男「カフェでノートパソコンいじってる奴って何してんだろ」 (25)

<カフェ>

男「初めて入るけど、なかなかいいカフェだな、ここ」

友人「ああ、雰囲気落ち着いてるし、コーヒーもうまいな」

男「ところで、こうして見まわしてみると……」キョロキョロ



カタカタ… カタカタカタ… カタカタ…



男「カフェでノートパソコンいじってる奴って多いよな」

友人「確かに」

男「画面を見るのも悪いから見ないようにしてるけど、ああいう人らって何してんだろうな」

友人「さぁ……どうせゲームとかじゃねーの。かっこつけてるだけで、遊んでるのさ」

男「だろうな~、カフェで集中できるわけないし」


営業マン「これはこれは……心外だな」カタカタッターン


男&友人「!?」ビクッ

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男「や、やべ……」ボソボソ

友人「聞こえてたのか……」ゴニョゴニョ

営業マン「実際に確かめたわけでもないのに、想像で人のことを悪くいうのは感心しないぞ」

男「す、すみません……」

友人「ところで……あなたは何をやってるんです?」

営業マン「帰社した後、上司に提出するための日報を作ってるのさ」カタカタ

男「へえ~」

友人「でも……どうしてわざわざカフェで? 会社でやればいいのに」

営業マン「営業ってのは外回りが多いから、外で仕事しなきゃならない場面も多いんだよ」

営業マン「それに、会社で仕事してると同僚とつい雑談しちゃったり」

営業マン「余計な雑用を頼まれたりして、かえって集中できないところもあるからね」

男「そういうことですか」

友人「なるほど」

男「ですけど、カフェでパソコンいじってる全員が日報を作ってるってことはないですよね?」

営業マン「それはそうだろうね」

友人「他の人は何やってんだろうなぁ……気になってきちゃった」

営業マン「そうだ! だったら他の人にも聞いてみたらどうだ?」

男「え?」

営業マン「『あなたはパソコンで何してるんですか?』って」

友人「え!? それはまずいですよ……絶対怒られる」

営業マン「大丈夫さ」

営業マン「俺はこのカフェの常連だけど、ここの客はみんな気さくで優しいから」

男「う~ん……どうする?」

友人「聞いてみるのも面白いんじゃね? 気になるじゃん」

男「そうだな! じゃあまず、あっちの学生っぽい人に話しかけてみようか」

営業マン「……」

男「すみませ~ん」

学生「はい?」カタカタ

友人「ノートパソコンでどういう作業をしてるかってのを教えてもらえないですか?」

学生「ああ、いいですよ」カタカタ

男「これは……レポートかな」

学生「ええ、カフェラテ飲みながらレポートを仕上げてます」カタカタ

友人「おお~、タイピングも早い」

男「差し支えなければ、どんな内容か教えてもらうことってできます?」

学生「僕は不老不死の薬品の研究をしてるんです」

男&友人「え?」

男「ふ、不老不死……?」

学生「ええ、薬自体はすでに完成しており、今はレポートにまとめている段階です」

友人「完成してるの!?」

学生「はい、この通り」サッ

男「……!」

男(『妄想ですか?』といってやりたいが、嘘や冗談をいってるようには見えない……!)

学生「いかがです? お一つ」

男「い、いえ、結構ですっ!」

友人「オレもいりません! ちゃんと天寿をまっとうします!」

学生「そうですか、残念です」

男「いやぁ~、ビックリしたな」

友人「うん……いきなり不老不死が出てくるとは」

男「もしかして、あの人、すでに不老不死になってるんじゃ……」

友人「深く考えるのはやめようぜ。怖くなってきた」

男「気を取り直して、次の人に話しかけてみよう」

友人「そうしよ」

男「あの~」

青年「ん?」カタカタ

男「ノートパソコンで何をしてるのか教えてもらえますか?」

青年「いわゆるマネーゲームだね」カタカタ

友人「株とか先物取引とか、今流行りの仮想通貨みたいなことですか?」

青年「そうそう」カタカタ

男(全然知らないけど、チャートとかいうやつが、画面上にびっしり並んでる……)

男「どのぐらい儲けてます?」

青年「今、一兆円儲けた」ッターンッ

男「は?」

青年「あ、十兆円損した」カタカタ

友人「ええ!?」

青年「おっ、二十兆円儲けた」ッターンッ

男「オイオイオイ」



男「なあ……株だとか先物取引って、こんなにムチャな上がり下がりするもんなの?」ボソボソ…

男「額がケタ違いすぎるだろ……」ボソボソ…

友人「オレが知るかよ……」ヒソヒソ…

青年「ふぅ~……少し休むか。コーヒー飲も」ゴクッ

男「ど、どうでした?」

青年「トータルで100兆円の儲け。まあまあかな」

男(まあまあかな……って)

友人(一生遊んで暮らせるってレベルじゃない額儲けて、なんの感動もないのかよ……)

男(きっと金を儲けることが手段でも目的でもなく、習慣化しちゃってるんだな……)

