【ゆるゆり】あかり「ちなつちゃん、どうしたの?」 (39)

※鬱注意

放課後の教室。

だいだい色の夕陽はちなつの物憂げな顔を照らし出す。

照明の消えた教室に居るのは、あかりとちなつだけだ。

「何か困ってるの?」

そもそも、話を聞いてほしいとあかりに言ってきたのはちなつだった。

ちなつは、窓の方を向いて逡巡しているようだったが、意を決したように言った。

「…最近、京子先輩の抱きつき方がおかしいの…」

予想外の話に、あかりは目を見開いた。

「そ、そうかな…」

あかりは答えながら、思い当たる節が無いか必死に考えていた。
しかし、あかりには何も思い当たる節が無かった。あかりには、最近の京子もいつもの京子も変わらないように思えた。

「…目が」

ちなつが目を逸らしたまま言った。

「目…が?」

あかりがキョトンとした顔で返す。

「目が…なんだろう…怖いの」

ちなつが怯えたような声で言う。

「目…」

あかりには、依然何も分からなかった。

「取り敢えず…部活行こ?結衣ちゃんや京子ちゃんも心配するよ」

重い空気を振り払うように、あかりは敢えて明るい口調で言った。

「うん…」

憂鬱そうな表情のまま、ちなつが椅子から立ち上がる。

「行こう」

あかりとちなつは鞄を持ち、廊下へと出る。

↑最後の「あ」はミスです


いつになく辛そうなちなつに、あかりは胸がモヤモヤするような感覚を覚えた。

そしてそのモヤモヤは、一生あかりの胸から取れることがないということを、その時のあかりは知る由もなかったのだった。


「来たよ~」

部室に入ると、やはりと言うべきか結衣と京子が"部活動"を楽しんでいた。

「おう、遅かったな」

「ちなちゅ~!」

結衣がクールに返し、京子がちなつに抱きつく。ごらく部の日常。
何も普段と違うことはなかった。

…が、

「京子、そろそろ離してやれよ」

結衣がいつも通り、京子に言うと、

「ぐはっ…!」

京子は無言でちなつを押し倒した。ちなつの表情が恐怖に歪む。

「京子…?」
「京子ちゃん…?」

ちなつが全身をバタつかせて逃げようとするが、京子はしっかりとちなつを押さえつけている。

「やっ…!」

「京子、ちなつちゃんが怖がってるじゃないか」

結衣が注意するが、京子は一向にやめる気配がない。

「京子ちゃん…」

あかりは、京子の顔を覗きこんだ。


そこには、京子はいなかった。

いたのは、『京子の顔をした獣』だった。

そう信じたいくらい、京子の顔は狂気に満ちていた。目の焦点がずれている。

あかりはあまりの恐怖にそこから一歩も動くことができなかった。ちなつにキスされた時もこれほどではなかっただろう。

「きょ、京子!?」

ごらく部部室に、不協和音が流れ出す。張り詰めた空気に、京子の獣のような荒い息遣いが聞こえる。

「ぎゃぁぁぁ!!」

「ちなつちゃん!?」

突然、ちなつが悲鳴をあげた。

結衣がちなつから京子を離そうとするが、なかなか離れない。

「京子!いい加減やめろ!」

結衣が怒鳴るが、

「ゆい…せんp…たす…ゲゴッ」

遂に京子はちなつの首を絞め始めた。

「駄目だ京子!おい!聞け!」

恐怖に立ち竦んでいたあかりも、ようやく京子を取り押さえに向かう。

「京子ちゃん!ちなつちゃん!」

しかし、ちなつの顔は既に蒼くなり始め、表情が虚ろになってきた。

「ころ…され……る……」

「ちなつちゃん!!」

あかりが思わず叫ぶ。

「京子ぉ!」

パァン!と乾いた音がし、結衣が京子の頬を思いっきりぶった。

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