赤犬「あァ? 聖杯戦争じゃァ……?」 (110)

雁夜「されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし。汝、狂乱の檻に囚われ者。我はその鎖を手繰る者」

バシュウゥゥゥ

赤犬「……っ。あァ、どこじゃァここは? わしはクザンの奴とパンクハザードで決闘しておったはずじゃが」

雁夜「えっ」

臓硯「えっ」

赤犬「聖杯戦争? なんじゃこりゃァ。頭に知識だけが刷り込まれているようじゃのォ」

雁夜「……あの」

赤犬「あァ? なんじゃァ貴様は」

雁夜「ひっ」ビクッ

臟硯「いや、あの、つかぬことを伺うがの。お主はサー・ランスロットかの?」

赤犬「誰じゃ、そりゃァ」

赤犬「わしは海軍大将ザカズキじゃァ」

雁夜「……」

臟硯「……」

赤犬(どうやらわしは聖杯戦争なんちゅうもんに巻き込まれたようじゃ)

赤犬(なぜそんなことになったのかはとんと分からんが……。何しろそれに関する知識だけは勝手に頭に入っとる)

赤犬(ともかく、ここはわしのいた世界とは全く別の場所らしいということは解った)

赤犬(そして、聖杯というあらゆる願いを叶えるものを巡った魔術師とサーヴァントの戦いに巻き込まれたということも……)

赤犬(英霊として召還されたっちゅうことは、実に腹立たしいがわしはクザンに殺されたんじゃろうのォ)

赤犬(全く下らんが、わしの世界では無いとはいえ、悪党が願望を叶えることは阻止せにゃならん。まずは、他の連中が何を目的にしているのか知る必要があるのう)

赤犬「おい、カリヤァ」

雁夜「あっ、はい!? なんでしょうかサカズキさん!」

赤犬「お前はどういう目的で聖杯戦争に加わったんじゃァ?」

雁夜「あっ、えーと、いやそれはですね……。あの、ちょっと」

赤犬「はっきり言わんかい!!」

雁夜「は、はいぃ!」

カクカクシカジカ

赤犬「あァ? なんじゃそりゃァ。そんなもんあの爺を殺せば済むことじゃろうがい」

雁夜「いやあの、それが出来ればやってるっつーか……」

赤犬「じゃァ、行ってくるわ」

雁夜「え、あのどこへ?」

赤犬「おい、ゾウケン」

臟硯「ひょ?」

赤犬「人間は、正しくなければ生きる価値なし」ドンッ

臟硯「」ジュー

雁夜「……え? え、え?」

雁夜「え、本当に死んだの?」

赤犬「こいつの肉体は全て焼き尽くしたが……。いや、まだじゃな」スッ

――ムシクラ

桜「カリヤおじさん、と……?」

赤犬「こいつじゃなァ」

雁夜「え?」

赤犬「カァッ!」ドンッ!

桜「キュッ」ドサッ

雁夜「……な!? あ、あああああああああああ!!」ダッ

雁夜「桜ちゃん!? 桜あああああ!!」

雁夜「貴様っ、何をおぉおおおお!!?」

赤犬「落ち着かんかい、バカタレが」

桜「……ケホッ」

雁夜「え」・

桜「……おじ、さん」

雁夜「桜ちゃん……! 良かった……! 良かった!」ギュウッ

赤犬「あのジジイは、こいつの心臓に本体を寄生させとった。わしの覇気でジジイの虫だけ取り出したわ」

爺虫「キィーッキィーッ」ジタバタ

赤犬「うるさいのォ」グシャッ ジュゥゥゥゥ

爺虫「」

赤犬「これでもう問題なかろォ」

雁夜「……サカズキさん。ありがとう……。ありがとう……っ」グスッ

赤犬「礼が欲しくてやったわけじゃないわい。わしはただ、爺を殺し娘を救うのが正義だったからそうしただけじゃァ」

その後、鶴野も殺され、その際に巻き込まれて慎二も死んだ。

――倉庫街

雁夜「はは、ははははっ」

雁夜「やっちゃってくださいサカズキさん! あのアーチャーを殺し潰せッ!!」

赤犬「……あァ、全くいつの時代も悪党は下らんのォ」

ランサー「なあ征服王。アイツには誘いをかけんのか?」

ライダー「誘おうにもなぁ。ありゃぁのっけから交渉の余地なさそうだわなぁ」

赤犬「『真の王は天上天下に俺ただ独り』……。下らん」

赤犬「王とは秩序を守り、国を後世へ継いで行く存在じゃァ。己の子孫すら考慮せんその言い分、己の快楽にしか興味がないか、国を滅ぼしたか」

赤犬「どちらにしろ、海賊王と大して変わらんのォ。まさに暗君じゃな」

アーチャー「……この我を、賊と並べたか? 雑種」

赤犬「あァ、言ったがそれがどうした、悪党が」

アーチャー「そこまで死に急ぐか、狗ッ!」ゲートオブバビロン!

ザシュザシュザシュ

アーチャー「雑種の血で我が宝物が汚れた、わ……?」

赤犬「これが宝具というやつか。図鑑の中ならマトマトに似とるかのォ」ジュゥゥゥ

アーチャー「なっ」

赤犬「月歩」タタンッ

アーチャー「貴さっ……」

ドシュッ

赤犬「遅いわ、バカたれがァ」ドンッ!

