ルパン「荒野に光る指輪」 (64)

注意
『ルパン三世』のオリジナルSSです。
原作、アニメ、TVスペシャルなどとの相違点あり。
パラレルワールドだと思って読んで頂けたら幸いです。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1517614237


 ────
 ──


 ─数年前・とあるバー―


 ~~~………♪


「あいよ兄ちゃん」コト…

「おお、あんがと」


 ~~~………♪


 カランカラン―


「……んん?」

「……」

 カツカツ… スッ…


 「ブラッディメアリー」



「……、ヌフフ……」スッ… スッ…

「……」カランッ…

「オシャレなお酒、飲むじゃないの」

「…………」チラッ

「……ええ。いつもはビールしか頼まないんだけど、
 今日はゆっくり飲みたかったから」

「相手になってもいいかな?」

「……ええ、もちろん」


 カチンッ



 ――――


 ~~~♪


「やっと仕事が終わって、今から娘のところに帰ろうと思ってたところなの」

「なーのにこんなところで飲んじゃってまあ」

「ふふ、いいじゃない。たまにはゆっくりと……」スッ… キラッ

「……」

「……綺麗な指輪だな」

「これ? ……そうね、綺麗よね」


 「私と娘に幸運を運んでくれる、そんな指輪よ」


「ふーん」

「あの子には、辛い思いばかりさせてたから……」

 カタン… スクッ

「あら、もう行っちゃうの? まだ一杯目じゃない」

「ごめんなさい。娘のこと考えたら、すぐに帰りたくなっちゃった」


「そうか……なら、しょうがねえな。早く帰って娘さんに顔見せてやりなよ」

「ええ。ありがとね、少しの間だったけど付き合ってくれて」

「ああ、いい時間だったぜ」

「……それじゃ」

 ──


 カランカラン―


「……最後まで、警戒は解いてくれなかったなぁ」

「それにしても……幸運の指輪か」


 ―カランッ







 『荒野に光る指輪』




今日中に上げ終わります寝ます

貼っていきます

 ――――
 ――

 ―アメリカ ネブラスカ州 ハイウェイ―

 ブウゥゥゥゥゥウウン──……

 ……ファンファンファンファン―!

銭形「おい、ルパーン! そろそろガス欠じゃないかー!?」

ルパン「うるへー! そっちの車よりは燃費いいってのー!」

次元「そうは言ったがなルパン、改造車の性能もここまでらしいぞ」

ルパン「なにぃっ?」

 ブルルルル… ブルル…

ルパン「あら、あららら……」

 プシュゥゥウウ……


 ファンファンファン―

ルパン「……っきしょーこんのポンコツ!」バンッ

次元「まあ、どうせならこのまま目的の街まで連れてってもらおうぜ」シュボッ

銭形「がーっはっはっは! ほーれ見たことか!」

銭形「よーし、大人しく捕まれルパン~~~……!」ガチャッ

ルパン「……」ヒョイ

銭形「ぬっ…… ぬぬっ……!」スカッ

 スカッ… スカッ…

銭形「このっ……! こんの……!!」スカスカッ

次元「……おい、ルパン」

ルパン「だーって身体が勝手に……」ヒョイヒョイッ


銭形「ぬぬぬぬぬ~~~~……!!」

ルパン「ありゃ、とっつぁん何して……って」

 グルグルグルグルグルグルグルグルグル――

銭形「はぁ、はぁ……ふぅ……へ、へへ……車ごと逮捕……
   ご、ご……護送車で、牽引して──」

ルパン「だーっ! 分かりましたよ
    大人しく捕まればいいんでしょ捕まればーっ!!」

 ────

 ─護送車内─

 ブゥゥゥゥウン─…

ルパン「はぁ~~~……」

次元「……あとで、クルマも何とかしねえとな」

