女子「ダイエットしよう」 (8)

ある日、あるところに一人の女子がいた。



女子「うーん、最近食べ過ぎでちょっと太っちゃったな。運動不足もあるし」

女子「太ったといっても2kgくらいだけど、少しだけダイエットしようかな」カチカチ

男子(女子の彼氏)「お、女子! いったい何を調べるんだ?」

女子「あ、男子くん。実はダイエットしようと思って。だから良い方法を検索してるの」

男子「ダイエットだと……」

女子「うん、最近食べ過ぎちゃって。あははは……」

男子「馬鹿野郎ーーーーッ!!」

女子「うわっ!?」ビクッ

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男子「お前、本当にそんなことを考えているのか……」

女子「そうだけど……いきなり怒鳴ってどうしたの?」オドオド

男子「お前、まさかシンデレラ体型を目指してるの?」

女子「シンデレラって、あの今ネットで話題になってるやつ? 別に私は……」

男子「ダイエットなんて身体に悪いだけだ! そんなことをする暇あったらしっかり飯を食え!」

女子「ちょっ、別に私はシンデレラになんか……。ただ少し痩せようとしただけで」

男子「そうやって身体に悪い方法で痩せて入院するやつも多いんだぞ! 女は自分の身体のことを全然わかってない」

女子「ちょっと男子くん、私の話聞いてよ!」

男子「とにかくダイエットなんて絶対にするなよ! もししたら別れるからな」

女子「ちょっ、男子くんってば……。行っちゃった」

男子「たくっ、今時の女はすぐに痩せたがる。女は少し肉のある方がエロいってのによ」

???「そこの君、何かお悩みかな?」

男子「え、俺のこと? アンタ誰?」

筋肉大好き男「私は筋肉大好き男、親しみを込めて筋肉と読んでくれたまえ! 見ろ、私のこの鍛え上げられた筋肉を!」ムキムキ

男子「すげー! スーツを着てるのに筋肉が盛り上がってるのが分かる!」

筋肉「ハハハッ、筋肉があればどんな悩みでも解決するのさ。悩んでいる暇があるなら筋トレをしろ!」

男子「筋肉ってすげー!」

筋肉「これも何かの縁だ。良ければ、どんな悩みか教えてくれないかな? 近くに喫茶店がる、私が奢るからゆっくり話そう」

男子「はい!」

喫茶店にて、



男子「……というわけなんです」

筋肉「なるほど、彼女が無茶なダイエットをしようとしているのか」

男子「ええ、僕の目には決して太っているようには見えませんし。でも本人は痩せる方法をネットで調べていたので、心配です」

筋肉「確かに、シンデレラを目指して死んでれらなんてことになったら笑えんしな。なら、良い方法があるぞ」

男子「本当ですか!?」

その頃、女子は……


女子「はぁ……男子くんったら、私の話聞いてくれないんだから」

女子「別に身体に悪い無茶な方法で痩せるつもりないよ。食事はきちんと三食摂るし」

女子「誰もガリガリの細過ぎる身体なんて目指してないよ。私はただ、食べ過ぎて太っちゃった分痩せたいだけなのにな」

女子「ダイエットしたら別れるなんて言われたけど、男の人ってどうして女の人が痩せるのに否定的なんだろう……」

女子「はぁ……とりあえず、ダイエットに良い食べ物でも調べようかな」カタカタ

男子「女子、いるかーー!?」

女子「男子くん!? って、隣にいるムキムキな人は誰?」

筋肉「私は筋肉大好き男だ。筋肉と呼んどくれたまえ」

女子「はぁ……、で、私に何か用ですか?」

筋肉「…………バカヤロォーーーー!!」

女子「えぇぇッ!?」ビクッ

筋肉「まったく君は、痩せようなどともってのほかだ。男子くんの気持ちを考えたことあるのか!?」

男子「そうだそうだ! 俺はお前のことを思って言っているのに、何故ダイエットしたがるんだよ!」

女子「…………」

男子「良いか? 女が無理してダイエットしても健康に悪いだけなんだよ! この筋肉さんを見てみろ、無駄な脂肪が一切ない! 女も身体のことを思うなら、筋トレすべきなんだよ!」