アーチャー「」ジュゥゥゥ

ギルガメッシュ、リタイア


――遠坂邸

時臣「……は?」

綺礼『まさか……、こんなことが』

時臣「……え?」


時臣「……えっ」

セイバー「あれは……!?」

ランサー「宝具による攻撃を受けておきながら、無傷……。いや、それだけでなく奴に突き刺さった宝具の方が溶けていた」

ウェイバー「な、なななな何なんだよあいつは!」

ライダー「攻撃を無効化する宝具か、あるいは幻覚の類でも見せられとるのか。どちらにしても、ありゃあ厄介だぞ」

赤犬「残るは3人……。だが、カリヤの奴が死にかけちょるのお」

赤犬(どうするか。まずこの中のどいつが悪かを見極め、悪なら殺さにゃいかんが……。世界を征する快楽だの言っとったライダーは悪として、他の2人はまだ解らんのォ)

赤犬(仮に3人まとめて相手となればカリヤが死ぬ。こいつら以外にもサーヴァントはおる以上、ここで終わるわけにゃいかん)

赤犬「ここは一旦退いちゃるわい」ザッ


雁夜「ぐ、が……」

赤犬「しっかりせんかァ、カリヤ」

雁夜「……はぁ、はぁ。あ、ああ。すまない、サカさん」

赤犬「まあええわい。まずは殺すべき悪とそうでない奴を別けるのが先だったしのォ」

雁夜「し、しかし……。あのアーチャーを、殺した、のか?」

赤犬「あァ、死におったわ。これでサクラの親父は聖杯戦争から脱落じゃあ」

雁夜(……勝った、のか? 時臣のやつに。こんなに、あっさりと……)

雁夜「……」

赤犬「何しとるんじゃァ。トキオミはこれでリタイアじゃろうが。娘を返しにいくぞ」

雁夜「そう、ですね……」


――間桐邸

桜「お帰りなさい。カリヤおじさん、サカズキおじさん」

赤犬「おォ」

雁夜「ただいま、桜ちゃん」

雁夜「……桜ちゃん。今からお父さんのところへ連れていくよ」

桜「……おとう、さん?」

雁夜「ああ」

桜「おとうさんに、会えるの?」

雁夜「ああ」

桜「おかあさんや、おねえちゃんにも?」

雁夜「ああ……、ああ! 会えるんだよ」

桜「…………」

雁夜「……会いたいかい? お母さんや、お姉ちゃんや……、お父さんに」

桜「…………」

桜「……あいたい」

桜「あいたいよぉ……」ポロポロポロ

雁夜(……!)

雁夜(俺は……、大馬鹿野郎だ)

雁夜(自分の薄汚い嫉妬心から……、この子の家族を奪おうとしていた)

雁夜(桜ちゃんの、凜ちゃんの父親を……。あの人の、夫を)

雁夜「……俺はっ」

赤犬「何をグズグズしとるんじゃァ、カリヤ。さっさと連れてっちゃらんか」

雁夜「……はい、サカさん!」

――教会

璃正「……まさか、時臣君が敗れるとはな」

時臣「面目ありません……」

璃正「これからどうする気かね」

時臣「率直に言って、今は、何も……。全てがあまりにも想定外でして……」

璃正「……うむ」

綺礼「父上」

璃正「どうした?」

綺礼「時臣師に客人、です」

時臣「……客人?」


時臣「……変わり果てたな、間桐雁夜」

雁夜「…………」

赤犬(こいつがトキオミか)

時臣「サーヴァントと、そして……、間桐桜まで連れて私を訪ねてくるとは。一体どういう用件かな」

桜「……」

雁夜「……桜ちゃんを返しに来た」

時臣「……なんだと? ……ふっ」

時臣「そのようなことを間桐の御当主や臟硯翁が望まれるとはとても思えんね」

時臣「何のつもりか知らないが、私は君とそんなことを話すつもりはない。大人しく臟硯翁のところへ……」

雁夜「臟硯は死んだ。鶴野もだ」

時臣「……は?」

雁夜「俺のサーヴァントが殺した。だから今はこの俺が間桐だ」

時臣「貴様……っ」

雁夜「あんたが俺のことを侮蔑しているのは知っている!!」

時臣「……!」

雁夜「だが、今は、俺の話を聞いてくれ……。桜ちゃんの為に……、あんたの為にもだ」
――――
――
時臣「……ば、かな」

時臣「そんな……。そんな、ことが……」

雁夜(やはり遠坂時臣は間桐の惨状について知らなかった。当然か。知っていればそんな堕ちた魔道の家門に、娘を養子に出そうとは考えない)

雁夜(……爺が、教育の名目で桜ちゃんに何をしたかも全て話した)

時臣「……あ、かっ」

雁夜(……こいつは、桜ちゃんが苦難を経験することは覚悟していただろう。だが、こいつの思い描いていた苦難は、桜ちゃんが実際に味わったものとはまるで違った)

雁夜「……これは、俺の罪だ。俺が間桐から逃げ出した結果、こんなことになった」

時臣「……!」

雁夜「だが、あんたの罪でもある。あんたは盟友間桐家を盲進し、桜ちゃんを預けた」

雁夜「俺たちは、償うべきだろう。その罪を」

雁夜「人としても、魔道の家に生まれた者としても、だ」

時臣「……くっ」

時臣「わ、私は……。遠坂の当主として、才気に溢れた娘に、栄光を……」

桜「おとうさま……」

時臣「……!」

桜「ごめんなさい、おとうさま……」

時臣「――あ」

時臣「……桜」ダッ

ギュッ

桜「……お父、さま?」

時臣「桜……。すまなかった……。すまない、桜……!」ギュゥッ



赤犬(上手くまとまったようじゃのォ)

赤犬(この期に及んでごねるようなら、今ここで殺すつもりじゃったが、まァ綺麗に収まって良かったわい)

赤犬(しかし、改めて聖杯戦争は罪深いのォ。いや、根源なんぞを目指す魔術師のあり方そのものが悪なのか……?)

