あなたが目を覚ますと、見知らぬ天井が広がっていた。 (58)

 どうするべきか。

KP!まずは周囲を見渡します!

>>2
 では目を覚ましたあなたは、半身だけを起き上がらせると、まずゆっくりと周囲を見渡した。
 そこは部屋のようだった。広い部屋ではない。8畳間よりやや広い程度か。
 どうやらあなたは部屋の丁度中央付近の床で、気を失っていたようだ。
 周囲には光源らしきものはなく、部屋には窓も確認できない。部屋は暗く、闇に慣れていないこの眼ですぐさま全貌を把握することは不可能だ。
 光源が無い影響か室内は肌寒く、あなたの今の装備ではとても快適とはいえないだろう。
 部屋の床は石材でできていた。やけに身体が怠いのは、硬質な床で寝たせいか。それは周囲の温度より一層冷え、とても寝るのに適しているとは思えない。

 あなたはまだ座り込んだままだが、立って部屋を歩き回れば、より詳細に部屋の全貌を知ることができるかもしれない。

立って部屋を歩きまくろうず

>>4
 ではあなたは、立ち上がって部屋を探索しようとする。
 しかしあなたが腰を持ち上げるなら、急な運動に身体が驚き、意識が瞬き1回分遠のく。
 立ちくらみだ。
 それはあなたが立ち上がるだけで眩んでしまうほど、ずっと眠り続けていた事を意味する。

 あなたが部屋を歩くのであれば、乾いた音と、金属質な音が同時に響く。
 前者は、裸足のあなたが床を踏む音。
 後者は、右脚の足枷から伸びる鎖が、石材の床に弾ける音だ。
 それはどちらも、あなたが部屋を歩く限り鳴り続ける。

 あなたは部屋を探索する。
 部屋は、天井も壁も、全てが石材でできていた。
 そこは人が暮らすための空間のように思える。部屋の北端には木でできた長机と椅子が置かれ、その上には様々な紙や本が乱雑に置かれている。
 北西には背の低い木の本棚が設置されており、3つの棚は全て本が収納されている。本の厚みや背丈はばらばらで、統一性がない。
 東の端には木でできた寝台がある。寝台には大きな麻が1枚かけられているだけで、寝心地はとても良さそうには見えない。
 そして、部屋の南側には、石でできた扉が存在する。
 この部屋に存在する全ての家具はひどく劣化しており、それらが使われなくなってからの年月を感じさせる。

長机の上に置かれたものを一つ一つ確認する
本棚の本を一つ一つ手に取って確認する
寝台に何かないか確認する
足枷がどういう作りなのか確認する

>>6
 あなたは長机の上に置かれたものや本棚の本を、一つ一つ手にとって確認していく。
 机の上に置かれているのは重ねられた複数の藁半紙とインクの乾いた羽ペン、そして開けられたままの沢山の本だ。
 本棚の中に収納されているのは、大小も様々な無数の本である。
 藁半紙も本も、こんな光源のない暗闇の中では、中身は判然としない。
 ただ何れもやけに古く、触れただけで埃が舞い、粕が落ちていく。

 寝台に近づけば、それは木でできた極めて原始的なものであると気づく。
 それはとても快適な眠りを行うためのものとは思えない。
 寝台には麻が乱雑に縫い込まれた麻布が一枚敷かれているが、それもこの寒さを軽減するのにはとても役不足だろう。
 寝台からはただ古臭い木の香りがするばかりで、人の気配や匂いは、全く感じられない。

 次にあなたは屈むと、自らの右脚を束縛する、足枷に目をやる。
 足枷はとても古いもののようで、所々に傷が見て取れる。装飾は一切なく、小さな鍵穴だけがぽっかりと開いている。
 足枷から繋がっているのは、20cm程度の細い鎖だ。鎖の先端は引きちぎられている。

本を一冊手に持ちながら扉を潜ろう

自分の状態を確認する

>>8
 あなたは近くにある本を一冊小脇に挟むと、それを持ち出して部屋を出ようとする。
 しかしこの部屋には、本が無数に存在していることは既に明らかだ。
 これらは全てそれなりの大きさと重さをしており、収納具を持ち合わせていないあなたがそれを持つ場合、少なからず行動に不自由が生じるのは間違いない。
 また、これらの書物の殆どは見てわかるほどに傷んでおり、持ち出しても内容を確認することは難しいだろう。
 それでも本を持ち出す決意があなたにあるのであれば、あなたはそこから比較的綺麗で、持ち出しても価値のある本を選別する事ができる。
 あなたは持ち出す本を何れかから選び取り、それ以外の本を見捨てる必要がある。

 一つ目の選択肢は、手書きで記述されているように見える、小さな手記だ。これを持ち出すことは用意だろう。
 二つ目の選択肢は、毎頁に絵が書かれている、辞典にも見える本だ。これを持ち出す場合、片手が少しだけ不自由になるだろう。
 三つ目の選択肢は、何頁にも渡って仰々しく何かが書かれている、丁寧に装丁された大版書だ。これを持ち出す場合、片手が完全に塞がってしまうことを覚悟しなければならない。
 四つ眼の選択肢は、鎖と錠で封印された、一冊の古文書だ。これを持ち出す場合もまた、完全に片手が塞がってしまうだろう。

