勇者「魔王封印するつもりがミスって殺してしまった。俺はもうダメかもしれない」 (416)

勇者「……」

勇者「いややべえよ」

勇者「どうすんだよこれ」

勇者「魔王死んだら勇者とか厄ネタまっしぐら」

勇者「みんなに命狙われて殺されるに決まってる」

勇者「先祖代々わざわざ魔王封印してきたのってそういうことだろ絶対」

勇者「やらかしマン惨状~!wwwwwwwwww」

勇者「笑えねえよ[ピーーー]ぞ」

勇者「俺はもう駄目かもしれない」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1575388357

勇者「……」

勇者「言い訳をさせてくれ」

勇者「俺は弱らせてから封印しようと思ってたんだよ」

勇者「でも魔王強すぎて加減する余裕なかったんだよ」

勇者「素でクソ強いのに封印耐性?魔法無効?回復不可?」

勇者「いやラスボスがやっちゃダメでしょそういうメタは」

勇者「なんなのあいつ。マジでなんなの」

勇者「……」

勇者「前向きに生きよう」

勇者「まあ俺多分殺されるんですけどね」

勇者「ハハッ」

戦士「っ…勇者、やったのか」

勇者「あ、はい戦士さん。怪我大丈夫ですか?」

勇者(戦士さん。魔王城直前の町で防衛部隊の隊長やってた人。人…ゴリラ…?頭いいし物理がパワーでタイマン張ったら死。妻帯者だから家族人質に取られたら多分躊躇いなく殺しに来る。やばい)

魔法使い「痛ぅ…あー、私生きてる…?」

勇者「ちゃんと生きてますよ魔法使いさん。強化魔法ありがとうございました」

勇者(魔法使いさん。樹海に住んでたエルフのハーフ。魔法どころか近接もできる。さっき知った。遠近中万能とか勝てる要素なし。研究資金とかレアな触媒とか欲しがってたし命令されたら普通に殺しにきそう。やばい)

僧侶「勇者様、終わりましたね。これで、全部…」

勇者「そうですね。僧侶さんもお疲れ様でした」

勇者(僧侶さん。世界でたった一人の聖女様。魔王の魔法直撃してもピンピンしてるし魔法の威力もえげつない。回復も補助もできるからなす術なく死。宗教家だしむしろ率先して殺しにきそう。やばい)

勇者「詰んだ」

戦士「?」

勇者「ナンデモナイデス」

戦士「それじゃ…帰ろう。魔法使い、リレミトは使えるか?」

魔法使い「魔翌力空っぽって言ったでしょ。僧侶は?」

僧侶「すみません、私も…」

勇者(もしこのまま帰ったとしよう)

勇者(そしたら王様、教会、民衆、軍、犯罪者ギルド、魔女同盟、その他エトセトラから命を狙われるのは間違いない)

勇者(そりゃメガンテみたいな人間がその辺散歩してたら邪魔だし何より怖いもん。気持ちは分かる。俺だってそうする)

勇者(というか、困ったことにこの三人もその中のどれかに所属してるんだよな)

勇者(つまり三体一で襲われる)

勇者(死ィ~!wwwwww)

勇者(もうここで闇討ちするか?)

勇者(落ち着け。冷静になれ)

勇者(この三人死なせたらそれこそそれぞれの勢力に狙われることになるだろ。だから必死こいて死なないようにやってきたんじゃねえか)

勇者(ただでさえキツいのに大義なんて与えちゃったらもうどうしようもなくなる)

勇者(…でももうこんなチャンスねえよなぁ…)

勇者(魔王になすりつければ…いけるか…?)

僧侶「勇者様もそれでよろしいでしょうか?」

勇者「ん、え?あ、はい。何がですか?」

魔法使い「何を上の空で考えてるんだか。戦士、もっかい言ってあげて」

戦士「王都に帰るためにも、まず俺の街で休んで疲れを取らないか?そう裕福じゃないが、できる限りの歓迎は約束するぞ」

勇者「いいですね。そうしましょう。戦士さんの奥さんにも挨拶しておきたいですしね」

勇者(俺も疲れてるし、とりあえずそこで休んでから色々考えよう)

勇者(悩んでるうちに街に着いちまった…)

兵士A「勇者様!よくぞ戻られました!隊長もご無事で何よりです!」

兵士B「空が晴れるのをこの目で見ました。私の生きているうちに日の光を拝むことが出来るとは…思わず泣いてしまいましたよ」

僧侶「勇者様が魔王の魂を滅したからでしょうか…?」

勇者(あっ、バッ!?)

兵士A「おおお!それは真ですか!我が王国の因縁をついに!」

兵士B「このことを一刻も早く国王に!」

勇者(やばいやばいやばい!王様に伝わるのも時間の問題じゃねえかこれやばい!)

勇者「あ、あ~いや、断言は出来ないというか、実は生きてる可能性がなくもなく…」

兵士A「何を仰いますか!あなたほどの方が!」

戦士「すまない。話はまた後にしてくれ。みんな疲れているのでな」

魔法使い「そうして。私もう限界」

勇者(ざっけんなお前ら)

戦士「宿の部屋を三人分用意出来るか?」

兵士B「既に。宴の準備も筒がなく進んでおります」

戦士「助かる。勇者、俺は家へ行くがお前達はどうする?」

勇者(   )

勇者「じゃあ…ハイ自由行動で。俺は宿で報告書書いてますんで」

魔法使い「私も宿で寝てるから。時間なったら起こして…」

僧侶「私は少し…教会の方に」

戦士「分かった。宴の時間になったら部下を向かわせよう」

勇者「……」

勇者(オワタ)

勇者「盗聴水晶なーし。盗撮水晶なーし」

勇者「……」

勇者「ああああああああやばいやばいやばいやばいやばいいいいいいいいい!」

勇者「魔王死んだら勇者いらねえって王様が思わない可能性!!」

勇者「なんと!!!0パーセント!!!」

勇者「そりゃそうだよ!!俺だってそう思うわボケ!!」

勇者「それもこれも全部アイツらのせいだよ!!!やっぱ闇討ちしとくべきだったじゃねえか俺の馬鹿野郎!!!」

勇者「どうする!?逃げるかもう!?」

勇者「どこに!?!?!?」

勇者「王都が駄目だとして、故郷はどうだ?あんなど田舎、それに母さんなら信用…」

勇者「いや… 母さんだって人の子だ。報奨金でもつけられたら秒で売るに決まってる。人間だもの」

勇者「教会はどうだ。あそこは生命至条主義だ。王国民のほとんどが信者だから国王だって無碍には…」

勇者「馬鹿か。魔王殺した勇者なんてそれ自体が宗教みたいなもんだ。神の代わりに俺を崇めるアホが出てもおかしくないし、それくらい連中だって分かってるはずだ」

勇者「大体僧侶だって疲れてるのに教会に行ったのは何故だ?このタイミングだ。怪しいなんてもんじゃない」

勇者「他は…エルフの森?あいつら人間嫌いだし、王国との国交も断絶してる。逃げ込めばバレないかも…」

勇者「…ないな。俺の首で王国に恩売れるし、そもそもトラブルの種を迎え入れるわけがない」

勇者「最後に…王国軍。英雄として歓迎してくれる可能性もなくは…」

勇者「うん、ねえわ。普通に邪魔だし、もう用済みだし。しかもなんか王様口約束で姫様と結婚とか言っちゃってたし。あれ絶対冷静になってから後悔するパターンでしょ…馬鹿じゃねえのあのジジイ…」

コンコン

勇者「はい…どうぞ…」

僧侶「勇者様。今お時間よろしいですか?」

勇者「!?」ガタッ

僧侶「ゆ、勇者様…?」

勇者(落ち着け。まだ僧侶の魔翌力は空のはず。大丈夫、大丈夫…)

勇者「何でもないです。何か用ですか?」

僧侶「その…お話がしたいんです。二人きりで」勇者「ヒッ」

僧侶「ひ?」

勇者「いやほんとなんでもないです…なんでも…」

勇者「それで話って?」

僧侶「これまでの感謝と、これから先のことです」

僧侶「勇者様は、この聖書を諳んじるしか能のない世間知らずの小娘に何くれとなく良くしてくださいました」

僧侶「特に出会った頃など…よく見捨てずにいてくれたと思うばかりです」

勇者「ああ…確かに昔の僧侶さんはちょっとアレでしたもんね」

僧侶「あ、アレ扱い…反論の余地もないですけど…」

勇者(力もないのに綺麗事ばかりほざく足手まとい。一人旅だったからほんっとにイラついたんだよなぁ)

勇者「スライム殺したら半日説教かますわ、旅の資金をど田舎の貧乏教会に全額喜捨するわ。ああ、野宿が怖くて眠れないせいでやたらラリホーの掛かりが良かったりもしましたっけ」

僧侶「ううっ…!どの節も本当にご迷惑お掛けしました…」

勇者「別に。僧侶さん変わりましたし。今となっては思い出話です」

勇者(まぁ聖女としては非常にアレだから隠した方がいいとは思うけど)

僧侶「こ、こほん。その、私の黒歴史は置いておいてですね」

僧侶「勇者様の言う通り、この魔王討伐という大任を通して私は変われたと思います。その感謝を直接言いたかったんです」

ありがとうございました

>>11はミス
勇者「それで話って?」

僧侶「これまでの感謝と、これから先のことです」

僧侶「勇者様は、この聖書を諳んじるしか能のない世間知らずの小娘に何くれとなく良くしてくださいました」

僧侶「特に出会った頃など…よく見捨てずにいてくれたと思うばかりです」

勇者「ああ…確かに昔の僧侶さんはちょっとアレでしたもんね」

僧侶「あ、アレ扱い…反論の余地もないですけど…」

勇者(力もないのに綺麗事ばかりほざく足手まとい。一人旅だったからほんっとにイラついたんだよなぁ)

勇者「スライム殺したら半日説教かますわ、旅の資金をど田舎の貧乏教会に全額喜捨するわ。ああ、野宿が怖くて眠れないせいでやたらラリホーの掛かりが良かったりもしましたっけ」

僧侶「ううっ…!どの節も本当にご迷惑お掛けしました…」

勇者「別に。僧侶さん変わりましたし。今となっては思い出話です」

勇者(まぁ聖女としては隠した方がいいとは思うけど)

僧侶「こ、こほん。その、私の黒歴史は置いておいてですね」

僧侶「勇者様の言う通り、この魔王討伐という大任を通して私は変われたと思います。その感謝を直接言いたかったんです」

僧侶「――ありがとうございました。私の勇者様」

勇者「はい。どういたしまして。こちらこそありがとうございました」

勇者「で、もう一つの方は?」

僧侶「…あの、反応軽くないですか?普通そんなさらっと流します?」

勇者「実は照れてるんです。心配しなくてもちゃんと受け取りましたよ。それで?」

僧侶「いいですけど…」

僧侶「もうひとつ、これから先のことです」

僧侶「魔王が死んで平和になった世界で、勇者様はどうされるおつもりですか?」

勇者「…どこなりで普通に生きていくつもりですよ。誰の迷惑にもならないように」

僧侶「勇者様さえよければ、私と一緒に来てくださいませんか?」

勇者「……」

勇者「は?」

僧侶「魔王の魂が消滅したことで、私の神託の聖女としての役目は終わりました」

僧侶「もちろん教会に戻れば役目は再び与えられるでしょうが…恐らくはお飾り」

僧侶「世界中を歩いて回ったんです。そんな味気ない余生はごめん被ります」

僧侶「だから再び旅に出ようかと。今度は純粋な人助けのために」

勇者「その旅に…ついて来いと?」

僧侶「はい。役目を終えた者同士、共に歩いては頂けませんか?」

勇者「……」

勇者「返事、急ぎですか?」

僧侶「いいえ。どうかよくよく考えてくださいね」

……

勇者「……」

勇者「行ったか」

勇者「まさか直で殺害予告されるとは」

勇者(神託の聖女の役目=勇者の手助け。それが終わって、お飾り=安全な仕事は刺激がなくて嫌だ)

勇者(んで国民にとっての脅威は、長年恐怖の対象だった魔王殺した勇者=俺で間違いない)

勇者(そいつらを助ける=不安を取り除く。それには勇者を生き返らせることができる教会が、勇者が本当に死んだって証明する必要がある)

勇者(そのために必要なのは…)

勇者「俺の首…」

勇者「一緒に来てくださいってのはつまり…」

勇者「晒し首…」

勇者「ヒェッ…」

ここまで
ゆっくりやってきます

【酒場】

勇者「それでは魔王の死を祝して(ファック)――乾杯!」

『『『『『乾杯!!!』』』』』

勇者(戦士さんの言うささやかな歓迎とは街で一番デカい酒場を貸し切ってのパーティらしい。全然ささやかじゃねえ)

勇者(まあこれだけ人の目があるなら命の危険はないだろ。王様もこんな早く命令飛ばしはしないだろうし)

勇者(故に気をつけるのは僧侶さん。いや僧侶。奴は敵だ。気を抜いたら死ぬと思え)

勇者(奴は料理がクソほど出来ん。だというのに調理場に入るのが見えた。十中八九料理に何か混ぜたはず。手をつけるのはやめておこう)

勇者(逆にここで俺に料理を勧めてくる奴は敵の可能性が高い。いい機会だ、ここで全員炙り出してやる…!)

兵士A「あれ、勇者様。全然食べてなくないっすか?」

勇者「つい話す方に熱中してしまいまして」

兵士A「あ、ならよければ俺が取ってきますよ!勇者様は座っててください!」

勇者「それなら魔法使いさんにしてあげてください。あの人も疲れてましたから」

兵士A「任されましたっす!」

勇者(こいつはただのお人好し。とはいえ軍人だし四捨五入して敵で)

兵士B「勇者様。こちら我が家の秘蔵酒です。ぜひ一口目は勇者様に」

勇者「ありがとうございます。下戸なので、舐める程度に」

勇者(酒精で判断力を鈍らせるつもりだな?馬鹿め、ひっかかるか)

僧侶「勇者様、勇者様。これ、心を込めて作りました。食べて頂けますか…?」

勇者「二フラム」ジュッ

僧侶「え…」

僧侶「!?」

勇者(僧侶め、まさか本当に料理で殺しに来るとは。やはり油断ならん…というか二フラム効く料理って一体…?)

勇者(とはいえ流石に暗殺は素人らしいな。盛るならもう少し上手く盛れよ。あんなゲロみたいなの魔物でも食わんぞ)

勇者(しかし…くそう。他のは普通に美味しそうだなぁ。俺も食べてえなあ。最後食ったの朝だし…)

勇者(みんなが食ってるやつだったら…大丈夫なはず…)

勇者(いや、我慢…我慢だ…誰が敵か分からないんだ。いのちをだいじに…)

勇者(よし、そろそろ抜け出してもいい頃か)

勇者「すみません。少し夜風に当たってきます。俺のことは気にせず楽しんでくださいね」

兵士A「ウェーイ!!勇者様ウェーイウェーイ!!」

勇者([ピーーー])

勇者「それじゃ俺はこれで」魔法使い「私も行くわ」

勇者「へ?」

魔法使い「ほら行くわよ勇者様」

勇者「アッハイ」

魔法使い「この街に悪いところが一つあるとしたら、それは寒さね。お酒が入ってなければ出歩く気も起きないわ…」

勇者「エルフって割りかし南方の種族ですもんねえ」

魔法使い「今度一族のババア共でも連れて来ようかしら。ふふ、まとめてあの世に送れそう」

勇者「あはははは」

魔法使い「うふふふふふ」

勇者「…はあ。で、話は?」

魔法使い「飲み直しましょ。あそこうるさい」

勇者「ああお金ですか。渡しとくので適当にどうぞ。じゃあ俺はこれで…」

魔法使い「逃げんな。金なんて一言も言ってないでしょ。何なら私が奢ってあげるから付き合いなさい」

勇者「えッ!?(銭ゲバ糞外道の)魔法使いさんが!?」

魔法使い「ええ、ええ。あなたが私をどう思ってるかよーく分かりました。これは徹底的に話し合う必要があるわねそうよね勇者様」

勇者「拒否権どこ…ここ…?」

【宿】

魔法使い「まさかどこも臨時休業だとは…」

勇者「(俺以外には)仮にもめでたい日ですからねえ」

魔法使い「そのめでたい日に宅飲みって嘘でしょ…私たち立役者なのに…?」

勇者「まあまあ。あ、何で乾杯します?」

魔法使い「私たちの永遠の愛で」

勇者「はいじゃあそれで。乾杯」

魔法使い「うっわ面白くなーい。ほんとつっまんない男ねえ。なに?隙見せたら死ぬ病気?」

勇者(そうだよクソが)

勇者「言っても魔法使いさんも隙見せてくれないでしょ。うちじゃ僧侶さんくらいじゃないですか?」

魔法使い「あの子がああなのは勇者様の前だけじゃない?他所じゃちゃんとしてるし」

勇者(畜生、最初から口封じするつもりだったってことかよ…)

勇者(魔法使いさん、もしかしてそれを伝えるために…?)

