【アイマス】P「千早がストーカー被害に?」 (72)

千早「…誰かに見られているかのような感覚がずっとあって…」

P「そ、それは本当か千早…!?」

千早「…」コクリ

P「…」

律子「そ、そんな事が…」

P「いつからだ…?」

P「…いや、いつからっていうか…そう気付いたのはいつ頃から?」

千早「…」

千早「だ、大体1ヶ月程前からです…」

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P「1ヶ月!? おい千早、何で今まで言わなかったんだ!」

千早「…そ、それは…」

P「相手がいつ手を出してきてもおかしくないのに、ずっと黙っていたなんて…」

P「お前の身に何かあってからじゃ遅いんだぞ!」

律子「プロデューサー!」

P「!」

P「…あ、あぁすまん…」

千早「…」

律子「…彼女のことだから、きっと大騒ぎにしたくないと思っていたんでしょう。他の人達に心配させたくないって…」

P「…そう、だな…千早は人より悩み事を溜め込む事があるしな…」

P「その前に、千早の変化に気付いてやれなかった俺の責任でもある…すまなかった」ペコリ

千早「い、いえ! 決してプロデューサーの責任では…!」

P「いや…俺の落ち度だ。既に不安な気持ちにさせてしまったんだから」

P「でも、今日はよく俺達に話してくれたな、ありがとう」

千早「…はい」

P「さて、その前にもう外が暗いし…千早が話せるなら、詳細はまた今度にして今日はもう帰ろう」

律子「そうですね。幸い、事務所に残っているのはこの3人だけですし」

小鳥「」

P「ならもう戸締りしちゃうか」

千早「…お疲れ様でした」

P「ああ、お疲れ様。千早、送っていくよ」

千早「えっ!? い、いやそれは流石に…」

P「流石に、なんだ?」

千早「…プロデューサーに悪いですよ」

P「…お前な、今の話を聞いて1人で帰らす訳ないだろう。悪いなんて思わなくていい。送らせてくれ」

千早「あ、ありがとうございます…」

ブーン...

P「…」

千早「…」

P「なあ、千早」

千早「っ…」ビクッ

P「詳細はまた今度…って言ったけどさ、どうしても今訊きたい事があるんだけど…大丈夫か?」

千早「は、はい…」

P「もう一度訊くが、まだ手を出されていないんだよな?」

千早「…はい」

P「良かった。じゃあ被害っていうのは…見られている以外にも、尾行…か?」

千早「そう、ですね…尾行されているような感じはします…」

P「…そうか」

P(尾行…)

P「それじゃあ、一番重要なところなんだが…」

千早「…」

P「…千早、そのストーカーに自宅まで尾行されてたりしてないか?」

千早「!」

P「…もし尾行されていて、自宅まで特定されていたらかなり危険だ。いつでも手を出されてしまう」

千早「尾行は…わ、分かりません…怖くて、振り向けなくて…」

P「…いや、いいんだ。それが普通だから…」

千早「…」

千早「…あ、そこを右に…ここで止まってください」

P「ん? あ、あぁ…ここか、立派なマンションだな」

P「どうする? 玄関先まで行こうか?」

千早「はい…」

スタスタ

千早「ここです」

P「そうか、じゃあおやすみ。また何かあったら俺に相談してくれ」

千早「…」

P「…千早?」

千早「…っ」ギュッ

P「!」

千早「…」ギューッ

P「ち、ちょっ! 千早!?///」

千早「…です」

P「え、え…?///」

千早「…怖い、です…」

P「…!」

P「…あー…折角来た事だし、少し邪魔してもいいか?」

千早「…」コクリ

ガチャッ

千早「どうぞ」

P「お邪魔します…」

千早「…何も出せるものがなくてすいません」

P「いやいや、気にしなくてもいいよ」

P「それにしても…何というか、スッキリとしてる部屋だな…」キョロキョロ

千早「…プロデューサーは、もっと女の子らしい部屋の方が好きですか?」

P「うーん、千早の部屋はシンプルで俺は好きだぞ」

千早「シンプル…ですか」

P「ごちゃごちゃしてるよりよっぽど良い」

千早「なら良かったです。どうぞ、お好きなところに座ってください」

P「ああ…」

P「…」

千早「…」

P「…」チラッ

千早「プロデューサー」

P「は、はいっ」

千早「…ふふっ、プロデューサーが緊張しないでくださいよ」

P「お、女の子の部屋なんて初めてなんだから仕方ないだろ…」

千早(初めて…だったんだ)

