零羅「僕らの世界」【遊戯王ARC-V】 (116)





零羅「………」スタスタ


零羅(僕の名前は赤馬零羅。どこにでもいる普通の女子高生だ)

零羅(もし、普通と違うところがあるとすればーーーーーー)



ズァーク『おい、メシはまだか』



零羅『………ちょっと、おボケな幽霊に取り憑かれてるってとこかな?』






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ズァーク『おい、誰がボケナスでナストラルだって?』

零羅『いや、ボケナスとまでは言ってないからね? というか、ナストラルって何?』

ズァーク『細かいことは気にするな。それよりもメシはまだか』

零羅『ご飯だったら、4時間くらい前に食べたでしょ?』

ズァーク『いや、あれも悪くは無かったが、今日のメシには、パンケーキが無かった! 俺はパンケーキが食いたいのだ!』

零羅『あのね、前にも話したと思うけど、今日からしばらくはダイエット期間中で………』

ズァーク『そんなこと知るか! 俺は、お前を通してでしか、食物を味わえないのだぞ?!』

零羅『別にパンケーキ食べなきゃ死ぬわけじゃないでしょ。そのくらい我慢してよ』

ズァーク『うるさい! 俺はパンケーキ、パンケーキを所望する!』








零羅(彼の名前は『ズァーク』、僕にしか見えない謎の幽霊だ)


零羅(彼は遊矢と同じ顔と声をしていて、物心ついた時には僕に取り憑いていた)


零羅(何で僕に取り憑いているのかは知らない。聞いてもはぐらかされる)


零羅(家族や友達にも何度か聞いてみたけど、同様にはぐらかされてしまった)








零羅(……みんなが答えてくれることは3つだけ)


零羅(一つ、『ズァークをむやみに傷つけるな』、二つ、『ズァークを戦いに駆り立てるな』、三つ、『ズァークのことを自分たち以外に話すな』)


零羅(……その3つだけ。それ以外は何も答えてくれなかった)


零羅(ネットでも彼の存在を調べてみたけど、情報はほとんど無い)

零羅(あっても、謎のドラゴンだの、遊矢のモンスターだの、遊矢の変身した姿だの、意味のわからないものしか無かった)

零羅(ただ、ズァークは基本的に無害だし、兄さまたちもズァークが無害なら取り立てて問題にする気は無いようだ)


零羅(………ほんとう、なんなんだろう? この幽霊は)








ズァーク『………おい! 聞いているのか! さっさとパンケーキをーーー』

零羅『うるさいなあ。僕だって必死に甘い物断ちしているんだから、ズァークも頑張ってよ』

ズァーク『なぜ、お前のダイエットに俺が付き合わねばならんのだ! パンケーk』

零羅『それに、今のズァークは、母親にチョコレートをねだる子供みたいだよ』

ズァーク『!?』

ズァーク『そ、そう見えるか………?』

零羅『うん、正直みっともないから、やめた方が良いよ』

ズァーク『ぬ、ぬううっ、』


零羅(これで、少しはおとなしくなるかな………)スタスタ








…………………………………………………………………………




零羅「……ふう、ようやく遊勝塾に到着だ……少し疲れたかな」

ズァーク『お前がダイエットのためとか行って、バス使わずに歩いているからだぞ』

零羅『それでも間に合ったんだ。だったら、問題ないよ』

ズァーク『……なあ、本当にダイエットなんて、必要なのか?』

零羅『普通に必要だけど?』








ズァーク『……今まで通りの生活でも、健康に大した異常は無かったはずだ』

零羅『うん、そうだね』

ズァーク『だったらーーー』

零羅『身体が重いとアクションデュエルに不利なんだよ。この前のデュエルで、それを思い知った。だから、ダイエットするだけの話さ』

ズァーク『身体が重くなるのは当たり前だ! 高校生というのは肉付きのよくなる時期なのだからな!』

零羅『それでも、アクションデュエルに不利になりたく無いんだよ』

ズァーク『……そもそも、アクションカードに頼らなければーーー』

零羅『それはそうと……』チラッ

ズァーク『……なんだ? 今は話の途中ーーー』

零羅『いや、今更だけど、大きい塾だなあって……』







デデーンッ!



ズァーク『………』

零羅『本当に大きい、ズァークもそう思わない?』

ズァーク『……ああ、まあ、確かにな。16年前とはえらい違いだ』

零羅『ズァークの話によれば、僕が産まれたばかりの頃は、今の百分の一にも満たない規模だったんでしょ?』

零羅『でもこれを見ると、とてもそうには思えないよ』

ズァーク『……それだけ、榊遊矢たちが頑張ったということだ』

零羅『遊矢かーー、しばらく会えてないけど、今度の帰国はいつになるやら』

ズァーク『今のあいつはプロデュエリストで、世界チャンピオンだ。そうホイホイ帰国できん』

零羅『わかってるよ。でも会えたら良いなーってだけの話』








ズァーク『ふん、ここにきて遊矢を求めるか。今日ここに来るあいつが不憫でならんな』

零羅『何言ってるの、叶うことなら彼にも会いたいと思ってるさ』

ズァーク『だったら、会えば良いではないか。今日はーーー』

零羅『前にも話したでしょ。会って話をするのは、プロデュエリストの過密スケジュールを考えれば難しい、って』

零羅『どうにか空き時間を作れたとしても、彼はプロデュエリスト兼遊勝塾の非常勤講師で、僕はそこの一生徒だ』

零羅『職場で堂々と懇意にしてもらうわけにはいかない。生徒を差別しているように見られかねないからね』

ズァーク『………』

零羅『残念だけど、今日彼と会って話をすることはできそうにない。迷惑をかけるわけにはーーー』



ピロリーンッ



零羅(……メール?)ピッ



零羅(あっ……)








…………………………………………………………………………




零羅「……失礼します」ガチャッ



素良「……久しぶりだね」

タツヤ「本当、久しぶり」



零羅「素…紫雲院先生! 山城マネージャー!」ガチャッ


素良「素良で良いよ」スタスタ


零羅「!?」


タツヤ「僕もタツヤで構わないよ」スタスタ








零羅「えっ、でもーーー」

素良「だいじだいじ、ここは防音設備があるし、中に誰かがいる状態で閉めれば自動でロックがかかる」

タツヤ「だから、誰かに聞き耳を立てられることも無ければ、無断で部屋に入られることは無いよ」

零羅「………」

素良「スケジュールと立場の関係上、こうでもしないと、普通に話すことができないからね。ゴメンね、いきなり呼び出しちゃって」

タツヤ「本当はもっと早くメールすべきだったんだろうけど、この空き時間は、さっき偶発的に作られたもので予定には無かったんだ。いきなりで、本当にごめん」

零羅「……謝る必要なんてないよ」

零羅「ありがとう、素良、タツヤ」ニコッ







ズァーク『ふん、気をつかっていたつもりが、逆に気をつかわれていたということか』

零羅『……うん、いろいろ気にしてたこっちが恥ずかしくなってきちゃった』

素良「ははっ、まあ、積もる話はあるけど、まずはおかs」



ブーッブーッ



タツヤ(ん、メール?)ピッ

タツヤ「…………!?」

タツヤ「素良、ちょっと!」

零羅&ズァーク「「?」」

素良「ん、どうかした?」

タツヤ「いや、それが、今回の公演で使うデッキの一つを【マジェスペクター】から【セフィラ】に差し替えてくれって、スポンサーから……!」








素良「……あー、そっか、じゃあ今すぐ柚子たちから【セフィラ】デッキ借りて、イメトレしないと」

タツヤ「だから、ごめん、二人とも! 結局、時間なくなっちゃった!」

零羅「あ、いや、それは誰のせいでもーーー」

素良「……スポンサーにも事情があるんだろうし、その意を汲むのもまたプロの仕事さ」


素良(それに、幸いなことに、【セフィラ】での新しい戦い方も考案済みだ)

素良(柚子たちから借りたデッキに、予備のデッキのカードを投入すれば何とかなるはず……いや、してみせる!)








