イタリア百合提督(その2)「タラントに二輪の百合の花」 (951)

このssは前作『イタリア百合提督「着任しました」』の続きになっております

お読みになる前に注意事項として…


百合・レズ表現があります

イタリア王国海軍の艦艇がメインになります

このss独自の世界観が含まれています

「艦これ」未プレイですので、実際の「艦娘」とは異なるオリジナルのキャラクターであったりします

更新はひどく遅いです



……もしここまで読んだ中に苦手なものがありましたら、そっと閉じて頂ければと思います



…また、これらの事柄を了解して下さった方は、どうぞお付き合い下さいませ

前スレ

イタリア百合提督「着任しました」
イタリア百合提督「着任しました」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1482850820/)

>>2 さっそくリンク貼ってくれてありがとうございます


まずはあけましておめでとうございます…とりあえず整理をかねて、登場人物やここまでのあらすじなどを投下していきます

…登場人物…


フランチェスカ・カンピオーニ少将


本作の主人公で、いわゆる「提督」


二十代後半にしてローマのスーペルマリーナ(海軍最高司令部)に勤務し、驚異的なスピードで大佐になっていた能力の持ち主だったが、その「華麗な女性遍歴」がスキャンダルに発展しそうになり、上官にあたる「お爺ちゃん大将」のはからいで二階級特進の上、好奇の目や追及の手を逃れるため、南イタリアにあるのんびりした鎮守府「タラント第六鎮守府」に「栄転」、司令官として着任した


イタリア人にしては控えめな顔立ちだが、長身で「ド級戦艦並み」の大きな胸とむっちりしたふともも、艶やかな唇にきれいな指の持ち主…腰まで届く長い髪は金と明るい栗色の中間で、瞳は金色。甘い優しい声は耳に心地よい


特技は艦隊指揮に射撃と料理、「色男でも言えないような」甘ったるい口説き文句に、女性のチャームポイントを見つけること…車の運転も上手い

趣味は可愛い女の子とキスすることと、60~70年代のカンツォーネ(イタリアン・ポップス)を歌う事、それに美味しい物を食べること…意外と機械いじりやメンテなども好きだったりする


母親のクラウディアと、事実婚をしているもう一人の母親「シルヴィアおばさま」のお陰で、幼いころから女性にしか興味がない筋金入りの百合属性
「据え膳はいただき、据えてない膳は持ってくる」「来るものは拒まず、去る者は出さない」などなど、上官・同僚・部下を問わず、いつも誰かを恋人にしている……むっちりした大人のお姉さまが好みだがロリからお姉さままで、長所があればそこを魅力に感じる優しい性格で、選り好みもしない主義


鎮守府では美味しい物を食べ過ぎ、胸やお尻、太ももがきつくなっているが、水泳と射撃以外の運動はたいてい苦手なので、カロリー消費が出来ていないのが目下の悩み


愛車は深青色の「ランチア・フラミニア」の4ドア・ベルリーナ

………



軽巡「ライモンド・モンテクッコリ」

「R・モンテクッコリ」級軽巡のネームシップ。1935年生まれで大戦を無事に生き抜き、戦後は練習艦として1964年まで長くイタリア海軍に在籍していた

「コンドッティエーリ」(傭兵隊長)型と言われる、中世の傭兵隊長たちの名を採ったイタリア軽巡の第三世代。ウンベルト・プリエーゼ造船官による「プリエーゼ式防御シリンダー」の円筒形をベースにした特徴的な艦橋と、バランスのとれた瀟洒(しょうしゃ)なデザインはスマートで美しく、兵装や速度性能も優れていたため以後のイタリア軽巡の基本形になった

…艦名の由来になった「ライモンド・モンテクッコリ」はオーストリア・ハンガリーの軍人で、対オスマン・トルコ戦争やプロイセン皇位継承戦争などを指揮し、現役引退後は戦術研究に明け暮れた研究熱心な「機動の天才」という人物



艦娘の「ライモンド・モンテクッコリ」はほどよく落ち着いた金色の髪を高めのポニーテールに結び、すらっとしつつメリハリの効いた身体をしている高校生ぐらいの女の子。性格はいたって律儀で真面目……当初は提督に優しくしてもらい、憧れと恋心の混じったような感情を抱いているだけだったが、着任早々に大浴場で提督と「愛を交わして」以来百合に目覚め始め、以来生真面目なだけではなく甘い一面や、可愛い嫉妬心なども見せるようになってきた

…提督の付けた「ライモン」という呼び方は気に入っていて、鎮守府の面々からは「妻」や「提督の嫁」と言われてからかわれている


妹の「ムツィオ・アッテンドーロ」はミラノ・スフォルツァ家の開祖の傭兵隊長が名前の由来…「スフォルツァ」(厳しい)性格と言うアッテンドーロの性格は受け継いではいないが、ナポリの巡洋艦戦隊にいたせいか、単刀直入に物を言うさばさばした性格で、何かと生真面目な姉「ライモン」をせっつくこともしばしば…こちらは43年ナポリ港空襲で失われてしまったが、どちらもイタリア海軍の淡いライトグレイをまとった姿が魅力的な軽巡


制服代わりの服も淡いライトグレイのワンピーススタイルで、胸元には白波のようなフリルが少しついたデコルテ、首にはイタリア王国海軍の星章を模した首飾り。すらっと長い脚には黒のニーハイソックスかストッキング…ワンピースは濃淡のグレイで幾何学線模様を描いた迷彩仕様もある 

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戦艦「コンテ・ディ・カヴール」

1915年生まれで、第一次大戦当時の最新鋭戦艦と言う「おばあちゃん」ながら、1933年から受けた大改装で艦の六割を作り変え、見事にモダンなデザインへと生まれ変わったド級戦艦

艦名は「イタリア統一の三傑」(ガリバルディ、マッツィーニ、カヴール)のうち、イタリア独立の支持を取り付けるためにニースやモナコをフランスに割譲した現実主義者で、親フランスの立場を取っていた宰相「カヴール伯」カミーロ・ベンゾから



艦娘「コンテ・ディ・カヴール」は年齢を感じさせないみずみずしい豊満な「ド級戦艦」体形で、長い金茶色の髪は優雅な内向きカールにしている

…少し困り眉で目尻を下げている様子は「甘々なお姉さま」と言う性格を見事に表している。おっとりした優しい性格で提督を甘やかすのが大好き……大戦中はまともに作戦行動をしないうちに「タラント空襲」を受け着底、修理のために北イタリアのトリエステまで移動するも修理が終わらず、イタリア敗戦時にはドイツに渡らないようにと連合軍の空襲で撃沈された……などなど、目立った活躍がないせいか何かと欲求不満で色欲も持て余し気味…ライモン、ドリアなどに続いて提督と愛し合った仲で、現「秘書艦」


…妹は古代ローマの名将の名を持つ「ジュリオ・チェザーレ」(ユリウス・カエサル)で、こちらはチェザーレの著作「ガリア戦記」の影響から一人称が「チェザーレ」な武人で、よく真紅のマントをひるがえしている……髪はローマの屋根瓦のような明るい赤茶色で、髪が薄いのを気にしていたチェザーレの影響か、髪を後ろで束ねただけのシンプルなまとめ方をしていても、セットには時間をかけるなど髪型にうるさい……戦後「ノヴォロシースク」としてソ連に引き渡された影響か、とにかくイタリアに戻って姉に会えたことと、イタリア料理を食べられることが嬉しいらしい


カヴールはよくイタリア海軍の防空識別帯の「赤と白の斜線」が首元に入った淡いグレイのタートルネックとスカート、黒のストッキングとエナメルハイヒールを身につけている……一方チェザーレはタートルネックに肩章の付いた軍人風の上着を羽織り、紅のマントをなびかせている

……… 

クラウディア・カンピオーニ

提督の母親で、服飾デザイナーだったが「せわしないのに疲れたから」となかば引退し、地元カンパーニア州でのんびり暮らしている…長い金髪とむっちりした豊満な体、それに甘い声がチャーミングな提督のお母さまで、熱心に提督を「教育」した張本人

とにかくキスと女の子が好きで、提督の姉に見えるほど若々しい……趣味の料理はとても上手で、その腕前は提督も歯が立たない

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シルヴィア・カンピオーニ

提督の「おばさま」で、クラウディアのパートナー…短く切った栗色の髪と、あっさりした物言いが魅力的なきりっとした大人の女性……趣味は射撃と猟で、銃やナイフの扱いがうまい
誰もがほれぼれするような凛々しさは、提督が百合に目覚めたきっかけの一つ


愛車はイタリアン・レッドに塗った初代「アルファロメオ・ジュリエッタ」

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百合野 深雪(ゆりの・みゆき)准将

通称「百合姫提督」

夏から秋にかけて行うことになった、イタリア海軍主催の「深海棲艦への戦術・知識交換プログラム」のため、海上自衛隊「横須賀第二鎮守府」から派遣されてきた准将で、「タラント第六」に派遣されてきた…提督と同じく二十代後半
(※設定上、階級は「海将補」などではなく、「准将」などと世界基準に統一されている)


豊かな黒髪にきめ細やかな肌、整った涼しげな顔立ちはまさに大和撫子そのもので、声も「横須賀の能登麻美子」とか「鎮守府の菊池桃子」などと言われるほど透き通っていて美しい


…以前ローマに短期赴任した際に、言葉に苦労していたところを提督がアパートに泊めて以来、すっかり「仲がいい」……交換プログラムの際も会えるかどうか定かでないにもかかわらず、日本から百合漫画や郷土のお菓子など様々なお土産を山ほど持ってきてくれた…百合好きなのもあるが、とにかくお姫様のような雰囲気から「百合姫提督」、提督からは「姫」と呼ばれている


一見おしとやかなだけに見えるが、「大艦巨砲主義」によらない戦略や戦術は実戦的で、スピード昇進の理由は「戦績に応じた臨時昇進」以外にも、あまりの切れ者ぶりに「あれは山口多聞の子孫らしい」とか「山本五十六の遠縁らしい」などという噂が広まったためだとか……優れた能力の持ち主ながら、士官学校の論文でイタリア海軍を研究するなど、多少風変りな面があるせいか、呉、舞鶴、佐世保などで戦果を挙げてきたにもかかわらず「いわくつき」の艦娘ばかりを集めた「横須賀第二鎮守府」の司令になっている…おかげで「弾除けのお守りに」と、とある部分の毛を「すっかり剃られてしまった」らしい…が、それを含めて艦娘たちが好きという変態なところも……


…大雪の日に産まれたので「深雪」という名前になったが、特型駆逐艦で唯一戦前に事故喪失した艦が「深雪」なので「縁起が悪い」と、一時期は自分の名前が嫌いだったという

愛車は濃緑色の初代「マツダ・ロードスター」

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一等巡洋艦(重巡)「足柄」

百合姫提督に随行してきた「妙高」型重巡の艦娘

その、居住性を犠牲にしてまで高性能を追い求めた低いシルエットは、戦前の「スピットヘッド観艦式」へ参加した際、背の高い「州」(カウンティ)級重巡を見慣れたイギリスの記者に「飢えた狼」と皮肉交じりで紹介されたこともある

本来は神戸生まれのハイカラさんで、スピットヘッド観艦式に続いて欧州歴訪をするなど才女でもある…艦娘になっても外国語に堪能で、艶のある黒髪と紫の服に包まれた姿が精悍で美しい

百合姫提督とは当初「エス」的な「大正ロマンあふれる」奥ゆかしいお付き合いをするつもりだった…が、百合姫提督や周りの艦娘たちのおかげですっかり教育され、今では布団の上でも狼に…

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二等巡洋艦(軽巡)「龍田」

百合姫提督に随行してきた「天龍」型軽巡の艦娘

「天龍」型軽巡自身は大正年間、イギリスで誕生した新しい艦種「軽巡洋艦」のアイデアを早速とりいれ、世界の最先端を行く艦となった艦だが、排水量3500トンはスペースに余裕がなさすぎ、後に5500トン型軽巡を生むことになった……艦のレイアウトはイギリス、主砲はフランス式の「14サンチ砲」と、まだ外国に学んでいた大正初期の日本艦らしい初々しさがある


艦娘「龍田」は短く切った紫がかった黒髪に優しい声が可愛らしい…が、白鞘の日本刀を差し、黒に銀の「昇り龍」の入った着物をはだけているさまは、どう見ても極道の姉御にしか見えないとも…百合姫提督を熱愛しているが、かなりの偏愛で拘束しているように見えることもしばしば……得意な歌は百合姫提督に向けて心をこめた「天城越え」

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ジェーン・ミッチャー准将

アメリカ海軍「ノーフォーク鎮守府」から派遣されてきた提督
チョコレート色の艶やかな肌と制服からはち切れそうな豊満な体型、ブロンドの髪が印象的

性格は親切かつあけっぴろげで、好き嫌いもはっきりしている……実力もあったが、ビアンで褐色の肌を持っている女性士官、おまけに細かい規則にうるさい「平時の海軍」のせいで何かと脚を引っ張られ昇進が進まなかった…が、太平洋岸の「サン・フランシスコ鎮守府」にいた際、レセプションに連れてきた艦娘に「サービス」しろと言った議員を派手にノックアウトし、それが気短な太平洋艦隊司令官「マティアス中将」の目に止まって気に入られるように…今では制服組トップの海軍作戦本部長(CNO)になったマティアス大将への配慮か、周りも遠慮がちになって鎮守府運営もやりやすくなったらしい……いつも「教養がない」と冗談めかしているが、実は読書家で、タフなだけではない文武両道の提督

…ちなみに戦中の名指揮官「マーク・ミッチャー」提督とは縁もゆかりもないとのこと


レセプションの一件の後、マティアス司令官に「転属先の空きができるまで避難させてやる」と派遣されたナポリで空母入港とかぶってしまい宿をとり損ね、当時ナポリ所属だった提督に声をかけられてアパートへ転がりこむことに……「何かいやらしいことしようとしたらどうする気だったの?」と、提督が聞かれた時は「もし無理に何かしようとしてもノックアウトできるから」と考えてオーケーしたとのこと


指揮下の艦娘たちには常日頃からバーベキューパーティやお出かけなど、様々なイベントを開いてあげているが、食べ盛りの艦娘数百人が所属している鎮守府を指揮しているだけあって財布が追い付かず「いつもピーピー」だという…


射撃の腕は海軍でもトップ二十人に入るほどで、愛用のピストルは自分で数丁分のパーツを組みたてた「コルト.45」こと「M1911」のカスタム銃
愛車はクロームイエローの1971年型「シボレー・バラクーダ」で、趣味は映画

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空母「エンタープライズ」(CV-6)

ミッチャー提督に随行してきた「ヨークタウン」級空母二番艦の艦娘


艦名「エンタープライズ」としては七代目で、レイテ、マリアナなど太平洋における海戦のほとんどに参加し十数回の損傷を受けながらも生き残った強運と戦績から、通称「ビッグE」や「グレイゴースト」などと呼ばれた

戦訓から学んで数次の対空火器増強を行い、ハリネズミのように40ミリ・ボフォース機銃や20ミリ・エリコン機銃を搭載している…また、装甲甲板こそないもののダメージ・コントロール能力に優れた名艦

アメリカ海軍としては初期の空母ながら搭載機も多く、最大で96機搭載可能と言われる

艦娘のエンタープライズは「ビッグE」だけに「巨大」と言ってもいい高身長で、ブロンドの髪は戦前の流行のようにカールさせている。タイトスカートからはみ出し、はち切れそうなふともも、何かと揺れる爆乳は「ビッグE」とからかわれるが、実際のカップはそれ以上とも……ミッチャー提督のよき補佐役

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駆逐艦「フレッチャー」(DD-445)

ミッチャー提督に随行してきた「フレッチャー」級駆逐艦の艦娘

フレッチャーは日本の特型駆逐艦…特にその後期型に対抗するべく空前絶後の175隻が整備された大型駆逐艦。建造隻数も多いが一隻ごとの質も極めて高く、37ノット近い最高速度に高い対艦・対空性能、さらにレーダーやVT(磁気感知式)信管など、優れた電子工学機器を搭載した艦隊型駆逐艦の傑作

艦娘の「フレッチャー」は駆逐艦とは思えないメリハリのあるボディに金髪ポニーテールで、雲形迷彩の「メジャー12」を彷彿とさせるブルーグレイとダークグレイのワンピースを着ている。何かと優秀なこともあってミッチャー提督とも親しく話す仲……妹が多すぎ見分けをつけてもらえないことがあるのが悩みのタネ

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マリー・エクレール大佐


フランス海軍・地中海方面艦隊所属で、南仏にある「トゥーロン第七」鎮守府の司令


淡い金髪に水色の瞳にほっそりした身体、流行のファッションをまとって高級な化粧品を使いこなし、パリ風のお嬢様言葉で話す

そのお洒落でイヤミ、フランス以外を何かと見下す性格はパリジェンヌそのもの…が、実際は「花の都」パリに憧れ、地元を出るために海軍士官になったプロヴァンス出身の田舎娘…ファッションセンスやアクセントはパリで馬鹿にされないために覚えたもので、たいていは見事なパリジェンヌに見えるが、やり過ぎの感もある……理論は一流のフランス海軍だけあって理屈をこねるのは得意だが実戦経験は乏しく、机上の空論になることも多い


パリの海軍司令部に所属している時に「流行しているから」とファッションレズを始めたが、連絡将校の少佐としてローマに派遣された際、提督に口説かれるとすっかり惚れ込んでしまい、一時期同棲するなど深い関係に…

そのせいで提督にはすっかり弱点を知り尽くされていて、「フランスの偉大さ」を鼻にかけたり、「イタリア海軍など物の数ではありませんわ」などと提督に議論を吹っかけるたびにその時のことでからかわれ、場合によっては首輪をつけられ鞭を振ってもらったりとすっかり調教済み…エクレール提督自身も普段は何かと「海軍司令部の意向に沿うように」と、肩がこりそうな完璧な生活スタイルを送っているからか、提督に会うと安心してすっかりデレデレの誘いネコ気質に……

「タラント第六」派遣中、提督が熱を出した時に看病してくれるなど、心根は優しい所もある

愛車は「ド・ゴール大統領も乗っていた」からと、黒のシトロエン「DS19」

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戦艦「リシュリュー」

エクレール提督に随行してきた「リシュリュー」級戦艦の艦娘


四連装二基、八門の主砲を全て艦首に装備し、後部に艦橋と副砲、水上偵察機の格納庫を設けると言う、イギリスの「ネルソン」「ロドネー」にも似た風変りなレイアウトの超ド級艦……第一次大戦での評価が低く、予算も削られ新戦艦を持っていなかったフランス海軍が、イタリアの「リットリオ」級戦艦建造の情報を受けてこれに対抗するべく計画した…が、開戦時にもだらだらと建造を続け、フランスの敗北が必至となったところで慌ててダカールに脱出、ヴィシー・フランスに属したり、その後連合国に加わったりと時代に翻弄され、戦後も長く「フランスの威信を見せつける」ために在籍していた
迷彩がグラデーションだったり煙突とマストを一体化したりするなど、かなり凝ったデザインをしている

艦名は智謀に優れた名宰相「リシュリュー」から名付けられている

艦娘「リシュリュー」はモノクル(片眼鏡)に白髪のロール髪、実際の艦影を彷彿とさせる前は豪華で後ろは飾り気のないエキセントリックなドレスを着ている…ファッションセンスはともかく、常に利害を考え落ち着いて行動する策士

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練習巡洋艦「ジャンヌ・ダルク」

エクレール提督に随行してきた練習巡洋艦「ジャンヌ・ダルク」の艦娘


長らく練習巡洋艦に旧式軽巡をあてがっていたフランス海軍が、ようやく専用の軽巡として建造した練習巡洋艦。同時期の優れたフランス軽巡「デュゲイ・トルーアン」級を参考に、速度を27ノット(公試時)まで落として雷装をなくし、客船のようなプロムナード・デッキを設けるなどした以外はほぼ同じ装備でまとめた……長距離航海に向いたバランスのいい練習巡洋艦で、戦後も長く愛された優秀艦

艦娘「ジャンヌ・ダルク」は三つ編みの金髪を頭に巻きつけたお姫様風の髪型に、剣を腰に提げ、銀の胸甲とブルボン王家の「金の百合」が入った白い胸帯、白いドレス…といかにも「ジャンヌ・ダルクらしい」恰好をしている

常にフランスの栄光と神の加護を信じ、思い込みが激しく熱っぽい…が、田舎者だった「ジャンヌ・ダルク」の影響か、お化粧やファッションには自信がない。エクレール提督を「モン・コマンダン」(私の司令)と呼び、熱烈に崇拝している

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メアリ・グレイ少将

イギリス海軍地中海艦隊「ジブラルタル第二」鎮守府の司令

ふわりと伸ばした金髪と深い茶色の瞳、その顔立ちは古風で美しい。紅茶はダージリンを好み、鼻にかかったようなキングス・イングリッシュを見事なアクセントで話す…「レディ」の称号こそ使っていないが、明らかに貴族にしか見えない優雅な提督……相手が気軽に話せるように気を配っているが、時折さりげないイヤミを言う辺りもイギリス貴族ならでは…

提督とはローマの「戦術・知識交換プログラム」で初めて会ったが、フランスのエクレール提督をやりこめたので興味を持った様子

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戦艦「クィーン・エリザベス」

グレイ提督の随伴艦「クィーン・エリザベス」級戦艦の艦娘


第一次大戦時の大海戦「ユトランド沖海戦」に新鋭高速戦艦として参加したド級艦
最高速度25ノットは第二次大戦レベルでみるともはや高速ではないが、姉妹艦「ウォースパイト」などと共にノルウェーでドイツ水雷戦隊を壊滅させたり、地中海でイタリア艦隊と交戦したりと活躍を見せた

第二次大戦中エジプトのアレクサンドリア港在泊中にイタリア軍コマンド部隊「デチマ・マス」隊の「SLC」(人間魚雷…吸着機雷付きの水中スクーター)に機雷を仕掛けられ大破、半年ほど行動不能になった

いずれにせよ新戦艦の建造が進んでいたことから、大戦後半はさして暴れ回ることもなく過ごした


艦娘「クィーン・エリザベス」は「エリザベス」だけにどこかの「最凶エレベーターガール」を彷彿とさせ、金髪に金色の目をしていて王冠を被り、宝石の入った王笏を持ち、たいていの提督ではかなわないような凄まじい気迫をはなっている……性格は自称「好奇心を抑えられない愛くるしい性格」らしい…

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軽巡「エメラルド」

グレイ提督の随伴艦「E」級軽巡の艦娘

第一次大戦中に帝政ドイツ海軍が計画していた高速敷設巡洋艦「ブルンマー」級を捕捉、撃破するために建造された高速軽巡…結局第一次大戦には間に合わなかったが、バランスのいい兵装と細い船体に搭載した二基の駆逐艦用主機のおかげで、計画通りの高速を発揮した…イギリス軽巡で最もスマートな一隻

第二次大戦に入ってもその高速は貴重で、ポケット戦艦「アドミラル・グラーフ・シュペー」追撃戦、地中海戦域などで活躍した


艦娘「エメラルド」は長身のほっそりした身体に、先端がエメラルド色にグラデーションしている銀髪、きれいなエメラルド色の瞳…と、妖精のような姿をしている

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シャルロッテ・ヴァイス中佐

ドイツ連邦海軍のフレガッテンカピタン(中佐)で「ヴィルヘルムスハーフェン鎮守府」の司令

鋭い灰色の目にプラチナゴールドの髪をそっけなく束ねている


グレイ少将と同じくローマで少し会話しただけだが、口調も厳しく厳格そうな様子は中佐には見えない存在感がある

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戦艦「ビスマルク」「ティルピッツ」

ヴァイス中佐の随伴艦「ビスマルク」級戦艦の艦娘


ドイツが再軍備宣言をする前から海軍内で密かに計画が進められていた超ド級艦。目的はイギリスを締め上げる通商破壊戦としただけあって、主砲の門数や口径よりも速度や防御に意識が払われている…一見すると地味に見えるスペックながら初期のレーダーを搭載したり、副砲や高角砲を多く搭載したりと実戦向き


ビスマルクは初出撃でイギリスの巡洋戦艦「フッド」を轟沈させ、艤装も間に合わないまま同行していた「プリンス・オブ・ウェールズ」にも被害を与えるなど奮闘したが、「ソードフィッシュ」複葉雷撃機の魚雷攻撃で舵機を損傷、フランスのブレスト港まで百数十キロと言う所で集中攻撃を浴びて撃沈された(ドイツでは自沈したという説もある)

二番艦「ティルピッツ」は大型艦の損失を恐れたヒトラーの命令でノルウェーのフィヨルドに引きこもっていたが、イギリスがイタリア海軍を参考にしたあの手この手のコマンド作戦を受け損傷、最後は「ランカスター」爆撃機の超大型爆弾に止めを刺された

…一番艦「ビスマルク」は言わずと知れた「鉄血宰相」ビスマルク、二番艦「ティルピッツ」は帝政ドイツ艦隊の生みの親である海軍提督の「ティルピッツ」から


艦娘「ビスマルク」は金髪を束ね、鉄血宰相だけに自他を問わず厳格で熱血…妹ティルピッツの事は姉として好ましく思っているが、うまく伝えられていない

艦娘「ティルピッツ」はノルウェーのフィヨルド暮らしが長かったせいか青白い肌に北海のような灰色の髪で、かなり引きこもりがち…爆撃で止めを刺されたせいかとにかく飛行機が嫌い

………

ジュリア・アントネッリ中佐

シチリア島にいるP-3「オライオン」対潜哨戒機の飛行隊長。モトグッツィの大型バイクと黒のライダーススーツが似合う格好いいタイプの女性で、同性によくモテる…本人も無類の女好き
提督とは軍の射撃場で知り合い「濃厚なお付き合い」をしていた関係で、直近の作戦で艦娘たちの支援のために哨戒ルートを変えてくれた

………

ナタリア・カルリーニ大佐
海軍測量部の大佐。提督と付き合っていた「恋人」の一人で、作戦のために海図を優先して回してくれた…美人でアルトの声が色っぽい

………

マリア・ヴィオレッタ少佐
海軍航空隊の作戦課に所属している少佐。数年前、提督と独身宿舎で変態チックな「メイドとお嬢様ごっこ」に興じていたところを海軍憲兵に見つけられ、提督のせいにしようとした…結局知り合いの憲兵だったので見逃してもらえたが、それ以来提督には頭が上がらない

………

ルチア

イタリアでさまざまな福祉活動をしている「社会福祉公社」を通じて、「タラント第六鎮守府」に引き取られた若いメスの保護犬。白いコリー系の雑種でボルゾイの血が強く出ているらしく、脚が普通のコリーよりも長い…避妊手術とトイレトレーニング済みで、可愛らしい上に賢い


………

…夏の日の午後・提督の自室…


提督「ふわぁ…ぁ……」午後の暖かい日差しに照らされながら、ベッドの上で「うーん…」と伸びをする提督……長い髪をベッドに広げ、そのむっちりした裸体を桃色のタオルケットが覆っている…


…この休暇に入る前、日々の哨戒や多少の支援任務以外で初めて「南部イオニア海管区」司令部から命令された大型作戦……しかも難しい作戦だったチュニジア沖「ケルケナー諸島方面」への人道支援物資・輸送作戦…要は輸送潜水艦を使ったイタリア版「東京急行」…と、リビア沖での「輸送船団攻撃」の二作戦を無事に終え、年度末の夏季休暇で久しぶりにカンパーニア州の実家に戻ってきた提督……久しぶりに子供に戻った気分で平らげた美味しい昼食とワインのおかげですっかり眠くなった提督は、母親のクラウディアがそのままにしておいてくれた自室のベッドに転がり込むと、しばらく眠りこけていた…


ライモンド・モンテクッコリ(ライモン)「ふふ…おはようございます」狭いシングルベッドで添い寝をしながら、ちゅっ♪…と「お目覚めのキス」をしてくれたのは軽巡の艦娘「ライモンド・モンテクッコリ」…提督言うところの「ライモン」だった

提督「おはよう、ライモン…私ったらあれからまた寝ちゃったのね」

ライモン「はい…でもいいと思います。せっかくのお休みなんですから♪」

…さっきまで甘ったるいようなキスを交わしていただけあって頬を桜色に染め、気おくれしたように、はにかんだ笑みを浮かべるライモン…普段は高めの位置で結んでいるポニーテールは解かれていて、しなやかで長い亜麻色のような金髪がきらきらと陽光にきらめいた…

提督「それもそうね…でも、せっかく招待してあげたのにそれじゃあつまらないでしょう?」

ライモン「そんな、お気になさらないで下さい…それに、提督の寝顔を見ているだけで嬉しかったですし……///」

提督「あらあら、そんな風に言われたら狼になっちゃうわよ…♪」目を細めてにっこりする提督

ライモン「も、もう…///」

提督「ふふ、冗談よ…さ、起きて庭の散歩でもしましょう?」

ライモン「はい…えーと、それじゃあ提督の着替えを……」

提督「いいの。ここは私の部屋だから自分が一番よく分かっているわ…それにライモンはお客様なんだから、あくせくしなくていいのよ♪」そう言ってウォークイン・クローゼットになっているアルコーヴ(小部屋)に入ると、置きっぱなしだった服をごそごそとかき回し始めた…

ライモン「そうですか、でしたらお言葉に甘えて…」ベッドの上で起き上がり、ヘアゴムで手早く髪をまとめるライモン…提督の部屋は割ときれいに整えてある執務室とは違って、机の上に数冊の本が置きっぱなしになっている……「しゅるっ…ぱさっ」と、提督が衣擦れの音を立てて着替える中、ライモンは小説らしい文庫本を見るでもなしに取り上げた……

提督「…読みたかったら読んでもいいわよ?」

ライモン「いえ…特にそう言うつもりでは……っ///」返事をしながら提督の方を向いた瞬間、真っ赤になるライモン…

提督「うふふっ…お互い普段からずいぶん裸も見ているのに、まだ私の下着姿で赤くなって……本当にライモンは可愛いわ♪」

ライモン「だって…提督、その下着は反則です///」

提督「そう?…そんなに際どいかしら」クリーム色がかった張りのある肌に紺のレースが付いた下着を履いたまま、改めて自分の身体を見おろす提督…

ライモン「いえ…その///」下着自体はおとなしい方ではあったが、日頃過ごしている鎮守府での美食がたたってサイズの合わなくなった生地が、ヒップに食い込んでいる…

提督「あー…そう言われれば確かにこの下着はきついわ…でもどうしようかしら、そうなるとここに置いてある下着はほとんど全滅だし……」

ライモン「出来るだけゆるい物を選ぶしかないのでは…とにかく、何か着てもらえませんか///」

提督「…下着を着ているじゃない♪」

ライモン「いえ、ですから…もう少し刺激の少ない格好をなさってくれませんか」

提督「はいはい…それじゃあちょっと待っててね♪」また小部屋に引っ込むと、今度は前よりも長くごそごそと服をかき回している…

ライモン「…どうですか?」

提督「ふぅ…なんとか見つけたわ、どう?」現れた提督はライムグリーンの縁取りがされた白のサマードレス姿で、ライモンの前でくるりと回ってみせた

ライモン「はい、それなら清楚で可愛らしいです♪」

提督「よかった…それじゃあ行きましょうか」…すっと手を差しだす提督

ライモン「はい…///」そっと差しだされた手を握って、指を絡めた…

…居間…

クラウディア「おはよう、フランチェスカ♪」提督の「お母さま」クラウディアは、もっちりと柔らかそうな身体を白いワンピースで包み、午後のお茶をすすっている…

提督「おはよう、お母さま……もう、こんな時間になる前に起こしてくれればよかったのに」

クラウディア「あら…私はてっきりフランチェスカが「お昼寝中」だと思ったからお邪魔しなかったのよ♪」

ライモン「…っ///」

提督「ふぅ、全く…お母さまは相変わらずね」

クラウディア「ええ、私は今日も朝からシルヴィアと……ねぇフランチェスカ、お母さまが朝からシルヴィアと何をしたか…知りたい?」

提督「聞かなくても分かるわ…でしょう、シルヴィアおばさま?」

シルヴィア「そうね、だいたいいつもの通りよ…もっとも、今日は猟に行くから早くにベッドから出たけれどね」居間に入ってきたシルヴィアはクリーム色のさっぱりしたスラックスに薄手のセーターを着て、手にコーヒーカップを持っている…

提督「それにしても…おばさまは相変わらず猟が得意なのね♪」

シルヴィア「まぁ、そうね…フランチェスカはどう、射撃の練習はしていた?」

提督「ええ、鎮守府に射撃用のレーンがあるから…まぁまぁね」

ライモン「提督は射撃がとってもお上手で…最初は少し驚きました」

シルヴィア「そうかも知れないわ。フランチェスカはあんまりそういうことが得意そうには見えないから」

ライモン「ええ。どちらかといえばお洋服にお化粧とか…」

シルヴィア「でしょうね。まぁ、射撃は子供の頃から私が教えたから経験が長いし…他の運動はあんまり得意じゃなかったけれど」

クラウディア「ふふ、シルヴィアは教え方もとっても上手で…この娘ったらずーっとシルヴィアにくっついていたわ♪」

提督「ちょっと止めてよ…昔の話なんて///」

クラウディア「別にいいじゃない♪…あのころはフランチェスカもお母さまにうんと甘えてくれて……もう、食べちゃいたいほど可愛かったわ♪」

ライモン「……提督はいまでも可愛いですよ///」

クラウディア「…あらあら♪」

シルヴィア「ふ…それもそうね」

提督「…ライモン///」

ライモン「いえ…だって///」

アッテンドーロ「あら、姉さんたちで何を話しているの?」

…そう言って二階から降りてきたのはライモンの妹「ムツィオ・アッテンドーロ」……提督の実家にお邪魔したいと言いたかったものの、なかなか切りだせないでいたライモンにつきあい、夏季休暇の申請を出さずにいた…さらにライモンが「わたし、提督と二人きりになったら絶対我慢できなくなっちゃう」と、いらぬ心配をしていたので「お目付け役」も兼ねてついてくることにした妹…

提督「あらムツィオ…服を着替えたのね♪」

アッテンドーロ「ええ、さっきの格好じゃちょっとくつろげないから」…淡いグレイの柔らかそうなフレアースカートに、あっさりした白のブラウスがスタイルのいい身体によく似合っている

クラウディア「あら、いい色合いのグレイね…よく似合ってるわ♪」デザイナーだけあって、ぱっと気が付く…

アッテンドーロ「どうも…で、姉さんたちは何の話をしてたの?」

ライモン「えーと、提督が子供の頃の話を…」

アッテンドーロ「へぇ…それは私も聞きたいわ」

提督「ねぇ、ムツィオ。私の子供時代の話なんて聞いてどうするの?」

アッテンドーロ「別にいいじゃない…どうせ表はまだ暑いでしょうし、夕食までいい気晴らしになるわ」

クラウディア「うふふ…それじゃあ決まりね♪」

提督「もう…お昼にそう言う話はしたんじゃなかったの?」

クラウディア「もちろんしたけど、もっといっぱい話したいじゃない♪…それに、あなたが眠くなってお部屋に戻ってからは、私もシルヴィアもずっと聞き役に回っていたんですもの♪」

提督「え…」

ライモン「その…すみません、提督……でも、提督が鎮守府でどう過ごしていらっしゃったかと聞かれたら、答えないわけにもいかなくて……」

アッテンドーロ「姉さんってば、そう言う割にはノリノリでいっぱい暴露してたわよ♪」

提督「あー……うん、平気よ。普段の生活は規則正しいイタリア海軍軍人に恥じないものだから、何も心配いらないわ♪」わざとすっとぼけてみせる…

アッテンドーロ「…ぷっ…くくっ♪」

提督「…何かおかしいかしら?」

アッテンドーロ「ええ…ふふっ……だって、おかしくって…くくくっ…お腹がよじれそうよ……あははっ!」

クラウディア「もう、ごまかさなくたっていいのに♪……ライモンちゃんから聞いたわよ、鎮守府ではずいぶんと楽しくやっているみたいじゃない♪」

シルヴィア「いつの間にか、フランチェスカも大人になってたってことね…この間まで小さいちいさいと思ってたのに…」

ライモン「…あ、そうでした。クラウディアさん、シルヴィアさん。よかったら提督が子供だった時のことを聞かせて下さい♪」

クラウディア「あぁ、はいはい…そうでした♪」

シルヴィア「よかったらもう一人の「艦娘」さんも呼んであげたら…コーヒーも淹れたし、ビスコッティもあるわ」

ライモン「そうですね、それじゃあ呼んできます♪」

提督「…お母さま、お願いだからあんまり恥ずかしい話はしないでよ?」

クラウディア「んー、何の事かしら…私にはよく分からないわ♪」

シルヴィア「…大丈夫よ、フランチェスカ。クラウディアに限って、あなたが本気で嫌がるような事を話したりする訳ないわ」

提督「ええ。そう思うけれど一応…ね」

クラウディア「もう、相変わらず心配性なのね…?」

提督「それを言うなら「用心深い」って言って欲しいわ……あ、戻ってきたみたい」

ライモン「チェザーレさんを呼んできました…「少し髪を整えたらすぐ行く」と言ってましたよ」

アッテンドーロ「ふふ…髪にうるさいチェザーレのことだから、きっと洗面台をひっくり返すような騒ぎを起こしてからに決まっているわ」

チェザーレ「……チェザーレの髪について何か言ったか、アッテンドーロよ?」

…階段を下りてきて居間を見渡すようにしながら、堂々たる口調で聞き返した「ジュリオ・チェザーレ」…長身でよく張ったふくよかな乳房、きゅっと引き締まったお腹に長い脚……まるでアスリートのような身体を五分袖のサマードレスに包み、威風堂々とやってきた…

アッテンドーロ「あら、ずいぶんと早かったわ……いえ、まぁ「チェザーレ候は髪に気を配っておられるからお出でになるまで少しかかるのでは」と、言ったまでですよ♪」

チェザーレ「それをナポリ流に砕いて言ったわけであるな…まぁよい。せっかくの機会なのだ、母君には提督が幼いころの話をうんとしてもらおうではないか♪」

クラウディア「はいはい…それと、お昼にもいったけど「クラウディア」って呼んで♪」

チェザーレ「おぉ…申し訳ない、クラウディア」

クラウディア「ふふ、よろしい…それじゃあフランチェスカの子供時代を話してあげましょうね♪」

ライモン「はい、お願いします♪」

アッテンドーロ「待ってたわ♪」

チェザーレ「うむ、「ガリア戦記」と同じくらい興味深いな♪」

提督「……お手柔らかに頼むわ、お母さま」

………

クラウディア「そうね、なら……この子がまだ…いくつの時だったかしら?」

シルヴィア「あの時の話なら確か…五歳とか、そのあたりだったと思うけど?」

クラウディア「うんうん、そうだったわ♪」

アッテンドーロ「提督が五歳のころ……うんと可愛い子供だったろうってこと以外、想像も出来ないわ」

ライモン「そうね、わたしもそう思うわ」

クラウディア「ええ、フランチェスカったらもうとにかく可愛くて♪…それでね……」

………

…提督・五歳の頃…


クラウディア「おはよう、フランチェスカ…ちゅっ♪」可愛らしいぬいぐるみにかこまれて布団に包まれている娘に屈みこみ、頬におはようのキスをするクラウディア…

提督(幼)「んんぅ…おはよう、クラウディアおかあたま……ちゅ♪」くりっとした目に大人しい外見のフランチェスカ(提督)がクラウディアの頬にキスを返す

クラウディア「さ、もう太陽が出ているわよ。朝ご飯を食べにいらっしゃい♪」

提督(幼)「はぁい♪」

提督(幼)「んぁー…がらがらがら……」丸い房飾りのついたパジャマ姿の提督はクラウディアに連れられて洗面台に立ち、顔を洗い、歯みがきとうがいと済ませる…

シルヴィア「おはよう、フランチェスカ…ん♪」食堂でコーヒーをすすりつつ、「コリエーレ・デラ・セラ」紙を読んで朝食を待っているシルヴィア……まだあどけない様子の提督がやってくると、左右の頬にキスをした

提督(幼)「うん、おはよう……シルヴィアおかあたま…ちゅっ♪」身を屈めているシルヴィアに届かせようと背伸びをして、頬にお返しのキスをする提督…

クラウディア「はい、よくできました…それじゃあ、「お母さま」が朝ご飯を持ってきてあげるわね♪」

提督(幼)「うんっ。わたし、おかあたまの作るご飯大好き♪」

クラウディア「あらあら、嬉しい事を言ってくれるわね…♪」…挨拶のキスよりちょっと長めのキスをふにふにと柔らかい桃色の唇にすると、バレエのようにくるりと一回転して台所に入って行った…

シルヴィア「フランカはいい子ね、そうやってお母さまをほめてあげて。えらいわね♪」(※フランカ…「フランチェスカ」の縮めた名前)

提督(幼)「うんっ、だっておかあたまの「ちゅう」は、やわらかくていい匂いがするし…だからいっぱいしてほしいの♪」

シルヴィア「そうね…確かにクラウディアの「ちゅう」は甘くてとろけそうよね……」幼い子供ならではの生真面目な様子で話す提督に微笑を浮かべ、コーヒーカップに手を伸ばした…

提督(幼)「ねぇねぇ、シルヴィアおかーたま…」まだまだ舌っ足らずな口調で「お母たま」の袖をそっと引いた…

シルヴィア「なぁに、フランチェスカ?」

提督(幼)「昨日おかあたまとクラウディアおかあたまがしてた「ちゅう」は、いつもの「ちゅう」とちがってたけど…どうして?」

シルヴィア「……「昨日のキス」って言うと、どこでしていたキスのこと?」(…だからあれほどドアを閉めてからにしようって言ったのに)

提督(幼)「うーんと…わたし、夜にね、お手洗いに行きたくなっちゃったの……それでね、その時におかあたまが「ちゅう」してるのが見えたの」

シルヴィア「うん…それはね、大人同士に使う「ちゅう」なの……だからフランカには使ってあげられないの」

提督(幼)「そうなの…でも、わたしがおっきくなった時にはおかあたまはもっとおっきくなってるよね……?」

シルヴィア「ええ、そうね」

提督(幼)「…それじゃあわたしは、ずーっとおかあたまと「おとなのちゅう」はできないの?」

シルヴィア「大丈夫よ…フランカが大きくなったら私はもっと大きくなっているでしょう、なら「大きい同士」でちゃんとできるわ」

提督(幼)「そっか…よかったぁ♪」

シルヴィア「そうね。…さ、ミルクを飲んでクラウディアお母さまが戻ってくるのを待ちましょうね」

提督(幼)「はぁーい」

………

提督かわいい

>>1
前スレ1000は1のために取らないんだ。取ってこいよ

>>14 そう言うものなのですね…教えて下さってありがとうございます……無事に取ってまいりました


それでは数日かけてクラウディアとシルヴィア×提督(幼)を投下してまいりますので…



クラウディア「……って言うことがあったの…それを聞いたらもう可愛くって♪」

提督「///」

ライモン「ええ……間違いなく可愛いですね///」

アッテンドーロ「もう…最高じゃない……♪」

チェザーレ「うむ、幼い提督も悪くないな……休暇明けに鎮守府へ戻ったら、アルキメーデ級にでも頼んでみるか…」


(※アルキメーデ級…古代・中世の高名な学者を艦名に取った中型潜。艦娘「アルキメーデ」級はおしゃれなケープや飾りのついた帽子、「月と星の杖」などを身に着けていて、どこぞの「錬金術士」たちをほうふつとさせ、日々実験や発明を続けている……有益な発明もあるにはあるが、提督としては鎮守府を「N/A」で吹き飛ばしたりしないよう祈るばかり…)


クラウディア「それでね、この話にはまだ続きがあって…」


………



クラウディア「はーい、お待ちどうさま。それじゃあ朝食にしましょうね……どうしたの、シルヴィア?」

シルヴィア「クラウディア、フランチェスカは「昨日の」見てたそうよ…だから言ったでしょう」

クラウディア「だって、仕方ないじゃない……それに最初にしてくれたのはシルヴィア、あなたよ♪」

シルヴィア「はぁ…たしかにそうだけど……でも、止めてくれたっていいじゃない」

提督(幼)「おかあたま…ケンカしてるの?」あどけない顔に少しだけ心配そうな表情を浮かべる…

クラウディア「…いいえ、お母さまとシルヴィアは「とっても仲良し」よ♪」

シルヴィア「そうね、それは間違いないわ」

提督(幼)「じゃあ、おかあたまたちで「ちゅう」できる?」

クラウディア「もちろんよね、シルヴィア…んっ♪」

シルヴィア「んっ…これでいい、フランカ?」

提督(幼)「んー……あっ!」

クラウディア「どうしたの、フランチェスカ?」

提督(幼)「さっきシルヴィアおかあたまが、「あれは『おとなどうしに使うおとなのちゅう』だから」って言ってたの……おかあたまは二人ともおとなだから「おとなのちゅう」じゃないとだめじゃないのかな…?」

シルヴィア「あー…」

クラウディア「ええそうね…お母さまたちは大人だから、ちゃんと「大人のちゅう」じゃないといけないわね♪」

シルヴィア「…ちょっと、クラウディア」

クラウディア「ふふ…大丈夫よ、任せておいて♪」ピンクのフリル付きエプロン姿で、こっそりウィンクを投げるクラウディア…

提督(幼)「……おかあたま?」

クラウディア「あのね、フランチェスカ…「大人のちゅう」はいつもする訳じゃないのよ♪」

提督(幼)「…どうして?」

クラウディア「それはね…「大人のちゅう」はとっても時間がかかるから、いつもしていたら一日が終わっちゃうの……だから、「大事なとき」や時間がある時、それも「大好きな人」や「時間をかけてあげたい人」にだけにするの♪」

提督(幼)「じゃあクラウディアおかあたまとシルヴィアおかあたまは「だいすきなひと」なんだ♪」

クラウディア「ええ、そうよ…」

シルヴィア「……ふぅ」

クラウディア「…だからちょっとだけシルヴィアと「大人のちゅう」をするわね♪」

シルヴィア「え…ちょっと」

クラウディア「いいじゃない…ちょっとだけ♪」

シルヴィア「クラウディア…言っておくけど娘の前なのよ?」

クラウディア「…でも、このまま間違って「あいさつの一つ」なんて覚えるよりは、ちゃんと「大人同士のちゅう」を理解させた方がいいと思うの」

シルヴィア「うーん……まぁそれも一理ある…か」

クラウディア「…それと、娘に「大人のキス」を見せつけるのもなかなかいいと思わない?」

シルヴィア「……おおかたそんなところだろうとは思っていたわ…じゃあ本当に少しだけよ?」

クラウディア「ええ♪…それじゃあフランチェスカ」

提督(幼)「うん」

クラウディア「お母さまがシルヴィアとちょっとだけ「大人のちゅう」をするから…朝ご飯は少しだけまっててね♪」

提督(幼)「うんっ…♪」

クラウディア「それじゃあ…まず「大人のちゅう」は挨拶から始めるの……シルヴィア♪」

シルヴィア「何、クラウディア?」

クラウディア「…秋の夜露のようにそっと耳に届く貴女の声……冬の落ち葉のような栗色をした貴女の髪…それに、春を迎えて開いたばかりのカーネーションのような貴女の唇…それを考えただけで私の胸は夏のティレニア海のようにときめくの…♪」……あっという間に目をうるませ、即興で四季をつづった愛の言葉をささやくクラウディア

シルヴィア「クラウディア……私が貴女の心を夏の海のようにときめかせるなら、きっと私は太陽なんだろうね…じゃあ、おいで……優しく暖めてあげるから…」つとクラウディアの腰に手を回し、そっと抱き寄せる…

クラウディア「んっ……ふ…♪」

シルヴィア「んっ…ちゅっ……ん、んっ///」

クラウディア「んふ…んっ、ん、んんっ♪……ん、ちゅぷっ…れろっ…ちゅっ、ぴちゅっ……ちゅぷ…っ♪」

シルヴィア「んっ、んんぅ…んっく…んっんっ、んぅぅ…!?」

提督(幼)「わぁ…///」

クラウディア「ん、ん、んっ、んちゅ…ちゅるっ、ちゅ…っ……んふっ、ちゅ、んくっ…ちゅぽっ……はぁぁ…っ♪」…絡みあわせていた舌先からすーっと垂れた唾液が、朝の明るい光に照らされて金色にきらめいた……

シルヴィア「ぷはぁ…っ……ちょっと、クラウディア…あなた自分で「少しだけ」って言ったでしょう///」

クラウディア「だって……日差しの中で見るシルヴィアが格別きれいに見えたんですもの♪」

シルヴィア「ふぅ…それにしたって甘すぎるわ///」

クラウディア「ふふっ…フランチェスカ、これで「大人のちゅう」は分かったかしら♪」

提督(幼)「う……うん///」

シルヴィア「……ほらごらんなさい、やっぱりこの子には刺激が強すぎたみたいよ」

クラウディア「…さぁ、どうかしら……ねぇフランチェスカ、お母さまたちの「大人のちゅう」はどうだったかしら♪」

提督(幼)「うん……あのね…」

シルヴィア「…正直に言っていいからね?」

提督(幼)「とっても…きれいだった……///」顔をぽーっと赤らめて、椅子からずり落ちそうなほど脱力して座っている…

クラウディア「あら嬉しい♪…綺麗だったのはシルヴィア?」

提督(幼)「ううん…ふたりとも……お日さまが明るくて、おかあたまたちがきらきらしてみえたの…///」

シルヴィア「そう…あれを「きれいだった」なんて……やっぱりクラウディアの娘だけあるのかも知れないわね…」

提督(幼)「ねぇ、おかあたま…」

クラウディア「なぁに、フランチェスカ♪」

提督(幼)「わたし、おおきくなったらおかあたまたちとけっこんする…それでね、おかあたまたちといっぱい「おとなのちゅう」するの///」

クラウディア「まぁ、嬉しい♪…それじゃあ、お母さまはフランチェスカが大きくなるまで待っていてあげるわね♪」

提督(幼)「うんっ♪…シルヴィアおかあたまも、わたしがおおきくなるまでまっててね?」

シルヴィア「ええ、待ってるわ……あー、何て言うのかしら…朝から今世紀最大の「パンドラの箱」を開けた気分ね…」

クラウディア「もう…こんなに可愛いフランチェスカがどうして「パンドラの箱」なの?」

提督(幼)「おかあたま…またケンカなの?」

シルヴィア「あぁ、大丈夫よ…それより、クラウディアが作ってくれたせっかくの朝ご飯が冷めるわ……さ、朝食にしましょうね?」

提督(幼)「うんっ♪」

………


クラウディア「…って言うことがあったの、まぁ何とも純粋で可愛かったわ♪」

シルヴィア「ちょっと、クラウディア…あの時の愛の言葉、まだ覚えていたわけ?」

ライモン「……それが今の提督を生んだきっかけですね///」

アッテンドーロ「ええ、間違いなくね…」

チェザーレ「うむ……なんと言うか、思っていたより強烈であった…な」

提督「///」

クラウディア「ほら、シルヴィアも何か話してあげたら?」

シルヴィア「そうは言ってもね…たいていはクラウディアと一緒に子育てしていたわけだし……」

提督「…シルヴィアおばさま、お願いだからもう少し大人しい思い出をお願い」

シルヴィア「ええ……そうね、それじゃあ…」

アッテンドーロ「…別の話があるのね♪」

シルヴィア「あるわ…あれはフランチェスカが八歳ごろの事だったわね…」


………

…提督・八歳のころ…

クラウディア「…フランチェスカに射撃を教える?」

シルヴィア「ええ、あの子もいくらか興味を持っているみたいだし……ああいうものは早いうちに覚えた方がいいわ。それに何だって使えて損はしないから」

クラウディア「あなたが教えるの?」

シルヴィア「ええ、そうなるわね…まぁ隣近所がいる訳じゃないし、迷惑はかからないわ」

クラウディア「でも、あの子ったらまだあんなに小さいけど…大丈夫かしら?」

シルヴィア「小さいうちに正しい使い方を覚えた方が事故は少ないわ。馬鹿なことをしでかすのはたいてい付け焼刃の連中って決まっているもの」

クラウディア「うーん…あなたが覚えさせたいなら私は反対しないけど……気を付けてね?」

シルヴィア「もちろん」


…とある日…

シルヴィア「フランカ、ちょっといい?」

提督(幼)「どうしたの?シルヴィアおかあさま」……いくらか大きくなった提督は桃色のフリル付きワンピースを着て本を読んでいたが、子供らしいきょとんとした顔をして首をかしげた

シルヴィア「今日はね、フランチェスカに射撃を教えてあげようと思うの…よかったら私の部屋においで?」

提督(幼)「いいの?……クラウディアおかあさまには聞いた?」

シルヴィア「ちゃんと聞いたわ」

提督(幼)「それで、おかあさまはいいって?」

シルヴィア「ええ…ただし、基本の約束事を守るならね」

提督(幼)「…どんなおやくそく?」

シルヴィア「それは私の部屋で話してあげるわ…汚れてもいいような服に着替えてからおいで?」

提督(幼)「はーい」

………

…シルヴィアの自室…

提督(幼)「…シルヴィアおかあさま、入ってもいい?」…少しよれてきたクリーム色の丸襟付きのブラウスと、茶色のズボン姿でやってきた

シルヴィア「ええ、どうぞ」

提督(幼)「うわぁぁ…すごい……」


…まだ小さいフランチェスカは、シックで大人びたシルヴィアの部屋に入るとあたりを見回した……射撃と猟が得意なシルヴィアだけあって、部屋には子供がいじるには危険なものが色々と置いてある…そのため普段は鍵をかけてあり、提督にとっては入ったことのない「聖域」のようになっていた……壁には数丁の散弾銃が掛けてあり、小さい棚には口径ごとに並べた銃弾メーカー「フィヨッキ」の箱が置いてある…


シルヴィア「さて…と……まず、ここに入ったから時はフランチェスカも大人だから、必ず「銃を扱う時の約束事」を守ること…いいわね?」

提督(幼)「うん…」普段のシルヴィアとは比較にならないほど厳しい顔をしているので、幼い提督にも約束を守らないと怖いことがあるのは理解できたらしい…緊張した面持ちでうなずいた

シルヴィア「よろしい…じゃあ、ここにおいで?」


…天板を痛めないよう木の板が敷いてある部屋の机には、ライトスタンド、すみっこに取り付けてある万力、それに様々なねじ回しや工具箱…それに一挺のほっそりしたライフルが置いてある……部屋には銃の木部に塗る亜麻仁油とガン・オイル、それに少しの硝煙が混じった、独特のひんやりしたような空気が流れていた…


提督(幼)「うん」そっと歩いて机に近寄るとシルヴィアが提督を持ち上げ、自分の膝の上に乗せた…

シルヴィア「これでよし…と。…それじゃあ約束事を言うからね」

提督(幼)「…うん」

シルヴィア「じゃあ一つ目…絶対に撃つ時以外は引き金に指をかけない……ここよ」細身のスポーツライフルの引き金を指差した

提督(幼)「指をかけない…」

シルヴィア「そうよ…引き金に指をかけたら、その時は相手を殺すつもりだと言うことよ……よく冗談で指をかける馬鹿者がいるけど、そうなったら相手から撃たれても文句は言えないのよ」

提督(幼)「…」

シルヴィア「二つ目…絶対に銃口をのぞかない」

シルヴィア「……私は直接見たわけじゃないけど、前に撃発不良の銃を調べようとして銃口をのぞきこんだ人がいてね…片目をなくしたわ」

提督(幼)「…ひっ」

シルヴィア「どんなことがあっても銃口をのぞいちゃいけないわ…いい?」

提督(幼)「うん…絶対にのぞかない……」机の上に置かれた綺麗なライフルをこわごわと見つめる提督…

シルヴィア「じゃあ三つ目…人に銃口を向けない」

提督(幼)「人にむけない…」

シルヴィア「ええ……これは一つ目と同じ。引き金に指をかけるとか、銃口を向けたら「お前を殺す」って言うのと同じよ。そうなったら何をされても文句は言えないわよ…いいわね?」

提督(幼)「うん…わかった」

シルヴィア「この三つだけでいいわ…守らないと死ぬことになるから、絶対にこの三つは守りなさい……いいわね?」

提督(幼)「うん…ぜったいまもる」

シルヴィア「あと、これは私とあなたの約束事ね…銃におかしなことがあったら必ず私を呼びなさい、怒ったりしないし、絶対にすぐ行ってあげるから」

提督(幼)「わかった…なにかあったらシルヴィアおかあさまをよぶね」

シルヴィア「そう…フランチェスカは立派ね、それじゃあそのライフルを触らせてあげる….22口径のスポーツライフルよ」木部は絹のように滑らかで、銃身や金属部はオイルを引かれ、漆塗りのように艶を持っている……

提督(幼)「わ…重い……」

シルヴィア「最初はそうかもしれないわね…じゃあ、操作してみましょうか」ボルトアクションの槓桿(こうかん)を引いてみせた…

提督(幼)「んんっ……くっ…」

シルヴィア「ちょっとあなたの力だと固いかも知れないけど…慣れればスムーズに動かせるようになるわ」

提督(幼)「んっ!」キシンッ!……ボルトが動いて薬室が開いた

シルヴィア「そうそう…そこに弾薬が入るのよ」

提督(幼)「どのたまが入るの?」

シルヴィア「.22ならこれね…ちょっといい?」

提督(幼)「?」

シルヴィア「悪く思わないでね…」小さい5.6ミリ×15(.22口径)の弾を箱から取り出し、その先端を強くふとももに押し付ける…

提督(幼)「っ!……いたいよぉ…シルヴィアおかあさま…ぁ」

シルヴィア「ごめんね、フランチェスカ…痛いでしょう?」

提督(幼)「うん…ぐすっ……」

シルヴィア「こんな痛いものを撃ちだすのよ…軽々しく使わないようにね?」

提督(幼)「うん……」

シルヴィア「さ、私が撫でてあげるから……ね、もう痛くないでしょう?」しばらくふとももに手を置いて、そっと撫でてあげるシルヴィア…

提督(幼)「うん…おかあさまのおててはひんやりしてて、いたいのがなくなったみたい……」

シルヴィア「よかった…じゃあ裏の森に行って練習してみましょうか」

提督(幼)「うん…っ!」

………

…数か月後・裏の森の小さな原っぱ…


提督(幼)「シルヴィアおかーさま、みてみて?」ライフルを優しく台に置いて耳当てを外すと、小走りでボール紙の標的用紙を持ってきた

シルヴィア「どれ…あら、ずいぶん上手になったわね……このままじゃあ私の方が教わる側になりそうね」ベネリの散弾銃を置くと、自慢げに的の用紙を見せに来た提督を眺め、「ふふっ」と笑みを浮かべた…

提督(幼)「そんなことないよぉ…シルヴィアおかあさまはどの銃でもとっても上手だもの♪」

シルヴィア「あら、ありがと…それじゃあそろそろお昼に戻りましょう……遅れたらクラウディアに怒られちゃうわよ」

提督(幼)「うーん……ねぇ、おかあさま」

シルヴィア「なぁに、フランチェスカ?」

提督(幼)「……もうちょっとだけ、撃っていかない?」

シルヴィア「お昼には戻るって言ってきちゃったわよ?……そろそろ片付けないと」

提督(幼)「でも…せっかくじょうずになってきたから……」

シルヴィア「ふー…仕方ないわね。じゃあ、あと弾倉一つ分だけよ……そのかわり、後ろで見ていてあげるから」

提督(幼)「おかあさま、見ててくれるの?…うれしいっ♪」…さっそく銃を置いてある台に駆け戻り、息を整えると耳当てをつける……慣れた手つきで小さい弾倉を込め、肩に銃床を当てるとボルトを動かし、引き金を引いた……

シルヴィア「…うん、上手になったわ……今度はもうちょっと大きい口径の銃にしてもいいかもしれないわ」提督が五発入りの弾倉を撃ちきると、感心したように言った…

提督(幼)「ほんと?」

シルヴィア「ほんとよ…さ、戻ったら手を洗って、それからお昼にしましょうね」

提督(幼)「はぁーい♪」

………

シルヴィア「それ以来ずーっと射撃だけは欠かさずに続けていたわ…森の散策にも必ず持って行ってね」

クラウディア「一度なんか銃にオイルを塗るのに手ごろな布がなかった物だから…食卓用の布巾を持って行っちゃって……」

提督「あー…あの時はさすがに怒られたわね」

クラウディア「それはそうよ、しかもおろして間もなかったから…でも、おかげで射撃と水泳は得意になったわね」

提督「あと料理もね…これはクラウディアお母さまのおかげ♪」

クラウディア「うふふっ…ありがと♪」

提督「…それにしても懐かしいわね、裏の小川とかうちの海岸にある浅瀬でよく泳いだわよね……それで、お母さまの作ったお弁当を持ったシルヴィアおばさまが一緒に来てくれて、泳ぎ方を教えてくれたのよね♪」

シルヴィア「そうだったわね…まぁ、あそこは流れが緩いし、水も温かいから脚もつらないのよ」

提督「…そうだ、よかったらライモンたちも後で泳ぎに行きましょうか♪」

ライモン「それもいいかもしれませんね…あ、でも泳ぐとは思ってなくて…水着を持ってこなかったかも……」

チェザーレ「おやおや。チェザーレは一応持って来たが……貸せるほど似通った体型ではないしな…アッテンドーロ、そなたはどうか?」

アッテンドーロ「私だって持ってこなかったわ…誰も見てないでしょうし、裸で泳げば?」

ライモン「いえ、そんな……いくら泳ぐだけとはいえ、裸で外をうろうろするなんて恥ずかしいです///」

アッテンドーロ「はぁ…相変わらず律儀なことで……じゃあ下着とか?」

ライモン「いえ、それも…///」

クラウディア「んー…ちょっと待っててね♪」ふと立ち上がると、階段をあがって行った…

ライモン「…提督、クラウディアさんはいったい何をしにいったんですか?」

提督「うーんと…多分だけど、どこかに水着の二、三着はしまってあるんじゃないかしら……」

アッテンドーロ「それにしたって…私たちに合うような水着があるかしら……クラウディアのはどう考えたって胸が余るし、シルヴィアは長身すぎるわ」

提督「そうよね…でも、何かしらの物があるから上がって行ったのでしょうし……あ、戻ってきたわ」

クラウディア「お待たせ…っ♪」


…胸を揺らしながら軽やかに階段を降りてきたクラウディアは、何枚かの服をテーブルの空いた場所に置き「じゃーん♪」と両手を広げてみせた…


ライモン「あの…これは?」

クラウディア「水着よ、ちょっと古いけど♪」

提督「ねぇ、これって……」

クラウディア「ええ、あなたの着ていたものよ……ふふふっ、取っておいてよかったわ♪」

ライモン「なるほど……って///」

アッテンドーロ「あら、姉さん…赤くなっちゃってどうしたのよ♪」姉の事となるとなおさら察しのいいムツィオが、妙にニヤニヤしながら聞き出そうとする…

ライモン「もう、分かってるでしょう…提督の水着ってことは……もう、何を言わせるつもり///」

チェザーレ「なるほど、そう言うことか……全く、ライモンドの生真面目なことよ♪」からからと笑って菓子皿のビスコッティをつまんだ

提督「ね?……もっとも、その律儀な所が可愛いのよね♪」

アッテンドーロ「ええ、全く…我が姉ながら時折むしょうに撫でくり回したくなるわ♪」

クラウディア「そうね…ライモンちゃんは純粋で……まるで天使みたい♪」

シルヴィア「こら、娘の連れてきた恋人にちょっかいをかけないの」

クラウディア「……なぁに、妬いてるの?」…小首を傾けていたずらっぽく聞いた

シルヴィア「まさか…クラウディアはどんなに遊んでるふりをしてても、いつも私の所に戻ってくるでしょう……嫉妬する理由がないわ」

クラウディア「まぁ…///」

提督「ふふっ、お母さまたちったら…まだ熱々みたいね♪」ぱちりとウィンクを飛ばした…


………

…夕方…

クラウディア「あら、もうこんな時間…残念だけど泳ぎに行くのは明日にしましょう?…それじゃあ私は夕ご飯の支度に取りかかるから、みんなはゆっくりしていてね♪」

ライモン「あの…わたしもお皿やグラスを並べたりとか、少しはお手伝いしますよ?」

クラウディア「いいのいいの、ライモンちゃんたちはここを実家だと思ってくつろいで…ねっ♪」

提督「そうね、なんて言ったってお客様なんだから♪…お母さま、私が手伝うわ……」

クラウディア「うふふ、フランチェスカもいいの。普段は忙しいんでしょう?…今日ぐらいゆっくりしなさいな♪」

ライモン「その……わたしも提督とお話しをしていたいです///」

提督「ふふ、分かったわ♪…じゃあお母さま、お言葉に甘えさせてもらうわね」

クラウディア「ええ♪……それじゃあシルヴィア、少し手伝って?」

シルヴィア「ええ、今行くわ。フランチェスカ、ちゃんとライモンドたちのお相手してあげるのよ」

提督「分かってます、シルヴィアおばさま♪」

シルヴィア「そう、ならいいわ」

ライモン「…シルヴィアさん、普通にしていても凛々しい方ですね」

提督「ええ、そうね♪……ところで」

ライモン「?」

提督「その水着、合わせてみたら?」

ライモン「…えっ///」

提督「だって明日「泳ぎに行こう」って言っているのに、その場になって身体に合わなかったら困るわ…夕食までまだ間があるし、しばらくお部屋で合わせてみたらいいと思うの」

アッテンドーロ「まぁ、それもそうよね。じゃあ私は部屋で着てみるわ……チェザーレ、よかったら手伝ってくれません?」

チェザーレ「ふふふ、承知した…それではライモンドよ、そなたは提督に手伝ってもらうといい♪」

ライモン「え?…いえ、だって別に水着を合わせるのにそんな付きっきりになるほどの事はないと……あっ///」

アッテンドーロ「提督にしっかり見立ててもらいなさい、姉さん…チャオ♪」指をひらひらさせて「じゃあね♪」の仕草をすると、ちょっと意地悪な笑みを浮かべ階段を上って行った…

ライモン「あの…チェザーレさん……」

チェザーレ「…ライモンドよ、恐れずにルビコン川を渡るのだ……さ、アヴァンティ(前進)♪」…まごまごしているライモンの背中をとんっ…と一つ突いて、階段の方に押しだした

ライモン「えっ、いえ…それじゃあチェザーレさんを呼んだ意味は何だったんです?」

チェザーレ「なに、この老嬢はゆっくり骨休めするつもりで付いてきただけの事よ……しっかりな♪」

ライモン「///」

提督「…さ、行きましょう♪」

ライモン「は…はい///」


…カンピオーニ家・台所…

クラウディア「♪~ふーん…ふふーん……」手早くパセリを刻みつつ、ご機嫌で鼻歌を歌っているクラウディア……薄いセーターの袖をまくりあげ、可愛らしい桃色のエプロンを着ている…指にはめている指環と、手首につけている小さな金時計はちゃんと外して片隅にあるガラス鉢に入れてあり、よく見ると薬指の所に少しだけ白さが目立つ場所がある…

シルヴィア「今日はことさらに機嫌がいいわね。久しぶりにフランカが帰って来たから?」…帆布地のようなしっかりした生地でできた、飾り気のない白いエプロンを首からかけると後ろで紐を結び、それから指環と時計を外して置き場所に乗せた……

クラウディア「ええ、それもあるわ…でもね、それだけじゃないの♪」

シルヴィア「…と、言うと?」

クラウディア「……あの子ったら、あんな素敵な女の子を三人も連れて来て……ふふふっ、なんだか私まで若返った気分♪」

シルヴィア「…それだけ?私はてっきり「あの子ったらすっかり大人らしくなって…これまでは独身宿舎で暮らしているのをいいことに、いろんな女の子たちと遊んでばかりで……」とでも言うのかと思ったわ」

クラウディア「あら、そんなこと言わないわ。優しく手を取ってくれる女性(ひと)がいる限り、私は手を差しだすことに決めてるの♪…だから他の蝶々さんたちに誘惑されないよう、貴女を連れてミラノからここに戻ってきたんじゃない♪」少し身体をくねらせて、下から上目遣いで見上げてくるクラウディア…

シルヴィア「そうだったわね…で、何をすればいい///」

クラウディア「そうねぇ…それじゃあこのカサゴをさばいてもらえるかしら?」

シルヴィア「分かったわ」


…魚のアラ(頭やヒレ)をニンニクの香りをつけたオイルでじゅーっと焼きつけ、そこに白ワインを振り入れる……さらに地元で採れた小さな鯛にカサゴ、イカの胴体や脚、汁気が出るように甘酸っぱいイタリアン・トマトと白インゲン豆など適当な野菜を放り込み、コンソメスープで伸ばしながらぐつぐつ煮こみ、塩や粗挽きの黒胡椒、オレガノなどのスパイスを振り入れる…


クラウディア「さてと…よかったらこれもお願い♪」カウンターの上には伸ばしてあるパスタ生地が置いてある…

シルヴィア「はいはい」棚にしまってある麺棒のような棒を取り出した…よく見るとこの「麺棒」にはギザギザが付いていて、生地を伸ばすように転がすとパスタが切りだせるようになっている……

クラウディア「できた?」

シルヴィア「ええ…入れる?」

クラウディア「ん、お願いね」

シルヴィア「入れたわよ…しばらく手は離せないから、何かお願いされても無理よ」ごぼごぼ言って沸きあがっているパスタ鍋に生パスタを入れる…

クラウディア「ええ、分かってます……よいしょ♪」台所の後ろの方で衣擦れの音をさせながら、何かごそごそやっているクラウディア

シルヴィア「どうしたの、何かちくちくする物でも服に入った?」

クラウディア「いいえ……料理をしているせいか、何だか暑くって♪」

シルヴィア「そう?…別にいつもとさして変わらな……い…」

クラウディア(裸エプロン)「で、パスタはどうかしら♪」…ピンクのエプロン以外の着ている物を全部脱ぎ捨てて、いたずらっぽいチャーミングな笑みを浮かべている

シルヴィア「ちょうど茹で上がったけど…お湯が跳ねたらやけどするわよ///」

クラウディア「茹で上がったならもう大丈夫よ……それに、あなたの愛ほど熱くはないでしょうし♪」

シルヴィア「…そうね、それでお次はどうするの?」

クラウディア「まずはアクアパッツァの味見をしないと…ね♪」大さじで綺麗なオレンジ色のスープをすくい「ふー…♪」と冷ますと軽くすすった…

シルヴィア「どう?」

クラウディア「んふふっ…ちょっと待って、味見させてあげるから♪」もう一度大さじでスープを取って冷ますと、今度は自分の胸に軽く垂らした…

クラウディア「はい、どうぞ♪」

シルヴィア「ふふっ…では試食させてもらうわよ」クラウディアの「たゆん…っ♪」と揺れている柔らかい乳白色の乳房に舌を這わせる…

クラウディア「んっ…お味はいかが?」

シルヴィア「美味しいわよ……そういえば、こっちはどうかしらね」ドルチェ(デザート)に用意してある、とろっと煮こまれた桃のコンポート…砂糖と赤ワインで煮た白桃がボルドー風の紅に染まり、ひんやりと冷やしてある……シルヴィアは深い赤紫色のシロップをすくうと、クラウディアの肩口に垂らした…

クラウディア「んっ、冷たい…っ♪」

シルヴィア「大丈夫、すぐに舐めてあげるから…ん、ちゅ……♪」

クラウディア「…どう?」

シルヴィア「甘くていい香りがするわ…満点ね」

クラウディア「よかった。でも、本当のドルチェは……♪」

シルヴィア「夕食の後…ね。……フランカたちに聞かれても知らないわよ」

クラウディア「ふふっ♪…さっき「熱々みたいね♪」なーんて言われたし、ちゃんと「期待に応えて」聞かせてあげようかなー……って♪」

シルヴィア「全く、親子そろって似たものどうしっていう訳ね…♪」

………

ママ百合すき

>>24 グラツィエ…大人百合やおねロリはなかなか少ないので多めに入れていこうと思っております



あと、一つ訂正なのですが…アクアパッツァ(イタリア版ブイヤベース)はコンソメで伸ばさないみたいですね…魚介と白ワイン、トマトの汁気だけで作るものだとか…ついうっかり書いてしまいました…

…何はさておき、しばらく夏のイタリアで提督たちが百合百合していきますので…

 

…夕食時・食堂…

クラウディア「あら、みんなちゃんと揃っているわね。えらいえらい♪」何事もなかったかのように微笑んでいるクラウディア…

提督「ふふ、だってお母さまの夕食を食べ損ねたくはないもの…ね、ライモン?」

ライモン「は…はい///」頬を赤くして、内股になっているふとももをもじもじとこすり合せるライモン…

チェザーレ「…で、水着はどうだったのだ?」

提督「それが誂えたようにぴったりなの…胸は少しゆるいけど、問題になるほどじゃないわ」

チェザーレ「そうか、それは何より……ところで、なんともいい香りではないか♪」

クラウディア「うふふっ、せっかくお客様が来てくれたんですもの…うんとごちそうしないと♪」

シルヴィア「そう言うことよ…さ、みんなグラスはある?」

提督「ええ」

ライモン「あります」

アッテンドーロ「こっちもあるわ」

チェザーレ「うむ、ちゃんとあるぞ」

クラウディア「じゃあシルヴィア、みんなに注いであげて?」

シルヴィア「分かってるわ…それじゃあ、まずは乾杯と行きましょう」

クラウディア「それじゃあ、乾杯♪」

提督「乾杯♪」

ライモン「では、いただきます……こくっ、こくんっ」

クラウディア「どう、ライモンちゃん?」

ライモン「美味しいです、何というか…素朴なワインですね」

アッテンドーロ「…そうね、偉そうなワインって言う感じではないけど……食卓に置いておきたいワインね」

チェザーレ「うむ。いいワインであるな」

クラウディア「あら…フランチェスカ、あなたの連れてきたお客様はなかなかの美食家揃いみたいね♪」

提督「あー…鎮守府の食生活を考えるとそうなるわね」

クラウディア「別にいいのよ…うふふっ、むしろその方が張り合いがあっていいわ」


…カンピオーニ家の食堂は明るい白の壁に、いかにもそれらしい唐辛子やニンニクの玉がひもで吊るしてあり、使いこまれたどっしりした木のテーブルと背の高い椅子は何度も拭かれているせいで色がくすみ、少し飴色を帯びている……テーブルの上には前菜として小さくちぎったレタスとカリフラワー、粗めに刻んだベビーコーンを和えたサラダ。それに陶器のつぼに入っている、海産物がどっさり入ったアクアパッツァと、手打ちのリングイネによく絡むローマ風のポモドーロ……濃い色のチーズは太鼓型の塊から切り出したばかりで、しっとりと艶やかな黄色をしている…


提督「ふふ、相変わらず美味しそう…♪」

クラウディア「さぁ、どうぞ♪」…ライモンたちにサラダを取り分け、提督にもたっぷりとよそった

提督「ありがと、お母さま♪」

クラウディア「どういたしまして♪」

アッテンドーロ「んっ…んむ……これ、美味しいわね♪」

チェザーレ「ふむ、なるほど…このさくさくした歯ごたえが心地良いな」

シルヴィア「アクアパッツァもどうぞ…クラウディアの自信作だから」

クラウディア「あんっ、もう……そんなに期待されたら困るわ♪」

アッテンドーロ「ふーん、それじゃあいただくわ…」

クラウディア「どう?」

アッテンドーロ「……美味しいわよ、クラウディア♪」

クラウディア「ほんと?…よかったわ」

提督「お母さまの作る料理にまずい物なんてなかったわ…んっ、パスタもすごく美味しい♪」

シルヴィア「…もう少しワインをどう?」

ライモン「あ、はい…では半分ほど」

クラウディア「…二人ともお皿が空よ、もっと食べる?」

アッテンドーロ「もらうわ……すごく美味しいもの」

チェザーレ「うむ、ちょうだいしよう」

提督「お母さま、チーズを切ってあげましょうか?」

クラウディア「そうね、お願いするわ♪」


…しばらくして…

提督「ふー…美味しかった……やっぱりうちの食事はいいわ」

チェザーレ「うむ…心おきなく食べたな」

ライモン「美味しかったです…でも、少し食べ過ぎちゃいました……」

アッテンドーロ「あー…もう満腹」

クラウディア「あら…せっかくドルチェを冷やしておいたのに……いらない?」

ライモン「…ドルチェですか♪」

アッテンドーロ「そうねぇ…その分くらいはお腹を空けてあるわよ」

チェザーレ「ふむ…チェザーレも甘い物は好物である」

クラウディア「なら決まりね、少し待ってて♪」

提督「…ところでおばさま」

シルヴィア「なに?」

提督「二人でお料理する時は、今でもあの「儀式」をしているの?」

シルヴィア「ええ、してるわ」

ライモン「…儀式?」

アッテンドーロ「…なにそれ?」

提督「ふふ…おばさま♪」

シルヴィア「ええ……実はクラウディアが台所で決めているルールなんだけど「身に着けている装身具は外す」って言うのがあって…」

提督「…うちの鎮守府にも取り入れさせてもらっているわ……いつもつけている指環や時計はどうしても汚れが付いているし、反対にせっかくのアクセサリーに料理の油やごみが付くのも嫌でしょう?」

シルヴィア「クラウディアもそっくり同じことを言っているわ…「料理人がひき肉をこねたりしている時に、指環なんかをしているとあきれる」って……実際にお店でも「指輪がすっぽ抜けて料理に入ってた」なんていうこともあったりするみたいだし」

アッテンドーロ「…じゃあ指環を外すのが「儀式」なの?」

提督「んふふっ、それがそうじゃないの……ね、おばさま♪」

シルヴィア「ええ…それで台所には指環や時計を入れる器があるんだけど……料理を終えたら相手の指に指環をはめてあげて、同時に「誓いのキス」みたいに口づけをするわけ」

提督「それも鎮守府に取り入れようかとは思ったわ♪」

チェザーレ「…別に今からでも遅くはないぞ?」

提督「いいのっ?」

ライモン「…提督」

提督「こほん……でも、「食堂のお手伝いの当番だからキス」というのはなんだかそっけないわね…まぁ止めておきましょう」

ライモン「ええ、それがいいと思います」

アッテンドーロ「そうね…どうせ好きな娘どうしは言わなくたって「キス、キス、キス」でしょっちゅうしてるんだから」

提督「まさに「もう夢chuなの」…っていう訳ね♪」

ライモン「だって、好きな人との口づけは我慢では解決できませんし……」

チェザーレ「なるほど…ライモンドが言うと実感がこもっている分、説得力があるな♪」

ライモン「///」

…食後…

ライモン「…クラウディアさん、ドルチェの「白桃のワイン煮」……美味しかったです♪」

クラウディア「そう、よかったわ。それじゃあ私はお皿を洗うから…その間にライモンちゃんはお風呂でも浴びて来たら?」

ライモン「いいんですか?」

クラウディア「ふふ、いいわよ。私がお皿洗うのを待ってたら遅くなっちゃうもの♪」

ライモン「うーん、それもそうですね……じゃあお言葉に甘えて」

クラウディア「ええ、ぜひそうして♪」

提督「それなら私がバスタオルを持ってきてあげるわね…あと、これ♪」何やら和風のイラストが描いてある箱を手渡した

ライモン「何です?」

提督「百合姫提督にもらった入浴剤…鎮守府へのお土産だけど、少しだけくすねて来たの♪」

ライモン「いいんですか?私が使っちゃって」

提督「もちろんいいわ…おばさまも入る時に使って?」

シルヴィア「ありがとう、楽しませてもらうわ」

ライモン「…あの、提督は?」

提督「私は後で…シルヴィアおばさまとつもる話でもしながら待たせてもらうわ♪」

アッテンドーロ「ほら、私も汗を流したいんだから早く行ってきなさいよ」

ライモン「あぁ、ごめんなさい…ではお先に入らせてもらいます」

シルヴィア「ふふ、ゆっくりでいいからね」

…しばらくして…

ライモン「出ましたよ、提督」…顔を火照らせ、パイル地のシンプルなバスローブに身を包んでいるライモン……しっとり濡れた髪がバスタオルにくるまれ、白い肌はほんのりと桜色に染まっている……

提督「はいはい♪…ムツィオも先に入ってきたら?」

ムツィオ「あら、悪いわね…それじゃあお先に♪」

チェザーレ「うむ、存分に旅のほこりを流してくるといい…それでだな、ポンペイの噴火を調査に行って住民を助けようとしたプリニウスだが……」

ライモン「チェザーレさん、一体何の話をしているんです…?」

チェザーレ「あぁ…ちょうどこの記事にポンペイの発掘調査が行われたとあってな」…数日前の「レプブリカ」紙を拡げてみせた

提督「チェザーレの得意分野ですもの、歴史を勉強をさせてもらっている所よ♪」

シルヴィア「さすが「ジュリオ・チェザーレ」ね。古代ローマに詳しいだけあって面白いわ…うちに置いてあるアンフォラの謎も解けたし」

ライモン「アンフォラ…玄関にあったあれですね」

提督「ええ。チェザーレの見立てによると、あれは古代ローマ時代のワイン輸送用だったみたい…もっとも、あちこちにひびが入っているし、そのままだと底がすぼまっていて立たないから、転ばないように鉄の枠をつけたしてあるけど」

チェザーレ「あれは「B型アンフォラ」というやつだな…カサ立てとは恐れ入ったが」

シルヴィア「まぁね…昔クラウディアがのみの市で「安かったし雰囲気があるから」って買ってきちゃってね……そのままじゃどうしようもないし、私が鉄枠を作って傘立てにしたわけ」

ライモン「傘立てなんかにしちゃって大丈夫なんですか?」

シルヴィア「歴史的価値は全然ないから大丈夫…持ち手も片っぽ取れてるし」

ライモン「なるほど……」

アッテンドーロ「みんな、出たわよ♪」

ライモン「ずいぶん早いのね…?」

アッテンドーロ「だって、ねぇ…提督やシルヴィアには悪いけど、お風呂だけは鎮守府の方が格段に上だわ……だから頭と身体だけ洗って、パッと済ませてきちゃった」大きく肩をすくめてみせる

提督「んー…まぁ、そうよね」

シルヴィア「フランチェスカ…鎮守府のお風呂はそんなにいいお風呂なの?」

提督「ええ、何しろ泳げるくらいだもの」

チェザーレ「うむ。しかも大きい浴槽だけではなくて、熱帯植物の生えている小さな中庭であったり、小さいあずまや付きの風呂がしつらえてあったり……まぁ、ローマの「カラカラ浴場」もかくやと思われるほど立派であるな」

シルヴィア「ならうちのお風呂じゃ満足できないわね…まぁ、狭いなりにさっぱりしてもらえればいいんだけど」

アッテンドーロ「あぁ、ごめんなさい…別にけちをつけるつもりじゃないの」

シルヴィア「別にいいわよ…ま、チェザーレも入って」

チェザーレ「うむ…それではありがたくいただくとしよう」新聞をたたんでテーブルに置くと、堂々とした歩みで浴室に歩いて行った…

提督「……それにしても、ムツィオ」

アッテンドーロ「なに?」

提督「いえ…ライモンもそうだけど、あなたたちって結構着やせするタイプよね」

アッテンドーロ「ちょっと、何言ってるのよ?」

ライモン「て…提督っ///」

提督「だって…こうやって見ていると意外と大きいし……♪」

ライモン「もう…ここで言うことですか?」

アッテンドーロ「本当よね…全く、少しは場所を考えて欲しいわ」そう言ってあきれたように手のひらを上に向けると、寄せられた胸がぷるんっ♪…と揺れた

提督「ここは私の実家なんだし、少しくらい良いじゃない…♪」いたずらっぽいチャーミングな表情を浮かべ、ウィンクを投げた

ライモン「もう、提督ったら…さっきもそんなことを言って……」

アッテンドーロ「へぇ…やっぱり♪」

ライモン「あっ……き、聞かなかったことにして///」

アッテンドーロ「ふふん…姉さんの頼みでもそれは無理ね」

ライモン「もう…ムツィオのいじわる///」

アッテンドーロ「私って隠し事と嘘が苦手なのよ♪」

提督「あらあら…ばれちゃったわね、ライモン?」

ライモン「うー…提督が胸の話なんてするから……」

提督「ごめんなさい…ほら、私が慰めてあげる♪」たゆんっ♪…手招きしながらたわわな胸を寄せる

ライモン「もう、そういうことじゃありませんっ…///」

シルヴィア「ふふ…仲睦まじいわね」

提督「ええ、シルヴィアおばさまとクラウディアお母さまくらいね♪」

ライモン「あの…そういえば」

シルヴィア「…何かしら?」

ライモン「提督がずっと「シルヴィアおばさま」とおっしゃっておられますが…その、どうも関係がよく分からなくて」

提督「あー…私はすっかり馴染んでいるけれど、言われてみればそうね……」

シルヴィア「そうね、ちゃんと話しておいた方がすっきりするでしょうし……ま、昔話はチェザーレとクラウディアが戻って来てからにしましょう」

クラウディア「呼んだかしら?」

シルヴィア「ええ…ちょっと私たちの馴れ初めの話をする必要がありそうだから」

クラウディア「……そうね、このままだとみんなも戸惑っちゃうものね」

提督「あのね…お母さまもおばさまも、無理に話そうとしなくてもいいのよ?」

クラウディア「ううん、いいのよ…私たちやあなたにとっては大事な話だし……それに、シルヴィアの事でうんと惚気を聞かせてあげられる機会だもの♪」

アッテンドーロ「…参ったわね」

チェザーレ「どうかしたのか、アッテンドーロよ?…おや、クラウディアも」頭を拭きながらバスローブ姿で現れた

クラウディア「うふふ、チェザーレは堂々とした立ち姿で本当に惚れ惚れしちゃうわね…さぁ、座って♪」

チェザーレ「うむ…で、一体どうしたのだ?」

シルヴィア「あー、何ていうのかしら…この際だから私とクラウディアの関係をはっきりさせた方がいいと思って……まぁ、あんまり面白い話ではないけれどね」

チェザーレ「ふむ…深いわけもありそうに見えるゆえ、無理にとは言わぬが?」

クラウディア「ふふ、ありがと♪…でも、気持ちのいい性格をしたあなたたちになら……話してもいいと思ったの♪」

チェザーレ「ふむ、さようであるか…」バスローブの胸元を整え、居住まいを正したチェザーレ…

クラウディア「…さてと♪」クラウディアは二階から一冊のアルバムを持って来た…

チェザーレ「これは?」

クラウディア「昔のアルバム。私がミラノでデザイナーをしていて、シルヴィアと出会う前の…ね♪」


………

…提督が生まれる前・ミラノ…


クラウディア「はぁ…」

…一軒のカフェでため息をつき、所在なさげにカプチーノをかき回すクラウディア……華やかなオープンカフェには小粋な格好をしたモデルや奇抜な色合いを着こなしたデザイナー、それに色っぽい女優のタマゴたちや、風変りでエキセントリックな格好をしている美大生などが座っている…時折、向かいあわせに座った二人が指を絡ませて手を握ったり、熱っぽい視線を交わしているあたりが、少しだけ他のカフェとは異なっている…


クラウディア「…」コーヒーをすするでもなく頬杖をつき、ため息ばかりをついている…すると時おり、ひそひそとうわさをやり取りする声が耳に入ってくる……

小生意気なモデル「…信じられないわ、彼女だけはそういうことはしないと思っていたのに……」

つんとしたモデル「…全く……あきれちゃう……」

クラウディア「ふぅ…」

奇抜な格好のデザイナー「…まさか本当に…どうして……」

黒と白の服を着たデザイナー「……どうにかして慰めてあげたいけど…」

クラウディア「はぁ…ぁ……」コーヒーカップの表面にため息を吹きかけながら、ただ座っている…と、一人の女性がふらりと入ってきた…

カフェの店員「…いらっしゃいませ、何になさいましょうか♪」フリル付きスカートをひらめかせ、目のぱっちりした可愛い店員が声をかける

短髪の女性「…カプチーノをお願い。スプーマ(泡)は少な目で甘さは抑えて」…シックなタートルネックセーターに栗色のスラックスを着て、ごくあっさりしたメイクをしている

店員「はい、承知しました…その、相席でも構いませんか?」

女性「ええ」

店員「では……あの、こちらの席でよろしいですか?」

女性「先客の女性がいいなら構わないわ」

店員「はい、うかがってまいります♪……あの」

クラウディア「…あぁ、何かしら?」

店員「相席の方、よろしいでしょうか?」

クラウディア「え…?」視線をあげると、整った凛々しい顔立ちの女性がこちらを見ている…

クラウディア「あっ…ええ、いいですよ///」

店員「では、お客様…こちらへどうぞ♪」

女性「…失礼、座らせていただくわね」

クラウディア「ええ、どうぞ……はぁ…」

店員「お待たせしました…カプチーノ、スプーマは少な目の甘さ控えめです。他に何かありましたら……♪」そう言いつつ小首を傾げ、期待したような表情を浮かべている…

女性「グラツィエ…でも大丈夫よ」

店員「そうですか……なにかありましたらお気軽にどうぞ♪」紺色のスカートをひらひらさせ、足取りも軽く戻って行った…

クラウディア「ふぅ…」

女性「…」静かにカプチーノをすすっている…

クラウディア「…」

女性「…ごめんなさい、少しいいかしら」

クラウディア「あぁ…何か……?」

女性「いえ…出しゃばりかもしれないけど……貴女、ずいぶん気分が沈んでいるようだから」

クラウディア「…まぁ、そうですね……はぁ…」

女性「…何か深いわけがあるようね」

クラウディア「ええ、まぁ……その…」

女性「…よかったら私に話してみない?…別に告解を聞く神父さまでもなければ、心理学者っていう訳でもないけど」

クラウディア「…親切にありがとうございます……じゃあ、少しだけ私の話を聞いてくれますか?」

女性「ええ、いいわよ」

クラウディア「実は…恋人に振られちゃって……それだけならまだ平気だったと思うのですけど、それが原因で知り合いとの関係もぎくしゃくしちゃって……」

女性「へぇ…貴女みたいなきれいな女性をね……そのお相手はずいぶん目がないのね」

クラウディア「いえ…」

女性「…じゃあ私は黙っていてあげるから、好きなように話してみたら?……例のミダース王のお話に出てくる床屋が「王様の耳はロバの耳」ってささやいた穴ぼこだと思ってくれていいわ」

クラウディア「…ふふ、それじゃあ風が吹くと歌になって聞こえてしまいますね」


(※ギリシャ神話…「触ったものを金に変えられる能力」を望んだせいで物を食べたり飲んだりできなくなったミダース王が、「金に変える力」を清水で洗い流してから笛の上手い牧神「パーン」を敬うようになり、神々の演奏比べの時に「パーンの勝ちだ」と意地を張った…すると他の神々に「お前の耳はロバの耳らしいから、ふさわしい耳をつけてやる」と魔法をかけられてしまったというもの……ミダース王付きの床屋は髪を切る以上頭を見ないわけにはいかないが「耳の事を口外したら死刑にする」と脅され、言いたくなるのをこらえるために砂の穴を掘ってささやいた……が、そこから生えたアシが風に吹かれると「王様の耳はロバの耳」と鳴り始め、国民たちにばれてしまったと言う話)


女性「…よかった、やっと少し笑ってくれた」

クラウディア「ええ、ありがとう…この数週間は毎日が灰色だったから……やっと話すだけの元気が出た気がするわ」

女性「そう…」後は促すでもなく、黙ってカプチーノをすすっている女性…

クラウディア「その……恋人に振られたのは、私が「自分の子供が欲しい」って言ったからなの」

女性「それで別れたの?…失礼だけど、子供を欲しがっている彼女を振るなんて……その「恋人」はずいぶんと軽薄な関係を望んでいたようね」

クラウディア「いえ…その、わたしも相手の言うことがよく分かるの……だって、向こうにしてみれば自分の子供じゃないわけだし…」

女性「ん?……なに、その恋人とは別な相手の子供なの?」眉をひそめてカプチーノをひとすすりした…

クラウディア「えーと…その……そういう言い方も出来るけど、こればっかりは今の科学ではどうにもできなくて…」

女性「つまり…相手に子供を作る能力がないって言うこと?」

クラウディア「ええ」

女性「なるほどね…でも別れるなんてよっぽどなのね」

クラウディア「ええ…やっぱり子供を欲しがると、それまでのは単なる「ファッション」だったみたいに思われて……」

女性「ん…?」

クラウディア「……別れる時に彼女も「あのね、クラウディア…貴女の他の部分が嫌いになったわけじゃないの。だから、お友達としてなら仲良くするし、もし他の誰かにイヤミでも言われたら私がかばってあげる」って言ってくれたんです…それに知り合いたちもたいていは理解してくれるけれど……やっぱりいろんな人がいるから…」

女性「なるほどね……って、ちょっと待って?」

クラウディア「?」

女性「今…「彼女」って言った?」

クラウディア「ええ」

女性「あー…なるほど」

クラウディア「えーと…何か?」

女性「いえ…何でもないの……なるほどね」

クラウディア「?」

女性「えーと、まとめるとこうね……あなたと彼女の意見が食い違って、結局二人は別れた。しかもあなたの考えに理解を示してくれない知り合いも多いせいで、どうにもミラノにいると居心地が悪い…と」

クラウディア「ええ…まぁそういうことね……」

女性「ならいいじゃない…そう言う考えに理解のある人を見つけて恋人にすれば」カプチーノをすっと飲み終え、深い色の瞳でじっとのぞきこんだ…

クラウディア「それもそうだけど……なかなか私の知り合いには…///」

女性「……なら、私でどう?」

クラウディア「えっ…///」

女性「…実を言うと、今の今までそんな関係があるなんて考えたこともなかったわ…でも、話を聞いてから貴女の事を改めて見たらとっても可愛いし……意外に女性同士で、って言うのも悪くないんじゃないか…って」

クラウディア「じゃあ…あの、このカフェに入って来たのも全然そう言うつもりじゃなくて……?」

女性「ええ。ちょっと親密すぎる感じで手を握っていたり、少し変わった感じの人が多いようには感じたけど…ファッションやモードの関係者なんて多かれ少なかれ毛色の違ったところがある、くらいにしか思わなかったわ……むしろそう言うお店なの、ここ?」

クラウディア「ええ…だってほら」…そっと視線を向けた先には、さっきオーダーを取りに来た可愛らしい店員に注文をしながら、すべすべのふとももをそっと撫で上げるデザイナーの姿がある……

女性「ふふ、どうやら貴女の話は本当みたいね…そういえば、自己紹介もまだだったわ」

クラウディア「あ…こちらこそ話を聞いてもらったのに……クラウディアです」

女性「私はシルヴィア…よろしくね……」

クラウディア「シルヴィア…ステキなお名前ね」

シルヴィア「そう?…クラウディアだっていい名前じゃない……それにしても「赤ちゃんを身ごもる」って決めた時は、大変な勇気が必要だったでしょう」

クラウディア「ええ…相手の男性はとっても大人しい控えめな方で「いいよ、僕は君に『選んでもらった』っていう思いだけで生きていける」って言ってくれたけど……」

シルヴィア「…貴女の方が大変よね……病院も探さないといけないし」

クラウディア「ええ…だからそろそろミラノを離れようとは思っていて……」

シルヴィア「…実家に戻るの?」

クラウディア「はい…カンパーニア州に」

シルヴィア「じゃあ、こうしましょう……まずはお互いの事を良く知り合うために、もっと時間をかけてお話をする…その上で、私のアパートがあるローマで病院を探すか、カンパーニア州で探すか決める」

クラウディア「ふふ、そうね…でもまずはコーヒーを飲み終えてからにしましょう……もうすっかり冷たくなってるわ」手のひらを上に向けて軽く肩をすくめた

シルヴィア「…なら私が飲むわ。妊婦さんにカフェインは毒だから」

クラウディア「あ、でも私の飲みかけだから……」

シルヴィア「…唇をつけたのはどっち?」カップに手を伸ばすと聞いた

クラウディア「そっち側よ…あ、そっちが口をつけた方……!」

シルヴィア「…コーヒーと間接キスをごちそうさま」

クラウディア「///」

シルヴィア「じゃあ行きましょうか…車はすぐそこに停めてあるの……一応言っておくけど、つつもたせや誘拐犯の一味じゃないわよ」

クラウディア「ふふ…見れば分かるわ♪」

シルヴィア「そう?…じゃあ行きましょう」

………

クラウディア「そうやってお互いに一目ぼれで……今でもそうだけど、シルヴィアったらとにかく凛々しくて素敵だったの♪」

シルヴィア「あー、何ていうのかしら……あの時は「目が覚めた」感じだったわ」

クラウディア「ふふっ…で、生まれたのがフランチェスカっていうわけ……だからシルヴィアはもう一人の母親みたいなものね♪」

ライモン「なるほど…その……なんと言うか…」

アッテンドーロ「…驚いたわ」

チェザーレ「うむ……たまたまカフェで会った相手といきなり結ばれるとは…」

シルヴィア「きっかけはそうだけど、それからお互いに時間をかけて趣味や嗜好を確かめたり……それに家を訪ねてみたりして、一年以上かけて相性がいいか調べたのよ」

クラウディア「そうだったわね…それでお互いに納得して、同棲することにしたの♪」

シルヴィア「あとはもうフランチェスカの知っている通り……クラウディアは優しいし、甘え上手で可愛いわ」

クラウディア「シルヴィアはいつも凛々しくて、いつも私を気遣ってくれるの♪」

シルヴィア「そうね…でも、クラウディアを見ていると「気遣ってあげないといけない」と言うよりも「気遣ってあげたくなる」って言うのが正しいわ」

クラウディア「ふふ…それを言うならシルヴィアも「意識して気遣ってくれる」のではなくて「自然と気遣ってくれている」のよね♪」

提督「…ね、分かったでしょう」

ライモン「その…熱々ですね……///」

提督「私はいつもこういうやりとりを聞かされていたのよ?……もう甘いこと甘いこと」

アッテンドーロ「ご愁傷様…そう考えると、提督は控えめに育ったものね」

提督「ええ、全く…ほら、また始まった……」

クラウディア「…もう、あの時のキスは舌がとろけそうだったわ……///」

シルヴィア「ふふ…それよりもクラウディアが最初に抱きついてきた時「なんて暖かくて柔らかいんだろう」…って思ったわ」

クラウディア「あの時は夢中で触ったりこねくり回したりしてたものね…♪」

シルヴィア「私の乳房は固くて、大きさもあんまりないから……クラウディアのはもっちりして、まるで柔らかいパン生地みたいに指が埋まるようで…おまけにベビーパウダーみたいな甘いいい匂いがするし……」

クラウディア「あらあら♪…でも私はシルヴィアの引き締まった胸……好きよ?」

シルヴィア「ふふ、嬉しい事を言ってくれるわね」

提督「…で、アルバムを見せてあげるつもりじゃなかったの?」

クラウディア「あぁ、そうだったわね……それで、これがその時の写真♪」真っ赤なアルファ・ロメオ「ジュリエッタ」の前でクラウディアの腰を抱き、口元に微笑を浮かべているシルヴィア……

ライモン「これがクラウディアさん…で、こっちがシルヴィアさんですね」

シルヴィア「ええ、そうよ…こうやって見ると、クラウディアはちっとも年齢を重ねていないみたいね」

クラウディア「…シルヴィアこそ♪」ちゅっ♪…と頬にキスをするクラウディア

シルヴィア「ふふ…娘たちが見ているわよ」

クラウディア「…いいじゃない♪」

提督「ふふっ…それじゃあお母さまたちの邪魔にならないよう、私はお風呂に入ってきます♪」

ライモン「そ…そうですね……では、わたしも失礼します…///」

アッテンドーロ「じゃあ私はルチアの様子を見に玄関へ行ってくるわ……鹿肉をもらっていたけど、ちゃんと食べたかしらね?」

チェザーレ「ふむ…しからばチェザーレも髪を整えよう……ライモンド、よかったら手伝ってくれまいか?」

ライモン「あ、はい」

クラウディア「…うふふ、みんな行っちゃったわ……ねぇ、シルヴィア♪」

シルヴィア「もう…せめて寝室に行くまで我慢できないの?」

クラウディア「んー…抱っこして運んでくれるなら我慢するわ♪」

シルヴィア「分かった…それじゃあお姫様抱っこしてあげる……何しろわたしのお姫様だものね」ちゅっ…♪

クラウディア「うふふっ…ありがと♪」

………

ママ百合の濡れ場はありますか?

…二人の寝室…

シルヴィア「ふぅ…よいしょ……ほら、着いたわよ」…どうにか片手でドアを開けるとベッドまでクラウディアを運び、そこで降ろした

クラウディア「ふふ、ありがと……でも私、まだお風呂に入ってないのよ?」ベッドの上で両手を頭の上に投げだし、いたずらっぽい笑みを浮かべるクラウディア…

シルヴィア「私だってまだよ……んっ♪」クラウディアの柔らかな唇に薄い唇を重ねる…ついばむような軽いキスをしながら手をつないだ

クラウディア「んっ…ふ……もっとキスしたくなっちゃった?」

シルヴィア「ええ…でも、キスだけじゃ物足りないわ」

クラウディア「あらあら……シルヴィアったら♪」

シルヴィア「ふふっ…ん、ちゅっ……」

クラウディア「んっ…ちょっと待って……きゃあっ♪」

シルヴィア「待てないかもしれないわ……んちゅ…ちゅ……ちゅっ…れろっ…」

クラウディア「んちゅっ…ん、んっ、んっ……れろっ、ぴちゃ…ちゅるっ……んふっ…♪」

シルヴィア「…それじゃあ、脱がしてあげましょうね」

クラウディア「ええ…♪」

シルヴィア「相変わらず絹のような肌ね……同じものを食べているはずなのに、どうしてこうも違うのかしら」…クラウディアの白くて滑らかな身体を見て、少しだけうらやましそうなシルヴィア……

クラウディア「だって私は家の中にいることが多いし……せいぜいお庭で草花の手入れをするくらいだもの」

シルヴィア「それにしたって…相変わらずしっとりして、手に吸いつくみたいね」むにっ…と乳房を揉みながら感心したような口調のシルヴィア

クラウディア「んんっ…あんっ……あふっ♪」

シルヴィア「少しだけフランカがうらやましいわね…」

クラウディア「んっ、んぅ…どうして?」

シルヴィア「…おっぱいの時期はいつもこの乳房を吸っていたわけでしょう?」

クラウディア「うふふっ……なにそれ♪」

シルヴィア「いえ…見ていたらそう思ったの」

クラウディア「ふふっ…もう出ないけど、よかったら吸ってみる?」

シルヴィア「そうね、せっかくだから……ん、ちゅぅ…っ」

クラウディア「んぁぁっ…あんっ、んんっ……もう、甘噛みはだめよ…んんっ♪」

シルヴィア「ん、ちゅぅ…ちゅぅ……れろっ…」

クラウディア「ひゃうっ、くすぐったい……あんっ、ちょっと♪」しっとりした唇を半開きにして、困ったような表情を浮かべるクラウディア…

シルヴィア「…じゃあこっちも」ベッドの上で体勢を立て直すと座ったような形になり、そのままクラウディアのもちもちのふとももを押し広げた…

クラウディア「ひぅっ…ん、んっ……もう、何をするつもり♪」

シルヴィア「ドルチェをまだ頂いてないから…ん、ちゅっ…じゅるっ……」脚の間に顔を埋めて、舌を差しいれるシルヴィア…

クラウディア「はぁぁ…んっ♪」ぞわぞわとしびれるような感覚に身体をくねらせ、甘い吐息をもらす……

シルヴィア「ここはピンクの真珠みたいな色合いなのね…それに、温かくてとっても気持ちいい……」舌を抜くとゆっくりと自分の指を舐めあげ、それから濡れた花芯に滑り込ませた……

クラウディア「全くもう…んんっ♪」

シルヴィア「……どう、にちゃにちゃ言っているのが聞こえる?」

クラウディア「ええ…もう下半身がじんわりして…すっかりとろとろになってるの……でも、もっと♪」

シルヴィア「…じゃあ、お風呂はまだいいわね?」

クラウディア「…ええ♪」

………

>>34 行き違いのような形になってしまいましたが、シルヴィア×クラウディアの百合を投下してみました…二人の昔話はちょっと重いような気がしていたので、口直しにどうぞ…


…この後は一応提督×ムツィオ、提督×チェザーレ(チェザーレ×提督)…の予定で、その後は提督があんな目やこんな目にあったりあわなかったり……の予定です

…しばらくして・玄関脇…

アッテンドーロ「よしよし…綺麗に食べたわね」アッテンドーロは玄関から入ってすぐの場所…犬には居心地の良さそうな隅っこにしゃがみこむときれいに舐めつくされている餌の皿を見て、それから満足げに寝転がっているルチアに声をかけた……

ルチア「フゥッ…♪」鎮守府で飼いはじめたばかりの真っ白な雑種犬「ルチア」は、コリー系の犬らしい笑顔「コリースマイル」を見せ、気だるげに尻尾を振っている…

アッテンドーロ「…満足した?」

ルチア「ワフッ…♪」組んだ前脚の上にあごを乗せ、軽く返事をする…

アッテンドーロ「そう、ならいいわ……じゃあついでに撫でてあげるわ♪」玄関脇に置いてあったブラシを取り上げると、長い毛足をくしけずりつつあちこちを撫でる…

ルチア「ワフッ……ハッハッハッ…♪」頭や尻尾の付け根をかいてあげると心地よさそうにごろりと転がり、おなかをさらした…

アッテンドーロ「はいはい、かけばいいのね…?」

ルチア「ワフ…ッ♪」

アッテンドーロ「この辺がいいかしら…どう?」

ルチア「♪」ぱたりぱたりと尻尾を振り、存分にかいてもらう……

アッテンドーロ「うわっ……ちょっと、舐めないでよ」心地良いのが気に入ったのか、ぺろぺろとアッテンドーロの手を舐めるルチア…

ルチア「ワゥン…?」

アッテンドーロ「……もう、仕方ないわね…まぁ、どうせ歯みがきもしなくちゃいけないし…また明日ね♪」お休みを言いつつ頭をひと撫でしてやり、洗面所に向かった…


…一方・浴室…

提督「ふー…浴槽こそ小さいけど、なんだか童心に帰った気分♪」…四つ脚の付いた浴槽に長身をどうにかねじ込み、窮屈な体勢でお風呂に入る提督……ふくらはぎから先は浴槽からはみ出し、両腕を浴槽の枠に乗せてシャワーを流している…

提督「さてと…頭も身体もきれいになった事だし、そろそろ出ましょうか……よいしょ♪」ざぁ…っと湯気を立ててお湯が流れ、その中ですっと立ち上がった…

提督「……えーと、タオルは…相変わらずいつもの場所なのね♪」久しぶりの実家ながら、家具や物の配置はほとんど変わっていない…浴室から出ると棚からふかふかのタオルを取り出し、身体に巻きつけようとした……と、ドアが開いてアッテンドーロが入ってきた…

アッテンドーロ「ふふ、何のかのと言って可愛いワン公よね……って///」

提督「あら、ムツィオ…ルチアの様子を見てきてくれたの?」そう言った瞬間に巻きかけたタオルがはらりと落ち、ずっしりした乳房が「たゆんっ♪」と揺れた…

アッテンドーロ「ちょっと、ルチアの事はいいから早くタオルを巻きなさいよ…目のやり場に困るじゃない」(相変わらず豊満な「ド級戦艦」体型ね…胸は大きいし先端もきれいな桃色…ヒップは色つやもよければ張りがあって……って、姉さんじゃあるまいし///)

提督「はいはい♪…それで、ルチアはどうだった?」タオルを拾い上げて巻きつけると、ドライヤーを取り出した…手を洗いたいアッテンドーロのために身体を片側に寄せると、ドライヤーのスイッチを「冷風」に入れ、髪が傷まないように乾かし始めた…

アッテンドーロ「鹿肉は気に入ったみたいね、お皿はすっかり舐めつくしてあったわ…ついでに少し撫でてきてあげたから、今はお休み中じゃないかしら?」

提督「そう、ならよかったわ♪」

アッテンドーロ「そうね」手をせっけんで洗うと持って来た青い歯ブラシを取り出し、歯磨き粉をつけた…

提督「そうそう、わたしも歯を磨かなくちゃ…ちょっと失礼♪」鏡に向かって歯を磨いているアッテンドーロの前に腕を伸ばすと、コップに入っている歯ブラシを取ろうとした…

アッテンドーロ「んー……んっ!」…両手を洗面台に突いてのけぞるように身体をどけた瞬間、歯ブラシが口から落ちた

提督「あ、ごめんなさい……っ!?」慌ててアッテンドーロの歯ブラシをつかもうとして腕を伸ばした途端、バランスを崩した提督…

アッテンドーロ「うわ…っと、大丈夫?」提督が倒れそうになった途端、両手でしっかりと抱き止めるようにして支えた…見た目こそ大人びた高校生くらいとはいえ「艦娘」なだけあって、提督が倒れかかって来てもしっかり受け止めた…

提督「え、ええ……///」(わ…ライモンもそうだけど、ムツィオの身体も細身なのにメリハリがあって……いい匂いがする///)

アッテンドーロ「……ねぇ、提督」

提督「な、何かしら…?」

アッテンドーロ「いつまで抱きついているわけ?」

提督「あっ…ご、ごめんなさい///」甘い匂いを嗅いでいたうなじから顔を離すと、ぎこちなく謝った

アッテンドーロ「ふぅん……それだけ?」

提督「…え?」

アッテンドーロ「…姉さんだけじゃないのよ?……貴女の事が好きなのはね」…ぐっと身体を伸ばして、洗面所の壁に押し付けるようにしてキスをする

提督「んっ……ん、んぅ…♪」…またしても巻いたタオルがはらりと解け、今度はそのまま床に落ちた……

アッテンドーロ「…ん…ちゅるっ………それにしても提督はきれいな瞳をしているわよね…朝日みたいな金色で……吸い込まれるみたい……」ぐっと片膝をあげると、提督の脚の間に割り込ませた…左手は提督のあごに添え、右手の人差し指で鎖骨からつーっ…と身体を撫で下ろしていく……

提督「あっ…あっ……ひうっ///」ぎりぎり触れるか触れないか…と言うような具合で身体をなぞっていく指先に、思わず甘い吐息をもらす提督……

アッテンドーロ「へぇ…提督ったらそんな物欲しげな表情も出来るのね……♪」口の端で「ふふ…」と笑うと、そのまま胸の谷間を滑らせ、S字を描くようにわき腹、へそ…そしてまだ風呂上がりの湯気が残っている秘所へと撫でていった……

提督「あっ…んんぅ……あふっ…くぅ……///」

アッテンドーロ「へぇ…提督ったらもうすっかり濡れそぼっているじゃない……そんなに私としたかった?……それとも…姉さんの事を考えてこんなになったの?」耳元でささやくアッテンドーロ…

提督「んんぅ…もう、そんなこと言わないで……今はそのスマートな姿、ささやく声……それにほっそりした指をした貴女が欲しいの……ライモンと比較するなんてできな…んあぁぁ…っ///」

アッテンドーロ「…そう、ならうんと愉しませてもらうわね♪」くちゅっ…ちゅくっ♪

提督「ひぁぁぁっ!…いいのっ、そこっ……んぁぁ、とろけそう…っ♪」

アッテンドーロ「…ここ?」じゅぶっ、ずちゅ…っ♪

提督「んっ、あぁぁ…っ……ひぐぅぅっ♪」

アッテンドーロ「ここがいいみたいね…それにしても提督の膣内は温かくて…しかも吸い付くようね……♪」

提督「んっ、ふぅ……ムツィオ…///」

アッテンドーロ「そんなに切ないような声を出さなくたって、ちゃんとしてあげるわよ……ほら、脚をあげて?」

提督「ん、んぅ…お願い、じらさないで……ぇ♪」

アッテンドーロ「ふふ、だめよ…美味しい果物はちゃんと皮を剥いて、種を取ったりしないと美味しくないでしょ……ちゃんと下ごしらえをしないと、ね♪」

提督「はぁ、はぁ…はあ…っ♪」

アッテンドーロ「あらまぁ、すっかりトロ顔になっちゃって……仕方ないわね、それじゃあしてあげるわよ♪」…それまで頬や髪をそっと愛撫していた左手と、とろとろに濡れた花芯をまさぐっていた右手を放すと、提督の両脚を小脇に抱え込んで軽く広げた…そしてそのままにじり寄って、ぴったりと濡れた箇所を合わせた……

提督「んっ、んっ、んっ…あっ、ん……あぁっ♪」くちゅっ…にちゅっ……と、貝やカタツムリが張りついたような音を響かせる…

アッテンドーロ「ん、んぅ…提督のここは最高よ……とろとろに濡れて…いやらしい音までさせちゃって♪」

提督「だって……腰がしびれて…とろけそう……はひぃ♪」

アッテンドーロ「そう…じゃあもうちょっとスパイスを……♪」耳元に顔を寄せた…

提督「な…なにをするつもり///」いやらしい責め方を期待して瞳を輝かせ、困ったような照れ笑いを浮かべて顔をそむけている……

アッテンドーロ「愛しているわよ……フランチェスカ♪」そう言った瞬間ほっそりした人差し指をいっぱいに突き入れた

提督「そんなのずる……んはあぁぁっ♪」ぶしゃぁぁ…と粘っこい蜜を噴き出しながら身体をひくつかせ、甘い叫び声をあげた

アッテンドーロ「…ずるいも何もないわ♪……そぉら、もう一回♪」

提督「んひぃぃっ…もっとぉ♪」

アッテンドーロ「んふふっ…道理で姉さんが病み付きになるわけね……ほぉら♪」

提督「ひぐぅぅっ…もう、腰が抜けちゃいそう……んあぁぁっ♪」

アッテンドーロ「なに、これだけしてあげているのに「抜けちゃいそう」なだけ?……何だかくやしいわ…こうなったら必殺の533ミリ魚雷をお見舞いしてあげるわ…ねっ!」ずぶずぶっ…ぐちゅっ♪

提督「はぁぁぁっ♪…ムツィオの指…長いからっ……ひぅぅっ、んあぁぁっ♪」


…しばらくして…

アッテンドーロ「はぁ…はぁ……はぁー…ありがと、提督……姉さんには悪いけど、おかげでうんと愉しませてもらったわ♪」

提督「ひぃ…ふぅ……はひぃ♪…いいの、わたしも身体が溶けちゃいそうなほど気持ちよかったし…それに……ムツィオが求めてくれて嬉しかったわ///」

アッテンドーロ「…そういう歯が浮くようなセリフを吐いていると、二回戦に突入しちゃうわよ?」

提督「二回戦ねぇ……せっかくだからしましょうか♪」

アッテンドーロ「…今日は止めておくわ。姉さんのために体力を取っておきなさい♪」

提督「ふふっ、そうね……それに、歯を磨かないと♪」

アッテンドーロ「ええ、そうね…ほら、提督の歯ブラシ」

提督「…ありがと♪」

………

…とりあえず今日はここまでで、ムツィオ×提督をやってみました……ムツィオは姉のライモンに比べてナポリ風な、少し勝気ではきはきした感じにしたかったのですが、どうだったでしょうか……また、もしかしたら数日ほど間が空いてしまうかもしれませんが、気長に待っていて下さればと思います……


…訂正…


>>6 ミッチャー提督のプロフィールで愛車を「71年型シボレー・バラクーダ」としていましたが、正しくは「プリマス・バラクーダ」です、失礼しました…ちなみにイメージとしては「刑事ナッシュ・ブリッジス」でサン・フランシスコの坂道を駆け抜けているアレです…


…翌朝・提督の部屋…

ライモン「…ど、どうでしょうか///」

…昨夜は提督のシングルベッドに二人で入り、お互いに指を絡めたり、優しく触れるようなキスを交わしながら眠りについた二人…朝食をくつろぎ用のガウン姿のままで済ませると、今は家の脇にから出られる海辺に家族揃って出かけようと着替えている……昨日は軽く身体に当ててみただけだった、十代の頃の提督が着ていた水着を着て、恥ずかしげに立っているライモン

提督「んー…ちょうどいいように見えるわよ。それにとっても可愛いわ♪」

ライモン「可愛い…ですか///」…白いセパレートスタイルですっきりしたデザインの水着に、化粧品や日焼け止めと言ったものが入っている小ぶりなハンドバッグを持ち、麦わら帽子をかぶっている

提督「ええ、とっても…私はその水着が合わなかったからうらやましいわ♪」提督は家に置いてあった黒いシックな水着で、やはり少しきつくなっていたが、ひもを緩めに結んだりしてどうにかこうにか身体を押し込んでいた……足はデッキシューズのような軽い靴で、夏の地中海ならではの眩しい陽光対策にはサングラスを掛けている

ライモン「そうでしょうか…色も涼しげな白で、提督ならとっても似合うように思えますが?」

提督「うーん…デザインは好みだったのだけど……胸回りがすぐきつくなっちゃって…」苦笑いを浮かべライモンをの水着姿を眺める提督…かたわらにはレモネードの瓶や浜辺に敷くシート、大きなバスタオルが詰め込んである柳のバスケットが一つ……

クラウディア「二人とも、準備は出来たかしらー?」

提督「はーい、今行くわ…それじゃあ、行きましょう♪」…階段の下から呼びかけてきたクラウディアに答えると、するりとライモンの指に自分の指を絡ませ
てにっこりした

ライモン「はい♪」


…玄関…


提督「お待たせ…チェザーレ、その水着とっても優雅ね♪」

チェザーレ「うむ、かたじけない」…チェザーレは何ともエレガントなライトグレイのパレオ付きのワンピーススタイルで、頭には豪奢な帽子を傾けてかぶっている

提督「本当の事ですもの♪……ムツィオ、私のお古だけどちゃんと着られた?」

アッテンドーロ「ええ、おかげさまでね…でもちょっと胸がゆるいわ」アッテンドーロの水着は胸元がV字に切れ込んでいる大人びたレオタードスタイルの水着で、左右で白と黒に分かれた生地を中央で重ねたようなデザインが、ヴィヴィッドで高級なイメージを与える…手首には首輪とつながっているリードの輪っかが通してあり、かたわらではルチアが待ちくたびれたように尻尾を振っている

クラウディア「んふふっ、フランカは胸が大きくなるのが早かったから……おかげで私はうんと水着選びを楽しませてもらったわ♪」そう言って目を細めるクラウディアはさっぱりした薄い青のワンピースに大きなバスケットを持ち、嬉しげに頬に手を当てた…

シルヴィア「…確かにクラウディアは毎シーズンごとに、色んな水着を買ってきたりもらったりしてたわね」そう言ってクラウディアを眺めたシルヴィアは巻いたシートとパラソルを小脇に抱え、引き締まったしなやかな身体をホールターネックのブラと綿の半ズボンで包んでいる…

提督「そうそう…で、私も十代の中頃には気が付いて「お母さま、私を着せ替え人形にするのは止めて?」なんて言ったこともあったり……でもまぁ、おかげでライモンたちが水着を着られたわけだし♪」

クラウディア「ね、よかったでしょ?」

提督「んー…まぁ、そういうことにしておくわ♪」

シルヴィア「…昔話はいいけど、早く行かないと熱さが耐え切れなくなるわよ?」

クラウディア「はいはい、相変わらずシルヴィアはせっかちさんね♪」

シルヴィア「そういうクラウディアは相変わらずおっとりしているわね…さ、行きましょう」クラウディアの腕に自分の腕を絡め、ドアを開けた…


…カンピオーニ家の庭はクラウディアの好みに任せ、手前には背の低いクロッカスや小ぶりな花々が華やかに咲き、黄色っぽいレンガで囲われた水道の回りは水っぽい場所を好む水仙がすんなりと伸びている。日当たりのいい場所には淡い桃色や目の覚めるような黄色の花をつけたバラのこんもりした茂みと、涼しい木陰に白い花をつけた背の高い百合、そして古い黄色っぽいレンガ塀にはクレマチスのようなつる性の植物が絡めてある……庭の一部は家庭菜園で、イタリア料理には欠かせないトマトとバジリコが植えてある…

アッテンドーロ「きれいな庭ね…ところで、どう行けばいいのかしら」

シルヴィア「こっちよ。昨日は裏の林の間に流れている小川で泳ごうかと思ったけど、この夏は川の水が少ないから…海岸に行きましょう」…母屋と同じく白い壁と赤茶色の瓦で出来た車庫を脇に見ながら庭を抜けていくと、茂みや岩の間を抜けてくねくねと曲がっている細い道が黄色い小さな砂浜に続いている

アッテンドーロ「ここはシルヴィアたちの海岸なの?」

シルヴィア「ええ。見ての通り陸から続いている道は他にないし、我が家の専用みたいなものね」

提督「そうなの。私も小さい頃からシルヴィアおばさまやお母さまとうんと泳ぎに行って…ふふ、懐かしいわ♪」

クラウディア「そうだったわねぇ、フランカは泳ぎも上手で……それに透けた水着からほの見える白い肌に、濡れた髪をかきあげる仕草が色っぽくて♪」

提督「自分の娘をそういう目で見ないでちょうだい…まぁ、一応褒め言葉として受け取っておくわ」

クラウディア「うふふ♪」

チェザーレ「…さて、この小道を降りていけばよいのだな」

シルヴィア「そう言うこと」


…海岸…

アッテンドーロ「へぇ…小ぢんまりとしてていい感じじゃない♪」

ライモン「可愛らしい場所ですね」

提督「気に入ってくれてよかったわ…さ、まずはパラソルを拡げてシートを敷きましょう♪」…茂みの間を抜けて浜辺に出た提督たちは、パラソルを黄色い砂浜に突きたて、シートを敷いて重しになる石を乗せた

アッテンドーロ「うーん、波は穏やかで風はなし。最高の海水浴日和ね…さ、泳ぎに行きましょうよ♪」

提督「私はまだ準備が出来てないわ。まずは日焼け止めを塗らないと」

アッテンドーロ「あらそう…姉さん」

ライモン「なぁに、ムツィオ?」

アッテンドーロ「…提督に日焼け止めを塗ってあげなさいよ♪」…にやにやと「分かっているわよ」といった笑みを浮かべ、派手なウィンクをした

ライモン「…えっ!?」

提督「そうね、お願いするわ♪」顔や腕に日焼け止めを塗っていた提督も「後ろは自分で塗れないから」と、日焼け止めクリームの瓶を差しだした

ライモン「ごくっ……じゃあ、塗りますね///」

提督「ええ、お願い♪」

ライモン「…まずは……肩口から」後ろから水着のスリップを解くと、肩ごしにたゆんっ♪…と弾む、ずっしりと柔らかそうな乳房が見える……提督の白くてなだらかな肩にとろりと甘い匂いのするクリームをたらすと、ライモンはそっと塗り広げた……

提督「ふぅ、ライモンったら日焼け止めの塗り方まで優しいのね……マッサージみたいで気持ちいいわ♪」

ライモン「そ、それはよかったです…次は背中に塗っていきますね///」

提督「ええ、それじゃあうつ伏せになるわね……んっ♪」肩甲骨の辺りを優しく揉みほぐすようにライモンの手が動いていき、思わず甘い吐息をもらす…

ライモン「///」

提督「んんぅ…んぁ……気持ちいい…♪」

ライモン「き…気持ちいいですか///」

提督「ええ……んっ、あぁ///」

クラウディア「あらあら、フランカったらあんな可愛い娘に日焼け止めを塗ってもらって…うらやましいわ♪」

シルヴィア「クラウディアには私がいるでしょ……ほら、塗ってあげるからサマードレスを脱いで?」

クラウディア「ええ…♪」するりとサマードレスを脱ぐと、下にはビキニスタイルの水着を着ていた…生地は柔らかな身体つきのクラウディアによく似合う桃色で、フリルとサイドリボンが付いている…

シルヴィア「じゃあ塗ってあげるから…」綿のハーフパンツを脱ぐと、その下にはサイドがきゅっと切り上がった白の水着を着ていた…しなやかな脚と引き締まったヒップが、ぴんと生地を張りつめさせている…そのまま後ろに座ると日焼け止めを手に取った……

クラウディア「んっ…シルヴィアに塗ってもらっていると愛撫されているみたいで好きよ……♪」

シルヴィア「そう…ならうんと気持ち良くなってもらわないと」

クラウディア「はぁぁ…んっ……そこ、気持ちいいの…あふっ♪」

シルヴィア「ふふ、そういうとろけるような甘い声を出すところは母娘とも同じね…前もやってあげましょうか?」

クラウディア「…んふふっ、そんなに私のおっぱいを触りたいの?」

シルヴィア「明るい海岸で眺めたり触ったりするのはまた格別だから…で、どうするの?」

クラウディア「うふふっ…お好きなだけどうぞ♪」

シルヴィア「…じゃあ塗るわね」

ライモン「……あ、あんまりそう言う声をあげないで下さいっ///」

提督「…だって、ライモンの手が……んっ、あふっ…ふぁぁ♪」

アッテンドーロ「…これじゃあ海水浴をしに来たのか、浜辺でいちゃつこうと思って来たのか分からないわね、チェザーレ?」

チェザーレ「はは、チェザーレは大方こうなるだろうとは思っていたぞ…それではアッテンドーロよ、ルチアを交えて遊ぶとしようか」

ライモン「…提督、塗り終わりましたよ///」

提督「それじゃあ海に入りましょうか……ライモン?」…ライモンは自分の手を見つめながら開いたり閉じたりを繰り返している

ライモン「…あ、はい///」(提督、相変わらず手に吸いつくような触り心地だった…///)

提督「泳がないの?」ずっしりと豊かな乳房をきつい水着にどうにか包むと、微笑を浮かべて小首をかしげた…

ライモン「い、いえ…提督も一緒に泳ぎましょう」

提督「ここではフランチェスカでいいって言ったでしょう?…ところで、ライモンは日焼け止めを塗らないの?」

ライモン「えっ…!?」

提督「昔は小麦色に焼けた肌の方がいいって言われてたけど、近頃は過度の日焼けは身体に悪いっていうし…どうする?」片手で日焼け止めクリームの瓶を揺さぶりながらにこにこと微笑んでいる

ライモン「えーと…その……フランチェスカはどう思いますか///」

提督「私はどっちでもいいわ…白いライモンも可愛いし、日焼け跡がくっきり残っているライモンも捨てがたいわね♪」いたずらっぽい視線を向け、頭の中ではこんがりと日に焼けたライモンの水着を脱がしているらしい提督…

ライモン「も、もう…じゃあ露出しているところだけお願いします///」

提督「ふふ、お任せあれ♪」


…しばらくして…

ライモン「はぁ…はぁ……もう、これじゃあ愛撫と変わらないじゃないですか///」

提督「ふふ…さっきは私が気持ち良くしてもらったから♪」

ライモン「…も、もう///」

アッテンドーロ「二人とも、まだいちゃついてるの?早くしないと午前が終わっちゃうわよ?」

提督「ふふっ…それじゃあ行きましょうか」

ライモン「はい……いっぱい楽しみましょうね♪」

提督「ごめんなさい、ムツィオ…遅くなったわ」

アッテンドーロ「ま、私はいいけどね…姉さんも入ってごらんなさいよ、水温もちょうどいいわ」

ライモン「ええ…わぁ、暖かくて気持ちいい♪」波打ち際で脚を水に浸し、両手で海水をしゃくって身体に跳ねかけるライモン

アッテンドーロ「ふふ……そーれっ!」いきなり両手で水をかけるアッテンドーロ

ライモン「わっ…もう、いきなり何をするのっ?」

アッテンドーロ「二人でいちゃついていて遅かった罰よ……ついでに提督も…ねっ!」

提督「あんっ…もう、やってくれたわね♪」バシャバシャと海に駆け込み、アッテンドーロに浴びせ返す提督

アッテンドーロ「普段から運動不足のあなたに負ける訳ないでしょう…が♪」

提督「うっぷ…ライモン、二人で挟撃しましょう♪」

ライモン「了解…それっ♪」

アッテンドーロ「あ、姉さんも提督に味方するわけ?」

ライモン「先に浴びせてきたのはムツィオだもの…えーいっ♪」

アッテンドーロ「この…チェザーレ、支援を要請するわ!」

チェザーレ「ふむ、致し方ないな…ルチア、チェザーレと一緒においで」

ルチア「ワンワンッ♪」チェザーレの脇で水しぶきをあげながら駆けるルチア

チェザーレ「さてと…えいやっ♪」のんきなかけ声とは裏腹に、もの凄い勢いで水を浴びせてくるチェザーレ

提督「うわっ…!?」

チェザーレ「それっ」

ライモン「きゃあっ…!?」

チェザーレ「ふむ…それでは支援は終了だ」

アッテンドーロ「え、いくら何でも支援が短くないかしら?」

チェザーレ「うむ、戦艦は被弾しないのが一番なのでな…あとはムツィオに任せる」

アッテンドーロ「ち、ちょっと…!」

提督「はぁー…疲れた」水のかけっこから早々に退却すると、少しばかり水泳を楽しんだ提督……濡れた身体からしずくを滴らせながら海岸に戻ると熱い砂浜に座り込んで、まだ水かけを続けているライモンとアッテンドーロを微笑ましい様子を眺めている

ライモン「もう、負けませんからねっ♪」

アッテンドーロ「私だって♪」

提督「ふぅ…風は気持ちいいし、ライモンたちは可愛いし……言うことなしね」

ライモン「えいっ♪」

アッテンドーロ「この…っ♪」

提督「ふわぁ…日差しが暖かくて気持ちいいし、何だか眠くなってきちゃったわね……でも昼寝するには早いし、何か眠気覚ましでもないかしら…」

ライモン「ムツィオ、これで決着です…きゃあっ///」両手で水をかけた瞬間、はらりと水着の紐が解けた…慌てて胸元を押さえるライモン

提督「ん、一気に目が覚めたわ……それにしてもライモンったら、お日さまの下で見てもきれいな桜色で…ふふっ♪」

アッテンドーロ「姉さん、そのまま待ってて…今付け直してあげる」

ライモン「う、うんっ…お願い」

アッテンドーロ「全く、姉妹のお遊びだって言うのにムキになるから……あぁ、あった」

チェザーレ「…ライモンド、大丈夫か?」

ライモン「え、ええ…提督が学生時代に着ていた水着だったものですから……ちょっと胸がゆるくて」

チェザーレ「そうか…つまりあの乳房は昔から大きかったのだな……まさに「ローマは一日にしてならず」ということか」

ライモン「チェザーレさん、ことわざはいいですから…///」

チェザーレ「なに、そう動揺することもあるまい…どのみちここには婦人しかおらぬし、そもそも隠し立てすることなどない間柄ではないか」

ライモン「そ、それはそうですが…///」

…一方・パラソルの下…

クラウディア「あらあら…ライモンちゃんの胸もなかなか美味しそうね♪」軽く水に入ってひと泳ぎすると、戻ってきてシートの上に寝転がっているクラウディア…脇には遠泳を済ませてきて、まだ胸を上下させているシルヴィアが座っている…

シルヴィア「ちょっと、娘の恋人までつまみ食いするつもりじゃないでしょうね」

クラウディア「さぁ、どうかしら♪」

シルヴィア「…そんな暇があるなら私の相手をしてほしいわ」クラウディアの上に屈みこむと、塩辛い唇でキスをした…

クラウディア「あ…んっ……んちゅっ、ちゅぱ…ちゅぷっ///」

シルヴィア「ちゅる…っ……ふぅ、貴女の口で塩辛いのが中和されたわ」

クラウディア「でも、今度は私の唇がしょっぱくなっちゃった……それに、塩水のせいかしら…こっちもひりひりするの///」砂の付いたふとももをこすり合せ、熱っぽい瞳で見上げる…

シルヴィア「…フランカたちに見られてもいいの?」

クラウディア「ええ…あの娘たちにシルヴィアがどんなに素敵か見せつけたいから///」

シルヴィア「だからってなにも見せつけなくたって…それにクラウディアのとろけた顔は私だけのものにしておきたいわ」

提督「ほーら、ルチア…おいでー♪」

チェザーレ「よーし、いい子だ……それ、この流木だぞ♪」

ルチア「…ワフッ、ワンワンッ♪」

ライモン「ムツィオ、あそこの沖まで泳ぎに行きましょう?」

アッテンドーロ「いいわね…今度は水着が脱げないように頼むわ」

クラウディア「うふふっ…今なら誰も見ていないわ♪」

シルヴィア「もう…仕方ないわね」…水着のへりをずらして、少し骨ばった指を差しいれた

クラウディア「んっ…あんっ♪」

………

提督「はー…疲れた♪」提督はチェザーレと二人でルチア相手に流木を使って遊んであげていたが、無尽蔵に体力があるらしいルチアに走り回らされ、ヘトヘトになってパラソルの下に戻ってきた……全身に心地よい疲労感を感じて、シートに寝転がる提督…

提督「喉も乾いたし…レモネードがあったわよね」バスケットをごそごそとかき回し、瓶に詰めた冷たいレモネードとグラスを取り出した…

提督「ごくっ…ごくっ……ふぅー…」

チェザーレ「…やれやれ、何とも元気なワン公よ」

ルチア「ワフッ…♪」…びしょびしょに濡れた身体をぶるぶるっと身震いさせつつ、流木をくわえて満足そうなルチア……一方のチェザーレは置いてあった優雅な帽子をかぶり直すと提督の脇に座り、長い脚を投げ出した

提督「お帰りなさい、チェザーレ」

チェザーレ「うむ、今戻ったぞ…おや、何やら涼しげなものを飲んでいるな……チェザーレにも一杯もらえないだろうか?」

提督「ええ、そこのバスケットに入っているから好きなだけどうぞ…グラスはここにあるから……」シートの上に出したグラスを一つ取って、チェザーレに差しだした…

チェザーレ「うむ、かたじけない……おっと!」

提督「きゃっ!……チェザーレ、大丈夫?」提督の身体越しに上体を伸ばしてレモネードの瓶を取ろうとしたチェザーレだったがバランスを崩し、寝転がっていた提督の上にのしかかった…

チェザーレ「うむ、チェザーレは平気だが……提督の双丘はなんとも柔らかいな///」…とっさに両手をついたチェザーレだったが、その右手はむっちりと弾力のある提督の乳房をつかんでいた……しみじみと感想をもらしながら、改めて胸を揉むチェザーレ

提督「もう、チェザーレったら…ほーら、早くどいて♪」空いている右手で、つんっ…とほっぺたをつつく提督

チェザーレ「ほう……本当にどいてしまって良いのか、提督よ?」ゆったりと乳房をこね回しながら、ささやくように問いかける…

提督「……ううん、どかないで///」

チェザーレ「そうであろう、こんなにも太陽が眩しいのだからな……んっ///」そのまま顔を近づけ、そっと唇を重ねる二人……ルチアだけがその様子を見ながら、両前足に挟んだ流木をかじっている…

提督「んっ…んふっ……んんっ///」シートの上に押さえつけられながら、口中に熱い舌をするりと入れられた提督…その瞳はとろりと焦点から外れ、身体の力も抜けている……

チェザーレ「んふっ…じゅぷっ……れろっ…ん♪」

提督「んはぁ……はぁ、はぁ、はぁ……///」砂浜からの照り返しで金色に光る唾液の糸をたらしつつ、色つやのいい唇を半開きにしてチェザーレを見上げた…

チェザーレ「砂浜で愛を交わすと言うのも…一興であるな……♪」提督のきつそうな水着をほどくと、たゆんっ…と丸っこい乳房が揺れ、所々についていた砂粒がぱらぱらとこぼれ落ちた……

提督「そうね、せっかくの夏休みだもの……いっぱい愛して…ね///」

チェザーレ「そう言われると…たまらんな♪」くちゅり♪…水着の中に手を入れ、しっとりと湿った提督の秘所に指を差しいれるチェザーレ……

提督「あぁっ…んんぅ♪」

チェザーレ「ふふ…昨夜もライモンドとお楽しみだったであろうに、まだ足りぬのか」

提督「だって……んんぅ、んぁぁ♪」シートの上で身体をくねらせながら、とろけたような表情で続きをせがむ提督…

チェザーレ「全く、チェザーレもずいぶん好色な提督を持ったものよ♪」ぐちゅぐちゅっ、にちゅっ…♪

提督「ひっ、あぁぁっ…んあぁぁぁっ♪」

チェザーレ「おぉ、チェザーレの指がねっとりと粘っこいぞ……どれ、味見でもしようか」じゅぶっ…と指を引き抜き、しげしげと眺める

提督「だ、だめ…恥ずかしいわ///」そう言いつつ期待した表情を浮かべている提督

チェザーレ「なに、お互いに隠すことなどない仲ではないか…んむ、少ししょっぱいな♪」

提督「も…もう、何も言わなくたって///」

チェザーレ「まぁ、よいではないか……さて、今度はもっと奥まで参るぞ♪」

提督「……ええ、チェザーレにいっぱいかき回して欲しいの///」

チェザーレ「……済まぬ、提督よ…そこまで言われると、このチェザーレもこらえきれぬ」…ぐちゅぐちゅっ、じゅぶっ!

提督「あぁぁっ、ひぐぅぅっ♪…もう、チェザーレったら急に激し……んあ゛ぁ゛ぁぁっ♪」

チェザーレ「提督の喘ぎ声も捨てがたいが、ここは一旦静かにしてもらおう……んちゅっ、ちゅぅぅっ♪」

提督「ん゛ーっ、ん゛っ…んんっ……♪」がくがくと腰をひくつかせていたが水着から蜜をたらし、とろりとふとももを濡らした……

チェザーレ「じゅる、じゅるっ…ちゅぽっ……さてと、提督は物わかりがいいからチェザーレがこれ以上言わなくとも静かに出来るな?」

提督「…」かくかくと首を動かしてうなずいた

チェザーレ「うむ、よろしい…おや、ライモンドたちも戻ってきたようだ…」

ライモン「あ、提督はもう戻っちゃったのかしら…?」

アッテンドーロ「かもね。見たところチェザーレとルチアもいないし、クラウディアたちも……///」

ライモン「…せ、せっかくだからもう少しだけ遊んでいきましょうよ…ね、ムツィオ///」

アッテンドーロ「そ、そうね…///」

チェザーレ「ふむ、どうやらここに放り出してある着替えやらバスケットやらで二人からは隠れているらしい……となると、なおさらこんなところを見つかるわけにもいくまいな♪」ずぶっ…ぐちゅっ♪

提督「っ…んっ///」

チェザーレ「おやおや、チェザーレがそう言った矢先にとろりと濡らして…提督はこういうのもお好きか♪」くちゅくちゅっ…ぬちゅっ♪

提督「…っ、んっ……んふぅぅっ♪」唇を噛みしめ、ふとももをびしょびしょに濡らしながら上体を引きつらせて、必死にこらえているように見える…が、その表情はすっかりとろけきっていて、提督自身もすっかりこの状況を愉しんでいる……

チェザーレ「ほほぉ……月並みな表現だが、提督の暖かくてとろりと濡れた花芯がきゅうきゅうとチェザーレの指に吸いついてきているぞ…?」くちゅり…ぐちゅっ♪

提督「…ん……くぅ///」耳元でささやくチェザーレに、提督は脚を閉じてふとももをこすり合せた…

チェザーレ「ふふ…喘ぎ声をこらえる提督の何と愛らしいことよ……しかし、こうしてとろけた表情を見ていると…」

提督「?」

チェザーレ「何というか、こう……むらむらと嗜虐的な欲求が湧きあがって来るな…♪」

提督「…あ」にたりと口角をあげて微笑むチェザーレを見て、ぞくっとするような予感を覚えた

チェザーレ「うむ、決めた。さっきの口づけは大変よかったのでな……提督が秘所を責められつつ、どこまで息を止めていられるか試してみようではないか♪」

提督「……あの、チェザーレ…ちょっと待っ…」

チェザーレ「声を出したら可愛いライモンドやクラウディアたちにばれてしまうぞ?……それでは、始めるとしよう…ん、ちゅぅ…れろっ、んちゅぅぅ♪」同時に人差し指と中指を突き入れ、ぐちゅぐちゅと提督の膣内をかき回すチェザーレ…

提督「んっ、んぐぅ゛ぅっ……ん゛ーっ♪」

………

…しばらくして…

提督「はぁ、はぁ…はあっ……もう、チェザーレったら…危うく窒息するところだったじゃない」

チェザーレ「まぁそう言うな。不意のキスで目を丸くしている提督も可愛くてな…ついやってしまったのだ」

提督「…相変わらず口が上手いんだから」

チェザーレ「弁舌はキケロにも褒められたと言うのが自慢でな……さて、改めてレモネードをちょうだいしよう♪」

提督「はいはい…んっ///」

チェザーレ「ごくっ、ごくっ……どうした、提督よ?まだ身体がうずくのか?」

提督「え…ええ……あれだけされたから、腰がぞわぞわして…んっ///」ふとももをこすり合せるたびに「にちゅっ…」という、まるでタコや貝類を水槽から引きはがしたような音をさせている…

チェザーレ「ふふ…チェザーレは満足したぞ♪」

提督「もう、チェザーレの女たらし…///」

チェザーレ「ふふ、お褒めにあずかり恐縮である…提督、身体が熱いなら海でさっぱりさせたらどうだろうか」

提督「…なら立たせて///」

チェザーレ「承知承知♪それ、肩を貸そう♪」

ライモン「…あれ、提督?それにチェザーレとルチアまで?」

チェザーレ「おぉ、ライモンド…遠泳はどうであった?」

ライモン「気持ち良かったですよ……ところで、今まで何をしていたんです?」

チェザーレ「提督もチェザーレも疲れてしまってな、パラソルの下でぐっすりと寝こけていた所よ……ルチアは退屈だったであろうから、もう少し遊ばせてやってもらえぬか?」

ライモン「あ、はい…ルチア、おいで♪」

ルチア「ワンッ♪」

チェザーレ「…さ、早く海に入ってそのねっとりした愛液を流すことだ♪」

提督「…ええ///」

提督「あー…ひんやりして気持ちいいわ」

チェザーレ「うむ、少し焼けた肌に沁みるが……これも夏らしくて良い」

提督「ええ、そうね♪」…と、クラウディアがライモンたちに向かって「しーっ」と唇に人差し指を当てるジェスチャーをしながら、提督の後ろからそっと近づいた……

クラウディア「…フランカっ♪」ぎゅむっ♪…と後ろから飛びつき抱きついたクラウディア

提督「ひゃあっ!?…って、お母さま?」

クラウディア「うふふふっ…久しぶりの海水浴は楽しいでしょうけど、そろそろお昼にしましょう?」

提督「ええ、そうね……って、どうして裸なの///」振り向いて絶句する提督

クラウディア「さて、どうしてかしら…♪」ふざけてファッションモデルのようなポーズを取ってみせるクラウディア…白く輝く肌、大きくて柔らかそうな乳房にもっちりしたふともも…と、ふっくらと甘く柔らかそうな身体を惜しげなく陽光にさらしている

提督「もう、ライモンたちもいるのよ?」

クラウディア「うふふ…目の保養になるでしょ♪」

シルヴィア「目の保養どころか、その美味しそうな裸を見たら心臓麻痺を起こすわ…さ、死人を出す前にこれを着なさい」後からやってきたシルヴィアが、ゆったりしたパイル地のバスローブを渡した…

クラウディア「もう…シルヴィアったら、そんなに私の身体を見せたくないの?」

シルヴィア「ええ。私は欲張りだから、クラウディアは私だけのものにしておきたいわ」そう言ってぎゅっと後ろから抱きしめる…

クラウディア「まぁ…///」

提督「はいはい。お母さまたちの惚気は素敵だけど、聞いているとお昼を食べないうちにお腹が一杯になっちゃうわ…みんな、そうなる前にお昼をいただきましょう?」

ライモン「…そ、そうですね///」

アッテンドーロ「そうね、今のはかなり『ごちそうさま』だったわ」

チェザーレ「ふふ…まさに「この母親にしてこの提督あり」であるな♪」

提督「あー…ルチアもおやつにしましょうね?」

ルチア「ワフッ…♪」濡れた身体をぶるぶるっ…と震わせると、提督の脚元にまとわりついて尻尾を振った…

ライモン「ええ、ルチアにもちゃんとおやつを用意して……」急に振り向くと水平線に目をこらした

提督「…どうしたの?」

ライモン「今、沖合に何かいたような気がして…すみません、気のせいだったようです」

提督「少し疲れたんでしょう……後で一緒にお昼寝しましょうね♪」

ライモン「も、もう///」

………



青白い肌の娘「…見つけた」

全身白っぽい娘「…よろしい、後は接近できる機会を待て」

青白い肌の娘「…了解」

………

…数日後・朝…

声「……く、…とく」

提督「んー…むにゃ……」裸身をくるむ肌ざわりのよいタオルケットの感触と身体を揺すぶるやんわりとした揺れに身を任せ、心地よい眠りを堪能している…

声「…いとく……きてください……」

提督「んふふ……すぅ…」

別の声「…のね、フランカを……ときは……ると目を覚ますわ♪」

声「…かりました……ん、ちゅぅ///」

提督「ん……んっ、んんぅ?」柔らかな感触がいきなり唇に押し当てられ、甘い香りが鼻腔をくすぐった……息が苦しくなってぱっちりと目を覚ました提督…

提督「…ふわぁ…ぁ……」

ライモン「…さすがに効果てきめんですね///」

クラウディア「ね?…おはよう、眠り姫さん♪」

提督「おはよう、お母さま……今の「おはようのキス」はライモン?」

クラウディア「うふふっ、そうよ…さぁ、そろそろ朝食を食べにいらっしゃい♪」

提督「ええ……んーっ、今日もいい天気ね。こういう天気だと朝寝坊も気持ちがいいわ♪」

ライモン「もう、いくら何でもお寝坊ですよ…あんまり提督が遅いので、ムツィオと先に朝食を済ませてきちゃいました」

提督「いいんじゃないかしら…さてと、それじゃあ起きるとするわ♪」

…提督はベッドから「よいしょ」と起き上がると、ウォークイン・クローゼットになっているアルコーヴ(入れこみ)から洋服を取り出し、どうにか身体に合いそうなものを着た……その横では提督のお尻が悩ましげに揺れるのを見ながらライモンが頬を赤らめ、困ったような表情を浮かべている…

提督「それじゃあ私は朝食をいただくとしましょう…ライモン、よかったら食後のコーヒーを付き合ってくれる?」

ライモン「ええ、もちろんです///」

…食堂…

提督「ふふっ、どれも美味しそう♪」

シルヴィア「ええ、美味しかったわよ。何しろクラウディアの料理だものね…ん、ちゅ……おはよう、フランカ」

提督「んっ…おはよう、シルヴィアおばさま♪」

シルヴィア「さ、冷めないうちに食べなさい?」ほっぺたにおはようのキスをすると、また「レプブリカ」紙を読む作業に戻ったシルヴィア…傍らにはコーヒーカップが置いてあり、時折すすっては満足げなため息をついた…

提督「それじゃあ…♪」

…目の前のお皿には、もっちりとしたフォカッチャ風の生地とパリパリの皮が絶妙な丸パン、広げた手ほどもありそうな香味野菜入りハムのスライス……パンにじんわりと染み込んでいる黄緑色のオリーヴオイルに、トマトとナスにズッキーニで出来た冷菜、アンチョビを詰めた酢漬けのオリーブ……果物にはみずみずしいスイカとメロンのスライス……と、南イタリア風の献立がにぎにぎしくテーブルに並んでいる…

提督「…んぅ、おいひい♪」

クラウディア「美味しい?…よかった♪」目の前に座っているクラウディアは頬に手を当て、にこにこと笑顔を浮かべている

提督「んむ……このハムが好きなのも覚えていてくれたのね」…ハムは中に小さく角切りにしたチーズやインゲン豆、脂身が散らしてあって、小さい頃から提督の好物だった

クラウディア「ええ。今年の夏は帰って来るって聞いて、お肉屋さんで買って来たの♪」

提督「ありがとう、お母さま……ふぅ、食べたわ♪」…最後にオリーヴをつまんで口に入れると、食後のコーヒーに取りかかる提督……

アッテンドーロ「で、うちの提督は起きてきたの…って、起きてるじゃない」

提督「おはよう、ムツィオ♪」

アッテンドーロ「おはよう、提督。どうせ昨晩は姉さんとお楽しみだったんでしょう…隠しても無駄よ?」

提督「ええ、もちろん…それに隠す気なんてないわ♪」

ライモン「///」

シルヴィア「ふふっ…ところでフランチェスカ」

提督「なぁに、おばさま?」

シルヴィア「後で射撃でもどう?せっかく戻ってきたんだし、久しぶりにあなたの銃を調整したら?」

提督「そうね、最近この辺りにもお肉が付いちゃったし…姿勢が変わったから照準も合わせないと……」困ったように自分の胸を見おろしつつ、両手で下から支えるようにしてぽよぽよと揺らす提督…

シルヴィア「それじゃあ後でね…ライモンドたちもよかったらいらっしゃい」

ライモン「はい、お邪魔させていただきます」

…シルヴィアの部屋…

シルヴィア「いらっしゃい。さ、入って」

ライモン「お邪魔します…わ、壁に銃が掛けてあるんですね……」

アッテンドーロ「へぇ、シックでいい趣味ね。気に入ったわ♪」

チェザーレ「うむ、丁寧に扱われている道具を見るのは気持ちがよいな」

シルヴィア「ありがとう…どうぞ、そこにかけて?」ライモンたちに椅子をすすめて、自分は作業台の片隅に軽く腰を下ろした

ライモン「…あ、ありがとうございます」…シルヴィアの部屋はシックな濃い茶色の家具と白い壁で統一されていて、ガンオイルと木部に塗る亜麻仁油の匂い、それに少しだけ煙草の香りが漂っている……壁のあちこちには散弾銃やライフルが専用のラックにかけたり、お洒落なヴェルヴェットを敷いたケースに収められて優雅に並んでいる…

提督「この部屋に入るのも久しぶりね…コレクションも相変わらずきれいだし、何だか落ち着くわ」

シルヴィア「褒めてもらって嬉しいわ。あなたの銃は今出してきてあげるからね」

ライモン「提督、提督…」鍵のかかった隣の部屋に入っていくシルヴィアを目で追いながら、ライモンが提督をつついた…

提督「なぁに、ライモン?」

ライモン「いえ…これってかなりすごいコレクションだと思うのですが……」艶やかなクルミ材の銃床も美しい、フランキの垂直二連ショットガンを眺めて言った…

(※フランキ…「ルイージ・フランキ」「ルイギ・フランキ」などとも言われるイタリアの銃器メーカー。散弾銃、狩猟用ライフルが主だが、以前は海軍制式採用の「フランキ・LF-57」短機関銃や「フランキ・SPAS12」散弾銃などの軍用小火器も作っていた)

提督「そうね…この散弾銃も軽く百万は下らないんじゃないかしら」

(※ユーロと復活したリラが並立している設定…リラと円がだいたい同じレートになっている)

ライモン「ひゃ、百万ですか…」

提督「おばさまは華美な飾りを入れないからその値段で済むけれど、もっと高い銃はいくらでもあるのよ?」

アッテンドーロ「…なかなか贅沢な趣味ってわけね。提督、この銃は?」かなり使いこまれているが綺麗に手入れされて、丁寧に壁のフックに載せてある一丁を指差した

提督「あぁ、これ?…ベネリの12ゲージ散弾銃で、おばさまのお気に入りなの……ほら♪」よく見ると引き金の上、機関部の金属に刻印が入っている…

(※ベネリ…イタリアの機械・銃器メーカー。「ベネリ・スーペル90」など軍用散弾銃を多く手掛けている)

アッテンドーロ「えーと、なになに…「シルヴィアへ愛を込めて…クラウディア」って彫ってあるわね」

シルヴィア「そうよ。それは私たちの結婚記念にクラウディアが注文してくれた散弾銃なの、今でも時々使わせてもらっているわ……はい、あなたの銃よ」口の端に笑みを浮かべて嬉しそうに言いながら、ガンケース数個を抱えて戻ってきた

提督「ありがとう、おばさま…さっそく開けさせてね♪」

シルヴィア「あなたのなんだもの、好きになさい…その間に私は隣で他のを手入れするわ」そう言って椅子にかけてあったエプロンをつけた…

チェザーレ「ほう、隣にも銃がしまってあるのか…よかったらチェザーレにも見せてもらえないだろうか」

シルヴィア「…フランカ」

提督「大丈夫よ、口は堅いわ…ね、チェザーレ?」

チェザーレ「うむ、何があってもチェザーレは他言しないと約束しよう」

シルヴィア「そう…ならどうぞ」

提督「せっかくだから私も行くわ…おばさまのコレクションは本当にすごいもの♪」

シルヴィア「ふふ、それじゃあみんなでいらっしゃい」

…隣の部屋…

チェザーレ「おぉぉ…これは素晴らしい……」

ライモン「これだけあったら一個小隊ぐらい楽々とまかなえそうですね…」

アッテンドーロ「あきれた、鎮守府の小火器保管庫よりもたくさんあるんじゃない?…戦争でも始めるつもりなの?」

提督「私も初めて見た時はそう思ったわ……それだけじゃなくて状態もすごくいいの」

シルヴィア「貴重なコレクションだもの…そうね、あなたたちの世代ならこの銃はお馴染みじゃないかしら?」シルヴィアは壁に掛けてある数丁の短機関銃から一丁を選び出し、フックから下ろした…

ライモン「あ、知ってます…ベレッタ短機関銃ですね」そっと受け取って重さを確かめるように抱えた…

シルヴィア「ええ、M1938「モスキト」(蚊)ね…ちなみにどれもちゃんと動作するわ」

ライモン「え…」

提督「そうなの、だからこの部屋にある銃のほとんどは違法よ……民間人のフルオート火器の所有は許可されないし、これだけあるとなおの事…ね」

シルヴィア「まさかこれだけの歴史的遺産をスクラップにしろって言うの?…冗談じゃないわ、余計なお世話よ」…肩をすくめるとラックからカルカノM1891/38歩兵用ライフルを降ろし、きちんと手入れされ暖かみのある木部を撫でた……隣には戦中のドイツ軍が使っていたスコープ付きの「Kar98」狙撃銃がかけてあり、横にはフランキの「LF-57」短機関銃とイスラエル製の傑作短機関銃「UZI」(ウージー)が並んでいる…

アッテンドーロ「確かに綺麗な物ばかりね…」辺りを見回してしきりにうなずいている…

チェザーレ「これに比べたら海軍博物館もかたなしかも知れぬ…うぅむ」


…部屋にある博物館のようなケースにはピストルが並び、ベレッタ・ピストルはシルヴィアが揃えている分を年代順に「M1934・M1935」「M1951」「M84」「M92」と並べている…壁のカルカノ・ライフルは6.5ミリ口径の「M1891」、銃身の長い「M1891/41」など数丁が銃剣と一緒に掛けてあり、狙撃用スコープは棚の引き出しに収まっている……床には古くなった絨毯を敷いてあり、その上には「がらくた」として有名な「ブレダ・M30」軽機関銃が二脚を拡げて据えてあり、その隣にはどうやって入手したのか、大戦中のドイツ軍が頼りにしていた軽機関銃、「1943年製」の刻印もくっきりと入っている、ピカピカの「MG42」汎用機関銃が置いてある……


アッテンドーロ「あー…提督」…しばらく銃を観賞していたアッテンドーロが不意に声をあげた

提督「なぁに、ムツィオ?」

アッテンドーロ「提督が最初にこれを見たのはいつ頃なの?」

提督「あれはたしか……私が高校生ぐらいの頃だったと思うけれど…どうして?」

アッテンドーロ「いえ…初めてライフルを持った頃の話は聞いたけど、十代の頃の提督ってどんなだったのか気になって……」

提督「あー…その頃の私は大人しい「いい子」で勉強もよく出来たし、家庭教師のお姉さんにもうんと褒められていたわね」

アッテンドーロ「大人しいはともかくとして、「いい子」だったって言うのは本当かしら……学校の先生を口説いて色々と「おまけ」してもらっていたんじゃないの?」

チェザーレ「はははっ、提督ならやりかねんな♪」

提督「もう、失礼ね…私がそんなことすると思う?」

ライモン「えーと、申し訳ないですが……こればかりは提督を信じて「その通りです」とは言い切れないですね」

提督「むぅ…シルヴィアおばさま、今の聞いた?」

シルヴィア「聞いているわよ…そうね、フランカの学生時代がそんなに気になるのならクラウディアに聞いてみなさいな。きっと話したくてうずうずしているでしょうし」

提督「そうね、それがいいわ。私とおばさまは銃の手入れにしばらくかかるし、その間お母さまが一人ぼっちではつまらないもの…みんな居間でお茶でも飲みながら聞いてみたら?」

アッテンドーロ「そうね、それはいいかも知れないわ…姉さんはどうする?」

ライモン「うーん…そうね、せっかくだから聞いてみたいわ♪」

アッテンドーロ「じゃあ決まりね…チェザーレはどう?」

チェザーレ「ふむ…この銃器室も名残惜しいが、まだまだ夏休みはある……ご一緒させてもらおう」

提督「ふふ、じゃあ行ってらっしゃい…おばさま、一緒に銃の手入れをしましょう♪」

シルヴィア「ええ」

ライモン「…それでは提督、また後で♪」

提督「はいはい♪」

………

…居間…

クラウディア「…あの子の学生時代?」

アッテンドーロ「ええ、どんな子供だったの?」

クラウディア「そうねぇ……この辺りは小さくて小学校が隣の自治体(コムーネ)にしかなくって…車で送り迎えするにしても小さいフランカには大変だし、授業もそこまで難しくなかったから、必要な分だけ出席したら後は家庭教師のお姉さんを頼んで、あんまり学校には通わせていないの」

ライモン「そうなんですか」

クラウディア「ええ。でもあの子ったらとってもお利口さんで…詩とかオペラの文章、歴史のお話なんて簡単に覚えていたわ♪」

………

…提督・十歳前後の頃…


提督(小)「おかあさま、みてみて♪」…半分にたわめた紙を後ろ手に持ちながらにこにこしている

クラウディア「なあに、フランカ?」新しい服のデザインを考えていたクラウディアは手を止めて小首をかしげた…

提督(小)「あのね、今回の「イタリア全国統一テスト」が返ってきて…結果のところに「歴史と国語がとってもよく出来ています」って書いてあるの♪」レーダーチャートのついた多色刷りの用紙を広げて見せる子供時代の提督…

クラウディア「そう、それじゃあお母さまに見せてね……まぁ、とってもいい成績じゃない♪」よしよしと頭を撫でるクラウディア

提督(小)「えへへぇ…ねぇおかあさま、ごほうびをちょうだい?」きらきらした目で見上げてくる提督

クラウディア「はい、よくできました…ちゅっ♪」

提督(小)「ん、ありがと…それじゃあシルヴィアおばさまにも見せてくる♪」

クラウディア「はいはい…あ、ちゃんとエンリカにも見せるのよ?」

提督(小)「はーい♪」

…しばらくして・提督の部屋…

エンリカ「さてと…統一テストが返って来たのよね?」…フィレンツェの美大を目指して貯金をしている提督の家庭教師「エンリカお姉さん」が椅子に腰かけ、隣にちょこんと座っている提督に尋ねた

提督(小)「うん♪」

エンリカ「その様子だといい結果だったのね?」

提督(小)「あのね「歴史と国語がよく出来ています」…だって♪」

エンリカ「どれどれ…へぇ、確かにほとんど満点ね」

提督(小)「ねぇねぇ、エンリカお姉ちゃん…」チュニックの袖を軽く引っ張る提督…

エンリカ「ん?…なに、どうしたの?」

提督(小)「あのね、クラウディアおかあさまとシルヴィアおばさまにはもらったけど…エンリカお姉ちゃんもごほうびをくれる?」

エンリカ「別にいいけど…「ごほうび」って言ったってお姉さんはお菓子とか持ってきてないし、あげられる物なんて筆記用具くらいしかないわよ?」

提督(小)「ううん…あのね、エンリカお姉ちゃん……」

エンリカ「なに、何が欲しいの?」

提督(小)「わたしね…エンリカお姉ちゃんに「ちゅう」して欲しいの///」

エンリカ「そうね、成績もよかったしそのくらいは……えっ?」

提督(小)「お姉ちゃん……「ちゅう」してくれる?」

エンリカ「えーと…「ちゅう」ってキスのことでいいのね?」

提督(小)「うん、おかあさまとおばさまにはしてもらったけど、エンリカお姉ちゃんにも「よくできました♪」って「ちゅう」して欲しいの……だめ?」

エンリカ「いや…お姉ちゃんがもしフランカちゃんと「ちゅう」したら、クラウディアお母さんやシルヴィアお母さんに怒られちゃう……」

提督(小)「んー…それじゃあお姉ちゃん、この「ちゅう」はお姉ちゃんとわたしで「二人だけのヒミツ」にしよう……ね、それなら大丈夫?」

エンリカ「えーと…あのね……」

提督(小)「おねえちゃん…「ごほうびのちゅう」は算数も出来ないとだめ?」少し悲しげに結果の用紙を眺めている

エンリカ「ううん…これだけできたんだもの、お姉ちゃんがちゃんと「ごほうびのちゅう」してあげる♪」

提督(小)「わぁ、ありがとう……んーっ」顔を上に向けて目をつぶり、唇を軽く突きだす提督…

エンリカ「あ、えーと……それじゃあキスしてあげるからね…ちゅっ♪」額の髪をかきあげてエンリカが軽くキスをすると、提督(小)が目を開けて何やら不満げな顔をしている…

提督(小)「むぅ…」

エンリカ「え、なに…何か間違えた?」

提督(小)「エンリカお姉ちゃん……んっ♪」急に小さいふっくらとした両手でエンリカの頬を押さえ、上体を伸ばして唇を重ねた…ぷにっとした提督の唇の感触がエンリカに伝わってくる……

エンリカ「ぷはっ…ち、ちょっと!?」

提督(小)「あのね…お姉ちゃんとの最初の「ちゅう」は唇にしたかったの……わたしとお姉ちゃんの最初の「ちゅう」だから、だいじにしてね?」瞳をキラキラさせて、いかにも子供らしい生真面目な様子で言った…

エンリカ「…あ、ありがとう……大事にするわ///」

…数年後…

提督(中)「…エンリカ先生、できました♪」…十代も半ばの提督は急に胸もふくらみ、声も小さい頃より甘さが増していた……最初は子供の少ない田舎町で「年齢が近いお姉さん」と言うこともあって家庭教師をお願いしていたエンリカ…彼女も今や高校生になったが、クラウディアたちの好意もあって相変わらず隣で授業を教えている……

エンリカ「どれ、見せて……ふんふん、問題は「この時の主人公の気持ちを書きなさい」…ね」

提督(中)「…これでいいと思いますか?」

エンリカ「ごめん、ちょっと腕をどけて……あっ///」答案をのぞきこもうと身体を伸ばした瞬間に少しバランスを崩し、提督にもたれかかるような体勢になったエンリカ…

提督(中)「きゃっ…!」

エンリカ「ごめんね、大丈夫…?」

提督(中)「…私は大丈夫です。先生は?」

エンリカ「う、うん…私も平気……今どくからちょっと待って」(うわ…今まで数日おきに会っていたから気づかなかったけど、フランカったら凄く柔らかい///)

提督(中)「あの、先生……」

エンリカ「な、何かしら…フランカ///」

提督(中)「…どかなくても、いいです……んっ」

エンリカ「んっ…ん、ん、んちゅ……っ///」

提督(中)「…せんせい……///」

エンリカ「…し、しばらく休憩ね……ん、んちゅ……」

提督(中)「あふっ、んっ……先生」

エンリカ「なに、フランカ?」

提督(中)「私…エンリカ先生の事が好き…もっといっぱいキスしたい……♪」

エンリカ「…これでもし終わらなかったら、次回までの宿題にするからね……ん、ん、ん、んっ……んくっ…ちゅっ……ちゅるっ…んくっ、んぅっ……れろっ、ちゅるっ…///」

提督(中)「あふっ…ん、ん、んくっ…ちゅく、ちゅぽっ…んっ、んんっ……はぁ、はぁ、はぁ……んちゅっ、ちゅるっ…///」

エンリカ「…んちゅっ……はぁはぁ…ふぅ……ほら、休憩はおしまい///」(それにしても何て気持ちいいキス……これじゃあ年下の生徒なのに、丸っきりいいようにされてるじゃない///)

提督(中)「…エンリカ先生、大丈夫?」

エンリカ「大丈夫よ……それにしても、どこでこんなキスを覚えたの?」

提督(中)「えーと…誰にも言わない?」

エンリカ「言わないわ、先生の口が固いのは知っているでしょ?」

提督(中)「じゃあ……実は、お母さまとおばさまに教えてもらったの///」

エンリカ「うぇっ!?……え、映画とかじゃなくて?」

提督(中)「うん…お母さまは私が子供の頃から「いい、フランカ?…良い大人になるには教養が大事よ♪」って言ってて……」

エンリカ「…まぁ、それは大事よね」

提督(中)「それで私が子供の頃は「ピッツァの上手な食べ方」や「フォークとナイフの持ち方」とか…それで、最近は「相手の女の子が悦んでくれるようなキスは「好き」「愛している」って言う気持ちを込めたときにだけできるの♪」って……気持ちはいっぱい込めたけど、先生は……気持ち良くなってくれたかしら?」

エンリカ「えーと…ね、正直に言うと……」

提督(中)「…う、うん」

エンリカ「……とろけるみたいだったわ…ちゅっ、んちゅっ……///」

提督(中)「よかったぁ…ん、んふっ…んちゅっ///」

…さらに一年後…

エンリカ「それにしてもフランカが高校生ねぇ…正直、急にあなたが大きくなったような気がするわ」

提督(高校生の頃)「ふふっ、そんなおばあちゃんみたいなこと言って…せいぜい三つぐらいしか違わないんですよ?……ところで、宿題でもらって来たこの問題が分からなくて…教えてもらえますか?」

エンリカ「ええ、ちょっと待ってね……何これ、最近の子はこんな難しい問題をやってるの?」

提督(高)「いえ、学校の国語(イタリア語)の教科書はちょっと簡単なので……高三クラスの教科書です」

エンリカ「あー、進度によって授業ごとにクラス分けするアレか…ちょっと待ってね……」あごに手を当てて眉をひそめている…

提督(高)「…ねぇ、先生///」そっとふとももに手を置き、耳元でささやいた…

エンリカ「ちょっと…あなたが「宿題が分からないので手伝って下さい」って電話してきたから来てあげたのよ?」

提督(高)「ふふっ…だってエンリカ先生に会いたくって///」

エンリカ「いいけど、宿題が終わらなくて困るのは誰?」

提督(高)「大丈夫です、分からないのはそれだけですから……あ、それともう一問だけ」

エンリカ「ほらやっぱり…なに、どの問題?」

提督(高)「その…先生にキスしてもらうにはどうしたらいいのか分からなくて……模範解答を教えてくれませんか///」

エンリカ「そんなの簡単よ、今みたいにおねだりすればいいわ…ん、んちゅ……ちゅるっ、ちゅぷっ…」

提督(高)「んふっ、んぅ……ちゅるっ…あ、んっんっ…んはぁ……ちゅぅっ…///」

エンリカ「ん…んくっ……んちゅ……んんぅ、舌が…入って……んふっ、んくぅぅ…///」

提督(高)「エンリカ先生……脱がしますね……んちゅ、ぴちゅっ♪」

エンリカ「普段からクラウディアさんみたいなきれいな人を見慣れてるあなたからしたら、私のがりがりの身体は面白くないんじゃ……あっ、んんぅ…ひゃうっ///」

提督(高)「先生の…ちゅっ……身体は、お母さまたちとはまた違うけれど…ちゅぅ…すらっとしてて……綺麗です…んちゅっ…♪」はだけさせたブラウスからのぞくエンリカの肌に顔を近づけ、鎖骨、胸元、脇腹…とキスしていく…

エンリカ「んんぅ…フランカ、あなたこそしっとりして柔らか……ちゅぷっ…んぅっ///」提督のふとももに手を伸ばして下着をずり下げると、絵筆で出来たタコのある指でぎこちなくまさぐった…

提督(高)「んんぅ…エンリカ先生……手もひんやりしてて…んっ、んんっ♪」

エンリカ「…フランカこそ、温かくてとろっとしてる……んあぁぁっ///」

提督(高)「あ……先生はここが弱いんですね…んふふっ、すごい濡れちゃってます…よ♪」

エンリカ「そうなのっ…んぁぁっ、そこっ……んっ、あぁっ///」

提督(高)「それじゃあ…ふとももをのせて……こうして…」

エンリカ「あっあっあっ…それ、いいっ……あぁぁっ!」くちゅくちゅ…と水音を立てて、昼下がりの日差しが照らす床で重なり合う二人……と、急にドアがノックされた…

クラウディアの声「フランチェスカ。エンリカ先生……飲み物を持って来たけど、入っていいかしら?」

エンリカ「…っ!?」

提督(高)「ちょっと待って、お母さま…今問題を解いているところなの♪」…くちゅっ、にちゅっ♪

クラウディア「そう、それならもう少し後にしましょうか?」

提督(高)「ううん、もうすぐ終わるから……そこで待っていてくれる?」

エンリカ「…ちょっとフランカ……んぐぅ!?」何かを言おうと開きかけた口に舌を絡められ、同時に濡れた秘部にほっそりした指を入れられた…

提督(高)「しーっ…ばれないようにがんばろう、先生っ?」

エンリカ「ん、くぅぅ…んんっ……んんぅぅっ///」奥歯を食いしばって身体をひくひくさせるエンリカ…ふとももをつたって蜜がとろりと垂れている……

提督(高)「…んふふっ。もし「お母さまに見られちゃったら」と思ったらすごくどきどきして気持ち良かった……さ、早く服を直さないと♪」

クラウディア「フランカ、そろそろいいかしらぁ…?」

提督(高)「もうちょっと……はい、終わったわ♪」

クラウディア「それじゃあ入るわね…二人ともこんな暑い時間に勉強していたから冷たいものが欲しかったでしょう♪」

提督(高)「ええ。ありがとう、お母さま♪」

エンリカ「ふー、ふーっ…ありがとうございます……」

クラウディア「……フランカ」ふと床に目を留めると、グラスを渡すときにこっそり耳打ちした

提督(高)「…なぁに、お母さま?」

クラウディア「…エンリカ先生の下着、落ちてるわよ♪」すっかりお見通しのクラウディアは、ぱちりと小さなウィンクをしてみせた…

…夕食時…

アッテンドーロ「…って言うような話を聞かされたわ」…夕食に並んだピッツァ・マルゲリータを皿に載せ、さらに卵をたっぷり使った鹿肉のピカタを取る…さっぱりした赤ワインでニンニクの風味が効いた鹿肉を流し込む……

提督「あー…まぁそう言う感じではあったわ。ちなみにエンリカ先生は夢がかなってフィレンツェで芸術家になっているそうよ♪」…提督は薄い生地にチーズがとろりと溶けた、火傷しそうなマルゲリータをふーふーさせながらくるりと丸めて口に運んだ……それから夏場の常備菜になっている、バジルがほどよく使われた野菜の煮込みをたっぷりとよそい、唐辛子入りのオリーヴ油を少しかけた…

ライモン「あの、そう言う問題では…」

チェザーレ「はははっ、チェザーレもこれには参った♪」普段は威風堂々とした武人として提督を支えるチェザーレだが、女たらしで有名だったチェザーレらしく、意外に好色な所もある…今も提督の浮いた話を聞いて「分かっている」といった笑みを浮かべてみせた……

クラウディア「…ところでフランカ、あのつんとしたお嬢さんはどうしてるの?」

提督「どのお嬢さん…もしかしてマリーのこと?」

クラウディア「そうそう、前に一度だけ泊まりに来てくれたじゃない…フランス海軍のマリーちゃんよ♪」

提督「あぁ、マリーね…そう言えばまだ見せてなかったかしら」部屋に戻ると、数枚の写真と細長い箱を持って来た提督…

クラウディア「なぁに…それ?」

提督「この間の交流プログラムで「タラント第六」に来た提督たちの写真よ♪」

シルヴィア「へぇ、三人も来たのね…」

提督「ええ、来訪する提督たちは数の都合で前期と後期の二回に分けてあるのだけど……驚いたことに前期の提督は全員知り合いだったの。で、これがその時の写真♪」…写真には提督を始めミッチャー提督、百合姫提督、エクレール提督と鎮守府の艦娘たちがずらりと勢ぞろいしている…

クラウディア「あらまぁ、この黒髪のお嬢さんはとっても可愛らしいわ…あ、この金髪はマリーさんね♪」

シルヴィア「…こっちの褐色の人はアメリカの提督?」

提督「ええ。このグラマーな女性がアメリカのミッチャー准将…私がナポリにいた時から知り合いで「ジェーン」って呼んでいるわ♪」

クラウディア「それで、このお嬢さんは?」

提督「彼女が横須賀の百合姫提督。で、他の荷物にまぎれて忘れていたのだけど…お母さまたちに姫からのお土産♪」何やら金文字で漢字が印刷されている緑色の箱を渡した…

クラウディア「ねぇ、フランチェスカ…これ、なんて読むの?……シルヴィア、貴女ならわかる?」

シルヴィア「えーと、私も漢字はあんまり強くないけど…とりあえず「清酒」って書いてあるのは分かるわ。つまり日本のお酒ね」

提督「ええ、何でも鎮守府でしか買えないらしいの……えーと、もらったメモがどこかに…あぁ、あった」

クラウディア「開けてもいいかしら♪」

提督「お母さまたちへの贈り物なんだから好きにして?…えーと、このお酒は清酒「友鶴」っていうそうよ……口当たりはいいけどかなり度数が高いお酒だから「『友鶴』だけにひっくり返らないよう」注意してほしいって書いてあるわ」

シルヴィア「それじゃあ後でいただくとしましょう……ね、クラウディア?」

クラウディア「ええ、食後にちょっとずつね♪…あ、そう言えば」

提督「なに?」

クラウディア「この間、街の雑貨屋さんに売れ残った手持ち花火をもらったのだけど…よかったら後でしましょうか♪」

ライモン「わぁ、夜に花火なんてきっと綺麗です♪」

アッテンドーロ「へぇ、いいじゃない…ねぇ提督?」

提督「ええ、いいわよ。それじゃあ花火を楽しみながらワインでも傾けましょう」

クラウディア「それならいっそ、この「友鶴」を砂浜に埋めて冷やしましょう…ね、シルヴィア♪」

シルヴィア「クラウディアの好きなようにしていいわよ…それじゃあ後で浜に行きましょう」

提督「夜は意外と冷えるから、みんな羽織るものを忘れずにね?」

ライモン「はい♪」

チェザーレ「承知した」

アッテンドーロ「ええ、分かってるわ」

………

…夜・海岸…

提督「バケツの準備はいい?」

ライモン「はい、ここにあります…♪」残り火で火事になったり火傷をしたりしないよう用意したバケツを置くと、提督と手をつないで少し恥ずかしげな笑みを浮かべるライモン…

アッテンドーロ「さ、早くやりましょうよ」

クラウディア「ちょっと待ってね…チェザーレもどうぞ♪」

チェザーレ「うむ、かたじけない」

クラウディア「フランチェスカ、あなたにも…はい♪」

提督「ありがと、お母さま。…ライモン、一緒に火をつけましょう?」

ライモン「はいっ♪」

チェザーレ「ふふ、仲睦まじい光景であるな……どれどれ、チェザーレも一つやってみるかな」小さい打ちあげ花火と手持ちの花火が数種類入っていて、チェザーレのは火を付けるとシューッ…と紅い火が空に上っていった…

チェザーレ「おぉ、なかなか綺麗ではないか…♪」

ライモン「ふふ、こういう小さな花火もいいものですね…///」提督にくっつくようにして小さな手持ち花火を眺めている

提督「そうね。あら、ライモン…肩が冷えているわ……ほら」ゆるいガウンをふわりと肩にかけてやり、二人でくるむように羽織った

ライモン「…あ///」

アッテンドーロ「ふぅん…姉さんは提督と熱々のようだから、私は一杯いただくことにするわ……クラウディア、よかったら私にもくれないかしら」

クラウディア「はい、どうぞ♪…んー、このお酒、甘みがあって美味しい♪」

シルヴィア「あんまり飲み過ぎちゃだめよ」

クラウディア「ええ。でも…もし酔ったら抱っこして運んでくれる?」

シルヴィア「もちろん…」波が洗う砂浜に埋めておいた「友鶴」をきゅーっとあおり、ピックにさしたチーズや黒オリーヴ、刻んだタコと言ったおつまみをちびちびとつまんだ…


…しばらくして…

クラウディア「ふふふっ、楽しかったわねぇ…♪」

シルヴィア「クラウディアったら、少し酔っているみたいね……さ、約束通り運んであげるわ。フランチェスカ、悪いけれど後はお願い」クラウディアをお姫様抱っこし、慎重に小道を歩いていく…

アッテンドーロ「こうやって静かにやる花火もなかなかいいものだったわね…さてと、後はもう寝るだけ…と……ふぁぁ」花火のごみを持つとあくびをしながらシルヴィアに続いた

チェザーレ「ふむ、チェザーレはこれから入浴させてもらおう…それから髪の手入れを行わねば♪」

アッテンドーロ「うぇぇ…だとしたら数時間は化粧台の灯りが点きっぱなしね……」

チェザーレ「済まぬな、ムツィオ…しかし、最近はどうも髪の質が気になってな」

アッテンドーロ「別にどうもなってないわよ…するっと指が通るじゃない」

チェザーレ「そう言うな、これもチェザーレなりのたしなみなのだ……」

ライモン「…提督、それじゃあわたしたちも行きましょうか……少し名残惜しいですが///」

提督「ふふ、二人きりになれる機会はこれからもいっぱいあるわ…さぁ、行きましょう♪」優しく唇にキスをすると、そっと肩に手を回した…


…部屋に戻った提督はパジャマ姿のライモンを迎え入れ、化粧台の前に座らせたライモンの髪を優しく梳いてやりながら、穏やかな気分でおしゃべりを続けていた……が、急に額に手を当てるとあきれたような声を上げた…


提督「いけない…っ」

ライモン「どうかしましたか?」

提督「ええ、砂浜に置いておいた「友鶴」を忘れてきちゃったわ……ちょっと取りに行ってくるから、ここで待ってて?」

ライモン「でも、提督はもうナイトガウンですし…明日ではいけませんか?」

提督「あそこだと満ち潮になったら流されちゃうかもしれないし…姫が重いのにわざわざ持ってきてくれたお酒だもの、取って来るわ♪」

ライモン「足元に気を付けてくださいね…?」

提督「大丈夫、懐中電灯を持って行くわ♪」


…再び海岸…

提督「えーと、どこに置いたかしら…」懐中電灯を振りながら波打ち際を探す提督…と、黒く湿った砂の穴に半分埋めてある瓶を見つけた

提督「あー、こんなところに…ようやく見つけたわ……♪」ちゃぽちゃぽと瓶を振って量を確かめると、砂を軽く払ってから片手にぶら下げた…波打ち際に背を向け、家の方に戻ろうとする提督……と、音も立てずに二つのシルエットが海から上がってくると、そっと提督の背後に近寄った…

青白い姿「…」指を開いたり閉じたりしてハンドサインを送る青白い肌の娘…

白い姿「…」軽く頷く真っ白い肌の娘…胸元には白化したサンゴのような白っぽい首飾りが下がっている……

提督「さてと、それじゃあ戻るとしましょうか…ライモンも待っているでしょうし……っ!?」不意に腐りかけた海藻と潮の匂いが混じったような臭いが鼻をつき、気になって振り向こうとした提督…

白い肌の娘「…!」その瞬間に提督へとびかかり口元を押さえ、同時に昆布かイカのようにぬるぬるした腕で提督の首を締め上げる…

提督「ん、んっ…んんっ、んーっ!」長身の提督がもがいているにも関わらず、びくともしない白い肌の娘…

青白い肌の娘「…急げ」

白い肌の娘「…」ぎゅうぎゅうと首を締め上げ、じたばたと暴れる提督を押さえこむ…

提督「ん゛ーっ!…んっ、ん………」首にかけられた粘っこい筋肉質の腕を意識しながら必死で懐中電灯を振り回し、後ろの相手を引きはがそうとする提督…が、「きーん…」と甲高い音と同時に息が苦しくなり、とうとう視界が真っ暗になった……

青白い肌「…よし、撤収する」

白い肌「了解…」二人は提督を抱えたまま沖合のシルエットに向かって泳ぎだし、最後に「ちゃぽっ…」と水音を残して海に消えた…

…居間…

ライモン「それにしても、提督はずいぶん遅いですね……」

チェザーレ「ふぅー…入った、洗った、出た!」ほかほかと湯気を立てながらバスローブを羽織り、頭にタオルを巻いているチェザーレ…

ライモン「そんな、チェザーレじゃないんですから」

チェザーレ「いかにもチェザーレはチェザーレだが…それよりライモンドはどうしてここに?」

ライモン「えぇと、そう言う意味ではなく……実は、提督が忘れ物を取りに浜に行ってまだ戻ってこないんです。なので今から探しに行こうかと…」

チェザーレ「ほう?…よかったらチェザーレも同行するか?」

ライモン「いえ、わたしだけで平気だと思いますが……」

アッテンドーロ「二人ともどうしたのよ?」

チェザーレ「おや、ムツィオも来たのか…何でも提督が海岸に忘れ物を取りに行って、まだ戻らぬらしい」

アッテンドーロ「そうなの?じゃあ私が見て来るわ。…もしかしたら足でもくじいたのかも知れないし。姉さん、ルーチェ(灯り)を」

ライモン「持ってるわ…それじゃあチェザーレさん、ちょっと待っていて下さい」

チェザーレ「いや、チェザーレもついて行くとしよう…庭からも照らした方がよく見えるだろうからな」もう一つあった懐中電灯を取り上げ、入るかどうか試す…

ライモン「ありがとうございます」

チェザーレ「なに、構わぬよ…まぁ、提督の事だからな。きっと夜空に見惚れていたと言ったところであろう」

ライモン「ならいいですが…」

………

…海岸…

ライモン「…っ、ムツィオ!」

アッテンドーロ「ここにいるわ…これ、提督が持っていた懐中電灯なんでしょ?」

ライモン「うん、お酒の瓶も落ちてるし……それに何より」

チェザーレ「この生臭いような臭い…間違いあるまいな」

ライモン「あぁ、もう…わたしが一緒に行けば良かった……それにもっと早くにおかしいって気づけば…っ!」

チェザーレ「仕方あるまい…こんなことは前代未聞だからな。とにかく、付近を探すことにいたそう」

アッテンドーロ「探照灯でもあればいいんだけど…ねぇ、装具なしで艦を呼び出せると思う?」

ライモン「やってみなければ分かりません…とにかくあのバチあたりな深海棲艦に砲撃をお見舞いしてやります!」

チェザーレ「待て、ライモンド!提督ごと連中を撃沈する気か?…それより近隣の鎮守府に連絡を入れて、この辺りで不審な艦影を捉えていないか聞くのが先決だろう」

ライモン「ですが、このままでは最悪の事態すら…!」

チェザーレ「それはあるまい…もし提督を葬る気ならわざわざ連れて行ったりはせぬはずだ……とにかくクラウディアたちにも事情を説明して、それから対策を立てるのがよかろう」

ライモン「…了解……提督、無事でいてくださいね…」

シルヴィア「…フランカがさらわれた?」

チェザーレ「うむ…こちらも油断していたとはいえ、まさか海から上がって来るとは……」

クラウディア「それで……あの子は大丈夫なのかしら…」

チェザーレ「それについては何とも言いかねる…が、連中がどこの誰であろうとチェザーレは提督を助けるために全力をもってすることを約束いたそう」

シルヴィア「とりあえずはそれで十分よ…で、何か必要なものは?」

チェザーレ「まずは電話をお借りしたい。近隣の鎮守府に敵影を捉えていないか聞いて回るつもりなので…それに、場合によっては我が鎮守府の面々にも動いてもらうことになるやもしれんからな……」

ライモン「いえ、たとえ戦艦だろうと空母だろうとわたしが切り込んで海の底に送り返してやります!…提督、心配しないで下さいね。貴女のライモンが必ず助けに行きますから……」

アッテンドーロ「姉さん、少しは落ち着きなさいな…提督だって子供じゃないんだから、きっとうまい脱出の手段を考えているわよ」

ライモン「うぅ、それはそうですけど……」

シルヴィア「とにかく電話と…もし銃が必要なら好きなのを持って行きなさい」

チェザーレ「かたじけない…」


…一方・海中…

青白い肌の娘「こちら「トーベイ」…目標を確保、帰投する」…あちこちに白化したサンゴや牡蠣殻がくっついた幽霊船のような艦内で、通信用アンテナを伸ばして電文を発信する、戦時のイギリス潜「T」級第一グループの深海棲艦「トーベイ」……

白い肌の娘「こちら「タリスマン」……対象は気を失うも無傷、現在追撃なし」…同じく「T」級潜の深海棲艦「タリスマン」……胸に下げたタリスマンを片手でもてあそびながら、寝台に横たえた提督を眺めている……

トーベイ「これでキーズ大将もお喜びになることだろう…」感慨深げに腕組みをしつぶやくトーベイ…

タリスマン「ふふ…ロンメルほどの大物ではないにしろ、これならヴィクトリア・クロスも夢ではないな…それにしても、ムッソリーニの提督には女もいるのか……?」いぶかしげに眺めているタリスマン…


…カンピオーニ家・居間…

チェザーレ「あぁ、ドリアか…夏休み中だと言うのに済まぬ、実はな……」クラウディアの仕事部屋にある電話機を持ってきてもらい、事情を説明するチェザーレ…

チェザーレ「そうなのだ、おそらく連中にさらわれたらしい……何、出撃する?…出撃してどうするのだ、連中ごと提督を沈める気か?」

チェザーレ「さよう…もし皆がそれを聞いても動揺しないよう、ドリアには落ち着いてふるまってもらいたい」

チェザーレ「うむ、よろしく頼む」受話器を置くと、すぐ次の電話に取りかかった…

ライモン「チェザーレさん、わたしにも何かお手伝いをさせて下さい…何かしていないとわたし、心配で心配で…不安ばかり大きくなって……」

チェザーレ「承知した…ではライモンド、そなたは提督の携帯電話や手帳を見て、手を貸してくれそうな人を探してもらいたい」

アッテンドーロ「チェザーレ、私は?」

チェザーレ「ムツィオ、そなたはライモンドの見つけた人物のリストを作ってチェザーレに教えてくれ」

アッテンドーロ「了解…それなら姉さんのそばにいてやることも出来るわね」

チェザーレ「うむ…そうしてやってくれ」


………

…一応、本編を進める前に解説を入れておきます……かなりのスロウスタートで申し訳ないですが、引き続きがんばりますので…



英潜「T」級…イギリス海軍が1930年代に整備していた「O」「P」「R」級を更新するために計画した複殻式船体を持つ哨戒用潜水艦で、ロンドン条約のあおりを受けてサイズを縮めなければならなくなったが、その分隻数を増やし、無難で堅実な設計が幸いし、イギリス潜水艦隊の中核を担った……大戦中は改良を加え続け、隻数はグループ合わせて53隻にも上る


基準排水量は1090トン、主機はディーゼル2500馬力(水上)・電動機1450馬力(水中)で速度15.75ノット/9ノット。

兵装は21インチ(53.3センチ)魚雷発射管を10門(艦首6門、艦首水上発射口2門、司令塔脇の舷側水上発射口に2門)、司令塔前面張りだしに4インチ(10.2センチ)砲Mk12(MkⅩⅡ)1基、他にブリティッシュ.303口径(7.7ミリ)の機銃3基を装備…魚雷16本は二回分の斉射に足りないので継戦能力は低い代わりに、一回に十発を同時斉射できるので大型艦でも撃沈できる


…大戦中はその優れた実用性のおかげか本来の哨戒、攻撃以外にもイギリスらしい様々なコマンド作戦や「奇想天外なびっくり作戦」の母船として駆け回り、ノルウェーに潜んでいた戦艦「ティルピッツ」に対する小型潜水艦による特殊作戦「ソース作戦」では豆潜水艦「X艇」の曳航などに活躍した


…「T」級第一グループの「タリスマン」「トーベイ」も1941年11月17日(ゴムボートでの上陸自体はその数日前)、英軍の攻勢の前に「敵の指揮官を取り除き、ドイツ軍をパニックに陥れる」ためのコマンド作戦、リビアのイタリア植民村だった「ベダ・リットリア」に居を構えたロンメル将軍の司令部を襲撃する作戦で、隊員を輸送する任務を請け負った……が、「砂漠のキツネ」ロンメル将軍は数か月前に前線近くへ移動しており不在、同じくらい重要な補給部の幹部将校もいたがメンバーの早とちりや指揮官の負傷などでこれも襲撃に失敗……この作戦の立案者でもあったイギリス・コマンド作戦の計画責任者キーズ提督の息子も戦死と、作戦は完全な失敗に終わった…

(詳しい資料としては当事者に取材しているパウル・カレルの「砂漠のキツネ」がある)

…どこかの洞窟…

提督「むぅ…ん…」ずきずきする頭を抱え、うっすらと目を開けた提督…辺りは磯臭い湿った洞窟で、雫が滴るような岩が天井を形作り、湿っぽい粗末なマットレスを敷いた素っ気ないパイプベッドの上に寝かされていた……

タリスマン「おや、お目覚めか…」

提督「ええ。どうやらお客様としてお招きされたようね……招待状をもらっていたら、ちゃんとドレスを着てきたのだけど…」

タリスマン「冗談が言えるなら大丈夫だろう…私の後についてこい、陛下がPOW(捕虜)の話を聞きたいそうだからな」

提督「分かったわ…その前に化粧直しをさせてもらえる?」

タリスマン「髪をとかしたいならそこに櫛がある……言っておくがその櫛でどうこうできるほどこちらはひ弱ではないから、無駄な抵抗はするな」

提督「分かってるわ…まだ首が痛いもの……」どこかから流れ着きでもしたのか、柄が半分ほど折れているプラスチックの櫛で髪をとかす…鏡はないので仕方なく、岩のくぼみの水たまりで身づくろい出来たかを確かめる……

タリスマン「もういいだろう…」

提督「はいはい…全く、英国人はせっかちなのね……」提督は「深海棲艦由来」のねばねばした粘液が付いたナイトガウンを見おろして肩をすくめた…


…洞窟の廊下は意外と乾いた砂で出来ていて、所々に拾い物らしいランタンやランプが置いてある……時々行きかう深海棲艦はどれもセーラー服や英国風のドレススタイルに見えなくもない格好をしていて、色はいずれもイギリス地中海艦隊の迷彩にそっくりな、白っぽい地色に明るい灰白色と薄いグリーンの迷彩をしている…が、よく見ると地の色はすっかり白化したサンゴや波に洗われてしまった貝殻、灰色の部分は牡蠣殻やフジツボ、グリーンの部分はぬめぬめした藻類が張りついていて、まるで幽霊船に取り込まれ呪われた海賊たちのように見える……しばらくタリスマンに連れられて歩くと、急に天井の高い場所に出た…


タリスマン「陛下、例の捕虜を連れてきました」

女性の声「よろしい…トーベイ、タリスマン……ご苦労であったな」

提督「…」周囲にずらりと並んだ深海棲艦たちに多少緊張感を覚えつつも提督がじっと見つめると、広い空間の一番奥に岩棚が削れてできた玉座のような場所があり、そこに宝冠をかぶった深海棲艦が座っているのが見えた……と、その深海棲艦が座ったままラインダンスのように脚を上げると、ぬめっとした脚から何かを外した……

宝冠の深海棲艦「これをタリスマン、トーベイに与えよ…そなたらの働きに対する感謝の念であると…」お付きらしい深海棲艦にそれを渡し、そのお付きが二人に仰々しく授ける…

タリスマン「…身に余る光栄です、陛下」

トーベイ「これからも陛下と大英帝国のために、身命を尽くしてまいります…」

提督「…いったい何かしら……って、ガーターベルト…?」(もとよりガーター勲章はそう言う経緯で生まれたって言うけれど…ちょっと時代錯誤じゃないかしら)

深海棲艦たち「「ジョージ国王陛下、万歳!大英帝国に栄光あれ!」」

宝冠の深海棲艦「ありがとう、皆……ところで誰か、その捕虜を余の近くに連れてまいれ…話が聞きたい」

深海棲艦「さぁ、陛下の前へ…」大柄な深海棲艦に軽く腕をつかまれ、丁寧ながら否応なしに歩かされる……近くで見ると、岩でできた「玉座」には豪奢なクッションが置かれ、真っ白な深海棲艦の宝冠には綺麗な珊瑚珠(サンゴを磨いたもの…綺麗な紅や欧州で珍重されるピンク色がある)や真珠、小粒ながら見事なダイヤモンドがちりばめてある…

提督「………」冷たい目でじっと見られ、このままマストにでも吊るされるのかと思うとぞっとして、すくみあがりそうになる提督…

宝冠の深海棲艦「さて……」

提督「…ごくっ」

宝冠の深海棲艦「…まずは余の部下が手荒な真似をしたことをお詫びいたしましょう、カンピオーニ少将。…余はクィーン・エリザベスです」

提督「…その、女王陛下……そちらの招待の方法にはいささか驚きましたが…まだ無事でおりますから」

クィーン・エリザベス「…イタリアの提督に指揮能力があるかは存じませんが、少なくともユーモアのセンスがあるようですね」

提督「…お褒めいただき光栄です……それで、私のような一介の少将にどのようなご用でしょうか」

クィーン・エリザベス「あぁ…それはですね……」

………

乙々のんびり読んでる。(スロウスタート面白いよね)

>>59 グラツィエ。こちらも南イタリアらしく、ゆったりじっくりのーんびり…で進めていきます。あとは基本的にシリアスや無理やりなえっちはしません…

日々の疲れをほどよく癒してくれますね。えーかむの二人可愛いです……ちなみに「クラウディアお母さま」はえーこちゃんが大人になったようなふんわりした女性を想像してもらえるとだいたいイメージ通りです…


…しばしさらわれた提督の救出作戦が続きますが、特に命の危機にさらされたりはしませんのでご安心を……身体の方はともかくですが…


ちなみに節分なので豆を撒いて邪気を払いロールケーキで糖分を摂取したおかげか、いくつか百合小ネタを思いつきました…今後使う予定でいます

…深夜…

ライモン「チェザーレさん、次はこの方です…ナポリ第十二鎮守府……駆潜艇隊ですね」

チェザーレ「うむ、駆潜艇隊か…潜水艦相手ならちょうどいいではないか」

…武人の迫力と雄弁、それに持ち前の女たらしの能力をフルに活用して提督の手帳に載っている提督や司令、それに力を貸してくれそうな軍内の愛人やら恋人たちに片っ端から電話をかけるチェザーレ……交換手がいた頃の壁掛け電話よりずっと近代的なボタン式の電話を慣れない手つきでぎこちなく押しながら、少し息を整える…

チェザーレ「むむむ、まだ出ないか……」

チェザーレ「…もしもし、タラント第六のジュリオ・チェザーレですが…夜分遅くに申し訳ない……いかにも、司令はカンピオーニですが…」

チェザーレ「…いえ、実を言うと司令どのにちょっとした「個人的」頼みごとを…この数日、そちらの担当海域で深海側の潜水艦を捕捉あるいは探知したことは……」

チェザーレ「…確かにこんな時間ではなく昼間に電話を差し上げればよかったのでありましょうが、カンピオーニは年度末の戦果報告書を仕上げている最中で、差し戻しをうけてしまい…当方で損傷を与えた潜水艦がティレニア海方面に離脱したまでは分かっておるのですが、それが確認されないと戦果として公認できないと……ええ、いかにも…」

チェザーレ「…ちなみに、司令どのにカンピオーニから伝言もうけたまわっておりまして「ごめんね…でも、夜の方が貴女と近づけるような気がして♪」と……さようですか、この数日は潜水艦の艦影はなし……承知いたしました、そちらの愛の言葉はカンピオーニにも伝えておきますゆえ…では」

ライモン「どうでした?」

チェザーレ「駄目であった、しかし提督の腕前は大したものよ…いかにも眠そうで不機嫌な声が、「カンピオーニ」の名前を聞いた途端跳ね上がったぞ」

アッテンドーロ「で、あの愛の言葉は即興で?」

チェザーレ「いかにもチェザーレの即興よ…面倒をかける手前、何かくすぐったい言葉の一つもつけてやらんと……で、次は誰にかけるのだ?」

ライモン「あぁ、はい…次は……」

………

…一方・洞窟の大広間…

提督「…話を聞きたい、ですか?」

クィーン・エリザベスの深海棲艦「ええ…先ごろそちらの捕虜になっていたG級駆逐艦が帰投し、なかなか興味深い話を携えて参りましたので……ぜひ他にも色々とお聞きしたいと思いまして。それと、そちらではなかなか厚遇して下さったようで、そのお礼も…彼女をここへ」

G級の深海棲艦「…グッド・イヴニング、アドミラル」


…真っ白な身体に牡蠣殻の付いていない彼女は、以前の作戦で鎮守府の艦隊と交戦・大破しても救助を拒んで抵抗し、とどめを刺されて沈んだと思っていたイギリス・「G」級の深海棲艦……その場では艦と一緒に沈んだと思われた彼女は、ぬらぬらした海藻のような髪をチェザーレのスクリュー軸に巻きつけ鎮守府までこっそりついてくると、出迎えていた艦娘たちや提督に襲い掛かって暴れ回り、最後は歓迎のために鎮守府の重巡「ポーラ」が用意した「五十年もの」のシェリーの瓶で後頭部を一撃されてようやくノックアウトした…提督はその後数日間、G級を鎮守府の空き部屋で寝泊まりさせ、最後は衣服数枚を渡し、鎮守府の中型潜水艦「フィリッポ・コリドーニ」も防水加工した写真などを手土産に持たせ海に帰してあげた…


提督「こんばんは…それで、一体どのようなことをお聞きになりたいのでしょう……」

クィーン・エリザベス「ええ…G級から聞いたところによると今は大戦も終わっているとか……面白いおとぎ話ですから、ぜひ聞かせて欲しいのです」

提督「お、おとぎ話ですか…」

G級「…前に言ったでしょう、心にも厚く貝殻が付いているからまだ大戦が続いているつもりなのよ」

クィーン・エリザベス「ふふ…証拠さえあれば余も信じますよ?」

提督「えーと…少しお耳を拝借」…周囲で瞳をぎらつかせている深海棲艦たちを見て、うかつなことを聞こえるように話す訳にはいかないと顔を近寄せた……

クィーン・エリザベス「…それで、今は何年だとおっしゃったのかしら…燃料の乏しいイタリア王国海軍がまだ活動しているのですから、きっと1941年あたりでしょうね?」

提督「失礼ながら……年です」

クィーン・エリザベス「まぁ、ふふ…面白いことをおっしゃる……ですが証拠がありません」

提督「…私を見てどう思いますか」

クィーン・エリザベス「ふふ…白くて柔らかい女性ね、可愛らしいですよ……それが?」

提督「…大戦中は女性が提督になれましたか?」

クィーン・エリザベス「いいえ…ですが敵国の事は分かりません、そうでしょう?……それにあなたの名前も聞いたことがありますよ、カンピオーニ提督」

提督「あー…私は戦中のカンピオーニ提督とは縁もゆかりもないのです」

クィーン・エリザベス「そう言って取引に使われないようにしているのですね…なかなか殊勝な心がけです」

提督「むぅ…話がまるで通じないわ……」

クィーン・エリザベス「…それでは英国の話をなさってみたらいかが?それなら余も知っていることが大いにありましょうから」

提督「では、そうさせていただきます…えーと、英国は無事に戦勝国となりました」

クィーン・エリザベス(以下クィーン)「それは余も予見しております…いつでも英国は統治する(ルール・ブリタニカ)のですから」

提督「いえ…それが……」戦後のイギリスがたどった道をかいつまんで説明する提督…

クィーン「なるほど…」

提督「いかがでしょう、これでお分かりになられたでしょうか…」

クィーン「ふふ、なかなかうがった物の見方と優れた脚本でできた物語ですね…ですがジョージ国王陛下のもとにありながら、この大英帝国がそこまで衰微するはずがないではありませんか」…冷たい瞳をきらりとひらめかせ、口もとに形ばかりの笑みをうかべた

提督「いえ、先ほども申しあげたとおり、今はエリザベス女王の治世なのです……現に「クィーン・エリザベス」級という新型空母も建造されております」

クィーン「ふふ、余の気を引こうとそのような可愛らしい戯れ言を…構いませんよ、気持ちはありがたく受け取っておきます」

提督「むぅ…あ、そう言えば」G級を見て何かを思い出した提督…

G級「…私の顔を見てどうしたの、何かご用?」

提督「ええ。前回さよならしたときにコリドーニが写真を渡していたでしょう…あれを持ってきてもらえる?」

G級「別にいいけど……陛下、よろしいですか?」

クィーン「結構ですよ、今度はどんなお話を聞かせてくれるのか楽しみです」

G級「……持って来たわ…これで陛下の意見が変わるとはとても思えないけど」提督に向けてあざけるような冷笑を浮かべるG級…

提督「さぁ、どうかしら……クィーン、この写真を見てどう思いますか?」

クィーン「どう思うか、ですか……暖かい陽光に照らされて、貴女が笑顔を浮かべている…楽しげな写真ですね」

提督「こんなきれいなカラー写真や、水につけても濡れない写真の加工法が大戦中にありましたか?」

クィーン「そうですね…我が方にはありませんでしたが、もしかしたらあなた方の国にはそうした技法があるのかもしれませんね」

提督「…クィーンはなかなか頑固でいらっしゃいますね」

クィーン「頑固なのではなく、堅実なのです…余は自分で見聞きしたものしか信じないだけですよ」

提督「これでも駄目ですか……って///」

…艦名の由来がムッソリーニとも親交のあった右派のジャーナリスト・作家だけあって、鎮守府の新聞や書き物、紀念写真などを一手に取り仕切っている中型潜「フィリッポ・コリドーニ」…彼女がG級へ手土産として渡した写真にはコリドーニ言うところの「鎮守府の士気を高める商品」こと、提督があられもない姿になっている合成写真も入っていた……写真の提督は鎮守府の執務机の上に制服を脱ぎ散らかし、裸体をさらして気恥ずかしげな笑みを浮かべている…

クィーン「どうなさいました…失礼?」すっと指でつまんで写真を取りあげるクィーン…

提督「あっ…///」

クィーン「まぁ…なかなか刺激的ですね……ご自分で志願されたの?」

提督「いえ…その……///」

クィーン「勝手に作られたのですか…確かにそちらはそう言ったプロパガンダや写真の合成がお得意ですものね」イギリス人らしい皮肉をたっぷりきかせつつ、興味深げに写真を眺めている…

提督「その、クィーン…あまり見ないで下さい……鎮守府の娘がいたずらで作ったものなので///」

クィーン「さようですか……さて、もっとお話したいのはやまやまですが余は執務もありますし、とりあえず今日はここまでにしておきましょう……また明日、今度はお茶でもご一緒しながら楽しい物語を聞かせて下さいね…改バーミンガム、そなたとG級のあなたは彼女をお部屋にお連れしてあげなさい。…丁重に扱うのですよ?」

長身の深海棲艦「はい、陛下…さぁ、こちらへ」

G級「ほら、だから言ったでしょう……まぁいいわ、私も一緒について行ってあげる」

提督「ふぅ…まるで話の通じないおばあちゃんね」

G級「…このブラッディ・フール(大間抜け)!…ここでそういうことを言うなんてどういうつもりよ……私からもお願いするわ、今のは聞かなかったことにしてもらえる?」

軽巡「改バーミンガム」級の深海棲艦「…そうね、聞かなかったことにしてあげます……代わりに…」

G級「…あれを回せばいいんでしょう?」

改バーミンガム級「そう、それでいいわ…」青ざめた色をした「改バーミンガム」級の深海棲艦はやせた身体とアンバランスな長身をゆらゆらさせながら、片手で提督の腰を押して部屋まで案内した…

改バーミンガム級「それでは、何か必要なものがあったら声をかけるよう…それと陛下のお召しがあってもいいよう、なるべく身ぎれいにしておくように……では、グッド・ナイト(お休み)」

提督「…ええ、そうさせてもらうわ」湿っぽい部屋とじっとりと濡れたマットレスを見て、ため息をつく提督…

………

…数時間後…

提督「うぅ…ん……」寝心地の悪いベッドからマットレスを外し、直接砂の上に置いて寝ようと試みた提督……が、カビ臭いマットレスに湿っぽい岩屋のせいで、うなされるような夢ばかり見る…

………



アンドレア・ドリア「あんっ…もう、提督ったらくすぐったいです♪」

提督「うふふっ、いいじゃない……あら、おはよう。ライモン♪」鎮守府の提督寝室に据えてある天蓋付きベッドで、むちむちの戦艦「アンドレア・ドリア」といちゃいちゃしながら朝寝をしている…と、ベッドの脇にライモンが立っている……

ライモン?「おはようございます、提督…ドリアさんと朝から添い寝ですか……良かったらわたしも交ぜてくれませんか?」急にずるりとライモンの身体が崩れ、緑色に腐乱した腕が提督の頬を撫でる…

提督「えぇと…いえ、だって……ライモンのその身体も悪くはないと思うけど…抱いたら崩れてしまいそうで……」

アッテンドーロ?「ふふ、遠慮なんてしなくていいわ……ほら、わたしとも仲良くしましょうよ♪」反対側には青ざめてぬるぬるとした深海棲艦のような姿をして、手招きするムツィオ…

提督「え、ちょっと待って…あぁぁっ!」

………



提督「……えぇ…と、みんな揃ってどうしたの?」今度は白いマーメイド・スタイルのウェディングドレスに身を包んで白百合の花束を抱え、どういう訳か鎮守府の食堂に立っている……周囲に立っている艦娘や提督たちも全員ウェディングドレス姿で、それぞれ手を差し伸べている…

カヴール「うふふっ、今日は私と提督の結婚発表会見の日ではありませんか……すでに大統領と首相もいらしておりますよ♪」

ドリア「あら、カヴール…提督は私と結婚するんですよ?……何しろヴァチカンのサン・ピエトロ寺院の真ん中でえっちした仲ですし…///」

ライモン「お二人とも、今日はわたしと提督の結婚式ですよ?…見て下さい、全イタリア海軍の艦艇が白塗りになって……新婚旅行はどこにしましょうか♪」

アヴィエーレ(駆逐艦「ソルダティ」級)「ふふっ…悪いけど提督は「操縦士」の私が連れて行くよ……式は成層圏であげて、イタリア中に結婚報告のビラをばら撒こう」

エクレール提督「あら、フランチェスカはわたくしと結婚するんですのよ……結婚式の引き出物として、フランスからコート・ダジュールとコルシカ島を差し上げますわ♪」

百合姫提督「フランチェスカ、子供の出生届けに書く名前はどうすればいい?…やっぱり「雪風」がいいかしら?」

ミッチャー提督「あははっ、相変わらずモテモテだね…でも大丈夫、うちの大統領からマリーン・ワン(大統領専用ヘリ)とシールズの連中を借りてきたから……ここから「ゲッタウェイ」としゃれこむわよ♪」

提督「え、えぇと……」

足柄「…まさかうちの提督を袖にする気じゃないでしょうね?」

龍田「あらぁ…そんなことをしたら……うふふっ♪」まさに「抜けば玉散る氷の刃」…すらりと白鞘の日本刀を抜き放つ龍田……

………



提督「ひぃっ!……はぁ、はぁ、はぁ…」心臓をどきどきさせ、汗をびっしょりとかいて目を覚ました提督…海の匂いがする湿っぽい空気は相変わらずで、洞窟の中なので時間も分からない……と、やせこけて真っ白な肌をした深海棲艦がのしかかるようにして提督にまたがっている…

提督「ひぅ…っ!?」

深海棲艦「起きなさい、朝食の時間よ……しかも陛下が同席を求めているわ」

提督「あ、あぁ…そうだったのね……すぐ準備するわ」

深海棲艦「ん、それでいい…あまりお待たせしない事ね」

提督「ええ……うわ、なんだか身体がぬるぬるする…」昆布やめかぶのようなぬるぬるが全身にまとわりついていて、さらわれた時に着ていたナイトガウンがぐっちょりと張りついている……

深海棲艦「何をしているの…?」

提督「いえ…少しだけ向こうを向いていてもらえる?…身体を拭きたいから」

深海棲艦「それならシャワーでも浴びたらどう…あんまり時間をかけないなら連れて行くわ」

提督「シャワーがあるの?……それならお願いするわ」

深海棲艦「いいわ…ついていらっしゃい」

…洞窟の一角…

深海棲艦「さぁ、どうぞ」

提督「えーと…これ?」

深海棲艦「これが何か?…真水よ?」

提督「あー…そうね、海水じゃないだけでも贅沢よね……はぁ…」水が流れている岩の間に木箱が挟んであり、箱にはじょうろのハス口のような細かい穴があけてある…下に立ってかたわらにある紐を引くと、箱から冷たい水が降りかかる仕組みになっている……

提督「その…見ないでいてもらえると助かるのだけど……」

深海棲艦「…脱走しないよう監視せよとの命令を受けている」

提督「…分かったわ……よいしょ……」しゅるっ…

深海棲艦「…」

提督「あの…そんなにじっと眺めることもないでしょう///」

深海棲艦「…その身体は実に興味深いわ」…よく見ると何人かの深海棲艦が食い入るように提督を見つめている……

提督「…わ、冷たっ……」青白かったり蒼白だったりとどれも血色の悪い深海棲艦たちに見られながら冷たい水を浴び、ぶるぶるっと身を震わせる提督…

やせこけた深海棲艦「…先端のサクランボは桃色ね……くふふっ…」

青白い深海棲艦「…ふふ、マカロニの女は柔らかそうね…「アレ」を見た後だとなおの事興味深いわ……」

提督「…もう」身体を舐めまわすような視線を浴びつつそそくさとシャワーを浴びると、用意されていた着替えに袖を通す…

深海棲艦「準備できたわね…ついて来なさい」


…大広間…

クィーン「グ・モーニン……よく眠れました?」豪奢なドレス…あるいはそう見える外装に身を包み、ずらりとそろった深海棲艦たちにかしずかれている…

提督「寝具に着替えと、数々の親切痛み入ります…慣れないベッドでしたがどうにか眠れました……」あてがわれた席に腰かけ、目の前の皿を眺めた……どうやら最近沈没した客船から拾い上げたり、航行中の貨物船から分捕ったりしたものらしく傷んではいない…

クィーン「それは結構…普段はあまり空腹を感じないのですが、今朝は余も朝食の席をお付き合いしましょう」上品にスプーンを取り上げ、料理を口に運んだ…

提督「…あ、ありがとうございます……んむっ…」皿に載せられていた茶色の「何かを煮込んだもの」にスプーンを入れ、おそるおそる口に運ぶ…味は大豆のようだが、もはや形も残らないほどに煮えている……

提督「あー、その…喉ごしのいい食べ物ですね……」皿の上にぐしゃりと盛られている「豆のペースト」を眺め、どうにか失礼でない感想を探す…

クィーン「ふふ、イングリッシュ・ブレックファーストは美味しいでしょう」冗談なのか本気なのかも分からないポーカーフェイスで、口角だけかすかに吊り上げて微笑みらしいものを見せている…

提督「さ、さようですね…」小ぶりなボウルには白いお粥状のものが入っている…そーっとしゃくって慎重に食べる……

クィーン「オートミールはいかがですか?」

提督「え、ええ…」(甘くもしょっぱくもない……おまけに燕麦がごそごそする…)

大柄な深海棲艦「…美味しいでしょう?」

提督「ええ…まぁ……」

大柄な深海棲艦「これこそ我が英国海軍の力の源ですからね…捕虜とはいえ海の者同士で遠慮は無用、うんと食べなさい」ほとんど減っていない朝食のプレートへさらにおたま一杯分の泥土…のようなペーストを盛った…

提督「…」それだけでも十分げんなりしているところへ追い打ちをかけるように、大皿の脇には脂がギトギトで、しかも焦げてチリチリになっているベーコンが数枚と、火をくわえ過ぎてすっかり固くなっている卵二つ分の目玉焼きが載っている……

クィーン「…朝はあまり食が進みませんか?」

提督「……ええ、まぁ」パンも湿っぽい洞窟の中にあったせいか磯臭い臭いがする上にかなり焦げ、そこにこってりとバターが塗りたくってある…

大柄な深海棲艦「さぁさぁ、遠慮はいりませんよ?」

クィーン「…無理強いはいけませんよ、カウンティ級……」

「州」級重巡の深海棲艦「はっ。…申し訳ありません、陛下」

クィーン「分かればよいのです…ですが彼女の言うとおり、捕虜であっても遠慮はいりませんよ」

提督「は、はい…もう充分堪能いたしました」(…全く「イギリス料理らしさ」を充分に味わわせてもらったわ……下手な尋問よりよっぽど効果があるんじゃないかしら…)

クィーン「そうですか、なら食後のお話をしていただきましょう」

………

…昼食時…

提督「これも信じて頂けませんか…」

クィーン「ええ、証拠にはなりませんね」どうやら提督に議論を吹っ掛けるのを楽しんでいるらしいクィーン…と、そこにティーセットが運ばれてきた…

改バーミンガム級「陛下…お茶の時間です」

クィーン「おや、もうそんな時間ですか…よかったらご一緒にいかが?」

提督「はい、ありがとうございます」(イギリスのお茶は美味しいし、きっとこれなら…)

クィーン「さぁ、スコーンをどうぞ?」

提督「いただきます…んむ……んむ…」朝食よりはずっと美味しいスコーンではあったが、どういう訳か入っているドライフルーツにシナモンが効きすぎていて、提督の好みではなかった…痛みかけているらしく多少酸っぱいクローテッド・クリームをつけてどうにか口に入れる提督…

G級「給仕をします……どう、英国の味は?」小声で聞いてくるG級…

提督「世界で一番薄い本の題名が「英国の美味しい料理」なのがよく分かったわ……」

G級「さすが無知なイタ公ね。衛生って言うものを知らないのかしら?…生焼けや生煮えは食中毒の危険があるからよくないのよ?」

提督「…だからって焦げるまで焼く必要はないでしょう?」

G級「ふん、まぁいいわ…しばらくはごちそうを出すんだからクィーンに感謝して欲しいわね」

提督「ごちそうねぇ……何だか不安でしかないわ…」

改バーミンガム級「…ところで、紅茶の味はいかがですか?」

提督「ええ、美味しいです…ダージリンですね?」

改バーミンガム級「いかにも。勝利の味とダージリンの香り……まさに紳士の特権ですからね」真っ白な髪をいじくりつつ、ちょっと高慢な表情を浮かべた…

提督「なるほど…ごちそうにあずかり感謝しています」そう言って湿っぽいきゅうりのサンドウィッチをぱくついた…海水のせいで今一つの食感になっているが、味の方はほどほどに塩気が効いている…

クィーン「ふふ、朝はあまり食べられなかったようですからティータイムがあってよかったでしょう…ですがせっかく来ていただいたのですから、伝統あるイギリスの晩餐に期待していて下さいね?」

提督「ええ、楽しみです……はぁ…」


………

…夕食時…

提督「…見事な装飾ですね」

クィーン「お気に召しました?」


…大広間にはしまってあったらしい銀の燭台や拾い物らしいキャンプ用のランタン、古い木箱を薪に使った暖炉の火が揺らめいて、そこに白や灰色、淡い緑色の地中海仕様の迷彩になった服(甲殻?)をまとった深海棲艦たちがずらりと居並んでいる……クィーンの脇にはもう一人、昼には見かけなかった大柄で高貴そうな深海棲艦が座り、じっと提督を眺めている……岩壁には「ホワイト・エンサイン」(イギリス海軍旗)が掲げられ、きらきらと銀の食器が火に照らされて輝いている…


クィーン「…さぁ、どうぞ」

提督「感謝します……」どこかから手に入れてきたらしい古めかしい白いドレスを着せられ、多少カビ臭い白手袋をつけている提督…食卓につくと目の前に埃をかぶったワインの瓶が置かれ、切子細工のワイングラスに注がれると、年代ものらしい見事な紅色をしたワインが香りを放った…

クィーン「それでは、わが方の勇敢なる「T」級潜水艦、「トーベイ」「タリスマン」がお連れしたイタリア王国海軍のアドミラル…カンピオーニ少将に乾杯いたしましょう……彼女は燃料不足の中、劣勢のイタリア艦隊をもってよく戦いました…今や囚われの身となりましたが、その戦いぶりに惜しみない称賛を与えようではありませんか…それでは、乾杯♪」

深海棲艦たち「「乾杯…!」」

提督「…感謝いたします、クィーン」

クィーン「いいえ。破れた敵とはいえ敬意を表すべきところには称賛を惜しまない…それがロイアル・ネイビー(英国海軍)のやり方ですので……さぁ、うんと召し上がれ」給仕係らしい駆逐艦クラスの深海棲艦が次々と皿の蓋を開ける…

提督「………」深海棲艦の提供するイギリス料理とはいえ、「ごちそう」と聞いて多少は期待していた提督…が、目の前にある料理は見た目からしてかなり衝撃的だった……

提督「これは…その……」

クィーン「イール(ウナギ)のゼリー寄せですね…お取りしましょうか?」灰色のぶるぶるしたゼラチンの塊の中に、ぶつ切りのウナギが散らばっている…

提督「いえ…別のものにさせていただきます……これは…」やはり灰色で、ふくれた風船のようなものを凝視している……

軽巡らしい深海棲艦「こいつはハギスだ…スコッツ(スコットランド人)がよだれをたらす料理さ……食うか?」…牛の胃袋に細切れの臓物やひき肉を詰めて茹でた料理…と聞いていた提督は現物を見てさらに食欲をなくした……隣には固いパンかタルトの底だけを焼いたような「ヨークシャー・プディング」が山ほど置いてある…

クィーン「何か取って差し上げましょうか…?」

提督「え、えぇと……」



…今日はここまでで、しばらくは提督がイギリスの「ごちそう」に悪戦苦闘する予定です…食べたことがないのにイギリス料理を悪くえがいてしまい申し訳ないですが、深海側の調理が悪かったとか、美食に慣れた提督からの主観が入っていると言うことで……


…あと訂正を一つ…(どうでもいいかもしれませんが)ハギスは牛ではなく羊の胃袋に詰めるものらしいです……どちらにせよ美味しそうには見えないですが…他には「まずい」カレーやローストビーフが提督に出されるイギリス料理の候補になっています、ご期待ください…

軽巡「カヴェンディッシュ」級(改バーミンガム級)「ならローストビーフは…?」

提督「ええ、では数枚下さい…」(ローストビーフなら不味いなんてことはないはず…)

カヴェンディッシュ級「…どうぞ」

提督「センキュー…あむっ……」

カウンティ(州)級重巡「で…どうだ?」

提督「…ごくん……美味しいですよ」(お洒落なソースも飾りもなし、おまけにすっかり脂が抜けきってパサパサだけど…他の物よりはまぁ美味しいわね…)

カウンティ級「そうかそうか…もっと彼女にローストビーフを!」

提督「あ、いえ…」

カウンティ級「なに、遠慮はするな…さようですな、陛下?」

クィーン「いかにも…さ、ワインを注いであげなさい……それともスコッチ・ウィスキーにしますか?」…と、別の席で騒ぎ声が上がる……

見た目の整った深海棲艦「ふざけないでよ、アイルランドの酒がないじゃない!」

同クラスらしい深海棲艦「落ち着きなさい、ベルファスト…ギネスの黒ビールがあるでしょう」

軽巡「ベルファスト」の深海棲艦「ん、ならよし…うぃ……ひっく」適当にハープを奏でつつ詩を口ずさみ、時折周囲の深海棲艦に絡んでいる…

軽巡「エディンバラ」の深海棲艦「やれやれ…」

提督「…」

クィーン「お見苦しい所をご覧に入れてしまいましたね……さ、もう一杯いかがですか」

提督「感謝します…」


…しばらくして…

駆逐艦「チーズをどうぞ…」

提督「ありがとう…ふぅ、何だか暑くなってきたわね……」

…食べ物がどれも絶望的な中でワインとウィスキーだけは上等だったことと、クィーンの杯を断ったらどうなるか分からないこともあって、ついグラスを重ねてしまった提督…晩餐も終わりに近づき、見た目も固さも薬用せっけんそっくりなレッドチェダー・チーズを食べる頃にはかなり量を過ごしていた…

カウンティ級「ふふふっ、貴官はロンドン橋を見たことがあるまい…ビッグ・ベンの鐘の音も!」わめいているのはどうやら重巡「カウンティ」クラスの一グループ「ロンドン」級のネームシップ「ロンドン」のようで、しきりに自慢話を聞かせてくる…

提督「…そうですか。でもロンドンがいかに素晴らしくとも、ローマほど古く美しい都市はありませんよ……何しろイギリスが未開の原野だったころからありますし♪」酔いが回っているせいか、つい切り返してしまう…

ロンドン「…ぐっ」

ベルファスト「ははっ♪…そうだ、いまいましいイングランドの街なんぞアイルランドにはかなうまい……!」

ロンドン「何を…アイリッシュのくせに」

ベルファスト「それのどこがいけないって言うんだい、少なくともここには熱いアイリッシュの魂があるのさ…装甲もペラペラの「重巡」とは訳が違うのよ」

ロンドン級「なにやら…失礼な軽巡ね」

ベルファスト「へぇぇ、ならどうする?」

ロンドン「…余人は手を出すな、さしでケリをつけてやるから……さぁ、どうした?」

G級「あーあ…またイングランドとそれ以外の喧嘩が始まった……酒が入るとすぐこれなのよね…」

提督「ねぇ…そう言えばデザートは何かしら♪」

ベルファスト「え?」

ロンドン「えぇと、そうだな…きっとパウンドケーキだろうが……いったい何が用意されているのか、アドミラルにお答えせよ」

駆逐艦「はっ…パウンドケーキかジャム入りプディングです」

ロンドン「よろしい…ではアドミラル・カンピオーニに持ってくるように」

提督「…良かったら一緒にいかがですか」

ロンドン「あ、あぁ…ではご一緒しようか」

ベルファスト「ふんっ…イングランドのくだらないケーキなんぞ欲しくないわ……アイリッシュ・ウィスキーを持ってきなさい!」

クィーン「…では、余も一切れいただきましょう」

………


…食後・廊下…

クィーン「先ほどは場をしずめて頂いて感謝しております…」

提督「いえ…私も巻き込まれるのは遠慮したいところでしたから」

クィーン「ふふふ…さてと、それでは食後にまたお話を聞かせてもらいましょうか……大広間は彼女たちが飲んでいますから、別の場所で」…そばに控えている軽巡「カヴェンディッシュ」級と一緒に階段を上るクィーンと提督…

提督「はい……っと…」ドレスの裾で足が隠れているせいか目算を誤り、石の段差にけつまずいてクィーンに腕を押さえてもらった提督…ぬるりとした氷のように冷たい手が腕をつかみ、思わず背筋に寒気が走る…

クィーン「…貴女はずいぶんと熱いのですね…まるで焼けてしまいそうなぐらい……」

提督「ええ、イタリアの女は情熱的なのです…」ぞっとするほど感情のないクィーンの目を見て、慌てて冗談めかしたウィンクを投げる提督

クィーン「ふふ…さ、どうぞお入りなさい……下がってよろしい」

カヴェンディッシュ級「…では失礼します、陛下」


…クィーンの部屋…

クィーン「…いかがですか、余の部屋は」

提督「ええ…大変豪華なお部屋でいらっしゃいます」…映画の幽霊船のようにホコリにまみれクモの巣が張っている部屋を想像していた提督だったが、岩をくりぬいたような部屋には立派な執務机、金の六分儀に宝石を散らしたサーベル、それにふっくらと柔らかそうな布団が敷いてある天蓋付きベッドが鎮座していた…

クィーン「さようですか…さてと、それではお話を聞かせてもらいましょう……」灰色のマントを椅子にかけ、白骨のように真っ白な笏と宝石をちりばめたティアラ(宝冠)を所定の場所らしい台の上に置いた…

提督「えぇ…と、どのような話がよろしいですか?」

クィーン「何でも構いませんよ…イタリア王国海軍、地中海の暮らし……貴女のいる司令部の話でも…いずれにせよ、余が信じるにはそれなりの証拠が必要ですが」

提督「ふぅ…ここに連れて来られてからと言うもの、そうしたことは毎日のように説明している気がするのですが……とはいえ私も身体一つで来てしまったので、何か証拠になりそうな物を示すことが出来ないのがもどかしいです…」

クィーン「さようですか…ところで、この写真ですが……」提督があられもない姿になっている合成写真を卓上から取り上げた…

提督「…うわ///」

クィーン「…帰投してきた折にG級から、そなたの艦隊にいる「艦娘」とやらの話を聞きました……どうやら余、あるいは余の部下たちと同じように娘の姿をしていながら、そなたと夜も共にしているとか…どうも聞き違いでもなさそうですが、説明してもらえますか?」

提督「説明…と、言いますと?」

クィーン「つまり…それは指揮官に対する「信頼」と言う意味なのですか?」

提督「ええ、まぁ…それもあります///」

クィーン「それで寝床を共にする…あるいは情を交わす……どうも理解できかねます…」

提督「えぇと…それはつまり……」

…言い回しの難解なイギリス英語と、提督の言うことを信じようとしないクィーンの頑固な態度…まずい食事のせいもあってワインや高級なウィスキー、ブランディと言ったお酒を飲みすぎた提督は、クィーンの取り澄ましている貴族的な様子にいい加減飽き飽きしてカーッとなっていた…

クィーン「…つまり、どういうことですか?」

提督「つまり……こういうことです…っ!」

クィーン「…んむっ!?」

提督「んっ、んんっ…ぷはっ……分かって頂けましたか?」クィーンの青ざめた冷たい唇に自分の唇を重ね、キスを済ませると手の甲で唇を拭った…

クィーン「…なるほど…確かに余の時代にこんなことは滅多にありませんでした……」

提督「…やっと信じてもらえましたか」

クィーン「ええ…それにしてもなかなか大胆ですね……捕虜が敵国のクィーンたる余の唇を奪うとは」かすかに笑みを浮かべて見せるクィーン…

提督「ここまでしないと信じて下さらないのですから…仕方ありません」

クィーン「…とはいえ、貴女は捕虜の身でありながら余の唇を奪ったのです……それ相応の罰を与えねばなりませんね」

提督「あっ…」(罰ね……きっとマストに吊るしたりするつもりなのね…ごめんなさい、ライモン…もう会えないかもしれないわ……)

クィーン「では、刑を申し渡します……もう一度口づけしてみて下さい。どういうものなのか一瞬では理解できかねましたので」

提督「…え?」

クィーン「聞こえませんでしたか?」

提督「いえ、よく聞こえましたが……本気で…?」

クィーン「余に二度も繰り返させるつもりなのですか、アドミラル?…イタリア人は色恋の戦術には優れていると聞きますが、それも敵国向けの宣伝ですか?」

提督「…いいえ、イタリア人は恋も海戦も一流です♪」ちゅっ、ちゅぅっ…♪

…しばらくして…

クィーン「ん…んちゅぅ……ちゅぅぅ…ん///」蒼白な舌から唾液を垂らし、さっきまでの冷たい表情も崩れて目をとろんとさせている…

提督「はぁ、はぁ……どう、なかなか気持ちいいものでしょう…?」(味は…痛みかけた貝類みたい……さっきのイギリス料理といい勝負ね…)

クィーン「いいえ…今が大戦中でない事は信じてもよろしいですが、余が捕虜の小娘ごときにいいようにされるようでは艦隊に示しがつきませんので……そちらこそあきらめて「お得意の」降伏をなさったらいかが?」

提督「あら、そうですか……それなら私も女としての意地をかけて、クィーンがはしたなく喘ぐまでやってあげます…っ♪」

…カビたシルク生地が傷んでいて、あちこちに擦れもある古いドレスの胸元を引っつかむと力いっぱい引き裂く提督…ビリッ…ビビィィ…ッ……と音を立てて生地が破れると、「たゆん…っ♪」と白いもっちりした乳房が弾んだ…

クィーン「…何をなさるつもり……?」

提督「…私の愛がこもった乳房に包まれたら、その皮肉で冷たい態度もどうにかなるかと思いまして…っ!」むにっ…♪

クィーン「んぷっ…んむっ、むぅ……」提督の谷間に顔を埋めさせられ、後頭部を押さえられているクィーン…

提督「はぁぁ…お酒のせいで身体が火照っていたのだけど、冷たい顔が当たって気持ちいいわ……それで、私の谷間はいかが?」

クィーン「…んぅ……むぅ…っ!」頭を押さえつけていた提督の手を振り切り、提督をじっと凝視する…

提督「…で、ご感想は?」

クィーン「……がした」

提督「んっ?」

クィーン「…あ、アップルティーのような甘い香りがしました……余が忘れていた感覚を思い起こさせるような…///」

提督「そう…よかった♪」

クィーン「よくありません…こんな気持ちは国王陛下に仕える者には不要…むしろ判断を鈍らせ、雑念を招きます……こんな感情は一体どうすればよいと言うのです…///」ふいっ…と提督から目をそむけた途端、卓上に置いてあった提督の合成写真が視界に入り、また視線を動かした…

提督「んー…それなら一度、思い切り発散してみたらいかがですか?」

クィーン「そしてそれを「艦隊中に知られてしまえ」と…?」

提督「うふふっ……でしたら私とならいかが?」

クィーン「……物好きにもほどがあるようですが」

提督「いいえ…えっちの事になると急におどおどしているクィーンを見るの……結構愉しいですから♪」

クィーン「…余をおもちゃにしようと言うか……面白い。海戦であろうと夜伽であろうと余は「クィーン・エリザベス」…小娘、そこまで言うならイタリア女らしく余を愉しませてくれるのでしょうね…?」固いコルセットのようになっているドレス、あるいは「殻」を脱ぐと、ぬるりと粘っこい糸を引いた真っ白な身体が出てくる…

提督「…ええ、きっとクィーンがアレクサンドリアでなったように、腰が砕けてベッドに着底することでしょう♪」

クィーン「あとでその言葉を思い出させてあげましょう…!」提督を引きずり、布団に押し倒すクィーン…

………

…数時間後…

クィーン「あふっ、ひぐっ……こんな………はぁぁぁっ…」ギシッ…キシィ……ギィ…

提督「ふふっ……クィーンの指ったら冷たくって、私の花芯もきゅうきゅう疼きました…♪」クィーンの身体をすみずみまでこねくり回し、ぬらぬらした身体をいじくり倒す提督…傷んでいるベッドをきしませながら、甘ったるい笑みを浮かべてクィーンにまたがっている…

クィーン「余は…余はクィーン・エリザベスです……レナウンたちに見つかったら、あなたは八つ裂きにされてもおかしくないのですよ?」

提督「あー…クィーンの隣に座っていた深海棲艦は「レナウン」でしたか…「アーク・ロイヤル」はいました?」

クィーン「余の右側にいた背の高い…んんっ、余の話している時に……」

提督「ふふ…だってクィーンの胸が話すたびにふるふる揺れて……先端は青っぽいのね♪」いたずらっぽい笑みを浮かべ、固い先端を指でピンッ…と弾く提督

クィーン「んんっ…どうして……余がこんな、マカロニの提督ごときに…///」

提督「うふふっ…イギリス海軍はいつも不意打ちには弱いようですから……ね、クィーン♪」にちゅっ…ぐちゅ、ぐちゅ…っ…♪

クィーン「あっ…あ゛あ゛ぁぁっ!」

提督「んふふっ、ほら…腰が砕けてベッドに着底するって言ったでしょう♪」

クィーン「んはぁ、はぁ、はぁ、はぁ…ふぅ、はぁ……」

………

…しばらくして…

クィーン「…余も明日の執務があります。そろそろ部屋に戻りなさい…それと、このことは口外しない事……よろしいですね?」

提督「はい、クィーン…それと、こちらの約束もお忘れなく♪」ぱちりとウィンクをして、びりびりに破いたドレスを取り繕いながら着る提督…

クィーン「余は約束したことは守ります…さぁ、行きなさい」

提督「ええ、それでは…グッドナイト♪」

…廊下…

カヴェンディッシュ級「……部屋に戻るのだな?」

提督「ええ…♪」

カヴェンディッシュ級「…それで」

提督「なぁに?」

カヴェンディッシュ級「……その、陛下があんなになるとは…「情を交わす」とはそんなにいいものなのか…」(陛下があんな獣のような声を…それに何ともみだらな光景だった……)

提督「もう…「下がれ」って言われていたはずでしょう?それなのにのぞいていたの?」

カヴェンディッシュ級「バカを言うな。ただ、陛下のただならぬお声が廊下に聞こえてきて……それで、陛下の身を案じて…」

提督「非力な人間の提督が深海棲艦のあなたたちにかなう訳ないじゃない…それなのにのぞくなんて」

カヴェンディッシュ級「し、仕方あるまい…軽巡は索敵が任務の一つなのだ……」

提督「…キスだけでよかったら」

カヴェンディッシュ級「なに?」

提督「私も疲れたし…キスだけでよかったら、してみる……?」

カヴェンディッシュ級「……では」

提督「了解、それじゃあ…んっ…んっ、んっ……んちゅっ///」

カヴェンディッシュ級「んんっ!?……ん、んんぅ…んはぁ」

提督「どうだった…?」

カヴェンディッシュ級「…お、おかしい……私は地中海艦隊の一隻として、それに「エリザベサン」級ともされるこの級名に恥じぬよう陛下にお仕えし、大英帝国の勝利の日まで任を全うすることこそが本義のはず……なのに…」

提督「愛は任務なんかよりもずっと大事よ?…それじゃあ、着替えて寝るから……ドレスは片づけてもらえる?」

カヴェンディッシュ級「ああ、承知した…」(…今までこの女が着ていたドレスか……)

………

…翌朝?…

提督「うぅ…ん…」妙に肌寒い気がした提督は眠気にあらがって薄眼を開けた…と、なぜか寝巻き代わりに渡されたはずのキャミソールと湿ったブランケットが引きはがされている……その上、数人の深海棲艦が周囲を取り囲むようにして立ち、提督の裸体を食い入るように見つめている…

提督「…え!?」慌てて跳ね起きると毛布で身体を隠した…

駆逐艦クラス「!?」

軽巡クラス「…!」

提督「…ちょっと、どういうつもりなの?」

軽巡「ふん、少しイタ公の身体を眺めてみたくなったのだ…安心しろ、別に取って食ったりはしない……」

提督「ねぇ…もしかしてこの間私の身体がねとねとだったのもそういう訳なの?」立ち上がると腰に手を当てて問い詰めた…

軽巡「…捕虜に答えてやる義務はない」

提督「私とクィーンでお話しする機会はまだまだありそうだけど…今度は何を話題にしようかしら♪」

軽巡「あ、あれは私ではない…駆逐艦の数隻が……だいたい、あの宣伝写真のせいなのだから、そちらにも責任の一端はあるのだ…」

提督「え…あれをみんなで見たの……?」

軽巡「ウェ…ル(えーと…)」

駆逐艦「まぁね…出撃がない時は手持無沙汰だし、ここの酒保には大して買えるものもないから……触ったりした連中はいたってことよ…」

提督「あー、もう…信じられないわ///」

…朝食…

提督「それはそうと…」周囲にそっと視線を走らせる…



…連れてこられた時は敵意を持った視線や「マカロニの捕虜」に対する冷笑をひしひしと感じていた提督…が、この数日は深海棲艦同士で回して見たらしい「例の写真」やクィーンとの「交流」があったせいか、食卓に並んでいる深海棲艦たちの視線が心なしか欲情したような、どこかぎらぎらしたものに変わっている……時折胸やふとももに向けられた視線を感じて、別な意味で危険を感じている提督……


G級「…なにか?」

提督「…いえ」あきらめて食卓に視線を戻す提督…相変わらず縁がチリチリになったハムと、ゴムそこのけに固くなった卵で出来たハムエッグス……そこについている焼きすぎのトーストに煮込みすぎて形もないベイクドビーンズ……おまけに卓上には黒い樹脂のようなものが鎮座している…

ケント級「…あむっ…むしゃむしゃ……」あまり空腹を感じないらしい深海棲艦たちは数日に一度の食事で済むらしく、今朝は三人の重巡「カウンティ」級とC級軽巡グループでも「ケープタウン」級に属する「カイロ」、パース級軽巡「シドニー」、大型の駆逐艦「トライバル」級が数人座っている…

軽巡シドニー「カイロ、それを取ってくんなよ」

C級軽巡「どうぞ」

シドニー「おーし、やっぱり『ベジマイト』がないと始まらないってもんよ…ずずずぅ…」マナーもへったくれもない様子で片脚を上げたまま「ベジマイト」を塗りたくったパンをがつがつと胃に放り込み、イギリス海軍伝統のホットココアで流し込む…

(※ベジマイト…野菜と酵母を発酵させて作るオーストラリア特産のスプレッド。ビタミンが多いらしいが味は「オーストラリア人専用」とのこと……)