P「それで、どうした?」

千早「…プロデューサーの隣、行ってもいいですか?」

千早「…」ピッタリ

P「ち、千早…近くない?」

千早「そうでしょうか…」

P(というかもう密着してるんだけど…)

千早「…」スッ

P「!」

P(千早が俺の肩に頭を預けてきた…)

千早「こうしていると、何だか落ち着きます…」

P「…そうか」

P「…」ギュッ

千早(!)

P「…」

千早「…」ギュッ

数十分後

千早「疲れているのにわざわざありがとうございました」

P「俺はまだ何もしてないよ。結局何も話せなかったし…」

千早「…いえ、私の事を思って…ですよね?」

P「…」

千早「それに、プロデューサーが傍に居てくれただけで私は…」

P「え…?」

千早「…///」

千早「…兎に角、多少は楽になりました」

P「そうか…良かった」

P「…おやすみ。ちゃんと戸締まりをしておくようにな」

千早「はい、おやすみなさい…」

ガチャッ

...バタン

翌日


ピーッピーッピーッ

千早「…ん、んん…」カチッ

千早(もう朝なのね…)

千早「…?」

千早(プロデューサーからメールが…)

ポチッ

『おはよう、俺が帰った後は何もなかったか?
不安な気持ちになるのも仕方ないが、これからは俺や律子が全力で千早を支えていくからどうか気に病まないでくれ。
それで、今日は来れそうか? 無理しなくてもいいが、来れるなら俺が迎えに行くから連絡頼む。』

千早「…」

千早「…」ポチポチ

ピッ

『特に何もありませんでした。

…ですが、もしプロデューサーが迎えに来ていただけると言うのならばお言葉に甘えてもいいでしょうか?』

千早「…~…!」ジタバタ

ピンポーン

ガチャッ

P「おはよう、千早」

千早「おはようございます」

P「今日の仕事も大変だけど、お互い頑張ろうな」

千早「…はい」

P「それと…はい、これ」スッ

千早「? これは…?」

P「防犯ブザーだよ。昨日の帰りに買ったんだ、安物で申し訳ないけど」

千早「防犯ブザー…」

P「あとは取り返しのつかなくなる前に警察に連絡して、出来ればそのストーカーを…」

千早「! い、いえ! そこまで大事にしなくても大丈夫です!」

P「え? いやだって、このまま放っておいた方が大事に…」

千早「…わ、私は大丈夫ですから…防犯ブザーも頂けましたし」

P「…そうか。じゃあ行こう」

千早「はい」

事務所


ガチャッ

P「ふぅ…」スタスタ

小鳥「お疲れ様です、プロデューサーさん」

P「あぁ音無さん、お疲れ様です」

小鳥「…千早ちゃん、どうでした?」

P「いつもと変わらないようで安心しましたよ。まあ多分心配かけないようにしてるだけだと…って」

P「…えっ、何故それを…!?」

小鳥「…昨日居たんですけど」

P「えぇ!? あ、あはは…ごめんなさい、気付かなくて…」

小鳥「いいんですよ、あの後鍵を閉められたことと比べれば」

P「…ほ、本当にごめんなさい」

P「千早は…彼女は強いですね、然程変わりはありませんでした」

小鳥「そ、そうでしたか…」ホッ

P「俺があげた防犯ブザーもちゃんと受け取ってくれましたし」

小鳥「防犯ブザー?」

春香「おはようございます!」ガチャッ

P「おはよう春香」

小鳥「あ、おはよう」

春香「あれ、私が一番でした?」

P「そうだな。千早を抜かしたら一番だよ」

春香「あぁ、そういえば歌の収録があったんでしたね! 朝早くから大変だなぁ…」

P「春香は…レッスンだけだったか」

春香「はい、皆が来たら一緒に行きます」

P「ああ、頑張ってこいよ」

春香「勿論です!」


小鳥「…春香ちゃん達には教えないんですか?」

P「まあ、ええ…千早も今まで黙ってきたみたいですし…今になって心配させるのもあれかと」

千早「~♪ ~♪」

千早「…ふぅ」

「はい、じゃあ少し休憩を取りましょう」

千早「は、はい」

千早(どうしよう…あまり歌に集中できない…)

