電「本日は我が横須賀鎮守府の採用面接に来てくださり、まことにありがとうございます」
電「今回の採用は、先日失踪した司令官さんの代わりを務める人材。つまり提督職の募集ということなのです。よろしいですか?」
提督「はい」
電「申し遅れました。私は今回の面接官を務める元秘書艦の電ともうします。右手に座りますのは駆逐艦筆頭の暁」
暁「暁よ」
電「そして、戦艦筆頭の長門」
長門「長門だ」
電「以上三名で今回の採用面接を執り行うのです。よろしくお願いします」
提督「はい。お願いします」
電「えー、では早速はじめるのですが、なにぶん私たちも不慣れなところがございますので、多少の不手際はご容赦願いたいのです」
電「それではまずは、志望動機からお聞かせいただけますか? 履歴書によりますと↓2とありますが」
↓2 志望動機
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電「は、ハーレムとありますが。これは?」
提督「は?」
電「…………」
提督「…………」
電「あ、あの」
提督「……何か問題でも?」
電「え?」
提督「私の志望動機はここでハーレムを築き上げること。それに何か問題でも?」
暁「あ、あるに決まってるじゃない! は、ハーレムなんて……。そもそもそんなことしてる場合じゃないでしょ! 今は戦争中なのよ!」
提督「確かに。では逆に聞きましょう。今の日本で、この深海棲艦が跋扈する日本で、ハーレムを築くことができますか?」
電「…………!」
提督「できるわけがない。先ほどのように一笑に付されて終わりです。そんなことをやっている場合ではない、とね」
提督「私の夢、動機はハーレムです。しかしそれはこの国が平和にならなければ成し遂げられない」
提督「深海棲艦をやっつけたい。戦争に勝ちたい。という夢は確かに立派だ。しかし少々短絡的だ」
提督「私はそれの遥か先、それからどうするか、というところまで見ているのです」
電「…………」
提督「そしてそれこそが、かつての大日本帝国が成し得なかった戦略策定と戦略志向。そう。グランド・デザインなのです」
暁「な、なるほど……」
電「た、確かに一理あるのです」
長門「ふん。なるほどな。面白い」
暁(よくわからないけどすごいわ……)
電(よくわからないけどすごいのです……)
長門(よくわからないけどわかったふりをしておくか)
電「あなたの英雄的な願望はわかったのです。非常に興味深かったのです」
提督「ええ、恐縮です」
電「では、気を取り直して次の質問を……」
電「自己PRをお願いできますか?」
電「履歴書には↓2と書いてありますが」
↓2 自己PR
電「え、えーっと」
提督「……? な、なにか?」
長門「ああ、すまん。私が読もう」
長門「……自己PRによると、貴様、女性を満足させられるそうだな。性的な意味で。それも六十連戦までなら衰えないと」
提督「は?」
長門「すごいな。驚愕に値する。スキルもそうだが、こんな履歴書を送ってくる豪胆さにも、だ」
提督「…………」
暁「ねえねえ。どういう意味?」
電「さ、さあ? 何を言ってるのかさっぱりわかんないのです」
提督「…………」
長門「どうした? さっさと自己PRの続きを言ってもらいたいものだが」
提督「百二十人」
長門「何?」
提督「これが何の数字だかわかりますか?」
長門「何を言うかと思えば、簡単だ。この鎮守府の艦娘の数だ」
提督「そう、この鎮守府の艦娘の数です」
長門「それがどうした」
提督「ここから駆逐艦。海防艦、それと例外を除けばざっと六十人ほどですか」
長門「なんだ? 何が言いたい?」
提督「つまり、私はこの鎮守府の全員を一夜で満足させることができる、ということですよ」
長門「なんだと?」
電「え、えーっと」
提督「……? な、なにか?」
長門「ああ、すまん。私が読もう」
長門「……自己PRによると、貴様、女性を満足させられるそうだな。性的な意味で。それも六十連戦までなら衰えないと」
提督「は?」
長門「すごいな。驚愕に値する。スキルもそうだが、こんな履歴書を送ってくる豪胆さにも、だ」
提督「…………」
暁「ねえねえ。どういう意味?」
電「さ、さあ? 何を言ってるのかさっぱりわかんないのです」
提督「…………」
長門「どうした? さっさと自己PRの続きを言ってもらいたいものだが」
提督「百二十人」
長門「何?」
提督「これが何の数字だかわかりますか?」
長門「何を言うかと思えば、簡単だ。この鎮守府の艦娘の数だ」
提督「そう、この鎮守府の艦娘の数です」
長門「それがどうした」
