悪代官「来たか、越後屋」ニヤニヤ
越後屋「今度の件では、ぜひご便宜の程を……」
越後屋「こちらはお菓子でございます」スッ
悪代官(山吹色のお菓子というわけか……)
悪代官(入っているのは百両か、二百両か……これだから悪代官はやめられん)
悪代官「おぬしもワルよのぉ~」パカッ
悪代官「!?」
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悪代官「こ、これは……!?」
越後屋「“ヨーグレット”でございます」
悪代官「ヨーグレット!?」
悪代官「ふざけるな! てっきり小判を貰えると思いきや、本当にお菓子かよ!」
悪代官「子供じゃあるまいし、いるかこんなもん!」
越後屋「まあまあお代官様、ご立腹なされるのは食べてからでも遅くはないかと……」
悪代官「うむ……」ポリッ
悪代官「おお、これは!?」
悪代官「甘さの中にすっぱさがあって、いくらでも食べられる味だ!」
悪代官「どれもう一個」ポリポリ
越後屋「お代官様は噛む派ですか。私めは舐めてじっくり味わう派でございます」
悪代官「うむ……舐めてじわじわ味わうのも悪くない。ところで、越後屋よ」
越後屋「もちろん“ハイレモン”も用意してございます」
悪代官「越後屋、褒めてつかわす!」
越後屋「ははーっ!」
……
悪代官「おお、越後屋」ニヤニヤ
越後屋「例の件で、お代官様の力をお借りしたく……」
悪代官「ブツは持ってきておろうな?」
越後屋「こちらはお菓子でございます」スッ
悪代官「おぬしもワルよのぉ~」パカッ
悪代官「!?」
悪代官「これは……なんという菓子じゃ?」
越後屋「“チョコあ~んぱん”でございます」
悪代官「パッケージに思い切りジャムおじさんみたいなキャラが描いてあるが、大丈夫なのか?」
越後屋「あくまで別人でございますゆえ……」
悪代官「むむ……やるなブルボン」
悪代官「では、いただくとしよう」パクッ
悪代官「おお……一口サイズのパンの中に、柔らかなチョコが入っておる!」
悪代官「これはなかなかの美味! ようやったぞ!」
越後屋「ははーっ!」
……
悪代官「待っておったぞ、越後屋」ニヤニヤ
越後屋「今日はお代官様のために、いいものを持って参りました」
悪代官「いいものとは?」
越後屋「お菓子でございます」スッ
悪代官「おぬしもワルよのぉ~」パカッ
悪代官「ほう……!」
悪代官「“ベビースターラーメン”……!」
越後屋「ご存じでしたか」
悪代官「まぁな、しかもチキン味とは分かっておる」ポリポリ
越後屋「チキン味こそが原点にして頂点でございますゆえ」
悪代官「うむうむ」ポリポリ
悪代官「しかし、気になることが一つだけ」
越後屋「なんでございましょう?」
悪代官「パッケージのキャラが変わっていないか?」
悪代官「中華風のキャラだったはずだが、やけにファンキーなキャラになっておるのう」
越後屋「彼はホシオくんというそうです。ちなみに前のキャラはベイちゃんです」
悪代官「そうか……ホシオくんにはベイちゃんの分まで頑張って欲しいものだ」
……
悪代官「ふふ、相変わらず悪い顔をしておるのう、越後屋」ニヤニヤ
越後屋「そういうお代官様こそ……」
悪代官「悪巧みこそ、悪代官のつとめゆえ、な」
越後屋「お菓子でございます。お納め下さいませ」スッ
悪代官「おぬしもワルよのぉ~」パカッ
悪代官「むむ……これは」
悪代官「“ブラックサンダー”ではないか」
越後屋「はい」
悪代官「どれ……」サクサク
悪代官「うまい! しかもこれで30円という安さがたまらんな!」サクサク
越後屋「私もコンビニで売ってるとつい買ってしまいます」
悪代官「ネーミングからしてすごいよな。こんな名前見たら、一度ぐらい食ってみたくなるもん」
越後屋「おっしゃる通り……」
越後屋「ちなみにかの安倍晋三も、ブラックサンダーが大好きだとか……」
悪代官「ほう、つまりワシが総理大臣になる日も近いと申すのだな?」
越後屋「おっしゃる通りで……」
……
悪代官「おお、越後屋。こちらへ来るがよい」ニヤニヤ
越後屋「はっ」
悪代官「今日の土産も期待しているぞ」
越後屋「お代官様、どうぞこのお菓子を」スッ
悪代官「おぬしもワルよのぉ~」パカッ
悪代官「これはこれは……珍しい品じゃな」
悪代官「まさかの“エンゼルパイ”とは……」
越後屋「お嫌いですか?」
悪代官「まさか! はっきりいってワシはチョコパイよりも好きだぞ!」
越後屋「私もでございます」
悪代官「しかし、なかなか売ってないのでな……食べるのは久しぶりだ」モニュモニュ
悪代官「おお、うまい! 中のマシュマロの歯ごたえがたまらん!」モニュモニュ
悪代官「うおおおおおお! ワシは天使だ! 今、天使になったのだ!」
越後屋「私には見えます……お代官様のお背中に生えた羽根が……」
……
悪代官「越後屋!」ニヤニヤ
悪代官「近頃はおぬしが来るのが待ち遠しくなってきたぞ。聞こえるか、この胸の高鳴りが!」
越後屋「ありがたきお言葉。ではこのお菓子をどうぞ」スッ
悪代官「おぬしもワルよのぉ~」パカッ
悪代官「なんだこれは……」
越後屋「“バッカス”でございます」
悪代官「ほう……チョコレートか、どれ」パクッ