提督「………」

G級「…早く食べないと冷めるわよ、アドミラル?」

提督「…ええ」


………

…昼食…

クィーン「今日はインド風昼食ですか、カイロ…見ているだけで「タージ・マハール」が目に浮かぶようです」

カイロ「ありがたきお言葉…どうですか、本場で仕込んでイギリス風にアレンジしたカリーは美味しいでしょう…」

提督「え、ええ……」辛さも今一つで水っぽく、風味もピンとこない不味いカレーを前にげんなりしている提督…仕方なしに濃いストレートティーを飲みながら黙々と食べる…

デリー(D級軽巡)「美味しい、これこそ故郷の味ね…」

クィーン「ふぅ…美味でしたよ、カイロ」

カイロ「恐縮です、陛下…」

………

…夕食…

ロンドン「…さて、我々の捕虜とはいえせっかくの機会ですから…アドミラルには世界の中心地、ロンドンの味を食べてもらわないと」

提督「…」目の前にドシンと置かれた大皿には、種類も選ばずぶつ切りにして焦げそうなほどガリガリに揚げた数種類の魚と、油っぽいポテトフライが載っている…

提督「えーと…これは「フィッシュ・アンド・チップス」でいいのかしら?」

ロンドン「いかにも…高尚な食べ物ではないが、ホワイトホール(イギリス海軍省)に行くまでの小腹ふさぎにと、若手の士官たちもつまんでいたものよ」

提督「…い、いただきます」ひくひくと口もとを引きつらせながら、魚のフライに取りかかる…

ロンドン「どうだ、ロンドンっ子の力の源は?」

提督「…あの、この魚ってウナギ?」ぶつ切りにされたウナギをぬめりも取らずに衣をつけ、すっかり固くなるまで揚げてある……

ロンドン「知らん。とにかく魚を揚げればいいのだからな」

提督「……ちょっといいかしら」

G級「何?」

提督「ここにも厨房とか食料庫はあるのよね?…明日必ずそこに連れて行きなさい。いいわね?」

G級「わ、分かったわよ…ずいぶんな剣幕だこと……」

提督「…ごちそうさまでした、もういいわ……」

ロンドン「そうか、なら私が……んぐ…何だこの魚は、えらくマズイな……」

提督「あー…きっとそう言う魚なんでしょうね…」(…ウナギを「フィッシュ・アンド・チップス」に使うからでしょうが…やっぱりイギリスの深海棲艦はセンスもイギリス流なのね…きっと永遠に分かり合えないわ……)

………

…翌日…

提督「それじゃあ昨日言った通り、厨房に案内してもらうわね」

G級「全く、捕虜のくせにいちいち面倒な事を……せっかくクィーンが許可してくれたのだから、脱走を試みたりしないことね…」

提督「はいはい…どのみち出口の場所も知らないのに脱走も何もないわ」肩をすくめて案内されるままに廊下を進む提督…

G級「ほら、ここよ…」

提督「えーと…なにこれ……」

G級「厨房よ。私たちはそんなにお腹もへらないし、これだけあれば充分なの…」


…洞窟の一角にある「厨房」の天井には煙突のような空気穴が抜けていて、提督の目の前で数人が何かを作っている……が、置いてある厨房用具は岩の張りだしの上に置いてあるまな板らしい板切れとナイフ数本、明らかに拾い物のアルミ鍋とフライパンがいくつか…水道代わりにちょろちょろと流れている水をためている隅っこのドラム缶、それに海岸から流れてきた…あるいは捨てられたものを拾ったかしたキャンプ用のグリル台と、暖炉のような直火の調理台だけしかない…


提督「…」

G級「で…ご感想は?」

提督「とりあえず使える道具の種類は分かったわ…今度は食料庫に案内して?」

G級「はぁ、面倒ね……出来上がったら私にも分けるのよ?」

提督「ええ、これは相当頑張らないといけないわね…」


…食料庫…

G級「で、こっちはどう?…マカロニの提督ならきっとすごいものが作れるわよね」

提督「ええ、そうね…」相変わらず皮肉な言い方は変わらないG級をよそに、提督は箱や缶詰の間にしゃがみこんで周囲をごそごそとかき回している……まず拾い上げたのは難破した貨物船あたりから回収したのか、外箱がすっかり壊れているスパゲッティの青い袋…

提督「これでとりあえずパスタが作れるわね、後は…んー……あ、トマト缶♪」賞味期限は明らかに数年前ながら「まだどうにかなりそう…」と、拾い上げて小脇に抱える…

G級「持っててあげるわよ…」

提督「ありがと♪……それに…わ、アンチョビがあるわ♪」しゃがみこんでアンチョビの缶を拾い上げる…

G級「ふぅん…艦隊指揮はからっきしなのに、イタリア人って言うのは料理の事になると手際がいいのね」

提督「かも知れないわね…あとは……」G級のイヤミに生返事をしながら缶詰や瓶詰を選び取る…

提督「…うん、これでどうにかなりそうね♪」

G級「あらそう、よかったわね…」

提督「ええ、ようやく人間の食べるものが食べられるわ…♪」途端にきゅぅ…とお腹が鳴る……

提督「もう、私のお腹ったら素直だこと…///」

…厨房…

提督「さてと…♪」与えられたよれよれのキャミソールを着ている提督は手を洗うと、深海棲艦に鍋を借りた……漂着物の拾い物らしい鍋は「取っ手が取れる」が売りのフランス製でもないのに柄が行方不明で、おまけにあちこちへこんでいる…

提督「…まぁいいわ、とにかくお湯を沸かしましょう♪」…久しぶりにまともな料理が食べられそうとあって、うきうきした様子の提督…深鍋にお湯を沸かしつつ、塩を小さじ二つほど入れる…

提督「それから…と♪」

…これもずいぶんゆがんでいるフライパンにオリーヴオイルを注ぎ、赤唐辛子と刻んだニンニクひとかけを入れて温める……赤唐辛子の辛さは油に溶け出すので焦げやすいニンニクよりも先に入れ、じっくりと風味を出していく…しばらくしてニンニクがカリカリといい音を立てはじめたら、食料庫にあったアンチョビの缶詰に黒オリーヴの輪切り、ケイパーの塩漬けを入れて木べらでほぐしていく…

深海棲艦「…ふんふん」冷たい表情は相変わらずながら、興味深そうに香りを嗅ぐ数人…

提督「んー…いい香り♪」

…ほど良くほぐれたアンチョビと黒オリーヴの所にトマト缶を空け、焦がさないよう注意しながら濃い赤が鮮やかな柿色になるまで火にかける……最後に茹で上がったスパゲッティを絡めて黒胡椒を振ると、恍惚の表情を浮かべながら香りを胸いっぱいに吸い込み、さっと大皿に盛りつけた…

G級「へぇ…それで、この料理の名前は?」

提督「スパゲッティ・アッラ・プッタネスカ(娼婦のスパゲッティ)…「水商売のお姉さんが活力を付けるために作った」とか、そう言うお姉さんたちと同じで「たまにならいいけど毎日だと飽きるから」とか言われるナポリの味よ……あぁ、空腹にはたまらない香りね♪」

G級「椅子ならここにあるわよ…」古いオレンジの木箱を持ちだしてきた…

提督「ありがとう。それじゃあさっそくいただくわね……んーっ、美味しい♪」身もだえしながらスパゲッティを口に運ぶ提督…

G級「…ごくっ」

深海棲艦「…」

………

…そのころ・提督の実家…

チェザーレ「うむ、了解…大佐どの、改めてカンピオーニからもお礼を贈らせていただきます……それでは」受話器を置くと肩を回した…

ライモン「…チェザーレさん、まだ提督の行方について手がかりはなしですか?」

チェザーレ「うむ…提督の手帳にあった名前からラ・スペツィア、ナポリ、サルデーニャ島のカリアリ…シチリア島のアウグスタとメッシーナ…イオニア海管区のレッジョ・ディ・カラーブリア、タラント……もしかしたらアドリア海方面に誘拐されたかもしれぬからブリンディシとヴェネツィアにも電話はかけた……後はパレルモ航空隊のアントネッリ中佐は提督の「親しいお友達」なのでな、色々調べてくれたぞ」

ライモン「なのにかいもく見当がつかないなんて…いったいどこにさらわれてしまったのか……うぅ、きっと今頃深海棲艦に取り囲まれてあれこれと厳しい尋問を受けているに違いありません…」

チェザーレ「まぁ落ち着け、ライモンド…提督はなかなか頭の回転が速い。きっと脱走の機会をうかがうか、さもなければここに返してくれるように深海の連中に掛け合っているはずだ……それにあの提督に限って愛しい女性を悲しませるような事をする訳があるまい。違うか?」

ライモン「…そ、それはそうですが///」

チェザーレ「そうであろう?……それにさっきムツィオが手伝っていたからな、そろそろあのナポリ鎮守府のカント水偵が離水できるはずだ…行ってその目で捜索してくるといい」

ライモン「はい。それでは留守をお願いします」

チェザーレ「任せておけ。…必要ならこのチェザーレが賄賂だろうが何だろうが用意してみせるから、後ろにローマ軍団が付いているつもりでいればいい」ポンと肩を叩き、口元に笑みを浮かべて見せた…

クラウディア「…必要なものがあったら何でも言ってね?」

シルヴィア「もし銃がいるようならいくらでも出してあげるから、そう言いなさい…あと、これ」装填済みのベレッタ・M1938短機関銃を渡した…

ライモン「これは?」

シルヴィア「お守り代わりに一応……「ウサギの脚」よりは効果があるでしょうし」

ライモン「ありがとうございます…それでは、しばらく上空から探してみます」

アッテンドーロ「姉さん、水偵の準備が出来たって」

ライモン「分かったわ…それでは、上空から捜索してみます」…ライモンは短機関銃を肩にかけると岸辺に着水している三発エンジンのフロート機、カントZ506「アイローネ」(※Airone…アオサギ)の後部席に乗り込み、しばらくするとカント水偵は浜辺に砂と波を巻き上げて離水していった……

チェザーレ「…提督、もし戻ってこなかったらライモンドに代わってチェザーレが怒るぞ……?」

………

…一方・深海棲艦の洞窟…

G級「…んむ……んむっ…まぁ美味しいんじゃないの?」提督にパスタを分けてもらうと勢いよく食べ、口の端にトマトの汚れまで付けていながら辛口の評価を下す…

ケント級重巡「ふむ、なかなか美味い…」一方の重巡「ケント」級はさすがの貫録で、無表情ながら一応感心したような声を上げた…そのうちにいい匂いに誘われたのか、次々と厨房に姿を見せる大小の深海棲艦たち……

提督「ふぅ…まさかせっかくの夏季休暇を深海棲艦の司厨長として過ごすになるとは思ってもみなかったわ……」次々と顔を出してくる深海棲艦たちに汗だくで「スパゲッティ・アッラ・プッタネスカ」をごちそうする羽目になっている提督…

クィーン「…何事ですか」

C級軽巡「…陛下、このような場所にまでお越しになるとは……お気遣い、痛み入ります」

クィーン「余はあらゆるものに目を通さなければなりませんから。で、何をしているのですか…アドミラル?」

提督「えぇ…と、料理を作っておりました……良かったらいかがですか、クィーン♪」

レナウン(巡洋戦艦)「陛下に対してそのような口を利くなんて失礼よ…?」

クィーン「よいのです、レナウン…イタリア人の捕虜なのですから、礼儀を知らずとも致し方ないでしょう……?」さりげなく失礼なことを言うクィーン…

提督「む……クィーン、これは『娼婦のスパゲッティ』などと申す一品で、はなはだお口汚しかと思いますが…よろしければお召し上がりになられますか?」

クィーン「…そうですね、それでは味見程度に頂戴いたしましょう……」さっと用意された椅子に軽く腰掛け、ほんの少しだけパスタを巻きとって口に運んだ…

提督「…」

クィーン「……なかなか美味しいではありませんか」

提督「感謝します、クィーン」

クィーン「いいえ…ところでアドミラル」

提督「はい」

クィーン「あとで話がありますから、余の部屋へお越しいただければと思います……それでは…」しゃなりしゃなりと優雅な歩みで出ていくクィーン…

提督「…分かりました」(…まさか「『娼婦のスパゲッティ』なんて言うものを食べさせて、無礼だから処刑する」とかじゃないわよね……)

…しばらくして・クィーンの部屋…

G級「連れて参りました、陛下」

クィーン「ご苦労様です…下がってよろしい……」

提督「…それで、私にどのようなご用でしょうか?」

クィーン「ええ…実を言いますと、そろそろアドミラルにはお帰りになって頂きたいと思っているのです……」

提督「そうですか」(ふぅぅ…これでようやくライモンに会えるし、深海棲艦の作るイギリス料理ともおさらば出来るわね♪)

クィーン「はい……この一週間ばかりアドミラルを「捕虜」とはいえ我が方でもてなしておりましたが、あまりアドミラルにいられると余の部下たちに悪影響があると考えているのです…したがって、余はアドミラルを数日中に潜水艦に乗せてお返しするつもりです……」

提督「悪影響ですか…「あまり美味しいイタリア料理を食べさせるな」という訳ですね♪」

クィーン「ふふ……それもありますが、アドミラルもお気づきでしょう…彼女たちの態度を」

提督「…と、言いますと?」

クィーン「アドミラルの写真を回しては色欲を覚えている者たちがいるのですよ…なかなか刺激的な写真ですから……」

提督「あ、あれは…その…///」(もうあちこち触られたりしているけど…)

クィーン「…存じております。とにかく余は地中海での勝利のために戦っているのですから、イタリア料理や数枚の写真のせいで戦意を失ったり、集中を乱されては困ります……それに、なかなかあのG級を手厚くもてなしてくれたそうですから、その礼として解放することに決めました……ついてはこれを」一枚の便せんとペンを差しだした

提督「…これは?」

クィーン「受け渡しに際して余の部下を攻撃しないようアドミラルの艦隊に伝えるのです…さぁ、お書きなさい」

提督「はい……これでよろしいですか?」

クィーン「よろしい…余に嘘をついていればわかりますから。では、どうぞお戻りなさい……」

提督「はい、クィーン」(…あぁ、やっと太陽の下に戻れるのね♪)

クィーン「それと言っておきますが、ここにも日の当たる場所はありますよ…」

提督「…え?」

クィーン「…聞かれませんでしたから余も言いませんでしたが、廊下の石段を登って行けば見張り台があります……」

提督「…では後で日光浴をさせてもらいます」

クィーン「ええ、ご自由に…」

………

…その日の夜・カンピオーニ家の海岸…

ライモン「…ふぅ」青っぽい明るい月を眺めながらため息をついているライモン…横には提督にもらった豪奢なナイトガウンを羽織ったチェザーレが立っている……

チェザーレ「ライモンド、今日はもう疲れたろう…もう休むことだ」

ライモン「ええ……ですが提督もどこかであの月を見ているかもしれないと思うと、なかなか戻れなくて…」

チェザーレ「うむ、気持ちは分かるが……ん?」ふと視線を落とし、波打ち際に揺れている瓶を見つけたチェザーレ

ライモン「どうしました?…あ、瓶ですね……中に何か入っています…」

チェザーレ「うむ、手紙のようだが……ちょっと待て、ライモンド。この字は提督のものではないか?」

ライモン「!?」慌てて瓶の外から見える字を月明かりにかざす…

チェザーレ「どうだ?」

ライモン「…はいっ、間違いありません!……ムツィオ、クラウディアさん、シルヴィアさん!」瓶をしっかり抱えると、家に通じる小道を駆け上がっていく…

チェザーレ「…ふふ。それにしても、さすがチェザーレたちの提督よ…「瓶に入った手紙」とはなかなかロマンティックではないか……ライモンド、そう慌てると転んでしまうぞ?」ライモンの後を追って小道を上るチェザーレ…





…居間…

アッテンドーロ「…それじゃあ姉さん、内容を読んでよ」

ライモン「ええ……「愛しのみんなへ…」もう、こんな時にまでこういうことを言うなんて提督らしいですね///」

シルヴィア「ふふ、それだけ愛されているのよ」

ライモン「///」

アッテンドーロ「で、続きは?」

ライモン「ちょっと待って…「今、深海棲艦たちの巣窟の中でこれを書いています。ずっと太陽の見えない場所にいたので何日経っているのかもわかりませんが、とりあえず身体に問題はありません…どうやら深海側は、以前の作戦で鎮守府が「捕虜」にした「G」級の扱いに感謝し、お礼を言いたかったようです」…と書いてあります」

チェザーレ「全く。深海棲艦の奴ばら、いらぬところで律儀な真似を…心配で夜も眠れなかったというのに……」

ライモン「えーと…「とりあえず数日中に帰してくれるそうなので、私を乗せた深海棲艦を攻撃したりしないよう手はずを整えておいてください。搭乗するのはおそらく深海側の潜水艦「T」級になるはずです…」ですって!」

クラウディア「まぁまぁ…フランカが無事でよかった、うんとごちそうを用意しないと♪」

アッテンドーロ「じゃああのふざけた連中を沈めたりしないように準備しないとね…チェザーレ、また電話することになりそうですね?」

チェザーレ「提督が無事に帰って来るなら電話くらいお安いものだ…他には何か書いてあるか?」

ライモン「はい…「みんなにうんと心配をかけた分、休暇の残りは好きなだけわがままを聞いてあげるつもりでいます…とにかく無事にみんなに会うこと、それと温かいお風呂、美味しい食事が待ち遠しくてなりません」…だそうです」

クラウディア「ふふ、そうだろうと思ったわ♪」

シルヴィア「ふぅ…これでようやく安心して過ごせるわね」提督のいない間寂しげに鳴いていたルチアの頭を優しく撫でる…

ルチア「クゥーン…?」

………

…数日後・深海棲艦の洞窟…

クィーン「…数日前に申し上げた通り、準備していた捕虜返還の手続きが整ったので…本日をもってアドミラル・カンピオーニをイタリア側に返還することとなりました……」

タリスマン「それは残念だ…せっかく捕虜にしたのに」提督の側に座っている「タリスマン」がぼやく…

トーベイ「仕方あるまい……まぁまた捕虜にすれば良いではないか。わが軍はこれまでもイタリアの将官など網ですくえるほど捕えているのだから」

提督「…陸軍はともかく、海軍は別よ?」

クィーン「皆、静かに。それでは乾杯するとしましょう……アドミラル」

提督「あぁ、はい」グラスを持って立ち上がった…

提督「えーと…なにはともあれ、イギリス地中海艦隊のもてなしに感謝しております。少なくとも今回は砲弾ではなくウィスキーでしたから」提督の冗談にそこそこ笑いらしいものが漏れる

提督「それでは、お互いに武運長久を願って…げほっ、ごほっ!?」グラスを持ち上げ透明な液体を一気に流し込んだ提督…と、カッとするような味が喉を焼いた……

ベルファスト「…へへっ、うまくいった」数人が底意地の悪い笑みを浮かべている…

提督「…なに、これ……!?」

クィーン「…三倍量(トレブル)のジンに純アルコールを数滴……そうでしょう?」

ベルファスト「ええ、クィーン…どう、アドミラル。ダイナマイトでしょう…?」小さいハープを片手にイェーツの詩か何かを口ずさんでいる…

提督「うぇぇ…ひどい味……」顔をしかめている間にも意識がぼんやりして、目の前が揺らぎ始める提督

クィーン「…余も出口の場所を見られるのは好ましくありませんので……許しなさい、アドミラル…」今度はいきなり背後から目隠しをされ、ひょいと誰かに持ち上げられた…

提督「えっ、もう出発ですか…?」

クィーン「いかにも…それでは、よい航海を……」

提督「うぅ…ん」…急に持ち上げられたりしたせいでアルコールが回り、ふっ…と意識を失くした提督

クィーン「それでは頼みましたよ…」

トーベイ「了解…トーベイ、出撃します」

………

…数日後・深夜…

ライモン「それにしても…深海棲艦たちは本当に約束を守ってくれるでしょうか?」ざぁぁ…っ、と波音だけが響く浜辺に立って合図の懐中電灯を持ち、不安げな表情のライモン……

チェザーレ「…ブリタニアの二枚舌が信用できないか、ライモンド?」

ライモン「ええ…いきなり提督をさらっていくような相手ですし」

アッテンドーロ「まぁね、姉さんの言うことも分かるわ。でもわざわざ瓶入りの手紙まで送りつけておいて「嘘でした」って言うことはないんじゃない?」

ライモン「うん…わたしもそう思うけど……」

アッテンドーロ「じゃあ姉さん、合理的に考えてみましょうよ…私たちに提督を返すふりをすることで、あちらさんが何か得をすることがある?」

ライモン「うーん……わたしたちがショックを受けるとか」

アッテンドーロ「それだけならこんな回りくどいことなんてしないわよ…ね?」

ライモン「そう言われてみればそうかも…でも提督が戻って来るまでは安心できないわ」

アッテンドーロ「まぁね……って姉さん、あれ!」…沖合に浮上した潜水艦のぼんやりしたシルエットが霞んで見え、豆電球のようなぽっちりした明かりが点滅した

チェザーレ「合図で間違いないようだ…ライモンド」

ライモン「は、はいっ…!」懐中電灯を点滅させ、合図を返す…

チェザーレ「…さて、どこから来るのやら」

ライモン「そうですね……あ!」浮上した潜水艦とは別の方向から一隻のゴムボートが近づいてきて、砂浜に乗り上げると誰かが降りてきた…

タリスマン「……捕虜の返還に来た」

ライモン「…提督、提督っ!」

提督「…」くしゃくしゃで染みだらけになったナイトガウンを羽織り、タリスマンに担がれてきた提督…

アッテンドーロ「…提督におかしな真似はしていないでしょうね?」

タリスマン「ああ…少し気を失っているだけだ、すぐ回復する……それと…」

チェザーレ「何だ?」

タリスマン「陛下からのアドミラル宛ての親書がある…後で渡してもらいたい」

チェザーレ「うむ、なら受け取っておく…これでよいな?」

タリスマン「結構だ……では失礼する、次に見るのは照準器越しだろうな…」

アッテンドーロ「それはこっちの台詞よ…もう用はないからとっとと海の底にでも帰りなさい」

タリスマン「言われなくとも……それでは…」ゴムボートを押して浜から出すとひらりと乗り込み、そのまま沖合に消えて行った…

チェザーレ「なかなか素早かったな…ところで提督は?」

ライモン「いま起こしています……提督、提督っ!」

アッテンドーロ「ちょっと、本当に無事なんでしょうね……」

提督「…う、うぅん……」

ライモン「提督…っ!」抱きついて砂浜に押し倒し、あたり構わず身体中にキスを見舞いつつ涙をこぼした…

提督「…ただいま、ライモン……泣かないで、ちゃんと私は戻ってきたわ…ん、ちゅ…っ……」提督は綿のように疲れ切っていたが、それでもライモンにキスを返し、アッテンドーロとチェザーレにもうなずいた…

ライモン「あぁ、よかった……本当に心配で心配で…わたし、どうにかなっちゃいそうでした……」

アッテンドーロ「本当よ、まったく…姉さんったら自分を責めるわ、艦隊のみんなに電話をかけようとしたりで、もう大変だったんだから」

チェザーレ「まぁ、何はともあれ「終わりよければすべてよし」と…しかし、よく返してもらえたものだな?」

提督「あー…うん。それがどうも、私が料理を作ったり現代の事を色々教えたりしたら「戦意高揚の邪魔」になるって思ったみたい」

チェザーレ「なるほど…確かに美味い物を食って、恋だの愛だのを知ったら深海暮らしなどやってられんだろうからな……」

提督「ええ、そう言うことだったみたい……ライモン、んーっ♪」

ライモン「はいっ…ちゅぅぅっ……んっ?」

提督「…どうかしたの?」

ライモン「…何だか今日の提督は変な味がします……もしかして深海棲艦ともしたんですか?」

チェザーレ「あー…ところで提督よ、ひどく磯臭いな……クラウディアが風呂を沸かしているはずだから、汚れを落としてさっぱりしたらどうか?」

ライモン「むぅ…チェザーレさん、わざとですか?」

チェザーレ「何がだ、ライモンド?…とにかく提督を家まで運ぶのが先決ではないのか?」

ライモン「あっ、そうでした…提督、わたしにつかまって下さい」

提督「うん、ありがとう……よいしょ…」むにゅ…と提督の柔らかい乳房が背中に当たり、頬を赤らめながら肩を貸すライモン……


…カンピオーニ家・玄関…

ライモン「よいしょ…ここまでくればもう大丈夫ですね?」

提督「ええ、チェザーレも、ムツィオもありがとう…ちゅっ♪」

チェザーレ「…なに、愛しい提督のためならこのくらい構わぬよ♪」

アッテンドーロ「ええ…姉さんにばっかりキスしてるから、私たちの事は忘れているのかと思ったわ」

提督「ふふ、そんな訳ないでしょう…」と、玄関先にシルヴィアとクラウディアが立っていて、足下に寄り添うようにルチアも座っていた……

クラウディア「…フランカ!」

提督「ただいま、お母さ…んむっ!」いきなり抱きつかれ、甘い匂いのする胸元に顔を押し付けられる提督…

クラウディア「もう、無事でよかったわ…怪我はない?…お腹が減ったでしょう。お風呂も準備してあるわ…それより一晩寝たいかしら?」

提督「んー…んーっ……」

シルヴィア「いいけど、とりあえず放してあげたら?…フランカが窒息するわよ」

クラウディア「あら、いけない///」

提督「ぷはぁ……改めて迷惑をかけてごめんなさい、お母さま、シルヴィアおばさま…でもどうにか無事で済んだわ」

シルヴィア「いいのよ、ちょっとぐらい迷惑をかけるぐらい……クラウディア、これでようやく安眠できるわね?」

クラウディア「ええ。ところでシルヴィア…私、安心したら人肌が恋しくなっちゃったわ……///」

シルヴィア「はいはい、まずはフランカの面倒を見てからね」

ルチア「ワンワンワンッ…!」尻尾をちぎれそうな勢いで振り、提督に飛びつくルチア…

提督「あー、よしよし…ごめんね、ずっと心配させて」

ルチア「ワフワフッ…♪」


…しばらくして・浴室…

提督「…あいたた」洞窟の中で過ごしていたせいか、あちこちに擦り傷やちょっとした切り傷を作っていた提督…後ろからライモンに洗ってもらいながら、痛みに顔をしかめている…

ライモン「大丈夫ですか?…深海棲艦たちに拷問とか、ひどい目に合わされたりしませんでしたか?」

提督「拷問はなかったけれど、ひどい目にはたびたびあったわね…」

ライモン「一体どういう目にあったんですか、提督?…今度深海棲艦を捕まえたら同じ目にあってもらいますから」

提督「ありがとう、ライモン…気持ちは嬉しいけど、イギリス料理じゃ深海棲艦には効果ないでしょうね」

ライモン「えっ?…あー、イギリス料理を食べさせられたのですか……」

提督「ええ、出来るものなら二度と経験したくない味だったわ…あっ、そこ気持ちいい……あふっ♪」優しく谷間を撫でるライモンの手に甘い吐息をもらす…

ライモン「も、もう…あんまり甘い声を出さないで下さい……提督?」

提督「すぅ…すぅ……」

ライモン「あ、寝ちゃいましたか……仕方ありませんね…」そっと残りの部分を洗うと優しくタオルで拭き、寝室のベッドまでお姫様抱っこで運ぶ…

提督「…んぅ、ライモン……」

ライモン「はい、わたしはここですよ…///」そっと服を脱ぐとベッドにもぐりこみ、お風呂上がりでまだ暖かい提督の身体にぴったりと寄り添った…

提督「んふふ……すぅ…」

………

…思っていたよりずっと時間がかかってしまいましたが、これで「提督が深海棲艦に捕まる」ネタは完了ですね…

…ちなみに深海棲艦たちのモデルになった艦はそれぞれ……


戦艦…クィーン・エリザベス級

第一次大戦時の最新鋭高速戦艦。四隻の計画であったが英領マレーからの献金で建造された「マレーヤ」を含む五隻に。第一次大戦時には史上最大の海戦「ジュットランド海戦」などに参加し奮戦。
第二次大戦に際しては「長門」型のような舷側副砲を廃止して4.5インチ(11.4センチ)連装高角砲の搭載など近接対空火力増強の改修、一本煙突化による甲板の有効利用、ウォーラス水偵の格納庫を増設するなど航空艤装の強化を受け、ノルウェイ、地中海、インド洋と転戦。特に「ウォースパイト」の活躍が有名


巡洋戦艦…リパルス(レパルス)級

第一次大戦時の第一海軍卿(海軍司令長官)フィッシャー海軍卿の肝いりで建造された巡洋戦艦の一つ。

帝政ドイツ海軍の巡洋艦を捕捉・撃破できる火力と29ノットと言う高速を求めた分装甲は薄かった…が、ジュットランド海戦では戦艦隊到着までのつなぎ、あるいは高速戦艦の扱いを受けてドイツ主力艦隊と交戦。数隻が火薬庫の引火で轟沈するなど防御面の不足が目立ち、第二次大戦前に舷側装甲や航空艤装の追加など数々の近代化改修を受けている。

リパルスは極東艦隊の一隻としてマレー沖海戦に参加、「プリンス・オヴ・ウェールズ」と共に一式陸攻や九六陸攻の猛攻を受け戦没したが、その優れた指揮と高速で多くの魚雷をかわしてみせた。一方、二番艦の「リナウン」は本国艦隊や地中海艦隊などを歴任し無事に退役。


重巡…「カウンティ」(州)級

ワシントン条約の範囲内で七隻を建造した「ケント」級、その改良型で四隻建造の「ロンドン」級、最終型として二隻建造された「ノーフォーク」級と、「ロンドン」をのぞいていずれもイギリスの州から名前を取っている8インチ(20.3センチ)砲重巡。

広大な植民地警備のため安くて小型の軽巡を多数整備したイギリスながら、敵の軽巡や仮装巡洋艦を撃破するため8インチ砲を搭載し、長い航続距離を持つ重巡として整備したクラス。
通商ルート保護のための遠距離航海が多くなることを想定していたため居住性や航続距離はよかったが、予算や隻数の都合で「一万トン以内」に押さえようとしたことから防御を削り、重巡でありながら舷側装甲が25ミリという弱体な艦に…第二次大戦前にそれぞれ対空火器や装甲の増設を行っているが、どの艦もバランスが悪かったり、後発組だった日米独伊などの重巡に比べて能力が劣るので評価自体はあまり良くない

スピットヘッド観艦式で日本の「足柄」と比較され、「客船」などと言われたのもこのクラス


軽巡…「C」級

第一次大戦から似たような艦を連続して建造していたイギリス「C」級軽巡のうち、第二次大戦に投入された「カレドン」級四隻に「シアリーズ」級五隻、「ケープタウン」級五隻。

4000トン余りの小ぶりな艦に6インチ(15.2センチ)単装砲をおおよそ5基、21インチ(53.3センチ)連装魚雷発射管4基と言った火器を搭載していた…が、第二次大戦時には旧式化していたため、当時は珍しい防空軽巡として改装、各国海軍の注目を浴びた。特に陸が近く空襲の激しい地中海方面に投入されて多くが戦没している


軽巡…「カヴェンディッシュ」(改バーミンガム)級

第一次大戦にイギリス海軍を振り回した仮装巡洋艦や通商破壊任務を帯びた艦を捕捉・撃破するために整備された巡洋艦。一万トン近い大柄な艦形に敵艦をアウトレンジ出来る7.5インチ(19.1センチ)砲を7基搭載し、速度も30ノットに届こうという強力な「軽巡」……だったが、第一次大戦後の海軍軍縮条約で「6インチ砲以上の艦」と言うことで「重巡」扱いを受けたり、大型の船型から何かと実験に使われ、ネームシップの「カヴェンディッシュ」が一時期空母「ヴィンディクティブ」になったりと忙しかった…第二次大戦では対空火器を増強して船団護衛などで活躍


クラス名もネームシップから「カヴェンディッシュ」級、二番艦から「ホーキンズ」級、軽巡「バーミンガム」級の改型と言うことで「改バーミンガム」級、エリザベス一世時代の提督名から来ていることから「エリザベサン」級などとさまざま…


軽巡…「エディンバラ」級

町の名前を冠した戦前の新型軽巡「タウン」級の最終グループで、「エディンバラ」と「ベルファスト」の二隻。

竣工が1939年と第二次大戦勃発時には最新鋭艦で、三連装6インチ砲を四基搭載した一万トンクラスの堂々とした軽巡。公称32ノットと言う速度に甲板防御、舷側防御を増した船体はマルタ島を救援する輸送船団の護衛役として最適だった。ネームシップ「エディンバラ」は戦没したが、「ベルファスト」は戦後も生き延び、テムズ川で記念艦になっている


ちなみに深海棲艦「ベルファスト」が竪琴を持っているのは1586年に「アイルランドのシンボル」としてエリザベス一世が選んだ「ブライアン・ボル・ハープ」という竪琴から…モデルの竪琴はダブリンの「トリニティ大学博物館」にあるということで、アイルランド生まれのビール「ギネス」にも描かれている…





…翌朝…

提督「…ん、んんぅ……朝の光が眩しいわね」一週間近くもの間、ずっと洞窟のような場所にいたせいか日差しが目を射る……目を細めてサングラスを探す提督…と、ベッドで寝息を立てている可愛らしいライモンの姿が目に留まった…

提督「…♪」いたずらっぽい笑みを浮かべると化粧台をから何かを取りあげてライモンに近づき、それから下の階に下りて行った……

…食堂…

提督「おはよう。お母さま、おばさま…それにチェザーレ♪」ちゅっ…と頬にキスをすると、食卓についてコーヒーと新聞を取った…

チェザーレ「うむ、おはよう…この何日かはチェザーレはなかなか寝つかれなくてな、昨夜は泥のように眠らせてもらった……アッテンドーロもまだぐっすり眠っているぞ♪」

提督「ごめんね…心配をかけたわ」

クラウディア「いいのよ、フランカが無事に戻って来ただけで充分…はい、朝ご飯よ♪」

提督「ありがと、お母さま♪」

シルヴィア「ま、いい刺激になったわね…」

提督「ふふっ…おばさまったら♪」

ライモン「…ふわぁぁ……提督、こちらでしたか…おはようございます♪」珍しく寝ぼけまなこで下りてきたライモンは、左右の頬にキスをしてから食卓につこうとする…

チェザーレ「ほう…なかなか大胆だな♪」

クラウディア「あらあら…うふふっ♪」

シルヴィア「へぇ…」

提督「…くすっ♪」

ライモン「あの……わたしの顔に何かついてます?」

チェザーレ「ふふふ、鏡を見てみるといい…♪」手鏡を差しだすチェザーレ

ライモン「…鏡ですか…って、あぁっ///」ほっぺたに濃い紅のルージュでキスマークが付けられている…

提督「くっ…ふふっ、あははっ♪」

チェザーレ「ははははっ、傑作だ♪」

ライモン「も、もう…提督がさらわれてからというもの、わたしが寝ずに頑張っていたのにこのいたずらですかっ……///」

チェザーレ「と、口で言う割にはにやけているな…♪」

クラウディア「もう、フランカったら……ほら、ライモンちゃん。メイク落としを貸してあげるから…」

ライモン「…そ、そうですね……でも少しもったいないような///」

シルヴィア「ふぅ…朝から甘いわね……」


…食後…

提督「はぁぁ…美味しかったぁ……幸せ…♪」

クラウディア「うふふ、お昼にはフランカの好きなものをいっぱい作ってあげるから…ね♪」

チェザーレ「うむ、無事に戻ってきたお祝いという訳だな…ところで……」名前が並んでいる紙を渡される…

提督「なぁに、これ…みんな私の知り合いばっかりだけど?」

チェザーレ「いかにも…このリストに書いてあるのは提督が連れ去られてから情報を聞き出したり、「損傷を与えた敵潜の撃沈確認」と言う名目で手を借りた軍のお知り合い方だ」

提督「こんなに聞いて回ってくれたの……本当にありがとう…///」

チェザーレ「うむ…が、間違っても公にすることも出来ぬ事ゆえこの方々には本当の事情は伏せておき、その上で「提督からの個人的な頼み」と言うことにして聞き出したのだ……つまり、「見返り」が必要という訳だな」

提督「…え、ちょっと待って」

チェザーレ「…夏季休暇の残り数日はプレゼントの購入とお礼の電話にかかりきりになってもらうのでな、よろしく頼むぞ…♪」

提督「…うぇぇ」

…夏季休暇最終日…

提督「はぁ…ふぅ……ひぃ…」暑い夏の最中にランチアと自宅を往復する提督…隣にはシルヴィアのオープンクーペ、綺麗なイタリアンレッドの「アルファロメオ・ジュリエッタ」が停まっていて、クラウディアもリボンやおしゃれな包み紙に包まれた贈り物をトランクから降ろしている……

チェザーレ「やれやれ…これでようやく全部用意できたな」

アッテンドーロ「私たちに心配をかけたんだから、そのくらいはしてもらわないとね」

提督「それにしたって…お礼の電話と礼状、それにプレゼントのお買いもの…まったく、これじゃあちっとも夏季休暇にならないわ……」

ライモン「まぁまぁ、またお世話になることもあるかも知れませんし…ね?」

提督「ええ、そうね…はぁぁ……」

クラウディア「うふふっ、お疲れさま…それじゃあこれは宅配便にお願いしておくから、宛て名とあなたの任地だけ書いておいてね♪」

提督「はぁーい……お母さま、おばさま…買い物につき合ってくれてありがとう」

クラウディア「いいのよ、お買いものするの楽しかったもの♪」

シルヴィア「それにしても時間がかかったけれどね…ま、たまには「ジュリエッタ」も走らせてあげないといけないし」

提督「車を出してくれて本当に助かったわ、シルヴィアおばさま」

シルヴィア「別にいいわよ…さ、お昼にしましょう?」

提督「はぁい♪」


…翌朝…


提督「それじゃあ忘れ物はなーい?」抜けるような快晴の空の下、すっきりしたサマーワンピースとサングラス姿の提督

ライモン「はい、大丈夫です」

アッテンドーロ「同じく、ばっちり準備したわ」

ルチア「ワフッ…♪」後部座席の床に寝そべり、ムツィオに頭をかいてもらっている…

チェザーレ「うむ…それに忘れていることに気づいたら忘れ物ではあるまい」

提督「そういうことを言わないの…それじゃあ、お母さま、おばさま……また冬の休暇の時にでも戻ってくるわ。あと、秋の初めに基地祭があるから、よかったら来てね♪」

シルヴィア「そうね、その時にはお邪魔するわ…」

クラウディア「ええ…あ、そう言えば♪」

提督「なぁに、お母さま?」

クラウディア「よかったらこれを持って行って?」口にテープを貼って閉じてある大きな紙袋を渡した…

提督「これ、なあに?」

クラウディア「ふふっ、それ?お母さまから可愛いフランカへ悪ふざ……フランカが艦娘の女の子たちと親睦を深めるのに使えるように用意したの♪」

提督「今、「悪ふざけ」って聞こえた気がしたのだけど…」

クラウディア「ふふっ、そんな訳ないじゃない♪…それじゃあ、タラントについたら電話をちょうだいね?」…ちゅっ♪

提督「ええ、そうするわ…それじゃあ、行ってくるわね」

シルヴィア「行ってらっしゃい…♪」

提督「ええ、行ってきます♪」運転席から手を出してクラウディアとシルヴィアに手を振ると席に座り、滑らかにアクセルを踏み込んだ…

ライモン「おかげで忙しい夏休みでしたが、なかなか刺激的でしたね…?」

提督「ええ、それにしても刺激的すぎたけど……さ、タラントまで飛ばして行きましょう♪」

…鎮守府…

提督「はぁぁ…着いたわね」電動ゲートに暗証番号を入れて門を開けると、ランチアを鎮守府の道に乗り入れる…

ライモン「ふふ、なんだか懐かしいですね♪」

アッテンドーロ「あーあ、これで夏休みも終わりなのね…改めて実感しているわ……」

チェザーレ「そう言うな、ここでもたいていはゆっくり出来るではないか♪」

アッテンドーロ「まぁね…それより、施設の掃除とか電源の立ち上げとかしないといけないんでしょ……提督、私も手伝いましょうか?」

提督「お願いできる?」

アッテンドーロ「いいわよ…それに電気と水道なしじゃ困るのはこっちだもの」

提督「ありがと♪」

…そう言っている間にも提督のランチアは入り口側に建っている「事務棟」こと、無機質なコンクリート二階建ての建物を回り込み、一変して花の咲いている前庭と建物の明るい黄色が陽光に映える、両翼の広い別荘風の「本館」前に車を停めた……提督は三人と一匹に降りてもらうと横手の車庫にランチアを入れ、入り口の石段に荷物を降ろすと、大きな観音開きの玄関を開けた……途端にむっとした空気が押し寄せてくる…

ライモン「うわ…!」

チェザーレ「むむむ……」

アッテンドーロ「ちょっと、ひどく空気が蒸れているわね…」

提督「本当ね…それじゃあ手分けして全部の窓を開けましょう、ルチアはゆっくりしてて良いわよ♪」

ルチア「ワンッ♪」提督の足下にまとわりついて尻尾を振る…

提督「あらそぉ?それなら一緒に行きましょうねぇ♪」

チェザーレ「相変わらずルチアと一緒になると甘ったるい話し方になるのだな…」

ライモン「…全くです」

…しばらくして…

ライモン「ふぅぅ…全部の窓を開けてきました……やっぱり海風が入ってくると涼しいですね♪」

提督「そうね。それじゃあ次は蛇口を開けて水を流して、あと建物のブレーカーを入れないと」

アッテンドーロ「電源ってレーダーは別なのよね?」

提督「ええ、あれは別に電源があるし、通信室と冷蔵・冷凍室はいつも稼働状態だから…あくまでもみんなの部屋の分ね」

アッテンドーロ「だったらなおの事ね…とっとと入れて来るわ」

提督「あ、電源は私がやるから水道をお願い♪」

アッテンドーロ「了解…はぁ、みんなにも早く戻ってきてほしいわね」

提督「あら、誰に会いたいの?」

アッテンドーロ「そういうのじゃなくて、色々やることが多いからよ…とりあえず、水道の栓を開きっぱなしにすればいいのね?」

提督「ええ。…それと、手伝ってくれたムツィオたちには私の特製パスタをごちそうしてあげる♪」

アッテンドーロ「ならいいけど……格別美味しいのを頼むわよ?」

提督「はいはい♪」


…お昼時…

提督「それにしても三人ともごめんなさいね、私と一緒だと一日は休暇が短くなっちゃうのをすっかり失念していたわ…」

チェザーレ「なに、構わぬよ。提督と一緒だとなかなか愉快であるからな」

ライモン「ええ…それに、提督と一緒にいられるならどこだって嬉しいです///」

提督「まぁ…ライモンったら///」

アッテンドーロ「へぇ、姉さんもやっと愛の言葉を言えるようになってきたわね♪」

ライモン「もう、からかわないで///」

提督「うふふ…それじゃあ愛情たっぷりのお昼にしましょうね♪」

チェザーレ「うむ、チェザーレも手伝おう」


…厨房…

提督「さーてと…何があるかしらー……と」ごそごそと冷蔵庫と奥の食料庫を探し回る提督…

提督「…あ、パルメジャーノ・レッジァーノがあるわ♪」奥の冷蔵室に入っていたパルメジャーノ・レッジァーノ(パルメザン)チーズの塊を見つけ、ニンニク一個と唐辛子数本を一緒にカゴに入れ、意気揚々と厨房に戻ってくる…

ライモン「何かありました?」

提督「ええ、チーズにニンニク、唐辛子、冷凍の海老とイカが少し……菜園のトマトとバジルはまだ残っているかしら?」

ライモン「わたしが見てきます…ムツィオ、一緒に行きましょう?」

ムツィオ「ええ、姉さん♪」

提督「お願いね、その間に準備しておくから♪」


…冷凍になっていたシーフードをビニール袋ごと水につけて解凍しながら、手際よくニンニクを刻み、唐辛子を輪切りにする……すでに大きなパスタ鍋にはお湯がかけてあり、フライパンも準備してある……と、厨房の片隅でカサコソ言う音が聞こえる…

提督「…?」材料を刻むと音のする方に視線を向け、途端に固まった提督……

提督「チェザーレ…来て!」

チェザーレ「提督、どうしたのだ?」

提督「えーと…厨房の床に……私、あれだけはどうも苦手で…」イタリアやスペインで言うところの「ラ・クカラーチャ」を見て引け腰の提督…

チェザーレ「どれ…あー、確かにいるな……少し待っておれ」食堂の片隅に置いてあったローマ風の長剣を持ってくると鞘ばしる音もさせずに抜き放ち、猛烈な突きを放った…

チェザーレ「…えいっ!」

提督「…ど、どう?」

チェザーレ「うむ、仕留めた…ほれ」

提督「あー、わざわざ見せなくていいから捨ててきて……後で殺虫剤でも撒かないと」

チェザーレ「…提督、捨ててきたぞ。それにしてもあれが苦手とはな、よく森の中にもいるではないか」

提督「森の中なら別にいいの…でも屋内にいるのは勘弁してほしいわ」

チェザーレ「細かいのだな…ところでな、パスタの湯が噴きこぼれそうだぞ?」

提督「わ…いけない!」

ライモン「提督、トマトをもいできましたよ。…どうしたんです、チェザーレさん?抜き身の剣なんか持って?」

アッテンドーロ「ネズミでもいたの?」

チェザーレ「あぁ、近いな…実はさっきそこに……」

提督「…ライモン、そのトマトをちょうだい」

ライモン「あっ、はい」

提督「それで…と」


…解凍された海老とイカは鎮守府の厨房を取り仕切る「ディアナ」が下ごしらえをした上で冷凍しておいてくれたものだったので、海老の背わたも取ってあった……それをさっとレモンと胡椒で揉んで、生臭さを取る……ニンニクと唐辛子の香りが空腹を誘うフライパンにイカと海老を入れて白ワインを注ぎ、軽く火を通すと一旦どけて、今度はもいできたばかりのトマトを刻んで入れ、形が無くなるまで煮詰めるようにしていく……ほとんどトマトの形が無くなったところにイカと海老を戻し、塩と粗挽き胡椒、オレガノで軽く風味をつける…


提督「はい、フェデリーニのペスカトーレ完成♪」くるりと巻くように大皿に盛りつけ、可愛らしくバジリコの葉っぱを上に載せる…

ライモン「わぁ、美味しそうですね♪」

アッテンドーロ「いい匂いね…たまらないわ」

提督「ふふっ…待っててね、もう一品作るから♪」


…今度はトマトのヘタを落とし串を刺すと、お尻の部分から皮に軽く十字の切り込みを入れ、湯剥きにする……極細のカッペリーニを茹でて軽く冷水で締めると、同時に作っていたトマトとニンニクだけのあっさりしたソースに軽く絡める。できたパスタをガラスの大皿に盛ったところへ氷水で冷やした湯剥きトマトを載せ、上からチーズおろしでパルメジャーノをかけると、すっきりした「トマトの冷製パスタ」が出来上がった…


チェザーレ「おぉ、なかなか洒落た一品ではないか」

アッテンドーロ「さすが、「パスタ大好き提督さん」ね…それじゃ、頂くとしますか♪」

提督「ふふっ…遠慮せずにどうぞ、ルチアには茹でたパスタに白茹でのお肉を乗せたのがあるからね♪」

ルチア「ワフッ…フガフガ……」

チェザーレ「ん、美味いな…カッペリーニはあっさりしていて、トマトの酸味がよく効いているな」

アッテンドーロ「こっちのペスカトーレも…んむ、美味しいわ」

ライモン「うーんっ…おいしいです♪」

提督「そう、よかった♪」

アッテンドーロ「それにしてもこれだけ広い場所に四人と一匹って言うのは少し静かすぎるわね…みんな戻ってこないかしら」

チェザーレ「うむ、ローマ観光に行ったガリバルディたちの土産話も聞きたいものだな」

ライモン「そうですね、みんなが帰ってきたら色々お土産も渡してあげないと」

提督「ふふ、そうね…♪」

ルチア「ワフッ」

………

…その頃・どこかの薄暗い部屋…

渋い男「…これが今回の目標だ」きっちりした姿の中年男が一冊のファイルを渡し、低い声で言った

女「なるほど……しかし、それほどの人物には見えませんが」女の方はきっちりとまとめた髪に眼鏡姿で、服にはチリ一つ付いていない…ファイルに記載された顔写真や経歴を読み進め、時々手元の手帳に何やら書き留める……最後にファイルを閉じて男に返すと切り捨てるように言った…

男「見た目から判断するな。一見穏やかそうだが、これまでに担当した三人が使い物にならなくなっている」

女「それで…開始はいつですか?」

男「ああ、今度の週明けからだ…うまくやれ」

女「了解」

………

…翌日…

ライモン「あ、ナポリからのバスが来ました…みんな元気そうですね」門の前で海軍の借りたバスから降りると、両手いっぱいに荷物を持って入ってくる艦娘たち…中の数人は出迎えの提督たちに向けて大きく手を振っている

提督「休暇中何もなかったようでよかったわ…おかえりー♪」提督が手を振りかえすと、スーツケースを後ろに引き、手にも紙袋や箱を抱えているリットリオが真っ先に近寄ってくる

リットリオ「ただいまです、提督っ!……んちゅ、んふ…ちゅっ……じゅるっ…♪」荷物を地面に置くと提督に抱きつき、うなじに両手を回して押さえつけると、熱い口づけを交わす…

提督「んぅ、んちゅ…んふぅ……もう、リットリオったら…こんな熱いキスは…お昼にするものじゃないわ……♪」

リットリオ「だって、提督とキスしたかったんです……ふふ、あまーい味がしますね♪」

提督「ええ、ドルチェにカスタードのロールケーキを食べたから…お帰りなさい、リットリオ」

リットリオ「はいっ…♪」

エマニュエレ・フィリベルト・デュカ・ダオスタ(アオスタ)「提督。軽巡アオスタ、ただいま戻りました」

提督「お帰りなさい、アオスタ…ナポリはどうだった、楽しかった?」ちゅっ…と左右の頬にキスをして、いたずらっぽくウィンクをする

アオスタ「ええ。途中でコレオーニがはぐれそうになったり、お店で勘定を間違えられそうになったりしましたが…こうしてちゃんと戻ってきました」

提督「ふふ、何はともあれ楽しそうでよかったわ♪」

アオスタ「それはもう…予算もオーバーしませんでしたし、提督へのお土産もちゃんと買えましたから」…戦後賠償艦としてソ連に引き渡されたせいもあってか理詰めの委員長気質で、何にせよきっちりした性格のアオスタ

提督「ありがと…あ、ローマからのバスも戻ってきたわ♪」楽しげに談笑しながらバスから降りてくる数人…と、カヴールが同行していた軽巡ガリバルディに荷物を預けてやってきた…

カヴール「…提督っ!…深海棲艦に誘拐されたと聞きましたが大丈夫でした?…身体に不調はありませんか?」

提督「心配させてごめんなさいね…大丈夫よ……ちゅっ♪」提督より大柄なカヴールの頭をつま先立ちして撫でると、キスを交わす…

カヴール「よかった…チェザーレから電話で聞いた時は心臓が止まるかと思いました……私を心配させるいけない提督にはお仕置きです♪」…さわっ♪

提督「きゃあっ♪…もう、いきなりどこを撫でているのっ……///」そう言いつつもちっとも嫌がっている様子はない提督…

カヴール「うふふっ♪…それはもう、提督のむっちりしたヒップを……また一段とむちむちになりましたね♪」

提督「もう…カヴールのえっち♪」

ガリバルディ「ねぇカヴール、よかったら私にも触らせてくれる?」

カヴール「あぁ、はいはい……ふふっ、独り占めはいけませんものね♪」

ガリバルディ「そう言うこと…提督は相変わらずいい手触りね♪」むにっ…♪

提督「あんっ、もう…♪」

ロモロ「…ねぇ提督、私たちのことを忘れてない?」

レモ「ほんとだよ、レモだってローマのお土産を買ってきてあげたんだからねー?」狼の乳で育ちローマを建国したと言う伝説上の双子を名前に取った「R」級大型輸送潜水艦、「ロモロ」と「レモ」が潜水艦とは思えない巨乳を提督に押し付ける…

提督「大丈夫、忘れてないわ…お帰り、ローマは相変わらずだったでしょう?」

ロモロ「そうね、むしろずいぶん立派になってて驚いたかも……うん、久しぶりの提督はいいねぇ…♪」ふとももを撫で回すロモロ…

レモ「でも車が多くてほこりっぽかったなぁ……物の値段も高くて、レモびっくり」

提督「うんうん…さ、荷物を置いて着替えていらっしゃい♪」

ロモロ「了解♪」

レモ「はぁーい♪」

ライモン「提督、ヴェネツィア組も帰ってきましたよ」

提督「そうみたいね…ずいぶんと肌が艶めいているようだけど……」

アミラーリオ・ディ・サイント・ボン「提督、サイント・ボン帰投いたしました」水中で2000トンを超える大型潜水艦、「カーニ」級大型潜の「サイント・ボン」がピシッと敬礼をする…と、「R」級と同じように潜水艦とは思えないわがままボディが「たゆん…っ♪」と揺れる…

提督「お帰りなさい、ヴェネツィア海軍博物館は面白かったかしら?」

サイント・ボン「ええ…色々と勉強になりましたし、案内の士官さんも丁寧でした」オーストリアに惨敗した「リッサ海戦」以降のイタリア王国海軍を復活・躍進させた偉大な海相の名前を取っただけあり、立っているだけで立派な存在感があるサイント・ボン…

提督「それはよかったわ…お帰りなさい、マルチェロ級のみんな。…その様子だとたっぷり休養できたみたいね♪」

ロレンツォ・マルチェロ「いかにも。なかなか刺激的でいい休暇になった…おっと、マルチェロ級大型潜マルチェロ、ただいま帰投!」

アゴスティーノ・バルバリゴ「同じくバルバリゴ、ただいま帰投…提督にも後で聞かせてあげよう♪」

アンジェロ・エモ「同じくエモ、帰投しました!……まったく、お姉ちゃんたちったらあんな騒ぎを起こして…」

エンリコ・ダンドロ「同じくダンドロ、帰投!相変わらず提督はしゃぶりつきたくなるような美人だな♪」

提督「うふふっ…もう♪」ヴェネツィア出身の中世の提督たちを艦名に取った「マルチェロ」級大型潜水艦たちが形のいい敬礼をする…提督はきりりと表情を引き締めて答礼すると、急に表情を崩して抱き寄せた……

フランチェスコ・モロシーニ「おい、抜け駆けとはずるいぞっ…!」

ラッツァロ・モチェニーゴ「待て待て、本官にも抱かせろ♪」

提督「大丈夫よ、逃げたりしないから…それより手を洗って来たらお茶にしましょうね♪」九人のマルチェロ級をやってくる順に次々と抱きしめる…と、今度は可愛らしい二人が荷物を抱えてやってきた…

クィンティノ・セラ(セラ級駆逐艦)「…ならヴェネツィア土産のお菓子がありますから、一緒に食べましょう…ね、提督♪」

フランチェスコ・クリスピ「そうね」

提督「あ、セラにクリスピ…ちゃんとMTMは見学できた?」

…排水量955トンの小さな駆逐艦「セラ」級はセラとクリスピの二隻で、41年にはクレタ島に隠密接近し、乗員が体当たり直前に脱出する危険な爆装モーターボート「MTM」(爆装艇)6隻を発進させると、イギリス重巡「ヨーク」とタンカー、貨物船を大破・撃沈させている……いつもは人の少ない時間に大浴場で「MTM」のラジコンを走らせているが、今度もお土産に買ったらしい「MTM」艇のプラモデルが入っている箱を抱えている…


提督「あら、イタレリの爆装艇?」(※イタレリ…イタリアのプラモデルメーカー。日本のタミヤとも協力関係にある)

セラ「そうなんです、おおきいスケールで見つけたので買っちゃいました…作るのはアヴィエーレに教えてもらおうと思って///」少し気恥ずかしそうにもじもじしている…

提督「いいじゃない、とりあえずそれは部屋に置いていらっしゃいね」

セラ「はい♪」

提督「ふふ、可愛いわね…お帰りなさい、ドリア、デュイリオ♪」

ドリア「戦艦ドリア、戻りました……んっ、ちゅぱ……ちゅぅ♪……もう、心配したんですからね?」

提督「んぅ、ぷはっ…ごめんなさい、心配をかけて♪」

デュイリオ「んふふっ♪…いいんですよ、提督……ちゅっ、じゅる…っ、んちゅ、れろっ…♪」


…1915年生まれの「おばあちゃん」ながら戦前の大改装で艦の6割を改造、新戦艦なみのぴちぴちな姿に一新されたお洒落なド級艦「カイオ・デュイリオ」と、やはり大改装を受けたむちむちの美魔女、1916年生まれの戦艦「アンドレア・ドリア」…どちらも提督には甘々で、その豊満な身体と燃料不足の影響で力を持て余していた戦前の記憶からか、むらむらと湧きあがる色欲を思う存分ぶつけてくる…


提督「んちゅぅ…もう、こんなところでは駄目よ……まずは荷物を置いて、着替えてからにしましょう?」

デュイリオ「はい…それでは、午後のお昼寝の時間にお邪魔します♪」

ドリア「…あら、私もお邪魔しようと思っていたのに」

デュイリオ「それなら二人一緒にお邪魔したらどうかしら…ね、ドリア♪」

ドリア「まぁまぁ、それも楽しそうね…ふふっ♪」

提督「…さっそく身体中の関節がきしむことになりそうね」

ライモン「そう言いながら顔がにやけていますよ、提督」

…しばらくして・食堂…

ガリバルディ「スペイン広場は大変な人混みで…ジェラートの屋台も辺りを散らかすからって移動させられていたけど、私たちはカフェで食べてきたの」

提督「あら、そうだったの♪」美味しいコーヒーとお菓子を前に談笑する艦娘たちは、それぞれお土産や贈り物をあげたりもらったりしてはきゃあきゃあ言ってはしゃいでいる…と、チェザーレがいくつもラッピングされた包みを持って明るい大食堂を歩き回っている……

チェザーレ「おぉ、アヴィエーレ…ちょうどいい」

アヴィエーレ(ソルダティ級駆逐艦)「どうしたんだい、チェザーレ…私に用事かな?」艦名が「航空兵」だけにローマの航空ショーとガルダ湖畔の博物館で戦闘機尽くしの時間を過ごしてきたアヴィエーレ…相変わらずサングラスとオールバックの髪に、革のブーツで格好よく決めている…

チェザーレ「うむ…実は、アヴィエーレにこれを渡したくてな…よかったら受け取ってもらえるか?」手に乗る程度の大きさをした、細長い包みを渡す…

アヴィエーレ「もちろんさ、どうもありがとう…開けていいかい?」

チェザーレ「うむ、チェザーレなりに吟味したつもりなのでな…喜んでもらえると嬉しい」

アヴィエーレ「どれどれ…って、これは」包み紙を剥がすと、銀色の精密そうなピンセットのセットが入っていた…

チェザーレ「うむ、模型用のピンセットなのだが…アヴィエーレはよく飛行機模型を作っているだろう?チェザーレの気持ちがこもったこれを手許に置いてもらえたら…そう思ってな」

アヴィエーレ「このピンセット、前から欲しいと思っていたんだ…嬉しいよ、チェザーレ///」

チェザーレ「うむ、愛用してもらえると嬉しいぞ…」

提督「……チェザーレ、最後の数日間ですごい額の買い物をしていたけど…まさかね」

チェザーレ「ディアナ、そなたに贈り物があるのだが…」

ディアナ「あら、ありがとうございます…何でしょうか?」優美なデザインで最大32ノットを出していた高速スループ「ディアナ」は重要物資の輸送任務が多かったが、鎮守府では食堂をきりもりしている…艦娘「ディアナ」はボリュームのある淡い金髪で「ディアナ様」だけに水色の瞳に水色の口紅を引いている…

チェザーレ「うむ…これなのだが」

ディアナ「まぁ、ミラノ製の調理道具セット…わざわざ買ってきてくれたのですか」

チェザーレ「いや、他に思いつく物がなくてな……これでディアナが楽に調理できるようになれば嬉しいぞ」

ディアナ「ええ、大事に使わせてもらいます♪」

提督「…」

チェザーレ「…ポーラ、構わぬか?」

ポーラ(ザラ級重巡)「はぁ~い、何でしょ~♪」

…重防御と攻撃力、ほどほどの速力をバランスよくを兼ね備えた重巡ながら、淡いグレイの髪にえんじ色のフレアースカート、淡い灰色のブラウスとふんわりとした印象のポーラ……ワインや洋酒に関してはかなりの目利きで、食卓にのぼるワインやリキュールの発注や時々ある押収品の競売では競り落とし役なども任されている…また、姉妹のザラ、フィウメ、ゴリツィアたちとは「あの時」の悲惨な結末の反動もあって一緒に過ごせることが嬉しくてたまらず、昼夜問わずにかなりの姉妹愛を育んでいる。最近はザラ級の改修型で一人っ子の「ボルツァーノ」もその渦に巻き込まれつつある…

チェザーレ「いや…ちょっとした贈り物なのだが……」

ポーラ「贈り物ですかぁ~、嬉しいです~♪」

チェザーレ「ふっ、中身を見たらもっと喜んでもらえるはずだ…さ、開けてみてくれ」

ポーラ「はぁ~い……わぁぁ、五つ入りのグラスセットですねぇ♪」

チェザーレ「うむ…銀製でフィレンツェのアンティークなのだ。これなら落としても割れぬから、姉妹の愛と友情をずっと祝い続けてくれるだろう…それと五つ目は仲良くしてくれているボルツァーノのために、そう思ってな」

ポーラ「ポーラ、嬉しいですっ…♪」

チェザーレ「…なに、たまたまチェザーレの目に留まってな……姉妹でワインを傾けるときにでも使ってくれ」

ポーラ「ありがとうございます、チェザーレ♪」

提督「…道理でお財布がすっからかんな訳ね……」

チェザーレ「…トリチェリ、素敵な錬金術士に似合いそうなケープを欲しがっていたであろう……チェザーレの見立てなのだが、着てみてくれぬか?」

トリチェリ(ブリン級大型潜)「そんな、こんな高そうな……ふんわりと軽くて、とっても馴染みますね……ガリレイ先生、チェザーレさんからこんな立派なケープを頂いてしまいました♪」

…フランコのナショナリスタ側スペインに引き渡された先代に続く二代目の「トリチェリ」は浮上砲戦に追い込まれ駆逐艦三隻、スループ艦一隻と交戦しながらも乗員の脱出・自沈までに英駆逐艦一隻を撃沈、一隻を損傷させるなど勇敢な艦で、名前をガリレオの弟子で物理学者の「エヴァンジェリスタ・トリチェリ」から取ったことから鎮守府の「錬金術士」組として淡い桃色と水色のケープや、クリーム色とセージグリーンのマントなど、お洒落な格好をしていることがある…

ガリレオ・ガリレイ「あら、よく似合ってる…チェザーレ、トリチェリに素敵なケープをありがとう♪」

チェザーレ「ふふ…ガリレイにはこれを使ってもらおうと思ってな」

ガリレイ「あ、素敵な帽子♪」

チェザーレ「…羽飾りがいかにも「錬金術士」らしいと思ってな。ぜひ使ってくれ♪」

ガリレイ「まぁ、嬉しい。しかも大きさもぴったり……今度、ぜひ「ガリレイのアトリエ」まで来て?…色々おもてなししてあげるから♪」

チェザーレ「そうか、では今度お邪魔させてもらおう…♪」

提督「…古代ローマのチェザーレは女たらしで有名だったって言うけれど……うちのチェザーレもいい勝負ね…」

マルチェロ「あれは天才のなせる技よな…ところで提督、隣に座ってもよいか?」

提督「ええ、どうぞ♪」

ライモン「コーヒーもどうぞ、マルチェロ」

マルチェロ「かたじけない……いや、せっかく行って来たのでヴェネツィアの話をしようと思ってな…このように写真もあるぞ♪」

提督「どれどれ…あら、上手♪」

バルバリゴ「全く、ずいぶんと羽目を外させてもらったよ…あれは楽しかったな♪」

提督「そんなに楽しかったの…よかったわね♪」

プロヴァーナ「何しろヴェネツィアで味わえる歓楽は全て堪能したのでな…痴態の限りを尽くしたと言ってもいいかも知れん♪」

提督「まぁ、そんなに遊んだの?」(ふふ、マルチェロたちは大げさなんだから…♪)

エモ「それにしたって…さすがに警察沙汰になったのはまずかったですよ……」

提督「…え?」

モロシーニ「こらこら、話の一番いい所をばらしてどうするのだ……マルチェロ、先任として提督に話してあげてくれ♪」

マルチェロ「分かってる、実はヴェネツィアでな……」

提督「…なんだか聞かないでおいた方がいいような……」

………

…夏季休暇数日目・ヴェネツィア…

マルチェロ「…これで海軍博物館も観たし、美術館も巡り、買い物もしたな♪」明るい午後のヴェネツィアを堂々と闊歩するマルチェロたち…

ダンドロ「いかにも…ヴェネツィア人の教養はだいたい済ませたな……もう言うことなしだ♪」

エモ「本当ですね、カナル・グランデ(大運河)も相変わらずですし…もっとも、こんなに外国の観光客が多いとは思いませんでした♪」

マルチェロ「おいおい、何を寝ぼけたことを言っているのだ……諸君、まだ少し足りんものがあるだろう…違うか?」

ヴェニエーロ「ほう…何です、マルチェロ提督?」

マルチェロ「それはもちろん、ヴェネツィア美人を抱くことに決まっている…気に入らなければ王侯貴族でも相手をしないと言う『クルティザン』のお姉さま方を口説かなければいかんだろう♪」

(※クルティザン…ルネサンス期ヴェネツィアにいた超高級娼婦のお姉さま方。大変教養がありながら橋の上で堂々と胸を露出したり、乳房を大きく見せるファッションで美しい身体であることを誇っていた。王侯貴族の愛妾になった女性も多い)

エモ「えっ…いいんですか?」

マルチェロ「何がいけないのだ、ヴェネツィアと言えば…クルティザンだろう。提督もいいがたまには違う味も楽しまんと……な♪」そう言って歓楽街に足を向ける…

ヴェニエーロ「ははは、昼からとはマルチェロ提督は大変な助平でいらっしゃるな♪」

マルチェロ「何をいうか…ヴェネツィア美人の柔らかな身体を触らずに鎮守府に戻るなど……っと!」

若いあんちゃん「…あ、ぶつかっちってすんません!」慌てているようで足早に立ち去ろうとする…

マルチェロ「構わんよ……が、この手は何だ?」

あんちゃん「…」

マルチェロ「この生粋のヴェネツィア人から財布をすろうとはなかなか向こう見ずだな…?」

あんちゃん「ちっ…おい、あんまりでかい口叩くなよ……お嬢ちゃんよぉ!」

ちんぴら「おうおう、やろうって言うのかよ!」

ちんぴらB「いい度胸だぜ!」…それぞれ折り畳みナイフを抜いて構えた

マルチェロ「…おや、仲間連れか……スリの腕も二流なら追いはぎに早変わりと言う態度も気に入らん…諸君!」腰に差していた金の鞘をしたサーベルに手をかける…

エモ「マルチェロ、一般人相手の抜刀は禁止ですよ…っ!」

マルチェロ「そう固い事をいうな、アンジェロ…先に抜いたのはあっちだぞ?」

スリ男「…がたがたうるせぇんだよ、畳んじまえ!」

チェザーレ「ほう、面白くなってきたな…それで、その不届き者はどうなったのだ?」

マルチェロ「まぁまぁ、物語は順を追っていかないと…♪」

アオスタ「一般人相手に喧嘩なんて…私たちは本気になったら力が違うんですから、そういうことはしてはいけないって言われているでしょう……」

ジャコモ・ナーニ「まぁまぁ、今はマルチェロの活躍を聞いてあげて下さい…♪」

………

スリ男「おらっ…!」

マルチェロ「ふんっ…本気でヴェネツィアの海軍提督にかなうと思っているのか……?」手刀で手首を一撃してナイフを弾き飛ばすと、みぞおちに見事な蹴りを叩きこむ…

スリ男「ぐえっ…!!」

ちんぴら「てめぇら…!」オープンカフェの看板をひっくり倒しつつ、少し気弱そうなエモに向かってナイフを突き上げる…

エモ「…いやっ!」身をかわしつつ、とっさに急所を蹴り上げるエモ

ちんぴら「う゛ぉ…っ!」

ちんぴらB「くそぉ、小娘だからってもう容赦しねぇぞ!」

ダンドロ「よーし…来いっ♪」サーベルを鞘ごと持ってナイフを受け止めると、腕をねじってから鞘で喉元を締め上げる…

ちんぴらB「ぐぇ…っ……」

ダンドロ「…片付いたな、マルチェロ」

マルチェロ「全く、何とたわいのない……襲う相手を間違えたな」…辺りからは「生粋のヴェネツィア人」への喝采と同時に「警察を呼んだから引き渡しておくよ」という親切な声も聞こえる

マルチェロ「…親父さん、看板は済まなかったな。取っておいてくれ」ひっくり返ったテーブルや看板を見て、数枚のリラ札を取り出すマルチェロ

カフェのオヤジ「あぁ、悪いね…それにしても「艦娘」って言うのはすごいもんだ、身体はそんなに大きい訳でもないのに……あっという間にちんぴら三人を片づけちゃったよ」

マルチェロ「はは、少しばかり鍛え方が違うんでね…それに生粋のヴェネツィア人って言うのは「弱きを助け、強きをくじく」じゃないと」

オヤジ「ああ、全くだね…もっとも、あんなおっかない連中を張り倒すなんて俺にはできないが……」

マルチェロ「なに…必要ならいつでもやってあげますよ……そうだ♪」運河を行き来する、艶のある木の外板も美しいモーターボートの水上タクシーに目を付けた…

エモ「どうしたんです、マルチェロ?」

マルチェロ「せっかくのヴェネツィアだから、水上タクシーで運河めぐりをしよう♪」

モチェニーゴ「そりゃまた急に…クルティザンのお姉さんと遊ぶんじゃなかったのか?」

マルチェロ「いや、そこに伸びているやつを少し綺麗にしてやろうと思ってね…♪」

ナーニ「あっははは、それはいい…おーい、そこのボート♪」

…数分後・運河…

水上タクシーの艇長「あの、お客さん…」

マルチェロ「どうかしたか、艇長?」ヴェネツィア民謡「ヴェネツィアの舟歌」を口ずさみながらご機嫌のマルチェロ…

艇長「いえ…ね、そろそろやめてあげたらどうですか?」

スリ男「がぼがぼ…ぶはぁ!……うえっ…がぼがぼ…ごぼ…」スリ男はボートの舷側から運河に頭を突っこまれ、時々髪をつかまれては息継ぎに頭をあげさせられている…

マルチェロ「そうか?…中世の艦隊では盗みは鞭打ち…追いはぎは吊るし首だったのだから、ずいぶん優しいと思うがな?」

艇長「いえ、そりゃそうかもしれませんがね…」

マルチェロ「まぁよい、ちょうど一周したからな…次で降りる♪」

艇長「毎度あり…今度はこういうのは無しで頼みますよ」

マルチェロ「了解だ、艇長…いい舵さばきだったぞ♪」

ダンドロ「ははは、これでこやつも海軍提督を襲うとどうなるか身に染みたろう♪」

モチェニーゴ「身体もきれいになっただろうしな♪」

マルチェロ「…それでは、お待ちかねのヴェネツィア美人としゃれこもう♪」

エモ「お、おー…」

ヴェニエロ「よしきた♪」

…ヴェネツィア・歓楽街の橋…

マルチェロ「おーおー…いるいる♪」

モチェニーゴ「美人が多いのは相変わらずだ…もっとも、百合専門のお姉さまたちがいるとは……いい時代だな♪」

ナーニ「ふふ、それではここからは単独行動だな…お互いに大漁を♪」

エモ「…う、うん……ほんとにいいのかな…」

娼婦のお姉さん「…あら、可愛い水兵さんね……でもね、こんなところをうろついてちゃ駄目よ」…お姉さんは金のバックルが付いたラメ入りの黒いベルト付きミニワンピースと紅いエナメルハイヒールを着こなし、肩からグッチのバッグをかけている…冷たいつんとした顔だが、少しだけ驚いたような表情とからかうような声が混じっている…

マルチェロ「はは、ヴェネツィアのヴィーナスはなかなかきついことを言う。ま、せっかくこうして声をかけてもらえたのだ……海軍さんでよければ、少しおしゃべりをさせてもらおうか」橋の欄干に背中を預け、行きかうゴンドラや水上タクシーを眺めている…

お姉さん「別にいいけど……会話もできないような野暮な人は嫌よ?」

マルチェロ「そう言われると自信がないな…そのお洒落な服はヴェルサーチかな」

お姉さん「惜しいわね、フェンディよ」

マルチェロ「おやおや…黒のドレスだからそう言ったのだが……」

お姉さん「ふふ、でもなかなかやるじゃない…遅いお昼くらいなら付き合ってあげてもいいけど?」

マルチェロ「それは光栄だ、では「ボッタルガのスパゲッティ」でもいただこう♪」(※ボッタルガ…カラスミ。ヴェネツィア周辺の名物)

お姉さん「あら、分かってるわね…アメリカナイズされた「ピザ」とか言ったら帰るところだったわ……フローラよ」

マルチェロ「フローラ…確か、片方の乳房を出してこちらを見ているパルマ・イル・ヴェッキオの描いた美人絵にもそんな名前の女性がいたな……しかしだ、私はどこか媚びるような「彼女」の絵より、凛とした君の方が好きだぞ?」

フローラ「へぇ、海軍さんはお上手なのね…いいわ、お昼は私がおごってあげる」

…一方…

エモ「…あの、私でいいんですか?」

お姉さん「ええ、いいわよ…お名前は?」

エモ「アンジェロ・エモです…えーと、お姉さんは……」

お姉さん「『ルクレツィア』よ♪」艶やかな笑みと明るい色気を振りまきつつ、エモの腕に自分の腕を絡める…薄いドレス越しに小ぶりな胸の感触が伝わってくる…

エモ「…ルクレツィア……ボルジア家にもそう言う名前の方がいましたね」

ルクレツィア「そう、正解よ…エモは歴史にも詳しいのね♪」

エモ「いえ……あれ、でもルクレツィア・ボルジアって…///」

ルクレツィア「そう。夜毎に相手を取りかえると言われて、みだらな女で有名だったのよ…利用されていただけとも言うけれど、真相は分からないわね……」

エモ「詳しいんですね、ルクレツィアは…///」

ルクレツィア「ええ。私、普段は中世史の研究をしているの……よかったら、しばらく歴史散歩でもしましょうか♪」

エモ「は、はい…///」


………

しばらく投下できずにいてごめんなさい、インフルエンザって怖い……身体に相談しつつちまちま投下していくので、よかったらお付き合い下さい…


…ちなみにもう少しでイギリスのグレイ少将とドイツのヴァイス中佐が登場してきます

いっち、ちゃんと食べろよー

>>93 グラツィエ…土曜日辺りは暖かい紅茶に砂糖とレモン、ラム少々を垂らしたものやショウガ入りスープで過ごしていましたが、おかげさまでこの数日は口も開くようになり、ちゃんと食べてます……とりあえず、せっかくなので少し投下していきます…

提督「じゃあマルチェロたちはクルティザンのお姉さんたちと刺激的なひとときを過ごしたわけね♪」苦笑しながら両手を上げ、肩をすくめた提督

マルチェロ「いや、それで済めば良かったのだがな……本官がフローラ嬢のお店にお邪魔していた時に…」

提督「…え、まだ何かあるの?」

………

…ヴェネツィア・高級娼館「白百合館」…

マルチェロ「…ふぅぅ……何とも刺激的であったな……さすがに…息が…切れた……」ベッドにあお向けにひっくり返り、美しい天使と女神たちがみだらな行為にふけっているルネサンス風の天井画を眺めている…

フローラ「そう、ならよかったわ。こっちも愉しませてもらったし…」黒いガーターベルトだけの姿で吸い口をはめた細いシガレットに火を付け、しばらく紫煙をくゆらせると、脱ぎ散らかしたマルチェロの服や綺麗に畳んであるフローラ自身の服、ベッドに放り出してあるべとべとになった玩具や道具を片づける…

マルチェロ「…そうか、それはよかった……ところで、これだけの美女と愉しませてもらったのだ…それ相応の物が必要だろうな……?」たっぷりとリラ札を詰めてきた財布をちらりと眺めた

フローラ「…あぁ、いいのよ。さっきの分で充分だわ」

マルチェロ「そうか?…ところで皆はどうしているかな」

フローラ「ふふ、それぞれうんとお楽しみなんじゃないかしら……特にルクレツィアにつかまってたあの娘…きっと腰が抜けてるわ」

マルチェロ「はははっ…あの可愛いエモがか……見られなくて残念だな♪」…と、せわしないノックと同時に「開けて下さい!」と命令口調の声がする

フローラ「…はぁ……こんな時に風紀課の手入れかしら」

マルチェロ「…よかったら本官が時間を稼ぐが?」

フローラ「大丈夫よ、どうせこの辺りの婦警はみんな骨抜きにしているんだから……どなた?」

…ドアを開けると白の制服をかっちり着こなした女性二人が立っていて、一人がドアの外に立つと、もう一人がずかずかと入ってくる…マルチェロは入ってきた女性の格好からすぐに憲兵隊だと察しを付けた…

フローラ「…なに、警察じゃないの?」

憲兵「海軍憲兵です…貴女ではなくそちらの艦娘に用があります……とりあえず何か身に付けてください」マルチェロにむかって言った…

マルチェロ「そうか、お役目ご苦労…本官に何か用か?」全裸でベッドの上に起き上がると、中世の提督らしい三角帽子だけをかぶって敬礼した…

憲兵「はい。一時間ほど前に市警察から連絡がありましたが……運河沿いで一般人ともめ事を起こしたそうですね?」

マルチェロ「一般人…あぁ、スリに財布を盗られそうになって取り押さえようとしたら、けちなナイフを抜かれてな……正当防衛だと思ったが」

憲兵「武器を取り上げるだけなら正当防衛ですが…その後何かしませんでしたか?」

マルチェロ「さて…どうだったかな……美女ならともかく、あいにくちんぴらに割ける時間はなかったのでな。そこらのカフェの店主たちに預けておいた」

憲兵「…そう言う時は警察か憲兵隊、カラビニエーリに通報するのが義務です。それに水上タクシーに乗り、くだんの人物を水に突っこんでいたという証言もありますが?」

マルチェロ「ふむぅ……何かの勘違いではないか?本官は橋の上でこちらの春のように可憐な女神と談笑していたのだ…そんなむさくるしい連中と一瞬でも長く付き合おうとは思わんが」

憲兵「…まぁ良いでしょう。幸い市警察からも「街の風紀を乱す連中を懲らしめてくれた」と言うことで、大目に見ると言ってきていますから……ただし、規則ですから所属の管区には報告を送ります。身分証はありますか」

マルチェロ「あぁ、ここにあるぞ…それ」

憲兵「なるほど…イオニア海管区の「タラント第六」ですね……話は以上ですが、今後はそう言ったことはしない事です。それでは」

マルチェロ「承知した……たわけめ、情事の余韻にしかめ面で入って来おってからに…」憲兵が帰るとしきりに文句をいうマルチェロ…

フローラ「ふふっ…それじゃあ、もう一回してあげましょうか……お代はその「面白そうな話」を聞かせてくれるって言うことで…どう?」

マルチェロ「うむ…それでは気分直しにもう一戦と行こう♪」フローラにまたがってもらうと、陶器のような肌に手を這わせた…

………

マルチェロ「…という訳で、素敵な時間の最中だと言うのに無粋な憲兵に踏み込まれた……という訳なのだ」

提督「…」

リットリオ「ふふっ、それもいい思い出ですよ♪」

ガリバルディ「そうよ…それにそのちんぴらを運河で「洗ってやった」話、痛快でいいわ♪」

トレント(トレント級重巡)「そうですね…少しはらはらしましたけど、なかなか面白いお話でした」

スクアロ(スクアロ級中型潜)「…私ならもっとシンプルにかたをつけていただろうがね……たとえばそのスリが逃走中に「不慮の事故」で橋から転落するとか……いずれにせよお楽しみの最中に憲兵とは…興ざめだったろう」


…艦名がサメ(海のギャング)にちなんでいるからか、びしっと決めたスーツ姿だったり「ゴッドファーザー」に出てくるアル・パチーノの物真似が得意なスクアロは、物騒な事をさらりと言ってのける…


コルサーロ(ソルダティ級駆逐艦)「あぁ、そいつはまったく災難だぜ…だいたいあたしに言わせれば、憲兵だの警察だのって言うのはガミガミ言ってばかりでロクな事をしやがらねえ」兵種を艦名にしているソルダティ級の中では珍しい名前の「コルサーロ」(アラビア海賊)が息巻いた…

エモ「…でも、お姉さんたちはすごかったから///」

ダンドロ「いかにも…相変わらずヴェネツィアのクルティザンたちは素晴らしかった♪」

モチェニーゴ「ああ、あれだけの女性たちを抱けるなら……提督、どうかしたか?」

提督「はー……あなたたち、憲兵隊と揉めてくれたわけね…」

マルチェロ「…まずかったか?」

提督「まずいとは言わないけど…憲兵隊の事だから、きっと査察か特別監査か……参ったわ」

マルチェロ「あー…本官が至らないばかりに迷惑をかけてしまった……申し訳ない」

提督「あぁ、いいのよ…むしろ聞いていて面白かったわ」

マルチェロ「そうか?」

提督「ええ…ただし、今度はスリを捕まえても「水浴び」をさせたりはしないようにね?」

マルチェロ「了解した♪」

………

…数日後・執務室…

カヴール「提督、年度替わり最初の書類が届きました」

提督「はぁぁ…相変わらずどっさりね……」

カヴール「まぁまぁ、私も手伝いますから…ね?」

提督「ありがとう……実際、一人で片づけられる量じゃないわよね」

カヴール「そうですね…よかったらライモンドとドリアも呼びましょうか?」

提督「そうねぇ、しばらくだけ手を借りましょうか……はぁい?」軽いノックの音に返事をする

リットリオ「提督、いいですかぁ?」

提督「あら、リットリオ…そうね、お話くらいならいいけれど、この書類が片付くまでそれ以上の事は出来ないわよ?」

リットリオ「それならリットリオも手伝いますよ?」

提督「あら、本当?…ありがとう、助かるわ♪」

リットリオ「…ふふっ、提督にキスしてもらっちゃいました♪」

カヴール「おかしいですね……私はさっきからお手伝いしているのに」

提督「貴女は秘書艦でしょう?…でもいいわ♪」…ちゅっ♪

カヴール「うふふっ、これでまた頑張れます♪」

提督「そうね、協力して片づけましょう」

…しばらくして…

カヴール「はい、この書類は処理できました」

提督「ありがとう、カヴール」

リットリオ「…ふーん、ふふーん♪」てきぱきと書類を片づけるカヴールと、少し飽きっぽい代わりに速度の速いリットリオ…

提督「ふぅ、そろそろ五分の一は終わりそうね……って、やっぱり…」

カヴール「どうなさいました?」

提督「あー…これを見て」ひらひらと振ってみせた大仰な海軍の紋章入り書類には「特別監察の実施について」とある

カヴール「あらあら、憲兵隊の……ふふっ、悪いことはできませんね?」にこにこしながら冗談めかすカヴール

提督「笑えないわ…きっと何につけてもねちねちと文句を言ってくるつもりでしょうし……まぁいいわ、今日はこれでおしまい♪」残りの書類を「未決」の箱に乗せると、椅子の上でひっくり返った…

カヴール「お疲れさまでした、提督♪」

提督「いいえ。二人のおかげでずいぶん助かったわ…さぁリットリオ、ご用はなぁに♪」執務机に腕をおいて頬杖をつくと、小首を傾げてリットリオの方を向いた…

リットリオ「はいっ、実は……妹が欲しいんですっ♪」

提督「そうねぇ…妹、いいじゃない……って、ちょっと待って」

リットリオ「はいっ。私の妹たちを鎮守府に迎えてくれませんか?」

カヴール「リットリオ級と言うことは…」

提督「未成艦の「インペロ」をのぞいた二隻ね…一応建造枠は余してあるけれど、出るかどうかは確約できないわ……」

リットリオ「ですから、試してもらえませんか?やっぱり一人ぼっちだと部屋が広すぎますし、姉妹で楽しく過ごしたいです」

提督「まぁ、それもそうね…いいわ、今度の建造の時に試してみましょう」

リットリオ「わぁぁ…やっぱり提督は優しいですねっ♪」…ぎゅっ♪

提督「ふふっ、いえいえ…♪」さわっ…♪

リットリオ「あんっ、提督ったらどこを触ってるんですかっ♪」

提督「それはもうリットリオのすべすべな船底のバルジを…」そう言いながらスカートの中に手を差しいれ、すべすべのヒップの感触を楽しむ提督…

カヴール「…そうですよね、やっぱり新型戦艦の方が旧式の改装戦艦よりもいいでしょうね」

提督「もう…カヴールは堂々たるド級艦でしょう?そう簡単にすねないの♪」

カヴール「でしたら私の機嫌がよくなるような一言を下さいな、提督?」

提督「んー、そうねぇ……大人の女性って素敵よ、カヴール♪」…ちゅっ、と頬にキスをしながら耳元にささやいた

カヴール「うふふっ…いいでしょう。ただし、後でお昼寝もご一緒させてもらいます♪」

提督「ふふっ、了解…♪」

…夕食時…

ムレーナ(フルット級中型潜)「それにしても査察か…なんなら私が片を付けようか」


…滑らかに波打つ金褐色の髪がウツボの尾びれのように背中に流れているフルット級中型潜の「ムレーナ」(ウツボ)……級名が「波」の優雅な言い方から来ている「フルット」級だけあってどの娘も端正な身体付きで、顔もミュシャの絵のように美しく、実際の性能もイタリア中型潜の中でも最も優れていたとされる……スクアロ級の「スクアロ」がしていたアル・パチーノの物真似は「本家」ムレーナの物真似で、こちらの物真似は絵のように美しい顔立ちもあいまってすごみもある…


提督「駄目よ、憲兵相手にもめ事をおこしちゃ」

ムレーナ「そうか…必要ならボート遊びに連れ出して、沖でこうしてもいいのだが……」しゅっ…と喉を切り裂く仕草をしてみせる

スクアロ「あぁ、そうね…内勤ばかりの憲兵に喰らいついて……柔肉を食いちぎる…ふふっ♪」

デルフィーノ(スクアロ級中型潜)「だからなんでそんな怖い話をするんですかぁ…もう、提督ぅ!」

提督「はいはい、こっちにいらっしゃい♪」

デルフィーノ「もう、スクアロったらひどいんですよぅ…帰ってきて早々にホラー映画を見せて来るし!」…頭がよく愛嬌のあるデルフィーノ(イルカ)はいたずらでよく姉のスクアロに怖い目に合わされている……が、イルカだけに自慰にふけってしまう性質であったりもする…

提督「もう、スクアロもいい加減止めてあげなさい?」

スクアロ「ふふっ…デルフィーノの怖がる姿を見るとむらむらして…♪」

提督「デルフィーノは可愛いものねぇ…一人で喘いでいるのを聞くと私だってぞくぞくしてくるもの…♪」ひざの上に大き目な中学生くらいの「デルフィーノ」を乗せ、綺麗な淡灰色の髪を撫でている…

デルフィーノ「…だ、だって///」

ポーラ「いいじゃないですかぁ~…ね、デルフィーノ♪…一人でするのも刺激的ですよねぇ?」

デルフィーノ「は、はい…///」

ザラ「それにしたってポーラ、あなたは少し頻度を考えなさい?」

ポーラ「……そう言っておきながら、いつも一番乗り気なのはザラ姉さまじゃないですかぁ~♪」

ザラ「う…だってポーラたちが可愛くって仕方ないんだもの……姉妹えっちだって気持ちいいし///」

ポーラ「あー、ザラ姉さまったら赤くなってますねぇ~…か~わいいっ♪」…ちゅっ♪

フィウメ「ザラ姉……私もザラ姉のこと、好きですよ♪」

ゴリツィア「私もです…姉様たちの事……離したくないくらい///」

デュイリオ「あらあらぁ、見せつけてくれますね……ドリア、お部屋で私と一杯いかが?」

ドリア「ふふっ、そうですね…今日はデュイリオだけに熱々のドリアを振る舞ってあげましょうか……♪」

デュイリオ「まぁ、それは美味しそうね……きっと中はとろっととろけて…♪」

ドリア「ねっとりと絡みつくような…さ、行きましょう♪」二人は指を絡めて手を握ると、意味ありげな笑みを交わしながら出て行った…

提督「…さーて、私もお風呂にしましょう……エリトレア、今日の夕食も素敵だったわ♪」

エリトレア「はいっ、満足してもらえて嬉しいですっ♪」

…植民地用スループと言うことで航続距離はあったが低速の「エリトレア」はそこそこの性能の割にはかなりの幸運艦で、エリトレア・マッサワ港から東南アジアへの脱出を阻止しようとする英海軍や、反対にイタリア敗戦後には東南アジアのサバンからインドの英海軍に投降しようとして日本の軽巡「球磨」に追われ、それも振り切るなどなかなかの幸運の持ち主でもあった……今はディアナと交代で厨房を担当していて、戦時に駆け回っていたせいか東アフリカ風料理や、エスニックな東南アジア風料理が得意だったりする…

提督「それじゃあ、バーカウンターの店じまいはいつも通り0100時までにね♪」…食堂の隅っこに作られているバーカウンターでシェーカーを振っているフルット級「ヴォルティーチェ」(渦・渦動)に声をかけると、ライモンを連れて大浴場に向かった

…ある日…

提督「はぁ…海外の提督さんたちが来る前に特別監察なんて……まったく、憲兵隊には私の事を恨んでいる誰かがいるに違いないわ」優雅な姿勢でコーヒーにグラッパ(※ぶどうの絞りかすブランディ…イタリア特産)を垂らすと、香りを楽しんでからすすった

チェザーレ「提督ほどの女たらしならそれは恨まれるだろうな…んっ!」

提督「だとしてもそれを特別監査でぶつけてくるなんて…まったく、底意地が悪いわ」

チェザーレ「かもしれぬな…ぐぅっ!」

提督「…チェザーレ、さっきから剣の鞘を背中に回して何をしているの?」

チェザーレ「いや…どうにも肩甲骨の下あたりがかゆくてな……手も届かぬし、長剣の鞘ならと思ったのだが…」

提督「ふふ、そんなことなら私が…」

ダ・ヴィンチ(マルコーニ級大型潜)「…ちょっと待った!この不世出の天才「レオナルド・ダ・ヴィンチ」が新しい発明を持ってきましたから、ぜひ試してみて下さい♪」

チェザーレ「…ダ・ヴィンチか、今度はどんな発明品なのだ?」

ダ・ヴィンチ「ふふ…気になりますよね?……はい、どうぞ使ってみて下さい♪」木でできた板状のものを渡した

チェザーレ「あー…チェザーレの目には薄い木のヘラにしか見えぬが」

ダ・ヴィンチ「んー、惜しい…よく見て♪」

チェザーレ「…よく見ると片方に曲線が付いているな、そしてそこに刻み目が入れてある……これで背中をかけばよいのか?」

ダ・ヴィンチ「はい、そうですよ…さぁさぁ、遠慮せず♪」

チェザーレ「ふむ…なるほど……おぉぉ…まさに「かゆいところに手が届く」な♪」

ダ・ヴィンチ「そうでしょう、まさに大発明です♪」

ジュセッペ・フィンチ(カルヴィ級大型潜)「待て、ダ・ヴィンチ…たしかジァポーネにはそう言う道具があるぞ」


…声をかけたのはカルヴィ級大型潜の「ジュセッペ・フィンチ」(フィンツィ)…フランス・ボルドーの前線基地から日本まで物資輸送任務に就く予定で改造されたがその前にイタリアの休戦を迎え、ドイツ潜「UIT.21」として戦没した経歴がある……そのせいかドイツ風の革長靴とかっちりした物腰、それに妙に間違った日本の知識をため込んでいる自称「日本通」で、鎮守府には実際に神戸まで到着した「ルイージ・トレーリ」などがいるにも関わらず、相変わらず的外れなことばかり言っている…


ダ・ヴィンチ「そうなんですか…ジァポーネに先を越されましたか」

フィンチ「いかにも!それはジァポーネで言うところの「猫の手」というもので、ことわざにも「猫の手でも借りたい」と言う風に名前が出てくるのだ」

ダ・ヴィンチ「なるほど…」

ルイージ・トレーリ(マルコーニ級大型潜)「…あの、フィンチ」

フィンチ「何だ、トレーリ。ジァポーネにこういう道具はあっただろう?」

トレーリ「ええ、ありましたが…これの名前は「孫の手」で、猫の手じゃありませんよ……」トレーリは1000トン越えの大型潜らしい高校生くらいに見える姿と豊満な胸、きゅっと引き締まった腰、それに可愛らしい顔立ちながら、イタリア・ドイツ・日本の軍籍に属しただけあって三カ国語もぺらぺらで物腰も礼儀正しい…と、非の打ちどころがなく、滑らかな髪には日本らしいヒスイと銀の髪飾りをつけている…

フィンチ「そうか…間違えてしまったな……とにかく、こういった道具はジァポーネに古くからあるのだ」

ダ・ヴィンチ「それは残念…新発明だと思ったのに」

チェザーレ「ふむ…最初の発明者ではないにせよ、背中はかけるし良い道具だと思うぞ。ダ・ヴィンチ」

ダ・ヴィンチ「チェザーレ、ありがとう♪…それではもっとたくさん発明しますから、ぜひ実験につき合ってくださいね♪」

チェザーレ「う、うむ……参ったな」弾むようにアトリエに戻っていくダ・ヴィンチを見てげんなりしている

提督「チェザーレも大変ね?」

チェザーレ「うむ…」



バンデ・ネーレ「どうかしたの?」…相変わらず「黒備えのジョバンニ」だけあって黒一色の格好をしているジュッサーノ級軽巡「ジョバンニ・デレ・バンデ・ネーレ」……中性的な顔立ちで背が高く、かなり華奢な身体付きをしている…

提督「いえ、ダ・ヴィンチの発明品の話…そういえば、ミラノはどうだった?」

バンデ・ネーレ「うん、楽しかった。いっぱい買い物もできたし、黒い服もうんとあって…そうだ、ちょっと着替えて来る♪」…部屋に駆けていくと、しばらくして戻ってきたバンデ・ネーレ

バンデ・ネーレ「どうかな…ボクに似合うって店員さんは言ってくれたけど」黒のしっとりしたスカートに袖なしのハイネックセーター、それにオニキスをあしらった銀のアクセサリー…

提督「…とっても綺麗よ、バンデ・ネーレ……同じ黒でも、すーっと吸い込まれそうな艶のある黒ね」

バンデ・ネーレ「…て、照れるな///」

提督「ううん、お世辞じゃなくてよく似合うわ…♪」

チェザーレ「うむ…ぐっと大人びた魅力が出ているぞ」

バンデ・ネーレ「ありがとう、でももういいよ…これ以上言われたら顔が火照ってきちゃうから///」

提督「…あらあら、行っちゃったわ♪」

チェザーレ「ふふ、可愛いものだな」

リベッチオ(マエストラーレ級駆逐艦)「どうしたの?」

…今度は褐色の駆逐艦「リベッチオ」が提督の横からひょいと顔をのぞかせた…北アフリカ向け船団護衛任務に就いた艦が多い中でどうして「マエストラーレ」級だけが褐色なのは謎ではあったが、少し船型を拡大した以外はほぼ同じ姿をしている「オリアーニ」級の艦娘たちと見分けがつきやすいので、提督としては便利ではあった…

提督「あら、リベッチオ…日光浴はもういいの?」

リベッチオ「うんっ、いっぱい太陽を浴びてきたから♪」

提督「そう、よかったわね♪…相変わらず裸で日光浴をしているの?」いたずらっぽい笑みを浮かべて聞いた

リベッチオ「そうだよっ、だってその方が気持ちいいもの…相変わらずマエストラーレお姉ちゃんは水着を着ているけど♪」

提督「ふふっ、もったいないわよね♪」

リベッチオ「そうだよね♪それじゃあ、また後で♪」

提督「ええ♪」

ライモン「…にやけていますよ、提督」

提督「だってねぇ…あのぷりっとした玉のような肌をしたリベッチオたちが全裸で日光浴をしていたら表情も緩むわ♪」

エウジェニオ「そうね、まるでレスボス島で愉しんできた私みたいにね。そうでしょう…て・い・と・く?」…後ろから背中にくっつくと、耳元に息を吹きかける軽巡「エウジェニオ・ディ・サヴォイア」…

…エウジェニオは「R・モンテクッコリ」級に始まるイタリア軽巡の華とも言うべき新型軽巡の一隻で、艦娘としても整ったしなやかな肢体に白い肌、長いまつげに玉を転がすような涼しげな声が特に優美で美しい…が、戦後をギリシャで過ごしたせいかすっかりビアン気質が染みつき、鎮守府の艦娘という艦娘を誘惑している…

提督「あら、エウジェニオ…ギリシャはどうだった?」

エウジェニオ「一言で言えば最高だったわ…綺麗な女性から可愛い女子学生まで食べ放題で……ふふっ、久しぶりに別名で遊んできたわ♪」

提督「…別名って?」

エウジェニオ「あぁ、私の別名は「エリ」っていうの。戦後賠償でギリシャに行ってからつけられた名前だけど、今回はうんと活用させてもらったわ…♪」

提督「あら、本名を隠してだなんて…いけない娘ね♪」

エウジェニオ「いいじゃない、おかげで欲求不満そうなフランスの小娘からギリシャの花売り娘まで巻き込んでうんと遊ばせてもらったわ♪」

提督「まぁまぁ…憲兵隊の査察の時は黙っていた方がいいわね♪」

エウジェニオ「あら、憲兵なんて私にかかればすぐベッドの上で撃沈させてあげるわ。それじゃあ、アオスタ姉さんを待たせているから…チャオ♪」軽く提督の耳たぶを甘噛みすると、足取りも優雅に出て行った…

提督「もう、エウジェニオったら相変わらずなんだから…♪」

ライモン「提督。コーヒーの時間もいいですが、そろそろ書類の整理に取りかからないと査察の時に困りますよ?」

提督「分かったわ…はぁ……それじゃあね、チェザーレ」

チェザーレ「うむ、チェザーレも時間が出来たら応援に参るぞ」

提督「ありがとう。…それじゃあライモン、行きましょうか」

ライモン「はい」

…数日後・食堂…

提督「……いよいよ特別監査の日ね。ライモン、準備はいいわよね?」

ライモン「はい、万全の態勢を整えてあります」

提督「助かるわ…みんな、今日は海軍憲兵隊の査察があるから、くれぐれも粗相をしたり裸でうろついたりしない事……廊下でキスしたりもダメよ」

エウジェニオ「あら、あいさつもいけないの?」

提督「あんまり唇に近いのはね。とにかく、真面目に振る舞っておくこと…いいわね?」

一同「「了解」」

提督「よろしい…そろそろ到着時間だと思うけど……」

ドリア「提督、門に憲兵隊の車が来ました」

提督「了解、すぐ行くわ」

…鎮守府・門…

提督「よくいらっしゃいました…さぁ、どうぞ?」…海軍カラーに塗られた「フィアット・パンダ」を迎え入れる提督

憲兵「ええ、少将」女性の憲兵隊士官はかっちりまとめた髪、シワ一つない制服と眼鏡姿で、採点するように提督を眺めた…

提督「…」(うわ…この人今までに笑った事ってあるのかしら……)

憲兵「ここが鎮守府の本棟ですね?」

提督「え、ええ…そうですよ。それで少佐のお名前は…?」

憲兵「私の名前が必要ですか、少将?」

提督「ええ、まぁ…いつまでも「少佐」では肩が凝りますし」

憲兵「そうですか?……まぁ良いでしょう。憲兵隊少佐、アンジェリカ・カルディナーレです」

提督「フランチェスカ・カンピオーニです…よろしくお願いします、カルディナーレ少佐♪」

カルディナーレ「ええ、よろしくお願いします」

提督「…長旅でお疲れでしょうし、まずはコーヒーでも……」

カルディナーレ「いえ、結構です。各鎮守府での「もてなし」は受けるなとの指示がありますので」

提督「あら、そうですか…」

カルディナーレ「それより、司令官の執務室に案内していただきたいのですが」

提督「…どうぞこちらへ」


…執務室…

提督「どうぞ、おかけになって下さい」小さいテーブルを挟んで椅子を二脚並べてあり、カルディナーレ少佐の方には鎮守府の中で一番座り心地の悪い椅子を用意しておいた提督…

カルディナーレ「失礼します」椅子に座ると早速ファイルとペン、ノートパソコンを取り出した…

ライモン「…良かったらどうぞ」コーヒーとお茶菓子を置く

カルディナーレ「いえ…そう言ったもてなしは結構ですから」

提督「…そう言わずに。せっかく淹れたコーヒーを無駄にしたくないですから」

カルディナーレ「いえ、ですが指示がありますので…」

提督「その指示は鎮守府で酒食をごちそうになり、査察の基準が鈍るといけないという判断からでしょう?……私はカルディナーレ少佐を「コーヒー一杯で手心を加えてくれるような不真面目な方」だとは思っていませんよ?」(…普段生真面目な女性は真面目さや律儀な所を素直にほめてもらうと喜ぶのよね♪)

カルディナーレ「それはもちろんです」

提督「でしたら冷めてしまわないうちにどうぞ」

カルディナーレ「…いただきます……いいコーヒーですね」

提督「ええ、いつも艦娘たちは激しい任務に就いていますので…せめてコーヒーぐらいは美味しいものを飲ませてあげたいですから」

カルディナーレ「…なるほど」

カルディナーレ「それでは早速ですが…カンピオーニ少将」パラパラとファイルをめくる…

提督「何でしょう?」

カルディナーレ「これからいくつか質問をさせていただきます…別に公式な査問という訳ではありませんが、正直にお答えください」

提督「ええ、どうぞ」

カルディナーレ「…まず、あなたの経歴ですが……士官学校を優秀な成績で卒業。運動は全般的に不得意ながら水泳と射撃は成績上位で、座学では特に海軍史、文学で優秀な成績。卒業後はフリゲート「インパヴィド」級での海上勤務を始め、ナポリ、ミラノ、ジェノヴァ、ヴェネツィア、ローマなど主だった司令部や基地で勤務していますね」

提督「ええ」

カルディナーレ「さらに士官学校卒業からここに着任するまでに「卓越した指揮および勇敢な行動」により勲章および感状数回…特進も二回ありますね」

提督「ええ、そうですね」

ライモン「…♪」(やっぱり、提督ってすごい人なんだ…♪)

カルディナーレ「ですが同時に…」

提督「……ほーら来た」

カルディナーレ「何か言いましたか?」

提督「いえ、別に」

カルディナーレ「そうですか…とにかく、士官学校在籍時に「候補生同士で不適切な関係を結んだ」という嫌疑が数回」

提督「はい」(本当は教官も含めて「数回」どころじゃなかったけど…ふふっ♪)

カルディナーレ「少尉の時に女性士官宿舎で「みだらな行為をしているようだ」と憲兵隊への通報数回…中尉、大尉時にも同様の通報ありとなっていますが」

提督「あー…それにはいずれも「誤報」とあるはずです。…事実、私の部屋で持ち寄りパーティを開いていたり、ワインを飲みすぎた同僚が少し騒いだだけなんです♪」(…あの時は憲兵さんがそういうことにしてくれたのよね♪)

カルディナーレ「…しかしこれだけ回数が重なると、間違いにしても疑わしく思えてきますが」

提督「疑わしいだけで取り調べを受けるのですか?」にっこり微笑んで切り返す…

カルディナーレ「いえ…さっきも申しあげた通り査問ではありませんから。単にお尋ねしているだけです」

提督「そうですか…ではもうよろしいですか?」

カルディナーレ「そうですね……あぁ、あともう一つだけ」

提督「何でしょう?」

カルディナーレ「カンピオーニ少将…着任以来、鎮守府の「艦娘」たちと不適切な関係は結んでいませんね?」

ライモン「…っ///」

提督「ええ、もちろん節度をわきまえております♪」(執務中はえっちしないもの…♪)

カルディナーレ「そうですか…質問は以上です」パタンとファイルを閉じた

提督「そうですか…それで、この後は?」

カルディナーレ「鎮守府の査察を行いますから、案内をお願いします」

提督「分かりました…それじゃあライモン、一緒に行きましょうか」

ライモン「はい」

カルディナーレ「ライモン?…個人的なあだ名をつけるとは、少将と「ライモンド・モンテクッコリ」はずいぶんと親密なようですね?」

提督「そうですか…通信でも聞きとりやすいですし、便利だと思って呼んでいるのですが?」そっとライモンにウィンクをする提督

ライモン「///」

カルディナーレ「ふぅむ…まぁ良いでしょう……」

…鎮守府・廊下…

カルディナーレ「それにしても立派な施設ですね、手入れもよく行き届いているようです」

提督「ええ、毎日過ごす施設ですから…まずはどこを見たいですか?」

カルディナーレ「そうですね、まずは通信室を」

提督「分かりました…あら、ルチア♪」

ルチア「…ワフッ♪」

カルディナーレ「…い、犬ですか」そっとルチアから距離を取り、意識せず提督に近寄る形になったカルディナーレ…

提督「犬は苦手ですか?」

カルディナーレ「いえ…ですがこんなに大きい犬は初めてで……」

提督「大人しい子ですから大丈夫ですよ…ね、ルチア♪」(…あら、カルディナーレ少佐ったらなかなかいい匂い♪)

ルチア「♪」ぱたりと尻尾を振りながらカルディナーレの匂いを嗅ごうと鼻を寄せた…

カルディナーレ「…ひゃっ!」タイトスカートの中へ鼻を突っこもうとするルチアにすっとんきょうな声を上げる

提督「あぁ、こらっ…大丈夫ですよ、カルディナーレ少佐」

カルディナーレ「あぁ、どうもありがとうございます…」


…しばらくして…

提督「通信室、建造施設を見ましたが…次はどうしますか?」さりげなく後ろの方にディアナが付き従っている…

カルディナーレ「そうですね……使用頻度が高い食堂や体育館を見るつもりですが、その途中で艦娘たちの部屋を見させてもらいます」

提督「分かりました。それでは、どの娘の部屋にしましょうか?」

カルディナーレ「では、まずは一番近い部屋を」

提督「それでしたら駆逐艦「ソルダティ」級の部屋ですね…駆逐艦では最も姉妹艦の多いクラスですよ」

ディアナ「…」すっと離れて角を曲がった…

…ソルダティ級の部屋・共有スペース…

ランチエーレ「あー…庭で駆け回れないのは退屈ね」

コルサーロ「全くだぜ、あたしも…アヴィエーレ、何を読んでるんだ?」

アヴィエーレ「んー…漫画さ」

コルサーロ「漫画なのは分かってるって…何の漫画だって聞いているんだよ」

アヴィエーレ「架空戦記ものだよ…「エリア八八艦隊」ってやつ」

コルサーロ「面白いのか?」

アヴィエーレ「死ぬほど面白いよ……「坂井」とか「ヒゲだるま」とかいろんなあだ名のエースが出て来てね」

コルサーロ「へぇ…よかったらあたしにも……」と、ジリリリン…ッと電話が鳴った

ランチエーレ「わっ…はい、ランチエーレ……はい、了解」

アヴィエーレ「どうした?」操縦士だけに電話の音を聞くと身構えてしまう…

ランチエーレ「憲兵の査察よ、漫画を片づけて!」

カラビニエーレ「任せて、私からすれば同業者みたいなものだから…よし、これでいいわ」艦名が「カラビニエーリ隊員」だけにきっちりした性格のカラビニエーレがあちこち手直しする…

…廊下…

提督「ここがソルダティ級の部屋です…ちょっといいかしら?」ノックをする提督

カラビニエーレ「どうぞ!」

提督「それじゃあ、ご覧になって下さい♪」

カルディナーレ「…失礼します……なかなか片付いているようですね」

アヴィエーレ「~♪」

提督「ええ。艦娘たちはみんな真面目ですし、私も「イタリア海軍の名に恥じぬよう行動せよ」と常々訓示しておりますから…♪」カルディナーレに見えないよういたずらっぽく笑ってウィンクした

ランチエーレ「ぷっ…♪」

提督「次はどうしますか?」

カルディナーレ「そうですね…重巡ザラ級の部屋はどうなっていますか?」

提督「ザラ級ですね、ではこちらへ…♪」

ガリバルディ「…」ガリバルディがすっと手近な部屋に入って行った…

…ザラ級の部屋…

ザラ「あぁぁ…んっ♪……んぁ、あぁぁぁっ♪」

ポーラ「ザラ姉さま…ぁ、明るい所だとザラ姉さまの綺麗なあそこがよく見えますよぉ~♪」くちゅっ、じゅぶっ♪…蜜をとろとろとしたたらせているザラのふとももに頬ずりしながら、すんなりした白い指で秘所をまさぐるポーラ…

ザラ「あっ、ひぅっ♪…いいっ、そこっ……いいのぉ♪…ポーラ、ポーラもっと…ぉ♪」立って壁に背中を預けながら両手でスカートをたくし上げ、腰を突きだして愛蜜を垂らすザラ…

フィウメ「…もう、ザラ姉の妹はポーラだけじゃないんですよ……それっ♪」じゅぶっ…♪

ザラ「あぁぁっ、いぃっ…ひぐぅぅっ♪」ぽたぽたっ…とろっ……♪

ゴリツィア「私も…お姉さまたちの事……大好きです…///」ぬちゅっ…くちゅっ、ずりゅっ……♪

ザラ「あぁっ、んぅ…ゴリツィア……そこ、気持ひいぃ……♪」

ポーラ「えへへぇ…ザラ姉さまぁ~♪」…んちゅっ、ちゅっ♪

ザラ「ん、ふ…待って、ポーラ…電話が……」

ポーラ「もぉ~、興ざめもいい所ですねぇ~……もしも~し、はい…分かりましたぁ~♪」ガチャリと受話器を置いた

ザラ「…はぁ………ふぅ…で、何だったの?」

ポーラ「憲兵さんの視察だそうですよぉ~…さぁ、片づけましょ~♪」

ザラ「嘘でしょ…早く着替えないと……んっ、く!」ぐちゃぐちゃに濡れて肌に張りつく下着をどうにか引きおろし、代えの下着に脚を通すザラ…

提督「…ザラ、お邪魔してもいいかしら?」

フィウメ「わっ、提督!?…ちょっと待ってくださいね!」

…廊下…

提督「ふふ…きっと何かおもてなしの準備でもしているのでしょう♪」

カルディナーレ「そう言ったものは不要と先ほどから…」

提督「あ、準備が整ったようですよ♪……もういいかしら?」

ザラ「は、はい…どうぞ……」

カルディナーレ「失礼…なんだか甘酸っぱいような刺激的なにおいがしますね」眉をひそめる

フィウメ「えーと…それはきっと……」

提督「家具の一部は仕立てなおしたものなので、どうしても接着剤の臭いがしたりするんです…それをどうにかしようと思って香水を撒いてみたりするんですが、どうにも……ね?」

ポーラ「そうなんですよぉ~…もっといい家具をそろえて欲しいですねぇ~♪」

カルディナーレ「それは私ではなく主計官の方にお願いして下さい…なるほど、小ざっぱりしていて掃除は行き届いていますね」

ザラ「…ふぅ」

提督「それではここはもういいですね?」

カルディナーレ「ええ…次は食堂に案内してください」

提督「ええ…お邪魔したわね、ザラ♪」

ザラ「…は、はい///」

ライモン「///」

………


…食堂…

提督「ここが食堂です…食事の邪魔になるのでテレビは置いてありませんが、レコードとCDのプレーヤーは置いてあります」…さりげなく隅のバーカウンターには布をかけて、見えないようにしてある

カルディナーレ「そうですか…そう言えばちょうどお昼時ですね」

提督「…よかったらお昼を食べていきませんか?」

カルディナーレ「いえ、結構です……昼食は査察を終えてから、来る途中にあった町で食べますので」

提督「そうですか?…まぁ、断食をなさりたいならそれでもいいと思いますが……」

カルディナーレ「…は?」

提督「いえ…いくらタラントの近くとはいえ、ここは南イタリアの田舎ですよ?昼の時間を過ぎて料理屋が開いている訳ないじゃありませんか♪…シエスタ(お昼寝)の時間ですからお店は軒並み閉まっていますよ」

カルディナーレ「え…ですがちょっとしたレストランやピザ店ぐらいなら探せば……」

提督「そんなローマやナポリみたいな観光客向けのお店なんかありませんよ?人のいいおじさんがやっている料理屋とカフェが数軒があるだけです」

カルディナーレ「…そ、そうですか」

提督「ですからどうぞここで食べていって下さい…なんならかかった材料の分の請求書だって書きますよ?」

カルディナーレ「いえ、そこまでは不要で……///」きゅう…とお腹が鳴り、耳を赤くするカルディナーレ

提督「ふふっ…さぁ、ここにおかけになって?」カルディナーレの肩を押さえて椅子に腰かけさせると、厨房に入って行った…

カルディナーレ「ところで…さっきの話は本当ですか?」

ライモン「お店の話ですか?まぁ本当ですね」(…多分、おじさんを起こして頼み込めば何か作ってはもらえるでしょうけど)

カルディナーレ「はぁ…つくづく南イタリアと言うのはのんきなものですね」

提督「…お待たせしました。さぁ、召し上がれ♪」コトリと置かれたのは大皿に入ったパスタで、細めのフェデリーニに緑も鮮やかなキャベツと紅い唐辛子、それにカラリと揚がっているニンニクの薄切りが散らしてある…

カルディナーレ「キャベツ入りペペロンチーニですか。いただきます……」くるりと巻いて口に運び、途端に不思議そうな表情を浮かべる

提督「いかがですか?」

カルディナーレ「…美味しいです。ただのペペロンチーニではないようですね?」

提督「ええ、オイルサーディンの缶詰が残っていたので…ニンニクの香りが効いたオリーヴオイルの中でほぐして、茹で上がったパスタに絡めただけですよ♪」

カルディナーレ「いえ…本当に美味しいです、仕上げの粗挽き胡椒も風味が効いていますし……んっ!」

提督「あ、喉に詰まって……さ、飲み物をどうぞ」グラスを差し出す

カルディナーレ「んくっ、んっ……はぁ、失礼しました」

提督「いいえ。パスタの一口目って時々のどに詰まりそうになりますものね♪」

カルディナーレ「ええ…って、ワインですか」

提督「すみません、どうしてもこの辺りは水道水があまり良くないので……つい」(本当はミネラルウォーターもあるけれど…♪)

カルディナーレ「…なるほど、それでは仕方ありませんね……でも少しにしておいてください、帰りも車なので」

提督「ええ、それでもパスタを流し込むだけに飲んだこの一杯だけと言うことはないでしょう…どうか二杯目はちゃんと味わって下さいね?」

カルディナーレ「ええ、それはそうかもしれませんが…ではその一杯だけで……///」空腹だった上に普段飲みつけない高級なワインがしっとりと喉を流れ落ち、ぽーっと頬が紅くなる…

提督「パスタのおかわりが欲しくなったらそう言って下さいね♪」

カルディナーレ「いえ…もう結構れす……失礼///」少し舌が回らなくなり、慌てて謝る…

提督「いいえ♪…良かったら酔いが覚めるまで空き部屋でお休みしたらいかがですか。その状態で運転はまずいでしょう?」

カルディナーレ「…ええ、それもそうですね……ですがまずは査察を終わらせましょう」

提督「ええ、そうですね…♪」

…鎮守府・廊下…

提督「ではこれから体育館の方へ…」

カルディナーレ「ええ…///」頬が桜色に染まり、しきりに眼鏡をずり上げては目をぱちくりさせている…

提督「どうかしましたか?」

カルディナーレ「いえ…どうも先ほどのワインが思っていたよりも効いてしまったようで……」

提督「あらあら…気分が悪くなったりしたらすぐ言って下さいね、どこかで休憩を挟みますから」

カルディナーレ「大丈夫です」

提督「そうですか、なら心配いりませんね…♪」そっと手を重ねる提督…

カルディナーレ「…どうして手を?」

提督「いえ…腰や身体ですとなれなれしいかと」(…こういう場合「真面目な女性は無理に親しさを装って触ったりし過ぎてはダメ」なのよね、おばさま♪)

カルディナーレ「…ええ、そうですね」と、ルチアがいつも一緒に歩くときのように提督の脇へとすり寄ってきた…

ルチア「ワフワフッ…♪」

提督「あら、ルチア…遊んでほしいの?今は駄目よ」

ルチア「ワンワンッ!」構ってもらいたいルチアが提督とカルディナーレの足元にまとわりついてウロウロする…

カルディナーレ「本当に大きい犬ですね……っ、きゃあっ!?」ルチアが踏み出した脚の間へ入り込むような形になってたたらを踏む…

提督「…っ、アンジェリカ!」…ぽすっ

カルディナーレ「……あ、ありがとうございます///」見事に提督の腕の中に収まったカルディナーレ…オーバルレンズの眼鏡が胸の谷間で斜めにずれて、鼻にかかっている……

提督「いえ…もう、ルチアったら!」

ルチア「クゥーン…」

提督「仕方ない子ね…ライモン、悪いけれどルチアを散歩にでも連れて行って?」

ライモン「はい。…もう、提督の邪魔をしたら駄目ですよ。さぁ、散歩にでも行きましょう?」

ルチア「ワフッ…♪」

提督「ふぅ…うちのルチアは可愛いですしたいていはお利口なんですが、時々ああいう子供みたいなところがあるんです」

カルディナーレ「…それより、少将///」(…今、私の事を「アンジェリカ」って///)

提督「はい、何か?」

カルディナーレ「…そろそろこの体勢を止めませんか……どうにも恥ずかしいので///」

提督「…そうですか?」カルディナーレの両手に自分の手を重ねると指を絡ませ「恋人つなぎ」にする提督…

カルディナーレ「あの…っ///」

提督「…アンジェリカ、私……貴女の事が好きみたいです///」

カルディナーレ「…じ、冗談は止して下さい。まだ数時間しか会ってもいない相手に……」

提督「いいえ…だってアンジェリカは……」

カルディナーレ「…なんですか?」(…どうせ「私の前に舞い降りた天使(アンジェ)のような女性だから♪」とでも言うのでしょう?…はぁ、そう言うのは聞き飽きてます)

提督「…とっても律儀な人だから」

カルディナーレ「…えっ!?」

提督「キンキン声で話す子供みたいな女性や、頭の悪い可愛いコぶっている女の子なんかと違って…真面目で、真剣で……///」

カルディナーレ「あ、あの…っ///」

提督「よかったら…貴女の手にキスさせて下さい……」

カルディナーレ「…いえ、こんな所で……誰かに見られたら…っ///」

提督「でしたら…こちらへ……///」目を伏せてそっとカルディナーレを見上げ、まつ毛をぱちぱちさせつつ角を曲がる…左右に人気がないのを確認してからそっとカルディナーレの薄い唇に自分の唇を重ね合わせた…

カルディナーレ「んっ…ふ……ん、ちゅっ…///」

提督「ちゅっ……素敵でしたよ、アンジェリカ…♪」

カルディナーレ「…ふぁぁ///」

………

…しばらくして・執務室…

カルディナーレ「…それにしても、カンピオーニ少将」床にひざをつき、提督の膝の上にあごを乗せていたカルディナーレがおもむろに口を開いた…

提督「んー?」椅子に座ってカルディナーレの頬を優しく撫でながら小首をかしげる…

カルディナーレ「さっきの言葉ですが…正直私にそこまでの魅力があるようには思えません」

提督「そんなことないわ♪」

カルディナーレ「では到着してからのほんの数時間で、どんなところに魅力を感じたというのです?」

提督「そうねぇ…最初に質問をしてきたときかしら。指がとっても綺麗だし、手もすべすべで……愛撫されたいと思ったわ///」

カルディナーレ「///」

…一方・ドアの外…

ドリア「まぁ…提督ったら相変わらずお上手♪」

エウジェニオ「…ふふっ、いい口説き文句ね。今度私も使わせてもらおうかしら」

カルロ・ミラベロ(ミラベロ級駆逐艦)「そうね、あんなことを言われたら身体がうずいちゃう…♪」…駆逐艦の中でも特に小さい1000トン未満の船型から小学生にすら間違われそうな身体ながら、1916~17年に就役した第一次大戦型の駆逐艦だけあってめっぽう耳年増なミラベロ級……ドリアたちと一緒にドアの隙間から漏れてくるやり取りに耳を傾けながらぞくぞくしたような表情を浮かべ、ふとももをこすり合せている…



提督「アンジェリカ…もう帰るの?」

カルディナーレ「ええ、査察は済みましたし…そろそろ戻らないとローマへの飛行機に乗り遅れてしまいますから」

提督「そう…残念ね……せめてお別れにキスだけさせてもらえないかしら」

カルディナーレ「…いえ、ですが///」

提督「一回でいいわ…貴女と出会えた思い出に、私の唇を捧げたいの///」

カルディナーレ「で、では…一回だけ……」顔を上に向けると、提督の方に近寄せる…

提督「ん…ちゅっ……ちゅ、ちゅぷっ…♪」

カルディナーレ「んふっ…あむっ……ちゅる…っ……んちゅ…っ♪」

提督「んんっ…んぅ……あふっ…んあぁ……ちゅ…ちゅぽっ…れろっ……ちゅぅ♪」



ドリア「まぁまぁ…提督ったらあの堅そうな憲兵さんをすっかりその気にさせてしまいましたね♪」

エウジェニオ「ふふ、百合の香りからは逃れられないのよ…♪」

ミラベロ「もう…あんなキスされたら腰が砕けちゃうわ……きっと♪」



提督「ぷは…ぁ……ふぅ、はぁ…とっても熱いキスだったわ、アンジェリカ♪」

カルディナーレ「あっ…いえ、つい夢中になって……はしたない真似を///」

提督「いいえ、いいのよ?…恋は理性でどうこうできるものでもないし、それに……禁断の愛であるほど甘い味がするものよ♪」ぱちりとウィンクを決めると、手を取って立ち上がらせた

カルディナーレ「///」

提督「…それでは、本日は監査のためにおいでいただき、まことにご苦労さまでした」

カルディナーレ「あぁ、はい……こちらの鎮守府には何も問題ありませんでした。上官にはそう報告する予定です」

提督「それはよかった…では、気を付けて帰ってくださいね♪」



ミラベロ「いけないっ、憲兵が出てくるわ…」

ドリア「ふふふ…っ♪」

エウジェニオ「…素敵なひと幕に感謝するわ、提督♪」そっとドアの前から立ち去る三人……

………

なかなか進まないのですが、今日はこの辺で投下を止めます……時間がかかりましたが、いよいよイギリス海軍のグレイ少将にドイツ連邦海軍のヴァイス中佐が出てきます

…ちなみに前スレでグレイ提督の愛車を何にするか迷っていたところ、「アストンマーチン・DB4」辺りがいいのではというリクエストがありましたので、それを採用するつもりでおります。またヴァイス中佐は紺の無難な「BMW・320i」です


あと、銃は多分グレイ提督が(いつもは)制式のSIG・P226辺りの軍用オートマティックで、趣味として.38ブリティッシュ口径のウェブリー&スコット・リボルバー…ヴァイス中佐はやっぱり軍用のSIG・P226かワルサー・P1(名銃ワルサー・P38の戦後型)辺りだと思っています…

…数日後・執務室…

提督「メイク…完了。制服……よし。軍帽…よし」髪はアップに結い上げ、頬には軽くファンデーションをのせ、唇には自然な感じに見えるピンクのルージュを引く…そして豪奢な白い礼装に身を包むと、鏡の前で糸くずが付いていたり、金モールのよじれがないか確かめる…

カヴール「背中は大丈夫ですよ…よく似合っていらっしゃいます♪」

提督「ありがとう、カヴール…でも少しふとももがきついかも……」お洒落にうるさいイタリア軍だけあって、軍服のシルエットはどれも細めに出来ている…が、鎮守府着任以来の食生活がたたって白のスラックスがぱつぱつに思える提督…

カヴール「でしたらタイトスカートになさったら?」

提督「そ…そうね、そうしましょう」

ライモン「提督、お客様の到着予定時刻まであと数十分ですよ」

提督「ええ、ありがと。…時間が少ないしちょっと急がないと…カヴールは大丈夫?」

カヴール「ええ、もちろんです……年を取るとせっかちになりますからね♪」…ころころと甘い声で笑うカヴールはボリュームたっぷりの長身をイタリア海軍らしい、白に近い淡いグレイの上衣と膝丈のプリーツスカートでまとめている

提督「ごめんなさいね。まさかここまでバタバタするとは思わなかったわ…」

カヴール「いいえ…それに前回は提督のお知り合いでしたから、あまり肩が凝るような準備は必要なかったではありませんか♪」

提督「ええ、そうね…それに引き替え今度はイギリス海軍の少将にお堅いドイツ海軍の司令だもの……あー、今から胃が痛むわ」

カヴール「ふふっ、話してみたら存外いい人かもしれませんよ?…はい、大丈夫です」

提督「ありがとう、助かったわ…さぁ、行きましょう♪」

…しばらくして・庭…

カヴール「全体、アテンツィオーネ!(気を付け!)」ずらりと並んだ艦娘たちと提督が敬礼する中、軍が用意した二台のマセラッティからイギリス海軍のグレイ提督とドイツ連邦海軍のヴァイス提督(正しくは司令)、それにそれぞれの随伴として艦娘二人づつが降りてくる…


…鎮守府本棟の前に立っている国旗掲揚のポールにするすると「ユニオン・ジャック」(イギリス国旗)と、「シュヴァルツ・ロート・ゴルト」(黒・赤・金…ドイツ国旗)がタイミングよく昇って行く……提督の敬礼に二人の提督が答礼すると、レコードプレーヤーから「ハート・オヴ・オーク」(樫の心…英海軍唱歌)、続いてドイツ連邦国家が流れた…


提督「…この度はわが鎮守府までお越しいただき、大変光栄に思っております。栄光ある大英帝国海軍の皆様、それに質実剛健なドイツ連邦海軍の皆様…本官を始め、タラント第六鎮守府は皆様を心より歓迎いたします」

グレイ提督「…感謝いたします、カンピオーニ提督。わたくし、イタリア海軍の独創性には常々学ぶところも多いと思っておりました…この機会を大いに有効活用させていただきたいと存じます」

ヴァイス提督「少将閣下を始め、貴鎮守府の心よりの歓迎、感謝いたします…本官も多くを学ぶべく尽力いたしますので、なにとぞご教授下さい」

提督「こちらこそ、ロイヤル・ネイビー(英海軍)とブンデスマリーネ(連邦海軍)の皆様を迎えられて嬉しく思います…」

ティルピッツ「…う、うぇっ……」

ビスマルク「…おい」青ざめた顔で直立不動の姿勢を取っている艦娘「ティルピッツ」と、それを横目でちらりとにらんでから厳格な表情に戻る姉の「ビスマルク」…

提督「……以上で、歓迎式典を終わります」

カヴール「気を付け!」

提督「…ではグレイ提督、ヴァイス提督……紅茶が用意してありますから、こちらへどうぞ♪」

グレイ提督「ふふ、ありがとう…♪」

ヴァイス提督「はっ」

………









…午後…

提督「…ヴァイス提督」式典を終えると礼服を脱ぎ、ブラウスにスカートの軽い制服に着替えてきた提督は、食堂前の廊下でヴァイス提督を見つけて話しかけた…

ヴァイス提督「はい、カンピオーニ提督」

提督「あー…私の事は気軽にフランチェスカと呼んで下さって構いませんよ」

ヴァイス提督「いえ、たかが中佐が少将に向けて呼び捨てなどしたら規律が乱れてしまいますから。…それで、何かご用でしょうか?」

提督「ええ、ティルピッツの事で…多少顔色が悪そうでしたから、何でしたらお薬でも……?」

ヴァイス提督「…大丈夫です、お気になさらず。今正装を脱いでいる所ですから」

提督「そうですか?」

ヴァイス提督「ええ…彼女は北海での作戦行動が多かったので顔色が白く見えますが、いたって健康ですので」

提督「ならいいのですが…もし具合が悪いようでしたら遠慮せずに言ってくださいね?」

ヴァイス提督「はっ、感謝します」

提督「私は無帽なのですから敬礼は不要ですよ…ヴァイス提督♪」

ヴァイス提督「…失礼しました///」

…一方・ドイツ艦の客室…

ティルピッツ「…だいたい、イタ公の運転手は飛ばし過ぎだ……マセラッティだか何だか知らないがラリーみたいに…うぇぇ…」洗面台に屈みこみ、蒼白になっているティルピッツ…

ビスマルク「全く、車酔いとは情けない……それでもドイツ海軍の戦艦か?」コップに水を満たし洗面台に置くと、酔い止め薬を差しだすビスマルク…反対の手で背中をさすってやりながら、あきれたように首を振った…

ティルピッツ「仕方ないだろう…姉上もよくご存じのはずだ、私は身体が弱いんだ……うぇ…っ」

ビスマルク「だらしないな、ティルピッツ提督が泣くぞ?…ほら、飲め」

ティルピッツ「ごくっ…ごくっ……ダンケ(ありがと)、姉上」

ビスマルク「ビッテシェーン(どういたしまして)…さぁ、食堂のティータイムに顔を出さんと英国海軍の奴に気どられるぞ」

ティルピッツ「うん……ふぅ、少し元気になった」

ビスマルク「全く…世話の焼ける妹だ」

…同じ頃・食堂…

提督「グレイ提督は紅茶とコーヒー、どちらになさいますか?」

グレイ提督「わたくしは紅茶を…♪」かっちりした正装でなくても常に姿勢が正しく、生まれながらにして優雅なグレイ提督…隣には無言の威圧感がある戦艦「クィーン・エリザベス」と、端正でエルフのように美しい軽巡「エメラルド」が控えている…

提督「お二人は?」

クィーン・エリザベス「わたくしも紅茶をお願いいたします…♪」

エメラルド「私も同じく…」

提督「それじゃあ、ディアナ…お願いするわ♪」

ディアナ「承知いたしました…♪」しばらくしてティーセットがテーブルに並ぶ…提督はよくティータイムに見られる「銀の鳥かごのようなアレ」がティーセットを広げられない貧乏貴族の家で使われるものと知っていたので、わざとテーブルいっぱいにお菓子ときゅうりのサンドウィッチを並べさせた…

グレイ提督「まぁ…イタリアのお菓子は色鮮やかで綺麗ですこと。よかったら紅茶を頂いてもよろしいでしょうか?」

提督「ええ、ダージリンですが…お好きですか?」

グレイ提督「あら、わたくしの好みです……この香りはトワイニングですね?」

提督「ええ…フォートナム&メイソンは手に入らなかったので、我慢して頂けますか?」(※フォートナム&メイソン…高級紅茶ブランド)

グレイ提督「いえいえ、トワイニングは肩の凝らないお茶の時によく飲むので好きですよ♪」

提督「ならよかったです」提督はポットで淹れた紅茶を漉してティーサーバーに移すと改めてグレイ提督のカップに注ぎ、ほどのいい所でグレイ提督はミルクポットから常温のミルクを入れる…

クィーン・エリザベス「わたくしも紅茶は大好きです…それに何と可愛らしいお菓子たち……このエリザベス、視線が迷ってしまいます♪」

エメラルド「そうですね…でもやっぱりスコーンを……♪」









提督「それにしてもいい天気でよかったですね♪」

グレイ提督「ええ…出撃にうってつけの好天ですね」(※好天艦隊…大戦中の英首相チャーチルがイタリア艦隊を指して言った皮肉)

提督「…そうですね♪」

ライモン「…」

カヴール「…さぁ、お菓子はいかがですか?」

クィーン・エリザベス(エリザベス)「ええ、美味しゅうございますね…♪」

カヴール「あまり食べ過ぎて速度が落ちないようになさってくださいね♪」

(※クィーン・エリザベス級…25ノット。コンテ・ディ・カヴール級…公試速力27ノット)

提督「…こらこら、カヴール♪」

ライモン「…ふふっ♪」

ヴァイス提督「あー……カンピオーニ提督、このお菓子は何と言うお菓子ですか」

提督「それはカンノーロ(カンノーリ)です。筒状の生地を揚げて中にクリームを詰めたものですよ」

ヴァイス提督「なるほど…ところで、イタリア戦艦の測距儀についてですが……」

提督「ふふ、お茶の時間にですか…♪」

ヴァイス提督「あ…いえ、すみません///」

提督「いいんですよ、ヴァイス提督…階級はあんまり気になさらないでくつろいで下さい♪」

ヴァイス提督「はっ。お気遣い痛み入ります、そろそろビスマルクたちも来るころかと…」

ビスマルク「エントシュルディゲン(失礼)…着替えに少々手間取りまして」あまり軍服と変わらないようなダークグレイのブレザーとスラックス、ホワイトのシャツ、それにグレイグリーンのネクタイを締めている…

ティルピッツ「…申し訳ない」こちらはジャーマングレイのスラックスに淡い灰色のブレザー、白のシャツとペールブルーのネクタイで、まるで北海用の迷彩を選んだように見える…

グレイ提督「…なかなか渋いお召し物ね」

エリザベス「…」かすかに眉をひそめるグレイ提督と随伴の艦娘たち…

提督「えーと…二人は紅茶とコーヒー、どっちがいいかしら?」

ビスマルク「司令と同じものを」

ティルピッツ「姉上と同じものを」

提督「ふふっ…なら紅茶ね?」

………

…しばらくして・執務室…

提督「あー…肩が凝ったわ」肩を回し、げんなりしている…

ライモン「…わたしも疲れました、緊張した雰囲気でしたから……」

カヴール「ええ、それにイギリスの提督はなかなか皮肉がお上手で…♪」

提督「まぁまぁ、カヴールも一本取ったんだから…それにしても参ったわねぇ」

カヴール「絵に描いたような貴族のグレイ提督と「典型的ドイツ人」のヴァイス提督…ですか?」

提督「うーん…グレイ提督はさすがに「ホンモノ」の貴族だけあって上手く空気を和ませてくれるけど…クィーン・エリザベスがね……」

ライモン「もの凄い威圧感でしたね」

カヴール「それにドイツ艦の二人も…まるで棒を飲みこんだようでしたね」

ライモン「…あれでくつろげるものなんでしょうか?」

提督「ヴァイス提督もお話しのタネに困っているようだけど…まさかお茶の時間に『ガリレオ社製トリプル・ファインダー測距儀』の講義をさせられそうになるとは思っていなかったわ」

カヴール「夕食でワインが入って、少しは変わるといいのですが…」

提督「そうね…今夜はディアナに言ってうんと美味しいものを作ってもらうわ」

………

ドイツいいね

>>112 ダンケシェーン…ドイツ艦の方は知識が未熟なので資料を読み漁りつつ小ネタを収集しております。そのうちにヴァイス提督以下のエピソードもお送りする予定です


今後は一応「基地祭」でのネタと、その前後で提督×ドイツ組、あるいはイギリス組での百合を投下する予定ではいます、提督同士になるか提督×艦娘になるかはその時の勢いと気分ですが……それでは少々投下させていただきます

…夕食前…

提督「手伝いに来たわ、ディアナ♪」…半袖のチュニックと適当なチノパンツ姿でやってきた提督は手を洗い、腕時計やアクセサリーを外すと白いエプロンをかけた

ディアナ「まぁ、提督…助かります」

提督「ふんふん…いい匂いね。今日の献立はなぁに?」

ディアナ「まずはパプリカとカリフラワーで色彩豊かな夏のマリネ…それとペンネ・アラビアータ、サーディンの重ねパン粉焼き……メインはローストした牛のあばら肉をトマトのスープと一緒に煮詰めたものと、魚介たっぷりのアクアパッツァ……ドルチェはティラミスかシャーベットを…いかがでしょう?」

提督「ふふ、とっても美味しそうね…特にサーディンのパン粉焼きはタラントの味だものね、私も手伝うわ♪」

ディアナ「よしなに…♪」


…重ね焼きは開いたサーディン(いわし)を深めの焼き皿に並べ、塩やオリーヴオイルをまぶしパン粉を振りかけ、その上にまたサーディン……と重ねて行き、刻みパセリや粗挽きの黒胡椒でアクセントをつけ、オーブンでこんがりと焼き上げるだけのシンプルな一品…臭みのない新鮮なサーディンがたくさん取れるタラント周辺で生み出された、飽きの来ないごちそうがパリパリといい具合に焼きあがっていく…


提督「んー…いい色♪」オーブンミトンをはめて焼き皿を取り出し、美味しそうな香気をいっぱいに吸い込む。それからおもむろに端っこの形が崩れた部分に指を伸ばす…

提督「ちょっと味見させてもらおうかしら……っ!」手を慌てて引っ込める提督

ディアナ「大丈夫ですか、提督っ?」

提督「ノン・ファ・ニエンテ(何でもないわ)、指先が少しだけ焼き皿に触っ……ディアナ?」

ディアナ「火傷するといけませんから…ん、ちゅぽっ…ちゅぅ///」

提督「それだったら冷水にさらすのが正解だと思うけれど…あ、でも気持ちいい……んっ///」ディアナのしっとりした舌が指先を優しく舐めてくれる…

ディアナ「…はい、わたくしの応急処置はお終いです……さぁ、後は冷水にどうぞ。手が冷たくなったら時々出していいですから、十分はそうしていて下さいませ」氷水を張ったボウルに手を優しく浸けてくれる…

提督「ありがとう、ディアナ///」


…夕食時…

提督「それでは改めて…ようこそ、タラント第六鎮守府へお越しくださいました」礼装ではないものの白の制服に身を包み、演説台で歓迎のスピーチをする提督…が、一部の艦娘たちはごちそうをにらみつつじりじりしていたり、それなりに長い各提督のあいさつに飽きてもぞもぞしている……

提督「…これで、歓迎晩餐会のあいさつを終わらせていただきます。どうぞグラスを持ってご起立ください」…ガヤガヤ

提督「では……この交流が素晴らしいものになりますよう、そして英海軍とドイツ海軍の旗が輝かしい戦果で飾られることを祈って…乾杯!」

一同「「乾杯!」」

提督「んくっ、こくんっ……ふぅ」爽やかな喉ごしのシャンパンを喉に流し込み、席に着く提督…向かいにはグレイ提督とヴァイス提督が制服姿で座っている……

グレイ提督「ふふ、素晴らしいあいさつでいらっしゃいましたね」

ヴァイス提督「見事なものでした」

提督「いえいえ…さ、アンティパスト(前菜)をどうぞ♪」マリネ以外にも生ハムとメロンの盛り合わせや、ピック(楊枝)で刺したオリーヴとチーズ、輪切りにしたナスの揚げ焼きなどがこぎれいに並んでいる…

グレイ提督「では失礼して…まぁ、美味しい♪」貴族らしく社交術に長け、場の空気を和ませるのも上手なグレイ提督はさっそく前菜を摘まんで、奥ゆかしい驚きの声を上げてみせる…

ヴァイス提督「あ、では私も同じものを…」一方、少将二人に挟まれてがちがちになっていたヴァイス提督はその声を聞いてようやく取り皿に前菜を載せ始めた…

提督「ふー…カヴール、私にもナスをもらえる?」

カヴール「はい♪」

…左右の横に座っているのは戦艦カヴールとフルット級潜水艦「フルット」で、カヴールはふわりと髪をカールさせ、ロココ調のような甘く優雅な桃色のドレスがおっとりした優雅な貴婦人のように見える。一方フルットはメリハリの効いた細身の身体にしっとりと張りついている淡いブルーグレイのドレスで、それがすっきりとした美しさを引き立てる…

ヴァイス提督「…」

グレイ提督「カンピオーニ提督、こちらも美味しいですね」

提督「それは何よりです…よかったらワインをどうぞ?」

グレイ提督「ええ、それではいただきましょう♪」

ヴァイス提督「…」

提督「ヴァイス提督は白の方がお好みですか?……リースリング種を使ったモーゼルですよ?」

ヴァイス提督「え、ええ…それでは白を」

提督「ふふ、分かりました♪」キュポン…ッ、とコルクを抜き、金色がかった綺麗なワインを静かに注ぐ…

ヴァイス提督「ダンケシェーン(ありがとうございます)」

提督「ビッテシェーン(どういたしまして)♪」

…しばらくして…

提督「んー…美味しい♪」

グレイ提督「ええ、とても美味しゅうございますね……噂や冗談と言ったものにも、一抹の事実が含まれているのかもしれません」(※冗談の一つで「飯の美味い国は戦争が弱い」)

提督「ふふ、かもしれません…ですが、いくら戦いに勝っても食事が貧しいのでは何のための勝利か分かりませんね♪」

グレイ提督「ふふ、そうかもしれません…あ、でしたら腕のいい料理人を連れて来ればよいのですよ」

提督「なるほど……ところでイギリスにはインド料理店が多いそうですね♪」

グレイ提督「ええ。わたくしが思うに…イギリスは他国のいい所を取り入れて、自国の風土に合わせてアレンジするのが得意なのです♪」

提督「イギリス風になるわけですね?」

グレイ提督「ええ♪」

提督「…それであんなに……いえ、何でもありません♪」(…さすがに深海棲艦の作ったカレーを食べただけで「だからイギリスのカレーは不味いのですね♪」っていう訳にもいかないわね)

グレイ提督「ふふ…ところでヴァイス提督、ドイツの料理はどんなものがあるのですか?よかったらわたくしに教えて下さいな」

ヴァイス提督「ドイツ料理ですか……代表的なのは白ソーセージや「血のソーセージ」、ザワークラウトなどがありますが」

グレイ提督「まぁ、美味しそうですね…それで、それを「使った」どんなお料理がありますか?」

ヴァイス提督「え…あー、その…私はあまり料理が得意ではないもので……」グレイ提督が放つイギリス流の皮肉を浴び、答えに詰まる…

提督「まぁまぁ…ヴァイス提督、良かったらイタリアの味を試してみて下さい♪」たっぷりとペンネ・アラビアータをよそってあげる提督

ヴァイス提督「ど、どうもありがとうございます…美味しいです」

提督「あぁ、それはよかったです……お飲み物は?」

ヴァイス提督「いえ、ワインを頂いておりますので…こんなにいいワインを飲んだのは初めてかもしれません」

提督「よかったらビールも用意しておきましたが?」ちらりとビスマルクたちの方に視線を向ける…

ヴァイス提督「?」

…テーブルの中央部…

ビスマルク「あー…いい心持ちだ、やっぱり飲み物は泡を引くビールに限る!」中くらいのジョッキに注がれた「レーヴェンブロイ」をぐいぐいと傾ける…

ティルピッツ「ですね…んっ、んっ、んっ……ぷは…ぁ♪」

チェザーレ「おぉ、見事な飲みっぷりではないか♪」(…さすが未開の地ゲルマニアに住まう原始人たちだ、まともなワインも知らないのだろう♪)

ポーラ「よかったらぁ、もう一杯いかがですかぁ~?」ポン♪…と瓶の王冠を抜いてジョッキに近づける…

ビスマルク「あー…気持ちは嬉しいがな、フロイライン(お嬢さん)…さすがにビールばかりがぶ飲みしていてはどうかと思われるので、もう結……」

ポーラ「えへへぇ…ポーラはぁ、練習して上手な泡を出せるようになったんですよぉ~♪」

ビスマルク「たしかにきめ細やかな泡が実にいい……では、もう一杯だけもらおう!」

ティルピッツ「あ、姉上…」袖を軽く引っ張るティルピッツ…

ビスマルク「…なんだ!?……このビスマルクがビールの数杯で不覚を取るとでも思ったか?」

ティルピッツ「い、いえ…」

ビスマルク「ならよし…うぅむ、いい泡だ」



ヴァイス提督「…シャイス(くそっ)」

提督「何か?」

ヴァイス提督「いえ…では一杯だけもらいます」

提督「ええ、どうぞ♪…グレイ提督には「イギリスらしく」ギネスの黒がありますが、どうします?」(ふふ、もちろん「ギネス」はアイルランドよね♪)

グレイ提督「ふふふ、「ギネス」はアイルランドのビールですよ♪」(イングランドとアイルランドを一緒にするなんて、なかなか皮肉の効いた冗談がお好きなようね♪)

提督「あ、これは失礼しました…♪」

カヴール「まぁ…提督ったら♪」

フルット「ふふ…っ♪」


………

…しばらくして・提督寝室…

提督「はぁぁ…いい気持ちだったわ……」

…お風呂上がりの提督はパイル地のバスローブ一枚で椅子に腰掛け、脚をもう一脚の椅子に載せてくたっとしている。手元には小さい冷蔵庫に入っているミネラルウォーターのペットボトルがあり、思い出したようにそれをあおる……提督の足元にはやはりほかほかと湯気を残し、肌もほのかに桜色になったカヴールがいて、爪ヤスリで提督の爪を磨いている…

カヴール「…うふふっ♪」

提督「なぁに、その含み笑いは?」

カヴール「ふふ……これからもっと気持ちいい事をするのにそんなにだらけていられては、張り合いがありませんね♪」

提督「んー…私もさすがに疲れたし、今日はしないわよ?」

カヴール「これはまたご冗談を。提督がひと晩でも誰かの添い寝なしで寝られるとは思えません♪」

提督「失礼ね♪……まるで私をさかりのついた猫みたいに言って」そう言いながらカヴールに爪を磨いてもらっていると、ギャング映画のドンが床屋ときれいなブロンド女性に身だしなみの手入れをしてもらっている光景に似ていないこともない……と、そこに内線電話が「リリリン…ッ」と鳴った

提督「何かしら……はい、執務室」

ディアナ「もしもし、提督…申し訳ありませんが至急食堂までおいで願えますか……少々厄介な問題が起きておりまして」

提督「厄介な問題…?」

ディアナ「ええ…火元はドイツ、イギリスの艦娘たちなのですが、放っておくと「黒歴史」になりそうな勢いで……こればかりは提督のどなたかでないと収まらないかと」

提督「分かった、すぐ行くわ」

カヴール「…どうやらベッドに入るのはもう少し後になりそうですね。私も一緒に行きましょうか?」

提督「いいえ、大丈夫よ…もし眠くなったらベッドに入っていても構わないわ」

カヴール「はい…それでは提督のベッドを暖めておきます♪」

提督「はいはい♪」

…食堂…

提督「ディアナ、どうしたの?」厨房寄りのドアからさりげなく食堂に入って、心配顔のディアナに話を聞いた…

ディアナ「いえ、それが……わたくしにもどうにも止められそうにないのです…」

ビスマルク「……ほぅ、この「鉄血宰相」にかなうと思うのか…「フッド」の二の舞にしてくれん!」

エリザベス「このエリザベス、いささか荒事の心得もございます…遠慮はございません。どうか撃沈させるつもりでおいでくださいませ」

提督「あー…まるでノルウェー沖の海戦みたいね」

ディアナ「はい、しばらく前までは大人しく飲んでおられたようなのですが……」

…数十分前…

ビスマルク「重巡「ポーラ」……だったか、貴様はいい奴だな…そんな貴様のために一曲かけよう!」ビールとキルシュヴァッサーと白ワインですっかり出来上がったビスマルクがポーラの肩を抱き、酒臭い息で声を張りあげる…

ポーラ「わ、わぁ~い…ポーラ、嬉しいです~……」

ビスマルク「なに、イタリア海軍がやる気に欠けるからとて卑屈になることはない…よし、「ヴィールファーレン・ゲーゲン・エングランド」を頼む!」(※ヴィールファーレン・ゲーゲン・エングランド…軍歌「いざ英国に進撃せん!」)

フィウメ「いえ、その曲のレコードはさすがにここには……」

ビスマルク「ないのか…仕方ないな、なら伴奏なしでも歌うぞ……ティルピッツ、一緒に歌え!」

ティルピッツ「ヤヴォール!」

エリザベス「……何とも無粋な歌でございますね。不屈のジョンブル魂はドイツ軍の空襲でも…まして軍歌ごときでは揺るぎもしないことを証明いたしましょう」ちびちびとブランデーを傾けていたが、わずかに眉をひそめた…

エメラルド「では「ハート・オヴ・オーク」を?」

エリザベス「無論でございます…さぁ、エメラルドもご一緒に♪」

………

提督「で、今に至る…と」

ディアナ「はい…グレイ提督は先に部屋へお戻りになられ、ヴァイス提督もお部屋で今日の報告書を書き上げてから戻ると……」

提督「あー…ディアナ、一応二人の提督に再度連絡をお願い……その間にどうにか止めてみるから」

ディアナ「承知いたしました」

提督「とはいえ……」

ビスマルク「貴様…ぁ」ゴゴゴ…

エリザベス「…ペルソナカード…ドロー♪」ゴゴゴゴ…

提督「うかつに割って入ったら火傷じゃ済みそうにないわね……」

ザラ「提督、そんなこと言ってないでどうにか止めさせてよ…あそこにはポーラもいるのよ?」

ポーラ「…ひぃぃ」

提督「確かにテーブルの下で這いつくばっているわね……はぁ、あんまりやりたくはないけれど…仕方ないわ」

ザラ「何かいい案が?」

提督「ええ…ザラ、ちょっと私の寝室までひとっ走りして、「実家でもらった手土産の紙袋」をカヴールから受け取って来てもらえる?」

ザラ「紙袋?」

提督「ええ…英独の開戦を防ぐためだもの、こだわっているわけにもいかないわ」

ザラ「よく分からないけど…とりあえずカヴールから「実家の紙袋」をもらって来ればいいのね?」ぱっと廊下に飛び出していくザラ…

提督「ええ、よろしく……ディアナ」

ディアナ「はい」

提督「グレイ提督たちはつかまった?」

ディアナ「いいえ…ですから、わたくしが直接お部屋にお伺いしようと存じます」

提督「お願い。ぜひとも32ノットの高速を発揮して?」

ディアナ「よしなに…」

ザラ「…提督っ、戻りました!」

提督「早かったわね…それじゃあ私は廊下で「準備」しなくちゃいけないから、ザラは合図したら食堂の灯りを落とせるようにしておいて?」

ザラ「了解」

ビスマルク「…むむむ!」

エリザベス「ふっ」

アブルッツィ「今度の当番の分をビスマルクに♪」

エウジェニオ「そう…なら、私はエリザベスに賭けるわ♪」にらみ合いが続いているテーブルの中央と、その周辺から離れてざわめいている艦娘たち…と、急に電気が消えた

ビスマルク「なに、停電か?…もっとも、私には優秀なレーダーがあるが」

エリザベス「わたくしも多少ならお相手できますので、夜戦と致し……」

提督「ザラ、ルーチェ!(灯り!)」

ザラ「はいっ!」急に演説台の周りだけ明かりがともり、全員の視線がそちらに集中する

ミラベロ「…へぇ、やるじゃない♪」

バリラ(大型潜バリラ級)「まぁまぁ…提督ったらお母さんにそんな姿を見せちゃって♪」

ザラ「え!?…ちょっと、紙袋の中身って///」一段高くなっている箱状の演説台に立って、灯りに照らされている提督…

提督(バニーガール)「えー……せっかくなので余興として私が一曲歌いたいと思います///」むっちりしたふとももや丸っこい胸が今にもこぼれ落ちそうな網タイツと黒いハイレグのバニーガール姿で、少し恥ずかしげにヒップの食い込みを直そうとする提督……

リベッチオ「提督、可愛いよぉ!」

エウジェニオ「ふふ、ちょっと露骨なお誘いだけど……そう言うのも嫌いじゃないわ♪」

提督「///」

ビスマルク「な、何だ…!?」

エリザベス「まぁ///」

ティルピッツ「!?」

エメラルド「///」…と、そこに冷たい怒りの表情を浮かべて駆け込んでくるヴァイス提督

ヴァイス提督「ビスマルク!ティルピッツ!お前たちは一体どういう……か、カンピオーニ提督!?…その格好は///」

提督「あー…開戦を阻止しようと頑張っていたところです///」

…しばらくして・執務室…

ヴァイス提督「…お邪魔して早々に大変ご迷惑をおかけしました……お前たちも早く謝らないか」小声で叱り飛ばすヴァイス提督

ビスマルク「全く申し訳ない…我々姉妹がイギリス艦ごときの挑発にやすやすと乗ってしまい、大変ご迷惑をおかけした」

ティルピッツ「…いや、でも元はと言えば姉上が酔った勢いで「ヴィールファーレン・ゲーゲン・エングランド」をかけろなどと言わなければ……」

ビスマルク「…何か言ったか?」

ティルピッツ「いえ……とにかく申し訳ありませんでした、カンピオーニ提督」

提督「いいの、気にしないで…何はともあれ喧嘩になったり、怪我をしたりしないでよかったです」

ヴァイス提督「それについてはいくらお礼を述べても足りません……あんな格好までしていさかいを止めていただき、どう謝罪をすればいいか…」

提督「えーと、まぁ……とにかく全員無事で良かったですし、謝罪もこれで充分ですから…どうぞお休みになって下さい♪」(恥ずかしかったのは嘘じゃないにしても「あんな格好」って言われたわ…)

ヴァイス提督「はっ、それでは失礼いたします……二人とも、後で私の所に来るように」

ビスマルク「…ヤヴォール」

ティルピッツ「うぇぇ、どうして私まで…」

ヴァイス提督「…連帯責任と言う言葉を知らないか!……全く、お前たちは……」さっそく廊下でお説教が始まり、それがだんだん遠のいていく…

提督「ふぅ…」

カヴール「うふふっ、お疲れさまでした…それにしても提督の可愛いバニーガール姿を見損ねてしまうなんて、つくづく残念です♪」

提督「もう、止してよ…結構恥ずかしかったんだから」

カヴール「あら、私と裸でいるのは大丈夫なのにもかかわらず……ですか?」

提督「だって…あれは好きな人と一緒にいる訳だから///」

カヴール「あら♪」

提督「さぁ…グレイ提督も謝りに来て、ヴァイス提督も来たわけだから……寝る前にもう一度お風呂に入って来るわ」

カヴール「ふふ、嫌な汗をかきましたか?」

提督「まぁね…疲れたからお風呂で身体を伸ばすわ…」

カヴール「はい…ではバスローブを用意しておきます♪」

…大浴場…

提督「あー……」ちゃぽ…っ……

…時おり源泉の色が変化する不思議な温泉の湯は淡い緑白色に濁っている……浴室の工事中にいきなり現れて、工兵隊に素晴らしいインスピレーションと設計図を残していった謎の古代ローマ風の男「ルシウス」が残したアイデア通りローマ建築と異国風が上手く融合した大浴場は、丸天井のついたあずまや風の個室風呂だったり、冷水浴の浴槽だったり、はたまたアクセントの蘭や観葉植物の植え込みが湯気の中で煙っていたりする……鎮守府の艦娘たちも古代ローマの雰囲気に合わせようと、基本的に水着を着ないで入ることになっている……提督も今ではすっかり裸での入浴に慣れ、たわわな乳房にお湯を跳ねかけている…

提督「うぁー…」と、大浴場の湯気の向こうに誰かのシルエットが霞んで見える

提督「?」

ヴァイス提督の声「全く……ビールを飲みすぎて喧嘩騒ぎを起こすなど…ハンブルグやキールの連中じゃあるまいに…」

提督「…ヴァイス提督も大変ね」小声でつぶやくと、ぱちゃぱちゃとお湯をすくった

ヴァイス提督の声「…それにしても立派な浴室だ…うちの浴室の数十倍はある……イタリア海軍は肝心の装備よりもこう言うところにお金をかけると言うが…本当だな」

提督「…余計なお世話です」

ヴァイス提督の声「…それに裸で入るのが規則だとか……あの艦娘に教えてもらって間違わずに済んだのはいいが…どうにも恥ずかしいな…」

提督「誰かしら…」

ヴァイス提督の声「あの艦娘…「カイオ・デュイリオ」だったか……旧式のド級艦を改装した中型戦艦で、確か主砲は32センチ……6割も改装するぐらいなら、いっそ新型戦艦を作った方が効率的だと思うが…」

提督「…そう思う人は多いわね…でも当時のイタリアはお金やら資源やらで色々と事情がありまして……」

ヴァイス提督の声「…それにしても彼女は…なんであんな微笑を浮かべて私の裸をちらちら見ていたのだろう……そんなに私の身体はおかしいだろうか…?」

提督「もう…デュイリオったら……♪」

ヴァイス提督の声「……ふむ、別に胸や腹周りにも変なたるみや贅肉はないし……下の毛だってはしたなく見えないように整えてあるしな……」

提督「そうね…制服の上から見ても引き締まっていて、アスリートみたいな身体つきだったわね……」

ヴァイス提督の声「…そもそもここの提督や艦娘は、お互いに礼儀を欠いているように見えるほど親しげだが…やっぱりイタリア海軍はラテン民族なのだな……カンピオーニ少将もあいさつの時に頬にキスしてきて…儀礼にしてはずいぶん優しいキスだったが……ヴィルヘルムスハーフェンで私があんなことをしたら、頭がおかしくなったと思われかねないな……」

提督「…ふふ、冷たいけれどしっとりした肌だったわ……♪」

………

…数日後・午前…

提督「さーてと、おかげで憲兵隊の特別監査も終わったことだし…もう心配なことは何もないわね♪」

ライモン「提督、数日後には年度初めの備品確認がありますが」

提督「あー…憲兵隊の次は主計部っていうわけね……はぁ、嫌になるわ」

ライモン「提督の着任前はそこまであれこれ買ってもらえなかったせいもあるでしょうが…そんなにですか?」

提督「ええ。憲兵隊もたいがいだけれど、何しろユーモアが通じないわ」

ライモン「そうですか…」

提督「ええ」

ライモン「なるほど…でも提督は書類をちゃんと片づけていますし、きっと大丈夫ですよ」

提督「ありがとう。でも考えると気が滅入るわ……楽しみにしていた百合漫画が急に終わってしまうくらいね」

ライモン「それほどですか…だいぶ重いですね」

提督「ええ……まぁいいわ、ちょっと運動がてらみんなの様子を見て回りましょう?」

ライモン「では、お供します」

…駆逐艦「ナヴィガトリ」(航海者)級の部屋…

提督「もしもし…入ってもいいかしら?」ノックをして声をかける

ニコロソ・ダ・レッコ(通称ニコ)「提督?…もちろんいいよ」

提督「ありがと、お邪魔するわね♪」

ニコ「あ、ライモンドも…どうぞ座って?お茶でも出そうか?」部屋の共有部分には相変わらず昔の地球儀や羅針盤、六分儀に真鍮の伸縮式望遠鏡が飾ってあり、ニコ自身も昔の航海者らしく見えるような三角帽子に燕尾のついた上着、白のぴっちりした半ズボンを着ている…

提督「いえいえ、ちょっと見に来ただけだから……何を読んでいたの?」

ニコ「うん、日本の漫画なんだけどね…「キソの旅」って」

提督「あぁ、タイトルだけなら百合姫提督から聞いたわ。…確かシニカルな軽巡「木曾」が日本の軍用オートバイ「陸王」に乗って、腰には「南部十四年式拳銃」と「ブローニング・M1910」を下げているって……」

ニコ「詳しいね、その通りだよ…ま、どうぞ♪」

提督「あら、ありがと♪」出された小さなパイをつまむ提督

アントニオ・ダ・ノリ「ニコ、誰か来てるの?……って、提督♪…よかったらお菓子でも食べる?」

提督「あらまぁ…ごちそうさま♪」中心にジャムのついた円盤状のクッキーをもらう提督…

ライモン「あの…あんまり提督に餌付けしないでもらえますか」

ニコ「…だそうだよ、提督♪」

提督「はーい…それじゃあまたね」

ダ・ノリ「いつでもどうぞ♪」

…廊下…

提督「今度はどこにしましょうか」

ライモン「そうですね…姉妹艦のいない重巡「ボルツァーノ」とか大型潜の「エットーレ・フィエラモスカ」あたりがよいのでは?」

提督「なるほど、いい考えね♪」

…重巡「ボルツァーノ」の部屋…

提督「…いないみたいね?」

トリエステ(重巡トレント級)「提督、どうかしました?」

提督「あ、トリエステ…いえ、ちょっとぶらぶら歩きを兼ねてボルツァーノの所に来たのだけど……どうやらお留守みたいね?」

トリエステ「あぁ、そういうことでしたか…ボルツァーノならさっきザラ級の四人と一緒にお庭へ行きましたよ?」

提督「そう、ならいいわ……トリエステ、よかったら私たちとおしゃべりする?」

トリエステ「あー…ごめんなさい、提督。「それはぜひ」と言いたいのですが、ちょうどトレント姉さんと泳ぎに行くところなので……」

提督「あら…ならトレントと一緒の方がいいわ。二人で仲良くしていらっしゃい♪」

トリエステ「はい、それでは」

提督「チャオ♪」

ライモン「フィエラモスカさんも潜水艦たちに戦術の講義中…ボルツァーノもザラ級のみんなと一緒……他に姉妹のいない艦と言いますと…」

提督「そうねぇ…あ!」

ライモン「どうしました、急に大きい声を出して?」

提督「いえ、姉妹で思い出したけれど…リットリオに頼まれていたことを思い出したわ」

ライモン「あ、そういえば「妹が欲しいの♪」って言ってましたね」

提督「ええ、もう建造許可は下りているし……さ、リットリオの部屋に行きましょうか♪」

…戦艦「リットリオ」の部屋…

提督「…リットリオ、いるかしら?」

リットリオ「はぁい、どうぞ」

提督「失礼するわね…まぁ、可愛い♪」

…部屋に入ると、波打つ明るい茶色の髪をポニーテールに結い上げたリットリオが夏季休暇のお土産らしい服に袖を通していた……淡いグレイのブルゾンを羽織り、白い薄手のタートルネックと明るいイタリアンレッドのプリーツスカート…そして頭にはちょこんとパールグレイのベレー帽がのっている…

リットリオ「可愛いですか?」

提督「ええ、可愛いわ…そうね。ちょっとしたネックレスとハンドバッグでもあればぐっと大人の女性らしく見えるし、バスコ(ベレー帽)を麦わら帽子みたいなつば付きの物に替えればもっとチャーミングな感じになるわ♪」

リットリオ「わぁ、提督ったら洋服の事も詳しいんですね♪」

ライモン「それはもう…提督のお母様は服飾デザイナーですから」

提督「んー…と言うより、そう言う服を着たリットリオを想像したら可愛いな……って♪」

ライモン「あー…そっちですか」

リットリオ「ふふ、でも嬉しいですよ…ところで、何のご用ですか?」

提督「ええ…実は、あなたが私に頼んでいた「リットリオ級」の建造にそろそろとりかかろうと……って、んっ///」

リットリオ「提督っ、嬉しいですっ!……んー、むっ♪…むちゅぅぅっ♪」

提督「ちょっとちょっと…別にそんなにキスの嵐を浴びせなくても……んぅぅ♪」

リットリオ「だって、やっと私にも妹たちがやって来るんですもの…嬉しいに決まってます♪」そう言いながら提督のヒップに手を伸ばし、もちもちしたお尻の肉を優しくこねるようにつかむ…

提督「だからってそんなに……あんっ、もうっ♪」まんざらでもない様子でリットリオを見つめる…

リットリオ「…提督、まだお昼前だけど……嬉しい気持ちが一杯なので愛し合いたいです///」

ライモン「こほん…リットリオさん」

リットリオ「あっ…ごめんね、ライモンド♪」

ライモン「とにかく、建造するにしても日にちを考えませんと…でしょう?」

提督「それもそうね……えーと、リットリオ。とりあえず建造に取りかかるのは数日後になると思うから、その時はお手伝いをよろしくね?」

リットリオ「はいっ♪」

…えー、という訳で次回の投下でリットリオ級二番艦「ヴィットリオ・ヴェネト」と三番艦「ローマ」を建造する予定です……のびのびにしていて申し訳なかったですが、ようやくですね……次回は数日後になってしまうかもしれませんが、コツコツ投下していきます…


…他に「基地祭」での小ネタ少々に追加して「提督の百合談義」、それと外国提督たちとの交流ネタは多少思いついています

…数日後…

リットリオ「それじゃあ、頑張りましょう♪」

提督「ええ」…手元にはリットリオお手製の「ヴィットリオ・ヴェネトおよびローマ建造の手引きマニュアル」が握られている

ライモン「何と言うか…ここまで準備が必要とは思いませんでした」

提督「そうね、必要な書類を読んでいるとこの前の作戦を思い出すわ」

ライモン「ヴィットリオ・ヴェネト(Vittorio Veneto)作戦……『V・V作戦』では長いですし、『V作戦』と言ったところですね」

提督「なんだか聞いたことのあるフレーズだけど…まぁ良いわ、とにかくヴィットリオ・ヴェネトとローマの建造を準備しましょう」

リットリオ「おー♪」

………

提督「むぅ…まずはイオニア海・軍管区への理由説明ね……まぁ、どうにか思いついてみましょう」

リットリオ「うーん…」

ドリア「失礼します。提督、良かったら一緒にお茶でもいかがですか♪」

提督「ありがとう、でも今はいいわ…申請書類を書かないといけないから」

ドリア「そうですか……それではまた後で♪」

提督「ええ。……そうねぇ、『カヴール級およびデュイリオ級では火力・防御面において深海側の戦艦群に対しいささかの不満なしとせず…また、リットリオ単艦では運用上、艦隊の編制はなはだ難しく……』とでも書きましょうか」

リットリオ「なるほど、お上手ですね♪」

提督「まぁね。少尉になりたての頃から需品の申請なんかでよく代筆したものよ…さてと、次に……」

………

提督「あー…今度は主計部に申請書を出さないと……ふぅ」

リットリオ「…軽く数十枚はありますね……さすがに疲れました?」

提督「大丈夫よ、日課の書類はカヴールとライモンに任せてあるし…それにリットリオの可愛い妹たちのためだもの♪」ちゅ…♪

リットリオ「提督…っ♪」

提督「ふふ、いいのよ♪」

ドリア「……あの、提督…よかったら午後のお茶でも……提督のお好きなお菓子を用意しておきましたよ?」

提督「あら、わざわざ気を使ってくれてありがとう…でも今日はいいわ、この申請書類を片づけないといけないの……ごめんなさいね」

ドリア「いえ…いいんですよ、でしたらお菓子だけお届けしますから」

提督「ふふ…ありがと♪」

………

ヴァイス提督「…という訳で、この時に「アトミラル・ヒッパー」「リュッツォウ」以下の戦隊が敵艦に対し果敢に攻撃を敢行していれば、間違いなく『JW51B』船団は壊滅していたはずです」

提督「それはあくまでも後知恵に過ぎないと思います……何しろクーメッツ提督とシュタンゲ大佐は「どのような形であれ艦の損害を避けよ」と厳命され、「同等の戦力であっても慎重に作戦すべし」と指示されていたのですから」

グレイ提督「対し我が方のシャーブルック大佐…彼が負傷してからも直接護衛の駆逐隊は「見敵必戦」で戦闘を行うよう意識づけされており、またノルウェーで長らく停泊していたドイツ艦と違い、常に戦闘行動を行い自信をつけておりました…特に「オンスロウ」「オーウェル」の擬似魚雷攻撃はそれだけでドイツ艦の動きをすくませておりますね」

提督「いずれにせよ、英駆逐艦の積極的な行動はドイツ側に疑念を抱かせ、結局は反転する結果をもたらしたと言えるでしょうね……以上でよろしいですか?」

ヴァイス提督「ええ…しかしどうも、イギリス海軍は強力な敵と分かっていても戦闘をあきらめない傾向があるようですが……理論的には12.7センチ砲の駆逐艦は20.3センチ砲の重巡には勝てないはずです」

グレイ提督「きっと…そちらがそう思っている所に駆逐艦が攻撃を敢行するから、面食らってしまうのでしょうね」

ヴァイス提督「なるほど……これもまたよく練られた心理的な戦術なのですね」

提督「と言うより、イギリス人のやせ我慢…あるいはこれが『ジョンブル魂』なのでしょうね♪」

ドリア「…提督、お疲れさまでした。よかったら夕食の席をご一緒して……」

ヴァイス提督「失礼…カンピオーニ提督。提督は先ほど「ヒッパー」の動きについて興味深い事をおっしゃっておりましたが……」

提督「あぁ、それは…ゴメンなさい、ドリア」

ドリア「……ええ」

………

…工作室…

提督「それでは…カンムスカード……ドロー!」…青いラピスラズリのような光が辺りを照らし、提督はずっしりした図鑑のような「艦娘全書」を左手に持ったまま、右手で投げ上げた白紙のカードを受け止める

グレイ提督「イタリア海軍はその青いタロットのようなカードで建造できる艦や装備が分かるのですか…面白い仕組みですね」

ヴァイス提督「我が方は機械的に生成される艦種や装備が各鎮守府の戦力や方向性に基づいて配布されますから…なかなか斬新ですね」

リットリオ「どうですかっ、提督♪」

提督「だめ…37ミリ・ブレダ対空機銃」

リットリオ「がんばって下さい、リットリオも応援してますから♪」

提督「ええ…ドロー!」

リットリオ「どれどれ…むぅ、20ミリブレダ連装機銃ですね」

提督「大丈夫、頑張ってみるわ」

リットリオ「はいっ♪」

提督「ドロー…!」

ライモン「あの、提督…」

提督「なぁに、ライモン…急ぎの用かしら?」

ライモン「急ぎ…ではないですが」

提督「んー、それだったらお昼の後でいいかしら?……もうちょっとでヴィットリオ・ヴェネトが出そうな気がするの♪」

ライモン「…そうですか」

提督「ごめんなさいね、この数日ヴィットリオの建造にかかりきりで」

ライモン「いえ、わたしは平気ですから」

提督「そうなの?…ん、今「わたしは」……って言った?」

ライモン「え、ええ」

提督「って言うことは、「わたし」以外で平気じゃない人がいるのね?」

ライモン「平気ではない…と言いますか、このところ提督がご一緒してくれなくて「さみしい」と言っている方が数名……」

提督「言われてみれば…リットリオと建造の準備、グレイ提督たちと有名な海戦の図上演習と戦術論…それに書類の片づけ……食事時以外はあんまりみんなとお話してなかったわね」

ライモン「はい、忙しいのですから仕方ないですが…」

グレイ提督「…カンピオーニ提督、よかったらお茶にしましょう?」

提督「…そうですね。では建造の様子は、また後でお見せします」

グレイ提督「ええ、ぜひそうなさってくださいな」

提督「それじゃあライモン…行きましょう」

ライモン「はい…っ♪」提督の差しだした腕に自分の腕を絡めて寄り添うライモン…反対側にはリットリオが同じようにくっ付いている……

………

…執務室…

提督「…それじゃあお茶の時間にふさわしく、少し軽い格好に着替えるわ」

ライモン「はい、でしたら先にお茶の用意をしてきます」

リットリオ「私は提督のお側にいたいです…いいですか?」

提督「ふふ、いいわよ…まったく、リットリオったら立派な戦艦なのに甘えん坊さん…ね……」ドアを開けて固まった提督…

ドリア「あら、提督……今日もリットリオと一緒なんですね。まぁ私のようなおばあさんとちがって可愛いですものねぇ♪」にっこりと笑みを浮かべるドリア…が、その表情は強ばっている……

ポーラ「えへへぇ…提督のベッド、いい匂いがしますねぇ…ん、んっ♪」…くちゅくちゅっ♪

ジョスエ・カルドゥッチ(オリアーニ級駆逐艦)「んはぁ…すぅ……はぁ……提督、提督っ……///」

…開いている寝室へのドアからは、クローゼットの下の引き出しに顔を埋めてランジェリーにまみれているカルドゥッチが見え、ベッドで喘ぎ声をあげているポーラの嬌声も聞こえる…

提督「あー…」(これはアレね…一つでも間違ったら間違いなく刺されるわ……)

リットリオ「ひっ…!」

ドリア「どうしました、リットリオ…別に怖がることなんてないじゃありませんか、私みたいな「おばあさん」なら簡単に沈められますもの……ね、そうでしょう♪」

提督「ち、ちょっと…ドリア」

ドリア「はい、何でしょうか……提督♪」

提督「あ、あー…リットリオ、ちょっと外してもらえる?」

リットリオ「は、はいっ……!」

提督「…これでよし、と」ポーラたちはそのままに寝室のドアを閉めた

ドリア「…提督、別に構いませんよ……私の用事なんてリットリオのお願いに比べたら大したことなんてないですものね♪」

提督「もう…ドリアったら」…ぎゅっ♪

ドリア「ふふ、リットリオの張りのある肌に比べたら……わたしの身体なんて樽みたいなものでしょう?」

提督「もう…ドリアったら何を勘違いしているの?」

ドリア「…あら、この期に及んで言い訳ですか」

提督「あのね……このところリットリオとばかりいて、ドリアのお誘いを断って来ちゃったわよね?」

ドリア「ええ…別に構いませんよ……リットリオの方が若くて可愛いですからね」

提督「ふふ、すねないの……あのね、そうでもしないと見境が無くなりそうだったんだもの……///」

ドリア「…」

提督「だって……グレイ提督とヴァイス提督が来ている手前、あんまりドリアとえっちしてる訳にも行かないじゃない?」

ドリア「そうですか…でも、リットリオとならいいんですか?」

提督「ふふ…リットリオは超ド級艦だけあって、あの色欲でしょう?…放っておいたら発情して何をしでかすか分からないわ。だから手元において手綱を取っていたわけ♪」

ドリア「でも…私だって提督と……///」

提督「分かってます。我慢させちゃったのは悪かったわ……でも、ドリアは大人の女性だし、デュイリオもいるからどうにかしてくれると思っちゃったの…寂しくさせてごめんなさいね?」

ドリア「提督……提督っ!」

提督「きゃあっ///」

ドリア「もう、寂しかったんですからね…っ!」んちゅっ、ちゅむ、ちゅぅぅっ……ちゅぷっ♪

提督「んぅ、んっ…ん……ドリア…私も……我慢できないの///」

ドリア「ふふ…それじゃあ「年増の魅力」をうんと教え込んで差し上げます♪」ぬちっ…ぐちゅぐちゅっ!

提督「あっ、ふあぁぁっ……あ゛っ、んあぁぁぁっ♪」ドリアに抱き上げられ、多少乱暴に指をねじ込まれる…柔らかなドリアのもち肌にしがみつき、口を開けて喘ぐ…

ドリア「……しばらく放してあげませんから♪」

提督「…あ゛ぁ゛ぁぁっ、いいっ…んぁぁっ、あふっ……ひぐっぅぅっ♪」ぐちゅぐちゅっ、とろっ…にちゅっ♪

………

…翌朝・食堂…

グレイ提督「モーニン。アドミラル・カンピオーニ……ご機嫌はいかがですか?」

提督「……どうにか生きています」どこか嬉しげながらもすっかり疲れた顔で、よたよたと朝食の席にやってきた提督

グレイ提督「ふふ、面白いお返事ですこと…よろしければ隣でご一緒なさいませんか?」

提督「え、ええ……あいたた…」

グレイ提督「…どうかなさいましたの?」

提督「えぇ、少し腰が…」そーっとテーブルにお盆を置き、牛乳を飲み干す提督…と、機嫌の良さそうなドリアを始め数人が何くれとなく世話をしてくれる……

グレイ提督「あらあら…カンピオーニ提督は艦娘たちに慕われておりますのね?」

エリザベス「仲がよろしいようで何より…でございます」

エメラルド「そうですね……それにしてもずいぶん親しげで…もしや……?」

グレイ提督「…ふむ」

提督「あ、あー……そう言えば、今日こそはリットリオ級戦艦の建造をお見せしますよ」

グレイ提督「ふふ、それは楽しみです…あの古い電話ボックスのようなお洒落な機械が動くのですね?」

提督「ええ、そうです」結局一睡もさせてもらえなかった前夜の猛烈な「夜戦」のせいで、お腹が背中にくっつきそうなほど空腹な提督…


…朝食は生クリームとチーズのリゾット、中にマッシュルームが混ぜ込んであるふわっとした卵二つ分のオムレツに、昨夜の残りのチキンが化けた美味しい冷肉……鶏モモ肉のローストを裂いて、そこに粗挽きの黒胡椒とバジルを散らしたもの……それを取ってもらうと、丸パンと一緒に食べ始めた…


グレイ提督「ふふ、朝からたくさん召し上がって……見ていて微笑ましいですね」…グレイ提督が「労働者階級は朝からうんと食べ、貴族や有閑階級は朝をほとんど食べない」ことをさりげなくあてこすってくる……

提督「ええ、何しろイタリアの朝食は美味しいですから…もっとも、「朝食だけ」ではなく昼も夜も美味しいですが♪」提督もサマセット・モームの言った「イギリスで美味い物を食いたかったら朝食を一日三回食べろ」を引用してやんわりとやり返す……と、テーブルの一角にきっちりと座っているヴァイス提督とドイツ艦たちに目が行った…

ビスマルク「…イタリア人と言うのはいつも祭日のような食べ物を食べているのだな…むしゃむしゃ……しかしだ…ドイツの食事だって美味いから、そこまで気を引かれるわけではないが……作ってもらっている以上、義務として味は見ておかないといかん……むしゃむしゃ…」

ティルピッツ「…これも美味しい……姉上、よかったらこれもどうぞ」

ヴァイス提督「…えーい、全く揃いもそろって食い意地ばかり……」

ディアナ「ビスマルク、イタリアの食事はいかがですか?」

ビスマルク「ふむ…何とも豪華で美味な食事である、このビスマルクが褒めてつかわそう」

ディアナ「ふふ…よしなに♪」

提督「あー…ヴァイス提督、食事の方が済みましたら今日こそ建造に取りかかりますので」

ヴァイス提督「ヤヴォール……おい、いい加減にしないか…」

ビスマルク「待て、戦闘前には腹に燃料を詰め込んでおかなくてはならん」

グレイ提督「ふふ…わたくしは待っておりますから、『以前食べられなかった分』もいっぱいお食べになって?」(※ビスマルクは派遣されたタンカーと合流する前に撃沈された)

提督「あー…ヴァイス提督。こちらもゆっくり準備をしますから、もうしばらくたったら工作室に来てください」

ヴァイス提督「失礼ながらカンピオーニ提督…もうしばらくとは何時ごろでしょうか、指定をお願います」

提督「えっ?……えーと、それでは0930時頃にお願いします」

ヴァイス提督「ヤヴォール。……二人とも、もういいだろう。これから支度に二十五分はかかるのだ…あと五分で朝食を終えろ」

ビスマルク「む、仕方ない…ティルピッツ、切りあげろ」

ティルピッツ「ですがまだ朝の甘い物を……」

ヴァイス提督「…部屋にバウムクーヘンがあるからそれですませておけ……残り三分だぞ」

ティルピッツ「…ヤヴォール」

提督「…」

…しばらくして・工作室…

提督「…で、後はこのレバーを引けば建造が開始されるわけです」…相変わらず「ド○ター・フー」に出てくる電話ボックスとお洒落なクローゼットのあいのこ……のようなデザインをした建造装置の前に立ち、説明を終えた

グレイ提督「なるほど」

ヴァイス提督「ふむ、そう言う仕組みなのですか」

提督「ええ…では実際にお見せしましょう。リットリオ?」

リットリオ「はいっ♪」提督がレバーに置いた手の上に指を重ね、横目で愛おしむように提督を見た…

提督「では、建造を開始します」レバーを引き、周囲に低い機械音が響き始めた…

………



提督「さてと…あのカウンターがゼロになったら建造が完了します」

グレイ提督「ふふ、それにしてもお茶の時間を挟んだ上でまだかかるとは思いませんでした……さすがに戦艦ともなると時間がかかるのですね♪」さりげない口調ながら、それも「イタリアの造船所は能力が低いから」という意味での皮肉であることにピンと来た

提督「その分斬新なアイデアと進取の姿勢は持ち合わせておりますから♪」

グレイ提督「ふふ、言われてみれば……ド級艦のアイデアも、もともとそちらの物でしたものね」

ヴァイス提督「性能のバランスが取れていて、短距離の作戦では優秀な性能を発揮しうると思います」

提督「そうですね……さぁ、出てきますよ♪」

リットリオ「やっと二人に会えます……もう嬉しくてたまりません…っ♪」

…建造装置の上についているカウントダウンのタイマーがゼロになると、相変わらず目を開けていられないような瑠璃色、あるいは群青色の強烈な光が目を眩ませ、同時に建造装置のドアが中から開かれた…

明るい茶髪の艦娘「…」

栗色の髪と眼鏡の艦娘「…」

…リットリオ級の二人は長身で、メリハリの効いた身体は張りがあり、胸を強調するような淡いグレイのブラウスに黒のコルセット、折れ線の幾何学迷彩を意識した淡いグレイと濃いグレイのプリーツスカート、それと艦首を1.7メートル延長したことがあるせいか、黒いエナメルハイヒールを履いている…片方は髪を三色旗のリボンでアップに結い上げ明るい笑みを浮かべていて、もう片方は栗色の髪で眼鏡をかけ、なぜか多少不機嫌そうに目を細めている…

提督「初めまして、お二人とも…ようこそ♪」

茶髪の艦娘「ボンジョルノ……えーと…?」

提督「タラント第六鎮守府司令官のフランチェスカ・カンピオーニ少将です…よろしく♪」挨拶として左右の頬にキスをし、リットリオと同じような甘い匂いと張りのある肌を楽しむ提督…

茶髪の艦娘「それでは私も…リットリオ級戦艦二番艦、「ヴィットリオ・ヴェネト」です。活躍させてくれると嬉しいです♪」

眼鏡の艦娘「同じくリットリオ級三番艦。戦艦「ローマ」です。好きなものは『永遠の都』ローマに関わること全般、嫌いなものは航空攻撃と誘導爆弾です……よろしくお願いします、提督」

提督「ええ、よろしくね…あの、ローマ?」

ローマ「何ですか?」

提督「私が何かしたかしら?」

ローマ「いいえ、別に…いったいどうしてです?」

提督「だって……なんだか不機嫌そう」

ローマ「いえ、むしろ上機嫌ですよ……ただ、眼鏡の度が強くて…」

提督「あらあら……そのうちに直してもらいましょうね♪」

ローマ「そうして頂けると助かります」

ヴィットリオ・ヴェネト「それで、提督さんは……きゃあ!?」

リットリオ「んー、ちゅうぅっ!……よく来てくれましたねぇ、お姉ちゃんですよっ♪…覚えてます?」

ヴェネト「わ、分かってます、分かってます!……リットリオ姉さまでしょう?」

リットリオ「そうですよっ…わぁぁ、懐かしいですねぇ……はい、ローマも……んーっ♪」

ローマ「…ん、んんっ!……も、もう…リットリオ姉様は愛情表現が過激すぎです、もっとこういう物は時間をかけて…///」

リットリオ「そうかしら、いつも提督にしているのにくらべたらこんなの……あっ」

ヴァイス提督「…な、何!?」

グレイ提督「…なるほど、それで納得がいきましたわ」

提督「あー…」

…しばらくして…

グレイ提督「…なるほど、それで納得がいきましたわ」優雅にティーカップのダージリンをすすりつつ眉を上げて見せた

ヴァイス提督「まぁ…その……とにかく、カンピオーニ提督が鎮守府の指揮を見事にこなしていることは間違いありません」

提督「…ヴァイス提督」

ヴァイス提督「は、はっ!……何でしょうか」

提督「あー…そこまで態度がぎこちないと、さすがに私も悲しくなります」

ヴァイス提督「も、申し訳ありません…」そう言ってちらりと提督の奥に目をやる…

リットリオ「はい、あーんっ♪」

ローマ「別にあーんしてもらわなくても食べられます……あーん///」

リットリオ「ふふっ、じゃあ今度はヴェネトね…「あーん」して?」

ヴェネト「あーんっ♪」

リットリオ「えへへっ…美味しい?」

ヴェネト「ええ、とっても♪」

ヴァイス提督「…」

提督「…可愛いですよね、リットリオたちは♪」

ヴァイス提督「いえ、そのっ!……別に私はそう言う目で見ていたのではなく…カンピオーニ提督から「そう言う関係である」と教えて頂いてから改めて観察すると……」

ザラ「…もう、口の端にクリームが付いてるわよ♪」

ポーラ「じゃあとってください、姉さま♪」

ザラ「はいはい…♪」ぺろっ♪

ポーラ「あんっ、もうザラ姉さまったら…///」

グレイ提督「確かに……皆さんずいぶんと親しげな感じがしておりましたが、これもまた「イタリアらしさ」なのかと思っておりましたわ」

提督「いえ…ここが特別に「仲良し」なだけで、中にはお互いに素っ気ない鎮守府もあると聞いております」

グレイ提督「なるほど…ところでカンピオーニ提督」

提督「はい、何でしょう?」

グレイ提督「よかったらわたくしに「百合」について教えて下さらない?」

ヴァイス提督「!?」

提督「別に構いませんが…グレイ提督にその趣味はないのでしょう?」

グレイ提督「ええ、今まで特に感じたことはありませんわ……ですが、イギリス海軍内にも様々な趣味の提督たちがおりますし、予習しておくのはいいことですから」

ヴァイス提督「…で、でしたら私も……」

提督「嫌なら別にいいんですよ、ヴァイス提督?」

ヴァイス提督「いえ、とんでもない…ただ、カンピオーニ提督からそれを聞いて、どうお付き合いすればよいのか少し……」

提督「別に、今までと変わりなく話しかけてもらってかまいませんよ……いきなり取って食べたりするわけじゃありませんもの♪」いたずらっぽいチャーミングな笑みを浮かべると、指先ですっと頬を撫で上げる…

ヴァイス提督「…り、了解」

チコーニャ(ガッビアーノ級コルヴェット)「…はい、あーんしてください♪」赤ん坊を連れてくるという「コウノトリ」だけあって、いつも何かしらのお菓子や食べ物を持っているチコーニャ…

ガッビアーノ「むぐむぐ……とても美味しいよ、もう一口欲しいな」澄んだ黄色の目をしたガッビアーノは「カモメ」らしくぼーっと海を眺めていたり、寂しげに漂っているような様子に見えるが、実は食い意地が張っていて何でもよく食べる……

チコーニャ「はい、どうぞ……あんっ、指まで食べちゃだめですよぅ♪」

ガッビアーノ「ふふ、美味しそうなものだから…つい♪」

チコーニャ「もう…お姉ちゃんたらぁ♪」ちゅ…っ♪

ヴァイス提督「…あんな小さな娘なのに、大胆というか…私だってあんな真似はしたことがないぞ……」

ビスマルク「…全く、度し難いな」

ティルピッツ「……私も姉上とあんな風に……いやいや、私は何を考えているんだ///」

…しばらくして・会議室…

提督「さてと…まずはどれから始めましょうか」

ライモン「うーん…これなんかどうですか?」図書室や提督の寝室から十数冊ばかり漫画を持ってきてくれたライモン…

提督「なるほど。「あの子にキスと不知火を」ね?」

エウジェニオ「そう?…私としてはやっぱりこっちの方がいいと思うけど♪」エウジェニオはとある「いちごパニック」な漫画を取り上げる…

グレイ提督「なるほど、結構こうした分類の漫画や小説も多いのですね」パラパラとページをめくりながら、感心したように百合本の山を眺める

エリザベス「何とも……興味深いものでございます」

エメラルド「…で、でもこんな風にキスしたりするなんて……///」

提督「まぁまぁ、「桜に錨Trick」はキスシーンが多めだから…でも絵柄は可愛い感じだし、入門にちょうどいいでしょう?」

ビスマルク「こ、これが入門なのか…!?」

ティルピッツ「…う、うわぁ///」

提督「ふふ、好きなのを選んでね?…もし必要なら訳して読んであげるわ♪」

デュイリオ「あらあら、ビスマルクにティルピッツ……貴女たちにはまだ早いかしら♪」

エリザベス「何しろ二人ともお若くていらっしゃるものね…♪」

ビスマルク「む……このビスマルクが何かで遅れを取ることなどあり得ん。ましてや漫画ごときではな!」

デュイリオ「…でしたら一緒に読みましょうか♪」

ビスマルク「あぁ、ぜひそうさせてもらう!」

提督「…それではヴァイス提督、私と一緒に読みませんか?」

ヴァイス提督「え、ええ…漫画など読むのは子供のころ以来ですが……ドイツの物に比べてカラフルで綺麗ですね」

提督「そうですね、ここにあるのはだいたい日本の漫画ですし♪」ヴァイス提督の横に座ると肩を寄せ、ぱらりとページをめくった…

ヴァイス提督「///」

…しばらくして…

提督「いかがでした?」

ヴァイス提督「…あー…その……何と言いますか///」

グレイ提督「ふふ、なかなか面白かったですわ」

エリザベス「わたくしもこの胸の内にあふれる好奇心をくすぐられましてございます…♪」

エメラルド「…はぁぁ、世の中にはこんな世界があるのですか///」

デュイリオ「ふふ、面白かったでしょう?」

ビスマルク「し…しかしどうして女同士で……その…ベッドを共にするのだ……///」

デュイリオ「ふふ、それが愛というものです…理屈なんてないのですよ♪」

ティルピッツ「うぁぁ…なんだか恥ずかしくて、姉上を直視できない…っ///」

提督「あらまぁ…良かったらアニメもあるけれど、見る?」

ビスマルク「いや、もう結構だ…!」

ティルピッツ「……わ、私はもう少しだけ見ていきます…その、せっかく用意して下さったのですから///」

提督「じゃあこの席の方がよく見えるわ…さ、どうぞ♪」

ティルピッツ「…ダンケシェーン」

エウジェニオ「ふふふっ…隣、失礼するわね?」

ティルピッツ「…あっ、あぅ……///」

ヴァイス提督「わ、私も一応見ていく…その、途中で退席するのも規則に反しているような気がするので……」

ビスマルク「規則か……なら私もとどまるぞ、最後の一発まで忠誠は失わぬ…!」

提督「ふふ、どうぞごゆっくり♪」

………

…数時間後…

提督「…いかがでした?」

グレイ提督「ええ、なかなか面白かったですわ……なんと申しましょうか…これからは愛情に近い感情を持って、より一層わが艦隊の娘たちに思いやりを持ってあげられそうですわ」

提督「それはよかったです♪…ヴァイス提督、どうしました?」

ヴァイス提督「いえ、何でもありません……うぅ、顔が熱い///」

エウジェニオ「あらあら…いつもは厳格なドイツの海軍将校が真っ赤になって……可愛いわね♪」

デュイリオ「ふふ、それを言ったらビスマルクも顔を赤くして…うふふっ♪」

ビスマルク「し、しかし……むしろあんなのを見て平然としている貴様の方がどうかしているのではないか!?」

デュイリオ「まぁまぁ、ずいぶんと怖い表情ですこと…♪」

ビスマルク「お、おのれ…イタリアの年増女がこの『鉄血宰相』ビスマルクを愚弄するとは……!」

デュイリオ「あらあら…可愛いちっちゃなビスマルクが何か言ってますね……そう言えばビスマルク」

ビスマルク「何だ!?」

デュイリオ「実を言うと私、年下の娘が好きなのですが……ビスマルクは顔が整っていますし、身体も引き締まっていて……うふふっ♪」

ビスマルク「!?」

ティルピッツ「待て、姉上は私の物だ!」

ビスマルク「……ティルピッツ、今何と言った?」

ティルピッツ「あっ…いや、それは同型艦、あるいは姉妹としてと言う意味で……///」

エウジェニオ「ふぅん…仲睦まじいのはいいことよね♪」

提督「エウジェニオのそれはちょっとオーバーだけれど…ね♪」

グレイ提督「まぁ……百合は姉妹であっても成り立つのですか」

提督「ええ、むしろお互いの事を知り尽くしている姉妹だからこそ…だと思います」

グレイ提督「だんだんと話が難しくなってきましたが…つまり百合と言うのは姉妹・母娘・友人・上司と部下・その他もろもろ……いずれにおいても成り立つと?」

提督「ええ、もちろんです」

グレイ提督「…そうですか……ところで」

提督「何でしょう?」

グレイ提督「もしぶしつけな質問でしたら許して下さいね……このイラストですが…」

提督「二人がキスをしているところを見られている…これですか」

グレイ提督「ええ……それで、この二人は誰を見て驚いているのですか?」

提督「んー…それはきっと二人のお姉さんかもしれませんし、あるいは母親…背景は礼拝堂みたいですし、もしかしたら修道女かもしれません……それを想像するのも楽しみの一つでしょうね♪」

グレイ提督「なるほど…」

ヴァイス提督「…ど、どうすればいいのだ……あれだけ色々見せられた後だと、全員の仕草一つひとつが意味ありげに見えてきてしまうな……」

提督「ヴァイス提督?…よかったら冷たいお飲み物でもいかがですか?」

ヴァイス提督「い、いえ……それより少し体育館を使わせていただきたいのですが///」

提督「ええ、遠慮なさらずにどうぞ♪」

ヴァイス提督「は、ありがとうございます…二人とも、行くぞ」

ビスマルク「ヤヴォール」

ティルピッツ「り、了解…///」

グレイ提督「では、わたくしたちも失礼いたします」

エウジェニオ「……くふふ、ビスマルクたちは真っ赤になってたわね♪」

提督「こぉら、あんまりからかわないの……でも、ヴァイス提督も普段は厳格な女性なのに、漫画数冊であんなになって可愛かったわね♪」

デュイリオ「うふふ…色々教えてあげるのが楽しみです♪」

ライモン「…みなさん悪い笑顔になってますね……」

めちゃめちゃどうでもいいかもしれんが前作で提督の実家に戻るときにガソスタで会った奴って某英国のハゲだよな…?

>>130 いえいえ、前作から読んで下さっている上に気づいてもらってうれしいです……もちろんその「英国のハゲ」ですよ(笑)

投下がなかなか進みませんが、基地祭のネタに絡めて百合姫提督と「横須賀第二鎮守府」の日常も多少お送りしようかとは考えております…ご期待下さい





…夕食時・食堂…

エリトレア「えー…という訳で、今日はお客様に合わせてイギリス・ドイツ料理を作ってみました…わー、ぱちぱちぱち♪」自分で拍手と歓声を上げるエリトレア

チェザーレ「うーむ、まさか食事が不味い国の上位二つが揃うとは……チェザーレは出された物は食べるとはいえ、好んで手を出したくはないな……」

ドリア「…焼野原の方がまだ食欲をそそりますね」

カヴール「少なくとも焼野原ならセンスのなさはありませんからね……」食べ物にはうるさくないチェザーレさえ眉をひそめ、日頃から美食でならしているドリアはかなり辛辣な意見を吐いている…

提督「あー……たしかにいつもとは雰囲気の違う料理が並んでいるわね」トマトの赤にバジルやズッキーニの緑や黄色で特にカラフルな南イタリアの料理に比べ、食欲の出ない地味な色合いの料理が並んでいる……

ヴァイス提督「おぉ…グラーシュがある」(※グラーシュ…あるものを色々と入れて煮込むドイツ風シチュー。一方ハンガリーではパプリカパウダーで紅も鮮やかな世界最高のスープ「グヤーシュ」がある)

ビスマルク「白ソーセージか…ビールがないとな」

ティルピッツ「それならやっぱりピルスナーでしょうか…コミスブロートもありますね」(※コミスブロート…ドイツ黒パン。酸味があって胃に溜まる感じのする重いパン)

グレイ提督「…スターゲイザー・パイもありますね」(※スターゲイザー・パイ…「星を見るもののパイ」パイ皮の表面からニシンの頭が林立しているパイ。味も見た目もイギリス人専用とか)

エリトレア「それだけじゃありませんよ…じゃーん♪」オーブンミトンを両手にはめて、大きな四角いパイ皿をグレイ提督たちの方に向ける……パイ皿にはこんがりと焼けたパイが収まっているが、表面をよく見ると飾りとして細く切ったパイ皮の帯を縦・横・斜めに乗せて焼いてあり、パイが見事な「ユニオン・ジャック」(英国旗)になっている

グレイ提督「まぁ♪」

エメラルド「それで、中身は何なのでしょう…♪」

エリトレア「はい、中身はステーキ・キドニー・パイですっ…初めて作ったのですが、きっとうまく出来てますよっ♪」(※ステーキ・キドニー・パイ…牛の内臓や尻尾など、普通に食べるには難しい部分を煮こんだりして詰めたパイ)

エリザベス「まぁ、それは楽しみですわね」

ローマ「……もし着任早々の食事がこれだけだったら自沈するわ」

ヴェネト「まさか、そんなことはないですよ……ね?」

エリトレア「もう、大丈夫に決まってるじゃないですか…ローマ風の四角いピッツァもばっちり焼きあがってますって♪」

提督「ふふ、私の特製カルボナーラもね…熱々のフェットチーネに絡めてあるわ♪」

ヴェネト「グラツィエ!……提督は素晴らしい女性ですね♪」

ローマ「ええ、そのようね…ところで提督」

提督「ええ、なぁに?」

ローマ「貴女の階級は?」

提督「海軍少将だけど?」

ローマ「ふーん…海軍少将って「アミラーリオ・ディ・ディヴィジォーネ」と同じ階級で合ってるのね?」(※Ammiraglio di Divisione…旧イタリア海軍少将)

提督「ええ……私の階級がどうかした?」

ローマ「どうして海軍少将が自分でエプロン付けてパスタなんて茹でていたの?」

提督「んー…海軍少将はエプロンをつけてパスタを茹でたらいけないの?」

ローマ「いけなくはないけど…少なくとも私の知っている限りでは例がないわね。だいたい、旧王国海軍で提督だけ……しかも女性しかいない司令部なんて聞いたこともないわ」

提督「まぁね…とはいえここは比較的のんびりした鎮守府だから私と秘書艦の娘だけでも書類は片づけられるし……それより、早くしないとパスタが冷めちゃうわよ?」

ローマ「それはいけないわね…では……」くるりとフェットチーネを巻きとり、口に運んだ…と、口の端にえくぼが浮かぶ……

提督「…お味はいかが?」

ローマ「ボーノ…とっても美味しい♪」手を口もとに当てて「おいしい」と、投げキッスのような仕草をする…

提督「ふふ、よかった…ヴィットリオは?」

ヴェネト「もちろん美味しいです……ワインも最高級で言うことなしです♪」

リットリオ「ふふっ…だって二人のために数十年物のキァンティをポーラに見立ててもらいましたから♪」

提督「私までお相伴にあずかっちゃって悪いわね……んー、本当に美味しい♪」

ロモロ(「R」級大型輸送潜)「どころか私までごちそうになっちゃって……ふぅ」

レモ「レモ、頭がぼーっとしてきちゃったぁ…提督、もたれかかってもいーい?」

提督「あらあら…どうぞ♪」排水量2000トンはある「R」級潜水艦の艦娘だけに「ばるん…っ♪」……と弾むたわわな胸とむっちりした豊満な身体で、提督にもたれかかってくる…そのもちもちした肌触りに思わず顔がほころぶ提督……

カヴール「むぅぅ……リットリオの次はロモロとレモですか」

ライモン「相変わらずですね…」

開発で是非サボイアs21(見た目はマッキm33)を出して頂きたい…

>>133 それならきっと真っ赤に塗った「シュナイダー・トロフィー・レース」仕様でしょうね……大戦中のイタリア水偵はたいてい「カント25AR」飛行艇か「メリジオナーリ・Ro43」水偵でしたからなかなか機会がありませんが、駆逐艦「アヴィエーレ」の模型飛行機か、開発時に一種の「ハズレ」カードとして出したいものですね……


…後はザラ級重巡フィウメ(あるいはポーラ)が戦前にスペインの「ラ・シエルヴァ」ジャイロコプターの発艦試験を行ったとか……そうしたちょっとした「こぼれ話」も機会があれば小ネタに取り入れていく予定です


…今日はちょっと投下できませんが、この後はヴァイス提督の苦労話を聞いてあげる提督(場合によっては提督×ヴァイス提督)や、百合姫提督の鎮守府から小ネタを……などと思っています

…食後・バーカウンター…

グレイ提督「…あら、グレンリベットがありますね。ストレートで頂きましょう」

ポーラ「はぁ~い、どうぞ♪」

エリザベス「わたくしはビーフィーター・ジンを…ダブルで」

エメラルド「えーと…それではグロッグをお願いします」(※グロッグ…ナポレオンの時代から英国海軍の伝統だった水割りラム酒。水で割ったラムを配給させた提督に対する皮肉から、その提督の着ていた上衣の生地から名前を取ったとも。…ちなみにオーストリアのピストルは『グロック』で、全く関係はない)

ポーラ「はぁ~い♪」

ビスマルク「よし、シュナップスだ!」

ティルピッツ「姉上…また騒ぎを起こしたら怒られますよ?……キルシュヴァッサーを頼みます」(※キルシュヴァッサー…ドイツ産チェリーブランデーの一種)

ビスマルク「なに、この前は少し飛ばし過ぎただけだ…今度は間違い(アクシデント)など起こさん!」

エリザベス「あれがアクシデント…ふふ、あれは貴女の虚栄心が生んだ必然……でございます♪」

ビスマルク「…なめるな!」一気にシュナップスをあおってみせるビスマルク

グレイ提督「おやめなさいエリザベス……それにビスマルクも」

エリザベス「失礼いたしました、何しろビスマルクが簡単に乗ってくれますので……このエリザベス、ついからかってしまいましてございます♪」

ビスマルク「……おのれ、老いぼれのアルビオンめ」

グレイ提督「こほん…そう言えば、ヴァイス提督はどちらに?」

ティルピッツ「は、何でもカンピオーニ提督とお話があるとかで…」

ビスマルク「……そのままイタリア娘に手籠めにされなければいいが…ちゃんとピストルは持って行っただろうな?」

チェザーレ「…なかなか失礼な小娘であるな…そなたの目には、チェザーレたちの提督が嫌がる女を無理やり抱くように見えるのか?」

ビスマルク「常に女をはべらせ、にやけているあの様子ではやりかねんだろうが?」

チェザーレ「ビスマルク…提督に限ってそんなことはない。安心いたせ」

ビスマルク「そうか?……よし、カエサルがそこまで言うなら信じてもよいぞ」

チェザーレ「結構。…ただし口説き落としてベッドに連れ込むかどうかについては保証できぬが♪」

ビスマルク「…なんだと?」

チェザーレ「ポーラよ、チェザーレにカンパリソーダを」

ポーラ「はぁい♪」

ビスマルク「おい…!」

グレイ提督「わたくしにもう一杯…♪」

エットーレ・フィエラモスカ「うぃー…先生にチンザノを下さいな…♪」大型潜「エットーレ・フィエラモスカ」は姉妹のない単艦で、戦前は長距離航海や記録作りでならしていたが、大戦時にはすっかり旧式化していたこともあり訓練用潜水艦として過ごしていた…そのせいか、鎮守府では潜水艦組の先生として定着している……

ポーラ「あまり飲むと毒ですよぉ~?」

ザラ「貴女が言えたことじゃないでしょうが…」

ポーラ「えぇ?…でもぉ、ポーラはぁ~……自分で限界が分かってますっ♪」

フィウメ「確かにポーラ姉さんはいくら飲んでも絡んだりしませんよね」

ザラ「うーん……そう言われると吐いたこともほとんどないわね」

ポーラ「だってぇ~、吐いたらもったいないじゃないですかぁ~……えへへぇ♪」手早くカルーアミルクを作るときゅーっと飲み干す…

ザラ「ふぅ…仕方ないわね。それじゃあ私にカンパリ・オレンジを一杯ちょうだい?」

ポーラ「はぁ~い、りょ~うか~い♪」

ザラ「…それにしても提督は何の話をしてるのかしらね?」

…そのころ・執務室…

提督「…それで、私に聞きたいこととは何でしょう?」いつもならみんなとおしゃべりとカクテルを楽しんでいるか、ゆっくり入浴しつつ身体をほぐしているか、あるいは誰かとベッドに入っている提督……が、真剣な表情のヴァイス提督に相談事を持ちかけられ、執務室で略装の白ワイシャツとタイトスカートのまま座っている…

ヴァイス提督「は、それが……」

提督「それが…?」

ヴァイス提督「…どうやったらあのように艦娘たちと打ち解けられるのでしょうか……ぜひともやり方を教えて頂きたい」

提督「うーん…そうは言っても私が着任してすぐにあの娘たちのほうから『仲良く』してくれたので……私は特に何かをしたと言うほどでも…」

ヴァイス提督「いえ、そんなことはないと思います。…もちろん本官も命令を下す立場であり、規則の上でも、あまり公私をわきまえぬような付き合いはどうかと思いますが……それでも、ビスマルクたちを始め所属の艦娘たちには常々信頼していることを伝えたいと思っているのです」

提督「あー…」(別に意識をしないで言っているのでしょうけど……絶賛公私混同中の私の耳にはちょっと痛いわね)

ヴァイス提督「いかがでしょうか、カンピオーニ提督……無論このような相談事を他国の少将にお尋ねするなどあり得ないことかと思いますが、同僚や上官にはなかなか相談しづらいもので…」

提督「いいえ、構いませんよ♪……えーと、それでは何か「感謝の意を表せるような贈り物」はどうでしょうか?」

ヴァイス提督「贈り物ですか…これまでにも幾度か試みてはみたのですが、やはりそれが一番ですか」

提督「そう思いますよ?やっぱり、何かをもらえると言うのは嬉しいものですし♪」

ヴァイス提督「なるほど……しかし我が方の鎮守府全員に贈るとなると数十個は必要か…とすると予算を一人当たり10ユーロとまでとして……」

提督「あの…ヴァイス提督、贈り物は全員にではなく数人に贈るのですよ?」

ヴァイス提督「…しかし、それはえこひいきなのでは?」

提督「ふふ…そうは言っても全員に同じプレゼントをあげたら、「特別さ」が薄れてしまうでしょう?……ですから、何か理由をつけて数人にだけ贈るか、一人一人の好みに合わせて違うものを贈ってあげるのがいいかと思いますよ?」

ヴァイス提督「…なるほど……」手帳にペンを走らせる…

提督「たとえばビスマルクの趣味は何かありますか?」

ヴァイス提督「趣味、ですか…」

提督「ええ。私室に何か……たとえば花とか、絵画とか…宝石とか♪」

ヴァイス提督「いえ、鎮守府で黒ネコは飼っていますが……部屋にはティルピッツやヒッパーたちの写真があるくらいで」

提督「…それならカメラはどうでしょう?「今度ティルピッツと一緒に撮るといい」と言ってプレゼントしたら喜ぶと思いますよ?」

ヴァイス提督「いえ…あくまで着任時のアルバム写真ですから、自分で撮るわけではないかと」

提督「あー…」(…こういう時はドイツ人の生真面目さがうらめしいわ)

ヴァイス提督「…」

提督「えーと……でしたら、何かスポーツは?」

ヴァイス提督「あぁ…ティルピッツはスキーを良くします」(※スキー…ティルピッツがノルウェーで無駄に係留されていた間、乗員はスキーに興じるのが唯一の楽しみだったという)

提督「それならビスマルクとティルピッツを連れてスキー旅行に連れて行ってあげるとか…どうでしょうか?」

ヴァイス提督「…なるほど」

提督「もちろん軍の施設などではなくて、観光ホテルにでも泊まって…そうすればきっと親しみやすい部分も出てきますよ♪」

ヴァイス提督「ふむ…参考になります」

提督「あとは……私の場合はよくキスをしたり、抱きしめてあげます♪」

ヴァイス提督「いえ…それは私には無理です……軍規にも『艦娘たちと必要以上に親密になることは好ましくない』とありますから」

提督「ええ、ですから「必要以上に」親しい状態にならなければいいんですよ……何しろこちらの規則にも『艦娘たちと不純な交友関係を持つことを禁じる』とありますし」

ヴァイス提督「しかしカンピオーニ提督は……こほんっ」

提督「ふふ、ですから私も執務中にえっち…つまりレズセックスはしないと決めています♪」

ヴァイス提督「…と、言うことは……その…///」

提督「ええ、ですから書類仕事の時はこうやって……はい、これで執務中ではありませんよ♪」書類を取り上げると、改めて執務机に置いてみせた

ヴァイス提督「…ず、ずいぶん規則を柔軟に運用しているのですね」

提督「ええ、結局「鎮守府の艦娘たちがどれだけ暮らしやすいか」ですから…ね♪」

ヴァイス提督「な、なるほど……では相談ついでに、もう一つだけよろしいですか」

提督「ええ、どうぞ♪」

ヴァイス提督「実は、以前キールに赴任していたのですが……」

提督「キールと言うと…潜水艦戦隊ですね?」(※Unterseeboot・flotte…潜水艦戦隊)

ヴァイス提督「ええ…と言っても戦前の編制と違って各Uボート群から戦果に応じて艦を選り抜いたり、組み換えているので同じではありませんが……」


………

…数年前・キール潜水艦戦隊…

ヴァイス大尉(当時)「…さて、いよいよここの艦娘たちと話す訳だ……全員無事に帰投させ、かつ戦果を残せるように努力せねば…!」前任者との交代式典を終えたばかりの、真っ白なチリ一つない制服に身を包み、艦娘たちが待っているはずの「食堂」と書かれたドアを開けた…

ザール(潜水艦母艦)「…大尉、そのようにあまり気負われますと……」

Uボートの艦娘「…あっははは!…何しろ私は「イギリスの女王」を手籠めにしてやったからな!」(※エンプレス・オブ・ブリテン…42350トンと言われる元豪華客船。兵員輸送船になっていたがⅦA型「U32」に撃沈さた。Uボートの撃沈史上最大の商船)

鼻息の荒いUボート艦娘「うわっははは、違いない!…こっちは「王室の樫」をへし折ってやったけどな!……で、何だっけ…あぁそうだ、トミーのやつらはこっちのPK(宣伝中隊)そこのけに大ぼら吹きだ!…二隻目を水上機母艦の「ペガサス」だなんて言いやがって。あんなちっこいオンボロ汽船をリパルスと見間違う訳ないだろ!」(※王室の樫…ロイアル・オーク)

芝居がかったUボートの艦娘「…さてさて、ではこの私がいかにしてあの船団をこましてやったか……とくとお聞かせしよう!」

Uボートの艦娘「ははは、そんなことを言ったら私なんて映画のモデルになったよ!」

物静かなUボートの艦娘「……一雷一殺。…隠密接近して外周の護衛艦艇をすり抜けてから雷撃する。それだけだ……」

大柄なUボートの艦娘「…おいおい、たぷんたぷんのいい身体をしてるじゃないか……ほぉら、「乳牛」なんだったら吸わせろよ…こちとら遠距離航海で喉が渇いているんだからな…っ♪」…もみっ♪

ぽっちゃりしたUボート「あんっ…いやぁぁ♪」


…広い食堂には中学生か高校生くらいに見えるUボートの艦娘たちが百人近く座っている……が、あたりは雑然としていて、シガレットの煙がたちこめる室内にはビールとブランデーの空き瓶が転がり、食べかけのジャガイモやサーディンの皿はひっくり返り、果ては床に落ちたテーブルクロスの上で寝ている艦娘までいる…


ヴァイス大尉「…アハトゥング!(気を付け)」

Uボート「おいおい、何だぁ…?」

Uボート「おや、新任の大尉さんじゃありませんか…「ウェッジゲン潜水クラブ」に何かご用ですか…ってね♪」(※キールの第一潜水隊は第一次大戦のUボート・エースの名前から「ウェッジゲン潜水隊」と呼ばれていた)

Uボート一同「「あっはははっ…!」」

ヴァイス大尉「……一体全体なんだ、このざまは!」

芝居がかった艦娘「…これはこれは見目麗しきフロイライン(お嬢さん)に、見苦しいものをお見せしました……わたくしめは「ⅦB型」Uボート、U100にございます…して、何かご用ですかな?」よれた革のコートに白の艦長帽をかぶり、ニヤニヤしながら一礼すると拍手喝采が上がる…

ヴァイス大尉「貴様がU100か…なぜきちんとした格好をしないか」

U100(ⅦB型…艦長シェプケ)「おやおや…われらUボートに戦艦のような白制服と金モールをお望みで?」

U99(ⅦB型…艦長クレッチマー)「…ふん、格好で戦果が上がるわけでもあるまいに。…下らんことを言う」…物静かで宣伝を嫌った「沈黙のエース」クレッチマーらしく静かに言う

鼻息の荒い艦娘「はんっ、戦果ならうんと挙げてるが?」…わざとらしく首元にかけている騎士十字章をチャラチャラいわせる

ヴァイス大尉「…誰だ」

鼻息の荒いUボート「私か、ⅦB型Uボートの「U47」だ…ご存じないかな?」

ヴァイス大尉「…ギュンター・プリーンの『ボート』か」

U47(ⅦB型…艦長プリーン)「いかにも!」

Uボート「…そうそう、「スカパ・フローの牡牛」さ♪」

ヴァイス大尉「…」唇をきっと噛みしめ、めちゃくちゃな食堂の中をにらんでいる…

………

ヴァイス提督「…と言うことがありまして、どうにか規律を守らせようとしたのですが……」

提督「あー…何と言うか……新任の大尉さんにはつらい鎮守府でしたね」

ヴァイス提督「ええ、何しろ……」

………


ヴァイス大尉「よし、順番に艦名を名乗れっ!…これからはドイツ連邦海軍の一員として、規則をきっちりと守ってもらう!」

U32(ⅦA型)「ⅦA型Uボート、U32…そういう訳で、「エンプレス・オブ・ブリテン」をレズレイプ…になるのかな?……とにかく、あの高慢な女王を犯してやったのは私さ…戦果を挙げている以上、文句を言われる筋合いはないね♪」

U38(ⅦA型)「同じくⅦAUボート、U38!……あたしはね、リーベ大尉やシュッヒ大尉と一緒に戦って来たんだ!戦艦の連中じゃあるまいし、新任の大尉さんに格好の事までうだうだ言われたくないね!」

(※ハインリッヒ・リーベ大尉…Uボートエース第十位の艦長。スコアは撃沈30隻。162333トン。U38は他の艦長とも出撃し、35隻、187077トンを記録…敗戦時ドイツの軍港にあり乗員が自沈させた)


U47「さて、改めて自己紹介が必要なようだな!…本来は「第七潜水隊」所属なのだが、今はここに配備されている「U47」だ!」プリーンのあだ名と第七潜水隊の紋章にもなった「鼻息を吹く牡牛」のイラストを基にした記章が、よれた革ジャケットの胸につけてある……

U99「…ⅦB型、「U99」だ」白い艦長帽はシミだらけで、長い金髪は後ろでしばって垂らし、黒の革ジャケットに双眼鏡を胸から下げ、黒のよれよれスカートをはいている…

U100「それではわたくしも…改めましてU100でございます、港に居並ぶスマートで小ぎれいな戦艦や重巡の『お姉さま』たちには格好でこそ劣りますが、その分戦果を挙げておりますのでなにとぞご勘弁を♪」…何事も芝居がかっていたというシェプケ大尉を真似ているのか、おどけたように一礼した


U96(ⅦC型)「ウンターゼーボート「ⅦC」型のU96だ……西ドイツの映画になったのは私さ!」名作映画「U・ボート」のモデルになったとされるU96は、映画の「デア・アルテ」(※おやじ…艦長のこと)と同じようにボロボロになった私服のタータンチェックのシャツに鉄十字章をぶら下げ、ジャーマングレイの薄汚れたズボンをはいている…


U66(ⅨC型)「あたしはⅨC型のU66…アメ公の護衛駆逐艦となぐり合ったのはあたしだ、文句があるならあとで勝負しな!」

(※U66…小説・名作映画の「眼下の敵」でモデルになったと思われるUボート。1944年5月6日の深夜、護衛空母「ブロック・アイランド」を中心にした対潜空母グループに捕捉され、航空攻撃の間に隠密接近したTE級護衛駆逐艦「バックレイ」の砲・銃撃の後、衝角攻撃を受け絡み合ってしまい、「総員退艦」をかけてから「バックレイ」の乗員と小火器などで交戦した。「バックレイ」側もピストルからげんこつ、空薬莢、コーヒーカップなどで応戦し、最後は損傷したU66が沈没)


胸を揉んでいた艦娘「わたしは「ⅨC」型のU510だよ、遠路はるばる日本の神戸まで行って、しかも帰りだってどうにかフランスまでは戻ってきたんだ……ちょっとくらいだらしない格好だからって怒らないでほしいもんだね♪」

(※U510…おもにインド洋などで作戦し、1944年には神戸まで到着。45年1月になって故国に戻ろうと厳しい警戒をくぐり抜け、何とフランスまで到着した……が、燃料が尽きサン・ナゼール港でフランス軍に降伏。戦後も59年までフランス潜として活躍した)


揉まれていた艦娘「…私は補給型Uボート、Uタンカーの「ⅩⅣ」(14)型、U459です……「乳牛」なんて言われることもあります」…ぽっちゃりとしたお腹や、ばるんっ…と揺れる乳房は、誰が見ても補給に活躍し潜水艦隊に愛された「Milchkuh」(乳牛)にふさわしい……

ヴァイス提督「うむむ……では、今日の所はひとまず解散!明日からはちゃんとした制服を着用のこと!」

U47「ヤヴォール」

U100「はいはい、了解りょーかい」

U96「…ビールの気が抜けた……ザール、おかわりを!」

ザール「…は、はいっ!今すぐ!」

ヴァイス提督「……秘書艦がこれでは規律を正すのは到底無理か……仕方ない、こうなったら戦艦でも何でも呼んで規律を整えさせるしかないな…」

………



提督「…それで戦艦を配属してもらったのですか?」(…いやーな予感)

ヴァイス提督「ええ…ところが……」

ヴァイス大尉「本日をもって秘書艦を潜水艦母艦「ザール」からこの「ティルピッツ」に交代する!…今後は厳格に規律を励行し、違反があれば容赦なく罰則を与える!」

ティルピッツ「…秘書艦となったビスマルク級二番艦「ティルピッツ」です。司令のおっしゃる通り、今後はきちんとしてもらいます!」

U100「結構なことでございますな……ところでお美しいティルピッツどのは撃沈何隻、何トンになりますので?」

ティルピッツ「いや…それは……」

U47「…何度も出迎えはしてくれただろうが、出撃したことはあるのか?」

Uボート一同「「あっはははは!!」」

ティルピッツ「うぅ…これでもビスマルク級の二番艦としてノルウェーからにらみをきかせていたんです!」

U100「…スキーと海水浴を楽しみながら?」

ヴァイス大尉「…いい加減にしないか!……規則に文句があるなら私が相手になるが!?」

U100「いえいえ…とんでもございません、わたくしどもはこの美しいユングフラウ(若い乙女)の活躍を聞きたかっただけなので♪」

U38「…けっ、図体ばかり大きい戦艦が」

U47「……ロイアル・オークの代わりにG7e魚雷で沈めてやってもいいかもな」

U96「…私みたいに銀幕デビューしてから言って欲しいね」

U510「…こっちは日本まで行ってきたんだから、あんまり指図されたくないね」

ティルピッツ「うぅぅ…」

ヴァイス大尉「もういい!…以上、解散っ!!」

ティルピッツ「…司令、この任務は私に向いてないのではないでしょうか……」

ヴァイス大尉「気にするな。ティルピッツは職務にまい進すればいい」

ティルピッツ「……は、命令とあらば頑張ってみせます!」



………

提督「あー…やっぱり」

ヴァイス提督「ええ…それで数週間もすると……」


………

ヴァイス大尉「一体どうなっているのか…ザール!」

ザール「は、はいっ…!」

ヴァイス大尉「これで規律が保たれていると言えるのか?」


…艦娘用の食堂には大音量でUボートの歌が流れ、同時にエディット・ピアフのシャンソンやララ・アンデルセンの「リリー・マルレーン」もかけられている。…皮肉で現実主義者なUボートの艦娘たちはビールやコニャック、シュナップスを浴びるように飲みながら、胸を強調するようなドイツの民族衣装を着せられ、きゃあきゃあと嬌声をあげているU459たちⅩⅣ型「乳牛」の身体を揉みしだいている…


ザール「い、いえ…」

ヴァイス大尉「ティルピッツ!……ティルピッツは?」

U100「どうやらおねんねの時間みたいですなぁ…♪」一同が爆笑する

ヴァイス大尉「…U100、ティルピッツに何かしたのか?」

U100「いいえ…♪」

ヴァイス大尉「…ふむ、いずれにせよ諸君は規律を守る気がないようだ」

U99「規律はともかく戦果は挙げています…一魚雷につき一隻で」

U47「私の牡牛の角だって相変わらず冴えわたっている…レッド・エンサイン(※英商船旗…赤地の旗の隅にユニオン・ジャックが入っている)があれば突進してやるさ!」

U29(ⅦA型)「…うまいっ、私が「カレイジャス」を撃沈した時みたいに冴えてるな!」(※カレイジャス…英空母。1939年9月17日に撃沈された)

ヴァイス大尉「…もう結構。この調子なら私も他の手を考えさせてもらう」

………

提督「…それで?」

ヴァイス提督「ですが結局のところ、ひんぱんに長期の出撃をさせられて、かつ戦果もあげているUボートたちが唯一持てる休息時間であることを考えると強く出ることも出来ず…ティルピッツも戦果が少なかったことからUボートたちにはにらみがきかないままで……」

提督「…そのまま転属に?」

ヴァイス提督「ええ……昇進はしましたが、結局キールの潜水艦隊では勝手放題されたままで終わってしまいました。ティルピッツもそのせいでより病弱になってしまい……カンピオーニ提督はどうやってあんなに和気あいあいと艦娘たちを仲良くさせているのですか…っ!?」

提督「落ち着いて下さい、ヴァイス提督…ね?」よく見るとヴァイス提督の頬がほのかに紅くなっている…食事中に出した美味しい白ワインと質量ともにたっぷりの夕食がついついグラスを誘い、飲みすぎてしまったらしい……

ヴァイス提督「しかし…っ、カンピオーニ提督は一見すると何も厳しいことは言っていないのに、どうしてこのように上手く……くっ!」テーブルの上に出してあったワインを一気にあおるとくやしげな表情を浮かべた……

提督「…シャルロッテも大変だったのね……よしよし」そっと席を立ってぎゅっとヴァイス提督を抱きしめると柔らかなプラチナ・ゴールドの髪を撫でつつ、そっと髪を束ねていたゴムを外す…

ヴァイス提督「…カンピオーニ提督…っ」

提督「……よかったら、髪をとかしてあげますね」寝室の化粧台からヘアブラシと香水を持ってきて、ヴァイス提督の後ろに立った…

ヴァイス提督「あ…いえ、そのようなお気遣いは不要です……///」

提督「まぁまぁ…」さらさらでくせのない髪に優しくブラシをかける……

ヴァイス提督「こんな…恥ずかしい物語まで聞いていただき、その上で少将に髪をくしけずらせるなんて……」

提督「ふふ、かまいませんよ…ヴァイス提督はまるでレーヴェ(ライオン)のように誇り高く、芯の強い方なのですね♪」

ヴァイス提督「……そ、そんなことは///」

提督「…ありますよ。さ、せっかくですからお化粧もしてみましょう?」ヴァイス提督の髪に、さっぱりしたシトラス(citrus)系の香水をひと吹きし、寝室に案内する…

ヴァイス提督「いえ…私に化粧など似合いませんから……」

提督「そう言わずに…私も気分が落ち込んだ時はお化粧に時間をかけて集中するんです。いい気分転換になりますし、何よりお化粧は女性の特権みたいな物ですから♪」

ヴァイス提督「……そこまでおっしゃるのなら、お願いします」

提督「ええ♪」


…提督寝室…

提督「さて…と」化粧台の前に座らせ、チークの粉やルージュが制服に付かないように、適当なバスタオルを首からかけた…

ヴァイス提督「…化粧品だけでこんなに……これだけの物をいったいどこに使うのですか?」

提督「んー…いつも使うのはほんの数種類で、ここに並べてある化粧品はたいていもらい物なんです」

ヴァイス提督「もらい物…男性からのプレゼントですか?」

提督「いいえ?…ここにあるのは基本的にお付き合いのあった以前の恋人たちや、軍の上官や同僚……元部下の娘たちや、私が親たちからもらったものもあります♪」

ヴァイス提督「えーと…しかし、時には男性士官からもらうこともあったのでは?」

提督「お付き合いできない方に贈り物をもらうのは申し訳ないので、全てお返ししています」

ヴァイス提督「……そ、そうですか」

提督「ええ…さ、まずは下地を作りましょうか♪」すっ…と指先で頬を撫で、後ろから身体を寄せる

ヴァイス提督「…うわっ」

提督「ふふっ…大丈夫ですよ、とって食べたりはしませんから♪」パフで下地をのせて行き、暗くなりがちな喉元や頬骨の下のエリアへ軽く白粉をはたく…どちらかと言えば白っぽく血色の悪いヴァイス提督の頬には軽く頬紅をのせ、目の下も暗くならないように明るい色を置く……上まぶたにはパッと明るいパステルピンクのラメ入りアイシャドウを引き、厳しい表情を少しぼかす…

ヴァイス提督「…なんだか、自分の顔が変わっていく気がします」

提督「ふふ、これは新型の迷彩ですから…少し時期外れですが、華やかな花畑でクロッカスやアネモネに偽装できるような春用の迷彩ですよ♪」…きゅっと引き締まっている薄い唇には華やかで優しいピンクパール色のルージュを引き、こてをあてて髪を軽くウェーブさせる…

提督「さぁ、できました…どうですか?」

ヴァイス提督「…何と言うか、軍人にはふさわしからぬ雰囲気ですが……休暇の時に時間があれば、こうした格好をしてみるのもいいかもしれません」

提督「ふふ、それじゃあせっかくの機会ですし…時々ここに来てもらって、戦術以外にお化粧も覚えていったらどうでしょう♪」

ヴァイス提督「…いえ、そこまでしていただくのも……そもそも今回のプログラムでは戦術論を学習し、帰国してからの艦隊行動に活かすために来ているのですから」

提督「ふふ、分かっています…でも、覚えられる事を覚えないで済ますのは「時間の有効活用」を考えるとひどくもったいないでしょう?」

ヴァイス提督「…たしかに。たかが化粧と言えども、何の役に立つかは分かりませんね」

提督「でしょう?」

ヴァイス提督「……分かりました。とりあえず今日は話を聞いて下さって、ありがとうございます」

提督「どういたしまして♪」

…翌日…

ヴァイス提督「…昨夜は申し訳ありませんでした、少将閣下!」直立不動の姿勢で提督に平謝りしているヴァイス提督に、食堂で午前のコーヒーや紅茶を楽しんでいる艦娘たちは何事かと注目している…

提督「そんな、お気になさらず……私と『親しい』日本の提督も「困ったときはお互いさま」ってよく言っていますし…ね?」

ヴァイス提督「いえ…昨夜は夜分遅くにもかかわらずお部屋にあがり込んで、大変ご迷惑をおかけしました……さらに化粧品までいただいてしまい、申し訳ない限りです…!」

提督「ふふ、いいんですよ……差し上げた化粧品は私にはあまり似合わない、きりっとした雰囲気の物でしたから…ヴァイス提督に使ってもらった方が「効率的」でしょう?」

ヴァイス提督「それは……まぁ、たしかに効率的で無駄がないですね」

提督「でしょう?…ところで、よかったら一緒に午前のお茶でもいかがですか♪」

ヴァイス提督「は、それではちょうだいいたします……」

提督「…どうかしました?」

ヴァイス提督「いえ…どうも先ほどから艦娘たちからの視線があるのですが」

ライモン「……あの、カヴールさん…今の、まさかとは思いますけど…」

カヴール「ええ…ヴァイス提督が確かに「夜分にもかかわらず上がり込んで迷惑をかけました」とおっしゃってましたね…これはどういう意味か提督にお聞きする必要がありそうですね♪」

リットリオ「もぉ、私が妹たちと「仲良く」している夜に限ってドイツの提督を部屋に連れ込むなんて……提督もなかなか捨てておけないんだから♪」

ローマ「…っ///」

ヴェネト「もう、姉さんったら…みんなに聞かれちゃう///」

デュイリオ「あらまぁ♪……それはそうと、ヴァイス提督のかけた「迷惑」とやらについて、今夜はたっぷりと提督に尋ねないといけないわ♪」

提督「…あー」

ヴァイス提督「その…申し訳ありません。私がお邪魔したせいで何か艦娘たちと予定していたことが出来なくなってしまったのですね?」

提督「えーと…ヴァイス提督の考えているような真面目なこととはおそらく違いますからお気になさらず……それで、飲み物は…」

ヴァイス提督「カンピオーニ提督と同じものを」

提督「ええ、分かりました……エリトレア、私とヴァイス提督にカプチーノの砂糖二さじ、ミルクはぬるめでスプーマを(泡)多めにして、濃く淹れたものをお願い♪」

エリトレア「はぁーい♪」

ヴァイス提督「あの…カンピオーニ提督……」

提督「ええ、なんですか?」

ヴァイス提督「今頼んだのはコーヒーですか?」

提督「そうですよ?」

ヴァイス提督「イタリアではコーヒー一杯にそんなに色々言わないといけないのですか……」

提督「えーと…私は注文の少ない方なのですが……そんなに多かったですか?」

ヴァイス提督「ええ…そう思えました」

提督「ふふ…それじゃあきっと「お国柄」でしょうね♪」カプチーノを受け取ると眺めのいい席に座り、鮮やかな海を眺めつつゆっくりとすすった…

提督「…ふぅ、美味しい♪」

ヴァイス提督「…確かに美味しいです」

アヴィエーレ「やぁ提督……隣、いいかな」

提督「あら、アヴィエーレ…今日もエースパイロットみたいで格好いいわね♪」アヴィエーレは毛皮の襟付き革ジャケットとサングラス…グレイグリーンの乗馬ズボンの裾は黒の革長靴につっ込んであり、航空チャートも一緒にねじ込んである…

アヴィエーレ「グラツィエ…ところで提督、ちょっと欲しいものがあるんだ」

提督「欲しいものねぇ……家具とか?」

アヴィエーレ「いや、家具は充分にあるよ……ふふ、何が欲しいか分かるかな♪」

提督「なら香水とか…でもアヴィエーレはあんまり香水や化粧品は使わないものね……じゃあプラモデルの道具や機材とか…でも休暇で一杯買って来たのよね?」

アヴィエーレ「あぁ、そうだね…どうだい?」

提督「うーん、何かしら……だめ、降参するわ♪」両手を上に持ち上げて肩をすくめた

アヴィエーレ「そっか、なら教えるよ…♪」ちゅっ♪…と頬に軽くキスをしてから、ぐっと身を乗りだした……

提督「…なるほど。「戦前の飛行艇を開発で出せないか」……ねぇ?」

アヴィエーレ「ああ、そうなんだ…ほら、提督がこの間「ここの基地祭がある」って言っていただろう?」

提督「ええ、まだひと月は先だけど……それで?」

アヴィエーレ「いや、せっかく基地祭があるんだから、私の作ったプラモデルでも並べようかと思ったんだ…だけどね、1/72スケールの飛行機じゃ並べてみてもちょっと小さいし、お客さんの印象に残らない気がするんだ……で、開発用のタロットで少し「いたずら」できないものか…とね♪」

提督「なるほど…それにしてもアヴィエーレは今から基地祭の事を考えてくれているのね♪」

アヴィエーレ「なぁに、操縦士って言うのは派手なのが好きだし…我が国のアクロバットチーム「フレッチェ・トリコローリ」と言えばなかなかの物だから、ここでもちょっと真似事みたいなことが出来たら楽しいだろう?」

提督「なるほど……でもここには滑走路がないから、海面から離水できる飛行艇や水上機が欲しい…と」

アヴィエーレ「そういうこと…で、どうかな?」

提督「うーん…主計部の査察はあるけど、「カンムスカード」で外れが出ることはままあるし……いいんじゃないかしら♪」

アヴィエーレ「よしっ……実は出してほしい機体もある程度決まっているんだ♪」

提督「あら、そうなの?」

アヴィエーレ「あぁ…この飛行艇なんだけど……提督でもさすがに知らないかな?」革ジャケットのポケットからモノクロ写真を取りだした…水面に浮かんでいる飛行艇は流麗な胴体と速度の出そうな薄翼、それに胴体の支持架に取り付けられたエンジンが特徴的で、モダンでスマートなスタイルが美しい…

提督「えーと……この機体は確か、「マッキM33」よね」

アヴィエーレ「お…さすが提督だ。正解者にはアマルフィ海岸の旅を一週間……と言いたいところだけど、チケットがないからね…代わりにキスをあげよう♪」

提督「あら、ありがと…♪」ちゅ…っ♪

ヴァイス提督「…これがイタリアでは普通なのか…わが国では考えられんな……」コーヒーをすすりながらなかばあきれ、なかば感心した様子のヴァイス提督…

提督「それにしても「マッキM33」ねぇ…25年のシュナイダー・トロフィーだったかしら?」

アヴィエーレ「ああ、そうだよ…二機制作されて一機はレースで三位に食い込む腕の冴えを見せたんだけど、エンジンに他国のお下がりを買ってくるようなフトコロ具合だったからね……それにアメリカのパイロットはあのドゥーリットルだったはずだし」


(※ドゥーリットル…太平洋戦争初期に米国民の士気を高揚させるべく、空母「ホーネット」からB-25「ミッチェル」中型爆撃機を発進させ東京を爆撃する「トーキョー・エクスプレス」を実行した飛行隊長。米軍屈指の腕利きパイロット)


提督「なるほど、それは分が悪かったわね」

アヴィエーレ「ああ…だからもう一度飛ばしてあげたいのさ♪」

提督「分かったわ……それじゃあ、今度の建造の時にやってみるから一緒に来て?」

アヴィエーレ「了解♪」

提督「…さてと、それならしばらく午後の映画は飛行艇の映画にしましょうか♪」

ヴァイス提督「…それはそうと構わないのですか」

提督「何がです?」

ヴァイス提督「開発に使うべき資材や労力をそのようなことにつぎ込んでしまって、鎮守府運営の妨げになりませんか」

提督「妨げになるようなら許可しませんし…それに、いつも戦闘のためにだけ労力を割いていたのでは気が休まらないでしょう?」

ヴァイス提督「なるほど…そう言う考え方もあるのですか」

提督「ええ…もっとも、陸軍と違って砂漠でパスタは茹でませんが♪」

ヴァイス提督「…そのエピソードは聞いたことがあります……が、本当なのでしょうか?」

提督「ふふっ、もちろん冗談に決まっていますよ♪…だいたいイタリア王国陸軍の主食は軍用ビスケットでパスタではありませんし、陸軍は補給が乏しかったのでパスタにありつけるような事はあまりなかったはずです」

ヴァイス提督「なるほど…てっきり本当の事かと思っていました」

提督「まさか…ヴァイス提督だって「ドイツ人は朝・昼・晩とジャガイモを食べている」なんて言われたら冗談だって分かるでしょう?」

ヴァイス提督「ええ、それは明らかに冗談ですが……でも、ちょっと待ってください…」手帳をめくり始めるヴァイス提督…

提督「?」

ヴァイス提督「いえ…出発前の食事ですが……朝食にポテト・パンケーキ、昼は焼きジャガイモとソーセージ…夜はアイントプフでジャガイモが入っていました……」(※アイントプフ…ポトフのような具の多いスープ)

提督「…」


………

…工作室…

提督「さてと…ジャガイモの話は忘れて開発にいそしむとしましょう♪」

アヴィエーレ「ああ、そうしよう…じゃあまずはイメージトレーニングをしてもらおうか」有名な「紅の飛行艇を駆るブタ」が主人公の漫画を取り出し、提督の手に押し付ける

提督「はいはい、分かりました♪……よいしょ」隣の船渠でたゆたうさざ波からの照り返しがちらちらと天井を彩り、涼風が吹き抜ける…

アヴィエーレ「…どうだい?」

提督「ええ……前に読んだことはあったけれど、相変わらずこの作中に流れているエスプリ…っていうのかしら、雰囲気がとっても好きよ♪」

アヴィエーレ「だね…私も操縦が出来たなら提督を前席に乗せてあげるんだけどね」

提督「ふふ、ならシュパンダウ機銃を一丁降ろさないと♪」

アヴィエーレ「ははっ、そうだね……もっとも、提督は小島の持ち主でシャンソンを歌っている方がいいかな…そうすればここの艦娘はみんな提督に恋をすることになるからね♪」

提督「それは嫌よ…だって、好きになった人に限って空に上がって行ってしまうんだもの……でしょう?」ぎゅっとアヴィエーレの手を握りしめる…

アヴィエーレ「…ふっ、そう言われると返す言葉もないよ……提督…///」ぐっと提督のあごを持ち上げ、唇を近寄せる…

提督「…ん///」…と、そこに三角帽と燕尾付きの上衣だったり、白の詰襟だったりする艦娘の一団がどやどやと入ってきた……艦名に提督や艦長、あるいは海相の名前が付いている潜水艦たちで、わらわらと提督を取り囲む…

マルチェロ(マルチェロ級大型潜)「…さてさてカンピオーニ君、ご機嫌いかがかな……潜水艦を建造すると言うのに本官に教えんとは水くさいではないか♪」

エモ(マルチェロ級)「提督、私でよかったら何でも言いつけて下さい♪」

ファー・ディ・ブルーノ(カッペリーニ級大型潜)「私にもぜひお手伝いさせてもらいたいですね」

ベネデット・ブリン(ブリン級大型潜)「いかにも…本官もお手伝いいたします。何しろ「ベネデット・ブリン」と言えば造船中将としてそこそこ有名でしたからな♪」

サイント・ボン(カーニ級大型潜)「提督。マルチェロたちに聞きましたが、何でも新しく建造を行うそうですね……本官も今は「イタリア王国海軍を育てた海相」としてお手伝いに参りましたぞ♪」