ルパン「そうねー……って、んん?」

少女「……」

ルパン「……ヌフフ」


 ズルズル…

ルパン「そこのかわい子ちゃん」

少女「……」

次元「……ったく、どこにいても変わらねえ野郎だ」ハァ…

ルパン「ねえねえ、何して捕まったのよ」

少女「……」

少女「…………私は、何もしてない」

ルパン「何もしてないわけがないじゃないの~」クネクネ

少女「っ、関係ないで──っしょ!!」グドッ



 ブゥゥゥゥウウン… ガタタッ



ルパン「ぐ、ぐぐ……」ズルズル…

次元「戻ってくんなよ、ツレだと思われたくねえ」

ルパン「ひどいな~次元ちゃん……」

ルパン(しかし、あの娘どっかで見たような……)

ブゥゥゥゥウウン… ガタタッ


 ――――
 ──

 ─とある街の刑務所─

警官「ほれ、さっさと歩け!」

 ゾロゾロ…

次元「なっさけねえ背中だなおい」

ルパン「おめえに言われたきゃねえよ……まあ、次元は悪人面がよく似合ってて――」


 「おい、暴れるな! 牢に放り込むぞ!」


ルパン・次元「んん……?」

少女「ちょっと! 乱暴に引っ張らないでよ!」ジタバタ

ルパン「って、あらら」

警官「不良娘め、すぐに家に帰してやるからな……!」

リリィ「私は探し物をしに来ただけなの! はなして!」

 …………。
 ……。

次元「家出か、結局送り帰されるんだから世話がねえや」

ルパン「……」

 ――――
 ――

 ─牢獄内─

 ガシャーーーーーーン…


 …………。


銭形「……」ジーーーーーー…

次元「ふん……芸術の街と謳われてる割には、質素な留置場だな」

ルパン「臭いものには蓋をして、その中身はどーでもいいってことさ」

次元「へっ、ちげえねえ。正に豚箱ってわけだ」

ルパン「まあ、こっちの方がよっぽど落ち着くぜ」

次元「確かに……それで、芸術の街について、
   そろそろ詳しく教えてくれねぇかルパン」

ルパン「んじゃあまずは、そう謳われることになった経緯をお教えしましょ。
    3年前にある男が市長に当選した。
    ジェームズ・デイカス――っつう芸術嗜好家なんだけどもな?
    そいつがこの街を奇抜に塗り替えちまったのさ」

次元「芸術嗜好家……俺にはわからねぇ感性だ」

ローゼンの人か。懐かしいじゃないか

次元「となると、市長が自分の収集品を
   自分の街の美術館で一般公開する……ってことか?」

ルパン「その通り~。それが今回の狙いの美術展ってわけよ」

次元「けっ、自己満足もいいところだぜ」

ルパン「だが、奴のコレクションはどれも目玉商品ときたもんだ。
    俺様が目をつけないわけがないっての」

次元「しかしよルパン、
   このままじゃその美術展が終わっちまうぜ。どうするよ?」

ルパン「うーんそうねー……」チラッ

銭形「……」ジーーーーー…

ルパン・次元「……」


 …………。


ルパン「んじゃあ、さっさと抜け出しちまうか」カチャカチャ…

次元「よしきた」

銭形「あぁっ?」ズルッ


ルパン「そうそう、それと奴には裏の顔があってよ?」

次元「裏の顔?」

銭形「お、おいルパン……? ちょっと……?」

ルパン「まあ、この話は出てからでいいか」カチャッ

 キィ…

銭形「ぐぬぬぬぬぅ……お、お前ら……
   わしが目の前にいることを忘れてないか……!?」ワナワナ

ルパン「わりぃがなとっつぁん、
    今回は捕まっていられるほど悠長にしてらんねえんだわ」

ルパン「ちっとばかし寄り道もしてぇしよ」

次元「寄り道?」

銭形「~~~~っ!! ええい今すぐこんな牢屋じゃなく、
   難攻不落の監獄にぶち込んでやる――!」バッ─

