

ロゼッタ「早い話が、私たちが閉じ込められていることに気付いたマリオ達が、
     この閉鎖された空間に多少なりとも干渉してくれればいいのです。
     それこそ、扉の入り口側を思い切り殴ってくれる…とかでも構いません。
     繋ぐべき先の空間の情報を、一気に入手することができます!

     大会が終われば間違いなく点検が行われるでしょうから、
     私としては最悪でも大会終了時には出られると踏んでいますよ!
     私の努力は割と無駄になりますがっ!」パアアアアア

ゼルダ「ホッ、よかった…ここで死ぬことになるだなんて御免ですよ…
    ……って、よくないですよ!
     大会期間中、分身体たちを野放しにするということではないですか!!!」

ロゼッタ「そうなんですよねぇ…………」パアアアア

ヒルダ「そ、そんなことよりも、大変です!!」バタバタ

ゼルダ「何ですか!!こんな時に!!
     ヒルダ姫も脱出の為に策を講じてください!」ギロッ



ヒルダ「それはそうなんです、けど!
    




     最長で3か月耐えなければならないとして…
     ライフラインがあるのは僥倖ですが、食料がありません!!」マッサオ

ゼルダ「あ」

ロゼッタ「あ」パアアアアア



私たちは、一体どうなってしまうのでしょうか――。

~3日後~

ヒルダ「…………」グッタリ

ゼルダ「…………」グッタリ

ヒルダ「…………」

ゼルダ「…………」

ヒルダ「…………おなかが、すきました」グゥゥ

ゼルダ「…………分かりきっていることを言わないでいただけますか?
    ……余計に空腹感が増すのですが」グゥゥ

ヒルダ「…………」チラッ



ロゼッタ「――――ああ、もうっ!空腹、空腹ですっ!
     昔の私なら、この位の食事抜き、全く問題なかったのに!?
     自分の体の変化が恨めしいですよ、後悔などありませんがっ!
     ………………はあああああっ!!!」パアアアア

ヒルダ「…………ロゼッタ、空元気で気合いを高めなくても…
    もう、解呪は断念して…体力温存に努めて…ください。
    助けが来る前に命を落としてしまいますよ」

ロゼッタ「大丈夫です、残機があるのでっ!」パアアアア

ゼルダ「…………ロゼッタ。もしかして…勘違いしていますか?
    餓死含めて、体調の都合で死亡した場合――
    残機があったとしても健康、満腹状態では復活しませんよ?」



ロゼッタ「」ピタッ



ヒルダ「…ど、どういうことですか、ゼルダ姫?」

ゼルダ「それが可能なら、不治の病に侵された人は片っ端から残機を与えたうえで
    死んでもらうことが流行りますね。…しかし、無理なことが分かっています。
    ピーチ姫いわく、残機復活は、あくまで体の『ガワ』を元通りにするだけです。
    もちろん、外傷ならば……治ってめでたしめでたしですが。

    今の私たちの場合、餓死からの復活を遂げたとして、
    体内エネルギーの枯渇による機能障害は確かに治りますが…
    機能障害をもたらした…根本の問題は解決されていません。
    復活したそばから、たいした猶予もなく…ふたたび機能障害を起こし始めます」

ヒルダ「…そ、それが延々と繰り返されるのですか…?」ゾッ

ゼルダ「ええ。延々と苦痛に苛まれることとなります。精神に異常をきたしますよ。
     よろしいのですか?ロゼッタ?」

ロゼッタ「よろしくないので休憩します」ザザッ

ゼルダ「そうですね、それが賢明だと思います」フッ

ヒルダ「ロゼッタ…貴方の空間魔法で、なんとかならないのですか?
    食べ物を出現させる、とか」

ロゼッタ「できなくはないですけど…」

ヒルダ「そうですよね、流石に無理難題ですよね…………
    って、えええええええ!?可能なのですか!?」

ロゼッタ「ちょっと、やってみますね。料理にリクエストはございますか?
     そこの机の上に出現させますから」

ヒルダ「え、え、えええ?……………………
    ………………………………ふわふわ卵のオムライスで」

ロゼッタ「オムライスですね!ふわふわかどうかは分かりませんが…それっ!」パアア



ポンッ!!



ヒルダ「…わああああああ!!ほ、本当に美味しそうなオムライスじゃないですかぁ!
    何故、早く教えてくれなかったのですか!!
    こ、こ、これは頂いても構わないですか!?お願い致します!」グゥゥ

ゼルダ「待ちなさいヒルダ姫!先に私が毒味をして差し上げますっ!」ズイッ

ヒルダ「ああっ!勝手に席に着くだなんて、最低ですよっ!
    ゼルダ姫はゼルダ姫で、ロゼッタに何か食べ物を出して貰えばいいではないですか!」

ゼルダ「ふふふ、世の中、弱肉強食なのですよっ!
    ヒルダ姫は改めてロゼッタに依頼しなさい!
    ああ、そうでしたロゼッタ、スプーンをおひとつ頂けますか?」

ヒルダ「どいてくださいっ!!」

ゼルダ「お断りしますっ!!」

ギャーギャー!



ロゼッタ「あのー、盛り上がっているところ、大変申し訳ないのですが…」

ゼルダ「ああ、スプーンは難しいのですか?
    …仕方が有りません、この際、はしたないですが…
    殿方には誰にも見られていないですし、手づかみで――っ!」サッ






ロゼッタ「それ、私の記憶をもとに構成した……ただの幻影(イリュージョン)ですよ?」






ゼルダ「」スカッ

ヒルダ「じゃあこれに何の意味が!?」

ロゼッタ「美味しそうで、お腹が満たされる…とか?」

ヒルダ「どう考えても余計にお腹がすきますよ!!」

ロゼッタ「結局のところ、空間を切り離されているので、
     私のスターピース倉庫を始めとして他のエリアにアクセスできないんですよ…」

ヒルダ「それを早く言ってください…
     あと、スターピース倉庫って一体なんですか…………」ガックリ

チコ「ぱくぱく」

チコ「もぐもぐ」

チコ「あんまりおいしくないけど、食べ物なら一杯あるのにー」

ヒルダ「……地面や壁を食べて凌げるのなら苦労しませんよ」



ゼルダ「…………」

ヒルダ「…………」

ロゼッタ「…………」



ゼルダ「…………はやく、リンク、来なさいよ…」グッタリ

ヒルダ「…………」グッタリ

ロゼッタ(……私の空間魔法で、木製のものを原子レベルまで分解して、
     組み換え直して炭水化物を作る…うん、流石に神の領域ですね、できません!
     どうシミュレートしてもエネルギー的に大損になりますし…)

ゼルダ「…………」

ヒルダ「…………」

ロゼッタ「…………」



ゼルダ「…………」

ヒルダ「…………」

ロゼッタ「…………」



・・・・・・



チコ「……………………あれ?今、何か、音がしなかった?」

ロゼッタ「気のせいじゃないですか?私たち以外、誰も――」




ガタンッ!



ゼルダ「…………確かに、あちらの部屋…仮眠室の方から聞こえましたね。
    初日にちょっと覗いたくらいで、利用はしませんでしたけど」

ヒルダ「更に扉をロックされて狭い部屋に閉じ込められてはたまらない…って
    無意識に思っていたみたいです。皆さんも同じですか?」

ロゼッタ「はい」

ゼルダ「ええ」



ヒルダ「…………何の音だと、思います?」

ロゼッタ「時間差で働くトラップを仕掛けられていた、とか」

ゼルダ「…あり得ますね。正直、今の私たちの状態では――
    スマブラでいうところの平均的な強さのファイター1人を仕掛けられた程度でも、
    まず…まともには、張り合えません」

ヒルダ「ど、どうするのですか!?」

ゼルダ「ヒルダ姫、声を落としなさい。ばれてしまいますよ。
    ……一か八か、扉の前で待機して、不意打ちを仕掛けましょう」ヒソヒソ

ロゼッタ「それを敵が察知して、中々現れずに膠着状態に入ったら…?」ヒソヒソ

ゼルダ「……そうなれば、疲労困憊のこちらが先に倒れてしまうのは自明の理。
    10分待機して動きが無ければ、逆にこちらから特攻する…という作戦で行きましょう。

    ファイターなら、何が何でも殲滅。初撃が運命の全てを左右します。

    爆発物、有毒物の類なら、速やかに翻して反対の部屋に駆け込む。
    ロゼッタ、可能ならば空間魔法で…扉の向こうに押し戻すなり、
    隔離するなり抑制するなりしてください。方法は問いません」

ロゼッタ「――――っ、わかりました。それで、問題は有りません。
     それではここからは無音で行動しましょう」

ヒルダ「…そん、な。わ、わたくし、まだ覚悟が…!」



心が痛みますが、泣き顔のヒルダ姫の口を、手で素早く押さえます。
まだしばらく、ひっくひっくと悲しみに暮れていましたが、30秒ほどして…
ようやく、震えも弱まり、落ち着いてくれました。

音を立てずに、3人で、扉の傍に近寄ります。
扉は、向こう側に開く、一般的な片開きタイプ。
不意打ちが扉に邪魔されることはありません。



幸い、この間に襲撃されずに済みました。…助かりました。



気配が、悠々と近づいてくるのがわかります。
小物がゴトンと落ちた音、とかなら杞憂で済んだのですが、
そうは問屋が卸さなかったようです。



気配が、扉のすぐ奥までやってきました。
ゼルダ姫とヒルダ姫に、アイコンタクト。理解したのか、すぐに頷きが返ってきます。
さあ、正念場が――。



がちゃり。
扉が、ギイイイと開いていき――

ゼルダ「はあああああ――――っ!!」キランッ!

ロゼッタ「やあぁ――――っ!!」パアアアアッ!

ヒルダ「て、てやぁ――――っ!!」ピカーッ!












デイジー「グッドモーニーング!呼ばれて飛び出てお邪魔しまゴフゥッ!?」グサーッ

ゼルダ「……あら?」

ロゼッタ「…えっ」

ヒルダ「……あ」



ありったけの魔法を食らい吹き飛んだのは……
まさかまさかの、デイジー姫だったのでした。

すったもんだして、落ち着きを取り戻して。
とりあえず、危機なんてものは、はなからなかったみたいです。
そして…ゼルダ姫が、頭を抱えています。



ゼルダ「変装して受付の眼を欺いて適当なフィールドに潜り込んだはいいものの、
     3徹した反動で――――3日間寝てた…ですって?正常ですか?」

デイジー「そーそー!私も驚いたよ、目が醒めてみたら!
      時計の日付表示が3日も進んでいるんだもん!」

ヒルダ「か、仮眠室はちらっと覗きましたけれど、
    デイジー姫の姿など見えませんでしたよ?」

デイジー「ははは、デイジーでいいって。よろしくね、ヒルダ。
      うーん…3日前はフラフラだったからよく覚えていないけど、
      確か…なるべくばれないようにって思考に従うままに、
      若干ホコリっぽいベッドの下で寝てたからなあ。
      改めて考えると、自分でも頭がおかしいとしか思えないね」

ヒルダ「え、えええ…………」アキレ

――拍子抜けしてしまいましたが、まずは。
――デイジー姫に、現状の厳しさを伝えねば、なりません。



ロゼッタ「実は、いま、私たちは…私の分身体たちの反逆によって、
     このフィールドに閉じ込められているのです。
     巻き込んでしまい、本当に申し訳ございません」

デイジー「え、ええ、えええええええ!?
     そんな大変なことになってるの!?ってか、分身体ってなに!?
     ロゼッタ、とうとう影分身を使えるようになったの!?」

ロゼッタ「実分身です」

デイジー「名前は変えたけど、実際の所は影分身だったりするんだよn」

ロゼッタ「実分身です」

デイジー「…あ、うん。わかった。わかったからそんなに睨まないで。
 
      うわ、あのおどろおどろしい結界がそうなのかー。
      それで、脱出するメドはあるの?も、もちろんあるよね?ねっ?
      私、スマブラ大会に参加したいってひたすら思った挙句に
      ここまで素っ頓狂なことをやってきたんだけれど」

ロゼッタ「今の所、大会終了まで出られそうにありません…
     重ね重ね、申し訳ございません…」

デイジー「そんなぁ!?せっかく苦労して苦労して潜りこんだのに!?」



うがーっと頭を抱えて天井に叫ぶデイジー姫。

ある意味呑気なデイジー姫を、ゼルダ姫とヒルダ姫が
何いってるんですかこの人は、という目で見やります。
…私は思っていませんよ。…多分。

ゼルダ「そんなことは今はいいでしょう!このままでは飢え死にしてしまいますよ!」

デイジー「…え?なんで?」

ゼルダ「本当に頭、大丈夫ですか!?このフィールドに、食料が一切ないからです!
    もう3日間も、食事を摂っていないのです…………よ…………!」グゥゥ





デイジー「私もスマブラ大会にそこまで詳しくないし、聞いただけの話なんだけど、
     フィールドのルールを『アイテム:おおい』にして
     食べ物を召喚し続けて、それを食べればいいんじゃないの?
     ちょっとアイテムスイッチを探してみるね」タタタッ





ゼルダ「えっ」

ロゼッタ「えっ」

ヒルダ「えっ」

チコ「……?」フヨフヨ

ゼルダ「…………」モグモグ

ヒルダ「…………」モグモグ

ロゼッタ「デイジー姫、本当に、本当に助かりました」モグモグ

デイジー「いいのいいの。というかゼルダ、アンタは気付きなさいと言いたい。
     普通に前回も出てたでしょ。頭、大丈夫ー?」ニヒヒ

ゼルダ「アイテムありのルールなんて知りません」ムスッ

デイジー「あー、まー、そうか。大会中は基本『アイテム:でない』だって話だからね、ごめんごめん。
      とりあえず、食べ物とマキシムトマトだけをひたすら出るように設定しておいたから。
      これで飢え死にすることはなくなるはずだよ」

ロゼッタ「何から何まで…ありがとうございます」ペコリ

ゼルダ「ま、まあ。礼は言っておきます。ありがとうございました」

ヒルダ「本当にありがとうございました、ふふ、美味しいです…!」パクッ

デイジー「あと、『アレ』も」ビッ

ロゼッタ「『アレ』……?」クルリ





激辛カレーライス×4「冷める前に食ってくれ」ドサッ





ロゼッタ「…あ、あれは遠慮したいのですが」

デイジー「まあまあ、そんなこと言わずにー!捨てるだなんて勿体ないよ!」アハハ





ロゼッタ「か ら あ い!!」ボオオオオオオオ

ゼルダ「きゃああああああ!!」ボオオオオオオ

ヒルダ「水、み、みず―――――!!」ボオオオオオ

デイジー「あはははは!」ボオオオオオ

――食後のコーヒーで一息、なんて気の利いたものはありませんが、
――とりあえず食べられるだけ食べて、小休憩。
――デイジー姫はのほほんと、他の皆は、皮一枚繋がったことを噛みしめて。



物思いに、耽る。
冷静になってきて、ようやく考えるべきことを思い出しました。

まず、デイジー姫には、事の顛末をしっかりと伝えます。
私がメインで話し、ゼルダ姫とヒルダ姫が時折、補足説明をする。
時に呆れ、時に驚きながら、彼女は耳を傾けてくれました。

デイジー「そ、そんなことになってたんだ…ロゼッタもついてないね…」

ゼルダ「ロゼッタは自業自得ではないですか。
     一番ついていないのは、巻き込まれた私とヒルダ姫なのですが」

ロゼッタ「うぐっ」



ヒルダ「…ゼルダ姫、大人げないですよ」

デイジー「ないわー。その言い方はないわー」

ゼルダ「…じょ、冗談です!」

ロゼッタ「いえ、間違いではないので…申し訳ございません」

デイジー「ときに、ロゼッタ。こうなっちゃった、そもそもの原因って
      推測が立ってたりするの?」

ロゼッタ「…分身体を作れば作るほど私の体調が顕著に悪くなったところからして、
     最初は空間魔法にだけ反応する呪いみたいなものを掛けられたと思いました。
     ですがそれだと、今の私が快調なことの説明が付きません。

     実は、解呪がてら、このあたりの空間を解析することができたのですが。
     ……ほんのわずかですが、淀んでいますね」

デイジー「淀んでる?」

ロゼッタ「簡単に言うと、『思念魔素』が薄く漂っているといいますか…」

ヒルダ「簡単ってなんでしょう」

デイジー「できればキノコ王国の言葉で教えてほしいなあ」

ゼルダ「ハイラル王国かロウラル王国の言葉でも全然かまいませんよ」

ロゼッタ「ええっと…ナノレベルの微細物でありながら、散布者の組み込んだ、
      簡単なプログラムに従って集合や離散、周囲への干渉を行う物の総称、ですね」

ゼルダ「っ!?」バッ

ヒルダ「っ!?」バッ

ロゼッタ「…別に、口を押さえたところで意味がないですよ?
     皮膚からでも余裕で取り込まれるサイズですし。

     それに、悪さをするならとっくに体がおかしくなっています。
     時間差で発動するような高度なプログラムは仕込めないので。
     というわけで、一般には…さして影響のない存在ですね」

デイジー「まあ、そんなことだろうと思ったよ。ロゼッタ落ち着いてたし」

ゼルダ「いつも思いますが、デイジーは暢気すぎますよ」

ヒルダ「…逆に言うと、ロゼッタには思いっきり干渉する代物だったのですね?」

ロゼッタ「そのよう、ですね。実分身を使っているうちに体中に纏わりつかれて、
     コンディションの著しい低下を招いたようです。気持ち悪いですね…。
     幸い…と言っていいのか分かりませんが、今は――
     用済みとなったからなのか、私の体には、皆さんと同じ程度の思念魔素しか
     残留していませんが」

デイジー「…よし。事が全て済んだら、空間もろとも――私たちの体、ロゼッタの魔法で浄化してほしいんだけど。
      無害と分かっていても気味が悪い」

ロゼッタ「は、はい。承りました」

ゼルダ「で、肝心の事件の犯人は分からない、ということでよろしいのですね?」

ロゼッタ「…はい。ある程度の空間魔法の使い手、ということと、
     膨大な量のFPを所有する者、ということくらいしかわかりません」

ゼルダ「膨大な量のFP?」

ロゼッタ「思念魔素って、陰で悪さをする上で非常に便利なのは確かですが、
     寿命が短くすぐ霧散してしまう、強力な威力を持たせられない、
     空間が大きくなるほど必要量も比例して多くなる…と
     デメリットも相当大きいのですよ。
   
     そんな代物を、おそらく――あちこちのフィールドにまき散らして
     獲物が掛かるのを待っていられる。
     FPを湯水のように使える術者でなければ、とてもできない芸当です」

ヒルダ「…そこまでして、一体何がしたかったのでしょうか」

ロゼッタ「…まず間違いなく、空間魔法に秀でた者を戦力として探していた、
      というところでしょう。それで、私の実力が眼鏡にかなったと」     

ヒルダ「さすがロゼッタです!」

ロゼッタ「ふっふっふ」

ゼルダ「調子に乗らないでくださいます?」バシッ

ロゼッタ「すいません!」ババッ






デイジー「…………犯人、わかったかもしれない」

――デイジー姫のその一言が、私たちを黙り込ませました。





ゼルダ「……犯人に、心当たりが?」



引き締まった顔のゼルダ姫に対して――デイジー姫は、一息おいて、話し始めます。



デイジー「ピーチが、言ってた。前回の大会で。おまけに私も会場で観戦してたし。



     『亜空の使者事件』っていう事件がキーになると思うな」

ロゼッタ「別空間に誘う者――『タブー』!?
      そんな存在が前回大会で――!」

ヒルダ「大変じゃないですか――!」

ゼルダ「まさか、そんなことが起こっていただなんて――!」

デイジー「いい加減にゼルダは反省しろと言いたい。
     アンタ、前回大会で何やってたねん」

ゼルダ「」



ロゼッタ「なるほど、そこまで大がかりなことができる敵なら、
     膨大な量のFPを持っている…というか他所から持ってこられることは
     十分に考えられますね。とりあえず、『黒』にしておきましょう――」



デイジー姫から頂いた貴重な情報をもとに、これまでを振り返って分析します。
敵側の描くシナリオが、おぼろげながら見えてきました。

ロゼッタ「では、私の仮説を披露させて頂きます。
     
     前回大会で大いに暴れようとしたものの、マリオ達によって倒されたタブー。
     倒し切ったと思いきや、潜伏状態で生き延びて、
     野望を捨て切れないからか、はたまた恨み、復讐心からか…
     大会会場で虎視眈々とチャンスを伺っていました。
     
     しかし、このまま単独で挑んでは勝ち目は薄いと判断。
     自分の能力を補強できる空間魔法の使い手を手駒にして
     攪乱させることを目論みました。

     無尽蔵のFPを糧に、着々と準備を進めます。
     大会が開かれず警備が薄いことが災いし、誰も思念魔素に気付きません」

デイジー「いやまあ、それに気づくのはロゼッタか――
      キノコ王国の誇る最新技術くらいだと思うけど。
      常人に気付けというのは酷っす」

ロゼッタ「そして大会直前、空間魔法を繰り出し続ける私に目を留めます。
     おまけにカンペキな分身体まで作れるとくれば、
     攪乱に使ってくれと言っているようなもの。
     いやぁ、我ながら気前のいいことをしてしまいましたね!
     敵に塩どころか兵糧と作戦ノートと金塊を送っていますね!

     あとは、頃合いを見計らって本体と入れ替わり、
     ついでにラッキーということでゼルダ姫やヒルダ姫もすり替えて。
     ゼルダ姫が強いことは分かっているため、下手に戦うよりは
     本体たちを隔離しておいてとっとと離脱した方が賢い、という判断をして。

     …もしも私が敵の立場だったら…そうですね。
     フィールドから出た後、何事もなかったかのように皆と合流しつつ、
     仕掛けを着々と施す一方で空間魔法を使った選手同士の仲違いを狙い、
     不信感が募りに募ったところで仕掛けの方が準備万端、
     一斉始動させて、してやったり…みたいなシナリオを描くと思います」

デイジー「えっと、ロゼッタが考えるってことは、コピー先の偽ロゼッタが
      考える可能性も高い作戦だってことでいいかな?」

ロゼッタ「実際には、私の思考回路とタブーの思考回路が合わさっていますから、
     より効果的な解が出ていることも考えられますが…」

デイジー「そっかぁ…中々、安心できる要素がないね…」

ゼルダ「状況を理解すればするほど、私達の偽者が間者として暗躍するなんて、と
    目の前が真っ暗になっていくのですが…」

ヒルダ「…………うう」

――沈み込む皆さん。ただ、沈ませっぱなしの私ではありません。
――振り払ってしまえるよう、ある提案をしてみます。

ロゼッタ「デイジー姫、お願いがあります。
 
  

     ――――私たちを、鍛えて頂けませんか」

デイジー「…………はい?」

突拍子もないことを言われたからか、目をぱちくりさせるデイジー姫。
でも、意図はあるのです。

ロゼッタ「いますぐに、脱出できない。大会が終わるまで、釘付け状態。
     …このままでは敵の言いなりです。あまりにも悔しいではありませんか。
     せめて――敵の裏をかいてやる、最大限の努力をするべきだと思います。
     そのうえで一つ、大きな、かなり大きな期待要素があります」

デイジー「え、なになに?何か希望を見つけたの!?」

ロゼッタ「ええ。私の力というより、思いっきり運によるものですが。
     とりあえず、タブーの知識量は置いておいて…
     分身体は、その他には、分身体を作った瞬間の私の知識しかありません」

デイジー「そりゃあ…そうでしょ?」

ロゼッタ「つまり、立てられる作戦も、そのときの私を基準としたものになります。
     その後に私が知った情報について、分身体は考慮することができません。
     そこを衝けば、敵の作戦の裏をかくことができるはずです」

デイジー「えっと、何かめぼしい新情報ってあったっけ?」

ヒルダ「…とりあえず、私達が十分生きられそうな環境が整ったというのはありますね。
    でも、どのみち脱出できないのでは敵への干渉のしようが…」

ゼルダ「…ああ、そういうことですか。一番のイレギュラーがありますね」

デイジー「イレギュラー?」



ゼルダ姫と二人して、同じところを見つめます。

…見つめられた「彼女」が、再び目をパチクリ。



ロゼッタ「デイジー姫の存在ですよ」

デイジー「……ほへ?私?」



私は大きく頷きます。まさに僥倖、運はまだ残っているようです。

もちろん、ゼルダ姫やヒルダ姫がこれからもたらしてくれる知識が、
敵の裏をかく要因になることも多少は考えられます。
ゼルダ姫やヒルダ姫の姿を象った分身体と言えど、知識まで彼女たちのものを
持っているわけではないので。所詮、知識ベースは私なのです。

ですが、分身体の私は、少なくとも――

「本体の私が、ゼルダ姫やヒルダ姫の知識を参考にするだろう」

という推測は、当然ながら立てているはずで、対策もしているはず。
つまり、あまり出し抜くことが期待できません。



その一方で、デイジー姫のことは、あの感じだと…
仮眠室でくぅくぅ寝ていることなど、まるで知らなかったことでしょう。
空間魔法探知に躍起になるあまり、通常の索敵ができなくなっているというのは
なんだかシュールです。…大助かりですけれどね。

言うなれば――デイジー姫を皮切りにした作戦は、裏をかき放題です。

デイジー「だからって、どうして私が鍛えることになるの?」

ロゼッタ「ではひとつお尋ねします。真剣に答えてください――」

デイジー「…………うん」ゴクリ

ロゼッタ「実は、ここから抜け出す裏口みたいなものをご存知だとか!」

デイジー「ふっふっふ、実はこう見えてフィールド設計の内部事情に詳しくて…
     って、なんでやねーん!」ビシィ

ロゼッタ「でしょう?」

……まあ、さすがにそこまでご都合主義とは思っていません。
冗談であることをさすがに理解しているのか、ゼルダ姫もヒルダ姫も、
とやかく言うことはありませんでした。

ロゼッタ「ですから、愚直に、単純明快に――
     デイジー姫には、私達のレベルアップの手助けをしていただけないかと。
     相手が想定するよりずっと早いペースで力を伸ばすことで、
     強引に結界を破る総合力、あるいはブレイクスルーとなる新技…
     それらを得ることに期待するのです」

デイジー「本当に地道だね…。うーーーん。
     …………でも、期待されているところ悪いけれど、
     この中でいうと私って…ゼルダとどっこいどっこいの実力しかないよ…?」



ヒルダ姫は、そうなんですか、と言いたげな顔。
ゼルダ姫も、うんうん、と頷いています。






…………そ、そんなゼルダ姫には、すこし耳障りな話を、しようとしているのですが…。
ええい、現状打開のためです!思い切りが大事です!






ロゼッタ「…………それって、本当に本当ですか?
     実際は、ゼルダ姫の数倍強かったりしませんか?」

ゼルダ「…は?」イラッ





デイジー「…え?いきなり何を藪から棒に。
     ロゼッタも知ってるでしょ、私、ピーチに負けまくってるじゃない。
     冗談はやめてよー」ケラケラ



ロゼッタ「以前、ピーチ姫に伺ったことがあるのですが…」

デイジー「え、何を……?」


・・
・・・

ピーチ「ふわぁ…今日も平和ね…平和が一番」

ロゼッタ「これも、ピーチ姫の日頃の努力の賜物ですよ」

ピーチ「ふふ、ありがと。まあ、一大事にはマリオ達が駆けつけてくれるし、
    なんだかんだ言ってクッパは協力的だし、それほど憂いがないってのは
    大きいと思うけれどね」

ロゼッタ「1人でこなす仕事量が半端ないことくらい、とっくに知っていますよ…。
     他の誰が代われるっていうんですか…」

ピーチ「あー、それはそうかもしれないわね、我ながら」

ロゼッタ「ちなみに、仮に今、クッパが本気でキノコ王国を侵略しに来たら
     キノコ王国としてはまずいことになるのですか?
     あんまり戦力関係を理解できていないのですが」

ピーチ「…王国のトップに、無邪気な顔して何て話題を振るのよ。
    そうねえ、王国内に戦力を潜伏されてからの不意打ちだとしたら、
    正直な所、王国が半壊してもおかしくないけれど。

    そんな卑怯なことは流石にしないだろうから、
    宣戦布告のうえで陣取って全面戦争するとして…
    結構な痛み分け、くらいの表現ね。まあ耐えられるとは思うわ」

ロゼッタ「仮に今、マリオが催眠術で操られるとかで――
      キノコ王国に反旗を翻した場合はどうでしょうか?」

ピーチ「え、なに?ロゼッタ、キノコ王国つぶしたいの?
    なんだったら牢屋に放り込んであげましょうか」ユラア

ロゼッタ「めめめ滅相もない!申し訳ございません!」

ピーチ「マリオが反逆、かあ。それはもう、大変なことになるわね。
    王国の弱点という弱点、知り尽くしてるし。

    なにより、マリオとルイージが引いた配管系、何万本あると思ってるのよ。
    その気になれば、全部を計画暴走させて、可燃ガス有毒ガスばら撒いて…
    王国木っ端微塵とかにでもできるんじゃないかしら…うわぁ」

ロゼッタ「うわぁ」

ロゼッタ「ま、まあ…そんなことあり得ませんし、他の方でそれほど強者などいませんし。
     キノコ王国も、ピーチ姫の御身も、至極安泰ということですね!」

ピーチ「目の前の貴方が不穏なIFを提示してくれていることを除けばね。
    …………あ、私の命については、そうでもないか」

ロゼッタ「…え、えええ?倒したつもりだけれども復活が恐ろしい敵が、
     まだまだいる、とかですか?ディメーンのときみたいに」

ピーチ「いいえ、当然ながら、今は普通に味方の人の話よ?」

ピーチ姫は、小さく笑いながら…





ピーチ「もしも――――

     デイジーに本気で憎み恨まれて、1対1の状況を見計らって襲われたら、
     私の命は1時間…いえ、10分も持たないと思うわ。間違いない、うん」



絶句する私に、ピーチ姫は笑い続けながら、こう続けました。

――もしかしてロゼッタ、私の方が一回りも二回りも…
――いえ、その感じだと五回りくらい強いって思い込んでた?
――本気を出したときのデイジー、おっそろしく強いわよ?

・・・
・・


ロゼッタ「……と、ピーチ姫が話されていたので。
     どういうわけか、そのあと急に『今の話は忘れてちょうだい』と
     あたふたされていましたが」

デイジー「…………ピーチめぇ」ボソッ

デイジー「…コホン。それ、ピーチがロゼッタを驚かせようと思って、
      テキトーにでっち上げたホラ話だよ、気付いてないの?
      私がそんなに強いわけないじゃーん、おっかしー」

ロゼッタ「神に誓って言えますか?」

デイジー「言えるともさ!」フフン





ロゼッタ「任天堂に誓って言えますか?」

デイジー「……………………いいいいいいいいえると、ともさ!」ダラダラ











ロゼッタ「嘘を付いてしまうと冒険ができなくなるかもしれませんよ?」ハクシン

デイジー「ロゼッタの鬼ぃぃぃぃ――――!!」

ゼルダ「」

ヒルダ「」

デイジー「…………いやいや、ロゼッタ、ここは落ち着こうじゃないか。
     私は、そうだね、本気を出すとちょっとは強くなるかもしれない、
     それは認めてあげようじゃないか。嘘を付いてごめんね?
     でもね、このチカラは厄介なことにね、すっごくリスクを伴うんですわ。
     いわゆる『軽くヤバイ』ってやつ?そうそう、それだよ。それなんだよ。
     とりあえず救助待ちができるこの状況で、行使するようなものじゃないっす。
     おとなしく救助を待ってようよ、ね?それが賢明、最適解だよ。
     もちろん、普通の範囲で特訓に参加するのは全然かまわないからさ?
     別に手を抜いているわけじゃないよ、総合的に判断してこう言ってるんだ。
     一時的に効果があっても、みんなすぐに後悔する羽目になるよ?
     というか私が後悔するので絶対使いたくないし使わない、おーけー?どぅーゆーあんだーすたん?
     ロゼッタはちょっとドジかもしれないけど、賢いからわかってくれるよね?
     ゼルダはハイラルって言う大国を統治する者として、冷静な判断できるよね?
     できないなら大人しく引退してリンクの尻を追っかけてるといいよ。
     ヒルダはいい勉強材料として、落ち着きの有難みを理解しなきゃ駄目だよ!
     いやあ、ロゼッタが変なこと言うもんだからすっかりお腹がすいちゃったよ。
     よし、もっと何か食べようか!よーし食い倒れるぞー!
     激辛カレーライス、一番多く食べた人が勝ちってことでどう?
     よーし燃えてきたぞー!」

ロゼッタ(溢れんばかりの凄まじい拒絶の意志を感じる)





怒涛の勢いで捲し立てるデイジー姫に気圧されて、この日はお開きとなりました。
…デイジー姫に気圧されて、食い倒れ大会をやってから。
仮眠室でみんな横になりましたが、唇がヒリヒリします…………。
それにしても……。

~翌日~

ガチャッ……

デイジー「おはよー!みんな、よく眠れた?
     昨日は、私の勝手な食い倒れ大会に巻き込んじゃってごめーん!
     さてと、朝日は特に見えないけど…今日も張り切って、脱出に向けて頑張ろう!」



ロゼッタ「――――」ヒソヒソ

ゼルダ「――――」ヒソヒソ

ヒルダ「――――」ヒソヒソ



デイジー「……3人して小声で、私をのけ者にして何話してるの?」

ロゼッタ「…………あ、いえ、なんでもありません!おかまいなくおかまいなく!
     さあ朝食としましょうか!」タタタッ

ゼルダ「ほぼお腹は空いていないのですけれどもね…デイジーは気にしないでください」

ヒルダ「そ、そうです。つまらない話をしていただけですから」

デイジー「…ふーん?」ハテ

ゼルダ「ハンバーガーにピザにローストチキンにドーナツに……
     正直、油がきつすぎるラインナップですね…ジャンクフードが多い…」

デイジー「パーティっぽくて私は結構好きだけどね、こういうの。
     パーティといえば、マリオパーティでよく見かけるかな、うん。
     確かに飽きやすそうではある」

ヒルダ「体に悪そう……ランダムで出現するに任せているので
    仕方がないのですが……冷蔵庫もないことですし、食べてしまいますか…」

ロゼッタ(あ、でも最近の私としてはカロリーの心配は全くしなくなりましたね)

ロゼッタ「とりあえず…マキシムトマトを使ってトマトジュースを作ってみました。
     少しはサッパリして口直しとなればよいのですが」

デイジー「お、気が利くじゃーん!ありがとー!
     あとは果物がいくつか湧いてくれると、なおありがたいんだけどね。
 
     それでは席について…いただきまーす!
     さっそく、そのトマトジュースを頂くね。…牛乳ビン?まあ、いいか」サッ

ロゼッタ「ところで、デイジー姫……」

デイジー「んー?」ゴクゴク







~ケース1 単刀直入に頼み込んでみよう!~

ロゼッタ「昨日話に出た『本気のチカラ』、私達に披露してくださいっ!」

デイジー「ぶふぉっ」ブハッ



ゼルダ「神回避っ!!」ズサーッ!!

ヒルダ「きゃああああああっ!?トマトジュースがぁ――っ!!
    私になすり付けておいて神回避だなんて言わないでください――っ!!」

デイジー「……ごほごほっ」

ロゼッタ「…………」キラキラ

ゼルダ「…………」

ヒルダ「体中が真っ赤なんですけど。洗いたいんですけど」ポタポタ

デイジー「いやいや、ウチ断るって言うたやん」

ロゼッタ「色々と事情はあるのでしょうが、そこをなんとか!
     私達を助けると思って!」

デイジー「ぜ っ た い 嫌!」

ゼルダ「まあ、私を遥かに超す力というのはハッタリでしょうがね。
    そんな力、デイジーにあるわけがない」

デイジー「言い方がなんか癪だけど、ゼルダの言う通りだよ。
     大したこともないし、期待するだけ無駄、無駄。
     諦め給へ、ロゼッタくん」

ロゼッタ「ゼルダ姫はどちらの味方なのですか!?」

~ケース2 論破してみよう!~

ロゼッタ「私、思うんです」

デイジー「何を?」

ロゼッタ「何だかんだ拒絶しながらも、デイジー姫は…私達が空想妄想するしかないチカラについて、
     リスクだとか使用条件だとかを少しずつ説明してくれていますよね?
     本当に使う気がないなら、一切合財無視しておけばいいだけというのに。

     これは、あれですよ。深層心理で、自分自身が持てあますチカラとやらについて、
     周囲に理解してほしい、受け入れてほしいという想いがあって、
     自分を言いくるめてみなさい、という立場を取って、
     私達に試練という名のチャンスを与えてくれているのですよ。
     合ってます?合ってますよね!

     さあ、デイジー姫のチカラ、私達は忌み嫌ったりなどしません。
     すべて受け入れますから、思い切って使って見せてください!」ドーン!
     


デイジー「妄想乙」ハッ!

ロゼッタ「鼻で笑われました!?」

ヒルダ(手強いですね)

ゼルダ(というより、ロゼッタの演技が微妙過ぎて…
デイジーにクリティカルヒットしないというのも大きくないですか?)

~ケース3 罰ゲーム化してみよう!~

デイジー「…その、牛乳ビンに入った…棒?は何なのかな?」

ロゼッタ「あ、はい!キノコ王国で余興として流行っているという、
     『王様げーむ』というものをやってみたいなと思いまして!
     この面子だと『女王様ゲーム』に改名した方がいいかも知れませんが、
     野暮なツッコミは無しということでお願いします!」

ゼルダ「わあ、面白そうですねー」

ヒルダ「さっそく4人でやってみましょうー」

デイジー「…………」



4人「「「「王様だーれだ!!」」」」スッ



デイジー「…の前に、空間魔法で棒のすり替えくらい楽勝と思われるロゼッタと、
     棒の交換を要求しまーす。確認してないからいいよね?異論は認めない」ガシィッ!

ロゼッタ「」

ゼルダ「あ」

ヒルダ「あ」

デイジー「はーい、王様、わたしー!」パーン

ロゼッタ「そ、そ、それで、デイジー姫。どんな命令を出しますか?
      ちょ、直接名前で指定しての命令は駄目ですよ?
      全員が対象になってしまったり、特定の人を狙えるような命令の仕方も駄目ですよ!」ダラダラ

デイジー「そんなのはいいから、私にチカラの行使を迫るような命令は今後一切禁止ね」

ロゼッタ「な、なんのことでしょう?ははは…」

デイジー「……あれ、引き下がってくれないのー?別の命令に変えろって?」

ゼルダ「ま、まあ、こじつけでもなんでもいいからなりふり構わず、という状況なので…」

ヒルダ「身も蓋もありませんけれどね、ふぅ…」

デイジー「…………………………よーし、じゃあ。命令を実行する番号はすぐ後に発表するとして。
      先に、罰ゲームの内容から宣言しちゃうぞー。マジでやらせるからねー。

      私がこの命令を言い終わった瞬間から、フィールド外に無事脱出して、
      タブーを倒し切るその瞬間まで、周囲の人たちになんと言われようとも、
      ガン見されようと写真を撮られようと、下着含めた一切の衣服を身に付けずに行動するk」

ロゼッタ「さあ特訓の続きに戻りましょうかぁ!!!」ダダダッ

ゼルダ「全くですね!!急ぎましょう!!」ダダダダッ

ヒルダ「こんなことをしている暇ではなかったですねっ!」ダダッ  

デイジー「…………やれやれ」

~ケース4 脅してみよう!~

スッ…。

ロゼッタ「…………こうなったら、私も、賭けに出ます」

デイジー「な、なにを。危ないよ、ナイフなんて首に当てて!」

ロゼッタ「チカラを使ってくれなければ…もはや光明を見出せません。
     思い直せば、私が原因で皆を苦しめてばかり。
     私、状況に…自分自身に、絶望しました。この命、絶ってしまおうと思います。
     デイジー姫、これまで色々と…お世話に…なりました」

デイジー「…………」

ロゼッタ「…………さあ」ゴクリ

デイジー「いや、『さあ』じゃないよ。ちょっとは驚いたけど…冷静になったらさ、
      そんな勝手な暴挙に出られてもロゼッタのことを見損なうだけなんだけど」

ロゼッタ「えっ」

デイジー「というよりですね。今更、料理用のナイフごときで致命傷を受けるとも思えないし、
     なにより万が一の際は残機で復活するじゃないですか」

ロゼッタ「それもそうでした」

デイジー「…ほんと、ロゼッタはドジだなあ。頭に血がのぼってきたよ」ピキピキ

ロゼッタ「ごめんなさいごめんなさい」ガクガクブルブル






ズドドドドッ…………。ズガガガガ――――ッ!



デイジー「ゼルダ、さっきの攻撃、いまいち連結が上手くいってないっぽいよ。
     着地硬直の解除も甘い。ゼルダならもうちょっと改善できるはずだから」モグモグ

ゼルダ「ありがとうございます……」イラッ

デイジー「どういたしましてー」モグモグ



デイジー「ヒルダぁ、相手の攻撃に怯むなとは言わないけど、目線を逸らしたまま相手と対峙するのだけはやめた方がいいなあ。
      思い切り、回避位置を探し回ってるのがばれるよ。
      あと、隙あらば虚を突いて突撃する癖があるみたいだけれど、ヒルダの身体能力だと…ぶっちゃけ隙になってない。
      片手間で対処されちゃう。むしろ、無謀さを露わにして斬って捨てられるだけだよ…味方の動きを束縛させる最悪なパターンだ」

ヒルダ「わ、わかっては、いるのですが…申し訳ございません」

デイジー「ま、今は深く考えなくていいよー。じきに理解できるようになるさー」モグモグ

デイジー「ロゼッタは…魔法は素晴らしい、はずなんだけど。まだまだ活かし切れてない感がある。
      そもそも、何より、発動が遅すぎっ!もっともっとフレーム数を減らさなきゃ!」

ロゼッタ「は、はい!」スタッ

デイジー「せっかくのテレポーテーションもさあ。事前に溜めが必要だなんて、
      見切られやすいことこの上ないよ、もったいない。
      専門外の私が首を突っ込んでいいのかは分からない所だけど」

ロゼッタ「対処を間に合わせないくらい…もっと、発動を早く、ですね。参考になります」

デイジー「それにしても、ロゼッタがここまで基礎体力が上昇しているのは驚いたー。
     その勢いで、レベル上げていこう!」ムシャムシャ

ゼルダ「ところで、デイジー。いい加減、口先ばかりで、結局私任せの特訓とするのは、辞めて頂けませんか?
    一人だけ呑気に物見遊山気分で料理を堪能しながら、というのはどうかと思いますが?」

デイジー「……だって、教え方、ゼルダの方が上手だもん。今更私が直接指導するまでもない気がするしー。
     それに正直、今日はロゼッタの陰謀を掻い潜るので疲れちゃった。
     …うげ、そんなに睨まないでよ。ま、明日からはまた考えるよ」ヒラヒラ

ロゼッタ「…でも、のほほんと観戦しているように見えて、かなり的確に問題点を洗い出してくれているような」

デイジー「経験値は割とあるからねっ」ドヤァ

ゼルダ「どうだか…………」

デイジー「…どうしようロゼッタ、ゼルダちゃんが反抗期だ」

ヒルダ「あはは…」

時を経るごとにデイジー姫とゼルダ姫との軋轢を生みながら、
特訓は続いて行きます。


デイジー姫を精神的に疲労させた私達――というより私――が悪いのです。
一体、なにをしているのでしょうか、私は…!


私の気持ちは、徐々に、徐々に、果てしなく沈んでいきました。

~夜~



ロゼッタ「…デイジー姫」

デイジー「どうしたの、改まって」

ロゼッタ「本日は色々と…ご迷惑をお掛けして、申し訳ございませんでした」ペコリ

デイジー「あー、そのこと?いいよいいよ、気にしてない気にしてない。
     変にほのめかした私も悪かったよ。

     これでロゼッタの無茶ぶりな作戦は全て攻撃終了、
     ひゃっひゃっひゃっひゃ、やったー!私の勝ちだー!」

ロゼッタ「その、ゼルダ姫とも仲直り…していただければ、と」

デイジー「そんなに悲観的な顔をしないでって。
     そりゃ、ちょっとはロゼッタやゼルダにムッときたけどさ。
     …わかった、適当に下手に出ていればゼルダの気も収まるよ。
     あと…明日からは、やっぱり私もちょっくら直接指導することで
     納得してくれるでしょ」

ロゼッタ「…………はい……………………」ウツムキ

デイジー「ロゼッタの行動は時として調子っぱずれな音を奏でるけど、
     それはそれでロゼッタの個性だし。何も悪いことじゃないよ。
     今回ヘマをしたと思ったのなら、次に挽回すればいいんだし」



ロゼッタ「……………………」

デイジー「…………ひょ?ロゼッタ?」








ロゼッタ「――――――――――――――――――――――――
     ずみまぜん、でじだあ゙ぁぁぁぁぁぁぁ―――――――」ポロポロ

デイジー「」

デイジー「」

デイジー「……いやいや!いやいやいやいや、待って待って!!」ナニゴト!?

ロゼッタ「あああああああああぁぁぁぁ――――――――――――」ポロポロポロポロ

余りの申し訳のなさに、不甲斐なさに、うずくまって。
大粒の涙が、次から次へと溢れ出てきます。

ゼルダ「……っ!なるほど!ロゼッタのバトルフェイズは、まだ終了していない!」ハッ!?

ヒルダ「何か知っているのですか、ゼルダ姫!」クルッ

ゼルダ「にっちもさっちもいかなくなったときの最終手段……
     速攻魔法発動!『泣 き 落 と し』っ!」

ヒルダ「な、泣き落とし!?」

ゼルダ「プライドを全てかなぐり捨てて、効果発動!
    これは相手の妥協が出るまで、何時間でも情に訴えて、
    理屈や道理による拒絶を選択肢からデリートするモード……っ!

    そしてその時間の分だけ、最大FP1500以下のファイターは――
    精神的に追加攻撃できるっ!」

ヒルダ「最大FP1500以下…?ハッ!?」



    ゼルダ:元々FPが高いうえにトライフォースの加護のおかげで最大FP+3000
    ヒルダ:元々のFPは高くないがトライフォースの加護のおかげで最大FP +3000
    ロゼッタ:大会7日前時点で最大FP896



ヒルダ「ロゼッタったら、そこまで考えて…
    …って、違いますよね、絶対!?どう考えてもこじつけではないですか!?
    何か悪い物でも食べましたかゼルダ姫!?」

ゼルダ「さあ、ロゼッタが仕掛けますよ!
    まず1時間目!涙をドロー!魔法戦士ロゼッタ、追加攻撃っ!!」ビシッ!

ヒルダ「ゼルダ姫!?正常な思考回路の貴方に戻ってきてください!
    幽閉生活のせいで少しおかしくなっているのですか!?」ユサユサ



デイジー(外野の喧しいやりとりも、丸聴こえ、なんだけど)チラッ



ロゼッタ「うわああああああああああああ――――――――」ポロポロ



デイジー(……………………これ、作戦とかじゃなくて
     正真正銘のマジ泣きだあああああああぁぁぁぁ!?)

チコ「ママを泣かせるなんて、酷いっ!」

チコ「そうだそうだっ!」

デイジー「ちょっとだまらっしゃい!!」

~2時間後~

ロゼッタ「――――――――っ、えぐっ、えぐっ」グズグズ

デイジー「いい加減泣き止んでくださいなロゼッタさんや!
     女性の涙は女性には効果はいまひとつ、これ基本!
     おまけに私の10倍以上の年齢を重ねてて、そんなにガチで泣いて…
     恥ずかしくないの!?恥ずかしいよね!?だからさっさと泣き止んで!?」

ロゼッタ「年齢の話をしないでくださあああい!!
      そうですよ、私はダメダメな人間なのですよぉ―――――!!!」ポロポロ

ヒルダ「あ、号泣の勢いが5割増しになりました」

デイジー「」

デイジー「」

ゼルダ(…割と効いている感じがありますね)

ゼルダ「ところで私とヒルダ姫はそろそろ就寝しますね」スタスタ

ヒルダ「えっと、えっと、おやすみなさい」スタスタ

デイジー「ちょ」

~4時間後~

ゼルダ「ZZZ・・・」

ヒルダ「ZZZ・・・」



デイジー「…いい子いい子、だからお願いだからいい加減…
     泣き止んでほしいなあ、日付変わっちゃったんだけど」ナデナデ

ロゼッタ「わ、わだじ、だぢが。……わだ、じが。
     もっど、づよぐで、がじごがっだら。
     …ごんな、ごどに、ならながっだ、のに」

デイジー「いや、別にロゼッタ達の強さや知能に不満があるから使わないとかじゃ…」

ロゼッタ「ぐずっ……おおいに、ありまず、よお!」バンッ

デイジー「どうして、そう思うのさ。一回、涙拭いて落ち着いて、話して、みてよ…」



ロゼッタ「……………………」フキフキ

ロゼッタ「…………」スゥー

ロゼッタ「だ、だって。デイジー姫に、何があったのかは、知り得ませんが。
      私に、話すには、ま、まだ――信頼が足らないって、ことでしょう?」

デイジー「そんなことないよ!ロゼッタも、ゼルダも、ヒルダも!信頼してるよ!
      いきなり何を言ってくれちゃってるのさ!」

ロゼッタ「――で、も。ピーチ姫は、そのチカラについて、
     目にして、その強さも、もろさも、理解している、んですよね?」

デイジー「うっ…」

ロゼッタ「なのに、だというのに――!
     私は、ピーチ姫と違って、受け止めることができない…と。
     誤って理解してしまう…と、デイジー姫に思われて、気遣われているから、
     今の、今まで、教えてもらえずに、いる。

     そん、な、デイジー姫の信頼を勝ち取れていない自分が、悔しく、て――!」ポロポロ

デイジー「違う、違うからっ!!ピーチが私のチカラについて詳しいのは、
      あくまで成り行き上仕方なかったの!私の方から教えたりなんかしてない!
      ロゼッタにだけ、気に食わないから、信じてないから話さない、なんてこと、
      絶対にありえない!!」

ロゼッタ「私は、ピーチ姫に比べればずっと弱くて、泣き虫で……!
     何をするにも、自分だけでは解決できずに、むしろ問題ばかり起こして……っ!
     自分を責めて反省しているようで、実はそれが一番楽であることも薄々と気付いていて、
     ますます悲しくなっていって…っ!」

デイジー「ちょっとは聴く耳持ってくれないかなあ…!
      ――――――――――――――――――――――――」












デイジー(あ、れ。



      この感覚…このロゼッタの振る舞い、どこかで…









       いつ、だった、だろう…………?)


・・
・・・

デイジー「お父様、聞いて聞いて!私、今日も、城下の子供たちと沢山遊んだよ!
  生意気に駆けっこ勝負を挑んできたから、ぶっちぎりの返り討ちにしてやったわ!
  流石に涙目になってて可哀想と思ったから、肉まんの一つでも奢ってあげたら、
  あっさり元気を取り戻してくれてさ。子供って単純だよねー」

国王「おお、そうかそうか、デイジーは元気で偉いなあ。
   でも、遊ぶのもいいけど、家庭教師さんとの約束を放り出したのは
   やっちゃいけないことだったって気付いてるかー?」ナデナデ

デイジー「ぎくっ。……ちょ、ちょっと悪いことしたかなーって。
     でも、あの人、少し間違うだけですぐに怒るしさ。
     勉強中は私語は禁止―、とか居眠りしないー、とかうるさいし。
     だいいち、経済学とか帝王学とか、面白くないしつまんないよ」

国王「…魔法や体術の修業の方は?」

デイジー「…………てへ」コツン

国王「…はぁ。デイジーも、もう二十歳を過ぎてるだろう?
   いつまでも子供っぽい行動じゃ許されないぞ?
   そんなことを言っていると、将来、立派な女王になれないぞ?
   学問に王道なし、だ。

   かのキノコ王国のピーチ姫は、最近即位したばかりだが、
   それはそれは有能な傑物で、どんな難題もたちどころに解決してしまうそうだ。
   デイジーも、そんな人に少しでも近づきたいだろう?」

デイジー「い、いやね?こう、城下を巡っている間に、
     若者同士の喧嘩を取り押さえたり、迷子を案内してあげたり、
     治安向上に結構貢献してるよ?王国民の立場で物事を見るって大事だよ、きっと。
     最近は、知識を深めるために各国を行脚してみたいなーとも思い始めてるし。
     あ、そのキノコ王国ってところにも行ってみたい!ぜひ!」

国王「稽古事から解放されて、旅行して美味しい物を食べたり観光したりしたい、
    の間違いだろう?懲りないな」

デイジー「…………てへ」コツン

国王「二度目は禁止。……はあ、とにかくすぐに、家庭教師さんに十分謝ってきなさい」

デイジー「かしこまりましたっ!」

大臣「王よ、いくら愛娘といえど、齢21にもなって、立場を理解しない愚鈍な振る舞い、
   いい加減に本気で矯正してやらねば…サラサ・ランドの将来が危ういですぞ?」アキレ

大臣「全くですな、もはや手遅れの可能性もありますが…
   これは、夜逃げの準備をしておいた方がよいかもしれません」タメイキ

国王「うむ、皆の言い分も至極もっともだ。…だがまあ、
   デイジーはこの明るさが最強の持ち味だからな!
   その分、私と妻がしゃかりき働いて見せるから大目に見てやってくれ」ドーン!

大臣「では、王が退位された暁には…私、お暇を頂きますね」

大臣「あ、私も」

大臣「俺も」

国王「えっ あの それはちょっと困るなあ、我慢してくれないか?
    デイジーも悪い子じゃないんだよ、うん。お転婆なだけで」アセリ

大臣「まあ、元気のないデイジー姫が爆誕したらそれはそれで気持ち悪いな」ヒソヒソ

大臣「言えてる言えてる」ヒソヒソ

デイジー「大臣さんたちー、聞こえてるよー。というわけで、謝罪しに行ってきまーす。
      のびのびと成長出来て、私はサラサ・ランド、大好きだよぉー!じゃあねー!」タタタッ

国王「うむ、そうしてきなさい」ニッコニコ





大臣「いや、のびのび過ぎだろ。親バカここに極まれりだな」

大臣「全くだ…これでなんとかなっているのが不思議でならん。
    それだけ王が有能ということになるが…本気で次代が心配だ」

大臣「まあ、侵略されたことが一切なければ、こんな王国でもやっていけるってことだろ」

国王「こんな王国で悪かったなー、はっはっは!」

大臣「しょうがないですね」

大臣「まったく、ふふ…」

・・・
・・

デイジー「―――――――っ」ギリッ



デイジー(状況は全然違う、はずなのに。
     昔の私と、今のロゼッタが、重なって見える)グサッ

デイジー(…………吐き気が、する)






ロゼッタ「私にできることなら、なんでも、しますから。
     何をすれば、デイジー姫の、信頼を、勝ち取ることが、できますかー!」グズッ





デイジー「――――え」





――――嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だっ!嫌だっ!!
――――こんな自分、要らないっ!何にも守れないなら、死んだ方が万倍まし!
――――いなくなってしまった方が、いいっ!!

――――だから…マリオッ!私の、一生のお願いっ!
――――私に力を。全てを、一切合財を…己でねじ伏せてしまえる、力をちょうだい!
――――それさえあれば、私はどうなってもいい!なんだってする!
――――体を慰み物にされたって、悪魔に魂売ったって構わないっ!!




デイジー「――――っ!!」ハッ!



――――私は…ロゼッタをみて、何を想う?
――――もしロゼッタの立場だったら…自分の無力さに苛まれてたら…
――――それをヒラヒラ手を振りつつ「また今度」と受け流されたら…どんなに絶望する?



デイジー「わ、たし、は」

――――なんて、酷いことを、していたんだろう。

ロゼッタ「くー」スヤァ

ロゼッタ「……うーん。あら?もしかして…泣いて泣いて…そのまま寝ちゃいました、か…?
     時刻は…ああっ!もう昼過ぎ!?すっかり寝坊ですっ!」ガバッ!



デイジー「…………」ズーン

ゼルダ「…………」

ヒルダ「…………」



ロゼッタ「…あのー。これは一体、どういう状況ですか?」

ゼルダ「…ああロゼッタ、ようやく目が醒めましたか。お寝坊さんですね。
     私とヒルダ姫が起きてきたときから、あの調子です。
     時折、聞き取れないくらいの小声でぶつぶつ呟きながら、
     呼びかけにも碌に応じず突っ伏したままの状態で」

ヒルダ「ロゼッタ、あのあと一体…何があったのですか?」

ロゼッタ「何があった、と言われましても。 私がその…無様に泣いて泣いて泣き続けただけで、
     特に何か妥協を得られたわけでは…むしろ、重ねてデイジー姫に無礼を働いたということで
     謝ることが増えたと言いますか…」

ヒルダ「…ロゼッタ、お疲れ様です!」ビシッ

デイジー姫は、うっすら眼を開けて、無表情のまま、焦点の定まらない視線を…
ただ前方へ投げやっています。

ゼルダ「きっと、ロゼッタの渾身の泣き落としが効いたのですよ。さすがですね」ヒソヒソ

ロゼッタ「何がさすがなのか気になる所ではありますが…本当にそうなのでしょうか」ヒソヒソ

ヒルダ「もうひと押しと言うことですか?ロゼッタ、頑張ってください!」ヒソヒソ

ロゼッタ「わ、私が最後まで押し切るんですか…?
     お二方の助太刀も欲しかったりするのですが」



ゼルダ「私とヒルダ姫では追加攻撃出来ないので駄目です」

ヒルダ「駄目だそうです」

ロゼッタ「何の話ですか!?」

デイジー「……………………アンタたち、聞こえてるよー」



ロゼッタ「!!」

ゼルダ「あら」

デイジー「……ああ、別に心配しなくていいよ。……参った、降参。
      私のチカラ、使ってあげても、いい、よ」

ロゼッタ「ええっ、どういう風の吹き回しですか?」

デイジー「まあ、細かいことはいいじゃん。

     ただねぇ、そこは踏ん切り付いたうえで、チカラを使うことを既定路線にして、
     100通りほどシミュレーションしてみたんだけど。

     どう転んでも、この事件の全てが片付いた後に…
     私、3人から絶縁求められる結末しか導けなくて。
     ほとほと困ってたところなんだよ、はぁ」トオイメ

ロゼッタ「私たちが…」

ゼルダ「絶縁を…」

ヒルダ「迫る…?どういうことですか…?」

ありえません。そんなこと。
無理を言ってチカラを使ってもらうことになったというのに。

デイジー姫は、やや乱暴に頭を掻きむしってから、諦めの心持から言葉を紡ぎます。
笑って見せていますが、生気が欠けていて、あまり見ていられません。

デイジー「私って、チカラを使っているときの記憶、結構あやふやなんだよね…。
     無意識に忘れようとしているのかな?サラサ・ランドで頻繁に使う割に。
     毎度、気が付いたら全てが片付いてる…って認識が合ってる、か」

ロゼッタ「…あっ!もしかして、サラサ・ランドに戻るたび、
      溜まりに溜まっていた仕事を…その能力を使って超速で片づけていたんですか!?
      それで政務がなんとか持ちこたえている、と」

デイジー「…………妙な所で勘が冴えてるね、ロゼッタ。その通りだよ。
     チカラを使うと、基礎能力も知性も跳ね上がる、からね…」

そんな都合のいいことが起きるなんて、とでも思ったのか。
ゼルダ姫が息を飲みます。

ゼルダ「…そんなに万能な力なら、どう考えてもさっさと行使すべきでしたでしょうに。
     決まりですね、さあ、使って見せてください。フィールドに向かいましょう」



そう、一件落着とばかりに席を立つゼルダ姫。
デイジー姫も、つられてゆっくりと立ち上がり…あら?

向かおうとする先が、フィールドではありません。






デイジー「…ごめん。今日はちょっと準備があるから、『明日』になる」テク テク





ゼルダ「はい?まだ昼を少し回った程度の時間帯ですよ?
     それとも、まだ決意が定まっていないので――」

そのとき。
これまで…見たこともないような険しい剣幕で、
デイジー姫が怒号をあげたのです。



デイジー「ほんとに準備があるのっ!!馬鹿にしないでっ!
      それと悪いけど、明日になるまで、一番奥の部屋…貸切るから!
      絶対に、入ってこないでね!!」キッ



さしものゼルダ姫も、あまりの剣幕に、一喝に、思いっきり怯みます。
鼻息荒く立ち去っていくデイジー姫を、止めることすらできません。
ヒルダ姫は、すっかり縮こまってしまいました。

ロゼッタ「ま、まあ。明日には披露して頂けるということですし、いいじゃないですか。
      それではゼルダ姫、本日も…よろしくお願い致します!」タッ タッ タッ

ゼルダ「……これで、大した底上げにならなかったら承知しませんからね、デイジー」イライラ



少し進展した、と思いつつ。今日も今日とて、ゼルダ姫に鍛えてもらうことにしました。
明日が楽しみです。















デイジー姫は、夕食の時間になっても、一切姿を現そうとはしませんでした。




ガツン。ガツン。ガツン。ガツン。



デイジー「……………………………………………………
     嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない
     嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない
     嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない
     嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない
     嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない
     嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない
     嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない
     嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない
     嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない
     嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない
     嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない
     嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない……」ガンッ ガンッ



ガンッ ガンッ ガンッ ガンッ。
壁に、床に、やり切れず頭突きの音が響き渡る。
凹むばかりは、壁の方。

デイジー「……………………………………………………
     嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない
     嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない
     嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない
     嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない
     嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない
     嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない
     嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない
     嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない
     嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない
     嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない
     嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない
     嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない嫌われたくない……」ガンッ ガンッ

デイジー「…………」ピタッ

デイジー「……………………無駄なあがき、かあ」グズッ

デイジー「よし、気持ち、切り替えるよ。私がやるべきことを、するんだ。
     これで、私達が、少しでも、活躍できるようになる…なら」グズッ



デイジー「……………………せーの」スゥー

デイジー「私は最強私は強靭私は無敵私は天才私は秀才私は女王
     私は帝王私は覇王私は万能私は君主私は聡明私は明晰
     私は王者私は傑物私は烈王私は博識私は精強私は屈強
     私は頑強私は英明私は俊敏私は利巧私は聡慧私は明敏
     私は怜悧私は利発私は勇敢私は豪胆私は勇烈私は勇猛
     私は最強私は強靭私は無敵私は天才私は秀才私は女王
     私は帝王私は覇王私は万能私は君主私は聡明私は明晰
     私は王者私は傑物私は烈王私は博識私は精強私は屈強
     私は頑強私は英明私は俊敏私は利巧私は聡慧私は明敏
     私は怜悧私は利発私は勇敢私は豪胆私は勇烈私は勇猛
     私は最強私は強靭私は無敵私は天才私は秀才私は女王
     私は帝王私は覇王私は万能私は君主私は聡明私は明晰
     私は王者私は傑物私は烈王私は博識私は精強私は屈強
     私は頑強私は英明私は俊敏私は利巧私は聡慧私は明敏
     私は怜悧私は利発私は勇敢私は豪胆私は勇烈私は勇猛
     私は最強私は強靭私は無敵私は天才私は秀才私は女王
     私は帝王私は覇王私は万能私は君主私は聡明私は明晰
     私は王者私は傑物私は烈王私は博識私は精強私は屈強
     私は頑強私は英明私は俊敏私は利巧私は聡慧私は明敏
     私は怜悧私は利発私は勇敢私は豪胆私は勇烈私は勇猛
     私は最強私は強靭私は無敵私は天才私は秀才私は女王
     私は帝王私は覇王私は万能私は君主私は聡明私は明晰
     私は王者私は傑物私は烈王私は博識私は精強私は屈強
     私は頑強私は英明私は俊敏私は利巧私は聡慧私は明敏
     私は怜悧私は利発私は勇敢私は豪胆私は勇烈私は勇猛
     私は最強私は強靭私は無敵私は天才私は秀才私は女王
     私は帝王私は覇王私は万能私は君主私は聡明私は明晰
     私は王者私は傑物私は烈王私は博識私は精強私は屈強
     私は頑強私は英明私は俊敏私は利巧私は聡慧私は明敏
     私は怜悧私は利発私は勇敢私は豪胆私は勇烈私は勇猛……」ブツブツブツブツ

デイジー「私は最強私は強靭私は無敵私は天才私は秀才私は女王
     私は帝王私は覇王私は万能私は君主私は聡明私は明晰
     私は王者私は傑物私は烈王私は博識私は精強私は屈強
     私は頑強私は英明私は俊敏私は利巧私は聡慧私は明敏
     私は怜悧私は利発私は勇敢私は豪胆私は勇烈私は勇猛
     私は最強私は強靭私は無敵私は天才私は秀才私は女王
     私は帝王私は覇王私は万能私は君主私は聡明私は明晰
     私は王者私は傑物私は烈王私は博識私は精強私は屈強
     私は頑強私は英明私は俊敏私は利巧私は聡慧私は明敏
     私は怜悧私は利発私は勇敢私は豪胆私は勇烈私は勇猛
     私は最強私は強靭私は無敵私は天才私は秀才私は女王
     私は帝王私は覇王私は万能私は君主私は聡明私は明晰
     私は王者私は傑物私は烈王私は博識私は精強私は屈強
     私は頑強私は英明私は俊敏私は利巧私は聡慧私は明敏
     私は怜悧私は利発私は勇敢私は豪胆私は勇烈私は勇猛
     私は最強私は強靭私は無敵私は天才私は秀才私は女王
     私は帝王私は覇王私は万能私は君主私は聡明私は明晰
     私は王者私は傑物私は烈王私は博識私は精強私は屈強
     私は頑強私は英明私は俊敏私は利巧私は聡慧私は明敏
     私は怜悧私は利発私は勇敢私は豪胆私は勇烈私は勇猛
     私は最強私は強靭私は無敵私は天才私は秀才私は女王
     私は帝王私は覇王私は万能私は君主私は聡明私は明晰
     私は王者私は傑物私は烈王私は博識私は精強私は屈強
     私は頑強私は英明私は俊敏私は利巧私は聡慧私は明敏
     私は怜悧私は利発私は勇敢私は豪胆私は勇烈私は勇猛
     私は最強私は強靭私は無敵私は天才私は秀才私は女王
     私は帝王私は覇王私は万能私は君主私は聡明私は明晰
     私は王者私は傑物私は烈王私は博識私は精強私は屈強
     私は頑強私は英明私は俊敏私は利巧私は聡慧私は明敏
     私は怜悧私は利発私は勇敢私は豪胆私は勇烈私は勇猛……」ブツブツブツブツ

キイイイイイイィィィィィ――――――――ン…。



デイジー「私は最強私は強靭私は無敵私は天才私は秀才私は女王
     私は帝王私は覇王私は万能私は君主私は聡明私は明晰
     私は王者私は傑物私は烈王私は博識私は精強私は屈強
     私は頑強私は英明私は俊敏私は利巧私は聡慧私は明敏
     私は怜悧私は利発私は勇敢私は豪胆私は勇烈私は勇猛
     私は最強私は強靭私は無敵私は天才私は秀才私は女王
     私は帝王私は覇王私は万能私は君主私は聡明私は明晰
     私は王者私は傑物私は烈王私は博識私は精強私は屈強
     私は頑強私は英明私は俊敏私は利巧私は聡慧私は明敏
     私は怜悧私は利発私は勇敢私は豪胆私は勇烈私は勇猛
     私は最強私は強靭私は無敵私は天才私は秀才私は女王
     私は帝王私は覇王私は万能私は君主私は聡明私は明晰
     私は王者私は傑物私は烈王私は博識私は精強私は屈強
     私は頑強私は英明私は俊敏私は利巧私は聡慧私は明敏
     私は怜悧私は利発私は勇敢私は豪胆私は勇烈私は勇猛
     私は最強私は強靭私は無敵私は天才私は秀才私は女王
     私は帝王私は覇王私は万能私は君主私は聡明私は明晰
     私は王者私は傑物私は烈王私は博識私は精強私は屈強
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     私は怜悧私は利発私は勇敢私は豪胆私は勇烈私は勇猛
     私は最強私は強靭私は無敵私は天才私は秀才私は女王
     私は帝王私は覇王私は万能私は君主私は聡明私は明晰
     私は王者私は傑物私は烈王私は博識私は精強私は屈強
     私は頑強私は英明私は俊敏私は利巧私は聡慧私は明敏
     私は怜悧私は利発私は勇敢私は豪胆私は勇烈私は勇猛……」ブツブツブツブツ

キイイイイイイィィィィィ――――――――ン…。



デイジー「私は最強私は強靭私は無敵私は天才私は秀才私は女王
     私は帝王私は覇王私は万能私は君主私は聡明私は明晰
     私は王者私は傑物私は烈王私は博識私は精強私は屈強
     私は頑強私は英明私は俊敏私は利巧私は聡慧私は明敏
     私は怜悧私は利発私は勇敢私は豪胆私は勇烈私は勇猛
     私は最強私は強靭私は無敵私は天才私は秀才私は女王
     私は帝王私は覇王私は万能私は君主私は聡明私は明晰
     私は王者私は傑物私は烈王私は博識私は精強私は屈強
     私は頑強私は英明私は俊敏私は利巧私は聡慧私は明敏
     私は怜悧私は利発私は勇敢私は豪胆私は勇烈私は勇猛
     私は最強私は強靭私は無敵私は天才私は秀才私は女王
     私は帝王私は覇王私は万能私は君主私は聡明私は明晰
     私は王者私は傑物私は烈王私は博識私は精強私は屈強
     私は頑強私は英明私は俊敏私は利巧私は聡慧私は明敏
     私は怜悧私は利発私は勇敢私は豪胆私は勇烈私は勇猛
     私は最強私は強靭私は無敵私は天才私は秀才私は女王
     私は帝王私は覇王私は万能私は君主私は聡明私は明晰
     私は王者私は傑物私は烈王私は博識私は精強私は屈強
     私は頑強私は英明私は俊敏私は利巧私は聡慧私は明敏
     私は怜悧私は利発私は勇敢私は豪胆私は勇烈私は勇猛
     私は最強私は強靭私は無敵私は天才私は秀才私は女王
     私は帝王私は覇王私は万能私は君主私は聡明私は明晰
     私は王者私は傑物私は烈王私は博識私は精強私は屈強
     私は頑強私は英明私は俊敏私は利巧私は聡慧私は明敏
     私は怜悧私は利発私は勇敢私は豪胆私は勇烈私は勇猛……」ブツブツブツブツ

キイイイイイイィィィィィ――――――――ン…!!!!!!!!

デイジー「私は最強私は強靭私は無敵私は天才私は秀才私は女王
     私は帝王私は覇王私は万能私は君主私は聡明私は明晰
     私は王者私は傑物私は烈王私は博識私は精強私は屈強
     私は頑強私は英明私は俊敏私は利巧私は聡慧私は明敏
     私は怜悧私は利発私は勇敢私は豪胆私は勇烈私は勇猛
     私は最強私は強靭私は無敵私は天才私は秀才私は女王
     私は帝王私は覇王私は万能私は君主私は聡明私は明晰
     私は王者私は傑物私は烈王私は博識私は精強私は屈強
     私は頑強私は英明私は俊敏私は利巧私は聡慧私は明敏
     私は怜悧私は利発私は勇敢私は豪胆私は勇烈私は勇猛
     私は最強私は強靭私は無敵私は天才私は秀才私は女王
     私は帝王私は覇王私は万能私は君主私は聡明私は明晰
     私は王者私は傑物私は烈王私は博識私は精強私は屈強
     私は頑強私は英明私は俊敏私は利巧私は聡慧私は明敏
     私は怜悧私は利発私は勇敢私は豪胆私は勇烈私は勇猛
     私は最強私は強靭私は無敵私は天才私は秀才私は女王
     私は帝王私は覇王私は万能私は君主私は聡明私は明晰
     私は王者私は傑物私は烈王私は博識私は精強私は屈強
     私は頑強私は英明私は俊敏私は利巧私は聡慧私は明敏
     私は怜悧私は利発私は勇敢私は豪胆私は勇烈私は勇猛
     私は最強私は強靭私は無敵私は天才私は秀才私は女王
     私は帝王私は覇王私は万能私は君主私は聡明私は明晰
     私は王者私は傑物私は烈王私は博識私は精強私は屈強
     私は頑強私は英明私は俊敏私は利巧私は聡慧私は明敏
     私は怜悧私は利発私は勇敢私は豪胆私は勇烈私は勇猛……

      私は…わ、た、し、は…………」ウツロ

~翌日~



ロゼッタ「いよいよですね!」ワクワク

ゼルダ「ロゼッタははしゃぎ過ぎですよ。
    今頃、大きく出過ぎたかと冷や汗たらたらの状態なのかもしれませんよ?」

ヒルダ「あは、それはちょっと見てみたいです…」



会話をしながら軽く身支度をして、さあ仮眠室を出よう…というところで。



がちゃり。



扉がぎいい、と開けられます。



デイジー姫が、妙に静かに――唐突に、部屋にやってきました。

ロゼッタ「おはようございます、デイジー姫!
      えっと、まずは朝食にしましょうか――――」





デイジー「フィールドに、全員、集合。…………以上」

バタン。





どうしたことでしょう、出鼻を挫かれました。
私の言葉を、いともあっさり遮って…デイジー姫は抑揚のない声で短く指示をして。
もう興味をなくしたかのように、また扉の向こうへ行ってしまいました。

ゼルダ「…なんですか、あの態度は。そろそろ許し難くなってきたのですが」

ロゼッタ「ま、まあまあ。デイジー姫の中で何かしらの葛藤があったということで、
     すこーし気が立っているだけですよ!」

ヒルダ「そうですね、とりあえずデイジーの所に向かってみましょう。
    彼女にも何か考えがあるのですよ」

これ以上、デイジー姫とゼルダ姫の仲をこじらせてはたまりません。
ヒルダ姫と協力してゼルダ姫を宥めに宥めて、揃ってフィールドに向かいます――。
















――――地獄の宴が、開かれようとしていることにも気付かずに。











気付いていた者がいたとしたら…それはきっと、『もともとの』デイジー姫、くらいでしょう。

フィールドに向かってみると、既に到着しているデイジー姫。

――目を閉じ、腕を組み、柱の一つに背中を預けて、もたれ掛かっています。
――らしくない振る舞いだなあ、と一瞬思って……。



ロゼッタ「…………!?」ビクゥッ



足を止めてしまった私は、悪くないと思います。

――何か、違う。
――デイジー姫の雰囲気が、纏う何かが、凄まじく、違う気がする。

――いつもなら、満開の向日葵のような…優しく照らす太陽のような…
   明るく朗らかな雰囲気に満ち溢れている、はず。なのに。

――今のデイジー姫からは、それが一切感じられません。

しかし、ゼルダ姫とヒルダ姫は。
違和感こそ感じたものの、さほど気にしないようで。
特に歩みを止めないまま、デイジー姫の元に向かいます。

慌てて私も、付いていく。
…針のむしろの感覚を拒絶する体を、強引に、向かわせて。

ゼルダ「…はっきり申し上げますと、その態度、気に食いません。
    私たちを馬鹿にしているのですか?
    コミュニケーションをとるための態度と言うものがあるでしょうに!」

またもや、ゼルダ姫がおかんむり。
そろそろ、実力行使にも出かねない感じです。
それでもなお、デイジー姫は態度を改めません。

…いえ。それどころではありませんでした。
薄く目を見開いて、小馬鹿にするような感じで私たちをすいーっと見渡した後。
信じられない、とんでもない行動に出たのです。



いきなり、指を3本、突き立てて。



デイジー「さてと。今から、私が直々に特訓してやるわけだけど。
     『お前たち』には今後、約束事を3つ、守ってもらおうか。

     ひとつ。順番に特訓してやるから、私に休む暇を与えないくらいの気持ちで
     3人交代で絶え間なく掛かってこい。

     ふたつ。特訓は本気(マジ)でやれ。手抜きと逃げは万死に値する。

     そして、みっつ。      私の命令には 絶対 逆らうな。
                                             ……以上だ」

ロゼッタ「!?」

ゼルダ「…なっ!!」カアッ!

ヒルダ「…え?えっ?」



あまりの無理強い、無理難題。
デイジー姫の言い分を飲むなら、主従関係…いえ隷属にも当たるかもしれません。

私は…いえ、私とヒルダ姫は、「いきなりどうして、こんな激変した態度をとるのか?」という疑問が
真っ先に浮上してしまい、腹を立てるどころではありません。

――しかし、ゼルダ姫を怒髪天にするには、十分すぎたようです。

ツカ、ツカと速足でデイジー姫に迫るゼルダ姫。
当然ながら激しい口調で、デイジー姫を非難します。



ゼルダ「フラフラと訳の分からない態度を取っていたかと思えば…
    今度は横柄極まりない、一方的な命令姿勢…!!何様のつもりですかっ!!
    冗談ではありませんっ!ふざけないでください!
    
    これ以上の狼藉は、こちらとしても重く受け止めなければならなくなりますよ!
    ピーチには悪いですが、ハイラルに翻意ありとみなしてもよろしくて?」

デイジー「…………」

デイジー姫は、なんとも面倒な物をみるような視線を貫きます。
それが、ゼルダ姫の機嫌をますます急降下させることになるの、分かっていますか!?



デイジー「…………」

ゼルダ「なんとか言ったらどうですか!?」


デイジー「じゃあ言わせてもらう。
     …最後通牒。私の命令に逆らうな。どうなっても知らないが?」

ゼルダ「いい加減にするのはそちらでしょう!
    あいにく、ロゼッタやヒルダ姫はそこまで気に留めていないようですが、
    私はそうは参りません!誇りが、立場が私を奮い立たせます!
    私を誰だと思っているのですか!私はハイラル王国の――」

ギュンッ!



――「デイジー姫以外の」全てが、スローモーションに、見えました。
――デイジー姫の、腕が。こう、グイッと、伸ばされたのです。

――ヒルダ姫は、反応できない。
――私も、やっぱり反応できない。

――――ゼルダ姫ですら、何が起こったか分からない。



――伸ばされた腕は、いともあっさりとゼルダ姫の首に届いて…………。








――ぽきり、と。首を折りました。



…え?

ヒルダ「…え?」

――私も、ヒルダ姫も。
――ナニガオコッタノカ、ワカラナイ。

ただ、5秒ほどして、ようやく。
ゼルダ姫が、四肢をだらんとぶら下げて…屍に変わったことが、わかりました。
デイジー姫が腕を離せば、たちどころに支持を失った体が崩れ落ちます。
…動き出すことなど、ありません。

ぞわっ!

一瞬で、全身から汗が吹き出します。
心臓がバクバク言って、激しく警鐘を鳴らします。

危険!危険!危険!危険!危険!危険!危険!危険!危険!危険!
危険!危険!危険!危険!危険!危険!危険!危険!危険!危険!
危険!危険!危険!危険!危険!危険!危険!危険!危険!危険!
危険!危険!危険!危険!危険!危険!危険!危険!危険!危険!
キケンキケンキケンキケンキケンキケンキケンキケンキケンキケン
キケンキケンキケンキケンキケンキケンキケンキケンキケンキケン
キケンキケンキケンキケンキケンキケンキケンキケンキケンキケン
キケンキケンキケンキケンキケンキケンキケンキケンキケンキケン
キケンキケンキケンキケンキケンキケンキケンキケンキケンキケン
キケンキケンキケンキケンキケンキケンキケンキケンキケンキケン
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

どれだけ、意識を飛ばしていたか。
一瞬のような、永劫のような。
デイジー姫は、全くゼルダ姫を心配する様子もなければ、
自分の愚行に反省する様子もありません。

デイジー「まあ、そんなに気にするな。どのみち…ほら、見てみろ。
     残機があるおかげですぐ復活できるんだから」

ゼルダ姫が、全身を光らせつつ、命を再び宿します。

…ええ、確かに、その通り。
その通り、では、ありますが。

単に吹っ飛ばされて撃墜、と。
非業の死を遂げて骸となる、とでは。
精神負荷に、雲泥の差があります。

ゼルダ姫はうつ伏せのままほんのすこし、目を開けた後。
一瞬で覚醒して立ち上がり、喉に手をやり激しく呼吸。
…目は血走り、完全に過呼吸になっています。

何が起こったのか、分からない、動揺。
ちょっと考えて、どうしても「それ」しか可能性が無くて、混乱。
「それ」を引き起こしたのが、目の前の彼女という結論に至り――
それでも、一瞬だけ、決壊を踏み止まって。

ゼルダ「は、はは、は。デイ、ジー。
    気の迷い、ですよね。今なら、土下座、して、くださるのなら、
    慈悲深い、私が、許して、あげ、ても、いいです、よ?」バクバク



デイジー「約束を破った愚か者を制裁しただけだが?
     自業自得なのに慈悲深いとは聞いて呆れる」フッ

ゼルダ「」ブチィッ



激怒。激昂。憤怒。憎しみ。

ありったけの感情を込めて、デイジー姫に襲い掛かります。



ゼルダ「ハアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァ――――!」ダダッ!



嘘っ!こんな、本気の殺意を込めたゼルダ姫を、私は知りません。
振るう拳には魔法で力も籠められているのか、鈍く光る。とんでもない速さと威力です。




…………それを、デイジー姫は。



デイジー「せめて」ザシュッ

ゼルダ「…………ああああっ!!?」

――――「指一本」の、一振りで、手首から切り落とし。



デイジー「肉弾戦でなくて」ドスッ!

ゼルダ「があ゙っ」ズンッ
    
――――助走動作すらない「足蹴り」で、空高く打ち上げて。



デイジー「純粋な魔法で勝負を仕掛ければ…多少はダメージ、与えられたかもな」ガッ!

ゼルダ「」ベチィッ!

――ハイジャンプで上を取り…
   落下に転じたゼルダ姫を、フィールド目掛けて弾丸の如く叩きつけました。

時が、止まっています。…いえ、時だけではなく。ゼルダ姫も、止まっています。

赤い、赤い、赤い。

ほんの一瞬にして、あたりは血の海です。

ゼルダ姫の腹部に……風穴が空いているのが、見えてしまいました。
ヒルダ姫は、先ほどから、目を見開いて、涙を溢れさせて、
痙攣したかのように「あ、あ、ああ」と錯乱するだけです。

またもやゼルダ姫「だったもの」が光に包まれ、ゼルダ姫、復活。

デイジー「あー、ようやく起きた。気分はどうだ?」

ゼルダ「――――っ!!?」

ゼルダ姫は、今度は一転して、後ずさる。
魑魅魍魎を見たかのような、恐怖と怯えが駆け回っている表情です。

デイジー「いい加減、命令に従ってくれると、こちらとしても話が楽なんだが」

ゼルダ「いやあああああああああああぁぁぁっ!!!」

――――明らかに動転しながら、恐怖に怯えながらの破れかぶれな、魔法の連打。
――――ロクに当たらず、意味もなく。

デイジー「…あっそう、もういいや」

無造作に掴んだ腕で、ぽいっとゼルダ姫の体を投げ飛ばします。
フィールドの柱の一つにめり込んだ結果…頭を垂れて、微動だにしなくなりました。

ヒルダ姫は、とうとう…余りの惨状に、気絶してしまった様子。
…それで、正解だと思います。

ロゼッタ「…デイジー姫。…デイジー、姫!!どうして!?
     どうして、こんなこと、するのですか!?」

デイジー「どうして…って、お前たちが願ったことだろ?
     私に、鍛えてほしいと散々頼んできたのは…そっちじゃないか」

ロゼッタ「どういった関係があるのですか!?
     行動も、その口調も、性格も、狂いすぎていますっ!!
     いつもの…いつものデイジー姫に、戻って下さい!」



途端に、腕を一振りされました。

…………おかしいですね、私の左腕。
肘から先がありません。何故か、地面に落ちています。
鎌鼬というやつですか。



激痛にたまらず転げまわる私。至って見下す表情で、デイジー姫は私を見ています。
幸い、すぐに命を取られることは…ありませんでした。

痛みを涙目で堪えつつ、最後にあがいてみます。



ロゼッタ「では…せめて。デイジー姫の身に今、何が起こっているのかだけでも、
     教えては頂けないでしょうか?」ポタポタ

デイジー「ああ、表の顔の私から…しっかり聞いておくんだったな。
      多少は『今の私』への対策、できただろうに。
      別にいいぞ、つまらない話だが」

…あれ?完全にこちらからの要望が無視される、というわけではないようです。
よかった。事情を話してくれる分には、いつものデイジー姫よりも素直そうで。

ロゼッタ「…………つまらないかどうかは、私が決めます。
      …このちぎれた腕、どうしましょうか。回復魔法でさっさと…
      でも、やっぱり、先に話を聞いておきたいです」



ふと思います。妙に私、冷静ですね。こんな…状況なのに。

デイジー「…………………………………………
     昔、サラサ・ランドに、一人の姫がいた。
     素質と言えば人より多いFP量くらいで、大した才能もなければ努力もしない。

     やることなすこと人に頼り切り、父となる国王や大臣たちに任せきり。
     国王は姫を甘やかし、大臣は早々と諦めて、姫はその環境に居直った。
     それでも、優秀な人材たちのおかげで、問題なく王国は動いていた」

ロゼッタ「……………………」



まるで、私が以前やったような――昔話、自分語り。



デイジー「あるとき、不届き者の宇宙怪人が、王国中の人たちに催眠を掛けて、
      王国を乗っ取ろうとした。姫を、自分の妃にしようとするおまけ付きだ。
      それまで外敵など想定すらしていなかった王国は、大混乱に陥った。
      幸い、宇宙怪人を塵のようにあしらえるヒーローに守られる幸運を得た姫は、
      悪の手が及ぶことなく救出された」

ロゼッタ「ああ、よかったです」ホッ

デイジー「だが…キノコ王国を襲う魔王が、王国の姫を『魔法の力を邪魔と感じ』、
      第一段階として姫を攫ったのとは状況が違った。
      最初から、一気に王国を潰す気で、塵野郎は動いていた」

ロゼッタ「……え?」

……ああ、姫を妃とすることと王国侵略は別の話で、
姫を攫ったからといって一息ついてくれる敵ではなかったということ…で……。
……………………ま、まさか!

