事の発端は、四月下旬に差し掛かった夕暮れ時のことである。
CiRCLEの楽器倉庫で、月島まりなはあるものを握りしめて息を荒げていた。
「ハァハァ……、ゴクリッ。こっちは香澄ちゃんのパンツで、こっちがこころちゃんのスクールソックスね……!」
両手に持っているしろものを交互に見やり、喜びに打ちひしがれるまりな。興奮して手元が震えてしまう。
これらは全て、スタジオで練習している彼女たちの鞄から盗んだ、思春期の結晶ーーもとい、青春(意味深)である。
どうやって手に入れたのかと問われれば言わずもがな、受付で預かった持ち物から隙を見て拝借したものたちだ。
「おっ! 黒色の生地に、ピンク色の花柄をあしらっちゃってるわ。まぁまぁ。香澄ちゃんったら、意外と大胆な下着を持っていたのね。素敵じゃない?」
いやらしい感想を独りでぶつぶつと言い、誰に質問してるのか分からない疑問を空にぶつけてにんまりとほほ笑む。
瞬間、ポッピンパーティのリーダーである、溌剌な少女のパンティーを顔に押しつけてまりなは一気に深呼吸し始めた。
「すっ! はっ! あ、ぁぁぁあっ……あ↑ら↓まぁ~^→」
香澄ちゃんの星の鼓動が鼻の奥深くまで、じんじんと伝わってくる。でも、どうやら今日はハズレみたい。これは未使用かもしれないわ。
下半身の温もりを経験していない冷えた肌着に、まりなは心底残念に思った。洗剤の匂いがもどかしく感じて仕方がない。
ただ、それも含めて変態淑女の鼻腔だけを満足させるには、十分な背徳感と芳香であることは間違いなかっただろう。
「お次は、そうね……。もっふもっふの、ふわ☆ギャラ♪サ~ンド~イ~ッチ!」
残業が二時間に及び、無償で働かされている死にかけのまりなに、至福のギャラ(?)が与えられる。
イベントストーリーの課題曲となっている歌に合わせて、二足の布を両頬に円を描くように押しつけ回した。
お察しの通り、ハローハッピーワールドの純粋無垢なお嬢様の使用済み靴下である。
「オホホホホノホォ~~~^ッッッ!?」
まりなはあまりの刺激に、反射的に背中をそってしまった。美しい弧を描いて、下手したらそのまま折れてしまいそうである。
学校で一生懸命に活動していた、こころちゃんの若々しい脚のエキスが凝縮されているわ。甘酸っぱくてたまらない。
「も、もしかして、これをサンドイッチしたらどうなるのかしら? ハァハァ」
さらに、意地汚いことに香澄のアンダーウェアをこころのソックスと一緒に絡みつかせて、
「お”っ……ぉ”お”!? の”っ”へ”ぇ”ぇ”ぇ”え”え”え”~~~~~~^!」
ポピパとハロハピのコラボに、感想を言いたいが言語化するのが難しく、奇声を発してしまう。
「ハッピー☆ ラッキー☆ ポピパパ★ピポパァァァアアアッッッ!」
ガキ臭いミルクのような匂いと、背伸びしたような汗の匂いが入り混じり、まりなの鼻をめちゃくちゃにする。
これがなければ、社畜なんてやってられない。今日も彼女たちに感謝の気持ちを込めて、ありがとうの言葉を胸にとどめる。
同時に、今日はどちらを持ち帰ろうか悩んでいたーーその時である。
ーーまりなさん? あの、なにやってるんですか?
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