千早(プロデューサー…)

ピロリン

千早「!」

千早(メール…プロデューサーからだ…!)ポチッ

『千早、頑張ってるか? 歌の収録が終わったら連絡してくれ。迎えに行く』

千早「…」ポチポチ

ピッ

千早「よし、頑張ろう」

P「お疲れ様、千早」

千早「お疲れ様です、プロデューサー」

P「それじゃ帰ろうか」

千早「あっ、待ってください!」

P「…? どうかしたか?」

千早「ちょっと、帰る前に行きたい所があって…」

P「…分かった。付き合うよ」

千早「ありがとうございます」

P(1人で歩かせるのも危険だしな…)

スーパー


P「スーパーか…何を買うんだ?」

千早「えっと、食材です」

P「へぇ~、料理するのか」

千早「ま、まあ…変ですか?」

P「ううん、家庭的で良いんじゃないかな?」

千早「!」

千早「よ、良ければ今日も来てください! ご馳走、しますから…」

P「おお、本当か!? ありがとう!」

P「千早の料理かー、楽しみだなぁ」

千早(…実際は春香が家に来た時にしか出来た事ないけど…あぁ、もう少し出来るようになってから言えば良かったわ…)

ガチャッ

千早「プロデューサーは座って待っていてください」

P「え、何か手伝うよ。何か待ってるだけって落ち着かないし…」

千早「大丈夫ですから。のんびりしててください」

P「…じゃあ、お言葉に甘えて…」

千早「…」キュッキュ

P(あ、千早がエプロンをして料理を始めようとしている…新鮮だ)ジーッ

P(何ていうんだろう…奥さん…いや、千早ぐらいだと彼女でも出来たような感覚だ…)

千早「…あの、あまり見つめないでくれます?」

P「あ…す、すまん…ちょっと見惚れてた…///」

千早「! …そう、ですか…///」

千早「…」トン...トン...

千早(えーと、人参とピーマンは短冊切りに…え、短冊切りって何? 短冊切り…やり方…)ポチポチ

千早(…携帯って便利ね。皆が使うのもよく分かるわ…)

千早「…なんだ、そのまま短冊みたいに切ればいいだけなのね…」トン...トン...


P「…」ジーッ

P(千早…さっきから俯いてばかりいる。動いたと思ったら包丁の使い方もぎこちない…いや、不安で料理に集中できていない…のか)

P(やっぱり助けた方が良さそうだな…)

P「千早、俺も手伝うよ」

千早「あ、プロデューサー…」

P(大丈夫だ、お前には俺がついている!)

千早(見られてた…料理出来ないって気付かれた…)

P「いただきます」

千早「い、いただきます…」

千早(結局、プロデューサーに頼っちゃった…私、ダメダメね…)

P「ん、美味しい。この野菜炒め、上手に出来たな」

千早「あ、それ…私が切った…」

P「うん、火もよく通ってるしとても食べやすい大きさだよ」

千早「!」

千早「そう、ですか…!」パァ

P「ああ!」

千早「ふふっ…♪」

P「あはは、やっと笑ったな!」ニコッ

千早「! …///」

P「やっぱり、笑顔が一番だ」モグモグ

千早「は、はい…」

千早(…)