ルパン「ほいっと」スカッ

次元「……」ゲシッ

銭形「どぉわっ!?」

 ガシャーーーン…

ルパン「ヌフフフ、すーぐ血が上っちゃうんだから。
    そこで頭冷やしながら俺の収監先でも考えててよとっつぁん」タタタタッ―

銭形「ち、ちっくしょう~! おーい! ルパンが、ルパンが逃げたぞーー!!」


 ――――

 ─取調べ室─

 ガサゴソ…

少女「あんまりぐちゃぐちゃにしないで」

警官「私物は携帯とサイフ、あとはこの懐中時計──」

 ジリリリリー

少女「っ……?」

警官「っ! 緊急サイレンっ!?」

〈脱獄者2名、直ちに捕縛せよ。繰り返す――……〉

警官「なんだと……!?」ガタッ

警官「おい! 鍵は閉めておくから、大人しくしてるんだぞ!」

 ガチャッ バタンッ

少女「ふんっ……散らかしっぱなしにすんなっての」

少女「……、……」スッ… カタッ…


 …………。


少女「…………どこにいるのよ、母さん」

 カチャカチャ…

少女「っ! ……」


 ……カチャッ キィィ…

警官「君、ここは危険だ。今すぐ脱出する」

少女「は、どういうことよ……って」


 ルパン「家に、帰りたくないんだろ?」スッ…


少女「あなた、一緒に捕まってた……」

次元「おい、寄り道が過ぎるぜルパン」

ルパン「まあまあ、とりあえず今は逃げましょうや!」


 ――――

 バタンッ

 キキィッ ブルウウゥゥゥゥン―…

ルパン「おお、新モデルじゃないのこれ~」

次元「スピードが出そうだな──って、向こうも意外に対応がはええな」

 …―ファンファンファン

ルパン「次元、後ろの連中は頼んだぜ~」

次元「そっちこそうまく撒けよ」

ルパン「任せとけって――!」

 ブウゥゥゥゥゥゥゥン―!

少女「って、なんでこんなことになってるのよ!」

ルパン「身ぃかがめてないと危ねえよ?」

少女「えっ──?」

 ドンッ― ドンッ―

少女「っ! きゃあああああああっ!!」

次元「っ、乱暴な連中だ……な──!」ドンッ─

 キッ キキキィ─ キュルルルル─…

 ……ガシャァアン─!


ルパン「ひゅーっ、さっすが次元ちゃ~ん」

次元「へへっ」

少女「すごい…………おじさん達、いったい何者?」

ルパン「おじさんじゃなくてお兄さん」

少女「……お兄さん達、何者?」ジトッ

ルパン「レディーに目がない、泥棒様さ」

少女「泥棒……」

次元「おい、女に目がないのはおめえだけだろ」

ルパン「まあそう硬いこと言うなって~。あっ、そういやお嬢ちゃん、お名前は?」

少女「……はぁ? どうして言わなきゃならないの」

ルパン「はじめに質問してきたのはそっちじゃねえか、これでおあいこだぜ?」

少女「ぐぬっ……」

 …………。
 ……。



 リリィ「……リリィ。リリィ・セテラよ」




ルパン「リリィ……」チラッ

リリィ「……っ? なに、私の顔に何かついてる?」

ルパン「リリィ……お前さん…………」ジーーーー…

リリィ「……っ」



 ルパン「…………臭わねえか?」



リリィ「……」

 パシンッ――

ルパン「いてーーーー!?」キュルルルル──

次元「ば、ばかっ──! ハンドル──」グラッ─

リリィ「きゃあああああああああああ──!!」


 ――――
 ――

 ―スラム街 安いホテル―

次元「ったく、無駄にヒヤヒヤさせやがって」

ルパン「すまねえって──おー、いちち……」

リリィ「……」ブスッ

リリィ「シャワー浴びてくる。綺麗さっぱりしたらもう出ていくから。
    助けて頂きありがとうございました」スクッ

ルパン「リリィちゃん、機嫌直してちょうだいよ~、ねっ、ねっ……?」