勇者(…いや!腹減ってると考えが浅くなる。気を許しちゃダメだ…)

勇者「そういえば、どうして今日は俺を誘ってくれたんですか?ひとり酒お好きでしょ」

魔法使い「それ本気で言ってるの?自分の胸に聞いてみなさいな」

勇者「身に覚えはありませんけど…」

魔法使い「――じゃあ、どうして今日は料理どころか飲み物ひとつ口をつけてないのかしら」

勇者「お腹が減ってなくて」

魔法使い「下手な嘘はやめなさい」

勇者「ああ。じゃあアレです。魔王の呪い。今後一生人前で食べ物が食べられないとか、そんなの」

魔法使い「…ふざけてるの?」

勇者「逆に聞きますけど、俺が何も食べなくて魔法使いさんに何か不利益ありますか?」

魔法使い「へえ。そういうこと言うんだ。…そういうこと言うんだ!!」

勇者「……」

魔法使い「不利益!?ええそうよ不利益よ!あなたがそんな調子じゃどんな高級酒も不味くて飲めたもんじゃない!」

魔法使い「仲間が明らかにおかしくて、それを心配するのはそんなにおかしいこと!?」

魔法使い「私を助けてくれた人の力になりたいと思うのが、そんなに信じられない!?」

魔法使い「何とか言え、勇者!!」

勇者「……」

勇者「はい。すみませんでした」

勇者「魔法使いさんの心配はちゃんと受け取って――」

魔法使い「ッ!」

魔法使い「――ふざけるなぁッ!!」

勇者「ホイミ」

勇者「素手で仮にも勇者の頬骨折るとは。警戒解いてたら殺されてたかもしれん」

勇者「なんかゴチャゴチャいいこと言ってたが、結果だけ見れば実にシンプル」

勇者「魔法使いは俺に毒入りの料理を食わせようとして、失敗して逆上した」

勇者「わざわざ挑発して怒らせた甲斐があったってもんだ」

勇者「理由は…僧侶に金でも握らされたか?それとも最初からそのつもりで?」

勇者(考えてみたらいくらハーフとはいえあんな排斥されたりしないだろ。俺の同情を引く作戦だったのかも)

勇者「それかとりあえず俺を殺しといて、後でどこかの勢力と交渉するつもりだったのかもな。今後の展開考えたら殺しといて損はないし」

勇者「ともかく魔法使いも敵だな。今後は一層警戒して接そう」

勇者「仲間の三分の二が敵だったなんて偶然じゃ考えられん。戦士さんも危険だ。明日探ってみよう」

勇者「……」

勇者「腹減ったな。ビスケット残ってたっけ」

勇者「……」

勇者「朝か」

勇者(結局一睡も出来なかった。夜が怖くて寝られないとか僧侶を笑えねえや)

勇者「今日は午前までゆっくりして、午後に王都に戻るって話だったな」

勇者「…戦士さんに会いに行くか。どうせ敵だろうけど」

勇者(今のうちに慣れとかないとな。これから先死ぬまで続くんだから)



【戦士の家】

戦士「勇者か。出発の準備は出来ているのか?」

勇者「はい。戦士さんはやっぱりこの街に留まるんですか?」

戦士「家も家族もこの街にあるからな。離れる理由がない」

勇者「勿体ない。王都に行けば勲章や褒賞貰えるのに。一生遊んで暮らせますよ?」

戦士「不要だよ。欲しくて戦ったわけじゃない。お前もだろう?」

勇者「過ぎたるは何とやらですからね。権力闘争とか怖くて怖くて」

戦士「全くだ」

戦士「ところで勇者。魔法使いと何かあったのか?」

勇者「昨夜、少し口論に。それが?」

戦士「酷く荒れていた。仲直りは出来そうか?」

勇者「うーん、どうでしょうね。彼女次第ですから、こればかりは俺じゃ何とも」.

戦士「そうか。しかし、お前がそこまでの喧嘩をするとは少し意外だな」

勇者「意外って。別に魔法使いさんは普通の女の子ですよ。喧嘩くらいするでしょう」

戦士「そうじゃない。俺が言っているのは勇者、お前のことだ」

勇者「俺…?」

戦士「俺の見てきた限り、お前は一度も敬語を崩さなかった」

勇者「そりゃそれが素ですし。そのせいで結構砕けちゃってますけど」

戦士「…すまない。今のは言葉が悪かった」

戦士「そういう表面的な話でなくて、だ」

戦士「お前は一度だって俺にも、魔法使いにも、僧侶にも。どころか他の誰にだって気を許したことがない。違うか?」

勇者「…は?いえ、そんなことありませんが」

戦士「お前はお前自身を最高の役者とでも思っているのかもしれないがそれは違う」

勇者「いや話聞いてます?」

戦士「どんなに大人びていても所詮は子供だ。壁を張っていることなんて簡単に分かるとも」

勇者「あの話…」

戦士「どうにか崩してやろうと俺なりに頑張ってみたんだがな。だが、お前は俺の想像以上に人間を信じていなかった。おかげで俺の試みは魔王を倒してなお道半ばだよ」

勇者「キアラル!マヌーハ!…効かん。あれえ?」

戦士「そんなお前が喧嘩とは…いや、それだけ魔法使いを怒らせたか。余程深く傷つけたのか」

ここまで


勇者「…戦士さん。さては話す内容めっちゃ事前に考えてたでしょ」

戦士「バレたか」

勇者「口下手がそれっぽいことそんなに上手く言えるわけありませんもん」

戦士「勇者に説教できる機会など今日を逃したらもうないだろうからな」

戦士「まあ、何か困ったらいつでも頼れ。可能な限り力になろう」

勇者「いいですって。戦士さんは俺たちのことなんか忘れてこの街とご家族を守っていてください」

戦士「そうはいかない。お前達はこの街を救った英雄だ。恩返しくらいさせてくれ」

勇者「はあ。そこまで言うなら貸しときますけど…」

勇者(信用しなきゃいいだけだし)

戦士「ああ。そうしておくといい」

勇者(可能な限りってのがミソだな。最初にそんな縛りつける辺り破る気満々だろ)

勇者(つまりこいつも敵。これでめでたく仲間が全員敵だったことが判明しました。フゥ~~~!)

勇者([ピーーー]よ)

勇者「じゃあ俺達そろそろ行きますんで。機会があったらまた」

戦士「そうだな。また会おう」

勇者(二度と会いたくねえわボケ皮肉かコラ)



【王都】

勇者(ついに戻ってきてしまった)

魔法使い「ルーラだとどうにも呆気ないわね」

僧侶「一瞬ですものね。それでも私は感慨深いですけど…」

勇者(あっちにも建前がある。謁見が終わるまでは殺されないはず)

魔法使い「僧侶はここで暮らしてたんでしょ?私何なら来るの初めてだもの」

僧侶「私もこうして城下町を歩くのは初めてです。ふふ、勇者パーティの特権ですね」

魔法使い「やっすい特権ねえ…」

勇者(謁見が終わったら…まずルーラで田舎まで飛んで…そこからはダッシュで…)

魔法使い「…あー、勇者様も何か言ってやったら?」

勇者(どこに逃げ込んでも僧侶と魔法使い、特に僧侶には目星がつく。初動でどれだけ距離を作れるかが肝心だ)

勇者(やっぱり戦士に会いに行ったのは正解だったな。ああやって家と家族の顔知ってるアピールしとけば家を空けようとは思わねえだろ)

僧侶「あの、勇者様?」

魔法使い「…そ。私とは口もききたくないってわけ」

魔法使い「先行ってるから」スタスタ

僧侶「あっ、魔法使い様…!?」

勇者(とにかくスピード勝負だ。昨日寝れてないせいでMPに余裕がない。一秒でも早く謁見終わらせねえと)スタスタ

僧侶「ゆ、勇者様も…!?待ってください、早いです、早いです…!」

【王宮】

王「よくぞ生きて戻った、勇者」

王「戦争が終わったことよりも、魔王を討ち滅ぼしたことよりも、余はそれが一番嬉しく思う」

勇者「はっ。これも陛下の手厚い支援のおかげでございます」

王「ほう?1000Gと鉄の剣、薬草袋数個程度が魔王を滅ぼす鍵となったと?」

勇者「はっ。何もかも厳しい中、歴代勇者と比しても充実した支援を充てて頂いたと理解しております」

王「そう言われて悪い気はしないが、やはり余が受け取る資格はないな。世界を救ったのは他の誰でもない勇者、貴様の力だよ」

勇者「…はっ。身に余る光栄でございます」

王「僧侶殿、魔法使い殿も誠に大儀であった」

王「よくぞ、よくぞ我が息子にも等しいこの者の助けとなり、支えとなり、戦い抜いてくれた。この通り礼を言わせてくれ」

魔法使い「…どうも」僧侶「それが私の使命ですから」

魔法使い(ふうん。随分人格者なのね)

僧侶(…まあ、そうですね。普通はそう思うのでしょうね)

魔法使い(え…?)

王「さて、老いぼれの話などこの辺りでいいだろう」

王「勇者、僧侶殿、魔法使い殿。この場にいない戦士殿も。魔王討伐の功績を称えて、そなたらの望みを叶えよう」

王「一つなどとケチなことは言わない。思うままに言うがよい」

勇者「私は何も。魔法使いさんどうぞ」

魔法使い「…じゃあ、王都に私専用の研究室と当座の資金をください」

王「あい分かった。叶えよう」

王「勇者も、何か思いついたらいつでも言うがよいぞ」

勇者「はっ」

僧侶「…すみません。私も保留ということでよろしいでしょうか?」

王「無論いいとも。何しろ余は叶えさせて貰う側の人間なのだからな」

王「実を言うと、魔法使い殿のための研究室はもう着工している。どのみち無駄にはならんと思ってな。まだ途上だが、よければ後で見て行くといい」

魔法使い「…!ありがとうございます」

王「さて、では…姫!」

勇者「!」

僧侶「っ!!」

魔法使い「…?」

姫「ここに」

勇者(まさか出てくるとは…)

勇者(例の婚約を破りたいなら黙ったままでいればいい。そうしなかったってことは…なるほど、姫本人による暗殺か)

勇者(姫を警戒する奴なんて普通いない。婚約者なら尚更だ。一人娘とはいえ所詮は女、失っても痛手は少ない)

勇者(仮にも魔王殺した勇者だ。馬鹿正直に武力ぶつけてもコスパが悪いって考えるのも当然)

勇者(そしてここにいるのは目撃者は王の手が掛かった者ばかり。風聞も勇者が無礼を働いた、野心が見えたとでも言えばどうとでもなる)

勇者(不確定要素だった魔法使いも、今の研究室云々の話で抱き込めたみたいだしな。ケッ)

王「勇者。あれだ、あの話…いや、やはり後は若い者のみで…」

姫「お父様、逃げないでくださいませ」

王「逃げてなんぞおらぬ。だが、こう、心臓がキュッとしたのだ。これは病気に違いない。うむ、うむ」

姫「お父様」

王「うむ…」

ひとまずここまで
夜に再開します

姫「勇者様。こうしてお会いできる日を心より待ち望んでおりました」

勇者「はい。私もです」

姫「単刀直入に聞きます。私との婚約のお話、覚えていらっしゃいますか?」

勇者「無論口約束だとわきまえております」

姫「いいえ勇者様、私は本気です。非力な私ですが、冗談で婚姻を持ち出すほどに心まで堕としたことはございません」

勇者「…心得ております」

勇者(やばいなやばいぞとてもやばい。姫に非礼な受け答えは出来ない。断りの文句が酷く限られる)

勇者(どうする、どう切り抜ける…うん?)

僧侶「――」

魔法使い「そ、僧侶…?」

勇者(僧侶が能面みたいになってる。あれはどえりゃあ機嫌が悪い時の…)

勇者(…そうか、そうかそうか!なるほど、使えるぞこれは!)

勇者「申し訳ございませんが姫様、やはり私はあなたと身を結ぶことは出来ません」

姫「その…理由は?」

勇者「私はこの旅を通して多くの人々を救いました。しかし同時に多くの人々を見捨てもしました。ひとえに魔王を討つという目的があったからでございます」

姫「…それは勇者様の咎ではございません。全て我ら王家の無力によるものです」

勇者(ったり前だ本気でそんなの俺のせいにされたら堪らんわボケが)

勇者「そう言って頂けるだけでも救われる思いですが、私がいくら救われたところで亡くなった方々が帰ってくるわけではありません」

勇者「故に私はその償いとして、人々の助けとなるため再び旅に出ようと考えておりました」

勇者「――僧侶さん。そうですよね」

僧侶「…」

僧侶「え」

勇者(僧侶は姫が出てきてから、正確には姫が出てくることを知ってから不機嫌になった)

勇者(姫が俺を[ピーーー]のが我慢ならない。それが意味するのは一つ、大なり小なり教会は国王と対立しているってことだ)

勇者(俺が王宮に縛られれば教会が俺を[ピーーー]のは格段に難しくなる。勇者を[ピーーー]ことで得られる権益があるんだろうな)

勇者(敵の本拠地に軟禁されるよりはまだ自由が利く旅路の方が生存率は高い。敵の敵は味方って話だ)

勇者(…しかし今まで一切気付かなかった。この土壇場で気付けたのは幸運だったな)

僧侶「……!」

僧侶「ゆ、勇者様。それって…!」

勇者(とっとと口裏合わせろノータリン!お前だって困るんだろうが!)


姫「僧侶様。そうなのですか?」

僧侶「…は、はい。私から勇者様をお誘いしました」

勇者(いいぞ百点の回答だ!もう黙れ!)

姫「…そうでしたか」

勇者「どこの世界に結婚してすぐ家を空け、挙句別の女性と二人歩く夫がいましょうか。役目こそ終えましたがこの身は勇者の端くれ。そんな不貞には耐えられません」

勇者「陛下。魔王討伐の私への褒美は、これから旅に出ることへのお許しとさせて頂きたく存じます」

王「…そうか。あい分かった。貴様がそう願うのであれば叶えないわけにはいくまいて」

王「姫も、それでよいな?」

姫「……はい」

勇者(よし!よし!!よし!!!)

王「…旅に出るにしても今日明日の話ではないだろう?宴の準備もしてしまっているのだ。主賓がいないのでは格好がつかない」

王「しばらく休み、疲れを取り、準備を整えてからでも遅くはあるまい?」

勇者「お心遣い痛み入ります。是非そうさせて頂きます」

勇者(よーしこれでいつでも逃げられる。ぶっちゃけ僧侶置いて行ってもいいしな!)

勇者(ああ…麗しの一人旅…!誰に怯えることなく生きていける理想の生活…!)

勇者(いや、逸るな、逸るな。最後までボロは出さないようにした方がいい。指名手配されるにしても早さが違うからな)

勇者(予定変更になるが少しの間耐えればいいんだ。それくらい何とかなんだろ多分)

勇者「では、これにて失礼致します」

王「ああ…」

王「…姫。その、気を落とさないように…」

王「…姫?」




勇者「ふう。緊張しましたねえ」

僧侶「私も…勇者様が突然あんなこと仰るから」

勇者「いつまでも引き延ばしにするのも悪いと思いまして。あ、もちろん気が変わったならそう言ってくださいね」

僧侶「そんなことは絶対に言いません。もう勇者様が嫌だって言っても一緒に行きますからね?」

勇者(チッ)

魔法使い「…私、知らなかった…」

魔法使い「私だけ…」

ここまで

勇者「じゃ夕食まで自由行動で。今日は会話メインになるので先にどこかで食べてきた方がいいですよ」

勇者「俺はちょっと用事があるのでこれで。飯も済ませてくるんでお気になさらず」スタスタ

僧侶「あっ、勇者様…行っちゃいました」

魔法使い「…研究室見てくるから。ちょっと一人にして」

僧侶「あ、はい…いってらっしゃいませ」

僧侶「…」ポツン

僧侶「…もしかして私嫌われてます…?」



勇者(ああ言っときゃ今日は飯食わなくても何も言われねえだろ)

勇者(しかし二日連続でパーティって…戦争で金ないだろうに馬鹿なのかね)

勇者(てかそんな金残ってるんなら旅立ちの時にもっと寄越せや。1000Gなんぞ三日で溶けたわ。宿代の相場も知らねえとかこれだから王族は)

勇者(そうやって死んでこいって送り出したくせに今は褒美だ婚約だって媚び売ってきやがる。馬鹿にしてんのか?)

勇者「…やめだやめ。もう関わりもなくなるんだ、あんなクズ共どうでもいいだろ」

「クズ、というのは誰のことでしょうか?」

勇者「!?」

勇者(しまった気ぃ抜いてた!)

姫「勇者様がそこまで言われるとは、その方々はよほど醜悪な心根をしているのでしょうね」

勇者(姫!?何でこんなところに…!)

勇者「…何故こんな裏路地にいらっしゃるんですか?」

姫「王宮では勇者様が本心で話して下さらないようでしたので」

勇者(護衛は…いるな。そうか。密偵につけさせて自分は先回りを…)

「クズ、というのは誰のことでしょうか?」

勇者「!?」

勇者(しまった気ぃ抜いてた!)

姫「勇者様がそこまで言われるとは、その方々はよほど醜悪な心根をしているのでしょうね」

勇者(姫!?何でこんなところに…!)

勇者「…何故こんな裏路地にいらっしゃるんですか?」

姫「王宮では勇者様が本心で話して下さらないようでしたので」

勇者(護衛は…いるな。そうか。密偵につけさせて自分は先回りを…)

勇者「ええと、仰る意味が良く…?」

勇者(何が目的だ…?)