赤犬(わしの世界にない魔術なんちゅうもんが絡んどるけェ、悪かどうか容易に判断が下せん)

赤犬(元の世界でわしが死んどるなら、こちらの世界で正義を果たさねば。しかし、聖杯戦争が終わる頃にゃァカリヤは死んどるじゃろうのォ。やはり聖杯を使いカリヤ無しで力が振るえるようにすべきか)

赤犬(そのうえでこの世界と魔術について調べ、悪かどうか判断する。もし悪と断じたその時に、このトキオミやサクラが魔術師だったならば、確実に殺さないかんのォ)

赤犬(うむ、聖杯を悪党に渡さんようにするだけで良いと考えちょったが、方針が変わってきたわい。このわしが聖杯を獲る!)

すまんちょい風呂行ってくる

璃正「祖先の悲願の達成は叶わなかったが、時臣君は別のものを得ることができたようだな……」

綺礼「…………そうですね」

璃正「私は友人として時臣君を素直に祝福したい」

璃正「……だが、それはそれとして、だ。時臣君が敗退した以上、我ら聖堂教会としては新たな手を考えねばならん」

綺礼「聖杯をどのマスターの手に渡すか、ですか」

璃正「そうだ。今のところ次善としてはロード・エルメロイが有力か。聖杯戦争への参加自体は自己顕示欲からであろうが、魔術師の名門ではある」

綺礼「叶える願いは最早なく、聖杯が悪用されぬように戦っているという間桐雁夜の言葉が真実であれば、彼に獲らせるというのも手では」

璃正「うむ。いずれにしろ、もう一度練り直さねばなるまい」

璃正「各所へ状況を伝達してくる」ガチャ

綺礼「分かりました」


綺礼(ふう。時臣師がリタイアとはな。だが、私の令呪は未だ消えぬ。聖杯は、私を……)

ドンッ

綺礼「……!? この魔力は!?」

綺礼「この感じ、教会の見張りにつけていたアサシンがやられたか……!」

璃正『ぐああああああああああ!』

綺礼「! 父上!」バンッ

璃正「ぐ、あ、あ」ドサッ

赤犬「あァ、別に殺す気は無かったんじゃが、いきなり構えられて思わずやってしもうたわ」ジュゥゥゥ

綺礼「父上ェ!!」ダッ

綺礼「大丈夫ですか、父上!?」

璃正「ぐ、は……。神よ、愛してくださり、ありがとう」ガクッ

綺礼「……父、上」

赤犬「アサシンのマスター、貴様に話があって来た」

綺礼「……私に?」

綺礼「……各マスターとサーヴァントが聖杯に望む願望の調査、か」

赤犬「どいつが悪かを見極める必要があるけェのう。お前のアサシンを使えば容易いじゃろうが」

綺礼「断ったらどうする?」

赤犬「貴様を殺すだけじゃァ。だがカリヤに聞いたが、貴様ら聖堂教会とやらも聖杯を悪用させんようにするのが目的なんじゃろォが」

赤犬「なら、わしに協力せい。正義の為にわしが聖杯を使うちゃる」

綺礼「……仕方があるまい。良いだろう協力しよう」

赤犬「そういやお前の親父を殺してもうたけェ、監視役がおらんようになったのう」

綺礼「それならば問題無い。父が死の間際に監督役の持つ令呪を私に委ねた。私が監督役の任を継ぐ。表向きは聖杯戦争から退いたことになっているからな」

赤犬「あァ、なら良かったわい。そういうことじゃけェ、任したぞ。わしも自分で探ってみるからのう」スーッ

――アインツベルン城 聖杯問答(サシ呑み)

ライダー「……己の為ではなく、人の為の〝王〟という偶像に縛られていただけの小娘にすぎん!」

セイバー「私は……」


赤犬「仮にも王が2人も雁首揃えておきながら、どちらも実に下らんのォ……」スーッ

セイバー「!! バーサーカー!」バッ

アイリ「なっ!?」

ウェイバー「ヒィ!?」

ライダー「ああ待て待て。余がそいつに声を掛けといたのだ」

セイバー「なに……? なぜ、こいつを呼んだのだライダー」

ライダー「いやなに、この間金ピカに向かって王がどうのと言っておったろうが。となれば、こやつもまた王かもしれんと思ってな」

赤犬「わしは王ではないわい。海軍大将じゃァ」

セイバー「なに……?」

ライダー「なんだ……。王でもないくせに人様の王道にケチつけとったんかお前」

セイバー「……たかだが一軍の将の分際で、王の宴に乗り込み、愚弄するとは」

赤犬「バカタレがァ。わしは800年の歴史を持ち、170カ国以上もの国を束ねる『世界政府』の海軍大将。王の中の王達の臣下じゃ」

赤犬「たかだが一国や一部の地域を支配しただけの弱小国、しかもそれすら守り切れんかった、歴史も無い王に過ぎん貴様等の方こそ、わしと対等に語る価値なんぞないわ」

セイバー「……世界政府だと? キャスターのような妄言をほざくな!」

ライダー「この現代まで歴史上、世界政府なんぞ出来たことはないが。お前さん未来からでも来たのか?」

赤犬「わしはこの世界とは別の世界から呼ばれてきたんじゃァ」

ライダー「ほほお、別世界か」

セイバー「……たしかに、この聖杯戦争ならばあり得ないことではないが」

赤犬「わしの素性なんざァ、どうでもええわい。そんなことよりも、貴様等揃いも揃ってろくでもない願望を持ちおって」

ライダー「なんだ、ずっと隠れて盗み聞きしとったのか」

赤犬「貴様等が悪かどうか確かめる必要があったからのォ。だがこれではっきりした。お前達は確実に殺さにゃいけん悪じゃ」

赤犬「世界征服なんぞ目論みおって。征服王などと名乗っちょるが、わしの世界での海賊共となんら変わらん。貴様は簒奪の王、盗賊王じゃァ」

ライダー「ふふん、盗賊王か。そいつも中々良い響きじゃないか」

セイバー「……ライダーはともかくとして、私は救国を願っているだけだ。その願いのどこが悪だと言う」

赤犬「たしかに貴様はライダーに比べりゃまだマシじゃが……。歴史の修正を目論んどる時点で秩序を乱す大罪じゃァ。負け犬は負け犬らしく、負け犬として歴史に名を刻んどれ」

セイバー「貴様……ッ!」ゴォッ

ライダー「そんで? 余が悪だというのなら、貴様は一体どうするというのだ? ここで余と勝負するか?」

赤犬「……そうしたいところじゃがのう」

赤犬(どうやらこいつらは覇気を持たん。となれば、わしが負けることはあり得んが、問題はカリヤじゃァ)

赤犬(果たしてこの2人を殺すまで保つかどうか……。金ピカの雑魚の時すら死にかけとったくらいじゃけェのう。しかも奴との距離も離れちょる)

赤犬「……ここは見逃しちゃる。だが貴様等2人ともわしがこの手で必ず殺す。それを片時も忘れるな」スーッ

ライダー「…………大言だけ残して消えおった」

セイバー「……」

アイリ「一体何だったのよ……」

ウェイバー「……なんかあいつ逃げてばっかりじゃないか?」

綺礼「……以上が、アサシンに調査させた結果だ」

赤犬「ふん、どいつもこいつも悪しき理由で聖杯なんぞを奪い合いおって」

赤犬「いずれも酌量の余地無く極刑に処すべき賊どもじゃァ」

綺礼「特に願望を持たぬランサーやライダーのマスターも悪だと?」

赤犬「当然じゃァ。自己顕示欲の為に庶民を犠牲にしかねん争乱に参加するなんぞ悪以外の何者でもなかろォが」

綺礼「しかし、それが魔術師という存在だ。高尚な魔術師同士の戦いにおいて一般人の犠牲を考慮する魔術師などそうはいない」

赤犬「ならば魔術師の在り方そのものが悪ということになるのォ」

綺礼「お前が救った間桐……遠坂桜も魔道の家門だぞ? 彼女も殺すというのか?」

赤犬「まだ調査は必要じゃが、魔術師を悪と断じれば当然殺す」

綺礼「……一度は救われた男に殺される、か。果たしてその時、彼女やその父はどんな顔をするものかな。―――間桐雁夜も」

綺礼「…………」

赤犬「自業自得じゃァ」

赤犬「そういやァ、カリヤに関する調査がやたら詳しかったのう」

赤犬「奴の調査は必要ないじゃろォが」

綺礼「…………ついでというものだ。彼の事情は込み入っていたからな。必然的に量も多くなる」

赤犬「ふん、まあカリヤにだけは聖杯戦争に参加した動機に正義があったからのォ。興味を引かれるのも当然か」

綺礼「……正義、だと?」

赤犬「あァ、カリヤやサクラの置かれとった苦境に、貴様の正義感が反応したっちゅうこっちゃろうが」

綺礼「……正義感、私に? 私は空虚な人間だ。これまで正義感が満たされたことなど」

赤犬「ほォか? カリヤのことを語る貴様の顔は活き活きしちょったがのう」

赤犬「正義が果たされたことを喜んどったんじゃないか。わしはそういうタチじゃねェが、海軍にも正義を果たすことに愉悦を感じるもんもおるわい」

綺礼「愉悦……」

赤犬「このアインツベルンに雇われた傭兵もセイバー共々殺さにゃいかんのォ。戦場を渡り歩くなんぞ、大方戦闘狂なんじゃろォが」

綺礼「……」

――凜の冒険後、公園

凜「……」

葵「ああ、凜……! 良かった、本当に」

時臣「……礼を言う、雁夜君」

雁夜「いや、本当に偶然だった。キャスターを探している時に見つけて……。危ないところだった」

時臣「キャスターを狩るのか?」

雁夜「ああ、奴のマスターも手に入ったからな」

龍之介「は、放せよ、この野郎!」

赤犬「うるさいのォ」ボキッ

龍之介「ぎゃああああああ! 指が、指が折れたあああああああ!」

雁夜「……サカさん、もう少し静かにさせられませんか」

赤犬「仕方ないじゃろォが」

雁夜「ふぅ。とにかく間桐邸で尋問するか。……じゃあ、葵さん、時臣。俺たちはここで」

葵「本当にありがとう、雁夜くん」

時臣「……気をつけるんだぞ」

雁夜「ああ」

龍之介「ち、ちくしょおっ誰が話すか! 何されたって青髭の旦那のことは喋らねえぞ!!」

赤犬(……青髭。二重に嫌な響きじゃのォ)