リリィ「――っ!」キッ―

リリィ「デリカシーも甲斐性もないのね、お・じ・さ・ん!」

 バタンッ!!

ルパン「…………」

次元「へっ、すっかり嫌われちまったな」

ルパン「ガキンチョめ……おじさんおじさん言いやがって、
    も~う怒っちゃったもんね!」


 ガサゴソ…

ルパン「イタズラグッズ仕掛けてやるんだからもう……」

次元「おいおい、ますます嫌われちまうぜ」

ルパン「嫌われようがおじさん気にしない~──って、あら」ペラッ

 ヒラヒラ…

次元「ん、なんだこりゃ」ピラッ

ルパン「なによなによ」ヒョコッ

次元「『メアリーの指輪』……探し物ってのはこれのことか」

ルパン「ん~? ……──っ」

 カタカタ… カタカタ… ッターン

次元「『メアリーの指輪』……今はジェームズの私物か。
   ……どうやら、探し物なんて可愛い理由じゃねえらしいな。同業者か?」

ルパン「いや、多分違うな……」

ルパン「…………」

ルパン「……なぁ次元、一つ頼みがあるんだけどよ」

次元「なんだ、藪から棒に?」


 ――――

 ガチャッ…

リリィ「タオルカビ臭かったんだけど、おじ……あれ」

次元「あのサル顔のおじさんなら、もう行ったぜ」シュボッ

リリィ「行ったって、どこに?」



 次元「『メアリーの指輪』を盗みにだよ」



リリィ「っ! …………――っ」スッ──

次元「おっと」カチャッ…

次元「お嬢ちゃん、わりぃがアンタはここで大人しくしててもらうぜ」

リリィ「…………」キッ─

 ――――
 ――

 ─市役所 市長室─

ジェームズ「なに? ルパンの狙いは美術展ではなくわしの指輪……?」

ジェームズ「それで……なに、メディア共が既に嗅ぎつけたっ?」

ジェームズ「マスコミは嫌いだとお前らには何度も言ったはずだ。中継車が来たら追い返せっ」ガチャンッ!

ジェームズ「ふむ……」ギィ…

ジェームズ「ルパン三世め。わしの本命に目をつけおって……」

ジェームズ「マスコミと同じく大嫌いだが、
      ここは権力を利用してみる……か。……ふふふ」


 ――――
 ――

 ─とある街 役所に向かう道─


 ブウウゥゥゥゥゥゥウン──…


ルパン「それにしても独裁政治だな……
    選挙ポスターもジェームズ一色じゃねえか」チラッ

ルパン(っ……! あの指輪は……)

ルパン「……指輪はヤツの手の中、ってわけか」

ルパン「ジェームズ・デイカス……見えてきたぜ、十年前の謎が」


 ブウウゥゥゥゥゥン――……



 ――――

 ―市長室―

銭形「ジェームズ市長。たった今より、
   市警を総動員して貴方のお宝を守らせて頂きます」

ジェームズ「よろしく頼むよ、ミスター銭形」

銭形「それで、その指輪はどこに?」

ジェームズ「ここだよ。わしがはめているのが『メアリーの指輪』だ」キラッ

銭形「ほほう、では市長室はこの銭形が直接──」

ジェームズ「いいや、わしには専属のSPがいる。
      ミスター銭形は役所の周りを守ってくれたまえ」

銭形「は、いやしかし……」

ジェームズ「こいつらはとても優秀だよ。
      多少、法外なこともするがね。致し方あるまい」ニヤリ

SP「……」

銭形「……分かりました。では、失礼します」バタンッ


 ──

 バタンッ

銭形「……けっ、なんでい。国際警察が信用できねえってのか」

 ──

ジェームズ「ふっ、所詮警察は国家の犬。信用は出来んわ」

SP「身辺は、我々におまかせを」

ジェームズ「頼んだぞ、お前たち」


 ――――
 ――

 ―安いホテル―

リリィ「……」

次元「……」コポポポポーー… カタン…


 …………。


