国王「朕の大切な第一皇女がさらわれた。取り戻してきなさい。ついでに世界も救っときなさい」
勇者「た、大した親バカだ……。世界を二の次にするなんて」
国王「装備なら揃っている」
初期装備
●武器:木の枝(樫の木なので硬い)
●頭防具:なし
●鎧:なし
●靴:なし
勇者「こんな木の枝ひとつで魔王討伐なんて無理です!」
国王「朕ならやる」
勇者「た、大したドタマ……ドタマっていうか国王だぜ。しかし僕は非力な小僧。できるはずないんですよ」
国王「行け」
勇者「はい」
旅が始まった
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勇者「クッソ~、とはいえ何をしたらいいか分からない!」
ー自宅ー
カランカラン!
勇者「おかあさーん」
母「あら、もう帰ってきたのね。昼ご飯は無いわよ」
勇者「えー」
母「ん? その木の枝は何かしら? もしかしてあなた、王様から魔王討伐の命を受けたのではないかしら?」
勇者「なにィ! 大した洞察力だ。ま、然りなんだけどね」
母「フンフン、それで旅に出るお金が無いから、お母さんにお金を用意してもらおうと企んだわけなのね」
勇者「ク、クソォ~。何もかもお見通しかぁ!」
母「残念だけど、無理よ。あなたにお金は残せない」
勇者「ク、クッソ~! なんで!?」
母「老後のため。私達は母子家庭。現在私のわらじを編む内職のお陰で稼げているが、あと20年もすれば私はヨボヨボのお婆さんに成り果てます。つまり内職、資金調達はできなくなります。1人で生きてはゆけません」
勇者「た、大した老後設計だクソ~」
母「このボロ布あげるから、出て行きなさい」
ドグォ!
勇者「ポグバッ!」
追い出された
ーハローワークー
勇者「お金ってどうやったら手に入るんですか」
職員「働いてみましょうか、まずはバイトからですね。あなたの経歴を見ると、到底正社員や契約社員など務まりそうにないので。バイトなら責任も軽めですし、いいでしょ」
勇者「バ、バイト……?」
職員「本屋で魔導書を売ってもらうバイトですね」
勇者「やってみます……」
ー数日後ー
マッチョ店員「おい! テメェが新入りか! カビた青菜みてぇな顔しやがって、下手な動きしたら殺す!」
勇者「ク、クソォ~、どうしてこんなことに」
カランカラン!
勇者「いらっしゃいませー」
勇者(クッソオ、こんなクソ暑い真昼間から、わざわざ60°の急斜面を上ってまで本屋に来るなんてよ~、大した読書家だぜ」
読書家A「フム……フム……」ペラリペラリ
そいつは魔導書のページをめくって流し読みしていた
勇者(クソ~、僕は魔導書のことなんて知らないのに、質問されたら答えようにも答えられないよ)
読書家A「あのぉ、すみません」
勇者「はい、いらっしゃいませ」
読書家A「この魔導書が書かれた3万年前に同一作者が書いた魔導書を探してるんですけど。ありますか?」
勇者(ええぇ~! そんなの知らないよ! そもそも3万年前の本なんて知らないし! クッソォ~どうすればいいんだ!)
マッチョ店員「それでしたらファンダラ=ダルマファティマ伯爵の『キエフ湖に咲くシシトウの花』という魔導書ですね」
読書家A「そうそう! それよそれ!」
勇者(ス、スゲ~!)
読書家A「ちょいと店員さん、そこのバイト? 研修だか何だか知らないけど、3万年前の魔導書も分からないなんて、バイト失格ですよ?」
勇者(え、えええ~!?)
読書家A「物を売る立場、人を思いやる心が足りていない。普段から本の勉強もしていない。ほんと、大したバイトだと思いますよ」
勇者(そ、そんなぁ~! クッソォ~!)
マッチョ店員「申し訳ございません。みっちり言い聞かせておきますので」ニヤリ
勇者(あッ! 来る……!)
勇者「店員さん! 僕、2番(トイレ)行ってきます! ごめんなさ~い!」ドヒューン
マッチョ店員「あ! おい! 待てぇぇ~~~い!」
勇者は半日でバイトをやめた
勇者(クッソ~、一体全体、どうすればよいんだ!? 分からないぞ! クソ~!)
魔王の倒し方が分からなかった
勇者(だって僕みたいなウンカスが頑張ったって、所詮は小僧の力だし勝てるわけないんだよ!)