ズァーク『………』

タツヤ「本当にごめん! 行くよ、素良!」

素良「はいはい! そういうわけで、ゴメンね、零羅! また今度話そう!」

零羅「そうだね、また今度ーーー」

素良「とりあえず、お菓子、ここ置いとくね!」スッ

零羅&ズァーク「「!?」」

素良「僕からのお土産だよ! それじゃ!」



ガチャッバタンッ








零羅(お、お菓子……!)ゴクッ

ズァーク『………』

零羅『ど、どうしよ、これ……』

ズァーク『……今すぐ食べよう、零羅』

零羅『な、なに言ってるの!?』

ズァーク『紫雲院素良の持ってきたお菓子に今までハズレは無かっただろう? 美味いに決まってる』

零羅『だ、ダメだよ! ダイエット中にそんなことしたら、太っちゃう、《リ・バウンド》しちゃうよ!』

ズァーク『良いではないか。そもそも甘い物断ちなんてしたら、ストレスがかかるだろうが。それで思考に悪影響を与えるかもしれない』








零羅『……そ、そうかな?』

ズァーク『そうだ。確かに身体が重くなれば、アクションカードは取りづらくなるが、逆に言えばアクションカードに頼らなければ良いんだ』

零羅『………』

ズァーク『大丈夫だ。お前ならアクションカードに頼らずともやっていける。かつての権限坂のように』

零羅(ううっ、僕は、僕は……っ、)

ズァーク『お前はお菓子が大好きなはずだ。特に飢えている時に食べるお菓子は格別のはずだ』

零羅「あ、ああ………」ゴクリッ

ズァーク『今こそ、その飢えと渇きを満たす時だ、零羅!』








ピロリーンッ



零羅(……メール?)パチリッ

ズァーク『……誰だ、こんな時に?』

零羅(差し出し人は……)ピッ



零羅(あっ、)







〔ダイエット生活1日目は大丈夫?〕

〔帰ってきたら、ヘルシー料理が待ってるわ。だから頑張ってね〕



零羅「………」

ズァーク『………』

零羅『……やっぱり、お菓子は食べないことにするね』

ズァーク『!?』

零羅『今はカバンの中に仕舞って、後で鍵付き棚にでも仕舞うよ』スッ

ズァーク『ま、まて、それは時期尚早ーー!』

零羅『1日目でダイエットやめる方が時期尚早だと思わない?』

ズァーク『うっ、』

零羅(さて、そうと決まれば、公演前に学校の課題でもーーー)









………………………………………………………………




アユ「皆さん、こんにちは。遊勝塾講師、鮎川アユです」

アユ「いつもであれば、皆さんにデュエルを教える身ではありますが、今回は特別公演のため、司会を務めさせて頂きます」

アユ「……そして、これより、新ルール適用のデュエルを皆さんに観戦して貰いたいと思います」



うおおおおおおおおっっ!!



アユ「ただし、その前に、皆さんに二つお願いがあります」








…………?



アユ「決して、恥ずかしくない振る舞いをお願いします」

アユ「……今回のデュエルは、ネット放送される予定です」

アユ「そのため、皆さんの行動一つで、皆さん及び遊勝塾全体が不利益を被ることもあり得ます」

アユ「なので、皆さんには、決して、恥ずかしくない振る舞いをお願いします」







…………。



アユ「……そして、最後にもう一つ」

アユ「遊勝塾の生徒を続けるのであれば、新ルールを受け入れるよう、お願いします」


アユ「……新ルールには、思うところがあるかもしれません」

アユ「今まで共に戦ってきたデッキが機能するか、不安に苛まれている人もいると思います」

アユ「ですが、しばらくすれば、旧ルールでデュエルすることは不可能となります。ならば、私たちは新ルールで満足するしかありません」

アユ「そして、新ルールならではの戦い方、楽しみ方は、確実に存在しているのです。遊勝塾でならば、それを見極めることも可能だと思っています」

アユ「なので、遊勝塾の生徒を続ける場合、必ず新ルールを受け入れるよう、お願いします」ペコッ








アユ「……お願いは以上となります。それでは、これより、新ルール適用のデュエル公演を開始したいと思います!」

アユ「そして、今回のゲストはこの人!」



ババーンッ!



アユ「融合次元出身の【ファーニマル】使い! しかも三十路手前らしかぬシュガーフェイスを併せ持つ、我が塾が誇るエンタメデュエリスト!」

アユ「その名も……紫雲院素良ーーー!」









デデーンッ!



素良「やっほー、みんな! プロデュエリスト、紫雲院素良だよ!」

素良「今日はよろしくね!」



うおおおおおっ!!

キャーッ!!

待ってましたー!!



パチパチパチパチパチパチ!!








素良「みんな、拍手ありがとうーー!」

素良「それでは、さっそくですが、三十路手前とか言ってた人にオシオキしようと思います!」



アユ「ええっ、!?」(台本通りだよね!? 素良の台詞がーーー)



素良「ははっ、なーんちゃって!」

素良「僕は永遠の美男子だからねーー、書類上の年齢なんか気にしないよーー!」









アユ「ははは……なら、永遠の美男子さんの相手はこの人!」



ババーンッ!



アユ「ペンデュラム次元の【幻奏】使い! 遊勝塾の誇るエンタメデュエリストで、我らが塾長!」

アユ「その名も……榊柚子ーーー!」








デデーンッ!



柚子「みなさん、塾長の榊柚子です!」



ザワザワ……ザワザワ………



柚子「今回は、私が彼のデュエルの相手を務めさせて頂きます!」

柚子「ただ、その前に一言ーーー」















柚子「ーーーエンタメデュエルを見るときは、ルールとマナーを守って、楽しく自由な気持ちで見てね♪」






……うおおおおおっ!!

榊塾長ーー!!

頑張れー!!



柚子「応援されちゃった、そういうわけで、今度は負けないわよ、素良!」



素良(うわー、若く見えるからって、無理するなあ……僕が言うのもなんだけどさ)

素良(もう齢30歳の既婚者だよね、柚子は?)