リリィ「……元々、指輪が狙いだったのね」

次元「どうかな」

リリィ「横取りしなくたっていいじゃない、わざわざ銃まで突きつけて大人気ない」

次元「へっ。お嬢ちゃんが片足突っ込んでるのは、こういう世界だぜ」

リリィ「分かってるつもりよ」

リリィ「……母さんが、そうだったんだから」

次元「……」チラッ

リリィ「……」

 …………。

次元「……何か、事情があるみてえだな」


リリィ「……」カチャッ…

次元「……宝物か、その懐中時計」

リリィ「そんな、大層なものじゃない」

 …………。

リリィ「…………元々、指輪を探していたのは母さんなんだ……
    今になって、盗もうとしてたって分かったんだけど」

リリィ「どうしようもない、大バカよね」

次元「……」

リリィ「私が生まれる頃に、父さんが夜逃げしたらしくて。
    ずっと母さんが女手ひとつで育ててくれた」

リリィ「そこに関しては感謝してる。まあ、それだけだけど」

リリィ「本当に突然だったわ。近所のお婆さんの家に私を預けて、
    母さんは急にいなくなった。8歳の時よ」

次元「そりゃ、難儀な話だ」


リリィ「はじめはきっと帰ってくるって信じてた。
    でも、孤児院に入れられて、数年が経って……」

リリィ「捨てられたんだって、そう思うしかなくなった。
    それからずっと、私は一人で生きていくしかなかった」

次元「……」

リリィ「ただの指輪一つのために、あの人は私を捨てたのよ」

リリィ「そんなのおかしいじゃない。
    ちゃんと会って、一言言わないと気が済まない……」

リリィ「そう思ったから、居ても立ってもいられなくなって、
    家を飛び出してきたの……それなのに、また私はこうして待ちぼうけてる」

次元「……」カチンッ …シュボッ

リリィ「……やっぱり、こんなところで待ってるなんてイヤ。
    きっと、きっと指輪を手に入れれば何か手掛かりがある筈なのよ」



 リリィ「連れてって、私も指輪がある場所にっ」





次元「……」

リリィ「……」

次元「……言っておくが。仕事になったら、お嬢ちゃんを守れる余裕なんてねえぜ」

次元「裏切りと鉛の弾が飛び交う、死と隣り合わせの世界だ。
   半端な覚悟じゃあやっていけねぇ」

次元「どうだい、それでも行くか?」

リリィ「私は……──」


 リリィ「──私はもう、子供じゃないわ」


次元「……ふっ」

リリィ「……」

次元「お嬢ちゃん、俺たち気が合うな。
   俺も、お守りなんて仕事に飽き飽きしてたところだったんだ」スクッ

リリィ「っ! ……」

リリィ「……ありがとね、おじさん」

次元「おじさんはやめろ」


 ――――
 ――

 ─市役所前─

銭形「…………」

銭形「ルパン、どこからでも出てこい……必ずやお縄をちょうだいしてやる……」


 …………──

 ――ファンファンファンファン


銭形「ん……あれは……うちの車両か?」

警官「いえ、あれは……」

銭形「……んん? お、おおお……?」



 ルパン「……──っ!!」ファンファンファンファン――!



銭形「る、ルパン!! ――って、突っ込む気か!?」

 ブゥゥゥゥウウン――!!


銭形「ま、待て──どわぁあっ!?」

 ──キキィ!

ルパン「っ、とっつぁん! 今回のところはわりぃけど見逃してくれや――!」

銭形「っ、んなわけにいくかぁ!!」

警官隊「捕らえろーー!!」ダダダダダー!

ルパン「あらよっと!」バッ─

 シュッ―カキンッ キュルルルルル――

銭形「う、上だとぅ!? ──って、バカめ! そのくらいはお見通しだ!」

 ────

キュルルルルル――

