安部菜々「足跡」 (27)


性描写があります


ガラスの靴を履いても、それが変わることはなかった


私は今、ウサミン星にいます。……いえ、地球外じゃないですよ? どこにでもある千葉県のアパートですよ。

テーブルの上には、ガスコンロと、その上の鍋料理と、お酒類の空き缶が所狭しとおかれています。

今日は、私とプロデューサーさんの、二人っきりのパーティの日なんです。「豪華なものもいいですけど、プロデューサーさんと慎ましいお祝いがしたいです」と、誘ったのは私でした。

「いやぁおめでとうございます! 本ッ当におめでとうございます!」

プロデューサーさんから、もう何回目かも分からない「おめでとう」を受け取りました。私は「ありがとうございます」と返して、嬉しさをビールと一緒に飲み込みました。ああ、美味しい。数ヶ月のお酒の味に、やみつきになってしまいそうです。

……本当は、人がいる前では飲まないようにしているんですけどね。でも、今私の目の前にいるのはプロデューサーさんだけですし、もう私のことなんか十分知られていますし、今さら私達の間で気にすることなんかないでしょう


宴もたけなわ、そろそろ鍋の中身もなくなりそうな、そんなところで

「あ、プロデューサーさんちょっとちょっと」

私は立ち上がり、台所へと向かいます。プロデューサーさんは箸を止め、私の方を見ていました。そんなプロデューサーさんに見せつけるように、新しいグラスを二つと、そしてお高めのワインボトルを手に取ります

「奮発したんですよ~」

「おお!」

グラスを二つ並べておき、私はプロデューサーさんの隣に座りました。コルクスクリューを持ってき忘れたのでもう一度台所まで戻りました。それから座り直します

並んだグラスに、同じくらいの分だけワインを注ぎます。並んで座った私達は、それを持ち上げ

「何回目かは分かりませんけど」

コツンと合わせ高い音を鳴らして、乾杯をしました

「……美味い」

「いや……本当に美味しいですね……奮発した甲斐がありました……」

私達はちびちびとワインを飲んでいきます。貧乏性ですかね、普段慣れない味で、一気に飲むのはもったいないと思ってしまうのでしょうか。ボトルにはまだまだ残っているというのに

さっきまでとは打って変わって、静かな空気が私達の間に流れます。

「菜々さん」

口元にグラスをやったままで、私の方を一切見ないまま、プロデューサーさんは私の名前を呼びました。

「俺、菜々さんをスカウト出来て、本当に良かったです」

しみじみと、絞り出すようにプロデューサーさんは言いました。耳が朱くなっているのは、お酒の所為なのでしょうか

「プロデューサーさん……」

その言葉を聞いて、目頭が熱くなりました。今までのことを思い返してしまって、胸の奥がきゅうと締め付けられるような感覚を覚えます。グラスを持った手が、ワインの冷たさでは足りないくらいに熱くなります。さっきまでプロデューサーさんに向けていた顔を、不意に背けてしまいました。

「急に変なことを言ってごめんなさい。でも、こういうときじゃないと、言えないような気がして」

ワイングラスを置く音が、遠くで聞こえた気がしました


私は味わう間もなく一気にワインを飲み干して、同じようにグラスを隣に置きます

「……私もです」

いつもは飲まないお酒の力を借りて、いつも思ってることを言っていきます

「私も、プロデューサーさんと出会えて、スカウトして貰って、本当に嬉しくて、感謝していますから」

スカウトしてくれたこと、最初のファンになってくれたこと、ずっと側にいてくれたこと。

私にガラスの靴を履かせてくれたこと。

まとめきれないくらいにあふれ出る思いを、私は数十文字に詰めて、隣の人に届けます

届ける合間に、私は少し涙を溢してしまいました


火の止まったガスコンロは、もう冷め切ってました。……しんみりした空気になっちゃいましたね。でも、気まずくなんかなかったです。何年も積み重ねていた思いを、ようやく届けられたんですから

ああ、でもまだですね。私の思いは「感謝」だけではないですから。ずっと一緒にいて、積み重なっている想いなんて、私の中には他にもあるのです。私がガラスの靴を履くまでに、出来上がっていた想い。それは、私達がアイドルとプロデューサーと言う関係では、許されないものあるのですが

