四月一日「スタンド?」 (70)


holic×jojo のSSです。

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俺が彼に会ったのは、中学生のころだった。。


いつものようにアヤカシに追いかけながら走って下校していた。

物心つくころから俺にはアヤカシが見えた。

テレビに出ている霊能力者の人たちが俺と同じものが見えているのかはわからなかったが、少なくとも身近な人にアヤカシが見える人はいなかった。

昔からのことだから当たり前のこととして受け入れてしまっているが、俺の周りにこの異常を分かち合う仲間がいないというのは、少しさびしくもあった。

そんな物思いにふけっていると、俺を追いかけていたアヤカシがいきなり離れて行った。


四月一日「急になんで…?」


きょろきょろと周りを見渡したが、アヤカシはもうどこにもいない。


四月一日「ラッキーだった…のかな」


のしかかっていたアヤカシが離れたおかげで軽くなった肩を軽く回して伸びをした。


?「君…」

四月一日「?」

?「大丈夫かい? 怪我をしているようだが…」

話しかけてきた人は、俺と同じ中学の制服を着た男だった。

なんとなく見たことがある顔だった。同学年かもしれない。

男が指さした俺の右手に目をやると、肌が切れて血が出ていた。さっきアヤカシに追いかけられているときに作ったようだ。

そこまで大きな傷ではないが、血が出ている。


四月一日「大丈夫です。俺そそっかしくてよくこういうの作っちゃうんですよね」

?「ならいいんだが…しかし、それはこけてできるような傷ではない。どうやったらそんな…」

四月一日「えっと…それは…その」(アヤカシに切られたとか言えないよな…)

?「…いや、余計な詮索だった。気にしないでくれ」

四月一日「いや! こっちこそなんかすみません」


どうにも申し訳ない気分になって、つい謝ってしまった。


四月一日(ん…? 今この人の肩の後ろに一瞬緑色の何かが見えたような…)

?「…?」

四月一日「今、肩に何か…」


目を凝らすと、再び緑色の何かが見えた。


四月一日「…っ!?」


彼の後ろに潜んでいたのは、緑色の人ならざるナニカだった。

四月一日(しかも普段俺が見かけるようなぼんやりしたアヤカシじゃない! なんというか…この緑の何かにはただのアヤカシにはない凄味があるッ!)

?「どうかしたのか?」

四月一日「あ、あの、えっとなんていえばいいんだ?!」


彼は平然としているが、どう考えても…彼は緑のアヤカシに取りつかれている!

このままほおっておいてはすごくまずい気がした。


四月一日(でもいきなりアヤカシが取りついているといったところで信じてもらえるはずがないッ! 第一…信じてもらえたところで俺にはどうすることもできないッ!)

?「さっきから百面相をしているようだが…何かあるのかい?」


男は怪訝な顔をしてこちらを見ている。


四月一日(でも放っておいたら大変なことになるかもしれない…ああもう。どうにでもなれ!)


当たって砕けろの思いで、俺は口を開いた。


四月一日「えっと…その、いきなり言うのもなんなんだけど…アヤカシって知ってますか?」

?「アヤカシ?」


予想どおり眉を顰められたが、気にせず続けた。


四月一日「俺、アヤカシが見えるんです。その…あなたの後ろに、緑のアヤカシがついていて…」

?「……」

四月一日「できればお祓いとか行った方がいいんじゃないかと思って…」

?「……」

四月一日「急にこんなこと言って信じてもらえないと思うんだけど! 本当に冗談とかじゃなくて、その、えっと…! うわっ!?」


男はいきなり僕の両腕をつかんで俺に顔を近づけた。


四月一日(もしかして変なことを言ったから怒ってるのか?!)

