【モバマスSS】年のはじめのためしとて【藤原肇】 (18)

糖分多めのP×肇SSです。

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カッチ…カッチ…

「……め……じめ…おーい、肇、そんなところで寝たら風邪ひくぞ」

「…んぅ…P、さん…?」

重い瞼を開くと、目の前にはPさんの姿がありました。

あれ、私、どうしていたんだっけ…?

「式は大変だったからな、今になって疲れが出たんだろう。ベッドまで運ぼうか、お姫様?」

「いえ、ちょっとウトウトしてしまっただけですから」

椅子から立ちあがり、うーんと伸びをすると少しずつ意識がはっきりとしてきました。

時間は夜更け、ここはホテルの一室で、私たちは…

「それに疲れているのはPさんも同じですから。お疲れ様でした…あなた」

「う、その呼ばれ方はなんというか、照れるな」

「ふふっ、早く慣れてくださいね、あ・な・た」

「ここぞとばかりに攻めてくるな…そんなことする肇は、こうだ!」

「きゃっ!?」

そう言って私を抱え上げ、ベッドに横たわらせるPさん。

予想よりも早い展開に胸を高鳴らせていると、予想外のところにPさんの手が伸びてきました。

「あ、Pさん、そこは…あ、あはははっ!」

「うりゃうりゃうりゃうりゃ! こっちか! こっちか!」

「あ、あははっ、あぁっ!」

「や、やりすぎです…もうっ」

1分程度で止めてくれたけど、くすぐられ終えた私は息も絶え絶えでした。

「ごめんごめん…しかしこの構図は中々色気が…」

「…Pさん?」

「わ、悪かったって! 何でも言うこと聞くから許してくれ!」

「それじゃあ…抱きしめてください。優しく、ですよ」

「…ん、了解」

きゅっと抱きしめられると、Pさんのぬくもりが伝わってきます。

私からも腕を伸ばしてぎゅっと抱き着くと、Pさんの鼓動まで聞こえてくるようでした。

「はー…嫁さんが可愛すぎる…幸せだ」

「ふふっ、私も幸せです」

「これからもよろしくな、肇」

「ええ、不束者ですがどうぞ末永くよろしくお願いしますね…あなた」

時間は夜更け、ここはホテルの一室。

そして私たちは、今日夫婦となったのでした。

カッチ…カッチ…

「起きてください、あなた。今日はいつもより早く出るんでしょう?」

「むぁ…あと5分…」

「朝ごはんを食べる時間がなくなっちゃいますよ?」

「ぅー…じゃあキスしてくれたら起きる…」

目覚めのキスは王子様の特技では…やぶさかではありませんけどね。

(チュッ)

「はい、起きてください」

「…ほっぺた?」

「唇は出かける時に…ね?」

「よっしゃ今すぐ着替えるわ」

「ふふっ、じゃあお味噌汁を温めておきますね」

カッチ…カッチ…

「ただいまー」

「おかえりなさい、あなた」

いつものように玄関へ迎えに行くと、Pさんはどこかワクワクとした表情でこちらを見ています。

ちょっと…いえ、かなり恥ずかしいけれど…肇、やります!