姫「勇者様が戦われている間、私とて城で暇を持て余していたわけではありません」

勇者「顔色を読むのは得意だ、と?」

姫「ええ。唯一の取り柄と自負しております」

勇者(ハッ、温室育ちの穀潰しが吹くなぁオイ)

勇者「…では、姫様から見えた私はなんと?」

姫「僧侶様との約束を口実に、私たちから逃れようとしているように見えました」

勇者(  )

姫「…やはり間違いなかったようですね」

勇者「それはですね、気高き王家の純血を私如きが穢すわけにはいかないと思いまして…」

姫「それ以上嘘を並べ立てるようでしたら、王家への謀叛の意思ありとしてこの場で捕らえます。気は進みませんが」

勇者「ざっ(け)…!!」

ここまで
凛世引けたので再開していきます

姫「勇者様。私は勇者様を愛しております」

姫「だから、手に入れます。どんな手を使ってでも」

勇者「一体何があなたをそこまで…」

姫「王家のため、そして私のためです」

姫「歴代勇者の誰も成し得なかった魔王殺しを遂げた初の勇者なんて、聞くだけで使い道などいくらでも考えられるでしょう?」

勇者(ハッ、道具扱いかよ)

姫「何より、今日お顔を見て確信致しました。あなた以上の殿方がこの世にいるとは思えません」

姫「優れた血を容れることこそ王家の娘の幸せですから」

姫「今日お顔を見て確信致しました。あなた以上の殿方がこの世にいるとは思えません」

姫「だから、手に入れます。どんな手を使ってでも。僧侶様にも魔法使い様にも渡しません」

姫「勇者様。受けてくださいますね?」

勇者「…あの、国民には人権ってのが存在するって最近知ったんですが」

姫「それを決めるのは私たちですので」

勇者「ああそう…」

勇者(理解した。こりゃハッタリだな)

勇者(姫なんかにそんな権力はない。平時ならともかくこの余裕ない時なら尚更だ)

勇者(ついでに王族が犯罪者を婿に取るわけがない。王家の格が落ちるようなのは流石にご法度だろ)

勇者(だとしても安心はできない)

勇者(血が欲しい云々はこいつの気持ち悪さ的に事実。んで俺の血が欲しいなら種馬にでもすりゃいい)

勇者(いずれ勇者の名は尾ひれが付きまくってえらいことになる。最初はそうなったら邪魔だろうから殺しに来るかと思ったが)

勇者(どうせなら生かさず殺さず管理下において張子の虎にする方がよほど便利だ)

勇者(そんで僧侶と姫が敵対してるのも確実。僧侶のいない時を狙って接触してきたのがその証拠だ)

勇者(女神の影響力を脅かしかねない以上、僧侶たち教会が俺を殺したがってるのは間違いない。逆に言えばあいつらは最低俺が死にさえすれば何だっていいんだ)

勇者(そんな奴ら敵対する=王族は俺を殺せないようにするってこと。今の考えに見事に合致する)

勇者(つまり、結局のところ拒否一択なわけだが…)

勇者「仮にですけど、俺がここで拒んだり逃げたりしたらどうなりますか?」

姫「姫の意に従わなかった…狼藉を働いたということで連行します」

勇者(…種馬にする気なら犯罪者にしようが問題ないか)

勇者「俺が抵抗したら?」

姫「それは…困りますね。どうしましょうか」

勇者「ふざけてます?」

姫「ではこうしましょう。まず王国内全ての街に手配を行います。勇者様の顔を知らない人はいないでしょうしね」

勇者「他国と連合軍組んでなお魔王程度に苦戦していた連中が、随分な啖呵ですね」.

姫「私たちが苦戦していたのは魔王軍ですよ、勇者様」

姫「無論その根源たる魔王を滅したのは敬服に値します。ですが魔王単騎の力は所詮は個。王国軍だけでも対処出来たでしょうね」

勇者(…確かにそうかも。この国の騎士超強いし)

姫「勇者様がどれほど強くとも同じことです。軍総出で、休息の暇を与えず、昼夜問わず攻撃を続ければ…どちらの限界が先かなど考えるまでもありません」

勇者「…」

勇者(うん。反論ねえわ。舌戦強いな姫様)

勇者「…そうですか。あなた方に強制されて、死ぬ思いをして世界救って、その返礼がこれですか」

姫「どんな手を使ってでも、と言ったでしょう。私は勇者様に付いていくことすら叶わなかった弱者ですから、どんな手でも使います」

勇者「愛が聞いて呆れますね。教会に怒られますよ」

姫「私は確かに抱いておりますから。残りは形を定めてしまえば時間が満たしてくれるでしょう」

勇者(…あークソ。躱すのは無理か)

勇者(しゃーない。遅いか早いかの違いだ。切り替えてけ)

勇者「…すみません。その話、やっぱりお断り――」

僧侶「何の話をしているんですか勇者様」

ここまで
安価忘れたけど世界観はよくあるファンタジーです。
呪文だけ分かりやすくドラクエから拝借しております。
フィーリングでお願いします。

勇者「!」

勇者(助かっ)

僧侶「こちらから勇者様の気配がすると思って来てみれば…あろうことか勇者様を捕まえる、なんて」

僧侶「――まさか本気で言っていないですよね?」

勇者(…てないですねハイ。目ぇ据わってらっしゃる)

姫「私はそのような悪趣味な冗談は口にしませんよ」

僧侶「ならば女神様に代わって神罰を下します。そこに直りなさい」

姫「ふふ、聖女ともあろうお方がそんな真似をしてよろしいのですか?」

姫「最悪の場合…そうですね。王国と教国で戦争で戦争になるかもしれないのに」

僧侶「そうはなりませんよ。国王陛下はこの状況で戦争を起こす愚は犯さないでしょうし、姫様はこれから神の教えに目覚めるのですから」

姫「まぁ怖い。今日は随分威勢がよろしいのですね。消去法で偶然選ばれて、もしかして舞い上がってらっしゃいますか?」

僧侶「…姫様こそ、よく吠えますね。選ばれなかった負け犬の分際で」

姫「弱い仔犬ですので。わんわんっ」

僧侶「…」

姫「…」

勇者「ルーラ」

勇者「……」

勇者「そりゃ逃げるよ」

勇者「悪手?ビビった?知ってんだよそんなことはよ」

勇者「恐怖ってのは理屈じゃねえんだよ」

勇者「……」

勇者「…で、久しぶりに故郷に帰って来たわけだけども」

勇者「…」

勇者「家の表札に知らん名前が増えてるんだけど」

勇者「母親の他に三つ」

勇者「家も豪邸…ってほどじゃないけど高級住宅くらいになってるし」

勇者「これは…」

勇者(まぁ、そういうことだよな)

勇者「…」

勇者「ごめんください」コンコン

母「はい…!?」

勇者「お久しぶりです母さん。すみませんね、連絡もなしに突然訪ねて」

母「勇者…」

勇者「病気、良くなったんですね」

母「…腕のいいお医者様が王都から来てくれましたから。国王陛下の計らいで…」

勇者(あ、ちゃんと約束守ってたんだ王様。意外)

母「…とにかく、よく帰ってきました。何も準備は出来ていないけど、上がって行きなさい」

勇者「それじゃお言葉に甘えて」

母「改めて、よく魔王を倒しおおせました」

母「これであの人も安らかに眠れると思います。本当に、よくやり遂げましたね」

勇者(どこかで聞いたような台詞に壁を感じる物腰。まるで他人だな)

勇者「そんな話より…母さん再婚したんですね」

母「ええ。とても優しい人なのですよ。私の病気が治った後も親身になって相談に乗ってくれて…」

勇者(相手そのお医者様かよ)

勇者(そりゃまぁ金持ってるわな。家建て替えるくらい余裕か)

勇者「表札の下二つの名前は…」

母「連れ子のようです。戦災孤児を引き取ったのだと」

勇者(そりゃなんとも高潔なことで)

母「もう少ししたらみんな戻ってくるでしょう。今日は泊まって行くのですよね?」

勇者「…」

勇者「いえ。ちょっと王都の方に呼ばれいて。ここには荷物を取りに来ただけですから」

母「(この子はこれから王様なんだから、私もピシッとしなきゃ)」
勇者「(俺は邪魔者ですかそーですか。)」

こんくらいの温度差かな?

勇者「…」

勇者(まあ、さ)

勇者(わざわざ幸せそうな家族を邪魔することもないだろ)

勇者(そもそも一箇所に留まるわけにはいかないんだし)

勇者(口封じもできないガキが二人もいるんだろ?危なくて仕方ねえじゃん)

勇者(母親は王様に恩義もある。板挟みになったら、そりゃ何年も会ってなかったガキなんざ取らんわ)

勇者(まぁ子供なんて親からしたら幾らでも作れるうちの一人だしな。他に二人もいるなら別に一人くらい不義理しても構わんだろ)

勇者(では、魔王殺しちゃったご褒美に俺の名前の表札を頂戴しまして)

勇者「えーと、次の街の方角はどっちだったっけ?」

勇者(本気で国から逃げるなら相応の準備がいる)

勇者(とりあえず当座の食料、予備の武器、服の替え、薬、テントは最低限必須だろう)

勇者(パーティの財布は俺が預かってたからな。金はある)

勇者(そしてこの街は国一番の貿易街。一通りのものは揃うし、街が大き過ぎるから何買っても足はつかない。船も出ていて他所の国まで一気に逃げられる)

勇者(幸い今は祝勝ブームで警戒もザルだ。事実買い物も問題なく終わった)

勇者「あとは知り合いにさえ会わなければ…」

勇者「…」

勇者「そう思ってたんですけどね」

盗賊「そう思うならさっさと逃げればいいじゃねえか。あのルーラとかいう呪文なら楽勝だろ?」

勇者「あれ出現場所固定なんで待ち伏せが超簡単なんですよ。どこに手配が飛んでるかも分からない今はもう使えません」

勇者「お久しぶりですね盗賊さん。いつからバレてたんです?」

盗賊「お前が街に入った時からだ。商人の旦那から依頼されてな」

勇者(…あいつも絡んでやがるのか)

勇者「警備緩いのもワザとですか」

盗賊「お前だけの為じゃねえけどな。魔王が死んだのはもう昨日だ。いろいろ怪しい動きする連中も多いんだよ」

盗賊「さて、そんで我らが勇者様がどうして手配なんざされてんだ?何やらかしたよ」

勇者「愛憎のもつれを少々」

盗賊「ああ、お姫様を振ったのか。通りで手配が姫様名義な訳だ。はは、あのチビ助がやるようになったもんだ」

勇者「こちらこそ、そのクソチビごときに捕まった犯罪者が今やこの街一番の商人のお抱えとは。時間は過ぎるものでさね」

盗賊「待て待て待て待て。剣を構えるな、勘弁だ勘弁。これでも俺はお前には感謝してるんだよ。穏便に行こうぜ」

勇者「じゃあ言いますけど、知り合いのよしみで見逃してくれません?」

盗賊「それを決めるのは俺じゃねえなあ。ほら、ちょうど来たようだから話してみろ」

商人「――ああ、いたいた。ご苦労様です盗賊さん。ご無沙汰しとります勇者様」

勇者「…商人さん。随分出世されたようで」

商人「勇者様との冒険の賜物です。僧侶様もお元気ですかな?」

勇者「(姫様に殺されていなければ)元気でしょうね」

商人「それは良かった。お二人がいなければ海路を取り返すことは出来ませんでしたからな。英雄譚の一端にでもこの身を刻めたこと、今でも光栄に思っとります」

勇者「商人さん。早速ですが見逃してください。この国に迷惑は掛けませんから」

商人「ふむ。戦争が終わった今こそ、何が次の戦争に繋がるか分からないものです」

勇者(糞が)

商人「…とはいえ、短い間とはいえ戦友であった縁。また魔王を討ち果たしたことを除いても勇者様はこの街の恩人です」

商人「しかしこの街にも王国から指令が下されております。『勇者様を見つけ、可能であれば拘束せよ』と。私はこの街の長としてそれに逆らわないつもりです」

商人「我々も王国民である以上、出来ることと出来ないことがあります。理解して頂けますかな?」

勇者(要は場所ゲロるけど逆恨みして復讐するなよ?ってことだろ。いちいち回りくどいんだよ)

勇者「その程度のことで復讐なんてしませんよ」

商人「結構。ふふ、以前にも増して聡明になられましたな」

勇者「それはもう。どちら様かの薫陶を受けてますから」

商人「これからはどちらへ行かれるつもりですかな」

勇者「南へ。あちらは隠れるにはうってつけですから」

商人「承りました。個人用の船を港に用意しております。急ぎ出発されるがよろしい」

……

商人「…こうも猜疑心ばかりが強くなっているとは。全く悪い成長だ」

盗賊「行かせて良かったのか?いや拘束しろとか言われても困るし嫌なんだが」

商人「我々では捕まえようにも捕まえられませぬ。ならばせめてどちらにも良い顔をしておけば損もなし」

盗賊「得も小さくなるってのにか?建前はよしてくれよ」

商人「…彼が捕まれば死か一生王宮で囲われるか。どのみち死ぬようなものです。それはとても良くない」

盗賊「その心は?」

商人「これでも私は殺しやそれに繋がる行為はできるだけ避けとります。なにせ死人とは商売が出来ませんからな」

盗賊「よっ、この金の亡者!世界一!」

商人「ほらほら、そういうのいいからとっとと戦争の準備しますぞ。ああも火種が元気ならばそう猶予もありますまい」

盗賊「部下はもう走らせてるさ…しかしまた戦争か。魔王死んでまだ一日っていうのに嫌になるね」

商人「稼ぎ時に文句を言うようでは良い商人にはなれませんぞ」

盗賊「いやなる気ねえから…」

勇者「バギ。バギマ。バギクロス」

勇者「おお…船がすいすい進む…」

勇者(盗賊と商人。どっちも変わらずクズだったな)

勇者(特に盗賊。思えばあいつが僧侶を誘拐なんかしてくれたおかげで一人旅終わったんだった。絶対許さねえ…)

勇者(商人も商人でクラーケン殺したのあいつの戦果にされたし。知ってんだからな俺が食われた時速攻で見捨てようとしたの)

勇者「……」

勇者「全人類あいつらくらいクズ丸出しでいてくれたらいいのになあ…」

勇者「……」

勇者「ねえわ」

勇者「というかさっきからなんか急に曇ってきてない?」

勇者「いや風やばいんだけど。転覆秒読みなんですけど。アッ待って待ってこれマジでやばいって!」

勇者「女神様ァー!あなたの忠実なる信徒がピンチですからとっととお助け」

津波「こん^^」

勇者「あっ」

……

勇者はめのまえがまっくらになった!

魔法使い「…勇者の船、沈没を確認しました」

姫「ご苦労様です。素晴らしいメイルストロムでした。流石は魔法使い様です」

姫「商人様も、よくぞ勇者様の船を捕捉していてくれました。おかげで迅速に事を為せました」

商人「恐悦至極でございます」

魔法使い「…どうも」

姫「あとは王都の教会で蘇生すれば勇者様は私のもの…僧侶様といえどもう手出し出来ないでしょう」

魔法使い「…」

姫「不服そうですね、魔法使い様。やはりかつての仲間を陥れるのは抵抗がありますか?」

魔法使い「…別に。あんなの仲間でもなんでもなかったので」

姫「それは良かったです。魔法使い様と争うのはとても大変そうですから」

魔法使い「…」

姫「さぁ、王都に帰りましょう。あまり勇者様を待たせてはいけませんからね」

勇者「」

勇者「」

「世界樹の葉」

勇者「」ゲボッ

勇者「はッ!?」

勇者「…い、生きてる…?」

戦士「ああ。生き返ったな」

勇者「ゲッ!?(戦士!?)」

戦士「一日ぶりだが、まさか死体になって戻ってくるとは思わなかったぞ」

勇者「あの、つかぬことをお聞きしますが、ここは…?」

戦士「どこも何も最前線の街だ。元こそつくがな」

勇者「(んなこたお前がいる時点で分かってんだよボケ!)えっと、そうじゃなくてですね…」

戦士「魔王城から帰った時、僧侶が教会に出掛けて行っただろう?その時お前の蘇生先をここに設定したらしくてな」

戦士「たまたま教会の掃除を手伝っていたところ、お前の死体が飛んできたわけだ」

勇者「はぁ…?」

勇者(つまり、じゃあ何か?)

勇者(僧侶は俺が王都に戻ってからどっかで死ぬ流れを予期してて?)

勇者(蘇生設定を自動から手動に変更して?こんな王国も教国も影響力の薄い街に飛ぶようにしてて?)

勇者(…苦肉の策?だよな多分。ルーラで帰る都合上教国には寄れないから、せめて王都から一番遠い街にしたってことか?)

勇者(いや…えぇ…?わっかんねえ…)

勇者「とりあえず…ありがとうございました戦士さん。これで貸しはチャラですね」

戦士「何があった?闇討ちでもされたか?」

勇者「いや普通に乗ってた船が転覆しまして」

戦士「何をやっているんだお前は…?」

勇者(ちょっと整理しよう)

勇者(あの天候の崩れ方はおかしかった。海ったって流石に急すぎる)

勇者(あんだけでかい津波だ。四天王が全滅した今あれ起こせんのは魔法使いくらいだろ。あいつに俺を[ピーーー]旨味はもうあんまりないはずだから、多分姫の命令)

勇者(いくら姫でもこの街での蘇生は読めていないはず。いずれ伝わるだろうが、少なくとも今はまだ)

勇者(僧侶にはバレてるが、ここから更に逃げればアイツすら分からなくなるはず)

勇者(そしてここは旧魔王領の目と鼻の先。人の目がない場所なんてごまんとある)

勇者(…あれ?状況めちゃくちゃよくね?)