?「君…!」

四月一日「はい!」

?「もしかして、これが見えるのかっ!?」

四月一日「…へ?」


彼は花京院典明と名乗った。花京院は俺の2つ隣のクラスの人物だった。


花京院「まさか、僕のほかにこれが見える人がいたとは…」

四月一日「ずっとアヤカシと一緒にいたのか? 危ないんじゃ…」

花京院「そんなことはない。むしろ彼は僕を守ってくれるくらいだ」

四月一日(そんなアヤカシもいるのか…)


聞くところによると、花京院も物心ついた時から緑色のアヤカシが見えていたらしい。


花京院「しかし…もし四月一日が言うようにアヤカシと言うものが存在していたなら、なぜ僕は今までそれに出会わなかったのだろうか…」

四月一日「花京院が来たと同時に俺を追いかけていたアヤカシが消えたから、もしかしたらその緑色のやつが追い払ったのかもしれないな」

花京院「なるほど…」

四月一日「まあ俺の予想だけど」


その後、俺たちはあっという間に仲良くなった。
花京院からは流行のゲームを聞いたりして、一緒にプレイしたこともあったし、逆に俺が花京院に料理を教えることもあった。
特別気が合う性格ではなかったと思う。それでも特別に仲良くなれたのは、きっと「他の人には見えない何かが見える」という秘密を共有していたからなのだろう。



中学を卒業して違う高校に行ってしまってからは、お互いの生活で忙しくてめっきり合わなくなってしまった。
月に数回手紙のやり取りはしているが、かれこれ半年はあっていないかもしれない。


四月一日「侑子さんのところにバイトしに行き始めてからは勉強時間すら確保するのが大変だしな…」

今朝だっていきなりイカ墨スパゲッティが食べたいと言い出すせいで、わざわざ遠くまでイカ墨を買いに行かなければならなくなったのだ。

四月一日「朝からなんでモノを食うんだ侑子さんは…」


そういえば、一番最近もらった手紙にはもうすぐ家族で海外旅行にいくと書いてあった。

四月一日「俺が侑子さんにこき使われてる間に、花京院は家族で楽しく海外旅行だもんな…うらやましいよなー。俺もひまわりちゃんと旅行とか行きたいなー」

俺は海外旅行をしたことはないが、きっとすごく楽しいのだろう。


四月一日「理不尽だよなー…ん?」


噂をすれば影…なのだろうか。
2本先の電柱のそばに、花京院が立っているのを見つけた。


四月一日「花京院!」

花京院「ふふ…久しぶりだね」

四月一日「高校入ってから全然合わなかったしな。エジプト旅行はどうだったんだ?」

花京院「ああ…素晴らしかったよ」

四月一日「……?」


なんとなく、花京院の様子がおかしいような気がした。


四月一日(しばらく会わなかったからか…?)


花京院「ところで…四月一日は僕のスタンドが見えたんだったね…」

四月一日「スタンド?」


なにか、あたりに黒いもやもやが出ている気がする。
よくないモノがそばにある兆候だ。


花京院「僕の法王の翠(ハイエロファント・エメラルド)が見えたということは、おそらく君もスタンド使いと言うこと…しかし僕は君がスタンドを出したところを今まで一度も見たことがない」

四月一日「お、おい! どうしたんだ…!?」


黒い靄の発生源は、花京院だ。


花京院「四月一日、君のスタンドはなんだ?」

四月一日「だからスタンドってなんなんだ!?」

花京院「…話すつもりはないのか。それなら…力づくでも教えてもらおうか! ハイエロファント・グリーンッ!」


花京院の額に、気味の悪い何かが取りついているッ!


四月一日「ッ!? うわああっ!」


いつも花京院のそばにいた緑色の何かが、俺に向かって触手を伸ばしてきた。


四月一日「何があったんだ!?」

花京院「さあ、君のスタンドは何かはいてもらおうか。DIO様のためにな…」

四月一日(DIOってなんだよ!?)


俺は逃げようと必死で走り出した。


花京院「逃がすか!」

四月一日「うわっ!」


四方八方に延びる緑の触手が俺の行く手を阻もうとした。

なんとかかわすが、安心はできない。今は管狐もつれていないし、完全に1人だ。

今の花京院に捕まったら無事で済むきがしない。


四月一日(ミセからは遠いし…ここから一番近いのは…。くそっ、よりにもよってあいつのところかよ!)


現在位置からして、ここから一番近いのは、腹の立つことに百目鬼の寺だった。

しかし、百目鬼以外に花京院の額にあるアレを処理できそうな人がそばにいないのだから仕方がない。


四月一日(でも…DIOってなんなんだっ!?)


