未央「太陽と向日葵は恋人なんだもん!」向日葵「やめてくれ」 (28)


未央「え?」

向日「やめてくれ……無責任にそんなことを言うのは」

未央「で、でも向日葵って太陽みたいだし……夏の代名詞で……」

向日「止めてくれって言ってるだろ!!」

未央「ッ」

向日「方や太陽系最大の天体! 方や小さな地球の小さな島国に咲くただ一輪の花!」

向日「分かるだろ……住んでる世界が全然違うんだよ」

未央「向日葵……」

向日「俺が太陽に影響されることはあっても、向こうが俺の存在によって変化することなんてない」

向日「俺はただ、一方的にアイツを見つめているだけだ……」


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未央「っていうことがあってさ」

渋谷「そう……大変だね(未央の頭が)」

卯月「向日葵さんとお話し出来るんですね、すごいです!」

未央「なんとか元気づけてあげたいんだけど、どうすれば良いかなぁ」

渋谷「いや、どうしようもないんじゃないかな(未央の頭が)」

未央「確かに難しいと思うけど、うーん」

渋谷「手遅れだと思うな、未央の頭は」

未央「うん?」

卯月「未央ちゃんの頭がどうかしましたか?」

渋谷「いやなんでもないよ」


未央「うーん、太陽……向日葵……日向一族……」

渋谷「向日葵はさ、自分が太陽に何の影響も及ぼせない存在なのが悲しいんだよね?」

卯月「そうみたいですね」

渋谷「じゃあさ、向日葵を太陽に向かって光の速さで投擲すれば良いんじゃないかな」

未央「なんでそんな酷いことするの? というか誰がやるのさ、それ」

渋谷「木場さん」

卯月「確かに木場さんなら出来そうですね!」

未央「……まあそれは最後の手段にしよう。向日葵燃え尽きちゃうし」

渋谷「名案だと思ったんだけどな」

未央「しぶりんは何事にも全力過ぎて発想が振り切ってるよね」

卯月「私、凛ちゃんのそういうところ大好きですよ!」

渋谷「ありがとう、卯月」フッ

未央「ドヤ顔やめて」


渋谷「そもそも、向日葵ってどういうアレなの? よく考えたら私全然知らないんだけど」

未央「夏に咲く背の高い花で、太陽の方を向いて咲いて……」

卯月「あの、種が食用になったりペットのえさになったりしますね」

渋谷「ほかには?」

未央「太陽の恋人」

渋谷「無責任にそんなこと言わないで!」ダンッ

卯月「」ビクッ

未央「なんでしぶりんが怒るのさ」

渋谷「よし先生に聞こう」

未央「グーグル先生ね」

渋谷「いやペディア先生」

卯月「ウィキですか?」

渋谷「……まあ卯月なら良いか」

未央(私がウィキペディアをウィキって略したら怒られるのかな)