警官「きたぞ! ルパンだ!」

ルパン「あらら……――ってなことで、ほいっ」ポイポイッ



 シュッ―― シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ――……


警官「え、煙幕──ゴホッ、ゴホッ……!」

 スタッ タタタタタ─

ルパン「さっさと中に……──っ!」


 バババババッ―


ルパン「おおっ、とと……どうしてただの市役所に、
    軍事用マシンガンが置いてあんだよっ!?」

ルパン「……んまあ、踏み込んでみりゃあ分かる話か――!」

ルパン「それでは突撃取材──!」バッ─


 ――――

 ―役所1階 ホール―

銭形「ルパンは上だ、急げ――」

 プルルルル―

銭形「って、こんな時に……!」

 プルルルル―

銭形「……~~~~っ!」

銭形「誰だぁ! 今取り込んでる最中だバカモン!」


 「……私だよ、銭形くん」


銭形「は? その声は……長官殿!?」

ICPO長官「謝罪は後でいい、今すぐテレビを見たまえ」


銭形「テレビ、でありますか?」

ICPO長官「そうだ」

銭形「……どうしても?」ソワソワ

ICPO長官「どうしてもだ」

銭形「~~~~っ。いやしかし、今はルパンが――」タタタッ─

ICPO長官「とある街の役所で暴れているのだろう、知っているよ」

銭形「な、何故それを……んん?」


〈速報です。たった今、この役所のなかでルパン三世が暴れまわっており――……〉


銭形「な、なんだぁ? どうなっとるんだ一体……?」

 ────
 ──

 ―市長室―

 ドンッ バババババ── ガシャァアン

ジェームズ「…………」

 ガタタッ ドォーーーン…

 …………。

ジェームズ「っ……」ゴクッ…

 ……ガチャッ


 ルパン「よ~う、会いたかったぜ市長さん」


ジェームズ「ルパン、三世……!」ガタッ


ルパン「おっと、そのままそのまま。横のSPもだ」カチャッ…

SP「っ……」

ジェームズ「あれだけの部下を、貴様一人で……くくぅ……!
      そもそも、美術展が狙いだったはずだ……それが何故……!」

ルパン「ちーっと、野暮用があってよ」

ルパン「その指輪を渡しな。大人しく渡せば危害は加えねえ」

ジェームズ「ぐっ……」

ルパン「……」

ジェームズ「っ…………、わかった。これで勘弁してくれ……」スッ

ルパン「ちょいまち」

ジェームズ「っ! ……どうした、指輪が欲しくなくなったのか」


ルパン「……」スッ…

ジェームズ「……なんだそれは」

ルパン「コイツはな、電子機器の暴走を促す自家製電波装置だ。
    このボタンを押すと周囲にある機械はたちまち言うことを利かなくなっちまう
    ……例えば、爆弾の起爆装置とかな?」

ジェームズ「──っ!?」



 ルパン「どうしたジェームズ市長……──いや、ドン・ジェームズ」



ジェームズ「っ…………知っていたか、ルパン三世」

ルパン「知ってたも何も、裏の世界でそこそこ有名じゃねえか。
    密輸、武器製造に力を入れてるマフィア『ジェームズグループ』のボス。
    その指輪型爆弾を作らせたのも、お前さんだろ?」

ジェームズ「何故、この指輪のことを……」

ルパン「お前さんの趣味趣向……それに
    十年前の事件がここまで来た理由すべてを繋ぐ鍵さ。
    まあ、お前さんが憶えてるとは思わねえが」

ルパン「さあ、身体を粉々にされたくなければ本物の指輪を出しな」

ジェームズ「ぐっ……」

ルパン「俺は気が短ぇんだ、早くしろ」


ジェームズ「っ……──」チラッ

SP「──……っ」スッ─

 ドンッ──