最悪な、予感が、よぎる。
こういう時の予感って、的中してしまうものなんです。



デイジー「…………姫『は』助かった。なんの怪我もなく、ヒーローに連れられて、
     呑気に城へ戻ってきた。

     

     …………催眠による同士討ちと、防衛戦の大失敗により、
     城下の5割と城内の9割の人を失った城にな」

ロゼッタ「な…………!!」

――それは、一体。
――どんなに、おぞましい光景なのでしょう。

デイジー「姫は、3日3晩、泣き喚いた。
     1週間経っても、歩くことすらままならなかった。

     1か月後、人員不足から半強制的に政務に駆り出されたものの、
     王国の未来の為に勇敢に散っていった人たちのことを、
     己を生き永らえさせるためだけに散っていった人たちのことを、
     生き残った人から聞くだけで、己の愚かさに気が狂いそうだった。
     
     強くなろうと誓った。ひたむきになった。
     だが、すこし身体能力に自信があるくらいでは、
     怠けていたツケを払えるほど、世の中は甘くない。

     姫はヒーローに縋った。
     『今更ながら、全てを己の手でねじ伏せてしまえるチカラをくれないか』と。
     『そのためなら、己の運命含めて、渡せる限りの物を渡すから』と。

     無理を言われ、思案した彼が姫にもたらした物は――――『仮面の姫』」



――仮面の、姫?それはいったい…?

デイジー「弱い自分を『強くする』のがベストだが、
     今すぐ矯正したいなら、強い自分を用意してやればいい。

     嘘八百。自己暗示。自己催眠。

     塗り固めて、塗り固めて、徹底的に…塗り固める。
     少々時間は掛かるけれども、一度『強く』なったら、易々とは解けはしない。
     それが…姫の特技。精神崩壊と隣り合わせで手に入れた、禍々しい宝物。

     『誰よりも強い、賢い。負けるはずがない、負けてはならない』という意識。
     『己の思い通りに物事は動く。動かさなければならない』という自覚。

     これが、姫の全てを支配する。誰も、姫自身すらも、逆らえない。
     親友だとか家族だとかすら、関係がなくなってしまう」

ロゼッタ「そ、んな…………!!」

そんな、ことって…………!
有り得て、いいのですか……!?

デイジー姫は、自嘲気味に続けます。…続けていきます。

デイジー「親の、そして王国の敵の塵野郎と、再会する機会があった。
     敢えて残機を与えたうえで、このチカラを使って、ざっと千回、命を奪った。
     精神崩壊の末に記憶喪失になったらしいんで、適当に捨て置いた。
     今頃は、どこかで小悪党でもやっているのだろうな」

執念深さに、身の毛がよだちます。
…はっと、気付く。あまり、他人事では、ありません。

デイジー「…私のつまらない話は、以上だ。何か質問でも?」

ロゼッタ「い、いえっ……!」

デイジー「じゃあ、特訓の続きと行くか」





ザンッ!!!!!!





ロゼッタ(速すぎる…!避ける、いえ避けようと動き始めることすら、できない!?)
     


ぽたり、ぽたり。
繰り出された右腕が、脇腹を掠って、ドレスごと…根こそぎ血肉を持って行きました。

ふと。
背中の方から、デイジー姫の囁く声が、聞こえます。

デイジー「そうそう、言っておいた方がいい情報があったな」

汗と、血を、ただただ消費する。――振り向けない。威圧が、凄まじい。

デイジー「流石の私も、マリオやクッパ、リンクに勝てるとは…よもや思っていない。
     あいつらは、基礎体力レベルが飛び抜けている。
     私の記憶なら…マリオがLv.160、クッパがLv.158、リンクがLv.147…だったか」

ロゼッタ「は、はは。マリオについては私も知っていましたが…みなさん、凄いですね!」

そう、乾いた笑いをしたところで。
デイジー姫が、面白そうに、妖絶に続けます。

デイジー「ところで、私は魔法がからっきしでな。
     ピーチと比較されては劣化だの下位互換だの笑われていたから、
     せめて基礎体力だけは負けないと、鍛えに鍛えてきた。
     そのおかげで、気付いてみれば……
     『表』の方の私でも、ピーチにそろそろ追いつく…くらいの基礎体力はある」



ロゼッタ「…え?」

デイジー「少し前に、ピーチに勝手に測定された数値だから、
      今なら更にひとつかふたつくらいはレベルが上がっているはずだが…



     『こっち』の私の基礎体力レベルは  1 1 5  だ。
     規格外ポジションの3強のヤツらを除けば…物理面に限って言えば、
     女性の中で、どころか世界全体で見てトップの数値みたいだから。

     …今の私は、『お前たちを鍛える』ことに全精力を費やし出して、止まらない。
     死にすぎたくなかったら、私の機嫌を損なわないよう、必死で足掻くんだな」クスッ



ロゼッタ「」

ロゼッタ「」



追撃を食らって、意識が薄れて行って。
でも、先ほど受けた衝撃は、絶対に忘れないでおこうと誓いました。



とりあえず、残機が尽きませんように。

ロゼッタ「……………………」

ロゼッタ「…………ううっ」ムクッ



短い時間、なのでしょうが。気を…失っていました。

もっとも、一度や二度のことでは、ないのですが。
よろよろと、ふらふらと、身を起こします。



ちらりと右を、見れば。
うつ伏せに倒れ伏し、痙攣して、血の吐いた跡まで残る、見るも無残なゼルダ姫。
私同様、全身が血濡れ、衣装はボロボロであったりします。
手が、脚が変な方向に曲がっている…気がします。
小さく、うめき声を上げているのは、気のせいでしょうか。
ハイラルの人たちが見たら、絶望で心中しそうな光景です。

命を失えば、衣装もろとも残機のおかげで復活します。
半殺しというのは、全身を駆け巡る痛みのせいで、
…惨めさをまざまざと感じなくてはならないせいで、余計に辛いのかもしれません。



あら?ヒルダ姫は…どこでしょう。

…あ。

デイジー姫と対峙している…もとい、
蛇に睨まれた蛙以上に委縮していて、何も出来ない状態です。



ヒルダ「あ、ああ、あ゙あ゙あ゙あ゙!?」ガクガクブルブル

デイジー「…あのさ。一撃入れてみろとは言わないから、
     真面目に特訓に参加してくれないか?
     さっきから、泣いてばかり、棒立ちしてばかりじゃないか」



ヒルダ姫は、デイジー姫の挑発にも…泣き腫らしながら首をぶんぶんと振るばかりで、
行動に移せません。目に見えて、デイジー姫の機嫌は下降の一途を辿ります。



デイジー「私が、5数えるまでに向かってこなかったら…」

ヒルダ「…………………え?」



デイジー「5」

ヒルダ「…っ!?」

デイジー「4」

ヒルダ「……っ!……っ!!」ポロポロ

なんとか、己を奮い立たせようと。



デイジー「3」

ヒルダ「………………………………」ポロポロ

…しては、いるよう、なのですが。
効果のほどは、お察しください。



デイジー「2」

ヒルダ「…………………………む、り、です」ガクリ

全てを諦めてしまって、その場にペタンと尻餅をついて…
顔を、覆って、うずくまってしまいました。



デイジー「1」

あとはもう、震えているだけ、泣き続けるだけ。

デイジー「…………0」ググッ




ヒルダ「……………………」

ビクッと。ヒルダ姫の体が、ひときわ大きく震えます。



しかし、デイジー姫は『その場から』動こうとはしません。



5秒、10秒、15秒。
来たるべき衝撃が来ないことに気付き、
少しずつ、少しずつ手のひらをどかせていき。






ドズンッ!!!!!


・・
・・・
ピーチ「これでもマリオは、魔法苦手な方なんだけどねー。
    そうね、物理の方なら多分…もし貴方に対してマリオが本気になれば、
    5メートル離れた所からの『何の変哲もない』パンチの衝撃波だけで絶命だわ」
・・・
・・




ピーチ姫の台詞が、思い起こされてしまいました。



ヒルダ姫の目の前には、拳を振るったあとのデイジー姫が、
動作を終わった姿勢で止まっています。

どうなっているのだろう、向かってこないのか。
それとも、あくまでハッタリだったのか。
…もしかしたら、そんな淡い期待を持ったかもしれません。
一瞬ほっとしたような表情を見せたヒルダ姫は…………





ごぼっと、大量の血を吐きました。

そりゃあ、そうです。

ヒルダ姫は極度の恐怖で感覚がマヒしているのか、気付いていませんでしたが…

心臓や肺もろとも、胸のあたり10センチくらいを、
拳からの衝撃波が貫通していきましたから。

今さらながら、現実を受け止められないまま、ゆっくりと、ゆっくりと。

下を向いて行って、胸にぽっかりと穴が空いたことに気付いて、

再度絶望して、そのままフラリと…前に倒れ込んでいきました。



まもなく、復活することでしょう。そしてまた…。



失礼しました。半殺し以上に、死ぬのって、辛いですよね。苦しいですよね…!
明らかに、一番絶望の底にいるのは、ヒルダ姫でしょう。

現在、デイジー姫は、私たち3人を…存分に手を抜きつつ、1人ずつ相手しています。

気絶するか、命を失うかで、交代。



自分の順が回ってきても気絶状態なら、とばされて…ではなく。
髪を千切れんかというばかりに強く引っ張られたり、バケツの水を掛けられたりして、
強引に叩き起こされます。

だれがどう見ても、紛うことなく、拷問です。ええ。
本当にありがとうございました。
地獄の終わりが見えません。

デイジー「なんなんだろうな、全く…。
     ゼルダは、まるで歯が立たないとわかったら、いつもの生意気さはどこへやら。
     ろくに戦おうともせず半狂乱になって…這いつくばってでも逃げようとする。
     ヒルダはヒルダで、最初から無気力状態になって。
     ますます一撃で倒されやすくなって、特訓のし甲斐もありゃしない。
     先に私を煽っておいて、舐めているのか…?」ゴゴゴゴ

ロゼッタ「……!!」

デイジー姫が、手首をブラブラさせながら、
詰まらなそうにつぶやいていますが…じょ、冗談ではありません!
これ以上、ゼルダ姫とヒルダ姫に無理はさせられません!
本当に廃人になってしまいます!

ロゼッタ「次は、私が行かせていただきますっ!」ザッ!

デイジー「…次はゼルダの番のはずだが?」

ロゼッタ「ゼルダ姫は、もう少し休憩したいそうなので!

     …あ、えええええっと、これも…
     デイジー姫のいうところの『命令に背く』ことになってしまいますか!?」

デイジー「……まあ、それは構わないが。だが、意気揚々と変わろうとする割には、
      ロゼッタも体力の限界の――」

ロゼッタ「なら一回、飛び降りてきますっ!!」ダダッ

デイジー「ようだ、が――――――」





ロゼッタ 残機-1

ロゼッタ「あいたたた…復活ですっ!…お待たせしましたぁ!」シュタッ

デイジー「…くっくっく」

ロゼッタ「…あれ?どうされましたか、デイジー姫?
     何か、おかしかったですか?」

いきなりデイジー姫が、おかしそうに笑っています。
機嫌が悪いうえでの空笑い、とかではなさそうです。よかった。
でも、失礼ではないでしょうか。…口には決して出しませんが。それはもちろん。



デイジー「…くく、おかしいさ。おかしいとも。
     
     マリオカートWiiの時のロゼッタの号泣っぷりを思い出してみろ。
     正直、3人の中で…真っ先に音を上げるのはロゼッタとばかり思っていた。
     それが…まさか、回復のためとはいえ、残機減らしを一切躊躇わないなんて。
     なかなかどうして。図太くなったものじゃないか」
     
ロゼッタ「……あー、まー。言われてみれば。
     自分でも、なんでだろうって思うんですけれどね」

なんだか、命を失うための大義名分があるなら、
まるで躊躇しなくなっているような…たしかに、改めて考えると、異常ですね。

まあ、そのおかげで冷静さを保てているというのなら、有難くあやかっておきましょう。

デイジー「ゼルダを見てみろ。下手をすれば、次に復活した時には
     手遅れな所まで精神がお陀仏になっているかもしれないぞ?」

ゼルダ「がはっ…だ、れ、が、だず、げ、で…ぐ、ださ…」シンダメ

ロゼッタ「可哀想です…ここまでやる必要があったのですか?」ムッ



デイジー「ヒルダもこのとおり、悲惨なありさまだ。
     今や、復活するから命を奪われるのか、
     命を奪われるために復活しているのかわかりゃしない。

     …おい、復活したのなら、少しは精神統一でもして
     自分の番の準備をしておけよ」ユサユサ

ヒルダ「――――」

ロゼッタ「復活したてで、まだ気絶しているのではないですか?」

デイジー「どうだろうな…?」




ピキッ…!



ヒルダ「――――っ!?」

デイジー「さっさと起きた方が身のためだぞ」

ロゼッタ「」



ピキッ!



ヒルダ「いやああ゙あ゙あ゙あ゙アアアアアアアアアアアアアアアアア!!」ガタガタ

デイジー「そら見ろ、狸寝入りじゃないか」

ロゼッタ「確認のためだけに指の爪をはいでいくのはやめてあげてください!?
     今のデイジー姫、機嫌を損ねるととんでもない暴虐に走りますね!?」

デイジー姫は、えぐえぐと泣くばかりのヒルダ姫など、もう放置して…
ふたたび、こちらに歩み寄ります。…歩み寄ってきます。

5センチも離れていない所に、デイジー姫の顔が迫ってきました。



デイジー「やはり、異常だな。
     ここまで、ゼルダやヒルダの状態を気遣い、心配することはあっても…
     虐げることは間違っている、許せない…という主張がほとんどない。
     絶望のあまり泣き叫んで、止めるよう懇願してもおかしくないというのに。

     …むしろ、お前が『ニセモノのロゼッタ』であると言われた方がまだ納得がいく。
     …本物のロゼッタか?こっそりすり替わっていやしないか?」

ロゼッタ「本物ですよ!?本人ですよ!?証拠とかは特にないですけど酷くないですか!?
      …えっと、泣き叫んだら、止まってくれるのですか?」

デイジー「余計に殺意が増すな」

ロゼッタ「ですよねー。分かっていました。
     だったら、私はデイジー姫に応えるべく、やれるだけのことをやるだけです。
     デイジー姫だって、嗜虐心だけで私たちを屠り続けているわけではないでしょう?」



今のデイジー姫は、恐ろしい。それは…確かです。
でも…少なくとも、デイジー姫を責めるのはお門違いだと思うのです。
唆した私達3人の自業自得、あるいは発端の私だけが責められるべきなのです。

デイジー「…………面白い。実に面白いぞ、ロゼッタ。
     ならば、こちらとしても丁重に『O・MO・TE・NA・SHI』しようじゃないか。
     その余裕が、どこで悲嘆の顔に変わるのか、あるいは乗り越えてみせるのか…
     非情に楽しみになってきた…!」

ロゼッタ「……あれ?あれれ?藪蛇ですか?
     …あと、なんだかニュアンスが変だったような。

     『とっても楽しみ』なんですよね?
     『あらん限りの絶望を与えることが楽しみ』とかじゃないですよね?」タラリ



デイジー「さあ、いざ、参る!」スッ・・・



ロゼッタ「…っ!こうなったら、当たって砕けろの精神で参りますよっ!」ビクッ

すぅっと、しっかりと、デイジー姫の方を向きつつ、身構えます。
…嘘です。格闘におけるポジションなど知りません。
ついでに言うと、心臓を隠せるようにだとか、足腰のバネに力を蓄えてとか…
にわか仕込みの、小手先の動きでどうにかなる相手ではないのです。

身長差からすると、私が有利…なんてことはなく、むしろ掻い潜られそう。
そう思った矢先っ!



デイジー「フッ!!」ゴウッ!

ロゼッタ「……っ!!」

――認識できない、ほどではない、拳。
――余裕を持って躱せる、なんてことはさらさらない、拳。

直感で腕を伸ばして、鳩尾を狙うデイジー姫の腕の軌道を妨害――



ロゼッタ「――しても無駄なのでっ!」



手のひらから…隔壁を、幾重にも展開、展開、展開っ!!
ただし、間違っても真正面から生成してはいけません。
デイジー姫と私との力量差の前では、向こうの拳が貫通弾となってしまいます。
繊細に…力を逃がすべく、斜めに滑らせ、受け流す!

ロゼッタ(よし、うまくいきました!!受け流し成功で――)

デイジー「人間の腕が2本あるのはなんでか、知ってるか?
      …交互に拳を絶え間なく繰り出すため、だぞ?」



ドガガガガガガッ!!

ロゼッタ「わっ、わわっ!?」パシン パシン

駄々をこねる子供のように、遮二無二腕を振り回すデイジー姫。
当然ながら、体のひねりなどロクに使えないため、力は籠められないはず…なのですがっ!
1発1発が、凄まじく、速くて重いですっ!山カンで防ぎに行くのが精いっぱい!



右、左、右、左、左――――っ!



フェイントも時たま交えつつ、連続攻撃で弄ばれます。
私はひたすら、体の脇へ脇へと受け流す、受け流す!

ピイイイイイィィィィン――!!

それでも。反発の勢いで、腕が大きく逸らされていきます。
その勢いは凄まじく、体ごと持って行かれます。

その隙を…見逃してくれるわけがありません。

くるり、とデイジー姫が身を翻します。



デイジー「セイヤッ!!!」ドゴォッ

ロゼッタ「がはっ」ガフッ ダンッ!



…何回かバウンドしながら、フィールドの反対側まで吹っ飛ばされました。
たいじゅうのこもった、ま、まわしげり、だなんて、は、はんそくです。
そんな威力の体術、秘匿しないでおいてほしかったですね。

…ああ、また口元に血が付いています。
いい加減、血を吐くのは飽きてきました。
このままではドレスが赤く染まって、ファイアロゼッタになってしまうではないですか…なーんて。
…実際は復活のたびに汚れはきれいさっぱりなくなりますが。

袖でグイッと拭って、さっさと立ち上がることにします。
そんな私を、フィールドの反対側から見ている、デイジー姫。
早く戻ってこい、と手招き状態。

…なんだか、にやにや笑っている気がします。
余裕ぶった態度に、少しだけ、カチンと来ました。

ロゼッタ「――――よし」ポワアアアン

何食わぬ顔で近づきつつ、こっそりFPを充填していきます。

一歩。また一歩。
歩くたびに、どんどんFPを蓄えます。

デイジー「のんびり歩くな、時間は有限だぞ」

ロゼッタ「すいません、今行きまーす!」

こう、呑気に手なんか振ってみたりして。

相手の視線、および死角の確認、OK。
移動先の座標、OK。
移動後の迅速な正拳を、イメージ。



…なんだか、わくわくしてきました。
ダメージを与えられるかどうかはともかく、
これが当たって、デイジー姫が少しでも驚いてくれたら、と考えただけで。

…準備完了。
最後は、少し小走りになりつつ、残り10メートルになったところで――

シュンッ!!

ロゼッタ「それっ!!」ブンッ!

テレポートからの、完全なる不意打ちですっ!
素晴らしい集中力の賜物で、数F程度のラグをもって拳を振るえています!
後頭部…は気が引けたので、背中に…会心の一撃!これは決まりました!





デイジー「……」クルリッ グワシッ!





ロゼッタ「…ふえっ!?」

…あれ?あれれー?
どうして、振り向きざまに拳を掴まれているのでしょう?

デイジー「気配。癖。それに勘。見破る鍵はいくらでもあるぞ。
     妙にワザとらしく手など振って、姑息なことを考えていることがバレバレだ」

ロゼッタ「」アゼン

デイジー「…根本的な問題として、移動と攻撃動作、合わせて10Fもあれば…
     余裕を持って対処くらいできるさ。私を誰だと思っているんだ?ん?」

ロゼッタ「あなたはデイジー姫です♪」

デイジー「…………」

ロゼッタ「…………」

デイジー「…………」ゴゴゴゴゴゴ・・・

ロゼッタ「…あ、いえ、そのう……せめて楽に死にたいなあって…」

デイジー「ハラワタをぶちまけるくらいまで殴る」

ロゼッタ「やめてください三途の川でも死んでしまいます」ガクガクブルブル

デイジー「フンッ!!!」バキィッ!



ロゼッタ「」チーン

――見失ってからの10Fでも余裕で対処可能だなんて…
――どうしようもないじゃないですか…。

時計が 午後7時を 指している▼

デイジー「…よし。今日は此処までとしよう。お前たち、精々休んでおくことだな。
     食事を摂ろうが惰眠をむさぼろうが構わないが、特訓から逃げようとしようものなら――」ギロッ

ロゼッタ「一撃も入れられませんでした…はあ。速さが足りない…。
      逃げません逃げません、そんな恐れ多いことしませんってば。
     ね、ゼルダ姫にヒルダ姫!」ボロッ



ゼルダ「」

ゼルダ「」

ゼルダ「」シンダメ

ヒルダ「」

ヒルダ「」

ヒルダ「」シンダメ

ゼルダは たたかう きりょくが のこっていない

ヒルダは たたかう きりょくが のこっていない▼

ロゼッタ「」

デイジー「…そこに転がってる2人はロゼッタ、お前がなんとかしろよ」スタスタ バタン・・・

ロゼッタ「あのー、もしもし?私の声が聞こえますか?」ブンブン!

ゼルダ「」

ヒルダ「」

ロゼッタ「これは駄目かもしれません」

ゼルダ「」

ヒルダ「」

ロゼッタ「とりあえず…………血濡れの2人の体を『浄化』してっと…」パアアアアア

ロゼッタ「…ああ、もうっ!無反応なら、勝手に運びますからね!
     文句は受け付けませんよ、失礼します!!」

面倒になったので、両脇に1人ずつ抱えて、仮眠室まで連れていくことにしました。
借りてきた猫…というより借りてきた人体模型なみに、ピクリとも動きませんでした。

ロゼッタ「あれ、もしかして…これって…
     血濡れのフィールドの清掃は私一人でやれということですか…
     なんという貧乏くじでしょう…はぁ…あとでやっておかなければ…」ガックリ

フィールドの料理を、チコたちとせっせと仮眠室へ運びます。
チコたちには、血生臭い場面を見せたくないこともあって、
基本的に仮眠室のお手入れをお願いしています。おかげでほこり一つありません。
私も家族の一員として誇らしいです。…シャレじゃないですよ。

ロゼッタ「さーて、それでは明日に備えて、しっかり食べておきますか――













    ……あの。ゼルダ、ひめ?
    ……一体、何をやっているのですか?」


いざ食べようとしたところ、椅子に強引に座らせたゼルダ姫が見当たりません。
はて?と見返すと、呪怨のように言葉にならない声を出しながら、
仮眠室のベッドを持ち上げて、扉の前に運んでいるではありませんか。

ロゼッタ「ふふ、まさか…デイジー姫に恐怖する余りのパニック衝動で
     彼女から少しでも遠ざかろうとする短絡的行為の現れじゃ……」





ゼルダ「…………」ポロポロ

ロゼッタ「図星ですか!?重症ですね!?」

そんな無意味な、むしろ逆効果な行為をしないでくださいよ!
デイジー姫に知れたら、一瞬笑った後、ベッドと扉もろとも吹き飛ばされますよ!?
あの強気なゼルダ姫が、ここまで動転しているだなんて…!

もちろん、そんな未来は御免被りたいので。
私とヒルダ姫で、とっとと元通りに…。

ヒルダ「…………」フラフラ

ロゼッタ「頼みます。お願いですから、そのタンスをもとの場所に戻してください。
     ゼルダ姫の後追いをしないでほしいのですが」

ヒルダ(ブンブン)ポロポロ

ロゼッタ「…チコ。みんな以外に味方がいないようなので、
     元の場所に戻すのを手伝ってもらえるかしら?」

チコ「わ、わかった!」

チコ「はーい!」

チコ「おしごとおしごとー!」



ヒルダ「やあああぁぁ……」ポロポロ

ロゼッタ「しがみ付かないでください!幼児退行までしないでください!心が痛むではないですか!
     それでも、ここは心を鬼にして…強行突破です!」ガシッ

どうにかこうにか、再び席に着かせたのはいいものの。
ぼそ、ぼそ、と。
うわ言を吐き続けて、一向に食事を摂らないお二人。
黙々と私だけ食事を摂ります。



…………沈黙が痛い。



ヒルダ「――――は」

ロゼッタ「……もぐ。はい?どうかされましたか、ヒルダ姫?」モグモグ



ヒルダ「――ロゼッタ、は。どうし、て。へいき、なの、ですか…?」



ロゼッタ「…別に、平気というわけではありません。
     撃墜されれば痛いですし、骨肉を毟り取られれば悶絶する痛さです。
     でも、自分の成長のためと割り切れば――」

ゼルダ「そんな、ことっ!
    …できるはずが、ないでしょうっ!!」バンッ!!



ゼルダ姫の渾身の一殴りが、テーブルをいとも簡単に粉砕していきました。
木くずが、ばらばらばらと、はじけ飛びます。
…料理を巻き添えにして。ああああっ!!なんてことを!

料理の心配をしている私の襟元を掴んで、涙ながらにゼルダ姫が訴えてきます。



ゼルダ「ロゼッタっ!貴方は、精神がおかしい!
    どうして、平然として、いられるのですか!?狂っているっ!
    此処まで虚仮にされてっ!此処まで殴り倒され虐げられてっ!

    …命を、幾度となく、笑いながら、奪われてっ!

    尊厳もなにもないっ!なにもないのですよっ!!」ポロポロ

ロゼッタ「…それは、デイジー姫が『特訓に本気になっている』だけで」

ゼルダ「違うっ!認識を改めなさいっ!
     あの女は、もはや単なる狂人なのだと!
     なんとしてでも、あの殺人鬼を、止めなければならないっ!」ググッ

…っぐ。流石に、首が締まります。

ロゼッタ「…ゼルダ姫の気が少しでも晴れるのなら、私の命の一つくらい…
      喜んで差し上げますよ。いつでもどうぞ。すぐ復活しますし。
      
      ですが、そちらこそ、訂正してください。
      …デイジー姫を侮辱する行為は、彼女の友人である私が…
      ぜったい、に。ゆる、しません」

ゼルダ「――っ!!」



そのひとことに、目を見開いて。
毒気も抜かれたのか、パッと手を離してしまうゼルダ姫。

そのまま、放心したのか膝まで付いて、顔を手で覆って――
再び泣き始めてしまいます。
もう、女王の威厳など、どこにも残っていないのです。

ゼルダ「グズッ…ロゼッタ…あなた、確実に…完全に、壊れているわ…」
(致死寛容レベル:Lv.5)

ヒルダ「あと――何回、いのちを、おとせば、かいほうされるのでしょう、か…。
    もう、いや…だれか、おしえてください…
    10かい、ですか?……100かい、ですか!?ねえ、誰か――っ!」シンダメ
(致死寛容レベル:Lv.3)



ポンッ。

ヒルダ「――ロゼッタ?」

ロゼッタ「大丈夫ですよ――――――――




      1日あたり18時間の特訓として、3分ごとに命を落とし続けたとしても、
      1時間で20回、18時間で360回。90日で32400回。…1人あたり、たかだか10800回が限界です!
      何とかなります、頑張りましょう!」

(致死寛容レベル:Lv.32    残機がある限り 致死・致命傷の精神負担に対し + 31%鈍感化!)

ヒルダ「ロゼッタっ!!もうちょっと命を大事にしましょうよっ!?
     これはゲームじゃないんですよ!?」ソウハク

ロゼッタ「まあまあ、そんな甘いことを言っていては…
     …うっ、なんだかブーメランが刺さったような錯覚が」イタタ

寛容などというレベルじゃない




朝を、迎えました。



ロゼッタ「おはようございます…って、その疲れ切った顔…まさか徹夜したのですか?」ジトー

ゼルダ「……なんで、すか。文句、ありますか?」ブルブル

ヒルダ「夢から醒めるまで、寝ていたい…っ!」ブルブル



私はともかく、ゼルダ姫とヒルダ姫は、ガタガタ震えるばかりで、
休息を取るどころか逆に疲労困憊、満身創痍の状況です。酷いクマができています。
自分で自分の首を絞めていないでしょうか…心配です。

そのとき。
ドドドドドドド――――ッと、突如として、激しい地響き、駆ける音。

ゼルダ「――ひっ!?」ブルッ

ヒルダ「――――っ!!」ガタガタブルブル

思わず互いに抱き合う、ゼルダ姫とヒルダ姫。どう考えても、デイジー姫でしょう。

ゼルダ「いいい、一体何事ですか!?」サァッ

ロゼッタ「あ、そういえば。少し寝過ごしたせいか…
     昨日の開始時刻より30分ばかり遅れていますね」

ヒルダ「ひいいいぃぃ!?ま、ままままさか、それで激怒して乗り込ん、で――」

ヒルダ姫の顔色が、青色を通り越して土気色になっています。
…あ、目の色まで死にました。頼みます、戻ってきてください。ゆさゆさ。

ゼルダ「ヒルダ姫っ!こうなったら、土下座でもなんでもして許しを請うのですっ!
    いいですかヒルダ姫っ!デイジー姫…いえデイジー様が靴を舐めろと言ったら、
    満面の笑みをもって、言われた通り舐めるのですよ!」

ヒルダ「ワカリマシタ」

ロゼッタ「え、あの。ゼルダ姫――?
      昨日あれだけ自信満々に言っていた、ゼルダ姫を奮い立たせるはずの誇りとか立場とか、
      どちらのゴミ捨て場にお捨てになられたのですか?」

なんだか馬鹿な感想を口にしてしまう私をよそに、
扉が強く、強く叩き開けられ、デイジー姫が乱入してきます。

すぐさま、ゼルダ姫とヒルダ姫が、なけなしの元気を振り絞って。

ゼルダ「大変申し訳――――」

ヒルダ「生まれてきてごめんなさい、どうか――――」











デイジー「ほんっっっっっとぉぉぉぉ――――――――――――に、
      すんませんっしたあああぁぁぁぁああ――――っ!!」ドゲザ

ロゼッタ「」

ゼルダ「」

ヒルダ「」

ゼルダ姫が、口を、ぱくぱく、させています。
わかります、わかりますよ、その気持ち。



ロゼッタ「…………『気絶するか、寝るか、はたまた命を落とすかで…
      意識を一度失うと、自己暗示が解ける』…?」

デイジー「そぉー!そぉなの、100点満点の理解、ありがとねロゼッタぁっ!!
     暗示が一度掛かると、自分の意志だとどうしようもできなくてっ!
     ただ、自ら暗示を解こうとはしないけれど、
     眠くなって自然と寝る分には割と素直みたいだから、私――っ!」

ゼルダ「は、はは、は」
     
ゼルダ姫が、ぷつんと緊張の糸が切れたのか、
へなへなと座り込んでしまいました。

乾いた笑いをしばらく続けたあと、大きな大きな、ため息、ひとつ。
警戒は無駄に終わってしまいましたが…心底、安心していることでしょう。
ほら、目元が潤んでいます。

ヒルダ「う…うわあああああぁぁぁあんっ!よかった、よかったです――――っ!」

ロゼッタ「ちょ、ちょっとヒルダ姫。感極まって抱き着かないでくださいな」

ヒルダ姫、泣きじゃくります。…仕方ないですねえ。
思う存分、泣いて、泣いて、すっきりしてください。
優しく背中をさすって抱きしめてあげると、一層激しく泣き始めました。

デイジー「…………」

ロゼッタ「…………」ジッ

未だ、デイジー姫は――委縮したまま、土下座を続けて、
視線を下へ下へ持って行こうとしています。
彼女は…心底、私達を傷付け、殺めたことを…悔いて、嘆いているようです。

デイジー「……ねえ、みんな。私、少しは、みんなの役に、立てた、かな?」

ロゼッタ「やっぱり、デイジー姫は、素晴らしいファイターだったのですね。
      …ええ、デイジー姫の特訓、とても厳しくて…ために、なりました」

デイジー「――――そっか。それなら、まあ、悔いはない、かな。
      ――――ロゼッタ。ゼルダ。ヒルダ。

      ――――これまで、色々と、ありがとう、ね。
      ――――楽しかった。本当に、本当に…楽しかった」グズッ

ロゼッタ「…え?一体、なにを――」





デイジー「ごめん。私もう、ここには――居られないよ。
     ――これは、チカラを使うと決めたときからの――既定事項」

ロゼッタ「…本当に――何を、言っているの、ですか?」



おもむろに立ち上がったデイジー姫が、一歩、二歩、三歩。
まるで「ちょっと用事を思い出したからじゃあね」と言わんばかりの軽やかな足取りで、
ごく自然に去っていくもので…思わず、5秒ほど、固まってしまいました。



大切な物を、手の指の隙間からこぼれ落としそうな気がして、
慌てて、必死に、全力で。
デイジー姫を追いかけ、その腕を掴みます。



ロゼッタ「答えてください、デイジー姫っ!!」



掴まれ動きを止められて、それでもこちらを振り返ることなく、
デイジー姫は、淡々と口を開きます。

デイジー「気持ち悪かったよね?軽蔑し、憎悪したよね?『あの』私。
      みんなのこと――たくさん、たくさん、殺したんだ。
      こうなること、わかってた。私、馬鹿で、融通利かないから」

ロゼッタ「それはデイジー姫の過失ではありません!むしろ貴方は被害者でしょう?気に病む必要なんて――」

デイジー姫は、相変わらず、遠い彼方を見ながら。

デイジー「あるよ。幾ら唆されようが…最終的に、『肉体暴走』することを選んだのは、私。
     知性暴走なら、まあ死人が出ることはなかったんだけどなー。あーあ、残念―。
     まあ、絶交されること覚悟で、納得して使ったけど、さ。

     …ゼルダの激怒も、ヒルダの絶望も、至極尤もだよ。
     気付いていないかもしれないけど、とんでもない恐怖を、
     私は――みんなの頭の奥に突き刺したんだから。

     この恐怖、完全に消えることはないよ。あのピーチですら、今でも――
     私の言動の中にチラッと暴走の気配を感じれば、息が止まるって言ってたし」

ゼルダ姫、ヒルダ姫が――まだ怯えを見せながら、デイジー姫の方をみやります。
――孤高の、姫を、みやります。

ロゼッタ「…それで。ここから離れて、どうするおつもりですか?
     そもそも、今は結界にみんな閉じ込められている状況なのですが」

デイジー「脱出のための共闘は惜しまないよ。
      でも、一緒に同じ場所にいるのは、やめにしよう。
      みんなが特訓するときは、私は部屋にこもってる。
      出くわさないようにうまいこと食事は運び込むから、
      そっちはそっちで、こっちはこっち一人で…頑張ろう。
      脱出するまで…脱出してから、も」

…なんでしょう。うまく言い表せないのですが…こう、もやもやとした怒りが、
沸々と胸の奥底から湧き上がってきます。

ロゼッタ「それは…なんとも、馬鹿げた話ですね。
     私は、デイジー姫と…これからもずっと、仲良く――」



デイジー「――――無理だよっ!!」



ロゼッタ「…っ!」

デイジー「もう、そんな呑気なことを言える資格なんて、私には残ってない!
     一方的に、みんなの心を踏みにじった罪は、消えてくれないっ!
     みんなと顔を合わせるたび…血みどろになったみんなが脳裏に蘇って、
     胸が張り裂けそうで張り裂けそうで、堪らないよ!」

ロゼッタ「……」

デイジー「何度命を奪ったと思ってるの?
     ゼルダ75回、ヒルダ76回、……ロゼッタ229回だよ!?
     それも、安らかな死とは程遠いありさまで!」

あ、横の2人がまた気分が悪くなって口元を抑え込んでしまいました。
ヒルダ姫に至っては、私の背中に隠れてブルブル震えています。
い、一応確認しておきますが、その位置からリバースしないでくださいね?
復活すれば衣装も元通り?それは流石にレディを馬鹿にしています。

改めて数を突き付けられると、得体のしれない薄気味悪さ。
…でも、どうしたことでしょう。
皆さんに「異常だ」と言われている私、ことロゼッタ。
いまいち、絶望感が襲ってきません。

というか、どうして3人の中で、ゼルダ姫が一番死亡回数が少ないんですか!
そしてどうして私だけ飛び抜けて多いのですか!?むしろ驚きの方が大きいです!

…はい、2人の肩代わりで特訓をし続けたからです、終わり。
なんだか理不尽です。
     


嗚咽を漏らしながら、ただ泣くだけのデイジー姫。
デイジー姫は、根が優しいですから。本当に。
自責の念に駆られて、駆られて。どうしようもない状態なのでしょう。

ゼルダ「…そう、ですね。私たちも調子に…乗って、いました。
    金輪際、あの姿の貴方は見たくない。今の状態の方が好ましい――」

ヒルダ姫も、おずおずと、ゆっくりと、か細い声で問いかけます。

ヒルダ「……で、でも。その。もう、あんな暴走状態になることはないんですよね?
    あの狂暴だった時のデイジーとはとても仲良くはやっていけないかもしれませんけど…!
    今の、穏やかなデイジー姫となら、問題なく友達として、友人として――」



――違う。

――違う。



ロゼッタ「……違い、ますっ!!」バッ!

ヒルダ「!?」

ヒルダ姫には悪いですが、なんとか振り絞ろうとしていた声に横槍。
それでは駄目です、2人とも。全然、デイジー姫のことを想えていません。

ロゼッタ「ゼルダ姫っ!ヒルダ姫っ!失礼ながら、穏やかな状態のデイジー姫を慕い、
     野性味を浴びた状態のデイジー姫を憎む…などといった使い分けは
     私は…私は、承服しかねます!」

2人の方を向いて、赤裸々に想いを語る。語らなければなりません!

ゼルダ「…どう、してですか?」

ロゼッタ「どちらも、デイジー姫が人生で得てきた人格、姿ではないですか!
     どちらが正義でどちらが悪だとか、優劣があるだとか、
     価値のない、秘めておくべき人格があるとか…そんなこと、おかしいです!」

デイジー「……っ!」

デイジー姫が、一瞬息を、飲む。しかし、すぐに真顔に戻ります。

デイジー「……ありがとう、ロゼッタ。私をそこまで庇ってくれて。
     でも、私自身、『裏の私』の逸脱ぶり、危険性は重々承知してるから。
     他人に庇ってもらえるようなもんじゃない。
     …だから、余計な事、しないでほしいな。
     もっとも、表の方の私との友達付き合いがしたいっていう――
     ゼルダ姫やヒルダ姫の願いも叶えることは無理なんだけど」

ロゼッタ「デイジー姫、貴方まで、なんてことを言うのですか!
     貴方自身が否定してしまったら、何もかも――」

デイジー姫が、ゆらりと、立ち上がりました。



デイジー「――――れ」

ロゼッタ「……え?今、なんと――」





デイジー「――――黙れっ!」ゴウウウッ!!





ロゼッタ「…………なっ!?」ゾワッ!

ヒルダ「…ひっ!!!!」カキーン!

ゼルダ「…嘘……!ま、まさか、貴方――!!」

デイジー「何?ビックリしたか?所詮、同じ『私』だからな。
     『裏の私』の思考をトレースし、殺気を真似ることくらい…できるさ。
     まあ、自己暗示不足のせいで、戦闘力は底上げされてないけど、さ」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・

まさか、表の状態のデイジー姫でも、この位の造作ならできる、だなんて。

そのまま、猛烈な眼光、殺気をもって私を睨み据えます。

たちまち、私は、凍えきってしまいます。

ロゼッタ「…………くっ――」ジリッ

デイジー「だから、無駄なことはやめろ。
     ゼルダ姫たちと同調するのも、当然許さない。
     私とは…そうだ、言ってみれば今後はビジネスパートナーとして、
     最低限の助け合い、利害一致による協力関係さえあれば――」



ロゼッタ「――――う…あ…………」ガクガク



自分の意志が、呑み込まれていく。
強者に従うまま、喉元で意見が押し戻される。
わたし、には。どうする、ことも――。






――――それで、いいの?





ロゼッタ(…………っ!!)

よいわけが、ありません。





――――ママは、そんなに、弱い人じゃ――ないよね?
――――困っている人のためなら、人一番頑張れる、人だもん。



ロゼッタ(…………)

ロゼッタ(……………………)

ロゼッタ(…………………………………………ありがとう、サヤカ。
     もう少し…いえ、まだまだ――私は、頑張れる!)

ほんのちょっと、夢の世界にでも飛び立っていたのでしょうか。
一瞬だけ下を向いて、小さくひとつ、息を吸って、吐く。

目の前に立ちはだかる、デイジー姫を。
顔で怒って、心で泣いている、彼女を、しかと、二つの眼で睨みつけて。



デイジー姫が、私を、そう睨みつけるように――!!





ロゼッタ「――いい加減に、しなさいっ!!!!!」ギンッ!!





デイジー「――――っ!?」



デイジー姫の、信じられないという感じで面食らう顔。
それに優越感を得るわけでなく、考えを改めようともせず。
私は、気持ちと気合をありったけ篭めて、声をデイジー姫にぶつけます――!

ロゼッタ「デイジー姫!結局貴方は、やはり私たちのことを信じてくれていない!
     自分ひとりで何もかも判断して、全部背負って!
     私たちの言葉に耳を塞ぐだけ!

     自分の気持ちを、分かってもらおうとする努力を怠って!
     心配でならない私たちの気持ちを、理解する努力を怠って!
     
     ならば、こちらにも考えがある!
     幾ら嫌だと、関わりたくないと駄々をこねても!
     救いの手を、声を、拒絶しつづけ切り裂き続けても!

     手を差し伸べ続けることを、決してやめない!
     齧り付いてでも、羽交い絞めにしてでも、深淵の闇から引き摺りだしてみせる!」

デイジー姫が、固まっています。戸惑っています。
まさか、私に反撃されるとは思ってもみなかったのでしょう。
感情の奔流に、私が呑み込まれると――心底思っていたに違いありません。

デイジー「な、なにを急に、らしくもない――」

ロゼッタ「――らしくも」

激情に任せて、体が勝手に動く。

ロゼッタ「――ないのは」

信じられない、力が、湧いてくる。
懐かしい愛娘には、感謝、感謝です。



ロゼッタ「――貴方だ、デイジー姫っ!!」ガンッ!



デイジー「――ぐっ……何!?」ダンッ!

ゼルダ「――なん、ですって」

不意を衝いたとはいえ、激しく地を蹴って俊敏に動いた私の体は――
固く握った拳をこめかみにクリンヒットッ!
…させることはできず咄嗟に両手で受け止められたものの、
かなりの勢いを殺し切れずに、大きくズサァっと後退させる。

そのままダダッと追い縋り、全身全霊で突撃しながらの――肘突きっ!
すぐ後ろの壁に叩きつけられ、さしものデイジー姫もカハッと空気を吐きます。
そのまま、凄まじい剣幕で、伸ばした腕をドンッと彼女の肩に突き付け――。

ロゼッタ「……………………」ウツムキ

デイジー「……ロ、ロゼッタ?」






ロゼッタ「……こひゅぅ……こひゅぅ――」ペタン

ロゼッタ「すいま、せん。電池、切れです」ゼェゼェ

ゼルダ「」

ヒルダ「」

デイジー「」



肩に押し付ける、どころか軽くタッチすることも出来ず、
火事場の馬鹿力の反動で、全身から力が抜けて…
激しくぜぇぜぇ息を吐きながら、デイジー姫の足元に膝を付いてしまいました。
ギャグ的に言うなら目がグルグル~、の状態です。全然、格好が、付きません。

ロゼッタ「……ごほごほっ――で、でもま、あ。
     今のデイ、ジー姫、が。『表の状態』であったと、して、も。
     力量差が、思い切り、あるの、ですから、ね。
     とう、ぜん、でした、か――ごほっ…」

デイジー「…………」

デイジー姫が、心配そうな顔をして、私を見つめています。
手を差し伸べようとしゃがみ込もうとして、躊躇して、そんな感じ。
…仰天したせいで裏の顔のなりきりが途切れたのか、よく知る朗らかなデイジー姫です。

ロゼッタ「――――言って、おきま、すが、さっきの、私の、主張、は、本心、ですよ」

デイジー(ビクッ)



そこに映るのは、後悔、恐怖、怯え、色々な感情が混ざる表情。

まだ体が本調子ではないですが、五臓六腑を奮い立たせて、なんとかかんとか立ち上がる。
そのまま、デイジー姫に一歩一歩、ふらりふらりと近づきます。
体中痛みますが、目線は決して逸らさない。

デイジー「…い、嫌。やめ、てよ、ロゼッタ。…こっち、来ないで!」

両腕で自身を抱きしめて、悲嘆はまだまだ尽きない様子。

ロゼッタ「やめません。デイジー姫とは、これまでもこれからも、
     親友で、居たいですから」

デイジー姫が、怯えるまま後ずさる。
その分だけ、――いえその分以上に、私は歩を進め、距離を減らす。

デイジー「何度も、何度も、何度もっ!
     ロゼッタ、貴方の命を奪ったのよ!?」

ロゼッタ「残機があった、とそれこそ何度言えば分かるのですか。
     それに、貴方は――その回数まで、しっかり覚えてくれている。
     1回1回、その瞬間を軽んぜず、脳裏に刻んだということでしょう?
     むしろ、私の方が『辛い思いをさせて本当に御免なさい』ですね」

デイジー「ちが…ちがうよ、そんなに私…思いやりのある、優しい人間じゃない…………
     自分の力不足を他力本願で埋め合わせようとしたロクデナシで…」

ロゼッタ「私にとっては十二分に、優しさに満ち溢れた人ですよ?
     …『表のデイジー姫』も、『裏のデイジー姫』も、ね」

デイジー「……っ!!」ハッ

ロゼッタ「私の知るデイジー姫は、そうですね…。

     表では、はっちゃけていて、ちょっと仕事に不真面目で…
     真面目に政務を執るピーチ姫からは頻繁に呆れられていて。
     突拍子もないことを言って、周囲を振り回したりして。
     でも、どんなときでも前向きで、めげなくて、ムードメーカーで。
     困難に立ち向かおう、強敵にも果敢に挑もうっていう強い意志の塊で。
     ピーチ姫や私を、その元気と勇気で数多く助けて、救ってくれた。

     裏では、視界に入る者すべて、思い通りにならないと済まない苛烈な人で。
     最適解を妨害する者、導出に意義を唱える者には遠慮なく制裁するスタンスで。
     …でも、私たちの無理強いと自分の未来とを天秤にかけて、一度決めた事なら。
     たとえそれが、『表のデイジー姫』の耐え難い苦痛、苦難になったとしても、
     少しでも早く私たちが経験値を積めるように、冷酷に徹することができて。
     自分本位のようでいて、あくまで他人本位の本質は変わっていない。

     おまけに、ゼルダ姫も白旗を上げる、凄まじい戦闘力――
     これを遺憾なく発揮できる、素晴らしいファイターであることに気付かされました。
     ……私は、1人の友人として、とても嬉しく、誇らしく思います」

デイジー姫が、目尻にぎっしりと、涙を蓄えています。
どんな葛藤が、これまであったのか。私などには知る由もありませんが。

優しく、優しく。デイジー姫を、ふんわりと抱き締めました。
今は、これだけで、十分でしょう。

ロゼッタ「ですから。親友でいられないだなんて、
     悲しいこと、言わないでください。寂しいこと、言わないでください。
     私たちはそんなこと耐えられませんし、貴方だってきっと耐えられない。

     これからももっと、デイジー姫のことを知っていきたい。
     デイジー姫に、私たちのこと、もっともっと知ってもらいたい。
     呆れられたり、時には喧嘩することもあったりするでしょうが、
     ずっと親友でいたい。

     ――この願い、どうか叶えて頂けないでしょうか?」ギュッ

デイジー「――――――――う―――あ――――――――」

ロゼッタ「最後に決めるのは、『表のデイジー姫』でも、『裏のデイジー姫』でもない。
     全部ひっくるめて、貴方が決めちゃってください、『デイジー姫』!」

デイジー「――――――――――――――――――――――――
     うわああああああああああぁぁぁぁ――――ん!!!!!!」



堰を切ったかのように、たちまち涙雨、号泣し出すデイジー姫。
ああ、本当に、本当に……お疲れさま、でした。

ひっく、ひっくと、デイジー姫は私の腕の中で、まだまだ泣き続けます。

デイジー「グズッ…マリオに、縋って、わだじ、強く、なったの。
     厳しい、条件付きとはいえ、確かに、強く、なったの。

     でも、お父様亡き後のサラサ・ランドで政務に本格的に取り掛かってみたら…
     性格の苛烈さが仇となって…表の私がびっくりするくらい、裏の私に怪我を貰う人たちが続出して!
     もともと、それほど仲の悪くなかった大臣や役人たちにまで、愛想尽かされて!

     お城に生き残った1割の、更に半分が下野しちゃって!
     一体私、何をやってるんだろうって悔やむばかりでぇっ!!」

ロゼッタ「…今は、どうなのですか?」

デイジー「……私のこの二面性を受け入れてくれている人――
     そんな人たちだけで、ほぼ全ての役職役員が構成されてる。
     そのおかげで、ようやく軌道には乗り出したけど、でも…!」

ロゼッタ「なら、よいではないですか。デイジー姫のことですから、
     苛烈になりながらも真面目に改革を図ったのでしょう?
     理屈で負けているのにそれに異論を唱えて、女王に反撃されて。
     それで下野するというのなら、それまでの人材だったということですよ」

ゼルダ「ロ、ロゼッタ。施政者でないとはいえ、ズバッと斬りますね…。
    ヒルダ姫、彼女の言い方を真に受け過ぎてはなりませんよ。
    上に立つ者としては、清濁併せ持ち、吟味に吟味を重ねて…」

ヒルダ「は、はい、わかったようなわからない、ような…」

むう。そんなこと、今言わなくてもいいじゃないですか。

ロゼッタ「デイジー姫。ともかく、貴方が『仮面の姫』となるすべを身に付けたことは、
     何ら恥じるべきことではない、と私は思います。むしろ誇るべきです。

     ただ、仮面という表現の仕方はちょっと違いますね。
     どんな姿であろうとデイジー姫なのですから。切り離すことなどできないのですから。
     そこを正々堂々と主張して主張して、認めさせればよかったのですよ。
     ええ、認めさせてやりましょう!私も微力ながら、協力させていただきます。
     困ったときは、いつでも仰ってください」



デイジー姫は、泣きながら、こくこく、とうなずくばかり。



ロゼッタ「離れ離れだなんて提案は撤回してくださいね。
      これからも、よろしくお願い致しますね!」



デイジー「うんっ!――うんっ!!ロゼッタが親友で――本当に、よかった」ポロポロ

ゼルダ姫とヒルダ姫も、思わず貰い泣きしています。
これで、一件落着といったところですかね。

ロゼッタ「それでは、とりあえず朝食としましょう。
     皆さん、お腹がすいたことでしょう?
     デイジー姫も、いっぱい食べて、元気になって下さいね!」

デイジー「うんっ!――うん!!」ポロポロ

ロゼッタ「さあ、私たちの友情も雨降って地固まる。弾みも付きましたし、
     明日からの特訓も、是非お願い致しますね、デイジー姫!
     少しでもデイジー姫のご期待に沿えるよう、全力を尽くします!」グッ

デイジー「うんっ!――うん!!










     ――――――――――――――――うん?」ピタリ

ゼルダ「うん?」

ヒルダ「うん?」




デイジー「……ごめん、それって、どういうこと?」



はて、デイジー姫が泣き止んで、素の状態に戻っています。
それは嬉しいのですが、一体どうしたというのでしょう。



ロゼッタ「え?ですから……





     前の日から自己暗示が必要、発動したら就寝まで効果が持続するということは…
     あの特訓、1日おきになら問題なくできるということでしょう?
     効率はもともとの予定の半分ですが、それでも十分やる価値はあると思います!」フンスッ

デイジー「ファッ!?」

ゼルダ「」

ヒルダ「」

ゼルダ「じょ、冗談ではありませんっ!もう、あのような拷問はこりごりです!
    どんなことがあろうとも、デイジー姫を暴走させてはならない!」マッサオ

ロゼッタ「私の話をちゃんと聞いていましたか?
     そういう、二面性の一方を否定すること自体が誤りなのですよ?」

ゼルダ「い、いえ、流石にそれとこれとは話が別でしょう!?
    特訓に本気にさせることはよろしくない、と言っているのですよ!!」

デイジー「そ、そーだよロゼッタ!今回ばかりは、ゼルダの主張が100%正しいよ!」

ヒルダ(こくこくこくこく)

ロゼッタ「むむぅ…では、私だけでもいいので鍛えて頂けませんか?
     そのように自己暗示をすれば解決するのですよね?」

デイジー「ま、まあ、ロゼッタのみに絞った特訓をするって自己暗示くらいなら、
     できなくはない、とは思うけど…やったことはないけど…」

ゼルダ「……付き合いきれません。そんなに死にたいのなら勝手にやってください。
     あとで泣いて後悔しても遅いですし助太刀も一切しませんよ」プイッ

デイジー「ゼルダぁ、ロゼッタを諦めさせるの、協力してよ…」

ロゼッタ「……………………」

ロゼッタ「よし、なんだかワクワクしてきました!デイジー姫!
     とりあえず、残りの期間を全て私に充てて頂けるのならば、
     ゼルダ姫 く ら い なら実力で追い抜けますよね!頑張ります!」

ロゼッタは ちょうはつした!▼

ゼルダ「は?」イラッ

ロゼッタ「デイジー姫の指導は、ゼルダ姫 な ん か とは比べ物にならないほど
      的確でお上手ですからね!最長で90日もあれば、
      外の世界で何年分、いえ何十年分も特訓するのと同じ価値がありますよ!
      こんな特訓を独り占めできるだなんて、なんて私は幸運なのでしょう!」ウットリ

ゼルダ「あぁん?」ギロッ

ロゼッタ「どうしたのですか、ゼルダ姫。
     特訓から尻尾を巻いて逃げ出す貴方には、関係のない話でしょう?
     私は勝手に強くなりますので、どうぞどうぞ、安全第一で過ごしてください」

ゼルダ「誰が逃げると言いましたか、誰がっ!
    よいでしょう、そこの馬鹿な女を黙らせるために、
    私も特訓を続行しようではないですか!後悔することですね!
    デイジー姫、さあ、さあ、さあっ!」ズイッ

ゼルダは ちょうはつに のってしまった!▼

デイジー「ゼルダァ――ッ!?」

ヒルダ「」

デイジー「」チラッ

ヒルダ「わわわわわ私は絶対に嫌ですからねっ!逃げますからねっ!?
    後ろ指差されようと、馬鹿にされようと、断固拒否しますからねっ!!!」ズサッ

デイジー「う、うん。わかってる、わかってるから。
     そんな怯えた目で私を見ないでくれるかな」

ロゼッタ「では朝食を持って参ります!私にお任せください!
     みなさんはお疲れでしょうから、ここで待っていてくださいね!」

バタン。

デイジー「…ふう。参ったな、こりゃ。ロゼッタにはかなわないや。
      ――――――――――――――――――――――――ありがとう」ボソッ

ヒルダ「…凄いですね、ロゼッタは。…あれ、ゼルダ姫?また顔が青く…」

デイジー「今頃になって挑発の効果が解けて後悔しだしてるんじゃないかなー。
      なんだったら、私からロゼッタに『ゼルダはやめておく』って伝えておこうか?」クスッ

ゼルダ「いいいいりましぇんよそんな気遣い!」ガクガクブルブル

ヒルダ「…ふふっ」

デイジー(あれ?そういえば、何かの事故で血塗れたりしたら…私って
      ゼルダとヒルダの見分け、しっかり付くのかな…ま、いっか)

ヒルダ「…っ!?何ですか、この悪寒は!?」

ロゼッタ「お待たせしました!
     今朝は、割とフルーツが多めに出現してくれましたよ!
     脂っこく無くて、本当によかったです!

     あと、栄養のことを考えて、こちらも大量に用意しておきました!
     いくらでも飲んでくださいね!お代わりもすぐ作れますから!」トンッ




トマトジュース「1人あたり2Lもあるぞ」マッカッカ



ゼルダ「…………」

ヒルダ「…………」ウプッ

ロゼッタ「…あれ?どうしたのですか、2人とも。急に顔色を変えて、口元を押さえて…
     え?ちょっとトイレに行ってくる?い、いきなりどうしたのですか!?」



ダダダダダダダッ――――



ロゼッタ「何か、悪いことをしてしまったのでしょうか…?」

デイジー「そ、そうだね、私から見ても極悪非道なことをやったと思うよ」

雨降って地固まる!
なし崩しで、1日おきの猛特訓をすることに。
空いた日は空いた日で、普通の特訓をしてまいります!



…と、早合点していたのですが。



デイジー「嫌われずに済んで万々歳、となったら気が抜けて……
      やる気でなーい。遊びたーい。

      というか、これから1日おきにあのモードになるなら、
      インターバルはしっかり休む―。みんなも休め―」グダー

ロゼッタ「えっ」

ゼルダ「えっ」

ヒルダ「…?」



デイジー姫は、ベッドでゴロゴロ。だらけ切っています。
昨日の反動か、まったくもって戦闘準備をしていません。
昨日とのあまりの違いに、皆さん、目を白黒させています。

デイジー「あー。もともと、火事場の馬鹿力の凄い版、だからねー。
      結構次の日はくるんだよー。

      だるさMAX、やる気激減、最大パワー抑制、みたいな副作用がねー。
      ま、治らない後遺症みたいなのはないから、十分便利ではあるけどー」グデー

デイジー姫が、脚だけバタバタさせながら、枕に顔をうずめています。
その姿は、まるで子供のよう。微笑ましいという意味で。
ですが、私としてはちょっと不完全燃焼です。

ロゼッタ「そんな…」

デイジー「休むのも立派な特訓だよー。
     万全の状態で明日を迎えたほうがいいよー」

ゼルダ「そうですよロゼッタ、戦闘狂でもあるまいし」

ヒルダ「そうですそうです」

ロゼッタ「…あれ?私、割と引かれてますか?」ガーン



そこまで言われると、なんだか、恥ずかしくなってきてしまいました。

ゼルダ「しかし、そうなると…きょ、今日は一日、何をいたしましょう」ビクッ

デイジー「…別に、私の顔色伺わなくてもいいよー、はぁ…。
     分かってはいるけど、トラウマはトラウマ、か。
     そーだねー。私は…あ、引きこもってゲームでもしておくかー」ガサゴソ

ロゼッタ「ゲーム…?」



ふらっと立ち上がったデイジー姫が、トコトコ歩いて行って。
オシャレなリュックの中をあさって、取り出したのは――
すこしちいさな電子機器でした。それは、まるで――








ロゼッタ「…お弁当箱?」

デイジー「…あ、間違えた。これ初代ゲームボーイだった。こっちこっち…
      ぱんぱかぱーん!『ニンテンドーDS lite』―!ゲーマーの必需品だねー!」

ゼルダ「その間違いは絶対におかしい」

ヒルダ「ゲームって、本当の意味での携帯ゲーム機ってことですか…
    現物を見るのは、初めてですが…」

まじまじと、私たちはその機器を見やります。

ロゼッタ「デイジー姫は、その『げぇまぁ』としても凄い実力をお持ちなのですか!
     素晴らしいです!」

デイジー「…ごめん、ほんとごめん。調子に乗った気はしないけど
     そういう言われ方をすると凄まじく恥ずかしい」カアァ

ばつの悪そうな顔をしたあと、そのままゲームをプレイする準備に入ったもよう。
専用のケースファイルに入れられた、カードのようなものをあれこれ見ていきます。
その数、10、20、…………お、多くないですか!?

ゼルダ「い、一体どれだけの数があるというのですか?」

デイジー「DS 用のソフトだけでも100以上あるよー。
      他にもGB、GBC、GBA…任天堂の携帯ゲーム機用のソフト揃ってるよー。
      旅のお供として常備してるんだー。
      定期的に任天堂本社に裏取引しに行く甲斐はあるよー」ペラペラ

ゼルダ「」ドンビキ

ヒルダ「ゲーマー、です…」



ゼルダ姫とヒルダ姫が引いています。

デイジー「なんだったら、対戦でもするぅー?
     カートリッジひとつでダウンロード対戦できる機能、
     備わってるソフトもそれなりにあるよー?」

ゼルダ「…そ、その。ちょっと、興味があまり……。
    そもそも、ソフトはともかく、携帯機そのものは人数分なければ、
    当然遊べないでしょ――」



ドサッ!



デイジー「はい、4人対戦をデフォとして、布教用の本体3つー」サッ

ロゼッタ「わぁ」

ヒルダ「」

ゼルダ「」

デイジー「経験の差は当然あるだろうけどー。
     ずるっこはなしってことで、事前にレクチャーはするからさー。
     あと、3対1で掛かってきてもらって構わないよー、あははー。

     …ねえ、その冷めた目はやめてほしいです」

3人して、顔を見合わせます。

ゼルダ「…どうしますか?正直、興味が本当にまるで湧かないのですが」

ヒルダ「でも、やってみたら案外気に入るかもしれませんよ?
    そ、それに。デイジー姫には色々とご迷惑をお掛けしたことですし、
    午前中だけでも、付き合ってあげるというのも…」

ロゼッタ「そうですね、この奇天烈さも、デイジー姫の持ち味です。
     きっといい気分転換になりますよ。
     未知の遊びにちょっと期待しています」

信じられない、という目を向けてくるゼルダ姫。
い、いいじゃないですか。

ゼルダ「…はあ、わかりました。私だけ悪者にはなりたくありませんから。
    付き合ってあげましょう」

デイジー「あはは、相変わらず偉そうだねー」

ゼルダ「めめめ滅相も御座いません!」ズサァ

デイジー「それをやめいと言っとるんですが。
     じゃあさ、好きなソフト、選んでちょうだいな。
     任天堂の特別製だからそう簡単には壊れないけど、
     あまり乱雑には扱わないでねー」

ゲームの素人たちで、あまりどういうゲームジャンルかもわからないまま、
ゲームを選ぼうとします。それをデイジー姫が遠目から、ニヤニヤと眺めます。

ゼルダ姫が「幼稚な絵ですね…」と思わず呟いて。
デイジー姫が「そういったゲームにこそ掘り出し物は山ほどあるのー」と、のほほんと答えます。
ヒルダ姫は、どちらかというと数に圧倒されていて、あたふたして決めれられない。

さて、私も、面白そうなものを頑張って選んでみましょうか…。



ロゼッタ「……あっ!これにします!なんだか、面白そう!ティンと来ました!」

デイジー「お、ロゼッタは決断力があるねー。どれを選んだのかなー?」

ロゼッタ「これです!」サッ



TETRIS「デデーン」

デイジー「」



ロゼッタ「デイジー姫?一体どうしたのですか?」

デイジー「……組合せ変更。
     ロゼッタ1人に対して私たち3人、のチーム戦ねー。
     それじゃあ、簡単にルールと戦術をレクチャーするよー」

ロゼッタ「!?」

ヒルダ(…………えっと、これをこうして…あれ、ラインが消えてくれません。
     …ああっ!あんなところに隙間が!どうリカバリすれば…!)ピコ ピコ

ゼルダ(ふむ、とりあえず一筋だけ残してしっかり埋めて、ホールドしておいたIミノで
    テトリス消しを行う。この繰り返しですね。…あまり作戦はないのでは。
    ロゼッタ虐めになってしまいそうですね)ピコピコ

デイジー(T-spin double!からーの…T-spin triple!ついでにテトリスいっちゃうよー!
      
      悪いね、初心者といえど――空間把握能力の高いロゼッタ相手だから、
      ちょっと…いや、むっちゃくちゃ本気出すよー!これでどうだー!)ピコピコピコ

    



ロゼッタ「T-spin triple , T-spin triple――テトリス――10REN――
     T-spin triple, T-spin triple, 15RENパフェ――
     T-spin triple, T-spin triple, 気分転換に17REN――」シュババババ

デイジー「ぎゃああああああ!この子、プレイ歴5分の癖に、
      既に基本ハードドロップしか使ってないぃー!」チュドーン

ヒルダ「あ、負けちゃい…ました」

ゼルダ「」

ロゼッタ「なるほど、T-spin triple back to back T-spin tripleを毎度しっかり仕掛けながら、
      残りのミノで臨機応変に攻撃するゲームなのですね。面白いです!」パアアアア

デイジー「違う、違うよ!?その安直な作戦が超速で100%決まりまくるのは
     ロゼッタだけだからね!?
     何が悲しくて、『10秒おきの13段攻撃のついでで』通常攻撃を食らわなきゃいけないのさ!?
     ち、違うゲームにしよう、ねっ!?」

ロゼッタ(シュン)ションボリ

ロゼッタ「…では、こちらで」サッ

デイジー「…うん、ごめんね、無理言っちゃってー。
      でも、さすがにもうこんなことには…」









ぷよぷよ「 セー↑ ガー↓ !」

デイジー(アカン)

デイジー「フィバ伸ばしなんかさせてられっか!
      ええい、怖いけど通ルールで勝負だー!
      ゼルダにヒルダ、波状攻撃を仕掛けるよーっ!」ピコピコ

ゼルダ「は、はい!えっと、これで…5連鎖、ですか?」ハッカ!

ヒルダ「2連鎖ダブル、です!」ハッカ!

デイジー「モタモタしてるけど…呑み込みが結構早いね、いいよ!」

ゼルダ「いくら初心者といえど、ハイラルのトップですから。
    階段積み、とか鍵積み、とかいう組み方くらい、楽に覚えられますよ」フフン

デイジー(なんだか微妙にシュールなことをのたまうゼルダでした)

ロゼッタ「ぐっ、このジャブは食らっていられません!
     仕方ありません、対応します!えい、それ!」ハッカ! ハッカ!

デイジー「よしっ、大きく形が崩れた!卑怯と言いたいなら言うがいい!
     はいっ、5連鎖!もう主砲を撃つしかないよ!」ダンッ!

ロゼッタ「…仕方ありません。10連鎖、参ります!」ハッカ!

ゼルダ「じゅ、10連鎖!?私たちではとても対応できませんよ!?」

デイジー「まっかせなさーい!そのくらいなら――ほい、ほいっと。
     それっ、おっかえしだー!11連鎖くらい行ったでしょ!
     主砲を撃たせて撃ち返す!これがこのゲームの醍醐味だ!」ハッカ!

ロゼッタ「正確には10連鎖ダブルみたいですね!」シュババババ

デイジー「…お前さん、いつ凝視してたんや」

ロゼッタ「まあ、これでも返されてしまうので…」シュババババ

デイジー「そ、そうだよね!…って、え、なに、そのミラクルな不定形の繋ぎ方…………
     いやもっと千切ろうよ、おかしいよ!?」

デイジー(あ!でも、このままなら折り返しで1個足らない!連鎖数がガクッと落ちるよ!
     気付いていないみたいだ!にひひひひ…)

ロゼッタ「発火、間に合いましたっ!」カチッ!

ヒルダ「……あ、13段目から青が落ちてきました」

デイジー「え゙」

ゼルダ「ま、まさか最後まで繋がって…」

ロゼッタ「17連鎖ダブルで返します」ババババババヨエーン!

デイジー「」👑👑

ヒルダ「」👑👑

ゼルダ「」👑👑

デイジー「ははははは」

ゼルダ「ふふふふふ」

ヒルダ「…グズッ」

ロゼッタ「…あ、あの?」





デイジー「……やってられっかー!!落ちゲー禁止ぃ!」

ゼルダ「異議なし!」

ロゼッタ(シュン)ションボリ

ボンバーマン「バーイ ハドソンッ!」



デイジー「…ふふふ。死にたいらしいな。殺してやるよぉー」ボムッ ボムッ

ロゼッタ「あ、あの!デイジー姫!
     どうして私ばっかり爆弾で狙うのですか!?
     ちょ、ちょっと!蹴ってくるのはやめてください!
     嫌ぁ!なんだか微妙に溜めてありますよ!?」ダダッ

ゼルダ「何を言っているのですか、今は個人戦でしょう?
    デイジー姫の攻撃軌道上で貴方がノロノロしているだけでしょうに」ダダッ

ヒルダ「しかし、ロゼッタ。
    空間把握で、爆弾の位置くらい…らくらく察知できるはずなのでは?
    …というより、リアルタイムの操作ゲームなら敵なしのはずなのでは」

ロゼッタ「互いに独立した空間情報が戦術のほぼ全てを占めるゲームなら、ですね!
     残念ながら、皆さんの爆弾数や特殊能力、更に設置された爆弾の火力など
     覚えていられません!互いの干渉領域も被り過ぎています!」アワワ

デイジー「…………どれ?」ボムッ

ロゼッタ「ひっ、爆弾!逃げないと――きゃあああ!?」ウワァー

デイジー「あらー、私の爆弾の火力を過大評価して逃げようとするあまり
      無理して爆風につっこんでるー…って、うわぁ!?」ウワァー

ゼルダ「よそ見するデイジー姫にお土産です…あ、キックがばら撒かれましたね。
     拾いに行きま――」フフ



ヒルダ「壁越しグローブ、えいっ」

ゼルダ「」ドカーン



ヒルダ「フッ」

ゼルダ「やってくれましたね、ヒルダ姫――っ!」ワナワナ

ロゼッタ「こ、これが友情破壊ゲーム…!」ブルッ

北京オリンピック「On your mark...」



パアァン!

ロゼッタ「はあああああああっ!!」ガガガッ

デイジー「はははっ、遅いおそーい!そして私のソニックは速いぞー!」ガガガガガッ

ロゼッタ「ハァッ…デイジー姫っ!おかしいです、このゲーム!
      マリオが…マリオがっ!100メートル走るのに10秒以上掛かっています!
      まるで…まるで一般人ではないですか!」ガ゙ガガッ

デイジー「そこは許してあげてちょ」

ロゼッタ「ま、まさか世界の圧力が掛かっているとでもいうのですか…!恐ろしい…!」ゴクリ

ゼルダ「これは酷いですね。デイジー姫、貴方、遅すぎますよ。
    100メートル走るのに12秒も掛かるだなんて。スピードタイプの名が泣きますよ」

ヒルダ「アスリートとは思えない遅さですね…ピーチ姫と仲良く最下位・7位フィニッシュです」

デイジー「腕の悪さを私のせいにしないでくれるかなー」

ロゼッタ「それにしても、こちらのゲームは…えっと、デイジー姫曰く、
      オリンピック地方で実際に行われた大会を再現しているのですね」

デイジー「厳密には、『北京っていう伝承のみ残る地方で、もしも――
     オリンピックというスポーツの祭典が開催されたとしたら』っていう
     たられば的なゲームだけどねー」

ロゼッタ「…も、もしかして。いつか、私も操作キャラになったりするのでしょうか?
     嬉しいような、恥ずかしいような…!
     そのためには、私も大会に出るだけの力を身に付けなければいけませんね!」

デイジー「…あ、あー。そ、そうじゃ、ないかなー。うん。
      かんっぜんにセクシー担当を意識されてたり、
      一部スポーツ限定のゲストキャラなんていう『ありがたき名誉の差別』を食らったり、
      まさかそんな未来が待ってるなんてわけないよねー」

ロゼッタ「もう、デイジー姫ったら、そんなご冗談を言って…ふふふ」

デイジー「HAHAHA、さあさあ次に行こう」サササッ

ロゼッタ「は、はい……あれ?」





デイジー「あーそーんーだぁー!!だいまんぞーく!」バタリ

デイジー姫が、仰向けにベッドに倒れ込みます。
憑き物まるでない顔で、心の底から楽しんだよう。

ゼルダ「ちょっと待ってください。勝ち逃げなど許しませんよ!
    こちらはもうスタンバイできています!」

デイジー「ゲームはやらされるものじゃないやーい」

ヒルダ(思いっきりはまっていませんか、ゼルダ姫…
    ま、まあ。あまり娯楽という物に触れてきませんでしたからね。
    ゼルダ姫も…私も。のめり込む素質はあるのでしょうか)

デイジー「やるとしても、私はそろそろ自己暗示に取り掛からなきゃいけないし。
     今度からの暗示は、すんなりいくとは思うけどねー。
     もう操作方法は分かってるだろうから、3人で対戦しといてよー」

ゼルダ「むぅ…」

ロゼッタ「えっと、私はそろそろリアルタイムの画面に目が疲れてきたので、遠慮させていただきます。
      一人でじっくりできるゲームがあるならば、やってみるのもやぶさかではありませんが」

デイジー「…私が言うのもなんだけど、見事にゲーマーの第一歩を踏み出してるねー。
      一人でじっくりできる、かあ。じゃあ、ポケモンでもやるー?
      …はい、『ポケットモンスター ブラック』!
      周回用だから、セーブデータは消してもらって構わないよー」

ロゼッタ「…『ポケモン』?ピカチュウ選手やリザードン選手が該当する種族群のことですよね?
      どういったゲームなのですか?」

あと、「しゅうかいよう」って、なんでしょう。…集会用?

デイジー「舞台は架空の世界観の一地方。
      非力な一般人が、何十倍何百倍も戦闘力があるポケモンを、
      絶対服従のマジックアイテムで捕獲して、束縛して、連れ回して、旅をする。
      
      ポケモンに戦闘欲があることをいいことに『目と目があったら即バトル』が
      暗黙の了解となっている世紀末のロールプレイングゲームだよ。
      ポケモンを育てて強くして、相手からお金を巻き上げながら進んでいくんだ。
      たとえ相手がジェントルマンや園児でもね」

ロゼッタ「碌でもないですね!?面白いとは思えないのですが?」

デイジー「面白いよー?限られた選択肢をうまく使って敵を倒していくのはー。
     親切なチュートリアルが散りばめられてるから、やってみてよー」

ロゼッタ「はあ……」

デイジー「最終的には熱い通信対戦も待ってるしー」

ロゼッタ「…対戦もできるのですか?」ズイッ

デイジー(……あ、マズった。攻略本も何もないし、
      このゲーム、経験が勝敗にモロに出る類のやつだった)
     
デイジー「ま、まあ対戦はさておいて。私は退散するから、
      ぜひプレイしてみてよー。ストーリーだけでも楽しめるし」テクテク

ロゼッタ「はい。…今日は完全に休養日にしてしまいましょうか」



    ハーイ! ポケットモンスターノ セカイヘ ヨウコソ!
    ワタシノ ナマエハ アララギト イイマス!
    ミンナカラハ ポケモンハカセト ヨバレテイルワ

ロゼッタ「……」

ロゼッタ(世界を牛耳るマフィアのボス、みたいなものでしょうか)

アララギ(チガウワヨ)





…もう!デイジー姫も意地が悪いですよ!
普通に競技としてポケモンバトルを楽しむ世界観があるだけじゃないですか!
まったくもう!

ジムリーダーが待ち構える、ジムという施設を回って、
最終的にチャンピオンを倒すことが目的のようですね。
道中、怪しげな宗教団体さんともお会いしましたが…。

ソシテ アナタガ サイショニエランダ パートナーハ クサタイプ ナンダヨネ
トイウコトデ ホノオタイプデ モヤシマクル オレ ポッドガ アイテヲスルゼ!

…炎は草に強く、草は水に強く、水は炎に強い。
なるほど、こういった相性ジャンケンをしっかり踏まえて行けば
戦いを有利に進められるのですね。今後は一層重要になってきそうです。



オラ! ユメノケムリ ダセ!
ヤメタゲテヨオ!

ロゼッタ「やめたげてよお!」

ゼルダ(ロゼッタが変になっています)

~翌日~



デイジー「…さーて。
     本日も、楽しい楽しい特訓、やっていこうか」カクセイ!

ロゼッタ「はい!一撃くらい入れて見せます!」フンッ

ゼルダ「……」ガクガクブルブル

ヒルダ「…私は関係ない私は関係ない私は関係ない」



デイジー「2人いるのも3人いるのも大して変わらないか。
     区別するのも面倒だ、お前も付き合え」グイッ

デイジーの じこあんじの ていぎづけが ふかんぜんだった▼ 

ヒルダ「嫌あああああああぁぁぁぁ――――――――!!」ガクガクブルブル

……私は、デイジー。

ようやく、本来の自分まるごと、認めてもらえた、幸運過ぎるお姫様。
…まあ、ピーチにも認めてもらってはいるが。

とはいっても。心残りがなくなって一層本腰モードとなった私に対し、
1日2日で耐性ができるなんてことは、あり得なくて。
目の前には、相変わらずの光景が、見事に広がっているんだがな。

――ゼルダ。
プライドのせいで引き下がれなくなったのが大いに災いし、また私に扱かれることに。
遠くから光の弓矢やら炎やらをぱしぱし撃つだけの、クソ詰まらない戦闘を仕掛けてくるものだから。

デイジー「せりゃ」

ゼルダ「があ゙っ…」

不意を衝いて急接近。遅い、反応が遅すぎる。何をやってる。
まだ場外の方がマシだと、自ら身を投げようと更に後退するものだから。
こちらは更に加速して、パンチ一発。

イタイ?クルシイ?そりゃ、拳が胴を貫通してるからそうだろうな。
ゼルダの背の後ろに、何度目か数えるのもだるくなる血飛沫の花が咲く。

デイジー「酷いありさまだな、さっさと残機復活したいよな?
      このまま横に腕を振るって、内臓ぐちゃぐちゃにしつつ体引き千切るから。
      はい、歯を食いしばれ。さん、にぃ、いーち」

ゼルダ「――――――――っ!!――――っ!!!」ポロポロ

私の腕だけで支えられて、宙ぶらりんで。相変わらずの光宿さない眼と、痙攣した手で。
力なく、ペシペシと私の体をはたいて猛抗議の意を示すが。
やる気がないなら、お構いなし。

デイジー「フンッ」ブオォッ

ゼルダ「」ドシャァ

…なんでこうなるのか、わからないものかな。

デイジー「お次は――」クルッ



ヒルダ「『ファントム・ユガ』召喚っ!!」パアアアア

ファントム・ユガ「WOOOOOOO――!」ズゴゴゴゴ

ヒルダ「わ、わ、私を守りなさいっ!」バッ

ファントム・ユガ「GAAAAAAAA――!」ダダダッ

ファントム・ユガの 槍突き!▼





デイジー「ぎゅっ……ポキッと」

デイジーは 穂の部分を 片手でつかんで へしおった!▼



デイジー「へえ、そんな隠し玉を覚えたのか。面白いな。
     中々の図体してるし、目くらましにはなるんじゃないか?」

ヒルダ「」

デイジー「これ、返す」ブンッ!!



ファントム・ユガ「」グサッ

ヒルダ「あ゙」ザクッ

ヒルダ「――」バタン



―ヒルダ。
少しは自分の意志で行動しようという気にはなっているみたいだが、
あいかわらず、とりあえず、逃げよう隠れようという意図が見え見え。
力ずくで捻りつぶすだけの力量差もある。話にならない。

ぶん投げた穂の切れ端が首に刺さったのは気まぐれだ。
あ、でも打開を願って成長していることは褒めてやろう。
…いや、3歩進んで5歩戻る精神状態との噂もあるな。

そして、ロゼッタは――。







ロゼッタ「ハァッ、ハァッ……『浄化』っ!『浄化』っ!『浄化』ぁ――っ!!
     ああもう!せっかく綺麗に掃除したのに、1時間でフィールドが…
     元の木阿弥、赤くて黒くて何か吐かれてて…嫌ああああぁぁ!
     きちゃないです!誰が掃除するというのですか!――どうせ私だけですよ!
     デイジー姫は手伝ってくれませんし!お二人は気力が残っていませんしっ!

     無駄に浄化の熟練度が上がっていく気がします!
     3か月後の私なら、もしかしなくても――あの血濡れの私の衣装、
     自力で蒼色に復元できたのではないですかねっ!?
     もう終わった話ですけどっ!!」シュババババ
 
デイジー「……」

ロゼッタ「ああっ、ゼルダ姫!復活したそばから倒れ込まないでください!
     そこまだ掃除が終わって…あああ、血がべっとりと!
     目に悪いです、再復活まで待っていられません!ちょっと脱がしますよっ!
     …はい、綺麗になりました!ここに置いておきますから着直してくださいね!
     いつまでも下着姿で寝転ばないでくださいね!ねっ!」パアアアア

デイジー「……」

ゼルダ「――」

ロゼッタ「…………あ、結界を破ってリンクさんが」

ゼルダ「!?」ガバッ

ロゼッタ「ウ ソ で す♪」ペロッ

ゼルダ「――――――――ちょっと殴らせなさい……!!」ゴゴゴゴ

ロゼッタ「……デイジー姫の威を借る、ロゼッタ」スッ!

デイジー「…おい」

ゼルダ「ぐぬぬぬぬ……で、デイジー様。そちら、どいて頂けないでしょうか」プルプル

デイジー(なんというか、ロゼッタの周りだけギャグ空間にでもなっているのかと
      ついつい錯覚してしまうくらい…とても活き活きしている)

デイジー「その必要は、ない」ザッ・・・

ゼルダ「申し訳ございませんでした差し出がましいことを申し上げました
     どうか寛大なご処置を」ガクガクブルブル

デイジー「そういうことではなくて。割とイラッと来たんで私が制裁してやろう」ドゴォッ

ロゼッタ「」ベシャッ

――そんなこんなで、不満はありつつも飽きない1日。

~次の日~

デイジー「いやあ、朝ごはんがおいしーい!
      ロゼッタ、お代わりあるー?山盛り持ってこーい―!」パクパク

ロゼッタ「はい、いくらでも食べてくださいね!
      …まあ、私が料理したわけでもなんでもないんですが」

すっかり吹っ切れたデイジー姫。元気元気、超元気といったところです。



ゼルダ「……」フラフラ

ヒルダ「――」グズッ

一方、精神的に参ったままの人もいるようです。
ヒルダ姫に至っては碌に食事を摂らずに机(修理済み)に突っ伏しています。
目に光が宿っているようにはみえません。

とりあえず、また休養日というデイジー姫のお達しが出ました。
ゲームの続きでもしましょうか。
…え?薄情じゃないかって?そんなこと…ないですよ?

デイジー「お、ヤグルマの森かあ。
      もう2つ目のジムまでクリアしたんだー。
      ツタージャ選んどいて、なかなかやるねー」ノゾキコミ

ロゼッタ「…今の言葉で察しました。
     最初のポケモン選択で難易度が変わるのですね?
     不公平なのではないですか?」

デイジー「…ちゃうねん。ツタージャが弱いんやないねん。
      虫に飛行に毒に炎にトドメの氷に、
      草タイプがシナリオで無駄に弱点を衝かれまくるのが悪いねん」

ロゼッタ「むう…レベルアップも結構苦労しました」

ジャノビー Lv28
ヒヤップ Lv.15
タブンネ Lv.13
チョロネコ Lv.12
ヨーテリー Lv.11
マメパト Lv.9

デイジー「バランスわるっ!?単騎同然じゃーん!
     …ついでに言うと、ジャノビーのHPが危ういよ!?
     ピコンピコン鳴ってるでしょこれ!大丈夫!?
     倒されたりでもしたら大ピンチだよー!?」

ロゼッタ「ここのダンジョンの虫ポケモン達に苦しめられて…
     で、でも、Lv.24でメガドレインを覚えたのです!
     回復しながら戦えるので強いですよ!」

デイジー「どうしてそれで自信が持てるんだってばよ。
      大体、このダンジョン、どこだかわかってるの?もう一度言ってみ?」

ロゼッタ「ですから、ヤグルマの森、ですよね?」

デイジー「…モンメンかクルミルかマメパトかフシデが出たらどうするの?」

ロゼッタ「…その時は体当たりで!」

デイジー「じゃあずっと体当たりだね」

ロゼッタ「え」

マメパトLv.15「くるっぽー」

あ! 野生の マメパトが 飛びだしてきた!▼

デイジー「あちゃあ、言ってる傍から…食らうとまずいよー?
     逃げよう逃げよう、それか回復だー」

ロゼッタ「大丈夫です!このポケモンは防御力が低いので…
    体当たりで一撃で倒せるはず!
    そして、素早さも――余裕を持って勝っています!」

デイジー「そのレベル差で倒したところで大した経験値が……
     ……………………………………………………………
     ちょっと待ったあああああああああ――――っ!!」

ロゼッタ「……え?」ポチッ

デイジー「」

ロゼッタ「もう押しちゃいま――」



マメパトの でんこうせっか!▼

急所に 当たった!
ジャノビーは 倒れた!▼

ロゼッタ「」

マメパト「どや」ポッポッポー

デイジー「…………あーあ。しーらない。下手すると全滅するよー」

ロゼッタ「……あ、あの、デイジー姫」

デイジー「んー?」

ロゼッタ「ど、どうして私のジャノビーが…先に攻撃されたのですか!?」

デイジー「そりゃ、相手の技が先制技の電光石火だから、でしょ」

ロゼッタ「…先制技?」

デイジー「……」

ロゼッタ「……」クビカシゲ

デイジー「…あー、ゲーム初心者のロゼッタには、その概念自体がなかったかー。
     ターン制のバトル、対戦を繰り広げるゲームでは…往々にして、
     先制技…すなわち『優先度が高い技』が設けられているんだよ」

ロゼッタ「ゆ、ゆうせんど?」

デイジー「威力の高い技は、相手に大きなダメージを与えられるから強い。
      命中の高い技は、外すことなく確実にダメージを与えられるから強い。
      
      それと同じように――
      優先度の高い技は、本来の先攻後攻の関係を取っ払って攻撃できる強みを
      主張することで、その他のスペックは低くてもプレイヤーに愛用されるんだ。

      自分の方が先に動ける…と思ってる相手の出鼻を挫けるのは大きいよ。
      …今のがその典型例だね。
     
      ま、ゲームの世界だからこそ設定できる項目だけどねー。
      たとえば現実世界のピカチュウも電光石火は使えるけど、
      あくまで『非常に素早く動く』だけ。

      ゲーム内のピカチュウのように『優先度+1で動く』なんて芸当は
      逆立ちしたってできないよー」

ロゼッタ「……」

デイジー「とりあえず、現状を打開しよう、かあ。
      一応聞いとくけど、最後のレポート、どこ?」

ロゼッタ「…………2番目のジム戦の直前です!
      『かたきうち』を掻い潜ってようやく突破したのに!」サアッ

デイジー「なんでジム突破直後にレポート書かなかったんだー!!」

~夜~

ヒルダ「…………」

ヒルダ「……誰か、助けて、くださいよう…」シンダメ



シンと静まる、仮眠室。明かりといえば、柔らかに光る小さな電灯一つきり。
私はただ、天井を――そう、天井を。感情もなく見やります。

今日は休息日。そう、「今日」は。
明日になれば、再びデイジー姫が覚醒し。
ロゼッタは何故か喜々として、ゼルダ姫は身から出た錆で特訓に巻き込まれ。
……どうせ、私も――渦の中に囚われる、気がする。

国を背負う女王として、色々と辛いことはあるとは思っていましたが。
延々と命を弄ばれ続けることは、さすがに想定していませんでした。
少し前の情景を思い出したとたん、目の前の景色がぼやけます。

ロゼッタは、ああは言うけれど。
デイジーの、暴れる絡繰りこそ、わかったけれど。
現実は、何も変わらない。あのとき安心したのは、何だったんだろう。馬鹿みたい。

自分の意志…もとい不手際で参加する羽目になったゼルダ姫とは違って、
私は、これ以上戦う意志だって、強くなりたい意志だってないと、散々主張しているのに。
昨日だけで、何度吐いて、何度血を流して、何度命を奪われたことか。

デイジー、ゼルダ姫、ロゼッタ。誰も、私の弱さを理解してくれていない。
いいように丸め込まれた自分の境遇が…ただただ、恨めしい――!