戦士「何か訳ありなら家で話を聞くが…」

勇者「いえいえいえお構いなく!急ぎの用があるんで俺はこれで!ご家族にもよろしく伝えてさようなら!」

戦士「…あ、ああ

途中送信

勇者(ちょっと整理しよう)

勇者(あの天候の崩れ方はおかしかった。海ったって流石に急すぎる)

勇者(あんだけでかい津波だ。四天王が全滅した今あれ起こせんのは魔法使いくらいだろ。あいつに俺を[ピーーー]旨味はもうあんまりないはずだから、多分姫の命令)

勇者(いくら姫でもこの街での蘇生は読めていないはず。いずれ伝わるだろうが、少なくとも今はまだ)

勇者(僧侶にはバレてるが、ここから更に逃げればアイツすら分からなくなるはず)

勇者(そしてここは旧魔王領の目と鼻の先。人の目がない場所なんてごまんとある)

勇者(…あれ?状況めちゃくちゃよくね?)

戦士「何か訳ありなら家で話を聞くが…」

勇者「いえいえいえお構いなく!急ぎの用があるんで俺はこれで!ご家族にもよろしく伝えてさようなら!」

戦士「…あ、ああ…?」

戦士「…行ったか。勇者のやつ、一体何をあんなに急いで…?」

兵士A「あっ隊長ここにいた!報告です!」

戦士「どうした?」

兵士A「教国から手配書です!それも、ゆ、勇者様の!」

戦士「な…!?」

兵士A「名目上は保護とのことですが…」

戦士(…これが理由か?)

兵士B「報告です!王都より軍令と勇者様の手配書とが届きました!見つけたらどんな手を使っても拘束しろとのことです!」

戦士「あいつ何をやらかしたんだ…!?」

勇者「やってきました旧魔王領!人間のいない土地!」

勇者「誰の目もない!誰に裏切られる心配もない!飯は魔物食えばオーケー!」

勇者「持っててよかった聖剣!何匹切っても錆びない欠けない!調理も戦闘もこれ一本で無問題!」

勇者「いやぁ最っ高!俺のための土地!もう終生ここで生きていきます!」

勇者「とはいえ寝る場所が全然ないんだよな。一生野宿ってのは流石にきつい。お風呂入りたいし布団で寝たい!」

勇者「でもね、心当たりあります。勇者だから!」

勇者「レッツゴー魔王城!魔王城でおやすみ!おすすめ!」

ここまで

勇者「…」

勇者「あの」

勇者「なんか魔王城明かりついてるんだけど」

ここまで

勇者(城内には誰もいなかった…)

勇者(残すところはこの玉座の間だけ。気配もある)

勇者(魔王死んだのに生き残りの魔物が?そりゃあんだけいたら例外いてもおかしくないけど…)

勇者(嫌だなぁ。怖いなぁ)

勇者「…」

勇者「お、お邪魔しまーす…」

大魔王「え…」

勇者「えっ…」

大魔王「……」

勇者「……」

大魔王「……うおおおおおおおおおおお!?」

勇者「うわあああああああああああああ!?」

大魔王「うおおおおおおおおおおおおお!!」

勇者「うわあああああああああああああ!!」



僧侶「果ての街からの返答はどうでしたか?」

枢機卿「勇者様の姿は見ていないとのこと。ですが庇っている可能性も考えられます」

僧侶「戦士様ならあり得るでしょうね。王国の動向は?」

教皇「貿易街の近海から引き上げたらしい。同時に奇妙な嵐も収まったようだ」

枢機卿「狙いは勇者様だったと見て間違いないでしょうな」

僧侶「私の細工で蘇生先は果ての街になっています。戦士様たちが庇っていたとしても同じ場所に留まっているとは思えません」

教皇「近隣の街道から発見の知らせは届いていないが…」

僧侶「…恐らく魔王領に逃れたのでしょう。今はもう魔王軍もいませんから、むしら人間界にいるより安全なはずです」

教皇「それは良かった。我が国にも捜索隊を出すだけの余裕はない」

枢機卿「では…勇者様のことはしばらく様子見ということでよろしいですかな、聖女様」

僧侶「ええ。王国は勇者様の居場所を掴んでいません。今は国内の立て直しに力を入れましょう」

僧侶「…本当は直接私が迎えに行けたらいいのですが…」

教皇「済まないがようやく帰ってきた我が国の象徴を外に出せない」

教皇「お前が象徴として在ることで国民の士気が上がる。彼らによる迅速な国力の充実が勇者を迎える何よりの近道だと思ってくれ」

僧侶「…ええ。弁えています」



姫「これは…一本取られたようですね」

魔法使い「…勇者が死んでいなかった、とは考えられませんか」

姫「これだけ時間が経ってどこにも打ち上がっておらず、誰もお姿を見ていないとは考え難いですね」

姫「蘇生先を誰かが意図的に変更したか、王国以外の場所に匿われているか…そんなところでしょう」

魔法使い「僧侶…教国が絡んでいる、と?」

姫「もしくは旧魔王領付近の王国の支配が届きづらい辺境かもしれません。どうにせよ怪しいのは一時でも仲間だった方々ですね。魔法使い様はご心当たりございませんか?」

魔法使い「…いえ」

姫「ひとまず今は国力の拡充こうも手がかりがないのでは捜索のしようがありませんね。

>>177はミス

【王国】

姫「これは…一本取られたようですね」

魔法使い「…勇者が死んでいなかった、とは考えられませんか」

姫「これだけ時間が経ってどこにも打ち上がっておらず、誰もお姿を見ていないとは考え難いですね」

姫「蘇生先を誰かが意図的に変更したか、王国以外の場所に匿われているか…そんなところでしょう」

魔法使い「僧侶…教国が絡んでいる、と?」

姫「もしくは旧魔王領付近の王国の支配が届きづらい辺境かもしれません。どうにせよ怪しいのは一時でも仲間だった方々ですね。魔法使い様はご心当たりございませんか?」

魔法使い「…いえ。何も」

姫「ひとまず今は国家の安定化に努めましょう。こうも手がかりがないのでは捜索しようにも非効率ですから。魔法使い様、ご苦労様でした」

魔法使い「…はい。また何かあれば呼んでください」



勇者「ひいっ…ひいぃ…」

大魔王「」

勇者「強っ…オエッ…ひぃ…なんなのこいつ…」

勇者「いきなり…はあっ…し、しんどっ…」

勇者(開幕滑って転ばなきゃ…運が…運がなかったら…こ、殺されてた…)

大魔王「」

勇者「…ま、魔王に似てる…?」

勇者「魔王の…先祖とか…?」

勇者(他にも…魔王ファミリーが来る可能性…?)

勇者(こ、こんなのが…もっとたくさん?)

勇者「――嫌ァァァァアーーーーーー!!!!!!」

勇者はにげだした!

ここまで
生きてるけど超忙しいです

【魔王城】

魔法使い「…」

魔法使い「勇者はいないか」

魔法使い「来てない?ううん、いたけど勘づかれた…」

大魔王の死体「」

魔法使い「これは…!?」

魔法使い「魔王…じゃない。でも、かなり似ている」

魔法使い「…この残留魔翌力…」

魔法使い「使える、かも」

一ヶ月後

【旧魔王領国境】

勇者「ズルッ!ズルルルルルッ!うまっ!スライムうまうま!」

勇者「ゴーレムクッキー!バキバキ!バキバキバキバキ!」

勇者「エヘッ!エヘヘヘヘヘヘヘッ!」

勇者「…」

勇者(死んだら蘇生される死んだら蘇生される死んだら蘇生される)

勇者「だれかころして…」

勇者「…」

勇者「やっぱ嫌ァーーーーー!!!死にたくなーーーい!!!!!」

【王都】

勇者(やってきました王都!久しぶり文明!)

勇者(いや、ほら、ここ一ヶ月超安全だったじゃん。もう姫たち俺のこと忘れてるかもじゃん)

勇者(情報収集は大事だよね?ね!)

勇者「お酒!肉!ください!」

店員「…お客さん、悪いこと言わないから水浴びてきな?うちの二階貸すからさ」

勇者「はい」

勇者「お世話になりました…ご迷惑おかけしてマジすんませんでした…」

店員「いいよ、いいよ。助け合いだよ」

勇者(泣きそう)

店員「あれ?でもお客さん、なんか見覚えが」

勇者「それはそうとですね!最近の新聞とかってありますか?あったらちょっと見せて欲しいな~って」

店員「はいよ。んで、注文は酒と肉だったね。すぐ持ってくるから座って待ってな」

勇者(…もしかして指名手配とかされてる?うわ、普通にありそう)

勇者(顔隠しとこ)

店員「お待たせしましたっと。あれ?お客さんなんで仮面なんか」

勇者「呪いです」

店員「えぇ…それ食べづらくない?」

勇者「慣れてるので余裕です」

店員「不憫な…」

勇者(どれどれ、最近のニュースは)

勇者「えッ戦争!?」

店員「あーね。教国と戦うんだよ」

勇者「いやいや魔族との戦争終わったばっかじゃないですか!嘘でしょ!?」

店員「まあ正直辛いけどね。でも教国は勇者様を誘拐したんだろう?助けられといてこっちは見捨てるなんて王国民の誇りが廃るってもんだ」

勇者「誘拐?」

店員「凱旋式のドサクサでね。旅が終わってやっと一息ってところを狙うなんて卑怯な連中だよ」

勇者(…そういうことになってるのか…)

店員「この国にも女神様を崇める信者は多いし、勇者様だって女神様の眷属みたいなものだからあまり悪くは言いたくないんだけどね。だからってこんなの許しちゃいけないよ」

勇者「…僧侶さまは?」

店員「お客さん、その名前はあんまり口に出さない方がいいよ。あの方こそが誘拐の主犯だ。凱旋式にも出ずに国に逃げたのがその証拠さ」

勇者「それはお姫様が仰ってた感じですかね…?」

店員「お姫様って…いつの話してるんだか。今はもう女王様だよ」

勇者「そ(れは)マ(ジですか)?」

勇者(姫改め女王は今回の戦争を自ら取り仕切っているらしい)

勇者(国王は戦争に反対したが、民意を煽って味方につけた姫を止めることはできず、敗れ去るように退位したとか)

勇者(あの日逃げたのがマジの大事になってて笑う。笑えねえよ[ピーーー]ぞ)

勇者(いや、流石にアカンでしょ。人と人との戦争はさぁ)

勇者(やっていいことと悪いことがあるって)

勇者(魔王と何の違いがある)

勇者「…………」

ひとまずここまで

勇者(王国だって疲弊している。だが戦争が可能な程度には回復した)

勇者(教国も回復はしているが、その幅は王国よりずっと小さい。だから戦争は王国が勝つ)

勇者(教国は抵抗しないで白旗を上げるだろう。僧侶は勝てる見込みのない戦で無駄に犠牲を出す奴じゃない)

勇者(…本当にそうか?枢機卿や教皇が指揮を取ったら?)

勇者(宗教家の頭の固さは旅に出る前の僧侶さんのお墨付きだ。開戦の可能性は十分にある)

勇者(奴らの教義として、女神の意思は何者にも侵されてはならない。王国に負ければ教団の求心力は著しく下がる。幹部の糞豚共が既得権益を手放すことを呑む?んなわけねえだろ)

勇者(しかし王国に勝てないのは事実。周辺国に助けを呼ぼうにも開戦までそう時間がない。国力で負けてる以上撃てる手は限られる)

勇者(例えば…)

「やべえ、大通りで暴動が起きた!ここもすぐ巻き込まれるぞ!みんな逃げろォ!」

店員「なんだって!?」

勇者「…王国内の信徒をゲリラ運用して厭戦感情を煽る、とかな」

店員「は!?」

勇者「いろいろありがとうございました。お会計置いときます。縁があればまた」

【大通り】

勇者「うっわ、グロッ…」

勇者(グチャグチャにされた死体がそこらに吊るされてる。見せしめだなこりゃ)

勇者(肝心の暴動を起こした連中は…あ、この死体とかそうっぽい。なんか宗教くせえし)

勇者(でもほとんどはもう逃げたみたいだな。手際すげえな。熟練の盗賊も真っ青だよ)

勇者(このやり口は…流石に僧侶じゃないだろ。うん。こんな惨い真似に耐えられる奴じゃない)

勇者(こういう暴動や自爆テロが繰り返されると国民は疑心暗鬼になる。それが狙いだな)

勇者「とはいえそれだけで王国に勝てるとも思えねえけど…っと」

勇者(やべ、騎士来た。逃げよ)

勇者「…ん?」

勇者「この井戸…血が中に…?」

勇者「もしかして…」

勇者(暗い。怖い。寒い)

勇者(この井戸やたら深いし長いしぐねぐねしてるし)

勇者(水のせいで血痕とかなんもわからんから来た意味ないし)

勇者(ぼくはどうしてこんなところを歩いているのでしょう…?)

勇者(ひっく…ぐすっ…ううっ…)

勇者「あれ?光…?」

勇者「…出口か!あー良かったぁ…助かったぁ…!」

勇者「しかしこれ、どこに繋がって」

盗賊「シッ!」

勇者「あぶなっ!?」

ここまで

勇者「えっなになに!?誰!?怖い!」

盗賊「…」

盗賊「はっ!」

勇者「盗賊さん!?ナンデ!?」

盗賊「逃げんなっ――」

勇者「ヒィイやめてぇ!こっちこないでぇ!」

盗賊「貰ったァ!」

勇者「魔神斬り」ゾン

勇者「あっ」

勇者「…」

勇者「オーッ、ヒューマン…」

盗賊「勇者が普通[ピーーー]か?」

勇者「ごめんなさい。マジごめんなさい。峰打ちだったんです」

勇者(蘇生間に合って良かったぁ)

盗賊「いやまぁ襲いかかった俺が言うことじゃねえけどよ」

盗賊「あーもうウンザリだ。だいたい俺なんかが勝てるわけねえっつの」

勇者「というかどうして俺殺そうとしたんです?お姫様関係じゃないですよね」

盗賊「分かってて聞くのは趣味か?言うまでもねえだろ」

勇者(ここに来たのは逃げたゲリラ共を追ってのこと。そんで逃げ込んだ先と思しき場所の目前で盗賊に襲われた)

勇者(え?じゃあ)

勇者「まさかあのゲリラ、盗賊さんの部下?」

盗賊「ハズレ。連中はちゃんと教国の信徒だよ。俺がやってるのはそいつらの指揮とケツ持ちだけ」

勇者「そうですか」

盗賊「…俺をまた[ピーーー]か?言っとくがそれほど意味はねえぞ。次の担当が送られてくるだけだ」

勇者「…」

盗賊「ま、その時間差が生じる以上無意味とは言わねえよ。[ピーーー]なら殺れ。どっちでも好きにしろよ。俺はもう疲れた」

勇者「…何故こんなことを?あんただって仮にも王国民だろうが。利敵行為をして何になる」

盗賊「ああ、そいつは俺が答えてやってもいいが…」

商人「いえ、私の受け持ちでしょう。人の仕事を盗る商売人は嫌われますぞ、盗賊さん」

盗賊「…とのことだ。後は旦那から聞いてくれや」

勇者「商人さんが依頼人ってことですか?」

商人「ええ、まあ。この老いぼれにも夢がありましてな。その達成のために必要だった故、彼らに手を貸しとります」

勇者「夢?」

商人「貿易街の国家としての独立」

勇者(はっ…?)