柚子「……素良?」



素良「……うん、気合入ってるねー、柚子! だけど、僕だって負けてらんないだからねー?」



柚子「わかってるわよ、だからーーー」



素良「お互い全力で、でしょ?」



柚子「そうよ、持てる力、全力でぶつけ合いましょう!」



素良「当たり前だよ! 新ルールだろうと、違うデッキだろうと、それは変わらない!」









アユ「なお、今回のデュエルは、新ルールの説明のため、不確定要素の無いノーマルデュエルで行われます!」

アユ「いろんな意味で、普段とは異なり過ぎるルール! その中で二人は、いったいどんなデュエルを繰り広げるのかーー!?」



柚子「いくわよ、素良!」



素良「こっちこそ、柚子!」



アユ「それでは、デュエル開始ーーーーっ、!!!」








………………………………………………………………



素良「ーーートドメだ! 《デストーイ・シザー・ベアー》でダイレクトアタック!」



ベアー『ガアアッ!』ブンッ



柚子「………!」LP0



ピィーッ



アユ「決まりました! 新ルールのデュエルを制したのは、プロデュエリスト、紫雲院素良ーー!!」



ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!



アユ「新ルールのデュエルは、4回行われましたが、その全てで素良は見事勝利を収めました!」

アユ「しかも、デュエルごとに異なる召喚法のデッキに変えたにも関わらず、混乱する様子は一切無し!」

アユ「これが、プロデュエリストの立つ次元領域なのかーーー!?」








素良「うん、そうだね」



アユ「言い切りましたよ、この男! なんという自信だーー!!」



柚子(それだけプロの世界で経験を積み続けたってことね。完敗だわ)



アユ「ーーー以上をもって、今回のイベントを終了します! 参加頂き誠にありがとうございました!」

アユ「なお、生徒の皆さんは、今回のデュエルを通して気づいたことを、一週間以内にレポートにまとめて、担当の講師に提出してください!」

アユ「きっと良い勉強になることでしょう!」

アユ「それでは、最後に、皆様の盛大な拍手をお願いします!」



ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!

パチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!