提督「ここから駆逐艦。海防艦、それと例外を除けばざっと六十人ほどですか」
長門「なんだ? 何が言いたい?」
提督「つまり、私はこの鎮守府の艦娘を一夜で完璧に満足させることができる、ということですよ」
長門「なんだと?」
提督「そもそも何故、提督はみな男性なのか。知っていますか?」
長門「いや、知らないが」
提督「艦娘はみな女性だ。それならば女性の提督のほうがいいんじゃないか。と思いませんか?」
暁「うーん。確かに、その方がこっちも安心するかも……」
提督「では、フランスのジャンヌダルクしかり、何故世界各国に女性の英雄譚が数多く残っているのか.わかりますか?」
長門「いいからとっとと言え、なぜだ?」
提督「簡単です。そのほうが士気が上がるからです」
長門「なんだと?」
提督「今はともかく、昔は軍隊といえば男社会でした。右を見ても左を見ても野郎ばかり。むさくるしいったらない。しかしそんなとき――」
提督「とある噂を耳にする。なんでも次の作戦ではとんでもない美女の兵士が部隊に加わるらしい、と」
提督「それが事実にせよ嘘にせよ。それだけで士気は上がる。男は頑張るわけです。もしそれが本当ならこんな作戦で死んでたまるか、と。異性が一人いるだけで、男はがんばる。今の状況はこれの逆だと考えていただきたい」
長門「うーむ」
提督「思い出しても見てください。ほぼ女子校だった訓練校と比べてこちらの鎮守府にいるころのほうがみんなの動きが違うと思いませんか?」
長門「た、確かに……。言われてみれば」
提督「それも士気の高さ故です」
電「女性社会の鎮守府に一人異性がいたほうがみんながんばるようになるってことですか?」
提督「左様です。この鎮守府でも提督が健在だったころ、提督にほめられる為に頑張っている艦娘を見たことがありませんか?」
電「あー」チラ
長門「なるほど、そういうことか」チラ
暁「……?」
提督「つまり私はこういっているのですよ」
提督「戦争の勝利のために私を利用しろと。艦隊の士気のために私を使い潰せと」
長門「しかし――」
提督「心配ですか? 私を奪い合って修羅場が起こるかもしれないと」
電「…………」
提督「私をそのへんのハーレム提督と一緒にしないでいただきたい。私は全ての女性を満足させられるスキルがある。それも衰え知らずだ。全て平等に愛せるのです。修羅場など起こるはずもない」
提督「もちろん無理強いはしない。最初は希望者だけでかまいません。そしてゆくゆくは――」
長門「貴様のハーレムができあがる、か」
提督「はい。そのときこそきっと平和な海をご覧に入れましょう」
暁「うーん。よくわからないけど、いいんじゃないかしら。要するに艦娘のことを思ってるってことでしょ?」
電「いや、まぁ、はい、そうともいえるのです……。わ、私もいいと思います。はい」
長門「一考の価値はあるな」
電「こほん。では、私からの最後の質問ですが」
提督「え、ええ」
電「あなたは二年前提督業をやめられて最近また復職したとのことですが、その間は何を?」
電「あ、なんだ。これも履歴書にかかれてありましたね。えーっと。↓2?」
↓2 二年間の空白期間にしてたこと
電「わあ、すごい! プロデューサーをされてたのですか?」
提督「は? ええ、まあ。多少ですが」
暁「すごいわね! ねえねえ! これまでどんな人をプロデュースしてきたの?」
提督「……えーっと、そ、その、け、ケレン味あふれるアイドルとか」
暁「ケレン味? ほかには?」
提督「野性味あふれるアイドルとか」
暁「よくわからないけど、みんな味わい豊かなのね」
電「ほかには何を……。あれ? なーんだ。作ったものもここに書いてるじゃないですか」
電「どれどれ……え? 愛?」
提督「…………え? 愛?」
電「製作総指揮:提督。スタッフ:提督、叢雲。なんですかこれ?」
提督「…………」
長門「なるほど。愛を作っていたのか。そうか」
提督「え、ええ。あの、あれです。空白を埋めるのはいつだって愛以外ありませんから」
長門「…………」
電「…………っぷ。くくく」
電「あはははは! い、いえ失礼。ふふふ」
提督「わ、笑われた……」
長門「しかし少し安心したな」
提督「え?」
長門「この履歴書が送られてきた時は正直どんなやつがやってくると思っていたが」
電「はい。思ったよりも大分ましな人で安心したのです」
暁「絶対やばいやつが来ると思って長門さんに同席してもらったけど、これじゃ必要なかったわね」
提督「そ、そうですか。は、ははは……」
提督(やっべえ……)
提督(さっきから何かおかしいと思ってたけど)
提督(送る履歴書間違えた……)
提督(これってあれじゃん!)
