~杉本くんは恋に気づかない~ 「可愛いとは罪だな」 (28)

※多田恋SS、ピン先輩と委員長メイン。

※時系列は最終回の後半辺りです。

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多田「……」スタスタ

多田(俺はもう……後悔していない)

多田(テレサとの出会いを……一生忘れない)

杉本「……」ズーン……

多田「……!!」

多田(ピン先輩が落ち込んでいる……何かあったのか?)

多田「……ピン先輩、おはようございます」

杉本「……多田か、おはよう」

多田「あの……何かあったんですか? どこか体調でも悪いんですか?」

杉本「……これを見ろ」バッ

多田「これは……模擬テストの答案用紙……」

多田「……!!」

多田「0点!!!?」

多田(あのピン先輩が0点!!?)

多田(というか……答案用紙に何も書いてない!!)

杉本「……すまないが一人にさせてくれ」スタスタ

多田「あ、ちょ……先輩!!」

多田「……」

多田(先輩は0点だったから落ち込んでいたのか)

多田(でもどうして0点なんか……?)

伊集院「光吉いいいいいい!!!」

多田「! 伊集院」

伊集院「大変なんだよ!! ピン先輩の様子が……」

多田「ピン先輩ならさっき会った。 ひどく落ち込んでいたな」

伊集院「お前も!?」

伊集院「……テストで0点!!?」

多田「ああ、何も書いてなかった」

伊集院「いや、俺の時は見せてくれなかったな」

多田「え……?」

伊集院「何かあったんすかーって聞いたら」

伊集院「悲しそうな顔で……」













杉本『伊集院……可愛いとは罪だな』










伊集院「……って言って、その後『ほっといてくれ』って言われた」

多田「……どういうことなんだ?」

多田「……落ち込んでる原因はテストと見ていいだろう」

多田「後は……どうして0点を取ってしまったかだ」

伊集院「テスト当日は腹痛だったとか……?」

長谷川「二人とも、どうしたの?」

伊集院「!! 委員長、実は……」











長谷川「……一ちゃんが!!?」

多田「委員長は何か知ってるか?」

長谷川「……ううん、何も」

多田「どうしよう……先輩の言う通りそっとしておいた方がいいのだろうか」

伊集院「ばっかやろう!!」

多田「!!」

伊集院「俺達の先輩だぞ!! そっとしておいていい訳ねーだろ!!」

伊集院「俺達でピン先輩を励ましてやろうぜ!!」

多田「伊集院……」

多田「……」

多田(伊集院は本当に……お節介な奴だな)

伊集院(けど……そのお節介に俺は救われた)

伊集院(親父とお袋が亡くなった時も……テレサを追いかけに行った時も……)

多田「……そうだな、ピン先輩には色々お世話になったんだ」

多田「今度は俺達が恩返ししないとな」

伊集院「だろ!!?」

多田「……じゃあ俺はこの件を山下に伝えてくる」

長谷川「私も……一ちゃんに詳しく聞いてみるね。 二人がダメだったからダメかもしれないけど……」

伊集院「じゃあ俺は!!!」

伊集院「……」

伊集院「何すればいい?」

多田「おい」

杉本「……」

長谷川「一ちゃん!!」

杉本「! 委員長……」

長谷川「模擬試験で0点取って落ち込んでるって聞いたけど……その日、何かあったの?」

杉本「……」

長谷川「ほっといて欲しいって思ってるかもしれない。 けどそんなのできないわ」

長谷川「だって……幼馴染じゃない!!」

杉本「……」

長谷川「……」

杉本「……HINA」

長谷川「……え?」ドキッ

杉本「……全部HINAが悪い」

長谷川「ええっ!!?」

杉本「これを見てくれ!!!」

『HINAが受験生のみんなにメッセージ!!』

長谷川(!! この間撮ったやつ……)

HINA『受験生のみんな、ファイトだよ!! 君ならできるって私、信じてるから!!!』

杉本「こんな動画を見たら……こんな動画を見たら……」

杉本「勉強に集中できんだろうがあああああああああ!!!」

杉本「HINAが可愛すぎて……テストに集中できなかった!!」

杉本「だから僕は0点を取ってしまったんだあああああああ!!!」

長谷川「」

放課後

長谷川「……というわけらしいの」

山下「ええ……そういうのって普通、モチベーション上がって勉強できるようになりませんか?」

多田「ピン先輩の場合は、好きを拗らせ過ぎて勉強ができなくなってしまった、という事か」

長谷川「どうしよう……一ちゃん、明日京大の試験なのよ?」

伊集院「おーし!! じゃあやる事はひとーつ!!!」

伊集院「HINAだったら好きすぎて勉強できないなら……俺達で応援すればいいんだよ!!」

伊集院「動画のHINAみたいにチアガールになれば『頑張るからその格好やめろ』ってなって……」

多田「断る」

山下「いいっす」

長谷川「ごめんなさい」

伊集院「全員拒否ぃ!!?」ガビーン

多田「俺が否定したのはチアガールの姿の話だ。 応援は否定しない」

山下「自分も多田先輩と同じっす」

伊集院「おーし!! そうと決まれば応援しにピン先輩ん家に行こうぜ!!」

多田「……家、知ってるのか?」

伊集院「あ」

長谷川「私、知ってるけど」

伊集院「おお!! 流石委員長!!!」

伊集院「じゃあ行こうぜ!! 行こうぜ行こうぜーーー!!!」

多田「……」

山下「? どうしたんすか多田先輩」

多田「すまない、今日は店の手伝いをしないと……」

伊集院「何ぃーーーーーーーー!!!?」

山下「そういえば……最近忙しくなってるんすよね」

多田「ああ、お陰様で」

山下「……そういや自分もこの後美容院の約束が」

伊集院「ええええ!!? キャンセルしろよキャンセルうううううううう!!!」

伊集院「……!! 待てよ、そういう俺も今日は店の手伝いの日だったような……」

長谷川「……」

長谷川「……ねぇ、みんな用事があって来れないようなら……提案があるんだけど」

多田「提案?」

長谷川「ええ、応援って……直接言う以外にも方法はあるでしょ?」

杉本の家

杉本「……」

HINA『受験生のみんな、ファイトだよ!! 君ならできるって私、信じてるから!!!』

杉本「ああああああああ!!! HINA最高だああああああああああ!!!///」

杉本「この胸!! 揺れてるか……? ああ、揺れてる!!///」

杉本「ああダメだ!! HINAが可愛すぎて勉強に手がつけられーーーーーん!!!///」

ピンポーン

杉本「!!! 誰だ!! 僕のHINAの動画鑑賞タイムを邪魔するのは!!」

ガチャ

長谷川「一ちゃん」

杉本「! 委員長」

長谷川「明日、京大の試験なんでしょ?」

長谷川「だからこれ……」サッ

杉本「……色紙?」

長谷川「うん、みんなが一ちゃんに向けてメッセージを書いてくれたの」

長谷川「本当はみんな来て直接言おうと思ったけど……みんな都合が悪くて」

杉本「……そうか」

長谷川「……あのね一ちゃん」

杉本「……なんだ?」

長谷川「一ちゃんがHINAが好き過ぎて勉強ができないのはしょうがないかもしれない」

長谷川「けど……HINAは勉強に集中させない為にあんな動画を公開した訳じゃないと思うの」

長谷川「頑張って欲しい……合格して欲しいって思いが込められてると思うの」

杉本「!!」

長谷川「だからHINAは……一ちゃんのそんな姿、見たくないはずよ」

杉本「……」

長谷川「……じゃあ私はこれで」

長谷川「明日の受験……頑張ってね」

杉本「……委員長」

長谷川「?」

杉本「……ありがとう」

長谷川「……うん」

バタン!!

杉本「……」

『ピン先輩ならできるって信じてます』

『俺が受かるって思ってんだから受かります!!!』

『気楽にいきましょう!!』

杉本「……」

『緊張した時は人の字を書いて飲み込んで』

杉本「……」

杉本(僕の周りには……こんなにいい後輩がいたんだな)

杉本(……京大に行ったら……もう会えなくなるのか)

杉本(……)

試験当日

長谷川「……」

長谷川(試験が始まる時間だ……)

長谷川(一ちゃん……大丈夫かしら……)

長谷川(あんなに一ちゃんが苦悩するなら……応援なんてない方がよかったのかな)

プルルルル……

長谷川「……!!」

長谷川(一ちゃんから電話!!?)

長谷川(なんで!!? 今は試験中で電話なんかできないはず……)

長谷川(一ちゃんに何かあったの!!?)

ピッ

長谷川「もしもし一ちゃん!!? どうしたの!!? 試験は!!?」

杉本『……委員長』

長谷川「……なに?」

杉本『京大は受験しない事にした』

長谷川「!!!?」

長谷川「どうして!!? どうして急に!!?」

長谷川「……!!」

長谷川「HINAなのね!! HINAの所為なのね!!?」

長谷川(私の所為だ)

長谷川「HINAの応援動画が可愛いすぎて……受験に行けなくなったのね!??」

長谷川(全部私の所為だ)

長谷川「だから行きたくても行けなくて……HINAがいなければ……一ちゃんは……」

長谷川(私が一ちゃんを苦しませたんだ)

杉本『違う!!!』

長谷川「……え?」

杉本『受験をやめた理由は……』

杉本『……東大を受けるからだ』

長谷川「! 東大……」

杉本『昨日貰った色紙を見て思ったんだ』

杉本『僕の周りには……先輩思いのいい後輩がいたんだなと』

杉本『京大に行けばそんな後輩ともなかなか会えなくなる……そう考えると……』

杉本『なんだか……寂しくなってな』

杉本『僕は……お前達とまだいたい』

杉本『だから都内にある東大を受験する事にしたんだ』

長谷川「一ちゃん……」

長谷川(よかった……私の所為じゃないんだ)

