男「俺の好きなタイプ? 常に限界に挑み続ける奴が好きだな」 (19)

幼馴染「え、常に限界に……?」

男「そうだ。常に限界にだ」

幼馴染「そっか……。運動部の娘が好きなのか……」ショボン

男「誰も運動部だとは言ってない。ただ限界に挑み続ける奴が好きなんだ。俺はそういう奴と切磋琢磨して高みへと行きたいんだ」

幼馴染「それはどんなジャンルの限界でもいいの……?」

男「ああ。例えどんなジャンルでも、限界に挑むってのは大変なものだ。そしてその苦難が自分を成長させるんだ」

幼馴染「そっか……。じゃあ私こっちだから」

男「ああ、また明日」

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――翌日

幼馴染「おはよー」

男「おはよう……ってどうしたんだその恰好は! パジャマじゃないか!」

幼馴染「あ! 間違えた!」

男「昔から少し抜けてるとは思っていたが、パジャマ登校とは恐れ入った!」ハッハッハ

幼馴染「どうしよう……もう家に取りに帰る時間はないし……」

男「困ったな」

幼馴染「怒られるかな……?」

男「どうだろうな……。悪気があったわけじゃないし……」

幼馴染「……。ギリギリ怒られないかな……?」

男「そうだな……ギリギリ……」

男(はっ……?! ///)ドキッ

幼馴染「私はね、悪気が無くても怒られる可能性は十分にあると思う。もう中学生なんだし。でも誠心誠意謝れば、ギリギリ怒られないような気もする」

男「そ、そうかもしれないな……///」ドキンドキン

幼馴染「でもまだパジャマで良かったよ……。スウェットとかジャージだったら『なんだその恰好は!』って問答無用で怒られそうだけど、パジャマだったらあまりに間抜けすぎてギリギリ怒りにくいもんね」

男「そうだな……ギリギリ怒りにくいな……///」ハァハァ

幼馴染「でも中学2年生でクマさんのパジャマか……。自分で言うのもなんだけど、結構ギリギリだよね」

男「くぅッ……! 確かにギリギリだ……! ///」ドックンドックン

幼馴染「3年生だと受験生だから『なんだそのパジャマは!』ってなるけど、子どもと大人の境が微妙な2年生だったらギリギリOKみたいな」

男「ど、どうしたんだ今日は……? やけに限界に挑んでくるじゃないか……///」

――10分後

男「普通に怒られてたな」

幼馴染「うん……」ショボン

男「まぁ体操着持ってるのに着替えなかったんだから当然だな」

幼馴染「うん……」

男「あとよくよく考えれば中3でクマさんのパジャマを着てようが、別にどうでもいいよな。受験生とか関係ないし」

幼馴染「うん……」

男(ふぅ……さっきは思わず動揺してしまった。だがこのような高翌揚は久しぶりだ……。複雑骨折を隠してちびっこ相撲に出場したとき以来か……?)

幼馴染「はぁ……一人だけ体操着で授業受けるの恥ずかしいな……」

男「気にするな。それより消しゴムを貸してくれないか? どうやら昨晩、筆箱に入れ忘れたようだ」

幼馴染「いいよ。はい」

男「どうもありが……」

男(はっ?! ///)ドキンッ

男(な、なんだこの極限までちびた消しゴムは……?! 消しかすより辛うじて一回り大きいだと……?! ///)ドッキンドッキン

幼馴染「それ、間違えた箇所と人差し指の間に挟んでゴシゴシすると微妙に字が滲むよ」

男「それは消しゴムとしての役割を果たしているのだろうか……? ///」バクバクバクバク

幼馴染「あ、でも私もそれしか持ってないし、何度も貸し借りしてたらどこかに転がってっちゃうかもしれないから……」スッ

男(じょ、定規……? ///)

幼馴染「これでよし」サクッ

男(は、半分にしただとおおおおおおおっ?! ///)カハァッ

幼馴染「うーん……職場体験のお礼の手紙、半分も書いたけど……。なんか違うな……」

男「ま、まさかお前……! ///」ハヒッハヒッ

幼馴染「消しちゃえ!」ゴシゴシゴシゴシゴシ

男「ぬはあっ! ///」ジタバタ

幼馴染「あ、指先が真っ黒になっちゃった」

男(消しゴムで消したのか、皮脂で消したのか……それすらも俺には判別ができない……///)フシュウフシュウ

幼馴染「用紙も真っ黒。でも読めないことはないし……」

男「いや流石にそんなのを出すのは失礼だろう……///」

幼馴染「でも感謝の思いがこもっていれば、きっと伝わるよ! ギリギリ!」ニコッ

男「す、すすすす……好き……好き……///」プシュウウウウウッ

幼馴染「へっ? ///」

教師「おいそこ! うるさいぞ!」

男「す、すみません……///」

幼馴染(び、びっくりした……///)

――10分後

男「普通に書き直しになったな……」

幼馴染「うん……」ショボン

男「そりゃあお世話になった相手に、斜めから光当てないと読めないような手紙を送ったら、伝わるものも伝わらないよな……」

幼馴染「うん……」

男「あとあのサイズの消しゴムは、どう言い訳しようが消しかすだな」

幼馴染「うん……」

――2限・美術

男(まったく……今日はどうしたと言うんだ? 今日のコイツを見てると、卒業式で急きょ病欠になった校長の代わりにアドリブの祝辞を述べたときのことを思い出す……)