雁夜「……なあ、龍之介、って言ったっけ?」

龍之介「ああっ!?」

雁夜「君さ、死んだ方が良いってくらいの痛みを経験したこと、あるか? 誰か他人にってことじゃなくて、自分がってことだけど」ジッ

龍之介「……!」ゾッ

雁夜「俺は、あるよ。飽きるくらいにね」

――キャスターの工房

雁夜「……ハァッ、ハァッ……グッ」

赤犬「情けないのォ、通路の触手を消し飛ばしただけでこのザマかァ」

雁夜「……だ、大丈夫、大したことはない。キャスターを殺すくらいの余裕はある……」

キャスター「りゅううううのすけええええ!!」

キャスター「貴様等ッ! 龍之介に一体何をしたァ!?」

龍之介「……カッ……あ……」

龍之介「やめて……、もう止めてください……」

龍之介「殺して……、殺して、ください……」

赤犬「あァ、もう用はないわい」グシャッ


キャスター「ノオオオオオオオオ!!」

キャスター「よくも我がマスターを!」

ウゾゾゾゾゾゾ

赤犬「またこのタコ共か……。うんざりじゃのォ」

雁夜「……サカさん。奴の後ろに子供達が囚われている。通路の時のように吹き飛ばす訳にはいかないぞ」

赤犬「何を言うちょるんじゃァ、カリヤ」ボコボコボコッ

雁夜「え?」

赤犬「流星火山!」ドンッ!

雁夜「な!?」


赤犬「これでキャスターもしまいか。残るはアサシン、ライダー、セイバー、ランサー。次はどいつにするかのォ」

雁夜「サカさん……」

赤犬「あァ?」

雁夜「なぜ、子供達ごと皆殺しにした……? 後ろに子供達がいると伝えたはずだろ!?」

赤犬「やるんなら徹底的にじゃァ。これでキャスターを逃がしでもしたら全ての犠牲が無駄になる!」

赤犬「キャスターを逃がさんようにするにはああするべきだったというだけじゃ」

雁夜「…………」

ライダー「貴様から余らの前に現れるとはな」

赤犬「アーチャー、キャスター、ランサー、アサシンが死に、残るはわしらとセイバーだけじゃァ」

赤犬「セイバーも必ずこの手で殺すが、まず何よりも巨悪である貴様から葬ってやろうと思ってのォ」

ライダー「ほお? 何のかんのと理由をつけて逃げておったが、ようやく余と戦う気になったか」

赤犬「ふん、だがわしのマスターが脆弱なのは変わっちょらん」

赤犬「とはいえ貴様のマスターもカリヤほどでは無いが弱っちいだろうが。そこで提案がある」

ウェイバー(……っ)