…………………………………………………………………………




素良「ーーーふうっ、終わった~~……」グデーッ

タツヤ「素良、休憩室だからって、気を抜きすぎ」

素良「良いじゃん良いじゃん、ここには僕ら以外に誰もいないし内側から鍵かかってるから誰も入ってこれない。それにーーー」

タツヤ「確かに、防音設備があるから聞き耳立てても意味は無いし、盗聴や盗撮の機器も無いことは、僕や職員が確認済みだ」

タツヤ「だけど、親しき仲にも礼儀ありって言うだろ? 柚子が見てるんだから、ちゃんとしなきゃ」


柚子「ふふふ、大丈夫よ、タツヤ。私は気にしないし、ああしてリラックスすることも大切だもの。遊矢も言ってたわ」


素良「さっすが、柚子と遊矢だ。わかってる~~」ゴロンゴロン

タツヤ「……それでも、素良は気を抜きすぎだと思うけどね」








柚子「いいのよ、気にしなくて。そもそも、いきなり呼び出したこっちにだって問題があるんだから」


素良「……僕は遊勝塾の非常勤講師でもあるんだ。だったら、スケジュールさえ空けば来るのは当然さ」ムクッ


柚子「素良……」


素良「それに、プロである僕が、遊勝塾で新ルール適用デュエルをすれば、間違いなく話題になるからね。入塾希望者を増やしたいなら、当たり前の選択だよ」

タツヤ「……そういうこと言わない」


柚子「はは……」


素良「しかも、今回僕は、プロの誰よりも先に、新ルール適用の公式デュエルを実行した」

素良「これで、僕の適応能力の高さを世間にアピールできたわけだ。次はどこの誰とどんなビジネスができることやら。今から楽しみたよ」


柚子「……商魂たくましいのは、お互い様ってことかな?」


素良「そういうこと~~♪」









素良「……それはそうと、本当に大丈夫なのかい?」


柚子「言ったでしょ? 気にしなくて良いってーーー」


素良「そうじゃないよ」


柚子「? どういうーーー」


素良「僕の存在そのものに関してさ」








柚子「!?」


素良「柚子だって、僕たちアカデミアが何をしていたのか、知っているだろう?」

タツヤ「ちょっと、素良!」

素良「大丈夫大丈夫、さっき述べた通り、この部屋にも防音設備がある。盗聴の類が無いことも、タツヤや職員が確認済みだ」

素良「僕の発言が外部に漏れて、遊勝塾に火の粉が降りかかったりはしないよ」

タツヤ「そういう問題じゃ……!」

素良「聞きなよ」


柚子&タツヤ「「………っ、」」


素良「僕たちアカデミアは、たくさんの人々から笑顔と自由を奪った。笑いながらね」

素良「そのことを思えば本来、僕にプロデュエリストになる資格なんか無いんだよ」








タツヤ「………」


素良「そんな僕が、融合次元以外でもプロとして認められたのは、色々な理由があるけれど……」

素良「最大の理由は、一番の被害者であるエクシーズ次元民が社会的弱者だからなんだ」


柚子「………」


素良「エクシーズ次元の顔色を伺わずとも、ペンデュラム次元及びシンクロ次元で不利益が生じることはないからね」









素良「……それに対して、融合次元は社会的強者、『国家』として独り立ちできている状態だ。しかも、数々のオーバーテクノロジーを持っている」

素良「融合次元の顔色は伺わざるを得ない。機嫌を損ねれば不利益に直結しかねないからね」

素良「だから、ペンデュラム次元及びシンクロ次元の各企業・団体は、融合次元やそこの住民に取り入った」


タツヤ「ーーーっ、」

柚子「………」








素良「もちろん、柚子たちはそんな理由で僕や融合次元と関わろうとしていたわけじゃないし、エクシーズ次元を軽視していたわけでもない」

素良「どこの誰だろうと、どの次元だろうと、分け隔てなく接していただけの話さ」

素良「だけど、世の中全体が、柚子たちのように真っ直ぐなわけじゃない」

素良「単純に自分たちが不利益を被りたくないから、力ある者に取り入って、力無き者を軽視する」

素良「そういう人たちの方が圧倒的に多い。というか、僕だって、そうだったからね」








素良「そして、世界全体がそうであることを利用して、僕は糾弾されるべき罪から逃れ、プロとして輝かしい日々を過ごしている」

素良「ねえ、僕の存在、本当に大丈夫?」


柚子「……っ、!!」

タツヤ「……いいかげんにしてよ! 何で今更そんなーーー」


素良「そうだね、今更だね……僕らにとっては、ね」


柚子&タツヤ「「!!」」


素良「だけど、『今更』じゃ済まない人だって、世の中にはいるんだよ。それは紛れも無い真実だ」








柚子「………」


素良「なら忘れちゃダメだ。常に受け入れなきゃ」


タツヤ「………」


素良「真実を受け入れられない人間は壊れるだけ……そうだろう?」


柚子「………!」

タツヤ「………っ、」


素良「壊れた人間が、誰かに笑顔になって貰おうとなんて……できるはずないんだから」








タツヤ「………」

柚子「……そうだね、その通りだよ、素良」

柚子「素良の昔や今、そして世の中全体がどういう状態にあるのか……そこから目を逸らして、遊勝塾の教えを広めるなんて、できっこない」


素良「でしょ?」


柚子「だけど、それでも素良がプロになったことは、良いことでもあると思う」








素良「………」


柚子「確かに素良たちアカデミアは許されないことをしたのかもしれないし、プロになったことに迷いもあるのかもしれない」


タツヤ「………」


柚子「だけど、素良たちがプロになったことで、救われた人もいるはずよ」


素良「………………」


柚子「勝率9割を超えたプロデュエリストの収入はすごく大きい」

柚子「素良たちが、収入のほとんどをエクシーズ次元に回したことで、多くの人たちが救われた。今だってそう」


素良「……やって当然のことをしているまでさ」

素良「それに、僕らの収入なんて、エクシーズ次元の被害を考えれば、雀の涙だよ」








柚子「それでも、救われた人たちはいる」

柚子「その行動は、エクシーズ次元の人たちが融合次元を見直すことに繋がった」


タツヤ「………」


柚子「見直すに値するまで、高い収入を得られたのは、素良たちがプロになったから」

柚子「だから、素良がプロになったのは、良いことでもあると思う」


素良「………」


柚子「それは、私にとって、紛れも無い真実なの」

柚子「……真実を受け入れることが大切だというのなら、素良もこの真実も受け入れなきゃ」

柚子「悲しい真実ばかり受け入れていたら、それこそ壊れちゃうもの……」








素良「……その通りだよ柚子、僕はまだ、壊れるわけにはいかない」

素良「ありがとね、柚子。君のその言葉が欲しかった」


タツヤ「………!」


素良「まっ、我ながら情けない話だとは思うけどね……」


柚子「……もし、辛い時があったら、また話をしましょう」

柚子「全力で、あなたの力になるわ」


素良「……ほんと、柚子には世話になるなあ……」


柚子「私だって、今日素良に助けてもらった。お互い様よ」








タツヤ(……やっぱり僕はまだまだ未熟だ。マネージャーなのに、素良の気持ち一つ察することができないなんて)

タツヤ(……それでも、頑張るしかない。でなきゃ、プロになって誰かに笑顔になって貰うなんて、夢のまたーーー)



ピロリーンッピロリーンッピロリーンッ



素良&柚子「「メール?」」ピッ


「「………」」







タツヤ「……ん、二人とも、どうかしたのーーー」


素良「……ぷっ、ははっ、」


柚子「ふふっ、ふふふっ……!」


タツヤ「え、なに? 急に笑って、何があったの?」


素良「……メール見ればわかるよ。タツヤのところにも来てると思うし」


タツヤ「メール?」ピッ



タツヤ「あっ、」








柚子「……零羅が、笑顔の自撮り写真を送ってくれた……ふふっ、!」


素良「よっぽど、僕たちのデュエルが楽しかったってことなんだろうね、ははっ、!」


タツヤ「……ははっ! 確かに零羅は、すごく機嫌の良い時、必ず自撮り写真を送ってくるからね」


素良「でも、いつもなら、なんで機嫌が良いかの理由も併記しているけど、今回は無かったね」


タツヤ「……多分、僕たちに気をつかったんじゃないかな?」

タツヤ「本当は色々書きたかったけど、全部書いてる時間も無くて、あまりに長い文章だと読むのに時間がかかって迷惑がかかる」

タツヤ「そう、考えたんだと思うよ」








柚子「……笑顔の自撮り写真、それ一発で自分の気持ち全てを伝えることにしたってことね」


タツヤ「もちろん、直接控え室まで来て、僕たちに笑顔を見せることも考えただろうけど、休憩中に割り込んできたら迷惑になるって考えたんだろうね」


素良「ほんと、よく気をつかうよ。まだ高校生だってのに……」


タツヤ(……そうだ、まだ高校生の零羅でさえ、こんなに人の気持ちを察することができるんだ)

タツヤ(……頑張らなきゃ! 僕は社会人で、既に素良のマネージャーなんだから……!)








………………………………………………………………




零羅「………」スタスタ

ズァーク『なあ、ほんとに、あの自撮り写真送るだけで良かったのか?』

零羅『……さっきも言ったでしょ。貴重な休憩時間に割り込んで邪魔するわけにもいかないし、長い文章を送れば読むのにも時間がかかる』

零羅『だったら、あれが一番なんだよ』

ズァーク『……まあ、その辺りは零羅の好きにすれば良いと思うがーーー』








零羅(……なーんてこと言ってるうちに、我が家に到着だ)



デデーンッ!



ズァーク『……ああ、もう腹が減ってたまらん。さっそくメシにするぞ!』

零羅『うん、そうだね。パンケーキは無いけど』

ズァーク『ぬおうっ、!?』








零羅「……ただいまーー!」ガチャッ


瑠璃「おかえりなさい、零羅ちゃん! ご飯もお風呂も既にできてるわ」


零羅「ありがとね、瑠璃!」


瑠璃「気にしなくて良いのよ、私は赤馬家の家政婦だもの。当然のことをしているだけなんだから」








零羅「……それでもお礼は言わないと」

零羅「特に今日は、ダイエットのために献立を変えて貰ってるんだから」


瑠璃「……ふふっ、よく味わって食べてね」


零羅「はーい、じゃあ、さっそく頂きます!」

ズァーク『ぬおおっ、メシ! メシ!』


瑠璃「ご飯は手洗いとうがいを済ませてからよ?」


零羅「もちろん、わかっているよ。今から済ませてくるね」スタスタ

零羅「……あっ、それとカバンの中に素良から貰ったお菓子があるから、鍵付き棚の中にしまってくれる?」


零羅(僕が触れると決心が鈍りそうだからね)


瑠璃「わかったわ、しまっておくわね。ダイエットが終わる時までとっておきましょう」

零羅「ありがと、それじゃ手洗いとうがい済ませてくるね」スタスタ








………………………………………………………………




零羅「……そんなこんなで、手洗いうがいが終わったのでーーー」

瑠璃「ご飯にしましょう」

ズァーク『ぬおおっ、メシ! メシ!』

瑠璃「ふふっ、まずは最初にあいさつからーーー」



零羅&ズァーク「「いただきます!」」








零羅「………」パクパク

ズァーク(うおおっ、!!)パクパク


瑠璃「どうかしら、零羅ちゃん? お口に合う?」

零羅「……うん、おいしいよ、瑠璃!」ニコッ

瑠璃「ふふっ、ありがとう。その言葉と笑顔だけでも頑張った甲斐があったわ」

零羅「美味しいものを食べれば、自然と笑顔になるし、そのお礼を言うのは当然だよ」パクパク

瑠璃「……よく噛んで食べてね。その方がダイエットにも良いから」

零羅「うん!」モグモグ

ズァーク『ンマーイ!』モグモグ








零羅「……あっ、そういえば何だけどさ」モグモグ

瑠璃「?」

零羅「次にユート達と会えるのはいつ頃?」モグモグ

瑠璃「……まだわからないわ。プロって基本的に忙しいから……」

零羅「そっか、そうだよね……」ゴクンッ








零羅『……遊矢と素良もそうだけど、プロって本当に大変なんだね』パクパク

ズァーク『……そうだな。プロとはそういうものだ』パクパク


零羅(……みんなと次に会えるのは、いつになるかな。特にジャックとシンジたちには、中学生になって以降は全然会えてないし)

零羅(それに、兄さまや母さま、父さまとも、最近はずっと会ってない……)


零羅(……はあ、また、みんなと会いたいなあ)