男子A「うっひょお! この美術の資料集、もはやエロ本じゃん! ///」

男子B「ギリギリ乳首見えてんじゃん! ///」

幼馴染「男子はああいうの好きだねぇ……」ハハハ

男「芸術をそういう目でしか見れないとは憐れな奴らめ」フン

幼馴染「裸婦画くらいギリギリでも何でもないよね。それより見てよ、このマルセル・デュシャンの『泉』」

男「なんだこの便器は」

幼馴染「これ、市販の便器にサインしてタイトルつけただけなんだって。もう限界って感じだよね」

男「はうっ! ///」ビクンッ

幼馴染「なんで前かがみになってるの?」

男「男性の生理現象だ。気にしないでくれ……///」ハァハァ

幼馴染「体勢を変えられると描きにくいんだけどな」

男「あ、ああそうだったな。すまない……。それにしても互いの顔の絵を描くというのは恥ずかしいものだな。俺は絵心がないし……」

幼馴染「細かく描こうとすると余計に全体のバランスが変になっちゃうよね」

男「そうなんだよ。だから不細工に描けてしまったとしても怒らないでくれ」

幼馴染「ははは、怒らないよ。よし、描けた!」

男「何、もうか? 見てもいいのか?」

幼馴染「いいよ。はい」クルッ

男(はッ?! ///)ドキンッ

男「こ、この棒線が……俺なのか……? ///」ドキドキ

幼馴染「うん。タイトルは『友達』」

男「し、しかしデッサンの授業で線を一本引いただけというのは……///」フスウフスウ

幼馴染「リアルを追求したいなら写真で十分。絵はもっと自由なはず」

男「自由すぎやしないか……? ///」

幼馴染「芸術と認められるか微妙なラインだよね。ホントギリギリ」

男「ひゅんっ! ///」キュウウウウウン

――10分後

男「全然認めてもらえなかったな……」

幼馴染「うん……」ショボン

男「先生の前で言ってた『心の目で見た本当の姿』ってのも無理があったと思うぞ」

幼馴染「うん……」

男「それだと俺の本質がただの棒ってことになっちゃうからな。少し傷ついたぞ」

幼馴染「うん……ごめん……」

――給食

給食当番「今日もお前はご飯ギチギチ盛か?」

男「ああ。米と米の隙間がないくらいギチギチに盛ってくれ」

給食当番「ほら。限界まで食えよ」ドチャッ ドチャッ ギュッギュッ

男「ありがとう」

給食当番「そっちはいつも通り半分くらいでいいの?」

幼馴染「ううん。私もギチギチ盛で」

給食当番「な?!」

男「や、やめておけ! これは男の俺でも腹が痛くなるような量なんだぞ! ///」

幼馴染「でも同じ給食費を払っていつも半分くらいしか食べないのももったいないなぁって」

給食当番「そりゃそうかもしれないけどさ……」

幼馴染「それに一度限界まで食べてみたかったし」

男「ふひゅッ! も、盛ってやれ……///」ハァハァ

給食当番「いいけどなんでお前、前かがみになってんだ……」ドチャッ ドチャッ ギュッギュッ

――30分後

幼馴染「うう……もう入らない……。お腹痛い……」

男「頑張れ! 頑張るんだ! もう6割はいったぞ! ///」ビクンビクン

幼馴染「げ、限界ってどれくらいなのかな……」ヒイヒイ

男「俺が本当に限界を感じたのはフードファイトの世界王者になったときだな。あの時はホットドッグを食いながら三途の川を渡る幻を見た///」

幼馴染「流石に死ぬのはちょっと……」フラッ ドサッ

教師「ど、どうした?! 大丈夫か!」

男「き、気絶してる……! 限界まで食べたんだ……! ///」ハヒッハヒッ

教師「何でお前は鼻息荒くしてんだ! こいつを保健室に連れてくからさっさと足を持て!」ウンショ

――保健室

幼馴染「はっ!」パチッ

男「よかった! 目が覚めたか!」

幼馴染「あれ、なんで私保健室に……?」

男「食べ過ぎてぶっ倒れたんだ。心配したぞまったく///」

養護教諭「嘘こけ、ずっと寝顔見て興奮してたくせに」

男「た、確かに興奮はしてましたが、心配してたのも事実です! ///」

幼馴染「なんかごめんね。迷惑かけちゃったみたいで……」

男「気にするな。しかしなんだって急に限界に挑むようになったんだ?」

幼馴染「……だって限界に挑み続ける娘がタイプだって言ってたから……///」

男「そ、そうか……。確かにそうは言ったが……。でもこんな毎日が続いたらお前の生活はボロボロになるぞ。今日だけで何回叱られたんだ。もっとこう、程々に限界をだな……///」

幼馴染「……それで? ///」

男「え……? ///」

幼馴染「私の好きだって気持ちは伝わったと思う……。だからその返事が聞きたいな……///」

男「……。言わなくたって分かるだろう。俺は今、興奮しすぎて立つに立てなくなっている。……まあ勃ってはいるんだが……///」

幼馴染「?」

養護教諭「なに大事な場面でギリギリのセクハラしてんだお前は」ベシッ

おしまい

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