SP「っ……!」キィィン─! ゴトンッ─

次元「おいたはいけねえな、次はそのポマードで固めたおつむを吹き飛ばすぜ」

リリィ「……」

ルパン「次元……危ねえから連れてくるなって言ったじゃねえか」

リリィ「私が説得したのよ」

 スタスタ…

ルパン「お、おいリリィ……」

ジェームズ「っ……!」

次元「おっと……動くなよ」ガチャッ…


 …………。
 ……。

ルパン(拮抗状態だな……)

リリィ「……」スタ…

ジェームズ「ぐっ……、うぅ……」ジリッ…

リリィ「…………」カタ… キラッ

リリィ「…………」

リリィ「……こんな指輪に、いったい何の価値があるってのよ……母さん」

SP「……――っ!」バッ─

次元「っ! バカ野郎が──!」ドンッ―

SP「ぐはっ……!」

リリィ「っ、きゃっ──!」

ジェームズ「ふは、ふははははっ! 捕まえたぞ小娘……!」

ルパン「リリィっ!」


ジェームズ「小娘よ、その通りだ……これは今まで名だたる人間に渡ってきた伝説の指輪……」

ジェームズ「貴様らのような薄汚いコソ泥の手に渡るなら、
      いっそのこと、この爆破装置で諸共粉々にして――!」


 シュッ──


リリィ「ふんっ──!」グドッ─

ジェームズ「がっ……!?」

リリィ「っ、はぁっ――!」シュッ──

ジェームズ「ぐはっ……!?」

リリィ「…………」



 リリィ「誰だろうと……母さんを馬鹿にすることだけは、絶対に許さない」




ルパン「リリィ! ……危ないことしやがって」

リリィ「っ……」

次元「じきにとっつぁんが来る、後始末は任せようぜ」

ルパン「ああ、窓から脱出だ。リリィ行くぞ」タタッ─

ジェームズ「くっ、ぐぐぅ……!」フラッ…

ジェームズ「ルパン、覚えておけよ……
      貴様は絶対にこのドン・ジェームズが殺す……!」

ルパン「ヌフフ、楽しみに待ってるぜ。……あ、そうそう。
    言い忘れてたことがあったんだけどもな」



 ルパン「今までの会話、ぜーんぶ報道局に筒抜けだからよ。そこんとこよろしくちゃん」



ジェームズ「…………は?」

ルパン「ほれ、ボイスレコーダー」パッ

ジェームズ「っ──!?」

ルパン「いいスクープが撮れたと思うぜ、ヌフフフフ~!」バッ─

ジェームズ「る……るぅ……!」ピクピク



  「ルパン~~~~~!!」




 ――――
 ──

 ─街中上空─

 ヒュゥゥゥゥゥゥゥ──……

ルパン「こいつもお役御免っと……」ポイッ

次元「まさか、リポーターまでやってたとはな」

ルパン「これで奴と芸術の街もおしまいさ、見納めだぜ?」

 ヒュゥゥゥゥゥゥゥ──……

ルパン「とは言っても見れたもんじゃねえけどな……」

リリィ「……」

ルパン「まだ、用は済んだわけじゃねえんだぜリリィ」

リリィ「え……?」

ルパン「今から比べ物にならねえくらいの、絶景を見に行くのさ」


 ――――
 ――

 ―見晴らしのいい高原―


 ヒュゥゥゥゥゥゥゥ──……


リリィ「うわぁ~……!」

ルパン「いい景色だろ、ここ。初めて来たときは驚いたぜ」

リリィ「すごいわね……! 綺麗……」

ルパン「……」

リリィ「頂上からだったら、どんな景色が──……」

リリィ「……──っ!?」

ルパン「…………」



 ヒュゥゥゥゥゥゥゥ──……




リリィ「……」

リリィ「…………ルパン、この十字架……」

ルパン「……」

ルパン「……お前さんが指輪を探してることが分かった時に、確信したんだ」

ルパン「十年前、あの指輪によって殺された女と関係があるってな」

リリィ「っ──!?」


  ── ──
 ─ ── ─── ─
  ── ─