悪代官「ん!? これは中に洋酒が入っておるな!?」トロ…
越後屋「さすがはお代官様、舌が肥えてらっしゃる」
越後屋「バッカスにはコニャックが入っております」
悪代官「ほぉ~、とろりとした甘さがヤミツキになるな」モグモグ
越後屋「私など、まずチョコに穴を開け、中のコニャックだけ先に吸ってからチョコを食べる、という」
越後屋「食べ方も編み出しました」
悪代官「まるで吸血鬼よのう」
越後屋「ちなみにこの商品、なぜか冬しか販売されません」
悪代官「限定商品というわけか……よくぞ入手してくれた!」
越後屋「ありがたき幸せ……」
越後屋「あとお代官様、これを食べたら念のためお車の運転などは控えられた方がよろしいかと」
悪代官「飲酒運転は危ないもんね!」
……
悪代官「越後屋、よく来た」ニヤニヤ
越後屋「恐れ入ります」
越後屋「今晩は、こんなお菓子を用意してみました」スッ
悪代官「おぬしもワルよのぉ~」パカッ
悪代官「ほう……これはなかなか……」
悪代官「“オレオ”ではないか!」
越後屋「はい」
悪代官「いただこう」サクッ
悪代官「うまい……ビターなビスケットと甘すぎないクリームの絶妙なハーモニー」
悪代官「越後屋、おぬしも食べていいぞ」
越後屋「では失礼して」チャプ…
悪代官「牛乳に浸した!? そんな食べ方もあるのか!」
越後屋「はい、これがまた美味でございまして……」サクサク
悪代官「お菓子というのも、奥が深いのう……」サクサク
……
悪代官「またワシの力が必要になったか、越後屋」ニヤニヤ
越後屋「はい、近頃は商売も大変でございまして」
越後屋「ぜひとも、このお菓子でお力をお貸し頂きたく……」スッ
悪代官「おぬしもワルよのぉ~」パカッ
悪代官「おおっ……!」
悪代官「この圧倒的高級感……! これはまさか……ッ!」
越後屋「“シルベーヌ”にございます」
悪代官「子供の頃、この菓子にどれだけ憧れたことか!」
悪代官「しかし、母上はなかなか買ってくれなかったんだよね~」
悪代官「これにむしゃぶりつくのが、ワシの長年の夢だったのだ!」
越後屋「ささ、どうぞ。誰も見ておりませぬ」
悪代官「うむ!」ムシャムシャ
悪代官「うん、見た目に違わぬ高級感ある味! 柔らかくてうまい!」ムシャムシャ
悪代官「上に乗っているレーズンが、またいいんだわ、これが!」パクッ
越後屋「お代官様、口元にチョコが……」サッ
悪代官「あ、失礼」フキフキ
……
悪代官「越後屋、よくぞ参った」ニヤニヤ
越後屋「さっそくですが、まずこのお菓子をお納め下さいませ」
越後屋「きっとお代官様も気に入るかと……」スッ
悪代官「おぬしもワルよのぉ~」パカッ
悪代官「なるほど、こうきたか……」
悪代官「これは……“スニッカーズ”!」
越後屋「はい、ナッツぎっしりたしかな満足にございます」
越後屋「お腹がすいたらスニッカーズでございます」
悪代官「ちょうど腹が減っていた。いただくとしよう」ニチャ…
悪代官「すごい! 本当にナッツぎっしり! これでもかというほど甘い!」モグモグ
悪代官「ものすごく体に悪そうだが……それがいい!」モグモグ
越後屋「それがスニッカーズの醍醐味でございますゆえ」
悪代官「それと……半分ぐらい食べたらもう体が満足してきてしまったのだが」
越後屋「その異常なボリューム感もまた、スニッカーズの醍醐味でございます」
悪代官「なるほど……恐るべし、スニッカーズ!」
……
悪代官「おお、よく来た、越後屋」
悪代官「しかし、あいにくワシはさっき食事したばかりでな。お菓子は食えんぞよ」
越後屋「むろん、承知しております」
越後屋「そういうお代官様にぴったりのお菓子がございます」
悪代官「おぬしもワルよのぉ~」パカッ
悪代官「むむ……!」
悪代官「これは見覚えがある」
越後屋「こちら“ココアシガレット”にございます」
越後屋「さあご一緒に、食後の一服ごっこを堪能しましょう」
悪代官「うむ」
悪代官「ふぅ~……」スパー…
越後屋「ふぅ~……」スパー…
悪代官「ちなみに越後屋、おぬし本物のタバコは吸うのか?」
越後屋「恥ずかしながら吸いません」
悪代官「ワシもだ。別に嫌煙ってわけでもないのだが」
悪代官「しかし、すごいものだな。お菓子とは」
悪代官「こんなに色々な種類があって、色々な楽しみ方ができるんだから……」スパー…
越後屋「まったくでございますねえ……」スパー…
……
…………
悪徳商人「ひっひっひ、お代官様」
悪代官「なんだ?」
悪徳商人「今回の不祥事をもみ消して頂くために、このようなお菓子を用意しました」
悪徳商人「どうぞ……」スッ
悪代官「おぬしもワルよのぉ~」パカッ
悪代官「こ、これは!?」
悪代官「なんだこれは!? ただの小判ではないか!」
悪徳商人「へ!?」
悪代官「ええい、こんな下らぬ代物でワシを買収しようなどとは笑止千万!」
悪代官「早々に帰るがよいわぁっ! きっちり不祥事の責任を取るがよい!」
悪徳商人「ひ、ひえええええっ!!!」
この後、悪代官は賄賂を受け取ることをやめ、領民とよくお菓子を食べる名代官になったという……。
~ 終 ~
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