 部屋の扉は石でできており、非力なあなたでは、片手で開くことは容易ではない。
 しかしあなたが全体重を用いて扉を押せば、片手が塞がっている場合でも、なんとか扉を開くことができるだろう。
 準備ができたのなら、この扉を開こう。

行動宣言ではなく質問です
一旦本を床において扉を開けて拾い直して進むとかはできるんだろうか
他の行動を取る場合でもそういった宣言すれば可能ですか?(例えば車のハンドル操作の間は本を助手席に置くなど)

KP!麻布を結んで荷物入れに出来ませんか!

>>9
 あなたは部屋を出る前に、自分の状態を確認する。
 とはいえこの狭く暗い部屋に鏡の類はなく、あなたは自身を主観的に視る以外の手段を持ち合わせていない。
 仕方なく、あなたは下を向いて、あなた自身を見つめ直した。

 立ち上がったあなたの視線は、決して高いとは言えない。身長は精々150cm程度だろうか。
 頬を掠める白銀は、長く伸ばされたあなたの髪だ。癖のないそれは、さらさらと視界の端で揺らめいている。
 両手をみる。雪のように白く肌理細やかな肌は、暗闇の中で浮き上がって見える。
 なだらかな胸元には微かに脂肪がつき始めているが、まだ二次性徴を終えているものではない。
 腹部から尻にかけてもまだ女性的な曲線を描いているとは言えず、代わりに10代前半特有のハリと艶が見て取れる。
 その下には健康的な両足が存在している。右脚には古い足枷が繋がれているが、あなたの歩行を邪魔するものではない。
 全身を隠しているのは麻の囚人布で、その下には同じく麻の、けして着心地がいいとは言えない下着がある。
 下着で隠された局部は今は見えないが、これは何を隠そうあなた自身の身体だ。もし見ようと思えば、それは簡単に見られるだろう。
 着ている服や足枷こそ傷だらけだが、あなたの身体には傷一つ見受けられない。

 そしてあなたは自身の右上腕に、黒く何らかの文字が刻印されているのがわかる。
 焼かれたものだろうか。触れても痛みはなく、また痒くもない。
 刻まれた文字は、直線的な記号に見える。それは少なくとも、知識としてあなたが知り得るものではない。
 それが文字列であれば、5文字程度だろうか。後ろの2文字は掠れて読めないが、前の2文字はくっきりと浮かんでいる。
 それは、次のようなものである。

ttps://pbs.twimg.com/media/DXqgiWMW0AA3oup.jpg

>>11
 あなたは本を床においた上で、扉を開いてから再び本を持ち運ぶという、極めて合理的な手段を思いついた。
 その手段は、現状把握している情報では、不可能とも可能とも判断することができないだろう。
 もちろんあなたは扉を開いたまま本を回収しようと、本を持たず先に扉を開いても良い。
 ただしこの扉が、あなたが一度開けば常に開き続けているとは限らないのだ。
 押している間だけ開く扉の可能性。或いは中に入ると閉じてしまうという可能性。
 最悪の可能性は、一度閉じたそれが、今度は二度と開かないかもしれないことだろう。

 もちろんあなたはそのリスクを理解した上で、この扉を開いても良い。
 ただしこの扉は極めて重く、扉を開いている間に、別の作業をすることはとても容易ではない事には留意すべきだ。

>>12
 ではあなたは麻布を結ぶと、中に物を入れられるような袋にしようと考える。
 あなたにとってそれは難しいことではない。工作は進み、結果として麻布の荷物入れは容易に完成する。
 荷物入れには、本を4冊程度は入れることのできる隙間があるだろう。
 ただし気をつけなければならない。これは飽くまで布を結んだだけの袋であり、しかも使用しているのはただの襤褸であることを。
 もしあなたがこの中に本を入れて持ち運ぶのであれば、布はすぐに消耗し、部屋から出た頃には千切れて使い物にならなくなってしまう筈だ。
 もしこの布を荷物入れとして用いるのであれば、この布を他の用途に用いることはできなくなるという事を、よくよく留意しておくべきだろう。
 あとはあなたの選択次第だ。

ソマ?股間に触れて性別を確認します

本を選んだ人が戻ってくるまで待とうと思ったが来ないかな?