商人「そうですな、ここでは仮に商国とでも呼びましょうか」

商人「王国の支配から逃れ、都市国家として独立し、私がその国の首長となる。そんな夢ですとも」

勇者「…」

勇者「えっと、教国に与して王国の国力を落とそうってことです?」

商人「ええ。無血で終戦などもってのほか。両国とももっと疲弊して貰わねば」

勇者「そんなの…魔王との戦争ん時にでもやりゃ良かったでしょう。なんで今更」

商人「あの時に内輪で割れれば人類そのものが滅亡していましたからな」

商人「今ならばそこまで酷いことにはなりますまい。せいぜいが疲弊した国二つで済むでしょうな」

勇者「じゃあここでアンタを殺します。お覚悟」

商人「どうぞ好きにすればよろしい。ですがその剣を振って一番に損をするのは私で、次が貴方だ」

勇者「何…?」

商人「考えてみるといい。私は教国の者の手引きをしただけです。信徒に命令を下している者はまた別にいる」

商人「さて勇者様。たった首一つで、そこへと繋がる線を切ってもいいと?」

商人「本当に?」

勇者(…商人を動かせるってなれば相当の大金持ち。大司祭以上の大物だ)

勇者(だが、大司祭だけでも十数人はいる。そいつらを一人一人洗うだけの時間は恐らくない)

勇者(そして、商人の代わりも多分用意されている。王都への手引きなんて一定以上の商人なら誰でもできるからな)

勇者(…チッ)



勇者「…そこまで言うなら、依頼人が誰か教えてくれるんですね?」

商人「無論。私も命は惜しいので」

勇者「誰」

商人「直接的な上は中央教区長。ですが命令の元を辿れば首席枢機卿…教皇の補佐を務める司教枢機卿でしょうな」

商人「この先は商業街に繋がっとります。一晩休んで行かれるといいでしょう」

勇者「いや寝首掻く気でしょ?結構です」

商人「では陰ながら応援するに留めておきましょう。ああ、討つのですか?」

勇者「まずは話を聞いてみます。商人さんこそこんなこと話して良かったんですか?」

商人「何の何の。命あっての物種ですからな。勇者様こそご武運を」

勇者(うるせえ[ピーーー])

……

盗賊「いいのか?もっと王国を弱らせなきゃいけないんだろ?止められちまうぜ」

商人「はて…?確かに私は『王国の国力を削ぐためにゲリラに手を貸している』とは言いましたが」

商人「ゲリラ活動で国力を削ぐなどと言った覚えはありませんな…?」

【教国】

神殿騎士A「…」

神殿騎士B「…」

勇者「」コソッ

勇者(内哨の数がやべえ…王国の工作員対策か?姫の性格知ってたらそりゃ立てるか)

勇者(しかも全員士気が異様に高い。敗色濃厚な戦争の前とは思えねえ)

勇者(…何か勝つための秘策があるって思った方がいいな、こりゃ)

勇者(さてどうするか…)

勇者(枢機卿は実質的な国政のトップだ。奴さえどうにかできれば今度こそ教国に手はなくなるはず。血は流れずに済む)

勇者(いるとすれば間違いなく中央神殿。潜り込む必要がある)

勇者(だけどこの監視の厳しさはマジで異常だ。何なら国境の哨戒すら国内に回している。他を捨てても神殿だけは守り通すってくらいに硬い)

勇者(…正面突破?いやぁ無理でしょ。死んじゃう)

勇者「困った…」

「何が?」

勇者「どうやって神殿に入ろうかなって…」

勇者「え?」

賢者「あそこに入ろう、ねえ。また無謀なことに挑んでるんだな君は」

勇者「け、…賢者さん?」

賢者「やあ、久しぶり勇者。封印の塔以来だね」

勇者「あっはい、その説は本当にお世話になりました」

賢者「でも結局封印魔法使わないで魔王倒したんでしょ?あれをネタに勇者に恩を売るつもりだったのにな~」

勇者「その、それより賢者さんこそ何でここに?」

勇者(世捨て人とか言ってたじゃんお前。え、あ)

勇者「まさか教国に雇われてるとか…」

賢者「普通に旅行だよ。ついでに君や僧侶や魔法使いに会えたらいいなってね。そしたらまた戦争が始まりそうとかで足止め。全く、これだから人間は」

賢者「で、撹乱魔法の気配がしたから王国のスパイかと思ってさ。ストレス解消にいたぶって殺そうと思って来たんだけど…ふふ、まさか勇者だったなんてね」

勇者「あ、あはは…」

賢者「勇者こそどうしたの?なんか王国に囚われたって聞いてたよ。今回の戦争もそれが理由だって」

勇者(こっちの国も似たようなことしてんなぁ…)

賢者「あ、もしかして自力で脱出したとか?」

勇者「いやあの…話せば長くなるんで…」

賢者「ああ、神殿に入りたいんだっけ。協力してあげよっか」

勇者「…見返りは?」

賢者「暇だから別にいいよ。あ、でも後でお礼言ってね」

勇者「助かります。何か方法あります?」

賢者「ざっと二つ。一つは僕開発の強化薬(無認可)を君が飲んで特攻する。もう一つは僕がその辺爆破して気を引いてる隙に君がこっそり忍び込む」

勇者(今度からコイツのこと愚者って呼ぼう)

ここまで

勇者(しかし二人いるってのはアドだな。やれることも増える)

勇者(それなら…でもこいつアホだし…いや…うーん)

賢者「あれ、勇者考え込んじゃった」

賢者「こうなると長いんだよなあ。もういいや、やっちゃえ」

賢者「イオ」

ドォン!!

勇者「えッえッ!?」

賢者「あっ、こういう時に言ってみたい台詞があったんだよね」

賢者「ここは任せて先に行け!」

勇者「嘘でしょアンタ…!?」

【神殿】

勇者「いや確かに入れたよ?」

勇者「だからって馬鹿じゃんこれは」

勇者「も~~やだ~~~!」

勇者「元仲間がみんなクズかアホなのほんとやだ~~~~~!」

勇者「…」

勇者「あれ?この気配、なんか奥の方で儀式やってる?」

勇者(これが王国に勝つための秘策か…?)

勇者「…入っちゃった以上進むしかないもんな」

勇者「行こう」

枢機卿「ようこそお越し下さいました、勇者様」

勇者「…これは…」

勇者(神殿の最奥。光を放つ巨大な扉の前に枢機卿が立っていた)

勇者「バレてたんですか」

枢機卿「いえ?ですが勇者様ならきっとこの場に辿り着くだろうと思っておりました。むしろ遅かったくらいでしょう」

枢機卿「なにせ、他ならぬ僧侶様に関わることなのですから」

勇者(

>>237はミス

枢機卿「ようこそお越し下さいました、勇者様」

勇者「…これは…」

勇者(神殿の最奥。光を放つ巨大な扉の前に枢機卿が立っていた)

勇者「バレてたんですか」

枢機卿「いえ?ですが話は僧侶様に関わることなのですからな」

枢機卿「他ならぬ勇者様であれば、きっと道理など飛び越えてこの場所に辿り着くと信じておりました」
勇者(…えっ僧侶?いや知らんが)

勇者「その、とりあえず王国へのテロやめてください。そして王国に無条件降伏を。条件が軽くなるように俺も協力しますから」

枢機卿「ふむ、それが勇者様のお望みですか?」

勇者「え?ええ、はい」

枢機卿「ではそのように。金輪際信徒を使った王国への襲撃はしないと約束しましょう」

勇者「口約束ならどうとでも言えます」

枢機卿「信用出来ないならば魔法を使った契約でも構いませんよ」

勇者(…?随分あっさりしてやがる…)

枢機卿「別に大したことはありませんよ。我々はもうそれを行う必要がないというだけのこと」

枢機卿「――王国軍の編成が数日遅れた。これより多くを望んでは罰が当たりましょうな」

勇者「なにがッ…!?」

勇者「眩しっ…!」

枢機卿「おや、これは失礼を。儀式の作用とのことです。しばし我慢いただけますか?」

勇者(扉から光が溢れ出てる。それと…は!?なんだこの馬鹿げた量の魔力!?)

勇者(しかもこれ、ただの魔力じゃない!)

勇者「女神様の…!?」

枢機卿「流石は勇者様。その通り、これなるは我らが崇め奉る女神の力です」

勇者「女神はこの世界に干渉できないはずだ!だからクソみたいや苦労をして俺が…!」

枢機卿「ええ。ですから女神は依代を必要とするでしょう?」

枢機卿「例えばそう、かつての貴方のように。力を容れられるだけの資質と精神を持つ者に女神は力を与えます。人類の文明が始まって以来幾度となく繰り返されてきたことです」

枢機卿「それだけの観測例があれば、いかに奇跡的な現象だろうが原理を分析し、応用することは充分に可能でした」

勇者「まさか…僧侶に女神の力を…!?」

枢機卿「正確には女神そのものを僧侶様の身に降ろし、顕現させます。彼女は元々そのために生み出された人間ですからな」

勇者「元々…」

勇者(何のために…なんて聞くまでもないか)

勇者「魔王への対抗策ですか」

枢機卿「ええ。勇者は加護により不死と聖剣を与えられますが、言ってしまえばそれだけですからな。失敗して囚われてもなんら不思議ではない」

枢機卿「そのように万一勇者が失敗した場合、女神を降臨させ魔王を滅ぼす。聖女とはそういう存在なのですよ」

枢機卿「だからこそ僧侶様が貴方に付いて行くと仰られた時は国中が騒然としたものです。あの数の反対勢力を鎮めるのは中々に骨が折れましたよ」

勇者(…ゲロ吐きそうだ)

勇者(でも、確かにここまで強い魔翌力…)

勇者(そして僧侶の魔法)

勇者(兵を強化しながら前線に出れば…)

勇者(…でも)

勇者「この国、滅びますよ」

枢機卿「そうですかな」

勇者「簡単には負けない。勝てるかもしれない。でもそこ止まりです。こんな戦争は何にもならない」

勇者「教国なんて結局のところ女神信仰の結実です。それがなくならない限り滅びることは決してない」

勇者「降伏するべき、じゃない。降伏しなきゃならないんだ」

枢機卿「ふむ。では滅びれば良いのでは?」

勇者(…)

勇者「は?」

枢機卿「言葉の通りですよ。滅びるなら滅びてしまえばいい…ああ、伝え忘れていましたか」

枢機卿「この戦争は僧侶様のご意思によるものですよ」

勇者「意味が…意味が分からない」

枢機卿「この国を、世界を救ったのは女神でも信仰でもない。勇者様、貴方たちと僧侶様だ」

枢機卿「その僧侶様が決断され、決意されたのです。女神を降ろして王国と戦うと」

枢機卿「ならば我々は彼女に付き従うのみ。いや、そうでなくてはならない!」

枢機卿「彼女に救われた我々が、彼女に代わりに戦わせた我々が、彼女を信じることしか出来なかった我々が!」

枢機卿「この期に及んで彼女の意思に背くなど!許されるわけがない!!」

勇者「……」

枢機卿「…失礼。お見苦しい姿をお見せしました」

勇者(狂信者)

枢機卿「勇者様。ここに来られたということは僧侶様が気掛かりなのでしょう?」

枢機卿「是非とも僧侶様の力となって欲しい。僧侶様が真に求めているのは貴方ただ一人なのだから」

枢機卿「いや、この戦争に直接手を貸さずとも構いません。機を見て必ずや僧侶様を逃します。その先の未来で彼女の力となってくだされば、それだけで」

勇者「…」

勇者「すみません。駄目です」

勇者「俺は戦争を止めます」

勇者「勇者として」

枢機卿「…さようでございますか。残念です」

枢機卿「ではご退場願いましょう」

教皇「ご苦労だった、枢機卿殿」

枢機卿「猊下。ご準備の程は?」

教皇「五割といったところだ」

枢機卿「それだけ進行していれば充分でしょう」

教皇「ああ…」

勇者(…教皇まで出てきたか)

勇者「まさか…あなた達が俺の相手になるつもりですか?」

教皇「いいや。勇者殿、君の相手は他にいる」

教皇「こちらへ、僧侶…」

教皇「…いえ、女神様」

僧侶「……」

勇者(うっ…?)

僧侶「……」

僧侶「お久しぶりですね、勇者様」

ここまで
クズばっかで草

勇者「言っても一ヶ月でしょ。そんな久しぶりってほどじゃない…」

僧侶「いいえ、十分に久しぶりですよ。私にとっては万を越す日数にも等しいのですから」

僧侶「そして私だけの言葉ではありません。こう言い直せば分かりやすいでしょうか?」

僧侶「――お久しぶりですね。勇者」

勇者「いやクッソ分かりづらいです。かっこつけてるとこ悪いけど滑ってますよ、女神様」

僧侶「わ、分かっているではないですか」

勇者「言語は文明の結晶です。アンタがサボるのは違うでしょう」

勇者(やばい怖いやばい怖いやばい怖い。これマジで強い)

勇者(下手しなくても魔王とタメ張ってやがる)

勇者(死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ)

勇者「…本当に女神だってんならそこの二人に戦争やめるよう言ってください。アンタの言うことなら聞くでしょ流石に」

僧侶「無意味ですよ。今代の教皇はともかく、もう一人は私のことなど全く信奉していないようですし」

僧侶「なにより、これはこの子自身の」

僧侶「私自身の意思です。誰かにそそのかされたわけじゃありません」

勇者(わっかりづらいんだよどっちがどっちか)

僧侶「ですので、勇者様こそ退いてください。この力があれば王国に勝てます。少なくともあの姫の首だけは獲れるはずです」

勇者「どんだけ嫌いなんですか…」

僧侶「個人としてはそうでも。けれど、あの人は必ずいつか勇者様に害を為します。今の騒動がいい例です」

勇者(いくらなんでも俺のためだけにここまで大事にするほどトチ狂ってないと思うけど)

僧侶「…勇者様には分からなくても私には分かります。姫がどうして女王になって、どうしてこんな戦争を起こしたのか」

勇者「あ?理由?」

僧侶「勇者様。きっと私は生きて戻ります。その時は約束を…」

勇者「うるせえ黙れ。殺人鬼との約束なんて無効に決まってるでしょうが」

僧侶「…そうですよね」

僧侶「…本当に良いのですか?」

僧侶「ええ。これで迷いはなくなりました」

勇者「先制ブレイブ足払い!」

勇者(コ・ローベ僧侶!魔王パパの如く!)

僧侶「分かりました。私も覚悟を決めましょう」ヒョイッ

勇者「あっ」スカッ

僧侶「勇者の加護を没収します」

僧侶「これからは一人の人間として生き、死になさい」

勇者「えっ」パリンッ

勇者「アッ聖剣が折れた!?」

僧侶「貴方は死にたくないのでしょう?ならば戦争になど来てはいけませんよ」

僧侶「さようなら勇者。もう会うこともないでしょう」

勇者「おい待てふざけ――」

カッ!

ここまで

勇者「…」

勇者「ここは…」

戦士「目を覚ましたか」

勇者「戦士さん…」

戦士「一ヶ月ぶりだな。突然飛んで来たから驚いたぞ?」

戦士「しかし王国か教国のどちらかに捕らえられていると思っていたが…」

勇者「…どっちも嘘ですよ。戦争の口実です」

戦士「そうか。それで逃げてきたのか」

勇者「ここは?」

戦士「俺の家だ。今妻が食事の準備をしている。丸一日も寝ていたんだ、まずは食べて行くといい」

勇者(…毒を盛ったりは…)

勇者(…いや…)


勇者「ご馳走様でした」

戦士「お粗末様だ」

勇者「それで、丸一日って本当ですか?」

戦士「ああ。昨日の未明からずっとだ。何があった?」

勇者(…僧侶、いや女神の言葉を信じるなら)

勇者(多分一番安全で信頼できる奴のところに飛ばしたんだろう)

勇者(話すべきか…?)

戦士「言い難いようなら質問を変えよう」

戦士「勇者、聖剣と加護はどうした?」

勇者「…」

勇者「女神様直々に没収されました」


勇者(いざとなったら妻子を人質にとって…)

勇者(…)

戦士「…そうか」

勇者「ええ、そうなんです」

戦士「ならば…」

戦士「今[ピーーー]ば、お前はもう蘇らないということか」

勇者「…」

勇者「それが?」

ここまで
ここから少し語彙が全体的に物騒気味になりそうです


戦士「…」

勇者「…」

戦士「…ふう。それは困ったな」

勇者「?」

戦士「お前に頼もうと思っていたことがあったんだが、どうにも危険を伴う」

戦士「不死の加護がなくなったのなら無理に頼むわけにもいかないと思ってな…」

勇者「…俺を殺そうとしないんですか?」

戦士「?何の話だ?」

勇者「いえ…」

勇者(…やっぱり…)

勇者「…頼みたいことって?」

戦士「俺が今指揮しているレジスタンスの旗頭になって欲しい」

勇者「レジスタンス、ですか」

戦士「ああ。戦争を止めるためにな。ここと周辺の街の兵士が中心の組織だ」

勇者(…ああ。だから戦争始まるってのに真っ先に召集されるはずの戦士がこの街にいたのか)

勇者(となると軍令を無視してるわけだから、女王にはバレてるって考えた方がいいな)

勇者(そんな組織が目標を遂げられる確率は…)

戦士「この戦争の発端はお前だ。そのお前が姿を見せれば両軍の兵士は士気を失う…」

勇者「いやそんなわけないでしょ。どーせ偽物だのなんだの難癖つけられて殺されて終わりですよ。今は聖剣も持ってないんですし」

戦士「…否定はしない。だが死者を出さずに場を収めるにはもうそれしかないだろう。あとは兵士達の、人間の良心を信じるしかない」

勇者「だったら始まる前に失敗してますよ。誰かの命を奪うことにポジティブな奴らが良心なんて持ってるわけないでしょう」

戦士「それは違う」

勇者「あ?」

戦士「女王も、僧侶も、兵士達も、命を平気で奪おうとしているわけじゃない」

戦士「ただそれに代えても成し遂げたいことがあるだけだ」

戦士「そこに命を奪う以上の価値を見出している。だから戦う。決して良心がないわけじゃないのだと俺は信じている」

勇者「…価値…」

戦士「ああ。人は誰しもそうして生きているものだろう」

勇者「……」

戦士「…まさか勇者に二度も説教する機会が訪れるとはな」

戦士「とにかく頼みたいことは伝えた。安心しろ、ここで決めろとは言わない。だが、時間がそうあるわけでもない。もう戦争が始まる」

戦士「俺はもう発つ。戦場となる国境線から少し離れた場所に陣を敷くつもりだ。もし協力してくれるならそこに来てくれ。地図を渡しておく」

勇者(戦う理由。生きる意味、か)

勇者「馬鹿じゃねえの。さっぱり分かんねえよ」

勇者(命より大事なものなんかあるか。平和に生きること以上の幸せなんてあるわけがない)

勇者(だから戦争を止める。勇者なんだからそうしなきゃならない…)

勇者(…勇者として?)