私は、視界の端にあるプロデューサーさんの手を掴みました。

「……?」

そのままプロデューサーさんの方にすり寄って、近づいて、ゆっくりと押し倒しました

横向きに倒れたプロデューサーさんの上に、馬乗りになる形。

そんな彼の耳元で、私は、思いをぶちまけました。今だけは、二人っきりの今だけは、アイドルでもウサミンでもない、「安部菜々」として扱って欲しいと。

男と女として、今晩だけはいさせて欲しいと。

プロデューサーさんは、そんなアイドル失格な私のお願いを、腕を伸ばし抱き締める形で応えてくれました。

日付は、いつの間にか変わっていました。

今回はここまでです、続きは後日

次回から性描写が本格的に入ります

再開します


◆◇◆

菜々さんの顔が、照明の逆光でよく見えない。見えないそれを確かめるように、俺は手を伸ばし、抱き寄せる

抱き寄せた体は、小さくて、小さくて。この小さな体で今まで来たんだなぁと、他人事のように頭の隅で思考した。それから今度は、自分の顔を近づけるようにする。

「んっ……」

口づけを交わし合う。ブドウの酸っぱいにおいと、菜々さんのにおいが混じり合って、自分の中に入り込む。全部を取り込もうとして、もっと欲しくなる。

「んぁっ、プロデューサーさ、んっ」

更に力強く抱き締めて、更に菜々さんを求める。たまらず菜々さんを抱きかかえながら、自分の体を起こした。照明に照らされた菜々さんの顔は、ワインの色よりも真っ赤になっていた。視界の端でそれを捕らえながら、菜々さんの口内を貪る。

「……っぁ」

顔を離し、菜々さんを見つめる。頬は上気し、息は上がっていて、目は蕩けていてどこを見ているのか分からない。

初めて見せられたその表情に、心を奪われた。

背中へ手を回し、抱き寄せる。抱き締めると、菜々さんの胸が俺の体で押しつぶされた感触がした。ピンクの服から手を移動させ、うなじ辺りの髪の毛を、手ぐしのようにしながら撫でる。シャンプーの甘い香りが漂った。

「……っ」

不意に、首下にこそばゆい感触を覚えた。吸うような音が同時にしたので、きっと菜々さんに跡をつけられてしまったのだろう。そう考えるよりも先に、二つ目を、今度はもっと強く吸われてつけられた。

「んっ……ちゅ……っんぁ……」

自分もお返しにつけてやろうかと思ったが、これから露出が増える彼女にそんなことは出来ないと、今さらながらに立ち止まった。もっと踏み込んだことをこれからするというのに、と自嘲した


「……立ちますよ」

そう言い、彼女を抱えながら立ち上がる。さっきまであったシャンプーの香りは、下側に行ってしまった。

菜々さんの体を、ベッドまで引き連れていく。俺の服をギュッと掴んでいる事に気がついたとき、たまらなく愛おしいと思った。

ベッドに仰向けになった菜々さんに、今度は俺が上になって、キスをする。さっきまでとは違って、菜々さんは舌を俺の口の中へ入れてこようとする。

舌の表面、ざらざらとした感触がとても近くにあった。互いの舌を絡ませ、求め合う。どれだけ求めても足りなくて、もっともっと絡ませ合う。菜々さんの口の端からは、どちらのものかも分からない、混ざり合った唾液が垂れていた


体を起こし、口元を拭う。菜々さんは物足りないような顔をしていた。

「……」

「……あの、プロデューサーさん?」

その、煽っているような表情と雰囲気にあてられてしまう。もう一度、唇を重ねる。激しく、激しく、一つになるくらいに。水の音が、俺たちの間で響き合う。

キスをしながら、菜々さんの下腹部へ手を伸ばす。衣服の中へ自らの手を入れ、パンツの上からその部分をいじる。そこは、俺が触る前からもう湿り気を帯びていて、布越しに水が溢れてきそうだった。

