淡「高鴨穏乃を100回倒す!」 (187)
<白糸台高校 麻雀部部室>
淡「絶対に倒す!」
照「…………」
菫「……急に何を言い出すんだ?」
淡「鈍いですねー。私が高鴨穏乃を100回倒すって宣言したの!」
菫「何を言ったかはわかっている。問題はその内容だ」
淡「?」
照「インハイの決勝で決着はついてると思うけど」
淡「むぅー……それはそうなんだけど……なんか違うんだよねー…」
菫「じゃあどうすればいいんだ」
淡「だってさー……準決勝では高鴨穏乃、決勝では私。1勝1敗でしょ?すっきりしない!」
照「だったらコクマの成績で決めるのはどう?」
淡「むぅぅ……それもそうなんですけど~……」ウゥゥ..
菫「何が不満なんだ。まさか言葉通り、100勝するまで満足できないなんて言うんじゃないだろうな?」フゥ
淡「……………あ」
菫「ん?」
照「?」
淡「それいい!」
菫「それ……とは?」
淡「100勝するまでってやつ!さすが菫先輩!いいこと言いますね!」
菫「え……いや、今のは別にアドバイスではなくて……」
淡「明日は土曜日だし、直接相手の本拠地に乗り込むぞ~♪」
菫「お、おい……」
淡「というわけで、今日はもう時間ですし、お先に失礼しま~す!」ガチャ!バタン!
菫「…………」
照「…………」
菫「……こういったことに関しての行動力はすごいな」フゥ
照「うん。でも悪いことじゃないと思う」
菫「まぁな」
照「それに……淡は気付いてないだろうけど、きっと……」
菫「………ああ、そうだな」
照「…………」
菫「…………」
照「……とにかく、淡がライバルと思える人が現れたことの方が大事。高鴨さんの存在は、強さのみが突出してる淡にいい影響を与えてくれるかもしれない」
菫「なるほど。孤高の天才と言われるお前から聞くと納得だな」
照「…………」
菫「なんだ?別にからかったわけじゃないぞ?」
照「………もう1人じゃないもん」
菫「あ………そうだな。悪かった」ナデナデ
照「ん……」スリスリ
菫「ふっ、学校で甘えモードになるのは珍しいな」
照「うん……」
菫「…………」ナデナデ..
照「………ねぇ」
菫「ん?」
照「今は……2人だけ」
菫「ああ」
照「…………」
菫「……それで?2人だけだと何かあるのか?」
照「…………………意地悪//」
菫「ふふ……すまない。その顔が見たくてな」チュ..
照「ん……//」
翌日 昼
<奈良県 高鴨家付近>
穏乃「さぁて、山に行くかな~」テクテク
淡「いた!!」
穏乃「へ?」
淡「高鴨穏乃!!」
穏乃「あれ?大星さん……どうしてここに?」
淡「ふふん、そんなの決まってんじゃん!」
穏乃「そうなんですか?」
淡「そうなの!」
穏乃「…………」
淡「……………」ムフー
穏乃「え?それで……どうしてここに?」
淡「あ、そうだった……私はね、高鴨穏乃!あんたを倒しに来たんだよ!」
穏乃「??えと……もう決勝で決着が…」
淡「違うっ!麻雀は1勝1敗!」
穏乃「ああ……なるほど」
淡「だから、麻雀以外の勝負で100回倒す!!」
穏乃「ひゃ、100回ですか?」
淡「そう!高鴨穏乃を100回倒す!そしたら私の大勝利!!」
穏乃(なんで100回?なんとなくわかるけど……)
淡「ふふん」
穏乃「…………あの、質問なんですが」
淡「うん?」
穏乃「今現在お互い1勝1敗なんですよね」
淡「そだね」
穏乃「もし私が先に100回勝っちゃったらどうなるんですか?」
淡「えっ」
穏乃「?」
淡(………全然考えたことなかった……でもそうだよね。100回倒すまでに100回以上負けてたら、大勝利どころか負けだよ……)
穏乃「大星さん?」
淡「そ、その場合は私の負けだから……えと……そう!どっちが先に100回勝つか勝負!これでどう!?」
穏乃「そ、そうですね……」
穏乃(ついつい素朴な疑問をぶつけちゃったけど……なんだか厄介な展開になりそうな予感……)
淡「……なんか面倒くさがってる気がする」
穏乃「そ、そんなことない……ですよ?」
淡「あ、そう?よかった」ホッ
穏乃「あれ……」
穏乃(意外と素直な人だな……対局中は怖いくらいの迫力だったけど、普段は全然違うんだね)クス
淡「じゃあ早速勝負だよ!」
穏乃「……わかりました」
穏乃(特に用事もないし)
淡「あ、そうそう!まず敬語はやめてよ」
穏乃「え?」
淡「同じ1年だし!」
穏乃「……うん、わかった」
淡「よし、じゃあ最初の勝負は…………マラソン!」
淡(高鴨穏乃のジャージ姿を見るに、きっと運動が得意だよね!その得意分野で負かしちゃうよ!)フフン!
穏乃「マラソン?」
淡「そ。ここから阿知賀の学校の校門まで行って帰ってくる。どう?」
穏乃「う、うん。じゃあそうしよう」
穏乃(ここから阿知賀までは2キロくらい……往復で4キロか)
淡「よーし、そうと決まれば………よーい、どん!」タタッ
穏乃(大星さん、なんかあんまり運動得意そうに見えないけど……いいのかな?)タタッ...
淡「それじゃ、私は先に行くよっ!」ダダッ!
穏乃「うん」タッタッ..
穏乃(そのペースだと、最後まで走りきるのは難しいと思うけど……)
淡「はっ、はっ、はっ……」タタタッ..
淡「はっ、はっ、はっ……」タタタッ..
淡「…………」チラ
穏乃「」
淡(ふふふ……結構離したね。このままぶっちぎりで勝ってやる!)ダダダ..
淡「…………」タタタッ..
淡「………………」タタッ..
淡(………………あれ?なんか脇腹が痛くなってきた……)タッタッ..
淡(ちょ、ちょっと飛ばし過ぎた?ペースを落とそう)
淡「………………」
淡(…………まだ痛い……けど、これ以上落としたら追いつかれ…)
穏乃「……先に行くね」ビュン
淡「!!」
穏乃「ほっ、ほっ、ほっ……」タッタッ..
淡「ま、待って……」タッ..タッ..
<高鴨家付近>
穏乃「はっ、はっ、はっ、はっ……」タッタッ..
穏乃「到着っと。さて、大星さんが来るまで待つか、それとも迎えに行くべきか……」ウーン..
穏乃「……………」
穏乃(だいぶ差をつけちゃったから、迎えに行った方が早そうだな)タタッ
穏乃(……………)タッタッタッ
――――
淡「…………」グター..
穏乃(あ、いた……って、校門の横で座り込んでる)タッタッ..
淡「…………」ブチブチ
穏乃(コンクリートの隙間から生えてる雑草を抜いてる……何もやることない時にやっちゃうやつだね。疲れて頭がボーっとしてるのかな?)
穏乃「大星さーん!!」
淡「!」スクッ!
淡「」パンパン!(スカートの砂を払う)
淡「お、おかえり」ニコッ
穏乃「いや、おかえりじゃないよ」
淡「うっ」
穏乃「疲れちゃった?」
淡「え……な、なんでそう思うの?」
穏乃「だって、勝負中なのに座って休んでたから」
淡「あ、ああ……そうだね。うん、ごめん。ウォーミングアップのマラソンとはいえ、最後まで走らないとダメだよね」
穏乃「ウォーミングアップ?あれ?これも勝負じゃ…」
淡「ちち、違うよっ!」
穏乃「…………」
淡「これは100回勝負とは違うの!ノーカウント」
穏乃「………ずるくない?」
淡「うっ……でも高鴨穏乃だってずるいよ。私を置いてくんだもん」
穏乃「置いてくって言われても……勝負だし……」
淡「むー……わかったよ!マラソンは私の負け!」
穏乃「うん。まずは私の1勝だね」
淡「もー!マラソンが得意ならそう言ってよ~」
淡(きっと得意中の得意だったんだ!ずるい!)
穏乃「あはは」
淡(うぅ……私の華やかな歴史に早くも傷が付いちゃったよ……次こそ勝てるやつにしないと)
淡(何の勝負がいいかな?うーーーーーーーん………………………)
穏乃「?」
淡(全然思いつかない……こんなことなら新幹線の中で考えておけばよかった……ずっと漫画読んでた私のおバカ!)
穏乃「どうかしたの?」
淡「え?あ、ちょ、ちょっと待って!」
淡(走る系は全部やめて、奈良で出来ること…………山があるから………あ!)
淡(釣り!!亦野先輩に教えてもらったし、どこかに魚がいる池くらいあるはず!これだよ!)
淡「ふふふふ……」
穏乃「わ。急に笑顔だ」
淡「高鴨穏乃!」
穏乃「うん」
淡「釣りで勝負だ!!」
穏乃「おっ、いいね~!」
淡「あれ?」
淡(すごく乗り気だ…………どうしよう。負けそうな気配がプンプンしてきた……)タラー
穏乃「久しぶりだな~」ウキウキ
淡(……というか今思い出したけど、亦野先輩と釣りにいった時、ほとんどの時間を絡まった糸をほどくのに費やしてたっけ……そうだ。1匹も釣れなかった私に、亦
野先輩が魚を恵んでくれて……)
淡「ちゅ、中止!!」
穏乃「ええっ!?なんで!?」
淡「……魚が可哀相です」
穏乃「ええー……自分で言いだしたのに……」
淡「い、池の中に尖った針を入れるのはナンセンスだって気付いたの!」
穏乃「意味がわからないよ…」
淡「と、とにかく、そういうこと!」
穏乃「残念……釣りしたかったのに」
淡「えーと……次の勝負は……………あ、クイズ!」
穏乃「クイズ?」
淡「そう!私がこれからクイズを5問出します。たくさん正解したら高鴨穏乃の勝ち!」
穏乃「たくさんって具体的に何問?」
淡「う……」
淡(高鴨穏乃が正解した数より1つ多く言おうと思ってたのに……)
穏乃「ねえ何問?」
淡「……さ、3問」
穏乃「3問か……」フム
淡「じゃあいくよ?」
穏乃「うん」
淡「第1問、白糸台高校麻雀部の部長は誰でしょう?」
穏乃「あ、それは知ってる。弘世さん」
淡「下の名前まで言って」
穏乃「弘世菫さん」
淡「正解」
穏乃「やった」
淡「第2問、今年の西東京の地区大会決勝で、私と戦った選手を1人答えてください」
淡(ふふ……これは無理でしょ。私だって1人しか覚えてないくらいだもん)ニヤリ
穏乃「んん!?難しいなぁ……でも……あれ?でも西東京の地区大会はどこかで見た気が……」
淡「え?」
穏乃「あ!そうだ!赤土さんに見せてもらったんだ!確か……思い出した!松庵女学院の多治比 真佑子さん!」
淡「…………」
穏乃「どう?正解でしょ!?」
淡「……………せ、正解」
淡(なんで知ってんの!?)