行動宣言・畳んだ麻布と手記を持ち扉を開ける
扉を通り抜けてからはそちら側からもう一度扉を開けることができるか確認だけする

>>17
 あなたはふと思い立って、自分の手を自らの股間に近づけていく。
 麻の囚人服を捲ると、飾り気のない麻の下着が現れる。
 更にあなたがそれを脱ぐと、麻布の向こう側に、ささやかに秘められた局部が見える。
 まだ産毛が生え始めたばかりの恥丘の奥に、しっとりと閉じられた縦筋が隠れている。
 性の成熟からはまだほど遠いそこは慣れない外気に晒され収縮している。
 その秘部からは性的な経験はまるで感じられず、純潔のままであることが外見からもよくわかる。

>>19
 ではあなたは襤褸の麻布を畳むと、それと手記を小脇に挟んで扉を開ける。
 石の扉は重く、分厚く、あなたの華奢な手では一寸も動かない。あなたは肩から全身の力を込める事で、ようやく扉を動かすことに成功する。
 石の扉はあなたの全体重を載せて、鈍い音と共に少しづつ動いていく。
 扉が動くと共に埃が舞い散り、砂屑がこぼれ落ち、あなたの肺を痛めつけていく。

 やがて長い時間の末、扉は30度ほど開き、あなたは蹌踉めきながら扉の隙間から脱出する。
 あなたが部屋から抜け出すと同時、開き始めていた扉は鈍い音を立てて閉じていく。
 開扉時の苦労がまるで嘘か夢幻のように、扉はぴったりと閉じ、再び静寂を保ってしまう。
 扉には取っ手などもなく、押してもまるで動く気配がない。
 少なくともあなた独りの力では、この扉をもう一度開くことなどできないだろう。

再開嬉しい

その場から動かずに辺りを見渡します
できれば聞き耳も立てたい匂いも嗅げれば

>>22
 あなたは閉じきった扉を諦めると、視線を再び周辺へと戻した。
 そこは広い吹き抜けの空間だった。空は見えず、そこはまだ室内だ。壁も床も、全て黄土色の古黴びた石煉瓦で出来ている。
 あなたは空間にかけられた、大きな橋の上に居る。橋はあなたが今しがた出てきた扉を終着点として、向かいの端まで真っ直ぐに続いている。
 橋はかなり高い地点に設置されているようで、橋の隅から下を覗けば、かなり下の地点で水が波打っている。
 もしここから飛び降りれば、いかにその下が水とはいえ、生きている事は無いだろう。
 橋のもう一つの終着点は、現在の位置からは遠く、視認することはできない。

 あなたが出てきた扉の横には、人形の何かが座り込んでいる。
 それは骸であった。物言わぬ白の髑髏が、壁に凭れ掛かっている。眼窩は深淵となっており、僅かに異臭が漂っている。
 骸は襤褸の外套を身にまとっていた。外套は相当古いものであるようだが、まだ辛うじて着用することはできそうだ。
 その右手にはカンテラが握られている。それもまた年月による相当な劣化が見受けられるが、不思議なことにカンテラには橙色の火が灯り、周囲を薄明るく照らしていた。
 あなたは望むのであれば骸から外套を剥ぎ取り、更に他の所持品を漁ることができる。

 次にあなたは目を瞑り、周辺の音に耳を傾かせた。
 先ず聞こえてくるのは、流れる水の細流だ。この部屋の底に張られた水辺のものか、或いはそれ以外のものか、あなたの技術では判別できない。
 更に耳をすませば、遠くから金属質な何かが振動し、擦れ合い、動く重厚な音がする。
 鼻を利かせれば埃と砂屑が肺に侵入し、思わずあなたは咳き込んでしまうだろう。
 ここではあまり、鼻を効かせないほうが良さそうだ。

外套とカンテラは貰っていく
骸に他の所持品がないか探す

>>24
 ではあなたは物言わぬ骸から外套とカンテラを剥ぎ取ると、それを自分の手にもつ。
 これであなたは折った麻布と手記を小脇に抱え、カンテラと外套をそれぞれ片手ずつに所持したことになる。
 このままでは両手の動作に極めて障害を発生させることは想像に難くない。
 あなたはこれらの道具を身につけるか、何らかに収納するか、或いはそれ以外の用途を見つける必要がある。
 勿論、この場で捨て去っても構わない。

 外套は柔らかな綿布で織られており、本来であればとても優秀な防寒着として用いる事が出来たのだろう。
 しかしそれは到るところが解れ、穴が空き、破れている。
 これを着用するとしても、僅かに寒さがマシになる程度なのは見て明らかだ。
 カンテラはあなたが手に持つと、取っ手越しに柔らかな温かさが感じられる。
 火は薄ぼんやりと灯り、橙色の輝きを発している。
 油入れを見れば、そこに油は存在していない。にも関わらず、カンテラは未だに灯りを灯し続けている。
 とはいえカンテラ自体は極めて劣化しており、そう長く使い続けていく事は難しいだろう。

 あなたはそれらを回収すると、再び骸に目をやり、他の所持品について詳しく調べる。
 骸から外套を剥げば、外套の内側から、いくつかの道具や食料が転がり落ちてくる。
 それらのうち、乾燥保存された食料は既に全て劣化しており、元の食材が何だったかすら判然としない。しかし勿論あなたはこれらの食材を、果敢にも口に入れることができる。
 黒ずんだ食材とともに落ちてきたのは、皮で出来た簡素なベルトと、そこに引っ掛けられた革のナイフポーチだ。
 何れも劣化しているが、外套の中で保存されていた為か、他の道具と比べると劣化の具合は穏やかに見える。
 ポーチには1本の、鉄でできた簡素な短剣が収められている。短剣は刃が削れ血糊が固まっているが、まだ辛うじて使うことはできるだろう。
 あなたはこれらの道具をここに置いて去る事も、或いは回収して持ち歩くこともできる。

着られるものは全部着用して他のものは持てるだけ持って慎重に橋を渡る
持ち物が多いので可能なら工夫してなるべく動きやすい持ち方で

>>26
 手に入れた外套を身に纏う。襤褸の綿布は決して防寒性能は高くないが、寒色の外套は周囲の暗闇に溶け、あなたの姿を敵の視線から隠してくれる。
 ベルトを腰に巻くと、そこに革のナイフポーチを引っ掛ける。ポーチからは短剣の心強い重量が感じられる。
 あなたは望むのであれば、更に革のベルトに麻布と、カンテラを引っ掛けて進むことができる。
 ただしベルトにそれらを掛ける場合、緊急の際に即座に取り出すことができなくなるのは留意すべきだろう。
 或いはそれらをベルトに掛けず、手に持っても良い。その場合、片手が塞がってしまうことは容易に想像できる。
 手記は爪やそれに類するものがないために、ベルトに掛けることはできない。もしこれを持ち歩くなら、小脇に挟んで持ち歩けるだろう。
 どの道具をどのように持つかは、あなたの判断次第だ。

 あなたは道具を整理した後、慎重に橋を進んでいく。
 裸足のまま歩く石煉瓦は冷たく、乾いた音を微かに響かせる。
 何歩か歩いても、周囲に変化が訪れる様子は無い。
 静寂の中、あなたの足音とナイフポーチが揺れる音、そしてカンテラの燃焼音だけが延々と続く。
 やがて橋も半分に至った頃、あなたは向かい側の果てに、両開きの石の扉があることに気付くはずだ。
 扉は先程あなたが出てきた扉よりも一回り大きく、石で装飾がなされている。表面には何か画らしきものが刻まれているようだが、ここからでは見えない。

 そしてあなたが足を進めようとした時、不意に右手側、あなたの顔の右上辺りから「やあ」と声がする。
 あなたが声の方へ振り向くのであれば、そこにはひとつの人影が浮いていた。
 全長は30cm程だろうか。人間の子供を、そのまま尺度を小さくしたかのような外見。尺度の違いさえ考えなければ、年程は10歳程度に見える。中性的な外見だが、どちらかというと女性だろうか。
 短くざっくばらんに切られた髪は、透けるような翡翠。若葉色のワンピースを身に纏い、好奇心の強そうな瞳はエメラルドグリーンの輝きを帯びている。
 背中には蝶にも似た大きな半透明の羽が生えており、緑色に輝く粒子を散らしながら、微かに振動している。
「こんにちは。こんなところにニンゲンさんだなんて、珍しいね」
 好奇心に満ち満ちた瞳で言って、小人は宙に漂ったまま笑った。

貴方は誰?
ここはどこ?
さっきの部屋は何?
どうして私がここにいるか知ってる?と言う
あと、手記の内容を確認する

>>28-29
 あなたは突然現れた小人に驚愕しながらも、先に自己紹介をしてから、幾つかの事を訪ねようとする。
 しかし、そこであなたは、あなた自身が自己を紹介出来るほど自分を知らないことに気づいてしまう。
 名前。経歴。目的。人間として持つべき記憶の全てを、今現在のあなたは持ち合わせていない。
 そもそも自分とは何者なのか。
 それが判らないことでどのような感情を迎えているかは、あなた自身が決めることだ。

 兎も角早々に自己紹介を諦めたあなたは、小人に矢継ぎ早に質問を重ねた。
「う、ううん……いきなりそんなに質問をされても、困ってしまうよ」
 小人は浴びせられる質問にあたふたとしている。
 場を取り直すように、或いは何か考え事をしているかのように翅を振動させると、光の粒子が中空に舞う。
「とりあえず、自己紹介をするね。ボクは……うん、リィンって呼ばれる事が多いかな。そう呼んでほしい」
「綴りは、こんな感じだよ」
 言いながら、リィンと名乗った小人が中空に人差し指を突き出し、まるで文字を描くようにそれを動かす。
 小さな指が動くとその場に光の粒子が留まり、一つの記号を作り出す。
 "Rene"。それはあなたもよく知る文字の羅列であった。
「ここは遺跡の中だよ。丁度、第一層の中心付近かな。ボクの住処でもあるんだ」
「普段は、ニンゲンさんは入れないはずなんだけど……」
 不思議そうに小首を傾げて、リィンは言葉を続ける。
「さっきの部屋……っていうと、あなたが今出てきた扉かな。今丁度、あなたが出てきたのを見たんだ」
「実はボクにもそれが判らないんだよ」
「普段ここの扉はぴったり閉じちゃってるし、ボクの力じゃそこの扉は開けられないからね」
「ここにニンゲンさんが居る事自体、ボクは初めて見るよ」
 確かにリィンの全長は30cm程度程度しかなく、見た目も華奢な少女のそれだ。その扉が開けられないことに、不思議な点は無いだろう。
 即ち彼女もまた、あなたが誰なのか、そしてどうしてここに居るのかを知らないように見える。
 ただどうにも、この空間は普段ニンゲンさんとやらが訪れるような場所ではなく、しかも彼女自身もこの扉の奥がただの個室であることを知らないらしい。
 あなたは誰も来ないような閉鎖的な場所の更に秘匿された個室で、眠り続けていたということになる。