…寝転ぶまま、涙滲ませながら、強く手を握り締めて…ドス黒い感情に、ハッとする。
こんなに暗い気持ちに、なりふり構わない気持ちになったのは、まるで――

ハイラルから聖三角を奪おうとした時、以来ではないですか。



きっと、私は何かに侵食でもされている。自分が自分でない感覚。
このままだと、コワレテしまう。スデニ、テオクレカモシレナイ。
あと2か月以上だなんて、耐えられない。

隣を見れば、顔を青くしてうなされながらも、必死に眠っているゼルダ姫。
…貴方だって、私よりはよほど、マシでしょうに。
私なんて――この瞬間にも発狂しかねないほどの動悸に、発作に、
襲われ続けていると、いうのに――っ!

きっと、今の私、酷い目をしています。
目に光が宿ったかに見えて、血走って、視界に入るもの全て否定したくなるような、目。

反対側のベッドを見れば、どうせ、気ままにすいよすいよと寝息を立てるロゼッタが……。



ロゼッタ「……………………」

ロゼッタ「……………………」



…あれ?

予想に反して、ロゼッタはしっかりと起きていました。
大きく動きこそしませんが、枕に頭を乗せ、私と「同じく」天井を見つめて…………
私と「大違いで」凛とした表情で、何か思案しています。

ヒルダ「…………」

ロゼッタ「…………」

私が横から見つめていることにも気付かず、一点を見つめたまま。

私が見つめ出してから、5分くらい経ったでしょうか。



ロゼッタ「……………………うん」

ヒルダ「……っ!!」スッ

おもむろにロゼッタが、ベッドから身を起こします。
つい、寝入った振りをしてしまいました。
つたない寝入り方でしたが、何かに気を取られているロゼッタは――
一切気付くことなく、そのままいそいそと、足音を立てずに部屋を出て行きます。

ヒルダ(…………?)

謎の行動に、ちょっと興味が湧いて、荒んだ気持ちも一時的に落ち着いて。

1分。

2分。

5分。

――――10分。



――――30分。

ヒルダ(何を、やっているのでしょうか……確かめに、行きましょう)スッ

ゼルダ「っ!…………はあっ、はあっ…!!」ガバッ!

傍にある、汲んでおいた水を一気に飲み干します。
どっと流れ出ている汗、汗、汗。



ゼルダ「…酷い、夢を、見ました、ね」ブルッ

顔をつねる。痛いです。――いっそのこと、今もなお夢の方がいいのですが。
時刻を確認。日付が変わったばかりのよう。

…あと数時間で、また地獄がやってくる。震える、体。



みっともない形相を見られたのではと我に返り、周りを見渡せば……え?
別室にこもっているデイジーが居ないのは当然として。
ヒルダ姫のベッドも、ロゼッタのベッドも、もぬけの殻。

一体、どこに消えたというのでしょうか。

仮眠室を出て、左右を確認。
外界とは閉ざされた、限られた空間…という割に、あまり全容を把握できていません。

とりあえず、フィールドへ向かってみました。…誰も、見当たりません。
不安を抱いて、見当たる扉――ひとつひとつ、開けて確認していきます。

いない。

いない。



やっぱり、いない。



少しずつ、恐れと焦りで、駆け足になっていきます。
お願いですから、誰か――――っ!!

ゼルダ「出て、来なさいよ――――っ!!」ガチャッ!ガチャッ!

ガチャッ!





デイジー「――先ほどから耳障りだ」ドゴオッ

ゼルダ「」チーン

デイジー「…ふん」ガチャリ

ゼルダ「――――」

奥の部屋まで駆けて行ったところで、既に自己暗示完了状態、
苛つき度MAXのデイジー姫に鳩尾一発、食らいました。
…貫通していませんが、生暖かい物が流れて行って、激痛です。こ、きゅ、うが――。

ふわりと意識がどこか遠くへ行って、気付いた時には傷ひとつなく。
…もう、考えるのは――やめましょう。そうしましょう。
…異常事態発生、というわけではなさそう。
それが分かったのは、不幸中の幸いでした。

触らぬ神に祟りなし、と通路を一目散に逃げ帰ろうとしたところで。





…階段?





柱の陰に隠れていて、仮眠室側からは見えなかった…階段がありました。
誘われるように――2階へと、登っていきます。

びりっ。

びりりっ。

ゼルダ「…!」ゾワッ



どうしたことでしょうか。
体が、言いようのない魔力を感じ取ります。
ですが、不快な感じではありません。
よりエネルギーの濃い方へ濃い方へと、自然と足が進みます。

どうやら、2階は…部屋数が少ない代わりに、一つ一つの部屋が
贅沢な広さを確保している趣のようですね。扉の数がグッと減りました。



…ヒルダ姫が、いました。



寝間着姿で、体も冷えかねないというのに、
扉の一つをちょっとだけ開けて、中を盗み見しているのでしょうか。

近付こうとすると、ますます魔力濃度は高まります。
…いえ、高まる、なんてものではありません。呑み込まれそうなほどです。
ですが、それでもいいと思えるくらいの、不思議な心地よさ。

ゼルダ「…ヒルダ姫、探しまし――」

ヒルダ「……」シーーーッ!

話しかけようとしたところで、特段私に驚きもしないヒルダ姫に――制止させられます。
その目は、久方ぶりに、輝いて見えました。

ちょいちょいと、彼女に促されるまま、私も、中の様子を伺います。











ゼルダ「――――――――――――なっ……………………!?」









私はその光景を、二度と忘れることはないでしょう。

そこにあった、ものは。
さながら、切り取った……宇宙。





ロゼッタ「――――――――」~~~~~~~





目を閉じ、両手をなだらかに下ろし、大部屋の中央に浮かびながら。
聴こえるけれども理解のできない、重ね掛け詠唱《オーバーラップ》を紡ぎ続ける、
神秘的な風貌の大魔法使いと。



ゼルダ「……嘘、でしょ」



彼女を囲み、囲み、囲み過ぎている――
あまりにも多すぎる、大小様々な魔法陣、だったのです。

私は、これでも魔法は相当に得意な方です。

デイジー姫はそもそもまともに食らってくれないため、どうしようもありませんが…
私の光の弓矢の魔法としての完成度と言ったら、ハイラルで私の右に出る者はいないでしょう。
…リンクは、ただ単にHPが多すぎるだけなのです。

キノコ王国のファイターにしても、易々と負けるつもりはありません、でした。
たった今、目の前の光景を見る、までは。



平時の私として。一度に展開できる、まともな魔法陣…術式は、せいぜい3つ。

たった10分でも…4つ使えば数日は碌に動けず、
5つ使えば軽くない後遺症が残り、
7つも使えば確実に、魔力暴走で死に至るでしょう。

そもそも、一流の魔法使いでも、ステレオ=マジックの素質は一握り。
まともな魔法陣は、それだけで手一杯になるから「まとも」と言えるのです。

それを、目の前の「彼女」は…

気が滅入りそうになりながらも、何度も何度も数え直して…
それが錯覚でも何でもないことに気付いて、戦慄します。





ゼルダ「さ……さんじゅう――!?」

ヒルダ「…違い、ますよ」

ヒルダ姫が、ロゼッタの足元を指で示して……っ!

ヒルダ「ひときわ大きい、部屋をはみ出るほどの大魔法陣が――
     床に描かれている、でしょう?…ほら、天井にも対になる物が。

     …ええ。全部で…32個ですね。
     正直な所、あの2つだけで通常の魔法陣10個分の負荷はありそうですけど。

     私が気付いて覗き出したときから…軽く1時間は経っていますが。
     理解はできないけれども耳に心地よい詠唱とともに――
     これっぽっちも、『術式崩れ』が起きていません…!」



…ありえ、ない!
何ですか、この魔法のレベルの高さは!これほどまで――!

宙に浮かんだままの、ロゼッタ。
流石に全精力を詠唱に割いているためか、一向にこちらには気付きません。

激しく溢れる魔力の奔流とともに、彼女のドレスが、髪が激しく波打ちますが、
気にする様子はまったくありません。…いえ、気付いてすらいないのでしょう。
光り輝く魔法陣たちが、ガーディアンのごとく彼女を幾重にも覆い隠します。

はたと気付けば、せっせとあちこちに動いているチコたちが。
FPが不足しないよう、ロゼッタを手助けしているようです。
そのうちの1人が、休憩がてら、ふよふよと近づいてきました。

チコ「あ、ゼルダ姫が増えた―。ママの邪魔はしないでね」

ゼルダ「ね、ねえ。これは、何を行っているのかしら?」

チコ「ひっみつー!というより、僕たちも詳しいことは分からないんだ。
   ただ…経験上、こうなったママは、すっごいんだよー!
   絶対に、とんでもない成果を出しちゃうんだー!
   だから、僕たちは喜んでママのことを応援するんだ!」

ヒルダ姫と、顔を見合わせます。

…一体、どんな「とんでもない成果」を出すというのでしょう。
彼女の魔法に見惚れて…ヒルダ姫と共に、そのまま、覗き続ける私。

2時間後も、3時間後も。
ロゼッタの詠唱が尽きることは、ありませんでした。
そして――。

~翌日~

デイジー(…………?)



皆の様子が、どうにも変だ。

やたら眠そうで、その一方でロゼッタをチラチラと眺める、ゼルダにヒルダ。

当のロゼッタは、何か――決意に満ちた顔で、私に話しかけるタイミングをうかがっている。
今まで通りウキウキと、なら分かるんだが。…いや、それも本来はおかしいが。



おっと、そう思ったそばから、ロゼッタがつかつかと歩み寄ってきた。
そして、いきなり。








ロゼッタ「…デイジー姫。特訓の前に、ちょっとだけ…勝負、してみませんか?」

デイジー「…勝負、だと?」

ロゼッタ「はい。…ルールは単純明快。

     今から私が、デイジー姫に攻撃を3回仕掛けます。
     3回仕掛けて、1回でもまともに当たったら私の勝ち。
     逆に、3回とも躱されたり防がれたりしたらデイジー姫の勝ちです。
     ただし、ダメージを受けたかどうかは考慮しないものとします」

その無茶な吹っ掛けに、ゼルダが驚いている。
そうだろう、今のロゼッタと私の戦闘力差では――

3回どころか、1000回仕掛けたところでロゼッタの攻撃は当たらない。

デイジー「3打席勝負か…野球かな?
      まさか、『反撃はしないでください』とは言わないな?」

ロゼッタ「うっ…本当は遠慮していただけるのなら嬉しいのですが。
     ただ、反撃はともかく、そもそも私が攻撃する機会がないほど
     攻め立てるのは…流石に止めてくださいね!?
     あ、あと残機が減ったとしても、3回目の攻撃がまだならば
     その時点で私の負けにはなりませんからねっ!?」

デイジー「…いいだろう。当然、何時までたってもそちらが仕掛けない…とかは
     こっちの勝ちでいいんだな?…さあ、いつでもどうぞ」スッ・・・

何を考えているのかは定かではないが、面白そうだから…乗ってやろう。

多少は背伸びしてしまうのも仕方ないだろう、と強者の余裕。

私に合わせて、ロゼッタもスッと構えを取る。
だいぶ様にはなってきたが…別に、昨日の今日で劇的に何かが変わったようには見えない。



ロゼッタ「それでは…まず、1発目っ!」ダッ



宣言してから仕掛けるとは…舐められたものだ!

直線的にただ突進してきて、拳を付き出すロゼッタ。
この数日で動きはよくなったが――。



余裕に余裕を重ねて、指一本で受け止める。
それもあえて小指で。



ロゼッタ「…………うわぁい」ゾッ

なんだか、非常に達観された顔をされた。

デイジー「もちろん、今のは…私を油断させるための手抜き、とかなんだろう?」

ロゼッタ「ももも、もちろんじゃないですっかー!」ビクビク

ビクビクしながら、それでいてモチベーションは下がっていない。
一旦引いたロゼッタが、パチンと自分の頬を叩いて、気合いを入れて――。
こんどは、ゆっくりと歩み寄って、すこしずつ速めて行って――!



シュンッ!



ロゼッタ「…………2発目ぇーっ!」シュインッ!


テレポートから背後を取って、振りかぶり。
…そう、まるで、いつぞやの。

こんなことで、私が今度こそ引っ掛かると思ったのか。
多少はアクションが速くなっているといえど、無性に腹が立ってくる。
苛立ちのまま、振り向いて――拳、一貫。

ロゼッタ「――うぐっ」ボスッ ズサァッ

咄嗟に身を捩じって避けようとしたことは褒めてやるが。
その結果、胴体のかわりに肩甲骨を強打。鈍い音、破壊音。
勢いも殺せず、壁にドシンとぶつかって止まるまで…地を滑っていく。

ロゼッタ「――っ…い…ったい、です――」ドクドク

デイジー「おう、腕が千切れなかっただけ御の字と言う奴だな。
      …やめるか?今ので確実に、右肩は使えなくなったろう。
      そんな体では、ますます戦えまい」

そう、諭してみたのだが――。

ロゼッタ「……ふ、ふふ」ヨロッ

ヒルダ「…な、何がおかしいのです?ロゼッタ…」

妙な笑顔をしたまま、壊れた肩を押さえつつ、ロゼッタは起き上がる。


ロゼッタ「…むしろ僥倖、といったところでしょうか。
     満身創痍の方が、『使い甲斐』がありそうなので」ドクドク

また、訳の分からないことを言うものだ。

デイジー「…結局は、フリなんだろ?最初から、3発目に賭けているんだろう?
     だったら、見せて、もらおうか」

ロゼッタ「…………………………………………
     ええ、では、見て頂きましょう、かっ!」ドクドク

デイジー「…全力で、受けて立とうじゃないか」ニヤリ



シイイイイイイイィィィン――――



ゼルダとヒルダが息を飲みつつ心配そうに見守る中。
5秒、10秒と睨み合いが続いたところで――
ロゼッタが…三度、駆けた。



ロゼッタ「…参りますっ!!」ダダッ!



デイジー(ぼんやりと…体が、光っている。何かしらの強化を掛けたな?
     だが…小手先の魔法で埋め合わせできるほどの差では、ないっ!)

ロゼッタの戦闘力が、素早さが1割2割上がったところで、なんだというのだ。
いや、2倍3倍ですらどうとでもなる絶対的な差が、そこにはある。
…なんだか、フラグっぽくて嫌だな。

再び、ロゼッタが姿を消す。
――――性懲りもない!!



横目で、後ろの気配を確認。…流石に学習したか。

左右、上。ロゼッタのことだから真下というのも十分に考えられる――

そう、周囲を満遍なく把握したところで…ロゼッタが現れた。



デイジー(…真正面?一体何を――)

ロゼッタ「はああああああああっ!!!!」ドンッ!

一気に、ロゼッタが…ロゼッタなりに、トップスピンを掛ける。
大怪我で体のバランスを崩しながら、痛みに耐えながら、ぎこちない体で。
それを私は、地獄の笑みを以て、遠慮なくフルパワーで――

デイジー「その思い上がり、悔い改めるんだな――」ブンッ



ゼルダが思わず目を背け。ヒルダが思わず顔を覆い。
誰もがその分かりきった結末を――








一陣の風が、吹く。








ロゼッタ「…………疾風の一撃《ゲイルアタック》――――っ!!」ギュンッ!!

ロゼッタの 周囲の空間が ねじ曲がった!▼



デイジー(……途端に、速くッ!
      …ちぃっ、このままでも相手に大ダメージは入るだろうが…
      ダブルノックは気に入らない、断じて。
    
      仕方ない、瞬時にガードに甘んじて――――――――――――――――
      ―――――――――――――――――――――――――――――――
      ―――――――――――――――――――――――――――――――
      ―――――――――――――――――――――――――――――――)






<Acceleration!Acceleration!!……….Acceleration!!!>キュイィィ―――――ン

疾風の一撃には 『優 先 度 +1』 が付いている!

デイジーが 行動を早めるほど それ以上に ロゼッタは 行動が早くなる!

ロゼッタの攻撃を ガードすることは 因果律として 不 可 能 だ!▼



ゼルダ「!?」

ヒルダ「!?」

デイジー「――――――っ!?ぐっ―!」ガード:1F



ズドンッ!



ロゼッタ「――っ!!左、すとれーと…届い、たぁ―――!!」アタック:0.1F

信じられない、この私が目で一切追えなかった…ロゼッタの爆速の一撃…!

ダメージこそ見かけに反してとても小さいが、なんてことだ。一体、何をしでかした…!

自分の不甲斐なさと、親友の成長への喜びがごちゃ混ぜになる。

でも、今は、自分の情けなさは置いておこう。
純粋に、ロゼッタを褒めてやらないまでもない…そう、思えるほど。

そう、「裏の私」に似合わず、小さく穏やかに笑って見せようとして――



ロゼッタ「――――――――――――――――――――――――――――――
      ――――――――――――――――――――――――――――――
      ――――――――――――――――――――――――――――――
      ――――――――――――――――――――――――――――――」



次の瞬間、一気に顔を青くした私は。
あらん限りに握り締めた拳で、ロゼッタに殴り掛かっていた。

宝具じみてんなお前

つよい

―――…――――――――――――――――――――――――――――――――――――

―――――――――…――――――――――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――…――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――…―――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――――――――…―――――――――

…。

……。

………しこうに、もざいく。

……………ここは、いったい、どこですか?

かくにん、したいのに。
なぜか、めが、あけられません。

「――――――」



なにかが、きこえる。



「――――――――」



だれかが、よんでいる、こえが、する。



ああ、きっと、みんなして…わたしをとりかこんでいるのですね。
ゼルダひめ、ヒルダひめ、そして…デイジーひめ。
ひっきりなしに、こえをかけながら。

そういえば、すこしまえに。
かってにわたしが、ちぬれたドレスをみつけてしまい…きを、うしなったときに。
めざめてみれば、なきはらしている、ピーチひめが、いましたっけ。
きっと、いまもおんなじような……。





…………おんなじ、ような?

かく、せい…ええ、覚醒。
行方知らずの意識と思考を、じわりじわりと取り戻し。
一瞬震えた後、ようやく私は…眼を、うっすらと開けていきました。

目の前には――



当たってほしくは、なかった。
私の目覚めに目を見開いた状態の、泣き腫らして憔悴しきった…デイジー姫。



デイジー「――――っ!!ロゼ…ッタ!?やっと…やっと、目を覚ましたのねっ!?」



私は、寝たきりの姿勢もそのままに、無言のまま、恐ろしくゆっくりと頷きます。

デイジー「…っ!よかった、本当に、よかった、よぉ――っ!!うわああぁぁん!!
      この、まま、死んじゃうんじゃないかってっ!
      本気でっ!思ってた、くらい、なんだからぁっ!」ポロポロ

ゼルダ「…バカっ!このっ、虚け者っ!!
     結局自分が、周りを悲しませているでは…ないですかっ!
     偉そうに…説教、しておいてっ!」ポロポロ

ヒルダ(ギュッ)ポロポロ

口調こそ荒いとはいえ、泣き腫らした顔を隠しもせずゼルダ姫がのたまい。
ヒルダ姫は、静かに泣きながら、私の腕を、ただひたすら強く抱きしめます。
結局最後は、皆が私に覆いかぶさるような感じになりました。

ロゼッタ「…………」

まだ微妙に、思考がふわふわしている気がしなくもないですが。
辛い思いをしている人の頭って、どうして撫でたくなるんでしょうね。
ありがとうとごめんなさいの気持ちを込めて、皆さんの頭をつい撫でてしまいました。
呆れられるわけでもなく、一層激しく泣き出す皆さん。…ええと、本当にごめんなさい。

しかし、どうにも体の動きがぎこちないのが、気懸り。
挙動ひとつひとつが、やたらもっさりしています。
速く動かすことができません。…気のせい、ですかね?



…皆の嬉し泣きに包み込まれる中、肝心の私の方はというと。なんとも滑稽なことに。
必死で、周りの方々が泣いている理由を考え始めていました。

…いや、だってですね。
このままだと死ぬんじゃないかと思われていた?そんな気絶の仕方を?私が?
そもそも、死んだら残機を使って復活するだけではないですか…?

デイジー「…!?も、もしかしてロゼッタッ!
      何が起きてこうなったか…いや、『今何が起きてるか』、
      まるで分かってないの!?」

ロゼッタ「……は、はい。大変申し訳ございません。皆さんはお分かりなのですか?」

デイジー姫は、信じられないような顔を一度して。
暫しののち、無表情になって、ふっと。



デイジー「――ごめん、ロゼッタ。本当に、ごめん。
     思い切り、歯を食いしばって、くれるかな?今から私、『手を離す』から」

ゼルダ「…そ、そんなっ!」

デイジー「…いや、現状を理解してもらうには必要なことだよ。残酷な話、だけど。
     はい、歯を食いしばったね?無意味な可能性も超特大だけど」

…よくわかりませんが、デイジー姫は間違ったことは言わないので。
既に準備は整っていました。1UPキノコ片手に準備万端のデイジー姫の姿を思い出します。

デイジー「…ゼルダ。暴れた時に備えて、右半身押さえてて。…特に、右手!私は左半身に対応するから。
      ヒルダは悪いこと言わない、5メートル以上下がってて」

2人は一瞬、憂いの目をしたあと、あっさりとデイジー姫に従います。

そして、デイジー姫が――
私の体から、どういうわけか「すっかり黒ずんだ」手を、恐る恐る…離しました。

その、途端。



ロゼッタ「――――――――――――――――っ!!!
      ガア゙ア゙ア゙アアアアアァァァ――――――――――!?」

この世の物とは思えない、全身を駆け巡る、痛み、苦しみに。
はしたなさなど彼方へ捨て去り、絶叫、絶叫、ただただ、絶叫――

ロゼッタ「ガハッ―――ア、ア、ア、ア―――――――――――――っ!!!
     ――――――――――っ!!」ポロポロ

ヒルダ「もう十分でしょうっ!デイジー姫、はやくっ…はやくっ!!
    助けてあげて、くださいっ!!」

イタイ。死んでしまう。いえ、死んだ方が100万倍マシ――そう思えてしまう、極限の痛み。

心臓に針を突き刺される…なんて表現、生ぬるい。
あらゆる器官が、微塵切りにでもされていくかのような、痛み――――っ!
歯を食いしばりすぎて出血し、狂乱し、体中を激しく掻き毟る。
とりわけ『右目』の疼き、異物感が我慢ならず、必死でもがきますが、
慌てて腕を掴んだゼルダ姫によって、阻止されてしまいます。
痙攣し呻きながら、悲しみではなく痛みのせいで、涙が延々と流れ出ます。

デイジー「まずっ、白目剥いてる!…ロゼッタっ!ロゼッタぁ――っ!!」

ゼルダ「起きてっ!お願いだから、起きなさいっ!」

ヒルダ「ロゼッタが死んじゃうっ!もうやめてぇっ!!」

ロゼッタ「……ハァッ、ハァッ、ハアッ」ボロッ



今度は私にも、気絶していたことがわかりました。
デイジー姫が、離すものかという掴み方で私の体を捕まえています。

デイジー「…よかった…グズッ。一体、何度私たちを泣かせたら…
     ロゼッタは…気が済むの、さあ」グズッ

ゼルダ「目の焦点が完全にまずいことになっていました…
    恨みますよ、デイジー」ポロポロ



残機がある、はずなのに。
痛みには、割と慣れてきたと…思っていたのに。



激しく動揺しながら、2人の方を見上げます。

デイジー「………………………ねえ、ロゼッタ。
     昨日の…私との3回勝負、覚えてる?」

ロゼッタ「お、覚えていま――――」

ああ、そうだ。そうでした。
私は、思い立ったまま会得してしまった秘密兵器をぜひ試したい、と…
デイジー姫に喧嘩を売ってしまったのでした。

デイジー「…そっか。じゃあ、何をやったか、詳しくロゼッタの口から…教えてくれるかな?
      推測だけであれこれ騒ぎ立てるのは、もうこりごり」

ロゼッタ「…わかり、ました。
      とはいっても、そんなに、複雑な話ではないんです。
      私は以前、『デイジー姫という新要素から作戦を引っ張り出すことで
      敵の裏をかくことができる』という旨の話をしましたよね?」

デイジー「…うん」

やはり、いまだに息切れしそうですが、なんとか堪えて話を続けます。

ロゼッタ「……これは、別に特訓中に限った話ではありません。
     何気ない会話の中にも、日課や癖の中にも…
     拾える可能性のあるものは無尽蔵にあります。

     私は…どうしても攻撃の速度が足らないと悩んでいました。
     奇しくもそこに、昔なら無縁極まりないゲームの世界から、
     『優先度』というものを教えていただきました。
     私は思ったんです。……これだ、と」

デイジー姫が、驚きに口をぽかんと開けます。

デイジー「…ま、まさか――!」

ロゼッタ「さっそく、S++ランクの超高等魔法として昇華させようと、
     昨日…いえ一昨日から、術式を構築し始めました。
     基礎となる格子を編み込み、条件式の肉付けをしていって――
     針の穴に通すような繊細な作業でしたが、なんとか…完成に至りました。
    
     とはいえ、本当に、本当に――現実に『優先度』を持ち込むというのは困難で、
     使った後に残機が減ることを、織り込み済みだったんですけどね」

ヒルダ「…織り込み、済み?」

あ、なんだかちょっとだけ、気分が落ち着いてきました。
そんな感じに驚く顔を、見てみたかったです。

ロゼッタ「…ええと。発動させることまでは、何とかなりそうだったんですけど。
     この魔法…というより、魔法が掛かった状態で繰り出す、この技。
     相手の行動の早さに応じて、私の意志そっちのけで自動加速が掛かるので…



     ぶちゃけた話、体が消費予定のFPを事前準備できないんですよね」



3人が、固まりました。

ロゼッタ「それを承知で、魔術回路をちょっとばかし騙して、
     技自体は正常発動させたのですが。その場合、どうなるか、というと…

     借金してまで豪遊した人が、我に返って慌てふためいて…
     日用品を叩き売って返済に充てるがごとく。

     かなり非効率な交換レートで、体がHPを無理やりFPに変換し出すんですねー」

デイジー「なっ…!?」

ロゼッタ「私の計算だと、不足分のFPを補うために、私のHPは枯渇ぎりぎり、
      というところまで追いつめられるはずでした。
      まあでも、そのくらいのこと、最近は幾らでも経験していますし。
     
      万が一、『ギリギリアウト』で死亡したとしても、残機制度のおかげで…そのままあっさり元通り!
      今の特訓環境だからこその、したたかで思い切った作戦だと思いませんか!
      …実際、御覧の通り元通りに――――」

凄い魔法の成功に、ついつい得意げになってしまい、語り出し――



…あれ?おかしいです。
――では。さっきの痛みは、後遺症のようなものは。いったい、なんなのです、か…?



デイジー「――馬鹿…!!――元通りに、なってないよ、ロゼッタ…っ!
      優先度なんてものを付けることがどれだけ禁忌か、わかってないよ…!
      私の行動の早さ、馬鹿に、して――っ!」ポロポロ

ヒルダ「……あの、これ」

ロゼッタ「……鏡?」

ヒルダ姫がおずおずと…持ってきてくれた、1枚の手鏡。
顔を見ろということでしょうか。…使ってみました。
…酷い顔色はしていますが、それ以外に、特に変わったところはなさそうですが。

暴れたせいでボサボサになった髪を、すっと払います。










「魔眼」呼びしていた右目に、幾重にもヒビが入っていました。
光を失う…を通り越して黒ずんで、もやまで掛かって、今にも砕け散りそうです。








…………………………………………………………は?

ロゼッタ「…………………………え…なに、これ…」ガタガタ

余りのショックに、呆然とします。
こんなこと、生まれてこのかた、なった覚えがありません。



デイジー「落ち着いて、聞いて、ロゼッタ。私、なんとなく状況が把握できた、から」

虚ろな目で、デイジー姫を見上げます。
まるで、あまりのみっともなさを恥ずかしがるように、前髪が再び――右目を覆い隠します。



デイジー「…あのとき。私は、ムキになって、持ちうる限りの速度でもって、ガードに移ろうとした。
      それを抜き去ろうとするために、ロゼッタの体は加速した。

      …ロゼッタの予測すらゴミにしかならないくらい、猛烈にね。
      FPが、あまりにも、あまりにも…『桁違いに』不足しすぎた。

      異常を察知した私が強引にロゼッタの命を速やかに奪って…
      復活するまでのごくごくわずかな時間すら、FPの代償を大量に求められて――
      魔力回路そのものが、ズタズタに荒らされたんだ。

      ロゼッタの例えを参考にするなら、
      待ちきれなくなった借金取りが怒号をあげながら家に乗り込んできて
      あらゆる家具は持ち出され、あるいは破壊され尽くした状態、かな」

ロゼッタ「…!?」サアッ

デイジー「…ロゼッタの右目、おそらく…単なる遠くが見えるだけの魔眼、じゃない。
      空間認識を極めに極めていく中で、ロゼッタの体のFP循環の根幹に関わっていった…
      超重要な制御装置、心臓部分だったみたい。…自覚、ないわけじゃないでしょ?

      その機能を失って、FPが無差別で体中に漏れ出して、
      …えーっと、魔法が誤発動され続けているような有様なんじゃないか…と…。

      つい条件反射的にFPを送り込もうとして、
      なしくずしで治療し始めることができて、本当に幸いだったよ。
      私のサポートがないと、何もできない。しばらくは、リハビリだね。
     
      薄々分かってるとは思うけど――リハビリが終わったところで、
      金輪際、『ゲイルアタック』とかいう技の行使は禁止。
      今度は確実に、残機制度があるところで使おうと、あの世行きだよ。
    
      だいたい、ロゼッタは仕様を理解してたみたいだけど…あの技。
      『優先度+1』のためだけにエネルギーの99.99%とか、つぎ込んでるんでしょ?
      とんでもない見た目の行動の早さは、『攻撃の運動エネルギー』自体には
      一切乗ってなくて…捨てられてるんだよね?
      革命的に凄いことをしたことは認めるけど、FPが勿体ないよ…ほんと…」

ゼルダ「そうだったのですか!?」

…はい。それは理解していました。しかし、そこまで危険な代物、だったとは―!
慢心があったにちがいありません。

さらに、デイジー姫は、ひどく申し訳なさそうな顔で――
最悪な結末を、私に突き付けてきたのです。

デイジー「…ここまでのことは、まあ、いいんだ。いや、全然よくはないだろうけど、
      リハビリは一時的なことだし、技の行使の抑止は意識してればいいし。
      まだ許せるんだ。私、全力でFPの流れのコントロール、サポートするから。
     


      …でも。



      その右目、ただのHPじゃなくて、神秘性とかLP、すなわち生命力とか、
      『残機制度で救済されない、取り返しのつかない ナ ニ カ 』をゴッソリ失った、みたい。
      残機制度による完全復活ありきで無茶をしたロゼッタにとって、酷過ぎる…話だけど。
      とにかく、通常の回復じゃあ一切対処ができない。

      リハビリが無事完了したところで…
      自慢の魔法の制御力、何分の1になったか知らないけど、下がりに下がって…
      奇跡でも起こらない限り…二度と、元には戻らない、よ」



デイジー姫が、必死に声を絞り出します。

――――とてつもない、途方もない、代償に。
――――目の前が、真っ暗になりました。

デイジー「…………」

涙流れた跡残すまま、気を失ってしまったロゼッタ。
当たり前だけど、今まで積み上げてきたもの、失うのは辛すぎる、よね…!
とりあえず私ができることは、彼女の腕を通じて強制的にFPの流れを作って、
回復に努めること、だけ。他に何もできなくて、歯痒い。

私の負担もけっこー大きいけど…そんなこと、言ってられない。
食い溜めしつつ、できるだけ睡眠時間はカットだ。

デイジー「…まあ、そんなわけで。しばらく、特訓は中止にさせてもらうよ。
     私のチカラ、こっちに注ぎ込まなきゃならないし、気分も全く乗らないし…ごめんね。
     …まあ、ちょうどよかったんじゃない?」

そう言って…自分にも言い聞かせて、見守る2人に向き直る。

ゼルダ「…………」

ヒルダ「…………はい」

デイジー「…まあ、2人はそんなに気を落とさないで。私がなんとしてでも、ロゼッタはこれ以上苦しませないから。
      よかったら、フィールドで…2人で普通のトレーニングを再開しちゃってよ。
      私は参加できないけど、ロゼッタを背負って同行してアドバイスすることくらいならできるからさ」

ゼルダ「……そう、ですね。時間が、勿体ない…ですもの、ね」

ヒルダ「…………」コク

デイジー「…………やっぱり、暗いの、苦手。ええい、もっと明るく行くぞー!!ビバ、空元気っ!
      このモヤモヤを、トレーニングにぶつけるぞ!ウオオオオオォォォ!
      はい、2人とも、拳を天に突き出して『オーッ!』て叫べ―!」

2人「「お、オーッ……?」」グッ

さあ、フィールドに向かっちゃおう!後ろは振り向かないっ!

ロゼッタ「」ズルズル

デイジー「…って、身長差のせいでロゼッタ背負えないんだった!?ごめん!引き摺ってる!
      こんちくしょーめ!こうなったらお姫様だっこだ!
      抱き上げる方もお姫様の、純度100%のお姫様抱っこだぞー…って、どうでもいいわ!」ツッコミ

ゼルダ「――ああ」

デイジー「ほらほらどうしたの、早く支度するっ!」     

ゼルダ(彼女の挙動にビクビクしてばかりの私でしたが―
     ロゼッタの言っていた彼女の朗らかさとムード、ようやく私にもちょっとだけ、
     理解できた気がしました。節穴…でしたね)

ロゼッタ「…う」パチッ



デイジー「お、ようやく起きたねロゼッタ」

ロゼッタ「…ど、どうして私、担がれているのですか?」

デイジー「私が3人の面倒を同時に見るにはこれしかなかったっす」



ロゼッタ「………………………っ、わ、私は――そうです、一体どうすれば――」



なんとか、しなければ。対策を考えなければっ!
呑気にデイジー姫に身を預けている暇ではないと、降りようともがきますが…

デイジー「おっと、そうは問屋が卸しません…降ろさないだけに。
      そうだね…この感じなら…あと1週間ばかりは、私が付きっ切りで介抱だね」

ロゼッタ「そん、な―!貴重な、時間がっ!離してっ、下さい!お願いですからっ!」

私の覚醒に気付いたのか、フィールド中央で躍動していた2人も動きを止めて、
こちらに駆け寄ってきます。

ロゼッタ「えいっ!」ドンッ

デイジー「あ、ちょっとぉっ!?」

デイジー姫の腕の中から、なんとか抜け出したとたん。
また、あの絶望的な侵食に、痛みに襲い掛かられます。
たまらず、もんどりうって、地面に這いつくばってしまう、私。
一瞬にして目の焦点が合わなくなり、涙が流れるままになる体たらく。

ゼルダ「なにをやっているのですか、ロゼッタっ!」

デイジー「もー、馬鹿ッ!いいから私に面倒見られてよっ、このアンポンタン!」

デイジー姫がすぐさま私の体を再度抱き上げ、FPの循環を再開してくれているようです。
痛みが、少しずつ、引いて行きます。…私の心の中の暗雲は、際限なく拡がるばかり。

ロゼッタ「ハアッ、ハアッ――!このままでは、状況が、悪化する一方では、ないですかっ!
     何か、何か策があるはずです!

     早くここから脱出する術が見つかれば、ピーチ姫やマリオならば有用な知識を持っていて
     劣化が抑えられるかもしれませんし!

     ――そ、そうです!新しい、魔法っ!
     私自身、目を修復できる新しい回復魔法を生み出してですね!
     そうすれば話は早いでしょうっ!?」

デイジー「…焦らないでよ、ロゼッタ。視界以上に思考が曇ってるよ。
     流石にそんな淡い希望に縋って一層無茶をするなんて、断固として許さないよ…?」ゴゴゴ

ロゼッタ「……!」

デイジー「唯一の救いは、目の劣化が、使用回数とは関係ないことだね。
      容体が安定したら、精度は下がってるにしても魔法を使い出してOKだよ。
      特訓再開も…まあ考えておいてあげる。でも。
      今はロゼッタを止めるのが私の役目。お願い、理解して」

私を宥めて、抱きしめてくれるデイジー姫ですが。
ポロ、ポロと。絶望から、自分勝手ながら、涙が更に溢れてきます。

ロゼッタ「何をやっているのですか、私…!貴重な時間を、みすみすフイにして…!
      恵まれた環境下を活かして、もっともっと、強くならなければいけないのに…!」

デイジー「…ほんと、いつの間にか、戦闘狂だよ。気持ちは、わかる、けど」グズッ

ゼルダ「…自分を追い込み過ぎ、ですよ」

ロゼッタ「騒動の原因ですらあるのですから、追い込んで当然です!
      それに…それにっ!これからの私がどんどん…魔法使いとして弱くなるのならば!
      ――既に、自分の存在意義にも直結して、崩れ去りそうではありますがっ!
      余計に、今できることを、今のうちに全てしなければ、後悔してもし足りないではないですか!

      デイジー姫、何かできることはないですか!?
      とりあえず、体を慣らしつつ、新しいFP動力源の構築を
      開始すべきだと考えるのですが、如何でしょうか!?
      ああ、そのためには一層の基礎体力も必要ですね―
      食事療法、ストレッチ、筋トレに走り込み、それからそれから――」

激しい動揺、動転を隠しもせず、泣き腫らしながら想いを吐露して、足掻こうとしたところで…

――強い衝撃を受けて、再び私の意識は、深く沈んでいきました。

――たった今、手刀一発で、ロゼッタの意識を刈り取ったのは…
――デイジー姫では、ありません。



デイジー「……え?」ボウゼン

ゼルダ「……ヒルダ、姫?」アゼン



ヒルダ「……」スッ

行為者は、予想もしない人物、でした。



気絶したロゼッタの胸に手をやって、数秒。
その手を自分の胸の所に持って行って、抱きしめて。目を瞑ること、数秒。





ヒルダ「――――強く、なりたい」

いつもの、弱弱しい面影は、どこへ行ってしまったのでしょうか。





ヒルダ「――そうだ、私。強く、なりたいんだ」





今度は、更に力強い声。
デイジー姫が、思わず息を呑んでいます。もちろん、私も。
ここまで凛とした顔のヒルダ姫は初めてです。

ヒルダ「ロゼッタの想い…私も、欠片だけでも受け継ぎたい。
     今回のロゼッタは…少しだけ思いきり過ぎたかも、しれないけど。
     私も、ロゼッタみたいに――
     やりたいこと、やらなければならないこと、全力で挑戦できる人になりたい」

私たちの方もじっと眺めて――

ヒルダ「皆さんより遥かに弱い私ですが。現状、足手まといにしか、なっていませんが。
    必死で足掻いて、追い縋りたい。役に立って、喜んでほしい。だから――
    
    お願いします、デイジー姫。あの特訓、続けてください」

デイジー姫が、完全に固まる。まさに窮鼠猫を噛む。

ヒルダ姫が…殻を破って、決意のカタマリになっています。
デイジーは、その目の真意を、十分に感じ取って、ふぅ、とため息をつきました。

デイジー「……やれやれ、まいったなあ。ロゼッタの影響は絶大だね。
     …いや、それも違うか。これは…ヒルダが最初から持ってた芯の強さが
     たまたま…この瞬間、開花しただけだもんね。
     ロゼッタのおかげって言うのはヒルダに失礼千万だ、ごめん。

     ――うん。ロゼッタの療養期間が終わって、それでもまだ
     その意思を貫いてるなら、私は何も言わな――」

ゼルダ「…ちょっと。ヒルダにだけ恰好は付けさせませんよ」

デイジー「…え?」

そんなの、悔しいではないですか。
私にも、響いてきたものは、確かにあるのですから。

ゼルダ「デイジー。私に、ロゼッタの治療法を教えなさい。
    要は、繊細な制御でFPを流し続けてやればよいのでしょう?
    私が面倒を見られるのならば、デイジーの復帰も早くなるでしょうが」

デイジー「え、あの、この治療法は、FPを割と豊富に持ってる私だからこそ
      えいやーって感じで多少のロスを気にせずできる荒技で…
      だいいち、私ならではの感覚的な表現でしか教えられないよ…?」

ゼルダ「…フン。私の魔法技術の真髄、舐めていますね?
     ロゼッタほどではありませんが、その程度の制御、手に負えないとでも?
     3日で…いえ2日で、身に付けて御覧に入れましょう」

意地っ張りと言われようと、どんと来い。臆病者にだけは、なりたくない。
胸底から、熱いものが込み上げてきます。

デイジーは、ぷっと噴き出して、涙をにじませながら笑い出しました。
…私は何も、言いません。

デイジー「…ふふ。わかった。わかったよ。不慮の事故も考えて…
      私の他にもロゼッタを助けられる人は、多いに越したことはない。
      全く――馬鹿で最高な人たちが集まって、私はすっごく嬉しい!」ジワッ


気絶したロゼッタの、手の上に。

デイジーの手が重なり。

意図を察して、更にヒルダ姫の手が。

最後に、私の手が重ねられ。


デイジー「…さあ、ロゼッタのためにも、そして私たち自身のためにもっ!
      まだまだしんどいこと、辛いこと、待ってるだろうけどっ!
      張り切って、頑張ってっ!喜びは分かち合ってっ!
      大団円のハッピーエンドに持ってく。皆、いいねっ!?」

ゼルダ「ええ!」

ヒルダ「はいっ!!」

――こういうのも、悪くない、と思いました。

…………。

……………………。



ロゼッタ「………………………………」



寝かされた状態のまま…ゆっくり――ゆっくりと、瞼が開かれて行きます。
散漫な動きで隣を見やれば、汗をかきながらも、ほっとした様子のデイジー姫が。
その右手はしっかりと、私の右手を握り締めています。

――温かい。

デイジー「…はい、落ち着いてね、今度こそ。
      ひとまずはひと段落ついたことに感謝、感謝だよ。
      神さまに御礼でも言わないと、なんてね」

…そう、でした。
私の体調を、必死に保ってくれているの、ですね。
何度も錯乱してしまいましたが、流石に落ち着かざるを得なくなって――
デイジー姫の手のひらを伝って、FPが、穏やかに流されていくのが自覚できました。
流石に…もう、跳ね除けることなどできません。

ただ、希望を持てる状況でないのは事実。
まさか、私の目がそんな特殊な機能を担うようになっていたとは露知らず…。
私がこれまで何百年もかけて積み上げてきた魔法のチカラ…
いったい、どれだけの頑張りを、切磋琢磨を、無駄にしてしまったのでしょうか。

虚ろな眼差しで、デイジー姫を見やります。

デイジー「…あーあー、また涙ぐんでー。
      まったく、いつまでも年下に慰められるんだからー」ナデナデ

ロゼッタ「…………?」ウルウル



撫でる左手に、不思議とざらざらとした感触。



ロゼッタ「…………あ」ゾッ

デイジー「…………あ、だ、大丈夫だよ!?心配しないで!
      ちょっち、カサブタができてるだけだから!ほら!ほら!
      右手と左手、交代にやってりゃこれ以上は悪化しないから!」ヒラッ

思わず息を呑む。
ヒラヒラと振って見せる左手は、ちょっとどころではなく――
手のひらの面積の半分以上が、赤黒く染まっています。固まっては、いるようですが。
握られている私の手は、特に異常を来していないというのに。

ああ、そういえば、私の両腕の裾が捲られています。
接触箇所を適宜移していくことで、負担を減らしてくれたのでしょう。

デイジー「…その様子だとバレた、かな。よっ、さすがの洞察力!
      FPを送る分には、私…手のひらしか使える部位が無くて」

ロゼッタ「…重ね重ね、申し訳ございません」

デイジー「べ、別に謝らなくていいってば。
      ロゼッタの向上欲はとっても大事だと私は思うよ、うん」アセアセ

ロゼッタ「せっかく、修業まで付けて頂いているというのに…
     皆さんの時間をますます削ってしまい…」





デイジー「………………………………
      いや、その判断は、ちょいと時期尚早かなー」ニヤッ





突然、デイジー姫が不思議なことを言い出しました。
おもむろに、扉の方を指さします――。



デイジー「……闘志ってさ、案外伝染するみたいだよ」

ロゼッタ「……?」

デイジー姫に手を預けたまま、仮眠室を出て、フィールドへ。



ロゼッタ「……!?」

失礼ですが、思わず目を瞬かせてしまいました。



ゼルダ「今の踏み込み、中々良かったですよっ!そのまま懐に飛び込んで、
    私に1発でも浴びせて御覧なさい!」



ズバッ!ズバッ!ズババババッ――!!
口ではそう言いつつも、余裕綽々な様子で、かといって手を抜いているわけでなく。
次々と繰り出されるディンの炎で、追い込む、追い込む。



そんな、真剣な面持ちでビシッと構えるゼルダ姫と対峙するは。



ヒルダ「はあっ!はあっ!はあっ!――――――――
    もちろん、やってみせようでは、ありません、かっ!!」

ぜぇぜぇと肩で激しく息をしながらも、今までで最高の闘志を燃やしているらしい、
ヒルダ姫だったのです。

ヒルダ「ファントム・ユガ!『ファイアロッド』で迎撃っ!」

ファントム・ユガ「DAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!」ブンッ!!

ファントム・ユガさんがどこからともなくフッと取り出したるや、
前回の槍ではなく、赤々とした炎を纏う杖。

ゼルダ姫が操り、ユラユラと上下に揺れながら迫り来る炎の球を、
危なっかしい所はちょっとありますが…一つ一つ、なんとか撃ち落としていきます。
激しい炎の弾幕戦となりました…!

状況が悪いのは、もちろんヒルダ姫のほう。
ゼルダ姫がさほど苦も無くディンの炎を連発してのけるのに対し、
青白い顔のヒルダ姫は苦悶の表情。明らかに魔法の限界出力のようです。

ゼルダ姫の猛攻に対抗できず、ジリ貧。違いは倒される時期が早いか遅いか、のみ。
その事実自体は、ちょっと前の、デイジー姫が居ない3人での特訓中にて
さんざん目にしてきた、分かりきっていた事実、なのですが――

ヒルダ「…………っ!」ギリッ

ヒルダ姫が、唇を強く噛みしめ、顎に血を伝わせ始めました。
爆発音があちこちで響く中、それでもヒルダ姫は、体を震わせながら――――

ヒルダ「……負け、ないっ!!」カッ!

一瞬後ろに倒れかけたのは気のせいでしょうか、ものの見事に持ち直しました。
ゼルダ姫を見据えて、強い眼光とともに、すっくと立っています……!
以前の弱気な姿勢が、まるで影も形もありません…!

ゼルダ「…ふっ」ダッ!

ここで、ゼルダ姫が魔法行使を突如として破棄。走り出し、接近戦を仕掛けました。

私の視点からはそれがわかりましたが、あちこちの爆風の隠れ蓑になったうえに
疲労困憊も祟っているヒルダ姫。気付くのが遅れてしまいました。

そもそもからして、2人の基礎体力差は、魔法の腕の差以上に開いているのです。
デイジー姫ほどではありませんが、ゼルダ姫の高速ムーブ。
ヒルダ姫が対抗できるわけがありません!

ゼルダ姫の突撃を視界に入れて目を見開いた時には、時すでに遅し。



ゼルダ「マジカルカッターッ!」ブンッ!!

手加減されたとはいえ、手刀を腹部に激しく受け、ヒルダ姫の体が吹き飛びます。



ゴロゴロと地面を転がり、そのままピクリとも動かなく――
あ、いえ!一つ咳をして、赤い物を吐き出して…のそりと、立ち上がろうとしています!
ダメージは大きいらしく、両手を地に着いたまま、中々体を持ちあげられませんが、
ゼルダ姫がその場から動かず様子を伺うなか…15秒ほどして、ようやく立ち上がりました。

私の思考回路が死の概念を軽んじるようになったという噂もありますが、
死と隣り合わせの背水の陣状態で戦う人を逞しい、格好いいと思う心は、忘れるはずもない。

ゼルダ「……ユガも消えてしまったみたいですが、まだ続けるのですね?」

ヒルダ姫が満身創痍ながら血を拭って、無言で頷いて…試合、再開、となりました。
容赦なく、ふたたびゼルダ姫が、ヒルダ姫のもとへ駆けて行きます!

…ああ、残念ながら。
ヒルダ姫は最後の力で立っているのがやっとなのでしょうか、動くことができません。



あと10メートル。ゼルダ姫が、優雅に颯爽と接近を続けています。

あと5メートル。投げ出してしまったのか、ヒルダ姫が、ぶらんと手を前に出しました。

あと2メートル。おもむろに、ヒルダ姫が微笑みます。



ゼルダ「クイックパームショッ――」

デイジー「あ」

そして―――――――――!

ヒルダ「――」サッ



……ファントムユガさんが死角であるヒルダ姫の陰からぬらりと再出現して。
長い手をすうっと伸ばして、ヒルダ姫の手の上に バクダン 置いて行きました。



ゼルダ「」ガツンッ

ヒルダ(ニコッ)



ドッカアアアアアアアアアアアンン!!!

ロゼッタ「」

デイジー「飛び出した ゼルダは急に 止まれないぃ!!」

ロゼッタ「…ハッ!ヒルダ姫ぇっ!何をやっているのですかっ!
     大丈夫ですか、わ、わ、わわわ…………!!」

デイジー姫と連れ立って、慌てて駆け寄ります。
爆発が晴れていき…絶命したヒルダ姫が映り込んできました。

ヒルダ「」チーン

ロゼッタ「嫌っ、完全にボロ雑巾状態になってるじゃないですか!?」

デイジー「私、ロゼッタの言い方も中々酷いと思う」



見ていられない状態のヒルダ姫の体が光り輝き、息を吹き返します。
ああ、本当によかった…。

ヒルダ姫は、復活したと同時に、復活に伴う絶望の副作用といいますか、
えづいて胃液を吐き出していますが。

ヒルダ「…あ、ロゼッ…タ。ゴホッ……。
    でき…れば、幻滅しないで、いただける、と、助かります。
    ちょ…っと、周りに配慮、する、余力が、ない、ので……
    事前に、胃の中、空っぽにして、おく、くらいしか、できませ、ん、でした」

ロゼッタ「そのあたりは私も通った道なので全然気にしないです」トオイメ

ヒルダ「…………………………そ、そうですか」タラリ

ロゼッタ「吐血でも嘔吐でも幾らでもすればよいのですよ。
     その数だけ私たちはきっと強くなれるのですから」

デイジー「いっぱしのレディが何て汚い話をしとるねん」バシーンッ

ロゼッタ「きゃああああああっ!ハリセンは痛いですっ!?
      でもFP供給側の手はそのままでいてくれてありがとうございますっ!」ガンッ

意志は強くとも、死の恐怖に慣れた訳ではさらさらないヒルダ姫。
まだガクガクと震えているところを、そっと背中を撫でてあげました。
ヒルダ姫は、片手を自分の胸に押し当て、落ち着こう落ち着こうとしています。

ヒルダ「…今の戦い、見ていたのですね。我ながら、無茶をしたとは思いますが。
    こうでもしなければ、ゼルダ姫に、一矢、報いることすらできませんでしたから」

ゼルダ「…ええ。これ以上はないというくらいの仕掛け方でしたね。
    もしかして、一度ファントム・ユガが消えたのも、ワザとだったのでは?
    本当にヒルダ姫は逞しくなりました。私もうかうかしていられませんね。
    …はい、とりあえず水を飲んで、体を落ち着かせてください」

慈しみの顔を向けてくるゼルダ姫から水の入ったコップを受け取り、
手先を震えさせながらも、どうにかこうにか、水をこくこくと飲んでいくヒルダ姫。

ヒルダ「……………………ぷはっ。
    ありがとうございました、ゼルダひ――――」

ぴしりと、ヒルダ姫が固まります。
……あれ?何か、おかしいような。あれ?

ヒルダ「ちょ、ちょっと待ってください。水を持ってきてくれたのは感謝するのですが、
    一体全体、どうして、無傷なんですか!?爆発に巻き込まれたはずじゃ!」

ロゼッタ「あ、そ、そうですよ!」

ゼルダ「あ、も、もちろんダメージを受けましたよ!?
    幸い、水を取りに行くついでに仮眠室でちょっとつまみ食いして
    体力を回復してきたもので――」



デイジー「嘘つけぃ。バクダンに気付いた瞬間、咄嗟にフロルの風で急上昇して
      爆発から逃れてたよー?私の目は見逃せないぞー。
      
      ヒルダの自爆戦法の狙いはバッチリだったけど
      結果的には地力の差で覆されて大失敗だったってことだよ」ケラケラ

ゼルダ「シィーーーーーーッ!」
     
ヒルダ「」ガーン

ロゼッタ「やるせないです」

ゼルダ「あの、その、ヒルダ姫!そんなに気を落とさないでください。
    結構ひやっとしたんですから」

ヒルダ「…………」グズッ

ゼルダ「…………」ダラダラ

ヒルダ「……もう一回」

ゼルダ「…………え」

ヒルダ「もう一回、ですっ!」

ゼルダ「む、無茶です!今日だけでどれだけ貴方の戦闘力の極限スレスレを進んでいるか、
     分からないわけではないでしょう?」

ヒルダ「でも……うっ」フラッ

デイジー「はーい、すとーっぷ。精神保全、精神保全―。
      悔しい気持ちは痛いほど分かるけど、とりあえず落ち着こうか。
      大丈夫大丈夫、今日だけでかなりの経験値は稼げてると思うから。

      いやあ、でも上出来上出来!
      ここまでヒルダ姫が頑張ってる姿見て、どう!?ロゼッタ!
      これも、ぜーんぶ、ロゼッタの熱意の賜物だよっ!!」バッ



慌てて、ヒルダ姫が私の方を向いて、申し訳なさそうに目を伏せます。

ヒルダ「…ど、どうでしょうか。ロゼッタ…。
    わ、私も、少しは、貴方みたいに勇気を出してみたので――」

ロゼッタ「……………………すごい、ですね、ヒルダ姫。
     それに比べて、私ときたら、本当に、どうしようもありません…」

ヒルダ「!?」

ゼルダ「」

ロゼッタ「くっ…ぐずっ…」ポロポロ

デイジー「あっれれー?おかしいぞー?ここはロゼッタが
      『私の行動に無駄なんてなかったんだ、皆さんをサポートできてたんだ!
      自信が出てきました、気を取り直して頑張りましょう!』
      ってモチベーションを上げまくる段取りだったんだけどなー?
      おーい、誰だ台本書き換えた奴~!」

どたばた。じたばた。どんがらがっしゃん!

~フィールド、ど真ん中~

チコ「シート、敷き詰め、おっけー!ごはんにデザート、オールグリーン!」ヨイショ

チコ「パーティの準備、いいよおー!」ビシッ

チコ「お待たせ―!」ワー

デイジー「…と、いうわけでぇ!一旦特訓は中止しましてぇ!
     さあさあ皆の者、座った座った!祭だ宴だ宴会だ!

     第一回、ロゼッタを励まして励まして励ましつくす会を始めたいと思います!
     盛り上げて参りましょう!おー!」

ゼルダ「いい趣ですね、誠に」

ヒルダ「ロゼッタのためですから!」



ロゼッタ「…………はあ」ドンヨリ

やる気:絶不調



デイジー「よ、よーし。とりあえず、食べて飲んでスカッとしようじゃないか!」

ゼルダ「…とは言っても、宴の酒があるわけではないですが…残念です」

デイジー「…………う、ぐ。牛乳ってのも、ちょっと…………………ぐ、ぐ、ぐ。
     …………ったく、しょうがないなあ!特別の特別だからねっ!」

デイジー姫が、頭を掻き毟って、ちょっとの間FPの治療行為をゼルダ姫に任せ…
自分の鞄から、何かの瓶を取り出してきました。

…あ、この僅かな時間でも、治療に慣れないゼルダ姫は額に汗を垂らしています。
かなりデリケートな治療、ですよね…。
もっさり動くことしかできない今の私は、頼り切ることしかできません。
ただ、腕を握られるに任せている、なんとも情けない状況です。

ヒルダ「…お酒、ですか?わざわざ持参されていたのですか?」

デイジー「秘蔵の、ね。ようやく確保できたもんで、こっそり持ってきてたの。
      そんじょそこらの酒とは比べ物にならないんだから!
      注ぐ器が何の変哲もない唯のコップなのは勘弁してほしいけど…はいっ!」スッ

4つのコップに、桃色の澄んだ液体が静かに注がれていきます。
…20mlずつ、くらいでしょうか。オーバーなくらい、慎重に、慎重に注いでいます。

ゼルダ「…勿体ぶる、といいますか。流石にケチ臭くはないですか?
    飲み応えのためにはもっと――」

ゼルダ姫が揺らすグラス…いえコップの中で、「それ」はゆらりと波打ちます。
ほのかに香る桃の香り。一瞬、ゼルダ姫がビクッと固まりました。…気のせいでしょうか。

ゼルダ(……まさか、ね)

デイジー「ととととんでもない!?そんなことできるわけないから!
     言っちゃ悪いけど、本当はみんなに振る舞うつもりもなかったんだからね!?
     ロゼッタに免じての大、大、大サービスだよ!?
    
     あ、みんな、お酒大丈夫?無理だったら即刻返してね!勿体ないからっ!!
     私が責任もって飲むっきゃない!」

ヒルダ「よくわかりかねますが……?やっぱり、欲張ってますか…?」

ゼルダ「…………この香り、どこか、で……………いえ、まさか…」ブンブン
    


皆さんがあれやこれや話す中、私はじっと、コップの中を見つめていました。
とても――とても、綺麗な色をしています。少しは、心が洗い流されていくような。



デイジー「とりあえず、かんぱーい!」

私の隣に、しっかりスタンバイしているデイジー姫。
私の左手と彼女の右手はFPの流れのために、仲よしこよしで繋がれていますが、
ぎこちないながらもコップを打ち付け合って。

そういえば、お酒、ですか。

日頃嗜むわけでもなく、最後に飲んだのはクッパの誕生パーティまで遡ります。
…デイジー姫のご厚意に応えられるだけの味の理解ができるでしょうか。
心配になってきました。

ふと周りをみれば、みなさん、私がます口を付けるのを待っています。
…わかりました、それならば甘えることに致しましょう。


ロゼッタ「では……」

すこぉしの緊張のあと、コップを、すっと、傾けました。






























「――――」

ロゼッタ(…………)

デイジー「…………おーい、ロゼッタぁー?」ユサユサ

ロゼッタ「……!?」ビクッ

ロゼッタ「……え?え?あれ?」



――意識が、ぷっつり、飛んでいました。
――コップを持っていた手すら力が抜けてしまい、危うく落とすところ。
――いえ、正確には「落とした」のですが、咄嗟にデイジー姫がキャッチしています。

デイジー「…ま、初めて飲んだら大抵はそうなるだろーね、くふふ」

してやったり、とデイジー姫は愉快そう。
しかし、そんな些細な事、気にしてはいられません。



駆け抜けた感覚に、しどろもどろ。



ロゼッタ「強すぎない、弱すぎない桃の味わいの主張。
     甘く、フルーティで、かといって甘ったるい卑な味でなく。
     香りの上品さ、喉を通るときのたちどころなく消えていく滑らかさ。
     自然の豊かさ、大地の芽吹きを感じさせる――」



――普通、お酒は飲む人を選ぶといいますが…
――このお酒を嫌う人は、おそらく一人たりともいないでしょう。
――そう。まさに……絶品酒…!

ヒルダ姫が、ほわほわぁと気持ちよさそうに、飲んだ後の余韻に浸っています。
……そして、ゼルダ姫は、というと。

ゼルダ「――っ!ま、まさか、本当に――っ!」ワナワナ

優雅に飲み干した後、プルプル震えて、必死に答えを導き出そうとしています。
おや、味に覚えがあるのでしょうか。

ほどなく、ダンッとコップをシートに叩きつけたあと、デイジー姫に詰め寄りました。
コップさんは殉職なされました。おいたわしや。

ゼルダ「デイジー!よもや、こちらの酒は――
    いえっ、しらばっくれるつもりでしょうが…瓶を改めさせてくださいっ!!」ガバッ

デイジー「ぬわああああああ!?しまったぁ!?無駄に舌が肥えてるぞこの人っ!?」

デイジー姫、私から離れられないせいで、妨害行動が遅れてしまいました。
そして――



ゼルダ「……やはり、思い違いでは、なかった…!

     『神酒 桃葵の誓い』――っ!

     再びお目にかかるとはっ!なんたる幸運でしょう…!!」

上気したゼルダ姫が、瓶から一切目を離さないまま、思わず唸ります。

ヒルダ「…神酒?神前にお供えされた有難いお酒、ということですか?」

ゼルダ「い、いえ。それどころではありません!    

    キノコ王国が完全管理する桃果樹園で熟成製造されると聞き及んでおりますが、
    極限の品質を突き詰めた結果、とにもかくにも稀少な果実酒で…
    ピーチが言うには、1年間でせいぜい2, 3リットル程度しか流通させられない、とか…!

    以前、ピーチの誕生祭に呼ばれた時に戴く機会が有りましたが…
    その時は大変恥ずかしながら、余りの味わいに数十秒のあいだ前後不覚になるほどで…!
    しかし、たった今、確信が持てました…!あの時の神酒だと!

    い、一説には、この1リットル瓶1本で小国の国家予算程度は吹き飛ぶ時価が付く、と…!」ブルブル

ヒルダ「!?」

ロゼッタ「!?」

デイジー「無駄に知識オタクだぞこの人!
      知ってくれてるのは嬉しいと言えば嬉しいけど!?」

ゼルダ「それもそのはず。何百年もの歴史を持つ果樹園で、
     製造者たちは最高の桃を求め、最高の水を求め、最高の酵母を求め…
     はたまた、副材料、熟成温度、湿度、ガス雰囲気、時間、撹拌具合、などなど。

     更に、科学的見地だけでは飽き足らず、魔力泉に樽を導いたり、
     祈祷魔法で神秘性を高めたり、浄化の光を浴びせたり、と構成要素は尽きず。
     心身が喝采を浴びせる、最適解となる条件のプロットを叩き出すために
     先駆者の多くが言葉通り命懸けだったと聞きます…」

ヒルダ「素晴らしいです…!その結果が、このお酒の出来栄えということなのですね!」

ゼルダ「ところが…そう、単純な話で、終わってくれないのですよ」

ヒルダ「…え?」ズルッ



ゼルダ「ズバリ、最後に必要なのは、 運  です。
    悲しいことに、最適解条件を割り出せても、不確定要素が多すぎて、
    作ってからでないと、条件が合っていたかどうか分からないそうです…

    精密機器を活用できる今ですら、ある程度の所まで絞ることしかできません。
    特に神秘性の充填などの話になると、数値測定すら困難ですから」

ロゼッタ「」

デイジー「憎たらしいほど理解してるね!ったくー、ばれてしまっては仕方がないなあ。
      製造の一部に関与するサラサ・ランドのお姫様として、
      このお酒の製造法、お伝えしまーす!括弧、ピーチ談、括弧閉じ!

     合ってるかな?かな?っていう条件を積み立てまくって、
     合計で1万キロリットルくらいの果実酒を作りまーす!
     でもでも、10リットル単位でわざわざ樽を独立させて、
     樽を全部で…ええっと…のべ100万本準備しないといけませーん!」

ロゼッタ「」

デイジー「熟成が終わったら、キノコ王国のスキャン技術で
     お酒の内部成分をしかと読み取りまーす!
     それぞれの…独立しこー?により、1樽か2樽くらい、
     全ての条件が超パーフェクトなお酒ができあがりまーす!
     でも運が悪くて1樽もできない年だってありまーす!

     まあ、できあがった樽があったとして、それにペタッと『神酒』の札を付けて、
     ピーチ直々に固定化の魔法かけて、はい完成!
     残りの99万9998樽くらいは、大衆向けに通常価格で
     売り出しまーす!妥協なんてものはありませーん!
     
     だから、これは神に祀られた有難いお酒じゃなくて…
     神に愛されて豪運を勝ち取った野生6Vのお酒ってことだよ。了解?」

ヒルダ「例えが全くもって意味不明ですが、ものすごいということは分かります」

デイジー「結局、キノコ王国の桃と、サラサ・ランドの向日葵が熟成過程で
     絶妙なハーモニーを醸し出す意外なベストパートナーになることが判明してね。

     両国間に友好条約が結ばれてからと言うもの、
     ピーチも私も製造者たちをバックアップして、1樽か2樽製造して…
     王国で買い上げて、仲良く半分こして、流通…流通?させてるわけだよ」

ゼルダ「…2樽できた年ですら、デイジーに渡るのは1樽、つまり10リットルだけですよね…。
    この1リットル瓶、たったの10本…」ゴクリ

デイジー「ノンノン、『サラサ・ランドに渡る』のが10本ね。更に減ってくよー?
     国民栄誉の頂に登りつめた人に贈呈したり、お祭りごとで少しずつ開放したり。
     外交の持て成しに重宝するし、富くじの特等の景品にもなってたっけ。
     …富くじの場合、ときたま殺傷沙汰になるんだよな…。

     誰もが一口飲むことを切望し、一度飲んだら忘れられず、
     また飲みたくなるお酒だからね」

ロゼッタ「それだけ聞くと危ない薬みたいですね…」

デイジー「失礼なっ!?…ま、とにかく。
      最終的にまともに売られるのが2, 3リットルになるわけだよ。超高いけど。
      …で、これは私の立場で特別に取り分けてもらってる1本ってわけ」



売ったとしたら、紅茶がいーっぱい買えそうですね。

ゼルダ「もう一杯、クダサイ」ウットリ

デイジー「今の話聞いてたぁ!?もうやらん!涎ふけ!しっしっ!
     周りの料理を食べてなさい!」

ゼルダ「こんなに美味しいお酒を頂いた後で、ジャンクフードなど食べられますかっ!
    吐き気を催してしまいます!」

デイジー「アンタも何気に酷いな!?なんと言われようとダーメ!」

ゼルダ「ぐぬぬ…!」

ヒルダ「…残念、です…」

デイジー「き、きっとピーチに頼み込めば、ハイラル王国にも数年に1本くらい、
      歯ぎしりされながらも融通してもらえるよ…!
      おっとロウラル王国は知らん」

ヒルダ「そんなぁ…」

あまりにも残念そうな顔をする、ゼルダ姫とヒルダ姫。
それを横目で見て取ったデイジー姫は、ため息ついて…
しばしの思慮のあと…こう告げました。



デイジー「…どうしても欲しいんだったら…そうさね。

     3人同時に私に掛かってきていいから、裏の私の残機を一つでも減らす…
     いや、『背中を3秒以上継続して地面に付けさせる』、で勘弁しておいてあげる。

     このミッションを達成出来たら、この瓶の所有権、3人に渡してもいいよ?
     どうせ無理だろうけど…明日から、やってみる?」



にやぁ、と笑うデイジー姫。
思わず反射的にゴクリと息を呑む私たち。
いの一番に反応を返したのは…予想通りと言うか、ゼルダ姫。



ゼルダ「…二言は、ありませんね?」



デイジー「…お、おう。ゼルダちゃん、貴方が酒でここまで燃えるとは思わなかったよ。
     え、なに?そんなに政務にストレスたまってるの?ハイラル大丈夫?」

一旦、お酒からは離れて。ようやく、あれこれつまみ始めました。
…いえ、お酒の入手のため作戦会議に移っただけですから、離れているとは言えませんか。



ゼルダ「いいですかロゼッタ!
    貴方にシャキッとしてもらわなければ、我々が勝つことなど夢のまた夢ですよ!
    早く元気になって下さい!」

ロゼッタ「そ、そんなこと、言われましても、無茶振りもいいところです!」

ヒルダ「まあまあ、落ち着いてください」

ゼルダ「何を、無関係気取りですか、ヒルダ姫。
    貴方だって内心欲しがっているでしょう?」

ヒルダ「そ、そこまでは…………………………………」

ゼルダ「…」ジーッ

ヒルダ「すいません意地張りました。ぜひとももう一度飲みたいです」

ロゼッタ「まったく、もう…アルコール中毒って怖いですね…!」



使い方次第で傾国の酒になりそうで怖いです。
私の場合は、そこまで飲みたくは…
いやまあ、飲んでいいと言われれば諸手を挙げて飲ませて頂きますけれど。
それは自然の摂理です。

デイジー姫が面白そうに眺める中、ゼルダ姫の啖呵は収まることを知りません。



ゼルダ「デイジー姫のロゼッタ語りの内容も踏まえて、私、思ったんです。

    ロゼッタ、貴方は異常なほど魔法技術に優れる。
    悔しいですが、私など足元にも及ばないでしょう。忌々しい。

    しかし、使う魔法も異常なほど高ランクのものを選んでばかりで、
    結果として失敗したり常用するには大掛かり過ぎたり…
    これを機会の損失と言わずして、なんと呼べばよいのか。

    今回の事故で魔法制御が覚束なくなってしまったのをいい切っ掛けとして、
    一旦、行使する魔法のランクを落としてみるというのは如何でしょう?」シレッ



その発言には、さすがの私も色めき立たざるを得ません。



ロゼッタ「なっ…………!それは、あまりにも酷い言い方ではないですか…!?
     こんなに苦しんでいるというのに、『いい切っ掛け』にしろ、だなんて…!」

ゼルダ「何を勘違いしているのか知りませんが、手を抜けと言っているのではないですよ!
    少ない投資でもっと成果を挙げるやり方くらい、ロゼッタなら見つけられる!
    そう言っているのですよ!この分からず屋が!」

ヒルダ「…あの、デイジー姫。2人とも、実はお酒、弱いのでしょうか?」ヒソヒソ

デイジー「…私の推測と経験からすると、ロゼッタに関しては素で弱い。
     ゼルダは日頃のストレスのせいでたまたま酒に弱い状況になってる。
     でも、ゼルダとうり二つのヒルダは…お酒、強いのかな?」

ヒルダ「荒れ果てた王国で、飢餓に苦しんで得体のしれない食べ物飲み物摂取しているうちに
     分解能力が高まったとかじゃないでしょうか…」フッ

デイジー「そんな重い話はお呼びじゃないよ!」



お酒のせいか、デイジー姫とヒルダ姫を置き去りに、とんとん拍子に、喧嘩腰になってしまっています。

ロゼッタ「私はこれでも何百年も、あれこれ思案して魔法を、術式を編み出してきました!
     空間魔法と回復魔法だけですが、工夫を重ねてきたのです!
     今更、それを馬鹿にされたくはありません!」

ゼルダ「そこまで言うのなら、ヒルダ姫とデイジーとの3人で、
    貴方が土下座したくなるような魔法を提案して差し上げますが、よいですか?」

ロゼッタ「…できるものならやってみてくださいよ」

チコ「そうだそうだー!」

チコ「ママを甘くみるなー!」

チコたちも、私をしっかり応援してくれています。
空間魔法といえば、安心と信頼の実績のロゼッタです!

ゼルダ「お二方も、よろしいですね!」

デイジー「なんだか変てこなことになってきたけど…
     面白そうだから大賛成!よーし、使える空間魔法、妄想するぞー!
     レッツ!シンキングターイム!」

ヒルダ「わ、わかりました」



御三方揃って、腕を組んだり、顎を捻ったりして悩み始めました。
ま、まあ、私の為に一苦労して頂けるのは非常に嬉しいことなのですが。



ゼルダ「思いついたところから発表していく、と言う感じで参りましょう。
    それでは、言い出しっぺの私から。

    ロゼッタ、あなたは空間魔法で隔壁を造りだせるのですよね?」

ロゼッタ「はい、造れます。無尽蔵に…というわけではありませんが」

今さら…それが一体、どうしたというのでしょう。

ゼルダ「壁を造れるならば、浮遊床を造ることもできるはずです。

    味方と息を合わせてポンポンと床を作ってやれば、
    さも、空中を言葉通り駆けるような動きが達成されるのでは。
    名付けて、『バディブロック』といったところでしょうか」

デイジー「いいね!本来制御しにくい空中で自由に駆け回れるって、
     相当なアドバンテージだと思う。
     敵に利用されそうだったらとっとと消せるっていうのも評価点かも」

ロゼッタ「ふむ、一理ありますね」



バディブロック、ですか。言い得て妙ですね。

ヒルダ「あ、あのー。次、私、いいですか?」オズオズ

デイジー「おー、どんどん発表しちゃって」

ヒルダ「隔壁を絶対座標に留めるのではなく、体に対して相対座標で固定して…、
     中長期的に体に何重にも纏わせて、身体強化するというのはどうでしょうか。
     ううっ…この説明自体、あんまり自信がないんですが…ごめんなさい。

    普通なら隔壁同士がごちゃごちゃ干渉しあって動きにくくなってしまいますが、
    ロゼッタならばそのくらいなんとかなったり…しませんか?
    鎧としても、パワードスーツ的な役割としても、面白そうだと思います」

ロゼッタ「相対座標に持続展開、ですか…」

デイジー「次、私―!
     やっぱり、空間魔法で攻撃したかったら『奪い取り』でしょ!
     単なる静止物の預け入れ倉庫だけっていうのは勿体ないよ!
     敵や味方の魔法を切り取って、自分の魔法としてストックして使うっ!
     もう、攻撃手段が亜空切断だけとは言わせないってね!」

ゼルダ「そ、それは流石にずるく…ないですか?できるとも思えませんし」

デイジー「そうかなぁ?既に、むらびとができているって言えばできてるし…」

ロゼッタ「…」

ヒルダ「…あ。隔壁を動かせるということは、動かさない隔壁との組み合わせでピストン…
    空間の圧縮や膨張ができるということですよね?

    つまり、まるで感知されない所に弾性エネルギーを蓄えられるということです。
    これで物を勢い良く飛ばしたり、爆発に利用したりすれば効果的なのでは」

ゼルダ「それ、いいですね!…いえ、それだけではないような。
    それを応用すれば、断熱状態の伸縮で急加熱、急冷却ができるということです!
    疑似的に炎、氷属性の攻撃手段になり得るのでは?」

デイジー「いいねいいね、盛り上がってきた!
     そうだな…やっぱり、空間魔法の花形といえば、『重力操作』でしょ!
     敵の動きを束縛したり、味方をふんわり落下させたり!
     上空の物体を急速落下させたり、横方向に敵を叩きつけたりね!」

ロゼッタ「…………」

デイジー「…………あり?ロゼッタ」

ロゼッタ「……………………」

デイジー「…………もしもーし?」






ロゼッタ「うわっ…私の知能、低すぎ…?」ガクガクブルブル





ヒルダ「ないないないない」ブンブンブンブン

ゼルダ「だとしたら全人類の大多数は知能が低いことになりますね」

デイジー「ロゼッタさんはちょっと頭が固いだけなんや」


あれ、おかしいですね。
色々と有意義過ぎる意見が出されたからでしょうか。
すごく嬉しいはずなのに、なんだか悲しい涙が出てきました。

フラフラと立ち上がり、ボーっと周りを見渡して。
突然の行動に、皆さんがギョッとしています。

デイジー「…ど、どうしたの急に」

ロゼッタ「あの、ちょっとだけ今から無茶します。
     治療中の身でありながら誠に申し訳ありません」

デイジー「え、なになに、どういうこと…
      わ、わたしはFPをこれまで通り送り続けてればいいの?」アタフタ

デイジー姫に握られていない右手で杖を…。

ロゼッタ「ああ、杖はまあ、いいですか」ポイッ

ゼルダ「えっ」



そこまで高等なことは、やらないですし。
数年前の私だと無理だけれど、今の私なら、大丈夫なはず。

ロゼッタ「えーっと、右手の手のひらの数センチ上に隔壁で小箱を作って…こんな感じですか?」

デイジー「り、理解が追いついていないんだけd――」

ロゼッタ「一方向の隔壁を一気に押し込んで瞬間圧縮して急加熱――」グッ

デイジー「ちょ」



ロゼッタ「その火種に向けてFPを燃料として放出し大きな火球とし――
     別の隔壁のバネの力で、勢いよく、打ち出すッ!

     ええっと、ええっと……………Pyrokinesis《超常の火炎弾》――っ!」



ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!

バレーボール大の火球「だらっしゃあああああああああああああ!!!」バビューーーン!!



ロゼッタは パイロキネシスを 覚えた!▼

デイジー「」

ゼルダ「」

ヒルダ「」

ロゼッタ「………………………………………………………………
     なるほど、魔法的には精々Bランクといったところですね!今の私でも大丈夫!
     お恥ずかしながら、ようやくゼルダ姫のおっしゃったことが分かりました!
     これが極限でなく実用性を取るということですか……!!

     空間魔法で、こんなことができるだなんて…眼から鱗ですっ!!
     これなら…まだ、戦えるかもしれませんっ!!
     本当にありがとうございました!これでファイアフラワー要らずっ!」パアアアアアア

ロゼッタの やる気が ぐぐーんと 上がった!▼



ゼルダ「ふ、ふ、ふ、すすす全て計算通りですよ、ええ」ガクブル

ヒルダ「…眩暈が」フラッ

デイジー「全王国の魔法使いに謝れやゴラアアアアアァァァァ――――!
      いやまず魔法の才能ゼロの私に土下座して謝らんかぁーい!」

まわりの やる気が がくっと 下がった!▼

うーんボイルシャルル

~時は少しずれ、選手宿泊施設~

ピット「……むにゃむにゃ……………」

ピット「……」

ピット「う……うう……………」ウナサレ

ピット「ぐ、ぐ…………いいかげんに…し、ろ…………」




ピット「このスレ、いよいよ500レスを突破しておいて、
    マリオカートのマの字も出てないぞおおおおおお!!」ガバッ

パルテナ「きゃっ!?」ビクッ



グースカ寝て、飛び起きて。
ふと横を見てみれば、両手をバンザイさせて、ビクッと固まったパルテナ様。



パルテナ「…あ、デイジー姫の台詞中に、チラッと掠めて言及されてましたよ。
      訂正してくださいね」

ピット「よく意味がわかりませんパルテナ様っ!」

ピット「…あれ?パルテナ様?…あ。し、失礼いたしましたっ!
    なんだか、意味不明な暴言を吐いたような気が…!

    それはそうと、一体全体、どうしてここに?」

パルテナ「まったく、こっちはこっちで、心臓が止まるかと思いましたよ…。
      …あ、そうでしたそうでした。

     実は、リンクが朝からルフレたちを特訓しているのを見かけまして。
     中々面白い勝負になっていたので、終わってしまう前に
     ピットにも観戦をお勧めしたくて、呼びに来たんですよ。
     きっと、得るものがあるはずです」

ピット「パルテナ様のオススメとあれば喜んで!
    …ですが、リンクとルフレたちが、面白い勝負…?
    いまいち想像できないんですが。一瞬で終わりませんか?」

パルテナ「まあまあ、百聞は一見に如かず、ですよ」グイグイッ

ピット「分かりましたって。そんなに引っ張らなくてもー。
    あれ?というか、部屋の鍵を掛けてたはずなんですが」

パルテナ「出窓の方の鍵が開いてましたよ?」シャキーン

ピット「それ、タダの不法侵入です!犯罪です!」

~鍛錬場~

リンク「さあ来い、俺に勝つつもりで…思いっきり掛かってくるんだ!」

ルフレ「何度でも同じ返答をさせていただきますが、そんな無茶な…
    ええい、ヤケクソですよ!――ルキナ、まだ大丈夫かい!?」

ルキナ「…はいっ!」ダッ

ルフレ「戦局を変えてやるっ!それっ!」バッ

ルキナ「はあああああああっ!!」



リンク「ただの、素振りぃー!!」ブンッ!

ブァサァ――ッ!!



ルフレ「ぎぎ…!その、ただの木刀の、ただの素振りで、
    こっちは碌に動けない風圧を食らうんですけどねぇっ!?
    油断していると、あっという間に魔導書も吹き飛ばされそうだっ!
    …ルキナっ!僕の魔法で緩和させるから、構わず突き進んでっ!」ズズズ

ルキナ「わかりましたっ!」ダダッ

リンク「そうだ、その調子!攻撃は最大の防御、だぞ!
    全部に対処しようとするんじゃなくて、進路上だけでも障害を退けて、
    針の穴から局面を打開する一撃を狙い打て!」



ルキナ「……!」チラッ

ルフレ「……」コクッ

ルキナと ルフレは デュアル状態!
「デュアルガード」発動! 攻撃を 上手く 受け流す!▼



ルキナ「…御免っ!」ズバッ

リンク「ぐはっ!…なかなかの一撃だったぞ」ザクッ ドンッ



ピット「…ありゃ!?本当に、いい勝負になってる!」タタタッ

アイク「うむ。悪くないコンビネーションだな」

マルス「本来の2人は、会ったのはごく最近だけど。
    あのルキナは『別のルフレ』とタッグを組んだ経験が存分にあるから、
    ある程度の呼吸が分かっているのが大きいね」

ピット「……え、でも…そ、それだけで!?
    それだけで、2対1とはいえリンクに善戦できる底力を持ってるの!?
    あの2人、恐ろしい新人ってことなんじゃあ…!まさかの伏兵…!?」

マルス「ははは、まさか。
    リンクは人数差の他に、3つほどハンデを背負ってるから」

ピット「ハンデ?それでも3つだけって、凄いと――」



マルス「ひとつ。リンクは脚を動かしてはならない。
        転倒した場合は、その場で起き上がって再び立ち尽くすこと。

    ふたつ。リンクは木刀しか使えず、更に木刀を直接相手に当ててはいけない。
        間接的に吹き飛ばすにしても、致命傷を与えてはいけない」

ピット「……え゙」




Wii fit トレーナー「はい、立木のポーズ!」

リンク「うへーい!」ビシッ

Wii fit トレーナー「いい感じです!」キラーン



マルス「みっつ。60秒ごとに30秒間、『立木のポーズ』を実行しなければならない。
        その間は構えることすらできず休まれ放題、斬られ放題、撃たれ放題」

ピット「ハンデというより敗北への片道切符じゃないかな、それ!?」
   
パルテナ「んー、でもリンクの方がちょっと押してますけどね」



ルフレ「ハアッ…ハアッ…どうして…曲がりなりにも攻撃を当て続けてるこっちが、
    先にフラフラになってきたんでしょうか…?」

ルキナ「…くっ、本当に…際限のない未曽有のスタミナですっ…!
    真剣で斬り続けているのに…!」

ピット「リンクすげえ!」

ルフレ「……こ、降参します…………ハアッ、ハアッ、ハアッ…」バタン

ルキナ「…無念、です…」キュウ

肉体と精神の疲労、そして魔力切れで目を回して、座り込んでしまったルフレ。
地に突き刺した剣にしな垂れかかるようにして、動けなくなってしまったルキナ。
う、うん。2人とも、本当によく頑張ったと、思う。相手が悪かっただけで。

リンク「おおっ、なんだかバランス感覚が向上して体幹も強化された気がするぞ!」グイッ

Wii fit トレーナー「BEST率100%!素晴らしいです!」パチパチ

パルテナ「確かに、文句のない体捌きでしたね。
     もしもフィットネスで敵を倒すRPGとかがあったら、
     ラスボスでも瞬殺できそうな勢いでした」

リンク「どんな奇天烈RPGだよ、それ。駄作もいいとこだろ……
    あらかたワゴン行きになる光景が目に浮かぶぞ…」

Wii fit トレーナー「…………面白そうですね」ボソッ

リンク「え、なんだって?」

Wii fit トレーナー「気にしないでください。
           ちょっと従妹に提案してみようと思ったまでです」

リンク「ますます意味が分からない」

観客「おう、色々ハンデは有ったみたいだが、
   お前たち、あのリンク相手によく頑張ったな!」

観客「活き活きとしてて、格好よかったわよー!
   そっちの男の人は参戦中だったわよね、応援してるわ!」

パチパチパチパチ……!



ルフレ「あ、あはは、どうも……」

ルキナ「こ、こんなに注目されていただなんて…は、恥ずかしいです…」カアァ



マルス「面白そうだから、今のルールで…是非、僕もやりたいな!
    人数は1対1でいいから!」ワクワク

リンク「おいやめろ!流石にマルスはシャレにならん!俺が剣の錆になる!」ビクッ

マルス「またまた、謙遜しなくてもいいじゃないかー」

リンク「マジだっつーに!
    というか、マルスはそれで勝ってうれしいのか!?」

――ピンポンパンポーン。



拡声器「こちら、王国放送です。
     スマブラfor大会に参加されている選手の皆様方にお伝えいたします。
     大会進行に関する重要連絡がございますので、至急、大会控室にお集まりくださいー」



ピット「なんだ、なんだ?こんなの初めてだよ、事件かな?」

周りの市民の人たちも、珍しい放送らしく、熱心に聞き入っているみたいだ。

パルテナ「まあ、残念なことに事件なら割と頻繁に起こってしまっていますが…」

ピット「たしかに…残念ですね、本当に」

マルス「呼び出しとあらば仕方ない。リンク、また次の機会にしよう」タッタッタッ



リンク「そんな機会、あってたまるか……………………………………………
    ………………………………………………………………さて、と」

~選手控え室~

マリオ「いや、集まって貰って申し訳ない、みんな」

ピーチ「一体どういうことよ、マリオ。私、こんな呼び出しなんて計画してなかったわよ?」

ザワザワと、落ち着かない様子の集まった選手たち。
どんな意図で招集をかけたのかと、要件を聞きたがっている。

マリオ「さっそくだが本題だ。みんな、いい加減、身の回りの事件に悩んでいると思う。
    その中でも、窃盗事件には辟易していることだろう。
    次はいつ、自分に降りかかるんだってな」

ファルコ「ちょっと待てよ。その件については、運の悪さというか不幸にげんなりするが、
     原因としては定かになった、解決済みの事件じゃねぇか」

マリオ「ファルコはまだ知らなかったかもしれないが、あの後もちらほら、窃盗事件は起きてるんだ。
    それも、相変わらず選手のみを狙ってな。
    その中には、まだ持ち主に返せていないものもある。
    それほど重要なアイテムでなかったのが幸いだが」

ルカリオ「…私のがんばリボンとコンテストリボンが…」

ドンキーコング「ネクタイが…許すまじ…!」ゴゴゴゴ

ロックマン「お守りのE缶が…」ガックリ

ネス「ヨーヨーが…」ショボン

サムス「盗んだ奴が一番悪いのは当然だが、みんな、油断し過ぎじゃないか?
    選ばれし戦士として、もう少しどうにかならなかったのか?情けないぞ、まったく」フン



ガチャッ!