穏乃「おお!やった!覚えてるもんだなー」エヘヘ
淡(ま、まずい……あと1問で負けちゃう!こうなったら……)
穏乃「よぉし……リーチかかったぞ~♪」フフン
淡「……………第3問」
穏乃「おう!」
淡「私が使ってるシャンプーは何?」
穏乃「ええっ!?そんなのわかるわけないよ!!」
淡「カッチ、カッチ、カッチ……」
穏乃「ちょ……ああもう!髪の匂い嗅がせてもらうよ!」ガバッ
淡「え?ちょ……あ……」
穏乃「くんくん……あー、すっげーいい匂い」
淡「う……//」
穏乃「………でも、なんのシャンプーはわかんないや。お手上げ」
淡「あ……ふ、不正解!!正解は、サロンSIDのオリジナルでした~!」
穏乃「…………答え聞いてもわかんない」ブー
淡「……う」
淡(すごい冷たい目……でも負けない!あと2問……――――)
淡「―――結果発表~!」ワーイ
穏乃「…………」
淡「高鴨穏乃の正解数は2問で、クイズ対決は私の勝ち~!!いえーい!!」キャホー!
穏乃「…………」
淡「……………」ヤッタヤッタ
穏乃「…………」
淡「……………」ワショーイ!
穏乃「ずるい」
淡「!」ピク
穏乃「白糸台の監督の趣味なんか知ってるわけないし、麻雀部内の試合での大星さんの総合成績なんて他校の私にわかるはずがない」
淡「う……」
穏乃(……マラソンの負けをなしにしようとする、釣り勝負を取り消す、絶対正解できないクイズを出す……いくら勝ちたいからってやりすぎだよ!)
穏乃(大星さんがそこまでするんだったら……私だって!)ギラリ
淡「べ、勉強不足だったねっ、うんうん。さて、次は…」
穏乃「次の勝負は私から提案させてもらっていいかな?」
淡「え?」
穏乃「ずっと大星さんからだと不公平でしょ?自分が発案した勝負でだけ勝ったって本当に勝ったとは言えないよ?ね?」
淡「む……」
穏乃「最終的に大星さんが勝ち越した時にケチがつくのは嫌でしょ?」
淡「うん………そう……だね。いいよ」
穏乃「よし!じゃあ、セミ捕り対決で!」
淡「え゛……セミ捕り?」
穏乃「うん。セミを多く捕まえた方の勝ち!場所はあの山の中!時間は……20分!」
淡「わ、私……セミなんて……触れない……」
穏乃「大星さんならきっと大丈夫。あ、袋はこれ使ってね。じゃあスタート!」タタッ!
淡「え?わ、わあ!待ってよ!」
<山>
淡「…………」ソローリ
セミ「…………」
淡「……動かないでね……」ソロリ
セミ「ジジッ!」バサー!
淡「ぎゃああああ!!!!」ビクゥン!
淡「………はぁ、はぁ……ビックリした……」
淡「うぅ……やっぱり怖いし気持ち悪い……でも勝負だしなー……」チラ
セミ「…………」
淡「地面にいるあのセミ、こっち見てる?うぅ、なんか大砲向けられてる気分だよ」
淡「………あ、そうだ。黙って捕まえに行くからセミの声でビックリするんだよね。よぉし…」
淡「♪ふんふふ~ん、ふふ~ん」ソロリ
セミ「…………」
淡「♪ふふんふ~ん、ふふふ~ん」ソローリ..
セミ「…………」
淡(いけそう!)
淡「♪ふんふ~……」
セミ「ジジジ!」バサー!
淡「ぎゃああああああ!!!!」ドシーン!
淡「び、ビックリするなぁ!なんだよっ、結局いきなりで怖いじゃんか!」
淡「もー……お尻打っちゃった……痛い……」
淡(もうすぐ時間切れなのに1匹も捕れてない……ダメだ……)ハァ
淡「………………」
淡「…………かゆい」ポリポリ..
淡「……なんかすっごい蚊に刺されてるし……もおお!!」
♪~
淡「あ……終了だ」
穏乃「大星さ~ん」タタタッ
淡「…………」
穏乃「あれ?また座ってる……どうだった?セミ捕まえられた?」
淡「えっと……その……ううん、私はセミの意思を尊重したからあえて捕まえなかった。高鴨穏乃は?」
穏乃「ふっふっふ……私は……じゃーん!!」
袋「ジジジジジジジジ………」
淡「ひぃいい!!」
穏乃「20匹ちょっとかな。私の勝ちだね」ニコリ
淡「ああああ……」
穏乃「さて、このまま袋に入れてたら可哀想だから、解放しないと。それ」バサッ
セミたち「ジジジジジッ!!」バサバサ!
淡「きゃあああ!こっちくんなー!!」ワタワタ!
穏乃「あははは!」
淡「うぅ……笑うなぁ~……」
穏乃「だってすごい慌てようだったから。虫苦手なの?」
淡「………べ、別に?」
穏乃「あ、大星さんの手の上にセミ止まってるよ?」
淡「にゃあああっ!!許して!!」バッ!バッ!
穏乃「嘘、何も止まってないよ」
淡「え?なぁんだ、よかった…………あ」
穏乃「やっぱり苦手なんじゃん」クス
淡「う、嘘つくのは反則!高鴨穏乃はダメな大人になるね!」
穏乃「ごめんごめん。でも虫が苦手なのを隠さなくてもいいのに」
淡「………苦手じゃない。ただ、反りが合わないだけ」
穏乃「それ、虫に使う言葉かな?」
穏乃(弱みを見せたくないんだな……私が言うのもなんだけど、なんか子供っぽくて可愛い)クスッ
淡「くっ……」プイ
穏乃「これで私の2勝目だね」
淡「あ……むむむ……」
穏乃(悔しそうな顔……ああ、なんだろこれ……からかいたくなってきた。我慢できない)
穏乃「2勝目、イエーイ!やったー!バンザーイ!」
淡「!」ヌゥ
穏乃「このままいくと圧勝かも!あははは!」
淡「あ、圧勝!?な、何を言うの!?この……えと……おバカ!」
穏乃「おバカって」
淡「まだ1勝ぽっちリードしただけなのにそんなこと言って……高鴨穏乃はアレだね。うん。アレだよアレ。えーと……」
穏乃「言葉が出てこないから私の勝ち、イエーイ!」
淡「うううるさい!出てこなくてもいいの!」
穏乃「うん、そうだね。思い出せなくてもいいよね」
淡「お……大人みたいな対応するなー!バカにしてるでしょ!!」キー!
穏乃(……やばい……楽しい……ムキになる大星さんめちゃくちゃ可愛いし……)
淡「もうこうなったら今すぐ次の対決するよ!内容は……『蚊にいっぱい刺されてる方が勝ち』これね!」
穏乃「蚊?」
淡「そう!ほらっ!私はこんなにいっぱい刺されたよ!」エヘン!
穏乃「あー……私はちょこちょこ動いてたし長袖だからたいして刺されてないや」
淡「や、やったーー!私の勝ちだー!!」バンザーイ!
穏乃「負けちゃった」
淡「これで同点~!イエーイ!」ピースピース!
穏乃「……負けたのは残念だけど、勝負に勝つより蚊に刺されない方がいいや」ボソッ
淡「……………」ピク
穏乃「あ」
淡「……………」
穏乃「ご、ごめん。別に勝った大星さんをバカにしたわけじゃないよ?」
淡「……………」
穏乃「本当に…」
淡「……………」
穏乃「……大星さん?」
淡「ねぇ、高鴨穏乃」
穏乃「な、なに?」
淡「…………かゆい」ポリポリ
穏乃「………うん。そうだろうね」
淡「………ムヒ持ってる?」
穏乃「持ってない」
淡「………………」
穏乃「……………」
淡「…………かゆい」ポリポリ
穏乃「……うん」
<高鴨家 リビング>
淡「塗って塗って~♪」
穏乃「うん」ヌリヌリ
穏乃(こうして近くで見ると、大星さんの腕とか足、細いなぁ……それと白い……)
淡「はぁ~……エアコン気持ちいい~♪」アシ バタバタ
穏乃「あ、塗ってるから足動かさないで」
淡「りょーかい♪」
穏乃(……ん、結構擦り傷がある……山に慣れてないからか……)
淡「~♪」
穏乃(慣れてないのに、私との勝負のために頑張ったんだな。なんか……嬉しいかも)クスッ
淡「あ、今笑った!」
穏乃「え?」
淡「私の足見て笑った!」
穏乃「ああ……それは」
淡「わかった!ムヒで『おバカ』とか書いたんでしょ!見えないからって!」
穏乃「書いてないよ。私をどんな人間だと思ってるのさ」
淡「ホントかなー?」ジト
穏乃母「ただいまー!」
穏乃「あ、お母さん帰ってきた」
淡「え!」
穏乃母「お客さん来てるのー?」ガチャ
淡「あ」
穏乃母「あら」
淡「ど、どどどうもこんにちは!大星淡という者です!」
穏乃母「こんにちは。穏乃の母です」ニコリ
淡「あ!お邪魔しております!今は、たか…穏乃さんにムヒを塗ってもらってるところです!」
穏乃母「まぁ、そうなの」
穏乃「わざわざ言わなくてもいいのに」
淡「だって!菫先輩とかに『淡は礼儀がなってない』とか言われてるからちゃんとしないとって思って…」ヒソヒソ
穏乃「それにしても……あと緊張しすぎだよ」
淡「う、うるさいなぁ」
穏乃母「大星さんは東京から来てくれたの?」
淡「え?はい……あれ?どうして私が東京って」
穏乃母「インターハイで穏乃と戦ってたじゃない」
淡「あ、なるほど……そうですね、あの……穏乃さんとは準決勝と決勝でお世話になりまして」
穏乃母「ええ」
淡「えと……なんというか……」
淡(うぅ……こういう時ってどうしたらいいんだろう?ちゃんとしないと変な子って思われる……そしたら高鴨穏乃に礼儀対決を挑まれちゃう)
淡「あ!そ、その」
淡(相手に気を遣うのが大事、だよね!)