アヴィエーレ「…やれやれ、とんだ邪魔が入ったね」

提督「ええ…でも後の楽しみが出来たじゃない♪」

アヴィエーレ「ふふ…かもね。……さ、それじゃあ開発にいそしもうか!」…白紙の「カンムスカード」と青い図鑑のような「カンムス全書」を机に置いた

提督「ええ…それじゃあ行くわよ……ドロー!」さっと群青色の光が辺りを照らすと提督は「カンムス全書」を左手で持ち、カードを右手で投げ上げる……

アヴィエーレ「うーん…カント25AR飛行艇だ……大戦初期の割とありふれた水偵だね…」提督はパシッとつかんだカードをアヴィエーレに渡し、二人で絵柄を確認する…

提督「まぁ、そんな簡単には出ないわよね…じゃあ、もう一回……ドロー♪」

アヴィエーレ「今度はRo43水偵か…アルカナは「航空兵装」だから近いとは思うんだけど……」

提督「思っているカードが出ないのも何だかすっきりしないわね…せーのっ、ドロー♪」

アヴィエーレ「むむ……またRo43か…せめて飛行艇が来ないかな」

提督「んー…意識はすっかり紅の飛行艇になっているんだけど……頭の中で「ウォォォォ…」っていうエンジン音の描きこみまで再生されているのよ?」

アヴィエーレ「じゃあもう少しなのかね……応援してるから頑張って」

エモ「うーん…何が欲しいのかは知りませんが、私も応援してますよ♪」

ブリン「本官も応援しております。何しろそれが終わらんと、潜水艦の建造に取りかかれないのですから♪」

プロヴァーナ「全く同感ですな…それに、提督には憲兵の特別監査の時ずいぶんかばってもらった恩義があるので♪」

モロシーニ「ヴェネツィアでちんぴらの頭を冷やしてやったり、クルティザン(高級娼婦)のお姉さま方と遊んだのがそんなに「いかん」と言われるとは、何とも理解に苦しむがな……とはいえ、提督に迷惑をかけた分はちゃんとお返しせねばならん」

バルバリゴ「いかにも…真のヴェネツィア人は律儀で情に厚く、強きをくじき弱きを助ける好漢揃いなのだ!」

提督「ふふ…ありがと♪」

アヴィエーレ「…ふふ、何とも言い話じゃないか……って、「ピアッジョP7」だって!?」ひょいと受け取ったカードを脇に置こうとして、慌てて絵柄を見直す

提督「ピアッジョP7……って、あの「手が四本必要」な飛行艇?」

アヴィエーレ「ああ…それにしてもこんな珍しいのが来るとは驚いたなぁ!」

提督「…ちょっとよそ見をしているくらいの方がいいのかもしれないわね」

アヴィエーレ「ああ…それじゃあ……ちゅっ♪」

提督「…んっ!?」

アヴィエーレ「…さて、結果はどうかな……っと」

提督「もう…さっき「後でしてあげる」って言ったのに……ふふっ///」

アヴィエーレ「あー…提督」

提督「なぁに、アヴィエーレ♪」

アヴィエーレ「今度から開発の時はあさっての方を向いてやった方がいいんじゃないかな……出たよ」

提督「……嘘でしょ?」

アヴィエーレ「嘘なもんか…ほら」真っ赤に塗られたマッキM33飛行艇が、まさに離水しようとしている絵柄のカードを見せた…

提督「…これはまた、ずいぶんとあっさりできちゃったわね……」

アヴィエーレ「ま…できたんだから文句なし……お礼に私の唇をあげよう♪」着ている物も態度も格好いいことは間違いないが、駆逐艦だけにどうしても背の高さが足りないアヴィエーレ…提督を腰掛けに座らせると、少し身を屈めてキスをした……

提督「んっ…ふふ、それじゃあさっそく飛ばして来たら?」

アヴィエーレ「ああ、そうさせてもらおう…チャオ♪」人さし指と中指の二本でキザっぽい敬礼をすると、足取りも軽く出て行った……

ブリン「行ってしまいましたな……それでは、今度はこちらの方に努力してもらいましょう♪」

提督「ええ…でもちょっと待って……さすがにくたびれたわ」椅子に腰かけたままアイスティをすすり、棚のあちこちを見回した…

バルバリゴ「……どうしたのだ?」

提督「ええ、何か甘い物が…ここにクッキーがあったはずよね……」

エモ「それは「夏季休暇の間にネズミや虫がたかったりしないように」…って言って、バカンスの前に食べちゃいましたよ?」

提督「あー…じゃあここにあった板チョコレートは?あれは休暇の後に入れたのだけど」…スパナやレンチの入っている引き出しの中に、一つだけ小ぎれいな紙が敷いてある引き出しが入っている……

ファー・ディ・ブルーノ「…あぁ、それでしたらこの間の掃海任務の後「ガッビアーノ」と「チコーニャ」がもぐもぐしておりましたな」

提督「……このティーセットと一緒に入れておいたピスタチオ入り焼き菓子は?」

サイント・ボン「申し訳ない。そのお菓子なら昨日の訓練後に食べてよいかオリアーニたちに聞かれ「別にいいのでは」と本官が言ってしまった……」

提督「むー……お菓子なしで建造なんかできないわ、何かないの?」

モロシーニ「と言ってもなぁ…我々は菓子など持ち合わせてはいないぞ」

バルバリゴ「食堂に電話をかけたらどうだ?」

提督「うーん…」

チコーニャ「提督、ライモンドから書類の事で……って、どうかしたんですかぁ?」

提督「あ、ちょうどいい所に…ねぇチコーニャ、何かお菓子を持っていないかしら?」

チコーニャ「お菓子…れふか……ちゅぱ…手持ちはちょっと…」口の中で何かを動かしている…

提督「そう…じゃあ口に入っているそれは?」

チコーニャ「えーと、アメ玉れふよぉ……」

提督「ねぇ、チコーニャ…私、そのアメが欲しいのだけど♪」

チコーニャ「ふぇ…っ!?」

提督「開発で体力を使ったから甘い物が欲しくて仕方ないのに、ここにあったお菓子がみんな食べられちゃっているんだもの……ね、いいわよね?」

チコーニャ「でも…ちゅぱ……これ、私の食べかけですよぉ?」

提督「全然かまわないわ…むし歯なんてないでしょう?」

チコーニャ「はい……でも、本当に?」

提督「ええ…ぜひとも私にちょうだいな……♪」

チコーニャ「分かりました…それじゃあ何かお皿を……」

提督「ふふ、直接ちょうだいするから必要ないわ……れろっ…ぬちゅ……あむっ…♪」

チコーニャ「んちゅ…んんっ、ちゅる……ん♪」てろっ…と唾液の糸を引きつつ、大きなガラス玉のようなアメを口移しする……

提督「ちゅぱ…うん、おいひい……♪」

チコーニャ「き、気に入ってもらって何よりです…っ///」

ブリン「……さて、それではいい加減建造に入ってもらおうかな」

提督「ふぁ…い」

提督「…それじゃあ、レバーを引くわね」

ブリン「そうしよう♪」

サイント・ボン「準備は出来ておりますよ」

提督「トーレ(さーん)…ドゥーエ(にーい)…ウーノ(いーち)……建造開始♪」…と、そこにグレイ提督が優雅な足取りで入ってきた

グレイ提督「…あら、ちょうどいいタイミングだったようですね」

提督「グレイ提督…どうなさいました?」

グレイ提督「いえ、わたくしもちょうど報告書を書き終えたところでしたので……よろしかったら少しお話でも致しませんか?」

提督「ええ、いいですよ…お菓子はありませんがアイスティをどうぞ?」

グレイ提督「あら、これは涼しげで結構ですね……ちなみに、アイスティはアメリカ発祥の物なのですよ」

提督「えーと…確か万博か何かの暑い日だったそうですね?」

グレイ提督「ええ、さようです……ふぅ、それにしても南イタリアは色彩が豊かで…素晴らしい保養地ですね」

提督「ふふ、堅苦しい話なんてできなくなるでしょう?」

グレイ提督「ええ。むろんヴァイス中佐は別でしょうが…♪」

提督「そうですね……ところでグレイ提督は映画を見ますか?」

グレイ提督「ええ、多少は見ますよ…何か?」

提督「いえ、毎日午後に流している映画なのですが、せっかくイギリスとドイツからお客様がおいでになったのですから、それぞれの国の映画を流そうと…」

グレイ提督「なるほど、いいですね」

提督「で、せっかくですから「007シリーズ」でも流そうかと…どれがお勧めですか?」

グレイ提督「なるほど…でしたらやっぱり「ドクター・ノー」か「ムーンレイカー」が一番ですわ」

提督「そうですか?」

グレイ提督「ええ…わたくしもシリーズは通して見ておりますが、特に「ドクター・ノー」は数十回ほど見ましたもの」

提督「あー…」(…まさかグレイ提督が007好きとは……これは話が長くなるわね)

グレイ提督「何しろ時代が時代でしょう?…最初は「ボンドカー」に防弾ガラスが付いているだけで大変な仕掛けだったわけですわね、それが次第に水中に潜ったり宇宙に飛び出したりと、どんどんアクションや表現が過剰になっていくわけですわね……と言っても時代を考えると「近未来の装置」やガジェットは大変にリアリティがあってよろしいですし、わたくしはどの作品も面白く拝見させてもらっております…が、やっぱり初期の大きなサイレンサーをつけたワルサーPPKで活躍している頃が最もリアルでそれらしいと、わたくしの『友人』も申しておりましたわ。後はやはり女性の誘惑に弱い所がスパイらしからぬところではありますが、それもまたショーン・コネリーが斜め上を見上げた時に浮かべるあの笑顔があると不思議と許せてしまう物なのですね……ちなみに…」


提督「…あー、はい」

グレイ提督「わたくしの車についてはまだお話しておりませんでしたわね?」

提督「ええ、そう言えばそうでしたね……グレイ提督はやっぱりロールス・ロイスですか?」

グレイ提督「実家は「ロールスロイス・ファントムⅣ」ですわ…とはいえわたくしが自分で運転するのにRRは少しおっくうですし、「ボンドカー」にあこがれたこともあって、気軽に使える「アストン・マーチン・DB4」にしております」

提督「…DB4が気軽に使える車……ですか」

グレイ提督「ええ…だってセバスチャンに……失礼、セバスチャンは実家の執事のことですわ……とにかくセバスチャンに運転をお願いしないで済みますもの」

提督「あー…なるほど」

グレイ提督「ええ、それに当時は免許も取りたてで「自分で運転してみたい」と思っておりましたし…車を走らせるのは楽しいものですわ」

提督「…免許取り立てでアストン・マーチンに……?」

グレイ提督「ええ…幸い父が運転教官を雇って下さいまして、実家の周囲で練習をしたのです……一周ほんの数マイルほどでしたから、乗馬の代わりによく練習したものですわ」

提督「…」

ブリン「…これが「ホンモノのイギリス貴族」というものですな……」

提督「あー…グレイ提督、そろそろ建造が完了しますよ」

グレイ提督「まぁ、それは楽しみですね……ヴァイス中佐にはもう声をおかけしましたの?」

提督「ええ、もうすぐ来ますよ」

ヴァイス提督「…申し訳ありません、遅くなりました」かちっ!…とかかとを鳴らし、滑らかに敬礼する

ビスマルク「遅れて失礼した……が、肝心な所には間に合ったようだな」

ティルピッツ「ええ…大事な場面に間に合ったようで何よりです……」

提督「そうね…さ、こちらへどうぞ♪」


…カウンターの時間がゼロになり、「クローゼット」の中からまばゆい光が射しこむ……やっと目を開けられる程度に光が薄れると、そこには中学生程度の艦娘たちが七人と、その七人よりちょっと大柄で、いささか印象の異なる二人が並んでいる…七人の方は淡い灰色のぴっちりした水着姿で、淡い水色や紫の瞳と艶のある肌が透き通るような美しさだが、中の数人はサッキュバスのような際どい色っぽさを醸し出している……もう二人は文学者か何かのようで、ペンと本を抱えている…


銀白色の髪をした艦娘「ボンジョルノ!……あなたがここの司令官ね?」

提督「ボンジョルノ♪…ええ、私がここの提督。フランチェスカ・カンピオーニ少将よ♪……それじゃあ自己紹介をしてもらえる?」


銀白色の艦娘「了解したわ!……私はアルゴナウタ級中型潜、ネームシップの「アルゴナウタ」よ!…艦名は「アルゴー号の乗組員」って意味ももちろんだけど、イカの一種って意味もあるの。敵の船なんて巻きついて沈めてあげちゃうから♪」…どうやらイカの触腕をイメージしているらしく、左右のこめかみからひと房ずつ髪が長く伸びていて、透明感のある肌はまるで新鮮なヤリイカのように見える……


提督「傑作中型潜「600」型の第一弾ね……お迎え出来て嬉しいわ♪」ちゅっ♪

アルゴナウタ「あんっ…提督はなかなか大胆なのね。唇も柔らかだし、気に入ったわ♪」

提督「ふふ、ありがと…」

淡いスミレ色の髪をした艦娘「…いいですか、提督?」淡いスミレ色の髪がずいぶん長く伸びていて、透明感のある肌は艶やかでみずみずしい…全体的にはかなげな印象で繊細な感じに見える…

提督「ええ、お願い♪」

スミレ色の艦娘「では…私はアルゴナウタ級、「フィザリア」です…一見弱そうに見えるでしょうが、騙されると痛い目に遭いますよ♪」

提督「…なるほど、それで……刺されないように気を付けないといけないわね♪」…フィザリアは猛毒のクラゲ「カツオノエボシ」で、その夢のような美しい外見からは想像できないほど危険だったりする……

フィザリア「ええ…キスしてもいいですけど……毒かもしれませんよ♪」

提督「ふふ、刺さないでね…?」ちゅっ…♪

薄物を羽織っている艦娘「初めまして、提督…アルゴナウタ級、「ジャレア」です…艦名はゼリーだとか、「クラゲ」の事を指していると言われています……」ゆらゆらととらえどころのない雰囲気ではあるが、夢見るような表情は幻想的で美しい…

提督「それでそのシースルーのケープを羽織っているのね?」

ジャレア「はい……それではごあいさつに…ちゅっ♪」

提督「よろしくね、ジャレア…♪」

淡い紫色の瞳をした艦娘「初めまして、アルゴナウタ級の「ジャンティーナ」です……好きなのは海面に漂っていることと、フィザリア(カツオノエボシ)を食べることです…♪」どこかのんびりしたようなとろんとした目つきで、頭には淡い紫のカタツムリのような髪飾りをつけている…

フィザリア「や、止めてよ…恥ずかしいから///」

提督「ふふっ、ジャンティーナだけに…ね♪」…薄紫のカタツムリのような殻を持ち、自分であぶく作って浮きにすると海面をふわふわ漂って、カツオノエボシやクラゲを食べる「ジャンティーナ」(アサガオガイ)…それだけに、よく見ると片手にシャボン玉の入れ物を持っている……

ジャンティーナ「はい…フィザリアは大好きです……♪」

提督「それで…貴女が……っ!?」隣の艦娘と視線が合った瞬間、身体が麻痺したようになる提督……相手の艦娘は何とも美しいが髪を振り乱していて、首元につけた金の蛇をかたどった首飾りに、伸びた爪と紅いルージュがどこかぞっとさせるような毒々しさを含んでいる…

髪の乱れた艦娘「初めましてねぇ…提督さん……アルゴナウタ級の「メドゥーサ」よ…クラゲって言うような意味もあるそうだけど♪」つぅーっ、と提督の頬を指先で撫で上げる…

提督「はぁ…はぁ……んはぁ…」

メドゥーサ「ふふ…石になったりはしないから安心なさいね♪」

提督「くはぁ…はぁ……ふぅ…え、えーと…それで、あなたが……」

透明な感じのする艦娘「アルゴナウタ級、「サルパ」です…クラゲの一種とでも覚えておいてもらえれば大丈夫です♪」

提督「よ、よろしくね…♪」

サルパ「はい♪」

提督「それであなたが……んっ!?」いきなりするりと絡みつかれ、ぐっと抱きしめられる…軽く締め付けられているだけのはずが、しなやかな筋肉質の身体をしていて引き離せない…

しなやかな艦娘「…ふふ、アルゴナウタ級「セルペンテ」……海蛇の事ね。メドゥーサとは似ているけれど、間違えないでね…♪」

提督「だ、大丈夫よ……は、離してもらえるかしら?」

セルペンテ「あら残念…もっとぎゅっとしてあげてもよかったのに……♪」

グレイ提督「…なかなか独特の艦娘たちですこと」

ヴァイス提督「な、何なんだ…この、大きさに似合わぬ妖しい雰囲気は……」

ビスマルク「…イタリアのUボートは……全員こんななのか…?」

ティルピッツ「…あ、姉上…私を守ってください……何とも恐ろしい相手で…」

ビスマルク「…貴様も戦艦だろうに、たかがUボートにおびえることがあるか……全く、鉄血精神が足らんのだ…!」

ティルピッツ「…姉上は動けないでいる時に潜水艦が忍び寄ってくる恐怖を知らないんです……!」

ヴァイス提督「…馬鹿っ、こんなところで恐れをなしていてどうする……私が付いているんだからしっかりしろ…!」

提督「……えーと、それでお二人が…?」

ペンを持っている艦娘「あー…はい。セッテンブリーニ級中型潜、文学者で愛国者の「ルイージ・セッテンブリーニ」です。イタリアに栄光を♪……申し訳ない、ごく普通のあいさつになってしまって…」

提督「あー…いいのよ、それが普通なのだから……とりあえず、これから一緒に頑張りましょうね」

セッテンブリーニ「はい、なにとぞ…///」

提督「ええ。それであなたが…」

豪華なケープをまとった艦娘「…セッテンブリーニ級の二番艦、古い政治家から名前を頂いた「ルッジエーロ・セッティモ」です。よろしく頼みます♪」親しげにニコニコしながら提督の肩を抱いて背中を軽く叩き、左右の頬にキスをする…が、その目は鋭く、権謀術策や暗殺が渦巻いていたイタリアの政治を渡ってきた策略家らしさが見える……

提督「よろしくね、セッティモ…それじゃあ全員お腹が空いているでしょうし、食堂に行きましょうか♪」

アルゴナウタ「それは助かる…何しろ腹ペコだ♪」

メドゥーサ「そうね…♪」

セルペンテ「ふふ、新鮮な魚が食べたいわ…♪」

提督「それじゃあ鯛のカルパッチョか、それともパスタにペスカトーレでも作りましょうか♪」

ジャンティーナ「どちらも美味しそうです…♪」

ブリン「うむ、ここの食事は大変美味しいぞ。保障しよう♪」

ジャンティーナ「えーと…提督のような恰好ですが……貴女は?」

ブリン「これは失礼、本官はブリン級大型潜の「ベネデット・ブリン」…きっと名前は聞いたことがあるでしょう」

ジャンティーナ「あぁ、はい…光栄です♪」

メドゥーサ「…それで、貴女はどなたかしら…ねぇ?」

サイント・ボン「本官はアミラーリオ・ディ・サイント・ボン…商船攻撃用大型潜「アミラーリオ・カーニ」級です」

メドゥーサ「あらぁ…偉大な海相の名前を頂いた艦なのね…ふふ、頼もしいわ……♪」

サイント・ボン「あー…うむ、頼って頂ければ本官も嬉しく思いますよ……」

メドゥーサ「ええ…ぜひそうさせてもらいたいわね……」

………

…艦娘紹介…


潜水艦

中型潜「アルゴナウタ」級。1932~33年生まれ。七隻


イタリア王国海軍の沿岸用中型潜で、排水量は650トン(水上)/800トン(水中)。単殻・サドルタンク式

30年竣工の中型潜「バンディエラ」級や31年竣工の「スクアロ」級などに連続するように建造された中型潜。
一部性能の不満足だった「バンディエラ」級と、その弱点を残していた改正型の「スクアロ」級よりも一回り小型で性能が優れ、カタログ値以外の実績もよかったことから以後の中型潜のモデルタイプになり、戦前に海外への輸出も行われた優秀艦

水上排水量が600トン前後だったことから「600」型と総称され、実用上の改修を次々と加えられていき、最終型の「フルット」級、およびイタリア敗戦で完成しなかった「フルットⅡ」級や「フルットⅢ」級まで計画されるなど実質的な主力潜水艦として扱われ、多くの改修型や準同型を擁する中型潜シリーズとなった

主機は1200馬力/800馬力で、速度は14ノット/8ノット…武装は533ミリ魚雷発射管4門(艦首)/2門(艦尾)と、102ミリ単装砲一基、13.2ミリ・ブレダ単装機銃2基といたって平凡


…性能もなかなかで大型潜に比べ燃料消費も少なかったことから地中海での激戦に次々と投入され、43年の休戦時に残っていたのは「ジャレア」「セルペンテ」だけ…さらに「セルペンテ」はドイツ側に渡すまいと乗員が自沈させたので、戦後まで残ったのは48年除籍の「ジャレア」だけだった

艦名はいずれも海の生き物で、特に「クラゲ」や「イカ」「海蛇」など魚以外の物が多い


…艦娘の「アルゴナウタ」級は中学生程度の小ぶりな艦娘で、クラゲに関係する名前が多いせいか気ままでゆったりとしている娘が多い…が、毒のある「フィザリア」(カツオノエボシ)や「メドゥーサ」(美しさが女神に勝るとあざけり、呪われて髪が蛇になってしまった三人姉妹の妖女。唯一殺せる末妹メドゥーサは退治された)など恐ろしい名前の艦娘もちらほら……可愛い娘とあなどると、提督でさえ容赦なく餌食にされてしまうかも…


………


中型潜「セッテンブリーニ」級。1932年生まれ。二隻

1929年に単殻・サドルタンク式の「ピサニ」級と性能比較のため建造された部分複殻の「マメリ」級の改型。938トン/1135トン、部分複殻式

…1929年以来、性能そのものは「マメリ」級の方が優れていたにもかかわらずなぜか「ピサニ」級系統の潜水艦が建造されていたが、ここに来てなぜか二隻だけ「マメリ」級系統の設計を受け継いで建造された中型潜。性能は「よくなっていた」と言うが、そこまでの進歩は見られないとも…特に凌波性や復原力に難ありだったという


中型潜にしては1000トン前後とかなり排水量があり、主機も3000/1400馬力で、速度17.5ノット/7.7ノットと、カタログ値ながら水上ではかなり優速。武装も533ミリ魚雷発射管4門(艦首)/4門(艦尾)、102ミリ単装砲一基、13.2ミリ単装機銃二基と豊富ではある


二隻とも43年の休戦まで健在で、連合軍側に付いてからは米海軍の対潜訓練用として仮想敵を務めていたが、一番艦「ルイージ・セッテンブリーニ」は44年11月、訓練相手の米護衛駆逐艦に誤って衝突され沈没。幸い二番艦「ルッジェーロ・セッティモ」は47年の除籍まで無事に過ごした

艦名は一番艦が文学者で愛国者の「ルイージ・セッテンブリーニ」二番艦が中世の政治家「ルッジェーロ・セッティモ」から


…艦娘「セッテンブリーニ」級はごくごく普通の文学娘の「セッテンブリーニ」と、深慮遠謀をめぐらせている「セッティモ」の二人で、中型潜にしては意外と大柄……

…食後…

セッテンブリーニ「…うーん、このワインの紅の何と美しいこと……夕日かルビーか、はたまたアンタレスのきらめきか…♪」(※アンタレス…戦の神「アレスに対抗する者」さそり座の主星で火星(アレス)と同じく紅いことから)

提督「ふふ、さすが文学者。言うことがお洒落ね」

ポーラ「それでしたらポーラも……一杯ワインを傾ければぁ~、それは暖かなぬくもり…ぃ♪」くぃ…っ♪

提督「…なら、二杯傾けたら?」

ポーラ「それはぁ、生きている喜び~…えへへぇ♪」くーっ…♪

提督「ふむふむ…じゃあ三杯目は?」

ポーラ「それはぁ…幸せぇ~…♪」きゅーっ…♪

提督「なるほど…四杯目は?」

ポーラ「それはぁ、ふわふわと夢心地~♪」こくん…っ♪

提督「なかなか上手ね…それじゃあ……」

ザラ「提督、あんまり飲ませないで…ポーラがうまいことを言うたびに飲ませてたら酩酊待ったなしよ?」

ポーラ「えへへぇ…ばれちゃいましたかぁ~♪」

提督「ふふ、いいから好きなだけ飲みなさいな♪…ポーラが自分の限度をわきまえているのは知っているもの」

ザラ「ちょっと、提督…っ!」

提督「ふふ、それと私も一杯もらおうかしら…♪」

ポーラ「はぁ~い、どうぞ~♪」

カヴール「ふふ、いっぱい食べたり飲んだりできる…何とも素晴らしい時代です」

提督「そうね……ところでみんな、少しだけいいかしら?」

カヴール「…あら」

ライモン「…なんでしょうか?」

提督「えーと……実はひと月以上も先の話なんだけれども、ここの基地祭があります……で、よかったら何か出し物や屋台のアイデアを考えて欲しいの♪」と、同時に全員が「わいわいがやがや」と一斉にしゃべり始める…

ヴァイス提督「…食事の席で意見を募るとはイタリアらしいな…私の所だったら一人づつ順番に直立不動で発表させるところだ」

ビスマルク「……全く。それに一斉にしゃべってやかましいことこの上ない…」

ダ・ヴィンチ「ふむふむ…基地祭なら、このレオナルド・ダ・ヴィンチが得意の発明で何か……」

グリエルモ・マルコーニ「よしなさいって…この間も全自動……なんだっけ?」

ダ・ヴィンチ「全自動パスタ茹で機ね…あれはちょっと失敗だったわ」

マルコーニ「ほら見なさい…まったくダ・ヴィンチったら……トン・ツー・トトト・トントン……」無線電信の生みの親だけあって、指で机を叩きはじめる…

ダ・ヴィンチ「む、この私に向かって「ヘボ発明家」とはおっしゃってくれるわね」

提督「はいはい、喧嘩はしない…それで、何か素敵なアイデアのある娘はいる?」メモ帳を机に置いてペンを手に取った…

チェザーレ「とりあえず艦隊の活動を簡潔な文章にすればよいのではないか?…チェザーレもかつてそうしたように」

提督「まるでガリア戦記ね…他に?」

ローマ「ローマ風ピッツァの屋台と言うのはいかがでしょう?」まだ眼鏡の度を直していないので目を細め、それがつんとした表情に見えるローマ…

提督「なるほど♪」

ドリア「でしたら私もお料理の屋台を開きましょう…美味しいものを作りますよ♪」

提督「ふふ、ここには料理上手が多いからお料理の屋台は多そうね……屋台以外で何かあるかしら?」

デルフィーノ「あの…オペラや歌劇なんてどうでしょうか?」

提督「なるほど…いいかもしれないわね♪」

フルット「でしたら歌祭りなどと言うのもよろしいのでは…?」

提督「了解、書き留めたわ…後で思いついた娘がいたら、私に教えてね……以上♪」

グレイ提督「…基地祭ですか……ジブラルタルでも何度か行いましたが、存外面白いものですよ?」

提督「そう聞いています…でも、見る側は経験がありますが実行するのは初めてなので……」

グレイ提督「…よろしければ私もお手伝いして差し上げますわ」

グレイ提督の隠れSを期待してます

>>150 むむむ、先読みされてしまいましたね…明日以降にまた投下していきますが、イギリスには犬の着ぐるみを着てリードを付けてもらい散歩するストレス解消法があるなど「様々な嗜好」の方がいるそうなので、きっとグレイ提督も何かあるでしょう……


ちなみに次こそ百合姫提督の所が出てきます…提督が基地祭の出し物についてアドバイスを受けるためですが、それにかこつけて百合姫提督と日本の艦娘たちの和気あいあいとしたところを少し書こうかと……

…午後・執務室…

提督「むぅ…」各艦種から数人づつ代表に来てもらってあれこれとアイデアを出し合う提督……執務机には大きな紙に色々なアイデアやスケッチが書かれている…

ライモン「…ずいぶんと悩んでおられますね、提督?」

提督「ええ、だってここで初めての基地祭だもの…もちろん、私にとってもね♪」

カヴール「それで、どの案を採用します?」

提督「まぁ、いくつかできそうな物があるわね……とりあえずみんなの得意な各地の料理や飲み物の屋台をいくつか出して「イタリア料理全国ツアー」と、ステージを作ってやるような歌劇や歌、ちょっとした喜劇みたいな軽い出し物……あとは「お堅い」展示としてイタリア艦隊のあれこれをパネルにしたり、アヴィエーレがこれまで作ったプラモデルをケースに入れて展示しようかなー…って言ったところかしら」


ルイージ・トレーリ(マルコーニ級大型潜)「なるほど…いいと思いますよ。よかったら私も「日本つながり」で、ちょっとした和食でも作ってみましょうか?」…イタリア潜として輸送任務に就き、見事に神戸へと到着するも、数奇な運命で伊・独・日と所属を変えた大型潜「ルイージ・トレーリ」…そのせいもあってか物事の調整が上手で三カ国語を流暢に操り、その上優しげな顔立ちとメリハリの効いた抜群のスタイルを持っている…髪にはトレードマークとして日本らしい銀とヒスイの髪飾りをつけている…


提督「なるほど、いいかも知れないわ。ドイツ料理はさておき「和食を食べてみたい」っていう人は多いでしょうけど、ここみたいな田舎ではなかなかその機会もないものね」

トレーリ「ええ、お魚は手ごろな値段で手に入るわけですし……たとえばお寿司の屋台とか♪」

提督「お寿司ね。でも暑い盛りに生魚だと痛むかも知れないわね…」

トレーリ「確かにそうですね…それならかき氷なんてどうでしょう?かき氷ならかき氷機もあるわけですし、食料庫の冷凍室に氷をうんと作っておけばいいですもんね?」

提督「ふふ、なるほどね…ザラはどう?」

ザラ「そうねぇ…今の所どれも納得のいくアイデアだと思うわ。むしろ歌劇は何をやろうかしら♪」

アルフレド・オリアーニ(オリアーニ級駆逐艦)「そうね…やっぱり「ロメオとジュリエッタ」とかじゃない?」

ガッビアーノ(ガッビアーノ級コルヴェット)「なら提督がロメオで決まりかな…」

カヴール「でしたら私がジュリエッタを…と言いたいところですが、私はおばあさんなのでおしゃべりな「ジュリエッタの乳母」でいいですよ♪」

ライモン「…な、ならわたしは……いえ、何でもないです///」

提督「はいはい、脱線しないの…それより本当に、予定はこれだけでいいものかしら……」

ガリバルディ「ふふ…ねぇ提督?」

提督「なぁに、ガリバルディ?」

ガリバルディ「提督の手元にあるその電話とコンピューターは何のためにあるのかしら…日本の百合姫提督やアメリカのミッチャー提督、ことによってはフランスのエクレール提督に聞いてみればいいじゃない♪」

提督「あー、その手があったわね…それに姫なら交換プログラムの後半で「ヴェネツィア第三」にいるから時差もないわ……それじゃあさっそくかけてみましょうか♪」電話帳と受話器を取り上げ、番号を探す…

ガリバルディ「ええ、それがいいんじゃない?」

シロッコ(マエストラーレ級駆逐艦)「…それじゃあ私が「歴史の立会人」になってあげる♪」

提督「ふふ、そんな大げさな……もしもし、ヴェネツィア第三ですか?…こちらはタラント第六司令官のカンピオーニですが……ふふ、こんにちは♪」

ライモン「…お知り合いの方ですか?」

提督「ええ。ヴェネツィア第三は「シモネッタ大佐」って言う、年上好みの私と違ってぺったんこな幼女が好きな………はーい、そっちは艦娘の娘とうまく行っている?…そう、それは何よりね♪……ところでそちらを訪問中の百合野准将を……ええ、お願い♪」

カヴール「百合野提督はいらっしゃいました?」

提督「ええ、すぐ出ますって♪」

…アドリア海管区・ヴェネツィア第三鎮守府…

シモネッタ大佐「…はいはい、ちょっと待ってね……リベッチオ、ちょっと私から降りて?」…制服のワイシャツだけでベッドに寝転がっていたが、片手を伸ばして電話を保留にした……それから胸元に抱きついている褐色の艦娘「リベッチオ」に声をかける…

リベッチオ(ヴェネツィア第三)「やーだ、提督と一緒にいるのぉ……♪」

シモネッタ「んふふ…そう言うわがままを言うとまたまたイかせちゃうわよ…いいの?」

リベッチオ「ふふーんだ…いいよ、むしろごほうびだもんっ♪」

シモネッタ「もう、仕方ないわね…じゃあパンテーラ、ちょっと百合野准将を呼んできて?」

パンテーラ(レオーネ級駆逐艦・ヴェネツィア第三)「いやよ、ずっと提督の脚にすりすりしてたいもの♪」

シモネッタ「でもこれじゃあ百合野准将を呼べないじゃない…あぁ、もう仕方ない♪」電話を内線に切り替え百合姫提督に電話を取るように頼む…それが済むと受話器を置き、また駆逐艦たちとたわむれはじめた…

リベッチオ「ねぇ提督ぅ?」

シモネッタ「うーん、どうしたの…?」

リベッチオ「今の電話はお友達からの?」

シモネッタ「ええ、いいお友達からよ…「母親みたいな年をした胸の大きい人が好き」って言うのがたまにキズだけどね♪」

………

…ヴェネツィア第三・百合姫提督の客室…

百合姫提督「もしもし、お電話かわりました…あら、フランチェスカ♪」隣にいる随伴艦の「足柄」と「龍田」のためにスピーカーへ切り替える

提督「…こんにちは、姫♪」

百合姫提督「ええ、こんにちは…お電話をくれて嬉しいわ、足柄と龍田も一緒よ♪」

提督「ふふ、そんなことを言ったって先週も電話をしたじゃない♪…それと、こんにちは足柄、龍田♪」

足柄「ええ、こんにちは…相変わらず元気そうね?」

龍田「うふふ、あんまり鎮守府の艦娘と「演習」ばっかりしちゃだめよぉ?」

提督「ええ、一日一回くらいだから安心して?」

龍田「十分すぎるわねぇ……とにかく提督に用事なのよねぇ、どうぞ?」

提督「ありがと。まずは姫の声が聞けて嬉しいわ……お邪魔じゃなかったかしら?」

百合姫提督「ふふ、フランチェスカからの電話ならいつだって大丈夫よ…それで、今日はどんなお話があるのかしら?」

提督「ふふ…今日は私じゃなくて、姫に聞きたいことがあって電話をしたの♪」

百合姫提督「…私に?」

提督「そうなの……姫は大尉になってからずっと、各地の鎮守府で司令官をしていたわよね?」

百合姫提督「ええ…最初は駆逐隊司令から始まって、呉、舞鶴、佐世保、館山、新発田……だいたいの鎮守府は巡ってきたと思うわ」

提督「ならちょうどいいわ…日本の鎮守府には「基地祭」みたいなイベントはあった?」

百合姫提督「ええ、たいていあったわ…それがどうかした?」

提督「……実を言うと…」

………



百合姫提督「…なるほど、それでどういう出し物があればいいか困っているわけね?」

提督「ええ。何しろアイデアはたくさんあるのだけど、準備や予算の都合もあるし…どんな催しものがいいか教えてもらえる?」

百合姫提督「分かったわ、それじゃあ一番最近やった横須賀での話をするけれど……それでいいかしら?」

提督「ええ、お願い♪」

百合姫提督「はいはい…それじゃあ足柄と龍田も付けたしがあったら言ってね♪」

足柄「了解」

龍田「ふふ、分かったわぁ…♪」


………

…一年前・横須賀第二鎮守府「基地祭」にて…

百合姫提督「ふふ…今年も大盛況ね?」

足柄「ええ、そうね……もっとも今日は連休だし、提督は顔も可愛いから広報受けがいいんじゃないかしら?」

百合姫提督「ふふ、別に顔で艦隊運営するわけじゃないのにね?」

足柄「とは言ってもそこはやっぱり写真写りのいい美人や二枚目の提督さんじゃないと、候補生の募集にも差し支えるってものよ……で、出し物の具合はどうなのかしらね?」

百合姫提督「んー…みんな上手く切り盛りしているみたいだけど、よかったら二人で巡ってみましょうか♪」にっこりと微笑む百合姫提督…

足柄「そ、そうね……あー、えーと…その、混みあっているから……手をつないだ方がいいんじゃないかしら///」

百合姫提督「ええ、そうしましょう♪」

足柄「///」

百合姫提督「…受付ご苦労さまです」丁寧に受付兼荷物チェックの警務隊に挨拶する……入り口の門にはにぎにぎしく紙の花やリボンが飾ってあり「横須賀第二鎮守府」の看板の脇には「横須賀第二鎮守府『横二祭』」と看板が立ててある…

警務隊「は、わざわざご足労いただき感謝いたします!」長机を両側に置き、そこで手荷物を開けてもらってチェックをする警務隊…

百合姫提督「いえいえ…人出はどうですか?」

警務隊「それはもう芋を洗うようで……今日の「横二祭」には何でも人気の声優さんだかが来るそうですし、もう大変ですよ」

百合姫提督「そうですね…終わったら詰所の冷蔵庫にお茶を買っておきましたので」

警務隊「は、助かります……はい、二列に並んで!手荷物のチャックは先に開けておいて下さい!」

百合姫提督「…それじゃあ行きましょうか♪」

足柄「ええ」


…鎮守府・構内…

百合姫提督「雪風、売れ行きはどう?」


…構内には道路に沿って十数軒の屋台が並んでいて、近隣住民や観光客、海自関係者、地方新聞や広報部の記者、それに「艦娘友の会」の花飾りを付けた会員などがひしめき合っている……くじで決めた屋台の順番で入り口すぐにあったのは「雪風のかき氷」で、暑い中やってきた上に、入り口でずいぶん待たされる来客を相手に飛ぶように売れている……


雪風「それはもう大変です…幸い扇風機はありますから熱中症にはならないでしょうけど……はい、いらっしゃい♪」

百合姫提督「…大変な人気ね♪」

足柄「何しろ暑いもの……アスファルトの照り返しで焦げ付きそうよ」

百合姫提督「一個買ってあげましょうか?」

足柄「わざわざ混んでいる所で買わなくても、向こうにもかき氷の屋台はあるじゃない…でしょ?」

百合姫提督「それもそうね……あ、ここは吹雪の屋台ね」

吹雪「…あ、二人ともよかったら一つどうぞ、蒸したてですよ♪…もっとも、こんなに暑い日だと知っていたらやらなかったですが…ふぅー、暑い……」駆逐艦「吹雪」の屋台は名前にかけた「吹雪まんじゅう」で、ふっくらと蒸し上がった生地から透ける、こしあんたっぷりの吹雪饅頭がせいろに並んでいる……が、暑い最中に蒸し物をしているせいで汗だくになり、扇風機の風に加えてばたばたとうちわで扇いでいる…

足柄「弱音を吐かないの…フィリッピンに比べたら大したことないでしょうが?」(※フィリッピン…比島。「フィリピン」ではない所がミソ)

吹雪「それはそうですが…機関科の苦労が身に染みますね……はい、どうぞ」

足柄「あら、ありがと…あつっ!…はむっ、はふっ、んむ……砂糖を「おごった」わね、とっても甘くて美味しいわよ?」

吹雪「ふふ、気に入ってもらって何よりです……いらっしゃいませー!」

百合姫提督「ふふ、一口ちょうだい…?」

足柄「それじゃあ…はい♪」ふわりと饅頭を割って、ほかほかと湯気を立てる半分を渡す…

百合姫提督「ふふ、ありがとう…では、いただきます……あ、美味しい♪」

足柄「そうね…提督、ここは混みあっているからもうちょっと奥に行きましょう?」

百合姫提督「ええ…♪」

足柄「ふー…ようやく人ごみを抜けられたわね……大丈夫?」

百合姫提督「ええ、おかげさまで…足柄はエスコートが上手なのね♪」

足柄「よ、止してよ…ほら、かき氷でさっぱりさせましょう?」

赤城「あら、いらっしゃい…仲良く見回りですか?」

足柄「…っ///」

百合姫提督「ええ…売れ行きはどう?」

赤城「おかげ様で上々です…ね♪」

時雨「うん、赤城がかき氷機を回してくれるおかげで助かってるの……提督もいかが…?」

…のぼりには「かき氷」とあり、イチゴ味の「赤城しぐれ」を売っている……なぜか横ではおつまみに良さそうな「牛の時雨煮」のパックと、酢醤油か辛子味噌でいただく「刺身こんにゃく」まで売っているが、そこは「時雨煮」の「時雨」と、こんにゃくの産地である群馬の名峰から名前を取った「赤城」なので仕方がない…

百合姫提督「ありがとう、それじゃあ三百円…♪」

時雨「毎度あり……それにしても…」

百合姫提督「ん?」

時雨「いや、三百円ねぇ……昔だったら三百円で料亭を貸し切りにしてどんちゃん出来たろうなー…って思って…」

足柄「あー…分かるわね、それ……」

赤城「…うんと美味しいお酒と天ぷら…それにきれいどころの芸者をあげて…ですね♪」

百合姫提督「うーん…三百円で料亭は無理だから、後でサイダーでも買ってあげる」

時雨「ふふ、ありがと……それじゃあまた後でね…」

百合姫提督「ええ…♪」

足柄「……ねぇ提督、何だかすごく美味しそうな匂いがしない?」

百合姫提督「…確かにするわね、行ってみましょうか……」

龍田「…はーい、いらっしゃーい」海軍独特の「ねずみ色」をしたエプロンをかけ、じりじりと熱気の立ちのぼる揚げ鍋の前に立っている…姉の「天龍」も手を貸していて、注文を受けると手早く会計を済ませている…

足柄「道理で…竜田揚げの屋台だったのね……美味しそうじゃない♪」

龍田「ふふっ、とっても美味しいわよぉ…おひとついかが?」…竜田揚げの語源になったとも言われる軽巡「龍田」の竜田揚げは衣に使う小麦粉を切らした司厨長の苦肉の策とも言われる…が、からりと揚がったそれはいかにも美味しそうにぷちぷちいっている……

足柄「それじゃあおひとつ…って、何よこれ……」一口大に切った普通の竜田揚げが入っている透明なパック…の脇に、モモ肉一枚を丸ごと使った竜田揚げが数枚入った、特大のパックが鎮座している……

天龍「あぁ、それ?」

足柄「ええ…すっごい大きさだけど……」

天龍「それはうちらの排水量にちなんで3500トン…は無理だから、3500グラムの竜田揚げ……どう、よかったら買って行かないか?」

足柄「そんなの食べたら胃がもたれてしょうがないわよ…普通のをもらうわ」

天龍「毎度ありぃ…またどうぞ♪」

百合姫提督「じゃあそれはお昼に食べましょうか……あ、ここは最上の屋台ね♪」

最上「提督、来てくれたんだ…嬉しいな♪」

…重巡「最上」は駆逐艦「五月雨」と一緒に「最上の最中」とだじゃれのようなのぼりをたてて最中(もなか)を売っている……改修前は少し頭が重くバランスの悪かった「最上」ではあるが、俳句の「五月雨を集めて早し最上川」と詠まれたこともあって、鎮守府では風流で通っている…

百合姫提督「…ええ、せっかくだから一つ下さいな♪」

五月雨「はいどうぞ…足柄さんと仲良く分けて下さいね♪」

百合姫提督「ふふ、ありがと……この後はどうしましょうか?」

足柄「うーん……中は冷房が入っているから涼しいだろうし、残りの屋台は午後に回ることにして涼みましょうよ?」

百合姫提督「ええ…それもそうね♪」

………

百合姫提督「…ふぅ、やっぱり中は涼しいわ」

…鎮守府の一部はエアコンを効かせ、涼みがてら入場できるように開放してある……その上であちこちに「横須賀のこれまで」や「横須賀第二鎮守府の歩み」と言ったパネル展示と、ガラスケースに納められた古い軍旗や写真と言った骨董品、それと海を模した青いプラ板の上に「横須賀第二鎮守府」所属艦艇を揃えたウォーターラインの艦船模型コレクションが並んでいる…

足柄「ええ、そうね…そう言えば中でも催し物があったわよね?」

百合姫提督「ええ、よかったら見ていきましょうか?」

足柄「そうするわ」

那智「……あら、提督に足柄も」涼しい部屋では折り目正しく浅葱色の着物をまとい、ちょっとした雑談を交えながらパチリと碁を打つ重巡「那智」がいた…相手は来場者のお爺さんで、その周りにはやいのやいのと指図したりあれこれ戦法を教えている数人の野次馬がいる……何しろ「那智黒」と言えば碁石として有名で、鎮守府一の棋士でもある「那智」だけに、お爺さんたちは旗色が悪い…

お爺さん「うむむ…なぁ、どう思うね?」隣にいる白髪のお爺さんに助けを求める

白髪のお爺さん「あーん、こりゃ難しいな…」

那智「……ごゆっくりどうぞ。提督は見回りですか?」

百合姫提督「ええ…そっちはどう?」

那智「五分五分ですよ……さっきは小学生と一局していました。おしゃべりも交えて気軽に対局してますよ」

百合姫提督「そう、それじゃあ頑張ってね…対局中に失礼しました」お爺さんたちに一礼してその場を後にする…

足柄「和やかで何よりね……こっちは潜水艦の出し物ね」

百合姫提督「じゃあ寄っていきましょう」

伊一六八(海大6a型・旧「伊六八」潜)「あ…提督、来てくれたんですね。忙しいでしょうけど楽しんでます?」室内には墨色も淡い仮名文字で書かれた和歌や俳句が飾ってある…

百合姫提督「ええ、おかげさまで…「いろは」はどう?」(※「いろは」…百合姫提督が「伊一六八潜」につけた通称。168の番号から「いろは」)

伊一六八「楽しんでます…昔の「かな」を読もうって言う企画を「伊二三」とやってるんですよ♪」

百合姫提督「うんうん、そうだったわね…「ふみ」はどう、上手く行ってる?」(※「ふみ」…同じく百合姫提督のつけたあだ名、艦番号の23から「ふみ」)

伊二三(伊一五型)「おかげ様で、結構人も来てくれたの…後は午後まで休憩♪」大型で水偵搭載機能を持っていた伊一五型(乙型)の「伊二三」潜が椅子に座ると扇子を取り出し、心地よさ気に目を細めて扇いだ…

百合姫提督「そう、いいわね…ところで足柄?」

足柄「うん?」

百合姫提督「……少しお腹も空いてきたし、もう一度表に出て何か買いましょう?」

足柄「分かったわ…正直出たくはないけれどね」

伊一六八「それじゃあまた後で」

百合姫提督「ええ…またね♪」

…鎮守府・屋台村…

足柄「うぇ、やっぱり暑いわね……手早く食べ物を買って室内に撤収しましょう?」

百合姫提督「ええ…それじゃあ二人で手分けして……あら、利根の屋台があるわね♪」

利根「はい、らっしゃい!…提督もよかったら利根の太巻き寿司を買ってく?」…日本三大暴れ川の「坂東太郎」だけあって威勢のいい重巡「利根」は着流しに鉢巻き姿で、桜でんぶやかんぴょうを巻いて花柄に仕上げる千葉県名物「太巻き寿司」を売っている……

百合姫提督「ええ、おひとつ下さいな♪」

利根「あいよ、毎度ありぃ!」

足柄「…じゃあ私も……ねえ高雄、それって焼きそば?」

高雄「ううん、「高雄」だけに台湾ビーフンなんだけど…どう?」

足柄「もらうわ…それにしてもこういうのを見ると南支方面を思い出すわよ……」

高雄「まぁまぁ、しみじみしちゃって…♪」

百合姫提督「あら、甘酒ね…二杯ちょうだい?」

酒匂「はぁーい……ひっく…♪」軽巡「阿賀野」型の「酒匂」はたちこめる酒気でほろ酔い状態になりながら甘酒を売っている…

足柄「お昼は買えたわ…さ、座れる場所を探しましょう♪」

百合姫提督「ええ…それじゃあみんなも無理せずに、休憩しながらお店をやってね?」

………

百合姫提督「…と、いう訳でたいていは食べ物や飲み物の屋台だったわ……後は割り箸鉄砲で射的とかも♪」

提督「……割り箸鉄砲?」

百合姫提督「あー…えーと、割り箸を輪ゴムで銃の形に組み立てて…引き金に当たる部分に挟んだ短い割り箸の棒と、先端に付けた刻みに弾の輪ゴムを引っかけて……」

提督「えーと…つまり昔のクロスボウ(弩)みたいな形で打ち出すの?」

百合姫提督「だいたいそう言う感じね…もっとも、引っ張られるのは「弾」にあたる輪ゴムの方だけど…」

提督「うんうん…それで?」

百合姫提督「ええ、それでね…」

………



百合姫提督「ふー…美味しかったわね」

足柄「ええ、ちょっとまだ物足りないけど…あれだけ混んでいるんだから、そう文句をいっちゃあいけないわよね」

百合姫提督「それにしても……太巻きに五目ビーフンに…」

足柄「行列が途切れていたから買えた「明石」のタコ焼き…明石ときたら相変わらず駆逐艦から重巡まで何人もはべらせて、満面の笑みでにやけてたわ……」

百合姫提督「工作艦だけにお世話になった娘も多いもの、仕方ないわ…確かに嬉しそうだったけれどね」

足柄「でしょう、あの女ったらしには参るわ……で、後はライスカレー…と言いたかったんだけどね」

百合姫提督「みんな考えることは同じね…もしお祭りが終わって残ってたらいただきましょう♪」

足柄「まぁ良いわ…どうせ土曜日…いえ、最近は金曜だったわね……じゃないし、カレーの気分じゃないわ」

百合姫提督「ふふ、負け惜しみを言っちゃって…♪」

足柄「別に負け惜しみじゃないわよ…それに私だってカレーには一家言あるんだもの、わざわざ誰かのを食べなくたっていいわ」

百合姫提督「ふふ…それじゃあもう少し見まわりをして、それから私は本部に戻るわ♪」

足柄「了解」

百合姫提督「……で、ここは射的なのね?」

秋月「はい、秋月型だから対空戦…という訳ではないですが、ゴム鉄砲を撃って、天井につるしてある的が落ちて来れば景品がもらえますよ」

百合姫提督「それにしても…射的「小園中佐の射撃場」……「目指せ黒鳥少尉!」ね」

(※小園安名…斜め銃の生みの親。最初は使いどころのなかった「月光」を有効活用するために発案したが、最後は単発の局地戦闘機「雷電」など、B-29の飛行高度まで届かないありとあらゆる機体に斜め銃を積ませるなどいささか過度な斜め銃信奉者に……黒鳥少尉は「月光」のエース。当時にありがちな大本営の水増し発表ではっきりしないが、9機前後のB-29を撃墜・撃破している)

秋月「よかったらどうですか?」

足柄「やっていきなさいよ、提督…腕の冴えに期待しているわ♪」

百合姫提督「ふふ、じゃあ頑張ってみます……えい!」パチン…ッ!

秋月「んー、惜しいですね…まぁ、弾は十発ありますから頑張って♪」夏季制服に身を包んだ百合姫提督が真剣な表情でゴム鉄砲を次々に撃つ…

百合姫提督「……んー…やっ!」

秋月「…おー、最後の一発で見事射止めましたね…はい、どうぞ♪」

百合姫提督「ええ、ありがとう…♪」駄菓子の袋をもらってどこか満足げな百合姫提督…

足柄「それじゃあ本部はこっちよね…また後で……」

百合姫提督「ねぇ足柄、せっかくだからあれもやっていきましょうよ♪」…視線の先には「二式大艇揚収ごっこ」とある

足柄「あー、はいはい…秋津洲、提督がやりたいそうよ」

秋津洲「はい、分かりました…やり方はいわゆるヨーヨーすくいと同じです。まずは私がやってみせましょう」…旧海軍では珍しく複雑な迷彩を施し、砲術に詳しかった艦長が独自に編み出した回避運動で度重なる空襲を幾度もかわし、長く飛行艇乗りたちの「憩いのフネ」だった水上機母艦「秋津洲」(あきつしま)…その秋津洲がデリックにそっくりな割り箸で器用に二式大艇……の代わりを務めるヨーヨーをすくい上げる

百合姫提督「まぁ、上手ね」

秋津洲「何しろ一個も揚収できない方もいるので、お手本を見せてあげないと……では、どうぞやってみて下さい」

百合姫提督「ええ、よいしょ……あ、上手く取れたわ♪」

足柄「全く…なんのかのですっかり満喫してるわね」

………



百合姫提督「と言うような感じだったの…大変だったけど結構面白かったわ♪」

足柄「ほんと、大変だったわよ……迷子が出たりしてね」

龍田「よりにもよって「金剛」が当番の時に本営にきちゃったのよねぇ……」

提督「金剛って巡洋戦艦……あー、それとも高速戦艦…よね?何か悪いことがあるの?」

百合姫提督「あー…うん、他の鎮守府にいる「金剛」は別に普通の戦艦なんだけど……うちの金剛は…」

………

…鎮守府本営…

大淀「提督、戻られました!」

百合姫提督「ええ、戻ったわ…何も問題はない?」

大淀「え、えぇーと……それが…迷子のお子さんが一人……警務隊にも親御さんの捜索を要請済です…」

百合姫提督「なら見つかるまで迷子係の娘にあやしてもらって…どうしたの、複雑そうな顔をして?」

大淀「それが…松型の「松」や「梅」だったらよかったのですが、さっき交代してしまいまして…」

百合姫提督「それじゃあ、今は誰が?」

大淀「……山城と金剛です」

百合姫提督「…すぐ様子を見てきます」

…迷子預かり所…

百合姫提督「失礼するわね…金剛、迷子の様子は……」

迷子「うわぁぁぁ…ん!!」泣きわめきながら百合姫提督のもとに飛び込んでくる、小学生くらいの女の子……

百合姫提督「きゃ…っ!?」

金剛「大丈夫、お姉ちゃんは怖くなんかないですよ……ぅ♪」長い黒髪はねじれて胸元に絡みつき、銀の蛇がのたうつ模様の着物に、真っ赤なルージュを引いた唇をわずかに持ち上げた微笑み…

百合姫提督「金剛、こんな小さい女の子を泣かせちゃあだめでしょう?」

金剛「別に泣かせるつもりなんてないですよ……ほぉら、お姉ちゃんと一緒に仲良く遊びましょ…♪」するりと細い指で子供の涙をすくい上げる…その手つきがまた鬼気迫るものがあり、女の子の背筋が凍りつく…

迷子「ふわぁぁ…あぁぁん!!」

百合姫提督「その笑い方は怖すぎるわよ…まるで「シャイニング」じゃない……もう一人は?」

山城「お呼びですか、提督…さっきからあやしてあげているのにちっとも泣き止んでくれなくて……はぁ、最近の子供はこらえ性がないですね」…側頭部に般若の面をつけ、白い八重歯もぎらりと鋭い戦艦「山城」……泣く子も黙る「鬼の山城」「蛇(じゃ)の金剛」が揃い踏みをしていて、女の子はすっかり震え上がっている…

(※「鬼の山城、蛇の金剛」…旧海軍で一番しごきが厳しかったと言われる艦。他にも「長門」「霧島」などで言われることも)

百合姫提督「あぁ…もう、二人とも本営の方をお願い……大丈夫?」

迷子「うえぇぇ…ひぐっ…ぐすっ……」

百合姫提督「だいじょうぶ、あのお姉ちゃんもいい人たちだから怖くないわ……ね?」

迷子「…うん……ぐすっ…」

百合姫提督「……大淀、誰か駆逐艦あたりで手すきの娘がいないかしら…大きい艦娘より、やっぱり年恰好が近い方が安心すると思うの」

大淀「了解、放送をかけますね…」

金剛「おばあちゃん呼ばわりはやめてほしいですね…この輝くような私に!」入り口から笑顔をのぞかせる金剛(※金剛石…ダイアモンド)

迷子「ひっ……わぁぁ…ん!!」

百合姫提督「ほら、また…分かったから向こうの当番をお願い」

金剛「むぅ…あれが子供でなきゃお尻に精神棒なのにね、まったく……そうよねぇ、山城…?」

山城「全く、失礼してくれますよね…誰もかれも揃って「鬼」だの「般若」だの「夜叉」だの「羅刹」だの……ぶつぶつ…」

………

提督「その女の子は災難だったわね」

百合姫提督「ええ…ともかく、基地祭は屋台みたいな出し物を中心に、舞台で歌舞伎をやったり……」

提督「…歌舞伎ね、いかにも日本らしいわね」

百合姫提督「何しろ艦娘の娘たちにとっては昔の物の方がなじみ深いものね…おかげで歌舞伎や落語、川柳や狂歌にはうんと詳しくなったわ」(※狂歌…五・七・五・七・七で詠む面白おかしい句)

提督「なるほど…ありがとう、色々参考になったわ♪」

百合姫提督「いえいえ、こちらこそお役にたててうれしいわ。それじゃあね」

提督「ええ、またね♪」

ライモン「……なるほど、屋台に出し物に…展示もあるのですね」

カヴール「せっかくですしオペラはやりましょう♪」

オリアーニ「ええ、賛成!」

提督「それじゃあ……後は夕食の後でグレイ提督にも聞いてみましょう♪」

ライモン「はい」

カヴール「それではいったん解散です…みんな、お疲れさま♪」

オリアーニ「じゃあ駆逐艦のみんなには話を通しておくわ…私が言うんだから、きっと文句なしだけど!」

ザラ「重巡には私から伝えておくわ」

提督「お願いね……さーてと♪」

カヴール「何ですか、にこにこして?」

提督「いえ…せっかく暖かくて気持ちのいいお昼だもの……ちょっと水着で庭にでも行こうかな、なんて♪」

カヴール「それなら麦わら帽子をかぶって行って下さいね、まだ暑いですから…♪」

提督「ええ」


…しばらくして・庭…

提督「んーっ…ちょっと日差しが厳しいけど、風が気持ちいいわ♪」

マエストラーレ「…提督も海水浴?」

提督「ううん…海水浴じゃないけれど、ちょっと日向ぼっこをね♪」

マエストラーレ「そうなの、じゃあ私はひと泳ぎしてくるわ…チャオ♪」

バリラ(バリラ級大型潜)「あらぁ、提督…♪」

提督「バリラは日向ぼっこ?」

バリラ「いいえ、お母さんもちょっと遠泳してくるわ…それからシャワーを浴びて、夕方までお昼寝♪」

提督「素敵な時間の過ごしかたね……うーん、やっぱり泳ごうかしら」

バリラ「せっかく水着なんだもの…泳ぎましょう?」

提督「そうね、どうせ運動しないとライモンに「運動するか食事を減らすかのどちらかですよ」って、やいのやいの言われるもの……じゃあ証人になってね?」

バリラ「ええ、いいわよぉ♪」

………

…夕食後…

提督「グレイ提督…少しお話をよろしいですか?」

グレイ提督「ええ、どうぞ♪」

提督「じつは、基地祭のことで……ジブラルタルではどんな具合だったのか教えてもらえませんか?」アドバイスを求める提督…

グレイ提督「なるほど…そういう事でしたらお手伝いして差し上げますわ」

提督「それは助かります♪」

グレイ提督「では…お部屋に参りましょう♪」グレンリベットをじっくり味わい、それから優雅に立ち上がった…

提督「はい」

グレイ提督「よろしければエリザベスとエメラルドも同行させて構いませんか?」

提督「もちろん構いませんよ♪」

グレイ提督「分かりました…エリザベス、エメラルド。少しいいかしら?」

エリザベス「無論でございます…♪」

エメラルド「何でしょうか」

グレイ提督「カンピオーニ提督がわたくしたちに、基地祭の事でお尋ねしたいことがあるそうなので……もし取り急ぎの用がなければ同道をお願いしたいと思うのだけれど…よろしいかしら?」

エリザベス「無論でございます…このエリザベス、いつ何時でも提督のお側におりますわ」

エメラルド「私もです」

グレイ提督「結構、それでは参りましょう…♪」すっと提督に腕を差し出し、慣れた様子で提督の執務室に向かう…


…執務室…

グレイ提督「さて、それでは…何でもお好きな事をうかがってくださいな?」

提督「ええ……でしたら…」

グレイ提督「…ふむ、だいたいの所はこれでよろしいと思いますわ。後は主計部相手に予算が降りるかどうか…だけですわね」

提督「グレイ提督の目から見ても大丈夫そうに見えますか?」

グレイ提督「ええ、わたくしの目で見ても「大丈夫そうに」見えますわ…♪」奥ゆかしい笑みを浮かべ提督を眺める…

提督「ふふ、それはよかったです…グレイ提督からみても大丈夫なら安心できます♪」

グレイ提督「ええ……それにしても素敵な執務室ですわね」

提督「そうですね。私にはもったいないほどです」

グレイ提督「いえいえ…執務室に立派な家具があると、それだけで身が入ると言うものですから」

提督「…あの…よかったら……」

グレイ提督「何でしょうか?」

提督「寝室もご覧になりますか…?」

グレイ提督「あら…ふふ、わたくしに寝室まで見せてくださいますの?」

提督「え、ええ…せっかく執務室まで来て下さったのにお茶の一杯もお出ししないなんて失礼ですし、ティーセットは寝室の方にあるので……」

グレイ提督「ふふ、それではお言葉に甘えることにいたしましょう…エリザベスとエメラルドもよろしいでしょうか?」

提督「もちろんですとも…さぁ、どうぞ♪」

グレイ提督「ふふ…それでは失礼いたしますわね」

提督「どうぞ…椅子もありますし、お嫌でなかったらベッドに腰掛けて下さっても構いませんよ?」椅子をグレイ提督たちにすすめると、自分はベッドに腰掛ける提督…

グレイ提督「ええ、ありがとうございます……まぁ、可愛らしいベッドですこと」まるで物語のお姫様が使いそうな、華やかなパステルカラーのカーテンが付いたロココ調の天蓋付きベッドを見て「ふふっ」…と微笑むグレイ提督

提督「いえ、これは着任したときからここにあったものでして……///」

グレイ提督「いえいえ、別にからかっているわけではありませんのよ?……こんな素敵なベッドはわたくしのどの任地にもありませんでしたから、少々うらやましいだけですわ♪」

提督「でしたら…どうぞ座ってみてください♪」

グレイ提督「ええ、それでは失礼いたしますわ。……まぁ、ふわふわで柔らかい…まるで雲の上に座っているようですわね」提督の横に座り、そっと肩を寄せる…

提督「お気に召しましたか?」

グレイ提督「ええ…それに甘いいい香りが致しますわ……あら、この香りはフランスの「レール・デュ・タン」ですわね」

提督「ええ…実はフランス海軍の友人にもらったものでして……覚えておいででしょうか、ローマでグレイ提督とも少しお話しした「トゥーロン第七」のエクレール大佐なのですが…」

グレイ提督「あぁ…あのいかにも「パリジェンヌ」と言った方でしたわね」イギリス貴族らしく、一言で的確かつ見事な皮肉を交える……

提督「ふふっ…そのエクレール大佐です♪」

グレイ提督「…そうでしたか。てっきりカンピオーニ提督とは好敵手だとばかり思っておりましたわ」

提督「いいえ…屁理屈こそ多いですが、むしろ良い「友人」です♪」

グレイ提督「そうでしたの……ふふ、と言うことは…お二人はきっと「親密な関係」で、こちらに訪問されていた際はよく「仲良く」なさっていたのでしょうね?」意味深な微笑を含ませるグレイ提督…

提督「ええ…何しろ彼女と過ごすと「とっても愉しい」時間を過ごせますから♪」

グレイ提督「そうでしたの……ところでカンピオーニ提督?」

提督「はい、グレイ提督?」

グレイ提督「ふふ、メアリで結構ですわ…♪」

提督「でしたら私もフランチェスカ…フランカでも結構ですが…そう呼んで下さいな……ね、メアリ♪」

グレイ提督「ふふ…いかにもイタリアらしい名前ですわね……フランチェスカ」

提督「何でしょう、メアリ…?」

グレイ提督「実を申しますとね…わたくし「ガンルーム」の頃ジブラルタルで、少々「愉快な遊び」を教わりましたの……三人いれば出来る遊びですし、よろしかったら試してみませんか?」(※ガンルーム…若手士官。ナポレオン時代は反乱予防のため武器庫のそばに士官室があったことから)

提督「面白い遊び…ですか?」

グレイ提督「ええ…貴族の青年士官はジブラルタルやアレックス(アレクサンドリア)で老練な下士官たちに「ハメの外し方」を教わるものなのですが……わたくしは女性でしょう?…ですから、女性下士官に連れられて……ふふ、もう言わずともお分かりの事でしょうね♪」

提督「あー…英国海軍のしきたりだそうですね……王室や貴族の子弟は、痛飲の仕方から「遊ぶべき」お店までこっそりと教わるとか…」

グレイ提督「ふふ、よく御存じですわね…いかにもその通りですわ。……そこでわたくしもジンの飲み方から、「様々な女性」との遊び方まで教えてもらったものですが…さ、お立ちになって♪」

提督「はい…それで、この後は……?」

グレイ提督「ふふふっ…エリザベス、エメラルド……よろしいかしら♪」

エリザベス「ふふ、まさかいきなり「アレ」をなさるおつもりとは……このエリザベス、恐れ入りましてございます」

エメラルド「あぁ…「アレ」ですか……少々恥ずかしいですが…///」

提督「…?」

グレイ提督「これは女性士官が海上勤務に就くようになった最近になって生まれた「女性だけで出来る」遊びなのですが…ふふっ、フランチェスカはどうぞ二人に身を任せてくださいませ♪」

エリザベス「それでは「ロンドン・ブリッジ・フォーリング・ダウン」…上に参りまぁーす♪」着ている青い服の前ををはだけ、形のいい乳房をあらわにすると、がしっ…と提督の脇に手を入れ、脚を持ったエメラルドと一緒になって水平に持ち上げた…

提督「えっ、ちょっと二人とも…きゃあ!?」

エリザベス「それでは…♪」…童謡「ロンドン・ブリッジ・フォーリング・ダウン」の歌に合わせて提督を眼前まで持ち上げ、口もとにキスをする…

エリザベス「♪~ローンドンブリッジ・フォーリン・ダウン……」ちゅぅぅっ…♪

エメラルド「♪~フォーリンダウン、フォーリンダウン…」

提督「んんぅ、んあ…っ♪」

エリザベス「おや、いとも簡単にそのような甘い顔をされてしまいますと…このエリザベス、愉しみが無くなってしまいます♪」

提督「だ、だって…あんっ♪」

エリザベス「さてさて…胸元までやってまいりましたね……ちなみにこの歌のタイトルは諸説ありますが、本家の「マザーグース」に載っているものは「ロンドン・ブリッジ・イズ・ブロークン・ダウン」の方が正解とされるそうでございます……それではご一緒に…さん、はい♪」

提督「そ、そんなこと言ったって……あんっ、んぁぁっ♪」

エメラルド「♪~ローンドン・ブリッジィズ・ブロークン・ダウン…ブロークン・ダウン……」両肩に提督の脚を乗せると秘所に舌を這わせるエメラルド…

提督「んひぃ…エメラルド、だめよ……ちゃんとお風呂は入ったけど…あぁぁっ、んっ♪」

エメラルド「…入浴したのなら大丈夫ですとも……それより、下着をつけておられないのですね?」

提督「あふっ、ひぅんっ……だって、もう寝るから必要ないと思って…っ///」

エリザベス「♪~ローンドン・ブリッジィズ・ブロークン・ダウン……マイフェア・レディ♪」歌詞が進むと同時に提督の身体は地面に近くなっていき、腕と脚を持った二人の責め方も場所ごとで変わってくる…

グレイ提督「あら、もうそこまで来ましたのね……面白いでしょう?」

提督「んふぅ…んぐぅ、んむっ……///」…顔をエリザベスのふとももに挟まれ、濡れた花芯をエメラルドと重ね合っている提督

グレイ提督「さぁ、エリザベス…その辺にして放してあげないと、フランチェスカが窒息してしまいますわ♪」

エリザベス「…おや、それは残念でございますね」

提督「ぷはぁ…はぁ、はぁ……これがイギリス流の「愉快な遊び」ですか…ふぅ」

グレイ提督「お気に召しまして?」

提督「…と、とっても気持ちはよかったです……でも、息が切れて……///」

グレイ提督「ふふ、エリザベスはついやり過ぎてしまいますの…それにしても、そのように火照ったお顔をしておられますと……わたくしも交ぜて欲しくなりましたわ♪」優雅に椅子から立ち上がると、すっ…と頬を指で撫で上げた……

提督「もう…メアリ///」

グレイ提督「ふふ、貴女からそう呼ばれると自分の名前なのに新鮮な感じがしますわ……さてと、きっとフランチェスカも何か「面白い遊び」をご存じなのでしょうから…ぜひわたくしたちに教えて下さいな」

提督「え…えーと」

グレイ提督「遠慮はいりませんわ……さ、おっしゃって?」

提督「そ、それなら…少しよろしいですか……///」グレイ提督たちに向こうを向いてもらう間にクローゼットの中をひっかき回し、ついでに実家のクラウディアから受け取った紙袋も取り出す…

グレイ提督「…もうよろしいかしら」

提督「はい、大丈夫ですよ///」…半ばやけっぱちで、いつぞや着るはめになったバニーガールの衣装やメイド……クラウディアの手づくりながら、やたら本物そっくりな憲兵隊の制服や何かをベッドに並べ、はにかんだような表情の提督…

グレイ提督「あら、フランチェスカはそんな道具もお持ちですの……ふふ、楽しそうですこと♪」

提督「あー…よかったら着てみますか?」

グレイ提督「ええ、せっかくですものね♪」

提督「え……着るんですか?」

グレイ提督「だって、わざわざしまってあったものをお出しになって下さったのですから…これ、よろしいかしら?」しばらく前に提督がエクレール提督相手に使った、全て本革の黒いコルセットと際どい黒のスカート、それと揃いになっている網タイツとガーターベルト…それに長い黒革の一本鞭とハイヒールの革長靴……

提督「え、ええ…着替えている間は向こうを向いていますから……」

グレイ提督「ふふ…それではしばしお待ちを♪」

エリザベス「……まぁ、よく似合っておりますこと」

エメラルド「…まるで冷酷な女王様です……私も…隷属させられたい気分になってしまいます…♪」

グレイ提督「…結構胸が余ってしまいますわね…ふふ、フランチェスカは豪奢で豊かな身体をお持ちだから致し方ありませんわね……はい、よろしいですわ」

提督「それじゃあ失礼して……うわ///」

グレイ提督「いかがでしょうか…似合っておりますかしら?」…すっきりとした身体つきのグレイ提督だけに、ヒール付きブーツを履くとぐっと背が高くなったように見える…おまけに酷薄な冷笑ともとれる微笑みが「狂女王」と言った雰囲気を出している……

提督「と…とっても似合っております///」

グレイ提督「まぁ嬉しい……いえ、違いましたわ「よろしい、褒めてつかわす」…ですわね」ひゅん…と鞭を鳴らし、見下したような視線を投げるグレイ提督……

提督「…っ///」じゅん…っ♪

グレイ提督「…ところで、わたくし乗馬以外で鞭を振るうなど初めてですが……よろしければやり方を教えて下さいな?」

提督「あぁ、そうですね…えーと、振るう時は手首のひねりを効かせて……あんまりきつく振るうと腕が疲れますし、相手にも痕が残ってしまうのでほどよく…ちょっと練習してみましょうか」グレイ提督の手に自分の手を重ねて「ひゅん…っ」と鞭を振るってみせる…

グレイ提督「なるほど、この程度の振り方でよろしいのですか…理解いたしましたわ」

提督「そうですか……では、えーと…」

グレイ提督「ええ、よろしければ床にお手をついていただいて……どうかいたしましたの、エリザベス?」

エリザベス「…私も何かお手伝いいたします。このメイドに何でもお申し付け下さいませ♪」

グレイ提督「ふふ、失敬。わたくしったら目新しいことに夢中で、貴女たちの愉しみを考えておりませんでしたわね……そう、フランチェスカには目隠しをお願いいたしますわ」

エリザベス「承知いたしました…では失礼いたします、カンピオーニ様♪」しゅるしゅる…っ、と柔らかい布で目隠しと猿ぐつわをかまされ、ついでにバスローブについているシルクの帯で両手を拘束される……そのまま四つん這いにされてナイトガウンの裾をめくりあげられると、とろりと濡れたふとももがひやりとした外気に触れた…

提督「…んー…んんぅ……///」

グレイ提督「ふふ、これはなかなか素敵な眺めですわね…さてと……こちらがよろしいのかしら?」ひゅん…っ!

提督「んーっ…んんぅ♪」

エリザベス「まぁまぁ、何とも愉悦を感じさせるお声ですこと…陛下、お済みになりましたらわたくしにもやらせて下さいませ」

グレイ提督「ええ…もちろんですわ……それ♪」ぴし…っ!

提督「んぐぅ…♪」

グレイ提督「さて…とはいうもののただ鞭を振るうだけでは情感がこもりませんし、何か「物語」が必要ですわね…」

エメラルド「でしたら…せっかくエリザベスもハウスキーパーの格好をしているのですし「ミスをしてハウスキーパーに連れてこられ、貴族のご主人に折檻されるメイド」にしたら如何でしょうか///」

グレイ提督「なるほど、では……「わたくしの大事にしているティーカップを割ってしまうなんて、何という失態なのかしら」…サディスティックな伯爵なら、きっとお仕置きするような場面でしょうね?」ぱしん…っ!

提督「ふぅぅ…んんぅ///」

グレイ提督「そう、それに…割ったのならそう言えばいいものを、どうして嘘をついたのです?……わたくしはカップを割られてしまった事より、嘘をつかれることの方が不愉快ですわ」ひゅんっ…!

提督「んんぅ…ふぅぅ……んぅ///」

グレイ提督「ふぅ…それでいながらフランチェスカ、貴女は鞭うたれて悦んでいるのですか?……全く度し難いイタリア人メイドですこと♪」ぴしっ…!

提督「んふぅ…んんぅ……♪」

グレイ提督「ふむ、何か言いたいことがあるようですわね…「ベス」外してあげなさい♪」

エリザベス「承知いたしました…さ、「女伯爵さま」にちゃんと謝るのですよ、フランチェスカ♪」

提督「はぁ…はぁ、ふぅぅ……///」

グレイ提督「あら「鞭うたれておきながらそんなに秘所を濡らして…はしたないと思わないのですか?」……ふふ、なかなか愉しいですわね♪」

提督「はひぃ…ふぅ……「申し訳ありません…伯爵さま」…んっ///」

グレイ提督「ふむ、では謝罪したことは認めましょう。……とはいえここまでの度重なる不行き届き、謝罪だけでどうにかなるものでもありませんわ…そうでしょう?」もっちりした丸いヒップにそっとヒール付きブーツのかかとを乗せるグレイ提督…

グレイ提督「……痛くはありませんね?」踏み台のように片足を乗せてはみたものの、上半身を傾けるとそっと提督に耳打ちした

提督「…ふふ、大丈夫ですから続けて下さい///」

グレイ提督「では……こうやって踏みつけられてまだ悦んでいられるか試して差し上げます!」ぐい…っ!

提督「あぁ…っ、んんっ……くぅぅ…んぁぁ♪」

グレイ提督「全く、踏みつけにされてまで愉悦に浸っているとはどこまではしたないのですか…このだらしのないメイドは」ひゅんっ…!

提督「んひぃ…あんっ♪」

グレイ提督「そうですわね…ベス、貴女たちからもきちんと罰を与えなさい」

エリザベス「承知いたしました…では♪」ひゅん…っ!

提督「ひぅぅ…んぅ♪」

エメラルド「…ごめんなさい、フランチェスカさま…私が至らないばっかりに…でも、女伯爵さまの言いつけには逆らえないんです……」ぴしっ…!

提督「あんっ…んあぁぁっ……♪」

………

…数時間後…

提督「はぁ、はぁ、はぁ…ふぅー……メアリ、先ほどはずいぶんと激しくなっておられましたね///」

グレイ提督「…ええ。わたくしとしたことが我を忘れて、ずいぶん愉しませていただきました……ところで貴女は大丈夫ですか、フランチェスカ?」部屋へ来た時に着ていた普段着に戻ったグレイ提督は、提督が淹れた紅茶を優雅にすすっている……さっきまでは這いつくばった提督を相手に思う存分鞭を振るっていたが、わずかな頬の赤み以外は何も変わらない…

提督「ええ、加減してもらったので……少し叩かれたところがひりひりしていますが…」鞭うたれたり、平手で叩かれたりしたお尻をさすりながらベッドに腰掛け、少し顔をしかめる提督…

グレイ提督「申し訳ありませんわ…あまりにも貴女の声が悩ましいもので、つい……座れますか?」

提督「ええ、平気です……痛っ…」

グレイ提督「おや…何かお薬でも塗った方がよろしいのではありませんか?」

提督「そうですね…それなら、薬箱がそこに……」

エリザベス「薬箱……こちらでございますね?」

提督「ええ…その中に痛み止めクリームが……あぁ、それよ」

エリザベス「ではわたくしが塗って差し上げましょう…さぁ、どうぞベッドの上でうつ伏せになってくださいませ……♪」

提督「ごめんなさいね、エリザベス?」

エリザベス「この程度の事、何でもございませんわ……では失礼して…♪」

提督「んぅ…それにしてもグレイ提督は、もしかしてかなりの嗜虐趣味をお持ちなのかもしれませんね?」日焼けした後のようなひりつく痛みに、エリザベスのしなやかな指先と冷たいクリームが心地よい…

グレイ提督「ええ、かもしれませんわ……何と言うか、貴女が目隠しをされて四つん這いになっているのを見て…背徳感、あるいは征服欲と申しましょうか…とにかく、心の底から湧きあがる「どろりとした感情の高ぶり」にぞくぞくいたしましたもの」

提督「あー…もしまた機会があったとしたら、どうぞお手柔らかに……」

グレイ提督「ええ…ぜひともそうさせていただきますわ♪」

エリザベス「そうですね、カンピオーニ提督はなかなかそそるものがございますゆえ……このエリザベスも、ついついお茶目なイタズラ心をくすぐられてしまうのでございま…す♪」ぱちんっ!

提督「ひぃん…っ!?」

エリザベス「これは失礼、つい丸くてすべすべのヒップが目の前にあったものですから…♪」

提督「だからって……もう///」

グレイ提督「まぁ、エリザベスったら。そんなことをしてはいけませんよ…ふふ」

エメラルド「…はぁぁ、何て甘い喘ぎ声なんでしょう……///」

提督「…」

グレイ提督「…ところで、フランチェスカ」

提督「ええ」

グレイ提督「そのままの姿勢で結構ですから、少しおしゃべりでもいたしましょう?」

提督「ええ、構いませんよ…夜はまだまだ長いですものね♪」

グレイ提督「そう言うことですわ……さ、よろしければお話しになって?」

提督「はい…メアリも後で話して下さいね♪」

グレイ提督「もちろんですわ」

………

グレイ提督のSMをもっと見たいのですが

>>165 まずはコメント感謝です…が、百合姫提督の小エピソードを出す予定だったのでちょっと間隔が空いてしまうかもしれません。せっかくのリクエストなので書きますけれど……他にカップリングやシチュエーションで何かご要望があればそれも出来るだけ頑張ります

提督「…それで、基地祭で「マクベス」を?」

グレイ提督「ええ、何しろシェークスピアの名作ですから……カンピオーニ提督はどんな出し物にするおつもりですか?」

提督「そうですねぇ…きっと「ロメオとジュリエッタ」になると思います♪」

グレイ提督「あら、素敵ですわね。でしたら「…あれはナイチンゲールの声ですわ、ロミオ様」ですわね?」

提督「ええ、そうです…「ならば私は死をも恐れない…さぁ、残酷なる運命よ来たれ」と言うところですね♪」

エリザベス「ふふ、お二人ともお似合いでございます♪」

提督「もう、止めてよエリザベス…もし私がロメオでメアリがジュリエッタなら、さらってでも連れて行くわ♪」

グレイ提督「まぁ…お上手ですこと」

提督「ふふ、だって好きな女性といられないなんて……あ、そう言えば百合姫提督の所でも舞台劇をやろうとしたとか…」

グレイ提督「日本の百合野准将ですか…どんな劇だったのです?」

提督「何でもペローやグリムの童話にある「赤ずきん」だとか……百合姫提督が言ってました」

グレイ提督「あら…でも「やろうとした」と言うのは?」

提督「あー…それがなんでも色々あったそうで……」

………

…一年前・横須賀…

百合姫提督(赤ずきん)「…それじゃあ「赤ずきんちゃん」の舞台練習を始めましょうか……いい歳をした提督が「この格好」って言うのは、ちょっと恥ずかしいけれどね…///」

大淀「まぁまぁ、せっかくの基地祭ですし…それに可愛いですよ♪」

龍田「よく似合っているわよぉ…♪」

百合姫提督「もう、みんなしてそういうことを言うんだから…///」

大淀「まぁまぁ…それでは、よーい……はじめ!」

長門(ナレーション)「あるところに、赤ずきんちゃんというとても可愛らしい女の子がおりました……」

間宮(赤ずきんのお母さん)「…それじゃあ赤ずきんちゃん、おばあさんの所にケーキとぶどう酒を届けて来てね。途中で寄り道してはいけませんよ?」

百合姫提督「はぁい、それじゃあ行ってきます♪」

長門(ナレーション)「ケーキとぶどう酒を入れたかごを持ち、おばあさんの所に向かう赤ずきんちゃんでしたが、森にさしかかると…そこには悪い狼がおりました」

足柄(悪い狼)「おや、赤ずきんちゃん…どこに行くの?」

百合姫提督「あら、狼さん。病気のおばあさんにケーキとぶどう酒を持って行ってあげるのよ?」

足柄「そう、それは感心ねぇ…ならついでに森でお花を摘んで行ったらどうかしら、綺麗なお花を持って行ったらおばあちゃんも喜ぶと思うわよ?」

百合姫提督「うーん、それもそうかしら……それじゃあ案内してもらえる?」

足柄「もちろん…さぁ、こっちよ♪」

長門「狼が悪者であることを知らない赤ずきんはすっかり騙されてしまいました……もちろん最初は数本の花を摘むだけのつもりだった赤ずきん。とはいえ、森には花が咲き乱れ、ついついあちらこちらと目移りしてしまいます……その間に足の速い狼はおばあさんの家に向かいました……」

宗谷(おばあさん)「うー…暑い……こほこほ…っ」

足柄「おばあさん、こんにちは…」

宗谷「うーん…外にいるのは誰ですか?」

足柄「私、赤ずきんよ…ケーキとぶどう酒を持ってきてあげたわ……♪」

宗谷「あぁ、ありがとね……ドアは開いているからノブを回して入っていらっしゃい」

長門「…狼はドアを開けると、病気でふせっているおばあさんを丸飲みにしてしまいました。そしておばあさんの衣服を剥ぐとそれをまとい、ベッドにもぐりこんでおばあさんのふりをして、赤ずきんを待ち受けます……」



長門「…その間に森でたくさんの花を摘み、すっかり遅くなってしまった赤ずきん…ようやく用事を思い出し、持ちきれないほどの花束を抱えておばあさんの家に向かいます……」

百合姫提督「いけない…すっかり遅くなっちゃったわ……おばあさん、いますか?」

足柄「…」

長門「狼はおばあさんのずきんを目深にかぶり、布団に包まっていますが…そうと知らない赤ずきんはベッドに近寄ります」

百合姫提督「…おばあさん、赤ずきんですよ……おばあさん、今日はずいぶんとお耳が大きいのね?」

足柄「…お前さんの言うことがよく聞こえるようにね」

百合姫提督「おばあさん、今日はずいぶんとお目々も大きいのね?」

足柄「…お前がよく見えるようにね」

百合姫提督「それに、なんて大きな手をしているんでしょう…!」

足柄「お前さんを上手く掴まえられるようにね…♪」

百合姫提督「それに…なんて大きなお口をしているんでしょう」

足柄「それは…お前を良く食べられるようにさ!」いきなりベッドから跳ね起き、百合姫提督に掴みかかる足柄…

百合姫提督「…きゃぁ!」掴みかかられた勢いで尻もちをつき、やわな手製の衣装が縫い目からひどく破れた……床にへたり込み、半分脱げた赤ずきんの格好で足柄を見上げる百合姫提督…

長門「うわっ…二人とも大事ないか?」

百合姫提督「え、ええ…でも衣装が破れちゃったわ///」

足柄「………」

宗谷「大丈夫ですか二人とも……って、どうしたんです?…足柄…さん?」

足柄「ふーっ…ふぅぅ…っ……!」

百合姫提督「あの、足柄……どうしたの?」

足柄「ふーっ…あのね、先に言っておくけど……そんな風に誘ってる提督が悪いのよ…っ!」んちゅぅぅ…♪

百合姫提督「んんぅ…!?」

足柄「はぁ、はぁっ…いくら神戸生まれのお嬢さまだからって、こんなやらしい格好を見せつけられて我慢できるほど私は出来ちゃいないのよ……っ♪」びびっ、びりぃ……っ!

百合姫提督「ちょっと、足柄…っ///」

長門「お…おぉ///」

宗谷「うわわ…ぁ///」

龍田「あらぁ…足柄ったら♪」

間宮「ち、ちょっと子供には見せられない「赤ずきんちゃん」ですね…///」

大淀「あ…あー……///」

百合姫提督「ひぃやぁぁぁっ…んぁぁぁっ、あふぅ……だめ、だめぇ…っ♪」

足柄「だめっていいながら…どうしてしがみついているのよ……っ♪」

百合姫提督「あぁぁっ、だって…いいの、いいのぉ…っ……あぁ、イくぅぅ♪」

長門「おぉ、これは……なんとも過激で……おぉぉ///」

百合姫提督「見てないでっ、誰か……あひぃぃんっ♪」

長門「……えー、こうして赤ずきんは悪い狼に食べられてしまいましたとさ……よし、邪魔をするのは野暮だから戻ろう///」

飛龍(狩人)「えっ、私の出番は…?」

………

提督「…と言うようなことがあったとか、なかったとか……」

グレイ提督「ふふ、面白いお話ですこと…ところで」

提督「何でしょう?」

グレイ提督「今宵は月が明るくて素晴らしいですし、ここの庭園はとても綺麗ですから…お休みになる前に、少々お散歩にでも参りましょう♪」

提督「ふふ、それもいいですね…では、何か着るので少し待ってくださ……」うつ伏せの状態から起き上がり、羽織っているナイトガウンの帯を締め直そうとする…と、グレイ提督のほっそりした白い手が優しく提督の手をつかんだ

グレイ提督「…別に着るものは必要ありませんわ。そうでしょう?」

提督「え///」

グレイ提督「せっかく綺麗な身体なのですから、隠すことなどございませんわ……ところで、もしよろしければ貴女方も一緒に……?」片方の眉をそれとなく上げてみせる…

エリザベス「いえ、わたくしは結構でございます…どうぞお二人で、行ってらっしゃいませ」

エメラルド「ええ…私は紅茶がまだ残っていますし、戻ってくるのをお待ちしております」

グレイ提督「そう、でしたら二人だけで参りましょう♪」

提督「あ、あの…///」するりと優しい手つきでナイトガウンを脱がされ、はにかんだような表情の提督…と、それを見て優雅な微笑みを浮かべるグレイ提督……

グレイ提督「とはいえ……さすがに何も着ていないのは心細いですものね、どうぞこれをお召しになって?」

提督「ありがとうございます、メアリは優しいですね……って、これだけですか///」白いレースのストッキングとガードル、ガーターベルトを渡される提督…

グレイ提督「あら、もしお召しにならないのでしたら…」

提督「…着ます」

グレイ提督「ふふ、そう言うと思いましたわ……あぁ、そうそう…お散歩にはこれもつけませんと♪」ベッドの上に散らかっている道具や衣装のなかから首輪のような黒革のチョーカーを取り出すと、丁寧に首元に留めた…それから提督の足元に紅いハイヒールを揃えて出した

提督(首輪つき)「…もう、最初からこうするつもりだったのですね///」

グレイ提督「ふふ、何のことやら……では、参りましょう?」チョーカーのリングにリード代わりの紐を通し、提督を歩かせるグレイ提督…


…鎮守府・廊下…


提督「あの…メアリ?」

グレイ提督「何でしょう?」すべすべしたシルクのナイトドレスに優雅なガウンを羽織り、片手には提督の首輪に繋がっているリード、もう片方の手には鞭を持っている…

提督「もしかして、ですが…こういった経験があったりします?」かたや下半身のみランジェリー姿のほぼ裸で、意外に涼しい夜風に肩をすくめている提督…

グレイ提督「あら、何のことでしょう?」

提督「…」

グレイ提督「……わたくしの実家には犬がおりますから、そこから思いついただけですわ♪」

提督「あら、メアリも犬を飼っているんですか…どんなわんこなんです?」

グレイ提督「ウェルシュ・コーギー・カーディガンと、黒いラブラドール・レトリーバーですわ」

提督「ふふ、どちらも可愛い犬種ですね…♪」

グレイ提督「ええ…とっても可愛いものですわね……」正面玄関を開けて、表に出る二人…外は青い月光が降り注ぎ、静かに波音が響いている……

グレイ提督「……ふぅ。夜にお散歩するのも、なかなか気持ちがいいものですわね…とっても月が明るくて、本も読めそうなくらいですし」

提督「ええ、そうですね…///」

グレイ提督「ふふ…さぁ、参りましょう?」くいっ…とリードを引っ張るグレイ提督

提督「んっ…く」

グレイ提督「あら、少し苦しかったですか?」

提督「けほっ…いえ、急に引っ張られたもので……///」


グレイ提督「それにしても夜風が心地いいですわ…ね、フランチェスカ?」

提督「え、ええ///」

グレイ提督「まぁ、夜だと言うのにこの庭の綺麗なこと…さ、こちらでよくご覧になって♪」くいっ…

提督「んっ…けほっ、こほっ!」

グレイ提督「あら、わたくしったら……また引っぱってしまって♪」

提督「いえ、平気です……それより、背中が少しぞくりとして…」

グレイ提督「あら、それはいけませんわね。寒いのですか?」

提督「ええ少し…気温は暖かいのですが、風が少しひんやりして……」

グレイ提督「それはいけませんわね……何か身体を暖める方法が…あぁ、それでしたら血の巡りを良くすればよろしいのでは?」

提督「…私は一枚のタオルすら持っていませんが、乾布摩擦でもすればいいのですか?」両手を上に向けて皮肉る提督…

グレイ提督「あら…フランチェスカは何もお持ちでないの?」

提督「ええ、あいにくと…♪」

グレイ提督「なら致し方ありませんわね。ところで…わたくし、何かの本で「刺激を与えると血流がよくなる」と聞いたことがありますから、よろしければお手伝いいたしましょう」ひゅん…っ!

提督「んっ…!」

グレイ提督「こうして軽く叩けば、すぐ暖かくなると思いますわ…♪」ぴしっ…!

提督「んくぅ…♪」

グレイ提督「幸い波音でかき消されておりますから、屋内に聞こえる心配はありませんし…わたくし、フランチェスカが暖かくなるまで頑張ってみせますわ」ぱしん…っ!

提督「んんぅ…あんっ///」

グレイ提督「まぁ、ここのお庭で生えているミントの香りが漂ってきて……とても甘くていい香りですわね♪」ひゅん…!

提督「ええ、そうですね…んっ///」

グレイ提督「…どうでしょう、これで少しは暖かくなりました?」

提督「あの…できたらもうちょっと……んっ///」ふとももをこすり合せつつ、上目づかいで甘えるような声を上げる…

グレイ提督「あら…お気に召しまして?」

提督「メアリみたいに加減をわきまえていてくれる方なら……ですけれど♪」

グレイ提督「まぁまぁ…嬉しいお言葉♪」ひゅん…っ!

提督「くっ…今のは少し強かったです……///」

グレイ提督「あら、失礼…♪」ぴしぃ…っ!

提督「んぅぅ…///」

グレイ提督「……今度はいかが?」

提督「もう…メアリのいじわる……♪」

グレイ提督「ふふふ…そうやって甘い声を出されてしまうと、わたくしの中の嗜虐的な部分が刺激されてしまいますのね」ひゅん…っ!

提督「あひぃ…んっ……///」

グレイ提督「…ふふ、貴女がふとももをこすり合わせるたびにねちっこい水音が響いて……何とも刺激的な光景ですわね♪」

提督「だって…こんな姿で庭にいると思うと……っ///」

グレイ提督「あらあら…月明かりだけでもとろとろに濡らしているのがよく分かりますわね……よろしければそこの草の上でしてあげますわ?」

提督「んぅぅ…メアリ……///」草地にひざを付き四つん這いになると、片手で秘所をまさぐりつつ甘い声を上げる…

グレイ提督「はいはい…♪」ぴしっ…!

…しばらくして…

提督「んぅ、あふんっ♪」

グレイ提督「ふふっ……それ♪」ぱしっ…!

提督「あぅん…っ///」

グレイ提督「さてと…良かったら撫でて差し上げましょう、お腹を出して下さいな♪」

提督「もう、メアリったらいやらしいんですから…っ♪」夜露の降りた青草の上に寝転がり、両手を投げ出して物欲しげな顔をする…

グレイ提督「ふふ、そうなったのは貴女のせいですわ…どうかしら?」サンダルを脱いでつま先でお腹をくすぐり、胸の谷間に脚を乗せる…そして提督を見おろし、イギリス貴族でなければできないような優雅な笑みと、かすかな軽蔑の混ざった表情を浮かべている……

提督「んふふっ…ぴちゃ、ぺろっ……♪」両手で真っ白なつま先を抱え、とろけたような表情のまま舌を這わす…

グレイ提督「ふふ、くすぐったいですわ……おやめなさいな?」口ではそう言いつつも、靴磨きでもさせるように片脚を出して微笑んでいる…

提督「ふふ…と、言いながらちっとも嫌がっていませんね♪」

グレイ提督「あら…わたくしはもう止めて頂きたいのに、貴女が離さないせいですわ」

提督「んふふっ、さすが口の上手いイギリス人ですね……ちゅぱ…ぴちゃ……っ♪」

グレイ提督「ふふふ…」

提督「んふふっ…♪」

グレイ提督「うふふふ…♪」

提督「ふふっ、くすくすっ…♪」

グレイ提督「ふふっ…ふふふふっ♪」

提督「あー、おかしい……いい歳した提督二人が夜の庭で、こんな変態じみた事をしながら仲良くおしゃべりなんて…うふふっ♪」

グレイ提督「ええ、全くですわね…しかもわたくしに至っては、こちらでもてなしてもらっている立場だと言うのに……ふふ」

提督「いえいえ、お客様には美味しいイタリア料理とワイン、コーヒー……それと、これもその一つですから…お気に召しましたか?」

グレイ提督「ええ、とても…♪」

提督「それじゃあそろそろ戻りましょうか。さっきからふとももが冷たくて…///」

グレイ提督「ふふ、あれだけ蜜を垂らしていればそうでしょうね……後でシャワーを浴びることですわ」

提督「ええ、そうします。うっ、背中も冷たい…っ」

グレイ提督「夜露が降りてましたものね……よかったらわたくしのガウンをお貸ししましょうか?」

提督「あー…もう戻るだけですし、綺麗なガウンに土や草の葉っぱが付いてしまいますから…それより///」

グレイ提督「何でしょう?」

提督「ごめんなさい…少しリードを放してもらえませんか///」

グレイ提督「別に構いませんが……どうかなさいましたの?」

提督「いえ…それが、その……冷たい地面に寝転がっていたので…///」

グレイ提督「あぁ…「お花を摘みに」行きたいのですか?」

提督「え、ええ…ですから……///」

グレイ提督「ならわたくしが見ていて差し上げますわ…さ、どうぞそちらのバラの木陰で……♪」

提督「い、いえ…あの……っ///」

グレイ提督「どうか遠慮なさらず…かつてウィンストン・チャーチルも言ったように「私は友人に対して隠しごとなど一切ない」……でしょう?」

提督「いえ、その気持ちは嬉しいですが…っ///」

グレイ提督「さぁさぁ、早くしないともっと恥ずかしいことになってしまいますわ……どうぞお構いなく」

提督「うぅぅ…それでは……///」

グレイ提督「ええ……ふふふ♪」

提督「もう、メアリったらやっぱり意地悪ですね…///」

グレイ提督「はて、何の事でしょう…♪」

………

…という訳で、グレイ提督×提督を頑張ってみました……書いているうちにグレイ提督のSっ気がどんどん加速していたような…


…この後は重巡のエピソードや艦娘のお誕生日ネタなど、ちょっとしたものを交えながらのんきに過ごしつつ基地祭を迎え、同時に士官学校時代の提督を書こうかと……ちなみに提督の両親「婦妻」、クラウディアとシルヴィアも来てくれる予定です


後は「600」(セイチェント)型と言われた名作中型潜シリーズがまだまだいるので、彼女たちを建造することになります…勇敢なエピソードも多いので、キャラクターとしても動かしやすいはずです。ちなみに中の一隻は戦艦「クィーン・エリザベス」とも浅からぬ因縁があったりするので、その辺で「ロリおね」のカップリングも書く予定ではあります……

…ある朝・食堂…

リットリオ「ふーん、ふふーん♪」食パンにイタリア生まれで圧倒的人気のヘーゼルナッツ入りチョコレートスプレッド「ヌテラ」を塗りつつ、ひどくご機嫌なリットリオ…

提督「あら。ずいぶんご機嫌ね、リットリオ?」

リットリオ「ふふふっ、分かっちゃいますかぁ?」

提督「それはそうよ…私にも頂戴?」

リットリオ「はいはーい♪」ヌテラをスプーンでしゃくってパンに塗ってくれるリットリオ…

ライモン「あ、わたしにも一口……そう言えば」

提督「んー?」

ライモン「みなさんはこれの名前…なんて呼んでます?」(1964年解役)

提督「え?…「ヌテラ」だけど?」

ライモン「カヴールさんは?」

カヴール「そうねぇ…「スーペルクレマ・ジャンドゥーヤ」かしら……美味しいわよね?」(1945年トリエステ港で戦没)

ライモン「やっぱり…ガリバルディはどうですか?」

ガリバルディ「え、私は「ヌテラ」だけど?」(1972年解役)

ライモン「そうですよね…あ、グレカーレはどっちですか?」

グレカーレ(マエストラーレ級駆逐艦)「あー、ライモンドの言いたいことが分かったかも…ちょうど私がお役御免になった年に名前が変わったんだよね♪」(※グレカーレ…1964年解役。この年「スーペルクレマ・ジャンドゥーヤ」が「ヌテラ」へ品名変更)

提督「もしかして、微妙な世代ごとのギャップ…ってこと?」

ライモン「ええ、そうなんですよ…いつもはなんて言うこともないんですが、時々話が合わなくて……ですよね、グレカーレ?」

グレカーレ「うんうん、それは分かるかも…私だって、お姉ちゃんたちがお菓子のプラスチック容器とかを取っておくの理解できないもん」

ガリバルディ「あー…それ、アブルッツィもやってたわ……「プラスチックって軽くて透明ですごいわよね!」とか言って」

ライモン「失礼ながら…カヴールさんはプラスチックではなくて「ベークライト」ってよく言いますよね」

カヴール「むぅ…おばあちゃんで悪かったですね」

提督「なるほどね……で、結局リットリオはどうしてそんなに嬉しそうなの?」

リットリオ「それはですねっ、夏季休暇で買ったものが今日届くからなんです♪」

提督「へぇぇ…それにしてもずいぶん時間がかかったわね?……夏休みが明けて、もうかれこれ二週間は過ぎているのに」

リットリオ「いえいえ、ちょっと大きめの買い物でしたから♪」

提督「そう、もしよかったら見せてね♪」

リットリオ「もちろんですっ…ね、ローマ♪」

ローマ「ええ…それにしても、姉さんったらお店から連絡が入って以来ずっとこの調子で……可愛いけどいい加減飽きてきたわ…」

提督「まぁまぁ…楽しみなことが待っているなんて良いことじゃない♪」

ヴェネト「ですね…それに私もその恩恵にあずかる予定なので、なおの事楽しみです♪」

提督「姉妹仲良しで何よりだわ…ディアナも一緒にコーヒーをどう?」

ディアナ「せっかくですし頂きます…よしなに♪」

提督「ディアナも相変わらず弓は冴えているみたいね?」(※ディアナ…ギリシャ神話ではアルテミス。狩りと月の女神で処女とされ、裸を見たりすると無慈悲な報復に遭う)

ディアナ「ええ、とてもよろしい具合です」

提督「結構…ところで哨戒組は?」

カヴール「まだお風呂ですよ…汗をかいた後のお風呂は気持ちいいですから♪」

提督「まだまだ暑いものねぇ……それなのに…」ちらりと食堂の一角に視線を向ける…

ヴァイス提督「本日は私が0930時より図上演習。その間に二人は1030までギムナジウム(運動場)で体力トレーニングに励め。メニューは私が作成してある…30分経過した所で五分休憩を挟み、水分200ミリリットルを摂取すること……昼食後は各自の判断で過ごしてよろしい、以上だ」

ビスマルク「ヤヴォール!」

ティルピッツ「ヤヴォール!」ピシッとプレスのきいた濃い灰色のスラックスにネクタイを締め、かちりとかかとを合わせる艦娘二人…

提督「…暑苦しいことこの上ないわね……」

…午前・執務室…

提督「ふぅぅ…図上演習も終わったし、あとは突き返されてきた書類の訂正だけね」

カヴール「あら、また主計部から差し戻しですか?」

提督「ええ……それでもあなたとライモンが手伝ってくれるから、ずいぶん少なくなったけれど」

ライモン「ふふ、そう言ってもらえるとやる気が出ます♪」

提督「そう?…それにしても主計部ときたら……ちょっと間違えただけなのに差し戻しなんて意地が悪いわ」

カヴール「ふむ…今回は何が悪かったのでしょう?」

提督「えーと…「鎮守府の需品向け予算で艦娘用の家具を購入した場合には、家具の用途、材質、縦・横・高さ、値段とその特徴を別紙に入力し、場合によっては家具の写真データと領収書を添付すること」だそうよ……あきれたわね」

カヴール「なるほど…で、何が足りなかったのでしょう?」

提督「それが「家具の用途が書かれていません」…だそうよ」

ライモン「それって、何を買った時のでしたっけ?」

提督「前にヴェネトとローマのために買ったクローゼットよ……全く、クローゼットに「服をしまう」以外の用途があるならうかがいたいものよね?」

ライモン「……身を隠す、とか?」

カヴール「中でえっちしてもいいかもしれませんよ…♪」

提督「はぁ…まったくもう、カヴールも最近デュイリオやリットリオに似てきたわね……」

カヴール「あら、そうですか?」

提督「まぁいいわ…そう言えばリットリオの言っていた「お届け物」がそろそろ来たころね、見に行きましょうか♪」

ライモン「はいっ♪」

…鎮守府・庭…

提督「それで、買ったものはどこにあるの?」

リットリオ「ふふふっ、こっちですよ…っ♪」あたりには暇な艦娘たちが集まってわいわい騒いでいて、リットリオはその中をかき分けつつ提督を引っ張り、車庫の方に連れて行く…

提督「……車庫に置いてもらったの?」

リットリオ「はいっ、何しろ…じゃーん♪」数台分のスペースがある車庫の手前に、綺麗な「フィアット・NUOVA500」(二代目チンクエチェント)が停めてある…

提督「え…リットリオのお買い物って、「フィアット500」だったの?」

リットリオ「ええ、そうなんですっ…これで近くの町まで行くのに、提督をわずらわせずに済みますよ♪」

提督「いや…綺麗なフィアット500だけど……」陽光に照らされた紅い車体のボンネットの隅には、右斜め上に向けて銀色の流麗なイタリックで「Littorio」という文字が塗装されている…

リットリオ「ふふっ、ヴァカンス中に車の免許を取って…ついでに買っちゃいました♪」

提督「それにしたって高かったでしょうに…」

リットリオ「そうですねぇ、色の塗り直しは別として五十万リラくらいでしたけど……すぐ買えちゃう値段だったので、現金で払っちゃいました♪」

提督「あー…まぁ艦娘の手当ならそうかもしれないわね」

ローマ「全く、姉さんったら前後の見境もなく車なんて……まぁ、一緒にお出かけできるのは嬉しいことだけど///」

ヴェネト「そうね♪…そう言えば姉さん、まだエンジンを試してないじゃない。せっかくだから鎮守府だけでも一周してみたら?」

リットリオ「ふふ、そこを提督に見せようと思って…それじゃあ提督、見ていて下さいね♪」

提督「はいはい…♪」

リットリオ「ふふっ♪」乗り込むとクラクションを鳴らし、窓を開けて手を振るリットリオ…

ムレーナ(フルット級中型潜)「あっ……止めろ、リットリオ!」相変わらず「ウツボ」だけに美しいがすご味のある顔立ちと、パリッとした背広姿がギャングのボスのようなムレーナ……と、急にリットリオに向けて叫んだ

リットリオ「えっ…?」エンジンのキーを回すと、何事もなくエンジンがかかる…

提督「…どうしたの、ムレーナ?」

ムレーナ「いや、爆弾でも仕掛けてあるんじゃないかと…ね」

提督「あー……映画でそんなシーンがあったわね」(※「ゴッドファーザー」パート2)

リットリオ「もう、おどかさないで下さいっ♪」

ムレーナ「…すまなかった」

リットリオ「それじゃあ改めて♪」ヴォロロロ…ッ

提督「うーん、この独特のエンジン音に丸っこいデザインはいいものね……ドリア、どうしてそんなに怪訝な顔をしてるの?」

ドリア「いえ、提督が先ほどからあの車を「フィアット500」と…新型モデルなんですか?」

提督「いいえ。それどころかかなりの旧式よ……どうして?」

ドリア「いえ…私の知っているフィアット500「トポリーノ」(ハツカネズミ)とは違いますので……」

(※トポリーノ…戦前生まれの初代「フィアット500」についた愛称。両目に見える位置の高いヘッドライトと、小回りが効きハツカネズミのようにちょこまか動き回る様子から名づけられ、フランスでも「シムカ・5」(シムカ・サンク)としてライセンス生産された。映画「ローマの休日」でグレゴリー・ペックとオードリー・ヘップバーンがドライブしたときにも使っていた、イタリア大衆車の元祖)

ライモン「…やっぱり時代の差が……」

提督「あー…ドリアの世代だとそうなるのも無理ないわ。リットリオの500は戦後生まれの二代目「NUOVA」で、今では三代目が主流なの…トポリーノは初代よ」

ドリア「なるほど、そうでしたか…」むっちりした張りのある身体をしていながら「やれやれ」と、おばあちゃんのように首を振るドリア……

提督「ええ…あ、戻ってきたわ」

リットリオ「ただいま戻りました、提督」

提督「お帰りなさい、調子はどう?」

リットリオ「おかげ様でいい調子ですっ♪」

提督「そう、それなら車庫はまだ空いてるから……駐車は大丈夫?」

リットリオ「はいっ、それはもう…よいしょ♪」かなりぎくしゃくしながらも車庫の空きスペースにフィアットを入れる…

提督「はい、お上手…それじゃあそろそろお昼にしましょうね♪」

リットリオ「はいっ♪」

ローマ「お昼は何かしら…たまには北部風の料理が欲しい所ね」

提督「んー、それは料理担当のディアナかエリトレアに言うしかないわ……今度でよければ私が作ってあげるけれどね♪」

ヴェネト「じゃあ今度お願いします…ね、ローマ?」

ローマ「そうね…たまにはフェットチーネに絡まる濃厚なカルボナーラが食べたいのよね」

提督「ふふ、北イタリアの料理はカロリーが怖いわよ?」

ローマ「赤ワインを飲んでいれば大丈夫よ…それより提督こそ、ふとももとお尻に気を配った方がいいんじゃない?」

ライモン「…全くですよ。提督ったら気が向いた時に海で泳ぐか、私やカヴールさんがやいのやいの言ってようやく運動するだけなんですから」

提督「それは、だって…ほら、執務もあるし……」

ライモン「…そんなに忙しいですか?」

提督「いえ…まぁ、それだけじゃなくてみんなとの交流も必要でしょうし…グレイ提督とヴァイス提督をもてなさないといけないし……」

カヴール「それにしても提督はのんびりなさっておられます……朝食を済ませたらお茶とお菓子…執務を少々こなして、昼食の後はお昼寝…午後はちょっとした執務の後にコーヒーや紅茶を味わい…その後は会議室で流す午後の映画を見るか、料理を手伝いつつ「味見」をなさって…さもなければ艦娘のみんなとおしゃべりに興じる……なかなか素敵な一日の過ごし方ですね♪」

提督「…なかなか手厳しいわね」

カヴール「うふふっ、私はただ「たまには運動の一つくらいなさった方がよろしいですよ」…と、申したかっただけです♪」

提督「了解…それじゃあ今日の午後はトレーニング室へ行くことにしましょう……はぁ、士官学校を卒業してようやく「腹筋」だの「腕立て伏せ」だのっていう運動からおさらばできたと思ったのに、まさかカヴールから「お小言」をいただくとは思わなかったわ…」

チェザーレ「そう言う時こそ「カヴールよ、お前もか!」と言うべきであるな♪」

提督「ふぅ…全くね」

カヴール「まぁまぁ……ちゃんと運動したら私からごほうびをあげますから…♪」にっこりと笑みを浮かべるカヴール

提督「…それじゃあうんと期待させてもらうわよ?」

カヴール「ええ、カヴールにお任せあれ…です♪」

ライモン「わたしも…頑張っている提督の事が好きですよ///」

提督「そう……なら腹筋の三十回くらいこなしてみせないといけないわね♪」

リットリオ「ふふっ…その意気ですよ、提督っ♪」

ローマ「ま、応援してるわ…♪」

…しばらくして・トレーニング室…

提督「はぁ…はぁ……はぁ…」薄いTシャツとジャージのトレーニングパンツ姿で腹筋に励む提督……まだまだ暑い盛りの南イタリアだけに、汗がぽたりぽたりと滴り落ちる…

リットリオ「さぁ、あと数回ですよっ♪」

アルマンド・ディアス(カドルナ級軽巡)「なかなかいい調子に見えますよ…提督、フォルツァ(頑張れ)♪」

提督「ひぃ…ふぅ……何で…こんな……串焼きの鶏みたいに……たらたら…汗を流さなきゃ……いけないのよ…!」

ライモン「運動は身体にいいですよ?」

チェザーレ「それに、たくさん汗を流すと一緒に老廃物が出るからな…頭皮にもいいと聞くぞ♪」数列あるフェンシングの試合レーンから出て防具を外した

提督「…んひぃ…ふぅ……」

コルサーロ(ソルダティ級駆逐艦)「へぇ、なかなか踏ん張ってるじゃねえか…あたしはてっきりすぐ音を上げるかと思ってたぜ♪」腕の立つチェザーレを相手に脚払いをかけたり締め上げたりと、「コルサーロ」(アラビア海賊)だけにルール抜きの猛烈な「海賊流フェンシング」を終え、感心したように声を上げる……

ボレア(トゥルビーネ級駆逐艦「北風」)「そうね、なかなか感心するわ」

シロッコ(マエストラーレ級駆逐艦)「…いいから。私と一戦交えるんでしょ?」どういう訳か妙に勘がいい褐色の駆逐艦「シロッコ」(砂漠から吹く強い南の季節風)が、練習用サーベルを取りあげる…

ボレア「はいはい…私の「北風」が乗った剣先をかわせるかしら?」

シロッコ「ふぅーん……ボレアこそ、この「歴史の立会人」に勝てると思ってるの?」防具をつけ、さっそく剣先を交える…

アントニオ・ピガフェッタ(ナヴィガトリ級)「…じゃあ、いいかな?」

アルピーノ・バニョリーニ(リウッツィ級大型潜)「もちろん…私は手の速さにかけては一流さ♪」大戦中のイタリア潜初の戦果として英軽巡「カリプソ」を沈めたバニョリーニ……そのせいもあってやたら手が早く、すぐに女の子を口説く癖がある…ピガフェッタに向けて白い歯を見せて笑いかけると、ぱちんとウィンクをした…

(※「カリプソ」…ギリシャ神話。漂着したオデュッセウスに恋をし「一緒にいる限り永遠の命と若さを与える」と言い、七年を一緒に過ごした巨人アトラスの娘。最後はオデュッセウスが故郷へ帰れるよう彼を手放せとヘルメス神に命じられた)


提督「ふぃー…ひぃ…はぁ…もうだめ…」マットの上にひっくり返る提督…白地に「R・モンテクッコリ」級軽巡のシルエットと、斜めに「Raccolta flotta d'italia」(イタリア艦隊これくしょん)と描かれたプリントTシャツが汗でびっしょりと濡れ、乳房に張りついている…

リットリオ「お疲れさまでしたっ…さ、どうぞ♪」

提督「ありがと…はぁぁ……」

ライモン「それはそうと…あの、提督…?」

提督「なぁに?…はぁ……ふぅ……」

ライモン「その…ブラは……お付けになってないのですか……///」張りついたTシャツから、ピンと乳房の先端が突き出している…

提督「ええ…腹筋する時にブラジャーなんて付けていたら蒸れて仕方ないもの」

ライモン「ま、まぁそれもそうですね…では、シャワーを浴びて着替えを……///」

提督「ええ、そうするわ……あー、こういう時は長髪を止めようかと思うわね。熱気がこもって暑いし…」

レオーネ(レオーネ級駆逐艦)「ふむ、それも悪くないかもな」なりは駆逐艦の中でもかなり小さいが、艦名が「ライオン」だけに迫力があり、いつも金茶色の髪がたてがみのようになっているレオーネ…

提督「んー……でもやっぱり切らないでおくわ。せっかく士官学校の卒業からずっと伸ばしてきたんだもの♪」

レオーネ「好きにするといい……それに提督の髪はいい匂いだ///」

提督「ふふ、ありがと…♪」ライモンに手を貸してもらい、トレーニング室から本棟に戻る小道へ出た…

………

…屋外射撃場…

提督「それにしてもまだまだ暑いこと…シャワーを浴びたら冷たいレモン水で決まりね」黄色いレンガで舗装された小道は途中で耐爆仕様の半地下式弾薬庫と、屋外射撃場の脇を通っている……と、誰かが射撃にいそしんでいるのか、からりとした夏の空気に余韻を残しながら銃声が響いている…

ライモン「そうですね、食堂でいただきましょう……射撃場にいるのは誰でしょうね?」

提督「そうね、誰かしら…って、メアリ?」…射撃場には防音の耳当てをつけ、白いシャツに袖なしの茶革のベストと栗色のスラックス、チェックのハンチング帽と「典型的イギリス人」スタイルで身を固め、綺麗な姿勢で散弾銃を構えているグレイ提督がいる…

グレイ提督「…」ダァァ…ン

エリザベス「相変わらずお上手でございますね…♪」

グレイ提督「…ふふ」バァ…ン

提督「…」射撃の邪魔にならないよう後ろから見学する提督……と、グレイ提督が数発撃ち終わって銃を置き、微笑みを浮かべて振り返った

グレイ提督「ごきげんよう……その様子ですと、体力トレーニングにいそしんでいらっしゃったのかしら?」

提督「ええ、何しろうちの艦娘たちが「運動しろ」とせっつくものですから…ちょっとのぞかせてもらいましたが、邪魔ではありませんか?」

グレイ提督「ええ、構いませんわ。ですが見学なさっても、わたくしの射撃ではあまり参考にならないでしょう」

提督「いいえ、絵に描いたように綺麗でした…♪」

グレイ提督「まぁ、嬉しいお言葉ですわ……せっかくですからカンピオーニ提督も数発試してみてはいかが?」…にこやかに垂直二連式ショットガンの薬室を開き、提督へ差しだすグレイ提督……美術品のような美しい木製ストックに、機関部のサイドに彫られた見事な彫刻…射撃台の上には渋いデザインの立派なガンケースが置いてある…

提督「これは見事な散弾銃ですね……って、「パーディ」ですか…!」触らせてもらおうとしてひと目見た瞬間、慌てて手を引っ込める提督…

(※パーディ…ロンドンで「ホランド&ホランド」と並ぶ最高のショットガンメーカー。仕上げの良さと性能は王室御用達クラスで、値段も王室御用達レベル)

グレイ提督「ええ…カンピオーニ提督は射撃がお上手ですし、どうぞお試しになって?」

提督「いえ、さっき運動してきて汗だくなので……銃を汚してしまいます」

グレイ提督「そう遠慮なさらずに…さ、どうぞ♪」

提督「……本当にいいんですか?」耳当てをしながら念を押す…

グレイ提督「ええ、どのみち後でクリーニングしますから♪」

提督「では失礼して……わ、わぁぁ……///」ほっそりと女性的で滑らかなストックに、しっかりと腕の中に納まるような素晴らしいバランス…感嘆のため息をつきながら眺め、肩づけして構えてみる…

グレイ提督「どうぞ?」…すっと数発の散弾を差し出すグレイ提督

提督「…ええ、ありがとうございます」銃身に二発を込め、的を狙って引き金を引く…

グレイ提督「まぁ、お見事ですわ」

提督「ふふ、銃がいいからですよ……ありがとうございます…」マナー通りに薬室を開いて返す提督…と、射撃台の上に骨董じみたリボルバーも置かれている…

グレイ提督「ふふ…お気づきになられました?」

提督「……ウェブリー・スコット、ですか」シャーロック・ホームズが持っているようなデザインの、かっちりしたリボルバーをしげしげと眺めた…

(※ウェブリー・スコット・リボルバー…第二次大戦頃まで軍用として長らく使われていた中折れ式リボルバー。口径はイギリス独特の「.38ブリティッシュ」で、中折れ銃身にする都合から威力は低めに抑えられている。後にエンフィールド造兵廠がコピーし訴訟騒ぎになっただけあり、刻印をのぞいて瓜二つ)

グレイ提督「ええ、ウェブリーの4インチですわ。最近のオートマティックはあまり……何といいましょうか、好みに合わないものですから」的に対して真横を向くように立ち、片腕を目一杯伸ばして構える……

提督「えーと、それは何とも…」

グレイ提督「ふふ、それでは参りますわ……」パンッ!…と軽い銃声がすると同時に、的の真ん中に穴が開く…

提督「お見事です」

グレイ提督「ふふ…ありがとう♪」

提督「……よかったら後でヴァイス提督も誘って、鎮守府にある銃の撃ち試しでもしませんか?」

グレイ提督「まぁ、それは面白そうですわね……ここの屋内射撃場にあるベレッタも、せっかくですから試してみたいと思っておりましたの」

提督「分かりました…それじゃあシャワーを浴びてきます♪」

グレイ提督「ええ、それではまた後で…」そっと提督の手を包むと、微笑を浮かべてから手を放した…

提督「///」


………

…提督たちの射撃トークばかりであんまり進んでいませんが、グレイ提督の貴族ならではのガジェット「パーディのショットガン」を登場させるためなのでご容赦ください…本当は「ウェブリー・フォスベリー・オートマティック・リボルバー」などと言う(…某スチームパンク・アニメで「黒蜥蜴星」出身の少女スパイが使っていた)珍品を出してもよかったのですが、さすがにグレイ提督は使わないだろうと……


…あと、書いている当人は海軍用語とパスタの名前、それにカンツォーネの歌詞で覚えた単語以外はイタリア語が出来ないので、提督の「イタリア艦隊これくしょん」Tシャツ「Raccolta flotta D’Italia」は合ってるかどうか……まずそもそも「D’Italia」の「I」は大文字でした、ごめんなさい……


………

乙。むこうでもSっ気がまじってて歓喜

>>181 どちらも読んで下さってありがとうございます……想像力が足りないためか似通った場面や表現が多いですし、まったく遅いですがが楽しんでもらえれば幸いです


……感想を見るとSっ気のある百合とおねロリが好きな方が多いようですから、頑張ってそう言った要素を入れていきたいと思います

…昼頃・食堂…

提督「…という訳でヴァイス提督、午後になったら一緒に射撃でもしませんか?」運動の分を帳消しにする勢いで美味しい海鮮のパスタ「ボンゴレ・ビアンコ」を口に運んでいる……

ヴァイス提督「なるほど…しかし私は軍の訓練以外で射撃をすることなどほとんどありませんし、気の利いた話も出来るような性格ではありません……お二人の邪魔になってしまうのではありませんか」

提督「ふふ、そんなことありませんよ。どのみち射撃の時は集中していますからおしゃべりは必要ありませんし、射撃をしていないときは当たったか外れたかで相手をほめるか「惜しかったですね」とでもいえばいいのですから…ね♪」

ヴァイス提督「そうですか…では参加させていただきます……」急に苦りきった表情でビスマルクたちの方を眺めた

提督「…どうしました?」

ヴァイス提督「いえ……あの馬鹿め……」


…ビスマルクたちの席「軍人たちのテーブル」…

…いつもめいめいの好きなように座っている昼食の席ではあったが、時々は違う相手ともおしゃべりできるようにと席次が決まっていることもある…今回は艦名の由来ごとに「生き物」や「天気」「神話」「学者」「作家・記者」などにカテゴリー分けされ、ビスマルクたちは「軍人・政治家」の席に座っていた…

ビスマルク「うむ、これは美味いステーキだ……んぐっ、はぐっ、むしゃむしゃ……んぐっ、ごくっ、ごくっ…♪」…ディアナがビスマルクのためにと、ほど良く焼いたミディアム・レアのステーキに半熟の目玉焼きを乗せた「ビステッカ・アッラ・ビスマルク」(ステーキのビスマルク風)を出すと、勢いよくがっつきながらビールで流し込む……

チェザーレ「……やはりゲルマニアの蛮族だ。うむ、間違いない」

ドリア「…美食とは食べ方も含めて美食なのですが……あれでは味も分かりはしないでしょうね」艦名が美食家の「ドリア候」だけに困惑しているようなドリア…

ガリバルディ「あきれてものも言えないわ…食べっぷりだけは大したものだけどね♪」

ビスマルク「ん…諸君、私がどうかしたのか?」

ドリア「いいえ…♪」

チェザーレ「うむ、チェザーレは何も言っておらぬぞ」

ガリバルディ「さすが鉄血宰相…胃袋も鉄でできているみたいね」

ビスマルク「ふむ。美味い物は好きだ……いくらでも食える!」


(※肉や卵、牡蠣やキャビアや鮭・鱒類が大好きだったというビスマルクの暴飲暴食は有名だったらしく、「牡蠣を150個以上食べた」とか、「一回の食事に卵15個を食べていた」、「食事をワインで流し込む食べ方を呆れられたことがある」などと言われる……イタリアではビスマルクの卵好きな所から半熟卵を乗せたピッツァやステーキを「ビスマルク風」という)


ディアナ「ふふ、そうやって「おいしい」と言って綺麗に食べて頂けるのは嬉しいことです…もう一枚焼きましょうか?」隣のテーブルから声をかけるディアナ…

ビスマルク「すまんな、ぜひ頼む!」

ドリア「…一枚200グラムはありましたが……これで四枚目ですか」

ティルピッツ「…姉上の食事量は私でもあきれます……ヴァレンタイン・デーもそうでした」

アミラーリオ・カーニ(カーニ級大型潜)「あら、そうなんですか?」

ティルピッツ「ええ。何しろ姉上の進水したのが39年のヴァレンタイン・デーなので……ヴィルヘルムスハーフェンでは姉上の「誕生日」と言うこともあって、数十人から贈り物を受け取っていたのですが……」

カーニ「ですが…?」

ティルピッツ「…姉上は事前に「花なんかいらん。すぐにしおれるし予算の無駄だ…宝石や飾り物もいらん。金や銀より鉄の方が戦の役に立つし、そんなにネックレスだの何だのを付けたら首が折れる…くれるなら何か飲み食いできるものにしてくれ」と…」

ゴフレド・マメリ(マメリ級中型潜)「ふふっ、なかなか面白い意見だ…そう思いませんか、ガリバルディ?」イタリア統一運動でガリバルディと共闘しただけあって、常にガリバルディを尊敬しているマメリ…

ガリバルディ「ええ、それでよく女心を射止められるものね……大したものだわ」両手を上げて肩をすくめた…

バニョリーニ(リウッツィ級大型潜)「ふふ、「いい女」って言うのはそういう物なのさ…ぜひとも見習いたいね♪」大型潜「バニョリーニ」(アッティリオ・バニョリーニ)はさわやかな笑みを浮かべて見せた……当然のように片手は隣のカッペリーニ級大型潜「コマンダンテ・カッペリーニ」のふとももに置かれている…

コマンダンテ・カッペリーニ「…バニョリーニはもう教わらなくても大丈夫でしょうに///」…後に「ルイージ・トレーリ」などと同じように物資を搭載して東南アジア方面まで長躯、ドイツ潜「UIT.24」から日本潜「伊五〇三」と所属を変えたカッペリーニだけあり、伊・独・日のいい所をあわせ持っている……バニョリーニにふとももを触られると、頬を桜色にして日本風の恥じらいの表情を浮かべた……


アレッサンドロ(マルコーニ級大型潜)「…私も。ぜひともそのやり方を知りたいものだね♪」大西洋進出後に初の戦果を挙げたアレッサンドロ(アレッサンドロ・マラスピーナ)だけに「全イタリア潜初戦果」のバニョリーニと張り合うように女の子を口説くのが上手で手が早い……こちらもさりげなくブラガディン級中型潜「マルカントニオ・ブラガディン」と椅子を近づけ、そっとふとももをくっつけている

ブラガディン「…私なんかにこんないい目があるとは///」…援軍もなしにオスマン・トルコから一年以上もキプロスの要塞を守り、最後は命の保証と引き換えに降伏したものの裏切られ吊るし切りの惨殺…とひどく悲運な中世の提督を名前に持つ「ブラガディン」だけに、アレッサンドロの優しい触れかたにとろけきっている…

ティルピッツ「…それでですね、当日になったらワインやシャンパン、チョコレートを山のように受け取って……しかも姉上は「感想だの礼だのを言わんといかんから、全部翌日までに食べきる」と言って……」

ルイージ・トレーリ(マルコーニ級大型潜)「はぁ…それは何と言いますか……そんなにチョコレートを食べたら鼻血が出そうですね?」

ティルピッツ「それが何ともないのですから姉上はすごいです…もっとも、最後の方は「誰もかれもチョコレートや菓子ばかりで口の中が甘くて仕方ない…たまにはガチョウとか、白ソーセージとビールを贈ってくれてもいいではないか」とぼやき通しでしたが…私もお相伴にあずかりましたが、量が多すぎてとてもとても……」

アブルッツィ「うへぇ…」

ビスマルク「うむ、美味いっ…もう一杯もらおう」バーカウンターにあるビール瓶を数本つかんで持ってくると、数本をまとめてピッチャーに空けてぐいぐいとあおる…

カヴール「…」

………

…食後・バーカウンター…

提督「…ビスマルク、食事は美味しかった?」

ビスマルク「あー、それはその……実に美味かったな!」

提督「そう、それはよかったわ♪」(…ディアナの手料理を味わわないで胃に放り込んでいたのね……)

ビスマルク「うむ、実に結構だった」

ヴァイス提督「…お話中に失礼、カンピオーニ提督。…少しビスマルクに用が……こっちに来いっ…!」耳をつかんで引っ張っていきそうな勢いでビスマルクを食堂の入り口まで連れて行く…

ビスマルク「…何だ?」

ヴァイス提督「全く…「何だ」も何もあるか!飢え死にしかかった狼みたいにがっついて……イタリア艦の食べ方と比べてまるで原始人ではないか…ドイツ連邦海軍の代表としてここにいることを忘れるなと、あれほど訓示したろうが…!」…どうやら小声で叱り飛ばしているヴァイス提督

ビスマルク「仕方あるまい……艦を操り、考えを巡らせるには栄養がいるのだ」

ヴァイス提督「別に私も「食うな」とは言っていない…が、食べ方をわきまえろと言っているのだ。あれほどテーブルマナーを教えただろう…!」

ビスマルク「それは私も分かっている……が、空腹の時はそこまで頭が回らんし…そこまで考えが回る時にはもう食べ終わっているのだ」

ヴァイス提督「……では今度からより一層注意するようにせよ。以上…!」

ビスマルク「ヤヴォール!」

グレイ提督「……ヴァイス中佐はいったいどうなさったのかしら」隣のストゥールにそっと腰かけるグレイ提督

提督「あら、メアリ…いえ、きっと何か気になることがあったのでしょうね」

グレイ提督「かもしれませんわね……どうでした、エメラルド?」

エメラルド「はい、やはりヴァイス中佐は食事時におけるビスマルクの振る舞いを叱責されているようでした」

グレイ提督「ふふ、やはりそうでしたか…ご苦労さま」

エメラルド「はい、それでは失礼いたします…」

提督「…あの」

グレイ提督「ふふ、他国の様子には常に関心を持っておりませんと…ね♪」

提督「…」

グレイ提督「さてと…せっかくですもの、ビールでもいただきますわ」

エリトレア「はぁい、何にしますかっ?」

グレイ提督「そうですわね…ではそのエールを一パイント」(※英パイント…570ミリリットル)

エリトレア「…えぇ…と?」

提督「570ミリリットルよ、エリトレア……面倒な言い方をするわよね?」

グレイ提督「…ふふ、何かおっしゃいまして?」

提督「いいえ、何でもありませんよ」

グレイ提督「そうですか?」長いビールグラスになみなみと注がれたエールをゆっくりと傾けるグレイ提督…と、そこにポーラたちザラ級が揃ってやってきた……

ザラ「私に赤を一杯ちょうだい……それにしてもいい天気ね。暖かい日差しの下でワインが心地よくお腹に収まってるわ♪」

フィウメ「こんな日はほろ酔い気分で昼寝としゃれこむのもいいですね…「ナポリを見て死ね」ではないですが、同じ沈むならこんな天気の日がよかったですよねぇ」

ポーラ「そうですねぇ…それにしても「我らザラ級、生まれた時は違えどもぉ…沈む時は同じぃ~」……な~んて言ってたら、まさかの本当になっちゃいましたものねぇ…しかもポーラのせいでした、ど~もすみませ~んっ♪」ぺろりと舌を出して自分の頭をコツンとやってみせるポーラ…

ゴリツィア「しかも私だけ置いてけぼりなんですからねぇ…あははっ♪」

提督「あー……ブラックユーモアにしてもなかなかきついわね。そんなに悪いワインだった?」

ザラ「ふふっ、そうじゃなくて…おかげさまでこんな可愛い姿になった妹たちと再会できたし、まるで「生まれ変わった」ようなものだからお互いに茶化してるのよ……ちなみにこの後は姉妹で昼下がりの「ベッドシーツ沖海戦」で決まりね…ボルツァーノ、あなたもよ♪」

ボルツァーノ「…えっ、私まで巻き込まなくたって///」

ポーラ「いいじゃないですかぁ~、ボルツァーノはポーラたちの妹みたいなものなんですからぁ……お姉ちゃんが優しくしてあげますねぇ~♪」

ボルツァーノ「…もぅ、そう言うポーラが一番激しいんですから……///」

提督「…うふふっ、あきれた♪」

グレイ提督「ふふふ……ではわたくしたちは射撃で汗を流しましょう。いったん失礼いたしますわ」最後の一口を飲み終えて、支度をしに部屋に戻って行った…

提督「それじゃあ私も失礼するわ…あんまり頑張り過ぎちゃだめよ?」

ポーラ「分かってまぁす…えへへぇ♪」

…夕方・屋外射撃場…

提督「…お待たせしました、グレイ提督♪」約束の時間に数分ほど遅れ、さっぱりとした開襟ワイシャツと軽いグレイのスラックス姿でやってくる提督…

グレイ提督「いえいえ、「待つ」と言うほど待ってはおりませんよ」そう言いつつ、銃置き用の台にはすでにウェブリー・スコット・リボルバーが用意されている…元はと言えば無骨な軍用ピストルではあるものの、グレイ提督のウェブリーはよく手入れされているらしく金属は深い青色で、改めて取り付けたらしい黒檀の握りは、ほんのりと艶を帯びている……

ヴァイス提督「私も大丈夫です、その間に準備をしていましたから」ヴァイス提督もさっぱりした半袖ワイシャツと制服のスラックスと言った格好で、台に官給品の銃を載せてある…

提督「ならよかったです……わぁ、「ワルサーP38」とは懐かしい銃ですね♪」

(※ワルサーP38…「ルパン三世」の愛銃としてもお馴染みのダブルアクション・軍用ピストル。第二次大戦時にはドイツ軍に採用され、戦後も「P1」と名前を変え、長く軍用として使用された。9×19ミリ口径。装弾数8+1発)

ヴァイス提督「今は「P1」と言う名称になっていますが、私はそこまで銃にこだわりはないので…軍内ではヘックラー・ウント・コッホの「P7」の方が性能がいいと聞きますし」

(※H&K「P7」…「MP5」サブ・マシンガン・シリーズなどで世界的に有名なヘックラー・ウント・コッホ(ヘッケラー&コック)の軍・警察用ピストル。「スクイーズ・コッカー」という独特な機能を持ち安全性に優れる。口径9×19ミリ。装弾数はモデルによって8+1発か、13+1発)

提督「無理を言ってはいけませんよ、名銃とはいえ戦前に生まれたモデルですし…触ってもいいですか?」

ヴァイス提督「ええ、どうぞ……ピストル一丁でそんなに喜んでもらえるとは思いませんでした」

提督「だって、なかなか実物にお目にかかる機会がなくて…わぁ、手によく馴染みます♪」弾倉を抜き、薬室にも弾が入っていないかスライドを引いて確認すると、頬ずりしそうな様子でワルサーを撫でまわす提督…

ヴァイス提督「そうですか…それはよかったです」

提督「あ、そうでした……私も「イタリア代表」のピストルを何丁か持ってきました♪」ケースを開けて数丁のピストルを取り出す提督…

グレイ提督「あら、この銃は存じ上げておりますわ…ベレッタのM1935でしょう?」

(※ベレッタM1934・M1935…世界で最も有名な小火器メーカーの一つ「ピエトロ・ベレッタ」社が戦前に警察・軍用として生産した中型オートマティック・ピストル。シンプルな構造で故障が少なく、仕上げも丁寧なことから、イタリア将校・下士官を捕虜にしたイギリス軍将兵は真っ先にこれを取り上げて「お土産」にした名銃…1943年のイタリア休戦後、北イタリアを占領したドイツ軍が生産ラインを接収・再生産したほどだが、急造しすぎてイタリア時代のものに比べ仕上げがずっと雑になったと言われる……戦後も1980年代まで生産され、100万丁とも言われる生産数を誇る大傑作ピストルに。口径9×17あるいは7.65×17ミリ。装弾数7+1発)

提督「ええ、よく御存じですね♪」

グレイ提督「いえ、わたくしの祖父が大戦中にイタリア兵の捕虜から「お土産」として手に入れたものが実家にありますので…♪」

提督「そうですか……まぁ世界に名を轟かす傑作ピストルですから「まともなオートマティック・ピストルのなかった」イギリス軍には特に好評だったようですね♪」

グレイ提督「ええ…それにイタリア将校の捕虜には事欠きませんでしたから♪」

ヴァイス提督「あの、楽しげなところ申し訳ないですが…カンピオーニ提督、その銃はそんなに有名なのですか」

提督「!?」

ヴァイス提督「いえ、私も教本や資料で名前と性能は知っていますが…私は家に銃のコレクションがあるわけでも、射撃場に通ったりと言うこともないので……」

提督「あー…そういう時は数発試してみたら分かりますよ」

グレイ提督「…それがよいですわ♪」

ヴァイス提督「それでは、えーと……」見慣れないピストルにまごつくヴァイス提督…

提督「ふふっ…弾倉はワルサーP38と同じように「爪」になっていますから、指で爪をずらしてあげて……♪」むにっ…♪

ヴァイス提督「…っ///」提督が後ろから操作を説明すると同時に、ヴァイス提督の背中にむっちりした乳房が押し付けられる……

提督「…それで、弾倉を押し込めば……はい、後はスライドを引くだけで撃てますよ」

ヴァイス提督「ダンケシェーン…それでは」耳当てをつけ、一生懸命に構える…

ヴァイス提督「…っ!」パンッ!

グレイ提督「まぁ、ずいぶんお上手ですわ」

提督「ええ…大口径のピストルではないですし、あまり力まずに構えた方が上手く撃てますよ」

ヴァイス提督「なるほど…それでは、撃ちます」パン!

提督「ふふ、さっきよりもずっと良くなりました…それとベレッタ1934は小ぶりなピストルですから、こうやって……」後ろから抱きつくようにしてあれこれと姿勢を直す提督と、薄いシャツを通して肌に伝わる柔らかな胸と乳首の固い感触、ほのかな甘い香りに真っ赤になっているヴァイス提督…

グレイ提督「まぁまぁ…ふふふ」



提督「お相手をせずに失礼しました……グレイ提督もお好きなのをどうぞ?」

グレイ提督「そうですか…でしたらわたくしもベレッタ1934にいたしましょう。一番落ち着く時代の銃ですので」

提督「イギリスの方は好みが保守的ですものね♪」

グレイ提督「保守的なのではなく、長く残っているということはそれだけの価値がある…と考えておりますわ。お二人には申し訳ありませんが、イタリアやドイツ……あるいフランスの方がお好きな「新奇のこころみ」は面白くても長続きしない物ですし…もし価値があるのなら、その時になって取り入れればよいのです」

提督「なるほど…ではぜひ「新奇のこころみ」も試してみて下さい♪」イタリア軍制式オートマティック・ピストル「ベレッタM92」を銃把を向けて差しだした

グレイ提督「ええ、そうですわね……っ!」パァン!

提督「…悪くないでしょう?」

グレイ提督「グリップが少し分厚く無骨な感じで握りにくいですし、スライド上面が切り欠いてあるので強度が心配になりますわ…まぁ悪くはないと存じます」

提督「ふふ、やっぱり褒めてはくれないのですね…?」

グレイ提督「いいえ、わたくしベレッタ・M1934はイタリアの中では「好みのピストル」と申し上げてもよろしいほどですもの」

提督「相変わらず頑固ですね♪」

グレイ提督「…安定感があるとおっしゃって欲しいですわね♪」

提督「でしたらウェブリーを貸していただけませんか…そんなに安定感があるのか試してみたくなりました」

グレイ提督「ええ、どうぞ」

提督「なるほど……グリップは小ぶりで女性の手にもちょうどいい具合ですし、銃自体のバランスも片手で持つと一直線に伸びるようで……」

グレイ提督「古い決闘用ピストルの流れから生まれたバランスの良さですわね」

提督「うーん……撃鉄も無理なく親指が届きますし…」カチリ…と撃鉄を起こして引き金を引いた

グレイ提督「…いかがですか?」

提督「なかなか見事なピストルです……確かにイギリスの将校がやっていたように片腕をいっぱいに伸ばして構えると、ちょうどいい具合になりますね…」

グレイ提督「そう言う風に出来ているものですから…せっかくですから、ワルサーもよろしいかしら?」

ヴァイス提督「はい、どうぞ」

グレイ提督「ありがとう……ふむ、なるほど…握り心地の良さはなかなかですわね。とはいえ、安全装置がスライド側面にあるのは親指を伸ばさなければならないですから不便ですし、グリップも前後の長さと厚みのバランスが少々悪いですわね?」

ヴァイス提督「そうですか…私は別に気になりませんでしたが」

提督「気にしないで大丈夫ですよ、ヴァイス提督……グレイ提督に限らず、イギリス貴族は皮肉と嫌味を言わないと生きていけない人種なんです♪」

グレイ提督「ふふ、イタリアの方ならではの面白いご冗談ですわね♪」

提督「うふふっ…射撃が済んだらもっと面白い話を聞かせてさしあげます♪」

グレイ提督「まぁ、それは楽しみですわね……♪」パンッ!

提督「んー、惜しい…ちょっと左上に跳ねましたね」

グレイ提督「ふふっ、皮肉を言っておくとこういう時に役立つのですわ…「わたくし撃つ前に申しましたが、グリップのバランスが悪くて…反動を抑えられるよう上手く握ることができませんでしたの」とね♪」

提督「ふふふふっ…なるほど♪」

ヴァイス提督「なるほど、それで何かにつけて……参考になります」

グレイ提督「ふふ、冗談ですから本気になさらないで?…それよりわたくし、カンピオーニ提督の面白いお話が聞きたいですわ♪」

提督「それじゃあ日も傾いて来ましたから、もうちょっと撃ち試しをしてから戻りましょうか?」

グレイ提督「ええ、それがよろしいですわね♪」

ヴァイス提督「分かりました」

提督「それではもう一発……」パン!

グレイ提督「まぁお上手…♪」にこやかに笑みを浮かべて小さく拍手するグレイ提督

提督「ふふ…ありがとう、メアリ♪」銃を置くと頬にくちづけをする…

グレイ提督「まぁまぁ、そのようなおいたをしてはいけませんわ…めっ♪」提督の唇に人差し指を当てて、茶目っ気のある言い方で叱る…

提督「んふふっ、ごめんなさい…っ♪」唇に当てられた人差し指に改めてキスをする提督

グレイ提督「全くもう…イタリアの女性は積極的ですわね」

ヴァイス提督「///」

提督「ふふっ…それでは戻りましょうか。美味しい夕食が待っていますよ」

…夕食時…

提督「ふぅぅ、シャワーを浴びてさっぱりしたら…急にお腹が減ってきたわ♪」

カルロ・ミラベロ(ミラベロ級駆逐艦)「ふふ、提督はいつもお腹を空かせていると思うわ……こっちの方でもね♪」ふとももを愛撫するミラベロ…

提督「ふふ…またお仕置きされたいのかしら。手はおひざの上にどうぞ?」ミラベロの小さい手をとって膝の上に戻す提督…

ミラベロ「あんっ、もう…♪」そこそこの高さがある椅子だけに、床へ届かない脚を空中でぶらぶらさせているミラベロ…


…一見すると小柄でいかにも幼いが、第一次大戦時に計画された駆逐艦が第一次大戦後の20年代になって完成したとあって駆逐艦勢のなかでは最年長……のはずが、やはり見た目のせいで耳年増でませているように見えるミラベロ級駆逐艦の「カルロ・ミラベロ」「アウグスト・リボティ」の二人……


ポーラ「…カクテルは何にしますかぁ~?」提督たちのテーブルへやって来て食前酒の注文を聞くポーラ…

グレイ提督「…それでは、ピンク・ジンをいただきますわ」

(※ピンク・ジン…カクテル。ジンに数滴の「アンゴスチュラ・ビターズ」(赤色を帯びた薬酒)をたらしステアあるいはシェークしたもの。イギリス海軍は長くジンを配給していたことから士官の食前酒として愛飲されていた)

提督「じゃあ私は……白にしておくわ」

ポーラ「えへへぇ、了解しましたぁ~。…ヴァイス提督は何になさいますかぁ~?」

ヴァイス提督「あ、あー…レーヴェンブロイをお願いする」

ポーラ「はぁ~い、お待たせしましたぁ♪」…しばらくするとグラスや瓶を盆に載せて戻ってきた

提督「……それでは」

グレイ提督「ふふ「君の瞳に乾杯」…♪」

提督「まぁ…「カサブランカ」とは素敵ですね♪」

グレイ提督「ふふ。ところがわたくしはカサブランカより先に「007/ムーンレイカー」で知ったのです……ふふっ、おかしいでしょう♪」

(※「007/ムーンレイカー」に出てくる悪役「ジョーズ」が訳ありながら結果的に007を助けることになり、007の脱出後に、ジョーズが一目ぼれしている「メガネでおさげ」の目立たない娘にシャンパンをごちそうしようと「ジョーズ独特な」やり方で栓を開けてから、カサブランカの名セリフを引用して言う…見た人はなにかと驚く場面)

提督「うっふふふ、それじゃあ私はあのメガネでおさげの娘ですか?」

グレイ提督「ジョーズよりはいいではありませんか…でしょう?」

提督「ふふふふっ、それはそうですが…♪」

ヴァイス提督「失礼……お二人とも一体何の話をなさっているのですか」

グレイ提督「え?…あの、まさかとは思いますが……ヴァイス中佐は「007」をご存じないのですか?」

ヴァイス提督「いえ、スパイアクションの映画であることは知っていますが……別段興味を引かなかったもので見ませんでした」

グレイ提督「まさか…ふふ、きっとご冗談ですわよね」

ヴァイス提督「いいえ。私は別段フィクションを見たいと思うことはありませんから……現実にある事を描いたドキュメンタリーの方が、色々と考えさせられるので好みです」

グレイ提督「…わたくしもドキュメンタリー映画は嫌いではありませんわ……ですが英国が生んだ最高のスパイ映画をご覧になったことがないなんて」イギリス貴族の女性でしかできないようなキングス・イングリッシュのアクセントに見事なほど軽蔑と皮肉を込めて「嘆かわしい」と言うように声を上げた…

提督「…」

グレイ提督「どうして見たいと思わなかったのかしら……車の趣味…いえ、それとも銃の趣味かしら……でも「PPK」はドイツのピストルですもの、と言うことは銃の趣味ではありませんわね…それでは「奇想天外な秘密兵器」のせいでしょうか?」

ヴァイス提督「…いえ、そもそもああいった「色男」が出て来る映画と言うのが……別に格好いい男性は嫌いではありませんが、やさ男と言いますか…女たらしのようなキャラクターは女性を手もなく口説くことが出来ると思い込んでいるような感じがして…ですから好みではありません」

提督「ふふ…シャルロッテとはもっと仲良くなれそうです♪」(…私も時々007が女性だったらいいのにと思っていましたから♪)

グレイ提督「…なるほど……しかしそこを差し引いても痛快な所が007の魅力ですもの。機会がありましたら…と言うより、わたくしからそちらの鎮守府にセットをお送りしておきますわ」

ヴァイス提督「だ、ダンケシェーン…」

提督「それでは話も済んだことですし……アンティパスト(前菜)はオリーブとトマトのざく切り、それにカッテージチーズを合わせた南イタリアらしいサラダ…それとムール貝のワイン蒸しですよ♪」

グレイ提督「まぁ、綺麗なものですわね…それではムール貝をいただきたいですわ♪」

提督「ええ、どうぞ…♪」

ヴァイス提督「では、私もムール貝を…」

提督「はい♪」

ミラベロ「ねぇ提督……提督は私のおへそにムール貝を載せて「ちゅるっ」ってしたいんじゃない…?」背中を伸ばして提督の耳にささやきかける…

提督「ふふ、全くもう…そういうことをする時は生牡蠣よ♪」

ミラベロ「あら、ごめんなさい…♪」

グレイ提督「ところで、カンピオーニ提督」

提督「ええ、何でしょう?」

グレイ提督「よろしければその「面白いお話」と言うものをぜひ伺いたいところですわ」…苦手なのか「タコのマリネ」には手を出さずに次の一品…ピリリと唐辛子の効いた「パスタ・アラビアータ」をよそってもらうグレイ提督

提督「そうですね、せっかくですしお話しましょうか……これは海軍航空隊の「とある友人」から聞いたのですが」

グレイ提督「ええ」

提督「…ある夏の日の事、その友人は軍の射撃場で規定された分のピストル射撃を行っていたのですが……」

グレイ提督「ふむふむ…」

提督「暑いからと軍用シャツの腕をまくり、胸元も大きく開けて的に向かっていたそうなのです」

グレイ提督「なるほど、それで…?」

提督「…ところが、私がよく知っているその友人は胸のボリュームがかなりありまして」

グレイ提督「ほう」

提督「何発か撃ったところで弾きだされた空薬莢が胸の谷間に飛び込んできた…と♪」

グレイ提督「まぁ……ふふ♪」

ヴァイス提督「…それで、火傷はしなかったのですか?」

提督「ええ、幸い火傷の痕が残るほどではありませんでしたが…しばらくは触ると痛がっていましたよ♪」

ヴァイス提督「触ったのですか……他の人の胸を?」

提督「ええ。何しろ「親しい友人」ですので、谷間以外にもいろいろな場所を……ふふっ♪」

ヴァイス提督「あっ…」

グレイ提督「ふふ…きっとずいぶん「親しい関係」でいらっしゃるのね♪」

提督「まぁそういう事になりますね……せっかくですし、グレイ提督も何かお話をしてくださいませんか♪」

グレイ提督「そうですわね、わたくしが知っている面白いお話……ちょっとした冗談でも構いませんかしら?」

提督「ええ、軽い冗談は好きですよ♪」

グレイ提督「さようですか。でしたら……スコットランドに薬屋を営む正直な男がおりました」

提督「ええ」

グレイ提督「ある時にお客が駆け込んできて、数ペンスの安い薬を買うと1ポンド札を置いて、お釣りももらわずに飛び出していきました…」

提督「それで?」

グレイ提督「薬屋の男は1ポンドは惜しかったものの正直な男でしたから、お客を呼びとめようと決意をし……カウンターをスポンジで叩いてお客を呼びとめようとしたそうです…♪」(※スコットランド人…イングランド人いわく「ケチ」だとされる)

提督「ふふっ…うふふふっ♪」

ヴァイス提督「あぁ…なるほど、スポンジで叩いても音が鳴らないからか……」

グレイ提督「ええ、その通りですわ……ところでカンピオーニ提督はまだまだ面白いお話をご存じに見えますわ、どうか聞かせて下さいな?」

提督「ええ、分かりました…実はこの間、海軍憲兵の「特別査察」を受けてしましまして」

グレイ提督「まぁ、それは災難でしたわね…それで、具体的にはどのような?」

提督「実は夏季休暇(ヴァカンス)中にうちの鎮守府の娘たち数人がちょっとした「トラブル」を……」そう言って中世ヴェネツィアの提督たちを艦名に取った潜水艦「マルチェロ」級に軽く手を振った…

マルチェロ「おや…諸君、我らが提督が私たちに向けて「見送りに来てくれたヴェネツィア美人」のように手を振ってくれているぞ?」

エモ「わぁ、嬉しいです♪」

バルバリゴ「全くだな。しかし提督はいつみても抱きたくなる…あんな美人がヴェネツィア生まれでないのが不思議なくらいだ」

リボティ(ミラベロ級)「だってさ、提督……でも確かに、提督は私たちのもとに舞い降りたアンジェリータ(小さな天使)だよ♪」

…ミラベロと同じように小さい身体で耳年増、おまけに歯の浮くような口説き文句を平気で言える妹の「アウグスト・リボティ」……裾に白いレースをあしらった黒いクラシカルなワンピーススタイルで、髪をパールグレイのリボンでツインテールに結んでいる…

提督「…ふふっ、ご丁寧にどうも♪」



…食後…

提督「ふー…とっても美味しかったわ♪」

ディアナ「ありがとうございます」

提督「いいのよ。それにしても、いつもなら駆逐艦や潜水艦の娘たちがお菓子や何かをねだりに来ているはずなのに……珍しいわね?」

ディアナ「そうですね…何でも会議室でアニメの「上映会」だそうですよ。わたくしもお呼ばれしております」

提督「あー、そう言われれば私も声をかけられていたわ……それじゃあちょっとのぞいてみようかしら」

ディアナ「それがよろしいかと…わたくしもお皿を流しに浸けたら参ります」

提督「必要なら後で私も手伝うわ。…グレイ提督もよかったらいかがですか?」

グレイ提督「嬉しいお申し出ですが…わたくし、少々用事がございまして」

提督「それでは仕方ないですね。ヴァイス提督?」

ヴァイス提督「申し訳ない、私も予定がありまして…ですが、よろしければビスマルクとティルピッツを招待してもらえますか。食後には特に予定もありませんので」

提督「ええ、喜んで…エリザベスとエメラルドはいかがでしょうか?」

グレイ提督「ふふ、あの二人はドイツ艦のお二人に近づけるときっとご迷惑をおかけしてしまいますから……お気持ちだけ受け取っておきますわ」

提督「そうですか…それではヴァイス提督、二人をエスコートさせていただきますね」

ヴァイス提督「は、よろしくお願いします」

………

…会議室…

提督「こんばんは、お邪魔するわね♪」

シロッコ(マエストラーレ級駆逐艦)「あ、いらっしゃい……ビスマルクとティルピッツもね♪」紙の入れ物に入った塩味のポップコーンや爪楊枝に刺したオリーヴ、あるいはプレッツェルと言ったおつまみが用意され、部屋は薄暗くしてある

提督「…それで、今日のアニメは何を流すの?」

フォルゴーレ(フォルゴーレ級駆逐艦)「えーと…日本の有名なシリーズものなんだけど、その何作かをこの間買ったの」

…艦名がいずれも「雷」や「稲妻」だけあって、雷のような金髪の房が頭からはねている「フォルゴーレ」(稲妻)…姉妹艦もみんな電光のような形をした特徴的な髪の房やアホ毛が、つむじやこめかみから伸びている…

提督「へぇ…それじゃあここに座らせてもらっていいかしら?」

シロッコ「ええ、どうぞ…お二人もね」

ビスマルク「うむ、済まんな!」

ティルピッツ「…ダンケシェーン」

ディアナ「ふぅ、遅ればせながらわたくしも参りましたわ…シロッコ、お招きして下さってありがとう」

シロッコ「いえいえ……それじゃあそろそろ始めるわ♪」

ストラーレ(フレッチア級駆逐艦)「待ってました!」

アルフレド・オリアーニ(オリアーニ級駆逐艦)「もう、手順が悪いんだから」

提督「まぁまぁ…わぁー♪」軽く歓声を上げて拍手する提督…

シロッコ「…まずは「機動戦姫カンムス1940・ポケットサイズの戦艦」…通称「ポケ戦」から行くわよ」

提督「ふんふん…ドイツ艦が主役なのね」

シロッコ「ええそうよ…ビスマルクたちも来てくれたことだから、とっつきやすいように……さぁ、始まるわ」

…しばらくして…

アニメ「…悲しいけど、これでもドイツ軍人なんだよなぁ……!」

ビスマルク「…」

ティルピッツ「…ううっ」

提督「…」

シロッコ「うーん……何とも悲しい話だったわね。でも戦闘シーンの派手さは大したものだったわ」

ティルピッツ「ううっ…「絶対死ぬんじゃねえぞ…お前がいなくなったら威張れる相手がいなくなっちまう」の場面は涙せずに見られませんでした」

ビスマルク「いや、「このままでは間に合わない!」のシーンも身に摘まされる思いだった…!」

フルミーネ(フォルゴーレ級「電撃」)「ねぇシロッコ、次も見よう?」

シロッコ「んー…とはいってももうだいぶ時間がたったから、次は明日ね」

提督「そうね、それがいいわ…みんなお風呂だってまだなんでしょう?」

サエッタ(フレッチア級「電光」)「大丈夫、雷みたいな速度ですぐ入ってすぐ出ちゃうもの!」

提督「もう、ちゃんと洗わないとダメよ……私もお風呂がまだだし、一緒に行きましょうか」

ダルド(フレッチア級「雷光・矢」)「ええ、行きましょ!」

提督「それじゃあ行きましょうか。…ところでビスマルクとティルピッツは、もうお風呂を済ませた?」

ビスマルク「いや、まだだが…」

ティルピッツ「え、ええ…///」

提督「お風呂…一緒に入らない?」

ビスマルク「!?」

ティルピッツ「いえ…そんな他人に裸を見せるなど……///」

フォルゴーレ「いいじゃない、一緒に入りましょうよ♪」

ランポ(フォルゴーレ級「雷」)「うん、それがいいわ。それとも…そんな大きいなりをしているのに、私たちとお風呂に入るのが怖いとかー?」

ビスマルク「な…馬鹿をいえ、この「鉄血宰相」ビスマルクに怖い物などあるわけがあるまい!」

フレッチア(フレッチア級「閃光」)「なら行こっか!」姉妹四人で取り囲み、大きなビスマルクの腕をつかんで引っ張ったり、背中を押したりするフレッチアたち……ティルピッツはフォルゴーレ級の四人に押したり引いたりされながら「連行」されている…

ゼフィーロ(トゥルビーネ級駆逐艦「春の西風」)「それなら私たちも行こう…?」

ネンボ(トゥルビーネ級「雨雲」)「そうね……ねぇ、私たちも一緒に行くわ♪」

ナザリオ・サウロ(サウロ級駆逐艦)「もう…みんなせっかちなんですから」

提督「ふふ、何しろフレッチア級とフォルゴーレ級はみんな「雷」に関係する名前だものね♪」

…大浴場…

フレッチア「…それじゃあ流してあげるわね♪」

ビスマルク「いや結構だ…そのくらいは自分で出来る!」

フレッチア「まぁまぁ、これでも私は「フレッチア」級の長女なんだから大丈夫…ねっ♪」

ビスマルク「そう言う意味ではない、裸体を見られたり触られたりするのが気恥ずかしいだけだと言っているのだ!」

サエッタ「そんなことないですよ、白くてとっても綺麗ですもん♪」

ビスマルク「えぇい……カンピオーニ提督、この小娘たちはどうにかならんのか!?」

提督「んー…どうにもならないわ♪」

ビスマルク「ちぃっ…えい、そうまとわりつくな!」

ティルピッツ「姉上、どうにかして下さい…っ///」

ランポ「まぁまぁ、そう固いことを言わずに……って、もうここは硬くなってるわね♪」

ティルピッツ「…っ///」

フォルゴーレ「うんうん、それじゃあ私たちで優しく洗ってあげますから…♪」身体用のスポンジでもこもこと泡を立て、優しく背中をこすっていくフォルゴーレ……普段はほとんど「蒼白」といっていいほど色の白いティルピッツは真っ赤になり、力なく「イヤイヤ」をするように首を振っている…

バレーノ「はいはい、動かないうごかない…それじゃあ前も洗いますね」

ティルピッツ「ナイン(だめ)、前は自分で出来るから…!」

フルミーネ「とか言って全然洗わない気でしょう……ドイツ人はお風呂もまともに入らないものね」

ティルピッツ「そんなことはないから、スポンジを貸して!」

フォルゴーレ「だーめ、綺麗に洗わないとヴァイス提督に嫌われちゃうわ…私たちで満艦飾みたいにおめかししてあげる」

バレーノ「ここがいいですか…それとも、ここ?」

ティルピッツ「ひうっ…んくっ、んんっ…///」ふとももをこすり合わせて声を抑えるティルピッツ…と、浴槽のふちに組んだ腕を置き、そこにあごを乗せてにんまりとだらしない笑みを浮かべている提督……

提督「そうそう、綺麗に洗ってあげてね…ふふっ♪」

ティルピッツ「ひぅん、あふっ……んあっ///」

フォルゴーレ「はい、おしまい…「稲妻」だけに早かったでしょ?」

ティルピッツ「んっ…もう、おしまい……?」

フォルゴーレ「なに、もっとして欲しかったの?」

ティルピッツ「いや、とんでもない……早くお湯に浸かりたかったから///」慌てて浴槽に身を沈めるティルピッツ……提督ほどでもないが、つんといい形をした乳房がお湯を弾きつつぽっかりと浮かぶ…

提督「…ふふ♪」

ビスマルク「…いい加減うっとうしいぞ、そこを退け!」

フレッチア「ふぅーん…ビスマルクはそういうことを言うの?」

ビスマルク「当たり前だ、貴様らのような小娘どもに好き放題されて黙っているこのビスマルクではないわ!」

フレッチア「…」

提督「あー……ティルピッツ、少しお湯の中に「潜航」していた方が得策かもしれないわよ?」

ティルピッツ「…と、言いますと?」

提督「まぁ、見ていたければどうぞ……ぶくぶくぶく……」鼻のあたりまで浴槽に身体を沈め、目と耳だけを出している提督…

フレッチア「……誰が小娘よ!!」腰に手を当てすっくと仁王立ちになると、雷に関係のある「フレッチア」級だけに、見事な「雷」を落とした…

ビスマルク「!?」

フレッチア「だいたいビスマルクは何年生まれ!?」

ビスマルク「…せ、1939年」

フレッチア「私は1931年生まれよ!…つまり、私の方が「お姉さま」なんだから言うことを聞きなさいよ!!」

ビスマルク「し、しかし私はドイチュラントを代表する戦艦で、貴様らはたかだか駆逐艦…」

フレッチア「私の魚雷は533ミリだけど、ビスマルクの主砲はそれより大きいわけ!?」

ビスマルク「い、いや…しかし……」

フレッチア「せっかく私たちがドイツの野暮ったい堅物をきれいに洗ってあげているのに、文句があるって言うの!?」

ビスマルク「い、いや……いくら何でもその言い方はだな!」

フレッチア「ドイツ艦ふぜいがごたごた言わないっ!!」

ビスマルク「ヤ、ヤヴォール…」

フレッチア「よろしい……それじゃあ全身をきれいに洗ってあげるわ。そうよね?」

ダルド「はい♪…それにしてもお姉ちゃんが雷を落っことす所、久しぶりに見ました……相変わらずドカンと来ましたね」

フレッチア「だってビスマルクがあんまりにもワガママなんだもの…」

ビスマルク「わ…私のせいなのか……」ピシッと背筋を伸ばし、おそるおそるフレッチア級に身体を預けている…

フレッチア「……うん、乳房も綺麗になったわね…えいっ♪」ぴんっ…とビスマルクの先端を弾く

ビスマルク「んっ///」

…風呂上がり…

ビスマルク「……失礼、カンピオーニ提督」

提督「んー?」バスローブを肩から羽織り、天井に吊るされた木の羽根の扇風機の下で涼んでいる…

ビスマルク「あの、さっきのフレッチア級だが……いつもああなのか?」

提督「いつも…ではないわね。ただし「小さい」とか、子供扱いしたりだとか……他にもうかつなことを言うと雷を落として来るわね」

ビスマルク「それにしてもあの大きさであの迫力か…」

提督「まぁ、言い合いになったらドイツ人じゃあイタリア人に勝てないから止めておきなさいね…はい、牛乳」鎮守府に来訪していた百合姫提督が教えてくれて以来、脱衣所にはガラス張りの小さな冷蔵庫が置かれて、牛乳の水差しがレモン水の水差しと共に冷やされている……グラスになみなみと注ぐとビスマルクに差しだす提督…

ビスマルク「うむ、頂こう……んぐっ、ごくん…ごくっ」

提督「美味しい?」

ビスマルク「ああ、よく冷えていて美味いな……んぐっ、ごきゅっ…」

提督「よかった…それにしてもビスマルクもティルピッツもいい形のおっぱいをしているわよね♪」

ビスマルク「ぶはぁ…げほっ、ごほっ!」

提督「ふふっ、どうしてそんなにむせているの…褒めてるのに♪」

ビスマルク「いきなりそんなことを言われてむせない女があるか……いや、ここにはたくさんいそうだが…」

提督「かもね…ところでビスマルク」

ビスマルク「今度は何だ…!?」

提督「……牛乳、こぼれてる」両手でほっぺたを包み込むようにして、噴き出した牛乳のついているあご先から口元をそっと舐めあげた…

ビスマルク「な…何をっ……///」

提督「黙って…♪」ちゅ…♪

ビスマルク「あ…あ……その、一体どういう…!」

提督「……ふふ、綺麗になったわ♪」

ビスマルク「///」

提督「もう少し肩の力を抜いて…ティルピッツも貴女の事が好きみたいだから、時には優しい言葉の一つもかけてあげるといいわ♪」

ビスマルク「しかし、それが上手く行かないから困っているのだ…私は一生懸命になって大事に思っていると伝えているつもりなのだが……」

提督「ふふ……時には思いを伝えるだけじゃなくて、姉妹だけの時にしか見られない「くだけた面」でも見せたらいいかもしれないわね」

ビスマルク「くだけた面か……なかなか難題だな」

提督「かもしれないわね…いずれにしても、私はビスマルクとティルピッツがもっと仲良しになってくれれば嬉しいわ♪」

ビスマルク「ダンケ……しかしだ」

提督「なぁに?」

ビスマルク「私の前でこうして優しい振るまいと「くだけた面」を見せると言うことは……///」

提督「うふふっ…ビスマルクも分かってきたわね♪」

ビスマルク「!?」

提督「ふふ、冗談よ…」

ビスマルク「ふぅ…それならいいが」

提督「…ティルピッツって色白で病弱な感じがそそるわよね♪」

ビスマルク「…おい」

………

…提督寝室…

提督「ふわぁ…今日も疲れた……と言うほど疲れてはいないけれど、やっぱりお客様がいると気を使うわよね…肩が凝ったわ」ひとり言を言いながらナイトガウンを脱いで椅子の背にかけ、自分の裸体を姿見で確かめる……

提督「うーん…やっぱりもうちょっと食事に制限をかけた方がいいのかしら……特にスプマンテ(イタリアン・シャンパン)やカクテルは爽やかに飲める上にカロリーが多いものね……とはいえ今日はちゃんと海で泳いだし、チョコレートケーキも一切れで我慢して……でも代わりにカスタードのタルトを食べたのよね……むぅ」渋い顔でふとももの肉をつまむと、今度は振りかえってみてヒップや腰回りを確認する…

提督「……まぁ良いわ、明日出来ることは今日やらなくてもいいものね♪」…ふわふわの布団に「ぼふっ」…とダイブする提督……

?「むぎゅっ…!?」ダイブした瞬間、布団の中に潜りこんでいた誰かに思い切りのしかかる形になり、くぐもった悲鳴が聞こえた…

提督「うわ!?」慌てて跳ね起きて布団をめくる……

セルペンテ(アルゴナウタ級中型潜「海蛇」)「ふふっ、いきなりボディーブローとは恐れ入ったわ。でも……激しいのも嫌いじゃないの…♪」黒いシースルーのベビードール一枚で、しなやかに身体をくねらせるセルペンテ……

提督「えーと…何で私のベッドにいるのかしら?」

セルペンテ「ふふ、なんでだと思う…?」水上排水量で600トン余りの中型潜だけに、一見すると中学生にも見えなくはない身体つきながら、「海蛇」らしく蠱惑的(こわくてき)でみだらな表情を浮かべてみせる……

提督「そうねぇ…姉妹の寝相が悪くて寝られないから泊まりに来た……とか?」

セルペンテ「ふふ…ざーんねん……♪」ベビードールを徐々にたくし上げ、裾を両手で持ってベッドに寝転ぶ…

提督「…あー」

セルペンテ「ほら…早く来て、蛇は寒いのが苦手なんだから……ね♪」

提督「えーと……それじゃあ失礼して」いそいそと布団にもぐりこむ提督…

セルペンテ「もぅ提督…そう言うことじゃないのよ?」布団をはねのけて提督の上にまたがると、お腹周りを愛撫するセルペンテ…

提督「分かってるけど……今日はくたびれちゃって…あ、そこ気持ちいい♪」

セルペンテ「もう、仕方ないわね……それじゃあ特別に私が「優しく」揉んであげる♪」

提督「ええ、ありがと。はぁぁ……セルペンテの指、しなやかでいいわ……」ねっとりとほぐすように身体を揉みしだかれ、全身の力が抜けていく提督…

セルペンテ「ふふ、悦んでもらえて何より……ここもかしら?」

提督「ええ…そこもいいけれど、背中もお願い……」

セルペンテ「仕方ないわねぇ……ほぉら、うつ伏せになって…?」

提督「ええ、ありがとう……はぁ、ふぅ…んぅっ♪」

セルペンテ「あらぁ、いい声を出してくれるじゃない……ふふ、そう言う甘ったるい声を出してくれるとやる気が出るの……れろっ♪」背中をじゅるりと舐めあげる……

提督「んんっ…くすぐったいわ///」

セルペンテ「ふふ、いいじゃない…それに提督の味、美味しい……♪」肩甲骨周りをゆったりとほぐし、腰は外向きの円を描くように揉みほぐしていく……

提督「あぁぁ…気持ちいぃ……ごめんなさい、他にも褒めようがあると思うのだけれど…頭が回らなくって……」

セルペンテ「いいのよ、頭を空っぽにして……それに身体の力も抜けていくでしょう…♪」提督から見えない位置で、にやりと笑みを浮かべる…

提督「ふわぁぁ…セルペンテは本当に上手ね……本当に身体がふにゃふにゃになっていくみたい…」

セルペンテ「気にしないでいいのよ…私がしてあげたいだけだから……ほーら、だんだん提督は私に逆らえなくなーる…♪」

提督「ええ…こんなに身体がとろけちゃうと……逆らえないかもしれないわ……はぁぁ…」

セルペンテ「ふふ、蛇の瞳は相手を魅了するって言うでしょう……」

提督「んっ、んぅぅ…確かにセルペンテに触られているだけで下半身がじんわりうずいて……んくぅ///」

セルペンテ「ふふ、濡れてきちゃった…?」

提督「え、ええ……今夜はそんなつもりじゃなかったの…に///」

セルペンテ「いいのよ……全部私に任せて…♪」

提督「それじゃあ…お願い……///」あお向けになって両手を投げだし、とろけたように口を半開きにしている提督…

セルペンテ「それじゃあちゃんと雰囲気も作らないと…ね♪」ナイトスタンドの黄色い灯りを絞ってろうそくのような明るさにし、提督にまたがった…

提督「んくぅ…んんぅ、あふぅ……♪」

セルペンテ「あら、もうそんなに濡らしてるの…?」きらりと光るセルペンテの瞳が提督を見おろす…

提督「だって……♪」

セルペンテ「ふふ、いいわ……それじゃあ…♪」くちゅ…っ♪

提督「ふわぁぁぁ…あぁ…♪」

セルペンテ「ふふ、提督ったらとろけた顔がとってもいやらしい…♪」

提督「だって……ふぁぁ♪」

セルペンテ「ふふっ…」ねっとりと絡みつき、首筋をチロチロと舐めあげつつ秘所に指を差しこむ…

提督「あふぅ…はひぃ、んぁぁ……はぁぁ、きもひいぃ……♪」

セルペンテ「みたいね、すっかり濡れそぼって……ほぉら、聞こえる?」にちゅっ、くちゅ…♪

提督「ええ…聞こえる……はぅ…ん♪」

セルペンテ「ねぇ提督、もっと私と……したい?」

提督「ええ…///」

セルペンテ「それじゃあ仕方な……あひぃ゛ぃっ、いぐぅっ!?」

提督「……セルペンテ?」

メドゥーサ「残念、セルペンテはそこでお休みしているみたいね……代わりに…私がイかせてあげ……る♪」じゅぶ、ぐちゅぐちゅぅ…っ!

提督「んひぃっ…ひぅっ!?」

メドゥーサ「どう、気持ちいいでしょう…セルペンテはたかだか「海蛇」……それに引き替え私は人を石にする「メドゥーサ」だものね…♪」

提督「メドゥーサ、一体いつ来たのっ…んひぃぃっ♪」

メドゥーサ「ふふ、だいたいセルペンテが貴女を押し倒した辺りに……ふふ、あそこもほど良く濡れていい具合ね…♪」

提督「気づかなかったわ……んぁぁぁっ///」

メドゥーサ「何しろメドゥーサだもの…それにしても提督のよがるさまはなかなかいいものね……ふふ」人差し指を舐めあげて濡らすと、提督の秘所に沈めて行く…

提督「はひぃ、んんぅ……いいのっ、そこきもひいぃ…っ♪」ぷしゃぁぁっ♪

メドゥーサ「ふふ、もうイっちゃったの?……もっと遊ばせて欲しいわねぇ…♪」

提督「…の///」

メドゥーサ「なぁに?」

提督「私も……もっとメドゥーサにして欲しい…の///」

メドゥーサ「んふふ、提督はそう言うみだらな女なのね……好みよ♪」

提督「だって……身体の芯がじんわりうずいて…んんぅ♪」にちゅっ…♪

メドゥーサ「仕方ないわねぇ…それじゃあ私からしびれるような甘美な毒を……んひぃぃっ!?」

セルペンテ「ふぅぅ……私がせっかく提督と愛をかわそうとしていたのに、邪魔するなんていけませんよね…ぇ?」メドゥーサの秘部に指をねじ込み、後ろから抱きついた…

メドゥーサ「別にいいでしょう…獲物を奪われる方が間抜けなのよ……んぁぁっ!」ぐちゅぐちゅっ…♪

セルペンテ「ふぅん、じゃあ私がメドゥーサから提督を奪ってもいいわけですね……ではたっぷりイかせてあげますから、そこで這いつくばっていてね…お姉さま♪」

メドゥーサ「んひぃ、ひぅぅ…んひぃぃぃっ♪」

提督「…」

セルペンテ「ふぅ、ふぅぅ…さぁ提督、お待たせしたわね……んひぃ゛ぃっ!?」

メドゥーサ「はぁ、ふぅ……さっき言ったはずよ、「海蛇」と「メドゥーサ」では格が違う……って!」ぐちゅっ、じゅぶっ…♪

セルペンテ「はひぃ、ひぅぅ……はへぇ…」

メドゥーサ「…ふぅぅ。とんだ邪魔が入ったけれど……今度こそ、私がたっぷり可愛がってあ・げ・る…♪」

提督「ねぇ…メドゥーサもセルペンテも///」

メドゥーサ「なに?」

セルペンテ「はひぃ……なに…かしら…?」

提督「……いっそ仲よく分けっこしたらどうかしら…私も焦らされてばっかりで、もう…んくぅ///」

メドゥーサ「ふぅん…提督ったら蛇二匹に絡まれて愉悦に浸ろうなんてね……いいわよ♪」

セルペンテ「…独り占めできないのは残念ですけれど……でも提督のいやらしい顔が見られるなら……それもまた面白いことになりそうね…ふふ♪」

メドゥーサ「ふふ…それじゃあまずは私が上を……♪」

セルペンテ「なら私は下を…ふふっ、とろとろにしてあげる……♪」

提督「んひぃ、ひうっ……んあぁぁ///」慎ましやかな身体の割に妖しげな魅力を放つ二人…メドゥーサは提督の乳房をこね回し、セルペンテは足元にまとわりつきながら花芯に指を入れてゆっくりとかき回す……

メドゥーサ「あら、こんなところを石化させた覚えはないわ…よ♪」こりっ…と乳房の先端を甘噛みする

提督「ふぁぁ…あふぅ、んくぅぅ……♪」とろりと蜜を垂らしながら甘い喘ぎ声を上げる提督……メドゥーサとセルペンテの瞳が妖しく爛々と輝き、その目で見られるたびに電撃のような痺れを覚える提督…

セルペンテ「ほぉら、気持ちいいわよね…いいのよ、素直になって……♪」

メドゥーサ「ふふ…こうして撫でるたびにひくひく身体が跳ねて……可愛いわねぇ」

提督「はひっ、あふっ…気持ひいぃのぉ……もっとぉ…♪」

メドゥーサ「欲張りな提督さんね……いいわ、それじゃあ交代しましょう…♪」

セルペンテ「うっふふふ…もうびしょびしょに濡らしちゃってるもの、今さらメドゥーサのやることなんてないけれど…ね」

メドゥーサ「ふふ……提督、ここからまた何回イかせられるか……想像しただけで楽しみでしょう?」

提督「あふぅ…ひうぅ……んっ、くぅぅ///」

メドゥーサ「ふふ…こんな小さな娘に好き放題されて、涎を垂らしながらおねだりして……本当にいやらしい提督ね♪」

提督「んぁぁ…そんないやらしい提督に二人は…もっと色々……してくれるのよね?」

セルペンテ「ええ、してあげる♪」

メドゥーサ「……私なしでいられないくらい…ね♪」

提督「んふふっ、期待してるわ……んちゅっ、れろっ…んぁぁっ♪」


………

…あくる日…

ライモン「…で、こうなったわけですか」腰に手を当てて仁王立ちしているライモンと、平謝りしている提督…

提督「ごめんなさい……」

ライモン「いえ、わたしは別にいいんですよ?……ただ、「明日は建造の予定があるから」とおっしゃって、早くお休みになるはずが徹夜…と言うのはさすがにいかがなものかと思いますが」

提督「ええ、分かっています…本当にごめんなさい」

ライモン「ふぅ、まぁいいでしょう……それで、二人も徹夜をしたのですか?」

セルペンテ「いいえ、空が明るくなる頃には疲れきって寝たわ…多分0500時ころじゃないかしら」

ライモン「そんなの徹夜と変わりません。メドゥーサは?」

メドゥーサ「私は最後まで提督と愉しませてもらったわ…♪」

提督「ええ…全身好き放題されて、もうとろとろのくたくた……時間がたったオムレツの気分ね…」

ライモン「そうですか……それでは提督は浴室でシャワーを浴びてすっきりなさってください…メドゥーサ、セルペンテ」

メドゥーサ「なぁに、ライモンドもしたいのかしら…ぁ?」ぺろりと人差し指を舐めあげ、ぞくりとするような妖しげな瞳で流し目をくれた…

ライモン「結構です。二人はそこのぐしゃぐしゃになった寝具を洗濯機に入れてきて下さい」

セルペンテ「えぇ…仕方ないわねぇ……入れて来ればいいんでしょう?」

ライモン「不満そうな顔をしないで下さい、元はと言えばお二人のせいなんですから……それが終わったら朝寝をしても構いませんよ」

メドゥーサ「ええ……それじゃあね、提督…♪」

セルペンテ「したくなったらいつでも呼んでね。待ってるわ♪」

提督「ええ、こんなに激しくないなら……また後でね♪」ぱちりとウィンクを送ってから、力の入らない足腰でよろよろと浴室に入った…

ライモン「……もう、そうと知っていたらわたしがお邪魔すればよかった…///」

提督「何か言ったー?」

ライモン「いいえ、何も…タオルは椅子の背にかけておきますね」

提督「ええ、ありがとう……今度はライモンだけ招いてあげるから♪」

ライモン「///」

………

…午前中・工作室…

提督「さてと…それじゃあ元気よく建造に取りかかるとしましょうか」

フルット「ええ、期待しています…♪」艦名が「波」の雅な言い方である「フルット」だけに、薄いスミレ色のフレアースカートと淡いグレイのタートルネックの控えめなコンビネーションもよく似合っている…

ジャンティーナ(アルゴナウタ級中型潜「アサガオガイ」)「はい…ぜひ私の従姉妹たちを呼んであげて下さい……♪」薄い青紫のふわっとしたミドル丈のワンピースに、同じ色合いをした薄いシースルーのケープ……頭には不思議と落ちないでいるアサガオガイを模した小さな帽子を斜めにかぶっている

提督「ええ、頑張るわね♪」

デュイリオ「ふふっ……提督は基地祭までに出来るだけ多くの娘を呼んであげるおつもりなのでしょう?」…こちらはいつもの貴婦人のようなファッションではなく、艦名の由来になったローマの指揮官「ガイウス・ドゥイリウス」にちなんだ古代ローマ風の白いトーガにサンダル、翼を広げたカラスの形をしたネックレスで、ボリュームたっぷりの胸が生地をぐっと押し上げている…

提督「ええ。だってみんな一緒の思い出があった方がいいじゃない?」

グレイ提督「ふふ、カンピオーニ提督はお優しいのね…♪」

ヴァイス提督「しかしよく許可が下りるものだ……何十という艦娘を抱えているのにさらに増勢とは…」感心したように一人でうなずいている…

提督「ふふ…そこはスーペルマリーナ(海軍最高司令部)にいるお姉さま方にお願いして……と言うのは冗談で、新年度の割り当てをもらったので建造枠が余っているんです」

ヴァイス提督「なるほど…しかしカンピオーニ提督の前ですが、これだけの戦力があるのはうらやましいです。ヴィルヘルムスハーフェンではぎりぎりの数の艦娘だけで、余裕を持つことが出来ずにいますから」

グレイ提督「ふふ、それはわたくしとて同じですわ……今わたくしの所にいる空母は「アークロイアル」と「イーグル」だけですし、「キングジョージⅤ世」級戦艦の建造は申請を出したものの「梨のつぶて」ですもの……ホワイトホール(イギリス海軍省)にも困ってしまいますわ」

提督「まぁそれにはお国の事情もありますよ……何と言ってもイギリスは世界各地に鎮守府を置いていますから、一か所に艦娘をたくさん所属させる予算はないでしょうし、ドイツはそもそも水上艦艇が少なくUボート中心ですから」

グレイ提督「ですわね…でもわたくしもヴァイス中佐のおっしゃる通り「うらやましい」と言う気持ちが少々ありますわ……それにしてもイタリア艦はどれも美しいですわね。…コレクションして飾っておくのが一番だと思いますわ♪」

提督「…素敵な意見をありがとうございます。イギリスも「リパルス」や「リナウン」のような巡洋戦艦は堂々として綺麗で……前線に出して沈めるのはもったいないですね♪」

グレイ提督「ふふ……お上手ですわね」

提督「うふふっ、ええ…それじゃあ建造に入りましょうか。フルット、ジャンティーナ♪」

ジャンティーナ「はーい、ここにいまぁ…す……♪」

フルット「はい」三人でレバーに手をかけて引いた…

グレイ提督「後は出て来るまでのお楽しみ…ですわね?」

提督「ええ。…よかったらお茶でも?」

グレイ提督「それは非常によろしいですわね、いただきましょう」

ヴァイス提督「お二人がいただくのでしたら私もちょうだいします」

提督「はい。ところでせっかくいい天気ですし、そこのドックを通り抜けて波止場で出て……そこでお茶にしませんか?」

グレイ提督「まぁ、それは結構なアイデアですわね…よろしければわたくしもお手伝いいたしますわ」

提督「大丈夫ですよ。グレイ提督には「お茶を味わってもらう」という重大な任務がありますから♪」

グレイ提督「ふふ、それは責任重大ですわね…♪」

ヴァイス提督「でしたらカンピオーニ提督、その分私にご命令を…!」

提督「分かりました…それでは命令します」

ヴァイス提督「はっ!」

提督「……この中でどのお菓子がいいか決めて下さい♪」

ヴァイス提督「ヤヴォール!……ん?」

提督「さぁ、命令ですよ?…かぼちゃのタルトレットに、チョコレートの詰め合わせ…クッキーにビスコッティ。どれにします?」工作室の棚の中や引き出しのあちこちに、隠し財産のごとくしまってあるお菓子の数々を次々と引っ張りだす……

ヴァイス提督「あ、あー…その、私はそう言った事には詳しくないもので…えーと……」

グレイ提督「…わたくしはきゅうりのサンドウィッチが好みですわ♪」

提督「それは食堂に伝えて持ってきてもらいましょう……さぁ、シャルロッテ♪」

ヴァイス提督「え、えぇと…分かりました。どれも数個づつ持って行けばバランスが取れるかと思います」

提督「了解…困ったときの模範解答ですね。それでは行きましょうか♪」

ヴァイス提督「ヤヴォール!」


…波止場…

提督「んー…いい風♪」

…庭のパラソルと小さい丸テーブル、それとデッキチェアを波止場に運んできた提督たち…提督は濃いサングラスをかけ、グレイ提督は軍帽を脱いで膝の上に置き、豊かな髪を風になびかせている……ヴァイス提督は相変わらず制服姿ではあるものの、さすがにワイシャツとネクタイ姿で上着は着ていない…

グレイ提督「大変心地良いですわね……あら♪」

ルチア「ワフッ…♪」とことことやって来て波止場の黄色いレンガ敷きにおすわりをし、左右に尻尾を振って地面を掃いているルチア…

グレイ提督「ふふ、あなたも何か欲しいのね?…ではカンピオーニ提督に伺いますから少々お待ちになって……フランチェスカ、この子に何かあげてもよろしいかしら?」

提督「ええ、犬が食べても大丈夫なものなら」

グレイ提督「よかったですわね…それではこれをあげましょうね」きゅうりのサンドウィッチからパンの端をちぎり取り、ルチアの鼻先に差しだす…

ルチア「ワフッ、ハフッ……♪」

グレイ提督「まぁ、何とも愛らしいこと……ふふ」

提督「あんまり食べ過ぎちゃだめよ?」ルチアを指差して冗談めかした口調で言うと、ティーポットを取り上げて注いで回る…

グレイ提督「ふぅ、いい香りですわ…♪」

ヴァイス提督「ヤー(はい)…きっといい紅茶なのでしょう」

提督「ふふ…さぁどうぞ?」お菓子ときゅうりのサンドウィッチ、それにスコーンがクローテッドクリームと一緒に並べてある…

グレイ提督「それではいただきます…今日はホワイトティーの気分ですわ」…風習やしきたりに関してはかなり頑固なグレイ提督だけに絶対に「MIF」をせず、紅茶を注いでもらってからミルクを入れた

(※MIF…ミルク・イン・ファースト。ティーカップへミルクを先に入れるやり方。長く「お茶をごちそうになったときにミルクを多くせしめようとする貧乏人のやり方である」ため不作法とされてきたが、近年『王立紅茶協会』から「紅茶のタンニンをミルクが包んで苦みやえぐみを抑えられるため、より美味しく紅茶を飲むことができる」と科学的な知見が発表された……「ホワイトティー」(White tea)はイギリスで言う「ミルクティー」の事)

提督「シャルロッテはミルクを…?」

ヴァイス提督「いえ。ストレートでいただきます」

提督「ええ、分かりました…♪」提督はミルクと砂糖を入れ、一緒にビスコッティをつまんだ…

グレイ提督「それにしてもイタリアにも紅茶があって助かりましたわ…数年前に米海軍と共同作戦をしたときなど……ふぅ」

提督「あー…例の「塩入り真っ黒け」コーヒーですか」

グレイ提督「ええ…思わず眉をしかめてしまいましたわ……」

提督「私もノーフォークのミッチャー准将……あのマーク・ミッチャー提督とは親戚でも何でもないらしいそうですが……とにかく、彼女にコーヒーをごちそうになったときは舌がおかしくなったのかと思いました」

グレイ提督「ですわね…英海軍の洋上勤務中はとろっとした熱いココアか紅茶と決まっておりますから、あれには驚きましたわ」

提督「ふふ…ところでヴァイス提督、ドイツ連邦海軍はコーヒーですか?」

ヴァイス提督「ヤー。ブンデスマリーネ(ドイツ連邦海軍)は基本的にコーヒーです……何だ、どうした?」ルチアが足元にすり寄り、舌を垂らしてヴァイス提督を見上げている…

提督「もう、ルチアったら……どうぞサンドウィッチのパンかクッキーのかけらでもあげて下さい…チョコレートは絶対にダメですが」

ヴァイス提督「確かチョコレートに入っているテオブロミンが犬には分解できず、心臓をおかしくしてしまう…でしたか」

提督「ええ、その通りです……ほぉらルチア、シャルロッテがパンの耳をくれるそうよぉ…良かったわねぇ♪」

ルチア「ハフッ、フガフガ……ワンッ♪」

提督「…ふふ、こうやっていると時間が経つのさえ忘れてしまいそうですね♪」

グレイ提督「全くです……風も心地良いですし、紅茶も美味しいですわ」

ヴァイス提督「ですが建造完了まではあと二時間三十二分…あまり時間が経つのを忘れてしまうのはいかがかと思います」時計の目盛りを見て言った

提督「ふふ、さすがですね。私は適当な所で戻ろうと思っていたのですが」

ヴァイス提督「あー、いや……残り時間は計っておいた方がよいかと///」

提督「助かります♪」

…しばらくして・工作室…

提督「さてと…そろそろ時間ですね」

グレイ提督「ふふ、今回はどんな娘が来るのでしょうね?」

提督「それが楽しみで建造をしているようなところもありますから…♪」

フルット「私も待ち遠しいです……私にとっては素敵な年上の従姉妹のようなものですから」

ジャンティーナ「そうですね…私も楽しみです……♪」

提督「さぁ…そろそろ時間ね……♪」

ヴァイス提督「…うっ!」


…相変わらずの眩しい青い光が消えると、中学生程度の大きさをした艦娘が十二人並んでいる…髪や瞳は一人づつ異なっていてカラフルだが、いずれも揃って「可愛い」と言うより「美しい」に近い透き通るような美少女揃いで、灰色に灰緑色や濃い灰色の斑点迷彩を散らしたウェットスーツのような「艤装」をまとい、きちんと整列している……


提督「ボンジョルノ…初めまして♪」きちんと敬礼を返すと一転してにこやかな笑みを浮かべる提督…

艦娘「初めましてぇ…♪」胸元に手を当てて伸びのある美しい声で挨拶をする艦娘…よく見るとくるぶしには人魚のヒレのような飾り物を付けていて、声を聞いているだけでうっとりとしてしまう……

提督「ふわぁ……っ、いけないいけない……えぇと、お名前をうかがっていこうかしら♪」声を聞いただけですっかり骨抜きにされそうだったが、自分の頬を軽く叩いてようやく意識を取りもどした…

艦娘「シレーナ級中型潜…ネームシップのシレーナ(セイレーン)です……ららら…ぁ♪」軽くベルカント唱法も効かせて、オペラのようにリズムに乗せる

提督「ふわぁぁ…で、貴女は……///」慌てて隣の紫色の瞳をした艦娘に声をかける…

艦娘「シレーナ級、アメティスタ(アメジスト)です……貴女に誠実さと心からの愛を捧げます♪」……そう言って提督の手の甲に軽くキスをするアメティスタ…髪も綺麗なアメジストの色で豊かに房をなしていて、首元にはティアドロップ(涙滴型)のアメジストをあしらった綺麗なネックレスと、楕円形のアメジストをはめ込んだ銀の指環を付けている…

提督「ありがとう、嬉しいわ……それじゃあ次は…」

艦娘「シレーナ級、ディアマンテ(ダイアモンド)よ…誇り高く壊れない、永遠の絆を貴女に」ダイアモンドのように七色にきらめく白い髪とダイアモンドを散らしたネックレス…それと頭には「ティファニーで朝食を」のオードリー・ヘップバーンが付けていたような、美しいダイアモンドのティアラを付けている…

提督「ありがとう…♪」

艦娘「次は私ね…シレーナ級潜水艦「ルビノ」(ルビー)よ……提督、心から愛してるわ!」綺麗な紅い瞳に鮮やかなルビー色の髪…耳にはルビーのついたイヤリングが下がっていて、当然指には「ルビーの指環」がはまっている……と、いきなり提督の頬を押さえつけると舌をねじ込んで熱いキスを浴びせた……

提督「んぅっ…んぅぅぅっ///」

ルビノ「ぷはぁっ……私は情熱と純愛に生きているの、心から大好きよ…提督♪」

提督「ご、ごちそうさま…とっても熱いキスだったわ///」

ヴァイス提督「あぁ…ぁ…///」

艦娘「じゃあ次は私ね?…シレーナ級「スメラルド」(エメラルド)です。歴史は古くローマの頃から好まれていました…貴女に幸運と希望がありますように♪」エメラルド色をした波打つ髪とすっきりした光を帯びた瞳をしていて、エメラルドを三つあしらったネックレスをしている…

提督「グラツィエ……と言うことは貴女はきっと…」

艦娘「ええ、トパツィーオ(トパーズ)よ…性格は誠実だと思うの。ぜひ友達になりましょうね?」透き通った黄色い瞳に、鮮やかな金色がかったトパーズ色の髪をセミロングに伸ばし、先端を内向きにカールさせている……指には楕円にカットしたトパーズの指環と、額にトパーズのはまったサークレットを付けている…

提督「ふふ、ありがとう…私もトパツィーオと仲良く出来たら嬉しいわ……それで貴女が…」

艦娘「初めまして…シレーナ級「ザフィーロ」(サファイア)です……慈愛と高潔をもって貴女にお仕えさせてもらいます」ザフィーロはすっきりとした綺麗な青い髪をお姫様風に頭の周りで結い上げ、慈愛に満ちた青い瞳をしている。指には驚くほど大きくて美しいサファイアの指環をし、頭にもサファイアを散らした銀のティアラを付けている……と、ザフィーロが提督の前にひざまづいて一礼した…

提督「そんなにかしこまらなくて大丈夫…でも嬉しいわ♪」額にキスをして立たせてあげる提督…

提督「次にあなたが…」

艦娘「シレーナ級、アンフィトリテ……もしここにトリトーネ(トライトゥンあるいはトリトン)がいるなら母親になるわ……海を従えるのはこの私よ、提督さん」…神々しいほどのきらめく美しさに豊かな髪…そして手にはネプトゥーヌスとトリトーネの持ち物でもある「三叉の鉾」と「ほら貝」を持っている…


(※アンフィトリテ…ギリシャ・ローマ神話の海の神「ポセイドン」(ローマではネプトゥーヌス…英語ではネプチューン)の妻でオケアノス(海)の孫にあたるニンフ(妖精)…トライトゥン(トリトン)はネプトゥーヌスとアンフィトリテの子)


フルット「トリトーネは私の妹にいるわ、アンフィトリテ…♪」

アンフィトリテ「と言うことは、貴女はフルット…?」

フルット「いかにも……んちゅっ、ちゅぅ…♪」

アンフィトリテ「私のお馬さんはもう来ていたのね…ふぅぅ…んっ、んちゅっ……♪」(※波…白い波頭はポセイドンの馬で、人類はポセイドンから馬をもらったとされる)

ヴァイス提督「…うわ……いきなりこんな…///」

グレイ提督「…まぁまぁ、さすがイタリアですわね」

提督「こほん…えーと、それで……」

肌の白い艦娘「ガラテアよ、提督……最初は大理石、次は鋼鉄で…やっとこの身体になれたわ……♪」白い肌にえもいわれぬ美しさ、ほのかな桃色の頬に鮮やかな色の唇、すっきりとした身体のラインにふくよかな胸…と、女性の身体の理想をかなえたようなしなやかな姿をしている……


(※ガラテア…ギリシャ神話の「ピグマリオン伝説」による。理想の女性像を追い求めていたキプロス王「ピグマリオン」が自分で彫刻した大理石像を愛してしまい、愛の女神アフロディーテ(ローマでは「ウェーヌス」。英語では「ヴィーナス」)に「像を生きた女性にして欲しい」と願い、それがかなえられ人間になったという石像)


提督「ええ、歓迎するわ……愛の女神にも感謝しないと///」

ガラテア「ふふ…そうですね♪」

提督「それで貴女は…水の妖精みたいね?」

艦娘「あら、分かってしまったかしら?…シレーナ級潜水艦「ナイアーデ」です♪」

(※ナイアーデ…ギリシャ神話の水の精)

提督「ふふ、何となく…ね♪」

艦娘「それじゃあ私は……どうかしら?」ちょっといたずらっぽくコケティッシュ(色っぽい・艶やか)な魅力を振りまく艦娘

提督「きっと海の精ね…どう?」

艦娘「正解。私は「ネレイーデ」…海の精よ♪」

(※ネレイーデ…ギリシャ神話の海のニンフの総称「ネレイス」のこと。父ネレウスと母ドリス(オケアノスの娘)の間にできた50人あまり(!)の娘たちを指す。アンフィトリテや英雄アキレウスの母テティスなどがいる)

提督「よろしくね、ネレイーデ…それで貴女が……」

艦娘「私がオンディーナ…水にたわむれ、水と共にあるものよ……♪」淡い水色の瞳にほっそりした妖精のような身体つきで、身のこなしも軽く提督の周りを跳ねまわった…

(※オンディーナ…フーケーの物語などにある水の妖精「ウンディーネ」)

提督「それじゃあこれで全員ね…まずは「タラント第六」にようこそ、歓迎するわ♪」

フルット「きっとお昼の食膳も整っている頃ですから……一緒に食事でもしながら積もる話でもいたしましょう…?」

提督「それがいいわ。ワインでも飲みながら…ね///」触ったら軽やかな音がしそうなシレーナたちとそっと手を握り、美しさに胸をときめかせつつ食堂に向かった……

………

…とりあえず今回の投下はここまでで「艦娘紹介」は次回に回したいと思います…

…思っていたより宝石の「石言葉」やギリシャ神話の由来を調べるのに時間がかかり大変疲れました…しかし潜水艦とは思えない何とも優雅な名前がついていますが、ドイツのように大量生産できなかった分、名前にこだわりが持てたと言うことでもあるのでしょう…

…また、読んでいる方の誕生石が艦名にあるかもしれませんね。もしそうした艦があればリクエスト次第で出していこうと思います


中型って高校生くらいのイメージでいいのかな?

>>201 一応中型潜(600トンクラス)や駆逐艦などは身長や外見的に中学生前後(場合によってはもっと幼く見えたり…)でイメージしています…また大型潜や軽巡が高校生~大学生、重巡が高校生~大学生程度、戦艦は(特にリットリオ級以外は旧型のリファインが多いので)妙齢の貴婦人でイメージしてもらえれば……もっとも外国の女の子は大人びて見えるのでもう少し年上っぽい感じだと思います…


…ちなみにあまり出していませんが「イタリア海軍の華」である「MAS」や「MS」艇(いわゆる魚雷艇)や「縁の下の力持ち」である駆潜艇、掃海艇、コルヴェットのような小型艦艇を登場させるとしたらせめて小学生程度はないと……と考えて逆算したと言うのもあります



……要は見た目は幼い「MAS」艇の艦娘がお高くとまっているイギリス艦の深海棲艦を百合らんぼうするわけですね…そのうちにエーゲ海方面の鎮守府をネタに登場させるかもしれません…


…食堂…

提督「それじゃあ…乾杯♪」

ガラテア「乾杯…♪」年代もののワインが入ったグラスをこつん…と合わせ、シレーナ級着任にかこつけて「食後の一杯」を楽しむ提督と艦娘たち

シレーナ「あぁ、何と美味しいんでしょ…う♪」ベルカント唱法のように声を震わせ、節をつけるシレーナ……それを聞いただけで近くにいた数人がとろりと表情を崩し、吸い寄せられるように近くの席に座った…

シレーナ「ららら…ぁ♪」歌に聞きほれて近寄った人を襲うという「シレーナ」(セイレーン)だけに、ふらふらと近寄ってきた数人を見てニヤリといやらしい笑みを浮かべた…

提督「…」提督は無言でレコードやCDの並んでいる一角に行くと、クラシックのCDをセットする……途端に「カルメン」からシンバルの音もけたたましい「トレアドール」(闘牛士の歌)が流れ、シレーナのささやくような歌声をかき消す…

ニコロソ・ダ・レッコ(ナヴィガトリ級駆逐艦…提督の通称「ニコ」)「はぁぁ…あれ?」

ジョヴァンニ・ダ・ヴェラサーノ(ナヴィガトリ級)「ふぁぁ……えっ?」

ニコロ・ツェーノ(ナヴィガトリ級)「はへぇ……んんっ?」

シレーナ「あぁ…ら、残念ねぇ……らら♪」

ニコ「なるほど、何だかむしょうに隣に座りたくなったのは「シレーナ」だからか///」

ヴェラサーノ「危ないあぶない……シレーナなんて船乗りには大敵じゃない…」大航海時代の「航海者」から艦名が来ているナヴィガトリ級だけにシレーネの歌声には弱い…ナポレオンのような三角帽子をかぶった自分の頭をげんこつで小突きながら、首をぶんぶん振った…

提督「ふぅ、危なかったわね…」

…いくらシレーナの「魔性の歌声」を防いだとはいえ昼下がりの気だるい時間に「カルメン」は厳しすぎるので、提督は甘いフルートアレンジのクラシック集をセットして席に戻った……席の両隣には「アメティスタ」(紫水晶)と「スメラルド」(エメラルド)が座り、他にもライモンや重巡の「トレント」、コルヴェット艦の「ガッビアーノ」などもいて、グレイ提督の随伴艦「エメラルド」はエメラルド同士「スメラルド」と一緒にワインを味わっている…

シレーナ「もう、邪魔をしないで……ルルル…ララ…♪」

提督「んっ…く///」聞いているだけで下腹部がうずくようなシレーナの甘い歌声を聞かないよう、一生懸命クラシックに耳を傾ける…

ライモン「んっ…提督、この曲はロッシーニの……///」

提督「ええ、「セミラーミデ」の序曲よ……ん///」

シレーナ「もう…私の歌を聞いてくれないなら他の娘に聞かせて来るから……それじゃあ、チャオ…らら♪」

提督「ふぅぅ…」

ライモン「すみません…わたし、ちょっと化粧室に……///」

ガラテア「本当にシレーナお姉さまは……船乗りを惑わせるイケナイ女(ひと)ね…♪」

提督「みたいね……そう言えばトレント」

トレント「はい、何でしょう?」

提督「10月4日は貴女の「二度目のお誕生日」ね……お料理は何がいい?」

ディアマンテ「あら…トレントは二度もお誕生日会をするのですか」

トレント「いえ、私はいいって言ったのですが……提督が…///」軍艦史上初の「バルバス・バウ」を採用したりと革新的な設計で、大戦に参加したイタリア重巡の七隻では最古参……しかしながら軽防御で、当初「軽巡」扱いだったこともあり立ち位置があいまいで控えめな性格の「トレント」と「トリエステ」…ディアマンテに首を傾げられると真っ赤になって恥ずかしがっている…

提督「ふふ、そこは史実通りに……というわけなの♪」

………

…さかのぼって9月4日…

提督「…それじゃあトレント、一回目のお誕生日おめでとう♪」

一同「「おめでとう♪」」わぁぁ!!

トレント「うぅ…恥ずかしいですよ、こんなのマヌケですし……///」

トリエステ「まぁまぁ姉様……提督を始めみんなで祝ってくれているんですから」

ザラ「そうそう、いいじゃないそう言うのも…さ、スプマンテで乾杯しましょう♪」しゅーっ…と泡立つスプマンテをシャンパングラスに注いだ…

ポーラ「それにしてもぉ、トレントはおっちょこちょいですよねぇ~♪」

フィウメ「まさか進水式で失敗なんて…ふふふっ♪」

トレント「い、言わないで下さいよ……思っていたより勢いがつかなかったんですから///」

ゴリツィア「まぁまぁ、それも味がありますよ…はい、プレゼント♪」控えめなトレントに似合う、あっさりした柑橘の香りがする香水をプレゼントする…

提督「それじゃあ私からも…トリエステとペアになっているから、これからも姉妹仲良くね♪」…白百合の形をしていて、銀と小粒の真珠で出来た髪飾りを渡した

アントニオ・ダ・ノリ(ナヴィガトリ級)「それと私たちからも…」

ルカ・タリゴ(ナヴィガトリ級)「そう、私たちからも……♪」

レオーネ・パンカルド(ナヴィガトリ級)「同じ29年生まれ(竣工)組の…」

アントニオット・ウソディマーレ(ナヴィガトリ級)「…トレントに素敵なプレゼントですよ♪」横一列に並ぶと、革のケースに入った立派な双眼鏡を差しだした

トレント「わ…こんなに一杯もらっちゃって……困ります///」

アントニオ・シエスタ(バリラ級大型潜)「気にしない気にしない…はい、これをどうぞ」…艦名が「アントニオ・『シエスタ』」だけにシエスタ(昼寝)用のクッションを渡した…

トレント「ありがとうございます……///」

ゴフレド・マメリ(マメリ級中型潜)「そして我らも『同い年』と言うことでな…貴君には詩集を贈る♪」愛国詩人でガリバルディと共闘したマメリは姉妹四人でお金を出し合ったのか、ヴェルギリウスの立派な詩集をプレゼントに加えた…

トレント「うわ…わわ……っ///」お嬢さまのお買い物に付き合わされた執事のような具合で、両手に山のようなプレゼントを抱えているトレント…

ヴェットール・ピサニ(ピサニ級中型潜)「そして私たちも29年組として贈り物だ……無論、この贈り物を使う場面がないのが一番だが…そうした場面に陥った時、役立ててもらえれば嬉しいぞ?」

…地中海の覇権を争って海戦を繰り広げた中世ジェノア(ジェノヴァ)やヴェネツィア、それにナポリの提督から名を取っている「ピサニ」級だけに、見事な金細工が鞘に施されたサーベルと、ベレッタの小型ピストルが贈られた…

トレント「こんな見事な品を……ありがとうございます」

デス・ジェネイス(ピサニ級)「いいえ…さ、これで礼儀正しい時間は終わったわね……提督諸君、一杯飲みましょうか!」

ジョヴァンニ・バウサン(ピサニ級)「ジェネイスはそれが目的だったものね…付き合ってあげる♪」

ピサニ「海戦でも飲み比べでもジェノヴァに負けるわけがないな……一番大きいグラスで飲んでやろう!」海戦でジェノヴァに勝利したヴェネツィアの提督「ヴェットール・ピサニ」だけに、金魚鉢ほどの大きさがありそうなグラスを探し出すとワインの瓶を持ちだした…

ジェネイス「面白いわね…受けて立つわ!」艦名の由来になった「ジョルジョ・アンドレア・アーネ・デス・ジェネイス」は「イタリア半島一の海軍国」を自認している「ジェノア」出身だけに、ヴェネツィアに負けるのだけは面白くない…

(※ジェノア…生粋のジェノヴァ人は「ジェノア」と発音するらしい)

バウサン「なら私だって…♪」こちらも誇り高い「両シチリア王国」こと、ティレニア海に面する「最強の海軍国」ナポリの提督だけに、三角帽を脱いで大きなグラスを取り上げた…

提督「…こぉら、せっかくのワインをそういうことに使うんじゃありません!」ボトルを没収しポーラに預ける提督

ポーラ「全くですよぉ~…あ、そう言えばトレントの「アレ」がまだでしたねぇ~♪」

トレント「…「アレ」ってなんです?」

ポーラ「それはもちろん進水式なんですからぁ~、艦首にスプマンテをぶつけないと、ですよ~……えへへぇ♪」

提督「そう言えばそうだったわね…はい、それじゃあみんな波止場まで行きましょう♪」

トレント「…いや、でも進水し損ねているわけですし……わわっ」

ザラ「そう言わずに…さ、行きましょう?」後ろから押して行くザラ…

ポーラ「んー……美味ひぃれすねぇ♪」わいわいと騒ぎながらトレントが連れて行かれる間に、さりげなく高いワインをたっぷりと喉に流し込む…

………

…というわけで重巡「トレント」の小ネタをお送りしました……実際「トレント」は1927年9月4日の進水式で滑走台を滑りきれずに止まってしまい、改めて10月4日に進水式のやり直しと言う何ともマヌケなエピソードがあったので、小ネタにさせてもらいました

…ちなみに当時のモノクロ写真で、艦首部に乗っていたり周辺にいる工員が困っていたり呆れている様子が撮られています…


>>202
なるほど、ありがとうございます
いいですね

>>203 どういたしまして、引き続きゆっくりながら続けていきます…


……そのうちに様々な外国海軍の提督たちも色物として登場させたいところですが、第二次大戦当時有力な海軍があった国と言うと枢軸側の日・独・伊、連合側の英・米・仏程度なのでなかなか…



>>206 の方へのコメントでした、失礼しました… 

…夜・廊下…

提督「さてと…そろそろ明日、明後日には基地祭用の資材が届きはじめるわね」

ライモン「えーと、出店が十数軒に…舞台ではオペラ「ロメオとジュリエッタ」か歴史劇として「ガリア戦記」……他に写真や模型の展示と、飛行艇や水上機のデモフライト…それとわたしたちが沖合いに自分の艦を錨泊させて「ミニ観艦式」……なかなか充実しているように思えます」

提督「ええ、主計部相手に頑張ったかいがあったわ……何しろ最初は「予算40万でどうにかして下さい」って言ってたのよ?…学芸祭でもあるまいし」

ライモン「40万ユーロ…ですか?」

提督「40万リラでよ……もっとも私もお返しに「…基地祭には海軍士官を目指すかもしれない子供たちや、鎮守府に文句ひとつ言わないでくれている地元の方々、それに地方議員や退役軍人の方も大勢来るはずです♪」って皮肉ってあげたわ……」

ライモン「それでこの額ですか」

提督「ええ。今のところ主計部の担当官が一番厄介だったわ……中にはいい人もいるのだけど、どうしてもお金にうるさい人が多いのよね…って、あら?」会議室の中から明かりとおしゃべりの声が漏れている…

提督「?」

…そっとドアを開けると、駆逐艦と潜水艦、植民地スループの「エリトレア」、コルヴェットの「ガッビアーノ」(カモメ)と「チコーニャ」(コウノトリ)の、合わせて二十人余りが座って映画を見ようとしている……そばにはエリトレアが作ったらしい小さいサンドウィッチと飲み物が並べてあり、どの作品を見るかでわいわい話し合っていた…

提督「…ねぇ、みんな?」

一同「「!?」」

提督「あぁ、驚かせてごめんなさいね…映画でも見るの?」

エリトレア「えっ、ええ…そうなんですよ。私も厨房の後片付けも終わったからいいかなぁ…なんて♪」

提督「ふふ、そんな言い訳がましく言わなくたっていいわよ……ただ、終わったらちゃんと電気を切っておいてね?」

カミチア・ネラ(ソルダティ級駆逐艦「黒シャツ隊員」)「了解、提督。私が駆逐艦代表としてきっちりやっておくから……ところで一緒に観る?」

提督「そうねぇ……候補は何があるの?」

フォルゴーレ「昼も観た「機動戦姫カンムス」シリーズなんだけど……一応これね」

提督「ふむふむ……まずは「機動戦姫カンムス…宇宙世紀秘録・艦娘ISUZU」と」

フォルゴーレ「試験部隊と歴史に現れなかったテスト兵器のエピソードを描いた作品ね」

提督「それから…「機動戦姫カンムス1943…ソロモン海戦メモリー」…に」

フォルゴーレ「うんうん」

提督「で、お次が「機動戦姫カンムス・第08駆逐隊」と……三シリーズもあってそれぞれ十数話づつ…しばらくは見るものに困らないわね?」

フォルゴーレ「うん…で、みんなでどれを見ようかと話していたんだけど、なかなか決まらなくて……提督、決めてもらえる?」

提督「そう、それじゃあこれがいいかしら…」

フォルゴーレ「了解、それじゃあこれにするわ♪」

………

…上映中…

プロパガンダ放送「とぉころが何とこの新型駆逐艦は、主機のトラブルでまぁったく役に立たないと言うのです…これを新型とはおかしいですねぇ!」

五十鈴「貴様ぁ…こんなのは敵のプロパガンダに過ぎない!」



連合軍機「ひゃっはぁ、喰らえ!」

まるゆ艇「うわぁぁ…っ!」

五十鈴「…えぇい、あれは一体何をしているのだ!?」

明石「あれは陸軍の潜水艇です…彼女らは溺れて……海で溺れているんです!」



島風「……私はもはや…ゴーストファイターではない!」

………



提督「…つい見ちゃったわ。えーと、私は見回りがあるから……後はみんなでどうぞ♪」

フォルゴーレ「了解、それじゃあね♪」ちゅっ♪

提督「はいはい…♪」


…廊下…

提督「さーてと…そう言えば建造に取りまぎれてすっかり忘れていたけれど、ちゃんとシレーナ級の部屋に寝具は用意しておいたかしら?」

ライモン「確かフルットたちが「年上の従姉妹みたいなものだから、私たちで準備しておきますよ…」って言っていましたが……」

提督「そう、でも一応確認に行きましょうか……ついでにちょっとお話でもして♪」

ライモン「それもいいですね…提督は誰がお気に入りですか?」

提督「それはもう……あら、不意打ちとは驚いたわね」

ライモン「あ、ばれちゃいましたか……いえ、提督に好みの娘がいれば…わたしもその娘を参考にしようと///」

提督「そう言う意味ね…それならライモンね」

ライモン「…え!?」

提督「だって…笑顔は可愛いし、律儀で真面目だし、怒ってもちゃんと謝れば許してくれるし、料理は上手だし、瞳は綺麗できらきらしているし、肌は白くて滑らかで、髪はしなやかで手ざわりがいいし……」一つづつ指折り数える提督…

ライモン「も、もう結構ですっ……十分わかりましたから…///」

提督「そう?…とにかく、何のかのと言って一番頼りにしているわ……♪」ちゅっ…♪

ライモン「///」

提督「ふふ。さぁ、ついたわよ……んっ?」ノックをしようと手を丸めた途端、室内の声を聞いて手を下ろした…

ライモン「どうしたんです、提督?」

提督「…しーっ」ドアに耳を当てる提督

ライモン「?」


…シレーナ級の部屋…

トリトーネ(フルット級中型潜)「それにしてもアンフィトリテが来るなんて…神話で言えば私の「お母さん」だものね」トライトゥンだけに三つ又矛を持ちほら貝を腰から提げている「トリトーネ」…が、三つ又矛は壁に立てかけ、ほら貝も素っ気ない金属のデスクの上に放り出してある……

アンフィトリテ「そうね……私も「娘」に会えて嬉しいわ。もっとも、年で言えば姉妹みたいなものだけれど…♪」

トリトーネ「それでも私の「お母さん」なのは変わらないわ……何だか落ち着くし…」

アンフィトリテ「そうね、私もトリトーネとずっと一緒にいたような気分がするわ……ほら、私の膝の上においでなさい?」

トリトーネ「ええ…///」アンフィトリテのひざに頭を乗せて髪を撫でてもらうトリトーネ…美しいがどこか嵐を予感させる普段の様子が、まるで嘘のようにおさまっている……

アンフィトリテ「ふふ…よしよし……」

トリトーネ「……お母さん///」

アンフィトリテ「はい、私はここにいますよ…」

トリトーネ「あの…さ……」

アンフィトリテ「何かしら?」

トリトーネ「いや…もっと母娘みたいなことがしてみたくて……ごめん、おかしなことを言って///」

アンフィトリテ「…ううん」するりとネグリジェをはだけ、慎ましやかな乳房をさらけ出すアンフィトリテ…

トリトーネ「アンフィトリテ……それって///」

アンフィトリテ「たとえほんの数年しか違わなくたって「私の娘」だもの……「お母さま」は母乳こそ出ないけれど…さ、いらっしゃい?」

トリトーネ「お、お母さまぁ……んんっ…ちゅぱ……ちゅうぅぅ…///」

アンフィトリテ(シレーナ級)「ふふ…一生懸命吸って……んっ、くぅっ///」ベッドに座ってほぼ同じ大きさのトリトーネを膝に乗せてあやしつつ、胸をはだけて授乳…の真似をしている二人……

提督「…うちの実家にも負けない母娘関係ね///」

ライモン「ふわぁ…ぁ///」

提督「……さて、あんまり聞き耳を立てるのも趣味が悪いし…とりあえず「仲良く」しているようだから、他のみんなの所に行きましょうか♪」

ライモン「り、了解です……///」

提督「となると…この辺りは潜水艦の娘たちの部屋が多いわね」

ライモン「あ、それじゃあ「R」級の二人の所はどうでしょう?…すぐ近くですし、おしゃべりは好きな方だから喜んでくれると思いますよ?」

提督「そうね、それじゃあそうしましょう……って、あら…」

ライモン「ま、またですか…///」

提督「ええ、そうみたい…あ、ドアの隙間からちょっとだけ見えるわ……」中腰になって片目をつぶり、ドアの隙間から中をのぞきこむ提督…

ライモン「……どうなってます?」

提督「あー…ローマがいるわ」

ライモン「でも珍しいですね、ローマはそういうタイプではないと思っていましたが…」

提督「まぁ、でも「ローマを作った」二人にはかなわないんじゃないかしら……うわぁ///」


(※ロムルスとレムス(ロモロとレモ)…「ローマ建設を行った」という伝説上の双子で、父は戦の神アレス(ローマ神話のマルス)。兄がロモロ(ロムルス)で弟がレモ(レムス)……赤ちゃんだった二人は祖父の王位を乗っ取った叔父によってテヴェレ川に流されたが、マルスが助けてやろうと陸にたどり着かせた…その流れ着いた先にいた雌狼の母乳で二人は育てられ、後に猟師に拾われる。立派な若者になってから事情を知ると叔父を倒し祖父に王位を返すが、二人は狼に拾われたテヴェレ川岸に新しく町を築こうとする…この時、地面に線を描いて計画を立てていた兄を馬鹿にしたことで兄弟の決闘になり弟レムスは死ぬ。しかし兄ロムルスが「これから敵は誰ひとりローマの街に入ることはできない」と弟の血に誓った事から、以後ローマは難攻不落になったという……そののち、開拓地にありがちな「お嫁さん不足」を解消しようと祭にかこつけて近くの異民族の町から女性を誘い出した「ザビーネ女の略奪」は彫刻にもなっていて有名)


…十数分前・大型輸送潜水艦「R」級の部屋…

ロモロ「ようこそ私たちの部屋へ…ローマ♪」

レモ「歓迎するよっ♪」狼のような白い八重歯を見せてにっこりする二人…とはいえ水上排水量で2000トンを超えるイタリア一の巨大潜水艦だけに、あどけないような表情と違ってむっちりした大人の身体が動くたびにたゆんたゆん揺れる……

ローマ「そう、それはどうも……なかなか綺麗なお部屋ね」まだ直していない度の強い眼鏡のせいで目を細めている…そのためかいくらかツンとした表情に見えるローマ……

ロモロ「ありがとう、今お茶でもいれるから……それともカプチーノの方が好み?」

ローマ「ええ、カプチーノの方がいいわ…それにしてもこの部屋はちょっと暑いわね。どうして窓を閉め切っているの?」夜とはいえまだ入浴する前だったので、ローマは淡い灰色のブラウスで胸元に細いリボン、下はベージュの膝丈スカートに黒い薄手のタイツとスリッパ姿で、髪を下ろしている……軽く手で扇ぎながら、閉め切られた窓を見て怪訝な表情を浮かべる

ロモロ「ふぅ…それはねぇ……っ♪」にやりと牙…のような八重歯を見せ、ベッドに突き倒すロモロ

ローマ「きゃっ…!?」

ロモロ「はぁ…ふぅ、ふぅ、ふぅ……ふぅぅ…♪」強引なキスをしながらブラウスのボタンを引きちぎるような勢いで外し、左右に開く…

ローマ「い、一体なにを考えているの…っ!?」

レモ「ふぅぅ…がるるぅ……それはもちろん「いやらしいこと」だよ…///」服を脱ぐのももどかしい様子で自分のワンピースを放り出すとローマの太ももにまたがり、腰を擦り付けるレモ…

ロモロ「んんぅ、ちゅぱ…れろっ、じゅるっ……ちゅぅぅっ♪」ゆさゆさと自分の大きな乳房を揺らしつつ、意地汚い獣のように形よく張った胸にしゃぶりつくロモロ…

ローマ「ふ、二人ともいきなり…っ///」顔を真っ赤にして身をよじらせるローマ…昼の熱気がこもった部屋のせいで、たちまち全身が汗でベタベタになる……

レモ「んー…汗ばんだローマのデリシャスメル……れろぉ…♪」脇腹からふとももまでをねちっこく舐めあげつつ、自分も汗ばんだ肌でのしかかるレモ…

ローマ「ふ、二人ともっ…汗を舐めるなんて汚いから止めて…っ///」

ロモロ「いいえ…むしろ私はもっと汗臭いくらいが好みなんだけど、あんまり部屋が暑くなってなかったわ……失敗しちゃった♪」にたりと牙を見せて笑みを浮かべるロモロ…

ローマ「わざわざそのためだけに一日中窓を閉めきって…んひぃぃっ!?」

レモ「そうだよぉ、レモは狼さんだから…むせ返るような濃い匂いがしないと興奮しないの……だからここのみんなにはちょっと不満なんだよねぇ♪」指でつまんで引き延ばしてから、強引に黒タイツを引き裂く…

ローマ「清潔にして何がいけないのっ……野蛮なフランス人じゃないんだから…んぃ゛ぃぃっ♪」

レモ「えへへぇ、やっぱりここも綺麗にしちゃってるんだぁ…残念っ」じゅる、じゅぅぅ…じゅるっ♪……ローマの股間に顔をうずめて探るように舌をねじ込むレモ…

ローマ「ひっ、い゛ぃ゛ぃぃっ…そこは汚いから…っ///」

レモ「らいじょうぶ……ぷは、ローマは汚いなんてことないよ…むしろきれいすぎてちょっとがっかりかな……じゅるっ、じゅるるっ…」

ロモロ「ふぅ…私も混ぜてもらおうかな……レモ、ちょっとどいて?」

レモ「えー、お姉ちゃんはいっつもそうやって……仕方ないなぁ」

ロモロ「それじゃあ二人でしようか…ねっ♪」

レモ「うんっ…♪」じゅるっ、ずずっ…じゅくっ、ぢゅるぅっっ…♪

ローマ「ち、ちょっとぉ…ひぁぁっ///」ぷしゃぁぁ…っ///

………

提督「あーあ…二人ともローマのパンティストッキングをびりびりに破いちゃって……まるで発情期のけだものね♪」

ライモン「…うぅ、もう聞かせてくれなくていいですから///」

提督「あー、綺麗で清らかなライモンにはちょっと厳しいわよね…それじゃあ行きましょうか」

ライモン「もう、みんなどうしちゃったんですか……何か媚薬でもまかれたとか?」

提督「ふふっ…そんなものがこの世の中にあったら、世間の「お姉さま方」は可愛いお嬢さんを口説くのに、花を買ってあげたり贈り物をしたりなんてしないでしょうよ♪」

ライモン「それはそうですけれど……に、してもですよ」

提督「ふぅ、それじゃあ鎮守府一の発明家にして「世界一の大天才」に聞いてみましょうか」


…大型潜水艦「マルコーニ」級の部屋…

提督「今度は大丈夫よね……失礼、ちょっといいかしら?」ドアの隙から室内をのぞいて、大丈夫と確かめてからノックをした

マルコーニ「はい、どうぞ?」

提督「こんばんは、マルコーニ…作業中にお邪魔してごめんなさい」

マルコーニ「いえ、別に大丈夫ですよ……ちょうど作業も終わりましたから」六人それぞれの居室が奥に並び、入り口側に共同スペースとして「談話室」が出来ているマルコーニ級の部屋……提督を出迎えたマルコーニは無線電信の発明で有名な「グリエルモ・マルコーニ」だけに、はんだごてと基盤で何かを作っていた…

提督「そう。ところでそれはなぁに?よかったら教えて?」

マルコーニ「これはハム(アマチュア無線)の通信機ですね。この小さい風車を窓の外に付けて発電して、それであちこちと通信できるようにしようと……そうすれば通信費はただになりますから♪」

提督「なるほど…ところでダ・ヴィンチはいる?」

マルコーニ「ダ・ヴィンチですか……今は「錬金術士の集まり」だったと思いますよ?」

提督「それじゃあアルキメーデ級の所ね?」

マルコーニ「ええ、そうです」

ライモン「……錬金術士の集まり?…あぁ」

提督「それじゃあ失礼するわ……お休み、可愛いマルコーニ♪」ちゅっ♪

マルコーニ「///」トトン・ツー・トト・ツー・トン……顔を赤らめて何も言わないが、提督が廊下に出る直前に指で机を叩いてモールスを送った…

提督「えーと…今のモールス信号は「おやすみなさい、私の大事な提督さん」ね……まぁ、うふふっ♪」

ライモン「…いいから行きますよ」

提督「はいはい……ライモンったら妬いちゃって♪」

ライモン「別に妬いてなんかいませんっ…///」

提督「大丈夫、私の「ここでの初めて」を持って行ったのはライモン……貴女だもの♪」

ライモン「もう…っ///」

提督「ふふっ…♪」

…大型潜水艦「アルキメーデ」級の部屋…


提督「こんばんは……お邪魔してもいいかしら?」入り口のドアには「アルキメーデのアトリエ」とお洒落な飾りのついた木のプレートがかかっていて、ノックをしたり開け閉めするたびにマヌケな感じで傾くのがお約束になっていた…

ガリレオ・ガリレイ(アルキメーデ級)「はーい、どなた?」

提督「私とライモンだけど…入っても大丈夫?」

ガリレオ・フェラリス(アルキメーデ級)「あぁ、提督……どうぞ入って下さい」

提督「それじゃあ失礼して……うわ」


…二隻はスペイン内乱時にフランコ側に渡ってしまったが、残り二隻も学者の名前を持つ大型潜「アルキメーデ」(アルキメデス)級と、他にも艦名に学者の名前がついている潜水艦が集まっている……中世の科学者は多かれ少なかれ「錬金術」をたしなんでいたせいか、みんな可愛らしいケープやマント、おしゃれな飾り付きの帽子や羽根飾りを身に着け、装飾のついた杖を持っていたり、丸底フラスコを揺すぶっている……談話室のスペースには科学の本や雑誌、草花の干したものや羽根や石ころが散らばり、火事にならないようレンガで囲われた中央部には、小ぶりながら立派な脚付きの丸釜が置いてある…


ガルヴァーニ(ブリン級大型潜)「それで…提督もやっと私の実験に参加してくれる気になったの?」…神経伝達は電気信号であることを発見して「神経生理学」の開祖となり、それが「ヴォルタ(ボルタ)電池」の発明にもつながった科学者「ルイージ・ガルヴァーニ」……とはいえ「カエルの脚に金属板をくっつける」という実験のためか、からかい半分でマッドサイエンティストのようなふりをしている……

提督「そうね…遠慮しておくわ♪」

ガルヴァーニ「残念だ…ライモンドはどうかな?」

ライモン「嫌ですよ……この間の「静電気マッサージ」はひどかったですし…しばらくしびれて口がきけなかったじゃないですか」

ガルヴァーニ「それだから面白いのよ……ほら、あげるわ」

ライモン「ひゃあ…っ!?」

ガルヴァーニ「大丈夫、偽物よ」樹脂でできたカエルの後脚を二本の指でつまみ、ぶらん…とぶら下げた

ライモン「もう、ガルヴァーニ…!」

カエル「……ケロッ!」

ライモン「うわ…っ!?」

トリチェリ(ブリン級)「もう、ガルヴァーニったら…止めてあげなさい?」


…包囲された紅海から脱出を図るも対潜グループに捕捉され、英駆逐艦三、スループ一隻と浮上砲戦を余儀なくされたが、駆逐艦「カルトゥーム」を返り討ちにしスループ「ショアハム」も損傷させ、乗員が脱出してから艦を自沈…とイタリア潜の中でも特に勇敢に戦った大型潜「トリチェリ(Ⅱ)」……それだけに大型潜水艦たちの間ではかなり尊敬されている…艦名は物理・数学者で「ガリレオ・ガリレイ」の弟子「エヴァンジェリスタ・トリチェリ」で、大気圧を測るのに「片方が閉じた筒を水銀の中に沈めても中はいっぱいにならず、上の方に真空が出来る」という「トリチェリの真空」を発見した人物……それだけにガリレオを「先生」と言って尊敬し、ガリレオの略号が「GL」だけに、百合についても英才教育を受けている……


ガルヴァーニ「仕方ないわね……ライモンド、鳴き声はこれのせいよ」指で押すと「ケロッ!」と音がなるおもちゃを、隠していた左手から出す…

ライモン「あぁ、もう…」

トリチェリ「それで、何のご用なのかしら……先生も気になるでしょ?」

ガリレイ「まぁそうね。提督、ご用は何かしら?」天体望遠鏡を初めて作ったガリレオだけに腰のベルトには望遠鏡を挟んでいるが、片方の手はしっかりトリチェリの腰に回している…

提督「あー…実を言うとかくかくしかじかで……」

レオナルド・ダ・ヴィンチ(マルコーニ級)「なるほど…そう言うことならこの「不世出の天才」ダ・ヴィンチに任せておいて♪」

…普段から木、歯車、滑車、それにロープだけで便利な…時にはアイデア倒れな発明品を作っているダ・ヴィンチ……今回はえんじ色のケープに羽の形をした飾りが付いた杖、羽根つきのベレーのような帽子をかぶっていて、服は長袖なのになぜかおへそが出ている……提督にはよく分からなかったが、「砂時計」を腰から提げているのはその格好にとって欠かせない意味があるらしい…

提督「お願いするわ……とりあえずおかしな薬とか、変なものとかは作ってないわよね?」

ダ・ヴィンチ「ふむ、そうねぇ……」

ライモン「もしかしたらたまたまなのかもしれません……私たちは別にどうともなっていませんし」

ダ・ヴィンチ「むー……この間作った薬は何だったかしら」

ガリレイ「あれは疲労回復に効果のある栄養剤だったわ」

ダ・ヴィンチ「その後は?」

トリチェリ「確か育毛剤で名前が「竹林」だとか何とか言っていませんでした?……確かチェザーレが「最近髪のコシが無くなった気がする」とか何とか言って…」

ダ・ヴィンチ「あぁ、そうだったわね…無いなかでどうにか竹の板を探してきて作ったのよね」

提督「……意外と色々やっているのね」


………

ライモン「で、結局あれは「媚薬」によるものだったんでしょうか?」

ダ・ヴィンチ「うーん、私には思い当たるようなものがないわ……しいて言えば「媚薬」とはちょっと違うけど、頭を空っぽにしてすっきり出来るような薬を作ったことはあるわ。以前のは上手く行かなかったから適当な瓶に入れて放りだしちゃったけど」

提督「…すっきり出来るような薬?」

ガリレイ「はい。えーと、確かこの空き瓶に…」

提督「瓶には「バニラエッセンス」って書いてあるわね?」

ガリレイ「あぁ…できた薬はたいていディアナとエリトレアに頼んで、空いた香辛料やお酒の瓶に入れてあるから……」

トリチェリ「ねぇ先生?…まさかとは思うけど、誰か間違えてそれを使っちゃったんじゃないでしょうか?」

ガリレイ「まさか、そんなマヌケな娘がここにいるかしら?……だいたいこのアトリエをひっかきまわすようなふらちな…あ」

提督「何か思い出した?」

ガリレイ「いえ…実は今日の昼頃、暑かったからロモロとレモに錬金術の実演も兼ねて「試験管アイス」なんかを作ってみせたんだけど…もしかしてその時……」

…数時間前…

ガリレイ「…というわけで、氷水に塩を混ぜると氷点が下がってこれが凍りつくわけね……ま、とりあえず手順は書いてあるからやってみて?その間に私は追加の氷を取って来るから……」

ロモロ「わざわざありがとう、急なお願いだったのに」

ガリレイ「いいのいいの…暑いなと思ってたし、出来上がったら私にも一本ちょうだいよ?」ガチャ…

ロモロ「了解……おー、もう固まってきた♪」

レモ「……ねぇお姉ちゃん、アイスには香りがないとダメだと思うな♪」

ロモロ「そうは言っても……ここにあるのは…胡椒、オールスパイス…クミン、ナツメグ……うーん」

レモ「ねぇ、それは?」

ロモロ「あっ、バニラエッセンス…それじゃあひとたらし♪」ごぼごぼ…ごぼ……

レモ「…できたぁ♪」

ロモロ「うんうん、なかなか上出来……おいひぃ♪」ちゅぅ…ちゅぱ♪

レモ「おいひいねぇ…♪」ぺろっ…しゃくっ……♪

ガリレイ「戻ったわよ…って、全部食べちゃったの……」

ロモロ「あっ……ごめんね、ガリレイ」

ガリレイ「ふぅ、まぁいいわ…私は錬金術の実験があるからどうぞ帰ってちょうだい」

………

ライモン「…それじゃないですか?」

ガリレイ「うーん、かもしれない…途中で抜けたのはその時だけだし、食べ物を持ちこんだような事があったのはその時くらいだから……」

提督「それで、効果はいつ切れるの?」

ガリレイ「うーん……ダ・ヴィンチなら分かる?」

ダ・ヴィンチ「そうね…失敗した試作品だし、バニラエッセンスと間違えたのなら入れても数滴だと思うから…ごく短い時間で済むはずよ。そんなに被害は出ないと思うわ」

ライモン「それが結構な被害が…///」

ダ・ヴィンチ「え?」

ライモン「いえ、何でもありません…っ///」

提督「いずれにしても、今度からは「劇物」とでも書いたラベルを貼っておくこと…基地祭のときにそんな騒ぎを起こされたら困るもの」

ガリレイ「了解」

媚薬すごい

>>215 ひ゛やくのちからってすけ゛ー!

……当初案では「疲れがポンと飛ぶ」疲労回復薬…略して「ツカポン」とでも書こうかと思いましたがさすがに…

…だいぶ遅ればせながらですがここで「シレーナ」級の艦娘紹介を…


…艦娘紹介…


中型潜水艦「シレーナ」級。1933~34年生まれ。12隻


近海用潜水艦として成功作だった「アルゴナウタ」級に続く「600」(セイチェント)シリーズ第二弾として建造された潜水艦

基準排水量がおおよそ600トンだったことから「600」型とひとくくりにされる一連の「単殻、サドル・タンク型」構造をした沿岸・近海用潜水艦で、構造が(イタリア潜にしては)簡易で大量生産に向き、運動性や潜航の速さもこれまでのイタリア中型潜よりぐっと良くなった傑作潜水艦


排水量は680トン/837トン、主機1200馬力(ディーゼル)/800馬力(電動機)で速度14ノット/7ノット…武装は533ミリ魚雷発射管4門(艦首)/2門(艦尾)、100ミリ単装砲(艦首甲板上)一基、13.2ミリ機銃二基(司令塔後部張り出し上)と全体的にごく普通


大戦前はイタリア潜にありがちだった大きな司令塔と目立つ潜望鏡支柱を設けていたが、被発見率が高くなることから改装されドイツUボートそっくりな暴露型司令塔に改装するなどした



大戦中は航続距離が短いことから地中海で哨戒・英輸送船団攻撃に活躍したが、陸地が近く対潜哨戒機の攻撃が厳しい地中海だったことや、1943年の休戦後にドイツ軍に渡すまいとヴェネツィアで自沈した艦も多かったことから、結果12隻のうち「ガラテア」を除く全艦が戦没…と、制空権のなかったイタリアの厳しい現状を表している


………

艦名は神話と宝石から名付けられ、ギリシャ・ローマ神話からは…

海神ポセイドンの妻「アンフィトリテ」、水の精「ナイアーデ」、海の精「ネレイーデ」


特にネームシップの「シレーナ」(セイレーン)はギリシャ神話に出てくる「美声で船乗りを魅了し海に引きずりこむ」と言われたカプリ島の「魔女」たちのことで、前級「アルゴナウタ」(イタリアでは「クラゲ」の事を指すらしいが、もちろん「アルゴー号の乗員たち」の意味もある)を誘惑したことから、ちゃんと神話の物語がつながっている気の配りよう


また、ギリシャ神話以外からは「オンディーナ」(水の精「ウンディーネ」としてフーケーの物語にかかれた妖精)があり、いずれも水にまつわるものが多い


宝石からはそれぞれ…

二月の誕生石「アメティスタ」(アメジスト・石言葉は「誠実」「愛情」…古代ギリシャ・ローマでは「酔いを防ぐ」効果があるとも言われていた)
四月の「ディアマンテ」(ダイアモンド・「永遠の絆」)
五月の「スメラルド」(エメラルド・「幸運」「希望」…古代ローマでは大変好まれ、治療に用いられたりもしたという)
七月の「ルビノ」(ルビー・「情熱」「純愛」)
九月の「ザフィーロ」(サファイア・「慈愛」「高潔」)
十一月の「トパツィーオ」(トパーズ・「誠実」「友情」)となっている


この中で「トパツィーオ」は連合軍に降伏していた43年にイギリス哨戒機に誤認されて撃沈された


………


艦娘「シレーナ」級は体型的には中学生と言ったところで、それぞれモチーフになった神話や宝石をイメージさせる特技や色を持っている……特に「アメティスト」をはじめとする宝石・奇石が艦名がついた艦娘たちは髪と瞳がそれぞれ自分の石を表す色をしていて、また由来になった宝石を惜しげもなくあしらった装身具を身に付けていて大変美しい…中でもキプロスの王が大理石で理想の女性像を彫り上げ、愛の女神アフロディーテにお願いして命を吹き込んでもらったという「ピグマリオン伝説」をモチーフにした「ガラテア」は息を飲むほど……


………

…とある日・鎮守府の波止場…


提督「そのまま…そのまま…もう少し右に……はい、大丈夫♪」快晴で波のない昼間、波止場に集まっている数十人の艦娘たちと提督……

ドリア「ふぅ…いい運動ですね。私のようなおばあちゃんには大変でした♪」

提督「そんな色っぽいおばあちゃんがあってたまるもんですか…♪」むにゅ♪…いたずらっぽい顔をして、前からドリアの柔らかな乳房を揉みしだく提督……

ドリア「うふふっ…もう提督ったら、おいたがすぎますよ♪」ぎゅ…っ!