勇者(魔王は死んで、聖剣と加護を失った)

勇者(名実共に俺はもう勇者じゃない。勇者じゃないんだ)

勇者「だったら…戦争なんて止めなくても…」

勇者(俺が危険を犯してまで止める理由なんて…ないのか…?)

勇者(仮に俺がここで介入をやめたらどうなる)

勇者(王国と教国の戦争は泥沼化する。女王のあの性格だ。教国がそうだったように、何かしらの切り札は持ってるはず)

勇者(戦争が長引くほど人が死んで…国が荒れて…周辺国も攻めたり離れたりしていく)

勇者(そうして商人や一部のクズだけが甘い汁を啜る)

勇者(最後に焦土となった国土で、屍の山の上で、姫様と僧侶さんのどっちかが死ぬ)

勇者(そんなのは許せない…と思う。だが、何故?ただの一般人の俺には関係ないはずだろ)

勇者(どうして俺はそれを許せないと思うんだ?)

勇者「…どうして、か」

勇者「なぁ俺」

勇者「どうして枢機卿は俺に僧侶さんのことを頼んだ?」

勇者「どうして女神様は俺にあんなことを言った?」

勇者「どうして戦士さんは俺を問答無用で従わせなかった?」

勇者「どうして僧侶さんは俺を殺さなかった?」

勇者「どうして俺は、みんなが俺のことを殺そうとしてるって思ったんだ?」

勇者「もういいよ。認めよう」

勇者「全部とは言わない。でもほとんどが勘違いだった」

勇者「俺がみんなを信じていればこんなことにはなっていなかったんだ」

勇者「そりゃ無理だよ。出来ねえよ。俺にはそうとしか思えなかったんだから」

勇者「じゃあ、もう分かってんだろ」

勇者「なぁ俺」

勇者「一番悪いのは誰だ?」

ここまで

擁護して頂けるのはとても嬉しいのですが、流石に死ねと殺すが頻出すると読みづらくなると思い入れさせていただきました。

一週間後

【野営地】

兵士A「設陣終わりました!」

商人「おお。即席ですがなんとか間に合ったようですな」

戦士「ああ。商人殿の手腕のおかげだ。感謝している」

商人「なんの。代金分の仕事をしたまでです」

商人「しかし、ふむ…勇者様はまだ来ませんか」

戦士「心配せずとも来る。信じて待つのみだ」

商人「ですが間に合わない可能性もある。もしそうなったらどうするおつもりで?」

戦士「その場合は両軍に妨害を仕掛ける。兵糧に火をつけるなり夜襲をかけるなり、敗勢の方に加勢するなり…とにかく時間を稼ぐつもりだ」

商人「そうして勇者様の到着を待つと…よろしい。ならば微力ながら我々も力になりましょう」

盗賊「――商人の旦那に戦士の旦那!偵察に遣ってた部下が戻ってきた!今にもおっ始まりそうだってよ!」

商人「戦士様」

戦士「…行くしかないだろう」

戦士「総員、出るぞ!」

【国境線・戦場】

騎士「…」

神殿騎士「…」


僧侶(…数の比にして1対4。世界最大の国は伊達じゃありませんか)

女王(僧侶様のあのご様子。単純な戦力比で考えては足元を掬われそうですね。こちらも切り札を切るべきでしょうか?)

僧侶(あの人は勇者様を手に入れるためには手段を選ばない。…少しだけ羨ましくて、けれど私には決して真似できませんでした)

女王(あの方は誰よりも勇者様と近しい間柄。…どんなに望んでも、私では決して到ることのできない距離だった)

僧侶「だから殺します」

女王「故に排除します」


「「全軍前進」」

女王「…」

女王「とはいえ、まさか真っ先に私の首を獲りに来るとは」

女王「嫌われたものですね。僧侶様?」

僧侶「それが一番の近道ですから」

僧侶「あなたの首一つでこの戦争を終わらせます。覚悟してください」

女王「できるとでも?この場には王国最精鋭の護衛が10人ほどいるのですが」

僧侶「逆に、その程度の護衛で今の私を止められるとでも?」

女王「…そうですね。女神様の力を降ろした今のあなたに10人程度では力不足。認めましょう」

女王「でも…1万人ならどうでしょう?」

僧侶「!」

女王「教国の聖女計画には王国も少なからず出資していました。であれば今日までの間に対策を練らないわけがない」

女王「そして対魔王の最終手段を用意しているのが貴女方だけだと思ったら大間違いですよ」

僧侶「…なんて力…!」

女王「人類の一番の力は数です。そして我が王国は人類最大の生存圏として、どんな苦境にあっても人が集まる」

女王「これは王に忠誠を誓った全ての兵の力を私と繋げる魔法。同時接続可能な最大数は一万。王家の血にのみ伝わる秘術です」

僧侶「…そんな魔法が」

女王「長い歴史の産物ですよ」

女王「さて、一騎当千という言葉をご存知ですか?」

女王「我が国の騎士を表す言葉としてこれほど相応しいものもありません」

女王「よって、ここに在るのは1千万と1人と心得なさい」

女王「行きますよ」

僧侶「手加減は不要そうですね…!」

戦士「始まったか…!」

戦士(戦場の中心で戦っているのは…僧侶と女王か…?)

兵士A「隊長!我々も!」

戦士「…両軍に側面から射掛ける!注意を引いたら散開、距離を取って分隊単位で独立行動!再び妨害工作にあたれ!」

戦士「いいか、絶対に死ぬな!傷を恐れ、死を恐れ、しかし殺しを恐れるな!それが平和に繋がると信じて戦え!」

兵士「「「イエス・サー!」」」

戦士「よし、戦闘開始!」

「ギガデイン」

ここまで

騎士「……」

神殿騎士「……」

兵士A「……」

兵士B「……」

商人「……」

盗賊「……」

戦士「来たか…!」


勇者「…………」


女王「今の雷は…」

僧侶「…勇者様」

僧侶「なぜ来たのです…!」


勇者「…ふぅ」

勇者「…………」スゥ

勇者「――革命じゃあぁぁぁああああっ!!」


女王「!?」

僧侶「か、かく…?」

勇者「生きる意味?平和より大事なもの?バーカ!バカバカブゥアァーーーカッ!!人が必死こいて守った世界で舐めたこと抜かしてんじゃねえぞボンクラ共が!!!」

勇者「特にそこのクソアマ二人!!命あっての物種って言葉を知らんのか!!産んでくれた親にごめんなさいしろ今すぐここで!!」

勇者「ハイッ、いっせーのでごめんなさい!!!」

女王「これは…」

僧侶「ゆ、勇者様が壊れた…」

勇者「僧侶ォ!」

僧侶「はっ、はい!」

勇者「答えろっ、お前は俺を殺すつもりだったか!?」

僧侶「えっ、えっ?なんの話ですか…!?」

勇者「ならばよォし!次、女王ッ!」

女王「な、なんでしょう…?」

勇者「お前は俺を殺すつもりなんてなかったんだろ!?」

女王「ええ、それはもちろん…」

勇者「――そう、俺は勘違いをしていた!」

勇者「お前たちが邪魔な俺を殺したいだろうと!危害を与えてくるだろうと!!まぁそっちは正直その通りだったが!」

勇者「何故か!?お前らと俺は物事の考え方が全く違ったからだ!!」

勇者「ならば悪いのは誰だ!?答えろ戦士ィイッ!!」

戦士「いや、それは…お前なのでは…?」

勇者「は!?ンなわけねえだろ!!!ブッ殺すぞこの糞野郎ッ!!!」

戦士「お、おお…?」


商人「絶好調ですな」

盗賊「というかアレが素なんじゃねえか?」

勇者「命より大事なものなんてない!平和より優先することなんぞない!俺の言ってることが間違ってるか!?あァン!?」

勇者「俺は正しい!!そして俺が正しいならばお前たちは間違っている!!」

僧侶「あ、あの、勇者?それは流石に無理やりなんじゃ…」

勇者「うっせぇぞボケ女神!!誰がいつ発言を許可しましたか!?」

僧侶「ひいっ…!?」

勇者「話を戻すぞ。そうだ、俺は間違っていない。なら一番悪いのは誰だ?」

勇者「決まっている!お前たち全員の、いや、この世界の価値観そのものだ!!」

勇者「お前らが俺と同じように考えるようになれば!もうこんな勘違いも戦争も起きずに済む!」

勇者「だったらやってやる!勇者としてじゃねえ!平和を愛する一般的人類として!」

勇者「命に替えても成し遂げるなんてゴミみたいな価値観を!!命があればそれだけで幸せっていう価値観に!!」

勇者「俺色に、塗り替えてやる!!!」

勇者「オラこの戦場にいる世界で一番のボケナス共!!今からもう一回宣言してやるから耳かっぽじってよーーーく聞け!!」


勇者「――革命じゃあぁぁぁぁぁぁぁあッ!!!」

ここまで

よく考えたらこれ勇者も生きるために戦ってね?
まあいっか

勇者「メラゾオォォォマ!!」

騎士「ぎゃあああっ!!」

勇者「大地斬ッ!!」

神殿騎士「ぎいっ!?」

勇者「ザオラルゥゥゥゥゥゥ!!!」

騎士「…ぐ」神殿騎士「うう…」

勇者「っしゃあ!絶好調!ヒャッホウ!」

勇者「見てたかお前ら!!邪魔する奴はこうやって、ぶっ殺してから蘇生して生の喜び感じさせてやるからなァ!!」

勇者「行くぜオラァ!!全員ぶった斬ってやるからそこに直れぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」


女王(…勇者様と僧侶様を同時に相手には出来ませんね)

僧侶(まず女王様を殺して、勇者様と戦うのはそれから)

女王「全軍、勇者様を抑えなさい!僧侶様を討つまでの間、教国の軍勢は無視して構いません!」

僧侶「こちらもまず勇者様を!私が女王様を殺したら王国軍の制圧に移ってください!」

騎士「勇者様がご乱心だ!!女王様を守れえええ!!」

神殿騎士「怯むな!勇者様があんな汚い言葉を使うはずがない!偽物だ!」

勇者「マヒャデドス!!ザオラル!!」

騎士「覚悟!」

勇者「っ、後ろ――!」

騎士「ガッ!?」

勇者「!?」

戦士「フォローする!お前は思うように突っ込め!」

勇者「ザラキ!!!」

戦士「うおおおおおおお!?」

勇者「は!?オイ避けんじゃねえ!!」

戦士「避けるだろう即死呪文撃たれたら!!」

勇者「仲間でもねえんだから即死呪文撃つのは当たり前だろうが!!」

戦士「こ、こいつ…!」

騎士「今だ――!」

神殿騎士「オオオッ!」

戦士「…ええい、ひとまず後だ!協力して奴らを倒すぞ勇」

勇者「全員消し飛べッ、イオナズンンンンン!!」

戦士「おまっ」

ここまで
夜にまた更新します

勇者「ザオラル!」

戦士「…はっ」

戦士「お前っ…!今のはないだろう!人として!」

勇者(えっ、もう動けるの?一回死んだんだよ?)

戦士「チッ…ああクソ、遺憾ながら少しだけ理解した!成る程これが生の安堵か!凄まじいな!」

勇者「…分かったなら手伝えや!俺がこの世界を薔薇色の理想郷に変えるのをな!!」

戦士「それただの屍山血河だろうッ」

勇者「ああ゛!?」

戦士「とにかく戦争を止めるのが俺の目的だ!道は開けてやるからとっとと僧侶と女王を止めてこい!」

勇者「言われずともやるっつーの!昔っから小うるっさいんだよ戦士さんは!」

盗賊「っはっはっは!お前最高だよ!面白え!面白えってのは大事だぜ勇者サマよぉ!」

勇者「るっせえ!戦争が面白いわけあるかヴォケ!テメエももっかい死んどくか!?」

盗賊「そりゃ勘弁!それに――よっ!」

神殿騎士「ぐぶ…」

勇者(…撹乱魔法か!気づかなかった)

盗賊「俺が死んでたらこういう真似も出来ねえからな!」

勇者「ザオラル!チッ、恩着せがまうぜえ!」

盗賊「それとこれは商人の旦那からだ!受け取れ!」

勇者「!」パシッ

勇者(剣、それもすげえ業物…!)

盗賊「聖剣ないんだろ?そんな安物じゃかっこつかないぜ!」

勇者「商人に伝えとけ!媚びても後でぶっ殺すってな!」

盗賊「悪いがそいつぁ労働規格外だ!生きて帰って自分で伝えるこった!」

勇者「ザオラル!…はあっ、次ぃ!」

「勇者!新しい顔よ!」

勇者「ゴボォ!?」

勇者「オエッ…んだこれ、聖水!?」

賢者「入り用かと思ってさ。賢者の聖水。魔法の聖水じゃ回復追いつかないでしょ」

賢者「実は僕作れちゃうんだよね。なんたって賢者だから」

勇者(愚物がなんか言ってる)

賢者「さて勇者、聞いてたんだけどさ。さっきの演説は本気なの?」

勇者「当然。邪魔するならお前も斬るぞ」

賢者「いや逆逆。むしろいたく感心したんだ」

賢者「君のいう理想郷。つまり縋り付く他人を蹴っ飛ばしてでも自分の身を守るってことでしょ?」

勇者「ああ。自分の命より優先するものはない」

賢者「だよね!やった、ようやく僕の時代が来た!」

賢者「これでもう世界なんかのために封印の塔の維持管理なんてしないで済む…!」

賢者「豪邸で食っちゃ寝して下民を指差して笑いながら生きていける!!」

賢者「ああ今日はなんていい日だろう!感謝するよぉ勇者!ハレルヤ!!」

勇者(うわぁ。屑だ)

賢者「自由と平和を今こそ我が手に!!バギクロス!!」

ここまで

今気づいたけどザオリクとザオラル間違えてたんでニュアンスでお願いします

乙? まあザオラルのが運よく生き返れて良かったな感があるがね

HPも削れた状態で復活するしなあ

>>321
>>322
天才か?
それでいきます

騎士「ぐうっ、本当に一般兵かお前…!」

兵士A「伊達に最前線で戦ってたわけじゃねえんで…!」

騎士「我らとて戦っていたのは同じ!ならばこそ負けるわけにはいかないな…!」

神殿騎士「何故だ!何故貴様らはあの者に味方する!?加護を失い、もはや勇者でないというのに!」

兵士B「関係ない!たとえ彼の職業が勇者でなくなっても、経歴は紛れもなく勇者のままだ!我々を救ったことに変わりはない!」

神殿騎士「でもアレ明らかにさっきから言ってることおかしいだろう!?後でアンタも殺されるんだぞ!!」

兵士B「…うおおおおおっ!!」

神殿騎士「叫んで誤魔化すなァ―――!」

盗賊「三倍煙幕だ!戦士の旦那、賢者の嬢ちゃん、今のうちだぜ!」

戦士「まとめて薙ぎ払う――五月雨剣!」

賢者「じゃあ取りこぼしは僕が。それ、ベギラゴン!」


騎士「決して休ませるな!数で殺せ!!」

神殿騎士「魔法は我々が防ぐぞ!」


戦士「次から次へと…」

盗賊「はっ、はあっ!流石に疲れてくるな畜生!」

賢者「おーい勇者ぁ!そっちどう!?」


勇者「――ライデインザオラルライデインザオラルライデインザオラルライデインザオラルゥッ!」

騎士「お、ややめください勇者様!」

神殿騎士「俺、まだ死にたくなッ――」

勇者「ウケケケケケケケケッ!!いいいいいのちをだいじにぃぃぃいいいい!!」

勇者「天ェェェェン誅ゥゥゥゥゥゥ!!!」

「「ギャアアアアアアア!!」」


盗賊「うわっ、エキサイトしてんなぁ…」

戦士(…もしなして俺のせいなのか…?)

賢者「あはははははは!!ひー!!」

短いけどここまで

勇者(ようやく…)

勇者「ようやく、辿り着いた!」

勇者「僧侶ッ、女王ォ!」

女王「やはり来ましたか…!」

僧侶「…勇者様…」

勇者「挨拶代わりに死んどけ!ギガスラッシュ!!」

女王「いきなりですか!」

僧侶「っ!!」

女王「ふふふふふっ!加護も聖剣も失った身で、まさか本当に来るなんて!」

勇者「ったり前だろうが!つーか女王テメェ、お前が戦争起こしたのが一番でかい原因だからな!お前だけは絶対に許さん!」

勇者「ついでに僧侶、応じやがったお前も同罪だ!二人まとめてボコってやるよッ、バイキルト!」

女王「っ…!僧侶様!」ミシッ

僧侶「弾きます、合わせて!」

ギィン!

勇者「うおっ…!」

勇者(チッ、協力しやがるか!うざってえ)

勇者「つーかそういうのはボス敵がやっちゃダメだろうがよ。魔王といいお前らは本当にさあ…!」

僧侶「バギクロス――いくら勇者様でも」

女王「私たち二人が相手では手が足りないでしょう?風神斬り!」

勇者「ライデイン、煉獄斬り!」

女王「今です!」僧侶「っ、いけない!」

勇者「――からのッ、イオナズン!」

女王「な!?」
僧侶「三回行動…!!」

勇者「魔王は三回行動!じゃあ勇者が出来ておかしくないやろがい!」

女王「しまっ…!」


僧侶「やらせません。バギクロス!」

勇者「二人まとめて死ね!ギガデイン!!」

カッ!!

