わがしかし (27)

第1菓子「あんぱん」

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【その辺の田んぼ道】


ほたる「はむっ、もぐもぐ…」

ほたる「…んん~、そうそう、この甘さ…この触感…」

ほたる「あぁ~、それにしても〝チョコあ~んぱん“は美味しいわぁ…」

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ほたる「ふふっ…〝チョコあ~んぱん〝…」

ほたる「一見中身が〝チョコ〝なのか〝あんこ〝なのかはっきりしない、この絶妙なネーミングセンス…」

ほたる「駄菓子ネーミング部門(ほたる調べ)では、〝タラタラしてんじゃね~よ〝に匹敵する素晴らしいネーミングだわ」

ほたる「お菓子一つ一つにゴマを振って、見た目を限りなくあんぱんっぽくしているのに、その実中身はチョコレート菓子という…」

ほたる「この遊び心…たまらないわぁ~」

ほたる「うふふ、今日はサヤ師にチョコあ~んぱんの魅力を伝えつつ…」

ほたる「あんぱんおじさんときこりのおじさんが実は親友だったって話を解説しちゃおうかしら」

ほたる「うふ、うふふふふ…」

【喫茶エンドウ】


サヤ「…………」ズズズ

サヤ「…ん~、まあこんな感じか」

サヤ「さっきよりは良くなったけど、もうちょっと深みが欲しいなぁ」

サヤ「今のを忘れない内に、もう一回…」

サヤ「…いや、流石に舌がもう苦みに飽きてきたな…」

サヤ「何か甘いものでも…」



「…お困りのようね」


サヤ「あっ、ほたるちゃんいらっしゃ…って相変わらず凄いポーズで登場するね…」

ほたる「ふふっ…サヤ師は〝フードペアリング〝というのを知っているかしら?」

サヤ「ああ、食べ物と飲み物の相性のことだよね」

サヤ「白いご飯にお味噌汁とか、甘い食べ物に苦い飲み物とか、一緒に口にするとお互いが味を引き立て合うっていう…」

サヤ「確かフランスだと〝マリアージュ〝って言うんだっけ?」

ほたる「…………」

サヤ(…ああっ!?ほたるちゃんが「それ私が説明するはずだったのに…」って感じの悲しそうな表情してる!)

サヤ「…な、な~んて何かの雑誌に書いてあった気がするけど」

サヤ「実際のところ、どんな飲み物と食べ物が相性ピッタリなのかはよくわかんないんだよね~!」

サヤ「あー、この苦いコーヒーに合うお菓子でもあればな~!」

ほたる「…………」

サヤ(…あっ、みるみる表情が明るくなっていく…)

ほたる「…そう、そういうことであれば仕方がないわね~!」

ほたる「というわけで紹介するのは…これよ!」

サヤ「チョコあ~んぱん…?」

サヤ「んん?これチョコ…?いやでもあんぱんって書いてあるし…」

ほたる(ふふふふ…相変わらずサヤ師は良い反応をしてくれるわ…!)

ほたる「このチョコあ~んぱん、なぜこんなネーミングセンスなのかというと…」

~中略~

サヤ「へ~、見た目はどう見てもあんぱんなのにねぇ」

ほたる「ふふっ、そうでしょうそうでしょう」

サヤ「ちゃんと天辺に〝ケシの実〝までまぶしてあるのが凝ってるね」

ほたる「え…け、ケシの実…?」

サヤ「ん?」

ほたる「えっと…サヤ師、それはゴマなのでは…?」

サヤ「えっ、そうなの?」

サヤ「まあ確かに、本物のあんぱんでもゴマ振ってあるやつは多いけど…」

サヤ「あんぱんといえばケシの実だったから、これもそうなのかと思ってた」

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ほたる「ケシの実…ケシの実…?」

ほたる「そんな…私今までずっとチョコあ~んぱんの上にかかってる白いのはゴマだとばかり…」

ほたる「……ああっ!?原材料にゴマがないっ!?」

ほたる「…私は…私は今まで何を…?」

サヤ(そ、そんなにショックなことなんだろうか…)