提督(この前、べろんべろんに酔っ払って叢雲と一緒にふざけて書いたやつじゃん!)
提督(何だ! 志望動機はハーレムで、自己PRが絶倫って! そらやべえ奴が来るって思うわ!)
提督(はあ、正直何書いてたかぜんぜん覚えてないんだけど)
提督(確かあの時、くっそテンション高かったんだよなあ)
―――数日前
提督「はあ」
叢雲「何なさけない顔してるのよ。結果。どうだったの?」
提督「落ちた」
叢雲「……そう。残念だったわね」
提督「これで十連敗かあ」
叢雲「もう諦めて一からスタートしたら? ほら私もついてるし」
提督「いーや! だめだ! こつこつ地道になんてやってられるか! 幸い提督が失踪した鎮守府は山ほどある! 応募しまくったらどっかには通るはずだ!」
叢雲「ふーん。ま、せいぜいがんばりなさいよ」
提督「頑張る!」
叢雲「まだ起きてる?」
提督「ああ」
叢雲「履歴書書いてるの?」
提督「ああ。もうすぐ面接だからな」
叢雲「ダンボールの机で器用に書くわね」
提督「くそっ。これに慣れた自分が悲しい」
提督「それで、どうしたんだ?」
叢雲「ん。これ」
提督「これって……」
叢雲「シャンパン。友達からもらったんだけど、そろそろ悪くなるし一人じゃ飲みきれないから」
叢雲「一緒に飲みましょ。次、がんばろーってことで。ね?」
提督「あ、ああ。ありがとう」
提督「…………」
提督(本当は俺が採用されたとき用に買っておいたんだろうな……)
提督(……くそっ)
…………
……
提督「がははははははは!!!」
叢雲「あははははははは!!!」
提督「おら、呑め! もっと呑め!」
叢雲「ぐびっ、ぐびっ、ぷはー! 飲んでるわよ! ほら! あんたも飲みなさい!」
提督「おっとっとっと。ぐびぐびぐび。うむ! うまい!」
叢雲「そーれしょお。これ高かったんだからあ」
提督「んくんく」
提督「…………」
提督「うわあああああ! 面接が! また面接がやってくるよお!」
叢雲「うっさい!」
提督「怖いよお! 面接怖いよお! 大体志望動機ってなんだよ! ねえよんなもん!」
叢雲「んー、そんなもんわねえ。自分の本心を書いておけばいいのよ!!」
提督「本心だとお!?」
叢雲「そうよ! あんたの夢は何!?」
提督「……ハーレム?」
叢雲「最低だ! でもその調子よ! 自己PRは?」
提督「俺様は絶倫だ! 俺のハイパー兵器は衰え知らずの萎え知らずで最大八リットルの皇帝液を注ぎ込みます! そんで六十連発くらいはいけます!」
叢雲「妖怪か」
提督「がはははははは!」
………………
…………
……
提督「…………」
提督(おぼろげに思い出したけど、なんだこれ)
提督(テンション高すぎんだろ俺。マリカーのキノピオかよ)
暁「じゃ、次は私ね」
暁「えーっと、履歴書に書いてあること聞けばいいの?」
電「はい、基本は」
暁「じゃ、趣味と特技は↓2ってなってるけど……」
↓2 趣味・特技
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