 ~~~♪


 ドカァァァァーーーーーン──!!


「っ──!?」



 ナ、ナンダ!?


「……──っ!」


 カランカラン─ ……タタタタタ─


「っ……!」


 ゴオオォォォォォォーーーー…!


「……」

(あれは偽物の指輪だった……まさか、あれがこの爆発を……)

「…………ちくしょう」



   ── ─
 ─ ─  ─ ── ─
  ─ ── ──


リリィ「っ……、うそ……」

ルパン「一度会っただけだったからよ、名前も聞いてなかったんだ。……ほら、リリィ」スッ…


リリィ「ル……パン…………?」

ルパン「名前さ、削ってやんな」

リリィ「っ……! ……、…………っ」

リリィ「……、……」ガリ… ガリガリ…


 …………。


リリィ「……」ガリッ… スクッ…



 『アンナ・セテラ ここに眠る』



ルパン「……」

次元「まさかとは思ったが……いただけねえ話だな」

リリィ「……」



 「……馬鹿じゃない」



ルパン「……」


リリィ「私を見捨てて、人生を棒に振ってまでして……」

リリィ「こんな……こんな指輪のために、母さんは……!!」バッ──

ルパン「待てよ」

リリィ「っ……!」

ルパン「その指輪にまつわる伝説……まだ知らねえだろ?」

リリィ「……そんなの知って、どうなるのよ」

ルパン「まあ捨てるかどうかは聞いてみてからにしろって」

リリィ「…………」


ルパン「『メアリーの指輪』はその名の通り、
    かつてのイングランド女王メアリー1世がはめていたとされる、曰く付きの指輪だ」

ルパン「数々の不遇を乗り越えて、彼女を女王まで上り詰めさせた……そんな幸運のアイテム」

ルパン「持ち主には必ず幸せが訪れる、っつう伝説があるのさ」

リリィ「……」

ルパン「お前さんの母親が、それこそ人生を棒に振ってまで
    手に入れたかったものなんだよ」

ルパン「みなまで言わなくても分かってるんだろうけどな」

リリィ「……」

ルパン「彼女は、娘の幸せな日々を願ってたんだ」



 ルパン「リリィの……──未来ってやつをよ」



リリィ「……」



 …………。


リリィ「……、……本当に馬鹿よ、母さんは……」

リリィ「何のために、待ってたと思ってるのよ……
    誰のために、生きてきたと思ってるのよ……っ」

リリィ「これから、私が幸せになれたとしても……っ」



 リリィ「その中に、母さんがいなくちゃ……意味なんてないじゃないっ……!」



リリィ「――――!」

ルパン・次元「……」



 ――――
 ──

 ─街近くのハイウェイ─


 ブルウゥゥゥウン――……


次元「……行っちまったな」

ルパン「ああ」

次元「……敢えて、事実を言わねえことも出来たはずだ。
   なぜあの場所に連れて行った、ルパン」

ルパン「リリィはもう、子供じゃねえ。そう思っちまったのよ」

次元「…………」

ルパン「この先、辛いことばかりが待ってるだろうけどもな。
    あの子ならうまくやれるさ」

ルパン「それに、『メアリーの指輪』がきっと幸せを運んでくれるだろうぜ」


次元「……ふん、ロマンチストになっちまってまあ」

ルパン「まあ……たまにはな?」

次元「……だが、確かにあの子はもう子供じゃねえ。このさき立派にやっていくさ」

ルパン「あら、知ったようなこと言うじゃない」

次元「へっ、少しばかりお守りを受け持ってたからな」

ルパン「ヌフフ、そりゃご苦労なこって」


 …………。


次元「……さて、俺らも行くか」

ルパン「そうしましょ」


 …………。


次元「……ん? そういえば俺らの車って……」

ルパン「……あぁっ!?」


 ────
 ──

 ─バス内─


 ブルウゥゥゥウン――……


リリィ「…………」

リリィ「……、……」スッ… キラッ

リリィ「……」


 「彼女は、娘の幸せな日々を願ってたんだ」


リリィ「……──っ」





  「ありがとう……母さん」






                        終わり

ちょっと分かり辛かったところとかあって反省……
もっとSSっぽい形式にしないとダメですね……

こんな凡作はさておき自分は4月からの新シリーズに期待します乙!

>>17
あ、ちなみに自分はローゼンの人じゃないですよー

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