穏乃母「はい?」
淡「む、ムヒ!よかったらお先にどうですか!?」
穏乃(お先にって、もう塗ってるじゃん)クスッ
穏乃母「えっ?いや、私は大丈夫よ」
淡「あー……そ、そうですか……ごめんなさい。穏乃さんに塗ってもらってたのも合わせて、ごめんなさい……」
穏乃母「別に謝らなくてもいいわよ」ウフフ
穏乃「よし、完了っと。お母さん、私たちは部屋に行くから。行こう、大星さん」
淡「え……うん」
<穏乃の部屋>
淡「は~……緊張したぁ」
穏乃「なんで?そんなに堅苦しく考えなくても、学校の先輩と話す感じで大丈夫だよ?大星さんは1年生だし、先輩に敬語で話すでしょ?」
淡「んー……その辺は割といい加減かな?」
穏乃「へー、白糸台って結構緩いんだ?」
淡「むふー。白糸台が緩いって言うより、私が強いからオッケーなんだね!きっと!」エヘン!
穏乃「そうなんだ」
穏乃(生意気だけど愛嬌があって憎めない後輩、みたいなポジションなんだろうな。わかるわかる)ホワー..
穏乃「あ、それで、勝負の続きはどうするの?」
淡「え?あ、そうだった」
穏乃「今のところ4回対決して2勝ずつだけど」
淡「うーん……」
穏乃「今すぐ決めなくてもいいか。冷蔵庫にかき氷あるから食べてからにしよう」
淡「かき氷!食べたい!」ワホーイ
穏乃「今とってくるね―――」
穏乃「―――お待たせ、持ってきたよ」
淡「わあ、ありがとう!お金お金……」
穏乃「あ、いいよ。私のおごりで」
淡「本当?気前いいね!」ワーイ
穏乃「そうだ。かき氷早食い勝負はどうかな?」
淡「お!それいい!やろうやろう!」
穏乃「よし、じゃあ始めるよ?3、2、1、スタート」
淡「はぐはぐはぐ!」ムシャシャ
穏乃「ぱく……ぱく」
淡「~~~~!!」
淡(うぁあ!キーンときた!うぅぅ……)
穏乃「ぱく……ぱく」
淡「……はぁ……はぐはぐはぐ!………~~~~~!!」キーン
穏乃(あれ?結構立ち直り早い……このままじゃ負けちゃう。ペースを上げないと!)クッ
穏乃「はぐぐぐぐ!…………~~~~~!」キーン..
淡「はぐはぐはぐ!…………~~~~!」キーン!
――――
穏乃「~~~~~~!………完……食!」
淡「~~~~~~~!…………完食!!」
穏乃「はぁ……頭痛い……」
淡「うぅ……手がベタベタ……高鴨穏乃ぉ~……」
穏乃「はいはい。ティッシュ……って、口の周りもベタベタだよ」
淡「本当?拭いて」ンー
穏乃「しょうがないなぁ」フキフキ
淡「んゅ……」
穏乃「はい、おしまい」
淡「ありがと」ニヘー
穏乃「う、うん」
穏乃(くっ……可愛いなぁもう)
淡「さて、かき氷勝負は私の勝ちだけど、次はどうする?」
穏乃「ちょっと待って。何をさらっと言ってるの」
淡「え?」
穏乃「大星さんも早かったけど、少なくとも私が食べ終わる直前まで食べてたじゃん」
淡「それは高鴨穏乃もそうだよ?私が最後の一口を食べようとした時はまだ残ってた」
穏乃「食べ終わった後は?こっち見たの?」
淡「………頭がキーンてしてたから」
穏乃「ほら、見てないじゃんか」
淡「高鴨穏乃は見たの?」
穏乃「……私も頭痛くて目を閉じてたから」
淡「…………」
穏乃「…………」
淡「……そういう場合は私の勝ちでいいんじゃないの?」
穏乃「よくないよ」
淡「えー」
穏乃(わがままなのか負けず嫌いなのか、どっちだろう?ま、どちらにせよ、こういう時は……)
穏乃「…………残念だなー」
淡「む?」
穏乃「大星さんとなら、正々堂々と気持ちよく戦えると思ったのに……」
淡「え?」
穏乃「最初のマラソン以外、自分に有利な勝負しか申し込まないし」
淡「そ、そんなこと……」
穏乃「今だって、勝ちを確信してないのに勝利を得ようとしてる……はぁ」
淡「ううっ……」
穏乃「私が間違ってたのかな?大星さんはもっと凄い人だと思ってたけど……」
淡「間違ってない!私は凄いよっ!」
穏乃「え?本当に?」
淡「ホントホント!」ピース
穏乃「これからの勝負もズルはしない?さっきのクイズはズルだよ?」
淡「う……次からはしない」
穏乃「……次からじゃなくて、今のかき氷早食い勝負からだよね?」
淡「も、もちろん!かき氷早食い勝負は……引き分け!」
穏乃「偉い!さすが大星さん!正々堂々としてる!」
淡「で、でしょ!?よく言われるんだ~♪」
穏乃「誰に?」
淡「え?それは……その……住民に」
穏乃「住民って……」
穏乃(また見栄を張って。可愛いけどさ)クスッ
淡「もうこの話題はおしまい!次の勝負はどうするか決める方が建設的!」
穏乃「それもそうか………あ!ちょっと待って。これは勝負と関係ないんだけどさ」
淡「ん?」
穏乃「大星さん夕食ってどこで食べるかとかって決まってる?」
淡「ううん、決まってないけど」
穏乃「じゃあさ、うちで食べていきなよ」
淡「え?」
穏乃「さっきかき氷取りに行った時にお母さんが言ってた。大星さんがよければどうですか?って」
淡「………私としては食べたいけど……いいの?なんか悪い気がする……」
穏乃「全然大丈夫。むしろ喜んでたよ。『娘が久しぶりに友達連れて来た』なんて言ってさ」
淡「ええっ!?」
穏乃「わ……な、なに?急に大声出して……」
淡「え、えと……それは……//」
淡(ともだち……私って、高鴨穏乃の友達なの……?)
淡(私は高鴨穏乃を倒すべき敵だと思ってたけど、高鴨穏乃は私を友達と思ってた……?)ドキドキ
淡(そういえば……ムヒをぬりぬりしてくれたし、口もふきふきしてくれた……敵は普通そんなことしない。やっつけにくるはずだもん)
淡(……敵が友達だった……私はどうしたらいいんだろう?友達を100回倒すなんて人間じゃなくて鬼だよね……)ウゥ..
穏乃「……大星さん?」スッ
淡(?……目の前に高鴨穏乃、つまり友達の顔が………って、近い近い!!)
淡「わわっ!」ズザザッ!
穏乃「?どうして後ずさるの?」
淡「それは……ちょ、ちょっと恥ずかしいから……//」
穏乃「?」
淡(びっくりした……いきなり顔が近くにあるんだもん。テルといる時ならそんなの普通にあるけどさ…………ん?あれ?)
淡(テルとはあれくらいの距離で話したりするのは普通……なのになんで高鴨穏乃だと恥ずかしいんだろ?)??
穏乃「ま、いいや。夕飯までゆっくりしてようよ」
淡「あ、うん……」
穏乃「それとも、この部屋で出来る勝負でもしようか?」
淡「勝負……」
淡(どうしよう……高鴨穏乃を100回倒すために来たけど、友達になった今、100回倒したら友達やめられちゃうかもしれないよ)
淡(………私にはどんな選択肢があるの?わかんないよ……………あ、そうだ。こんな時は携帯で……)スチャ..ポチポチ..
『友達 100回倒す』
淡(検索!)カチッ
淡(…………ダメだ。友達を100人作るとかそんなのしかない……うぅ……)
穏乃「……なんか難しい顔してるけど、何かあった?」
淡「えっ、それは……」
穏乃「かき氷食べたからお腹痛くなったとか?」
淡「ううん、大丈夫」
穏乃「そっか。じゃあどうしたの?何か気になることがあるとか?」
淡「…………あるにはある」
穏乃「そうなの?教えてよ」
淡「うん。ねえ、高鴨穏乃は……倒しにくる子ってどう思う?」
穏乃「…………はい?」
淡「だ・か・ら!自分を倒しにくる子をどう思う!?」
穏乃「倒しにくるって意味がイマイチわからないけど……」
淡「うぅ~、鈍いなぁ!だから!わ、私が高鴨穏乃を倒そうと勝負を挑んでくるのはどうなのってこと!」
穏乃「どうなのって……別にどうも」
淡「へ?」
穏乃「私と勝負したいなら、勝負するってだけだよ?」
淡「…………そう?」
穏乃「私を嫌ってるとか、邪魔するつもりとか、そういうんじゃないでしょ?」
淡「そ、それはもちろん!」コクコク!
穏乃「じゃあ問題ないよ」
淡「…………本当?」
穏乃「うん」
淡「……………あとで私の友達やめるとか言わない?」
穏乃「え?大星さんと私って……もう友達?」
淡「えっ!」
穏乃「?」
淡「ち、違うの……?」
穏乃「いや、違うというか」
淡(なんだよぉ……友達じゃないのに顔を近付けたのかっ!高鴨穏乃っ!)グス..
穏乃「ああっ!ごめん!今のは悪い意味じゃないんだ!」
淡「じゃあどんな意味なのさ」ゴシゴシ..
穏乃「私は友達になりたいと思ってるけど、大星さんはどうなのかわからなかったからさ」
淡「あ……そうなんだ」ホッ
穏乃「ごめんごめん。言い方悪かったね」アハハ
淡「ホントだよっ…」グシュ..
穏乃(さて……ここで私から友達になろうって言うのは簡単だけど…………何故か無性に大星さんから言わせたい……)ウズウズ
穏乃「………で、大星さんはどうかな?」
淡「え?ま、まぁ……いいんじゃないの///」
穏乃「いいんじゃないのってどういう意味?」
淡「えと……今言ったみたいなことで」
穏乃「ちゃんと言ってくれないとわかんないけど」
淡「だ、だから……その……高鴨穏乃と………友達になりたい、とかそんな感じの……///」(髪の毛いじりつつ)
穏乃(ちくしょーーー!可愛い!!)
穏乃「お、大星さんが私と友達になりたいなんて……嬉しいよ!ありがとう!」
淡「う、うん……私は別に、その……高鴨穏乃ほど喜んではないけど……まぁ、嬉しいは嬉しいかな……///」ニヘー
穏乃「よかった」
淡「じゃあこれからも勝負してもいい?」
穏乃「もちろん。ただ、クイズみたいなズルは無しだよ?」
淡「あれはマニアック問題でズルってわけじゃ……」
穏乃「…………」ムム..
淡「う……わかった。ズルはやめる!」
穏乃「うん。さて、それじゃあ夕飯まで何して遊ぶ?っていってもゲーム機もないし、あんまり遊べるものないけど……あ、人生ゲームがあった。人生ゲーム勝負や
る?」
淡「やる!絶対勝つ!」
穏乃「私だって負けないよ~……――――」
穏乃「―――……やった!勝ち~!」
淡「また負けた~!!」
穏乃「いや~、なんかツイてるなぁ。これで私の3勝目だね」エッヘヘー
淡「うぅ~……ダブリーが出来ないのが辛い……」
穏乃「人生ゲームでダブリーって何?」
淡「ゴール1マス前でお金いっぱい」
穏乃「それズルだよ……」
穏乃母「ご飯出来たわよ~!」
穏乃「お、いいタイミング。行こ」
淡「うん」
<リビング>
淡「あの、改めまして。私は穏乃さんの友達の大星淡です」ニコッ
穏乃母「ふふっ、よろしくね」
穏乃(うぉおぉ……友達になったこと、そんなに嬉しくないとか言っといて、めちゃくちゃ喜んでる!くっそー……可愛いなー)
穏乃(それと、高鴨穏乃って呼ばれるより『穏乃さん』って呼ばれる方がいいなぁ。ちょっとドキッとする)
穏乃母「それじゃ食べましょうか。いただきます」
穏乃・淡「いたーだきます!」
パクパクモグモグ..
穏乃母「大星さんが遊びに来てくれて嬉しいわ~。この子ったらいつも1人で山に行って遊んで……友達いないんじゃないかって心配してたのよ」
淡「あんほ、ほうあんえふか」モグモグ
穏乃母「あらら。食べてる途中に話し掛けちゃってごめんなさいね」
淡「!ひ、ひいえ……ごくごく………はぁ………なんと、そうなんですか?」
穏乃母「ふふっ……言い直してくれたのね。ありがとう」
淡「い、いえ……///」
穏乃「……友達がいないわけじゃないよ?ただ1人で遊ぶことが多いだけで」
穏乃母「それとあんた、携帯置いて山に行くのやめなさいよ。松実さんとか憧ちゃんがあんたを誘いに来てくれた時あったけど、連絡つかないから帰っちゃったわよ」
穏乃「あはは……学校でもそれ言われた」
淡「………私以外に友達いるんだ」
穏乃「いるよっ!ひどいなぁ」
淡「ふーん……」
淡(なんかモヤッとするなー……)モグモグ..
穏乃母「あ、ねえ大星さん。大星さんはこの後の予定とかって決まってるのかしら?」
淡「へ?いえ、特には」
穏乃母「だったらうちに泊まっていかない?」
淡「え?」
穏乃「!」
穏乃母「だって東京からわざわざ来てくれたんでしょ?それとも、もうホテルとか予約してある?」
淡「い、いえ……日帰りのつもりでしたので」
穏乃母「あら!日帰りなんて大変じゃない。是非泊まっていって。ね?」
淡「いいんですか?」
穏乃母「もちろん」ニコリ
淡「…………」チラ
穏乃「ん?」
淡「…………」ジー..
穏乃(あの目……『泊まっていい?』ってことかな?それか私に『泊まっていって』と言ってほしがってる?うわ、それ可愛いなぁ)
淡「…………」シューン..
穏乃(ああっ!私が何も言わないからだんだん元気がなくなってきた。ごめん!でもそのしょぼんとした顔がいい!)
淡「…………」
穏乃「私は大歓迎だよ」ニコリ
淡「あ……」パァァア!
淡「じゃ、じゃあ!是非泊まらせてください!」ペコリ!
穏乃母「ええ」ニッコリ
淡「いやぁ~、ありがとうございます!穏乃さんのお母さんは優しいお母さんですねっ!」ニヘー
穏乃母「あら、ありがとう」ニコリ
淡「ぱくっ!もぐもぐ……おかず作るのも上手だし!」ハグハグ..
穏乃(はぁ……大星さん可愛い……)
穏乃母「穏乃」
穏乃「ん、なに?」
穏乃母「ちょっと意地悪よ?」クス
穏乃「…………うん、気を付ける」
穏乃母「穏乃の気持ちはわかるけどね」フフフ
穏乃(……さすが私のお母さん)
1時間後―――
穏乃母「お風呂沸いたわよ」
淡「ありがとうございます!」
穏乃「お母さんはもっと遅い時間に入るから、大星さんから入っていいよ」
淡「え?高鴨穏乃も一緒に入ろうよ」
穏乃「えっ!?」
淡(友達の家にお泊りときたら、一緒にお風呂入るのが当たり前だよね?なんかの漫画で読んだよー!)ムフー
穏乃「お、大星さんがそういうなら……//」
淡「あ、お風呂の中で息止め勝負しよう!」
穏乃(やばい……なんか緊張してきた)
<風呂場>
淡「~♪」ジャバー
穏乃「…………」
穏乃(大星さんの体、キレイだな……腰も腕も足もすっげー細い……あと、おへそがなんか可愛い)
淡「じゃあ私から息止め勝負いくね?せーの!」ザブーン!
淡「……………」
穏乃(あ……髪が水面でユラユラ揺れて…………こう見ると金髪っていいな……)
淡「……………」コポ..
穏乃(……毎日使ってるお風呂に大星さんがいるって、なんか不思議……)
淡「ぷはぁっ!」ザバーン!
淡「はぁ……はぁ……はぁ……どう?何秒だった?」
穏乃「え?あ、ごめん、全然計ってなかった」
淡「ええーっ!?もう!私の息を返してよっ!」
4時間後―――
<穏乃の部屋>
穏乃「…………」
淡「…………」
穏乃「………ねえ」
淡「なに?」
穏乃「エアコンの温度とか大丈夫?寝苦しくない?」
淡「大丈夫。ちょうどいいよ」
穏乃「ごめんね、私だけベッドで」
淡「高鴨穏乃の部屋だもん。全然いいよ。この布団フカフカだし」
穏乃「そっか、よかった」
淡「…………」
穏乃「…………」
穏乃(高鴨穏乃、か……)
穏乃「……………ねえ」
淡「なに?」
穏乃「ふと思ったんだけどさ」
淡「うん」
穏乃「大星さんって、私のこと『高鴨穏乃』って呼ぶよね?」
淡「……うん」
穏乃「………なんかさ、友達なのに他人行儀っていうか」
淡「…………」
穏乃「だから……その、なんていうか……」
穏乃(穏乃って呼んでほしいんだけど………って、なんかすっげー照れくさい……//)
穏乃(憧の時は何も言わなくても憧の方からしずって呼んできたし、玄さんとかは年上だから穏乃ちゃんって普通に呼ばれた)
穏乃(……考えてみたら、自分から下の名前で呼んでって言うの初めてだ。うわ、やっべ、ドキドキしてきた)
淡「…………」
穏乃「…………わ、わかんないかな?」
淡「わかんない」
穏乃「ええー……」
淡「高鴨穏乃は私のこと友達って言うくせに『大星さん』って呼ぶし」
穏乃「あ」
淡「だから私が高鴨穏乃って呼ぶのは間違ってない」プイッ
穏乃「…………」
穏乃(大星さんは………わがままというかお姫様気質というか……)クスッ
穏乃「………あわい」
淡「!」ピクン
穏乃「あーわい♪」
淡「………し、しずの//」
穏乃「!……ありがと、淡」
淡「ふ、ふん……//」
穏乃「……………」ニヘラー..
穏乃(なんか………すっごい心があったかくなる)
穏乃(名前を呼んでもらうだけでこんな気持ちになるなんて……)
穏乃(てゆーか、顔がにやける!やばい!布団かぶって寝よう!)ガバッ!
2日後―――
<阿知賀女子学院 麻雀部部室>
穏乃「~♪」
玄「あれ?穏乃ちゃん、帰らないの?」
穏乃「ん?あ、玄さん。もうちょっとしたら帰ります」
玄「なんか楽しそうだね。いいことあった?」
穏乃「はい!ありました!」
玄「そうなんだ~♪よかったらどんなことか、私に教えてほしいな」
穏乃「いいですよ!あのですね、一昨日から白糸台の淡と勝負してるんです!」
玄「あわい?………えっ、あの大星さんと!?」
穏乃「はい!それで、今は猫真似勝負をしてて……」
玄「ね、猫真似勝負?それってなんなのかな?」
穏乃「えと、どっちが猫っぽく振る舞うかって勝負なんです!」
玄「そうなんだ」
玄(というより、いつのまに仲良くなったんだろう?)フゥーム
穏乃「それでちょうど今、淡から写メが来まして……ほら、見てくださいよ!これこれ!!」
玄「ん?………わぁ、可愛い」
穏乃「でしょ!?髪を頭の上で猫耳みたいに結んで……猫耳ヘアっていうんでしたっけ?マジでやばい!!」
穏乃「首輪まで付けて……しかもマジックでヒゲも描いてるし。ああ……可愛い…//」
玄「本格的だね。穏乃ちゃんも猫ちゃんの真似して写メール送るの?」
穏乃「いえ、私は淡からのメールにめちゃくちゃ食いついて、猫真似写メをいっぱい送らせておきながら、つれない返事をすることで猫の気まぐれさをアピールして勝ちます」
玄「……大星さん怒らないかな?」
穏乃「多分怒りますね。『私はこんなに頑張ったのに!穏乃のおバカ!』って感じで……でもその怒ったところも可愛いんですよ~!」エヘヘ
♪~
穏乃「あ、またきた!」ポチポチ..
憧「もう……締まりがない顔しちゃって」ボソッ..
玄「憧ちゃん?」
憧「しず、教室でもずっとああなのよ」
玄「ずっとメールしてるの?」
憧「そ。昨日、一昨日って一緒に遊んだ時にメアド交換したんだって」
玄「そうなんだー。仲良しさんだね」
憧「うーん……仲良しは仲良しだけど、それ以上のものを感じるんだよねー………彼氏が出来たばかりの子みたいというか……」
玄「え?」
憧「彼氏からのメールをニコニコしながら待ってる感じ?」
玄「でも、穏乃ちゃんは大星さんとメールしてるって」
憧「そうなんだけど……しずが初恋したらこうなるだろうな、ってイメージとピッタリ重なるのよね」
玄「どんなイメージなの?」
憧「……好きな人に一直線、ちょっとしたことに感動する、結構ヤキモチ焼き」
玄「あはは、確かに穏乃ちゃんっぽいかも」
憧「1つ好きになったらそれに集中するタイプだから。麻雀もそうだし、きっと恋愛もそうね」
穏乃「わあ!しっぽも用意してる!可愛い!!あ、宥さん!灼さん!これ見てくださいよ!可愛いんです!」タタッ
玄「…………」
憧「……それにしても浮かれすぎ」フフッ..
<白糸台高校 麻雀部部室>
淡「むふー、これだけ送れば勝ったも同然!!」
菫「はぁ……なんで私が猫になった淡を撮影しなければならないんだ、まったく」
淡「ありがとうございましたー♪」
菫「ん」
淡「でも私ってツイてる!猫真似の完成度を高めたいなーって思ってたら、菫先輩が首輪持ってるんだもん!」
菫「あ、ああ……運がいいな」
淡「サイズもピッタリだし。菫先輩って犬飼ってるの?」
菫「いや、それは……まぁ、それなりにな」
淡「?」
ガチャ
照「…………」
菫「ん?」
淡「あれ?テルもまだ残ってたんだ?」
照「うん。淡は菫と何を…………あ」
淡「?」
照「その首輪……」
淡「これ?菫先輩のだよ!」
照「…………」
菫「あ、待て照……」
照「……私以外の人に付けるなんてひどい」
淡「へ」
菫「ちょ、ちょっと待て!」
照「菫は……私を捨てるの…?」
菫「ば、馬鹿なことを言うな!私にはお前しかいない!首輪は貸しただけだ!」
淡「??」
照「……本当?」
菫「ああ」
照「………だったらキスして」
淡「!?」
菫「そ、それは……淡が見ているし」
照「私が好きだって、淡の前で証明して」
菫「………わかった」
淡「え?えっ?」
淡(キスって……どういうこと?)
菫「私が愛してるのは照だけだよ………ん……」チュ
照「ん……ちゅ……」
淡「!!!」
淡(て、テルと菫先輩がキスしてる!?なんで!?)
淡(……2人は恋人じゃなくて友達だよね!?すごく仲が良い友達同士はキスするのが普通なの!?)
菫「ん……はぁ……これで信じてくれたか?」
照「…………///」コクリ
菫「ありがとう」ナデ..
淡(友達……恋人……わかんない………こうなったら直接聞こう!)
淡「あ、あ、あのっ!」
菫「なんだ?」
淡「つかぬことを聞きますが、テルと菫先輩は……友達、だよね」
菫「ああ」
照「うん」
淡「………それじゃあ……なんで………き、きす?……するの?」
菫「それは……なんというか……//」
淡(菫先輩が照れてるの初めて見た!)ナント!
照「友達で、恋人だから」
淡「友達でこいび……ええっ!?」
照「///」
淡「で、でもでもっ!女の子同士なのに……」
照「あ……」シュン
菫「…………」ギュッ(照の肩を抱く)
照「菫……」
菫「確かに女性同士で付き合っているのは少数だし、日本では結婚することはできない。しかし、この気持ちに恥じるものなどない。私は世の男女が恋人に向ける愛情となんら変わらない気持ちを、照に対して抱いている。そして、これからも抱き続けていく」
照「うん。私も……」ギュッ
淡「…………」
菫「……だから安心して相談してくれていいぞ」
淡「……ふぇ?相談?」
菫「ああ。淡も女性に恋をしてるだろう?」
淡「ええっ!?し、してないよ!」
菫「ん?高鴨さんが好きなんじゃ…?」
淡「ち、違うよっ!穏乃は友達だよ!」
菫「そうか?私は友達に向ける感情以上のものを感じたがな。今も奈良に行った時の話を楽しそうに語っていたじゃないか」
淡「だからって……」
菫「高鴨さんのお母さんに会った時にやたら緊張したというのは、好きな人の母親だからだろうな、とも思った」
淡「あ……」
淡(確かに……なんでっていうぐらい緊張したけど……)
照「……淡が同級生の友達と話してるのを見たことあるけど、その時と高鴨さんの話をしている時の淡の目の輝きが全然違う」
淡「…………!」
菫「一度であろうと、自分を麻雀で負かした相手だからというのもあるだろう。だが、本当にそれだけか?」
淡「…………」
淡(それだけ?……どうなんだろ?)
菫「インハイが終わってからも、高鴨さんのインタビュー記事が載っている雑誌をとっておいたり、大会のDVDを繰り返し見てたじゃないか」
淡「あ……」
淡(それは……負けた悔しさを忘れないように……だったはず……だけど……)
菫「麻雀の実力なら高鴨さん以上の人間は何人もいる。でも淡がこだわるのは高鴨さんだけ。それは何故だ?」
淡(そう……決勝で絶対倒すって決めて………実際、勝った。でも穏乃のことが頭から離れなくて………どうしてだろう?)
淡「……………わかんない」
菫「そうか……」
淡「うん……」
照「…………ねえ、淡。私と菫がしたみたいに、高鴨さんとキスするところを想像してみて」
淡「え?な、なんで?」
照「いいから」
淡「う、うん……」
淡(穏乃とキス……?)
淡「…………」
菫「どうだ?」
淡「テルと菫先輩の見てたけど、実際にキスしたことないから想像しようにもよくわかんない」
菫「それもそうか……なら、告白はどうだ?」
淡「告白?」
照「そう。高鴨さんから告白される場面を想像する」
淡「わかった」
淡(穏乃から告白……)
~~~~~~~~~~~~~~~
穏乃「私、淡のことが好き……///」
穏乃「淡のためだったらなんでもできる!」
穏乃「……もし淡がエッチなお願いを望むなら……叶えてあげる」
穏乃「だから……私の前では全てを見せてよ……//」
~~~~~~~~~~~~~~~
淡「むぁあ~~!!」
照・菫「!!」ビクッ!
淡(やばいって!!すっごく嬉しい!!穏乃ってちょー可愛いじゃん!!)ドキドキ..
照「どうだった?」
淡「どうって……~~~~///」カァアァ..
照「淡、顔真っ赤」
淡「しょ、しょうがないじゃん!勝手になっちゃうんだから!青くなるよりいいでしょ!」
菫「確かにな」
淡「……ね、これって……ホントに好きってことなのかな?告白されるの想像してからドキドキが止まらないんだけど……」ドキドキ
照「そのドキドキが嬉しさから来てるものなら……間違いないよ」
菫「ああ。それが恋というものだ」
淡「そう……なんだ……」
淡(私は穏乃が好き………これが……恋……)
淡「ど、どうしよう!?」
照「え?」
淡「私が穏乃を好きだってのはわかったけど、このあとは何すればいいの?ねえねえ!!」
菫「恋人として付き合えるように努力する、だな」
淡「なるほど……」
菫「そのためには……」
淡「あ、ねえ、女の子同士って付き合ったらどんなことするの?」
菫「ん?別に男女のカップルとそう変わらないと思うぞ?あ、まったくエッチしない人たちもいるみたいだけどな」
淡「ほうほう…」
淡(エッチかぁ……女の子同士のエッチって、どうやるのかな?おそらくお互い裸になってから…………って)
淡「ああ~~~っ!!」
照「っ」ビクッ!
菫「な、なんだ急に……」
淡「私……穏乃と一緒にお風呂入った……裸、見られちゃった……」
菫「それがどうかしたか?」
淡「え?だ、だって……恥ずかしいよ……穏乃は友達っていう意識だったから……私、すっごい無防備だったし……///」
菫「?」
照「菫にはわからない。淡が感じてるのはきっと『される側』の感覚だから。私にはわかる」
菫「そういうものか……」
淡「うぅ……//」
照「大丈夫。恥ずかしいかもしれないけど、淡はキレイだから自信を持って。ね?」
淡「テル……ありがと……でも私ね、暑いからって脱衣場で大の字に寝て……穏乃にうちわで煽いでもらっちゃったの……」
照「え゛」
淡「うぅ……あの時の私……ホントおバカだよぉ……」
照「それは………」チラ
菫(わ、私にフォローしろというのか?)