キノピオ「たたたた大変ですサムスさん!
     何者かが更衣室に忍び込んで、サムス選手のロッカーを荒らしたみたいです!
     スーツ一式がなくなっている模様だと報告がありました!
     ちょっと確認しに行ってもらえませんか、今すぐっ!」バターン

サムス「それはすごく重要なアイテムだから返してぇ!?」ダダダダダッ



ピーチ「ううっ…吐き気、が」フラッ

ファルコ「…何やってんだよ。マジで大丈夫かよ、この大会!
     防げるかどうか、の話じゃなくて、これじゃ大会に集中することすら…ろくにできないぜ?
     やっぱり…俺の最初の怒りは、間違ってなかったってことになっちまうのか?」

ピーチ姫の顔色が、目に見えて悪い。
相当ショックを受け続けているみたいだ。

マリオ「そのことに、ついてなんだが。
    実は、クッパと協力して、対策を考えていたんだ」

ピーチ「…ちょっと。何よそれ、初耳よ」

マリオ「まあ、駄目元だったんでな。
    選手たちが不安がると、周りの市民や観客だって異常に気付いて、
    ますます大会に支障が出てしまう。
    一刻も早く対処したいと、藁でも縋る気持ちだったんだよ」

ピーチ「…駄目元、だった…ってことは、方策を見つけたのね?」

マリオ「ああ。それが…これだ。おーい、クッパ!用意はいいか?」

クッパ「任せておくのだ!」

…!?なんだ、ありゃ?
クッパが、漆黒のでっかい箱を頭の上に抱えて、ズシンズシンとやってきた。

クッパ「……ふんっ!」バッ



ドッズウウウゥゥ――ン!!!

クッパが、軽く放り投げるようにして控室中央に置いて見せたのが…
1辺5メートルはあろうかという、巨大な――

フォックス「……金庫、か?」

クッパ「そうだ、人呼んで『大魔王の金庫』。もちろん、唯の金庫などではない。
    あらゆる衝撃に、魔法にビクともしない優れものなのだ。
    おまけにカメックの魔法のおかげで、外見以上の収容能力を持つ!

    さあお前ら、貴重品はとっととこの中に詰め込んでしまうのだ!
    試合中の者だけ、引き出しておけばよい。
    大会終了まで、無事を保証してやるぞ!ガッハッハ!」



でも、そんな高笑いにもすぐに納得はできず…
選手たちは、互いに目配せをし合って、動こうとしない。
突然の提案に、どうしたものかと悩んでいるみたい。

ファルコ「…そいつは、信用できるのか?
     悪いが、その金庫の性能が本当に高いのかどうか、俺たちには分からねえ。
     もしそれでも無くなったり奪われたりしたら、一体どうしてくれるんだ」

マルス「僕も疑う訳じゃないが…そもそも、肌身離したくないようなものを
    人様の金庫に収める、ということ自体に、中々の抵抗があるしね」

リンク「そうだぞマリオ。無くなりました、じゃあ弁償します、じゃ済まされないぞ」

全体的に、胡散臭がる、拒絶しようとする雰囲気だ。当然だね。



マリオ「…まあ、普通の弁償限界だったらな」

ピーチ「どういうこと?」

マリオは周りの皆をゆっくりと見渡して、こう宣言した――



マリオ「俺とクッパが、この金庫に絶対的な自信があることを示そう。
    もしも俺たちを信じて預け入れてくれ、その結果何者かに奪われ、あるいは損失したならば。

    奪われた要因、損失の程度に関わらず。
    預け数1つごとに…問答無用で 10億コイン 渡そうじゃないか。
    更に、この『マリオ』の使用権を1年分渡そう。
    自国に連れ帰って、存分にこき使ってもらって構わないぞ」

ピーチ「はああっ!?」

ザワザワザワ――ッ!!

控室が、にわかに騒がしくなった。なんてことを言い出すんだよ、マリオ!
ヒーローのマリオを1年間駒にできるとなれば、途轍もない利権には違いない。

ピーチ「マリオっ!そんなこと、勝手に決めないでよ!
    そこまで責任被ること、流石にないわ!」

マリオ「悪いが、ピーチは黙ってろ。
    これは、キノコ王国がどうの、という話じゃあ、ない。
    あくまで俺個人が、みんなと交わす取り決め、約束だ。
    支払いのコインだって、当然俺が全負担する」

ピーチ「そんなお金、ないでしょ!?」

マリオ「まあ…身の回りのアイテムや備品、色々売り払えば、なんとかなるだろ。
    そのくらい、俺は覚悟してるってことだ」



選手たちが、黙りこくる。



クッパ「…おーい。どうして誰も動こうとせんのだ。
    誰も使わないとかいう骨折り損のくたびれ儲けなオチはやめてほしいのだ」

リンク「…しゃーないな、そこまで言うなら、この俺が信じてやるよ。
    もちろん、なーんの価値もないようなものを、からかいで入れるとかはしないぞ?
    俺はとりあえず、ネオ・マスターソードとハイリアの盾を預けておくぜ」

デデデ「!?リンク、正気か!?
    それらを失いでもしたら、永遠に取り返しのつかないことになるぞい!
    下手をすればハイラル王国の存亡に関わるぞい!」

リンク「それは盗まれたときだって同じことだろ?
    ルカリオやネスの裏を掻けるような奴の犯行なんだ、
    俺だって絶対に守る自信なんてないよ。
    だったら、せっかく用意してくれる万全なセキュリティに任せた方がいいさ。

    あ、そうだ、パルテナー。
    念のため、金庫の中にテレポートできないことを確かめてくれないか?」

パルテナ「あ、は、はい」スッ

パルテナ様が、目を閉じてしばし。



パルテナ「きゃんっ!?」バチィ!

ピット「パルテナ様っ!?」

金庫が怪しく光を発したかと思ったら、テレポートを発動させ姿を消したパルテナ様が、
術式を強制解除されたのか…金庫の壁に予期せぬ出現をして、激しく吹き飛ばされた。

パルテナ「」ドクドク

ピット「うわあ!?あわわわわわわわわわ!!?」

ピーチ「か、回復回復っ!!」ポワアアアアン



パルテナ「う…いったたたた…ちょ、ちょっとクッパさん!?
     これ、何重に転移阻止の術式を展開しているのですか?
     大盤振る舞いにも程がありますよ!」

クッパ「ふん、100人以上のカメック達に1週間がかり夜通しで、
    魔法を仕込ませておいたからな。この金庫に死角なしなのだ!
    なんだったら、ロゼッタも試してみるといい!」

ロゼッタ「え、ええ?わ、わかりました。
     ……せーのっ!」シュンッ


ロゼッタもパルテナ様と同じように姿を消し…、
同じように、激しく跳ね飛ばされる。
流血はしないものの、もんどりうって床を大きく滑らされた。

ピーチ「ちょ、ちょっと大丈夫、ロゼッタ!?
    …クッパ!ちょっとやりすぎよ!」

ロゼッタ「……うそ。凄いですね、これ!まさか跳ね返されるとは…!」

リンク「おおー、上々だな。ま、この金庫に入れたうえで、トドメに周囲を監視カメラで完全警護でもしておけば、
    流石に獲られはしないだろ。マリオ、クッパ、サンキュー!
    じゃ、ハイラルの大事な剣と盾、よろしくな!」ホイッ

マリオ「よっしゃ、確かに承ったぞ」ウケトリ

続きはよ

~閉ざされたフィールド~



ロゼッタ「…ぐぐ、まだまだ本調子じゃ…ありません…」ググッ



それでも汗の滴り落ちる中、必死に腕を、脚を、動かし続けます。

ようやくFPの流れも自力制御できるだけの回復を果たして、喜びたいところですが。
そんな暇など、ありません。なまった体を本調子へ、そしてその先へ進ませなければ。



ロゼッタ「…998、999、1000っ!!」



スクワット、腕立て伏せ、腹筋。1000回ずつ終わりました!
…それぞれ1時間も掛かってしまうだなんて。まだまだ短縮の余地がありますね。



自身を気休めに回復させて、ほっと一息。

ゼルダ「やっと終わりましたか、ロゼッタ」

ロゼッタ「…あ、す、すいません」

…おっと、ゼルダ姫をお待たせしていたのでした。

お一人で、魔法の特訓をひたすらしていたゼルダ姫。
なんでも、ゲイルアタック習得時にお見せした私の魔法レベルの高さに刺激を受けて、
居ても立ってもいられなくなったのだとか。…ちょっと照れます。

ゼルダ「もっと高みを目指したくはありますが、やはり簡単ではないですか…ふう。
     …さて、準備はよろしいですか?
     本当にできるかどうか気になりますが、やってみますよ?
     言い出したのは、貴方なのですから」

ロゼッタ「今更、机上の空論と罵倒されるのも嫌ですし……もちろんです!
      練習ではわりといい感じに仕上がっていましたから!」

目を瞑って、ちょっと集中。

ゆっくり目を開いて、両腕を横に伸ばします。

左手をグーに、右手をパーにして、パチンと打ち付けて。
FPを集積し、集約し、さあ展開していきましょう。



ロゼッタ「………………Barricade Robe《要塞法衣》――っ!!」



バキバキバキバキバキバキバキバキィ――――――――ッ!!

首を、両腕を、肩を、胸部を、腹部を、背中を――
上半身全体を、ある程度フレキシブルな隔壁が覆います。
肌やドレスに接触した瞬間、凝縮され薄膜となり、コンパクトに。

その上から、次の隔壁がやってきて、ペタリと接着。
焼き直しのように凝縮され薄膜となり、コンパクトに。
更に、その上から次の隔壁が――

一連の作業が、隔壁『12枚分』、生々しい打撃音と共に夥しい速度で進められていきます。
この枚数が、試行錯誤によって判明した…後々の柔軟性を担保できる、限界枚数。
10秒もしないうちに、全ての工程が完了しました―!

ロゼッタ「感触、問題ナシ……要塞法衣、完成っ!!」シャキーン



ロゼッタの 上半身の 攻撃力が  10%アップ!
ロゼッタの 上半身の 防御力が 300%アップ!
ロゼッタの 上半身の 素早さが  50%ダウン!▼



ゼルダ「……!」



私の新しい魔法、要塞法衣。
体を隔壁が覆うことで、ダメージを大きく抑えてくれる…天晴れな鎧です!
何重にも薄く張り付いた隔壁が、少しばかり金属じみた性質を獲得したためか、
うっすらと光を反射して輝いています。

…動くたびに体の周りからミシミシと音が立って耳障りなのは我慢、我慢っ!
流石に動きに制約があって、ちょっと動きが取りにくいのは…もっと我慢っ!

ついでにこの魔法、隔壁に多大な負担を強いるため、劣化防止でFPを垂れ流し。考え無しに使うと自分の首を絞めます。
更についでに言うと、視界や聴覚、嗅覚や呼吸なんかが愉快なことになるので顔に対しては発動できません。
もうひとつおまけに申し上げると、何もないところで頻繁に転びまくってしまうので下半身にも発動できません。
…と、何気に不便なところもあります。悲しいかな、全部経験談です、ええ。

鎧を纏って、改めてゼルダ姫を見やる。
少し驚いたように見えたゼルダ姫ですが、すぐに顔を引き締めています。

ふんわりとジャンプして、浮き上がって…。
ゼルダ姫を見上げる格好になりました。さて、いよいよですね。
ちょっと、わくわく。

ゼルダ「……コホン」



ゼルダ「光と影を統べる王に弓引く 愚か者よ…
    その身をもって 我が力に触れるがいい!!」クワッ



ロゼッタ「……え?」

ゼルダ姫が、左手を天に向かって掲げると。
途端に、眩く輝く光の球が現れました。
…ええ、それは伺っていた通り、の現象なのですが。
さっきの台詞は一体なんですか?

ゼルダ「ハッ!」ブンッ!

ゼルダ姫が、光の球を――私に向けて、放り投げます!

それを私は、避けるのでなく、食らうのでもなく…!



ロゼッタ「…せー、のっ!」ズンッ!



鎧状態の拳で、真正面から正拳突き!
バシイイィィン!と爽快な打撃音とともに…光の球を、ゼルダ姫に撃ち返しますっ!
目論見通り!大成功です!さあさあ鍛えて参りましょう!

…あ、けっこう反動あります。ビリビリします。軽い硬直状態になりますね。
こ、これは間隔開けずに繰り返しこなすのは、無謀ではないでしょうか。タイムを要求します。

私の心の叫びを知ってか知らずか。返された光の球に、ゼルダ姫は手をかざして、一振り。
それだけで、光の球は、ふたたび反転して私に襲い掛かります。

ゼルダ「ほう…問題なさそうですね。それでは、改めて宣言します。
    ――光の球ラリー、500往復、始めっ!」

ロゼッタ「あの、えと、もうちょっと小さい光の球から始めてほし…
     わ、わ、わわわっ!聞く耳持たず!?きゃあ!?」

それは確かに、私から提案してみた特訓方法ですけどねっ!?
覚えたての魔法の具合を確かめるには、ちょっと…図らずもハードルを上げ過ぎではないでしょうか!

ああもう…仕方がありません!このまま続行、ラリーを続けます!
開き直り、破れかぶれと人は呼びます!



ロゼッタ「いーち!」ドンッ!

ゼルダ「……」カンッ



ロゼッタ「次はビンタっぽく、にー!」ダンッ!

ゼルダ「……」カンッ



ロゼッタ「アッパー気味に、さーん!」カキーン!

ゼルダ「……」カンッ



ロゼッタ「受け止めて押し返す感じで、しー!」ドスッ!

ゼルダ「……ふふ」カンッ

ロゼッタ「流れに逆らわず、くるりと体ごと一回転させながら投げ返す感じで、ごー!」ブンッ

ゼルダ「…それっ」カンッ!

ロゼッタ「――ろ、ろくっ!…あれ?
     ちょ、ちょっとゼルダ姫!微妙に速度が上がって、上がってますよっ!」・・・ゴンッ!

ゼルダ「それが?」

ロゼッタ「いやあの!間違って顔面に当たったりすると即死する威力なのをお忘れで?
      割と今のスピードで一杯一杯なんですが!」

ゼルダ「頑張りなさい、不断の努力こそがロゼッタの強みでしょう」

ロゼッタ「無視されました!?」



ゼルダ(……………………)

~回想~



ゼルダ「光と影を統べる王に弓引く 愚か者よ…
     その身をもって 我が力に触れるがいい!!」フワッ



ブンッ!
ゴオオオオオッ!



ミドナ「憑依されているのか…!?魔法を放って来たぞリンク!
    剣でなんとか対処できるか!?」

リンク「よっしゃ、まかせとけ!…マスターソードォ――――!」

ズバアアアアアアァァン!!



光の球は 耐え切れずに 一撃で 消し飛んだ!!▼



リンク「あ」

ゼルダ「」

ゼルダ「…ひ、光と影を統べる王に弓引く 愚か者よ…
     その身をもって 我が力に触れるがいい!!」

ミドナ「…Take2?」



リンク「……ハイリアの盾ェ――!」

ゴチイイイィィン!



光の球は 耐え切れずに 一撃で 消し飛んだ!!▼



リンク「…おいガノン!ゼルダ姫の力、思いっきり呪縛かけてるだろ!
    ゼルダ姫の力、流石にここまでへっぽこにして差し上げるなよ!
    ゼルダ姫の評価を貶めようって腹か?悪役ながら酷い奴だな!」

ガノン(えっ)

ゼルダ「」グサグサッ

ミドナ「…そんなにラリーをやりたいんだったら、
    伝説の剣や盾使うのをやめておけばいいんじゃないか?よくわからんが」

リンク「まあ、そうなんだけど…恰好がつかないんだよなあ。
    …それでもお約束のラリーをする楽しさが優先か。
    じゃじゃーん!トアルの剣っ!」

ミドナ「優先なのか」アキレ

リンク「…って、もう光の球撃たれてる!?食らっても案外平気そうだけど、やばっ!」

ミドナ「それってどこがヤバイんだ?」



ズバッ!

光の球は 耐え切れずに 一撃で 消し飛んだ!!▼

ミドナ「……………………」

リンク「……………………」

ゼルダ「」

ミドナ「あ、そ、そうだ。そこに転がってる奴とかどうだ?」

リンク「え、これのこと?」ヒョイッ



ゼルダ「」カンッ!

リンク「てえぇい!」カキンッ!

ゼルダ「」カンッ!

リンク「まだまだっ!俺は、負けないっ!
    ……ミドナ、これ、すごいぞ!ラリーがちゃんと続くっ!
    サンキュー、助かったぜ!」

ミドナ「……あ、ああ。全然助けた気がしないが、どういたしまして」

リンク「俺とこの武器は一心同体だー!」





ミドナ「それ、崩れた城の一部から採取できた、何の変哲もない木切れだけどな」

ゼルダ「」

ゼルダ「」ダバーッ





ゼルダ(……………………)

ロゼッタ「あっ…いた、いたたっ!そろそろ限界…ああっ!」Miss!

ゼルダ「……ふふふふふふ、また最初からやり直しですね。
     ああ――楽しい、楽しいわ…!」

ロゼッタ「そ、そんな…せっかく35往復まで行ったのに…ハァッ…
      い、いえ、どのみち、序盤もいいところでしたね…。
      うぐ、隔壁修復が間に合わずにけっこう血が滲んで…」

ゼルダ「ああ…こんなに、こんなに光の球の応酬が、楽しい物だった、なんて…!
     グズッ…さあロゼッタ!まだまだ行きますよ!」ポロポロ

ロゼッタ「ちょっと治療の時間を頂いても…って、もう再スタートですか。
      …あ、あれ?なにゆえ泣いているのですか!?」

まさかの「失敗したらカウントし直し」を宣告されてから、2時間。

必死に頑張っては見たものの、500往復だなんて土台無理な話で。
一度だけ100往復以上続けさせたところで、ようやく休憩となりました。
か、体が酸素を求めています。

妙にサッパリした顔つきのゼルダ姫が隣に来て、腰を下ろします。
流石に、基礎体力の差が出たのか、ちょっと汗をかいたくらいで余裕そうなゼルダ姫。

ちなみに、基礎体力レベルとしては
デイジー姫(裏)>>デイジー姫(表)>ゼルダ姫>>私>>ヒルダ姫。

一方の魔法レベルとしては
私(本気)>>ゼルダ姫>ヒルダ姫>私(低下)>>>デイジー姫。
…だいたいこんな感じです。たぶん。



2人して見やるのは、そう、ヒルダ姫。
何を隠そう、本日一番頑張っているのは、彼女なのです。



なにせ、私のお相手をゼルダ姫に委ねた流れから、消去法的に――
デイジー姫とのタイマン勝負を、何時間も続けているのですから。

私、ロウラル王国のトップを務めさせていただいております、ヒルダです。

魔法それなり、運動能力からっきし。吹けば倒れると評判の、ヒルダです。

かつて、理を見失い、愚かにも目が曇り、
「あなたの、その……勇気のトライフォースを渡しなさい!」
とかなんとか、宣ったことのある、ヒルダです。

…ちなみに、リンクに
「勇気のトライフォースね!3つあれば十分かな?」
と笑って返され、固まってしまったのは内緒です。



そんな、私ですが。
何の因果か、いろいろあって心変わりして。
今しがた、デイジーという強大な壁に立ち向かっている最中です。

既に、ちょっと振り返るだけで、彼女に軽く500回以上残機を減らされています。
要するに、命を奪われています。

前半は、失望と絶望の真っただ中で。
そして後半は――

デイジー「そらっ!」ダダッ!!

ヒルダ「――――っ!」

迫り来る高速の一撃。私程度では、避けられません。
……それで、諦めてしまうのは、簡単。実際、ほんの少し前の私が、そうでした。

何もできず、運命の過酷さを憂い…いえ、運命のせいだと全て責任を押し付けるのは、
何だかんだ言って、ただの逃げ。自暴自棄。役割放棄。
それでは、何も変わらない。変わらなきゃ、いけない。



たとえば。



ヒルダ「……サンド、ロッド――ッ!」

ファントム・ユガ「DAAAAAAAAAAAAAAAAAA!」ブンッ!!



召喚した影の魔物の杖が振り下ろされるたび、
むき出しの地面から繰り出される、固められた、何本もの砂の柱。

デイジー姫は、そんなこと気にも留めず、むしろ体当たりで砕かんとする勢いです。

それでも。持ちうる最大火力の魔法をぶつければ、ちょっとは彼女の勢いを削げる。
あるいは、最短距離で接近されることを防いで、時間の余裕を生み出せる。

そんな私の願いをあざ笑うかのように、大して時間と体力のロスもなく、デイジー姫が刻々と迫る…!



――別に、優雅に振る舞えなくても、いい。
――とにかく、残機を失うその瞬間を、少しでも遅らせるために。
――足掻き続けられたら、それで、いいはずなのです。



砂の柱をデイジー姫の目前に繰り出させ、視界を遮る。
私を見失わせたその瞬間に、自分の体に鞭打って、大きく大きく横っ飛び。
さしものデイジー姫といえど、スピードが乗った状態からの急な方向転換は…決して楽ではないはず。

デイジー姫に破砕された砂の柱。四方八方に激しく砂が舞い散ります。
横方向に、1メートル離れ、2メートル離れ、3メートル離れ――!?



デイジー「残念、だったなっ!」グッ ダンッ!

ヒルダ「――!?」

なんて、こと。
デイジー姫ときたら、私が居た箇所、たった一か所踏みしめるだけで。
猛スピードもなんのその、いともあっさり進行方向を90度転換。
私を見据えたまま、迷うことなく突き進んで、きますっ!

デイジー「はあああぁ――!」ゴウッ!



風を纏いながら、ジャンプキック。

1秒後に、私の胴に届かんとする、デイジー姫。
1秒後に、胴を貫かれ、無残に残忍に絶命させられる――
後ろのデイジー姫に顔を向けてしまった、私。



こちらも負けじと方向転換?
…無理です、貧弱な脚力が咄嗟の行動を許してくれません。

もう一度、サンドロッドで食い止める?
…彼女の位置が大問題です。攻撃動作で浮いているため、
地面から立ち上らせる砂の柱がぎりぎり間に合いません。



デイジー「諦め――」







ヒルダ「……っ!ここに――っ!」

痛みを覚悟する、一瞬。その直後。



ズゴゴゴゴゴゴッ…!

デイジー「…何っ」

ヒルダ「…ハァッ!…ハァッ!…ハァッ!…ハァッ!」



半ば、自分目掛けて撃ち抜く感じ、でっ!
一気に、何、メートルも、大きく自身、を、持ち上げますっ!

痛い、痛い、痛いっ!
背中を強く、あまりにも強く打ちのめす自爆行為。
肋骨が折れていますよと指摘されても納得してしまう痛みです。
涙目になりながら、砂の柱のてっぺんで激しく呼吸しながら。仰向けに転がります。

砂の柱は、じきに崩れる、あるいは崩されます。
でも、この行動は、決して、無駄じゃない。
ほら、今度こそ、砂の柱に意図せず突っ込んでしまって――
ざっと5秒…いえ10秒、時間を稼げました。

何もしなかったときに比べ、最低でも10秒ぶん。
――考える力を。戦う力を。経験値をかせげたということです。

この激しい痛みだって、即死に比べればよほどマシ、万々歳というものです。

ヒルダ「…そもそも、砂が崩れるまでのほほんと待ってくださるとも…
     限りません、よ、ねえっ!」

一刻も早く、体勢を、整えなければ。
節々が痛む体を叱咤激励しつつ、砂の上で起き上がり、周囲の警戒を怠らずっ!
休む間もなく、ファントム・ユガに構えさせる装備を考えます。

私の大切な従者、ラヴィオによって集められた、数々の装備。
もともとはリンクに使ってもらう予定のレンタル品だったとのことでしたが、
リンクが「あんな感じ」なので、まるで使われることはなく。
そのままラヴィオに勧められるまま、私が預かることとなり。

僭越ながら勝手に使い手となってしまって、熟練度を軒並み上げた結果
ファントム・ユガの手にも具現化させるに成功、偉そうに使わせるに至っています。
誰とも知れない本来の使い手さん、本当に申し訳ありません。

フックショットで、足場から足場へ逃げていくか。
…まあ、逃げられるのは図体の大きなあの魔物だけなんですが。却下です。

速度だけなら、やはり弓矢を放たせるか。

自爆覚悟で、バクダンか。



…光の弓矢なんて特別製の代物は、ゼルダ姫か…リンクくらいしか扱えないんです。
私としては持っていない以前に流石に実力不足です。魔法回路が焼き切れます。

ヒルダ「ハァッ…ハァッ…」

とりあえず威力重視でバクダンを持たせることにして、術式書換え、切換え。
次第に砂の柱がひしゃげていって…。

デイジー「……おお、頑張った頑張った、その調子」

ファントム・ユガ「GARUUUUUUUUU・・・・・」

ヒルダ「よゆう、しゃくしゃく、ですね……バクダン、連続投擲っ!!」サッ

ファントム・ユガ「DADADADADA!」ポポポポポポイッ



デイジー「…別に、猪突猛進だけが能では、ないぞ?…見るがいい」フフッ



5個、10個と、揺らめくバクダンを投げつける。
爆風が辺りに吹き荒れますが、それでもデイジー姫はひらりひらりとかわしていく。
エレガントに、それでいてアクロバティックに。まるで炎の舞を踊っているよう。
激情を醸し出しながらも、「表のデイジー」の片鱗が垣間見えます。

がくん。



ヒルダ「――ご、ふ」

魔力を急激に召喚獣に持って行かれ、立ち眩みと小さい嘔吐。



デイジー「いいのか?碌に効かないまま、どんどんFPを消耗するぞ?」

対峙する相手は、そう言ってほくそ笑みますが。



ヒルダ「…いい、んです!
    FP…いえ魔力で数々の装備を繰り出せるのが、私の…私だけの、持ち味!
    それを1秒でも伸ばし育てるのが、私の使命、そうでしょう!?」

デイジー「…その意気や、よし。
      もっと踊れ、いや踊らせてやろうじゃないか。
      足掻いたうえで、絶望にぶち当たらないことを精々願っておくことだな」

ヒルダ「…………あたり、まえ、ですっ!
    今の私が目指して止まないものは――期待と希望、だけですからっ!」

口を拭って――まだまだ、足掻いてみせますっ!

ゼルダ「…本当に、凄いですね」

ロゼッタ「ええ。本当の、本当に――2人とも、凄い、です」

ゼルダ「…え?凄いのは、ヒルダ姫だけでしょう?
     必死に戦う意志をとうとう己の物として、一気に成長の兆しが――」



…何を言っているんですか?そんなこと、あるわけないじゃないですか。



ゼルダ「…も、もちろんデイジーの強さは凄いと思いますが。
     それはもう、これまでで十分…分かりきっていたことでしょう?」

ロゼッタ「……いえ?私、改めて気付きましたよ。
      デイジー姫は、もしかしたら――天才なんじゃないかって。

      単純な戦闘力なら、今のデイジー姫よりも、マリオ達のほうが更に強いのでしょう。
      彼女自身が認めたように。それは真実かもしれません。

      でも。『成長促進』の素質というか、才覚については……
      世界で一番かもしれないって思った次第です。
      恐るべきは、『私たちを鍛え上げることに全精力』という暗示の絶大さ―!」

ゼルダ「…………?」

ロゼッタ「……ねえ、ゼルダ姫。貴方は、気付いていますか?
      私は準備運動中やゼルダ姫とのラリー中にチラ見していたのですが…

      ヒルダ姫、残機が減る間隔が――どんどん、どんどん、長くなっています。
      それはもう、加速度的に」

ゼルダ「…で、ですから。それは、ヒルダ姫の努力の賜物でしょう?」

ロゼッタ「いくらヒルダ姫が成長芳しいと言っても、デイジー姫からしてみれば
     赤子の手を捻るような状態のままですよ。
     少なくとも、それだけで何倍も間隔が伸びるなんてことはあり得ません」

ゼルダ「では、手を抜いていると?」

ロゼッタ「…うーん、半分合っているけれど、絶対的に間違っている、と言いますか。
   
      …今日、デイジー姫が鍛えているのは、ヒルダ姫1人です。
      以前のように3人を順番に鍛えるのではない…
      つまり、長引かせても順番待ちが発生するようなことはありません。

      デイジー姫は、そこで――ヒルダ姫が最も成長するようなカリキュラムを、
      徹底して実行しているみたいなんです」

ゼルダ「勿体ぶらずに話してください!」



…できれば、自分で気付いた方が、より大きな感銘を受けられると思うのですが。

ロゼッタ「…デイジー姫の駆け引きを、よく観察してほしいのですが。
      あと、ヒルダ姫が絶命する瞬間のデイジー姫の動きも、
      ひとつひとつ思い出して頂きたいのですが。

      デイジー姫は、ヒルダ姫の成長ぶりを超人的感覚で分析、フィードバックさせながら、
      今繰り出されているヒルダ姫の行動に潜む本気度を、限界値を読み取り続けています。

      そのうえで、デイジー姫の動き。
      ……ヒルダ姫が諦めずに実力限界を突破する一手を繰り出したとき『 だ け 』
      ぎりぎりのところで減速するように、追撃もしないように制御しているんですよ。
      逆に、諦めたり下を向いたりした瞬間、力も速度も倍化して介錯の一撃を繰り出しています」

ゼルダ「……………………………………………………………………………………………
     ……………………………………………………………………………………………
     ……………………………………………………………………………………………
     ……………………………………………………………………………………………
     そ、んな、馬鹿な」ブルブル

ロゼッタ「ところがどうしたことでしょう、本当、みたいです。
      つまり、ヒルダ姫は無自覚のうちに――
     
      気を抜くと一層の激昂のもと一瞬でねじ伏せられて絶命するのに、
      渾身の動きをすると何故か拍子抜けするくらい怪我をしない、という環境が与えられ。
      否応なしにフルスロットルで応対する癖が、構えが身に付き。
      …経験値を荒稼ぎしているというわけですね」ニコッ

ゼルダ「有り得ない!有り得ないです、そんなこと!」

ロゼッタ「私も、何度そう思ったことか」

…これに、どれだけの細心の注意が、必要になることか。想像も尽きません。
デイジー姫本人に問い質したとしても、はぐらかされるでしょうけど。



デイジー姫の尽力もあり、ヒルダ姫は、もう、大丈夫。
頼もしすぎる、レベルアップの音が聞こえてくる気がします。

さあ、2人に勇気を貰ったところで。



ロゼッタ「さあゼルダ姫!
     私たちも、休んでいる暇はないみたいですよ!
     続きと参りましょう、続きと!」グッ

ゼルダ「…上等です!
    私も、まだまだ成長させてもらいますから!
    今度こそ、500往復、達成して御覧なさい!」



みんな、まだまだ、強くなれる気がします。
待っていてください、偽物さんたち。
後悔しても、もう遅いというものですよっ!

~大会会場~

掲示板「現在の順位表デス!

     1st MARIO

     2nd KOOPA     -30pts.
     3rd LINK      -196pts.
     4th CHARIZARD -550pts.

     5th PIKACHU   -620pts.
     6th YOSHI    -783pts.
     7th KIRBY     -877pts.
     8th LUIGI     -1019pts.」デデン!

ピット「…………CHARIZARD?LIZARDON?…あれ?」ミアゲ

パルテナ「まー、このスレ内ではロゼッタも…
      ROSETTAではなくてROSALINAで通してきましたし」ミアゲ

ピット「なるほど…ってか、やっぱりキノコ王国勢と初代ポケモン勢、強いなあ…」

マリオ「…うげっ、一時は1000ポイント以上あったリンクとの差が、
     あれよあれよと、とうとう200ポイント切ったか…!
     残り1か月もないとはいえ、混戦になってきたな…!」

ルイージ「僕が…僕が、暫定8位だよっ、兄さんっ!うおーっ!」バンザーイ!

マリオ「…ビリかあ」ヤレヤレ

ルイージ「上位だよ!?」

マリオ「…あんまり調子にのってると、またいつもの如く滑り落ちるぞー?
    だいたい、ピーチの不調がなけりゃ、ルイージの順位は下がってても
    全然おかしくないんだからな?」

キノピオ「姫様、多発する問題にすっかり意気消沈されて…
     本調子とは程遠いありさまです、おいたわしや…」ジワァ
      
ルイージ「うぐぅ…言えてる」

リンク「よし。…よしっ!マリオとクッパに、肉薄肉薄ぅ!
    まだまだ苦しいけど、逆転優勝の可能性も十分出てきたぜ!」オーッ

パルテナ「怒涛の追い上げですね…やはり歴戦の勇者の底力は恐ろしい。
     私など、フィールドで吐かないようにするので精一杯ですよ…」

ピット「パルテナ様っ!生々しい!すっごく生々しい!ちょっとは見栄を張りましょう!」

ルキナ「お疲れ様です、リンクさん!本当にお強いのですね!」

ルフレ「僕たちの面倒も見て頂きながら…凄いとしか、言いようがないですよ」

リンク「まーねー。…よし、じゃあまた、金庫にネオ・マスターソードとハイリアの盾預けてっと。
    特訓しようぜ特訓!ルキナ、ルフレ、鍛錬場にレッツゴーだ!」

ルフレ「休みなしですか…返す言葉もないですよ…。
    …はい、もう遠慮はしないことにしました。よろしくお願いします。
    ルキナ、せめて僕たちも全力疾走で試合の準備をしに行こう」タタッ

ルキナ「は、はいっ!」タタタッ

ロゼッタ「お疲れ様です。皆さん、本当にお強いですね。
     私なんか、見ているだけでお腹いっぱいで…一体、何時になったら戦えるのやら…。
     …せめて、せめて。ゼルダ姫とヒルダ姫が、見つかってくれれば…」

パルテナ「ロゼッタ…………よしよし。元気を出して、くださいな」ナデナデ

ロゼッタ「あっ…………く、くすぐったいです…でも、ありがとうございます」ポワポワ

パルテナ「マリオが言っていたでしょう?きっと2人は大丈夫だって。
      ロゼッタは今のところは、問題解決を一旦他の方々にお任せして、
      大会を楽しみましょうよ。…酷な言い方かも、しれませんけれどね。
      気分転換に、いろいろ見て回るのも、いいかもしれませんよ?

      まあ、あんまり人気のない所に行かれると心配ですけど。ロゼッタの場合…」

ロゼッタ「……………………はい」ニコッ

リンク「ロゼッタ、元気出せよー。ロゼッタがしょぼくれてると、きっと戻ってきた2人も悲しむぞー。
    2人のことなら、俺やマリオやクッパに任せとけ!ちょっとずつ、あてを探っているところだからさ!」

ロゼッタ「それは、本当によかったです。お願い…致します」ペコリ

マリオ「…………おう、任された!」

クッパ「…………うむ。大船に乗ったつもりでいるのだ!」

~キノコ城 城下~

ワイワイ、ガヤガヤ…。

ロゼッタ「…………」スタスタ

ロゼッタ「…………んー」キョロキョロ

ロゼッタ「気分転換に、いろいろ見て回る、ですか」ボソッ

ロゼッタ「…………」

ロゼッタ「…………既に、色々と、『回って』いるんでけどね」

ロゼッタ「…………」ピタッ

ロゼッタ「なんて、この王国は、平和で、笑顔が溢れて、活気があって――――――――











            こんなに、一寸先が闇とも知らず、呑気でいられるんでしょうね?」クスッ

ロゼッタ「ここ。人通り、多いですねぇ。

      ――――とぉっても、おあつらえ向き。いいところ、見つけちゃいました」スッ・・・



ロゼッタ「――――――――」パアアアア

トンッ。…スウッ。



ロゼッタ「よし。…………ふふふ」





      『―――――――――――塩梅は』



ロゼッタ『――――――――――――――――――――――――
      上々ですよ、我が主。

      頂いたリモート爆弾、ムラなく満遍なく…
      最大限、効果的な殺戮と交通網の遮断を計算して…これで94個目。
      一斉に火を噴いたときの、絶叫と絶望が、目に浮かんでくるようです。

      そろそろ…派手に、行ってしまいますか?鶴の一声あれば、仰せのままに』ユラァ

     『――――――――いや、まだだ。まだ、足りない。
      大会時間全て使って、念には念を入れよ。
      だが、あとはお前に任せれば、大丈夫のようだ。良きに計らえ』



ロゼッタ『ああ、勿体ないお言葉です――――――――』



     『――――――――その呼ばれ方は、少々詰まらない。
      万民が恐れおののくよう、脳裏に刻み込めるよう、
      彼奴らの付けた名前を、あえて名乗るのが興があってよいだろう』

ロゼッタ『お戯れを…ですが、承知いたしました。
      引き続き、私めになんなりとご命令を――――



      偉大なる異次元の支配者、タブー様――――』



ロゼッタ(ゼルダ、ヒルダの誘拐と私の負傷。
      芝居を打った甲斐があったというものです。ふ、ふ、ふふふ…!
      そろそろ私が疑われそうでしたからね、ざまあない。
      この王国、本丸から…血みどろに粉砕しつくして、あげますよ♪)

ロゼッタ(……ん?あら、いけない)

ポケトレ「……」テクテク

ロゼッタ「…あ、あなたはえっと…ポケモントレーナー、さんでしたか?
      こんにちは。今日はお出かけですか?
      かくいう私も、元気のないところをパルテナさんに勧められて…
      こうして目的もなしに出歩いている身なんです」

ポケトレ「…………」

ロゼッタ「…うーん。あの、コミュニケーション、難しいですね。
      えっと、ニャースさん、でしたっけ。通訳の方はいらっしゃらないのですか?」

ポケトレ「……」フルフル

ロゼッタ「そうですか…すいません、私の力では、上手く会話ができません。
      …お、お邪魔しちゃ悪いので、また今度ということで!失礼いたしますね」

ポケトレ「……」テヲフル

ロゼッタ「気にしないで…ってことですか?ふふ、ありがとうございます。
      それでは、お互い、よい発見がありますように」ニコッ

ポケトレ「……」コクコク

ロゼッタ「…では」スタスタ

ポケトレ「……」バイバーイ

ポケトレ「……」スタスタ







ポケトレ「……」ピタッ






ポケトレ「……」クルリ

ポケトレ「……」チャキッ

ポケトレ「……………………………………………………………………
      ……………………………………………………………………
      ……………………………………………………………………
      ……………………………………………………………………
      ……………………………………………………………………
      ……………………………………………………………………
      ……………………………………………………………………
      ……………………………………………………………………」






おっ!
マシンが はんのう してるぞ!
ちかくに アイテムが うまってる!





ポケトレ「…………」ピコーン!



知り合いに 貰っていた デボンスコープを 装着した!
ポケモントレーナーは ステルス式の リモート爆弾を みつけた!
バッグの ポケットに 仕舞った! これで 80個目だ!▼



ポケトレ「………………………」ヒョイッ スッ・・・

ポケトレ「………………………」ヨイショ

ポケトレ「………………………」ストーカー ゾッコウ

ポケトレ「………………………」キラーン

ピロリン!

マリオ「お、メールだ!…頑張ってくれてるな!
    かたじけないが、感謝と引き続きの捜索について返信っと!」

マリオ「…ポケトレ、相変わらず頑張ってくれてるぞ。
    怪しげなトラップ、というか爆弾の回収量、80個到達時のリュックの画像だ。
    スネークにも負けない隠形ぶりを見込んだ甲斐があった!」

リンク「考えたよなー。さっすがマリオ。
    アイツなら絶対に口を割らない、作戦漏れは起こさない。
    …ホントは大々的に、ロゼッタをみんなで監視したいんだけど」

クッパ「……というか、やはり…偽物とはっきりしたとはいえ、
    ロゼッタの姿でそのような悪行をされていることを突き付けられると、
    なかなか堪えるものがあるのだ…」

リンク「…全くだ、暗躍するタブーには反吐が出るぜ。
    用意周到な同情作戦まで使ってみんなを出し抜きやがって。
    でも、まだ、早いんだよな…?あのロゼッタをとっちめるのは…」

マリオ「ああ。ロゼッタを詰問するにしても倒すにしても、まだ早すぎる。
    『本物のロゼッタ、ゼルダ、ヒルダ』の安全が保証されるまでは、
    いつ何時、交渉材料に使われるか判ったもんじゃない。ディメーン戦で懲りてる。

    それこそ俺たちに掛かれば、始末するのは朝飯前だが――
    いましばらく、騙された振りを続けるしかないさ」

リンク「…面倒だなあ」

クッパ「…だが、それにもリミットタイムがあるだろう?
    ポケトレも、全部の仕掛けを解除できているわけではあるまい」

マリオ「…ああ。問題はそこなんだ。
    油断させつつ、完全に尾行しきることは流石に無理だからな。
    探索漏れが出てしまうのは仕方がない。

    それが何個あるのか、はたまた何十個も残っているのか…。
    そしてそれらが、いつ発動されるのか…正直ビビりまくってるぞ。

    とりま、ポケトレには人命が関わる所を優先的に暴いてもらっているが…
    いざ決戦となったら、ある程度はドカンとやられて、建造物もろもろの物的損失は免れないだろうな。
    そこに不慮の事故がプラスされないことを祈るばかりだ…」

リンク「そんな、消極的な願い方しかないのかよ…!
    そりゃ、俺はハイラルの民だけどさ…!キノコ王国は第二の故郷みたいなもんなんだ。
    犠牲なんて1人たりとも出したくないぜ…俺は!



    …なあ。やっぱり、『ここ』、どうにかして突破しないか!?」クッ

マリオ「…俺だって、できるなら、そうしたい。そうしたいんだが…!」





フィールドに繋がる 開かずの扉が 目の前に 佇んでいる!▼

マリオ「制御室から監視しておいて…全員集合させたときに、
    相も変わらず『乱闘中』表示だった、この先のフィールド…!

    よくよく確認してみれば、変な呪いだか結界だかが張られているみたいで、
    普通には開かない。完全にドンピシャ!白か黒かで言ったら、もう、まっ黒!
    強引にこじ開けて助けに行きたい、のはやまやまなんだが…!

    どうみてもこれ、ロゼッタの空間魔法に通ずる高度な仕掛けがある!
    下手に素人が扉を蹴破ったりすると、繋がりがどう破綻するか…わからん!
    それこそ、永遠に結び付きが失われる可能性だってある。
    中にいるだろうロゼッタ本人に何とかしてもらわないと、どうにもならない…!」

リンク「…いつになく、弱気だな……人のこと、俺も言えないけど…
    こう、扉を叩くことで、なにかしらのアクションを引き起こせたり、だな…!
    
    すうぅ――――…うぉりゃあ――!」ババッ



ドンッ! ドンッ! ドンッ!!!



マリオ「お、おい!無闇な刺激は、万が一伝わった時に中の『見張り』を刺激して逆効果だからやめとけ!
    ……気付かれなかっただろうな…!迂闊なことをするんじゃない、リンク!」ヒソヒソ

リンク「…………あ。わ、悪い…!つい、カッとなって…!」

クッパ「…全く。一体、どんな敵が控えているというのだ。
    まさか人質監視に労力を割いてまで、タブー本人が律儀に見張っているとは考えにくいが…」

マリオ「…ああ、かといって唯のコケオドシというわけでもないだろう。
    少なくともゼルダ、ロゼッタ、ヒルダを纏めて相手にできる戦闘力はあるはずだからな。
    タブーの側近とかを務めている、俺たちにとって初見ながら凄腕の奴が、きっと――」チラッ

リンク「…未知の力なり特異体質なりを有してて、
    俺たちでもそれなりに倒すのに手間取るかもってことか――」チラッ

クッパ「いざ乗り込んでおいて手間取ったら、相手側に利がありすぎる。
    どうにも手詰まり感があるのだ――」チラッ



パネル表示「非公式乱闘中!観戦不可!
        乱闘人数   4 / 4   満員です!」パッ
 








~閉ざされたフィールド~

デイジー「へくちっ」クシュン

デイジー「……ロ、ロ、ロゼッタ?私、何か変な物に憑りつかれてたりしない!?」

ロゼッタ「…いえ、特に異常はなさそうですが。さあ、そんなことより、参りますよ!勝負です!」

デイジー「そんなことよりって…。まあ、ロゼッタが太鼓判押してくれるなら。
      まあ勝負するのは別に、いいけど、不安だなあ…。よし、こい!

      いけっ!パルシェン!君に決めた!」



ロゼッタ「行ってください、レシラム!」モエルーワ!

デイジー「…………えっ」

デイジー(……………………………………………ま、いいか。ロゼッタだし)

ロゼッタ「みず・こおりタイプでしたっけ…十分耐えられますね、『きあいだま』です!」

レシラムの きあいだま!
相手の パルシェンには 当たらなかった!▼

パルシェンの からをやぶる!
パルシェンの 防御が 下がった!
パルシェンの 特防が 下がった!
パルシェンの 攻撃が ぐーんと上がった!
パルシェンの 特攻が ぐーんと上がった!
パルシェンの 素早さが ぐーんと上がった!▼

ロゼッタ「…………!?」

デイジー「ロックブラストどーんwww」

レシラム「ぎゃああああ」

デイジー「つららばりウェーイwww」

ジャローダ「ひいいぃぃ」

デイジー「つららばりアンコ――――ル!」

サザンドラ「ぐわあああああ」



ロゼッタ「」ポロッ

デイジー「圧勝過ぎて一回りして勝った気がしないっ!」

デイジー「…ごめん。すっごく大人げなかったけど、あんまりロゼッタが
      『殿堂入りしたことですし、デイジー姫と対戦したいです!負けませんよ!』
      って捲し立てるものだから…

      あとロゼッタ、言い忘れてたけど。
      対人戦で伝説ポケモンは特殊ルール除いてマナー違反っす」

ロゼッタ「……気合玉が、当たって、いれば……!」ブルブル

デイジー(ごめん、ウチ…タスキ持たせてるねん)




扉「――」・・・ドン ・・・ドン ・・・ドン



ロゼッタ「今度こそ、勝ちますっ!」

デイジー「まあ、いくらでも相手するけどさあ…

     バトンに天候、トリルにトリック。
     土産に宿みが、みがまも猫の手。
     流星ぶっぱに論者、麻痺撒き毒撒き火傷撒き。
     …ああ、多すぎてまだまだ言い切れないや。

     やっぱり経験の差はロゼッタの思う万倍効いてくると、思うよ…?」

ロゼッタ「呪文か何かですか?」



ロゼッタは ゲームに夢中で 外部からの干渉に 気付かなかった!▼




1日、また1日と。きっと有意義な時間を過ごしながら。
私たちの「日常な非日常」は、過ぎていきます。



デイジー「…おっはよー!
     いやー、昨日はお疲れさまでしたー!
     まあ、私の14連勝目で終了したけどねー!」ガチャッ



ロゼッタ「…と、このあたりで、私の魔法でドンッとおふたりをサポートしてですね…」ツツー

ヒルダ「…それだとロゼッタの負担が大きすぎます。
    私がこう動いて、デイジーに雨霰と爆撃を行って、魔法発動時間を稼ぎます」トン トン トン

ゼルダ「…適材適所、と。私はこの経路で一気に躍り出て、なるべく出の早い魔法で
    仕上げに入ればよろしいのでしょうか。バックアップ、期待していますよ」スイーッ



デイジー姫の元気な挨拶は右から左へ聞き流されて。
手書きのフィールド図を中央に、私たちは喧々諤々、頭を寄せ合って。
なめらかに指を、朗らかに声を。縦横無尽に走らせ続けます。

デイジー「…なんだか、最近、つまらないなー。
     ちょっと前まで、ヒルダもゼルダも、私が入室するたびにビクッと震えて
     ガタガタ震えてワタワタあたふたしてたのに…今や、平然と作戦会議…………」



ヒルダ「…………眼の光を失った方がいい、デスカ?」シンダメ

デイジー「冗談でもヤメテクダサイすいませんでした」ドゲザ

ヒルダ「…冗談デス。……ふっ、でも安心しました。
    デイジーからしても、成長できてるってことですよね、私たち」

ゼルダ「とても長い、長い道のりだった…気が、します」シミジミ

ロゼッタ「そして、その道のりも…ようやく、終わろうと、している」

デイジー「え、なになに?エンディングへ駆け足進め!な雰囲気ですか?
     混ぜて混ぜて!」

ゼルダ「…はあ。まあ、間違ってはいませんよ。
    ですが、デイジーを混ぜるわけには、いきませんね。

    ――――そろそろ、1勝もぎ取ろうと。
    本格的に、作戦を練りに練ろうとしているところです。
    残念ですが――デイジーの快進撃も、これで終わりですよ、本当に残念なことに」

デイジー「…へえ、大きく出たねー。まだまだ、私に勝てるようには、思えないけど。
     似たようなこと、10戦目にも宣言してたの、忘れたの?」ニヤリ



まあ、そうかも、しれません。

ただの、自信過剰かも。大それたことを身の程知らずで言っているだけなのかも。

やっぱり、デイジー姫の前で膝を付いて屈する結果が、待っているのかも。



――でも、根拠とか後ろ盾とかがなくても。
――「これは行けるぞ」っていう直感が働いても、いいですよね。
――それが、何の巡り合わせか、3人同時に起こったのなら、なおのこと。



ゼルダ「切羽詰まる、俗物的な理由もありますよ。
    そろそろ、ここから脱出できる…いえ、脱出しなければならないタイミング。
    つまり――」

ロゼッタ「はやくしないと、あの果実酒を飲める機会を失う?」

ゼルダ「そう、そのとお――――なんていうのは、冗談さておき、ですね!
    
    デイジーに『このくらいのことはできるようになった』と示すことが、
    私たちの――精一杯の、お、恩返しだと、思うのです」

デイジー「…………」ポカーン



ゼルダ「…………ちょ、ちょっとデイジー。
    は、恥ずかしくなってきたのですが!何か反応してください!」

デイジー「…………熱でもある?意趣返しの間違い、とかじゃない?」

ゼルダ「私の決死の想いに対して謝罪しなさいっ!」ムカッ!

ヒルダ「…本当は熱があるのでしょう?ゼルダ姫?」フフッ

ゼルダ「貴方までなんてことを言うのですか!まったくもう!まったくもう!!」



バンッと、机をたたく音。
もちろん、本気の怒りではなく、机が破壊されたり、紙とペンが吹き飛んだりはしません。

ヒルダ「…でも、デイジー。

    ゼルダ姫も、ロゼッタも。――私も。
    恩返ししたいと思うくらい、感謝しているのは、本当ですよ?」



デイジー「――――」



デイジー姫が、虚を突かれて押し黙る。



ヒルダ「明日は、デイジーに教わった事、全部、ぶつけようと思います。
    そして、勝ってみせます。勝ちたいです。

    もし勝ったら、お酒の他に、そうですね…
    口を尖らせながらでも、ヤレヤレとため息つきながらでもいいですから。

    『裏の』貴方の状態で、『よく頑張った』って。私の頭、撫でてください。
    ――いい、でしょうか」

デイジー「――――――――っ!」

上目遣いのヒルダ姫のその言葉に、デイジー姫、途端に顔がくしゃくしゃに。
思う所、数多に及ぶのでしょう。それでも決して泣いたりせず、ブルブルと震えて堪えています。

デイジー「…お、おう!まっかせなさい!幾らでも、撫でてあげるよっ!
     髪が摩擦で燃え出すかっていうくらい、わしゃわしゃと!」

ヒルダ「本当に燃えそうなのでやめてくださいっ!?」

ロゼッタ「あ、じゃあ私もお願いできますか!」

デイジー「背が高くて手が届きにくいから駄目――――

     嘘っす。ドンと来いっす。
     そんな絶望に駆られた顔をしないでください。

     ついでに、プライドの高そうなゼルダも撫でといてあげるー」

ゼルダ「ついでで撫でて頂かなくても結構です!」

デイジー「…じゃ、ちゃんと心を込めて撫でてあげるよ。
     ――――お疲れさま、よく頑張ったねって」







ゼルダ「……考えておいて、あげますよ」カアァ

デイジー「やばっ、泣きそう――
     よし、じゃあ、私は朝食摂ったら、明日まで会わないでおこうかな。
     その方が、作戦会議も存分にできるでしょ?私、空気読める子!」

ロゼッタ「そこまで気を遣わなくても…でも、ありがたくその提案、受け入れます。
     明日を、楽しみにしておいて、くださいな!」



拳と拳を、軽く、ぶつける。

…なんだか、熱血と青春の香りがします。この際、年齢は気にしません。



ヒルダ「あ、待ってください!私も!」タタタ

ゼルダ「やれやれですね」



左からヒルダ姫が、右からはゼルダ姫が。
2人分の拳は4人分の拳となって、正々堂々、全身全霊の誓いを立てました。

デイジー姫が、どばっと食料担いで、去った後。

ゼルダ姫と、ヒルダ姫と、私は、時間が経つのもすっかり忘れて。
作戦会議のまっさかり。次々と、線が紙に書き込まれて行きます。

…………冷静沈着に、でもしっかり意見は言い合って。
修正、修正、また修正。

見直すべき動き、手順、プロットはてんこ盛り。
珍しく体もほとんど動かさず、完全な頭脳モード。

体を動かしたときを敢えて挙げるなら…コンビネーション技の特訓、くらいでしょうか。
デイジー姫には悪いですが、退出していただいたこの機会。最大限に利用します。



ゼルダ「はい、では――このあたりにしておきましょうか」パチン

ヒルダ「そう、ですね……あれ、すごくお腹がすいています」

手を打ち合わせるゼルダ姫の合図で、お開き。うーんと背筋を伸ばします。
そういえば昼食すら、食べていませんでした。それくらい熱中していたのです。



夕食を摂って、お風呂に入って、寝間着に着替えて。
寝具に滑り込んで、しばらくぼーっとします。

天井が、妙に近い気がする。…何か、大きなことができそうな、気がします。

チコ「片づけ、まかせてー!」セッセ

チコ「明日に向けて、すぐに寝ること―!」フヨフヨ

……いろいろ、お片づけを任せちゃいました。



ヒルダ「…ロゼッタ、起きていますか?」

ロゼッタ「起きていますよ。明日は頑張りましょうね」

ヒルダ「…デイジーにお礼を述べたことですし、ロゼッタにも。

    私、ロゼッタと友達になれて、本当によかったです。
    ありがとうございます」

ロゼッタ「…何をいまさら。私こそ、ありがとうございます。
     これまでも、これからも。きっと、ずっと、友達です」

ヒルダ「そうですよね、ふふ…」



もう、暗い表情のヒルダ姫なんて、どこにもいないのです。
それは、とてもとても、喜ばしいことだと、思いました。

ゼルダ「……何を2人とも駄弁っているのです?
    明日に備えて、さっさと寝てください。

    それに、あえて苦言を言わせて頂きますが。
    結局負ける可能性だって…十分にあるのですよ?
    浮かれすぎず、その先、さらに先を考えておく癖をつけてはどうですか?」

ヒルダ「…………」クスッ

ロゼッタ「…………」クスッ



その言葉は、むしろ笑わせる効果しかありません。



ロゼッタ「ゼルダ姫?快進撃ストップ宣言をしでかした張本人が、
     そんなことでは駄目ではないですか。心にも思っていないでしょう?
     …勝つんですよ、絶対に」

ゼルダ「…はあ。私もヤキが回りましたか。ロゼッタにバレては形無しですね。
    私のこと、中々分かってきたのではないですか?」クスクス



寝過ごしなんて、まっぴら御免ですが。
もう少しだけ、この余韻に浸っていたいと思ってしまうのは、贅沢でしょうか。

…さて、真の強さを手に入れた3人で、打倒デイジー姫と参りましょう!

~翌日~



ロゼッタ「いよいよですね!」ワクワク

ゼルダ「ロゼッタははしゃぎ過ぎですよ。
    今頃、大きく出過ぎたかと冷や汗たらたらの状態なのかもしれませんよ?」

ヒルダ「あは、それはちょっと見てみたいです…」



会話をしながら軽く身支度をして、さあ仮眠室を出よう…というところで。



がちゃり。



扉がぎいい、と開けられます。



デイジー姫が、妙に静かに――唐突に、部屋にやってきました。

ロゼッタ「おはようございます、デイジー姫!
      えっと、まずは朝食にしましょうか――――」





デイジー「フィールドに、全員、集合。…………以上」ニヤッ












ゼルダ「――――望むところです」フッ

ヒルダ「が、頑張ります!」グッ

ロゼッタ「為さねば成らぬ、何事も…ですよね!」

フィールドに向かってみると、既に到着しているデイジー姫。

――目を閉じ、腕を組み、柱の一つに背中を預けて、もたれ掛かっています。
――これぞ、デイジー姫の振る舞いだなあ、と一瞬思って……。







デイジー「では、耳にタコができるかもしれないが、改めて。

     …これより。
     私ことデイジーと、ゼルダ、ヒルダ、ロゼッタの3名1グループによる、
     模擬戦、第15戦を始める。位置に着くように」







流れるように、三者三様…いえ四者四様に、既定の位置まで歩を進めます。



ぴりぴりと張り詰めるこの雰囲気が、たまりません。

デイジー「初期残機数は、デイジーが『1』、他の3名は『3』とする。
     どちらかの陣営の全ての残機数が『0』となったなら、
     その時点で残機を残した側を勝利とし、試合終了とする。
     また、特殊ルールとして、デイジーについては
     『初期配置の床・地面に対して、背を継続して3秒接地』
     が満たされた時点で敗北条件が満たされたものとする。

     デイジー側の陣営について。
     相手陣営の残機を奪う場合は、一方的な瞬殺を抑止するため…
     直前の残機削りから10秒以上の間隔を空けること。
     また、直前の残機削り対象者とは異なる選手を狙える状況であるかぎり、
     同一の相手から連続で残機を奪わないこと。
     これらに違反した場合、該当する分の残機削りについてはカウント無効とする。

     ゼルダ、ヒルダ、ロゼッタ側の陣営について。
     形式的に残機0となった者は、復活したとしても速やかに戦線から離脱し、フィールド外へ移動。
     試合への不干渉を遵守できる状態に移行しなければならない。
     ただし、既にその者によってフィールド上に仕掛けられた、
     行使が間に合って発動中ないし発動待機中の魔法等については、
     外野からの操作でもしない限り、改めて除去する必要はないものとする。
     外野からの助言等は禁止。単なる応援はこの限りでない。



     ――――不明点のある者は、前へ」



デイジー姫も分かっている通り、何度も何度も聞いた文言です。
私たち3人の反応は、神妙に「問題無し」と微動だにしないことのみ。

デイジー「…では、ロゼッタ。いつもの開始合図、頼んだぞ」

ロゼッタ「はい!」

皆さん構えたところで、私だけ、違うポーズ。
右手の手のひらの少し上に赤々と作り出したるは、
私だけの炎魔法、パイロキネシス。



…間違えました。私だけの「空間魔法」、パイロキネシス。



見かけも効果もモロに炎属性ですが、物理法則で作った火種にFPを撒いているだけなので、
極端な例を挙げるなら「炎属性禁止スキル」を持った敵が現れたとしてもどこ吹く風で使えます。
逆に、空間魔法を禁止されたとしたら置物になるので、偽物の私には注意しなければ。



さてさて、これをどうするかと言いますと。



ロゼッタ「…そぉれっ!」ブンッ!

ほんのちょっとだけ前方の、はるか頭上目掛けて、ぶん投げます。
隔壁のバネの力で飛ばすのは、頃合いを見計らって止めにしています。
自分の腕を酷使して飛ばした方が、威力も精度も高いみたいです。

ここで特訓する間にも…私の基礎体力、とてつもなく、伸びました。デイジー姫のおかげです。

ぐんぐんと伸びていき――やがてようやく上昇を止め――重力に従い、落ちてきます。
それが、ちょうど…私たちと、デイジー姫との中間あたりの位置の地面目掛けて――



ボンッ!!



――――ひょうきんな衝突音とともに、試合、開始ですっ!
――――こちらの、第一手は。







ロゼッタ「――――」

ヒルダ「ファントム・ヨガ、召喚――――っ!」

デイジー「相変わらず凝りもせず――何っ!?」



今までとは違う。
フィールド全体を覆い尽くさんとする、巨大な召喚獣の出現で、幕を上げました。

<前レス訂正 ファントム・ヨガ → ファントム・ユガ>






――――でかい。



ぱっと見た感想が、それ。
これまでの召喚獣はせいぜい体長5メートルといったところだったが、今回は20メートルはありそうだ。
フィールドの足場の一番高い所まで、揺らめく頭が届いている。
もちろん3人の姿など、完全に隠れてしまった。
――そういえば、目くらましになる、とはいつぞや言わせてもらったか。



だが、その分、密度が小さくなって強度としては落ちたのか。
向こう側が透けて見えるとまでは行かなかったが、
いつもならすぐに魔法の杖やらを振り下ろしてくるところなのに、
今さらになってようやくアイスロッドを振り上げ始めた。その動きはあまりに鈍い。

それをわざわざ待ってやる私でもない。
召喚獣の体を突き破る心持で、突進。拳がうなりを上げる。




ロゼッタ「…要塞法衣っ!」



防御力が高まっていくことを示す、ロゼッタの声がする。
ピキピキピキ、と特徴的すぎる金属音。

…ざっと、防御力4倍。ステータス補助としては破格の効果のように思う。
使えるなら使っておくのは当然な性能だ。それだけ頭に入れておき、なおも私は突進する。



キラッ!

ゼルダ「はああああああああああああ――――っ!!」ドンッ!!



――まさか、そちらから魔物の腹を突き破って突撃してくるとは思わなかった。
無茶をさせ、ゆらりとよろめく召喚獣。ただ、消え失せるほどではない様子。

魔物を貫いた副産物の、身を纏う靄と煙。
神々しい冠を光らせ、ゼルダが中々の…いや、中々すぎる速さでミサイルのように迫り来る。

魔物の体にぽっかりと空いた、大きな穴。
その向こうに、一瞬だけキラリと光る空間を、私は見逃さない。
鼻血を出して、ふらつきながら構えているロゼッタが、映っている。

…なるほど。ゼルダの体そのものを、即席で…隔壁の空気砲で吹っ飛ばしたのか。
今の魔法レベルで、思い切ったことをする。相当酷使したみたいだがな。

種明かしが済んだところで、作戦に特段の変更、なし。
飛んでくるゼルダに、重い拳を炸裂させて――



しかし妙なことに。低空飛行するゼルダが、顔の前で腕を交差させ。
なりふり構わず突っ込む体勢だと?



ガッキイイイイイィィン!!



デイジー「――――そういう、ことかっ!」ビリッ

ゼルダ「――――ぐっ、これでも結構痛みますが…無問題、ですっ!」

ゼルダの 上半身の 攻撃力が  15%アップしている!
ゼルダの 上半身の 防御力が 300%アップしている!
ゼルダの 上半身の 素早さが  50%ダウンしている!▼

デイジー(…まさか、他人に行使できるように改良していたとはな、ロゼッタめ!)ジィィン

なるほど、無謀に見えた突進は、ロゼッタの魔法を信頼してこそか。
つい迎撃で殴ってしまった右手を恨めし気に見る。
ゼルダの素の防御力と合わせると、馬鹿にできない耐久性。多少の痺れがある。

ロゼッタ「――まだまだっ!要塞法衣、ばら撒きますよっ!
     積み技の 重要性を 教えて差し上げますっ!」パアアアアアアアアッ

今度は様子がはっきりと伺えた。ヒルダの背に手を当てて、立て続けに術式発動。
ヒルダの体の見た目が、不可思議な屈折率を生み出している。

なるほど、流石に他人の体を遠隔で隔壁で覆うことはできないか。
さっきはそれで、ゼルダを私の視界から隠しておいたのだな。



ヒルダの 上半身の 攻撃力が  15%アップ!
ヒルダの 上半身の 防御力が 300%アップ!
ヒルダの 上半身の 素早さが  50%ダウン!▼



ヒルダ「ありがとうございます、ロゼッタ!」シュイィィン―― !

ロゼッタ「うっ…ははは、どういたしまして。さて、次は私自身が――」スッ

デイジー(これは、うざいな)ヒクッ

サポートキャラとしては壊れもいいところだ。
ヒルダの攻撃スタイルとしては直接の素早さダウンは有ってないような物。

呆れて一瞬目を離した隙に、ゼルダは勢いそのままに、至近距離で魔法の構え。



ゼルダ「光の――――」パアアアアアッ!

――馬鹿か。チャージに時間が掛かり過ぎる。
――ロゼッタの魔法の副作用で腕の敏捷性が落ちているせいで、ますます遅い。
――5秒、10秒レベルで無防備。こんな距離から矢を番え始めて、間に合わせる訳、無いだろう!

怒涛の反撃体勢。
要は、堅固となっている胴部ではなく、下半身か頭部を撃ち据えてやればいい。

ヒルダ「ファントム・ユガ――ハンマーっ!!」サッ

ゼルダへの支援が飛んでくるのは読めている。
そうしておいて光の弓矢を撃つ機会を作るという方針なのだろう。
だが、この攻撃も、飽きるほど目にしてきた。

闇色に染まる、大きな具現化ハンマー。召喚獣が撃ち付けてくる、怒涛のモグラたたき。

ヒルダ「それっ、それっ、それ――っ!」

FP供給を必死に頑張り、何かを堪えている感じのヒルダ。
1発目は、手刀で斬って捨てる。2発目は、横にはたいて吹き飛ばす。3発目は蹴り上げる。

そう。ヒルダには悪いが、あいかわらず避けるほどでもない攻撃なのだ。
美しくかわすのも趣があるが、今は調子に乗ったゼルダを懲らしめることを優先。
時間稼ぎに付き合うつもりはない。最短距離でゼルダに向かう。

――まだまだ、甘いっ!

光の弓矢の魔力充填を今さらやめるわけにもいかず。
ちょっとバックステップして身を翻し私から逃れようとするゼルダの悪あがき。
そんなゼルダの胸倉を、超加速で飛び込んで掴み上げる。
にぃっと笑う私に、目を見開くゼルダ。その隙まさに、命取り。

逃走を防ぐまでが、ワンアクション。鎧のない顔面に、体重の篭った、無慈悲かつ怒涛の肘突き――っ!



ゼルダ「が、はっ……あああああああっ!!」ゴボッ

血反吐を吐きながら吹き飛ばされながらも、ゼルダが吠えつつ、意地で、充填の終わった光の弓矢を解き放つ。
投げやりの叫びではなく、諦めない鋼の心。よく耐えた、と称賛してやりたいところだ。
ただ、狙いなど付けられず放たれたそれは、ゼルダの想いをバッサリ裏切って、
てんで方向違いのところに向かって飛んで行く。

残機のおかげで復活しても、体力と異なり、魔力/FPは回復しない。
つまり、完全に撃ち損。大量の魔力の無駄使い――





ロゼッタ「――――Tactics-Hold《留保戦術》っ!!」ギュッ!



――とはならないのが、最近のゼルダ・ロゼッタコンビの厄介な所なのだよな、全く。

私の横を通り過ぎ、天を目指す光の弓矢が、霧散する前に…。

ロゼッタの腕が素早く的確にすぅっと向けられ、ぎゅっと握り拳を作られてみれば。
豪速の光の弓矢は、ギュイィンと激しく光ったかと思えば、シュパッと消えていく。
なんというか、あれだ。某忍者漫画の「カム○」みたいな奴だ。
…言っておくがDLCのFE勢の方ではない。



ロゼッタ「――ハァッ…T-ホールド、成功っ!ぐぐぐ…」ガシッ!

デイジー「チッ…」

血を指の隙間から垂れ流しつつ、握り締めた状態で固まっている、ロゼッタの右手。
それが、何を意味するか。最近の私は、知っている。

握り拳をほどくと、ほどなくロゼッタの手の甲が光り出す。
まるで英雄の紋章のように、弓矢らしき、光る絵が刻まれた。
トライフォース模様を光らせることがあるゼルダやヒルダとお揃いだな。

これで、ロゼッタが、何ができるようになったかと言うと。



発動を念じて、腕を振りかぶる、それだけで。
1発だけ、光の弓矢をポンと出現させ、もとの勢いのままぶちかませる。
つまり「『光の弓矢』ストック状態」、以上。

…さすがの私も、初めて見た時は開いた口が塞がらなかった。

そりゃ、「魔法の奪い取り」が非常に便利だろうとは助言したが。
マスターする早さも、完成度も、異常な次元だろう…!



一度にストックできるのは魔法1つのみ。

コントラクト(魔術契約)を取り交わした味方の魔法しか回収できない。
魔法のことはまるでわからないが、以前、契約の為に魔法陣をサラサラ描いていた。
まるで魔法使いだ。…………忘れていた、大魔法使いだったな。
今の所、契約しているのは当然、ゼルダとヒルダのみ。

ストックから取り出した魔法を、再度回収することはできない。

更に、ストック状態では、取り込んだ魔法のランクと自分の実力との差に応じて
スリップダメージを強いられ続ける。



…とまあ、雁字搦めの制約があるらしいが。
これでロゼッタは、攻撃の幅が「ほぼ0」だった昔から恐ろしく拡がったことになる。

なんせ、外れて無駄になるはずの味方の魔法を見つけたら、
ギュッと握り締めて回収するだけで再利用。「はずれがでたのでもう1回」だ。
エコにも程がある。笑えて来る、と言ってもいい。

将来のことを考えると、更に胸が躍る。

マリオやピーチなら諸手を挙げて、ロゼッタに協力してくれるだろう。
味方が必殺技を持っていれば、それだけ自分も強くなる。
光の弓矢をあっさり刈り取った…いや切り取ったことから分かる通り、
繊細な集中と視認追跡さえできていれば、魔法の規模、速度は今のところ制約なしだ。

…しかし。
  





  
       え?超高難易度じゃないかって?
       でもですね、『自軍識別』と『魔法エネルギー保存』を『空間転移』に組み合わせるだけですよ?
       一番難しい『魔法エネルギー保存』は自分のHP消費を対価としてBランクに落とし込んでいますし。
       『自軍識別』なんて、あらかじめの魔法陣で別工程タスクにしているおかげで行使中はCランクにもなりません。

      うーん、現に今の私が何とか使えていることからして、全体でB+ランクってところでしょう。
      実分身とかゲイルアタックとか亜空切断とかに比べれば遊戯みたいなものですよ?





……とりあえず、ムカついて残機を奪った当時の私は、絶対に悪くない。

~昨日~

作戦会議も半ば、とあるタイミングで。



ロゼッタ「ぶっちゃけていいですか?」

ゼルダ姫と、ヒルダ姫が、振り向きます。



ロゼッタ「心の底ではデイジー姫に教えを乞うて満足していた今までと、
     打倒デイジー姫、大々前提で動く明日とでは、私たちの作戦は…
     大きく変えなければ、なりません。

     ぶっちゃけた話。
     勝つためのポイントは、突き詰めれば、至極単純。



     ――どれだけ、光の弓矢をデイジー姫に放ち、当てられるかです」

ゼルダ「……えっ」

ゼルダ姫が、目を白黒させています。
もっと己の魔法に自信を持ってくださいよ。

ヒルダ「……やっぱり、そうですよね…
    他の魔法や物理攻撃に比べて――光の弓矢だけ、威力が段違い。
    …5倍か10倍くらい上回っていますから。やはり芸術的にまで完成された大魔法ですよね!

    他の魔法を100回かすらせるくらいなら、
    光の弓矢を1回クリンヒットさせた方がよほど効果があるのではないでしょうか」

ロゼッタ「同じ認識を持っていただいていて、嬉しいです」

ゼルダ「えっ…えっ、そのようなことは――」カアァ

ロゼッタ「続けますねー。
     そして、デイジー姫としての認識もそうなっているはずです。
     光の弓矢だけは、割と本気で対策・対処しようとするでしょう。

     そのほかの魔法は逆に、強引に突っ込まれる可能性がありすぎます。
     足止めできたと思い込んでいたら直進で斬り込まれることをうっかりしていた、
     っていうのが一番やってはいけない過ちですね。

     ……今まで嫌というほど犯してきた過ちですけど、ええ」

ヒルダ「では、その……ゼルダ姫を徹底的にガードして温存して、
    その間にできるだけ光の弓矢を撃ってもらう、と」

ゼルダ「……………………それは、したくありません」

ロゼッタ「私も、それはしたくありません。全然、三位一体じゃありません。
     …というより、それだと勝てません、絶対。

     私たちがデイジー姫に散々鍛えられてきたのと同じく、
     光の弓矢を放つゼルダ姫を十二分に攻略できるだけの経験を、
     私たちはデイジー姫に与えてしまいましたから」

ヒルダ「では、どうしますか?その顔…無策ではないでしょう?
    声が弾んで聞こえますよ。話してみてください」



そう。悲しむのではなく、途方に暮れるのでもなく。
解決策を是が非でも探し出す原動力にしなければなりません。

ロゼッタ「大事なことは、3つ。

     まず、やっぱり、ゼルダ姫に光の弓矢を撃ち続けてもらうこと。これが、ひとつ目。

     ただし、そのゼルダ姫には敢えて前線に出てもらい、
     一層侮られがちとなった他の魔法で意表を突いたダメージを与えること。これが、ふたつ目」

ヒルダ「確かに、一番の脅威となるはずの撃ち方のゼルダ姫が前に出れば、
    デイジーはそれを咎めるべく、他の魔法を多少強引に蹴散らしてでも
    最短の道筋で接近戦を仕掛けるべく動くでしょうね」 
 
ロゼッタ「そして3つ目は――――」







ゼルダ「――――すこし、待ってください」



ロゼッタ「…え?」

私の秘策を提示しようとしたところに、まさかの横槍。
不快では全くありません。ただただ驚いて、思わず、固まってしまいます。

ゼルダ「――――ロゼッタの考えていること、分かっているつもりです。
    でも、それだと、まだデイジーの想定から抜け出せていない気がしてなりません。
    
    というわけで、私からの提案は、更なる役割の変更です」

ロゼッタ「…………なんと」

これは、思いがけない申し出です。



ヒルダ「…えっと。ロゼッタの考えとは、一体、なんだったのですか?」

ゼルダ「要するに、ロゼッタと私、2人の話を統合するとですね。





     『最後の切り札』は、ヒルダ姫。貴方になるということですよ」

ヒルダ「…………!!ま、まだ、理解が十分でないのですが…
    それで、よいのですか!?納得して頂けるのですか!?」



ゼルダ「ええ、もちろんですよ?」

ロゼッタ「…ゼルダ姫がそうおっしゃるのなら、私も反対することなどありません!
     して、ゼルダ姫の修正案とは、どのような――!?」

~再び、戦いの最中~

手に光る仮初の紋章。ぐさり、ぐさりと体を蝕んできます。
…痛い、痛いですねっ!やっぱり今の私にとっては光の弓矢のランクが高すぎますっ!



ロゼッタ「…あっ!ゼルダ姫、すぐに回復してさしあげ――」

ロゼッタは 留保戦術の副作用で ダメージを受けている!▼



頭から血を流しながら、デイジー姫を睨み、ゼルダ姫が小声で私を諫めてきます。

ゼルダ「…いい、大丈夫、です。FP温存に、努めておきなさい。
    貴方の魔法はただでさえ燃費がよろしくないのですから。
    作戦の大元が破綻するくらいなら、私の残機の方がよほど安上がりです」ドクドク

顔の右半分が血濡れで、心配でしょうがないのですが――
そうですか、気遣って頂きありがとうございます。私も心を鬼にします。

ヒルダ「ユガ、急ぎ修復しますからねっ!」パアア

ファントム・ユガ「GRUUUUUU・・・・」ピカーッ!

ファントム・ユガが、シュルシュルと縮んでいきます。
そうしてやらないと、修復の魔力も馬鹿になりません。

デイジー「強化タイムは終了か。折角の隠れ蓑を捨てていいのか?」

ヒルダ「……十分役目は果たしましたのでっ!」

捨て身のギミックとしても使った召喚獣。わざわざ修復するのは骨です。

かといって完全に消滅させてしまっては…まずいことになります。
存在が希薄になり、消滅までの時間も迫るので、一旦ヒルダ姫がメンテナンスに。

ロゼッタ「その間の支援はお任せくださいっ!」ボウッ!

フッと火の玉を浮き上がらせる私。…割と、超能力者っぽいサマになってきました。

ゼルダ「…ゴホッ…まだまだ、射て、さしあげます、よ――」パアアアア



デイジー「その、『2人いれば無防備な3人目を私相手に守り切れる』という浅はかな考え――

      気に、食わないなっ!」

ロゼッタ「――ふぇっ!?」



デイジー姫が大地を震わせて、駆ける。
い、いけない!反応し損ねましたっ!かろうじてゼルダ姫が対応に移ります!

一拍遅れて動作に入るも…余りに速くて、私のパイロキネシスごときは、
誰もいない空間を間抜けに通過していくのみ……!

口では「射貫く」と言っていても、流石に無謀と察したか、ゼルダ姫が身構えて格闘応戦。

ただし、攻撃してもダメ―ジなど碌に通らず、意味がありません。
後ろ向きではありますが、底上げされた防御力を少しでも活かし、時間稼ぎに徹せねば。



――そう考えていた、私たち。
――その考え、恐ろしく甘い見積もりでした。



デイジー姫は、ゼルダ姫の直前まで来ると、急停止し、ふっと笑って――





デイジー「右から来るぞ、気を付けろ」





ゼルダ「な、何を―――――――」



――――――――




ゼルダ「――――っ!」





ゼルダ姫が、反応できたのは、奇跡だったかもしれません。

ゼルダ姫は、咄嗟に、反射的に、自分の顔までの軌跡を両腕で遮ろうとし――
あろうことか、「咄嗟に顔の守りを捨てて」、下方向に急旋回。
鳩尾を、死に物狂いで、死守しました。

バリイイイィィン、と、耳をつんざくような爆音がこだます。
なにかが霧散していく、光の欠片と共に。



ゼルダ「……フーッ…フーッ…!!」ガクガク



デイジー姫の拳は、言葉面だけならゼルダ姫の「期待通り」、
限界を超えて突っ張って見せたゼルダ姫の手によって、バシィッ!!と取り押さえられました。

デイジー姫の拳から初めて流れた、何筋かの赤い血。
受け止めたゼルダ姫の手首からは、夥しい量の出血が。




ゼルダ「――――フーッ――――フーッ…!!」バクバク



…傍から見ていても分かるくらいの動揺、脂汗。血走った眼。定まらない呼吸。
ただ、ゼルダ姫は決して、激痛のせいで、あんなことになっているわけではありません。



一瞬見せた、デイジー姫の、本気の本気。
私の仕込んだ要塞法衣は…たった一発のパンチで、腕の周り…
そしてその後ろに控える腹部のものまで、絶望的に大きな風穴があき、もはや使い物になりません。

もしも、「どうせ顔に飛んでくるんだろう」と決めつけてガードしていたのなら、
減速させること叶わず腹部の鎧を貫き通して、絶命させていたこと、請け合いです。



デイジー姫はデイジー姫で、目を見開いています。

デイジー「…驚いたな、心の底から驚いた。
     まさか反応してくるとは、更には腕の制約があるというのに、
     それを跳ね除けて間一髪、間に合わせてみせるとは…っ!
     基礎体力レベルにして、Lv. 50の大台には乗ったんじゃないか?

     私は『胸が張り裂けるほど』嬉しい。敬意を以て――――――――」スッ

ゼルダ「ヒルダ姫っ!!自分に集中してっ!早く――っ!」

「ナニカ」を悟り、ゼルダ姫が絶叫します。



デイジー「――――――――――――全力で叩き潰そう」

ドゴオオオオオオオオオオオォォォッ!!



ゼルダ「――――――――なん、ども、いいま、すが。
    ほん、とうに、しゅ……み、わるい、で、す………………………ね」

ゼルダ姫が、ぐるんと1回転、したので、しょうか。
速過ぎて、よくわかりませんでした。……見ているだけしか、できませんでした。

…多分、なのですが、こう…一瞬のうちに、デイジー姫の手が再び自由の身となって。
しなやかに長い腕を差し込まれて。背負い投げをされたのだと、思います。
…クレーターを作りながら、背中から叩きつけられている最終状態を鑑みるに、そうとしか思えない、ので。はい。

…要塞法衣に敢えてちょっかいを出すのは、こちらの戦意を下げることを狙っているのでしょうか――

ゼルダ「――」ガクッ



ゼルダ残機・・・残り『2』
ゼルダを包む要塞法衣が 完全に 解けた!▼

光り輝くとともに、ゼルダ姫、復活。

ケガ完治、パチッと目を開け、手で口を押さえて…吐き気をグッと、堪えています。
ちなみに、ゼルダ姫もヒルダ姫も、それなりにショックには強くなってはきましたが…
復活後に吐き気が一切ないのは――私だけです。嬉しいような、悲しいような。

さて、ここからが。お互い、ますます重要になってきます。
連続した残機削りが禁止というルール上、ヒルダ姫か私が残機を減らすまで、
ゼルダ姫の残機が奪われることはありません。
もちろん無力化に専念して動かれる可能性は残っていますが、
ゼルダ姫の光の弓矢はなんだかんだ言って充填しやすくなるでしょう。

ただしこれは、デイジー姫がヒルダ姫と私の速やかな殺戮に躍起になる、
積極的になるということでも…当然あるのですから。



ヒルダ「アイス、ロッドッ!」バッ

少なくないFPを注ぎ込み、なんとか復活した召喚獣。いわゆる「いつもの大きさ」で。
デイジー姫を休ませまいと、なるべく時間を空けず、ヒルダ姫が動きます。
10秒は倒されないから…なんて悠長にしていると、たちまち取り返しが付かなくなってもおかしくありません。

彼女の魔法も、決して貧弱ではありません。威力も速度も、見事なもの。
術式の素早い切換えにより、持たせる武器も様変わり。
地力、そしてこれまでの努力の結晶により…そこいらの敵相手ならば、粉砕もたやすい。
乱れ飛ぶ激しい冷気の塊たちが、デイジー姫に襲い掛かります。



デイジー「…おっと。それにしても、ヒルダ、お前だけは中々火力が上がっていかないな。
     ロゼッタは割と、私に警鐘を鳴らせるようになったっていうのに」



…しかし、デイジー姫の基準からすると、なかなか及第点を貰えない。
飛ばす氷は、上体を逸らすだけで躱され、身を翻すだけで空振りし、
悉く無効化されて行きます。

ヒルダ「人が、気にしている、事を――っ!」

ヒルダ姫が悔しさをにじませていますが、
すでにデイジー姫は、視線をゼルダ姫に向けています。

ゼルダ姫が、光の弓矢を…デイジー姫からすれば「性懲りもなく」溜め始めます。
要塞法衣は消え去っているのが本当に気懸り。
もちろん、全員がこの衣に覆われ続けること、残機を削られるたびに張り直せること…
これらが達成されれば非常に心強くはありますが、時間的にもFP的にも余裕などありません。

…仮に余裕があったところで、デイジー姫にとって突破できないこともないというのが更に私を億劫にさせる、
という新たな懸念事項とエンカウントしましたが。

ヒルダ「アイスロッドッ!」



デイジー姫が、ヒルダ姫を半ば無視し――



ゼルダ「光の――――」パアアアア



ゼルダ姫が溜めるソレには、流石に目を光らせて――



デイジー「ゼルd――――――――――」ダダダダダ



――ぴくっ。





デイジー「――――――っとぉ!!!!」ズサァ―ッ!

デイジー姫が、何を思ったのか、突然自らバランスを崩す。
身を捩らせて、進路から大きく外れゴロゴロ転がって、最後は背中を地に滑らせる。

ロゼッタ「――――え、えええーっ!?」シュンッ!!  ザンッ!!

ヒルダ「そんな……!」

野生の勘、というものか。

進路通りに進んでいれば――斜め45度後方からデイジー姫目掛けて迷うことなく走る、
「私の」光の弓矢が、背中を背中を射止めていた、はずでした。
突如現れた私の腕の先から、これまた突如として現れた、一筋の閃光。
…狙撃対象を見失って、フィールドの遠くまで……むなしく飛んで、消えて行きました。

う、そ。今のが、読まれ、たのですか!?
とっておきの、初お披露目の、「ワープ即撃ち」光の弓矢だったのですが…!
腕を振り下ろした状態のまま、硬直を食らいつつ、心まで固まってしまいます。



デイジー「おっと、これで3秒取られるとかはギャグにもなら――」

ゼルダ「…ハッ!!!」バシュッ!

デイジー「――――っ!」



で、ですが。まだ、デイジー姫は安心できない。
時をほぼ同じくして、ゼルダ姫の光の弓矢も準備完了。デイジー姫をロックオン。
体勢が崩れているありさまで、この2射目を――切り抜けられますかっ!?




デイジー「ずああああああああぁぁぁっ!!」ズシャアッ!




ぽたり、ぽたり。



デイジー「……………………少々、無茶をしたかな」ポタポタ

私もヒルダ姫も――そして何より、ゼルダ姫が、唖然とする。
夢でも見ている気分です。

ゼルダ「――――ま、まさか。
    腕の一振りで、光の弓矢を――引き裂いた、ですって?」

デイジー「いや、そんなに簡単なことじゃなかったぞ?
     見ろ、今のだけで――右腕が、結構、外出血を起こしているようだ。
     ぽつぽつと赤く染まっているだろう?マリオやリンクなら、こんな症状すら起きていないと思うが。
     所詮、私の力などこれっぽっちということか。

     …そうだな、ここまでの時点で、これまでの14回の試合を差し置いて
     ベストスコアは叩き出せているだろう」スクッ

…そんなしょっぱい結果を求めて光の弓矢を撃ち続けたわけではないのですが。
ゆらりと立ち上がったデイジー姫が、まさに「越えられない壁」に見えてきます。

デイジー「…今のは、かなり良かった、掛け値なしに。
      ワープ後の動作に硬直ロスもほとんどなく、抜群のタイミング…
      すっかり技術を、物にしたんだな――!