杉本『まぁ一番の理由は……』

長谷川「……?」

杉本『HINAに会えなくなるからな!!!』

長谷川「!!?」

杉本『過去のグラビア撮影場所!! イベント開催場所!! 殆どが都心!!! そして彼女の自宅も都内にあるとインタビューで答えていた!!!』

杉本『だったらこっちにいた方がHINAにまた会える可能性が高くなるだろう!!!』

杉本『ああああ!!! HINA!!! 好きだHINAAAAAAAAAAAA!!!///』

長谷川「……」

長谷川「フフ、本当馬鹿なんだから……」

杉本『ん? なんか言ったか?』

長谷川「……ううん? なんでも?」

杉本『……というわけで僕はもう一度応援動画を見よう』

長谷川「もう大丈夫なの? あの時みたいにならない?」

杉本『ならん。 寧ろもっと応援してほしいぐらいだ』

長谷川「悪化しそう……」

杉本『ならないと言っているだろう。 僕を信じろ』

長谷川「……」

長谷川「もっと……応援してほしいの?」

杉本『? ああ、そうだな』

長谷川「……その願い、叶うといいわね」

杉本『そうだな』

その後











伊集院「光吉いいいいいいいい!!!! 大変だあああああああ!!!」

多田「なんだ伊集院」

伊集院「この動画見ろおおおおお!!!」

多田「……? HINAの受験生応援メッセージ……追加されたのか」

『ユウキくん!! 君ならできるよ!!』

『ハルカちゃん!! 頑張って!!!』

多田「……成る程、色んな人の名前を呼ぶようになったのか」

伊集院「それで見ろ!! こんなかに……」

多田「ん……?」

『一ちゃん!! 私がついてるよ!! 緊張した時は人の字を書いて飲み込んで!!』

伊集院「こんなん見たらピン先輩、萌え死んで東大受験できなくなっちまうよおおおおおおおおおお!!!」

多田「確かに……前のやつでああなってたんだから名前を呼ぶとなると更にまずいな……」

杉本「心配はいらない」

多田「ピン先輩!!?」

伊集院「い、今の動画はなーんでもないっすよーなーんでもない!! 俺の声真似でーーす!!」

杉本「誤魔化さなくてもいい。 とっくに見た」

多田「あの……当日は大丈夫ですか? 気が散りませんか?」

杉本「心配はいらないと言ってるだろう」

杉本「僕は気づかされたんだ、HINAは僕に合格して欲しいから応援してるんだと」

杉本「だったらその期待に答えなければならまい」

伊集院「ピン先輩……」

杉本「それに見ろ。 過去問の採点結果はオール満点だ」

伊集院「マッジ!!?」

多田「……もう心配はいらないみたいですね」

杉本「ああ」









杉本『明日の受験はHINAのポスターを持参する事にした』

長谷川「ポスターを!!?」

杉本『HINAは言ってくれた、『私がついている』と』

杉本『だったらそれを僕の手でちゃんと実現させなければな』

長谷川「……」

長谷川「そうね、『私がついてる』ものね」

杉本『……?』

長谷川「……一ちゃん、明日頑張ってね」

杉本『……ああ、頑張るよ日向子』

長谷川「!!」ドキッ

プツッ

長谷川(びっくりした、いきなり下の名前で呼ぶから……)

長谷川「……」
















『名前を呼ぶ動画?』

長谷川『お願いします!! どうしても……投稿したいんです!!』

『確かにいいアイデアだけど……スケジュール混んでるの分かってるよね?』

長谷川『はい!! 分かってます!!』

『……じゃあ分かった、そんなに撮れないけどいい? 5パターンぐらいかな』

長谷川『ありがとうございます!!』

『じゃあありきたりな名前でいいか、ユウキくんでしょ、後は……』

長谷川『あの!! その中に……』

『ん?』

長谷川『一ちゃんって名前の人のも……入れていいですか?』











伊集院「ピン先輩合格おめっとございまーーーーす!!!」

山下「おめでとうございまーす!!」

杉本「ありがとう」

多田「まさか本当にポスターを持っていくとは……」

杉本「当たり前だろう!! 僕はHINAがいないと本領発揮できないんだからな!!」

長谷川「あら? でも最初はHINAの所為で0点じゃなかったかしら……?」

伊集院「おお!! 委員長鋭い!!」

杉本「なっ!!? あ、あれは本気を出してなかっただけだ!!!」

杉本「そ、それにあれだ。 HINAが僕の名前を呼ぶ動画を投稿したのは僕が0点だったからだろう!!」

杉本「僕はHINAに名前で呼んでもらいたかったからわざと0点を取ったのだああああああ!!!」

山下「いやいや……近くにいる訳じゃあるまいし」

杉本「いるだろう近くに!! ほら!!」バン!!

多田「いや、それポスターじゃ……」

杉本「HINAなのに変わりはない!!」

長谷川「……ふふっ」

長谷川「……」

長谷川(これからもずっと……一ちゃんといられたらいいな)

終わり

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