僧侶「…相殺ですか、今の私と…!」

勇者「相変わらず硬ったいなお前!だが!」

勇者「俺は勇ましき者!諦めません勝つまでは!そらもういっちょ!」

僧侶「嘘っ…!?」

女王「僧侶様!百烈斬り!」

勇者「チッ!」

女王「無事ですか?」

僧侶「ええ…」

女王「まずは勇者様を」

僧侶「…そうするほかないようですね」

勇者「クソが…」

勇者(僧侶の魔法は強力だ。喰らったらワンパンで消し飛ぶ)

勇者(女王のパワーとスピードも厄介極まりない。ミスったら首がオサラバだ)

勇者(そんな二人が連携組んでやがるんだ。今行けそうな雰囲気出てるのは奴らがビックリしてるだけ。冷静になられたら苦しいか)

勇者(…仕方ねえ)

勇者「オラ、手伝えクズ共!」

賢者「ピオリム」

盗賊「シャアッ!」

女王「っ!?」

ギンッ!

盗賊「浅いかっ」

賢者「ちょっと。ちゃんと決めてよね」

盗賊「いや無茶言うなよ…完璧な不意打ちでこれだぜ。化け物だ」

女王「あなたたちは…!」

勇者「おいお前ら、俺は僧侶を殺ってくる。それまで女王の相手頼むぞ」

賢者「オッケー。王家にはゴミみたいな仕事あてがわれた恨み辛みが山ほどあるからね。任せてよ」

盗賊「やれるだけはやってやる。そんな長くは保たないからな」

女王「…勇者様ならいざ知らず。あなた方程度が私を止められるとお思いで?」

賢者「あはは。無理に決まってるでしょそんなの。こちとら賢いだけの賢者と薄汚いドブネズミだよ」

盗賊「あ?おい」

賢者「そこらの兵隊よりは強い自信あるけど、魔王級の相手ともなると流石にね。無謀だ」

女王「では…」

賢者「あくまでも僕達二人は、ね。はいバイキルト」

戦士「――ギガブレイク!」

女王「!!」

女王「貴方、は……ッ!」

戦士「やっとあいつらが二人になれたんだ。貴女には悪いが、少しの間付き合っていただこう…!」

女王「目障りなっ…!」

勇者「これで二人っきりだ。僧侶」

僧侶「…力を隠していたんですね」

勇者「隠す?馬鹿言えよ。必要なかっただけだ。お前らパーティメンバーが優秀だったからな」

勇者「俺は歴代の勇者共と違って封印魔法の才能がなかったからな。隙を作るために仲間が必要だったんだよ」

勇者(まぁそれはアイツが封印耐性つけてたせいでオシャカになったわけだが)

僧侶「私たちは…保険だったということですか」

勇者「力が足りなかったのか、何か理由があったのかは知らねえ。だが歴代勇者は代々魔王を封印してきた」

勇者「俺よりよほど立派な心根の連中がそうしてきたんだ。なら俺もそれに倣うと決めた」

勇者「だが、そもそも勇者の役目は魔王を倒すこと。封印は手段で目的じゃない。なら封印の才能がなかった時点で次善の手段を用意するのは当然だ」

勇者「殺すなら一人で事足りる。それくらいまで強くなる」

勇者「他人を信じられないビビリな俺にとって、それだけが唯一確実と思えた手段だったんだよ」

勇者「実際にそこまで強くなれたのは、まぁラッキーってやつだな」

僧侶「簡単に言ってくれますね…」

僧侶「勇者様…私は…!」

勇者「ああ、いい、いい。そういうのはもういらん」

僧侶「っ…」

勇者「俺達にはきっと話し合う時間が根本的に足りていない。こんなところでちょっと話しただけじゃ何も変わらん」

勇者「お前が思ったこと、俺に言いたいこと。帰ってからいくらでも聞いてやる。許すのも怒るのも、全部それからだ。だから…」

勇者「…だから、一回ここで死んでいけ」

僧侶「…」

勇者「後のことは俺が自分で何とかしてみせるからさ。信じてくれよ」

僧侶「…」

僧侶「…はい。勇者様」

僧侶「今度こそ、約束ですよ?」

勇者「ギガスラッシュ」

僧侶「グランドクロス」

女王「剣の舞」

盗賊「ぐあっ!」

賢者「づっ!」

女王「覇王斬!」

戦士「ギガブレイク…!」

戦士「…がッ!」

女王「はあっ…流石は戦士様。今の私を相手にここまで粘るとは思いませんでした。ですが、貴方では勝てませんよ」

戦士「…百も承知のこと。俺は魔王に勝てなかったのだから」

戦士「だが…それでもいい。十分だ。あの時同様、最低限の役目は果たした」

女王「なにを…」

戦士「気付かなかったか?…あちらは終わったようだぞ」

女王「あちら…?…はっ!!」

勇者「オラァ!待たせたなぁ、女王!!」

女王「勇者様…!僧侶様、はッ…!」

勇者「ぶっ殺してやったよ!そんで生き返した!」

勇者「あぁ…最悪の気分だクソッタレ!死ね!」

女王「くっ!」

女王「っ!はぁっ…!」

女王「か、体が重い…!?」

盗賊「…へっ、ざまあみろ…」

女王「っ、そうか、あの一瞬、掠った時に…!」

賢者「勇…者ァ!ありったけ強化してやる!そのアマをブッ殺せッ!」

勇者「応とも!吹っ飛べ、ギガスラッシュ!」

女王「ぐうううぅっ…!!ま、まだ…!!」

女王「覇王、斬!!」

勇者「!」

ズドォン!!!!!

女王「やっ…!?」

戦士「…!!」

女王「う、嘘…!」

戦士「…っ、行けっ!勇者っっ!!」

勇者「ああ!!」

勇者「――ギガ、デインッ!!!」

ここまで

……

勇者「ザオラル」

女王「…う…」

女王「…ここは…」

勇者「よう。起きたか」

女王「…」

女王「戦争は…どうなりましたか…?」

勇者「お前が寝ている間に終わったよ。安心しろ、全員生き返してある。流石にしんどかったがな…」

女王「そう…」

勇者「…言い訳するなら聞いてやる。なんでこんなことをした」

女王「…ふふ。なんで、ですか」

女王「…」

女王「だって勇者様、私が追ったら逃げたじゃないですか」

勇者「は…?」

女王「貴方にとって、私はどうでもいい類の人間ですから」

女王「僧侶様や魔法使い様、戦士様…商人様に盗賊様に賢者様。彼らよりもずっとずっと、私の優先度はずっと低い」

勇者「…かもな。で?」

女王「だから、少し考えたのです。勇者様に求めてもらえるようになるには、どうしたらいいのかと」

女王「答えはすぐに見つかりました。だって勇者様には、まさにそのような存在がいて、そしてそれを失ったばかりでしたから」

勇者「…」

『…勇者様には分からなくても私には分かります。姫がどうして女王になって、どうしてこんな戦争を起こしたのか』

勇者(そうか)

勇者(そういうことかよ)

女王「私の知る勇者様は『勇者』ですから」

女王「であれば、私が世に戦乱をもたらす『魔王』になれば、ちょうどいいと思ったんですよ」

勇者「…狂ってやがる」

勇者「なんて前の俺なら言ったんだろうがな。今は違え」

勇者「俺もお前も自分のやりたいことをやっただけだ。狂ってなんていないんだろうよ」

勇者「だが…それにしては、随分お粗末な結果だな。仮にも魔王がこの程度で終わりだなんて」

女王「ええ…所詮私は弱者ですから。人間一つ捨て切れず、戦争一つ起こし切れず、最後まで中途半端…」

女王「でも…それでもよかった。今、こうして勇者様が私を見てくれているから…」

勇者(…コイツがやらかしたのも結局は俺が原因か)

勇者「だとしても、悪いのはお前だ。一人で暴走して、一人でやらかした。そんなお前の罰に俺まで巻き込まれちゃ堪ったもんじゃねえ」

勇者「だから償うなら独りで償えよ。それがお前におあつらえ向きの罰だろうさ」

女王「ふふ…」

勇者「…はぁ…とりあえず、どうにか終わったか…」

勇者(さ、流石に疲れた…もう無理、マジで限界…つらたん…)

勇者(帰って…そんで死ぬほど寝よう…そうしよううん…)

「どこに行くのかしら、勇者様。エンディングはまだ先よ」

ここまで

女王「…まさか…魔法使い様…?」

魔王「ええそうよ。姫…ああ、もう女王様だったかしら」

魔王「ご褒美あげる。ドルマドン」

女王「ごぶっ…!?」

勇者「女王!?おい!」

魔王「ふふ、何を慌てているの?らしくもない」

勇者「うるせえっ、コイツが死んだらせっかく殺して生き返らせた意味がなくなるだろうが!」

勇者「何が魔法使いだ!その牙と爪と肌の色のブスが人間様名乗ってんじゃねえぞ!」

勇者「正体現したらどうだ、クソ魔王!」

魔王「…。流石は勇者。見破られたなら仕方ない――」

魔王「なんてね。嘘よ。あなたがどう思おうと、正真正銘私は魔法使い」

勇者「テメェ…」

魔王「あはは。怒らないで。でも本当なのよ。信じて?」

魔王「大魔王の死骸から魔力を抜き取り、一ヶ月を掛けて自分の体に馴染ませた。そうして生まれたのがこの私」

魔王「だから元こそつくけれど、私が魔法使いであるのは真実。そして勇者、貴方が言ったように今の私が魔王であることもまた真実」

勇者「ギガスラッシュ!!」

勇者(直撃!これなら…!)

魔王「あはははは。なぁに勇者、その軟弱な一撃は。それじゃ私は殺せないわ」

勇者「…ほざけブスが。魔王ってんなら今日で二人相当ぶっ殺してんだ。三人目になるとは考えなかったのか?」

魔王「ええ、ええ。もしも貴方が万全の体調で、聖剣を持っていれば、勝負は分からなかったでしょうね」

魔王「こんな風に剣が折れてしまわなければ、もしかしたらまだ何とかなったのかも」

勇者「…チッ…」

バキンッ…

勇者(…魔王の魔力結界…普通の武器じゃ腐食して壊れちまうのも変わらずか)

魔王「勝ち目がないのは理解した?だから私は今こそ来たの」

魔王「貴方が限界で、他の人も限界で、我を止められる者が誰一人いない今だからこそ」

勇者「はっ、魔王になってまでやることが火事場泥棒かよ…」

魔王「…勇者、僧侶、戦士。貴方たちはハーフだからと迫害され続けてきた私にとって初めて出来た大切な仲間よ」

魔王「特に勇者、貴方は私にとって紛れもなく勇者だった。女神の加護がなくなろうが、狂った理想を掲げようが何も変わらない」

魔王「そんな貴方を倒して我が物にするのは魔王にのみ許されし御業に違いない。だから私はなった。…なるしかなかった」

魔王「もう二度と独りにならないために…」

勇者(な!?なんつー魔力…)

魔王「…貴方たち以外の人間をどけてしまえば、もう私が蔑ろにされることもなくなる」

魔王「さ…スッキリしたところでそろそろ始めましょうか」

魔王「勇者よ。我が腕の中で眠りなさい」

勇者「っ!」

僧侶「結界!!」

魔王「…へぇ。まだ動けたの、僧侶」

僧侶「はあっ、はあっ!はぁっ…!」

勇者「僧侶…」

僧侶「勇者、様…私が、援護を…」

勇者「…」

勇者「いや、駄目だ。そんな瀕死の奴が一人増えたところで倒せる相手じゃない」

僧侶「それはっ…でも…!」

勇者「その代わり…そこに倒れてる女王の治療を頼む。そのままにしてたら死んじまう」

女王「……」

僧侶「…で、でも!それじゃあ勇者様は…まさか、一人で…?」

勇者「……さっき、約束したよな」

勇者「悪いな。あの約束はなしだ」

僧侶「…!」

勇者「おい女神様。俺のやろうとしてること分かるだろ。力を貸してくれ」

女神「…いいでしょう。この場で加護を結び直せるならそれが一番ですが…」

勇者「ないものねだりしても仕方ないでしょ。充分ですよ。それがなかったら話にならないんだから」

女神「御武運を」

勇者「ええ」

勇者(そうだ。戦ったら勝てない。今の俺じゃ絶対に)

勇者(だとしても、引けない。周りの連中を殺させないために)

勇者「…フゥゥゥ…」

勇者(…たった一つ。方法はある)

勇者(そのためには時間が必要だ。力を溜めるだけの時間が。コイツを倒せるほどの…)

勇者(それぞれ合わせて、およそ4ターン)

勇者「当然…待っちゃくれねえよな」

魔王「もちろん。勇者を侮った魔王は皆滅んだのだから。同じ轍を踏む気はないわ」

魔王「燃え尽きなさい。カイザーフェニックス」

勇者「ぐうあああ…っ!!」

勇者(…耐えろ!何度攻撃を喰らってもいい!全部受けてやれ!)

勇者(何が起きようと意識を揺らさず…蓄積を続けるんだ)

魔王「…!そうか…!」

魔王「それだけはさせない。メドローア!」

勇者「…かはッ…!」

勇者(…腹が…)

勇者(…構う、ものか。今は限界まで力を溜め続けて…解き放つのみ)

勇者(それまで…保てよ。俺の体…)

――1ターン。

一旦ここまで

魔王「アビスハンド、イオグランデ!」

勇者「ガッ!ごぶっ、があっ……!」

――2ターン。

魔王「…凄まじいタフネス。そしてかつてない魔力と生命力の胎動を感じる…」

魔王「けれど間に合わない。貴方の体はもう限界だから。そして…」

魔王「気付いている?私がさっきと今、一行動ずつ魔力のチャージに回していることに」

魔王「次の一撃は…絶対に耐えられない。たとえ貴方が万全の体勢だったとしても」

勇者「…ハッ…」

勇者(その通りだよ…クソッタレ…)

勇者(ただでさえ限界なんだ…その上にあんなの…もう保たない)

勇者(…チクショウ…)

僧侶「…勇者様っ…!」

女神「勇者…!」

ポツ…ポツ…

ザァァァァァ…

魔王「…雨?雲もないのに」

勇者 「…雨…」

勇者(…いいや…)

勇者「…全く。美味しいところを持っていくのが本当に上手い…」

勇者「…なぁ、商人さん」

勇者のキズが完全に回復した!
勇者のMPが完全に回復した!

魔王「なっ…!?」

私兵「支援砲撃、狙い通りに勇者様の直上で散裂させました」

商人「ご苦労様です」

私兵「…良かったのですか?あれだけの世界樹の雫にエルフの飲み薬、何億という価値が…」

商人「魔王の世では無価値となるもの。使うべき時に使ったまでのことですとも」

商人「何より漁夫の利を掠め取るのは我ら商人の専売特許。魔法使い如きに真似られては堪ったものではありません」

商人「さ、後は勇者様に任せて急ぎ撤退を。こちらに目をつけられては敵わない。あんな戦い、命がいくつあっても足りませんからな」

勇者(とか何とか言ってるんだろうな。あの人、あれで負けず嫌いだから…)

魔王「…それでも!魔王の渾身の一撃、人間である限り決して耐えられはしない!」

魔王「喰らいなさい!!神の裁き!!!」

勇者(……まだ足りないが、仕方ねえ)

勇者「いいぜ、勝負――」

「いいや、下がれ勇者。それは俺の役目だ」

勇者「…戦士さん…?待てよアンタ、もう限界だろ!」

戦士「それはお前もだろうが。心配するな。弱い俺だが…攻撃の前に立ち塞がるくらいはできる」

戦士「じゃあな。魔法使いは任せた」

勇者「待っ、戦士さ…!」

戦士「――仁王立ち」

カッ!!!!!

――3ターン。

勇者「僧侶っ、戦士さんの蘇生を――!」

魔王「ウォォォォォォォォオッ!!!」

勇者「っ!?」ガキィン

魔王「させないっ!それだけは、絶対に、させない……!」

魔王「私が勝ったら戦士も貴方もちゃんとすぐに生き返らせる!私が死ぬなら、最悪それでもいい!」

魔王「でも、だから、その方法だけは駄目!だって、私が死んで、貴方も死んだら、もう誰も貴方を生き返らせることは出来ないのよ!?」

魔王「やめて勇者!それだけは!!お願いだからっ!!」

勇者(…こんな時に、他人の心配かよ…)

勇者「あいにく…魔王に逆らって生きるが俺の趣味なんでな」

勇者「……安心しろよ。大丈夫だ」

勇者「今度はミスらない」

魔王「ッッッ!」

魔王「カラミティ、エンド!!!」

ゾブッ!!!!