どうやら今のところ花京院は俺をすぐに殺す気はないらしい。

さっきスタンドがどうだとか言っていたが、それを確かめるために手加減してくれているのかもしれない。

だったらそれを利用して百目鬼の寺まで逃げ切るしかなかった。


なんとか百目鬼の寺の近くまで来ることができた。


四月一日「百目鬼の野郎どこにいるんだよ!?」


肝心の百目鬼が見つからなかった。呼ばないときには出てくるくせに、肝心な時にいない。


四月一日「っ!!!」


触手が四方から迫ってきた。…避けきれない!


四月一日「くっそっ!」


おれは腕で頭を守って待ち構えた。

…しかしいつまでたっても衝撃がこない。


四月一日「…?」

花京院(…! ハイエロファントの触手に何かがかかった…。これは…空条承太郎だ…ッ! 四月一日はしばらく放置していても大丈夫だろうが…空条承太郎は早く始末しなければ…)


四月一日「…花京院?」

花京院「…」


花京院はいきなり身をひるがえすと、去って行った。


四月一日「…どういうことだよ!?」



今回の投下はここまでです。


四月一日「…ってことがあったんだよ」

ひまわり「へー、どうしてなんだろうね」

百目鬼「…」モグモグ


花京院に襲撃された日の昼、俺はひまわりちゃんと(あと不本意ながら百目鬼と)一緒に昼ご飯を食べていた。
その時に今朝の話を二人にしたのだ。


ひまわり「でもDIOってなんのことなんだろう」

四月一日「それが全く心当たりがなくて…」

百目鬼「確か外国にそんな名前の神がいた気がするが」

ひまわり「そうなんだ」

四月一日「変な宗教にはまりでもしたのか…? でもあの花京院が…?」


どうにもそういう風には思えない。
それに花京院の額についていた気味の悪い何かは、アヤカシのような非日常的な何かが関係しているように感じる。


四月一日(危ないかもしれないけど、やっぱり連絡取ったほうがいいよな…今夜電話かけるか)

百目鬼「その話は侑子さんにはしたのか?」

四月一日「いや、まだしてねえけど…」

百目鬼「…」

四月一日「…なんだよ」

百目鬼「…お前友達いたんだな」

四月一日「お前にだけは言われたくねえよ!」



侑子さんに頼んで、花京院の自宅に電話をかけさせてもらった。
数回コール音がなった後、相手が電話に出た。


四月一日「もしもし」


電話に出たのは、花京院の母親だった。
俺が中学生だった頃何回もあったことがある人だ。

ありのままの事情を話すわけにもいかないので、とりあえず花京院に電話を代わってもらうように頼んだ。


四月一日「…家に、帰ってきてない?!」


花京院の母親の話によると、花京院は旅行から帰ってきた日からずっと自宅に戻っていないらしい。


四月一日(やっぱり何かあったのか…!)


お互いに何かあったらすぐ連絡を入れると約束した後、電話を切った。


四月一日「どうしたんだよあいつは…!」

侑子「あら、どうかしたの四月一日」

四月一日「侑子さん…」


侑子さんが一升瓶を片手に廊下にやってきていた。足元にはモコナもいる。


モコナ「どうかしたのかー? 元気出せ!」

四月一日(…侑子さんなら何かわかるかもしれないよな)