渋谷「えーと向日葵、出た出た」

未央「学名はHelianthus annuus。Helianthusはまんまヒマワリ属って意味なんだね」

渋谷「annuus……これもしかしてアヌs」

未央「発音が違うからね。意味は『一年生』だって」

渋谷「なんだ、がっかり」

卯月「ひまわり一年生ってことなんでしょうか、なんだか可愛いです」

未央「花言葉は『私はあなただけを見つめる』かぁ……なんか辛いなぁ」

渋谷「一途と盲目って紙一重だよね」

未央「しぶりんは話をややこしくしないで」


渋谷「別名はソレイユ……シルクドソレイユとかのソレイユと同じかな」

未央「そっちは太陽って意味みたいだね。あと別名はひぐるまそう、ひゅうがあおい」

卯月「なんだか人名みたいですね、日向 葵ちゃん」

渋谷「木の葉にて最強じゃん」

未央「関係ない話しないで」

渋谷「さっき未央も言ってたよね?」

未央「私は最強なんて言ってないもん」

卯月「なんの話ですか?」

渋谷「葵ェ!」

首藤「ひゃっ!」ビクゥ

渋谷「あ、ごめんね首藤さん。葵は葵でも葵違いだから」

未央「そもそも葵と言っても厳密には別に葵じゃないから、日向の者だから。いや厳密には日向でもないけど」

首藤「う、うん……?」


未央「えーと分類は……キク類キク目キク科キク亜科ヒマワリ属ヒマワリ」

渋谷「もうキクじゃん」

未央「キクだこいつ」

渋谷「実質キク」

未央「太陽関係ないわ」

卯月「そういうものなんですか?」

渋谷「たぶん違う」

未央「ただ意味もなくレッテル貼りしたくなる時あるよね」

渋谷「えーっとほかには……太陽の方を向くのは生育途中だけで、咲いたらずっと東向き」

未央「なんだよーやる気ねーな」

渋谷「もう良いんじゃない? 彼のことは」

卯月「案外乗り気じゃないんですね」


渋谷「あとは特筆するようなこと書いてないね。あ、原産地はアメリカ大陸だって」

未央「あいつ軽く日本のことディスってたくせにメリケンなんだ。はーこれだからメリケンは」

卯月「生まれは日本なんじゃないですか?」

未央「いや言うてもメリケンはメリケンだよしまむー」

渋谷「奴らバターを揚げて食べるからね。卯月は目を合わせちゃダメだよ」

卯月「そ、そうなんですか?」

未央「メリケンだけはダメだよしまむー」

渋谷「まあ別に嫌いじゃないけどね、メリケン」

未央「まあね」

卯月「メリケンさんにもいろんな人がいるってことですね(強引なまとめ)」


未央「けっきょくよく分からなかったね」

渋谷「ペディア先生も案外役に立たない」

卯月「ウィキはみんなで作るものですし、物足りなければ自分で編集するべきだって聞きました」

渋谷「……いやこの場合は正しいか」

未央「ひまわりについて加筆するような知識があったらそもそもウィキを見てないよね」

渋谷「ウィキペディアをウィキと略すな」

未央「言いたそうだったから言ってあげたよ」

渋谷「未央……ありがとう」

未央「礼なんて良いよしぶりん、私たち仲間でしょ?」

卯月「……ペディアって略し方はアンの方と混ざりませんか?」


渋谷「じゃあ次は太陽を調べてみようか」

未央「えーと太陽は……」

渋谷「え、長……」

未央「……」

渋谷「……」

卯月「……?」

渋谷「もうやめよう、こんな意味のないこと」

未央「しぶりん……?」

渋谷「こんな、ネットで検索して、表面的な知識だけ手に入れて」

渋谷「そんなので未央は向日葵にちゃんと向き合ったって言えるの!?」

未央「!!」

渋谷「逃げないでよ。あんた言ったよね、向日葵を励ましたいって! あれは嘘だったの?」

未央「違う……違うよ! でも私、馬鹿だから」

渋谷「馬鹿でもいいでしょ! 未央の本当の気持ちを伝えることが、何より大事だと思う!」

未央「しぶりん……」

渋谷「あとアレじゃん! あのほらやっぱ……ねぇ! そうでしょ!」

未央「そうだねしぶりん……私、間違ってたよ!」

卯月「もしかして、ウィキ読むのが面倒になったんですか?」

渋谷「そうだよ未央! 未央は間違ってた! 馬鹿だった!」

未央「しぶりん! でも最初に検索しようとしたのはしぶりんだからしぶりんが馬鹿!」