勇者「……ご、ぼッ……」

勇者「……」

魔王「死んで…死んでよ…!お願いだから…ここで、今すぐ…!!」

勇者「……」

勇者「……」

勇者「…」


勇者「……4、ターン」

魔王「…ぁ…!」

魔王「…あぁぁぁ…!!」

勇者「…泣くなよ。仮にも魔王がさ」

魔王「だって…私、こんな結末は望んでないのに…!」

魔王「私は…ただ…みんなと…」

魔王「…みんなに…」

勇者「…だとしたら、お前やり方ミスってるよ。たったそれだけのことに魔王の力なんて必要ねえ」

勇者「そういうのはひたすら誠実に口に出していくしかないんだ。まぁ、俺も最近知ったばっかなんだけどさ…」

魔王「……」

勇者「今回は俺のせいだから仕方ないけどな。次からはもうちょっとお手柔らかに頼むわ」

魔王「…次?」

勇者「言ったろ。安心しろって」

勇者「お前は生きて帰れるよ。多分な」

魔王「…!!」

勇者「さぁ女神様…魔力を」

女神「ええ」

魔王「勇者、待って…!」

勇者「……じゃあな、魔王」

勇者「マダンテ」

勇者「メガンテ」

勇者は己の全ての魔力を解き放った!
魔王の結界に壊滅的なダメージ!
勇者は己の全ての生命力を解き放った!
魔王の肉体に壊滅的なダメージ!

魔王を倒した!

ここまで

……王国と教国の国境線で起きたこの戦争は、その実態と異なり最後に現れた魔王の存在から第八次魔王戦役と称されることとなった。
この戦役は第七次の終結からおよそ一ヶ月という非常に短い間隔で起きたものであり、それに比例するかのように歴代でも最短の魔王事変とされている。

これは第七次の折に勇者が魔王を封印せずに討滅したことが原因ではないかと考えられているが、真相は不明である。
またこの戦役の特異さを際立たせる逸話として、戦役の規模と負傷者の数に比して死者が確認されていない点が挙げられる。

当事者である筆者自身あまりに信じがたい話であるから、後世に伝わるにつれておよそおとぎ話の一種とされるようになるのではないだろうか。
そうなるまで少しでも長く時が掛かるよう、可能な限り詳細な情報を残すことが、我々当事者のせめてもの責務であると考え、ここに筆をとる――。

【王国城内・病室】

賢者「もしもーし。ご飯持ってきたよ。入るよ戦士…ってあ、寝てなきゃ駄目じゃない。僧侶に言いつけるよ」

戦士「賢者か…そうは言っても暇を持て余していてな。ペンを動かすくらいは許して欲しい」

賢者「ふーん、何書いてるのっと。ふーむ、手記?ふんふん……うん、30点」

戦士「…そんなに駄目か?」

賢者「ポエミーすぎ。あと面白みがない。もっと勇者魔改造しようぜ。目からビーム出すとかさ」

戦士「おい…」

賢者「あははは。まぁ冗談は嘘にしてもちゃんと寝なきゃ駄目だよ。蘇生受付ギリギリだったから後遺症すごかったんでしょ?」

戦士「目が覚めてから三ヶ月は指一本動かせなかったからな。とはいえいい加減もう治ったと思うんだが」

賢者「そういう野蛮人特有の素人判断はだーめ。いいからお医者様の言うことを聞く。お嫁さんとお子さん泣かせるのが癖になったってんなら止めないけどね」

戦士「…分かったよ。大人しくしておく」

賢者「よろしい。ご飯ここに置いてくね。それじゃ僕はこれで」

戦士「僧侶によろしく伝えておいてくれ」

賢者「はいはーい」

商人「おや」

盗賊「あん?ゲッ…」

賢者「お。クズと外道だ」

商人「これは賢者様。ご機嫌麗しゅう」

賢者「そういうのいいから。なんか機嫌良さそうだね。いいことでもあった?」

商人「いいえ?貴女に取り立ててお聞かせ出来るようなことは何も」

賢者「ふうん。あ、話は変わるけど貿易街の特別勅任官に任命されたんだってね。おめでとう」

商人「幸運に恵まれた結果ですな」

賢者「裁量権の拡大に合わせて治安維持の名目で一個連隊の保有が認められたんでしょ?すごいね。もはやあなたの王国と言っても過言じゃない」

商人「そういった暴走の抑止のための王国軍です。彼らが監視の目となる以上心配はご無用」

賢者「あはは。そんなのお金でいくらでも緩むでしょ?政治上の勢力争いをしない…聞こえはいいけど彼らにも既得権益をかじらせてるって言ってるようなものじゃない」

商人「滅多なことを言わないでいただきたい。私はあくまで自分の手の及ぶ範囲で最善を尽くしているに過ぎませんぞ?」

賢者「ふふふふふ、わざと曖昧な言い方して、もしかして煽ってる?」

商人「はっはっは。いやいや、滅相もない」

盗賊(…帰りてえ…)

僧侶「ああ忙しい忙しい…!」

女王「まあまあ僧侶様、そんなに肩肘張らないで。今日の分のノルマは終わったんですから少し休憩にしましょう?」

僧侶「そうは言っても、王国と教国の垣根を払う初めての試みです。両国民を安心させるためにも一刻も早い法制度の整備が…」

女王「根拠法と書類の作成は目下最優先で行っています。すぐまた忙しくなるのですから休める時に休んでおかないと。これも為政者の務めですよ」

女王「さあさ、お茶を入れてきましょう。熱いの?冷たいの?」

僧侶「……熱いので」


法皇「ふむ。なんだかんだ仲良くやれているようだな」

前国王「結局は似たもの同士よ。競うでもなく同じ目標を目指すならああもなる」

法皇「…言い方は悪いが、まさかご息女が王を続けることになるとはな。こう言ってはなんだが、貴方が復座すると思っていた」

前国王「余を玉座から引きずり下ろした手管からして、あれが余より優れた為政者であることは間違いない。国民もそう理解しているのだろう」

女王「なにより、為政者としての過ちは為政者として正しく民を導くことでしか償えませんから」

法皇「むぅ…」

女王「そういうわけで、お二方も暇でしたらこっちを手伝ってくださいね。目下人手不足で各所が悲鳴を上げている真っ最中なので」

女王「適材適所。しっかり働いて美味しくご飯を食べましょう。ね?」

前国王「う、うむ…」

女王「…あと、それはそれとして」

女王「私は王様を続けるつもりなんてありませんよ?」

女王『せっかくですので大休止にしましょう。僧侶様は魔法使い様の様子を見に行ってみては?』

僧侶「……ふぅ」

僧侶「僧侶です。魔法使い様、入りますよ」

魔法使い「ああ、僧侶。いらっしゃい」

魔法使い「…疲れてるわね。仕事は片付いたの?」

僧侶「今できる一通りは。といっても次から次へと増えているので戻ったらまた山積みでしょうけどね」

魔法使い「そう。何かあったら言ってね。私に助けられることは少ないけど、きっと力になるわ」

僧侶「ありがとうございます。それで…その、お体の方は…?」

魔法使い「…だめね。体内から一切魔力を感じない」

魔法使い「これが女神の封印魔法、か。確かにこんな風になるなら魔王でもどうしようもないわね」

僧侶「…でも、そのおかげで魔法使い様は人間に戻れたと聞きました」

魔法使い「ええ。角も牙も消えて、肌の色も戻った。今の私は何の力もないただの人間でしかない」

魔法使い「本当に…優しい結末だわ」

僧侶「魔法使い様…」

魔法使い「そんな顔しないで。あなたが思っているほど落ち込んでないのよ。魔王だった者への罰としては軽すぎるくらい」

僧侶「……」

魔法使い「ああ…でも、そうね。これから先魔法がもう使えないなら、魔法使いはもう名乗れなくなるのかしら」

魔法使い「そのあたりはどうなのか、ぜひ先達としての意見を聞かせて欲しいかな」

魔法使い「ね、勇者」

「……んだよ。気付いてたのかよ」

19時ごろ更新
それで完結
多分

勇者「うーっす。見舞いに来たぞ魔法使い…ってあれ、僧侶もいたのか」

僧侶「あ、先に休憩いただいています。すみません、忙しいのは分かっているんですけど、女王に休憩をとるよう言われてしまって…」

勇者「俺も似たようなもんだから気にすんな。違いがあるとすれば自発的に休憩してるところだけだな」

魔法使い「ふふ、それサボりって言うのよ」

勇者「あーあー聞こえん聞こえん。そもそも何で俺に法律なんて関わらせるんだっつの。こちとらただの戦闘屋だぞ。しかも用済み」

魔法使い「これからは剣なんかよりずっと関わることになるんだから仕方ないでしょ」

魔法使い「なんたって、次の王様になるんだから」

勇者「……ほんとどこで人生間違っちゃったんだろうなぁ……」

僧侶「で、でも適任だと思いますよ。今の世情で勇者様より大衆人気のある人はいません。諸々の覚えもとても早いですし」

勇者「嬉しくねえよう…」

勇者「はい、気の滅入る話はやめやめ。何の話してたんだ?」

魔法使い「私の魔力の話よ」

勇者「ああそれか。ふっふーん、さては俺の華麗なる魔法捌きを褒めてたんだろ?いいんだぜ褒めても」

魔法使い「華麗というかキモいわね」

僧侶「…その、すみません。最初話を聞いた時はちょっと引きました」

勇者「えっ」

魔法使い「いやだって…あの局面で四つの魔法を並立して使うとか…」

僧侶「正直同じ人間とは思えないというか…」

勇者「えっえっ」

勇者(あの最後の瞬間)

勇者(メガンテで四散した瞬間、俺は装備していたメガザルの腕輪――死んだ瞬間蘇生魔法が発動する腕輪で生き返った)

勇者(で、即時女神から魔力を受け取って、魔法使いにザオリク使って、弱りに弱った魔王の魔力を封印したのである)

勇者「……そんな誰もが賞賛すべき神業が……き、きもい……?」

魔法使い「というかあなたいつからメガザルの腕輪なんて持ってたのよ。冒険中なかったでしょあんなの」

勇者「普通に魔物殺しまくってそいつらの核を集めて作ったんだよ。300体くらい狩ってようやく作れるもんだからな。本当に時間かかった…」

勇者「戦士から戦争の話聞いてからは一週間ずーっとそれやってた。そのせいで到着がかなりギリギリになっちまったが」

僧侶「そう…ですよね。あの時の勇者様、武器もまともに用意してませんでしたから。いつも用心深いのに珍しいなと思ってました」

勇者「俺は絶対に死にたくなかったんだよ。特にあの時は加護消えて道歩くのも怖かったくらいだ。代わりの手段も用意しないで戦争なんかやってられるかってんだ」

勇者「だからあんな使い方するとは思ってもなかったよ。残っていて本当に運が良かった。それに尽きる」

僧侶「…じゃあ聞きますけど、あの死ぬ死ぬ詐欺なんだったんですか?約束を守れそうにないとか。あれ言ってる時命のストックあったってことですよね」

僧侶「あれ私がどんな気持ちで聞いていたか分かりますか…?」

勇者「……め、メガザルの腕輪使うの初めてで…効果を信頼してなかったから……?」

魔法使い「なんで疑問系なのよ…」

勇者「あ、あははは…」

勇者(あの場のノリで死んだことにしていろいろ有耶無耶にしようとしてたとか言ったら…お、怒られますかね…?)

補足
メガザルの腕輪はモンスタードロップの装飾品
確率は一番いいので1/250?くらいだったはず
作品によってはなんかカジノだったかコインだったかで手に入るけどここではそれはなし




勇者「ごほん。うん、まぁ、なんだ。俺が封印魔法が下手くそなせいでお前の魔力ごと封印しちまった。それだけは悪いと思ってるよ」

魔法使い「別にいいわよ。もし私が自由に魔法を使えたら、今頃晒し首にしなきゃ収集つかなくなってるところでしょ。今ですら一悶着あったのに」

勇者「当然っちゃ当然だけどな。なにせ魔王だ…」

勇者「まぁその辺りは女王が上手くやってくれた。もう心配しなくてもいいだろ」

僧侶「あの人本当に優秀ですよね。暴走さえしなければ…」

魔法使い「そのお目付役がこれからのあなたのお仕事なんでしょ?がんばれ王様」

勇者「オエッ」

魔法使い「あ、そうなると正妻はやっぱり女王様になるのかしら。ねえねえ勇者、どうなの?」

勇者「ゲロッ」

僧侶「…言っておきますけど、籍を入れるわけじゃないですからね。あの人はただの補佐官、副王です。魔法使い様もそこを誤解しないように」

魔法使い「はいはい。ごめんってば」

僧侶「そもそもですね、勇者様は一応王国民なわけですから、王国と教国が対等な合併を迎える以上王妃は教国の人間であるべきなんです」

僧侶「確かにあの人は優秀ですし勇者様は政治畑の人間じゃありませんから補佐は必要ですよ?でもまたやらかさないとは限らない以上お目付役との距離が必要以上に近くなるのは避けるべきではないでしょうか」

僧侶「それに政治の補佐であれば私もできます。あの人よりは劣るかもしれませんけど見方を変えれば王を傀儡にする危険性が低いとも言えますしなにより両国のバランスを考えれば王妃とするべきはやはり」

魔法使い「あー、うん。うんそうね。ところで僧侶」

僧侶「はい?」

魔法使い「勇者ならとっくに逃げたわよ」

僧侶「…あ、あ!?勇者様!?」

…………

勇者「あ…あの女、目がマジだった…やばかった…」

勇者「……」

勇者「いや成長しても怖いものは怖いよ。しょうがないじゃん。それはもうさ」

勇者「ねえ戦士さんもそう思うでしょ?」

戦士「何故お前らはノックをしないんだ…?」

勇者「お、書きかけの…何だこれ。手記…じゃなくて小説…?」

勇者「…えっ、俺って目からビームとか出たの…?やば…クッソ面白い…」

戦士「そして何故揃って勝手に読んだ上に文句をつけていく…?」

勇者「だってこれ途中からまるきりフィクションになってるじゃないですか。特に何ですかこの最後。勝手に人の人生決めつけんでください」

戦士「そうか?そう悪い終わり方ではないと思うが」

勇者「そりゃそうですけど…でも、一つのミスで駄目になるかもしれないのが人生ってやつじゃないですか。どう終わるかなんて分かりませんよ」

戦士「そうでもないさ。ミスした取り返せばいい。お前たちならきっと取り返せるよ」

勇者「……じゃあ、望んでもねえ人生の墓場がダッシュでお迎えに来た場合はどうすればいいですか?それも複数」

戦士「ああ、それはミスじゃないから無理だな。運命と思って諦めろ」

勇者「そんなァ…」

……以上が、この騒動において当事者として記せる全てである。
もっとも勇者の命が続く限りまた同じようなことが起こるに違いない。

全てを記したい気持ちは山々だが、あくまで俺は戦士だ。ペンを取るのはこれで終わりにして、もっと適した者に任せるとしよう。
最後に区切りとして、一番大事なことのみ記そうと思う――。

勇者「『彼らはいつまでも幸せに暮らした』」

勇者「……」

勇者「はっ…ポエミーすぎるっつの」

勇者「……王様ねえ」

勇者「俺の価値観でこの世界を染めてやるって野望にはうってつけだ。やる気がでるってもんさ」

勇者「ご要望どおりいつまでも幸せに生きてやろうじゃねえか」

勇者(そのためには…)

女王「ご機嫌よう、見つけましたわ勇者様。戴冠式の日取りとその後について少しお話が…」

僧侶「あ、いました、勇者様…と女王!?あ、こら、離れてください今すぐに!」

女王「あら僧侶様。今は私が先ですのでお控えくださいな。終わりましたら僧侶様にお貸ししますから。ね?」

僧侶「ね?じゃないです!大体借りるのはあなたの方でしょうが!」

女王「んー、そうですね。確かに過ごした時間の長さとして胸はお借りしたいところですが…」

僧侶「ちょっと。どこを見て…」

女王「…うーん。借りたらご破産してしまいそうですし、遠慮いたします。お気持ちだけいただいておきますね?」

僧侶「…あ?上等です表出ろッ!!」

勇者「あ、じゃあ俺はこの辺で…」

女王「嫌ですわ。勇者様も来てくださいな。このままだと私僧侶様に殺されてしまいそう」

僧侶「誰がしますかそんなこと!…勇者様もに来てください。私まだあの約束が無効になったなんて認めてないんですからね!」

勇者「……はぁ」

勇者(そのためには、まずこの二人と白黒つけなきゃな)

勇者「はいはい。いくらでも付き合いますよ」

勇者「今度こそ逃げずに、さ」

おしまい
完結させた俺超偉い!

そうだごめん、無理矢理最後までドラクエの呪文とか特技でゴリ押ししたけど、これ正直分かりづらいと思うし実際の強さより技名的な分かりやすさを優先してるから「それそんな強くなくね?」「その職業ってその技覚えなくね?」って思ってもフィーリングで読み飛ばしてくれると嬉しい

ダラダラしてると思ったらそれは俺の実力不足なので本当にごめん。次書くときはもっとコンパクトにまとめるように意識する

一年間近く読んでくれた人いたらありがとう
こんな長編になると思わなかったけどキャラに愛着湧いたし書いてて楽しかったわ

あと展開予想マンは絶対に許さない
絶対にだ


展開よまれてたってこと?

>>402
最初書き始めたときはなーんも考えず「実はそんなことなかったよー。勇者くん考えすぎだよー」的なオチにしようと思ってた
確か100レス目くらいでバレたから路線変更した

>>357>>364の間に抜け確認

勇者「…?空が暗く…」

勇者「…え?」

勇者(この魔翌力、は)

「良かったわ。今度は私も仲間に入れてもらえそう」

勇者「…お前は…」

魔王「ご機嫌よう、勇者。なんだかとても久しぶりね」

勇者「…」

勇者「誰だお前」

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom