※まほチョビ要素があります。
※西住母娘がぽんこつです。
※常夫さんはずっと半笑いです。
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まほ「お母様は、アンツィオのドゥーチェアンチョビを御存知ですか?」
しほ「スカウトされてから三年でアンツィオの戦車道を立て直した」
しほ「辣腕で知られる安斎千代美さんですね。知っていますよ」
まほ「はい。自身も優秀な選手であるにもかかわらず」
まほ「ひたすら後進と自らの信じる戦車道そのものの為に身を捧げた」
まほ「尊敬すべき人物です」
しほ「そうね。それで?」
まほ「しかしもう十分でしょう」
まほ「安斎もこれからは自らが輝くために教導される立場に戻るべきです」
まほ「お母様、ぜひ西住流の名の推薦でもって安斎を私と同じドイツの大学に留学させて欲しいのです」
しほ「……まぁ、話の前半は理解できましたが」
しほ「なぜアンツィオの生徒をドイツの大学に?」
しほ「そもそもそれは安斎さんの希望した進学先なのですか?」
まほ「さっきも言った通り安斎は後輩を導いてきましたが」
まほ「同学年のライバルと切磋琢磨する機会には恵まれませんでした」
まほ「私は……私なら安斎に良い刺激を与えられる好敵手たりうると」
まほ「そしてまた安斎によって刺激を受けることができると思っています」
しほ「それは、きちんとした場所に進学したら他にいくらでも友達くらい」
まほ「安斎に同学年の友達なんていません。私と一緒です」
しほ(えー……)
まほ「安斎はアンツィオ戦車道唯一の三年生」
まほ「良い後輩たちに恵まれても背中を預け合える相手のいない孤独には苛まれていたはずです」
まほ「私は、私自身が安斎の……初めての、友になりたいのです」
しほ(戦車道にいないだけで普通はクラスメイトにいくらでも友達が居ると思いますが)
まほ「白状します。私が、安斎の友達になってやりたいのです」
まほ「他の誰かじゃなくて、私が……」
しほ(あ、そう言えば昔……)
しぽりん『その、常夫さん。お互い初めてのこととは存じますが///』
しぽりん『お、女から切り出すなんてはしたないとお思いにならないで///』
しぽりん『でも、あなたは気づいていないかもしれないけれど』
しぽりん『貴方は本当に格好良くて……///』
しぽりん『いつか、他の女の子も貴方の魅力に気づいてしまったらと思うと気が気でなくて///』
常夫『…………』
しほ(今にして思うと単に当時はフリーだっただけね常夫さん)
しほ(普通にリードしてもらったし普通にモテてたし)
しほ「そもそも安斎さんの了解はとっているのですか」
まほ「いえ、それはまだ。打診すらしていない状態です」
しほ「なら駄目ではないですか」
まほ「まずは空手形にならないようにお母様との約束を取り付けようかと」
しほ「出した手形が無駄になる心配はしないのですか」
まほ「はい?」
しほ(そういえば……)
しぽりん『此方から告白しておいてお家の事情でなかったことにならない様』
しぽりん『家族にはあらかじめ婚約のうまを告げておきました///』
常夫『…………』
しほ「若いって怖いわね」
まほ「は……?」
しほ「なんでもありません」
しほ「まぁ、成績優秀な戦車道の選手に推薦を与えること自体は問題ではありません」
しほ「安斎さんの実力がそれに見合わないとも言いません、が」
しほ「彼女はドイツ語ができるのですか」
しほ「気軽に留学といってもそこは異国の地」
しほ「その国の言語に達者でも日本とは違う文化、風習によって受けるストレスは大抵のものではありません」
しほ「言語など前提条件のようなものです」
しほ「彼女にそこまでの苦労を強いてまで得られるものがあると思いますか」
まほ「確かに、その不安はあります。私に、安斎を守り抜くことができるのか」
まほ「正直言えば私自身が、生まれ育った国を離れることに怯えてもいます」
まほ「ですがだからこそ、安斎の存在は私を奮い立たせる勇気になってくれると思います」
まほ「そして艱難辛苦を共に乗り越えるべく手を取りあえると信じています」
しほ(まずあなたが連れていかなければ彼女に艱難辛苦は訪れないのだけど)
しぽりん『西住流は長く続く戦車道の大家』
しぽりん『きっと常夫さんが今まで経験したことの無いような世界でしょう』
しぽりん『ですが、貴方ならきっと、如何なる試練も乗り越えて共に歩んでくれると///』
しぽりん『そう……/// 信じています……///』
常夫『…………』
しほ(初回のデートで言う台詞じゃなかったわね)
まほ「その為には……ルームシェアをしようかなと」
しほ「同居ですか」
まほ「ど……! 同棲!? そ、そういうつもりは……」
しほ(同居って言ったんだけど)
まほ「一般的に内縁関係の男女や法律で結婚を認められない人たちの事実婚ともとらえられがちですが」
まほ「ルームシェアは世界的には学生の居住形態として一般的でして」
まほ「まぁ最近では同棲にまで至らないソフトな文学的表現として扱われることはありますが……///」
しほ(そうなんだ)
しほ「……まほ、貴方は跡継ぎの事をどう考えていますか」
まほ「え?」
しほ(考えたこともないって顔してるわ)
まほ「あ、跡継ぎ……ですか///」
まほ「も、もちろん、お母様が私とそう変わらない年で私を授かったことは知っています///」
まほ「で、ですが……/// 今のところ私には相手もいませんし……///」
まほ「幸い身体的には健康ですし……も、もう少し長い目でお待ちいただければと///」
しほ(あら、ちゃんと男性と添うことは考えてるのね)
しほ(私の勘違いだったかしら)
まほ「こほん、それにいざとなれば養子という手もありますし」
しほ「今からそんなことでどうしますか全く」
しほ「別に急かしているわけではありませんよ」
まほ「養子……」
まほ「安斎を、私と養子縁組する……?」
まほ「西住……千代美……! いけるぞ安斎……いや、千代美?」
しぽりん『その……貴方もいずれは「西住さん」になるのですから///』
しぽりん『どうか……しほ、と呼んでください……///』
常夫『…………』
しほ(二回目のデートで言う台詞じゃなかったわね)
しほ「すこし話を戻しましょうか」
しほ「アンツィオのドゥーチェアンチョビ、ええ、良く知っています」
しほ「一から戦車道を立ち上げるためにまず後進に戦車道を楽しむことを教えた」
しほ「それこそ、戦車道には切っても切り離せぬ勝負事としての一面」
しほ「自らの勝利の喜びを据え置いてでも」
しほ「まったく高校生離れした精神性だと言えるでしょう」
しほ「ですがそれだけに」
しほ「モチベーションがあるものを集め鍛え上げ、統計的な勝利に喜びを見出す」
しほ「戦車道の一面を煮詰めた存在である西住流とは、かけはなれています」
しほ「どちらが正しいというのではありません。どちらもまた戦車道なのです」
しほ「しかし道は、時に交わり、時に並ぶこともありますが」
しほ「平行線をたどり、あるいはまったくの逆を向くこともあるでしょう」
しほ「そしてまほ、貴方は、自分でも言っていましたが」
しほ「客観的に見ても、西住流そのものであり、それが一番無理のない」
しほ「貴方の自然体でもあるように見えます」
しほ「安斎さんもまた確固たる意志で自らの戦車道を歩む人」
しほ「貴方たちの道は必ずしも二人で歩ける道ではないかもしれませんよ」
まほ「……」
しほ「……」
まほ「……あ、じゃあ、安斎は戦車道しなくていいです」
しほ「えぇ……(ドン引き)」
まほ「ただ、ただ私の傍にいてくれるだけでいいです」
しほ(助けて常夫さんこの子嫌なとこばっかり私に似る!)
しぽりん『じゃあ常夫さんは働かなくていいです』
しぽりん『西住流家元として私の収入は十分ですし』
しぽりん『無理に男性は家を支えるという固定観念に縛られることもありません』
しぽりん『常夫さんは私だけを、ずっと傍で……支えてくれれば///』
常夫『…………』
まほ退出 障子越し
しほ(撃てば必中)
まほ「そうと決まれば早速安斎に話をしてみよう」
しぽりん『避妊? していませんよ』
しほ(守りは固く)
まほ「戦車道推薦がないのならまずは当事者である安斎と話すべきだしな」
しぽりん『貴方との子供に決まっているでしょう! いじわる!』
しほ(進む姿に乱れ無し)
まほ「どう切り出したものか……まず率直に要件を伝えればいいか。お前が必要だと」
まほ「そしてその後何故そうなのかを箇条書きにして説明しよう……流石に恥ずかしいが、問題ない」
しぽりん『だって家元補佐としての仕事が始まると忙しくなってしまうし、子供を作るなら今のうちと思って』
しぽりん『戦車道の家元だけあって女系が続く家です。心配しなくてもそこに理解はありますわ』
しほ(鉄の掟、鋼の心)
まほ「西住流に逃げるという選択肢はない……よし、送信するぞ!」
しぽりん『それでその……やっぱり跡継ぎというのなら二人は欲しいです……/// よ、ね?』
しほ(それが西住流……)
しほ(メールは阻止して一先ずは落ち着かせましたが)
しほ(あの分では暴走は止められないでしょうね)
しほ(まぁ、話を聞く限り人格者ですしあまり無碍にフリはしないでしょう)
しほ(……むしろ適当に話を合わせながら徐々に方向修正を図ろうとして)
しほ(……結局妙なエネルギッシュさに負けて流される、なんてこと)
しほ(…………)
しほ「常夫さん、大事な話があります」
しほ「常夫さんは……私と結婚したことを……後悔、したことはありますか……?」
常夫「…………」
常夫「…………」
以上です。お目汚し失礼しました。
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