「答辞、卒業生代表…絢瀬絵里」
「はい」スクッ
スタスタスタ
「春の訪れを感じるこの良き日、私達三年生一同は無事、卒業式を迎えることができました。」
綺麗で飾られた…そしてありきたりな言葉を私は紡ぐ…
決して手を抜いたわけじゃない。
私なりに悩み、考えて書き上げた言葉。
きっとみんなはこの答辞でいい卒業式だったと言ってくれる。
けれど、あの送辞…
後輩達の想いが詰め込まれたあの送辞に私も全力で答えたい。
きっとあの子達に会えなかったらこんなことは考えなかった…いえ、考えれなかったんでしょうね。
「先生方、ご来賓の方々、保護者の皆さま。すみません。私は後輩達の想いに心からの言葉で答えたい…心からの言葉で感謝を伝えたい。」ビリビリビリ
ザワザワ ナンダ? ヤブッチャッタノォ?
「私は、この音ノ木坂学院が大好きです。」
今なら心からそう思える。
「一年前の私は、音ノ木坂の生徒であることを誇りに思ってはいても、この学校のことを好きとは思えませんでした。」
「廃校になりそうな音ノ木坂をなんとかしないと…どうにかしないと…私がなんとかしないと…」
そう…一人ぼっちだった。
「そんな義務感に囚われ、支えてくれる友人、諭してくれる先生の言葉にも耳を傾けず、意地を張って空回り…」
ほんとは辛かった…ほんとは寂しかった…ほんとは泣きたかった…
「自分で暗く寂しいところに閉じこもって意地を張ってた…そんな時です。」
私は救われた。
「太陽が…太陽達が私を明るくて暖かい場所に連れ出してくれました。」
あの日から学校が好きになった。あの日から学校で笑えるようになった。
「気がつくと暗く孤独な場所だった学校は明るく楽しい場所に変わってて」
「私自身の硬く冷たい氷のような心もすっかり溶かされて」
「我慢できたはずの涙も…っ…止められなくなってっ…」ポロ ポロ
「くっ…うっ…うう…」ポロポロ
ザワザワ ザワザワ
ガタッ!
「ぅえりちゃん!!ファイトだよっ!!!」
ほら。そうやってすぐ甘やかすから…
でもダメよ。今日だけは甘えちゃダメ。
あなた達が送り出してくれるだもの。
心配させるわけにはいかない。
「すーっはーーー」ゴシゴシ
「いつの間にか学校は、自然に泣ける場所になった。自然に笑える場所になった。」
「そして、誰かと過ごす場所になりました。」
「大雪のあの日、休みにも関わらずみんなが集まってくれたあの日の事を」
「私達は忘れない。」
忘れられるわけがないじゃない…
「ずっと支えてくれたあなた達に頼りない『先輩』から二つだけ…」
「『大好き』と『ありがとう』を贈ります。」
大好きよ。
「ほんとは大好きなあなた達ともっと一緒にいたい!ずっと一緒にいたい!」
大好きよ。
「離れたくない。」
大好きよ。
「だけど…あなた達がいるから!あなた達がここにいてくれるから!振り返るとあなた達がいるから!」
「私達は前に進める」
ありがとう。
「あなた達が人とのつながりの素晴らしさを教えてくれたから!」
ありがとう。
「この先の未知を笑顔で進むことができる。」
ありがとう。
「ありがとう。」
ありがとう。
「ありがとう。大好きよみんな。」
ありがと…大好き…
おわり
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