瑠璃「……ねえ、零羅ちゃん」

零羅「なあに、瑠璃?」モグモグ

瑠璃「零羅ちゃんもプロになったら、きっと大忙しよ。それでもプロになりたいの?」

零羅「うん、なりたい」モグモグ

瑠璃「どうして?」

零羅「僕のエンタメデュエルを、より多くの人たちに楽しんで貰いたいから」








瑠璃「………」

零羅「昔からの夢なんだ」

零羅「デュエルで誰かを楽しませたい」

零羅「たとえ、笑顔を失うようなことがあっても、また笑顔になれるんだって、デュエルを通して伝えたい」

ズァーク『………』

零羅「物心ついた時にはもう、それを夢見ていたんだ……」








瑠璃「……それが零羅ちゃんの気持ちなのね」

零羅「うん、というか、前にも話したでしょ?」パクパク

瑠璃「……ふふっ、気持ちが変わってないか確認しただけよ」

零羅「……そうなの? あっ、これも美味しい!」モグモグ

瑠璃「ありがと、ふふっ、」








瑠璃「……零羅ちゃんなら、きっとプロになれるわ」

零羅「そう? だったら、嬉しいけど」モグモグ

瑠璃「うん、だって零羅ちゃんは “強い” し、それに…… “若い” 」

ズァーク『………』

瑠璃「強さと若さは、可能性よ。その両方を持っている零羅ちゃんなら、きっとプロになれるわ」

零羅「……ははっ、ありがと、瑠璃。背中を押してくれて」

瑠璃「………」ニコッ








零羅「……ごちそうさま。おいしかったよ、瑠璃!」

ズァーク『実に美味かったぞ。やはり洋子の後任が務まるだけはあるな』

瑠璃「ふふっ、どういたしまして」

瑠璃「……後片付けに入るわね」カチャッカチャッ

零羅「……ふう、今日は色々あったなーーー」ボーッ

瑠璃「……ところで、零羅ちゃん」

零羅「ん、なあに、瑠璃?」

瑠璃「今日の公演は楽しかった?」

零羅「うん、楽しかっーーー」



零羅「あっ、!?」








瑠璃「……そうよね、やっぱりデュエルは、楽しいものよね」

ズァーク『………』

零羅「あっ、えっと、そのーーー」

瑠璃「……気にしなくて良いのよ。私だって、紫雲院さんのデュエルはネットで観ていたんだから」

零羅「………」

瑠璃「私は、あの人たちアカデミアが変わってくれて、本当に嬉しいの」

ズァーク『………』

瑠璃「……だから、お願い。そんなに気をつかわないで、零羅ちゃん」

瑠璃「私だって、デニスさんに紫雲院さんたち、今のアカデミアを応援しているの」

瑠璃「だったら、私たちは同じファン同士……遠慮なんて全然する必要が無いんだから」

零羅「……瑠璃がそれで良いなら」

瑠璃「ええ、大丈夫よ、零羅ちゃん」








瑠璃「……後片付けを再開するわね。零羅ちゃんはお風呂に入って貰えるかしら?」

零羅「……うん、入るね!」

瑠璃「それと、わかってるとは思うけどーーー」

零羅「……わかってるよ」

零羅「…………ズァーク、今からお風呂入るから、僕が起こすまで眠っててね」

ズァーク『ふん、言われるまでも無い……ぐーっ、』スヤスヤ

零羅「……じゃあ、入ってくるねー!」スタスタ








…………………………………………………………………………



キュッキュッ



瑠璃「これで、食器洗い完了、っと……」

瑠璃「後は零羅ちゃんがお風呂から出てからーーー」


瑠璃「………」


瑠璃「………………」


瑠璃「………………………………」








瑠璃(……零羅ちゃんがお風呂の時、いえ正確には服を脱ぐ時、ズァークには眠って貰っている)

瑠璃(零羅ちゃんを通じて聞いたところによると、ズァークは眠るのが得意で、すぐにノンレム睡眠に移れるみたい)

瑠璃(……それが本当だとしても、本当にこのままで良いのかしら)

瑠璃(だって、零羅ちゃんは、お風呂やトイレ……服を脱ぐことが必要な時、必ずズァークに眠るよう指示を出さなきゃいけない)

瑠璃(……それに、零羅ちゃんとズァークは感覚を共有しているという話だから、その……生理的感覚もダイレクトに伝わってしまう)

瑠璃(プライバシーも何もあったものじゃない。本当にこれで良いの?)








瑠璃(……わかってる。ズァークと分離できない以上、仕方のないことだって。それは、零児様や洋子さんだって認めていたこと)

瑠璃(……あの人、融合次元のプロフェッサーに研究させれば、分離させることもできるかもしれない)

瑠璃(そう、2年前、私たちやユートたちを分離させた時のように……)

瑠璃(だけど、あの人は、『これ以上、エクシーズ次元の復興に関わらない研究のために、時間と予算を消費するわけにはいかない』と言っていた。それだけ復興が遅れてしまうから)

瑠璃(……その言葉に対し、私は押し黙ることしかできなかった)

瑠璃(しかも、零児様の話によると、零羅ちゃんは私たちやユートたちと違って、自ら望んで人生を棒に振ったとのことだった)

瑠璃(その零羅ちゃんとエクシーズ次元の復興を天秤にかければ、後者に傾いた。だから、零児様もプロフェッサーもエクシーズ次元の復興を優先した)








瑠璃(……その決定に思うことが無いわけじゃない。だからこうして、また思い返している)

瑠璃(だけど、零羅ちゃんが言うには、ズァークは既に無害で緊急性が無い)

瑠璃(また、身体の支配権は、零羅ちゃんにあるから、ズァークが大それた真似をすることはできない)

瑠璃(何より、零羅ちゃん自身が、ズァークを受け入れている)

瑠璃(なら、私にできることは、家政婦として零羅ちゃんを支えることだけ)

瑠璃(それは、わかってる……わかってるはずなのに……)ギュッ







零羅「……ふう、あったまったーー」ホカホカ


瑠璃「あっ、お風呂終わったのね、零羅ちゃん」


零羅「うん、いつもより早いけど、早くお風呂を終わらせた方がダイエットに良いって聞いたからね」

零羅「短い時間だったけど、良いお湯だった。ありがとね、瑠璃」


瑠璃「……ふふっ、それは何よりだわ」


零羅「ははっ、とりあえず部屋に戻って、塾の課題片付けちゃうね」


瑠璃「学校の課題も忘れないでね?」


零羅「そっちは、今のところ全部片付いているから大丈夫だよ」


瑠璃「あら、流石ね、零羅ちゃん」








零羅「当たり前だよ、このくらいーーー」

零羅「ーーーあっ、もう起きて良いよ、ズァーク」

ズァーク『……ん、もう風呂は終わりか』フワアーッ

零羅「そうだよ。ゴメンね、起こすの忘れてた」

ズァーク『……ふん、甘いもの断ちなどして、糖分の供給を減らすからそうなるのだ』

ズァーク『よって、これよりパンケーキを解禁ーーー』

零羅「いや、これは単純に忘れてただけで、糖分関係ないと思うよ?」

ズァーク『ぬうっ、!!』








零羅「起こし忘れることは、これまでにもあったからね。服を脱ぐ際、ズァークに眠ってもらうようになってから、ずっと……」

ズァーク『……人間なのだ。つまらんミスを重ねることもある』

ズァーク『それよりも、お前は時々、俺を眠らせないで着替えようとすることがある。そっちの方が問題だ』

零羅「…………ああー、確かに、そういう時もあるね」

ズァーク『相手が俺とはいえ、年頃の娘がやすやすと身体を見せるものではないぞ? 高校生になった今なら、なおのことだ』

零羅「……んー、今更ズァークに見られたところで、僕は恥ずかしくも何ともないけどね。気にしてるのは主にズァークだし」

ズァーク『な、何を抜かすか! 俺は赤馬零児たちの気持ちを汲んで、ああしているに過ぎん! 俺がお前の身体を気にするなど……!』カアアッ

零羅「……はあ、ほんとウブだなあ。自称48歳のくせに、恋愛経験ゼロの16歳よりウブとかどういうことなの……」

ズァーク『う、うるさい! 俺は硬派なだけだ! 断じてウブなどではない!』








瑠璃(……また、ズァークと話してる)