ライダー「……なんだあ? 申してみよ」

赤犬「マスターを抜かした決闘を申し入れる!」

ライダー「ふぅん?」

赤犬「マスターは監督役のコトミネ・キレイに預け、周りを巻き込まんで済む場所で決着をつける」

ライダー「まあ決闘を受けるのは吝かではないが、その監督役とやらは信用できるのか?」

赤犬「あァ、たしかに奴は敗北した振りをしてアサシンを隠し持っとったからのォ。だがそいつらもわしが殺したわ」

ウェイバー「え!?」

ライダー「ふん、そんなこったろうと思っとったわ。んで? アサシンらは貴様が殺したのか?」

赤犬「あァ、キレイを脅迫して貴様等が悪かどうかを見極める為の使いっ走りにしちょったが、もう用は済んだけェ殺したわ」

赤犬「コトミネ・キレイも最早マスターではない」

赤犬「まともにやり合えばわしが貴様に負けるこたァあり得んが、マスターを狙われれば弱いからのう」

赤犬「どうするんじゃァ? ハンデ無しでわしと戦うのが怖いっちゅうなら、わしも腹を括るが」

ライダー「挑発が下手な奴だのう」

ライダー「だが良かろう! その挑戦受けて立とうではないか! 余らの力で貴様一匹ひねり潰してくれる!}

赤犬「……ふん、悪党にしては気概がある奴じゃな」

赤犬「では、互いのマスターを教会に預けたうえで、あの埠頭に来い」

赤犬「今度はわしらがあそこで決闘する番じゃァ」

―――教会

赤犬「じゃァ、カリヤは置いていく」

赤犬「任したぞ、キレイ」

綺礼「承知した」

赤犬「まァ、そんなに長くはかからんわ」ガチャッ

綺礼「まったく面白いサーヴァントを持ったものだな、間桐雁夜」

雁夜「…………」

―――少し遅れてまた教会

ウェイバー「我がサーヴァントよ、ウェイバー・ベルベットが令呪をもって命ずる」

ウェイバー「ライダーよ、必ずやお前が最後まで勝ち抜け」

ウェイバー「重ねて令呪をもって命ずる。ライダーよ、必ずやオマエが聖杯を掴め」

ウェイバー「さらに重ねて令呪で命ずる。ライダーよ、必ずや世界を掴め。失敗なんて許さない」


ライダー「では、征ってくる。安心せい、すぐに首級をあげて凱旋するわい」

ライダー「AAAALaLaLaLaLaie!!」ドンッ

ウェイバー「……絶対に勝てよ、ライダー」

ギイィィィ・・・

ウェイバー「言峰神父? 約束通り来たぞ」

シーン

ウェイバー「……? おーい、神父? どこに……。あ」

雁夜「…………」

ウェイバー「間桐雁夜……。お互いサーヴァントを御しきれないなんて情けないマスターだよな」

雁夜「…………」

ウェイバー「もっともボクはもうマスターですらなくなったけど。令呪を使い切ってしまったよ」

雁夜「…………」

ウェイバー「……? おい、聞いてるのか?」スッ


雁夜「」グラッ

ウェイバー「え?」

雁夜「」ドサッ

ウェイバー「……な!? なんで」バッ

ウェイバー「……死んでいる。一体、何が」

綺礼「彼もまたマスターではなくなっていたということだ」

ウェイバー「……! 言峰神父! これは一体……」

綺礼「まあ待て。全てを教える者がここに来る」

ウェイバー「……え?」

ギィィィ・・・

ウェイバー「!!」

赤犬「おう、帰ったぞ」

赤犬「あァ、小僧もおったか」

赤犬「エミヤの拠点から聖杯の人形とやらを持ってきたが……。この女に聖杯が入っとるとは思えんのう」

アイリ「……」ドサッ

ウェイバー「……え?」

赤犬「なんじゃァ? 小僧から令呪の気配を感じんが」

綺礼「どうやら全て使い切ったらしい」

赤犬「あァ、そんならここにライダーの奴を呼ばれるこたァないのう。丁度良かったわい」

ウェイバー「な、何で……」

赤犬「あァ?」

ウェイバー「なんで、お前がここにいるんだ……? ライダーと決着をつけに行ったはずだろ……?」

赤犬「悪との約束なんざァ、誰が守るかバカタレがァ」

ウェイバー「……なん、だって?」

赤犬「マスターさえ殺してしまえば、わざわざサーヴァントと正面からぶつかる必要もないじゃろォが」

赤犬「決闘の約束は、単に奴を貴様から引き離す為だけのもんじゃァ」

ウェイバー「卑怯者!! あいつは、あいつは本気でお前と決着をつけるつもりで向かったんだぞ! それなのに……、お前はっ!!」

赤犬「貴様ら悪に生きる価値はなし! ならば、価値のない命と交わした約束もまた何の価値も持たんっちゅうこっちゃろうがァ」

綺礼(酒でも飲むか)トクトクトクッ

ウェイバー「そん、な……」ガクッ

赤犬「簒奪の王は死に値する。奴に協力する者も同じく死罪じゃァ」ボコボコボコッ

ウェイバー「……ライ、ダー」

赤犬「死ね」ジュッ

赤犬「さて、とっとと行くかのう。ライダーは感づいつとるじゃろォし、結局奴とぶつかるハメになりかねん」

綺礼「その心配は無いだろう。もはやマスターではなくなっているのだから、彼の危機を感じ取ることもできない」

綺礼(最早マスターではないのだから殺す必要もなかったのだがな)

赤犬「あァ、そうか。そんならあとはライダーが消えるのを待ちながら、セイバーを殺しゃあ良いだけじゃのォ」

赤犬「ともかくここから移動するか」ヒョイッ

赤犬「では行くぞ、キレイ」

綺礼「そうだな、バーサーカー」

―――時は戻って

雁夜「サカさん、やっぱり俺は納得できない」

赤犬「あァ?」

雁夜「いくら敵を倒す為だかと言って、救えたはずの子供達を犠牲にするなんて!」

赤犬「……」

雁夜「悪いけど、令呪を使わせて……」

ドシュッ

雁夜「……え? あ」ガハッ

雁夜「」

赤犬「……チィ。使えんマスターのうえに悪だったとはのォ」

赤犬「しかし、代わりのマスターを見つけにゃ消えてしまう」

赤犬「あァ、そうじゃキレイのとこにでも行くか」

綺礼「代わりのマスターになれ、か。まあそれ自体は構わない」

綺礼「だが、私にはアサシンがいる」

赤犬「そういやそうじゃったのォ」

赤犬「アサシンの正体は何者なんじゃァ?」

綺礼「ハサン・サッバーハという暗殺組織の頭領だ。奴は多重人格……」

赤犬「あァ、なら悪じゃのォ。殺すけェ令呪でここに呼べや」

綺礼「……殺すのか?」

赤犬「そうせんとわしと契約できんじゃろうがい。金目当ての暗殺者なら生きる価値はないしのォ」

綺礼(わざわざ呼び寄せて殺さずとも自害を命じれば事足りるが)

綺礼(…………)