P「今日はありがとな」

千早「いえ、こちらこそ」

P「明日、また迎えに来るから。仕事も一緒に行くし」

千早「ついてきてくれるんですか?」

P「いつもなら千早1人に任せても良かったんだが、一応あの件もあるしな…いいか?」

千早「…はい、嬉しいです。プロデューサーがいると頼りになりますから」

P「お、おう…照れるな…それなら良かった」

千早「…」

千早「プロデューサー…」

P「ん?」

千早「…おやすみなさい」

P「…ああ、おやすみ」

翌日


ガチャッ

律子「おはようございます」

小鳥「あ、おはようございます」

律子「あれ、小鳥さん。プロデューサーはまだ来ていないんですか?」

小鳥「プロデューサーさんなら千早ちゃんとお仕事に行きましたよ。今日は多分ずっと一緒です」

律子「ふむ…そうですか…」

小鳥「何か用事でもあったんですか?」

律子「…実は、プロデューサーから今日中にまとめたい書類があるから手伝ってほしいと言われてたんですけどねぇ…」

律子「私に連絡せず予定を変えたのはちょっとムッとしますが、千早の事もあるし許すとしますか…」ボソッ

小鳥「…犯人、早く捕まえられるといいですね…」

律子「えっ!? どうして小鳥さんがそれを…!?」

小鳥「ぴよ…」

千早「今日はよろしくお願いします」

「それじゃ、早速始めるよー」

千早「はい」

千早(…今日は、プロデューサーが一緒にいてくれるから安心して出来そう…)チラッ


P「はい、もしもし…」

P「あぁ律子。どうかしたか?」

P「え、忘れてる事…? んー…あ!?」

P「すまない! すっかり忘れてた!」

P「えっと、書類は…」


千早「…」ジーッ

「千早さん、早く始めますよ」

千早「! あ、はい…」

P「ふー、律子には申し訳ない事しちゃったな…」

P「あんまり怒ってないようだったからいいけど…ってあれ、もう撮影始まってる」


千早「…」チラッチラッ

P(え、何でこっちめっちゃ見てくるんだ?)

P(まあいいや、手を振っておこう)フリフリ


千早「!」パァァ

「あ、その表情良いですね! 撮らせていただきます!」

P(お、笑顔になった。そういえば千早もよく笑ってくれるようになったな…)

P(…だからこそ、彼女の笑顔はプロデューサーの俺が守らなくちゃな…)

律子「プロデューサーの言ってたのは…あ、あったあった…この書類ね」スッ

ポロッ

小鳥「律子さん、何か落ちましたよ」

小鳥「…ん?」ヒョイッ

小鳥(…防犯ブザーの組み立て方…)

小鳥「ぴぇ!? あれ既製品じゃなくてプロデューサーさんが組み立ててたの!?」

律子「小鳥さん。急に大きな声出さないでください…びっくりしましたよ」

小鳥「ご、ごめんなさい…」

小鳥(でも、何でわざわざ組み立て式の防犯ブザーを買ったんだろ…)

小鳥「…ひょっとしたら、何か仕込んでたり…なーんて」

小鳥「もう駄目よ小鳥! ちゃんと仕事しなくちゃ」



ガチャッ

美希「あ、はに…」

P「あぁ、美希。もう事務所に戻ってたのか」

千早「…」ピッタリ

美希「…ハニー、どうして千早さんとそんなにくっついてるの?」

P「えっ? あ、いや…これはまあ…何ていうか…」

千早「く、くっついてなんかないわ! これは…そう、これはただたまたま近かっただけ! そ、そうですよね!」

P「あ、ああ…」

P(そこまで全力で否定されたら流石に傷つくな…)

千早「…!」ハッ

千早「す、すみませんプロデューサー…その、今のは…」

P「だ、大丈夫。気にしてないから…」

千早「…」

千早(やってしまったわ…そんな事言いたかったわけじゃなかったのに…)

美希「だったら美希とくっついても問題ないの!」ギュー

P「み、美希…いつも言ってるけど、そうやって男にすぐ抱きつくのはな…」

美希「美希が抱きつくのはハニーだけだもん!」ムニュッ

P「ちょっ! 美希!? そんな抱きつかれると…その…胸が…!///」

美希「ふふーん…ハニーってば顔赤くなっちゃって…美希はハニーなら良いんだけどなぁ」

P「お前はまたそうやって…///」


千早「…」チラリ

ペタン...