>>28
 あなたはリィンとの会話を頭の片隅に追いやりながら、小脇に抱えていた手記を開く。
 擦り切れた頁はカンテラの灯りによってぼんやりと照らされ、そこに書かれた文字を浮き上がらせる。
 それは手書きで数頁に渡って書き綴られたものだ。
 書かれている文字自体はあなたが普段見慣れない直線的なもので、あなたの右上腕に書かれているものにどこか似ている。
 ただそれらは手記の書き手によって書き崩され、本来の形を失っているように見える。
 誰かに見せるためのものではなく、自身だけが見返す事を前提として書かれている文字だ。
 当然、あなたはこれを解読することはできない。

「……? なにそれ」
 不意に、リィンが言葉を止めて呟いた。
 あなたの興味が彼女から手記に移ったことを察したようだ。気分を害した様子はない。
 ただあなたの顔の横に浮かんだまま、あなたが開いたままの手記に顔を覗かせる。
「古代文字? しかもすっごく書き崩されてる」
「古代文字ってことは少なくとも1500年は昔のものの筈だけど、その割には凄く綺麗だね」
 呟きながら、リィンは人差し指を頤に当てて文字を眺めている。
 どうやら、なんとか読める箇所を探しているようだ。
 やや暫くの間を置いて、彼女が指さしたのは手記の一節である。
 それは長々と綴られた手記の、最後の頁に書かれたものだ。
 他の速度重視の崩された文字と違い、そこだけは力強く、どこか意志を感じられる。
 書かれた文字は次のようなものだ。
ttps://pbs.twimg.com/media/DXxRvKSVQAAoPd6.jpg

「……これら? できない……いや、する方法はない、かな。救う、助ける……」
「救う方法は無かった、かな」
「最後の二文字は、人名みたいに見えるよ。そのまま音にすれば、アイ」
 彼女がそう言って解読しているのは、指さされた手記の一行目のようだ。
「二行目は判らないや……ちょっと表現が使われてるのかな」
「ごめんなさい……? 私の……対して? んん?」
 眉尻を困惑に歪めたまま、どうにか解読できないかと考えているらしい。
 ただ、このままどれだけ待っても、もうこれ以上の解読を彼女に求めることは難しそうだ。

自分の腕に刻まれた文字を見せてみる

>>32
 あなたは未だ解読を試みようとしているリィンに、自分の右上腕に刻まれた文字を露出させる。
 そこに描かれているものは、先ほどの手記で書かれていた文字と、同系統のものにみえる。

「どうしたの? それ、入れ墨?」
「しかも古代文字……というか、ここに書かれてる文字と一緒だね」
 そう言って彼女が指差すのは、あなたが未だ開いたままの手記の一節だ。
 丁度一行目の最後の二文字が、あなたの腕に刻まれたものと一致する。
「これ、あなたが書いたの?」
 手記を指差しながら、リィンはあなたに尋ねる。

自分が目を覚ましたときにはもう書かれていたことを話す

(いつ書かれたかや書いた人物について言及がなかったのはこちらが踏み込んでいないからか主人公の記憶がないからなのか?)

>>34
「そう、あなたが書いたわけじゃないんだ?」
 目を覚ました場所に手記があった事を告げると、リィンはどこか納得したように頷く。
「まあ、そうだよね。今時、わざわざ古代文字で文章を書く必要なんてないだろうし」
「それに、この文字はあんまり女の子っぽく無いように見えるよ」
 確かに手記に書かれた文字は乱雑で、その力強さはどちらかと言うと男性性をイメージさせる。
 兎にも角にも、この手記はどうやら現代において、あなただけでなく一般的にも用いられることのない言語であるようだ。
 そこにあなたの刻印と同じものが書かれているのは、ただの偶然なのかもしれない。
 少なくともこの手記について、リィンはこれ以上の情報を持ち合わせていないようだ。