提督「わぷっ!…むぐぅ……むぅ///」かなり長身な提督もドリアの前では頭半分ほど背が低く、むずと掴まれて胸元に顔をうずめられた…

ドリア「…お分かりになった?」

提督「ぷはぁ…はい、分かりました///」

アヴィエーレ「……いやはや、それにしても助かったよ…基地祭の前に予備飛行させておきたかったからね♪」提督たちのいちゃつきぶりに苦笑いしながら、波に揺れている二機の飛行艇を眺めているアヴィエーレ……艶のある真っ赤な表面はいかにもレーサー機の塗装で、ちゃんと綱止めにもやい綱がかけてある…

ランチエーレ(ソルダティ級「槍騎兵」)「確かに綺麗な機体ね♪」

アヴィエーレ「そりゃそうさ…マッキM.33とピアッジォ(ピアッジョ)P.7……イタリアの誇る最高の飛行艇だからね」

エリザベス「それでわたくしたちもお呼ばれしているのですね…どうしてわたくしのウォーラスが必要なのかと思いましたが、これで納得いたしました♪」

ティルピッツ「私のアラド水偵も準備は出来ています」

アヴィエーレ「どうもありがとう…まぁせっかくだから一緒に飛ばしてみたくてね。波もないしさ♪」白いマフラーを後ろに跳ねあげると「ふっ♪」…と格好のいい笑みを浮かべる…

エリザベス「…なるほど。お茶をいただきながら水上機の飛行を眺める……優雅でございますね」

提督「…ねぇアヴィエーレ、それはいいけれど……」

アヴィエーレ「ん、何かな?」

提督「マッキはともかくピアッジォは…」

アヴィエーレ「嫌いかな?」

提督「別に嫌いなのじゃなくて…飛べるの?」

ライモン「?」

アヴィエーレ「あー…そう言うことか」

提督「ええ」

アヴィエーレ「なぁに、そんなこともあろうかと工作室であちこちの伝達ギアを調整したり改造したりしたからね…ちゃんと飛べるさ♪」

提督「ならいいけれど……でもそれを聞いたら私も楽しみになってきたわ♪」

アヴィエーレ「だろう?…よーし、諸君!」

チェザーレ「うむ」

ジュッサーノ「はい」

バリラ「なぁに?」

トレント「何でしょうか?」

アヴィエーレ「…これからこの二機の試験飛行を行おうと思う……まばたきせずに、かぶりつきでご覧あれ♪」もやい綱を解いて「パチン」と指を鳴らすと、半分幻のような操縦士がエンジンを回し、周囲に轟音と水しぶきが飛び散る…

リベッチオ「わぁぁ…すごいねぇ♪」

ベネデット・ブリン「ふむ…ブリン造船中将もこれを見ていたら飛行艇設計者に乗り換えたかも分かりませんな」

アヴィエーレ「うぅん…このエンジン音……それじゃあ離水させるよ♪」白い航跡を残しつつ一気に加速していくマッキとピアッジォの飛行艇と、そのあとに続くようにグレイとグリーンの二色迷彩を施した「ウォーラス」水陸両用飛行艇と濃いグリーンのアラドAr196水偵が滑走していく……

提督「わぁ…♪」

アヴィエーレ「さて…問題の離水は上手く行くかな……?」サングラス越しにピアッジォP.7をじっと眺めるアヴィエーレ…次第に水中翼の効果でピアッジォの艇体が持ち上がって行く……

提督「…」両手を組んで祈るような姿勢の提督…

ライモン「…」どういうことかは分からないが事故が起きないか心配なライモン…が、事情をしらない他の艦娘たちはわいわい言いながらはしゃいでいる


(※ピアッジォP.7…1929年のシュナイダー・トロフィー・レースに向けて試作された高速水上レーサー機。特徴は離水後デッドウェイトになるフロートを付けないで高速を出そうとした斬新な設計にあり、1000馬力級のエンジンと空気抵抗の少ない短い主翼、軽量な機体とがあいまって600キロは出る……予定だった。理論的にはエンジンをかけて機体後部にあるスクリューに接続し「船」として加速、艇体にある水中翼の効果で機首が持ち上がったところでスクリューへの動力伝達を切りつつ機首のプロペラへとギアをつなぎ、同時に機首を上げ角に保ってプロペラが水面を叩かないようにしながら離水する…のだが、そもそも操縦補助装置がほとんどなく機械の精度もまだまだの時代に「手が四本いる」ほど複雑な操作をして、さらに「船」モードで水面に起きた波によって視界がゼロになっている中離水するのは「不可能」とテストパイロットも飛行を投げ、飛ばずに終わった)


アヴィエーレ「頼むよ…上がってくれ……」

提督「……あっ、離水したわ!」

アヴィエーレ「よぉし!」

ライモン「…ふぅ」思わずため息をつくライモン…

グラナティエーレ(ソルダティ級「擲弾兵」)「やったじゃない?」

アヴィエーレ「あぁ…君のおかげさ♪」親指を立ててみせるアヴィエーレ

グラナティエーレ「もう…///」

ティルピッツ「カンピオーニ提督、失礼ながらあの飛行艇は飛ばすのがそんなに難しいのですか?」

提督「ええ…と、言うより飛んだことがないわ」

ティルピッツ「?」

提督「……かくかくしかじか」

ティルピッツ「はぁ…まるでブローム・ウント・フォス辺りで思いつきそうなアイデアですね。私の水偵がアラドでよかったです……」(※ブローム・ウント・フォス…ドイツの航空機メーカー。戦中に機体が非対称の偵察機「Bv141」などかなりのキワモノ飛行機を設計している)

提督「アラド196は堅実な水偵だものね…エリザベスのウォーラスもそうだけれど」

(※アラドAr196…戦中ドイツ艦の標準的な単葉、単発エンジンで複座の水偵。武装は20ミリ機銃二門と13ミリ機銃、50キロ小型爆弾等で、最高速度300キロ前後。エンジンは960馬力のBMW132空冷エンジンで、堅実な性能が幸いし輸出やライセンス生産もされたベストセラー機。ビスマルク級には4機搭載可)

エリザベス「いかにも…堅実なのが一番でございます」

提督「イギリスだものね……とにかく頑固なんだから…」

エリザベス「何かおっしゃいました?」

提督「いいえ♪」一同は庭の方にぞろぞろと歩いていき、提督は庭のデッキチェアに寝ころぶとパラソルの下からピアッジォとマッキの優雅な飛行姿を眺める……ドリアやチェザーレのような戦艦は提督と一緒にデッキチェアに座り、一方で活発な駆逐艦たちはとっとと水着になったり裸になったりして海に駆け込んで行った…

提督「おー…駆逐艦と潜水艦の娘は元気ねぇ♪」

チェザーレ「うむ。何しろ「あの時」も、燃料切れでへたり込んでいたチェザーレたちの分まで駆けずり回っていたからな……見た目こそ小さいが頼もしく思うぞ」

提督「そうねぇ…それに私はあの張りのある肌と元気さがうらやましいわ♪」

チェザーレ「ふむ…」むにっ…

提督「ひゃあっ///」

チェザーレ「…別に提督の肌とて、駆逐艦の娘らと変わらぬくらい張りがあるぞ?」

提督「そ、そう?」チェザーレの嬉しい褒め言葉にニヤけている提督…上空ではピアッジォが他の機体を引き離している……

アヴィエーレ「おぉぉ、いい調子だ…♪」

提督「よかったわね、アヴィエーレ?」

アヴィエーレ「あぁ、これで基地祭の時には派手な展示飛行が出来そうだよ…♪」

提督「それを聞いて私も嬉しいわ……あら、あそこで泳いでいるのはオタリアね…手を振っているわ♪」手を振りかえしてあげる提督

オタリア(グラウコ級大型潜「アシカ・オットセイ」)「あ、手を振ってくれたわ…嬉しい♪」オタリアだけに長い艶のある黒褐色の髪をなびかせ、ぴったりした黒の競泳水着にメリハリの効いた身体を包んでいるオタリア…と、その下の海中から濃い灰色の何かがゆっくり迫ってくる……





ジョーズじゃないすか!((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル

>>220 「♪~テーレン…テーレン…テレテレテレテレ……」

…と、見せかけて元ネタになったドヴォルザークの交響曲「新世界より」から第四楽章と言う可能性も……(笑)

オタリア「それにしても今日は波が暖かいし気持ちいい……ひぁぁっ!?」いきなり下から突き上げてきた「何か」にびっくりするオタリア…

スクアロ(スクアロ級中型潜「サメ」)「ばぁ♪……ふふっ、ずいぶんと可愛い悲鳴を上げてくれて……♪」

オタリア「も、もうっ…驚かせないで下さい!」

スクアロ「仕方ないでしょう、潜っていたらオタリアの脚がゆらゆらしていたんだもの…それにしても相変わらず喰らいつきたくなるような柔肌で……たまらないわ…♪」

オタリア「ひぅっ…い、一体どこに手を入れて……んくっ///」立ち泳ぎの状態で後ろから抱きつき、オタリアの吸いつくような競泳水着の裾から手を入れて秘所に指を入れるスクアロ……

スクアロ「ふふっ…サメっていう生き物はアシカもオットセイも食べるのよ……何しろこんなに柔らかくて美味しそうなんだもの、我慢できるわけないわよね…♪」

オタリア「ひぐぅぅ…いっ……んあぁっ、脚がつっちゃいますから……っ///」

スクアロ「もしそうなったら私が運んであげる…ふふ、もう我慢できないから……」すーっと潜ってオタリアのふとももを甘噛みし始めるスクアロ…

オタリア「あふっ…ひぅ……ひゃあぁぁ……んふぅ、んくっ///」

フラテッリ・バンディエラ(バンディエラ級中型潜)「どうした、オタリア?」

オタリア「べ、別にどうもしません……っ///」

バンディエラ「そうか?…具合が悪いなら上がった方がいいぞ?」

オタリア「え、えぇ……んんっ///」唇をかんで必死に喘ぎ声をこらえるオタリア…その間もスクアロが水中でふとももを甘噛みしたり、花芯をねちっこくかき回したりしながら潜水を続けている……

バンディエラ「…ならいいけどな?」

オタリア「は、はい…お気遣いありがとう……あっ…ん///」一瞬目が焦点を失ってとろんとした表情になったオタリア…が、バンディエラはもう岸辺に向かって泳いでいたので気付かれずに済んだ……

スクアロ「ふふっ…水中でイっちゃったみたいね……んふふっ」

オタリア「ひぅぅ……あへぇ…///」

スクアロ「…ふふ、やっぱり喰らいつくなら柔肉に限るわ……って、向こうもお楽しみの最中みたいね♪」沖合を眺めた…

…一方・少し沖合の波間…


フィザリア(アルゴナウタ級中型潜「カツオノエボシ」)「ふわぁぁ…気持ちい……い♪」ほとんど透明で、大事な部分とひらひらした縁取りだけが美しいスミレ色と紅をした、「カツオノエボシ」らしいネグリジェの風の際どい水着姿で、ぼんやりとあお向けに浮いているフィザリア……隣ではフルット級の「スパリーデ」(鯛)が息も絶え絶えでフィザレアにつかまっていて、時折ひくひくと身体を振るわせては美しい顔を台無しにするようなとろけた表情を浮かべ、だらしなく涎を垂らしている……

スパリーデ「はへぇ…あへぇぇ……もっろ……ぉ///」

フィザリア「ええ……ここがいいの?」にちゅっ…ぐちゅっ♪…水中で長い脚を絡ませ、ついでに腕を伸ばすとスパリーデのきゅっと引き締まったアナルに指を入れ、ゆったりと責めたてるフィザリア…

スパリーデ「えぇ…そこぉ……んはぁ…はへぇ、んぁ……///」

フィザリア「私「お魚」は大好物なの……どう、痺れてきたでしょう?」透明なビニール浮き輪に身体を預け、ゆったりとたゆたっているフィザリア…が、水中ではとろとろに濡れて温かくなった秘所を重ね、同時にスパリーデの引き締まったヒップも責めたてている……

スパリーデ「はへぇ…んひぃぃ……んあぁぁ…いいの……ぉ///」

フィザリア「気持ちいい?」

スパリーデ「あへぇぇ…はひぃ……きもひいぃれひゅ……ぅ♪」

フィザリア「そう、ならよかった……あ…」

スパリーデ「ろうしたの…ぉ?」相手が猛毒の「カツオノエボシ」だから…と言うわけでもないが、すっかり舌も回らなくなっているスパリーデ……

フィザリア「ふふ、私もイきそ…う……はぁぁ、んぅ…♪」

スパリーデ「ねぇ…フィザリアぁ…もっと、もっと……ぉ♪」

フィザリア「それじゃあ私がじっくり溶かしてすすってあげる……って、ジャンティーナ……」

ジャンティーナ(アルゴナウタ級「アサガオガイ」)「あー…フィザリアはここだったんですね……やっと会えました…♪」

フィザリア「ええ。何かご用……?」

ジャンティーナ「はい……実を言うとジャレアお姉ちゃんとサルパお姉ちゃん(どちらもクラゲの一種)はもうすっかりへとへとになっちゃって……だからフィザリアを探していたところだったんです…♪」…ジャンティーナはクラゲを主食とする殻のあるクラゲの一種「アサガオガイ」だけに、水色の巻き貝を頭飾りにしていて、波にゆったりと漂いつつフィザリアのそばまでやってきた……と、そのまま胸を優しくこね回し、腰を擦り付けつつ舌を入れてキスをした……

フィザリア「うぅ…んくぅ……あへぇぇ……♪」

ジャンティーナ「あははぁ……お姉ちゃんの膣内はねっとりして温かくて、とっても気持ちいいです……♪」ゆったりと波に揺られながらフィザリアの花芯に指を差しいれて、「にちゅっ…くちゅっ…♪」…と優しく責めあげる

スパリーデ「あんっ……私も、もっと…ぉ///」

ジャンティーナ「ほぉら、フィザリアお姉ちゃん……三人で一緒に気持ち良くなりましょう…?」

フィザリア「はへぇ…あへぇぇ……♪」

スパリーデ「気持ひいいれふぅ…あへぇ、んぁぁ…♪」

…パラソルの下…

提督「…太陽の照り返しでよく見えないけれど、スパリーデたちは沖合で仲良く泳いでいるみたいね♪」

ドリア「いえ、仲良く泳いでいると言うよりも…あれは……」

提督「違うの?」

ドリア「えーと、いえ…仲良くしていますよ♪」

提督「何か引っかかる言い方ね…チェザーレはスパリーデたちがどうなっているか見える?」

チェザーレ「あー、チェザーレにはよく見えるが…世の中には知らないでいる方がいいこともある……そう言うことだ」

提督「ふぅん?」

アヴィエーレ「ま、まぁそう言うことだね……とりあえず飛行艇は無事に飛べることが分かったし、そろそろ着水させるよ///」

提督「また手伝いが必要かしら?」

アヴィエーレ「うーん、戻りは大丈夫かな…グラツィエ♪」

提督「いえいえ……あ、オタリアが戻ってきたわ♪」

オタリア「はぁ、ふぅぅ…ぜぇ、はぁぁ……」

提督「お帰りなさい、泳いで疲れちゃったみたいね?」

オタリア「あー…はい、結構頑張って泳いできましたから…」

提督「そう……それにしてもずいぶん顔が火照っているみたいだけれど?」

オタリア「いえ、それは……結構太陽が眩しかったので///」

提督「それじゃあ午後はゆっくりお昼寝でもするといいわ…♪」

オタリア「はい」(ふぅ、どうにか無事にごまかせたようです…)

提督「ところでオタリア…スクアロのえっちはどうだった?」

オタリア「!?」

提督「ふふっ、驚かなくたっていいじゃない…オタリアの後ろからスクアロが抱き着いているのは私にも見えたの……いきなり水中から襲ってくるところは、まるで「ジョーズ」だったわ♪」

スクアロ「…サメだものね、何しろ」

提督「あら、お帰りなさい」

スクアロ「ただいま……むちゅ、ちゅぅ…♪」

提督「んぅぅ、んむっ…ちゅむっ……もう、スクアロったらキスの仕方が乱暴なんだから///」

スクアロ「ふふ、悪いね…ほら、シャワーを浴びに行こうか♪」

オタリア「え、ええ…///」

提督「さてと、それじゃあ私は着水の様子でも見に行きましょうか」

アヴィエーレ「ああ、見物においでよ」

提督「ええ…それじゃあエスコートはお願いね?」アヴィエーレと指を絡めて手を握り、にっこりと微笑みかける

アヴィエーレ「もちろん。任せておいてよ…///」(…なんて柔らかい手なんだろう///)

………

提督「それはそうと…フロートのないピアッジォP.7の着水ってどうするの?」

アヴィエーレ「それは自分で見て確かめてくれればいいさ…きっと度肝を抜かれるよ」

提督「せっかく珍しい機体なんだから壊れないといいけど……まずはウォーラスとアラドね」

アヴィエーレ「ああ…まさかお客様の燃料を無駄遣いさせるのもどうかと思ってね……さすがクィーン・エリザベスだね、降下角も速度もばっちりだ……」

エリザベス「お褒めいただき光栄でございます」

アヴィエーレ「うわ!」

エリザベス「さて……それでは着水いたします♪」片手の手のひらをエレベーターガールのように上に向けた……

アヴィエーレ「おぉ…見事だね」グォォ…ォンと接近するにつれてエンジン音が耐え難いくらい大きくなったと瞬間、ふっとウォーラスが着水した…

提督「本当にエリザベスは上手ね♪」

エリザベス「恐縮でございます…さぁ、ティルピッツもどうぞ見事な着水を見せて下さいませ♪」

ティルピッツ「ぐっ…」(…私はフィヨルドに閉じこもっていたから水偵の離着水は苦手なのに……えぇい、ままよ!)

アヴィエーレ「うーん…まぁなかなかじゃないかな?」

提督「なかなか上手なのじゃないかしら…それにいつもの場所と勝手が違うものね?」

ティルピッツ「いや、お世辞はいい……あんまりうまく降ろせなかったから」

提督「そう言うこともあるわ…ね♪」

ティルピッツ「うー…」

アヴィエーレ「さてと…二人が水偵の航跡で波を打ち消してくれたから、着水するなら今だね……♪」マッキM.33が上空で優雅に旋回しつつ待機している間に、真っ赤な矢のようなピアッジォが高速で降下をかけてくる…

提督「ち、ちょっと降下が早い気がするのは気のせい?」

アヴィエーレ「いや、気のせいじゃないよ……さぁ、タイトロープ(綱渡り)の始まりさ!」早い速度のまま低空まで降りてくると、水面すれすれで失速速度ぎりぎりまで持ち込みプロペラへの動力をカット…着水した瞬間にスクリューへ動力をつなぐ……

提督「はぁぁ…まるで曲芸ね……」

アヴィエーレ「……ふぅー」額に浮いた汗を拭う…

エリザベス「お見事ですわ」

ティルピッツ「ええ、称賛に値します」

アヴィエーレ「ふっ、飛んでいるものはいつか降りるものさ……でも、ありがとう♪」サングラスを外してウィンクをする…

提督「アヴィエーレ、とっても上手だったわ…♪」抱きついて頬にキスをする提督…

アヴィエーレ「あ、あぁ…なんでもないさ。さ、今度はマッキを着水させるからね……名残惜しいけど離れてくれ///」

提督「はいはい…♪」ヴォォ…ンッ……とエンジン音を轟かせ、真っ赤なイタリアンレッドも陽光に鮮やかなマッキM.33が滑らかに海面へ滑り込んでくる……明るい太陽に黄色いレンガ敷きの波止場、きらめく海面…南イタリアの晩夏ならではの美しい風景に古き良き「飛行艇時代」の機体が映える……

アヴィエーレ「よし、決まった…それじゃあ私は機体の整備に取りかかるから、チャオ♪」

提督「チャオ、アヴィエーレ…食事の時間には戻って来てね♪」ちゅっ♪

アヴィエーレ「了解した…///」

ティルピッツ「……どうしてマカロニの連中はこうも簡単にキス出来るのか……うぅ、顔が火照ってきた///」

提督「ふふ…これが愛のなせるわざよ♪」

エリザベス「相変わらずカンピオーニ提督は口がお上手でございます」

提督「かもね…うふふっ♪」ぱちっとウィンクをして手をひらひら振ると、エリザベスたちを残して庭の方へと歩いて行った……

………

…とある日・厨房…

ディアナ「ふむ…これは少々困りました」お茶の時間になって提督が何かつまもうと厨房に入ると、ディアナが白いエプロン姿で冷蔵庫の食材リストを見ながら考え込んでいる……

提督「…どうしたの、ディアナ?」

ディアナ「あぁ、提督……いえ、実を申しますと…」

提督「……なるほど、最近「鶏もも肉や手羽の献立が多くて、その分胸肉を余している」…と」

ディアナ「ええ、その通りです。丸鶏の方が割安なのでつい買いこんだのはいいのですが……困ってしまいますね」

提督「ふぅん……ねぇディアナ、よかったら私にやらせてくれないかしら?」

ディアナ「提督には何かアイデアがおありですか?」

提督「ええ、いかにも「アイデアがおあり」よ…エプロンに着替えるわ♪」

ディアナ「それではよしなに…」

提督「はいはい♪」

ディアナ「……さて、これでどのようなお料理になるのでしょう?」


…調理台の上には余っている鶏胸肉が十数切れと塩、砂糖に粗挽き胡椒、バジリコ……と、基本的な調味料が一揃い置かれ、隣には幅広のラップひと巻きと真空パック、袋を閉じる針金と底の浅い平鍋が置いてある…


提督「ふふ、まぁとくとご覧あれ…♪」まずはラップの上に乗せた分厚い胸肉を、包丁で中央から左右に広げるように削いでいって薄手の大きな一枚肉にする…

エリトレア「…あ、今日は提督が厨房ですかっ♪」

提督「まぁ色々あって…ね♪」薄くなった一枚肉に軽く塩と砂糖をまぶす…

ディアナ「砂糖ですか…?」

提督「ええ。大丈夫、間違いじゃないわ」ついでに粗挽き胡椒や刻んだバジルを中央部に散らし、端っこの部分から肉を巻いていく…

ガッビアーノ(コルヴェット「ガッビアーノ」級)「…おや、なんだか美味しそうなものを作っているみたいだ…よかったらこの孤独なカモメにもくれるかな……」お菓子でも探しに来たのか、ひょっこり顔を出したガッビアーノは黄色い瞳にそこはかとない哀愁感……その割に意地汚いほど何でもよく食べるあたりはいかにも「ガッビアーノ」(カモメ)らしい…今もじっと提督の手元を見つめ、何かつまみ食いできそうな物がないか確認した……

提督「出来上がったらね?」

ガッビアーノ「分かった…それじゃあ失礼しよう……」対潜捜索時に静粛航行するための補助電動機がある「ガッビアーノ」級だけあって、さりげなく冷蔵庫に残っていたハムサンドウィッチを手にして静かに退却していった…

エリトレア「…あーっ!?」

ガッビアーノ「どうも、ごちそうさま…ほど良くしっとりしていていい塩梅だったよ……」

提督「ふふ、ガッビアーノは相変わらず食べるのが好きね?」苦笑しながら巻いた鶏肉の形を整えると、ラップを使って長細いキャンディのように包み、ねじりあげたラップの端っこを針金で留めた…

ガッビアーノ「なに、提督ほどじゃないさ……」

提督「…余計なお世話よ♪」

ディアナ「それはそうと……何やらソーセージみたいな形になりましたね?」

提督「ふふ、ご名答……これは「鶏胸肉のソーセージ」よ♪」

ディアナ「なるほど…その手がありましたか」メモを取りつつ感心した様子のディアナ…その間に平鍋のお湯が沸き、提督は出来上がったラップ包みの「ソーセージ」を真空パックに入れ、空気を抜くと真空パックごとお湯に浸けた……

提督「さてと…後はこれで十五分も浸しておけば熱が通るから、その後はお湯が冷めるまで鍋に浸けて……最後はバラバラにならないよう固まるまで冷蔵庫に入れておくだけ」

エリトレア「わぁ、美味しそうですねっ♪」

提督「ええ、結構美味しいわよ…そのうえ鶏の胸肉なら安いものね♪」

デュイリオ「……それに鶏肉なら提督の「低カロリー生活」にもよいでしょうし♪」後ろでティーセットを取り出しながら、くすくす笑うデュイリオ…

提督「むぅ……あなたたちはみんなして私に質素な食生活を送らせようとするのね?」

ジュセッペ・フィンチ(カルヴィ級大型潜)「うむ…というわけで提督にはこの「バランス栄養食」を使って、日本のゲイシャのようにダイエットを進めてもらいたい」…自称「日本通」のフィンチは、ハンディサイズの黄色い箱に入った「クッキーみたいなブロック」を差しだした……

提督「それはどうも……んむ、んむ…」

フィンチ「……で、お味は?」

提督「ごくん…っ……そうね、ちょっと後味が風変りだけれど…チーズ風味でなかなか美味しいわ。でもこれじゃあおやつにしても寂しいわ」

フィンチ「それはおやつじゃない…それで一食をまかなうんだ」

提督「え…せっかくの食事の時間にこれだけじゃ生きていけないわ……!」

フィンチ「やれやれ……提督が理想の細身を手にするのはまだまだ先のようだ」

………

…昼食時…

提督「……という風に言われまして」…ペールグリーンで胸元の襟ぐりが深いミドル丈のワンピーススタイルで、髪型はライモンとお揃いの高く結ったポニーテール…そして何か身動きするたびに「たゆん…」と白桃のような乳房が弾む…

グレイ提督「まぁ…ずいぶんな言われようですこと?」細身ですらっとしているグレイ提督は「高みの見物」と、上品に口元を押さえてくすくす笑った…

提督「全くですよ…せっかく私が美味しく食べられるように料理したのに……」そう言いつつも粒マスタードをつけた鶏ハムを数切れと、ズッキーニとナスのトマト煮込み、熱々のラザーニアをたっぷりとよそい、パン皿にはもちっとしたフォカッチャを一つ二つ…さらにワインをたっぷりグラスに注いだ…

カヴール「あら、提督…♪」にこにこしつつもとがめるようなカヴール…

提督「いいの。私は欲求に従って食べることにしたから……止めたって無駄よ?」

ライモン「はぁ…やれやれですね……」

提督「…もし私を断食させたいならイギリスにでも連れて行くといいわ!」

グレイ提督「……ふふ、面白い意見ですわね…フランカ?」

提督「あっ…失礼しました」

グレイ提督「いいえ、構いませんわ……ですが今度また「メイドごっこ」でもいたしましょうね…♪」こっそり耳打ちするグレイ提督…

提督「…は、はい///」

エメラルド「あー……閣下に弱みを見せたら最後です。まず助かりませんから…」

エリザベス「…さようでございますね♪」

ドリア「……ところで提督、もう少しラザーニアをいかがです?」こちらも美食には目がない「アンドレア・ドリア」だけに、にっこりと笑みを浮かべて取り分け用のスプーンを差しだした…

提督「ありがとう、いただくわ……んふぅ、はふぅ……美味ひぃ…♪」

ゾエア(大型敷設潜「フォカ」級)「美味しいですか、提督…?」エビ・カニ類の幼生「ゾエア」を名に持つだけあって、抜けるような白い肌と淡い青色の透けそうなワンピースで座っている……

提督「ええ、とっても美味しいわ♪」

ルイージ・トレーリ(大型潜「マルコーニ」級)「うーん…それは喜ばしいことなのか……はたまたとがめるべきことなのか悩みますね?」

チェザーレ「なに、構わぬさ…食べられるときにうんと食べるがよい♪」

提督「チェザーレにそう言ってもらえると心強いわ…それでは……きゃぁ、熱っ!?」スプーンですくったラザーニアから、とろとろのホワイトソースが胸元に垂れ、ふっくらと丸みを帯びた提督の乳房に沿ってたらりと流れる…

ライモン「提督、今濡れふきんを……っ!?」

ドリア「ちゅっ…れろっ……ぺろっ…///」

提督「ひゃぁ……んぅ♪」

カヴール「あら、ドリアったら……うふふふっ♪」

エウジェニオ「…ドリアもなかなかやるわね……ふふ、貴女たちも私で試してみたい?」左右や向かいに座っている駆逐艦や潜水艦に向かって、いたずらな笑みを浮かべた…

パンテーラ(駆逐艦「レオーネ」級)「うぅ…さすがにここでそれは恥ずかしいわ///」

アルベルト・グリエルモッティ(大型潜「ブリン」級)「な、何と破廉恥な…///」艦名が神父に由来するとされるグリエルモッティは修道女の格好をしていて、エウジェニオの刺激的な申し出を聞くと真っ赤になって首を振った…

アルヴィセ・ダ・モスト(駆逐艦「ナヴィガトリ」級)「…エウジェニオがいいなら……ぜひ♪」

ニコ(ナヴィガトリ級「ニコロソ・ダ・レッコ」)「…うん///」

エウジェニオ「ふふ、貴女たちったらいつも新しいことに興味津々ね…♪」

レオーネ・パンカルド「何しろ航海者ですから…♪」





…午後・提督寝室…

提督「ふわぁぁ……美味しいものを食べていいワインを飲んだら、急に眠くなってきちゃったわ……ふぁぁ…」

ライモン「ふふ、仕方ないことですよ…しばらくお休みになったらいかがです?」

提督「そうねぇ……それがいいわね…まだ昼下がりは焼け付くようだし、動くには向いていないものね?」

ライモン「ええ」

提督「…よかったらライモンもお昼寝する?」提督はワンピースと花柄のショーツ以外なにもまとっていなかったので、するりと脱ぐとベッドに寝転がり、ベッドの空いているスペースをぽんぽんと叩いた…

ライモン「いえ、今日はムツィオと一緒にお昼寝しますから……どうぞゆっくりなさってください」

提督「そう、それじゃあお休みさせてもらうわ…また後でね♪」

ライモン「はい」少しでも涼しい風が入るようにと、気を利かせて窓を開けて出て行った…

提督「ふわぁぁ…あ……んふふ、気持ちいいっ♪」一糸まとわぬ姿で洗いたてのタオルケットの上を転がってみる提督…ほのかな「太陽の匂い」と甘い洗剤の香りがするタオルケットを抱き枕のように抱きしめたり、ネコのように「うーん」と伸びをしてみたりする……

提督「基地祭の資材も数日中には届くし…残りの潜水艦の娘たちもそのころまでには建造してあげられそうだし……♪」と、執務室のドアをノックする音が聞こえた……

提督「はぁ…い?」鎮守府全体が静まり返る昼寝の時間にわざわざやってくることに驚きを感じながら、バスローブを羽織ってドアを開けた…

リットリオ「こんにちは、提督っ……お邪魔しに来ました♪」床の石材からしみ出す冷気を感じたいのか、靴やスリッパをはかない白いストッキングだけの素足に、えんじ色のひざ丈フレアースカートとシンプルなシルクのブラウス…長身のリットリオを引き立たせるすっきりしたシルエットが爽やかな印象を与える……

提督「あら、リットリオ…妹たちはいいの?」

リットリオ「はい。ヴェネトたちが寝てから来ましたから…♪」くりっとした瞳に可愛らしい顔だちのリットリオが無邪気な様子でにっこりした…

提督「……私もこれからお昼寝するところだけれど…一緒に添い寝でもする?」

リットリオ「はい…ぜひ提督と一緒にお昼寝したいです♪」

提督「ふふ……分かったわ、それじゃあいらっしゃい」もう一度寝室に戻るとバスローブをハンガーにかけ、裸でタオルケットの上に寝ころぶ…

リットリオ「それじゃあ私も…えいっ♪」しゅるっ…とブラウスとスカートを脱ぐと、紅いリボンの縁取りが付いたストッキングとランジェリーを組み合わせた姿でベッドに潜りこんできた……

提督「……それにしてもリットリオは脚が長いわね。七頭身はありそう」

リットリオ「そうですねぇ…七頭身までは行きませんが「6.8頭身」って言ったところです♪」

(※6.8頭身…リットリオ級のL/B値(縦横比)はおよそ6.8。主砲斉射時の「据わりをよくする」ためであったり装甲重量で安定を失わないよう、各国では縦横比が5に近い戦艦が多い…その中でリットリオ級はかなりスマートで、巡洋艦らしいデザインで高速を狙うイタリア戦艦らしい)

提督「そうねぇ…それに肌がすべすべで……きめ細やかで触り心地がいいわ♪」

リットリオ「もう、くすぐったいですよっ…♪」

提督「それで…私の所に一人で来るなんてどうしたの?」

リットリオ「いえ…ヴェネトにローマと、提督が私の妹たちを「建造」してくれたので、改めてそのお礼を言いたいなぁ……って///」

提督「いいのよ。リットリオは何かと忙しい時に手伝ってくれたし、姉妹で仲良く思い出を作って欲しいもの……もし出来ることなら「インペロ」だって呼んであげたい所だけれどね」

(※インペロ(皇帝)…リットリオ級戦艦四番艦。「ローマ」と対になる「リットリオ級・第二グループ」になる予定だったが、資材不足と小型護衛艦艇の優先により作業が先送りされ未成)

リットリオ「いいんですよ。ローマまで来てくれて私は充分満足してますから……それより提督…///」

提督「なぁに?」

リットリオ「…ちゅぅぅ…ちゅぱ……ちゅむっ…♪」

提督「んふぅ…っ!?…んちゅ……れろっ、ちゅる……♪」

リットリオ「ぷはぁ……私、提督と愛し合いたいです♪」

提督「……可愛いリットリオに言われたら断れないわ」

………

…一時間後…

提督「はぁ、はぁ、はぁ……///」

リットリオ「んはぁぁ…もっと……ぉ♪」

提督「ふひぃ…ふぅ……ぜぇ、はぁ……///」火照った提督の身体から汗がしたたり落ち、リットリオと触れ合う肌がぬるぬるする…

リットリオ「提督、もっとですよぅ…それとももう疲れちゃったんですか?」

提督「そんなこと…ふぃー……あるわけないわ……ふぅ、ふぅぅ……」提督はリットリオにのしかかられ、胸の谷間に顔を押し付けられているせいで声がくぐもっている……まるでサンドウィッチから具がはみ出すように提督の脚のつま先と長い髪、それにリットリオの背中に回されている手だけがベッドからのぞいている…

リットリオ「それじゃあもっと愛して下さいねっ…フォルツァ(頑張れ)、提督っ♪」

提督「ふー…はー……それじゃあ…♪」くちゅっ…にちゅっ……

リットリオ「ひゃあっ……んっ♪」髪を振り乱して濡れた花芯を合わせるリットリオ……いつもの親しげな瞳は色情で熱っぽく輝き、その視線を浴びるたびに提督は電撃を浴びたように身体がしびれ、とろっと蜜を垂らした…

提督「もう…まだ満足しないの……?」

リットリオ「はい、こうやって誰かと一緒に昼下がりのベッドにいられると思うたびに……嬉しくて…んくぅ♪」指を唾液で濡らすと自分の花芯に差しいれて「くちゅり…」とかき回しつつ、甘えたような声を上げる…

提督「も、もう……そんな言われ方をしたら私だって優しくしてあげたくなっちゃうじゃない…///」

リットリオ「はいっ、優しくして下さいっ…♪」

提督「あぁ、もう……午後は書類を片づけるからしっかり昼寝をしておきたかったのに…」

リットリオ「ふふ、ごめんなさい…♪」

提督「まぁいいわ…書類なんか明日だっていいもの……それより、今はリットリオがいいわ…♪」

リットリオ「そうですかぁ…それじゃあ私も頑張っちゃいます!」提督の上で膝立ちになり、馬にまたがるように秘部を擦り付けるリットリオ…

提督「あひぃ、ひぅぅ…んぁぁっ、いいっ……あぁぁっ♪」

リットリオ「あふっ、んっ…ふぅっ……どうですかぁ、気持ちいいですかっ?」

提督「はひっ、んっ、んあっ……ちょっとリットリオ…は、激しい……っ///」

リットリオ「んっ、んぅっ…はぁ、んぁぁ……そうですか…ぁ?」

提督「ええ……これ以上…はぁぁ、ん゛あぁっ……されると……腰に…きそう……で…///」

リットリオ「えー?…もう、提督なら大丈夫ですってば…♪」

提督「そう言われても…っ……私が大丈夫じゃないって……ん゛ぁ゛ぁぁっ…言っているのにぃ…っ♪」

リットリオ「あははっ♪…提督ったらよだれ垂らしちゃって、とっても気持ちよさそうですよっ?」

提督「それとこれとは…ひぐぅぅっ……話が別…んはぁぁっ♪」

リットリオ「大丈夫ですよっ、リットリオが優しくしてあげますからっ♪」

提督「り、リットリオの…あぁぁっ!…「優しく」は…っ、超ド級艦基準の…「優しく」だからっ………ちっとも私に…んひ゛ぃぃっ……優しくない…の゛ぉ…っ♪」

リットリオ「えー、そんなことないですってばぁ……んぁぁっ、今の気持ちいいっ♪」

提督「んひぃぃっ…んあぁぁっ///」ぷしゃぁぁ……

リットリオ「わぁぁ、提督のふとももべとべとですねっ…ふふっ、とっても暖かくてぬるぬるしてますっ♪」

提督「……あーあ…今日洗ったタオルケットとシーツなのに……んっ、んぁぁ……っ///」ぐちゅ…にちゅっ……ベッドの上で顔を横に向け、気だるい焦点の合わない目で転がった枕を眺める提督……その間もリットリオは汗を滴らせながら脚を絡めてくる……と、リットリオが時計に視線を向けた…

リットリオ「あ…もう1500時ですね……提督はそろそろ午後の執務に取りかかる時間ですか?」

提督「あー、もう今日はいいわ…こうなったらとことんまで付き合ってあげる……ん…じゅる……ぐちゅっ…///」

リットリオ「ふふっ、提督は優しいですねっ♪」

提督「えぇ、まぁね……全くもう…♪」リットリオの超ド級の色欲に苦笑いしながら滑らかなふとももに舌を這わせた……

………

…夕方・工作室…

提督「……そう言うわけで座ったままだけど…ごめんなさいね……うー、腰が……」制帽を脱いで作業台の上に置き、ぐでっ…と工作室の椅子にへたり込む提督……

カヴール「それでこの時間ですか…ふふっ、リットリオは無邪気な所がありますものね♪」

グラウコ(大型潜「グラウコ」級)「……構いませんよ。どうぞ私たちに任せて座っていて下さい」

…濃い青色の瞳としっかりメリハリのある身体をしている大型潜「グラウコ」は妹の「オタリア」(アシカ・オットセイの類)と一緒に、戦前ポルトガル潜として発注されたものの起工直後にキャンセル…イタリア王国が引き取って建造したところ大変優秀で、以後のイタリア大型潜のモデルとなった……と、優等生だけあって何でもそつなくこなせるので、提督に代わってテキパキと建造の準備を進めた…

提督「三人ともありがとう…あいたた……」

オタリア「さすってあげましょうか?」

提督「うー……お願いしていいかしら…」

オタリア「はい、いいですとも…♪」黒褐色のつやつやな髪をしたオタリアが優しく後ろからさすってくれる……

提督「…あ゛ー…気持ちいいわ……しびれが取れるみたい…」

カヴール「ふふ…おばあちゃんの私でさえそんなマッサージをお願いしたりはしませんよ?」

提督「…それはリットリオとえっちしたことがないからよ……どう、大丈夫そう?」

グラウコ「もちろん…準備は出来ました」

提督「ありがとう…それじゃあ……いたた…ぁ」腰やふとももの筋肉のあげる悲鳴に顔をしかめている提督はカヴールに支えられつつレバーに近寄ると、グラウコとオタリアの手に自分の手を重ね、ぐいっ…とレバーを引いた……

グラウコ「さて…これで数時間もすれば、また新しい娘たちが来てくれるわけですね?」

提督「ええ、それで今回の……きゃっ!?」いつもはほのかに青い光を放ちつつ、ゴトゴトと静かな音を立てる、建造装置…通称「ド○ター・フーの電話ボックス」あるいは「お洒落なクローゼット」が突然ガタガタと震え、何回かバフッ…と「咳き込み」をおこした……

提督「…」

オタリア「…」

カヴール「……大丈夫でしょうか」

グラウコ「…あー、こういう時は……」バシッ!…と「電話ボックス」の脇を引っぱたき、一歩下がって様子を見た……

カヴール「えーと……どうやら静かになりましたね」

グラウコ「…この手に限るわ」

提督「あー……それで、建造にかかるのが……144時間っ!?」

カヴール「あら…これはまたずいぶんとかかりますね……」

グラウコ「おおよそ六日と言ったところですね……待ちますか、提督?」

提督「いいえ。いくら私の気が長くても、さすがにそれはないわ……建造装置がどうなっているかも分からないし、今日はこれだけにしておいて…六日後、この建造で誰が来るかを確かめてから、次回の建造に取りかかりましょう」

カヴール「そうですね…もしかして深海棲艦か何かが出て来るかもしれませんし……」

提督「ええ…今の所は建造装置でトラブルがあったとは聞かないけれど…何があるか分からないものね……」

オタリア「あの、提督……ここは小銃を持たせた見張りでも置いた方がいいのではないでしょうか?」

提督「うーん……確かに待機室の中から数人づつ立哨に立ってもらった方がいいわね……それと武器庫から短機関銃を持ち出しておくわ…」

カヴール「でしたら提督には夕食の時にでも、全員にお話しして頂いて…」

提督「ええ、そうするわね……」ゴトゴト動いている建造装置を恐るおそる眺めた…

…夕食時…

提督「……という訳でして、グレイ提督とヴァイス提督も工作室へ一人では近づかないようになさってください」…改めて英語で二人に説明する提督

グレイ提督「それであんなに物々しい態勢だったのですね?」

ヴァイス提督「確かに…私も訓練か何かかと思いました」

提督「どうもお騒がせしてすみません…とはいえ何が起こるか分かりませんから」…建造が終わるまでは工作室の前に交代で二人組の見張りを置き、そばには提督が武器庫をひっかきまわして持ち出してきた「ベレッタ・M12S」短機関銃と、イタリアンM14こと「ベレッタ・BM59」オートマティック・ライフルが立てかけてある……


(※ベレッタBM59…7.62×51ミリ口径のオートマティック・ライフル。戦後アメリカから供与されたりライセンス生産したものの旧式化したM1「ガーランド」小銃が余り、これをNATO共通7.62ミリ弾に口径を変更、箱型20連弾倉をつけることでオートマティックライフルに生まれ替わらせたもので、ベレッタAR70/90アサルトライフルの配備まで長くイタリア軍で採用されていた……本家アメリカが同様の経緯でM14を開発するより早かったが、イマイチ知名度は低い)


グレイ提督「いいえ、構いませんわ……あら、どうしたの?」…足下にやって来て尻尾を振り、何かおやつをもらえないものかとグレイ提督を見上げているルチア……

提督「あー、すみません…どうも食い意地が張っている子で……もうないわよ?」

ルチア「ハフッ、ワフッ……ハッハッハフッ…♪」ちょこんと座って首を傾げ、舌を垂らしてグレイ提督を見上げている…

提督「まったく……どうぞ、メアリからあげて下さい」パンをちぎって差しだす提督

グレイ提督「あら、嬉しいです」小さくちぎった欠片を指でつまみ、ルチアに食べさせるグレイ提督……

ルチア「ワフッ…ハフッ……」

提督「もう…これじゃあ食べさせてないみたいじゃない……シャルロッテもあげてみますか?」

ヴァイス提督「よろしいのですか…?」

提督「ええ、もちろん…はい、どうぞ♪」

ヴァイス提督「ダンケシェーン……おいで」

ルチア「ワフッ…♪」

ヴァイス提督「待て……そのまま…」

ルチア「…フゥーン……」

ヴァイス提督「……よろしい、食べてよし!」

ルチア「ハフッ、ハフ……ワンッ♪」数口でちぎったパンを飲み込むと、まだ物欲しげにヴァイス提督の方を見上げている……

ヴァイス提督「あの…カンピオーニ提督」

提督「ええ」

ヴァイス提督「その…足元からどいてくれないのですが……」

提督「それは困りましたね……どれどれ?」テーブルクロスをめくってヴァイス提督の足もとを見ると、ほっそりした白い脚を包む灰色のストッキング…と、その足の脇に寝そべり、時折横目でヴァイス提督の食べる様子を眺めているルチアが見えた……

提督「ふぅ…ルチア、もうないのよ?」

ルチア「…クゥーン?」

グレイ提督「ふふ、こういう時は何もあげなければ勝手にどこかへ行きますわ……実家でもそうでした」

提督「そう言えばメアリは実家に犬を飼っているそうですね…確か黒のラブラドールとウエルッシュ・コーギーだとか……よかったらどんなワンちゃんなのか聞きたいです♪」

グレイ提督「ええ、構いませんよ」食後のコーヒーにキアンティを垂らし、それからイギリス上流階級らしい鼻にかかった英語で話し始めた……


………

…十数年前・イギリス東部…

グレイ提督(少尉)「お父様、どうでしょうか?」


…グレイ提督の実家はカンタベリーからそこそこ離れた、森や畑が散らばるのどかな田園地帯にあり、敷地はまるで児童文学「小公子」に出てくる「ドリンコート伯爵」の実家そこのけに広く、屋敷の中ではメイド数人と執事、それに運転手のセバスチャンがいつも控えている…


グレイ伯爵「うむ、よく似合っておる…わしも、わしの父親……メアリから見たらお祖父さんだな……も、若い頃はそうやって慣れない制服に袖を通してはぎくしゃくと動いていたものよ…」暖炉の前で肘かけ椅子に腰かけてマントルピースの上にかけてある先祖の肖像画を指差し、それからグレイ提督が海軍少尉の正装に身を包んでいる様子を誇らしげに眺めた…

グレイ少尉「やはりそうなのですね…お父様?」

グレイ伯爵「もちろんそうだとも…世の中では『アールグレイ』の由来になったグレイ伯爵の方が有名だが、我が家の家系…『リリーフォードのグレイ伯爵家』とて捨てたものではないのだぞ?……古くはネルソンと同時代にナポレオンの野望をくじくため戦列艦を率い、第一次大戦ではジュットランド沖海戦で「フォン・デア・タン」と砲火を交え…第二次大戦ではカニンガム提督と肩を並べ、地中海の枢軸軍を相手に奮闘したのだよ」

グレイ少尉「それではわたくしが海軍に入ったのはいわば必然ですのね?」

グレイ伯爵「うむ、そう言うことだ…何しろリリーフォード・グレイ伯は第一海軍卿こそ輩出してはおらんが、歴代当主はほぼそれに肩を並べる実力を持っていて、海軍上層部にもずいぶんと顔が効くのだ……メアリ、あそこを見てみなさい」(※第一海軍卿…海軍最高司令官)

グレイ少尉「何でしょうか、お父様?」

グレイ伯爵「あれは、当時のフィッシャー第一海軍卿が我が家においでになった際に撮られた写真だ。歴代の海軍首脳部をお招きするのが我が家の伝統で……わしが父上に聞いたところによると、その伝統は英仏戦争の頃にできたものらしいがな……その時は貧しかったものの、後に本国艦隊の司令官にまでなった若手士官を夕食に招いたことから始まっているそうだ」

グレイ少尉「では、わたくしも頑張らなくてはなりませんね?」

グレイ伯爵「そうだな…メアリが艦隊司令官になれば、我が家で夕食会が出来るぞ?」

グレイ少尉「ふふ、それではなおの事頑張りますわね……そう言えばブラッキーのお散歩がまだでした」

グレイ伯爵「あの黒いラブラドールの子犬か。一緒に遊んでやるのは構わんが、まずは正装を脱いで行きなさい……汚してはまずいだろう」

グレイ少尉「分かりましたわ、お父様」

………



グレイ提督「…ラブラドールの「ブラッキー」はわたくしが海軍士官候補生だったころに子犬として産まれ……いまではすっかり立派な成犬ですわ」

提督「なるほど……しかし、その…何というか……」

グレイ提督「なんでしょう?」

提督「…生まれの違いを実感するようなお話でした」

ヴァイス提督「ヤー…同感です」

グレイ提督「そうかもしれませんわね……ですがわたくし、候補生時代にはちゃんと二段ベッドで就寝いたしましたし、自分で服を畳みもしましたわ?」

提督「……それを特別な経験として語ることが出来るのがメアリらしいです」

グレイ提督「あら、これでも訓練係の下士官たちからは「飲み込みがいい」と褒められたものですのよ…♪」

提督「うーん…」

グレイ提督「ふふ…ではコーギーのお話をいたしましょうか」



………

…十年ほど前・ロンドン…


グレイ提督(中佐)「久しぶりのロンドンですが…相変わらずで安心しましたわ」

…それまで東インド艦隊やスカパ・フローのグランド・フリート(本国艦隊)で駆逐隊や巡洋艦戦隊司令官を務めていたグレイ提督は、今度はイギリス南部の「ポーツマス管区」の一司令官として海軍司令部に呼び出された後、数日もらえた休暇を使って家族を呼び、ロンドンでの買い物を楽しんでいた……

グレイ伯爵(父)「うむ、わしも久しぶりにロンドンに来たからな……いつもは我が家へ仕立てに来てもらうが、今日は久々にサヴィル・ロウの洋服屋「キングスマン」に行くつもりだ」

(※サヴィル・ロウ…高級紳士服店が並ぶ通り。「背広」の由来になったとも)

グレイ提督「分かりましたわ……その間わたくしとお母様は服地でも見て参りますわね」

グレイ父「うむ。たまさかの休暇なのだから好きなようにしなさい…アン、君も一緒にいてやってくれるね?」

グレイ伯爵夫人(母)「ええ、もちろんわたくしもお供いたしますわ……何しろメアリの昇進祝いなのですから」

グレイ父「そうか…でもあまり高いのはいけないよ、わしの心臓に悪いからね」

グレイ母「ええ、そうですわね。それではメアリ、一緒に参りましょう?」

グレイ提督「はい、お母様♪」…セバスチャンの運転する「ロールス・ロイス・ファントムⅣ」から降りると母親に手を貸し、優雅な歩調で歩き出す……


…途中の道すがら…

グレイ母「…ふふ、お父様はあなたの記事が「ロンドン・タイムズ」に出ていると、必ず切り抜いているのよ?」

グレイ提督「いかにもお父様らしいですわ……それにしてもグランド・フリートの「クルーザー・スコードロン」(巡洋艦戦隊)の次はいきなりポーツマスとは…ザ・アンドリュース(英海軍)もよほど人材が足りないようですわね…」整った細い眉をひそめるグレイ提督…

グレイ母「それだけ期待されているのよ…私はあなたが誇らしいわ」

グレイ提督「ありがとう…お母様」…と、向こうからやってきた艦娘……頭や耳に控えめな花飾りを付け、甘い匂いをさせた小柄な数人が一斉に駆け寄ってきた……

艦娘「「…グレイ戦隊司令!」」

グレイ提督「まあ、久しぶりね……エリカ(ヒース)にダイアンサス(ナデシコ)、それにクロッカスも」


…大戦初期から商船構造のずんぐりした小柄な船体で荒波に耐え、船団護衛やUボート狩り、掃海、撃沈された船舶の船員救助と駆けまわっていた「花」(フラワー)級コルヴェットはイギリス海軍としては忘れられない功労艦たちで、艦娘の「花」級も小さい身体で深海棲艦のUボートや爆撃機相手によく頑張っていた……グレイ提督も駆け出しの海軍少尉だったころはコルヴェット数隻の戦隊を率いていて、その頃の艦娘たちとひょっこり出くわしたので、お互いに礼を失しない程度に親しげな挨拶を交わした…


グレイ提督「あなたたち、今日は休暇でロンドンに?」

エリカ「はい、司令……失礼しました、中佐……映画「バウンティ号の叛乱」を見てきました♪」

(※「バウンティ号の叛乱」…1935年アカデミー賞の白黒映画。当時にして250万ドルとも言われる巨額の製作費で作られた、実話をもとにした傑作映画…後に数回リメイクされている)

グレイ提督「そう。あの映画は指揮官にとってはいい教訓になる映画だったわ」

ダイアンサス「あ…そう言えばグレイ司令、中佐への昇進おめでとうございます」

グレイ提督「ありがとう、ダイアンサス……今の戦隊司令はいい方かしら?」

ダイアンサス「おかげ様で立派な海軍士官の方です……とはいえグレイ司令ほどではありませんが」

グレイ提督「ありがとう」

クロッカス「グレイ戦隊司……中佐はおかあさまとお出かけですか?」

グレイ提督「司令でいいですよ…ええ、そうですよ……お母様、こちらは私の最初の艦娘たちの一部で「フラワー」級コルヴェットの「エリカ」「ダイアンサス」「クロッカス」…三人とも、こちらは私の母親…リリーフォードのアン・ベアトリクス・グレイ伯爵夫人」

三人「「初めまして」」

グレイ母「初めまして…可愛らしい娘さんたちね」

グレイ提督「可愛らしいだけでなく、護衛任務ではずいぶんと頑張ってもらいました……私は今度ポーツマスですから、良かったらお手紙をお書きになってね?」

三人「「はい、戦隊司令♪」」

グレイ提督「それでは、また会いましょうね」

グレイ母「……あなたはずいぶんと艦娘の子たちに好かれていたようで、お母様は嬉しいですよ」

グレイ提督「別段彼女たちに気に入られるようなことはしておりませんでしたわ」

…しばらくして・車内…

グレイ提督「……さてと、わたくしたちの買い物は終わりましたけれど…お父様はまだ時間がかかりそうですわね」

グレイ母「そうね…それではセバスチャンにそう言ってデパートでも見て回りましょう?」後ろから声をかけようとするグレイ伯爵夫人…

グレイ提督「ええ……あら、あの娘は…?」

グレイ母「あの艦娘の子も知り合いなの、メアリ?」

グレイ提督「ええ…車を停めて、セバスチャン?」

褐色の艦娘「困ったナァ……」

グレイ提督「…お久しぶりね、ソマリ?」イギリス海軍士官としての習慣から、つい手を後ろに組んで話しかけるグレイ提督…

ソマリ(トライバル級駆逐艦)「…あ、グレイ戦隊司令!?」休暇らしく色鮮やかな民族衣装に身を包み、霧のロンドンではひどく目立つ褐色の肌をしている「トライバル」(部族)級駆逐艦「ソマリ」が、表通りから少し入った薄暗い道端でしゃがみこみ、困ったような顔をしている……

グレイ提督「ええ、わたくしですよ……こんなところでどうかなさったの?」

ソマリ「あの、それが……」ロンドンの高級な街区にはなはだふさわしくない薄汚れた段ボール箱を持ち上げて中を見せる…

グレイ提督「まぁ、子犬…?」

子犬「クゥーン…」小刻みにぶるぶると震えている小さな犬が数匹、段ボールに入っている…

ソマリ「はい、そーなんです…どーも捨てられているみたいなんですが、お店の人に言っても引き取ってくれる訳もないし……スコットランド・ヤード(ロンドン警視庁)を呼びたくても、電話も持ってなくて……そもそも私の英語じゃあんまり通じないから…」訛のきつい英語で困ったように子犬を見おろす…

グレイ提督「あなたの所属する駆逐隊でも引き取るのは難しいものね……分かりました」

ソマリ「何ですか、司令…?」

グレイ提督「その子犬はわたくしが何とかいたしますわ……あなたは休暇を楽しみなさいな」

ソマリ「でも司令……司令だって休暇中でしょ?」

グレイ提督「…大英帝国海軍のモットーは何かしら、ソマリ?」

ソマリ「『見敵必戦』です、司令」

グレイ提督「そうね…ですからわたくしもここで、この子犬たちを見捨てる訳には参りません……さ、わたくしにその箱をお貸しなさい?」

ソマリ「でも…この箱汚いですよ、司令?」

グレイ提督「構いません……セバスチャン、この箱を後部座席に置いてもらえる?」

セバスチャン「はい、お嬢さま……おや、この子犬はコーギーですね」

グレイ提督「ええ、そのようですわね…お父様と合流したらすぐに獣医の所に連れて行きますから」

セバスチャン「承知いたしました、お嬢さま…」

グレイ提督「ソマリ、よかったら乗っていきますか?」

ソマリ「平気です、司令……それよりその子犬を獣医のせんせーに見せてあげてください」

グレイ提督「ええ、それはわたくしが淑女の名誉にかけて守りますわ」

ソマリ「よかった…♪」

グレイ提督「ええ、わたくしもそう思いますわ」

………



グレイ提督「…というわけで、まだ尻尾も切っていなかった数匹のウェルシュ・コーギー・カーディガンを引き取り、里親のなかった一匹をわたくしが飼うことにいたしましたの」

提督「……優しいんですね、メアリは…ぐすっ……」

グレイ提督「まぁ…何も涙ぐむほどの事ではございませんでしょうに……わたくしは淑女としてするべきことをしたまでですわ?」

提督「…いえ、それが出来ない人は大勢いますから……それにしても子犬を捨てるなんて…」

グレイ提督「全くですわ」

提督「……それで、そのコーギーにはどんな名前を付けたのです?」

グレイ提督「ええ…わたくし、その子が立派に育つよう「アーサー」と」

提督「ふふ、それは立派に育ちそうですね…♪」

………

…二日後…

提督「はー…建造装置から何が出て来るか分からない手前、鎮守府を留守にする訳にもいかないし……かといって書かなきゃならない書類はもうないし……暇で仕方ないわ…」万年筆をもてあそびながら所在なげにしている提督…

カヴール「そうですねぇ、だからと言ってお茶を飲み続ける訳にも参りませんし……映画はどうですか?」

提督「朝から映画なんて見たら、もう何もやる気にならなくなっちゃうわ。それにせっかくいい天気だから、何かこう…お日さまとたわむれたい気分なの」

カヴール「同感ですね……それではあれこれと思い悩む前に、とにかく庭に出てから考えませんか?」

提督「ええ、それもそうね♪」立ちあがって制服を脱ぎ捨て、シンプルなワンピースに着替える提督…

カヴール「ふふ、それでは私もお供いたします…♪」こちらは膝丈で淡い青灰色のサマードレスに革のサンダルを履き、つばの大きい貴婦人のような帽子をかぶっている…


…鎮守府・菜園…

提督「…うわ、しばらく見ない間にずいぶん茂ってくれちゃって……」

…鎮守府の横手にあるハーブと野菜の畑は晩夏の日差しに照らされて、畝には赤く熟れきったトマト、青々としたバジル、ほど良く色づいて艶やかな唐辛子…それに育ちすぎてちょっとした灌木サイズになっているセージがぼさぼさと生えている……提督は肩をすくめて裏手の物置に行き、小ぶりなハサミを持ちだした……

カヴール「お手伝いいたしましょうか?」

提督「大丈夫、それにたまにはこういう作業もいいわ…♪」むっと蒸れているセージのやぶの下に風が入るよう、腰掛けに座り込んでパチリパチリとハサミを入れていく提督…麦わら帽子をしていてもカーンと照りつける日差しは厳しいが、時折海からのそよ風が優しく頬をなぶっていく…

ジュッサーノ「あ、提督……何もこんな暑い時にやらなくたっていいじゃない?」たまたま通りがかったジュッサーノがあきれたように首を振る…

提督「だって午後になったらもっと暑くなるし…それにこんなになっていたら放っておくわけにもいかないでしょう」

ジュッサーノ「提督ったら律儀なのね…何か私に頼みたいことは?」腰に片手を当てて、もう片方の手のひらを上に向けた…

提督「そうね、それなら厨房からレモン水でも持ってきてほしいわ……」

ジュッサーノ「了解、ちょっと待ってて?」

提督「ええ……ずいぶん刈り込んだけれど、これでどうかしら?」

カヴール「なかなかいい具合に見えますよ♪」周囲には切られた枝や茎が散らばり、つんと香ばしいセージの香りと、日差しに照らされて光を発しているような紅いセージの花が風に揺れている…

ジュッサーノ「はい、お待たせ…ちなみにディアナから伝言で「一緒にお塩も補って下さいね」ですって……それじゃあ、チャオ♪」

提督「ええ、ありがとう」お盆を受け取るとカットグラスの水差しに入ったレモン水をグラスに注いで、ごくごくと飲み干す……お盆の上にはローストしたピスタチオの小皿も載っていて、提督はさっそく一つ割った…

提督「…カヴールもどう?」割ったピスタチオをつまんで差しだす…

カヴール「わたくしはレモン水の方をいただきます…♪」

提督「そう、それじゃあ暑気あたりにならないようにいっぱい飲んでね?」カリッ…とピスタチオを噛みしめ、一つまたひとつと口の中に放り込んでいく……口がパサつくとカヴールからグラスを受け取り、氷の入ったレモン水をあおる…

提督「ふー……すっかり喉の渇きは収まったわ…カヴール、私が切った枝を運んで行く間にお盆を戻してきてくれないかしら?」

カヴール「ええ、分かりました」…お盆を受け取り、ゆったりとした優雅な歩き方で厨房に向かうカヴール……その間に提督は一輪の手押し車を持ち出し、切った枝を積み込んで裏手…地面に穴を掘って果物の皮やコーヒーの引きかすを放り込んである肥料置き場…に持って行った……

カヴール「戻りましたよ、提督」

提督「お帰りなさい……ふー、すっかりいい汗をかいちゃったわ…浜辺のパラソルの下で涼みましょう?」

カヴール「ええ、それがよろしいです♪」

…鎮守府・浜辺…

提督「うーん、やっぱり海はいいわねぇ…」金色の砂浜にしゅうぅぅ…と音を立てて打ち寄せる白い波の花と、濃い青色の海……明るい白と濃い青のパラソルに涼しげなデッキチェア…抜けるような青い空と白いはぐれ雲……

カヴール「いつ見ても見飽きませんものね…」

提督「ええ…それじゃあゆっくりするとしましょうか?」

カヴール「ふふ、私はこれまでもずいぶんゆっくりさせてもらいましたが…提督が一緒ですと不思議と飽きませんね」

提督「あら///」

カヴール「うふふっ…ちょっとおセンチでしょうか?」

提督「いいえ……嬉しいわ♪」軽くウィンクをすると服からセージの葉っぱを払い、デッキチェアに寝ころんで伸びをした…

提督「んー、気持ちいいわね……でもちょっと汗でベタベタするわ…」眉をひそめて自分の服を見おろす提督…と、褐色の艦娘が弾むようにして提督のそばに駆け寄ってくる……

リベッチオ「チャオ、提督っ…私たちと一緒に遊ばない?」よく日に当たっているせいか、褐色に日焼けしているリベッチオ……そして鎮守府の周辺が立ち入り禁止区域なのをいいことに、しょっちゅう全裸で日光浴をしたり水遊びをしているせいで、全身が綺麗にむらなく焼けている…

提督「そうねぇ…今日はなんだか身体を動かしたい気分だから……ええ、お付き合いするわ♪」

リベッチオ「やったぁ…それじゃ一緒に行こっか♪」

提督「はいはい…カヴールも来る?」

カヴール「いいえ、私のようなおばあちゃんでは駆逐艦の娘たちにはついて行けませんから……リベッチオ、あんまり提督を引っ張りまわしちゃだめですよ?」

リベッチオ「はぁい♪」

提督「ちょっと、あんまり引っ張らないで…ふふっ♪」提督は腕を引っ張るリベッチオの張りのあるヒップやきゅっと引き締まったふくらはぎを見て、すっかりニヤけている…

リベッチオ「何がおかしいの?」

提督「いいえ、何も……んふふっ♪」

リベッチオ「ふふ、おかしな提督…♪」

提督「…かもしれないわね♪」

…波打ち際…

リベッチオ「お姉ちゃん、提督を連れてきたよっ♪」

マエストラーレ「え、ちょっと…///」まだまだ裸には抵抗がある長女「マエストラーレ」は褐色の肌を際立たせる白いフリル付きのビキニスタイルで、提督を見て顔を赤らめた…

グレカーレ「ふふっ…ようこそ、提督♪」きゅっと引き締まって張りのある艶やかなお尻に、ほど良く控えめでつんと尖った胸…活発な駆逐艦らしい身体と、褐色の肌を際立たせる日焼け用オイルが目にまぶしい…

シロッコ「これはこれは……」全裸は恥ずかしいと思ったのか、一応水着を着ているシロッコ…が、明るい水色の水着からは乳首が透けて見え、あそこの割れ目もくっきりとシルエットになって浮き出している…

提督「ふふっ…それじゃあどうやって遊びましょうか♪」

グレカーレ「うんっ…さっきまで水のかけっこをしていたんだけど……提督はサマードレスだから…うーん」

提督「…それじゃあ脱ぎましょうか?」

マエストラーレ「え、ちょっと…!?」

提督「私は別に構わないわよ…リベッチオだって裸だし、別に街中で脱ぐわけじゃないもの♪」

リベッチオ「それじゃあ提督も脱いじゃおっか♪」

提督「…お腹がたぷたぷんしていても笑わないでね?」

グレカーレ「大丈夫、笑わないよ…それにむっちりした身体の方が好みだし///」

提督「あら、お上手……それじゃあ、よいしょ…と♪」連絡用の携帯電話を首から外し、ワンピースとショーツも脱いでリベッチオたちのデッキチェアにまとめて置いた……汗で蒸れていた胸の谷間やふとももの間に風が入ってきて心地良い…

リベッチオ「おぉー♪」

グレカーレ「へぇぇ…♪」

マエストラーレ「わ、わっ…///」

シロッコ「おぉ、これは……まさに私は歴史の立会人になったな…///」

提督「はぁぁ…涼しい……気持ちいいわね、これ♪」

リベッチオ「ね、気持ちいいでしょ…提督っ?」

提督「ええ……普段はなかなかこんなことできないもの…あなたたちに見られているからちょっとくすぐったい気分だけれど……いいものね」

リベッチオ「ふふーん……それっ♪」ばしゃっ!

提督「きゃあっ…もう、奇襲攻撃とはやってくれたわね♪」ざばぁ…っ!

リベッチオ「だって提督がぼーっとしてるか……わぷっ!?」

グレカーレ「ふふ、リベッチオにかかりきりでこっちがお留守だよ…提督っ!」ばしゃん!

提督「んっ、この…ぉ♪」

グレカーレ「…っ、ぷはぁ!」

シロッコ「うっぷ……えぇい、やってくれるわね!」

マエストラーレ「むぅ、こうなったら私が指揮を執るわ!…リベッチオは右、シロッコは正面から牽制攻撃、グレカーレは私に続いて!」

提督「うっぷ、ぷはぁ…っ!」

リベッチオ「ほぉら、こっちだよっ♪」ばしゃ!

マエストラーレ「えいっ…!」ばしゃん…っ!

提督「…っ!」ちょこまかとあたりを駆け回り、威勢よく水を浴びせかけてくるマエストラーレたちを持て余し気味の提督…次々とつるべ撃ちに水をかけられて息をつく暇もない……

シロッコ「それっ…!」

提督「ぷは……もうっ!」提督は周囲を取り囲んでいるマエストラーレたちの包囲を抜けようと、バシャバシャと駆け出した……が、もとより走るのは苦手な上にふくらはぎ辺りまで水に浸かり、さらに砂に足を取られている状態では上手く走れる訳もなく、たちまち情けない具合につまづいた…

リベッチオ「わわっ…!」

提督「きゃあっ…!?」リベッチオを巻きこみ、派手な水しぶきを上げて飛び込む形になった提督…

マエストラーレ「ちょっと、二人とも大丈夫!?」

提督「ええ…どうにか。…私はいいけれど、リベッチオは……?」ぷーっ…と口に入った海水を吐きだし、海水で痛む目をしきりにぱちぱちさせながらも様子を見ようと上半身を起こした…

マエストラーレ「リベッチオは……えーと…///」

提督「どうなの?…怪我とかしていない?」

リベッチオ「大丈夫だよ、提督……///」ひっくり返った提督の上に抱き着く形でしがみついているリベッチオ…提督のお腹にきゅっと固くなった胸の突起が当たっている…

提督「あ、あー…転んだ時にすりむいたりしなくてよかったわね、リベッチオ」

リベッチオ「う、うんっ…提督が下敷きになってくれたからだと思うな…///」リベッチオの褐色の肌が提督のクリーム色をした肌に重なり、お互いの火照った身体の熱がじんわりと伝わってくる…

提督「そう、それはよかったわ…ね?」…と、はしゃぎまわったせいかすっかり頬を紅潮させているリベッチオが提督の身体に手をかけると、跳び箱を跳びそこねて上に乗ってしまった時のようにして、ずりずりと胸元の方へ這いずってきた…

リベッチオ「ねぇねぇ、提督…///」

提督「…な、なぁに?」リベッチオのぽーっと熱っぽい瞳につんと尖った形のいい乳房…ぷりっとした唇を半開きにして、波打ち際で両手を投げだしてひっくり返っている提督をじっと見おろしている…

リベッチオ「せっかくだし…「ちゅぅ」……しよっか♪」

提督「えっ…で、でも……マエストラーレたちも見ているわよ…?」

リベッチオ「いいよ…むしろお姉ちゃんたちに見せつけちゃおうよ……♪」

提督「そ、それに……だって…」

リベッチオ「……言っておくけど、私は提督よりオトナだよ?」無邪気な笑顔を浮かべると、提督のたわわな乳房に手を這わせた…

提督「あんっ……んっ♪」小さいリベッチオの手が固くなった胸の先端をつまみあげ、もっちりした乳房をこねくり回す……

リベッチオ「えへへ、提督ってばいやらしい声を上げちゃって……んちゅぅぅ、ちゅぅぅ…♪」

提督「んちゅぅ…ちゅっ…そ、それはリベッチオの触り方がいやらしいから……あんっ、んふぅ…っ♪」お互いにしょっぱい唇をむさぼり、汗をかいたせいですっかり水気が無くなったねばつく舌をにちゃにちゃと絡める…

リベッチオ「なーんだぁ、提督ってばすっかりえっちしたい気分なんじゃない…っ♪」

提督「んんぅ……だってそんな風にされたら…身体がうずいて……///」

リベッチオ「あれ、じゃあさっきの「マエストラーレたちに見られているから」…っていうのはどうしたのかな?」

提督「だ、だから…リベッチオはお姉ちゃんたちに見られながらなんて恥ずかしいこと……」

リベッチオ「私は平気だよっ?……それとも、うぶな提督にはできないかな…っ?」

提督「ふふっ…むしろたまらないわ♪」くちゅ、にちゅっ…♪

リベッチオ「えへへっ、そうじゃなくっちゃ……あ、提督のここはとっても暖かいねっ♪」ぬちゅっ、ぐちゅぐちゅっ♪

提督「あんっ、そんなこと言って…リベッチオこそとろとろで指が吸い込まれそうよ……あっ、んぅぅ♪」くちっ、にちゅっ…♪

マエストラーレ「ばか、二人とも信じられないっ!…わ、私たちの目の前で……っ///」

グレカーレ「まぁまぁ姉さん、そう怒らないで……今度ライモンドを誘ってやってみようかな…///」

シロッコ「…こ、ここは「歴史の立会人」としてじっくり眺めておかねば……おぉぉ///」

リベッチオ「……ねぇ見てみて、提督?…お姉ちゃんってば顔を真っ赤にしてるくせに、穴が開きそうなほどこっちを凝視してるよ?」

提督「ふふっ…リベッチオがおませさんだからでしょう?」

リベッチオ「あははっ、お姉ちゃんが引け腰なだけだってば……マエストラーレお姉ちゃーん、ちゃんと見てるぅ?」提督の上にまたがりながら片手を振る…

マエストラーレ「も、もう…ばか、スケベ、変態っ…私は先に戻るから勝手にいちゃついてなさいよ…っ///」

リベッチオ「あらま、行っちゃった……それじゃあ…リベッチオがもっと気持ち良くしてあげるね……かぷっ♪」身体をすり寄せると耳元でささやき、それから耳たぶを甘噛みした…

提督「んっ、あぁぁんっ…んはぁぁ♪」びくびくっ…ぷしゃぁぁ……

………

…しばらくして・パラソルの下…

リベッチオ「んー…冷たくって美味しいねぇ♪」そばに脱ぎ散らかしている服の上に携帯ラジオを置いて番組を流しつつ、冷たいカフェラテをストローですすりながら、デッキチェアの上にひっくり返っているリベッチオ…よく引き締まった褐色のお腹、ほっそりした腕、つるりとした下腹部を、海水の雫がつぅーっ…と流れていく……

提督「…うー…リベッチオはとっても可愛かったけれど……あぁ、もう…///」隣のデッキチェアでは提督がカフェラテをすすりながら頭をかかえている…

リベッチオ「えへへ…でも気持ち良かったし、開放感があってよかったよ?」

提督「そ、そう…?」

リベッチオ「うんっ♪」

提督「な、ならお互いに同意の上と言うことでいいかしら…?」

リベッチオ「もちろん。提督とならいいに決まってるよっ…ちゅっ♪」

提督「んふふっ……なら安心ね♪」

カヴール「あら、そうですか…ちなみに私も一部始終は見物させていただきました♪」

提督「!?」げほっ…と、コーヒーにむせる提督…

カヴール「うふふ、それにしても提督は…太陽の出ている間からずいぶんとお盛んでいらっしゃいますね♪」

提督「あ、あー…それはその……」と、ラジオから60年代の音楽が流れ始めた……とっさにラジオに手を伸ばし、音量を上げる…

ラジオ「それでは『懐かしのイタリアン・メロディー』…今度の一曲は61年のパワフルなロック・ナンバーをお送りいたしましょう!」

提督「わ、わぁ…ちょうど一曲聞きたかったのよねー……」

カヴール「あら、そうですか…♪」

ラジオ「…当時歌ったのはリトル・トニー、そして作曲者でもあるアドリアーノ・チェレンターノ……61年の「サン・レモ音楽祭」では二位に入賞したナンバーです……『ヴェンティクァトミア・バーチ!』」(※Ventiquattromia Baci…日本での曲名は「二万四千回のキッス」)



ラジオ「♪~…アーマぁーミぃぃ…ティ…ヴォッリォ……ベーネぇぇ…!」
(♪…愛しておくれよ……好きなんだ!)


「♪~コンヴェンティクァトミア、バぁぁーチぃ!…オッジ、サプラィ、ペルチェラモーレ!…ヴォレ、エニスタンテ、ミレバぁーチぃぃ!ミレカレッツェ、ヴオーレ、アロぉぉーラ!」
(♪~二万四千回のキッスでいま知るんだ!…恋には一度に千回のキッスと、一時間に千回の抱擁がいるわけを!)

「♪~コンヴェンティクァトミア、バぁぁーチぃ!…フェリシコロノ、レ、オぉぉーレ!…ドゥ、ジョルノ、スプレンディド、ペルチェ…オッニ、セコンド、バチォ、テ…!」
(♪~二万四千回のキッスで時は幸せに過ぎ、素晴らしい一日になる…一瞬一瞬が君にキッスをする!)

「♪~ニエンテ、ブジ、メラヴィリオぉーセ…フラシィダモレ、アパッシォナぁぁーテ……マ、ソロ、バァチ、キエドぉ、ア、テぇ…イェー、イェー、イェー、イェ、イェー、イェ!」
(♪~可愛らしい嘘も、アパッシォナート(情熱的)な愛の言葉も要らない…君にあげるのはただただキッスだけ!)




提督「♪~……コンヴェンティクァトミア、バぁーチぃ……コシ、フレネティコ、エラモーレぇぇ…イン、クェスト、ジォルノ、ディ、フォーリア…オッニ、ミヌート、エ、トゥト、ミーオぉぉ…!」
(♪~二万四千回のキッスで恋に狂った、あの日の激しさ…あの一瞬一瞬が全て撲のもの…!)

カヴール「まぁ…///」

提督「……んちゅ、ちゅうぅぅ……んふぅ、ちゅっ…ちゅぷっ…んちゅるっ……ちゅくぅぅっ…♪」

カヴール「あふっ、んぅぅ///…んちゅ、んんぅ、ちゅく…れろっ……むちゅっ…ちゅぱ……」

リベッチオ「二人には曲の続きは必要なさそうだね…っ♪」邪魔にならないようにラジオの音量を下げた…

………

提督「はぁ、はぁ…はぁ……まさか気を失いかけるまで放してくれないとは思わなかったわ……ふぅぅ…」

カヴール「だって……提督があんな事をおっしゃるんですもの…///」

提督「ひぃ、ふぅ……さすがに息が切れちゃって……はぁ…」

カヴール「ふふ、情熱的で素敵でした…♪」

提督「……今度は私がのびちゃう前に切りあげて欲しいわ…」そう言ってもう一度デッキチェアにひっくり返る提督……長い髪はデッキチェアの布地の上いっぱいに広がり、滝のように左右に流れ落ちている……淡いクリーム色をした汗のしたたる裸身に「たゆんっ」と揺れる丸っこい乳房…相変わらず肉付きが気になるすべすべのお腹周りに、張りのある白いむっちりしたふともも……

カヴール「いいえ、ダメです。さっきのは浮気な提督へのお仕置きなんですから……提督に主導権はありません♪」

提督「ふふ…あれが浮気のお仕置きなら、毎日でも浮気しちゃおうかしら♪」

カヴール「……そういうことをおっしゃるなら、私も別な案を思いついてしまいますよ?」

提督「むぅぅ…それなら仕方ないわね……ところで沖合で泳いでいるのは誰かしら?」

リベッチオ「えぇ…と……ごめんね、あれだけ遠いと良く分からないかも…カヴールには見える?」

カヴール「ええ、スクアロ級の「デルフィーノ」ですよ」

提督「通りで泳ぎが早いと思ったわ…ほら、もうそこまで来ているわ♪」

デルフィーノ(スクアロ級中型潜「イルカ」)「…ふぅ……あれ…さ、三人そろって私を見てますけど…私がどうかしました…かぁ///」デルフィーノは濃いグレイと淡いグレイで出来たツートンカラーのぴちっとした競泳用水着に身を包み、妙にもじもじとお股のところを押さえている…

提督「いいえ。デルフィーノは泳ぐのが速いわね…っていうお話をしていた所よ。よかったら冷たいカフェラテでもいかが?」

デルフィーノ「い、いえっ…大丈夫ですから……///」

提督「そう…?」

デルフィーノ「え、ええ…デルフィーノは大丈夫です…ぅ///」

提督「ならいいけれど…暑気あたりを起こさないようにちゃんと水分はとるのよ?」…と、たたんだ服の上に置いてある携帯電話が「ヴーッ、ヴーッ」と震えだした……

デルフィーノ「…えっ、ちゃんと切ったはずなのに…ぃ!?」

提督「うわ……もうこんな時に限って…はい、もしもし?」

デルフィーノ「……あ、提督の携帯電話でしたかぁ…///」

カヴール「?」

リベッチオ「…んっ?」

デルフィーノ「あ、いえっ…なんでもないですぅ……ふぅ、いけないいけない…っ///」顔を妙に赤らめたまま、歩いて行こうとするデルフィーノ…

提督「…デルフィーノ、ほどほどにね?」通話口を押さえてから背中に向かって声をかけた…

デルフィーノ「は、はい…っ///」

カヴール「提督…何が「ほどほどに」なのですか?」

提督「ふふっ…まぁ何をするにも「あんまり夢中になり過ぎないで」…って言うところかしらね?」

カヴール「えぇ、それはまぁ……そうでしょうけれど…?」

提督「まぁ気にしないで?…もしもし……あら、ジェーン♪」電話の相手がノーフォークのミッチャー提督と分かって声が跳ね上がる提督…

ミッチャー提督の声「ハーイ、元気にしてる?」

提督「ええ、おかげさまで元気よ……この時間だとそっちは時差で大変じゃないかしら?」

ミッチャー提督「センキュー、お気遣いどうも…いや、実を言うと今日は寝ずの当直をする日でね……暇で仕方ないから、真っ黒けなコーヒーとまずいチキンサンドウィッチをお供に電話しているわけよ」

提督「あら、大変ね……でも大丈夫?」

ミッチャー提督「…ワッツ(何が)?」

提督「私の携帯電話は秘話回線じゃないのに、「アメリカ海軍のサンドウィッチがマズイ」なんて重大な機密情報を話しちゃって…♪」

ミッチャー提督「あっはははは…そいつはもうモスクワからサンタクロースまで、全世界の人間が知ってるわ♪」

提督「ならいいけれど…それじゃあ……『せんせー、アメリカ海軍の潜水艦はどのぐらい深くもぐれゆの?』」舌っ足らずな赤ちゃん言葉で冗談めかした…

ミッチャー提督「はい、我らがアメリカ海軍の公式解答は『セイルが隠れるくらいまでは潜れます』よ…♪」

提督「うふふっ…♪」

ミッチャー提督「あはははっ♪」

デルフィーノをもっと詳しくお願いします

>>239 了解、少々お待ちを…それにしても頭のいい海生哺乳類だけあってイルカの自慰は想像の斜め上を行っているらしいです……何でも数匹でフグをつつき回して毒(テトロドトキシン)を放出させて、ほど良くキマってるところでするのだとか……


…ちなみに以前出てきた「バニラエッセンス」の小瓶ですが、またどこかで騒ぎを起こす予感が……

提督「それで、ノーフォークに戻ってからはどんな具合?」

ミッチャー提督「ウェ…ル(そうね)、最近は北大西洋もだいぶ静かになったわ。で、大戦の時と同じく北大西洋の西半分はこっち…東半分はイギリスの連中が請け負うことになってるわ」

提督「イギリス海軍ねぇ……ちなみに共同作戦の時はどんな具合?」

ミッチャー提督「まぁ、とにかく頑固ね…こっちがどんなにいいものを貸してやろうとしても、絶対に受け入れないわ」

提督「…ふふっ、確かにイギリス海軍にはそう言うところがあるわよね……いま交換プログラムで来ている「ジブラルタル第二」の司令官も、そう言うところがあるもの♪」

ミッチャー提督「ジブラルタル第二……ねぇ、もしかしてその提督って、「グレイ」とか言うガチガチの貴族だったりする?」

提督「えぇ、そうよ…「リリーフォード・グレイ伯爵令嬢」のメアリ・グレイ少将だけれど……なぁに、知り合いなの?」

ミッチャー提督「あー…以前数回ばかしUボート狩で共同作戦をやったことがあるんだけど、まぁ絵に描いたようなイギリス貴族でさ……その時はあちらさんの艦載機があんまりだから、こっちのF4F「ワイルドキャット」とTBM「アベンジャー」を提供するって言ったんだけど……」

提督「言ったけれど……断ったのね?」

ミッチャー提督「ザッツ・ライ(その通り)…あのすまし屋のレディときたら「そちらの機体はイギリス空母で運用するには自重が重く、少々不便な所がありますので……お気持ちだけ受け取っておきますわ」とか言って受け取らなかったわ……自分の所には「フルマー」と「ソードフィッシュ」しかないくせに」


(※フェアリー・フルマー…戦前から第二次大戦初期にかけて運用されたイギリス艦上戦闘機。デザインは液冷エンジンと言うこともありすっきりしていて「スピットファイア」のようではあるが、戦前のイギリス海軍航空隊の考えによると「パイロットの単独洋上飛行はレーダーや誘導装置、あるいは航法技術が未発達のため危険」と言うことで、ナヴィゲーター(航法士)の席を付けた縦列複座の機体として開発された…当然搭乗者二人分の艤装などで重量が増え、低性能の艦上戦闘機となってしまった……それでも爆・雷撃機の迎撃や哨戒・連絡等には使われたが、わざわざ生産ラインを別にしなくとも「ハリケーン」や「スピットファイア」の艦上型で十分と、徐々に前線から下げられていった)


提督「あー…メアリなら言いそうね」

ミッチャー提督「ちっちっちっ…フランチェスカ『メアリなら言いそう』じゃなくて、実際に言われたのよ……しかも北大西洋だっていうのに、駆逐艦の航海艦橋は後ろが開いてる露天だし…主砲だって砲塔じゃなくてちょっとした防盾しかないのよ?」

提督「あー…それはメアリに言わせると「航海艦橋が露天なのは風や天気を肌で感じることで気象の変化を敏感に感じとり、シーマンシップの涵養(かんよう)にも役立つ」からで、旧型駆逐艦の主砲が全周で覆われていないのは「手動旋回なので重量軽減のため」だそうよ」

ミッチャー提督「はぁ…全く、イギリス海軍ときたらそんなことばっかり言ってるのよ……」

提督「でもメアリは艦隊の運用が上手よ?」

ミッチャー提督「そりゃあ、あれだけやってればね……そう言えばそっちの基地祭はそろそろじゃなかった?」

提督「ええ、あと一か月くらいね」

ミッチャー提督「そっか。あーあ…そっちの食べ物は美味しいし、その時に行ければ良かったわ……」

提督「まぁまぁ、ジェーンだってノーフォークでバーベキューとかをするんでしょう?」

ミッチャー提督「ええ、するわよ…もっとも、最初の時は散々だったけど」

提督「…と言うと?」

ミッチャー提督「えーと、あの時だから……数年前って所かしら」

………

…数年前・ノーフォーク鎮守府…

ミッチャー提督「オーケー、ガールズ……今日は好きなだけ食べて頂戴。もちろんビールもね!」鎮守府のコンクリート舗装した波止場の脇で、瓶ビール片手に、数百人の艦娘たちに向かって大声を張り上げた……そして目の前には大きな「バーベキュー用」の鉄板が置いてある…

一同「「センキュー・マーム!!」」…食べ盛りの駆逐艦や空母の艦娘たちが泡の立つ「バドワイザー」を喉に流し込み、脂がじゅうじゅうと跳ねるTボーンステーキや巨大ソーセージにかぶりつく…

ミッチャー提督「あはは、お礼なんていいって……それじゃあ私もいただこうか…な?」

エンタープライズ「どうかした、マーム?」

ミッチャー提督「いや…ちょっとこの肉、妙に油臭いような気がしたんだけど……」

エンタープライズ「そう?…いっぺんにこれだけ焼いているし、マームったら油酔いでも起こしたんじゃない?」

ミッチャー提督「そう言われればそうかもね…オーケー、じゃあ冷たいやつですっきりさせるわ♪」氷の詰まっているクーラーボックスからバドワイザーを取り出し、王冠を鉄板の縁で跳ね上げた…

ミッチャー提督「あー、うまい……それじゃあこのでっかいスペアリブを…♪」

フレッチャー「マーム、これ美味しいわね!」

ミッチャー提督「ふふーん…何しろ私の「オリジナル・バーベキューソース」で味付けしておいたからね……いっぱい食べな?」

フレッチャー「アイアイ・マーム♪」

………

提督「楽しそうで何よりじゃない…それがどうして「散々なこと」になっちゃったの?」

ミッチャー提督「いや、それがね…私とフレッチャー、それに「ビッグE」で買い出しに行っている間に「何かバーベキュー用の鉄板を見つけておいてちょうだい」ってうちの娘たちに頼んでおいたんだけど……なんとまぁ、それが倉庫に放り込んであったまっさらな仮舗装用の鉄板でね…つまり工業用オイルがついていたらしいのよ」

提督「うわ…ぁ」

ミッチャー提督「私も最初のバーベキューでハチャメチャに忙しかったから、そこまで見ている余裕がなくってね……まぁおかげで大変だったわ」

提督「でしょうね、工業用オイルなんてついている板でバーべキューなんてしたら……数十人はお腹を壊したでしょうし…」

ミッチャー提督「…それが笑えることに、お腹を壊したのは私一人なのよ?」

提督「え?」

ミッチャー提督「なんと、うちの艦娘たちはお腹いっぱいで何事もなくケロッとしてるの…そのせいで私がお腹を壊したのは「マームが食べ過ぎたか飲みすぎたかしたせいだ」って言われるし、こっちはソーナーで捉えたソ連のイカれた原潜みたいにお腹がゴロゴロ鳴りっぱなし……改めて「艦娘」って言うのは丈夫なもんだと思ったわ」

提督「ふふふっ、それは災難だったわね…♪」

ミッチャー提督「全くよ……フランチェスカも何か鉄板で焼くものを用意するときは気を付けなさいね?」

提督「ええ、肝に銘じておくわ」

ミッチャー提督「よろしい……おっと、うちの管区じゃないけど「深海棲艦」のコンタクトが出たわ…ちょっと忙しくなりそうだから、また今度ね」

提督「ええ、いつでもどうぞ♪」

ミッチャー提督「ありがとね…バーイ」

提督「…ふふふっ、ジェーンったら相変わらずね♪」

カヴール「ノーフォークのミッチャー提督でしたか…お元気でいらっしゃいました?」

提督「ええ、相変わらず元気そうだったわ♪」

カヴール「せっかくの機会でしたから、基地祭の事で色々おたずねになれば良かったのでは?」

提督「あー…言われてみれば……」

リベッチオ「くすくすっ…提督ってば時々お間抜けだよねっ♪」

提督「もう、余計なお世話よ…さてと、そろそろ上がらせてもらうわね……♪」

カヴール「…お昼の準備ですか?」

提督「ええ。今日はたっぷりトマトが収穫できたらしいから、昼のパスタは「プッタネスカ」にでもしましょう♪」

リベッチオ「私もプッタネスカは好きだよっ♪」

提督「それじゃあなおさら準備してこないと…ね♪」リベッチオの少し塩辛い唇に軽くキスをすると、砂粒のついた身体をはたいてサマードレスに袖を通す……が、まだふとももは湿っていたので、ショーツは履かずに丸めて手に持った…

カヴール「まぁまぁ…裾がめくれたら恥ずかしいことになりますよ?」

提督「大丈夫。部屋に戻ったらちゃんと着替えるわ、それに……今は夏だもの♪」

カヴール「ふふ…それもそうですね」

リベッチオ「それじゃあ美味しいのを期待してるねっ?」

提督「ええ♪」

………

…一方・中型潜「スクアロ」級の部屋…

デルフィーノ「あー、びっくりしたぁ……まさか提督の携帯電話だなんて…///」滑らかに磨き上げられひんやりした石造りの廊下を困ったような表情を浮かべながら、裸足でぺたぺたと歩いているデルフィーノ…

デルフィーノ「…ただいま、お姉ちゃぁん…って、誰もいない……いい天気だし、お姉ちゃんたちもお庭かなぁ……?」


…窓を開け放っていて、爽やかな海風が入ってくるスクアロたちの部屋……共有部分になっている「談話室」の壁には、展示箱のような入れ物に収まっている「スクアロ」(サメ)の歯の化石にヒレの置物、読み終わった自然科学の雑誌から切り抜いた「デルフィーノ」(イルカ)の跳ねている写真、ナルヴァーロ(イッカク)が日頃つけている一角獣のような銀の「角付きサークレット」、トリケーコ(セイウチ)の牙の置物が飾ってあり、それぞれの上には提督が絵ハガキのセット「イタリア王国海軍・艦艇写真集」から分けてくれた、各艦の進水式の白黒写真がブロマイドのようにして額に収めてある…


デルフィーノ「…提督は分かってて言わないでいてくれたみたいだけど……誰かに知られたらと思うと恥ずかしいです…ぅ…んんぅ///」…ぴちっと身体に張りついたゴムのような水着のスリップ(肩ひも)を外そうと、身体をよじったり引っぱってみたりするデルフィーノ……ようやく片方の肩からスリップが外れると、胸元から手を入れて股に手を伸ばす…

デルフィーノ「……さすがに遠泳するときは止めた方がいいかも知れないです……イきすぎて脚がつりそうにになっちゃいましたもの……んっ///」秘所に入れていたバイブレーターを引き抜こうとすると「ぬちゅ…っ」と、打ち上げられた海藻のような粘っこい水音を立てた…

デルフィーノ「も…もうちょっとだけ……お昼までまだ時間はありますし…ぃ……んくっ、んんぅ///」抜きかけたところでもう一度スイッチを入れ、「じゅぶ…っ」と奥まで入れなおす……と、視線の先に姉妹でカードやお茶を楽しむ小さなカフェテーブルが入って来た…

デルフィーノ「はぁ、はぁ……今だけ…お姉ちゃんたちが帰って来る前には終わらせますし…ぃ……んぁぁ///」普段は賢く、その上くりっとした瞳の愛らしいデルフィーノが、バイブのスイッチを入れたままテーブルの角に秘所を押し付け、トロけた表情で天井を向いている……

デルフィーノ「はひぃ、はへぇ…恥ずかしかったですけれど…ぉ……やっぱりマルチェロさんたちに買ってきてもらって正解でした…ぁ……ん、くぅっ///」


…夏季休暇の前、デルフィーノは中世ヴェネツィアの提督としてヴェネツィアの表から裏まで知り尽くし、酸いも甘いも噛み分けている大型潜の「マルチェロ」たちに、恥ずかしいのをこらえて何か「玩具」を買ってきてほしいとお願いしていた……頼まれたマルチェロたちは面白半分で、ヴェネツィアの「刺激的なお土産店」でデルフィーノの気に入りそうな「玩具」をしこたま買ってきてくれていた…


デルフィーノ「…んっ、く…ぅぅ///」力の入らない腰をがくがくさせてカフェテーブルにしがみつき、天井を向いたまま半開きの口からよだれを垂らしている…

デルフィーノ「はうぅぅ…きもひいぃれす…よぉぉ……///」ずり落ちそうになってきた水着を引き上げようとすると、お股の所が引っ張られてバイブが膣内に押し込まれる…と同時に、アナルにも入れていたバイブが奥にねじ込まれて、ひくひくと身体がけいれんする…

デルフィーノ「はひっ、あへぇぇ…きもひぃ……はひぃ…あっ、あっ……腰が…抜けちゃいます…ぅ……///」とろっ…ぷしゃぁぁ♪……うつろな目をさせてぺたんと床にへたり込み、水着の中にねっとりと愛蜜を噴きだした…

デルフィーノ「はひぃぃ…これ……いいれひゅぅ……んぁぁぁ…///」とろっ…しょわぁぁ…♪……ぐしょぐしょに濡らした水着の中ではまだとろとろと蜜が噴き出し、快感のあまりしてしまったおもらしで水たまりを作っている……

デルフィーノ「あひっ…んぅぅ……はひっ……き、気持ち良すぎて立てないれす…ぅ///」…と、「カツッ…カツッ」と近寄ってくる靴音が聞こえる……

デルフィーノ「……あっ、あっ…ど、どうしよう……///」どうにか立とうとカフェテーブルにつかまってみるものの腰に力が入らないまま、小鹿のように脚をがくがくさせている…

デルフィーノ「あうぅ…も、もういいです……お姉ちゃんたちはデルフィーノがよくひとりえっちしているの知っていますし…ぃ///」びしゃっ…もう一度へたり込んで生暖かい愛蜜にふとももを浸しながら、とろけきった表情で足音が近づいてくるのを待っている……

提督「……デルフィーノ、いる?」

デルフィーノ「はへぇ…て、提督…?」

提督「ええ…実はさっきデルフィーノが上がって来た時、あそこに何か玩具を入れていたみたいだから、ちゃんと「安全な使い方」かどうかとか、ちょっと気になって……パスタの準備を済ませてからちょっと様子を見に来たのだけれど…って、あら///」

デルフィーノ「あのぉ…提督ぅ///」

提督「これはまた……ずいぶん気持ちよかったみたいね…///」

デルフィーノ「はい…デルフィーノ、もうイきすぎちゃって立てそうにないんです…ぅ///」

提督「…じゃあ私が片づけるのを手伝うから……雑巾はどこ?」

デルフィーノ「洗面台の下に…んくぅぅ///」ぷしゃぁぁ…♪

提督「あー…よっぽど好きなのね、デルフィーノ?」

デルフィーノ「…は、はい…それは、そのぉ……///」

提督「まぁいいわ…中には「食べる」とか「お酒を飲む」みたいな、「艦娘の身体」で出来る色んなことに夢中になってしまう娘もいるらしいから…とにかく、スクアロたちが帰って来る前に拭かないと……どう、立てそう?」

デルフィーノ「そ、それが……んんぅ、ひぅぅっ///」じゅぶっ…とぽとぽっ、ぷしゃぁぁ♪……力の抜けきった手でどうにか前後のバイブを抜き取ると「どぽ…っ」と愛液がこぼれる…

提督「あー……前後に入れていたの?」

デルフィーノ「は、はい……何だか、魚雷発射管の魚雷と同じで……前後に収まっていないと落ち着かなくて…ぇ///」

提督「…まさか「魚雷と同じ」で、前後に四本づつ収めていたりはしないわよね?」

デルフィーノ「さすがにそれはありませんよぅ……で、でも…二本くらいなら……///」

提督「…それは止めた方がいいと思うわ……あと、そう言う玩具はちゃんとしたものを使うようにね?」

デルフィーノ「はぁ…い……んくぅ///」

提督「そもそもはそれを言いに来たのだけれど……知り合いの士官でそう言う玩具が取れなくなって、軍の女医さんの前で恥をかいた人を知っているの」

デルフィーノ「うわ…デルフィーノもそんな恥ずかしいのは嫌ですよぅ……」

提督「ええ。何しろ車を出して病院へ付き添っただけの私まで恥ずかしかったくらいだから……それに私は肝心な時に指とか舌以外を使ってするのは、どうも…ね///」

デルフィーノ「それで提督はえっちの時におもちゃを使わないんですか…?」

提督「ええ…なんだか道具に頼るのも相手に失礼な気がするし……もっとも、これも私の「おばさま」の影響かもしれないわ」

デルフィーノ「…それじゃあ、提督のおばさまは道具を使わない女性なんですかぁ?」

提督「ええ…そのせいか私も「雰囲気を作るため」とか「相手に求められたら」いろいろ使うけれど、自分ではあんまり使おうとは思わないわね……」

デルフィーノ「なるほど…ぉ」

提督「あー…そう言えば一度だけ身体のにおいの強い人がいて閉口したことはあったわ……まぁ、でもそう言う時は指を使えばいいし…」

デルフィーノ「もう、提督ってばそういう事を言わないで欲しいです……せっかくデルフィーノが甘い気分にひたってたのにぃ…///」

提督「ふふっ、ごめんなさい…もっとも、ここの娘はみんな清潔にしているから甘い石けんの香りとか素敵な香水……ちょっと汗ばんでいても甘酸っぱいような香りだから、私は好きよ?」

デルフィーノ「もう、今さら言っても遅いですよっ…」

提督「はいはい…それで、そろそろ立てるようになった?」

デルフィーノ「どうでしょう…か…よいしょ……っと」

提督「あらあら、大丈夫?」よろめいたデルフィーノを受け止める…

デルフィーノ「はい、大丈夫です……すんすん…っ」

提督「…なぁに?もしかして汗臭いかしら?」

デルフィーノ「いいえ…むしろ美味しそうなトマトソースの匂いですよ?」

提督「あー…きっとお昼の準備でプッタネスカを作っていたからじゃないかしら?」

デルフィーノ「ふふ…トマトの香りがする香水があったら美味しそうでいいかもしれないですね…っ♪」

提督「ふふ、それは面白いわね……むしろ私ならバジルの香りがいいわ♪」

デルフィーノ「きっと食欲をそそりますねっ…ね、提督?」

提督「ふふ、そうね……♪」デルフィーノのすべすべした肌を撫でつつ手を引っ張って立たせる…

デルフィーノ「ふぅぅ…提督、デルフィーノが汚しちゃったのに片づけてくれてありがとうございます…っ♪」

提督「いいのよ……とにかくシャワーを浴びて、それから着替えていらっしゃい♪」

デルフィーノ「はい///」

提督「…そろそろお昼の時間だからあんまりシャワーで「刺激」したりしていないで、早めに上がっていらっしゃいね?」

デルフィーノ「は…はぁい///」

提督「…図星だったみたいね……全くもう♪」

………

感謝感謝
イルカかわいいよね

>>245 気に入って頂けて何よりです…時間ばかりかかっていますが……

…食後…

提督「ふー、美味しかったわ…それで、食後のドルチェは何かしら?」

ディアナ「今回はシフォンケーキに挑戦してみたのですが…バニラエッセンスは垂らしてみたものの香りが飛んでしまっていたようで、横に添えたクリームは今一つかもしれません……お味はいかがでしょうか?」

提督「どれどれ……んっ♪」フォークで切ろうとするとふっくらとした生地が沈み込み、それからすんなりと切れる……ほんの少しだけバニラの香りがするホイップクリームとダージリンの香りがする淡い茶色の生地が合わさって、ふわりと口の中に広がる…

グレイ提督「そうですね…クリームこそバニラの香りが足りませんが、ケーキそのものはふんわりしていて美味しいですよ?」

ヴァイス提督「ヤー、ほど良く焼けていて美味しいです……この馬鹿者が…!」提督から見えないよう、隣でシフォンケーキをがっついているビスマルクにひじ打ちを浴びせる…

ビスマルク「…何だ?……あ…あぁ……その、まぁ…なんだ……ウマいと思うぞ!」

ヴァイス提督「…」

ティルピッツ「…姉上……///」

提督「ふふっ♪」

エリザベス「ふふふ……やはりジャガイモの国はマナーを知らないイモ娘ばかりになるようですね…?」小声でグレイ提督に耳打ちする…

エメラルド「ぷっ…くすくすっ…♪」

グレイ提督「ふふふっ…そういうことをいうのはおよしなさいな、エリザベス?」

エリザベス「失礼いたしました……わたくしはつい思ったことが口から出てしまう素直な性格でございまして…♪」

グレイ提督「…うふふ」

提督「それにしてもバニラの香りが足りないとはいえクリームはしっかりしているし………って、バニラ!?」

グレイ提督「まぁ、いきなりそのような声をお上げになって…どうかなさいましたの?」

提督「ね、ねぇ……ディアナ」

ディアナ「はい、何でございましょう?」

提督「私の勘違いだったらごめんなさい…確かバニラエッセンスは先週使い終わって、次は食料品配達の日まで来ないはずよね?」

ディアナ「ええ、さようでございます……ですがわたくし、数日前からシフォンケーキに挑戦してみたかったものですから「誰かバニラエッセンスをお持ちではありませんか?」と声をかけまして…チェザーレがわたくしのために探し出してきてくれたのでございます」

提督「そう……チェザーレ」

チェザーレ「うむ、チェザーレに何か用か?」

提督「…ディアナのためにバニラエッセンスを探してきてくれたそうね?」

チェザーレ「うむ…あちこち探し回っていたらなぜか提督の机の上にあってな……黙って持って行くのも申し訳ないとは思ったが、美人の頼みには変えられぬ…ゆえに拝借させてもらったという次第なのだ」

提督「……それであの瓶がなくなっていたのね…私はてっきりライモンが片づけてくれたものかと……」

チェザーレ「あー…もしやあの瓶には何か別なものが入っていたのか?」

提督「ええ……ガリレオ!」

ガリレオ・ガリレイ「なに?どうかしたのかしら?」

提督「この間の失敗した疲労回復薬…と言うより「媚薬」を覚えている?」

ガリレイ「ええ、あれは「危険だから預かる」って提督が持って行ったわね…それがどうかしたの?」

提督「いえ…実を言うとラベルに「劇物」って書こうと思ったら油性ペンがないことに気がついて……そこで油性ペンを探しに行ったら倉庫が思っていたより散らかっていて……で、つい片づけに夢中になっている間に瓶の事を忘れて、机の上に置きっぱなしにしている間に……」お役所の書いた答弁よろしく、もごもごと言い訳がましい事をつぶやく提督……

チェザーレ「……チェザーレがちょうどいい所に「バニラエッセンス」があると勘違いをしてディアナに渡し…」

ディアナ「…それを私がホイップクリームの香りづけに垂らしてしまった…というわけですね?」

提督「ええ……どうしようかしら、もし鎮守府全体があんな風になったら///」

チェザーレ「むぅ……それは何とも楽しみ…もとい、大変なことになるな」

ガリレイ「それは困ったわね…とりあえず「アレ」は疲労回復のために身体の血行を良くする薬だから……とにかく身体のほてりを覚えたら冷やせばいいわ」

提督「あー、もう……それにしたって、グレイ提督とヴァイス提督には何て言えばいいの…?」

グレイ提督「……どうかなさいまして?」

提督「いえ、あのっ…まぁ……その…ぉ///」

グレイ提督「…ふむ?」

ガリレイ「とりあえず身体の小さい方が薬の効果が大きいから…駆逐艦と中型潜には部屋に引っ込んでいてもらうのがいいと思うわ」

提督「そ、そうね……ちょうどお昼寝の時間だから、それとなく通信室から放送をかけて来るわ///」

ガリバルディ「……ふぅん、小さい娘たちが身体を火照らせているわけね…ならこのガリバルディが鎮めてあげないと♪」放送を聞いて舌なめずりをする女好きのガリバルディ……

エウジェニオ「うふふ、それが駆逐隊を率いる軽巡の務め……だものね♪」こちらはギリシャ風のレズ気質がすっかり染みついているエウジェニオ…

アオスタ「あ、あのねぇ…そういうことはしてはいけない…って!?」

エウジェニオ「姉さんは部屋で休んでいて?…その間に私は「身体を張って」駆逐艦の娘たちを助けて来るから……ふふっ♪」姉のアオスタが止めようとすると、エウジェニオが唇に指を押し当てた…



…重巡「ザラ」級の部屋…

ポーラ「…ふわぁぁ…身体がぽかぽかして気持ちいいですねぇ~……ザラ姉さまぁ、一緒にお昼寝しましょ~…んぅ、ちゅっ♪」

ザラ「ええ…さっきの「薬がどうのこうの」とかがなくっても、私はポーラたちが大好きよ?……ちゅむっ…れろっ、ちゅるっ♪」

フィウメ「…わわわ……姉様たちのキス…いつもよりねちっこいです…///」

ゴリツィア「ふふ、フィウメ姉さんったら……薬の効き方まで一番遅いんですね…ちゅるっ、ちゅぽ…っ♪」(※フィウメ…公試速力32.95ノットでザラ級四隻中最低だった)

フィウメ「そ、そう言う話じゃ……んちゅぅぅ、ちゅるぅ///」


………

…駆逐艦「セラ」級の部屋…

セラ「はぁぁ…んっ……んんぅ///」氷枕をふとももに挟んで火照りを鎮めようとしながら、秘所に指を入れて激しくかき回すセラ…

クリスピ「全く、こんなのって……聞いたことがないわ…んっ、あぁぁぁっ///」鎮守府の駆逐艦では一番小さい955トンの「セラ」級だけに薬もよく効いたらしく、顔を火照らせ息を荒げている……

セラ「はぁぁ…っ、気持ちい…ぃ!」にちゅっ、ぐじゅっ…じゅぷっ♪

クリスピ「姉さん、あんまり刺激しないでっ……私は必死になって我慢しているんだから…っ!」シーツの端を噛みしめてふとももをこすり合わせているクリスピ…

セラ「そんなこと言ったって…ぇ……はぁぁ、んっ…♪」普段はMTM(爆装艇)のラジコン模型を抱えている大人しいセラが、あどけなさの残る見た目からは想像もできない色っぽいため息をつきながら、夢中で花芯をまさぐっている……

クリスピ「もう……姉さんのそんな声を聞いたら…我慢できなくなっちゃったじゃない…んんぅ…っ///」じゅぷ…っ♪

セラ「クリスピ…それなら一緒に……ね?」

クリスピ「あ、あっ、あっ……///」

………

…中型潜「シレーナ」級の部屋…

アメティスタ(アメジスト)「あふぅ、んくぅ……き、気持ちは嬉しいですがもうだめです……ねぇ、お願いですから……んちゅぅ、ちゅぅ///」民間療法では「酔いを防ぐ」と言われていた「アメティスタ」だけに薬もほとんど効かず、そのせいでかえって姉妹にいいようにされている…とはいえ石言葉の「愛情」を感じさせる熱いキスにまんざらでもない気分で、押しのける手つきもほとんど形ばかりで表情をとろけさせている……


ルビノ(ルビー)「はぁ、はぁっ……愛しいアメティスタ…好き、好き、好き…大好きよ、キスさせて!……もしダメでも無理やりいただくから……んちゅるっ、ちゅぷっ、れろっ…んちゅぅぅっ!」一方「ルビノ」は石言葉の「情熱・純愛」どうりに真紅の髪を振り乱し、床に押し倒したアメティスタをむさぼっている…

ガラテア「……ふぅ、そんなに私がいいのですか?」一方、自分の作った大理石像を愛した王「ピグマリオン」の願いでアフロディーテ(ヴィーナス)に命を吹き込まれた理想の女性像が艦名になっている「ガラテア」…そのすっきりとした白い肌をさらけ出してしなやかに立っていて、足元にはスメラルド(エメラルド)とザフィーロ(サファイア)がまとわりついて、滑らかな肌に頬ずりをしている……

スメラルド「ええ…ガラテア……私の変わらない「誠実さ」をどうか受け取って…///」

ザフィーロ「私は「慈愛」をもってガラテアに尽くします…はぁ…ん///」

ガラテア「困りましたね……分かりました、こちらへいらっしゃい…ね?」

スメラルド「あぁぁ、ガラテア……嬉しい…っ///」

ザフィーロ「愛してます…っ♪」…すっかりメロメロになっている二人は困った様子のガラテアに手を引かれて、彼女の私室へ入っていった……

トパツィーオ(トパーズ)「……私はあんな風には出来ないけれど……ずっと一緒に仲良くしましょうね、ディアマンテ?」黄色い石の「トパツィーオ」(トパーズ)は「誠実・友情」が石言葉で、ディアマンテと両手の指を絡めてきらきらとした瞳で見つめあっている…

ディアマンテ(ダイアモンド)「ええ…私たち二人の「永遠の絆」ね……ちゅっ♪」

トパツィーオ「ええ…それじゃあ一緒に……///」

ディアマンテ「そうね…トパツィーオ……ちゅ♪」軽く唇を重ねると、お互いに仲よく手をつないで座っている…

………

…その頃・グレイ提督の客室…

エメラルド「…はぁ、ふぅ……///」提督から事情を聞かされたものの、半信半疑で部屋にこもったグレイ提督一行……が、軽巡「エメラルド」はほっそりと端正な、まるでエルフのような顔を火照らせている…

エリザベス「どうかいたしましたか、エメラルド?」

グレイ提督「……顔が紅いようですわね」

エメラルド「な、何でもありません……はぁ、ふぅ……///」

グレイ提督「そうかしら…おでこを出してご覧なさい?」ぴた…っと額に手を当てるグレイ提督……古風な美しさを持った卵型の顔が迫り、琥珀色をした瞳がじっとエメラルドを凝視する…

エメラルド「閣下…ち、近いです……っ///」

グレイ提督「それが何か?……少々熱っぽいようですわね、カンピオーニ提督の所へ行って薬か何かをもらってきてあげましょう」

エメラルド「いえ…わ、私は提督…と……うぅ///」

グレイ提督「わたくしと…何です?」

エメラルド「はぁ…んぅぅ……わ、私は提督と女王陛下のためにこの身体を捧げております…ですが、もし…わがままを許していただけるのなら……///」

グレイ提督「ええ、許してあげます……さ、どうぞ申してご覧なさい?」

エメラルド「……そ、その…ほんの一時で構いません……私の……唇を…///」

エリザベス「まぁまぁ…何ともそれは……大胆でございますわね?」

グレイ提督「エリザベス…エメラルドはドイツやイタリアの艦娘ではないのです、からかうのはお止しなさい?」

エリザベス「失礼いたしました…」

グレイ提督「よろしい……エメラルド、わたくしでよろしいのね?」

エメラルド「は、はい…」

グレイ提督「分かりました…では、わたくしが女王陛下と大英帝国海軍に貢献するそなた「エメラルド」に祝福の接吻をいたしましょう……」ちゅぅ…♪

エメラルド「は、はぁぁ……提督は紅茶の香りが……とても…いい香りです……きゅぅ///」

エリザベス「…あらあら、気を失ってしまったようございますね?」

グレイ提督「わたくしの口づけがそんなにも嬉しかったとは、光栄なことですわね……しかし、どうやらカンピオーニ提督がおっしゃっていた「媚薬」とやらも事実のようですし…ふふ、何ともイタリアらしいと申しましょうか……」

エリザベス「ですが提督、ここは普段から「あの調子」ですから…本当に媚薬の効果があったかどうか分かりそうにはない、と存じます♪」

グレイ提督「ふふふ…まったくですわね。まぁ、しいて言うといつもよりも甘ったるい嬌声がたくさん聞こえる…と言った程度ですわね」

エリザベス「……それにしてもヴァイス中佐とビスマルクたちはどうなっているのやら…想像するだけで愉快でございます」

グレイ提督「なるほど、それはなかなか愉快ですわね…あの堅物のヴァイス中佐がビスマルクとティルピッツに迫られて、しどろもどろになっていると考えると……ふふ♪」

エリザベス「それにあの不作法な「ビスマルク」の事ですから、きっと野太い吼え声で喘いでいるに違いないと存じます…♪」

グレイ提督「まぁまぁ、何とも想像しやすい場面ですこと……ふふふ、おかしいですわ♪」紅茶を注ぎながら、いつもより毒気の強い皮肉を吐くグレイ提督……

エリザベス「それにしても、エメラルドはどういたしましょうか」

グレイ提督「寝台に寝かせてあげなさい……わたくしも手伝いましょうか?」

エリザベス「いえ、わたくしエリザベスは「か弱い」艦娘に過ぎませんが……エメラルド一人程度ならば大丈夫でございます♪」そう言いつつひょいとエメラルドを持ち上げ、ベッドに静かに下ろした…

エメラルド「うぅん……メアリ様ぁ………ふふ…っ///」

グレイ提督「まぁまぁ、気を失ってなおわたくしの事を……提督としてこれ以上の名誉はありませんわね…」

エリザベス「まぁ…このエリザベスも、いつも提督の事をお慕い申し上げておりますわ」

グレイ提督「ふふ……エリザベス、貴女もいつになく正直ですわね…これが薬の効果かどうかは存じませんが、フランチェスカには感謝せねばなりませんわね…?」

エリザベス「ええ、それにエメラルドの面白……いえ心に秘めた本音を聞くことも出来ましたから♪」

グレイ提督「ふふ…ヴァイス中佐とカンピオーニ提督の様子を見に行けないのは残念ですけれど……少なくとも「元は取った」と言ったところですわね」

…ヴァイス提督の客室…

ヴァイス提督「……は、は…はくしっ…!」

ティルピッツ「大丈夫ですか、提督?」

ヴァイス提督「ヤー…誰かに何か噂された気がしたがな……ティルピッツ、具合はどうか?」

ティルピッツ「…私は平気です……一切れしか食べなかったのでクリームもそこまでつけませんでした…それより姉上が……///」

ビスマルク「……「いいかティルピッツ…私はなぁ……実は貴様の事が…」……あぁぁ、妹に面と向かってこんなことが言えるわけがあるか!」

ヴァイス提督「…何やらテーブルに額を叩きつけているが…大丈夫なのか?」

ティルピッツ「いえ……姉上は狼のようにがっついていましたから…どうも薬が回ってしまったようで……」

ヴァイス提督「だからあれほど食べ過ぎるなと…まったく、身から出た錆だ」

ティルピッツ「すみません、提督…でも私では姉上を止めるには実力不足で……」

ヴァイス提督「いや、構わん……それより効果が切れるまでビスマルクをどうするかだな…まぁ、ああして悶々としているだけなら何の問題もないが……」

ビスマルク「……むむむ、こうなったら力づくでも私が妹と提督に好意を持っていることを示さねばなるまい…うむ、そうだビスマルクよ…恐れずに『鉄血政策』あるのみ……ティルピッツ!」

ティルピッツ「は、何でしょうか姉上!」

ビスマルク「うむ…あー……どうもいつもは上手く言えんのだが…私はなぁ、実は…妹である貴様の事がなぁ……その…///」

ティルピッツ「…姉上?」

ビスマルク「えぇい、こうなったら構うものか……ティルピッツ!」ティルピッツのネクタイを引っ張り顔面に引き寄せる…

ティルピッツ「ひっ…な、何でしょうか……姉上…!」

ビスマルク「…き、貴様が好きだぞ!」んちゅぅぅ…♪

ティルピッツ「んんぅ!?……んふっ、んむぅ…///」

ビスマルク「……ぷはぁ…我が妹ながらなんと甘い唇だ……!」

ティルピッツ「…ふぁぁ///」

ビスマルク「うむ…一度したら勇気が出た、これならば……提督!」

ヴァイス提督「何だ、ビスマルク……その…私とも……したいの…か?」

ビスマルク「いかにも…こうなれば一度するのも二度するのも変わらん!」

ヴァイス提督「分かった…そのかわり、きっちり反省してもらうからな……ん」

ビスマルク「よ、よし…ならば参るぞ……んちゅぅ、ちゅぅ……///」

ヴァイス提督「んくっ…んっ、ちゅっ……はぁ…っ///」

ビスマルク「…おぉぉ、おほぉぉ…なんと甘酸っぱくかぐわしいことか……モーゼルの白ワインのような味わいで…頭がくらくらする…ぞ!」

ヴァイス提督「ばかを言え…たかだか唇同士のくっつけ合いに過ぎんものにそんな効果があるわけ……お、おい…何をする気か?」

ビスマルク「提督は頭がいいのだ…こうして私がベッドに押し倒している時点で察しが付くだろう?」

ヴァイス提督「まさか、ビスマルク……本気で…///」

ビスマルク「いかにも…ちっ、シャツのボタンを外すのさえ……もどかしい…っ…えい、構うものか…!」びびぃ…っ、ぶちん……っ!

ヴァイス提督「…だからと言って引きちぎるやつがあるか……んくっ、んふぅっ…///」

ビスマルク「…んふっ、ちゅる…っ…じゅるぅ……っ!」

ヴァイス提督「んっ、んっ、んんぅ…っ!」

ビスマルク「はぁ…はぁ、提督の胸の何と白い……まるでエーデルヴァイスの花の色だ…な!」

ヴァイス提督「よ、余計なお世話だ…んひぃ゛ぃぃっ!?」

ビスマルク「おっ、お゛ぉ゛ぉぉっ…あ゛ぁぁっ!」部屋中に響き渡るような咆哮をあげつつ馬乗りになるビスマルク…

ヴァイス提督「んっ、くぅっ……馬鹿ぁ…もっと、優しくは…出来ないのか……っ///」

ビスマルク「出来るわけあるまい…っ、提督が綺麗なのがいかんのだ……あぁぁっ!」

ヴァイス提督「んくっ…んぁぁぁっ!」

………

…一方・提督寝室…

提督「……で、結局こうなるわけね」裸でベッドに寝転がりつつ、提督の片腕を抱きしめながらすやすやと眠っているライモンの頭を撫でる…

ライモン「…すぅ…すぅ…むにゃ……すぅぅ…」

カヴール「ふふ、この程度でよかったですね…提督♪」むっちりと魅力的な白い身体をさらに引き立たせる、ミラノ製の黒レースのランジェリーで提督の左側に寝そべり、片肘を立てて頬にあてがいながら微笑している…

提督「…まぁね」足もとでは大型潜の「エットーレ・フィエラモスカ」と大型敷設潜「ピエトロ・ミッカ」が疲れ果ててぐっすり眠りこけている……

カヴール「提督はもっと大変な事を想像していたのでしょう?…例えば……」


………



提督「…はぁ、はぁ、はぁ……ど、どうしよう…!」提督用浴室の隣、小さな個室になっている化粧室に閉じこもって鍵をかける……

リットリオ「…提督ぅー…ど~こで~すかぁ~……♪」

ローマ「私たちと一緒に…「イイコト」しません?」

ヴィトリオ・ヴェネト「えへへ…早く出てこないと……お仕置きですよっ?」

提督「…ひっ……!」腰のベレッタ・ピストルをホルスターから抜いて、震える手でスライドを引く…と、ドアが音を立ててゆがみ始める……

提督「ひぃぃ…こ、来ないで……来たら本当に撃つわよ…っ!?」

リットリオ「ふふ、優しい提督がそんなことする訳ないじゃないですかぁ……それに…」

提督「……そ、それに?」

リットリオ「…私を止めたいなら、9ミリのピストルくらいじゃダメですよ……っ♪」そう言いながら隙間に指を入れてメリメリと扉をこじ開ける…ドアに掛けていたチェーンが基部ごとはじけ飛び、蝶つがいがゆがんでいく…

提督「あ…あぁぁ……」恐怖のあまり制服のタイトスカートを濡らし、化粧室の床にへたり込む…と、半壊したドアから満面の笑みでリットリオが顔を出す……

リットリオ「……みぃつけた♪」

提督「いやぁぁ!…やめてっ、お願い…何でもしてあげるからっ!」

リットリオ「ふふっ…大げさですよっ、提督?…ただ……提督が「何でも」してくれるなら、イロイロしちゃいますねっ…んふふっ♪」

ヴェネト「ふふふ…っ♪」

ローマ「じゅる…っ♪」

提督「いやぁぁあぁっ…!」

………

カヴール「と、まぁ…こんな感じかと♪」

提督「……まるでホラーね」

カヴール「ふふふっ…それに引き替え現実は可愛いライモンドに、一人っ子の「フィエラモスカ」と「ミッカ」……それと私だけなんですから、提督からしたら「お茶の子」だったでしょう♪」

提督「あのね……正直に言って、腰ががくがくして立つことも出来そうにないのだけれど…」

カヴール「ふふ、ならお休みになればいいじゃありませんか…子守歌でも歌ってあげましょうか?」

提督「カヴール、世の中には「疲れすぎて眠れないことがある」…って知らないかしら」

カヴール「あらあら…私は提督を疲れさせないよう、チェザーレにデュイリオを交ぜて一戦こなしてから参りましたのに……そんなことを言っているようでは大作戦の時に体力が持ちませんよ?」

提督「作戦とえっちを同列に論じないで欲しいわ……はぁ…」

カヴール「それにしても…今回の「バニラエッセンス」はずいぶんと士気を高める役に立ってくれましたね♪」開いた窓からあちこちの部屋から漏れてくる嬌声が聞こえてくる…

提督「…そんなことで士気を高められても…それと…まぁヴァイス提督はともかくとしても……メアリに鎮守府の「奔放な百合事情」を知られちゃったのはね///」

カヴール「あら…グレイ提督に知られて何か問題でも?」

提督「だってメアリはイギリスの提督よ?…多かれ少なかれ「SIS」みたいな諜報組織と関係があるでしょうし、使えるとなったらスキャンダルだろうが暴露写真だろうが構わず武器にしてくるわ……」

(※SIS…イギリス秘密情報部。よく間違って「MI6」と呼ばれていて、最近では半ば公式のニックネームになっている…ちなみに「007」こと「ジェームズ・ボンド」もここの所属と言う設定)

カヴール「提督ったら少し考え過ぎで…いえ、イギリスの事ですからあながち「ない」とも言えませんね……」

提督「ね?…こうなったら機先を制してコリドーニにメアリの恥ずかしい写真でも撮っておいてもらおうかしら……」

………

…別の日・厨房…

提督「……それじゃあ私も手伝うから、一生懸命やるように!」

…よれよれのカットソーに下着のショーツ一枚で、手にはゴム手袋をしている提督……見上げる先にはひと月分の油汚れが溜まって、ギトギトになっている換気扇が「タワーリング・インフェルノ」(そびえたつ地獄)となって立ちはだかっている……すでに調理器具はディアナとエリトレアが「退避」させていて、ガス台も元栓を閉め、調理台の上には読み終わった新聞紙が広げてある……

ガリレイ「…了解…せっかくのいい天気の日に私はこんな事をしている……それでも地球は回ってるのよね…」

ガルヴァーニ「それは誰のせいだと思っているのかしら……ガリレオにはあとで電気ショックでも浴びせてあげようかしら…ぶつぶつ……」

トリチェリ「うぅ…先生の起こしたトラブルだから私も連帯責任ですよね……ふぅ、こうなったら頑張りますよ…」

フェラリス「あーあ、いくら私の姉とはいえ…恨み言の一つも言いたくなるわ…」

アルキメーデ「まったく、嫌になるわね……」

チェザーレ「いかにも…だいたいなんでチェザーレまで罰を受けねばならんのか……提督、チェザーレが好きなものを買ってやるから見逃してはくれまいか?」

提督「…そう言う賄賂(わいろ)を使うような娘は罰が倍になるわよ?」

チェザーレ「く…やはり提督は元老院のようにはいかぬか……」

(※ユリウス・カエサルは地位を得るまでにもの凄い額の賄賂を使い、当時の任地イスパーニア(スペイン)の寺院に納められた寄進の金銀までくすねて元老院議員にばら撒いたことで有名だった…らしい)

提督「文句を言わない…さぁ、それじゃあ始めましょう……終わったら冷たい飲み物が待っているんだから♪」

ダ・ヴィンチ「仕方ないわね…ここは私が素晴らしい発明品で……!」

ガリレイ「うん、さすがは世界の大天才ね!……で、どんな道具があるの?」

ダ・ヴィンチ「…はい♪」

ガリレイ「えーと……なにこれ」

ダ・ヴィンチ「見ての通り、食器用洗剤と使い古しの歯ブラシよ」

ガリレイ「…は?」

ダ・ヴィンチ「なに、ガリレオは知らないの?」

ガリレイ「いや……何が?」

ダ・ヴィンチ「あのね…換気扇の汚れなんてたいていは油なんだから、50℃くらいのお湯に食器用洗剤を溶かして漬けちゃえばあっという間に落としやすくなるのよ…そうでしょう、提督?」

提督「ええ、そうよ……ただしそうするには、あの地獄の底みたいに汚れた換気扇のフードの中に頭を突っこんで、フィンとカバーを取りはずさなきゃならないわけだけれど…ちなみに私はパス♪」

チェザーレ「チェザーレも髪を汚したくないから遠慮させてもらおう♪」

トリチェリ「わ、私は他の所で頑張りますから……」

ガルヴァーニ「ま、一番の原因なんだからガリレオがやるべきよね……ふふ」

ダ・ヴィンチ「異議なし♪」

ガリレイ「え、ちょっと待って…私だって嫌なんだけど?」

提督「……ふーん」

ガリレイ「う…分かった、分かったわよ……それでも地球は回っているものね!!」

提督「…ガリレオ、顔を突っこむ前にこれを付けてね?」目に油の雫が入らないよう古い水泳用のゴーグルと、髪を汚さないよう縁がほつれているスカーフを渡した…さっそくゴーグルをかけてスカーフを頭中に巻きつけたガリレオ…

ガリレイ「はいはい…どうもありがとう、提督……うわぁぁ…」

ディアナ「…中はひどいことになっているでしょう?」様子を見に来たディアナが下からのぞきこみながら声をかける…

ガリレイ「……心底見なきゃよかったわ…パネルを外すわよ」フィンとカバーを取り外し、あちこちに酸化した油独特のすえたニオイのする汚れを付けて降りてきた…

提督「ご苦労様。それじゃあ後はみんなでやりましょう」ハブラシと洗剤を持って換気扇のフィンをにらみつける提督…

チェザーレ「うむ…こうなったら仕方あるまい」

トリチェリ「私もがんばりますから、一緒に頑張りましょう?」

アルキメーデ「まぁ…トリチェリに言われたら仕方ないわ」

フェラリス「ええ、そうですね」

………

アルキメーデ「……トリチェリ、その歯ブラシをとって?」調理台の上にまとめて放り出してある使い古しの歯ブラシを指差した

トリチェリ「あぁ、はいはい…油汚れが相手ではすぐダメになっちゃいますものね」

アルキメーデ「そうなのよ…って、これ……」手渡された白と青の歯ブラシをしげしげと眺め、油汚れに触れていない事を確かめると…そっとポケットにねじ込んだ……

トリチェリ「ん…どうかしたんですか?」

アルキメーデ「あぁ、えーと…そうそう!…いちいち取ってもらうのも面倒でしょうし、数本まとめて取ってもらえれば…って思ったの」

トリチェリ「なるほど、それもそうですね……はい、どうぞ♪」

アルキメーデ「ありがと。ふふ、きっと日頃の行いがよかったのね…」アルキメーデがそっと隠した歯ブラシは、「キスしたときに食べかすがついていたりしたら恥ずかしいから…」と、普段から歯ブラシ選びにこだわりを持っている提督の使い古しだった…

アルキメーデ「……ふふーん、ふーん…♪」

チェザーレ「ほう、ずいぶんと上機嫌ではないか…♪」

アルキメーデ「いや、だって…その……何か汚れていた物が綺麗になるっていい気分だもの」

提督「ふふ、アルキメーデは綺麗好きなのね…えらいえらい♪」

アルキメーデ「…まぁね」

フェラリス「うぅ、それにしてもフィンの汚れにフィルターの汚れ…はぁぁ……」

ダ・ヴィンチ「食器用洗剤でも落ちるものだけれど…もうちょっとひと工夫が必要だったかもしれないわ……」

ガルヴァーニ「本当にね…ねぇ、ダ・ヴィンチ?」

ダ・ヴィンチ「んー、何かしら?」

ガルヴァーニ「…あなた、世界の大天才なんでしょう?ここで汚れが綺麗に落ちるような工夫を思いついてくれない?」

ダ・ヴィンチ「うーん……そう言われても…」

提督「はいはい、考えている間も手を動かせば早いわよ…歌でも歌いながらやれば気分よくできるでしょう?」

ガリレイ「こんな油汚れの中で気の利いた歌なんか出る訳ないわよね…まったく……」

提督「もう、ぶつぶつ言わないの。私だってこうして汗だくでやっているのだから…ね?」

トリチェリ「そうですね、提督ったら汗びっしょりで……す///」水色のカットソーは汗でしっとりと濡れ、つんと突き出した乳首と布地に張りついた豊かな乳房が透けて見える……

チェザーレ「うむ…その上頑張ってこすっていて……何とも良い眺めであるな…♪」提督が歯ブラシで浮いた汚れをかき落とすたびに、たゆんっ…と胸が弾む…

提督「それって…もしかして「努力する人は綺麗に見える」って言うことかしら?」

チェザーレ「あぁ、うむ…そう言う意味であるな……もとより綺麗な提督が真剣な顔をしていると、なおの事引き立つと言うものだ…///」

提督「ふふ、嬉しい…じゃあもっと頑張らないといけないわね♪」

チェザーレ「なに、チェザーレもここにいるのだ……ぜひとも頼ってもらいたいな♪」…揺れる提督の胸を目で見て楽しみながら、ごしごしと換気扇の羽根をこする……

トリチェリ「あの、提督…良かったらここを押さえてもらえますか?」

提督「ええ」…トリチェリに近寄ると腕の間に手を伸ばし、下から換気扇の部品を支える提督……

トリチェリ「え、えーと…もうちょっと奥を支えて下さい……///」…二人羽織りのような具合で後ろに立った提督……一方のトリチェリからは背中に当たって柔らかく押しつぶされる乳房と、耳元にかかる荒い息づかいに甘い吐息が感じられる……

ガリレイ「…ちょっと近すぎじゃないかしら?」

トリチェリ「私は「部品を支えてください」と提督にお願いしているだけです……ちょっと勘繰り過ぎではありませんか///」

提督「ええそうよ、ガリレオ……それにトリチェリが一生懸命やっているのに、水を差すような事を言うのはどうかと思うわ」

ガリレイ「いえ、私は単に思った事を…まぁいいわ」

トリチェリ「…それでは提督、申し訳ないですが今度はここを……」もっと身体を押し付けてもらえるよう、わざと手の届きにくい所を支えてくれるよう頼む……

提督「分かったわ……で、胸を押し付けられた気分はいかが…?」耳元でいたずらっぽくささやく…

トリチェリ「……はい、むちむちで素晴らしいです…///」

提督「ふふっ、私もトリチェリに抱きつけて幸せよ?……さぁ、これ以上視線を集めないように手早く終わらせましょう」

トリチェリ「…はい///」

…しばらくして…

チェザーレ「うむ…終わったな♪」汚れた服を洗濯機に放り込み、シャワーでさっぱりとした気分になってから食堂に戻ってきた提督たち…

ガリバルディ「リベッチオ、これを運んでおいてちょうだい……ほら、みんな手際よく動きなさい?」

リベッチオ「うんっ!」

ドリア「ふふ、今日のお昼はなんでしょう……考えるだけでお腹が空きますね♪」

…辺りであくせくしている空腹の艦娘たちはディアナが厨房を元に戻すまで昼ごはんにありつけないので、時折テーブルの上に出されたチーズやオリーヴをつまみながら、積極的に手伝っている…

アルキメーデ「…はー、それにしても疲れたわ……」そう言って力なく椅子に腰かけている…

提督「みんな、お疲れさま…これで換気扇掃除は完了ね」

ディアナ「ええ、皆さんがやってくれたおかげで助かりました…感謝いたしますよ♪」

ダ・ヴィンチ「どういたしまして…それにしてもくたびれたわ……」

ガリレイ「ええ…ところで提督」

提督「なぁに、ガリレオ?」

ガリレイ「後で換気扇のフードに、メッセージを刻んだプレートを取り付けていいかしら…」

提督「メッセージ…どんな?」

ガリレイ「……ダンテじゃないけれど「すべての希望を捨てよ」って」

提督「…笑えるわ……でもこれで一カ月は見なくても済むのだから、そう言わないの」

ガルヴァーニ「そうね、そもそもはガリレオがあんな薬を作ったせいなんだから…少しは反省しなさいよ?」

ガリレイ「ちょっと待って、まるで私だけが悪いみたいに言われているけれどね……そもそも調合自体はみんなでやったじゃない」

トリチェリ「でもバニラエッセンスの瓶に入れたのはガリレオ先生ですよ?」

ガリレイ「うっ…弟子にまで言われるとはね……分かったわ、黙ってコーヒーでも飲んでいればいいわけね」

提督「でも思っていたより時間がかかったせいで、お昼の時間に食いこんじゃったわね…ディアナ、今からで悪いけれど何か作れる?」

ディアナ「ふふ……わたくし、そこに抜かりはありませんよ。お昼は『ポークソテーの冷肉・南イタリア風』です♪」冷蔵庫から取り出した大皿にはカリッと焼いてあるポークソテーの冷やしたものが並び、上には「ソース」と言うより、ざく切りのサラダのような具だくさんの「サルサ・ポモドーレ」(トマトソース)がかかっている…

提督「まぁ、美味しそう♪」


…コールドポークにかかっている「サルサ・ポモドーレ」は、みじん切りにしたたっぷりの野菜をニンニクと唐辛子で香りづけしたオリーヴオイルで軽く炒め、そこにたっぷりと荒みじんにしたトマトを入れる……ある程度トマトが煮詰まって生の紅色が濃い柿色に変わったら塩胡椒、少しのコンソメスープ、オレガノ、オールスパイスのようなちょっとした香辛料を利かせる……もっとも、スパイスがなくても甘酸っぱいトマトと豚肉の相性は抜群で、素焼きのカップで飲むような素朴なテーブルワイン、普通のパン…あるいはクラッカーを並べただけだとしても美味しく食べられる…


チェザーレ「おぉ…何ともよい香りだ♪」…オリーヴの酢漬けとひよこ豆のサラダをつまみながらちびちびと赤ワインをすすっていたが、大皿を見て微笑を浮かべた……

アッテンドーロ「ふぅ、こっちも待ちくたびれたわよ……それじゃあさっそく♪」カリッと焼けた豚の脂身の多い所を選んで取り、粒マスタードを添える…

ライモン「もう、ムツィオったら提督も取らないうちに…はしたないですよ?」

アッテンドーロ「悪いわね、提督……こっちはさっきまで訓練をしていたからお腹がぺこぺこなの」

提督「いいわよ…その代わり私にも取ってくれる?」

アッテンドーロ「ですってよ、姉さん?」

ライモン「でも…あなたが言われたのよ、ムツィオ?」

アッテンドーロ「知ってるわ……でも「愛しの提督」には、姉さんがよそってあげた方が気が利いているでしょうよ♪」

ライモン「…も、もう///」

ドリア「うふふっ…ライモンドによそってもらったら美味しさも格別ですね、提督?」

提督「ええ♪」

ライモン「まったくもう…みんなしてわたしをからかうんですから……はい、どうぞ…///」

提督「ええ、グラツィエ……ライモン♪」お皿を受け取ると、トマトソースの跳ねたライモンの指先を「ちゅっ♪」と舐めとった…

ライモン「///」

………

…数日後・工作室…

提督「……ついにこの日が来たわね」


…六日前にガタピシとおかしな音を立て、建造完了まで「144時間」などという数字を弾きだした建造装置を不安げに眺める提督……周囲には土のうを積み、そこに「ベレッタ・BM59」オートマティック・ライフル、「MG42/59」軽機関銃、手榴弾数個を立てかけて、何が出てきても大丈夫なように身構えている一同……提督は旧イタリア王国士官風の白い詰襟にフリッツ・ヘルメットをかぶり、髪をお団子に結い上げて、土のうの陰にしゃがんでいる…


ガリバルディ「大丈夫よ、私がついているわ」

チェザーレ「うむ、チェザーレもそばについているからな…ローマ軍団が後ろに控えているつもりでいればよいぞ」

コルサーロ(ソルダティ級駆逐艦「アラビア海賊」)「あたしだってついてるぜ、提督……深海の連中なんて出て来てみなよ、この三日月刀に物をいわせてやるさ」青いターバンを頭に巻き、つま先の尖った靴を履いているコルサーロ…

スクアロ(スクアロ級中型潜「サメ」)「…ふふっ、いざとなったら私がこの丈夫な歯で噛みちぎってやるわ…♪」

ムレーナ(フルット級中型潜「ウツボ」)「ええ…ハチの巣も悪くはないでしょうけれどね……」冷たい微笑を浮かべると、ベレッタM38「モスキト」短機関銃のボルトを引いた……二本ある引き金の手前側に指をかけ、銃身を土のうに乗せて待ち受ける…

提督「…ありがとう、心強いわ」

ライモン「さぁ、来ますよ…残り時間…3…2…1……建造完了です…!」

提督「……うっ!」…いつもと変わらないラピスラズリのような光が工作室を照らし、一瞬目を眩ませる……

チェザーレ「むむっ…!」

ガリバルディ「出てくるわよ!」

コルサーロ「はんっ、待ちくたびれたよ…!」

提督「こんなに時間がかかるなんて一体どんな……って、あら?」


…青い光が薄れると、建造装置の前に中型潜くらいの艦娘が二人だけ立っていた……片方は淡いグレイの水着のような「艤装」にギリシャ風のアップに結い上げた髪、一方の肩には金の毛皮をかけている……もう一人は少しぼんやりした表情でゆらゆらと身体を揺さぶりながら、水着の上にシースルーの青い薄物を羽織り、頭には透明なガラスのようなカチューシャを付けている…


艦娘?「…ボン・ディア、提督さん……鎮守府までこの様子だと、かなりの激戦地に来ちゃったみたいね?」…いきなりポルトガル語で「こんにちは」とあいさつする艦娘…周囲の物々しい様子を眺めてから、足もとに気を付けて前に出た

提督「ボン・ディア……えーと、貴女は…?」

艦娘?「そうね、まずは自己紹介から…私は中型潜「アルゴ」級のアルゴ……勇士と思うものは私に乗れーっ!」

提督「それで六日もかかったのね……ふふ、深海棲艦じゃなくてよかったわ♪」自己紹介を済ませると、迷彩カバーをかぶせてあご紐までかけているヘルメットを眉の上まで持ち上げ、「アルゴ」の頬に音高くキスをした…

アルゴ「んぅっ…もう、提督ったらずいぶん慣れなれしいじゃない♪」

提督「ふふっ…それで貴女が……」

艦娘「はい…中型潜「アルゴ」級の「ヴェレラ」です……もしかして、触ると毒かもしれません……よ…?」綺麗な青色の瞳に透明感のあるぷるぷるの肌…端正な見かけと長い髪が、病弱なお嬢さまのように見せている……

提督「ふふ、刺さないでね…?」軽く左右の頬にキスをすると、ぱちりとウィンクした…

ライモン「はぁ……ちゃんと艦娘でよかったです…」

コルサーロ「…まったくさね」

提督「ふぅ、杞憂でよかったわ……こちら工作室」携帯無線機を取り上げて「送信」を押す…

ドリアの声「はい、こちら第一戦隊…工作室どうぞ?」

提督「出てきたのは艦娘…繰り返します、出てきたのは艦娘……警戒状態は解除してください、どうぞ」

ドリア「了解、それはよかったです…どうぞ」

提督「ええ……武器を武器庫へ戻したら、手を洗ってごちそうの準備に取り掛かって下さい…以上、通信終わり♪」

ムレーナ「…歓迎するよ…さ、ひざまづいて私の指輪にキスをしてもらえるかな?」

提督「もう、いきなりそれはないでしょう……それより、早くお昼にしましょうね♪」

チェザーレ「うむ、土のうを片づけんといかんからな」

アルゴ「……一体何に備えての準備だったの?」

提督「あー…えーと……///」

ムレーナ「…みんなの心が生み出した疑心暗鬼にさ……さ、一緒に来るといい」ギャングの大ボスが良く出来た部下にやるように、肩に手を回してぽんぽんと軽く叩いた…

………

…艦娘紹介…


中型潜「アルゴ」級。1937年生まれ。二隻

排水量は780トン/1000トン、完全複殻式


イタリア王国海軍が第一次大戦後、初めて建造した複殻構造の大型潜「バリラ」級の系譜を継ぐ中型潜。

本来は1931年に、大型潜「グラウコ」級二隻と同じくポルトガル海軍に発注されたがキャンセルされ、35年にイタリア王国海軍が引き取って完成させたもの……が、ポルトガル海軍のキャンセルやその後の扱いに関する処理などで建造が中断していたこともあり、1931年に建造を開始してから37年に完成するまで、なんと6年もかかったという記録破りな潜水艦……イタリアがスローライフの国とはいえかなりのカタツムリぶりではある…

…とはいえ肝心の性能はすこぶる優秀で信頼性に富み、このクラスを参考にイタリア中型潜の完成型である「フルット」級が生まれたことからも意義深い二隻


主機は1500馬力(ディーゼル)/800馬力(電動機)で14/8ノット

武装は533ミリ魚雷発射管4門(艦首)/2門(艦尾)、100ミリ単装砲1基、13.2ミリ連装機銃2基

………

戦中は地中海と大西洋で有効活用され、ネームシップ「アルゴ」は43年に建造所CRDA社で修理中に休戦となり、ドイツ軍に接収されるのを防ぐため自沈、ヴェレラもやはり43年ごろ、英潜の雷撃によって撃沈された


艦名は「アルゴ」(Argo)がギリシャ神話の有名な冒険物語、「金羊毛」を求めたイアーソーンと勇者たちの乗った船「アルゴー号」で、ヴェレラ(Velella)は青い胴体と、透明な空気袋を「帆」にして海上を漂うクラゲの一種「カツオノカンムリ」から…ちなみに「カツオノカンムリ」は毒があり、触ると数日は入院することになるという…

………


艦娘「アルゴ」は女神ヘーラー(ローマでは「ユーノー」、英語では「ジュノー」)から授けられたという、「未来を予知する柏の小枝」を模した小枝を持っていて、肩には金羊毛を模した金の毛皮をかけている…艦娘「アルゴナウタ」(「アルゴー号の乗組員たち」…一般的な「勇敢なもの」と言う意味の他に、イタリア語では「イカの一種」を指すこともあるらしい)とは当然乗ったり乗られたりの関係に…

ヴェレラは「カツオノカンムリ」と同じような青いシースルーのケープやベビードール、透明な「帆」のようなカチューシャを付けていて、よく風任せにふわふわ、ぼんやりしている……どちらもポルトガル海軍にキャンセルされた経緯からか、ポルトガル語に堪能で甘いものが好き…


………

…ずいぶん投下が遅くなってしまいましたが、これで時間のかかった「アルゴ」級の建造を小ネタに使うことが出来ました……この後は「600」型シリーズの数クラスを登場させれば、主だった艦艇は全部登場したことになります…


…他にも提督の回想(子供時代・少尉~大尉時代)や百合っぽいシチュエーションも多少思いついてはいますので、また思い出した頃にのぞいてみてもらえればと思います…

乙。読んでるよ

>>258 グラツィエ、読んで下さってありがとうございます…更新は遅いですが、どうぞごひいきに……

…数日後・提督執務室…

提督「さてと…飲み物はコーヒーに紅茶、ミルクにレモン水……どれにする?」鎮守府の暮らしに何かと戸惑うこともあるだろうと、提督は「アルゴ」級の二人を執務室に呼んで、世間話をしながら悩みを聞いていた……

アルゴ「ならカフェラテを…ミルクたっぷりで甘いのを♪」

ヴェレラ「あ、私も甘くして下さい……」

提督「ふふっ、分かってます……お菓子は何がいいかしら?」棚からお菓子の入っている蓋つきのお皿を持ってきた…

アルゴ「えぇと…それじゃ……どれにしようかなー…っと」神話のアルゴー号が船出する際に女神ユーノーから贈られたという「未来を予知する柏の枝」…の飾り物を手に考え込み、それからおもむろに顔をあげた……

提督「どう、決まった?…別に一つじゃなくてもいいわよ♪」

アルゴ「ふふ、そう言ってくれると思った……カステーラにクッキー…あ、あとこの美味しそうなチョコレートをもらうわね♪」

提督「ええ、どうぞ…ヴェレラも欲しかったら好きなだけ取っていいわよ?」

ヴェレラ「わ…そうですか……それでは…ビスコッティにケーキを…あ、カンノーロも美味しそうですね……」

提督「はい、どうぞ♪」

ヴェレラ「わぁ…うれしいです……あむっ……♪」

提督「…美味しい?」

アルゴ「とっても美味しいわ…砂糖をいっぱい使ったお菓子が自由に食べられるなんて、いい時代になったものね♪」

ヴェレラ「そうですね……ここに来られてよかったです……んむ…っ…♪」口の端にクリームをつけて、幸せそうにケーキを味わっている……

提督「ふふ…クリームがついているわよ?」小ぶりな応接用のテーブルに両肘をつき、手をあごに当てて目を細めている…

ヴェレラ「ん……どっちですか…?」

提督「もうちょっと端っこに……もう、ふふっ♪」指を伸ばしてつぅ…っとクリームをすくい取り、そのまま口に含んで舐めとる提督…

ヴェレラ「……ん♪」

提督「はい、取れたわ」

ヴェレラ「ふぁ…ありがとうございます……///」

提督「どういたしまして…それじゃあ鎮守府暮らしはまぁまぁって所ね?」

アルゴ「まぁまぁどころか……こんな楽な暮らしをしてて「バチが当たらないか心配」ってくらい♪」

提督「ふふ…っ♪」

ヴェレラ「…それにしても……提督の執務室は立派ですねぇ……んー…と?」甘いものをたっぷりお腹に収めて、とろとろと眠そうな表情のヴェレラ……左右の壁をゆっくり見回して額に入っている数枚の感状に気が付くと、トコトコと歩み寄って書いてある文章を眺めた……

アルゴ「なに…って、提督への感状?」

ヴェレラ「うん……「カンピオーニ少尉の卓抜せる勇敢さと功績をたたえて、ここに『海軍青銅勲章』を授けるものである」…ですって…ぇ……♪」

提督「あぁ、それね…せっかく立派な額縁もあるし、ファイルにしまうのも何となくもったいないような気がして……べ、別に見栄っぱりだから飾っているわけじゃないのよ…///」

アルゴ「ふふ、そんなこと言ってないでしょ……ね、せっかくだから聞かせてちょうだい?」

提督「そうねぇ…まぁライモンやカヴールも知っていることだから……」

アルゴ「やったぁ…私、英雄豪傑とか勇敢なお話は大好きよ♪」

ヴェレラ「それじゃあ…せっかくなのでお話、聞きたいです……♪」

提督「…ふぅ、分かったわ」

………

…十年ほど前・ナポリ…

提督(少尉時代)「ふふ、どうかしら?…お母さま、シルヴィアおばさま♪」制服を見せびらかすように、軽くくるりと回ってみせる…

シルヴィア「とっても似合ってるわ」ちゅっ…♪

クラウディア「ええ、フランカは色白だから黒がよく似合うけど……白い夏服も爽やかでいいわね♪」んちゅっ…ちゅぅっ♪


…狭いベッドに、女性士官専用どうしとはいえプライバシーのほとんどない艦内生活……そうした部分にはいくらか閉口したものの、船酔いになることもなく、無事にフリゲート艦「インパヴィド」級での遠洋航海任務を終えた提督…シルヴィアとクラウディアはそんな提督を出迎えるために、わざわざナポリのホテルに部屋を取ってまで来てくれていた……白い制服も初々しい提督を抱きしめ、熱いキスを交わすシルヴィアとクラウディア……


提督「ふふっ、来てくれてありがと…♪」

シルヴィア「いいのよ、たまには出かけた方が頭の体操になるわ」

クラウディア「それに初めての洋上勤務だもの、ちゃんとお出迎えしてあげたかったの……さ、行きましょう♪」

提督「ええ、ホテルに着いたら制服を脱いで…うんと美味しいものを食べたいわ」

クラウディア「ふふ、そうね♪」

………

…しばらくして…

提督「お母さま、シルヴィアおばさまとちょっと出かけて来るわね?」

クラウディア「ええ、いいわよ…どこに行くの?」

提督「ふふ、ちょっとね……大丈夫、レストランの予約時間までには戻ってくるから」

クラウディア「そう、それなら大丈夫ね♪」

シルヴィア「一人にさせて悪いわね」

クラウディア「ううん、気にしないで…早く戻って来てね?」ちゅ…♪

シルヴィア「ええ」ちゅぅ…♪

…街中…

提督「ねぇシルヴィアおばさま……お母さまは喜んでくれるかしら?」…初めての遠洋航海手当で何かプレゼントを贈って驚かせようと考えている提督…クラウディアの好みが良く分かっているシルヴィアについてきてもらい、あれこれと遠洋航海の話をしながら連れだって歩いている……

シルヴィア「ふふ、喜ぶに決まっているわ……でも、それにはまずお金をおろさないとね…?」

提督「分かってるわ♪…大丈夫、艦内の酒保(売店)で買えるものはあんまりなかったし、お給料はいっぱい貯まっているの」

シルヴィア「…それでも足りないようなら私も出してあげるから……何よりクラウディアの好きなものを選んであげましょうね」

提督「ええ……あ、あったわ♪」




…銀行…

提督「…何でこんなところにパン屋のバンが停まっているのかしら……」銀行の脇道からはみ出すような形で無神経に停めてあるパン屋のバンに、提督は眉をひそめた…

シルヴィア「…」軽いグレイのブレザーを羽織っていたが、暑いのか前のボタンを外している……

行員「…いらっしゃいませ、本日はどのようなご用件でしょうか?」

提督「あ、えーと…口座からお金を下ろしたいのですが……」

行員「はい、それでしたらこちらへどうぞ…お客様はご本人様でいらっしゃいますか?」

提督「ええ、そうです」

行員「そうですか…では通帳と、お客様がご本人様であることが分かるものを提示して頂けますか?」

提督「あぁ、はい……これでいいですか?」まだ慣れない銀行でのやり取りにまごつきながら、海軍の写真つき身分証を取り出す…

行員「はい、結構でございます…ところでお客様は新しいサービスである……」大人しい感じのする提督に、ベテランらしい行員のお姉さんはさっそく色々なサービスプランや契約を持ちかける…

提督「えーと…つまりこのカードで電子決済が出来るようになると……ごめんなさい、特に必要がないのでいらないです」…その頃は提督もまだまだ真面目で、ある程度話を聞いてから丁寧に断っている

シルヴィア「……何してるの?」

提督「あぁ、おばさま…えーと……」

シルヴィア「ふぅ……申し訳ないけど、今日は投資信託も電子決済もクルーザーもビジネスジェット機もなし…大事な人を待たせているから手際よくお願い」

行員「あ、これは失礼いたしました…」

提督「……ふぅぅ、ありがとう」

シルヴィア「あのね、そういう時はとりあえず「必要ないです」って言っておきなさい……いちいち話を聞いていたら日が暮れるし、向こうだってあれだけしゃべらされたら舌がくたびれるわ」

提督「ええ、今度からそうするわね…」やっとお金を下ろして銀行を出ようとしたとき、突然脇道のバンから覆面姿の数人が勢いよく飛び込んできた……

強盗「金を出せ!!」

強盗B「全員床に伏せやがれ!!」

強盗C「いいか、足もとの警報ベルを押そうなんて考えるなよ!」

シルヴィア「ね、これだから銀行で長居をすると良くないのよ…それにしてもこんな時に……」床に伏せたまま肩をすくめるシルヴィア…

提督「ええ…お母さまが待っているのに……」

シルヴィア「そうね……はぁ、取るなら取るでいいから早く済ませてくれないかしら…」

強盗「くそっ、早くしやがれ…!」ショットガンの筒先で行員のお姉さんをぐいぐいと押す…

行員「は、はい…今開けます……」

強盗「…どけっ!」手が震えて引き出しを開けられない行員に業を煮やし、平手で頬を張り倒す強盗……引き出しをこじ開けると現金を引っつかみ、あちこちからかき集めさせた他のお金と一緒に麻袋へ突っ込む……

強盗「いいぞ、ズラかれ!」玄関ドアを蹴り開けて表に飛び出していく三人……

シルヴィア「…フランカ」履いている革のショートブーツにそっと手を伸ばし、小さいベレッタ・ピストルを取り出す…

提督「…ええ!」

…銀行前…

強盗B「あぁ、くそっ…!」麻袋がほつれていて、十数枚のリラ札がひらひら舞い落ちる……慌てて拾い集めようとする覆面男…

強盗「そんなのほっとけ…早く乗れ!」

シルヴィア「…」パン、パンッ!

強盗B「うぐっ…!」

提督「…」パンッ、パァン!

強盗「ぐわあ…っ!」

強盗C「ち、畜生っ…!」慌ててアクセルをふかすがギアが上手く入らない…

提督「…」パン、パンッ…パンッ!

強盗C「うわ…っ!」腕を撃ち抜かれて運転席から転がり落ちてきた強盗……

提督「はぁ…はぁ……はぁぁ……」追いかけた瞬間は何でもなかったはずが、ほっとした瞬間に脚が震えてへたり込む提督…

………

提督「…って言うようなことがあって、それで表彰されることになったのだけど……今思い返しても恥ずかしいわ///」

アルゴ「いいじゃない、とっても格好いいわ!」

提督「いえ…だって強盗を追いかけておいて腰を抜かすなんて間抜けもいい所よ?……しかもその後の数日は「女性海軍士官、強盗を退治!!」って新聞に書きたてられて…」

ヴェレラ「…ほぇぇ……♪」

提督「おかげで当日の夕食すっかりおじゃん…警察署のカフェテリアで買った薄っぺらなチーズサンドウィッチを一つ食べただけで、数時間も事情聴取を受ける羽目になって……」

アルゴ「あらら…それにしても、どうして提督と「シルヴィアおばさま」は後を追いかけたの?」

提督「んー…私はかーっとなっていて、なんで追いかけたか自分でもよく分からないのだけど……シルヴィアおばさまは冷静で「無抵抗の女性の頬を張りとばすなんて許せなかったから」らしいわ」

アルゴ「へぇ、提督のおばさまってかなり「いさぎよく、カッコよく」生きている人なのね!」

提督「ええ、私のあこがれね♪」

アルゴ「それにいつもピストルを忍ばせているなんて、スパイみたいじゃない…♪」

提督「それは……どういう訳かピストルの携行許可を持っているのよね…」

アルゴ「ふぅーん」

提督「あぁもう、やめやめ…この話はおしまい///」

アルゴ「んもぅ……もっと自慢すればいいのに」

提督「イヤよ。記者に追いかけれられていたら、綺麗なお姉さまたちと出かけることもできないじゃない?」

アルゴ「ぷっ…理由はそこなのね!」

提督「ええ……恋愛はすべてに優先するわ♪」

アルゴ「くっくくく…ただし「食べることをのぞいて」よね?」

提督「ふふっ、そうね……だってお腹が空いていたら恋なんてできないもの」

ヴェレラ「…ふふ…提督って面白い……♪」

提督「そう?」

アルゴ「ええ♪」

提督「ふふふ…それはどうもね♪」

アルゴ「どういたしまして……ねぇ、提督」

提督「なぁに?」

アルゴ「よかったら……私に乗ってくれてもいいわよ♪」

提督「…アルゴったら、私にそんなことを言って……本気にしちゃうわよ?」目を細め、口の端にえくぼを浮かべている…

アルゴ「ええ、だって英雄や勇士を乗せるのは大好きだし……提督には十分「その資格あり」よ♪」

提督「……アルゴ…♪」

アルゴ「ふふ、提督っ……♪」

ライモンの声「……失礼します、提督…文書便の受け取りをお願いします」

アルゴ「ふぅ…残念、邪魔が入っちゃった」

提督「ふふっ……それじゃあ、機会があったらまた…ね♪」

アルゴ「そうしましょう…ヴェレラ、行きましょ?」

ヴェレラ「…うん……いい天気だねぇ……♪」

アルゴ「はぁぁ…相変わらずぼんやりしてらっしゃることで……それじゃ、チャオ♪」

提督「うふふ…チャオ♪」


…夕食後・バーカウンター…

ライモン「…あー、やっぱりあの感状のことを聞かれたんですね」

提督「ええ……みんな私の部屋に来るたびに聞いてくるし、本当にしまっちゃおうかしら」

グレイ提督「そういえば確かに立派な感状が二枚、お部屋の壁に飾ってありましたわね」

提督「えっ……前に来た時はそんなに室内を見渡しているようには見えませんでしたけれど…?」

グレイ提督「ふふ、わたくしったらいけませんわ…相手の能力が気になって、ついあれこれ調べようとしてしまう……これも軍人のサガですわね、きっと」

ライモン「…提督、もしかしてグレイ提督は非常に記憶力の優れた方なのでは……」ひそひそと提督に耳打ちするライモン

提督「あー、だとしたら……メアリ、私の執務室にある椅子のクッションは何色でした?」

グレイ提督「まぁ、フランチェスカは急に面白い事をおたずねになるのね。クイズかしら?」

提督「まぁそう言ったものでしょうね…どうですか?」

グレイ提督「ふむ…クッションでしたらクリーム色に淡いセージグリーンの線と、ピンクのバラですわ」

提督「…未決書類の箱は私から見て……」

グレイ提督「左でしたわね」

提督「…」

ライモン「…」

グレイ提督「……ちなみにカンピオーニ少将は本当によがっているとき、右脚より左脚の方がピンと伸び…」

提督「わ、わわわ…っ///」

グレイ提督「…それと「愉快な小道具」の数々はクローゼットの下から数えて……」

提督「メ、メアリ…!」

ライモン「提督、あとでお話しをする必要がありそうですね…♪」

グレイ提督「あら……わたくしはてっきり、ここにいる全員が知っているものと思ってお話していたのですが…違いましたの?」

提督「そ、そんなわけ……」

グレイ提督「…ありませんか?」

提督「いえ、まぁ…それはきっと……多分…知らない娘もいるだろう……と、こう思っているしだいでありまして…///」

グレイ提督「つまりほぼ全員が知っているのですね……でしたら別段お隠しになることもないでしょうに…ふふ♪」

提督「も、もう…メアリのいじわる///」

グレイ提督「ふふふ……わたくしはいじわる?」十数年もののグレンリベットを舐めながら首を傾げるグレイ提督…その見下すような表情が混じった微笑に、提督の下腹部が「きゅん」とうずいた……

提督「ええ、いじわるです…♪」

グレイ提督「まぁ…わたくし、面と向かって「いじわる」と言われたのは初めてですわ♪」

提督「……ふふっ」

グレイ提督「ふふふ…♪」

ライモン「…はぁ、提督の選り好みのなさにはついて行けません……すみません、ポーラ…もう一杯下さい」

ポーラ「はぁ~い…少し強めにしておきますねぇ~?」

ライモン「ええ…まったく、提督は隠す気があるのかないのかはっきりして下さいよ……」

提督「ふふ、メアリはもう「隠さなくていい相手」だから隠さないの……ね♪」

グレイ提督「あら、一体何の事でしょう?」

提督「あー、メアリったらそう言う風に自分だけ……ふふーん、「あの時」の事を話してもいいのかしら?」にやにやと小悪魔的な笑みを浮かべてグレイ提督のふとももに手を置く…

グレイ提督「ええ、構いませんわ…そうすればわたくしも、あの時「お庭で何があったか」をお話できますものね♪」

提督「…っ///」

グレイ提督「……ふふ、イギリスに勝つにはまだまだ修行が必要ですわね?」耳元でいたずらっぽくささやいた…

提督「むぅぅ…」

ライモン「?」

グレイ提督「…それにしても」

提督「何ですか?」

グレイ提督「いえ……ヴァイス中佐の堅いことと言ったら、フランチェスカとはまるで対照的ですわね」

提督「柔らかくて悪かったですね…♪」

グレイ提督「いいえ、わたくしはローストビーフも柔らかい方が好みですから…ご安心なさいな」

提督「私はローストビーフですか…」

グレイ提督「…もしそうならポテト・ピューレを添えて、上からグレーヴィー(肉汁から作るソース)をかけないといけませんわね」

提督「…」

グレイ提督「ふふ…冗談はさておき、フランチェスカはヴァイス中佐のあだ名を聞いたことがありまして?」

提督「あだ名、ですか…特には聞いていませんが?」

グレイ提督「それが、わたくしが聞いたところによりますと…彼女のあだ名は「鋼鉄のヴァイス」だそうですわ……まぁ、あまりにもお似合いで……ふふ」

提督「あー、確かに……ちなみにメアリにはあだ名がありますか?」

グレイ提督「え、わたくしですか?」

提督「ええ、メアリほどの提督ならきっとあだ名があると思ったのですが…」

グレイ提督「本当に聞きたいのですか?」

提督「ええ……もちろんメアリが教えてくれるなら、ですが」

グレイ提督「ふぅ、致し方ありませんわね……わたくしのあだ名は「気どったメアリ」ですわ」

提督「ぷっ……んふふふっ…♪」

グレイ提督「…ちなみに他には「氷のメアリ」「ブラッディ・メアリ」……と言ったところですわね」

提督「な、なるほど……うふふっ…♪」

グレイ提督「さて…こうなるとフランチェスカのあだ名もお伺いしたいところですわね」

提督「わ、私ですか……まぁメアリのあだ名を聞いた以上は、私のも教えないといけませんよね…」

グレイ提督「ええ、それがフェアと言うものですわ」

提督「それが、私もいくつかありまして……」

グレイ提督「そうですか」

提督「ええ…えーと、まずは「ドルチェ(甘美)のフランカ」「口説きのフランチェスカ」に「女性専用サッキュバス」…われながらひどい言われようですね……」

グレイ提督「…きっと日ごろの行いですわね」

提督「まぁ…あとは「女性士官なだめ」に「処女の皮をかぶった女たらし」……他には「フォルテ」、あるいは「フォルティッシモ」ですね」

グレイ提督「ふむ、「フォルテ」に「フォルティッシモ」ですか…どちらも音楽記号ですわね?」

提督「ええ…「強く」と「とても強く」の意味ですが……」

グレイ提督「他のあだ名は何となく想像がつきますけれど…どうしてフランチェスカが「フォルテ」なのですか?」

提督「あー……話すと長いのですが…」

グレイ提督「構いませんわ…上等なお酒をいただきながら昔話を聞くのも一興ですわ」

提督「そうですか……あー、実を言うとこのあだ名がついた原因というのが、二枚ある感状のもう一枚をもらった理由でもありまして……」

グレイ提督「あら、そうなのですか」

提督「ええ…もう数年ほど前になりますが……」


………

…数年前・リヴォルノ…


カンピオーニ中佐(提督)「ふー、夕食は美味しかったし夜風も涼しくて心地いいし…トスカーナ地方はいいところね」…着任して半年あまり、まだまだ任地に飽きの来ていない提督はエアコンの効いた通信隊の建物に戻ると、当直を終えたおしゃべりな大尉と夕食の話になった…

大尉「ええ、このあたりは最高ですよ……たとえ観光客が多くてもね♪」


…ナポレオンが一時幽閉されていた歴史ロマンあふれる「エルバ島」や、風景画のように美しい「ジリオ島」など、イタリア半島でも特に風光明媚な島々が多く、「ピサの斜塔」や「芸術の街」フィレンツェもあるトスカーナ地方…そのなかの港町にして有数の軍港「リヴォルノ」で、海軍通信隊の基地司令をしていた提督…森が多く狩猟が盛んなトスカーナだけに、ウズラやハトのような野鳥にイノシシやウサギ、あるいは鹿肉が有名で、提督も当直の前でワインが飲めないのを残念に思いながら、炭焼きのイノシシを味わってきていた…


提督「ええ…シチリアにナポリ、ローマにヴェネツィア……いろいろ食べてきたけれどトスカーナはまた格別ね♪」

大尉「そうでしょうとも、特に肉料理が一番おいしいのはトスカーナですよ…間違いなしです!」…人差し指を舐めるような仕草をしてから片目をつぶり、「むむむ」と食通のようなうなり声を出す大尉……

通信士(黒髪ロング)「ふふふ…お二人のやり取りを聞いていると、まるで美食巡りをしに来たみたいですね?」

大尉「かもね…ま、少なくとも中佐はそうよ……そうでしょう?」

提督「えー、そんなことはないわよ?」

通信士(茶髪ショート)「またまたご冗談を…この半年で制服がきつくなったんじゃないですか?」

提督「…秘密よ」

大尉「でしょうね…ま、中佐の体型の話には口を突っこまないでおきましょう……うかつなことを言うと階級章をむしられちゃうもの」

提督「もう、そんなことしないわよ…それじゃあゆっくり夕食を味わっていらっしゃい」

大尉「ええ、そうさせてもらいます……それではまた明日」

提督「チャオ…さぁ、みんな当直に戻って?」

黒髪「了解」

茶髪「…どのみちクルーズ船数隻だけですけどね」

提督「まぁそうね……でももしかしたら、潮の状態や港の入港待ちの順番を聞きたがる船長がいるかもしれないわよ?」

茶髪「私たちは海軍ですから…そんなのは港湾当局に回しちゃいますよ♪」

提督「こぉら、手抜きしない……ま、時々なら目をつぶってあげるから」

茶髪「了解……ふわぁぁ…」

提督「もう…少したるんでるわよ?」

黒髪「中佐のお腹みたいにね」

提督「またそういうことを言う…黙ってヘッドフォンを当てていなさい」

黒髪「……ですってよ?」

茶髪「え…あたし?」

提督「もう、二人ともよ」

黒髪「はっ、それでは心を入れ替えて任務にまい進いたします…♪」

茶髪「…右に同じ♪」

提督「ふふっ…よろしい♪」

…数時間後…

茶髪「…海軍曳船『603』号…貴船はチヴィタヴェッキアを過ぎたところで南部ティレニア海管区の管制下に入りますので、それ以降はナポリの管制から指示を受けて下さいとのことです……では、よい航海を」

黒髪「……リヴォルノ了解、そちらの通信をローマのスーペルマリーナ(海軍最高司令部)に転送します…以上、通信終わり」

提督「静かな夜で結構ね。お月様も綺麗だし」

茶髪「そうですね…これだけ明るいと新聞でも読めそうですよ」

提督「本当にね…って、何これ……?」窓から月夜の海を眺めていたが、ふとレーダー画面に映ったシルエットに気づいてヘッドセットを取り上げた……

黒髪「どうしたんです、中佐?」

提督「この船…ほら、レーダー画面の……こんな海岸沿いに航行してどうするつもりなのかしら…」

黒髪「…確かに航路を逸脱していますね」

提督「……レーダー符号は客船のだから港湾当局の管轄だけど…声はかけているのかしら?」

茶髪「えーと…港湾当局が航路を訊ねていますが……どうも二等航海士か誰かで、要領を得ないみたいですね」ぱちりとスピーカーにスイッチを入れた

港湾当局「…繰り返す、「コッタ・コットゥーラ」…貴船は航路を逸脱しているのではないか?…ただちに航路を再確認せよ…島の海岸に寄り過ぎではないのか?」

提督「…『コッタ・コットゥーラ』号ね……あったわ、おおよそ一万トンのクルーズ船ね」

黒髪「結構な大きさですね」

提督「中型クルーズ船と言った所ね…本当に大丈夫かしら……?」船舶カタログと見比べると、水深はクルーズ船の喫水ギリギリしかない…

港湾当局「こちらリヴォルノ港湾当局、「コッタ・コットゥーラ」…船長はブリッジにいるのか?」

クルーズ船「…船長はダイニングホールでお客様の相手をしているようだ…よくは知らない」

港湾当局「ではただちにブリッジに呼びだし、適切な回避措置を取れ…どうぞ!」

茶髪「……中佐、これはちょっとマズイかもしれませんよ?」

提督「ええ…この船の船長は何をやっているのかしら…」

黒髪「あっ……レーダーのシルエットが減速中……いえ、動かなくなりました!」

提督「ほら見なさい、やっぱり座礁したわ……こちら海軍のリヴォルノ通信隊、港湾当局へ…レーダー上でクルーズ船の座礁らしき状況を確認、何か支援できることはありますか、どうぞ?」

港湾当局「こちら港湾当局……そちらの通信機の方が出力が強いので、当該船との交信を願いたい!」

提督「了解しました…「コッタ・コットゥーラ」こちらは海軍のリヴォルノ通信隊…状況を知らせよ、どうぞ?」

クルーズ船「…こちら「コットゥーラ」…リヴォルノ、状況はコントロール出来ているから問題ない…どうぞ」

提督「了解。乗客の避難はどうなっているか……支援は必要か?」

クルーズ船「大丈夫だ…座礁したが傾斜は数度だけだ」

提督「了解。「コッタ・コットゥーラ」…繰り返すが乗客の避難準備は出来ているのか?」

クルーズ船「あー……おそらく大丈夫だ。救命ボートもあるし…」

提督「…船長はどこにいて、乗客の避難を指揮しているか分かるか?」

クルーズ船「私には分からない……多分お客様と一緒だからそうしているだろう」

提督「なら状況を把握し、直ちに詳細を連絡するように…以上!」

クルーズ船「了解」

…数十分後…

黒髪「哨戒艇121号、船の様子はどうなっていますか…傾斜が増している?……了解、サーチライトを全てつけ、救命ボートなしで流されている人を収容して下さい」

茶髪「……そうです、救難ヘリの到着まであと十分。また、ローマ、トリノからも支援が急行中です……ええ、はい!」

大尉「いいわね、手すきの者は電話応対にあたるように!」

…クルーズ船の座礁から数十分もしないうちにリヴォルノ港は上を下への大騒ぎになり、提督も休憩中の要員から非番の隊員まで全て呼び出して、無線機のコンソールについたり鳴り止まない電話応対に駆けまわっていた……が、港から見て目と鼻の先のような場所での座礁…しかも波の穏やかな月夜だったので、乗客も無事に救命ラフトやボートに乗っているだろうと思い、少しは安心していた…

港湾当局「…港湾当局よりリヴォルノ通信隊、聞こえますか」

提督「こちらリヴォルノ、港湾当局どうぞ?」

港湾当局「実はちょうど今、岸壁にいる警官とカラビニエーリ隊員から連絡が入ったのですが…救助された乗客が「真っ先に船長以下のクルーが救命ボートで脱出してしまい、まだたくさん乗客が取り残されている」と伝えてきたとかで……詳細は不明ですが、そちらで確認が取れますか?」

提督「まさか……さっきも交信で「状況をコントロール出来ている」と聞いたばかりですよ!?」

港湾当局「分かりません、こちらも難船者の救助と通信で手一杯なんです…そちらはクルーズ船のクルーと通信出来ているようですし、問い合わせてみてくれませんか?」

提督「了解、すぐ問い合わせます…それと海軍の救難ヘリは十分以内に現場に到着します」

港湾当局「了解」

黒髪「…どういうことでしょう」

提督「分からないわ……「コッタ・コットゥーラ」聞こえますか?」

船員「こちらコットゥーラ、聞こえています」

提督「すぐ船長を出して下さい…今すぐ!」

船員「り、了解……船長」

船長「あー、はい…こちら船長」

提督「…船長、名前は?」

船長「…スケッティです……ジュセッペ・スケッティ…」

提督「了解。スケッティ船長、状況はどうなっていますか…船の浸水状況は?乗客には救命胴衣が行き渡っていますか?…救命ボートはもう降ろしたでしょうね?」

船長「えーと…それは……」

提督「……そもそもあなたは今どこにいるんですか?」

船長「…いや、それが……」

提督「答えなさい…ブリッジで退船の指示を出しているのですか?」船長の煮え切らない返事に、普段は温厚な提督も声がとげとげしくなる…

船長「いや…それが救命ボートに……」

提督「何ですって?」

船長「じ、実は……一等航海士と一緒にブリッジに向かおうとしたのですが…退船する乗客たちに巻き込まれて…」

提督「なら救助の船に救命ボートの乗客を引き渡し、直ちに戻って指揮を執りなさい!」

船長「いや、それがダメなんです…何しろ船はとても傾いているけれど、上るためのハシゴがあるわけじゃないから……波もあるし…」

提督「すでに右舷には救助隊を送り込むための縄バシゴがかけてあるし、今日ほどの凪の日はないでしょう…スケッティ船長!」

船長「…いえ…それが…」

提督「まだ何か?」

船長「…実を言うともう岸に上がっていて、安静にしていてくれと医者に……」

提督「それは乗客の話でしょうが!……この、この人でなしの恥知らず!地獄のディアボリ(悪魔)にでも喰われてしまえばいいわ!!」

船長「そ、そんなことを言ったって……」

提督「スケッティ、直ちに船に戻り乗客の命を救いなさい!さもなければ私が生きたまま心臓をえぐり出してやるから!!」

茶髪「…」

黒髪「…」

大尉「…ひぇー」

………

グレイ提督「…わたくし、初めてお会いした時からどこかでお見受けしたようなお顔だと思っておりましたが…一時は話題になりましたわね?」

提督「ええ…まさかあの通信を録音している人がいたとは思っていませんでした……///」

ライモン「あー、覚えていますよ…芝居っ気の強い船長が「島に挨拶するんだ」って起こした事故でしたね……」

チェザーレ「幸い死者こそ出なかったが……近頃の船長は船と一緒に死ぬこともしないのかと、チェザーレたちはずいぶん軽蔑したものだ」

ヴァイス提督「…それにしても、その悪態の数々……普段大きい声一つ出さない方とは思えませんね」

グレイ提督「口が上手なイタリアの方らしいではありませんか」

提督「どうも…何しろ子供時代に同じ年頃の遊び相手がいなかったせいか、物静かな親の話し方に合わせる癖がついていたのですが……あの時は頭に血が上って……」

ガリバルディ「いえ、それでこそイタリア人よ…乗客を置き去りにした船長をののしったあの痛快な文句にはしびれたわ♪」

エウジェニオ「あの雄弁な美人士官には一度会って抱きたいと思ってたけど…まさかうちの提督とはね♪」

提督「もう…おかげでしばらくは海事法廷だの取材だのでひどかったんだから……」

グレイ提督「……しかし、それがどうしたら「フォルテ」というあだ名になるのですか?」

提督「あー…それが、あの時の音声を聞いた口の悪い同僚たちに「F・カンピオーニの『F』はフランチェスカじゃなくてフォルテの『f』でしょ?」などと言われて、それ以来「フォルテ」と……で、しまいにはミドルネームみたいにフランチェスカ・『フォルテ』・カンピオーニと……」

グレイ提督「なるほど…それを略して『ff』…フォルティッシモなのですね?」

提督「ええ、そうです…///」

カヴール「まぁまぁ、いいあだ名ではありませんか…だって乗客の方は無事だったのですし♪」

提督「んー…まぁそう言われればそうなのだけれど、あの船長はちゃんと私の罵詈雑言なんかより重い罰を受けたわけだし……正直、みんなが思っていたことを直接言える場所にいただけで感状と昇進っていうのは…ちょっとね」

アッテンドーロ「いいじゃないの…ま、せっかくだし今日は私がおごってあげる……ポーラ、提督に一杯差し上げてちょうだい♪」ぱちんと指を鳴らしウィンクする…

ポーラ「はぁ~い…なんにいたしましょ~?」

提督「えーと、それじゃあ赤で……って、ここのお酒ってみんなの手当から出しているから無料みたいなものよね?」

アッテンドーロ「まぁまぁ、そう言う身もふたもないことは言わない…何でもムードっていうのがあるじゃない?」

提督「んー、何か引っかかるけど…それじゃあいただくわね?」

アッテンドーロ「ええ、そうしてちょうだい♪」

チェザーレ「むむ…ポーラよ、あちらのお客さんに「チェザーレから」と言って一杯出してくれ」

ライモン「……ポーラ、赤を二つ下さい…提督、飲みきれないので手伝ってくれますか?」

カヴール「私に「フレンチ75」を一杯……提督、よかったら軽く味見をしませんか?」

提督「…みんなして私を酔い潰すつもりなの?」

デュイリオ「ふふ、まさか……わたくしたちが提督を酔い潰して何の得があります?」

リットリオ「そうですよっ、酔ってお休みになった提督のベッドに潜り込んで……なんて考えてもいませんよ?」

メドゥーサ(アルゴナウタ級中型潜)「んふふっ……そうよ…だからほら、私の特製カクテルを召し上がれ……♪」妖艶な仕草で身体をくねらせながら、暗緑色をした毒々しいカクテルを差しだすメドゥーサ…

ダ・ヴィンチ「ええ、そうね…別に媚薬とかそんなのは入ってないから……さぁ、ほら♪」こちらは縁にマラスキーノ・チェリーを添えた、ピンクと紫の二層になっている妖しげなカクテルを手元に置いた…

提督「…」

グレイ提督「あらあら…大変ですこと♪」ストゥール(腰掛け)の間に割り込んで「お座り」しているルチアの頭を片手で撫でつつ、ウィスキーをゆっくり口に含んだ…


………

…翌朝・提督寝室…

提督「…おはよう……う゛ー…」提督はベッドの上で起き上がり、鈍い頭痛が残るこめかみを押さえて唸っている……口の中はカラカラで、まだふとももがひくついているような気がしている……

デュイリオ「おはようございます、提督♪」提督のげっそりした様子とは対照的に、内向きロールの長髪もばっちり整え、うっすらメイクも施しているデュイリオ……

提督「…素敵な笑顔ね…私は朝からぐったりだけれど……」

デュイリオ「うふふ…それはもう、うんと愉しませていただきましたから♪」

リットリオ「とっても素敵でしたよ、提督っ…♪」

メドゥーサ「んふふふっ、蛇は愛欲の生き物なんだけど……愉しんでいただけたかしら?」

提督「まさか順番を決めて来るとは思っていなかったし……メドゥーサのひとにらみで金縛りにあったときは、もうちょっとで死ぬかと思ったわ……うー…今日は建造の予定があるのに……よいしょ…」よろめきながらベッドから下り、浴室に入っていく提督…

デュイリオ「あらあら…ところでわたくしたちは引き揚げますけれど、カヴールはどうします?」

カヴール「私は秘書艦の務めがありますから……せっかくですし、デュイリオは提督の朝食を用意してあげてくださいな?」

デュイリオ「ええ、分かりました…それではまたね♪」

カヴール「はい……さて、と…」提督用に酔い覚ましの濃いエスプレッソを用意し、執務机には朝の気象通報と任務スケジュールのプリントアウト、朝刊を置く……それから寝室にあるバスローブをとってくると肩の部分を広げて持ち、浴室の入り口に立った…

提督「…うー、どうにか目が覚めたわ……んしょ……」カヴールが広げているバスローブに「ぽふっ」と飛び込むと、もそもそ身動きしながら羽織り、それから前をはだけたままの姿で、姿見をじっと眺めた…

カヴール「どうしました?…またお肉がつきましたか?」

提督「いえ…あれだけ色んなカクテルを飲んだ割には、身体が虹色にならずに済んだと思って……」

カヴール「うふふ、提督は面白い事をおっしゃいますね……さ、エスプレッソをどうぞ?」

提督「ありがとう…ふー…」寝ぼけまなこでエスプレッソをすすると、頭にタオルを巻いたバスローブ姿で気象通報を読み、それから任務表を読み込む……鉛筆でいくつか注意事項やメモを書きこむと、今度は朝刊の「レプブリカ」と「コリエーレ・デラ・セラ」にざっと目を通す…

提督「…んー、風は南西から南東に回りつつあり、風速2から3メートル毎秒……波高1ないし1.5メートル程度…相変わらず穏やかね」

カヴール「ですね…新聞には何か面白い記事がありました?」

提督「…そうねぇ……首相がまた失言したそうよ」

カヴール「あらまぁ…こりませんね、あの方も…今度は何と?」

提督「それじゃあ読むわね…「ベルッツィオーニ首相、またも失言……女性の地位向上を訴える活動家が裸の上半身にメッセージを書き込んで現れたことに対し『他の陳情もみんなああいう風だったら来てほしいね』と発言」…だそうよ」…大きな口に満面の笑みを浮かべた恰幅のいい首相……の顔写真が写っている一面をひらひらさせた…

カヴール「まぁまぁ…」

提督「後はセリエAの結果ぐらいかしら……相変わらずインテルナツィオナーレ・ミラノが強いわね…」

カヴール「では読み終わりましたら貸して下さい…待機室に置いてきますから」

提督「ううん。特に気になる記事もなかったし、もういいわ」

カヴール「分かりました……朝食はデュイリオが用意してくれていますから、食堂へどうぞ」

提督「グラツィエ」

…食堂…

提督「おはよう、みんな…それとメアリにエリザベス、エメラルドもおはよう♪」

グレイ提督「モーニン……よいお日柄ですわね」

エリザベス「ご機嫌よろしゅう、カンピオーニ提督」

エメラルド「おはようございます」

提督「ええ…ライモン、おはよう♪」

ライモン「おはようございます、提督。朝食はデュイリオさんが用意してくれましたよ……よかったら一緒に食べませんか?」

提督「ええ、ぜひそうさせてもらうわ」…ライモンの向かいの席に腰を下ろし、パリパリのクルミ入りパンにたっぷりバターを塗る……具だくさんのミネストローネに厚切りのモルタデッラソーセージ数枚、バジルとトマトのサラダに、グリュイエールチーズのスライス…四つ割りにしたイチゴにはクリームがかけてあり、あとは冷たい牛乳と砂糖入りのコーヒー…

ライモン「ふふ、ご一緒できてよかった…お味はいかがですか?」

提督「美味しいわよ」

ライモン「ふふ、実はわたしも手伝ったので…♪」

提督「それでこんなに美味しいのね♪」

ライモン「…そうかもしれないですね///」

提督「きっとそうね……ところでデュイリオは?」

ライモン「さぁ…朝食のパンからクルミをほじくり出していたと思ったら、急に出て行っちゃいました」

提督「クルミを?…なんでかしら?」

ライモン「分かりません…さっき菜園からバジルを摘みに行ったと思ったら、急に余っている大きなかごや古いふきんを持って行ってしまって……」

提督「妙な話ね…別に害になるようなものでないなら何をしたっていいのだけれど……」

エウジェニオ「ふーん……そう言えば今朝のデュイリオはチーズのかけらやパンくずも集めていたわね」

提督「…野ネズミでも飼うのかしら?」

チェザーレ「ふぅむ…デュイリオか……ならばアレだな…」

提督「チェザーレは何の生きものか分かる?」

チェザーレ「うむ、チェザーレはすぐにピンときたぞ…諸君もちゃんとローマの歴史を学んでいたなら分かるであろうな」

提督「デュイリオ……カイオ・デュイリオ…うーん」

チェザーレ「まぁ分からぬとしても致し方あるまい…だがデュイリオの事だから、きっと教えてくれるであろうよ♪」

提督「そうね…後で聞いてみるわ」

ライモン「きっと姉妹のドリアさんも教えてくれるでしょうし」

提督「そうね」

チェザーレ「ふむ…それにしてもチェザーレも何かシンボルになる……」

ロモロ「…がつがつ……むしゃむしゃ…んぐ……このハム美味しい♪」

レモ「…はぐはぐっ…がぶっ……むぐむぐ…ほんと、皿ごといただきたいぐらいだねぇ♪」

チェザーレ「おぉ、そうだ…ローマと言えば「ロモロとレモ」ではないか♪」

ロモロ「…むしゃ…ん、チェザーレ?」

レモ「どしたの?」

チェザーレ「いや、なに…せっかくローマ繋がりで縁があるのだ……今度チェザーレが何でも好きなものを買ってあげようではないか!」

ロモロ「わぁぁ、いいんですか?」

レモ「やったぁ♪」

チェザーレ「うむ、もちろんだとも……何でも言ってみるがいい♪」

レモ「それじゃあパルマの生ハム、後脚一本丸ごとで…一度そのままかぶりついてみたかったの!」

チェザーレ「生ハムの脚一本分……ま、まあよい、チェザーレが買ってあげよう!」

ロモロ「わぁぁ、チェザーレってば太っ腹♪」

チェザーレ「…う、うむ」

提督「…」

…少しして・戦艦「C・デュイリオ」級の部屋…

提督「デュイリオ、入ってもいいかしら?」…潜水艦の建造までまだ時間があったので、デュイリオが見つけた「生きもの」を見に行くことにした提督…朝食後ののどかな時間の暇つぶしと、普段は大した事件も起きない鎮守府での物珍しさと言うこともあって、野次馬半分で数人がついてきた…

デュイリオ「少し待って下さい……はい、いいですよ」

提督「失礼、お邪魔するわね」

デュイリオ「はい、ようこそ♪」白いハイネックのワンピースを着て、目を細めて提督たちを招き入れるデュイリオ

提督「…結構暑い日だけど、窓は開けないの?」天井についている木製ファンのクラシカルな扇風機は回っているが、大きな窓は閉めてある…

デュイリオ「ええ…何しろこの子がおりますから」長い髪を内向きカールにしているデュイリオが、軽く首をかしげてにっこりする…部屋の棚の上には、朝方持って行ったという大きなカゴが置いてある…

ドリア「そうね、少し暑いのは難点だけど…せっかくデュイリオが可愛がってあげるつもりなんですもの、出来るだけ協力してあげないと♪」

提督「窓を開けたら出て行っちゃう生きもの…野鳥か何か?」

デュイリオ「ええ、そうです♪」

ライモン「…ヒバリですか?」

デュイリオ「うふふ、残念…さて、どなたか正解を答えられるでしょうか?」

チェザーレ「ふむ、チェザーレは分かっているから黙っておこう……ドリア、そなたもな」

ドリア「ええ」

ガッビアーノ「分かった…私と同じ、ガッビアーノ(カモメ)だね……」

デュイリオ「残念、外れです…♪」

ロモロ「それじゃあセキレイね?」

デュイリオ「いいえ…確かにセキレイは人なつっこい鳥ではありますが……もっと大きいですよ♪」

レモ「じゃあ鷹でしょ?…レモかしこーい!」

デュイリオ「残念…それに鷹や鷲でしたら、チェザーレの方が似合います♪」

チェザーレ「確かにな…ローマ軍団の象徴でもある」

提督「んー、それじゃあ何かしら……」

デュイリオ「うふふふっ…♪」にこにこしながらカゴの前に立って、脇から見ようとするレモやガッビアーノをさえぎるデュイリオ……と、カゴの中から鳴き声がした…

カゴ「カー…!」

提督「え……もしかしてカラス?」

デュイリオ「あらあら、ばれちゃいましたねぇ…ええ、カラスです」

ライモン「カラスって……あの「カラス」ですよね?」

デュイリオ「ええ。黒い艶やかな羽根と鳥類の中で最も賢い頭脳を持つ、そのカラスです……さぁ、おいで♪」よく見ると鷹匠の革手袋のように、手首の辺りにふきんを巻きつけているデュイリオ…中をのぞき込みながら、丁寧に大きなカゴのフタを開ける

カラス「カー」…ぴょんとカゴから出てくると、デュイリオの手首にちょこんと止まった

ロモロ「わ…近くで見ると大きいのね」

レモ「突っついたりしない?」

デュイリオ「カラスはとってもお利口ですから、いじめたり怒らせたりしなければ大丈夫ですよ…そうですよね?」…頭を優しく撫でながら問いかけるデュイリオ……

カラス「カー」翼をばたばたさせながら返事をするカラス…

デュイリオ「ね?」

提督「それにしてもこんな大きなカラス…どうしたの?」

デュイリオ「いえ…実は朝食の前に、厨房で料理をしていたディアナから「バジルを摘んできてほしい」と頼まれまして……」


…朝食前…

ディアナ「ふぅ、こうしてみるとミネストローネの材料は意外と多いものですね……とはいえ、ハムは切って並べてありますし、チーズもスライスできていますね…それにトマトのサラダも……あ、これはいけませんね…」

デュイリオ「何か足りない物でもありました?」時おり頼まれごとを手伝いながら、ディアナの手際のいい調理を見物していたデュイリオ…微笑を浮かべながら頬杖をついていたが、優雅に立ち上がった…

ディアナ「はい…わたくし出来るだけ新鮮なままお出ししようと思って、サラダに合わせるバジルを摘んでくるのを失念しておりました……まだ余裕はありますし、ゆっくりで構いませんから摘んできてはいただけませんか?」

ライモン「あ、それならわたしが…」

デュイリオ「ふふ…ライモンドはディアナと協力して、愛しい提督のために美味しいミネストローネを作ってあげてくださいな……それでは行ってまいりますね♪」小さい園芸用ハサミとカゴを持って、横手の菜園に向かうデュイリオ

ディアナ「助かります」

ライモン「いってらっしゃい///」

デュイリオ「はい、行ってきます♪」

…菜園…

デュイリオ「…ふー、ふふーん…それにしても朝の風が心地いいこと♪」ぱちりぱちりとバジルの枝を切り取りながら、うんと深呼吸する…

デュイリオ「ふぅ……この時間に裏手の丘に上ったら、さぞ海が綺麗でしょうね……このバジルもサラダに和えるだけならすぐ出来るでしょうし、ちょっと「寄り道」といたしましょう♪」…ぴったりと身体にあった古風なワンピースごしからでもよく分かる、むちむちの太ももに張りのあるヒップ、服を高く持ち上げる柔らかな乳房…とても「おばあちゃん」とは思えないみずみずしい身体を軽やかに揺らしつつ、裏手のあずまやに続く階段を上って行った…

…裏手の丘…

デュイリオ「まぁ…やっぱりいい眺めですね、上って来て正解でした♪」白い石造りの丸天井とベンチ、それに聖母マリアの彫像が建っている裏手のあずまや……晩夏の南イタリアらしい乾いた黄色い土に、爽やかな松の香りが漂っている…

デュイリオ「ふぅぅ…よいしょ」バジルの入ったカゴとハサミをかたわらに置くとベンチに腰掛け、海風にあたりながらきらめく海面を眺めるデュイリオ…

デュイリオ「ふふ、風が涼しくてちょうどいいですね…♪」目を細めて、「さぁぁ…っ」と松葉を鳴らしながら吹き抜ける風で涼む……と、かたわらで何か黒いものがばたばたしている…

デュイリオ「あら、こんなところに……何でしょう?」足首まで隠れた白いハイネックのロングワンピース姿で、しゃなりしゃなりと優雅に歩みよるデュイリオ…

デュイリオ「……まぁ、カラス?」

カラス「カー…カー……」カタハネを傷めているのか、地面で元気なくばたついている若いカラス…

デュイリオ「ふむ……私、「カイオ・デュイリオ」があなたを見つけたのも何かの縁でしょうね…少し待っていてくださいな?」そっと手を差し伸べても怒るそぶりを見せないので、頭を軽く撫でると、一旦あずまやのベンチまで運んでからそっと下ろした……

…厨房…

デュイリオ「…摘んできましたよ、ディアナ」

ディアナ「あぁ、助かりました」

デュイリオ「いえいえ……ところでディアナ、大きなふた付きのカゴと、古くなったふきん数枚をちょうだいしたいのですが…どれを持って行ったらよろしいかしら?」

ディアナ「…それでしたら、そこにあるカゴは持ち手が切れそうなので使っておりませんよ……それと、古くなったふきんは後でかがって雑巾にでもしようかと思っておりましたので…そこに積んであります」

デュイリオ「それではこれをちょうだいいたしますが、構いません?」

ディアナ「どうぞ、よしなに…?」

デュイリオ「グラツィエ…それではちょっと失礼」いつも貴婦人のように優雅なデュイリオ…にしては珍しくあたふたと出て行った……

ライモン「どうしたんでしょう?」

ディアナ「なんでしょうね…ですがデュイリオは優しいですから、何か小動物でも助けてあげるつもりなのではありませんか?」

ライモン「そうかもしれないですね…♪」

ディアナ「きっとそうでしょう……ライモンド、ミネストローネが出来ましたから味見をしてみてくださいまし」

ライモン「あぁ、はい……うん、甘酸っぱいトマトに、野菜の滋味豊かな味わいが美味しいです♪」

ディアナ「それはよかったです…提督にも喜んでいただけますね」

ライモン「…はい///」

………

…数分後…

デュイリオ「ほら…もう大丈夫ですよ、出ていらっしゃい?」大事そうに胸に抱えたカゴを低い飾り棚の上に下ろすと、フタを開ける…どうやらカラスも悪さをしないと分かったらしく、ひょっこり顔を出した…

ドリア「おはよう、デュイリオ…そのカゴはどうしたの……って、カラス?」

デュイリオ「ええ…裏の林で飛べなくなっているのを見つけて……飼ってもいいかしら?」

ドリア「ええ、いいわよ♪…餌はあげた?」

デュイリオ「いえ、まだですけれど……まずはお水をあげようと思いまして」プラスチックの容器に水を注ぐと、頭を上に向けて水を喉に流し込むカラス…

ドリア「あら、かわいそうに…ずいぶん水を飲んでなかったのね」

デュイリオ「みたいです……それじゃあ今度は餌をあげないといけませんね」

ドリア「カラスって何を食べるものなの?」

デュイリオ「そうですね…カラスは雑食ですから木の実とか、昆虫とか…小動物なども食べるはずですよ?」

ドリア「そうなのね……じゃあとりあえず、食堂から何か持ってきてあげましょうか?」

デュイリオ「はい、それじゃあ一緒に参りましょう?」

ドリア「ええ、髪をセットしたらね…♪」

…しばらくして…

デュイリオ「食べてくれるといいけれど…どうぞ、召し上がれ?」朝食のくるみパンから「採掘」してきたクルミとパンの皮、チーズひと欠けにイチゴが数粒…

カラス「アー…♪」最初こそ警戒して遠巻きにしてみていたが、そのうちにクルミやチーズをついばみ始めた…

デュイリオ「ふふ、よかった…♪」

ドリア「お気に召したみたいね、デュイリオ?」

デュイリオ「ええ♪」

カラス「カー」

ドリア「あらあら、返事をするなんてお利口ね♪」

カラス「カー…♪」くるっと丸い利口そうな目でドリアとデュイリオを眺めた…

………



デュイリオ「……と、いう訳なのです♪」

提督「なるほど…で、「カイオ・デュイリオ」とカラスのつながりって……あ」

デュイリオ「思い出しました?」

提督「何だったかしら……古代ローマ史で勉強したことがあったようななかったような…」

デュイリオ「うふふ…♪」

ガッビアーノ「…流浪のカモメである私には分からないな…降参するよ……」

ライモン「うーん、もうちょっと近代の事なら分かるのですが……私も降参です」

チェザーレ「提督もあきらめてデュイリオの講義を聞いてやるがよかろう」

提督「むー…答えられないのは何となくくやしいけれど、覚えていないのだから仕方ないわ……デュイリオ、「カイオ・デュイリオ」とカラスのつながりってなぁに?」

デュイリオ「ふふ、それでは教えてあげますね♪……時は第一次ポエニ戦争の頃…」



提督「ふむふむ…?」

デュイリオ「当時ローマ帝国は、北アフリカからシチリアを治め、たびたびローマ帝国侵略の機会をうかがっていたカルタゴと戦争状態にありました…」

チェザーレ「それがかの有名なポエニ戦争であるな」

デュイリオ「そうですね…それまでローマ帝国は、陸戦でこそ無敵のローマ軍団を擁しておりましたが海には不慣れで、その上地中海の向こう岸にあるカルタゴを攻めるには大艦隊が必要でした……そこでローマは大型の軍船を建造し、今でいう「海軍」を作ることといたしました」

ライモン「言うなれば、それが私たちイタリア海軍のルーツになるわけですね」

デュイリオ「ええ…そして艦隊指揮官に選ばれたのはローマにおける名家、スキピオ家の一族であったグナエウス・スキピオでした…」

チェザーレ「第二次ポエニ戦争でハンニバルを下した名将「スキピオ・アフリカヌス」の祖父の兄(大おじ)にあたる人物であるな」

デュイリオ「ええ、そうです……そしてグナエウス・スキピオは完成したばかりの大型軍船十数隻で、哨戒と訓練を兼ねた航海に乗り出します…と言っても当時の事ですから、陸地を見ながら進むものでしたが…そしてシチリアまで航海したころ、グナエウスはとある情報を入手します」

ライモン「…とある情報?」

デュイリオ「はい…その情報とは、カルタゴ側についていた「リーパリ」がローマに寝返る用意をしている…と言うものでした」(※リーパリ諸島…シチリア島の北にあり、メッシーナ海峡北端を臨む場所にある。現在は風光明媚な観光地)

ライモン「なるほど…」

デュイリオ「当然、一番乗りの栄誉や褒美は素晴らしいものになると、グナエウスは艦隊を急行させてリーパリへの上陸・進駐を急がせます……ところが」

レモ「ところが?」

デュイリオ「それは智謀に長けた敵将「ハンニバル・ギスコ」の流した偽情報で、湾内に入ったローマ艦隊は潜んでいたカルタゴの艦隊に湾を封鎖されてしまいます……こうなると海に不慣れなローマ兵は慌てふためき、船を捨てて陸戦に持ち込もうとします…ところが不意打ちと言うこともありローマ軍は敗れ、軍団長であったグナエウスも捕虜になってしまいました……」

チェザーレ「…まったく、情けない限りだ……」

デュイリオ「ですね……しかし、後衛艦隊を率いていた無名貴族の指揮官「ガイウス・ドゥイリウス」はこの報を聞き、残存の艦隊を率いて救援に向かいます」

チェザーレ「さよう」

デュイリオ「そこでドゥイリウスは海戦に長けたカルタゴの軍船に対して、「コルウス」(カラス)と呼ばれる一種のハシゴを引っかけて切り込み戦術を行いました」(※コルウス…先端に「爪」のある揚陸艇の道板のようなもの。マストに固定されていたらしい)

提督「うんうん」

デュイリオ「接近戦となればローマ軍団はカルタゴなどものともしません…敵将ギスコを捕え、多くの軍船も鹵獲し、さらには捕虜になっていたグナエウスも救出することが出来ました……こうしてローマ艦隊の敗戦を覆した「ガイウス・ドゥイリウス」はローマで凱旋式を行う栄誉を得て、その後は要職を歴任することとなりました…」

ドリア「そして、その「ガイウス・ドゥイリウス」のイタリア語読みが「カイオ・デュイリオ」というわけ…つまり私の妹は海軍にぴったりの名前なの♪」

提督「そうだったわ……でもローマ海軍が海戦に慣れてからは、船がトップヘビーになるコルウスは使われなくなったのよね」

チェザーレ「いかにも…そしておまけの話だが、功を焦ってうかつにも捕虜になったグナエウス・スキピオはそれ以降からかいの対象となり「グナエウス・スキピオ・アシナ」と言われるようになったのだ」(※アシナ…雌のロバ。要は「雌ロバのスキピオ」)

提督「はー…カラス一羽に大変な歴史の講義がついてきたわね……」

ドリア「何しろ歴史ある国ですから…ね♪」

提督「まぁね」

デュイリオ「うふふっ…という訳で、この子を飼うことにしたいと思います」

提督「いいんじゃないかしら…今度動物病院に連れて行って翼の具合と、それから病気がないかどうかも見てもらいましょうね」

デュイリオ「はい……よかったですね?」

カラス「カー…♪」

提督「さてと…歴史ロマンの話で盛り上がったけれど、私は建造に行かないと……うちの鎮守府に軽巡枠が足りなくてよかったわ」

ライモン「どうしてです?」

提督「もしカピターニ・ロマーニ級の「スキピオーネ・アフリカーノ」がここにいたら、きっと毎回デュイリオに「貴女の大おじ様は『雌ロバのスキピオ』って言ってね…♪」ってやられたと思うの」

デュイリオ「もう、提督ったら…私はそんなこと……」

提督「しない?」

デュイリオ「……ちょっとだけは♪」

提督「ほら、やっぱり♪」

チェザーレ「ははははっ!」

ライモン「ふふっ♪」

ドリア「まぁまぁ…♪」

………

…工作室…

提督「さてと…それじゃあ建造しましょうか」

ゴルゴ(フルット級中型潜「渦」)「了解…」

ヴォルティーチェ(フルット級「渦動」)「はい、喜んでお手伝いいたします」…白い髪が右の側頭部で羊の角のように渦を巻いている「ゴルゴ」と、薄青い髪が左の側頭部で巻いている「ヴォルティーチェ」……

提督「ありがとう、じゃあレバーを引くわよ…せーの!」

ゴルゴ「…動いたみたい」

ヴォルティーチェ「誰が来るのか楽しみです」

提督「ええ、私もよ…♪」

ライモン「あとは時間まで待つばかり…ですね」

提督「その間にお茶でもいただきましょうか」

マレア(フルット級「潮」)「結構ですね……それでは準備します」

提督「大丈夫、私がやるわ。お菓子は何がいい?」

ナウティロ(フルット級「オウム貝」)「甘いのなら何でもいいですよ…♪」

提督「あー…やっぱり戦中生まれだと甘いものに目がないわよね」

ライモン「特にフルットたちは42年、43年組ですし……いろんな物が払底していた時代ですから」

提督「戦意高揚のポスター以外はね」

ライモン「ええ…さ、それじゃあうんと甘いお紅茶でも淹れましょうね♪」

ナウティロ「ありがと、ライモンド♪」

ライモン「いえいえ……えーと、砂糖つぼは…」

提督「そこの引き出しの中よ」

ライモン「あぁ、ありました」

提督「それと紅茶が……今日はセイロンのブレンドにしましょう♪」

グレイ提督「セイロンですとミルクにも合わせやすいスタンダードな紅茶ですものね……皆さん、ご機嫌いかが?」

提督「…出たわね、紅茶妖怪……」

グレイ提督「ふふ、何かおっしゃいまして…?」

提督「何でもないわ♪」

グレイ提督「さようですか……どうやらフランチェスカはまた「お散歩」に連れて行って欲しいようですわね…?」耳元に口を寄せてぼそっとつぶやく…

提督「…ごめんなさい」

グレイ提督「よろしい…さて、紅茶を淹れる時は沸騰したお湯でないといけませんわ♪」

ライモン「ちゃんと沸いてますよ」

グレイ提督「あぁ、それは何より……それからポットやカップに軽くお湯を注いで、ほどよく熱してあげることが肝心ですわ」

提督「ふぅ…それじゃあ紅茶はうるさ型の……もとい、本格派のメアリに任せて、私たちはお菓子を選びましょう?」

ナウティロ「はい…いっぱい欲しいです♪」

提督「あんまり食べ過ぎるとお昼に差し支えるわよ?」ぱちんとウィンクをして、棚の引き出しからあれこれとお菓子を取り出した……

グレイ提督「…さぁ、お茶が入りましたわ」

提督「ありがとうございます…うーん、いい香り」

グレイ提督「紅茶を淹れるには正しい淹れ方をしませんと、こういう風に綺麗な水色と華やかな香りは出ないのです」

提督「それではいただきます…ふー……すすっ…」

グレイ提督「いかがかしら?」

提督「とっても美味しいです…香りがよくって、鼻から抜けていくような感じがしますね」

グレイ提督「それはよかったですわ」

提督「ええ。それでは失礼して…」最初の一口は淹れてくれたグレイ提督への失礼にならないようストレートですすり、それから改めてミルクを入れた…

グレイ提督「では、わたくしもいただきましょう…」工作室の腰掛けに軽く腰を下ろし、優雅な手つきで紅茶をすする…

ナウティロ「はむっ…あむっ……うん、美味しいです…♪」さっくりした「チョコレートがけのパイ」をぱくつき、時々ふーふーと冷ましつつ紅茶をすする…

グレイ提督「喜んで頂けて何よりですわね……しかしこうして紅茶をいただいていると、ジブラルタルにいるわたくしの艦娘たちも、今頃はアフタヌーン・ティーを楽しんでいるのだろうと思われてなりませんわ…」

提督「ホームシックですか、メアリ?」弱音にも聞こえるような言葉を艦娘たちに聞かれたくないだろうと、首をかしげつつ英語でたずねる提督…

グレイ提督「いいえ、ふと心に浮かんだだけですから…お気遣いに感謝いたしますわ」

提督「そうですか……ところでメアリ」

グレイ提督「何でしょう?」

提督「メアリはイギリス海軍の「地中海艦隊」所属の提督でしたよね?」

グレイ提督「ええ、いかにも」

提督「艦娘たちに大戦中の編制を継承させているイギリス海軍なら、メアリの所属はマルタ島ではありませんか?」

グレイ提督「あぁ、そのことですか……確かに本来なら、ジブラルタルに所属しているわたくしは「北大西洋部隊」の所属になるはずですわね」

(※ジブラルタル…スペインにある英領の飛び地で、イギリス海軍にとって重要な海軍基地。地中海の入り口をふさぐ要衝にあり、ジブラルタル海峡の狭さから『ガット』(腸)…あるいは目印の大岩から『ザ・ロック』(岩)と呼びならわされていた。小説版「Uボート」によると元はアラビア語の「ジェベル・アル・タリク」(タリクの山)で、それがなまったものらしい…狭水道を挟んだスペイン側はスペイン本土の要港アルヘシラスで、ジブラルタル海峡を挟んだ北アフリカ側の対岸は、モロッコにあるスペインの飛び地セウタ)

提督「ええ…よく考えたら在マルタの(戦中は散々イタリアを苦しめてくれた)英軍はずいぶんと少ないですし、アレクサンドリア(エジプト)にも形ばかりで……」

グレイ提督「…わたくしからは申し上げにくい事柄ですので、お答えはいたしませんが……「栄光ある大英帝国も昔のようにはいかない」と言うことですわ」

提督「あー…それでですか」(イギリスも予算がないのね…)

グレイ提督「そういう事ですわ。ジブラルタルはイギリス領ですから、エジプトやマルタに駐留費を払う必要もございませんでしょう?」

提督「なるほど……」

グレイ提督「それにジブラルタルなら基地施設は揃っておりますし、電化製品もイギリス規格になっておりますの……外国に来て困るのはそう言ったところですから」

提督「確かに…あ、そろそろですね」

グレイ提督「今回は一体どんな戦歴の艦が「艦娘」になってやって来るのでしょうか…「わたくしでも知っているような」有名な娘なのかどうか、気になりますわ」

提督「むぅ……そう言われてしまえば、イギリス海軍の名艦たちほど有名な娘はいないでしょうね……でも、大局的にはふがいないと言われようが、どこかでピリッとしたところがあるのがイタリア海軍ですから♪」それとない皮肉を受け流してやり返す提督…

グレイ提督「よく存じております…わたくしたちの先人たちも「マカロニ艦隊」とあなどっては、時折チクリと刺されることがありましたもの……」

提督「ええ、そう言うことです♪」

ナウティロ「ふふ…ん♪」

グレイ提督「ふふ、わたくしは気を付けますわ……それと少なくとも、フランス海軍よりはよく行動いたしましたわね」

提督「ふふ、メアリったら…いつぞやマリーにイヤミを言われたのを、まだ根に持っているのですか?」

グレイ提督「いいえ。わたくしは根に持ったりする性格ではありませんもの……ただ、いつかその相手が溺れてでもいるような時に、過去の言動を思い起こして「ロープを投げるかどうか」の判断材料にはいたしますわね…♪」

提督「…」

…フランス・トゥーロン第七鎮守府…

エクレール提督「くしゅっ…!」

ジャンヌ・ダルク(練習軽巡)「大丈夫ですか、モン・コマンダン(私の司令)?」

エクレール提督「ええ、大丈夫ですわ……きっとフランチェスカあたりが噂でもしてくれているのでしょう…まったく」

リシュリュー(戦艦リシュリュー級)「でしたらなおの事気を付けませんと…イタリアは風向き次第でいつ寝返るか分かりませんので…」

エクレール提督「ええ……といっても、フランチェスカに限ってはその心配はありませんわ///」昔プレゼントされた趣味のいいネックレスをもてあそびながら、頬を赤くした……

…同じころ…

提督「さて…そろそろ出てくるわね」

ゴルゴ「やれやれ、待ちくたびれたわ」

ヴォルティーチェ「結構かかりましたものね♪」

ナウティロ「んぐ、んむっ…ごくん……ごちそうさま、美味しかったです♪」

提督「ずいぶん食べたわね、お昼が入らなくなっちゃうわよ?」

ナウティロ「大丈夫ですよ、提督…♪」

提督「そう…ふふっ♪」綺麗なえんじ色と白髪が房ごとに分かれているナウティロの頭を軽く撫で、制服の裾を直して待った…

…建造装置のカウンターがゼロになるとドアが開いて、中から漏れ出した青い光が目を眩ませた…光が収まると中学生ぐらいのすんなりした艦娘がきっちり十人整列していて、それぞれが違った宝石を身に着け、色とりどりの瞳が夏の海のようにキラキラときらめいている……

艦娘「…こんにちは……えーと、提督…さん?」

提督「ええ、初めまして…タラント第六へようこそ。司令のカンピオーニです♪」

艦娘「ボンジョルノ(こんにちは)、提督さん…自己紹介が必要ですね?」

提督「ええ、よろしく…♪」

艦娘「こほん、それでは…中型潜水艦「ペルラ」(真珠)級ネームシップの「ペルラ」です……あの時は捕まったりもしましたが、今度こそ「健康」と「長寿」、そして「富」を鎮守府にもたらしますから…ちゅっ♪」…「ペルラ」はパールピンクと白の混ざったような艶やかな髪に白っぽい瞳…そして提督の給料では手が届かないような大粒の美しい真珠のネックレスとブレスレット、イヤリングを付けている……敬礼が済むと、提督の手の甲にしっとりした唇で軽くキスをした…

艦娘「次は私ですね…潜水艦、「アンブラ」(琥珀)です。イタリア潜で一番の大物を沈めた実力、今度も発揮したいと思います♪」…明るい琥珀色の瞳に綺麗な金色がかった琥珀色の髪をなびかせ、両脇と腰にSLC(※人間魚雷…水中スクーター)の格納筒を抱えている……首元にはウズラの卵ほどありそうな琥珀のブローチを付けている…

提督「よろしく、アンブラ…沈めたのはイギリス軽巡だったわね?」

アンブラ「はいっ、軽巡「ボナベンチャー」です…ご存じとは嬉しいです///」

提督「ふふ、復習しておいたの…♪」ちゅっ…と左右の頬にキスをすると次の艦娘の前に立った…

艦娘「初めまして。ペルラ級中型潜「ベリロ」(ベリル・緑柱石)です…石言葉は「永遠の若さ」と「聡明」です……どうぞ長いお付き合いが出来ますように…♪」…髪はすっきりしたベリルの緑色でセミロングに伸ばし、瞳は初夏の木々のような鮮やかな緑色…手首のブレスレットと髪止めのベリルも透き通った緑色で、涼やかで美しい…

提督「初めまして……私にもその若さを分けて欲しいわね♪」にっこりと微笑みかけて、軽くぱちりとウィンクをする…

艦娘「それでは私の番ですね……ペルラ級「コラーロ」(珊瑚)です。「成長」と「威厳」、そして「長寿」をもたらしましょう…」ポニーテールにしている深い赤色の髪を真っ赤な珊瑚珠(さんごじゅ)の髪止めで結んでいる…首にはピンクコーラルのネックレスをつけ、赤く艶のある瞳で提督をじっと見つめた…

提督「グラツィエ…あなた自身にもね♪」

艦娘「ボンジョルノ、提督…ディアスプロ(ジャスパー・碧玉)です!…石言葉は「勇気」、それに「多種多様」です!」ぐっと身を寄せると軽くつま先立ちして、提督の唇ギリギリのところにキスをした…

提督「んんぅ…ふふ、元気いっぱいのようね……それで、貴女…が……?」…唐突に流れ始めたエンニオ・モリコーネのウェスタン映画の音楽に驚いて、辺りを見回す提督……さぁーっと吹き付ける乾いた風に乗って、足もとをコロコロと埃の固まりが転がった…

艦娘「…やぁ、あんたが提督さんか……私がジェンマ(宝石)だ。名前はそれだけでいい…今度は味方にやられないよう気を付ける……」黒地に銀の縁取りがついたテンガロンハットに黒のブレザーとズボン…足元は銀の拍車がついた黒のブーツで固め、腰には「コルト・ピースメーカー」を左右に吊るしたガンベルト……帽子を軽く持ち上げると、帽子の影になっている下からニヒルな笑みが見える…

提督「あー…それでエンニオ・モリコーネの曲なのね……よろしく頼むわね♪」

(※ジュリアーノ・ジェンマ…イタリア映画界がハリウッドでのウェスタン映画ヒットを見て次々に作った一連の西部劇映画、通称「マカロニ・ウェスタン」で多く主役を務めた俳優。エンニオ・モリコーネは有名な映画音楽の作曲家で、マカロニ・ウェスタンの曲も多く手掛けた……たいていは口笛と鞭の音が入っていてどれがどれやら分からないが、ウェスタン・ムードはたっぷり)

ジェンマ「……ジェンマだけにな……それじゃあ、よろしく…」

提督「ええ、それで…」

艦娘「ブエナス・タルデス(スペイン語で「こんにちは」)…私が中型潜「ゴンサレス・ロペス」……じゃなかった…ボンジョルノ、中型潜「イリデ」(虹・アヤメ)です…伝言なら私にお任せです♪」スペイン国旗の赤と金のリボンにアヤメの髪飾りを付けたポニーテールの髪に、プリズムのように変化して見える輝く瞳……両脇には四本の人間魚雷格納筒を装備している…

提督「ええ、グラシアス…ブエンベニード(ようこそ)♪」

イリデ「へぇぇ、提督はスペイン語が出来るんですね…今度一緒にパエーリャでも食べましょうね♪」

提督「ええ、そうしましょう♪……それから貴女が…っ…!?」

艦娘「んふふ…私が「マラキーテ」(マラカイト・孔雀石)よ。石言葉は「危険な愛情」に「恋の成就」……どう、私と火遊びしてみない?」提督の腰にふとももを擦り付け、胸の谷間に手を這わす「マラキーテ」……青緑色の瞳が妖しく光り、長い髪がまとわりつく…

提督「だ、ダメよ……こんな所じゃムードも何もないし…あ、でもちょっとキスするくらいなら……///」

ライモン「…こほん!」

提督「あ、あぁ……まだ自己紹介が終わっていないから、待ってちょうだいね…えーと///」

艦娘「中型潜、「オニーチェ」(オニキス・しまメノウ)です…一時期はフランコ将軍の下で「アグィラール・タブラダ」として頑張っておりました。「和合」と「夫婦の幸せ」がありますように…♪」黒い髪に黒い瞳のすっきりした美人のオニーチェ…黒髪を縛っているスペイン国旗の色がよく映えていて、額のサークレットと指輪のオニキスが光っている…

提督「んー…夫婦というよりは「婦妻」だけれど……よろしくね♪」

艦娘「最後が私ですね…ペルラ級「トゥルケーゼ」(トルコ石)です。提督に繁栄や成功がありますように♪」水色の瞳に水色の髪を難しく結い上げ、胸元の二重ネックレスと、指の大きなトルコ石がエキゾチックな雰囲気をかもしだしている…

提督「ええ、グラツィエ…それじゃあ何はともあれ、食堂に行ってお昼にしましょう♪」

ペルラ「了解♪」

…食堂…

ドリア「まぁまぁ、これはまた色鮮やかな娘たちで…ここも一層にぎやかになりますね♪」

提督「本当にね……エリトレア、よかったら始めましょうか♪」

エリトレア「了解しました♪…それでは、どうぞ召し上がれっ♪」

フルット「ふふふ、何とも国際色豊かで美味しそうですね…」

ルイージ・トレーリ「それじゃあ今度は、私も和食を皆さんにごちそうします…いいでしょうか、エリトレア?」

エリトレア「もちろんですとも♪」

提督「ここにいながら外国の料理を楽しめるなんて素敵ね…もし注文したい材料があったら、遠慮なく私に相談してね?」あれこれと目移りしながらも、取り分け用のスプーンを忙しく動かす提督…

ライモン「もう、またそんなに食べて…後で運動して下さいね?」

提督「はいはい…んー、こっちの料理も美味しそうね♪」

ドリア「提督、私にもよそって下さい♪」

エリトレア「器に乗りきらなかっただけで、まだおかわりもありますからねっ♪」


…紅海を脱出してからは東南アジア方面で補給任務をしていただけに、エスニック風料理の得意なエリトレア……優しく海風の吹き抜ける食卓には、ライスをたっぷりのタマネギとひき肉で炒め、バジルを乗せたピラフのような「東南アジア風ライス」や、ナスと鶏肉をココナッツミルクでまろやかに仕上げた「タイ風カレー」が並んでいる……もちろんイタリアらしさも忘れずにいて、「ピッツァ・マルゲリータ」と「パスタ・アラビアータ」がしっかりと並んでいる…


提督「うん、ひき肉の風味がほどよく染み込んでいるわ…美味しい♪」

…ひき肉から出る油でタマネギとニンニクを炒め、そこに固く炊いたご飯を投入したらしい「東南アジア風ライス」……百合姫提督が欲しくなるだろうと用意しておいた醤油は結局そこまで使わずに余していたが、それをうまく使って、いかにもアジア風な香りがついている…香ばしいようなしょっぱいような香りに、山ほど散らしたバジルがインドネシア辺りの混みあった市場を連想させる…

ディアスプロ「これも美味しいです…!」

…タイのカレーと言えばたいてい入っている「コブミカンの実」に代えて、カクテル用に用意してあるライムジュースを少しだけ垂らしてある黄色っぽいカレー…ピリリと辛いが爽やかな青唐辛子と、よく煮こまれてとろりと柔らかいナス……鶏肉は小骨の多い部位や余していた部分を軽くソテーしてから入れてあるので、表面は香ばしく、それでいて肉は簡単にほぐれる…

提督「そうね、こんな快晴の日にはいいわね…ふぅー、暑くなってきたわ…」意外と辛いカレーに汗を滴らせ、すっきりした白ワインで口の中をさっぱりさせる提督……夏季略装のブラウスがぴったりと張りつき、黒いレースのブラがはっきりと透けて見える…

グレイ提督「…ふぅ、なかなかスパイシーでよろしいですわね」耐熱ガラスのカップで熱いストレートティーをすすっているグレイ提督…インド料理などにぴったりな熱い紅茶は、すっきりと辛さを抑えてくれる……

ヴァイス提督「これは美味しいが……どうも辛いな…」そっとハンカチを取り出して額を拭うヴァイス提督…隣ではビスマルクが汗をかき、ビールをあおりながら料理をむさぼっている……

提督「ペルラ級のみんなはどうかしら…美味しい?」

ペルラ「はい、美味しいです♪」

マラキーテ「後は食後のドルチェだけ…ね、提督♪」ぺろりと舌舐めずりをするマラキーテ…

提督「…ええ、午後の執務に差し支えなければ……ね♪」いたずらっぽい笑みを浮かべ、そっとウィンクをする提督…

………

…お待たせしていましたが、艦娘の紹介は次回以降に持ち越してこの辺りで止めます……「ペルラ」級に付けられた宝石の「石言葉」を調べようとしたところ、パワーストーンとしてのスピリチュアルな情報ばかり出てきて苦労しました…あと「石言葉」は国によって違うようなので、日本で知られている石言葉は日本独自のものか、欧米のを翻訳したものが多いようです…


…残る「600」型系統の中型潜は2クラスなのですが、イタリアらしからぬ量産数なので書くのが大変そうで……しばらくはお茶を濁す形で百合百合したり、だらだら書いていくと思います(アメリカ海軍でやらないでよかった)…


姉妹が多ければ多いほど目の保養になるじゃない

>>281 なるほど、いい考え方ですね(笑)

……一応それぞれの戦歴などを調べ直したうえでキャラを考えるので、しばしお待ちを…

…とある日…

提督「んー…書類仕事も終わったし、後はみんなの様子でも見て回りましょう♪」

カヴール「でしたら私がお供いたします…♪」

ライモン「あ、わたしも行きます」

提督「それじゃあ待っていてあげるから、ファイルだけ戻しておいて?」

ライモン「了解……それでは行きましょう」

………

…駆逐艦「ソルダティ」級の部屋…

提督「こんにちは…あら、アヴィエーレ♪」

アヴィエーレ(ソルダティ級「航空兵」)「やぁ、提督……これからゲームでもしようかと思っていたところなんだ♪」提督の左右の頬に音高くキスをすると座り心地の良さそうなひじ掛け椅子に座り、テレビとゲーム機の電源を入れた…

ランチエーレ(ソルダティ級「槍騎兵」)「私もいるわよ…見ているだけでも意外と面白いもの♪」

カミチア・ネラ(ソルダティ級「黒シャツ隊員」)「そうね……それに今日は暑すぎて…表にいたら焦げそうよ……」

提督「カミチア・ネラは黒シャツだものね……後ろから見ていてもいいかしら?」

アヴィエーレ「もちろん構わないよ、ジェット戦闘機だったらさしずめナヴィゲーター(航法士)だね……」

提督「ふふっ、そうね…あら、戦闘機のゲーム……?」空いている椅子を引っ張って来て腰かける…

アヴィエーレ「そうだよ…このオープニングの曲がよくってね……♪」

提督「確かに…フラメンコみたいなテンポのいい曲ね」

アヴィエーレ「…そうだ、せっかく提督が来たんだし……今のオープニングをもじって、一つちょっとした冗談を…♪」椅子の前後を逆にして座るアヴィエーレ…もう一度オープニング画面を流しつつ、セリフを重ねる…

提督「?」

アヴィエーレ「…知ってるか?……レズは三つに分けられる…相手を追い求めるタチ…身を任せて生きるネコ……そして空気の読めるリバ…この三つだ」…親指、人差し指、中指と開いて数え上げるアヴィエーレ…

カヴール「…ふふっ♪」

提督「ぷっ…くすくすっ♪」

アヴィエーレ「彼女は「カタハネの妖精」と言われた女……「彼女」の相手だった人物だ…」

ランチエーレ「くくっ…何それ…♪」

アヴィエーレ「…『エリア「Y7R」で大規模な百合発生!』…『増援か…どこのタチだ!?』……」

ライモン「もう、アヴィエーレ…///」

アヴィエーレ「……その戦いでは誰もがタチになり、誰もがネコになる……そして誰がフェムで、誰がリバだったのか…」

提督「ふふふっ、もういいわ……ふふふ、お腹が痛い…っ♪」

アヴィエーレ「そうか、それじゃあこのくらいにしておこう…では改めてコックピットに座らせてもらおうかな」椅子を戻すとコントローラーを手に取った…周囲には提督を含めて十人近い観客が座っている…

………

…しばらくして…

アヴィエーレ「……えぇい、「フォックスハウンド」のくせに旋回戦なんか…おまけに赤と黒のカラーリングときた……ぐぅぅ…っ」本当にGがかかっているかのように歯を食いしばり、スティック(操縦桿)…の代わりにコントローラーの「ぐりぐり」を動かすアヴィエーレ…

(※MiG-31「フォックスハウンド」(キツネ狩り用の猟犬)…ベレンコ中尉の函館亡命事件で有名になったソ連のMiG-25「フォックスバット」(オオコウモリ)の後継機で、戦闘機初のフェイズドアレイレーダー搭載などFCSが優秀。単座の「フォックスバット」と違って複座になっている…もともとはアメリカの計画していたXB-70超音速爆撃機「ヴァルキリー」を迎え撃つための迎撃戦闘機だったので、トップスピードはマッハ3が出るが、旋回性はあまり良くない)

アヴィエーレ「あっ!?…しまった、ダメだったか……」

提督「あらまぁ…」

アヴィエーレ「うーん…まぁいいさ、負けたから交代しよう」

ランチエーレ「じゃあ私が!」

アヴィエーレ「よし、任せたよ…うまくやってくれ♪」

提督「それじゃあ仲よくね…♪」

カラビニエーレ(ソルダティ級「カラビニエーリ隊員」)「はい、私がちゃんと順番を守らせますから」カラビニエーリ(軍警察)隊員だけあって規則や順番にはうるさいカラビニエーレが、カチリとかかとを合わせて敬礼する…

提督「よろしくね……それじゃあ次は…と」

提督「やっぱりペルラの所かしら…来たばっかりで戸惑っているでしょうし」

カヴール「ええ、それがよろしいかと思います…♪」

ライモン「そうですね」

提督「じゃあそうしましょう……その後で待機室に行って、待機組のみんなに声をかけることにすればいいわね」

ライモン「はい、分かりました」

………

…中型潜「ペルラ」級の部屋…

ペルラ(真珠)「まぁ…提督、よく来てくれました♪」

ベリロ(ベリル)「歓迎いたします……ようこそ、私たちの部屋へ♪」

アンブラ(琥珀)「来てくれて嬉しいですよ…ほら、ぶーちゃんも挨拶しなさいね?」

提督「…『ぶーちゃん』って?」

アンブラ「この子ですよ…ほら♪」両の腰と背中にマウントしているSLC格納筒の一つを開けると、中にピンク色をしたブタのぬいぐるみが収まっていた…

提督「あら可愛い…それはいいけれど、またどうして……あ」

ペルラ「ふふ、そうです…SLCの通称が「豚」だったからなんです」

アンブラ「安心してくださいね…艦には「ホンモノ」が収まっていますから……よしよし♪」ピンクの「ぶーちゃん」を撫でると、また格納筒を閉めた…

提督「……まぁいいわ。あと困っていることとか、欲しい家具なんてあったら……」そう言って部屋を見渡すと、左右の壁や化粧台にキラキラと光る宝石や奇石のアクセサリーが積まれている……

提督「…まるでミラノの宝石店みたい……」

ライモン「…眩しいです」

カヴール「ふふ、きれいですね…私のようなおばあちゃんでさえ、身に付けてみたくなってしまいます♪」

ペルラ「……私のよければ構いませんよ?」

カヴール「あら、いいの?」

ペルラ「ええ…せっかくの機会ですから」

オニーチェ(オニキス)「よかったら提督とライモンドもどうぞ…そこに座ってくれればつけてあげますよ?」

ライモン「いえ、そんな…わたしは宝石の似合うような貴婦人じゃありませんし……」

提督「まぁまぁ、せっかくそう言ってくれているのだから……そうよね、オニーチェ?」

オニーチェ「ええ…ライモンドは綺麗な金色の髪ですし、私の黒はよく似合うと思います」

提督「ふふ、それじゃあついでに髪型も…♪」二人がかりでライモンを座らせると、化粧台の鏡に映るように微笑みつつ、髪をまとめているヘアゴムに手をかける…

ライモン「え、ちょっと…提督、何をするつもりですか///」

提督「まぁまぁ…せっかく落ち着いた風合いの金髪なんだもの……いつものポニーテールもすっきりしていていいけれど、たまにはお嬢さまみたいに…♪」髪をまとめているゴムを外すと、ふわりと髪が波打った…

ライモン「あの…提督……」

提督「ふふっ、ライモンの髪……いつも通りしっとりしていて、すごくいい手ざわりね……すぅ…はぁ…♪」豊かに流れた髪の房に顔をうずめて甘い香りを吸い込む……

ライモン「も、もう…っ///」

トゥルケーゼ(トルコ石)「それじゃあ私は提督に似合いそうな…マラキーテも提督に見繕ってあげたら?」

マラキーテ(マラカイト)「いいわねぇ…ふふ、私の身に着けた宝石を提督が、なんて……んふふ、たまらない…♪」

提督「あらまぁ、こんなに宝石を身に着けたのは生まれて初めてかもしれないわ……ふふ、ちょっと重いくらい♪」マラカイトのネックレスにトルコ石の腕輪をつけ、いたずらっぽい笑みを浮かべた…

ライモン「うぅ…素敵なアクセサリーですけど、こんな贅沢なのを身に付けていると…似合わないのに背伸びをしているみたいで恥ずかしいです……ど、どうでしょうか///」オニキスのサークレットにカメオのブローチ…耳には複雑に絡み合ったオニキスと銀のイヤリング……肩に流れる髪とごくあっさりとした淡灰色のサマードレスがライモンのすっきりした顔をぐっと引き立て、モノトーンならではのモダンな美しさを感じさせる…

提督「……とっても素敵よ///」

カヴール「ええ、本当に綺麗ですよ……ふふ、でもこうしていると欲しくなってきてしまいますから……ペルラ、つつしんでお返しします♪」二重になったパールのネックレスにティアラをつけて、貴婦人そのもののカヴール…が、優美ながら気どらないカヴールはにっこり笑ってアクセサリーを外し、ペルラに礼を言って返した…

…廊下…

提督「ペルラたち、思っていたより大丈夫そうだったわ…ここの生活には馴染みやすいのかしら?」

カヴール「かもしれませんね♪」

ライモン「……それも提督がいるからこそなんですよ…///」

提督「んー?」

ライモン「いえ、何でもないです…っ///」

提督「そう?」

ライモン「は、はいっ…それより早く待機室に行きましょう!」

提督「はいはい……そう言ってもらえて嬉しかったわよ、ライモン…♪」耳元に唇をよせ、そっとささやいた…

ライモン「///」

カヴール「ふぅ、それでなくても暑いくらいの陽気ですのに…ますます暑くなってきますね♪」

提督「それはもう…ね♪」

…待機室…

カヴール「ふぅ…お二人の甘いやり取りの後ですから、冷房が余計涼しく感じますね?」

ライモン「もう、言わないで下さいよ…///」

提督「ふふ…チャオ、みんな」

ガリバルディ「あら提督…こんなところまで来てくれて嬉しいわよ♪」

アオスタ「提督、待機組は全員異常なしです」

提督「了解。アオスタがいると楽できるから助かるわ…♪」冗談交じりにウィンクを投げる

アオスタ「はい、頼りにして下さってありがとうございます…ですが、提督もきっちりご自身の目で確かめて下さい」

提督「そうよね…まぁ、そう思ったから来たの♪」

アオスタ「よい心がけです」

提督「どうも……って、ここでもゲーム中なのね」

アオスタ「…まったく、みんないい歳しておきながらゲームなんかにかじりついて……それに一時間ごとに十五分は休憩を挟むよう説明書にも書いてあったでしょう?」…戦後ギリシャに渡ったせいで、すっかり「堕落」した女たらしの妹「エウジェニオ・ディ・サヴォイア」と違い、ソ連に引き渡されて生真面目な委員長気質が染みついたアオスタ……

提督「まぁまぁ…で、ここではどんなゲームをやっているのかしら……」待機室にある居心地のいい肘掛椅子に数人が腰掛け、わいわい言いながらゲームを見物している……

デュイリオ「…」

提督「あら、デュイリオがゲームなんて珍しいわね?」

アルフレド・オリアーニ(オリアーニ級駆逐艦)「あ、提督……それがデュイリオったらすごく強いのよ!」

ジョスエ・カルドゥッチ(オリアーニ級)「ええ、本当に…惚れ惚れしちゃいます……///」

ヴィンチェンツォ・ジオベルティ(オリアーニ級)「ね…今までプレイしてたみんなとはけた違い♪」

ヴィットリオ・アルフィエリ(オリアーニ級)「ですからこうやって応援しているんです」

提督「へぇぇ…なになに『ARMORED艦CORE2』?……ロボットの戦闘ものみたいだけど…」

デュイリオ「……「AC」と言って下さい、提督……カラサワ…カラサワ…」いつも通り甘い表情を浮かべているが凍りついたような笑みで、まばたき一つせず画面に向かっている…

提督「あら、ごめんなさい…で、デュイリオがその操縦士なのね?」

デュイリオ「ええ…ちなみに操縦者ではなく「レイヴン」です……小ブースト…小ブースト……」

提督「レイヴン(大カラス)……だから『コルウス』(カラス)を使ったデュイリオが得意なのね…♪」

オリアーニ「そうなの。ちょっと怖いくらいよ……さっきからみんなで交代しながら「アリーナ」に挑んでいたところなんだけ……あ、あの難敵を倒しちゃったわ……!」画面には黒く煙を噴く、黒と紫のカラーリングを施した相手の四脚型ACが映っている…

デュイリオ「……カラサワ…カラサワ………あら、提督?」

提督「…こんにちは、デュイリオ……大丈夫?」

デュイリオ「何がです?」

カヴール「…誰かに強化人間手術を受けさせられた…とかありませんか?」

デュイリオ「ええ?……って、あら…ほんの少したわむれにやってみようと思っただけでしたのに、もうこんな時間…ゲームなんて触ったこともありませんでしたけれど、待機時間の暇つぶしにはもってこいですね♪」

提督「…アオスタの言う通り、少しゲーム禁止令を出した方がいいような気がしてきたわ……」

…屋外射撃場…

提督「はー…暑いわねぇ……」

カヴール「そうですね…見回りはこのくらいにして、執務室に戻りますか?」

提督「ううん、運動も兼ねてとりあえず一周はしようと思って…暑いのは後でシャワーを浴びればいいもの……って、向こうに誰かいるわね…?」小手をかざして目を細め、射撃場のレンジに向かっているのが誰か見極めようとする提督…

♪~「荒野のガンマン」のテーマ~

ジェンマ(ペルラ級中型潜「宝石」)「……誰だ?」…的に向かっていたのは鎮守府に来たばかりのペルラ級中型潜「ジェンマ」で、多くの艦娘たちが甘い香水や化粧品の香りをさせている中、一人だけ砂ぼこりと硝煙のにおいをさせている……ニヒルな笑みを浮かべて「荒野のガンマン」を口笛で吹きつつ、手際よく的を撃ちぬいている……

提督「私よ、ジェンマ…射撃の練習中?」

ジェンマ「提督か……ああ、そうだ…」ジャキン…ッ、バンッ!…ジャキンッ、バンッ!

提督「…さすがジェンマね」ひとり言をつぶやく提督…

ジェンマ「どうも……さて、これでおしまいだ…」ガシャッ……バンッ…!

提督「お疲れさま…この日差しだから、暑気あたりを起こさないように注意してね?」

ジェンマ「ああ」

提督「よろしい♪……それにしても綺麗な仕上げのウィンチェスター・ライフルね…M1873?」


(※ウィンチェスター・M1873…当時としては速射が利き、そのうえ物の届きにくかった西部の開拓地で「コルト・シングルアクションアーミー」(ピースメーカー)と同じ弾を撃てるということから、絶大な人気を誇ったレバーアクション式ライフル。初期のモデルは真鍮の機関部から「イエロー・ボーイ」のあだ名で親しまれ、モデル1873は映画「ウィンチェスター銃73」などで名銃として描かれたことから名高く、ピースメーカーと合わせて「西部を征服した銃」などと呼ばれる…のちに故障が少なく安価なボルトアクション式ライフルが生まれたことで廃れていったが、まだまだ愛好家は多い。口径は.45ロング・コルトなどモデルにより様々)


ジェンマ「ほう…提督は「ウィンチェスター73」をご存じか」

提督「ええ、触ってもいいかしら?」

ジェンマ「……ああ」

提督「うーん…艶のある木のストックに綺麗な仕上げの銃身……さすがウベルティね♪」(※アルド・ウベルティ…戦後イタリアのロンバルディア州で生まれた小火器メーカー。アメリカや欧州で人気がありながら、パテントが切れて特許料のいらない西部開拓時代の銃を丹念に作っている)

ジェンマ「そうだな…こっちもウベルティのだ」腰に差したニッケルメッキのピースメーカーをあごで指し示した…

提督「ねぇ、ジェンマ…ぁ♪」

ジェンマ「何だ……いきなり甘ったるい声を出して」

提督「……数発だけ試し撃ちさせて?」

ジェンマ「…なんだ、それだけの事か……構わないからやれよ…」

提督「ふふっ、ありがと……ふぅ…」ジャキンッ…バァン!

ジェンマ「……ヒュゥ、上手いもんだな…!」

提督「…」ジャキッ、バンッ!…ジャキンッ、バンッ!……ジャキン、バンッ!