「んんっ、あっ、だっ……」

刺激していると、菜々さんが口を離し言葉を途切れ途切れに紡ぐ。ダメ、と言いかけたのだろうか。でも、このダメは辞めて欲しいという意味ではないと、俺はそう思った。

「んぅっ!ひぁ、はぁっ……んぅ……」

キスを再開し、パンツの上から更に強く、陰部を刺激する。しみ出した愛液が、指先を濡らしていった。

菜々さんは身じろぎをするだけで、拒絶も抵抗もしなかった。


今回はここまで、つづきはまた


菜々さんの甘い声と、淫らな水音が寂しげに響く。俺はそれを聞きながら、キスを中断し、陰部から退けた手を服にかける。裾を握り、上へ持って行く。

晒された白い肌は眩しく、ブラに包まれた胸は小柄な体に似合わず大きかった。仕事でもあまり肌を晒したがらない彼女の、その裸体を、目に焼き付ける。彼女は恥ずかしそうに、手で口元を隠していた。

胸の上辺りで服はしわくちゃになって止まる。全てを脱がすのももどかしい。

生唾を飲み込んだ後、フロントホックのブラを外し、直接その双丘に触れる。

「んぅっ♡」

それらに触れながら、またキス。この短い間に、菜々さんがキスされることが好きだと言うことに気がついた。口をそこに持って行くだけで、向こうから吸い付いてくる。

手のひらの中の乳首はもう既に硬度を得ていて、興奮していることが分かる。

痛くならないように、胸を揉み、形を変えていく。不意に、キスをしている最中にナナさんが目を開けた。視線がぶつかり合って、互いになんだか恥ずかしくなって、どちらともなく口を離した。

「……」

「……っ」

菜々さんは恥ずかしさからか顔を横に向け、視線を合わせようとしない。俺はそんな彼女を尻目に、菜々さんのズボンに手をかける。

「……腰、あげてください」

「……」

無言のまま、菜々さんは俺の言葉に従う。ズボンが下ろされ、曝け出されたパンツはやはりもうその機能を果たしてないほどに濡れ透けていた。

そのパンツにも手をかけた。菜々さんは、俺が言うよりも先に腰を上げ、パンツを下ろしやすいようにしていた。

「……」

「……プロデューサーさん、その、じっと見られると流石に……」

愛液にまみれ、てらてらと輝いている「そこ」は、この上なく淫靡だった。


自分も性器を晒し、そして菜々さんのそこへ持って行く。コンドームは菜々さんが持っていたものを使った。曰く、「こういうことになったときのために」らしい。それを言うとき、彼女はとても恥ずかしげにしていて、少女のようにも感じられた。

性器と性器を触れ合わせると、「くちり」という音が小さくする。菜々さんは、そこを凝視するように見つめた後、俺の方へ視線を変え、

「……来て」

一言を溢す。普段の彼女とは違う声色で発されたその二文字は、あまりにも容易に理性の箍を外した。

「う゛んっ……あぁっ……」

太ももを鷲掴みにし、腰を推し進める。膣内へペニスを入れていくと、奥から奥から愛液が溢れ、シーツに落ち、染みを作っていく。べとべとになった太ももの合間に、自分の体を入れていく。

最初は苦しそうだった彼女の声も、いつしかほぐれ、甘さを含みだしていく。全て入りきったときには、体に入っていた力も抜け落ちていた。


目尻から零れていた涙を人差し指で掬いながら、何度目かも分からない口づけを。

菜々さんの膣内は熱く、少しでも腰を動かしペニスを抜こうとすると、それを拒むように締め付けてくる。

彼女に覆い被さり、キスしながら、腰を動かす。

「んゆっ♡うちゅっ、んっ♡、ああっ♡」

ぱちゅぱちゅという水と肉が交じった音が、俺を更に昂ぶらせた。

彼女は更に乱れる。淫らになる。

「ぃや、うぅんっ♡あぁぁっ♡」

彼女の手を握った。握り返してきたので、更に強く力を入れる。指と指と絡ませ、離れないように、確かめ合うように、手のひらを合わせ合う。


恥骨と恥骨をぶつける度に、菜々さんから喘ぎ声が漏れる。ピストンの度に、愛液がシーツに染みを広げていく。

キスをし続けた唇はふやけ、唾液はもうどちらのものか分からないくらいに混ざり合っている。

限界が近かった。もう射精しそうだった。菜々さんは、もう何度も絶頂を迎えているらしく、体をビクビクと痙攣させていた。それでも、手と口と、俺の後ろに絡めた脚を離すことはなかった