瑠璃(……私にはズァークの声は聞こえないけど、零羅ちゃんの発言から察するにーーーー今のズァークには本当に邪な気持ちが無いのね)

瑠璃(……信じて良いのよね)


零羅「ははっ、ねえ、瑠璃もズァークがウブだって思わーーー」


瑠璃「…………」


零羅「……あっ、ごめん、瑠璃。意味わかんないよね」

ズァーク『………っ、』

零羅「……また、やっちゃった」








瑠璃「……気にしないで、零羅ちゃん」


零羅「えっ、でも、勝手に話の流れを止めちゃったし。いや、それ以前に洗い物の邪魔をーーー」


瑠璃「良いのよ、大事な話があるわけじゃないし、洗い物も、もう終わったところだから」

瑠璃「だから、気にしないで」


零羅「……部屋に戻るね」ペコッ



スタスタ………









瑠璃「………」


瑠璃(……受け入れなきゃ)


瑠璃(そうよ、私は零羅ちゃんの中に、ズァークがいることを受け入れる)


瑠璃(それが真実。なら、受け入れなきゃーーー)


瑠璃(でなきゃ、壊れるのはーーー)








…………………………………………………………………………



カキカキカキ………



零羅「……ふう、今日はこのくらいで良いかな」カタッ

零羅「また明日、気づいたことを箇条書きにして、まとめないと……」

ズァーク『………ふん、この程度のことしか気づけないとは、まだまだだな』

零羅「えっ、そう? 割と多くのことに気づけたと思うんだけど」

ズァーク『俺は今日、もっと多くのことに気づいたし、もっと多くのことを書ける』

ズァーク『零羅、やはり、お前はまだまだだな』

零羅「……そっか」

ズァーク『………』

零羅「……つまり、今のダイエット中の僕とそれ以前の僕に、思考能力の差は無いってことだね」

ズァーク『!?』








零羅「だって、もしダイエットで思考能力が落ちているのなら、僕が気づけた部分は今よりも遥かに少ないはずだよ」

ズァーク『………!』

零羅「そして、ズァークほどのデュエリストなら、普段の僕がどのくらいところまで気付けるか、見当がついているはずだ」

零羅「なのに、ズァークは今回、ダイエットによる思考能力の低下について話さなかった」

零羅「それって、つまり、僕の思考能力は落ちてないってことだよね?」








ズァーク『……本当に捻くれた考え方をするようになったものだ。昔とは大違いだ』

零羅「ははっ、褒め言葉と受け取っておくよ」

ズァーク『………』

零羅「とにかく、これでダイエットを中止する意味は無さそうだね」

零羅「パンケーキはしばらく後。我慢してね、ズァーク」

ズァーク『……ぬうっ、』








零羅「……それに、どんなにズァークが誘惑したところで、僕はダイエットをやめない」

零羅「もちろん、アクションカードの使用も、ね」

ズァーク『………!』

零羅「わかっているよ」

零羅「ズァークが僕にダイエットをやめさせようとするのは、体重の増加でアクションカードを取りづらくなったことを口実に、アクションカードの使用をやめさせるためだ」

零羅「もちろん、パンケーキを食べたいということも嘘じゃないだろうけどさ。一番の理由はアクションカードの使用をやめさせるため、違う?」








ズァーク『………』

零羅「ズァークがアクションカードを否定する理屈はわかる」

零羅「アクションカードには、デメリットカードだって混じっているんだからね。それを思えば、使うのをやめさせたいと思うのも無理は無い」

ズァーク『……だが、零羅はアクションカードを使うのをやめる気がない』

零羅「うん、そうだね」

ズァーク『………………』

零羅「さっきも言った通り、アクションカードにはデメリットカードも混じっている」

零羅「つまり、何が出るか本当にわからないんだ」

零羅「自分を有利にするどころか、かえって不利にするかもしれない」

零羅「だからこそ、僕は、アクションカードを面白く思うし、拾いたくなるんだ」








ズァーク『………』

零羅「ズァークにとって、デュエルとは、既に定まったデッキ同士で戦うものなのかもしれない」

零羅「お互いに万全を期して、確実に勝つよう心掛けるものなのかもしれない」

零羅「だけど、僕が求めるデュエルは、そうじゃない」

零羅「既に定まったデッキだけでなく、アクションカードをも駆使して戦うものなんだ」

零羅「何が出るかわからない……そんな刹那の楽しみに身を浸らせて戦う。それが僕にとってのデュエルなんだ」

零羅「だから僕はアクションカードの使用をやめない」

零羅「そして、そんなアクションカードを取り合うことが面白くて仕方がないんだよ」

ズァーク『………………』

零羅「……僕の価値観は、ズァークには認めがたいものなのかもしれない」

零羅「だけど、いつか必ず、僕の求めるデュエルを認めさせてみせる」

零羅「その時を楽しみにしててよ、ズァーク」








ズァーク『……ふん、お菓子を前に我を失いかけた奴が大層なことを抜かすものだ』

零羅「あ、あれは、ちょっと混乱しただけだから! もう大丈夫だから!」アセアセ

ズァーク『そうかそうか、ちなみにお菓子やパンケーキはいつでもお前を待っているからな』

零羅「食べませーん! 僕には朝昼晩、瑠璃のダイエット料理があるんでーす!」

ズァーク『……ダイエットも、アクションカードの使用もやめる気は無いか』

零羅「やめませーん! それが僕だから!」

ズァーク『……そうか、それが零羅の『自分』か』

零羅「そうだよ! そう言ってるじゃないか!」

ズァーク『なら、せいぜい貫いてみせることだな』

ズァーク『それができるかどうかで、零羅の未来も変わってくるだろう』








零羅「……言われなくても、貫いてみせるよーだ!」

ズァーク『ふん、ならいいがな……』

零羅「……はあ、今日は疲れちゃったよ、歯磨きしたら寝ることにするよ」トボトボ

ズァーク『おう、そうしろそうしろ。早寝早起き、規則正しい生活はデュエリストには必須だからな』

零羅「………」トボトボ








…………………………………………………………………………




零羅「……瑠璃にもおやすみの挨拶はしたし、後は寝るだけだ」フワアーッ

ズァーク『少し早いが、このくらいなら生活リズムに大した影響は無い。寝るか』

零羅「……ねえ、ズァーク。少しだけ良いかな?」

ズァーク『……なんだ?』



零羅「なんで、ズァークは僕に取り憑いているの?」








ズァーク『………』

零羅「僕はもう高校生なんだよ。精神も身体も、一概には子供と言えない年齢だ」

零羅「……そろそろ、教えてくれても良いんじゃないかな?」

ズァーク『………』

零羅「……ズァーク」








ズァーク『……なあ、零羅』

零羅「……なあに、ズァーク?」

ズァーク『エクシーズ次元は好きか?』

零羅「……なに言ってるの? 話を逸らさないでーーー」

ズァーク『大事なことだ。答えてくれ』

零羅「……好きに決まってるじゃないか。瑠璃たちの故郷だよ? アレンとサヤカだっているんだよ?」

ズァーク『……そうか』

零羅「……これで良い? なら、教えーーー」

ズァーク『シンクロ次元は好きか?』

零羅「………」

ズァーク『………』

零羅「……好きに決まってるよ。ジャックとシンジたちがいるもの」








ズァーク『……なら、融合次元とこのペンデュラム次元はどうだ?』

零羅「好きに決まってるじゃないか!」

零羅「……兄さま、母さま、父さま、洋子さん、瑠璃、遊矢、柚子、アユ、タツヤ、フトシ、素良、デニス、遊勝さん、修造さん、明日香、カイト、月影、セレナ、黒咲、ユート、沢渡、勝鬨、BB…………」

零羅「そう、家族と友達がいるんだ……好き以外の答えなんてないじゃないか」

ズァーク『……そうか』

零羅「もう良いよね? だったら、本当のことをーーー」

ズァーク『言うことはできんな』

零羅「なっーーー!」

ズァーク『やはり、お前に本当のことを教えるわけにはいかん』








零羅「……なんでさ、意味がわからないよ」

ズァーク『………』

零羅「……どうして、ズァークや兄さま達は、本当の理由を教えてくれないの?」

ズァーク『……その質問になら答えてやっても良い』

零羅「!」

ズァーク『そもそも、お前だって本当のことを話せない理由くらい、薄々わかっているんじゃないのか?』

零羅「……っ、!?」

ズァーク『……やはりそうか』

零羅「そ、それは……っ、!!」

ズァーク『……そうだ、お前に真実を受け入れる覚悟が無いからだ』








零羅「………っ、!!」

ズァーク『覚悟のいらぬ話ならば、とうに話している』

ズァーク『だが、俺たちは話そうとはしない。つまり、それほどまでに、受け入れるには覚悟のいる話だということだ』

ズァーク『そのくらい、お前なら分析できているはずだ』

零羅「……」

ズァーク『……それを受け入れる覚悟を、お前は本当に決めることができるのか?』








零羅「そ、それは……」

ズァーク『……覚悟の無い奴が、本当のことを知ったところで壊れるだけだ』

ズァーク『だから、俺たちは今のお前に、本当のことを教えることができないんだ』

零羅「………っ、」

ズァーク『……わかったら早く寝ろ。起きているだけでは、強い覚悟は決められん』

零羅「……わかったよ、ゴメンね。ワガママ言って」

ズァーク『………』

零羅「……おやすみ、ズァーク」

ズァーク『ああ、おやすみだ、零羅……』



パチンッ








…………………………………………………………………………




ズァーク(……なぜ、俺や赤馬零児たちが、零羅に本当のことを話すことができないのか?)

ズァーク(それは、本当のことを話せば、『かつて零羅が』『4つの次元に対し』『何をするつもりだったのか』、思い出してしまうかもしれないからだ)


ズァーク(そうなれば、零羅は己を責め続け、心を壊してしまうかもしれない)


ズァーク(もちろん、全ての元凶は俺だ。零羅を唆したのは、あの小娘だ)


ズァーク(それでも、零羅は己を責め続ける。この子はそういう子だ)

ズァーク(だが、零羅が己を責め続けるなど、誰も望まない。望むはずがない)

ズァーク(だから、俺や赤馬零児たちは、零羅に本当のことを教えることができないのだ)








ズァーク『………』チラッ

零羅「ーーーーーーーーー」


ズァーク(……眠ったか)