俺は侑子さんに事情を話した。


侑子「「スタンド」に「DIO」…ね。四月一日の友達はずいぶん厄介なものにかかわっちゃったみたいね」

四月一日「やっぱり危険なんですか!?」

侑子「それもとびっきり」


侑子さんは怪しげにほほ笑んだ。


侑子「四月一日、吸血鬼って知ってる?」

四月一日「吸血鬼って、あのドラキュラとかヴァンパイアとか…」

侑子「石仮面によって生まれた吸血鬼は蝙蝠にもなれないし流水も渡れるんだけどね」

四月一日「それってどういう…」

侑子「…四月一日の友達は、とても危険な吸血鬼を倒す旅に出かけるみたいよ」

四月一日「…へ?」

侑子「吸血鬼に操られていたところを助けてもらったお礼かしら。ついていく気満々みたいね」


侑子さんの言っていることは、いつもよくわからない。
しかし、一つだけ確かなことは…


四月一日「花京院は今危険なことにかかわってるんですか?」

侑子「ええ」


俺はそれを聞くと、急いでミセの玄関に向かって走り出した。


四月一日「今すぐ花京院を探しに行ってきます!」

侑子「で、会ってどうする気?」

四月一日「それは…考えてません。でも! あいつが危険なことに首を突っ込んでるなら、じっとしていられないです!」

侑子「…そう」

俺は靴を履くと、ミセを出て行った。


侑子「今の話の分はバイト代に上乗せしとくわねー!」

四月一日「今日の侑子さんやけに詳しく話してくれると思ったらやっぱりかよッ!」



おれは一晩中近所を探し回ったが、結局花京院を見つけることはできなかった。





侑子「…この運命に関して、今の四月一日ができることはほとんどない。けれど…」

モコナ「四月一日はDIOって吸血鬼のこともスタンドのことも知っちゃったもんな」

侑子「ええ…縁は繋がった」

モコナ「…」

侑子「さーて! 四月一日もいなくなったことだし、今日はガンガン飲むわよー!」

モコナ「わーいっ! モコナも飲むぞー!」


次の日の昼、俺はいつものようにレジャーシートを広げて、お弁当を広げていた。


四月一日「結局あれだけ走り回ったのに花京院は見つからなかったし、侑子さんたちはいつもより5本も多く酒瓶開けてるし…。ったく!」

百目鬼「何一人で叫んでるんだ」ヒョイ パク

四月一日「ああっ、何かってにだし巻き食ってんだよ!?」

百目鬼「俺のために作ってきたんだから別にいいだろ」

四月一日「お前じゃなくてひまわりちゃんのためだっつうの! お前はついでだ、ついで!」

百目鬼「何言ってんだ」

四月一日「何が「何言ってんだ」、だよ!?」

百目鬼「九軒なら今日から家族で旅行だろ」

四月一日「…旅行?」

百目鬼「昨日言ってただろうが。たしか父親が町内のくじ引きで旅行券あてたとか」

四月一日(…俺としたことが! ひまわりちゃんの話を聞き逃してたなんてっ!?)


百目鬼「…」モグモグ

四月一日「だからって遠慮なさすぎだろ…少しは俺を敬え! 感謝しろ!」

百目鬼「…」パク

四月一日「ああっ! 最後のだし巻きがっ! 俺1つも食ってねえし!」

百目鬼に文句を言ったが、この三白眼はどこ吹く風だ。

四月一日「オマエは…。って、そういえばひまわりちゃんはどこに旅行に行くんだ?」

百目鬼「たしか…」



百目鬼「エジプトだったな」



四月一日(エジプトって花京院がつい最近家族旅行に行ったっていう…大丈夫なのかな…)


この時の俺には、ひまわりちゃんが花京院たちと「同じ飛行機」に乗ってエジプトに向かっていたことなど、知る由もなかった。

投下終了です。


SIDE:ひまわり


ひまわりは無事離陸した飛行機の席で、ぼんやりと天井を見つめていた。


ひまわり(無事離陸できたけど…大丈夫かな…)


わたしにはある秘密…体質があった。
それは他人と話すだけ、会うだけ、かかわるだけで、すべての人を不幸にしてしまうというものだった。
対象は自分と両親を除くすべての人。自分の意思とは関係なく他人の運命が悪い方へと向かってしまう。

父があてたという商店街のくじ引き。
今までなら当然行かなかっただろう。
自分の体質を考慮すれば当然だ。普通に過ごしているだけでも自分の周りには交通事故やもめごとが多く起こる。
飛行機に乗ったりしたら、ハイジャックや墜落事故が起きても何ら不思議でもない。


ひまわり(でも…最近はあまり大きなことも起きてないもんね)


高校に入ってからであった四月一日くんや百目鬼くんは、私と仲良くなったにもかかわらず今でもまだちゃんと生きている。
危険な目にあっているはずなのに、四月一日君はいつまでたっても私の気味の悪い体質に気付かない。
それに甘えてしまう私は、いけない子なのだろうか。


ひまわり(もし…何かの理由でわたしの体質が落ち着いてきているのだとしたら…)