      いや、ロゼッタだけではないぞ。ゼルダ、お前も。
      致命傷一つ狙いではなく、迂闊に起き上がれない位置関係を狙って
      敢えて照準をずらした、一瞬の判断で――だろう?
      あれがなく、欲張って仕留めようとしていれば、躱しきれていたというのに」



最近のデイジー姫は、吹っ切れた影響が徐々に好い方向に出ているのか、「裏の顔」でも…
褒めたいと思えば言葉でしっかり称え、冗談などにも即激怒はせず一旦流してくれる、といった変化が出ています。
このように褒めて頂けると、くすぐったい。

ですが、状況としては非常にまずいことになりました。
腕で無理やり払う選択をしたということは、もし胴体に到達していればよりダメージを与えられていた、
というのは間違いなさそうではありますが。

ここまで武勇を示されては、果たして有効ダメージを与えるのが、何時になることやら…!
もっともっと、致命的なスキを、好機を用意してやらなければならないようです。

私の手の甲の弓矢のマークは、ストックを失ったことで、今は跡形もありません。
ストックし直さなければ何も始まらないのですが、今のでゼルダ姫の心が折れていなければよいのですが――



ゼルダ「…………」ブルブル

ゼルダ「……………………」ハーッ

ゼルダ「…………その笑いを崩すのが、ますます楽しみに、なってきました、ね…!
    やってやろうでは、ありませんか!お覚悟をっ!」



――杞憂だったみたいです。武者震いでしたか。
――今のゼルダ姫、いえ私たち3人の心を折るのは、そう簡単ではないですよね。



むしろ問題は私です。
肩で息をしています。汗もびっしょり、腕には鈍痛。
光の弓矢の維持で、デイジー姫以上に痛手を負ってしまいました。

ロゼッタ「――――つ、強い」

デイジー「弱い姿など、見せた事ないだろう?」

ロゼッタ「わかっています、言葉の綾というか、再認識というか…そんなところ、です」

くつくつと笑ったあと――

デイジー「何だ?ボーっとしているのなら…こちらから行くぞ!」ダンッ!

ロゼッタ「―――っ!?」シュンッ!

地を蹴り、颯爽と、私に迫る。…まずい、予想はしていましたが、狙われました。

ヒルダ姫のもとへ、慌ててワープ。
なんということでしょう、無理が祟って、体がフラ付きます…!
読まれていたのか、デイジー姫は既に方向転換、またもや距離を縮めます。
私=ターゲット、の等式が成立してしまっているようです。

デイジー「ふんっ!」ブンッ!

ロゼッタ「ひやっ!?」ズルッ!

速度を緩められないまま、何かを投擲されました。
…砕けた足場の破片!?拾ったタイミングすらわかりません。

1投目のストレートを、ぎょっとしながらも大きく横に反ってヒヤヒヤと躱し、

2投目のフォーク…もとい上に浮く足場の裏側に跳ね返らせた荒れ球を、
思わず目を瞑りながらの交差する両腕で防ぐ。

…ものすっごい威力です。
ただの5cm程度の破片なのに、私に着弾すると同時に爆発し、もうもうと土煙。
あんなのを見せられると、私のジャイロファイアなんて、まだまだ序の口ですね。

それでもとりあえず、なんとか――




ヒルダ「うぁっ――――」ズルッ・・・



――なんて、考えていたのが、馬鹿でした。
――激痛の呻きが、傍のヒルダ姫から聴こえてくる。
――狙ったのか、はたまた偶然か。…きっと、狙ったのでしょう。



デイジー姫の3投目は、ヒルダ姫のドレスごと、ヒルダ姫の右太ももあたりを、
グサッとザクッと、あっさり貫いていきました。



それでも、流石はヒルダ姫。流れる血など、なんのその。
一度、もんどりうって地に伏せたものの、涙目で、歯を食いしばって耐え…
息を整えつつ、立ち上がろうと、しています。

私は、ヒルダ姫を信じます。――だから、駆け寄ることなんていたしません。
だから私は、デイジー姫をしっかり見据えたままで――





――――あ、れ?デイジー姫が消え、ました!?

ヒルダ「ロゼッタっ!上…というか後ろですっ!」

痛みを堪えつつ、ヒルダ姫が警告を発する。
目を切った瞬間に、身を舞わせて浮遊足場に移動――!?
振り向いてみれば…なんか、背後から殴り込んできました――っ!?

ヒルダ姫を庇おうと、決死のダッシュ。
私の作った鎧だけではあまりにも心もとない。



ビシィッ! ビシィッ! ビシィッ・・・!

ヒルダ姫と私の目の前に、改めて隔壁を急ごしらえっ!



デイジー「こんなもの、回り込めば――」

ロゼッタ「せい、やぁ―――――っ!」

ブウウウゥゥンッ!

隔壁との接続を切らないでいて、よかった。両腕を前に突き出し、
力を集めつつ、腕のスイングと共に隔壁をスライドッ!
厚い厚い壁を、再度作るより、こちらの方が多分早くて低コスト!

勢い余ったデイジー姫の拳を、どうにかこうにか食い止め――ますっ!
叩いてみるまで、そこにあるとは中々気付かれにくい、透明度の高い壁。
とりあえず食いついてくれました!

デイジー「……!付いて、来られるか――だが」

ロゼッタ「――――けほっ」

代償も、小さくない。じわじわと体を蝕まれ、数えるのも億劫になった吐血。
それでも、なんとか…自らを奮い立たせ踏ん張って、デイジー姫を見据えますっ!

デイジー「意気込みすぎているのはいいが、ロゼッタ。
     お前、フルパワーすぎて、いつも以上にスタミナ切れが早いぞ?
     ペース配分の重要性を…忘れたのか?」

ロゼッタ「……ゴホッ、ゴホッ…は、はは。不真面目な動きには、見えない、でしょう?
     そうだ。ちょっとくらい、手加減しても、バチは当たりませんよ?」



とはいえ、デイジー姫は一層拳に力を込めて、ぐぐぐっと全力前進。
1枚、また1枚、またまた1枚……!
衝撃に晒された隔壁は、ちょっとデイジー姫を減速させるくらいで、
外側から順に次々とかち割られ、その役目を失っていきます。

補強、補強、補強――――っ!

ヒルダ姫が攻撃態勢を整えるまで、私がカバーして差し上げなければっ!
…ですが、損傷速度の方が、どうにも、大きい…!



デイジー「ふ、は、はははは――――っ!!」ゴオオオオオォォ!!

ロゼッタ「ぐ、ぎ、ぎぎぎ……………勘弁、してくださいよ…っ」

それでも、高エネルギーの衝突に耐え、少しでもデイジー姫の到着を遅らせます。
あ、隔壁動かせるとはいえ、あんまりフェイントで側面から攻撃とか、ヤメテクダサイね!
神経ますます磨り減るんで!もうちょっと、意地張っててくださいね!

あ、視界が…ちょっと、赤い、気がします。
いえ、投げ出したりは、しませんっ!

ロゼッタ(…予想以上に、負担が大きいん、ですけど、ねぇ!)

ですが――デイジー姫に悟らせては、いけません。





あとで…怒られる気はしますが、はい。
…泣かれたら、嫌ですね。

ヒルダ「……ハァッ…もう、大丈夫、ですっ!――――――――ハンマーっ!」



そうこうしているうちに、ようやくヒルダ姫が、戦闘態勢を整えました。
右脚をできるだけ庇いつつ、フラフラとではありますが立ち上がって、
ファントム・ユガに命令を下せる段階です。

復活した、凛としたその声で、魔物が炎の杖を振り回す。
ヒルダ姫の足元に流れる血が痛々しいですが、いまは少しでも粘って…
ゼルダ姫の自由行動時間を伸ばすべき。

ファントム・ユガ「GUOOOOOOOOO!」

ヒルダ姫の後押しも加わって、なんとかデイジー姫を押し戻そうとします。

デイジー「…一つ覚え、懲りない奴だ」

ヒルダ「――――ハンマー!――――ハンマー!――――まだ、まだぁっ!!」



――1発、2発、3発。

しかし、もはや、ヒルダ姫の攻撃は脅威と見なされなくなっています。

ヒルダ姫が、じりじりと、後ずさる。
怯えたように、私の後ろに隠れて、私と付かず離れずの距離になりました。

私は、隔壁の制御を左手で任せて。
空いた右手で、ヒルダ姫の左手を握ってあげます。
…負けていられませんよ、頑張って。

強く強く、神経を集中し、握り締めます。
もちろん、この一連の挙動は、デイジー姫からすると――

デイジー「なるほど、ファイアロッドにみせかけてハンマーを繰り出す…
      その程度の引っかけが、お前の戦略だというのだな。
      久しぶりに…臆病風が、吹いたかぁ――!」ギュンッ!






――――――――かかった!!




ヒルダ「――――――――」スッ・・・

ヒルダ姫の怯えた「ふり」が、終わりの時を告げます!
治療中のFP制御の経験から閃いた、私の魔法の発動と共に!

召喚獣が、炎の杖を、ハンマーにしっかり、切り替える。
…妙に、そのハンマー、大きいんですよ。ええ!


ロゼッタ(――――Double Slot《相互演算》)カチッ!



相互演算の 効果で 魔法回路が 接続されている!
ロゼッタは 術式演算の 一部を 肩代わりした!
ヒルダの 術式ランクの 限界が 高まった!▼



ヒルダ「―――――――ナイス、ハンマァァァァ――――ッ!!」ビシィッ!

ファントム・ユガ「YEAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAH!!」ブンッ!!



カッ!! ――ドッズウウウウウウウゥゥゥン!!

デイジー「…………ぐっ…………!?」ブワッ!



いつものハンマーに比べ、倍以上に丸々と肥え太った巨大なハンマーが、
速度すら増してデイジー姫に、しかと振り翳されます!
いつものごとく無視可能、蹴散らし容易とばかり思い込んで突っ込んできたデイジー姫を、
したたかに打ち付けて、向こうに吹き飛ばして見せました!

ヒルダ「――――これが、私の…奥の手、ですっ!!」

デイジー「……っ、ロゼッタ、お前…なにかやったな?」

ロゼッタ「…………人を疑うのは良くないと思いますよ」

片膝姿勢でズサァッと5mほど滑り、止まってからも立ち上がろうとしないデイジー姫。
ダメージがきつい、というよりは、呆れているっていうニュアンスが伝わってきます。

ロゼッタ「…まあ、私のせいではありますが。ふふん、ネタ晴らしは試合終了までしませ――」



デイジー「大方、手を握ったことで2人の魔法回路を接続させて――
     疑似的に魔法回路の容量を増やすことで
     ヒルダに実力以上の魔法を繰り出させたのだろう?
     ヒルダも、中々の演技振りだったということか、迂闊。

     だが、言い換えれば、その間のロゼッタはサポートに掛かり切りで腑抜け状態。
     碌に行動手段を持たなくなる、という認識で間違いないか?
     そのくらいの対価は当然あるよな?魔法使い殿?」

ロゼッタ「――――どどどどうでしょうかねえ」



うわぁい、完全にばれています。
…まあ、時間とともにばれるのは覚悟していました。
それが、ちょーっとだけ早まったということにしておきましょう。

私の失態をなかったことにしてやろうと、ヒルダ姫が、熱気を帯びて動きます。
力いっぱい、手を振りかぶって。



ヒルダ「ナイスハンマー、連撃!叩きつけて…差し上げなさいっ!!」ゴオオオ

ヒルダの 攻撃は まだ続いている!▼



デイジー姫、迫り来るハンマーを二度、三度受けて、感触を確かめていましたが…。

さしものデイジー姫といえど、潰されないためには、しっかり足を止めて構えて、
受け止め、静止させ、力任せに目一杯押しのけ、跳ね返す…という動作が必要が出てきました。
…あ、あの表情。思いっきり苦虫を噛み潰したような状態です。



ふっふっふ。
それだけ、私の魔法回路がヒルダ姫の底上げを行えるスペックを持つということです。
劣化状態の今の私ですら、ヒルダ姫の負担を半分…いえ3分の1にはできていることでしょう。



…というわけで、私の頑張りに免じて、ちょっとばかり気遣ってくれませんか、ヒルダ姫。
既に血の気が引いて来ているのですが。助けてください。

ほどなく、この魔法も「しっかり避けるべき」対象と見なしたご様子。
左右に振って、浮遊する足場を駆使して、掻い潜りつつ接近するスタイルに移りました。

ヒルダ姫に、デイジー姫の動きを追い切る洞察力、動体視力はとてもありません。
…ですが。



ヒルダ「…ようは、隙間なく打ち続ければいいだけのことでしょう――――!
    ははははは――!」



ヒルダ姫が、トランス状態?…邪悪な?高笑いまで始めて、ノリに乗っています。
そして、有言実行。ドカドカドカドカと、地面が叩かれ、轟音と爆音の嵐。

…そういえば。昨日の練習のときも、そうでしたよね。
一気に限界突破した魔法を行使できるのが本当に嬉しいのか、
ゼルダ姫がたしなめるまで延々と、魔法の繰り出しに付き合わされました。
提案した側の私が、半泣き状態になるほどまで。



既に立っている状態なのに、立ち眩み。あ、本格的に、まずそうです。
な、何が、彼女をそうさせるのでしょう、か…?

~選手控室~

リンク「そういや、ロウラルに冒険に向かった時さぁ。
    ヒルダの奴が、『Heyリンク、実は私が黒幕でした』って衝撃告白して、
    そのまま動けないゼルダから知恵のトライフォース奪って、
    ユガをドババーンって呼び出したんだよ」

マリオ「いきなり前提知識なしに語り出すなよ。ユガってなんだよ、召喚物か?
    つまり、もともとヒルダは悪役だったんだな。…だが、なんで唐突にそんな話を?」

リンク「いや、その時のヒルダの豹変ぶりが中々面白くてさ。
   3人のことを心配してたら、ちょうど思い出しちゃったんだ。
   たぶん、初めてトライフォースの力を得たことで実力が一気に底上げされたのが
   本当に嬉しかったのか、抑圧からの解放か、高笑いまでし出してさ。

   それまでは、落ち着いた天の声色で俺を手助けしてくれる、
   穏やかで奥ゆかしいお姫様とばかり思っていたのに。ゼルダ姫とは違って」

マリオ「お、おう。……意味がない質問をさせてもらうが…苦戦したのか?」

リンク「いや、全く。自慢じゃないが、流石に俺と比べるのは可哀想だろ…。

    ヒルダが唯一得意とする魔法分野ですら、なんとか俺の勝ち。
    基本体力なんて、当時のヒルダだったら10メートル離れて俺が回転切りするだけで
    風圧で壁に叩きつけられて死ぬんじゃないか?」

マリオ「優しさの欠片もない評価だな」

リンク「客観的な評価と言ってくれ」

リンク「そして、頼みの綱として縋ったトライフォースの数ですら俺の方が多いっていう。

    なんだったらあれだよ?トライフォース6つ使って、正六角形に綺麗に並べて
    『壁々のヘキサフォース!』とかやっちゃうよ?

    結局は召喚したユガにまで裏切られて、ほんと可哀想な役回りだったなあ…」

マリオ「『かべかべ』って言いにくいな…。だが、トライフォースは幾つあってもトライフォースだろ?
    よく『聖三角』って呼んでるじゃないか。三角形だからトライフォースなんだろ?」

リンク「…………え、力と知恵と勇気、3つの力でトライフォースじゃないの?
    (本来は)3個に分かれてるからトライフォースじゃないの?」

マリオ「その理論だったら、お前が正六角形に並べたところで
    『勇気のモノフォース!』じゃね?」

リンク「予想以上にダサいな!?
    …でもそうだな、ゲットするたびに1個1個『○○のトライフォース』って言ってきたし。
    じゃあマリオの方が正しいのか。

    …待てよ、ちいさな欠片を『フォース』とだけ呼んでたこともあった気が。
 
    …いや、もしかすると、勇気のトライフォースにも力と知恵の成分が5%くらいつつ添加されていたりするのか…?

    …じゃあ俺が持っているのは『ほぼ勇気のトライフォース』…?あれ、頭が混乱してきたぞ…?」グルグルグルグル

マリオ「やめとけ」

~閉ざされたフィールド~

ヒルダ(…………なんだか無性に心が切なくなってました)ガクーン

ロゼッタ「――あ、の。そ、そこまで連続行動、されると。
     ちょっと私の負担が、お、おおきい、かなって…ヒル、ダ、姫」ガタガタガタガタ

デイジー「……」ジーッ

ヒルダ「さあさあ、まだまだっ!相手の動きが鈍ってきています、
    どんどんデイジーを追い込みますよぉっ!」バッ

ロゼッタ(聴いちゃいない!)



仁王立ちして、口をできるだけ閉じて、痛みに涙堪えてプルプル震えているのですが。

デイジー姫が、やや引き気味に…それはもう、物理的および精神的に引き気味に行動しつつ、
半ば「私の自滅待ち」をし始めているような錯覚がしてきたのですが!錯覚ですよね!?
まずいです、ヒルダ姫の抑制の練習まではしていませんでしたっ!



――ここは、やはり。
――ちらっと見れば、時間を作った甲斐あって、準備万端ゼルダ姫!
――貴方に頼るしか、なさそうです!

ゼルダ(――随分と、時間を与えてくれたではないですか)

まるで、こちらの警戒をしていない。千載一遇のチャンス到来です。
柱の陰を上手く利用して、光り輝く弓矢をできる限り隠し通したのが功を奏しているよう。
しなる弦、飛び立つのを今か今かと待ち望む矢。



このまま矢を解き放つか、接近して確実性を上げるか――



…………。



私の動きを視界に入れてしまう危険性のほうが、
どうやらよっぽど高いようですね。
私も、ここの生活で、デイジーと比べた際の身体能力の低さは…
冷静に判断できるようになってきたつもりです。

でも、光の弓矢の速度に対する誇りと自信も、付いてきたのですよ?

…決めました。
あとは、できるだけヒルダ姫の行動を読み――
デイジーの反応を遅らせるベストなタイミングで、魔法を発動させるのみ。

非常に頼もしいことに、万が一外してしまっても、
ロゼッタの回収能力があれば、全部が全部、無駄にはなりませんし。
それこそ、先ほどのように、2本の光の弓矢で狙い撃ち、なんてことも出来ます。
…繰り返します。非常に頼もしいですよ、本当に。

伊達に、3人の連携を、これまで取ってきていません。
ある程度の動きなら、癖なら、お互い把握できる。分かり合える。
ステップ。ひと呼吸。ガード。身構え。
まるで、照らし合わせた台本のように。

一見して調子に乗り過ぎて、我を忘れて仕掛け続けているようにも見えるヒルダ姫が。
振り返るまでもなく、ちらっと斜め下を向き、カツンと踵を鳴らします。



――もう、言葉は、要らない。



私は一転してパッと柱の横に飛び出て、
ヒルダ姫を射貫くかの如く、魔法を発動させ、あとは――



ヒルダ「それを待って――」






デイジー「そいつを待ってたんだよ、なあっ!!」グワン!






――――なっ!?


そのとき、信じられないことが、起こりました。

デイジーが激しく地を蹴る。…今度は本当に、「地面を蹴った」のです。
もともと散らばっていた瓦礫、さらにその下の土まで薙ぎ払う蹴り。
もうもうと砂の幕が張られ、皆の姿がかき消されます。
…それでも、矢を放とうと動作に入ってしまった私の手は、止まることができません。



――何か、非常に、よろしくないことが…!



それでも、手は、止まらない。

バチィ―――ッ!!



ロゼッタ「――――ひゃっ!?」

ヒルダ「――きゃあっ!!」



煙幕の中で、何かが、弾けた、音が、する。そう、思ったのが、0.5秒後。

弾けた?何がですか?
ヒルダ姫とロゼッタの、繋いでいた手が、強引に引き裂かれた?
なんの、ために?なんの、意図を以て?



ゼルダ「――――――――っ!?」

私は、最悪な状況を想像してしまいました。

どうか、外れていて――
その想いは、無情にも裏切られます。





煙幕から、ぬるっと、銀色の冠が――見えました。

もぎ取られる感じで、強引に手の繋ぎを引き裂かれていたヒルダ姫。
おかげで指を血が滴っている有様ですが、本人は気にも留めません。



ヒルダ「ロゼッタアアァァァ――――!?」

彼女の叫びが、ただただフィールドに木霊します。



デイジー「時間稼ぎさせれば、お前らは必ず、ほくそ笑みつつ、光の弓矢でチャンスを伺ってくる。
     飛んできたソレを躱したとしても、ロゼッタに回収されちゃ…なあ?
     いまいちお前らの戦力消耗になってない。私のリスクを高めるばかりだ。



     ――なら、話は簡単だ。

     ロゼッタが回収する余裕もないように誘導できる、弓の撃たせ方をさせればいいのさ。
     たとえば、今みたいに――





     光の弓矢目掛けて、真正面からロゼッタを一思いに投げつける、とかな」

ロゼッタ「――――――――――――」

デイジー「私に駆け引きで勝つのは、そう簡単なことじゃないぞ?」



チッチッチ、と指を振って嘲る素振りのデイジー姫。
まだまだ舐め腐られている。私は――ただ、ワナワナと震える、ばかりなり。

デイジーはこちらを向いており、もはや目で追ってはいませんが――
光の弓矢が、フィールドの遠くへ一直線に飛んで行く。

デイジーは、多少は無理をして掻い潜ってみせたのか、ドレスと顔に、幾重にも切り傷。
さきほどより、血の滲む箇所は更に増えました。
そして、一方。手には、紋章など浮き上がらず――――



ロゼッタ「――――――――――――――――」フラッ・・・



勢いよく放り投げられ、状況を察せないまま背中から、無慈悲にも――
心の臓を光の弓矢に貫かれ、絶命して。糸の切れた人形のように
横倒しになるロゼッタが、いたのです。



ロゼッタの残機が、ひとつ、確かに、減りました。

ロゼッタ「――――――――ゴホッ!ゴホッ!――――――――っ!!
     …ハァッ!…ハァッ!…ハァッ!…ハァっ!…ハァッ!
     い、い、い、いまのは、さ、さ、さす、がに、効きました、よっ!?
     
     デイジー、姫。貴方、お、おにです、か」ピカーーッ!


ふ、ふっかつ、してます、よねっ!?…ああ、よかった。
復活したのはよかったですが、今更ながらの遅すぎる、怒涛の冷や汗。

なんて、恐怖体験。体がここまで震えるなんて、久しぶり、ですっ!
心臓もバクバク言っていて、本当に煩いくらいです。

いや、もちろん単なる破壊力だけなら、デイジー姫の渾身の連弾を食らう方がきついのかもしれませんがっ!
なんか、一瞬で自分が無に帰るんじゃないかっていうくらいの一撃でしたよっ、今の!
やっぱり光の弓矢という魔法は神が与えし代物ですね…!!

あ、あしが、わらっていて、うまく、立てません。
し、しかしっ!予定外の残機損失を、して、しまったのですから!
立て直さなければ、勝ちの目がだいぶ薄くなってしまい、ます!



ゼルダ「――――ご、ごめんなさい、ロゼッタ――――!」ジワッ

ヒルダ「――――――――っ!
    ロゼッタ、ロゼッタッ!大丈夫、です、かっ!?わ、私が調子に、のる、から…!」ダダッ!

ゼルダ姫は珍しく狼狽し、ヒルダ姫が泣きじゃくりながら駆け寄ってきます。
そのお気持ちは本当に嬉しい、のですが…!

ロゼッタ「お二人ともっ!まだ…試合は継続、中、ですよっ!
     油断しては、いけませんっ!私なら、大丈夫、ですっ!」

心配を掛けないよう、なんとか気合で虚勢を張って見せます。
早く、迎え撃つ態勢に戻って!デイジー姫の次の狙いは貴方たちなのですよ!



ヒルダ「で、でもっ!でも、ロゼッタ!今、思いっきりグサッ…て!
    血がっ!ドバァって!あんなのっ!見た、らっ!」ポロポロ



動転状態からいつまでも戻ってこない、ヒルダ姫。
よほどショッキングな光景だった、模様です。我ながら。
止め処なく、涙が溢れて来ていて、終わりを知りません。

ロゼッタ「気にしていませんから、はやくシャキッとしてください!」

ヒルダ「そ、そんな、ロゼッタぁ――」





――覚悟を決めなければ、ならないようです。

――――パチィン!



ヒルダ「ぶっ――――――――」

ゼルダ姫と、デイジー姫が、目を見開く。



私は――ありったけのスウィングで、抱き着かんとするヒルダ姫の頬を張りました。



赤く腫れた頬を抑え、横に流しやられた顔をぎこちなく、ぎこちなく戻しながら、
ヒルダ姫が信じられなものを見るように私を見つめます。

ロゼッタ「でも、も。何、も。ありませんっ!この私が、気にしていないと言いました!
     私も、ゼルダ姫も、むざむざ負けたくなどないですよ!
     貴方は、そうではないのですか!?誓いは――嘘だったのですか!?

     そんなことでは、体たらくでは――最後の最後まで逃げて怯えて――
     デイジー姫に1対1で相まみえる絶望の未来しか見えてきませんが、よろしいのですかっ!」

ヒルダ「―――――――――――――――――――――っ!!」

ゼルダ「―――――――――――――――――――――――」

ヒルダ姫が、徐々に目を見開き。ゼルダ姫が、驚愕の眼差しでこちらを見て。



ヒルダ「い、嫌――い、いや、です――――――そ、そんなの――」ガタガタ

数歩後ずさりながら、うわ言のように、繰り返す。

ロゼッタ「ヒルダ姫っ!」

ゼルダ「ヒルダ姫、気をしっかり持ってください!」





デイジー「いつまで、やってるんだ?」ゴウッ

ヒルダ「――――っ!?」



――とっくに、10秒、経っている。

そんなに暴走した後ろめたさがあるのなら。ついでに引導、渡してやろうか。
…そんなデイジー姫の声が、聞こえてくるようです。

首根っこ掴んで、デイジー姫にしてみれば、軽い頭突き。
たちまちヒルダ姫の額は割れ、血を噴き出しながら激痛に苛まれる。
間髪入れず、ヒルダ姫の体をぶわぁっと放り投げ、自分も鳥の如く舞い上がる。



ヒルダ「あ――」



虚ろな表情のヒルダ姫の眼前に、迫り来る足。
いたずらに首に引っ掛けられた、下向きのベクトル甚だしい、踵落とし。
怒涛の一撃が、襲い掛かる。



ゼルダ「――くっ。…………光の…」パアァァ

ゼルダ姫は「諦めて」、せめて時間を無駄にしまいとフィールドの反対側に駆けつつ、
光の弓矢の充填に入ります――!

反射的に助けようとする私の手の、はるか向こうをすり抜けて。
フィールド外に向かって飛ばされて行きました。



ヒルダ残機・・・残り『2』
ヒルダを包む要塞法衣が 完全に 解けた!▼

…ヒルダの残機が、減った。



ファントム・ユガ「…………」ユラァ



通常ならば、ヒルダが残機を失った瞬間に、召喚物の類は消え失せる。
それが、召喚者との接続の切られた物の定め。

…しかし、今回に限っては、それは当てはまらないらしい。
杖を持ちこちらを睨む召喚獣は、姿を残したまま。



ロゼッタ「消えちゃうのは、勿体ないですからねっ!」ポワン ポワン

ヒルダとの接続が消えているちょっとの間、ロゼッタが急ぎ駆けつけFPを供給することで
消滅を防いだようだ。10秒縛りがなければ、ロゼッタを伸しておいたのだが。
…というかロゼッタ、器用だな。お前にはFPの輸送法…教えた覚え、ないのだが。

一方のゼルダは、間もなく充填完了の構え。…やれやれ。
やや赤くなった腕を少し見る。距離をもって撃たれる分には、まだ…耐えられるだろう。
今の所、全員の残機を1ずつ削って、片腕をそこそこ消費。
もっと楽勝のつもりだったが、勝ち負けでいうなら、割と余裕の流れ。

さあ、ここからどう動いてくれるか、楽しませてもらおう。
さっきのロゼッタぶん投げのこともあるし、向こうも流石に警戒はしている――
ここぞ、という相当な近距離からしか撃とうとはしてこないに違いない。

光と共にシュタっと現れたヒルダが、顔を真っ青にしている。
おびえ苦しむ様子ながらも、それでもなんとか、詰まりながら魔術を行使し、魔物にバクダンを構え直させる。
ヒルダと魔物との再接続を見て取ったロゼッタは、ヒルダの後衛として撤退。
ルール的に、ヒルダは一旦狙われなくなったからこその判断だろう。

しかし、ヒルダの心の傷はそう簡単に癒えるものではない。ぐさりと、楔は刺さっている。
ゼルダについては復調したが、ヒルダは…しばらく使い物にならなそうだ。

ロゼッタの叱咤激励が、ものの見事に逆効果。
いつぞやのトラウマを引き起こして、動揺、挙動不審に意気消沈。
ゼルダとロゼッタの顔色をやたら確認し、精彩を大きく欠いている。



ヒルダ「――――ハァ――――ハァ――」ガタガタガタガタ

ロゼッタ「――要塞、法衣っ」パアアァァ

どうせヒルダが狙われないならいっそのこと、と。
ロゼッタが、自身を優先させて強化する。それはそれで、ヒルダが孤立するぞ?

そして、私は…発動の瞬間に、体がふらついたのを見逃さない。
確実に、ロゼッタの魔法行使が悲鳴を上げるようになっている。

ゼルダ「それでも――
    私たちには、これしか、ないんです、よっ!!」キュイィーン!!



距離を特に詰めない?…だから、それ、それほど効かないんだが。
他にやることはないのか?縋りたくなる気持ちは分からなくもないが。



デイジー「しつこい――」バッ

目の前のヒルダは無視し…いや、せっかくだからと腹に重い拳をめり込ませて、
勢いそのままにその奥のロゼッタ目指してひた走る。
間もなくの弓矢の飛来からも距離を取れて一石二鳥…いや一石三鳥。

吹っ飛ぶヒルダ。
ルール違反にならないよう、手加減はした、つもりだ。

特段、柱とか、足場の出っ張った角とかにヒットしてお陀仏にならない程度に…
腹を拳が貫通しない程度に、そう。たかだか地面を転がり滑る、程度に。
今のヒルダなら、出血大サービスの血みどろでも多分、生き永らえているだろう。

ヒルダ「――――――――っ!!――――っ!」モガキ



ちらっとヒルダの方を見て、一瞬暗い顔をしたかに見えたロゼッタ。

だが、私の拳が届く一拍前に、口を一文字にし、意を決して小ジャンプ。
体の下の空いた空間に手のひらを向けて、光る「何か」を作り出す。
そして、私の拳が達する一瞬前に――



砂の柱によって掻き消える。



デイジー「…サンド、ロッド?」クルッ

転がった先で、ヒルダが言葉にならない呻きで仰向けに倒れて…
それでも尚、瓦礫に埋もれながらも、尚。ほんの僅かだけ首を傾けてこちらを見据え、手を伸ばしている。
…ぎりぎり、ファントム・ユガへの命令が間に合ったのか。

ロゼッタ「この足場、下から貫通できるんですよ!!上出来ですっ!
     ――そ、ぉれ!!」ブワッ!

ヒルダのなんとか正気を保ってのアシストで、ロゼッタがぐんぐんと急上昇。
緊急回避をやってのけた。即興で作ったらしきバディブロックと共に、上へ上へと舞い上がる…!

私からすると、バディブロックは光の反射・屈折具合でしか確認できない代物。
ただ、低姿勢にジッと構えたロゼッタと砂の柱との間にぽっかりと空白があるのだから、
疑いの余地はない。さしずめ、透明な高速エレベーター。

エレベーターはエレベーターでも、安全装置も加速制御もない、怒涛の片道上昇だ。
砂の柱が上限一杯になって止まってからも、ロゼッタは透明な箱に乗り、上昇を続ける。
あっという間に最上部まで……!

しかし、ロゼッタは無事でいられるのか。
あんな押上げを食らっては、足腰が破壊されてもおかしくない。



――つまり、さっきの要塞法衣…そういうことか。





ロゼッタの 「全身の」 攻撃力が  15%アップしている!
ロゼッタの 「全身の」 防御力が 300%アップしている!
ロゼッタの 「全身の」 素早さが  50%ダウンしている!▼

ハナから固定砲台の役割を持たせると割り切った作戦。
水平方向に比べれば、垂直方向の私の追撃は多少は時間が掛かる。
それを見越して、最上部から見下ろして安全に回収する算段に切り替えたか。
光加減をよく確かめておけば、気付けたかな。



ゼルダ「――行って、くださいっ!!」シュパッ



ゴウウウウウゥゥッ!!

光の弓矢が、勢いよく、撃ち出される。
下手にロゼッタに回収されると、また不意打ち至近距離で万が一、ということもあり得る。
軽いダメージで確実に消し飛ばせるのなら、多少は目を瞑って……。





デイジー「……!?」

お、おい。これは――――!

ゼルダ「受け止められるなら――受け止めて、みなさいっ!!」クルッ!



光の弓矢が、ただ走る。

――何もない、空間へと、一直線に。



デイジー「――――無茶、言うなっ!」

私と90°もずらした方向に撃った光の弓矢など、触れられるかっ!!


こいつ、かんっぜんに回収前提で光の弓矢を放つとは。
光の弓矢使いが荒いなっ!ハイラル王国の先祖たちが泣くぞ!



ゼルダ「さあロゼッタ!今度こそ、しっかり――光の弓矢を回収してしまうのです!!」

腰を落として、ガッツポーズまでしてくれる。

そちらがそこまで割り切るのならば、こちらもさっさと割り切ろう。

光の弓矢をとにかく打ち止めにしてしまうために、ゼルダの残機をさっさと0にする。
ゼルダ→ ロゼッタorヒルダ → ゼルダ、これでルールには抵触しない。

ヒルダが風前の灯なので、ヒルダ狙いが賢い…と言いたいとこだが、
ここはロゼッタを狙っておきたい。というのも、残機が減れば自動的に、ストック分の魔法が消滅するからだ。
いつまでも寝首を掻かれ得る状況は御免被りたい。







そう、思ったところで――

何かが、上から、降ってきた。



ゼルダ「ロ、ロゼッタッ!?」





――ロゼッタ?…本当だ。
――どういう訳か、上の方からドシャァと落ちてくる。

ダアァァン!!



ロゼッタ「――――ぐぅっ…………ふ、不覚っ……!」ヨロッ

ド派手に叩きつけられ、空気を吐き――よろよろと立ち上がるロゼッタ。
腕が、やたら血塗れている。さっきまでとは比べるべくもない。
せっかくの美しい蒼いドレスが台無しだ。

要塞法衣のおかげで、なんとか致命傷を免れたものの。
一気に、黄色ゲージあたりまで体力を持って行かれたらしい。



――光の弓矢は、どこかへ消えて行ったというのに。
――赤く染まるその手の甲には、何も光ってはいなかった。



ハッと青ざめ、手を袖に隠そうとするが、あまりに遅いぞ、ロゼッタ。
だいいち、その行動自体が、語るに落ちている。
それが意味するのは、唯一つ。大勢が決した、残酷な事実。



――ロゼッタの魔法行使が負荷目一杯、閉店ガラガラさようなら、ということだ。

苦労と工夫を積み重ねて、大きな犠牲を払って、魔法の回収が不発に終わった。
これは3人にとっては、痛手も痛手、ゲームセットのようなものだろう。その無念さは容易に想像できる。



ロゼッタ「……あはは、大変な、ことに、なっちゃいました、ねえ」ドクドク


作戦は完全に瓦解。光の弓矢の使用者が完全にゼルダのみとなった。
ポンポンと魔法を使い続け、FPも消費し続けるから、そういうことになる。
ならば、作戦は変えなくてよいだろう。より効果が期待できる。

――ゼルダから潰すのが最適というわけ。



両腕を広げてヤレヤレと呟いて、一瞬目を閉じて。
目を開けたなら、ゼルダに向かって猛突進。



ロゼッタ「――ヒルダ、姫っ!
     ゼルダ、姫を、守って、あげてくださいっ!!」

ヒルダ「――そ、そんなっ……!」ブルブル

これから起ころうとすることに目を背けてしまったのか、
ヒルダは却って硬直するばかり。本当に――どうしようもない。
…いや、あそこまで激しいダメージで、それをやれと言うロゼッタの方が酷いか。
まだヒルダ、起き上がることもできていないんだぞ?

勢いを大いに削がれたゼルダは、抵抗が完全に遅れた。
形だけのガードを見てから、まあ折角だから付き合ってやろうということで
正面突破は勘弁してやり、横薙ぎに蹴りつける。

一撃目。必死の形相で、身をよじったゼルダが蹴りを躱す。

右脚を振り切ってバランスを崩し隙を晒す…ようにみせかけて、
地面を手に取り上下反転。ゼルダが息を呑むのが分かる。
既に持っていた慣性力と手の捻りを最大限に活用し、カポエイラの要領で…
遠心力を味方につけた追撃の左脚がゼルダに向かって飛んでいく。

二撃目。更に容赦なくパーソナルスペースに突進してきた脚を防ぐこと叶わず、
顎を打ち砕かれ斜め後ろに吹き飛ぶゼルダ。

三撃目。伸び切った脚の勢いを糧に、ダンッと足の裏を確かに地面に叩きつけ、
再び起き上がった私は――頭蓋骨を砕かんばかりに、フルスロットルの踵落としを――



……するのは、最近の私としては「幸いにして」かなり抵抗があるので、
腹部に留めておいた。これで多少はマシな死に方をするだろう。

ヒルダ「ファ、ファイアロッドッ!」

ファントム・ユガ「GAAAAAAAAAAA!」ブンッ





全て片付いてしまってから、まるで間に合っていないヒルダの援護射撃が、
いまさら私に降ってくる。集中できておらず、碌に威力がこもっていない。

平然と炎の雨の中を歩いて抜けて、うぅんと背伸び1回。





ゼルダ「――――――――――う、あ゙」





ほどなくして、ゼルダが、瞳孔を硬直させたまま、ぴくりともしなくなる。
そろそろ、終劇が近いようだ。



ゼルダ残機・・・残り『1』

ロゼッタ「…………………………………………」



たらり、と嫌な汗。
現状、まったくもって安心できません。
…というより、絶賛不利な状態です。うわぁい。



ゼルダ姫もヒルダ姫も余裕なんてなく、私だってこの通り魔法行使の限界が近い。
私の予定外の残機消費が本当に響いていますっ…!!

えっと。作戦を元の軌道に修正するには――



最後に倒されたのが、ゼルダ姫で…。

ゼルダ姫が残機1、ヒルダ姫が実質残機1同然といえど残機2なので…。

デイジー姫にばれないように細心の注意を払うことを想定し――

ゼルダ姫に、なんとしてでもあと1発、光の弓矢を撃ってもらうには――!






ロゼッタ(……あ。勝算や成功率はともかく、むしろ、計算はしやすく、なった?)





…ならば、その解答を目指して、突き進むだけの事。ふらつく足を叱咤激励。
私たち4人を駒とした、詰将棋の始まりです!

…あれ、ショウギってなんでしょう。チェスなら知っているのですが。
キノコ城でピーチ姫やデイジー姫とすこし嗜んだ経験があります。

さすが頭脳明晰、ピーチ姫には歯が立ちませんでした。
デイジー姫は、基本私より上手なのですが…
肝心なところでポカミスをして私が勝ちを拾うというか、なんというか。
あ、でも今のデイジー姫は、きっとお強いんでしょうね。



――話がそれました。忘れましょう。

ロゼッタ「ゼルダ姫っ!私かヒルダ姫が残機を犠牲にしてでも時間を稼ぎますっ!
     ワンパターンと言われようと、もう一度――もう一度、光の弓矢をっ!
     勝つためにはなんだってやりますよ!」

ゼルダ「――――――――」ユラリ

ゼルダ姫が、光と共に起き上がります。
顔は青ざめていますし、すぐに口に手をやりましたが、まだ…
闘志は消えていません。その意気です!

デイジー「…ん?今、なんだってやる、と言ったか?
     その、なんだってやるための代償と、光の弓矢回収の期待値、
     そして…運よく賭けに勝って回収できたとして、その有効性。
     ますます魔法の幅は狭まり、体力は限界を早める。
     天秤が釣り合っているのか、今一度考えてみたらどうだ?」

ロゼッタ「考えた結果が、それなんですよーだ!」

想像の中だけでもアッカンべーをしてみて、気を紛らわせます。
もちろん実際にはやりません。デイジー姫を逆なでしたくない…というよりは、
純粋に体力の問題です。これ以上、余計な体力はびた一文払いたくありません!

私が虚勢を張る間に。ゼルダ姫が、ふらついて、ふらついて、それでも。
…光の弓矢を、撃つ態勢に入ります。
ゼルダ姫自身の精神力も、FPも、限界に近付いてきているのは確かでしょう。
無駄撃ちになんて…させません!

突然に、迷うことなく、デイジー姫が私目がけて走ります。



…私も、目がかすんできました。
あと数分も、持たないでしょう。



ぎりぎりまで引きつけて、ワープ。
行き先は、倒れている同然で、柱にもたれ掛かるところまではなんとか持ち直したヒルダ姫の横。

デイジー姫が、それ見た事かと、すぐさま反転し迫り来る。
彼女からしてみれば、私だろうとヒルダ姫だろうと、どちらかの残機を削れば
プラスになります。そんな2人が、同じ方向に居てくれる。
彼女にとって、こんなに好都合なことはありません。



デイジー「どうしたゼルダ?撃ちたかったら、いつでも撃ってこいっ!」ダダダッ

ゼルダ「……………………舐めて、くれます、ねっ!!
    後悔、することに、なるんです、からっ!!」キュイィ―ン!!

一瞬だけ後ろを振り返って挑発をぶつけるデイジー姫に怒りながらも、なんとか平静を保ち――
光り輝き始める、ゼルダ姫の懐。これで、何度目でしょうか。

ヒルダ姫を、ちらりと見ます。
怯えた表情は、残ったまま。震えて、こちらを見返します。

ロゼッタ「ヒルダ姫、手を――――」

ヒルダ「…ううん、駄目です!今の、私じゃ、魔法は、まともに――」ブンブン

大きく、情けなさそうに首を振るヒルダ姫。





ロゼッタ「――――ごめんなさい」





ヒルダ姫の手を、それでも掴んだ私は、「相互演算」を使ってヒルダ姫のサポートを――
…するのではなく。これでもかというくらい、引き寄せて。





突進してくるデイジー姫の拳目掛けて、非情にも突き出して、
狙われていた私の、身代わりにしたのでした。

時が、止まる。



ヒルダ「――――――――ど、うして――――」ポタポタ

ポタポタと散る鮮血。小刻みに震える、ヒルダ姫の唇。
あえて心を狂鬼にして、ヒルダ姫に諭します。



ロゼッタ「このくらいは、さっきの失態の罪滅ぼしでしょう?今の状況、ヒルダ姫の残機が減る方が――
    私の残機が減るよりも被害が小さいのは…火を見るよりも明らかですよ?
    さあ、尽きかけていた命で、10秒稼ぐことができました。ユガさんは私が責任をもってお助けしておきます」

固まる2人を尻目に、なけなしのFPを送ってファントム・ユガさんの消滅を防ぎましょう。
打算主義でスタコラサッサです。



デイジー「――――そこまで、するか。
     勝ちたいとはいえ――あって無いような勝算のために、ここまで豹変するとは。私のことを笑えんぞ」

くたりと頭を垂れ、命を細らせていくヒルダ姫を前に…デイジー姫が唖然としています。
拳を振りほどいてみれば、体の内側からズタズタに破壊され限界の叫びが来たのか、
血の海にそのまま沈むヒルダ姫の姿がありました。



ヒルダ残機・・・残り『1』

miiさん
新しいファイター考えていますか?

miiさん
新しいファイター考えていますか?

ゼルダ姫が、着々と、光の弓矢を、溜めて、溜めて――!

ゼルダ「ヒルダ姫の、仇、絶対に取らせて頂きますからね――」グズッ



……それ、デイジー姫に対して言ったんですよね?ね?
私に言ったりしていませんよね!?自業自得な面は確かにありますけどっ!

ヒルダ姫が、2度目の復活。
しかし、うつ伏せのまま、なにかうわ言を耳に届かせるばかりで、
起き上がる様子がありません。

所在なさげに、召喚された魔物が佇みます。






ロゼッタ「――――本当に、ごめんなさい」



物言わぬ状態になったヒルダ姫が、一瞬、ぶるっと震えた、気がしました。

…これまで築きあげてきた友情、親愛…ぶち壊しにしかねない策略。
ロゼッタの異常な思考に唖然としつつ、一方で戦局判断は確か。

――何か、こちらが策に嵌っている…なんてことが、あるのか?

…いや、何度考えても、ないだろう。
すこしでも全体としての生存時間を伸ばす、というやり方は、
私が身を以て伝え鍛えてきたことだから、間違っちゃいない。

単に、それに律儀に従い続けているだけ、なのか?



あと残っているのは、残機最後のゼルダヒルダに、魔法が底を尽きかけたロゼッタ。
おそらく、次の光の弓矢をロゼッタが回収しそこねたら、完全に「詰み」だ。



ゼルダ「光の―――――――」パアアアアアァァァァ

ゼルダの一縋りの想いがこもり、ひときわ強く輝いた気がする、光の弓矢。

さあ、撃ちたければ撃ってこい。
変にタイミングをずらしても、ヒルダがもたらした猶予時間を浪費するだけだろう?



一瞬目を瞑ってから…ゼルダが、最後の、弓矢を放つ――

デイジー「――――は」



――得体の知れない緊迫感に気付けたのは、偶然か。天空が、キラリと、光った。
――なにかが、衝撃波を纏い、凄まじい勢いで、落下してくる…!?





ロゼッタ「――――――――――――――――――――――――



     ―――Chiko Meteor《 キ ラ キ ラ 落 と し 》、最・大・出・力ぅ――――っ!!!」パアアアァァァッ!



チコ「「「「「「「「わああああああああぁぁぁぁ――――!!!!!!」」」」」」」」



ロゼッタ「私の残りのFP、ぜーんぶ、持っていきなさい、みんなっ!!」パアアアアァァ

デイジー「…!?」

可愛い顔したチコたちが、いつの間に、フィールドの上空に待機していたのか。
全部で、たしか、8人。…数え方は「人」でいいんだよな?

だが、爆炎を上げながらのその速度、尋常でない。とても、あんな速度でチコたちが動けるとは思えない。
というより、ロゼッタは「最大出力」と言ったな?…原動力は、ロゼッタ?



――――まさか、選択的な、一種の…重力制御っ!



ロゼッタ「光の弓矢ほどじゃないですけど、当たると痛いですよーっ!
     チコの頑丈さは、折り紙付きですからねーっ!!」グググググッ!

デイジー「…がっ!?」ズギャンッ!

おそらく、動転していなければなんとか避けられていたであろう先陣の1発目が、脳天に、直撃。



チュドオオオオオォォォォォ―――ン!!



その、威力。かなりの痛みをもたらした後、逸れて行って、フィールドの地面に深々と突き刺さる。
その瞬間、ズゴォッと割れる地面、半径10メートルのクレーター。
当たり判定こそごく小さいが、ヒルダのナイスハンマーに勝るの威力じゃないかっ!
これを最初からどうして使わなかった…!?


ロゼッタの 特攻が がくっと 下がった!▼


デイジー「…ん?」

ロゼッタ「どんどん、行って――っ!」ハァッ!


チュドオオオォォォ――ン!

デイジー「…………あれ?」ヒラリッ

ロゼッタの 特攻が がくっと 下がった!▼


ロゼッタ「ど、どん、どん、おねが、い……」ゼェゼェ

チュドオォ―ン!

デイジー「…………」ヒラリッ

ロゼッタの 特攻が がくっと 下がった!▼


デイジー「…………威力、下がってないか。
     いや、ぶっちゃけると技名が間違ってないか」

ロゼッタ「ままま、まっさかぁー?」アタフタ

ゴオオオオオオオオオオオオォォォォォォッ――――!



デイジー「――――っ!!!!」


――ぬかった。
――思わずツッコミを入れてしまったところに、忘れ物。
――ここまで計算していたというのなら、ロゼッタも相当な策士だ。

――――絡繰りもハッタリも、なにもない。
――――忘れたころに、今度は普通に私を狙う、素朴で素直な、一射。

――――光の弓矢、颯爽と迫り来る。



ゼルダ「――――終わり、ですっ!!」

ゼルダの最後の雄叫びが耳障り。だが……。

――――ここまで来てこの集中力、惚れ惚れする。
――――挟撃に見事に嵌って…これは、よけられ、ない。

――――だが、急所を庇えないほどではない。
――――諦めて、腕の貫通くらいは覚悟しようと割り切って、ずいっと腕を動かす。








が…幸いなことに。

私には、届かなかった。













3人の最後の希望を乗せて迫り来るその矢は、私の3メートルばかり手前で、
力の限界を迎えて――フッと、消えてしまったのだから。

ゼルダ「――――そ、そん、な」ガクッ



この世の終わり、と叫びたい感じのゼルダが、唖然として、力なく、崩れ落ちる。
俯き膝を付いて、動けない。…なるほど、これで、ゼルダもFP切れ…いや、魔力切れ、ということか。

デイジー「――――終わったな」

ゼルダ「……」ピクッ

ゼルダ「……ま、だです」グッ



…おや。



ゼルダ「――――やあああああああああああああ―――っ!!!」ダッ!



私のつぶやきに激昂したのか――途端に、完全な、やけっぱち。
満身創痍のまま一心不乱に、無謀すぎる接近戦を挑んでくる。

渾身のゼルダのパンチも、カッターも、私はぞんざいな手の振りでパシパシと。
目の前に拳を突き出して――――






ゼルダ「――――あ」





一瞬達観したかにみえたのは、気のせいか。





よくやった、と心の中では褒めながら。
ラストの一撃で、フィールドの彼方まで、殴り飛ばしてみせた。





デイジー「…悪いが、スマブラには…顔面セーフとか、ないんでな」


ゼルダ残機・・・残り『0』
ゼルダは 戦線離脱と なった!▼

ヒルダ「ひっ……さ、サンドロッドっ!サンド、ロッドっ!!
    サンドロッドっ!サンドロッドっ!!サンドロッドっ!!
    ―――――――――――サンド、ロッドォ――――!!!」ガクガクブルブル



次は、自分か。絶望の直感が、ヒルダに襲い来る。
恐怖心で出鱈目に、ヒルダがサンドロッドを指示。
あちこちに砂柱が立つが、障害にもならない出鱈目な位置に、出ては崩れることを繰り返す。



もはやロゼッタもヒルダも脅威ではないが、まだ魔法のストックがあるヒルダから先に片付けるか。
その後、ロゼッタを二連続で倒す。これで行こう。



さあ、猶予のカウントダウンを、始めよう。



ゼルダが、起き上がって…ため息付いて。いそいそと、フィールドの外に出て行く。
思う存分、最期を観戦してやるといい。



チコ「…ねえねえ、ママたち、勝てるかなあ?」

ゼルダ「もうすぐ、わかるわ。…大丈夫よ、きっと。あの2人…いえ、私たち3人なら」

――9、8、7。


ヒルダ「サンド、ロッド!」グズッ



回避にしても食らうにしても、まだまだ余裕。


―――6、5、4。


ヒルダ「サンド、ロッドッ!」グズッ!


―――3、2、1。


ヒルダ「サンド、ロッドォ――――ッ!」グズッ!!





デイジー「…ゼロ、だぁ―――っ!!」

私の、怒涛の、進撃。最早、止める物など、何もない。




ロゼッタ「――――お返し、です」ザクッ!!





デイジー「――――――――」

ヒルダ「ロゼ、ッタ?」

ヒルダの、涙声がする。



ロゼッタ「――は、はは。
     私ごときに間に入られるだなんて、デイジー姫も、抜けています、ね」ドクドク

デイジー「…今度は、自分から、身代わりに、か――徹底的な打算、貫き通しているのだな」



ぬっと、割って入られた。…そう、ロゼッタに。
…いや、私も好きでロゼッタの心臓を貫いているわけじゃ、ないんだが。
正確には、今更勢いが止められないタイミングで、自分からワープで身代わりに入られた。
これは流石に、どうしようもない。ドンピシャな防御策…なのか、な?

ロゼッタが、心臓を貫かれたまま、苦しそうにしながらも、微笑んでいる。
…へんなスイッチが入っていたりしないよな?全く。



デイジー「…なけなしと言っておきながら、最後の最後のために…FP、残しておいたのか」

ロゼッタ「は、はい。――デイジー姫を、引っ掛ける、ことができて――
     私も、満足、ですっ――ご、ほっ」ガハッ!

口の中を真っ赤にしながらも、満足気。
目を閉じて、そのまま四肢をだらんとさせる。

これで、ロゼッタもヒルダも、残機1だ。
自動的に、ヒルダ、ロゼッタの順で倒すことになる。




ロゼッタが――光に包まれ、息を、吹き返す。


ロゼッタ「…では」スクッ

…さあ、最後のあがきを、見せてもらおうじゃないか。

まずは、体に付いた汚れをパン、と払い。サササッと…私から、離れていく。

ロゼッタ「あがっ……い、いたぃ、です、ね…!!
     しばらくは体、まともに、動きません、よぉ…!しくしく…」



そして。



ゼルダ「お疲れさまです、ロゼッタ」

ロゼッタ「はい、やっぱり中々…上手く、行きませんね。デイジー姫、強すぎます。
     眩暈も吐き気も、酷い、です、し。助けて、ください、よ」

ゼルダ「そんな余裕、私にあるわけないでしょう。どれだけ光の弓矢を乱発したと」



デイジー「――――おい、ロゼッタ」

ロゼッタ「――は、い?ど、どうしましたか、デイジー、姫」ゼェゼェ



思わず、プッと笑ってしまう。完全にグロッキー状態だ。
ここまで、精根尽き果てるまで戦っていた、というのは嬉しい限りだが。

デイジー「どうしたもこうしたもないだろうが。

     お前、残機をよくカウントしてみろ。まだ1機残ってるぞ。
     とっととフィールドに戻ってこい」

ロゼッタ「――――え――――――――」



ロゼッタが目を白黒させる。

デイジー「そんな事にも気付かないとは、お間抜けだな。
     私としては、遮二無二の本気度が伺えて最高に嬉しいが。
     どんな時も冷静沈着で在れ。なあ、ロゼッタ」ニヤッ

ロゼッタ「――――あっ―――――――――――――――――
     うっかりしていました、も、申し訳、ございま、せん……」



ロゼッタが、再び向こうを向いてしまう。
まあ、ショックなのは分からなくもない。恥ずかしいよな。

デイジー「いい、構わん。待ってやるから、とっとと降りてこい――」



するとロゼッタが、首だけこちらに向けてきた。
折角復活したのに、地べたならぬ「血べた」に倒れていたせいで、
ところどころ赤くなっている背中、そして顔。

だが、その顔は――――
















ロゼッタ「うっかり、伝えそびれていました。



     ――――私の残機…確かにさっき、『0』になりましたよ?」フフッ



――――身の毛もよだつほどの、「してやったり」の顔だった。

頭が一気に冷たくなる。



残機が、尽きた?いつ?そんな馬鹿な。



…いや。今は、それは後回しにしなければおかしい。



得てして、作戦のネタ晴らしをするタイミングというのは。



ひとつ。調子に乗った、傲慢になった者が口を滑らせる場合。



そうでなければ、もうひとつ…相手に知られても最早ひっくり返ることのない状態を
己の手の内に呼び込んだ後の、勝利の余韻の場合なのだから。



だが、そうは言っても…後ろに控えているのは、生気を失った、戦力には程遠いヒルダのみで―――

後ろを、振り返り、始めた。



ロゼッタ(デイジー姫。あなたの敗因は、大きく分けて…えーっと、4つ、ですか。割とありますね。
      どれか一つでも気付けていれば、私たちの負けでした。

      ひとつは、『相互演算』がその言葉通り、『私が2人のチカラを借り受けることもできる』という
      事実を知らなかったこと。…まあ、言っていませんしね。
      ゼルダ姫に手伝ってもらって、私の処理限界をAランクにまで上げました)

     

ヒルダ「――――――――――」

出鱈目に立ち上っていた砂の柱が、視界に入ってくる。
その中に、不自然に崩れている柱が、ある。
多分、横からの衝撃で、崩されたのだろう。そう、思えた。

もうすこし、振り返っていた。



ロゼッタ(2つ目としては、私の無茶振り、思い切り。
     ゲイルアタックの時にもありましたが…直後に残機減らすこと覚悟なら、
     HPをゴッソリバッサリ削って、さらに処理限界を一段階上げられます。

     …もちろん、こんどは生命力を削らないように細心の注意を払いましたけどねっ!
     ゼルダ姫やヒルダ姫にも確認していただきました!それはもちろんっ!

     というわけで…一回こっきりですが、Sランクの魔法が使える状態にまでなっていたんですよね)



ヒルダ「――――Tri――」

同じような柱が、更に、2本。全部で、3本。
意味は分からないが、あんなことができる魔法、あっただろうか。それも、音もなく。
だが、どうしても胸騒ぎが収まらない。

更に、振り返っていた。



ロゼッタ(3つ目としては…その…あれです。
     Sランクの魔法を繰り出した後、それを最高に活かせる秘密兵器的な魔法を、
     実はヒルダ姫が使えるようになったということですね。
     ゼルダ姫が『ユガができるならファントム・ユガだってできるはず』とおっしゃっていましたが…
     今更になって考えると、説得力があるようなないような…まあ、できたのだからよしとしましょう。
     不意打ちとか初見殺しとか思っちゃいけませんよ!)



ヒルダ「―――――――――dent――」

あの魔物が、何かをぶん投げた格好をしている。
ヒルダが、それに合わせて、魔法の力を込めた手を左から右へ振り、何かを発動させようとしている。

私の目前に、何かが飛来する。



――ブーメラン?



回転を続けながら迫るそれは、速さこそあれど重量的には、別に大した脅威などではない、はず。

ただ――なぜかそいつは、私を狙う鮮やかな軌道を描きつつ。
砂の柱に隠していたであろうヘンテコな四角い物を3つ、巻き込んでいた。

共通しているのは――それぞれの四角の中に。
一風変わった青いドレスで金髪碧眼の女性の絵が、描かれている、らしい、こと――っ!?

ロゼッタ(そして、なによりも、4つ目。その秘密兵器が、来たるべき時に備えて…
     『陰でこそこそ光の弓矢を回収していく』のを、しっかり雲隠れさせてしまう程度には――)

それと、しっかり判断できた、のは。
ボンっと白煙を上げて、絵から「彼女」たちが、一斉に飛び出し、目の前に肉薄してから、で。

デイジー(…!?ヒルダ、どうして笑って――)



ロゼッタ(分身1)「――――っ!」ブワッ!

ロゼッタ(分身2)「――――っ!」ゴウッ!

ロゼッタ(分身3)「――――チェック、メイトッ!」バンッ!



ロゼッタ(―――――――ヒルダ姫の『演技』が抜群に冴えていた、ということですよ!)



ヒルダ「――――――――Arrow《三叉光戟(さんさこうげき)》――っ!!!」キラッ!!

私の行動のまえに、3人の右手が、私の腹すぐ手前に、グイッと持ってこられていて。
3人の手の甲には、どういうわけか、どれもこれも光る弓矢の紋章が浮き上がっていて。
1本の血を浴びた赤い弓。2本の白く輝く弓。たちどころに、私の胴へ、突き刺さったの、だった。

ダアァン!!



デイジー「ふ、ぐっ…!」グラッ



束になった、神々しい3本の光の矢。

放った3人のロゼッタの分身どもは、継続ダメージが祟ったか、ほどなくして消えていく。
ついでに、あのファントム・ユガまでも、役割を全うしたのか消え失せる。

…あの図体の真意は、分身体たちを影にし、取り込んでおくこと、かっ!
本体のロゼッタが回収失敗するのを見せつけつつ、1本1本しっかり回収して…!
能天気な私にも、ようやく事態が呑み込めた。



だが、そんなことは一旦忘れて。
とりあえず、無防備な懐を狙われ吹っ飛ばされ、特大ダメージを受け。
腹部から大量に出血している、この状況を、どうにかしなければ…!

…ほんっ、とうっに!キツイな、これ、はっ!
一瞬背中を付けた、ところ、からは、少しばかり、起き上がれた、がっ!
だが、まだ負けては、いない!

ユガを残す魔力すらなくなったということは、もはや魔法は飛んでこない、はず!
とっとと立ち上がって、HPを失わないうちにヒルダにトドメを――




ヒルダ「――」ダダダッ!

低体勢から、ヒルダが――突っ込んでくる?



ヒルダ「ゼルダ姫直伝――――――――」

立ち上がり切っていない私の懐に、脇目も振らず突っ込んでくる。
…こんな攻撃、私に効くはずがない。
ヒルダの基礎体力のモヤシっぷりを馬鹿にしてはいけない。



――それが、「2か月前のヒルダ」であった、なら。
――目の前に決死の覚悟で向かってきているのは、「私に苛め抜かれたヒルダ」なのだ。
――精神ズタボロになりながらも、涙の跡残しながらも、1戦士として向かってくる。





ヒルダ「――――――――――――『疾風』――――っ!!」ズバァン!
基礎体力レベル:Lv25

デイジー「―――――――っ!」グラッ

深い手負いの私からすると十分に力強くなってしまっている、切り裂き攻撃。
切り裂きついでというか、ヒルダの自愛しない全力疾走、もといタックルに…
起き上がろうとしていた私の背中が、また再び地面に叩きつけられる。



ヒルダ「ハァッ――!」

仰向けの私の体の上にダイブで乗っかって、汗だくで顔を俯かせて、私以上に満身創痍。
…今の残機としては肉体ダメージはほぼないはずだが…魔力枯渇と精神摩耗が
相当に堪えているらしい。私の攻撃を受け止めることなどできまい。風前の灯火だ。



私としても、まだ負けを認めるわけにはいかない。パンチ1発、当てればいい。
ヒルダ姫がバッと顔を上げたところで、さあ、とっとと起き上がって――











ヒルダ「一番やり込んだゲームはなんですかっ!」クワッ!

デイジー「…!?」

――それはもちろん、王道の対戦育成ゲームだろう。
――ゲーム内のプレイ時間表示ですら悉くカンストしている、
――その後のプレイングやリセットで消えて行った時間を含めれば更に…。



――いや、やりこみ度を時間だけで議論するのは早計というもの。



――アイテムコンプや低レベル縛りを引っ提げて挑むRPG系。

――全弾必中、全撃墜を目標に飛翔し続けたシューティング系。

――的確なライン取りでミリ秒を競い続けるレース系。

――1フレームの狭間に涙し、研鑽に邁進した格闘系。

――慣れぬ知恵熱を覚悟して、理論構築したパズル・シミュレーション系。

――スローライフ系も味があって長続きするし、
――クイズ系は出題問題を粗方頭に叩き込んだうえでボタンがお釈迦になるまで先読み早押しに励んだし、
――クリエイト系は不定期に閃いた時に怒涛の時間と気力を注ぎ込める。
――どんなゲームもやり込んできた、一概にいちジャンルを決めることは困難。
――ましてや、ひとつのソフトに絞り込むことなど……

ヒルダ「…あのー。それって、そんなに悩むことなんですか?よくわかりません。
    こんな奇策が効くなんて、聴いた時には半信半疑だったんですが」

デイジー「何を言ってる、お前が問いかけてk――――」



ぴしり。何かが固まった音がした。





ロゼッタ「――――――――デイジー姫」

目を見開いて、後ろを見やる。え、ちょっと、待ってほしい。







ロゼッタ「―――――――とっくに、3秒経ってます」Vサイン

デイジー「」



ゼルダ「――――――――はあぁぁぁぁ……」

~キノコ城 城下町~

ブラックピット「…………通算、4人中の2位以上が2割ってとこか…チッ。
        この俺がこの成績とは、腹立たしいことこのうえないな…
        このままで終わりたくはないぜ…」イライラ

賑やかな夜の街を、俺はブツブツ、苛立ちながら歩いている。



あのバカは、

「ハハハ、こんなもんでしょ、お互い。
そもそも、『真実の魔鏡から生まれた=初期ステを僕と対等のところまで優遇』っていう温情の奇跡がなかったら、
このスレ内でのブラピさんは2位以上なんて1割…いや『1分』切っても全くおかしくないんだよー?

ま、僕は飛翔能力で負けてる分、通常戦闘力をブラピよりちょっと高く設定されてるらしいから、
僅かながら僕のほうが勝率いいですけれどねフッフーン!」

などと、訳の分からない供述をしていたが。
…ああ、ムシャクシャする。酒でも一杯ひっかけたい気分だ。



ブラックピット「…そういえば、選手カードを提示することで安く酒が飲める店、
        割とあるみたいだな…」

所持金は決して多くないが…パンフレット片手に、少し当たってみるか。
居酒屋というよりは、洒落た店がいい。

あれこれ歩いて選んで、ようやく納得のいくバーを探り当てた。
ああ、クールな俺にふさわしいアンティーク調に整えられた内観だ。
インテリアもグラスも、中々のものじゃないか。

会釈を受けながら、カウンターに座った。さあ、お手並み拝見だ。



マスター「いらっしゃい。お客さん、当店は初めてかい?」


ブラックピット「ああ。アルコール強め…いや、明日を考えて弱めで。
        軽くほろ酔いできるくらいの、甘ったるくないカクテルを頼む。
        …店の雰囲気の割に、割とフランクな接客なんだな」

マスター「そりゃあね。この時期、たっくさん観光客が来るでしょう?
     どうやってその人たちを呼び込むかって言ったら…」

ブラックピット「…なるほど、気兼ねなく入って貰える、
        プライドを感じさせない店の方が繁盛するってわけか」

マスター「これはお厳しい。ですが、どんちゃん騒ぎで周囲に迷惑…とかでなければ、
     この店は誰でもウエルカムですよ。それに、腕に自信はありますよ」ハハハ

周りを見渡せば、テーブル席には家族連れまで割といる。
子供が、新鮮なジュースを飲んで満面の笑顔になっている。
…間違えて酒とか飲ますなよ?まあ、無用な心配か。
子供も行儀よく、大声で騒いだりしない。しつけが行き届いているな。

マスター「あ、今の時間帯、ラジオ放送を流しているんです。
     スマブラ開催期間限定の放送をやっておりまして。
     『意味は分からないが面白い』と皆さんから好評なんですよ。

     …カウンター席は音量が大きいですが、気になりませんかね?」

ブラックピット「本当にバーらしくないな。まあ、構わないぞ?この位の音量なら」

そう言えば、さっきから…心躍るようなBGMが流れていて、皆聴き入っている。
リスナーリクエストの音楽でも掛かっているのだろう。



それにしても…意味が分からないが面白い?どういうことだ?
この王国に集う者たちの思考はよくわからん。



マスターが出来上がったカクテルを持ってきた。
ほう、俺に合わせて、黒を基調とした色にしてくれたのか。
中々サービスがいいじゃないか。

ざっくりとカクテルの説明を受けて、知識はそれほどないが相槌を打って。
一口飲んで…これは、いける。ニヤニヤしているマスターには悔しいが…いい腕だ。
店選びに成功していたことに満足して、さらにもう一口――――












パルテナ「はいっ!新・光神話 パルテナの鏡より、『星賊船』をお送りしましたー!
     やっぱりいい曲ですねー!」

ピット「ですねー!」



ブラックピット「ブッフゥ――――ッ!?」

マスター「お客さん!?」



子供「うわ、マナーの欠片も無い人だなあ」ヒソヒソ

親「ホントにね。あんな人になっちゃいけませんよ?」ヒソヒソ

子供「はーい!」ヒソヒソ

周囲の注目浴びる中、マスターに謝罪して布巾を借りつつ、噴き出したカクテルを拭く。
…あのバカはともかく、何やってるんだ…!?あのバカはともかくっ!?



パルテナ「ラジオネーム『しぜんの ちからって すげー!』さん、
     リクエストありがとうございました!記念品を贈呈しておきますね!」

ブラックピット(もうひとり馬鹿がいた…!)



パルテナ「さてさて、スマブラ大会も、とっくに折り返し地点を過ぎ…
     いよいよ大詰めですね、ピットさん!
     優勝目指して止まない者、現状の順位を確固たるものにしようとする者、
     誰かを落とし込めようと画策する者…複雑なドラマが化学反応を起こしそう!」

ピット「その通りですね、パルテナさん!どういうわけか僕たち、
   街角でスカウトされたのを皮切りに固定枠までもらっちゃいましたけど!
   期間限定とはいえ、大抜擢ですよ!最後までやりきってみせましょう!」

パルテナ「さーて、それでは…!
     お待ちかね、『パルテナの何でも相談室』のコーナーでーす!
     ピットさん、初めて聴く方もいるかもしれないから、
     今一度分かりやすく説明してあげてくれませんか?」

ピット「合点承知!このコーナーは、主にこちらのパルテナさんが、ときたま私ピットが!
   いろんな人たちの疑問点や悩みに、鋭く際どく回答していくコーナーです!
   リスナーはもちろんのこと、ファイターやファイター候補が電撃来訪することもありますよ!」

パルテナ「さっそく始めて参りましょう!えっと…
     『パルテナさん、ピットさん、こんばんは!毎晩楽しく聴かせてもらってます!
     もう、お二人の天界漫才…いえ夫婦漫才がないと生きていられません!』」

ピット「わあ、ありがとうございます!…め、夫婦漫才だなんて、照れるなあ…」テレテレ

パルテナ「……でも、ここだけの話、ピットさんって…見られていないのをいいことに、
     放送中に私の胸とかをガン見してくるんですよ?酷いと思いませんか?」

ピット「濡れ衣!?」

パルテナ「それだけではありません…実は私たちの間には、権力・神格、身分的に大きな隔たりがあるのですが…
     それをいいことに、私に対して口では言えないほどの破廉恥な命令を――
     ああ、私はただ従い耐えるしかありません…ぐずっ…自由が、欲しい…!」

ピット「すっごい逆!百歩譲って起こりうるとしても真逆っ!」

パルテナ「ピットさんが素直に『青春を持て余してすいません』と謝るのなら。
     寛大な私の心で、水に流してあげても…構いませんよ?」

ピット「やだなあ、開幕早々マリオのポンプに流されたのはパルテナさんじゃないですかー」ハハハ

パルテナ「うまいっ!座布団1枚差し上げます!…要りますか?」

ピット「わーい!やったー!有難く頂きます!」

パルテナ「喜んでもらってよかったです。
     …ふう、今年のクリスマスプレゼントは安上がりで済みました」

ピット「要るかこんなもん!」ポイッ

パルテナ「ピットさん、話が逸れてますよ?軌道修正しましょうか」

ピット「誰が逸らしたんですか…あ、す、すいません。平常心、平常心っと。
   …はい、リスナーさんの手紙、続けてくださいパルテナさん」





パルテナ「…『ところで以前から思っていたんですけど。人間ミサイルが使えるピットさんって天使じゃ』
     ――おっと、検閲に引っ掛かっていた手紙を読み上げてしまいました。
     これは没ですね、失礼いたしました。次に行きましょう」

ピット「うおおぉーい!!?」





ブラックピット「」

ピット「違うんだよ…ポケモンのタマゴグループに『ひとがた』があるのと同じで
   あくまで『人間型ミサイル』ってだけなんだよ…きっと…」ブツブツ





パルテナ「落ち込んでいるピットさんは安静にしておいて、次でーす。
     『パルテナさん、遅くなりましたが、今回は出場おめでとうございます!』
     はい、ありがとうございます!

     『ところで、パルテナさんと同じく初参戦のロゼッタさんっていらっしゃいますよね?
     それに、前回から引き続き参戦のゼルダさんも!
     あと、ゼルダさんのそっくりさんも参戦されているみたいで…。

     彼女たちはいつごろ試合に出られるのでしょうか!まだ1戦もされていなくて、気になっているのです』

     …うーん。そうですね。こればっかりはなんとも言えませんねー。
     まずは閉ざされた空間から出てきてもらわないと…ゲフンゲフン。

     『それに加えて、もうひとつ。単刀直入に伺います!
     ロゼッタさんは何時頃マリオカートに戻られるのですか?
     マリオカートWiiの時の素人ぶり、失望させっぷりから、
     否定的な意見を言う人も大勢いるみたいですが、私は出てほしいです!』

     ――おおう、本当に単刀直入ですね。スマブラに直接関係ないのに」

ピット「…やっと持ち直しましたよ、パルテナさん。…答えにくい、厄介な質問ですね。
   いくらこのラジオ番組が、『ファイターたちに情報を伝えようとすると抑止力が働くフシギ仕様』とはいえ」

パルテナ「ですよねえ。まず3人…いえ4人が部屋から無事脱出できて、私たちと合流。
     タブーと大がかりな攻防戦、大乱闘。大会の残り消化に、しっかりオチまで用意して――」

ピット「うーん、どう考えても、それだけでこのスレの残りを全部使っちゃいますよねー。
   いやむしろ、このスレだけで終わらせられたら御の字なのかな…?
   >>650さんみたいに、もっと多くのファイターのことを描いて、
   マンネリ化を防いでくれ!と忠告してくれる人だっているっていうのに…。

   で、できるだけ頑張ります!収拾がつく程度に、風呂敷を拡げ過ぎない程度に!」アワワ

パルテナ「だいたい、スマブラ編が終わったら終わったらで、
     3Dワールド編もようやく中盤に入ったところですし…。
     まあ、あっちの方はステージを飛ばしていけば割と速いですけどね」

ピット「それでも、それなりに時間は食いそうですねぇ」

パルテナ「次のスレには『ルキナ救済編』が数百レス分、待っていますしねぇ…
     まあ、今言えるのはこの位ですね、次に参りましょうー」

ピット「うーん…いろいろと難しいなあ…次はどんな――――

    …………あれ?今、サラッと爆弾発言が聴こえたぞ?」

パルテナ「…むしろそちらの話ばかり構想・構成が捗ったそうです」

ピット「本編書けよコノヤロウ!いや、それも一応将来的には本編になるんだろうけどっ!?」



ブラックピット「」

パルテナ「気を取り直しましてー。
     『こんにちは!いきなりですが、無知な私に教えてください、女神様!
     魔力回路と魔術回路と魔法回路って、何が違うんですか!?
     細かい定義が知りたくて、気になり過ぎて、1日8時間しか眠れません!』

     まあまあ、それはお可哀想に」

ピット「不眠症ですね。鬱に繋がることもあるので、2週間続くようならお近くの病院へ!」

パルテナ「ああ、それで。この3つの言葉の意味の違いですが…。

     FPや魔力の通り道となっているのが『魔力回路』。
     術式を発動させるためのラインが『魔術回路』。
     これら2つを並走あるいは合流させ、魔法の形として取り出す機構全体が『魔法回路』。

     水道に喩えると、魔力回路に水を流し、魔術回路に電気やガスを流し、
     魔法回路として最終的に熱湯を取り出す……。
     おなじ『魔法が使えなくなった』という症状でも、
     どこにトラブルが発生したかで、緊急性や治療法がまるで変わってくる――」

ピット「うおぉ…な、なんだか真面目っぽいぞ…!」



パルテナ「――――っていうのはどうでしょう!」ドーン!

ピット「分かってましたよ!唯のブレ表記、統一してなかっただけですよねっ!」

パルテナ「なし崩しでやってきていましたが…今後は統一させます…」ショボン

ピット「…あ!だったら、お姫様方の『姫』の有無も表記ブレですね!リンクの台詞が気になってました!
   ゼルダのことは『ゼルダ姫』なのに、ヒルダのことは『ヒルダ』なのはおかしいと思ってたんですよ!」

パルテナ「いえ、それは仕様です」

ピット「…え?」

パルテナ「実際には打ち間違いでブレ表記は有ったりするのですが、基本的なスタンスとしては――

     ロゼッタ→お姫様方
     生粋の腰の低さから、感情が高ぶって『敢えて』呼ばないかぎり『姫』付き。

     キノピオ→ピーチ
     意志としては常に『姫』付き。選手紹介などで逆にピーチから説教されることも。

     ルフレなど→お姫様方
     新参者の礼儀として、『姫』付き。
     同様に、知り合って間もない関係の段階では『姫』付き。

     ゼルダ←→ヒルダ
     ゲームに準じて、互いに『姫』付き。(付けない場面もちょっとある)

     リンク→ゼルダ
     『幼馴染関係で既に名前呼び』の伝説の中を除き、『姫』付き。

     それ以外のケース
     『姫』は付けないことが多い。
 
    …こんな感じみたいですねー」

ピット「…あの、パルテナさん。
   リンクが、『ゼルダ姫』および『ヒルダ』って区別して呼ぶ理由が、
   ……………………ま、まだ分からないんですけど。分かりたく、ないんですけど」

パルテナ「断っておきますと、スレ主はゼルダというキャラはもちろん好きですよ?
     




     ただ、このスレにおいてはイベントにあまりにも恵まれないせいで、
     ゼルダに対するリンクの好感度がヒルダ以上に低――」

ピット「わああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――!!」



ブツッ……。



スタッフ「放送が乱れております。しばらくお待ちください」



ブラックピット「」




ブラックピット「…マス、ター。カクテル、オイシカッタ。

        …………勘定ヲ、タノム」ワナワナ



マスター「…ど、どうしましたか?急に顔色が…。
     申し訳ありません、あまりおもてなしできず。

     それにしても、いやあ、この破天荒な放送、癖になりませんか?
     意味はあんまり分からないんですが、不思議と笑顔になるんですよ。
   
     …おや?そういえば、今更で申し訳ありませんが、
     お客さんってもしかして、ブラックピットさんじゃ――」







ブラックピット「俺はあんな奴らの同類なんかじゃなあああああぁぁぁ―――い!!」ダダダダダッ!!

マスター「」

客「」

~閉ざされたフィールド~



とく、とく、とく。



4本のグラスに、桃色のアルコールが、静かに静かに注がれていく。



1本目。20mlくらい。

2本目。40mlくらい。

3本目。60mlくらい。

そして、4本目――――





「…………な、な、なななな――――」ブルブル

震える声が、聞こえてきます。

デイジー「まあ、しゃーない。一番の功労賞は間違いなくヒルダだし。
     お酒強いからしっかり堪能してもらえそうだし。…くっ、無意識に私の腕が拒絶するけど。

     …それにしても、私が飲んじゃって、いいの?
     一応、契約上は…所有権は3人に譲ったはずなんだけど」トクトク

ゼルダ「羨ましい(まあ、そうですよね。当然の帰結です)。
    …あ、デイジーもぜひご賞味ください、一人だけ除け者になど出来ません」ギリッ

ロゼッタ「ゼルダ姫、本音と逆です逆」

デイジー「――ありがとうね。そのかわり、一番少ないのでいいや。
     んー、3回に分けて飲み切るとしたら、こんなもんかな」





――――ざっと、150mlくらい。





ヒルダ「――――――――なーーーーーーーーーーーーーっ!?」

デイジー「いやいや、驚きすぎですよヒルダさん。
     みんなが良いって言ってるんだから、気が変わらないうちに頂いとこうよ。
     飲みたいと思った時が、お酒を飲むタイミングだよー?」

ヒルダ「おおおおおおお驚くに決まってるじゃないですか!?
    これだけで、ロウラル王国の年間予算、超えかねませんよね!?
    ななな、何か裏でも、あるのですかっ!?

    一生分の運を使い果たしそうなのですがっ!?
    ――――わ、私が頂いて、よろしいのですかっ!?」



ゼルダ「――――まあ、支障なしですね」フッ

デイジー「残機一つ分の運かー。大したことないじゃん」

ヒルダ「そういう意味じゃありませんっ!」

ロゼッタ「…と、ところで、私(40ml)とゼルダ姫(60ml)の差はなんですか?」

デイジー「私の気分」

ロゼッタ「酷いっ!?」

~回想~

デイジー「ふっ……………………頑張ったな、ヒルダ」スッ・・・

ヒルダ「――――あ」

デイジー「…………本当に、よく、頑張った。
     師として――いや。親友、として。嬉しい、んだと思う。

     ――あー。あまり『今の状態』だと勝手が分からない、が。
     …こんな、感じで――いいだろう、か」ナデナデ

ヒルダ「――――――――――――――――っ!――――――――っ!!」ガバッ

デイジー「おいおい、抱き着くな。今度は、嘘泣きではないと、信じたいものだが」

ヒルダ「――――ぐずっ…あたり、まえじゃ、ないです、かぁ……………っ!!
    やく、そく。おぼえてて、くれたんですね。
    うわああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――――」ポロポロ

ゼルダ「――――いい、話ですね……涙腺が、ゆるみ、ます――――」グズッ・・・







ロゼッタ「絶賛踏みつけられ中でなければ、私もそう思えたんですが――っ!?」グチャッ




デイジー「何か言ったか?」ミシィィッ!



ロゼッタ「があ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ!?…ゲホッ!?
     折れまじだ!今確実に肋骨が何本か逝ぎまじだっ!?
     普通に血も吐いでるんでずげどぉ!

     …しかも中途半端に止めないで!いっそ殺してくださいよ!」ドクドク

デイジー「知らん。好きなだけ海老反りしとけ」ダンッ!!



ロゼッタ「」ジタバタ

ロゼッタ「」ジタ・・・バタ・・・

ロゼッタ「」・・・・・・・・



ロゼッタ「り、ふ…じ…ん――」チーン

ロゼッタ「…生かさず殺さずの状態で何十分も、さっきは酷い状態でした――
    精神が病んだらどうしてくれるのですか――」




デイジー「…え?あの程度で――」

ゼルダ「ロゼッタが――病む?」

ヒルダ「そんなことが有り得るのですか?」

ロゼッタ「…………………………………それにしても、さっきは酷い状態でした――
    精神が病んだらどうしてくれるのですか――」

デイジー「拗ねて繰り返しちゃったよ」

ゼルダ「……」

ヒルダ「……」

扱いが凄く雑になっています!心外ですっ!

デイジー「あ、あは、あはは。ごめん、ごめん。なんか、ロゼッタの図太さを信じ切ってる感じ?
     心臓に毛が生えてそうっていうか」

……その心臓、拳やら弓矢やら足やら、色んなものに貫かれてるんですが…。
そういえば、以前に自分でナイフを突き刺したこともありましたっけ…。
頑張ってください、心臓さん。私、まだまだ生き永らえたいので。
全力で応援させていただきます。扱いはすこぶる悪いですが。

デイジー「じゃあ…皆の勝利を祝して――かんぱーい!」

お疲れ様です、私含めて。



皆、思い思いに、これまでを振り返りながら――飲んで、語って、飲んで、食べる。



デイジー「序盤からロゼッタの調子がどうにもぎこちなかったのは、
     初期の初期に大分無茶をしていたことの副作用だったんだね。
     そのあたりを気付いておけば、負けなかったかもしれないのに…。
     くそぅ、私もまだまだ状況判断がぬるいなあ。

    それを含めて、作戦の根幹はロゼッタが割と噛んでたっぽいね」

ロゼッタ「まあ、その通りですね。最後の騙しは万が一の場合に備えてのとっておきでした。
     一緒に過ごしている間に、デイジー姫のゲーマー魂が黙っていないと思いましてですね――」

デイジー「むぐぅ、言い返せない。だからって、あんな作戦立てるなんて…むぐぐ……」



ヒルダ「……ああ、お酒は美味しいし、無事に強くなれましたし、
    ここまでやってきた甲斐が…ありました。
    …この強さ、絶対に無駄なんかにはなりません」ホワホワ

デイジー「――――殊勝なことだね。ヒルダが笑ってくれてると、
    私としても――間違ってなかったんだって、思えるよ」シミジミ

ゼルダ「…私も、見識が暗く狭かった、と痛感しています。
    …今の私なら、リンクに呆れられることも…きっとないでしょうか。
    ハイラルでも、なにか、皆で切磋琢磨できることを考案していきたい」

デイジー「ゼルダはゼルダで、いいところは一杯あると思うよ?
     あんまり私に感化されて、舵を切り過ぎることはないさ。
     気になったところから、ちょびっとずつ変えて行ったらいいんじゃない?
     キノコ王国とハイラル王国じゃ、勝手も色々違うだろうし」

ゼルダ「ふふっ…参考にしておきます」



デイジー「それにしても、みんながここまで成長しているなんて――

     …まあ、冷静にれいせーいに振り返ってみると、
     『初見殺しのオンパレードで事故っただけなんじゃ…』とも愚痴を零したくはなるけど」

ロゼッタ「え、得てして強敵に打ち勝つ時というのはそういうものですよ」

デイジー「…その強敵が、ストーリー的に1回倒せば舞台から退く悪役なら、
     それでもいい…というか、それを狙ってしかるべきだけど。
     今後も私の特訓を受けて、勝負して、いつか勝ってやろう…って思うなら、
     お互い知ってる手の内の範囲でポイントを主張していかないと、ね?」

それは強者だからこその主張、考え方ではないでしょうか…。
なかなか、そこまでは強気な姿勢では望めません。スペックオーバーもいいところです。

ゼルダ姫が、目をぱちくり。

ゼルダ「……大会が終わっても、特訓、していただけるのですか?」

デイジー「…どうしたの、急に。ま、私もみんなも、暇な時ならね。
     スマブラ会場までご足労は願うけど。残機が無いと流石に不慮の事故が怖い」

ゼルダ「……そうですね。では、時々、お願いしましょうか。
    とりあえず――吐き気を催さなくなるくらいになるまでは」



その願いに、デイジー姫は、面倒そうな顔をしながらも、とてもうれしそう。
ひとつ、また認められた証拠でもあるのですよね、デイジー姫にとって。



デイジー「ははは、いい意気込み。でも、果たしてゼルダにできるかなー?」

ロゼッタ「大丈夫ですよ、ゼルダ姫なら!私でも出来たのですから!」

ヒルダ「…結局、ロゼッタのその精神力はどのように培われたのでしょうか…?」

ゼルダ「ああ、それは私も気になっていました。純粋な戦闘力では私の方が高いのに」

ロゼッタ「どのように、と申しましても…」



ロゼッタ「…………」ポワン ポワン

~回想~

ピーチ「崖に突き落とす!マグマにダイブしなさい!ドッスンに潰されなさーい!」ドスッ

ワリオ「頭が吹っ飛ばなかっただけマシと思えよー」

マスター オブ ギャラクシー「空中散歩しようぜ!お前、残機1な!」

ディメーン「嫌だなあ、僕は刺してませんよ?彼女が勝手にトチ狂って自身を刺したんです」

ファイナル! チャンピオンシップロード「宇宙散策しようぜ!とりあえず1107回くたばれ!」
    
スーパーベルの丘「タイムアップの笛吹くの飽きたんですけど」

パックン「マミった?マミった?」

水「3D出身者は軟弱だのう」

プンプン「手裏剣投げたところに額がちょうどあるのよ」

デイジー「死ぬ気で覚えろ。さもなくば死ね」





ロゼッタ「……………………ハッ」トオイメ

デイジー「!!?」ゾクッ

ロゼッタ「むしゃくしゃしてきました。
     もっと食べましょう。食べて元気を付けましょう」パクパク

チコ「ボクもー」

チコ「ボクもー」

チコ「食べる―!」

デイジー「しょ、食欲旺盛だねぇ。いいことだよ、うん」

ヒルダ「うわぁ…ロゼッタったらよく食べますね。私たちはまだまだ吐き気のせいで
   及び腰になっているというのに。ねえ、ゼルダ姫」チラッ



ゼルダ「………………………………」

ゼルダ(お酒がなくなってしまいました…もっと欲しいです…)

ヒルダ「…………駄目な人です」ジトー

~キノコ城 城下町~

ブラックピット「…………スゥー、ハァー。…………スゥー、ハァー。

        ……………………よし、深呼吸終わり。今度こそ、まともに酒を飲むぞ――――」

俺はまた、大会参加帰りに、あのバーにやってきた。
他の飲み処に移ることもチラッと考えたが、やはり、あの味は捨てがたい。
価格テーブル的にも、選択肢は有ってないようなものだ。

ブラックピット「前回は飲み残して逃げ去る恥を晒したからな…!
        リベンジ、してやる、からな――――!」

そう…これは、リベンジだ。
リベンジであるから、忌々しいあのラジオ放送の時間帯からずらして来店、
なんてことは一切検討しない。まるで負けを恐れているようじゃないか。
俺があのバカに屈するだと!そんなこと、あってはならない。
正々堂々――正面から打ち破ってみせる。

――ここまで仰々しく考える時点で、若干負けている気がしなくもない。
――ええい、余計なことを考えるなっ!