ズァーク『……さっきはキツイこと言ってしまったな。それで、お前を突き放しもした』

零羅「ーーーーーーーーー」

ズァーク『……その詫びと言ってはなんだが、少しだけ昔話をしてやる』








ズァーク『……かつて、二人の人間がいた』


ズァーク『……その二人には、『自分』が無かった。それゆえに、『自分』を信じることができなかった』


ズァーク『できたのは、せいぜい他者を信じ、傀儡となることだけだった』


ズァーク『だが、自分でさえ信じられない者に、他者を信じ続けることなどできるはずがなかった』


ズァーク『信じるべき相手かどうか、判断するのは、結局のところ自分だ』


ズァーク『その自分を信じられないのでは、他者を信じようとしたところでボロが出るに決まってる』


ズァーク『そうして、他者の傀儡であることすら放棄しはじめた』








ズァーク『……そんなある日、ある声が囁いてきた』


ズァーク『それは、己にしか聞こえない、“特別な声” だった』


ズァーク『二人の人間は、それぞれの “特別な声” に運命を感じた』


ズァーク『今までの他者とは違う、特別な存在だ、そんな存在であれば従う意味がある……』


ズァーク『そう感じた結果、“特別な声” に導かれるまま、行動すること決めた』


ズァーク『そして、その声のためなら、なんだってする気でいた』


ズァーク『たとえ、いまある世界を滅ぼすことだってーーーーーー』








ズァーク『ーーー結局、二人の人間の行為は、どちらも失敗した』


ズァーク『片方は未遂で終わり、もう片方は結果的に世界を滅ぼせたものの、新たな世界が創生されて、自身が封印されるに至った』


ズァーク『まあ、後者は封印を解いた後、もう一度世界を滅ぼすために暴れまわって、その結果改めて封印されることになったのだがな』


ズァーク『それで、封印されたそいつは、ある日を境に世界を滅ぼすことをやめた』


ズァーク『それは、 “特別な声” の持ち主たちが、一人の人間の元でデュエルしている様を見たからだ』


ズァーク『封印されたそいつでは、到底できない、楽しいデュエルを、な』


ズァーク『 “特別な声” の持ち主たちは、新たな主人と心を通わせ、心の底から、そのデュエルを楽しんでいたんだ』








ズァーク『……元主人は、一人だけ取り残された』


ズァーク『そして、その時、はじめて『自分』が空っぽであることに気づいた』


ズァーク『最後の最後まで、誰かの声に縋ることしかできなかった、哀れな人間であることに気づかされたんだ』


ズァーク『……だが、そんな奴でも、できることもあると気づいた』


ズァーク『……それは、もう二度と、過ちを繰り返えさせないことだ』








ズァーク『……そいつ自身が過ちを繰り返すことは無い。繰り返そうにも、そいつは身動きの取れない状態にあるからな』


ズァーク『だが、そいつのそばにいた奴は違う』


ズァーク『……『自分』を持たないもう一人は違う』


ズァーク『もう一人の方は、自由だった。人生をやり直すことが可能だった』


ズァーク『それで、思ったのだ。せめて、そのもう一人には、過ちを繰り返して欲しくは無いと』


ズァーク『そのために生きることこそが、自分にできる唯一のこと、そう思った』


ズァーク『それが、そいつがはじめて定めることのできた『自分』だった』


ズァーク『だからこそ、空っぽだったという真実を受け入れ、前に進むことができたんだ』








ズァーク『ーーー長々と述べたが、結論はこうだ』


ズァーク『ーーー必ず『自分』を持ち続けろ。そして、決して忘れるな』


零羅「ーーーーーーーーー」


ズァーク『……その二人のようにはなるな、零羅』


ズァーク『お前は、俺と違って、帰る場所があるのだからな……』








零羅「……違う」

ズァーク 『!』

零羅「そうじゃない……そうじゃないよ、ズァーク……」ムニャムニャ

ズァーク『寝言か……驚かせてくれる』

零羅「ズァーク……ズァーク……」

ズァーク『まったく、どんな夢をーーー』

零羅「ズァークには、僕がいるから……」








ズァーク『なっーーー』

零羅「僕がズァークの帰る場所で、ズァークが僕の居場所ーーー」

零羅「ーーー僕らが、僕らの世界なんだ」

ズァーク『零羅、何を言って……』

零羅「いやだいやだ、そうじゃなきゃ、いやだ……」








ズァーク『!?』

零羅「……君だけは本当のことを言ってよ、僕を一人にしないで、そんなの嫌……」

ズァーク『……違う! お前は一人なんかじゃーーー』

零羅「……聞こえるのは、僕一人だけ……!」

ズァーク『!』

零羅「寂しいよ、ズァーク……!」グスッ








ズァーク『ーーーーっ、!!』


零羅「ズァーク、ズァーク……っ、」


ズァーク『……そうだな』

ズァーク『お前には、他者には聞こえない声が聞こえるんだからな……』

ズァーク『……そんな自分が、怖くて不安で仕方がない……』



ズァーク『寂しいに、決まってるよなあっ、!』








零羅「ズァーク……っ、」ヒッグ


ズァーク(……零羅をこうしたのは誰だ?)

ズァーク(言うまでもない……俺だ)グッ


零羅「………っ、」ギュッ


ズァーク(……なら、俺がやることはーーーーーー)








…………………………………………………………………………




チュンチュン……



零羅「う、うう~~ん……」



ジリジリ! ジリジリ!



零羅「……っ、」ピッ








零羅「……ふわあ~~、よく寝た~~」ムクッ

ズァーク『……起きたか、零羅』

零羅「……ん、おはよう、ズァーク。僕が起こす前から起きてるなんて珍しいね」

ズァーク『………』


零羅「……黙っちゃって、どうかしたの?」


ズァーク『……起きたばかりで悪いが、お前に話がある』








零羅「……なあに、話って?」

ズァーク『俺は3つ、お前に伝えなきゃならないことがある』

零羅「………?」

ズァーク『まずは、一つ目だ』

ズァーク『……昨夜は突き放すようなことを言って悪かった』

零羅「!?」

ズァーク『……本当のことはまだ話せないが、それでも言い方というものがあった』

ズァーク『本当に悪かった……』

零羅「ズァーク……そんな、僕は別にーーー」








ズァーク『……そして、二つ目』

零羅「………」

ズァーク『……お前は一人じゃない』

零羅「………!」

ズァーク『お前には家族がいるし、友達がいる』

ズァーク『みんな、お前が大好きなんだ。本当のことを話さないのは、お前に壊れて欲しくないからだ』

ズァーク『それだけお前のことを大切に思っているからなんだ』


ズァーク『それをどうか、わかって欲しい』








零羅「ズァーク……」


ズァーク『そして、三つ目』


ズァーク『……何があろうと俺たちは一緒だ』


零羅「!!」


ズァーク『……もし、分離することがあったとしても、俺は必ずお前の側にいる』

ズァーク『お前が嫌がろうと変わらず取り憑いてやる』



ズァーク『だから、何があろうと俺たちは一緒なんだ。覚えておけ』








零羅「…………」

ズァーク『……話はそれだけだ。悪かったな、時間を取らせて』

零羅「……悪くなんてないよ」

ズァーク『!』

零羅「ありがとう、ズァーク。僕を想ってくれて……」

ズァーク『……礼を言われるようなことでもないと思うがな』

零羅「何言ってるの、嬉しい気持ちにしてくれたら、お礼を言うのは当然だよ」

ズァーク『………ふん』プイッ


零羅「……いやー、それにしても、まさか、ズァークからプロポーズされるなんてねー」







ズァーク『ぷ、ぷろぽ……っっ、?!!』

零羅「だって、さっき、ズァークは、異性の僕とずっと一緒にいる宣言したわけじゃん」

ズァーク『!』

零羅「それって、つまり、そういうことじゃーーー」

ズァーク『ち、ちがわい! 誰がお前のようなガキと……!』カアアッ

零羅「あはは、冗談だよ」

ズァーク『なっ……!!』

零羅「いや、ズァークが僕をそういう対象として見ていないことくらいわかってるからね?」

零羅「なのに、そんなに照れるだなんて、ズァークって本当にウブだねー」








ズァーク『~~~~っ、零羅! お前ーーー!』

零羅「でも、さっきの言葉を嬉しく思ったのは事実だし、お礼を言いたかったのも事実だよ」

零羅「本当にありがとう、ズァーク」

ズァーク『~~っ、ふん! 本当に捻くれたガキだ! まったく、なんでこんな風になってしまったんだか……!』

零羅「ウブな反面教師がいるからじゃない?」

ズァーク『ああっ!?』

零羅「それよりも、ほら、今日の朝食のことでも考えようよ。きっと美味しいよ」

ズァーク『……うおおっ、そうだった!』

零羅「ほんと、今日の朝ご飯はどんな味がするんだろうねー? 今から楽しみだよ♪」








零羅(……僕の名前は赤馬零羅。どこにでもいる普通の女子高生だ)

零羅(もし、普通と違うところがあるとすればーーーーーー)



ズァーク『うおおっ! メシ! メシ! メシ!』



零羅(……かなりボケまくりの幽霊に取り憑かれているってとこかな?)








零羅「……とりあえず今から制服に着替えるから、一回眠ってね?」

ズァーク『ん? ……ああ、すまん。それじゃおやすみ……ぐぐーっ!』スヤスヤ

零羅「……ほんと眠るの早いよね。取り憑く前は、スリープが基本なナマケモノ生活でもしてたのかな?」

ズァーク『ぐぐーっ、ぐがーっ、』スヤスヤ

零羅「……完全に寝ちゃってるね。まあ、いつものことだけど……」








零羅「……ねえ、ズァーク」

ズァーク『ぐごーっ、ぐがーっ、』

零羅「僕はズァークがいつ眠っても起きても、それを受け入れるよ」

ズァーク『ぐがーっ、ぐぐーっ、』

零羅「……着替える時でも、お風呂の時でも…………たとえ、どんなことをしている時であっても、起きてくれて構わない」



零羅「僕はそれを受け入れる」








ズァーク『………』


零羅「……なぜなら、僕がズァークの帰る場所で、ズァークが僕の居場所なんだからーーー」


零羅「ーーーそう、僕らが、僕らの世界なんだ」


零羅「だったら、お互い変な気をつかう必要は無い。そうでしょ?」


ズァーク『………………』








零羅「だからーーーね、?」スッ


ズァーク『………………………』






零羅「……ずっと一緒だよ、ズァーク」ニコッ


ズァーク『……ぐーっ、』



以上で完結です。

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