サヤ「あっ、そういえば」

ほたる「ん…?」

サヤ「…あ、あったあった」

サヤ「じゃーん、本物~」

ほたる「あ、あんぱん…!」

サヤ「えへへ、後で食べようと思って置いといたんだ」

サヤ「コーヒーの試飲してたんだけど、甘いものないとどうもキツくってさ」

ほたる「あら、そうだったの」

サヤ「さっきのフードペアリングの話だけど、やっぱりコーヒーには甘いものが合うよねぇ」

ほたる「ええ、間違いないわね」

ほたる「…ところで、その袋見せてくれるかしら?」

サヤ「え?いいけど…」

ほたる「…………」ジ~

ほたる「…あっ!?ほんとに原材料にケシの実って書いてある!」

ほたる「…どうやらまた一つ、サヤ師から学ばせてもらったみたいね…」

サヤ「んな大げさな…」

ほたる「ところで、どうしてあんぱんにはケシの実が乗っているのかしら…?」

ほたる「触感を出すため…?いや、栄養的な観点…?いやそれとも…?」ブツブツ

サヤ「えっと確か…中のあんこの種類を見分けるためだったと思うけど」



~その時、ほたるに電流走るーーー!~


ほたる「み、見分ける…?」

サヤ「うん、昔は中身がつぶあんなら黒ごま、こしあんならケシの実(白ごま)って」

サヤ「お客さんが一目見ただけで分かるように、そういう工夫をしてたんだって」

サヤ「今ではそうやってわざわざ区別してるお店も少ないけどね」

ほたる「…………」

サヤ「そうだ、ほたるちゃんこれ飲む?」

ほたる「これは…牛乳?」

サヤ「うん、コーヒーも合うけど、やっぱりあんぱんには牛乳だよね」

ほたる「牛乳…」

ほたる「…………」ゴクゴク

ほたる「…美味しいわ…」

サヤ「えへへ、やっぱあんぱんと牛乳は合うよね」

ほたる(…ちょっと待って、ということはつまり…)

サヤ「ほたるちゃん?」

ほたる(あんぱんと牛乳のベストマッチ…なら、チョコあ~んぱんと牛乳は…?)

サヤ(なんかまた変なこと考えてそうな顔してるなぁ…)

ほたる(チョコあ~んぱん…牛乳…)

ほたる(その相性…ハウマッチ…!?)ゴクゴク

ほたる「………!!!」



~その時、ほたるに再び電流走るーーー!~


サヤ「ほ、ほたるちゃん…?」

ほたる「…サヤ師」

サヤ「は、はい…」

ほたる「あんぱんには牛乳…そんなシンプルかつ王道なフードペアリングがありながら、私は大切なことを見落としていたわ…」

ほたる「あんぱんに牛乳が合うのなら、チョコあ~んぱんに牛乳が合わないわけがないじゃない…!」

ほたる「その相性…まさにスーパーベストマッチ…!!!」

ほたる「…まさか、和菓子たるあんぱんから駄菓子の新たな魅力を気づかされるなんて…ね」ニヤッ

サヤ「は、はあ…」

ほたる「ありがとうサヤ師…それ以外に言葉が見つからない…」

サヤ(泣くほど嬉しい事なんだ…)

ほたる「サヤ師はやはり私にとっての師…マスターね…」

ほたる「サヤ師…いえ…」

ほたる「和菓師!!!」

サヤ「変なあだ名増やすなっ!」


【サヤは新たな称号を手に入れた…!】


~駄菓子No,001「チョコあ~んぱん」~

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見た目は小さいあんぱんだが、その実中身はチョコレートという遊び心に満ちたブルボンが出したチョコレート菓子。「みんなで楽しくあ~んと召し上がれ!」がキャッチコピー。パッケージに登場するあんぱんおじさんには姪っ子がいて、その名もメイちゃん。
メイちゃんは〝チョコあ~んぱんカスタード味〝のパッケージに登場するが、商品名が渋滞しすぎてもはやチョコなのかあんぱんなのかカスタードなのか分からなくなっているぞ!
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ちなみにあんぱんおじさんには家系図があるほど設定が充実している。

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~和菓子No,001「あんぱん」~

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その誕生時期は明治時代まで遡る歴史あるお菓子。
茨城県出身の元士族、木村安兵衛とその次男英三郎によって考案された。最盛期では一日10万個も売れる程の大ヒット商品だったとか。
つぶあん派かこしあん派か、属する派閥によってしばしば論争が起きる。

~おわりんこ~

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