勇者(仕方ない、ファミレスに行こう)
ファミレスに行った
勇者「ええっと、ドリンクバーとサラダとハンバーグとご飯で」
ウェイトレス「畏まりました。少々お待ちくださいませ」
勇者「クッソ~、しかしあの店員も大した奴だ。僕をクビにするだなんて、国王が黙って見ちゃいないんだからな」
少女「ん? どうかしたの? 国王がどうしたって?」
勇者「うわッ! いつの間に相席をしていたのか! なんて奴だ、気配すら感じなかったよ」
少女「あなた、武器がないね。どうやって魔物と闘っていくつもり?」
勇者「分からない。そこは気合いで何とかするよ」
少女「へぇ……大した男ね。あなたみたいなヒョロガリが素手で立ち向かったところで、スライムにすら殺されるわよ」
勇者「えッ!? スライムに!?」
少女「そう。あなたが想像するスライム像を言ってごらん」
勇者「えっと、それは……なんか餅みたいな形でプニプニした柔らかいゼリー状のプリンみたいな形をした……」
少女「ちがうちがう! なってないわ、あなた。スライムはね、とても素早いのよ」
勇者「へー」
少女「素早く獲物の背後に回り込んで、顔に巻き付き、溺死させるの」
勇者「ふーん、大した奴だよ、まったく」ズゾゾ
少女「あ! ちょっと、なに勝手にスムージー飲んでるのよ!」
勇者「面白いけど、たかが素早いだけのゼリーでしょ? 手に負えないわけじゃない」
勇者「ちなみに、君の名前を聞かせてくれ」
魔女「魔女」
勇者「フーン、変わった名前だね」
魔女「違うの! これは職業の名前なの。魔導師養成機関から、本名は明かすなって釘を刺されているのよ」
勇者「すげ~、大した養成機関だぜ~」ヘラヘラ
魔女「あなた、私のことバカにしてるの?」
勇者「いやァ~そんなことはありませんねェ~」ムシャムシャ
魔女「なによ、ハンバーグ食べて偉そうに」
勇者「これ食べたら魔王討伐しに行こう」
勇者「よし、じゃあ行くとしようか!」
魔女「あんたねー、武器もないのに魔物と闘ったら死ぬって教わらなかった? バカじゃないの」
勇者「大丈夫、ここの物干し竿を拝借するから」
魔女「そんな物干し竿ひとつで何ができるのよ」
勇者「この物干し竿はダイヤモンドでできてる」
勇者「だから叩くんじゃなく、刺すものとして使う」
店長「ちょいとお客さん! お会計がまだ済んでな(ry」
ズドン!
店長「かっ……はっ……」
勇者「ま、こんな感じに口から脳幹まで貫くことも可能」
魔女「あんた、大した悪漢ね。地獄に堕ちるべきだわ」
勇者「ルンルンルン! 楽しいな♪ 自分でも何が楽しいのか分からないけど何だか楽しくってたまらないや!」
魔女「……」ムスッ
勇者「オムスビ握ってんの?」
魔女「はぁ?」
勇者「いやなんかムスッとしてるから」
魔女「あなたの馬鹿さ加減に呆れてるのよ」
勇者「え」
魔女「あなた、もうあの町には戻れないよ。殺人犯として追われてるからね。その忌々しい物干し竿のせいで」
勇者「ク、クソォ! ぼくは勇者なのに、どうして兵に追われなくちゃあいけないんだ!」
魔女「だからそれはあんたが……」
兵A「見つけたぞ、この勇者のツラをかぶった人殺し!」
兵B「殺人犯はその場で首を落としてもいい決まりだ」
兵A・B「「いくぞッ!!」」
デデーン
野生の兵士A 兵士Bが現れた!
チャラララーン チャラリラリーラーン
勇者はどうする?
勇者「ぼくは……こうしてやるッ!」ドンッ
魔女「きゃあッ!?」
勇者は魔女を兵士に向かって突き飛ばした!
勇者「そしてダッシュ! クッソォ、これしかない!」
魔女「ちょっとあんた、待ちなさーい! ただじゃあおかないからねッ! 殺してやる! 殺してやるーッ!」
兵士A「バカだな、死ぬのはお前だよ」
魔女「何ですって?」
魔女のファイアストーム! 兵士達は消し炭になった!
魔女「私を見くびってもらっちゃあ困るわね。誰に喧嘩売ってるのか、分かってんの?」
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