自分が来るまでに変わった出来事は無かったかリィンに聞く

骸について知っていることはないか尋ねる

>>36
 リィンに対して、自分がここに来るまでに何か変わったことが無かったかと質問する。
 あなたの質問を受けると、彼女は翅を振動させて浮かんだまま、腕を組んで中空を睨んだ。
 どうやら、最近の記憶を掘り出しているらしい。
「んん……そうだね」
「さっきも言った通り、そもそもこの区画にニンゲンさんが来ること自体初めてのことからね」
 暗闇の中で、あなたのカンテラとリィンの鱗粉だけが、光源となって輝いている。
 緑色の淡い輝きを纏いながら、彼女は言葉を続ける。
「少なくともボクが覚えている限り、この周辺で変わった事なんて無かったかなあ」
「今日あなたがここに現れたのが、一番変わった出来事かも」

>>37
 あなたはリィンに、骸についての情報を聞き出す。
 未だ扉の横で座り込む骸は、外套と装備を剥ぎ取られ、骨と幾つかの屑だけが周囲に散らばっている。
 底の見えない眼窩に、命あるものの意志は感じられない。
「そのニンゲンさんも、ボクがここに来た時から既に居たんだよね」
「多分相当昔からあるものだと思うんだけど……」
 リィンの話によれば、持ち物などは彼女がここに来た段階では、既に劣化に襤褸になっていたらしい。

その亡骸の性別はわかりますか、男だったか、女だったか

リィンはいつからいるのか
どこからきたのか

>>39
 あなたは再び亡骸に目を向けると、それをよくよく観察する。
 持ち物を剥ぎ取られ見窄らしくなった骸は、物言わぬ眼窩で中空を見つめている。
 頭蓋骨は大きく、眼の周辺は分厚い骨で覆われている。胸骨は太く大きく、そして横に広い。
 骨盤は尻すぼみに下部にいくほど細くなり、仙骨は骨盤から大きく突き出ている。
 これらは男性性の遺骨に一致する特徴ではある。

>>40
 リィンに、彼女自身の事についてを質問する。
 どこか中性的な小人は、あなたの近くに居るのに飽きたのか周辺を緩やかに飛び回っている。
 あなたに声をかけられる事で、彼女は再びあなたの近くまで舞い戻り、あなたの目の前で停止する。
「ボクかい? 何時からだったかなあ」
「忘れっぽい性格でね。昔のことなんて、殆ど覚えていないんだ」
「ボクは過去は振り返らない主義だからね」
 過去を思い出そうとと努力する素振りすらなく、リィンがくつくつと笑う。
 本当に覚えていないようにも、答えをはぐらかしているようにも見える。

そろそろ進んでみようか
麻布、カンテラをベルトに提げる
向かいの扉とその奥について教えてもらえないかとこの先一緒に来てくれるかをリィンに訊く

>>42
 ではあなたは麻布とカンテラを、それぞれベルトに掲げていく。
 麻布をベルトに巻き付け、カンテラの取手を腰に引っ掛ければ、あなたの両手を遮るのは読めない手記だけになる筈だ。
 少なくとも片手で短剣を扱える程には、手の自由が効くだろう。

 あなたは今一度、石橋の向かいに存在する両開きの扉を一瞥する。
 あなたの身長よりもかなり大きな全長を持つそれは、一面に大きな画が描かれている。何が描かれているかは、ここからでは読み取れない。
 周囲には装飾が為され、扉により一層の神聖さを与えている。
 あなたはリィンに、あの扉についてを訪ねた。
「あの扉かい? ふふ、とても面白いものがあるんだ」
「ボクも見せたいと思ってたんだよ! ほら早く、きっと驚くよ!」
 好奇心と期待に満ち満ちた声で言うと、リィンはあなたが静止する間もなく扉の方へ飛翔していく。
 翅が鱗粉を漂わせ、中空に翡翠色の線を作る。
 どうやらあなたが提案するまでもなく、彼女はあなたについていく気があるようだ。
 リィンは装飾された扉の前で、中空に揺らめきながらあなたを待っている。

扉を潜ろう
雑談
誰かこの少女に名前を付けてあげて、何となく名前がないのはイラつく

>>44-45
 あなたは座り込む遺骨から頭蓋骨を抜くと、それを片手に抱え込む。
 白骨は乾いた臭いを発しており、底の見えない眼窩は中空を見つめている。
 頭蓋骨と手記によって、あなたの片手片腕は完全に塞がっている。
 緊急のときにそれらを動かすことは難しいかもしれない。

 石造りの橋を素足で歩いている。冷たい石の感覚を、足裏から知覚する。
 部屋には相変わらず、水音と微かな金属音が聞こえている。
 水音は直下から、金属音は遠い何処かから。
 やがて扉の姿が詳細に現れる。扉には植物の花や蔓を模った装飾が為されている。何の植物かまでは断定できない。
 扉の表面に刻まれているのは大きな石画だ。色のついていない、凹凸だけで表現された扉画がそこにある。
 画の最上段に描かれているのは、四対八枚の大翼を持つ女性だ。右手に炎を、左手に稲穂を持っている。
 画の二段目には、三人の女性たちが描かれている。何れも右手に剣を持ち、背中には一対の翼を生やしている。
 三段目に描かれているのは沢山の赤ん坊だ。彼らは全て背中に小さな羽を持ち、喇叭を鳴らしながら浮かんでいる。
 そして赤ん坊の下では、一人の少女が背を向けて祈りを捧げている。