カヴール「まぁまぁ…♪」

ライモン「わぁぁ…!」

提督「……ふぅ、やっぱりウィンチェスターのこのクラスは細身でいいわね…私でも持ちやすいわ♪」

ジェンマ「ふふ、それじゃあ……こいつはできるか?」食堂からもらって来たらしい空き缶数個を揺さぶった…

提督「…やってみましょうか?」

ジェンマ「西部劇ではお馴染みだからな……ライモンド、合図してくれ」腰のピースメーカーに手をかけた…

ライモン「わ、分かりました……トーレ、ドゥーエ、ウーノ…はい!」

ジェンマ「そら…っ!」

提督「んっ!」ジャキンッ…バンッ!……投げ上げられた缶を撃ち抜いて、もう一度空中に跳ね上げる提督…

ジェンマ「…ふんっ!」バンッ、バンッ、バァン…ッ!……腰のホルスターからピースメーカーを抜くと落ちかけた缶に次々と撃ちこみ、水切りする小石のように数回も跳ね上げた…

カヴール「あら…あらあらあら♪」

ライモン「……すごい!」

提督「ふふーん♪」

ジェンマ「ふ…提督とは仲良く出来そうだ……それじゃあ…♪」黒と銀のテンガロンハットを軽く傾けて会釈すると、哀愁と硝煙の香りを漂わせて戻って行った…

………

…まずは見て下さってありがとうございます……が、続きを投下する前におわびと訂正を一つ……

…中型潜「ジェンマ」が口笛で吹いていた曲は「荒野の用心棒」です…眠い時にうろ覚えで適当なタイトルを書いてしまいごめんなさい(…言い訳としては、マカロニウェスタンの題名なんてたいてい「荒野の○○」「夕陽の○○」「さすらいの○○」とか、さもなければ「○○の用心棒」とか「○○のガンマン」なので……)


…ちなみに「ジェンマ」の服ですが、個人的には黒と銀のかっちりしたウェスタン・スタイルです。

……あと、ゲーム「ワイルドアームズ」のテーマは絶対マカロニ・ウェスタンの曲からヒントを得ていると思います……機会があったら聴き比べてみてください


……では、この後もしばらくだらだらいちゃいちゃしていきます……

…大浴場…

提督「はー…さっぱりして気持ちいいわね♪」

ライモン「ええ、せっかくのお化粧が落ちちゃうのが難点ですが…」

提督「そうは言っても私は普段からすっぴんみたいなものだし……ライモンやカヴールはお化粧の必要がないくらい綺麗だから、いいんじゃないかしら?」

ライモン「///」

カヴール「あらあら…提督ったらお上手♪」

提督「だって…ねぇ」

ポーラ「……とってもじゃないですが~、1915年生まれには見えませんね~?」大浴場の扉を開けて入って来たザラとポーラ…入って来るなりカヴールの身体を眺めまわして、感心したような口調のポーラ……

カヴール「あんまり言わないで下さいな、ポーラ。…これでも気にしているんですから♪」

ポーラ「えぇ~?…だってぇ、カヴールはおっぱいももちもちで、脚もきゅ~っと引き締まってますし~…気にすることはないんじゃないですかぁ~?」

カヴール「……私くらいの歳になると、けっこう気になるものなんです」

(※「コンテ・ディ・カヴール」の完成は1915年…イタリア参戦時の1940年には25歳だが、軍艦の艦齢は人間に換算すると数倍は大きい数字になるので……)

提督「それでいてその豊満かつワガママなド級艦体型……うらやましいわ」

ザラ「提督だって綺麗な身体だと思うわよ…ね、ポーラ?」

ポーラ「はい、提督もむっちりしていながらメリハリがあってぇ…えへへぇ♪」

提督「もう…ポーラのえっち♪」

ポーラ「えへへぇ、ばれちゃいました~♪」

ザラ「全くもう……ポーラには私がいるでしょうに…///」

ポーラ「ん~?…ザラ姉さま、何か言いましたかぁ?」

ザラ「ううん、何でもないわ」

ポーラ「分かってますよぉ、ザラ姉さま……ポーラの一番はぁ~、いつでもザラ姉さまです♪」むにっ…♪

ザラ「あんっ、ちょっと…提督たちが見てるから……んんっ///」

提督「そうよね、私たちが見ているものね…ポーラ」

ポーラ「はい、なんでしょう~?」

提督「……ぜひ続けてちょうだい♪」

カヴール「ふふ…微笑ましい光景ですものね♪」

ライモン「あ、あの……それはさすがに///」

ザラ「ライモンドの言う通りよ…もう、止めなさいってばぁ……♪」

ポーラ「えへへぇ…早く止めないと~、提督たちの前で好き勝手しちゃいますよぉ~?」

ザラ「んんぅ、ポーラったらさっきも散々したでしょうに…ぃ……ふふっ、本当にいやらしいんだからぁ♪」むにゅっ…もみっ♪

ポーラ「…あれれぇ?」

ザラ「ほぉら、手が止まっているわよポーラ……早く触ってってば♪」むにゅっ、ぐにっ…♪

ポーラ「…もう、ザラ姉さまってばぁ♪」

ライモン「………」

提督「うふふっ……いい眺めだけど、これ以上の邪魔は無粋ね…上がりましょう♪」

カヴール「ええ。それではお二人とも、のぼせない程度に仲良くなさってくださいね♪」

ザラ「ええ、それじゃあまた後で…あうんっ///」

ポーラ「えへへぇ…それじゃあ、しばらくの間はチャオですねぇ♪」

提督「ええ、チャオ…んふふっ♪」だらしない「にへら♪」とした笑みのまま、大浴場を出た…

提督「んふふ…っ♪」

ライモン「…」

提督「んー…二人はあの後どうしたかしらねぇ……唇を重ねてから、そっと二人きりの時間を…ふふっ♪」

カヴール「…いとく……提督っ」

提督「あぁ、はいはい…えーと、戦艦の主砲斉射時に起きるブラストの話だったわね?」

カヴール「いいえ、「この後はどうなさいますか?」とおたずねしたのですが…」

提督「あ、あぁ…そうだったわね。とりあえず書類を片づけましょう♪」

ライモン「了解しました。わたしも手伝います」

提督「グラツィエ、ライモン……で、書類とにらめっこをしていればお腹が減ってきて、時計もちょうどお昼時になる…と♪」

カヴール「ふふ、なるほど…♪」

…執務室…

提督「あー…この書類って写しが必要なのね。ライモン、コピーをお願い」

ライモン「はい」

提督「それから……んー?」

カヴール「…どうかなさいましたか?」

提督「ええ、ちょっと…基地祭の物品申請に必要なこの書式って、どうなっているのかしら……」

ライモン「あ、それはわたしも分かりません……誰かに聞いてみたらいかがでしょう?」

提督「そうねぇ…私もこういう書類は初めてだし「聞くは一時の恥」よね……と、言っても誰に電話をすればいいかしら…と」受話器を取り上げ、ボタンの上で指を遊ばせている…

ライモン「提督、それでしたら手帳に控えてある「ご友人」の中から選べばいいんじゃないでしょうか?」

提督「それが一番いいわね……となると、とりあえず鎮守府に縁がない人はダメね」

カヴール「それと新任の提督さんも駄目ですね」

提督「そうね……ふぅ、いちいちその通りにしなきゃいけないからマニュアルは好きじゃないけれど、なければないで困るのよね……あ♪」

ライモン「お聞きできそうな方はいました?」

提督「ええ、エレオノーラ……百合姫提督が訪問している「ヴェネツィア第三」のシモネッタ大佐のことよ」

カヴール「そうですか、それではお電話してみましょう」

提督「ええ。ぜひあのロリコンお姉さんに聞いてみましょう…♪」

………

…ヴェネツィア第三鎮守府・執務室…

セラ(駆逐艦「セラ」級)「提督、お電話ですよー?」

シモネッタ司令「はいはーい…ありがと、セラ……んー♪」ちゅう…んむっ♪

セラ「んんぅ……もう提督さんってばキスしすぎなのですよ…」

シモネッタ司令「だってぇ…幼女を愛でるのはお姉さんのたしなみよ?」…さわっ♪

クリスピ(セラ級)「そんなの聞いたことないですよぅ///」

シモネッタ司令「ええ、ホントよ…ほら、ジァポーネ(日本)では漫画に描かれるくらいよくあることなのよ?」…執務机で読んでいた漫画「お姉さん提督は駆逐艦に興味があります」を差しだしてみせた…

セラ「そうなのですか…セラ、知りませんでした///」

シモネッタ司令「いいのよ。だから私に任せて…ねっ♪」

セラ「は、はい…///」

シモネッタ司令「さてと…それじゃあかわゆいセラを心ゆくまで愛でる前に、どこかの誰かさんがかけてきた電話に応えないと……はい、もしもーし?」

提督「チャオ、エレオノーラ…私よ」

シモネッタ司令「あー…フランカ、何かご用?それとも百合野准将に用事かしら?」

提督「今回はあなたに用事よ、エレオノーラ♪」

シモネッタ司令「そうなの?それで、ご用はなんでしょう…少将閣下♪」

提督「ふふっ…えーとね、基地祭に必要で外部から買い入れる必要のある物品の書式が分からなくて……エレオノーラは知っているかしら?」

シモネッタ司令「はいはい、ちょーっと待ってて……」

提督「……どう?」

シモネッタ司令「…はい、ありました。書式一覧の四十八ページの「D」にばっちり書いてあるから、それ通りに書けば大丈夫」

提督「四十八ページのD…四十八ページの……ずいぶん後ろの方ね……あ、あったわ」

シモネッタ司令「見つかった?」

提督「ええ、おかげさまで…付せんを付けたからもう大丈夫♪」

シモネッタ司令「お役にたてて何より。それじゃあ私は大事な任務に戻らせていただくわ」

提督「…どうせ駆逐艦とか水雷艇の娘にいたずらするんでしょう……全くもう、あなたが女性じゃなかったら一発で査問会ものよ?」

シモネッタ司令「ふーんだ…私は別に嫌がってる娘にはいたずらなんてしませんー…ね、セラ♪」

セラ「…はい。セラも提督さんの事が…好きですから…っ///」

シモネッタ司令「あんぅ、可愛いっ……セラぁ、せっかくだからその可愛いおしりもさわさわさせてぇ♪」

セラ「…て、提督になら……いいで…///」

提督「ちょっと、エレオノーラ…!」

シモネッタ司令「いいじゃない……ふわぁぁぁ、やわらかぁ…ぃい♪」ひざの上にセラを乗せ、支えるようにしながらお尻を撫で上げるシモネッタ司令…

セラ「……あんぅ…え、「エレオノーラお姉ちゃん」……だめですよぅ…///」

シモネッタ司令「ふふーん…私はお姉ちゃんだから大丈夫よぉ♪」

提督「…あきれた」

シモネッタ司令「フランカだって人の事は言えないでしょうが…はぁぁ、このまま幼女にうもれて暮らしたぁ…い♪」

提督「ふぅ…それにしても大人のお姉さま方の魅力が分からないなんて…エレオノーラもまだまだね♪」

シモネッタ司令「フランカこそ…この初々しい甘酸っぱさが分からないで、傷みかけの果物みたいな年上にばっかり手を出して…どうして可愛い幼女の鑑定眼があるのに、それを活かそうととしないのよ……宝の持ち腐れじゃない」

提督「ふふ…果物は傷みかけているくらいが、一番甘くておいしいのよ♪」

シモネッタ司令「ふぅん、ではお好きなように……私は「幼女のうち(おはやめ)にいただく」ことにするから……あぁん、このぺったんこなお胸にぷりぷりの白桃みたいなヒップ…んー♪」

クリスピ「おねーちゃん、肩揉んであげるねぇ?」ぺったんこな胸を背中に押し付け、小さい手で一生懸命に肩を揉むクリスピ…

シモネッタ司令「ふわぁぁ…ここが天国なのね……もう執務なんてできなぁい♪」

セラ「いいんですよ、エレオノーラお姉ちゃんはお疲れさまなんですから…その分セラが頑張ります!」

シモネッタ司令「はぁ…はぁ…はぁ、はぁぁ……んっ、それじゃあまた…あぅん♪」

提督「ふぅ…本来なら有能だし見た目は可愛いしで言うことなしなんだけれど……あの幼女趣味だけで長所をかき消してお釣りがくるのよね…」

カヴール「電話越しでさえ甘い嬌声が聞こえておりましたね…」

提督「ええ、それはもう…幼女好きの司令官が駆逐艦中心の鎮守府に転属になったらどう思う?」

ライモン「……その結果のあれですか」

提督「ええ…」


………

あ艦これ

>>291 誰が上手いことを…まさにその通りですが(笑)



…こんな生ぬるいssですし、ちゃんちゃらおかしいかもしれませんが…大雨だったり地震だったりと大変な人もいる中、もしかしたらこれが日々のわずらわしさを忘れられる一助に……なればいいなと思って書いております…なので基本的には誰も不愉快な目にあったりしないよう「甘々でみんな仲良く」なスタイルを続けて行きます……時折アクセントでSっ気のある百合えっちが入りますが、それも双方同意の上ですので……

…それと、またグレイ提督にSっ気を発動させる小ネタを思いついてきたので、そのうちに投下します…

提督「…しかもエレオノーラときたら興味のない人にはよそよそしい態度を取るのだけれど、人当たりがいいから一見すると丁寧な応対に見えて…それでみんな「親切でいい人」って勘違いをするのよね……」

ライモン「あー…なるほど」

提督「…おかげで人事考査はいつでもA評価……あっという間に大佐になって、鎮守府に着任したのも私より数年は早いのだから…ズルいわよね」ぷーっと頬をふくらませてみせる提督…

カヴール「まぁまぁ、提督も今や押しも押されぬここの司令官ですもの…いいではありませんか♪」

提督「そうね、おかげで可愛い艦娘たちに出会えたし……えいっ♪」両脇に控えていたライモンとカヴールを一気に抱き寄せ、乳房に頬ずりする提督…

ライモン「きゃっ…もう///」

カヴール「まぁ、ふふっ…私のような老嬢でよろしいのですか?」

提督「私はエレオノーラみたいな幼女好きじゃないもの……むしろ優しく包み込んでくれるような年上のお姉さま方が好きよ♪」

カヴール「まぁ、お上手…♪」

提督「ふふっ…そう?」

ライモン「むぅ……そう言われるとわたしは立つ瀬がない気がするのですが…」

提督「いいえ、ライモンだって私の知らない色々なこと知っているもの……それに何より、律儀で優しい性格がとっても愛おしいわ…んふふっ♪」むにゅ…♪

ライモン「提督……って、どこを触っているんですか///」

提督「それはもう、ライモンのしっかりと張りのあるお胸を…♪」

ライモン「もう…そんな暇があるなら執務をしてくださいっ」

提督「あらら、叱られちゃったわ……カヴール、可哀そうな私を慰めて?」

カヴール「仕方ありませんね…よしよし♪」

提督「ふふ、ありがと……カヴールおねえたま♪」

カヴール「あら…///」きゅんっ♪

ライモン「ふぅぅ、もう一度言いますよ……提督もカヴールさんも、三文芝居は止めて早く執務して下さいっ」

提督「了解」

カヴール「ふふ…分かっておりますよ、ライモンド♪」

ライモン「分かっているなら最初からちゃんとやって下さいよ…」

提督「ごめんなさい、ライモン…ライモンの反応がいじらしくて、つい……」

ライモン「ふぅ…わたしだってあとあとまで気にするのは止めようと思っているんですよ……なのであんまりその部分を茶化されるのは、少しもやもやした気分になります…」

提督「…ごめんなさい、それじゃあ真面目に執務に取りかかるから……」

ライモン「あっ、いえ……その、わたしもたまになら嫌じゃありませんし…時々ならいいんですよ///」

提督「…ふふっ、了解♪」

カヴール「うふふふ…っ♪」

ライモン「うぅ…結局前と変わっていないじゃありませんか……///」

カヴール「まぁまぁ…世の中が変わるには時間がかかりますから」

提督「…それに「変わらない良さ」って言うのもあるわよね♪」

ライモン「むぅぅ…説得力のある言い方ですが、どうも納得できませんね……」

提督「そうかしら……あ、そう言えばエレオノーラに姫の様子を聞くのを忘れたわ」

カヴール「そう言えばそうでしたね…もう一度電話をかけましょうか?」

提督「いいえ…あんまりかけるとエレオノーラの執務を邪魔することになるもの……駆逐艦や水雷艇、コルヴェットや魚雷艇の艦娘にいたずらするのが執務だって言うのならね」

ライモン「……提督がちゃんとした海軍士官でよかったです」

提督「…と思われるほど、エレオノーラは重度のロリコンなのよね……姫まであてられて幼女好きになったりしなければいいのだけど」

………

現在呉市内や江田島での人命救助や物資の補給等の辛い任務に追われる中での唯一の癒しです。ありがとうございます。

>>294 もしかして制服組の方でしょうか…安穏に過ごしている身からすると頭が上がりません。どうか無理はなさらずに……いずれにせよ、「癒し」と言って頂けて嬉しく思います…今後もスローではありますが、飽きずに投下していきます


…次は今夜か明日の夜になると思いますので、もしよかったらのぞいてみてください

…再びヴェネツィア第三鎮守府・百合姫提督の客室…

シモネッタ司令「……っくしゅっ!」

百合姫提督「あ、大丈夫ですか…ちり紙、いります?」

シモネッタ司令「あぁ、ありがとうございます…どうも空調が効きすぎているのかもしれませんね」甘いけれども爽やかな笑みを浮かべ、冗談めかしてぶるぶると凍える真似をするシモネッタ司令…

シリオ(スピカ級水雷艇「シリウス」)「ねぇ司令…しーれーい?」


(※スピカ級水雷艇…1930年代の軍縮条約時代に帝国海軍の「友鶴型」と同じような経緯で生まれた、駆逐艦並みの性能を目指した水雷艇。一本煙突・600トン前後のとても小さな船体に102ミリ単装砲3基、450ミリ魚雷4本を発射可能なように単装4基、単装2基・連装のセット、連装2基とバリエーションがある魚雷発射管、さらに艦尾には爆雷あるいは機雷を備え、甲板中央部のプラットフォーム上には20ミリや37ミリ対空機銃を搭載…公称速力34ノットで、駆逐艦としては小さすぎたが、護衛駆逐艦として船団護衛に活躍した。32隻建造)


百合姫提督「……分かります、訓練中に乗った護衛艦でもCICや通信室は寒いくらいで…よくひざ掛けを持って行ったりしましたから」(※CIC…コンバット・インフォメーション・センター。いわゆる戦闘指揮所)

シモネッタ司令「そうですよね、私も夏なのに厚手のタイツを履いて行ったりして……」

シリオ「……んもぅ…司令ってばぁ、シリオともお話してくれないとつまんないー!」

…英語が分からないので二人の会話に飽きてしまったシリオが、椅子に座っているシモネッタ司令のひざの上でじたばたと脚をばたつかせる……シリウスの光を宿したように明るくキラキラ光る瞳と、シモネッタ司令の趣味で選んだシンプルな丸襟のついたワンピースと白いサンダル、それにイタリア三色旗の色をしたリボンで結んだツインテールが揺れる……

シモネッタ司令「んふふっ♪…よーし、それじゃあ司令がシリオの事をいっぱいなでなでしちゃおーう♪」イタリア語に戻すとさっきまでの整った表情をにやけさせ、涼しげなサテンのワンピースに手を入れるなり脇腹やふとももをくすぐった…

シリオ「んっ、んふふっ…もう、くすぐったいよぉ///」

シモネッタ司令「んー…どこが一番くすぐったいのかなぁ?」

シリオ「ひゃうっ…あはははっ、ひぃ…もうらめらよぉ、んひゃぁぁっ///」

シモネッタ司令「それじゃあここはどうかしらぁ…ふふ、つるつるで柔らかぁ……い♪」ぷにっ…くちゅっ♪

シリオ「んひゃぁぁ…あっ、ん…んんぅ///」

シモネッタ司令「はぁはぁ…もう、シリオったら可愛い声を上げちゃって……♪」くにくにっ…ちゅぷ……っ♪

シリオ「はぁ、あぅ……んくぅ……しれ…ぇ///」

シモネッタ司令「んー、どうしたのかなぁ♪」

シリオ「はぁ…はぁ……なんだか、シリオね…あそこがじんじんして……火照ってきちゃったの…ぉ///」

シモネッタ司令「うんうん、それじゃあおねえちゃんと一緒にやらしいことしよっか……♪」

シリオ「…うん……しれぇ…シリオのここ……いっぱいくちゅくちゅして…ぇ///」

シモネッタ司令「んふふっ、もちろんっ♪……百合野准将、お話の途中で申し訳ありませんが…シリオが飽きてきてしまったそうなので、ちょっと相手をしてきます♪」英語に戻すと、さも何でもないような口調でそう言った…そのまま小学生にしか見えないシリオの手を優しく包み込むと、いやらしい笑みを隠しながら出て行った…

足柄「……あー、分からないようなフリはしておいたけれど、だいたい聞き取れちゃった…今日ほど自分の才能をうらめしく思ったことはないわよ」

百合姫提督「……ええ。イタリア語はあんまり分からないけれど…私にもだいたい想像がついたわ…///」

龍田「…ふぅ、カンピオーニ提督も相当だと思ってはいたけれど……ここの司令はちょっと度し難いくらいの変態ねぇ…」

百合姫提督「…こっちで言えば友鶴型くらいの水雷艇だものね…来訪初日から、私もちょっとおかしいなとは思っていたの」

足柄「そうよね……だってうちの国で言えば「菊の御紋」を付けられるような大型のフネがほとんどいないんだもの」

百合姫提督「そうね……かろうじて軽巡が数人と駆逐艦がいるだけで、あとは水雷艇、コルヴェットやMAS艇、MS艇(どちらも魚雷艇)、VAS艇(駆潜艇)の艦娘ばっかり…「沿岸の哨戒や対潜任務に便利な小型護衛艦艇を集めている」と言えばそれまでだけれど、それにしては度が過ぎた可愛がり方をしているな…って///」

足柄「あー…早くこの訪問期間が終わらないかしら……いい加減にしないとこっちまで幼女趣味に染まっちゃいそうよ…」

龍田「…戻って松型や丁型と顔を合わせたら変な気分になりそうねぇ……」


(※松・橘型…大戦末期、帝国海軍が初めて量産性と対空・対潜を主軸に置いた護衛駆逐艦的な駆逐艦。カタログデータは凡庸ながら実用性に優れ、機関のシフト配置などが功を奏し意外と頑丈でもあった。一部は中華民国に引き渡されたり、海上自衛隊の創設期を支えたりした功労艦)

(※丁型…海防艦。流麗ではあるが量産性を損なうダブルカーブを捨てた真っ直ぐな艦首のラインや六角形の煙突、対空機銃の基部を穴あき鉄板の一枚板にするなど量産性が最優先され、低速ではあったが測深儀や電探などの探知装置と強力な爆雷投射機、多くの25ミリ機銃を備えることで帝国海軍の中では優秀な対空・対潜能力を持っていた…松型と同じく一部は黎明期の海上自衛隊や海上保安庁に引き継がれ、長く活躍した艦もいる)


………

…とある日・深夜…

提督「ふぅ…もういい加減止めるとしましょう……」


…あとひと月もない程度に迫ってきた基地祭と、それまでに(鎮守府の枠が許す限り)みんな呼んでおきたいと連続していた建造…すると当然のように必要になる申請書や見積書、契約書や提出書類…それがだんだんと「未決」の箱の上に積み上がり、この数日はもはや危なっかしいくらいにかしいでいた…いくら面倒とはいえ、さすがに見てみぬふりも出来なくなった提督はそそくさと夕食を済ませると、ため息をつきつつ、溜まりにたまった書類の山を片づけにかかった……優しいライモンとカヴールを始め、みんな当然のような顔で何かしら手伝ってくれ、特に雄弁でならしていたチェザーレや文章の巧みな「オリアーニ」級のカルドゥッチは、申請理由などを大変上手に書いてくれた…


提督「もうこんな時間……はぁぁ、道理で肩がこるわけね…」数時間付き合ってもらって山をあらかた平らにすると、提督はライモンたちにお礼と「お休み」を言って帰ってもらい、残りをもくもくと片づけていた……ふと腕の時計を見ると針が深夜を回っていたので、提督はひとつ伸びをすると、残りの書類を箱に戻した……

提督「……お腹がすいたわ…」くぅぅ…と悲しげな音を立てるお腹を見おろすと、意を決して立ち上がった提督…


…食堂…

提督「あーあ、寝る前に物を食べると太るって分かっているのに……でもこのままじゃ寝つけないし、少しだけ…」


…食堂のテーブルには、待機室で深夜直につく艦娘や夜間・黎明哨戒を終えて戻ってくる艦娘たちの気持ちを和らげようと、常夜灯の薄明かり以外に燭台に灯ったキャンドルが揺らめき、疲れてお腹の空いた艦娘たちにはラップや蝿帳(※はいちょう…食器にかぶせる小さい蚊帳のようなもの)をかけて、ちょっとした軽食が置いてある……ディアナやエリトレアの作る心づくしの「お夜食」は、波しぶきを浴びてくたびれた艦娘に染みわたる美味しさで、黎明哨戒の終わる朝方にはたいてい綺麗さっぱりなくなっていて、お皿だけが流し台に置かれている……


提督「…美味しそう…でもこれは哨戒に行っているアルゴナウタたちの分だから、食べてはいけないわよね……」テーブルの上にある三角形のサンドウィッチを物欲しげに眺めてから、首を振って厨房に入りこんだ……

提督「うーん…何か食べるもの……」冷蔵庫の前にしゃがみこむと、ごそごそとラップがけしてあるお皿を取り出したり、入れ物のふたを開けてみたりする…

提督「あ…オイルサーディンがあるわ……それと確か食べきれなかったチーズがどこかに…」

提督「……クラッカーもあるわね…うん、なかなかいいじゃない」

提督「…ただのクラッカーだけでは火力不足…とはいえそこにバターを塗り、チーズとサーディンを乗せる……さらに粒マスタードの援護射撃があれば…」

提督「できたわ……クラッカーの「デンマーク風オープンサンドウィッチ」…ふふ♪」

…小皿に盛りつけられた四角いクラッカーにサーディンとチーズの端っこを乗せ、アクセントにマスタードとパセリを散らした…

提督「…とはいえ、さすがにクラッカー三枚だけでは物足りないわね…あ、パストラミハムの残り……レタスにバジル…オリーヴの瓶詰もあるわね…」適当なサラダボウルを取り出すとレタスを手でちぎり、そこにハムをロール状に丸めて並べ、オリーヴもいくつか乗せてバジルを散らした……

提督「うん…ハムとレタス、バジリコの簡単サラダ……この時間だもの、せめて野菜にしておかないと…」

提督「それでは…いただきます……♪」厨房の端に置いてあるストゥール(腰掛け)に座ると、ミルクと一緒に夜食をつまみ始めた……

提督「ん…おいしい……「空腹は最良のソースである」なんて、よく言ったものね…♪」

提督「…意外とレタスもしゃきしゃきしているわね……昨日の昼には出たはずなのに、あんまりしなびてないわ…んむ」

提督「クラッカー……ちょっと湿気ているけれど、それもまた愛嬌…それにサーディンの油が染みているから、なんてことないわよね……」

提督「パストラミハム…縁が乾きはじめているけれど、胡椒のピリッとした風味はまだまだ損なわれていないわね……あむっ…」

提督「……サラダに唐辛子入りのオリーヴオイルを垂らしたらどうかしら…?」ガラス瓶で漬けこんである唐辛子入りのオリーヴオイルを数滴垂らし、冷蔵庫の隅っこに入っていた半かけのレモンを軽く絞った…

提督「…ピリッとしているのに後味は辛くないし、すーっと爽やかな感じに仕上がったわね……今度ディアナにも教えてあげようかしら…」

提督「……ふぅ、美味しかった……後は口をゆすいで寝るだけね…」と、廊下から足音が近づいてきた……

提督「!」





グレイ提督「…あら、カンピオーニ提督。こんな時間にどうなさいました?」純白のシルクで出来たナイトガウンをまとい、ふわりと髪を下ろしているグレイ提督…

提督「いえ…その、ちょっとガスの元栓を閉めたかどうか気になったので……」

グレイ提督「あぁ、そうでしたか……ところで、口もとに食べ物のかけらがついておりますけれど」

提督「…っ!」

グレイ提督「ふふ、やはり夜食をお召し上がりになったのですね…♪」

提督「あっ…それじゃあもしかして今のは……///」

グレイ提督「ええ、少々フェイントをかけてみたのですが…図星だったようですわね?」

提督「……はい…どうか口外しないで下さいね…言えば間違いなくライモンに「寝る直前に食べちゃだめです」と怒られてしまうので……ところで、メアリはどうして食堂に?」

グレイ提督「ええ…実はわたくし、少々のどが乾いたのですが、部屋の冷蔵庫にあるミネラルウォーターを飲んでしまったのを失念しておりまして……こうして食堂まで人目を忍んできた…という訳ですわ」

提督「あー…ごめんなさい、たいていは艦娘たちが気を利かせてペットボトルや水差しのレモン水を補充しておいてくれるのですが……」

グレイ提督「構いませんわ。こうして薄暗い夜更けの食堂で何かを飲んだり食べたりするのも、童心に帰ったようで愉快ですもの…♪」ぼんやりとした間接照明のような常夜灯と、ろうそくの揺らめく灯りを頼りに厨房へ向かうグレイ提督……

提督「…灯りをつけましょうか?」

グレイ提督「ふふ、いけません……母親に見つかったのでない限り、灯りは消したままにしておかないと…そうでしょう?」

提督「ふふっ、メアリったら意外とお茶目ですね♪」

グレイ提督「わたくしも時にはそうした「お遊び」に興じてみたくなるのですわ……まぁ、危ない所でした」食堂の椅子に脚を引っかけ、少しバランスを崩した…

提督「……やっぱり灯りをつけないで歩くのは、ちょっと危ないかもしれませんね…あ♪」

グレイ提督「何か名案がございまして?」

提督「これで照らすなら問題ないと思いますが…どうでしょうか?」…テーブルの上に置かれた燭台を取り上げ、グレイ提督の足もとを照らした……

グレイ提督「ええ、これならよろしいですわ…♪」

提督「それでは、私が道を照らしますから」

グレイ提督「ふふ……フランチェスカがわたくしの灯台…という訳ですわね」

提督「そういう事ですね…さ、厨房につきましたよ♪」

グレイ提督「助かりましたわ……それと、勝手にいただいてしまってよろしいでしょうか?」

提督「ええ、好きなだけどうぞ?ミネラルウォーターの数本で傾くほど、鎮守府のお財布はさみしくありませんから♪」

グレイ提督「ふふ、それではなみなみと頂戴することといたしましょう……ふぅ、美味しゅうございました」

提督「それはよかったです…それじゃあ、艦娘の娘たちに見つからないよう戻りましょうか」

グレイ提督「そうすることにいたしましょう…」

提督「…ふふ、それじゃあ後は燭台をテーブルの上に戻して……っ!」三本がけの燭台をテーブルの上に戻そうとして傾けてしまい、冷めかけているとはいえまだ熱い蝋がぽたりと垂れた…

グレイ提督「あぁ、いけませんね…大丈夫ですか?」

提督「え、ええ…幸いそこまで熱くもありませんでした……ふー、ふーっ…」手の甲に垂れた蝋を剥がすと手を口もとに当て、それから息を吹きかけて冷やした…

グレイ提督「熱くなかったのなら幸いでした…火傷にはなりませんでしたか?」

提督「ええ。おかげさまで何ともなっていません……」

グレイ提督「そうですか……もしよろしければ、その燭台をお貸しいただけませんでしょうか」

提督「ええ、どうぞ……?」

グレイ提督「ふふ、ありがとうございます。ところでフランチェスカ……わたくし、一つ刺激的な考えを思いついたのですけれど…よろしければ左手を出していただけますか?」

提督「……あー、一応うかがっておきますが…ろうそくを使って私に何かするおつもり……ではないですよ…ね?」

グレイ提督「ふふっ…はて、何の事でしょう?」しらじらしくとぼけてみせるグレイ提督…が、口元には意地悪な笑みが浮かんでいる……

提督「…はぁ、分かりました……そのかわり私が夜食を食べたなんて言わないで下さいね?」

グレイ提督「もちろん、承知いたしておりますわ♪」

提督「…」

提督「…メアリ、まさか本当にろうそくを使おうなんて思っていませんよ……ね?」

グレイ提督「まぁ、どうして距離をお取りになるのですか…わたくしがフランチェスカに、痛い思いや怖い思いをさせたことがありまして?」じりっ…

提督「…痛い思いと怖い思いはありませんが、お尻のひりひりする思いと恥ずかしい思いはさせられましたね……///」すすっ…

グレイ提督「まあまあ…それもわたくしがフランチェスカを好ましく思っているからですわ」じりっ、じりっ…

提督「よくもまぁ、そうやって上手いことを…///」

グレイ提督「あら、わたくしの気持ちは純粋に誠実なものですわ……そう、イタリアの方で言うならマキアヴェリのように…ふふ♪」(※マキアヴェリ…「君主論」を書いたイタリアの策略家。権謀術数でならした)

提督「……まるっきりじゃありませんか」

グレイ提督「まぁそうおっしゃらず…わたくしが満足したらすぐ済みますわ、ね?」提督を壁に追い詰めると頬を軽く撫で上げ、イギリスの貴族女性の特技らしい無邪気な笑みを浮かべて見せた…

提督「はぁ…メアリにはかないませんね///」

グレイ提督「ふふ、優しいフランチェスカ…それでは、参りますわね♪」そっと提督の手を握ると、ネイルアーティストが爪にマニキュアをする時のように手の甲を向けさせた…それから期待に満ちた目で、傾けて持った燭台から蝋の垂れるのを見守った……

提督「……あつっ…!」最初の一瞬はとろりと柔らかいキャラメルのような感触だけでちっとも熱くないが、それから急に熱を感じた…蝋は一滴なのですぐに冷めて固まるが、それでも何とか火傷しない程度にしか冷めていない……

グレイ提督「しーっ……誰かに声を聞かれてしまっては、フランチェスカとしてもよろしくないでしょう?」

提督「ええ、まさかこんなことをしているなんて知られたら……みんながろうそくを持って寝室に押しかけてくるでしょうし、それを考えると少し怖いですね…」

グレイ提督「でしたらお静かになさらないといけませんわ?」

提督「あの、どうも私が悪いように聞こえますけれど……先に始めたのはメアリなんですよ?」

グレイ提督「ふふ…さ、もう一回参りましょう?」

提督「も、もう…///」裾の短い薄手のキャミソール一枚でいたが、恥ずかしげに腕を差しだした…

グレイ提督「ふふ、そこがよろしいのですね…では」ぽたり…♪

提督「んっ…///」

グレイ提督「はぁ…伏し目がちにしているフランチェスカ、何とも魅力的ですわね……んっ♪」

提督「んっ…あむっ……ちゅ///」

グレイ提督「ふふ、ミルクの味がしますのね……何といいましょうか「無垢な子供」を味にするとしたら、この味だと思いますわ」

提督「さっき夜食と一緒にミルクを飲んだので…んちゅっ///」

グレイ提督「んふっ……まぁまぁ、不意打ちとはずるいですわね♪」お仕置きとばかりに鎖骨に蝋をたらす…どちらかと言えばふくよかな提督は鎖骨が浮き出ていないので、蝋が一瞬だけ滑らかに胸元へと駆け下り、すぐに冷めて止まった……

提督「んんぅ…もう、メアリ……♪」薄いキャミソールの胸元を開くと、ずっしりした乳房をのぞかせた…

グレイ提督「あらあら、そんなところに垂らしてもよろしいのですか?」

提督「もう…何を今さら……熱いですが、意外と癖になりそうで…///」

グレイ提督「いけませんわね…わたくしはただお友達になろうとしただけですのに、訪問先の将官の方をそのような趣味に目覚めさせてしまうなど……もう止めにいたしましょう?」

提督「メアリ…お願いですから、もうちょっとだけ……こんな中途半端なままで終わらせないで///」

グレイ提督「ふむ…フランチェスカがそうおっしゃるのなら、わたくしとしてはいたし方ありませんわね?」ぽたぽた…っ♪

提督「あっ、あっ…熱いぃ♪」

グレイ提督「それはいけませんわ……すぐ冷やして差し上げますから、動かずにいらしてくださいね?」胸の谷間に垂れた蝋を爪の先で愛撫するように剥がし、それからゆっくりと胸元に顔を近づけて、舌で舐めあげた……同時に燭台を持っていない方の手で短いキャミソールの裾に手を入れ、ゆっくり丁寧にふとももをさすった…

提督「はぁ、ん…んくぅ……んちゅっ、ちゅぅ♪」


…同じ頃・ドイツ艦の客室…

ビスマルク「……眠れない」

ティルピッツ「すぅ…すぅ……むにゃ…トップ艦長…」(※カール・トップ大佐…ティルピッツ初代艦長)

ビスマルク「こうして見ると我が妹ながら可愛いものだ……が、いつまでもこうしていては明日に差しつかえてしまう…」

…不眠症に悩まされていたというビスマルクの性質を受け継いだのか、なかなか寝付けないまま椅子に腰かけ、すやすやと寝息を立てているティルピッツの頭を撫ででいるビスマルク…睡眠薬の錠剤を取り出し飲もうとしたが、ペットボトルのミネラルウォーターがないことに気が付いた……

ビスマルク「しまったな……かといってレモン水で薬を飲むのはいかん」処方薬の袋とレモン水の入った水差しを交互に眺め、それから一つため息をついて立ち上がった…

ビスマルク「この時間ならだれもおるまい…」

…廊下…

ビスマルク「……それにしても、昼間の騒がしさが嘘のようだな…ん?」

提督の声「……って……メアリ…」

グレイ提督の声「……ですものね……」

ビスマルク「…カンピオーニ提督にグレイ提督だと?……こんな時間に食堂でいったい何を…まさか…」

グレイ提督(想像)「……ふふ、わたくしに協力してドイツを裏切って下されば、何でも欲しいものをさしあげますことよ?」ちゅっ♪

提督(想像)「あんっ…それじゃあドイツは見限ることにしまーす♪」

ビスマルク「…ありうる。イタ公め、また裏切る気だな…これはフレガッテンカピタン(中佐)のためにも、様子をのぞいておかね…ば……!?」ドアの隙間からのぞきこみ、途端に真っ赤になるビスマルク…

提督「あっ、あっ……はぁぁ…んっ///」

グレイ提督「今度はどこにいたしましょうかしら……ふともも、うなじ…それともお腹に?」

提督「んっ……んぅぅ…メアリ、背中に垂らして…♪」壁に片手をついてヒップを突きだし、なまめかしいくらいに甘い声で誘う…

グレイ提督「ふふ、承知いたしましたわ…」ぽたぽた…っ♪

提督「あっ、あぁっ……♪」

グレイ提督「あら、ごめんなさいね…少し手が滑ってしまいましたの♪」

提督「…もう、メアリのいじわる♪」

グレイ提督「申し訳ありませんわ…ですがその丸っこいヒップを見たら、つい…♪」

提督「ねぇ、メアリ…」

グレイ提督「なんでしょう?」

提督「好きよ……それにしてもメアリったら、お屋敷でもこんなことをしているの?」片手で自分の濡れた花芯をかき回しつつ、いたずらっぽく聞いた…

グレイ提督「ええ、わたくしの家のメイドはみんな手籠めにしてしまいましたから…♪」上品な笑みを口もとに浮かべ、際どい冗談を返す…

提督「そうだろうと思いました…ふふ、それでもメアリが好き♪」ねっとりと蜜のついた手をグレイ提督の手に重ねると、濡れた秘部に誘導する提督…

グレイ提督「嬉しいお言葉です。わたくしも、フランチェスカが愛おしいですわ」くちゅくちゅ…ぅっ♪

提督「あっ、ん……メアリったら、港ごとにそうやってささやく相手がいるくせに…んっ、あぁっ♪」とろ…っ♪

グレイ提督「ふふ、タラントではフランチェスカ…あなただけですわ」

提督「なら仕方ないわ、許してあげま……あっ、あぁぁっ♪」

グレイ提督「ふふ、お間違えにならないでね?……許すのはフランチェスカではなくて、わたくしですわ♪」ぽたぽた…っ♪

提督「あっ、あっ…熱いっ……んんぅ♪」

グレイ提督「お分かりになりまして?」

提督「…いいえ。なのでもっと教えてください♪」

グレイ提督「ふふ……では、わたくしにも「イタリア流」を教えて下さいまし…ね?」

提督「ええ、もちろん……ちゅぅぅっ、あむっ…ちゅっ…♪」

ビスマルク「…ますます寝つけなくなったな……///」

できれば目隠しもしてほしい

提督「んっ…ちゅっ……はぁ…っ……///」

グレイ提督「ん…ちゅぅ……ふふ、そう焦らずに……わたくしは逃げませんわ」ぽたっ♪…舌を絡めてねちっこいキスをねだる提督を軽く突き放すと、上品な含み笑いを浮かべつつ軽蔑するような目で見おろし、見せつけるようにゆっくり蝋を垂らす……

提督「あっ、ひぅぅ…♪」

グレイ提督「…わたくしもこれまで執務室でクラゲを飼っていたり、古代ギリシャ語で日誌を書いたりと、風変りな提督たちと知り合ってまいりましたけれど……フランチェスカのような提督は初めてですわ」ぽたっ…ぽたぽたっ♪

提督「はひぃぃ…だって……♪」

グレイ提督「ふふ…そんなにとろけたような顔をされては、わたくしだって我慢のしようがありませんわね……目をつむって下さいな♪」しゅるり…とナイトガウンの帯をほどくと、手際よく提督の目元に巻きつけた…

提督「あっ……もう、また目隠しですか///」

グレイ提督「ええ、フランチェスカの金色の瞳はわたくしをおかしくしそうですから…さて、どこに垂らすか想像しながら愉しんで下さいましね?」

提督「もう、メアリの変態…っ///」

グレイ提督「そうしむけたのは貴女ですわ…フランチェスカ♪」しゃがみこむと耳元でささやいた…

提督「あっ、あぁ…んっ♪」

グレイ提督「あら、こんなに食堂の床を濡らしてしまって……いけませんわね?」目隠ししたまま提督を椅子に座らせると、ナイトガウンの裾をたくし上げてまたがった…

提督「あ、あぁ……メアリ…やっぱり甘くていい匂いがします……///」

グレイ提督「ふふ…このあいだ貴女にそう言われてから、わたくしもこの香水が気に入っておりますの……さ、動きますわね?」

提督「はぁ…んぅぅっ♪」

グレイ提督「はぁ…はぁ……これでよろしい?」提督のずっしりと大きな胸に形のいい小ぶりな胸を擦りつけ、ねっとりと濡れた提督のクリーム色をしたふとももに、真っ白な肌を重ねる…

提督「ええ、ええ…とっても、気持ちいいです……はぁぁっ♪」

グレイ提督「それは……よかったですわ…わたくしはフランチェスカと違って…ふぅ……こういう経験が豊富ではありませんから」ぽたぽた…っ♪

提督「あっ、あぁっ…私だって……んくぅ…そんな、はしたない女じゃありませ……んぅぅ♪」

グレイ提督「ふふ、ご冗談を…♪」ぽたっ…♪

提督「だって…ぇ……私は好きな女性(ひと)としか…しませんから…ぁっ♪」

グレイ提督「まぁ、お上手…これだけ聞くと、わたくしだけを本気で愛してくれているものと誤解してしまいそうですわ///」くちゅ…ぐちゅっ♪

提督「はひっ…んっ、ひぃぃ…♪」

グレイ提督「んっ、んっ、んぅっ……ふぅ、ふぅ…///」

提督「んぅぅ、メアリ…♪」悩ましげな声を上げる提督…

グレイ提督「ふぅぅ……まだして欲しいのですか?」

提督「ええ…だってメアリの身体…ひんやりしていていい気持ち……♪」

グレイ提督「あいにくですが、わたくしはフランチェスカの抱き枕ではありませんわ……さ、そろそろ夜もふけます。部屋に戻りましょう?」

提督「んふふっ、いやです……もうちょっとだけ…♪」

グレイ提督「わがままですわね…それではわたくしは戻りますから、後は一人でお愉しみになって?」花芯にくちゅりと指を差しいれて提督がひくついている間に、背中に回されている両腕をどけて立ち上がった…

提督「あ、メアリ……行かないで?」

グレイ提督「それではお休みなさい。ごきげんよう♪」

提督「えっ、ちょっと…本当に待って下さい、目隠しが解けないんです……」イギリス海軍ならではの複雑かつ見事な結び方で結ばれた帯は、ほどこうとしてもたやすく解くことができない……

グレイ提督「…♪」少し離れた場所に立って、おろおろしている提督を眺めている…

提督「メアリ…本当に行っちゃったの?」仕方なく目隠しをされたままあちこちに手を差しだしてみては、触れたものを手がかりにして危なっかしくふらふらと歩きだした…

グレイ提督「…」(ふぅ…これではいやらしい気分になってしまうのも無理ありませんわね……)

提督「えぇ…と、これがテーブル……痛っ…」椅子にけつまずき、壁にぶつかりながら一歩づつ進む提督……短いキャミソールからのぞくふとももから愛蜜をとろりと滴らせ、内股になって膝をがくがくさせながら歩いている…

グレイ提督「…」つかず離れずの距離で、提督の後ろからついて行くグレイ提督…色々と「役に立った」燭台はテーブルの上に戻し、火事にならないようちゃんと台の安定も確かめる……

提督「あいたっ…もう、こうなったら仕方ないわね」何回か壁にぶつかって、とうとうまともに歩くことをあきらめて四つん這いになった……

グレイ提督「…」後ろからだと、めくれ上がったキャミソールからむちむちのヒップが揺れるのがよく見える…意地の悪い笑みを浮かべると、足音を立てずに後ろからついて行くグレイ提督……

提督「…誰かに見つかったらどう言い訳しようかしら……っ!?」

…四つん這いのままどうにか階段を上り、廊下で息をつく提督…と、廊下の先でドアの開く音がする……慌てて双アーチ状の中央階段を見おろす廊下の踊り場(テラス)に飾ってある「ベネデット・ブリン海相」の像に身を隠す…が、豊満な身体の提督が小ぶりな胸像の台座に隠れられるわけもなく、身体の半分以上がばっちりのぞいている…

ニコロソ・ダ・レッコ(ニコ)「…ふわぁ……暑いからって冷たいものをがぶ飲みするものじゃないね…お手洗いが近くなっていけな……い?」ほとんど下半身丸出しのまま目隠しをされ、明らかに小さい隠れ場所に身を隠そうとしている提督と、その後ろに立ってからかうような笑みを浮かべているグレイ提督……

グレイ提督「…」(しーっ…気付かなかったふりでお願いしますわ)…提督の数歩後ろに立っていたが、そっと唇に人差し指を当てると意味深な笑みを浮かべた

ニコ「…あっ……ふわぁぁ、眠いな…ぁ///」

グレイ提督「♪」

提督「ふー、あの声はニコみたいね……どうにか気づかれずに済んだけれど…」ふとももがこすれるたびに「にちゅっ…」といやらしい水音をさせつつ、手探りで執務室のドアを探す…

提督「たぶんここね……でも、間違っていたらどうしようかしら…///」そう言っているそばから部屋を間違えている提督…

グレイ提督「……その時はわたくしが部屋にお連れいたしますわ♪」後ろから抱きつくとそっと口もとをふさいで、耳元にささやく…

提督「…むぐ…っ!?」

グレイ提督「しーっ……わたくしがフランチェスカを見はなして行ってしまう訳がないではありませんか♪」

提督「むぅぅ…もがもが……」

グレイ提督「大きい声を出してはいけませんわ…さあ、立って?」ほっそりした手で口を覆ったまま提督を立ち上がらせると、後ろから張りつくように抱き着き、そのまま執務室に入りこんだ……

…提督寝室…

提督「もうっ、メアリのいじわるっ///」やっと目隠しを解いてもらい、頬を赤らめつつも文句を言う提督……

グレイ提督「ふふ…楽しかったでしょう、何しろこんなに濡らしておりますものね?」くちゅっ…♪

提督「あんっ、だって…///」ふとももをもじもじとこすり合わせて、顔を伏せると上目づかいでグレイ提督を見る…

グレイ提督「わたくしもフランチェスカに悦んで頂けて何よりですわ……見つかりそうになって秘所を濡らしてしまうほどの、いやらしい方だとは思いませんでしたが…♪」

提督「でも…メアリがしむけたくせに///」

グレイ提督「ふふ、面白かったですわ」

提督「むぅぅ……ねぇ、メアリ」

グレイ提督「何でしょうか」

提督「…明け方まではまだ数時間あるわ///」

グレイ提督「ええ、そのようですわね。それで?」

提督「……どうしたいか私に言わせるの?」

グレイ提督「ええ、あいにくとわたくしには分かりかねますから…どうぞおっしゃってみて?」

提督「むぅぅ、メアリのいじわる…お高くとまった底意地の悪い……冷血なすまし屋の…」

グレイ提督「まぁまぁ…イタリア人だけあってよく舌が回りますこと」

提督「……けちな貴族のお嬢さまの……愛しい人♪」んちゅぅ…っ♪

グレイ提督「きゃ…っ♪」

提督「今度は私の番よ……もう「ゴメンなさい」って言っても朝までは許してあげないから♪」グレイ提督をベッドに押し倒すと上にまたがり、舌なめずりする提督……月夜に金色の瞳が反射してらんらんと光っている…

グレイ提督「まぁ、怖い…♪」

提督「その余裕ぶったすまし顔も、いまに甘ったるいとろっとろの表情にしてあげますからっ……んくぅ…っ♪」くちゅっ、ぐちゅり…っ♪

グレイ提督「あぁ…っ、んんぅ……なんとも…んふぅ…激しいですわ……ね///」

提督「んふふっ、もうそんなことを言って……あと三時間はありますから、頑張って耐えてね…メアリ♪」

グレイ提督「んぅ、んっ……あっ、あぁぁ…///」

………

…という訳で >>302 の方のリクエストにお答えし、目隠しプレイなどを加えてグレイ提督×提督などしてみました…いかがだったでしょうか?


…この後はそろそろ建造に取りかかり、前回の建造で加わった「ペルラ」級中型潜の艦娘紹介もまとめて投下していきたいと思っています



……そう言えば7月14日はフランス革命の記念日(パリ祭)ということで、特にフランス人でもないのですが(連休と言うこともあり)フランボワーズのケーキをいただきました…大変美味しく、まさに「幸福な砂糖生活(ハッピーシュガーライフ)」でした(…すみません、言いたかっただけです)

…明け方…

アルゴ(「アルゴ」級中型潜)「あー、疲れた!…金羊毛を取りに行くほどじゃないけれど、黎明哨戒は気を使うわよね」

…ギリシャ神話に出てくる金羊毛を求めたイアーソーンの船「アルゴー号」が由来のアルゴ…それだけに女神ヘーラー(ユーノー)が授けてアルゴー号の船首についていたという「未来を予知する柏の枝」を髪飾りに差し、一方の肩からは金羊毛のようなケープを垂らしている…

ヴェレラ(アルゴ級「カツオノカンムリ」)「ですね……私も食堂でちょっとお夜食をつまんだら、ひと眠り……♪」…こちらは帆を兼ねた浮き袋で海面近くをふわふわと漂うクラゲの一種「カツオノカンムリ」らしく、青いシースルーのベビードールにクリアブルーのカチューシャを身に付け、ゆったりした口調で話す…

アルゴナウタ(「アルゴナウタ」級中型潜)「本当にね。でもアルゴを見てるといつだって乗りたくなっちゃう……後でお邪魔させてよ?」…イタリアではイカの一種の名前だと言うが、同時に「アルゴ号」の乗員になったギリシャの英雄豪傑たち…それから転じて「勇敢な者」という意味もあるアルゴナウタ…当然アルゴとはいつでも乗ったり乗られたりの仲…

フィザリア(アルゴナウタ級「カツオノエボシ」)「ふふっ、それじゃあ私も誰かお魚さんの名前がついている娘の所にお邪魔させてもらわなきゃ…♪」魚を餌食にする猛毒のクラゲ「カツオノエボシ」だけあって、魚類の名前がついている艦娘は容赦なくむさぼって、しゃぶりつくしている…

ナイアーデ(中型潜シレーナ級「水の精」)「全く悪い娘ばかりですね?」

ネレイーデ(シレーナ級「海の精」)「本当にそうね…アンフィトリテがここにいたらうんと叱られているところよ」(※アンフィトリテ…海神ポセイドンの妻。シレーナ級の一隻にある)

アルゴ「まぁまぁ…それよりディアナの夜食をいただきましょうよ、ビリの娘には空のお皿だけだからねっ!」

アルゴナウタ「もう…乗り手を置いていくなんてダメな船♪」

アルゴ「ふーんだ、そういうことを言うなら二度と乗せてあげないから…!」

ナイアーデ「もう…まだ夜明け前なんですから静かにしません……と?」

ネレイーデ「どうしたの?」

ナイアーデ「いえ、何だか床に水が垂れて……?」

ネレイーデ「まぁ、本当に…ってナイアーデ、これ……///」提督が滴らせた愛蜜がぽたぽたと垂れている…

ナイアーデ「えっ…あぁ///」

ネレイーデ「ちょっと雑巾を取ってきます…全く、どこのどなたか知りませんけど……なにも食堂でしなくたって///」

アルゴナウタ「どうかしたの?」

ナイアーデ「いえ、別に…」

アルゴナウタ「ふぅーん…あっ、今日の夜食も美味しそう!」

………



…朝方・ビスマルクたちの客室…

ティルピッツ「もう……起きて下さい、姉上!」

ヴァイス提督「シャイス(くそっ)、このところ出撃もないからたるんでるな…こら、起きないか!」

ビスマルク「ぐぅ……すぅ…」

ヴァイス提督「まったく、だらしない……イタリアの連中よりねぼすけでは、何のための規律なのか分からんではないか!」

ティルピッツ「申し訳ありません、中佐…いつもは睡眠薬を飲んだらきっちり七時間後には目を覚ますのですが、昨日は飲んだ時間が遅かったのかもしれません…」

ヴァイス提督「別にティルピッツを責めているわけではない…このだらしないのを起こそうとしているだけだ」

提督「お邪魔します…ヴァイス提督、どうかしたのですか?」

ヴァイス提督「あっ、カンピオーニ少将…いえ……それが///」

提督「あら、ビスマルクがこの時間まで寝ているなんて珍しいですね……ふふ、いつもの引き締まった表情も凛々しいですが、柔らかな寝顔も可愛らしいですね♪」

ティルピッツ「そうですね。姉上は起きている時こそちょっと近寄りがたいですが、寝ている時はエンゲル(天使)みたいなんです」

ヴァイス提督「……こら、余計な事を言うな…っ!」ティルピッツを小声でたしなめる…

提督「いえいえ。普段は厳格な姉の無邪気な寝姿なんて、何とも微笑ましいものですから…ティルピッツの気持ちもよく分かりますよ…ね、ティルピッツ?」

ティルピッツ「は。そうして直接言われると恥ずかしいものがありますが……///」

ヴァイス提督「とにかく揺さぶっても声を張りあげても起きないので……恥ずかしい所をお目にかけました」

提督「まぁまぁ…これがメアリだったら事あるごとにこのことを持ち出してくるでしょうが、私はそんなことしませんから♪」

ヴァイス提督「ダンケシェーン…///」

提督「お気になさらず。とりあえず起こす手段を考えてみましょう♪」

提督「それじゃあまずは…と」客室に置いてあるCDラジカセを開けて、音楽CDをセットする…

ヴァイス提督「…失礼ですが、音楽くらいで目を覚ますようなビスマルクではないかと」

提督「ふふ、この曲なら分かりませんよ?」音量を大きくしてから耳をふさいだ…途端にワーグナーの交響曲「ニーベルンゲンの指環」から、一番の有名どころである「ワルキューレの騎行」が大音量で流れる…

ティルピッツ「お、おぉぉ…!」

提督「やっぱりビスマルクを起こすならこの曲でしょう…!」

ビスマルク「ぐぅ…」

提督「…」肩をすくめて曲を止める…

ヴァイス提督「……申し訳ありません。こうなったら冷水でも浴びせかけるか「警報!」とでも叫んで…」

提督「まぁまぁ…まだ手段はあります」

ヴァイス提督「まだありますか」

提督「はい、ちょっと失礼して……グーテンモルゲン、フロイライン(お嬢さん)♪」ベッドに近寄り、唇にそっとキスをする…

ビスマルク「んんぅ…んぅぅ……」

ティルピッツ「何だかうなされているような表情になりましたが…」

提督「むぅ…白雪姫はこれでも起きてくれませんか……」

ヴァイス提督「もう結構です、カンピオーニ提督。これ以上お手を煩わすわけには行きません……ティルピッツ、バケツに冷水を。シュネル(急げ)!」

ティルピッツ「ヤヴォール!」

提督「わわっ、もうちょっとだけ待ってください…!」

ヴァイス提督「しかし、すでに六分以上も貴重な時間を無駄にさせておりますし…後はもう実力行使あるのみ……!」

提督「ヴァイス提督、お願いですから……あと一つだけ「ドイツ人には絶対効果がある」…はずの手段があるので」

ヴァイス提督「そんな手段があるのですか?」

提督「え、ええ…私も聞いたことがあるだけで、試すのは初めてですが……」

ヴァイス提督「それは多少不安ですが…どうぞ試してみてください」

提督「ええ、それでは……カルトッフェル…♪」耳元でささやいた提督…(※Kartoffel…ジャガイモ)

ビスマルク「なにっ!」

提督「ふふっ、効果がありました♪」

ヴァイス提督「…」

ティルピッツ「うーん…ドイツ人と言うだけでジャガイモに反応すると思われるのは複雑ですが……」

ビスマルク「今、誰かジャガイモがどうとか言わなかったか!?」

ヴァイス提督「ダンケシェーン、カンピオーニ提督……ビスマルク、今が一体何時だと思っているのか!」

ビスマルク「ぐっ…しかしそれは昨夜……///」(まさかあんな場面をのぞいたとは、口が裂けても言えん…!)

ヴァイス提督「言い訳するなっ!…ドイツ艦の代表としてはるばるヴィルヘルムスハーフェンから派遣されたのは、イタリアでのんきに休暇を過ごすためではない!」

提督「あー…それではまた後で♪」

ヴァイス提督「はっ…まったく、訓練が少ないからとはいえたるんでいる……トレーニングに追加して腕立て三十回、腹筋三十回を課す!」

提督「…ヴァイス提督ったら、あんなにビスマルクを叱りつけて……でも理不尽な事で怒らないのはさすがよね♪」

…しばらくして・工作室…

提督「さてと…準備はいい?」

アスカーリ(ソルダティ級駆逐艦「植民地兵」)「んだ、いつでもええだよ」紅い房付きのトルコ帽をかぶっている「アスカーリ」…訛りはきついが、鎮守府の面々はもう慣れっこになっている

トゥルケーゼ(ペルラ級中型潜「トルコ石」)「私もいいですよ」…不透明な水色が美しいトルコ石のアクセサリーを随所にまとい、水色の瞳をキラキラさせている「トゥルケーゼ」……アラビア風のエキゾチックな腕輪やネックレスが魅力的な顔をさらに引き立てている…

提督「よろしい、それじゃあ建造しましょうか♪」

ライモン「今回は大勢になりそうですし、後でそれぞれのお部屋を上手く割り振らないと……」

カヴール「ふふ、にぎやかでよろしいではありませんか♪」

フィリッポ・コリドーニ(ブラガディン級中型潜)「そうですね、私も写真とメモの準備は出来ています…いかがですか提督、今のお気持ちは!」

提督「ふふ、もちろん嬉しいわ♪」

コリドーニ「なるほど「夜の相手をしてくれる若い娘が増えるので嬉しい」……と」

提督「…私がそんなことを言った?」

コリドーニ「違いますか?」

提督「んふふっ…半分は正解♪」

ライモン「…て・い・と・く?」

提督「あー…今のはちょっとした冗談よ、コリドーニ」

コリドーニ「分かりました…提督は「ライモンドに頭が上がらないので明言は避けたい」とコメント…っと♪」

ライモン「…」

提督「……それじゃあ始めるわね、トーレ…ドゥーエ…ウーノ……建造開始っ♪」

…建造中…

提督「さてと、これであと……」

ヴァイス提督「三時間十六分は時間があります」腕のクロノメーターを眺めて言った

提督「あら、どうも……相変わらず正確ですね♪」

ヴァイス提督「いえ、海軍軍人として必要な素質かと」

提督「ふふっ、そうですね…ではその間にちょっとお茶でも……」提督も腕にはステンレス製のかっちりした防水腕時計を付けていて、そこだけは立派な海軍士官らしい…

ヴァイス提督「あの…よかったらこの時間を使って、戦術について講義してくれませんか」

提督「あ、あー……それもそうですね…」お茶の時間がフイになりそうで、露骨にがっかりしている提督…

ヴァイス提督「あ、いえ…別にここでお茶をいただきながらで構いませんので……」

提督「そうですか…ライモン、ティーセットの準備をお願い♪」

ライモン「まったくもう。朝食を食べた直後なのに、今度はお菓子ですか」

提督「いいじゃない、頭を使うには糖分が欠かせないのよ?」

ライモン「はい、分かりました……まぁわたしもお相伴にあずかっている手前、あんまりがみがみ言いませんが…」

トゥルケーゼ「ちょっと最近の提督はふくよかすぎる…かもしれないですね♪」

提督「だって……ご飯もお菓子も美味しいんだもの///」

ライモン「ふぅ…駄々っ子じゃないんですから、しっかり自制して下さい」

提督「はぁーい…以後気を付けます……」

ヴァイス提督「…後で我が方の使っているカロリー計算表でもお貸ししましょうか?」

提督「いえ、お気持ちだけで結構です♪」

ライモン「…」

………

…三時間後…

ヴァイス提督「……しかしこの状況下と距離で主砲の斉射を行っても、命中率は良くて五パーセント…散布界の狭いイタリア巡洋艦の主砲であればなおの事…にもかかわらずここで斉射を行う理由が見当たりません……なぜ一万メートルを切ってから砲撃しなかったのですか?」

提督「はぁ、はぁ…えーと…この状況下で斉射を行ったのは、味方の駆逐隊に「友軍が到着した」事を知らせる目的と深海側の攻撃を集中させないための「存在アピール」…と同時に、深海側の集中を少しでも途切れさせようという意味でありまして……ふぅ…」

ライモン「…提督…以前の作戦推移の図を前に、ずっと講義させられていますね……」

カヴール「どんな機動にも理由がないと納得しない理詰めのヴァイス司令…納得させるのは大変そうですね?」

トゥルケーゼ「確かに…それにしても三時間の間、ずっと質問とは大したものです」

ヴァイス提督「……ではここ…1302時の旗艦「トレント」が取った取り舵いっぱいの意味は何でしょうか」

提督「あー…その時深海側の駆逐艦が突っかけてきていたので、雷撃を予測しての回頭ですね」

ヴァイス提督「なるほど、理解しました……では次に…と言いたかったのですが、あと五分あまりで建造が完了しますね。ダンケシェーン、カンピオーニ提督」

提督「ビッテシェーン……はぁ、疲れたわ…」くたくたと椅子に座り込む提督…

ライモン「提督、お茶です」

提督「ありがと……こくっ、こくん…っ」砂糖がたっぷり入ったぬるめのミルクティーを飲み干し、額の汗を拭った…

カヴール「さ、提督…裾に埃がついておりますよ?」椅子から立たせると白い夏季制服の裾を軽くはたき、襟元を直したりタイの結び目を整えたりしている…

提督「グラツィエ……ふぅ、何はともあれもうそろそろね…♪」

グレイ提督「…そうですか。それならわたくしも、ちょうど良いタイミングにお伺いすることができたわけですわね?」…タイミングを合わせたようにやってきたグレイ提督はいかにも「夏のイギリス海軍」らしい、裾を折り返した白い半ズボンにひざ丈のソックス、階級章付きの白い半袖シャツを着ている…

提督「ええ♪」

エリザベス「わたくしエリザベスも、またしてもにぎやかしの……いえ優れた戦力が増えることに、お慶びを申し上げさせていただきます♪」

エメラルド「おめでとうございます。カンピオーニ提督」

提督「どうもありがとう……さぁ、カウンターがゼロになったわ♪」


…相変わらずのまばゆい青い光が消えると、いつもは新着の艦娘が列になって並んでいる…のだが、今回はその数が異様に多く、建造施設の「ド○ター・フーの電話ボックス」から、物理法則を無視したようにぞろぞろと出てくる…全員が出てきて二列に整列すると、工作室が人いきれでむんむんするほどの人数になってひしめき合っている……今回の艦娘は、背の高さが中学生くらいですっきりとした目鼻立ち…少し日に焼けた淡い小麦色の肌と、アフリカ風の飾り物やエチオピア風の帽子をかぶっていたりする……中でも二人は両脇にSLC格納筒をマウントしていて、黒いウェットスーツが滑らかな身体のラインをくっきりと浮き上がらせている……


グレイ提督「まぁ、あの小さな建造施設から次々と……まるで「オースチン・ミニに何人乗れるか」のギネス記録ですわね?」

ライモン「……ずいぶんたくさんいますね」

カヴール「ふふ、何とも可愛い娘たちです♪」

提督「ボンジョルノ…私がここの司令を務めているカンピオーニです。とりあえず自己紹介をお願い♪」ぎゅう詰めで並んでいる艦娘たちを前に、視線をどこに向けるべきか困惑している提督……とりあえずネームシップらしい一人に声をかけて、えくぼを浮かべてにっこりした…




艦娘「では自己紹介をさせてもらいます。中型潜水艦「アデュア」級のアデュアです、どうぞよろしく…♪」敬礼を交わすと、提督の手の甲に軽くキスした…

提督「ようこそ、タラント第六へ……えーと、どうかしたの?」…どういう訳か隣に立っている艦娘は指でふとももを叩いたり、貧乏ゆすりしたりとそわそわしていて落ち着かない……

艦娘「ボンジョルノ、提督。アデュア級の「アラジ」です♪……大戦中はイタリア潜で一番出撃したんだけれど、そのせいか…なんだか動かないでいると落ち着かなくって///」ショートカット姿で活発そうな「アラジ」は濃い灰色の競泳水着風の格好で、裾の辺りには流麗な字体で「55」のナンバーが白抜きでレタリングされている…

提督「ふふ、それでなのね…ここは出撃の回数は少ないから、スポーツや何かで発散してくれればと思うわ♪」

アラジ「グラツィエ、提督♪」にっこりと歯を見せて笑みを浮かべた

艦娘「初めまして、アデュア級「アラダム」です…どうぞよろしくです♪」

提督「…ええ♪」左右の頬にキスをされた瞬間、ふっと太陽と潮の香りがした……アデュア級の艦娘たちに色白の娘は少なく、みんな浅い小麦色だったりうっすらと褐色だったり、カスタードのようなクリーム色をしていて、髪も金色やグレイより濃い褐色や金茶色、黒髪が目立つ…

艦娘「アデュア級、「アシアンギ」です…どーぞよろしく、てーとく///」

提督「はい、よろしくね♪」訛もあるらしいアデュア級の艦娘「アシアンギ」は緊張したのか、少しカタコトで挨拶してくれた…

艦娘「私はアデュア級の「アクスム」よ。よろしくね、提督さん♪」

提督「ええ、よろしく♪」

アクスム「ちなみにペデスタル船団攻撃では「デジエ」と一緒に大活躍だったわ……ね、デジエ♪」ぎゅっと指を絡めて手を握る…

艦娘「そうだね、アクスム…チャオ、提督。私がアデュア級の「デジエ」です…よろしく♪」

提督「よろしくね、デジエ……二人とも再会できてよかったわね?」

デジエ「ええ…久しぶりだね、アクスム♪」ちゅ…っ♪

アクスム「ふふ、また二人で出撃しようね?」

デジエ「ん♪」

艦娘「相変わらず二人はベタベタして……アデュア級「ベイルル」です///」

提督「よろしくね、ベイルル…♪」

ベイルル「はい」

艦娘「ボンジョルノ、提督。艦娘「ダガブール」です♪」

提督「よろしく♪」

艦娘「初めまして、アデュア級中型潜「ドゥルボ」です…よろしくお願いします」

提督「ええ、よろしくね…ちゅっ♪」…提督が前列の娘たちと挨拶を終えて後列の艦娘の前に立つと、例の人間魚雷「SLC」格納筒を持った二人が並んでいる……

提督「初めまして…えーと、あなたが「シーレ」かしら?」

艦娘「はい、アデュア級中型潜「シーレ」です……アレクサンドリアやジブラルタルではドカンと派手にお見舞いしてやって、しかもあのデ・ラ・ペンヌ大尉もお乗せしたんです♪」ゴムのウェットスーツがぴっちり身体に張りつき、滑らかなお腹のラインや小ぶりで引き締まった乳房、あそこの割れ目がくっきりと浮きだしている……背中にはアクアラング用の酸素ボンベを背負い、片手には外した足ヒレ…そして腕には戦中イタリアで最高の軍用ダイバーウォッチだった「パネライ」をはめている…


エリザベス「……シーレ、でございますか…」

シーレ「ん…提督、この大きいお姉さんは?」

提督「こちらはイギリス海軍の艦娘「クィーン・エリザベス」よ……ふふ、シーレは良く知っているわよね♪」

シーレ「あー……ふふ、久しぶり…エリザベスお姉ちゃ…ん♪」にたりと笑うといやらしい手つきでお尻を撫で上げる…

エリザベス「…んっ…お、おやめなさい……///」

シーレ「ふふ、エリザベスおねえちゃん…ここが弱いのは相変わらずなのかな?」

エリザベス「んくっ…いっ……///」

提督「まぁまぁ、今はその辺にしてあげて…ね♪」

シーレ「ふふっ…了解♪」


提督「シーレがこっちの娘だったということは……あなたがゴンダール?」

ゴンダール「はい、私がゴンダールです……あの時はシーレみたいに活躍は出来ませんでしたけど、今度は負けないよう頑張ります♪」

提督「ええ、私もゴンダールが活躍できるよう応援するわ」

ゴンダール「グラツィエ///」

艦娘「…私がラフォーレです、どうぞお見知りおきを♪」

提督「ええ、初めまして」

…さっきから続けざまに挨拶のキスを交わし、左右のほっぺたに唇の感覚が染みつきそうでいる提督……それぞれ唇が薄かったり柔らかだったり、しっとりと艶やかだったり、塩気を感じる少し荒れた唇だったり…とさまざまだったが、顔立ちも似ている姉妹艦だけあって、やはり雰囲気は似ている…

艦娘「アデュア級「マカレ」です、よろしくー♪」

提督「はぁい、よろしくね♪」

艦娘「初めまして、提督。アデュア級中型潜「ネゲリ」です♪」艶やかで黒っぽい肌をした「ネゲリ」の胸が、灰色の水着をつんと尖らせている…

提督「ボンジョルノ♪」

艦娘「ふぃー、ずいぶんかかったね…「テンビエン」だよ、よろしくネ♪」

提督「待たせてごめんなさいね…よろしく♪」

艦娘「中型潜「ウアルシエク」です…名前、ちょっと言いにくいですよね?」

提督「大丈夫、ちゃんと言えるわ……よろしくね、ウアルシエク♪」

ウアルシエク「…はい♪」

艦娘「ウアルシエクはまだ言いやすいほうでしょ…ボンジョルノ、提督「ウエビ・セベリ」です」

提督「ええ、ボンジョルノ…ウエビ・セベリね?」

ウエビ・セベリ「そ、よく言えました…なんなら噛まないように「セベリ」でもいいからね♪」

提督「了解。さて、これで全員ね……何でエリザベスはそんな後ろにいるのかしら♪」

エリザベス「…わたくしエリザベス…力を司るものとして、強者にはそれ相応の敬意を示すことにいたしております」

提督「そんなことを言わないでシーレとも仲良くしてあげて…ね、シーレ?」

シーレ「そうそう、仲良くしよ……お・ね・え・ちゃん♪」

グレイ提督「ふふ、お気持ちだけありがたく受け取っておきますわ」

提督「あら、残念……それじゃあまずはお昼にするから、食堂までついてきてね♪」

ライモン「…今後は一回に作る量をますます増やさないと…ですね」

提督「そうね。必要なら私だって厨房に立つわ」

カヴール「そのうちに誰が厨房の係にふさわしいかを決めないといけませんね♪」

提督「ディアナとエリトレアの交代制にお手伝いの娘数人……それだとさすがにこれ以上はまかないきれないものね」

アスカーリ「んだ、必要ならおらだって手伝うだよ」

提督「ふふ、ありがと♪」

まずは見て下さっている皆さま、無理せずエアコンを入れて(できるだけ)涼しく過ごしましょう……コジマ君、ジャブローのオフィスは快適だよ?


>>294 の方はまだ派遣中でしょうか…暑気あたりや熱中症にならないよう(…「休む」「疲れた」などとは言い出しにくい風潮もあるでしょうが)ご自愛くださいませ


…そろそろ投下していきますが、このところの暑さは異常ですよね……この調子で本当に数年後「国際的スポーツ大会」をやれるのでしょうか…どう考えてもインパール作戦そこのけの事態になりそうな……



…ちなみにこの後には「シーレ」×「クィーン・エリザベス」で年下責めの百合を投下したいなー…と思っております

…艦娘紹介…


中型潜「ペルラ」(真珠)級。1936年生まれ。10隻。単殻・サドルタンク型


量産性に優れ実用面での性能が優れていた傑作中型潜「600」型シリーズの第三弾。

前級「シレーナ」(セイレーン)級の準同型艦で、シレーナ級より多少船型を拡大、もろもろの改良や新装備を施したことで多少性能が向上している。
小ぶりな船型かつ同型艦の建造が続いたこともあってか、造船所も一年で完成させるなど手際よく建造することができ、性能も実戦向きで優秀。

OTO社(現OTOメララ)とCRDA社のどちらが建造したかで多少司令塔のデザインに違いがあると言われる



主機は1200馬力(ディーゼル)/800馬力(電動機)で14ノット/7.5ノット

武装は533ミリ魚雷発射管4門(艦首)/2門(艦尾)、100ミリ単装砲一基、13.2ミリブレダ機銃2~4挺(連装二基?)といたって無難



ペルラ級のうちネームシップの「ペルラ」は英「フラワー」(花)級コルヴェット「ハイアシンス」(ヒヤシンス)に捕捉され逃げ切れず、やむなく降伏…各種性能を調査の上で英潜「P712」となったが、ヤード・ポンド法のイギリスではメートル法で規格の違うイタリア潜を持て余し、後にギリシャへ譲渡されて「マトロツォス」となり長く活動した


また「イリーデ」(虹、あるいはアヤメ…本来はギリシャ・ローマ神話の伝令の神「イーリス」から)と「オニーチェ」(オニキス)はスペイン内乱時にフランコ軍へと貸与され、それぞれ「ゴンサレス・ロペス」(Gonzalez Lopez)「アグィラール・タブラダ」(Aguilar Tablada)と改名、その後イタリアへ返却され旧艦名に復帰。マラキーテ(マラカイト…孔雀石)はオランダ潜に撃沈され、ジェンマ(宝石)は友軍「スクアーロ」級中型潜「トリケーコ」(セイウチ)に誤射され撃沈した


第二次大戦下では「アンブラ」(琥珀)と「オニーチェ」がSLC(※人間魚雷…設置型の磁気機雷を運ぶ水中スクーター。回天のような特攻兵器ではない)搭載艦となり、アンブラは三基、オニーチェは四基の格納筒を搭載している…またアンブラは雷撃で英軽巡「ボナベンチャー」を撃沈し、イタリア潜一の大物を討ち取った





艦名は宝石が主で

「ペルラ」(真珠)
「アンブラ」(琥珀…古代ローマの大プリニウスが「樹脂である」と論じたという。古代ギリシャでは「エレクトロン」(太陽の輝き)とも呼ばれていた)
「ベリロ」(ベリル…緑柱石。石言葉は「永遠の若さ」「聡明」)
「コラーロ」(珊瑚。「威厳」や「成長」「長寿」など…三月の誕生石の一つ)
「ディアスプロ」(ジャスパー…碧玉。石言葉は「勇気」組成によって色が変化し、様々な色あいがあることから「多種多様」など…三月の誕生石「ブラッドストーン」も碧玉の一種)

「ジェンマ」(宝石)
「イリーデ」(虹・アヤメ)
「マラキーテ」(マラカイト…孔雀石。「危険な愛情」「恋の成就」など…古代エジプト人にも愛用された青緑色の奇石)
「オニーチェ」(オニキス…縞メノウ。「和合」「夫婦の幸福」など。黒と白の縞模様が美しく、黒地の部分を削り出して白い部分に彫刻を施すことでカメオなどの細工物にしたりする。八月の誕生石「サードニクス」(紅い縞メノウ)もこの一種)

「トゥルケーゼ」(トルコ石)…と大変美しい名前が付けられている



艦娘「ペルラ」級は名前にふさわしい美しさで、前級「シレーナ」級にもいる宝石が艦名の艦娘と合わせると、さながらミラノの宝飾店のよう……たいていの娘がしとやかで丁寧な話し方をし、髪や瞳はそれぞれ対応する宝石の色と似ている…「アンブラ」と「オニーチェ」はそれぞれ腰や背中に、ワインボトル程度の大きさをしたSLC格納筒(を模した物入れ)を装備している。中にはお菓子だったり小物だったりブタのぬいぐるみ「ぶーちゃん」だったりが入っているらしい…


…補足…

トルコ石は12月の誕生石で石言葉は「繁栄」「成功」など

………


ちなみに「石言葉」は国によって変わり、ここに書いてあるのは全て日本の(あるいは日本にない石で海外の石言葉をあてた)ものになっています

余談ですが、ただ「石言葉」を知りたいだけなのにスピリチュアルやパワーストーンの話ばかり出て来て、これを調べる方が個艦のエピソードを調べるより大変でした……

中型潜「アデュア」級。1936~38年生まれ。17隻


前級「ペルラ」(真珠)級とほぼ同じ構造・性能の「600」型シリーズ中型潜水艦の第四弾。基準排水量680/844トンという部分も同じ

特徴はやはり建造隻数の多さで、姉妹艦17隻というのはイタリア潜で一番多い。性能も優秀で大戦中は有効に活用されたが損害も多く、戦後に残ったのは「アラジ」の一隻のみと、空軍の援護がなく有効な電子機器も開発できなかったイタリアの辛い戦いぶりをよく示している



主機1200馬力(ディーゼル)/800馬力(電動機)で速力14ノット/7.5ノット

武装は533ミリ魚雷発射管4門(艦首)/2門(艦尾)、100ミリ単装砲一基、13.2ミリ機銃2~4挺…と、これもペルラ級と同じ




と、ここまでは一連の「600」(セイチェント)型の中型潜に共通する部分であるが、「アデュア」級は名艦・殊勲艦揃いで


出撃55回(イタリア潜で最高記録)かつイギリスのマルタ島救援船団(ペデスタル作戦)の迎撃作戦「EA-3作戦」では英巡「ケニア」を撃破、商船一隻を撃沈し無事に戦後を迎えた不沈艦の「アラジ」

やはりペデスタル船団攻撃に参加し、二隻で防空軽巡「カイロ」を撃沈、巡洋艦「ナイジェリア」と商船二隻を損傷させた名コンビ「デジエ」と「アクスム」などが目立つ……が、一番の殊勲艦は人間魚雷搭載艦になった「シーレ」なのは間違いない




「人間魚雷」作戦そのものはは1940年に計三回行ったアレクサンドリア港襲撃(ペルラ級の「イリーデ」が行った時はイリーデが英軍機に発見され撃沈されている。また一回は急に作戦が中止され、作戦区域から離脱中だった「シーレ」の姉妹艦「ゴンダール」が捕捉され撃沈、技術メンバーだったトスキ少佐も含めて乗組員は捕虜になっている…が、イギリスの尋問がザルだったらしく人間魚雷の事は気づかれなかった)と41年に二回行ったジブラルタル襲撃があったがいずれも失敗…


……ところが1941年9月20日の「第三回ジブラルタル襲撃」では、ジブラルタル沖の「シーレ」(艦長ヴァレリオ・ボルゲーゼ大尉…のちに昇進)から発進したマーリオ・ヴィンシンティーニ大尉以下の「マイアーレ」(※ブタ…SLC人間魚雷の通称。ひどく乗りにくかったことから苦労している隊員たちに当時の指揮官であったテセオ・テゼイ技術大尉が「そのブタにしがみつけ!」と言ったことから)隊三隻はイギリス艦入港のために開かれた防潜網をくぐり抜け、ジブラルタル港停泊中のタンカーおよび輸送船(大型軍艦は不在)に磁気機雷を取りつけイギリス海軍所属のタンカー「デンビデール」、輸送船「ダーラム」(約一万トン)「フィオーナ・シェル」(約2400トン)を撃沈、無事に対岸のスペイン(中立国)へと脱出に成功、帰投し大歓迎を受けている。




その後12月20日には、伯爵ルイージ・ドゥランド・デ・ラ・ペンヌ大尉以下がアレクサンドリア港に攻撃先を切り替え、やはり駆逐艦入港のために開かれた防潜網を(駆逐艦にくっつくように)くぐり抜けて、戦艦「ヴァリアント」「クィーン・エリザベス」へ磁気クランプ付きの時限機雷をセットする手はずになっていた…が、ヴァリアント班のデ・ラ・ペンヌ大尉は助手ビアンキが流され(操舵していなければいけないので)機雷をくっつけることが出来ず、やむなく機雷を海底に投棄、発見されて捕虜になりヴァリアントの船底近い場所に(巻き添えになりたくないだろうから自白するに違いないと)閉じ込められてしまったが、時刻ギリギリまで我慢して艦長を呼び「あなたのフネはもうじき爆発しますよ」とだけ言って甲板に連れ出してもらい、ついでに(回収されないよう海底に投棄していることは明かさなかったので)「ヴァリアント」を大破着底させることに成功した

この攻撃で「クィーン・エリザベス」と「ヴァリアント」が大破、輸送艦一隻が沈没、その輸送艦爆発のあおりを受けた「J」級駆逐艦で「ラッキー・ジャーヴィス」のあだ名があった不沈艦「ジャーヴィス」も大破している

…ちなみにデ・ラ・ペンヌ伯は1945年(解放されていた南イタリアで)戦死者以外には珍しいイタリアの「武功黄金勲章」(メダリエ・ドーロ)を、当時のヴァリアント艦長だったモーガン提督から手渡されて授かっている…戦後には「ルイージ・ドゥランド・デ・ラ・ペンヌ」級として駆逐艦の艦名にもなっている…


こののちもイタリア王国海軍の襲撃作戦は活発で、ペルラ級「アンブラ」がSLCと水中爆破工作班「G」(ガンマ)グループを放ってアリジェリアのアルジェ港で輸送船四隻を撃沈したり、中立国スペインから(開戦したせいで)出られなくなっていたイタリア船籍の貨物船「オルテラ」に秘密格納庫「トロイの木馬」を作り、上層部のおしゃべりからイギリスのスパイに秘密が漏れないようにと夜の外務省に忍び込んで公印を盗み出して偽造書類にハンコをつき(!)SLCを「機械部品」として発送、「オルテラ」から対岸のジブラルタルを攻撃して輸送船を沈めるなど大活躍した

……



…アデュア級紹介(その2)…

ちなみにイタリアの潜水工作班は海水パンツに潜水艦脱出用の簡易呼吸器だけの「手抜き装備」だったイギリスと違って、全身用ウェットスーツにゴム製足ヒレ、酸素ボンベ付きアクアラングに、「パネライ」社製の発光機能付き防水時計と素晴らしい専用装備を開発・装備していた



「アデュア」級の艦名はいずれもイタリアが占領していたエチオピアの地名が主で

「アデュア」
「アラジ」
「アラダム」
「アシアンギ」
「アクスム」
「ベイルル」
「ダガブール」
「デジエ」(エチオピア戦では最後まで連合軍に抵抗したイタリア軍の要塞があった)
「ドゥルボ」
「ゴンダール」(世界遺産になっている歴史的景観が有名)
「ラフォーレ」
「マカレ」
「ネゲリ」
「シーレ」
「テンビエン」
「ウアルシエク」
「ウエビ・セベリ」

の十七隻。この中で無事だったのは「アラジ」だけで、殊勲艦「シーレ」も42年8月アレクサンドリア港襲撃寸前で発見、撃沈されてしまった




艦娘「アデュア」級は艦名通りに東アフリカ植民地風で、髪や瞳が黒っぽかったりよく日に焼けていたりして、話すときも緊張したりするとカタコトになってしまう…姿かたちは中学生そこそこのようではあるが、ほっそりと滑らかな身体のラインはしなやかで、競泳水着風の「艤装」をまとった背中はかなり色っぽい…「シーレ」と「ゴンダール」はウェットスーツとSLC格納筒を装備している


………


カタコトなの好き

>>318 グラツィエ、あとはどの程度のカタコトにするかについて検討中です…あんまりカタコトだと読みづらいことおびただしいので、所々に入れる程度でしょうか…


…ちなみに、グレイ提督が犬を拾うエピソード(本スレの>>233 あたり)で登場させたトライバル級駆逐艦「ソマリ」も、漢字以外は全部カタカナにするか悩んでおりました……とりあえず「アデュア」たちは所々がカタカナ…程度の想定をしております

…昼食時…

提督「さぁ、どうぞ召し上がれ♪」夏も終わりかけた鎮守府の菜園で、白い花房が開いて硬くなりはじめたバジリコからまだ柔らかい葉っぱを選んで作った「ペスト・ジェノヴェーゼ」…緑のバジルと濃い松の実の油っ気がパスタによく合う……

ドゥルボ「んー…本国の味だぁ」

テンビエン「美味しい…ホントに美味しい♪」

エリトレア「いやぁ、そう言ってもらえてよかったですよぉ…何しろディアナと二人で奮戦しましたからねっ♪」

提督「奮戦したかいがあったわね。とっても美味しい……って、まぁまぁ♪」

デジエ「アクスム、ほら…一緒に食べよ?」

アクスム「わ、ありがと……♪」一つのパスタ皿を前にして、仲良く両側からフォークで巻き取って口に入れるデジエとアクスム…と、一本のパスタが両方のフォークに絡み、次第に短く巻き取られていく……

デジエ「…ん///」

アクスム「んっ、ふ…///」

提督「ふふっ…♪」

カヴール「あらあら、微笑ましい光景ですね」

アッテンドーロ「はぁ、またお熱い姉妹が増えたようで……私は姉さんが提督一筋で助かるわ」

ライモン「ちょっと、ムツィオってば///」

アッテンドーロ「だって事実だもの…私だって姉さんは好きだけど、さすがに毎日こんなふうにベタベタされていたら飽きちゃうわよ」

提督「あら。ムツィオったら照れてるの?」

アッテンドーロ「そんな清純派がまだここにいるとしたら、それはよっぽどおめでたい娘ね」大げさに両手をすくめた

チェザーレ「はは、違いない♪」

…食後…

ネゲリ「…ふー、美味しかったですネ」

ゴンダール「満腹で動く気も起きません……ふわぁぁ」

提督「ふふ、それは良かったわね…ディアナ、美味しかったそうよ♪」

ディアナ「それは何よりです。やっぱり作った側としては「美味しい」と言ってもらえるのが一番ですもの」

提督「そうよね…お皿洗いを手伝いましょうか?」

ディアナ「いえ、大丈夫ですよ。提督はどうぞお楽に」

提督「ありがと、それじゃあ私は食後酒でもいただこうかしら」バーカウンターの棚に並ぶリキュールを一通り眺めるとシチリアの甘いレモンリキュール「リモンチェーロ」を取り出し、グラスに氷とソーダ水を入れた…

グレイ提督「でしたらわたくしにも、何かお願いできますかしら?」

提督「ええ、いいですよ…♪」ウォッカにトマトジュースを取り出すとステアし、出来上がった「ブラッディ・マリー」をカクテルグラスに注ぐ…

グレイ提督「あら…フランチェスカには、わたくしがそんなに血に飢えているように見えますの?」

提督「ええ♪」

グレイ提督「まあ、失礼なお方…ですが味はよろしいですわ」

アデュア「へぇ…カクテルバーなんてお洒落ですね?」…食事がすんでから鎮守府の案内を受けることになっているアデュアたちは、物珍しげに食堂を見回している……

提督「アデュアも何か飲む?」

アデュア「はい…といってもカクテルなんて良く知らないから……リモンチェーロとカンパリ、アブサン酒くらいなら分かりますけど…」

提督「えーと…それじゃあ食後に合わせてコーヒーリキュールにでもしましょうか♪」丸い大き目のグラスに氷を数個おとすとカルーアと牛乳を注いで「カルーア・ミルク」にして渡した…

アデュア「それじゃあ……ん!」

提督「どう?」

アデュア「これ、本当にカクテル?」

提督「ええ、そうよ♪」

アデュア「飲みやすくって美味しい…牛乳も冷たいし」

提督「冷たいカフェラテみたいで、暑い時にはいいでしょう?」

アデュア「はい♪」

提督「あら、いらっしゃい…ジェンマは何がいい?」相変わらず黒に銀の刺繍が入ったテンガロンハットと黒のブレザー、腰のガンベルトに吊るした二丁のウベルティ社製「ピースメーカー」と、ウェスタンな空気をまとっているジェンマ…

ジェンマ(ペルラ級中型潜「宝石」)「……バーボン」

提督「はいはい♪」バーカウンターに背中を預けてひじを置くジェンマの西部劇スタイルに合わせて、ショットグラスを滑らせる提督……グラスが上手く手元まで滑って行ったのを見て、ぱちりとウィンクした

ジェンマ「グラツィエ…」きついバーボンウィスキーを一息にあおると、カンッ…とグラスをカウンターに置いた

ジェンマ「提督、もう一杯もらおうか」

提督「あんまり飲みすぎると照準が狂うわよ…射撃はどうだった?」

ジェンマ「悪くなかった…「気持ちは焦らずゆっくりと…しかし銃を抜く手は早く」が実践できた」(※西部の名保安官ワイアット・アープが言った「早撃ちの心得」)

提督「そう、よかったわね…ウィンチェスターのほうは?」

ジェンマ「それもまぁまぁさ」

提督「それじゃあ……これは私からのおごり♪」もう一杯グラスを滑らせる

ジェンマ「ああ。ごちそうさま」テンガロンハットのふちに手をかけ、軽く持ち上げると哀愁感たっぷりに去って行った…

提督「射撃と言えば……メアリはジブラルタルでもあのパーディで射撃練習を?」

グレイ提督「ええ、基本的には…わたくし、構造が熟成された銃器以外はあまり好みではありませんの」

提督「と、いいますと?」

グレイ提督「そう…例えば鎮守府にある銃で言えば「リー・エンフィールド」小銃や「ブレン」軽機関銃ですわね……他に「L85A1」も装備されておりますが、わたくしならエンフィールド小銃にいたしますわね」


(※リー・エンフィールド小銃…19世紀末から改良を続けて、第二次大戦後にベルギーFN社の「L1A1」(FAL)に更新されてからも長く「予備兵器」などとして英軍に採用され続けていたボルトアクション式ライフル。ボルトの位置と構造から速射がきき「下手な自動火器よりも連射が出来る」と言われるほど…口径は「.303ブリティッシュ」こと7.7ミリ×56R。装弾数は10発)

(※ブレン軽機関銃…戦前に「無故障マシンガン」また旧帝国陸軍では「チェッコ式」として有名だったチェコ製「zB26」軽機関銃の口径を「.303ブリティッシュ」に改造してライセンス生産したもの。通称は「ブレン・ガン」……バナナ型マガジンが銃の上側についている特異なデザインは照準器を少し横へオフセットする必要があるものの、伏せ撃ちの時に弾倉が邪魔にならないことと、空薬莢が自然に落ちるために、薬莢を弾きだす機構が不要になることから弾詰まりを起こしにくいメリットがある…その頑丈さと「絶対に故障しない」安心感から長く愛され続け、戦後も7.62ミリ×51のNATO弾に変更した「L4A1」モデルが特殊部隊「SAS」の隊員たちに愛用されていた。口径は「.303ブリティッシュ」で装弾数は30発)


提督「あー……まぁその二丁だったら、私もエンフィールドにしておきます」

グレイ提督「そうでしょうね」


(※L85A1…名銃ではあったが60年代から採用されていて、さすがに時代遅れになりつつあった「L1A1」ライフルを更新しようと、様々な革新的機能を盛り込んだオートマティックライフル。ブルパップ式で全長が短く取り回しに優れ、寸が短くなったことで軽量化も図れる……はずが、剛性を重視して分厚い金属の部材を多用したことで重量は4キロ前後とひどく重く、おまけに「ボルトの位置取りが悪く、弾きだした空薬莢がボルトに弾かれて薬室に跳ね戻ってくる」「弾倉を保持するスプリングが弾の重量に耐えられず勝手に弾倉が脱落する」「撃針が折れる」など不具合が頻発、イギリス人の皮肉とユーモアのセンスを刺激し、数限りないジョークのタネとなることに…ドイツの「ヘックラー・ウント・コッホ」(H&K)社に改修してもらった「L85A2」では別物のように故障が減ったが、ひどく高くついたので「M4カービンを採用した方が安く済んだはずだ」と議会でも問題になったほど……ちなみにメーカーのエンフィールド社(旧エンフィールド造兵廠)はL85シリーズを最後に倒産している。装弾数は30発…が、いっぱいまで弾を込めると弾倉が落下してしまうので実質25発前後。口径は5.56×45ミリ)


チェザーレ「……だいたいブリタニアにまともな銃がつくれるわけがあるまい…」

グレイ提督「何かおっしゃいまして?」

提督「あ、あー…それじゃあそろそろアデュアたちに鎮守府を案内してあげましょうか♪」

ライモン「そうですね、午後の日差しが暑くなる前に済ませてしまいましょう」

提督「ええ」

…しばらくして・アデュア級の部屋…

提督「…というわけで、鎮守府の構造はこうなっています。お部屋の家具や小物で足りないものがあったら倉庫にあるものを探すか…新しく注文したいなら私に声をかけてね?」

アデュア「了解」

提督「ちょっとまだ殺風景だけれど、その分お部屋をどうするか考える楽しみが増えるわよね」

ネゲリ「はい。楽しみですネ?」

テンビエン「うんうん」

アラジ「そうだね…さてと、それじゃあ私はちょーっと散策にでも行ってこようかな♪」

シーレ「それじゃあ私も…♪」

提督「ふふ、アラジったら元気いっぱいで……それじゃあ私は午後の執務に備えてシエスタ(昼寝)にいそしんでくるから、何か用があったら直接執務室に来るか、内線電話をかけてね?」

ラフォーレ「ええ…番号は分かりましたから大丈夫です」

提督「よろしい……それじゃあ、また後でね♪」ちゅっ♪…と投げキッスをしてから部屋を出た…


…鎮守府・庭…

アラジ「ははっ、あはははっ♪」素足のまま庭の草地に飛び出し、暑い日差しをものともしないで跳ねまわっている…

シーレ「ちょっと、アラジったら少しは落ち着いて……」

アラジ「だって自由に動けるし、お日さまは明るくて波はキラキラ輝いているんだもの……お昼寝なんかで時間を潰すのはもったいないでしょ♪」

シーレ「もう、それにしたってはしゃぎ過ぎ…」

ガリレオ・ガリレイ(アルキメーデ級中型潜)「あ、アラジにシーレ……チャオ♪」

シーレ「…もしかしてガリレイ?」

ガリレイ「ええ、そうよ」

アラジ「そんな茂みにしゃがみこんでどうしたの?」

ガリレイ「あぁ、今マリポーサ(スペイン語で「蝶々」)が花に止まってて…」フランコ側にたってスペイン内乱に参加しただけあって、時々ぽろりとスペイン語が飛び出してくるガリレイ……

シーレ「マリポーサ…あぁ、ファルファッレ?」

ガリレイ「あっ……ま、まぁそうとも言います///」

アラジ「なんにせよ綺麗な蝶々ね…舞い上がるとまるで花びらみたい♪」両腕を広げてくるくると回り、黄色い蝶々に合わせて駆け回る…

シーレ「ふぅ…で、鎮守府めぐりはいいの?」

アラジ「そう言えばそうだったわ♪」

ガリレイ「…よかったら私が案内しましょうか?」

アラジ「ううん、平気…ほーら、ついてこないと置いて行っちゃうから」

シーレ「あっ、もう……それじゃあすみません」

ガリレイ「ううん、気にしないで♪」

…廊下…

アラジ「んー、やっぱり屋内は涼しい…♪」バレエを踊るように廊下を駆け巡るアラジ…

シーレ「もう…目が回るから少しは落ち着いてくれない?」

アラジ「だって、あれこれ面白いものがいっぱいあって…とってもじゃないけど落ち着けないわ♪」

シーレ「はぁ……全くもう」

アラジ「ふふっ、楽しい…っ♪」

シーレ「もう、ちょっと待って……んっ!」

エリザベス「んっ!」

シーレ「あ、ごめんね…エリザベス?」

エリザベス「ええ、わたくしは平気でございます…が、廊下は「走ると危ない」と教わっているはずでございますね?」

シーレ「ごめんなさい、でもアラジがどんどん先に行っちゃうものだから……」

エリザベス「それはそれ…でございます」

シーレ「そうは言っても……別に航海灯がついているのに突っかけたわけじゃないんだから…」

エリザベス「おや、言い訳とは…このエリザベス、感心できませんね」

シーレ「でもそれで言ったらエリザベスの方がずっと大きいし、私の方が被害が大きいハズなんだけどな…」

エリザベス「そちらが先にぶつかってきたのですから、わたくしが謝る理由はないかと存じます」

シーレ「……ふーん、そう」

エリザベス「何か?」

シーレ「いや、それなら……お互いに実力で決着をつけよう?」

エリザベス「力を司るわたくしを相手に、ですか…よろしゅうございます♪」恐るべき闘志をみなぎらせるエリザベス…

シーレ「…ふふ、エリザベスお姉ちゃんってば……アレクサンドリアの時の事、もう忘れたのかな♪」と、急にいやらしい笑みを浮かべるとエリザベスの後ろに回り込んで脇から顔を出し、腰に手を回しつつ上目遣いをするシーレ……

エリザベス「…っ///」

…しばらくして・英国艦の客室…

シーレ「それではお邪魔します…」

エリザベス「ええ…さて、今度こそわたくしが「地中海の女王」であることを示して差し上げます」

シーレ「くすくすっ……それじゃあ最初はごあいさつとして軽くキスから…ん…はむっ、んむっ……ちゅるっ…じゅるぅぅ…っ♪」背丈ばかりはエリザベスに及ばないシーレ…下から見上げるようにして舌を絡ませ、すすりあげるようなねちっこいキスを浴びせた…

エリザベス「んっ、んっ…あふっ、んくっ……はぁ、はぁ…っ///」

シーレ「あれれ、どうしたの…キスされただけでイっちゃった?」

エリザベス「わたくし…わたくしエリザベスは女王陛下と英国の誇りにかけても……断じてそのような事にはなりませんの…で…///」

シーレ「そう、ならもっと気持ち良くしてあげないと……ねぇ♪」ちろっ…れろっ♪

エリザベス「ん、くっ……///」

シーレ「ふふ、綺麗な胸もと……れろ…ぉ♪」

エリザベス「んふぅ…っ///」

シーレ「真っ白で…陶器みたいにすべすべ……さてと、そろそろ脱がせるからね」エリザベスに抱き着くようにして、ふかふかのベッドの上に倒れ込む……

エリザベス「それにつきましては断固拒否させていただきます」

シーレ「ふふっ、もう遅いわ…そう、ドアを開けて港に私を招き入れちゃった時点で…ネ♪」日に焼けた暖かみのあるカスタードクリーム色の肌が、エリザベスの白い肌に重なってくる…にんまりといやらしい笑みを浮かべ、エリザベスの青い服を脱がしていくシーレ……

エリザベス「…っ///」

シーレ「ほら、どうしたの…頑張って逆らわないと、このまま私の良いようにされちゃうけどぉ?」

エリザベス「く……んっ!」

シーレ「あぁ、もしかして…ベッドの上だと力が出ないのカナ?」

エリザベス「栄光のホワイトエンサインを恥辱にまみれさせ…なおかつわたくしを……ここまで…愚弄するとは……んんっ///」

シーレ「だって、もうすっかりとろっとろ……ホントは腰が抜けちゃうほど気持ちいいのよネ?」

エリザベス「いいえ、そのようなことは…」

シーレ「いいのいいの、我慢しなくたって…だって、私にイかされて着底しちゃうのは……分かりきっているもの♪」

エリザベス「わたくし…今度はそうなったりしませんわ」

シーレ「どうかしら……それっ♪」ずぷ…っ♪

エリザベス「あ゛っ、あ゛あぁぁっ……わ、わたくしにこのような真似を…っ///」

シーレ「ふふ…何だかんだ言っても、下が弱いのは相変わらずみたいネ……♪」ぴったりしたゴムの手袋をはめた手をひと舐めするとエリザベスの秘部をまさぐり、空いている方の手で形のいい乳房をわしづかみにする…

エリザベス「んっ、い゛ぃ゛ぃっ…///」

シーレ「ふふ……お姉ちゃん…だーいすき♪」

エリザベス「ふ、そのようなざれ言に引っかかるわたくしでは……」

シーレ「…って言うのは陽動で…本当は……こっち♪」ずぶっ…くちっ♪

エリザベス「あぁぁっ…んっ、い゛ぃっ…!」

シーレ「ふふ、後ろの方が感じやすい?……まぁ、エリザベスお姉ちゃんたちの世代って下は絶望的に弱いものネ♪」

エリザベス「わ、わらくしをこのような…このような…///」

シーレ「……プライドなんてどうだっていいから、我慢しないで素直にイっちゃお♪」ぐちゅり、ぐちゅぐちゅぅ…っ♪

エリザベス「あ゛っ、あ゛ぁ゛ぁぁ…っ!」どぽどぽっ…ぶしゃぁぁっ♪

シーレ「ふふ、激しかったでしょ…また大破着底しちゃったものね♪」

エリザベス「この…このような……わたくし…力を司るものとして……女王陛下と英国のために尽くしてまいりましたのに…ぃ゛っ!?」

シーレ「ふふ…そのまま動けなくなるまでしてアゲル……♪」

シーレ「ふっふふふ…どこにしようかナァ……でもやっぱりお尻がいいのよね?」つぷ…っ♪

エリザベス「わ、わらくひが……このような…はしひゃない姿をさらしては……んぐぅぅっ///」

シーレ「ふふ、指に吸いつくみたい…きゅんきゅん締まって…♪」

エリザベス「はぁぁぁ…んっ、ぃ゛ぃっ!?」

シーレ「んふっ…ここにエメラルドが戻ってきたら……私の奇襲もばれちゃうけれど、エリザベスのだらしないお顔も見られちゃうわよネ?」

エリザベス「!」

シーレ「って言ったらまたきゅうきゅう締め付けて…すっごく熱くっテぬめぬめシテるのネ……♪」

エリザベス「わらくひが……このような、小娘ごときに…ぃ……遅れを取るな……いぃ゛っ♪」

シーレ「んふふっ…そうは言っても……こんなにぐちゃぐちゃにして…せっかくだからもう一本入れちゃいましょ?」

エリザベス「はひっ…ひゅ…ぅっ……はひぃ…んっ…お゛ぉ゛ぉぉんっ♪」

シーレ「あ…またイっちゃったのね♪」

エリザベス「はひっ…ひゅっ……くは…はぁ、はぁ……」

シーレ「ふふーん……誰かに聞こえるようにもっと大きな声を上げちゃおう…ね、お姉ちゃん♪」エリザベスの上にまたがると秘所を重ね、奔放な動きで腰を上下させたり擦りつけたりする…

エリザベス「ふひゅ…っ、んくぅ……あっ、あっ、あ゛あ゛ぁぁぁっ♪」とぷっ…とろぉ……♪

シーレ「んふふ、すごいイきっぷり…気持ちいいでしょう♪」腰を引くつかせ、またがったシーレごと海老反りになるエリザベス…と、ロデオでもしているかのようなシーレ……

エリザベス「あへぇ…ひぐぅぅ……はへぇ…」頭の王冠はベッドの上に転がり、髪を乱してせわしなく喘いでいる…

シーレ「ふぅ、やっぱり年上のお姉ちゃんたちをイかせるのって愉しい…「ヴァリアント」もいれば良かったのにネ♪」

エリザベス「はー…はー……はぁ…提督閣下、申し訳ありません……わらくひ…マカロニ艦隊の小娘ごときに……///」

シーレ「ふふ…誇り高い女王様を好き放題味見出来るなら、頑張って忍び込むかいがある……っていうものよね♪」

エリザベス「……ところで、シーレ」

シーレ「ん?」

エリザベス「わらくひ……もう、立てません…///」

シーレ「ふふ…いいじゃない、今はお互い敵じゃないんだから……ネ♪」

エリザベス「…」

シーレ「確かにあの時は「仇敵アルビオン」の大物だったから狙ったけど…別にエリザベスだからことさらに……ってわけじゃないし、それはエリザベスも同じでしょ?」

エリザベス「それは……そうでございますね…」

シーレ「ね…お互いに昔の事は水に流そう?」

エリザベス「……シーレ…わたくし…///」

シーレ「…んふふ、引っかかった♪」じゅぶっ、ずぶずぶぅ…っ!

エリザベス「あ゛あ゛ぁ゛ぁぁっ…♪」ぶしゃぁ…っ♪

シーレ「奇襲作戦大成功……ふふ、ガクガクひくついちゃっテ…♪」

エリザベス「わたくしの気持ちをもてあそぶとは…許しま……」

シーレ「んー…なにか言ったカシラ、お姉ちゃん?」じゅぶじゅぶっ…ぐちゅ…ぅ♪

エリザベス「はぁぁっ、ひっぐぅ゛ぅ…っ!」

シーレ「あぁぁ、あのエリザベスがトロけた顔で腰を抜かして……たまんなぁ…い♪」


…廊下…

グレイ提督「……ふぅ、このような場合にお邪魔するのは無粋というものですわね…それとエリザベス…あなたの忠誠心はしっかりと理解いたしました……そして英国は受けた分の「お礼」は必ずいたしますから安心なさい……今度フランチェスカを部屋にお招きすると致しましょう…」そっとドアの前を離れて去って行った…

………

…翌日・昼…

エリザベス「…」

シーレ「ふふっ…そんなに怖い顔シテどうしたの?」横を通り過ぎながら耳元へささやきかける…

エリザベス「…っ///」

シーレ「ふふーん…今日のお昼は何かなぁ……っと♪」

ゴンダール「ずいぶんゴキゲンですね、シーレ?」

シーレ「うん、まぁそうね…ふーん、ふふーん…♪」

提督「…みんな、少し静かにしてもらえるかしら?」軽く手を叩いて静粛をうながす提督…

提督「はい、結構……えーと、実は今日から基地祭の屋台を誰が担当するか決めるための「お料理審査」を行いたいと思います♪」

一同「「ざわざわ…」」

提督「…といっても朝・昼・晩の食事時に厨房を使って、一品ずつ好きな料理を作ってもらうだけなのだけど……それにみんなで献立の一品でも肩代わりすれば、ディアナとエリトレアの負担も軽くなるでしょうし」

ディアナ「まぁ、ありがたいお言葉です…」

エリトレア「はい、その気持ちが嬉しいですっ♪」

提督「どういたしまして…というわけで今日のお昼から、立候補した順番にやっていくことにします。以上♪」

ライモン「あの、ドリアさんはこの「審査」をどう思います?…駆逐艦の娘から戦艦の方まで十数人は立候補していますけれど」

ドリア「そうですね、私もデュイリオに薦められて立候補してみましたが……それより、みんなの美味しい手料理が味わえることの方が楽しみですよ♪」

アッテンドーロ「ふふ、それはどうかしらね…案外まずい料理のオンパレードだったりするかもしれないわよ?」

ドリア「ふぅ、そうなったら私が直々にお料理の仕方を身体へ叩き込みますよ…♪」

アッテンドーロ「うわ…ドリアったら、相変わらず食べ物の事となると迫力あるわね……」

ドリア「ええ、だって私は美味しいものを食べるために頑張っているんですから……提督、最初はどなたです?」

提督「えーと…まずはローマね」アンティパスト(前菜)を平らげ、空っぽのお皿を前に待ち遠しげな顔をしている…

ローマ「はい、お待たせ…普段のさっぱりした南部料理も悪くはないけれど、やっぱり濃厚なローマ風の料理が食べたかったからいい機会になったわ」…大きな皿にはいい香りを立てるパスタが山盛りに盛られている…牛とトマトを煮こんだスーゴ(スープ)をたっぷり絡めたスパゲッティーニを取り分けるローマ……

提督「あら、美味しそう…♪」金属のおろし器でたっぷりとチーズをおろしてもらい、湯気と香りを胸いっぱいに吸い込む…

ドリア「何ともいい香りです」

ローマ「…どうぞ、遠慮しないで召し上がれ?」

提督「ええ、それでは…」くるりとフォークに巻き取り、口に運ぶ…

アッテンドーロ「固っ…ねぇ、これずいぶんと固ゆでじゃない!?」

ドリア「んぐっ……ローマ、失礼ですけど「コットゥーラ」って言葉は知ってます?」(※cottura…ほど良い具合)

ローマ「何を言っているの…パスタはアルデンテに決まってるでしょう」(※al dente…固ゆで)

提督「それにしてもこれはちょっと……中に芯があるどころか、まだ生みたいな部分まであるわよ?」

ローマ「そう?このくらいが一番おいしいのに……リットリオ姉さんはどう思う?」

リットリオ「んー…これはちょっと固いですよ?」

ヴィットリオ・ヴェネト「さすがにこれは…ローマ、もうちょっとどうにかならないですか?」

提督「…やっぱりローマは「鉄のアルデンテ」が好みなのね……」イタリアでも特に硬いというローマ風のアルデンテ…通称「鉄のアルデンテ」に微妙な表情の提督たち…一方でローマに縁のある艦娘たちは喜んで硬いパスタを楽しんでいる……

ロモロ「ローマ、とっても美味しい♪」

レモ「ボーノ、ボーノっ♪」

チェザーレ「うむ、この硬さもローマ人の気骨を表しているな…実によい」

ローマ「ね、やっぱりパスタはアルデンテが「粋」だもの…♪」

提督「…」

…とりあえずシーレ×エリザベスで「年の差百合」をやってみました……夏バテ気味のせいか読み返してみるとボリューム不足が否めないですが、またリクエストがあればやってみたいと思います…


…それとローマのアルデンテが「鉄のアルデンテ」というのは、多分博多ラーメンの「バリカタ」のような物なのだろうと思います…水が硬水だったりして上手く茹でられないせいもあるかもしれませんが、きっとローマ人なりの「粋」というか、「通」な食べ方なのでしょうね……

…別の日…

提督「さてと、それじゃあやりますか♪」…麦わら帽子にTシャツ、下半身はイタリア軍らしいダークイエロー・グレイグリーン・赤茶色の独特な三色迷彩を施した野戦服のズボンと軍用ブーツ……裾はブーツにたくし込んであり、目元にはサングラスをかけている…

ライモン「朝からやる気充分ですね」

提督「まぁね…さぁ、行きましょう?」

…畑…

トレント「あ、提督…お待ちしてましたよ」

トリエステ「カゴも用意してあります」

ボルツァーノ「たくさん採れるといいですね?」

提督「そうね♪」


…提督から面白半分で見にきた野次馬の娘たちの合わせて数十人が眺めているのは、鎮守府の菜園に植えてあったジャガイモ……元はといえば芽が生えてしまったジャガイモを「捨てるよりは…」と、ためしに植えつけてみただけだったものが、ほど良い日差しですくすく育ち、今ではすっかり一面に生い茂っている…


ザラ「それじゃあ始めましょうか?」

提督「そうね……それじゃあ…」

ビスマルク「グーテンモルゲン(おはよう)…揃いもそろって、そんなところで何をしているのだ?」両手を後ろに組み、辺りを睥睨(へいげい)しながらやってきたビスマルク…

提督「グーテンモルゲン、ビスマルク…ちょっと作物の収穫をしようと思って♪」

ビスマルク「ほう?」

提督「…何だか分かる?」濃い緑色の葉っぱを指差して微笑む提督…

ビスマルク「ジャガイモか!」

提督「ええ♪」

ビスマルク「ということは、昼は収穫したばかりのジャガイモにありつけるわけだな!?」

提督「ヤー」

ビスマルク「そうと知ったらティルピッツにもすぐ教えてやら……まぁ…その、何だ…よければ私も手伝おうか」

提督「ダンケ♪…それじゃあ待っているから、ティルピッツとヴァイス提督にも知らせてあげて?」

ビスマルク「ヤー、すぐ伝えてくるので待っておれ…!」

…数分後…

ビスマルク「戻ったぞ!」…ジャーマングレイの乗馬用ズボンと長袖ワイシャツのビスマルク…ズボンの裾をブーツに突っこんでいるさまはヴェーアマハト(旧ドイツ国防軍)の将校にしか見えない…

ティルピッツ「私も来ました…日差しが強いですね……」ブルーの開襟シャツにジャーマングレイのズボンとブーツ…と、ビスマルクにそっくりなティルピッツ……普段から青白いような顔をしかめて、横目で太陽を見上げている…

ヴァイス提督「わざわざ声をかけてもらってありがとうございます…よく育っていますね」

提督「何しろどこでもよく育つ植物ですから…良かったら収穫を手伝ってください♪」

ヴァイス提督「ヤー…この規模なら三人が横並びになって作業をして、ひとつの畝に十分かけて……掘り残しがないかどうかの確認に…」あごに手をあてて、どう作業すれば一番効率がいいか計算し始める…

提督「ふふっ、そんな綿密な計算なんてしないで…せっかくの収穫ですし、のんきにやりましょう?」

ヴァイス提督「は、申し訳ありません…」

提督「やりたい娘がいたら交代してあげるから、いつでも声をかけてね?」

バリラ(大型潜バリラ級)「ふふ、お母さんもあとで参加させてもらおうかしら…♪」

ルイージ・トレーリ(大型潜マルコーニ級)「面白そうですよね」

ポーラ「…それじゃあ抜きますよ~?」

提督「あ、待って…まずは抜きやすいように周りの土を少し掘って……」

…一時間後…

提督「ふー…思っていたよりもたくさん採れたわね…」額の汗を拭い、Tシャツをぱたぱた動かして胸元に風を入れる提督…辺りには掘り返された地面と引き抜かれたジャガイモの茎や葉が散らばっていて、カゴには拳骨くらいの大きさからピンポン玉くらいの小さいのまで、ぎっしりとイモが入っている…

トレント「はい、カゴもいっぱいです」

ビスマルク「さて、後はこれで何を食べるかだが……ティルピッツはどの料理が好みだ?」…ヴァイス提督がスケジュールを片づけに行った後も残って手伝っていたビスマルクとティルピッツ……先ほどから妙に押し黙っているティルピッツにビスマルクが声をかける…

ティルピッツ「……ぜぇ…はぁ…」

ビスマルク「…なんだ、仕方のないやつだな。このくらいの作業でへたばるとは……普段から引きこもってばかりいるからだ……ぞ…?」

ティルピッツ「…はぁ、はぁ……はぁ……!」

ビスマルク「おい、一体どうした?」

アッテンドーロ「ねぇちょっと…顔が真っ赤よ?」

マエストラーレ「まるで左舷の航海灯みたいね……大丈夫なの?」

ティルピッツ「ヤー…大丈夫で…す……少し日差しが強かったから…のぼせただけ…で……」もうろうとした様子でふらふらしているティルピッツ

提督「暑気あたりね、ちっとも大丈夫じゃないわ。すぐ屋内に入って冷やさないと」

ビスマルク「まったくだらしない…と言いたいが、この日射しと熱気ではな……私が屋内まで連れて行く」

提督「いえ、私も一緒に行くわ。ビスマルクはそっち側を支えてあげて?」両方からティルピッツの肩を支え、屋内に連れて行く二人…

…食堂…

提督「それじゃあゆっくり下ろして……」

ビスマルク「ああ…まったく、この妹ときたら私に心配ばかりかけさせる……」そう口ではぼやきつつも、心なしか妹を気づかっている様子のビスマルク…

提督「まぁまぁ…この暑さの上に、普段ドイツの涼しさに慣れていて身体が追いつかなかったのね……とにかく身体を冷やしましょう」

ディアナ「…持ってまいりましたよ、提督」…普段は誰も食べないので食料品倉庫に放り込んである軍用携行糧食「ラツィオーネ・ヴィヴェリ・スペシアーレ」の箱に、氷の詰まったビニール袋をいくつも抱えてやってきた…

提督「ありがとう…それじゃあちょっと失礼して……」身体にこもった熱を逃がすため、ティルピッツの服を脱がして下着姿にする提督…いつもなら甘ったるい笑みを浮かべてあれこれイタズラに興じるところが、今回ばかりは真面目な顔で氷の入った袋を押しつける……

ビスマルク「よし、どこに当てればいい?」

提督「太い血管が身体の表面近くにある場所だから…首の側面、手首、脇の下、ふとももの付け根、足首……上は私がやるから、ビスマルクは下半身をお願いね」

ビスマルク「ヤヴォール」

ティルピッツ「……すみません、姉上…」白い下着姿で足先を氷袋の入った洗面器に突っこみ、椅子にもたれるように座り込んでいる…

ビスマルク「構うな。それより、これからは同じ過ちを犯さんように気を付けることだ……具合は大丈夫か?」

ティルピッツ「ナイン(いいえ)…まだくらくらします……」

提督「そうすぐには良くならないでしょうね…まずはこれを飲んで?」携行糧食の箱を引き破るように開けると、中に入っている軍用スポーツドリンクの素を水で溶かし、グラスを唇に押し当てた……

ティルピッツ「んくっ…ごくっ……ごくっ…」

提督「…ひと口づつでいいから全部飲むのよ?」

ティルピッツ「ヤヴォール……」

提督「とりあえずもう少し落ち着いたら、横にして休ませましょう」

ビスマルク「ヤー…ダンケ」

提督「ノン・ファ・ニエンテ(何でもないわ)……火照りはどうかしら…」自分の額とティルピッツの額をくっつける提督…

ティルピッツ「…っ///」

提督「やっぱり熱を持っているわね…しばらくはこのまま身体を冷やすのが一番いいわ」

ビスマルク「どうも世話をかけるな……」

提督「いいのよ、気にしないで?」

…しばらくして・ドイツ艦の客室…

提督「よいしょ……と…」まだ身体が火照っているティルピッツに肩を貸し、ピンと張った清潔なシーツも涼しげなベッドへと座らせる…

ビスマルク「済まなかったな、アトミラール・カンピオーニ」

提督「いいえ…私も気配りが足りなかったわ」

ティルピッツ「姉上…カンピオーニ提督……二人には迷惑をかけて…」

ビスマルク「いいから貴様は黙って休んでいろ。司令には私から何とか言いつくろっておいてやる……ではカンピオーニ提督、迷惑ついでにしばらく様子を見ていてもらえるか」

提督「ええ、もちろんいいわ…何なら私からもヴァイス提督に一言添えてあげましょうか?」

ビスマルク「いや。そうしたら「適切な水分補給もせずにはしゃぎまわり、あげくに他国の提督に迷惑をかけるとは…」と、より叱責を受けるだろう……被害は最小限に止めねばな」

提督「分かったわ。それじゃあ私がティルピッツを見ていてあげるから」

ビスマルク「ダンケシェーン…ティルピッツ、大人しくしていろよ?」

ティルピッツ「ヤー…」

提督「……ビスマルクはああ言っていたけれど…ドイツに比べたら南イタリアなんて熱帯みたいなものだもの、仕方ないわ」

ティルピッツ「ええ…とはいえ迷惑をかけたのは事実ですから……」

提督「いいのよ…それより座っているのはつらくないかしら?」

ティルピッツ「いえ、大丈夫です。あちこちに氷袋をあてていますし……」

提督「でも頭がくらくらするでしょう…?」

ティルピッツ「それも船のローリング(横揺れ)のようなものだと思えば…どうにか……」

提督「もう、せっかくここまで運んできたのだから今さらになってやせ我慢はなしよ…さ、横になって?」

ティルピッツ「ですが…」

提督「ふぅ…命令しなくちゃダメかしら?」

ティルピッツ「いえ……」

提督「じゃあ横になりなさいな?」

ティルピッツ「ならばお言葉に甘え……いえ、やっぱり止めておきます」

提督「どうして?」

ティルピッツ「その…///」

提督「なぁに?」

ティルピッツ「カンピオーニ提督のふとももに頭を乗せるなど……失礼極まりないことですから…///」

提督「構わないわ」

ティルピッツ「しかし…姉上が戻ってきたら何といわれ……っく!」ズキリと脈を打った頭痛に顔をしかめる…

提督「ほら、やっぱり横になった方がいいわ……ね?」

ティルピッツ「ヤー、分かりました……では…」恐るおそる身体を横たえていき、そっと提督のふとももに頭を乗せるティルピッツ…

提督「どう?」

ティルピッツ「ダンケ……少し楽になりました…」

提督「それはよかったわ…♪」左手でゆっくりと風を送りながら、右手で優しく額を撫でる提督……

ティルピッツ「すぅ……すぅ…」むっちりと弾力のある提督のふとももを枕にして寝入ってしまったティルピッツ…

提督「ふふ…この純粋な寝顔を見たら誰だって可愛がってあげたくもなるわよ…ね……?」

ティルピッツ「うぅ…ん……すぅ…」フィヨルドの雪氷のような白い下着と、火照りで淡い桜色になっている白い肌……寝息を立てるたびにひきしまった胸が上下する…

提督「…っ、がまんがまん///」柔らかい銀灰色の髪を撫でる手が無自覚でイケナイ方向へ伸びそうになるたびに自制を取り戻しては、ピクリと手を引き戻す…

ティルピッツ「ん……」

提督「あん…っ♪」寝返りを打って提督のふとももの間に顔をうずめてしまうティルピッツ…汗ばんでしっとりと濡れたふとももや割れ目に、ティルピッツの静かな吐息が吹きかけられる……

ティルピッツ「むふ…ぅ……すぅ……」

提督「もう…んふふっ♪」

…夕食時…

提督「…」

ライモン「提督、そんなにしげしげと自分の手を眺めてどうしたんです?」

提督「いえ…案外柔らかかったなぁ……って…」

ライモン「……あの、提督…まさかとは思いますが……」

提督「あっ、いえ…何でもないの♪」

ライモン「……お願いですから国際問題にならないようにしてくださいね…」

提督「だ、大丈夫よ…それより今夜はビスマルクが収穫したジャガイモで一品作ってくれるそうよ」

ドリア「晩餐はビスマルクの手料理ですか…」

提督「…美食家のあなたからしたら、外国の味を体験できるのは楽しみかしら?」

ドリア「ドイツ料理が楽しみになるというのは……そうですね、一週間ほどイギリス料理だったらそうなるかもしれません♪」にっこりとほほ笑みつつ、バッサリと切り捨てるドリア…

エリザベス「それはそれは…お褒めの言葉に感謝いたしますわ」

ドリア「いいえ……私は先にアンティパストとポレンタをいただいておくことにします。提督もおかわりをいかがです?」(※ポレンタ…トウモロコシでできた「そばがき」のようなこねもの)

提督「あー…いいえ、大丈夫♪」(…ディアナの手料理だってあるもの)

ドリア「そうですか?」

チェザーレ「ふむ…ドイツ料理がメインとは、提督は勇敢だな……チェザーレとてそんな冒険はできん」たっぷりと取り分けてもらったポレンタにサラミを添えるチェザーレ…

ビスマルク「……待たせたな諸君…出来たぞ!」ビスマルクが大皿を持って堂々とやってくると、物見高い十数人が辺りに集まって皿をのぞきこんだ……

フランチェスコ・クリスピ(駆逐艦「セラ」級)「うーん…なんというか……懐かしいような、そうでもないような感じがするわ……」(※43年イタリア休戦と同時に接収…ドイツ艦「TA.15」として戦没)

トゥルビーネ(駆逐艦「トゥルビーネ」級)「あー……うん、まぁ…そうよね……」(※同じくドイツ艦「TA.14」として戦没)

ビスマルク「なんだ…せっかくの料理が気に入らんか?」むっとした顔をするビスマルク…

トレーリ「わぁ、何とも言えない温かい匂いがします…美味しそうですね、ビスマルク?」イタリア・ドイツ・日本と所属を変えた「ルイージ・トレーリ」は三カ国語を操るだけでなく物腰も丁寧で、ビスマルクに微笑んでみせた…

ビスマルク「……そうかそうか!…ではカマラード(戦友)よ、たっぷり食ってくれ!」

トレーリ「ダンケ、ビスマルク…でも私はそんなにお腹が大きくないので、ちょっとだけ♪」親指と人差し指で「ちょっとだけ」としぐさをつけてウィンクするトレーリ…1000トンクラスの大型潜だけあって、しなやかなメリハリのある身体を動かすと腰の滑らかなラインがぐっと強調される…

ビスマルク「そ、そうか……ならカンピオーニ提督はどうだ?」

提督「ええ、頂くわ。でもそれより、まずはヴァイス提督に食べてもらわないと…ね♪」

ビスマルク「…う、うむ///」

ヴァイス提督「いえ。カンピオーニ提督にはティルピッツの事で面倒をかけてしまいましたから…ぜひ先に召し上がってください」

提督「そうですか…ではヴァイス提督にティルピッツの分も取っておかないといけませんね♪」そう言って湯気を立てている大皿をのぞきこんだ…

…ビスマルクの持っている大皿には焼きジャガイモがゴロゴロと転がり、その脇には茹でた数種類のヴルスト(ソーセージ)と付けあわせのザワークラウトが並んでいる……別にまずそうではないが見栄えのしない地味な感じで、ビスマルクが「調理した」と自慢するほどの手がかかっているようには見えない…

提督「えーと…それでは白ソーセージをいただきます」割れ目から湯気を上げている焼きジャガイモに白ソーセージを取り、モーゼル地方のすっきりした白ワインを選ぶ…

ビスマルク「そんな量でよいのか?」

提督「ええ、ありがとう…カヴールは?」

カヴール「そうですね…結局修理に明け暮れただけでしたが、私もドイツ艦だったこともあるわけですし……少しいただくことにします」(※43年トリエステ港で修復中ドイツ軍の手に落ち、結局修理中のままで45年に空襲で沈没)

提督「さてと…それじゃあ……はふっ…♪」熱い焼きジャガイモにかぶりつき、口をぱくぱくさせる提督……ハーブが効いた肉汁たっぷりの白ソーセージには粒マスタードをつけ、口の中の脂っこさが気になったら酸味のあるザワークラウトをつまむか、モーゼルワインを傾けてさっぱりさせる…

グレイ提督「…なかなか美味しいですよ、ヴァイス中佐」相変わらず、かすかに見下したような微笑みを浮かべながら話しかけた…

ヴァイス提督「は、ありがとうございます」

グレイ提督「ええ。なにせ蒸したり焼いたりしただけですものね……♪」

ヴァイス提督「…っ」

提督「ふふっ…ですがイギリス料理のように素材を不味くしないだけ、まだドイツ料理の方が救いがありますね♪」

ドリア「まぁ、私に言わせればどっちもどっちです……あぁ、やっと美味しそうな匂いがしてきました…♪」

…別の日・食堂…

ロモロ「今日の一品は私たちが作ったの…さぁどうぞ、提督♪」

レモ「レモの愛情がたっぷりこもってるからね……そうだ、レモが食べさせてあげる♪」

提督「あらあら…そんな事をされたらいくらも食べないうちにお腹いっぱいになっちゃうわね♪」

…イタリア最大の2000トンクラスという巨大輸送潜「R」級の艦娘だけに、ばるんっ…と弾む爆乳とむっちりした身体を揺らしながらお皿を置くロモロとレモ……見た目はなかなか美味しそうなオムレツで、キノコのクリームソースが添えてある…

レモ「はい、あーん♪」

提督「ふふっ、あー……っ゛ん!?」にやけた表情でレモに「あーん」してもらっていたが、オムレツを口に入れた瞬間むせ返った…

ロモロ「ちょっと、大丈夫…?」

提督「けほっ……これ、かなりしょっぱいわ…」涙目で顔をしかめる提督…

レモ「えー?」

提督「…ちょっと食べてみる?」

ロモロ「うん…最初は提督に食べてもらおうと思ったから味は見ていないの……んむっ…」

提督「ね?」

ロモロ「そう?…少し濃い味だけど、そんなにしょっぱい?」

提督「……え?」

レモ「じゃあレモも…あーん♪」

提督「はい、あーん……」

レモ「んー…ちょっと濃いめだけど普通の味じゃない?」

提督「あー……塩はどの位振ったの?」

ロモロ「卵二つのオムレツだから…小さじ二杯にしておいたけど」

提督「!?」

ロモロ「そんなに多くない……よね?」

提督「えーと…卵や牛乳、生クリームは塩味が効きやすいから……その半分でも多いくらいだと思うわ…」(道理でしょっぱいわけね…)

レモ「レモはそんなにしょっぱいとは思わないけどー?」

提督「ふー…「肉食獣は味覚が弱い」っていうのは本当なのかも知れないわね…」伝説にある「狼に育てられた乳飲み子」でローマ建設の祖である双子だけに何かと狼らしいところがある「ロモロ」と「レモ」…

提督「…」せっかく作ってくれた料理を食べずに捨てるのは気が引ける…が、しょっぱいオムレツを食べきる自信もない提督……

レモ「嫌なら食べなくってもいいよ…?」

ロモロ「私たちもちゃんと調べれば良かったわけだもんね…でも、つい作りたい気分が先に立っちゃったから……」

提督「ありがとう…二人のその気持ちが嬉しいわ……///」横から身を乗り出してくるロモロとレモの胸が身体に押し付けられている…

レモ「…それじゃあ、三人で食べさせあいっこすればどうかな……レモかしこーい♪」

ロモロ「それなら提督の食べる分は少ないから、どうにかなるはずよね……どう、提督?」

提督「そうね……本当は二人が作ってくれたのだから全部食べてあげたいけれど…」

レモ「無理しなくっていいよ……でもそのかわりに「あーん」して?」

提督「ええ、そのくらいはお安いご用よ…はい、あーん♪」

レモ「あー…んっ♪」

ロモロ「じゃあ私にも…あーん」

提督「はい、あーん…♪」

レモ「ふぅ、ごちそうさまでした……ごめんね、提督?」

提督「いいえ…私の方こそせっかく作ってくれたのに残しちゃって…」

ロモロ「しょっぱいのは我慢できないもの……あ♪」

提督「?」

ロモロ「ふふ、口直しをどうぞ……んちゅ…ちゅるっ……ぴちゅっ…♪」

提督「んっ…ふ……んんぅ///」

…また別の日…

提督「ふぅ…ちょっと疲れたわ……」ホコリと同じでいつの間にかに溜まってしまう書類を片づけるべく、執務机にかじりついていた提督…長ったらしい書式の申請書や請求書を書き上げて万年筆を置くと、ぐったりと椅子にもたれかかった…

ライモン「それじゃあお茶を淹れてきますね……それともコーヒーがいいですか?」

提督「んー…そうね、紅茶にするわ」

ライモン「了解」

カヴール「ふふ、お疲れ様です…よろしければ肩でもさすってあげましょうか♪」

提督「ええ、お願い。もっとも、二人に手伝ってもらっておきながらあれこれしてもらって……こき使っているみたいでちょっと複雑な気分ね」

カヴール「いいえ、私が好きでしていることですから……それに…♪」むにゅ…っ、と下から乳房を支えるように揉む…

提督「あんっ…♪」

カヴール「ふふ、柔らかいのに弾力と張りもあって……まるで夢のような触り心地です♪」

提督「あん、もう…っ///」

ライモン「…」

カヴール「あら、ライモンド……ふふ、いたずらしている現場を見られてしまいましたね♪」

ライモン「構いませんよ…ええ、別に構いませんとも」

提督「…ごめんなさいね、ライモン」

ライモン「別にいいです…っ///」

提督「あぁもう…すねないで、一緒にお茶にしましょう?」

ライモン「…」

提督「お菓子もつけるから…ね?」

ライモン「……っ、わたしはお菓子でつられるような安い女じゃありませんっ///」

提督「…じゃあ今夜、二人きりで……ね?」

ライモン「も、もう…っ」

提督「…それでどうかしら?」

ライモン「ふぅ、分かりました…///」

提督「ふふっ、よかったわ…怒ったライモンも威厳があってステキだけれど、やっぱり笑顔が一番似合うわ♪」

ライモン「…っ、提督はいつもそうやって///」

提督「ふふっ……はぁい、どなた?」

アメティスタ(中型潜シレーナ級「アメジスト」)「…失礼いたします、提督」

提督「ええ、いらっしゃ……きゃあっ!?」

ルビノ(シレーナ級「ルビー」)「あぁ提督っ、会いたかったあいたかった…会いたかったわ!」いきなり提督の両頬を手で押さえると、紅いポニーテールの房を揺らしつつ、舌をねじ込みむさぼるようなキスを交わす……

提督「んぅぅっ…んふぅ///」

アンブラ(ペルラ級「琥珀」)「もう…そのくらいにしておいたら?」

スメラルド(シレーナ級「エメラルド」)「本当にそうですね……提督、実は私たちも一品を作って来たのですが…」

提督「今日はスメラルドたちの番だったものね…それで、どんな料理を作ったの?」

トパツィーオ(シレーナ級「トパーズ」)「ふふ、これなんだけれど…♪」

提督「まぁ…とっても綺麗ね♪」トパツィーオの持っているお盆には、宝石のようなフルーツをふんだんに盛り合わせた大きなタルトが載っている…

アメティスタ「私たちの色を連想させる果物を使った「宝石のタルト」…ぜひ提督に召し上がって頂きたくて。もちろん、ライモンドとカヴールもご一緒に」

カヴール「まぁまぁ、私まで誘っていただいて…ではお言葉に甘えさせてもらいますね♪」

ライモン「それじゃあトパツィーオたちも一緒に食べましょう……いまティーカップを用意してきますから」

トパツィーオ「ありがとう、ライモンド…優しいのね♪」

ライモン「いえ、そんな…///」

提督「それでは…あむっ、んむ…んむ……」

…カラフルな果物をぎっしり載せた五号サイズ大のタルトを切り分け、フォークで口に運ぶ提督…「アメティスタ」の紫は赤ワインで煮詰めた白桃のコンポートに、紅の「ルビノ」は真っ赤なサクランボ、「アンブラ」の琥珀は杏のスライス…その上に可愛く盛りつけられているのは「スメラルド」をイメージしたマスカットと「トパツィーオ」をイメージして球形にくりぬいたマンゴーの果肉……タルトの台はさっくりと歯切れがよく、敷き詰められたカスタードとアーモンド粉末を練り込んだ生地がふんわりと甘い…


提督「…はぁぁ……///」

ルビノ「どう、私の愛のこもったタルトは?」

提督「……あえて言うなら、とっても幸せな気分よ…口の中からこの甘さを逃がしたくないくらい///」

ルビノ「ふふ、やったわね!」

アメティスタ「はい、とっても嬉しいです…ライモンドはどうですか?」

ライモン「……っ、すごく美味しいです…♪」

カヴール「ええ、本当に…もしよかったら、もう一切れいただいてもよろしいかしら」

アンブラ「さぁどうぞ……カヴールったら結構食いしんぼうさんなんですね?」

カヴール「ふふ、なにせとっても美味しいですから…♪」

トパツィーオ「嬉しいけど、食事に差し支えないように気を付けてね?」

カヴール「ええ」

提督「こんなに美味しいタルトならいくらでも入りそうよ…ね、ライモン♪」

ライモン「もう…提督は少し召し上がり過ぎです」

提督「ふふ、怒られちゃったわ♪」

アメティスタ「提督、あんまりライモンドに気を使わせては駄目ですよ?」

提督「それもそうね……自重します」

カヴール「うふふっ、そんな事できっこありませんのにね♪」

提督「…ごもっともです……///」

………



…しばらくして・食堂…

グレイ提督「…ふう、少し休憩といたしましょう……あら、カンピオーニ提督」

提督「あ、メアリ…ちょうどいいところに♪」

グレイ提督「はて、何でしょうか?」

提督「今から、メアリに重大な任務を与えます……心してかかって下さい」

グレイ提督「……その内容は?」

提督「…艦娘たちの作ったタルトの評価を兼ねて、ここでお茶を召し上がって行ってもらいます」

グレイ提督「まぁ…ふふ♪」

提督「責任重大かつ繊細な任務ですが……取りかかる準備は出来ていますか?」

グレイ提督「ええ…わたくし、そのような任務でしたらいついかなる時でも遂行してみせますわ」

提督「それではスメラルド、後は任せるわ」

スメラルド「はい…ではグレイ提督、私がお給仕いたしますね…♪」

グレイ提督「ありがとう……ん」

スメラルド「……どうでしょうか?」

グレイ提督「ふぅ、果物の華やかな色合いに爽やかな甘い汁気、さっくりとした生地…ほぼ満点ですわね」ダージリンを少しづつ口に含みながら、じっくりとタルトを味わう…

提督「よかったわね、みんな?」

アンブラ「はい、今回も大金星です♪」

…ある日のお昼時…

ライモン「て、提督…「あーん」してくれませんか///」

提督「もちろん。ほかならぬライモンの頼みですもの……あーん♪」

ライモン「あーん…」

提督「…んふふっ、ライモンが「あーん」してくれたから倍も美味しく感じるわ♪」

ライモン「///」

ドリア「それでは私からも…はい、あーん♪」

提督「あー…んぅ、クリームが付いちゃったわ…」

ドリア「あ、ごめんなさい……いま取ってあげますから…ちゅっ♪」

提督「もう…♪」

ヴァイス提督「…」

提督「……どうかしました?」

ヴァイス提督「ああ、いえ……それにしてもカンピオーニ提督は艦娘たちから大変に愛されているな…と思いまして」

提督「ふふっ、そうでもないですよ?」

ヴァイス提督「…そうでしょうか」

提督「ええ…私よりもモテる娘なんて、ここにはゴロゴロしていますから」さりげなく一つのテーブルに視線を向けた…

ヴァイス提督「?」

…「ローマとローマ軍団」のテーブル…

チェザーレ「…はは、そう抱きつくな。そうしがみつかれては、チェザーレが食べられぬ♪」

ロモロ「なら私たちが食べさせてあげるわ♪」

レモ「そうそう…ほらチェザーレ「あーん」して?」

チェザーレ「まったく仕方ないな…では、あーん…」

レモ「あーん♪」

チェザーレ「んぐ…もぐ……うむ。美女が口に運んでくれるからか、なおのこと美味いぞ♪」

レモ「えへへぇ♪」

ローマ「その…チェザーレ、よかったらこのラビオリも食べませんか……?」

チェザーレ「おお、いただこう……ロモロにレモよ、いい加減に腕を放してくれんと身じろぎ一つ出来ぬではないか」

ローマ「あ、なら私も「あーん」しますから…///」

チェザーレ「済まぬな、ローマ……必ず礼はするのでな、期待していてもらいたい♪」少し好色な笑みを浮かべて、意味ありげなウィンクをするチェザーレ…

ローマ「…っ///」

…「サヴォイア王家とイタリア統一の英雄たち」のテーブル…

アオスタ「エウジェニオ…いい加減、食事時くらいはちゃんとしなさい///」向かいに座っているエウジェニオを叱りつけるアオスタ…ソ連に渡った生真面目な姉は、ギリシャに渡った色白美人で口説き上手な妹に苦労が絶えない…

エウジェニオ「ふふ…そんな固いことを言わないの、姉さん♪」

アブルッツィ「んっ、んんぅ……エウジェニオ…ぉ///」

エウジェニオ「あらあら、とっても滑らかで…美味しそう♪」さわさわっ…♪

アオスタ「エウジェニオ…っ!」

エウジェニオ「姉さんったら何を怒っているの?…ラビオリの話なんだけど?」

アオスタ「もう、嘘をつかないの…ぉっ!?」

エウジェニオ「どうしたの、アオスタ姉さん…姉さんってば♪」ぐりっ…くちゅっ♪……テーブルクロスの下で器用にパンプスを脱ぐと、白いストッキングを履いた長い脚を伸ばしてアオスタの脚の間をつま先で弄りまわす…

アオスタ「え、エウジェニオ……あなたね…ぇ///」

エウジェニオ「姉さんったら何をカリカリしているのかしら……そう思わない?」

ガリバルディ「まったくね…アオスタ、貴女はその堅苦しい態度をすこーし直しなさいよ♪」アオスタの隣に座っているのはアブルッツィの妹にしてイタリア王国軽巡の究極形…そして名前ばかりではなく「ジュゼッペ・ガリバルディ」の性格も受け継いだらしく、たいへん女好きのガリバルディ……

ゴフレド・マメリ(中型潜「マメリ」級)「んっ、ガリバルディ……ぃ///」ガリバルディと共闘した愛国詩人のマメリは、向かいのガリバルディが伸ばしたつま先に足の甲をくすぐられている…

ガリバルディ「ふふっ、マメリったら…初心で可愛いわ♪」

マメリ「んんぅ…///」

エウジェニオ「ふふ、姉さん…っ♪」

アオスタ「んっ…ひぃ、んぅぅ……ひゃうっ…///」

ガリバルディ「ところでアオスタ…私の言っている事、ちゃんと聞いてる?」すりっ…♪

アオスタ「はひっ…はふぅぅ……///」ガリバルディの右手が優しくふとももをさすりあげ、エウジェニオのつま先が感じやすい場所を的確にえぐる…

アブルッツィ「ひゅぅ…はふっ……ひぐっ…///」

カヴール「まぁまぁ…♪」

…「スペインにゆかりのある艦娘たち」のテーブル…

アレッサンドロ・マラスピーナ(大型潜「マルコーニ」級)「ふふ、私がみんなに新しい水平線をみせてあげるわ…ね?」(艦名がスペイン海軍士官として探検したイタリア人航海者)

ガリレオ・ガリレイ(大型潜「アルキメーデ」級)「……私こそ、皆さんをピサの斜塔から落ちるほど気持ち良くしてあげますよ♪」(スペイン内乱へ極秘派遣)

ガリレオ・フェラリス(アルキメーデ級)「いぃっ、二人ともどこを触って…んくっ///」(ガリレイに同じ)

コンソーレ・ジェネラーレ・リウッツィ(大型潜「リウッツィ」級)「あ、あっ……///」(艦名がスペイン内乱で亡くなった軍人)



提督「…ね、私よりモテる娘なんてたくさんいますよ?」

ヴァイス提督「…」

ビスマルク「…」

ティルピッツ「///」

グレイ提督「…あー…はん」

エリザベス「さすがはイタリア…でございますね」

エメラルド「…っ///」

ドリア「ふふ…ちなみに提督は受け責めともに甘くて優しく、エウジェニオは技巧を尽くして全身がとろけるような愛し方をしてくれます…ガリバルディは革命の闘士だけあって愛も激しいですから、燃えるようなひと時を過ごせますよ♪」

提督「もう、ドリアったら…それは言わなくてもいいの///」

ドリア「ふふっ…ごめんなさい、提督。つい口が滑ってしまいました…♪」真っ赤になってうつむいたヴァイス提督やティルピッツを見て、いたずらっぽくほほ笑んだ…

グレイ提督「…なるほど」(体験した限りではその通り…ですわね♪)


………

…別の日・作戦室…

提督「さて、と…いよいようちの鎮守府が持っている建造枠を使い切る時が来たわね」そう言って、厚い布表紙に金文字が入っている立派な「旧王国海軍・艦艇図鑑」をバタンと閉じた…

カヴール「またまた新しい娘がここにやって来るわけですね…ところで提督?」

提督「んー?」

カヴール「イオニア管区司令部から与えられている枠から考えると、最後も潜水艦ということになりますね?」

提督「ええ、その通りよ…何やかやで中型潜は小回りが利いて使い勝手もいいし、ここも最近は「実績がある」とか言って、請け負わされる哨戒範囲が拡大されたから……」

カヴール「提督も大変でいらっしゃいますね?」くすくすと微笑みながら、いたずらっぽく小首を傾けるカヴール…

提督「いいえ…むしろこんなにいい身分だとは思わなかったわ♪」

カヴール「そうですか?」

提督「ええ。可愛い娘たちにかこまれて……って言うのは抜きにしても、フリゲート艦みたいにぺたんこなマットレスの二段ベッドじゃなくて、ぜいたくな個室と立派な天蓋付きベッド…しかも誰かと一緒に昼まで寝ていようが、シーツをしわくちゃにしていようが怒られないし…お風呂も十五分で入らなきゃいけない狭いシャワー室の代わりに古代ローマ風の大浴場……美味しくて「熱いものは熱く、冷たいものは冷たい」式の豪華な食事が三食…それにワインにシャンパン……いいところをあげたらキリがないわ♪」

カヴール「それでは、提督になってよかったですか?」

提督「ええ、もちろんよ。もっとも、最初は私に務まるかどうかは不安だったけれど…みんなが手助けしてくれるおかげで、どうにかこうにかやっているわ」

ライモン「そんなことありません、提督は立派に務めを果たしておられます…っ!」

提督「まぁ、ライモン///」

ライモン「あっ…いえ……その、つい思ったことが口から…///」

提督「いいの。そう言ってくれて嬉しいわ……それに、やっぱり口に出して言ってもらうのが一番好きよ♪」優しく頬を撫でる提督…

ライモン「///」

提督「…あと、将官になったことで気づいた「いいこと」もいくつかあったわ」

ライモン「なんですか?」

提督「それはね……理不尽な上官の言いぐさをもう聞かなくて済むこと♪」

カヴール「ふふっ…まぁまぁ♪」

提督「もちろん同時に、いい人の意見を好きなように取り入れられることもあるわ…やっぱり「言説高邁でも位低ければ通らず」って言うのが軍の基本みたいなものだから……」

カヴール「そうですね」

提督「後は車のダッシュボードに置く「将官用ステッカー」かしらね…たいていの場所ならアレで交通警察とかカラビニエーリが遠慮してくれるもの♪」

カヴール「まぁまぁ、提督ったら権威をかさに着て…いけない方ですね♪」

提督「いいじゃない。そのかわりにお給料はスズメの涙なんだから」

ライモン「あー…この前見せてくれましたけど、わたしより少なかったですものね」

提督「そうなのよ…スーペルマリーナ(海軍最高司令部)いわく、ここ十数年で「深海棲艦」相手に功績を挙げて昇進した士官は多いし、かといってイタリアは財政がアレだから、全員に階級通りのお給料を捻出するのはムリだっていうの…だから形だけ昇進させるけれど、お給料は定期昇給以外「据え置き」ですって」

カヴール「では、失礼を承知で伺いますけれど……提督のお給料はどの階級で据え置きなのですか?」

提督「…中佐」

カヴール「あらまぁ…」

提督「だからここで寝起きして、三食をごちそうになれるのはありがたいわ…♪」冗談めかしてぱちっとウィンクする提督…

カヴール「ふふっ…では今度から提督のお食事を人質にして、うんとワガママを言うことにします♪」

提督「もう、それは困るわね♪」

ライモン「あの…お二人とも、午前中に建造を済ませる予定じゃなかったんですか?」

提督「はいはい」

カヴール「ふふ、分かっております♪」

提督「さてと…今日の建造にはフィザリアとジャンティーナ、それにネレイーデにオンディーナが来てくれるって言っていたわ」

カヴール「海の精ネレイーデ(ネレイス)に、水の妖精オンディーナ(ウンディーネ)ですか…潜水艦の娘を呼ぶのにふさわしいですね」

提督「ええ…でもフィザリア(カツオノエボシ)とジャンティーナ(アサガオガイ)はいい娘だけれど、名前がクラゲの仲間だけにちょっとぼんやりしているから、もう二人くらい手伝いが欲しいわね…」

ジョヴァンニ・ダ・プロチーダ(中型潜「マメリ」級)「あ、提督…ハーイ♪」

ティト・スペリ(マメリ級)「モーニン、提督…元気してる?」

…部屋の観葉植物を日に当てて戻って来たらしいプロチーダと、その横でおしゃべりしながら一緒に歩いているスペリ……プロチーダは小ぶりな植木鉢を片手で抱きしめていて、もう片方の手を振った…どちらも43年からは連合国側について米軍の対潜訓練で相手役を務めていただけあって、艦娘としても少し「アメリカ流」の軽い態度をとっている…

提督「チャオ、プロチーダ。ちょうどいいところに来てくれたわね♪…もし時間があるようなら、すこーし私のお手伝いをしてくれないかしら?」

プロチーダ「オーケー」

提督「今から工作室に行くのだけれど、いい?」

プロチーダ「オーケー」

提督「あー…本当に大丈夫ね?」

プロチーダ「オーケー」

提督「ふぅ……プロチーダ、何にでも「オーケー」はやめなさい」

プロチーダ「…オーケー」

提督「……あのね、ナタリー・ポートマンじゃないんだから…」(※映画「レオン」)

プロチーダ「あはは、やっぱり分かってくれた♪」

スペリ「さっすが我らが提督…ナイス♪」

提督「はいはい…それじゃあ一緒に来てちょうだいね」

プロチーダ「オーケー♪」

提督「…」

…工作室…

提督「うわ、これはまたずいぶんと暑いわね…って、日陰で二十九度もあるわ……」工作室の壁に掛けてある温度計をのぞいて白い詰襟の上を脱ぐと、シャツの胸元をはだけてぱたぱたと扇ぐ…

カヴール「今日はあまり風がありませんから…それでもここは日差しが差しこまない分だけ涼しいですよ?」

提督「そうは言っても作戦室は冷房が効いていたから……ふぅ」

カヴール「提督はお若いですね。どうも私は「エアコン」というのが苦手でして…」

提督「そう言われてみると…カヴールって何でもそつなくこなせるけれど、電化製品だけは苦手よね?」

カヴール「ええ、どうも新しいものは覚えきれなくっていけません。それに、使ってみても「人が関わる暖かみ」を感じないと申しましょうか……」

ライモン「何となく分かります…わたしも交換手さんの出ない電話に慣れるのにはずいぶんかかりました」

提督「…なんて言うのかしら……まだまだ高校生くらいに見えるライモンがそう言うのを聞いていると、すごい違和感があるわね」

ライモン「こ、高校生だなんて…///」

カヴール「あらあら…ライモンドったらすっかり照れちゃってますね♪」

ライモン「あ、いえ…っ!」

提督「いいのよ。初々しくって可愛いわ♪」

プロチーダ「ヒュー♪」

スペリ「フゥー、二人ともお熱いですねぇ♪」

ライモン「もう、からかわないで下さいっ///」

ネレイーデ「お待たせしました、提督。ちょっと遅れちゃいましたね♪」淡いオーシャンブルーのワンピース姿をしたネレイーデ…美しいがどこか無邪気な雰囲気が、なんとも海の妖精(ニンフ)らしい……

オンディーナ「ごめんなさいね?」子供がわざと水たまりを選んで渡るように、数歩ずつ軽く跳ねるようにしながらやってきた……裾に水しぶきのような白いレースをあしらった薄青いミディアム丈のワンピースが目に爽やかで、いかにも涼しい…

提督「いいえ、私も今来たところだから大丈夫よ…ところでフィザリアとジャンティーナは?」

ネレイーデ「あら、二人ともまだ来てないのですか…」

提督「ええ、そうなのよ…まったく、どこで油を売っているのかしら…」

ジャンティーナ「…ふー、遅くなりました……ぁ///」

フィザリア「ふぅ…ふぅ、はぁ……///」

…頭には薄紫色の丸いカタツムリの殻…に見えるアサガオガイの殻を模した飾りを乗せ、クラゲの仲間らしく青いシースルーの薄物一枚と、その下にミニマム丈のベビードールのような同系色の服を着ているジャンティーナ…態度はいつも通り、風任せ波任せのクラゲ族らしくとろんとしているように見えるが、フィザリアを見る目がいつもよりねちっこくていやらしい……反対にフィザリアは目の焦点も合わなければ息も絶え絶えで、よく見ると青紫色をしたサマードレスの太ももからとろりと粘っこい蜜を垂らしている…

提督「もう、仕方のない娘たちね♪」…クラゲ類…当然フィザリア(カツオノエボシ)も獲物にしてしまうジャンティーナだけに、一戦交えてきたらしい…提督はくすくすと微笑しながらウィンクした…

カヴール「…あらあら♪」

提督「さてと……それじゃあ準備の方はよろしいかしら?」

ネレイーデ「はい…♪」

オンディーナ「もちろんです……さぁ、水とたわむれましょう♪」

プロチーダ「オーケー♪」

スペリ「いつでもウェルカムです♪」

ジャンティーナ「ふふ…フィザリアもいいですよね……♪」

フィザリア「はひぃ、ふぅ…ふぅ…提督、こっちも準備はいいです……よ…///」

提督「ふふっ、了解…それじゃあ建造開始♪」

………

…建造中…

アンフィトリテ(シレーナ級)「ふふ、いよいよ新しい娘が来るそうですね……私は楽しみですが、あなたはどうなのかしら?」

ネレイーデ「ええ、アンフィトリテ。私も楽しみです」

トリトーネ(フルット級)「さて、調子はどうなのかしら…って、おかあ……じゃなくて、アンフィトリテも来ていたのね」

アンフィトリテ「ふふ、私とあなたは母娘なんですから「お母様」でも構いませんよ…我が愛しの娘よ♪」(※トリトーネ…ポセイドンとアンフィトリテの子供)

トリトーネ「…っ///」

…三つ又矛を持ち、腰には角笛を提げているトリトーネ……いつもはいかめしいくらいにしっかりしているが、由来が「海神ポセイドンとアンフィトリテの子供」というだけあって、鎮守府ではアンフィトリテと母娘かつ百合という「禁断の関係」にある……当然、アンフィトリテには全く頭が上がらない…

シレーナ(シレーナ級「セイレーン」)「らら…私もちょっと様子をのぞきに来たの……ラララ♪」

提督「あら…シレーナ♪」

ライモン「ん、くっ…///」

シレーナ「様子はどうなのですか…らぁ~、ララ…♪」

…優しげな見た目に、身体をうずかせ、心もとろかすような歌声をしているシレーナ(セイレーン)…ミュージカル映画のように優雅な足取りでやって来て、滑らかな動きで腰掛けに座った……組んだ足は長くてすんなりしていて、くるぶしにヒレ飾りのついたハイヒール風の靴も脚線美を引き立てている…

ウアルシエク(アデュア級)「あ…みんな様子を見に来たノ?」

提督「そのようね…ウアルシエクも?」

ウアルシエク「ええ、そうなノ……だって、これから一緒ニ過ごすんだもの」

…少し浅黒い肌で、訛りも結構あるアデュア級のウアルシエク……提督は腰掛けをすすめて、それから頬に親愛を込めたキスをした…

提督「さて…と、それじゃあもう少し腰掛けを出しておきましょうか」

カヴール「ええ、うふふっ…この様子ですと鎮守府中の娘が来るかもしれませんものね♪」

………

シレーナかわいい

>>340 まずは感想グラツィエです。「シレーナ」は歌だけで魂をとろかすことが出来る娘ですが、歌を聞いてもらえないと恥じて(ギリシャ神話では死んでしまうそうですが…)どこかに行ってしまったりします…


…本当なら、戦前のイタリアが「ソ連海軍向けに設計した大型駆逐艦」(後の殊勲艦「タシュケント」)を基本に建造した軽巡(大型駆逐艦?)の「カピターニ・ロマーニ」(スキピオーネ・アフリカーノ)級12隻(完成三隻)や、未成に終わった旧シャム(タイ)海軍向けの防空軽巡「エトナ」「ヴェスヴィオ」に、空母「アクィラ」や「スパルヴィエロ」などがいるのですが……そう言った未成艦や計画のみの「艦娘」については別に機会を設けて、鎮守府に現れたりさせたいと思っております


…いずれにせよ、また数日のうちに投下していきますのでお待ちください…

…数時間後…

提督「もうそろそろね…着るとどうしようもなく暑いけれど、仕方ないわ」お菓子のかけらを払い落とし、軍帽を頭に乗せる提督…椅子の背にかけていた白い詰襟も、きっちり襟元までボタンを留めた……

ライモン「何しろ何人も詰めかけていますし…わ、温度計が三十二度になっています」

提督「あー…聞きたくないわね」

カヴール「まぁまぁ。食堂は「うんとごちそうを用意しておく」とのことでしたから♪」

提督「…もう、エリトレアったら気が早いんだから」

カヴール「ふふ、いいではありませんか…気分転換にもなりますし♪」

提督「まぁね……さ、出てくるわ」

カヴール「はい」

バリラ(大型潜「バリラ」級)「こうして見ると感慨深いものねぇ…」

スクアーロ(中型潜スクアーロ級「サメ」)「ホントにね…まぁ何であれ、私としてみれば白くて柔らかい「噛みちぎりやすそう」な娘だといいんだけど♪」

提督「こらこら…流血の惨事はなしでお願いするわよ?」

スクアーロ「大丈夫大丈夫…ちょっとだけよ♪」ニタリと鋭い牙…のような白い歯を見せるスクアーロ…

提督「はい、それじゃあおしゃべりはそこまで……アテンツィオーネ(気を付け)!」


…建造のたびごとに工作室を「青の洞窟」のようにしてきた鮮やかな青い光がスーッと薄れていき、視界が戻ると艦娘たちが立っていた……身長は中学生くらいのすっきりとした身体つきで飾り気が少なく、数人は身体中に水銀のような金属光沢があるウェットスーツ、あるいはSF作品のヒロインがまとうような艶やかなボディスーツのようなもの…を身に着けていて、そこからつんと尖ったほどのいい乳房や、提督には真似できないお腹の引き締まったライン…そしてきゅっと伸びた脚がぴっちりと浮き上がっている……


提督「さてと……まずは、「タラント第六」へよく来てくれました。司令のカンピオーニ少将です♪」

艦娘「グラツィエ、提督…んーと、とりあえず自己紹介が必要よね?」まるで素晴らしいピストルのように金属的な青みを帯びた黒色の髪をツインテールにし、ぴっちりしたボディスーツに身を包んでいる艦娘が言った…

提督「ええ、よろしくお願いするわ♪」

艦娘「了解…中型潜アッチアイーオ級の一番艦、「アッチアイーオ」(鋼鉄)よ……よろしくね♪」黒く輝く瞳から熱っぽい視線が提督にそそがれ、それから愛らしい笑みを浮かべると、軽く前かがみになった提督の左右の頬…というより唇ギリギリのところに音高くキスをした…

提督「んんぅ…こちらこそ、よろしくね♪」

アッチアイーオ「ええ……私、提督のこと大好き…っ///」提督の手を温かな両手でぎゅっと包み、上目づかいでささやいた…

提督「んふふっ、ありがと……それで、あなたが…」

艦娘「アッチアイーオ級「アラバストロ」(雪花石膏…あるいは白大理石)です。よろしくお願いします」こちらはアッチアイーオとは正反対に、アルビノのような真っ白な肌と髪に、瞳も薄いグレイをしていて、フリル付きのワンピース型水着のような物を着ている

提督「ええ、こちらこそ♪」

艦娘「同じく「アルジェント」(銀)です……いぶし銀の魅力、お見せいたします」…まるで何も着ていないのと変わらないほど身体にぴちっと張りついている銀のボディスーツに銀髪…引き締まった身体は水滴が流れていきそうなほど滑らかで、鋭い形のハイヒールがきゅっとヒップを持ち上げている……

提督「ふふ、私も派手な金より落ち着いた銀の方が好みよ♪」

アルジェント「そう言ってもらえて光栄です…」うやうやしく提督の手の甲にキスをする…

艦娘「…次は私ですね。私はアッチアイーオ級の「アステリア」(ヒトデ)です…夜に輝きこそしませんが、海中では私が唯一のステラ(星)ですよ♪」…星のペンダントを胸元につけ、頭のサイドに小さいヒトデの飾り物をつけている

提督「ふふっ、そんなことないわ…アステリアの瞳はシリオ(シリウス)みたいに十分輝いて見えるもの♪」

アステリア「そ、そうですか…嬉しいです///」

艦娘「次は私の番ですか…「アヴォリオ」(象牙)です、どうぞ大事になさってくださいね?」…クリーム色の髪に象牙色のパレオ付き水着で、優雅に挨拶した

提督「もちろん、ひとかけらだって欠けさせはしないわ♪」

艦娘「アッチアイーオ級「ブロンヅォ」(ブロンズ。青銅)です…前は鹵獲されてあちこちたらい回しにされてしまいましたが、今度は提督のもとで頑張りたいものです」

提督「ええ…ずっと一緒にいてね?」

艦娘「初めまして、提督…私はコバルト。前は青二才だったけれど、今度の私はひと味違うわ♪」…すっきりしたコバルトブルーの瞳に青っぽい髪……競泳水着風の「艤装」は灰緑色の斑点迷彩を施した灰色で、アクセントとしてコバルトブルーの線が脇に沿って入っている…

提督「そう…それじゃあ期待しているわね♪」

艦娘「では…アッチアイーオ級「ジアダ」(カット用の硬石)です。たとえダイアモンドのような堅陣であろうと切り裂いてみせます」

提督「ええ、頼りにしているわ…♪」きりりと引き締まった口もとに軽く接吻する…

艦娘「ボンジョルノ、「グラニト」(花崗岩・御影石)です…私に立派な戦績を彫り込ませて下さいね?」黒御影のような艶やかで滑らかな髪につるつるした手ざわりのボディスーツ…それも安っぽい光沢ではなく、本当の御影石で出来ているような質感をしている……

提督「ええ、私も頑張るわ……それで、あなたは…えーと……?」

艦娘「あ、あぁ……初めまして、提督「ニケリオ」(ニッケル)です」

提督「よろしくね?」

ニケリオ「ええ…はい」

提督「こちらこそ…で、あなたが……うっ!?」色味も渋く、ゆっくりした話し方のニケリオ…反対に隣にいる艦娘は直視できないほど肌が明るく、銀白色に輝いているように見える……

艦娘「ボンジョルノ、提督…アッチアイーオ級「プラティノ」(プラチナ)です♪」軽く歯を見せて笑うと、ますます眩しい…が、決してけばけばしい明るさではなくて、月が目の前にあるような涼しげな明るさをしている……

提督「え、ええ…」サングラスをしていないのを少し後悔しながら、ほっぺたの位置を慎重に確かめつつ挨拶をすませる…

艦娘「お次は私の番ね…中型潜アッチアイーオ級「ポルフィド」(斑岩…赤紫がかった奇石)です、よろしく♪」新鮮なブルーベリーを絞ったような赤紫色をした波打つ髪と深い赤紫に見える瞳…唇にはチェリーレッドのルージュをひいて、足下は宝石箱に敷いたヴェルヴェットのような色をした、おしゃれなハイヒールで決めている…

提督「ええ、よろしく…♪」

艦娘「……私は「ヴォルフラミオ」(タングステン)…命令とあらば何でも撃ちぬいてみせる」一人だけ冷たく硬質な雰囲気を放っている、ドイツ風のきりりとした艦娘で、狼のような冷静な灰色の目をしている……

提督「ふふ、そう固くならないで?」…そう言ってほっぺたに軽くキスをしたが、鈍い銀灰色の競泳水着をまとった直立不動の姿勢と硬い表情はまるで崩れない…

提督「それじゃあ、この十三人で「アッチアイーオ」級は全員ね……何はともあれお腹が減っているでしょうし、食堂でお昼を食べながらみんなに挨拶してもらいましょう♪」

アッチアイーオ「はい、提督っ♪」

提督「ふふっ、いい返事よ…それじゃあついてきてね?」

………

…食堂…

提督「さぁ、入って?」

アルジェント「…では失礼して」

一同「「わー!!」」

アッチアイーオ「うわっ、なに…なんなの!?」


…食堂に集まっていた艦娘たちは一斉に立ち上がって拍手をしながら、アッチアイーオたちに花輪をかけ、それぞれ一人づつ手を取ってエスコートしながら席に座らせる……大きく開け放った窓からはきらめくイオニア海の海風が入って来て、熱気のこもった工作室にいささか閉口していた提督は、ほっと息をついて席についた…


提督「どう、おいしい?」…歓迎パーティではないので手短なあいさつにとどめて、ゆっくり食事にかかる提督……両隣にはネームシップの「アッチアイーオ」と、まるで光を反射しているかのように眩しい「プラティノ」が座っている…

アッチアイーオ「ええ、美味しいけど?」

提督「それは良かったわ…好きなだけ食べてね」ワイングラス片手に顔を近づけ、いたずらっぽく微笑んだ…

アッチアイーオ「そうさせてもらうわよ…///」顔を赤らめ「ぷい…っ」とそっぽを向いた

提督「どうしたの……もうワインが回っちゃったのかしら♪」椅子をそっと寄せて、アッチアイーオの滑らかなふとももに自分の太ももをそっと押し付ける提督…恥ずかしそうにうつむく初々しい様子にいたずら心がくすぐられ、そっと手を伸ばした……

アッチアイーオ「や、止めてよ…!」そっと置かれた提督の手を振り払った…

提督「あら、工作室ではあんなに「大好き」って言ってくれたのに……ちょっと性急すぎたかしら?」申し訳なさそうに肩をすくめ、大人しく距離を戻す提督…

アッチアイーオ「分かったならいいわよ……いくら司令だからって、あんまりベタベタしないでよね!」

提督「ごめんなさい…ここの娘たちに慣れきったせいで、ちょっと感覚が鈍くなっているのかもしれないわ……なので、黙って食べることにします」

ライモン「もう、提督…」


…前菜にスープ(パスタ)が済み、ワイン数杯がほど良く入ったところでメインの料理に手を伸ばす提督……ニンニクと唐辛子、クミンやターメリックをよく揉みこんで下味をつけた鶏の手羽元や腿肉をあぶり、こんがりと焼き目を付けた「タンドーリ風チキン」は最初こそ香ばしいが、次第に口の中が辛くなってきて、身体が火照り汗も滴ってきた…鶏の骨をお皿に重ねつつも、工作室では「ベタ惚れ」状態だったのに、急にはねつけるような態度をとったアッチアイーオが気になって、横目でちらちら視線を送っている……


アッチアイーオ「な、なによ…///」

提督「ワインをもう一杯いかが…って聞こうと思ったのだけれど?」

アッチアイーオ「それならそうと言ってくれればいいじゃない……もう一杯だけちょうだい」

提督「このくらいでいいかしら?」

アッチアイーオ「ええ……ふぅ、辛い料理のおかげで暑くなってきちゃったわ///」さっきとは反対に自分からふとももをすり寄せ、スラックスの上から提督のふとももを撫でるアッチアイーオ…

提督「…あら」

ライモン「…」

プラティノ「…ライモンドさん、私にも一杯ついで下さいな♪」

ライモン「あぁ、はい…どうぞ」

プラティノ「ふふ、ありがとう♪」

ライモン「う…笑顔が眩しい……」

アッチアイーオ「さっきはごめんなさい、提督……私、本当に提督の事が大好きなの…信じてね?」

提督「いいのよ…それにしても、さっきからどこを撫でているのかしら♪」

アッチアイーオ「…だって、提督のふともも……とっても…触り心地がいいんだもの///」

提督「うふふっ…♪」

ライモン「…提督はドルチェ(デザート)を召し上がらないそうですから、どうぞプラティノが食べて下さい」

プラティノ「そうですか、それでは♪」

提督「ライモン、そんなに怒らないで?……ほら、「あーん」してあげるから」

ライモン「でも、来たばかりの娘たちを前に…ですか///」

提督「いいじゃない。はい、あーん♪」

アッチアイーオ「ねぇ提督…私も「あーん」して欲しい♪」

提督「ふふっ、それじゃあちょっと待ってね?」

…食後・バーカウンター…

提督「…どうもよく分からないわ」

ライモン「何がです?」

提督「アッチアイーオの態度よ……さっきまでキスしてくれたり、身体を寄せてふとももを撫でてくれたりしていたと思ったら、急に突き放すような態度になったり…」

カヴール「そうですねぇ…もしかしたらかなりの気分屋さんなのではありませんか?」

提督「それだけ?」

エウジェニオ「うーん、そうねぇ……何かその「スイッチ」になりそうなことはあったかしら?」

提督「えーと…何だか私から触ったりすると怒ったような気がするわ……」

アルピーノ・バニョリーニ(大型潜リウッツィ級)「ならアレね、自分から仕掛けたい性格なのよ…私と同じで♪」手の速いバニョリーニは「よく分かるわ」とばかりに、うんうんとうなずいている…

提督「んー…でもそれだけでもないような気がするのよね。もう一杯ちょうだい?」

エウジェニオ「はいはい…それじゃあ悩める提督さんにはちょっとほろ苦いドライ・マルティーニね♪」

提督「ありがと…今の気分にぴったりだわ」

トリチェリ(大型潜ブリン級)「あの、皆さんで頭を悩ませているようですが…どうしたんです?」

提督「あぁ、トリチェリ……いえ、アッチアイーオの気分がよく分からなくって…」

トリチェリ「言われてみると、素っ気なかったり甘えてみたり…何だか態度が猫の目みたいに変化していましたね」

ガルヴァーニ(ブリン級)「ふふ…ならちょっと頭に電極でも差し込んで、ピリッと電流を流せば……あとは電流カエルと同じで、お好きなようにビクンビクンさせられるわよ?」いつもマッドサイエンティストめかしているガルヴァーニは、危ない笑みをうかべてカクテルをすすった

提督「もう、またそうやってフランケンシュタイン博士みたいな事を言って…アッチアイーオが私の事を嫌いならまだ分かるけれど、甘えられたり素っ気なくされたりする理由が何なのか……どうも気になるのよね」

ガリバルディ「あら、鎮守府の女たらしが三人も集まって頭を抱えて…一体どうしたの?」

ライモン「…それ、わたしのことじゃないですよね?」

ガリバルディ「ええ、大丈夫よ…提督にエウジェニオ、それとバニョリーニの三人よ」

カヴール「あら、私はダメですか?」

ガリバルディ「カヴールみたいな貴婦人に「女たらし」なんて失礼でしょう♪」ウィンクを送るガリバルディ…

カヴール「あら、嬉しいお言葉…さすがはガリバルディですね」

ガリバルディ「ふふ、褒められて怒る人はいないもの……で、何の話?」

提督「それが…アッチアイーオの気分がよく分からなくって」

ガリバルディ「ふふ…今日はじめて顔を合わせておいて、それで心の奥底まで分かろうなんて……提督もシチリア人そこのけに気が短いわね♪」

エウジェニオ「でも気になるでしょう?」

ガリバルディ「まぁね。とりあえず、そういう時は行動あるのみ…アッチアイーオ?」

アッチアイーオ「…なに、呼んだ?」たっぷりの昼食とワインで、ほど良く身体が火照っているらしいアッチアイーオ…頬が軽く赤らんでいる…

ガリバルディ「ええ、提督が話をしたいそうよ」

アッチアイーオ「あ…そ、そうなの///」

提督「さぁ、かけて……飲み物は何がいい?」

アッチアイーオ「え、えぇ…と///」

エウジェニオ「とりあえずカンパリオレンジにでもしておくわね?」

アッチアイーオ「じ、じゃあそれで…で、私に「用事」って///」

提督「ええ」

アッチアイーオ「それは、その…嬉しいけど、ちょっと気が早いんじゃない……?」

提督「こうやって話をするのに「気が早い」ことなんてあるかしら?」

アッチアイーオ「あっ、ううん…別に何でもないの!」

提督「それじゃあしばらくの間だけ、おしゃべりでもしましょう?」

アッチアイーオ「え、ええ…提督とたくさんお話できるなんて、嬉しいっ……///」

提督「んー?」

アッチアイーオ「…き、聞こえなかったことにして///」

猫ってどっちの意味なんですかねえ

…数日後・厨房…

提督「うーん…」エプロンの紐を結びながら、眉をひそめている提督…

チェザーレ「…何だ、まだアッチアイーオの事で悩んでいるのか?」

提督「ええ…」

バンデ・ネーレ「提督もこりないよね…ボクならあきらめている所だけど……」

ジュッサーノ「本当にね。だいたいけんつくを喰らって落ち込むくらいなら、はなからちょっかいを出さないでおけばいいのに」

提督「むぅ…そうは言っても甘えに来てくれるときは本当にベッタリだし、せっかくの好意をむげにするのも悪いような気がして……」

ルイージ・トレーリ「そうですねぇ、個人的にはジァポーネで言うところの「ツンデレ」ではないかと思いますけれど…どうでしょうか?」

提督「それって「好きだけれど気恥ずかしいからわざと突き放したりする」っていう…」

トレーリ「ええ、それです♪」

提督「んー…それも考えては見たのだけれど、そう言う感じでもないのよね……」

カヴール「ふふ…それで距離を縮めようと、一緒にお料理を作る約束をなさったのですものね?」

提督「ええ。隣り合って厨房に立てば少しは性格も分かるんじゃないかって…あ、来たわね♪」

アッチアイーオ「チャオ、提督…んーっ///」

提督「はぁい……ちゅっ♪」

アッチアイーオ「ふぅぅ…部屋の模様替えをしようと思ってあれこれ動かしたら、もう汗びっしょり……汗くさくない?」

提督「ふふ、大丈夫よ…♪」汗ばんだ頭を軽く撫でる…

アッチアイーオ「あぁ、よかった…せっかく提督と一緒なのに汗くさかったら嫌だもの……///」頬を赤らめ、人差し指の指先をもじもじとこすり合わせる…

提督「もう、そんなに気にしなくたって大丈夫よ……さぁ、美味しいパスタを作りましょうね?」

アッチアイーオ「え、ええ……提督と一緒なら何でもおいしいけど…///」

提督「あら、嬉しいお言葉♪」

アッチアイーオ「…だって、本当の事だもの……///」

チェザーレ「ふぅむ…どうすればこの甘えっぷりが、あの木で鼻をくくったような態度になるのだ?」

トレーリ「ふふ、提督はそれを調べるつもりなんですよね…♪」

チェザーレ「うむ……まぁいい、手伝いが欲しくなったらそう申してくれ」

提督「ありがとう…それじゃあアッチアイーオ♪」

アッチアイーオ「ええ、二人でお料理なんて楽しみ…///」

………


提督「…それじゃあニンニクを刻んでもらえる?」厨房のガス台はパスタ鍋にお湯を沸かそうと強火になっていて、換気扇だけでは抜けない熱でずいぶんと暑くなっている…ふと壁の温度計を見て、思わずげんなりする提督……

アッチアイーオ「ええ、任せて……それはそうと、提督は甘い匂いがするのね///」

提督「香水はつけていないけれど?」

アッチアイーオ「べ、別に香水とかそう言うのじゃなくって……提督そのものが…よ///」

提督「まぁ…♪」

アッチアイーオ「本当にいい匂い…甘いクリームみたいな……ちゅぅ♪」提督の頬を舐めるようにキスをした…

提督「まぁ…んふふっ♪」

…食堂…

トレーリ「どうやら、今の所は順調のようですね」

チェザーレ「うむ…カヴールはどう見る?」

カヴール「私もお二人の見立てと同じです。大変に仲睦まじくて、いい雰囲気ではありませんか♪」



提督「さてと、パスタのソースはこれでよし…と」

アッチアイーオ「ボーノ♪ とっても美味しいっ…提督の手づくりだからかしら///」

提督「ふふ、お褒めにあずかり恐縮です♪」

アッチアイーオ「あっ、提督」

提督「んー?」

アッチアイーオ「……ソースをこぼしちゃった…舐めて?」

提督「あらあら…ちゅっ、んちゅっ♪」アッチアイーオが胸元に垂らしたマリナーラ(プッタネスカ)のソースをぺろりと舐めあげる提督…

アッチアイーオ「ん、んふぅ……っ///」

提督「ふふっ……そういえば、冷蔵庫からサラダの野菜を出さないといけないわね」

アッチアイーオ「ねぇ、それじゃあ一緒に行きましょう?」

提督「ええ♪」アッチアイーオの手をそっと包み込み、指を絡めた…

…食料庫・冷蔵室…

提督「ふー…やっぱりここは涼しくていいわね」

アッチアイーオ「ね、ねぇ…何で手を握っているの///」

提督「だって、アッチアイーオの手がすべすべしているんだもの♪」

アッチアイーオ「それじゃあ答えになってないわ……早く野菜を出して戻りましょうよ」

提督「あら、今さらになって照れちゃったの?」

アッチアイーオ「別に照れるような事なんてないでしょ…」急に黙りこくって唇をきゅっと結んでいる…

提督「ふふ、いいのよ…ここなら、しばらくは誰も来ないから……ね?」指先でそっと背中をなぞり、腰のくびれまで撫でおろしていく…

アッチアイーオ「……だから、あんまり触られたり馴れ馴れしくされるのは嫌いなの」

提督「あら、さっきまではあんなに嬉しそうだったのに?」

アッチアイーオ「さっきは…その、何て言うか……///」

提督「いいのよ、遠慮しないで? …私、アッチアイーオの事が好き……♪」優しい手つきでふとももを愛撫し、少し屈んでそっと唇を近づける…

アッチアイーオ「ふ、ふざけないでっ…!」パァン…!

提督「…っ!?」

アッチアイーオ「提督は私の事を「ちょっと一緒に過ごして、甘い言葉さえかければすぐにコロリと参っちゃう」とでも思ってるんでしょう…私はそんな甘くないわよ!?」

提督「違うわ……ねぇ、急にどうしたの?」冷蔵室の冷気で余計にヒリヒリと傷む頬を押さえて、涙目でしゃがみこむ…

アッチアイーオ「この数日、あなたが司令だからっておままごとにつき合ってあげたけど…たとえ肩章に「二つ星」が付いていても、私の気持ちまで思い通りになるわけじゃないんだからっ!」

提督「…アッチアイーオ」

アッチアイーオ「命令は聞いてあげるけど、それ以外はお断りよ!」

………



チェザーレ「何だと?」

提督「…ええ、見ての通りよ」

カヴール「そうですか…しかし提督に手を上げるとは……」

ライモン「ほっぺた、痛くありませんか?」

提督「頬の方はもう大丈夫…でも平手打ちを受けたのは久しぶりね……」

ディアナ「保冷材はもう大丈夫ですか?」

提督「ええ、ありがとう…」

リットリオ「提督にそんなことするなんて許せませんっ…ヴェネト、ローマ!」

ヴェネト「姉さん、ちょっと落ち着いて…」

ローマ「そうです。落ち着いてください」

アッテンドーロ「ま…なかなか気の強い娘っ子みたいね?」

ライモン「それにしたって提督を叩くなんて……いくら何でもやり過ぎです」

提督「うーん…それでもまだ分からないわ」

ヴェネト「アッチアイーオの性格が…ですか?」

提督「ええ」

トレーリ「そうですね…きっと気まぐれで、その上かなりの恥ずかしがり屋さんなんでしょう」

ライモン「むぅ…それにしたってひどいです…」

ダ・ヴィンチ「ふぅ、お腹が空いたわ……って、みんなしてどうしたの?」

トレーリ「あー、実はかくかくしかじかで……」

ダ・ヴィンチ「はーん…それで提督がみんなにかこまれているのね」

提督「私はもう大丈夫なのだけれど、みんな優しいから……ところでダ・ヴィンチなら、アッチアイーオが急に機嫌を損ねる理由が分かるかしら?」

ダ・ヴィンチ「そうねぇ……あ!」

提督「何かある?」

ダ・ヴィンチ「ええ、あるわ…ふふ「名は体を表す」って言葉通りってわけね♪」

ライモン「どういうことですか?」

ダ・ヴィンチ「ふふ、ちょっと待ってて……すぐ提督にメロメロになったアッチアイーオを連れて来てあげるから」

提督「まさか。いくらダ・ヴィンチが天才でもそれはムリよ」

チェザーレ「ローマは一日にしてならず…そうそう人の気持ちは変わらぬものだ」

ダ・ヴィンチ「まぁまぁ…天才の言うことだと思って♪」

…しばらくして…

ダ・ヴィンチ「ほら、みんな怒ってないから…遠慮しないで入りなさいって?」

アッチアイーオ「…提督」

提督「アッチアイーオ、さっきはいやらしい真似をしてごめんな……」

アッチアイーオ「提督、提督っ…ごめんなさいっ、痛かったでしょ!? …すぐ私が痛いのを無くなるようにしてあげるから…んちゅっ、ちゅぅ///」

ライモン「!?」

提督「……ダ・ヴィンチ?」

ダ・ヴィンチ「だから言ったでしょう「名は体を表す」って。何しろ名前が「アッチアイーオ」(鋼鉄)だから、きっと「熱したら柔らかく、冷やせば堅くなる」と思ったの…で、熱いシャワーに付き合わせたり毛布をかけてあげたりしたら……案の定だったわ♪」

アッチアイーオ「さっきは急に恥ずかしくなってあんなことして……でも本当は提督にされるの…大好きだから……今度、一緒に…ね///」

提督「ふふ、いいのよ…今度からは口づけは暖かい所でしましょうね♪」

アッチアイーオ「ええ…私がとろけるくらいに熱いキスにしてね///」

………

…というわけで、アッチアイーオは名前をネタに「変温性ツンデレキャラ」にしてみました……熱くなればなるほど甘々のデレデレになり、冷えると冷たい態度でけんつくを喰らわせ、さらに冷えると柔らかさがなくなり、強度(メンタル)が弱くなります…



>>347 とりあえず「そっちの意味」の場合は「ネコ」、生きものの場合は「猫」表記にしておきます……また、どこかで「ネコの恩返し」のような小ネタも入れようかと…


…艦娘紹介…


中型潜…アッチアイーオ(鋼鉄)級。1941~42年生まれ。13隻


「アルゴナウタ」「シレーナ」「ペルラ」「アデュア」級と次々整備された傑作中型潜「600型」シリーズの最終タイプ。戦時下の建造だったこともあって建材の質が落ちていたと言うが、開戦以来の損害を少しでも補充し、また英地中海艦隊に対抗する面からもタイミングよく完成した意義は大きく、性能も良好だった。

外見はこれまでイタリア潜が採用していた(雨風の防げる)屋根付き艦橋タイプの司令塔ではなく、露天型司令塔としていることからドイツの「U-ボート」に似通っている。


排水量は697/850トンとこれまでの「600型」より多少増え、主機1400馬力(ディーゼル)/800馬力(電動機)で速力は14ノット/7.7ノット。
武装は533ミリ魚雷発射管4門(艦首)/2門(艦尾…一部装備のない艦も)に、100ミリ単装砲一基(司令塔前甲板)、13.2ミリブレダ機銃(連装二基?)が4挺




実戦では「アデュア」級の「デジエ」や「アクスム」と協力して連合軍のアルジェリア上陸作戦『トーチ』の迎撃などに参加、それぞれ優れた性能で善戦したが、英軍のレーダーやアスディックを活用した対潜グループや航空機の攻撃で次々に撃沈され、43年のイタリア休戦時には北部(ヴェネツィアなど)の基地にいた艦がドイツ側に渡すまいと自沈させるなどしたため、戦後に生き残っていたのは「ブロンヅォ」「ジアダ」「ニケリオ」「プラティノ」とごく少なかった……


このうち「ブロンヅォ」は英軍と交戦し逃げ場を失いやむなく降伏、英潜「P714」として各種機器などを調べられたが、何かとイギリス規格に合わない艦だったことから持て余され、戦後フランスに引き渡されて「ナルヴァル」(イッカク)となり60年代まで長生きした

同じく「ニケリオ」(ニッケル)はソ連に引き渡されて49年除籍、「プラティノ」は48年、「ジアダ」は66年まで長くご奉公した




艦名は金属が主で

「アッチアイーオ」(鋼鉄)
「アラバストロ」(雪花石膏・あるいは純白の大理石「アラバスター」)
「アルジェント」(銀)
「アステリア」(ヒトデ)
「アヴォリオ」(象牙)
「ブロンヅォ」(ブロンズ・青銅)
「コバルト」(コバルト)
「ジアダ」(カット用硬石)
「グラニト」(花崗岩…日本の一部では「御影石」と言われる)
「ニケリオ」(ニッケル)
「プラティノ」(プラチナ)
「ポルフィド」(斑岩(はんがん)…紫がかった奇石の一種)
「ヴォルフラミオ」(タングステン…旧艦名は「ストロンツィーオ」(ストロンチウム)だった)

この中でどうして「アステリア」だけが金属や奇石ではなく「ヒトデ」となっているのか理由は分からないが、おそらく「頭文字の「A」で始まる金属が足りなかったから」と言う気もしないではない……また「ヴォルフラミオ」(タングステン)は語源になったドイツ語「ヴォルフラム」(狼の泡)からの直訳という



艦娘「アッチアイーオ」級は中学生そこそこのバランスのとれた引き締まった身体で、瞳や髪はそれぞれのモチーフになった金属や石と同じ色調をしている。まとっている「艤装」もそれぞれぴったりとしたボディスーツ風のもので、全身に液体金属を垂らしたような外見がSF作品に出てくるヒロインのようで非常に色っぽい……

アッチアイーオは暑いと柔らかくなって、提督にベッタリと甘えてくるが、冷え込むとつんけんした態度になる変温性のツンデレキャラで、さらに冷え込むとすっかり強度(メンタル)がなくなってしまい、落ち込んだり室内にこもったりと元気を失くす…また、ニケリオ(ニッケル)は酸やアルカリに腐食しにくいせいか、反応が少し遅い……などなど、名前の由来になった金属の性質をよく受け継いでいる。また「アデュア」級とは一緒に作戦したこともあり仲良し

………

…数日後…

提督「さてさて、今日は頑張るとしましょうか」

カヴール「ふふっ…提督ったら、「今日も」ではなく「今日は」ですか?」

提督「だって今日はいつもの執務と違うもの……ね♪」


…週ごとに注文した食材などを鎮守府に届けてくるイヴェコ製の三トン積み軍用トラックから、基地祭の屋台や舞台用の木材や鉄材、ネジやボルト、ナットの類が次々と降ろされる……鎮守府の艦娘たちがわいわい言いながらそれを車庫のコンクリート床に運び下ろし、きっちりした性格のアオスタとライモンが注文書と比べては鉛筆でチェックをつける…


ライモン「あ、提督…注文した物は無事に揃っていました」

提督「それは良かったわ。じゃあトラックは帰してもいいわね?」

アオスタ「はい、ですがその前にお茶でもお出ししようと…」

提督「いい考えね、アオスタ……少尉、軍曹♪」

女性士官「はい」

提督「うちの娘がお茶を淹れてくれたそうだから、テラスで飲んで行って?」

女性士官「は、いつもありがとうございます」

女性下士「本当にごちそうさまです、カンピオーニ司令…」

提督「いえいえ、こちらこそいつも配達してもらって助かっているわ♪」

女性下士「任務ですから」

提督「任務とはいえ、タラントからだと結構時間がかかるし大変でしょう?」

女性下士「ま、その間は他の職務をしなくて済みますから…♪」

提督「ふふふっ、それもそうね …確かアイスクリームがあったはずだから、どうぞ食べて行って?」

女性士官「では、お言葉に甘えて」

提督「はいはい……アオスタ、今日開けたアイスクリームって何だったかしら?」

アオスタ「えーと、確か「バナナチョコミントハワイアン」とか何とか……水色と黄色のアイスクリームでした」

提督「それ、美味しいのかしら? …ヘンテコな味であの二人に恨まれないといいけれど……」

チェザーレ「……諸君、その板は上だ…そうだ、よろしい!」

ダ・ヴィンチ「そうね、それをそこに…で、そっちを上に……そう、ブラヴォー♪」

提督「…どうやら、屋台そのものはチェザーレとダ・ヴィンチに任せておけばよさそうね」紅のマントをひるがえし堂々と指揮を執るチェザーレと、斬新なやり方で次々と屋台を建てていくダ・ヴィンチ…

ライモン「そのようですね。では、他の場所を見て回りましょうか」

提督「ええ、そうしましょう……せっかくだから屋台料理の試作品を味見させてもらおうかしら」

ライモン「もう、また食べる気ですか…」

提督「ふふっ、毎晩ベッドの上で威勢のいい「跳ね馬」たちの手綱を取っているとお腹が減るのよ…♪」

ライモン「もう…っ///」

提督「よく言うでしょう? 「女は幾人もの相手を満足させることができる」って…私もみんなを満足させてあげたいから、そのぶん栄養をつけないとね♪」

デュイリオ「うふふっ、必要なら私が請け負いますからご安心くださいな…♪」…カラスの脚に綱をつけて、肩に止まらせているデュイリオ

リットリオ「ぜひ私も頼って下さいねっ、提督♪」

メドゥーサ「ふふっ…私が何人だって痺れさせてあげるから、少しはこっちにも回してちょうだい……♪」

提督「ふふっ、はいはい…♪」

提督「そう言えば、出し物の練習はどう?」

ライモン「はい、みなさん和気あいあいとやっていますよ」

提督「そう…ちょっとのぞいてみようかしら」

ライモン「はい」

…会議室…

カルドゥッチ「…ある時、イタリアへと向かう客船に一人の可哀そうな子供が乗っておりました……子供は貧しい両親によって軽業の一座に売り飛ばされ、満足に食べることも出来ずに二年を過し、ついに耐え切れなくなってイタリア領事館に駆け込んだのでした。領事は子供をかわいそうに思って、ジェノヴァ行の船に乗せてやり、事情を書いた警察署長あての手紙を持たせてやったのでした…」


エリザベス「…坊やはイタリアの子供なの?」

フレッチア「そうだよ。両親が貧乏だったから、軽業師の一座に売られちまったんだ……」

エリザベス「そうかい…それじゃあ少ないけれど、これを取っておきな?」

エメラルド「これもあげよう」

エリザベス「それじゃあ私はもっと出してあげるよ」

フレッチア「……ありがとう」

エリザベス「なに、構わないよ」

提督「そう言えば出し物は「クオレ」の中の短編に変わったのよね」

(※クオレ…デ・アミーチスが書いた「こころ」という意味の児童文学。小学生の主人公が身の回りの貧しい同級生や大人たち、また先生から教わる愛国的なお話や人情味あふれるお話を聞いて人にやさしくしたり、恵まれている自分を恥じたりするお話。「母を訪ねて」など有名なエピソードもたくさんはいっている……愛国的なお話が多いがけっして好戦的ではなく、むしろイタリアらしさや「弱きを助く」の思いやり精神、人間の持つ義侠心に訴えるものが多い)

ライモン「あれは「パドヴァの少年愛国者」のお話ですね」

提督「それにしてもエリザベスとエメラルドまで友情出演してくれて……よくメアリが許してくれたものね」

グレイ提督「…構いませんとも、お互いにこういった時は持ちつもたれつですから」

提督「…」

グレイ提督「何かおかしなことを申しましたかしら?」

提督「いえ、メアリからそんな殊勝な意見が聞けるとは思っていませんでした」

グレイ提督「あら、失礼ですわね……わたくしとてこちらの基地祭の成功に協力するのはやぶさかではありませんわ」

提督「またまたご冗談を…」



フレッチア「このお金があればもう両親だっておいらを売り飛ばしたりはしないはずさ…それにまともな服も買えるだろうな……」

カルドゥッチ「こうして見栄っ張りのイギリス人からお金を恵んでもらった少年は、あてがわれた二等船室の寝台にもぐりこんでお金の使い道を考えつつ、すさんだ心を慰めておりました…と、その当人のイギリス人たちがテーブルを挟んで、何やら話をしています……」

エリザベス「…ふぅ、レディの前でいい所をみせようと、あの子供にお金を恵んでやったものの…イタリア人の子供っていうのはみんな薄汚いねぇ」

エメラルド「何しろイタリアって言うのは街並みから貧乏くさくて汚らしいですし」

エリザベス「はは、まぁ詐欺師か追いはぎしかいないような国ですから」

エメラルド「役人は字も読めない無能ばかりだし」

エリザベス「イタリアに行くくらいならラップランド(今のフィンランド)にでも行く方がまだマシですな」

エメラルド「だいたいがイタリア人なんてほとんど泥棒みたいなもの……うわっ!」

カルドゥッチ「…イギリス人がそう言いかけたところで、寝台からばらばらと小銭が叩きつけられました」

フレッチア「ちくしょうっ、おいらの生まれた国をバカにしているような奴からもらった金なんていらねぇやいっ…返してやらぁ!!」

………



提督「フレッチア、上手だったわよ♪ …ところでメアリ」

グレイ提督「何でしょう」

提督「もしかして、このお話なら「面と向かってイタリアの悪口を言えるから」協力して下さったのですか?」

グレイ提督「さて、何の事やら…♪」

提督「…」

提督「まぁいいです……ところで、もしよろしければ屋台料理の試作品につき合ってもらえませんか?」

グレイ提督「そうですね。ですがまだ朝食を食べたばかりですので…少しだけ」

提督「はい♪」

…食堂…

ヴァイス提督「その…もう満腹で、これ以上は食べられない……」

ローマ「そうおっしゃらずに……それともまさか、ナポリのピッツァだけ食べて、ローマ風ピッツァは召し上がりたくないと?」

ヴァイス提督「そう言うつもりではないが、朝食から量が多くて…本当に食べられそうにないのだ。どうか許してもらえないか、ビッテ(頼む)……」

ローマ「そうですか、なら仕方がないですね…ですが「あの時」の恨み、まだ忘れたわけではありませんよ……」小声でぼそっとつぶやいた…

ヴァイス提督「…っ!」

提督「あらローマ…ヴァイス提督に味見をお願いしているの?」

ローマ「……ええ、まぁそんなところです」

提督「なら私とメアリにも、少し味見をさせてもらえないかしら?」

ローマ「はい、もちろんです」

グレイ提督「それにしても、何とも美味しそうな香りが漂っておりますね……こんがりと焼けたチーズやバジル…」

提督「お腹が減ってくるでしょう?」

グレイ提督「ふふ、さっき朝食をいただいたばかりですのにね」

ローマ「……お待たせしました、「ローマ風キノコのピッツァ」です…いかがですか?」

提督「ふふっ、とっても美味しそうよ…それでは♪」


…ローマ風の四角いもっちりした生地に、たっぷり敷き詰められたチーズがこんがり焼き上がりぶつぶつとはじけ、ちりばめられたキノコやサラミもほど良くチーズに絡まって湯気を立てている…皿の下に敷いてある新聞紙も相まって、手軽で気さくなトラットリア(軽食屋)風の一品になっている…


提督「あふっ…はふっ……おいひい…ふぉの…キノコの……はふっ……味わいが…」

ローマ「提督、どうか召し上がってからおっしゃってください」

提督「ふぅー…ポルチーニ茸とかのこっくりしたキノコの味わいが、濃いチーズに上手く絡まって美味しいわね……焼き加減もとっても良かったわ♪」

グレイ提督「ふふ、わたくしの言いたいことはあらかた言われてしまいましたね…このピッツァは生地が厚手で、もちっとしておりますのね」

ローマ「それがローマ風ですから」

提督「ラツィオ州はカンパーニアとかに比べて、お腹にたまるようなこっくりした味付けの料理が多いのです」

グレイ提督「なるほど」

提督「……それにしても、今回のプログラムでおいでになったのがお二人でよかったと思います」

グレイ提督「あら、ずいぶん突然ですわね?」

提督「いえ、何しろ歴史ある英国海軍と厳格なドイツ連邦海軍の将官をお迎えすることを考えたら…数日前にはなかなか寝つけないくらいでしたもの」

グレイ提督「まぁまぁ……なにもそこまで気を配って頂かなくともよろしかったのですよ?」

ヴァイス提督「ヤー。むしろ私のような中佐風情にここまでよくして頂いて…ご親切、痛み入ります」

提督「いえいえ」

グレイ提督「…しかし、わたくしもイタリア海軍と言えばわが軍の「使い古された冗談」で考えておりましたから……考えを改めるよいきっかけになりましたわ」

提督「古い冗談…ですか?」

グレイ提督「ええ…その冗談ですが、「歴代の地中海艦隊司令官は『できればイタリアが中立であってほしいと望み、フランスが敵になってもイタリアを味方にするよりはましだ』」と…こういうものですの」

提督「……おっしゃってくれますね」

グレイ提督「ああ、怒らないで下さいね…わたくし、今はそう思ってはおりませんもの」

提督「今は…ですか」

グレイ提督「あら、失礼……ところで、このお料理は何でしょうか♪」

提督「…むぅ」

このひと月あまりサーバーがダウンしていたようですが、何はともあれ復活おめでとうございます…これからまた、ちまちま更新していきます

まってたおかえりなさい

>>358 こちらこそです

…と言っても物理的に来られなかったわけですが、その間いいクールダウンになったような、そうでもないような……とにかく、ちょっぴり投下していきますのでお付き合い下さい

提督「ところで…ローマ、ちょっといい?」

ローマ「はい、何か?」

提督「眼鏡に油が跳ねているわ。貸して?」

ローマ「あぁ…どうもすみません」

提督「いいえ、どういたしまして♪」

…眼鏡を受け取ると、胸元に入れていたハンカチを取り出して「はーっ」と息を吹きかけ、そっとレンズを拭く。それが済むと眼鏡を天井に向けて明かりに透かし、油はねが残っていないか確かめる…

提督「うん、きれいになったわ」

ローマ「グラツィエ」

提督「ふふっ…こうしてみるとローマが大きく見えるわね」にっこりとほほ笑むと眼鏡を前後逆さにして瞳に近づけ、レンズをのぞく…

ローマ「…あの、返していただけませんか」

提督「はいはい。それじゃあかけてあげる♪」背の高いローマ相手に軽くつま先立ちをして、両手で眼鏡をかけてあげる…

ローマ「ありがとうございます。どうにも眼鏡がないと近くのものが見えづらいと言うか…」

提督「ローマは遠視だものね」

ローマ「遠視…まぁ、いつも遠くばかりを見ているせいかもしれません」

提督「リットリオ級は主砲の射程がすごいものね…」(※リットリオ級の主砲「OTO38.1/50モデル1934」381ミリ砲…最大射程42800メートル)

ローマ「ええ、さして当たる訳でもありませんが…届かないよりはいいですから」

ピエル・カッポーニ「…そうやって遠くを見ていると、そのうち両目が測距儀のように離れてくるかもしれませんね」…そう言ってローマをからかうとひょいとピッツァ一切れをつまみ上げ、口に入れた

ローマ「あなたはいきなりやって来て…失礼ね」

カッポーニ「おっと、ごめんなさい…「今では尻尾だが、かつては世界の中心だった」ローマさん♪」

ローマ「…」

提督「ローマ、気にしないで? 彼女は名前の由来がフィレンツェ人だから、ローマにライバル心をむき出しているのよ」

ローマ「…ボッカチオですか」

提督「そう、「デカメロン」(十日物語)よ…何しろボッカチオはフィレンツェ育ちだし、あのころはフィレンツェとヴェネツィアがイタリアの中心みたいなものだったそうだから…」

エンリコ・ダンドロ(大型潜マルチェロ級)「ははは、まさかフィレンツェが我らのヴェネツィアと同格だって? 面白い冗談だ」

提督「あー、悪魔の噂をすれば何とやら…ヴェネツィア派が出てきちゃったわね」

バルバリゴ(マルチェロ級)「ああ。諸君、ルネサンス期に「イタリアの中心」と言えば、それはもう最強の海軍国ヴェネツィアだけだ。あとはみんな『どんぐりの背比べ』で、たいしたことない」

ジョバンニ・バウサン(中型潜ピサニ級)「…かつてはヴェルギリウスやアウグストゥス帝、ティベリウス帝…あの「暴君」ネロ帝さえも好んだ、両シチリア王国の都ナポリもありますが」

ダンドロ「はは、あんなのはド田舎村さ」

バウサン「むっ…」

アッテンドーロ「ナポリはそうだとしても、ミラノは田舎じゃないわ」

ダンドロ「かもしれんね…えーと、どんな名門がいたっけ?」

アッテンドーロ「…私の名前の由来になったスフォルツァ家と、ヴィスコンティ家があるけど?」

ダンドロ「ふむ、まぁそこそこじゃないか…イタリアを制するメディチ家ほどじゃないけれどもね」

ドリア「ジェノアはいかがですか?」

ダンドロ「あんなのはただの港町だろう……あっ」

ドリア「ふふ、面白い事をおっしゃいますね…アンドレア・ドリア公はジェノア生まれなのですが♪」

デス・ジェネイス(中型潜ピサニ級)「私もですよ…我らがジェノアをバカにするとは、なかなかいい度胸ですね」(※ジョルジョ・アンドレア・アーネ・デス・ジェネイス…イタリアでは有名らしい、ナポレオン時代に活躍したジェノヴァの提督。バーバリ海賊の退治などに功績があったらしい)

提督「あーあ、やっちゃったわね」

アッテンドーロ「口は災いの元…きっと地獄を見ることになるわ」

ドリア「ふふ、よかったら私の部屋にいらっしゃいな……ゆっくりヴェネツィアのいい所をお聞きしたいですから♪」

ダンドロ「提督…一つだけ言っておきたいんだが」

提督「何かしら?」

ダンドロ「今夜の深夜直は外しておいてもらいたい」

提督「あー、了解…ドリアもほどほどにしてあげてね?」

ドリア「ふふ、分かっていますよ…でも深夜直を外してもらったなら、時間はたっぷりありますね♪」

ダンドロ「しまった、作戦が裏目に出たか…なぁ誰か、このジェノヴァ人との和睦をとりなしてはくれないか?」

ローマ「…知りません」

カッポーニ「はたしてベッドの上でドリア相手に持つかどうか…おっしゃっていた「ヴェネツィア人の心意気」とやらを見せていただきたいですね♪」

アッテンドーロ「ま、明日には軟体動物にでも進化しているんじゃない?」

ライモン「身から出た錆びです」

ダンドロ「あー、我が姉妹たちよ…」

マルチェロ「おっと、用事を思い出したので本官は失礼する…貴君の健闘を祈るよ♪」

アンジェロ・エモ(マルチェロ級)「ええ…頑張って下さいね」

ラッツァロ・モチェニーゴ(マルチェロ級)「ああ、ドリアの相手は任せた♪」

ダンドロ「この薄情者どもめ…貴様らとて同じヴェネツィアの提督同士ではないか!?」

カッポーニ「ふふ、ヴェネツィア人の『仁義』なんてこんなものですよ…ボッカチオの言う通りです♪」

ドリア「さぁ、私の部屋にいらっしゃいね…エンリコ♪」

ダンドロ「…っ///」

提督「容赦なく連れて行かれたわね……」

…別の日…

提督「…さてと、そろそろ基地祭の招待状を発送しないといけないわね」

カヴール「ええ、そうですね。 …提督の着任まで、ここではこれといった催しをしなかったので……基地祭がどのようなものなのか、今から楽しみです」

提督「とはいえ、こういうお祭りの運営する側は楽しめないのが常だから…当日はカヴールもちゃんと見て回れるよう交代を決めておきましょうね」

カヴール「まぁ…提督ったら相変わらず優しいです♪」

提督「ううん、いいの。私も尉官のころはしょっちゅう駆りだされては苦労したから、もし命令を下せる立場になったら、みんなが少しずつでも楽しめるようにしようって思っていたの…やっと実行する機会が持てたわ」

カヴール「まぁ、ふふっ♪」

提督「さ、おしゃべりはこのくらいにして…宛先を読み上げるから、送付リストにチェックを付けてくれる?」執務机の「処理済み」の箱には錨とロープ、それにイタリアの三色旗があしらわれた海軍の封筒が積み重なっている…

カヴール「はい」

提督「えーと…まずは海軍のイオニア海管区司令官と、沿岸警備隊の司令官…うちの『航空隊』があるグロッタリーエの空軍基地にも」

カヴール「はい」

提督「それからプーリア州とタラント県議会の各会派…わざわざここまで来るかどうかはさておき、ね」

カヴール「ええ」

提督「タラント市の市長とコムーネ(自治体)の議員先生たち」

カヴール「はい」

提督「地元の漁業組合と農業組合…特に漁業組合は「潜水艦に仕掛け網を持って行かれた」とか「砲声で漁場の魚が逃げる」ってもめるから、絶対に忘れないようにしないと…」

カヴール「あります」

提督「ならいいわ…地元の有力者に地方新聞」

カヴール「揃っています」

提督「あとは『近くの町』の町長さんと、いつも立ち寄るお店の人たちね」

カヴール「全部ありました…これで公式に招待する方々は大丈夫ですね」

提督「そうね…じゃあ、後は私から個人的に送る相手ね」

カヴール「ふふっ♪ 提督の事ですから、きっとその方が多いでしょうね?」

提督「んー…そうかもしれないわ」

カヴール「読み上げましょうか?」

提督「ううん、だいたいは覚えているから平気よ」

カヴール「そうですか」

提督「ええ…まずはお母さまにシルヴィアおばさま」

カヴール「はい」

提督「それからシチリアのジュリア…この前ここへ遊びに来た、アントネッリ中佐ね」

カヴール「あのP-3対潜哨戒機の飛行隊長さんですね?」

提督「ええ、そうよ。それに測量部のカルリーニ大佐と航空隊作戦課のヴィオレッタ少佐…」

カヴール「どちらもあります」

提督「それからヴェネツィア第三のエレオノーラに、私が深海棲艦にさらわれた時に捜索を手伝ってくれた各鎮守府の司令官…向こうもそれぞれ忙しいから来られるとは思わないけれど、まぁ気持ちだけね」

カヴール「…相変わらずお友達の方が多くていらっしゃいますね?」

提督「あー…まぁ、そうね」

カヴール「ふふ…提督の事ですからお友達ではなく、もっと「親密な仲」でいらっしゃいますか?」

提督「えー…と」

カヴール「ふふ、構いませんよ…少なくとも今は私がお側にいられるのですから」

提督「ふふ、私も隣にいてくれるのがカヴールで嬉しいわ……そうそう、国際郵便で「トゥーロン第七」のマリーにも招待状を出さないと…あまのじゃくなマリーの事だから招待しても来ないでしょうけれど、出さなければ出さないでひがむでしょうし」

カヴール「ふふ…ですがエクレール提督は提督の事がお好きでいらっしゃいますし、案外おいでになるかもしれませんよ?」

提督「…他の用事にかこつけるとかして?」

カヴール「ええ」

提督「ありえるわね…じゃあなおの事出してあげないと♪」

カヴール「はい、そうした方がよろしいと思いますよ」

提督「そうするわ」

カヴール「ではフランスへの国際郵便を一通…と」

提督「これで全部?」

カヴール「ええ、そのようですね」

提督「良かったわ…それじゃあ今度は、屋台の「建築現場」でも見に行きましょうか」

カヴール「でしたらライモンドを連れて行ってあげてくださいな…執務中はわたくしばかり隣にいて、きっとやきもちを妬いていることでしょうから♪」

提督「ふふっ、そうね…それじゃあお疲れさま♪」

カヴール「はい♪」

………

…R・モンテクッコリ級の部屋…

提督「…ライモン、いる?」

ライモン「あ、提督」

提督「これから屋台作りの作業を見に行く予定なのだけれど…一緒に行かない?」

ライモン「はいっ♪」

提督「そう、それじゃあ…お手をどうぞ♪」

ライモン「は、はい…///」

…鎮守府・庭…

提督「ダ・ヴィンチ、進捗状況はどう?」

レオナルド・ダ・ヴィンチ(大型潜マルコーニ級)「ええ、いい調子ですよ…この不世出の大天才、レオナルド・ダ・ヴィンチに任せておけば、ヘリコプターだろうが潜水艦だろうが作ってあげますよ♪」

提督「頼もしいわね」

ライモン「…でもダ・ヴィンチの「潜水艦」は沈んだきりで浮上しなかったはずでは……」

ダ・ヴィンチ「何か言った?」

ライモン「あっ、いえ。…さすがダ・ヴィンチと感心していたんです」

ダ・ヴィンチ「それはどうも……ちょっと、その柱は後でいいから先に屋根を上げちゃって!」

ライモン「…あの、提督」

提督「なに?」

ライモン「どう見ても屋根がすみっこの柱一本で支えられている気がするんですが」

提督「まぁダ・ヴィンチは天才だから……それにしても、ぐらつく様子さえないのよね」

ライモン「どうなっているんでしょうね…」

ダ・ヴィンチ「あーもう、どうしてみんなはやたらと下から作ろうとするの?…柱なんて後からでも取り付けられるんだから、先に面倒な屋根を持ち上げればいいでしょうに?」

トリチェリ(大型潜ブリン級)「ねぇガリレイ先生、こんなの物理法則に反しているはずなのに…なんでこれが崩れないんです?」

ガリレオ・ガリレイ(大型潜アルキメーデ級)「私も知らないけれど、天才のやることだからじゃない?」

トリチェリ「…そんなものですか」

………

…また別の日…

リットリオ「提督、ちょっとお買い物に行ってきます♪」

提督「あぁ、はいはい…それじゃあいつも通り玄関脇の小机にノートがあるから、行き先と戻る予定の時間を書いておいてね?」

リットリオ「了解」

カヴール「あら、また誰かお出かけですか?」

提督「ええ。まぁここ一週間というもの、あちこちでトンテンカンの音ばっかりで騒がしいものね…」

カヴール「確かにそうですね。おまけにのこぎりの切りくずや木切れがあちこちに飛び散っていますし」

提督「そうね…それにリットリオも姉妹でドライブするのがお気に入りみたい」

カヴール「そのようですね…しかし長身のリットリオとヴィットリオ、それにローマがあの小さいフィアットに乗り込んでいるのを見ると、よく車内に収まるものだと思いますね」

提督「ふふっ、確かに窮屈そうよね」

カヴール「はい…もし私があの後部座席に乗ることになったら、身体のあちこちが痛くなりそうです」

提督「まぁ、あの500(チンクエチェント)はリットリオのだから、カヴールがお出かけしたいなら私がランチアを出してあげるわ♪」

カヴール「グラツィエ…それに、ここにはヴェスパもありますし」(※ヴェスパ…イタリア史上最も有名なスクーターで、名前は「スズメバチ」の意。ベスパ)

提督「ちょっとお買い物に行く分にはあれで用が足りるものね」

カヴール「いざとなれば無反動砲も載せられますし、ね♪」

提督「ぷっ…もう、フランスの空挺部隊じゃないんだから」

(※ベスパに無反動砲を搭載した、通称「バズーカ・ベスパ」…大型輸送ヘリのなかった時代にフランス空挺部隊が生みだした苦肉の策で、本来は無反動砲の移動に使うだけだったが、車載したままでの発射も可能)

カヴール「うふふっ♪ さて、見まわりも済みましたが、この後はどうなさいます?」

提督「そうねぇ…あ、そう言えばまた大浴場の給湯パイプが詰まり始めたから、どこかで修理をしようって話をしていたわね」

カヴール「あぁ、そう言えばそうでした…歳をとると、どうも忘れっぽくなっていけませんね」

提督「もう、カヴールったら冗談が上手なんだから♪」…そういってパチリとウィンクを投げた

カヴール「ふふっ、まぁまぁ…では、水道屋さんに電話でもいたしましょうか?」

提督「いいえ、私がやるわ…どうせ街の水道屋さんに頼んだってすぐ来るわけがないし、かといってタラントに連絡して工兵隊の分隊を割いてもらうのも大げさだし……それにこの間も直したから、手順は分かっているわ」

カヴール「でしたら午前の残りはその作業ですね」

提督「そうね。とにかく、まずは汚れてもいいような服に着替えてくるわ」

…しばらくして・大浴場…

提督「さてと、服も着替えてきたし…行きましょうか」準備を済ませた提督は、もし汚れたらそのまま捨ててもいいように糸のほつれたTシャツと油染みのついたズボン姿に着替えてきて、片手には工作室から持って来た工具箱を提げている…

カヴール「はい」大浴場の大きな扉を開けるカヴール…

アラバストロ(中型潜アッチアイーオ級)「あ、提督…っ!?」

提督「あら…ごめんなさい、ちょっと給湯設備の修理をしに来たの」シャワーを浴びていたアラバストロの白い肌と滑らかな腰のラインをじっくり堪能しつつ、微笑を浮かべる提督…

アラバストロ「それで服のままなのですね。実は、さっき泳いできたのであちこちに砂が付いてしまって…ごめんなさい、すぐ終わらせます」

提督「ノン・ファ・ニエンテ(いいのよ)…遠慮なんてしなくていいから、気にせずにシャワーを浴びて?」

アラバストロ「いえ、むしろ私が気になりますので……もう砂は流しましたから、出ますね///」アラバスター(雪花石膏)の名の通り、息を飲むほど真っ白な身体を慌ててタオルで隠すが、色白なだけにぽーっと赤くなっているのが良く分かる…

提督「そう?」

アラバストロ「ええ…提督もカヴールもスタイルがいいので恥ずかしいですし……」

提督「そんなことはないわ。アラバストロの引き締まった身体と白い肌…とっても綺麗よ?」

アラバストロ「も、もうっ///」

カヴール「あらあら、あの娘ったらあんなに恥ずかしがって…何とも可愛らしいことですね」

提督「本当にね…さ、それじゃあ取りかかりましょうか♪」

カヴール「はい」

オンディーナ「私も手伝いますから、何でも言って下さいね…♪」浴槽から床のモザイク画の上に溢れているお湯を軽く蹴って跳ね上げながら、軽やかにステップを踏んでいる…

提督「ええ…それにしてもオンディーナ(ウンディーネ)は水の精だけあって、水回りの事は得意よね」

オンディーナ「はい、水を操ることにかけては私が一番ですから…」

提督「ふふっ、いつも手伝ってくれてありがとう♪」…ちゅっ♪

オンディーナ「んっ…どういたしまして///」

アシアンギ(中型潜アデュア級)「私もいますよ、提督…でも、何で私まで手伝うことになっているのデスカ?」日に焼けたカスタード色の肌に、カタコトでしゃべるところも異国風でチャーミングな「アシアンギ」…よく焼けた肌に白い下着のコントラストが目にまぶしい…

提督「んー、私たちが来た時にたまたま更衣室で下着になっていたし…それに、協力してくれればそれだけ早くシャワーが浴びられるわよ?」

アシアンギ「でも私は給湯設備のことナンテ分からないですよ?」

提督「大丈夫、ちょっと工具を持っていてくれたり、支えてくれたりするだけでいいから」

アシアンギ「そう、なら私でも少しは役に立てます?」

提督「いいえ…「少し」どころか、とっても助かるわ♪」

アシアンギ「ふふ、提督にそう言ってもらえると、私も嬉シイ…です///」

提督「よかった…でもお世辞じゃなくて本当の事よ?」

カヴール「提督、早くしないとお昼までに終わりませんよ?」

提督「あぁ、はいはい…それじゃあまずはここにお湯を流している給湯口を閉めるところから……」

………

濡れ衣イベント来た!

>>366 むむっ、なぜそれを……まぁ、おっしゃる通り濡れ透けイベントでございます。どうぞお楽しみ下さい

提督「さてと…大浴場の栓は閉めたから、今度は裏の給湯パイプね」

カヴール「了解」

…鎮守府・裏手…

アシアンギ「へぇ、裏にはこんなところがあったんデスネ」

提督「そうよ…と言ってもこんな機会でもない限り、めったに来ないけれどね」

アシアンギ「それで、汲みあげ用のポンプはどこにあるんですか?」

提督「このパイプの先ね…そこに源泉があるの」

アシアンギ「そうなんデスか」

提督「ええ」

カヴール「ここの温泉は「源泉」と言っても熱湯ではなくて、せいぜい43度になるかならないかのものなんですよ…だから私たちでも手入れが出来るんです」

アシアンギ「ふぅん」

オンディーナ「それで、やり方は?」

提督「まずはパイプにお湯を送っているポンプを止めて、それからパイプを詰まらせている温泉の「おり」をかき出すの…要はミネラル分とか、源泉の底から一緒に湧き出してくる泥とかね」

カヴール「どうしても流れないで残ってしまうものですからね」

提督「本当に困った物よね…まぁ、温泉成分が溶け込んでいるから身体にはいいみたいだけれど」

オンディーナ「それでバケツを持ってきたのね?」

提督「そう言うこと……かき出したらバケツに空けて、使いたい娘には泥パックとかなんとか…とにかく、そういうことに使ってもらうの」

アシアンギ「なるほどね…ぇ」

提督「たとえ泥だとしても、無駄にするよりはいいものね。 …ほら、あそこよ」

アシアンギ「どれどれ…わぁぁ♪」

オンディーナ「鎮守府の裏手にこんなところがあったんですねぇ」

…鎮守府裏手の丘のふもと、まばらな松林の木漏れ日が差しこむ中に、淡い緑白色をした温泉がごぼごぼと湧きだしている…

提督「ええ…それまではただ湧いているだけだったこの温泉に、工兵隊が汲みあげポンプとパイプを設置してくれたおかげで、私たちは好きなだけ温泉に入れるっていうわけね」

オンディーナ「それじゃあ工兵隊には感謝しないとね♪」

提督「そう言うこと。さてと、ポンプの切り方は…と」

カヴール「まずはメインの汲みあげバルブを回してくみ上げ量を減らしていって下さい……正面の緑のバルブ、右側の大きい方です」

提督「あぁ、そうだったわね」

カヴール「それから圧力を抜きます…赤のバルブです」

提督「はいはい……次は?」

カヴール「圧力計の値がきちんと下がったのを確認したら、電源を落としてもらって…これで作業に取りかかれますよ」

提督「全部済ませたわ。それにしても前に一回やったかやらないかなのに、ちゃんと手順を覚えているなんて…さすがはカヴールね♪」

カヴール「…いえ、提督の開けたポンプのカバー裏に動かし方と止め方が書いてありましたので」

提督「えぇ? あ、本当ね…せっかく褒めてあげたのに、手順を読み上げていたなんてズルいわ」

カヴール「ふふ、そうむくれないで下さいな…」

提督「むぅぅ…まぁいいわ、とにかく作業に取りかかりましょう」

…数分後…

提督「カヴール、モンキーレンチを取ってもらえる?」

カヴール「はい、どうぞ」

提督「ありがとう…アシアンギ、ちょっとここを押さえていてくれる?」

アシアンギ「了解、ここでいいの?」

提督「そう、そのまま押さえていてね……っ!?」

アシアンギ「うわ!」パイプを留めていたボルトを外した瞬間に残っていたお湯が噴き出して、頭から思い切りお湯を浴びることになった二人…

カヴール「まぁ、大丈夫ですか?」

提督「うっ…ぷ… まぁどうにか」

アシアンギ「うー、こんなところで湯浴みをするなんて思ってもいませんでシタ…」

提督「同感ね…とにかくパイプは外れたから、中を掃除しましょ…う///」

アシアンギ「どうかしたんですか?」

提督「あ、いえ…何でもないの///」

アシアンギ「?」

提督「……すっかり透けているわね」

…お湯を頭からかぶったせいで白い下着が透けて、アシアンギの暖かいカスタード色の肌がくっきりと浮き上がっている…

提督「まぁ、こんなに大変な作業なんだもの…少しは見返りがあってもいいわよね♪」…びしょ濡れになったまま含み笑いを浮かべるとパイプを傾け、長い棒を突っ込んで泥をかき出した…

オンディーナ「何か手伝いましょうか…?」

提督「いいえ、大丈夫よ…びしょ濡れになるのは二人だけで充分」

オンディーナ「…そうですね♪」(提督のたわわな胸…先端もくっきり浮き上がってる♪)

カヴール「…ふふ、同感です♪」(まぁまぁ、少し動くだけであんなに弾んで……目のやり場に困りますね♪)

…しばらくして…

提督「ふぅ…それにしてもよく溜まったものね」

カヴール「バケツ数杯分はありましたね……とりあえず大浴場の中にある個室風呂の一つに空けてきました」

提督「それでいいわ…ふー、お疲れ様」

オンディーナ「いえいえ、提督こそ…それじゃお先に…♪」無邪気な笑みを浮かべると、跳ねるように戻って行った…

提督「ええ……さて、後はゆっくりお茶でも飲みながら過ごすとしましょう」

カヴール「そうですね、今日はいい運動になりましたね?」

提督「全くよ……くたびれたわ。アシアンギも手伝ってくれてありがとう」

アシアンギ「ううん、気にしないデ?」

提督「それじゃあ後は私とカヴールでやるから、お湯が出るまで大浴場で待っていて?」

アシアンギ「はい、そうシマス」

提督「ええ」

カヴール「…それでは提督、後は浴室の元栓を開けに行きましょう」

提督「そうしましょう…それが終わったら、後はもう何もしないつもりよ」

カヴール「ええ、結構ですよ♪」

…昼食後…

提督「ふぅ…美味しかったわ、ディアナ」

ディアナ「そう言っていただけると作り甲斐がございます…では、わたくしはこれで」厨房の隅に置いてあった弓と矢筒を取り上げると肩にかけ、優雅に一礼して出て行った…

提督「ええ、お疲れ様」

カヴール「…あの、提督」

提督「なぁに、カヴール…さっき言った通り、今日はもう何もしないわよ?」

カヴール「いえ、それで構わないのですが…工具箱はどこに片付けられましたか?」

提督「工具箱…?」

カヴール「はい」

提督「えーと…あー、大浴場に置いてきたわ」両手を上に向けて首をすくめる提督…

カヴール「そうですか、でしたら私が…」

提督「ううん、置き忘れた私が悪いんだもの…ちょっと行って片づけて来るわ」

カヴール「そうですか?」

提督「ええ……どうも何か忘れたと思ったのよね…」

…大浴場…

提督「…はぁ、まったく。とんだ二度手間になっちゃったわ…食べた後は動きたくない所だけれど、そうそうカヴールに頼り過ぎるのも問題だもの…ね?」

ディアナ「!?」…いつもは長い金髪を左右のこめかみと後ろでまとめ、銀色のリングでまとめているディアナ…提督も初めて見る髪を解いた姿でシャワーの下に立ち、月のような乳白色の肌にお湯を浴びせている……そして片隅には、当然のように弓と矢筒が立てかけてある…

提督「あら、ディアナ…」

ディアナ「…み///」

提督「ごめんなさい、ちょっと工具箱を置き忘れてきちゃったから…そう言えばディアナがシャワーを浴びているところなんて初めてみ……」

ディアナ「…見ないで下さいっ!」ビシュ…ッ!

提督「いえ、あの…っ!?」提督の頭の脇、ほんの数センチの所に矢が突き立って震えている…

ディアナ「早く出て行って下さいっ…猟犬をけしかけられたいですかっ!!」ビィィ…ンッ!…あっという間に二の矢をつがえると、弦音も激しい一発を放ってくる…

提督「ご、ごめんなさい…分かったわ!」ピシャ…ッ!

提督「…ふぅ」更衣室の床に座り込んで肩を撫で下ろす提督…

ランチエーレ「あ、提督…どうしたの?」

提督「いえ…危うくアクタイオンになるところだったわ……」

(※ギリシャ神話…アルテミス(ディアナ)が狩りの最中に見つけた泉でお供の処女たちと水浴びをしていたところ、やはり狩りの最中だったアクタイオンが間違ってのぞいてしまい、裸を見られた恥ずかしさと怒りからアルテミスはアクタイオンを鹿に変えた上で、アクタイオン自身の連れていた猟犬五十頭を解き放ち、彼を八つ裂きにさせてしまった……純潔を愛おしむ処女神アルテミスの恐ろしい一面が書かれたエピソード)

ランチエーレ「どういうこと?」

提督「…工具箱を置き忘れたから取りに入ったの…そうしたらディアナがシャワーを浴びていて……」

ランチエーレ「あー…そう言うことね」

提督「知ってたの?」

ランチエーレ「だってディアナでしょ…うかつにのぞいたらあの百発百中の弓で射殺されかねないじゃない?」

提督「危うくそうなるところだったわ…ふぅ、出てくるまで待つしかないわね」

ランチエーレ「じゃあ出て来たら教えてあげるから……その間食堂で待っていたらどう?」

提督「お願いできる?」

ランチエーレ「もちろん…鎗騎兵の私が伝令に立ってあげる♪」ぺたんと座り込んでいる提督の頬に軽くキスをすると、腰掛けに座った

提督「それじゃあお願いするわ……ふぅ」

………

濡れ透けいいぞー

>>371 コメントありがとうございます

…そろそろ基地祭の場面に(反転することなしに)突入する予定ですので、しばらくはそれに絡めて提督の子供時代や士官学校時代の百合っぽいエピソードなどを交えて進める予定です…

…基地祭・前日…

…ここまでのひと月ばかり、しっかり進めていたはずの基地祭の準備…が、結局のところ設営を始めるとあちこちかみ合わないところが出てくる……おまけに提督が鎮守府で基地祭を運営するのは初めてで、熱意はあってもほとんどの艦娘たちは今まで基地祭の経験がない…結局、前日になっても鎮守府をひっくり返す勢いでドタバタしている…

カミチア・ネラ「…みんな、これ動かすのを手伝って!」

提督「…ドリア、発電機のディーゼル燃料を補給しておいて」

ガリバルディ「…作業灯の点灯テスト、いい?」

エウジェニオ「…うん、いい味。これなら納得できるわ」

ヴェネト「…ディアナ、トマトが足りないみたいなんだけど…届いたトマト缶がどこにあるか知らない?」

ディアナ「ああ、届いたトマト缶なら食堂の床に並べておきましたよ」

ヴェネト「あ、本当だ…グラツィエ♪」

バンデ・ネーレ「…正門の飾りつけは終わったかい?」

ジュッサーノ「ええ、終わったわ。でもまだ植木鉢をどかしてないの」

バンデ・ネーレ「ならボクと一緒に片づけようよ…姉さん♪」

ザラ「はい、こちらタラント第六…あ、海軍憲兵隊ですか。ええ、はい……提督、お電話です!」

提督「はいはい、すぐ出るわ…ふぅ、忙しくて目が回りそう」

カヴール「まぁまぁ、私たちも出来るだけ手伝いますから」

提督「助かるわ。そうでもないとばったり倒れちゃいそう」

チェザーレ「おーい、コードの長さが足りないぞ…誰か、延長ケーブルを!」

フィウメ「提督、回線の二番に市長の秘書さんからお電話です」

提督「時間の事だったら電話の脇に予定表があるから…それを教えてあげて?」

フィウメ「了解」

ゴリツィア「提督、グロッタリーエの航空基地から明日の予定について問い合わせが…」

提督「あぁもう…電子メールを送ってあるから確認するように言っておいて?」

ポーラ「提督ぅ、海軍旗とNATO旗はぁ…どちらを右のポールにしますか~?」

提督「それならNATO旗を優先するから右に…」

ザラ「提督、さっきのお電話ですが……海軍憲兵隊の少佐から「駐車スペースに停められる車の数はどれくらいか」とのことです」

提督「そんなの知らないわよ…詰め込めるだけ詰め込んでも二十台がせいぜいだって言っておいて?」

ザラ「分かりました」

デュイリオ「提督、来訪される議員さんたちですが…スピーチの順番は来た順番通りでよろしいですか?」

提督「いいえ。スピーチは行政単位の大きい方から順番…つまりプーリア州議員から始めるようにして、同格の議員だったらより年季の長い人を先にするように……どこかにマニュアルを作っておいたはずなんだけれど…」

ライモン「…提督」

提督「もう、今度はなんなの?」

ライモン「あ、いえ…よかったら少し休憩なさってもらおうとお茶を用意したのですが…」

提督「そうだったの…ごめんなさい、ちょっと忙しかったものだから」

ライモン「いえ、大丈夫ですよ…砂糖入りですから、疲れがとれますよ?」

提督「グラツィエ……うん、美味しいわ」…テラスの椅子にへたり込むように座ると、甘い紅茶をすする提督……かたわらではグレイ提督が「邪魔にならないように」とお茶をすすり、あくせくしている提督たちをからかうように優雅なひと時を過ごしている…

グレイ提督「それにしても大変な忙しさですこと。普段イタリア人は働かないと聞きましたが…何事も例外はあるようですわね」

提督「そうですね…まぁ、イタリア人は流れ作業のようなつまらない物でなければ寝食も忘れて働きますよ。特に自分が誇りを持っている仕事なら、なおの事です♪」

グレイ提督「なるほど…だからデザイナーはたくさんいても、工場は動かないのですね」

提督「まぁ、そう言うことですね…規格化だとか生産はドイツにでもやってもらいますから♪」こちらは同じ「邪魔しないように」でも、グレイ提督と違って律儀に客室にこもっているヴァイス提督…その生真面目さを少しからかうように、ウィンクしながら上を指差した…

グレイ提督「ふふ…♪」

…夕食時…

提督「えー…それでは明日からの三日間、基地祭を無事に終わらせることができるよう頑張りましょう。乾杯」

一同「「乾杯」」

提督「…今日はさすがのディアナとエリトレアも献立を考える余裕がなかったみたいね?」

ディアナ「ええ、申し訳ありません…」

エリトレア「ごめんなさいですっ」…作り置きしておいたマリネやサラダを前菜にして、慌てて焼いたチキンや、基地祭で出す屋台料理の試作品が並べてある

提督「ううん、別に非難しているわけじゃないの…たまにはこういう夕食もいいんじゃない?」茶目っ気たっぷりにウィンクする提督

カヴール「むしろこの忙しい中、よくこれだけ作れたものですね?」

ディアナ「それがわたくしの務めですから…それに今夜も哨戒の娘たちは出撃しなければなりませんし」

アッテンドーロ「そうね…敵さんは基地祭に合わせて休んでくれたりはしないものね」

エリトレア「まったくですねぇ…まぁ、とりあえず一杯どうぞ」

アブルッツィ「そうそう、前祝いってところでね」

提督「なら断れないわ…乾杯」

チェザーレ「…乾杯。良いワインだ」

提督「ええ」

…夜…

提督「ふー…少し飲み過ぎたわね」

カヴール「何度か乾杯に付きあっておりましたものね…お水をどうぞ?」

提督「ありがと。とにかく、もうお風呂には入ったし…水を多めに飲んでおけば、明日はすっきり起きられるはずよ」

カヴール「ええ。とにかく今日は早めにお休みになって、明日に備えて下さいね」

提督「そうするわ…それじゃあお休み」

カヴール「お休みなさい」

提督「…とはいうものの寝るにはまだ早いし、あれこれ気になってなかなか眠れそうにないわ」

…基地祭の段取りが書いてある書類を幾度も見直したり、問い合わせのメールか何かが届いてはいないかとパソコンを立ち上げてみたりと落ち着かない…そうこうしているうちにようやく眠気が忍び寄ってきて、執務室の電気を切って寝室に行き、椅子の背にナイトガウンを引っかけると布団をまくった…

提督「ふぅ、いよいよ明日ね…まぁ、なにはともあれみんなが楽しめればそれでいいわ……」

マラキーテ(中型潜ペルラ級)「…ふふ、そうよねぇ」

提督「!?」

マラキーテ「布団を暖めておいたわ。それに…一人で寝るのは寂しいでしょう?」…ほとんど透明な黒いベビードール姿でベッドに寝そべっている「マラキーテ」(マラカイト)…そのしなやかな身体がナイトスタンドのオレンジ色に照らされて、妖しい陰影を作っている…

提督「…一体いつから潜りこんでいたの?」

マラキーテ「ふふ、夕食を終えてすぐ…と言ったところじゃないかしら…ぁ」青緑色をした瞳を揺らめかせ、ゆっくりと提督を手招きする…

提督「あの、悪いけれど明日は忙しいからよく休んでおかないといけないの…」

マラキーテ「そんなつれない事を言わないでよ……て・い・と・く?」指先で提督の頬をなぞり、腕を引っ張った…

提督「はぁ…少しだけよ?」

マラキーテ「ええ、そうさせてもらうわ…♪」

…次の投下は今夜か明日以降になりますので、とりあえず次回予告でも…


…予告…

…絡み合う身体、交錯する舌…幾年もの間抑圧されてきた女の情欲が提督を襲う……愛と嫉妬、白と黒の二輪の百合が撃鉄を起こし、胸元に銃口が向けられる時、薬室に込められている銃弾は恋心か、あるいは怒りか……澄んだ秋の空とはほど遠い、ただれた過去と一片の優しい記憶…

…ここはイタリア、恋と嫉妬が渦巻く南欧の国…


次回、「装甲騎兵カンムス…カンピオーニ・ファイルズ『再会』」…提督の過去は、甘くて苦い


…基地祭当日・朝…

カヴール「おはようございます、提督」

提督「おはよう…うー、結局昨夜はマラキーテに付き合わされて、ほとんど眠れなかったわ」

カヴール「大変ですね……カプチーノでもお飲みになって、すっきりして下さいな」

提督「ええ、ありがとう。それじゃあ私はその間にシャワーを浴びてさっぱりしてくるわ」

カヴール「はい」

…食堂…

提督「みんな、おはよう…よく眠れた?」

アウグスト・リボティ「おはよう。昨夜は胸が高鳴って……提督が来てくれるかと思ったものだから」

カルロ・ミラベロ「…つまり興奮して眠れなかったのよ♪」

提督「あらあら。よかったら後でお昼寝でもなさいな」

リボティ「ああ、そうするよ……でもせっかくお昼寝するなら、提督と添い寝したいね」

提督「今日は忙しくてダメだから…また今度ね」

リボティ「そう、それは残念…」

ライモン「おはようございます、提督」

提督「おはよう、ライモン。ごめんなさい、今日は忙しくてあんまり一緒にいられないと思うから…明日は一緒に回りましょうね?」

ライモン「そんな、気にしないで下さい。わたしにはムツィオもいますし」

アッテンドーロ「そうね…姉さんったらはしゃぐのが苦手だから、いちいち私が手を引いてあげないといけないのよ」

ライモン「ちょっと!」

提督「まぁ…ふふっ」

ライモン「もう……それが自分の姉に向かって言うこと?」

アッテンドーロ「さぁね」

提督「それじゃあみんな怪我なく、出来るだけ楽しむようにね…命令よ?」

一同「「了解」」

カヴール「…提督、憲兵隊の車が来ました」

提督「分かったわ、それじゃあ朝食を兼ねて最後の打ちあわせね…テラスにご案内して?」

カヴール「はい」

…しばらくして…

提督「ふぅぅ…そろそろ0900時、開門時間ね」もう一度制服を改める提督…むっちりしたふとももがタイトスカートからはち切れそうな感じはするが、それ以外はびしっと決まっている…

カヴール「朝から多忙でいらっしゃいましたものね……テントの下でお座りになりませんか?」

提督「ありがとう。しばらくしたら落ち着くでしょうから、そうしたら座らせてもらうわ」

カヴール「それもそうですね…では、ぜひそうなさってくださいね」

提督「ええ♪」

広報担当士官「…司令官、議員の方々がおいでになりました」

提督「了解…それじゃあ出迎えないと」

愛想のいい議員「や、どうもどうも…何とも風光明媚ないい所ですなぁ!」

提督「ありがとうございます」

広報担当士官「こちらはプーリア州「カトリック保守連盟」のフェルッキオ議員です」

提督「初めまして、議員…司令官のカンピオーニです」

フェルッキオ議員「お招き下さってありがとう。いやはや、実にいい所だし……それにトマトソースの良い匂いがしますなぁ!」

提督「うちの娘たちが出している屋台がありますので…よろしければあとで召しあがってみて下さい」

フェルッキオ議員「ええ、ぜひそうさせてもらいますよ…ホテルの朝食は量が少なくってね!」

小柄なおばさんの議員「初めまして、司令官…お招き下さってどうもありがとう」

広報担当士官「こちらはプーリア州「労働者運動『赤い星』」のダンドレア議員です」

提督「本日はようこそ」

ダンドレア議員「ええ、よろしく…まさか海軍さんが私みたいな共産主義者にまで招待状を送って来るとは思いませんでしたから、ぜひお邪魔しようと思いましてね♪」広報担当士官からは「左派の闘士」だというブリーフィングを受けてはいたが、そうは見えない茶目っ気のあるおばさんで、提督に軽くウィンクしてみせた…

提督「いえいえ…プーリア州議員の方には、基地がどんなものなのかちゃんと見てもらわないといけませんから」

ダンドレア議員「ありがとう、お嬢さん……お若いのに立派ね」

提督「どうも恐れ入ります」

…数分後…

提督「……ふぅ、これで議員さんたちが好き勝手に口出ししてくれなければ、なおありがたいのだけれど」

広報担当士官「それは無理でしょう…議員のセンセイ方は何でも知っているつもりですからね」

提督「そうね…って、あの車……」

…駐車スペースに停まっているのは、つつましい生活を送っているらしいダンドレア議員のぽんこつフィアット127から、800万リラは下らないであろうフェルッキオ議員の最新型のマセラッティ・クアトロポルテまで様々だった…が、そのクアトロポルテでさえかすんでしまうような一台の車が目に止まった…磨き上げたアルミのような銀色をしているのは、なつかしの名車「マセラッティ・3500GT」で、提督はそのマセラッティを見た瞬間、背筋に冷たい汗が流れた…

提督「い゛っ…ごめんなさい、カヴール」

カヴール「どうなさいました…まるで悪魔を見たようなお顔でいらっしゃいますが?」

提督「ええ、あながち間違いでもないわね……ちょっと屋台の方を見てくるから、ここは任せるわ」

カヴール「はい、構いませんが……」

提督「そ、それじゃあよろしく…」

女性の声「…どこに行くつもりなのかしら?」

提督「!!」…一瞬その場に凍り付き、それから恐る恐る振り返る提督

すらりとした女性「会いたかったわよ、フランカ!」

提督「……うえぇ、やっぱり」

女性「何よ、やっと許嫁に会えたのにその表情?」

提督「いえ、だってほら…久しぶりでうんと綺麗になっていたから、一瞬誰だか分からなくって……」

女性「あら、ご挨拶ね…昔は綺麗じゃなかったって言うの?」

提督「あ、えーと…あのころは「綺麗」じゃなくて「可愛い」って感じだったもの」

女性「まぁ、嬉しい事を言ってくれるわ…さ、私をエスコートしてちょうだいね♪」

提督「あー…私は一応司令官だから、議員センセイたちの案内をしないといけなくって…」

女性「プーリアの田舎議員なんて放っておきなさいよ、どうせマイクを渡しておけば延々としゃべっていてくれるわ…インコと同じね」

提督「いえ、仮にも司令官だからそういう訳にも…」

女性「なら許嫁として隣にいるわ…それならいいでしょ?」

提督「…」

カヴール「あの…提督?」

提督「今は聞かないで……後でちゃんと説明するから」


…食堂…

提督「それじゃあ改めて…カヴール、彼女はアンナ・マリア・ベアトリーチェ・「ピピストレッロ」・カスティリオーネ。私とは…」(※ピピストレッロ…コウモリ)

アンナ「許嫁の関係よ♪」


…そう言って片方の眉を吊り上げてみせたアンナは見た目も雰囲気も提督とは対照的で、提督がむっちりした胸やふとももなら、モデルのようなすらりとした細身で、提督の髪が明るい金と栗色の間なら、アンナは黒に近い濃い褐色の髪を背中に伸ばしている…そしてどちらかと言えば提督は大人しい雰囲気をしているが、アンナは細い眉ときゅっと結ばれた唇、くっきりした濃い色の瞳していて、好き嫌いのはっきりした気の強そうな性格に見える……また格好も顔立ちによく似合った、ラメをまぶしてある黒い袖なしハイネックと細いベルト付きの黒いスカート……それに色っぽい薄手のタイツに十センチはありそうなピンヒールを履き、高そうなグッチのハンドバッグを手に持っている…


提督「えー…そう自称しているわ」

アンナ「自称じゃないわよ…だって「あの時」にちゃんと約束したじゃない?」提督のあごを親指と人差し指で「くい…っ」と持ち上げる…

カヴール「…提督?」

提督「つまり幼馴染ということよ……許嫁うんぬんは気にしないで」

アンナ「ふぅん、フランカったらそういうことを言うのね…」

提督「あっ、いえ……だって恥ずかしいもの」

アンナ「そうなの? …ふふっ、照れちゃって可愛い♪」

ライモン「提督…どういうことなのかはっきり説明してもらえませんか」

提督「え、えーと……」

アンナ「つまり私はフランカの許嫁で、あちこち調べたあげくにやっとここを探し出したわけ…これでよく分かったわよね♪」

提督「ねぇ、アンナ…私の転属は海軍内部にしか発表されなかったはずなんだけれど……」

アンナ「ええ、だから大変だったわ…海軍広報部に問い合わせても教えてくれないし、新聞にも出てないんだもの」

提督「じゃあどうやって……いえ、聞きたくないわ」

アンナ「ふふ、最後は現役士官にリラ札を積んで調べてもらったわ…こういう時お金って便利よね♪」

提督「…」

アンナ「それにしてもここはいい所ねぇ…ちょっと田舎過ぎるのが欠点だけれど、それもまた保養地みたいな味があっていいわ」

提督「……で、貴女は一体どうして来たの?」

アンナ「あら、許嫁が将来の伴侶と一緒にいちゃいけない?」

提督「…」

デュイリオ「…なんだか提督が振り回されていますね」

チェザーレ「うむ、珍しいな…」

フィリッポ・コリドーニ「…せっかくだから、たじたじになっている提督の写真でも撮っておきましょうよ♪」

チェザーレ「よせよせ、傷口に塩を塗るような真似はするな…少し賛成したい気もするが」

アヴィエーレ「…なんだ、こんなところにいたのか。 …提督、そろそろうちの所属機で展示飛行を始め……どちら様?」サングラスに乗馬ズボン、革ジャケット姿のアヴィエーレが入って来て、ちゃっかり提督の隣に腰かけているアンナを見て眉をひそめた…

提督「あぁ、アヴィエーレ。こちらは…」

アンナ「アンナ・マリア・ベアトリーチェ・カスティリオーネ…フランカの許嫁よ♪」

アヴィエーレ「許嫁だって? …初めて聞いたね」

提督「ええ、許嫁も何もアンナがそう自称しているだけ……」

アンナ「何か言った?」

提督「…いえ、何でもないわ」

アヴィエーレ「……どうやら恋多き人には語られることのない過去あり、ってところだね……話が済んだらテラスに出てみるといい」

提督「ええ、ありがとう…」げっそりした様子で力なくうなずいた…

アナウンス「…それでは、ただいまからタラント第六鎮守府所属の航空機による展示飛行を行います……イタリアの空を守る軍用機の華麗な飛行をお楽しみ下さい!」

提督「あ、始まったわ…♪」

アンナ「まぁ、すごい音。ねぇフランカ、テラスで一緒に見物しましょうよ!」…提督の腕にしがみつき、わざとらしく上目遣いをするアンナ

提督「はいはい…」関係者以外は立ち入り禁止にしてある食堂からテラスに出ると、エンジンの爆音が周囲に響き、辺りに燃料の臭いを残していく…

アンナ「まぁ、すごい低さ……それにものすごいスピードで飛ぶのね!」

提督「ええ」

アンナ「ねぇ、あれはなんていう戦闘機なの?」

提督「今の、砂色にオリーヴグリーンで「煙の輪迷彩」を施してあるのはマッキC202「フォルゴーレ」(稲妻)ね」

アンナ「そう…じゃあいま飛んで行った緑のは?」

提督「あれはフィアットG55「チェンタウロ」(ケンタウルス)ね。主翼とエンジンの軸内にマウザー20ミリ機関砲を搭載していて、機体は頑丈で速度も抜群…うちの鎮守府には三機しかない高性能機よ」

アンナ「ふぅん…見たところどっちもエンジンが一つの飛行機で、あんまり変わらないように見えるけれど?」

提督「ふふ、フォルゴーレとチェンタウロだと性能が段違いよ……で、あれがマッキC205V「ヴェルトロ」(イタリアン・グレイハウンド)…42年の、いわゆる「セリエ5」計画で開発された三機種の一つね」

(※セリエ(シリーズ)5…マッキC205V「ヴェルトロ」、フィアットG55「チェンタウロ」、レッジアーネRe2005「サジッタリーオ」(射手座)と、どれも形式番号の末尾に5が付いている三機種……本来は1942年ごろ、見劣りがしてきた既存機をリファインすることを目的にした新機種決定競作だったが、どれも性能面ではそれぞれ長所があった上に、とにかく保有機材が足りなかったので三機種とも採用された……しかしドイツ・ダイムラーベンツ製「DB605」エンジンのライセンス国産に手間取ったことで生産は43年にずれ込み、三機種すべてを採用した結果として補給の複雑化や生産ラインの非効率など混乱を招き、どれも生産数は少なかった)

アンナ「そうなの…それじゃあ、あのエンジンが三つの戦闘機は?」

提督「……ふぅ」

アンナ「何よ…私の相手はそんなに嫌?」

提督「いいえ、そうじゃなくて…あれはサヴォイア・マルケッティSM79「スパルヴィエロ」(ハイタカ)……戦闘機じゃなくて雷撃機」

アンナ「知らないわよそんなの…どっちも空を飛ぶんでしょ?」

提督「なら、アンナはムササビも鳥類に含めるの?」

アンナ「もうなんなのよ…フランカはそう言うことになると細かいんだから」

提督「それでお給料をもらっているんだもの……アンナ、あれを見て♪」

アンナ「なに?」

提督「あの真紅の飛行艇…マッキM33「シュナイダー・トロフィー・レース」仕様よ……開発でなかなか出てこなくて苦労したの」

アンナ「ふぅん…戦闘機なんて砂色か薄汚れた緑ばっかりだと思っていたけれど、たまにはああいう明るい色もあるのね♪」

提督「あれは戦前のレース機だから…それにしても惚れ惚れするようなデザインねぇ♪」

アンナ「ふーん、私にはよく分からないわ…とりあえず飛行機は見たし、今度は屋台を案内してちょうだいよ」

提督「えぇ…?」

アンナ「いいじゃない、戦闘機なら毎日見ているでしょ?」

提督「それはそうだけれど…でもこんな風に展示飛行を眺めるのは初めてだし……ほら見て、あれはピアッジォP7高速飛行艇。実機は飛ばずに終わっちゃったから、こうやって飛行姿を見ることが出来るなんて幸運なのよ?」

アンナ「そんなこと言ったって私には分からないわよ…さぁ、案内してちょうだい♪」

提督「はぁ、アンナはいつもそうやって人を振り回して……ところで」

アンナ「何よ?」

提督「貴女の後ろに付いてくるあの二人…ボディーガードなの?」…スーツの前ボタンを外し、サングラスをかけた「いかにも」な二人が距離を開けて付いてくる……

アンナ「ええ……ちゃんとピストル所持の許可証は持ってるけど?」

提督「…そう、お願いだからここでの「ドンパチ」は止めてね」

アンナ「もう、心配しなくたって大丈夫よ!」

提督「ならいいけれど……でも入口の憲兵にはなんて言ったの?」

アンナ「それはもちろん「フランカの許嫁です」って……すぐ通してくれたわ♪」

提督「…はぁぁ」額を手で押さえ「あきれた」と言うように首を振る提督…

ちょっと遅いですがハッピーハロウィン…そして、アイルランドよ永遠なれ!