きっとそんなに素敵なことはない。
父や母も、最近私の周りで大きな不幸が起きていないからこそ、こんな楽しい旅行に行くことを許してくれたのだ。


ひまわり「…四月一日君と百目鬼君に、お土産買っても大丈夫かなあ」


わたしは楽しいことがたくさんあるであろうエジプト旅行を想像して、思わず微笑んだ。



「———、——!」

「——」

「—————!」


ひまわり「向こうが騒がしいみたいだけど、何かあったのかな?」


わたしはひょっこりと通路に首を出して様子をうかがった。


ひまわり「おっきな人だなあ」


身の丈195�はあろうかという男性が2人もいる。話しているのは日本語だが、日本人にしては高身長ぞろいだった。


ひまわり「…! 「花京院」ってたしか四月一日君が言ってたお友達の名前じゃ…!」


騒いでいる人たちのなかに、花京院と呼ばれた人物がいた。あの中で一番小さな、同い年くらいの学生服の人だ。


ひまわり(花京院なんて珍しい名字だし…もしかしたら本当に四月一日君が話してた人なのかな)


ほんの少し…ほんの少し話すくらいなら大丈夫だろうか?


ひまわり「うーん、よし! 行ってみよう」


自分の体質のことも考えるとむやみやたらに他人に話しかけるのは得策とは言えなかったけど、こんな私にかかわってくれる四月一日君の探し人かもしれない、と思うと動かずにはいられなかった。


ひまわり「まだ何も起こってないし…きっと大丈夫だよね」


わたしは、近くの責で眠っている人たちを起こさないように静かに席を立った。



その瞬間だった。



ひまわり「…え」


わたしの座席の列に座っていた人たちの舌が、




ひ と つ 残 ら ず 引 っ こ 抜 か れ て い たッ・・・!!!



ひまわり「えっ……!?」


?「まずい…乗客が起きた! おいお嬢ちゃん、気を付けるんじゃ!」


誰かから声をかけられた。でもそちらを振り向くことができない。



皆 殺 し (マ サ ク ゥ ル)!!!



わたしの目は、そう血で書かれた文字に釘付けになってしまっていた。


ひまわり「…」


そして理解してしまった。
これは、私が引き起こした「不幸」なのだと。



?「ちっ」


ひまわり「きゃっ」


高身長の男性のうちの一人にいきなり右手(…)で押し倒された。よく見たら学ランを来ているので学生のようだ。


?「大丈夫か承太郎!」


?「ああ、このアマも無傷だぜ」


ひまわり「?」


口ぶりからすると、何かから守ってくれたのだろうか?
しかし何か危険なものがあったようには思えない…


ひまわり「…もしかして、アヤカシ…?」


?「…アヤカシ? なんだそれは」


私を押さえつけたママの体制で、男の人はそういった。

誤字 ママ→まま




ひまわり「ねえ、名前なんていうの?」


?「…」


男の人はすこしだけ呆れたような顔をした。


承太郎「…空条承太郎だ」


ひまわり「私九軒ひまわりって言うの」


承太郎「おいアマ、ちょっと黙ってろ」


ひまわり「?」


空条君は周りを警戒するように見渡していた。





「ぎゃあああああああ!」



ひまわり「!」


承太郎「終わったみてーだな。…やれやれだぜ」




花京院「さっきのじじいが本体だったのか…」


空条君たちはさっきから何か話している。
詳しいことはよくわからなかったけど、どうやら騒ぎは収まったらしい。


ひまわり「……」


私の席の列に座っていた人たちの死体を見た。
…お母さんとお父さんは、私の隣の席で眠っている。無事だった。


ひまわり「あっ、空条君! ちょっと待って」


承太郎「後にしろ」


ひまわり「えっと、そこの花京院って人は…」


花京院「…僕がなにか?」


ひまわり「えっと…」


私が四月一日君のことを言おうとした時だった。
空条君たちのグループの中で一番年長の人が、みんなを制するように言った。


?「変じゃ…! さっきから気のせいか機体が傾いて飛行しているぞ…」


ひまわり「…!?」


空条君たちはあわてて操舵室に向かっていた。



ひまわり「…「不幸」はまだ終わってないのかな」



操舵室では年長の人(ジョースターさんって言うみたい)がなんとか不時着しようと操縦かんをいじっていた。


ジョセフ「しかし承太郎…これでわしゃ3度目だぞ。人生で3回も飛行機で墜落するなんてそんな奴あるかなぁ」


承太郎「…二度とテメーとは一緒に乗らねえ」


ひまわり(今は声をかけない方がいいかな?)