男「少しよろしいですか?」

外交官「なんでしょう?」カタカタ

友人「パソコンでどんなことをしてるのか、教えてもらっていいですか?」

外交官「私は外交官なんですが、今、A国首相とB国大統領のネット会談を見はってましてね」カタカタ

男「へぇ~、他国同士のやり取りにも気を配ってるんですか」

友人「今やネットで外交する時代か……」

外交官「おっとっと、仲裁メッセージを送らないと!」カタカタ…

外交官「ふう……危ない危ない」

男「どうかしたんですか?」

外交官「A国とB国が、危うく戦争になるところでした」

男「えええええええええ!?」

友人「せ、戦争!?」

外交官「私が仲裁しましたから、しばらくは大丈夫でしょう。戦争になってたら十万人は死んでたな」

男(いったいどんな会談になってたんだ……)

外交官「せっかくですから質問にお答えしましょう。なにか質問はありますか?」

男「いえいえいえ! A国とB国に集中して下さい!」

友人「また戦争の危機になったら困りますから!」

外交官「そうですか」カタカタ

メガネ「……わたくしが何をしているか、ですか?」カタカタ

メガネ「説明するより、画面を見てもらった方が早いでしょうね」クイッ

ズガガーンッ ズガーンッ ズガガーンッ

男「……」

友人「……」

男(迫りくる隕石を破壊するゲームをやってる……。やっぱりゲームやってる人もいるんだな)

友人(にしても、このゲームのグラフィックやたらリアルだな。実写みたいだ)

男「これは……面白そうなゲームですね」

メガネ「いえ、これはゲームではありませんよ」

男「へ?」

メガネ「わたくしは地球に落ちてくる隕石を撃ち落としてるんです」

男「隕石を!?」

メガネ「地球には毎秒のように、人類滅亡クラスの隕石が落ちてきています」

友人「毎秒!?」

メガネ「それを破壊するのがわたくしの仕事なのです」

男「えええええ!?」

メガネ「すごいでしょう?」クイッ

友人「いや、眼鏡クイッしてないで、画面見て、画面!」

男「なんだかすごい人ばっかりだな……」

友人「ああ……遊んでる人なんて一人もいやしねえ」

男「最後にあそこにいる女の人に話しかけてみるか」

友人「そうだな」

男「失礼します」

黒装束女「なにかしら?」カタカタカタカタ

男「パソコンで何をやってらっしゃるんですか?」

黒装束女「ああ……これ? 何もしてないわ。いじってるフリをしてるだけよ」カタカタ

男(いじってるフリ……!?)プッ

友人(おいおい、最後にとんでもないの来たな)クスクス

男「なんで、そんなことしてるんですか?」

黒装束女「ここで私が毎日六時間ノートパソコンをいじらないと、因果律が乱れて」カタカタ

黒装束女「宇宙そのものが崩壊するからよ」カタカタ

男(なにいってんだ、この女。さすがに宇宙はないわ)

友人(うわぁ~、完全にヤバイ奴だよこれ)

黒装束女「信じてないって顔ね」

男「い、いや……(信じられるわけないだろ)」

友人「そんなことないですよ、信じてますよ」ニヤニヤ

黒装束女「いいわ。だったら、パソコンいじるのをやめてあげる」スッ…



グチャッ……



男「!?」

グニャァ~……



男「な、なんだ!?」

友人「このカフェが……いや世界が歪み始めた!」



ボロボロ… ボロボロ…



男「うわわわわっ!? なんだなんだ!?」

友人「あちこちが崩れ始め……!」



ボロボロボロボロボロ…



男&友人「うわああああああああああああああああああああああっ!!!!!」

黒装束女「ね?」カタカタッターン

男「!」ハッ

友人「戻った……」

黒装束女「本当だったでしょ?」

男「はいっ! 本当でしたっ!」

友人「このカフェで宇宙を維持してくれて、ありがとうございますぅ!」

男「いやぁ~、冷や汗かいたよ」

友人「オレも汗びっしょりだ」

男「カフェでノートパソコンしてる人って、みんなすごいことやってるんだな……」

友人「ああ……先入観でどうせかっこつけてるだけなんていって反省してるよ」

営業マン「二人とも、カフェでノートパソコンをいじってる人がすごいってよく分かっただろう?」

男「はい、よく分かりました」

友人「勉強させてもらいました!」

男「俺はノーパソ持ってないけど、ちょっとやってみようかなって思いましたよ」

友人「オレもオレも!」

営業マン「そうかい、だったら――」

営業マン「この○×社のノートパソコンなんかどうだい?」

男「あっ、かっこいい!」

友人「よさそうなパソコンですね!」

営業マン「最新式のCPUを搭載していて、バッテリーは長持ち、容量も特大だ」

男「す、すごい!」

友人「これ買います!」

営業マン「では、この書類のここにサインしてくれたまえ」

男「はーいっ!」

友人「分かりました!」

男「ありがとうございました!」

友人「さっそくノーパソデビューします!」

営業マン「ハハハ、またね」

営業マン「……さて、日報の続きを書こう」カタカタ

営業マン「『ノートパソコン二台、契約に成功……○×社営業部、営業マン』……っと」カタカタッターン

営業マン「カフェでノートパソコンをいじってると、こういうチャンスにも巡り合えるのさ」







おわり

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