綺礼「良いだろう。『令呪をもって命ずる。アサシン共よ、ここに集え』」

アサシンA「綺礼様、何用でしょうか?」

アサシンB「バーサーカー……。また貴様か」

綺礼「警戒する必要はない。彼は協力者だ」

アサシンC「……して、令呪を使われてまで我らをここに集められた理由とは?」

綺礼「ああ、バーサーカーからの要請でな。『令呪をもって命ず。そこから動くな』」

アサシン「!?」ピキッ

アサシンD「な、何の真似です!?」ググッ

アサシンE「か、体が……、動かない!」

赤犬「さァて……」ボコボコボコボコッ

アサシン「!!?」

アサシンF「……ま、まさか」

アサシンG「や、やめ……」

赤犬「岩漿犬牙!」ドンッ

ギャアァァァァ アツイ、アツイイイイイ ジュウウウゥゥ・・・

綺礼「・・・・・・・・・・・・」

赤犬「片付いたかのォ」

綺礼「・・・・・・ああ、アサシンは全て死んだ」

赤犬「なんじゃァ? 貴様、笑っとるんか?」

綺礼「なに?」

赤犬「いま笑っちょったろうが」

綺礼「・・・・・・笑っていた、のか? 私は」

赤犬「あァ? 自覚がなかったんか」

綺礼「笑っていた・・・・・・、そう、か」

綺礼「なぜ、私は笑っていたのだろう」

赤犬「そんなもんわしに解るわけないじゃろォが」

綺礼「・・・・・・そうだろうな」

赤犬「じゃが、まァ、推測はできるがのォ」

綺礼「なに・・・・・・? 解るというのか!? この私のことが」

赤犬「前にも言ったろうが。聖杯戦争参加者達を調べさせた時、お前はカリヤが参加した経緯をしつこく調べちょった」

赤犬「それはカリヤや、奴が助けたがった娘が置かれた苦境に悪を感じ取ったから・・・・・・、すなわち正義感じゃァ」

綺礼「・・・・・・正義」

赤犬「今回も同じじゃろう。キレイ、お前は悪であるアサシン共が殺されるところを見て喜んだ」

赤犬「それは正義感が満たされたっちゅうこっちゃ」

綺礼「・・・・・・ふ、ふふ、そうか、正義か」

綺礼「ははははははは!」

綺礼「なるほど、そうか、そうだったか!」

赤犬「・・・・・・なんじゃァ? どうした」

綺礼「ふ、ふふ・・・・・・、いや、これまでの苦悩に失笑していたのだ」

綺礼「こういうことは過去に幾度もあった。例えば異端の集団を女子供まで皆殺しにした時・・・・・・」

綺礼「例えば、教会の為に何の罪も無い家族を殺した時」

綺礼「私は、心の中に言いようのないざわつき・・・・・・今になってようやく分かったが、悦びを感じていた」

綺礼「私はそれを道理に反した悪しきものとして気付かぬふりをし、常に『空虚』であったなどと己を騙していた」

綺礼「だが、違ったのだな。あの悦びは悪なのでは全くなかった」

綺礼「そうだ・・・・・・。正義が果たされたことへの善なる悦楽であったのか!」

綺礼「それに気付けば・・・・・・。くっくっく、何を私は、馬鹿げた誤解をしていたんだ」

綺礼「恥じることなどなかった。なぜならば、私は正義を為しただけなのだから! そうだな、サカズキ!?」

赤犬「あァ、その通りじゃァ。悪を討ち取れば喜びを感じることもあろう」

綺礼「ああ、神よ! 感謝いたします! この私を・・・・・・、この世全ての善なるものを創造して下さったことに!!」

―――市民会館

赤犬「……先刻まで女だったもんが器に変わりおったわ」

綺礼「それこそが聖杯だ。女はただの護り手にすぎない」

赤犬「ますます気味が悪いのォ、魔術っちゅうやつは」

綺礼「さて、そろそろ私は行こう。衛宮切嗣がここにくるはずだ」

赤犬「あァ、殺してこい。守るべきもんも持たん傭兵に引導を渡しちゃれ」

セイバー「……アイリスフィール」

赤犬「来たか、セイバー」

セイバー「……そこを退け、バーサーカー。聖杯は私が手に入れる」

セイバー「祖国と、彼らの望み、恒久和平の為に」

赤犬「あァ? 何を訳の分からんことを言っちょるんじゃ」

赤犬「まあええわい。悪の願望なんぞ、これ以上聞いても無駄じゃからのォ」

セイバー(どうする……。奴の宝具は未だ謎。分かっているのはアーチャーの無数の宝具を受けても無傷ということだけ)

セイバー(エクスカリバーでは聖杯までも破壊してしまう……! どうする!)

赤犬「なんじゃァ、来こんのならこっちから行くぞ」ボコボコボコッ

セイバー「……くっ」

ドンッ

赤犬「……あァ!? なんじゃァ!?」

赤犬「どこじゃァ、ここは!?」

セイバー「これは……、固有結界?」

ライダー「……」

赤犬「……生きちょったか。しかも前よりも魔力が溢れとりゃせんか?」

赤犬「無能なマスターが死んで、眠れる力が覚醒でもしたんかァ?」

ライダー「……バーサーカー。約定を破り、我が朋友を騙し討ちするとは」

オオオオオオォ;オ;オ

セイバー(……!? 無数の軍勢が、ライダーの周りに!?)

赤犬「悪を殺すことが全て、その手段は問題じゃないわい」

ライダー「……集えよ! 我が同胞! 今宵、王を欺いたかの敵に、我らの絆を見せつける!!」

ライダー「おし潰せ!!」

赤犬「王国ごっこにお仲間を引き連れてきたようじゃが……」

赤犬「所詮はお山の大将じゃァ! 世界政府海軍大将に勝てるかァ!!」

セイバー(だ、ダメだ……)

赤犬「流星火山!!」ドンッ

セイバー(征服王の、あの軍勢をもってしても)

セイバー(バーサーカーに一太刀も浴びせられない)

セイバー(挑んでは、ただ徒に数を減らしていく)

セイバー(斬ることが出来ない敵を……、彼らでは倒せない)

赤犬「数が揃おうが、雑魚は雑魚! 盗賊は盗賊じゃァ!!」

――――
―――
――

赤犬「残るはお山の大将、ただ一騎」

シュウゥゥゥゥ

セイバー「……固有結界が、消えた」

セイバー「彼らの……、征服王の絆をもってしても」

ライダー「AAAALaLaLaLaLaie!!」ドンッ

赤犬「しつこいのォ……。部下を皆殺しにされ、まだ来るか」

赤犬「海賊やら盗賊やらっちゅう輩は、どこの世界もイカレとるのう」

ライダー「はあああァァァァ」ドンッ!!