私はそう思って、なんとなく操舵室の入り口から畿内の方に目をやった。





…本当に「不幸」なことだったのだ。

「不幸」なことに、この飛行機での大惨事を引き起こした人がほんらいよりもちょびっとだけ長く気絶していて。
「不幸」なことに、空条君たちの意識が飛行機が無事着陸できるかどうかということの方に向いていて。
「不幸」なことに、あの人には空条君たちを襲う余力がほんの少しだけ残っていた。


そんな「不幸」な出来事だった。



ひまわり「空条君…後ろ…ッ!」


承太郎「ッ!?」


何か黒いものが空条君に向かって飛んで行ったような気がした。

その黒い何かはすさまじいスピードで飛んでいき、



…空 条 君 の 右 手 を 貫 い た。





承太郎「ッ———!!!」


ジョセフ「承太郎ーーーーッ!?」


アヴドゥル「ジョースターさんは操縦に集中しておいてくださいッ!!」


花京院「ハイエロファント・グリーン!!」


花京院くんがそういうと、さっきの黒いものを飛ばした老人はあっという間に拘束された。


「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ、ざまあ見やがれーーーーっ!」


老人は声高に笑っていたが、花京院君がひと睨みすると、「ぐえっ」っと悲鳴を上げて再び意識を失った。


花京院「大丈夫か承太郎!」


承太郎「…大丈夫だ」


そんなはずはない。空条君の手からは今も絶えず血が流れ続けている。


ジョセフ「安静にしておくんじゃ承太郎! 飛行機を不時着させ次第ワシの波紋で治療してやる!」


私は思わず空条君に駆け寄った。

…だけど、彼に振れることはどうしてもできなかった。


投下終了です。
ひまわりちゃんはかわいい。


SIDE:四月一日


四月一日「やっぱりここのおでんはおいしいよなぁー」


俺は少し前に出会った狐のおでん屋に来ていた。
いい匂いがすると思っていつもの通学路から少し外れた道を探すと、屋台はすぐに見つかった。


四月一日「やっぱりこの油揚げが特に最高です」


狐のおでん屋「狐ですからね」


油揚げと卵、こんにゃくとはんぺんとジャガイモと大根…たくさんの種類のおでんを少しずつよそってもらい食べた。

やはりここの店のおでんはおいしい。自分でも真似して作ってみようと思っ他のだが、なかなか再現できない。
それをここの主人に言うと、「そりゃあ簡単にまねできてしまったら商売あがったりだ」と笑われてしまった。


四月一日(今日の侑子さんへの晩御飯はこれでいいか)


狐の息子「あっ、あの…」


四月一日「君は…! ひさしぶり。どうしたの?」


おでん屋の息子「えっと…その…猫娘にね、聞いたんだけど…」


四月一日「猫娘?」


話しかけてきたのはここの主人の子供の狐だった。
この子の言う猫娘…俺の知っている猫娘はブーツ着用だった気がする…彼女がどうかしたのだろうか?



おでん屋の息子「飛行機が…落ちたって…」


四月一日「飛行機…?」


おでん屋の息子「エジプト行きの飛行機が墜落したらしいって猫娘が…」


四月一日「エジプト行の飛行機!?」


たしか、ひまわりちゃんは「エジプト」へ海外旅行に行っていたはずだ。


四月一日(まさか…いや、でも、違う便って可能性だってあるはずだ…)