千早「…くっ」

P「律子、書類の事だけど助かったよ。ありがとう」

律子「いえいえ。それより千早の調子はどうでしたか?」

P「…」

律子「…プロデューサー?」

P「ん、あぁ…特に変わりはない。けど、送迎は続けていくよ」

律子「そうですね。大事なアイドルに何かあったらいけませんから」

P「…勿論だ」

律子「…?」

P「千早、そろそろ帰ろう」

千早「はい」

P「それじゃ、お疲れ様」

律子「お疲れ様でした」

美希「すぅ…すぅ…」

律子「こら美希。事務所で寝るんなら早く帰りなさい」

P「…」

P「なあ、千早」

千早「はい…?」

P「俺の見当違いだったらいいんだが…」


P「千早、俺に何か隠し事とかしてないか?」

千早「…」

P「…千早?」

千早「あの…質問を質問で返すようであれですが、プロデューサーは私に隠し事をしていませんか?」

P「!」

P「あ、あぁ…そうだな…」

P「変なことを訊いてすまない。忘れてくれ」

千早「…いえ」

小鳥「うーん…」

律子「小鳥さん、残って仕事してたんですか。駄目ですよ、ちゃんと休養は取らないと」

小鳥「律子さん…いえ、仕事はもうしてないんですけど…ちょっと考えてたんですよ、千早ちゃんの事で」

律子「千早? プロデューサーと話しましたが、特に変化はないそうですよ」

小鳥「そう言ってました? じゃあやっぱり考えすぎかなぁ…」

律子「何か引っかかる点でも?」

小鳥「引っかかるというか…千早ちゃん、ストーカー被害に遭ってると打ち明けた後から少し表情が暗くなっているような気がして」

律子「そうですか? 寧ろ明るくなったように見えましたけど…」

律子「プロデューサーが千早の傍に居てあげる事で、最近はすごく笑顔も見せてくれるんですよ?」

小鳥「…それでも、偶に様子がおかしい時があるんですよね…事務所にいる時」

律子「どういう事ですか…?」

小鳥「…いえ、やっぱり私の考えすぎです」

小鳥「第一、ストーカーの事を考えれば表情が暗く見えても仕方ない事ですし」

律子「え、ええ…」


小鳥(そっか…あまり信じたくないけれど、もしかしたら…)