悠々と席について、カクテルを2、3注文して味わって、マスターと歓談して…
あくまで優雅に、クールに、その場を後にするのだ。
多少は料理も出せるらしいからな。それ味わってみるのもいいだろう。
あのマスターのことだ、格別な味わいを繰り出してくるに違いない。

ピット「ブラピさーん、一級フラグ建築士の資格に応募してみなよ」

…なんだか幻聴が聴こえた。

さあ、扉の前で最後の深呼吸をして――
カランカラン、というベルとともに、いざ、参る!



マスター「あ、ぶ、ブラックピットさん!?
     え、えっと。前回は、どうもすいませんでした」

ブラックピット「畏まるな、悪いのは勝手に自爆して逃げた俺だ。
        さっそくだが、1杯目に前回と同じ奴を頼む。これで仕切り直したい」

マスター「あ、はい!すぐお作りしますね!レシピはバッチリですよ」タタタッ

…う、うん。あまりつっつかれても気が滅入るだけの話だ。
深く聞かず、なかったことにしてくれると一番ありがたい。
さあ、同じようにカウンターに座ろう。 逃 げ ち ゃ 駄 目 だ。

ちらほら、前回に見かけた顔の奴らがいて…
こちらを指差しつつヒソヒソ話しているが。今は無視だ、無視。
今日こそは俺の完璧な飲み方を目の当たりにして、平伏すがいい。



おっと、今日は…BGMではなく、歌が流れているようだ。
やはり、前回同様に皆が聴き入っている。

…これは。いわゆる、アニソンというやつか。




抱き締めた命のかたち――

その夢に目覚めたとき――



――――ああ、この…曲は。
――――アニソンに疎い俺でも知っている、有名な歌だ。
――――アニメ業界に革命をもたらした作品の、オープニングじゃないか。
――――これは、聴き入ってしまうのも納得だ。

俺も、思わず耳を傾ける。



誰よりも光を放つ――

少年よ、神話になれ――





……いい曲だ。だが、ちょっと待て。
この声。なんだか、違和感があるというか、なんというか…
というより、どこかで聞いた…いや、つい最近耳にした声色のような…?




パルテナ「ピットはハートを貢ぎながら  ホンキ度決める――

      女神なのに憑かれたまま  私は生きるぅぅぅぅ――――――――!!」

ブラックピット「…………!?」



パルテナ「残酷な天使のブラピ  魔鏡からやがて飛び立つ――

     ネタ走る熱いハデスで  エンディングをう・ら・ぎ・る・なぁらぁ――!

     この宇宙を抱いて輝く  少年よ、(光)神話になぁれぇぇ――――――――っ!」



客「うおおおおおおおぉぉぉぉ――――!!!」

客「パルテナさん、かっけぇ――――――――――――――――!!
  ラジオパーソナリティだけじゃなくて声優や歌手まで兼ねてるなんて!」

客「むしろそっちの方が本業だったりしてな!」

客「あはは、本業は女神だろー!」

ブラックピット「」

パルテナ「ふぅ、歌い切りましたー!」

ピット「以上、ラジオネーム『カイロスマッギョ』さんのリクエストで、パルテナさんの熱唱による
   『残酷な天使のブラピ【新世紀 光神話・パルテナの鏡(概)】』でした――!
   最後の少年って私のことですよね、かっこいい歌詞だなあ!」



マスター「みなさーん、お静かに頼みますよー」

客「「「はーい、すいませんでしたー!!!」」」ペコリ





ブラックピット「」

ブラックピット(勝手に人の名前使うなとか。
        客のヤツらは前回俺を散々睨んでおいてこの騒ぎようか、とか…。
        ツッコミどころもいろいろあるが……

        まだ口に酒を含んでなくて、ほんっとうに良かったぜ…!!)ブルブル

パルテナ「ふう、ちょっと化粧直ししてきますね」タタタ



ピット「わかりました!しばし、この私に任せてくださいパルテナさん!
   ――さて、それではお待ちかね、『パルテナの何でも相談室』のコーナーです!
   パルテナさんいなくなっちゃいましたけど!

   本日は、なんと!ファイターの1人にお越しいただきました!
   今のうちに紹介しておきましょう!

   はるかぜとともにプププランドへやってきた旅の若者、
   何でも吸い込む食いしん坊、コピー&ペースト…じゃなかった、コピー&変身!
   ピンクの悪魔こと、カービィさんです!どうぞ!」

カービィ「ハーイ!」

ピット「…とまあ、紹介はしたものの。
   今のままじゃ、さすがにお話を聞くもなにも、あったもんじゃないよねー。
   パルテナさんが戻ってきたら『翻訳の奇跡』を掛けてくれるから、
   ちょっとお菓子でも食べておいてね」

カービィ「――――ハーイ!」ギュルルルル ゴックン

パルテナ「…お待たせしました!申し訳ありませんー」



カービィ「大丈夫だよ、お菓子食べて時間を潰してたから」

パルテナ「それはよかった…って、まあ!
     カービィさん、普通にしゃべれるようになっていたんですね!
     奇跡を施す手間が省けました!

     …あれ?ピットさんはどちらに?入れ違いですか?」

カービィ「お菓子を食べてたら、急に目の前からいなくなったよ」

パルテナ「不思議ですね…まあ、時間も有限ですし、このまま始めてしまいましょう。
     『パルテナの何でも相談室』のコーナーです!

     早速ですが、カービィさんの悩みってなんですか?」





カービィ「ボク、スレ内で露出が少なくない?」

パルテナ「…カービィさんって基本裸ですよね?
     変身で装備や帽子を纏うことはありますが」

カービィ「出番が少なくない?ってことだよ!任天堂の主要キャラの一角でしょ!
     スマブラにだってずっと出演してるし!」

パルテナ「それは…」

カービィ「スマブラのストーリーモードでも目立つ役回りだし、
     もっと出番があってもいいと思うんだ。なのに、デデデ大王の方が出番が多い…」

パルテナ「そうしてあげたいのは、やまやま、なんですが…………」

カービィ「…??」

パルテナ「実は…………スレ主。



     カービィシリーズは、パズルゲームの『きらきらきっず』しか
     プレイしたことがないんですよおぉぉぉ――――っ!!
     そっちは割と極めたんですけどねぇっ!」

カービィ「」

パルテナ「最近までワドルディとワドルドゥをごっちゃにしてました!」

カービィ「!?」

カービィ「……まさか、スーパーデラックスすら、やったこと、ないの?」ブルブル

パルテナ「…あ!そういえば、やってましたね!これは失礼しました。
     2019年12月からですけど……。
     あと、カービィハンターズもやってましたか」
     
カービィ「きらきらきっず以外は全部未来の話のうえに無料プレイできる物しかやってない!?」

パルテナ「そのかわりカービィハンターズは3DS版もSWITCH版もしっかりこなしましたよ!
     どんな敵が相手だろうと、画面端から的確にビームばしばし撃って、時間を止めるだけの簡単な仕事でした!」

カービィ「唯の作業だよそれ!暇人なだけだよ!?」

パルテナ「だってアクション苦手だとこれが一番強いんですもん…
     2Dマリオの動きにしか適応不可なんですもん…」

カービィ「『もん…』って言われても…嘆きたいのはこっちなんだけど」

パルテナ「…ま、まあ。そんなわけで、キャラの理解が不十分といいますか…。
     掛け声も『ハーイ』が9割だし、ちょーっと扱い難い、といいますか…そのー」

カービィ「…スレ内のラスボスを吸い込んで一瞬で終わらせようかな。
     スマブラの順位見る限り、実力は評価してもらってるっぽいし、
     少なくとも巨大キノコとの組み合わせなら可能だと思うんだ」

パルテナ「やめてください話が壊れます」ガクブル

カービィ「――――問題が解決しないことがわかったので帰りまーす」ガチャッ

パルテナ「…ま、またのお越しをー」

カービィ「…………ハーイ!」



ピット「」ベチャァ



パルテナ「…ピットさん?どうしてそんなところで寝ているのですか?」

ピット「…………涎まみれの指輪にでもなった気分だ…………」

ブラックピット「」



パルテナ「…あら?スタッフさん?どうかしましたか?……ふむふむ。
     ピットさん、今日はもう少し時間があるそうなので、
     あと一人の相談も受けてみるそうです。まだ行けますか?」

ピット「…ええ、なんとか。でも、急にそんな事決めても、来訪者の都合が付きますかね?」

パルテナ「それが…本当に気が気でない悩み事を抱えていらっしゃるそうで。
     放送は明日の予定だったのが、既にいらしているそうです」

ピット「むっ!それは、なんとしても助けて差し上げたいですね!喜んで!」

パルテナ「それでは…『パルテナのお悩み相談室』、本日2回目!
     『ファイアーエムブレムif』の主人公、カムイ(女)さんです!」




カムイ「…………お願い、します」ドヨーン




ピット「…え、なにこの重苦しい雰囲気」

カムイ「…私、運命の分岐点で選択を迫られて、必死に悩んだ挙句に…
   天から聴こえてきた選択肢…『大乱闘に参戦する』を選んだんです。

   自分に降りかかる難題を一時放り出してまで、歴戦のファイターたちと戦い、
   より強くなって舞い戻るため、に…。

   ですが、やってきてみたら、おかしいんです。
   結局、DLC組の運命として、大会に出られなかったのは…
   肩透かしを食らって残念ですが、いいんです。納得、しています。

   でも、同じFE組の方々にお会いした時、どの方も愛想笑いをして…
   まともに、心の壁を取り払った会話をしてくれないんです。
   あの英雄王マルスですら、ぎこちなく、一歩引いているんです…!
   ましてや、練習試合など言い出せる雰囲気ではありません…。

   私、一体、何をしてしまったのでしょうか…!
   知らないうちに、取り返しのつかない失礼をしてしまったのでしょうか…!」ウルウル

パルテナ「…………あー」

ピット「…………あー」

カムイ「…!?何か、ご存知なのですか!教えてください!
    この王国ならではの作法?しきたり?それともやっぱり、実力!?
    頑張って直しますからっ!どうか、お願いしますっ!
    何の成果もなしに戻るなど、恥ずかしすぎます!きょうだいたちに顔向けできません!」ペコリ

パルテナ「大丈夫ですよ、貴方は全く悪くありません」

ピット「ある意味、全く大丈夫じゃないですけどねぇ…」

カムイ「それは、どういう…」

パルテナ「落ち着いて、どうか落ち着いて聞いてください。
     スレ主は、FEシリーズは、実は覚醒までしかやったことがありません」

カムイ「……?」

パルテナ「そして、ちょっと前に、無料トライアルでFE無双をプレイしたのですが。
     無双ものは初めてだったことも災いし、13章で乱心した貴方に殺されまくりました」

ピット「拠点なんて気にせず逃げて、正気に戻るまで相手をしちゃいけないのに、
   『ちょっと能力が高いくらいで、頑張ったら倒せるんじゃね?』と考えて
   突っ込んでいったのが浅はかでしたね」

カムイ「…………そ、それでとばっちり気味に嫌われてしまったということですか!?」

パルテナ「いえ、そういうわけではないのですが…。
     というか、それならばまだ救いがあったのですが…」

ピット「実はスレ主は、スマブラforはDLCなんて利用せず、ネット対戦もせず。
    ほぼオフラインでだけ楽しんで終わりました。
    いやあ、ライトプレイ極まりないですね。買っておいて損してますね。

    参戦告知動画にも、対戦動画にも、一切触れてきませんでした」

カムイ「…………話が、見えてきません!はっきり言ってください!
    何を聞かされようとも、覚悟はできています!」

パルテナ「…わかりました。現実は非情で残酷ですよ…?
   
      色々な事柄が、奇跡的に絡み合った結果――――








     貴方が、鈴を転がすような声色で、可愛い系のキャラだなんてこと、
     2020年になって初めて知ったんですよ!
     おまけに、極端すぎて完全にキャラが固定されちゃったんですよ!」

カムイ「」

ピット「それは、決して悪いことじゃありません。
   作り声でもなければ、むしろ大多数の女性にとっては褒め言葉でしょう。

   しかし…しかしっ!このスレにとっては、致命的っ……!」

パルテナ「剣を頭上に掲げて『皆、私に付いてきなさい!』とか言いそうな、
     リーダーシップ溢れる、リンに似たキャラとして動いてもらう予定だったのに!
     もちろんスレ内では弱キャラの部類には入りますが、活発に動かせそうで、
     中盤終盤でルキナと組ませたり、ルフレと裏事情で絡ませたりできたのに!

     座禅して5秒で足首がもげてしまいそう、とか言う子を、
     今更どう扱えばよいというのですか!難易度ルナティックですよ!
     座禅素人の一般人でも確実に1分は平然としてますよ!」

カムイ「い、いえ、絆会話の間の時間経過は普段通りではないといいますか…
    …って、う、裏事情!?むしろどうしてそちら側を先に知ったのですか!?」



パルテナ「設定資料って読み漁るの面白いですよね。ネットに流されまくりですけど」

ピット「世界観以外にも、威力計算とか成長限界とか。
   買ってもいないゲームの、最高ダメージを計算して遊んだりね」

カムイ「」

カムイ「」プルプル

カムイ「もう、許しません!流石の私も…堪忍袋の緒が切れちゃいました!」ゴゴゴ

ピット「ちょ、ちょっと、カムイさん!乱心しないで!何度目!?
   こちらとしても押さえつけるなんてことはできればしたくないんです!
   ラジオ局にもすごく迷惑が掛かりますし!おまけにそれ、唯の八つ当たり!」

カムイ「そんなに乱心した記憶、ありませんよ!お覚悟をっ!」



バサッ!!!





カムイ(竜)「――――――――激流咆―っ!!」ゴオオオオッ!





パルテナ「奇跡で機材諸々を守って、と。ピット、抑えてください!

     残念ながら、カムイさん…ピットとはただでさえ実力差があるうえに――」ピカーッ

ピット「えいっ」パシッ



パルテナ「このスレ内の、特にキノコ王国内では。
     フェアリータイプのピットにドラゴン技は効きません。貴方の天敵ですね」

ピット「なんか最近効かなくなったんですよね」

カムイ「」ポンッ

ピット「すいません。ほんと、すいません。当初から相性関係をそう描写しちゃってるんで。
   竜に変身しなければ、水技っていう言い訳もまだ立ったんですけど――
   パルテナ様…じゃなかった、パルテナさん。ちょっと連れて行きますね」ガシッ

パルテナ「いえ、こちらもついつい戦闘モードに入っていました」

カムイ「いやあぁぁ――」ズルズル



カービィ(物影)「……………………」

カービィ(彼女よりはマシかぁ…)



ブラックピット「」

――――ブラックピット、2敗目。

~キノコ城 執務室~

コン、コン。



マリオ「ピーチ、ちょっといいかー?」ガチャッ



ピーチ「…………あー、マリオ?どうし…たのー?」グデー

マリオ「…机に突っ伏して、ここまで絶不調とは思わなかった。
    無理せずベッドで寝とけばいいのに…」

ピーチ「…………何もせずとも仕事は湧いてくるのよ…。
   おまけにスマブラ大会が問題抱えまくりの状況だし…しんどい…
   キノピオ達も『今こそ姫様のお役に立つ時!』って意気込んでくれてるんだけどね…」グデー

マリオ「ほう、そりゃあよかったなあ!」





ピーチ「…慣れないことやったせいで失敗が多くて、却ってチェックの手間を増やしてるけど」ガクッ

マリオ(知ってた。思いっきり知ってた。まるで成長していない)

ピーチ「はやくこのストレスから解放されたいぃ…」ウルウル

マリオ「弱気にも程があるな、雨どころか槍でも降りそうなレアっぷりだぞ。
   まあ、職業病だから今更変えられないか。口出しはしない。
   …ただ、本格的にぶっ倒れるのだけはやめてくれよ?分かってるとは思うけど」

ピーチ「…はーい」ヒラヒラ

マリオ「とりあえず、スッキリドリンクとフレッシュジュース、お待ちどう。
   あとキャシーデラックス作って貰ってきたぞ。少しは体調も良くなるだろ」サッ

ピーチ「――――頂くわ!」ガバッ







ピーチ「ごちそうさまでした。…うん、少し持ち直したわ、ありがとう!」

マリオ「お粗末様でしたっと。じゃあ、頼みがあるんだけど。
   ちょっくら、俺の手のひらに思いっきりパンチかましてみろ。
   それで元気度を確かめるぞ」スッ

ピーチ「何よ、それ…別に良いけど。怪我するんじゃないわよ――――はあぁぁっ!!」

バシイィ――ン!!



マリオ「……ふむ、まあそこそこ元気にはなってるか。
   そういうことなら、改めてお願いがあるんだが。無理言って済まないな」ヒリヒリ

ピーチ「あら、何かしら?」

マリオ「事態が事態だからな、念のため、備えに備えて…助っ人を呼びたいんだけどさ。
   …デイジーにメールで連絡とってくれないか?というか、もっと早く気付けばよかった」

ピーチ「…そんなの、とっくにやってるわよ。
   どこをほっつき歩いてるのか、電源切られたままで、一向に捕まらないけど」

マリオ「…あ、そうなんだ。一応、個人のメールだけじゃなくて、
   サラサ・ランドの王室向けにも送ったんだよな?」

ピーチ「…………あっ」

マリオ「おいおい…大臣の誰かが行き先をほのめかしてくれるかもしれないぞ?」

ピーチ「ひ、日頃は直接連絡が取れてばっかりだったから…!
    わ、わかった!すぐに連絡を取ってみるわ!」

マリオ「頼んだぞー」ガチャッ

マリオ「…ううむ、本当に気付くのが遅かったな…
   今からだと、間に合ってくれるかどうか。俺も、テンパってるのか?
   …まあ、悔やむのは後にしよう。さてと、あとは…」



トゥルルル・・・



ルイージ『あ、兄さん!とりあえず、1UPキノコは順調に回収できてるよ!
     今で大体100個くらい!』

マリオ「全然足らん。冗談抜きに、その10倍は持ってこい」

ルイージ『ええっ!?そんなに要るの!?』

マリオ「…と、言いたいとこだが。
   まあ、集めることに躍起になり過ぎて、敵さんの仕掛けを見過ごすのは
   本末転倒だからな。回収数に関わらず、3日後には帰還してくれ」

ルイージ『了解!その時にはちゃーんとネタ晴らししてよね!
     兄さんのことだから、理由はあるんだろうけど、はは』

マリオ「悪いな、助かるよ」

プツッ。


マリオ「……ピーチもルイージも、すり替わってる可能性は低いな。たぶん。
   『外見ゼルダ』が一向に参戦したがらなかったところを考えると、おそらく大した戦闘力は持ってない。
   …というか、『ロゼッタ自身の強さ』までが限界なんだろうな。

   確実に戦闘力がロゼッタより高い奴なら安全、か。
   …逆に言うと、市民に化けてる可能性は残ってるのかぁ、はぁ。

   偽者になれる条件は何だ?不明確過ぎて動きにくいったらありゃしない。
   空間魔法についてもっと勉強しておいたらよかったな。

   人や物の流れに大きな変化は…なさそうか?
   ファイター以外の盗難被害は…特に、出てないな。本当かな?
   非常事態宣言のマニュアルってどうなってるんだっけ…?

   …やばいな、ピーチにおんぶにだっこ状態で、キノピオ達を笑ってられないぞ?
   ピーチが戦線離脱したタイミングで仕掛けられたら…ゾッとするな。

   もうちょいピーチの体力がマシな瞬間に、流石に事情を伝えておくか…?
   そんでもって、偽ロゼッタをとっとと成敗した方がいいのかな…」ウーン

八百屋「お、リンクじゃねえか!最近は怒涛の勢いで追い上げてるな!
    応援してるぜ、頑張んな!ほれ、リンゴ持ってけ」ポイッ

リンク「サンキュー、有難く頂いとくよ。優勝なら任せとけ!

   …しっかし、前々から思ってたんだが、俺ってハイラル王国出身だぞ?
   キノコ王国民なら何の勝負であれ、マリオに勝ってほしいもんじゃないのか?」

主婦「馬鹿ねー、頑張って戦うファイターを応援するのに、出身なんて関係ないわよ。
  うちの家は全員、リンクさんの大ファンなのよ?」

子供「そーなの!勇者は絶対負けないの!マリオなんてドカーンなの!
  吹き飛ばして、壁に叩きつけちゃうんだから!」

リンク「いやいや、流石に言いすぎだぞー。どこのジーノだよ」ポンッ

子供「ふみゅう」

リンク「まあ、応援してくれるのは嬉しいよ。大会終了まで、熱い声援をよろしくな!
   裏切らない活躍、させてもらうから!」

子供「…!!うん!」パアアア

リンク「(ガブッ)…うん、今日もオッチャンのとこのリンゴは最高だね!
   甘い蜜!こぼれる果汁!これがたったの1個3コイン!」チャリン

八百屋「おお、毎度……………って、そのリンゴはお前にやったんだよ!」

リンク「またまたー、実はちゃっかり払ってもらう予定調和だったんだろー?」

子供「…八百屋さん、悪い人?」

リンク「そうだぞ、このオッチャンは悪い人なんだ。
   並べられた果物や野菜はみずみずしいし、奥さんは美人だし、従業員の給料も高いんだ。
   ……ほら、何か裏がありそうだろ?30分以内に誰かが命を失いそうな不自然さだ」

子供「ほ、本当だ…妙だね…!」ゴクリ

八百屋「ちっがーう!リンクもふざけるのはやめろぉ!」

リンク「おまけに、ここだけの話…少し前に、このオッチャンは風邪で休んでたんだ。
   その間は、奥さんがメインで店を開いてたんだけど。

   なんと、ミカン1個買いにきただけで2時間捕まって惚気話に付き合わされた。
   このオッチャンは極悪人と言えるのではなかろうか」

子供「…極悪人だね――!」キラキラ

八百屋「いい加減にしろー!」カアァ

リンク「はっはっは、またなー!」

子供「リンクー、大会中だからって、最近付き合い悪いぞー。今日こそ遊ぼうぜ!
  かくれんぼでも、鬼ごっこでもいいからさ!俺、すぐに仲間集めるよ!」

リンク「悪い、忙しいんでまた今度なー。大会終わったら嫌っちゅうほど遊んでやるから!
   不貞腐れて、いたずらしすぎるなよー!」ヒラヒラ



老婦「おやおや、リンクじゃないか。この前は、荷物持ってもらって、本当に助かったよ。
  ほら、そのときのお駄賃だよ」

リンク「何十キロもある風呂敷包みを背負うなんて無茶、もうしないでくれよ。
   よろけてた所を目にしたときは肝が冷えたぜ…。よく街はずれまで行こうと思ったな。
   ま、俺にとっちゃ50トンくらいまでなら持ちっぱなしでも平気だから。お金だなんてとんでもない!」

老婦「ふふ、リンクなら…そう言うと思ってさ、これをあげようとおもってねえ」



リンク「――――紙袋のなかには?



    ――――ぱんぱかぱーん! 赤 い マ フ ラ ー !



    …………って、完成度たかっ!これは流石に対価がデカすぎじゃないか!?
    おまけにこれ、すっげー手間掛かってるだろ!?駄目だろ、こんなに簡単に手放しちゃ!」

老婦「元々趣味で作り貯めしておいて、眠ってたのを持ってきただけさね。
  どうか貰っておいておくれ、せっかくあげたいと思ったんだから。

  それとも、いつでも渡せるようにずーっと手提げの中に入れていた…
  老い先短い、しがない老人の気持ちを無駄にするのかい?」

リンク「…それは卑怯っすよ、ううう…。俺にはクリティカルヒットだよ…。
   老い先短いとか冗談でも言わないでくれよ…。  

   …あー、婆ちゃん、編み物大好きだからなー。家の中、完成品で埋もれてたよね。
   そういうことなら、有難く貰っておきまーす。これから寒くなるから嬉しいや。
   返却要請は受け付けられないので、ご了承くださーい。どうも、それじゃ!」

老婦「傷んで来たら、また作ってあげるからねー」ヒラヒラ

リンク「傷む前提かい!…いやまあ、巻きながら剣を振ったりしたら
   速攻で傷みそうではあるけれど。むしろ何かの拍子にバッサリ行きそうだけど。

   できる限り大事に使わせて頂きまーす!」ビシッ



リンク「……………………あったかいな」ポカポカ

パン屋「り、リンクさん!」

リンク「んー?」クルリ

パン屋「あの!その!…………し、新作のパンが焼けたんです!
    おひとつ、持って行ってください!焼き立てです!」

リンク「おー、美味しそうだな!でもそれ、売り物…………」

パン屋「持って行ってください!」ズイッ

リンク「だからそれ、売り物…………」

パン屋「持って行ってください!!」ズイズイッ

リンク「俺だけ贔屓してもらうってのも…………」

パン屋「持って行ってください!!!」ズイズイズイッ

リンク「え、これって『貰う』って言わないとループするタイプの選択肢?」

パン屋「う、ううう……………」

リンク「わ、わかったわかった、貰う貰う」ヒョイ

パン屋「…………!」パアアアア

パン屋「か、感想お待ちしてますね!――――キャーッ!」タタタッ

リンク「お、おう…?」

男「リンク…ここを通るたびに看板娘といちゃつきやがって。リア充め、爆発しろ」

男「そうだそうだ!俺たちのオアシスにズカズカ踏み込んでくるんじゃねぇ。
 姫様方とキャッキャウフフしとけよ!」

リンク「って、またお前らかよ、懲りないなあ。何がしたいんだよ。
   お姫様と相思相愛?…どこの勇者の話をしているんだお前は。

   あの子は店主なんだから看板娘ってのはおかしいって前から言ってるだろ?
   ついでに、爆弾ならしょっちゅう爆発させてるとも言ってるぞ!

   それに、いちゃついてるとか何を言ってるのかわからないけど、
   パンをこうやって貰ったのは初めてだぞ」

男「なん……だと……」

男「…………一歩前進してしまった、だと…!
 俺たちがどれだけ勇気を振り絞ってあの子に話しかけているのか、知りもしないで…!
 ええい、その性根、今日という今日こそ叩き斬ってやる」ビシッ

男「頑張ってください兄貴!」





リンク「…木剣突き付けて俺に喧嘩を売る方が百万倍勇気が要ると思うんだけどなぁ」

男「ぐだぐだ抜かすな!さあ、そこの広場で勝負だ!まさか逃げはしないよな!」

リンク「うわー、こわーい。逃げよーっと。お前の勝ちでいーよー」テクテク

男「えっ」

男「えっ」

リンク「これでお前の初勝利じゃん、よかったなー。
   百連敗くらい?したけど、終わりよければすべてよしだなー」

男「そそそ、そりゃないぜリンク!いやリンクさん!
 そのうち回転切り教えてくれるって約束だったじゃねーか!」

リンク「そういうことはしっかり覚えてるのな。
   でも、ちょっとマジで忙しくてですね。構ってられないんですよ…。また今度な!悪い!」タタタッ

男「……」ショボーン

男「……イテッ!?…な、なんだあ?…小冊子?」コツン



――初心者でもわかる回転切りの操作法――

リンク「簡単なマニュアル作っといた!ちょっとそれ読んで独学でやってみてくれ!
   ただしケガだけはするなよー!剣を握る時は、周囲の人や物にぶつからないことを確認だ!」タタタッ

男「うおおお、流石だぜ!ありがとな!!……でも、なんで『操作法』?」





リンク「はっはっは、あんなに喜んでもらえるなんて、単純だなー。











    さってと。一切合財、俺たちで守ってみせますか!
    そのために、俺たちは今、ここにいるんだから――――」

ウェンディ「へー、このアクセサリ、中々イカスじゃない。…どうかしら?」

ロイ「うーん、僕もこういった装飾品には疎いけど…よく似合ってると思うよ。
  あ、でも効果の方はまかせて。しっかり情報は集めてるから。

  えーっと、『セーフティーリング』…
  『防御・魔防・素早さの微強化と属性ダメージ無効化、状態異常・即死効果を受けない』だね。
  すごいよ!さすがウェンディ、お目が高い!いい選択なんじゃないかな!」

ウェンディ「いい事言ってくれるじゃないの!」

イギー「そうかぁ?アクセサリが可哀想じゃない?――イデッ!?」

ウェンディ「何かほざいた?」

イギー「なんでもありません」プシュー

ルドウィッグ「ふむ、それにしても、どの店も良いアイテムが揃っているな。
       いい加減、城の皆に土産として何を買ってやるか決めないといかんな…。
       できるだけ動きを束縛されずに、手頃な価格で良効果のものを…」

ロイ「だったら、ルドウィッグ。このリストが役立ったら嬉しいな。
  僕なりに、キノコ王国の装備品を、同系統の戦闘効果でグループ分けしてみたんだ」バサッ

ルドウィッグ「…うおぉ!?こいつは分かりやすいな!
       性能比較に、稀少性ランキングに、費用対効果!
      販売店舗の詳細や値崩れ状況まで載っているではないか!
      よ、よく調べ上げたな…!」ペラッ ペラッ

ロイ「特に在庫状況と価格変動は気にするべきかな。
  大会期間も間もなく終了するから、売り抜けたい各店舗の思惑が絡み合って
  大きく価格変動が起きるはずだよ。目的のものを安く買い叩くチャンスだ。

  ただ、目がくらんで法外な価格で外れ品や劣化品を買わされる可能性もあるから、
  情報網を駆使しつつ…必要な物だけを必要な数だけ買う計画を事前に立てた方がいい」

レミー「最近のロイってマジで戦略面で冴えてるなー!見習いたいよ。
   
   ところで、ロイはどの装備に興味を惹かれた?
   オレはバトルのたびに6回までダメージを無効化してくれる
   ガードシェルDXが超欲しいんだけど…2,400,000コインか。
   一瞬2,400コインに見えちゃったけど、気のせいか。たっかいなあ、やっぱり」

ロイ「そんな異常性能なら激安だと思うけれどね…そうだね、僕が気になってるのは…
  1日1万歩歩くだけでとんでもない威力を発揮するようになる『テクテクブーツ』かな。

  …いやほんと、なんだよこれ…。どういう原理?たったの1万歩で?えええ…。
  僕の知り得る神器たちより踏みつけの威力が出るみたいなんだけど…
  世界は広いなあ…………キノコ王国の技術?は凄いなあ…」フゥ



モートン「…………?ジンギ?何ソレ?」

ラリー「尊いものさ、きっと」

クッパJr.「ねえパパ、もう面倒だから、店の商品全部買い取って、後で分配決めようよ。
     時間がいくらあっても足りないよ」

クッパ「それでは駄目だぞ、Jr.よ。やりくりはとても大事なのだ。
   
   それはもちろん、ワガハイのお金があればできないことではない。
   だがそれだと、使われず仕舞いのアイテムが大量に出る。
   そんな浪費ばかりではクッパ軍もじきに立ち行かなくなるのだ」

クッパJr.「この程度のお金で大げさじゃない?それにお店の人は商品が完売すれば大喜びでしょ?」

クッパ「塵も積もればなんとやら、なのだ。それに、我が帝国の懐が痛むだけではないぞ?

   品質の良し悪しを気にせず物が売れていくと、粗悪な商品が淘汰されなくなる。
   職人のモチベーションが下がって良質な物が生まれにくくなるし、
   販売者は性能と価格との関連性を読み解けなくなって仕入れの質が悪くなる。
   つまり、良質な物に出会える機会自体が減る。

   その結果、業界自体の縮小を招くのだ。回り回って、将来的に全員が損をするのだ。
   何百年先かわからんがワガハイの跡を継ぐのなら、こういったことは少しずつでも理解していかなければならん」

クッパJr.「ふーん、そんなもんなんだ。…店主のおじさん、失礼なこと言ってゴメンな」

店主「あはは、大丈夫ですよ。
   しっかし、まあ。クッパ大魔王たちに何食わぬ顔で戦闘用アクセサリを勧めるとか、
   平和な時代になったものですねー。改めて思いますよ」

クッパ「何食わぬ顔て」

店主「それにしても、クッパさんとこの技術班なら、店売りに負けない装備品とか、
   らくらく作れそうなんですけど。気のせいですか?」

クッパ「…作れないことはないが、割とマッドな技術者集団だからな…。
   効果と引き換えに精神を侵食されるとか、副作用ありきの闇の装備が多いのだ」

店主「なにそれ怖いです」

クッパ「それに、実力を底上げしすぎる装備品を買い与えたところで、碌な事にならん。
   自分のチカラを過信して努力を怠って、しまいには弱っちい兵士を生み出すだけだ。
   そんな稀少な装備品は製作費ばかり掛かって、全員に配るのもままならんしな。

   ちょこっと底上げして、『あと少し強ければこんなことができるんだ』と知って
   ますます修業に邁進できる、くらいでなければいけないのである」

店主「ごもっともですね。今後も、末永くお付き合いしていきたいものであります」

クッパ「…うむ!実にキノコ王国の民は呑気で楽観的で――愉快な性格をしている!
   ワガハイにも、こんなに門戸を開放しているのだからな!」

店主「はははははははは」



ピュウウウウウ――――

店主「でも無理やり通ろうとして破壊した入口の扉は弁償してくださいね。
  思いっきり風が入ってきて寒いですし」

クッパ「間もなく修復作業係のトゲノコたちが到着しますハイ」

~キノコ城 執務室~

マリオ「……………………え?なんだって、ピーチ?」

ピーチ「難聴主人公か。だから、サラサ・ランドから返信があったんだってば。

   『どうやらデイジー様はキノコ王国に向かわれた模様です。
   大会の間居座って、観戦三昧のことでしょう。
   我々を出し抜いてほくそ笑む様子が、ありありと浮かび上がりました。

   ピーチ様は、あの方に絆されて匿われているのでしょうか?
   あの方の為にもなりませんので、ここは心を鬼にして…
   むしろ、はやくこちらまで突き返してください。政務が山積みです。
   それだけが私どもの切なる願いです』

   っていう恨みがましい返信がね。大臣も相当まいってるわね…。

   これ、どういうことかしら。もしかして、隠れて観戦してる?
   ちっとも気付かなかったわ…!」

マリオ「…………」

マリオ「……………………」

マリオ「…………………………………………」

マリオ「………………………………………………………………………………っ!?」ハッ

マリオ「…………」ワナワナ

ピーチ「…………どうしたの?」



マリオ「…な、なあ、ピーチ。これまで、グースカ寝ていた、とかを除いて…
   デイジーに電話が繋がらなかったことって、ほぼないんだよ、な?」

ピーチ「ないわよ?というより、電源が切られていた事自体が、記憶にないわ。
   それがどうし――」





マリオ「ちょおっと用事を思い出したぁ――――っ!!じゃあなーっ!!」ダダダダダダッ!!

ピーチ「」

ピーチ「去っていった……」

~閉ざされたフィールド~





――――どうして、こんなことに、なってしまったんだろう。





皆が、半狂乱になって、暴れている。

目の前の惨劇に、思わず目を覆いたくなります。






あんなに、あんなにも平和な時間が過ぎていたのに。

それもこれも、ぜんぶ、私のせい。
争いを振りまくジンクスでも、持ち合わせているのでしょうか。



「…………わたし、が」












ロゼッタ「あははははははは!」フラフラ

デイジー「はっはっはっは!」フラフラ

ゼルダ「あなたたち、笑いすぎだゴラァ――!」ヨロヨロ



ヒルダ「私が『平等に残りのお酒を飲みましょう』とか言ったばっかりに――っ!?」ガクブル

確かに私は、お酒に強いと自覚していましたが。
ここまで差が付くとは、思いもよりませんでした。案外、度数が高いのでしょうか…?
そこまで悪酔いしたことがないまま今日まで生きてきたので、よくわかりません。



ヒルダ「え?え?え?何ですか、これ?

   お酒をデイジーから頂いた段階で、残り900mlくらい。

   前回に300mlくらい消費して、残り600mlくらい。

   あと2回と言わず、飲みつくしてしまおうって提案して、1人あたり150ml。

   私が美味にほんわかしている間に、何で此処まで本格的に酔うんです!?
   特にデイジーっ!これまで少量ずつ飲んできたから露わにならなかっただけで、
   貴方も割とお酒弱いんですかっ!?」

これは、勿体ない飲ませ方をさせてしまったかもしれません。盛大に恨まれそうです。
…いえ、案外楽しそうだから無問題なのでしょうか。

やっぱり、ここまでの酷い酔い方をしたことがないので、3人の気持ちを想像しきれません。

ロゼッタ「あははははは!なんだかとっても楽しいです!世界が回って見えます!
    世界の中心に私がいるのですね!」グルグル

デイジー「まったくぅ…相変わらず馬鹿だな、ロゼッタはー。
     それにしても、ロゼッタ。勝手に実分身で2人に増えないでよー!
     どっちが本物だよ、こらー!」ケラケラ

ゼルダ「デイジー、完全に酔っているではないですかー!なっさけない!
    貴方には3人目が見えないのですかー?やれやれぇー」クスクス

デイジー「その言葉、のし付けてお返しするよー!なーにが3人目だ!
     4人目が見えてない人に説教されたくありませーん!」

ゼルダ「あらー?3人目が見えていなくて4人目が見えているということは、
    それは3人目でしょう?子供でも分かる理屈ですよぉ?」

デイジー「え、3人目が見えていないから、3人目ぇってこと?
     あれ?あれ?3人目って、なに?哲学?」

ヒルダ「」

ロゼッタ「お二人とも、ダメダメですねー!
     デイジー姫には4人目が見えていて、
     ゼルダ姫には3人目が見えているのでしょう?
    
     つまり、ここには7人いるということですよっ!カンペキな理論ですっ!」

デイジー「うぎゃあ!これは迂闊だったぁ!ロゼッタって天才っ!?」バシバシ

ロゼッタ「ふふふ、それほどでも……痛いですよー。背中を叩かないでください。
     全く、子供なんですからー」

デイジー「ロゼッタは、えらいっ!」バシバシ

ロゼッタ「ふふふ、ごほっごほっ―――うぷっ」

ヒルダ「きゃー!きゃぁーーーーっ!?吐かないで、吐かないでくださいっ!
   心臓貫かれて吐かない人が、お酒くらいで吐かないでくださいっ!!」

デイジーを引っぺがして、ロゼッタの背中を懸命にさすります。
顔を青くしながらも…どうにか汚いことにならずに済みました。私、えらい。

ちょっと、長らく介抱してくれていたロゼッタの気持ちが分かった気がします。
…こんな形で分かりたくはありませんでしたが。

はあ……。一人だけ素面だと、負担が全部回ってきて大変です。

デイジー「おー?さっきから見てれば、ヒルダが酔ってない!もっと飲め飲め!」

ヒルダ「一応言っておきますと、このお酒の強さなら…
   仮に私一人で瓶まるごと、1000mL全量を飲んでいたとしても、
   そこまで酔わない自信がありますよ?」

ゼルダ「自慢かっ!」ビシッ!

ヒルダ「いえ、あの、そんなことを言いたいのではなくてですね」

デイジー「そんなヒルダちゃんの弱点が知りたいなっ」

…弱点なら山のようにあると思いますが。特に戦闘力方面。

デイジー「なにをそんな悟った顔をしてるかなー?
     …そうだ!ロゼッタみたいに黒歴史を持ってたりしない?」

ヒルダ「…黒歴史?」

デイジー「そっ!酒の肴になりそうな、面白いやつ!
     自作ライトノベルでニマニマした経験があるとか!魔法少女ポーズを世間にばら撒かれたとか!」

ロゼッタ「」グサッ

デイジー「男装癖があるとか!自分に酔って悪役にわざと攫わせたとか!」

ゼルダ「」ザクッ

ヒルダ「酒の肴って…これほどの果実酒に対して、失礼極まりなくないですか?

   …そうですね、ユガの口車に乗せられてリンクと敵対したことが
   最大の黒歴史と言えば黒歴史ですけれど…はあ……思い出すだけでため息が」

デイジー「…………」フッ



デイジー「まったくもってつまらないっ!」ガオーッ!

ヒルダ「!?」



デイジー「なにさなにさ、いい子ぶっちゃって!
    誰しも、黒歴史の一つや二つ、笑えるのがあるはずだよ!」

…私にとってはつまらなくはないんですけど……。
笑って済む黒歴史くらい、真の黒歴史が帳消しになるのなら幾らでも抱えますよ。

ヒルダ「だいたい、それを言うならデイジーの黒歴史…
    ああ、それは『裏の顔』でお腹いっぱいですか。

    では、たとえばピーチ姫の黒歴史とか、すぐに思い浮かぶのですか?
    教えて頂きたいものですが」

デイジー「マリオに助けられた初期のころは、誰にも敬語でおしとやかに猫を被ってた」

ヒルダ「ちょっと意外ですが、それも大して面白くはないですよね。
   そう簡単に、面白い黒歴史なんて探しても見当たらないもので――――」









デイジー「ああ、そういえば。酔った席で超偶然に耳にしたけど。
     敵の要塞を全裸徘徊プレイしたことがあるとか聞いたなあ」

ロゼッタ「」

ゼルダ「」

ヒルダ「」

…え?
…いや、いや。…………ええええっ!?

ロゼッタ「そそそそそそそそ、そんなこと有り得るわけがないでしょうっ!?
    あのピーチ姫が、ですよっ!?そんな破廉恥なっ!?
    酔った勢いで、ピーチ姫を貶めようとしても、そうはいきませんよっ!!
    いくらなんでも、怒りますよっ!!」

デイジー「…でも、妙に具体的だったんだよなあ。
     『足音を立てないようにそーっと通路を掻い潜って、
     発見されずに攻略のカギをマリオに伝えることができたわ。
     無事に更衣室に戻ってくることができて本当によかった。
     脱いだドレスも取られてなくて助かったわー』って。

     ――――あ、私がここでばらしたことは、4人だけのヒミツねー。私まだ死にたくない」

ヒルダ「」

ゼルダ「」

ロゼッタ「」

ロゼッタ「…これは夢これは夢これは夢これは夢」ブツブツ

ロゼッタ「これはぁ、夢ぇ――」フラァ

ロゼッタ「」バタリ

――――ピーチ姫の印象を、凄まじく負の方向に見直さなければならないですね。
――――残念です。とても。

…あ。ゼルダ姫が、ロゼッタのグラスを勝手に掻っ攫って、
ちょっと残っていたお酒を呷りました。あーあー、ロゼッタ怒りますよ…?

ゼルダ「――忘れましょう!」キリッ

ヒルダ「そう簡単には忘れられない気がするのですがっ!」

デイジー「いやいや、忘れてねー!じゃないと私の首が飛んじゃいそうだしー!」

ゼルダ「…はい!私はたった今忘れましたぁー!!」

デイジー「ということはー?あとは、ヒルダが忘れれば万事解決だぁねー!」ユサユサッ!

ヒルダ「にゃにゃにゃにゃにゃ」グラグラグラグラ

完全な酔っ払いに、乱雑に肩を掴まれて体を揺すられます――!
ゼルダ姫まで加わって、ぐらぐらぐらぐらぐらぐらぐらぐらぐらぐらぐらぐら~!

さ、すが、に。気持ち悪く、なって、きまし、た――

いっそのこと、気絶してしまった方が、楽でしょうか――

それがいいです、そうしましょう――

ゼルダ「あぁ、ヒルダ姫ったらこんなに汗をかいて…!」ケラケラ

デイジー「相当暑がってるみたいだからドレスぜーんぶ脱がせ――」ズイッ



ヒルダ「ハンマアアアアァァァァ――――ッ!!!!!」フルスイングッ!!



ゼルダ「」バタリ

デイジー「」バタリ

ヒルダ「はぁっ!はぁっ!なんですか、もうっ!!油断なりませんよ全くっ!…ねえ、ファントム・ユガ!
    
    ………………………あれ?ユガ?」クルリ



ヒルダは もえさかるハンマーを にぎりしめながら ふりかえったが
とくに だれも いなかった▼

ハンマー「そろそろ消えるでー」シュン・・・

ヒルダ「……………………………えっ、何、今の」チラッ

ヒルダ「…ああ、夢か幻覚ですか。わたし、なんだかんだ酔ってたんですね…
    …………おやすみなさい…………」ズルズル・・・

ロゼッタ「――――っつぅ」

酷い頭痛を感じながら、のろのろと起き上がる。



う、うわぁ。周りは酷い惨状です。

デイジー姫とゼルダ姫が折り重なるかのように倒れ込んでいて。
ヒルダ姫はヒルダ姫で、壁に寄りかかって、ずり落ちそうな態勢で寝ています。

それ、でも、チコたちは平常運転。
私が起きたのを見て取って、すぐさまコップに水を汲んできてくれました。
ありがとう、チコ。助かったわ!

こくこくと、ゆっくりと…でも一気に、飲み干します。



チコ「…………」フヨフヨ

チコ「あ、お酒残ってる」ペロッ

チコ「………………………………まずぅい」

チコ「まだ地面の方がおいしいねー」

がんっ! がんっ! がんっ!



…それでも。頭がっ!頭が、ガンガンしますっ!!!
昨日は飲み過ぎてしまいました!全然お酒に強くないのにっ!
突拍子もないことを、散々言った気がしてなりません!あわわわ…!!



がんっ! がんっ! がんっ!



耳鳴りが、途轍もない!全身に響いているような、この五月蠅さ!敵いません!
無意味にも頭を押さえて、ヨロヨロ、フラフラ…!

ロゼッタ「う、ぐう…響きます、ねえ……!!」

チコ「ママも気付いた?絶対、何か鳴ってるよねえ!」

チコ「一体何の音だろ…?」

ロゼッタ「そう、貴方たちも気付いたのね、この頭痛の――――」

…………え?
そんな、馬鹿な事、有り得るわけがないじゃないですか。

がんっ! がんっ! がんっ!



チコ「なんだか、空間がほんのちょっとだけ振動してるっていうか…
   誰かが、何かに殴り掛かってるっていうか…!」









ロゼッタ「………………………………ああああああああっ!!?」





意識、一気に、フルスロットル。
待ちに待った、福音。





――――外部からの、干渉ですっ!!!

ロゼッタ「みんなっ!今のママは魔法の制御が鈍ってるから、
     どうか助けてほしいの!お願いするわ!」ダダダダダッ!!

チコ「うん!」

チコ「そういうことだったんだね!」

チコ「きたきたきたー!!」

チコ「待ってましたぁ!」

チコ「外に出られるー!?」

チコ「やったあああああ!!」

チコ「絶対に脱出してやろうねっ!!」

チコ「いっくよーー!!」

チコ全員と、一目散に…あの、忌々しい結界のもとへっ!!
魔法陣をサササッと描いて、手のひらを扉に向けてっ!



ロゼッタ「――――解析、開始――――っ!!」パアアアアアアア

チコ「「「「「「「「わああああああああああああああっ!!!!!」」」」」」」」パアアアアアアア

光り輝く私とチコたちとで、敵のセキュリティロックに華々しく突撃です!!

がんっ!! がんっ!! がんっ!!



外で、何かが扉に、激しく当てられているのでしょう。

以前やったときは、幾重にもモザイク掛かって、まるで読み解けなかった空間情報が。
衝撃の瞬間だけ、一気に濁流の如く、私の頭に流れ込んできます。
今の私にとっては処理は中々きついですが、泣きごとなど言っていられません!

ふたたび空間情報の流れがストップする前に。自分のFPを繊細に流し込んで。
「こちら」と「あちら」との、空間の正しい繋がりを…細い糸で橋渡し。
もともとその領域に蠢いていた、「誤った」空間情報に、ほんのちょっと風穴が空きました。
衝撃のたび、地道に同じことを繰り返し…少しずつ、風穴を拡げます。
要らなくなった、異常値を示す空間情報は、どんどん破棄してしまいます!

最初は、うっすらぼやけて。やがて、おぼろげに浮かび上がって。
どんどん、どんどん……向こう側が、くっきり、鮮明になっていきますっ!!



ぱりんっ!

ロゼッタ「……!!」グッ!

結界の一部が、ちりりと削れました。結界が、崩壊を始めたのです。
ほどなく、結晶全体が、光の粒子となって薄く散り散りに拡散し始めました!

こうなれば、しめたもの!

ギュィインと、ピントが合った空間情報は、もう答えを丸写しできるような段階。
ますます怒涛の如く修正・校正されていきます!
あとは流れ作業!止まることを知りません!!



ロゼッタ「ラスト、スパートォ――――!!!」パアアアアアアアア

チコ「「「「「「「「おおおおおおおおおお――――――――っ!!」」」」」」」」パアアアアア



パリイイイイイイィィィィ――――ン!!!



とうとう、私たちを3か月近く苦しめてきた結界が。
ニセモノたちを、好き放題させてきた結界が。役割を果たせなくなり――
正常な扉を、私の目の前にもたらすことと、なりました――!!





ロゼッタ「や、やった――――」サッ

…さて、ここで問題です。

扉の向こう側では、おそらくこちらの反応を期待して、衝撃を与え続けてくれていた。
そして、結界が消えたことで、自由を取り戻した扉。
そこに、扉が無事に解放され、大喜びかつ有頂天になって、咄嗟に駆け寄った私。

一体どうなるでしょーうか?





マリオ「YAHOOOO――――!!」

リンク「ヤアアアァァ――――!!」

クッパ「ふんっ!!」





扉「」ビタアアアァァァァ――ン!!

ロゼッタ「」ベチイイイイィィッ!

チコ「「「「「「「「ぎゃーーーーーー!!?」」」」」」」」

3強「「「あ」」」

ロゼッタ「…………」ガクガクブルブル



ロゼッタ「…………」ガクガクブルブル



ロゼッタ「…………」ガクガクブルブル



デイジー姫のパワーを見せつけられ、もう怖いものなし…と思っていた私を殴りたい。
復活した感じでは、扉ごと、フィールドの果てまで吹き飛ばされたはずなのに、
扉にビンタされてからの記憶がありません。

痛みは覚えていないのに、体が震えています。
開始コンマ何秒かで、体が「得体の知れないナニカ」に変わり果てていたみたいです。
あまりにも速すぎて、チコたちにグロテスクな所を見せなかったのが不幸中の幸い…!
な、なる、ほどー。3強のパワーを一度に受けると、私程度はこうなるん、です、ね…!



ロゼッタ「落ち着いて、私――。落ち着いて、私――。
    残機はある、いくらでも、ある――――――――」ガクガクブルブル

マリオ「本当に…本当に、済まなかった!その、無理は絶対にするなっ!
   素直に横になってろ!今すぐ精神安定剤でも処方してやるから――」アセリ

ロゼッタ「………………………………………………………………
    …………………………………………………………………
    ……よ、よし。なんとか、耐え抜きましたよ、マリオ。
    ……………………もう、大丈夫です。収まってきました」ガク・・・ブル・・・

マリオ「…なんだって!?」アングリ

リンク「…有り得ねぇぞ、そのレベルで!?」ビクッ

クッパ「何時からそんなにタフになったのだ!?」アゼン



ロゼッタ「……………………」スッ・・・

ロゼッタ「まあ…………いろいろと、あったのですよ」ニコッ

チコ「あったのですよー」フヨフヨ

チコ「ですよー」フヨフヨ

チコ「よー」フヨフヨ

マリオ「」

リンク「」

クッパ「」

マリオ「ま、まあそれはおいとこう、なっ!そ、それで!ゼルダとヒルダは、いるんだよなっ!?
    全員生きてて、無事を担保できて、初めて俺たちは…反撃できるんだ!」

ロゼッタ「もちろんです!早速案内しますねっ!!」タタタッ!



ロゼッタ「みなさんっ!ううっ…!マリオ達が、とうとう駆けつけてくれましたよ!もう大丈夫ですっ!!」バンッ!



ゼルダ「お、おさけー!追加のおさけはまだですかー!…どのコップも、空っぽ…」フラフラ

デイジー「ええい、よくばりめー!アル中めー!とっくに空になったよ!
    そんなに飲みたいなら、瓶を逆さに掲げて一時間でも二時間でも待ってろー!
    日が変わったのにいつまで酔っぱらっとるか、お前さんはー!アハハ!」ケラケラ

ゼルダ「中々…滴が落ちてきませんねー」フラッ

ヒルダ「…う、え、リンク?……みな…さん?」ピシリ



マリオ「」

クッパ「」

リンク「」

ロゼッタ(あ、早まったかもしれない)

リンク「と、とりあえず、ヒルダは風呂にでも入りたかったんだな!

   ロゼッタにつられてノックもナシに入ったのが悪かった!マジでごめん!
   事態が落ち着いたら、慰謝料払って土下座もさせてもらうから!

   でも一旦、服を脱ごうとするのはやめようか、うん!お互いのために!
   下着がチラ見えするくらいのタイミングでまだ助かったわ!
   もうちょい遅かったらCERO CとかDになるとこだった!



   あと、ゼルダ姫は…もうちょっと恥じらいをお持ちになったらいかがでしょうか…」



リンクの 好感度が 5下がった!▼



ゼルダ「……いやあああああああああああぁぁぁぁ!!?」バッ!

ヒルダ「……きゃあああああああああああああぁぁ――――!!?」バッ

デイジー「…あー、マリオたちだー!まったくぜんぜん気付かなかったなー!」

マリオ「嘘つけ」

ロゼッタ「えっ、デイジー姫、酔ってますよね?」

マリオ「デイジー姫の悪酔いは『悪乗りする酔い』って意味だからなー。
    案外、意識ははっきりとしてたりするぞ。
    あんな派手な音までさせたし、俺たちの声にもちょっと前から気付いてたろ」

デイジー「てへぺろー」

ロゼッタ「なら協力してくださいよ!?」



マリオ「…次にお前は『それだと面白くないじゃんー』と言う」

デイジー「それだと面白くないじゃんー…ハッ!?」

ひと悶着ありながらも、とりあえず身を整えて、改めて彼らと向き合います。

ゼルダ「……」ズーン

ヒルダ「……」シクシク

デイジー「お勤めご苦労様っした!貴方たちも、私たちも!」ビシッ!

ロゼッタ「あ、あはは。でも、本当に…ありがとう、ございます。
     私たちの生存を――信じてくれていて」

リンク「…まー、生存を信じるか、偽者に騙されてるかの二択って感じだけどな。

   それにしても…本当はもっと早く助けられたのに。
   ちっくしょー!結果的には俺の直感で正しかったってことじゃん、マリオ!
   まあ結果的には、だから文句はこれ以上言わないけどっ!」

マリオ「す、すまん。まさか、4人目がデイジーだとは夢にも…。
    ずっと敵の人員でカウントしてたんだが、まさか音信不通ってとこから
    デイジーの居場所が決まるとは思わなかった」

ロゼッタ「デイジー姫の存在まで気付かれていたのですね!すっごく話が早いです!
    …私たちも、なんとなくではありますが、状況は分かります!
    今、私たちに化けた偽者がどこかに居る…そうですよね!?」

クッパ「ああ!その通りなのだ!やっぱりロゼッタの能力なのだな!
    …正確には、自分を被害者側に仕立て上げるため、偽ロゼッタが偽ゼルダたちを葬って見せたのだが…。
    おかげで、ワガハイたちを除けばまだ騙されたままなのだ。

    それに、本当に偽者が1人だけになったのか、単に収納しているだけなのかは分からんな。
    というより、偽者が何人いるかすら…。偽者が増える条件とかは、どうなのだ!?」

ロゼッタ「その件なら、大丈夫です!分身体に、新たな分身を作る能力はありません!
     だから、増えることはないんです!その1人ないし3人と、暗躍する敵を倒せばハッピーエンドですよっ!

     そして、その暗躍する敵、とは――」





全員「――――タブー」





…よかった!この認識はドンピシャだったようです。思わず握り拳を作ります。
これで間違っていたりしたら、目も当てられませんでした。

マリオ「……本当に、驚いたな。そこまでよく情報を集められたよなあ」

ロゼッタ「ほとんどデイジー姫のおかげですけどね!運が味方しています!」

デイジー「えっへん」

リンク「改めて、ちゃんと自己紹介させてください。俺はリンク、ハイラルの勇者です。
   ゼルダ姫とヒルダを助けてくれてありがとうございます」

ロゼッタ「ほうき星の主、ロゼッタと申します。よろしくお願い致します。
    こちらこそ、お二方には感謝してもし切れません。
    あ、砕けた話し方で大丈夫ですよ?」

リンク「あ、やっぱり?さっすがマリオファミリー、話が分かる。
   じゃあさ、話が分かるついでに、ひとつ頼まれてくれないか?
   ちなみに、ヒルダも。もちろんゼルダ姫もお願いします」



ロゼッタ「…?」

ゼルダ「頼み…」

ヒルダ「…とは?」



リンク「大前提なんだけど、ロゼッタに聞きたい。
   ロゼッタの言う所の結界が破られた以上、もうこの空間が…
   本来の世界と隔離されることはないとみていいんだよな?」

神妙な面持ちで、そう彼は問いかけてきました。

ロゼッタ「はい、それはもうないと思います。一連の解呪工程で、空間情報をかなりの部分、インプットできました。
    同程度の結界を張り直されたところで、格段に速く解呪できるでしょう。

    仮に私の分身が今この場に現れて、より強い結界を張り直そうとしたところで…
    時間が掛かる上に、貴方たちの誰か、あるいはデイジー姫に瞬殺されますから」

マリオ「…そこで、ゼルダじゃなくてデイジーの名前が先に挙がるのか?
    ……………………ま、まさか…!」



デイジー「…ま、そういうことだね」フッ



マリオ「…にゃるほど、合点がいった。おめでとう、と言っておこう」

デイジー「…………ありがとう、と返しておくよ」プイッ

ゼルダ「照れてますね」

ヒルダ「ふふっ」

クッパ「…………うむ」

リンク「…………?」

マリオは、なんだか温かい目で我々を一瞥します。
デイジー姫の言葉を借りるなら…まさしく。まあ、そういうことなのです。

あ、そうでしたそうでした。

ロゼッタ「結局、私たちへの頼みって…なんですか?」

リンク「えーーっと……」



ぽりぽりと、頬を掻いたあと。





リンク「…あと5日…いや、あと3日だけ、このフィールドに留まっておいてくれない?
   このとーり、頼む!」





そう言って、手を合わせて見せたのです。



――――ええええええええっ!?

ゼルダ「ど、どうしてですかっ!?」

ヒルダ「どうして…!」

せっかく、ようやく脱出できると思っていたのに。不満が噴出します。
ゼルダ姫は、悲しみに暮れてリンクに突っかかろうとします。

――あ。

ロゼッタ「…………もしかして、炙り出しの準備、ですか?」

それなら…納得。



リンク「…………おお、ロゼッタ、ご明察!すげぇ!俺なんかちっともわからなかったのに。

   無事と分かったらこっちのターン…って言っただろ?
   今のまま3人に戻って来られても、事態が釈然としないんだよ。
   3人のこと…特にロゼッタのことをよく知らない人たちにとっては。
   最悪、全員が『本物はどこだ、悪いのはどっちだ』で疑心暗鬼になっちまう。
   敵は敵で、慎重に行動されちゃうしな。

   周囲から、偽者をしっかり悪と認識させたうえで、颯爽と登場してもらうからさ。
   今エサをばら撒けば、どんなに幼稚でも…確実に偽者は食いつくみたいだぜ?
   いや、正確には…もう食いついているんだ」



彼の顔は…わるーい顔で。なんだかとっても、活き活きとしていました。

~選手控室~



ガヤガヤ……。



クッパ「ほれほれ、とっとと貴重品はワガハイの『大魔王の金庫』に放り込んでしまうのだ!」



最初は疑り深かった選手共だったが、リンクがかの有名な剣と盾をアッサリと預け、無事に守り切った実績がある。
今となっては、疑う余地もなく――戦場から戻ってきた者が、大切な武器や防具を預け入れていく。
信用してもらえたようでなによりなのだ。



ロゼッタ「……」ジーッ

クッパ「さあ、並べ並べー。…お、ロゼッタ。なんだったら、お前のその魔法の杖も、
   厳重管理のもとワガハイが保管してやるのだ、光栄に思うがよい」

ロゼッタ「あ、ご親切にありがとうございます。でも、お気遣いなく。
     私の場合、杖がないと咄嗟の行動もままなりませんし…。
     それに、変な力で奪われたりしないよう、魔法付与も万全ですから」

クッパ「む?そうか?ならば別によいのだが」

リンク「おーいクッパ、俺のマスターソードとハイリアの盾…
   今度は3日ばかし、預けたままにしておいてくれよー。ラストスパート前に最後の息抜きがしたいんだ。
   バトルから離れて、町のみんなと遊んでくるからさ」ヒョイ

クッパ「…はあ?リンク、まだポイントで負けていながら余裕を見せるとは…いい度胸だ。
   大会終了まで、のこり6日しかないのだぞ?その半分を無駄に過ごすのか?」

リンク「いいだろー?マリオやクッパに比べて、俺のバトルはハイペースなんだ。
   ルキナやルフレの特訓もあるし、ちょっと疲れ気味でさ。

   それに、町のみんなを…いい加減、相手してやらないとうるさいんだ。
   大切な知り合いばかりだからさー」

マリオ「やれやれ…じゃあ、せっかくだし俺とクッパも休んでやろうか?
    俺たち3人、他の選手の追随はもはや許していない状況だし…。
    最後まで延々と参加してたんじゃ観客もマンネリだろ。
    ここは平等にいこうじゃないか平等に。その方が優勝の価値も上がるってもんだ」
   
クッパ「勝手に決めるとはふてぶてしい…ったく、ワガママな奴らなのだ。
   この貸しは高くつくぞ、覚えておくのだ」ハァ

リンク「マジでか!そいつはいいや!
   サンキュー、マリオ!ありがとう、クッちゃん!」

クッパ「誰がクッちゃんだ!…あらよっと、確かに仕舞ってやったぞ!」



しばらく動かさないということで、金庫の奥底に…
マスターソードと、ハイリアの盾を収納。これで、よし。

クッパ「はい、次の奴!…はい、次っ!
   チンタラせず、とっととスムーズに持ってくるのだー!
   ワガハイも頭を切り替えて、とっとと羽を伸ばしたいのだ!」



持ち寄ってくるアイテムを、片っ端から仕舞い込んでいく。
流石に量が多く、10分そこらは掛かってしまうな。



ロゼッタ「ああ…あの剣と盾、取り出すには面倒なことになりましたよ?
    そのようなことをして、大丈夫なのですか?折角優勝を狙える位置に付けているのに…」

リンク「だからこその、マリオとクッパの提案だろ?
   …あ、そうだ。これ幸いと、ルフレとルキナの特訓時間、ちょちょいと伸ばすか。
   そのくらいのスタミナは付いてきたみたいだし」

ロゼッタ「…それって、息抜きするって趣旨からすると本末転倒ではありませんか?」

リンク「ダイジョーブダイジョーブ、そこまで緊迫感のある戦闘じゃないし。
    マスターソードもハイリアの盾も一切不要だし~?」ヒラヒラ

ロゼッタ「はあ…そ、そんなものですか。
     やはり3強という存在はどこまでも規格外なのですね」

リンク「お褒めに預かり光栄です、ははは」

クッパ「…よし、ロック完了なのだ。
   そういえば、リンクの特訓風景、間近で見たことはなかったな。
   面白そうなのだ、少し後で覗いてやるとしよう」



ロゼッタをちらりと伺うと、ニコニコと笑っているようで…
何か、考え込んでいるような様子。



…どうだろうか。





マリオ「俺も俺も。…でも、パトロールも忘れるなよー」

クッパ「任せるのだー」ドシン ドシン

リンク「おー!」スタスタ





ロゼッタ「…………」

パルテナ「…おや、ロゼッタ?どうしたのですか?もしかして、暇していましたか?暇を弄んでいましたか?
     んもう、そんなに暇なら、大会に参加すればいいでしょうに」クスクス

ロゼッタ「あ、いえ、ちょっと考え事を」

パルテナ「あ!暇だというのなら、ちょうどよかったです!私に付き合ってもらえませんか?
     そろそろ帰還に向けて、お土産屋さんを見て回りたかったのですが…
     一人で回るのは心もとなかったのです。さあさあ!」グイグイ

ロゼッタ「わ、わかりました。それでは…御供させていただきますね」

パルテナ「よし!スカウト成功です!なし崩し的にうちの軍に入りませんか!好待遇を保証させて頂きますよ!
     衣食住と私を崇め奉る権利、それにお代わり2回…いえ5回まででどうでしょう!」

ロゼッタ「うちの軍!?何の話ですか一体!?」

パルテナ「聞くも涙語るも涙…話せば長くなりますが…
     うちの軍は戦力の大部分をピットが担っていたのにですね、
     勝手にブラピが誕生して、おまけに自然軍に取り入ってしまったばっかりに、
     戦力バランスが崩れに崩れてですね……正直私は不公平だと言いたくて言いたくて……

     私とピット以外のまともな…汎用キャラでない味方を、早く誕生させてくださいよ任天堂さん!」

ロゼッタ「いきなり何を言っているのですか!?」

パルテナ「正直、自然王の気まぐれで私たちは生き永らえているようなものでして、
     女神としてやるせないんですよ!分かりますかこの気持ち!!」

ロゼッタ「あいにく全く分かりません!」

~夜~



シイィィィイン――――



穏やかに流れる風の音、そして…どこかで梟の鳴く声のみが、ほんの僅かに聞こえてくる。

人気はなく、照明は一切付けられず――ただただ、「ソレ」が佇むのみ。

そこへ、招かれざる客が、ひとり。



「…………」シュンッ!!

「……………………」



(……………………さて)スィー

(…………しばらく、あのアイテムは眠ったままになるはずですし)



ロゼッタ(お仕事、始めちゃいますか♪)ニヤリ

ロゼッタ(監視カメラなんて、意味はないですよ。いくら懸命に、金庫を映し続けていたところで。
     死角から一気に金庫の中へ転移すればいいだけですし、
     金庫の中に監視する類のものがないことは確認済ですし。
     この程度の次元破り、私に掛かれば――――)



シュンッ!!

ロゼッタ(…楽勝ですね、魔法で周囲を照らして、と。
     …うん、なにかトラップが感知作動する様子もない、と。
     隠密のためローブを羽織っているので、カメラ程度はそもそも怖くないですが。

     前に転移失敗したように偽装してみせましたが…
     この程度の空間制御も、パルテナは突破できないのですか?案外、大したことないんですね。

     おっと、無駄口は叩いていられません。とっとと、やることをやって…ずらかりましょう。
     烏合の衆の他のアイテムたちは、逆に残しておいた方がばれなくてよさそうですね)



マスターソード「――」パアアアアア

ハイリアの盾「――」キラキラ

ロゼッタ「それでは、早速――――これが、伝説の装備、ですか。
    ふふ、全てが手遅れになった3日後の大混乱が、楽しみで仕方ないですね…!!
    せいぜい、仲間割れを思う存分してください――」ゾクゾク

~元、閉ざされたフィールド~

私の巧妙な?…偽装によって、禍々しい結界に再び包まれた扉。
もっとも、偽者たちの目を欺くためのダミーなので、閉じ込める能力は一切ありません。
鍵が付いたままの錠前があるだけのような状態です。気にしないでおきましょう。
そんなことより、最後の仕上げが大事、大事。


ヒルダ「それでは、参ります――」スッ・・・

デイジー「うん!バッチ来ーい!」サッ

ヒルダ「はあああああっ――――――――――――――――――――

     ――――――――――――――――ビルダーハンマァ―――ッ!!」サッ

バキバキバキィっと、連続した連結音とともに!
片手を掲げたヒルダ姫が…その手に、燃え盛るハンマーを具現化させました!!
ファントム・ユガのハンマーに比べれば小さいものですが、なかなかの迫力です!
炎が揺らめき、その存在感を確かに示しています!

ヒルダ「えーーい!!」ブンッ!!

ドゴォッ!!

デイジー「ぐわっ!!…ナイスインパクトッ!
     表の私だと、構えてないと大ダメージを食らいそうだねっ!」

激しい打撃とともに、ズズズッ!とデイジー姫が後ずさり。体を大きく持って行かれました。
プスプスと、皮膚が焦げている気配まであります。

ゼルダ「ふむ、私のマジカルカッター同様、威力について…
    基礎体力レベルだけでなく、魔法レベルについても参照しているようですね。
    これは面白くなってきました」

デイジー「アイテムありルールでの『ハンマー』みたいなものと思ったけど…
    行動が制限されないし炎の属性ダメージもあるっぽいし、
    更には敵の手に渡らないハンマーでしょ!?
    FPを消費する以外の点においてはむしろ上位互換っぽい!凄いよ!」

ヒルダ「ま、まあ、攻撃範囲が狭いうえに予備動作が長めなのがネックですが。
    そこそこ敏捷性のある人には決まらないですよね…」

デイジー「そこはあれだ、向かってくる敵に不意打ちで具現化させてぶちかますとか」

ヒルダ「あ、それはよさそうですね!
    …それにしても。夢じゃなかったんですね、この新魔法」

ロゼッタ「ビルダーハンマーとは…洒落ていますね。
    『ヒルダ』と『ビルダー』を掛けているのですよね!」

ヒルダ「…………なんだか恥ずかしくなってきました。名前、変えましょうか」

デイジー「それは駄目だよ!メーカー的に!」

ヒルダ「は、はいっ!?」ビクッ

…妙に、デイジー姫が力説しています。何か裏事情でもあるのでしょうか。
ヒルダ姫が、目を点にしています。

ロゼッタ「…私も、何か肉弾戦用の魔法を覚えた方がいいのでしょうか」

ゼルダ「…別に、無理に覚えなくてもよいのでは?
    ロゼッタの場合特に、魔法を繰り出した方がよほど高火力でしょうに」

デイジー「まあ、物理面でも最低限の火力があると戦略の幅はグンと広がるだろうけど。
     …よーし、それじゃあヒルダ!あと3日の間に、その新技…カンペキにしてみせようね!」



デイジー姫は、「やっぱりこの4人で最終決戦に殴り込みしたいじゃない?」ということで。
自由の身になってもなお、私たちと一緒にフィールドに残ってくれています。…ただただ感謝を。



デイジー「いーい?万全の状態で颯爽と繰り出して、偽者たちを叩きのめすんだよ!
    そこで私は腕を組んでフッと笑ってこう言うんだ、『3人は私が育てた』と!」

ゼルダ「なんですかその茶番は」

デイジー「言ってみればこれは、トリプルバトルっ!
    登場の段階から横並びになって、ポーズを決めてババーンと目立って、
    その後は息を合わせて一斉攻撃するんだ!」

ヒルダ「う、ええ?恥ずかしいですよ、そんな戦隊ものアニメじゃありませんし!
   下手をすれば洗脳でもされたのかと白い目で見られますよ!」



…う、うん。感謝、を?

ゼルダ「ロウラルにもそんなアニメが放送されているんですね…驚きです」

ヒルダ「単純な勧善懲悪ものは、むしろ苦難の道を歩むロウラルでこそ年齢問わず人気があるんですよ…」

ゼルダ「そ、そうですか…」

デイジー「今の3人は、何よりも『偽者じゃない』ことをアピールする必要があるんだよ?
    ちょっとネジが飛んでるな、くらいのインパクトを出すことで
    『流石にこれが偽者ってのは有り得ないだろ』って思わせるのが重要さ!」

ヒルダ「そんなことで無駄に引かれたくありません!?
    ロゼッタも、そんな茶番は無意味…いえ逆効果だと思いますよね!」



ロゼッタ「両腕を拡げて、両肩にチコを乗せてふわりと登場してみましょうか」ワクワク

チコ「ロゼッタ&チィコォー!!」ビシッ

チコ「華麗にけんさーん!…ってことだねー!!」シャキーン!



ヒルダ「」

ゼルダ「駄目ですこの人、早くなんとかしないと…」

着地と同時に、杖をビシッと掲げてみればいい感じでしょうか。
使い魔を使役した魔法少女っぽくて楽しそうです……………………。
あ、いえいえ!変な妄想に憑りつかれていました!

~キノコ城 城下町~

カランカラン…。



ブラックピット「…………」

マスター「…あ」

ブラックピット「…………何も、言うな」

マスター「あ、はい。…え、ええと。
     カウンター席はお止めになった方がよろしいのでは――」

ブラック「…いいからとっとと、カクテルを作ってくれ…。
    レシピは、もう分かってるよな…?」

マスター「…………承知致しました」サッ



客「……あの人も懲りないなあ」ヒソヒソ

客「時間帯ずらせばいいのに…」ヒソヒソ

ブラックピット「聞こえてるぞお前ら…!」ゴゴゴ

客「」ビクッ

トゥルルルル……!



ブラックピット「…………ん?電話か?チッ、人が緊張してるってのに。
        誰から…って、ナチュレか。…もしもし?どうした?何か用か?」ピッ

ナチュレ『おー、ようやく繋がったか!わらわを待たせるでない!
     ちょっとお前に、参考までに聞きたいことがあってのう!
     わらわ直々に連絡を取ってやったことに感謝するがよいのじゃ!』

ブラックピット「…手短に話せのじゃロリ、今は気が立ってるんだ」

ナチュレ『誰がのじゃロリかっ!?
     相変わらずぶっきらぼうな態度しかせん奴め。まあよいわ。






     
     今、パックンフラワーに関する論文を纏めておるのだが…
     ブラックパックンはパックンフラワーの一種だという解説は…
     世間の、人間どもの一般認識に合致しておるかのう?』

ブラックピット「………………………………は?」

ナチュレ『ブラックパックンはパックンフラワーの一種であるとする情報が
    Wikipedia等、信頼性の低い所にポツポツと載っているには載っているのだが、
    何度考えても、どうにもしっくりこなくてのう。

    これが『パックン』の一種である、というのなら、まあわかるのじゃ。
    『口をパカッと開けてマリオを飲み込まんとする敵の総称』といったニュアンスになるからのう。

    じゃが、『パックンフラワー』とまで言ってしまうと、
    ファイア攻撃に弱いこと、物をぶつけることで倒せること、
    なにより植物であることなどの要素が必要になってくるじゃろう?

    ブラックパックンは、POWブロックやハイヒールドロップでしか倒せん。
    ダメージ通過はできず、壁や地面との間にマリオが挟まれれば圧死する。
    マリオ3ではPスイッチでコイン化までする、要するにブロック的、障害物的扱いじゃ。
    おまけにとある情報筋によれば、砲台顔負けの重量を誇るそうじゃ…!
    要するに、植物かどうかも疑わしい鉄の塊…!

    これをパックンフラワーの一種に含めるのは、ちと違和感があってのう。
    派生として紹介するのにとどめておいた方がいいのか、迷っておるのじゃ。
    ほれ、ブラック繋がりで、率直な意見を述べてみい――』

ブラックピット「どうでもいいわそんなもんっ!!!」プツッ

マスター「…ブラックピットさん、お静かにお願いします」

ブラックピット「――っ、すまない」

どうして俺の周りの奴は、ことごとく――俺の邪魔ばかりしやがるんだ…!
余計な恥をかきまくっているじゃないか…許さんぞ…!

パルテナ「スマブラ大会も、ほんとのほんとにラストスパート!優勝の可能性を残すファイターは、なんと…!
    マリオさん、クッパさん、そしてリンクさん!以上の3名となっております!」

ピット「ある意味、なんの面白みもへったくれもない途中結果ですね」

ブラックピット(始まってしまったか――――)ブルッ

パルテナ「ピ、ピットさん、そういうことを言ってはいけませんよ。
     なんでも、示し合わせて御三方とも休息を取られるそうで、最後の3日間が本当に待ち遠しくなって参りました!」

ピット「ま、まあ強いて言うならば…最後に残った微妙なポイント差を…
   リンクさんがどうやってひっくり返すかが見ものですね」

パルテナ「そうでしょうそうでしょう!さーて、それでは…!いつものごとく、『パルテナの何でも相談室』のコーナーでーす!
     本日は、なんとっ!次回大会のファイター候補にノミネートされている有望株の戦士にお越しいただきました!

     幼稚園児のころから戦闘訓練に明け暮れていた強者!
     魔導師の卵、アルル・ナジャさんです!どうぞっ!!!」ババッ!


アルル「……………………」

パルテナ「まさか、スレ内でぷよぷよが登場したと思ったら
    キャラクター自身が飛び入り参加するなんて、意外でしたね!ある意味贔屓なんでしょうか?」



アルル「………………………………帰っていい?」ハァ

パルテナ「!?」

アルル「ぶっちゃけ、次回参戦ノミネートとか、有り得ないから。
    ボク自身、次回スマブラに参戦できるとは全く思ってないし。
    大会名物とかいう激辛カレーっていうのを食べて、お土産でも買って、早く帰りたいよ」

パルテナ「こ、これは意外な展開にっ!?」

ピット「ちょちょちょ、ちょっと待ってください!なんですその放送事故!
   参戦希望だから、わざわざ来訪希望されたんでしょう!?
   それがどうして、そんなに消極的というか否定的な態度を取るんですか!?」

アルル「……いや……その……魔王やら変態やら友達たちに勝手にアポイント取られただけだし…
   全く来る気はなかったんだけど、体裁として、礼儀として、一応来ただけというか…
   それはかんっぜんにこちら側の不手際だから、謝るよ、本当にゴメン」ペコリ

パルテナ「」

ピット「」




「アルルが参戦してくれれば、きっと私も色替えキャラとして参戦できるよ!頑張って!」

アルル(ごめんアミティ、魔導戦闘の経験はボクしか持ってないから、
    万が一ボクが参戦できたとしてもアミティは無理だと思う…)



「参戦した暁には、科学的見地から的確な行動をとり、敵を翻弄して見せます!」

アルル(りんご…公式から思いっきり『ぷよを消すオワニモのチカラのみ与えられた』って言われてるよね。
    アミティ以上に深刻だよ。チキュウ人のりんごは戦えないよ。背景のぷよ連鎖スタンドでも使うの?)
 


「大乱闘?駄目です!そんな喧嘩をしちゃ!もっと愛し合いましょう!」

アルル(アリィ…二重人格をキャラの旨みにしたいのはわかるけど、
   どっちかというとドッペルゲンガーアルルやダークアルルで間に合ってるんだよ…。
   それに、酷なことを言うけど、アリィだけ不評なクロニクルのせいで知名度が…)



アルル「こんな感じ」

ピット「あちゃあ」

アルル「…………」ハァ

アルル「大体ねえ、スマブラに出るからには魔導物語がベースになると思うけど、
   いまやぷよぷよのイメージが99%のボクに、魔導物語を想起できる人がどれだけいるっていうの?
   海外展開なんかもっと絶望的だよ?
   版権問題も相変わらずだし、解決しなきゃならない課題が山積みだよ…」

ピット「そんなの、開発スタッフの勢いでどうにでもなりますって!
   私やパルテナさんを見てください!どれだけ新要素・改変要素があったと!」

アルル「なんか論点がずれてる気がするんだけど…」

パルテナ「で、でもですね!私、アルルさんの大ファンなんです!
     だから、そんなに簡単にあきらめてほしくないなって…!」

アルル「…え?ボクの…ファン?う、嬉しいけど…ど、どうして?」ドキッ







パルテナ「漫才の大先輩、始祖みたいな人ですから!!」キラキラキラキラ

アルル「すっごく傷ついたよ!」ガーン!

ピット「…と、いうわけで!やっぱり参戦したくなっちゃったー、
   みたいな宣言をしていただけないでしょうか!放送としてもそれが一番穏便なので、ぜひ!」

アルル「嫌だよ!!」

パルテナ「そこをなんとか――――そうです!いいことを思いつきました!
     参戦を果たした暁には、なにか一つ望みをかなえて差し上げますから!
     私の奇跡の力で!どどーんと!」



アルル「――」ビクッ



パルテナ「おおっ!意外にも食いついてくれたみたいですね、ふふふ…!
     さあ、倫理的に問題でない事なら、なんでも一つ願いを――」

アルル「『聖魔導物語』をなかったことにしてほしい」

パルテナ「」

ピット「えっ」

アルル「『聖魔導物語』をなかったことにしてほしい」

パルテナ「2回言った!?
     えーっと、流石にそれは私の力の限界を超えていまして…」

アルル「なぁんだ…」

パルテナ「あ、では意中の方の好感度を上げて差し上げるとかどうでしょう!
    シェゾさん?それとも案外サタンさん?」フフフ

アルル「はい?」

ピット「まあまあ、そんな恥ずかしがらずにー」ニヤニヤ

アルル「…………どうしてそれでボクが喜ぶと思ったかなあ…?
    ちょっと痛い目に遭いたいみたいだね――――」ユラァ

ピット「…あれ?あっれれー?カムイさんと同じことになりそうな気配です!
   アルルさん、落ち着いてください…駄目だ、そういえば元来好戦的な人でした!」

パルテナ「くっ、仕方がありませんね…!ピットさん、確実に抑え込みますよ!
     アルルさん、申し訳ありません!正当防衛させてもらいます!」ザッ・・・



ピット「お覚悟をっ!」ダダッ

パルテナ「参りますっ!」パアアアア

アルル「…ばよえーん!」キラッ!!

ズギャアアアアアアアア――――ン!!