渋谷「未央!」

未央「しぶりん!」

卯月「面倒になったんですね!」


未央「そんなわけで向日葵のもとにやってきたのだ」

向日「誰ですかアナタ」

未央「向日葵……あなたに伝えたいことがあるんだ」

向日「いや誰ですかアナタ」

未央「向日葵……」

渋谷「未央……」

未央「しぶりん……向日葵が」

向日「いやだから誰なんですか」

渋谷「ひょっとして向日葵違いなのでは?」ピーン

未央「いや分かんない。そうかもしれないけどそうじゃないかもしれない」


卯月「皆さん似たようなお顔ですもんね」

未央「……太陽と向日葵は恋人なんだもん!」

向日「は?」

未央「あっ人違いでした」

渋谷「そもそも歌詞違わない?」

未央「そこは察してよ」

卯月「もしかしてメリケンのせいですか?」

未央「まあだいたいそんな感じだね」

渋谷「邪悪の権化だからね、メリケンは」

未央「私の前でメリケンを悪く言わないでよ」スタコラサッサー

向日「なんなんですかアナタ達」


未央「向日葵!!」ザッ

日向「……なんだ未央、またこんな奴のところに来たのか」

未央「こんな奴なんかじゃないよ」

日向「俺なんていくらでも替えの利く花でしかないんだ……向日葵が好きなら別の奴のところに行けよ」

渋谷「利く? やっぱりキクでは」

未央「替えなんて利かないよ! 向日葵は向日葵じゃん!」

渋谷「さっき思いっきり間違ってたよね」

未央「しぶりんうっさい!」

渋谷「はい」

向日「俺は俺、か。確かにそうだな、俺なんてどこまで行っても俺のまま……」

未央「もう! すぐそうやってネガティブなこと言って!」プンスカドカチャーン

向日「もういいんだ! 俺はただ太陽を見つめるだけで、恋人になんてなれやしないんだよ!!」


未央「確かに、そうかもね」フワッ

向日「未、央……?」

未央「だったら、私がなるよ。向日葵の恋人に」

卯月「未央ちゃん……」

未央「私ずっとスターになりたかったけど……いいよ。あなただけの太陽になっても」

向日「何、言ってんだよ。未央」

未央「ほら私、パッションなアイドルじゃん? 太陽と比べたらちょっと物足りないかもしれないけどさ」

未央「太陽みたいにあなたを照らして、あったかい気持ちにしてあげられると思うんだ」

向日「なんで、俺みたいな奴の為にそこまで」

未央「なんでだろ? でも、ほっとけないから」

向日「未央……」


渋谷「異議あり!」ビシィ

未央「しぶりん!?」

渋谷「未央はパッションなアイドルだから太陽になれるって言ったよね。でも」

渋谷「それは違うよ!」

未央「欲張りすぎだよしぶりん!」

渋谷「向日葵! 太陽はあなたのことを見てくれてたの?」

渋谷「否! 太陽はあなたのことなんて見ていなかった!あなたがいくら見つめても!」

向日「」

未央「しぶりん! 追い打ちはやめて!」

渋谷「加えて太陽はあなたを温めてるわけじゃなくただ熱を放出しているだけ!」

渋谷「現に今とかめっちゃ過剰に暑いけど緩める気配もないし! 冬は寒いし!」

渋谷「つまり奴は! 割と熱いようでそうでもない! 情熱的ではない!!」

渋谷「パッションのようでパッションじゃない! むしろそう、その立ち振る舞いはクール!」

向日「なん……だと……」


渋谷「だからね、向日葵」

渋谷「恋人には、私がなるよ」ファッサー

向日「渋谷……」

未央「しぶりん!」

渋谷「未央、大丈夫だよ。未央がこんなことやる必要ない」

未央「勝手なこと言わないでよ! しぶりんはこんなことしたくないでしょ!?」

渋谷「それは未央だって同じでしょ。こんなこと、本当はしたくないはず」

未央「確かにこんなこと……でも! しぶりんだって!」

渋谷「私は仲間の為ならどんなことだってやる。こんなことだってやる」

向日「さっきから君たち酷いな」

卯月「…」←太陽は実はキュート!って言って割って入りたいけど上手いことこじつけられない島村卯月


向日「……お前たち、ありがとうな」フッ

未央「向日葵?」

向日「こんな俺に、そこまで言ってくれて」

卯月「向日葵さん……」

向日「……お前らが恋人か。確かに幸せそうだ」