「…お、お風呂にする? ご飯にする? それとも…わ、私?」

「ヒューッ!」

うぅ、予想以上に恥ずかしい…

「ありがとう肇、男のロマンが一つ叶ったよ…」

「きょ、今日だけですからねっ!」

朝に頼まれた時には何事かと思ったけれど、嬉しそうなPさんを見ると頑張った甲斐はあったみたいです。

「よし、じゃあ肇で!」

「いえ、ご飯が冷めちゃいますから先に…あ、駄目ですっ! せ、せめてベッドに…ひゃん!」

琴線に触れてしまったのか、この日のPさんは普段よりも積極的でした。

…今日限りのつもりでしたが、偶にはこのお迎え方も良いかもしれません。

カッチ…カッチ…

「あぁ~駄目になるんじゃ~…」

「ふふ、なんですかそれ」

「いや、本当に凄いこれ…癒され方が半端無い…」

膝枕で耳かきをしていると、Pさんが変なことを言い出してしまいました。

あ、大きな耳垢発見…こりこり…よし、取れました。

「おっふ…ゾワゾワする感じと気持ちよさのバランスがまた…あふぅ…」

「危ないから動いちゃ駄目ですよ…うん、右耳はこれでよし。仕上げに…ふぅ~っ」

「あひゃっ!」

「あ、ごめんなさい、くすぐったかったですか?」

「うぅ、弄ばれてしまった…ていっ!」

ごろりと寝返りを打ち、お腹に顔を埋めるようにしたPさんが反撃してきました。

「あ、そこは…あはははっ!」

「うりゃうりゃー…あ、いかん、この体勢だと肇に包まれる感じがさらに…」

「え、えいっ!」

「もがっ!?」

前かがみになってPさんをしばらく押さえていると、くすぐるのを止めてくれました。

「ふぅ、それじゃあ続きを…あれ?」

「………ワガジンセイニクイナシ………」

「Pさん!?」

幸いなことにすぐ眼を覚ましたPさん曰く『天国が見えた』とのことでした。

カッチ…カッチ…

「ごちそうさま、今日も美味しかったよ」

「お粗末様です」

夕食を食べ終えてソファーでまったりと。

今日はPさんに打ち明けたいことがあるのですが、私が切り出す前にPさんが話題を振ってくれました。

「そういえば今日のお皿、新しいやつだったよな?」

「ええ、この前焼きあがったものをおじいちゃんが送ってくれたので…いかがでした?」

「良かったよ。肇の作るご飯が美味しいのは勿論だけど、盛り付けてある器のおかげで食事がもっと魅力的になっている気がするな」

「そう言ってもらえると嬉しいです、とても」

「食事の時に備前焼の器が無いと物足りなく感じるようになってきたからなぁ…肇の色に染められてしまった」

「ふふっ、それはお互い様ですよ」

「そういえば事務所の花瓶が足りなくなってきてな。もし良かったら次の機会に一つお願いできないか?」

「ええ、勿論構いませんよ。近いうちに食器一式を作りたいと考えていましたから、その時に」

「自分の分を新しくするのか?」

「いえ、新しい家族のため、ですね」

「新しい………っ!?」

「ええと、二ヶ月目くらいだそうで…わぷっ!」

少し緊張しながら打ち明けると、言い終える前にPさんに抱きしめられてしまいました。

「ははっ、やった! やったな肇、でかした!」

「も、もう、喜び過ぎですよ、あなた」

「喜ばずにいられるかって! そうだ名前! 名前考えないと!」

「ふふっ、気が早すぎませんか? まだ男の子か女の子かも分からないのに」

「どっちも考えておけばいいさ! ああ、それにお義父さん達にも報告に行かないと! 忙しくなるぞぅ!」

次の休暇を一刻も早く取るべくスケジュール帳を捲るPさんを見ながら、私はこの人と一緒になれた喜びを実感するのでした。

カッチ…カッチ…カッチ…カッチ…ジリリリリリリリリリリリリリ!!!

「ん…」

ぽふぽふとPさんの温もりを求めるも、ベッドにPさんの姿はありません。

「…あれ…あなた…?」

少しずつ眠気が取れてきて、周囲を見渡すとそこは見慣れた寮の一室でした。

「………もしかして、全部、夢…?」

妙にはっきりと覚えている夢の内容を思い出すと、顔がぼふんと熱くなります。

「う…うぅー!!」

そんな私に出来るのは、布団の上でのた打ち回ることだけでした。

「諸説ありますが、現代では初夢とは元日から2日にかけてみる夢の事を指すことが多いようです」

「良い夢を見るために七福神の宝船を描いた絵を枕の下に入れる。眠る前に『長き世の 遠の眠りの みな目覚め 波乗り船の 音のよきかな』という回文を読み上げる。縁起の良い夢としては『一富士二鷹三茄子・四扇五煙草六座頭』が知られていたりと、初夢に纏わる言い伝えは数多く存在します」