パルテナ「」チーン

ピット「」チーン

アルル「…あのねー。登場作品数の分だけ強くなるんでしょー?
    初登場時期こそ負けてはいるけれど、ナンバリングタイトルと共に頻繁に出演して、
    おまけに多機種展開フルパワーなボクに、2人が勝てるわけないじゃないかー。
    …とりあえず、ボクは帰るね、スタッフさん。保存の効くカレーとか見つかるといいなぁ」テクテク

スタッフ「あ、はい。ありがとうございましたー。おーい、一旦放送止めろー」


ブツッ……。

スタッフ「放送が乱れております。しばらくお待ちください」


ブラックピット「…………もう耳栓でも付けるかな」ズーン

マスター「つ、次からは音量を落としますよ!気をしっかりお持ちください!
     はい、御注文のカクテルです!」ユサユサ   

客「だから時間帯ずらせばいいのに」

~3日後~

ロゼッタ「…………いよいよ、ですね」

ゼルダ「……ええ」

ヒルダ「長かったような、短かったような……」

デイジー「程よい長さに感じられたっていうんなら、それはきっと――
     充実した日々だったってことなんじゃないかな!」

勝負の時を、固唾を飲んで今か今かと待っています。
そんな私たちの緊張をほぐすべく、デイジー姫が元気溌剌と声を投げ掛けてくれます。

ロゼッタ「…最初の頃は、そうも言っていられないどん底状態でしたけれどね」

デイジー「うぐぅ…」

ヒルダ「…ふふ、今となってはそれも――い、い、おもい、でです、よ」ブルブル

デイジー「えーっと、無理しなくてもいいよー?まだ私にぶつけたい本音とか恨みつらみとかあるなら、
     今のうちに吐き出しちゃいなよ。…おっと、本当に嘔吐するのはノーサンキュー」

ヒルダ「――」プルプル

ヒルダ「――――――――もち、こたえ、ました」

デイジー「ちなみに今までの死亡カウント数を教えてあげると――――」

ヒルダ「聴きたくない聴きたくないっ!!」ブンブン

ヒルダ姫が、それはそれはもう、必死に首振り。
まだちょっと顔が青いですね。大丈夫でしょうか。

マリオたちからの合図が有れば、たちまち空間転移で「打合せの場所」へ。
もう制約がないのは本当にすがすがしい気分です。
…欲を言うならば、こっそり戻っておいてサポートに向かいたくはあったのですが、
偽者や黒幕に気配で勘付かれたり出くわしたりしたら本末転倒だから、とのこと。

チコたちがそわそわしています。
私はみんなをあやしつつ、チコ2人を両肩に乗せて、スタンバイ。

ヒルダ「…ロゼッタ、本気でそんな状態で登場するおつもりで?」

ロゼッタ「ふふ、鍛えられたおかげで全く重くありませんよ?」

ヒルダ「そういうことでは、なくてですね…」

ゼルダ「ヒルダ姫、つっつかないでおきましょう。
    あんまり言及すると『貴方たちにもチコをお貸しします』とか言いかねません」

ヒルダ「た、確かに……」

デイジー「さてと。…みんなー、気合いは十分だねー?
     …やれるだけのことは、やった。覚悟も、ビシッと固めた。
     私は緊急時以外は後衛サポートに徹するから――――

     みんなの成長っぷり、仲間に、そしてにっくき敵共に――
     思う存分、見せてやれー!」



ゼルダ「――――言われなくても」

ゼルダ姫が、目を細め。



ヒルダ「――――できる限り、やってみます」

ヒルダ姫が、拳をグッと握り。



ロゼッタ「――――承知いたしました」スッ・・・

私は、最後の精神統一を済ませます――――

~選手控室~

選手たちの目が、血走っている、この感じ。
別に、怒りに我を忘れている…というありがちな意味ではなく、
それだけ皆が大会に集中しているってこと。強者も弱者も関係ない。
誰だって、前の自分を、昨日の自分を超えるために凌ぎを削っているのだから。
大会は間もなく終わる。最後の踏ん張り、正念場。

…ただし、今から――――「ありがちな意味」での、目の血走りを――――
俺たちは、目にすることに、なるだろう。
そう、「ロゼッタ」の思惑通りに。

クッパ(989888241983…っと)

クッパ「よーし、皆、集まったな!それではアイテムを返却していくぞ!
   必要な者はさっさと並べ!」

もはや恒例作業、ずらりと選手たちが一列に並ぶ。

ピーチ「…………私は今日は参戦しないって言ってるのに…
    どうしてこんなところに呼び出されたのよ…………はぁ…」

マリオ「まーまー。疲労困憊中のピーチにも、この闘志を燃やす選手たちを見て
   元気を出してほしかったんだ。楽しんでる奴はちゃんと楽しんでるんだよ。…元気出た?」

ピーチ「…それ、どっちかというとクッパの金庫の存在のおかげでしょ?
    気兼ねなく、後顧の憂いなく参戦できるようになったから…。
    私の無力さに、むしろ打ちひしがれるわね……」

マリオ「駄目だこりゃ。処置無し」

オリマー「生命維持装置が無事でなによりだ」

ピカチュウ「チャア……ピカッ!?ピッカー!!!」

ニャース「電気玉のひとつ前に、これ見よがしに雷の石を預けたのは誰だぁ!…って言ってるニャ」

ロボット(ヒジョウヨウ、エネルギー・・・)

ディディーコング「任天堂の帽子、確かにゲーット!これ失うと大問題だからなー!
          正直ピーナッツポップガンより優先順位高いよ…」

シュルク「今日も無事に、モナドが帰ってきたね。
     …いえ、あの、穴あき包丁じゃないです。
     斬った敵がはがれやすいとか、ないです。本当にないですから」

ワリオ「俺んとこで作ったクソゲーの山、盗まれてた?盗まれてた?
   あー、盗まれてたわ。こりゃ、1個あたり10億コイン弁償して貰わなきゃな。
   …………嘘つくな?チッ、ばれたか」



リンク「……………………」

クッパ「よーし、これで今朝の分は全部吐き出したな――――」



リンク「…………おいクッパ、俺のマスターソードは?」



クッパ「えっ、知らんぞ?」

ピット「…あれ?なんだか…様子が、おかしいぞ?」



リンク「…………ハイリアの盾も。まだ受け取ってないぞ」

クッパ「何だと!?そんな馬鹿な、もう金庫の中には残っていないぞ!?
   …でも、確かに…帳簿上は、有るはず、だよな…!」ペラッ

リンク「はあああああああああああ!?」



ザワザワザワ・・・・・・!!!

クッパ「…おい、カメック!聞こえておるか!急ぎ、全員を連れてこい!
   魔法の痕跡がないか、徹底的に調査するのだっ!!」トゥルルル

カメック『しょ、承知致しましたっ!』

ピーチ「ま、まさ、か――――」





カメック「…間違いありません。金庫に張られた術式の一部が、一部抉られていることが確認されました。
     何者かによる――――侵入ならびに強奪行為の結果、でしょう」

リンク「――――――――」ブルブルブルブル

デデデ「Oh・・・・」

クッパJr.「パパがあんなに自信満々だった金庫が、こんなにあっさり――――!!
     嘘だ嘘だっ!こんなの間違ってるっ!認めないぞっ!!」

リンク「――――どういう、ことだよ」

マリオ「リン、ク…………!!」

リンク「――――どういうことだ、マリオ――――ッ!!!」ガシッ

マリオ「グハッ――」

クッパ「お、おい――――」

リンク「俺はっ!!俺は、なあっ!!マリオとクッパがあんなに自信ありげなものだから、
   信用してっ!信頼してっ!俺の宝物たちを、何の不審もなく預けてたんだぞっ!!
   他のファイターにも信用してもらえたらいいなっていう想いも込めて――っ!
   なのにこれは、どういう了見だっ!!ふざけんなぁっ!!」ギリリリ

マリオ「――――」

ピーチ「や、やめてリンク!!マリオは悪くないのっ!!
   わ、私が――ちゃんとしていない、ばっかりに――――!!
   キ、キノコ王国として、しっかり対価は支払わせてもらうから――――っ!」

リンク「対価、だとっ!けっ!冗談じゃ、ないっ!!
   あの剣と盾の代わりだなんて、キノコ王国が用意できるわけねーだろ!
   話になるかよっ!ハッ!!

   …もしや。おい、一連のこと……全部、キノコ王国の、仕込み、か――?」

ピーチ「…はぁ!?」
   
リンク「そうだ…そうだよ――
   考えてみれば、キノコ城をちょっと要補修にするくらいで、
   ゼルダ姫とヒルダを亡き者にできるくらいなら――――
   ハイラル潰して一強王国になるため、やっすい料金、だよな――」

ピーチ「フザケたこと言わないでっ!キレるわよ私でもっ!!」



一触即発、大混乱。団結力がガラガラと崩れていく、音がする。



リンク「そう考えちまうくらい、お前らのやったことは論外、問題外なんだよっ!!
   どうなんだ、ええっ!!マリオ、何とか言ってみやがれや!!」ドスッ!!

マリオ「――――――――――――――――――――――――――――――
    ―――――――――――――――――――――――すまん」

リンク「聴こえねーよ!」ガンッ!

マリオ「――――――――すまない――本当に、済まなかった――――」

ピーチ「…………リンク、やめて――――お願い――――っ!」ウルッ

ロゼッタ「そ、そうですリンクさん!そんなことをしても何も解決しないですよ!」

ルキナ「リ、リンクさん!きっと、誤解です!見ていられませんっ!
    そ、そんなことをなさらないで――」グズッ








リンク「ルキナがそう言うならやめとくわ」パッ

マリオ「それがいいそれがいい」

ピーチ「」ズルッ

ロゼッタ「」

ルキナ「えっ」

ピーチ「…え?今の、なに?」

リンク「…悪い悪い、ちょっと芝居打たせてもらった。
   一応、間違って受け取った人が名乗り出てくることも願ってたからな。
   まあ、誰も出てこないし、盗まれたことが確定したわけだが。

   俺が3日間もマスターソードとハイリアの盾を預けっぱなしにするって
   さんざん自分から言いふらしたら、そりゃあ確かに犯人も盗みたくなるだろ。
   足もだいぶ付きにくくなるし絶好のチャンスだよな」

ピーチ「…し、芝居って。結局盗られたら意味がないじゃない!」





リンク「いやだって、取られたの模造品だし」

クッパ「急ごしらえで我が技術部に造らせたのだ」

マリオ(ま、十分に見慣れている人は引っ掛かりようがない、くらいの再現度だけどな!)

ピーチ「」

ロゼッタ「」

クッパ「ん?どうした?特にロゼッタ、えらく驚愕しているみたいだが」

ロゼッタ「い、いえ、別になんでも……」

ざわざわと、さっきとは別の意味で騒がしくなってきた。


リンク「はい、全員集まってるなー!こんだけ騒いだってこともあるしー。
    それでー。ここにいるみんなを証人として、何がしたいかと申し上げますとー。

    模造品には、クッパ帝国技術部の粋を集めた闇のトラップ――
    超強力な呪いの仕掛けを施していたんだよねえ」

クッパ「うむ。非常時の為に秘密裏に開発していた負の代物が、
    まさか役に立つ時が来るとはワガハイも考えていなかったぞ」

ピーチ「……………………えっ」

ロゼッタ「…………………………………………はい?」

リンク「ここに、偽マスターソードと偽ハイリアの盾、それぞれに対応した呪詛を込めた水晶玉がありまぁす。見えてるよなー!
   もうここに犯人が潜伏しているわけもないから、種明かししちゃうぞ!

   偽マスターソードに対応している方の水晶玉を、このように割りますとっ!」ブンッ



リンクが、握り拳大の2つの水晶玉をどこからともなく取り出し――
そのうちのひとつを、床に向けて叩きつける。
赤く光っていた方の水晶玉が、パリィンという高い音と共に、粉々に砕け散って消えて行った。



ロゼッタ「……っ!」ゾクッ

ピット「これで、どうなったの?」

クッパ「水晶を割った瞬間において、『偽マスターソードに最後に触れていた』輩に残機数貫通の『死の呪い』を付与する。
    今頃犯人は、意味も解らぬ倦怠感と吐き気と殺気に襲われていることだろう。

    更に、この呪いは個々人のFPなり魔力なりに反応する類の物なのだが、
    その者に対して魔力供与を施していた関連者がいるならば、
    対象者を芋ヅル式に増やして死刑宣告ができる優れものなのだ。どうだ、呪いって凄いだろう!」

リンク「ふんぞり返るだけのことはあるよ、マジで。あとは、こっち…盾に対応する水晶玉を割って、呪いを発動させるだけだな。
   体中の細胞がたちまち煮え滾ってから爆発四散、苦しむ暇もなく絶命するんだとさ」

サムス「自業自得だがやることがえげつないな!?」

リンク「サムス、知ってるか?基本的に国家転覆罪ってすべからく死刑なんだぜ?」

ピーチ「す、すごいわ…!!流石に技術力で負けたかも……!!
    ち、ちなみに呪いを回避されたりはしないの?ポカミスとかやめてよね」

リンク「ああ、一応そこが問題だったから、あえて3日間も時間を空けたんだけどな。
   
   2つの水晶玉は連動した絡繰りで、60秒おきに立て続けに割らないと効果を発揮しないんだが、
   その間に、この呪いを付与された人が、水晶玉を割った人…
   つまり俺に対して触れると、儀式に失敗して呪いをなすり付けられるらしいんだよ。
   俺の足元に、魔法陣が展開してるだろ?まだ儀式途中なんだ。
   
   万が一にもタッチされて逆に殺されました、じゃあ笑い話にもならないからさ。
   犯人が完全に遠くに離れる頃合いを待ってたわけだ」

ピット「へえ…ってブラピさん、その『その回りくどい儀式に厨二心くすぐられました』って顔、やめてください」

リンク「悪いけど、ここまでやってきた犯人には慈悲はないぞー!
   そんじゃ、カウントダウンしていって、もうひとつの水晶玉も割っちゃいまーす!
   せいぜい愉しい思いをしたまま、訳も分からず野垂れ死ぬがよい!
   …って言っても体すら残らないし、野垂れ死ぬこともできないか。まあいいや。

   じゅーう!きゅーう!はーち!なーな!ろーく!」

ピーチ「犯人の死に様を偶然目撃しちゃう無関係者のことだけが気懸りなんだけど……」ドキドキ

ワリオ「…ハッ!あっけない幕切れだな…ま、不届き者にはお似合いか」

パルテナ「ワリオが言うとちょっと違和感があるような…まあ、報いは受けるべきでしょうか」

リンク「ごー!よーん!さーん!にー!いーち!!」バッ



リンク「――――ゼロッ!!」



ガッシャアアアァァン!!



何の疑いもナシに、思いの丈を腕に籠め。
リンクが両腕をブンっと振りかぶり、力任せに叩きつけ――――
青く光っていた方の、2つ目の水晶玉が、割れた。


そして、皆が――――――――目を、見張る。



ガシイイィッ!!

クッパ「――――なお。
   そんなご都合主義満載の呪いは、流石に作れなかったのだ。
   せいぜいが、対象者に腹痛をもたらすくらいの作用しかない。
   まあ、1つ目の水晶玉の効果さえあればハッタリには十分だと思ったので、
   それすら搭載していないが」

リンク「そゆことそゆこと。…………さぁてと。







   
    背中から転移で突進してきたのが無駄になって、悪いな。
    ま、そんなわけで…色々と聴きたいことがあるんだけどな――――ロゼッタ氏?」



ロゼッタ「――――――――ハァッ、ハァッ――――!!」ブルブル

容疑者、ここに確保なり――

いつもの穏やかな顔とはまるで異なる、目つきの悪いロゼッタが、息を荒げている。
我に返って、表情を引っ込めても、流石に遅い。周囲の目にはしっかり焼き付いた。

ロゼッタ「…い、いえ。ちょっと、首筋に蚊が止まっていたもので」

リンク「マジか!!こんなときに、犯人と疑われかねないことまで承知のうえで
   蚊を叩き潰しに突撃してきてくれたのか!ロゼッタさんすげえ!
   よっぽどの聖女なんだな!疑って悪かった!」

ロゼッタ「い、いえ。気にしないでください、ふふ…」



リンク「あるいは、この場でそんな言い訳が通じると思っている心底の馬鹿なんだな!」

ロゼッタ「――え」

クッパ「さて、ここで特に意味はないが1個目の水晶玉の呪いを強めるのだ。カメック、やれ」

カメック「あ、はい」ピカアアァ

ロゼッタ「――――――――がああぁっ!?」ガハッ



紫電の靄が、彼女の周りに立ち込める。口を覆いかけて、咄嗟にやめたはいいものの。
彼女は、体がよろめくのを防ぎきれない。

ロゼッタ「――――――――――――――――ハァッ、ハァッ…何を…」ヨロッ

クッパ「……」ヤレヤレ

リンク「語るに落ちたな」

むらびと「…………ロゼッタ、さん?嘘、でしょ?」

ファルコ「…まさ、か。全部が全部、こいつの、仕業?…そりゃ、立場的には――可能、だな…」

ピーチ「嘘よっ!!ロゼッタが…ロゼッタがっ!そんなこと、するわけ、ないっ!!
   きっと、私、疲れすぎで悪夢を見てるんだわ…!!」フラッ

ロゼッタ「そ、その通りですピーチ姫!信じてください、私です!ピーチ姫の友人のロゼッタです!
     マリオ達は洗脳か何かをされていて、私を罠に掛けようとしているのです!」

ピーチ「な、なんですって――」

パルテナ「……それはおかしいですね。
     マリオにリンクにクッパ、この御三方を操れているというのなら、
     そんなまどろっこしいことをせずとも、単純に暴れ回らせるだけで――
     黒幕は私たち全員を亡き者にして、キノコ王国を潰せると思うのですが。
     この状況、鯛で海老を釣っていませんか?」

ピット「悔しいけど言えてます」

パルテナ「ついでに言うと、そんな状況なら3強の皆さんに責任転嫁できるので…
     無駄死にしないためにも、従順な駒として一時的にでも寝返っておきますね♪
     要するに洗脳されてようがいまいが、今やることはマリオ達との同調ですよ?」

ピット「ドヤ顔でぶっちゃけましたねパルテナ様!」

マリオ「なーんか釈然としないが…嘘は付いてないが、正解でもないんだぞ。
    こいつは、ロゼッタだけどロゼッタじゃないんだぞ」

ピーチ「…え?……ニセモノ?ロゼッタの!?
   ――――総員、最大限警戒してっ!!」

マリオ「うん、話が早くて助かる」













ロゼッタ「――――何時から、気付いていたのですか?後学のためにご教授ください」

ピーチ「――っ!――ほん、とうに…」



流石に、本物のふりは、止めることにしたらしい。
汗ばみ、身悶えながらも、薄気味悪い笑みを浮かべつつ、ロゼッタが問うてくる。
じりじりと、人がいない壁の方に、後ずさりしながら。意地汚く活路を見出そうとしているようだ。

マリオ「なーんか釈然としないが…嘘は付いてないが、正解でもないんだぞ。
こいつは、ロゼッタだけどロゼッタじゃないんだぞ」

ピーチ「…え?……ニセモノ?ロゼッタの!?
   ――――総員、最大限警戒してっ!!」


リンク「まあ、俺たちの話し合いの結果からすると、
   初期の初期としてはチートっぽい気付き方だったけど……」ポリポリ

クッパ「まあ、そうだな」コホン

マリオ「なにより、金庫に跳ね返されてあっさり引き下がった時点で確定だったな。

   空間魔法に命を懸けてるロゼッタだぞ?
   『あり得ませんっ!なんとしてでも突破して見せますからね!』
   とかなんとか言って、ここぞとばかりに気の済むまでチャレンジするだろうに。

   そもそも、ロゼッタが本気を出したら、カメックたちが集団で頑張ったところで
   魔法レベル差の暴力で一瞬で破れるはずだし」
   
カメック「えっ、酷くない?」



クッパ「というより、ロゼッタが本当に跳ね返されるくらいの術式だったとしたら
   パルテナごときは光の粒と化すか体が切断されてあの世行きだったろうしな」

パルテナ「えっ、酷くない?」

>>805訂正

リンク「まあ、俺たちの話し合いの結果からすると、
   初期の初期としてはチートっぽい気付き方だったけど……」ポリポリ

クッパ「まあ、そうだな」コホン

マリオ「なにより、金庫に跳ね返されてあっさり引き下がった時点で確定だったな。

   空間魔法に命を懸けてるロゼッタだぞ?もしも本物なら――
   『あり得ませんっ!なんとしてでも突破して見せますからね!』
   とかなんとか言って、ここぞとばかりに気の済むまでチャレンジするだろうに。

   そもそも、ロゼッタが本気を出したら、カメックたちが集団で頑張ったところで
   魔法レベル差の暴力で一瞬で破れるはずだし」
   
カメック「えっ、酷くない?」



クッパ「というより、ロゼッタが本当に跳ね返されるくらいの術式だったとしたら
   パルテナごときは光の粒と化すか体が切断されてあの世行きだったろうしな」

パルテナ「えっ、酷くない?」

ロゼッタ「――――」





ロゼッタ「――――くっ」シュン!

ピット「ああっ!空間転移で逃げたっ!」

マリオ「大丈夫だ!そんなに距離を稼げるわけじゃない!
   おまけにあのニセモノは大したチカラを持っていないからな!

   ただ、観客に絡まれると面倒だ!外には逃がすなっ!
   非公式試合仕様のフィールドに追い立てろ!」ダダダッ!

リンク「りょーかい!」ダダダッ!

ソニック「俺たちから逃げ切れると思うなよっ!」ダダダダダダダダ

ファルコ「――アイツ、もう許さねえぞ!待ちやがれ!」ダダダッ!

フォックス「ファルコがいつになく切れている…!」ダダダッ!

ロゼッタ(――――最低です、こんなばれ方をするとは。
     もう、とっとと爆弾を起爆させてしまいましょうか)タタタタッ

ロゼッタ(――!あのフィールドの扉、半開きですね。
     追いかけっこをしたところでじきに追いつかれる…仕方ありません、滑り込みましょう)

バタンッ!

ロゼッタ(はぁ、はぁ……これで時間を稼げます、ね)

ロゼッタ『申し訳ございません、タブー様。このような体たらくとなってしまい……』

     『――まあ、よいだろう。お前が本物ではないと露見したところで、
     私がお前に期待するところは、特に変わりはしない。
     能力余すことなく私に協力し、場を攪乱し、キノコ王国の崩壊に努めよ。
     それさえ達成されたならば、この程度の粗相など些細なことだ』

ロゼッタ『寛大なお言葉、感謝いたし、ます――――っ!?』



リンク「偽ロゼッター!ここかぁー!想定通り過ぎて恐ろしいぜ!」ダンッ!!

マリオ「控室に全員集まってたのに、半開きに『しておいた』扉が閉まってたら
   居場所を教えてるようなもんだよなぁー!
   このあたりのウッカリ具合はしっかり本人から引き継いでるな…!」

ファイターたちが、次々に雪崩れ込んでくる。
たちまち私は、フィールドの中央で――袋の鼠になりました。

リンク「もう逃げられないぞ!さあ、観念しろ!
   そんでもって!ここに!最後の証拠を突き付けるっ!」

マリオ「さあさあ、舞台は整った!本物のロゼッタたちの、ご登場だっ!」ポチッ!

ピーチ「本物っ!?いつの間に確保してたのっ!?
    どうして私たちに言ってくれなかったのよ!」

マリオ「…敵を欺くにはまず味方か――――」バシッ

マリオ「…痛いじゃないか」

ピーチ「当たり前よっ!むしろこの程度で済んで感謝しなさい!」



ゴゴゴゴゴゴ……!!!



ロゼッタ「――――!?」

見上げれば、空中に、まばゆい光――
光り輝く空間の裂け目から、登場するはずのなかった3人…いえ、4人…!?
彼女らが、颯爽と登場し――――

ロゼッタ(馬鹿なっ!まさか…あの女が…!
     イレギュラーが、よくもやってくれましたねえ…………!)ギリッ

ドキドキ、ハラハラ。
4人の乙女が、皆の待つフィールドへ、飛び降りる形で颯爽と登場――――!
まもなく、地面に降り立ちます――――!



デイジー「にゃはは!『馬鹿なっ!まさか…あの女が…!(ギリッ)』とか思ってそうな、ひっどい顔だねえ!

     …いけっ!ゼルダ!ヒルダ!ロゼッタ!」ヒュゥゥ 

ゼルダ「私たちを指差さないでくださいっ!…まったく。
    それにしても、今の隙のうちにリンクなら不意打ちで一撃のもと倒せますよね。
    …ははあ、そういうことですか」ヒュウウ

ヒルダ「…もう、何を呑気なことをいっているのですか。舌を噛みますよっ!
    罠が仕掛けられている可能性もゼロではありません、気を引き締めて!」ヒュゥゥ

ロゼッタ「さあ…想定通り、ファイターの皆さんが集まったところで――――
     本物と認識してもらいつつ、華麗に登場して見せましたよ、このフィールドに――――
    そう、『イッシュポケモンリーグ』へとっ!」ヒュゥゥ

チコ×2「「わー!」」



――――この程度の高低差、今では何てことはありませんっ!
――――いざっ!着地しますっ!

ゼルダ「ハッ!」

ダァーン!!
50kg OVER!▼



ヒルダ「ふっ!」

ダァーン!!
50kg OVER!▼



ロゼッタ「お待たせ、しましたぁっ!!」

ズッシャアアァァ――――ンッ!!!
150kg OVER! 砂煙が 舞っている!▼



ロゼッタ「…………ふえっ?」カアァ

ゼルダ「」

ヒルダ「」

マリオ「」

リンク「」

ピット「…150超マイナス40×2だから……
   BW仕様なら上限も設けられてないし……」

パルテナ「やめて差し上げなさい!」ポカッ

ピット「」チーン

ピーチ「そうよ!ロゼッタの身長205cmからすると84kgでようやくBMI20よ、
    まだ痩せてるんだから!たぶん!」ヒソヒソ

Wii Fit トレーナー「はい、至って健康体と思われます」ヒソヒソ

デイジー(ロゼッタ、ほぼ吐き気を催すこともなく、毎日しっかり食べてたからなあ…
     脂肪だけ付いていったわけでもなく体格もしっかり強化されてるし、
     全く悪いことじゃないんだけど……本人はそうは思ってないだろうなあ…)



むらびと「……えっとお、重い方が…本物?」

ロゼッタ「」グサッ

ファルコ「そ、そこは強い方が本物、とかにしておけよ!
     女は体重のことを口出しすると怖えんだよ、知っとけ!」ヒソヒソ

ロゼッタ「――――――――」

ロゼッタ「」ギロッ

フィールド「消し飛ばされそうな殺気をひしひしと感じるぜ!ハハッ!」

ななな、なんですか、このフィールド仕様っ!?顔から火が出るとはこのことです!
こんなフィールドを選択するだなんて…!マリオ、恨みますからねぇっ!!
恥ずかしさと怒りのままに、無性に地団駄を踏みたくなってきました!
…2回目の砂煙とかが起きたら恥の上塗りなので、やめておきましょう。

と、とりあえず、ですねっ!
なんだか激しく体重バレしたような気がしますが、きっと錯覚です!
今はそんなことは捨て置いて、しっかり敵を見据えましょう、ええ!

マリオ「――――よしっ!ロゼッタ!ズルい気はするが、今すぐ制空権を!
    空中庭園《スカイガーデン》を展開してくれっ!そうすりゃタブーも形無しだ!」

リンク「…空中庭園?なんだ、それ?」

御存じのない方は、はて?という顔をされますが。
なるほど、相手の出鼻を挫くのは正当ですね!
分身たちの、そしてタブー本人の得意とする空間魔法を封じ込めてしまいましょう!
所詮分身たちの魔法レベルでは、このS+ランク魔法を行使するなどということは、到底できなかったでしょうから!

ロゼッタ「はいっ、おまかせ――――――――」



ぴしり、と。
杖を振り翳した状態で、思わず、固まってしまいました。



ロゼッタ(そういう私も、S+ランク魔法なんて現状では使えっこないじゃないですかっ!?
     魔法の制御力が落ちたこと、マリオ達に伝えそびれていましたぁ――――!!?)

ロゼッタ(偽)「あら?どうしたのですか?
        ――――まさか、できないのですか?『本物の私』ときたら」クスッ

――悟られた!?

ここに来て、小さく笑って見せる『偽者の私』。
自分に笑われると、なんだか無性に腹が立ちますね。

マリオ「え、おい待て、それは本当に想定外になっちゃうんだけど。
    敵さんは空間魔法を早々と使えなくなるっていう大前提があったんだけど。
    いろいろと計画が狂うんだけど!なんでできないんだ、ロゼッタ!?」

ロゼッタ「え、えっと、ちょっとした事故の副作用で――――っ!」

マリオ「うおぉーい!?報・連・相!!先に言っといてくれよ!」

ロゼッタ「すすすすいません!!」ガバッ

思わずマリオに叫ばれます!
これは平謝りするしか選択肢がありません!

ロゼッタ(偽)「へえ、そうだったんですね。
       何から何までそちらに都合よく、というわけではないようで安心しました」

ニタリ、と嫌な笑い方をして、偽者の私がすぅっと浮かび上がります。
…いえ?浮かび上がるというより、上へと引き寄せられている?
まるで、主と仰ぐ者の元に馳せ参じるかのように。――――まさかっ!

ロゼッタ(偽)「貴方たちは追いつめたつもりなのでしょうが――
       まさか、逆に誘い込まれたとは、思ってもいないのですね」フワァ

マリオ「先行きが不透明になってきたな…手間がやたら掛かりそうだ…
    で?勿体ぶらずにとっとと出てこいや、ラスボスさんよ」



    『――――そこまで言うのなら、致し方ない』



j跪くがよい、とでも言いそうな高圧的な雰囲気とともに…空間がねじ曲がり、亀裂が発生。
ぬるっと、スライムのような軟体性の物体が、突如として――どこからともなく、流れ出してきました――!
無秩序に発光して、各部位がビビッドに存在を主張してきます。

デイジー「何あれ…気持ち悪い…うげぇ」

ピーチ「うん、久しぶりね、デイジー!
    そして、歯に衣着せぬ率直な意見を、代表して出してくれてありがとう」

うにょうにょとグロテスクに蠢いたあと、ほどなくして半透明な人の形をとっていき――
やがて、体格が固定された模様です。
ただ、大きさ自体は波打つように…常時、変化。5メートル~10メートルを行ったり来たり。
なんというか、ただただ不気味です。ステレオタイプなエイリアン、といった感じです。

     『この会場…いや、この王国もろとも破壊し尽くしてくれる――
      私の復讐劇、とくと味わうがよい――――!』

ピーチ「……はぁ。これ以上、私たちの王国に難癖付けるのはやめて下さる?
    というか、災難がキノコ王国に集中し過ぎよ…」

体調不良も相まって、不機嫌極まりない元首様の嘆きが、力なく発せられて消えていきました。

裏切り者の私の分身体が、フッと追加で現れて…計、3人。
なるほど、ゼルダ姫とヒルダ姫の姿を偽るのはやめたということですか。
今さら、意味ないですもんね。でもあれで…全部のはず。

さきほどまで皆の視線の的だった偽者が浮かび上がっていき…そのままタブーのもとへ。
こうしてみると、2メートル超えの私でも小さく見えますね。
ほら、あんな感じにタブーの肩にストンと座って、しな垂れかかって――
それを受け入れるかのように、タブーが片腕で抱きかかえるようにして――

って、私の姿で何やってくれてるんですか!?別の意味で大問題なんですけどっ!?
私、そんなにふしだらな人間ではありません!目に毒!おぞましい!鳥肌ものです!!
顔面蒼白、大慌ての私を尻目に、顔を赤らめながら流し目でこちらを眺めて、み、せ、て――――
ええ、大層煽情的ですこと。

パルテナ「いかがわしい」

サムス「いかがわしい」

ワリオ「いくら俺でも引くわー」

ロゼッタ「ああああああぁぁ!?」ゾワッ!

なにこれ酷い!酷すぎます!
衆目に晒す事、耐えられません!

ロゼッタ「…………キレました!ええ、流石の私も堪忍袋の緒が切れました!!
     マリオッ!あの破廉恥極まりない、頭からっぽそうな馬鹿面を晒す女狐、
     私がとっとと成敗してしまって構いませんかねっ!?」

マリオ「お、おう。正論とはいえ本人から言われるとすっごくシュール。
    お、俺たちも手助けするから、や…やってみるか?無理はするなよ?」ビクッ



ロゼッタ(偽2)「なにをそんな、強がりを」

ロゼッタ(偽3)「貴方程度に、そんな大それたことができますか?
         大人しく、タブー様に周りが蹂躙される所を…怯えながら眺めていなさい」

残る2人の偽者の私が、憎たらしい顔をしながら、からかうように声をかける。
人を見下して、止まない目です。眩暈がします。
いったい、どれだけこの人たちは――マリオ達に迷惑を掛けてきたというのでしょうか。
もう、想像するだけで泣きたくなります。



自業自得ながら、私自身への今後の風当たりまで――暗雲立ち込めていて。


ロゼッタ(偽2)「…いえ、そもそも――私たちをいつまでも軽んじていることが、
         とてつもない命取りになったり――」シュンッ!



リンク「――ぎっ!?」

クッパ「――なっ!?」

マリオ「――げげっ!?」

――――なんと。
一瞬の隙を狙われて。偽者のうちの1人が、テレポート。
さすが私の分身、とか言っている場合では、ありませんね!



ヒルダ「ひゃっ――――」グッ

ヒルダ姫の背後に突如として現れ、腕を回し――
たちどころに首を絞める体制に入りました――――!

ヒルダ「――――が――ぅ――――」ギチギチ

ピーチ「――っ!」

愉快痛快といった感じで、彼女は興奮気味に話します。

ロゼッタ(偽2)「ゾクゾクしますねぇ…!ああ、動かないでくださいねー、皆さん。
        一人でも何かアクションを起こせば、首をぽきりと折りますよ?
        いくら私でも、この人相手ならばそのくらいのこと、訳ないですよ?
        それなりに筋力差はあるんですからね、ふふ、ふふふ」

無駄に妖絶な顔持ちを醸し出した分身体。…いや、ほんと、やめてください。それはともかく。
致命的な遅れを取ったピーチ姫は、驚愕の顔を隠さないまま固まってしまいました。

サムス「…………お前、最低な奴だな。弱者を狙うなんて。
    陰でコソコソ動いて、同士討ち狙って、挙句の果てに人質か。正々堂々戦うという矜持はないのか?」

ロゼッタ(偽3)「貴方ごときに説教される筋合いはありません。
        すべてはタブー様の思し召し、タブー様の意向ありき――」

マルス「これは、ちょっと、腹立たしすぎる光景だね――吐き気を催すくらい」



どのファイターたちも、動けない。責任を背負えない。ピーチ姫の指示を仰ごうという雰囲気です。
やろうと思えば、1秒先に、ヒルダ姫の命は尽きる、そういうことですか。

ピーチ「ごめん、なさい。痛い、苦しい思いをさせることになるけど、
    ここは心を鬼にして――――」ウルッ

マリオ「……!?駄目だ、ピーチ!大ポカやっちまった!
    今は『乱闘中』制御下じゃない!フィールド内でも残機制度が働かん!!
    死んだらそれまでだ!!」

ピーチ「――――なんで、よぉっ!!」

ここにきて、痛恨の準備不足、紐の掛け間違い――!
ほんとのほんとに、ピーチ姫がなすすべ無しで立ちすくんでしまいました。

ロゼッタ(偽2)「あは♪意気込んでおいて、なんともお粗末なものですね!
        形勢逆転!この駆け引き、私たちの勝利――」











ヒルダ「――――言いたい……こと、は、それ、だけ…ですか?」

ロゼッタ(偽2)「…は?馬鹿なのですか?立場をわきまえていますか?
        少しは黙っておいた方が身のためで――」グググ
(基礎体力レベル:Lv.20)



ヒルダ「――――ふんっ!!」ガンッ!

ヒルダの 頭突き!
ロゼッタ(偽2)の 顔面に クリンヒット!▼

ロゼッタ(偽2)「ふべっ」フラリ


ヒルダ「胴ががら空きですっ!!」ザンッ

ヒルダの 肘突き!▼

ロゼッタ(偽2)「がっ!?」ヨロッ


ヒルダ「吹っ飛べええええぇぇぇ――――っ!!」グワンッ!
(基礎体力レベル:Lv.28)

スマッシュ攻撃発動! ヒルダの ビルダーハンマー!▼

ロゼッタ(偽2)「」バチコーン!

リンク「」

ヒュルルル――――


ゼルダ「あ、ゴミが飛んできましたね。目障りなので蹴っておきましょう」ゲシッ!
(基礎体力レベル:Lv.54)

デイジー直伝! ゼルダの 回し蹴り!▼

ロゼッタ(偽2)「――ぁ――」グシャッ

コンボが つながった!
かいしんの いちげき!▼


ロゼッタ「ぜ、ゼルダ姫!やりすぎです!これ、背骨折れてないですか!?
     やめてあげてください!間違っても死亡させてはなりません!」ダダダッ

ロゼッタ(偽2)「――――そ、そぅで、す。た、す、け、て」ドクドク



ロゼッタ「経験値、しっかり返してもらわないといけませんからね!
     …あれ、もしかして還元されるのを抵抗してますね!?生意気な!
     さっさと返してください!さあ!さあ!」ギュッ

びたぁーん!

ロゼッタ(偽2)「」ベチィッ

マリオ「」

ロゼッタ「あなたがっ!」ブンッ

びたぁーん!

ロゼッタ(偽2)「」ベチィッ


ロゼッタ「経験値を、返すまでっ!」ブンッ

びたぁーーん!

ロゼッタ(偽2)「」ベチィッ


ロゼッタ「足首を掴んで地面に全身を叩きつけることを――やめないっ!!」ブンッ
(基礎体力レベル:Lv.42)

びたぁーーーん!

むらびと「」ガクガクブルブル

ファルコ「真っ赤な花が咲いてるな」ブルブル

クッパ「拷問かな?」ブルブル

ロゼッタ(偽2)「ふ、つ、うに――し、に、たい――」

ロゼッタ(偽2)「」シュウ・・・

ロゼッタ「ほっ、用済みになって消えていきました。1人分、経験値回収成功!
     …血がやたら跳ねちゃいましたけど。汚いです…」

      『……………………』

デイジー「お粗末と自覚してくれててよかったね。
      話が早くて助かるぅー」

まあ、今の私たちの実力なら、こんなところでしょう。
甘く見ていたのは敵も同じのようですね。私たちの努力が功を奏しています。

あれ?残り2人の偽者の私が、怯えて震えている気がするのですが、気のせいでしょうか。
まあ、些細なことなので放っておきましょう。

あと、デイジー姫がドヤ顔をしています。「私が育てた」と書いてありそうな顔です。
…なんだか私としても幸せなので。こちらも放っておきましょう。

ロゼッタ「さて、これで人質は…一切いなくなりまし――――」


ロゼッタ(偽1)「――こ、これを見ても、まだそんなことが言えますかっ!?
        空中庭園《スカイガーデン》――!!」パアアアアアアァァ


タブーとくっ付いていた偽者が、流れを引き戻すべくアクションを――
…え、ええっ?えええっ!?ちょっと、なんでですかっ!?
魔法レベル50程度じゃ、使えない、はず…!

――改めてよく見れば、なんてことはない。
――まさにすぐそばにいるタブーが、同調して光っています。
――あの偽者、タブーの補佐を利用して実力を底上げしてますねっ!意外と考えてた!
――空間能力適性があるタブーなら、可能でも不思議ではありません!

まずいです!相手の空間魔法を封じるどころか、
こちらが制御下に置かれてしまいます!猪口才な!

ゼルダ「ロゼッタ!余計なこと考える暇があるなら、こちらも対抗です!」バッ

ロゼッタ「そ、そうでした!あっちが底上げなら、こちらだって!
     …いやいや、それでもランク的に無理過ぎるような…や、やっては、みます、けど!
     ゼルダ姫、力をお借りしますよ!

     ――――相互演算《ダブルスロット》からの…空中庭園《スカイガーデン》――!」パアアアアァァ

ふたつの結界を張ろうとする力が、何も見えないようでいて確かに激しくぶつかり合い。
私には、互いに相手を押しのけるべく、打ち勝つべく…バチバチと激しい音を立てていることが認識できます。

…あ、やっぱりきつい!?無理が祟って、既に魔法回路が悲鳴を上げています!
底上げがまるで不十分で、ものの3秒で眩暈がしてきました!
ザザーッ…と、視界にノイズまで走ります。我ながら情けないっ…!

リンク「おうおう!俺たちのことも無視すんなよ!
    みんな!ロゼッタがわやくちゃやってる間にタブーを始末すればオシマイ――」


   『――――舐めるなっ!』


ポンッ!ポンッ!ポンッ!


ロゼッタ(偽4)「――――」バッ

ロゼッタ(偽5)「――――」バッ

ロゼッタ(偽6)「――――」バッ


ズラーーッ!!


ロゼッタ「…!?」

リンク「…………げげっ、なんか増えた!?」

ロゼッタ「え―――」

大事な魔法の行使中だというのに、思わず、唖然。

長さ10メートル以上、直径1メートルほど、といったところでしょうか。
タブーが触手のようなものを何本も空間に出現させ、ブンブンと振り回す。
その軌跡が、空間にノイズを走らせたかと思うと――
何人もの、いえ何十人もの分身体を出現させたのです。相変わらず、全員私。わぁい。

あらら?分身体は無秩序に増えない増やさない、という術式の縛りを設けていたのですが、
偽者とタブーとの間でどんな洗練もとい魔改造が働いたのでしょうか。
あんなことをしたらとてつもなくFPを消費するのに…………って。
そういえば、FPに関しては湯水のように使いこなしてのける相手でした!
偽者たちがなんだか羨ましく感じるのは悲しいサガですね!

デイジー「わあ、ロゼッタがいっぱーい。
    人によっては大喜びしそうな光景ですな」

ピーチ「呑気なこと言ってないの!
   ロゼッタ!本気で、空間制御をなんとかして!そうすればみんなまとめて――――」

…が、駄目っ!!
追加召喚された偽者たちの一部が、代表の偽者の傍に集って…
案の定、杖を光らせて助太刀を始めます!術式作用を直列繋ぎ。数の力、わっかりやすい!

ロゼッタ「ぎぎ、ぎ…………一方的に、押され、て――」パアアアアアアア

ゼルダ「スペック差が、モロに……ぐっ」パアアアア

歯を食いしばったところで、押されることには変わりありません。まずいまずいまずい!
おまけに、増えてきたFPがあるとはいえ、たいそう燃費の悪い、この魔法。
ジリ貧すぎて手詰まりです。私が本調子で在ればこんなことには――!


ロゼッタ「ぐうっ!?」バチッ!

ゼルダ「痛っ!?」バチィッ!

ロゼッタ(偽1)「ハッ!!」パアアアアアアア


ロゼッタ(偽1)の スカイガーデンが 競り勝った!
キノコ王国に 相手の スカイガーデンが 展開されている!▼  シィーン・・・!
こちらの 空間魔法は 全て無効化され 再展開もできない!▼



お、おし負けて、しまいました!私の空中庭園、発動失敗!?
バックファイアまで襲い掛かってきて、ゼルダ姫ともども、激しい痛みに腕の焦げ。
さっそく満身創痍なうえに、これでもう、空間魔法ありきの私は戦闘において役立たず同然です。
大変なことになってしまいました…!

ピット「要するにどうなったのピーチ!三行…いや一行で説明よろしく!」

ピーチ「――相手の空間魔法が通り放題、こっちは売り切れ状態になったわ!」

ピット「わかったようなわからないような説明ありがとう!」

パルテナ「――ふむ」シュンッ

Error!
マスター権限がないため空間魔法を展開できません!▼

パルテナ「きゃっ!?テ、テレポートが弾かれました!?」

パルテナさんが確かめていたところで、敵側が矢継ぎ早に次の行動に…って。



    『フィールド、強制転送!』

ロゼッタ(偽)「「「「「「「「ハアアアァァァァァ!!!」」」」」」」」パアアアアアァァ



ロゼッタ「なにか大がかりなことを始めて――――!?
     い、いけません!このフィールドが『召喚』されようとしています!!」

ピーチ「え、ど、どこによ?」

ルイージ「うえっ!?け、景色がぐちゃぐちゃになってきてるよ、兄さ――」

~メイン会場~

観客「おーい、いつまで待たせるんだ―!」

観客「早く次の戦いが観たいぞー!」

マスターハンド「もう少々お待ちください!ただ今、お取込み中です!
         いやはや、なかなか時間を潰すことが不得手で恐縮――」

シュンッ!!!

マスターハンド「…………え?」



  『――――始めろ』



ロゼッタ(偽)「「「「「「「「――――――――転生の扉、召喚っ!!」」」」」」」

ぐにゃり。 ぐにゃり。 ぐにゃり。


リンク「――――め、メイン会場、だと!?やっべぇ、本気でやばいぞこれ!!
    それにあの渦、以前にキノコ城を早朝から荒らした――!なんだよ、俺たち超後手後手じゃん!だっせー!」

私たちごと、観客ひしめくメイン会場に強制転移、させられたようです。
騒然とする観客のみなさん。でも、早く危険に気付いて!
おまけに、息つく暇も与えてくれず異次元との繋がりを、何十個も――っ!数は増えていくばかりです…!

マリオ「ピーチ!嘘でもいいから観客落ち着かせろ、最優先っ!!」ヒソヒソ

ピーチ「――――――――っ!!…………すぅ。
    み、皆さんっ!こ、これよりっ!サプライズ演目として!
    『タブーの逆襲 総力戦の段』を執り行います!
    前回大会の演目を覚えていらっしゃる方も!そうでない方も!
    ぜひぜひ、お楽しみ、くださいっ!!」ババーン!

ピーチ姫が、マイクすらないというのに…会場に響き渡る大声で、必死に宣言します。
思考、ためらいはほんの一瞬だけ。なんという肝っ玉でしょうか。
かろうじて騙されるかもしれない、取り繕った笑顔を浮かべて。で、でも…!

フォックス「いやいや、この状況でその発言は流石に苦しいだろ!」コソッ

ファルコ「それで信用するなら、どんだけ王国民はお人よしだってんだ!」コソッ



観客「す、すげええええええ!以前にも増して、リアルな造形だ!
   ファイターたちも全員集合か、気合入ってるな!」

観客「タブーさん、カッコいいぞー!おまけにあの不気味な仕掛け!すごいCG技術だな!」

――――ウオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォ!!!!!

マスターハンド「――――なんとー!これは予想外の出来事だあ!(空気読み)」

実況「コロシアムの時空が歪んでしまいました!」

ロゼッタ「すっごくお人よしでした!?」

ピーチ「ならば良し!支持率9割5分は伊達じゃない!
    私の大事な、守るべき王国民たちだもの!」

デイジー「…と、とりあえず、さっさと動き出して分身体たちをなんとか一掃しようよ!
     早く倒せば、それだけ状況の悪化を防げそーだし、
     ロゼッタ本人も空間魔法を使えるように…!」

マリオ「わかってら!…おいみんな、分身体ロゼッタをなぎ倒せ!
    一応、あの渦…いや扉に吸い込まれることには注意しろよ!」

ルイージ「お、おおー!」

ファイターたちが、一斉に飛び出していきます。…あ、私も、ですか。
で、ですが…空間魔法の使えない私では、いかんせん何ともしがたく…!

デイジー「なーにを思案してるの、ロゼッタ!忘れたの!
     今の貴方なら、肉弾戦だってじゅーぶんできるよ!
     ささ、パンチでもキックでも何でも、偽者たちにぶつけちゃえ!」グイッ

ロゼッタ「は、はいっ!そ、そうですよね、後ろ向きは駄目ですよね!
     やるだけやってみます!」

そう言って、たちまち身を躍らせていくデイジー姫。流石です。
気を取り直して、私も…顔をぴしゃりと叩いたあと、駆けだしていきました。

とりあえず、一番近くにいた私の分身に照準。
ジャンプ一番、空間魔法などなしに近づいて…!手加減無し、フルパワーで!

ロゼッタ(偽)「…!?」

ロゼッタ「えいっ!!」

油断しているところに、ドズンッ!といい音を立てて、鳩尾にキツーイ一撃!

ロゼッタ(偽)「がはっ――」フラッ

ロゼッタ「続けて、もう一発!!」ブンッ!


渾身のパンチが、続けてクリンヒット!
デイジー姫の見よう見真似ですが、中々、さまになりました!
その後も、もう一発、更にもう一発と攻め立てます。
パシパシパシと、都合10発ほど当てたところで…。

ロゼッタ(偽)「」シュウ・・・

ロゼッタ「…よし、倒せました!経験値も回収できてなによりです!…ん?経験値?あれ?
     …なんだかんだ言って、特訓を開始した初期の初期の、ゼルダ姫の少し下…
     程度には、今の私って基礎体力付いてるんでしたっけ。この位の芸当はできますか。
 
     我ながら凄い成長速度…いえ、デイジー姫さまさまの成長速度ですね!この勢いで――――」

「お嬢さん、そいつはちょっと勘違いしているぜ」



ロゼッタ「…え?」クルッ

突然の声掛けに振り返ってみると、そこにいらっしゃったのは恰幅のよい男性。
いきなり、どうしたことでしょう。

ドック「おっと失礼、自己紹介がまだだったな…えーっと、ロゼッタ、だったか。
    俺の名はドック・ルイス。マックのトレーナーだ。
    マックってのは、そこにいるボクサーな!アンタに比べると小さいだろ!
    でも、こんな低身長でもれっきとしたファイターなんだぜ!」ニコニコ

マック「よろしくな!」

ロゼッタ「は、はい。こちらこそよろしくお願いします」

ついつい、緊急事態さなかというのに呑気に挨拶などしてしまいました。

ドック「あれだな!アンタの素質は、中々見どころがある!
    だというのに、レベル差があれだけある相手に対して、
    あーんなド素人のヘナチョコパンチの連打で満足しているってのが、
    俺としては我慢がならない!
    しっかりと軸を合わせ捻りを利かせ、体重を乗せたインパクトパンチなら、
    最低でも二撃で…場合によっちゃ一撃で倒せたはずだ!」

ロゼッタ「…え?」

ドック「いいか?パンチを繰り出すときはだな――」

ガシッ!

ロゼッタ「」

ドック「腰をこう動かして、体重をこう乗せて――」

ロゼッタ「――――きゃああああああ!!」ガンッ!!

ドック「ぐふぅ!?」ヨロッ

い、いいいいい、今、ためらいもなく腰回りを抱きかかえてきましたよ、この男!
痴漢です!変質者です!いつぞやのワリオ以上です!!
ワリオはせいぜいお尻を撫でる程度だったのに!それも大概ですが!
つい殴ってしまいましたが、私は悪くありません!殴り足りないくらいです!!

マック「…ドック、流石に今のは…ないだろ。ロゼッタが正しいと思うんだが」

ドック「…あっはっは、ついついマックの面倒見るときと同じように、指導者として動いちまった」

ロゼッタ「フーッ!フーッ!言い訳無用!警戒心マックスですよ、今の私!
     覚えておいてくださいねっ、あとでピーチ姫のところに突き出します!」

マック「すまない、ロゼッタ。ドックも悪気はなかったんだ…………たぶん」ポリポリ

――たぶん、が付いた! 全く信用なりません!!

ドック「豚箱送りは御免被りたいな…よーし!じゃあ罪滅ぼしとして、即席でお前さんを…
    一流のボクサーに仕立て上げてやろうじゃないか!腕が鳴るぜ!
    実験台の敵は、周りに掃いて捨てるほどいるみたいだしな!

    どうだ?俺のナイスな指導を受けてみないか?」キラッ☆

ロゼッタ「ガルルルルル……」

マック「…まあ、確かに。俺から見ると、眩しいくらいに恵まれた体格だからな。
    ドックが鍛えてみたいと思うのも、わからないではないけれど」ウンウン

ロゼッタ「…体格、ですか。そんなものでしょうか」

マック「そりゃあそうだろ、その…2mを超す、身長!」

ドック「そりゃあそうだろう、その…すでにある上にまだまだ成長が見込まれる、胸!

    …じゃなかった、そう、身長だ身長!」

ロゼッタ「……」ピキピキ

…ここで成敗してしまったほうがいい類の人間でしょうか。

マック「…やっぱり悪気があったかもしれない。深く謝罪します。
    責任をもって俺がK.O.して反省させておく」

ドック「あっ、その、いや、ちょっと待ってマックさん!?落ち着こうジャマイカ!」

ロゼッタ「ええ…ええ…ほんとうに、心の底から、お願いしたいですよ――
      身内の管理くらい、しっかりと――」




ザッ・・・・・・・



一瞬、集中力をやや切らせていたら――何事かと、思いました。



マック「――――――――K. O. アッパアアアアアァァァァ――――!!」

ドック「NOOOOOOOOOOOOOOOO!!!」

ズガアアアアアアアァァーーン!!

ロゼッタ「――――――――っ!?」ビクゥッ!

駆け抜ける、凄まじい風圧。
面食らって、怯んで、瞬きを何度も。

私からするとやや身長が低い(とは言ってもマリオより高いのですが)彼が、
おもむろに精神を研ぎ澄ませたと思ったら、たちまち拳を繰り出し――
ドックを、勢いよく、壁にめり込ませてみせたのです。
…いえ。壁にぶつかったドックは、勢いそのまま壁を突き破って、彼方まで――!

な、なんですかあの威力!?た、ただのパンチで!?
活性化状態のデイジー姫ですら、ここまでの威力はなかったはずですが…!?

マック「…とまあ、こんなところで手打ちにしてくれない、かなあ。
    納得はしてくれないと、思うんだけど、うん。どうかこの通り俺に免じて…」ペコリ

先ほどの鮮やかな拳から一転。縮こまって、本当に申し訳なさそうにしていらっしゃるマックさん。
ですが、私はそれどころではありません。

ロゼッタ「」

ロゼッタ「」

ロゼッタ「――今の、規格外の、威力はっ!?」

意識をようやくまともにするやいなや、思わず彼に詰め寄ってしまうほど。

マック「あ、今の?俺、戦闘力のバランスが両極端でさ。
   空中戦だと本当にお荷物になるんだけれど、地に足付く限り――
   怒涛の攻撃を繰り出せるパンチの申し子なんだぜ!自分で言うのもなんだが!
   鍛え抜き、洗練した結果がこれさ!…まあ、ドックのおかげ、かな、はは。
   ロゼッタには早速嫌われたみたいだけど。

   瞬間的な爆発力だけなら、マリオやクッパクラスに匹敵するはず!
   とは言っても、中々当たってくれないんだけどな、残念ながら。
   わざわざ俺の得意な土俵で戦ってくれやしないからなあ…とほほ」

ロゼッタ「…………!」

ごくり。最悪な出会いからでしたが、好奇心がもたげてきます。
喉から手が出るほど、その威力の片鱗に預かりたい。
もちろん、1日2日でどうにかなるなんて思っていませんが、
コツだけでも掴みたい!体格を活かせるというのなら、尚更に!

ロゼッタ「…………思う所は、まだあったりはするのですが…
     気が変わりました!指導、受けます!」

ドック「そうこなくっちゃあ!」ダダダダダッ!!

マック「復活はやっ!?」

ドック「いや、残機減ったからな!?残機システムが再稼働しててよかった…!
   死ぬかと思ったぞ、うぷっ…!…というか死んでたわ、あはは!
   たくっ、誰のせいだ!お前らのせいだ!」

ロゼッタ「貴方のせいです」

マック「鏡を見てくれ」

ドック「うっ…まあ、細かいことはいいじゃないか、HAHAHAHAHA!
    じゃあ、レッスンやっていくぜ!容赦はしないからしっかり付いてきな!」

ロゼッタ「体触ろうとしたら、躊躇いなく命もろとも『削り』ますからねっ!」ギロッ

ドック「ワカリマシタ。デモ、シドウナイヨウハ、チャントキイテネ?」ブルッ



なんだが怪しげな香りがしますが、ちょっと試させて頂きましょう!

ロゼッタが、接点のなさそうなリトルマックらと何か画策し、駆けていく。
思わず声掛けしようとして、躊躇して止めてしまう。
…きっと、意味があるのでしょう。好きにさせてあげよう。

そうこうしているうちに、ソニックが自慢の超速アタックを…
「大元の偽者3人のうち3人目」に仕掛けて、一気に吹き飛ばす。

ロゼッタ(偽3)「ふ、ぐっ…!?」ガンッ

ソニック「それで警戒してたつもりかよ!」ビュンッ!

警戒が足らなかったか、なすすべもなく吹き飛ぶ偽ロゼッタ。
しめたとばかりに、アイクが迷わず剣を一貫!…よし、消し飛ばせたわ!
ちょっとビクッとなったけど、FE勢は敵と判断すれば躊躇なく人を斬れるわね。
殴り飛ばしたりするのとは覚悟が、訳が違う…というのは私の勝手なエゴかしら。

とりあえず…2人の戦闘力と、ロゼッタの戦闘力との差からすれば当然の結果ね。
残る大元の偽者は、タブーの傍にいつまでも控える1人だけ!

ヒルダは、3か月前とは打って変わって、中々の応戦中。
どこからともなく取り出した、燃え盛るハンマー片手に…
あ、何やら魔人っぽいのを繰り出したわね。呆れるくらい、凄い進歩!
少なくとも、今すぐ手助けしなければやられる…なんて心配はないみたい。

ゼルダは、かなり私に戦闘力が近付いた、かしら。
魔法一辺倒の境地からは脱却して、一皮むけた感じがあるわ。
まだまだ負けてはあげないけれどね。

…うん。デイジーが、かなりうまいこと、事を運んでくれていたみたい。
幸運と、彼女らのひたすらな努力に、感謝、感謝!

…ただし、事態は必ずしも好転してはいない。

ピーチ(…今、すべきこと。私は、目の前の状況に集中、集中――)

体調が芳しくないのは百も承知。
マリオ達が策を練っていたみたいだけれど、アクシデント発生ですこぶる不安。
でも、私は私なんだから、責任しっかり果たさないと!

ロゼッタ(偽)「…ふふ」シュンッ!

シュン! シュン! シュンッ!!

デデデ「うおー!こいつら腹立つ!生意気なヤツらめ!
    勝てないと踏んだらテレポート連続での回避作戦に切り替えたぞい!
    攻撃を当てろと言う方がどうかしてる!はやく倒して、扉を塞ぎたいのに!」

ソニック「は、速いな!俊足かつ瞬速の俺でも、
    数Fでそんなにあっちこっちに動かれちゃあ、敵わないぜ!
    とりあえず、他の雑魚たちから片付けて――」

パルテナ「しくしく、テレポート使えれば追い縋れる可能性もあったのに…!
     …あれっ!反射板も使えない!?ひゃあっ!ブレスを防げません!」

ルフレ「あぐっ!…そもそも僕やルキナのレベルだと、1対1でも五分、くらいです。
    このままだと物量差であからさまに劣勢に――役に立てず、申し訳ありません…」

ピット「このスレの設定からしてそれはしょうがないから!無理だけはしないでよ!
    …おっと、ルフレ狙いのそのビームは僕が処理しておこう」パシッ

ピーチ(回避特化戦法!浪費するFPはタブーがカバー!?
     おまけに後ろでは絶賛ロゼッタの分身体が増殖中!?
     時間が経つほどむしろ増えてない!?FPありすぎ!)

おまけに、さっきから。
ビームやら火炎やら、はたまた剣戟、弓矢やら。ロゼッタに似つかわしくない「障害」が…。
飛び交い、ぶつかり合うのが、おわかりかしら。

「転生の扉」とやらの狙いの結果が、侵食を始めているわ…!



   『出でよ、異形の者たちよ。この王国を、ただひたすらに荒らし尽くせ』



それぞれの扉から、続々と出現するは…!

「「「「オレタチ、オマエラ、ミナゴロシー!」」」」ワラワラ

リンク「……なっ!?ボコブリン、ブルブリン、スタルベビー、ガーナイル…
    あいつらってハイラルの魔物どもじゃないか、何で!?」



「「「「ひとあばれ、してやるか――――」」」」

ルフレ「なん…だと!?ジェネラル、スナイパー、グレートナイトにドラゴンマスター…
    馬鹿な、僕たちの国の傭兵や屍兵なのかい!?」

キノピオ「ひ、姫様ぁ!良いお知らせと悪いお知らせがあります!」ダダッ!

ピーチ「…………良い方からお願い!」

キノピオ「は、はい!ひとまず、観客席へのバリア機構の展開、完了!
     並びに、適用モードの『乱闘中』切換え、済ませました!
     今の皆さんは、フィールド内にいる限り、残機制度に守られてます!」

ピーチ「ありがと!助かるわ!でも、バリアも絶対的な物じゃないし、
    いつ何時、敵の空間魔法で穴が空くか分からないわ!信用はし過ぎないで!
    それで、悪い方のお知らせって!?」

キノピオ「各中継地からの報告ではっ!街中にも、小規模ながら、
     『あれ』と似たような扉が複数出現したことが確認されっ!
     一般人からすると十分すぎる量の魔物が現れて、
     初動の段階で自警団がてんやわんやの状況とのこと!
     
     急ぎ、ファイターの皆さんの戦力をある程度割いて、助太刀が欲しいとのことであります!」

ファルコ「マジかよ!さすがにもう言い訳もできねぇだろ!
    本当のこと、ここにいる観客どもに伝えた方がいいんじゃねーのか!」

ピーチ「…それは最終手段っ!バリアのおかげで、ある程度は安全だから、
    パニック回避を優先させて…このまま話を押し通すわ!責任は私が全部負うからっ!
    …会場の外の件は、わかったわ!急ぎ、分担構成を――――」シュンッ!

キノピオ「!?」

ファルコ「…は!?」

ロゼッタ(フィールド内だけでも、しっちゃかめっちゃかになってますね…!)

…おまけに、なんだか会場外も騒がしくなっているみたいなんですけど…!
戦いの場所が、どんどん拡散してしまっているのですか…!?
更に性質の悪いことに、敵の数を減らすどころか「増え方を抑える」に留まるありさま。
ふと見れば、マリオやクッパが怒涛の範囲攻撃で、敵を根こそぎ刈り取ってはいるみたいですが…!

リンク「…とりま、数が多すぎる!魔物にしても分身体にしても!
   おまけに俺、何気に全体攻撃技に乏しいしっ!!
   これじゃあ埒があかない!一気に倒すにはどうすれば――――
   あああ、なんか、ファイターが各自の判断で会場内外の分担を決めて
   飛び出して行っちゃってるし…!!おいおい、統率どうするんだよ――!

   ところでロゼッタさんは一体、何をやっとるんですか?」



ドック「スピードだ、ロゼッタ!もっと速く!」

ロゼッタ「は、はいっ!」

ドック「気合を入れろ!気合だ!」

ロゼッタ「はっ!せいっ!」ブンッ!

ドック「ひだり、みぎ!ひだり、みぎ!! そうだ、その感じだ!その調子だ、ロゼッタ!」

ロゼッタ「ひだり、みぎ、ひだり、みぎ…!!」ガンッ! ガンッ!

ドック「打て!もっと強く!」

ロゼッタ「そ、そんな無茶苦茶な――」

ドック「もっと速く打て!お前ならできる!」

ロゼッタ「もう限界なんですけどっ!!」

…ドック氏の指導のもと、マックの動きを参考にしつつ、
魔物達を殴って殴って殴り続けています。柄にもなく。
…うぅ、ときたま変な色の返り血が飛んできますよぉ…!
でも、傭兵にしろ人間を殴り殺す勇気は、まだ未熟者の私にはありません…勝手で本当にすいません。
分身体の私はノーカンです。相手に残機ありと分かっているときもノーカンです。

リンク「何遊んでるんだよ、ロゼッタ!適材適所、魔法にチカラを割いてくれよ!」

ロゼッタ「遊んでませんよ!ですから今の私、魔法に頼り切れないんですってば!」

マック「そ、そうだぞ!ついでに、ちょっと猛特訓してるだけだ!」



リンクがジト目で私をみています。

ちなみに、魔法を一切試していない…なんてこと、さらさらないんですよ!
使おうとは、したんですよ!

私の超広範囲回復魔法、「Starlit Wish《星に願いを》」。
私自身はあんまり自覚がありませんが、キノコ城城下くらいなら楽々覆える範囲全体に
最大HP50%回復という効果を与える、ぶっ壊れ性能(とピーチ姫は宣います)のS++クラス回復魔法です。

空間魔法ではないので、当然ながら空中庭園《スカイガーデン》の影響は受けません。
これを、数分間隔でちまちま発動させれば、私のあずかり知らぬところで
死傷者を大幅に減らせてめでたしめでたし!…みたいなのが理想だったのですが。

なにぶん、S++ランク魔法なので。はい。今は使えません。 実体験です。意識を持って行かれかけました。
すぐさま魔法行使を破棄できたのが幸い。仕方ない犠牲として、結構なFPとHPが無駄に奪われて行きました。

不幸中の幸いとして、高すぎるランクのおかげで――
タブーの助太刀を以てしても、敵方も使えないらしいことですね。
もしこれが、『偽者全員が持ち回りで』使ってきて、倒し切らない魔物が次々と全快…
なんてことになっていたら、色々と詰んでいました。

息を荒くして、ちょっと休憩。
周囲も激しい攻防戦が繰り広げられています。観客席に届かんとする爆風、火花。

…これをアトラクションの一環と納得できる観客も、大物ですね。
…いえ、心のどこかでは「本当にそうか?」と思っているとしても、
ピーチ姫への絶対的な信頼があるのでしょう。
通常時が万全だからこそ、非常時もぐらつかずに済むということですね。

ロゼッタ「それにしても――あの分身体たちは、どうして腕輪を付けているのですか?」

ふと。心の奥底にあった素朴な疑問を、私は呟きました。
それを耳に挟んで、リンクがバッと振り向きます。そして、近づいて耳打ち。

リンク「腕輪…?ああ!それなら、俺たちが目印代わりにわざと持たせた。
   ほれ、タブーんとこの偽者が付けてるだろ?一緒に増殖してんだな、うっぜー。
   だが、どのみち増殖されるんじゃ、持たせた大元を今さら倒してもな…」

ロゼッタ「…!?そ、それは違います!うっかりしていました!
    いくらタブーと言えど、模倣に模倣を重ねると構成要素の劣化が抑えきれません。
    その大元の分身体を雛型として大事にしながら、コピーを作り出しているはず。

    貴方たちが腕輪を持たせた…大元を叩くことは十分に意味が有ります!
    おそらく、可能な限りの防御面の強化は掛けられているでしょうが…!」

もうちょっと早く勘付くべきでした!
彼女を倒したからといって、ほかの分身体がフッと消えるわけではありませんが、
とりあえず倒せるなら早めに倒しておくのが吉です!

リンク「…!!じゃあ、あいつ1人を倒せば、とりあえずこれ以上の分身体製造は
    防げそうなんだな!でかしたロゼッタ!」

まさしく、是、です。術者を倒して空中庭園を解除する面でも理にかなっています。
…まあ、そちらの方は数任せで再度構築されてしまうのでしょうけれど。

明るい情報を得たリンクが、颯爽と突撃。羽の生えたような飛翔。
は、速いです!なんですかあの加速力!?あれでもソニックより遅いだなんて…!

狙うはもちろん、腕輪を渡した偽者。しかし、案の定、転移で回避。
剣の切っ先が空ぶります。そして震える周囲の空間。当たれば当然一撃でしたね。
あまりの斬撃に、向こう側の浮遊足場にズバッと斬り跡が付きました。うわぁ。

相手もあれでなかなか、警戒するようになってきました。
それでは隣のタブーはというと、即席でディメーン顔負けの隔壁を張って…
不意打ち対策、でしょうか。リンクの転進攻撃を諦めさせる効果はあったみたい。

正直、隔壁一つ一つは、本調子の私基準からするとかなり粗かったりするのですが、
とにもかくにも枚数を稼いでいるので…攻撃を届かせるのは至難の業のよう。



…私が修業も何もせず、のんびり過ごしていれば。
私の基礎体力レベルは上がっていなくても空中庭園をとっとと使うことができて、もっと楽に勝てたんじゃあ…
という疑惑が頭の片隅にポンと出現したのですが、あえて意識を逸らしましょう。精神面のうえで。



リンク「ちぇっ、3強の攻撃なんだから当たってくれよ。ほらほらー。
    もれなく、えーっと、本体に吸収される権利をプレゼントするぜ?」

ロゼッタ(偽1)「聞くに堪えませんね。
        今の私は、多大なチカラをタブー様に与えられ、空間魔法を使い放題、発揮し放題。 
        攻撃など一切、食らいませんよ。貴方も、崇め奉るがよいでしょう」

心の底からそう思っている、したり顔。

そんな相手でも、リンクはある程度、余裕を取り戻した感じです。

リンク「でもさ。それって、絶対無敵…とかじゃなくて、単に
   『当たらなければどうということはない』を実践してるだけだよな?

   つまり、そこそこ強力な攻撃を、ただ当てれば勝ちだ。子供でも分かる簡単な話だよ」

ロゼッタ(偽1)「無駄口を叩く暇があるなら、他の分身体を減らすことを考えるのはどうですか?
         当たるとお思いで?今の私に……!」

いつでも空間魔法を繰り出せる、そうあざ笑うかのように。
彼女の周りは、ゆらゆらと空間がブレています。誰もが、警戒を忘れないはず。

リンク「えらく大口を叩くんだな、後悔しても知らないぞ。
    ――当たるかどうか、じゃない。当てるんだ」

絶対の自信を持って、10メートルほど浮かんだ位置で。偽者は天を掲げ、声高々と宣います。
うっすらと闇の衣…ですか?黒くて紫っぽくて、とにかく変な靄を纏って――
まさに闇堕ちしたって感じです。相変わらず腹が立ちますね、だれか天罰を与えてほしい。

アイク「くっ…!」

クッパJr.「ムカつくなあ…」

ポケトレ「……」

ロゼッタ(偽1)「今は残念ながら真昼間、かのような晴天ですが。
         それすなわち、太陽の光が無ければ、れっきとした――『星天』。
         星の力、それすなわち私の力。私の土俵、そのものなのですよ」

マリオ「フンッ!…これも躱すか!」

示し合わせたかのように背後からマリオが迫りますが、これすらも相手は回避。
リンクが弓を番えていますが、どうにも当たる情景が想像できかねるのか、射るのを躊躇っています。
星の力すなわち私の力、ですか。合っているだけに、貴方に横取りされたい台詞ではありませんでした。

FP使い放題というのは、ここまでレベル差を埋めてしまうものですね。
それだけ私の空間魔法は凄い、ということ、なんですかね。「常時発動できさえすれば」。
今は喜んでいる場合ではないですが!かつてのディメーンよりも厄介ですね、どうすれば――

ロゼッタ(偽1)「3強とやらも、この程度ですよね」シュンッ!

マリオ「…………」

リンク「…………」

ポケトレ「…………」スッ

彼女は、いつまでも、天に手をかざすことを止めずに。
紅潮した、悦に入った状態で――――!

ロゼッタ(偽1)「タブー様の恩寵に加え!

        星々の加護を一心に受ける、この私に!

        立ち向かうなど、何と哀れで浅はかな――――」バッ









ポケトレ「ゼニガメ、『あまごい』」








ドッザアアアアアアァァァァァァ――――!!!!

実況「コロシアムは――――――――
   いきなり土砂降りになりましたぁ――――――――っ!!」

ロゼッタ(偽1)「」



マリオ「キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!」ビクゥッ!

デイジー「しゃべった程度で、そこまで驚かなくていいじゃない!」

…カラッと晴れていた天気が一転。厚くてまっ黒な雲が爆誕し、酷い雨模様になりました!?
しとしと、なんて表現では全然足りません。たちまち全員ずぶぬれに。
まあ、下着が透けるような不手際は起こしませんが。…あ、返り血がちょっと誤魔化せました。わーい。
よくよく見ると…あら?会場の外は今まで通り晴れています…。何故。

ロゼッタ(偽1)「い、一体どうやって――
        
        …………ふ、ふふ。なんですか、当てつけですか?言葉の綾とは下らない。
        別に雨が降っていようと、まったく影響なんてないんですけど?」

ロゼッタ(そ、それもそうですよね、一体どうして――)

マリオ「…しゃーない。そこまで回避自慢したいなら手札を切るか。
    ちょっと大人げないけど悪く思うな。用意周到と言って欲しい」

リンク「いざとなったら回避作戦を使われるかも…って予想、ドンピシャだったな。
   おーいみんな!電気系の攻撃を使える奴、適当な方向に使え!」

ルイージ「よくわからないけど…任せて兄さん、リンク!――サンダーハンドッ!」バッ

ロックマン「――スパークショック!」

ルフレ「考える前に動きますが、威力には期待しないでくださいね――ギガサンダー!」

ブラックピット「フン、手間かけさせやがって――――豪腕デンショッカー!」

ネス「――PKサンダー!…ほら、リュカも!」

リュカ「ぼ、僕もここにいていいのかなあ…ええい!――PKサンダー!」

リンクの号令に従い、使える人達が、技や魔法を発動!
しかし、本当に無茶苦茶に撃って行くばかりで、偽者には届きもしません――はて?

ロゼッタ(偽1)「てんで出鱈目な方向に使って、それがどうしたというのですか――――」

ロゼッタ「…あれ?そういえば、電気の代表的存在のピカチュウは何をして…?」クルッ



ピカチュウは 避雷針で サンダーハンドを 引き寄せた!
特攻が上がった!▼

ピカチュウは 避雷針で スパークショックを 引き寄せた!
特攻が上がった!▼

ピカチュウは 避雷針で ギガサンダーを 引き寄せた!
特攻が上がった!▼

ピカチュウは 避雷針で 豪腕デンショッカーを 引き寄せた!
特攻が上がった!▼

ピカチュウは 避雷針で PKサンダーを 引き寄せた!
特攻が上がった!▼

ピカチュウは 避雷針で PKサンダーを 引き寄せた!
特攻が上がった!▼

ロゼッタ(偽1)「…………???」

ロゼッタ「」

ピカチュウ「ピッカアァー!!」ググーン!!

ピット「」

ピット「」

ピット「まさか……マリオさん!ねえ、マリオさん!ちょっとちょっと!
   これはちょっと、ベタすぎやしませんか!?読者が怒りますよ!」

パルテナ「そうですよ!いくらなんでも、このオチは酷くないですかっ!」

マリオ「…訳の分からないことを叫ぶなよ、まったく。さてと――」

ビリビリと、凄く帯電したピカチュウが、ポケモントレーナーさんの肩を伝って頭によじ登り。
少し身を屈めて、力を込めまして――――あれ、なにやら猛烈に嫌な予感が!

ポケトレ「……」グッ

マリオ「また黙るんかい…いけっ!ピカチュウ!君に決めた!」

リンク「あそこにいる偽者ロゼッタに向かって、最大パワーで―― か み な り !」ビシィッ!

ロゼッタ「うわあああああああっ!?区別つかないとかでとばっちり受けそうですっ!」ザクッ ザクッ

ロゼッタは 無理やり穴を掘って 地中に潜った!▼

フォックス「本物の方のロゼッタが奇行に走っている件について」

デイジー「不幸体質に慣れちゃったんだね…大丈夫だから出ておいで―。
     あと、行動自体は私のせい、絶対」ホロリ

ピカチュウ「ピ~~カ~~…………チュウウウウウウウ!!!」カッ

ピカチュウの かみなり!▼


天の怒りが、稲光が、颯爽と落ちてくる――


ロゼッタ(偽1)「こんなもの――」シュンッ!

相変わらず、それすらもテレポートで事前回避し――



マリオ「業界の常識に疎いロゼッタで助かったぜ。冥土の土産に教えてやるよ――――」

リンク「最近の研究、もとい俺の実体験から分かってきたことなんだけどさ――――」



迅雷が たちまち方向転換して 追いすがる!
よ け ら れ な い!▼



マリオ「ポケモンが使用した、雨天時の雷は――――無茶苦茶当たりやすいっ!!」

リンク「導電性の高い装備を装着していると――――雷を自身に引き寄せるっ!!」

ロゼッタ(偽1)「…!?」

ロゼッタ(偽1)は 咄嗟に隔壁を使って 身を隠した!



――――雷は 隔壁を ひらりと避けた!!
――――効果がない!▼



ロゼッタ(偽1)「…い、ぎっ!?」

辛うじて身を逸らして間一髪避けたものの、超至近距離を通過した雷が――
偽者の体に、ザクッとまっ黒な焼け跡を残します。
何か、纏っていたものがパリンと弾け砕ける音。
掠めただけで、タブーの恩寵、一瞬にして失う破壊力ですか!

それだけではありません。ピカチュウは何も指示していない、操っていないのに、
雷はある程度進んだ先でカクンと折れ曲がって――怒涛の勢いで目標を再度ロックオン!
テレポートまで行使したのに…転移先に、回避したはずの雷が「先読みで」迫ってきていたら、
それはそれは恐ろしいですよね、うん!私に飛んでこなくてよかった!

「ゲーム」のように速やかに完全必中…とまではいかないようですが。
明らかに、雷の軌跡が、敵を自動追尾!?
何度転移しても、そのたびに――まるで意思を持つかのように、雷が――
轟音伴いつつ、たちまち迫りゆく!!恐ろしい因果律の操作です!

リンク「悪いな!そのシルバーリングもまた、クッパ軍に作って貰った呪いの品でさ!
    秘宝でも宝具でもなんでもないし、一度付けたら、ちょっとやそっとじゃ外れないぜ。
    耐久10倍効果とかも嘘っぱち。前は俺が手を抜いてただけ。驚いたー?」

ロゼッタ(偽1)「…………!!」ギリッ

偽者から、余裕というものが無くなります。
むしろ、変に腕輪をひっぺがそうとしたせいで、確実に時間をロスして、とうとう――――

リンク「あーたーれぇ――――!!」グッ



ビシャアアアアアアアアアーーーン!!

ロゼッタ(偽1)「―ぁ――――」シュウ・・・



雨降りしきるフィールドに、特大の放電フィナーレ。
激しすぎる光に包まれて、偽者はたちまち滅されていきました。

フォックス「敵機撃墜ぃ!流石にこれは躱しきれないよなぁ!」



信じられないものを見たかのように、周囲の分身体たちも動きを止めてしまっています。

リンク「意義があるんなら、悲観し過ぎずに最初っから仕込みを使うべきだったな…!」

マリオ「いやでも、力及ばなかったみたいで嫌じゃないか…できれば頼りたくなかった」

リンク「一人でも不幸な人を減らすためなら?」

マリオ「躊躇わず使う、当然だな」

リンク「おう、それでいいんだよ」

ロゼッタ(相変わらず、規格外すぎる方々ですね)



クッパ「…ちっ、だからといって、不気味な扉や他の分身体が、
   いきなりフッと消えてくれるわけではないらしいのだ。
   まだまだやることは多そうなのだ!」

そう、ですよね。まだまだ気は抜いていられませんよね。



    『……………………』



…なんだか、タブーの方も、あんまりショックを受けているようにみえません。
次の作戦に移ったからもうどうでもいい、用済みだ…ということでしょうか。
分身体、哀れなり。同情はいたしません。

マリオ「だいたいだな、なんだよあの異形の者たち。
    落ち着いて考えてみりゃ、おかしいだろ。
    キノコ王国の敵を呼ぶならまだしも、一体全体、何がどうなって――」

    『失笑したくなるほど察しが悪い。…まあ、よかろう。
    見事、彼女を倒したことに敬意を表し、開示してやろうか。
    すなわち、こういう、事に過ぎない』

リンク「そいつは助かる。思い違いの強者の余裕って奴かな?
    ぜひとも、倒されるまで勘違いし続けてくれると嬉しいな」


タブーがぱちんと指を鳴らすと、煙を纏って突如として現れし、2人の男。

…はて、知らない顔ですね。
一方は荘厳な顔つき、そしてもう一方は飄々とした顔つき。
共通して言えることは……悪役顔がとっても似合っています。



ただ、その程度の感想を抱いたのは、恥ずかしながら私だけだったようです。
ファイター各々、大きく顔色を変えることになっています。
知り合い…いえ、知っている敵なのですか?

一人目の方には、ゼルダ姫、そしてリンクが激情を露わにしました。


ゼルダ「…なん、ですって」

リンク「――――はあっ!?
    どうしてお前がそこにいるんだよ――――答えろよ、ガノンドロフっ!!」

ガノンドロフ「――――フン、断る」


そして、もう一方は――――



ルキナ「な、なん、で――」ガタガタ



絶望の、形相。



「やあ。また敢えて嬉しい、とだけ言っておこうか。
寸でのところで逃げるなどとは、往生際が悪かったね、ルキナ。
僕…いや。『我』に面倒を掛けさせるとは、いけない子だ。

でも――鬼ごっこはもう、終わりにしよう」

ルフレ「――――邪竜、ギムレー……!!まさか――――こんなことって――――!!」

ひとりの女性の方が、蛇に睨まれた蛙のように、恐怖に支配されて…ガクガクと震え、たちまち尻餅をついてしまいます。
すかさずルフレと呼ばれる方が駆け寄っているみたいですが、功を奏していません。

ルキナ「――――――――あ、ああ!お、もい、だしました。
    やぶれかぶれ、の、けっき、がだいしっぱい、して。みなごろしに、なって。
    さいごの、ひとりに、なって。おいつめ、られ、て。
    きんきゅう、てんいを、いしきがなくなりながら、かろうじて――」ガタガタガタガタ

リンク「トラウマ再発かよ…!落ち着け、ルキナ!今は俺たちが付いてる!」

ギムレー「なるほど、なるほど。意識の混濁が心の保全に奇跡的に役立った感じかい?
     通りで、案外ピンピンしているわけだ」ニヤッ

リンク「心の保全に役立った、だあ?――――勝手なこと言いやがって。
    …それにしても、あれって、ルフレと瓜二つというか、ルフレそのまんま――」

ルフレ「…………そうです。邪竜ギムレーとはすなわち、忌まわしきもう一人の僕。
    僕と同化して完全な姿になろうと画策し、それが叶ってしまったのが、
    おそらく『そこにいるルキナ』の世界…。軽蔑してくれて、構いません…………」

リンク「馬鹿野郎!!」ガツンッ!

ルフレ「ぐわっ!?」ゴロゴロ

リンク「軽蔑してやるよ!積もる裏話とかあるんだろうし、その事実自体は別にぜんぜん責めねぇよ!
   でも、さっきのロゼッタ同様、そういう情報はちゃんと事前に伝えろぉ!!
   準備できることが全然違ってくるだろうが!」

ルフレ・ロゼッタ「「は、はいぃっ!!」」

ギムレー「…とはいえ、ここにいる『我』は『我』ではないのだけれどね。
     一通り国を征服して暇していたところに、興味深い話を持ち掛けられて、
     写し身を提供したまでのこと」

ルフレ「…写し身?ど、どういうことだ?」

ギムレー「我の模造や異形たちを使って暴れたい、復讐の支えとしたいと持ち掛けられたのさ。
別に、我はそこの異常生命体とつるむつもりも、ましてや協力してやるつもりもない。

ただ、興味本位、だね。異形共の提供も含めて。
模造を作る力があるというのなら別に止めやしない。勝手にすればいい。
『我』の国には依然として『我』本人が万全の態勢で居座っているよ。

どう転んでも懐が痛まずに…うまく事が運べば、国をまた一つ潰せる。
悦に浸れる楽しみがあるならば…ひとつ噛んでやってもいいか、と考えたまでさ。
…ああ。やはり、興味本位に尽きるね」

マリオ「呆れるほど身勝手な参戦理由だな…」

ルフレ「…訂正してもらいたいね、あの場所は僕たちみんなの場所で、みんなの国だ。
    断じて、お前なんかの所有物じゃあ、ない!」

ルフレが魔導書片手に強がっている様子ですが、怯えているのが見て取れます。
非常に強い拒絶感、嫌悪感。そして…絶望感。

リンク「…ちっ。コイツを倒してもルキナのいた世界が平和になるわけじゃないのか。
   …じゃあ、何か?…お前も、影武者か何か?」チラッ

リンクが、そう言ってガノンドロフと呼ばれし者の方を見やります。

ガノンドロフ「さあ、どうだか――――」

リンク「あ、そりゃそうだわ。本体は半壊ガノン城で三途の川を、必死にばたついて犬掻きでもしているはずだもんな。
    ここに来られるわきゃないか。変な置き土産残しやがって…」

ガノンドロフ「…………」ワナワナ

ガノンドロフ「…言っておくが。ここに連れてくることを許可した魔物どもは…
       直近の争乱で余った輩ばかりだぞ。
       使いどころに困ったから廃棄処分のつもりで譲ってやったのだ」

リンク「…直近の、争乱?ハイラルの?…ええと、それってつまり」

ゼルダ「――――あああぁぁ!?どう考えても暴走した私のせいですね御免なさいぃ――!!」

何故かゼルダ姫が絶叫して頭を抱えていらっしゃいます。



話を纏めると…特に協力関係にはないけれども、興味本位やら腹いせやらで、
厄介な者、3人が手を組んでしまった…そういうことでしょうか!?


    『…………行けっ!』

ガノンドロフ「…指図するな、忌々しい」

ギムレー「…まあ、のらりくらり遊ばせてもらうとするさ」



異形「「「「「「「「RYEEEEEEEEEEEEEEE!」」」」」」」」ガバッ



マリオ「……!本格的に会場の中も外もてんやわんや、か!
    これ以上、転生の扉とやらは増えないかもしれないが…
    既に50、いや100くらいは開けられちまってるみたいだ!
    
    ええい、皆!タブー用に戦力残しつつ、分担してあいつ等を抑えるぞ!
    個々の戦闘力は大したこたぁない!人的被害、ましてや死者なんて出してたまるか!
    ピーチ、そういうわけで司令塔となって指示を…

    

    ――――ピーチ?おい?いずこ?」



キノピオ「あわ、わわわわわ」マッサオ

ファルコ「な、なあ!非常に、言い出しにくい、ことなんだが…!」ダダダッ

~異空間~

ロゼッタ(偽)「さてと。これで頭脳は潰せたと思うのですが、如何でしょう?」

ロゼッタ(偽)「なんだかんだ言って、貴方が居なければ、マリオだろうとクッパだろうと…
        せっかくの凄まじい戦力も、哀れ宝の持ち腐れ」

ロゼッタ(偽)「私たちで、徹底して時間稼ぎさせていただきますね♪
        別に倒せるとは思っていません。安心してゆっくりしようではありませんか」



ざっ。ざっ。ざっ。



ピーチ(……………………やられた)





Sランク級、超緊急ミッション。
会場の観客、ならびにキノコ城城下の王国民・観光客を人質に取られかけての――――
拠点防衛戦、スタートと相成りました。

://youtube.com/watch?v=8Ch4X1AeEn0

ドッカーーン!
ガラ、ガラ、ガラ…………!

あちこちで、火の手が上がる。
瓦礫が崩れる音がする。



キノピオ『緊急速報、緊急速報―!非常事態宣言でーす!

    城下各地点に、数々の魔物が出現、襲撃を開始しております!
    絶対に、無理して戦ったりして、致命傷を受けたりしないでください!
    …あ、でも腕に自信がある方はどうか戦っちゃってくださーい!

    城下に住まう皆さま、観光客の皆さま!係の者が避難経路へ誘導しますので、
    落ち着いて冷静に、安心して従ってくださーい!よろしくお願い致します!
    あと、安全なエリアはとことん安全にしておりますので!
    逆に抜け出したりしないでください!以上、王国放送でしたー!』



キノピオたちが、広域放送で、あるいは拡声器片手に、必死の避難誘導を開始――!
人々が、不安げな表情を掲げながらも、黙々と付き従う。
そこには、絶対的なキノコ王国への信頼があった。

~キノコ城北 第7区~

子供「…うえっ…みんな、どこぉ…!?」



一人の男の子が――うっかり話を上の空で聴いてしまい、はぐれている。



「たかが」、ちょっとあちこちが燃えているくらいの。

「たかが」、ちょっと見知らぬ姿の化け物がうろついているくらいの。

それ以外は、いつもの街中、いつもの遊び場のはずなのに。
それだけで…危険度、段違い。



まるで未知の巨大迷路に迷い込んだかのように、錯乱して、立ち尽くして、
にっちもさっちもいかない状況に陥っている。

――――スマブラ絶賛開催中という、いつもの、お祭り日和。それだけだったはずなのに。
――――なんでこんなことになっているのか、ちっともわからない。わかるはずもない。

――――そうしていたら、目が合ってしまった。

子供「…………ひっ」

翼が生え、ぎょろりとした目で自分を睨む生き物と、鉢合わせしてしまったのだ。

子供「――――――――」ガクガクガクガク

すぐさま、踵を返して逃げなければならない。
なのに、頭も、腕も、脚も、何もかもが震えに震えて動かない。
ただただ、絶望の涙が流れるのみ。

そうこうしているうちに、化け物が、あざ笑うかのようにほくそ笑んで――
命を弄ぶべく、たちまち目前に駆けてきた。

翼をあからさまに威嚇するかのようにバッと拡げ、
男の子を飲みこまんとせんと口を大きく開け――――

魔物「GUOOOOOO―――」バッ

子供「う、うあああああああああああ――――」ポロポロ





トゲノコ「チャージアターーック!」ガツンッ!!