P「今日もお邪魔して悪いな」

千早「いえ、そんな事はありません。1人でいるより、安心しますから」

P「そ、そうか…」

千早「はい」

千早「あ、プロデューサー。今日も私の家で食べていきますか?」

P「いいのか!? うーん、じゃあそうしようかな」

千早「ふふっ、今回は私に任せてもらっても大丈夫ですよ。勉強してきましたから」

P「料理の勉強か? へぇ…」

千早「…意外ですか?」

P「意外というより…変わったなって思ったんだ。今まで歌の事ばかり考えてた千早が他の事に手を出すなんて」

千早「…そ、それは…」

P「良い傾向じゃないか? 自分に余裕が持てている証拠だよ」

千早「…そうですね」

P「それじゃ、ご飯の方よろしく頼むよ」

千早「あ、はい」

翌日

ガチャッ

P「おはよう」

千早「おはようございます」

春香「あ、プロデューサーさんに千早ちゃん! おはようございます!」

春香「…へぇ~、本当だったんですね。ここの所、毎日プロデューサーさんと千早ちゃんが一緒に事務所に来るって」

P「いやいや…事務所に着く時間が一緒なだけで、たまたま下で会うだけだよ」

ガチャッ

伊織「あら、私には千早がプロデューサーの車から出るように見えたけど?」

千早「!」

P「伊織!? い、いつの間に…!?」

伊織「ちょっと! どういう事か説明しなさいよ! 場合によっては今すぐにでも…」ピッピッ

P「あー違う! 誤解だ! だから警察呼ぼうとするな!」

春香「え!? 千早ちゃん! そ、その…まさか、プロデューサーさんとそういう関係だったの!?」

千早「…そういうって?」

春香「だから! あの…つ、付き合っちゃってるの!?」

千早「…」



千早「ええ、そうよ」

P「なっ!?」

春香・伊織「「はああああ!?」」

千早「…」

春香「プロデューサーさん!」

伊織「プロデューサー!」

春香「一体どういう事ですか! 私にも分かるように説明してください! 何で隠してたんですか!? いつからですか!?」

伊織「担当アイドルに手を出すなんてどうかしてるんじゃないの!? こ、これはもう通報よ通報!」

P「ま、待てって! ち、千早!」

千早「…プロデューサー、今日も一緒に帰りましょうね。それじゃあボイストレーニングに行ってきます」

P「ちょっ! その前に何でそんな事…」

ガシガシッ

春香「プロデュ~サ~さん♪」グググ...

伊織「こっちでゆっくりお話しするわよ…♪」グググ...

P「うお…こいつらどこにこんな馬鹿力が…!」

千早「あなたを愛してた~♪」

千早「でも前だけを見つめてく~♪」

千早「…ふぅ」

「今日は一段と調子が良さそうですね。何か良いことでもありました?」

千早「いえ…ただ、私を応援してくれる人達の為にもっと努力しなくてはいけないと思っただけです」

「成程…しかし意識が変わるだけでこんなにも歌に影響が出るとは少々驚きました」

千早「…それはきっと、私を支えてくれている人のおかげですよ」

千早「私の意識を変えてくれた、大切な…」



P「はぁ、助かったよ律子…あそこでお前が来てくれなかったら今頃は大変な騒動に…」

律子「今度どこかで埋め合わせしてくださいね? いきなり話を合わせるの本当に無茶ぶりだったんですから」

P「あ、ああ…しかし、千早が俺と付き合うだなんて言い切るからなぁ…一体どうして…」

律子「千早的にはそう言っておいた方が得策だと思ったんじゃないですか?」

律子「ストーカーの事は誤魔化せますし、恋人同士なら一緒にいてもおかしくないですしね」

P「いやいや…そしたらまた別の問題が出てくるだろ…」

律子「そんな事は千早に言ってください。大体プロデューサーが…」

プルルルル...

P「あ、すまん…電話だ」


P「はい、もしもし…あ! お世話になっています! はい…はい…」スタスタ


律子「全くもう…」

千早「お疲れ様でした」

「お疲れ様でしたー」

千早(時間は…午後6時。プロデューサーはまだお仕事中かしら…)ピッ

千早「!」

千早(プロデューサーからメール…もしかしたらもう外で待ってて…)ポチポチ


『悪い! 大事な仕事が入っちゃったから今日は迎えにいけない。代わりに律子が家まで送っていくそうだからそこで待っていてくれ』


千早(…)ピッ

『』電源オフ

千早「それでは、先に帰らせていただきます」

「はーい。お気を付けてー」


千早「…」スタスタ

P「はい、こちらこそありがとうございます!」

P「それで今回の企画としては…」


プルルルル...プルルルル...


P「…という事で…え? 誰かの電話が鳴ってる…ですか?」チラッ

P(あ、俺に電話来てる! …今忙しいんだが…)

P「すいません…あとで掛け直させていただくのでご心配なく…」


プルルルル...プルルルル...