ザシュッ

ライダー「……が、ハ」

赤犬「最後の一振りも届かず、か。全てが無価値じゃったのォ、悪党」

ライダー「……は、はははは」

赤犬「あァ?」

ライダー「いや、届いた……」

赤犬「あ? ……!!」バッ

赤犬「……き、貴様ァッ!! 聖杯を!!」

ライダー「…………」シュウゥゥゥゥ

セイバー「……っ、聖杯、が」

赤犬「くっ……、おどれライダアァァァ!!」

ドロッ

セイバー「!?」

セイバー(上から、何かが……!)バッ

赤犬「あの悪党に……、このわしが!」

ズズズズズ

赤犬「あァ? なんじゃァ?」

ドッ!!

赤犬「あァ!?」

セイバー「黒い、泥……!?」

赤犬「ぐ、ぐああああああああああ」

セイバー「……何とか脱出したが」

セイバー「空に浮かぶ黒い太陽は、一体……!」

セイバー「広がった泥が、火災を……。何が、どうなって」

ガシャァッン

セイバー「!?」

赤犬「あアァァァァ!!」

セイバー「バーサーカー…・・・! まだ生きていたか!!」

赤犬「『否』じゃァ」

赤犬「全ての悪を、わしが否定する! わしが裁き、わしが殺す!!」

赤犬「セイバアァァァ!! 死ね、歴史を歪める悪党があああああ!!」

セイバー「……私は、約束を守れなかった」

セイバー「だが、せめて、お前だけは!!」チャキッ

赤犬「バカタレがァ!! まだ分からんか!?」

赤犬「わしはロギア、わしはマグマじゃァ!!」

赤犬「貴様の剣など、わしには通用せん!!」

赤犬「さァ斬ってみィや!! その後で全て燃やし尽くしてくれるわ!!」ドンッ

セイバー「……エクス」

赤犬「あ……」


光が集まった時に、ようやく赤犬は気がついたが、全てはもう手遅れだった。
攻撃を受け止める姿勢をとっていた彼には、セイバーの宝具を避けることは出来ない。

赤犬(ルーキーか……。わしは)

赤犬(なぜ、忘れちょった。こんな当たり前のことを)

赤犬(己が無敵だと錯覚した、ロギアの寿命は短い……)


セイバー「カリバアァァァアアァァ!!」ドンッ

赤犬「アアアァァァァァ・・・

――――
―――
――

綺礼「ははッ、ははははッ!!」

綺礼「燃えている!! この街の悪を浄化する正義の炎が!!」

綺礼「そうか、これが私の望み! 願望!!」

綺礼「例えどんな犠牲を出そうとも、全ての悪を滅する! そのために神は私をお造りになったのだ!」

綺礼「ははははははッ!! まだだ、これでは足りん!!」

綺礼「全ての悪を燃やし尽くすには、不十分だ!」

綺礼「いつかまた至らねばならない。次こそは見届けねばならない。この世全ての悪を浄化する聖杯の力を!!」


言峰の正義が世界を救うと信じて・・・・・・!
長らくのご愛読ありがとうございました!

おまけ

赤犬「・・・・・・ここは、パンクハザード、か?」

赤犬「帰ってきたんか・・・・・・? それとも、全て夢だった・・・・・・?」

赤犬「・・・・・・・・・・・・」

赤犬「どちらにしろ、腹立たしい悪夢じゃわい。このわしが、悪党共に・・・・・・」

赤犬「ともかく、マリンフォードに帰るかのォ。海軍大将としての仕事がわしを待っちょる」


元帥青雉「・・・・・・生きてたんだ。あらら」

青雉「え? いやいや違うよ、喜んでるよ」

青雉「えっと、海軍に戻ってくる感じ?」

藤虎「あの人がいつもクザンさんが愚痴を溢してらした赤犬さんですか・・・・・・」

橙牛「しっ! 聞こえっぞ」

黄猿「お~、生きてたんだねえ~サカズキ。新体制がようやく慣れてきたとこだったんだけどねえ~」

青雉「いや、俺は良いんだけどね。歓迎するよ」

青雉「ただ、新人入れちゃったからさ。逆にサカズキに悪いかなあ、って・・・・・・え? ガチで戻ってくる感じ?」

赤犬「」

橙牛じゃなく緑牛じゃなかったっけ

1年後

――パンクハザード

G-5「やめてくれええ! スモやんを殺さないでくれええ!!」

ドフラミンゴ「ハァ……ハァ……。てめえらがどこまで知ったか分からねェ以上、全員死んでもらう」

スモーカー「ぐっ……」

??「待てや」ガシッ

ドフラミンゴ「……!?」

赤犬「その手放さんかい。友達なんじゃァ」ボコボコボコッ

G-5「ぎゃあああああ!? あ、赤犬うううううう!?」

ドフラミンゴ「あばばばばばば」

スモーカー「」

激闘の末、赤犬は見事ドフラミンゴやその部下バッファローとベビー5を殺すことに成功した
巻き込まれてG-5とスモ中将は死んだ

赤犬「海軍を抜けたからこそ、見えてくる正義もある!」

赤犬「わしは新世界で徹底的に正義を果たす!!」ドンッ

おわり

>>101
青雉が抜けた穴埋という意味で「青+赤=紫(藤色)」、「青+黄=緑」みたいだから
今回は赤犬が抜けたんで「赤+黄=橙」にしてみた

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