菫「あ、淡。過去のことは過去。悔やんでも仕方がない。それよりも未来について考えよう」
淡「未来……?」
菫「ああ。攻め方としては押せ押せでいいだろう、メールでも電話でもいい。とにかく連絡して繋がりを持つんだ」
淡「押せ押せ……」
照「うん。淡にはその方が合ってると思う。それに女の子同士だから、待ってるだけだと難しい」
淡「わかった。さっそくメールしてみる!」
淡(『昨日の料理勝負で穏乃が作ってくれた納豆ご飯が美味しかったからまた食べたい!今週の土曜日も遊びに行っていい?』……と、送信)ピッ
淡「よ、よし……」
♪~
淡「きた!!穏乃はなんて返してくるかな?『淡の作ったパスタをまた食べたい』とか?」ピッ
穏乃『うん』
淡「…………………え?」
照「どうしたの?」
淡「なんか……そっけないの」ホラ
照「………本当だね」
菫「もう1回送ってみたらどうだ?」
淡「う、うん」
淡(『その「うん」は、いいよってことだよね!土曜日が楽しみだなぁ~!私が先に100勝するからねっ!負けないよ~♪』……送信)ピッ
♪~
淡「きた!………………うぅ」
照「どう?」
菫「今度はなんて返ってきた?」
淡「……これ」
穏乃『うん』
照・菫「…………」
淡「なんでこんなに素っ気ないんだろ……怒ってるのかな?」シューン..
菫「怒っているとしたら、何か心当たりはあるか?」
淡「わかんないよ……さっきまでメールで褒めてくれてたのに………あ!一昨日、おバカとか言っちゃったからかな……」
♪~
淡「あ、穏乃から電話!どうしよう……」
照「出た方がいい」
菫「ああ」
淡「わ、わかった……………もしもし」ピッ
穏乃『もしもし淡?どうだった?今のメールの感じ』
淡「え?どういうこと?」
穏乃『さっきまで淡を褒めまくって懐いてたのに急につれなくなるの!すっげー猫っぽいよね?』
淡「な……え?」
穏乃『いや、だから猫真似勝負の話』
淡「猫真似勝負?……それで今みたいなメールを送ったの?」
穏乃『そうだよ!気まぐれっぽくて猫っぽいでしょ?どう?どう?』
淡「……し、穏乃のおバカッ!」
穏乃『ええっ!?』
淡「私がどんな気持ちだったかわかるのかーっ!!」
穏乃『わかるのかーって言われても……もしかして……傷付けちゃった?』
淡「!!」
穏乃『あー……だとしたらごめん』
淡「べ、別に?傷なんてついてない。金ぴかだし」
穏乃『そっか』
淡「うん……」
穏乃『あのさ、土曜日楽しみにしてる』
淡「あ……わ、私も!」
穏乃『よかったらまた泊まって行ってよ』
淡「う、うん!泊まりたい!」
穏乃『やった。またいっぱい遊べるね』
淡「えへへ……そうだね」
穏乃『……え?あ、はい!もう帰りまーす!……ごめん、先生に怒られちゃった。切るね』
淡「うん……」
穏乃『また夜にメールするね』
淡「っ!うん!!ばいばい!」
ツー..ツー..
淡「…………」
照「どうだった?」
菫「メールの問題は解決したようだな」
淡「うん!」
菫「あとは告白へ向けて頑張るだけだな」
淡「告白……なるほど!」
照「淡に告白されたら、高鴨さんもきっと喜んでくれるはず」
淡「えっ?」
照「?」
菫「どうした?」
淡「……私が告白するの?」
菫「そうだろう?押せ押せで行くといったばかりだぞ?」
淡「…………やだ」
菫「な、なに?」
淡「なんかそれじゃ負けたみたいじゃん」
照「淡……」
淡「だ、だって!私が穏乃を好きで好きでしょうがないみたいなんだもん!」
菫「気付くのが遅かったとはいえ事実だろう?」
淡「っていうか、テルと菫先輩が変なこと言うから、どんどん穏乃を好きになっちゃったんだよ!」
菫「私たちのせいと言うより……なぁ?」
照「うん。高鴨さんを意識してる自分に気付いてるか気付いてないかだけの問題だと思うけど」
淡「ううぅ~……でも自分から言うのはやだぁ~!」
菫「……誰かにとられても知らないぞ?」
淡「それはもっとやだ!」
菫「わがままだなお前は……」ハァ
照「………押せ押せはともかく、焦る必要はないと思う。今すぐ答えを出さなくてもいいから」
淡「テル……」
照「どうせなら、高鴨さんから告白させるぐらいの気持ちでアピールすればいい」
淡「……うん、わかった」
淡(そうだよ。私が穏乃より先に100勝すれば、穏乃は私のことを凄いと認める!そして告白してくる……かもしれない)
淡(よしっ!目指せ100勝だよ!)オー!
土曜日―――
<繁華街>
穏乃「1週間ぶりだね」
淡「う、うん」
穏乃(あれ?前より可愛くなってる?いや、もともと可愛かったけど……)
淡「今日はね、いっぱい勝負して、圧勝するからね!」
穏乃「そうはさせないよ!今のところ52勝ずつで同点……つまり私と淡はほぼ互角!そう簡単に負けはしない!」
淡「ふふん、言うじゃんか。まず最初の勝負は……カラオケの点数!!」
穏乃「くっ……まぁいい。絶対勝つ!」
<カラオケボックス>
淡「♪~」
穏乃「…………」
穏乃(上手いなぁ……さすが東京人)
穏乃(………それにしても……相変わらず細いなー……首から肩のラインがキレイだし……後ろから抱きつきたくなっちゃうよ)
淡「ふぅ~……得点は………89点!まぁまぁだねっ!」フフン!
穏乃「次は私だね」
淡「頑張って歌うけど88点以下になるだろね」
穏乃「ふんっ!意地でも90点とってやる!」
穏乃「♪~」
淡「あれ……結構上手い」
淡「…………」
淡(穏乃って、結構指細いんだ……爪もキレイにしてる……意外)
穏乃「ふぅ……ノド渇いた」チューチュー
淡(あ……ジュース飲んでる穏乃の口……なんかえっちぃ……///)
穏乃「点数は………ああっ!85点!」
淡「やった~!私の勝ちぃ!!」
穏乃「悔しい……ねえ、今のは私の負けでいいけどさ、もっかい勝負しようよ!今度は同じ曲勝負とか、ジャンルで勝負とか!」
淡「受けて立つよ!カラオケ女王としてね!」ムフー!
夜―――
<穏乃の部屋>
穏乃「ふぃ~……いい湯だった。淡、次入っていいよ」
淡「うん、ありがと」ガチャ バタン
穏乃「…………」
穏乃「………はぁ」
穏乃(なんで先週みたいに一緒に入ろうって言ってくれなかったんだろ?)
穏乃(私が変な目で見てたって気付いた?いや、そんな感じじゃなかったけどな……)
穏乃(……というか、淡の可愛さレベルが半端なく増してる気がする……なんでだろう?)
穏乃(………これってアレかな?淡が変わったっていうより、私が淡のことを本気で好きになってる、ってことかな?)
穏乃(……うん、きっとそうだ。だってお風呂に入ってる時、すごい寂しかった。さっきまで淡と一緒だったのに、急に1人になったから……)
穏乃(はは……お風呂から出たらすぐ淡に会えるのに。もう完全に好きになってるんだろなー……)
穏乃「……………でも」
穏乃(淡はどうなんだろう?私を友達とは思ってくれてるだろうけど……恋人はなぁ……女同士だし、壁は大きいよな~)
穏乃「はぁ……」
穏乃(とりあえず私に出来ることは……先に100勝することかな)
<風呂場>
淡「………ふぃ~」チャプ..
淡(今日はいっぱい勝負したな~。カラオケでは同じ曲、演歌、アイドル、男の曲、2人とも知らない曲……)
淡(穏乃んちに戻ってきてからは、豆を箸で運ぶ、暗算、ポーカー、ババ抜き、神経衰弱……他にも色々やった)
淡(……最初は穏乃を意識しちゃうと思ってたけど、意外と平気だったね)
淡(むしろ、穏乃と一緒に遊ぶのが楽しくてしょうがなかった。先週も楽しかったけど、穏乃を好きだって気付いてからは、もっと楽しくなった)
淡(からかわれるのはあんま好きじゃないけど、穏乃が喜んでる顔を見ると……怒りも全部吹き飛んじゃうよ)
淡(こんな日がずっと続いたらいいな~……)
淡「………………でも」
淡(穏乃は私のことを友達と思ってて、恋人になりたいとは思ってないんだよね……)
淡(私がお風呂は別々がいいって言った時も、ちょっと驚いてたけど、あんまり気にしてなかったし)
淡(もし穏乃が私を好きだったら、一緒に入りたがるはずだもん)
淡(そしたら私は恥ずかしいから嫌だって言うけど、穏乃がどうしても入りたいってお願いするなら……一緒に入ってあげてもいいつもりだったのに……///)
淡「…………はぁ」
淡(このままだと、100勝しても告白してもらえそうにないなぁ)ブクブクブク..