P「…」

P「で、出てもいい…ですか。あ、ありがとうございます。すいません…」

バタンッ


P「どうした律子。大事な仕事があるって言っただろう?」

P「…ああ、確かにお前に千早の迎えを頼んだが…」

P「…え、千早がいない…!?」

P「お、落ち着け! えっと…そこは千早が居た所で間違ってないんだな?」

P「うん…トレーナーさんは…もう居ないか。電話も出ない…?」

P「だ、大丈夫だ! 律子のせいじゃないから…」

P「そうだな。ストーカーが関わっているかもしれない」

P「兎に角、その事に関しては俺に任してくれ。ああ、安心しろ」

P「律子は探さなくていいからもう早く帰れ。それじゃあ」ピッ

P「…」

千早「…」


ピンポーン


千早「!」

千早「…はい」ガチャッ

P「もう家に帰ってたんだな、千早」

千早「…プロデューサー…」

P「もう夜遅くだが…お邪魔してもいいか?」

千早「…」コクリ

P「ありがとう」

千早「夕食、まだですよね?」

P「ああ、時間がなくてな。でももう今日はいい」

千早「そうですか…それでは」スッ

P「…これは?」

千早「時間がない朝にいつも飲む私の手作りのジュースです。栄養があるのでどうぞ」スッ

P「…ありがとう」

P「…なあ、千早…律子が心配してたぞ。もう連絡もしないで1人で帰るなんてやめてくれ」

千早「すいません…でもあの時、携帯の充電が切れてしまっていて…」

P「…そうか。まあ、ストーカーに襲われなかっただけ良かったよ」

千早「…」

千早「……何を言っているんですか?」

P「えっ…?」

千早「もう、薄々気付いているんですよね」

P「…何がだ?」

千早「隠さなくていいですよ。私ももう隠す気なんてありませんから」

P「…」

千早「いつからですか?」


千早「私のストーカーが存在しない事に気付いたのは」


P「…」

P「言っておくが、今千早がその事を言うまではまだ確信を持っていなかった」

P「…おかしいと感じたのは千早が俺たちにストーカーの事を話してくれたその翌日からだ」

千早「…そこまで早いとは…驚きました」

P「まあ万が一に備えて、防犯ブザーを渡したけどな」

千早「そういえばあの防犯ブザー…」

P「気付いたか? 組み立て式だよ」

P「そして、ある物を仕組ませてもらった」

千早「ある物…?」

P「…今日、千早が誰にも連絡せず家に帰ってきただろう?」

P「迎えに行った律子は待っている筈の千早がいなくて、色んなところを探し回ったそうだ」

P「結局、居場所が掴めなくて俺に電話してきたけどな」

P「…でも俺は千早の居場所がすぐに分かった」

千早「! もしかして…」

P「…ああ、小型のGPSを仕組ませてもらった」

P「勿論、悪用する気はなかったぞ。あのGPSは事務所にある俺のパソコンからしか発見できないようにしてあるから、どこからでも、いつでも千早の事を監視できた訳じゃない」

P「…ただ、本当にいたかもしれないストーカーに襲われた時の為のものだったんだ」

千早「…」

P「でも、もう必要ない事が分かったな」

P「話を戻すか。それで、どうしてその段階でおかしいと感じたのかというとだな…」

P「千早が、少し悲しそうに見えたんだよ」

千早「私が…悲しそう…?」

P「…ああ。今だから分かるが、あれは俺たちに罪悪感を感じていたんだろう?」

P「自分の嘘で、皆を心配させて…迷惑をかけて…」

P「俺がストーカーの話を出す度に悲しそうにしていたのは、ストーカーに追いかけられているからではなく…騙した事への罪悪感だったんだよな?」

千早「…」

P「教えてくれ、千早」

P「どうして千早は…あんな嘘を吐いたんだ?」

P「…正直に話してくれ。お願いだ」

千早「…」

千早「……」


千早「もうそろそろ、ですかね」

P「…もう、そろそろ…?」

P「…何を言ってるんだ…千早…?」

千早「確かに…私はプロデューサー達に嘘を吐いた事に関して、罪悪感を感じていました」

千早「でも、その一方で幸せだったんですよ」

P「…幸せ…?」

千早「はい」

P「…何、が…」ドサッ

P(あれ…何だ…? 俺、倒れたのか…?)

P「…」

千早「…プロデューサー…貴方が、私の傍にいてくれるだけで…私は…」

P「ん、んん…」

P(あれ…俺、何してたんだっけ…?)