「初夢が正夢となるか、逆夢となるか……ですか? それは地域毎に様々ではっきりしないようです。夢の内容を人に語ると夢の内容が叶わなくなるので、悪夢を見た時には人に話すと良い、という言い伝えはありますが……なるほど、肇さんの初夢は良いものだったようですね。では話されない方が良いでしょう」

「文香ちゃーん、そろそろ出かけますよー」

「はい、分かりました……では、お先に失礼しますね」

1月2日、事務所でお茶を飲みながら文香さんに初夢について聞くと、色々な話を教えて貰えました。

元より人に話せる内容ではなかったから最後の言い伝えは都合が良かったけれど、残る問題は…

「どんな顔をしてPさんに会えば…」

「おーい、肇ー?」

「ひゃわっ!?」

「さっきまで鷺沢さんと話していたからそっとしておいたんだが…まだ取り込み中だったか?」

「い、いえ、大丈夫です」

「それじゃあこちらもそろそろ行こうか」

お仕事に向かう車の中、いつものように助手席に座ったものの、Pさんの方が見られません。

「随分熱心に話し込んでいたけど、何を話していたんだ?」

「ええと…初夢について、ですね」

「ああ、そういえば昨夜の夢が初夢になるのか」

「文香さん曰く、大晦日でしたり今日の夜でしたりと、いくつか説はあるそうですよ」

「うーむ流石だなふみペディア…」

Pさんと話していると、少しずつ緊張が取れてきました。

「Pさんは何か夢を見ましたか?」

「…あー、うん、見たなぁ」

「いい夢でしたら人には話さない方がいいみたいですよ? 実現しなくなるそうです」

「お、おお、そうなのか…」

何やらPさんの様子が少し変です。

「悪夢だったのでしたら私が聞きましょうか?」

「ああ、いや、良い夢だったからそれは大丈夫…大筋は話せないけど夢に肇が出てきたものだから、ちょっと照れくさくてなぁ」

「えっ!?」

「いや、変な意味じゃないぞ? それに肇が出てきてくれたのは縁起が良かったかもしれないよな。ほら、いちふじにたかさんなすび、って言うじゃないか」

「…ふふっ、藤の字がちがいますよ。茄子さんだったらその通りでしたけど」

「読み方が一緒ならいいのさ。そういえば今日の仕事は鷹富士さんも一緒だったな…後で拝ませてもらうか」

信号待ちの車の中、ふと思いついてしまったことをPさんに尋ねました。

「…夢の中の私は本当に『藤原』でしたか?」

「え、そりゃあ………あっ!?」

目を丸くしてこちらを見るPさんの姿に私の想像が外れていないのだと確信しました。

「…信号が変わりましたよ」

「お、おうっ」

走り出す車の中、さっきまでは気にならなかったエンジン音が妙に大きく聞こえます。

「あー…なんでまたそんな質問を?」

「私も似たような夢を見たので…いい夢だったので詳しくは秘密、です」

「…そうか、それなら聞けないな」

Pさんの横顔は真っ赤。

ですが、私の顔もPさんと大差ないでしょう。

この世界に神様という存在が居るのだとしたら、もしかすると私の恋路は応援されているのかもしれません。

以上になります。読んで頂きありがとうございました。

2017年に躍進を遂げた藤原肇のさらなる飛躍を担当Pとして祈っております。

ドーム公演、来てくれるといいなぁ…現地争いは戦争、多々買う覚悟は出来ている…!

そして今夜の夢が初夢になりますね。皆さんの夢が良いものとなりますように。ふみペディアの豆知識もどうぞご活用くださいませ。

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