向日「恋人じゃなくてもいい。学生時代、お前らみたいな奴が同級生だったら……」

渋谷「学……?」

向日「気さくで明るくて、俺みたいな陰気な奴にも声をかけてきてくれる未央……(B84cm)」

向日「ちょっとギャルっぽくて、でも誰よりも真面目で情熱的な渋谷……(B80cm)」

向日「正直たまらんですね」

未央「雰囲気変わったな」

向日「お前らが俺の傍にいてくれれば、俺もこんな風にはならなかったかもしれないな」

渋谷「こんなこんな言わないでよね」

未央「ね。卑屈だよね」


向日「でもさ。俺、思ったんだよ」

向日「確かに俺と太陽は遠い存在だ。恋人になんて、なれっこない」

向日「ただ、だからってこれまで俺がずっと太陽を見つめてきた時間が無駄になるわけじゃないよな」

未央「向日葵……そうだよ。向日葵の想いは、無意味なんかじゃない」

向日「そうだよな。絶対に届かなくて、それでも一途に思い続けて」

向日「そんな生涯だって、きっとそんなに悪いものじゃないんだ」

渋谷「一途と盲目って紙一重だよね」

向日「えっ」

未央「あーせっかく良い話風に何も解決しないまま終わりそうだったのに」

渋谷「しまった、「ふーん、悪くないかな」って決め台詞言って終われば良かった」

未央「もう、しぶりんったらぁ」ツンツン

渋谷「未央ったら、やめてよ」バシバシ


向日「で?」

未央「こんなこともあろうかと、今木場さんをお呼びしました」

木場「やあ」キン ギュワーン シュバッ ッタァーン ザーッ パラパラ

卯月「木場さん、おはようございます!」

向日「え?」

渋谷「良かったね向日葵、太陽に会いに行けるよ」

木場「まあ実際は向日葵の本体は燃え尽きて衝撃波だけが到達し貫通するだろうがな」

向日「えっ?」

未央「行っておいでよ、向日葵。そして自分の想いを伝えようよ」

渋谷「大丈夫。向日葵なら出来る」

卯月「いってらっしゃい、向日葵さん!」

木場「では準備は良いかい」

向日「えぇ……」


向日(俺、死ぬのか)ブチィ

向日(でも、それも良いかもな……ずっと片思いし続けるなら、いっそ)

向日(当たって、砕けろだ)カッコブツリカッコトジ

??「その必要はないわ」

木場「何奴!!」

太陽「私よ」

木場「なんだ、太陽か」

未央「太陽が……会いに来たの? 向日葵に?」

卯月「向日葵さんの想いが太陽さんに通じたんですよ!」

渋谷「ふーん、あんたが太陽? ま、悪くないかな」キリッ

太陽「向日葵、ずっと私のことを想っていてくれてありがとう」

太陽「ずっと知ってた、ずっと嬉しかったよ」

太陽「だって私も、向日葵のこと……」


向日「があああああああああ!!」メラメラ

太陽「もう、向日葵ったら。真っ赤になっちゃって」

未央「照れてる?」

卯月「照れてるんでしょうかね?」

渋谷「なんか照れすぎて赤熱してない?」

木場「太陽が眼前まで迫ったら普通は赤熱じゃ済まないぞ。あの向日葵何者だ?」ケッカイハリー

太陽「ね、向日葵。名前を呼んで?」

日向「ぎぃやああああああああああ!!」メラメラ

太陽「私達はずっと一緒にはいられない。今だって私が太陽系の中心から外れたことで惑星が放牧されていってるし」

日向「ぐわああああああああああああ!!」メラメラ

太陽「でも、今だけ。今だけは、あなたの恋人でいさせて」ギュッ

日向「あああああああああああああああああああ!!」ジュッ


卯月「……」

渋谷「……」

未央「……」

かつて向日葵であった灰「」

太陽「……」

木場「……」ガシッ

太陽「あっ」

木場「ふんっ」ポイー

太陽「」ヒューン

未央「終わったね……」

渋谷「うん、終わった」

卯月「帰りましょうか!」

未央「そうだね、しまむー!」

渋谷「三人でレッスンしよう!」

卯月凛未央「「「そして三人で! 輝く一番星になろう!」」」



―完―

ところどころ向日が日向になってますが白眼とかに目覚めたわけではなく単にミスです
失礼しました ありがとうございました

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