翌日 夕方―――
淡「今の勝負は私の勝ち!これで……」
穏乃「お互い99勝同士……」
淡(まさか、ここまでもつれるなんてね)
穏乃(まるで狙ったみたいだ。私と淡って、総合力だと本当に互角なのかも)
穏乃(でもとりあえず、次の勝負は負けるにはいかないね。勝った方が100勝だもん)
淡「最後の勝負は何にする?」
穏乃「うーん……あ」
淡「?……あれってボウリング場?」
穏乃「うん。灼さんちだね」
淡「灼……?ああ、亦野先輩とやった……」
穏乃「そう」
淡「ちょうどいいね。最後の勝負はボウリングにしようか?」
穏乃「私はいいけど……本当にいいの?」
淡「ぐ……確かに、運動系は全部負けてるけど……でも!最後に勝つことでチャラ!」
穏乃「チャラにはならないと思うけどなー」
淡「いいの!ただハンデというか、条件が1つ」
穏乃「条件?何?」
淡「私は練習時間を1時間もらう!あのボウリング場のコーチ的な人に1時間みっちり教えてもらってから勝負する!どう?」
穏乃「なるほど。私もその間は練習していい?」
淡「だ、だめ!山登りが苦手な人が頑張って山に登ろうとしてるのに、その山が高くなったらだめでしょ!?」
穏乃「あ、やっぱり?」
淡「うん。この勝負で穏乃に勝って、私が実は運動神経抜群なことを証明するんだから」フフン
穏乃「…………」
穏乃(これって一見わがままに見えるけど、私に運動が苦手だと思われたままじゃ一緒に遊べなくなるかもしれないと思って、みたいな理由かな?だとしたら可愛すぎる…)
穏乃「……………」
穏乃(って、そんなわけないか。ダメだ私……全部都合いいように考えちゃってるよ。ベタ惚れってやつじゃん)クスッ
<Sagimori Lanes>
穏乃「……というわけで、コーチをお願いしたいんですけど」
灼「あー……うちには専属のプロはいないんだ。私でよければ教えるけど……」
淡「ホント!?やった!」
灼「ただ……おばあちゃんが帰ってくるまでは店番が……」
穏乃「あ!それなら私がやりますよ!」
灼「え?でも……2人で遊びに来たんでしょ?」
淡「そうなんだけど、勝負なの!」ムフー!
灼「?」
穏乃「とにかく、私に任せてください!」
灼「……うん、わかった。ありがとう」
穏乃「いえ!コーチをお願いしたのはこっちですから!」
淡「よろしくお願いしますっ!」
灼「……うん、よろしく」
10分後―――
穏乃「ありがとうございましたー!」
穏乃「………ふう……」
穏乃「…………」チラ
淡「」コウ?
灼「」コウ..
穏乃(熱心に教えてくれてるみたい……さすが灼さん、面倒見がいい)
淡「?」
灼「!」
穏乃(あ……淡の後ろにピッタリくっついた……で、でも……フォームを教えるなら普通にあるよね。ああゆうの)ウンウン
淡「!」ワーイ
灼「」ヤッタネ
穏乃(あっ!ハイタッチしてる!私もまだしたことないのに……)ムゥゥ
淡「」キャッキャッ
灼「」クスクス
穏乃(う~、楽しそう……なんだよぉ~……全然こっち見ないし、絶対私のこと忘れてるよ~)ムゥゥゥ
玄「こんにちは~」
穏乃「いらっしゃいませ!……って、玄さん?」
玄「穏乃ちゃん?どうして穏乃ちゃんが店員さんをやってるの?」
穏乃「今、灼さんがコーチをしてくれてまして。代わりに私が店番してるんです」
玄「あ、そうなんだ」
穏乃「はい。それで、玄さんは?」
玄「灼ちゃんと一緒にボウリングしようかなって」
穏乃「なるほど」
玄「最近は結構一緒に遊んでるんだ~」ニコー
穏乃「へぇ~!そうなんですか?いいですね~♪」アハハ
パカァァン!
淡「………やたっ!ストライク!」
灼「大分上手になったね」
淡「うん!」
淡(穏乃、見てくれた?今ので3回目のストライクだよ!)チラッ
穏乃「」アハハ
玄「」ニコー
淡「!!!」
灼「どうしたの?」
淡「あれ……」
灼「ん?あ、玄来てくれてたんだ」
淡「な、なんか仲良さそうだけど」
灼「うん。まぁ、仲良いからね」
淡「ふーん……」
穏乃「」アハハ
玄「」エヘヘ
淡(楽しそうに笑ってるし。私の練習を遠くで見てるより、その子と話してる方が楽しいってこと?)ムカッ
灼「どうかした?」
淡「う、うん…………ねえ、あの人って、穏乃の友達?」
灼「え?」
淡「……友達なの?」
灼「友達だけど…」
淡「だ、だけど?」
灼「……………」
淡「…………友達だけど……なに?」
灼「……………」
淡「………なんか言ってよぉ……」
灼「……………」
淡「………ねえ……」ウルウル..
灼「…………ただの友達。それ以上じゃない」
淡「あ……そ、そうなんだー!?へぇー!」ニコー!
灼「…………」
淡「実はね、私もあの子はただの友達だと思ってたんだよね~!えへへ♪」
灼「そうなんだ」クスッ
淡「よし!問題は解決っと!ねえ、もうちょっと教えてよ」
灼「うん」
練習後―――
穏乃「よっし、勝負の時間!」
淡「ふふん、パワーアップした私の力を思い知らせてやるっ!」ムフー
灼「頑張ってね」
淡「あ、うん!ありがとね!」
灼「ん」バイバイ
穏乃(なんか仲良くなってる……)
淡「そだ!ボールを磨いておこ」キュキュ..
灼「穏乃」ボソッ
穏乃「はい?」
灼「穏乃があの子を好きになったの、わかる気がする」
穏乃「ええっ?」
灼「うちの部にはいないタイプで、イジられ役っぽい感じが可愛いね。私も思わず意地悪しちゃった」
穏乃「え……もしかして灼さんも……?」
灼「ううん、違うから安心して」
穏乃「そ、そうですか……よかった」ホッ
灼「……あの子も穏乃に懐いてるみたいだし、頑張ってね」
穏乃「えっ?」
灼「……私は私で頑張るからさ」テクテク
穏乃「灼さん?」
玄「灼ちゃーん!」オーイ
灼「今行くっ」タッタッ..
穏乃「…………」
穏乃(淡が私に懐いてる?それって……)
淡「よし!ピカピカになった!穏乃、勝負しよう!」
穏乃「う、うん」
10フレーム―――
パカァアン..
淡「やった!スペア!」
淡(これで135!穏乃が9フレームでストライク出してて、8フレームの得点がちょうど100だから……何本以下なら私の勝ちだろう?)
淡「…………」ウーン..エート..
淡(…………うん、計算しなくても多分勝てるよねっ!)ヨシッ!
穏乃「うーん……」
穏乃(135って結構いいスコアだよね……淡は運動が苦手っていうより、普段あまり運動しないから体力ないだけで、ポテンシャルはかなりのものなんじゃないかな…)
穏乃(っと、今は勝負に集中しないと。ストライクかスペア必須だ。よぉし)
穏乃「…………えいっ!」ゴロロロー..
淡「…………」
パカァァン!
穏乃「あっ!9本か……」
穏乃(残念。でもスペアをとればいいだけの話)
穏乃「えい」ゴロロロ..
パカッ
穏乃「よし!」
淡(お。今のスペアで9フレームの得点が119になった……あれ?ということは、穏乃の得点は……129!?やばい!次で7本以上倒されたらで負け!?)
穏乃「ふー……」
淡(投げる瞬間に、くしゃみして!)イノリ
穏乃「………えいっ!」ゴロロロー..
淡「ああっ!」
パッカァァアン..
穏乃「やった!ストライク!!」
淡「ああ……負けちゃった……」
穏乃「139対135で私の勝ち!」
淡「うぅ……悔しいけど……認めるしかない」
淡(でも、次こそは私が……)
穏乃「これで私の100勝目だね!」
淡「えっ……」
穏乃「?だってお互い99勝だったわけだし……」
淡「あ……そう………だね……」
穏乃「?」
淡(そうだった……元はといえば、私と穏乃のどちらかが100勝するまで勝負するっていう話だった……)
淡(………あれ?じゃあ………もう……終わり?)
淡(穏乃と色んなことして勝負するのも……一緒にご飯食べたり……お泊まりしたりするのも……)
穏乃「淡?」
淡「ゃだ……」ポロ..
穏乃「ど、どうしたの?なんで泣いて……」
淡「だ……だってっ……ぐす……私が先に……100回……っ……勝つはず……だったの……にっ!」
淡(せっかく……いっぱいお喋りできるようになったのに!穏乃が好きな歌も……好きな食べ物だってわかったのに!)グス..
淡「絶対勝つって……決めてたのっ……に……!」
淡(もう……穏乃に会う理由がなくなっちゃうよっ……)
穏乃「淡……」
淡「やだ……私が……負けるなんて………やだよぉ……」グシュ..
淡(こんなに好きになったのに………どうして気付いてくれないの……ばかぁっ……)
穏乃「…………」
穏乃(淡……ごめんね。でも……私はどうしても先に100勝したかったんだ)
穏乃(そうすれば、淡が100勝するまで何度でも会いに来てくれると思ったから)
穏乃(……淡が私を好きになってくれるまで、何度でも勝負しようって……そう決めて……)
穏乃(………でも、それは遠回りの逃げだよね。告白して断られるのが怖くて……)
穏乃「……………」
淡「うぅ……」グスッ..
穏乃(淡がちょっぴりわがままなのはわかってる。だけど、勝負に負けただけの理由でここまで泣くとは思えない……)
穏乃(……期待……しちゃってもいいよね?私とまだ一緒にいたいと思ってくれてるって……)
穏乃(もしかしたら……ただ単に友達としての気持ちなのかもしれないけど……淡が泣いてるのを見てたら……もう……我慢できない。気持ちが抑えられない)
穏乃「……………淡」
淡「…………っ」
穏乃「………ごめん、私……ズルしちゃった」
淡「………え」
穏乃「本当は……淡の方が先に100勝してたんだ」
淡「………ど、どういうこと?」グス
穏乃「その……よく言うじゃん。恋愛は惚れたもん負けって」
淡「え……」
淡(惚れた……?それって……//)カァァ..