 あなたが扉の前に立つと、画の中心を境にして扉の左右が断裂していく。
 重厚な音を立てて開かれた扉の隙間から眩い光が差し込み、石橋に光の筋を作り出していく。
 光の筋は扇状に広がっていき、伴って扉の奥の景色が姿を表している。
 見えてくるのは極めて大きな空間だった。
 室外ではない。八方全ての壁が、黄土色の石煉瓦で組み立てられている。
 部屋の中央に存在するのは、大きな女神像だ。全長は、あなたの身長の三倍はあるだろうか。あなたが出てきた扉の向きを背にして存在している。
 女神像は手を天井に向けて掲げており、そこには炎を模した輝く石が置かれている。部屋の光源はそれだけである筈だが、まるで太陽のように部屋中を照らして止まない。
 女神像の周囲を囲むようにして存在しているのは、三台の石の台座だ。それぞれ女神像の正面と左右の後ろに、等間隔で存在している。
 そのうち女神像の正面にある台座だけは、一本の剣が突き刺さっている。残りの二つの台座は空のままだ。
 部屋の外周には底の浅い水路が流れている。水路には緩やかな流れが存在し、部屋内で循環を繰り返している。
 部屋にある扉はふたつ。ひとつはあなたが今しがた出てきた扉だ。そして女神像を挟んで対面上にもうひとつ、同じような扉が存在している。

リィンにこの女神像について知ってるかと聞く
新しい扉を潜る

女神像とそれぞれの台座、剣を調べる

>>47
 中空を飛ぶリィンに振り向き、女神像について尋ねる。
 全長30cm程度の彼女にとって、4m半ばはあるこの像は最早巨人にも等しい。
「すごいだろう、これ」
 そういって彼女が近づいたのは像ではない。そこに掲げられた石であった。
 炎を模った、緋色のそれ。部屋で唯一の光源であるそれは、本物の太陽のように燦然と輝いている。熱も発しているのか、部屋全体は仄かに暖かい。
 石に近づいているリィンはさぞかし暑いのだろうが、彼女はまるでそれを気にすることはなく、陶然とした瞳を石に向けている。
「ボクがここに来た時からずっと……もう本当に何年も、こうやって光を出し続けてるんだ。何の補給も無しにさ」
「本当にすごい……膨大な力の塊だよ」
「これを手にすることができれば、どんな奇跡を起こすことだって思いのままさ」
「それこそ、神様にだって……」
 まるで恋をしているかのように頬を紅潮させて、リィンは輝石を見つめ続けている。
 像について聞いているはずだが、彼女の口からは石の話題しか出てこない。

 あなたはリィンに語りかけるのを止めると、向かいの扉へと足を向ける。
 その扉は形状も装飾も、あなたが先程潜った扉と同じように見える。
 石の扉に描かれているのは、背を向けた祈りを捧げる少女と、その下で傅く異形の怪物達。
 そしてその下で異形の怪物達に鞭を以て仕事をさせている、無数の人間が描かれている。
 あなたが扉に軽く手を触れると、扉に描かれた画が緑色に光りだし、扉がひとりでに開いていく。
 重厚な音を立てて開かれる扉の奥には、長く続く石煉瓦の通路が見えた。
 通路の奥は暗闇に閉ざされており、先へ進んでみなければ、何があるかは判らない。

「もう先に進むのかな?」
 あなたが扉を開くと、背中越しに声がかけられる。
 振り向けばいつの間にかリィンが女神像の肩に座り、あなたを見下ろしていた。
 女神像も大層装飾が為され価値があるもののように見えるが、彼女がそれに価値を見出している様子はない。
「悪いけど、その奥まではボクもついていってあげるわけにはいかないのさ」
「もし進むなら、ここでお別れだね」
 足をぶらぶらと揺らしながら、リィンはそう言ってあなたに笑いかけた。
 ここで進むのも、一度留まるのもあなたの自由だ。
 あなたが思う選択をすると良いだろう。

>>48
 あなたは扉を開いたまま振り向くと、再び部屋の中の探索を始める。
 あなたが扉から離れると再びひとりでに扉は閉まり、画の輝きも元に収まる。

 女神像に近づいていくと、今度はあなたは正面から女神像を見ることになる。
 象牙色の像は頭上の石の光を浴びて、橙色に染まっている。表面はよく磨かれており、触れてみれば取っ掛かりのひとつもない。
 それは女性を模っている。背中には四対計八枚の翼が生え、身体には薄いキトンが一枚だけ羽織られその身体を隠している。
 その顔には慈愛の笑みが浮かんでおり、どことなく母性を感じさせる。
 右肩にはリィンが座り、ぶらぶらと両足を動かしながら、興味深げにあなたを観察している。