…投下はまた明日にでもやっていきますのでお待ちください…

女の子が許嫁なんですねいいですね

>>381 自称「許嫁」なのですが、そこの経緯はおいおい書いていきます…ちなみにロリ×ロリ百合になるはずです…

…鎮守府・庭…

アンナ「ほら、あれなんて美味しそうじゃない……お嬢さん、一つもらえる?」

アオスタ(軽巡デュカ・ダオスタ級)「はい…いらっしゃいませ」(※アオスタ侯エマニュエーレ・フィリベルト…当時の貴族で、イタリア・サヴォイア王家とは親戚にあたる人)


…第一次大戦の陸軍第三軍団司令官が名前の由来になっている「エマニュエーレ・フィリベルト・デュカ・ダオスタ」と、同じく第一次大戦時の陸軍参謀総長「ルイージ・カドルナ」と、途中でカドルナに代わった「アルマンド・ディアス」の三人……イタリア王国にとっては長きにわたって北イタリアを併合していた「憎っくき仇敵」オーストリアと戦った三人だけに、屋台で出している長方形のムースは苺とマスカルポーネ・チーズで赤・白・赤の横しま…と、どこかの国旗にそっくりなデザインをしていて「敵を食べてしまおう」と言う意図が透けて見える…


ルイージ・カドルナ(軽巡カドルナ級)「いらっしゃいませ…提督、こちらの方は?」
(※ルイージ・カドルナ…第一次大戦でイレデンタ(未回収地)の街ゴリツィアの占領をこころみたが、七度も単調な攻撃を繰り返し、あげく手薄になった戦線へのカウンター攻撃である「カポレットの戦い」でオーストリア軍に惨敗。さらに他人に敗北の責任を押し付けた無責任さが問題視され任を解かれた将軍……が、ムッソリーニ時代には国威発揚の意味もあって「軍神」扱いに)

提督「…後で説明するから聞かないで」

アルマンド・ディアス(カドルナ級)「それも気になりますけれど……「お嬢さん」ですか」
(※アルマンド・ディアス…カドルナに代わり参謀総長となり、ヴェネト州・ヴィットリオ村近くで行われた「ヴィットリオ・ヴェネトの戦い」でオーストリア軍を撃破するなどイタリアでは評価が高い…第一次大戦後はイタリアの『強国』ぶりを国民に宣伝したがっていたムッソリーニに高く評価され、大臣になっている)


アオスタ「見た目よりはいい年なんですが…」

アンナ「さぁ、早くしてよ…せっかく来たんだし、フランカといっぱい見て回りたいんだから」

カドルナ「ねぇ、アルマンド……この人、いま提督の事を「フランカ」って…」

ディアス「ええ、聞こえた…提督が私たちには内緒にしていた恋人か愛人か……いずれにせよ、そうとう仲が良さそうですよ…?」

提督「あー…どんどん話が面倒な方向に向かっていくわね……」

アオスタ「はい、お待たせしました」

アンナ「グラツィエ…さぁフランカ、どこか静かで眺めのいい所に案内してちょうだい?」

提督「うーん、普段だったらどこでも静かで眺めがいいのだけれど……今はちょっと難しそうね」

アンナ「じゃあ貴女の部屋にしましょう♪」

提督「えーと…一応、施設内は立ち入り禁止だから……」

アンナ「もう、そんな細かい事はいいじゃない…私とフランカの間柄でしょ?」

提督「うー……そうは言っても軍規を破るのはちょっと…」

アンナ「もう…とっとと海軍なんて辞めて、私の家族になってよ?」

エウジェニオ「…何だか面白い事になってるわね……もしかして提督ったら、あの美人から逃げ出すために海軍に入ったとか?」

アブルッツィ「まさか、いくらなんでもそんなことは…」

エウジェニオ「ないって言い切れる?」

アブルッツィ「……あながち、あり得ない話でもないような気が…」

エウジェニオ「でしょう? …ほんと、提督ったら可愛い顔して罪な女♪」

バニョリーニ(大型潜リウッツィ級)「ふふ、あんな美人の恋人さんを隠しておくなんて…提督秘蔵の「お宝」ってところだね♪」

提督「……アンナ、こっちに来て」

アンナ「あら、やっと二人きりになれる場所へ案内してくれる気になったのね?」

提督「このままだとうちの娘たちが私とあなたの関係で、ある事ない事を言いそうだからよ…」

アンナ「もう「ある事ない事」じゃなくって、どれも事実じゃない…ローマに行って「真実の口」に手を突っ込んだって無事で済むくらいよ?」
(※真実の口…古代ローマ人が建物の壁に当時の「マンホールのふた」を流用したローマ観光名所の一つ。手を突っこんだ状態で嘘をつくと手を食いちぎられるという伝説がある……「ローマの休日」ではグレゴリー・ペックが手を食いちぎられるアドリブをして、オードリー・ヘップバーンを驚かせた)

提督「どこがよ……私たちが「幼い頃からの知り合い」ってところ以外はまるっきりのでまかせじゃない」

アンナ「そんな事ないわ…だって約束してくれたじゃない」

提督「ものを知らない子供の頃の口約束なんて無効よ?」

アンナ「いいえ、約束は約束……もしフランカが約束を果たしてくれないなら、法律だろうがお金だろうが、ありったけ駆使してあなたと結婚してみせるんだから♪」

提督「……はぁぁ」

…鎮守府・裏手の丘…

アンナ「まぁ、眺めのいい所ね…素敵じゃない!」…裏手の丘にある小さなあずまやからきらめく海を眺め、嬉しそうに声を上げるアンナ…ボディーガードらしい「こわもて」の二人はここまで付いて来ようとしたがアンナに怒られ、ふもとで待たされている…

提督「ここなら文句もないでしょう?」…松林に囲まれた白い石造りのあずまや…その周囲は誰もおらず、あずまやの中心にあるマリア像だけが二人を見ている…

アンナ「ええ、納得してあげる…それじゃあ、あーん♪」石のベンチに腰掛けて紙の箱を開き、さっきのムースを取り出すと使い捨てフォークで小さく切り分け、それを提督に向けて差しだした…

提督「…え?」

アンナ「だから、私が「あーん」してあげるって言ってるの…っ!」

提督「わ、分かったわよ……あーん」

アンナ「はい、あーん♪ …ね、許嫁に「あーん」してもらえばずっと美味しいでしょ?」

提督「ええ、そうね…」(味なんて全然分からなかった…どうすればこの状態を切り抜けられるかしら……)

アンナ「ところでフランカ、お昼は一緒に食べましょうよ♪」

提督「ごめんなさい、アンナ…それは出来ないわ」

アンナ「どうしてよ?」

提督「お昼は来賓の議員たちと試食会があって…軍用糧食と鎮守府の献立を、それぞれ軽く味見してもらうの」

アンナ「何よ…せっかくフランカとお昼を食べようと思ったのに」

提督「ごめんなさいね、アンナ」

アンナ「まぁいいわ…それじゃあ代わりに私がディナーにご招待するわ。ちなみに泊まっているのはタラントの「ホテル・レジーナ・マルゲリータ」よ♪」

提督「…それってタラントの最高級ホテルじゃない」

アンナ「あぁもう、フランカったら! …あれが最高級だなんて、海軍生活が長すぎたのね……やっぱり軍なんて辞めて、もう少し文化的な生活した方がいいわ」

提督「…あなたはそう言うけれど、ここだっていい所よ?」

アンナ「ええそうね、きっと「シャワーのお湯が出るから」とか言うんでしょう…海軍さんはお湯も満足に使わせてくれないそうだものね?」

提督「いいえ、それだけじゃなくて……」

アンナ「ねぇ…まさかとは思うけれど、あの「艦娘」とか言う女の子がたくさんいて、夜昼構わず食べ散らかしてるから……とかじゃないわよね?」

提督「…っ!?」(あながち間違いでもないあたり否定できないわ…)

アンナ「フランカ、分かっているとは思うけど…うちの「ファミリア」(家族)も私とフランカの事をよく覚えていて「早く結婚の予定を決めなさい、さもないとフランカだって準備のしようがないじゃないか」ってせっつかれているのよ?」

提督「あー…それってアンナのお父さんも……」

アンナ「それはもう♪」

提督「……えーと、それじゃあその事についてはディナーの時に話しましょうか…」

アンナ「それじゃあ今夜は来てくれるの?」

提督「え、ええ…」

アンナ「ふふっ、嬉しいっ! それじゃあすぐ帰って支度しないと…待ってるわよ♪」

提督「そう、そうね……チャオ、アンナ」

アンナ「チャオ、フランカ…ちゅっ♪」

提督「……どうしよう///」

………

…昼食時・食堂…

提督「それでは皆さま方には軍の携行糧食と、艦娘たちが作ったお昼を試食していただこうと思います…何かお聞きになりたいことがありましたら、私か皆様の向かいに座っている艦娘たちにお聞きください」提督が主人の位置に座り、あとは長いテーブルに向かい合う形で艦娘と議員が座っておしゃべりに興じている…

フェルッキオ議員「いや、これは美味しそうだ…携行糧食の方じゃありませんぞ?」フェルッキオ議員が軽く冗談めかした

ダンドレア議員「…屋台でいただいた軽食も美味しかったですし、期待できそうですね」

提督「そう思いますよ、議員……では、改めて自己紹介をさせていただきます。ここの司令官を務めております、フランチェスカ・カンピオーニ少将です…では、どうぞ冷めないうちにお召し上がりくださ……い…」提督の視線が三つほど離れた席にいる、一人の綺麗な議員に止まった……顔はどこかで見た記憶があるのだが思い出せず、もやもやした気分でワイングラスに手を付けた…

ダンドレア議員「どうかしたの、司令官さん?」

提督「あぁ、いえ…少し考え事を。どうぞお食事をなさってください」

美人の議員「♪」…提督の視線に気づいたのか、こっそりウィンクを投げてきた……グレイのパンツスーツからはち切れそうな身体をしていて、少し媚びるような笑みを浮かべている…

提督「…すみません、ダンドレア議員…あちらの金髪の議員は……」そっと耳打ちする提督

ダンドレア議員「ああ、彼女は「プーリア愛と緑の党」にいるパンピネア・ルッピーニ議員よ…彼女がどうかしたの?」

提督「あぁ…いえ」

ダンドレア議員「…彼女がレズビアン向けのアダルト映画女優から転身して、上半身裸で立候補した時はずい分とセンセーショナルだったものね。あなたもその時のニュースで「チェチィーリア」って言う名前を見たんじゃないかしら?」(※チェチィーリア…イタリア語での「セシリア」)

提督「あぁ…そういえばそうでした。何かと話題になった方でしたね……」(まさか「少尉の頃、士官宿舎で集まって見た」とは言えないわね…///)

ダンドレア議員「ええ、私みたいなおばさんからするとうらやましいわ。美人でスタイルが良くってね」

提督「まぁ、ふふっ」

フェルッキオ議員「…それにしても少将、軍の糧食って言うのはどうも…味が濃すぎるね」牛肉のステーキ風を噛みちぎろうと悪戦苦闘している…

提督「ええ。軍の携行糧食は塩分が汗と一緒に出て行ってしまう、運動量の多い時を前提にしていますから…どうしても味が濃いのです」

フェルッキオ議員「なるほどねぇ……でもこちらのパスタは絶品だ、誰が作ったんですかな?」

提督「これはうちの艦娘が作ったものです…ディアナ」

ディアナ「はい」

提督「議員が「美味しい」っておっしゃってくれたわ…♪」

ディアナ「恐縮でございます」

フェルッキオ議員「いや、ホントの事だよ…議員だからって、いつもウソをついているわけじゃない」

ディアナ「ふふっ、まぁまぁ…♪」

フェルッキオ議員「はは、良かった…私もまだまだ女の子を笑わせる事が出来るよう…だ?」

エウジェニオ「……なんですって?」

…ディアナの手料理のおかげか、それまで和やかに進んでいた試食会…と、提督たちはエウジェニオの声に鋭さが増しているのを聞きとがめた…

女性議員「ですからね、昨今の風潮には我慢ならないのです!」最初から鼻息荒く息巻いていた女性議員の一人…眼鏡と細い眉が、いかにも神経質そうな雰囲気をさせている…

ダンドレア議員「……彼女は「イタリア南部保守党」のミーア・サイエッタ議員よ」提督に小声で教えてくれるダンドレア議員

提督「…どうも」

エウジェニオ「ふぅ…ん、それじゃあ議員はどうしたいの?」

サイエッタ議員「わたくしに言わせればLGBTだの何だの……そんなのは生物学的にもおかしいですし、神の摂理にも反しています…それに子供を産めないだなんて、イタリアの出生率はどうなるのです!?」

エウジェニオ「そう…まぁ意見は意見としてうかがっておくわ。でもね……」

提督「…エウジェニオ」

エウジェニオ「なに、提督から始めたい?」

提督「いいえ?」(…あんまりやり込めすぎないようにね)

エウジェニオ「ふふ…まず、生物学だの何だのって言うけれど……」

サイエッタ議員「普通の動物に同性愛なんていません!」

エウジェニオ「…ゴリラはゲイのカップルを作るし、他のサルでもそういう事例はあるし…イルカは手がないから、同性どうしで集団になって、お互いに自慰の手伝いをするわよ?」

チェザーレ「…それに人間は獣ではない。子供を作るためだけに交わるのではなく、愛や恋のために交わるのだ……ただ子供を作るだけならロメオの相手はジュリエッタでなくても構わんだろう?」

アブルッツィ「議員は子供を作るためだけだからって、わざわざブタみたいな相手を選ぶ?」

フェルッキオ議員「……あのヒステリーが相手じゃ、相手のブタがかわいそうだ」

提督「くくっ…♪」

レジナルド・ジュリアーニ(大型潜リウッツィ級)「…それに、神の摂理と申しますが……聖書にも「人を裁くな、あなたが裁かれないために」とあります。あなたは神の代弁者でいらっしゃるのですか?」

…鎮守府の食堂では海軍のマナーとして、言い争いや上官反抗の理由になりやすい宗教や政治(…それにここでは好きな百合カップリング)の話題は基本的にしないが、ジュリアーニは艦名の由来が「第一次大戦やスペイン内乱に従軍した神父」だけあって、聖書にはめっぽう強い…

カヴール「それに「汝の隣人を愛し、汝の敵のために祈れ」と申しますよ…同じ人間同士ではありませんか」

ドリア「全くです、それに人を断罪したいのなら「本当に罪のない者だけが石を投げろ」と言いますよね…?」

サイエッタ議員「ですが…っ!」

提督「それに今では「iPS細胞」と言うもので、同性の間でも子供が作れるそうですよ……イタリアの出生率もこれで安泰ですね、サイエッタ議員?」

サイエッタ議員「ぐぅ…っ!」

アッテンドーロ「それに「出生率」だの何だのって……フィアットやアンサルドの工場じゃあるまいし、数字だけで人の気持ちを測ろうって言うの?」

デュイリオ「それにその言い方ですと、イタリアに非常に貢献しておられる私たちの提督より、子供が五人でスリやかっぱらいをしている泥棒一家の方がイタリアのために貢献していることになってしまいますね?」

サイエッタ議員「そう言うことではありませんっ…!」

提督「まぁまぁ、食事時に言い争いはよくないわ…ディアナ、次の料理を持ってきてもらえる? …ただし、サイエッタ議員のは抜きでね♪」

サイエッタ議員「ど…どういうことですか!?」

提督「前に物の本で読んだことがあるのですが…世の中の動物の中で、食べ物を味付けしたり料理する生き物は人間しかいないそうですよ。生物学的には私たちの方がおかしいそうなので、生き物として「正しい生活」をされているサイエッタ議員におかれましては、ぜひ新鮮な水と生肉をご賞味いただこうかと……」

サイエッタ議員「いえ、ですがっ…!」

提督「…残念です、議員……前夜から仕込んだディアナの美味しいシチューを食べられないなんて♪」

フェルッキオ議員「ああ、残念だね」

ルッピーニ議員「全くね♪」

サイエッタ議員「いえ、その…っ!」

提督「動物たちは当然お酒を醸造したりもしませんから……サイエッタ議員のワインも飲んでいいわよ、ポーラ?」

ポーラ「はぁ~い♪」

サイエッタ議員「その、あの…っ!」

提督「どうかなさいましたか?」

サイエッタ議員「えーと…その……謝罪しますから…」

提督「そうですか……ですが私にではなく、食事時に不快な思いをした議員の皆さんと艦娘たちにですよ?」

サイエッタ議員「は、はいっ…申し訳ありませんでした」

提督「どうですか、議員の先生方?」

フェルッキオ議員「まぁ良いだろう…それより特製のシチューはまだかな?」

ダンドレア議員「今は許してあげましょう……ただし食後のドルチェは抜きですよ♪」

フェルッキオ議員「ははっ。それはいい処罰ですなぁ、ダンドレア議員…うちのおふくろを思い出しますよ」

サイエッタ議員「うぅ…」

エウジェニオ「ふふ……せいせいしたわ♪」

提督「…お食事が済みましたら、また見学の方をどうぞ……フェルッキオ議員、申し訳ありませんが男性用のお手洗いは正門の方にある管理棟にしかありませんので…」

フェルッキオ議員「…やれやれ、どうもここは私のようなむさくるしい男はいちゃイカン場所のようですな……今後は女性議員を選ぶよう、事務局に言っておきますよ」

提督「お手数をおかけします」

フェルッキオ議員「いや、いいんですよ…それに君と艦娘の女の子たちがサイエッタ議員をやり込めてくれてスッキリした♪」

提督「ふふっ…♪」

…食後…

提督「ふぅ…私も化粧室に行っておこうかしら……」

ルッピーニ議員「…あら、司令官さん」

提督「あ、ルッピーニ議員…化粧室の場所は分かりましたか?」

ルッピーニ「ええ、案内の娘が丁寧に教えてくれたわ…ところで司令官さん、ルッピーニ議員なんて堅苦しいのはよして?」

提督「えぇと…でしたら何とお呼びしたら……」

ルッピーニ「チェチィーリアでいいわよ…選挙の時も本名の「パンピネア」より「チェチィーリア」の投票用紙の方が多かったくらいなの……危うく無効票になるところだったんだから♪」ぱっちりしたまつ毛のルッピーニ議員が、少し甘えるような上目使いで二、三回まばたきした…

提督「そうですか。それなら私の事もフランチェスカでいいですよ…では、午後の施設案内まではどうぞご自由にお過ごし……」

ルッピーニ「…ちょっと待って」

提督「…何でしょうか?」

ルッピーニ「フランチェスカ…あなたもしかして、私の「現役時代」の作品を見たことあるんじゃない?」

提督「えっ、いえ……それは…///」

ルッピーニ「やっぱり。最初に会った時から何となくそういう雰囲気がしたのよね…どれを見たのかしら「女子高生と未亡人マルガリータ・昼下がりの情事」とか「女子修道院の黒百合」とか……何にせよ、見てすぐにわかったわ♪」

提督「そ、そうですか…?」

ルッピーニ「ええ。何ていうのか…視線とか女の子に対する態度、メイクなんかがちょっと違うのよね」

提督「///」

ルッピーニ「いいのよ、恥ずかしがらなくても。私はみんなに見てもらって、きれいな身体を称賛されるのが好きだもの…じゃなきゃ選挙戦の時にあんなことしないわよ♪」

提督「えぇ…と」

ルッピーニ「それにね、フランチェスカは何となく「私好み」って言うのかしら……もっと近くで見てみたいわ」提督を壁に押し付けて、両肩を優しく押さえつける…

提督「あのっ…その、議員……///」ルッピーニは提督より二回り近く年上……もう四十歳を超えているはずだが、顔のしわもほとんどなく肌もきめ細かい…それに香水だけではない、甘い良い匂いがする…

ルッピーニ「……チェチィーリア」

提督「チェチィーリア、こんなところでは見られてしまいますから…///」提督が顔をわずかにそむけて頬を赤くする…かといって振りほどくわけでもない…

ルッピーニ「確かに…何もスキャンダルのタネを撒くことはないものね♪」

提督「え、えぇと……とりあえず、人の来ない所に行きましょう…」

ルッピーニ「ええ。ぜひともそうしてちょうだい、司令官さん?」

…倉庫…

提督「とりあえず、ここなら人は来ませんので…///」

ルッピーニ「ふぅん…とはいえ、あんまりほめられた場所じゃないわね……もっとムードのある場所が良かったわ?」

提督「そ、そう言われましても……」

ルッピーニ「…でもこれはこれで、女学生同士でいちゃついているような感じがしてわくわくするかも…ね♪」

提督「んぅ……んむぅ、はむ…っ…ちゅぷっ……///」

ルッピーニ「ぷは…思った通りね。フランチェスカの口の中、甘くてとろけそう…そうそう、私は虫歯もなければ病気もないから安心してね?」

提督「もう、チェチィーリア…///」

ルッピーニ「ふふ…貴女って相手に合わせて攻守どっちもイケるタイプでしょう……そんなトロけた顔をされたら、もっと甘い表情を見たくなっちゃうじゃない♪」

提督「はひっ、あふっ…だめ、制服がよごれちゃいますからっ……んむっ、ちゅぅ…ぅっ…♪」白いダブルの上着を脱ぎ、ぴっちりしたタイトスカートをどうにかたくし上げた…

ルッピーニ「そうね、私もスーツを汚さないようにしないと…♪」ちゅる…くちゅっ、にちゅ…っ♪ 

…ルッピーニがぴったりフィットしたスラックスを脱ぐと、ハイヒールできゅっと引き締まっているふくらはぎと形のいいヒップ、そしてそれを包む桃色のランジェリーがのぞいた……提督を片脚を挟み込むように、とろりと濡れた秘所を押し付ける……

提督「あっ、あっ…あふっ、あっあぁぁぁっ…♪」

ルッピーニ「んんっ、んっ…く……はぁぁ、んあぁぁ♪」

………

…その頃・廊下…

サイエッタ議員「…あなたの所の司令官には本当にあきれました!」

エウジェニオ「まぁ、奇遇ね…私も貴女にはあきれ返って物も言えないでいるところなの」…純白の肌に整った美しい顔、うっすらと施したメイク…ギリシャ風に結い上げた髪もばっちり決まっているエウジェニオが、あきれたように肩をすくめた…

サイエッタ議員「あのね…あなたたちがいくらイタリアの防衛に尽くしているからって、州議員に対して少し失礼じゃありません?」

エウジェニオ「かもしれないわ。でも私は普段から、礼を尽くす相手にはきちんとした態度を取っているのよ?」

サイエッタ議員「なら私が「礼を尽くしていない」って言うつもりですか?」

エウジェニオ「いいえ。私はあくまでも、相手に合わせてそれ相応の態度を取るだけ……ってこと♪」

サイエッタ議員「そういう冷やかしが無礼だと言っているのです…仮にもプーリア州の議員として納税者の代表を務めている……」

エウジェニオ「興味ないわ。私は命令を受けて作戦に出て、無事に戻れるように戦うだけ…陸(おか)にいるときは「あの時」楽しめなかった分も楽しんで…他の面倒なことは全部、あなたたち陸の人間に任せておくわ」

サイエッタ議員「あなたねぇ…!」

エウジェニオ「…それに、さっきの言い草は気に入らないわね。誰が誰を好きになるかなんてアモーレ(愛の女神)だけが決めることで、あとは個人の自由でいいじゃない?」

サイエッタ議員「ですから、そういう身勝手な考えの人が増えるから国民の一体感や……」

エウジェニオ「知った事じゃないわ。やれ国旗だの標語だの…そんなので戦争に勝てるなら、ムッソリーニは世界大統領にでもなってたわ」

サイエッタ議員「あなたってば本当に…!」

エウジェニオ「エウジェニオ・ディ・サヴォイア…人の何倍も人生経験のある私に向かって「あなた」だなんて失礼じゃない?」

サイエッタ議員「そうだとしてもあなたの態度は少し軽薄すぎま…っ!?」

エウジェニオ「…なら、これで少しは静かに出来るかしら?」むちゅっ、ちゅぅ…じゅるっ、ちゅぅぅ……っ♪

サイエッタ議員「!?」

エウジェニオ「ぷはぁ……口うるさい女性議員を黙らせるならこの手に限るわね。それに舌も柔らかくて、結構よかったわよ?」

サイエッタ議員「あ、あなた一体なにをして…っ!?」

エウジェニオ「あら…議員さんったらこんな挨拶で驚くような小娘だったの?」

サイエッタ議員「し、信じられませんっ…こんな、こんな事……っ///」顔を真っ赤にして、がくがくとひざを震わせているサイエッタ…

エウジェニオ「ふぅん……貴女ってがみがみと小うるさいけれど、ちゃんと可愛い顔も出来るじゃない…♪」

サイエッタ議員「可愛いですって…!?」

エウジェニオ「ええ。意外と好みかもしれないわよ…ミーア♪」

サイエッタ議員「…っ///」

エウジェニオ「さ、化粧室に行くんでしょう……歩ける?」

サイエッタ議員「あ、当たり前です…っ!」

エウジェニオ「その調子じゃあだめそうね…それじゃあ失礼して♪」艦娘だけあって、エウジェニオは軽々とサイエッタを「お姫様抱っこ」した…

サイエッタ議員「何をするのっ! …お、降ろしなさい…っ!」

エウジェニオ「ふふっ、あんまりわがまま言わないの…ちゅっ♪」

サイエッタ議員「///」

…化粧室…

エウジェニオ「貴女って、表向きはああやって人に強くあたる性格みたいだけど…そんなに無理しなくてもいいんじゃない?」

…恥ずかしいのを隠すように鏡に向かい、一生懸命メイク直しを行っているサイエッタに、壁にもたれかかっているエウジェニオがつぶやくように言った…

サイエッタ議員「でも、私は…っ!」振り返って、きっ…とにらみつける

エウジェニオ「何をそんなにいきり立っているのよ? 貴女一人でイタリアを変えようなんて、ガリバルディにでもなるつもりなの?」

サイエッタ議員「…っ」

エウジェニオ「いいじゃない、時には弱い所を見せたって。少なくとも今ここでなら……そう、こうして二人きりの時だけは…ね?」

サイエッタ議員「あっ、あ…///」(…色、白い……まつ毛も長くて…っ///)

エウジェニオ「んむ…っ、ちゅぅぅ……ぴちゅっ、ちゅぅぅ…っ♪」

サイエッタ議員「あふっ…んふっ、くっ…///」

エウジェニオ「んちゅ……ちゅる、れろっ…ん、じゅるぅぅっ……♪」

サイエッタ「んぅぅぅっ…んっ、ふぅぅ……っ!?」(な、何なの…っ!? …舌が入り込んできて…絡みついて……まるで別の生き物みたいに…っ!)

エウジェニオ「んむっ…んちゅっ♪」しゅる…っ、くちゅっ、ぬちゅ…っ……洗面台にサイエッタを押し付け舌を絡ませたまま、スラックスをずり下ろす…そのまま下着のへりから手を差し入れると、秘所にほっそりと形のいい指を滑り込ませた……

サイエッタ「んいぃぃっ…ふぅぅっ……んふぁあぁ…っ!?」

エウジェニオ「ちゅぽ…っ……ふふ、意外と濡れているじゃない。女同士は嫌じゃなかったの?」

サイエッタ「……んっ、だって…あなたがこんな事……無理やり…///」(こんなの…おかしいはずなのに、どうして……っ///)

エウジェニオ「そう…なら止すわ。嫌がる女性を無理に手籠めにするのは趣味じゃないの……化粧を直して、また基地祭を回るといいわ」あっさりと両手を放し、出口の方に片手を向けてみせるエウジェニオ…

サイエッタ「ええ、そうさせてもらいます…っ///」スラックスをはき、怒ったようにパウダーをはたきマスカラをやり直すと出て行こうとする…が、出口の所で立ち止まった…

エウジェニオ「…どうしたの?」

サイエッタ「……わ、分かっているくせに…っ///」

エウジェニオ「ふふっ、かもね……さ、来て♪」

サイエッタ「///」メイク道具のポーチが床に落ち、コンパクトやアイペンシルが散らばった…

…しばらくして…

エウジェニオ「だから言ったのよ……女のいいところは女が一番よく知っている、って♪」ブラウスをはだけさせると片手で小ぶりな胸をこね回し、反対の手で秘部を優しくかき回す…

サイエッタ「あぁぁ…ふぁ、あぁっ……い゛っ、んふぁぁっ……♪」とろとろ…っ、ぶしゃぁぁ……っ♪

エウジェニオ「あーあ、私ったら真面目な議員さんをたぶらかして……こんなによがらせちゃうなん…て♪」ぐちゅぐちゅっ、じゅく…っ♪

サイエッタ「はぁぁっ…あひぃ、ふぁあぁぁ…♪」さっきまではぴりぴりと神経質そうだった表情はだらしなくとろけきり、きゅっと真一文字に結ばれていた薄い唇は半開きになってよだれを垂らしている…

エウジェニオ「あのね、今の貴女ってとっても可愛いわよ……ミーア♪」耳元に息を吹きかけるようにささやく…

サイエッタ「はひぃぃっ、あへっ、ひぅぅぅ…っ♪」もはや自力では立てないほどひざを震わせ、ふとももを伝ってとろとろと垂れる愛蜜がストッキングからパンプスまでぐしょぐしょに濡らしている…

エウジェニオ「好きよ…貴女の事をペットとして飼いたいくらい……♪」

サイエッタ「そ、そんな事…///」ぐちゅ、ずぷ…っ……とぷ…っ♪

エウジェニオ「可愛い女の子に嘘はつかない主義なの…誰よりも貴女を可愛がってあげる♪」

サイエッタ「はひっ…はひゅ…ぅ……♪」

エウジェニオ「…ふふ、こんなとろっとろに濡らしちゃって……♪」洗面台の上にサイエッタのお尻を乗せると脚を押し開き、しゃがみ込んで秘部に顔をうずめた…

サイエッタ「あひぃぃっ、ひうぅ……あっあっあぁぁ……っ♪」

エウジェニオ「んっ、じゅるっ…じゅるぅぅっ……れろっ、じゅぼっ…♪」

サイエッタ「ひあぁ……っ、ふあぁぁ…んくぅ……♪」頭をのけぞらせてひくひくとけいれんするサイエッタ……しばらくしてエウジェニオが顔を上げると、だらしなく喘ぎ、鏡に背中を付けてぐったりと脱力していた…

エウジェニオ「ふふ、今度こそ化粧直しが必要ね♪」

サイエッタ「あへぇ…こんあの……もう、もろれない…ぃ…///」

エウジェニオ「戻らなくたっていいじゃない…ふふ、新世界にようこそ♪」ちゅ…っ♪

………

さすが女たらし

>>390 何しろ艦隊一のタラシですので……提督は別としてですが(笑)


…次の投下は明日以降の予定で、提督×(自称「許嫁」の)アンナでいちゃつく予定です……そのうちに二人の馴れ初めも書きますので、お待ちください

…午後…

提督「ねぇ、エウジェニオ」

エウジェニオ「なぁに?」

提督「……一体、サイエッタ議員に何をしたの?」

エウジェニオ「ふふっ、聞きたいの?」

提督「あー…いえ、止めておくわ」

エウジェニオ「そうね、その方がいいわ…ところで、提督もルッピーニ議員と二人きりでどこに行ってたの?」

提督「えーと…まぁ、その……///」

エウジェニオ「ね、お互いに聞かない方がいい事もあるでしょ…♪」

提督「確かにそうね……でもサイエッタ議員が、さっきとはうって変わって大人しくなったものだから…」(すっかりトロけた表情になっていたし…)

エウジェニオ「ふふふっ……さぁてと、午前中は議員の案内でほとんど見て回れなかったから、午後は楽しませてもらうわね」

提督「ええ、行ってらっしゃい」

エウジェニオ「私は提督みたいに許嫁が来てくれるわけじゃないから、現地調達で可愛い娘を探すとしましょうか♪」

提督「だから、本当にアンナは許嫁じゃないの…!」

エウジェニオ「そう? …まぁいいわ、チャオ♪」

提督「むぅ…とりあえず私もあちこち巡ってみるとしましょうか。ライモン」

ライモン「はい」

提督「議員さんたちには広報部の士官が付いてくれることになったから身体が空いたわ…よかったら一緒に回らない?」

ライモン「え、いいんですか?」

提督「もちろん♪」

ライモン「それじゃあ…ご一緒させてください///」

提督「ええ」

…鎮守府・庭…

ヴィットリオ・ヴェネト「…ヴィットリオの「ヴェネト風パスタ」はいかが? 美味しいですよ!」

ローマ「ラツィオの味、チーズと茸のピッツァはいかがですか、焼き立てですよ?」

ルイージ・トレーリ(大型潜マルコーニ級)「この暑い日差しは参ってしまいますよね…ジァポーネ風のシャーベット「かき氷」はいかがですか?」

アスカーリ(駆逐艦ソルダティ級)「アラビア風の牛の串焼きだ…香辛料が効いてるでな、美味ぇだぞ!」

提督「……なかなかにぎわっているわね?」

ライモン「そうですね…近くの町からも数キロはありますし、もっと人出が少ないものと思っていました」

提督「そうね…それに観光客みたいな人もいくらかいるみたいね」

ライモン「ええ」

提督「…後はあちこちの若手士官ね……こういうとき、司令部の偉い人が優しいと「私の代わりに視察に行ってこい」とか言って羽を伸ばす機会をくれるのよね♪」

ライモン「なるほど…」

提督「他には協賛企業の人たち、と……ライモン、ちょっとだけ挨拶回りに付き合ってくれる?」

ライモン「もちろんです」

…鎮守府の正門そばには海軍と縁のある「OTOメララ」「ブレダ」「フィアット」「アエルマッキ」「ピエトロ・ベレッタ」「ルイージ・フランキ」といった企業の人たちが来ていて、お客さんにパンフレットやメーカーロゴの入ったしおりなどを配っている…

提督「ふぅ……挨拶はこれでよし、と」

ライモン「それじゃあ…」

提督「ええ、後は好きなように回れるわ…どこに行きたい?」

ライモン「……提督とならどこでもいいです///」

…特設ステージ…

アオスタ「では、大型潜水艦「グラウコ」と、妹「オタリア」のギター演奏で……「サンバ・アストロナウタ(宇宙飛行士のサンバ)」をどうぞ!」

(※サンバ・アストロナウタ…ブラジルが誇った超絶技巧のギタリスト、バーデン・パウエルの名曲。ポルトガル海軍の注文流れだった二人には関係がないこともない…?)

グラウコ「…いい?」

オタリア「はい…っ♪」椅子に腰かけ、ギターを爪弾く二人…アンプのつかないシンプルなクラシックギターなので、マイクをそばに置いて音を大きくしていて、柔らかな和音が耳に心地よい…

提督「…二人ともずいぶん練習していたけれど、そのかいがあったわね」

ライモン「そうですね。まるで吸い込まれるような音……」

提督「手…つなぎましょうか」

ライモン「はい」

…しばらくして…

提督「……みんなとっても上手だったわね」

ライモン「ええ、そうですね」

提督「それじゃあ何か食べに行きましょうか…かき氷でいいかしら?」

ライモン「いいですよ」

提督「……あら、フィンチもここのお手伝い?」

ジュセッペ・フィンチ(大型潜カルヴィ級)「ああ。何しろジァポーネに関しては私もひとかどの「通」だ…トレーリほどではないにせよ、な」

提督「そうね…ところで何味があるの?」

フィンチ「ふむ、良い質問だ…あるのは紅、白、緑、黄、青で、それぞれグレナデン・シロップ、練乳、チンザノ、リモンチェーロ、ブルー・キュラソーとなっているのだ…さぁ、何味にする?」(※グレナデン・シロップ…綺麗なルビー色をしたザクロのシロップ)

提督「ライモン、先に選んでいいわよ?」

ライモン「じゃあ…わたしは青にします」

提督「なら私は紅で…お代はここに置くわね?」

フィンチ「提督からお代を取るのも複雑な気分だが…毎度あり」

提督「気にしないで……どう、ライモン? おいしい?」

ライモン「はい。ブルー・キュラソーなのでさっぱりします」(※ブルー・キュラソー…オレンジリキュールを青色に着色したもの)

提督「そう、良かった。私の方はグレナデン・シロップだから甘酸っぱくて美味しいわ……はい」スプーンを差しだす提督

ライモン「え?」

提督「よかったら味見してみない?」

ライモン「いえ、その…じゃあ一口だけ……」

提督「ふふっ♪」頬を赤くしながら差しだされた一口を食べるライモンを見て、思わず笑みを浮かべる提督…

ライモン「…な、ならわたしのも……どうぞ///」

提督「ありがと。あーん♪」

ライモン「ど、どうですか?」

提督「うん、爽やかですっきりするわね…ところで」

ライモン「はい」

提督「唇に付いているわ…」ライモンの唇に付いている青い色を指ですくい取り、そのまま舐めとる提督

ライモン「///」

提督「ふふっ……さぁ、次は何を食べたい?」

ライモン「…とく」

提督「ん?」

ライモン「…提督を……食べたいです…///」

提督「まぁ…ふふっ♪」

………

…その日の夜・食堂…

提督「…まずは基地祭の初日、お疲れ様。視察に来た司令部の人や議員さんたちも良い印象を持ってくれたようだったわ……みんなのおかげね♪」

エウジェニオ「…まぁね♪」

アルピーノ・バニョリーニ(大型潜リウッツィ級)「ふふ、タイトスカートの若手将校って言うのはいいものだね…何とも言えない可愛さだったよ♪」

提督「あー……それでは、残り二日間も事故なく…そしてみんなで楽しめるように頑張りましょう。乾杯」

一同「「乾杯」」

提督「……ところでグレイ提督、ヴァイス提督」

グレイ提督「はい、何でしょうか」

ヴァイス提督「ヤー」

提督「お二人にも改めてお礼を…色々と協力してもらって助かりました」

グレイ提督「ふふ、どうかお気になさらず。こういう場合はお互いに「持ちつ持たれつ」と言うことですから」

ヴァイス提督「確かにそれもそうですが、これだけ素晴らしいもてなしをしていただいているのですから…協力は当然です」

提督「ダンケシェーン…シャルロッテ♪」

ヴァイス提督「ビッテ…///」

ポーラ「…提督ぅ、もう一杯いかがですかぁ~?」

提督「うーん、いただきたいのはやまやまだけれど…今夜は車で出かけるから、みんなで飲んで?」

ポーラ「りょうか~い♪」

ライモン「お帰りはいつごろですか?」

提督「そうねぇ…たぶん明日の朝、0700時ころになると思うわ……どのみち飲まないで済ませられそうにはないし…」

カヴール「分かりました。それではお気を付けて」

提督「ええ…何しろライオンの口に飛び込むようなものだから……」

カヴール「まぁまぁ……散弾銃と防弾チョッキでもお持ちになりますか?」

提督「…本当に持って行こうかしら」

カヴール「ふふっ、提督ったら…口ではそう言いつつも、わたくしの目には大変うきうきしているように見えますよ?」

提督「きっとカヴールの見間違いね……それじゃあ行ってくるから、何かあったら携帯電話にかけて? …留守は任せたわ」

カヴール「はい」

ライモン「行ってらっしゃい」

提督「ええ、行ってきます…♪」ちゅっ…と軽くキスをして、玄関に回しておいた車に乗り込んだ…

提督「♪…ふーん、ふふーん……」

…タラント市内までは海沿いを走る交通量の少ない道路で、帰宅時間には遅く、夕食後のお出かけには早すぎる中途半端な時間だったせいもあって、快調に飛ばすことが出来た…夕日が沈んでいく海を後ろにして快走する濃青色の「ランチア・フラミニア」が、次第に深まる夜の色に紛れていく……提督はヘッドライトを点けて、カーブの続く道を滑らかにクリアしていく…

提督「…きっとアンナの事だから、私が到着するなり海軍のお役所仕事ぶりに向かってあれこれ文句を言うに決まっているわね……ふふ♪」

………

…しばらくして・タラント市内…

提督「ふー、時間が時間だけに道路は空いていたけれど……結構かかったわね」腕時計をのぞき、それからこわばった肩を回した…

提督「ホテル・レジーナ・マルゲリータ……改めて立派なホテルね…」

…入り口の車止めで駐車係がキーを受け取り、裏手の駐車場に車を停める…見える範囲に停まっている車はだいたいがフェラーリかマセラッティ、メルツェデス・ベンツと言ったところで、相場を考えた提督は「仕方ない」とあきらめた様子で、駐車係に結構な額のチップを渡した…

…フロント…

受付係「…いらっしゃいませ、何かご用でしょうか?」

提督「ええ…600号室のカスティリオーネさんに招かれていて……」

受付係「左様でございますか…失礼ですが、お名前と身分証をお願いできますか?」

…一流ホテルだけにあたりのご婦人たちは贅沢なカクテルドレスやミンクのコート、ダイアモンドや金のネックレスがきらめかせている…その中で一人、なかなかお洒落には見えるが、お金がうなっているようには見えない提督…受付のホテルマンも少し場違いな提督に疑問を持ったのか、丁寧だが堅苦しい様子で声をかけてきた…

提督「ええ…これでいいかしら」

受付係「はい、結構でございます…それでは、担当の者がご案内いたします♪」アンナから聞いていたのか、急に笑みを浮かべるホテルマン…

…最上階・ロイヤルスイート…

案内係「こちらでございます……失礼いたします」

アンナ「はぁい、どなた?」

案内係「ホテルの者でございます。カンピオーニ様がいらっしゃいました」

アンナ「そう、なら入ってもらって?」

案内係「承知いたしました…どうぞお入りくださいませ」…両開きのドアを開けると控えの間になっていて、テーブルには昼もアンナに付いていたボディーガードの「こわもて」二人が座っていた…片方がボーイの顔を確かめると、多めのリラ札を渡した…

提督「ええ、ありがとう」

案内係「とんでもございません。それでは……」

…メインベッドルーム…

提督「…アンナ、いる?」軽くノックしてドアを開けた

アンナ「フランカ…待ってたわ!」提督に抱き着くと、頬に「ちゅっ…♪」と音高くキスをした…身体が透けて見える極薄の黒いカクテルドレスに、大豆くらいはありそうな大きなルビーの首飾り。ふっと動くと香る甘い香水に、濃いチェリーレッドの口紅…黒褐色の艶やかな髪はシャンデリアの灯りを反射して「天使の輪」を作っている…

提督「アンナ、待たせてごめんなさい…お客さんが帰ってからもあれこれと長引いたものだから……」

アンナ「分かってるわ……どうせくだらない打ち合わせとかでしょ。 さ、座って?」…テーブルには頼んでおいたらしいディナーと、銀のアイスバケットに入っているシャンパンが見える…

提督「まぁね。それにしてもすごい部屋……ぜいたく過ぎて、むしろ居心地が悪いくらい」

アンナ「またそんなことを言って…何か飲むでしょ、シャンパンでいい?」

提督「ええ、いいわよ」

アンナ「ふぅ…何はさておき、これでようやく二人きりになれたわね。はい♪」ポン…ッと栓を開けると、金色に泡立つシャンパンを注いだ…

提督「ありがと」

アンナ「ええ。それじゃあ…乾杯♪」

提督「乾杯……んくっ…」

アンナ「どう?」

提督「ええ、とっても美味しい…♪」

アンナ「そう、良かった。 …それにしてもずいぶん遅いから、何かあったのかと思ったじゃない」

提督「ふふ、何もないわよ…うちの鎮守府には狙われるような重要施設なんてないもの」

アンナ「何言ってるのよ、フランカ…あなたがいるじゃない!」

提督「ふふっ、なにそれ…♪」

アンナ「笑いごとじゃないわ…あなたに何かあったらどうしようと思って、心配だったんだからねっ!?」

提督「…ごめんなさい、アンナ……せめて電話くらいすれば良かったわ」

アンナ「ホントよ、まったく…ま、この埋め合わせはちゃんとしてもらうわ♪」さっきまでの心配そうな怒り方は提督もよく知っているアンナの演技で、提督が少し謝ると、けろりとした様子で笑いかけた…

提督「…」


護衛「……他にご用はありますか、シニョリーナ・カスティリオーネ?」

アンナ「ないわ…後は私がやるから部屋に戻ってちょうだい」

護衛「分かりました」

アンナ「ふぅ……そういえばフランカ、夕食はまだなんでしょう?」

提督「そうねぇ、鎮守府でいくらか食べては来たけれど……せっかく用意してくれたのだから、いただくわ」

アンナ「殊勝な心がけね…じゃあ取ってあげる♪」

提督「ありがと」

…オードブルはキャビアやスモークサーモン、オリーヴやフォアグラのパテが載った小さいクラッカーにチーズの盛り合わせ…スープは上手にアクをとってあるおかげで琥珀色に透き通っている、玉ねぎのコンソメスープ…メインディッシュにはジャガイモとニンジンを添えた半身のローストチキン、そしてデザートには濃いチョコレートムースが控えている…

アンナ「さぁどうぞ…遠慮しないでいっぱい食べなさいよ?」チキンを切り分け、大きい方を提督の皿に載せるアンナ…

提督「ええ、そうさせてもらうわ」

アンナ「ところでフランカ、最近はどうしてた?」…そう言いながら提督のグラスにシャンパンを注いだ

提督「んー、春ごろまではローマのスーペルマリーナにいたから忙しくて、それから色々と「訳あり」でタラント第六…今いるところね…に転属になって……って具合だから、どうにか司令官の務めに慣れてきたところよ」

アンナ「ふぅん…それじゃあ転属だなんだで、なかなか大変だったんじゃない?」

提督「まぁ、そう言ってもいいわね。アンナは?」

アンナ「相変わらずよ…「国際弁護士」なんて聞こえはいいけれど、重箱の隅をつつくようなケースばっかり。嫌になるわ」

提督「お互い何かと大変ね…乾杯♪」

アンナ「乾杯……そうよ、私なんて結婚の話も宙に浮いたきりだし…ねぇフランカ、返事はどうなの?」シャンパンを注ぎながら、じっと提督を見る…

提督「あー…だから何度も言っているけれど、あれは子供だったからよく知らないまま言った「おままごと」みたいなもので……」

アンナ「あのね、そんな事聞いているんじゃないわ! …イェスなの?スィなの?」

提督「ちょっと…ノーの選択肢はないの?」

アンナ「あるわけないわ。私だってファミリアに話をしちゃってるし、お父さんも乗り気よ。それに私だって……フランカが欲しいの♪」

提督「…っ///」顔を赤くしてうつむいた提督…

アンナ「はぁ、まぁいいわ…せっついても自分で動こうとしない限り、フランカを動かせないのはよく知ってるもの……シャンパン、もう少ないから飲んじゃって?」

提督「え、ええ…///」

アンナ「はい、おしまい…他に飲みたいものとかある?」

提督「いいえ、もう十分よ……正直、身体がふわふわして…」

アンナ「空腹だったから効いちゃった?」

提督「ええ、そんな感じよ…」

アンナ「もう、仕方ないわね……それじゃあベッドで休んだら?」

提督「そうね、ありがと…♪」シャンパンが軽く回ってぽーっと全身が暖かく、ふわふわといい気持ちになっている提督…アンナにエスコートされて、柔らかいキングサイズのベッドに腰掛けた…

アンナ「それじゃあ、お休みなさい……とでもいうと思った?」提督の腰に手を回して抱き寄せると、向かい合うようにしてふとももの上にまたがった…

提督「…やっぱりそのつもりだったの?」口ではそう言いながら、甘えるような表情で物欲しげにしている提督…

アンナ「当然でしょ、一体どれだけフランカの事がおあずけだったと思ってるの? …あむっ、ちゅうぅっ…んちゅぅぅっ、ちゅぅぅっ…♪」

提督「んんぅ、ちゅぅぅっ…れろっ、んちゅっ…///」

アンナ「ぷはぁっ…相変わらずキスが上手ね♪」

提督「その割にはサクランボの茎も結べないけれど…ね♪」ちゅぅぅ…っ♪

アンナ「んふっ、んんぅ…もう、不意打ちだなんて……このっ♪」んちゅぅっ♪

提督「んふふっ…アンナの唇、甘くて美味しい……っ♪」

アンナ「もう、フランカってば…今夜は寝かせてあげないから!」

提督「ふふ、期待してるわ…♪」もじもじと内ももをこすり合わせ、とろりととろけたような表情を浮かべた…

………

アンナ「ん…むちゅぅ……れろっ、ちゅぽっ…♪」

提督「んふぅ…んむぅぅ、ぷはぁ…んちゅ……ちゅぷ…♪」

アンナ「ふふ、昼間はあんなに迷惑そうにしていたくせに…なによ、こんなに悦んでいるじゃない?」ルージュをひいた唇を舐め、あお向けに寝転がった提督を妖しげな表情で見おろした……提督はすでに服を脱がされていて、黒いレースのブラがたわわな胸を包み込んでいる…

提督「だって…ぇ♪」

アンナ「ふふ、さすがは可愛い私の許嫁……相変わらず乳房は大きいし、柔らかくて……最高のおっぱいね♪」もにゅ…っ♪

提督「あふっ、んっ…そういうアンナだって大きいわ♪」むにっ、もみっ…♪

アンナ「ふぁ、んぅぅ♪」柔らかで張りがあり、丸っこくたわわな提督の乳房を持ち上げるように揉みしだく…

提督「んぁっ、はぁぁ…んっ♪」つんとロケットの先端のように尖っていて、大きいが引き締まっているアンナの胸を薄いドレスの生地越しに優しくつかむ…

アンナ「んっ、んんぅぅっ…フランカ、遠慮してないでもっとあちこち触りなさいよ♪」

提督「それじゃあ…お言葉に甘えて♪」カクテルドレスのスリットから手を入れ、形のいいヒップを撫で回す…

アンナ「…もう、くすぐったいわね♪」

提督「んふふっ、アンナのお尻ったら柔らかい…♪」

アンナ「どうしても運動する機会が少ないものね…そういうフランカだってむちむちじゃない」

提督「あっ、ふぁぁっ…私の場合は鎮守府の食事が美味しすぎるせいね……あぁんっ♪」

アンナ「おかげで抱き心地は最高だわ……ほら、動くわよ?」

提督「…ええ///」

アンナ「んくっ…あっ、んっ、ふぅっ……♪」提督にまたがったままカクテルドレスの裾をめくりあげ、秘所を重ね合わせる…

提督「んぁぁ♪ あふっ、んはぁぁ…はぁっ、んっ♪」ぬるま湯に浸かった身体が温まっていくように、下半身からじんわりと甘い感覚が伝わってくる…同時に、身体の芯が「きゅん」とうずいて、甘い喘ぎ声が口から漏れる……

アンナ「はぁ、はぁ、はぁっ…あぁもう、こんな気どった服なんて着ていられないわ…!」アンナは馬にまたがるように提督の下半身を挟み込んで動いていたが、額の汗を拭うと引きちぎるようにドレスを脱ぎ捨てた…ドレスとネックレスを床に放り出すとぷるんと形のいい乳房が揺れ、提督より一回り白い肌がてらてらと明かりを反射した…

提督「アンナって…肌、綺麗よね///」

アンナ「なによ、フランカだって綺麗じゃない。少し焼けてクリーム色っぽい感じもそそるわ…♪」そう言って「ちゅぅぅ…っ♪」と乳房に吸いつくようなキスをした…

提督「あっ、あ……もう、跡が残っちゃう…///」

アンナ「ええ、そのつもりよ…フランカは私の所有物なんだから、他の娘に見せられないようにしてあげる♪」

提督「もう……アンナがそういうことを言うなら、私だって…♪」んちゅぅぅ…っ♪

アンナ「ちょ…首筋はダメよ、依頼人に会う時困るじゃない!」

提督「ふふっ、そんなの知らないわ…♪」

アンナ「このっ……ひゃぁっ!?」

提督「アンナ、可愛い…もっと……ぉ♪」背中に手を回してアンナをぐっと引き倒し、上下を入れ替える提督…

アンナ「フランカ…!?」

提督「ふふっ…アンナならうちの娘たちと違ってお互い対等な立場だし、あれこれ遠慮しなくて済むわ……はぁぁぁ♪」ぐちゅぐちゅっ…ずりゅっ、にちゅっ…♪

アンナ「あっ、ひぅっ…いぃっ、はひぃっ♪」大柄な提督が動くたびにがくがくと身体が揺れ動き、途切れ途切れの喘ぎ声が響く…

提督「んふふっ、気持ちいい…とろとろで暖かくて……んむっ♪」にちゅっ…と、濡れたあそこを重ねながら胸の谷間に顔をうずめて、甘い匂いを吸い込む提督…

アンナ「んぅ、このっ…意外に力があるわね……っ!?」

提督「ぷはぁ…普段から艦娘の娘と一緒に生活しているからじゃないかしら……んっ、んぅぅ…♪」

アンナ「あふっ、はひっ…いいっ、いいのっ……フランカぁ…っ♪」とろっ、ぷしゃぁぁ…っ♪

提督「私も……あぁぁ、んぅぅっ…はあっ、あぁぁぁ…っ♪」とぽっ…とろとろっ…♪


………

アンナ「はぁ、はぁ、ふぅぅ…っ///」

提督「ふふっ……れろっ、ちゅぅぅ…♪」乳首を甘噛みし、それからお腹へと舌を這わせていく…

アンナ「あぁ…んぁぁ……っ♪」

提督「アンナ、いい匂いがする…柔らかいし……んむっ、じゅる…ちゅぷ…にちゅっ……♪」ふとももの間に顔をうずめると、とろりと蜜を滴らせているアンナの秘部を舌でまさぐった…

アンナ「あ、あっ…そこ、いぃっ…♪」

提督「きもひいい…?」

アンナ「気持ちいいっ……もっと…んぁぁっ、あっ、ああぁっ♪」提督の後頭部を両手で押さえつけ、濡れた花芯に押し付ける…

提督「んんぅ、ぷはぁぁ…もう♪」

アンナ「フランカ、なかなか良かったわよ……ふぅ…っ///」大きく息を吐いた…

提督「ふふっ…ありがと♪」

アンナ「……ところでフランカ」

提督「んー?」

アンナ「私もこういうことをしようと思ってたから、色々準備してきたの…使わないでおしまいにするのはもったいないでしょ♪」ベッドの脇にある小机の上に何やら袋が置いてある…それを取ると、中身をベッドの上にぶちまけた…

提督「…うわ///」思わず上半身を起こした提督…

アンナ「何よ? これだけ二人でやらしい事しておいて、今さら玩具の一つや二つで赤くなるわけ?」

提督「いえ、だって普段はこういうの使わないもの…///」

アンナ「ふぅん……そうやってわざわざ「普段は」って言い添えるところを見ると、いっつもあの艦娘の娘たちとやることやってるわけね?」

提督「あっ…いえ、そのっ///」

アンナ「そう…私があなたを想って娼婦で我慢したり、一人寂しく冷たいベッドに入っていた時に、フランカはぬくぬくと暖かいベッドで指揮下の娘たちに手を出していたわけ……なるほど、結構な許嫁だわ♪」そう言いながら一番大きそうなディルドにワセリンをたっぷりと塗りつける…

提督「いえ、だって…みんな任務で頑張っているから断るのもかわいそうだし……抵抗したくても力が違うから、かなわないの///」

アンナ「ふーん…」

提督「ね、ねぇ……アンナ?」

アンナ「ふぅぅ…さ、覚悟はいい?」じりっ…

提督「えっ、いえ…ちょっと!?」

アンナ「無駄な抵抗はよしなさい…っ!」ずぶっ、ずちゅぅ…っ♪

提督「あっ、ふぁあぁぁぁっ…♪」

アンナ「このっ……フランカったらすぐ女の子に手を出して…っ!」四つんばいになった提督のアナルにディルドをねじ込み、ついでにむっちりしたヒップへ平手うちをあびせた…

提督「あぁん…っ♪」

アンナ「女たらしっ!」ぱちぃ…ん!

提督「んぅ…っ♪」口を半開きにしてとろけたような表情を浮かべ、とろりと蜜を垂らし悦んでいる…

アンナ「色魔っ!」ぱちぃんっ!

提督「はひっ、あんっ……きもひいぃ…っ♪」

アンナ「でも大好きよ…私のフランカ♪」

提督「んむぅ…はひぃ、あふぅぅ♪」

アンナ「…さぁ、まだ夜は長いわ…フランカも全部試してみたいわよね♪」

提督「///」

………

…翌朝…

提督「ん、んんーっ…」

…鎮守府でのまぁまぁ規則正しい生活がしみ込んでいるおかげか、きっちり目が覚めた提督……窓から朝日が射しこむのを見ると、つい癖で窓を開け、風の具合を確かめた…

アンナ「…んぅ、おはよう……何してるの?」

提督「あ、ごめんなさい。起こす気はなかったのだけれど……ちょっと風の具合を確かめようと思って……」

アンナ「そう…で、お好みの風だった?」

提督「うーん…弱い南風だから弾着に影響はなし。だけど煙突の煙が吹き流されないから、敵に発見されやすいかもしれないわ」

アンナ「ふぅん……でも基地祭の最中なら関係ないでしょ?」

提督「いえ、哨戒だけは毎日あるから…」

アンナ「そうなの? それじゃ、あなたの所の「艦娘」とやらも大変ね」

提督「ええ…だからつい色々と甘くなっちゃって」

アンナ「無理もないわ……いいけど少し寒いわ、そろそろ閉めてくれない?」

提督「あぁ、はいはい」

アンナ「…ふぅ」

提督「コーヒーでも淹れましょうか?」たゆんっ…♪

アンナ「いいわね…うん、実にいいわ」…昨夜ぐちょぐちょに濡れてしまったランジェリーは履かずに、全裸にバスローブだけ引っかけている提督…アンナはベッドの上で上半身だけ起こして、提督の身体を舐めまわすように見ながらうなずいている……

提督「…なにを見て言ってるの?」

アンナ「私の許嫁♪」

提督「もう…///」

アンナ「ふふ……で、フランカはいつごろまでに戻るつもり?」

提督「えーと、今朝の打ちあわせが0800時にはあるから…鎮守府まで一時間としても、0630時にはここを出たいわね」

アンナ「そう、ならあと一時間はあるってことよね?」

提督「え…?」

アンナ「何よ?」

提督「あぁ、いえ…でも、さすがに今朝は時間がないし……」

アンナ「冗談よ…「シャワーでも浴びてさっぱりしてきたら?」って言おうとしたの」

提督「あ、あぁ…そうに決まっているわよね///」

アンナ「フランカ……あなた、所属先では一体どんな扱いを受けてるのよ?」

提督「あー…///」

アンナ「はぁ、あきれた…とにかくさっぱりしてきなさいよ」

提督「ええ、そうさせてもらうわ…」

…浴室…

提督「…ふぅぅ」

…大理石張りの壁に手を突き、シャワーヘッドから流れ出るお湯に身を任せる…水を含んだ髪がずっしりと重さを増して波打つ感覚が心地よい…

アンナ「フランカ、入るわよ?」

提督「ちょっと、アンナ…っ?」

アンナ「何よ、今さら裸を見られて恥ずかしがるような間柄じゃないでしょうが?」紺色のTバックスタイルをしたパンティに同色のブラをつけたまま、浴室に入って来た…

提督「あー…いえ、そのぉ…///」

アンナ「いいから、ちょっと代わりなさいってば♪」

提督「……アンナ」

アンナ「何よ?」

提督「さっき「あと一時間はある」って言ったわよね……?」

アンナ「ええ、それが?」

提督「あと…一時間しかないのよね……」ぎゅっ…♪

アンナ「はぁ!?」

提督「だって……アンナがそんな格好で入って来るから…///」

アンナ「私のせいだっていうの!?」

提督「ええ、アンナのせいよ…♪」

アンナ「はぁ…フランカは昔っから少しズレてるとは思っていたけど、とうとうおかしくなったわね」

提督「だって…ぇ///」

アンナ「だってもヘチマもあるもんですか、この……ばか///」…ちゅっ♪

提督「///」

…しばらくして…

提督「ふぅ…って、もうあまり時間がないわね……下着もぐしょぐしょだし…」

アンナ「そう、誰かさんのせいでね…下着なら貸してあげるわよ」

提督「だって…さっきのはアンナが……って、これ…///」普段からシックな大人のランジェリーにこそ慣れている提督だが、目のやり場に困るようなアンナの下着を広げてみて、さすがに顔を赤くした…

アンナ「そう、海軍さんって言うのは困ったら人のせいにするわけ…結構ね」

提督「いえ、でも……」豊満な身体には少しきつい下着をどうにか着ようとヒップをくねらせる提督…しばらく格闘してどうにか着られたものの、ヒップに下着が食い込み、かなりいやらしい様子になっている……

アンナ「いいから、とっとと戻る準備をしたらどうなの?」

提督「そ、そうね…」

アンナ「…はぁ、なんで私がこんなことを言わなきゃいけないのよ」

提督「ごめんなさい、アンナ」

アンナ「まぁいいわ……結婚の話もうちのファミリアには「カッコ付きで中に「仮」の字が付く」とでも言っておくから」

提督「ありがとう、アンナ…私のわがままに付き合ってくれて///」

アンナ「ええ、感謝しなさいよ……その代わりに一度は私の実家に来て、ちゃんとうちの家族を納得させること…いいわね?」

提督「ええ」

アンナ「よろしい、なら気を付けて行ってらっしゃい…さっきホテルのフロントに連絡しておいたから、車は玄関に回してあるはずよ」

提督「重ね重ねありがとう…アンナ」

アンナ「いいのよ……あなたに惚れ込んだ私がマヌケだったんだから♪」

提督「…ごめんなさい」

アンナ「そんな神妙な顔をしなくたっていいわよ……私も明日までは休みだから、また今日の午後にでもお邪魔するわね♪」

提督「ええ、待っているわ」

アンナ「それじゃあね…チャオ♪」…ちゅっ♪

…ずいぶん長くなってしまいましたが、これで「基地祭一日目~翌朝」が終わり、次回から「基地祭二日目」を投下していこうと思います……そこで提督の幼少期(小学生の頃)から士官学校時代を振り返るようなエピソードを入れていきます…また、自称「許嫁」ことアンナとの出会いも書く予定です…



…そう言えばノルウェー海軍のフリゲート「ヘルゲ・イングスタド」は大変なことになってしまいましたね…せっかく演習を無事に終えたのに、責任を取ることになる艦長さんはやり切れないでしょう…

…ちなみにノルウェーの「フリチョフ・ナンセン」級はみんな探検家の名前だそうですが、一クラス全部に付けられるほど探検家がいるなんて、さすがヴァイキングの頃から航海をしてきたノルウェーらしいですね……個人的には「コン・ティキ号漂流記」で知られるトール・ハイエルダールが好きですが、「コン・ティキ号」の無線手だったトルシュタイン・ラービは戦中、フィヨルドに潜んでいたティルピッツの居場所をイギリスに通信していたレジスタンスだったそうなので、海軍とも縁があると言えなくもないですね…

意外と良い仲なのね

>>402 まずはコメントありがとうございます……アンナですが、何だかんだで幼馴染みだった提督の事を探しだして「許嫁」を自称するくらいには、提督の事が好きという設定でいます…また、そうなった理由が分かるエピソードは今後投下していきます

…鎮守府…

提督「ふぅ、ふぅ…どうにか間に合ったわね……」

ライモン「お帰りなさい、提督」

カヴール「お帰りなさいませ…打ちあわせの前に、軽く朝食でも召し上がりますか?」

提督「ありがとう、それじゃあ少しだけいただくわ。どのみち後で屋台めぐりをするつもりだから……あぁ、よしよし♪」尻尾をばたばたと振って身体を擦りつけてくるルチアを撫で、頭をかいてあげる提督…

ルチア「ワフッ…♪」

ライモン「それじゃあ準備してきますね」

提督「ええ……それで、今日の来賓は…と」

カヴール「はい…昨日の打ちあわせでも申し上げましたが、本日は北アドリア海管区から「ヴェネツィア第三」のシモネッタ司令、またフランス「トゥーロン第七」からエクレール司令がおいでになられます……やっぱりエクレール提督は招待されるのを待っていたようですね♪」

提督「ふふ、出した招待状が翌日には返ってきたものね……他には?」

カヴール「えー…エーゲ海管区「レロス島第十二鎮守府」のルクレツィア・カサルディ中佐がいらっしゃいます」

提督「あら、ルクレツィアが? …士官学校以来だわ♪」

カヴール「提督のお友達でいらっしゃいますか?」

提督「ルクレツィアとは士官学校で同じ班だったから…何かと助け合った仲よ♪」

カヴール「そうでしたか」

提督「ええ…とりあえず、まずは制服に着替えてくるわ」

カヴール「了解」

提督「…よいしょ……んっ、くぅぅ…」アンナから貸してもらった下着は提督には小さく着る時も一苦労だったが、同じように脱ぐのにも四苦八苦している…

カヴール「失礼します、提督…どうかなさいました?」

提督「あぁ、いえ…ちょっと下着がきつく……って!」

カヴール「でも寸法は合っているはずでしょうに…失礼します、誰かの物と間違えているのではありません…か……」

提督「あ…」

カヴール「…提督、ずいぶん刺激的な下着を召していらっしゃいますね……どなたのですか?」

提督「あぁ、いえ…まぁ、色々と事情があってアンナに借りたのだけれど…」

カヴール「下着を借りるような「事情」ですか……昨日はあれほど許嫁ではないとおっしゃっておられましたが、その割には親密な関係のようですね…?」

提督「えーと、それは…」

カヴール「まぁいいです…が、早く着替えて下さいね……我慢できなくなってしまいますから♪」

提督「…はい///」

…しばらくして…

提督「ふぅ…これで打ちあわせも済んだわね」

カヴール「はい。後は開門前に簡単な朝礼をお願いします」

提督「分かったわ」

…鎮守府・玄関前…

提督「…それでは、国歌斉唱を……アオスタ、かけて?」

アオスタ「了解」

…提督が挨拶を済ませてアオスタに合図をすると、スピーカーにつないだCDラジカセから、イタリア共和国国歌「マメーリの賛歌」が流れ始める……最初は旧イタリア王国の国歌に馴染んでいたためか歌いにくそうだった艦娘たちも、今ではすっかり慣れっこになっている…
(※マメーリの賛歌…Inno di Mameli …別名「イタリアの兄弟」(Fratelli d’Italia)とも)

………

一同「♪~フーラテーッリ、ディーターリアぁぁ、リィータリア、セ・デぇスタぁー! デッレールモぉ、ディ・スキィーピオ、セ・チンタ、ラ・テスタ!」
(イタリアの兄弟よ、イタリアは目覚めた! スキピオの兜を頭に戴き!)

「♪~ドーヴェ、ラ・ヴィーットーリア? レ・ポルガ、ラ・キオーマ! ケ・シァーヴァ、ディ・ローマ、イディオ、ラ・クレオ!」
(勝利の女神ヴィットリアはいずこ? 汝が髪をささげよ! 神は汝をローマのしもべとして創造したのだから!)

※(くり返し)

「♪~フラテッリ、ディタリア、リタリア、セ・デスタ デレルモ、ディ・スキィーピオ、セ・チンタ、ラ・テスタ」

「♪~ドーヴェ、ラ・ヴィットーリア? レ・ポルガ、ラ・キオーマ ケ・シァーヴァ、ディ・ローマ、イディオ、ラ・クレオ」


「♪~スタリンチァ、ア・コルテ、シアン、プロンティ、アッラ・モルテ …シアン、プロンティ、アッラ・モルテ、リタリア、キアーモ」
(隊伍を組め、死をも恐れず…隊伍を組め、イタリアが呼んでいる!)

※(くり返し)

「♪~スタリンチァ、ア・コルテ、シアン、プロンティ、アッラ・モルテ」


「♪~シアン・プロンティ、ア・モルテ、リタリア、キァーモ、スィ!」
(隊伍を組め、イタリアが呼んでいる…スィ!)

………

提督「はい、それじゃあ解散…二日目も無事に過ごしましょうね♪」

アヴィエーレ「了解……ところでローマ、今の歌詞にあったけれど「ヴィットリオ」を従える気分はどうかな?」(※Vittorio…「ヴィットリア」の男性形)

フチリエーレ「あははっ、この調子じゃヴィットリオの前髪が無くなっちゃうわよね!」

グラナティエーレ「ヴィットリオの方が年上なのに、ローマには絶対服従なのね…ヒュウ♪」

ローマ「…もうっ!」

ヴィットリオ・ヴェネト「…はぁ、これを歌うたびにこうなんだから///」

提督「ほらほら、あんまりヴィットリオたちをからかわないの……そろそろ開場なんだから、ちゃんとしてね?」

フチリエーレ「はぁーい」

アヴィエーレ「了解だ、提督…♪」二本の指を唇に当てて投げキッスを贈ると、サングラスをかけ直して飛行艇の様子を確かめに行った…

グラナティエーレ「了解」

海軍憲兵「…司令官、そろそろ開門しても大丈夫ですか?」

提督「はい、お願いします」

グレイ提督「ふふ、二日目も楽しいことになりそうですわね…?」

ヴァイス提督「ヤー、なかなかにぎやかで面白いものですね……ビスマルク、みっともないから昨日みたいにがっつくことのないように」

ビスマルク「何だ…せっかく千ユーロ近くもリラに替えたと言うのに、自分の金で買い食いするのもいかんのか…イタリアは食べ物の物価も安いし、うんと食べ歩きが出来ると思ったのだがな……」

ヴァイス提督「…ティルピッツ、自分の姉なのだ……ビスマルクが「一人大食い大会」を始めないよう監視しておけ」

ティルピッツ「ヤヴォール…姉上、お願いしますよ?」

ビスマルク「分かったわかった……昨日でだいたいの屋台は味見したからな、今日は気に入ったところでじっくりとねばることにしよう」

ティルピッツ「…」



提督「それにしても壮観ねぇ…」

…鎮守府から望む波ひとつない穏やかな海には、淡い灰色もスマートな艦隊の艦艇が二列縦陣で錨泊している……中央には堂々としたシルエットのA・ドリア級やリットリオ級の戦艦群やザラ級、トレント級、ボルツァーノのような重巡たち…その前後にはすらりとしたデュカ・ダオスタ級やアブルッツィ級、R・モンテクッコリ級のような軽巡と、それにつき従う高速のオリアーニ級やソルダティ級の艦隊型駆逐艦…

カヴール「提督、グロッタリーエ空軍基地から連絡です。エクレール提督の搭乗機が到着したとのことです」

提督「分かったわ。だとしたらあと一時間くらいで来るわね」

ライモン「提督、ヴェネツィア第三のシモネッタ提督から通信がありました「間もなく到着する…編成はマエストラーレ駆逐艦四隻」だそうです」

提督「相変わらずのロリ好きね…それじゃあ波止場のモーターランチを用意しておいて?」

ライモン「はい…それと「レロス島第十二」のカサルディ司令は先ほどブリンディシを出港し、昼頃に到着の予定だそうです」
(※ブリンディシ…アドリア海の入口にあたる港。ブーツに例えられるイタリア半島の「ヒール付け根のかかと側」にあたる部分)

提督「ルクレツィアも大変ね…経由地で一泊してから来るんだもの」

カヴール「…レロス島と言えばエーゲ海の中心……ほとんどトルコの沿岸ですからね」

提督「そうよ。何しろギリシャ海軍は予算がないからアテにならないし、トルコ海軍は勇敢だけれど装備が足りないから…どうしてもこっちの負担が大きいのよね」

カヴール「その上、深海棲艦もうようよいる訳ですからね…」

提督「ええ…最近は少し大人しくなったけれど、しばらく「エーゲ海管区」と言えば激戦区で有名だったくらいだもの」

カヴール「そうですね」

アオスタ「…提督、シチリアから連絡がありました。P-3哨戒機は1300時頃に鎮守府上空を通過する予定とのことです」

提督「了解…ふふっ、ジュリアったら「展示飛行の代わりに」って、わざわざ基地祭当日に合わせてこっちの上空を訓練空域にしてくれたのよ?」

カヴール「そうですか…後でお礼をしないといけませんね?」

提督「ええ、うんとね♪」

…しばらくして…

カヴール「提督、エクレール提督がお見えになられました」

提督「分かったわ…それじゃあ出迎えに行かないとね♪」正門へ迎えに行く提督…

エクレール提督「…お久しぶりですわね」提督に向けてスマートな敬礼を見せるエクレール提督……飛行機と車を乗り継いでフランスからやって来たはずなのにもかかわらず、しわ一つついていない紺と純白の制服姿を保ち、かすかに甘い香水の香りをさせている…

提督「ええ……サ・ヴァ(元気)?」

エクレール提督「サ・ヴァ…エ・ヴ(ええ…あなたは)?」

提督「ウィ。トレ・ビァン、メルスィ(ええ。元気よ、ありがと)……よく来てくれたわね、マリー♪」答礼を済ますと、両方の頬に音高くキスをした提督…

エクレール提督「ちょうどわたくしも時間がありましたので…それだけですわ」

提督「もう、相変わらずあまのじゃくなんだから♪」

エクレール提督「余計なお世話ですわ! …まぁ何はともあれにぎやかですわね」

提督「ええ、おかげさまでね……一緒に何か食べる?」

エクレール提督「いえ、わたくしはダイエット中ですので」

提督「冗談でしょう? それ以上やせたら骸骨になっちゃうわ」

エクレール提督「失礼ですわね、だいたい……っ///」きゅぅ…

提督「ほら見なさい、なにも食べない方が身体に毒よ…だいたい艦隊運用に頭を使っているのだから、カロリーなんてあっという間に消費されるわ♪」

カヴール「そう言って三食たっぷりと召しあがられる提督はともかく……エクレール提督、せっかくの機会ですし「両国の親善」と言う意味もあるかと存じます…味見程度で構いませんから召し上がっていただけませんか?」

エクレール提督「そ、そう言われてしまうと断りづらいですわね…では一口づつだけ」

カヴール「はい♪」

ドリア「提督、ヴェネツィア第三のシモネッタ提督がいらっしゃいました」…受け持ちの時間を終えてカヴールと代わったドリアが優しく教えてくれる…

提督「ありがとう、ドリア…それじゃあ波止場へ迎えに行くわ」

ドリア「それでは私も一緒に行きましょう♪」

提督「ええ、お願いね」

…波止場…

シモネッタ提督「ヴェネツィア第三鎮守府司令官、エレオノーラ・シモネッタ大佐…海上自衛隊「横須賀第二鎮守府」司令官、百合野准将を護衛し到着いたしました!」

…鎮守府のモーターランチからもやい綱が投げられて波止場に係止されると、まずシモネッタ提督の随伴艦「マエストラーレ級」の四人と百合姫提督の随伴艦である重巡「足柄」と軽巡「龍田」、それからふわりと優雅な動きでシモネッタ提督が波止場に飛び移り、最後に優しく差し出したシモネッタ提督の手に片手を乗せ、百合姫提督がランチから降りた…白い制服姿のシモネッタ提督は相変わらず礼儀正しく、重度のロリコンとは思えないほど優雅で立派な士官に見える……そして横にはさりげなく百合姫提督が立ち、敬礼を済ませると提督へ小さく手を振った…

提督「ご苦労様……久しぶりね、エレオノーラ」敬礼を済ませるとシモネッタの柔らかい左右の頬に軽く口づけをし、それからぎゅっと抱き合った…

シモネッタ提督「ふふっ、ほんとにねぇ…士官学校の卒業以来?」

提督「ええ……それに姫、来てくれて嬉しいわ♪」

百合姫提督「ふふ、せっかくだからついてきちゃったの…ご迷惑じゃなかったかしら?」

提督「とんでもない、この上ないほどの嬉しい驚きよ♪」

百合姫提督「まぁ、お上手…♪」

シモネッタ提督「フランカってば本当にそういうのが上手だから、みんなコロリとだまされちゃうの……ね、フランカ?」

提督「そんなの、エレオノーラが言える事じゃないでしょうが…」

シモネッタ提督「だって私は上官を口説いたりしなかったわよ?」

提督「…子供にいたずらしたいなんてもっとタチが悪いじゃない……」

シモネッタ提督「あら、フランカったら言ってくれるわね。それにしても……まぁ、ここはなんていい所なのかしら♪」ととと…っ、と提督に駆け寄ってくるミラベロ級の二人を目ざとく見つけると「にへら…♪」とだらしない笑みをこぼした……

リボティ「提督、昨日は一緒に過ごせなかった分……あ、お客様のお出迎え中だったんだね…失礼 ……ところで、そちらの美しい士官さんはどなたかな?」

ミラベロ「…ふふ、色白でとっても綺麗……制服の下を想像したくなっちゃうわ♪」白いブラウスに黒のスカートと、シンプルで(外見の)年相応な格好も愛らしい二人…

シモネッタ提督「あらあらあら…フランカの所にもちゃんと可愛らしい娘がいるじゃない♪」

提督「もう…仮にも上官の所に来て、いきなりそれって……一体なにを考えているのよ?」

シモネッタ提督「えー、それはもう……可愛らしい無垢な女の子にいろんなあれやこれを、愛情たっぷりに手ほどきしてあげたいな…って♪」

提督「はぁ、それ以上言わなくていいわ……ミラベロ、リボティ、このお姉さんはとんでもない変態で手におえないから、優しい見た目にだまされちゃダメよ?」

リボティ「ふぅん…そうは見えないけれど……」

ミラベロ「ね、むしろたおやかな感じがして素敵よ…♪」

シモネッタ提督「まぁまぁ、フランカに比べてこの娘たちったら嬉しい事を言ってくれるわ……よかったらお名前を教えてもらえる?」

ミラベロ「ええ。ミラベロ級駆逐艦、カルロ・ミラベロよ」ちゅっ♪

リボティ「同じくミラベロ級、アウグスト・リボティ…よろしく、お姉さん♪」んちゅっ♪

シモネッタ提督「んふふっ…よろしくね、ミラベロ、リボティ……ヴェネツィア第三の司令官、エレオノーラ・シモネッタ大佐よ…くふふっ♪ …エレオノーラでいいわ…んふっ、ふふふっ♪」軽く腰をかがめて左右の頬に二人からあいさつのキスを受けると、気持ち悪い笑い声を漏らした…

提督「…」

ドリア「あら、シモネッタ提督はなかなか年下好きのようですね……提督、憲兵隊が近づかないようにした方がいいですか?」

提督「あー、本当にその方がいいかもしれないわ……って、ちょっと!?」

ミラベロ「…ねぇねぇ、シモネッタ提督……よかったら私たちと一緒に回りましょうよ♪」

リボティ「…ふふ、私たちと「タラントの思い出」を作らない?」

シモネッタ提督「ええ、いっぱいイイコトしましょうね♪」両の袖を引かれてにこにこと幸福そうな笑みを浮かべ、どこかに行こうとしているシモネッタ提督…

提督「エレオノーラ…!」

シモネッタ提督「なぁに? …一応言っておくけれど、フランカは私の対象外よ?」

提督「はぁ……いいわ、ミラベロ、リボティ。私と一緒に回りましょう♪」

ミラベロ「ほんとに?」

リボティ「ふふ、嬉しいよ…♪」

提督「…そうすればエレオノーラにうちの娘たちをいたずらされないで済むものね……もちろん、姫も一緒にね♪」

百合姫提督「ありがとう、それじゃあ…手、つなぎましょう///」

…またしばらくして…

ザラ「提督、間もなくカサルディ提督が到着するとのことです」

提督「はいはい、それじゃあみんなで迎えに行きましょうか」

ポーラ「はぁ~い」

提督「ふふ、よろしい♪」

シモネッタ提督「…ルクレツィアに会うのも久しぶりね…フランカは?」

提督「私も練習航海以来よ…あー、あれね……」

…提督たちが波止場に立ってカサルディ提督の到着を待っていると、きれいに錨泊している鎮守府の艦艇をかすめるように白波を切り、かなりの高速で淡灰色をした二隻の魚雷艇が波止場に接近してきた…紺と白の生地に金モールも鮮やかな制服が波しぶきを浴びないよう提督たちが波止場から下がった瞬間、魚雷艇がエンジンを後進に入れて勢いを殺し、しぶきも上げずにぴたりと波止場に艇をよせた…

百合姫提督「すごい…さすがイタリアの魚雷艇隊……♪」

提督「ふふっ、さすがにあんな曲芸はイタリアでもそうそう見られないわ…何しろルクレツィアはエーゲ海管区でも指折りの腕前だから」

シモネッタ提督「ああいう所は相変わらずみたいで安心したわ…後は肝心の本人だけど……」

カサルディ提督「お久しぶりです、カンピオーニ少将……って、エレオノーラも来てたの?」…茶色の髪を後ろでお団子にしているカサルディ提督…琥珀色の瞳は明るく元気いっぱいの様子だが、提督の前に立つとその小柄な身体が際立っていて、その左右には黒のニーソックスと淡い灰色のワンピース姿をした、小学生くらいの小さな女の子が立っている…

シモネッタ提督「あー、相変わらず可愛いわね…♪」

提督「もう、エレオノーラったら挨拶もしないうちに……久しぶりね、ルクレツィア♪」

カサルディ提督「フランチェスカ…! 相変わらず大きいね♪」もにゅ♪…と、提督の乳房を下から持ち上げるように触った

提督「あんっ、もう…元気だった?」

カサルディ提督「ええ、招待状をありがとう。おかげで久しぶりにエーゲ海から離れられたわ……」

提督「ならよかったわ…立ち話もなんだから、食堂でお茶でもいかが?」

カサルディ提督「ありがと、フランチェスカ……海水のせいで喉がガサガサにかれちゃって…」

提督「無理もないわ。さぁ、行きましょう?」

…ふたたび食堂…

カサルディ提督「…ふー、美味しい……それに贅沢な施設でうらやましい…」アイスティーをあおりながら、明るく広々とした食堂を感心したように眺めている…

シモネッタ提督「ね、それは私も思っていたわ…フランカったら一人だけズルい♪」

提督「むぅ…そう言われてもね」

カサルディ提督「ふふふっ、冗談冗談…さてと、改めてこの娘たちを紹介しないとね……私の所のトップエース…」

小学生くらいの艦娘「モート・シルランテ「MS16」と…」

艦娘「同じく「MS22」です…よろしくね、提督のお姉ちゃんたち♪」

シモネッタ提督「まぁまぁ…くふっ♪」

提督「…MS16と22……なるほどね」

(※MS16、22…イタリアがそれまでのMAS艇よりも大型で性能の優れた艇として、41年ユーゴスラビアで鹵獲した元ドイツの「Sボート」を参考に十八隻を建造した魚雷艇「MS.Ⅰ」型の二隻。「Moto Siluranti」(魚雷艇)の頭文字を取って「MS」と言われる。重量62トンで34ノット。武装は再装填機能付き533ミリ魚雷発射管二基と魚雷四本、20ミリ機銃など…MS16と22はイギリス軍のマルタ島救援物資輸送作戦「ペデスタル作戦」の際に共同して船団を迎撃、グロスター級の軽巡「マンチェスター」を撃沈、輸送船四隻を撃沈・大破させるなど大活躍した)

カサルディ提督「ええ、見た目は可愛いけどうかつに触ると火傷するわよ……エレオノーラ、あなたに言ってるんだけど?」

シモネッタ提督「んふっ、大丈夫…♪」優雅な手つきで向かいに座っている「MS16」の小さい手に自分の手を重ねようとする…

グレイ提督「…MS16と22……なるほど、マンチェスターに一撃を加えたのはこの二人でしたか……」見おろすように二人を眺めているグレイ提督…

MS16「くふふっ…大きいお姉ちゃんって大好き、特に不意打ちでイかせるのがたまらないの……ね♪」

MS22「うんっ……みんな私たちよりうんと大きいのに、すぐイっちゃって可愛いの♪」

シモネッタ提督「んふっ、くふふっ……はぁ、はぁ…二人ともおませさんで可愛いわ…ぁ♪」

提督「…」

ザラ「…」

ポーラ「…えぇ~…と」

グレイ提督「どうやら遅かれ早かれ…どちらかと言えば早かれの方でしょうが…憲兵隊が必要になりそうですわね?」

エクレール提督「まぁ、イタリア人に風紀を期待する方が無駄ですわ…!」

提督「はぁ…この状況じゃあ言い返せないわね……」

………

ろりこんこわい

>>409 まずは遅くなってすみませんでした、この数日ばかりちょっと用事が立て込んでいたもので…「ろりこんこわい」って回文みたいですね(笑)


…とりあえず、この後もしばらくのどかな基地祭の光景でお楽しみ下さい…

提督「さてと…せっかくだから屋台でも回りましょうか?」

シモネッタ提督「いいわねぇ」

カサルディ提督「賛成。ブリンディシを出た時に食べただけだからこの娘たちもお腹が空いているところだと思うの…そうでしょ?」

MS16「うんっ、もうお腹すいちゃった」

MS22「ね、早くおいしい物が食べたいなぁ…♪」

提督「それじゃあ決まりね……姫、グレイ提督、ヴァイス提督も一緒にいかがですか?」

百合姫提督「ええ、美味しいイタリアの屋台料理を味わいたいわ」

グレイ提督「そうですね、せっかくですから…それにエリザベスたちの出番も終わったでしょうから、合流するとしましょう」

ヴァイス提督「ヤー、昼食には少し早いですが」

提督「分かりました…それじゃあまずはステージの所に行きましょうか♪」

エクレール提督「…ちょっと、どうしてわたくしを無視するんですのっ!?」

提督「あら、マリーはダイエット中だって言うから…てっきりいらないものかと♪」

エクレール提督「たとえそうだとしても、わたくしに声をかけないと言うのは失礼ではありませんこと?」

提督(フランス語)「はぁ、プロヴァンスの田舎娘にしてはあれこれと注文の多い事で……ご一緒しませんか、お嬢様?」…普段からパリジェンヌのふりをしていて、「プロヴァンスの田舎娘」であることを知られるのを嫌がっているエクレール提督のために、フランス語に切り替える提督…

エクレール提督「もうっ…///」

カサルディ提督「そう言えばフランチェスカってフランス語も出来たんだっけ…すごいね」

提督「必要に迫られたからなのだけれど…ね」

カサルディ提督「パリ大使館付海軍武官への連絡将校だったっけ?」

提督「ええ、そんなところよ」

シモネッタ提督「すごいわよね…」

提督「いえ、まぁそれほどでも…///」(実際は「お姉さま」の一人に無理やり推薦されただけなのだけれど…ね)

…鎮守府・特設ステージ前…

コルサーロ「…イタリアを馬鹿にするようなやつらの施しなんて…いらねぇやいっ!」施しとしてもらった金を叩きつける、出稼ぎ少年役のコルサーロ…

禿げ頭のおじさん「そうだそうだ、言ってやれ!」

白髪のじいさん「いいぞっ!」

アオスタ「……これにて一幕芝居「クオレ…パドヴァの愛国少年」を終わります。皆さま、出演の艦娘たちに改めて盛大な拍手をお願いします!」

おじさん「ブラヴォー!」

丸っこいおばさん「良かったわよ、お嬢ちゃんたち!」

明るいおばさん「いやぁ、演技とは言えイギリス人役の二人は本当に高慢ちきで…近くにいたら張り倒しているところだったねぇ!」

クィーン・エリザベス「お褒めに預かり恐縮でございます…では、失礼」

提督「みんな、お疲れ様」

コルサーロ「おっ、提督…あたしの芝居はどうだった?」

提督「ふふっ、威勢のいい啖呵の切り方が格好良かったわ♪」

コルサーロ「ははっ、そいつはあたしのような海賊にゃあ嬉しい意見だね……で、提督方はお揃いでどちらに?」

提督「ええ、実はこれから食べ歩きでもと思って…コルサーロもどうかしら?」

コルサーロ「これはこれは…それじゃああたしもご一緒させていただくよ♪」

提督「そう、良かったわ……最初はピッツァにしようかしら?」

百合姫提督「いいわね、ピッツァは好きよ♪」

提督「それじゃあローマの茸とチーズのラツィオ風ピッツァか、ムツィオのナポリ風マルゲリータがあるけれど…どっちにする?」

シモネッタ提督「私はナポリ風で」

百合姫提督「マルゲリータも捨てがたいけれど、濃厚なローマ風も美味しそう……足柄と龍田はどっちがいい?」

龍田「うーん、どっちも捨てがたいから両方がいいわぁ…♪」

足柄「そうよね。旅費は出るって言っても、どのみち鎮守府へのお土産だなんだで貯めておいた予算は使いきっちゃったし……どうせ戻ったら「MY作戦」なんだから、うんと美味しい物を食べておきたいわよね」

提督「姫「MY作戦」って、確かミッドウェイ方面の……こんな時期に作戦が控えているの?」

百合姫提督「あー…いえ、「MY」って言うのは別に頭文字をとっただけで「MI作戦」とは関係ないの///」

提督「頭文字?」

百合姫提督「ええ…実は「MY」っていうのは「もやし」の頭文字で……///」

足柄「鎮守府の食費が厳しい時の倹約献立集なのよ…はぁ、帰ったら三食とも豆もやしの朝鮮風(ナムル)かしらね?」

龍田「あれはあれで美味しいけれど…さすがに毎日だとねぇ…」

足柄「本当よ… ♪~イヤじゃあ~りませんかぐ~んた~いはぁぁ~、かね(金属)のうつわに竹のはしぃぃ~…」

龍田「♪ほぉ~と~けさまでもあるまいにぃ~、いちぜぇ~ん飯とはなさけなやぁ~… まったくよねぇ…」(※海軍小唄)

提督「あらあら……それじゃあその分もここで食べて行って? ルクレツィアは?」

カサルディ提督「うーん…私はどっちも食べたいけど、他にも美味しそうなのがあるし…」

提督「じゃあ私が違うのを買うから、一口味見させてあげましょうか?」

カサルディ提督「あ、いい?」

提督「ええ♪ …あ、ちょっと待ってね」

カサルディ提督「どうしたの?」

提督「いえ、警備担当の指揮官が…大尉、見回りご苦労様です」憲兵隊の女性士官に近寄っていって挨拶をする提督…身なりにもうるさい憲兵隊だけあって、折り目もピシッと入った白と紺の制服に型崩れもしていない制帽…ピストルベルトに吊るしたベレッタM92ピストルにはきっちりランヤードが通してある…

(※ランヤード…ピストルの銃把についているリングと、ベルトやホルスターをつなぐひも。紛失・落下防止のもの)

海軍憲兵士官「あぁ、司令官…いえ、これも憲兵隊の職務ですか…ら……」

提督「どうかしました?」

憲兵士官「あ、いえ…数人の提督が来訪されるとはうかがっておりましたが、こんなにたくさんの将官がいらっしゃるとは……」

提督「そう言うことですか。ふふ、緊張しなくても大丈夫ですよ…大変なご苦労でしょうが見回りの方、引き続きよろしくお願いします♪」

憲兵士官「は、お任せください」

提督「はい、それでは」

シモネッタ提督「……確かに中佐や大佐、少将がきら星のごとくだもの、固くもなるわよ…そうでしょ、フランカ?」

提督「ええ、大尉もやりづらいわよね」

カサルディ提督「ねぇ、おしゃべりもいいけどそろそろ買いましょうよ?」

提督「ふふっ、それもそうね…ローマ、その美味しいピッツァを一つもらえる?」



海軍憲兵下士官「……大尉、額なんて押さえてどうしたんです? 今の所たいした問題もないじゃありませんか」

憲兵士官「あなたは何をのんきなことを言っているの…あの三人が揃うなんて悪夢だわ……」

憲兵下士「あの三人って…確かにここの司令は「女たらし」のカンピオーニ少将ですけれど……」

憲兵士官「問題はその横にいた二人よ…長髪の優雅な方は「幼女集め」で有名なヴェネツィア第三のシモネッタ大佐だし、小柄で髪をお団子にしていた方は「スケコマシ」のカサルディ中佐でしょうが……」

憲兵下士「うえっ…あれがですか!?」

憲兵士官「ええ…参ったわ、イタリア海軍で一番問題のある女の上位三人がそろい踏みとはね……」

憲兵下士「どうします?」

憲兵士官「どうもこうも…よく見張って騒動が起きないようにしなさい。ここからは軽食を食べ歩くような暇はないわよ?」

憲兵下士「…了解」

シモネッタ提督「ところで、フランチェスカ」

提督「なぁに?」

シモネッタ提督「…なんだかすごい事になってないかしら?」

提督「あー、そうね…あんまり見ないようにしていたけれど……」

ビスマルク「はぐっ…むしゃ、むしゃ……」屋台の椅子にどっかりと腰掛け、次々と皿を空にしているビスマルク…

ヴァイス提督「全く…お恥ずかしい限りです///」

提督「いえ、別に構いませんが…大食い競争に出たら大会を総なめにできそうね……」

コルサーロ「そう言えば、ちょうどあんなのをアニメで見たことあるぞ……ほら、「千と千歳の船隠し」で両親がブタになる場面さ…くくくっ♪」

提督「あー…言われてみれば」

フィウメ「それでもあの体型なのはさすがですねぇ」

提督「確かに…いくら食べても太らないなんてうらやましいわ」そう言って遠巻きにしていると、アッテンドーロがビスマルクを挑発し始めた…

アッテンドーロ「……へぇ、まだ食べられるの? 本当かしら?」

ビスマルク「ほう…よかろう、「鉄血宰相」は胃袋も鋼鉄だと言うことを見せてやる。もう一枚だ!」

ティルピッツ「姉上、姉上…っ!」

ビスマルク「何だ、金ならちゃんと払っているだろうが…釣りはいらないからその分焼いて持ってくるがいい!」

アッテンドーロ「毎度あり♪」…イタリアのことわざにも「美女よりもカネになるブタを選ぶのはミラノ人だけ」と言われるほど、物質万能主義で商売上手なミラノ人…アッテンドーロも艦名はミラノ人だけあって、口車にのせるのも上手い…

提督「…」

シモネッタ提督「……とりあえず私たちもどこかで座って食べましょうか」

カサルディ提督「ええ、お腹ぺこぺこ♪」

MS16「んー…ねぇねぇ、シモネッタ提督さん」

シモネッタ提督「うん、どうしたの?」

MS16「わたし、あのお肉が食べたいな…ぁ♪」くりっとした目で斜め下から上目をつかう…

シモネッタ提督「ふふっ、それじゃあお姉ちゃんが買ってあげるわね♪」

MS16「…ほんと?」

シモネッタ提督「ええ、もちろん♪」

カサルディ提督「ちょっと、エレオノーラ!」

シモネッタ提督「あら……あなたは大佐の判断に異を唱えるの?」

カサルディ提督「いや、それよりも何で勝手にうちの娘たちにあれこれ買ってるのよ…だいたいエレオノーラは管区が違うんだから、直属の上官じゃないでしょ!」

シモネッタ提督「別にいいでしょうが…はい、不公平にならないようにあなたにも買ってあげるからね♪」MS22にもアラビア風の串焼き肉を差しだした

MS22「ありがとぉ、エレオノーラお姉ちゃん……んっ♪」しゃがんだシモネッタ提督のほっぺたにキスをするMS22…

シモネッタ提督「んふっ、んふふっ…いいのよ♪」

カサルディ提督「ねぇフランカ、どうにかしてよ!?」

提督「…エレオノーラ」

シモネッタ提督「もう、分かったわよ…もてなす側に叱られたら仕方ないわ」

カサルディ提督「はぁ…もう、二人ともお姉さんたちを困らせないのっ!」

MS16「そんな事言ったって……大きいお姉ちゃんたちはたらしやすいんだもの♪」

MS22「ねっ…んー、美味しっ♪」

カサルディ提督「こぉら、ちゃんと司令の話を聞きなさいよ」

MS16「うんっ、聞いてるよ」

MS22「そうそう…あ、ねぇカンピオーニ提督さんっ」

提督「なぁに?」

MS22「あの白と紅のケーキも美味しそう…一つ買ってくれる?」

提督「ふふ、それじゃあルクレツィアに聞いてあげるわね」

MS22「わぁ、ありがと…カンピオーニお姉ちゃんは優しいねっ♪」

提督「いいのよ…で、どうかしら?」

カサルディ提督「はぁ…あなたもなの、フランチェスカ?」

提督「まぁまぁ…そんなに大きいわけじゃないし、一つならいいんじゃないかしら?」

カサルディ提督「分かったわよ、それじゃあお金は私が出してあげるから…まったく、これじゃ普段何も食べさせてないみたいじゃない……ほら、買っていらっしゃい」

MS22「ありがと……うんっ、美味しい♪」

提督「そう、良かった…うちの娘たちが頑張って作ったお菓子だから、よく味わってね♪」

カサルディ提督「はぁ…とはいえこの娘たちがはしゃぐのも無理ないわ。何しろうちの施設は貧弱で…たびたび管区司令部をせっついてはいるんだけど……」

MS16「ふふっ…司令のせいじゃないから、気にしてないよ」

MS22「いつも司令が頑張ってるのは知ってるもん♪」

カサルディ提督「そう…ありがと、二人とも」

シモネッタ提督「あぁぁっ…うらやましいっ、私だって配属希望をエーゲ海管区って出したのに……」

提督「まぁ、エレオノーラの希望がいれられなかった理由は……ね」

カサルディ提督「それはもう「お察しください」…ってところよね」

シモネッタ提督「むぅ…二人は自分の好みの娘を抱えておきながら、私にはそう言うことを言うのね?」

提督「さすがに貴女の趣味まではかばえないわ」

シモネッタ提督「そうやってすぐ人を差別して…ねぇ、マエストラーレ?」

マエストラーレ(ヴェネツィア第三)「くすくすっ…さすがにこればっかりは司令をかばえないですよぉ♪」

シモネッタ提督「あー、マエストラーレまで私をいじめるの?」

カサルディ提督「ほらね?」

リベッチオ(ヴェネツィア第三)「えへへっ、それでも司令はいい人だよ…♪」

シモネッタ提督「ほぉら見なさい、純粋な心を持った幼女にはちゃんと分かるのよ……それじゃあ、いい子のリベッチオには何でも買ってあげる♪」

グレカーレ(ヴェネツィア第三)「あきれた…すぐこれだもん」

提督「ふふ、変わってないわね…ザラ、隣に座る?」

ザラ「ありがとうございます、提督…ねぇライモンド、私の隣にはポーラたちが座るし、あなたは提督の左隣に座ったらいいんじゃない?」

ライモン「そうですね、ありがとうございます……それじゃあわたしは提督のお隣に…///」

提督「ええ、いらっしゃい♪」

提督「あむっ、んむぅ…んぅ♪」チーズたっぷりのピッツァにかぶりつき、頬を押さえて幸せそうな提督…と、そこにアッチアイーオ級の中型潜「アッチアイーオ」と「アラバストロ」が走ってきた…

アッチアイーオ「あ、いたいた…提督ぅ♪」

提督「あら、アッチアイーオ…何かご用かしら?」

アッチアイーオ「ううん、でも提督と一緒にいたくって……///」寒くなると途端につんけんするアッチアイーオだが、日差しが暖かいのですっかりデレデレの「甘えモード」に入っている…

提督「まぁ、嬉しいわ…アラバストロもどうぞ♪」

アラバストロ「はい、どうもありがとうございます…♪」アッチアイーオとは対照的に白っぽい瞳と淡色の髪、白いフリル付きワンピース…と、白一色のアラバストロ(雪花石膏・白大理石)…

デシエ(中型潜アデュア級)「あー、もうあんなに集まってるわ…」エチオピア風なのか肌がいくらか褐色がかっていて、瞳も茶色っぽいアデュア級の名コンビ「デシエ」と「アクスム」

アクスム「ちょっと出遅れちゃったかもね……どうする?」

デシエ「それはもう…二人で斬り込みましょう♪」

アクスム「ふふ、そう言うと思った…それじゃあ、行こうか」

提督「あらあら…みんなあちこち見て回らなくていいの?」次第に集まってくる艦娘たちに、にっこりと笑いかける提督

アッチアイーオ「提督と一緒に回りたいの…ね、お願い♪」

デシエ「ねぇ提督…」

アクスム「私たちと一緒に…」

デシエとアクスム「「基地祭を回ってくれる?」」

提督「ふふっ、二人とも息ぴったりね♪」

アクスム「ええ…だってデシエは最高の戦友だもの、ね♪」

デシエ「ふふ、むしろそれ以上の関係…かな♪」

アクスム「言われてみればそうかもね…んむっ、ちゅ♪」

提督「あら…二人の間には私なんていらないんじゃないかしら?」

デシエ「そうつれない事を言わないで…ね?」

アクスム「私たちと一緒に回りましょ?」

提督「もう、私の身体は一つだけなのよ…?」

ザラ「……あの、提督」

アッチアイーオ「だーめ、私が提督と一緒に回るのっ♪ …ね、アラバストロ?」

アラバストロ「そうですね、アッチアイーオは提督の事が大好きですから……よかったら譲ってもらえませんか?」

デシエ「え、なに? ワタシ「デシエ」イタリア語ヨクワカラナイ…提督ヤサシイ。ワタシ、誘ッテモラウ…ワタシ、ウレシイ!」

アッチアイーオ「もうっ、そうやって都合のいい時だけエチオピア訛りにして…アクスム、そのとぼけた相方に言ってやって!?」

アクスム「ハウ、ワタシ「アクスム」…コ・ン・ゴ・ト・モ・ヨ・ロ・シ・ク」

アッチアイーオ「あ、このっ…もういいわ! 提督、一緒に行きましょう?」

提督「ふふ、それじゃあ順番で……」

ザラ「提督、提督…っ!」

提督「なぁに、ザラも一緒に回りたいの?」

ザラ「そうじゃなくて……あの、提督の「許嫁」さんが…」

提督「い゛っ…!?」

アンナ「…さーて、フランカ。電話にも出ず、あまつさえ車をとばしてやって来た許嫁の目の前でいちゃついてくれるなんてね……被告人、何か弁解は?」

提督「いえ、あのっ…さっき出し物の邪魔をしないように携帯電話をマナーモードにしたっきりで……」

アンナ「へぇ…それじゃあどうやって埋め合わせるのか聞かせてもらうわ。それが私の気に入ったなら執行猶予にしてあげる♪」

提督「わ、分かったわ…ごめんなさいね、みんな」

ドリア「まぁ怖い…まるで「プラダを着た悪魔」ですね♪」

提督「いえ、アンナはプラダを着てなくても悪魔だから……」

アンナ「何か言った?」黒いプラダのドレスの腰に手を当てて、提督を「きっ」とにらみつけた…

提督「い、いえ…」

グレイ提督「あらまぁ…もてなし役が退場してしまいましたし、ここからはそれぞれ自由行動ですわね?」

エクレール提督「本当にイタリア人は自分勝手で困りますわ……せっかくリシュリューとジャンヌが気を使って留守をしてくれていると言うのに、フランチェスカときたら…///」ため息をついて肩をすくめた…

カサルディ提督「…さぁ、これでエレオノーラを抑えられる人間がいなくなっちゃった……二人とも私のそばにいなさいよ?」

MS16「了解♪」

MS22「大丈夫…司令とはいつも一緒よ♪」

チコーニャ(ガッビアーノ級コルヴェット「コウノトリ」)「…ほらお姉ちゃん「あーん」して?」

ガッビアーノ(ガッビアーノ級「カモメ」)「あーん……うん、美味しいよ…♪」折りたたみテーブルに両肘をついて黄色い目で水平線を眺めながら、チコーニャに「あーん」してもらっている…

シモネッタ提督「…フランチェスカったらあんな可愛い娘を隠しているなんて…くふふっ、隅に置けないわね……♪」

カサルディ提督「ほら、ちょっと目を放すとすぐこれだもん…参ったわね……」

…一方…

百合姫提督「ふふ…うちもそうだけれど、ここの娘たちも仲睦まじくて微笑ましいわね……」

足柄「はぁ…この「ただ事じゃない仲の良さ」をそれで済ましちゃう辺りが、ね」

スーツ姿の男性「……さて、なにを食うか…晴れやかなイタリアの空にふさわしい腹具合だ…」

龍田「いかにもうちの提督らしいわねぇ…きゃっ!?」足早に歩く地味なスーツ姿の男性と軽くぶつかった…

男性「あ、すみません……お怪我はありませんか?」

龍田「え、ええ…」

百合姫提督「大丈夫、龍田?」

龍田「私は平気よぉ…それより、そちらもお怪我は……」

男性「あぁ、はい…って、もしかして日本の提督と艦娘さんですか?」

百合姫提督「ええ、そうですが……もしかしてそちらも日本の方ですか?」

男性「ええ、そうなんです…あ、実はわたくし、こういう者でして……」慣れた手つきで名刺を差し出す男性…

百合姫提督「まぁ、すみません…えぇと、「井之頭」さん?」

男性「はい、井之頭と申します……」

百合姫提督「まぁまぁ、イタリアまでわざわざ…商用でいらしたのですか?」

井之頭「ええ、その通りです…あ、今はちょっと急ぎの用事が……失礼します」

百合姫提督「はい…お仕事、うまく行くといいですね」

井之頭「どうも」

足柄「…何だかせかせかした感じの人だったわね」

百合姫提督「南イタリアののどかな鎮守府であんなに急ぐ用事があるとも思えないけれど…まぁ、きっと何かあったのでしょうね」

足柄「そうね…って……」

井之頭「……うーむ、困った…イタリア料理、パスタにするかピッツァにするか、ドリアにするか……いや、せっかくならいきなり肉にかぶりつくと言うのも悪くない……」

足柄「…あの人「急ぎの用事で」って言う割には、屋台の前で悩んでいるだけに見えるんだけど……」

龍田「そうねぇ、私にもそう見えるわぁ」

百合姫提督「うーん……だとしたら午後に商談か何かが控えていて、お昼を急がなくてはいけないのかもしれないわ。 …せっかくだから私たちも何か食べましょう♪」

足柄「そうね…龍田、何か注文したいなら私がしてあげるからね?」

龍田「ふふ、助かるわぁ…♪」

足柄「いいのよ、イタリア語ならそこそこ出来るし…代わりに一口ちょうだいよ?」

龍田「ええ、もちろん」

…しばらくして・昼下がりの提督寝室…

提督「ふー…これで少しは満足した?」

アンナ「ええ、被告人への告訴は取り下げにしてあげるわ…♪」

提督「そう、良かった……あら?」ベッドサイドの小机に置いてあった携帯電話がぶるぶると震え、「ピリリリ…ッ!」と着信音が響いた

アンナ「……あなたの着信じゃない?」

提督「みたいね。もしもし…あ、お母さま♪ ええ、うん…そうね、一応駐車スペースは確保してあるから平気よ……うん、うん…分かった、待っているわね。チャオ♪」

アンナ「今の電話…お母さんから?」

提督「ええ、そろそろここに着くって電話…シルヴィアおばさまも一緒よ」

アンナ「そう…なら私も、お義母さまにあいさつしなくちゃね♪」

提督「…え」

アンナ「何よ?」

提督「いえ、構わないけれど…」

アンナ「決まりね……それじゃまだ時間はあるし、もうちょっとこのベッドを堪能させてもらうわよ♪」提督の枕に顔をうずめて息を吸い込む…

提督「もう、仕方ないわね……それじゃあ私は先に着替えるから」

…同じ頃・上空六千フィート…

P-3Cの副操縦士「よーし、目標が見えた…機長「タラント第六」上空まで五分です」

アントネッリ「よろしい。アンジェ(天使)1からアンジェ2、アンジェ3…これから隊形を組んで鎮守府上空を通過、一周してからチャフ・フレアの発射訓練を行うぞ」

…基地祭を迎えた提督へのちょっとしたプレゼントとして、チャフ・フレアを放つ「回避機動訓練」を鎮守府上空の空域にセットしたアントネッリ中佐……僚機二機が後ろに従い、低周波を奏でるエンジン音を響かせながら飛行を続けている…

僚機「アンジェ2了解」

アントネッリ「…いいか、私のカウントにちゃんと合わせろよ?」

僚機「分かっていますよ、隊長!」

アントネッリ「結構……それじゃあ私をトップに、くさび形陣形を組め!」

僚機「了解…2、3ともに位置につきました」

アントネッリ「よろしい、では三千フィートまで降下するぞ…!」

…一方・鎮守府…

アンナ「今日は飛行機がずいぶんうるさいのね……昨日はここまでじゃなかったのに」

提督「…そろそろ時間ね……アンナ、着替えてテラスに出ましょう♪」

アンナ「えぇ? …何だかニヤニヤしてるけど、アクロバット飛行でも始まるっていうの?」

提督「まぁそんなところね…さ、早く♪」

アンナ「もう、分かったわよ…」脱ぎ捨てられていた服を着直すと、提督に手を引かれながらテラスに向かった…

…鎮守府上空…

アントネッリ「いいか、アンジェ1よりアンジェ2、3…フレア射出まで五秒前…トーレ、ドゥーエ、ウノ……フレア、フレア、フレア!」…C130輸送機の「天使の翼」ほど派手ではないにしろ、三機のP-3Cがタイミングを合わせてフレアを打ちだすと、上空に鮮やかな白い煙と明るい光が漂った…

…鎮守府・二階のテラス…

提督「…さすがね、タイミングもぴったり」

アンナ「まぁ、すごい花火……あれって照明弾か何か?」

提督「ええ、ミサイル妨害のフレアね……ジュリア、上手だったわよぉー♪」上空を飛び去るオライオンに手を振る提督…すると提督が見えているわけではないだろうがP-3も軽く翼を振り、エンジン排気の薄い雲を残して飛んでいった…

………


乙。読んでるよ

>>418 どうもありがとうございます…書くのが遅いものでなかなか進みませんが、そろそろ提督とアンナの馴れ初めの話を投下するつもりです


…ちなみに提督(小)×アンナ(小)の百合っぽいのも書くつもりですので、どうかお待ちください…

…しばらくして…

提督「あ、来たわ…♪」

…海軍憲兵に誘導されて駐車スペースに鮮やかなイタリアン・レッドの「アルファロメオ・ジュリエッタ」(初代)が停まると、クラウディアとシルヴィアが降りてきた…シルヴィアは綿のスラックスに白い開襟シャツ、淡い茶色のブレザー…クラウディアは秋らしく、カシミアらしいふわっとした白いセーターに明るい朽葉色のスカートと黒いタイツでまとめ、肩ひも付きのハンドバッグを持っている…

シルヴィア「…フランカ、来たわよ」

クラウディア「ここはのどかでいい所ね♪」

提督「お母さま、おばさま、来てくれて嬉しいわ…ようこそ鎮守府へ♪」ちゅっ…と左右の頬にキスを交わす提督たち……

ライモン「お久しぶりです、夏休みの時は色々とありがとうございました」

クラウディア「いいのよ…って、あら」

アンナ「お久しぶりですね」

クラウディア「まぁまぁ…アンナ、貴女も来ていたのね♪」

アンナ「ええ、だって許嫁の基地祭ですから…クラウディアお義母さまも、シルヴィアおばさまも元気そうで何よりです♪」

クラウディア「ふふ、ありがとう」

シルヴィア「おかげさまでね…そちらのご家族は?」

アンナ「ええ、おかげで上手くやっています……今はフランカと話したいことがたくさんあるでしょうし、その話は後にしましょう?」

クラウディア「そうね、アンナには悪いけれど…ごめんなさいね?」

アンナ「いえ、いいんですよ……それじゃあフランカ、また後でね♪」

提督「ええ、チャオ……ふー、来てくれて助かったわ…」

シルヴィア「アンナも相変わらずのようね」

クラウディア「ええ、それにしても綺麗な大人の女性になって…どこかのモデルかと思ったわ♪」

シルヴィア「そうね」

提督「お母さま、おばさま、ここで立ち話もなんだから…食堂に行きましょう?」

クラウディア「あら、ありがとう」

シルヴィア「フランカ、ここは軍の施設でしょう…大丈夫なの?」

提督「ええ、通信室や武器庫でもない限りは大丈夫…それじゃあ案内するわ♪」

…食堂…

シルヴィア「…それにしてもなかなか立派な施設ね……感心したわ」

クラウディア「うふふっ、フランカにはそれくらいの価値があるわ♪」

シルヴィア「クラウディアは相変わらずフランカに甘いんだから…ここで食事をしているのね」床に古代ローマ風のモザイク画が施してあったりと、広くて明るい上に装飾も優れている食堂に感心した様子で、ぐるりと辺りを見回した…

提督「ええ、うちの娘たちと一緒にね……ちょうどいい機会だし、紹介するわね。この優しげな貴婦人が、私の副官を務めてくれている戦艦「コンテ・ディ・カヴール」…それから高速スループの「ディアナ」…料理上手だから、厨房を取り仕切っているわ。それからこちらは大型潜「エットーレ・フィエラモスカ」…姉妹艦がない代わりに、潜水艦隊の訓練役をしているわ」

クラウディア「よろしくね、カヴール……フランカから聞いていた以上の美人さんね♪」

カヴール「まぁ、お上手ですね♪ こちらこそ提督のおかげで、鎮守府での生活を何不自由なく過ごすことが出来ております…それに、提督はお母さまと瓜二つでいらっしゃいますね♪」にっこりと笑みを浮かべてクラウディアとあいさつの接吻を交わす…

クラウディア「ふふ、ありがとう…それから、あなたがディアナね?」

ディアナ「さようでございます…提督から、クラウディア様は大変な料理上手と伺っておりますし、ぜひご教示願いたいものです」

クラウディア「もう、フランカったら……それじゃあ時間があったら何か作ってみるわ。ディアナの参考になればいいけれど…」

ディアナ「嬉しゅうございます」

シルヴィア「それからあなたが大型潜の「フィエラモスカ」ね…いつもうちの娘を支えてくれてありがとう」

フィエラモスカ「いえ、こちらこそ…提督から紹介して頂きました、エットーレ・フィエラモスカです」

提督「さてと、そのうちにみんなも入れ替わりで戻ってくるでしょうし…ところでお母さまたちはお昼を済ませたの?」

クラウディア「いいえ、せっかくだからここで何か買ってあげようと思って…ね、シルヴィア♪」

シルヴィア「ええ。だから案内してちょうだい…私もクラウディアも、お腹を空かせたら何をしでかすか分からないわよ?」口の端に笑みを浮かべて冗談めかした…

提督「ふふっ、了解しました♪」

…午後…

カヴール「それで…実際の所、提督とアンナさんとはどんな関係なのですか?」

アッテンドーロ「あー、それは私も気になっていたわ……何でも「許嫁」って話だったけれど…」

クラウディア「まぁ…アンナったらあの時の話をちゃんと覚えていたのね。フランカ、どうしてみんなに話してあげないの?」

提督「いえ、だって…話そうとは思っていたけれど、みんな基地祭で忙しいし……」

シルヴィア「ずいぶん前の事なのにね…それじゃあ、フランカが話をして、クラウディアが足りない部分を付け加えればいいわ」

クラウディア「そうね、そうしましょう…いい、フランカ?」

提督「ええ……アンナは自分の事を「許嫁」なんて言っているけれど、少なくとも幼馴染ではあるわ」

アッテンドーロ「ふーん」

提督「知り合ったのは小学校も低学年の頃ね…どっちかというと内気で本ばっかり読んでいた私と活発なアンナだから、最初は特に付き合いもなかったわ」

ドリア「それがどうしてそんな深い中になったのでしょう?」

提督「ええ、それがね……」

…提督・小学校時代…

提督(小)「あ、お母さま、おばさま…今日は保護者会なの?」

クラウディア「ええ、そうよ……その間は本でも読んで待っていてくれる?」

提督(小)「うん」

…翌日…

同級生の男子(金色がかった髪)「そういえば、カンピオーニの家ってお父さんっていないの?」…保護者会にやってきたクラウディアとシルヴィアを見かけたらしい男子が聞いてきた…

提督(小)「いないよ?」

男子「じゃあどこかで出稼ぎとか?」

提督(小)「ううん、最初からいないけど…?」

男子「へん、そんなのおかしいや!」

提督(小)「別に…おかしくないよ」

男子「おかしいや、だってそれじゃあ父無し子じゃんか…そうだろ、ロッシ!」

男子(やせっぽち)「あぁ、おかしいや…へんなの!」

提督(小)「変じゃないもん……おばさまがいればお父さんなんていらないし」

男子「それが変なんだよ、カンピオーニって変なやつ!」

…集団でいる子供ならではの、ちょっと毛色の違う相手への「思いやりがなく意地悪な」からかいが提督に向けられた…大人しい提督は困ってしまって、本を開いたまま少し泣きそうな顔をしている…

アンナ(小)「ねぇ、ちょっと!」

男子「…ん、なんだよ?」

アンナ(小)「あんたたち、フランチェスカをいじめてどうしようっていうの?」両の腰に手をあてたアンナは、まだあどけない子供にもかかわらずプラダのプリーツスカートと、襟元をリボンで留めた白のブラウスを着て、長い黒髪をツインテールにしている…

男子「別にいじめてなんかないや…変だって言ってるだけだろ?」

アンナ(小)「それをいじめてるって言うんでしょうが。だいたい、私に言わせればあんたたちの方がよっぽど変よ。エミリオなんて真っ黄色な髪で、まるでポレンタじゃない…あんたってピノッキオのじいさん友達みたいに「ポレンディーナ」なんじゃないの?」

(※ポレンディーナ…トウモロコシ粉を練った料理「ポレンタ」から。ピノッキオのもとになった木材をくれたジェペット爺さんの友達で、カツラが金髪…当時はカツラのレベルが低かったのですっかり皆に知られていたがからかわれると怒る。当然ピノッキオはそれを(材木のままではあったが)からかい、ジェペットが言ったものと思った二人はケンカになる)

男子「そ、そんなことねーし!」

アンナ(小)「へぇ、まぁカツラの人はたいていそう言うわよね…中身が足りなくて、おまけに髪もポレンディーナじゃ仕方ないもんね」

男子「このぉ…!」

アンナ(小)「それにロッシ…あんたなんて勉強はできないし、顔もろくに洗わないし……まるで野良犬…それとも山ザルかしら?」

男子(やせ)「このやろ…!」こぶしを握る男子…

アンナ(小)「おまけに言い返せなくなるとすぐ手を出そうっていうんだもん…ホントにキャンキャン吠えてる野良犬そこのけよね…あんたのお母さんって、昨日そこを歩いていたぶち犬?」

男子(やせ)「なにを…っ!」

アンナ(小)「ほら、何か言い返せるなら言い返してみなさいよ…フランカが大人しいからってつけあがっちゃって!」

同級生の女子「そうよ…アンナはちょっと言い過ぎだけど、さっきからどうしてフランカにちょっかいを出すの?」

女子(おさげ)「本当よ、フランチェスカが何をしたって言うの?」

アンナ(小)「ほら見なさい、とっととその薄汚い顔を引っ込めるのね!」

男子「…ふんだ、お前たちなんてうちの兄ちゃんがコテンパンにしてやるからな!」

アンナ(小)「あっそう、じゃあうちはパパに言いつけてあげるから…!」

提督(小)「……助けてくれてありがとう、アンナ」

アンナ(小)「いいのよ、あんなエテ公なんかに言わせておくことなんてないわ…今日は逃げられちゃったけど、今度会ったらきっちりあいつらに謝らせるからね」

提督(小)「ううん、本当にありがとう…」

アンナ(小)「いいのよ♪」

…数日後の放課後・図書室…

アンナ(小)「ねぇフランカ、ちょっと来てちょうだい?」

提督(小)「なぁに、アンナ?」

アンナ(小)「いいから来て?」

提督(小)「?」

…教室…

提督(小)「!?」

アンナ(小)「ほら、約束したでしょ?」

男子「う゛え゛えぇ゛ぇん゛…っ、げほっ、ごほっ……!」

男子(やせ)「う゛わ゛ぁ゛ぁぁ…ん゛っ!」

提督(小)「ど、どうしたの…?」

…教室の中心で鼻を垂らしながらわんわん泣きわめいているのは例の男子二人……そしてアンナが呼び集めたのか、その時の事を見ていた何人かが恐るおそると言った様子で周囲に立っている…

アンナ(小)「どうしたもなにも…この前の事でちゃんと謝らせるって言ったでしょ? ほら、二人ともとっととフランチェスカに謝りなさいよ!」

男子「ごう゛ぇん゛な゛さぁ゛ぁい…っ!」

男子(やせ)「ひぐっ、う゛え゛っ……」

アンナ(小)「ほら、あんたも謝るのっ!」

男子(やせ)「えぐっ、ぐずっ…ごめ゛んな゛…ひぐっ、ひっ……さ゛い゛…」

アンナ(小)「よろしい…みんなもこれでいいわよね?」

女子「う、うん…」

女子(おさげ)「い…いいよ?」

アンナ(小)「それじゃあ二度とフランカに余計なおせっかいはしないこと…はい、おしまい!」両手をぱんぱんっ…と叩いて解散をうながした…

…少しして・再び図書室…

提督「……どうもありがとう、アンナ」…何が何だかよく分からないが、とりあえず男子には謝ってもらい、これでシルヴィアおばさまの迎えが来るまで心おきなく本が読めると図書室に戻った提督(小)…が、当然のようにアンナ(小)もついてきて隣の椅子に座ったので、一旦本を閉じて再度お礼を言った…

アンナ(小)「いいのよ。…でも私が助けてあげたんだから、何かしらの「お礼」が必要だと思わない?」

提督(小)「うん…でもお金はないし、あげられるような物も持ってないから……」学校への送り迎えはシルヴィアの車で、お昼は持参のお弁当…なので特にお金も持っていない提督(小)…

アンナ(小)「別に物じゃなくたっていいわよ……それならどう?」

提督(小)「うーん……あ、ならこれでどうか…な?」…ちゅっ♪

アンナ(小)「!?」

…提督(小)の柔らかい唇がアンナ(小)のきゅっと引き絞られた唇に重なった…放課後の明るい図書室には人気もなく、暖かい午後の日差しを浴びて古い紙の香りが漂い、静かな部屋に二人の吐息の音だけが聞こえる…

提督(小)「……どう、だったかな?」

アンナ(小)「な…今のって……///」唇を指でなぞる…

提督(小)「ありがとうっていう気持ちはいっぱいこめたけど……ダメだった、かな…?」

アンナ(小)「いえ、気持ちは伝わったわ…でもまだ足りないわ、もう一回ね///」

提督(小)「うん、それじゃあ……んっ///」ちゅっ…んちゅっ、ちゅ…っ♪

アンナ(小)「ん…んっ///」

提督「…どう、今度は伝わった……?」

アンナ(小)「そ、そうね…これで十分よ/// ……今度うちに遊びにきなさいよ、招待してあげるから」

提督(小)「うん。それじゃあね、アンナ」

アンナ(小)「ええ」

…その日の午後…

クラウディア「そう、友達の家に招待されたの」

提督(小)「うん…行ってもいいかな?」

クラウディア「別に構わないけれど…迷惑をかけないようにしなさいね?」

シルヴィア「何か手土産でも持って行った方がいいかもしれないわ……何か用意しておいてあげる」

提督(小)「ありがとう、おばさま♪」

…数日後…

シルヴィア「それで、その子の方から迎えに来るって?」

提督(小)「うん…アンナが家の人から「迎えに行くから、一度学校から帰ってからにしなさい」って言われたらしいの」

クラウディア「そう……わざわざうちの方まで迎えに来てもらって悪いわね」

シルヴィア「帰りはこっちで車を出すとか…でも、それも相手を信頼できないみたいで失礼ね……」

クラウディア「まぁ、その人が来たらきちんとお礼を言えばいいわね……って、来たんじゃないかしら?」

シルヴィア「あの車…まさかね?」

…玄関の呼び鈴がリンと鳴り、シルヴィアが出迎えるとスーツ姿の男が立っていた…丘の上にあるカンピオーニ家の前に停まっているのは角を曲がるのも難しそうな黒塗りのメルツェデス・ベンツSクラスのリムジーネ…それも50年代のいかめしいモデルで、かっちりしたフロントグリルのデザインに、四灯のヘッドライトが付いている…

若い男「ボンジョルノ、カンピオーニさんのお宅で間違いないですか?…フランチェスカさんをお連れするよう言いつかっているのですが……」

シルヴィア「申し訳ないけれど……一応名前を確かめさせてもらえる?」

男「ええ…シニョリーナ・アンナ・マリア・ベアトリーチェ・カスティリオーニのお友達、シニョリーナ・フランチェスカ・カンピオーニをお迎えに上がりました。自分は運転手のジャンニです」

シルヴィア「分かったわ……フランカ」

提督(小)「はい、おばさま」

シルヴィア「来たわよ、粗相のないようにね」

提督(小)「はい。それじゃあ行ってきます」

シルヴィア「ええ…」

…数十分後・カスティリオーニ家の玄関…

男「さぁ、つきましたよ…どうぞ」

…メルツェデスの重いドアを開けてもらって降りると、目の前には広い立派な庭と大きな館が建っていた…黄色っぽい石を積んだ外の壁に這わせたバラに、水がめを抱えた女神の噴水…館自体は明るい白壁と黄色がかった屋根瓦で、庭にもよく馴染んでいる……どういうわけかこわもての男が何人かいるが、小さい提督はそこまで気が付かなかった…

提督(小)「ありがとうございます」

男「いえ、お嬢のお友達なら大歓迎ですよ…さ、こっちで……」

アンナ(小)「フランカ、待ってたわよ!」

提督(小)「アンナ…そんなに抱きつかれたら苦しいよ…///」

アンナ(小)「ん、それもそうね…とにかく、よく来てくれたわ。とにかくまずはフランカをパパとママに紹介しなくっちゃ♪ ご苦労様、ジャンニ」

男「へい、シニョリーナ」

…邸内…

提督(小)「…すごいお家ね……」素朴な南イタリア風ではあるがとても広いお屋敷と、あたりに飾ってある大きくて高そうな花瓶や飾り皿に、子供ながらに感心している…

アンナ(小)「そう? まぁいいから居間に来てちょうだい♪」提督(小)の手をつかみ、引っ張っていくアンナ(小)…

提督(小)「う、うん…」

アンナ(小)「パパ、ママ…フランカが来たわ!」

…広々とした居間には第二次大戦前に撮られたらしい色あせた昔の写真が数枚かけてあり、真ん中にはがっちりした木の椅子とテーブルが置いてある…テーブルの中央には素朴な田舎屋敷には場違いな銀の花瓶が置いてあり、椅子にはアンナの「パパとママ」が座っている…

アンナの父「そうか……初めまして、フランチェスカちゃんだね?」

提督(小)「はじめまして…え、えーと…お母さまとおばさまからおみやげを……」大事に抱えてきたお菓子の箱を差しだした…

アンナ父「これは親切にありがとう。私はフランチェスコ・サルヴァトーレ…アンナの父親だよ。それでこちらが母親のマリア」


…アンナの父親は顔に深いしわが刻まれた一癖ありそうな顔をしていて、髪の毛をポマードでぺったりと後ろに撫でつけている…声もいくらかしゃがれた癖のある声をしているが、可愛らしいを無邪気な二人を見てにこにこしている……一方、横にいるアンナの母親はまだ可愛らしいが、そろそろドレスよりエプロンが似合いそうな、ぽっちゃりとしたイタリアの「肝っ玉母さん」らしい貫禄が出始めている…


アンナ母「初めまして、よく来てくれたわね♪」

提督(小)「その…はじめまして」

アンナ父「はは、緊張することはないよ…フランチェスカちゃんはおじさんの「フランチェスコ」と同じ名前だし、アンナとも仲良くしてくれているそうだから家族同然だよ……そうだろ、アンナ?」

アンナ(小)「ええ、パパ…それで、もういいかしら?」

アンナ父「ああ、いいとも。好きに遊んでいなさい…パパは書斎でイナッツィオさんとお仕事の話をしてくるからね」

アンナ(小)「分かったわ、邪魔はするなってことね?」

アンナ父「邪魔なんてことはないさ…ただ、あまりうるさくしちゃだめだよ?」

アンナ(小)「ええ」


…アンナの部屋…

アンナ(小)「さ、どうぞ」

提督(小)「うん…わぁ、すごい……!」

…アンナ(小)の部屋には子供にしてはずいぶん立派な机と椅子、それに本棚いっぱいに詰め込まれた(その割には読まれていない様子の)豪華な装丁の物語集……それにどこかのプリンセスめいたお洒落なベッドが置かれていて、その上にはクマのぬいぐるみがずらりと並んでいる…

アンナ(小)「そう? 別にそこまですごいところはないと思うけど?」

提督(小)「ううん。とってもすてきなお部屋だし、すごいと思うな…ぬいぐるみもいっぱい」

アンナ(小)「別に欲しいわけじゃないのに、パパとお仕事をする人たちが「アンナちゃんに」って持ってくるのよ……ああいうオジサンたちは煙草臭いから好きじゃないわ」

提督(小)「アンナのお父さんは、いろんな人とお仕事してるの?」

アンナ(小)「ええ、「カスティリオーネ・ファミリア」って言って、オリーヴオイルとかを世界中に売ってる会社の社長なのよ……首相よりもえらいんだから♪」

提督(小)「へぇ…」

アンナ(小)「まぁいいわ…さ、座って? そろそろ誰かがお菓子を持ってきてくれるから」

提督(小)「うん、分かった……それじゃあここでいいかな…?」

アンナ(小)「そんなのどこだっていいわ、お好きなところにどうぞ…ほら、来たわ」

男「…シニョリーナ・カスティリオーネ、お菓子を持ってきましたよ」少しけばけばしいオレンジと茶色のネクタイを締めた男が、お菓子の盆を持って入って来た…

アンナ(小)「グラツィエ。ありがとね、トーニ」

男「いいんですよ、他に何か必要だったら言ってください」

アンナ(小)「ええ、それとこの間はあのエテ公を締め上げてくれてありがとね…パパには内緒よ?」

男「おやおや…シニョリーナ、「エテ公」だなんて、どこでそんな乱暴な口の利き方を覚えたんです?」

アンナ(小)「この間……いえ、言わないでおくわ。誰かに迷惑がかかるといけないものね♪」

男「はは、さすがはシニョリーナだ…とにかく、ドン・カスティリオーネには秘密にしておきますよ」

アンナ(小)「ならいいわ……ところでトーニ、それとそのネクタイの柄はなに?まるでピエロよ」

男「あれ、こりゃ手厳しいや。シニョリーナの前じゃ着る物にも気を付けなくっちゃあ」

アンナ(小)「当然でしょ、パパも「トーニがうちのファミリアをきちんと締めてくれているんだ」って言ってたもの…それがそのネクタイじゃ笑い者になっちゃうわ」

男「参ったな……今度から気を付けます」

アンナ(小)「よろしい…それとお菓子をありがとね♪」

男「なぁに、シニョリーナのためなら何でもありませんや…何か用があったら構わずに呼んでくださいよ」

アンナ(小)「ありがと……さ、食べて?」

提督(小)「うん……とってもおいしい…♪」出されたカンノーロとクッキーを一つ二つ食べると、丁寧に手を拭った…

アンナ(小)「よかったわ…さ、何して遊ぶ?」

提督(小)「んー…」

アンナ(小)「ま、フランカってばいつも本ばっかりだもんね……ところで…」

提督(小)「?」

アンナ(小)「この間のやつ…もう一回やってみてくれない……?」

提督(小)「この間の……キスのこと?」

アンナ(小)「ええ、それよ…あれ、とっても気持ちよかったから…///」

提督(小)「うん、お母さまには「大事な人とだけするように」って言われてるけど……アンナは大事な人だもんね……んっ♪」

アンナ(小)「ん、ふっ…///」…ぞくっ♪

提督(小)「んむっ…んっ……♪」ちゅっ…はむっ、ちゅぅぅ…っ♪

アンナ(小)「んんぅ…はーっ、はーっ……んっ♪」ぞくっ…ぞくぞくっ……♪

提督(小)「んちゅっ、ちゅぅ…ちゅっ……ぷは♪」薄いが意外と柔らかく、カンノーロのクリームに入っていたリコッタチーズとアンズの甘い味がするアンナの唇に、提督(小)は見よう見まねで覚えた、優しいついばむようなキスをしばらく続けた…

アンナ(小)「はーっ、はーっ、はぁぁ…っ♪」

提督(小)「…きもちよかったね……「ちゅう」するの///」

アンナ(小)「そ、そうね…///」

………

提督「…って言うようなことがあって、それ以来時々遊びに行っては子供らしい口づけをよく交わしていたわね……当時はまだ小さくて世間知らずだったから、キスをするのは「仲良しのしるし」みたいなものだと思っていて…アンナの家に遊びに行ったりとか、学校で二人きりになるたびにキスしてたわ///」

アッテンドーロ「うわ…ぁ…」

アメティスタ「まぁ、戻ってきたら何やら興味深いお話の最中のようで……失礼します」

ペルラ「屋台に出さなかった分の「宝石のタルト」が少しありますから、よかったら一緒に召し上がりませんか?」

ディアナ「あら、でしたらわたくしがお皿を持ってきて差し上げます……皆さまは、どうぞおかけになって待っていらしてくださいな」

アッテンドーロ「ありがと、ディアナ…ちなみに今はみんなで提督のスケコマシぶりにあきれ返っていたところよ。こんな色魔に引っかかっちゃった姉さんが気の毒だわ…」

提督「色魔って…ずいぶんな言われようね……」

カヴール「…あの、それはさておき……アンナさんのお父上の「カスティリオーネ・ファミリア」って…その…」

提督「あー…まぁ、その…つまり……貿易会社よ」

コルサーロ「やれやれ、何を「取引」するんだかわからねえなぁ……」

シルヴィア「あー…当時フランカの事が心配になったから調べたけれど、ギリギリで違法なことはしていないわ……いささか怪しい書類で建築許可を得たりとか、入管手続きで目をつぶってもらったりとか…だいたいはそんな感じね」

クラウディア「それにアンナちゃんがフランカと仲がいいのを邪魔することもないし…そうでしょ、シルヴィア?」

シルヴィア「まぁそういう事ね。それに向こうの方も、フランカの事を可愛がってくれたから…問題が起きない限りは、わざわざ引き離すこともないと思って……」

提督「…でもそのおかげで、すっかりアンナとはおかしな関係になっちゃって……」

………



…それから数か月後…

提督(小)「ボンジョルノ、シニョーレ・カスティリオーネとシニョーラ・カスティリオーネ……アンナと遊ぶ約束をしたので、おじゃましにきました♪」

アンナ父「よくきたね、フランチェスカ…アンナが来るのを心待ちにしていたよ♪」

アンナ母「そうね、後でおばさんがおいしいお菓子を持って行くから……二人で遊んでいてちょうだいね♪」

提督(小)「はい♪」

…アンナの部屋…

提督(小)「うん…やっぱりこのお話は面白いなぁ……」

アンナ(小)「ふぅ、相変わらずフランカは本が好きねぇ……パパに「読書をするといい大人になれるから、アンナもフランカみたいにいっぱい本を読みなさい」って言われちゃったわ」…やれやれね」

提督(小)「ごめんね、アンナ」…すっかりアンナの部屋に慣れた提督(小)はアンナのふかふかのベッドにうつ伏せになって、脚をゆっくりとばたばたさせながら、どっしりした装丁の本をめくっている…その脇ではアンナ(小)が少し退屈そうにしながら提督(小)の髪を梳いてみたり、もてあそんだりしている…

アンナ(小)「いいのよ…おかげでフランカがうちに遊びに来てくれるわけだし、わたしもお友だちができてうれしいわ♪」

提督(小)「うん、わたしもアンナとお友だちになれてうれしい……それにアンナのお家の人も優しいし」

アンナ(小)「…そうね、パパやママだけじゃなくて「ファミリア」のメンバーたちも、みんなフランカの事が好きみたいよ…ところでフランカ、そろそろ…///」

提督(小)「また「ちゅう」…する?」

アンナ(小)「ええ…フランカのキス、とってもきもちいいし…///」カンピオーニ家の「教育」のおかげでキスが上手で、ぷるっと柔らかな唇と甘い匂いのする提督(小)に、すっかり病み付きになっているアンナ(小)…何かと理由を作っては家に呼び、そのたびに提督(小)とのキスをせがんでいる…

提督(小)「よかった…だっていっぱい「好き」って気持ちをこめているもの……ん、ちゅっ♪」

アンナ(小)「んふっ、んんぅ……ぷはぁ♪ …ねぇフランカ」

提督(小)「なーに?」

アンナ(小)「フランカは私のこと…好き?」

提督(小)「うん、アンナはやさしいから好き…いじわるな男の子からかばってくれたし、本もいっぱいかしてくれるもの♪」

アンナ(小)「……じゃあ私たちって「好きどうし」だし…大きくなったら、私とけっこんしてくれる?」

提督(小)「…うーん、シルヴィアおばさまはクラウディアお母さまとけっこんしちゃったから……うん、アンナとならけっこんしたいな♪」

アンナ(小)「ホントに? うれしい…っ♪ …それじゃあわたしたちは今日から「いいなずけ」ね…やくそくしたわよ、フランカ?」

提督(小)「うん…っ♪」

アンナ(小)「それじゃあもう一回「ちゅっ」てして…///」

提督(小)「わかった……んちゅっ、ちゅっ…ちゅぅっ♪」…提督(小)はアンナ(小)とベッドの上で向かい合い、両方の頬を小さな手で押さえると、柔らかいキスを交わした…

………

提督「…というわけで、アンナはそのことを持ちだしては私の「許嫁」だ……って言い張っているわけ」

アッテンドーロ「まぁ、子供の口約束だし何とも言えないわね…それにしても、彼女もよくそんな子供の頃の事を覚えていたわね?」

提督「そうね。まぁアンナは昔から物覚えが良かったから……勉強しているところなんて見たこともなかったけれど、いつも成績は上の方だったもの…」

クラウディア「…何はともあれ、私はアンナがお嫁さんでいいと思うのだけど…こればっかりはフランカの気持ちが固まらないことには決められないわ♪」

シルヴィア「まぁどっちにしろ、結婚するならオランダかイギリスにでも行かないことにはね……」

提督「だから、アンナが言っているだけで私にその気はないの…だいたい「カスティリオーネ・ファミリア」の女統領(ドンナ)の奥さんなんて私には務まりっこないもの……」

シルヴィア「そこはアンナに任せておけばいいんじゃないかしらね…それに、もしかしたらファミリアを継がないつもりかも知れないわよ?」

提督「そんなはずはないわ…あれだけお父さんのことを思っているアンナだもの……」

………



…提督・高校生のころ…

アンナ(高)「んあぁ…あむっ、ちゅぅぅ……はひっ、あふぅ…っん///」ビクッ、ビクン…ッ♪

提督(高)「んむっ、ちゅぅぅ…んっ、んちゅっ♪」

アンナ(高)「あっ…あ゛っあ゛っ……んあ゛ぁぁっ♪」

提督(高)「アンナの唇…柔らかいし、髪もいい匂い……ねぇ…もっと…して……いい?」椅子に座ったアンナの上にまたがり、両手の指を絡めてねちっこいキスを交わす二人……物覚えがよく要領のいいアンナもこればかりは提督のされるがままで、脚を開いてぐっちょりとめしべを濡らしている…

アンナ(高)「ええ、もっと…もっとしてちょうだい…っ♪」がくがくっ……とろっ…にちゅっ♪


…成績はお互いに悪くなかったが、地元カンパーニア州にあるごく普通の「身の丈にあった」公立高校に進んだ提督(高)と、ローマにあるただれた噂の絶えない、お金持ちだらけの私立高級女子校に進んだアンナ(高)…お互いに離れ離れになって会う機会が減った分、たまに提督が実家に戻ってきたアンナの家に遊びに行くと、挨拶もそこそこに舌を絡めるようなキスを交わす…


提督(高)「それにしてもアンナったら……久しぶりに遊びに来たのに、挨拶も抜きにいきなりこんな……ちゅっ、んちゅ…っ♪」

アンナ(高)「いいじゃない、高校が別々になっちゃってなかなか会えないんだもの…それより、もっとキスしてよ?」

提督(高)「はいはい…それじゃあ会えなかった分♪」むちゅ、ちゅぅっ…れろっ、ちゅぽ…っ♪

アンナ(高)「はひっ、んむっ…んちゅっ、れろっ……ぬちゅっ……ん、ふぅ…♪」

提督(高)「ぷはぁ…どう、満足してくれた?」

アンナ(高)「ええ、よかったわ……ん、もう下着がぐちょぐちょ…フランカは?」高校生とはいえかなり大人っぽいランジェリーを脱ぎ捨て、髪を留めていた金の髪飾りを外した…

提督(高)「…ええ、私も……このままスカートの中が濡れたまま帰ることになりそう///」

アンナ(高)「ふふ、じゃあ私のを貸してあげる…もっとも、フランカが履いたら食いこんじゃいそうだけど……またおっぱい大きくなったんじゃない?」

提督(高)「ええ、もう走るたびにたゆんたゆん揺れるから運動が大変……それに足をついた時じゃなくて、それより一呼吸遅れて揺れるから…」

アンナ(高)「あっそう。私はそんな巨乳じゃなくてよかったわ」

提督(高)「もう、聞いたのはアンナじゃない…」

アンナ(高)「まぁね…ところで、フランカは進路って決めた?」

提督(高)「うーん……私は大学で歴史を勉強しようかなって」

アンナ(高)「なるほどね。フランカは昔のものとか好きだし、いいんじゃないかしら?」

提督(高)「ありがと……それよりアンナは何でも得意だけれど、数学が一番得意だし…やっぱり数学者とか?」

アンナ(高)「ううん、私はもう決めてあるの…ボローニャ大の法学部よ」

(※ボローニャ大…十一世紀に開校された欧州最古の名門大学。当時隆盛を極めていたボローニャ商人たちが出資したこともあって、商法・民法などを学ぶための法学部や神学部、文学部、医学部が有名だった。また、実利を重んじる商人らしく、当時から宗教にとらわれない自由な発想で女性の参加にも抵抗がなく「学生がボーっとならないよう」カーテン越しに講義をしたと言う絶世の美人、ノヴェルラ・ダンドレア教授など有名な女性教師もいた)

提督(高)「えっ、法学部…?」

アンナ(高)「ええ…弁護士になって検察からパパを守って、いつかは「ファミリア」の相談役になるつもりなの……ま、とりあえずの夢は「街の国際弁護士」ってところね♪」

提督(高)「…もうやることが決まっているなんて、アンナはすごいわね……応援してるわ」

アンナ(高)「ありがと…じゃあ、あの時の約束通り結婚してよ♪」

提督(高)「そ、それとこれとは話が別でしょう…///」

………

幼馴染いいね

>>428 幼馴染み百合は成長と共にどんどん関係が深まっていく良さがありますね…続きはまた数日後に投下します

…ちなみにもうお分かりかとは思いますが、アンナの実家はイタリアならではの実業家……つまりそういうことです(アンナの父親である「フランチェスコ・カスティリオーネ」と言う名前もアメリカで勢力を振るったフランク・コステロの本名をもじって付けています)

提督、これは責任取らないと。

>>430 そうなると提督は重婚待ったなしですし、エクレール提督のことを考えると国際問題まで引き起こしかねないですね…はたしてどうなるやら(笑)

カヴール「…なるほど、そう言うことだったんですね……いっその事結婚してしまったらいかがです?」

コルサーロ「違いねぇ…あのお嬢さんは上玉だし、案外悪くないかもしれないぜ?」

ライモン「…わ、わたしは提督のお気持ちが動かない限りはダメだと思いますが……///」

アッテンドーロ「姉さんの言う通りね…その場の流れだとか、政略結婚なんて絶対にうまく行かないわ」

ペルラ「ふふ、それに提督が結婚するなんて言ったら…ウェディングドレス姿で押しかけてくる人たちが数十人ではきかないでしょうね♪」

提督「…修羅場待ったなしね…考えただけで頭が痛いわ……」

チェザーレ「やれやれ、さすがのチェザーレもそんな目には遭わなかったぞ」

ディアナ「そうですね……こういう場合「その道の達人」に聞けばよろしいのでは?」

提督「達人?」

ディアナ「ええ…女性のあしらいが上手なエウジェニオやバニョリーニ、アレッサンドロ……いかがです?」

提督「なるほど、経験豊かな「お姉さま方」に聞くわけね…いいかもしれないわ」

アッテンドーロ「ところでそのエウジェニオは…?」

提督「言われてみれば……それにエレオノーラやルクレツィアもそろそろ見つけに行かないと…お母さまとおばさまは?」

クラウディア「ふふ、私はディアナとお料理をするわ…ね、ディアナ?」

ディアナ「なにとぞ、よろしくお願いいたします」

シルヴィア「だったら私もいるわ…別に今日だけじゃないんだから、気にしないで行ってらっしゃい」

提督「それじゃあ、ちょっとエレオノーラたちを探してきます……行きましょう、ライモン?」

ライモン「はい…そういえばムツィオ、ピッツァの屋台はいいの?」

アッテンドーロ「あぁ…それがビスマルクが座り込んでずーっとむしゃむしゃやってたものだから、生地も具材もすっからかん…っていうわけで今日はもう店じまいよ……おかげで軽く十万リラは稼がせてもらったわ♪」扇のようにしてひらひらとリラ札を振ってみせる…

ライモン「そうなの、それじゃあ一緒に行けるわね?」

アッテンドーロ「ええ。おかげで財布の中も暖かいし…何か欲しいなら買ってあげるわよ、姉さん?」

ライモン「もう…ムツィオったら」

提督「…まぁ予算の分さえ回収できたら、あとの利益は好きにしていいって事になっているものね……」

アッテンドーロ「おかげ様でね。ま、そんなことよりエウジェニオを見つけに行きましょ……きっと会場で一番美女が集まっている所ね♪」

…鎮守府・庭…

エウジェニオ「ふぅ、にぎやかなのはいいけれど…ここまで来るとちょっと閉口しちゃうわね……れろっ…」

…棒のついた丸い真っ赤なアメ玉をしゃぶりつつ、庭の片隅の芝生にひざを立てて腰を下ろしているエウジェニオ…ギリシャ彫刻のような端正な顔立ちで海を眺めていると、それだけで絵になる……会場の中心ではにぎやかな売り声や来場者の歓声が聞こえてくるが、エウジェニオのいる場所からだと砂浜に打ち寄せる波音や風の音に混じって、途切れ途切れのざわめきのようにしか聞こえてこない…

エウジェニオ「いい風……これで隣にいい匂いのする美女でもいれば完璧なんだけど…ま、たまには一人も悪くないわ……ちゅぱ…」

母親「……人混みで疲れちゃったのね…ここならいいでしょう?」

女の子「うん…つかれちゃったし、すわりたいよ……ねえ、ここにすわっていい?」

母親「しかたないわね…着るものを汚さないようにしなさい……あ」茂みの陰で見えなかったエウジェニオを見つけた母娘連れ…

エウジェニオ「ボンジョルノ。お嬢さんも人混みで疲れちゃったんでしょう……チャオ♪」女の子に片手を振ってみせる

母親「ええ、娘がぐずってしまって…ここ、座ってもいいですか?」

エウジェニオ「別に私だけの芝生じゃないし、特に花が植わっているわけでもないわ……遠慮しないで座って?」

母親「グラツィエ…ほら、お姉さんが座っていいって言っているわよ」

女の子「ありがと、お姉ちゃん……」そう言って座ると、じーっとエウジェニオの端正な口元を眺めている…

エウジェニオ「ノン・ファ・ニエンテ(何でもないわ)…ちゅぱ……」

女の子「…マンマ、あれがほしい……おねえちゃん…」

母親「…え?」

女の子「おねえちゃんのもってるアメ…ほしいよぉ……」

母親「そんなこと言ったって、お姉さんが食べてるでしょう?」

女の子「でもぉ…」

エウジェニオ「シニョーラ(奥さん)、私は虫歯も病気もないけれど……良かったらこのアメ、お嬢さんにあげてもいいかしら?」

母親「えーと…その……」

エウジェニオ「エウジェニオ・ディ・サヴォイア…ここの艦娘よ」

女の子「ねぇ、マンマ……」

母親「…え、ええと…では、ありがとうございます」

エウジェニオ「いいのよ、遠慮することはないわ。さぁ、可愛らしいお嬢さま…どうぞ召し上がれ♪」ボールペンを回すように指先でくるりとアメ玉の柄を半回転させると、一輪のバラを渡すようにして女の子にアメ玉を差しだした…

女の子「わぁぁ…♪ グラツィエ、おねえちゃん……ん、ちゅぱ♪」

母親「///」

エウジェニオ「いいのよ…小さな貴婦人さん♪」女の子のぷにぷにした頬に軽くキスをし、母親に軽くウィンクをするエウジェニオ……立ち上がると芝生に下ろしていたヒップの砂を軽く払い、鎮守府の方に歩きかけた…

提督「…あ、いたいた♪」

エウジェニオ「あら、提督。そんな巡礼みたいにみんなをぞろぞろ引きつれて…どうしたの?」

提督「いえ、実を言うとね…あら」

母親「……ボンジョルノ、士官さん///」エウジェニオのウィンクに頬を赤くしている母親…

提督「ボンジョルノ、シニョーラ。 あら可愛らしいお嬢さん…アメは美味しい?」

女の子「うん……おねえちゃんがぺろぺろしてたのをくれたの♪」

提督「…え」

アッテンドーロ「エウジェニオ……前から見境なしだとは思っていたけれど、さすがにそれは…」

カヴール「まぁまぁ…まさか母娘をいっぺんに味見するなんて、エウジェニオったら……ふふっ♪」

エウジェニオ「ちょっと、あなたたちね…人の事を何だと思っているの?」

コルサーロ「ま、そりゃふだんの色事師っぷりを見ていればな…」

エウジェニオ「まったく失礼ね…それじゃあね」

女の子「うん…ちゅぱ、ちゅむ……♪」



提督「さてと、それじゃあ今度はエレオノーラたちを見つけないといけないわね」

エウジェニオ「ま、提督はそれよりも「許嫁」との関係をどうにかしないと…でしょう♪」

提督「むぅ…それはそうとエレオノーラたちはどこに行ったのかしら?」

ライモン「あ。提督、向こうに…」

提督「あー、見えたわ…みんな、お待たせ♪」

シモネッタ提督「あら、別に待ってないわ……それじゃあ大きなお口で「あーん」してね♪」

ミラベロ「あーん♪」

シモネッタ提督「はい♪ あら、ごめんなさい…私としたことがクリームを口の端に付けちゃったわ、取ってあげるわね……んちゅっ、れろっ♪」

ミラベロ「んふふっ。もう、くすぐったいわ……お返ししてあげる♪」…ちゅっ♪

シモネッタ提督「んふふふっ、むふ…っ♪」

カサルディ提督「ねぇフランカ、早く助けてよ! ここままじゃ、いつうちの娘たちが物陰に連れ込まれるか分かったものじゃないわ…!」

シモネッタ提督「…ルクレツィアったら失礼ね……可愛い天使たちと仲良くするんだもの、ちゃんとベッドのあるところまでエスコートするに決まっているでしょう♪」

カサルディ提督「あぁ、もう!」

エクレール提督「まったく信じられませんわ…シモネッタ提督ときたら、さっきからずっとこんなですのよ!? は、早くどうにかなさいっ///」

提督「あー…なんと言うか、エレオノーラは期待を裏切らないわね……」

エクレール提督「感心している場合ではありませんわ…!」

提督「まぁまぁマリー、落ち着いて……一緒にいられなかった分、後で「パルフェ」でも食べましょうね…もちろん、姫も♪」(※パルフェ…フランス語。「パフェ」の原型になった冷菓子のこと)

足柄「……うちの提督は「メロンパン」なんかが好きだけど…イタリアじゃ難しそうね」

百合姫提督「ええ、特に「チョコチップメロンパン」が好きなの…でもフランカが用意してくれるなら、何だっていいわ♪」

提督「ありがと…それに、パルフェだって甘くて美味しいもの♪」

…食堂…

カサルディ提督「あー…怒鳴り過ぎて喉が痛い……」

シモネッタ提督「もう、あんまり大声を出しちゃダメよ?」

カサルディ提督「一体誰のせいだと…! …う゛ー…ごほんっ…」

提督「まぁまぁ、いま飲み物を用意するから…カフェラテでいいかしら?」

カサルディ提督「ありがと、カフェラテでいいわ…あー…うー…おほんっ……」

エクレール提督「…まったく、イタリア勢の提督は揃いも揃ってどうしようもありませんわね……」

提督「ねぇマリー…「犬のしつけ」って愉しいわよね♪」

エクレール提督「…っ///」

ヴァイス提督「?」

グレイ提督「……ふむ、エクレール大佐はカンピオーニ少将に何か…なるほど、興味深いですね…」

エリトレア「提督方、お待たせしました♪ コーヒーにぴったりなおいしいお菓子ですよっ♪」

グレイ提督「ふふ、なるほど美味しそうですわね…ありがとう、エリトレア」

エリトレア「いえいえ、どうぞお好きなだけ取って下さいねっ♪」

カサルディ提督「グラツィエ…二人ともお菓子は? …あ、でもさっきあれだけ食べたからお腹いっぱいか……」

MS16「ご心配なく、司令…どれも美味しそう♪」

MS22「まだまだいくらでも入るけど、まずは一個ずつ取ってくれる?」

カサルディ提督「まったく…そんな小さい身体のどこに収まるんだか……お腹を壊さないようにね?」

MS16・22「「はい、司令♪」」

シモネッタ提督「あー、私もああいうちっちゃな女の子に囲まれて執務がしたいわ…♪」

マエストラーレ(ヴェネツィア)「もう、司令ったら浮気しないっ!」

グレカーレ(ヴェネツィア)「ふふ、おねえちゃんったら心配性なんだから…うちの司令に限っては大丈夫、だってちゃんと戻ってくるもの……そうでしょ?」

シモネッタ提督「ええ、だって普段あれだけ「仲良し」してるもの…ね♪」

カサルディ提督「…」

提督「…はい、お待たせ……どうしたの、ルクレツィア? そんな生ゴミを見るような目でエレオノーラを見て」

カサルディ提督「…生ゴミなら幼女にいたずらはしないし、その方がマシよ」

シモネッタ提督「んー、このエクレアおいし…♪」

エリトレア「それは「エクレア・ルージュ」です…貴女の心に響く味がする、イチゴとクランベリーの甘酸っぱいエクレアですよ♪」

シモネッタ提督「なるほど、とっても美味しいわ…ほら、リベッチオはこっち側から食べて?」

リベッチオ(ヴェネツィア)「うんっ……あむっ、はむっ♪」

シモネッタ提督「はむっ、んむ……ちゅぅ…っ♪」

リベッチオ「ぷは……勢い込んで食べてたら、司令の唇まで食べちゃった…甘酸っぱくて美味しいね♪」

シモネッタ提督「ふふ……それじゃあもう一個食べる?」

提督「あー…カヴール、お菓子はどれにする?」

カヴール「あ、あぁ…そうですね、でしたらこのショコラを……」

ヴァイス提督「な、何て破廉恥な……落ち着け、計算でもして冷静になれ…距離一万メートルからの20.3センチ砲弾が角度四十五度で着弾するとき、その貫徹力は……///」

エリザベス「おやまあ…イタリアの提督方は皆さん艦娘たちとずいぶん親密な関係でいらっしゃること…」

エメラルド「///」

グレイ提督「……エメラルド、庭が綺麗ですよ…ほら、ごらんなさい?」

この数日投下出来ていませんでしたが、何はともあれ「クリスマスおめでとう」というわけでまた今夜にでも投下していきます…そして数時間かけて準備した割には、意外と少ない料理の数……なぜなのか…?

提督「ところで、マリー」

エクレール提督「なんですの?」

提督「トゥーロンからはどうやって来たの?」

エクレール提督「あぁ、そのことですか…まずは車で最寄りの空軍基地へ参りまして」

提督「あのムール貝みたいなDS19?」

エクレール提督「いえ、今回は公用車の「ルノー・ルーテシア」ですわ……もっとも、フランチェスカはルーテシアと言うのがいかにフランスらしい由緒ある名前で、どういう来歴があるかなんてご存じないでしょうけれど?」

提督「ルーテシア…ルテチア…ってパリの古い名前でしょう…そうよね、チェザーレ?」

チェザーレ「いかにも……当時ガリアの一部族が住んでいた街の名であるな」

エクレール提督「…むっ」

チェザーレ「ちなみに、パリと言う名前は後にルテチアに入植したパリサイ(パリシー)人から来ているのだ…まぁ何にせよ、ローマとは比べ物にならぬ小さな集落と言うことだな」

エクレール提督「むぅ…っ」

提督「ふふ…あなどってもらっては困るわね。それから?」

エクレール提督「ええ…それから空軍基地に駐機している鎮守府製の「コードロン・シムーン」で、グロッタリーエまで飛んで参りましたの」

(※コードロン・シムーン…1930年代に開発された単発四人乗りの小型郵便・連絡機。性能が良く素直な操縦性が評価され、フランスの航空会社や、「星の王子様」の作者で知られるサン・テグジュベリなど多くの冒険飛行家に愛用された。一部は連絡機として戦前・戦中のフランス空軍にも配備された。220馬力のルノー製エンジンを搭載し、最高速度300キロ前後…C500に始まり多くのサブタイプがあり、名前の「シムーン」は砂漠の風のこと)

提督「シムーンねぇ…乗る前にちゃんとキスはした?」

エクレール提督「…どういう意味ですの?」

提督「あー…いえ、分からないならいいわ」

百合姫提督「……もしかして上手く編隊を組んだら、リ・マージョンできるかも知れないわね?」

提督「そういうこと♪」

エクレール提督「ですから、さっきから何が言いたいんですの?」

提督「気にしないで、私と姫の間で通じる暗号みたいなものだから」

百合姫提督「ええ…♪」

エクレール提督「どうも引っかかりますわね…まぁいいですわ」

グレイ提督「それはそうと、カンピオーニ提督」

提督「はい、何でしょう?」コーヒーを優雅にすすりつつ、にこやかに返事をした

グレイ提督「あの「許嫁」の方がいらっしゃいましたわ」

提督「けほっ、こほっ…!」

アンナ「フランカ、そろそろ話は済んだでしょう? あ、それと貴女「ディアナ」だったわよね……私にもカフェラテをお願い♪」別のテーブルから椅子を持ってきて、ちゃっかり隣に腰かけるアンナ…

ディアナ「…はい」

提督「あの…アンナ、今はちょっと……」

アンナ「コーヒーとお菓子を並べて優雅にお茶してるところなのに、私がいちゃいけないの? …皆さんはどう?」

シモネッタ提督「私は構いませんよ、フランカのお友だちなら歓迎です♪」

カサルディ提督「うん、私も構わないわ…それより、フランカったらこんなきれいな女の人と付き合ってたの?」

提督「あー、いえ…アンナとは……」

アンナ「フランカとは幼いころからの許嫁なんです…アンナです、よろしく♪」

シモネッタ提督「そうでしたか…フランカとアンナさんはお似合いですし、いい婦妻になりそうですね♪」

カサルディ提督「フランカ、おめでと……う?」

提督「はぁ…ぁ」

カサルディ提督「……ねぇフランカ、もしかしてめでたくない?」

提督「ええ、全然めでたくないわ…まるでジョロウグモの糸に絡められた蝶の気分よ……」

カサルディ提督「…あらまぁ……」

アンナ「ほら「あーん」しなさいよ、食べさせてあげるから♪」

提督「あー…気持ちは嬉しいけれど、自分で食べられるから大丈夫よ」

アンナ「いいから。それとも私のフォークで刺したケーキは嫌だって言うの?」

提督「いえ、あの…別にそう言うつもりではないわ……あーん…」

アンナ「あーん。もう、フランカったら他の提督さんたちがいるからって照れちゃって…許嫁なんだから気にすることなんてないじゃない?」

提督「だからその話は保留にする…って///」

グレイ提督「ふふ…いつも鷹揚な態度でいらっしゃるカンピオーニ提督がこれだけ動揺しているさまを見るのは大変に愉快……いえ、興味深いですわね」…お菓子を優雅に楽しみながら、くすくす笑いをしている

クラウディア「まぁまぁ、フランカったら「あーん」なんてしてもらっちゃって…私もシルヴィアにしてもらおうかしら♪」

提督「あ、お母さま……ディアナとのお料理はどうだった?」

クラウディア「ええ、いくつか我が家のレシピを書いてきたけれど…ディアナったらてきぱきしているしお料理そのものも上手で、むしろ私の方が勉強になったわ♪」

ディアナ「お褒めにあずかり恐縮でございます」

提督「ディアナは本当に料理が上手だものね…お母さまとシルヴィアおばさまはタラントのホテルで泊まるの?」

シルヴィア「いいえ」

クラウディア「…ここの近くに小さな町があるでしょう、そこのホテルを予約したの」

提督「なるほどね」

カサルディ提督「それにしてもフランカのご両親は綺麗な人ね……うらやましい♪」

提督「もう…ルクレツィアったら人の親に色目を使わないでよ」

カサルディ提督「いや、事実だから仕方ないでしょ?」

シモネッタ提督「あら、またルクレツィアの口説きが始まったみたいね…そうでしょう、二人とも?」

MS16「くすくすっ…だってうちの司令は口説き上手だもの♪」

MS22「ねっ♪」

カサルディ提督「……クラウディアさんは可愛らしいし、フランカに似て美人ですね……私はクラウディアみたいな優しい感じの女性、結構好きですよ♪」

クラウディア「まぁまぁ…カサルディさんったらお上手ね。シルヴィアがいなかったら、ころりと参ってしまいそう♪」

カサルディ提督「どうかルクレツィアと呼んで下さい」

クラウディア「そう、それじゃあ…ルクレツィア」

カサルディ提督「はい、何ですか?」

クラウディア「ふふ、呼んでみただけよ♪」

カサルディ提督「はは、一本取られちゃった…クラウディアってばお茶目なんですね♪」

提督「ちょっと、ルクレツィア…!」

カサルディ提督「どうしたの、フランカ?」

提督「もう「どうしたの?」じゃなくて…普通、人の母親を本人の目の前で誘惑する?」

カサルディ提督「別に誘惑しているつもりじゃないけど…でも、自然と仲良くなっちゃうのは仕方ないでしょ♪」

提督「…これだからルクレツィアは……」

シモネッタ提督「さすが「スケコマシ」の名をほしいままにしただけあるわね…ふふふ♪」

ヴァイス提督「うぅ、こんな会話には参加できそうにない……どうしてコーヒーを楽しみながら、和気あいあいと女性を口説いているのだ…!?」

提督「…ところで、ヴァイス提督はどうですか?」

ヴァイス提督「え? …あー、その…それは良いと思いますが……?」

提督「そう、よかった……ほらね、ヴァイス提督もお姉さまが良いそうよ♪」

シモネッタ提督「あら、残念ね♪」

ヴァイス提督「!?」

提督「ふふ…適当に返事をしちゃダメよ、シャルロッテ♪」

ヴァイス提督「は、これからは気を付けます……///」

…夕方…

ガラテア(中型潜シレーナ級)「さて、それでは哨戒任務に行ってきませんと。せっかくのお祭の日に順番が回って来てしまうなんて、少し残念ですね」

…美女揃いの鎮守府の中でも特に美しく目も覚めるような「ガラテア」は、白大理石のような純白の肌を、淡い灰色と灰緑色の斑点迷彩を施した「艤装」で包んでいる……ぴっちりと肌に吸いついたウェットスーツのような艤装のおかげで、くっきりと乳首やあそこの割れ目が際立っている……

ネレイーデ(シレーナ級)「そう?私は哨戒も好きよ? 沖に出て感じる海のざわざわした感じや、泡立つ波のしぶきとか♪」海の精だけあって、たとえ理由が哨戒でも海に出るのが好きなネレイーデ…

アンフィトリテ(シレーナ級)「私も嫌いではないわ…シレーナはどう?」こちらも海神ポセイドンの妻だけあり、ほとんど海と一心同体のアンフィトリテ…自分の艤装には飾りのフリルを付けているが、それも白く砕ける波頭に見える…

シレーナ「そうね、海は好きよ…ラララ、ララ…ラ~…♪」一人でワルツを踊る真似をしながら、聞くだけで心もとろかすようなメロディを聞かせるシレーナ(セイレーン)…

提督「んっ…シレーナ、ちょっと歌うのは止めてもらっていいかしら……///」

ライモン「そ、そうですね…///」恥ずかしげに頬を赤らめ、もじもじとふとももを擦りあわせるライモン…

シレーナ「あら残念、気に入ってもらえると思ったのに」

提督「いえ、歌は上手だけれど…その……」

アッテンドーロ「その甘い声が良くないのよ」

シレーナ「そうですか…それじゃあ洋上でうんと歌ってくることにしましょう♪」

提督「そうしてもらえると助かるわ…」

シモネッタ提督「んぅぅ、私も今の声で濡れちゃったわ……ねぇリベッチオ♪」

リベッチオ(ヴェネツィア)「んー?」

シモネッタ提督「…ちょっと化粧室に行きたくなぁい?」

リベッチオ(ヴェネツィア)「うん、提督が行きたいなら一緒に行ってあげる♪」

シモネッタ提督「んふっ、リベッチオはいい娘ね♪」

リベッチオ「えへへっ♪ …提督、リベッチオのこと……いっぱい気持ち良くしてね♪」

シモネッタ提督「ええ、それはもう…んふふっ♪」

提督「えーと……あ、そうそう、日が沈んだら庭に行きましょう。二日目の催し物として準備しているものがあるの」

グレイ提督「それは楽しみですわね…エメラルド、わたくしたちは外で待つことといたしましょう?」

エメラルド「は、はい…んぅ……///」歌声を聞いて身体を火照らせ、悩ましげな表情を浮かべたエメラルド…それをさりげなく連れ出すグレイ提督と、さすがに顔色一つ変わらないクィーン・エリザベス…

…日没・庭先…

シルヴィア「…それで、何を用意してあるの?」

提督「まぁまぁ、それは見てのお楽しみ。期待していてね、シルヴィアおばさま♪」

クラウディア「ふふ、楽しみね……んっ」意外と冷たい夜風に軽く身震いしたクラウディア…と、シルヴィアが肩に手を回して軽く抱きしめた…

シルヴィア「ほら、こうしていれば少しは暖かいでしょう?」

クラウディア「ええ、ありがとう///」

提督「…ライモン、あなたは平気?」

ライモン「ええ、大丈夫です…でも、隣にいさせて下さいね……提督///」

提督「ふふっ、もちろんいいわ…さ、そろそろね♪」

リットリオ「えー、こちらリットリオ…提督、始めてもいいですか?」

提督「こちら提督…ええ、どうぞ♪」

リットリオ「リットリオ了解。それでは行きますよ? ……トーレ、ドゥーエ、ウーノ…フオーコ(撃て)♪」…と、リットリオ級の甲板上にある星弾(照明弾)用の単装砲が目一杯仰角を取ると発射され、シュルシュルと尾を引いて照明弾が打ち上げられたかと思うと、上空で紅と緑の花火が開いた……

シルヴィア「へぇ、綺麗ね…」

提督「ふふ…照明弾にちょっと細工をしてもらって花火にしたの」アナウンスを受けて艦隊の方を見ていたお客さんたちからも歓声が上がる…

グレイ提督「まぁまぁ、なかなかお洒落ですわね…♪」

アンナ「許嫁と花火なんて言うのも悪くないわね…フランカ、合格点をあげるわ♪」

提督「そう、よかった……それじゃあお母さま、おばさま、それにアンナ…この花火が終わったらお客さんは退場の時間だから、気を付けて帰ってね?」

クラウディア「ええ、とっても楽しかったわ…また明日も遊びに来るわね」

提督「ええ、待ってるから……ちゅっ♪」

デュイリオ「それではそろそろ夕食にいたしましょう…わたくし、お腹が空いてしまいました♪」

乙。ライモンは癒し

>>439 まずはコメントありがとうございます。優しい世界観を目指してガンバっております…書いている方としてもライモンは(艦としてもキャラとしても)メインヒロインになっている感じがします


……ここ数日で急に寒くなりましたから、見ている皆さまはどうか暖かくして、風邪など引かないようにして下さいね…ちなみにこの後は基地祭二日目~三日目を投下していく予定ですので、どうぞ見ていって下さい

…夕食後…

提督「ふー…ディアナの料理が美味しいのはいつもだけれど、それよりも今日は懐かしい味だったわ。なんだかうちで夕食を食べたみたい♪」

ディアナ「それは良かったです……クラウディア様にカンピオーニ家の味を教わったかいがありました」

提督「ええ…あんまり美味しいから、ちょっと食べ過ぎちゃったわ……」苦笑いしながらお腹をさする提督…

ライモン「もう、また提督は…基地祭の間は運動する時間が取れないんですから、少しは食べる方を抑えないとだめですよ?」

提督「大丈夫、その分お風呂に長く入って汗を流して……それから、ベッドでも「運動」することにするから…ね♪」意味ありげにウィンクをし、カクテルグラスを持ち上げて乾杯した…

ライモン「も、もうっ…///」

デュイリオ「あらあら、うふふ…でしたらわたくしも一緒に「運動」したいです♪」つつー…っ、と提督のふとももに指を走らせる…

提督「んっ///」

ドリア「もう、デュイリオったら邪魔してはいけませんよ。ライモンドは提督と二人きりで過ごしたいのですから、ね♪」

デュイリオ「ふふ、分かってます……でもうらやましいじゃありませんか、ライモンドったら提督のみずみずしい身体を独り占めなんて」

ライモン「///」

提督「まぁまぁ…デュイリオのために明日の夜は開けておくから、それで許してくれる?」

デュイリオ「仕方ありませんね……それで勘弁してあげます♪」

ザラ「提督も大変ね」

提督「ザラもね…お姉ちゃんっ子の妹が多いと大変でしょう?」

ザラ「ええ…きつい姿勢が多いから、腰とふとももに来るわ……ポーラ、あなたに言っているのよ?」

ポーラ「え~? ポーラはぁ、よく分かりませぇ~ん……んくっ、こくんっ♪」

ザラ「…これだもの……ま、それだけ愛されているのかしら?」

フィウメ「そうですよ、ザラ姉…私たちはザラ姉の事が大好きなんですから///」

ゴリツィア「はい、その通りです…たとえ姉さまが嫌がっても、もう一生離れませんからね?」

ザラ「はいはい……はぁ、酔っぱらいたくなってきたわ…」

ボルツァーノ「あの、ザラ…私もその中に加えていただいても……いいでしょうか…?」

ザラ「ふふ、当然でしょ……貴女は私たちザラ級の準同型なんですもの、もう姉妹みたいなものよ?」

ボルツァーノ「ザラ…///」

ザラ「さぁポーラ、ボルツァーノも加えた私たち「姉妹」に、何か素敵なカクテルをちょうだい?」

ポーラ「はぁ~い♪」

ザラ「…ん、美味しいわね……キール?」

ポーラ「はい、キールですよぉ♪」(※キール…戦後すぐのフランスで生まれたカクテル。戦争で荒廃したせいで売れずにいた地元のワインやリキュールを売り込むために作られた。白ワインとクレーム・ド・カシスで作る鮮やかな紅紫色のさっぱりとしたカクテルで、名前は竜骨(キール)ではなく村の名前から)

エクレール提督「…でしたら、わたくしにも何かフランスらしいものをお願いいたしますわ」

ポーラ「そうですねぇ…アブサンなんてどうでしょ~?」

(※アブサン…フランスやスイスで作られる、透明な黄緑色をしたニガヨモギのリキュールで「ペルノー」が有名。プロヴァンス地方などの特産だが、一時期ニガヨモギの成分ツヨン(ツジョン)が覚醒剤と類似の効果があると販売禁止になったことも……もちろん含有量はとても少ないのでそんなことはなく、おまけにへそ曲がりが自慢のフランス人の事なので「知った事か」と自家醸造は続けていたが、その間市販品として風味を似せた「パスティス」が販売されていた……味はミントガムと砂糖とパクチーを混ぜたようなもので、しばらくは味覚が麻痺すること請け合い)

エクレール提督「ええ、それで構いませんわ」

ポーラ「はぁ~い、お待ちどうさま~♪」

エクレール提督「メルスィ……ん」アルコール度数が高いので小さなグラスに入ったアブサンをちびりちびりと舐めるエクレール提督…

ジェンマ「それにしても何だな……」

提督「んー?」

ジェンマ「我らがイタリア海軍の重巡って言うのは全部で七隻なわけだが…」

提督「それがどうかしたの?」

ジェンマ「いや…それなら「荒野の七人」ができるな……」ちょっとだけ嬉しそうにバーボンを喉に流し込んでいるジェンマは相変わらず「西部のガンファイター」といった格好で決めていて、ガンベルトを腰に巻き、シングルアクション・アーミーを二丁拳銃にして突っこんでいる…

提督「ふふっ、言われてみれば…♪」

ジェンマ「♪~フーフーン、フーフー、フーフーン……」機嫌よく「荒野の七人」のテーマを鼻歌で奏でている…

…大浴場…

提督「…ふぅぅ、気持ちいい……」ほろ酔いと言うには少し酔いが回っている状態のぼんやりした気分で、暖かいお湯にとっぷりと浸かっている提督…浴槽の縁石に腕を乗せ、ぼーっと天井のモザイク画を眺めている…

ナザリオ・サウロ(駆逐艦サウロ級)「大丈夫、提督?」…見た目は中学生になるかならないかと言った様子のサウロたちがぞろぞろとお風呂にやって来て、くたっとなっている提督の左右に「ちゃぽん…」と入って来た…

提督「ええ……すっかりふにゃふにゃだけれど…あー……身体がとろけるみたい……ふわぁ…ぁ」

ダニエレ・マニン(サウロ級)「もう…提督ったらだらしないんだから♪」

提督「だって……ふわ…ぁ……」

フランチェスコ・ヌロ(サウロ級)「…提督、身体は洗わないの?」

提督「洗いたいのはやまやまなんだけれど…お風呂から出るのも面倒で……あー…」

チェザーレ・バティスティ(サウロ級)「もう、提督ったらダメね……私たちで洗ってあげましょうか?」

提督「グラツィエ…お願いするわ……」

サウロ「それじゃあせめて浴槽から出てくれないと…」

提督「はーい…」

ヌロ「……提督?」

提督「…動きたくないわ……」

サウロ「あぁもう…!」

バティスティ「提督ったらこれだもん…さ、立って?」

提督「ええ…ふわ……ぁ」両腕を小さな手につかまれて、カランの方に連れて行かれる提督…

サウロ「はい、そこに座って」

提督「…りょうかーい……」

ヌロ「ふふ、提督ったらまるで子供みたい……私たちでお世話してあげる♪」

提督「ありがと……んぁ///」サウロたちがスポンジに石けんを泡立てて優しく背中をこすり始めると、くすぐったさに変な声が出た提督…

バティスティ「何、今の声?」

提督「いえ、ちょっとくすぐったくて……んっ///」

マニン「提督ってば、あんまり甘い声をあげないでよ…こっちまで変な気分になっちゃう///」

提督「そんなこと言ったって…サウロたちの小さい手があちこち撫でるから……んぅぅ♪」

サウロ「…ねぇ、バティスティ」

バティスティ「なに?」

サウロ「……前もちゃんと洗った方がいいわよね?」

バティスティ「…そうだね♪」

提督「あー、気持ちは嬉しいけれどそれぐらいは自分でやれるか……んあぁっ♪」

サウロ「ダメよ、綺麗にしないと…特に提督はおっぱいが大きいし、ふとももだってむっちりしてるから汗が溜まりやすいでしょ?」

マニン「そうそう、割れ目だって綺麗にしておかないと…ライモンドに嫌われちゃうよ?」くちゅ…つぷっ♪

提督「あ、はぁ…ん……はぁ、はぁ、はぁ…っ…♪」

ヌロ「提督、ここも洗った方がいいですよね?」ぬりゅっ、するっ…♪

提督「はぁぁ…んっ……きもひいぃ…っ♪」胸の谷間、秘所とヒップの割れ目…そして脇腹を愛撫するようにサウロたちの柔らかな手やスポンジが撫でまわしていき、提督は惚けたようにとろりと愛液をしたたらせ、口を開いて甘い声で喘いでいる……

サウロ「…それじゃあ、そろそろ流すわね?」

提督「ううん…もっと洗って? ……だって割れ目には汗が溜まりやすいもの…ね♪」

バティスティ「くすくすっ…提督ってばいけないんだ♪」ぐちゅ、ぬちゅっ…♪

提督「ふふっ、そうね……あんっ♪」

………

提督「…んっ///」

…全身をくまなく洗ってお風呂からは出たものの、サウロたちが中途半端に責めたせいで身体が火照っている提督……バスローブにスリッパ姿で寝室に向かいながらも、ふとももがこすれるたびに「にちゅ…っ」と粘っこい水音が聞こえ、生暖かい蜜が垂れるのが分かる…

提督「はぁ……んぅ♪」ワインのせいもあってか、恥も外聞もなくバスローブの合わせ目から片手を差し入れて秘所に指を這わせ、階段の手すりにつかまりながら歩く…

提督「んぅ、気持ちいぃ……こんなところをメアリに…いえ、誰に見られても困るわね……でも…ん、くぅっ♪」くちゅくちゅ…っ♪

提督「…はぁ…はぁぁ……んっ♪」

…提督寝室…

ライモン「…あ、提督。お待ちしていまし……た?」読みかけの本をテーブルに置いて顔を上げるライモン…

提督「まぁ、ライモンったら♪ 待っていてくれるなんて優しい…ん、ちゅっ♪」

ライモン「提督、一体どうなさったので……きゃあっ!?」

提督「ふふっ…ライモンの事、押し倒しちゃっ…た♪」

…提督のベッドは規律正しい(?)海軍士官にふさわしくいつもきちんと整えられていて、そこへライモンを抱えるようにしながらダイブする…昼間は高めに結っているライモンのポニーテールはすでにほどかれていたので、まるでパスタ鍋にスパゲッティを入れた時のように、布団の上に落ち着いた色合いの金髪がふわりと広がった…

ライモン「て、提督……最初は、キスからして欲しいです///」

提督「ええ、あなたのお願いは断れないわ……ん、んちゅっ…ちゅっ♪」

ライモン「ん、はぁ…ぷは……んんぅ、あむっ…ちゅぅ……♪」

提督「ライモン…甘くて美味しい……♪」

ライモン「もう…提督ったら///」ちゅっ…と首筋にキスし返すライモン

提督「ん、もっと…♪」

ライモン「……今までも何回かこういうことはしていますけど…それでも恥ずかしいですね……んっ、ちゅぅぅ…っ///」

提督「ふあぁぁ…あっ、ん……♪」柔らかな二の腕に吸いつくようなキスをされ、甘い吐息を漏らす…

ライモン「そ、そんな声を出さないで下さい……わたし、我慢できなくなっちゃいます…///」

提督「ふふっ、どうして我慢するの……?」

ライモン「だ、だって…」

提督「……ここの壁は厚くて聞こえないから大丈夫よ♪」甘ったるくいやらしい笑みを浮かべると、ライモンの両脚を押し広げて顔をうずめた…

ライモン「て、提督……って、んぁぁっ♪ 何をするんですかっ///」

提督「んむっ…ちゅうぅ……ライモンの…れろっ、くちゅぅっ……味見をしようと…じゅるっ……思って…ぷはぁ♪」

ライモン「も、もうっ…ひゃあぁぁっ///」

提督「ん、じゅるっ…ぢゅくっ、じゅぶぅ…っ♪」

ライモン「はぁぁ…んっ、んくぅ…はひぃっ、はー、はーっ……ひぅぅんっ♪」

提督「ん、じゅぶっ…ぴちゃ……じゅるっ…♪」産毛一つ生えていない滑らかでしなやかなライモンのふとももに挟まれ、とろりと濡れそぼった花芯に舌を這わす…

ライモン「て、提督ったら情緒も何もなくいきなり……そう言うことなら♪」…もとより人とは力の違う「艦娘」だけあってあっさりと提督をひっくり返すと顔の上にまたがり、互い違いのような形になった…

提督「んむぅ、むぅ…じゅぶっ、くちゅっ……♪」濡れてぺったりと張りついた柔らかな金色の産毛と、とろとろと蜜をしたたらせる花芯に舌を差しこみ「くちゅくちゅ…っ♪」と音を立ててライモンをよがらせる……

ライモン「はひっ、ひゃあぁっ♪ …でも、わたしだっていつまでもやられっぱなしではないんですよ……んむっ、ちゅぅぅっ、じゅるっ…ちゅぷ……っ♪」

提督「んぁぁぁっ…はぁ…っ、んんぅ♪」ぞくぞくっ…と下腹部から甘い衝撃が走り、ひくひくと身体をよじらせた提督……と同時に、思っているよりも奥まで舌をねじ込んでしまう…

ライモン「はひっ、あひぃっ……あっ、んはぁぁ…っ♪」とぷっ…ぶしゃあぁ…っ♪

提督「いいっ、はひっ…はぁぁ…んっ♪」とぽっ…とろとろ……っ♪

ライモン「……はー、はー…はぁぁ……っ///」

提督「…はぁ、ふぅ…はぁぁ……まるで…下半身が全部とろけちゃったみたい……んっ♪」

………

何だかんだと言って今日は大みそかですが……今年はアニメや漫画の百合作品が豊富ないい年でしたね(笑)

…まずは遅々として進まない更新にもかかわらず見て下さった皆さま、ありがとうございます。また年が明けた三が日にでも更新していきますので、どうぞよろしくお願いします


……そして来年が皆さまにとって平和で実り多い(そして百合作品でいっぱいの)一年になりますように…それではよいお年を♪

少し遅くなりましたが、新年明けましておめでとうございます

また投下していきますので、なにとぞお付き合い下さいませ……今年も皆さまの「初春」が「松」「竹」「梅」と縁起よく揃ったよいお年になりますように…

ライモンかわいい。乙々

>>446 コメントありがとうございます、引き続きライモンやカヴールを正妻にした鎮守府生活をお送りしていきます

…基地祭三日目・朝…

カヴール「昨夜はお楽しみでいらっしゃったようですが…ちゃんとお休みになりました?」

提督「ええ、おかげさまで。ライモンはその辺も律儀だから……ふわぁ…ぁ」

カヴール「あらあら? 提督ったらたった今「ライモンドはちゃんとわきまえている」というお話をなさっていましたけれど?」目を細めていたずらっぽくにっこりした…

提督「いえ、実はライモンが寝ちゃった後も火照りが抜けなくて……その、一人で…///」

カヴール「ふふ、提督ったら♪」

提督「だって……って、そんなことは別にいいでしょう///」

カヴール「まぁまぁ、提督ったら顔を紅くなさって…ふふふっ♪ ……今夜は私が添い寝してあげますから、ね♪」

提督「…待っているわね///」

カヴール「はい♪」

提督「って、そんなことより……こほん!」演説台の前に立つと、マイクを取り上げた……食堂には一同が揃って、気楽におしゃべりをしながら提督のあいさつを待っている…

提督「あー……それでは今日が基地祭最終日ですので、最後まで事故のないように頑張りましょう。私も基地祭のお客さんはもちろんのこと、みんなも楽しめるように尽力します。以上!」

カヴール「…提督はお優しいですからそう言って下さいますが…司令官として職務が多くて大変なので、皆さんもよく協力して下さいね?」

一同「「了解」」

提督「みんな、ありがとう…それじゃあ朝食を続けて?」

…提督の一言で、また和やかに食事が再開された食堂……テーブルにはもちもちと食べごたえのあるフォカッチャと厚切りのハム、温かいトマトスープ…そしてイタリアで生まれ、ヘーゼルナッツチョコレートのような味が人気のチョコレートスプレッド「ヌテラ」の瓶がテーブルに鎮座している……

マエストラーレ「それにしても…せっかくの最終日に哨戒だなんてツイてないわ……」

シロッコ「仕方ないさ……歴史の立ちあい人になれないのは残念だけれどね…」

リベッチオ「ま、敵が出てこないことを願うばかりだよね…そうだジュリアーニ、深海棲艦が出てこないようなお祈りをしておいてよ♪」従軍司祭の名前を取ったと言う大型潜のジュリアーニに無茶なリクエストをするリベッチオ

レジナルド・ジュリアーニ(大型潜リウッツィ級)「深海棲艦除けのお祈りですか……そのような物はありませんが、まずは哨戒が無事に終わるようにお祈りしておきましょう」相変わらず黒の僧服でまとめていて、胸に金の十字架を提げているジュリアーニ…

グレカーレ「ありがとう、ジュリアーニ…♪」

ジュリアーニ「いいえ、構いませんよ」

ヴァイス提督「……カンピオーニ少将。私も出来るだけ協力しますので、何かあったらおっしゃって下さい」

提督「ダンケシェーン♪」

ヴァイス提督「はっ…それとビスマルク」

ビスマルク「むしゃむしゃ、んぐっ……何か?」

ヴァイス提督「…貴様というやつはまったく…一体どういうつもりだ、あれだけ言い聞かせたのにまだそんな風にがっついて……いい加減テーブルマナーくらい覚えたらどうなのだ…!?」こめかみに青筋を立てて、小声でビスマルクを叱りつけているヴァイス提督…

ビスマルク「むしゃむしゃ…ずずーっ……ふむ、こういうことを言うのもなんだが…別に構うまい、食い方で戦果が上がるならばフォークとナイフで馬鹿丁寧にやるだろうが…」片手でハムとモッツァレラチーズのスライスを挟んだフォカッチャをつかみ、もう片方の手でスープ用のお椀をつかんですすっている…

ヴァイス提督「またそういう言いわけを…ティルピッツも自分の姉だろうが! どうして止めさせない…!?」

ティルピッツ「それは…何度も注意したのですが……」

ヴァイス提督「シャイス、これでは恥をかきに来たようなものではないか……もういい、せめて出撃に随行するようなことがあったら、食った分だけいい所を見せるように…フェルシュテーエン(分かったか)!?」

ビスマルク「ヤー、アトミラル……ずず…っ…」

ヴァイス提督「全く……朝から小言を言わせるな…」

ティルピッツ「司令、どうか落ち着いて……それに姉上も姉上です、そんな原始人みたいな食べ方をして…」

ビスマルク「そう言うな、ティルピッツ…食い方がどうのこうのよりも、私には考えねばならんことがうんとあるのだ」

ティルピッツ「そうかもしれませんが……あっ。…姉上、ちょっと顔をこちらに」

ビスマルク「ん? こうか?」顔を近寄せるビスマルク…

ティルピッツ「ヤー…口の端にスープの「ひげ」が……取れましたよ」ナプキンで拭ってあげるティルピッツ…

ビスマルク「ダンケ。すまんな、ティルピッツ」

ティルピッツ「ビッテ……だって、たった一人の姉上ですから///」

ビスマルク「ふむ…私にとっても貴様が唯一の妹だぞ」

ティルピッツ「///」

…朝食後…

ガラテア「おはようございます、提督…中型潜シレーナ級「ガラテア」以下四隻、ただいま哨戒から戻りました」汗と塩水の染みた「艤装」を着たまま、直立不動で敬礼するガラテアたち……波しぶきに叩かれた髪はドックの隅っこに用意してあるバスタオルで拭ったらしく、くしゃくしゃに乱れている…

提督「お疲れさま、夜を徹しての哨戒は大変だったでしょう……今日はゆっくり休んでね?」塩水のせいでしょっぱいガラテアたちの唇に、優しさを込めて順番に口づけする提督…

ガラテア「はい、それではお言葉に甘えさせていただきます」疲れていても大理石像のような美しさは健在のガラテア…

アンフィトリテ「ふぅ、さすがに疲れたわ……おはよう、トリトーネ」

トリトーネ(中型潜フルット級)「……あ、お帰りお母さ…アンフィトリテ///」

アンフィトリテ「ふふ…「お母さま」で構いませんよ?」

トリトーネ「……き、聞かなかったことにして///」右手には三又矛、腰にはほら貝を提げ、美しさの中に嵐の前の静けさをたたえた威厳のあるトリトーネ…が、「母親」であるアンフィトリテの前では恥ずかしがりつつも甘えてしまう…

アンフィトリテ「そう恥ずかしがらずに……ほら、髪を梳いてあげますからおいでなさい?」

トリトーネ「う、うん…」

ネレイーデ「ふー、疲れたけれど気持ち良かったわ……あの明け方の海の綺麗なこと♪」

シレーナ「そうね、毎日でも飽きないわ…ララ♪ …でもさすがに歌い疲れちゃった……」

提督「ふふっ、さすがのシレーナも一晩中は歌えないみたいね?」

シレーナ「ええ、さすがにね……こほんっ…ララ…ラ……♪」

提督「んっ、く……まだまだ歌えそうだけれど…喉を休めた方がいいんじゃないかしら///」

シレーナ「ええ。ありがとう、提督…そうするわ♪」

バリラ(大型潜バリラ級)「それじゃあお母さんが燃料を補給してあげますから……ほぉら、いらっしゃぁ…い♪」

…1928~29年の就役直後は1427(水上)/1874(水中)トンという大柄な船体を活かしさまざまな航海記録を塗り替えていたものの、戦時にはすっかり旧型になっていて、状態のよかった「アントニオ・シエスタ」以外は燃料タンクとして係留されていたバリラ級……そのことがあるのか「たぷんっ…♪」と揺れるたわわな胸と、母性愛たっぷりのおっとりした性格をしている…

シレーナ「ふわぁ…///」

エンリコ・トーティ(バリラ級)「さぁネレイーデ、お母さんが枕になってあげますからねぇ……おっぱいに包まれて、ゆーっくりお休みなさい♪」

ネレイーデ「はぁぁ…おっぱいに挟まれてダメになる……ぅ♪」

トーティ「いいのよぉ♪ ところでネレイーデ……ついでにお母さんのおっぱいを吸ってみる?」

ネレイーデ「!?」

トーティ「ふふっ、別にお乳は出ないけど…どうかしらぁ?」服の襟ぐりを手で広げ、ゆさゆさと揺れる乳房を出そうとする…

ネレイーデ「そ、それは止めておくわ…何だか戻れなくなりそうだし、まだお風呂にも入ってないから……///」

トーティ「そーお?」

ネレイーデ「え、ええ…また後でね……」

トーティ「それじゃあ、チャオ♪」

提督「…」

ライモン「…何というか、圧倒的でしたね……」

提督「…ええ」

足柄「うちの間宮でもああは行かないわ……なんて言うのかしら、見ているだけで幼児退行しそうだったわね…」

百合姫提督「…そうね……」

提督「はっ……いけないいけない、ぼんやりしている場合じゃなかったわ…カヴール、そろそろ準備に取りかからないと」

カヴール「そうですね、それでは参りましょう♪」

…午前九時・正門…

憲兵大尉「司令官、時間ですが…よろしいですか?」

提督「ええ、お願いします」

憲兵大尉「分かりました……伍長、入場を始めさせてちょうだい」

憲兵伍長「は…それでは入場を開始します! 簡単な手荷物検査がありますので、列に並んで下さい!」

憲兵大尉「それでは司令官、後はこちらでやりますので」

提督「分かりました、それではお任せしま……」

アンナ「…もう、なんで手荷物まで見せなきゃいけないのよ?」アンナの不満そうな声が響いた

提督「…」

憲兵伍長「規則ですから」…女性下士は手荷物を見せようとしないアンナを相手に一歩も譲らず、他の入場客(…と言っても鎮守府のあたりはのんきなもので、早起きして朝から基地祭に来るような地元の人はあまりいない)を他の列にさばきながら、頑として入れないでいる…

アンナ「その規則には「司令官の許嫁の荷物も見ろ」って書いてあるわけ?」一方のアンナはナポリ辺りで覚えたのか、両手で扇ぐような大げさな身振りを付けて文句を言っている…

憲兵伍長「司令官の許嫁の方かどうかは存じませんが、手荷物を確認しなければ入ることはできません」

アンナ「全くもうっ…分かったわよ、見せればいいんでしょ!?」

憲兵伍長「……はい、結構です」

アンナ「はぁ、もう……って、フランカ! んー、ちゅっ♪」

提督「んっ…おはよう、アンナ。 …ずいぶんと憲兵隊の人を困らせてくれたわね?」

アンナ「向こうが分からず屋なのがいけないのよ……だいたい、どうして自分の婚約者のいる施設に入るのに許可を得なきゃいけないわけ?」

提督「アンナもよく知っているでしょう、それが…」

アンナ「はいはい「海軍だから」って言うんでしょ……よーく分かったわよ」

提督「分かってくれて嬉しいわ。しばらくは忙しいけれど、昼下がりになったら少し休憩するつもりだから…一緒にお昼でも食べる?」

アンナ「ふふ、嬉しいことを言ってくれるじゃない……でも無理して削り出した時間だから、午後には帰らないといけないのよね」

提督「ふぅ…助かったわ……」

アンナ「何か言った?」

提督「いえ、何も……本当にアンナったら、一度言い出したら聞かないんだから」苦笑いをしながら肩をすくめた

アンナ「そうやって押しまくればどこかで相手が折れるもの…ちょうど今みたいにね♪」

提督「負けたわ……それじゃあ今日は施設の中を巡りましょうか」

アンナ「そのあたりは任せるわ…私のこと、ちゃんとエスコートしてよね?」

提督「ええ」

カヴール「それでは私は見回りをしながら、屋台料理でもいただくことにしますから…提督はアンナさんとご一緒に回られてはいかがでしょう?」

提督「え、ええ……今日は最終日だし、カヴールも楽しんでいらっしゃい…」

カヴール「はい、楽しませていただきます…それでは提督、どうぞアンナさんとごゆっくり♪」提督をからかっている時によく浮かべる無邪気な感じのほほ笑みを見せると、小さく手を振ってにこやかに歩いて行った…

提督「そ、そうさせてもらうわ……今日ばかりはカヴールの気の利かせ方がうらめしいわ…」カヴールの後ろ姿を見送りながら、小さくため息をついた…

アンナ「フランカ、何をボーっとしてるのよ? 私は午前中しかいないのよ?」

提督「あぁ、はいはい……それじゃあ行きましょう」

アンナ「ええ♪」

…鎮守府・管理棟…

提督「それじゃあ最初はここからにしましょう?」正門のそばに立てられている鉄骨コンクリート造りの現代的な建物ながら、普段は使っていない「管理棟」にアンナを案内する提督…

アンナ「いいわよ」

提督「最初は水族館ね…と言っても、みんなが哨戒の時に見つけたクラゲなんかを、たも網ですくって捕まえただけだけれど……」

アンナ「それはまたお金のかからない水族館ね…ま、いいわ」

提督「何しろ予算がないものだから……ここよ♪」


…打ち合わせや映像資料の上映は、普段提督と艦娘たちが暮らしている「本棟」で済ませてしまうため、ほとんど使われていない大部屋の「会議室」…そこへ学校の理科室か何かのように、あちこちから手に入れてきたガラスの水槽やら海水を入れた大きな空きびんやらを並べ、クラゲや魚を種類別にして展示している「水族館」……提督とアンナが開け放してある人気のない入り口をくぐろうとすると、何やら甘い喘ぎ声が聞こえ、絡みあっている脚が見えた…


フィザリア(中型潜アルゴナウタ級「カツオノエボシ」)「んむっ、あふっ…はぁ、はぁぁ……♪」

ジャンティーナ(アルゴナウタ級「アサガオガイ」)「ぷは…ぁ…どう、フィザリア…気持ちいい……?」

フィザリア「あふっ…はぅ……んんぅ…気持ち良すぎて……身体が…んくっ…ひくひくする……ぅ♪」

アンナ「ふぅん…これを見物すればいいわけね?」

提督「いえ、そうじゃなくて……こほんっ///」

フィザリア「!」

ジャンティーナ「あ…提督……来てくれたんですね…ぇ…♪」

…ジャンティーナはアサガオガイ(クラゲの一種。綺麗な紫色の巻き貝をフロートにして海面を浮遊し、クラゲを食べる)の「殻」をモチーフにした紫の巻き貝を頭の飾りにあしらい、半透明でひらひらした薄紫色のフレアワンピースをまとっている。ジャンティーナは海面をゆったりとたゆたうクラゲの仲間らしくふわふわと漂うような話し方をしているが、椅子に腰かけたフィザリアと向かい合わせになるようにまたがり、片脚もしっかり脚の間に割り込ませている…さらに、今になって離したお互いの口もとからはとろりと銀色の糸が垂れている…

提督「あー…ジャンティーナ、一応聞くけれど……何をしていたの?」

ジャンティーナ「はい、それはもちろん…水族館の「受付」ですよ……でも、あんまり人が来なくて…眠気覚ましに、フィザリアを味見していました…♪」

提督「そう。それで、美味しかった?……じゃなくて、基地祭の間は人が来るところではそういう事をしないように」

ジャンティーナ「でも…誰も来ていませんでしたよ……?」

提督「あー…でもこうやって見つかることもあるから、以後気を付けてね?」

ジャンティーナ「はぁ…い、りょーかーい…♪」

提督「よろしい……で、フィザリアは大丈夫なの?」

フィザリア「…んぅぅ、大丈夫……んっ…///」こちらも「カツオノエボシ」らしく、シースルーのような青紫色のひらひらした薄物をまとっていて、受付用のパイプ椅子にへたり込むように座っている…普段はふわふわと眠たげながらも意外と責めてくるが、天敵のジャンティーナに「捕食」されてすっかり骨抜き(そもそも骨のないクラゲではあるが…)にされている…

提督「それで、えーと…アンナ、これが「水族館」よ」

アンナ「みたいね」

提督「ジャンティーナ、案内をお願いしていいかしら?」

ジャンティーナ「もちろんです…どうぞ……♪」長い青みがかった髪をゆらゆらさせながら、クラゲやヒトデ、イソギンチャクやカシパン(ウニの仲間)の入った水槽を案内する…

提督「で、これが「フィザリア」ね…」一見すると綺麗な紫と紅をした浮き袋もって漂っているが、その下に長く伸びた猛毒の触手を伸ばしているカツオノエボシ…水槽にはフタもしてあり、クラゲなのでとびかかってくるわけでもないが、遠巻きにしながら観察する…

アンナ「ふぅん……お目にかかるのは初めてだわ」

ジャンティーナ「私の名前にもなっていますが…アサガオガイは結構これを食べるんです………確かに、ぷるぷるしていて美味しそうですよね…ぇ…♪」

提督「うーん…さすがに毒のあるクラゲはちょっと……」

ジャンティーナ「そうですかぁ…」





提督「で、次が…」

アンナ「さっきがキスだったから、今度はストリップでも見せてくれるつもり?」

提督「あ、あれは姉妹愛が行き過ぎているだけよ…ほらね、ここはなんていうことないでしょう?」

…やはり空き部屋になっている別の部屋は駆逐艦「フレッチア」級の四人がダーツの的当てをやっている……的に向かっているのは可愛らしい女の子から、一見すると中学生くらいに見えるフレッチアたちを相手に自信ありげなお姉さんやあんちゃん、果ては子供につき合っているおばさんまでいる…

フレッチア(フレッチア級「矢・フレシェット」)「提督、来てくれたのね…うれしいわ♪」軽く背伸びをして頬にキスをするフレッチア…

提督「ええ、フレッチア。それとみんなに会いたくて♪」ぱちりとウィンクする提督…

ダルド(フレッチア級「矢・ダーツ」)「ふふっ、提督ってばお上手なんだから♪」

サエッタ(フレッチア級「閃光・雷」)「ところで提督、それにアンナさんも……どう、一つやっていかない?」

ストラーレ(フレッチア級「雷光・雷電」)「私たちに勝ったらいいことあるかもね♪」

アンナ「そうね、なら勝負させてもらうわ……もちろんフランカもやるのよ?」

提督「分かった、分かったから…それじゃあダルド、矢を貸して?」

ダルド「はい、どうぞ…十本だから慎重にね♪」

提督「ありがと、頑張るわ」

アンナ「さて…と。それで、誰が私と勝負する?」

提督「ずいぶんやる気ね、アンナ?」

アンナ「こういう勝負って結構好きなのよ…負けるのは嫌いだけど」賭け事や勝負にはめっぽう強いアンナだけあって、すっかりやる気になっている

フレッチア「…それじゃあ私がお相手しますね」

ストラーレ「頑張ってよ、お姉ちゃん?」

フレッチア「もちろん、妹たちの前で恥はかけないわ……とにかくルールは簡単。より得点の多い方が勝ち」…的には「深海棲艦」として遭遇する大戦時のイギリス艦がシルエットとして描いてあり、それぞれのクリティカル・パートには高得点が書かれている…

アンナ「シンプルでいいわ…それじゃあ、まずはそっちからどうぞ?」

フレッチア「了解……それ!」ヒュッ…トスッ!

アンナ「へぇ…上手ね。それじゃあ今度は私が…♪」ヒュ……バスッ!

フレッチア「ん、お上手!」

提督「えい…っ!」ヒュン…パスッ!

ダルド「ふふ、結構上手ね……でも、ごめんなさい♪」ヒュゥッ…トスッ!

提督「むぅ……でも私だって…!」

ダルド「さすが提督…それじゃあこれはどう?」

提督「っ!?」

ダルド「ふふ、このくらいは出来ないと…名前負けしちゃうから♪」…ダルドの投げたダーツは提督の投げたダーツと同じ場所に刺さって、双子のように震えている…

提督「ふぅ……ダルドったら本当に上手ね、結局負けちゃったわ」

ダルド「無理もないわ、私たちは初日から相当やってるもの」

提督「それにしてもね…ところでフレッチアとアンナの勝負は……」

ストラーレ「それが互角なの…すごい勝負になってきたわ♪」

フレッチア「…これで最後の一本ね」お互いの投げたダーツが「10点」の部分に林立していて、「ハント」級駆逐艦を描いた的はハリネズミになっている…

アンナ「さ、投げてちょうだい」

フレッチア「……やっ!」ヒュンッ…プツッ!

アンナ「なるほど、なかなか上手よ……でもね!」ヒュッ…バシッ!

フレッチア「あっ!」…アンナの投げたダーツが突き刺さっていたはずのフレッチアのダーツをはじき落とし、的の中心に突き立っている…

アンナ「…ふふん♪」

提督「さすがアンナね……おめでとう」

フレッチア「こんないい勝負できるとは思ってなかったわ。それでは賞品をどうぞ…はい♪」…屋台のケーキ引き換え券を渡す

アンナ「どうもね。さぁフランカ、次に行きましょう?」

提督「はいはい…もう、アンナったら本当にせっかちなんだから♪」

提督「どう? ケーキは美味しい?」

アンナ「そうね、ここの「艦娘」たちが作ったって言ってたけど…だとしたら大したものね。美味しいわよ」…引き換え券でもらった、マスカルポーネチーズとレモンのムースをつつきながら感心している

提督「そう、よかった♪」

アンナ「ええ…ところでフランカ」

提督「なぁに?」

アンナ「目をつぶって口を大きく開けなさい」

提督「…こう?」

アンナ「それでいいわ……ほら」使い捨てフォークでケーキを切って提督の口に押し込むと、ムースが口の端についた

提督「んっ…んむんむ……」

アンナ「どう? …私一人で食べるのも悪いから、味見させてあげる」

提督「ごくん……ありがとうアンナ、美味しかったわ」

アンナ「そう、よかったわ。 …ちょっと待って」

提督「んー?」

アンナ「口にムースがついてる」

提督「どのあたり?」

アンナ「ああ、そっちじゃない……いいからじっとしてなさい、私が取ってあげるわよ」…甘い香水と、吐息に混じるレモンムースの爽やかな匂い……ぱっちりと長いまつげと濃い色の瞳、綺麗な紅色のルージュを引いた唇がじりじりと近寄ってくる…

提督「ん///」思わず目を閉じて、唇が触れるのを待つ提督…

アンナ「……はい、取れたわよ」

提督「…?」薄目を開けてみると、アンナはハンカチを取り出して指を拭っている…

アンナ「なに、どうしたのよ?」

提督「あ…いえ、その……///」(まさか唇でクリームを取るものと思っていた…なんて言えないわね……)

アンナ「ふぅ……んちゅっ♪」

提督「んぅっ!?」

アンナ「…こういう風にされると思ったんでしょ?」

提督「え、ええ…///」

アンナ「まったく、考えていることが分かりやすいんだから…さ、次行くわよ♪」

提督「…そ、そうね」





提督「少し歩き疲れたでしょう…休憩する?」

アンナ「そうね、どこかで一休みさせてもらいたいわ……意外と広いもの、ここ」

提督「ええ……それじゃあついてきて♪」

…管理棟・三階…

提督「どう、アンナ?」

アンナ「…いい眺めじゃない」

…正門に近い側に建っている管理棟の東の窓からは、鎮守府の様子が一望できる…手前に波止場と黄色いレンガ造りの船渠が見え、その奥には貴族のお屋敷のような鎮守府の本棟と広い庭、ゆるい三日月型に伸びる砂浜……そしてずっと奥に続いている白っぽい地面と松林が、てっぺんにフェイズドアレイ・レーダーのサイトを設けている小さな岬で区切られている…

提督「ね?」

アンナ「ええ…風も気持ちいいし、休憩にはうってつけの場所ね」

ニコ(ナヴィガトリ級駆逐艦「ニコロソ・ダ・レッコ」)「本当に気持ちがいいよね……ねぇ提督」

提督「なぁに?」

ニコ「…良かったら少し聞いていってよ?」椅子に腰かけているニコはマンドリンを抱えている…この鎮守府は比較的落ち着いた管区にあるので普段はのんびりしていて、たいていの艦娘たちは退屈しのぎに楽器の一つふたつを練習しているか、さもなければそこそこ歌が歌える…

提督「ええ、それじゃあお願いするわ」

アンナ「じゃあフランカはそこに座ったら?」

提督「ええ、そうさせてもらうわ…あら、特等席ね。ニコの顔が良く見えるわ♪」

ニコ「て、提督ってばまたそういうことを…///」

アンナ「まったく、フランカときたら息をするようにそういうことを言って……子供の頃のおとなしかったフランカはどこに行っちゃったの?」

提督「ふふっ…私だって成長したのよ♪」

アンナ「やれやれ……ま、いいわ。一つ聞かせてちょうだい?」

ニコ「そうだね…じゃあ一つやってみようか」

ニコ「♪」…軽くマンドリンを爪弾くと、滑らかに「サンタ・ルチア」を弾きはじめた

アンナ「あら上手♪」

提督「…しーっ」


…提督とアンナがマンドリンの音に耳を傾けていると、暇な艦娘たちが音色を聞きつけたのかやってきた……それぞれ手には楽器を持っていて、いつの間にか小さな演奏会になっている…


ミトラリエーレ(ソルダティ級駆逐艦「機関銃手」)「ふふ、上手いうまい…♪」イタリア音楽には欠かせない、素朴な木のカスタネットを叩いてリズムを作る…

レオーネ(レオーネ級駆逐艦「雄ライオン」)「♪」レオーネは鎮守府に寄付されたオカリナを吹きながら身体を揺すっている…

ゼフィーロ(トゥルビーネ級駆逐艦「春の西風・ゼファー」)「♪~サンタ・ルーチーアーぁぁ…サンタ・ルチぃーアぁぁ…♪」独特の響きを持ったチターを弾きながら口ずさむ…


提督「ふふ…っ♪」

アンナ「フランカ、あなたの気持ちが少し分かったわよ…こんな無邪気で可愛い娘たちがいたんじゃ、そう簡単に辞めるわけにはいかないわね?」

提督「…そういうことよ♪」

アンナ「……でも私はあきらめないから。とっととあなたのお母さんにウェディングドレスのデザインと採寸をしてもらうことね」

提督「…もう///」

アンナ「それじゃあそろそろ行かないと……楽しかったわよ♪」

提督「じゃあ門まで送るわ」

アンナ「ええ、ありがと」

…しばらくして・通信室…

提督「当直お疲れさま、マルコーニ、ビアンキ。カフェラテを持って来たから交代でどうぞ? …コーヒーは少し濃い目の砂糖二杯、ミルクは多めで少しぬるくしてあるわ」

…自分の分と合わせて三つカップを持っている提督……目が疲れないようにと照明の明るさを少し落してある通信室で、無線機の前に詰めているのは「マルコーニ」級大型潜の「グリエルモ・マルコーニ」と「ミケーレ・ビアンキ」…二人は「当直」と言うことでヘッドフォンをかけて座っているが、マルコーニは世界初の無線電信の発明者なのでまさにぴったりの役どころ…

ビアンキ「お先にどうぞ、グリエルモ」

マルコーニ「グラツィエ……コンソールデッキにこぼすといけないので、こっちに座らせてもらいますね」

提督「ええ。それで、変わった様子はない?」

マルコーニ「はい、今のところは」

提督「そう、ならよかったわ…うちの水偵からも?」

マルコーニ「はい、なにもありません」

提督「そう、ならそろそろ交代だから……」そう言って提督が温かいコーヒーを飲もうとした瞬間、無線機がざわめきだした…

マルコーニ「…何とも間が悪いですね!」マグカップを置くと慌てて席についてヘッドフォンをあてた

提督「…深海棲艦の艦隊とかじゃないといいのだけれど……」


…数分前・鎮守府沖数十浬…

マエストラーレ「ふー…いい天気で気持ちいいわねぇ」

シロッコ「本当にね……出撃なんておっくうだと思っていたけれど、出てみると案外いいものね」

リベッチオ「そうだね、風が爽やかで気持ちいい…♪」

グレカーレ「もう、みんなたるんでない?」

リベッチオ「だってぇ…」

マエストラーレ「……確かにグレカーレの言う通りね。みんな気を引き締めて見張るように!」

リベッチオ「そんなこと言ったって、深海棲艦がこんなところまで出てくるわけないと思うけどね?」

シロッコ「それはたし……ん?」何かと勘のいいシロッコが、不意に水平線と雲の間に目をこらした…

マエストラーレ「…どうしたの?」

シロッコ「敵機視認! …もう、基地祭の日なのに!」

マエストラーレ「そんなことを言ったって仕方ないでしょうが…対空陣形!」メインマストに軍艦旗を掲げつつ、鎮守府に打電するマエストラーレ…

………



マルコーニ「…敵機視認。機種、ウォーラス……ただちに対空戦に入る」

提督「ウォーラスに見つかったら、お次はボーファイターかアンソンか……とにかく哨戒中の水偵を向かわせて、その間にマッキを発進させましょう」

マルコーニ「了解」リズムよく「トトン・ツー…」とモールス電信を叩きはじめるマルコーニと、電話にかじりついてグロッタリーエ空軍基地に駐機している「鎮守府所属」の戦闘機隊へ発進要請をかけるビアンキ……

提督「…」戦闘機隊が発進してマエストラーレたちの所にたどり着くまでの時間を計算している…



マエストラーレ「無電を発信されたら敵機がわらわら来るに違いないわ…対空戦闘! 急いで落として!」120ミリ主砲と40ミリ機銃、それに戦時に増設された20ミリ・ブレダ機銃も吼えたてる…

グレカーレ「主砲、てっ!」

シロッコ「…落ちろ、蚊トンボ!」

リベッチオ「撃てぇ!……あ、命中…命中っ!」航続距離はあっても速度や敏捷さには欠けるウォーラス水偵の周囲に次々と対空砲弾が炸裂していたが、ついに一発がウォーラスを捉え、二つに折れた残骸がゆっくりと落ちていった…

シロッコ「無電の発信は…なかったみたい」

マエストラーレ「……ふぅ。なら鎮守府に連絡して一件落着ね」

シロッコ「良かった…まだ基地祭の屋台巡りも終わってないし、ね♪」


………

提督「ふぅぅ…敵の増援が来なくてよかったわ……」

マルコーニ「ですね」

提督「それじゃあC202の小隊はグロッタリーエに戻りつつ哨戒を…Ro43水偵はマエストラーレたちの外側五十キロを目安に哨戒ラインを作って、彼女たちが帰投するのに合わせて戻しましょう」

マルコーニ「了解、そのように打電します」トン・トト・トン・ツー…

提督「それじゃあ私はまた見回りに行ってくるけれど、何かあったら呼んでね?」

マルコーニ「はい」

提督「ふー…」軍帽を脱いで額を拭うと、紅くなっている帽子の跡と、ぱらりと目にかかってくる前髪を気にしつつ通信室を出た…

………

…鎮守府・庭…

ライモン「そうですか…よかったです……」同じ1964年に退役した「グレカーレ」と仲が良く、そもそも仲間思いの優しい性格だけにほっとしたようなライモン…

提督「ええ…これで私も心おきなく可愛い女の子を物色出来るわ」

ライモン「提督」

提督「冗談よ、だって一番可愛い女の子はここにいるものね♪」胸元に抱え込むようにしてライモンをぎゅっと抱きしめると、さらさらの髪を撫でる提督…

ライモン「んむぅ、むぐ……ぷはぁ!」

提督「あら、ごめんなさい…♪」

ライモン「もう…///」

リットリオ「…相変わらずお熱いですねぇ」無邪気な笑顔を浮かべて「とととっ…♪」と軽やかなステップで駆け寄ってくるリットリオ……着ている白いブラウスからのぞく胸元は赤みを帯びていて、髪が少し乱れている……

提督「ええ、おかげ様で♪ …でも、リットリオだって他人のことは言えないでしょう?」

リットリオ「ふふっ、そうですね♪」

提督「ところで、ヴェネトとローマは…?」

リットリオ「はい、「さっきまでは」裏のあずまやで一緒でした♪」

提督「あー…」

ライモン「な、何も今日しなくたって…///」

リットリオ「……だって、したくなっちゃって♪」

提督「まぁほどほどにね…この後は?」

リットリオ「そうですね、特に予定はないですよ?」

提督「そう……だったらヴェネトとローマの様子も見てきてあげてね?」

リットリオ「了解です、提督っ……でもその前に、ちょっと甘いものを補給してきます♪」

ライモン「何というか…自由奔放ですね」

提督「そこが魅力と言うべきかしらね。それじゃあ私たちは見回りを続けましょうか」

ライモン「はい」

提督「…それとも、デートって言いかえた方がいいかしら?」

ライモン「も、もうっ///」

提督「ふふふっ♪」つんっ、とライモンのほっぺたをつついて目を細める…

…鎮守府・空き部屋…

アヴィエーレ「…そうか、それは良かったね」

提督「ええ、おかげさまで♪」


…イタリア海軍旗が部屋の隅のに飾ってある「仮設展示室」には、鎮守府所属のマッキやフィアット、レジアーネやメリジオナーリの戦闘機や雷撃機、水偵のプラモデルがアクリルケースに収まってずらりと並び、アヴィエーレは椅子に座ってお客さんの質問に備えている……が、たいていは庭で行っている舞台の出し物や屋台に集まっているので、全部の催し物を一通り巡ろうとする真面目な人が時々のぞきに来る以外は、かなり空いている…


アヴィエーレ「まぁ、Ro43水偵ならウォーラスより機動性が上だからね…心配することはないかな」

提督「そうね」

(※メリジオナーリRo43水偵…単発複座・複葉の水上偵察機。武装は前部固定1挺と後部旋回1挺の7.7ミリ機銃、最高速力300キロ弱とごくごく平凡な弾着観測用の「水偵らしい水偵」。実戦で使われることは少なかったものの戦時イタリア艦の標準的な搭載機で、複葉機ならではの旋回性の良さから限定的ながら空戦能力も有する。性格としては帝国海軍の「九五式水偵」に近く、前部機銃を2挺に増やし後席を無くした「水上戦闘機」型のRo44も作られている)

アヴィエーレ「それじゃあじっくり見ていってよ」

提督「ええ、ありがと」つい海軍士官の癖で、手を後ろに組んで歩き始める提督…

ライモン「…」

提督「あ、いけないいけない……はい♪」

ライモン「…はい///」

アヴィエーレ「ふふ…「恋人つなぎ」とはなかなかやるじゃないか、提督♪」オールバックにした髪を櫛で撫でつけながら、ニヤニヤしている…

提督「…アヴィエーレも「恋人つなぎ」したい?」

アヴィエーレ「はは、提督とライモンドの間を邪魔するほど無粋じゃないつもりさ。それにそろそろ水偵が戻ってくる頃だろうし、ちょっと風の具合を確かめて来るから……終わったら呼んでくれないかな?」

提督「ええ」

アヴィエーレ「それじゃ…♪」

ライモン「……行っちゃいましたね、アヴィエーレ」

提督「そうね」

ライモン「別にそんなに気を使わなくたっていいのに…そうですよね、提督?」

提督「いいえ、私は嬉しいわ……だってライモンと二人きりになれたもの♪」

ライモン「て、提督はまたそうやって///」

提督「嘘じゃないわ……ライモン」

ライモン「て、提督…///」

提督「……いい?」

ライモン「///」そっと目を閉じて提督に顔を向けるライモン…

提督「…ライモン……可愛い…♪」ライモンの腰に手を回してぐっと身体を引き寄せ、顔を上向かせた……と、首から提げていた携帯電話が「ピリリリッ…!」と鳴りはじめた…

ライモン「…っ!?」

提督「あぁもう……はい、もしもし?」

ライモン「…っ///」(わ、わたし…わたしったら、この部屋にお客さんが入ってくるかもしれないのにっ///)

提督「ふぅぅ…ルクレツィアからだったわ。またエレオノーラが手に負えなくなっているから助けて欲しいそうよ」

ライモン「そ、そうですか」

提督「ええ……でも感謝しないとね」

ライモン「…と、言いますと?」

提督「だって…おあずけにされた分だけ、次のキスが待ち遠しくなるものね♪」

ライモン「……いいえ、提督」

提督「?」

ライモン「その……いつだって、提督とのキスは待ち遠しいです…///」

提督「…まぁ♪」

ライモン「……さぁ、早く行きましょう///」

提督「ふふ、そうね♪」

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>>458 ありがとうございます。なかなか進みませんが頑張ります…

…食堂…

カサルディ提督「あぁ、やっと来た。フランカ、早くエレオノーラのことをどうにかしてよ…!?」

提督「少し落ち着いて、ルクレツィア……一体どうしたの?」

カサルディ提督「…あれよ」

…指差した先にはシモネッタ提督が椅子に腰かけ、年の割には幼い見た目のせいで耳年増に見える駆逐艦の「カルロ・ミラベロ」「アウグスト・リボティ」と過剰なふれ合いに興じている姿が見える……そしてシモネッタ提督をからかっているミラベロとリボティは白いフリルブラウスと、コルセットを兼ねたような黒のフレアースカートとつま先の丸いエナメルの靴…と、いかにも「お嬢さま」スタイルの格好をしている…

シモネッタ提督「はぁぁぁっ、まさに「私に天使が舞い降りた!」わ…♪」

提督「あー…」

ライモン「…」

ミラベロ「ふふ、シモネッタ提督……ううん「エレオノーラお姉ちゃん」…♪」ミラベロは髪型もいかにもお嬢さんらしいツーサイドアップ(両側頭からのツインテール)で、髪の根元を可愛らしいデザインの黒リボンで留めている…

シモネッタ提督「んふっ…どうしたの、ミラベロ?」

ミラベロ「くすくすっ……呼んでみただけ♪」小首を傾げてぱちぱちとまばたきすると、ふわりとなびいた髪の束がシモネッタ提督の鼻先をくすぐった…

シモネッタ提督「ふわぁぁぁぁ…可愛い、しかもいい匂い…ぃ♪」

ミラベロ「ふふ、ありがと♪ …でも、エレオノーラお姉ちゃんがもっと褒めてくれたら……私もその分頑張ってあげちゃうけれど…ね?」

シモネッタ提督「まぁまぁ、可愛いミラベロは何を頑張ってくれるのかしらぁ♪ お姉ちゃんに教えてぇ?」

ミラベロ「ふふ、なにかしら?」

シモネッタ提督「えーとねぇ…むふふっ、んふっ♪」

ミラベロ「残念、時間切れ……♪」

シモネッタ提督「えー?」

ミラベロ「正解は……んしょ♪」ぽすっ…と膝の上に座り、顔を上向かせてシモネッタ提督を眺める…

シモネッタ提督「あっ、あっ、あっ……んふゅっ、むふっ♪」

ミラベロ「ふふっ…さ、なでなでして?」

シモネッタ提督「ええ、お姉ちゃんがいっぱいなでなでしてあげるわねぇ…むふふっ♪」

提督「…」

ライモン「…シモネッタ提督、ここに来てから一番の笑顔ですね……」

提督「そうね…」

シモネッタ提督「んふ…ミラベロのすべすべふとももをなでなでしたり、一緒にお風呂に入ったり……ほのかなふくらみを触ったりしたいわぁ♪」さわ…っ♪

ミラベロ「あんっ、お姉ちゃんってばぁ……えっち♪」そう言いつつも小さな手をシモネッタ提督の手に重ね、わざとふとももを撫でさせる…

シモネッタ提督「くふふっ…♪」

リボティ「……ねぇエレオノーラお姉ちゃん、私も相手してくれないとつまらないな」こちらはカチューシャを付けたセミロングの髪を肩に垂らしている…

シモネッタ提督「あぁん、ごめんなさいねぇ……じゃあリボティには、照れ隠しにお姉ちゃんを叱ってくれるかしら♪」

ジュセッペ・フィンチ(大型潜カルヴィ級)「おぉ…それはジァポーネで言うところの「ツンデレ」というやつだな……私も見るのは初めてだ!」遠巻きにして面白半分に観察していたが、「ガタッ…!」と椅子から身を乗り出した…

リボティ「それじゃあ……いい?」

シモネッタ提督「ええ、お願いするわね♪」

リボティ「こほん……い、いつもスパゲッティを食べてるからって、別にペンネが嫌いなわけじゃないんだからね…っ///」

シモネッタ提督「ふわぁぁぁ…可愛いっ、可愛いわぁぁぁ…もう今夜にでも……いえ、むしろ今すぐ頂きたいわねぇ…♪」

提督「ふー……ちょっとエレオノーラ、うちの娘に変なことを吹きこんだりしないでくれる?」(それにリボティのセリフ…それっぽくはあったけれど、ツンデレとはちょっと違うような……)

シモネッタ提督「あ、フランカ……もう、本当にフランカってば人が悪いんだから…♪」

提督「…どういうこと?」

シモネッタ提督「んふっ、とぼけちゃって……こーんな可愛い娘をいっぱい抱えて、大人な知識まで吹きこんでいるなんて…イケナイ提督さんだこと♪」

提督「あー、いえ…それは別に私が教えたわけでも何でも……」

シモネッタ提督「んふふっ、隠さなくたっていいのよ……さぁミラベロ、リボティ、お姉ちゃんが一万リラあげるから、好きな物を買ってね♪」

提督「…」

カサルディ提督「フランカ、ごめん…エレオノーラが壊れてる時は手におえないって忘れてた……」

提督「いいえ、構わないけれど……問題が起きる前にお茶にでもして、二人をエレオノーラから引き離しましょう?」

カサルディ提督「そうね。どのみちここに来ている提督はみんな集まってるし…」

提督「そうね、言われてみれば…それじゃあ早くお菓子を用意しないと♪」

百合姫提督「ふふ、今回はどんなお菓子かしら……こっちに来てから美味しいものが多くって、食事のたびに目移りしちゃうの…♪」

エクレール提督「まぁ…でしたらぜひフランスにおいで下さいな。量ばかりのイタリア料理と違って、洗練された美食が味わえますわ」

提督「姫、マリーの言うことを聞いちゃダメよ…フランス料理なんて田舎は「ブイヤベース」とか「ラタトゥイユ」みたいなごった煮ばかりだし、かといってパリのビストロなんて入ったら目が回るような勘定書きが届くわよ?」

エクレール提督「また貴女はそうやって…!」

グレイ提督「ふふ、仲がよろしいようで結構ですわね…百合野提督、もし機会があったらイギリスの「ミートミンスパイ」か「ヨークシャープディング」……さもなければ朝食だけでもご賞味下さいね?」

ヴァイス提督「…それなら、ドイツを訪問されるようなことがあったらぜひ本場のソーセージを召し上がってください……!」

百合姫提督「はい、機会があったらみんな味わってみたいです……って、あら?」震えだした携帯電話をちらりと見て番号を確認すると、提督たちに謝って電話を受けた…

提督「鎮守府から?」

百合姫提督「ええ……はい、もしもし…」席を外して廊下に出て行く百合姫提督…



百合姫提督「…仁淀、どうかしたの?」

仁淀「はい、提督…実は前回提出の書類で一枚だけ差し戻しが……訂正はすぐ出来たのですが、提督のハンコを代わりに押してしまっても…?」

百合姫提督「ええ、仁淀が大丈夫だっていうなら大丈夫…ハンコは机の上にあるから、代わりに押していいわ」

仁淀「了解、それでは…」

百合姫提督「あぁ、待って仁淀」

仁淀「はい、何でしょうか?」

百合姫提督「こっちの時間から考えると横須賀は1900時くらいよね…?」

仁淀「ええ、まぁだいたいそのくらいです」

百合姫提督「みんなご飯はちゃんと食べている? もっとも、厨房は間宮だから心配ないとは思うけれど……」

仁淀「ええ、大丈夫ですよ…ちょうどいま済ませて、それでお電話したところです」

百合姫提督「それで、今日は何を食べたの?」

仁淀「えーとですね…主食は「昆布わかめ」の混ぜご飯で、おかずは「べにしゃけ」と冷蔵庫に残っていた「タチ」(太刀魚)の塩焼き……具だくさんのけんちん汁に納豆…あ、あと食後に「森永みるく」と「もちオーレ」をいただきました」

百合姫提督「そう、ならよかったわ…♪」

仁淀「おかげ様で大満足です…実は「メロンメロン」のチョコチップメロンパンもあったのですが、さすがに満腹で……」

百合姫提督「まぁ、ふふ…あのお店のメロンパンは私も好きだから、帰ったらまた買いに行きましょう♪ …ちなみに明日の献立は決まっているの?」

仁淀「あ、はい…明日はハンバーグステーキを喫食する予定なのですが、間宮も伊良湖も意気込んでいて……もうデミグラスソースの仕込みに取り掛かっています」

百合姫提督「なるほどね……じゃあ明日は「デミライフ!」ってところね?」

仁淀「はい…正直ちょっと楽しみです♪」

百合姫提督「分かったわ……それじゃあまた寝る前にかけるから…皆にもよろしく伝えておいてね?」

仁淀「はい。では失礼します」

百合姫提督「ええ」



グラツィエ…引き続き投下していきます

提督「姫、横須賀は大丈夫だった?」

百合姫提督「ええ、おかげさまで」

提督「それは良かったわね…ところで、よかったらみんなでテラスに出ない?」意味ありげな含み笑いを浮かべている…

シモネッタ提督「…何かあるのね?」

提督「ええ…実はグロッタリーエ所属の空軍機が訓練を兼ねて、ちょっとしたアクロバットをしてくれることになっているの」

カサルディ提督「へぇ、フランカってば空軍に顔が利くんだ?」

提督「ううん、これは向こうの好意みたいなものよ……何しろ空軍は目立ちたがりだもの♪」

カサルディ提督「ぷっ…確かに♪」

シモネッタ提督「それで、どこならよく見られるかしら」

提督「そうねぇ…飛行ルートは沖合だから、二階のベランダかそこのテラスね」

カサルディ提督「じゃあそこでいいんじゃない?」

提督「そう? ならそこにしましょう…さ、姫は特等席にどうぞ♪」

百合姫提督「あ、そんな…私が一番いい席に座るなんておこがましいと思うの……むしろグレイ提督に座ってもらった方が…///」

グレイ提督「構いませんよ…わたくしは立っている方が好きですから」

ヴァイス提督「私の方が階級が下ですから、どうぞ先に座って下さい。そうでないと私も席を決められませんので」

百合姫提督「えーと…ならエクレール提督……」

エクレール提督「わたくしはこの席で構いませんわ…どうぞ遠慮なさらずにお座りなさいな?」

提督「別にマリーの椅子じゃないのだけれど…でもまぁ、そう言うことね」

百合姫提督「じ、じゃあ失礼して……」

提督「素直でよろしい…♪」

カサルディ提督「……あ、来たんじゃない?」

…空に溶け込むような灰色の迷彩を施した「パナヴィア・トーネード」が二機編隊でやって来て、湾に列を作って停泊している艦隊の上でロールを打ち、それから垂直上昇で高度を取ると、今度は機体を背面に入れてスプリットSをかけた…

シモネッタ提督「へぇ、空軍もなかなかどうしてやるじゃない…」

提督「そうね…あ、もう行っちゃった……」トーネードは翼を軽く振ると、独り占めにしたお客さんの歓声を後に残し、さっさと飛んで行ってしまった…

カサルディ提督「きっと燃料がないんでしょ?」

提督「…かもしれないわね」

…ジェットの響きが遠ざかると、またざわめきを取り戻し始めた会場……とはいえナポリやジェノヴァ、ヴェネツィア…あるいは市街地に近い「タラント第一」と違って、田舎にあるのどかな鎮守府なのでお客さんが詰めかけることもなく、海軍憲兵隊が上手くさばいてくれているのでたいした問題もない……そこで提督たちは会場を眺めながら、安心してお茶を楽しんでいる……

?「…気を付け!」

提督「!」ビクンッ…!