おでん屋の息子「それでね、その飛行機に……」


四月一日「飛行機に…?」


おでん屋の息子「九軒ひまわりって人が乗ってたらしいって…」


四月一日「ッ・・・!!!」


…嫌な予想ほど、裏切られるものなのだと、俺は今日学んだ。


四月一日「…そっか。ありがうな、教えてくれて。すみません、おでんお土産に包んでもらえますか?」


狐のおでん屋「はいよ」


さすが客商売のプロなのか、おでん屋の主人は俺がどうするつもりなのかあれこれ詮索することなく、手早くおでんを包んでくれた。


四月一日「おでん、美味しかったです。ありがとうございました」


狐のおでん屋「まいどあり」


おでん屋の息子「あの…気を付けてください!」


四月一日「…うん!」


俺は支払いを済ませた後、急いで侑子さんのミセへと走って帰って行った。


侑子さんはミセの入り口に立って待っていた。


四月一日「侑子さん!」


侑子「そろそろ来るころだと思ってたわ」


四月一日「それにしてもなんでわざわざ外に…中で待っててくれてもよかったのに」


侑子「……」


侑子さんは無言で俺が走ってきた方の道を俺に見るように促した。


四月一日「なっ、百目鬼!?」


百目鬼「おう」


四月一日「おう、じゃねえよ! なんでここにいるんだ!?」


百目鬼「慌てて走ってたみたいだからついてきたんだよ。お前がああいう顔をしてる時はたいていやばいことにかかわってるだろううが」


四月一日「お前俺のことをどういう風に思ってるんだよ!?」


百目鬼「で、どうなんだ?」


四月一日「…」


図星だった。


四月一日「…ひまわりちゃんの乗ってる飛行機が墜落したらしい」


百目鬼「! それで九軒は無事なのか」


四月一日「…わからねえ」


俺は百目鬼にそう言うと、改めて侑子さんと向き合った。


侑子「で、何が聞きたい?」




四月一日「…ひまわりちゃんは無事なんですか」


侑子「無事よ。怪我もしてないわ」


四月一日「よかった…!」


侑子「でも危ない状況よ。彼女はスタンド使いたちの戦いに巻き込まれそうになっている。…逆にひまわりちゃんの影響も出始めてる」


百目鬼(九軒の影響…?)


四月一日「スタンド使いって…まさか…!?」


侑子「そう、四月一日のお友達の花京院くんもその飛行機に乗ってたみたいね」


四月一日「花京院もッ・・・!? 花京院は無事なんですか?! というかなんで花京院とひまわりちゃんが一緒に!?」


侑子「…ひまわりちゃんと彼らの出会いは偶然よ。…でも必然。もう縁は結ばれたし、すでに影響も出始めている。あの子たちはいつ死んでもおかしくない旅をしているんだしね」


四月一日「……」


百目鬼「で、行くのか?」


四月一日「…ひまわりちゃんも、花京院も危ないんだろ」


百目鬼「具体的にどうするつもりだ」


四月一日「それは…」


言葉に詰まった。
今すぐ駆けつけられるならすぐにでも行きたいが、その手段が俺たちにはない。

…普通なら。



四月一日「…俺に何かできることはありますか」


侑子「話すだけなら狐のおでんで十分だったけど、ここから先は別料金よ?」


四月一日「構いません」


侑子「…そう。マル、モロ! 宝物庫からあれとってきてー!」


マル/モロ「「はぁーい!」」


侑子さんは店の中にいたマルとモロに声をかけた。


四月一日「アレって…?」


侑子「ひまわりちゃんは飛行機の中で四月一日の友達がいるジョースター一行を狙ったスタンド使いとの戦いに巻き込まれたみたいよ。今はそのジョースター一行とともに香港の病院にいるわ」


四月一日「香港にひまわりちゃんと花京院が…」


侑子「これからそこへ私が四月一日と百目鬼君を移動させてあげる。けれど彼らの意志を曲げることはできない」


四月一日「意志?」


百目鬼「連れて帰るなら説得しろってことだろ」


四月一日「…お前に言われなくてもわかってるよ!」


百目鬼「そうは見えなかったけどな」




マル/モロ「「主サマー!」」


侑子「ありがとね、マル、モロ」


侑子さんはマルとモロから楓の葉のような扇を受け取った。


四月一日「あれって…見覚えがある…!」


侑子「カラス天狗の扇よ」


それは俺が女郎蜘蛛にさらわれた座敷童を取り返しに行ったときに、カラス天狗が対価として渡していたものだった。
人を遠方まで飛ばす力があったはずだ。


侑子「それから管狐も連れて行きなさい」


四月一日「はい」


管狐の小さな体が俺の腕に巻きついた。



侑子さんがカラス天狗の扇を一振りすると、景色が歪んだ。

すこしめまいがして、眼をこする。

次に目を開けると目の前に広がっていたのは、日本に比べて数段治安の悪い商店街だった。


俺たちは、香港に移動したのだ。





侑子「…気を付けて」


投下終了です。

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