 続いてあなたは、像を取り囲む台座に足を向ける。
 それぞれの台座で共通して、それらは三角錐の形状をしている。素材は簡素な石で出来ているが、表面は綺麗に磨かれている。
 剣の天辺には横一文字に何かを嵌めるための穴がある。うち一つは剣が収められ、残りの二つには何も収まってはいない。
 台座にはそれぞれ、腹に見られない文字が刻まれていた。像の右後ろ、像の左後ろ、像の正面の台座ごとに、次のようなものが刻まれている。
ttps://pbs.twimg.com/media/DYC02QlUMAEBNjz.jpg

 剣の正面の台座までいくと、収められた剣を観察する。
 それは100cm程度の長さがある、両刃の直剣だ。腹を女神像に向けて、静かに収まっている。
 その剣の柄も刃も、薄い緑色の石が用いられている。握りや柄頭には大した装飾が為されておらず、鍔は翼を模って掘られている。
 あなたが近づくと、剣は全体に緑色の光を放ち始める。あなたが近づいてきたことを喜ぶように、或いはあなたに握られることを望むように。
「シャルナスというんだ」
 女神像の肩に乗ったまま、リィンが口元に笑みを浮かべて言う。
「"秘翠のシャルナス"。その剣の名前だよ」
「普段はボクが近づいても全然光ってくれないんだけどね。どうやら彼女は、あなたがとても気に入ったみたい」
 リィンがそう言うと、剣はまるで名前を呼ばれて返事をするかのように、その光を強める。

この剣を持って行っていいか聞く

どうして剣の名前を知っているのか聞く
一緒にこの先へ行かないか誘う

空の台座の穴を詳しく調べる

>>51
 あなたは剣を台座に収めたまま、リィンにそれを持ち出せないかを聞いてみる。
 剣はまるであなたに握られることを待ち望んでいるかのように、淡い緑色の輝きを放ち続けている。
「それを持っていきたい? ……ふふ、構わないよ」
「あなたにそれが必要なら、ボクはそれを貸してあげる。その方がきっと、彼女自身も喜ぶだろうからね」
 そこに剣への執着や、それを貸し出すことへの躊躇いは全く感じられない。どうやら彼女にとっては、この剣すらも対して価値のあるものではないようだ。
 あの輝石に向けていた陶酔の眼差しも、今はいつもの好奇心が強くどこか底の見えない笑みに変わっている。

>>52
「その子の名前?」
 あなたに問われると、リィンは頤に人差し指を当てて何かを思案する。
 どう答えれば良いのかを、悩んでいるような素振りに見える。
「……書いてあるでしょ? そこに」
 やや間を置いて彼女が指差したのは、淡く輝く剣ではなく、それを収めている台座だ。
 三角錐のそれはそれぞれ外壁面の腹に、小さな文字が刻まれている。
 リィンは先ず像の右後ろに人差し指を向けると、その名前を口にする。
「"抗蒼のアスティオン"」
 続いて向けられるのは、像の左後ろに存在する台座。
「"閃紅のボルガニッカ"」
 最後に女神像の正面、即ち今あなたが居る場所の目の前。
 緑色に光り輝く剣に指を向けて。
「"秘翠のシャルナス"」
「そこに書かれている文字で、ボクはその子の名前を知ったのさ」

>>52
 リィンにこの先の同行を願い出る。
 あなたの誘いを受けて、彼女はまるで当然のように首を横に降る。そこには断固とした拒絶が感じられた。
「お誘いは嬉しいけどね」
「ボクにとっては、コレを見続けていることだけが唯一の楽しみなんだよ」
 輝石の輝きを背に受けて、彼女の顔が影に隠れている。
 そこにある表情は果たしてどういったものか。強い光に遮られ、それを見ることは叶わない。
 しかし言葉には、輝石への信仰と執着が隠されることもなく顕になっている。
 彼女の価値観では、この周辺から離れることなど想像もできない行為なのかもしれない。
 像に掲げられ周囲を照らすそれは、しかし信仰するほどの美しさがあるようには見えない。
「それに大丈夫さ」
 リィンは像の肩から飛び降りると、輝く鱗粉を中空に残しながら飛翔する。
 流線的な軌道を描いた後に、彼女はあなたの目の前までやってくる。
「ボクはここから離れることは無いからね」
「もしもボクに会いたくなったら、またここに戻ってくると良い」
「ボクはいつまでもここで待っているよ」
 そう言って、彼女はにっこりと笑った。

>>53
 あなたは女神像の後ろ左右にある、空の台座に近づいていく。
 それは刻まれている文字以外は、剣が刺さっていた台座と全く同一のものだ。
 その頂点には、横一文字に何かを指す穴が存在している。
 それらはふたつとも、何か細く、長いものを刺すための台座だ。長剣などがあれば、丁度いいように見える。
 そして、それらの穴に、今の所特殊な何かは感じられない。

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