P(確か、大事な会議をしてて…終わったら、千早のマンションに…そうだ!)グッ

P「! いってぇ…」チラッ

P「…結束バンドか…手も足も結構キツく縛られてるな…」

千早「あっ…おはようございます、プロデューサー。調子はどうですか?」

P「…最高の目覚めだよ」

千早「ふふっ、それなら良かった…私も昨日はプロデューサーと添い寝できてとても嬉しかったです…」

P「…」

千早「あ、無理に動かないでくださいね? これ以上プロデューサーに危害を加える気はありませんから」

P「…盛ったのか」

千早「はい、あのジュースに…」

P「どうしてだ?」

千早「プロデューサーが私を見てくれるように」

P「…俺はいつだって隣で千早を見てたさ…」

千早「それは春香達にも言える事でしょう? …私は、プロデューサーの特別になりたかったんです」

P「だったら違うやり方で…」

千早「できないからこうしているんでしょう!?」

P「…」

千早「…私だって、もっと春香や美希みたいに…プロデューサーと普通に話したかった…近付きたかった…」

千早「でも、私には出来なかったんです…今まで歌の事しか考えてこなかった私には、その普通が難しかったんです…」

千早「だからといってプロデューサーの事を諦めたくなかった…だって…私は…私は…」ポロポロ

千早「…こんなにも、人を好きになった事がなかったから…」

P「千早…」

千早「…」ゴシゴシ

千早「自分のやった事の重さは十分に理解しています。ですが、今だけは…こうさせてください」スッ

千早「…」ギュッ...

P「…」

P「…千早、この結束バンドを解いてくれ」

千早「…嫌です」

P「そうか…じゃあこのままでいいから聞いてほしい」

P「…すまないな、千早がこんなにも苦しんでいる事に気がつかなくて…」

P「千早の気持ちはよく伝わったし、すごく嬉しいよ…ありがとう」

P「でもな…俺には千早の気持ちに答えてやる事はできない」

千早「…」

P「お前だって分かっていただろ?」

千早「…」ギューッ

P「…その代わり、一つ約束しよう」

千早「…約束…ですか…?」

P「千早がアイドルを続ける限り、俺も千早のプロデューサーを続けるよ」

千早「…」

P「…それで、いつかトップアイドルになって…引退する時が来たら…」

P「その時…千早の気持ちをまた聞かせてくれないか?」

P「…そしたら、俺は千早の気持ちに答えてやる事ができる」

千早「…本当、ですか…?」

P「それまで俺に愛想を尽かしてなければいいけどな」

千早「! 尽かしません! つ、尽かしませんから…や、約束ですよ…?」

P「…ああ、約束だ」

千早「…ちょっと待っててください」スッ


タッタッタ


P「…?」

千早「…」スタスタ

千早「動かないでくださいね…?」


バチンッ バチンッ


P「!」

千早「結束バンド…切りました…手、動かせますか…?」

P「…ああ」

千早「…じゃあ…」スッ

P「?」

千早「ゆ、指切りしてください…約束なんですから…」

P「…そっか、分かったよ」スッ

千早「ゆーびきーりげーんまーん…」

P「うっそついたら…」

千早「またプロデューサーを拘束します」

P「…指切った」

千早「ふふっ…♪」

P「あ、あはは…」




(それから…)

律子「え、ストーカーが捕まったんですか!? わ、私にも会わせてください! うちのアイドルの手を出すような輩は…」

(千早の恋心から始まったこのストーカー騒動は…)

小鳥「ぴよっ!? ならもう安心ですね…私と来たら、千早ちゃんが嘘を吐いてプロデューサーさんにお近付きになろうとしているんじゃないかって妄想しちゃって…」

P「ははは…えっ」

(ストーカーは捕まったという事にして、徐々に忘れられていった…)

(…しかし、問題はまだ残っていた)

(…それは…)

「間もなく本番でーす」


P(まさか千早自らが料理番組に出たいと言うとは…まあ嬉しい変化だな)

P「千早、今日も頑張ろう」

千早「はい、プロデューサー」

千早「…」

P「…どうした、行かないのか?」

千早「…」ジーッ

P「…またやるのか?」

千早「お、お願いします…///」

P「…全く…はい、千早だけ特別だぞ」スッ

千早「では…///」ギュッ

P「大丈夫、千早なら頑張れる。俺がついてるから」ナデナデ

千早「~…!///」ギューッ

P(プロデューサーとして何とかしないといけないんだけどな…)


P(千早が甘えん坊になってしまった…)



終わり

ここまで読んでくださった方々、ありがとうございました。
千早は可愛いです。

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