筋肉「私は体脂肪率わずか数パーセントだ。筋トレだけでなく食事や睡眠にも気をつけている。君のようにただ痩せたいだけの女子とはわけが違うぞ!」

女子「…………」

男子「それに、筋トレで筋肉を鍛えた方がダイエットするより良い体を手にできる! 無駄な脂肪をを燃焼するのも、筋肉があった方が良いわけだ!」

筋肉「自分の体型を気にする暇があれば黙って筋トレしろ! 筋トレして筋肉を手に入れればすべての悩みが解決する。健康を手にできるし、人間関係や仕事も良くなる! 人生が明るくなるぞ!」

男子「ああ、身体に悪いダイエットをした人生を壊すか、それとも筋トレをして人生を変えるか……女子ならどちらが良い選択かわかるはずだぞ!」

女子「…………」

筋肉「君みたいな若い女は、ダイエットのために極端に食べなくなる。ただ汗を流せば良いと思っている。だから身体を壊して入院する場合もあるのさ。本当に悲しいよ、見ているだけで……」

男子「確かお前は161㎝で49㎏だったな。2㎏太ったって言ってたから51㎏だろうけど、どうせ50㎏超えてデブだと思ってんだろ。どうせ45㎏ぐらいを目指してんだろ? 拒食になるつもりかよ!」

筋肉「ダイエットなら筋肉が重要なのだ! 下手に痩せるより筋トレをした方が君のためだぞ!」

女子「…………」

男子「いいか、無理なダイエットなんてマジでやめろよ! 俺はこれから筋肉さんが経営するジムの見学に行くから、お前は大人しく飯でも食ってろよ」

筋肉「うちのジムはまだできたばかりでも。今は男性限定だが近いうちに女性用のコースも考えている。君も是非とも入会してくれ、じゃあな!」





女子「………………」


それからしばらくして、



男子「ふふん、俺もいい感じのマッチョになったぜ!」ムキムキ

男子「そういやあれから女子のこと見てないけど、ダイエットなんてしてねーだろうな。今度筋肉さんのジムに女性用コースできるから、無理矢理でも入れてやろう!」

prprpr……

男子「お、電話だ。はいもしもし?」

女子の母『男子くんですか? お久しぶりです。女子の母です』

男子「あ、お母さんですか! お久しぶりですね! で、俺に何か用ですか?」

女子の母『娘のことでお話があります』

男子「女子のことで?」

女子の母『……娘が、入院しました』

男子「はっ?」

女子の母『体調を崩して、近くの総合病院に収容されています。お医者さんの話ではしばらくすれば退院可能だそうですけど』

男子「あいつ、まさかあれだけ口酸っぱくして言ったのにダイエットしたんじゃ!?」

女子の母『ええ、確かに娘は痩せこけてしまいましたよ……心がね』

男子「え?」

女子の母『娘が部屋で倒れていたのを近所の人が見つけて通報してくれたのですが、過剰な精神的ストレスが原因だそうです』

男子「精神的ストレス? 肉体的な原因じゃないんですか?」

女子の母『……娘は、あなたが思っていたようなダイエットなど初めからするつもりはありませんでしたよ』

男子「え……」

女子の母『娘は食べ過ぎで太ってしまった2㎏分だけ痩せようと、ヘルシーな食事や運動方法を調べていた。それをたまたま見かけたあなたに説明したら、話を最後まで聞いてもらえず勝手に身体に悪い無茶なダイエットをするつもりだと決めつけられた……』

男子「……」

女子の母『食事もきちんとバランス良く食べるつもりで、その上で少しだけ痩せる方法を探していたつもりでした。それを付き合っている彼氏とわけのわからないムキムキな人に一方的に決めつけられ、全否定されれば……心はすり減って痩せてしまいます』

男子「…………」

女子の母『今の娘に笑顔はありません。退院しても、また元の通りになれるかどうか……』

男子「あ、あの……」

女子の母『今回あなたに電話をしたのは、娘からの伝言を伝えるためです』

男子「……」

女子の母『「今までありがとう、さようなら……」と。娘はもう、あなたとは会いたくないと言っていました。では……』ガチャッ

男子「………………」










終わり

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