シモネッタ提督「!!」

カサルディ提督「っ!?」…不意に大声で号令をかけられ、反射的に直立不動の姿勢を取った提督たち…

?「よろしい、休め…!」

提督「もう、一体誰……教官!?」声の方を向くと、軍のデジタル迷彩服に身を包んだ短髪の女性が立っていた…ブーツはよく手入れされているが迷彩服のボタンは二つ目まで外していて、両手の邪魔にならないよう、ベレー帽は肩章を縫いつけるボタン留めの「輪っか」の所に突っこんでいる…

短髪の女性「久しぶりだな、『カンピオーニ候補生』……短い間にずいぶんと昇進したな?」敬礼を交わすと左右の頬に接吻をし、それから提督の手を力強く握った…

提督「ええ、おかげさまで…///」

女性「いや、お前の実力だよ……それはいいが、また肉が付いているな。私にがみがみ言われないからって運動してないだろう…って、なんだ、お前たちも一緒か?」

カサルディ提督「お久しぶりです、教官」

シモネッタ提督「お会いできて嬉しいです♪」

女性「なんだ、あの時の問題児どもが一堂に揃ってるじゃないか……それにどいつもこいつも金モールと勲章をベタベタつけて…昇進おめでとう」そう言うとニヤリと笑ってみせた…

…食堂…

提督「紹介するわね…私たちの指導教官だったエウリディーチェ・メッセ曹長」

ライモン「初めまして」

メッセ曹長「ああ、よろしく…きっとカンピオーニの事だから、うんと君らを甘やかしていることだろうな」口調は少しぞんざいだが、どことなく親切な感じがするメッセ…

カヴール「ええ、まぁ…」

メッセ曹長「はははっ、おおかたそんな事だろうと思ってたよ♪」

ディアナ「…どうぞ、カフェラテです」

メッセ曹長「お、悪いな…君は?」

ディアナ「高速スループ「ディアナ」でございます」

メッセ曹長「それじゃあごちそうになろう……うーん、こいつはいい」

ディアナ「お褒めに預かり恐縮でございます…♪」

提督「……それにしても、どうして教官が?」

メッセ曹長「どうしても何も…タラントに用事があったから、ついでに教え子の様子を見に来ただけだが……さては私が見ていないからって、たるんだ生活をしているんだろう」いかにも怒ったふりをして腕組みをする…

提督「いえ、そんなことはまったくありません……ちゃんと規則正しい生活を送っています」

メッセ曹長「ほー、そうか…じゃあ昨日はどんなトレーニングをこなした?」

提督「えーと……腹筋を…」

メッセ曹長「何回だ?」

提督「……回です」

メッセ曹長「なに? もう少しはっきり言わないか」

提督「十回です…///」

メッセ曹長「ふー…十回か……ということは他のメニューが重かったんだな?」

提督「えーと…」

メッセ曹長「腕立てか?懸垂か?…それとも敷地内でランニングか?」

提督「いえ……その…」

メッセ曹長「ふむぅ…どうやらみっちり絞られたいらしいな」

提督「…っ!」

メッセ曹長「まぁいい、今日は「昇進おめでとう」を言いにきたんだ。あまりガミガミ言わないでやる……感謝しろよ?」

シモネッタ提督「ふふっ…♪」

メッセ曹長「何がおかしいんだ、シモネッタ?」

シモネッタ提督「…いえ、何でもありません」

メッセ曹長「そうか…カンピオーニの事を笑えるなら、さぞかしトレーニングをしているんだろうな?」

シモネッタ提督「…」

メッセ曹長「どうなんだ?」

シモネッタ提督「いえ、まさか訪問先の運動施設を借りるのもどうかと思いまして……」

メッセ曹長「別に腕立てや腹筋なら道具もいらないだろう……ちゃんとやってるか?」

シモネッタ提督「…い、いいえ」

メッセ曹長「全くカンピオーニといいシモネッタといい……カサルディ、お前は大丈夫だろうな?」

カサルディ提督「はい…客室で腕立てと腹筋を四十づつ」

メッセ曹長「よろしい……この二人の身体がボローニャソーセージみたいになったら、その時はうんと笑ってやれ」

カサルディ提督「はっ…!」


投下前に訂正を一つ……海軍なので「曹長」ではなく「兵曹長」でしたね。うっかりしておりました…

…では、気を取り直して提督たちが士官候補生だった時のエピソードを投下していきます……

メッセ兵曹長「…それにしても、揃いもそろって「士官学校の女たらし」が三人とも揃うとはな……世も末だな」

カサルディ提督「言いますね、教官」

メッセ兵曹長「おい、私はもうお前たちの教官じゃないぞ…もっとも、また士官学校に入るって言うなら鍛えなおしてやるが?」

カサルディ提督「…遠慮しておきます」

メッセ兵曹長「そうだろうな」

ライモン「…あの、提督…少し気になっていることが……」

提督「なぁに?」

ライモン「いえ…いくら卒業したとはいえ、提督方は元教官ともずいぶん親しげでおられますから……」

提督「あー、その事?」

シモネッタ提督「ふふっ…話しても構わないわよ、フランカ?」

カサルディ提督「別にそこいら中に触れ回るわけじゃなし…私も構わないけど」

提督「…教官?」

メッセ兵曹長「もうお前たちは卒業してるんだ、私はどうのこうの言う立場じゃないな」

提督「なら…ちょっとした昔話でもしましょうか♪」


…士官候補生時代・リヴォルノ…

メッセ教官「…訓練生の諸君。私は体育教官と君たちの担当教官を兼ねる、エウリディーチェ・メッセ一等兵曹長だ。 諸君はここに入るまでは高校生だったり大学生だったり、場合によっては大学院にいたかも知れない……が、今日からはたるんだ女子学生気分ではなく、士官学校の規則にのっとった規律正しい生活をしてもらう!」


…入学式を終えたばかりの礼服姿でいる候補生たちの前に立って、何一つ見逃さない目をしているメッセ兵曹長……白い礼服には四列も五列も勲章の略綬が付いていて、茶色がかった髪の毛はバッサリと短く切ってある…


候補生一同「「はい」」

メッセ教官「声が小さいぞ、もっと大きな声で!」

一同「「はいっ!」」

メッセ教官「そうだ。ところで、軍隊モノの映画や何かでこういう場面が良く出てくるだろう……何故だかわかるか、アマルフィ?」

士官候補生「わ、分かりません…」

メッセ教官「分からないことは恥ずべき事じゃないんだ、もっとはっきりと答えろ。…ではカンピオーニ、お前はどうだ?」

カンピオーニ候補生(提督)「えぇと…海の上でも聞こえるようにです」

メッセ教官「正解だ、カンピオーニ……だから海軍士官は声が大きいのだ。諸君の可愛らしい声では嵐の音にかき消されて命令が届かないぞ。もっとオペラみたいに腹から声を出せ…分かったな?」

一同「「はい!」」

メッセ教官「結構。部屋割りはさっき言った通りだ…明日からは講義が始まるから、きっちり準備をしておけよ。以上!」

…候補生寝室…

短髪の候補生「えーと…あ、私が上か……」礼服をクローゼットのハンガーにかけると、割り当ての書かれた紙とベッドの番号を見比べた…

提督「ええ、そうみたいね」

…入学前に肩甲骨辺りまで伸びていたしなやかなロングヘアーを短くして、ついでに切った髪を病気の人のカツラのために寄付(ヘア・ドネーション)してきた提督だったが、それよりもさらに短い髪をしている候補生……わりと小柄でほどよく日に焼け、気持ちのいい爽やかな笑顔を浮かべている…

候補生「それじゃありがたく……あ、名前を聞いてなかったね」

提督「カンピオーニよ…フランチェスカ・カンピオーニ」左右の頬に軽く口づけをする提督…

候補生(カサルディ提督)「初めまして、フランチェスカ……私はルクレツィア・カサルディ。よろしく」

提督「ええ、こちらこそ」

カサルディ提督「出身は?」

提督「カンパーニア州、ガエタの近くよ…あなたは?」

カサルディ提督「ルクレツィアでいいわ……私は生まれも育ちもリーパリ諸島。もっとも、高校の時はシチリアの学校に入ったけど」

提督「へぇ…リーパリはきれいなところだって聞くし、一度行ってみたいわ」

カサルディ提督「この「深海お化け」の騒ぎが収まったらね……それじゃ改めてよろしく。フランチェスカ」

提督「よろしくね、ルクレツィア♪」

…翌日・運動場…

メッセ教官「…よーし、準備運動は終わったな。それでは最初に諸君がどれだけ運動が出来るのか、ちょっとした体力トレーニングを行う……隣同士で組んで、左側の者から腹筋二十回!」

カサルディ提督「ほら、脚を押さえておいてあげるから…さ、始めて?」青色のトレーニングウェアに身を包んだカサルディ候補生は、色白で柔らかそうな提督に比べて、ガゼルのように無駄のない身体をしている……膝を立てて寝ころんだ提督の、しっとりとした長い脚を抱え込む……

提督「ええ……んっ、ふ!」

カサルディ提督「…いーち」(…うわ、フランチェスカの身体ってば柔らかい……///)

提督「ふぬぬ……っ!」

カサルディ提督「にーい…」

提督「んぐぅ…!」

カサルディ提督「さーん……ほら、頑張って!」

提督「そんなこと…言われて…も……んっ!」

カサルディ提督「よーん…」

メッセ教官「……まだ終わらない組はあるか? …ベルディーニ候補生、カンピオーニ候補生、ヴェルディ候補生、もっと早くするんだ!」

提督「はぁ、はぁ…ふん……っ!」

メッセ教官「…カンピオーニ訓練生、しっかりしろ。もっと速く上体を起こすんだ!」

提督「今……やっていま…す!」

メッセ教官「ふぅ、分かった……訓練生諸君、注目! 今から私が腹筋のコツを教えてやるから、よく覚えておけ!」迷彩服に身を包んでいるメッセ教官がみんなの前で寝転がると、後頭部に手を当てて勢いよく腹筋をやり始めた…

候補生「…うわ、速い……!」

メッセ教官「どうだ…とにかく腹筋の時は一気に上体を起こすことだ。なぜなら、腹筋が一番苦しいのは上体が斜めになった時だからだ……腹筋が苦手な者は、たいてい「上体を起こす勢い」が足りないから途中で起き上がれなくなり、それでなくても苦しいものが余計に苦しくなってしまう…分かったか?」

一同「「はい、教官!」」

メッセ教官「よろしい……さぁカンピオーニ候補生、今私が教えたようにしてやってみろ」

提督「はい、教官……んっ!」

カサルディ提督「…ごーお……うん、いい調子♪」

提督「ふぅ…っ!」

メッセ教官「そうだ、その調子だ! …身体は資本だからな、鍛えておいて損はないぞ!」

提督「ひぃ…ふぅ……!」

カサルディ提督「ほら、あと五回…!」

………

カサルディ提督「そうそう、フランチェスカときたら士官候補生なのに腹筋もまともに出来てなくてね」

提督「仕方ないじゃない…私は子供の時から走ったり跳んだりって苦手だったし」

カサルディ提督「ねぇ、それって……やっぱりそれのせい?」自分の胸元に視線を落としてから、提督のたわわな胸を眺めた…

提督「それもあるし、幼い頃に同じくらいの子供が少なかったから外遊びをあんまりしなくて……あとは単純に、本を読んだりする方が好きだったせいもあるわ」

カサルディ提督「なるほどね」

提督「だから体育教練の時間は苦痛だったわ…途中からどうにかビリにはならないで済むようになったけれどね……」

メッセ兵曹長「ああ、そうだったな。…もっとも、カンピオーニは脚が長いし、運動のコツさえつかめばある程度伸びるとは思っていたが……そう言う面でカサルディ、お前の名前がカンピオーニの一個前で良かったと思うぞ」

カサルディ提督「まったく苦労しましたよ…フランチェスカがビリになるたびに腹筋や腕立てを追加されるんですからね」

メッセ曹長「はは、おかげで鍛えられただろう」

提督「もう、あの時は笑いごとじゃなかったんですから……あら、何か欲しいの?」足もとにすり寄ってきたルチアを撫でた…

ルチア「…ワフッ♪」

メッセ兵曹長「おっ、犬か…ここで飼ってるのか?」

提督「ええ、引き取った保護犬です……「ルチア」って言って、お利口な犬ですよ。よかったらおやつでもあげてみます?」

メッセ兵曹長「はは、そうだな…ほらワン公、こっちに来い」提督から古くなったパンの耳を受け取り、振ってみせた

ルチア「♪」

メッセ兵曹長「おいおい、ずいぶんと人懐っこい犬だな…こんなので番犬になるのか?」

提督「ええ、今はみんなが安心しているって分かるんです」

メッセ兵曹長「なるほど、四つ足とはいえ利口な……おいこら、どこに鼻っ面を突っこんでる」

ルチア「フゥ…ン、フン…フン……」鼻先をメッセ兵曹長の脚の間に突っこみ、フガフガと鼻を鳴らしている…

メッセ兵曹長「何だ…このワン公、女好きなところまでお前に似ているな」

提督「いえ、別にそう言う訳では……初対面の相手だから匂いを嗅いでいるんですよ」

メッセ兵曹長「まぁいい。犬と一緒ならお前もちゃんと走るようになるだろうしな」

提督「ええ…相変わらず走るのは嫌いですが、少なくとも教官の言ったことはまだ覚えています」

メッセ兵曹長「ほう?」

………

…とある日…

候補生たち「「…ぜぇ、ぜぇ…はぁ…ふぅ……」」

…やたら広い運動場を散々走らされ、三々五々にへたばったり、肩で息をしている候補生たち……が、最後の一人(幸いなことに提督ではなかった)に付き添い、悪態をついたり励ましたりしながら走ってきたメッセ教官は、大して息も上がっていない…

メッセ教官「よーし、これで全員走り終えたようだな……さて、候補生の諸君。どうして私が諸君をこんな目に合わせるのか分かるか? 言っておくが、私は別に諸君をいじめてうさばらしをしようとか、古代スパルタの真似をしようと思ってこんなことをしている訳じゃないぞ」

候補生「じゃあ…ふぅ、はぁ……どうしてなんですか…?」

メッセ教官「それは簡単さ……諸君がここを卒業して海軍少尉の階級章を付けたら、これぐらいの事はできなければならないし、また「そうある事を要求される」からだ」

メッセ教官「ほぼ間違いなく、諸君は今まで宿題や家の手伝いのような「やりたくないこと」を回避したり…あるいはやらなかったことを叱られはしても、そうたいした問題にはならなかったという経験があるはずだ。しかし海軍において「できない」とか「やりたくない」ということは認められない……とはいえ私は諸君にできもしないことは言わないし、やらせたりもしないがな」

メッセ教官「しかし任官したらそうはいかん。士官なら腕利きの下士官たちを上手く御することができなければならんし、艦に関わる様々な問題に立ち向かわなきゃならないからな…そうなった時にあたふたしないよう、今のうちにうんと失敗したり苦労したりしておけ。ついでに私が「教訓」を忘れないように腕立ても付けておいてやる」

メッセ教官「……それともう一つ。いくらあれこれ言ってみても、男どもの中に女性士官をからかいのタネにしたり、軽く扱ってくる奴らがいるのは事実だ。特に昨今の「深海棲艦」どもと「艦娘」たちに関わる女性士官が増えたことで、そう言う連中と諸君が出くわす可能性は高くなった……だからと言ってその度に憲兵隊だの法務官だのに泣きついている暇はない。したがって、自分でどうにかできるようになっておかないといけないのだ…どうだ、納得したか?」

候補生たち「「…はい、よく分かりました!」」

メッセ教官「結構…なら明日からはつべこべ言わずに頑張ってもらうぞ」

………



ライモン「ところで…提督とシモネッタ提督はどうしてお知り合いに?」提督たちのおしゃべりを邪魔しないようにと、グレイ提督たちは気を利かせて庭に行っているので、椅子を近寄せて隣に座った…

カサルディ提督「確かに気になるわよね……フランチェスカとエレオノーラの好みときたら、まるで反対だもの」

提督「まぁそうね…」

シモネッタ提督「ふふ、私はフランカみたいに年増を食べる趣味はないの…♪」優雅に紅茶をすすりつつ、隣に座っているマエストラーレのお尻に手を伸ばした……

マエストラーレ(ヴェネツィア)「もうっ…///」ぺちっ!…と手の甲を軽く叩いた

シモネッタ提督「もう、マエストラーレのいじわる…♪」

提督「またそうやって……エレオノーラみたいな趣味を持っていたら、いつか逮捕されるわよ?」

シモネッタ提督「心配しないで…私は普段からお行儀よく過ごしているもの」

カサルディ提督「ま、エレオノーラのお行儀がいいかどうかはさておき…」

………

…士官学校・教室…

教官「さて…諸君はここで海軍史について勉強することになる。過去の戦争で各国の指揮官たちが犯した失策を学ぶことで、同じ過ちを繰り返さないで済むわけだ」教室に座っている士官候補生たちを前に、中年の教官が講義を始めた…

カサルディ提督「はぁ、参ったな…私、歴史とかって苦手……」小声で提督にぼやくカサルディ提督…

提督「そう? 昔の話って面白いと思うけれど?」

カサルディ提督「…フランチェスカは歴史得意だもんね……」

教官「さて、今日は初回だからな。簡単なイタリア近・現代史の振り返りと行こう……さて、イタリア王国海軍の基礎はガリバルディのイタリア統一運動と、両シチリア王国がそれに帰順したことにより出来上がり……」

提督「…」ノートをつけながら、熱心に聞いている提督…

教官「ではこの問題を…シモネッタ」

シモネッタ候補生(シモネッタ提督)「はい」

教官「第二次大戦への旧イタリア王国の参戦はいつだったか?」

シモネッタ提督「1940年6月10日です」

教官「結構。座りたまえ…では旧イタリア王国が英仏に宣戦布告したのはなぜか? …カンピオーニ」

提督「はい。当時のドイツが我が国の仮想敵であったフランスを撃破しつつあったことで、当時の政府が「このままでは戦後得られるかもしれない賠償を手にできない」と考えたからです」

教官「よろしい…平たく言えばイル・ドゥーチェ(ムッソリーニ)の思い立った火事場泥棒ということだな。そのせいでイタリアは大やけどをしたわけだ……ところで、そこの四人は大したものだな?」

提督「…と、言いますと?」

教官「諸君の名前だ。ベルガミーニ、ビアンケッリ、カサルディ…それにカンピオーニ。いずれも大戦中の提督と同じ苗字じゃないか…末は海軍提督に違いない!」

一同「「くすくすっ…♪」」

提督「あー……そうなれるよう努力します」

教官「結構だ…では座ってくれ、提督」

提督「///」

教官「さて、講義を続けようか…」



…数週間後・候補生寝室…

カサルディ提督「いやぁ…フランチェスカもたいしたものだと思ってたけど、上には上がいるんだね?」…カサルディ提督は二段ベッドの上から顔をのぞかせ、からかい半分に話しかけてきた…

提督「…成績の事?」士官学校に入る前にかなり短くしたとはいえ、十五分の入浴時間では乾かせっこない豊かな髪を拭きながら答えた…

カサルディ提督「そう、それよ♪」

…士官学校に入って二か月経ったこの日、最初の試験結果が発表されて張り出され、候補生たちは寄ると触るとその話題で持ちきりだった…

カサルディ提督「そう。だってフランチェスカは『海軍史』と『図上演習』で一位だったでしょ?」

提督「うーん、でも私は計算とか体育が苦手だから……その二つは下から数えた方が早いもの」

カサルディ提督「それにしたって、首席じゃないなんて驚きよ…フランチェスカじゃないなら誰なの? って感じだもの」…からっとした気持ちのいい笑顔を浮かべ、特に意識もせずに人を喜ばせるような事をいう「天然タラシ」のカサルディ提督……そのせいか、すでに何人かの候補生は骨抜きになっている…

提督「えーと、首席は確かシモネッタ候補生っていう…ほら、あのヴェネツィア出身の優しそうな……」

カサルディ提督「あぁ、あの感じのいい人? なるほどねぇ…人当たりはいいし成績も優秀、おまけにフェンシングも強ければバレーボールだって上手いんだ…眉目秀麗、文武両道……まさに『海軍の求める人材』ってところよね」

提督「そうねぇ。私は走るの嫌いだし、フェンシングは弱いし……バレーも得意じゃないから…」

カサルディ提督「…でもあれだけ完璧だと、逆にとんでもない欠点を抱えてたりするんじゃない?」

提督「ふふっ、なにそれ…♪」

カサルディ提督「いや…そんな風に折り目正しく生活していたら、どこかで破綻すると思うんだよね」

提督「うーん……でもおかしな雰囲気は感じないけれど?」

カサルディ提督「そう?」

提督「ええ。むしろ、何と言えばいいのかしら……誰にでも丁寧だけれど、ほどよく距離を開けている感じね」

カサルディ提督「あー、北部人ってそういう所あるわよね」

提督「うーん、むしろあれはヴェネツィア出身だからって言うよりも……」

先輩候補生「…気を付け! これより整理整頓のチェックを行う!」きりりとした先輩候補生が突然ドアを開け、鋭い声を出した…

提督「!」

カサルディ提督「おっと…!」

先輩候補生「今週の室長は誰か?」

カサルディ提督「はっ、カサルディ候補生です!」

先輩候補生「そうか…ではこれから確認を行うぞ?」短髪の候補生はベッドシーツや掛け布団がきちんとなっているか、ロッカーや部屋が散らかっていないかを確認して、クリップボードに書き込んでいく…

先輩候補生「…カサルディ候補生!」

カサルディ提督「は!」

先輩候補生「この取り散らかった服は誰のものか?」

ベルガミーニ候補生「あっ……わ、私のです!」人はいいが肝心な時に失敗したりと、どうにも運の悪いベルガミーニ候補生……

先輩候補生「ふぅ…ベルガミーニ候補生、お前は床に物を散らかしておくよう習ったのか?」

ベルガミーニ候補生「いいえ!」

先輩候補生「なら、どうして床にタオルだの何だのを散らかしておくのだ?」

ベルガミーニ候補生「その…それは、入浴の後だったので……///」

先輩候補生「ベルガミーニ候補生、私は理由を聞いているわけではない…これが実際のフリゲート艦で、非常事態になった時、床に物が散らかっていたらどうなる?」

ベルガミーニ候補生「…」

先輩候補生「私は決して意地悪なおばさんではない……が、取り散らかった室内では迅速な行動が妨げられ、もしかしたら命に関わる事態を巻き起こすかも知れない。このことをよく理解するために、君たちに腕立て二十回を行ってもらう…いいか?」

一同「「はい!」」

先輩候補生「それと、カサルディ候補生は室長として整理整頓を率先しなければならない立場にあったはずだ…腕立て三十回だ」

カサルディ提督「はっ!」…ネイビーブルーの半袖Tシャツとショートパンツ姿で腕立てをする提督たち……先輩候補生はカウントを終えるとクリップボードを小脇に抱え、提督に顔を近づけた……

先輩候補生「……カンピオーニ候補生、お前は数学が苦手だそうだな?」

提督「はい」

先輩候補生「…その……よかったら後で私が教えてやろうか…///」少しだけ恥ずかしそうに、小声でつぶやいた…

提督「…はい♪」

…別の日…

提督「…今日は体育が連続なのね……はぁ…」

カサルディ提督「まぁまぁ、そうへこたれない…前よりずっと出来るようになって来たんだし、この調子で頑張ればもっと身体が動くようになってくるって」

提督「そうは言ってもね…今日は何をやるのかしら?」

カサルディ提督「さぁ…多分フェンシングとレスリングが一時限ずつじゃない?」

提督「あーあ…レスリングなんて全然勝てないし苦手だわ。だいたい海軍なのにどうしてレスリングがいるの?」

カサルディ提督「そんな事私に言ったって…」


…しばらくして・体育館…

メッセ教官「…よーし、では次は相手を変える……シモネッタ候補生、お前が一番フェンシングが上手いようだから、カンピオーニ候補生を見てやれ」

シモネッタ提督「はい、教官」

提督「…迷惑をかけてしまってごめんなさい、シモネッタさん」

シモネッタ提督「エレオノーラでいいわ…私のことは気にしないでいいから、一緒に頑張りましょう?」白い柔らかな手で、提督の手を包むように握手した…

提督「ありがとう…それじゃあ私のこともフランチェスカって呼んで?」

シモネッタ提督「ええ…♪」

…どちらかと言えばガサツな「体育会系」タイプが多い中、シモネッタ候補生は常に優雅に振る舞っていて、短い自由時間ではとてもセットできそうにないほどきちんと整えられている髪をふわりと揺らし、提督に優しく微笑みかけた……顔こそ多少汗ばんでいるが、その様子からはとてもフェンシングの練習を数セットこなしたようには見えない…

メッセ教官「防具付けろ……それでは、始め!」

シモネッタ提督「それじゃあ、フランチェスカは私の胴体を狙って突いてみて?」

提督「ええ…それじゃあ、行くわね?」

シモネッタ提督「どうぞ♪」

提督「はっ…!」

シモネッタ提督「うん、上手よ…ただ、もっと踏み込まないといけないわ」

提督「それって……こうかしら…っ!」

シモネッタ提督「そうそう、上手ね…その勢いでもう一回♪」

提督「やぁっ…!」

シモネッタ提督「あら、いい突きが出たじゃない♪ そう、そういう風にすればいいの」

提督「ええ、でもこれ…ふとももの内側に来るわね……」少し顔をしかめる提督…

シモネッタ提督「ふふ、段々と慣らしていきましょうね…それじゃあ今度は私もカウンターをかけに行くから、遠慮しないで打ってきて?」

提督「分かったわ…はぁっ!」カシッ…!

シモネッタ提督「ふふ……えいっ!」キシン…ッ!

提督「ふっ…!」(…見れば見るほど綺麗ね…しかも甘い香りまで……///)

シモネッタ提督「…考え事なんてしていてはダメよ、フランチェスカ?」スキを突かれてパシッ…とエペを弾かれ、防具越しに胸の谷間へ一突き浴びる提督……

提督「…っ!?」

メッセ教官「……よーし、そこまで! 次は位置を交代してもう一回行う! ベルガミーニ候補生、足もとはしっかりさせるんだ…本物の果し合いだったらやられてしまうぞ?」

ベルガミーニ候補生「は、はいっ…!」

シモネッタ提督「……ふふ、集中してね?」

提督「え、ええ…///」

シモネッタ提督「それじゃあ場所を代わって…準備ができたら打ってきて?」

提督「分かったわ……やぁっ!」

………

…何だか各地で寒波と雪がすごいことになっていますね。ここを見て下さっている皆さまも、もし出かけるなら気を付けて下さいね……小足で歩くようにして、雪を溶かそうとしてお湯を流したりはしないようにしましょう…



シモネッタ提督「ふふふ、そう言えばそうだったわ。フランカったらいかにもふんわりと柔らかそうで、まるで士官学校向きには見えなかったわ♪」

提督「…それをあなたが言う?」

カサルディ提督「確かに……エレオノーラなんて色は白いし香水の香りまでさせちゃってさ。ちっとも士官候補生らしくなかったって」

シモネッタ提督「あら、香水は女性のたしなみじゃない……♪」にっこりと柔和な笑みを浮かべ、優雅な手つきでティーカップを持ち上げた…

メッセ兵曹長「ふぅむ、それじゃあ私は女じゃないって言うんだな? …シモネッタ、候補生の時じゃなくてよかったな」

シモネッタ提督「くすっ…でも兵曹長でしたら、並みの男性よりずっとタフガイじゃありませんか。…きっとそのあたりの男性が十人ばかりかかって来ても、たちまち返り討ちにしてしまうでしょう?」

メッセ兵曹長「それは買いかぶり過ぎだ、シモネッタ……同時にだったらせいぜい五人までだ」

提督「ふふ…♪」

カサルディ提督「あははっ♪」

メッセ兵曹長「ふ……それにしてもカンピオーニ、お前は人がいいようだったから、せいぜい「マスコットとして好かれている」くらいにしか思っていなかったが…ふたを開けてみたらとんでもない問題児だったな。私もいろんな候補生を見てきたが、あの時ばかりはすっかりだまされたよ」

提督「…そうですか?」

メッセ兵曹長「ああ……ちなみに「どうもそうなんじゃないか」と思い始めたのが、ちょうどあのレスリング授業の時だ」

………

…フェンシング授業の後・更衣室…

提督「ふぅー…疲れた…ぁ……」更衣室でフェンシングの防具を外してラックにかけると、くたっ…と身体をゆるませた……

カサルディ提督「お疲れ。でも打ちこみが上手になってたじゃない」

提督「ありがとう…でも、おかげで太ももの内側にかなり来ているわ……」

カサルディ提督「あー、内転筋ね……まぁ、後でマッサージでもしてあげるから。さ、次もあるし早く行かないと」

提督「うぇぇ…もう一時間あるなんて……」

候補生「まぁまぁ…早く行かないとメッセ教官に怒鳴られるよ?」

提督「ええ。それにしても早く終わってくれないかしら……体育じゃなくていいなら、国際法とか弾道計算だっていいわ…」

候補生「あはは、フランチェスカらしいね…ほら、早くしないと♪」

…体育館…

メッセ教官「さて候補生諸君、今度はレスリングだ。いくらライフルやピストルが上手くたって、弾は切れるし故障もする…あるいは銃そのものがどこかに行ってしまうことだってあり得る。そうなった時に役立つのは筋肉だ……もしかしたら艦(ふね)から逃げ出すような時に、障害物をどかす必要に迫られるかもしれないしな!」

メッセ教官「…それじゃあ最初は名簿順で練習をして、それから順番を入れ替えて行くぞ……始め!」

提督「よろしくね、ルクレツィア?」

カサルディ提督「はいはい。まぁ軽くやってあげる……それじゃ、行くよ!」両手を前に突きだし、中腰になってタックルをかけるカサルディ提督…

提督「わっ…!?」

カサルディ提督「ほら、肩をマットにつけられないように抵抗しないと…負けになっちゃうよ?」(…うわ…やっぱり胸とか柔らかい……///)

提督「わ、分かっているけれど……んぅっ、ふぅ…んっ!」…小柄ながら引き締まったカサルディ提督に組み敷かれ、じたばたともがく提督…頬を紅くして、聞きようによってはなまめかしく聞こえる声で喘いでいる……

カサルディ提督「…ふっ、ん!」(…やば……何か変な気分になってきた…///)

提督「…はぁっ、ふぅ…んくぅ///」

カサルディ提督「ほら、どうにか振りほどかないと……///」

提督「ん…っぁ…///」

カサルディ提督「ほぉら、しっかりしないと……っ///」もにゅ…♪

提督「んぁ…はぁっ、あふっ……///」

カサルディ提督「…」本人は必死に抵抗しているらしい提督の甘い声を聞いて、妙な気分になってきたカサルディ提督……上からのしかかってがっちりとホールドすると、柔らかい胸やふとももがぐいぐいと当たってくる…

提督「んっ、んんっ……///」

カサルディ提督「…あのさ、フランチェスカ」

提督「…んぅ、振りほどけない…っ……なに、ルクレツィア…っ?」

カサルディ提督「……あとで頼みがあるんだけど///」

提督「わ、分かったから……んぐぐ…ぅ…!」

メッセ教官「よーし、そろそろ次だ……カサルディ候補生、もうその辺でいいぞ」

カサルディ提督「はい、教官! …ほら、立てる?」

提督「はーっ、はーっ……もう…全然振りほどけない……」

メッセ教官「よーし、一つずつ場所をずらしてもう一回だ…始めっ!」

提督「はぁ、ふぅ……よろしくね?」

候補生(金髪ショート・百合)「こちらこそ♪」やたら優しい手つきで、提督の手を包み込むように握手する…

提督「それじゃあ……」

候補生(金髪)「やっ!」

提督「ぐっ……でも私だって、そうそう負けてばっかりって言うわけにはいかないもの…っ!」

候補生(金髪)「へぇぇ、言うじゃない……でもスキだらけよ!」長身で腰高な提督は下半身へのタックルを防ごうと中腰で前かがみになる…が、無理な姿勢になって身体のバランスが崩れ、組みつかれるとあっさりひっくり返った…

提督「!?」

候補生(金髪)「…さぁ、どうする?」

提督「まだまだ…っ!」

候補生(金髪)「ふぅん、そう…♪」提督をしっかり押さえ込みながら、首筋をぺろりと舐めた…

提督「ひうっ!?」

候補生(金髪)「ほぉら、早く振りほどかないと♪」提督の耳元に顔を寄せ、深呼吸するように髪の匂いを吸い込んだ…

提督「あっ…ん……もうっ///」

候補生(金髪)「…教官に気づかれちゃうから声は出さないでよ?」

提督「ええ……あふっ///」

候補生(金髪)「…もう、言ってるそばから……でもいい声で鳴くじゃない、フランチェスカ…♪」

提督「そんな…んんぅ……こと…はぁ……言われても…声が…んぅ…出ちゃうものは……仕方ないでしょう…んぁっ……///」

候補生(金髪)「……くすくすっ…フランチェスカってば誘い受けが上手なんだから♪ …うんと可愛がってあげる♪」

提督「……ふぅん、そう…」

候補生(金髪)「っ!?」

提督「……ねぇ、誘い受けはどっちだったかしら♪」長身のむっちりした身体を活かしてのしかかると、耳元にささやき返した…

候補生(金髪)「うっ、あんっ…♪」

提督「…私だって負けっぱなしは嫌だもの……ふふ、このままだと私のフォール勝ちね♪」

候補生(金髪)「…あふぅ、はぅ…ん///」

メッセ教官「お…いいぞ、カンピオーニ候補生。そのまま押さえこめ!」

提督「はい、教官…っ!」

候補生(金髪)「んぐぐぅ…♪」

メッセ教官「そこまで! カンピオーニ候補生、お前は長身なんだからそうやって押さえこめば相手は動けないぞ。その調子だ…それよりお前はどうしたんだ。いつもより力を抜いてなかったか?」

候補生(金髪)「いいえ、そんなことありません!」

メッセ教官「ふざけているとケガするぞ…諸君、遊び感覚でやるなよ」

ずいぶんと投下できずにいてすみませんでした。この一週間近く、この頃はやりのインフルエンザというやつに(ちゃんとワクチン打ったのに…)かかっておりまして…まだトップヘビーの軍艦そこのけにフラフラするので続きは数日後からにしますが……皆さまもよくよく気を付けて下さいね


いやぁ、インフルエンザって、本当にツライものです…食事も喉も通らないので、ヨーグルト、すりリンゴ、ゆで卵……とかそんなのばっかりでした…

お、乙。

>>477 どうぞそちらも気を付けてくださいね

…それではまたちょっとずつ投下していきます……百合百合しているのあんまり書いていませんが、まぁまたそのうちにやりますので…

…運動後・更衣室…

候補生(金髪)「そう言えばさ、エレオノーラって変わってるよね?」

…トレーンニングウェアを脱いで、濃緑色の軍用スポーツブラとショーツ姿で提督に話しかけてきた金髪ショートの候補生……周囲では数人ずつ「助け合いグループ」だったり「優等生トリオ」、「落ちこぼれ班」や「おしゃべりの噂好き」など、気の合う候補生同士で助け合ったり課題を教え合ったりするグループのような物が出来上がっていて、提督は仲のいいカサルディ提督とは別に「百合・ビアン」グループとも時々おしゃべりする……

提督「…そう?」

候補生(金髪)「うん、だってどんな女性(ひと)が好みか、とか…聞いたことないでしょ?」

提督「ええ」

候補生(レズ・黒髪ポニーテール)「言われてみれば……フランチェスカはエレオノーラから恋人の話とか、何か聞いたことある?」

提督「んー…特にないけれど、少なくともどっちかと言われたら「そう」だと思うわ」

候補生(黒髪)「あー、やっぱりそう思う…?」

提督「ええ…エレオノーラって親切だけれど異性にモテようとしてベタベタ媚びている感じはないし、メイクも上手いけれどけばけばしくはないし……」

候補生(黒髪)「うぅん…でもそれとなく誘ってみたんだけど、あんまり食いついてこないのよねぇ……」

候補生(金髪)「誘い方が露骨すぎて呆れられちゃったんじゃない?」

候補生(黒髪)「もう、失礼な事言うわね…フィレンツェ人の私がそんな野暮なわけないでしょ?」

提督「まぁまぁ、二人とも……ひゃぁっ///」ぎゅむっ…♪

カサルディ提督「お疲れ、フランチェスカ。さっきは頑張ってたじゃない…それにしてもすっごいね///」背中に身体をくっつけ、柔らかい乳房の下に手を回し、ぽよぽよと軽く跳ね上げる…

提督「もう、ルクレツィアってば…このところちょっと触り方が過剰じゃない?」

カサルディ提督「あー、うん……いや、その…さっきも言いかけたけど……///」

提督「?」

カサルディ提督「えーと、だからさ……あぁもう! …つまりね、おっぱい触らせて欲しかったの///」

提督「…別に構わないけれど?」

カサルディ提督「いや、ちょっとおかしなことを頼んでるのは分かっ……え!?」

提督「触ってみたいのなら構わないわ……あんまり強く握りしめたりしないなら、どうぞ?」

カサルディ提督「いや、そんなあっさり…いいの?」

提督「ええ」

カサルディ提督「そ、そっか……それじゃあ、後で…///」

提督「ん?別にここでいいじゃない。ここにいる二人は大丈夫だから…ね、そうでしょう?」

候補生(金髪)「ええ…それにしてもルクレツィアは意外だったかな♪」

候補生(黒髪)「ふふ、私は最初からそうだと思っていたわ…ルクレツィアはボーイッシュだし、女の子にモテそうだもの♪」

カサルディ提督「…いや、えーと……何の話よ?」

提督「ふふ、気にしないで…さ、どうぞ♪」ぱちりとウィンクをしてカサルディ提督の手に自分の手を重ねると、ずっしりとした自分の乳房に誘導して、優しく揉ませる提督…

カサルディ提督「うわ、うわうわうわ……なにこれ、柔らか…っ!」

提督「ふふ、気に入った…?」

カサルディ提督「うん……すっごいね、女性の身体ってこんな具合なんだ…///」

候補生(金髪)「ルクレツィアだって女でしょ…♪」

カサルディ提督「いや…だって私ときたら日に焼けてるから色は浅黒いし、おまけに手は骨ばってるし、おっぱいは堅いしでさ…女の人ってこういう感じなんだね……///」

候補生(黒髪)「ふふ。就寝前の自由時間に私たちの部屋に来てくれたら、他にも「色々」教えてあげるけど?」

カサルディ提督「…いや、それはいいかな。フランチェスカのおっぱいだけでいいし……///」

候補生(金髪)「ぷくくっ……さすが『フィレンツェ人は野暮じゃない』ね、見事な口説き方だことで♪」

候補生(黒髪)「もう、余計なお世話よ…!」

…日曜日…

提督「…ふーん、ふーふーん♪ …やっとお出かけ出来るわね、ルクレツィア?」

カサルディ提督「ようやくの週末だもんね……それにしてもそっちはツイてなかったね」

ベルガミーニ候補生「ええ、まさか「道具の手入れの仕方が悪い」って外出許可が取り消されるなんて…運がないわ…」

カサルディ提督「ま、何かお土産でも買ってきてあげるからさ」

提督「お菓子とか甘いものが食べたいでしょう? 買ってきてあげるから…今度は先輩候補生に見つからないように上手く隠してね♪」

ベルガミーニ候補生「二人ともありがと……泣けてきそうよ…」

提督「そこまでありがたがらなくたっていいのに…それじゃあ、行ってくるわ♪」運のないベルガミーニ候補生の頬に軽くキスをすると、足取りも軽く部屋を出た…

………

…リヴォルノ市街…

提督「それじゃあね?」

カサルディ提督「うん、また宿舎で」

提督「ええ。 んー、久しぶりの私服にチャイムに追われない自由なひととき…やっぱり外出っていいものね♪」


…日頃から規律や身だしなみについてやかましく言われている分、自由に過ごせる週末が何より嬉しい候補生たち……街角のカフェや商店は一週間分の購買欲とお金を貯め込んだ候補生たちを相手に商売に励み、通りのあちこちには立ち居振る舞いを見ただけでそれと分かる士官候補生たちがうろうろしている…


提督「それじゃあ最初はお買いものでもして…それからカルラのために何かお菓子でも見つくろってあげるとしましょう……その前に、まずはゆっくりコーヒーでも飲みたいわね…」提督はちょうど目についた小さなオープンカフェへ立ち寄ることにした…

…カフェ…

カフェのオヤジ「いらっしゃい、候補生さん! …何にします?」

提督「えーと…ここのおすすめは?」

オヤジ「ならエスプレッソとティラミスだね。すぐ用意するから待ってな」

提督「グラツィエ……って、あら♪」

シモネッタ提督「…シニョーレ、エスプレッソをもう一杯」ペールグレイのスラックスに白い上品なカットソーを組み合わせ、革カバーの文庫本片手に優雅な仕草でカップのコーヒーをすすっているシモネッタ提督…ゆるくロールさせた髪もおしとやかで、休日を精一杯楽しもうとあくせくしている候補生たちとは違って品がいい…

オヤジ「はいはい、少し待っててね…ジュリア、お客さんにおかわりを持って行って!」

カフェの娘「はーい…お待たせしました、お姉さん!」

シモネッタ提督「グラツィエ、シニョリーナ(お嬢さん)…♪」見たところ十代の前半と言った、可愛らしいお嬢さんがお盆に載せたエスプレッソを持ってくると、にこやかに娘の頬を撫でた…

提督「……まさかね」

娘「いいえ、いつもありがとうございます。お姉さんってば綺麗で優しいし…あこがれちゃいます///」

シモネッタ提督「まぁまぁ…そんな風に言ってもらえるとお姉さんも嬉しいわ……ねぇ、よかったらこの後一緒にお出かけでもしましょうか…♪」優雅な雰囲気ではあるが、妙に息づかいを荒くさせている…

娘「ごめんなさい、まだうちの手伝いをしなくちゃいけなくて…でもありがとね、お姉さん♪」

シモネッタ提督「いいのよ……良かったら何かお話でもしましょうか、ね?」

娘「うーん……ちょっとお父さんに聞いてくるね?」

シモネッタ提督「ええ、そうね…」

娘「……お父さん、しばらくならお話してていいって…それじゃあお姉さん、何のお話をしようか?」

シモネッタ提督「ふふ、何だってかまわないわよ…さ、ここに座って……お姉さんの食べかけで良ければ、タルトもどうぞ♪」シモネッタ提督はカフェの娘を向かいに座らせると、いつものしとやかな微笑みはどこへやら、デレデレとにやけた笑みを浮かべて、女の子が脚をぶらぶらさせながらタルトを食べる様子を見ている…

提督「…なるほど、道理で色恋の噂がたたないわけね……それにしても…」

シモネッタ提督「どう、美味しい?」

娘「うん、美味しい…ほら、お姉さんも♪」

シモネッタ提督「まぁ、ありがとう……むふふっ、女の子が使ったフォーク……んふっ♪」

提督「…頭脳明晰で運動もそつなくこなし、その上おしとやかなあの「シモネッタ候補生」がきわめつきのロリコンとは……世の中分からないものね…」

シモネッタ提督「んー、幸せな時間だったわ……また週末になったら来るわね♪」

娘「待ってるね♪」

シモネッタ提督「ええ、チャオ…♪」

提督「…」(見なかったことにしましょう…)

シモネッタ提督「あら、フランチェスカ…あなたもカフェで休憩?」

提督「!?」

シモネッタ提督「ここのエスプレッソは格別よね。マスターの腕がいいし、豆も上等だもの」

提督「え、ええ…初めて入ったけれど、いいお店ね」

シモネッタ提督「あら、初めてだったの? だとしたらいいお店を見つけたわね♪」

提督「そ、そうね…」

シモネッタ提督「この後、何か予定はあるの?」

提督「え、えーと……カルラのために何かお菓子でも買ってきてあげようかと…酒保のお菓子は美味しくないし食べ飽きちゃっているだろうから……」

シモネッタ提督「カルラ? …ベルガミーニ候補生のこと?」

提督「ええ。同室なのだけれど用具の手入れが悪かったから、今日の外出が取り消しになっちゃって…」

シモネッタ提督「あらあら、ツイてないのね」

提督「そうなの、カルラったらことごとくそうで…教官が見ている時に限って失敗したり、たまーにロッカーの整理整頓をサボった時に限って先輩たちの点検を受けたり……」

シモネッタ提督「そう言う人っているわよね…ところで、良かったら私もフランチェスカのお買い物にご一緒してよろしいかしら?」

提督「それはいいけれど……」

シモネッタ提督「…エレオノーラでいいわ、フランチェスカ♪」

提督「そう…エレオノーラは自分の用事は済ませたの?」

シモネッタ提督「ええ、私は天使と甘い時間を過ごしたから今日の用事はもう済んだわ……と言っても、貴女には何のことか分からないかしら♪」

提督「えー、まぁ…そうね」(…どう考えてもさっきの「アレ」よね)

シモネッタ提督「…それにね、フランチェスカ…私、貴女に少し興味があるの♪」頬に手を当ててにっこりとほほ笑むシモネッタ提督…

提督「え…私!?」

シモネッタ提督「ふふ、勘違いしないで? フランチェスカはいい人だし綺麗だとは思うけれど、私は貴女と「そういうこと」をしたいとは思わないわ♪」

提督「そ、そうよね…」(うーん…美人のロリコンお姉さんに面と向かって「興味ない」と言われて、嬉しいような悲しいような……)

シモネッタ提督「実はね、貴女と一つ「協定」を結べないかと思って…ちょうどいい機会だし、話を聞いてもらえるかしら?」

提督「協定?」

シモネッタ提督「ええ…実はね、同期や先輩方の中には私に思慕の情を寄せてくれる女性(ひと)がいるのだけれど、私の好みから言うと……正直あまりタイプじゃないの」

提督「……でしょうね」

シモネッタ提督「だけど、フランチェスカは優しくて穏やかな性格だし、顔だって綺麗だから……よかったらそう言う「お姉さま方」と仲良くなってはもらえないかしら?」

提督「それって、つまり…」

シモネッタ提督「そういうこと…私の好みのタイプがどんなか、フランチェスカも薄々気づいているでしょう?」

提督「まぁ、ある程度は……」

シモネッタ提督「ならお互いにタイプじゃない女性の思いをそれぞれ私…あるいはフランチェスカ、貴女に向けるようにしたら好都合じゃないかしら……どう?」

提督「うーん…でも人の恋心をそういうモノみたいにやり取りするのはちょっと……」

シモネッタ提督「でも、その娘たちはかなわぬ思いに身を焦がさずに済むし、私たちはお互いに好みの娘を集められるじゃない?」

提督「まぁ、それはそうかも知れないけれど…」

シモネッタ提督「…別に無理にとは言わないけれど……フランチェスカの好きそうなお姉さま方を何人か知っているわよ?」指の爪を眺めながら、さりげなくつぶやいた

提督「……ほんと?」

シモネッタ提督「ええ♪」

提督「エレオノーラ…」

シモネッタ提督「なーに、フランチェスカ?」

提督「協定…締結するわ///」

シモネッタ提督「そう言ってくれると思っていたわ…よろしくね、フランカ♪」

来てた。乙々

>>483 どうもお待たせしています…インフルは治りましたが今度は家族がかかったりとてんやわんやで……自分でも何を書いていたか忘れてしまいそうです…

…投下はまた数日後になってしまいますが、これから提督たち「士官学校の女たらし」三人組が士官学校の先輩・同期・後輩たちを食べ散らかして大暴れする予定です…(笑)

期待

>>485 書き溜めもなければ(資料はあり)投下も遅いのに、そう言っていただけると嬉しいです…頑張ります


そう言えばひな祭りだったので、はまぐりの潮汁とちらし寿司を楽しみました…もっとも、近場のスーパーにははまぐりがなかったのでデパ地下の鮮魚店で奮発することになりましたが……

そう言えば「貝合わせ」ってはまぐりの殻でやるものなんですよね……あ、「貝合わせ」(意味深)とかそういう意味ではないです(笑)

…一か月後…

シモネッタ提督「国際法の講義お疲れさま……ねぇフランカ、今夜の自由時間って空いているかしら?」

提督「ええ、別に教本を読むか部屋のみんなでおしゃべりするぐらいだけれど…どうしたの、エレオノーラ?」

シモネッタ提督「それがね…また「協定」を実行する必要が出てきたの」

提督「あら、また? 本当にエレオノーラったら先輩方に受けがいいわね♪」

シモネッタ提督「好みでもない先輩諸氏に好かれたって困るわ……とにかく、今夜の自由時間に「海軍史を教えてあげるから部屋に来ない?」って誘われているから、いつも通り先輩が貴女に夢中になるよう上手くたらしこんで?」

提督「もう、私だって年上なら誰だっていいわけじゃないのよ? …でもまぁエレオノーラのためだものね。仕方ないわ」

シモネッタ提督「ありがとう、助かるわ…ところで、私好みの可愛らしい娘は?」

提督「うーん……エレオノーラのおめがねに叶いそうな「できるだけ小柄で可愛いらしい、初心な候補生」って言われてもね…注文が厳しいわ」

シモネッタ提督「そう…でもこれだとフランカ、貴女が一人で得をしているわよね」わざとむくれたように唇を尖らせるシモネッタ提督…

提督「そんなこと言われても……この間だってマリアを紹介してあげたじゃない。それでもだめなら、今度の日曜日にご飯でもおごりましょうか?」

シモネッタ提督「ふふっ、冗談よ……私と貴女の仲だもの、ね♪」

提督「はいはい…ところでルクレツィアの事なんだけれど」

シモネッタ提督「この間話していたカサルディ候補生のこと?」

提督「ええ…どう思う?」

シモネッタ提督「いいんじゃないかしら…私たちと違ってボーイッシュでさっぱりした感じのタイプだし」

提督「ええ。あ、言っているそばから当の本人が……ルクレツィア、ちょっといいかしら?」

カサルディ提督「あ、フランチェスカにエレオノーラ…お疲れ。もう、身動き一つしないで講義を聞いているのはつらかったわ…カッター漕艇とか海に出られる実習がやりたいよね」

提督「うぇぇ、お願いだから勘弁して…前回のカッター実習の後、身体中きしんで寝られなかったのよ……」

カサルディ提督「私みたいながさつな漁師の娘と違って、フランカは箱入り娘だもんね…で、何のご用?」

提督「ええ、実はルクレツィアにも相談しようかと思って…」

カサルディ提督「何を?」

提督「…私とエレオノーラが女性のことが好きなのは、ルクレツィアもよく知っているわよね?」

カサルディ提督「まぁね……実際、私だって何だかんだで女の子は嫌いじゃないわけだし…///」快活で開けっぴろげなカサルディ提督にしては珍しく、小声でぼそぼそとつぶやいた…

提督「そこでなんだけれど、私とエレオノーラは色んな候補生たちと「仲良くなろうと」思ってに色々手回ししているのだけれど……ルクレツィアも一緒にどうかしら?」

カサルディ提督「うぇ…っ!?」

提督「ふふ、別に無理に力でねじ伏せるような事をしているわけじゃないのよ? …そもそもルクレツィアだってよく知っているように、私の腕力は大したことないもの…ね、エレオノーラ?」

シモネッタ提督「ええ……ただ私たちは、同性の「親しいお友だち」が集まりやすいようにお膳立てをしているだけなの♪」

カサルディ提督「…えーと、フランチェスカ……」

提督「なぁに?」

カサルディ提督「その…そういう女の子の中には……さ」

提督「ええ」

カサルディ提督「……フランチェスカみたいに…おっぱいが大きい娘もいるんだよね///」

提督「ええ♪」

シモネッタ提督「ふふ、もちろん…色んなタイプの人がいるわ♪」

カサルディ提督「…よし……それじゃあ私も乗った!」

提督「ふふっ、よろしくね♪」

シモネッタ提督「貴女が協力してくれるって言ってくれて嬉しいわ♪」

カサルディ提督「いや…だって二人と違って、私はつい最近まで自分がこんなおっぱい好きだなんて思ってなかったし……しかもこういう悩みって打ち明けにくいしさ、同じような仲間がいて良かったよ///」

提督「ふふ、ルクレツィアが目覚めたのはあのレスリング授業の時だものね…♪」

カサルディ提督「つまりフランチェスカのせいってこと……だからさ、おっぱいの大きな女の子がいたら紹介してよ。私も二人が気に入りそうな娘とかいたら教えてあげるから…さ///」

提督「ええ♪」

…就寝前の自由時間・先輩候補生の部屋…

先輩候補生(ブロンド・短髪)「いらっしゃい。よく来てくれたわ、シモネッタ候補生……と、そちらは?」

シモネッタ提督「シモネッタ候補生と同期のカンピオーニ候補生です。 …その、エレオノーラと一緒に海軍史の補習を受けたくて……あの、ご迷惑だったでしょうか?」

先輩「あぁ、いえ! どうせ勉強するならお友だちと一緒の方がいいものね…それに勉強熱心なのはいい事よ、カンピオーニ候補生」

提督「はい、その…候補生どのもご自分の勉強があるのに、わざわざお時間を割いて下さって……ありがとうございます///」

先輩「ふふ、そんな堅苦しくしなくても「先輩」でいいわよ。それにルームメイトにはこの時間を他の部屋で過ごしてくれるよう頼んでおいたから、貸し切りみたいなものだし…教本は持って来た?」

シモネッタ提督「はい」

先輩「結構! ならさっそく勉強しましょうか…ちなみに次の試験範囲はどこなの?」

シモネッタ提督「え、えーと…フランチェスカ、貴女は覚えている?」

提督「……確か「第一次大戦における列強海軍の主だった海戦」についてだった気がするわ…」

先輩「なるほどね……カンピオーニ候補生は海軍史が得意?」

提督「えーと…苦手ではないですけれど、せっかくならより詳しい先輩に教えていただきたいなと思って、ついてきてしまいました…その、ごめんなさい…」

先輩「いいのいいの、候補生として後輩たちを指導するのは先輩の務めよ♪」

(…ふぅん…エレオノーラと二人きりになりたかったのに、勝手についてくるなんてとんだ邪魔が入ったと思ったけれど……こっちの娘も意外とネコっぽくていいじゃない…♪)

提督「それでは、よろしくお願いします」

(…むぅ、この先輩は百合とかそんなに詳しくない感じね……なんだかファッションでやっているというか「先輩、先輩っ♪」って後輩たちにきゃあきゃあ言われたがっているだけみたい……そう言うのはあんまり好きじゃないわね…)

先輩「それじゃあ机はそこのを使っていいから…かけて?」

シモネッタ提督「はい」

提督「ありがとうございます…先輩///」

…しばらくの間、二段ベッドの脇にある先輩たちのスチールデスクに向かい、分厚い海軍史のテキストをめくる提督たち……先輩候補生は親切なお姉さんぶりながら二人のノートをのぞきこんだり、椅子を持ってきて二人の間に座ると、さも意識していないように提督たちの腕や背中に胸が当たるようにしてみたり、馴れ馴れしく手を重ねたりしていた…

シモネッタ提督「あ…ごめんなさい、ちょっと化粧室に……」

先輩「ええ、行ってらっしゃい…フランチェスカ、あなたは?」

提督「はい、大丈夫です」

先輩「なら続けましょうか……エレオノーラ、あなたが戻ってきたらさっきのページの答えを添削してあげるわね」

シモネッタ提督「はい、お願いします」(…それじゃあ頼んだわね♪)

提督「行ってらっしゃい」(ええ…♪)

先輩「じゃあ続きをしましょう…何かお菓子でもあればよかったわね♪」

(…確か「フランチェスカ」って言ったわよね…ふふっ、見れば見るほど可愛いじゃない……何だったらエレオノーラの代わりにこの娘を私の「特別な後輩たち」に加えてもいいわ…♪)

提督「いえ、そんな…先輩の時間を使わせてしまっているのは私ですから……それと、先輩」

先輩「はい、なぁに?」

提督「テキストの「ユトランド沖海戦」に関するこの問題が分からなくて…「帝政ドイツ艦隊と英艦隊との交戦においてドイツ戦艦の被害はイギリス側より少なかったが、その理由を『水平防御』の語を用いて記述せよ」とあるのですが…」

先輩「あぁ、それはね……」むにゅ…♪

提督「……あ、あの…」

先輩「どうしたの?」

提督「…その、胸が……///」

先輩「あら、ごめんなさい…でも女同士なんだし、気にすることはないじゃない♪」

(さぁ、フランチェスカはどうかしら…でもこの感じ、手ごたえがあるわ……♪)

提督「いえ…それは……そうですけれど…///」

(いよいよ仕掛けてきたわね……んー、でも顔は綺麗だし、誘い受けって考えたらこういう露骨な誘惑も可愛く見えないこともないし……ふふっ、そう考えたらこの先輩も…うん、いいわね♪)


…すみません、訂正が一つ…

488の二行目「シモネッタ提督」は「提督」です。途中で書きかえたりするからこういうことが起きるんですよね…反省しております…


先輩「ふふ…さっきから顔が赤いわよ、フランチェスカ?」

提督「いえ、だって…先輩の顔が近い…から…///」

先輩「ふーん…なら、あなたのここはどきどきしているのかしら?」そっと提督の胸元に手を当て、鼓動を確かめるそぶりをする先輩…

提督「あ、あっ…///」

先輩「ふふふ、私の手にあなたの心臓の音が伝わってくる……大丈夫よ、すぐやみつきになっちゃうから…ね♪」あごに手を当てて、軽く顔を上げさせた…

提督「せ、せんぱい…///」

先輩「いいのよ、私に身を任せて。何も心配いらないわ……んっ♪」

提督「んぅ…っ♪」

先輩「ん…ちゅっ……ぷは♪」

提督「…」(え…これだけ?)

先輩「…ね、気持ちいいでしょう?」(ふふ、これでもうすっかり私にメロメロね…♪)

提督「えーと…その……」

先輩「どうしたの? そんなによかった?」

提督「ふぅ……あむっ♪」

先輩「んっ♪」(ふふ、この娘ったら積極的…きっと私のキスに参っちゃったのね♪)

提督「…んちゅっ…ちゅぅぅっ、ちゅるぅぅっ…ちゅくっ、んちゅぅっ♪」(…さてと…それじゃあ独りよがりの先輩に、本当の甘いキスがどんなものか教育してあげないとね♪)

先輩「ん……んぅっ!?」

提督「あむっ、ちゅぅぅ♪ …ちゅる…ちゅぅぅっ、んちゅぅ、ぢゅっ…♪」

先輩「んんぅぅ…ん゛ぅ゛ぅぅっ!」

提督「んむっ、ちゅぅぅぅ…ちゅくっ、ちゅぽっ……んはぁ…ちゅぅ、ちゅぷっ……んちゅるぅっ♪」

先輩「ぷはぁっ! ちょ、ちょっと待っ…んぐぅ///」(こ、この娘…上手過ぎ…っ! …すごい舌が絡まって来て……キスだけなのに…イきそうっ///)

提督「んちゅぅぅ…れろっ、ちゅぱ……んふっ、ちゅぅぅぅ…っ♪」

先輩「ぷはぁっ…! お願いだから息をさせ…んむっ!」

提督「んむっ、ちゅうぅぅっ……ぷはぁ♪」

先輩「はひっ…はふぅぅ……///」椅子からずり落ちて、脚を広げてぺたんと床にへたり込む先輩…口を半開きにして瞳をとろんとさせ、力なく崩れている…

提督「ふふっ…本当のキスはどうでしたか、先輩?」

先輩「はひぃ…あふぅ……も、もう…腰が……抜けて…///」部屋着として決められている灰色のスウェットにじんわりと染みが出来ている…

提督「…ふふっ、でも気持ちいいのはここからですよ……先輩♪」

先輩「え…///」

提督「まだ時間はありますし……ね♪」スイッチの入った提督の瞳が爛々と光り、さっきまでの柔らかい微笑みがいやらしい笑みに変わった…そのまま先輩候補生の上にまたがり、床にゆっくりと押し倒す…

先輩「いえ、今日はこれでいいから…ね、また今度……」

提督「ふふっ…だめですよ、先輩。あなたが百合に免疫のない候補生を誘惑しては、自分の取り巻きにしていたのは知っているんですから……せめてお互いに気持ち良くなれるやり方は覚えましょうよ…ね♪」

先輩「いえっ、その…っ///」

提督「ふふっ、大丈夫ですよ…優しく手ほどきしますから♪」するりとスウェットの裾から手を入れて、海軍制式のスポーツブラ越しにゆっくりと乳房をこね回した…

先輩「はひっ、あぁ…っ♪ んぁ…っ♪」

提督「ん…ちゅっ♪」左手で固くなった乳首をつまみながら唇を重ねて舌を絡め、右手の長い人差し指をねっとりと濡れた花芯にそろそろと入れていく…

先輩「ふぁぁっ…はひゅ……あ、あっ……んぁぁ///」

提督「先輩、せっかくのキスをあんな雑にしてはダメですよ。あれではエトナ山みたいに熱い恋だって冷めちゃいますよ…分かりましたか?」くちゅっ、にちゅっ…♪

先輩「は、はひっ…///」

提督「ふふっ、さすがは先輩……それでは…と♪」くちゅり…っ♪

先輩「あっ、あぁぁぁ…っ♪」ぷしゃぁ…っ♪

提督「ふふ…また「海軍史」を教えて下さいね、先輩♪」

先輩「…ひ、ひゃい///」

…数日後…

シモネッタ提督「あら、フランカ…ちょうどよかった」

提督「んー?」

シモネッタ提督「いえ、例の「先輩」のことでお礼を言いたくて…おかげで助かったわ♪」

提督「どういたしまして……それに、案外あの先輩も悪い人じゃなかったわよ?」

シモネッタ提督「それは良かったわ。 まぁでも、年上はフランカにお任せしておくわね…♪」

提督「はいはい…そう言えばルクレツィア、あなたはどうだった?」

カサルディ提督「うん、おかげさまで可愛い娘たちとお付き合いできて大満足ってとこ。いやぁ、女の子ってもちもちふわふわで甘い匂いがして……いいもんだね」

シモネッタ提督「まぁ、おかしい…ふふっ♪」

カサルディ提督「……っ、笑うことはないでしょ…///」

提督「そうよね…エレオノーラったら、そのくすくす笑いを止めてちゃんと聞いてあげたらどうなの?」

シモネッタ提督「ふふ、ごめんなさい…でもあんまりにも正直な感想だったものだから♪」

カサルディ提督「いや、まぁいいけどさ…何しろ私は小さい島の漁師町で育ったから、よく近所のおっちゃんとか肝っ玉母ちゃんみたいな人から「いつ結婚するんだい?」みたいに言われててね…」

シモネッタ提督「まぁまぁ…それは大変だったでしょうね?」

カサルディ提督「いや、ちょっとした冗談みたいなもんだからそれ自体はいいんだけど……でも、漁師のあんちゃんたちとは男女って言うより兄弟みたいな感じだったから「付き合う」だとか、ましてや「結婚」って言うのはどうも違うように感じてたんだけど……ようやくモヤモヤしてたのが晴れた気分。ありがとね、二人とも」

シモネッタ提督「どういたしまして♪」

提督「ルクレツィアが納得できる恋が出来るようになって嬉しいわ♪」

カサルディ提督「うん。もうなんか世界が違って見えるね…♪」

シモネッタ提督「ふふ、そのようね……聞いたわよ、先週だけでミーナとジュリアをすっかり夢中にさせちゃったそうね?」

カサルディ提督「いや…別にそんなつもりはなかったんだけど……///」

提督「ふふ、でもあんな風に格好いいことを言われたら…たいていの娘は参っちゃうわ♪」

シモネッタ提督「あら、フランカは聞いていたの?」

提督「…ちょっとだけね♪」

…その前日・更衣室…

候補生(栗色・結い上げ髪)「はぁぁ、疲れた…メッセ教官ってば厳しすぎ。 …ルクレツィアもそう思うでしょ?」

カサルディ提督「うーん、別に私はそこまでじゃないと思うけどね?」

候補生(栗色)「ルクレツィアは鍛えられてるもんね……私なんて最初の体力テストからぎりぎりだったし……」

カサルディ提督「……でもさ、それで言ったらミーナは私よりもずっと立派だと思うんだよね…だって体力のある人が普通にやるより、体力がない人が全力出してる方が偉いでしょ?」肩に手を置いて顔を近づけると、真面目な表情を浮かべてそう言った…

候補生(栗色)「も、もう……ルクレツィアって真顔でそういうこと言うんだから///」きゅん…っ♪

カサルディ提督「だって本当のことだし…違う?」

候補生(栗色)「……あ、あの…ルクレツィア///」

カサルディ提督「どうかした?」

候補生(栗色)「か、顔が近いんだけど…///」

カサルディ提督「あっ…ごめんね。 …いや、ミーナってまつ毛が長いし、唇も私と違って綺麗で柔らかそうだし……いいなぁ、って///」

候補生(栗色)「ね…ねぇ、ルクレツィア……///」背中をロッカーの扉に預けて、目をつぶった…

カサルディ提督「ミーナ、それってさ…」

候補生(栗色)「…そうよ。分かるでしょ///」カサルディ提督の腰に手を回してぐっと身体を引き寄せる候補生…

カサルディ提督「そっか……嬉しいよ♪」…ちゅぅっ♪

候補生(栗色)「あむっ、あふっ……ふぁぁぁ…っ♪」

………

カサルディ提督「うわっ、あれ聞いてたの…!?」

提督「盗み聞きは無粋だから、最初の方だけね……もうルクレツィアの口説き文句ったら、聞いている私の方まで胸がキュンとしそうだったわ♪」

カサルディ提督「べ、別に「口説く」とかそういうつもりで言ったわけじゃなかったんだけど……///」

………

カヴール「まぁまぁ…提督ったら候補生の頃から年上をたぶらかすなんて……ふふ、いけませんね♪」

ライモン「本当にもう…っ///」

メッセ兵曹長「まったく、聞けば聞くほどこの三人は……」あきれたように首をふって、コーヒーをがぶっと飲んだ…

ガリレオ「やれやれ、提督たちはとんでもない候補生だったようで…ところで提督?」

提督「なぁに?」

ガリレオ「いえ、今の話を聞いていると……提督は「年上のお姉さまが好き」で合ってるわよね?」

提督「ええ、基本的に好意を寄せてくれる女性(ひと)なら誰でも愛せるけれど…ね♪」

ガリレオ「ふむふむ……で、シモネッタ提督は幼女がお好き…と」

シモネッタ提督「ええ、小さくて純粋無垢な女の子……天使っていうのはそういう娘のためにある言葉だもの♪」

ガリレオ「なるほど……で、カサルディ提督は…」

カサルディ提督「うーん、別に私は年にはこだわらないけど…しいて言えば話題の多い同年代……まぁ、できればおっぱいが大きい娘がいいかなって言う程度で…」

ガリレオ「ふむ…つまりこういう図式が出来上がるわ……」

提督「図式?」

ガリレオ「ええ…紙に描くとこんな感じよ、提督」ガリレオはさっと円を二つ書き上げた…二つの円は一部が重なっていて、片方の円に「年増」、もう片方には「幼女」と書いてあって、二つが重なるところに「同い年」と書いてある…

提督「あー…こういうの、数学で見たことあるわね」

シモネッタ提督「集合論でしょう、フランカ…もう貴女ってば、本当に数学が苦手なんだから♪」

提督「別に砲術科じゃないんだからいいわ。それに基本の航海術くらい出来るし……」

カサルディ提督「ま、怪しいところだけどね」

提督「もう、失礼ね……」

リベッチオ(ヴェネツィア)「ねぇねぇ……カンピオーニ提督、カサルディ提督」

提督「んー?」

カサルディ提督「どうかした?」

リベッチオ(ヴェネツィア)「うん♪ ……あのね、リベッチオは私たちの司令がどんなだったのか知りたいなぁ…って♪」

提督「あー…エレオノーラねぇ……」

カサルディ提督「うーん……まぁ、その…アレだ……」

シモネッタ提督「…ねぇ、どうして二人とも口ごもるの?」

提督「それは……だって、ねぇ…」

カサルディ提督「…まぁ、問題が多いというか……うちの娘たちに変な事は聞かせたくないしね…」

シモネッタ提督「どのみち貴女たち二人だって同じようなものでしょう?」

提督・カサルディ提督「「それはないわ」」

メッセ兵曹長「わっはははっ、これこそまさに「意見の一致」というやつだな♪」

MS16「ねぇ司令…司令の言う「変な事」ってなに?」

MS22「そうそう、気になる…それに見た目こそ小さいけど、私たちだってオトナなんだから……あんまり子供扱いしないでよね?」

カサルディ提督「あぁもう、これだから話したくないんだ……全くもう!」

ライモン「あの、提督……シモネッタ提督の話ですが、わたしが聞いても大丈夫でしょうか…?」

提督「あー…その、まぁ……別にライモンも子供じゃないわけだし、犯罪とかそういう話ではないから……」

カサルディ提督「怪しいところだけどね…この話をちょっとでも聞かれたら、間違いなく「査問会案件」で憲兵か法務官が駆け込んでくるとは思うわ……」

>>493 ここまででもずいぶん長くなってしまいましたし、投下も遅いのでお待たせしております…

…まだしばらくは提督たちのおしゃべりが続きますが、時間的にはまだお昼にもなっていませんので、久しぶりに何か料理の描写も入れていきたいです…ご期待ください(笑)

提督「とはいっても…どのみちここまで話したなら同じじゃないかしら?」

カサルディ提督「あれか「毒食わば皿まで」…ってやつ?」

提督「ええ、まぁ」

カサルディ提督「あー、それもそうか…それにエレオノーラの事を話せば、私たちの罪状が軽く見えるようになるもんね♪」

シモネッタ提督「もう…失礼なことを言うわね?」

カサルディ提督「まぎれもない事実でしょうが……この変態のロリコン…」

提督「まぁまぁ……それじゃあ話すとしましょう。エレオノーラも付け加えがあったら言ってね?」

シモネッタ提督「ええ、そうさせてもらうわ♪」

カサルディ提督「私たちが知っている分だけで充分なのに、それに付け加えるのがあったら……うへぇ…」

提督「まぁ、そう言わずに……えーと、あれは私が例の先輩候補生と「仲良く」なった後のことで…」

………

…シャワー室…

提督「ふー…いい気持ち♪ ……本当はたっぷりのお湯につかってゆっくりしたいところだけれど、士官学校でそれは無理よね…」

カサルディ提督「そうだね…まぁ身体をきれいにするのに湯船はいらないし、フリゲートとかで暮らすなら節水にも慣れないといけないからね。…ま、これも訓練だと思って諦めなよ」

提督「ええ……あー、時間を気にしないですむ家のお風呂とご飯が懐かしいわ」

カサルディ提督「フランチェスカのお母さんって料理上手だしね。この間、実家から送ってもらったお母さんの手づくりお菓子を分けてくれたでしょ…あれすっごく美味しかったもん……よかったらまた分けてよ?」

提督「ふふ、今度の手紙にそう書いておくわ…そうしたらきっとお母さまのことだから、喜んでルクレツィアの分も送ってくれるわ♪」

カサルディ提督「それじゃあフランチェスカには早く手紙を書いてもらわないとね…♪」

提督「もう、せかさないで…身体中ベタベタするから、出来るだけ長く浴びていたいの」

カサルディ提督「はははっ、わかるわかる。私も運動は得意な方だけど、汗ばむのだけはいただけないもんね…背中、流そうか?」

提督「…仕切りで区切られているのに?」

カサルディ提督「フランチェスカの長話につき合ってたら全身洗い終わっちゃったから……それにフランチェスカは髪の毛が長いしさ、時間かかるでしょ?」

提督「ええ、まぁ…」

カサルディ提督「それじゃお邪魔しまーす、と。……相変わらず最高のおっぱいだね♪」もにゅ…♪

提督「あんっ…もう、最初からそれがしたかっただけでしょう///」

カサルディ提督「まぁね……って、ねぇ…あれ」

提督「?」

カサルディ提督「あっち…エレオノーラとマリアじゃない?」

…カサルディ提督があごをしゃくった先には、やはり一つのシャワーブースに入って洗いっこをしているシモネッタ提督と、もう一人同期の候補生がいる…

提督「あー…そうね」

カサルディ提督「相変わらず仲がいいんだね…まぁ当然ちゃあ当然か」

提督「ええ…幼女好きで優雅なエレオノーラと、甘えたがりで童顔のマリア……」

カサルディ提督「…肉とワイン、パスタにオリーヴオイルって所だよね」

提督「エレオノーラに紹介したのは私だけれど、あんなに上手く行くとは思ってなかったわ……喜ぶべきなのか、それとも後悔すればいいのやら…」

カサルディ提督「ま、そこまで気に病むことはないんじゃない? …フランチェスカが紹介しなくたって、エレオノーラが目をつけたと思うし」

提督「…確かに」

カサルディ提督「でしょ? …あ、あの二人はシャワー終わったみたいだね……私たちもそろそろあがらないと」

提督「ええ、そうしましょう」

カサルディ提督「それじゃ、おっぱいは私が流してあげるからね」鏡越しに提督へ向かって気持ちのいい笑みを浮かべながら、張りのある乳房を「ぽよん…っ♪」と下から弾ませた…

提督「もうっ…ルクレツィアってば♪」

カサルディ提督「あはは、ごめんごめん…あんまりにも大きくてたゆんたゆん揺れてるからさ♪」

…廊下…

カサルディ提督「ねぇ、フランチェスカ」

提督「んー?」

カサルディ提督「…今夜の自由時間に…したいな」

提督「ふふっ、了解……って…」

カサルディ提督「うん? どうしたの?」

提督「いえ…そこの倉庫……」


…提督の視線の先には、ドアの鍵が外れた小ぶりの倉庫がある……廊下の一隅にある倉庫は旧式の教材が収めてあるだけで大して使われていない上、宿舎へ向かう廊下を左折した先にあるので、普段はわざわざ角を曲がって立ち寄る人もいない……もっとも提督たちはスキモノの「お姉さま」方から、その倉庫の「使い方」と、一番安全な時間帯、それに壊れかけた鍵を開けるドアノブの回し方を伝授されていた…


カサルディ提督「……倉庫がどうかした?」

提督「ええ……何か声がしたような気がしたの」

カサルディ提督「あー、言われてみれば…それに、そこの倉庫ってさ……」

提督「ええ…そうよ」

カサルディ提督「…それじゃあさ、ちょっとのぞいてみる?」

提督「えぇ? ……まぁ、ルクレツィアがそういうなら…」

カサルディ提督「じゃあ「隠密接近」ってやつで行かないと…♪」

…倉庫…

提督「…相変わらず埃っぽいわね……」

カサルディ提督「…しーっ、やっぱり誰かいる」

提督「…そうみたいね……あれってエレオノーラとマリアじゃないかしら…?」


…幼女好きのシモネッタ提督を満足させるような「無垢で愛らしい娘」を士官学校で見つけるのは草食のライオンや羽音を立てるフクロウを見つけるよりも難しいが、提督は(…どういうわけかクラスに一人くらいはいる)同期とは思えない童顔の小柄な候補生をシモネッタ提督に紹介し、甘えん坊の候補生も(変態ながら)優しい「お姉ちゃん」のシモネッタ提督について回って、暇さえあればいちゃいちゃしていた……提督たち二人がふちの錆びたロッカーの陰からのぞくと、シモネッタ提督が候補生の前にひざまづいて、脚を舐めまわしている…


候補生(童顔ショートヘア・ネコ)「…んはぁ、はぁ…んっ♪」

シモネッタ提督「あぁぁぁんっ、もう…マリアったらそんな風に顔を赤らめちゃって可愛いっ♪」

候補生「らってぇ……エレオノーラおねえひゃんが…ふわぁぁぁっ///」

シモネッタ提督「あらあら…マリアったらまた靴擦れを起こしちゃって、可哀そうに……お姉ちゃんがその小さな足を舐めてあげるわね…ぇ♪」れろっ、んちゅ…♪

候補生「はひゅっ、ひくぅ…っ♪」あどけない顔をトロけさせ、がくがくと膝を震わせている……

シモネッタ提督「いいのよぉ、お姉ちゃんがいっぱい気持ち良くしてあげるからねぇ♪」ちゅっ、ぢゅぅっ…♪

候補生「ふぁぁぁ…っ、おねえひゃ……っぁ、きもひいぃよぉぉ♪」くちゅり、ぬちゅ…っ♪

シモネッタ提督「んふふふっ…つつましいお胸に小さな身体、それにつるんとしたあそこ……はぁぁぁぁ、たまらないわ…ぁ♪」両手で小さな足を包み込むと、指の間まで丁寧に舐めあげていく…

候補生「あっあっあっ……それっ、きもひいぃれひゅ…っ///」

シモネッタ提督「ふふ、それじゃあもーっと気持ちいいことしましょうねぇ♪」

候補生「ふぇ…っ?」

シモネッタ提督「ふふ、そーれ…っ♪」濃緑色の指定ショーツをずり下ろすと片脚立ちをさせて、下から顔を寄せるとつるんとした割れ目に舌を這わせた…

候補生「ひぅっ、エレオノーラおねえひゃん……は、恥ずかしいよぉ…♪」

シモネッタ提督「まぁまぁまぁ…恥ずかしがちゃって、可愛いっ♪」むちゅ、じゅるっ…れろぉ…♪

候補生「はひぃ、はあぁぁ…んっ……きもひよくってぇぇ…腰が抜けちゃいそうれす……///」

シモネッタ提督「んふふふっ、そうなったらお姉ちゃんがお部屋まで連れて行ってあげますからねぇ……むちゅっ、じゅるぅぅ…ぬちゅっ♪」

候補生「ふわぁぁぁ…おねえひゃん、しゅきぃぃ♪」

シモネッタ提督「んふっ…嬉しいっ。そんな良い子にはもーっと気持ちいいことしてあげましょうねぇ♪」

候補生「おねえひゃぁん…マリアに、いいこと……してぇぇ♪」

提督「…」

カサルディ提督「……見なきゃよかった…」

………



提督「…と言うようなことがあったの」

カサルディ提督「あー、そう言えばそんなこともあったね……」

シモネッタ提督「ふふっ…それにしても、あれを見られていたとは思わなかったわ♪」胸元に垂れている髪の房をいじりながら、柔らかい笑みを浮かべている…

メッセ兵曹長「…何だ、お前たちもあの「コマシ倉庫」を使ってたのか? まったく、悪い事だけはちゃんと受け継ぐ奴らだ」

カサルディ提督「先輩諸公の教育のたまものですよ♪」

メッセ兵曹長「やれやれ、まったく度し難い女たらしどもだな……頼むから海軍参謀総長だとか大臣の娘にだけは手を出すなよ?」

提督「あー…」

カサルディ提督「…」

メッセ兵曹長「…おい、まさかとは思うが……シモネッタ、まさか「あの噂」だけは冗談だろうな?」

シモネッタ提督「…すみません、メッセ教官♪」

メッセ兵曹長「はぁ…あきれたな。風の噂で「北ティレニア海管区司令官の孫娘をたらしこんだ大バカが海軍にいる」とは耳にしていたが……あれは貴様か」

シモネッタ提督「はい♪」

メッセ兵曹長「まったく…もしも地獄の入り口を知ってたら尻を蹴飛ばして放り込んでやるところだ……」

シモネッタ提督「ふふ…お手数をおかけします♪」

リベッチオ(ヴェネツィア)「…それにしても、ほんとに司令ってば可愛い娘を見るとすぐ手を出して……そうやって色目ばっかり使ってると「めっ!」なんだからね♪」身体を寄せてシモネッタ提督の肩に頭を預けると、見上げるようにしながら手の甲をつねった…

シモネッタ提督「ごめんね、リベッチオ…でも士官学校の時は他に小さくて可愛い娘がいなかったし……ね、おわびにリベちゃんの言うこと聞いてあげるから♪」

リベッチオ(ヴェネツィア)「…それじゃあ「ちゅー」したら許してあげる♪」

シモネッタ提督「はい、喜んで♪」ちゅぅ…っ♪

リベッチオ(ヴェネツィア)「えへへっ…♪」

提督「…」

ライモン「…」

カサルディ提督「二人とも、あんなのを見ると悪影響があるからね…目をつぶってなさい」

MS16・22「「これでいい?」」

カサルディ提督「ええ、それでよし……それにしてもまったく、真っ昼間から雌犬そこのけに盛ってくれちゃって……」

提督「ルクレツィア、全国の雌犬に失礼よ…うちのルチアにもね」

ルチア「ワンッ!」

カサルディ提督「あー、ごめんごめん…お前のことじゃないからね」足下にいるルチアを撫で、それから呆れたように両手を上に向けて広げた…

カヴール「……それはそうと」

マエストラーレ(ヴェネツィア)「…むぅ……リベッチオだけじゃなくて、私たちも怒ってるんですよっ?」

グレカーレ(ヴェネツィア)「そうだよぉ、司令ってばいっつも小さい女の子にばっかり優しくして…っ」

シロッコ(ヴェネツィア)「エレオノーラおねえちゃんは私たちよりも、MAS(魚雷艇)やVAS(駆潜艇)のみんなみたいな娘の方がいいんでしょ」

シモネッタ提督「もう、そんなことはないわ……私はマエストラーレ級のみんなも大好きよ♪」左右に座っているマエストラーレとリベッチオを抱き寄せてそれぞれのふとももに手を置き、膝にシロッコを乗せてぎゅっと身体をくっつけながらグレカーレの頬にくちづけした…

カヴール「…こと女性にかけては提督もなかなかでいらっしゃいますが、これほどではありませんね♪」

提督「さすがにエレオノーラと一緒にされるのは心外よ、カヴール……それにしてもお昼前だっていうのに痴話喧嘩に惚気だなんて、これだけでお腹がいっぱいになりそう……」

カヴール「ふふ、いい食事制限になりますね♪」

提督「…むしろお昼でも食べないとやってられないわ」

ディアナ「昼食の時間まではあと二時間ほどですから…どうか辛抱なさってくださいまし」

提督「……耐えられるか不安になってきたわ」


シモネッタ提督「あら、フランカったら自分だけは関係ないみたいな顔をして……あなただってなかなかだったでしょう♪」

カサルディ提督「確かに…年上が一番の好みってだけで、あとは選り好みしなかったよね」

ライモン「へぇぇ…そうなんですか、提督?」

提督「…だって///」

カサルディ提督「そうそう…フランチェスカときたら先輩はたらしこむわ同級生を誘惑するわ、果ては後輩は手ほどきするわで、どれだけの候補生を食べ散らかしたか分かった物じゃないんだから♪」

提督「そ、それは言い過ぎよ……ただ、先輩のお姉さま方は大人っぽくていい匂いがするし、同期の何人かとは話しているうちに自然と仲良くなっちゃって…それに後輩たちに「先輩、先輩♪」って慕われるのも嬉しくて…それで、つい///」

カサルディ提督「…聞いてあきれるわ」

シモネッタ提督「ふふ、そうね…確か、あれは半年くらいたってからだったわね?」

提督「あっ…///」

カサルディ提督「あー、そうだった。あの辺からタガが外れたようになったもんね……ま、どうせだから話しちゃおうか」

カヴール「ふふ、何やら楽しみですね♪」

提督「///」

フィリッポ・コリドーニ「おや、何やら特ダネの匂いが…ぜひお聞かせ願います!」

カサルディ提督「もちろん。これはね、誰とは言わないけど…そこで乙女みたいなふりをして頬を赤らめているどこかの誰かさんのお話でね♪」

………



…士官学校・入学からおよそ半年…

ビアンケッリ候補生「それじゃあ私は図書室で勉強してくるから…後でね」

カサルディ提督「ああ、また後で」

提督「行ってらっしゃい♪」

先輩候補生(結い上げ髪・ネコ)「……カンピオーニ候補生、いる?」

提督「はい、ここにおります」

先輩(ネコ)「ああ、ちょうどよかった……その、今夜の2200時ごろに…いいかしら///」

提督「ふふっ、もちろんいいですよ……先輩♪」

先輩(ネコ)「…ええ、待ってるわね///」

提督「はい♪」

後輩候補生(金髪お団子)「…失礼します! カンピオーニ候補生はいらっしゃいますか?」

提督「あら、いらっしゃい…どうしたの、講義で分からないところでもあった?」

後輩(お団子)「あ、いえ……その、お姉さまがよろしければ…今夜……///」

提督「あぁ、ごめんなさい…今夜はちょっと忙しくて……もしよかったら、明日の晩はどうかしら♪」

後輩(お団子)「はいっ…///」

カサルディ提督「フランチェスカってば相変わらずモテるねぇ…それに運動がダメなのにレズセックスは大丈夫って……」

提督「だってえっちするときは走ったり跳んだりしないもの…♪」

ベルガミーニ候補生「……そ、そう言えばフランカ///」

提督「どうしたの、カルラ…また何か無くなったの?」

ベルガミーニ候補生「ううん、そうじゃなくて……その///」

提督「ふふっ、分かったわ…♪」ちゅっ、ちゅむ…っ♪

カサルディ提督「まったく、同室のルームメイトまで骨抜きにするなんてどうかしてるんじゃない?」

提督「お褒めにあずかり恐縮です…あむっ、ちゅ…♪」

カサルディ提督「はぁー…仕方ない、ちょっとトレーニングルームにでも行って汗を流してくるから……」

提督「ごめんなさいね、ルクレツィア……はぁ、んむ…っ♪」

…また別の日・屋外射撃場…

メッセ教官「さて、候補生諸君もライフルや短機関銃の射撃に慣れてきたことだろうが…いま一度おさらいといこう!」


…濃緑色の野戦服に身を包んで地面に座っている候補生たちを前に、迷彩服姿で解説するメッセ教官と小火器担当のアシスタント教官数人……脇にはイタリア軍に制式採用されている数種類の自動小銃と短機関銃が並べておいてある……提督は「シルヴィアおばさま」のおかげで小さい頃からたしなんでいたので(…大きい音は苦手ながら)射撃はなかなか得意で、長距離走や障害物走などと違って射撃訓練はわりと好きな時間だった…


メッセ教官「まず、これが「ベレッタ・BM59」自動小銃。口径は7.62×51ミリで装弾数は二十発…陸軍や第一線級の部隊ではすでに「ベレッタ・AR70/90」に置き換わっているが、海軍ではまだまだ更新されていないから見る機会もあるだろう……とにかく重くてかさばるが威力は抜群だ。コンクリートブロックを撃ちぬくことも出来るし、当たれば身体のその部分とは一生お別れすることになる」


メッセ教官「……しかし、海軍士官候補生の諸君はこっちの方が手にする機会が多いはずだ。この短機関銃はルイージ・フランキの「LF57」で、口径は9×19ミリ。シンプルな形で構造も簡単。取り回しのいい短機関銃だ…今は同じ9ミリでより扱いやすい「ベレッタ・M12S」と交代しているが、一部の施設にはまだ残っているからよく練習しておく必要がある」

メッセ教官「さて…とにかくまずは事故を起こさないことだ。私も口が酸っぱくなるほど言って来たし、諸君も耳にタコができるほどだろうが、どじな小娘のせいで軍法会議にかけられたりするのはゴメンだ!」

候補生たち「「くすくすっ…♪」」

メッセ教官「笑いごとじゃなく、本当に火器の扱いには気を付けろよ…弾は薬室に送り込まず、引き金には指をかけるな! それだけで事故率はうんと減る」

メッセ教官「……さて、班ごとに分かれているから順繰りに回していこう。それぞれ一挺づつ渡すから、全員が一弾倉分を撃ち終えたら報告しろ!」

候補生たち「「了解!」」

カサルディ提督「…それじゃあ早くしよう? 最初は私がやるよ」全員耳当てをし、奥に的と土盛りがある射撃レンジに集まった…

提督「ええ」

補助教官「よし、それじゃあ始めろ…使い方は覚えているな?」

カサルディ提督「はい。カサルディ、射撃を始めます!」伏せ撃ちのセミオート射撃でBM59を撃つと引き金を引くたびに轟音が響き、奥で土煙が上がる…

補助教官「…よろしい、次!」

提督「カンピオーニ、射撃を始めます!」撃つたびにドスッ!…と肩に蹴りを浴びたような重い衝撃が走るが、何とかこらえて二十発を撃ちきった

メッセ教官「…カンピオーニ候補生、お前は射撃が上手いな。この射撃の腕に走りや反応の機敏さが加われば、射撃記章や海軍射撃チーム入りも夢じゃないぞ?」

提督「ありがとうございます、教官」

メッセ教官「いや、それもお前の才能だよ…もっと運動させてやるから、射撃と一緒に伸ばしていけ!」

提督「か、感謝します……うぇぇ……」

メッセ教官「なんだ。せっかく教えてやろうと言うんだからもっと喜べ、全く……ビアンケッリ、もっと落ち着いて撃て!」

提督「…努力します」

メッセ教官「それでいい。お前はせっかく脚が長いんだから、走り方を覚えればもっと速く長く走れるようになるはずだが……どうもその胸のせいか、呼吸と走り方がずれるんだな。また今度フォームを確認してやろう」

カサルディ提督「……だって♪」

提督「…」たゆんっ…♪

…また別の日・海岸の演習場…

メッセ教官「よーし、訓練生諸君! 今日はここで訓練をしてもらう!」迷彩服をまとい、もとより大きい声をさらに張り上げるメッセ教官…


…遠浅の干潟が広がる演習場は、明るい陽光に照らされて潮の匂いがする蒸れた空気がたちこめ、滑らかな灰色の泥地が沖合まで広がっている……二班ごとに並んだ提督たち士官候補生は濃緑色の迷彩服の上に漁師が着るような「胴長」を着こみ、それぞれ弾の入っていないフランキ短機関銃を持ち、置いてあるゴムボートのまわりに座っている…


カサルディ提督「うわ…これはきついかも……」

提督「…ええ……もう、サン・マルコ海兵連隊でもないのにどうして私たちが上陸訓練なの……」(※サン・マルコ海兵連隊…イタリア海軍最強の海兵連隊。コマンド作戦や破壊工作で第二次大戦中から有名)

メッセ教官「さて、この訓練の目的だが……諸君はもしかしたら乗艦を捨てることになり、どうにか陸地にたどり着かないといけなくなるかもしれない。そんな時のためにゴムボートの漕艇と、上陸した場所が軟弱地だったことを想定し、歩き方を体験しておくことにある!」

メッセ教官「……それに諸君ら候補生の中にはダイエットに熱心な者もいるようだからな。たっぷり運動して脂肪を落せるようにという、私からのささやかなプレゼントだ♪」

提督「…誰よ、もう…ダイエットなんて余計な事をしているのは……」

カサルディ提督「ま、少なくともフランチェスカじゃないよね…♪」

メッセ教官「さて…各班はまず突堤からゴムボートに乗り、沖合のブイまで向かう! ブイまでたどり着いたらUターンして戻り、旗の立ててある辺りに上陸し、ボートを引いて陸まで戻ってくること…一応「お助け」として岸からロープを数本伸ばしてあるから、どうしても進めなくなった班はそれにすがって戻ってこい!」

提督「…すごく頑張らないといけなくなりそうね……」

ビアンケッリ候補生「……確かに」

ベルガミーニ候補生「ねえ……もし足を引っぱっちゃったらごめん…」

カサルディ提督「大丈夫だって…さ、行こうよ」

………

…数十分後…

提督「ぜぇ…はぁ……ふぅ…」ぐぽっ…ずぶっ……

ベルガミーニ候補生「はぁ…ひぃ……」ずぼっ…ぐじゅっ……

カサルディ提督「ほら、頑張ろう……あと少しだから…ふぅ、はぁ……」ぐじゅっ…ぬとっ……


…全身すっかりどろんこになって汗を滝のように流し、じりじりと日光に背中をあぶられながらゴムボートを引っ張る提督たち……ゴムボートを漕いで凪ぎの海に出て、ブイの所にたどり着くまでは涼しい風もあってまだ良かったが、干潟に上陸してゴムボートを引っ張り出してからは地獄そこのけだった……最初こそ文句を言う元気もあったが、数十メートルも行かないうちに声を出す元気もなくなり、一歩進むたびにまとわりついてひざまで埋まる泥にどんどん体力を消耗した…


提督「…はぁ、はぁ……ひぃ…ふぅ……」ずぶっ…ぐぱ…っ……

カサルディ提督「ほら、もう一歩…おいちに、さんし……」

ベルガミーニ提督「ん、んんっ…きゃあっ!」脚を抜こうとして「べしゃっ…」と泥の中に倒れ込む…

提督「カルラ…ほら、つかまって……」

ベルガミーニ提督「ありがと……はぁ、うぷっ…」顔についた泥を拭ってゴムボートのロープをつかみ直す…

候補生(黒髪ショート)「今日ほど教官が憎らしい日はないわ……」

メッセ教官「…ほら、頑張れ! あと数十メートルだぞ!」

候補生(ショート)「!」

メッセ教官「…教官だからと言ってふんぞり返って、お前たちだけにやらせるのは不公平だからな……歩く時は一度脚を垂直に上げてから前に出すようにしろ、一気に前に進めようとしても泥をかきわける分だけ疲れるぞ!」いつの間にか胴長に着替え、隣の班に加わっているメッセ教官…

カサルディ提督「はい、教官…!」

メッセ教官「ああ、それじゃあ頑張れよ!」

シモネッタ提督「……フランカ、もう少しだから頑張ってね…♪」横を追い越しながら小声ではげましていった…汗だくではあるが、顔に泥はね一つ付けず綺麗なままでいる…

提督「…ええ、ありがとう……はぁ、ふぅ……」息も絶え絶えで脚を上げる提督…身体がふらつき、一歩ごとに提督たちを引き戻そうとするゴムボートが心底にくらしい……

カサルディ提督「ほら、もうちょっとだから…!」小柄な身体で二人分は頑張っているカサルディ提督…足をとられている別な候補生を助け起こしながらロープを引っ張っている……

提督「…ええ……ひぃ、ふぅ…!」

…しばらくして…

提督「……ルクレツィア、スポンジを取ってくれる?」

カサルディ提督「はい…フランチェスカってば、もう「動くのも嫌だ」って顔だね」

提督「ええ、ごめんなさい…でも、もうふらふらで……」

ベルガミーニ候補生「ごめんね、私のせいで…」よくよくツイてないベルガミーニ候補生は途中で数回転び、一回はゴムボートに載せておいた短機関銃を泥の中に落として、数分かけて干潟を這いずりまわりながら探すはめになっていた…

提督「別にカルラのせいじゃないわ……そもそもはこのゴムボートのせいだもの…」ホースから水を浴びせかけ、ゴムボートの底面から内側まで丁寧に洗う…

メッセ教官「……きれいに洗えよ、候補生諸君…泥汚れが残っていたらやり直しだからな!」

提督「…それにしても、教官のあの体力はどこから来るのかしらね?」

ビアンケッリ候補生「鍛え方が違うんでしょうね……私には無理…」

カサルディ提督「だね……よし。ボートは綺麗になったし、戻ったら顔とか野戦服を洗って…それから甘いものでも食べて休憩しよう♪」

ベルガミーニ提督「同感…この後の講義がなくて良かったわ……」


…数分後…


カサルディ提督「ふぅ、さすがに今日は身体にこたえたね……」

提督「…ええ……もう歩くことすらしたくないわ…」


…ワイン樽を運ばされるロバか石材運びの奴隷のような気分でゴムボートを岸まで引っ張りあげると、そのままゴムボートや胴長の洗浄と「ルイージ・フランキ・LF57」短機関銃のメンテナンスをやらされ、すっかりヘトヘトの提督…髪にまで付いていた泥はねをゴムボート洗いのついでにある程度流し、房になっている濡れた髪を手で軽く整えた…


メッセ教官「…カンピオーニ候補生!」

提督「はい、教官…!」

メッセ教官「ちょっと用がある…教官室まで来てくれ」

提督「はっ!」

カサルディ提督「……フランチェスカってば、何かやらかしたんじゃない?」

提督「…どうかしら…これと言った覚えはないけれど……」

カサルディ提督「ふふ、あれだけ「つまみ食い」しておきながらよく言うね……じゃあ荷物は私が持って行ってあげるから」

提督「ええ、ありがとう…」

カサルディ提督「それじゃ…カミナリを落されないように祈っておくよ♪」白い歯を見せて爽やかな笑みを浮かべると、提督の背中を「ぽんっ」と叩いた…

………

…体育教官室…

提督「…カンピオーニ候補生、入ります!」

メッセ教官「よく来たな……さ、入れ」ビニール製シートの回転椅子を一脚引っぱってきてデスクのそばに寄せると迷彩服の上着を自分の椅子の背にひっかけ、それからポットのコーヒーをマグカップに注いだ…

提督「失礼します!」…まだ着替えを済ませていない提督は汗と潮水で濡れた野戦服で椅子が汚れるのをはばかって、座らずにいる…

メッセ教官「椅子は構わないから座れ…長身のお前に立っていられたんじゃ首がこって仕方がない」

提督「は、ありがとうございます…」

メッセ教官「コーヒーはどうだ?」自分にはブラックコーヒーを淹れ、振り向くとたずねた…

提督「はい、いただきます…」どうやら叱られるために呼び出されたわけではないらしいと、少しリラックスして肩の力を抜いた提督…

メッセ教官「クリームと砂糖は?」

提督「えーと…少しづつお願いします」

メッセ教官「ふははっ、そう硬くなるな…別に叱り飛ばすために呼んだわけじゃない。叱り飛ばす時は「教訓」が行き渡るように、訓練生全員の前でやるからな」

提督「…は、はい」

メッセ教官「ああ…さてと……」どっかりと椅子に腰を下ろし、腕組みをした…汗で色が濃くなっている濃緑色のタンクトップを、きゅっと引き締まった乳房が押し上げている…

提督「…」

メッセ教官「カンピオーニ、さっきのお前には感心したぞ……あの干潟ゴムボート引きでは例の「お助けロープ」にすがったり、音を上げる候補生も多いんだが…よく最後まで頑張ったな」

提督「…あ、ありがとうございます///」

メッセ教官「なに、礼などいらないさ。お前自身の努力だ…自分でも最初に比べて体力が付いたのが分かるだろう?」

提督「そうかもしれません…あまり実感はありませんが……」

メッセ教官「はははっ。周りも同じように伸びているから気付かないかも知れんが、着実に良くなっているぞ……しかもさっきはベルガミーニ候補生を手助けしていたな。大したもんだ」

提督「///」

メッセ教官「そう恥ずかしがるな…海軍士官は「同じ艦(ふね)の仲間」として生きるも死ぬも一緒。そうしたときにお互いを助けあうのは大事なことだ……またそうなるように我々教官は憎まれ役を買って出ているんだからな」

提督「はい」

メッセ教官「お前は座学がよく出来るそうだし、もっと体力をつければいい士官になれるだろう…希望は決めてあるのか?」

提督「えぇと…「指揮官・参謀コース」を……」

メッセ教官「なるほど、お前は歴史や図上演習が得意だからな…だがあれの選抜にも体力テストはあるぞ。よっぽどいい成績を付けるか、運動を頑張るかしないとな」

提督「はい、努力します」

メッセ教官「ああ、頑張れよ……と、ここまではいい話だ…」

提督「…」

メッセ教官「…カンピオーニ、お前らの女遊びの話はここまで聞こえてきているぞ」

提督「っ///」

メッセ教官「別に「するな」とは言わん…だがお前やカサルディのはやりすぎだ」

提督「…」

メッセ教官「……どこの誰が士官学校の候補生をたらしこんでハーレムを作れと言った…しかもご丁寧に卒業間近の連中から入りたての娘っ子まで構わず食い散らかしやがって、このどあほうが…!」

提督「……申し訳ありません、教官…!」

メッセ教官「いまさら謝って済むことか…まったく。お前とその仲間どもときたら、どいつもこいつも大人しいフリをしてとんでもないアバズレだ」

提督「…」

メッセ教官「…だがな」

提督「?」

メッセ教官「そのくらい元気があるっていうのはいいことだ……若いうちは身体を持て余すこともあるだろうしな♪」ニヤッと笑ってあきれたように首を振った…

提督「えぇと…その……」

メッセ教官「それにだ、確かにお前は女受けのいい顔をしてる…さぞモテるだろうな?」ぐっと顔を近寄せて、じっくりと提督を観察するメッセ教官…

提督「あー…それは、まぁ…///」

メッセ教官「今さら恥ずかしがるな、このスケベ女が……んっ♪」

提督「んっ!?」メッセ教官の荒い唇が触れると、コーヒーと煙草の煙るような味と潮の匂いがまとわりつく…

メッセ教官「んむっ、ん…ちゅっ、ちゅぅぅ…っ!」

提督「んむ、あふっ…はむっ……んちゅぅ、ちゅぅぅ///」

メッセ教官「ぷはっ……なるほど、これじゃあ骨抜きにされる娘っ子が出るのも無理はない」手の甲で唇を拭うと、感心したようにうなずいた…

提督「き、教官…///」

メッセ教官「なんだ、おかしいか? 私だってな、もっと向こう見ずな頃には色々と悪さをしたもんだ……本当は教官になるつもりはなかったんだが…」

提督「その……では、どうして教官になったのですか///」

メッセ教官「そのことか…まぁ時間もあるしな、話してやろう」

メッセ教官「ふー……私の家族は頭が固くてね、物心ついた頃から何かといえば「お前は女の子なんだから、将来いいお嫁さんになれるよう女の子らしくしなさい」ばっかり言われてたもんだ」

メッセ教官「…特に母親はそうでな。何かといえば「そんな女の子らしくない事は止めなさい!」とくる」

提督「……それは…息がつまりそうですね…」

メッセ教官「ああ…着ているものと言えばいつも丸襟のブラウスとスカートで、エナメルの丸っこい靴を履かされてお行儀よく……いいところのお嬢さんみたいにな」

提督「…正直、想像もできません」

メッセ教官「無理もない……それに私はガキの頃から駆けずり回るのが好きだったものだから、そんなのはまったく好みに合わなかった」

提督「…ええ」

メッセ教官「隙を見つけちゃ家を抜け出して日が暮れるまで暴れ回り、自分よりひと回りは大きい近所の坊主どもを蹴散らしてたもんだ」

メッセ教官「…だがな、それをやって家に帰ると「お前は女の子なのに、どうしておしとやかにしないの!」なんて言われては、夕飯を抜きにされたり頬を引っぱたかれたり……二日に一回はそんな具合だったな」

提督「…」

メッセ教官「…で、家にいる時は毎日お裁縫だのお菓子作りだの…つまり母親が言うところの「女の子らしい」事ばっかりやらされた……とにかく嫌でたまらなかったから、学校に入ってからはうんと勉強するようにしてやった……どうしてか分かるか?」

提督「…勉強にぶつけたのですか?」

メッセ教官「まぁそれもあるが……少なくともノートを開いて勉強の真似事をしている間は、そういう「がらくた」につき合わされないで済むからだ」

提督「なるほど…」

メッセ教官「…で、中学生になったらなったで今度は「将来、素敵な男性に見初めてもらえるよう」に化粧だとか服だとか…もちろん、母親からは子供の時よりもっと金切り声でやられる始末だ…まったく「繊細で情緒的」だった私にしてみれば悪夢だったよ」

提督「ええ…想像するだけで胃がきりきりします……」

メッセ教官「そうだろうな……とにかく、母親の考えでは「女に花嫁修業以外の教育はいらない」って事だったらしくてな。高校を卒業するかしないかのうちにいい人を見つけて、後はそいつにコバンザメよろしくひっ付いて食べ物のおこぼれをあずかり、パーティの時は見てくれのいいお飾りになっていればいい…ってつもりだったらしい」

提督「…」

メッセ教官「もちろん、高校生の私にだってそのくらいの考えは読めた……で、どうやって家出をするか考えていて、ふと街に貼ってあるポスターに気づいたわけだ……」

提督「あの……それって、もしかして…」

メッセ教官「ああ、そうだ…海軍の「新兵募集」のポスターさ。で、私は高校卒業と同時に自分の貯金をかき集めて家を飛び出し、海軍に転がり込んだ…ってわけだ」

提督「…教官は大変だったのですね……」

メッセ教官「そうかもな……まぁ海軍の初等訓練が楽だったとは言わないが、何かと金切り声でわめく母親はいないから気苦労がないし、好きなだけ身体を動かして怒られるどころか褒められるんだからな…私にしてみればいい所だった」

メッセ教官「…それでだ、私は訓練課程の修了までにうんと鍛えて、並みの男の三人分くらい戦えるようになったから「サン・マルコ」海兵連隊に志願したんだが……」

提督「…が?」

メッセ教官「担当士官に「君は優秀だとは思うが女性のための設備がないし、海兵連隊の伝統もあって女は入れられない」……と門前払いを食った」

提督「…」

メッセ教官「もうくやしかったどころじゃない……あれだけ「女らしく」って言われるのが嫌だったのに、制度にまでそう言われるとは思ってもなかったからな……海兵の荒くれを一人か二人ぶちのめして見せて、そいつの代わりに入れてもらおうかと思ったくらいさ」

メッセ教官「…まぁ腹わたが煮えくり返ったのは一週間くらいで、そのうちにこう思った……「私自身は入れなくても、私が強い女性兵士や士官をたくさん育てれば、いつか海軍だって認めざるを得なくなるだろう」ってな…それに体力と脳みそはあって困ることはない。違うか?」

提督「いいえ、その通りだと思います」

メッセ教官「そうだろう……それにここでなら私の性癖も満たせるからな♪」

提督「えっ…?」

メッセ教官「私が子供時代に抑えつけられたせいもあるだろうが……私は女が泥んこになってるのが好きなんだ。軍では好きなだけ泥だらけになれるし、教官ならある程度訓練項目を選ぶことも出来るからなおのことだ…ま、干潟訓練はいい体力トレーニングにもなるし「一石二鳥」ってわけだな」

提督「…教官、それでは……その///」

メッセ教官「……さっきはベルガミーニが身体中泥まみれになってべちゃべちゃやってるのを見て興奮した…カンピオーニ、お前もなかなかだったぞ♪」

提督「あ、あー…えーと、ありがとうございま…す……///」

メッセ教官「…適当なロングブーツを買ってきてぬかるみに突っこむのも好きだが……お前はいらないブーツとかあるか?」

提督「……さ、探しておきます」

メッセ教官「おう…さ、もう私の昔話はいいだろう。行ってよし!」

提督「はっ、失礼します……コーヒーをごちそうさまでした、教官♪」

メッセ教官「ああ…しっかりやれよ」

………



シモネッタ提督「…それは初耳ね」

カサルディ提督「あれ、言ってなかったかな……とにかくそれ以降は教官も黙認みたいなものだったから、フランチェスカときたらもうやりたい放題で…」

メッセ兵曹長「全くだ…カンピオーニときたら、私が少し甘い顔をしてやったら勘違いしてな」

提督「むぅ…それを言ったらルクレツィアだって更衣室のロッカーに同期の娘を押し付けて、耳元でずーっと甘酸っぱいような台詞をささやいていたじゃない」

カサルディ提督「あー…それは、まぁ…そうかもしれないけどさ……」

提督「…忘れたなんて言わせないわよ?」

コリドーニ「おぉぉ…次から次へと記事になりそうな話が……!」

デュイリオ「うふふっ、そういうのもあるのですね……今度機会を見つけて、私も提督に試すといたしましょう…♪」

ガリバルディ「さっきから聞いていたけれど…へぇ、なるほどね♪」

エウジェニオ「色々と役に立ちそうな話ね……ふふ♪」

提督「あら、三人ともお帰りなさい…外の様子は?」

デュイリオ「風もなく心地よいお日柄です……催し物は上天気が一番ですもの♪」

ガリバルディ「そうね。おかげで盛況よ、提督…混乱も特になし」

エウジェニオ「憲兵隊が上手くさばいてくれているから、提督はゆっくりしていて……ね♪」ちゅっ♪

提督「ふふ、了解♪」

ライモン「もう、提督ってばエウジェニオには甘いんですから……」

ガリバルディ「提督、ライモンドが妬いているわよ…ほら、怒られる前にご機嫌を取ってあげないと♪」

提督「ふふっ……怒らないでね、ライモン?」…ちゅっ♪

ライモン「…っ///」

シモネッタ提督「本当にフランカときたらお熱いこと…♪」わざとらしく手で扇いでみせるシモネッタ提督…気づけばいつの間にか提督の所の小さな駆逐艦「クィンティノ・セラ」をテディベアのように抱きかかえ、カサルディ提督の「MS16」と「MS22」をはべらせている…

提督「ちょっと…エレオノーラ!?」

シモネッタ提督「なに?」

提督「…い、いつの間に……?」

シモネッタ提督「ふふ、貴女が昔話に花を咲かせている間によ……それにしてもセラは可愛いわね♪」セラのさらさらの髪を手ですくい上げると顔に近づけ「すぅ…」と深呼吸する…

セラ「えぇと……あの…///」シモネッタ提督のひざの上で、恥ずかしげに顔を紅くしているセラ…

提督「あー……そろそろお昼だし、姫たちにも戻って来てもらいましょうか…ね、ライモン?」意味ありげにウィンクをしてみせる…

ライモン「…あ……あ、あぁ…そうですね! わたしもお腹が空きました♪」

提督「そうよね♪ それじゃあお昼の用意をしないと…セラ、お皿を運ぶから手伝ってくれる?」

セラ「は、はい///」

シモネッタ提督「もう…せっかく至福の時間を過ごしていたのに……」

提督「はいはい…兵曹長もご一緒にいかがですか?」

メッセ兵曹長「すまんな…それじゃあせっかくだしごちそうになろうか」

提督「ええ、ぜひ…ライモン、悪いけれど姫たちに「お昼にしますので」って伝えてきてもらえる?」

ライモン「はい」

提督「ディアナ、厨房に行きましょうか」

ディアナ「ええ、よしなに…♪」

…厨房…

提督「…さてと、お昼の献立は何にする?」金モールの付いた上着と軍帽を厨房の隅っこに置いてある椅子にたたんで乗せるとエプロンをかけ、手を洗った…

ディアナ「そうですね…とりあえずカリフラワーがたくさんありますから、それを使って一品作りましょう。後は砂を吐かせたアサリが冷蔵庫に入っております」

提督「んー…だったら「カリフラワーのアンチョビ風味」と「ボンゴレ・ビアンコ」でどうかしら? 後は屋台料理のお余りや冷蔵庫の残り物とかをかき集めたら、そこそこどうにかなるんじゃないかしら?」

ディアナ「ああ、それはよろしいですね…♪」

提督「それじゃあ私はカリフラワーに取りかかるから、ディアナはボンゴレをお願い」

ディアナ「はい、よしなに」

提督「それじゃあまずはカリフラワーを洗って……」


…提督はクリーム色をしたカリフラワーをとなりの食料庫からいくつか取り出してきてざっと洗い、それから包丁で房を一口大に切り出していく……残った太い茎は食べられないこともないが、わざわざ使うこともないのでルチアの餌に混ぜることにして分けておく…


提督「…お湯も沸いたみたいね」ごぼごぼと泡を立てている鍋にカリフラワーを放り込み、タイマーを四分にセットする…

提督「ではその間に…と♪」唐辛子とニンニク、アンチョビの缶詰をまな板の脇に並べた……ニンニクは薄切りにし、乾燥唐辛子は辛みが出るようハサミで適当な大きさの輪切りにする…綺麗な赤色の唐辛子はパリパリに乾いているのでハサミを入れるそばから割れてしまうが、風味付けなので気にせずに切った…


提督「♪~ふーん、ふふーん……」アルミの大ぶりなフライパンにオリーヴオイルを流し込んで火にかけると唐辛子を入れ、(焦げやすいので)少し間を開けてからニンニクを入れる…

提督「そろそろ茹ったかしら…うん、いいわね♪」

…カリフラワーがちゃんと茹ったかどうか串を刺し、それから網しゃくしでカリフラワーをしゃくい上げた…手際を考えるならカリフラワーをすくうよりは、むしろ流し台のザルに空けてお湯を流してしまう方が早いが、そこは節水を叩きこまれた海軍士官だけに、つい「何かに使える」とお湯を残す…

提督「……それでは、と」アンチョビの缶を開けるとフライパンに空け、アンチョビがすっかり溶けてしまうまで弱火にかけた…

提督「後はカリフラワーを……そーれ♪」火を止めたフライパンに水気を切った茹でカリフラワーを投入して、さっと和える……少し馴染ませると陶器の大きなサラダボウルに移し、それから油汚れが取れるように、カリフラワーの茹で汁をフライパンにそそぎこんだ…

提督「私の方はできたわ…ディアナ、何か手伝いましょうか?」

ディアナ「いえ、こちらも出来上がりますので…」


…大戦時は32ノットを誇った「高速スループ」だけあって、とにかく手際のいい「ディアナ」…提督がカリフラワーを料理している間にアサリの「ボンゴレ・ビアンコ」を仕上げている……まずはみじん切りのニンニクとオリーヴオイルを弱火にかけて、刻んだ玉ねぎを少々加える…玉ねぎがすっかり透明になったところで、殻を擦りあわせて良く洗った殻つきアサリをガラガラと放り込み、火勢を強めて白ワインをそそぐと蓋をして、一気に蒸らす…ほんの二分ばかりでアサリがぱっくりと口を開け、そこに薄めのコンソメスープを注いで軽くひと煮立ちさせる……アサリの塩気が出るので塩はほとんど入れず、少し固めにゆで上げたパスタに出来上がった「ボンゴレ・ビアンコ」をたっぷりと注ぐ…


提督「すぅー……いい匂い。美味しそうね♪」

ディアナ「ふふ、さようでございますね…さ、提督も上着をお召しになって食卓に参りましょう?」

提督「ええ♪」パスタが冷めないうちにと、急いで上着を羽織る…

…食堂…

提督「お待たせしました…さぁ、召し上がれ♪」提督が制服を整えて食堂の席に着くころには百合姫提督たちも戻って来ていて、長テーブルに揃った白と紺、そして金モールの制服がまぶしい…

カサルディ提督「うわぁ、いい匂い…♪ 料理の腕は相変わらずみたいだね、フランチェスカ?」

提督「ええ…だけどここに着任してからはディアナに頭が上がらないわ♪」そう言ってディアナにウィンクを投げる

ディアナ「お褒めいただきありがたく存じます…///」

シモネッタ提督「あら、美味しい…毎日こんなにいいものを食べているなんて、やっぱりフランカはずるいわ♪」

提督「ふふっ、少将にもなると色んな特権があるのよ…♪」冗談めかしてそう言うと、白ワインのグラスを軽くかかげた…

百合姫提督「ほんと…美味しいわ……♪」

グレイ提督「確かに…上品な味付けでよろしいですわね」

ヴァイス提督「アサリだけでこんなに美味しい料理が作れるのですね」

エクレール提督「まぁ、フランスでしたらこのくらいは……」

提督「…んー?」意味ありげに眉を上げ、微笑んでみせる提督…

エクレール提督「い、いえ…なかなかの味だと思いますわ///」

提督「そう、よかったわ♪」

ルチア「ワフッ…ハフハフッ……フガ…♪」長テーブルの脇で冷ましておいた鶏レバーとカリフラワーの茎を混ぜたものをもらってご満悦のルチア…

提督「ふー…美味しかったわ♪」

カサルディ提督「本当に美味しかったよ…おかげで食べ過ぎちゃった……」

提督「ふふ、いいじゃない…日差しが気持ちいいし、お昼寝でもして来たら?」

カサルディ提督「いやいや…そんなことしたら夜まで寝ちゃいそうだし、起きてることにするわ」

提督「そう、ならコーヒーでも淹れましょうか…みんなは?」

シモネッタ提督「ええ、ありがとう」

メッセ兵曹長「もらおう」

提督「はいはい…ライモン、手伝って?」

ライモン「はい、提督」

カサルディ提督「……うーん、美味しい」甘いカフェ・ラテをすすって満足そうにため息をついた…

提督「ふふっ…カフェ・ラテ一杯でそんなに感心しなくたって♪」

カサルディ提督「いや、それがさ…うちは規模が小さいから予算もあんまりつかないし、艦娘も少ないから当然出し合う食費の方も集まらなくて……たいていはインスタントコーヒーなんだよね」

提督「あらまぁ…エーゲ海管区と言えば激戦区なのに、それはずいぶんね?」

カサルディ提督「うん…まぁもっとも、うちはレロス島鎮守府って言っても「第十二」なんていうほとんど末席の小さい所だからね……ところでエレオノーラ、ここは貴族の別荘みたいだけどさ「ヴェネツィア第三」はどんな感じ?」

シモネッタ提督「そうね……まぁ、ここほど贅沢ではないけれど一応みんなに個室があるし、艦娘の子も結構いるから「まぁまぁ」って所ね」

カサルディ提督「そっか…そう言えばさ、エレオノーラがロリコ……いや、幼女が好きになったのってどうして?」

シモネッタ提督「…あら、それなら士官学校の時に話したことがなかったかしら?」

カサルディ提督「そうだっけ?」

提督「…確かあの時は私だけで、ルクレツィアはいなかったんじゃなかったかしら?」

シモネッタ提督「あぁ、そう言えばそうだったわ……そう、あれはまだ私が小さい頃だったけれど、近所に従姉妹がいて……」

カサルディ提督「へぇ、エレオノーラに従姉妹ねぇ……よそ様の話とはいえ、その従姉妹の貞操が心配になるわ…」

シモネッタ提督「失礼ね、その頃はまだ「愛の手ほどき」なんてしていなかったわ♪」

カサルディ提督「…」

シモネッタ提督「まぁとにかくその娘が可愛くて可愛くて…くりっとした瞳にぷるぷるの唇…小さくて柔らかな手足に、笑みを浮かべると出来るえくぼ……もう天使がいるようにしか思えなかったわ…♪」

カサルディ提督「あー…幼い頃からそんなだったわけね……」

提督「そのようね……前に聞いた時も同じ話をしてくれたもの」

シモネッタ提督「ええ…で、幼心にこう思ったの「将来は可愛い幼女に色々手ほどきできるような立派な女性になりたい」って…♪」

カサルディ提督「それって立派な犯……いや、まぁ…夢を持つのはいいことだと思うけどさ……」

提督「……しかもちゃんと実現できているものね…」

シモネッタ提督「ふふ…たまたま行ったイベントで艦娘の子に出会わなかったら、今ごろは保育士か幼稚園の先生になっていたでしょうね♪」

カサルディ提督「…さもなきゃ刑務所か……」

提督「ええ、それが一番ありそうね…」

シモネッタ提督「そう言えば…私は艦娘たちといちゃいちゃしたかったからで、フランカは歴史とか軍艦のことが得意だったから、って言うのは知っているけれど……ルクレツィアはどういう経緯で海軍に入ったの?」

カサルディ提督「あー、私はねぇ…実家はリーパリ諸島からシチリア沖に船を出して魚を取る漁師で……私は船を継ぐ気だったんだけど、シチリア辺りじゃ女が漁師になるっていうのはなかなか受け入れてもらえなくてさ…しかも「深海棲艦」騒ぎが起こって危険だからって、もう漁どころじゃなくなっちゃって……」

シモネッタ提督「…それで?」

カサルディ提督「まぁそういう訳で小舟の扱いは上手かったから、モーターボートの選手になろうと思ってヴェネツィアに行ったんだけど……海軍の制服ってスマートで格好いいし、お給料もきちんとくれるし…それに意外と小型艇も多いから、けっこう向いてるんじゃないか……って思ってね」

シモネッタ提督「なるほど…」

提督「…少なくともエレオノーラの理由よりは健全よね」

カサルディ提督「…確かに」

シモネッタ提督「もう、失礼ね…これでもちゃんと指揮は取れるのよ?」苦笑いするカサルディ提督とむくれてみせるシモネッタ提督…

…まずはこれで「提督たちの士官学校時代」はおしまいにして、あとは基地祭の最終日の模様を続けていこうかと思います……あと、せっかくなので「カリフラワーのアンチョビソース」のレシピを書いておきます…


………

カリフラワーのアンチョビソース(だいたい三人前くらい)

カリフラワー…一株
アンチョビ缶…四切れ程度
乾燥唐辛子…半分~一本分(輪切り)
ニンニク…ひとかけ(薄切り)
オリーヴオイル…適量(アンチョビ缶の油を使う場合はその分減らしておく)


カリフラワーは「幹」の部分から各「枝」ごとに切り出し、三分から四分くらい茹でておく(ゆでてすぐ和えると水っぽくなるので少し冷ました方がいいかも…)

フライパンにオリーヴオイルを(使う場合はアンチョビ缶のオイルも一緒に)たらして、唐辛子を(辛み成分が油溶性だそうなので、時間をかけた方が辛みが出ます)弱火でゆっくり温め、しばらくしたら薄く切ったニンニクを投入して、軽くカリカリになるまで火を加える

ニンニク・唐辛子オイルにアンチョビを投入して、木べらでほぐすようにしていく…完全に形がほぐれたら火を止めて、ゆでておいたカリフラワーを投入して和える……もし味が薄かったら塩を軽く振る


……こんな感じでわりと簡単です。温かい内はもちろん、冷めても前菜やワインのお供にぴったりで、しかも数日は置いておけるので常備菜にでも…

…昼下がり…

シロッコ「うーん……屋台の当番も終わったし、お昼も美味しかったわ…ふわぁ…あ…///」大きく伸びをしながらあくびをするシロッコ…

シロッコ「……この後は少し昼寝をして、それから今度はお客さんになって屋台でも巡ろうかな……って、お姉…」廊下の先を歩いている、見覚えのある淡い褐色のシルエット……シロッコは声をかけようとして口を開けたが、直前でやめた…

マエストラーレ?「…」

シロッコ「……くすくすっ♪」(ふふ、いいこと思いついちゃった……後ろからいきなり抱きついておっぱい触ったりしたら、堅物なお姉ちゃんのことだから「きゃあ!」とか可愛い反応をしちゃうよね……♪)

マエストラーレ?「…」

シロッコ「…そーっと、そーっと……」(お姉ちゃんにしては何だか少し背が低いような気がするけど…気づかないうちに私も背が伸びたのかしら……?)

マエストラーレ?「…」

シロッコ「……えい♪」ふにっ…♪

マエストラーレ?「ひゃあっ!?」

シロッコ「ん? …お姉ちゃんにしては胸がずいぶん慎ましいような…声も甲高いし……」

マエストラーレ(ヴェネツィア)「も、もうっ…いきなり何するのっ///」

シロッコ「えっ…あれっ!?」

マエストラーレ(ヴェネツィア)「…後ろからいきなり胸をわしづかみにするなんて……どういうつもり…っ///」

シロッコ「うわわ…っ、ごめんなさい! お姉ちゃんのつもりでびっくりさせようとしたんだけど……まさかヴェネツィアのマエストラーレだったなんて…」

マエストラーレ(ヴェネツィア)「……シロッコは自分のお姉ちゃんと私を間違えたの?」

シロッコ「そ、そういうこと……ごめんなさい…」

マエストラーレ(ヴェネツィア)「そういうこと…ならいいわ。間違えたのなら許してあげる♪」鎮守府のマエストラーレたちより少し小柄なヴェネツィアの「マエストラーレ」が少しつま先立ちをして、シロッコの頭をぽんぽんと撫でる…

シロッコ「あぁ、驚いた。 だってこっちに来た時はお団子二つだったのに、いつのまにか髪型がお姉ちゃんと同じになってるんだもの…」

マエストラーレ(ヴェネツィア)「ああ、これ? これはね、さっき食堂でここのマエストラーレと一緒になって……」

…数分前・食堂…

マエストラーレ(ヴェネツィア)「美味しいわねぇ、リベッチオ?」

リベッチオ(ヴェネツィア)「うんっ、おいひい…♪」

シロッコ(ヴェネツィア)「もう、口もとにべたべたつけちゃって…ほぉら、拭いてあげるから顔を寄せて?」

リベッチオ(ヴェネツィア)「んー…♪」

グレカーレ(ヴェネツィア)「あはは、本当にリベッチオってば子供なんだから……♪」

リベッチオ(ヴェネツィア)「えへへ…っ♪」

マエストラーレ「……ねぇ、マエストラーレ?」ヴェネツィアのシロッコたちが食堂から出ていくと、残っていたマエストラーレに声をかけた…

マエストラーレ(ヴェネツィア)「なぁに、マエストラーレ…って、これだと自分で自分を呼んでいるみたいでおかしな感じ♪」

マエストラーレ「そうね……って、そうじゃなくて」

マエストラーレ(ヴェネツィア)「…?」

マエストラーレ「いえ…他の鎮守府所属の「自分」と出会うのって初めてだけど、変な気分で……マエストラーレはどう?」

マエストラーレ(ヴェネツィア)「うーん…確かにちょっとおかしな気分ではあるけれど、瓜二つってほどじゃないから……従姉妹みたいな感じかな♪」

マエストラーレ「…なるほど、従姉妹ね……言われてみればそうかもしれないわ♪」

マエストラーレ(ヴェネツィア)「でしょ♪ ……あ、そうだ。せっかくだから髪をとかしてくれない?」

マエストラーレ「髪を?」

マエストラーレ(ヴェネツィア)「うん…せっかく自分の「分身」に会えたわけだし、同じ髪型にしてほしいの」

マエストラーレ「なるほどね……分かった、それじゃあ櫛を持ってくるわね」


………



マエストラーレ「……どう?」

マエストラーレ(ヴェネツィア)「うん…気持ちいい……」マエストラーレが二つのお団子を解いて櫛を走らせると、椅子に大人しく座っている「マエストラーレ」(ヴェネツィア)は心地よさそうに目をつぶり、頭皮をくすぐる櫛の感触を楽しんでいる……

マエストラーレ「きれいな髪…シモネッタ司令はいい女性(ひと)みたいね」

マエストラーレ(ヴェネツィア)「そうね、とってもいい女性よ…ちょっと幼女好みなのが欠点だけど……」

マエストラーレ「まぁ、それで言ったらうちの提督も女たらしの年上好きだから……」

マエストラーレ(ヴェネツィア)「…何でも完璧な人はいないって事ね」

マエストラーレ「そうかもね……あ…」梳いている髪からふわりと甘いいい香りが漂った…

マエストラーレ(ヴェネツィア)「どうしたの?」

マエストラーレ「あー、えーと……いま、マエストラーレの髪からいい匂いがして…///」

マエストラーレ(ヴェネツィア)「シャンプーかな……うちはみんなで集める分に提督がお金を足してくれるから、いいのを使えるの」

マエストラーレ「あ、ヴェネツィアもそういう風になっているのね。 …それにしてもいい香りで、まるで花園みたい♪」

マエストラーレ(ヴェネツィア)「そうかもね…これはうちの提督がアロマのお店に頼んで作ってもらってるオーダーメイドだから」

マエストラーレ「…それでこんなにいい匂いがするのね……すうぅ…はぁ……」髪をひと房持ち上げて深呼吸する…

マエストラーレ(ヴェネツィア)「んっ…///」

マエストラーレ「あ…ごめんなさい」

マエストラーレ(ヴェネツィア)「大丈夫、ちょっとくすぐったかっただけ……///」

マエストラーレ「そう……続けるわね?」

…マエストラーレは優しく櫛を走らせ、髪をとかしていく……そのたびにヴェネツィアの「マエストラーレ」からふわりと立ち上る甘い香りと、ちらちらのぞく淡褐色の艶やかなうなじ…小さな肩と華奢な身体は、とても北アドリア海を守る「艦娘」の一人とは思えない……

マエストラーレ「…ねぇ、マエストラーレ……///」

マエストラーレ(ヴェネツィア)「…なに?」

マエストラーレ「その、続きは……部屋で…しない…?」

マエストラーレ(ヴェネツィア)「……うん///」

…しばらくして・マエストラーレ級の部屋…

マエストラーレ「……それじゃあ、するわね…///」

マエストラーレ(ヴェネツィア)「…うん……来て///」

マエストラーレ「ん…ちゅ……ちゅっ///」

マエストラーレ(ヴェネツィア)「あむっ……んちゅっ、ちゅ…///」

マエストラーレ「あっ、あっ…んぁっ♪」

マエストラーレ(ヴェネツィア)「あふっ、んっ…あ♪」

マエストラーレ「んくっ、ちゅるっ……れろっ///」

マエストラーレ(ヴェネツィア)「ふぁっ、あぁ……んふ、ちゅる……ぅ///」

マエストラーレ「はぁ、はぁ……んはぁ…脱がすわ……ね///」しゅるり…とお互いの服をたくし上げると、そのまま滑らかに脱がしていった……ヴェネツィアの「マエストラーレ」はあどけない感じのする褐色の身体に、レースをあしらった揃いの白いブラとショーツがよく似合っていて、大人びたランジェリーも清楚な下着のどちらも中途半端で決まらない感じがするマエストラーレとしては少しうらやましい…

マエストラーレ(ヴェネツィア)「ん……」くちゅ…♪

マエストラーレ「んんぅ、マエストラーレ…ぇ♪」じゅるっ、ぢゅぷ…っ、んちゅるっ…♪

マエストラーレ(ヴェネツィア)「うん……あっあっ、そこ…ゆび…気持ちいいのっ……ふぁぁ…ぁっ///」くちゅくちゅっ…にちゅっ、じゅぷっ…♪

マエストラーレ「はぁぁ……あぁ…んぅ///」くちゅっ、じゅぶ…っ♪

マエストラーレ(ヴェネツィア)「あぁぁ、はぁ…も、もう…イキそう……///」

マエストラーレ「…んんぅ、はぁ…っ…私も……///」

マエストラーレ「あっ、あっ、あっ……んあぁぁぁっ///」くちゅっ、くちゅ…ぷしゃぁぁ……っ♪

マエストラーレ(ヴェネツィア)「はぁぁ、あぁ…んっ、くぅぅっ…///」とぷっ、ぷしゃぁ…♪

………

マエストラーレ(ヴェネツィア)「…って言うようなことがあったから……それに終わってから時計を見たら、実際は数分どころじゃなくて……///」

シロッコ「へぇ…普段はあんなにガミガミいう割には、お姉ちゃんも意外とスケベなのね……それにしてもほんの数分でそんなになるなんて、マエストラーレも意外とスキモノなのね♪」

マエストラーレ(ヴェネツィア)「い、言わないで……だって…髪をくしけずってもらうと身体がじんじんして……///」

シロッコ「へぇ…髪だけで?」

マエストラーレ(ヴェネツィア)「え、ええ…///」

シロッコ「ふぅん……ねぇマエストラーレ、何か隠してない?」

マエストラーレ(ヴェネツィア)「…っ!」

シロッコ「隠しても無駄よ…なんとなーく分かるもの」

マエストラーレ(ヴェネツィア)「…そ、それじゃあ教えるけど……他のみんなには…言わないでくれる?」

シロッコ「もちろん」

マエストラーレ(ヴェネツィア)「それじゃあ……その…私が提督とするときは…たいてい……髪をすいてもらうところから始めるから……///」

シロッコ「……なるほど。条件反射って言うやつ?」

マエストラーレ(ヴェネツィア)「そ、そう……だから、もう…髪の毛を撫でられると濡れてきちゃって……///」

シロッコ「ふふっ、そうなのね…♪」

マエストラーレ(ヴェネツィア)「ええ……と、とにかく他のみんなには秘密にしてちょうだい///」

シロッコ「もちろん…この「歴史の立会人」を信用して?」

マエストラーレ(ヴァネツィア)「…歴史の立会人って言うのは分からないけれど……ええ」

シロッコ「うん…それじゃあまた♪」

マエストラーレ(ヴェネツィア)「またね…ちょっと休憩してくるわ……」

シロッコ「チャオ……ふふーん、いいこと聞いちゃった♪」

…またしばらくして・食堂…

提督「……ふふっ、エレオノーラったら相変わらずね♪」

シモネッタ提督「ええ、それはもう…♪」

グレイ提督「ふふふっ、イタリアの提督は愉快な方々ばかりですわね……イギリスでしたらテレビ番組に出られますわ♪」

ヴァイス提督「いや、それはその……くすっ///」

提督「あ、やっと笑ってくれたわね……いつものきりりとしたシャルロッテも凛々しくて素敵だけれど、笑った顔も可愛らしくていいわ」

ヴァイス提督「あ、いえ…笑うつもりなどなかったのですが……///」

提督「いいんですよ…面白おかしい話をしているのですから、笑ってくれないとかえって心配になってしまいます♪」

グレイ提督「ええ、ドイツ人の事ですから笑うことは禁止されているとか…さもなければ脳のユーモア神経でも切除されてしまったのかと心配になりますわ」

ヴァイス提督「いえ、決してそんなことは……」

エクレール提督「まぁ、ドイツ人に笑いを理解させるのはイギリス人に美食を作らせるくらいの難事業ですから…致し方ありませんわ」

提督「そうね。でもフランス人にまともなデザインをさせるよりは簡単でしょうけれど♪」

グレイ提督「まぁまぁ、カンピオーニ提督……わたくしはフランス艦の特異なデザインは「見ている分には」面白いと思いますわ」

提督「考えオチですけれど…ね♪」

エクレール提督「ぐっ…また貴女はそうやって……!」

提督「そう言えば、マリーはバターが好きよね……食後のおやつにでも持ってきてもらいましょうか?」(…いつかの時は四つん這いになって、夢中で舐めまわしていたものね♪)

エクレール提督「…っ///」

提督「…ねぇディアナ、マリーにバターを……って、あら?」

ライモン「提督、ディアナさんでしたら出し物に出演しに行きましたよ」

提督「あ、そういえばそんなことを言っていたわね……でも練習しているところは見せてくれたことがないし、何をするのか気になっていたのよね」

デュイリオ「でしたら見に行きましょう…ね、提督♪」ぎゅっと身体を寄せて甘えるようにしながら、提督の腕を胸の谷間に挟み込みつつ抱き寄せた…

ライモン「わ、わたしもご一緒したいです……!」反対側の手を「恋人つなぎ」にして肩を寄せた…

提督「ええ…♪」

…数分後・特設ステージ前…

提督「それで、ディアナはどんな出し物をやるのかしら?」

ライモン「どうなんでしょう、ほとんどのみんなは知らないようですし…なんでもオリアーニから服を借りていたみたいですが……」

提督「ふーん、オリアーニからねぇ……別にディアナは服を持っていないわけでもないし、ますます分からないわ」

デュイリオ「まぁまぁ、何はともあれ見れば分かりますから…ね♪」

提督「それもそうね……さぁ、姫は特等席にどうぞ♪」並べてある折りたたみ椅子に百合姫提督を座らせる…

百合姫提督「あ、ありがとう……///」

提督「他の提督方は席を確保できましたか?」

グレイ提督「ええ、ご心配なく」

ヴァイス提督「ヤー、大丈夫です」

エクレール提督「……わたくしは「学芸会」などに興味はありませんが…立っているのもおかしいですから、とりあえず座らせていただきますわ」

コリドーニ「……さて書き出しは、と…「いよいよ世紀の大スペクタクルが始まろうと言うところ…我が艦隊の高速スループ、月の化身にして狩人の女神「ディアナ」の見せるものは一体何か…会場を埋め尽くす観客は今や遅しと彼女の登場を待ち望み、高まる期待に舞台の周囲はジュリオ・チェザーレの凱旋を待ちわびるローマ市内のような熱気に包まれております!」…と」鉛筆を舐めながら取材ノートに文字を書き殴っているコリドーニ…

提督「よいしょ、と…コリドーニの書き方は少し大げさだけれど……まぁ、あながち嘘でもないわね」

アオスタ「それでは、お次は高速スループ「ディアナ」です…盛大にお迎えください!」

提督「さぁ、やっとディアナの……って…」

ライモン「…えっ///」

デュイリオ「まぁ…♪」

百合姫提督「……わぁぁ…っ///」

グレイ提督「あら、なかなか大胆ですわね…?」

ディアナ(セーラー服)「……それでは、参ります…メイク・アップ…!」


…いつもはとある「月の女王」らしく、プラチナブロンドの髪を銀色のリングで特徴的にまとめ、水色のルージュを唇に引いているディアナ……が、ステージの上にいるディアナはオリアーニから借りたらしい、スカートの丈がふとももの半分もないようなミニスカートのセーラー服をまとい、紅い口紅と金の額当てを付け、髪を二つのお団子にまとめて魔法のステッキのような物を手に持っている…ステッキを天に掲げて合図をすると、両側に置いてあるスピーカーから、鎮守府でも見ている艦娘のいる日本の人気アニメ作品の主題歌が流れてきた…


提督「…ねぇライモン、あれって…確か」

ライモン「ええ、そうだと思います…おそらくセーラー(水兵)で海軍つながり、それにディアナはまぎれもなくムーン(月)の女神ですから……」

提督「…まさにぴったりね」

ライモン「ええ」

百合姫提督「ねぇフランカ……あの有名な「美少女戦士」のアニメってこっちでも放送しているの?」

提督「ええ。こっちではちょうど放送されているところで、テレビにかぶりつきで見ている娘もいるくらいよ……でもディアナがあれをやるとは思わなかったわ…」

ディアナ「♪~……つーきーの光にみーちびかーれー、なーんーどーも、めぐーりあうー…♪」ひらひらとプリーツスカートが揺れるたびに、真っ白なふとももがちらりとのぞく…

デュイリオ「あらまぁ…これはずいぶんと結構な目の保養だと思いませんか、提督?」

提督「えぇ、まぁ…その……かなりそそるわね♪」下には白い競泳水着を着ているらしいが、それでもしなやかなディアナの太ももがのぞくとなかなか際どい…拍手しながらも、思わず顔がにやける提督……

ライモン「ち…直視するのはちょっと恥ずかしいですね……///」ちらちらと視線を向けてはまた恥ずかしげに顔を伏せるライモン…

百合姫提督「えーと、その…イタリア艦の娘がやるとちょっと刺激的な感じになっちゃうのは分かったわ……///」

ディアナ「♪~…星座のまたーたき数え、占う恋のゆくーえ…同じくーにに生まれたーの、ミラクル・ロマンス…♪」

三つ編みの女の子「わぁぁ…あのおねえちゃん、とってもきれい///」

小学生くらいの女の子「すごぉ…い///」観客の小さな女の子たちは美しい顔とスマートな身体つきのディアナに見とれている……

コリドーニ「おぉ、なるほどこれは色っぽい…とはいえ艦齢(とし)を考えると少し無理しすぎといえなくもな……」

ディアナ「…」ビシュッ…!

コリドーニ「うわっ…と!」足もと数センチの所に矢が突き立って震えている……

提督「ほら、そうやって人の揚足を取るから……ディアナ、とっても素敵よ♪」軽く手を振ってウィンクを投げた…

ディアナ「///」恥ずかしげに小さく手を振りかえすディアナ…

………



提督「お疲れさま、ディアナ」

ディアナ「ありがとうございます……あの格好で舞台に上るのはかなり恥ずかしかったですが…///」

提督「よく頑張ったわね…とってもセクシーで、そのままいただきたいくらいだったわ♪」わざと色っぽいウィンクを投げる…

ディアナ「…提督ったら……そのようなおたわむれを……///」

デュイリオ「ふふっ……ところでディアナ、この後は忙しいですか?」

ディアナ「そうですね…今夜の夕食はエリトレアが当番ですので、特にこれと言った用事は……わたくしにご用でしょうか?」

デュイリオ「ええ、せっかくですからディアナとも回りたいと思いまして…ライモンド、貴女も一緒にどう?」

ライモン「わたしもご一緒していいですか?」

デュイリオ「ええ、もちろんですとも…♪ ディアナ、いかが?」

ディアナ「そうですね……お二人がそうおっしゃって下さるのなら、わたくしもご一緒させていただきます」

デュイリオ「なら決まりですね…と、言うことで失礼いたします♪」

提督「あら、だったら……姫、私と一緒に回る?」

百合姫提督「え、ええ……気持ちは嬉しいけれど…その……お邪魔じゃないかしら…?」

提督「ふふっ、別に逢引をするわけじゃないのよ♪」

百合姫提督「そう、なら……///」

足柄「…じゃあ私たちはここの娘たちと一緒に見て回るとして……提督、上手くいくように祈ってるわ…♪」耳元にささやいた…

百合姫提督「べ…別にそういうことじゃないのよ、足柄……///」

足柄「いいのいいの、分かってるから……そのかわり、戻ったら私が満足するまでとことん付き合ってもらうわよ…?」

百合姫提督「///」

足柄「ふふ……ほら龍田、ボーっとしてないで行きましょうよ!」

龍田「そうね…それでは提督、また後でね…♪」

百合姫提督「え、ええ///」

提督「……ふふっ、姫の所もなかなか積極的な娘がお揃いのようで…♪」

百合姫提督「えぇ、まぁ……///」

グレイ提督「……お二人とも、よろしければわたくしと回りましょうか?」

ヴァイス提督「はっ、ご一緒させていただきます…!」

エクレール提督「ええ、そうですわね……」

グレイ提督「ではそういう事で…失礼いたしますわ♪」そう言いつつ提督にだけ見えるよう、さりげなく眉を動かしてみせた…

提督「♪」こっそりウィンクを投げ返す提督…

シモネッタ提督「そう、なら……私たちも別行動しましょうか?」長い髪をふわりと揺らし、ちょっと意味ありげに微笑を浮かべてみせた…

カサルディ提督「賛成。私も肩章に星が付いてる相手と一緒にいると疲れて仕方ないし……と言うわけで、また後でね♪」小さく親指を立てると軽くうなずいた…

提督「ええ、また後で……今日は基地祭の最終日だから、夕食は2000時以降にずれ込むと思うの…その時に食堂でね」

カサルディ提督「了解…って、こら! ちょっと目を離すとうちの娘に手を出して……そっちにも駆逐艦の娘がいるでしょうが?」

シモネッタ提督「ふふ、だってとっても可愛らしくって……ね♪」

MS16「ふふっ……おねえちゃぁ…ん♪」

MS22「……エレオノーラおねえちゃん♪」

シモネッタ提督「んふ…むふふ…っ♪」

カサルディ提督「あー、もう…あんたらもいい加減にしなさいっ……」わざとガミガミ言いながら歩いて行った…

提督「それじゃあ行きましょうか」

百合姫提督「え、ええ…///」

………



百合姫提督「……でね、そういうことがあったの…♪」

提督「まぁ、ふふっ♪」

百合姫提督「あ…ごめんなさい、私ばっかり……フランカと一緒だと、ついいっぱいしゃべっちゃう……///」

提督「いいのいいの、私だっておしゃべりは好きだもの…せっかくだからどこかで座りましょうか?」

百合姫提督「えーと……そうね、それがいいと思うわ」

提督「…だったら裏手の丘にしましょうか。基地祭のお客さんはあそこには入れないことになっているから静かだし、眺めも素晴らしいわ……どうかしら?」

百合姫提督「…ええ、そうしましょう……///」

提督「決まりね♪」

…裏手の丘…

提督「ふぅ…やっぱり思った通りだったわ、風が気持ちいい……」軍帽を脱ぐとあずまやのテーブルの上に置き、長い髪を手でくしけずるようにして後ろになびかせながら軽く目を閉じた…

百合姫提督「ええ……さわやかで心地いいわ…///」丘を上る時に提督の差しだした左手を受け取るとさりげなく指を絡められ、少し気恥ずかしげに顔を伏せていた百合姫提督……そーっと手を離すと白い石のベンチに腰掛け、膝の上で上品に軽く組んだ…

提督「それじゃあ、おしゃべりの続きでもしましょうか♪」百合姫提督に微笑みかけると隣に座り、艦娘たちから買った軽食やお菓子を開けた…

百合姫提督「そうね……えーと、どこまで話したかしら…」

提督「ちょうど姫の鎮守府にいる艦娘たちの話をしていたところ……姫の所にはなかなか「癖のある」艦娘が多いみたいね?」

百合姫提督「ええ…うちの娘たちはよその鎮守府でちょっと色々あって転属して来たり、持て余した提督たちから受け入れた娘が多いから……」

提督「そういう娘たちの指揮を取れるなんて、さすが姫ね…♪」

百合姫提督「ううん、そうじゃないの……必要最低限の規則以外を守ってもらう以外は、あの娘たちに任せているだけだから…艦娘を「指揮している」なんておこがましいくらい……///」

提督「ふふ、姫ったら謙遜しちゃって…ちなみによその司令官が「持て余した」っていう艦娘って、どんな娘たちなの?」

百合姫提督「えぇと、そうね…例えば……」

………

…十年ほど前・佐世保…

仁淀「提督、またご一緒できましたね……改めてよろしくお願いします」

百合姫提督(少佐)「ええ。私も仁淀が一緒で嬉しい…///」

仁淀「もう、提督…///」

百合姫提督「……ご、ごめんなさい…つい……///」

仁淀「いえ…その、嬉しいです……とはいうものの、ほとんどの娘が提督と一緒に転属したようなものですが……」

百合姫提督「そうね…それと、またここに入ってくる娘がいるのよね?」

仁淀「そうですね……今回は呉第三から給糧艦「間宮」と工作艦「明石」、新発田第一から給油艦「速吸」です…これで後方支援が整いましたから、やっと近海護衛以外の作戦が立てられます」

百合姫提督「そうね…特に「間宮」は艦隊のお腹を満たす大事な艦(フネ)だし……みんなにより美味しいものを食べさせてあげられるわね」

仁淀「そうですね」

百合姫提督「ところで呉鎮の提督は、どうしてそんな大事な艦を手放す気になったのかしら…?」

仁淀「えーと、ですね…あー……」送られてきた資料を見て口ごもった…

百合姫提督「なんて書いてあるの?」

仁淀「これは提督がご自分でお読みになった方がよろしいかと……」

百合姫提督「…そんなに問題のある娘なのかしら……?」

仁淀「…問題というか……その…司令官に傷はつくかもしれません」

百合姫提督「そう…ちょっと読んでみるわ。 …給糧艦「間宮」、呉第三鎮守府より転入……特記事項…経費の横領および物資流用にて、けん責処分あり……詳細は「添付資料」に記載…」

仁淀「…食費の水増しや物資のちょろまかし……給糧艦や補給係の得意技ですね」

百合姫提督「……それから…工作艦「明石」、呉第三鎮守府より転入……特記事項「おおむね職務には忠実ながら、いささか鎮守府の風紀に馴染まぬ点あり。善導を要す」とあるわ…」

仁淀「……これだけだとはっきりしませんが、おそらく「問題になるほどだらしがない」とか…そういう事だと思います」

百合姫提督「それくらいだったらちゃんと言えば分かってもらえるし、どうにかなるわ……後は…と」

仁淀「給油艦の「速吸」です」

百合姫提督「そうだったわね…まぁ理由は何であれ、うちに「速吸」が来てくれて助かるわ……とにかく駆逐艦の娘たちは燃料の搭載量も少ないし…戦闘をしたらすぐ戻りが厳しくなるもの……」

仁淀「ええ、そうですね」

百合姫提督「それで…給油艦「速吸」、新発田第一鎮守府より転入…もしかしたら、日本海側だと長距離の護衛任務がないから大して必要なかったのかもしれないわね……えーと、特記事項は……「総じて優秀かつ、職務に対し熱心であるが…」優秀だけど何かあるのかしら……?」

仁淀「はい、続きに書いてありました…」

百合姫提督「ええ「…素行に多少の問題あり……特に風紀に関しては意識が緩く、ことさらに指導を要す」……ですって」資料のページをめくりつつ、少し眉をひそめた…

仁淀「風紀に関してですから…どうなんでしょうね?」

百合姫提督「うーん…どのみち会ってみればどんな娘なのか分かると思うから……着任の挨拶に来たら、横にいて?」

仁淀「はい」

………

提督「あらまぁ…姫ったら、あちこちから厄介払いされた艦娘を押し付けられているみたいね?」

百合姫提督「うーん…でも実際に会ってみるとたいていはいい娘ばかりだし……細かい規則にとらわれて鎮守府が息苦しくなるよりは、みんなにのびのびと生活してもらった方がいいと思うから…」

提督「そこは私も同じね…もっとも、ここはのびのびしすぎかもしれないけれど♪」

百合姫提督「私はいいと思うわ……せめて鎮守府では気楽にさせてあげないと…」

提督「その兼ね合いが難しい所よね? あんまり自由にさせると、今度は司令官としての命令に重さがなくなっちゃうし……」

百合姫提督「そうね、私もいまだに悩んでいるの……」

提督「同期に相談できる悩みでもないものね…それで、その娘たちはどうだったの?」

百合姫提督「ええ…それでね……」

………



百合姫提督「……ところで、間宮」

間宮「はい、何でしょうか?」

百合姫提督「えーと…その、少し言いにくい事かもしれないけれど……」

間宮「…はい」

百合姫提督「その…あなたの「けん責」処分について読んだけれど…」

間宮「あ、はい…えーと……添付資料があると思いますが、それに書いてある通りです……」

百合姫提督「そう…それで「資材を流用した」って言うのは……」

間宮「はい…実は未使用のきれいなドラム缶が鎮守府にあったので……それを縦割りにして焼き鳥用の焼き台に…」

百合姫提督「…じゃあ「経費の横領」っていうのは……」

間宮「お恥ずかしい話ですが…任務で疲れる艦隊のみんなに少しでも多く甘いものを食べて欲しくて、申請の時に食材を水増し請求してしまって…」

百合姫提督「……浮かせた代金でお菓子の材料を?」

間宮「はい、つい出来心で……反省しています…」

百合姫提督「……間宮」

間宮「はい」

百合姫提督「…お菓子で艦隊のみんなが頑張れるようなら、私が予算申請でねばってあげるから……みんなにたくさん作ってあげて?」

間宮「……はいっ♪」

提督「あら…てっきり「経費の横領」って言うから賭け事にでもつぎ込んだのかと思ったら…「みんなに甘いものを食べさせてあげたい」なんて、心の優しい娘じゃない♪」

百合姫提督「ええ、まぁ……そうね…」

提督「…それで、他の娘はどうだったの?」

百合姫提督「…えーと、ね……///」

………



百合姫提督「あなたが工作艦の「明石」ね…よく来てくれました」

明石「いえ、こちらこそ呉鎮から「間宮」ともども拾ってくれてありがとうございます…今後は提督のために力を尽くしたいと思います」

百合姫提督「ありがとう。とはいっても、ここはまだ小さい鎮守府だから……あんまり出番はないかもしれないわ…」

明石「そうですか」

百合姫提督「とりあえず工作室があるから、そこの運営をお願いするわ」

明石「はい♪」

…数週間後…

仁淀「……もう、困ったものですね」鎮守府の中で使っている自転車のタイヤがパンクして、直してもらおうとママチャリを押して工作室に運ぶ仁淀と百合姫提督…

百合姫提督「私も…急にパンクしてびっくりしたわ。明石、入るわね…?」普段はあまり使っていない、工作室に外から入る「勝手口」を開けた…

松「…っあ、はぁ…っ……あぁぁんっ!」くちゅくちゅっ…♪

竹「……はっ、はっ、はっ……あふ……っ、はひぃ…♪」ちゅくっ、にちゅっ…♪

梅「あひっ、んひぃぃっ、おっ、おぉ…っ……んあぁぁ…っ!」ぐちゅっ、じゅぶ…っ♪

明石「……んー、やっぱりいっぺんに三人くらい相手にしないと満足できませんね♪ …ここは居心地もいいし、欲を言えば呉みたいに女の子がいっぱいいればいいんですけ……ど…」工作室の隅にある三畳ほどの休憩室…そこに布団を敷き、それぞれの手で「松」と「竹」の割れ目をいじりつつ、同時に「梅」にまたがっている…

百合姫提督「…」

仁淀「…」

明石「あー……その、何かご用ですか…」

百合姫提督「……えーと、その…自転車がパンクしちゃって…///」

明石「あぁ、分かりました……それじゃあすぐやっておきますから…」

百合姫提督「…明石」

明石「はい」

百合姫提督「後で執務室まで来て?」

明石「…了解」

…しばらくして・執務室…

百合姫提督「……それで呉から転属させられたの?」

明石「ええ、そうなんですよ♪」

仁淀「…」(情事の最中を見つかってから、まるで隠す気がなくなったわね……)

明石「いや、勝手口を閉めるのを忘れるなんて…とんだ失敗でした♪」

百合姫提督「…」

明石「まぁ実を言うと呉鎮から放り出されたのも、倉庫で艦隊の娘とよろしくやってたのを見つかったせいでして…」

百合姫提督「…えーと、つまり「鎮守府の風紀がうんぬん…」っていうのはそのことだったのね……」

明石「ええ、そうなんですよ」

仁淀「また悪びれもせずに……まったくもう…」

明石「いやぁ、面目ない…♪」

………



提督「…それで姫の所に転出させられたわけね?」

百合姫提督「ええ…明石ときたら「同時に三人は横抱きにできます」って暇さえあれば艦隊の娘たちを布団に引っ張り込むし、何かにつけてタコみたいに腕や脚を絡めてくるし……///」

提督「それはまたずいぶんと…」

百合姫提督「……でも明石の能力は艦隊に不可欠で、佐世保の時は建造枠も足りなかったから…そのまま……」

提督「なるほど。イオニア海中心のここと違って、姫の場合は行動範囲が太平洋だもの…出先で修理できるのは大きいわよね」

百合姫提督「ええ…」

提督「なるほど……それと、もう一人いるって言ってなかった?」

百合姫提督「ええ、それが給油艦の「速吸」で……」

………

速吸「給油艦「速吸」、着任いたしました…!」

百合姫提督「ようこそ……えーと、ここの前は「新発田第一」ね?」

速吸「そうです」

百合姫提督「そう……ここの規則はお互いが過ごしやすくできるよう作られているから、それさえきちんと守れば何も問題はないわ…どうぞよろしくね、速吸」

速吸「はい、よろしくお願いします……ところで…」

百合姫提督「ええ」

速吸「……提督「ネコ」はお好きですか?」

百合姫提督「猫?」

速吸「はい。提督はそういう感じがしたのですが……」

百合姫提督「そうね…猫には好かれる方よ♪」

速吸「そうですか……ネコに好かれる…タチですか」

百合姫提督「うーん…「猫に好かれる性質(たち)」……まぁどちらかと言えばそうかもしれないわ」

速吸「……ちなみにどんなふうにお好きですか?」

百合姫提督「そうね…撫でたり膝の上であやしたり……あとはあごを持ち上げて軽くかいてあげたり……」

速吸「ほほう……♪」

百合姫提督「…速吸は猫が好きなの?」

速吸「ええ、ネコは好きです」

百合姫提督「そう、ならここにもいるから仲良くなれるといいわね…♪」

速吸「そうですね……唐突に変な質問をしてすみませんでした」

百合姫提督「いいえ…それじゃあまた後でね」

速吸「はい」


…半月ほど後・燃料倉庫…

百合姫提督「それで、ここで私に用事って何かしら…燃料の品質にでも問題があったの?」紺色の作業着姿でやって来た百合姫提督…

速吸「いえ、そういうわけでは……」そう言いながら「カチン…」と倉庫の鍵をかけた…

百合姫提督「そうなの……それじゃあ何か相談事?」

速吸「……そうですね、それに近いです…」

百合姫提督「…もしかして、誰かと仲が悪かったりするの……?」

速吸「いえ、みんな良くしてくれます」

百合姫提督「そう……じゃあ聞いてあげるから…なんでも好きなように話してみて?」横になっているからっぽのドラム缶の上に腰を乗せると、立っている速吸を下から見上げた…

速吸「そうですか……では遠慮なく…♪」ちゅっ、ちゅくっ…♪

百合姫提督「んふ、んぅっ…!?」

速吸「んちゅっ、じゅるるっ…んぐっ、じゅぷ……んちゅっ♪」

百合姫提督「ぷは…は、速吸……っぷ!?」

速吸「んちゅるっ、ちゅくぅ……んぐっ、ちゅるぅぅっ…♪」

百合姫提督「ふぅ、んぅぅ……っぁ///」息が苦しくなってきた百合姫提督は涙目で、速吸の姿もぼーっと霞んでくる…

速吸「……ぷはぁっ♪」

百合姫提督「ふぁ……あ///」

速吸「ふぅぅ…提督と会ってからと言うもの、ずっとこうしたかったです……さぁ、口を開けて…」

百合姫提督「あ、あ…ぁん…///」

速吸「ほら、飲んでください…」百合姫提督に覆いかぶさるようにして、とろっ…と舌先から唾液を垂らしていく……

百合姫提督「んくっ……んっ……こくんっ…///」

速吸「ふふ、提督に補給完了です……いかがでしたか、私からの洋上給油は…♪」

百合姫提督「ふわ…ぁ……とっても…気持ち良かったわ……///」身体中の力が抜け、とろんとしている…

速吸「…ふふ、まだこれからですよ……♪」百合姫提督の着ている作業着のズボンに手を差し入れると、下着の中に指を滑り込ませた……

百合姫提督「ふぁぁ…っ、あっ……んっ…♪」



百合姫提督「……それじゃあ速吸が新発田から転属になったのは…」

速吸「ええ……司令が親切なものですから、すっかり気があるものとやり過ぎてしまって…」

百合姫提督「あー…それでお互いに気まずく……」

速吸「はい…具体的にはですね、司令にしゃがんでもらって下の給油口から……」

百合姫提督「あぁ、いえ…聞かないでおくわ……///」

速吸「そうですか…」

百合姫提督「ええ……と、とにかくあまり任務に差し支えない範囲で…ね///」

速吸「はい、お任せください」


………

…続きを投下する前に、まずは改元おめでとうございます……これを読んでいる皆さまが毎日を平穏無事に過ごせますよう…

……それと故ポール・アレン氏の財団が撃沈された軽巡「神通」の残骸をコロバンガラ沖で発見したそうですね…老朽5500トン型軽巡ながら「華の二水戦」旗艦として奮戦したことは有名ですし、見つかって良かったと思います……史実ではともかく、せめてこのssの中では楽しく過ごさせてあげたいですし、どこかで機会を設けて登場させたいですね……


………

…とりあえず百合姫提督のところの問題児たちを紹介していきます…

給糧艦…間宮。1924(大正13年)年生まれ。単艦

艦隊に生鮮食料を補給するべく、大正12年に計画された給糧艦。約10000トン。

見たところは三島式の船体を持つ一本煙突の船…と、当時の貨物船そのままのデザインではあるが、石炭炊きの煙突から煤が飛んで食品に混入しないよう煙突を高くしたり、冷凍、冷蔵設備を持つなど当時としては充分に気を配って建造された本格的な給糧艦であった。

大戦時は既に老朽艦だったが、当時の貧しい日本の予算と乏しい資源、それに「艦隊決戦」のための主力艦優先の状況で特務艦艇に回せるような力がなかったので、限定的ながら病院・工作・長距離通信機能に、水偵や射撃用の標的まで搭載するなどあれもこれもと詰め込まれた「万能支援艦」のようなフネに…

…有名なところとしては和菓子店や豆腐屋など、あちこちの名店から職人を引き抜き、軍属扱いで乗船させていたことから艦上で作られる「ようかん」や「もなか」など菓子が絶品で、「間宮見ユ」で艦隊が大騒ぎになったとか、もとより鈍足の「間宮」が荒天時に難航していたところ、護衛駆逐艦に「貴艦前進中なりや、それとも後進中なりや?」と皮肉な文句を信号された…など、エピソードに事欠かない…

最後は米潜に雷撃されて沈んだが、それでも数発を耐えて乗員の退艦する余裕を与えた名艦…



百合姫提督の艦娘「間宮」はおっとりとした性格の艦娘想いで、母性愛にあふれている…もとは「呉第三鎮守府」にいたが「艦娘たちの喜ぶ顔が見たい」と、つい出来心で予算をごまかし、それが「呉第三」の提督にばれて訓告の上、厄介払いで百合姫提督のところに転属となった……鎮守府では食事の準備に加えて、ちょっとした病気や怪我の面倒も見たりちょっとした修繕もこなすなど、多彩な才能の持ち主で面倒見もよく優しい…が、無線探知機能が高いことから噂話に詳しい「金棒引きで」お菓子の大きさをちょっとづつ削っては他の艦娘や訪問者に「ワイロ」として振る舞ったり、勝手に資材を流用してしまうなど、優しい顔をしてなかなか悪いところのある艦娘……実は一緒に転属してきた「明石」と横流し仲間だったりなかったり…

………


工作艦…明石。1939(昭和14)年生まれ。単艦

連合艦隊唯一かつ最も優れた工作艦。旧式戦艦「朝日」の改造でお茶を濁していた海軍が、本格的な工作艦として計画した。約9000トン

設計は戦前のアメリカ海軍工作艦「メデューサ」をよく研究しただけあって船体は(甲板上でも作業がしやすいよう)平甲板の二本煙突で、艦内の工作スペースを大きくするべく乾舷も高い…と、かなり独特の日本艦らしくないデザインをしている。

その性能は極めて優秀で、主機として採用された「マン式」ディーゼルも性能が良く、工作艦にして約19ノットの軽快さを誇る。
修理能力もけた違いで、連合艦隊が必要とする年間修理数の4割をこなせる、まさに「動く海軍工廠」と言うべき艦で、戦時中はほとんどトラック諸島で修理に明け暮れ、米海軍からは「最優先目標」とされるなど、その重要さは敵味方を問わず知れ渡っていた。

自衛火器には前後の12.7センチ八九式連装高角砲2基と、艦橋脇に25ミリ連装機銃が2基。同型艦二隻の追加計画もあったが、予算が艦隊決戦用の主力艦に振り向けられてしまい見送られてしまった…



百合姫提督の艦娘「明石」は、トラック諸島で同時に三隻を修理して(抱いて)いたということから、とにかく女好きで暇さえあれば艦娘とレズセすることしか考えていない…呉第三鎮守府で他の艦娘たちと「よろしくやっていた」ところを見つかり、それ以上の問題を起こされる前に…と、工作艦のいなかった百合姫提督の所に転出させられた……海流が強く肉質の引き締まったタコが取れる「明石」だけに、腕や脚を絡めてくるとなかなか引きはがせない…

………


給油艦…速吸(はやすい)。1944(昭和19)年生まれ。単艦

本来は「風早(かざはや)型」給油艦の三番艦だったが、各艦が様々な目的のために改造されたことから共通点が薄く、単艦扱いになっている。約18000トン。

そもそもの風早型は「剣埼(つるぎざき)」型高速給油艦「剣埼」「高崎(たかさき)」が潜水艦母艦(後にさらに改造して空母「祥鳳」と「瑞鳳」)に流用されてしまったことから昭和16年(1942年)に代艦として計画されたもの。16.5ノットと給油艦としては高速で、連合艦隊への補給任務に役立てられる…予定だった。

しかしながらミッドウェー海戦以降の空母の不足から「補助的に艦載機の発進能力を持たせよう」という計画変更が行われ、船体中央にカタパルトが設置された…当初は対潜用の水偵ということだったが、そのうちに艦攻を搭載するなど話がふくれあがって意味不明な状態になったが、実際に補助空母的な用法で用いられたことはなく、まったく意味のない改造だった…高速給油艦として重油の輸送に用いられたが、おおよそ四カ月で撃沈されてしまうなど、優秀な性能を活かせなかった

…自衛火器は12.7センチ八九式連装高角砲2基、25ミリ九六式三連装機銃2基と連装1基、カタパルト1基に水偵(あるいは水攻)7機(うち予備1機)



百合姫提督の艦娘「速吸」は新発田第一鎮守府から転属にしてきた…表向きはごくごく真面目な艦娘でやることもてきぱきしているが、実はかなりのタチ……「新発田第一」の提督が親切なことからやり過ぎてしまい、気まずくなってしまった新発田の提督が転属させた…得意なのは「洋上給油」と称するねっとりとしたキスと唾液を飲ませること……場合によっては違う方の「給油口」から「洋上補給」をすることもある、かなりの変態…



………


提督「……なかなかおてんばな娘たちみたいね♪」

百合姫提督「え、ええ…///」

提督「それにしても「大和撫子」を絵にかいたような姫が提督を志すなんて…いまだに信じられないわ」

百合姫提督「…もう、そのことは言いっこなしよ……///」

提督「そういわれてもね……姫は小さい頃「カブキ」の俳優さんになりたかったんでしょう?」

百合姫提督「そうなの…だから子供の時におねだりして三味線とか日舞を習わせてもらったんだけど……」

提督「…確か「カブキ」は女人禁制なのよね?」

百合姫提督「ええ、だから中学や高校の時は何になろうか決められなくて迷っていたのだけど……たまたまパンフレットがあって…」

提督「それで士官学校に入ったのよね?」

百合姫提督「そう。とにかく艦娘を担当できる女性自衛官が足りないみたいだったから、防大に…」

提督「なるほど。確かに鎮守府司令官は女性士官を充てることが多いけれど……まぁ「女の子」だらけのところに男性士官が一人だと、何かと居心地が悪いでしょうし…ね?」

百合姫提督「そうね、それに逆のこともあるみたい」

提督「あー…こっちでも時々聞くわ。艦娘たちに愛され過ぎて色恋沙汰になったり、憲兵の査察が入ることになったりで「消耗」しちゃった話……」

百合姫提督「ええ……私の一つ下にもいたわ。まるで旧海軍の「理想の青年士官」みたいな好青年で、期待もされていたそうだけど…」

提督「…鎮守府の娘と抜き差しならない仲にでもなったの?」

百合姫提督「ううん…半年で「耐え切れない」って退官願いを出したらしいわ……」

提督「あらあら……ところで、姫のところの猫ちゃんは二匹とも元気?」

百合姫提督「ええ、昨日は「大淀」からメールがあったわ」

提督「あら、いつもは「仁淀」じゃなかった?」

百合姫提督「そうだけど、時々交代するの…そもそも仁淀は「あの時」未成に終わったから、本来なら「大淀」型は一隻なのだけど……どうしたことか、他の鎮守府で「建造」できちゃって、こっちではそういうのを「幽霊」って呼んで事故扱いするから…」

提督「……姫のところならちょうどいい…って、押し付けられたわけね?」

百合姫提督「ええ、まぁ…でもとってもいい娘よ?」

提督「ならよかったわ」

百合姫提督「昨日も「ミケ」と「モカ」がじゃれついてくるところを送ってくれたわ…見る?」

提督「ええ♪」…百合姫提督がスマートフォンの動画を出してくれ、それをのぞき込む提督……

………



ミケ(三毛猫)「ミャア…♪」

モカ(薄茶色の猫)「ナァ…ン♪」

大淀「あぁ、はいはい……いまあげますからね」尻尾を立ててすり寄ってくる二匹の猫をあやしつつ、おやつの煮干しと鰹節をがさごそやっている…

ミケ「ミァァ…ン♪」

モカ「……ニャア…ァン♪」

大淀「…はい、待たせましたね…召し上がれ?」

ミケ「フニャア…♪」

モカ「……ンニャア♪」



提督「…相変わらず可愛いわね。こういう時だけは「猫にすればよかったかしら…」って思うわ♪」

百合姫提督「ふふ、ルチアだって可愛いじゃない…♪」

提督「まぁね…それにどうせ飼うなら、猫よりも「ネコ」を飼いたいもの♪」冗談交じりに軽く舌なめずりをしながら、いやらしいウィンクをしてみせた…

百合姫提督「…もう、フランカったら♪」

提督「ふふ……って、もうこんな時間」

百合姫提督「あら、本当ね…そろそろ戻りましょうか」

提督「二人きりでもっと話していたいけれど…ね♪」

百合姫提督「……それで、執務室の扉を開けたら途端にごつん…って」

提督「そういうのってあるわよね」

百合姫提督「ええ、特に私と「電」は注意していないときに限ってよくぶつかるの…って、もう着いちゃった…」少し残念そうな表情の百合姫提督

提督「まぁまぁ、この後だっておしゃべりする時間くらいあるわ……紅茶でも淹れるから、ゆっくりして?」

百合姫提督「ええ、ありがとう…」

提督「どういたしまして♪」

…食堂…

提督「みんな、お疲れさま……売れ行きはどう?」交代で休憩に入っている艦娘たちに声をかける…

アッテンドーロ「おかげ様で上々よ…♪」

ムレーナ(中型潜フルット級「ウツボ」)「ああ……いいシノギになった…」マフィアのドゥーチェ(首領)のようにどっしりと構え、ルチアの首を撫でてやっている……

スクアロ(中型潜スクアロ級「サメ」)「……くくっ、儲かって笑いが止まらないってわけでね…♪」ちんぴらギャングのように硬貨を手の上ではじき上げている…

提督「もう…お行儀が悪いから硬貨をはじくのは止めなさい?」

スクアロ「…了解だよ、提督……」ピンッ…とひときわ高く硬貨を投げ上げると、落ちてきたのを「パシッ!」と手で受け止めた…

提督「まったく……コーヒーでも飲むことにするわ」

カサルディ提督「あ、お帰り…そう言えばフランチェスカ」

提督「んー?」

カサルディ提督「なんか客室に変な落書きがあるんだけど」

提督「えぇ?」

カサルディ提督「別に目立つようなところじゃないんだけど……もしかして知らなかった?」

提督「ええ…どこにあるのか教えて? 見に行くから」

カサルディ提督「分かった。それじゃあ案内するわ」

…カサルディ提督の客室…

提督「…それで、どこにその落書きがあるの?」室内をざっと見わたしてから、両の手のひらを上に向けた…

カサルディ提督「それがね、えーと…あー、ここここ。さっきハンドクリームの入れ物を落としちゃって、それで見つけたのよ」ベッドの前で四つん這いになり、底板を見上げている…

提督「どれどれ…?」ホコリがつかないように制服の上着を脱いでベッドの上に置くと、カサルディ提督の隣で同じように這いつくばった…

カサルディ提督「ほら、そこ…見えるでしょ?」

提督「…本当ね、確かに何か描いて……あーっ!」

カサルディ提督「何、どうしたの?」

提督「やられたわ…きっとフレッチャーね……」

…ベッドの下に潜り込んで底板を見上げると、丸い頭を壁からのぞかせて大きな鼻をだらんとさせ、両手を壁にかけている変な漫画と一緒に「キルロイ参上」(Kilroy was here)と書いてある…

カサルディ提督「誰が描いたか知ってるの?」

提督「ええ…交流プロジェクトでこっちに来た米海軍の……まったくもう、こんなところに描いてあっでも気付く訳ないわ」あきれたように肩をすくめた…

カサルディ提督「なんなの、あれ?」

提督「戦時中にアメリカで流行ったイタズラ書きよ…もう、あとでノーフォークのジェーンに電話しないと……」

カサルディ提督「……いいけど、この調子だと他にも描いてありそうじゃない?」

提督「ええ…明日は基地祭の片づけがあるから、ついでに探すわ」

カサルディ提督「この調子じゃとんでもない所にも描いてありそうだね?」

提督「そうね……まぁ、みんなを総動員して探すことにするわ…」

カサルディ提督「ま、頑張って……いやぁ、うちは小さい鎮守府でよかった♪」

提督「ふぅん…そういうことを言うと、今夜の夕食は携行糧食になるわよ?」

カサルディ提督「うわ、それだけは勘弁してよ…なんてね、あははっ♪」

提督「ふふふっ…♪」

グレイ提督「……まぁまぁ、キルロイとはまた懐かしいものを」

提督「ええ…もしかしたらメアリの客室のどこかにも描いてあるかもしれません」

グレイ提督「わかりました。見つけたらお教えいたしますわね」

シモネッタ提督「じゃあ私も探してみるわ。可愛い娘と一緒に過ごさせてもらったから、そのお礼に…ね♪」

ヴァイス提督「私も発見に協力します…ビスマルクとティルピッツにも、客室内を調べさせます」

提督「グラツィエ」

グレイ提督「…わたくしもエリザベスとエメラルドにそう言っておきましょう……ところで」

提督「はい、何でしょうか?」

グレイ提督「……わたくしはどこにいたずら書きをしたらよろしいですか?」

提督「あー、できれば落書きを増やすのはなしで済ませていただけると助かるのですが…」

グレイ提督「あら…アメリカ海軍は良くて英国海軍はいけないのですか?」

提督「いえ、どこの海軍でもいたずら書きはちょっと…いえ、だいぶ困りますから」

グレイ提督「あら、残念ですわ……アメリカに「キルロイ」があるなら、我が英国にも「チャド」(Chad)がありますのに…」

提督「チャド…ですか?」

グレイ提督「ええ……そうでしょう、エリザベス?」

エリザベス「さようでございます…チャドは「なんでまた~がないの?」で有名な、戦時下における英国の落書きでございます」

提督「なるほど……と、とにかく落書きを増やすのはやめていただけると助かります…」

グレイ提督「ふふ、分かっております…冗談ですわ♪」

提督「…」

………



…日没時…

提督「それでは教官、また機会があったらいらして下さい」メッセ兵曹長の見送りに、門まで来た提督たち…

メッセ兵曹長「そうだな。もっとも、お前たちがちゃんと「提督してる」のを見て安心したからな……しばらくは来ないさ」

カサルディ提督「そうですか、うちにも来てくれるかと思ったんですが…少しさみしいですね」

メッセ兵曹長「なぁに、万年下士官の私が鎮守府の司令官に向かってガミガミやることもないだろう……しかしな、お前たちは制服の金モールと略綬を増やすのもいいが、ちゃんと運動しろよ…あまりたるんでるようだと本当にちょくちょく押しかけて、特別メニューを組んでやるからな!」

提督「…気を付けます」

シモネッタ提督「ええ、ちゃんとします…」

メッセ兵曹長「ははっ、冗談だよ……それじゃあな」敬礼を交わすと順番に提督たち三人を抱きしめて背中を叩き、海軍の「フィアット・パンダ」に乗って走り去った…

提督「ふぅ……相変わらずだったわね?」

カサルディ提督「まぁね。それにその方がいいよ」

シモネッタ提督「そうね…何だか士官学校に戻った気がしたわ……♪」

提督「あら、エレオノーラったらもう思い出にひたる年頃になったの?」

カサルディ提督「そりゃそうでしょ……エレオノーラの基準って、小学生以上はみんなおばあちゃん扱いなんでしょ?」

シモネッタ提督「まぁ、失礼ね」

カサルディ提督「違うの?」

シモネッタ提督「……いいえ♪」

カサルディ提督「これだもん…全くもう!」

提督「ふふふっ♪」

………

提督「…そろそろ基地祭も終了の時間ね」

ライモン「そうですね……こうしてみると、ずいぶん早かった気がします」

提督「そうね。色々とお疲れさま」

ライモン「はい…でも、頑張ったのはわたしだけではありませんから……みんなに言ってあげてください」

提督「もちろんみんなにも伝えるわ……でも、まずはライモンに♪」

ライモン「…っ、そういうえこひいきはダメですよ……///」

提督「いいの、ライモンは特別…ちょっとした司令官特権ね♪」そう言ってぱちりとウィンクを決めた…

ライモン「///」

提督「……それにしても、お客さんが帰らないうちに憲兵隊や広報の人にあいさつするわけにもいかないし…夕食が待ち遠しいわ」

ライモン「もう…提督ってば」

提督「だってお昼にパスタを食べて、その後はコーヒーとお菓子を少し…それで午後はあちこち歩き回っていたんだもの……いっそ歩数計でもつけておけばよかったわ。きっとメッセ教官だって納得するくらい歩いたもの」

ライモン「でも、いつものように夕食を召しあがったらおつりがきちゃいますね」

提督「さて…何の事かしら?」

ライモン「ふふ、提督は相変わらずですね…♪」

提督「ええ……それじゃあ行きましょうか」

ライモン「はい」



アナウンス「えー、間もなく基地祭終了の時間となりますが…本日は最終日ですので、特別な催しがございます。ご来場の皆さま、どうか海側をご覧ください」

提督「よかった、ちょうど真正面ね……さぁ、姫もここに来て?」

百合姫提督「なぁに?」

提督「いいからいいから…グレイ提督、ヴァイス提督もどうぞ?」

グレイ提督「…あら、まだ何かございますの?」

ヴァイス提督「ヤー……?」

エクレール提督「…ちょっと、どうしてわたくしには声をかけないんですのっ?」

提督「あら…てっきりマリーはそういうのに興味がないかと思って♪」

エクレール提督「何が始まるかも知らないのに、興味がないかどうかなど分からないでしょうが…!?」

提督「まぁまぁ、冗談よ……ほら、ちゃーんと席も用意してあるわ♪」

エクレール提督「……なら構いませんわ」

提督「ふふっ…マリーってばあまのじゃくだから、こんな具合に最初は声をかけない方がいいの♪」

カヴール「ええ、たいていのフランス人はそうですものね…♪」

エクレール提督「ちょっと、何かおっしゃいまして?」

提督「いいえ…それより「リットリオ」級の辺りに注目よ……リットリオ、お願い♪」携帯無線機でひとこと伝えた…

…鎮守府所属艦艇の中央に停泊しているリットリオ級戦艦…その中央両舷にならぶ、スマートなデザインの砲塔に収まっている90ミリ高角砲……の三番、四番砲のさらに外側にそれぞれ二基づつ装備されている星弾(照明弾)用の旧式砲「120ミリ40口径・アームストロング・モデル1892」がきりきりと仰角を取り、鈍い音と一緒に砲弾を撃ち上げた……数秒ほどシュルシュルと尾を引く音がすると、空中でパッと花火が広がった…リットリオ、ヴェネト、ローマの三隻でそれぞれ「緑・白・赤」とイタリア国旗(トリコローリ)の色をした花火を打ち上げると、観客から歓声と拍手が上がる…

グレイ提督「…まぁ♪」

提督「ふふっ…どう、姫?」

百合姫提督「……ええ、とってもきれい♪」

エクレール提督「むぅ…イタリア海軍にしてはなかなか洒落ておりますわね……」

提督「ふふ、上手くいったわね…リットリオ?」

リットリオの声「はい、大成功ですね♪」

ヴェネトの声「良かったです…ちょっぴり心配でしたから」

ローマの声「陸からはどうですか……綺麗に見えていますか?」

提督「ええ、それはもう…打ち上げが終わったら戻っていらっしゃい。とっておきのワインを開けるわ♪」

…食堂…

提督「えー……まずは三日間の基地祭お疲れさまでした…おかげで大変な盛況ぶりだったし、事故や騒ぎもなく過ごせたわ……みんな、協力ありがとう♪」

カヴール「いえいえ…♪」

アオスタ「提督こそ大変だったと思います」

フルット「ええ、私たちこそお礼を言うべきかと…♪」

提督「いえ、私はもうあたふたしているばっかりだったもの…みんなの協力があってこそよ」

チェザーレ「なに、提督は充分立派にこなしていたとも……もっと自信を持つがいい」

提督「ありがとう、チェザーレ///」

トレント「…チェザーレの言う通りです…私たちが楽しく出来たのも提督のおかげですから……///」

ザラ「ええ、とっても立派な指揮だったと思うわ」

ガリバルディ「いい基地祭だったわね…もっと続けたいくらい♪」

提督「そ、そんなに褒められると照れるわ……とにかく、みんなのおかげよ///」

ガッビアーノ「……ところで…お互いに褒め合うのもいいけど、私としては早く食べたいんだけどな」

チコーニャ「…もう、ガッビアーノお姉ちゃんってば……///」

提督「ふふっ……ガッビアーノもああ言っているし、私もお腹が空いたから…とにかく挨拶だけ済ませましょう♪」

提督「それでは、基地祭が無事終了したことを祝って……乾杯♪」

一同「「乾杯♪」」

提督「んくっ…んっ……♪」さーっと泡立ち、すがすがしい味わいで喉を流れ落ちるスプマンテ(イタリア・シャンパン)のグラスを空け、それから席についた…

ライモン「お疲れさまでした、提督」

カヴール「…いい基地祭でした。とても楽しかったですよ♪」

デュイリオ「そうね…おかげで私のようなおばあちゃんもつい張り切ってしまって、しばらくは興奮が収まりそうにないわ……うふふっ♪」熱っぽい視線で提督をじっと眺め、それから小さく舌なめずりをした…

提督「…っ///」

…軽巡のテーブル…

ガリバルディ「あーあ、基地祭も終わっちゃったわね……ところでエウジェニオ、戦績は?」

エウジェニオ「ふふふ…十五戦全勝よ♪」

ガリバルディ「へぇ、さすが…」

エウジェニオ「おかげ様で連絡先を書いたメモがいっぱい……で、そちらは?」

ガリバルディ「……二十戦十五勝、五引き分け」

エウジェニオ「ふふ、さすがは「熱き革命の闘士」ガリバルディ…恋もお熱いのね♪」

ガリバルディ「まぁね……それじゃあお互いに「大漁」を祝して♪」グラスを掲げてエウジェニオのグラスに「こつん…♪」と触れ合わせた…

ジュッサーノ「……あぁ、もう。この二人ときたらずっとこんな話ばっかり///」

カドルナ「やれやれですね…」

アッテンドーロ「本当にこの二人ときたら女癖の悪い……それでいてこの見かけだもの、そりゃあ手もなく参っちゃうわよね…」

アブルッツィ「姉としてはまったく困りものよ…アオスタ、どうにかならないの?」

アオスタ「ええ…それはもう三日にあげず、口を酸っぱくするほど言い聞かせているのだけど……」

エウジェニオ「まるでソ連のプロパガンダ放送なみにね♪」

アオスタ「……見ての通りこの調子で…」

アブルッツィ「…じゃあ乾杯しましょう?」

アオスタ「ええ、お互い苦労人の姉同士…ね」

…しばらくして・駆逐艦とコルヴェットのテーブル…

ナザリオ・サウロ「…ふぅ。美味しいけど…もうお腹がはちきれそう……」フォークを動かすのもおっくうな様子で、一口づつごちそうを口に運んでいる…

ダニエレ・マニン(サウロ級)「ほんとにね……この鶏のトマト煮込みだって最高だと思うの…」

クィンティノ・セラ「わかります。私ももっと食べたいですけれど、お腹の方が「もういい」って言ってます…こういう時はいっぱい食べるレオーネたちがうらやましいですね」

フランチェスコ・クリスピ(セラ級)「…まぁ、身体に見合った量があるっていうことだから……欲を言えばもう一回おかわりしたいけれど…」名残惜しそうに大皿のスパゲッティ・ボロネーゼを眺めている…

レオーネ(レオーネ級「雄ライオン」)「はぐっ、んぐ……セラたちはもう食べないのか?」…相変わらずちっともまとまらない金茶色の髪が「獅子」の名前にふさわしいたてがみのようになっている…

セラ「はい、私は身体が小さいので…もうお腹一杯です」

レオーネ「それは残念だな…じゃあ、せめてワインでも?」そう言ってガラスのデカンターを差し出した…

セラ「ええ、そうします」

ティグレ(レオーネ級「虎」)「あー、だめだめ…もっと食べて強く大きくならないと!」なかば無理やりに豚のあばら肉のローストを盛りつけようとする…

パンテーラ(レオーネ級「ヒョウ」)「まぁまぁ、無理に食べさせちゃだめよ…?」

ティグレ「そうはいっても、セラとかサウロとかは小さくて色が白いから病弱に見えるんだ……もっと肉を食べて元気を出さないと!」

セラ「気持ちは嬉しいです、ティグレ…でも私たちは充分元気ですから、大丈夫」

ティグレ「ならいいけど……ところでパンテーラ、もう一切れ取って?」

パンテーラ「ええ」

アルフレド・オリアーニ「…向こうは相変わらず元気いっぱいね……って、カルドゥッチ?」

ジョスエ・カルドゥッチ(オリアーニ級)「…その瞳は情熱を宿し……その髪はオルフェウスの竪琴の弦よりも美しく鳴り……はぁぁ♪」…ガリバルディに傾倒して「イタリア統一運動」に加わり、イタリア初のノーベル文学賞も授かった詩人「ジョスエ・カルドゥッチ」の名前を持つカルドゥッチ…普段から熱烈に崇拝しているガリバルディがなごやかに談笑している様子を、夢見るような表情で眺めている……

ヴィンチェンツォ・ジオベルティ(オリアーニ級)「…相変わらずガリバルディのことになるとこの調子ね」

ヴィットリオ・アルフィエリ(オリアーニ級)「ガリバルディもまんざらでもないみたいだし……いい関係なんじゃない?」

カラビニエーレ(ソルダティ級「カラビニエーリ隊員」)「…それはいいけど、カルドゥッチったらフォークとナイフをあべこべにして…ちょっと、危ないわよ!?」

ガリバルディ「♪」熱っぽい視線に答えるように、カルドゥッチに向けて軽くウィンクを送った…

カルドゥッチ「…ぁ、ガリバルディが私にウィンクを……ふへぇ♪」

カラビニエーレ「…早くよそわないと肉汁がこぼれるから……あぁ、もうっ…何でこの席順になっちゃったのかしら……!」

オリアーニ「おかげで楽できていいわ♪」

アスカーリ(ソルダティ級「植民地兵」)「…んだ。それにカラビニエーレは面倒見がええだでな……ちょうどいいべ♪」

コルサーロ(ソルダティ級「アラビア海賊」)「ああ、しかもこっちに「ガミガミ」の火の粉が降りかからないで済む…まったく結構だ」…ターバンに三日月刀と「アラビアン・ナイト」のような格好で、肉を指でつまみあげたりとお行儀が悪い……

ヴェリーテ(ソルダティ級「軽歩兵」)「うんうん……ちょっと杓子定規なところが傷だものね」

コルサーロ「そういう事さ……なぁヴェリーテ、その肉をもう一枚切ってくんな」

ヴェリーテ「…分かったわ、姉さん」戦時中に損傷し、未成艦の「カリスタ」(戦車兵)を接合して修復したヴェリーテは顔の左右で瞳の色や雰囲気が違い、話し方も時々変わる…

コルサーロ「おう、頼むぜ……っと、向こうは向こうで忙しい連中だぜ…♪」

エウロ(トゥルビーネ級「南東風」)「…ふー……あつっ!」

トゥルビーネ(トゥルビーネ級「旋風」)「もう、気を付けなさいよ…平気?」

エウロ「ん…ちょっと熱くて」

トゥルビーネ「もう……ちゃんと冷まさないから」

エウロ「ううん、ちゃんと冷ましたんだけど…私は暖かい風だから、ね?」

トゥルビーネ「こら、そういう言い訳をしない。ボレア、代わりに冷ましてあげて?」

ボレア(トゥルビーネ級「北風」)「えぇ? いい加減「ふーふー」してあげる年でもないでしょうよ…」

トゥルビーネ「そう言わずに頼むわ」

ボレア「やれやれ……ふー…ふーっ……」

オストロ(トゥルビーネ級「南風」)「くすくすっ…仲うるわしいことで♪」

ボレア「うるさいわね…だったら代わりにやってよ?」

オストロ「私は「南風」だから冷ますのには向いてないわ…と♪」くすくす笑いをしながらオリーヴをつまんだ…

…食後…

フルット(フルット級「波」)「ふぅ…ドルチェがシャーベットだと、口の中がさっぱりしてよろしいですね♪」

ゴルゴ(フルット級「渦」)「はい、姉上」

ロモロ(R級「ロムルス」)「…そう?」

レモ(R級「レムス」)「うーん、レモはお肉の味が残ってる方がいいけどなぁ…牛肉は脂がのってて、とっても美味しかったし♪」

フィザリア(アルゴナウタ級「カツオノエボシ」)「お肉もよかったですが、とにかくカサゴが美味しかったですねぇ……お魚さんは大好きですから…ぁ♪」相変わらずクラゲらしいふわふわ、ゆらゆらした様子だがどこか意味深な口ぶりでつぶやいた…

スパリーデ(フルット級「鯛」)「///」

ムレーナ(フルット級「ウツボ」)「…っ!」

…バーカウンター…

ポーラ「提督、基地祭お疲れさまでしたぁ~…これで安心してお酒が飲めますねぇ♪」

提督「ええ、おかげさまで……何か美味しいのがいいわね」

ポーラ「でしたらぁ…綺麗な「アプリコット・サンライズ」なんてどうですかぁ?」

提督「アプリコット・サンライズっていうと…アンズのリキュールとオレンジジュースと……」

ポーラ「グレナデン・シロップですねぇ…最後にそっと注ぐと、紅いシロップとステアしたオレンジ色のお酒の部分がくっきり分かれて綺麗ですよぉ♪」

提督「飲み口も甘くて美味しいものね……じゃあそれでお願い」

ポーラ「はぁい♪」

ザラ「…それじゃあ私にも何か作ってくれる?」

ポーラ「分かりましたぁ…姉様のは「ブザム・カレッサー」(ひそかな抱擁)にしましょう♪」

(※ブザム・カレッサー…ブランデーが3/2、オレンジキュラソー(オレンジのリキュール)が1/3、グレナデン・シロップ1tsp(ティースプーン)と卵黄が一個)

提督「ブザム・カレッサーねぇ……ふふっ♪」

ザラ「///」

ゴリツィア「あ、ザラ姉たちはここでしたか……ポーラ姉、お任せしますから私にも一杯下さい♪」

ポーラ「はぁ~い、それじゃあ……ゴリツィアには「ビトウィーン・ザ・シーツ」(シーツの間)がいいですねぇ♪」

(※ビトウィーン・ザ・シーツ…意味深な名前でちょっと大人な言葉遊びをしているカクテル。ブランデーかラムが1/3、オレンジキュラソーの「コアントロー」が1/3、ホワイト・ラムが1/3、レモンジュースが1tsp……飲み口はさわやかだが、意外と度数は高い)

ゴリツィア「もう…ポーラ姉///」

提督「…まぁまぁ♪」

ドリア「うふふっ、ザラたちは本当に仲がいいですね…そう思いませんか、提督?」

提督「ええ」

ザラ「まぁ…ね♪」

ポーラ「えへへぇ…♪」

ゴリツィア「///」

カヴール「そして相変わらずフィウメは一番後ですか…変わりませんね♪」

フィウメ「ふー、美味しかったですが食べるのに時間がかかりました……ポーラ姉様、何かおすすめを作ってくれませんか?」

提督「……さて、今度は何かしらね♪」

ポーラ「んー…それじゃあ「セックス・オン・ザ・ビーチ」(浜辺での交わり)にしましょう♪」

(※セックス・オン・ザ・ビーチ…これも「大人の言葉遊び」な名前が付いたカクテル。ウォッカ、メロン(あるいはピーチ)リキュール、クレームド・フランボワーズ(あるいはグレナデン・シロップ)とパイナップル・ジュースがそれぞれ15、20、10、80ミリリットルで作る、甘酸っぱいフルーティなカクテル)

ライモン「けほっ…!」

フィウメ「もう、お姉さまってば///」

提督「ふふふっ♪」


…数時間後…

提督「…それじゃあ黎明哨戒のみんなは早起きしないといけないから、そろそろバーも「かんばん」にしてもらわないと……いい、ポーラ?」

ポーラ「りょ~かいです…えへへぇ、姉様ぁ♪」

ザラ「もう……ポーラってば、どこを触ってるのよ…♪」

ポーラ「だって…ぇ♪」

ザラ「あぁ、はいはい……フィウメ、ゴリツィア、そろそろ引き上げましょう?」

ゴリツィア「了解…ほら、早くしないと置いて行かれるわよ?」

フィウメ「あ、待ってください…まだ中身が残っていて……」

ザラ「大丈夫、待っててあげるから…ねぇ、ボルツァーノも一緒に私たちの部屋で……どう?」

ボルツァーノ「あ…はい///」

ザラ「それじゃあ決まりね…それじゃあ提督、お休みなさい♪」

提督「ええ、お休み」

ヴァイス提督「では私もそろそろ……」

提督「ええ、お休みなさい…シャルロッテ♪」

ヴァイス提督「…ヤー///」

提督「それじゃあ私もお風呂で汗を流して、さっぱりしたらベッドでぐっすりと……姫、もうお風呂は済ませた?」

百合姫提督「あ、いえ…まだだけど、その……一緒に?」

提督「もちろん♪」

百合姫提督「そ、それじゃあ…///」

提督「ええ……ところで、二人はもう入った?」

カサルディ提督「まだだけど……でもさ、私が一緒に行ったら邪魔じゃない?」

提督「もう、そういうつもりじゃないってば♪」

カサルディ提督「そう? なら一緒に行くわ」

シモネッタ提督「…それじゃあ私もご一緒させていただくわ」

提督「決まりね…ライモンとカヴールは?」

ライモン「わたしはもうお風呂は済ませたので、提督の寝室を整えておきます」

提督「ありがとう…でもベッドの準備は済ませてあるから、そんなに気を使わなくても大丈夫よ?」

ライモン「そうだとは思いますが……提督のお休みの準備をしてあげたいので///」

提督「ふふ…ライモンが手ずから寝支度を整えてくれるなんて嬉しいわ♪」ちゅっ…♪

ライモン「…と、とにかく準備を済ませて来ます///」

提督「グラツィエ……うふふっ、本当にライモンったら可愛いわ♪」

カヴール「ええ、まったくですね…で、私はライモンドと比べていかがでしょう?」

提督「ライモンはライモン、カヴールはカヴールよ……比較なんてできないわ」

カヴール「まぁ、提督ったらお上手ですこと…♪」

提督「かもね…それじゃあまた明日♪」…柔らかい唇にくちづけをすると、軽く微笑んで出て行った……

カヴール「……もう///」

…湯上り・提督寝室…

提督「はー、さっぱりした……おかげで一日の疲れが取れたわ♪」


…提督の寝室にある椅子やベッドに腰掛けて、寝る前のおしゃべりを楽しむ提督たち…提督とカサルディ提督はバスローブ姿で、シモネッタ提督はおしゃれで透けるような薄手のキャミソール、百合姫提督はすっきりした浴衣を折り目正しく着ている…


カサルディ提督「ほんとにね…それにしてもここの大浴場がうらやましいよ。うちの鎮守府にあるシャワーときたら水の出も悪いしさ……」

シモネッタ提督「そうねぇ……ヴェネツィアも他はいいけれど、お風呂と食事に関してはここの方が上ね」

カサルディ提督「それに水着を着ないで入るっていうのも…ローマ風とか何とかいう話だったけど、慣れると気持ちがいいよね?」

シモネッタ提督「ええ……最初は少し気恥ずかしかったけれど、開放的でいいわ」

カサルディ提督「ね? …それにしても温泉かぁ……行ったことはないけれど、ジァポーネにはたくさんあるらしいですね?」

百合姫提督「ええ…草津、別府、登別……鬼怒川、湯沢、湯布院…全国にたくさんあります」

カサルディ提督「それはうらやましい…うちも鎮守府に温泉があればよかったな」

百合姫提督「いえ、その…私のところも別に温泉は出なくて、ただのお湯ですから……」

カサルディ提督「あー、そうなんですか……じゃあフランチェスカってばものすごく恵まれてるじゃない」

提督「ええ、そうね♪」

カサルディ提督「はぁ、あっきれた。すました顔で「ええ、そうね」だって…ワイン飲んでごちそう食べて、温泉に入って……それで鎮守府の司令官なわけ?」

提督「おかげさまで…きっと日頃の行いが良かったのね♪」冗談めかしてウィンクを投げた…

カサルディ提督「は、言うに事欠いて…今の聞いた?」

シモネッタ提督「ええ」

カサルディ提督「まったくもう…」

提督「ふふ…♪」

百合姫提督「……くすっ♪」

提督「あら、姫にまで笑われちゃったわ♪」

百合姫提督「あ、いえ……///」

提督「ふふ、別にいいのよ…そうでしょう?」

カサルディ提督「…だね」

シモネッタ提督「ええ」

百合姫提督「あ、その……ありがとうござ…ふわ…ぁ…///」慌てて口元を押さえてあくびをかみ殺した…

提督「まぁ、ふふっ♪」

百合姫提督「ご、ごめんなさい…っ///」

提督「ううん、いいのよ…」

シモネッタ提督「今日はだいぶ遅くなってしまったものね……それじゃあ私はこれで」

カサルディ提督「…私もそうする。また明日ね?」

提督「ええ、お休みなさい……」二人を見送って寝室に戻った提督……と、百合姫提督はすでにこっくりこっくりと舟をこぎ始めている…

提督「……ふふ、姫ったら小さな女の子みたい♪」

百合姫提督「…すぅ……すぅ……」

提督「でもこのままって言うわけにもいかないから……よいしょ…」大和撫子の百合姫提督はほっそりとして軽いとはいえ、人を抱き上げるのはなかなか重労働で、どうにか百合姫提督を「お姫様抱っこ」にして抱え上げた…

提督「……いい夢をね、姫♪」すやすやと小さな寝息を立てている百合姫提督の額にそっとキスをした……

百合姫提督「……んぅぅ……ん…?」

提督「あら、起こしちゃったかしら」

百合姫提督「あっ/// …ご、ごめんなさい…私ったらすっかり……///」

提督「いいのよ、まるで羽根みたいに軽かったわ♪」

百合姫提督「///」

提督「ふふっ…って、夜空が綺麗ね。少し見ていきましょうか?」建物の二階中央部、階段ホールの大きな窓から秋の夜空が見える…

百合姫提督「…ええ///」

…二階・中央テラス…

提督「……ふぅ、空気が涼やかで気持ちがいいわ…それに見て、さそり座があんなに綺麗…♪」雲一つない夜空には、さそり座の主星「アンタレス」が紅い光を放っている…

百合姫提督「…そうね、とっても……くしゅっ!」

提督「あ、ごめんなさい…確かにこの時期に浴衣一枚だと、ちょっと寒いかもしれないわ……」

百合姫提督「へ、平気だから心配しな……あっ///」

提督「…これで少しは暖かい?」百合姫提督を後ろから包むように抱きしめる…

百合姫提督「……ええ…とっても暖かいわ……///」

提督「良かった…姫に風邪を引かれたら困るもの……」ちゅっ♪

百合姫提督「…ん、んっ……///」

提督「それにしても…これだけの星空でさえ、姫の前では霞んでしまうわね……ちゅぅ♪」はらりと黒髪のかかったしっとりした首筋から柔らかな口もとへと、キスをしながら移動していく…

百合姫提督「もう、そういうのは恥ずかしいからやめてってば……んむっ…ちゅ///」

提督「いいじゃない……イタリアに来た思い出に…んちゅっ、ちゅ♪」

百合姫提督「……だ、だめ…///」

提督「…どうして?」

百合姫提督「だって……明日にはヴェネツィアに戻るし、そもそも交流プログラムもあと少しで終わっちゃうから……そうしたら次はいつ会えるか分からないもの…」

提督「ふふ、だったらなおのこと思い出に残るようにしないと……それにね」

百合姫提督「?」

提督「…離れていても、海は繋がっているもの……いつも一緒よ♪」体勢を変えて百合姫提督と向かい合い、ほっそりした腰に手を回した……

百合姫提督「あ、あっ…んむっ、ちゅぅ///」

提督「んちゅっ、ちゅ……ちゅぅぅっ♪」

百合姫提督「んあぁ、ふぁ…あっ、あぁ……///」

提督「姫…♪」

百合姫提督「……フランチェスカ///」

提督「ええ…♪」浴衣の胸元に顔を寄せて、小ぶりな乳房に何度もキスをくり返す……と同時に、内またになって力が抜けている百合姫提督を支えながら浴衣の前あわせから手を差し入れ、しっとりとした秘所に優しく指を沈める…

百合姫提督「ふぁぁ…あぁ……あっ、あぁ…んっ…///」

提督「んっ、んぅぅ……んむっ、ちゅるっ…ちゅぅぅっ♪」

百合姫提督「はぁぁ…っ、あっ、あぁ……ん///」提督の手にとろりと粘っこい蜜が滴り、百合姫提督の瞳が焦点を失った…

提督「……さぁ、あんまりここにいると凍えちゃうわ……ね?」

百合姫提督「…え、ええ……///」じんわりと身体の芯に残る余韻のおかげで力が抜け、提督にすがりつく百合姫提督……

提督「ふふっ、それじゃあ…もう一度お姫様抱っこをしてあげるわね♪」

百合姫提督「///」

………

提督「……それにしても相変わらず姫はおしとやかで…マリーにも少しは見習ってほしいものね…」

提督「…今夜はちょっと冷えるわね。さすがにこの時期にバスローブ一枚って言うのは考えものかしら……そろそろ暖かいナイトガウンでも出しておくとしましょう…」ひとり言をつぶやきながらバスローブを脱いで椅子に掛け、布団をめくってベッドにもぐりこもうとすると、控えめなノックの音が聞こえてきた…

提督「……どうぞ?」

ライモン「夜分遅くにすみません、提督…もうお休みになられたところですか?」

提督「あら、ライモン。 …いえ、ちょうどベッドに入ろうとしたところだけれど……どうかした?」いそいそとバスローブを羽織り直し、寝室のドアを開けた…

ライモン「はい、今夜は少し冷えるので…就寝前に温かいミルクでも……と思いまして」…そういうライモンはゆったりしたナイトガウン姿でお盆を持ち、その上にはミルクのマグカップがほのかに湯気を立てている…

提督「まぁ、ありがとう……そんなに気を使ってくれなくてもいいのに♪」

ライモン「いえ、わたしもベッドに入ったら夜風を冷たく感じたのでムツィオと一緒に飲んだのですが、せっかくなら提督の分も……と思いまして」

提督「ふふっ…嬉しいわ♪」

ライモン「…どうぞ冷めないうちに召し上がってください///」

提督「ええ、それじゃあいただくわ」…温めたミルクには数滴のブランデーが垂らしてあり、いい香りがする…ベッドに腰掛けマグを両手で包むようにして持つと、軽く一口すすった……温度はちょうどいい頃合いでぬるくはなく、かといって熱くて舌先がやけどするほどでもない…

ライモン「いかがですか?」

提督「うーん…少し温かいものが欲しかったところだったし、量もちょうどいいわ」

ライモン「ああ、よかったです…では、飲み終わったら片づけておきますので……///」妙に歯切れの悪い調子でそう言いながら、少し上目づかいで視線を向けてくる…

提督「…ねぇ、ライモン」

ライモン「…はい、何でしょう……」

提督「ベッドのシーツが冷たいの…よかったら一緒に入ってくれる?」

ライモン「……はい///」

提督「ふふっ、それじゃあすぐ残りも飲むから…どうぞ?」

ライモン「…それでは、お邪魔します///」

提督「ふぅ、美味しかったわ……さてと…」底に残ったミルクが固まらないように水差しの水をカップに注ぎこんで小さいテーブルの上に置くと、改めてバスローブを脱いでベッドに入った……布団をかぶるとライモンがぎゅっと腕を回し、くっ付いてくる…

ライモン「……提督、基地祭お疲れさまでした」

提督「ありがとう……ライモンもね♪」

ライモン「いえ、わたしはそんなに……」

提督「んちゅっ♪」

ライモン「んっ…///」

提督「…ライモンはあれこれ手伝ってくれたし、とっても助かったわ……だからそう謙遜しないの♪」ライモンの頭を撫でながら顔を寄せてにっこりした…

ライモン「……はい///」

提督「ふふっ…よろしい♪」ちゅ…ちゅっ♪

ライモン「ん、んむっ……ちゅぅ…♪」

提督「んぅ、んちゅっ…ライモンったら、なんだかいい匂いがするわ…♪」

ライモン「そ、そうでしょうか……確かに少しだけ香水はつけましたが…///」

提督「ええ…でも香水だけじゃなくて…ベビーパウダーみたいな甘い匂いが……ん、れろっ…♪」首筋を舐めあげ、それから吸いつくようなキスをした…

ライモン「あんっ…も、もう提督ってば……///」

提督「ん…♪」

ライモン「ん、ちゅっ……ちゅむっ…♪」

提督「ちゅ…ちゅっ、れろっ、ん……ちゅるっ…♪」

ライモン「あ、んぅぅ……あっ…ん…///」横向きで互いに抱き合い、どちらからでもなく舌を絡める深い口づけを始めた……ライモンの頬が紅く染まり、恥ずかしげなため息のような喘ぎ声が漏れる…

提督「…ん、ちゅ……んむ…っ♪」

ライモン「あ、あっ……はー、はぁぁ……っ///」


…提督のもっちりした肌とライモンのきめ細やかな白い肌が重なり合い、次第に汗ばんでてらてらと艶めいてくる……いったいどのくらい続けたかも分からないが、少なくとも十数分はキスを続けた提督……そのうちに目が暗闇に慣れてくると、すっかりとろけきったライモンの表情が見えてきた…


提督「ちゅむ……ふふ、ライモンったらすっかりトロけちゃって♪」

ライモン「…ふわぁ……らって…提督のキスが気持ち良くて…ぇ…///」

提督「…そう、よかったわ…ライモンが気持ち良くなってくれて私も嬉しい…わ♪」ちゅぷ…っ♪

ライモン「あ、あっ…///」

提督「ふふ、それじゃあここはどうかしら?」にちゅっ、くちゅ…っ♪

ライモン「あ、あぁぁっ……ふあぁぁ…んっ♪」

提督「あら…こっちはすっかり濡れそぼって……すんなり入るわね♪」

ライモン「い、言わないで下さい…恥ずかしいですから……ぁ///」

提督「んふふっ……ライモンのそういうところ、好きよ…♪」ライモンの(本人はそう思っていない)誘い受けにすっかり乗せられ、みだらな甘ったるい表情を浮かべる提督…金色の瞳が妖しい光を帯び、身体の芯がじんわりと熱っぽくなる…

ライモン「あっ、ひゃあっ……んあぁっ、あっ…ん、くぅ……♪」くちゅくちゅっ、にちゅっ…♪

提督「ん…♪」

ライモン「んぅぅ…ちゅっ、ちゅぅぅ…///」提督のしなやかな指で濡れた秘所をゆっくりとかき回されながら反対の手で頬を支えられ、長い口づけを交わす……

提督「……ん…ちゅっ♪」唇を離すと一筋の細い銀糸がとろりと垂れ、肌の上にこぼれた……

ライモン「んぅぅ、提督…ぅ///」

提督「…もっとする?」

ライモン「……はい///」

提督「ふふ、了解…んじゅっ、ぢゅるぅ……っ♪」布団の中に潜りこむとしなやかなライモンの脚を押し開いて顔をうずめ、花芯に舌を差し入れた…

ライモン「あっ、ひゃあぁぁっ…!?」

提督「んちゅっ、じゅぅっ……ちゅる…んちゅぅっ♪」

ライモン「あっあっあっ…だめです、そんなところを舐めちゃ……ぁっ///」いくら全身をくまなく洗って来たとはいえ「綺麗じゃないですから…」と抵抗するライモン……が、提督の舌先が秘部をまさぐるたびにじんわりとした感覚が上って来て、身体の力が入らない…

提督「…ぷはぁ……大丈夫、ライモンの身体ならどこだって舐められるわ…んじゅっ、ちゅぅぅ…っ♪」かけ布団の奥からこもったような声が聞こえてくる…

ライモン「そ、そういう事ではなくてわたしが恥ずかしいからだめなんで……あぁぁんっ♪」布団のふちをつかんで身体をのけ反らせるライモン…

提督「ん、ちゅるぅっ…じゅぷ、じゅるぅぅっ……♪」

ライモン「あっ、ひぁぁっ……はひっ、んあぁぁ…っ♪」

提督「ぷはぁ…! ふぅ、さすがに空気がこもって息が苦しいわ……///」ライモンの胸元から妙に嬉しそうな火照った顔をのぞかせると、そのまま布団をはねのけた…

ライモン「あっ…///」

提督「ふぅ、涼しい……これで続きが出来るわね♪」そう言って身体をずり下ろすようにして、またライモンの秘所に顔をうずめた……

ライモン「あぁ、んくぅ…ひうぅぅっ♪」身体が引くつくのと恥ずかしさでふとももが内またになり、提督の顔を挟み込む形になるライモン

提督「んふぅ……ちゅるぅぅっ、ちゅう……んちゅっ、ちゅぷぅ…♪」

ライモン「あぁぁっ、あっ、あ……ふわあぁぁぁっ♪」とぽっ、ぷしゃぁぁ…っ♪

提督「ぷは……ふふふ、ライモンの蜜…甘酸っぱくて温かい♪」顔中をべたべたにしたライモンの愛液を舐め、みだらな笑みを浮かべた……

ライモン「…もう、提督ってば……ぁ///」

………

…翌朝…

ライモン「うぅ…ん……」明け方のひんやりした風で目が覚めたライモン……情事の最中に提督が布団をはねのけ、二人とも疲れて寝入ってしまうまでいちゃつき続けたので身体はすっかり冷え込んでいた……ライモンはぶるぶるっ…と軽く震えて、それから冷えた身体を伸ばしながら起き上った…

ライモン「…もう夜明け……うっ、寒い……!」あわててナイトガウンを羽織り、それから解いていた髪の毛をまとめて、いつもの高いポニーテールにまとめた…

提督「…すぅ……すぅ……」

ライモン「…ふふ、提督ったら可愛いです……ちゅっ///」穏やかな寝顔を浮かべている提督の頬に軽くキスをすると、提督が蹴飛ばしたクッションを拾い上げて「ぽんぽん…っ」と形を整え、それからふわっとしたタオルケットと夏がけの羽毛布団を提督の身体に優しくかけた…

ライモン「…えーと、あとは……」辺りを軽く見回すとコーヒーメーカーのスイッチを入れ、小さい丸テーブルに提督のマグや砂糖つぼ、クリームの水差しを置く…

ライモン「うん…もう大丈夫ですね」…最後にさっと室内を見回すと小さくうなずいて、昨夜持って行ったホットミルクのマグを持って部屋を出た……

提督「……ふふ、グラツィエ…♪」…頬にあたる柔らかい唇の感触で目が覚めたが、起きあがるとライモンが恥ずかしがるだろう…と、かけてもらった布団にくるまり、寝たふりをしながら見送った……

…廊下…

ライモン「…う……なんだか身体中がべたべたする…」そっとドアを閉めてからつぶやく…

アッテンドーロ「……おはよう、姉さん」…左手側の壁に背中をあずけて立っていたアッテンドーロがいきなり声をかけた

ライモン「ひゃあっ!?」

アッテンドーロ「しーっ…そんなすっとんきょうな声を上げたら愛しの提督さんが起きちゃうわよ?」

ライモン「だって、いきなり……どうしたの、ムツィオ?」

アッテンドーロ「そりゃあもう、初心で可愛い姉さんを迎えに来たに決まってるでしょうが…何しろ昨晩は行ったきり戻ってこないから、これはてっきり提督に捕まったな……って思ってね」

ライモン「え、じゃあずーっとここで待ってたの?」

アッテンドーロ「まさか…ついさっきここに来て、そろそろ起きる頃だろうと思って待ってたのよ」

ライモン「そうなの……ありがと…う///」

アッテンドーロ「よしてよ、姉妹の間でお礼なんていらないわ……ま、それは私が片づけてあげるから、シャワーでも浴びて来たら?」そう言ってマグを取り上げ、代わりにバスタオルを押し付けた…

ライモン「え、でも……」

アッテンドーロ「……いいからとっとと行ってきなさいよ。提督の朝食も準備してあげたいんでしょ?」

ライモン「ええ…あ、ありがとう///」

アッテンドーロ「いいのよ…あとでお代は請求するわ♪」

ライモン「ふふっ、なにそれ…♪」

アッテンドーロ「…ちなみに領収書は書いてあげるけど、支払いは現金一括払いじゃないとダメだからね?」そう言ってパチンとウィンクを決めた

ライモン「ん…それじゃあお言葉に甘えて♪」軽く頬にくちづけをすると、大浴場に向かって歩いて行った…

アッテンドーロ「はいはい……で、提督はいつまでそこで盗み聞きしてるわけ?」

提督「あら、ばれちゃったわ…♪」

アッテンドーロ「当たり前でしょうが、風が揺らぐ気配がしたもの……それにしても昨夜はせっかく姉さんと一戦交えようと思って準備しておいたのに、提督ときたら泥棒猫みたいな真似をして…」

提督「ふふ、ごめんなさい♪」

アッテンドーロ「ふっ、別にいいわよ……それに姉さんも提督と寝たくてうずうずしてたもの♪」

提督「ええ…ずーっとそわそわしていたものね♪」

アッテンドーロ「……まったく、いい加減「新婚初夜」ってわけでもないのに…姉さんときたら」

提督「ふふっ…ライモンはそこが可愛いのよ♪」

アッテンドーロ「知ってるわ。私もそう思うもの」

提督「あら…ふふっ♪」

アッテンドーロ「ふっ……まぁ提督も身支度をして、姉さんの手料理を食べる準備でもしておきなさいな」

提督「は、つつしんでそうさせていただきます…♪」冗談めかして敬礼すると、パチッとウィンクをした…

アッテンドーロ「ええ、頼んだわよ♪」

…えー、相変わらず書きためも展開もなくだらだらと続けておりますが、そろそろ提督×潜水艦の娘で一つ書こうかな…と思っています

……そういえば今日(六日)はノルマンディ上陸作戦の日…いわゆる「ザ・ロンゲスト・デイ」ですね……特にパウル・カレルの「彼らは来た」は幾度も読んでいるのですが、ボリュームがあり、戦史あるいは将兵たちのエピソード集としても大変よくまとめられていて面白いですね…

…朝食後…

シモネッタ提督「ふぅ、朝から美味しいご飯だったわ…グラツィエ、フランカ♪」上品に口もとを拭い、食後のコーヒーを優雅に楽しんでいる…

カサルディ提督「同感。それにこっちは鎮守府に戻ったらまた「パンとチーズだけ」の食生活に戻るだろうから、なおのことね……」

提督「ノン・ファ・ニエンテ(いいのよ)…それにお礼ならエリトレアに言ってあげて?」提督自身はライモンの心づくしの手料理を堪能し、満足げに頬をゆるめている…

カサルディ提督「そうだね…美味しかったよ、エリトレア♪」

シモネッタ提督「ええ、特に「蟹のクリームパスタ」はヴェネツィアでもなかなか味わえないくらい絶品だったわ……あんまり美味しいものだから、ヴェネツィアに帰りたくないほどよ♪」

エリトレア「わぁ、ありがとうございますっ。それならずっといてくださいっ♪」

シモネッタ提督「…あら、ほんと?」

提督「却下…駆逐艦の娘のそばにエレオノーラを置いておくなんて、鶏小屋にキツネを放すとか、肉屋に犬を連れて行くようなものよ……いつ手籠めにされるか分かったものじゃないわ…」

シモネッタ提督「あら、フランカも言ってくれるわね……大丈夫よ、ちゃんと合意は得るから♪」

提督「これだもの…見た目がいいだけに余計タチが悪いわ」

カサルディ提督「あはははっ、二人のやり取りも相変わらずだね…♪」

提督「もう、おかしくなんてないわよ……それにルクレツィアだって、エレオノーラがそばにいたらMS艇の娘たちが危ないわよ?」

カサルディ提督「ああ、そのことなら大丈夫…うちの娘たちは見た目は小さいけどすごいんだから……♪」

シモネッタ提督「あら、それってベッドの上で…ってこと?」

カサルディ提督「まさか、エレオノーラじゃあるまいし……何しろ、あの娘たちときたらエーゲの深海棲艦を相手に暴れ回って、戻ってきたときには煙の煤で顔を真っ黒にしていたくらいだもの…エレオノーラの一人や二人、かかって行ったところで部屋から放り出されるのがオチだと思うわ」

提督「それはそうかもしれないわね……ルクレツィアの報告書は海軍公報で読んだわ」

カサルディ提督「ま、うちの娘たちはやることが派手だから……さてと、そろそろ出発の時間かな」ステンレスの腕時計に視線を走らせると、一気にコーヒーを流し込んだ…

提督「あら、もうそんな時間? …もっとゆっくりできたらいいのにね?」

カサルディ提督「ほんと、私だって出来たらそうしたいわ。でもレロス島に戻る時間を考えるとね」

提督「まぁ、それもそうね……それじゃあせめて鎮守府総出でお見送りしてあげる♪」

カサルディ提督「やめてよ、べつに参謀総長だとか海軍大臣じゃないんだから…///」

提督「ふふっ、いいじゃない…上官の好意はもらっておくものよ?」

カサルディ提督「あーあ…あの大人しかったフランカも、金モールをつけるようになったらすっかり押し付けがましくなっちゃって……♪」ため息をつくふりをしながら冗談めかした…

提督「ふふっ…とにかく、波止場までは見送るわ♪」

カサルディ提督「グラツィエ…ちゅっ♪」少し荒れてカサついた唇が押し付けられた…

提督「ん…♪」

…少しして・波止場…

カサルディ提督「やーれやれ…まさか本当にやるとはねぇ」駆逐隊が複縦陣で「道」を作っているのを見て、あきれ返ったように両手を上に向けた…

提督「まぁまぁ…♪」

カサルディ提督「それにしてもあの娘たちは何をやってるのやら…もう出発の時間だっていうのに……」

MS16・22「「遅くなりました、司令…!」」

カサルディ提督「まったく、どこで油を売っていたのよ……って、その大荷物は一体なに?」小さい二人の背丈と大差ないくらいの、重そうな袋を背負っている…

提督「…うちの艦娘たちからの餞別よ……チーズとかワインとか、他にも色々入ってるわ…宅配便で送ると記録が残っちゃうものね♪」

カサルディ提督「……今回は格段のご配慮をありがとうございます、司令官閣下…ありがとう、フランチェスカ。…エーゲに来るときはぜひうちの鎮守府に寄ってよ♪」

提督「ええ…カサルディ中佐におかれても、ますますの戦果と航海の無事を……ルクレツィアも、タラントに来たくなったらいつでもいらっしゃいね♪」

カサルディ提督「ありがとね…それじゃあ、チャオ!」揺れているMS艇にひらりと乗り込むと手を振り、もやいを解いて艇の「イソッタ・フラスキーニ」ガソリンエンジンを噴かすと、綺麗な航跡を残して出港していった…

シモネッタ提督「行っちゃったわね……あーあ、あのMS艇の娘たちともっとお知り合いになりたかったわ♪」

提督「そうならないように慌てて出て行ったんじゃないかしら?」

シモネッタ提督「ふふっ…とにかくルクレツィアが元気そうで良かったわ♪」

提督「ええ、そうね…♪」次第に小さくなっていく淡灰色のMS艇に向けて、しばらく手を振った提督たち…

…食堂…

提督「さてと、ルクレツィアのお見送りも済んだし……マリーの出発は1000時頃だったわね」

エクレール提督「ええ、そうですわ」

提督「それじゃあ出発までゆっくりするといいわ…ちゃんと荷物は詰めた?忘れ物はない?」

エクレール提督「…わたくしを子供扱いしないでいただきたいですわ!」

提督「あら、違ったの?」

エクレール提督「この…っ!」

グレイ提督「ふふ……そうしてすぐムキになるところを見ていると、まるで姉にからかわれている妹のようですわね♪」

エクレール提督「な、何をおっしゃって……///」

提督「ふふ、マリーも「ホンモノ」のお嬢さま相手だとかたなしね…♪」

エクレール提督「…っ///」

カヴール「まぁまぁ提督、そうエクレール提督をからかわないであげてくださいな」

提督「あら、カヴールはマリーの味方?」

カヴール「ふふっ…私はフランスの事が結構好きですから♪」

提督「あー……カヴール伯だものね」

カヴール「はい♪」

ガリバルディ「……フランスかぶれと合理主義が、カヴールの数少ない欠点よ」

提督「あら、ガリバルディ」

ガリバルディ「チャオ、提督…隣に座ってもいいわよね?」

提督「ええ、どうぞ♪」

ガリバルディ「ありがと…カヴールも他はいいんだから、あとはそこだけどうにかなればね」

カヴール「あらあら、なかなか手厳しいですね……でも、ガリバルディは行動する前にもう少し考えた方がいいと思いますよ?」

ガリバルディ「例えば?」

カヴール「数週間前でしたか…新しい紅の下着を買っていましたが、その直前にも同じような下着を買っていたでしょう?」

ガリバルディ「別に私のお給料なんだからいいでしょ?」

カヴール「ええ、まぁ……でも似たような色の服も多いですし、着回せばいいじゃありませんか。お金がもったいないですよ?」

ガリバルディ「はぁ…貴女のそういうところが好きじゃないのよ、カヴール……似たような色だからってまるっきり同じって言うわけじゃないし、ちょっとのデザインや色味で雰囲気はぐっと変わるものなのよ」

カヴール「そうでしょうか…ガリバルディはたいてい赤や紅の服で、あまり変わらない気がしますが……」

ガリバルディ「これだもの……そんなんじゃあ女にモテないわよ?」

カヴール「私には提督がおりますから、ご心配なく♪」

提督「…カヴールとガリバルディって、意外と仲が悪いわよね……やっぱり「本人」の性格を継いでいるのかしら?」

カヴール「あら、私はそう思ってはいませんよ? むしろガリバルディとはお互いに欠点を指摘できるほどの仲だと思っております…♪」

ガリバルディ「さすが政治家、物の言い方が上手いわね……ま、とりあえずは「どうにかやってる」ってところよ♪」

提督「なるほどね」

ガリバルディ「ええ…とにかく必要な時はちゃんと返事してるわ」

カヴール「ふふっ、そうですね♪」

ライモン「ガリバルディお得意の「オッベディスコ」ですね♪」(※Obbedisco…「従う」の意。イタリア統一戦争のさなか、望まない撤兵を命じられたガリバルディが送った返答)

提督「あー…時々言っているわよね」

カヴール「たいてい何かやりたくない事を頼まれたときに使っていますね♪」

ガリバルディ「…でもちゃんとやるんだからいいでしょ?」

カヴール「ええ、そこは否定していませんよ♪」

提督「うーん……カヴールとガリバルディを一緒に行動させるのは考えものね…」

…しばらくして…

チコーニャ(ガッビアーノ級コルヴェット「コウノトリ」)「提督、お菓子をどうぞ♪」柳のバスケットを腕にかけ、提督へビスコッティを差し出した…

提督「あら、ありがとう。ちょうど欲しかった所よ」小柄なチコーニャの頭を軽く撫でる…

チコーニャ「えへへ…っ、喜んでもらえて良かったです♪」

提督「ふふ、チコーニャが気配りの出来るいい娘だからよ……みんなも好きなのを取って?」

シモネッタ提督「あら、いいの?」

提督「ええ…チコーニャは優しいから、そのために来てくれたのよね?」

チコーニャ「はいっ///」

提督「ね? …さ、遠慮せずに召し上がれ♪」

グレイ提督「ふふ、ではこちらのお菓子をいただきますわ…♪」

エクレール提督「…せっかく持って来たのに、受け取らないのも失礼ですわね」

ヴァイス提督「ダンケ」

百合姫提督「…え、えぇと……ごめんなさい、たくさんあるので目移りしちゃって…これにしますね///」

チコーニャ「シモネッタ提督もどうぞ♪」

シモネッタ提督「あら、ありがとう……んふふっ、つかまえたぁ♪」お菓子を受け取るかと思うと、いきなり腰を抱きかかえて膝の上に乗せた…

チコーニャ「わわっ、いきなり抱き上げちゃだめですってば…///」

シモネッタ提督「まぁまぁ、そう言わないで……あんっ、もちもちのぷにぷにで柔らかぁ…い♪」恥ずかしげにもがいているチコーニャに頬ずりをしたり、むちっとしたふとももに手を這わせたりと本領を発揮しているシモネッタ提督…

提督「…ところでエレオノーラ、そろそろ時間じゃないかしら?」

シモネッタ提督「ほーら、お姉ちゃんがぎゅってして……えぇ?」あわてて腕の時計に視線を走らせた…

チコーニャ「えい…っ!」

シモネッタ提督「あっ…!」

チコーニャ「ふぅ…提督、ありがとうございます♪」

提督「いいのよ…まったくもう、エレオノーラにはほとほと参るわ……」

シモネッタ提督「もう、だからって人をだますのは良くないんじゃないかしら?」

提督「チコーニャをエレオノーラの魔の手から救い出すなら合法よ♪」そう言ってウィンクするとコーヒーをすすった…

シモネッタ提督「…むぅ」

提督「それに時間が近いのも本当だし」

シモネッタ提督「みたいね……百合野提督、準備はお済みですか?」

百合姫提督「はい」

提督「…エレオノーラはともかく、姫が帰っちゃうのは残念ね」

百合姫提督「も、もう…またそんな……///」

シモネッタ提督「あら、私が帰るのは残念じゃないっていうのね?」

提督「いいえ、残念よ…だけどエレオノーラが起こす問題のあれこれを考えると、帰ってくれた方がほっとするわ♪」

シモネッタ提督「フランカもなかなか言ってくれるわね……ところで」

提督「なぁに?」

シモネッタ提督「もてなしてくれたお礼よ…受け取って?」ヴェネツィアらしい、おしゃれな包装紙の包みを手渡した…

提督「えっ…わざわざありがとう///」

シモネッタ提督「いいのよ……ちなみに一人の時に開けてね♪」

提督「ええ、わかったわ」

シモネッタ提督「ふふ…それじゃあ名残惜しいけれど、そろそろおいとまさせていただくわ。鎮守府では可愛い娘たちが私の帰りを待っているもの♪」

提督「……憲兵隊が来ないよう心から祈るわ」

シモネッタ提督「グラツィエ♪」

…波止場…

百合姫提督「それでは改めて……色々お世話になりました」敬礼を交わすと深々と一礼した…

提督「いえいえ、こちらこそ…♪」百合姫提督を真似て頭を下げる…

マエストラーレ(ヴェネツィア)「…それじゃあまたね……んちゅ♪」

マエストラーレ「う、うんっ…///」

シモネッタ提督「んふふっ……貴女たちもよかったらヴェネツィアに遊びにいらっしゃい、うんとイイコトしてあげるわ…ねっ♪」

ミラベロ「ふぅん…でも「イイコト」って何のことなのかしら…♪」

リボティ「ね、私には何の事だかよく分からないな…♪」

シモネッタ提督「まぁ…ふふふっ♪」

提督「…」

シモネッタ提督「こほんっ……とにかく、もてなしてくれてありがとう…冗談は抜きにしても、ヴェネツィアに来るような事があったら歓迎するわ♪」

提督「グラツィエ……それじゃあね」

シモネッタ提督「ええ…またね♪」優美な身のこなしでモーターランチに乗り込むと、沖合に錨泊しているマエストラーレに向かっていった……

カヴール「…行ってしまいましたね」

提督「そうね……でも今の世の中ならいつだって会えるもの、ね?」

カヴール「ふふっ…そうですね♪」

提督「ええ……さてと、今日は昼食が済んだらエレオノーラがくれたプレゼントでも開けてみるとするわ」

カヴール「分かりました…では私はチェザーレと過ごすことにします」

提督「ええ♪」

…提督寝室…

提督「さてと…一体何をくれたのかしら?」外袋を開けると、中からはヴェネツィアらしいしゃれた紙袋が出てきた…入っているロゴは有名な女性下着ブランドのもので、提督もいく度か買おうかと思ったが値段を聞いて手を出さずにいたものだった…

提督「この包みからすると、中身は下着かしら……まぁエレオノーラが選んでくれたのなら大丈夫ね。 …何しろあの幼女趣味をのぞけばセンスは抜群にいいし……///」そうつぶやきながら包装を解いて、途端に顔を紅くする提督…

提督「うわ…///」…包みに入っていた下着は確かにおしゃれな黒レースのランジェリーで、ふちにトーンの違う黒で花模様があしらわれている……が、その薄さはけた違いで、生地を透かしてベッドシーツの模様がはっきり見える…

提督「すごい……生地を透かして外が見えるわ…///」持ち上げてみて午後の陽光に透かして見ると、ますます薄さが際立って見える…

提督「…それにしても、こんなのどこで着ればいいのかしら……」


…そう言いながら服を脱ぐとさっそく試してみる提督…ブラはカップもぴったり合っていて、ショーツの方もだいたいちょうどいい……それに着心地や使い勝手の部分にも細かく配慮が行き届いていて、直接肌に触れないようタグは裏地に挟まれるようにつけられていたり、股やふともものよく擦れる部分は少し厚手で長く使えるようになっていたりする……それに布地そのものも柔らかで、滑らかでひんやりした感じが心地よい…


提督「……まぁなんにせよ、これは「ここ一番」っていう時に身につけたいわね♪」納得して下着をクローゼットにしまった…

………

…夕食後…

提督「…ふぅ、美味しかった……あ、そういえば」太い筒型のパスタ「リガトーニ」に絡めた、玉ねぎと荒みじんのひき肉を赤ワインとトマトで仕上げたポモドーロ…それを心ゆくまで味わってすっかり満腹すると、入浴も済ませてバスローブ姿でいる……提督は満足げなため息をついてベッドに腰掛けると、ふと思い出して携帯電話を取り上げた…

シモネッタ提督「もしもし、シモネッタです…」

提督「エレオノーラ、私よ♪」

シモネッタ提督「あら、フランカ……贈り物はいかがだったかしら?」

提督「ええ、ありがとう…ちょっと際どいけれど、とっても素敵♪」

シモネッタ提督「気に入ってくれたようで良かったわ……ここぞって言う場面で使ってね?」

提督「ええ」

シモネッタ提督「ついでに良かったらおしゃべりでもしましょうか」

提督「そうね♪」

………

ついに艦これにもガリバルディが出ましたな。みなさんはゲットされましたかな?あ、ちなみに私はラスダン12回目で資材が尽きかけております。(丁提督)

>>537 まずは「G・ガリバルディ」の実装…そして入手おめでとうございます! 

ガリバルディと言えばイタリア軽巡の粋であり最精鋭…そして戦後も改装の上、ポラリスSLBM搭載艦(!)として長く在籍した名艦ですから……それだけで「艦これ」を始めたくなりました(笑)


…そして艦名がやたら長い姉の「ルイージ・ディ・サヴォイア・デュカ・デリ・アブルッツィ(サヴォイア王家アブルッツィ侯のルイージ)」もいますね……ちなみに本によっては「L・d・S・D・d・アブルッツィ」と略されていて、当時のイタリア王国海軍では単に「アブルッツィ」と呼ばれていたようです


……えー、ちなみになかなか進まない本編ですが、そろそろ提督と中型潜たちのやらしいのを書いていく予定ですので…どうぞお待ちください

…しばらくして…

提督「それじゃあね。チャオ♪」

シモネッタ提督「ええ、またね…♪」

提督「さてと…電話ついでに今度はノーフォークへ、と……」ミッチャー提督の番号を回し、呼び出し音が鳴るのを聞いている…

ミッチャー提督「ハロー……もしもし、どちら様?」

提督「ハーイ、ジェーン。私よ……もしもし?」どうやら映画かテレビ番組の最中だったらしく、騒がしい音が響いている…それに交じってノーフォークの艦娘たちがあげる爆笑が聞こえるところを見ると、流しているのはコメディか何からしい……

ミッチャー提督「もしもし、誰だって? ……ソーリィ、ちょっと後ろの音がうるさくって…!」

提督「私よ、ジェーン。タラントのフランチェスカよ……お話しても大丈夫?」

ミッチャー提督「…あぁ、フランカね……オーケー、どうしたの?」廊下にでも出たのか、急にはっきり聞き取れるようになった…

提督「ええ、ちょっとジェーンに言っておかないといけないことがあって…それよりさっきのは何の音だったの? 映画?」

ミッチャー提督「イェス…幸い今日はヒマでね。うちのガールズたちに映画を流してたとこ」

提督「ジェーンは映画好きだものね……ちなみにずいぶん愉快そうだったけれど、何を流していたの?」

ミッチャー提督「ああ、今日はガールズのリクエストに応えて「トムとジェリー」をね」

提督「なるほど、それで…♪」

ミッチャー提督「そうなの…ほら、ちょうど「トムとジェリー」も戦時中にできた作品だから、あの娘たちからするとセンスやジョークもドンピシャだし、まだ見たことのない回もうんとあるわけよ。 …だからまぁウケることウケること……あんまり笑い過ぎてポップコーンをこぼしちゃうんだから♪」

提督「なるほどね」

ミッチャー提督「…で、その「話したいこと」っていうのは?」

提督「あー、そうそう……実はね…」ベッドの裏にフレッチャーが描いていった「キルロイ参上」の落書きについて、かいつまんで説明した…

ミッチャー提督「……シッ! まったくあの小娘ときたら……まったくもう♪」電話越しに苦笑しているミッチャー提督…

提督「まぁ私はそこまで気にしていないのだけれど、他でそういうのがあったら文句を言われるかと思って…」

ミッチャー提督「そうね……わざわざありがと、うちのガールズにはきつく言っておくわ」

提督「その辺はジェーンに任せるわ……でも、ほどほどにね?」

ミッチャー提督「ま、その辺は大丈夫よ…サンクス♪」

提督「ええ。それじゃあまたね♪」

ミッチャー提督「そっちはもう夜だもんね…グッドナイト(お休み)、いい夢を」

提督「ありがとう♪」

提督「……ふー、これで用件は済んだし…あとは寝るだけね♪」ベッドに身体を横たえると布団をかぶろうとした……と、そこにノックの音がした

提督「…このノックのしかた……アッチアイーオかしら? …どうぞ?」

アッチアイーオ(中型潜アッチアイーオ級「鋼鉄」)「……提督、もう寝るところだったかしら?」お風呂上がりなのかほこほこと湯気を残し、パイル地のバスローブを羽織っている…

提督「ええ、そろそろ寝ようかなとは思ってはいたけれど……どうしたの?」

アッチアイーオ(温)「いえ…その……今夜は提督と一緒のベッドで寝たいと思って…///」身体が温まっているからか、少し照れたようにうつむいている…

提督「…まぁ……ふふっ♪」

アッチアイーオ「あっ…嫌だったら別にいいのよ? それにもしライモンドやカヴールが来るって言うなら邪魔はしないから……///」

提督「うふふっ、そんなに気を回さなくてもいいのよ…それに今夜は「予定」がなくて、一人で寝るところだったの♪」とろりと甘い誘うような表情で小首をかしげ、小さくウィンクをした…

アッチアイーオ「そ、そう…なら…お邪魔しても……いいかしら///」

提督「…ええ、どうぞ♪」かけ布団とタオルケットをまくってぽんぽんっ…とベッドを叩いた…

アッチアイーオ「じ、じゃあ……入るわね///」

提督「ええ…いらっしゃい♪」布団をかけてあげて、アッチアイーオの艶やかな黒髪を優しく撫でる…

アッチアイーオ「…ん///」提督と向かいあうように横向きになると、目を閉じて唇を近づけた…

提督「……ちゅっ♪」

アッチアイーオ「……んっ、ふ…///」

…続きを投下しようと思っていたのですが、越後の方は大変なことになっているみたいですね…ここに書き込むのもなんですが、とにかく地元の方は身の安全を第一に行動して下さいね……

……続きは明日にでも投下するつもりですが、ちょっと不謹慎なのではないかと思ってしまって落ち着かないですね…

…越後の地震ですが、怪我人だけだったのが不幸中の幸いでしたね……続きを投下しようかなと思います


……ちなみに今後はアッチアイーオ(温)などのように気分を表す予定です…だいたいの目安としてベタベタ状態からすっかりしょげている状態までを「熱・温・常・冷・寒」みたいに表現しようかな…と

…十数分後…

提督「あむっ……ん…ちゅっ、ちゅぅ…っ♪」

アッチアイーオ(温)「んんぅ…はぁ……んふっ、んちゅぅ……///」

提督「んっ…ぷは♪」

アッチアイーオ「ふぁ……もうおしまい…?」

提督「いいえ……これからよ♪」ちゅっ、ちゅぅ…っ♪

アッチアイーオ「あんっ…あ、あっ…んぅぅっ♪」

提督「んっ、ふ……舌が…暖かくて……ぬるっとしていて…んぅ、ちゅぅ…♪」

アッチアイーオ「そ、そういうことは言わなくてもいいから…ぁ///」

提督「ふふ、だって……れろっ、んっ…♪」

アッチアイーオ「はぁ、はぁ、はぁっ……んむっ///」

提督「ん…ちゅぅっ、ちゅるっ……はむっ、んちゅ……っ♪」アッチアイーオをぎゅっと抱きしめて舌を絡ませ、ゆっくりと口内をむさぼるような口づけを続ける…

アッチアイーオ「んんっ、あっ…ふわぁ……あぁ…///」鋼鉄のような青味を帯びた黒い瞳が焦点を失い、一瞬うつろになった…

提督「……ほら、来て?」

アッチアイーオ「…ん、んっ///」抱きしめられたまま提督の白くて柔らかい胸元に顔をうずめ、熱っぽくしっとりと汗ばんだ乳房を舐めあげる…

提督「ん、ふふっ…くすぐったいわ♪」

アッチアイーオ「……ね、お願い…///」

提督「ええ…♪」提督のほっそりした…しかし骨ばってはいない柔らかな指がアッチアイーオの身体をなぞり、柔らかい花芯にゆっくり差し込まれた…

アッチアイーオ「あぁ、んぅ……気持ち…いぃ……///」提督にしがみついてしなやかな脚を絡みつかせた……

提督「ふふ、よかった……それにとっても温かくて、とろっとしている…わ♪」ちゅぷっ、くちゅ…♪

アッチアイーオ「そ、そんなの言わなくってもいいから…///」

提督「ふふ、ちゃんと伝えたかったの……とっても「気持ちいい」って…」柔らかい笑みを浮かべて愛おしむように指を滑らせる提督…

アッチアイーオ「もう…///」

提督「…ふふ♪」

アッチアイーオ「……それじゃあ、提督にも…してあげるわね…///」提督のむっちりとしたふとももに手を這わせると、膣内に指を滑り込ませた…

提督「…ぁっ♪」

アッチアイーオ「………あんまり上手じゃないかもしれないけど…どうかしら…?」くちゅ、くちゅっ…♪

提督「いいえ……その気持ちだけで…充分……んんぅ…感じるから♪」

アッチアイーオ「…提督ってばずるい…そういう事を平気で言うんだもの……///」

提督「本当の事だから……んあぁっ♪」トロけた表情で甘ったるい嬌声を上げる提督…

アッチアイーオ「…んはぁ、はぁ、はぁ…っ……だめ、もう我慢できない…っ///」次第に熱を帯び、頬を紅潮させ始めたアッチアイーオ……向かい合って抱き合っていた提督をあお向けになるように転がすと、提督の上にまたがった…

提督「…あんっ♪」

アッチアイーオ(熱)「…はぁっ、はぁっ、はぁ……提督っ、好き、好きぃ…っ!」ちゅぅぅっ…ちゅむっ、ちゅぷ、じゅるぅ…っ♪

提督「んんっ、あっ、あっ…あぁんっ♪」花芯をまさぐっていた指を力一杯動かされ、とろりと蜜を垂らしながら腰をひくつかせる提督…

アッチアイーオ「もう……今夜は放さないんだから…っ♪」ぐちゅぐちゅっ、じゅぶっ…!