一層激しくピストンをする。強く腰をぶつける。膣は、更に強くペニスを離すまいと締め付ける。爪が食い込むほどに彼女に手を握られる。その痛みすら、快感のように感じた。

「菜々さっ……もう……っ!」

「う゛っ♡あ゛っ……♡」

濁った声を、キスの隙間から漏らす菜々さん。もう、まともな言葉も出せないほどになっている彼女に、ペニスを根元まで入れ込み、そして果てた。

「はあっ、はぁっ……菜々、さんっ……」

「ぁっ……うぅ…………♡」

膣からペニスを引き抜く。膣口はひくひくと痙攣していた。

息も絶え絶えで、汗だくになった俺たちの間に、無言の時間が訪れる。互いに指だけは絡め合ったまま、視線を合わせていた

今回はここまで、続きはまた

あと少しで終わります


◆◇◆

初めて出会ったときのことを思い出していました。

あのとき、私はまだメイドさんで。あのとき、あなたはまだ大学生で。

友達に連れられて、私が働いているお店に来たあなた。そこへ、転んでホットコーヒーをぶちまけた私。今思うと、とってもシュールな出会いですね。

でも。あのとき、私がこけていなかったら、あなたと連絡先を交換することも、あなたに私の夢を話すこともなかったのでしょう。

最初は、本当に私の事を17歳だと思って「ナナちゃん」って呼んでましたね。懐かしい感じがします。

気がついたら、季節は何度か巡って、あなたがお店へ来なくなって。ああ、就職したのかな、と寂しく思いました。


「安部菜々さん」

久しぶりに来たあなたは、私にちょっとだけ大人びた顔を見せてくれましたね。スーツを着て、髪をぴしっと整えてて、正直見違えましたよ。

「あなたをどうかスカウトさせてください」

手渡された小さな名刺には、あなたの名前と、有名な芸能事務所の名前があって。

「夢の手伝いを、俺にさせてください」

この瞬間、何かの足音が聞こえた気がしました。今なら、それが何かはっきりと分かります。私が、階段を上り始めた、その一歩の音であると。

それからの、あなたと歩いた日々は、かけがえなく、この上なく輝いていました。

それは多分、最高の日々だと思えたのは多分、アイドルとして活躍できたからだけじゃなくて、あなたもいたからですよ。許されない思いを、私が抱いていたからですよ。

アイドル失格ですかね。でもきっと、私がまだウサミンじゃなかったときから、きっとあなたに心惹かれていたのでしょう。初めて意識したのは、あなたがお店に来なくなってからですかね。

それは、私がガラスの靴を履いても、変わる事なんてなかったです。


差し込む朝日で、私は目を覚まします。汗でべたつくはだと、なんとも言えないにおいが襲って来ました

「……おはようございます、菜々さん」

「あ……お、おはようございます」

朝の挨拶を、隣の人と交わします。見ると、首下や手の甲に赤い後が残っています。昨日、私がつけてしまったものでした

体を起こそうとすると、節々や筋肉が痛みます。それに耐えながら、胸の前で布団を掴んで体を隠したまま、彼と目線を合わせます。

見つめ合って、数秒後。どちらともなく照れくさくなって、笑ってしまいました。とっても禁断の関係になったとは思えないですね。

「シャワー浴びましょうか」

何も身に纏わないまま、私達はお風呂に向かいます。私の家のお風呂は小さいので、二人で入るにはちょっと無理をしないといけないでしょう。それこそ、ぴったりと密着しないといけないでしょうね。

浮き足だってお風呂場に向かう間も、私達は手を繋いだままでした。手のひらから感じる暖かさが、心地よかったです。

ここまでです、ありがとうございました

弟に、指の代わりにチンコを、おもちゃの代わりに本物のワニを使っての「ワニワニパニック」をさせました
弟のチンコはワニの血肉になることでしょう

約束はきちんと果たしました

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