穏乃「ね?というわけで、淡の方が先に100勝してた、と」
淡「……ちょっと待って……………その言い方じゃ……わかんない//」
穏乃「えっ?今の、言っててすっげー恥ずかしかったのに……//」
淡「……もっと……わかりやすく言って……///」キュ(穏乃のジャージの裾を掴む)
穏乃「う……///」
淡「ねえ……お願い…///」ユサユサ
穏乃「う、うん……」
淡「…………」
穏乃「淡」
淡「うん」
穏乃「…………私は……淡が好き」
淡「あ………」
穏乃「……///」
淡「……そ、それは友達として?」
穏乃「………ううん、違う……恋愛の好き」
淡「っ///」
穏乃「……………」
淡「……………」
穏乃「……………で」
淡「?」
穏乃「あ、淡は?……淡は私のことを……どう、思ってるの?」
淡「あ……うん」
穏乃「…………」
淡「穏乃は私のこと好き、だよね」
穏乃「う、うん」
淡「私は違うよ」
穏乃「!!!」
淡「私は………大好き」
穏乃「………へ」
淡「だから私の方が好き!」ダキッ!
穏乃「……………あ」
淡「えへへ……これで、どっちが好きか勝負は私の勝ちだねっ♪」
穏乃「………あ………あわい~~~」ギュゥゥ!
淡「いっ、痛いっ!?」
穏乃「もうっ!一瞬目の前が真っ暗になったじゃんかぁ!!」
淡「ご、ごめん」
穏乃「はぁ……でも好き」ギュ
淡「うん……嬉しい」キュ
穏乃「…………どっちが好きか勝負さ、またしようよ」
淡「え?」
穏乃「淡を好きな気持ち……どんどん大きくなってるんだ。先週より今週、昨日より今日、さっきより今、ってさ」
淡「わ、私だってそうだよっ!今も……すっごいドキドキしてるんだから……くっついてるから……わかるでしょ…///」
穏乃「う、うん……///」
淡「///」
穏乃「///」
灼「…………」
灼(よかったね、穏乃)
玄「ぅわわ……2人とも幸せそう」
灼「だね。好きな人と気持ちが通じ合うって、とても幸せだと思う」
玄「うん。わかる気がするよ」
灼「…………あ、あのさ……その……玄は、あんな風に恋人とか作る気は…」ゴニョゴニョ..
玄「お~い!2人とも、おめでと~~」タタタッ!
灼「あっ………もう、相変わらず玄は……一筋縄じゃいかない」フフッ..
玄「灼ちゃんもおいでよ~!!」
灼「うん!」タタッ..
灼(でもしょうがないよね。惚れたもん負け、だもんね)クスッ
1週間後―――
<阿知賀女子学院 麻雀部部室>
穏乃「ねえ、淡がこの世界で一番好きな人って誰?」
淡「むふー、誰だと思う?」
穏乃「ん~……………私かな?」
淡「正解~~♪」ダキッ
穏乃「やったぁ!」
淡「今度は穏乃が問題出して♪」
穏乃「そうだなぁ………よし、問題!私が今一番ハマっているのは何でしょう!」
淡「はいはーい!」
穏乃「はい、どうぞ!」
淡「私とのキス!」
穏乃「正解!」
淡「やったぁ!じゃあご褒美あげる~!」チュッ
穏乃「あっ……今のじゃ短いよ~」
淡「わ、すごーい!私も今同じこと思ってた!」
穏乃「本当!?やっぱり好き同士だからかなー?」エヘヘ
淡「絶対そうだよぉ!あー、嬉しいなぁ~♪……じゃあもっかいキスするね?」
穏乃「今度はもっと長くね?」
淡「うん♪……穏乃、大好き……」チューーーーーーーー..
穏乃「んーー…///」
淡「ぷぁ………あぁ、どうしよう………さっきよりもっと穏乃のことが好きになっちゃった///」スリスリ
穏乃「私も……なんかもう、淡だけを感じてたいぐらい……///」
淡「穏乃……そんなこと言われたら……ずっとキスしていたくなっちゃうよぉ……///」
穏乃「ふふっ、作戦成功……ちゅ…///」
晴絵「…………ねえ」
憧「何?」
晴絵「なんなのアレは?」
憧「バカップル」
晴絵「それはわかるよ!なんでうちの部室でやってんの!?」
憧「あー……大星さんがね、しずが普段通ってる学校に行きたいって言うから連れてきたんだって」
晴絵「連れてくるのはいいとしても、あんなこと……」
憧「目に毒ではあるね」アハハ
晴絵「あははじゃないよ!灼は何やってるの?部長がちゃんと見てないと……」
憧「灼さんはあそこ」
晴絵「え?」
玄「ここの掃除はこういう風にするの」
灼「なるほど……」
玄「ほうきの使い方はこう」スッ(灼の手ごとほうきを握る)
灼「あっ……手が……///」
玄「ごめんね?この方がわかりやすいと思うんだ」
灼「う、うん……///」
玄「こうやって動かすと、効率いいんだよ。わかった?」
灼「……ごめん。もう1回、教えて…///」
玄「うん、じゃあいくよ?」
晴絵「…………ねえ」
憧「何?」
晴絵「なんなのアレは?」
憧「片想い1人と鈍感1人」
晴絵「そうなの!?片想いって……灼がもごご」
憧「声が大きいって」
晴絵「はぁ……いつの間にそんなことに?灼は私を尊敬してくれてたんじゃ……」
憧「いや、今でも尊敬してると思うよ。ネクタイはしてないけど」
晴絵「あっ!本当だ!」
憧「家に大事にしまってあるみたいだから安心しなよ」
晴絵「そういう問題じゃ……まぁ、それは置いといて、いつから玄を?イマイチわからないんだけど……」
憧「ふむ……結構前の話だけど、玄にドラが集まる理由について灼さんに聞かれてさ。玄と玄のお母さんの思い出の話とかしたんだけど、それからかもしれない」
晴絵「……なるほど」
憧「その時に、阿知賀こども麻雀クラブがなくなってからも部室を守り続けてたって話もしたし」
晴絵「………そっか……それらの話を聞いた上で、インハイで玄が見せた覚悟……」
憧「うん、優しさと強さを両方持ってる玄に惹かれても不思議じゃないね」
晴絵「はぁ……」
憧「あとさ、準決勝の先鋒戦が終わって玄が控室に戻って来た時、新道寺と千里山の人たちとの連携に気付いてなかったところとか、頼りない部分もあるけど、そこを支えたいとか思うのかも。灼さんも健気っぽいから。ずっとハルエのファンだったし」
晴絵「もういい……わかったから」ハァ
憧「何を拗ねてんの?応援してあげればいいのに」
晴絵「はいはい、わかってるよ………っていうか、憧だって拗ねたくなるでしょ?」
憧「なんで?」
晴絵「しずと大星淡もそうだけど、灼と玄もあんな感じで……余った者の悲しさというか……」
憧「あー……それは……」
晴絵「?」
宥「あのー」
晴絵「ん?宥か……どうした?」
宥「その……憧ちゃんにお話が…」
晴絵「え?いや、今は私と…」
憧「鈍いなー、ハルエは」
晴絵「……え?」
憧「要するに宥姉はさ、あたしがハルエとばかり喋ってて寂しいって言ってるの」
晴絵「………ということは?」
憧「宥姉、どうしてほしい?」
宥「ぁ……あの………ぁっためて……///」
憧「オッケ」ギュッ
宥「……あったか~い///」
憧「えー?あたしはまだ寒いけど?宥姉からは抱きしめてくれないの?」
宥「あ……ご、ごめんね?」キュッ
憧「ん~……やっとあったかい」
宥「………憧ちゃん……」
憧「ん?なぁに?」
宥「…………ほしい、な」
憧「なにがー?」
宥「うぅ……///」
憧「ちゃんと言ってくれないとわかんないよ?」
宥「き、きす」
憧「え?もっかい言って?」
宥「………キスして」
憧「もっと大きな声で言わないと………他の子にキスしちゃうよ?」(宥の耳元で囁く)
宥「っ!だ、ダメ!」
憧「じゃあさ…………大きな声で……おねだりしてよ」クスッ
宥「う、うん………」スゥーッ...
宥「わ、わたしっ!憧ちゃんと……キス、したいっ!!」
晴絵「…………」
宥「////」ハァ..ハァ..ハァ..
憧「ふふっ……かっわいい」ナデナデ
宥「ん……//」
憧「恥ずかしい思いさせちゃってごめんね?……でもさ、宥姉がおねだりするの……可愛いから」
宥「お、怒ってないけど……他の人にキスはやだ」
憧「しないよ……宥姉以外なんてやだもん」チュ
宥「んっ……ちゅ……」
憧「っ……ほんっと、可愛い……宥姉はあたしのだ……誰にも渡さないから…」チュ..チュ
宥「うん……離さないで…///」
晴絵「………………」
晴絵「なに?なにこれ?なんでこんなことになってるんだ!?なんで私の心はこんなに傷付いてるんだ!?」
晴絵「ああっ!無性に寂しい!」
晴絵「灼!私はもう帰るから、鍵はよろしくな!」
晴絵「…………」ピッピッピッ...トゥルルルル..
晴絵「あ、もしもし望!?今日一緒に飲まない?………え?違うけどさ………ただどうしても飲みたいんだ!…………べ、別に誰でもいいわけじゃないよ!え?どうしてって………わかんないけど!望の顔が浮かんだっていうか……」
淡「あぁ~、幸せだね~」
穏乃「うん。幸せ♪」
淡「あ、ねえねえ、今日中に『好き』って100回言えるかな?」
穏乃「もう100回以上言ってるよ~」
淡「じゃあキス100回出来るかな?」
穏乃「楽勝だよ!」
淡「食べさせっこ100回は?」
穏乃「今日の夕飯でやろう!」
淡「えへへ……今日中に全部出来ちゃうね///」
穏乃「うん、淡が喜んでくれると思うと力が溢れてくるから///」
淡「私だって同じだよ♪好き好きパワーは無敵だねっ!」
穏乃「淡とならなんでも出来ちゃいそう。夢が広がるよ!」
淡「夢…………」
穏乃「どうしたの?」
淡「今ね、1個……大きな夢が出来た!」
穏乃「夢?なに?教えて教えて!」
淡「それはね……」
淡「穏乃と100歳までずっと一緒!」
終わり
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