魔物「」チーン

子供「…………え?」

トゲノコ「正義は かあああぁぁーーーーっつ!!」

トゲノコ「エリート部隊なめんなやー!!」

トゲノコ「うおおおーー!!」

子供「…………………」

子供「あ、ありがとう…」グズッ

トゲノコ「…!?う、うおっ!勘違いすんなよ!
    俺たちは…そう!クッパ様に断りもなく、横槍で――
    キノコ王国を勝手に踏みにじろうとする奴が許せないだけだ!
    別にお前を助けようと後を付けていたわけじゃないぞ!
    俺たちは エリート だからな!お前のことなどどうでもいいのだ!」

トゲノコ「まあでも乗り掛かった舟だから、
     とりあえずお前をみんなの所まで届けてやろう!

     本当はふん縛って奴隷の如く引き摺るところだが、
     ちょっとは気が咎めるから肩車で勘弁しておいてやる!
     泣いて感謝するがいい!はっはっは!」

子供「…ありがとう、ございます…………」ポロポロ

トゲノコ「うあーっ!いい加減泣き止め!調子狂う!」アタフタ

~キノコ城西 第22区~

敵傭兵「…………腹が減ったな」グゥゥ

敵傭兵「………………………………」キョロキョロ

敵傭兵「………………おお!!」



アイテム店店主の張り紙
『非常事態のため、回復アイテムを露店解放いたします!
必要量だけ、どうぞご自由にお持ちください!お代は結構です!
保存の効くキノコと野菜が揃ってます!加熱処理せずそのまま食べられます!』

敵傭兵「くく、馬鹿め。こんなことをして、敵を助けるとも知らず。
    じゃ、適当に食ってやるか――――もぐ。

    うわっぺっ、なんだこのしなびたキノコは。旨くもなんともねぇな、けっ!
    こっちの野菜の方がよっぽど――――」ガブッ






白ピクミン「ギャァー」ハーイ

敵傭兵「」チーン

敵傭兵「…おい、しっかりしろ!?――クソくらえ、罠だったのか!…………ん?」

赤ピクミン「ハーイ」ペシッ

赤ピクミンの ジャンプ攻撃!
敵傭兵に 0.1 ダメージを 与えた!▼

青ピクミン「ハーイ」ペシッ

青ピクミンの ジャンプ攻撃!
敵傭兵に 0.1 ダメージを 与えた!▼

黄ピクミン「ハーイ」ペシッ

黄ピクミンの ジャンプ攻撃!
敵傭兵に 0.1 ダメージを 与えた!▼

紫ピクミン「ハーイ!」ペシィッ

紫ピクミンの ジャンプ攻撃!
敵傭兵に 0.2 ダメージを 与えた!▼

敵傭兵「はぁ?それで攻撃のつもりか…?フンッ!」ザシュッ

ピクミンs「ギャー!」バタリ

敵傭兵「舐めんな、痛くも痒くもねぇ」ペッ

―ハーイ!
――ハーイ!
――――ハーイ!

ドドドドドドドド…………!



敵傭兵「だからいい加減に――――」



赤ピクミン×1000「「「「「「「「ハーイ」」」」」」」」ドドドドドド

青ピクミン×1000「「「「「「「「ハーイ」」」」」」」」ドドドドドド

黄ピクミン×1000「「「「「「「「ハーイ」」」」」」」」ドドドドドド

紫ピクミン×1000「「「「「「「「ハーイ!」」」」」」」」ドドドドドドドドドドドド

敵傭兵「」



オリマー「あんた、『コピーフラワー』って知ってるか?」

ピクミンs「「「「「「「「「「「「「「「「ワー!!」」」」」」」」」」」」ペシペシペシペシペシペシペシペシ

敵傭兵「」チーン

オリマー「露店に瀕死白ピクミン補充っと…………こいつ等、馬鹿だなー」

店主「キノコ王国民なら有毒性を知らない人はいませんからねー。
   ところで、コピーフラワーってこう長くは続かないはずじゃ」ヒョコッ

オリマー「ピクミンたち、知能が低いのが幸い、
     
     『タイミング合わせて踏め』

     みたいな単純作業には滅法強いからなぁ…
     ここは任せても大丈夫そうかな?他の所も仕掛けたいし」

店主「あ!だったら、残りのコピーフラワーも持って行っちゃってくれませんか!
   オリマーさんなら使いこなせるはずです!」

オリマー「おー!こりゃ、ピクミン隊列が捗りそうだ!ありがとうございます!
     お礼にいくらか赤ピクミン置いていく!火事場の作業に便利だから!」ダッ

店主「おおきに!」



オリマー「…………さってと、弱いファイターは弱いなりに…
     精一杯、頑張ってみるとしますかね!」

~キノコ城南 第43区~

住民「逃げろー!魔物が追いかけてきたぞー!」ダダダッ

誘導員「そこの路地に逃げ込んでくださーい!!」ダダッ

魔物「…………………ぐるるっ!!」ダダダダダッ!



バタンッ!



魔物「…………っ!」ゴツンッ!

魔物「………………………??」



バッタン「あぁン?この道通りたいってぇ?
     別に良いぜ?そンかわり、10コイン寄越せや」ノッシ

魔物「……………………!?」

バッタン「払えないだぁ?じゃあ通すわけにはいかねぇな!こちとら仕事なンでな!」

魔物「――」イラッ



ゴオオォォォォ!!

魔物の ブレス攻撃!▼



バッタン「…こいつはおでれぇた、ただ土埃を上げるだけの技かよ。
    石の頑丈さを馬鹿にしてンのかぁ?ん?んん?」NO DAMAGE!

魔物「――!?」

バッタン「おらぁ、そのまま動くンじゃねーぞー!」バッターン!!



魔物「」チーン

バッタン「はっはっは!口ほどにもないヤツらめ!
     これでもドッスンに比べりゃマシなンだぜ?警告はしてやれるからな!
     アイツは視界の外から初見殺しで潰しに来やがるってのに!

     まあとにかく、ちょいとクッパ軍の実力を見せつけてやらぁ!」

~キノコ城東 第56区~

観光客「…あ、あれはっ!?」

観光客「まさかっ!」

――――辛うじて、ファイターたちの援助に頼らず異形の者どもと戦い抜いて来て。
――――流石に疲れ果て、それでも人々の命を守るため、必死に足を前に出す警備兵。
――――そばには震える観光客、まだまだ弱音などは吐けはしない。

――――そんあところに、ゆったりときらびやかに…平然と現れた、一人の美しい女性。
――――知る人ぞ知る、屈強なファイターの一人――!
――――たちまち一気に膨れ上がる、希望――!

キノコ王国軍兵士「あ、貴方はっ!」



彼女は静かに微笑み、苦労をねぎらう顔をしながら――――

ゼルダ?「全てのキノコ王国の兵達よ!争うことをやめ 私に従いなさい!
      悪いようにはしません!」バッ!

観光客「――――っ!」

兵士「――――っ!」

皆が一斉に息を呑み、互いに顔を見つめ合って――――

兵士「――――くそったれ、偽者じゃないですか!期待して損した!」

観光客「よく見りゃ、なんか本物より色が黒いぞ!2Pカラーか!
    本物のゼルダ姫に謝れ!焼き土下座して謝れ!」

兵士「散々攻撃してきた奴らの仲間だろ、どうせ!
   そんな子供だまし話術に引っ掛かるかよ、ばーかばーか!」

観光客「そもそも、キノコ王国軍もクッパ帝国軍も――
    ハイラルのお姫様に従う義理なんてねーですよ?
    偽者さんはそんなことすらわからないの?」

兵士「「「叩き潰せぇ!!」」」ウオオォォォ

ゼルダ?「」



<<キノコ王国軍、ゼルダ?の言葉により 怒りで『やる気上昇』!>>

~異空間~

ピーチ(大丈夫、私が居なくても、きっとなんとかなる。
    開催前からクッパとも協力して、できるだけの手は打っていたし。
    そう簡単には、キノコ城は、キノコ王国は――挫けない)

ピーチ(他の皆をまとめ上げ、作戦を練ることだって、きっと誰かが――)

ロゼッタ(偽)「誰かが代わりを務めてくれる、なんて思っているのでしょうが、無駄ですよ?」

ロゼッタ(偽)「そうですとも。これでも、私たち――
       ピーチ姫の実力を、高く高く評価しているのですから」

ピーチ「…………そりゃあ、どうも。
    貴方たちに褒められても、全然嬉しくないけれどね」

ピーチ(私を異空間に残して去ってしまえるのなら、とっくにやっているはず。
    つまり、彼女たちは私の拘束のために留まらなければならない制約がある。
    本人と違って実力が不足していることが多少は反映されているのかしらね。

    言い直せば、全員倒せば拘束から抜け出せることになるわ)



周りを一瞥。全部で6人。戦闘力的には、これでも私側に遥かに分がある。
問題は、転移一本やりで振る舞われたら1人倒すことも大変、という懸念があること。

となれば、ここはあれね。「ロゼッタならではの弱み」を探し出して、捻り出して。
油断させておいて一瞬で一網打尽にするしかない。

ピーチ「…………いいわ、仕方ないわね。ゆっくりするの…付き合ってあげましょう。
   お互い、相手を害するには策がない…そういうことでしょう?
   それがどちらにとって好都合となるかは、わからないけれど」

ため息ひとつ、その場に腰を下ろす。
フシギな弾力の地面に、無警戒過ぎたかとひやっとしたけれど、
とりあえず牙をむいてくることはなくてよかったわ。

ピーチ「そんなに離れなくてもいいじゃない。
    もうちょっとこっちに来て、おしゃべりでもしない?」

ロゼッタ(偽)「そこまで馬鹿ではありません。
       私の警戒力で貴方の動きを見切れる程度には離れますよ」フッ

ピーチ「ちっ。面白くないわねー」

体育座りで、しかめっ面。緊張をほぐすため、あるいは緊張をほぐさせるため…
両手でほっぺたをグニグニ変形させて遊んでみる。
…うわ、思いの外、凝り固まってたわね、私の顔。嫌になっちゃうわ。



ピーチ「それでー?確かに統率力について聞かれたら、
    『統率100です』って自信を持って返せる人間よ、私。

    でも、どうして、私の代わりがいないって言い切れるのよ。
    あの場には、国を治める人や、英雄と呼ばれてしかるべき人が
    十分すぎるほどいたと思うのだけれど?」




ロゼッタ(偽)「貴方の振る舞い全てが、そう思わせる」




ピーチ「…………え?」

ロゼッタ(偽)「別に、礼儀作法という意味合いではないですよ。
       指導力、カリスマ、判断力、知識。美貌、柔軟性、慈愛、向上心。
       貴方の実力を――間近で見てきたでしょう、『私』?

       このようなことができる者など、貴方の他に誰もいない。
       そう断言できる程度には、貴方のこと、見てきたのです」

ピーチ「…………まさかそこまで絶賛されるとは思わなかったわ。
    なーんか複雑ね、ロゼッタ『本人』になら是非言ってもらいたかった。
    そしたら私、大喜びで小躍りして、まる一日祝賀会を開いてたわよ」

ロゼッタ(偽)「だからこそ、周囲はピーチ姫ありきで動いてきた、動けてきた。
       だからこそ、私たちが――隠し、見失わせる意義は途轍もなく大きい。
       5割の勝率を10割にする程度、には。

       タブー様とも照らし合わせたうえで、虎視眈々と狙っていた甲斐がありました…!」

ピーチ「あらまあ、照れるを通り越して呆れるわ。それは流石に買いかぶり過ぎよ、他の人を舐めすぎ。
    私だって、見習いたいな、敵わないなと悔しがることは幾らでもあるわよ?
    そう、たとえばゼルダなら、私の代わりくらいササッと…



    
    …あれ、なんでだろう。指示を出す格好は様になってるのに、
    真面目に考えているようで予想外のことにテンパって
    ズッコケる景色しか浮かばない!?」

ロゼッタ(偽)「ほら、みなさい」

ピーチ「…い、いやいや。流石に私の目が曇ってる、だけだから。
    そ、そうよね?そうと言ってよね、ゼルダ!?
    妙に高飛車な態度で反目買うとか、そんなことないわよね!?」

ロゼッタ(偽)「そもそも、周りの人々の適材適所を咄嗟に理解して割り振るなんて芸当、
       彼女にできると本気で思ってますか?」

ピーチ「凄い痛い所を衝かれた!
    …いやね!ゼルダだって立派な施政者なのよ!天才なのよ!
    伝説のたびに知識がリセットされるような境遇だから私と差が付いただけで!」

ロゼッタ(偽)「本音が出ましたね、自分よりは劣ると」

ピーチ「むむぅ…そうは捉えてほしくないんだけれど…」

ロゼッタ(偽)「それで、他の方はどうですか?

       マリオやクッパは、自ら知識面ではピーチ姫に白旗を上げていますよね。
       リンクも、考えるのは苦手のようですし。
       3強といえど、あくまで本質は戦闘力のみです。

       ルフレという軍師もいましたっけ。頭脳明晰そうではありましたが。
       戦闘力が低すぎるうえに誰彼の能力も十分に理解し切れていない。
       5年10年の経験の積み重ねでもあれば事情は変わっていたでしょうが」

ピーチ「見た感じ、基礎体力なら分身体の貴方よりは流石に戦闘力高いんだけど…」

ロゼッタ(偽)「…耳障りですね。…パルテナは女神だそうで。眉唾物ですが。
       妙に皆の裏事情に詳しそうですが、やはり戦闘力が頼りなく」

ピーチ「見た感じ、基礎体力なら分身体の貴方よりは流石に戦闘力高いんだけど…」



ロゼッタ(偽)「…………」

ピーチ「続けて続けて」ヒラヒラ

青筋浮かぶロゼッタというのもちょっと面白い、かも。

ロゼッタ(偽)「…要するに、です。最終結論として。

       最低限の戦闘力を持ちつつ司令塔となって動ける人材など、
       あの場にいるわけがないのですよ。
       混乱の極みの中で、地獄の業火に焼き尽くされるのが関の山です」



ピーチ「…………」

ピーチ「そう、かもしれないわね」

ロゼッタ(偽)「やっとわかっていただけましたか、状況の深刻さに」フッ



ピーチ(実の所、『覚醒した』デイジーなら余裕でクリアできてるんだけど…。
    まあでも、数時間単位の集中し切った暗示が必要みたいだし、難しいわよね…。
    うう、お願いだから、誰か1人でもいいから適任者がいてほしいわ…!)

~急設 指令スペース~

慌ただしく、戦闘員ならびに非戦闘員が行き交う――



キノピオ「キノコ王国軍、クッパ帝国軍と連携して各所で交戦中!」ダダッ!

キノピオ「申し上げます!各ファイターに、交信用の通信機を手渡し完了!
     リアルタイムで、情報交換したり、指示があるポイントへ向かわせたりすることが可能です!
     …皆さん超スピードで動き回るんですもん、辛かったぁー!」



「被害状況は、どうなってる。暫定のものでいい、ファイルを見せてくれ」

キノピオ「はいっ!できるだけ簡潔に、こちらにまとめてあります!」サッ

「貸せっ!すぐに目を通す!」



バサッ! バサッ!バサッ!
キノピオたちがギョッとするほど、激しくページをめくっていく音…!

「――――――――よし、大まかに把握した!
 …聞こえてるか、皆!とりあえず、向こう30分の行動指令を出すぞ!
 追加で指令が無い限り、脇目振らず従ってくれ!上から目線で済まないね!

 マリオ!ルイージ!
 今お前らがいる区画から、南東方面500m四方に大量の魔物が出現したよ!
 幸い、ほぼ全員地上戦闘系だそうだ!適当に薙ぎ払え!」

マリオ『適当て』

ルイージ『もうちょっと具体的に指示してくれないの?』

「お前らの方が城下の地形や通路は把握してるだろ、なら任せた方が早い!
 あえて言うなら、レンガ作りの家屋が多いか?延焼の危険性は低そうだ…
ならば、ほどほどにファイア主体で攻めろ! 住民の巻き込みを危惧せず済む!
 異形はびこる戦場だ、未知の病原菌とかを焼き殺す効果も少しはあるだろう!」

マリオ『おっけー!任せろ!』

ルイージ『ブラザーアタックも狙って行こうね、兄さん!』

クッパ『おい、ファイアならワガハイの出番だろう!マリオらの比ではないぞ!』

「アンタは駄目だ、火力が強すぎる!住民を蒸し焼きにする気か!
それに、狭い路地に入り込むにはその図体は少々不便だろ!他のポイントを言い付ける!」

クッパ『なにを生意気な、小娘が!』

「あいにく、今はこっちの方が指示系統として立場が上なもんでね!物怖じはしないよ!
従う気が無いなら失せてくれ!そうでないならひとまず飲みこんでくれ!
あとで土下座のひとつでもしてやる!それで満足してくれるかい!」

クッパ『…むう』

「それに、アンタの軍勢は喉から手が出るほど使いこなしたい。
 開けた中央エリア一帯を…波状攻撃を仕掛けて、一気に制圧してほしいんだ!
 思う存分暴れられるぞ!現金な話だが衆目の前で名誉も得られる!
どうだ、大魔王様。現場監督として腕が鳴るだろう!」

クッパ『…………ふん!ワガハイの性格をよくわかってるじゃないか。
    なんともシャクだが、とりあえずは話を聞いてやるのだ!』ククッ

「『大きい方の』リンクは、ピットと共に突っ切ってほしい!」

リンク『突っ切る…?』

「リンクは、3強の中ではマリオやクッパに比べて範囲攻撃の手数に劣るが、
機動力と火力とを高いレベルで兼ね備えたファイターだろう。
それを存分に活かしてほしい!酷かもしれないが、駆けて駆けて駆けまわれ!

苦戦中の区画が見つかるたびに連絡するから、全速力で駆け付けて瞬殺しろ!
ただし、司令部が察知していない危険地域を通りかかったら…
リンクの裁量で寄り道を許す!余裕がある限り『ひと当て』ちょっかい掛けておけ!
もちろん、それが済み次第、目的ポイントに改めて向かえよ!

ピットはリンクの補佐および上空からの偵察を頼む!
状況に応じて、リンクを抱えて飛翔移動までしてくれるなら万々歳だ!
自動的に、飛翔の軌跡を使うパルテナも同行だな!」

ピット『なるほど、そいつは合理的だ!すぐリンクと合流するよ!』

リンク『パルテナの戦闘力の低さは、俺がうまくカバーすればいいんだな!』

パルテナ『うう、実力不足が心苦しいですが…承りました!
     ふっふーん!飛翔の奇跡…というか奇跡全般は空間魔法とは別腹みたいです!
     これは儲けましたね!』

「マルス、アイク!できれば、人を斬ることに躊躇しないことを見越して、
 FE勢を人間型の敵にドカンとぶつけたいんだが、構わないな?」

マルス『何を今さら。時代は違えど、自分たちの国の尻拭いをするという意味でも、いいんじゃないかな』

アイク『それが利点になるというのが俺の中ではしっくりこないが、適任だというのなら喜んで受けよう』

「助かる。戦力不足かもしれないが、ルフレとルキナも連れて行ってやってくれるかい?
 一番コンビネーションが上手くいくのは当然お前たちだろう」
 
マルス『それはもちろん構わないけれど…うーん、どうだろうね。
    僕たちのグループだけで本当に固めちゃうと、
    攻撃スタイル的に、特に僕とルキナが役割が被ることが出てきそうで』

ルキナ『すいません。そうなると、本当に私が用済みになってしまいますね…』

マルス『別にルキナを責めてはいないよ。少しばかり僕に年の功があっただけさ。
    でも、酷い言い方をしてしまってごめん。

    最近じゃ、リンクとの連携も中々よさそうな気がするよ。
    そちらも考えておくのはどうだろうか』

「…ああ、それもそうか。じゃあ、もしリンク達と合流する機会が有ったら、
 場合によってはルフレとルキナをリンクに引き渡してもいいぞ。
 かわりにピットとパルテナを引き受けてほしい。
グループの特性を上手くスイッチして、それで戦況が好転するケースもあるだろうし」

マルス『わかった。じゃあ最初は、2人とも僕たちと行動だね』

ルキナ『よ、よろしくお願い致します、マルス様!すぐ合流します!』

「ソニックはリンク以上に縦横無尽に駆け回って敵を翻弄!
ただし処理に時間が掛かりそうな場面に出くわしたら救援を要請すること!

…いやむしろ、9割がた状況把握のための偵察として動いてくれても構わない!
気になる戦況はどしどし報告してくれないか!」

ソニック『おいおい、俺に戦うなっていうのか?ふざけるなよ?』

「お前の速度は貴重過ぎるからな、仮にソニックが一切戦えなくても――
私の指示がより的確になって、他のファイター全員の戦闘効率が5%でも上がれば、
結果的に有り余るお釣りがくる!どうかわかってほしい!」

ソニック『…っはは!冗談だ冗談だ。そこまで俺の速さを評価してくれてるのは嬉しいぜ!
     いいぜ、言われた通りに動いてやっても!』ダダダダダダッツ!!!
    
「恩に着る!
……そして、名を挙げなかった他の者たちは、城下に飛び出してしまっているなら
ひとまず今いる場所から無理に大きく移動・転回しなくていい!
必要があれば、すぐに私から要請を出すから、それを待ちつつ周囲をねじ伏せろ!

ただし、それほど試合会場から離れてないやつは一旦会場に戻れ!
できるだけ偽者のロゼッタ達を減らすのに協力しろ!タブーの警戒も現状薄いしな!
もちろん、この指示自体も状況に応じて臨機応変に人数調整させてもらうから頼むぞ!」

ファイター『『『『『『『『――――了解!』』』』』』』』

「いい、返事だ。飛び入りだというのに、指示の出し甲斐があって嬉しいよ。
心の底から感謝する。それでは――――」









トゥーンゼルダ「皆、健闘を祈る!!」クワッ!
【テトラモード:統率96】









ゼルダ「…………」

ゼルダ「どうしてこうなった…………」ズーン
【統率85】

トゥーンリンク「いやだって、3伝説分の『荒波に飲まれ鍛えられた』
        リーダーシップ経験値があるし、ね?」

ゼルダ「私だって…私だって、かつての伝説たちの記憶、
    無理やりですがシアとかいう魔女に戻されているのに…」

トゥーンリンク「うーん…。戻ったといってもまだ時間不足で馴染んでないっていうのと…
        あんまり統率っぽいこと、各伝説でやってこなかったんじゃない?
        捕まってるだけとか、潜伏してるだけとか、寝てるだけとか…。

        少なくとも『うちのゼルダ』は、2回分はバリバリ指示を出してたよ?
        …2回は言いすぎか。1.2回分、くらいかな」

ゼルダ「」ガーン
        
トゥーンゼルダ(代わりたいならどうぞ代わって下さいよ!いつまで私、
         おばあ様に成り切って皆に振る舞わなければならないのですか!?
         いや、それは確かに、魂としては私=おばあ様なんですが!
         なり切ることも容易ではありますけど!妙にカリスマ発揮しますけど!
         なんだかもう色々とややこしいんですけどっ!)

パルテナ(SS内のその設定、覚えている人いるんですかね…)

トゥーンゼルダ(……今誰かの呟きが刺さった気がします!)

トゥーンリンク「ゼルダ、頑張れ!周辺警護は任せてよ!」

トゥーンゼルダ「が、頑張ります!…じゃなくて、頑張ってやるよ!」グッ!

ゼルダ「…………」グズッ

ヒルダ「よしよし」ナデナデ




魔道士「ヒャハハ!どんどん攻め立てるのだ!」グオォ



キノピオ「ももも、申し上げます!
     キノコ城東の第63区、陥落寸前!魔物軍、ますます激しく進軍開始!
     一般市民らの避難はすでに終えているのが不幸中の幸いです!
     ですが今の警備兵だけではどうにもなりませーん!」

トゥーンゼルダ「――っ!早速出番だぞ、リンク!第63区に進軍せよ!
       キノピオ、警備兵には無理だけはしないように伝えてくれ!」

リンク『まっかせろぉー!!』ダダダッ!

ピット『待ってリンク!速い、速いっ!合流できないんですけどっ!』

パルテナ『私など、もっと無理なんですけどっ!置いていかないでくださーい!』

リンク『2人とも、俺が片を付けるまでに合流できなかったら罰ゲームだぞー!』

ピット『無茶言うなぁー!!』



トゥーンゼルダ(…まあ、『大きい方の』全力で動けているうちは、
         きっと大丈夫ですよね、そう信じましょう)

マリオ「ファイアファイア、ひたすらファイア!」ボウッ!

ルイージ「お前たちなーんか、1発当たっただけで即アウトだぞー!
     近付けるもんなら近付いてみろー!」ボウッ!

魔物「「「ギャアアアアアアア!!!」」」バタリ

マリオ「ふむ、一通り片付いた、か……!?」ビクッ

敵傭兵「所詮唯の魔法だろうが…!そして、魔法使いは物理面に弱いのが常識。
    これでも――食らえぃ!!」ブンッ!

カキイィィ――ン!



ルイージ「え、だれが魔法使いって?まさかとは思うけど、兄さんのこと言ってる?」

マリオ「悪い、不意を衝いて近づいてきた度胸は大いに褒めるが、
    そんじょそこらの使い手の剣じゃ素手で受けても痛くないんだ」パシッ
    
敵傭兵「え゙」

マリオ「むしろ剣の切っ先を握って剣を奪い取れるレベル」ズルッ

敵傭兵「」

マリオ「ついでに言うとそのまま剣の柄部分で殴り倒せるレベル」ブンッ

敵傭兵「」チーン

ルイージ「まあ、そのくらいじゃないとリンクの剣戟で死んじゃうしね…。
     にしても数が多すぎるよ、兄さん!どうするの!?」

トゥーンゼルダ『区画内の敵を減らすのはもちろんだが、
        敵をポコポコ召喚している扉がどこかにあるはずだから破壊しろ!
        高エネルギーの技をぶつけてやればいいはずだ!
        敵側の増援を止められるぞ!念のため、直接殴ろうとはするなよ!』

マリオ「声を拾ってくれてたか!助かる!『転生の扉』とかいうやつか?
    ――――――――――――あれか!」



転生の扉「――――」ブウゥゥゥゥーーン



ルイージ「兄さん、この距離からいくよ!せーの!」サッ

ポイッ!ポイッ!ポイッ!

マリオ「怒涛の『スピードボム』、全弾食らっとけ――!!」ブウゥゥン!!



パリイィィィィ―――――ン!

転生の扉は 大ダメージを受けて 跡形もなく 崩れ去った!
そのまま 光となって 消えていく!▼

ロゼッタ(偽)「――――――――っ!」ギリッ

<<第63区の『転生の扉』の破壊に成功!>>
<<キノコ王国軍、魔物軍への反撃により、やる気上昇!>>

マリオ「そのついでで、息を潜めた偽者ロゼッタ発見!
    …くそ、すぐさま逃げられたか。そりゃそうだよな」

ルイージ「兄さん、どうする?ここを離れたら、しばらくたってから…
     あの変な扉をまた作られるかもしれないよ?明らかに管理者っぽかったし」

マリオ「…………いや、離れよう!釘付けにされたんじゃ
   何もできなくなっちまう。そこまで頭が回らないことを祈ろう」ダダッ!

ルイージ「…仕方ない、かあ!」ダダッ!




ロゼッタ(偽)「…………」

ロゼッタ(偽)「…………」

ロゼッタ(偽)「よいしょっと」

ロゼッタ(偽)「……………………油断大敵ですね。では、お言葉に甘えて――」クスッ

マリオ「――――お前がなぁ!」ズドンッ!

ロゼッタ(偽)「」チーン シュゥ・・・

ルイージ「消えてく、消えてくー。
     僕が言うのもなんだけど、ロゼッタって……
     戦闘面での心理的駆け引き、経験不足すぎるね」

マリオ「正確に言うと、『調子に乗った時の駆け引きが愚策極まりなくなる』だな。
    ディメーン戦でのロゼッタは冴えわたってただろ?
    味方の命背負って、最悪を考えて動くときのロゼッタは強いんだよ。
    調子に乗らないことでバランス取れてるんだよ。俺はそれでいいと思うぞ?

    というか、隠れて動くんだったら相手が隠れることも予測しとけよと。
    これだけ遮蔽物があると、俺と偽ロゼッタとの身体能力差じゃ…
    気付いたころには手遅れ甚だしいんだよな」

ルイージ「言ってあげないでよ……」




<<キノコ城の陥落に注意せよ!>>

マリオ「させねぇよそんな事!」

ルイージ「ど、どうしたの兄さん?」

パタパタ「キノコ城南の第35区にて!クッパ帝国軍、避難警護を行いつつ南東へ後退開始!
     帝国軍に支障ありませんが、人員空白箇所が発生!徐々に押されています!」

トゥーンゼルダ「リンクは…流石にすぐ駆けつけるのは無理か」

サムス『南、だって?ちょうどいい塩梅に向かえるかもしれん!
    あまり地理を把握していないから、現地までの誘導をお願いしたい!』

トゥーンゼルダ「ありがたい!ではサムスに向かってもらおう!今、どの区画にいる?」

サムス『…そう、だな。大通りを適当に蹴散らしつつ、ひた走っているんだが…。
    …ああ、第28区を抜けて、たった今第33区に入ったところだ!』

トゥーンゼルダ「……………………ふむ。
         そのまままっすぐひたすら進めば着く!最短距離で頼んだぞ!」

サムス『まっすぐ?…いやちょっと待て、さっそく目の前に行き止まりが見えてきたぞ。
    左か右にしか行けないんだが。どこかでまた方向転換か?』

トゥーンゼルダ「…キノピオ!あの辺りは、ただの食糧備蓄保管庫、だよな?
        貰った地図にはそのように記されているんだが、合っているな?」

キノピオ「は、はい。そうですけど――――」



トゥーンゼルダ「――――そういうわけだ。そのまままっすぐ!」

サムス『……………………えええ…』

トゥーンゼルダ「そこをなんとか」

サムス『…ハァ、了解。言っとくが、弁償はしないからな!
  


   ――――シャインスパアアァーーーク!!!」ゴウッ!

倉庫「「「ぎゃああああああ」」」

キノピオ「」



サムス『…………小麦粉まみれ…ええい、気にしない気にしない!
   最短距離で突っ込めぇ――っ!』ダダダッ!

<<キノコ城東、第63区にリンク到着!ピット、パルテナも接近中!>>

トゥーンゼルダ「よし、予想以上に速かったな!さっさと片付けてくれ、リンク!」

リンク『お、おう。よく俺が到着したって分かったな。
    うお、いるわいるわ、魔物達。懺悔の時間も与えてやらねぇぜ!』

ピット『し、死に物狂いでなんとか駆けつけたよ…ふう。
    う、うわっ!ちょこちょこ人間も紛れ込んでるよ!?見るからに悪人だけど!
    本来助けるべき存在の命を奪うって、勇気がいるなあ…!
    リンク、どうする?FE勢に任せる!?それとも心を鬼にして斬ってくれる!?
    ちょっと時間はかかるけど、生け捕りも検討してみるかなぁ――――』

リンク『…………』

敵傭兵『ぐへへ、死ねい!』ブンッ!

住民『う、うわあああああああ!!!』

リンク『はい、悪人確定。あらよーっと!!』ザシュッ!

敵傭兵『』チーン

ピット『ひぇっ!?――あ、あれ?や、やけに、あっさりなのね』ゾクッ

リンク『え、むしろなんで躊躇すんの?』

パルテナ『そ、それはその…人間殺しは咎める部分も少なからずあるのかな、と。
    ピットなど、異種族なのに人型というだけでビクビクしていますし』

リンク『いやいや…。種族で差別なんてしないぜ、俺。
   それに、本人の意志とは別に操られてる、とかなら是が非でも助けたいけど…
   俺、別に全人類を助けたい正義の味方とか聖人君子とかじゃないし』ザシュッ!

リンク『投降するならともかく、絶賛悪行中の根っからの悪人に慈悲なんてないぞ?
   ましてや、今にも襲われようとしてる人の命と天秤にかけるとか馬鹿げてる。
   何年、各伝説のパトロールやってきたと思ってるのさ。
   悪人1000人斬りすることで善人1人が助かる可能性が1%上がるなら
   俺は迷わず1000人斬るよ?』グサッ!

リンク『俺がもっと強かったら、善人を速やかに保護したうえで…
   1000人の更生を気長に待つ余裕も…まあ、あるかもしれないけど。
   あいにくまだまだ未熟なもんでな。手加減せず斬る。

   敵さんが余裕を持たせないように狙って仕掛けた、全部の命は救い切れない、
   だから善人のために悪人切り捨てるのは仕方ないし、責められる筋合いはない。
   そのことをいつまでも気にして俺自身の調子が悪くなったら
   トータルで救われる人が減るから、後悔すらしない。
   文句言うならあの世で敵の親玉にどうぞ。それか自業自得と諦めてくれ』ザクッ!

ピット『ドライだ…』

パルテナ『ドライです…』

トゥーンゼルダ(ドライです…)

リンク(俺の出る幕がないくらい、統治者がハイラルを平和にしてくれてればなぁ…)ハァ・・・

ゼルダ(…!?今、リンクのため息が聞こえたような!?)

~試合会場~

<<偽者の分身体、集団術式で空中庭園《スカイガーデン》を再展開!>>

ロゼッタ(偽)「「「「「「「「ハァーー!!」」」」」」」」パアアアアアアア!!



ヨッシー「うっ!?また仕掛けられちゃいましたよ!
     タブーのFP、本当に無尽蔵にあったりするんですか!?」

ルカリオ「…また、こちら側の空間魔法が使えなくなる…だったか?
    存外、味方の作戦に影響があるものだな」



<<タブー軍、空中庭園《スカイガーデン》の持ち直しにより、やる気上昇!>>

ルカリオ「…………………諸刃の剣、の作戦だな。敵も思い切ったことをする」



ロゼッタ(偽)「――――」シュウ・・・

ロゼッタ(偽)「――――」シュウ・・・

ロゼッタ(偽)「――――」シュウ・・・

<<バックファイアにより、集団術式に関与した分身体の一部が消滅!>>

ピカチュウ「…ピ、カァ…………」パチィッ

ピカチュウの 雷のPPが 尽きた!▼

ルカリオ「ピカチュウ、ご苦労様。敵の自爆戦法ならびにお前のおかげで随分…
     分身体の数を減らせたようだ」

ピカチュウ「ピカッ!」



フィールド中央、観客たちの目の前に堂々と居座る――タブー。
あの気持ち悪い動き、激しい攻防。これを興行とみなせる観光客には恐れ入る。
こんな大人数の避難は今更無理難題ということで、会場外部とは情報遮断、移動規制。
バリア機能頼みで居座って貰っているのだが、何時まで持つか…。中々の博打だな。

タブーがここまで居座ってくれているのならば、とっとと倒せばいい。
…それができたら、どれだけ楽なことか。
妨げるのは、何重もの箱となってタブーを覆い護っている結界だ。
単純に――魔力任せの重ね掛けの数が、半端ない。

渾身の波導弾を1発お見舞いしてみたが、
タブーに近づくにつれたちまち減速し、霧散してしまった。
壊れたところは魔力を即流し込んで、修復しているようだ。

…いや、違う。技を受けたところに自動的に魔力が流れ込んで、
タブーの意志などなくても自動修復するようになっている。
同じ箇所にピンポイントで連撃を与えてみたが、最初に凹ませてからの押し込む感覚がない。こちらのワンアクションよりも復元力の方が勝るとでもいうのか…!
先ほどの雷の攻撃を見て取って、更に念入りに守備を固めてきているようだ…!

デデデ「闇の衣を剥がさないと、ラスボスはどうにもならない…ってな!」

ロックマン「敵の攻撃自体は、屁でもないんだけどな…!」

訳知り顔のデイジーは言った。あんな結界、本物に比べればお粗末な紛い物、だと。
何より、あんな殻に閉じこもっていると自分も攻撃できない、と。

その主張は当たっている。要は、結界を跨ぐ魔法干渉は自分もロスがでかいのだ。
それこそ、飛んでくる空間魔法や触手攻撃は、口笛吹きながらあしらえるほど弱弱しい。
数だけは割と飛んでくるので、万が一にも観客席のバリアを壊されてはたまらないと、
ファイターたちが地道に受け流しはじき返しているこう着状況だ。
雨脚は弱まり、再び日差しが戻ってきた。

忌々しい、異形共を延々と繰り出し続ける扉たちは…
破壊した傍から、分身体たちが作り直して元の木阿弥。
ただ、分身体たちが1人、また1人と減り出しているおかげで、
少しずつ勢いは鈍ってきている。それは朗報には違いない。

ルカリオ「…………朗報、には違いないんだが」

どうも、胸騒ぎがする。
全部が全部、垂れ流しの異形任せで、碌にタブー自身は働こうとしない――
そんな状況を、タブー側が良しとしているのか、と。
もちろん、こちらとしては既に小火(ぼや)どころの騒ぎではなくなっているが。

まるで、時が満ちるのを待っているかのような――




――バアアァァァン!



…おっと。首をブンブン振って雑念を払っていたら、
横で中型の魔物がガクンと体勢を崩して吹っ飛んだ音。
代わってその空間に斬り込んできたのは、渦中のお姫様だ。

ドック「うん、良い音だロゼッタ!爽やかな表情に飛び散る汗がベストマッチ!
   徐々に感覚を掴んできたか!?」

ロゼッタ「えぇいっ!…ふふん、空間魔法を封じられたと言っても、
    生粋の空間把握能力だけは健在なのです!
    悔しいですが貴方の教え方も中々堂に入っていますし!ほんと悔しいですがっ!」

マック「ほ、本当に伸びがいいな…!自信無くしちゃうなあ、俺…」

ロゼッタ「とんでもない。これだけ短期間で型が整ってきたのは、
    間違いなくお手本の貴方の動きが洗練し尽くされているからですよ!
    所詮私は、動きの真似を重ねているにすぎません。
    むしろ習えば習うほど驚いています…!」

ふと、ロゼッタの拳を見る。
純白のグローブ越し、普通の人には分からないだろうが…。

ルカリオ「おい、ロゼッタ。ドックたちの純粋な評価を聞けば、中々サマになってきているのは分かるが。
    ちょっと戦果を急ぎ過ぎだ。だいぶ傷んできているぞ」

ロゼッタ「……っ!?わかるのですか!?返り血はなるべく浄化したつもりだったのですが…
     外出血でもしていましたか!?」

一瞬、拳を背中の後ろに隠そうとする素振りを見せ…観念したのか、すぐに止めてしまう彼女。

ルカリオ「私には波導…各人の命の振動のようなものを読み取る能力があってな。
    一見して隠れている姿、あるいは感情の揺らぎを推し量ることができる。
    そして、今のところロゼッタからは『痛みへの我慢』の感情が伝わってくる。
    まあ、状況からして拳くらいしか疑えないだろう。…おまけに両腕か」

ロゼッタ「あ、あはは。別に我慢できかねるほどでは、ないんですよ?本当に。
     ですが、どうしても繰り返し間隔が短すぎてですねぇ…」

ルカリオ「せめて、マックのようにちゃんとしたパンチンググローブを使え。いつか大怪我をするぞ」

私も、割と拳を多用するタイプだからな。先輩としてアドバイスできることは多いだろう。

ロゼッタ「いやでも、そんなもの持ってなくて…マック、いまさらですが予備のグローブがあったりしませんか?」

マック「あいにく持ち合わせがないが…そもそもグローブのサイズや形はしっかり吟味しないと意味がないぞ?
   たぶん俺のグローブを貸したところでしっくりこないことになる」

ロゼッタ「そうですか……………………」

ロゼッタが、一瞬しょんぼりしたあと、うんうん唸り出した。

ロゼッタ「……………………空間魔法が、使えるようになれば…
    要塞法衣《バリケードローブ》を改良して、あるいは――」ボソボソ

――あいにく、小声のため聞き取れなかったが。

ドック「よぅし、つかの間の休憩、終わりっ!もうひと頑張りするぞ、マック!ロゼッタ!」

ロゼッタ「は、はい!…あ、あの!ルカリオさん!
     私は…私の分身体の動向チェックも兼ねて、なるべく会場の傍にいようと思うんです!
     何か不審なことを分身体が仕出かし始めたら、声をかけてくれませんか?」

ルカリオ「ああ、わかった。まあ、結構分身体も減ってきたことだし、
     もしかしたらあっさり全滅するかもしれないけれどもな!
     お前がそこまで責任感に押し潰されることはないさ」

彼女を安心させる意味でも、すこしおどけて話してしまった。
我ながら、らしくない。まあ、彼女も気が気じゃないだろうからな。



ロゼッタ「…………あ、本当です。かなり数を減らしていますね。いいことです。





     ――――って、流石にちょっと減り過ぎじゃないですか、これ?
     何時の間にこんなに倒して…私の気のせいでしょうか」




周りを改めて見渡して、彼女はそう、宣った。

ルカリオ「――――」



ピカチュウの雷で、確実に1人ずつ葬っていって。

集団術式の代償で、勝手に葬られていって。

ファイターの奮闘のおかげで、ときたま転移との鬼ごっこに打ち勝って。

何人か、ピーチの隔離の為に別行動をとったそうで。

確実に、着実に人数を減らしているはずで――――



ルカリオ「……確かに、それでも少なすぎる」

10人、いや下手をすると20人ばかり、人数が食い違う気がする。
何故だ、と考え出すのは簡単だが――愚かだ。
今はそれより、せっかく私がここにいるのだから――――

ルカリオ「今から、偽者たちの波導を、捉えよう。協力してほしいのだが――」ホイッ

ロゼッタ「……ええと、手を繋げばいいのですか?」ギュッ

ルカリオ「ああ。ロゼッタと気配が似ていて、なおかつ負の感情が溢れていればそれが偽者だからな。
     ロゼッタの空間魔法ほど索敵範囲は広くないが…同時に全数ヒットしてくれるのが強みだ。
     波導を記憶に刻んで…よしっ!」バッ!

目をそっと閉じるけれども、イメージとしてはカッと見開く感覚。
神経研ぎ澄ませて、周り全体を「波導のチカラで観る」。
ただひたすらに、観る――――



なるほど、しっかり観えてきた。



そのうち、会場内にいる偽者は、現時点ではどうでもいい。

ぽつぽつと、城下の区画に留まっている奴らもいるが、
これは転生の扉とやらを管理するためにもともと待機しているのだろう。
つい最近飛び出していった、なんてことではなさそうだから、緊急性はなさそうだ。
ファイターの誰かと交戦になり次第、倒されてくれると期待している。



…問題は、一目散に移動していく「波導」だ。
特に周囲に被害を加えているような進路採りではない。
ただ、その位置と移動方向に首をかしげる。

ルカリオ「全部で、16…いや17人、か。不可解な動きをしているな。
     会場など知ったことかと、一目散に外へ外へと離れていく様子だぞ…?」

ロゼッタ「…え?」

ドック「おーい、早くしろよー!サボりとは感心しないな!」

ロゼッタ「ちょ、ちょっと待ってください。すいません…。
     え?17人が、一目散に?」

ルカリオ「ああ。それも、全員バラバラの方向に」

――ある程度の戦力を潜伏させて保険を掛けておこうという算段か?
――それならば願ったりかなったりだ。目論見が筒抜けなら対処もしやすい。
――適当なタイミングで、根こそぎ成敗してくれよう。

だが。
ロゼッタは、そうは捉えなかったようだ。
あくまで怪しい行動と捉え、熟考し出す。

ロゼッタ「…………………………………………
    もしも、敵の、立場だったら―――――――」

動きを止めてしばし。
びくぅっと震えて、ロゼッタが顔を青くした。

ロゼッタ「――――っ!?かく、さん――!?そんな、まさか、でも――
    タブーのFPがあれば、可能……!?」

ルカリオ「――――何か心当たりがあるのか?」

ロゼッタは、息を詰まらせてから、とにかく慌てふためいた様子で。

ロゼッタ「……『拡散術式』の準備に入った可能性が有りますっ!
     ああっ…!遊び心で紙の上で術式を組み立てたのが仇になっちゃいましたっ!」




ルカリオ「…拡散術式?なんだ、それは」

いきなり専門用語が飛び出してきた。門外漢なので噛み砕いた説明が欲しい。



ロゼッタ「むかーしむかしに、私が開発してしまった空間魔法の一つです!
     必要な人員も、FPも、多すぎる夢物語に終わって、机上の空論どまり。
     とても使えなどしませんでしたけどね!

     正多角形の幾何学的配置に術者を配置して同時発動させる、
     ただの集団術式では収まらない、いわば『共同制作の巨大魔法陣』!
     とりわけ、正十七角形配置は最高クラスのスペックを誇る制圧力計算です!
     は、発動してしまったら、とんでもないことに――――!」

ルカリオ「ど、どうなるんだ?正確に教えてくれ!」



通信機を通して、司令部にも伝えられるようにすることを忘れない。
重要事項は、速やかに全員で共有だ。
トゥーンゼルダが、通信機越しに息を潜めるのが分かった。

ロゼッタは、一拍、二拍、空けてから――

ロゼッタ「――っ!私の記憶が、正しければ……この魔法は、それ単独では意味をなしません。
     ただ、この魔法が発動中の領域で、行使者からみて味方の誰かが…
     音、とか。光、とか。『空間を伝播していく』特性を持つ魔法を放った場合、
     『距離に対して減衰しなくなる』んですよ!

     囲んだ領域の全域にわたって、100%の出力で魔法干渉を受けてしまいます!!」





背筋が、凍った。

空間を伝播する、特性、だと?





ロゼッタ「あああ…!仕掛けてきたからには、明らかにその類の魔法を持ち合わせている…
     そう捉えるべきってことですよね!?何か、御存じ――――はわっ!?」

ルカリオ「――――『神速』っ!!」ヒュゴウッ!



堪らず、駆けた。ロゼッタの腕を掴み、紙のように舞わせながら。

ロゼッタ「わ、わわわ、わ!?ちょ、ちょっと!
    どちらまで私を連れて行こうというのですかぁ!」

一瞬にして遠ざかるボクシング師弟が、なにか喚いているが。
冗談ではない。ふざけすぎている。それをされたら、一貫の終わりだ。



ルカリオ「まさか!城下、全域にわたって――――撃つつもりか!

     ――――『OFF波動』をっ!!」

ロゼッタ「お、OFF波動!?それは一体…!?」

     
あれは、まずすぎる。
あの切り札だけは、まずすぎる。


ルカリオ「OFF波動――ピーチによって命名されたそれは――
     たちまち周囲の者の時を止める、端的に言えば石化させてしまう、
     絶望一直線の範囲魔法だ!」

ロゼッタ「――――!?」



そう、「波動」。明らかに、ロゼッタの言う伝播特性の魔法と見て間違いない!
どうやらタブーは、悪事を働くにうってつけすぎる人材を手に入れてしまったようだ!

ルカリオ「絶望一直線、と言ったが。これはあながち飛躍した表現というわけでもない。
     耐魔法というか、魔防というか、特防というか。
     耐性が低いものほど速やかに石化していくのもそうなのだが!

     波動自体に『恐怖、絶望、諦め』の感情を強く揺さぶる作用があるとのことで、
     それに絡めとられると、耐性がますます下がる。その結果、石化は一層加速する。
     つまり悪循環。『もう駄目だ』と悟ってしまうと後戻りができない厄介さ…!」

ロゼッタ「そんな…!心が閉ざされ切って、しまうと、どうなるのですか!?」

ルカリオ「石の体の奥底に魂が引っ込んでしまい――ああ、残酷過ぎて語る気もない!」

前回大会では。奴は、会場に出現して、いざ大暴れ…とは意気込んだものの。
所詮は、OFF波動については会場の広さ程度に効果を拡げるのが関の山、タブーの限界。
観客は、一部動揺する者もいたがバリア機能でなんとか致命傷は避けられ…
ファイターたちは、一般人に比べれば石化スピードは相当遅く、諦めも悪かったのだ。
結果として、誰も狂わず、死なずに済んだ。

おまけに言うと、マリオに至っては「なんか動きが鈍くなったな、風邪か?」で済ませ。
ついでに言うと、デデデ大王が偶然、石化対策バッジなんてドンピシャな保険を発動。
「むしろお前の仕込じゃないのか!」という総ツッコミのオチまで付いたという。

そんなこんなで、スマブラ上位陣の反撃を食らって、ものの10分で退場したのだ。
少なくとも見かけの上では袋叩きからの余裕勝ちであり、演目ということで貫いて、
大会はつつがなく閉幕させることに成功。…こうしてみると、情けない悪役だな。

…だが。今回は、訳が違う。
たぶん、ファイタークラスが食らう分には、そこまで脅威ではないだろうが。
一般人が無差別に食らったりなどすれば、取り返しのつかないことになる!

ルカリオ「その、拡散術式とやら!解除するには、どうすればいいっ!」

ロゼッタ「お伝えしますから、とりあえず、下ろしてくださいよ!…ふう。
     
     …え、えっと、ですねっ!
     仕掛けようとする偽者の私を、拡散術式発動前に1人でも倒すか…
     倒せないまでも、無関係な所に追い出してしまえば、発動は阻止できます!
     綿密な位置関係と、同時刻の術式発動が根幹の魔法なので!

    逆に、一度発動してしまったら――術者自らが破棄するか――
    術者のFPが尽きるまで解除されないと思ってください!
    今回の場合、FPの供給元はタブーで間違いないので、
    偽者の私を全滅させたところで魔法自体は取り消されません!」

ルカリオ「要するにタブーを倒すまで解除されなくなるのと同義だな!?
     何が何でも発動を阻止しなければならないということか!

     ――――おい司令部!聞こえていたか!?
     当てがある者全員を、街の外へ散っていくロゼッタ達の撃破に向かわせろ!
     既に私も最寄りの対象まで向かっているところだ!
     参考人として本物のロゼッタを連れて行く!」

トゥーンゼルダ『わ、わかった!そちらは任せたぞ!他の方面はなんとかして見せる!』

本物のロゼッタを言葉通り「振り回している」が、仕方がないことだ。

ルカリオ(身長1.2m)「背負えないので、このまま――『神速』続行っ!!」ダダダダダダッ!!

ロゼッタ(身長2.05m)「ま、またっ!?
             う、浮いてますっ!体が浮いてますけどぉ――――!?
             あと腕がちぎれ、そう、ですよっ!!」ブオォォォ

ルカリオ「私もPPとスタミナをゴリゴリ削っているんだ!我慢してくれ!」ダダダダダッ!

ロゼッタ「酷いっ!?」










    『……………………』

    『……………………』

    『……………………』

    『……………………そろそろ、動くと、しよう』

~異空間~

ロゼッタ(偽)「…………っ!」ピクッ

ロゼッタ(偽)「…………っ!」ピクッ

ロゼッタ(偽)「…………っ!」ピクッ

ピーチ「え?…ど、どうしたの、いったい」

何度かヒステリックボムを仕掛けてはみたものの、案の定回避に専念されて。
やれやれFPが勿体ないと、手持無沙汰の睨めっこ。
一体どれだけの時間付き合っていた事やら。

いきなり、ブルッと震えたように見えた偽者たち。
私としては、なにかタブーにとって不都合なことが起こった…と思いたいところ。
――――思いたいところ、だったんだけど。

彼女たちは、徐々に徐々にと、口元を綻ばせて行って…。



ロゼッタ(偽)「…………時は、満ちた。タブー様がいよいよ、動かれる時」

ピーチ「…は?」

不吉な台詞。ハッタリであってほしいのに、
クスクスと小さく笑って、こちらを振り返っては、なお笑う。
不気味。不愉快。白状しなさい。

ロゼッタ(偽)「『ロゼッタ』としての知識にはこれっぽっちもありませんが――
        ピーチ姫、貴方はご存知なのでしょう?

       ――全てを凍てつかせる、闇の波動のことを」

ピーチ「――――っ!OFF、波動!」

ピンと、きた。当然よね。忘れなどできようはずもない。
――とうとう、お出ましという訳ね。

ロゼッタ(偽)「ふむ…OFF波動、ですか。そのように呼ばれているのですか。
       シンプルながら、中々よい響きではないですか。褒めてあげます」

ピーチ「…………ふん、やれるものならやってみなさいよ。
   ファイターたちを舐めるんじゃないわよ?あんな攻撃、簡単に打ち破って――」

素の力が高いほど、アレには抵抗しやすいもの。
おまけに今回は。念には念を入れて。
デデデ大王の作ったバッジ効果を、各ファイターの選手カードにスナッチさせたんだから。
もともとの抵抗力と合わせて、無視できるところまで影響を少なくできているはず!



ロゼッタ(偽)「ああ、いえいえ。そんなことは、こちらにもリスクが有るので…
       ひとまずは、しませんよ」

ズン、と空気が重くなった。

ロゼッタ(偽)「貴方が大切にして止まない――王国民に牙を向けたら、
       貴方はどのように慟哭してくれるのでしょうね?」

ピーチ「――――ちょ、っと」

体が、震える。

ピーチ「なに、を、するつもり。そんな広範囲に展開できる、訳――――」

そんな、一気に――タブーの力が膨れ上がるわけが、ない。

ロゼッタ(偽)「ああ、言い忘れていましたね。     
        かれこれ二百年ほど前に、私――拡散術式というおあつらえ向きの魔法を、
        机上ではありますが編み出していてですね。

        これを…そう。『OFF波動』と併用することで、効果範囲をグンと広げられるのですよ」

ピーチ「――――っ!?」

何という、有ってはならないマリアージュ…!?



ロゼッタ(偽)「どのくらい、広がるのか、知りたいですか?
       …うーん、どうしましょうかね?どうしてもというのなら…ふふ」

ピーチ「――――」

必死に、心臓を、落ち着かせようとする。うるさい。うるさい。

そして――――
あいかわらず、絶妙な距離を保ち、私に打倒されないよう警戒したうえで――
ただ一言、小声ながらも澄んだ声ではっきりと、伝えてくる。

ロゼッタ(偽)「――――キノコ城城下、全域くらい、わけないんですよ」



――――――――――――。



どばっと、冷や汗。眩暈までもがお出迎え。
その直後に湧いてくるのは、烈火の怒り。

ロゼッタ(偽)「おやおや?流石のピーチ姫も、
       激昂せずにはいられなかったようですね?」

ピーチ「……あんた、たちぃ………!許さ、ない、わよ…………!」ブチブチッ



最高に、切れている。今の、私。
腹の中、煮えくり返ってるわ。

でも、彼女たちの態度を観る限り、本当に本当のこと、らしい。
もしも、一般市民がまともに受けたら、おそらくきっと致命的。――猛烈な、吐き気。

唇噛みしめ血を垂らしながらも、それでも。
最後の踏ん張りで押し止まって、自身の短絡的な突進を食い止める。

ピーチ「…それ、で。何が望み、よ。
    みんなの命乞いをすればいいのかしら。
    それとも私1人の命と引き換えに見逃してくれる?」

ロゼッタ(偽)「ふ、嫌ですねぇ。そんなこと、しませんしません」

ピーチ「――え?」

ロゼッタ(偽)「その気になれば、自分が死ぬ方が王国の損失と『客観的に』割り切って
        自分が生き延びる方を迷わず選択するお人でしょう?
        ディメーン戦で身に染みてわかっていますよ。

        ですから、そう。変な選択肢など、最初から与えません。




        単純に、絶望してほしかっただけ――――」

ピーチ「な――――」

ロゼッタの姿で、なんてことを言ってのけるのかしら。
野蛮な言い方が許されるなら、八つ裂きにしてやりたい。





ロゼッタ(偽)「トラップを発動させ全てを終わらせるのは――――
       残念ながら、規定事項です!」バッ!

~キノコ城城下~



ルカリオ(――――見つけたっ!)



まだそれなりの距離とはいえ…後姿をバッチリと捉え。
若干スピードを落として慎重に追跡。丁度いい、ロゼッタを下ろしてしまおう。
家屋の陰に隠れて小刻みに姿を見失う?波導を読む私にとっては些細な事項。

魔物達は、律儀に彼女だけ無視して暴れている。当然の帰結ではあるが歯痒い。

ルカリオ「トゥーンゼルダ!対象を発見した、あと1分もあれば仕掛けられる!」

トゥーンゼルダ『助かった!他の奴らはまだ遭遇できていなかったんだ!
         位置が微妙に悪かったうえに、口頭で伝えるしかないからな…!』ホッ

ロゼッタ「あ、あの、ルカリオさん」

ルカリオ「ルカリオでいい、さん付けはこそばゆい」

ロゼッタ「で、では。ルカリオ、1分と言わず、貴方のスピードで10秒で急接近しましょうよ!
     対処を余儀なくされて、簡単に目的の位置から追いやれるはずで――――」

ルカリオ「神速がちょっとPP切れになった、という苦々しい事情もあるが。
     駄目だ、追いやるだけでは。いつ舞い戻られるか分からないからな。
     時間に余裕は少しあるみたいだから、慎重に近づいて確実に仕留めたい。
     察知されて空間転移など使わせてはいけない、気付かれていないのは僥倖だ」

ロゼッタ「で、ですが……なんだか、嫌な予感が――
     流石に、一切後ろを振り返らないのは無警戒すぎる、ような――
     ゆ、油断しがちな私の分身らしいといえば、らしいのですが…」

ルカリオ「案ずることはない!むしろ、だからこそこのチャンスをものにすべきだ!」

小声で返しつつ、しなやかな足取りで接近、接近。もちろん裏道から、ばれないように。
隠形は得意な方だからな。ロゼッタはその限りではないから、もう少し近づいたら待機してもらおう――――



その時。
ロゼッタがグイッと、ありったけの力を込めて私の背を押しやった。



ロゼッタ「――――――――!!!
    ルカリオ、全速力で相手を吹き飛ばして!速くっ!!」

ルカリオ「な、なにをいきなり急に、まだ街の外れは先―――」



こんな中途半端なところで、まさか術を始めるとはとても――――

予想だにしないことが、発生した。
まだまだ城下を抜け出していないのに、偽ロゼッタが動きを、止めた、だと?



数秒の祈るようなそぶりののち、瞬く間に天に片手を掲げ――――
舞い降りる、光の束。静まる、空気。…………足元には、既に、魔法陣の片鱗がっ!?

ルカリオ(途中で、領域拡大を切り上げた、だと!?
     追いつく間際の…都合のよすぎる、ギリギリ目一杯のタイミングで!?)

ロゼッタ「――――私たちを含めた追跡作戦が、敵方に漏れていますっ!
     私のことは無視して、急いでください!」

ルカリオ「――――なんたる愚!なんたる油断か!」

相手を見くびり、驕っておいてのこの体たらくか!神速がもう使えないのが悔やまれる!
それでも再び、可能な限りの高速で駆ける!このヘマの埋め合わせは、命懸けで――――



そこに迫り来る、大剣の不意打ち――

ガノンドロフ「ハッ!!」ブウゥゥン!!

ルカリオ「ゴフッ!?」

あまりに狭かった視野。巨漢に横槍を許し、一気に肉薄されてしまう。
パワータイプのそれは、たちまち腹にめり込んで私を毬のようにはじき返した…!

ルカリオ「ぐっ…貴様…!」

そびえ立つ、悪意の塊。
ずっしりと構えるは、ハイラルの三傑の一人にして、『力』の具現化のような男――

ガノンドロフ「無様だな――
      フン、手間を掛けさせおって。とっとと発動しろ、小娘め」

なんだかんだ、私たちの敵であるのは確かなのだ。
完全な協力関係ではないとはいえ、タブー側を利するように動く、ガノンドロフ。

ロゼッタ(偽)「――――ははっ!最高のタイミングでのアシスト、感謝です。
       ハアアアアアアアアアアアアアァァァ――――――――!!!」パアアアア

まだ残る、それなりの距離は、偽ロゼッタを安心させるには十分だったらしい。

足元で紫色に輝く、魔法陣。その輝きは瞬く間に勢いを増す。

一条の光が呻りと共に地を這い、私たちの足元を潜って――
今駆けてきた道を走り、城下の中心部へと駆けていく。
更に偽ロゼッタが伸ばす両腕に従うかのように、左右に走る光。
…届く先は、正多角形の隣の頂点に位置する別の分身体なのだと、素人考えでも容易に想像できた。

ロゼッタ「あ、ああっ!術式が完全に進行していますっ!」

激しい地鳴り、震える大地。私が受ける感覚も大層なものだが。
ロゼッタは特にけたたましい危険サインとして、魔法の発動をその身に感じているらしく、
苦しそうにふらついて頭を抱えている…!

ルカリオ「くそっ!!」

気を改め、分身体に繰り出すは、八頸。

油断していた相手は受け止めることも出来ず、無残に屍を――――
さらすことなく、勝手に、自分から消えて行った。
こちらを伺う最後の表情は、勝ち誇ったなんとも醜悪なもの。



ルカリオ「……ロゼッタ」

ロゼッタ「…………はい」



ロゼッタの方を、半ば放心しつつ、振り返る。
いや、もしかしたら、術式が完成し切らず不発に終わり、要らぬ心配だった、とか…。
藁をもすがる気持ちで、返事を待つ。





ロゼッタ「…………………………………………
    拡散術式。最高クラスのが、ガッツリ発動されちゃいました。
    どう、しましょう」

振り向き返すロゼッタは、なんとも乾いた笑いを浮かべていた。

切り替えだ。そうだ、頭を切り替えて仕切り直せ。
下手をすると、犠牲者を出すか出さないか、ではなく…
犠牲者を何人減らせるか、という状況に後退してしまったかもしれない。
それでも嘆くのは――――ああ、後回し。

ふと見れば、無防備なロゼッタへと、邪悪に笑って大剣を振り翳すガノンドロフ。
――――!?…どういうわけか、ロゼッタが回避行動をとらない!?

我に返って、素早くロゼッタとの間に滑り込んでガードするっ!
このあたりの覚悟の差は、やはり仕方がないものがあるか!

ロゼッタ「きゃぁっ!!あ、あぶな、かった…!!た、助かりました!
     そ、そうですよね!今は死んだら終わりですよね!?残機制じゃ、ない!」

ルカリオ「人のことを言えた義理ではないかもしれないが、余所見をするな!
     何を呑気なことを言ってるんだ、全く!脳天に刺されたいのか!」グググッ!



ロゼッタ「――――――――――――??」ズキン



ロゼッタ「……あ、は、はいっ!忠告痛み入ります!」

ガノンドロフ「フン、消え失せろ、死にぞこないの雑魚が――」

ガノンドロフが続けざまに剣を振るう。それも2本。
片手で易々と振り下ろされる大剣はかなりの重量物。
ロゼッタを庇いながらだと流石に辛い!

丁寧に受けて堪えるしかなく、腕から血が滴り落ちる――!

ロゼッタ「―――――――強い…!」ブルッ・・・

ガノンドロフ「魔王の覇に今頃気付くとは、愚かしいにも程が――」



ルカリオ「…いや、流石にロゼッタは敵わないかもしれないが、
     ファイター基準でいうとそれ程…というレベルだぞ。
     私でもロゼッタを庇う必要さえなくなれば勝てる」

ロゼッタ「…あ、やっぱりですか?
     最近、散々扱かれてきた『強者』と比べると、そこまで脅威ではないような気がしていました!
     というわけで離れて見学しますっ!押し付けて申し訳ございません!」

ルカリオ「むしろ先に引き返しておいてくれ!すぐに追いかける!」

ロゼッタ「わ、わかりました!」

ガノンドロフ「」

ガノンドロフ「…………ほほう?魔王に盾突くばかりか、愚弄するとは、無謀な獣よ。
       ならばここで屍を晒すが――――」プルプル

ルカリオ「波導は、我に、有り――――!」スッ・・・

ガノンドロフ「無駄な真似をっ!」ブゥン!

シュンッ!

ガノンドロフ「ぬう!?小賢しい、フェイントなどとは――」



――――瞬間移動とまではいかないが。
――――相手の心を読み、裏をかいて一気に懐に忍び込み。
――――大剣が頭を掠めて切傷ひとつ。そのくらいなら安い代償だ。



ルカリオ(乾坤、一擲ッ!)

ルカリオ「でやあああああああああっ!!」ズドドドドドドドッ!



ルカリオの インファイト!
効果は 抜群だ!▼

ガノンドロフ「」\98.6%/

ロゼッタ「わぁ…!」

ガノンドロフ「お、のれ――――!」ドクドク



一目散に走っていけばいいものを。
ロゼッタは足を止めてこちらを振り向いてしまっている。
そんなロゼッタには、私が、一瞬のうちに消えたようにみえたかもしれない。
神速を使ったときは手を繋いでいたから、逆に体感できなかっただろうがな。



ルカリオ「――――終わりだあああぁぁっ!!」ゴウッ!

鋼の拳が弾丸となって、ガノンドロフの顔面を貫いた。

ガノンドロフ「」チーン



ルカリオ「…いやまあ、実際に顔に穴が空いたわけじゃないけれども」

ロゼッタ「ソウデスネ、ソウ簡単ニ人体ニ大穴ナンテ空キマセンヨネー」

ルカリオ「…何故棒読み?」

ロゼッタ「アハハ」

ロゼッタ「……失礼しました。――――あ、ガノンドロフが消えて行きます」

ルカリオ「…ああ、そうだな。
     やはり本人ではなく、紛い物、か。まあいい。
     今回の騒動にはもはや関われなくなっただろう。
     おそらく、ハイラルの魔物に関しては士気も下がる。

     …それにしても、抜群インファイトで確1取れないか。
     まだまだ弱いな、私は――――」

ロゼッタ「……………………」フラッ

ロゼッタ(……あれ?な、なんだかさっきから息が…詰まる?胸が苦しい、ような――
    …………………気のせいですか、よかった。今更怖気づくとか勘弁ですよね)

ルカリオ「おいロゼッタ、相変わらず集中力が途切れがちなのか?」

ロゼッタ「まあ、連戦のせいでHPが黄色ゲージに突入してそれなりに経ったとは
    自覚していますけど…。でも、致命傷とかは特段受けていませんよ。
    鍛えられた成果です、はい!」

ルカリオ「…そうか。大変だろうが、まだまだ気張って貰わなければ困ることになった。
     最悪の状況を想定して動くぞ。

     間もなく、間違いなく、OFF波動が繰り出される。
     そう、それは――――」



――――ほんの5秒後の、ことだった。

~司令部~

《タブー軍、偽者のロゼッタ達により拡散術式が発動したことで、やる気上昇!》

トゥーンゼルダ「――――っ!」ギリッ

《ルカリオ、ガノンドロフを撃破!ハイラルの魔物、大幅にやる気低下!》

トゥーンゼルダ「それはいい、いいことなんだが…!
        手放しでは喜べない、な。

        一体全体、どうして敵に情報が漏れた…!?」

キノピオ「…………?」ヒソヒソ

キノピオ「……………………?」ヒソヒソ

ソニック『おい、司令部!こちらソニック!一大事だ、報告するぜ!
     もう少し早く伝える機会が有ればと思うと、ノロマな自分が腹立たしい!』

トゥーンゼルダ「ど、どうしたソニック!こちらもパニックになり掛けていて…」

ソニック『情報が漏れた、しょうもない絡繰りが分かったぜ!
     ルフレ…じゃなかったか、ギムレーって奴がいただろ?
     そいつに一部の工作員キノピオが襲われてやがった!
     瀕死の所をなんとか逃走優先で救出したが!』

トゥーンゼルダ「何だと!?」

ソニック『要するに、余ってた通信機を敵側が奪い取ったってことらしい!
     そん時から、俺たちの情報のやり取りが筒抜けになってる!
     …もちろん、この会話含めてな!伝えるかどうかちょっと迷ったぜ!』

トゥーンゼルダ「……!!」アゼン

ソニック『――――いいか、頼んだぞ!お前の知恵にかかってる!』プツッ

トゥーンゼルダ(ソニック…!迂闊に口を滑らせることを避けてくれたのか。
         だが、私の方こそ、迂闊に指示を出すと、裏を掻く側が圧倒的に有利――

         このドタバタ状況で、通信機の識別なんか、できていない!
         ピーチなら割り出し可能かもしれないが、少なくとも私には無理難題!
         通信機が、もう、使えないっ!?)

トゥーンゼルダ「み、皆!しばらくの間、各自判断で行動してくれ!
        私からの指示は一旦保留とする!皆からの状況報告のみ、
        随時…司令部に向けて行ってもらいたい!不甲斐なくて済まない!」

トゥーンゼルダ(これでは、あまりにも――)

トゥーンリンク「ゼ、ゼルダ!しっかり!きっと対策があるはずだよ!」

ヒルダ「本当に、酷い…………」

ゼルダ「…もう我慢できません。私も会場外の助太刀に参ります!
    トゥーンゼルダの警護は任せましたよ!」ダダッ!

トゥーンゼルダ「…あ、あ。たのみ、ます」ウツロ

トゥーンリンク「ねえ、元気出してってば!精神が揺らぎ始めてるよ!」ユサユサ



――――その時、だった。




    『――永遠に。世界と、現世と、隔離されるがいい――!』




トゥーンゼルダ「…!?なんだか、みょ、うな、悪寒が」

ヒルダ「…っ!?な、なに、これ」ビクッ

トゥーンリンク「…やばっ!タブー、まさか――――!」

隔壁に厳重に守られ引き籠っていたタブーが、動いた。



一瞬縮こまったかと思うと。膨れ上がり、そして――――

隔壁の中が闇に染まる。



中の様子が、一切推し量れないほどの、まっ黒。

皆が、驚愕の表情をする中――――








隔壁が、解除、された。

狂暴なナニカが、たちまち、会場を、城下を、覆い尽くす――――!



「OFF波動」、ここに発動。

クッパ『――――――――皆、聞くのだっ!』

敵側に動きがばれるのも承知。
クッパの大音量の声が、突然通信機から発信される。

クッパ『ワガハイとピーチの策で、選手カードにはOFF波動に抵抗する仕掛けが
   施されているのだ!そう簡単には石にならん!絶対に手放すな!

   それと、多少は周囲の人間にもプロテクト作用がある!
   石化を開始したり恐慌状態に陥ったりした一般人がいれば、
   すぐさま駆け寄り保護するのだ!

   この情報を聞いて、カード奪取に動く不届きな輩がいたなら
   問答無用、容赦なく叩きのめすのだ!以上だ!わかったか!』



トゥーンリンク「た、たすかる、よ。少しは希望が、持てる、かな。
        …なーんて、言ってられない、ね!」ガクッ

トゥーンリンクの 全ステータスが 下がった!▼

ヒルダ「う……な、なんです、か、これぇ…!」ガクッ

ヒルダの 全ステータスが 下がった!▼

トゥーンゼルダ「き、きっつい―――これ、が、OFF波動という魔法…
         気力が、ごっそり、吸い取られていく――――!」ガクッ

トゥーンゼルダの 全ステータスが 下がった!▼

トゥーンリンク「ほ、本当に怖いのは、なんといっても石化しちゃうこと、だよ!
       偽者のロゼッタの仕掛けで範囲が広がって――
       
       う、ううん。威力自体も、ぜ、前回より多少は上がって、る…!」

トゥーンゼルダ「そ、そんな――――――うっ!?」グラッ



トゥーンゼルダの 全ステータスの 低下が 止まらない!▼



トゥーンリンク「…!?し、しまった!ゼルダっ!絶望しちゃ駄目!
        精神干渉も一癖あるよ!一度はまると、際限なく能力低下を招くよっ!

        そういや…選手、カードッ!持ってないのかっ!
        ほ、ほら!僕の選手カード、貸すから!

        …予想以上に危険だ!僕たちも油断なんかできないけど…
        特に今回初出場のファイター程度のレベルだと、ひとたまりもないぞ…!」

パルテナ「ぐぅっ!?」ガクーンッ!

パルテナの 全ステータスが 大きく下がった!▼

ピット「パルテナ様!?急に倒れて一体――わわっ!?」ガクッ!

ピットの 全ステータスが 下がった!▼

パルテナ「…………い、いやあ。たまには地面で寝転んでみたいなー、
      なんて思っちゃったもので」

ピット「……こいつは、きついや…!
   パルテナ様は、もっと大変なことに――!?」



リンク「ついに、来ちまったか…!」ブルッ

リンクの 全ステータスが 雀の涙ほど下がった!▼

ピット「リンクずっこい」

リンク「知らねぇよ…」

ルキナ「うっ…!?」ガクーンッ!

ルキナの 全ステータスが 大きく下がった!▼

ルフレ「…こ、これが――――力が、抜けていく―――」ガクーンッ!

ルフレの 全ステータスが 大きく下がった!▼

マルス「2人とも、しっかりするんだ!大丈夫、僕たちがサポートする!
    ルキナッ!僕の選手カードを代わりに持っておいて!」

マルスの 全ステータスが ちょっと下がった!▼

アイク「勝手なこと、しでかしやがって――――!」

アイクの 全ステータスが やや下がった!▼

マルス「…アイク!予定を早めて、急ぎリンク達と合流するよ!
   悔しいけれど、僕たちだけだと2人を護り切れないのも事実なんだ!
   このままだと、雑兵相手に苦戦するような状態の2人を背負って、
   ジリ貧の戦いをすることにもなりかねない!」

アイク「まだこの辺りは制圧し足りないんだが…ああ、わかった!
    …って、リンクの位置が通信機なしじゃ分からないぞ!
    いっそのこと、敵にばれるの承知で使うか!?」

マルス「……通信機強奪を考えたのが、あのギムレーという男だからね…。
   あの男の性格的に、因縁のあるルキナの場所を割り出せたら、
   間違いなく不意打ちしてくるよ。あまり、好ましくはない。

   トゥーンゼルダとリンクとのやり取りからある程度は推測がつく。
   その付近で大暴れしているファイターがいれば、それがリンクだろう。
   制圧被りしないよう、他のファイターも接近を避けていたはずだから!」

アイク「なるほど。リンクに負担を押し付けるのは情けないが…
    それじゃあ、行くぞ!……って、ちょっと待った!
    悲鳴が聞こえる!あっちに逃げ遅れた人がいるようだ!」ダダダッ!

マルス「――ナイスな判断だ!なんとしてでも助けよう!気付けて良かった!」

翼竜たちが、一点に集って、誰かを襲っている。
その人は、血まみれになりながら、ただただ蹲っている。

アイク「そこを――――どけぇっ!!」ブウゥン!

いくら戦闘力が下がったとはいえ、所詮アイクの敵ではないね。
たちまちのうちに全部まとめて切り伏せてしまった。

目の前には震えたままの住人、あるいは観光客かな?
安心させようと、こちらを認識してもらうつもりで肩を抱いて揺すぶった。
タオルなんて気の利いたものは持ち合わせていなかったので――
僕なんかのハンカチで悪いけれども、さっさっ、と血を拭ってあげた。

――――拭ってあげようと、した。



アイク「――――」ピタッ

アイク「――――お、おい。まさか」

マルス「――――――――っ!アイク、君のカードを!」



――――絶望のあまりか、石化が、始まっているっ!?
――――本当に、効果を拡げていた、タブーの魔法!
――――おまけに…ファイターと一般人の差を、あまりにも舐めすぎていた!?

今さらながら、アイクが選手カードを彼に押し付け、加護を与えようとするも――

住人「もう、だめ、だ――――し、しぬ、んだ――――」

マルス「――――待て!早まってはいけない!
    待つんだ!僕たちが君を助けた!もう助かったんだ!だから!」

聴く耳を、持ってくれない。
ガタガタガタガタ、ただひたすら咽び泣いて。
その声が絶望を強めるたびに、カードの回復力などあざ笑うかのように――
足元から、瞬く間に、石化が、進む。

アイク「クソッ!クソッ!ちょっとは役に立てよ、
    ピーチとクッパの自信作のアイテムだろ!そうなんだろぉ!」

固まる。
泣く。
固まる。固まる。
回復して、少し石化が解ける。
固まる。固まる。固まる。
泣く。泣く。泣く。
固まる固まる固まる固まる固まる固まる固まる固まる固まる――――――――



住人「                」



かんぜんに、石になった。

マルス「――――――――」

天を、仰いだ。

アイクが、堪らず地面に拳を打ち付ける。
多少の鮮血とともに、舗装された道が瓦礫となって吹き飛んだ。

マルス「――――先を、急ごう」

アイク「はぁ!?…ちょっと、ちょっと待てマルス!耳を疑ったぞ!
   この感じだと、この付近のぎせ…い、いや、被害はまだまだ広がるぞ、まさに今から!……拡がる一方だ!
   俺たちが離れたら、本当におしまい――――」

マルス「だからって、人々を必ず石化から守れるとも分からないカード片手に、
    付近を巡回して、闇雲に時間を費やすかい?――それこそ被害を拡げるよ!
    
    今の皆の状況は、時限爆弾を括りつけられて放置されたのと同じだ。
    そのタイマーを少し遅らせるだけじゃ、何も解決しない!
    幸い、石化は死と必ずしも同義というわけでは…辛うじて、ない。
    原因そのものを叩いて、全てを解除すれば、元通りなんだ。

    ――――そのためにも、僕たちという戦力を腐らせるわけにはいかない。
    最速で敵を倒すために策を講じることが、今やるべきことだ」

アイク「ルフレやルキナのことは俺たちの手間を増やしてでも、
   こうやって助けようとしているだろう!それと一緒じゃないか!」

――――はっと、した。そうかも、しれない。僕は自分勝手に過ぎるようだ。
――――助けたい人に優先順位を付けてしまっていたなんて。
――――冷静なように見えて、一番周りが良く見えていないのは僕なのかもしれない。

ルキナ「――――――――」

アイク「――――あ、いや、ルキナ。ルフレ。
   別に俺はお前たちを助けることを苦に思っているというわけではなくてだな!」クルッ



ルキナが、顔面蒼白にして、吐き気を堪えようと、うずくまっていた。
様子がすこぶる、おかしい。体が言うことを――聞いているようには、みえない。



ルキナの 全ステータスの 低下が 止まらない!▼



マルス「…………はっ!?
   今の光景は、ルキナには毒すぎる!ルフレも時間の問題といったところか!」

ルフレ「…は、はは。マルス様には…敵いません、ね。
    で、ですが。まだまだ虚勢は張らせて頂きますよ」ブルブル

マルス「…急いで離脱するよ、アイク!本格的に危うい!
   妥協しよう。その住人を唯一の犠牲者と信じて、その人だけ背負っていくのは許す。
   それ以上、君に負担を強いるわけにはいけない。分かってくれ」

周りには沢山の家屋、商店、飲み屋に飯処。少し歩けば公園だって旅館だって、
それこそ人がいておかしくないスポットは無数にある。
どうして、逃げ遅れた人が1人も他にいないと言い切れようか。

いきなり背負われ恥ずかしがる…そんなそぶりを見せる余裕すらないのか、ルキナは。
覚束ない足取りながらも、ルフレも後に続いてくれた。





アイクは――――



アイク「――――――――ちくしょう!後で一発、殴らせろよっ!!」



あれやこれや、煮えくり返って。くぐもった涙声になりながらも。
住人担いで、なんとか後に続いてくれた。



せめて――リンクと合流するまで、通りかかった人たちだけでも救えたら。
心からそう願った。

少年が、はぁはぁ息を切らせつつ走っている。
走りながら腕を引っ張るは、同じくらいの年の少女。



少年「ゴホッ、ゴホッ…勘弁、して、くれよぉ…!うるさいし臭いし煙たいし…
  どっちに向かえばいいんだよ…!どっちかわかる!?」

少女「……………………あっち!」ビシッ

土埃まみれでせき込む少年に対し、少女は迷わず、繋がれていない手で指し示す。



少年「…指差してくれるのは嬉しいけど、その心は?」

少女「女の勘よ!」

少年は拍子抜けして転びかけながらも、やれやれと苦笑して示された方向へ。
こういったとき、一番よくないのは悩んで足を止めることだと、経験上よくわかっているから。

少女「――っ!?何か来るわ!?」

少年「なら、よけーる!避けれなかったら…そのときまた考える!」

冴えわたる、第六感。
少年に引っ張られるまま少女もそのまま大きく動いて――
間一髪、上空からの狙撃を横っ飛びで躱す。

まさか振り向きもせず躱されるとは思っていなかったのか。
上空の影は無理に追い縋ろうと、碌に前も見ず旋回し――――
建物の突き出しに裂かれてあえなく墜落していった。

少年「うっしゃーラッキー!儲け儲け!あの竜アホだな!」タタタッ

少女「お茶らけたこと言ってないの!急いで急いで!」タタタッ

少年「いやいや、このくらいお茶らけてないとやってられないんだって!
  俺たち、ヨワヨワだし!簡単に死ぬし!空元気バンザイってやつ!?
  それに得てして、このくらいフザけてる位が一番死ににくいんだよ!」

少年はそう自虐するが。
角を曲がってバッタリ出くわした、剣を持って襲い来る不届き者。振りかぶった剣は相応に速いけれども――

少年「!?――そりゃあ!!」パアアァ!

雑兵「」チーン

少年「―危ねっ!?怖っ!?…チカラ無駄遣いしたくないんだけどなあ」タタタッ

――――ちょっとした下っ端くらいなら、なんてことはないらしい。

少女「はいはい、ふざけるのはそこまで。
   はやく探し出さないと、取り返しのつかないことになるわよ!」タタタッ

少年「ふざけてなんか…あー、はいはい。わかってるってー。

   だいたい、事態が動いてからジタバタするんじゃなくて、
   ファイターたちが一斉に瞬間移動してきた時、すぐコンタクトを取るか…
   せめてストーキングしとけば楽だったんじゃあ。得意でしょ?」タタタッ

少女「ううううるさいわね!会場にいれば安心だと思ったのよ!
   動かなくていいかもしれなかったし、局面を見極めてたの!
   そしたら、ビューンって感じで一目散に駆け出されちゃったし!
   あと、ストーキング得意とか言うな!

   と・も・か・く!今頑張らなくて、何時頑張るっていうのよ!さあさあ!
   姫様の期待を裏切るって言うの!?」タタタッ

少年「へーい。…それにしても、他のファイター達すら見当たんないや。
   聞いて回ることもできやしない。やっぱり俺たち機動力ひっくー!
   ソニックさんとかでも通りかからないかな、運んでもらえるんだけどっ!」タタタッ

少女「そこ、無い物ねだりしない!」タタタッ

少年「………………………………………………………
   いや、ここはあえて――現状打破とジンクスブレイクを兼ねて、無い物ねだりしてみよう」ピタッ

少女「…………は?」ピタッ

少年「――――――――――――――――――――――――――――――――
   うわああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁ――!!
   体が石になるるうううううううううううううううううぅぅぅぅぅぅ!!
   だあぁれえぇぇかあぁぁ、たぁすけええええてえええええええぇぇぇ――!!!!」

少女「」

しかし、なんとも単純な子供じみた作戦ながら、ファイターの注意を引くには十分。
甲高い悲鳴に呼応するように、飛んできたファイターが一人――!



少女「うわあ、恥を知らない馬鹿は、馬鹿なりに役に立つ場面が――」

少年「ほらみろ、効果てきめん!最初からこうしておけば――」



デイジー「天が誰呼ぶ我を呼ぶ!世界を救えと皆が呼ぶ!
     泣く子も駄菓子で黙らせる、ステキなお転婆お姉さん!
     サラサ・ランドの王女、デイジー参上!!」ズサァーー!

少年「」

少女「」

デイジー「リアクションが欲しいなっ!…いやいや、それよりも!
     どうしたの、大丈夫!?ケガはない!?
     石になり始めたってホント!?…あれ、そうでもない!?

     というより、私誰だかわかる!?デイジーだよ!
     そこそこメディアに露出してるから知られてると思うけど!
     おっと、露出って言ってもイカガワシイ意味じゃないよ、念のため。
     姿をあっちこっちで見かけるって意味だよ。知ってた?偉いぞ♪」

怒涛の如く、しゃべくるお姫様。最後はウインクで締めて見せる。
少年と少女は、唖然とするばかりで、しばらく動くことができなかった。



少年「いや、ほんと――――さっさとやっとくべき頭脳プレイだったんじゃね?
   悔やまれるにも程があるんだけど」

少女「…そうね。喜ばしきことなのに悲しくなってくるわ」

デイジー「???」

あちこちで爆発音が聞こえると言うのに、
ため息と、腑抜けた言葉を吐いてしまうのは仕方がない。

デイジー「――――あれ?貴方たち、どこかで会ったこと、あるような、ないような……」

少年「おおっ!さすが、放と…いや情報通なデイジーさんなだけのことはあるね!
   できればそこは『ある』と断言してほしかったけど」

デイジー「…放蕩って言おうとしたね!?子供だから大目に見るけど。
     …いや待った、子供に言われたからこそ憤慨するべきなのかな私は?」



少女「――――――――お願いが、あります」

少女が、真摯な表情でぺこりと一礼。



デイジー「…んん?どうしたの畏まって。言ってみて?」

基本、困った人は放っておけない性分のお姫様なもので。
気さくに話しかけ、気さくに提案に乗っていく。

少女「…私たち、この時の為に――ずっと、構えていたんです。
  『仲間』は決して多くはないけれど。おまけに一人一人は、弱いかも、だけど。
  頼られたからには、数年かけて――準備してきたんです。

  もちろん、招待されて、大会自体を、お祭り騒ぎを、そっと楽しんでいたっていう事実もある、けど。
  裏方として目立たないよう、そう、ひっそりと――」

デイジー「…え?え?な、なんの話?」

少年「デイジーさん。アンタを探してたんだよ、まさしく!
   運がいいのやら悪いのやら!…いや、きっといいに決まってる!
   さあ反撃の狼煙だ!…というわけで、協力してほしいんだ!

   こればっかりは、俺たちだけじゃどうにもならなかった!
   アンタがいないと、俺たち輝けないっぽい!」

デイジー「は、はあ?」

少女「…『こうなった時』は貴方を頼るよう、貴方の親友から――――





   そう、ピーチ姫から、託されました。ずっとずっと、前から。



   私たちに、チカラを貸して、くれますか?」

デイジー「――――っ!?」

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