ヤクザA「任侠道なんて理想だよ…俺はクズだ」 (9)

ヤクザA「俺はヤクザになった 覚えているとすれば3年前になったということくらいだ。」

ヤクザA「もともとは小さなジムに所属するボクサーでそれなりに期待もされていた。」

※以下Aとします

A「さてと今日もちゃっちゃと取り立てを終わらせるか…」

組長「これから取り立てか?その前にお前に話しておきたいことがある…話というよりは頼みかな」

A(この人は俺が所属する〇〇組の組長だ。任侠映画の理想のような人で俺が唯一、心を許してる男だ)

A(だが俺はこの人みたいな立派なヤクザにも、まともな人間にもなれないのだ)



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A「親父の頼みなら何でもしますよ?ただ今の時代にムショとかは嫌っすけど…」

組長「かわいい息子にそんなことは頼まんよ…お前に頼みたいってのは娘のことだよ」

A「お嬢がどうかしましたか?」

組長「あいつが12年前のあの日から、心を閉ざしたのは知ってるだろう?まぁ親の俺の責任だが…」

A「はい…」

組長「お前にあいつの専属のボディーガードになってほしい」

A「親父の頼みならやりますけど、心は開かないと思いますよ?」

組長「それはさておき、頼みたい これは組長としてではなくて、娘を持つ父親としての頼みだ 受けてくれるか?」

A「わかりました。」

若頭「お~う Aちゃんじゃねぇか?随分と親父に気に入られているようだな~?」

A「心配せんでください。親父は俺に跡目を譲ったりしませんからね」

若頭「んな心配はしてねぇ~よ?まぁそうなったら俺はお前を東京湾に沈めるだけだけどな」

A「そうですか…俺は親父に頼まれた用事があるのでこれで失礼します。」

若頭「ついでにひとつ頼まれてくれないか?」

A「なんですか?」

若頭「そう嫌そうな顔するなよ?俺はお前が好きだぜ」

A(俺は若頭のことが嫌いだ。ジョークばかりかますが実際は相当な武闘派。とにかく何を考えてるかわからないし相当嫌味な男だから)

A「で、仕事というのはなんでしょうか?」

若頭「〇×不動産の社長が夜逃げしようとしてるってタレコミがあってね?それであいつの娘かわいいだろ?適当に脅しといて?」

A「その件でしたら親父が手を引けって言ってたのでは?」

若頭「親父はちっとあめぇ~しあの案件は元々俺のもんだぜ?」

A「親父に相談します。では…」

若頭「まぁいいや~あの女は俺がまず試食するとするわ?お前も今夜どうだ?」

A「結構です。」

A(任侠道なんて理想だってことはわかっているが、このカシラの考え方はあまり好きになれない。)

第一章~千両役者

A「失礼します〇〇組のAです お嬢さんを迎えに上がりました。」

お嬢「なんだアンタか?お父さんに言っといて…あと200万円くらい足りないってさ?」

A「それより、これからカウンセリングですので…」

お嬢「そんなもの必要ないわ 私はどこも病んでいないのよ」

A「またこんなものに手ぇ出して…親父にぶん殴られたじゃないですか…」

お嬢「あなたも一粒どう?心が落ち着くわよ?」

A「ヤクと殺しだけは嫌いなんで…」

お嬢「ヤクザのくせにかっこつけちゃって…」

A「そういうわけじゃありません。」

お嬢「まぁいいわ あんたなかなか色男だし 私と寝てみる?そういう気分なのよ…今」

A「まだ親父に殺されるわけにはいかないので…それでは」

3日後

組長「おう急に呼びつけて悪いな…A」

A「いいえ、いつものことなので」

組長「相変わらず面白いなぁ…お前は」

A「それで急用とはなんでしょうか?」

組長「最近、若頭の奴がとんでもねぇビジネスに手を出してるらしくてな」

A「どんなビジネスですか?」

組長「サファイアってドラッグを裁いてるらしくてな…うちは薬と殺しはご法度だ。それはお前もわかるな?」

A「なら親父の権限で破門か絶縁にしたらどうですか?」

組長「あいつは親組織からの預かりものだ そう簡単にはいかない」

A「じゃあどうすれば?」

組長「それにどんな経由があれ、一度息子になったあいつを簡単に破門にはしたくない だから証拠さえ揃えてくれればあとは俺が説教してみる」

A「でもカシラは俺を煙たく思ってます そう簡単に尻尾を出すとは思えないですよ?」

組長「実は娘のボディーガードをお前に頼んだのはサファイアの手どころを自然に探り出すためだ」

A「まだヤク中なの知ってるんですね…」

組長「あいつが12年前にどんだけ苦しんだとしても、親として見過ごすわけはいかないんだ だからうまく娘を利用して証拠を押さえてくれないか?」

A「善処します」

組長「悪いな…厄介ごとばかり押し付けて」

7日後

A(なるほどあの喫茶店が薬局になってるのか…とりあえず親父に報告しよう)

事務所

組長「そうか…あの喫茶店の親父も1枚噛んでるのか…あいつは若頭の同級生で多額の借金もある」

A「そこから繋がったわけですね」

組長「なぁ…俺にもしものことがあったらお前は悲しんでくれるか?」

A「なんすか?いきなり?」

組長「ヤクザやってるとよ たまに悲しくなることがあるんだ 何のために命貼ってるんだろうなって…」

A「親父が誰かに殺されたとしたら俺はそいつを殺しますよ?」

組長「どんな理由があっても俺の息子である以上、殺しはご法度だぞ?」

A「そうでしたね…」

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