提督「ええ……私も…んぁぁっ、あふっ、んぅぅ…っ♪」くちゅっ、にちゅ……♪

アッチアイーオ「はぁ、はぁ、はぁ…提督の膣内……柔らかくて…指が吸い付かれるみたいで……すっごく気持ちいいっ♪」ぐちゅっ、じゅぶ…ぬちゅっ…♪

提督「…アッチアイーオこそ……熱くて柔らかくて…出来たてのカスタードクリームみたい……♪」くちゅ、くちゅぅ…っ、ぬちゅ…♪

アッチアイーオ「提督…んふっ、れろぉ……好き…んむぅ、ちゅぅぅっ♪」

提督「あ…んっ、んむっ……私も……ん、ちゅぅ…っ♪」きゅっと引き締まった乳房やお腹に吸いつくようなキスをする……

アッチアイーオ「はぁ…はぁ……っ、あぁ、あぁぁっ!」

提督「あっ、あっ……あふっ、んぅぅ…んんぅっ♪」アッチアイーオを抱き寄せるとじっとりと汗ばんでいる身体を押し付け、パルメジャーノ・レッジァーノをチーズをおろし器にかけるようにずり動かした…

アッチアイーオ「…あぁ、それ……いい、いいっ! あっ、あ……あふ…っ、はひっ…♪」

提督「んぅ、んくっ…ちゅるっ、むちゅ……♪」とろとろに濡れたアッチアイーオの秘部を往復させたので提督のふとももはすっかりべとべとになり、左右の脚が触れ合ったりするたびに「にちゅ…♪」と水っぽい音をたてる……

アッチアイーオ「はぁぁ、んあぁ…ぁ……ん、ちゅっ♪」

提督「…ふふ……ねぇ、アッチアイーオ?」

アッチアイーオ「…んむっ、ちゅぅっ……なに?」

提督「もっと……気持ちいいこと…しましょうか♪」いつもの穏やかな笑みと違って、どことなく情欲をたたえた色っぽい表情を浮かべつつ、瞳を爛々と輝かせている…

アッチアイーオ「……うん…提督に、もっと……いっぱい愛して欲しいっ!」ぎゅっと抱き着き、ところ構わずキスの雨をあびせてくる…

提督「…了解、それじゃあ……そーれっ♪」

アッチアイーオ「あんっ…♪」提督に「お姫様抱っこ」で抱きかかえられ、室内に置いてある円形の小テーブルに載せられた…

提督「んふふっ……アッチアイーオのとろとろのあそこが良く見えるわ…ん、じゅるぅ……っ♪」

アッチアイーオ「あぁ…んっ、んぅぅ……っ♪」とぽ…っ、とろとろっ…♪

提督「ん…じゅる、じゅるぅ……舐めても……じゅぷ、れろっ…いっぱいあふれてくるわ……ね♪」

アッチアイーオ「らってぇ…気持ちいいんだもの……ぉ♪」

提督「……んじゅっ、ぴちゃ…ぢゅるぅっ…気持ひいぃ……?」ふとももに挟まれながら上目づかいでアッチアイーオを見上げている提督…秘所に顔をうずめているからか、声がくぐもって聞こえる…

アッチアイーオ「ん、気持ちいいから……もっといっぱいして…っ♪」テーブルの上で上体を起こすと、提督の頭を両手で押さえて花芯に押し付けた…

提督「んふっ…んんぅ、んむぅ……♪」

アッチアイーオ「ふふっ、提督はどれだけ息継ぎしないで潜れるのか試してあげ……んはぁ、はぁぁんっ♪」

提督「…んふふっ♪」ちゅるっ、くちゅり……れろっ♪

アッチアイーオ「いい、そりぇ……ひゅごくいぃ…っ!」

提督「…れろぉ、ぢゅぽ……んちゅるっ……♪」

アッチアイーオ「はひぃ、はぁぁんっ…あひっ、はひぃ…っ♪」天井を向いた顔はすっかりとろけきっていて、半開きの口からだらしなくよだれを垂らしている…

提督「んちゅる……ぢゅぷ…れろっ♪」

アッチアイーオ「いい゛っ、いいのっ……もっと、もっとして♪」テーブルがぐらつきそうなほどがくがくと身体をひくつかせている…が、それでも提督の頭を秘部に押し付けて離さない…

提督「ぷは……んじゅるっ♪」頭を揺すってアッチアイーオの手を振り払うと息継ぎをして、また顔をうずめた…

アッチアイーオ「あんっ、もう一回ね♪」

提督「ぴちゃ…れろっ、にちゅっ……ちゅぷ、じゅるっ……くちゅっ♪」しばらくジェラートでも舐めるようにアッチアイーオの花芯をなめていたが、不意にしなやかな舌を奥に差し入れた…

アッチアイーオ「あっ、あぁぁぁんっ…♪」とぽっ、ぷしゃぁぁ…っ♪

提督「んふ、んぅぅ…♪」床にひざまづいたまま熱いアッチアイーオの蜜を顔に浴びると、いたずらっぽくぱちりとウィンクをしてみせた…

アッチアイーオ「はぁ…はぁぁ……すっごい、気持ちいぃ…♪」

提督「ふふっ……でも朝まではまだ時間があるわ♪」床に脚を投げ出して息を切らし、全身はあびせられた愛液や汗ですっかりべとべとになっている…が、アッチアイーオの足先に顔を寄せるとくるぶしからふとももまでねっとりと舐めあげた…

アッチアイーオ「うんっ、じゃあもっとしたい…っ♪」

提督「はい、了解しました♪」

アッチアイーオ「ん…いっぱい愛してね♪」

提督「ええ……だって私はアッチアイーオの事…好きだもの♪」耳元まで顔を寄せると、耳たぶを甘噛みしながらささやいた…

アッチアイーオ「…嬉しいっ!」テーブルからすべり降りるようにして提督に飛びついた

提督「きゃあっ……あんっ♪」そのまま甘い言葉を交わしながら、床で絡みあい始めた……

………

…翌朝…

提督「うぅ…ん……」いくら絨毯が敷いてあるとはいえ、冷たく堅い床のせいで目が覚めた提督……まだ夜が明けたばかりで、すっきりと爽やかな空気が窓から流れ込んできている…

アッチアイーオ「…むにゃ……」

提督「…ふふ、可愛い寝顔……♪」頬にそっとキスをすると、枕にされていた腕をそろりそろりと引き抜こうとした…

アッチアイーオ(常温)「…んぅ……」

提督「あら、起きちゃった♪」

アッチアイーオ「…ん、おはよ……う…?」ぱちくりと数回まばたきをすると、二人ともすっかり裸でいるのを確認した…

アッチアイーオ「え…うぇっ!?」

提督「ふふ、アッチアイーオにおはようのキスをしないと…ね♪」すっと唇を近づけつつ、左手をアッチアイーオの腰に回して抱き寄せる…

アッチアイーオ「ちょ、ちょっと! …わ、私がいくら提督のことが好きだからってそんなこと……だいたいどうして床の上で絡みあったまま寝てるのよ!?」

提督「んー…でも昨夜はあんなに激しくしてくれたじゃない♪ …もう忘れちゃった?」

アッチアイーオ「…昨夜、昨夜は……っ///」

提督「ふふっ、その様子だと思い出してくれたみたいね……もうアッチアイーオったら熱すぎて、滑油を垂らさないと焼け付きを起こしそうだったわよね♪」

アッチアイーオ「もうっ、思い出させないでよ…っ///」

提督「…でもせっかく一晩を共にしてくれたのだもの、忘れられちゃうのは悲しいわ」

アッチアイーオ「べ、別に「忘れろ」なんて言ってないわよ。口に出してくれるなって言っているだけで…こんなところを誰かに見聞きされたら恥ずかしいし……///」

カヴール「…あらあら、それでしたらわたくしも口をつぐんでいないといけませんね♪」

アッチアイーオ「ひゃう!?」

カヴール「おはようございます、提督。それとアッチアイーオも…絨毯の上でお休みになられたようですが、よく眠れました?」にこにこしながら、しばらくはからかう気満々のカヴール…

提督「おはよう、カヴール。そうね…おかげさまで身体がこわばっていて、背中も痛いけれど……でも昨夜のアッチアイーオはとっても可愛かったから、文句はないわ♪」

カヴール「ふふ、抱き枕は上等だったわけですね…それではどうぞシャワーを浴びて、お着替えになって下さいな♪」そう言ってバスタオルとガウンを差しだしてくれる…

提督「グラツィエ…アッチアイーオにも出してあげて?」

カヴール「はい♪」

アッチアイーオ「わ、私はいいわよ…大浴場に行ってくるから///」

提督「…そんな気がねしなくてもいいのに」

アッチアイーオ「べ、別にそういう意味じゃなくて……提督の部屋からシャワーの湯気を立てている私が出ていったら、どういう意味か誰だって気づくでしょうが…!」

提督「あら、そう……私は別に知られても構わないのに…♪」

アッチアイーオ「提督が気にしなくたって私が気にするのっ…と、とにかく部屋に戻るわ」

提督「分かったわ、アッチアイーオがそういうなら……それじゃあ、またいつでもいらっしゃいね♪」ちゅ…っ♪

アッチアイーオ「…え、ええ///」

カヴール「……まぁまぁ、提督ったらいけませんね。あんな思わせぶりな言い方をしたら誘っているようにしか聞こえませんよ?」

提督「…いけないかしら?」

カヴール「いいえ。でもまずはさっぱりなさってください…その間にコーヒーを用意しておきますから♪」

提督「ええ♪」

………

…とある日…

ディアナ「…提督、少しお願いがあるのですが」

提督「あら、ディアナが頼みごとなんて珍しいわね…なぁに?」

ディアナ「ええ……実は「近くの町」まで買い物に行きたいので、提督に車を出していただきたいと思いまして…」

提督「もちろんいいけれど…厨房で何か足りないものでもあったかしら?」

ディアナ「いえ、食料品や調味料は揃っております……ですが十五日のことがありますので」

提督「…十五日?」


…グレイ提督たちとコーヒーをすすっていた提督だが、ディアナにそう言われて手帳を取り出した……が、基地祭が済んで数日後の「十月十五日」は普段通りの哨戒や日常的な業務はあっても、特段これと言った予定は入っていない…しかし手帳の日付のところにはろうそくの印と「G・チェザーレ」と書きいれてある…


ディアナ「お分かりになりましたでしょうか?」

提督「…もしかして、チェザーレの誕生日(進水日)ね?」

ディアナ「いかにも」

提督「言われてみれば「カイオ・ジュリオ・チェザーレ」が進水したのは十五日だったわね……」

ディアナ「さようでございます…ですから、誕生日パーティを開きたいと思いまして」

提督「いいじゃない。規模の大小はさておき、みんな機会があったらお祝いしているんだものね…分かったわ」

ディアナ「…それではよろしいですか?」

提督「もちろん。断る理由が見つからないわ……チェザーレのためにも、うんとごちそうを用意してあげましょう♪」

ディアナ「はい」

…しばらくして…

提督「それじゃあ行ってくるから、留守はお願いね♪」

カヴール「はい。お任せください」

提督「…カヴールも妹の誕生日だから楽しみでしょう♪」

カヴール「ふふっ、そうですね……せっかくですから、うんと美味しいものを買ってきてくださいね♪」

提督「ええ、任せておいて…♪」ぱちりとウィンクを投げると、ランチアを出した…

…海沿いの道路…

提督「うーん、やっぱり渋滞のない道路は気分よく走れるわ♪」…海沿いの地方道路だけあって行きかう車も少なく、提督の「ランチア・フラミニア」は快調に飛ばしていた……メーターはだいたい90キロを指していて、海を望むゆるいカーブの続く道路をしなやかにクリアしていく…

ディアナ「さようでございますね」…白いゆったりしたチュニックのような格好でつばの大きな帽子を膝に乗せ、楽しげに目を輝かせている……

提督「…ディアナとエリトレアには厨房を任せきりで、普段はお出かけもままならないものね……今後は買い物でも何でも、出かける機会があったら誘うようにするわ」

ディアナ「ふふ、お気を使っていただいて…♪」

提督「いいのよ。そもそも鎮守府にあるのがヴェスパ(ベスパ)一台きりって言うのがね……あれじゃあまともに買い物にさえ行けないわよね」

ディアナ「そうかもしれません」

提督「この前リットリオが「チンクエチェント」を買ったけれど、あれだって私物だし…」(※フィアット500…いわゆる二代目のフィアット「NUOVA500」)

ディアナ「はい。もちろんリットリオに頼めば快く乗せてくれますが、そう毎回お願いするのも心苦しいですから」

提督「そうよね…」

ディアナ「ええ……それにしても速度のある乗り物と言うのは愉快ですね」…戦中は32ノットの快速を誇った高速スループだけあって、落ち着いた様子ながらどこかスピードを楽しんでいる……

提督「あら、だったらディアナも車を考えてみたら? 私に限って言えば車を出すのは構わないけれど、ディアナからしたら頼みにくいかもしれないものね…その点、自分の車なら好きな時に買い物に行けるわよ」

ディアナ「なるほど…そうですね……」

提督「免許はタラントに行けば取れるし、それまでの練習は鎮守府の敷地ですればいいわ…お給料だって私よりあるでしょうし♪」最後は半分冗談めかして微笑んだ…

ディアナ「ふむ……少し考えてみましょう」

提督「ええ♪」

ここ数日投下できずにいましたが、明日にでも続きを投下する予定です。お待ちください…九州の皆さんは大雨に気を付けて、家の敷地の近くに裏山などがある方は二階で寝る…などの対策をして下さいね


…それと重巡「摩耶」が発見されたそうですね。個人的に「高雄」型は設計者が用兵側の言う通りにしすぎてしまい、その結果あの詰め込みすぎな艦橋になってしまった感じがありますので微妙ですが……帝国海軍の重巡ではバランスのいい「妙高」型が好きです

…近くの町…

提督「…それで、今日はどこへ寄ればいいのかしら?」

ディアナ「まずは鮮魚店ですね…チェザーレは肉も魚も同じように好きですから」

提督「了解♪」

…鮮魚店…

魚屋のおっちゃん「いらっしゃい…おっ、海軍さんとこのお嬢さんじゃねえか。今日は提督さんも一緒かい?」威勢のいい店主のおっちゃんはウロコだらけのエプロンで軽く手を拭くと店先に出てきた…店先には使いこまれた「天秤ばかり」や氷の入った箱がならべてあり、赤や銀の魚が置かれている…

ディアナ「ええ。ところで今日のおすすめはなんでしょう?」

おっちゃん「そうさな……とりあえずカサゴとスズキ、あとは鯛のいいやつが数尾揚がってるぜ?」えらに指をかけるとひょいと持ち上げてみせた…

ディアナ「なるほど…でしたらそれを三尾づつ頂戴しましょう」

おっちゃん「毎度あり! 海軍さんは魚にうるさいから、いつもヒヤヒヤしてるがね……合わせて千リラ、端数はおまけしとくよ!」おっちゃんは「わはは!」と笑いながら魚をはかりに載せ、値段をはじいた…

ディアナ「よしなに……それと、うろこだけ処理して頂けますか?」

おっちゃん「お、任しとけ…カサゴのトゲも落としとくぜ?」

ディアナ「お気遣い感謝いたします」

おっちゃん「なぁに、いいってことよ。海軍さんにはいつもうんと買ってもらってるからな!」たちまちガリガリとうろこを落とすと、油紙の袋に魚を詰めた…

ディアナ「グラツィエ…♪」トートバッグ型の保冷袋に氷と一緒に詰めてもらい、優雅に会釈した

おっちゃん「あいよ、また来てくれよな!」

提督「……ディアナったら、魚屋さんとも顔見知りなのね?」

ディアナ「はい。そもそも海軍の補給トラックはあらかじめリストを送っておかないといけませんし、お魚は急に必要になったりしますので…」

提督「なるほどね……次は?」

ディアナ「菓子屋でケーキを受け取りに…それが終わったらもう用事はおしまいです」

提督「あら、そうなの?」

ディアナ「ええ。生ものやケーキを持ってあちこち歩き回りたくはないですから」

提督「確かに…それじゃあ今度は何もない時にお出かけしましょう。そうすればあちこちお店をひやかしたり、二人でお昼を食べたりできるものね♪」

ディアナ「…よしなに♪」

提督「ええ」

…菓子屋…

菓子屋の主人「おや、いらっしゃい…予約のケーキだね?」

ディアナ「はい」

主人「ちゃんと出来ているよ……奥の冷蔵庫から出してくるから、座って待っていてくれるかな」

ディアナ「ええ」

おばさん「さ、その間にこれでもどうぞ…ちょっと欠けちゃってるけど、味はおんなじよ♪」

…落ち着いた細身の主人と丸っこくて愛想のいいおばさんが切り盛りしている菓子屋…提督とディアナが椅子に腰かけると、さっそくおばさんが割れたクッキーだの、飾りの砂糖漬けチェリーが外れてしまった焼き菓子だのを出してくれる…

提督「いつもごちそうさまです♪」

おばさん「ノン・ファ・ニエンテ(いいのよ)、海軍さんはいつもうんと買ってくれるもの。 特にあなたが来てからは…ね♪」

提督「いえ、それは…彼女たちを見ていると、つい甘くなってしましまして……///」

おばさん「まぁまぁ。お嬢さんたちは頑張っているんだもの…お菓子の一つや二つくらいはいいじゃないの♪」

提督「ふふ、そうですね…♪」

主人「……はい、おまちどうさま…気を付けて運んでくださいね…」両手で抱え込むくらいの大きな箱をそっと手渡した…

提督「それじゃあ代金は私が……」両手がいっぱいのディアナに代わって財布を取り出し、払いを済ませると魚の入っている保冷袋を手に提げた…

ディアナ「…それでは、また近いうちにお邪魔いたします」

主人「ええ。待ってますよ…」

………

…十月十五日…

ディアナ「ふぅ……さすがに疲れました…」

エリトレア「私もですよぅ…もう食べる元気もないくらいです……」

提督「ええ、これだけのご馳走をつくるとさすがに重労働だったわね……でもチェザーレの誕生日だもの、目一杯お祝いしてあげないと♪」

ドリア「ふふ、そうですね…♪」

提督「……ところでカヴール、チェザーレはまだ?」

カヴール「ええ。チェザーレったら「髪が整わんうちに出るわけにもいくまい」と、一時間も前から鏡に向かってあれこれしておりましたよ…♪」上品に口もとを手で押さえ、ころころと柔らかい声で笑うカヴール…

提督「…チェザーレの事だから、そうなると長いわね」

カヴール「そうですね」

ロモロ「提督、さすがにお腹が減ったわ……少しくらい良いかしら?」

提督「だーめ♪」

レモ「えぇー? ねぇ提督、まだダメなのー?」

提督「主賓のチェザーレが来るまでは我慢してね♪」

ポーラ「まったくもう…スプマンテがぬるくなっちゃいます……」そう言ってスプマンテ(イタリア・シャンパン)の瓶が突っこんであるアイスバケットの氷水を取り替える…

提督「まぁまぁ」

リットリオ「…提督、チェザーレが来ましたよっ♪」チェザーレの先触れを請け負ってくれたリットリオ…

レモ「ふぃー、待ちくたびれたよぉ…」

提督「ふふっ…それじゃあレコードを……♪」古代ローマ帝国の堂々としたファンファーレをかけると、入り口に近い艦娘が扉を開けた……

エリザベス「なかなか時間がかかりましたわ……ね…」

ビスマルク「……どうやら「時間厳守」と言うのはイタリア語の辞書に…おぉ」

提督「…まぁ♪」

チェザーレ「……待たせたな、諸君!」

…堂々と食堂に入ってきたチェザーレは白いトーガに紅のマントをまとって、腰には古代ローマ風の幅広で短めな長剣を吊るし、頭に月桂樹の冠をかぶっている……丁寧に時間をかけただけあって、ローマの屋根瓦のような明るい赤茶色の髪はつやつやと輝き、威風堂々とした迫力と美しさを際立たせている…

レモ「うわぁぁ…♪」

ロモロ「とっても綺麗…♪」

ローマ「…素敵///」

チェザーレ「お待たせしたな、提督……さっそく乾杯の音頭を頼む♪」きりりとした表情に深みのある声のおかげで、堂々とした身体がさらに立派に見える…

提督「え、ええ…こほん……」ポーラにスプマンテを注いでもらうと、グラスを持ち上げた…

提督「……それでは、これより「カイオ・ジュリオ・チェザーレ」の進水記念を祝って乾杯したいと思います…チェザーレ「お誕生日」おめでとう♪」

一同「「おめでとう!」」

提督「……んくっ、こくっ…」

チェザーレ「うむ…このチェザーレ、諸君に祝ってもらって光栄に思うぞ!」

カヴール「……おめでとう、チェザーレ♪」

チェザーレ「ありがとう、姉上…さ、座ってご馳走をいただこう♪」カヴールの肩に手を回し、そっと椅子に座らせた…

チェザーレ「…さてと、アンティパスト(前菜)は……ほう、カプレーゼか」

提督「ええ。もうトマトの時期も終わりだから」

チェザーレ「いよいよ秋が深まってきたということか…だが、まだ味は濃いな」

提督「おいしい?」

チェザーレ「無論だ。提督が作ってくれたのだろう?」

提督「あら、どうして分かったの?」

チェザーレ「なに、提督の愛情が味に伝わってくるのでな…」

提督「…まぁ///」

チェザーレ「…と言いたいところではあるが、本当はオリーヴオイルの量や盛り付けかたが違うから分かったのだ」

提督「もうっ……そう言われて少し胸が「きゅん」としたじゃない…///」

チェザーレ「……少しだけか、提督?」顔を近づけてささやいた…

提督「…っ、回答は控えさせていただくわ///」

チェザーレ「はははっ…どうやらチェザーレもまだまだ捨てたものではないらしい♪」

ガリバルディ「そりゃあもう、女たらしで有名なチェザーレだものね」

カヴール「ええ、まったく。姉としては頭の痛い限りです…♪」苦笑いしながらナスやズッキーニの煮込みを取り分けるカヴール…

エウジェニオ「しかも人妻ばっかり狙って…ね♪」いたずらっぽく指先で投げキッスを投げた…

チェザーレ「こらこら。人聞きの悪いことを言うものでないぞ、エウジェニオ」

エウジェニオ「あら、違ったかしら?」

チェザーレ「うむ、大違いだ……たまたま好みの女性に人妻が多いというだけのことだ♪」

エウジェニオ「あら、それは失礼♪」

レモ「くすくすっ…「ハゲの女たらしが来たぞ、女を隠せ!」だねっ♪」(※「ハゲの女たらし…」 古代ローマでは将軍が市内を凱旋する時に軍団兵がはやし立てるしきたりがあり、その時チェザーレが言われたとされる)

チェザーレ「こら、髪の事は言うな…まったく口の悪いやつだ」

レモ「じゃあレモに何かよそってくれる? そうしたらしゃべらないで済むもの♪」

チェザーレ「やれやれ……ではパスタも来たことだから、うんと頬張るがいい」リガトーニ(太い筒状のパスタ)によく絡むボロネーゼをたっぷりとよそった…

ローマ「それは私の自信作ですよ、ジュリオ…どうぞ味わってみてください」

チェザーレ「ほう、ローマの手づくりとは嬉しいものだな。どれどれ…」


…普通の「サルサ・ポモドーロ」(トマトのソース)と違って、炒めた肉と玉ねぎをたっぷりの赤ワインで伸ばす「ボロネーゼ」…見た目は赤みの強いポモドーロより濃く、まさにワイン色をしていて、味も深い渋みがあって「大人の味」と言った風格がある…


チェザーレ「…ふむ。うむ……」

ローマ「…どうですか?」

チェザーレ「うむ、うまいぞ…チェザーレはあまり食い物の評価が出来ぬのだが、これは本当に美味い」

ローマ「それはよかったです……量もたっぷりありますからね?」

チェザーレ「それは何よりだ」

ディアナ「ですがあまり食べ過ぎないようになさって下さいませ、これから主菜が来ますから」

チェザーレ「なに、まだ腹の方は大丈夫だと言っているよ…♪」

ディアナ「では、そろそろ肉と魚の料理をお出ししましょう」

チェザーレ「頼んだ」

ディアナ「はい……さぁ、どうぞ」

…深い鉢に盛られてきたのはシンプルな魚の煮付けのような料理で、どうやら塩とオリーヴオイルだけで調理されているように見える…

リットリオ「……あの、これは?」

ヴェネト「ずいぶんそっけない料理に見えるわね…」

ローマ「いえ、これは…!」

ロモロ「うん、間違いないわ……!」

レモ「うわぁ…すごーい!」

チェザーレ「うむむ……ディアナよ、チェザーレのためにそこまでしてくれたか!」

ディアナ「はい。それと提督にもお礼を…車を出してくれたのは提督ですから」

チェザーレ「そうか……提督よ、感謝するぞ!」ん、ちゅぅ…っ♪

提督「も、もう…大げさなんだから///」そう言いつつまんざらでもなさそうな提督…

オリアーニ「えーと…それで、この料理は一体なんなの……?」

チェザーレ「あぁ、そうであったな…ディアナ、作った本人が説明するのが一番よかろう」

ディアナ「よしなに…これは古代ローマ流に調理した鯛とカサゴです。当時はトマトがありませんので、たっぷりのオリーヴオイルと塩だけで温めたと聞き及んでおります……味が物足りなく感じたり、お肉が食べたかったりする方には、ちゃんとヒレ肉のあぶりも用意してありますから…ご安心下さいませ」

提督「話には聞いたことがあるけれど、見るのは初めてね…なんて言えばいいのかしら。ただの煮つけではないし、かといって「揚げ煮」とも違うし……」

ディアナ「一番近いのは「バーニャ・カウダ」でしょうか」

(※バーニャ・カウダ…ニンニクなどで風味づけしたオリーヴオイルを温め、野菜などの食材を浸けて食べる料理。日本ではあちこちで食べられるが、本来はピエモンテ周辺の郷土料理だそうで、来日したイタリア人は「なんでこんなマイナーな料理があちこちにあるんだ…?」と驚くらしい)

提督「あー…それが一番近いかもしれないわね」

チェザーレ「それにしてもよく調べたものだ……」

ディアナ「ふふ。実はこの前ドキュメンタリー番組で「古代ローマの料理」を放送していたものですから、せっかくならローマに縁のあるチェザーレの誕生日に……と、思いまして」

チェザーレ「なるほど。しかし何とも嬉しい心意気ではないか…ま、とにかくいただこう♪」フォークとナイフで鯛をほぐし、取り分けた……別の深皿には同じ料理が入っているが、こちらにはぷっくりと肉厚で美味しそうな、小ぶりなむき身のカキが並んでいる…

提督「それじゃあ私も……はむっ」…たっぷりとオリーヴオイルをまとった鯛の身にはほんのり塩味が付いていて、口に入れると素朴な風味と一緒にほろほろと身が崩れた…

提督「……うーん、昔の人はこういう物を食べていたのね…」じっくり味わってから感慨深げに白ワインを含む……

ローマ「これはなかなか……シンプルなだけに素材の良さが引き立ちますね」

チェザーレ「うむ。料理一つにも深いローマの伝統を感じるな」

ビスマルク「……やれやれ。イタリア人というやつは、ただの料理一つにまで古代ローマを持ちださないと済まないらしい…」ワインをぐいぐいあおりつつ、あきれたようにつぶやいた…

ティルピッツ「…姉上!」小声でたしなめるティルピッツ…

チェザーレ「おや、どこかにゲルマンの原始人がいるようだ……征伐の必要があるやもしれぬな♪」

ビスマルク「……むっ!」

チェザーレ「ふむ…」

ヴァイス提督「…こら、やめんか……!」

提督「……チェザーレ、相手にしちゃだめよ?」

チェザーレ「うむ、提督の言う通りだ……ローマの将たるチェザーレが小娘相手に大人げないというものだな」

ローマ「その通りです…かのロモロとレモがテヴェレ川の岸辺にローマの礎をおいた時、あそこはまだ原始の森だったのですからね」

レモ「うん、レモたちがローマを築いたんだもん……ね、お姉ちゃん♪」

ロモロ「ええ」

チェザーレ「ははは、そうであったな♪」

ビスマルク「……むむむ」

ヴァイス提督「だから言わんことじゃない…イタリア人相手に言い合いなど仕掛けるからこうなるのだ、まったく。静かに料理を食べていろ…!」

エリザベス「ふふ…何とも愉快な食卓でございますね♪」

グレイ提督「エリザベス…たとえ「昔の因縁」があるとしても、他人のいさかいを笑ってはいけませんよ……ふふふ」

…食事が終わり…

提督「…さてと、それじゃあケーキを出してきましょうか」

ディアナ「よしなに」

チェザーレ「おお、ケーキか」

レモ「レモ、ケーキ大好きっ♪」

カヴール「ふふ、ケーキが嫌いな人はそういないでしょう…私も手伝いますよ、提督?」

提督「ううん、カヴールはチェザーレのお姉さんなんだから座っていていいのよ♪」

カヴール「あら、そうですか…でしたら、おとなしくケーキを待つことにしましょう」

チェザーレ「まったく至れりつくせりであるな、姉上」

カヴール「そうね……あ、来たわ」

提督「…さぁ、お待ちどうさま♪」

チェザーレ「おお…!」


…提督とディアナが車輪付きの手押し台に載せてきたケーキはたっぷり大きな画用紙くらいの面積とちょっとした辞書くらいの厚みがあり、ホイップクリームと旬の葡萄、それにくし形に切った洋梨で華麗にデコレーションされている……中央には「お誕生日おめでとう、カイオ・ジュリオ・チェザーレ」と筆記体のチョコレート文字が麗々しく躍っている…


提督「さ、それじゃあろうそくを…」

チェザーレ「……まさか年齢通りの本数ではあるまいな」

レモ「くすくすっ…そんなことしたらケーキがハリネズミになっちゃうよね♪」

チェザーレ「…」

ディアナ「ふふ、杞憂には及びません。ろうそくは十本程度にしておいてもらいましたから」

チェザーレ「やれやれ、まずは一安心と言ったところか…では、参るぞ!」

提督「ええ♪」

チェザーレ「ふう…っ!」

一同「「チェザーレ、お誕生日おめでとう♪」」

チェザーレ「うむ、かたじけない。 さ、それでは切り分けていただこうではないか♪」

提督「そうね…あ、せっかくだからチェザーレが切ったらどうかしら?」一旦切り分けようとしたが、思い直してナイフを下げた…

チェザーレ「ふむ、それも悪くないな……そうだ、提督も一緒に握ってくれるか?」

提督「あら、いいの?」

チェザーレ「無論だ…さぁ♪」

提督「そう、なら一緒に…♪」身体を寄せると、一緒に柄を握って刃を入れた…

チェザーレ「うむ……えい!」

一同「「わー♪」」喝采と同時にせっかちな艦娘たちからの「早く切り分けてよ♪」といった軽口も聞こえる

ローマ「おめでとうございます、チェザーレ」

チェザーレ「うむ…♪」

カヴール「……ふふ、チェザーレったら…二人でケーキを切るなんて、まるで結婚式みたいですね♪」

提督「えっ、あ…///」

チェザーレ「あー、チェザーレもそこまで考えていたわけでは……いや、別に提督となら構わぬが…」

ロモロ「提督は白の礼装だし、チェザーレもローマ風の白いトーガでお似合いです♪」

提督「まぁまぁ、そんな「お似合い」だなんて……照れるわ♪」

ライモン「…」

提督「……あー、いえ…その……そうそう、ライモンには「あーん」してあげる♪」

ライモン「はい♪」

提督「…ふぅ」

…しばらくして…

提督「…それじゃあそろそろ「進水式」をやりましょうか?」

チェザーレ「うむ、頃合いであろうな」

カヴール「それでは皆さん、表に行きましょう♪」

…波止場…

提督「…さて、と」スプマンテの瓶を手に波止場に立った提督……ポーラが用意してくれたボトルだが、相変わらずラベルを見て相場を考えると、艦首に叩きつけるのがためらわれるような気がする…

チェザーレ「準備は整っているぞ、提督!」沖に錨泊させた「ジュリオ・チェザーレ」の艦首に立って紅いマントをはためかせ、腕を組んで堂々としている…

提督「ええ、いま行くわ♪」


…本当なら波止場に立ってへさきに瓶を叩きつけ、みんなでリボンや紙テープを投げてにぎにぎしく…としたいところではあるが、鎮守府のつつましい港に入れるのは実寸で言うと小型の駆逐艦一隻か二隻が精一杯…リットリオ級や他国の超ド級艦に比べれば控えめな中型サイズとはいえ、戦艦である「ジュリオ・チェザーレ」が収まるような大きさなどまったくないので、チェザーレは自分の艦を「具現化」させて沖合で待っている……結局近づくのは提督とチェザーレや古代ローマに関係のある数人……それからお客様であるグレイ提督とヴァイス提督と決まり、モーターランチで近寄って、そこから瓶をぶつけることにした…


グレイ提督「…では、参りましょうか?」

提督「ええ」

ヴァイス提督「むむ……こうして見るとなかなか巧みな設計だ…」真面目な性格のヴァイス提督らしく、次第に近くなってくるチェザーレの船体を熱心に観察している…

提督「塗色の淡い灰色と相まって、艦首の線が綺麗に見えますよね♪」

ヴァイス提督「は、確かに……改装時に大きく作り変えたと言うが、なるほど…」あごに手を当ててじっくりと考え込んでいる…

提督「ふふっ…さ、着きましたよ♪」

ヴァイス提督「あ…これは失礼しました」

提督「研究熱心ですね♪」

ヴァイス提督「は、申し訳ありません……どうも性格のようで…///」

提督「構いませんよ、じっくり観察してもらって……でもまずは式をすませてしまいましょう♪」

ヴァイス提督「ヤヴォール」

提督「……それじゃあローマ、カヴール。 準備はいいかしら?」

ローマ「はい」

カヴール「ええ♪」

提督「それでは…汝(なんじ)、戦艦「カイオ・ジュリオ・チェザーレ」の進水を祝して!」二人と一緒に瓶の首を持って、艦首にぶつけた…

一同「「わーっ!」」岸辺や波止場から動きを見ていた艦娘たちから、一瞬遅れて歓声が上がった…

チェザーレ「祝ってくれて感謝するぞ、諸君…♪」

提督「いいのよ…さ、戻って残りのケーキでも食べましょうか♪」

チェザーレ「ああ、そうしよう」

…食堂…

カヴール「…いいお祝いになったわね、チェザーレ?」

チェザーレ「うむ…提督や皆の気持ちも嬉しいが、やはりチェザーレとしては姉上に祝してもらえたのを一番に思っているぞ」

カヴール「あら、嬉しいわ♪」

提督「良かったわね、カヴール…」そう言いながら、横目でちらりとビスマルクの方を見た…

ビスマルク「うむ、これも美味い……はぐっ、むしゃ…」街の菓子屋さんに頼んだケーキも決して小さくはなかったが、鎮守府の人数で切り分けてしまえば大した量にはならないので、追加としてエリトレアたちがいくつも焼き上げた様々なケーキやデザート……それを皿に盛りあわせにしてがつがつとむさぼっている…

ティルピッツ「……姉上、姉上…!」

ヴァイス提督「…シャイス……あの意地汚い大食らいめ、少しは控えめにするということを知らないのか…!」小声でたしなめているティルピッツと、席が離れているので叱り飛ばすことも出来ず、小声で悪態をついているヴァイス提督…

ビスマルク「あぁ、これも美味いな……むぐ、んむ…」

チェザーレ「……あのままだと、しまいには両手にフォークを持って食べ始めるであろうな」

ビスマルク「…うむ、このビスケットもいい」

エリトレア「それは酵母を入れたビスコッティ(ビスケット)ですから、栄養もありますよっ♪」

ビスマルク「ふむ……味も良ければ栄養もある…まさに「おいしくて強くなる」というやつだな!」

提督「……なんだか聞いたことのあるフレーズね…♪」苦笑いしながらもう一切れチョコレートケーキを取った…

…午後・提督寝室…

提督「…ふわぁ、飲み過ぎたわね…眠くなってきちゃったわ……」

…乾杯で飲み干した上等なスプマンテと、食事の間に紅白のワインをそれぞれ一杯か二杯…食後には二杯ばかりの甘いカクテル……普段はそこまで量を過ごさないでいるが、明るいお祝いムードに乗せられてつい色々と飲んでしまった提督…

提督「…メアリもシャルロッテもレポートを書くのに忙しそうだし、カヴールはチェザーレと一緒に仲良くお部屋に行っちゃったものね……」白い詰襟の制服を脱いで椅子の上にたたんで乗せ、ベッドに「ぼふっ…」と倒れ込んだ…

提督「ふわぁぁ……少しだけお昼寝するとしましょう…」

………



…しばらくして…

提督「うぅ…ん……」目を覚ますと窓の外はすっかり夕暮れ空で、もう日没が迫っている……口の中はお酒のせいかにちゃにちゃしていて、頭も多少ぼんやりしている…

提督「…少しお昼寝を取るつもりだったのに…寝過ごしたわね……」そうつぶやいて髪をかきあげると身体を起こし、それから眉をひそめた…

提督「……で、いつの間にこうなったのかしら?」

ロモロ「…すぅ…すぅ……」

レモ「うーん…むにゃ…」提督のベッドに上がりこみ、一糸まとわぬ裸体をさらして寝ているロモロとレモ…

提督「私は別にいいけれど、貴女たちにだって自分の部屋があるでしょうに…」そうつぶやいて肩をすくめたが、視線はロモロたちの身体から離れない…

提督「…それはそうとずいぶん大きいわね…ちょっとだけ触ってみようかしら……いえ、でも寝ているのに勝手に触ったりするのはよくないわよね…」建造当時は世界最大級だった2000トン超の「R級」大型輸送潜らしく、もはや「爆乳」と言ってもいいような豊満な乳房やむっちりとしたヒップを見て、おかしな気分になって来た提督…

提督「あー…でもよく考えたら、そもそも私のベッドで勝手に寝ているのがいけないのよね……どれどれ…?」もにゅ…♪

提督「……うわ、すごい弾力…出来立てのリコッタ(チーズ)みたい…」もみっ…むにゅっ♪

提督「これは……何とも言えないわね♪」

提督「さて…ロモロの次はレモの方も……分けへだてはよくないもの♪」むにっ…♪

提督「……うーん、この手触り…弾力もすごいし、この大きさで垂れたりしていないっていうのもすごいわね……」妙に感心しながら、両腕を投げ出してすやすや寝ているレモの胸を下から支えるように揉みしだいた……

提督「それにしても…」

レモ「ん…むにゃ……すぅ…」

提督「何て言うのかしら…この身体でこんなに無防備だと、ちょっとえっちな事もしたくなっちゃうわよね♪」

ロモロ「…」

レモ「……すぅ、すぅ…」妙にせわしない寝息を立てている二人…

提督「…おかしいわね……ねぇ二人とも、もしかして起きているんじゃない?」

ロモロ「……すぅ、すぅ…」

レモ「すー…すー…」

提督「…まぁいいわ、それじゃあそろそろ着替え……」

レモ「そうはいかないよ、提督っ♪」いきなりはね起きると提督に飛びついて押し倒した…

提督「あんっ♪」

ロモロ「もう、提督ったら寝たふりしていたのにおっぱい触ったりするんだもの…変な声が出そうになったじゃない♪」

提督「全くもう…で、どうして裸で私のベッドに入りこんだりしたの?」

レモ「うーん、面白そうだったから…かな♪」

提督「ふふっ、なにそれ…♪」

ロモロ「ふふふ…本当はね、私たちがもぐりこんだら提督も目が覚めるかと思って入ってみたんだけど、案外起きなくて…」

レモ「それでいつの間にかに寝ちゃったの♪」

提督「……まったくもう、二人とも「狼に育てられた子」だっていうのに、そんな風に誘惑して…私の方がルッピ(雌狼)になっちゃうわ♪」

レモ「えへへぇ…♪」提督の腰にしがみついてふとももに頬ずりをしている…

ロモロ「ふふふ…それにしても、提督ってば良い匂い……♪」

提督「そう? ちょっと汗くさいんじゃないかと思うのだけれど……」寝起きで何となく肌がベタベタしている気がしている…

ロモロ「……むしろそこがいいんだってば…れろっ♪」汗ばんだ胸元に舌を這わせた

提督「んっ…もうっ、やめなさいってば///」

ロモロ「どうして? 甘酸っぱいような良い匂いだと思うけど?」

提督「んー、そういわれてもね…」

ロモロ「…もしも嫌だったら、遠慮なくどかしてくれていいからね?」

提督「ふふっ……せっかく来てくれたのに、嫌なわけがないじゃない♪」ちゅっ…♪

ロモロ「やっぱり提督は優しいね…ん、ちゅ♪」

レモ「あー、お姉ちゃんばっかりずるーい!」んちゅぅ…っ♪

提督「んむっ、ちゅぅっ……ぷはぁ♪」

レモ「んふふっ、提督…甘くて美味しい♪」

提督「もう……まだうがいもしていないのに///」

レモ「大丈夫、変な味なんてしなかったから♪」

提督「ならいいけれど…」

レモ「それにしても、提督のおっぱいも大きいねぇ…♪」へその辺りにあごをのせ、腕を伸ばしてゆさゆさと揺さぶっている…

ロモロ「ね、私たちのを揉まなくたって良さそうなくらい」

提督「うーん、それとこれとは別問題だから……自分のだったら別に毎日でも揉めるし、私は相手の可愛い顔を見ながら揉みたいの♪」

ロモロ「なるほどねぇ…で、どうだった?」

レモ「そうそう。レモとお姉ちゃんのおっぱい、触ってみてどうだった?」

提督「そうねぇ……同じ「大きい」でもむっちりしたカヴールとかデュイリオとはまた違った感じで…もっと張っている感じだったわ」

ロモロ「そっか… さてと、それじゃあ今度は私たちの番ね……あむっ♪」

提督「あんっ♪」

ロモロ「ちゅぱ、ちゅぅっ……♪」

提督「ち、ちょっと…そんなに吸ったって母乳なんて出ないわよ///」

レモ「気にしない気にしない、時々したくなるだけなの……はむっ♪」

ロモロ「ちゅぅっ…あむっ♪」こりっ…と先端を甘噛みしたり、手でこね回したりしながら提督の乳房に吸い付く二人…

提督「んっ、あ…はぁ……ん♪」ただただ胸に吸い付かれているうちに、甘い声が漏れてきてしまう提督…二人を見ていると母性愛のような気持ちと色欲が混ざって、下腹部がじーんとうずいてくる……

レモ「ぷは……ふふ、提督からお乳が出ないのが残念かな♪」

ロモロ「そうね…ちゅぅっ♪」

提督「はぁぁ、んあぁ……もう、二人がそんなことをするなら…私だって♪」くちゅっ、ちゅぷ…♪

レモ「ひゃぁぁんっ♪」

ロモロ「はひっ♪ あっ、あひぃ…っ♪」

…一時間後…

レモ「あへぇ…気持ひよかったよぉ…♪」

ロモロ「うん……はぁぁ…♪」

提督「はぁ、はぁ…ふー、お昼寝する前よりも疲れた……もう、夕方の執務なんてできそうにないわ…♪」汗だくで仰向けに寝転がり、額に片手をのせている…

レモ「平気平気…ライモンドやカヴールがやってくれるもん♪」

提督「全くもう…」苦笑いしながら、ほっぺたにキスをしてあげた…

レモ「えへへぇ…♪」

…夕方…

提督「それにしても…確かにそれも考えないといけない時期ね……」

カヴール「…と、言いますと?」

提督「いえ、そろそろ秘書艦の交代をしないと…って」

カヴール「あら、提督は私だと不満でいらっしゃいますか?」

提督「いいえ…でも、そのうち大作戦が回って来るようなことがあったら全部の戦艦を投入する必要が出てくるかもしれないでしょうし、今回は夏の作戦が難しかった分、秋の作戦は簡単なものになるはずだから、今なら新しい娘に交代しても任務に差しさわりはないはず……そう思ったの。別にカヴールが不満だからとか、そういうことではないわ」

カヴール「そういう事でしたか…てっきり私のようなおばあちゃんはお嫌なのかと」

提督「まさか……何を任せても優秀だし、それでいてちっとも威張ることもなくて優しいし…こんなにいい秘書がいる司令官なんて、スーペルマリーナ(海軍最高司令部)にだってそうそういないわ♪」

カヴール「まぁまぁ、そんなに言われると照れてしまいますね…♪」

…数日後…

提督「……えー、というわけで秘書艦の交代を行いたいと思います…いつも通りくじ引きをするから、食堂の入口にある箱から一枚づつ引いてね?」

ライモン「…次の秘書艦の方は誰になるんでしょうね?」

エウジェニオ「さぁ。いずれにせよ、私たちは与えられた任務を尽くすだけ…でしょ?」

ライモン「そうですね」

フレッチア(フレッチア級)「秘書艦ね…ぜひ当たって欲しいわ」

ニコ(ナヴィガトリ級)「へぇ? ここはのんびりした鎮守府だし、提督もあれこれ押し付けたりはしないけど…それでも何だかんだで結構忙しくて面倒だと思うよ……それなのにやりたいの?」…相変わらず三角帽子に燕尾の付いた上着姿の「ニコロソ・ダ・レッコ」…鎮守府では通称「ニコ」が肩をすくめた

フレッチア「ええ、だって私は「新世代」駆逐艦で一番の年上だもの。艦隊型駆逐艦の代表として、妹や従姉妹たちにいい所を見せないと」

ニコ「ふぅん…そんな風に頑張ってたら気が休まらないだろうにね?」

フレッチア「そのくらいの矜持がなければ戦艦の護衛なんてできないわ」

ニコ「やれやれ……私は長女じゃなくて良かったよ」

リベッチオ(マエストラーレ級)「…ところで、誰が当たると思う?」…そう言って話に交じって来た

ニコ「うーん……提督は年上好きだし引きもいいから、今度はデュイリオとかリットリオ…あるいは重巡の誰かにでもなるんじゃない?」

リベッチオ「なるほどね…」

フレッチア「……でも、確率から言えば駆逐艦か潜水艦が一番高いはずよ……人数が多いんだから」

リベッチオ「確かに…ねぇ、それじゃあ賭けてみない? 負けたらきょう一日は勝った人の世話をするって事で…どう?」

ニコ「よし、乗った……秘書艦は戦艦か重巡になる方に賭ける」

フレッチア「じゃあ私は駆逐艦から出る方に賭けるわ!」

シロッコ(マエストラーレ級)「む…じゃあ私は潜水艦がなることに賭ける♪」

提督「……まったくもう、みんな何でもかんでもすぐああやってトトカルチョにするんだから…」(※トトカルチョ…サッカーくじのこと。転じて賭け事や賭博の意味も)

カヴール「まぁまぁ、あれも娯楽の一種ですから…お金を賭けているわけでもないですし」

提督「んー、まぁね……それじゃあ始めましょうか」

………

…このところちっとも投下できずにいましたが、もしまだ見てくれているような律儀な方がいたら本当にごめんなさい…このところなかなか書けなかったので……この数日で急に暑くなりましたし、熱中症には気を付けて下さいね…


……そして心機一転、そろそろ秘書艦を交代させようと思います……候補としては隻数も多い中型潜の誰かにする予定です…

カヴール「全員引き終わりましたよ、提督」

提督「了解。それじゃあ私も…」数字の書かれた紙が一杯に入っている箱に手を突っ込むと、ごそごそとかき回した……

ヴィットリオ・ヴェネト「…いよいよですね」

チェザーレ「うむ…いよいよ「ルビコン川を渡る」わけだ」

リットリオ「そうですね……妹だからひいき目で見ているかもしれませんが、私はヴェネトかローマだったらいいと思います♪」

ザラ「…ライモンドは軽巡、カヴールは戦艦だから……今度は重巡の誰かになって欲しいわね」

ポーラ「それはいいですねぇ~♪」

アブルッツィ「……やっぱり提督を支えるには実力がないと…そうでしょ、ガリバルディ?」

ガリバルディ「ええ…それに提督は可愛いから、秘書艦になったらお楽しみが増えるわ♪」そう言って小さく舌舐めずりをした…

マエストラーレ「…みんな勝手なことを言っているわね。ふたを開けてみるまで分からないっていうのに」

フレッチア「……ごくっ…」

エットーレ・フィエラモスカ「私としては、潜水艦隊の誰かがなってくれたら嬉しいのですが…」

ルイージ・トレーリ「はい……もし私が提督の秘書艦になったら、精一杯がんばりますね」

フィエラモスカ「ふふ、トレーリはいい子ですし優秀ですから大丈夫…♪」

グレイ提督「なるほど…くじ引きとは面白い考えですわね……」

ヴァイス提督「…司令官の副官役をくじ引きで選ぶとは…それでうまく行くものなのか?」

提督「えー……それでは「当たり」の番号を発表します。 …それと前にも言ったけれど、秘書艦に当たったのが駆逐艦や中型潜、補助艦艇の娘だった場合、体格が小さくて大変だと思うから、追加でもう一人選ぶわ…だから自分の番号札は持っておいてね?」

提督「……では、発表します…72番!」

デルフィーノ「わ、当たりです♪」

スクアーロ「おや、良かったね……今夜はお祝いに映画でも見ようか♪」

デルフィーノ「うう、お姉ちゃんは怖い映画ばっかり見せるから嫌ですよぅ…」

スクアーロ「ふふ、ばれてたか…♪」

提督「はいはい、みんな静かに…それじゃあデルフィーノは中型潜だから、もう一人ね……よいしょ」

デルフィーノ「……せっかくならお姉ちゃんたちがいいですけれど…」

提督「はい、引けたわ……26番!」

アッチアイーオ(温)「26番は私よ……提督のそばにいられるなんて…嬉しい……///」

提督「二人目はアッチアイーオね……それじゃあ、前に来て挨拶してくれる?」

デルフィーノ「はい♪」

アッチアイーオ「分かったわ」

提督「それじゃあ「コンテ・ディ・カヴール」と交代で秘書艦になった、スクアーロ級中型潜の「デルフィーノ」と、アッチアイーオ級中型潜の「アッチアイーオ」から挨拶をしてもらいます…さ、どうぞ♪」

アッチアイーオ「今日から秘書艦になった、中型潜のアッチアイーオよ……鎮守府の役に立つ事や必要な事ならなんでもするし、どんな小さい事でも言ってちょうだい…それと、よろしくね……提督///」

提督「ええ…さ、デルフィーノもごあいさつをしてくれる?」

デルフィーノ「は、はい……えーと、スクアーロ級の「デルフィーノ」です…これから秘書艦としてがんばります…ぅ///」鎮守府の艦娘たち全員の視線を浴びると恥ずかしげに頬を赤らめて下を向き、内股になってもじもじしている…

提督「はい、結構…それじゃあ改めてカヴールには感謝の拍手を♪」

一同「「わー♪」」

提督「と、言うわけで秘書艦は交代したけれど……しばらくはお手伝いをお願いするから、これからもよろしく頼むわね♪」

カヴール「…はい♪」

………

…執務室…

カヴール「では、これで説明は終わりです…といっても、しばらくは私も手伝いますから、分からない事があったら何でも聞いて下さいね?」

アッチアイーオ「ありがとう、カヴール」

デルフィーノ「本当に助かりました…♪」

カヴール「いいえ、お気になさらず……私のようなおばあちゃんになると、何かと心配になるものですから」

デルフィーノ「おばあちゃんだなんて、そんなことないです…カヴールはお肌もきれいで張りもあるし、十分若いですよぅ」

カヴール「あらあら、褒めても何もありませんよ?」

デルフィーノ「お世辞じゃなくってホントの事ですもん…」

カヴール「ふふっ、デルフィーノったら優しいですね……ちゅっ♪」

デルフィーノ「あっ、ふぁぁ…///」

提督「ふふふ、仲睦まじいようでなによりね……それとカヴールの言う通り、しばらくは引き継ぎを兼ねてこまごましたものから手伝ってもらう事にするから、安心して?」

アッチアイーオ「ええ、了解……でも、私は早く提督に頼られるようになりたいわ…///」

デルフィーノ「私もです」

提督「ありがとう、二人とも……でも、まずは「アンダンテ」(歩くように)で行きましょう…ね♪」

デルフィーノ「はい♪」

提督「んー、新しくなにか入り用な物があるかと思ったけれど…とりあえず「秘書艦用」の執務机は交代で使えばいいし、筆記用具も揃っているし……となると、特に倉庫から探し出してくる必要もないかしら…?」

カヴール「そうですね。それにもし足りないものが出て来たら、改めて持って来ればいいですから」

提督「それもそうね……それじゃあ今はこれくらいにして、お茶でも淹れましょうか♪」

デルフィーノ「あ、それじゃあ私がやります♪」

アッチアイーオ「ううん、私がやるわ」

提督「ふふっ…このお茶はあなたたちをもてなすために淹れるのだから、ゆっくり座っていていいのよ♪」

アッチアイーオ「そ、そう…ならお言葉に甘えて///」

提督「よろしい♪」

………



…別の日…

アッチアイーオ「提督、文書便が届いたわ」

提督「ええ、ありがとう……それじゃあまずは公務のものと私用の手紙を分けて、それから宛名を確認してね」

アッチアイーオ「ええ…それから?」

提督「宛名を確認してそれぞれまとめたら、その娘の部屋に届けてあげて?」

アッチアイーオ「了解……あ、ちょうどリットリオ宛てに来ているわね…後は軽巡のエウジェニオとガリバルディ、アレッサンドロ(マルコーニ級大型潜)とバニョリーニ(リウッツィ級大型潜)にそれぞれ、ひい、ふう、みい……ずいぶんあるわね…」

提督「あー…エウジェニオたちのは、だいたい恋文(ラブレター)みたいね♪」

アッチアイーオ「確かにやたらモテるものね…休暇だの長距離哨戒だのであちこち行くたびに、手紙だの贈り物だのをもらって来るんだから」

提督「ね…さてと、それじゃあこれでより分けるのは終わったから……」

デルフィーノ「あ、それじゃあ私が届けてきます」

提督「あら、やってくれる?」

デルフィーノ「はい、もちろんですよぅ♪」

アッチアイーオ「…勝手に中身を読んで、一人で盛ったりしないでよね?」

デルフィーノ「も、もうっ…そんな事しないってばぁ///」

提督「こらこら、アッチアイーオ…デルフィーノはいい娘だもの、そんな事しないわよ♪」

アッチアイーオ「どうだか…」

…廊下…

デルフィーノ「もう…アッチアイーオってば、いくらなんでも言い過ぎですよぉ…」手紙をそれぞれの部屋に届けて回りながらつぶやいた…

デルフィーノ「……まぁ、一人でするのは好きですし……ちょっと回数は多いかもしれませんけど…だからって……///」

エウジェニオ「…ふふ、可愛いイルカさんは何が好きなのかしら?」そっと後ろに忍び寄っていたエウジェニオが胸元に腕を回し、色っぽい声でささやいた…

デルフィーノ「ひゃんっ…!?」

エウジェニオ「ふふふっ、チャオ♪」

デルフィーノ「もう、エウジェニオさんってばぁ……お、驚かさないでくださいよぅ…」

エウジェニオ「ふふ、ごめんなさい…つい、ね♪」

デルフィーノ「エウジェニオさんのいじわる…ぅ///」

エウジェニオ「だって可愛かったんだもの…♪」

デルフィーノ「うぅ…もう、本当にびっくりしたんですからぁ……」

エウジェニオ「まぁまぁ……ところで、デルフィーノは何の回数が多いの?」

デルフィーノ「ひゃうっ!?」

エウジェニオ「……いえ、だって「ちょっと回数は多いかもしれませんが…」ってひとりごとを言っていたから、つい気になって♪」

デルフィーノ「えぇ…と、それは……あの…///」

エウジェニオ「なぁに?」

デルフィーノ「その、ですから……ぁ///」

エウジェニオ「……くすくすっ♪」

デルフィーノ「…わ、笑わないで下さいよぅ……///」

エウジェニオ「ふふふっ、ごめんなさい……あなたの「趣味」はもうすっかり公開されているようなものなのに、それを言葉で言うのさえ恥ずかしがっているのがおかしくて…♪」

デルフィーノ「だって…ぇ///」

エウジェニオ「まぁ、いいんじゃないかしら……人それぞれだもの♪」

デルフィーノ「エウジェニオさん…」

エウジェニオ「ふふふっ……ところで、手紙を届けに来てくれたのよね?」

デルフィーノ「あ、そうでした…これです」

エウジェニオ「ふふ、ありがと」

デルフィーノ「どういたしまして。それでは失礼しま…」

エウジェニオ「……あら、お礼がまだよ?」

デルフィーノ「いえ…これも秘書艦の務めですし、お礼なんていいですよぅ」

エウジェニオ「そう言うわけにもいかないでしょう……せっかく届けに来てくれたんだもの、なにもお礼をしないなんて悪いわ♪」

デルフィーノ「でも…ぉ」

エウジェニオ「どのみち私の所が最後だったんでしょう? …だったらもう用は済んでいるわけだし、少しくらい良いじゃない」

デルフィーノ「それは、まぁ……確かに…」

エウジェニオ「でしょ…それじゃあ目をつぶって?」

デルフィーノ「…えぇと、こうですか?」

エウジェニオ「ええ、それでいいわ……んちゅっ、ちゅぅぅっ♪」腰を抱き寄せてあごを上向かせると、舌を滑り込ませて巧みなキスを浴びせた…

デルフィーノ「んんっ!? くぅぅっ、んむぅ…///」

エウジェニオ「ちゅるっ……ちゅぷ…ぷは♪」

デルフィーノ「ぷはぁ……ふわぁぁ…っ///」

エウジェニオ「ふふふ、またいつでもいらっしゃい…ね♪」

デルフィーノ「はひ…っ///」

呉の豪雨災害から1年が過ぎてiseadや遠航での寄港地で読むこのssはかなり心の支えになってます。これからも応援してます。

>>560 遅筆でなかなか投下できずにいる中、気長に見て下さっていて嬉しく思います……気候の違いなどで体調を崩しやすいかと思いますので、どうぞご自愛くださいませ…なかなか話が進みませんが、頑張って投下していきます…


…そしてやっぱりこの時期になると(キザな言い草かもしれませんが…)ぬるま湯につかっているようなものをだらだらと書いていられる「平和のありがたみ」を感じますね……


……また明日以降にでも投下する予定でいますので、思い出したころにまた見に来ていただければと思います…

…その晩・スクアーロ級の部屋…

スクアーロ「ぐー……すぅ…」

ナルヴァーロ(イッカク)「すー…すー……」

トリケーコ(セイウチ)「すぅぅ……むにゃ…」

デルフィーノ「うぅ……ん///」小さいながらもちゃんと仕切られているそれぞれの寝室から姉妹たちの寝息がかすかに聞こえてくるなか、デルフィーノはふとももをこすり合わせ、まんじりともせずにいた…

デルフィーノ「…もう、エウジェニオさんがあんなことをするから……ぁ///」

…そう小声でつぶやきながら濡れた秘部に人差し指を滑り込ませると、瞳がうつろになり「くちゅ…っ♪」と粘っこい水音がブランケット越しにくぐもって聞こえた…

デルフィーノ「はひっ、んぅぅ……んっ、んく…ぅっ///」くちゅくちゅ…っ、ぬちゅ♪

デルフィーノ「はぁ、はぁ…んっ、くぅぅ…っ♪」

デルフィーノ「…はひぃ、ふぅ…はぁ……はふぅ……」しばらくじんわりと広がった余韻に身体をひくつかせていたが、やがてごそごそと起き上がった…

デルフィーノ「……うぅぅ…恥ずかしいですけれど……でも、もっと…したいです…///」ベッド脇にあるナイトテーブルの引き出しを開け、やがてちょっとしたポーチを取り出した……白い顔を赤く染め、恥ずかしげな困り顔で袋の中をかき回す…

デルフィーノ「…うぅ…ん、どれにするか迷ってしまいます……ね///」…中に入っている「玩具」を取り上げてみては袋に戻し、また別な物を選んでは思案した……そしてやっと二つ三つばかり選び終えた…

デルフィーノ「……今日はこれと…これにしま……んくぅ…っ♪」すっかりとろとろの花芯に玩具を滑り込ませるとスイッチを入れ、甘い声をもらした…

デルフィーノ「…ふわぁ……あふっ、んぁぁ……あぅ…んっ♪」

デルフィーノ「ふぁ…ぁ、はひっ…ひぅぅ……っ♪」ベッドの上で横向きに寝て、膝を抱え込むような胎児の体勢で身体をひくつかせている…

デルフィーノ「ふぁぁぁ…っ、きもひ……いぃ…っ///」

…しばらくして…

デルフィーノ「…はー、はぁぁ……っ」

デルフィーノ「……んっ、まだ…身体がじんじんします…///」瞳の焦点も合わないままよろよろと立ち上がると、壁に手をついて歩き出した…

デルフィーノ「も、もう…こんな……んくぅっ///」力の入らない足腰で廊下を歩きながら、それでも玩具のスイッチを切らずにいる……ちょうど携帯電話の振動に似た震えが秘所に響いて、そのままとろけてへたり込みそうになる…

デルフィーノ「はひぃ…ふぅ……こんなの、どうかしています……でも…んんっ♪」階段ホールの手すりに秘部を擦り付け、玩具を押しこむ…

デルフィーノ「ふぁぁ…んっ♪」

………

…執務室…

提督「……うーん」ナイトガウン一枚の提督は左腕で頬杖をつき、ノートパソコンの画面に向かっている…左手の側には空っぽのマグカップ、右手の側には未決書類が広げてある…

提督「…年間経費が……万リラで、今月の経費が…見積もり書や納品書は納入業者の人が作って持ってきてくれるから、それはいいとして…」

提督「……ふぅ、そろそろやめにしましょう…明日でも出来るんだもの、今日やることでもないわ…」のんびりした空気の鎮守府にいるせいか、せわしないローマのスーペルマリーナ(海軍最高司令部)にいた時に比べて、ついなまけてしまう提督……細かい数字を目で追うのもおっくうになったので書類を「未決」の箱に戻し、ノートパソコンの電源を切った…

提督「ふわぁ…そろそろ寝るとしましょうか……」歯磨きも済ませてあり「あとは寝るだけ」と、寝室のドアノブに手をかけた…

提督「…だあれ?」控えめなノックの音に首をかしげた…

デルフィーノ「あのぅ…夜分遅くにごめんなさい……入ってもいいですか……?」

提督「あら、デルフィーノ……どうぞ?」

デルフィーノ「…すみません……こんな時間に…///」

提督「いいえ、構わないわ……何かご用?」

デルフィーノ「えぇ…と、はい……その…///」

提督「ふふっ、どうかしたの…?」焦点の合わない瞳に火照った頬、半開きの口もと…それに内股で力の入っていないような脚と、携帯電話のような振動音……それに気づいていながら、提督はわざととぼけた様子でたずねた…デルフィーノのそばに歩み寄ると後ろに立って、軽く肩に手を回した…

デルフィーノ「あのぅ、つまり……はぁんっ♪」…提督の左手が軽くふとももを撫で上げ、びくんっ…とデルフィーノが跳ねた…

提督「……一緒に寝ましょうか♪」

デルフィーノ「…はい///」

………

…寝室…

提督「さぁ、どうぞ…♪」

デルフィーノ「はい……んんっ///」ベッドに上がろうとした瞬間、提督が軽く背中を撫で上げた…

提督「…あら、どうしたの?」

デルフィーノ「て、提督ってば…ぁ……///」

提督「ふふっ、それじゃあ改めて…♪」

デルフィーノ「ふわぁ…っ///」マットレスの上に乗った瞬間、玩具が奥に押し付けられて甘い声が漏れた…

提督「……まったくもう、私が手伝わなくても大丈夫に見えるけれど?」

デルフィーノ「いえ……なんだか今日は一人だと物足りなくて…提督に手伝って欲しいんです……ぅ///」

提督「ふふ、了解♪」

デルフィーノ「きゃっ、ひゃぁ……んっ///」

提督「…ちゅぅ…ちゅるっ、ちゅむ……ちゅぱ…ちゅぷっ、んちゅ……っ♪」

デルフィーノ「んむっ、ちゅるぅ…っ、んちゅっ……ちゅぷ…ん、ちゅるっ……///」

提督「うふふっ、デルフィーノったらそんなに勢い込んで…して欲しいならいくらでもしてあげるのに♪」

デルフィーノ「だって……提督のキス…とっても気持ちよくて……ぇ///」

提督「まぁまぁ、それじゃあもっとしてあげるわ…ね♪」

デルフィーノ「はい……デルフィーノに色々教えて下さぁ…い♪」普段のくりっとして可愛らしく、それでいて賢そうな瞳はとろんととろけていて、すっかり発情したような具合になっている…

提督「ええ……って、私が何もしなくたってもうすっかりとろとろじゃない♪」

デルフィーノ「あっ、あ……ひゃぁん…っ///」くちゅっ、ちゅくっ…♪

提督「しかも相変わらず前と後ろに入れて……それはそうと、この状態でここまで来たの?」

デルフィーノ「はい…///」

提督「もう、あきれた♪」そう言いながらも金色の瞳はらんらんと輝き、甘ったるい笑みを浮かべて小さく舌舐めずりをした……それからモーターのうなっている玩具に手をかけ、一気に引きぬいた…

デルフィーノ「ひゃあぁ…っ♪」とろとろっ…とぽっ♪

提督「んふふっ、まったくこのイルカさんときたら…本当にいやらしいことが好きなんだから♪」くちゅくちゅっ…じゅぷっ♪

デルフィーノ「はひぃぃ…んっ、あ……ふわぁぁ…ぁ、気持ひいぃれす…ぅ♪」提督に後ろから抱きかかえられたまま白いふとももを押し広げられると、とろとろに濡れた秘所に提督の指が入って来た……

提督「ふふ、まだまだ…♪」ぐちゅぐちゅっ、にちゅっ…じゅぶっ、ぐちゅ…っ♪

デルフィーノ「ふぁぁっ、提督…もっとしてくらひゃ……いぃっ♪」ぐちゅり…ぷしゃぁぁ…っ♪

提督「んー、なぁに?」ぐちゅぐちゅ、じゅぷ…ぬちゅっ♪

デルフィーノ「ふわぁぁ…それぇ……もっと、もっと…ぉ///」ちょうど提督をリクライニングの椅子にするようなかたちで身体をあずけ、提督の指だけでは物足りないかのように自分の人差し指も滑り込ませてかき回している…

提督「…ところで、デルフィーノ」

デルフィーノ「ふぁ…い?」頭をのけぞらせて提督の顔を見た…

提督「……好きよ♪」ちゅうぅ…っ♪

デルフィーノ「んんっ/// んむっ、んくぅぅ……っ♪」とろっ、とぽっ…ぷしゃあぁ……っ♪

提督「ふふ……デルフィーノ(イルカ)はクジラの仲間だけに「潮を吹く」のが得意なのね♪」ベタな冗談を言いながら、くたっと提督にもたれかかっているデルフィーノにウィンクした……二人のふとももはデルフィーノの蜜でねとねとで、身動きするたびに「にちゅ…っ♪」と粘っこい水音が響く…

デルフィーノ「はい、とっても得意ですよ…ぅ///」くちゅくちゅっ…ぐちゅっ、にちゅっ♪

提督「…もう、まだしたいの?」

デルフィーノ「だって…くちゅくちゅするの、気持ちよくって…ぇ♪」

提督「ふー…仕方ないわね、満足するまで付き合ってあげるわ♪」

デルフィーノ「はい…っ♪」

提督「……どうやら明日は寝不足になりそうね…♪」

………

…翌朝…

アッチアイーオ(常)「おはよう、提督」

提督「ええ、おはよう♪」ちゅっ♪

アッチアイーオ「…んっ、もうっ……いきなりしないでよ///」

提督「ふふふっ、ごめんなさい…アッチアイーオがあまりにも可愛いものだから、つい♪」

アッチアイーオ「て、提督ってばいつもそうやって…///」

提督「まぁまぁ、そう怒らないで♪」

アッチアイーオ(温)「お、怒ってなんかいないわ……むしろ嬉しい…くらい……だ……もの…///」

提督「そう、よかったわ♪」

アッチアイーオ「……いっ、今のが聞こえたの?」

提督「ええ……だって愛しい女(ひと)の言うことは、一言だって聞き逃したくないもの…ね♪」

アッチアイーオ「…っ///」顔を伏せて耳まで赤くしている…

提督「ふふっ」

アッチアイーオ「…と、とにかく朝刊と気象通報を持ってきたわ///」

提督「ええ、ありがとう」

アッチアイーオ「……それにしてもデルフィーノったら、一体どこをほっつき歩いているのかしら? …まったく、秘書艦になって最初の朝だっていうのに…」

デルフィーノ「ふわぁぁ…おはよ、提督……♪」乱れた淡灰色の髪をかき上げ、眠そうな様子で目をこすりながらデルフィーノが寝室から出てきた……前がはだけたナイトガウンに満足げな艶を帯びた声…そして「ただ添い寝しただけ」といった言い訳は通じそうにない、乾いた愛蜜のこびりついたふとももと、とろんとした表情を浮かべている…

アッチアイーオ「…」

提督「…あー……」

デルフィーノ「…わわっ、アッチアイーオ!?」

アッチアイーオ「おはよう、デルフィーノ……なるほどねぇ…私が朝から駆けずり回って新聞を取って来たり気象通報を印刷したりしている間、あなたは提督といちゃいちゃしてたってわけね?」

デルフィーノ「え、えぇと……その…///」

提督「あのね、アッチアイーオ…私もよせばよかったのにデルフィーノを見ていたら、つい……だから、その…あんまりデルフィーノだけを責めないであげてほしいの……」

アッチアイーオ「……はぁ、もういいわ。どのみちデルフィーノが万年発情期でいっつも「ナニする」ことしか頭にないのはよく知ってるし…」

デルフィーノ「…う」

アッチアイーオ「提督が「来るものは拒まず」式で、女にだらしがないのもよく知ってるわ」

提督「……ええ、ごめんなさい」

アッチアイーオ「ただ、こういう場合には何か必要だと思うのよね……」

デルフィーノ「え、えぇと…今日は一日私が秘書艦のお仕事を頑張りますから……ね?」

アッチアイーオ「なるほど…で、提督は?」

提督「そ、そうね……よかったら今日のお茶の時間にとっておきのお菓子を…」

アッチアイーオ「…そういうことじゃないわよね」

提督「あー……デルフィーノ、ちょっと外してくれる?」

デルフィーノ「はい…っ」アッチアイーオの剣幕から逃げ出せるとあって、急いで執務室から出て行った…

アッチアイーオ「…それじゃあ、もう一度聞くわね……提督は埋め合わせに何をしてくれるの?」

提督「そうね…アッチアイーオが溶けちゃいそうなくらい甘い一日と熱い一晩を……これでどうかしら♪」アッチアイーオの耳に口元を近づけてささやいた…

アッチアイーオ「……それならいいわ///」

提督「よかった…ふふ、それじゃあ精一杯素敵なもてなしをしないとね♪」

アッチアイーオ「期待してるわ……さ、朝食にしましょ?」

提督「ええ…それじゃあ一緒に行きましょうか♪」そう言ってさりげなく指を絡めた…

アッチアイーオ「///」

………

…朝食時…

提督「はい、あーん♪」

アッチアイーオ「…そ、そんなのやらないわよ///」

提督「まぁまぁ、そう言わずに……それとも命令しないとダメかしら?」スプーンでミネストローネをすくうと「ふぅー」とひと吹きして冷まし、アッチアイーオの口元に近づけた…が、アッチアイーオに断られると残念そうに肩をすくめた…

アッチアイーオ「何もそこまで言うことはないじゃない…分かったわよ///」困り顔でスプーンを差し出している提督に根負けして「あーん」したアッチアイーオ…

提督「ふふっ……そうやって照れるところも可愛いわ♪」

アッチアイーオ「て、照れてないわよ!」

…別の席…

ライモン「……あの、デルフィーノ」

デルフィーノ「なぁに、ライモンド?」

ライモン「いえ、さっきから提督が妙にアッチアイーオを構っているようですが…一体どうしたんです?」

デルフィーノ「あー…えーと、ね……実はかくかくしかじかで…」

ライモン「……はぁ、提督は相変わらずですね…」あきれたように天を仰ぎ見た…

デルフィーノ「ごめんなさい、ライモンド」

ライモン「いえ、別にデルフィーノが悪いわけじゃありませんから……でも一日中これを見せられるかと思うと…」

カヴール「…食事をしないうちからお腹いっぱいになりそうね♪」

ライモン「えぇ、まぁ…」



…午前・会議室…

提督「…以上のように、この間リットリオたちが実施した射撃訓練での命中弾は…発で、リットリオ級の主砲の門数は九門……単純計算すると、この鎮守府のリットリオたちの命中率平均はおよそ六パーセントということになりますね……風や火薬の燃焼ムラ、線条(ライフリング)の摩耗…その他もろもろの変数を考えると、相手が移動しないはしけ(バージ)とはいえ、かなりの命中率だと思います」

グレイ提督「確かによい数字ですわね…ところでカンピオーニ提督?」

提督「はい、何でしょう?」

グレイ提督「こちらの「秋季作戦」はいつごろ実施されるのでしょう?」

提督「秋季作戦…ですか」

グレイ提督「ええ。なにせわたくしたちの交換プログラムもそろそろ終了するわけですが、せっかくの機会ですから一回くらいカンピオーニ提督指揮下の艦隊行動を実戦で拝見できる機会があれば…と思っておりまして。 …ヴァイス中佐もご同様かと思いますが、いかがでしょう?」

ヴァイス提督「はっ…それはそうですね。無論これまでもさまざまな事柄についてご教示をいただき、大変有意義ではありましたが……」

グレイ提督「何事も「百聞は一見にしかず」ですものね?」

ヴァイス提督「は、その通りです」

提督「うーん…それに関してはイオニア海管区からの命令書が来るまでは何とも言いがたいですし、うち(タラント第六)は夏季休暇の前に大掛かりで難しい作戦を二つ同時に実施したので……おそらく、今回の作戦はごく簡単なものになると思っています」

グレイ提督「そうですか」

提督「ええ……司令部としてはどの鎮守府にもまんべんなく作戦を実行できる実力を持たせたいですし、一つの鎮守府に頼りきり…というのは艦娘の疲労や、ある特定の鎮守府司令官の発言力が強まる事を考えても避けたいでしょうから」

ヴァイス提督「確かに…」

提督「…それにお忘れかもしれませんが、私は「鳴かず飛ばず」で過ごすよう、わざわざのんびりした鎮守府に「栄転」させられてきた司令官ですから♪」

グレイ提督「ふふ、ご謙遜を…♪」

アッチアイーオ「…そうよ、提督は立派にやっているわ!」

提督「あら、ありがとう…アッチアイーオにそう言ってもらえて嬉しいわ♪」

アッチアイーオ「///」

グレイ提督「あら、でしたらわたくしの言葉は嬉しくないのかしら…?」ちょっと意地悪くたずねた…

提督「ええ…だってメアリの褒め言葉は「嬉しく思う」ではなくて「光栄に思う」ものですから♪」

グレイ提督「まぁ、お上手ですこと」

………

…これでやっと秋季作戦への布石を書くことができました…


…それはそうと、九州の方は大雨ですが大丈夫でしょうか…あの雨が全部アマゾンの森林火災に行ってくれればいいのに、と思います……災害はどんな災害でもそれぞれ大変ですが、豪雨災害で何より困るのは泥水ばかりで飲食や洗浄に使えるきれいな水がなく「辺りは水浸しなのに水不足」ということでしょうね……暑さの残る時期でもありますし、どうか暑気あたりなどには気を付けて下さいね

…昼下がり・執務室…

提督「ふわぁ…あ……お昼を食べたら眠くなってきちゃったわ…」

アッチアイーオ「そんなのいつもの事じゃない…まったく」

提督「だって、食事をすると「消化のために血の巡りが胃の方に行って、それで脳の活動が低下するから眠くなる」って、この間読んだ新聞記事に書いてあったわ」

アッチアイーオ「だからって鎮守府の司令官が昼寝っていうのはどうなのよ…?」

提督「まぁまぁ…アッチアイーオもお昼寝しましょう♪」

アッチアイーオ「わ、私はいいわよ……それに昼寝するなら自分の部屋です……ふぁ…ぁ///」

提督「ふふっ…そう言わずに♪」

アッチアイーオ(温)「わ、分かったわよ…私も、その……提督となら一緒のベッドに入りたいし///」

提督「それじゃあ決まりね♪」しゅるっ…♪

アッチアイーオ「え、ちょっと…///」

提督「……アッチアイーオは脱がないの?」

アッチアイーオ「ぬ、脱ぐけど…提督ってば、何も私の目の前で脱ぐことはないでしょ///」

提督「どうして?」

アッチアイーオ「ど、どうしても何も……///」

提督「ふふっ、私とアッチアイーオの間じゃない…ね♪」椅子の上に制服を畳んで載せると、黒いストッキングと桃色のレースが付いた下着をその上に重ねて置いた……

アッチアイーオ「///」(改めて見ると提督ってばきれいな身体よね…胸とヒップは大きいけど張りがあって、ふとももだってむっちりしていて……///)

提督「♪」(…こうしてみるとアッチアイーオは胸もあるし、お腹は引き締まっていて……それに綺麗な黒い瞳と、磨き上げたピストルみたいに青みがかった黒髪…中型潜の娘だからちょっとだけ背は低いけれど…それもまた魅力的ね♪)

アッチアイーオ「…は、恥ずかしいから早くベッドに行きましょうよ///」黒のショーツとブラで、照れ隠しにそっぽを向いている…

提督「ええ♪」

…提督寝室・ベッド…

提督「さぁ、いらっしゃい♪」タオルケットをめくりあげ、ふわりと柔らかい敷き布団を「ぽんぽんっ…」と軽く叩いた…

アッチアイーオ「そ、それじゃあお邪魔するわ…///」顔を真っ赤にしてもぞもぞと入ってきたアッチアイーオ…心なしか瞳が熱っぽく、わずかに開いた唇からは甘い息遣いが漏れる……甘い匂いのするもっちりと柔らかい…それでいてまだまだ張りのある提督の身体に手を回し、抱き枕を抱くような格好で落ち着いた…

提督「ふふっ、アッチアイーオったら結構身体が火照っているのね……そんなにしがみつかれたら火傷しちゃいそう♪」片手では長い黒髪を撫でながら、背骨に沿って手を滑らせていく…

アッチアイーオ(熱)「だって…提督と一緒にいると……身体が火照って…熱くて……我慢できない…の///」

提督「……それじゃあ…」目を閉じて唇を近寄せた…

アッチアイーオ「…ええ///」ん、ちゅくっ…ちゅっ♪

提督「ん、ふ……んむっ、ちゅっ…♪」

アッチアイーオ「ん…ちゅぅっ、ちゅむっ、ちゅるぅ…っ……ちゅぷっ、んちゅっ…ちゅっ、ちゅっ、ちゅぅぅ…っ♪」

提督「んうぅ…んくっ、んむぅ……はむっ、あむっ…んんぅ、ちゅぅぅ…んっ、んむっ、んちゅぅぅっ…///」

アッチアイーオ「んむぅぅっ、ちゅぅっ、ちゅっ……ちゅくっ、ちゅるぅ…っ♪」提督の頬に両手を添えると、まるでタガが外れたかのように唇を重ね、むさぼるような勢いで舌を絡める……

提督「んっ、んんぅ……んむぅぅ…ふぅ…っ、んっ…♪」焼けるようなキスに口を塞がれて息を切らしながらも、アッチアイーオ(鋼鉄)にしては滑らかで柔らかいお尻の曲線に手を這わせ、そこからまた肩甲骨へと指先を撫で上げていく…

アッチアイーオ「んんぅ、んむっ…ちゅぽ…んっ///」

提督「ぷはぁ……アッチアイーオのキス…とっても熱くて、とろけるようだったわ…///」とろりと焦点の外れた瞳でアッチアイーオを見つめながら、甘い声でつぶやいた…

アッチアイーオ「ええ…私も……でも、提督にはもっと気持ちよくなってほしいわ♪」つぷっ…くちゅっ♪

提督「あっ、あぁぁ…んぅ♪」

アッチアイーオ「…どう、提督……気持ちいい?」…くちゅくちゅっ、にちゅっ♪

提督「ええ…気持ちい……んぁぁ、あふっ…あんっ♪」

アッチアイーオ「はぁ…はぁ、はぁ……っ♪」

提督「あんっ♪」…荒い息遣いのアッチアイーオに転がされて仰向けにされる提督……腕を投げだした無防備な格好で目を細め、とろけたような表情をしている…

アッチアイーオ「はーっ、はーっ……とく…提督っ♪」…じゅぶじゅぶっ、くちゅっ♪

提督「…あっ、んっ……あぁ…んっ♪」

アッチアイーオ「はぁ…んぅっ♪」

提督「あっ、あ…んぁぁ、あん……っ♪」

アッチアイーオ「あぁ、提督……愛してるわ、本当に大好き…っ!」提督にまたがって秘所を重ねながら、うわごとのように繰り返す……照れ隠しのようないつもの素っ気なさやけんつくはすっかり鳴りをひそめ、焼けるような熱っぽさで提督を責めたてる…額からは汗の玉がはじけ、火照った身体は油でも塗ったようにてらてらと艶を帯びている…

提督「…ええ、私も……だからいっぱい好きなようにしていいわ…ね♪」

アッチアイーオ「提督…っ!」…ぐちゅぐちゅっ、にちゅっ♪

提督「はぁ…あぁん……んぅ♪」

アッチアイーオ「提督っ、私の大好きな……あぁぁっ、はぁぁんっ♪」

提督「あっ、あぁぁっ…んぅっ、あぁん……っ♪」

アッチアイーオ「もう…焼けつくまで……止めないから!」ぐちゅっ、じゅぶ…じゅぶっ♪

提督「ええ……んぅっ、はぁぁんっ…あぁっ♪」

アッチアイーオ「…あぁぁっ……提督…っ♪」

提督「あぁっ、んっ……はひぃ、んっ!」アッチアイーオの左手がいささか手荒に乳房をこねくり回し、右手の人差し指と中指がとろりと濡れた花芯にねじ込まれる…細っぽいけれども長くて意外に力強い指がぬるりと膣内をかき回し、そのたびに提督の身体が跳ねた……

アッチアイーオ「あぁ…っ、温かくて……とろとろで…指が……とろけそう…っ♪」

提督「んんぅ…私も……あぁぁっ、んっ…気持ちよくて…っ……んくぅ…ふあぁぁぁっ♪」

アッチアイーオ「はぁ、はぁ……でも、まだ……もっと…提督の…こと……全部、知りたい……の♪」黒い瞳が重油のようにどろりと欲情を帯び、胸を揉んでいた左手を離すと指先を「れろ…っ」と舐めあげ、それから提督のヒップに滑らせていった…

提督「あ、そこはダメ……んんっ♪」

アッチアイーオ「どうしてだめなのよ…私は、提督としたいの……っ!」ぬちゅ…っ♪

提督「あぁ゛ぁ゛ぁんっ…///」

アッチアイーオ「ほぉら、気持ちいいんじゃない…もっと…してあげるわ……ね♪」くちゅ、ぬちゅっ…♪

提督「あ゛ぁぁんっ、はひぃっ、いぃ゛ぃ…っ♪」蜜を垂らしがくがくと身体をひくつかせ、甘い声をあげながら口から涎を垂らしている…

アッチアイーオ「ふふ、これだけじゃあまだ物足りないわよね……ぢゅぅぅっ♪」提督に身体を重ねると、ずっしりした乳房に吸い付いて先端を甘噛みした…

提督「あっ、あぁぁんっ…もうっ♪」

アッチアイーオ「ちゅっ…じゅぅっ、れろっ……♪」

提督「あっ、あぁ゛っ…んぅっ、それ……気持ちいい…っ♪」

アッチアイーオ「ふぉれは……んぢゅぅっ…よふぁっらわ……♪」

提督「もう…「それはよかったわ」じゃな…あ゛っ、あぁぁんっ♪」

アッチアイーオ「んちゅ…れろ、ちゅぱ……ぢゅぅぅっ…こり…っ♪」

提督「ふあぁぁぁ…っ♪」

アッチアイーオ「ぷは……提督のイってる顔も……とっても好き…ずっと見ていたい……くらい…♪」ぐちゅり…と花芯から指を抜くと、愛液でべとべとの手で提督の頬を撫でた…

提督「ふー、ふーっ…ふぅ……はぁぁぁ…♪」額にかかった乱れ髪をのろのろと払いのけ、走った後のように胸を大きく上下させている…

アッチアイーオ「…ふふ、可愛かったわよ……提督♪」

提督「ん……でも…」

アッチアイーオ「なに?」

提督「もっと…しましょうか♪」小さくウィンクすると、くすっと笑った…

アッチアイーオ「……執務に差し支えても知らないわよ?」

提督「執務なら明日だってできるけれど…今日この瞬間のアッチアイーオは今だけしかいないわ♪」

アッチアイーオ「もう…どうなっても知らないんだから///」ちゅむっ…ちゅぅぅっ♪

提督「あん…っ♪」

………

…翌日…

アッチアイーオ(温)「…提督、この書類は私がやっておくわね」

提督「ええ…それじゃあ私はその間に主計部宛てに文房具代の申請書でも……」

アッチアイーオ「それも私がやっておくわ」

提督「いえ、手伝ってくれるのは嬉しいけれど…私も提督として秘書艦に頼りきりじゃあいけないし……」

アッチアイーオ「いいのいいの。 私が全部やってあげるから、提督は座ってて♪」

デルフィーノ「…提督、提督」小さく袖を引っ張り、耳元にささやきかけた…

提督「なぁに?」

デルフィーノ「いえ……結局、昨日はアッチアイーオと何があったんですか?」

提督「あー…まぁ、その……色々と、ね」

デルフィーノ「なるほど、色々ですか…ぁ///」

アッチアイーオ「提督、この書類が片付いたらコーヒーを淹れましょうか?」

提督「あ、それは私がやるわ……がんばっている二人に、せめてものお礼ね♪」

アッチアイーオ「…もう、提督ってば///」

提督「ふふっ……さ、その前に今日の文書便を片付けてしまいましょう」


…執務机の前にある応接セットのテーブルに文書便の袋を空けると、手紙や文書をより分けはじめる提督たち……それぞれの艦娘宛てに届いた手紙は級ごとにより分けて届けるか受け取りに来てもらい、宛名が「艦娘の皆様へ」や「鎮守府様」となっている広告や無料カタログは(そこそこ暇つぶしになるので)「待機室」や「談話室」のテーブルに置いておく……そしてもっとも量がある各種の業務伝達や命令書、公文書の写しは執務机の「未決」の箱に積まれていき、提督が中身を確認して、後はぶつぶつ言いながら処理することになる…


提督「ふぅ、またこんなに書類が……嫌になるわね」

アッチアイーオ「そう言わないで…私が手伝ってあげるから」

デルフィーノ「私も手伝いますよぅ」

提督「ふふ、頼もしいわ…それじゃあ私はこっちの整理にとりかかるから、お手紙やパンフレットをお願い」

アッチアイーオ「ええ、終わったら手伝うわね」

提督「ありがとう…えーと、まずは「十二日付で送付された公文書の誤字訂正について」…これは時間がある時でいいわね……」

アッチアイーオ「…デルフィーノ、それは全部エウジェニオのだから分けておいて?」

デルフィーノ「ふわぁ…相変わらずすごい量ですね……」

提督「んー、それからこれが「月別報告書・管区司令部送付用封筒」と…いい加減電子メールで送ればいいのに……」

アッチアイーオ「提督、終わったわ」

提督「あぁ、ありがと…それじゃあ悪いけれど、こっちの中身の確認を手伝ってくれる?」

アッチアイーオ「ええ♪」

提督「助かるわ。それにしてもスーペルマリーナと来たら……まったく、書類の海に軍艦を浮かべるつもりなのかしら?」

アッチアイーオ「くすくすっ…もう、提督ってば♪」

提督「ふふっ……って、これは…」

…提督が手に取った封筒には赤い縁取りがしてあり、宛名の上には「重要」と書かれたスタンプが押してある…

アッチアイーオ「ねぇ、それって…」

提督「ええ、やっと来たわね……秋季作戦の命令書よ」

デルフィーノ「どんな作戦なんでしょう……緊張します…」

提督「まぁ大丈夫でしょう…夏の作戦が大変だった分、今度の作戦はちょっとした哨戒や護衛任務に……」微笑を浮かべつつペーパーナイフで封筒を開けると、中身を読み始めた提督…が、次第に眉間にしわを寄せ、唇をきゅっと引き結んだ……

提督「……まったく、信じられないわ」温厚な提督には珍しく、吐き捨てるような口調で命令書を机の上に放り出すと腕を組んだ……

デルフィーノ「どうしたんですか、提督?」

提督「読んでみれば分かるわ…管区司令部ときたら、一体どういうつもりなの?」

デルフィーノ「?」

アッチアイーオ「じゃあ読むわね…えーと「発・イオニア海管区司令部…宛・タラント第六司令部(鎮守府)……秋季作戦実施について…」ですって」

提督「問題は中身よ…続きを読めば分かるわ」

アッチアイーオ「…えーと「タラント第六司令部には『リビア方面海上輸送作戦』の実施を命じる」…って、また輸送作戦?」

提督「ええ……そもそもうちは「リビア輸送作戦」を夏にやったし、あんなのはそう何度もやるものじゃないわ」

アッチアイーオ「じゃあなんでここに回ってきたのかしら?」

提督「きっとどこかの鎮守府が失敗したせいでしょうね…そうでなければ今さらになって命令が来るはずもないし……あー、もう」

デルフィーノ「でも「海上輸送作戦」って限定しているのはどうしてでしょう?」

提督「……それも書いてあるわ…管区司令部の参謀が免罪符のつもりで書き添えたのね」

デルフィーノ「じゃあ読んでみますね…「また、大型輸送潜を用いた輸送作戦は当該海域でのいちじるしい対潜哨戒強化が認められるため極めて困難であると予想される…したがって、水上艦艇による高速輸送が望ましい」だそうです」

提督「…要は「どこかの鎮守府が中途半端に潜水艦で輸送作戦をやって失敗したから警戒が強くなった、したがって輸送潜を使った水中輸送作戦は出来ない…よって軽巡や駆逐艦にドラム缶を載せてリビアまで突っ走れ」ってこと……戦中にそれをやったフネがどうなったか聞いたことがないのかしら?」

デルフィーノ「大変なことになっちゃいましたね……」

提督「まったくよ…このことはみんなを集めて伝えるから、それまでは言わないでおいてね?」

二人「「了解」」

…夕食前…

フレッチア「……提督が集合をかけるなんて珍しいわね、お説教かしら?」

マエストラーレ「普段の生活態度やゴミの出し方が悪い…とか?」

提督「みんな、しばらく静かにしてもらえる? …ちょっと大事な話があるの」

提督「はい、ありがとう…えー、実は先ほど「秋季作戦」の命令がうちに届きました……」

チェザーレ「おお…」

アブルッツィ「なるほど…その話だったわけね」

レモ「…でも夏があんな大変だったんだから、今回は楽な作戦でしょ」

提督「…そして、その内容ですが……」

バルトロメオ・コレオーニ「…うん」

提督「……リビア輸送作戦です」

一同「「えぇ!?」」途端に動揺のざわめきが起こり、片手を上げて静かにさせる提督……

提督「…さらにもう一つ……今回はこれから説明する事情のせいで輸送潜での作戦が不可能です。したがって水上艦艇での高速輸送ということになります」

アルベルト・ディ・ジュッサーノ「…」

アルベリコ・ダ・バルビアーノ「……嘘でしょ?」軽巡ジュッサーノとバルビアーノを始め「リビア輸送作戦」と聞くと、かつての事を思い出す艦娘も多い…

ロモロ「……ふぅ」一方の潜水艦勢は安堵のため息をついた…

提督「幸い、うちはみんながちゃんと訓練に励んでいるから練度は十分…あとは航行ルートや編成を詰めるだけでいいから、私が頭をひねればいいわ……もし何かいい案や思いついた事があったら、どんなに小さいことでも構わないから教えてね?」

一同「「了解」」

提督「はい、それじゃあ解散…さ、夕食にしましょう」

………

…この数日というもの台風の後始末や何かで忙しく、なかなか投下できず済みませんでした…


…それにしても千葉県の方はまだ停電や断水が続いているようですが、大丈夫でしょうか……部屋も冷やせず水も飲めないという中では難しいことでしょうが、とにかく熱中症にならないように気をつけて欲しいものです…また、送電やインフラが復旧してもしばらくは後片付けやなにかでくたびれることも多いでしょうから、そんな時に休憩がてらこのssを読んでもらい、少しでも楽しんでいただければ嬉しく思います


………

…夕食時…

ジュッサーノ「…」

バルビアーノ「…」

ボレア「ねぇエスペロ、サラダを取ってあげましょうか…」

エスペロ「…はぁ」

ボレア「…」

グラナティエーレ「…」

アルティリエーレ「…」

アスカーリ「そげなへこたれた顔しててもしがだねぇって…ほれ、うんと食って元気さだすべ」

カラビニエーレ「アスカーリの言う通りよ…ほら、出された料理はきっちり食べなさい」


…いつもわりと切り替えの上手な艦娘の面々…とはいえ、かつてリビア向け船団護衛や補給任務に駆り出された艦娘たち(特に軽巡や駆逐艦勢)はどうしても元気がない…


チェザーレ「…やはり皆も作戦の事が気にかかるようだな」相変わらず(鎮守府の食事が美味しいこともあり)文句ひとつ言わず、出された分の料理はきっちり食べるチェザーレ…

提督「ええ、特にリビア向け輸送任務となると…ね」

ライモン「そうですね……しかしこればかりはどうしようもありませんし…」

ビスマルク「…はぐっ、むしゃ…んぐ……今日はいつもと違って妙に静まり返っているな…あぐっ……お代わりをよそうか?」

ドリア「いえ…お気遣いありがとうございます」

ビスマルク「ほう、食事が進まないとは……ドリアにしては珍しいな」

ドリア「えぇ、まあ……」普段は美食家で鳴らしているドリアも色々考え込んでいるようで、あまりフォークが進まない…

ヴァイス提督「…貴様がブタみたいにがっついているだけだ、あの間抜けめ……とはいえ今夜はあまり活気がありませんね、カンピオーニ提督」

提督「ええ。ですがそのことは食後にしましょう…」

ヴァイス提督「ヤヴォール」

グレイ提督「…」

エリザベス「どうやら皆さま、料理に夢中で声も出ないようでいらっしゃいます」…何も言わないがよく分かっているらしいグレイ提督と、艦齢を重ねているだけあって事情を察し、普段ほど皮肉やブラックユーモアに棘のないエリザベス……

アッチアイーオ「…ねぇ、提督」

提督「なぁに?」

アッチアイーオ「……こういう時はどうすればいいの?」

提督「そうねぇ……とりあえず気分転換になるような面白い話をするとか、気分を落ち着かせるような環境を整えるとか…かしらね」

デルフィーノ「そういえば食卓の蝋燭もそうなんですよね、提督?」

提督「ええ、揺らめく蝋燭には気分を和ませる効果があるらしいから…」

デュイリオ「ふふ、あとは提督がベッドで「気分転換」でもしてあげればよろしいかと♪」

提督「…それであの娘たちの気がまぎれるのなら構わないわ」

デュイリオ「まぁ、でしたら私もぜひお邪魔させていただいて…ふふっ♪」

提督「デュイリオは大丈夫そうだから、また今度ね?」

デュイリオ「あら、つれないお返事ですこと」わざとらしく頬をふくらませてみせる…

提督「ふふ…っ♪」

デュイリオ「ああ、やっと提督に笑顔が戻ってきてくれました…まるで雲間からのぞく太陽のようですね」

提督「……グラツィエ、デュイリオ」

デュイリオ「ノン・ファ・ニエンテ(お気になさらず)…わたくしのようなおばあさんになると、こうした事が上手になるものなのですよ♪」

提督「そうだとしても嬉しいわ……それにデュイリオはおばあさんじゃないわ、とっても綺麗だし」

デュイリオ「あらあら…♪」

…食後・バーカウンター…

グレイ提督「…なるほど、なかなか大変な任務を与えられましたわね」

提督「ええ……まったく、管区司令部ときたら…」


…いつもは甘く飲み口がいいか、さもなければすっきりと爽やかなカクテルを選ぶ提督が、珍しくドライなマティーニを傾けながらグレイ提督たちを相手にボヤいている……提督たちのそばではジュッサーノ級軽巡の「アルベルト・ディ・ジュッサーノ」と「アルベリコ・ダ・バルビアーノ」(※二隻でドラム缶運びのリビア輸送作戦を遂行中にボン岬沖で英駆逐艦の奇襲を受け、姉妹揃って41年12月3日に戦没)それにカドルナ級軽巡の「アルマンド・ディアス」(※41年2月25日、リビア船団の護衛中に英潜の雷撃をうけ戦没)が座り、複雑な表情でカクテルをすすっている…


ヴァイス提督「確かに難しい任務ですね……しかし裏返してみれば、これだけリスクの高い作戦でもカンピオーニ提督なら遂行できる…と、司令部から信任されていると考えることも出来るのではありませんか?」

提督「…シャルロッテは嬉しいことを言ってくれますね……ですが、そうではないと思います」肩をすくめてみせた…

ヴァイス提督「そうですか…」

提督「ええ……でも、ありがとう♪」

ヴァイス提督「…いえ、そんな///」

グレイ提督「カンピオーニ提督……わたくしに出来る範囲のことでよろしければ、お手伝いいたしますわね」

提督「メアリ…」

グレイ提督「ふふ…そう感謝せずともよろしいですわ」

ヴァイス提督「ヤー、何しろこれだけお世話になっているのですから…もし必要な事があれば、何なりとおっしゃって下さい」

提督「二人とも、ありがとうございます…///」少し酔いが回っているせいか目をうるませて、やたらと感動的になっている提督……

グレイ提督「ふふ、それ以上はおっしゃらないで…♪」

ヴァイス提督「そうです……それと明日以降は忙しくなるでしょうから、今夜はゆっくり休まれた方がよろしいかと」

提督「それもそうですね…では、申し訳ありませんが先に休ませてもらいます」

グレイ提督「…グッドナイト(お休みなさい)」

………



…提督寝室…

提督「うーん……」


…寝る前にお風呂に入り、湯上りに冷たい水をあおったおかげでだいぶ酔いがさめた提督…しかし今度は作戦が気がかりになってしまい、なかなか寝付けないでいる……いつもは心地よく眠りにいざなってくれる枕や肌触りのいいタオルケット、ふんわりした布団も今は妙に重苦しく、ごろごろと寝返りを打っては、やたら浮かんでくるまとまりのない考えに頭を悩ませている…


提督「……むぅ…」

提督「…うぅ…ん……」と、軽いノックの音が響いてきた…が、ライモンやカヴール、ドリアといった、よく夜を共に過ごす艦娘たちとはノックの仕方が違う……

提督「……どうぞ?」

フィザリア(中型潜アルゴナウタ級「カツオノエボシ」)「提督…お邪魔してもいいかしら?」

提督「あら、フィザリア……ええ、ちょうど寝つけなかったから…」

フィザリア「それなら、よかったわ……」

…艦名の「フィザリア」(カツオノエボシ)をほうふつとさせる、どこか海面をたゆたうようなゆったりしたしゃべり方と腰まで届くスミレ色の長い髪…お気に入りらしいひらひらとした薄青色のベビードールはとても薄いシースルーの生地で出来ていて、身体がほとんど透けて見える…

提督「…それで、どうしたの?」

フィザリア「その、私も…寝付けなくて……」

提督「そう…じゃあ一緒に寝ましょうか?」

フィザリア「…いいかしら?」

提督「ええ、どうぞ♪」

フィザリア「ありがとう、提督…♪」するりと提督の横にもぐり込んで、ふわりと背中に手を回した…

提督「いいのよ……それじゃあ、眠くなるまでおしゃべりでもしま…」そう言ってナイトスタンドの灯りを切ろうとする提督……

フィザリア「……ん、ちゅぅ…♪」

提督「んっ、んむぅ…っ!?」いきなり唇を重ねられ、吸い付くようなキスをされる…

フィザリア「…ちゅぅぅぅ…っ、ちゅぷっ……♪」

提督「ん、んんぅぅぅ…っ///」

フィザリア「……そうやって油断しているからですよ…提督♪」ちゅぅっ、ちゅむ…っ♪

提督「あ、あぁ…ん……んっ、んぅぅ…♪」

フィザリア「…ちゅぅ、ちゅる……っ♪」

提督「あっ、ん……はぁぁ…んっ♪」

フィザリア「ちゅるっ、ちゅむっ……ちゅぽ…っ♪」

提督「んぅっ、むぅぅっ、んくぅ……ぷはぁ♪」…提督の息が続かなくなった頃になってようやく長い口づけが終わり、それまで口中を舐め回していたフィザリアの舌がぬるりと引き抜かれた……絡み合っていた舌先からはとろっと銀色の糸が垂れ、二人の間をかけ橋のようにつないだ…

フィザリア「ふふっ……提督…♪」

提督「あんっ♪」

フィザリア「…提督はいつも優しくて、皆を大事にしてくれて……でも…あんまりうかつに優しくすると…こうして、捕食されてしまうわ……よ♪」

提督「あっ、あっ、あぁ゛ぁ゛っ♪」


…固めのゼリーのようにぷるっとした肌のフィザリアが提督に絡みつく……提督の右ふとももを両脚ではさみこんで身体をすりつけ、小ぶりながらつんと張りのある乳房を提督の胸に押し付ける…そしてカツオノエボシの触手をほうふつとさせるような細くて長い指が提督の首に巻きつけられ「きゅぅ…っ」と喉首を締め上げる…


提督「あ…あっ、あっ、あぁ゛っ……んぐっ、ん゛ぅ゛ぅぅっ♪」

フィザリア「……ふふ、気持ちいい?」ぬちゅっ、ぐちゅ…っ♪

提督「あっ、あぁ゛ん゛っ……いい、とってもいぃ゛…っ♪」空いている方の手が提督の秘所にゆっくり入ってきて、細い指がねっとりと膣内をかき回す……せいぜい中学生にしか見えないような中型潜のフィザリアにいいようにもてあそばれて、焦点の合わない瞳で天井を見上げつつ、半開きの口からだらしなく涎を垂らしている…

フィザリア「……くすくすっ…提督のここ…もうすっかりとろとろ…♪」

提督「だって……フィザリアの指、すごい気持ちいいから…あぁっ♪」まるで本当にカツオノエボシの毒が回っているかのように、指でかき回されたところがビリビリと痺れている…

フィザリア「ふふ…提督ってば膣内をかき回すたびに、びくん…って跳ねて……新鮮なお魚みたいで…美味しそう♪」

提督「はひっ…はぁ、はぁ、はぁっ…それじゃあ、痛まないうちに……どうぞ、召し上が…れ♪」提督はすっかり甘くとろけきった顔で、誘うように両腕を広げた…

フィザリア「…ふふ、提督ってば……どうなっても知らないから…♪」じゅぷっ、ぐちゅぐちゅ……にちゅっ♪

提督「…い゛っ…あっ、あっ、あっ…あ゛ぁ゛ぁぁ…っ♪」とろっ…とぽっ、ぷしゃぁぁ…っ♪

フィザリア「提督……どう、気持ちいいでしょう…?」

提督「ええ…とっれも…ぉ…気持ひい…ぃ……♪」

フィザリア「ふふ、可愛い……ちゅうっ♪」

提督「んっ…ね、もっと……キス…しましょう?」

フィザリア「…んちゅっ、ちゅぅ……♪」

提督「んちゅるっ、ちゅむ…っ…♪」

フィザリア「んむ……ちゅぅぅっ、ちゅむ…れろっ…♪」

提督「んんぅ、ちゅっ…ちゅるっ、ぬるっ……ん、ふぅ…ん♪」

フィザリア「ちゅぅ、ちゅぷ…っ♪」

提督「ふあぁぁ、んぅ……んちゅっ、ちゅぅっ♪」

………

フィザリア「提督、提督ぅ…っ♪」ぐちゅっ、じゅぷっ…♪

提督「フィザリア…あぁ、んぅぅっ♪」じゅぶ、にちゅっ……ぐちゅ…っ♪

フィザリア「……提督に…跡をつけてあげる…私の、愛の…しるし……♪」んちゅぅ…っ♪

提督「んっ、んんぅ……っ♪」

フィザリア「…提督の二の腕……お肉が付いていて柔らかいわ…まるでおっぱいみたい……ちゅぅっ♪」

提督「もう、言わないで…これでも気にしているんだか…ら……あぁ、んぅっ///」

フィザリア「……ふふ、きっと明日になったらくっきり残るわ…ね?」

提督「そうね…せっかくフィザリアがつけてくれた「愛のしるし」が、砂浜に描いた絵みたいに消えてしまうのは残念だけれど…♪」

フィザリア「心配しないで……またいつでもつけ直してあげる♪」

提督「まぁ、嬉しい…それじゃあお礼に私……も♪」…ちゅぅぅっ♪

フィザリア「あっ、あぁっ……だからって…そ、そんなところに跡をつけちゃダメ…っ……あっ、ふあぁぁ…んっ///」

提督「ふふ……フィザリアに負けないくらい、私も「愛のしるし」をつけてあげるわ…ね♪」胸元や首筋…そして愛液でねっとりと濡れたふとももの内側といった場所に、跡が残るようなキスをしていく……

フィザリア「…嬉しいけど、そんなところには……ふわぁぁ…っ///」

提督「ん、ちゅぅ……ちゅむ…♪」

フィザリア「あむっ、んむっ……ちゅるっ、れろっ…♪」

提督「んぅぅ、ちゅぅぅ……ん、ふぅ……んっ♪」

フィザリア「んっ、んっ、んぅっ……はぁ、はぁっ…んぅっ///」

提督「ん、ふ…ちゅむ、ちゅる……っ♪」

…数時間後…

フィザリア「はぁ、はぁ、はぁ……提督…まだ……続けるの…ぉっ?」

提督「あら、誘ったのはフィザリアでしょう? …あむぅ、ちゅるぅ……♪」

フィザリア「あっ、あっ…あぁ゛ぁ…っ♪」

提督「ふふふっ、こんなに蜜を垂らしちゃって……ん、ちゅるっ♪」

フィザリア「んぅっ、んん゛ぅっ…///」

提督「れろっ…ちゅるっ……♪」

フィザリア「あっ、あぁぁ……ん、くぅっ…///」

提督「ちゅぅ…ん♪」

フィザリア「はひぃ、んはぁ……ん、くぅ…っ///」

提督「……フィザリア♪」正対したままぎゅっと抱きしめ、とろとろになった秘所に指を差し入れた……

フィザリア「あ、あっ……あぁぁっ♪」

提督「ふふっ……フィザリアがそうして甘い声を出してくれると嬉しくなるわ♪」ぐちゅぐちゅ、にちゅっ…♪

フィザリア「はー…はー…はーっ……提督…っ、もっと……ぉ♪」

提督「…ええ♪」ぬちゅ、ぬるっ……ぐちゅり♪

フィザリア「ふああ゛ぁ゛ぁっ、あっあ゛ぁ゛ぁ…っ!」ぎゅっとしがみついたまま、提督の背中に爪を立ててかきむしるフィザリア…

提督「あっ、あぁぁん…っ♪」

………



フィザリア「…すぅぅ……すぅ……」

提督「ふぅ…ふぅ……うふふっ♪」

…ほとんど失神するような具合で眠りについたフィザリアの頭を愛蜜でべとつく手で撫でながら、肩で息をしている提督…ぐったりとはしているが甘い笑みを浮かべて、くっきりと口づけの跡をつけられた身体のあちこちを眺めている…

提督「ふふっ、明日ライモンやカヴールにこれを見られたら、どんなお仕置きをされちゃうのかしら……んふふっ♪」

フィザリア「すぅ…すぅ……」

提督「……それに、しばらくなりとも作戦の事を忘れられたわ…ありがとう、フィザリア…♪」ちゅっ…♪

………

…翌朝・執務室…

カヴール「おはようございます、提督…よくお休みになれました?」

提督「おはよう、カヴール……秘書艦じゃないのに、わざわざ起こしに来てくれたの?」

カヴール「いえ、まぁ…そこは色々ありまして♪」

提督「?」

カヴール「まぁまぁ、細かい事はよろしいですから……コーヒーを淹れておきますので、その間にシャワーでも浴びてきてはいかがです?」

提督「それもそうね……あ、痛っ…」昨夜の情事の時にフィザリアに引っかかれた部分がヒリヒリする……

カヴール「……どうなさいました?」

提督「いえ、その…///」

カヴール「見せてくださいな…あら、背中にみみずばれが出来ていますね……まるでクラゲにでもまとわりつかれたようですよ?」

提督「…クラゲ、ね……」

カヴール「……いったい誰に引っかかれたんですか、提督?」にこにこと微笑を浮かべているカヴール…

提督「ねぇ、カヴール…あなた、分かってて言っているでしょう?」

カヴール「うふふっ……ばれちゃいましたね♪」

提督「…もう、いったいどういうつもり?」

カヴール「いえ…昨日の提督は秋季作戦の事で随分と頭を抱えておられるようでしたし、その調子ではゆっくりお休みになれないだろうと…ですが、艦娘の誰かと一晩たっぷりと愛し合えば、きっと寝つきが良くなるかと思いまして……また、ちょうどフィザリアも身体の火照りを抑えきれないでいたようでしたので♪」

提督「……フィザリアを焚きつけたの?」

カヴール「まぁ、人聞きが悪いですね…わたくしはただ「今夜はアッチアイーオが哨戒任務で、デルフィーノもお部屋に戻ってしまいましたね…」といっただけですよ♪」

提督「あのねぇ、私は「小ナポレオン」じゃないのよ…?」


(※「ナポレオン三世」あるいはルイ・ナポレオン…カヴールは親仏派の宰相ではあったが、イタリア統一の障害になりうるフランスの外交方針の情報を入手するべく貴婦人「カスティリオーネ伯爵夫人」であり、同時にクルティザン(超高級娼婦)でもあったヴィルジニア・オルドイーニを送り込み、ナポレオン三世はそうとは知らず自分の考えなどをしゃべっていた……ちなみにオルドイーニはナポレオン三世の没後、混乱に乗じてパリ占領を目論んだビスマルクを「説得」してあきらめさせたと言われ、イタリア諜報史上一番の大金星を挙げた人物だとされている)


カヴール「ふふ、分かっております♪」

提督「むぅ…」

カヴール「それで、昨夜は悩み事を忘れてお休みになることができましたか?」

提督「……おかげさまで///」

カヴール「うふふっ、それはよかったです…♪」

提督「ふぅ、カヴールにはかなわないわ…シャワーを浴びてきます」

カヴール「ええ、ごゆっくり♪」

提督「はいはい……まったくもう♪」

カヴール「…うふふっ♪」

…朝食後・作戦室…

提督「…さてと、それじゃあ取りかかるとしましょう……みんな、色々と手伝ってちょうだいね?」

デルフィーノ「はい、提督っ」

アッチアイーオ「当然じゃない…他でもない提督のためだも…の…///」

カヴール「私も手伝いますから大丈夫ですよ」

デュイリオ「海戦の事でしたらわたくしにお任せください…それと、これが終わったら提督にはあまーいご褒美を差し上げますから……うふふっ♪」肩に止まらせたカラスを指先で軽く撫でながら、甘い笑みを浮かべるデュイリオ…

ザラ「何でも言って下さいね、提督」

ポーラ「遠慮はいりませんからねぇ~?」

ライモン「わたしにできる事があったらなんなりとおっしゃって下さい」

ガリバルディ「ま、私もいるんだから…後ろに「千人隊」が控えている気持ちでいてちょうだい♪」

マエストラーレ「私たちも駆逐艦の代表として頑張らせてもらうわ…そうよね?」

ジョスエ・カルドゥッチ(駆逐艦オリアーニ級)「もちろん。…それにしてもこのそうそうたる顔ぶれ……私の敬愛する偉人たちがこんなにいて、興奮が収まりそうにないです///」

レオナルド・ダ・ヴィンチ(大型潜マルコーニ級)「確かに…ぞくぞくしてくるわ♪」

アミラーリオ・ディ・サイント・ボン(大型潜カーニ級)「同感ですな。この面子となると、本官もいささか気おくれしてしまいますよ」

ガッビアーノ(ガッビアーノ級コルヴェット「カモメ」)「…そうかもね……チコーニャ、何か食べる物もってない?」

チコーニャ(ガッビアーノ級「コウノトリ」)「もう、お姉ちゃんってば……これから作業するんですよ? …ビスコッティでいいですか?」

ガッビアーノ「ん…あむ……」

提督「ふふ…ガッビアーノは相変わらずね♪」普段通り食い意地が張っているガッビアーノを見て思わず笑い出し、あれこれと思い悩んでいた気分が少し晴れた…

提督「…えー、では気を取り直して……これから作戦計画の立案を行います。どんな細かい事でも気が付いたら遠慮なく言ってね?」

一同「「了解」」

………



提督「…んー……まずはデータベースで調べてみないと……えーと、年度を選んで…「イオニア海管区」の「輸送作戦」…海域は「リビア方面」…と……」


…とりあえずイタリア海軍のデータベースで、命令書の「別紙」に添付されていた別の鎮守府の(失敗した)作戦を詳しく調べることにした提督……添付資料には在タラントのどこの鎮守府が実施して成否はどうだったか、そしてどんな艦が参加したのか……と、大まかな経緯だけしか書いていないが、データベースにはこれまで実施された各鎮守府の作戦の詳細と海図、そして参加艦艇や航空機の一覧がぎっしり記載されていて、年度や海域、管区、おおよその作戦目標などを入力するだけで検索できるようになっている…


提督「えーと…あぁ、あったわ……って、えぇ?」

ライモン「どうしました?」

提督「いえ…こんな行き当たりばったりの作戦で上手く行くようだったら、世の中の提督たちは頭を痛くしないで済むでしょうよ……」

ライモン「……あの、わたしが見ても大丈夫ですか?」

提督「もちろん。貴女たち「艦娘」はいわば当事者だもの」

ライモン「では、横から失礼しますね……あぁ、なるほど…」

デュイリオ「…まぁ、あきれてしまいますね」

提督「ね?」

デュイリオ「ええ…提督の作戦が上手くいったのは、主力艦隊を陽動で出撃させて水上艦艇を引きつけたり、綿密な航空支援の計画を立てたからですのに……援護も何もなしにただ輸送潜を送り込むのでは、哨戒中のコルヴェットやフリゲートに捕捉されてしまうに決まっています」

提督「実際その通りになっているわ……ほら「…護衛駆逐艦およびコルヴェット数隻からなる対潜グループより爆雷攻撃を六時間にわたって受け、ディーゼル主機に損傷…作戦を中止し、電動機にて帰投す」ってなっているわね」

カヴール「…提督が作戦を成功させたので、簡単な任務だとあなどったのでしょうね」

提督「うーん…むしろ先任として「新参者」の私より少ない消費で作戦を成功させようとしたんじゃないかしら……」

アッチアイーオ「どっちみち、付き合わされる方としてはいい迷惑だわ」

提督「まったくね……よその鎮守府だけれど、出撃した娘が撃沈されなくてよかったわ…」

ザラ「私たちはそうならないように、しっかり作戦を練らないといけませんね?」

提督「ええ。今日は一日中ここで缶詰めになるくらいの気持ちで…ね♪」

ザラ「はい」

…午前中…

提督「…デルフィーノ、資料棚から『リビア・ボン岬方面・その2』って書いてあるファイルを取って来てもらえる?」

デルフィーノ「了解です」


…ローマにいた時から暇な時間を見つけると、データベースにアクセスしては各鎮守府の様々な作戦計画を眺めていた提督……鎮守府に着任してからは役に立ちそうな過去の作戦や気になる情報を見つけては印刷して、資料棚のファイルに収めていた……それを次々と持ち出しては、参考になりそうな航路や護衛計画を探した…


ザラ「提督、海図を持ってきました」

提督「ああ、ありがとう……ライモン、気象課から来週と再来週の気象通報が届いていたわよね。持ってきてもらえる?」

ライモン「ここにありますよ」

提督「さすがライモン、気が利くわね……それじゃあ後は透明シートを…カルドゥッチ、そっちのすみっこに重石を載せてくれる?」

カルドゥッチ「了解」

提督「あ、もうちょっとそっち側を引っ張って……そう、それでいいわ」…テーブルいっぱいに広げられたイオニア海の海図に書き込み用の透明シートをかぶせ、赤や青の油性ペンを取り出した……

提督「うーん……まずは輸送する物資の重さと体積を考えて輸送する艦を決めないと……」

ライモン「そうですね」

提督「と言っても、これだけの物資を高速で運ぶとなると…軽巡には少し厳しいわね」

ガリバルディ「そうね。あの時のジュッサーノたちみたいに、艦橋にまでドラム缶やらなんやらを載せて…っていうのは願い下げにしたいわ」

提督「…となると、やっぱり……」

………



ディアナ「…お呼びでしょうか、提督?」

提督「ええ、実はね……今度の作戦、ディアナに物資の輸送をお願いしたいと思っているの」

ディアナ「はい。わたくしも内心そうではないかと思っておりました」

提督「…普段は厨房で料理を任せているばかりなのに、急に作戦に参加してほしいなんて言われて戸惑うかもしれないけれど……え?」

ディアナ「ふふ、ですから存じておりますよ…当時から「高速輸送任務」と言えばわたくしがよく担当しておりましたから」

提督「あー、まぁ…それはそうだけれど、今まで練度維持の基礎訓練以外で出撃する機会はなかったし……大丈夫?」

ディアナ「はい」

提督「…もし難しいと思ったら、いつでもそう言ってくれてかまわないわよ?」

ディアナ「お気づかい嬉しく思います……ですが、わたくしとて海軍に籍を置く「艦娘」の一人ですので」

提督「そう…では、お願いするわ」

ディアナ「よしなに…♪」

提督「…ありがとう、助かるわ」

ディアナ「お気になさらず……ですが、困りましたね…」

提督「…何か問題があるの?」

ディアナ「ええ、少々気にかかる事が…」

カヴール「それは穏やかではありませんね……どこか具合でも悪いのですか?」

ディアナ「そうではありませんが…わたくしが出撃している間、ここの食事は誰がまかなえばよろしいのでしょう?」

ガリバルディ「ぷっ……くくくっ♪」

マエストラーレ「…提督が頭を抱えるような厳しい作戦を前にして、それが気になるの?」

ディアナ「ええ……日々の活力として、三度の食事は大切ですし…」

アッチアイーオ「大丈夫よ、うちにはエリトレアだっているじゃない」

ディアナ「それもそうですが、彼女一人では荷が重いでしょうから……作り置きでもしておきましょうか」

提督「ふふっ、それに関しては任せるわ…♪」

デルフィーノ「ふぅ…作戦に関わることじゃなくて良かったですよぅ……」

…昼時…

提督「…ふぅぅ……」

グレイ提督「…お疲れのようですわね、カンピオーニ提督?」

提督「ええ、まぁ…こんなに頭を使ったのは久しぶりですから……」

グレイ提督「分かりますわ。それと……もし、何らかの助言が必要であったり、気にかかるような事がおありでしたら……わたくしでよろしければお答えいたしますけれど…?」

提督「ありがとうございます、メアリ」

グレイ提督「いいえ…こういう時は「お互い様」でしょう?」

ヴァイス提督「私も同様です、カンピオーニ提督……もっとも、たかだか中佐の私がカンピオーニ提督に「教える」などということはあり得ませんが…」

提督「まぁまぁ、そう謙遜なさらずに…」

ビスマルク「その通り……司令はモルトケやグーデリアンとまでは言わんが、優れた叡智と能力の持ち主なのだからな」

ヴァイス提督「よせ、私ごときでは足元にも及ばない名将たちだぞ…まったく、何てことを言うのだ///」

ビスマルク「なに、そう恥ずかしがることはあるまい…確かに司令にロンメルのような縦横無尽の機略はあまりない……が、しかしだ…」

ヴァイス提督「やめないか!」

ビスマルク「…冷静にして手堅く、与えられた任務は確実にこなす……実に大したものだ」

ヴァイス提督「この…っ///」

ティルピッツ「…姉上…っ!」

ビスマルク「何だ、別に嘘を言っている訳ではあるまい?」

グレイ提督「まぁまぁ…信頼が厚いようで微笑ましいですわ♪」

ヴァイス提督「///」

エリザベス「…それにしても、モルトケにグーデリアン、ロンメル……あら、どれも陸軍の方ばかりでいらっしゃいますね?」

ビスマルク「ぐっ……まぁわが国には陸軍だけでも名将がきら星のごとくいるのだ…あのモントゴメリーを「名将」にカウントするような、どこかの島国とは違ってな」

エリザベス「…」

提督「あー…とにかく、午後になったら作戦室におりますから……よかったらおいで下さい」

グレイ提督「お伺いいたしますわ」

ヴァイス提督「ヤー…私もお邪魔させていただきます……」

エリザベス「ふふ「名将」がいらっしゃるようですから安心ですわね…」

ビスマルク「…っ」

グレイ提督「エリザベス」

エリザベス「ふふ、軽い冗談ですわ♪」

………

…午後・作戦室…

提督「…うーん……」

デュイリオ「どうかなさいましたか?」

提督「いえ…まずはしっかりした護送計画を立てないといけないから、ルートを決めないといけないのだけれど……沿岸に沿って航行して、メッシーナ海峡の沖で南南西に転針…後はシチリア島、マルタ島を横に見ながらリビアに接近するのが一番かしら……15ノットだと…時間で……18ノットだと……あー、燃料が厳しくなるわね…」ディバイダーと定規を手に眉をひそめ、ぶつぶつとつぶやきながら海図にかぶせた透明シートへ線を描き入れる…

ライモン「…航路としてはそれが一番かと思います」

提督「そうね…これなら航路の大半が制空権を持っている範囲になるし、そうなれば上空援護ももらいやすいから……制空権内なら低速のカント水偵でも問題なく飛べるでしょうし…もっとも、マルタ島沖からトリポリまでは航空優勢が確立されていないから、高速で航行してもらう事になるけれど…」

ガリバルディ「ま、こちらとしては誤爆さえなければ十分よ」

提督「そうね、そこは十分注意するようにしましょう…それから護衛艦艇だけれど、直接援護と間接援護の部隊をつける必要があるわね」

ライモン「はい」

提督「……となると、直衛の艦艇は駆逐隊が四隻くらい…間接援護は……」

ガリバルディ「とりあえず私がつくわ…どうかしら?」

提督「そうねぇ…となると、ガリバルディを旗艦に軽巡が二、三隻と駆逐艦が一隊……」

マエストラーレ「船団そのものはそれでいいんじゃないかしら?」

提督「うん、そうね…後は天気と潮の具合だけれど……うーん、なかなか都合のいい日がないわね……」カレンダーに天気予報、月齢図、潮汐表を並べて考え込んでいる…

ライモン「あー、言われてみればそうですね……」

提督「ええ……この前失敗した鎮守府ときたら大潮の夜…しかも干潮時に潜水艦の娘をリビア沿岸に接近させているんだもの……そんなことをしたら行動余地海面が狭くなるに決まっているでしょうに…」

ライモン「満ち潮に合わせて入港させたかったんでしょうか?」

提督「そうでしょうね、そうすれば主機の出力にプラスして一ノットは稼げるから…それにしたって、深海棲艦がうろうろしている沿岸で潮待ちさせるなんてどうかしているわ」大きく両手を上に向けて、あきれたように肩をすくめた…

………



…数十分後…

提督「…さてと、次は護衛の艦に誰を選ぶかだけれど……カルドゥッチ、鎮守府の装備リストを持ってきて?」

カルドゥッチ「了解」

提督「うーん…やっぱり駆逐艦は同クラスで揃えたいところよね」

ガリバルディ「そうね、その方が何かと都合がいいし」

提督「……そうなるとやっぱりソルダティ級…でもあの娘たちには夏の作戦で頑張ってもらったから、あんまり毎回っていうのも……ここはオリアーニ級かマエストラーレ級かしらね…」

マエストラーレ「だったら直接護衛は任せて、提督……オリアーニたちは間接護衛の隊に入れてあげて?」

提督「そう言ってもらって助かるわ…そうなると後部の魚雷発射管と測距儀は降ろして、その分37ミリ機銃を増備……と」

カルドゥッチ「そうでしょうね」

提督「ええ…幸いなことに、うちには37ミリ機銃のストックが結構あるから四隻分くらいは捻出できるし……」

カヴール「だいぶ計画が固まってきましたね…♪」

提督「ええ、おかげさまで…あとは航路前方の哨戒を兼ねて中型潜を数隻展開させて、それから通信の中継役に大型潜を二、三隻……うちの戦闘機隊はグロッタリーエからトラーパニ(シチリア島)に進出させておいて…水偵はここから直接発進させるのと、ブリンディシに置いている機体でまかなって……シチリアで一旦降ろして再補給させればマルタ沖までは十分援護できるし…」

ガリバルディ「ま、その辺りはアヴィエーレが詳しそうよね」

………


…しばらくして…

提督「…ふぅ…ようやく形になったわね……」軽く一つため息をついて、肩を回した…

カヴール「お疲れ様です」

グレイ提督「…その様子ですと、作戦計画が決まったようですわね?」まるで銃弾のようにイタリア語が飛び交っている中、海図を眺めながら優雅に立っていたグレイ提督と、読み取れる限りの記号や符号を読み取って、少しでも護衛計画の詳細を理解しようと悪戦苦闘していたヴァイス提督…

提督「ええ…とはいえ私も海上護衛任務は初めてですから、その道の玄人(プロ)に意見を仰ぎたいところなのですが……グレイ提督」

グレイ提督「なんでしょう?」

提督「…護送計画を立ててみたので、見てもらえますか?」

グレイ提督「ええ、もちろんですわ…玄人などというほどではありませんが、これでも船団護衛の経験は多少ありますから」

ヴァイス提督「あの…私も見せてもらってよろしいですか? …なにせ私は海上護衛任務の経験がないものですから、よい勉強になるかと」

提督「ええ、いいですよ……それでは護送計画ですが、物資の輸送を担当する「ディアナ」には直接護衛と間接護衛の部隊をつけます…直接護衛の駆逐艦はディアナを中心に「ひし形」を構成し、前方と左右の艦はそれぞれの警戒にあたり、後ろの艦は遊弋(ゆうよく)しながら、必要次第で対潜攻撃を実施します……」

…数分後…

提督「……といった具合ですが、どうでしょうか?」

グレイ提督「…なるほど、初めての護送計画とは思えないほどよく練られておりますね……基本はこれで良いと思いますわ」

提督「そう言ってもらえて安心しました」

グレイ提督「ふふ、わたくしとていつでも「イヤミな伯母さん」の役どころというわけではありませんから…ただ少々気になったのが、直接護衛グループの後衛に駆逐艦が一隻しかいないことですわね」

提督「ディアナ一隻に四隻の護衛では足りないでしょうか…?」

グレイ提督「いいえ。確かに一隻の輸送船に四隻の駆逐艦が付くというのは、わたくしの経験で言えば「ぜいたく」と言っていいほどの十分な護衛です…」北大西洋や地中海での厳しい海上護衛任務をこなしてきたグレイ提督だけに、いつもより雰囲気が険しい…

グレイ提督「……とはいえ、お国の駆逐艦には水中聴音機こそありますけれど「アスディック」はありませんし…」


(※アスディック(ASDIC)…英国の「対潜兵器研究委員会」の頭文字から取ったアクティブ方式の音響探知機で、それまでの(ただ水中の音を聞き取るだけの)水中聴音機と違って、自艦から音響パルスを発してそのエコー(反響)を捉えるので、静かな相手や多少の海の音響の乱れにも影響されず敵潜の探知が可能だった。名前としては後にアメリカで付けられた「ソーナー」の方が広く知られている……ちなみに水中の方が音が遠くまで届くことを発見し、それを聞き取る装置は(やっぱり)レオナルド・ダ・ヴィンチが発明したとされている)


グレイ提督「…それに「ヘッジホッグ」や「スキッド」のような前方投射系の対潜兵器もありませんから、どうしても対潜戦ではハンデになりますわね……これが後衛として駆逐艦二隻がいれば交互に攻撃を行って、捕捉した潜水艦に「頭を上げさせないで」おくことができますから、その間に敵潜を振り切る事ができますわ」


(※ヘッジホッグ/スキッド…どちらも大戦中に英国が開発した対潜迫撃砲で、小型の「ヘッジホッグ」(ハリネズミ)とそれを強化・大型化した改良タイプの「スキッド」(ヤリイカ)があり、「ヘッジホッグ」「スキッド」ともに多連装の発射機から特定の散布パターンで発射される。特徴として前方投射できるので、アスディック(ソーナー)で捕捉さえすれば、今までのように敵潜の上を通過しながら投射する「ドラム缶」型の爆雷と違い、爆発時の水中衝撃や水柱による自艦への影響を気にせず撃ちだすことが可能、水中衝撃の範囲内から慌てて離れる必要もないので敵潜を失探する可能性が低い、一発ごとの弾体は小さいことから海中の音響をあまり乱さず、投射後の探知に影響が少なく攻撃を継続しやすく、かつ小型艦艇にも多数搭載できる……と、多くの面で優れていたことから対潜戦で大いに威力を発揮し、連合軍側の護衛艦艇から大変重宝された)


提督「なるほど…」

グレイ提督「ですからわたくしは「ディアナ」を中心にひし形…ではなく「五角形」に護衛艦艇を配置すればよろしいと思います」

提督「よく分かりました…とても参考になります」

グレイ提督「いえ、お気になさらず……あとはご友人の百合野准将にお聞きすれば、また違った意見も聞くことが出来るかと存じますわ」

提督「そうですね」

………



提督「…さてと、それじゃあヴェネツィアに電話をするとしましょうか……」

ライモン「それでは、その間にお茶とお菓子を用意しておきますね」

アッチアイーオ「あ、ちょっと…!」

ライモン「どうかしました、アッチアイーオ?」

アッチアイーオ「それは秘書艦の役目なんだから、ライモンドがやることはないでしょ…私がやるわ」

ライモン「確かにそうかもしれませんね。 でも、わたしは自分の手で提督にお茶を淹れてあげたいので…」

アッチアイーオ「いいから、私がやるってば……私だって提督のためにお茶の準備がしたいし…///」

ライモン「なんです?」

アッチアイーオ「なんでもないわよ…っ///」

提督「……二人の気持ちはとても嬉しいから、仲良く交代で淹れてくれるかしら?」

ライモン「はい、分かりました」

アッチアイーオ「…提督がそう言うなら」

提督「結構♪ それじゃあ姫に電話をかけてくるわ」

…ヴェネツィア第三鎮守府・客室…

龍田「んー…髪が上手くまとまらないわ……」地元との交流レセプションで「日本文化に触れてもらう」と言うことから、着物姿で出席する予定の百合姫提督たち……が、龍田は結い上げた髪が上手く決まらずに、しきりに鏡に向かって顔を動かしている…

足柄「どれ、ちょっと貸してごらんなさいな…」

龍田「ありがとう、助かるわぁ…」

足柄「お礼なんていいわよ……こっちは空気が乾いているし水も硬水だから、髪質に影響が出るのよね…」龍田の後ろに立つと髪留めピン数本を口にくわえ、手際よく髪をまとめ始めた…

龍田「…相変わらず上手ねぇ♪」

足柄「おだてても何も出ないわよ……っと、こんな時に電話?」

龍田「しかも外線ね…しかも提督が席を外している時に……」

足柄「私が取るわよ……もしもし?」

提督「…もしもし、足柄?」

足柄「そうよ……うちの提督に用事かしら?」

提督「ええ。 …貴女の声も素敵だけれど、ちょっと姫に代わってもらえるかしら?」

足柄「…もちろん、と言いたいところなんだけど……間の悪いことに、ちょうど席を外しているところなのよね…」

提督「あら、そう…ちょっと姫に教えてもらいたい事があったのだけれど……」

足柄「うちの提督に聞きたい事、ね……もし答えられるようならことなら代わりに教えてあげるけど、どうする?」

提督「そうねぇ…聞きたい事っていうのは海上護衛戦とか、護送船団についての事なのだけれど……」

足柄「あー、そう言うことについてならうちの提督に聞くのが一番いいわ…何しろ船団護衛では右に出る提督がいないってくらいだもの。当時の海上護衛総隊にいれば「ヒ船団」や「マタ船団」だってああはならなかったでしょうよ……」

百合姫提督「…ただいま……あら、電話中?」

足柄「あ、ちょうどいい所に戻って来てくれたわね…タラントのカンピオーニ提督から、船団の護衛について聞きたい事があるんですって」

百合姫提督「分かった、代わるわね……もしもし?」

提督「あぁ、姫…ちょうど良かったわ♪」

百合姫提督「うん、どうしたの?」

提督「実はかくかくしかじかで……」


…こちらは無事でしたので明日あたりまた投下する予定ですが、読んで下さっている皆様におかれましては、台風の被害は大丈夫だったでしょうか……台風が行き過ぎてもしばらくは増水などが残りますから、くれぐれも安全には気をつけて下さいね……

提督「…と言うわけで、今の所はこんな感じなのだけれど……姫はどう思う?」

百合姫提督「そうねぇ…グレイ提督の助言も正しいと思うし、これと言って問題はなさそうね……」

提督「本当に? 姫にそう言ってもらえると心強いわ」

百合姫提督「私なんかの意見で「心強い」と思ってもらえるなんて、ちょっとくすぐったいけれど……とにかくフランカの所の「ディアナ」は高速のフネだから、護衛艦艇は必ずしも敵潜を撃沈しなくても、相手を潜航させて船団に追い付けない程度の時間稼ぎさえできれば構わないし…これが低速の船団だと、食い下がってくる敵潜から逃げ切るだけの間合いをかせぐまでに時間がかかるし大変だけれどね……」

提督「なるほど…やっぱり経験者の意見には重みがあるわね」

百合姫提督「ええ…私が提督になってこのかた、船団護衛の任務が一番神経を使ったから……少しでも参考になれば嬉しいわ」

提督「そうみたいね…口にこそ出さなかったけれど、メアリも同じように感じていたみたい」

百合姫提督「そうだと思うわ…」

提督「あとは……そうそう、姫から「こうした方がいい」っていう助言はある?」

百合姫提督「うーん、助言って言っても技術的な面はだいたい大丈夫そうだし……心構えみたいなものならそれなりにあるけれど、聞く?」

提督「ええ、ぜひお願いするわ」

百合姫提督「分かったわ…とにかく海上護衛戦のつらいところは基本的に受け身でいなければいけなくて、いつ相手の攻撃を受けるか分からない所にあると思うの……つまり攻撃をしかけてくる側が有利な状態にあるということね」

提督「…確かに」

百合姫提督「…それと対潜戦は他のどんな戦闘とも違って基本的に相手が見えないし、時間がかかるから……しつこいくらいに粘り強く、忍耐強く行わないといけない所も大変だと思うわ」

提督「ええ」

百合姫提督「…例えばこれが対空戦なら一瞬の迅速な判断と決断が必要だけれど、対潜戦となるとそれに加えて腰を据えての駆け引きみたいなところも出てくるし……」

提督「ええ」

百合姫提督「護衛艦艇だって一隻で挑めば返り討ちに遭うことだってあるから、敵潜を探知したからと言って気安く向かわせることも出来ない…それに攻撃のために艦艇を差し向けたら、そこにできた「穴」を埋めるためにそのつど護衛艦艇の配置を変更しないといけなかったり…そう言った具合に、一手も二手も先の事を考えないといけないのも大変だし……と、こんなところかしら?」

提督「なるほど…とてもためになるわ」

百合姫提督「本当に? …よかった」

提督「ええ、そういう「心構え」みたいなところは教本で勉強できるものではないから……ありがとう」

百合姫提督「いいえ…お役にたててうれしいわ」

提督「ええ、とても助かったわ……そういう優しい所も好きよ、姫♪」受話器越しに投げキッスの音を送る提督…

百合姫提督「も、もう…///」

………

ライモン「…いかがでした、提督?」

提督「ええ、いろいろと有益な話が聞けたわ…あら、コーヒーをありがとう」

ライモン「はい♪」

アッチアイーオ「夜は私が淹れてあげるわね」

提督「ええ、お願いするわ…さて、これでおおよその計画は固まったし、後は参加する娘たちによく練習しておいてもらわないと……それと私もね」

デルフィーノ「え……提督も出撃するんですか?」

提督「ええ、夏の作戦の時はここに居座っていたけれど…今度は一緒に出るつもりよ」

ライモン「あの、それは……その…」

提督「大丈夫、みんなならきっと無事にやりとげてくれると信じているわ……それに自分がやりたくないような作戦に、貴女たちだけを送り込んでのほほんとしていられるわけがないでしょう?」

ライモン「…て、提督///」

提督「ふふ、私だって肩に「二つ星」をつけているんだもの…たまにはそれらしく振る舞わないと、ね♪」軽く微笑んでウィンクを投げた…

………

…化粧室…

提督「…と、格好を付けてみたはいいものの……」


…洗面台の鏡に向かいつつとっくりと考えると、少しづつ不安になってきた提督…もちろん艦娘たちへの愛情や想いに嘘はないが、自分や艦娘たちの生命もかかるとなると穏やかな気持ちではいられない……


提督「うぅん…でも皆が出撃しているっていうのに、私だけ鎮守府に残っているなんていうのもいたたまれないし……」

シロッコ「…提督、また悩み事?」

提督「あぁ、シロッコ……えぇ、まぁ…」

シロッコ「ふふ……その様子だと「私の作戦で怪我をする娘が出るんじゃないか」とか「もっといい作戦があるんじゃないか」とか、そんな取り越し苦労をしている…ってところかしら……」

提督「…よく分かったわね?」

シロッコ「ふふふ、提督ってば夏季作戦の時もそうだったもの…」

………

…さかのぼって・夏季作戦の直前…

提督「うーん……うぅん…」

シロッコ「…提督、どうしたの?」

提督「いえ…今回が私にとって初の大型作戦なのだけれど、「提督」の経験がない私が立てた作戦で大丈夫か心配で……」

シロッコ「提督」

提督「なぁに、シロッコ?」

シロッコ「…私はね、新しい世代の海軍は女が率いると思っているんだ」

提督「ずいぶんといきなりね……でも、海軍はそこまで変われるかしら?」

シロッコ「変えるのよ……もしかしたら、提督…それをやるのは貴女かもしれない」

提督「……シロッコ…」

シロッコ「…私は提督の可能性を信じているわ」

………



提督「…あの時はシロッコの一言のおかげで随分と自信が持てたわ」

シロッコ「ふふ……なにせ「歴史の立会人」たる私だもの…今度の作戦も上手く行くわ」

提督「ありがとう」

シロッコ「どういたしまして……あと、「ディアナ」の護衛は任せておいてちょうだい」

提督「……まだ誰もしゃべっていないのに、どうして分かったの?」

シロッコ「さぁ、どうしてかしらね…♪」

提督「…」

…食堂…

提督「……では、作戦に参加する艦娘と作戦計画を伝達します」

デルフィーノ「はい」

提督「まずは輸送艦として通報艦(高速スループ)の「ディアナ」…それを護衛する直接援護の駆逐隊にはマエストラーレ級の四隻「マエストラーレ」「リベッチオ」「グレカーレ」「シロッコ」と、さらに「ソルダティ」級から「コラッツィエーレ」と「レジオナーリオ」を参加させます」

ディアナ「…よしなに」

マエストラーレ「ディアナ、貴女には深海棲艦の指一本だって触れさせはしないわ♪」

提督「それから、深海側の駆逐隊などが出撃してきた場合に備えて、軽巡「ジュゼッペ・ガリバルディ」「ライモンド・モンテクッコリ」「ジョバンニ・デッレ・バンデ・ネーレ」およびオリアーニ級駆逐艦の四隻「アルフレド・オリアーニ」「ヴィットリオ・アルフィエリ」「ジョスエ・カルドゥッチ」「ヴィンチェンツォ・ジオベルティ」からなる間接護衛グループを編成します……旗艦はガリバルディ、お願いね」

ガリバルディ「ええ…提督の言うことなら「オッベディスコ(従う)」だから安心して♪」

提督「グラツィエ……また、重巡以上の強力な敵水上艦艇が迎撃してくる場合に備えて戦艦を中心とした支隊を「影の護衛部隊」とし、船団から距離を空けて随伴させます…」

チェザーレ「…なるほど」

提督「……この支隊は旗艦「リットリオ」を中心に重巡「トレント」「トリエステ」およびフォルゴーレ級駆逐艦の「フォルゴーレ」「フルミーネ」「バレーノ」「ランポ」の四隻で構成し、タラント・マルタ・ベンガジ(リビア)沖を結んだ三角形の哨戒ルートを航行…必要に応じて船団の援護に駆けつけます」

リットリオ「はい♪」

スクアーロ「…提督、私たち潜水艦隊は?」

提督「安心して、今からその話をするわ……潜水艦隊は側面警戒と無線通信の中継を兼ねてタラント湾、メッシーナ海峡、マルタ島、シルテ湾(リビア)の沖に展開します。特にシルテ湾沖は深海棲艦の出現が見込まれるので、担当の娘は十分警戒するように」

ルビノ(中型潜シレーナ級「ルビー」)「それで「シルテ湾」担当は誰になるの?」

提督「ええ、ちょっと待ってね……まず「タラント湾沖」は少し哨戒ルートに手をくわえますが、基本は普段通りに作戦日の当直艦が哨戒につきます」

ヴォルフラミオ(中型潜アッチアイーオ級「タングステン」)「…なるほど」

提督「それからメッシーナ海峡は「アントニオ・シエスタ」…友軍の制空権下にあるから危険度は少ないけれど、長時間にわたって哨戒してもらう事になるから、航続距離の長い貴女にお願いするわ」

アントニオ・シエスタ(大型潜バリラ級)「はい、了解しました…ぁ」

提督「…哨戒中に寝こけたりしないようにね?」どっと笑いが起きる…

シエスタ「もう、そんな事ありませんってば…ぁ///」

提督「よろしい……それからマルタ沖は船団と鎮守府、あるいは戦艦隊などとの通信を中継する役目だから…グリエルモ・マルコーニ。貴女が一番の適役ね」(※マルコーニ…無線電信の発明者)

マルコーニ(大型潜マルコーニ級)「ん、通信なら任せて」

提督「ええ……そしてシルテ湾沖は「デジエ」「アクスム」の二人にお願いするわ…もし深海側の水上艦艇を発見したら船団への脅威にならないよう、積極的に攻撃すること」

デジエ(中型潜アデュア級)「任せておいて、提督。だってアクスムと一緒だもの…ね♪」

アクスム(アデュア級)「ええ…デジエ♪」お互いに指を絡めて身体を寄せ合っている……

アラジ(アデュア級)「まったく、お熱いんだから…」

提督「こほん……話を続けてもいいかしら?」

デジエ「はい」

アクスム「どうぞ♪」

提督「あー……上空の援護に関してはうちから発進させる「メリジオナーリRo43」水偵と「カント・Z506」水偵、それにグロッタリーエの空軍基地に置いてあるうちの「フィアット・CR42」戦闘機が…マルタ島より先の制空権がない空域に関してはシチリアのトラーパニにうちの「マッキ・C202」戦闘機と「サヴォイア・マルケッティSM79」雷撃機を作戦に先だって展開させ、援護出来る態勢をとります…」

アヴィエーレ「…提督、一ついいかな?」

提督「どうぞ?」

アヴィエーレ「夜間の上空援護が必要なら「CR42・CN」が三機だけあるけど……使わないのかい?」

提督「ええ…それも考えたけれど、フィアット夜戦と言っても夜間に長距離進出できる特別な航法装置があるわけでもないし、それはあちらの軽爆や雷撃機も同様で夜は大人しくしているから……夜間に戦闘機を飛ばすことはしないわ」

アヴィエーレ「了解だ」

提督「……他に質問は?」

提督「よろしい。それでは作戦に参加する全員は無事に帰って来られるよう、当日までよく練習に励むこと……以上!」

…お話の続きを投下する前に、名前を登場させた機体の紹介を一つ……長いので読み飛ばしてくれても大丈夫です


フィアットCR42「ファルコ」(鷹)戦闘機

合計で1000機以上生産された、イタリア王国空軍の(数の上では)主力となった複葉戦闘機。
愛称は「ファルコ」(鷹)で、正式名称についているアルファベットの意味はメーカーごとに異なるが、フィアットの場合は主任設計士(この場合チェレスティーノ・ロザテッリ)の頭文字をとっている。


武装は「12.7ミリ・ブレダ・サファト(SAFAT)」機銃が二挺と、イタリアの戦闘機としてはごく普通。

CR42戦闘機の前作である「CR32」複葉戦闘機が、スペイン内乱で交戦した共和派の「ポリカルポフI-15」「I-16」などに対してほどほどに戦うことができたことと、単葉戦闘機の性能がまだそこまでではなかったことから「複葉機でも十分に戦える」という勘違い、イタリア空軍の操縦士たちが(今でもイタリア空軍が得意な)アクロバットや旋回戦ばかり練習していて、技術面で保守的だったことから「戦闘機は開放風防で」(もっとも当時は無線機がなかったり性能が悪かったりしたことから機上のやり取りは手信号だったことと、風防ガラスが綺麗に作れずゆがんで見えたりくすんだりと見づらかった事もあるが…)「水平格闘戦で勝てることが一番だ」という意見が強く、世界の流れに乗らず複葉固定脚という形で設計された。


…とはいえそれでは性能が心もとないと、当時の戦闘機としては強力な「フィアット・A74RC38」(空冷840馬力)という高出力のエンジンを選択し、最高速度は約430キロを出した…その複葉機にしては高い性能から「最後の複葉戦闘機」や「世界最速の複葉戦闘機」などと言われた…開戦当初は英軍が配備していた「グロスター・グラディエーター」複葉戦闘機などを相手に互角に戦えたが、ハリケーンやスピットファイアが出現し始めると一気に劣勢に……おまけになまじ速度があったため複葉機が得意な低速域での旋回戦に持ち込むことも出来ず、被害ばかりが増えて行った……それでもアシ(航続距離)の長さと頑丈な機体構造、整備性の良さ、また複葉機らしい軽快な動きから戦闘爆撃機として戦い抜いた



…また実戦テストを兼ねて様々な機体を使っていた「独立第377飛行隊」や、ローマやナポリの防空を請け負った「第300飛行隊」など一部の部隊では、夜間防空のために機体を黒一色で塗り、胴体下部にまで伸びる消炎排気管と主翼下にサーチライトを吊るしたCR42「CN」(カッチア・ノトゥルナ…夜間戦闘)仕様として夜間迎撃に用いた。

特に独立377飛行隊は「赤い逆三角形の中に三日月が浮かび、そこにフクロウが止まっている」部隊マークが、狙ったわけではないのに夜間戦闘機らしい……古めかしい機体ながら377飛行隊のエース(撃墜5機)、ルイージ・トルキオ中尉が見事に夜間爆撃の英空軍「ウェリントン」爆撃機を撃墜している


………

カント(CANT)・Z506「アイローネ」(アオサギ)水上偵察機

もとは郵便機や旅客機として開発された民間用の水上機に目をつけて、軍用とした単葉、「アルファロメオ126RC34」(750馬力)の三発エンジン、木製胴体に双フロート(フロートだけは波に耐えるため金属製)の大型水偵。


形式名称の「Z」は後にブレダに引き抜かれた設計者「フィリッポ・ザパタ」の名字から。
愛称は「アイローネ」で、同じくカント製で木製胴体の優秀な三発爆撃機、Z1007「アルシオーネ」(カワセミ)と響きが似ていてまぎらわしい…(機体も一部の設計を流用しているため、わざと似た響きの名前にしたのかもしれない)


Z506は、戦前にありとあらゆる水上機の記録を塗り替えた優秀な機体で、単発エンジンで機体構造も複雑だったZ501「ガッビアーノ」(カモメ)より全ての面で優れていた。
特に外部搭載量が1200キロと多く、航続距離も約2750キロと長いことから長距離哨戒や、制空権のない海域を航行する船団を攻撃することも意識して生産された。武装は前方固定、上部旋回銃座、下部張り出しの旋回銃座に装備された12.7ミリと7.7ミリのブレダ・サファト機銃。

もちろん「下駄ばき」(フロート機)なので速度は360キロ程度とさして出ないが、大戦序盤は機体の頑丈さや航続距離の長さを買われて地中海上空の哨戒などにあたった……が、英地中海艦隊に空母が加わったり、北アフリカの英軍機が洋上にまで出てくるようになったりすると損害が急増し、それ以後は救難機として洋上で脱出したパイロットたちの救出にあたって過ごした

………

サヴォイア・マルケッティSM79「スパルヴィエロ」(ハイタカ)

言わずと知れたイタリア王国空軍で一番有名な三発の爆・雷撃機。形式番号のアルファベットは「サヴォイア・マルケッティ」の略で、資料によっては「S.79」としている物も。


元は旅客機レース用の高速旅客機と言うことで開発されたがレースそのものには間に合わず、1934年に初飛行…軍用型は「アルファロメオ126・RC34」(750馬力)エンジンを搭載し速度は430キロ前後、航続距離は1900キロで爆弾などの搭載量は1250キロと、戦前の設計にしてはなかなか。


1935年頃、ドゥーエ将軍の唱えていた「空中艦隊構想」(「近未来小説」の形で発表された論文で、いわゆる戦略爆撃を唱え、世界の空軍関係者やムッソリーニにまで感銘を与えたが、ムッソリーニは『戦闘機よりも爆撃機が重要』と戦闘機の開発や調達を二の次とし、兵力のアンバランスや戦闘機の近代化に遅れをとってしまった……また「空中艦隊」は工業生産力に乏しいイタリアには実現できず、反対に米英に実現されてしまった…)にふさわしい近代的な高速爆撃機が見つからないでいた空軍から打診されて、爆撃機として改造。

12.7ミリのブレダ・SAFAT機銃をコクピット上部のふくらみに(前方固定と後部手動旋回)各一挺、左右胴体に7.7ミリブレダ機銃を各一挺、後部胴体下面の爆撃手用ゴンドラに12.7ミリブレダ旋回機銃を一挺装備しているが、専任の銃手はおらず、操縦士を除く全員が銃手を兼任しなければならない(米軍を除くたいていの国も同じ…)ので「一度に全ての機銃が火を噴く」と言うわけにはいかなかった。


実戦デビューのスペイン内乱では共和国側のポリカルポフ戦闘機を全て振り切り「戦闘機による被撃墜ゼロ」と、頑丈で運動性がよく高速なSM79の高性能ぶりを内外にアピールしたが、第二次大戦ではハリケーンやスピットファイアなどが相手で分が悪く、輸送船団相手の対艦攻撃にシフト。腹部のゴンドラを取り払って魚雷二本を胴体に吊るした雷撃仕様の「SM79bis」となって多くの船団に猛攻を加え、かなりの損害を与えている。


機体をすっきりとリファインさせ、エンジンを1000馬力級の「ピアッジォP10・RC40」に換装した後継機「SM84」も1940年から少しづつ生産されたが、思っていたほど性能が伸びず、むしろ運動性が悪くなり、大戦中盤からはより高性能なカントZ1007「アルシオーネ」の方が多用された……それでもSM84は英戦艦「ネルソン」に雷撃を敢行するなど奮闘、一部の生き残った機体は戦後も輸送機などとして活躍した。

…翌日…

マエストラーレ「それじゃあ速度二十ノットの時に、主軸の回転数がどのくらいになるか計測すること!」それぞれの艦ごとに微妙に速度差があるが、それでも艦隊運動の時に速度がぴったりと合わせられるよう、一定ごとの速度とその時の軸(スクリューシャフト)の回転数を測る……

ディアナ「…よしなに」

リベッチオ「よし…うん、ちょうど二十ノット♪」

グレカーレ「計測完了です」

マエストラーレ「いいわ……それじゃあ沖合十キロまで出て護衛隊形の訓練と、潜水艦たちを相手に回避行動の訓練をするわよ」

シロッコ「了解」


…鎮守府沖の海中・深度十数メートル…

スクアーロ「ふふふ…見えてきたみえてきた……白くて柔らかいお腹をさらした美味しそうなお魚さんが…♪」


…白い八重歯を光らせ、にたりと笑みを浮かべている「スクアーロ」(サメ)は、姉妹艦の「デルフィーノ」(イルカ)「ナルヴァーロ」(イッカク)「トリケーコ」(セイウチ)たちと模擬魚雷で「雷撃」を仕掛けることになっている…当然ディアナたちには攻撃のタイミングや方向を教えない実戦形式になっている…


デルフィーノ「…対象の速度二十五ノット、偏差調整を……雷速三十ノット、深度三メートル……前部の四本を扇状発射で行きますよ…ぅ」頭がよく計算も早いデルフィーノは手早く偏差を調整し、片目を細めて潜望鏡に取りついた…

スクアーロ「……発射管に注水…前扉開け!」潜望鏡に淡灰色と濃い灰色、そして艦首に白で偽の艦首波を描いた迷彩姿のディアナたちが入ってくる……

デルフィーノ「…トーレ、ドゥーエ、ウーノ…魚雷発射!」弾頭なしの模擬魚雷が鈍い音を立てて射出されると、魚雷が「シュル…ッ」と白い泡を引きながら航走を始めた…

…海上…

マエストラーレ「……左舷九○度に雷跡! …とぉぉーりかぁーじ、いっぱぁーい!」

リベッチオ「とぉーりかぁーじ、いっぱーい!」


…鎮守府の潜水艦たちを仮想敵にして、魚雷の回避と一斉回頭の訓練にいそしむディアナたち……マエストラーレたちは取り舵と面舵に特定の信号旗を決め、旗艦のメインマストに信号旗が揚がると同時に各艦もすぐ同じ旗を揚げ、信号旗が降りた瞬間に舵輪を回す……信号旗に合わせて一糸乱れぬ動きが出来るよう、今はそれぞれが直接護衛グループの旗艦「マエストラーレ」に目をこらしている…


マエストラーレ「…グレカーレ、回頭の入りが遅いっ!」

グレカーレ「うぅ、ごめんなさい……ここからだと信号旗が見づらくて…」マエストラーレの真後ろに配置されているグレカーレからは、はためく信号旗が何色なのかも見分けにくい…

マエストラーレ「だったら他艦と見比べる! …海の600メートルなんてすぐ距離が詰まっちゃうのは分かっているでしょうが!」

グレカーレ「…っ、了解!」

トリケーコ「……ふふ、上手上手…でも、ね♪」ドシュッ…!

シロッコ「…右舷に雷跡!」

マエストラーレ「……っ、両舷全速! 面舵一杯!」最初の雷撃をかわして船団が真横を向いた所に、第二撃の魚雷が航走してくる…

ディアナ「おもーかぁぁーじ、いっぱぁーい!」32ノットと駆逐艦並みの高速を誇るディアナだけあって、優雅に波を切りながら二本の雷跡の間をすり抜けた…

トリケーコ「…むぅぅ、なかなかお上手だこと……」

ナルヴァーロ「……トリケーコも外したようだし、今度は私が…前部一番から四番、撃て!」

マエストラーレ「左舷に雷跡、取り舵一杯!」

グレカーレ「とぉーりかぁぁーじ、いっぱぁーい!」

リベッチオ「……っ、間に合わない!」ぎりぎりの所で避けきれず、白い雷跡が艦尾に届くと「ゴン…」と鈍い音がした…

マエストラーレ「あぁ、もう…もうちょっとだったのに……!」

リベッチオ「……ごめんね、お姉ちゃん…」

マエストラーレ「謝らなくていいわ……もっとも、その分練習するように!」

リベッチオ「はぁ…い」

シロッコ「…まったく、スクアーロたちもやってくれるね」

ディアナ「ふぅ、最後の斉射はわたくしもひやりといたしました……」

マエストラーレ「そうね……でも深海の連中はもっといろんな手を使ってくるはずだし、このくらいは回避できないと困るわよ…」

…一方…

ガリバルディ「まったく…旗艦だから提督を乗せているけれど、ライモンドに嫉妬されそうで怖いわね♪」

提督「大丈夫よ、ライモンはいい娘だもの。任務に必要なことで怒ったりすねたりはしないわ」

ガリバルディ「まったく、惚気てくれちゃって……」と、ふいに目を細めると水平線に目をこらした……

提督「…」提督も慌てて首にかけている双眼鏡を引っつかみ、水平線近くを探る…ぽつりぽつりと黒い点が視界に入り、倍率を上げると水面ぎりぎりを飛ぶ独特なシルエットが見えた…

ガリバルディ「……敵機! 赤(左舷)二十度! 機関全速!」

提督「対空戦、用意! 射程に入り次第自由に撃て!」


…提督が座乗する予定の軽巡「ジュゼッペ・ガリバルディ」を始めとする間接護衛グループは、鎮守府所属の「サヴォイア・マルケッティSM79」を使っての対空戦と、腕の立つ「フルット」級や「アデュア」級中型潜を相手にした対潜戦の訓練に余念がない…提督は耳に防音のイアピース(耳当て)をつけていて、おまけに訓練では空砲を使っている……が、それでも耳が聞こえなくなりそうな砲声と硝煙の臭いが立ちこめ、指示を飛ばすために大声を張り上げているので喉がひりひりする…


ガリバルディ「左舷ブレダ機銃、撃ち方始め!」…37ミリや20ミリのブレダ機銃が低空で突っ込んでくるサヴォイアに振り向けられると「バン、バン、バンッ!」と吼えたてる……甲板上ではうっすらした幻影のような水兵たちが次々と保弾板を入れ替え、照準をつけているのが見える…

ライモン「距離2000! 機種、サヴォイア雷撃機! 高角砲、撃てっ!」

バンデ・ネーレ「左舷ブレダ、先頭の敵機を狙え…撃て!」

オリアーニ「…左舷四十五度に敵機三機!」

カルドゥッチ「ブレダ機銃、てーっ!」中央部の三連装魚雷発射管を下ろして37ミリ連装機銃を増備した「護衛駆逐艦」仕様のオリアーニたちが、アイススケートのような航跡を描きながら機銃を振り向ける…

アルフィエリ「機関全速! 取り舵いっぱぁーい!」

ジオベルティ「左舷に雷跡! 取り舵二十!」

ガリバルディ「…敵機、左舷から来るわ!」

提督「…っ!」エンジンの爆音に思わず頭を引っ込めそうになるくらいの低空…艦橋すれすれの高度でサヴォイア雷撃機がすり抜けて行った……

ガリバルディ「……撃ち方止め! どうやらこれでおしまいみたいね」

提督「え? あぁ、そうね……っと…」疲労のせいで少し足元がふらついて、慌てて海図台につかまる提督…

ガリバルディ「……提督はまだこういうのに慣れていないし、疲れたでしょう?」ガリバルディが後ろから腕を回して提督の肩を抱えた…びっしょりと汗ばんだ略装越しに、ガリバルディの張りのある胸の感触と身体の火照りが伝わり、首筋に熱い息がかかる……

提督「ええ、まぁ…でも大丈夫///」

ガリバルディ「ふふ、頼もしいわ……まぁ操艦は私がやるわけだから、提督は全体の指揮を頑張ってちょうだいね」

提督「ええ」

ガリバルディ「よろしい……さーて、今日のお昼当番は誰だったかしら? うんと動いたし、何かしっかりしたものが食べたいわね」

提督「えーと…今日はドリアとザラが担当だったはずよ」

ガリバルディ「あら、いいじゃない。特にドリアは美食家だから期待できるわ」

提督「そうね。それじゃあ早く帰りましょう」

ガリバルディ「了解、それじゃあ最大戦速で行きましょうか♪」横から提督の顔をのぞくと冗談めかして派手なウィンクを投げた…

提督「もう…鎮守府に戻るまでは訓練のうちなんだから、真面目にやりなさい?」

ガリバルディ「了解。従うわ」

提督「結構♪」

………

…しばらくして・執務室…

提督「ふー…さっぱりしたし、後は遅めのお昼でも……」硝煙と汗の染みた服は洗濯機に放り込み、シャワーも済ませた提督……軽くお化粧を直し、クリーム色をした薄手のセーターに袖を通す……と、急に内線電話が鳴り出した…

提督「はい、こちら執務室…」

カラビニエーレ「提督、食堂でトラブルです! 至急来てください!」

提督「トラブルね……了解、すぐ行くわ」

カラビニエーレ「お願いします!」

…食堂…

ガッビアーノ「……確かにそれは悪かったかもしれないけれどね…」

フレッチア「悪かったと思ってるなら謝ればいいでしょうが、カモメだからって意地汚いにもほどがあるわ!」

アレッサンドロ・マラスピーナ「まぁまぁ……フレッチアもそこまで言うことはないじゃないか…だろう?」

フレッチア「そりゃあ言いたくもなるでしょうよ! それにアレッサンドロ、あんただって同罪みたいなものなんだからね!?」

マラスピーナ「……何も私にまで雷を落とさなくたっていいだろう」

フレッチア「落とすわよ! だいたいあんたはいっつも適当で、暇さえあれば女の子とベタベタして…作戦も近いってのに、ちゃんと真剣にやってるわけ!?」

…両手を腰にあて、小柄ながら迫力充分のフレッチア……普段から稲妻のようにはねている髪は腹立ちのためか、まるで帯電でもしているかのように逆立っている…

マラスピーナ「……これでも実力は伴っているんだ…君が可愛いおつむを悩ませて、他人のことまで心配する必要はないよ!」

フレッチア「この…っ!」いきり立って飛びかかると、マラスピーナの顔に爪をたてて引っかこうとするフレッチア…

提督「…やめ!!」

…普段は柔和で大声一つ出さない提督が声を張り上げると、途端に全員が「気をつけ」の姿勢を取り、食堂がピタリと静まり返った…

提督「アレッサンドロ、ガッビアーノ、フレッチア……それぞれ離れなさい」

ガッビアーノ「…了解」

マラスピーナ「…ああ、了解」

フレッチア「ええ……」

提督「ふぅ……それで、一体どうしたって言うの?」

エリトレア「えぇ…と、その……実は…」

…十数分前…

ガッビアーノ「エリトレア、このお皿のお菓子だけど…食べてもいいかな?」

エリトレア「え? お菓子ですか?」

ガッビアーノ「うん、ここに置いてあるんだけどね…」

エリトレア「そうですねぇ……特に誰もいないようですし、私も早くお皿洗いを済ませたいですから……食べちゃっていいですよ♪」

ガッビアーノ「分かった。それじゃあいただこう…」

マラスピーナ「…おや、白い翼のガッビアーノ(カモメ)さん……いったい何をしているのかな?」

ガッビアーノ「ん、机にお菓子があったからね…アレッサンドロも一つ食べるか……な?」

マラスピーナ「おや、嬉しいね…ではありがたく♪」にこやかに笑って隣に座ると、ガッビアーノにジャム付きのクッキーを差し出した…

………



提督「…それで?」

エリトレア「はい…そのお菓子はフレッチアが哨戒の前に、帰投したら食べるつもりで置いておいたそうなんです……」

提督「なるほどね……」

カルドゥッチ「…まさに「人間は自分の父親が死んだことよりも、物を取られたことの方がよく覚えている」っていうものだね」(※マキャヴェリ)

フレッチア「……哨戒が終わったら食べようと思って取っておいたのに、この泥棒カモメが盗み食いするんだもの…それだけならまだしも、謝りもしないでいけしゃあしゃあと「皿に名前でも書いてあれば食べなかったさ…」なんて言うのよ!?」

提督「フレッチア!」

フレッチア「…ごめんなさい、いくらなんでも言い過ぎたわ」

提督「分かればよろしい……では、三人に処分を言い渡します」

フレッチア「…はい」

ガッビアーノ「…」

マラスピーナ「…」

提督「まず……ガッビアーノは知らなかったとはいえフレッチアが取っておいたお菓子を食べちゃったのだから、ちゃんと謝ること」

ガッビアーノ「了解…」

提督「次、フレッチアはガッビアーノとアレッサンドロの二人に対して言った悪態を取り消すこと」

フレッチア「……分かったわ」

提督「アレッサンドロもフレッチアに向けて謝ること」

マラスピーナ「了解したよ、提督……」

提督「それから三人には罰直として、今日から三日間お風呂とトイレの掃除を命じます…以上、分かったわね?」

三人「「了解」」

提督「よろしい……それじゃあお互いに仲直りのキスをして?」急に甘い口調になると、満面の笑みを浮かべた…

フレッチア「…は!?」

提督「頬で構わないわ…もし唇にしたければ別だけれど♪」

フレッチア「だ、誰がよ…///」

アレッサンドロ「ふふ、了解……そういうのは得意な方でね♪」

フレッチア「ち、ちょっと!」

アレッサンドロ「…フレッチア、さっきは悪かったよ……つい頭に血が上ってね…愚かな私を許してくれるかい……?」ひざまづいてフレッチアの手を包むように握ると、上体を伸ばして頬にキスをした…

フレッチア「ゆ、許してあげるわよ……じゃあ、今度は私が…///」ちゅっ♪

ガッビアーノ「……フレッチア、済まなかったよ…今後は気を付ける……」ちゅぅ…っ♪

フレッチア「わ、私も言い過ぎたわ……ごめんなさい///」…ちゅっ♪

提督「はい、よろしい♪」

カラビニエーレ「ふぅ……やっぱりこういう時は提督じゃないとおさまりがつかないわ。私が上手く抑えられれば良かったのだけど……」

提督「ふふ、いいのよ…そのために私がいるんだもの。 …カラビニエーレはよくやったわ♪」

カラビニエーレ「グラツィエ、提督…///」

提督「それにしても今後は同じような事がないように、お皿に何か「目印」でも置いておくことにしましょうか…」

エリトレア「そうですね、それなら私もうっかり片付けないで済みます♪」

………

…夜・執務室…

提督「……はぁぁ」執務室の椅子に座ると身体をぐったりさせて、大きなため息をついた…

カヴール「あら、そんな大きなため息をついて…どうなさいました?」

提督「いえ、ね……作戦が近いせいか、みんな神経がささくれ立っているというか…どうも鎮守府の雰囲気がピリピリしていて……夏の作戦の時はそうでもなかったのに……」

カヴール「そうですねぇ……まぁ、夏の時は提督が着任したばかりでの大作戦でしたから、どのような指揮を執られるかも分からなかったですし…それに提督が作戦の前に風邪をお召しになったりしたものですから……みんな気がかりな事柄が多くて、それどころではなかったのだと思いますよ♪」

提督「もう、そんなところで慣れてもらっても困るわね……」

カヴール「ふふふ…っ♪」

提督「……それにしても作戦が決まってからは体力トレーニングに、ガリバルディたちに座乗させてもらって対空戦・対潜戦の訓練…それから必要書類の整理と、作戦に関連するあちこちとの調整……やることが多くて、なんだか身体の芯に疲れが溜まっている感じがするわ…」

カヴール「あら、それはいけませんね…」

提督「ええ……だからと言ってどれも手抜きは出来ないし…」

カヴール「なるほど…そういうことでしたら、ダ・ヴィンチの所に行ってみるとよろしいかと♪」

提督「……ダ・ヴィンチ?」

おぉ!ヘッジホッグったぁこれまた懐かしい!昔乗っていた艦を思い出しますな!

>>594 乗艦にヘッジホッグが搭載されていたのでしょうか…戦後の艦は軒並みリンボーになっているものと思っていましたが……

…もっとも寡聞にして、海自がヘッジホッグやリンボーのような対潜迫撃砲をどう呼称していたのかは知らないので…もしかしたらひとくくりにして全部「ヘッジホッグ」で済ましていたのかもしれませんね

確かアメちゃんから貰ったやつの固定型がmk10(ちゃんとした型式は忘れた)で回転式は六八式対潜弾投射機Mk15って呼んどった思い出が。まぁ、私の乗っとった某DDGではまとめてヘッジホッグっと呼んどりましたが。

>>596 なるほど、わざわざ教えて下さってありがとうございます

…ここしばらく進められないでいましたが、そろそろ秋季作戦の場面を書き、それからまた提督たちがだらだらいちゃいちゃする予定です…お待ちください

…大型潜「マルコーニ級」の部屋…

提督「…ダ・ヴィンチ、いる?」

レオナルド・ダ・ヴィンチ「いますよ、どうぞ」

提督「お邪魔するわね」

ダ・ヴィンチ「ええ、いらっしゃい……さて、今日はこの「世紀の大天才」レオナルド・ダ・ヴィンチにどのようなご用でしょう…科学、天文、錬金、美術に建築……何でもどうぞ?」


…いつも通りひらひらしたケープに花飾りの「錬金術士スタイル」をしているダ・ヴィンチ…錬金用の大釜は鎮守府の「錬金術士」たちが入り浸っているアルキメーデ級の部屋にあるが、「予備」の小さい釜が室内の暖炉に据え付けてある…


提督「ふふ、そんなに大層なものじゃないわ…実はね、この数日ちょっと疲れ気味で……」

ダ・ヴィンチ「なるほどなるほど……それで疲労回復の薬が欲しいと…そう言うことね?」

提督「いえ、まだ何も…」

ダ・ヴィンチ「大丈夫…そんな提督にぴったりのお薬があるわ♪」ごそごそとポーチをかきまわすと、夕日のような色をした錠剤を取り出した……

提督「…これ?」

ダ・ヴィンチ「ええ、疲労回復に役立つモノがうんと入っているわ……ちなみに主な成分はバリン、ロイシン、イソロイシン、アスパラギン酸ナトリウム…アセスルファムカリウム、トレハロース、酸化マグネシウム、クエン酸……そこにチェザーレの勇敢さとガリバルディのカリスマ……マンドラゴラにピンクヒスイの粉末…そして色付けに飴色紅茶のエッセンスと唇に透けたオレンジを加えて……」

提督「……あー、それって飲んでも大丈夫なのね?」

ダ・ヴィンチ「もちろん。一回一錠で疲労も吹き飛ぶわ♪」

提督「そう、ならいただくわね…」

ダ・ヴィンチ「はい、また何か助けてほしい事があったら来てね?」

提督「ええ、ありがとう」

ダ・ヴィンチ「また明日ね、提督……っと、副作用の事を伝え忘れたっけ……」

ダ・ヴィンチ「……ま、いいか♪」

…夕食後・執務室…

提督「ふわぁ…さすがにくたびれたわね……」目をしょぼしょぼさせながらノートパソコンの画面に映る数字とにらめっこしていたが、ようやくけりがついたので「保存」をクリックし、電源を落とすと肩を回して伸びをした…

提督「さてと、あとは深夜哨戒に出る娘たちのお見送りをして……それから食堂に行って、深夜哨戒組が戻ってきた時に食べる加給食(お夜食)の確認と検品……」


…時々ディアナやエリトレアが夜食に出すサンドウィッチや軽食を作り過ぎると「検品」と称して、提督やその場にいる艦娘たちがおすそ分けにあずかることがある……体形も気になる提督としては別段なくても構わないが、あるとちょっとだけ嬉しい気分になることは否定できない…


提督「…あ、あと作戦・通信室にも顔を出さないといけないわよね……で、それが済んだら寝る前にお風呂に入って…ふぅ、何だかんだで色々やらないといけないわね…」と、執務机の上に置いておいた錠剤に目が留まった…

提督「…せっかくだからダ・ヴィンチのくれた薬でも飲んでみるとしましょうか……えーと、グラスは…と」

………



…しばらくして・待機室…

ウアルシエク(中型潜アデュア級)「ふわ…ぁ、眠いネェ……」

ネゲリ(アデュア級)「うん……深夜哨戒ノ辛いトコロだよネ…」浅黒かったり褐色だったり、はたまたカスタード色の肌をしている艦娘「アデュア」級の面々はしゃべるとアフリカ…特に艦名についている植民地の地名からか、アビシニア(エチオピア)訛りやキレナイカ(リビア)訛りが多い……

ベリロ(中型潜ペルラ級「ベリル(緑柱石)」)「まぁまぁ…私たちが毎晩タラント湾の哨戒をしているおかげで、深海棲艦の機雷の敷設や夜襲を予防出来ているんですから」

オニーチェ(ペルラ級「オニキス(縞メノウ)」)「……とはいうものの、眠いことは変わりませんね…ぇ」午後の間に昼寝をしておいたとはいえ、生あくびが出る……オニキスのように黒と白がそれぞれ房に分かれている髪をかき上げ、濃いエスプレッソをすすった…

ベリロ「それでも、提督はたいてい出撃前に様子を見に来てくれるもの…優しいわ」

ウアルシエク「そうネ」

提督「みんな…チャオ……♪」

ウアルシエク「あ……噂をすれば、ネ」

ベリロ「提督、来てくれたんですね……って、大丈夫ですか?」

提督「んふふっ……ええ、私は元気よ…ぉ♪」頬は紅潮し、滑らかな肌は上気してしっとりと汗ばんでいる……いつもは優しげに細められていることが多い金色の目は瞳孔が広がり、ギラついた光を帯びて爛々と輝いている……

オニーチェ「ほ、本当に…?」

ベリロ「…何だか顔が火照っているようですけれ…ど?」

提督「え、ええ……はぁ、はぁ、はぁ…っ///」

ネゲリ「提督、平気…?」提督に近寄ると上目づかいで見上げるようにして身体を近づけたネゲリ……ぴっちりした淡灰色と灰緑色の迷彩が施された競泳水着風の「艤装」が際立たせる、滑らかで引き締まった身体の曲線…そして艶やかな浅黒い肌からふわりと立ちのぼる甘く香ばしいような匂いが、提督の鼻腔をくすぐる…

提督「……実を言うと…ふーっ、ふーっ……もう…我慢できない…わ♪」ちゅぅぅっ、ちゅるぅ…っ♪

ネゲリ「…んむっ!?」

オニーチェ「!?」

ベリロ「え…?」

ウアルシエク「な…!?」

提督「あむっ、んっ、ちゅむ……んちゅぅ、じゅるっぅぅ…っ♪」背中に腕を回してぎゅっと抱きしめると、顔を上向かせてむさぼるようなキスを浴びせる…

ネゲリ「んふぅっ、んぅぅっ…んふぅ……っ///」

提督「ふあぁぁんっ♪ ネゲリの唇、柔らかくて…はむっ、ちゅぅっ……んー、むちゅっ…ぅ♪」

ネゲリ「ぷはぁっ…んぐっ、むぅぅ…んっ///」

提督「それにこの……んちゅっ…弾力のあるお尻も……んふふっ♪」提督のきれいな指が水着の隙間に差し入れられ、張りのあるヒップを撫で上げる…

ネゲリ「ひゃぁん…っ///」

提督「んふふっ、そんなに甘い声を出しちゃって……ふふ、もっと気持ちよくしてあげるわね…ちゅぅっ♪」ちゅくっ、くちゅ…っ♪

ネゲリ「はー、はー……んあっ、ふあぁ…んっ♪」

提督「うふふっ、ネゲリったらもうこんなにとろとろになって…可愛い♪」メロンか何かの目方を量るようにヒップを下から支えつつ、もう片方の手をぴっちりと張りついた水着の隙間に優しく滑り込ませる……

ネゲリ「はーっ、はぁぁ…っ…ていとく……気持ひイイ…ふぁぁ…///」ひざから崩れ落ちそうな内股でとろけた表情を浮かべ、提督にしがみついている…

提督「んふふっ、嬉しいわ…それじゃあもっとしてあげる……♪」にちゅっ、ぐちゅぐちゅっ♪

ネゲリ「ふあぁぁん…っ///」

提督「あらあら、もういいの? んふふっ、それじゃあ次は誰にしようかしら…♪」ねっとりと甘い声をあげオニーチェたちを見回すと、ぺろりと舌なめずりをした…

オニーチェ「///」

ウアルシエク「テ、提督…っ///」

ベリロ「…っ///」

…数十分後…


提督「んむっ…はむっ、ちゅるぅ…っ♪」

ベリロ「ふぁぁぁ、提督……提督ぅ///」ぷしゃぁぁ…っ♪

提督「んふふっ……あむっ、ちゅむっ♪」

オニーチェ「はひぃぃ…っ♪」ぐちゅっぐちゅぅ…っ♪

提督「んちゅるっ、ちゅむ……ちゅぅぅ…っ♪」

ウアルシエク「ふわぁぁ…あふっ、んはぁぁ///」

………

提督「あんっ、もう…四人ともすっかりとろとろに濡らしちゃって♪」

オニーチェ「はー、はー、はーっ……///」

ベリロ「はひぃ…ふぅ…///」

ウアルシエク「……はへぇ…ぇ///」

ネゲリ「…んぅ…っ///」

提督「ふふっ……それじゃあ哨戒、頑張ってね♪」黒いタイツに包まれたふとももにとろりと愛蜜を垂らしたまま、甘ったるい笑みを浮かべると出て行った…

ベリロ「……まずは…ふぅ、はぁ……一旦シャワーを浴びて……出撃は…それからにしましょう……」

ウアルシエク「…賛成……」

………



…廊下…

提督「ふーっ、ふーっ……はあぁ…っ♪」くちゅ…っ♪

…廊下を歩きながら、まるでマラソンでもした後のように荒い息遣いをしている提督……歩くたびにもっちりしたふとももとねっとりと濡れた花芯がこすれて、腰が抜けそうなほど気持ちいい……いつもなら潮風の爽やかな息吹か艦娘たちの甘い香水の匂いに満ちている廊下も、今はくらくらするほど強いジャスミンやチョコレート、それに熟れきったメロンが合わさったような甘ったるい香りにしか感じられない…

提督「ふーっ、ふーっ…」

チコーニャ「あ、提督っ♪」

提督「あら、チコーニャ……港内の掃海は終わったの…ね♪」

チコーニャ「はい、きれいになりましたよ…って、提督…どうしたんです……か?」

提督「…いいえ、どうもしないわ……チコーニャはもう一度シャワーに?」

チコーニャ「はい。鎮守府はいつでもお風呂に入れるので…自由に汗や塩気が流せるので嬉しいです♪」

提督「そうね……ところで掃海具の予備はどうなっていたかしら…」

チコーニャ「はい、掃海具の予備はパラベーンと一緒に備品倉庫に入ってます」

提督「それじゃあ少し付き合ってもらえるかしら……一緒に確認しましょう?」

チコーニャ「分かりました、それじゃあシャワーの前に済ませちゃいましょう♪」

提督「…ええ、それがいいわ……んふふっ…♪」何も気づいていないチコーニャを見て、いやらしい笑みを小さく浮かべた……

チコーニャ「提督、どうかしましたか?」

提督「いいえ……何でもないわ♪」

…倉庫…

チコーニャ「えぇ…と、曳索が十巻きにパラベーンが八つ、それに掃海具がそれぞれ……」

提督「…なるほど、大丈夫そう……ね♪」カチリ…

チコーニャ「そうですね、それじゃあこれでおしまいで……あれ?」

提督「ふふふ…っ♪」

チコーニャ「…あの、提督?」

提督「……チコーニャ♪」小さなチコーニャを壁に押し付け、頬に手を当てる…

チコーニャ「え、あっ……提督…っ///」

提督「…好きよ……んむっ、ちゅるぅっ…可愛らしくて、一生懸命で……よくやってくれているわ…ちゅぱ…ちゅむっ、むちゅぅ…っ♪」

チコーニャ「んむっ、あふっ……ふわぁぁぁ///」

提督「…ふふふっ…シャワーの前に…もうちょっと汗をかいていきましょう……ね♪」チコーニャのプリーツスカートをめくりあげ白いサイドリボン付きのショーツをずり下ろすと、ふとももを絡めた…

チコーニャ「ふぁ…ぃ///」

………

…ここしばらく投下できずにいてすみませんでした。ちょっとPCがダメになってしまったもので…

…また数日以内に投下していきますので、どうかもうしばらくお待ちいただければと思います……

…しばらくして・軽巡アオスタ級の部屋…

エウジェニオ「…『愛しいレオナルダ、その後かわりはないかしら……ちょうど今頃のボローニャは焼き栗の季節ね。屋台で紙袋に詰めてもらって、二人で歩きながら食べたことを思い出すわ』と…」


…毎晩寝る前に、イタリア各地の「恋人」たちから送られてくる恋文に返事を書くのが日課になっている女たらしのエウジェニオ……白いすっきりしたナイトガウン姿で椅子に腰かけ、きれいなすみれ色の便せんにさらさらと手紙を書きつづっている…かたわらには甘い言葉がたっぷりつまった便せんを入れて、各地の住所と宛名が記された出来上がりの封筒が積み上げられている…


エウジェニオ「…結びに『…貴女を思い出しつつ……エウジェニオ』と…ふふ、これでいいわ……あら」軽く数回ノックの音が響いた…

エウジェニオ「……どうぞ、提督…開いているわ」

提督「…ふぅ、ふぅ……どうして私だって分かった…の……?」とろりとした表情を浮かべて頬を火照らせ、ドアの枠につかまるようにしてようやく立っている…

エウジェニオ「あら、だってノックの仕方が違うもの…」

提督「…はーっ、はーっ……さすがね…エウジェニオ……///」

エウジェニオ「ふふ、お褒めにあずかり光栄ね……それで、こんな時間に何のご用かしら?」手紙の山をきれいに片付けると書き物机の引き出しにしまい、片方の腕で頬杖をついた…髪の房が胸元に垂れ、ギリシャ彫刻風の端正な顔立ちには微笑を浮かべている……

提督「…あの…それが……ね…エウジェニオ……」

エウジェニオ「ええ、何かしら?」

提督「…その……私、身体が火照って…さっき…から……収まらないの…ぉ///」

エウジェニオ「あら…私にそんなことを言っていいのかしら? めちゃくちゃにしちゃうわよ?」

提督「…ええ、お願い……私のこと…好きなだけ……めちゃくちゃにして…///」

エウジェニオ「そう……ふふっ、提督の頼みとあれば断れないわね♪」立ち上がって片方の手を提督の腰に回し、もう片方の手を肩にかけると部屋に招き入れた…

提督「はぁ…はぁ……ん///」

エウジェニオ「もう…そんな表情をされたら、我慢出来ないわ♪」ちゅぅ…っ♪

提督「あ、ふぁ……んあぁっ♪」

エウジェニオ「それにしても……ふふっ、こんな格好でここまで来たの?」

提督「…あ、んっ……♪」ちゅくっ、くちゅ…っ♪

エウジェニオ「タイツは伝線しているし、こんなところまでぐっしょり濡れて……おまけに下着をどこかに置いてきちゃったようね?」

提督「…そんなこと、どうでもいいの……んくっ、ちゅむっ……んむ…っ♪」

エウジェニオ「ふふ、そうかもしれないわね……んむ、ちゅぅぅっ…ちゅるっ、ちゅぷ…っ♪」

提督「あっ、ふぁ…ぁんっ……んふっ、んくぅぅ…っ♪」

エウジェニオ「ほら、壁にもたれかかって……ね♪」

提督「ふあぁぁぁ…あんっ、あぁ……それ、とっれも…いい…っ♪」


…だらしなく喘いでいる提督を壁に押しつけるようにし、片脚を膝から上げさせるとタイツの破れ目から指をするりと滑り込ませた……技巧派のエウジェニオらしく、ねっとりとぬめる花芯を洗練されたやり方で甘く責めたてる……同時に耳元に唇を寄せると甘い言葉をささやき、時折じらすように耳たぶを甘噛みする…


提督「ぁぁ…っ、はぁっ、はぁぁ…んっ♪」

エウジェニオ「ふふ、イっちゃっていいのよ……ほら♪」

提督「ふあぁぁぁっ、あふっ、んぅっ……あっ、あぁぁ…っ♪」

エウジェニオ「……愛しているわ♪」

提督「あぁぁっ…はひっ、あぁぁぁ……っ♪」

………



提督「…すぅ、すぅ……」

エウジェニオ「ふふ、すっかり疲れて寝ちゃったわね…♪」

提督「…すぅ……むにゃ…ライモン……」

エウジェニオ「……ふふ、提督ったら…情事の後に違う女性(ひと)の名前を出すなんて……らしくないじゃない」

提督「…すぅ……」

エウジェニオ「…まったく、ライモンドってば提督からこんなに想ってもらえて…幸せ者ね……♪」すっかり衣服の乱れた提督を軽々と抱きあげると、提督の寝室へと運んでいった…

………

…翌日…

提督「…それで?」

ダ・ヴィンチ「いえ、まぁ…提督は出て行っちゃったし、わざわざ追いかけて言うほどのことでもないか……と」

提督「なるほど……つまり「副作用があるかもしれないのに説明をし忘れた」というわけね?」

ダ・ヴィンチ「…まぁ、短くいえば」

提督「それじゃあ改めて聞くけれど……あの薬の「副作用」っていうのはなぁに?」

ダ・ヴィンチ「あー…何というか、女性から女性への欲情が止まらなくなるの……言うなれば「桃色トランス」とでもいったところね…」

提督「なるほど」

ダ・ヴィンチ「あと飲んだ人は百合になるって効果はあるけれど…まぁ提督はすでに百合だから関係ないし……」

提督「……ダ・ヴィンチ」

ダ・ヴィンチ「な、なに…?」

提督「今後は軽々しくそういう薬を調合したりしないこと……それと、後でもうちょっともらえるかしら♪」

ダ・ヴィンチ「なんだぁ…ふふっ、もちろん「お任せあれ」よ♪」

………

…執務室…

提督「うーん…作戦計画はだいたい形になったし、後はいい名前が欲しいわね……夏の作戦の時はそこまで手が回らなかったけれど、さすがに「A025」だと素っ気なさすぎるし…」コーヒーカップを片手に思案顔の提督…


…管区司令部へ送り、作戦が終わると海軍のデータベースへ登録される作戦計画書には「20XX(西暦)-A025(季節「アウトゥーノ(秋)」の頭文字と、管区内で実施された作戦の通し番号)-TR6(鎮守府ナンバー)-25063(資料照会ナンバー)」と、検索システムですぐ調べられるよう一連のアルファベットと数字が振ってある……が、鎮守府の艦娘たちが身体を張って挑む作戦がただの文字列ではあまりにも味気ない…


デルフィーノ「確かに、何か気の利いた名前が欲しいですね」

提督「ね…カヴールもそう思うでしょう?」

カヴール「ええ」秘書艦を交代してからも、提督のところに来てはあれこれ手伝ってくれるカヴール…律儀なライモンの手早くかいがいしい手助けとは違って、じっくりと腰を据えて導き出される深慮遠謀や機略の数々は、イタリアを統一した名宰相の名にふさわしい……

提督「……それじゃあどんな作戦名にしようかしら」

カヴール「そうですね…やはりここは神話から命名するのがよいのではないかと思いますが」

提督「神話ねぇ……あ、それじゃあ「プレイアディ」は?」(※プレイアディ…イタリア語でプレアデス(すばる)の意)

カヴール「プレイアディ、ですか」

提督「ええ…今回の主役はディアナでしょう? それで、ディアナと関係のある神話を考えてみたら、プレイアディの話を思い出したの……輸送船団ともなれば深海側も目の色を変えて追いかけてくるでしょうし、躍起になった誰かに追いかけられるなんて、プレイアディとそっくりだな…って思ったのだけれど、どうかしら?」

デルフィーノ「…なるほど、言い得て妙ですね♪」

提督「いいと思う?」

カヴール「ええ、まさに今回の船団にぴったりの名前です……でしたら提督、敵の出現に備えるリットリオたちには「スコルピオーネ」と名付けたらいかがでしょう♪」(※スコルピオーネ…さそり座)

提督「…オリオーネが出てきたら一刺しするわけね?」(※オリオーネ…オリオン座)

カヴール「ええ…何しろディアナの怒りに触れたわけですから、ね♪」

提督「ふふっ、了解…それじゃあ輸送作戦そのものは「プレイアディ」で、敵の出現があったときの戦艦隊には「スコルピオーネ」としましょう♪」

カヴール「はい」

…オリオーネとプレイアディ、ディアナ(アルテミス)…


…オリオンは大地の女神ガイアが産んだ(あるいは海神ポセイドンとネプトゥーヌス(ネプチューン)の間に生まれた)猟の得意な美青年で、ディアナに仕える狩人となったが、女とみれば追いかけ回すようなだらしのない性格で、こともあろうにディアナ(狩人と月の女神であり、純潔な一面もあった)に欲情しこれを手籠めにしようとしたため、怒り狂ったディアナによって差し向けられた蠍によってかかとを刺されて死に、星座になった

また、オリオンを見事に刺し殺した蠍はその功績によって星座にしてもらった…そのため、いつもオリオン座(夏の星座)はさそり座(秋の星座)から逃げるように天界を巡っているのだという


…プレアデスは世界を支える巨神アトラスの娘とされる七人の乙女で、野原で母親と遊んでいたところを女好きのオリオンに見染められ、五年もの間追いかけ回されたあげく、とうとう白い鳩になって逃げ出した……そこでかわいそうに思ったゼウスがプレアデスを星座にしたが、星になってもまだオリオンが追いかけ回してくるので、プレアデスはオリオン座から逃げるような季節に空に上るのだという…

提督「……というわけで、作戦名は「プレイアディ」と言うことになったわ。どうかしら?」

ディアナ「なるほど、プレイアディとは良い名前ですね」目を細めて「ふふ…」と上品に笑ってみせた…

提督「そう、そう言ってもらえて良かったわ…それから支援の戦艦隊は「スコルピオーネ」よ」

ディアナ「もしもオリオーネのようにわたくしを追い回す敵艦が現れたら、後ろから一刺し…というわけでございますね」

提督「ええ」

ディアナ「ふふ、よろしいではありませんか…♪」


…作戦前日・食堂…

提督「では、いよいよ明日から秋期作戦「プレイアディ」を開始します…」

リベッチオ「待ってました!」リベッチオの軽口に一同がどっと吹き出した…

提督「こぉら、大事な任務説明なんだから茶化さないの…まったくもう」…苦笑いすると、ざわつきが静まるのを待ってから続けた

提督「すでにみんなも知っている通り、内容は夏の作戦と同じ「リビア輸送作戦」だけれど…今回は高速水上艦艇での輸送作戦なので激しい空襲が予想されます……全員、より一層の監視・警戒に努めるよう」

提督「…それから参加艦艇は以前伝達した通りですが、間接護衛部隊にグレイ提督の座乗する軽巡「エメラルド」と、ヴァイス提督が座乗する戦艦「ティルピッツ」が帯同します……ガリバルディ、お客様を怪我させないようにお願いね?」

ガリバルディ「ええ」

提督「結構…それからリビア沖のシルテ湾で哨戒を行う「デジエ」と「アクスム」は今夜の2200時、マルタ沖での哨戒と通信の中継を担当する「グリエルモ・マルコーニ」は2300時…同じくメッシーナ海峡担当の「アントニオ・シエスタ」は日付が変わった深夜の0300時頃にここを出撃し、それぞれ担当の海域で哨戒を行ってもらいます」

デジエ・アクスム「了解」

マルコーニ「了解」

シエスタ「はーい、一番眠い時間ですが感張ります…」

提督「貴女はいつもたっぷりお昼寝しているから大丈夫よ♪」

一同「くすくす…」

提督「それから「ディアナ」は物資の搭載があるため、この後すぐにタラント港に向けて出港します。また、護衛駆逐隊のうち「ソルダティ」級の「コラッツィエーレ」と「レジオナーリオ」を除く「マエストラーレ」級四隻はこれに随伴して護衛にあたること」

マエストラーレ「了解!」

提督「ディアナがタラントで物資を搭載したらトンボ返りを打つ形でここまで戻ってきてもらって、残りの護衛艦艇と会同。プレイアディ船団そのものとしては明日の0900時に出撃する形になります…何か質問は?」

ガリバルディ「提督、対潜哨戒機の援護はもらえるの?」

提督「それが、航空部の知り合いに頼んで回せないか聞いてみたのだけれど……マルタ島以南の制空権が確保できていない以上P-3Cの投入は厳しいし、今回はリビア側との折り合いもつかなくて、残念ながら手に入らなかったわ…そのぶん、うちの航空隊に頑張ってもらいましょう」

ガリバルディ「分かったわ」

提督「あと、他に質問は……ないようね」

提督「…それでは、全員無事に作戦を完了できるよう頑張りましょう!」

チェザーレ「…そしてカルタゴは滅びなければならぬ、と」(※ローマの政治家で弁舌家の「大カトー」が演説の際、必ずこれで締めくくった)

デュイリオ「まぁまぁ、ふふっ…♪」



グレイ提督「…なかなか見事なスピーチでしたわ」

提督「ありがとうございます、メアリ」

グレイ提督「カンピオーニ提督の艦隊運用をこの目で見られるとは…なかなか楽しみですわね」

提督「メアリに見られていると思うと、深海棲艦よりもその方が気にかかりますね…」

グレイ提督「ふふ……とかく作戦前は何かと思い悩む事があるでしょうが、貴女と艦娘たちはこれだけ訓練を積んできたのですから恐れることはありません…でしょう?」

提督「メアリ…」

グレイ提督「……それでは、わたくしも支度をしないといけませんので…失礼」

提督「…」いつもは皮肉っぽいグレイ提督から励まされ、すっかり驚いた提督…グレイ提督自身も少し気恥ずかしくなったのか、さらりと立ち去った…

………


…数分後・作戦室…

提督「全員、用意はいい?」


…時刻合わせのために腕時計のリューズに指をあて、作戦室の時計に目をやっている提督……辺りには作戦に参加する艦娘たちと、グレイ提督、ヴァイス提督が集まっている……提督のクロノグラフ(精密時計)はしっかりしたステンレス製で、グレイ提督はそれだけで財産になりそうな「パテック・フィリップ」の腕時計、ヴァイス提督はドイツ製らしい堅実なデザインのものを付けている…艦娘たちはそれぞれ好みのクロノグラフを付けているが、潜水艦組は大戦時のイタリア王国海軍に納入されて、当時その出来の良さから数々の特殊作戦で役だった「パネライ」の軍用ダイバーズウォッチか、頑丈で特殊部隊の隊員たちにも愛されている「G-ショック」が多い…


ディアナ「…よしなに」

提督「それじゃあ秒読み……トーレ…ドゥーエ…ウーノ、カウント!」

ライモン「はい、合わせました」

提督「よろしい…それじゃあディアナとマエストラーレたちはそのままタラントへ出港してちょうだい」

ディアナ「了解」

………



…2145時…

デジエ「それじゃあちょっと早いけれど……行ってきます、提督」

…船団に先駆けて出撃し、リビア・シルテ湾で哨戒にあたる予定の中型潜「アデュア」級の二人は、灰色に灰緑色の斑点迷彩が施された、ぴっちりしたウェットスーツ風の「艤装」を身につけ、その上から潜水艦乗りらしい黒いレザーコートを羽織り、頭には艦長帽をかぶっている…

アクスム「シルテ湾は私たちでばっちり哨戒しておきます…ね、デジエ♪」…ちゅっ♪

デジエ「ん…♪」戦中は二隻でよく英船団に襲いかかり、大戦果を挙げていた名コンビの「デジエ」と「アクスム」…艦娘としても二人は息ぴったりで、いつも「恋人つなぎ」で手をつないだり唇を重ねたりと、誰かが間に入る余地もないほどお熱い…

提督「ふふ、相変わらず二人は仲が良いわね……深海側の哨戒機には気をつけてね?」

デジエ「はい」

提督「それじゃあ波止場までお見送りするわ」

アクスム「グラツィエ、提督…♪」

…普段提督たちが過ごしている「鎮守府本棟」の西側とつながっている黄色っぽいレンガ造りのささやかな船渠と、そこから海に向かって伸びている波止場……提督と見送りの艦娘たちがそれぞれ帽子や手を振って「帽振れ」で見送るなか、月もさやかな夜のイオニア海にディーゼル主機の青い煙を残しつつ、アデュア級の二隻がゆっくりと出港していった…

デルフィーノ「…次は2300時のマルコーニさんですね」

提督「そうね」

………

…2300時・波止場…

マルコーニ「それでは「グリエルモ・マルコーニ」出撃します…!」艶のある黒い競泳水着スタイルの服にレザーコート、裏張り付きの艦内長靴を履いたマルコーニが司令塔の上から敬礼した…

提督「ええ、通信の中継は任せたわ」

マルコーニ「了解…!」迷彩を施した大柄な「グリエルモ・マルコーニ」が4ノットくらいの低速で波止場を出て行った…

提督「……さてと、後は明日の朝方まで待つことになるわけだけれど……その間にあれこれとやらないといけない事があるわね」

ガリバルディ「そうね」

提督「ええ…それとガリバルディ、貴女たちは0900時の出撃に間に合うように蒸気を上げておいて?」

ガリバルディ「了解、それなら2400時くらいから缶を温めておけば間に合うわ」

提督「お願いね」



…2400時・作戦室…

提督「みんな、お疲れ様」

セラ「こんばんは、提督……あの、お休みにならなくて大丈夫ですか?」

提督「ありがとう、セラ。だけど今は色々とやる事があるから」

セラ「それはそうですけれど…」

提督「ふふ、出撃したらマルタ島までたっぷり数時間はかかるもの…その間に仮眠でもさせてもらうわ」

セラ「あ、なら良かったです」

提督「ええ…お気遣いありがとう♪」小さなセラのほっぺたに軽く唇を当てた…

セラ「///」

提督「ふふっ、セラは可愛いわね……ところでムツィオ」

アッテンドーロ「なに?」

提督「空軍のAWACS(早期警戒管制機)から何か情報は?」

アッテンドーロ「今のところ何もなし…定期的にキレナイカ(リビア)上空に深海側の哨戒機らしいシルエットがあるけど、それだけね」

提督「了解…ドリア」

ドリア「はい、何でしょう?」

提督「最新の気象通報は?」

ドリア「はい。明日0600時から1200時の天候ですが、今の段階では「晴れ」、雲量は3から4、風力は2から3、波高1,5メートルから2メートル、気圧は1000「ヘクトパスカル」からさらに上昇する見通しとのこと」

提督「そう。さっきから雲が湧いてきて、てっきり悪天候になるのかとばかり思っていたけれど……それじゃあ、明日は「やがて晴れになる」っていうところね?」

ドリア「はい「きっとこのまま変わらない」かと♪」

提督「ふふっ、了解」

ドリア「また最新のものが届き次第連絡します」

提督「お願いね…それから、サントーレ」

サントーレ・サンタローサ「は、はい…!」

提督「イオニア海管区の他の鎮守府から深海側の動静について通報は?」

サンタローサ「いえ、ありません」

提督「了解。サイント・ボン…貴女の方には?」

アミラーリオ・ディ・サイント・ボン「本官の方にもありませんよ、提督…マルタ島も今夜は静かなようです」

提督「では、引き続きお願いね」

サイント・ボン「もちろんですとも」

提督「それじゃあ私は出撃組の様子を見てくるから、何かあったら館内放送か内線で呼び出してね…携帯でもかまわないわ」

ドリア「はい、承知しました♪」

…十数分前・軽巡「アブルッツィ」級の部屋…

ガリバルディ「そろそろ2400時ね…ちょっと着替えて缶に火を入れてくるわ」

アブルッツィ「私の分まで活躍してきてね、ガリバルディ?」

ガリバルディ「ええ、任せておきなさいな」


…ゆるいチュニックを脱ぐとおもむろに着替え始めたガリバルディ…革命家として「赤シャツ隊」を率いていたためか着るものは紅色が多く、今も真紅のブラとレースの縁取りがされたランジェリーを身につけている……軽巡とはいえ排水量が一万トン近くあり、前級「デュカ・ダオスタ」級よりも大柄で少し幅広になったアブルッツィ級の艦娘だけあって、運動選手のような平たく引き締まったお腹と形良くふくらんでいる乳房、張りのあるヒップと長く伸びた脚が、ライモンやアオスタのような軽巡勢の先輩たちよりも力強い印象をあたえる…


ガリバルディ「これでよし、と…着替えはすんだし、行ってくるわね」黒のストッキングと、イタリア海軍独特の白に近いライトグレイに濃い灰色の折れ線迷彩を施したブレザーとプリーツスカートに袖を通した…

アブルッツィ「気をつけて行ってらっしゃい」

ガリバルディ「もちろん…♪」口元に笑みを浮かべると頬に音高くキスをし、片手を振りながら出て行った…

…数分後・鎮守府の湾内…

ライモン「それにしても、ガリバルディさんと出撃するのは久しぶりですね」沖合に錨泊している艦まで、モーターランチに乗って移動するライモンたち…鎮守府のある三日月型の小さな湾には波もなく、夜風とランチの艇首から飛び散る飛沫はひんやりと冷たいが、まだ凍えるほどではない…

バンデ・ネーレ「そうだね」

ガリバルディ「でも私が旗艦って…なんだか悪いわね、ライモンド」

ライモン「…何がです?」

ガリバルディ「だって提督を乗せたかったでしょう?」

ライモン「えっ、いえ…そんな///」

バンデ・ネーレ「ふふ、ライモンドってば真っ赤になって…可愛いよ♪」

ガリバルディ「ね…これじゃあ提督が惚れ込むのも無理ないわ」

ライモン「そ、そのことは言いっこなしですよ…///」

ガリバルディ「ふふふっ…全くいつまでたっても初心なんだから♪」

アウグスト・リボティ「そこがまた可愛いんだよね」ランチの舵輪を操りながら、くすくす笑いをするリボティ…

ライモン「も、もう…みんなしてわたしをからかわないで下さい…!」

ガリバルディ「もう、悪かったってば…ほら、貴女の艦に着いたわよ?」

ライモン「むぅ……」腑に落ちない顔で舷側のタラップを上っていった…

…2400時・軽巡「ジュゼッペ・ガリバルディ」艦橋…

ガリバルディ「ガリバルディから各艦へ…機関、用意!」

ガリバルディ「……秒読み開始…3…2…1、点火!」


…十万馬力を誇る「ジュゼッペ・ガリバルディ」の缶室ではどろりとした重油が燃え始め、最初のぞき窓から見えていた不完全燃焼の黒い煙が次第に消えて、やがてめらめらと燃えさかり始めた…後は圧力鍋と同じ原理で高圧・過熱状態にした蒸気を作り、その力でタービンを回す…各艦ともに最初は煙突から煙を上げるが、それも次第に収まってほぼ無煙になる…


ガリバルディ「さて、あとは蒸気が上がるのを待つばかり…と」

ガリバルディ「…こっちはいいけど、お客さんの具合はどうかしら」向こうに見える「ティルピッツ」と「エメラルド」に視線を走らせた…

…戦艦「ティルピッツ」艦橋…

ティルピッツ「よし、無事に動いてくれた……これで点火に失敗したりしたら、提督と姉上に合わせる顔がない…」

…南イタリアで数ヶ月近く過ごしている割には、相変わらずバレンツ海の流氷のように真っ白な肌をしているティルピッツ……かつての大戦中は中盤からほとんど活躍の機会を与えられずノルウェーに留め置かれていただけに、いまだに機関を稼働させるだけでも身構えてしまう…

…軽巡「エメラルド」艦橋…

エメラルド「…あちらも無事に点火できたようですね」

…ずっと引きこもり状態で「孤独な女王」などと揶揄(やゆ)されたティルピッツとは対照的に、快速かつ使い勝手のいい軽巡として、船団護衛やポケット戦艦「アドミラル・グラーフ・シュペー」追撃戦で大西洋やインド洋を所狭しと駆け回った「E」級軽巡のエメラルド…白と淡い緑色を基調にした英海軍「地中海艦隊」仕様の迷彩に身を包み、慣れた様子で艦橋に立っている…


エメラルド「あとは作戦開始を待つばかり…せっかくですし紅茶でも淹れるとしましょう」

………

…0400時・執務室…

提督「うーん…」昼間に軽く眠っておいたとはいえ、どうしてもあくびが出てしまう提督…仕方がないので大浴場で熱めのシャワーを浴びてくると、黒い下着に前をはだけたブラウスだけという格好でコーヒーをすすっている……そのまま机の端に腰を下ろすとノートパソコンを立ち上げ、落ち着かなげに気象通報や各鎮守府から届く最新の敵情報を眺めている…


提督「…まだ早いけれど着替えることにしましょう。どうせこのままの格好でいても落ち着かないし……」

提督「そうと決まればまずはちょっとお化粧をしないと……んー、どれにしようかしら」化粧台の椅子に腰を下ろすと唇におとなしい色合いのルージュを引き、軽く白粉をはたく……それから少し悩んで、甘いバラと蜂蜜の香りがする香水を手首や首筋に吹きかけた…

提督「うん…いい香り。 さ、制服を出さないと…」


…十一月も終わりに近づき、すっかり衣替えも済んでいる鎮守府……それは提督も同様で、夏に着ていた白いダブルの上着とスラックス、タイトスカート、それから「艦娘たちが馴染みやすいよう」復活した旧王国海軍スタイルの白い詰襟はクリーニングから戻ってきて、今はクローゼットの奥にしまってある……代わりに提督が取り出した冬期の制服はダブルの上着とスラックス(あるいはタイトスカート)の組み合わせで、濃紺の布地に金ボタンや階級章、胸元に並んだ略綬がきらりと映える…


提督「よいしょ……と」イオニア海とはいえ晩秋の海風は寒かろうと、黒い厚手のタイツを履いてからスラックスに脚を通した…

提督「……これでどうかしら…」白ワイシャツに濃紺のネクタイを締めると、金モールと少将の袖章もまだ新しいずっしりとした上着を着込み、姿見の前で軽く姿勢を整えてみた…

提督「……ま、いいわ」

提督「あとは帽をかぶって…と」


…腰まで届きそうな長い髪を後ろでお団子に結い上げると、金の帽章と将官の金線が施された上部の白い濃紺の制帽を頭にのせた…近頃は艦娘を運用する「鎮守府」の司令や提督たちとして女性が増えたこともあって、女性士官も今までの「縁が丸い」帽ではなく「つば付き」の制帽をかぶってもいい事になり、提督もつば付きの方を選んでいた…


提督「…ん」

提督「さてと…あとは作戦室に行って状況の確認ね」…作戦にかかる数日分の着替えやこまごました物が入っている軍用バッグはガリバルディが先に艦へ運んでくれたので、提督としては手ぶらで乗艦できる……そして普段と同じように着替えをしたおかげか、そわそわした気分もいくらか落ち着いた…

………

…0500時・タラント港…

マエストラーレ「各艦、準備はいい?」

グレカーレ「うん」

リベッチオ「いいよっ♪」

シロッコ「…もちろん」

ディアナ「よしなに」

マエストラーレ「よろしい…係留索、離せ! 両舷機前進微速!」


…タラントの外港でリビア向けの物資をずっしりと積み込んだディアナと護衛の「マエストラーレ」級駆逐艦四隻が、まだ夜も明けないうちに係留索を離し、ゆっくりと岸壁を離れた……マエストラーレたちは岸壁に艦尾を向けた状態で姉妹横並びで停泊していたが、タラントをはじめだいたいのイタリアの港は直接外海と接しているので水深が深く、首尾線を海に向けた状態(縦向き)で停泊するようになっていて、そのためあまり曳船(タグボート)のお世話にならず手際よく出港することができる…


グレカーレ「了解、両舷前進微速」

リベッチオ「あ…お姉ちゃん! タラント港湾部から発光信号「無事な航海と作戦の成功を祈る」だって♪」

マエストラーレ「了解、それじゃあ「感謝する」…とでも打っておくわ」信号灯を取り出し、カタカタと返事を送った…

ディアナ「あら、また信号でございますね…「追伸…そちらの女たらしの提督に、たまには顔を出してくれるようお伝え下さい」だそうですわ」

マエストラーレ「あぁもう…うちの提督ときたら女性を見たら口説かないといけない病気にでもかかってるわけ?」

グレカーレ「くすくすっ…♪」

リベッチオ「あははっ、提督らしいね♪」

マエストラーレ「ちっともおかしくなんかないわよ、まったく…「その件については直接本人に伝達されたし」…以上!」

………



…0530時・食堂…

提督「おはようございます。グレイ提督、ヴァイス提督」

グレイ提督「…モーニン」

ヴァイス提督「グーテンモルゲン(おはようございます)、カンピオーニ提督」

…あと数時間で出撃するとは思えないほど落ち着き払った態度で紅茶を味わっているグレイ提督と、緊張のためかいつもよりさらに堅苦しい態度のヴァイス提督…

アッチアイーオ「提督、朝食の準備が出来ているわよ」

提督「ありがとう、いただくわ」

アッチアイーオ「それじゃあ持ってくるわね…それとナプキンを使ってちょうだい。制服に食べこぼしなんて付いていたらみっともないもの」

提督「ふふっ、お気遣いありがとう…♪」

アッチアイーオ「飲み物はコーヒーでいい?」

提督「ええ…砂糖はふたさじ、ミルクを多めにしてもらえる?」

アッチアイーオ「了解、すぐ持って行くわ」

提督「ええ……それにしても天気が良さそうで何よりですね」

グレイ提督「そうですわね」

ヴァイス提督「…それだけ敵機からの攻撃が激しくなる可能性はあると思いますが、波で船体が動揺することはありませんね……」そこまで言ってから、ビスマルクたちの方をちらっと見た…

ビスマルク「……どうしたティルピッツ、もっと食え…貴様はこれから出撃するのだからな、うんと食って力をつけろ」

ティルピッツ「…ヤ、ヤヴォール……しかし姉上、そんなには食べられません……」

ビスマルク「なんだ、仕方のないやつだな…私より貴様の身体の方が大きいのだから、もっと食えるはずだろうが」

(※ティルピッツ…ビスマルク級の二番艦として改修を加えたため船体が少し大きく、排水量も1000トンほど増加している)

ヴァイス提督「この前も言ったはずだぞ、ビスマルク…ティルピッツは貴様と違って大食らいではないのだから無理を言うな」

ビスマルク「そうは言ってもな…あまりに食が細いので姉としては心配なのだ……」

エリザベス「……エメラルド、紅茶をもう一杯いかが?」

エメラルド「はい、いただきます…」

エリザベス「さ、どうぞ……それにしてもわたくしがもう少し高速なら、提督のお供が出来たというのに…残念でございますわ」

エメラルド「大丈夫です、私がその分も駆け回ってきますから」

グレイ提督「そういうことです……エリザベス、あなたは英国海軍の戦艦らしく腰を据えて堂々としていればいいのですよ」

エリザベス「はい…このエリザベス、納得いたしました」

グレイ提督「よろしい」

提督「…ふぅ、美味しかったわ」

アッチアイーオ「ちゃんと食べたわね、提督?」

提督「ええ…ありがとう♪」

アッチアイーオ「…っ、作ったのはエリトレアなんだから、お礼は私じゃなくてエリトレアに言って……///」

提督「ええ…グラツィエ、エリトレア♪」

エリトレア「はいっ♪」

…0600時…

提督「…さてと、あとはガリバルディに乗艦すればいいだけ……と」

提督「むぅ…あれだけ忙しかったはずなのに、急にやることがなくなっちゃったわね……」

デルフィーノ「くすくすっ、出撃前にはよくあることですよぅ…♪」

提督「ふふっ…とはいえこのまま座っているのも落ち着かないし……どうしようかしら」

カヴール「……それでしたら、礼拝堂でお祈りなどなさってきたらいかがでしょう?」

提督「なるほど、いい考えね……それじゃあちょっと行ってくるわ♪」

…鎮守府・礼拝堂…

レジナルド・ジュリアーニ(大型潜リウッツィ級)「……あ、提督…」


…鎮守府本棟の東側に建っている礼拝堂は小ぶりながら、丁寧な仕上げのステンドグラスから差し込む神々しい朝の光と、静まりかえった空間のおかげで大きさ以上の荘厳さを感じる……提督が帽を脱いで入ろうとしたタイミングで、リウッツィ級の「レジナルド・ジュリアーニ」もやってきた…従軍神父の名が付いているジュリアーニは黒い僧服姿で、首には小さな金の十字架を下げている…


提督「あら、レジナルド…おはよう」

ジュリアーニ「おはようございます…提督も礼拝に?」

提督「ええ、まぁ」普段は特に教会へ行くこともなく、日曜礼拝もほぼすっぽかしている提督は、ときたまこの礼拝堂で祈るのがせいぜいだった…

ジュリアーニ「良い心がけです…特に出撃の前ですからね」

提督「ええ」

…礼拝堂の中には小ぶりなマリア像と、その左右に火薬庫の守護聖人である「サンタ・バーバラ(聖バルバラ)」と、船乗り(とナポリ)の守護聖人「サンタ・ルチア(聖ルチア)」の絵がかけてある…

ジュリアーニ「…」

提督「…」

………



…0700時・波止場…

提督「それじゃあ、留守は任せたわよ?」

アッチアイーオ「ええ、心配しないで」

デルフィーノ「はい♪」

カヴール「…お気をつけて、提督」

提督「ん…♪」それぞれの頬に軽く口づけすると、モーターランチに乗り込んだ…

…数分後…

ガリバルディ「改めて、ようこそ「ジュゼッペ・ガリバルディ」へ…旗艦として提督をお迎えできて嬉しいわ♪」

提督「ありがとう……蒸気の具合はどう?」

ガリバルディ「順調に上がっているわ」

提督「そう、よかった」

ガリバルディ「おかげさまでね。順調だから何も心配いらないわよ」

提督「了解」

ガリバルディ「ええ。後はディアナの到着を待つばかりよ…」

………

…0830時…

ガリバルディ「提督、来たわ。 左舷四〇、マストの先端が見えるわ」

提督「ガリバルディは目がいいわね…どこ?」

ガリバルディ「東の岬の先端と、丸っこいちぎれ雲とが直角に交わる辺りの水平線上に…どう?」

提督「んー……あぁ、見つけた♪」

ガリバルディ「ね、ディアナのマストに間違いないわ……あら、どうやらオリアーニも見つけたようね。信号旗を揚げてるわ…だけどね、もうこっちは見つけているのよ♪」了解信号を掲げながらも、少し自慢げなガリバルディ…

提督「それじゃあ出撃の用意を…準備はいい?」

ガリバルディ「もちろん」

…0900時…

提督「うん、時間通り……それじゃあ各艦に信号旗で「出港せよ」をお願い」

ガリバルディ「了解」

提督「それから事前の計画通り「コラッツィエーレ」「レジオナーリオ」は近接護衛戦隊の後方につけ」


…ガリバルディのマストに信号旗が掲げられると、ソルダティ級駆逐艦「コラッツィエーレ(装甲兵)」と「レジオナーリオ(ローマ軍団兵)」の二隻に「了解」の信号旗がはためいた……二隻は白波を蹴立ててぐっと加速すると、ディアナをひし形に取り囲んで近接護衛戦隊を形成するマエストラーレたちの斜め左右後方、おおよそ一浬の位置に付いた…


提督「ちょうどいい位置に付いたわね…それじゃあこちらも出撃しましょう。両舷前進半速!」

ガリバルディ「了解。両舷前進半速!」

…戦隊の全艦が了解信号旗を掲げるのを確認すると、ガリバルディの信号旗が下ろされた…

グレイ提督「……エメラルド、両舷前進半速」

エメラルド「了解、両舷前進半速」

ヴァイス提督「両舷前進半速!」

ティルピッツ「ヤヴォール、両舷前進半速!」

提督「……うん、エメラルドとティルピッツも無事に動き始めたわ」

ガリバルディ「そうね……しかしなんとも場違いよね、彼女」

提督「ティルピッツ?」

ガリバルディ「ええ、だってあの迷彩ときたら…白夜の北海だとか時化どきのバルト海ならさておき、ここじゃあ逆に目立って仕方ないわ」

提督「確かにね…」


…そう言って提督が視線を向けた先には、濃淡の灰色で幾何学的な折れ線迷彩が施された「ティルピッツ」の、四万トンを越す堂々とした姿がある……荒天下での航行に耐えるよう低くまとめられたシルエット、鋭くとがった艦首の「アトランティック・バウ」に重厚な艦橋……イタリア艦のしゃれたデザインとは全く違う、牙を剥いた狼のような鋭さは灰色の北大西洋や北海にこそふさわしく、晩秋の爽やかなイオニア海にはまるで似合わない…


ガリバルディ「ま、いいわ…そろそろ陣形を組みましょうか?」

提督「ええ、そうね」

ガリバルディ「了解、信号旗を揚げるわ」

オリアーニ「…戦隊旗艦から信号「各艦は所定の位置につけ」ね……了解、と」


…オリアーニたち四隻の駆逐艦が軽やかに動いてひし形の外周を作ると、その中に軽巡「ライモンド・モンテクッコリ」「ジュゼッペ・ガリバルディ」「ジョヴァンニ・デッレ・バンデ・ネーレ」がくさび形に展開し、お客様である「エメラルド」と「ティルピッツ」はそのくさび形で守られるようにして横陣を組む…


ガリバルディ「提督、陣形が整ったわ」

提督「了解…それじゃあ速力十五ノット、進路はこのまま」

ガリバルディ「了解」

………

…このところなかなか進められなくて済みません、ちょっと忙しかったもので……それはそうとクリスマスおめでとうございます♪


……この後もしばらくお堅い作戦の場面が続きます。数日おきくらいの間隔で思い出したように投下していきますので、時折のぞきに来てもらえれば(たぶん)進んでいるはずです……

…1000時…

ガリバルディ「提督、このあたりはこっちの勢力圏内だし…今のうちに少し寝てきたら?」

提督「うーん、そうは言ってもね……何か突発的に対応しないといけない事が起きるかもしれないし」

ガリバルディ「そうなったら熱いキッスで起こしてあげるわよ」

提督「ふふっ、もう…っ♪」

ガリバルディ「ふふふ……革命家の血って言うのはね、いつでも情熱的にたぎっているものなのよ」

提督「……ガリバルディ///」

ガリバルディ「…提督ってば、本当にいい女よね……♪」くいっ…とあごに指をあてがい、艦橋の壁面に押しつけた……

提督「///」頬を赤らめて恥ずかしげな表情を浮かべ、視線をデッキに落としてはいるが、案外まんざらでもなさそうな提督……次第にガリバルディの紅い唇が近寄り、熱っぽい吐息がかかってくる……

ライモン「左舷に機影!」

提督「…っ!」慌ててガリバルディから離れ、首から下げていた双眼鏡をひっつかむ提督…

ガリバルディ「……いいところだったのにとんだ邪魔が入ったわね…機種は!」

ライモン「機種…カントZ506水偵「アイローネ」です!」

ガリバルディ「予定にあったうちの航空隊ね……了解」

提督「……ふぅ、びっくりしたわ」

…提督は上面を「ヴェルデ・オリーヴァ・スクーロ(暗いオリーヴグリーン)」、下面を「グリージョ・アズーロ・キアーロ(明るいブルーグレイ)」に塗った大型のカント水偵を確認すると、ほっとしたように双眼鏡を下ろした…

ガリバルディ「……ライモンドもなかなかやるじゃない…♪」

提督「なにか言った?」

ガリバルディ「いえ、何も……何はともあれ味方機が来てくれたことだし、少し休んでいらっしゃいよ」

提督「ええ、そうするわ。それじゃあ何かあった場合はすぐ…なかったら1130時に起こしてもらえる?」

ガリバルディ「了解」

提督「……もうちょっとで「革命」は成功だったのに、惜しかったわね♪」

ガリバルディ「ふふん……ライモンドだって艦長室の中までは確認できないもの、そのときにお邪魔させてもらうわよ♪」

提督「見張りを怠らない程度にしてね?」

ガリバルディ「大丈夫よ、手際よく済ませるから」

提督「むぅ……せっかくなのだからじっくり味わって欲しいわね」

ガリバルディ「おっと、これは失礼したわね♪」

………

…1130時…

ガリバルディ「1130時よ、提督」

提督「ふわぁ……ありがとう、ガリバルディ」

ガリバルディ「どういたしまして…海況は相変わらず、風は十分前から北西の風、風力2に変わったわ」

提督「了解」

ガリバルディ「戦隊は異常なし、陣形もきっちり維持しているわ」

提督「よろしい」

ガリバルディ「…それから「アントニオ・シエスタ」から入電「…本艦は予定海域に到着、哨戒を開始する」だそうよ」

提督「了解…マルタ沖のマルコーニは?」

ガリバルディ「まだ電文は届いていないけれど、彼女もそろそろ哨戒地点に到着するはずよ」

提督「そうね」

ガリバルディ「それから何か軽い昼食を作るから、提督は艦橋で待っていて? …少し早いけれど、今のうちに食べておいたほうがいいわ」

提督「グラツィエ♪」

…1200時・鎮守府…

リットリオ「……それでは「プレイアディ」作戦支援のため、「スコルピオーネ」戦隊および旗艦リットリオ、出撃します!」

カヴール「気をつけて行ってらっしゃいね、リットリオ」

リットリオ「はいっ♪」

ザラ「…トレント、トリエステ……二人とも無理は禁物よ」

トレント「はい、気をつけます」

ポーラ「そうですよぉ~、二人は装甲が薄いんですからぁ」

トリエステ「ええ…」

フレッチア「……出撃したら辺りをよく警戒すること。特に敵機は太陽を背にして突っ込んでくるんだから、気をつけなきゃダメよ?」

フォルゴーレ「分かってるわ」

フレッチア「ならいいけど…四人とも、とにかく気をつけるのよ?」

フォルゴーレ「ええ、任せておいて♪」

………

…1230時…

提督「ふー…艦上とは思えないほど美味しい食事だったわ」

ガリバルディ「…ふふ♪」

提督「特にあのフェデリーニのペスカトーレ……とっても美味しかった♪」

ガリバルディ「気に入ってもらえてなによりだわ…コーヒーは?」

提督「ええ、いただくわ…」

…軽巡「エメラルド」艦橋…

エメラルド「提督、昼食をお持ちしました」

グレイ提督「ありがとう、エメラルド…さぁ、貴女も自分の分を召し上がりなさいな」

エメラルド「はい」海図台に食事の盆を置くエメラルド……

グレイ提督「よろしい……なるほど、今日のお昼はタンの冷肉にピクルス…それにエンドウ豆のポタージュですわね」

エメラルド「あまり複雑なものは作れませんから…」

グレイ提督「いいえ、構いませんよ」立ったまま海図台に載せてある食事に取りかかった…

エメラルド「……ココアはいかがでしょうか?」

グレイ提督「ええ、いただきましょう」

…戦艦「ティルピッツ」艦橋…

ティルピッツ「提督、昼食の準備が整いました…どうぞ」

ヴァイス提督「ダンケ、ティルピッツ」

ティルピッツ「いいえ、そんな…」

…皿の上にはパン数切れにバター、オイルサーディン、ハム数枚と味の強いチーズ…それから熟成が進み白っぽくなっているザワークラウトが盛り合わせにしてある……

ヴァイス提督「……ところでティルピッツ、貴様はもう済ませたのか?」

ティルピッツ「いえ、これから食べようかと…」

ヴァイス提督「なら私が食べ終わったら昼食を食べるように……命令だ」

ティルピッツ「ヤヴォール!」かちりとかかとをぶつけ、敬礼するティルピッツ…

………

…まずは今年一年このssを見てくださったり感想を下さった皆さま、遅筆でなかなか進まない作品にお付き合い下さりありがとうございました……来年が皆様にとって良いお年でありますようにお祈りしております


……ちなみに1はこれからお雑煮の準備に取りかかる予定なのですが、皆様の地元はどんなお雑煮ですか?

まずは遅ればせながら、明けましておめでとうございます

…皆さま本年もよろしくお願いいたします…また、今年はもっと投下のペースを上げていけるよう頑張りたいと思います…

…1500時・鎮守府…

フィウメ「そろそろ提督たちはメッシーナ海峡の辺りでしょうか……っと」

ザラ「ええ、それで計算は合うんじゃないかしら……それっ」

ポーラ「何もないといいですけれどねぇ~……せーのっ♪」

ゴリツィア「そうですね、トレントたちも上手くやってくれればいいですけど…えいっ!」

…さすがに海で泳ぐには水温が冷たくなってきてしまったので、運動と暇つぶしを兼ねて浜辺でビーチバレーにいそしむ留守番の艦娘たち…

ポーラ「そーれっ♪」バレーボールを「ぽぉ…んっ」と打ち上げると、思っていたよりも遠くに飛んでいってしまった……

ザラ「もう、ポーラってば……そんなはるかなかなたにレシーブしてどうするのよ?」

ポーラ「姉様、ごめんなさぁ~い…拾って来ますねぇ」

ザラ「ええ…」目をこらせば提督たちが見えるかのように、南西の方を向いて水平線をじっとながめた…

…1520時・メッシーナ海峡沖…

提督「うーん、そろそろレッジョ・ディ・カラブリアを過ぎるころね…」海図にディバイダーと定規をあてがい、航行距離を計算する提督……本土からシチリアへの玄関口「レッジョ・ディ・カラブリア」とメッシーナ海峡を横に、艦隊は陣形を組んで進んでいる…

ガリバルディ「ええ……回頭点もまもなくよ」

提督「そうね、信号旗の用意をお願い」

ガリバルディ「了解」

…しばらくして・鎮守府の作戦室…

トリチェリ「…間接護衛戦隊より入電「回頭点に到着、針路190度に転針」とのこと」

ローマ「ええ、分かりました……それとこちらからプレイアディ船団とスコルピオーネ戦隊に向けて「敵状に変化なし、引き続き無事の航海を願う」と」

トリチェリ「はい」

…同じ頃・シルテ湾の北50浬…

デジエ「…」

アクスム「…」


…革コートの襟を立て、双眼鏡で周囲の空を探っているデジエとアクスム…地中海は陸地に囲まれていて(深海側に基地があるかどうかはさておき)航空基地が近いため、おそろしく空襲が激しく気が抜けない……だからといってずっと潜航していると、それでなくても長くは持たない電動機用バッテリーの充電がカラになってしまい、いざというときに使えなくなってしまう……結局、周りで当直にあたっている当時の将兵の幻影たちと一緒に見張りに立ち、ずっしりと重い双眼鏡を目に当てている…


デジエ「…ふー、ふー……」一旦双眼鏡を下ろし、マグカップを両手で包むようにしてコーヒーをすする…潜水艦は乾舷が低いので海が穏やかな時でもしばしば波が甲板を洗い、しょっぱい飛沫が艦橋まではねてくる……

アクスム「……ほ…っ」まるで見計らったかのように、ほぼ同じタイミングでコーヒーをすすっているアクスム……

デジエ「……ふぅ」コーヒーマグを足下に置くと、また双眼鏡を取り上げた…

…一方・メッシーナ海峡…

アントニオ・シエスタ「ふわ…ぁ……こういい天気ですと、眠くなってしまいますね…」

…波もない凪の海をゆったり航行しながらちぎれ雲が穏やかに浮かんでいる空を眺め、ディーゼル主機の震動に身を任せているとむしょうに眠くなってくる……それでなくても深夜に出撃してから哨戒にあたっていたおかげで満足に熟睡出来ておらず、それもあってなおのこと眠気がつのってくる…

シエスタ「そろそろ提督たちはここの沖を通過したはずですね……」双眼鏡片手に濃く淹れた砂糖入りのコーヒーをすすり、甘苦い味を舌の上で転がす……

シエスタ「……ふぁぁ…作戦が終わって無事に帰投したら、うんとお昼寝をするとしましょう…」

………

…1800時・シチリア島沖…

マエストラーレ「ここまでは無事に来られたわね……でも油断しないように。ここからが大変なんだから」

シロッコ「確かに」

マエストラーレ「…ディアナ、あなたは平気?」

ディアナ「ええ。少し揺れますが、大丈夫ですよ」

マエストラーレ「ならいいけど……とりあえず鎮守府に無電を打っておきましょう」

…鎮守府・作戦室…

サウロ「……アオスタ、船団から通信です」

アオスタ「内容は?」

サウロ「はい「現在、座標AN256にあり。速度15ノット。北西の風、風力2。波高2から2.5メートル」とのことです」

アオスタ「了解…その座標だとそろそろシチリア島の影を抜ける所ね」

チェザーレ「となると少しばかり波も出てくるはずだ……駆逐艦は大変であろうな」

アオスタ「そうですね」

チェザーレ「うむ。ではチェザーレは秘書艦の二人に伝えるとしよう…」そういって内線電話の受話器を取り上げた…

…同じ頃・執務室…

アッチアイーオ「それじゃあ見回りに行ってくるから、留守番はお願いね」

デルフィーノ「はい、行ってらっしゃい」

アッチアイーオ「何かあったら呼び出しをかけるのよ?」

デルフィーノ「もう、分かってますってばぁ」

アッチアイーオ「頼んだわよ」

デルフィーノ「…もう、アッチアイーオったらガミガミとうるさいんですから……んしょ」そう言うと提督の椅子に腰かけてみた…

デルフィーノ「わぁ、座り心地のいい椅子です…提督はいつもこの椅子に座って執務をしているんですね♪」嬉しそうにペン立ての万年筆を触ってみたり、周囲を眺め回してみたりした…

デルフィーノ「……っと、いけないいけない。アッチアイーオが戻ってくるまでにこのファイルを片付けないと…」ぴょんと跳ねるように椅子から立ち上がる……と、執務机のふちが秘部をこすった…

デルフィーノ「ふあ…っ♪」

デルフィーノ「も、もうっ…///」変な声が出てしまい、少し恥ずかしくなるデルフィーノ……

デルフィーノ「……他に用がある訳でもないですし、少しだけ///」くちゅ…♪

デルフィーノ「あっ、ん…♪」くちゅっ、ちゅく…っ♪

デルフィーノ「ふわぁぁ、提督の甘い匂いがして……あふっ♪」

デルフィーノ「ん、あっ…ふあぁんっ♪」賢そうなくりくりとした瞳がとろんと焦点を失い、困ったように眉を寄せつつ机のふちに腰を擦り付ける……

デルフィーノ「ふあぁ……気持ちいいですよ…ぅ♪」

デルフィーノ「…はぁっ、はぁっ……んぅぅっ♪」くちゅり、くちゅくちゅっ…♪

デルフィーノ「……んぁぁ、んくぅぅ♪」

デルフィーノ「はひっ、んんぅ……あぁぁ…んっ♪」口を半開きにして甘い嬌声をあげ、下着の隙間からぬるりと花芯に指を滑り込ませる……

デルフィーノ「ふわぁぁ…♪」ちゅくちゅくっ…にちゅっ♪

デルフィーノ「あふぅ、んあぁ………執務室でするの……っ、気持ちいいです…ぅ♪」…左手を机について崩れ落ちそうな身体を支え、右手の人差し指と中指でくちゅくちゅと花芯をかき回す……と、不意に内線電話が「リリリン…ッ」と鳴った…

デルフィーノ「ふあぁぁん…っ♪」驚いてびくっと身体が跳ねた拍子に指を奥まで突き入れてしまったデルフィーノ…がくがくと膝が震え、太ももにとろりと蜜が垂れる…

デルフィーノ「はふぅ、はひぃ……こ、こちら執務室…///」

チェザーレ「こちら作戦室のチェザーレ。マエストラーレより入電…船団は間もなくシチリア島の沖を通過するそうだ」

デルフィーノ「り、了解です…ぅ///」

チェザーレ「うむ……作戦室、以上だ」

デルフィーノ「……ふわぁぁぁ♪」腰が抜け、机にしがみつくようにしてだらしない表情を浮かべている…

………

…1900時…

チェザーレ「それでは諸君、夕食をいただこうではないか」

ドリア「今夜は私が腕を振るいましたから、存分に召し上がって下さいね…特にイワシのパン粉焼きが美味しいですよ♪」

ムレーナ(中型潜フルット級「ウツボ」)「ふっ、それは楽しみだ……魚は好物だからな♪」

スクアーロ(中型潜スクアーロ級「サメ」)「んふふっ、全く……もっとも、柔らかくて汁気たっぷりの生き物なら何でも好きだけれ…ど♪」

セルペンテ(中型潜アルゴナウタ級「海蛇」)「ね…くすくすっ♪」

メドゥーサ(アルゴナウタ級)「……くふふ…っ♪」

フィザリア(アルゴナウタ級「カツオノエボシ」)「…そうですねぇ……ふふふ♪」

デルフィーノ「ひぃぃ……ここの面々は怖すぎですよ…ぅ」

スパリーデ(フルット級「鯛」)「うぅ…どうしてこんなテーブルになってしまったのでしょう……」

ナウティーロ(フルット級「オウムガイ」)「……ここは殻に閉じこもっているしかないようです…ね」

ムレーナ「…どうした、ナウティーロ。グラスが空だぞ?」

ナウティーロ「…」

ムレーナ「私が注いであげよう……いい作戦だったが、ウツボは固い殻でも噛み砕く……残念だったな♪」顔を近寄せると小声でささやき、ニタリと笑みを浮かべた…

ナウティーロ「…ひぃ」

…中央のテーブル…

カヴール「…それにしても、ここに提督がいらっしゃらないとおかしな気分です」

ローマ「私もリットリオ姉さんがいないとなんだか張り合いがなくって…」

ヴェネト「ええ、全くです」

チェザーレ「日頃から仲の良いそなたたちだ、さもあろう……ルチアもいくぶん寂しげだな」

ルチア「……クゥン」テーブルの下でぺったりと床に伏せている…

チェザーレ「よしよし…お前には骨があるからな、それをかじっているといい」

ルチア「ワフッ…♪」

チェザーレ「ふふ、現金な奴め…♪」

カヴール「……それにしても」

チェザーレ「うん?」

カヴール「相変わらずビスマルクはよく食べますね」

ビスマルク「…がつがつ……はぐっ……ん、呼んだか?」

カヴール「あぁ、いえ……こうしてみると育ち盛りの子供のようで微笑ましいですね♪」

エリザベス「…まぁ、ふふっ♪」

ビスマルク「…その言い方だとまるでお祖母さんだな……」

カヴール「……何かおっしゃいました?」

ビスマルク「あぁ、いや……カヴール候は何年生まれだ?」

カヴール「むぅ、女性に軽々しく年齢を聞くものではありませんよ……1915年です」

ビスマルク「…と、いうと……」

カヴール「ちょうどお国の「バイエルン」級戦艦と同い年、といったところですね。もっとも、海戦で相まみえたことはありませんでしたが」

ビスマルク「…ば、バイエルン級……」

エリザベス「ふふ、その点わたくしは幸運にもユトランド海戦に加わる栄誉に恵まれましたが…あれだけの大海戦はもう二度とないかと存じますわ」

ビスマルク「…」

チェザーレ「……分かっただろう。いくら身体が大きいからとて、あまり年上を侮るものではないぞ……小娘」

ビスマルク「…ヤヴォール」

………

…1930時・マルタ島の沖…

マエストラーレ「各艦、夜間護衛隊形に移行せよ……鎮守府じゃ今ごろ夕食の時間ね」昼間に比べてお互いを視認しにくいので、1200メートルほどに開いていた各艦の距離をおおよそ600メートルまで詰めさせる……

リベッチオ「だったら私たちもご飯にしよう?」

シロッコ「いい考えだ…夜は長いし、今のうちに詰め込んでおきたいね」

グレカーレ「賛成」

ディアナ「それはよい考えです」

マエストラーレ「分かった、わかったわよ……それじゃあ夕食にしましょう」


…あきれたように肩をすくめて両手を上に向けると、夕食の準備に取りかかったマエストラーレ……丸い胚芽入りパンをスライスしたところにオリーヴオイルを垂らし、サラミ、厚切りのチーズ、出撃前に作って瓶詰めにしてきたトマトペーストを載せ、ぐらぐらしているのを落とさないようマスタードを塗りつけるともう一枚を重ねる……口を開けてかぶりつくと、サラミの脂とオレガノの効いたトマトの味わい、チーズの濃厚な後味が絡んでとても美味しい…


マエストラーレ「…っと」駆逐艦は喫水が浅いだけによくローリングやピッチングを起こし、ひとかけらもこぼさずに食べ物を口に運ぶのはなかなか難しいが、そこは長女としての意地というものがある……膝を艦の揺れに合わせながら、悠々とサンドウィッチを頬張る…

マエストラーレ「……せっかくだし温かい飲み物も欲しいところよね」


…パンを食べ終えると、食堂から持ってきた保温容器からスープを注いだ…ふわっと立ちのぼる温かいいい匂いを吸い込み、それからマカロニが入ったキノコと牛肉の濃いスープをすする…


マエストラーレ「うーん……美味し…」

シロッコ「……こちらシロッコ、水中聴音機に感あり。方位、左舷四〇!」

マエストラーレ「けほっ! …こちらマエストラーレ、確かね?」

シロッコ「ああ、敵潜でほぼ間違いない!」

マエストラーレ「仕方ないわね…護衛戦隊旗艦より「レジオナーリオ」および「コラッツィエーレ」へ。船団はこのまま突っ走るから、対潜攻撃は任せたわよ!」

レジオナーリオ「承知した! ローマ軍団兵の誇りにかけて、アルビオンの蛮族に思い知らせてやろう!」

コラッツィエーレ「装甲兵の意地にかけて!」

マエストラーレ「勢い込んで返り討ちに遭わないでよ? …それから鎮守府および間接護衛戦隊に打電「座標AN261にて敵潜を探知、後衛グループに攻撃を任せ、船団は続航す…」と」

………

…数分後・間接護衛戦隊…

提督「ふぅ…おかげですっかり暖まったわ」コーヒーのマグカップを両手で包み込むようにして持ち、満足そうなため息をついた……と、無電室からせわしないモールス信号の音が響いてくる……数十秒もしないうちに通信紙を持って駆け上がってくる旧王国海軍の水兵や、それを受け取る士官たちの「幻影」が提督とガリバルディの左右を行き交った…

ガリバルディ「提督、こちらと鎮守府に宛てて「SBJK」より打電あり!」

提督「船団のコールサインね…内容は?」

ガリバルディ「今読むわ…「座標AN261にて敵潜を探知、後衛グループに攻撃を任せ、船団は続航す…マエストラーレ」だそうよ」

提督「了解……今まで見つからなかっただけでも大したものだと思うわ」

ガリバルディ「まぁね」

提督「それと座標を確認しましょう…「アンコーナ(A)」「ナポリ(N)」の261だったわね?」海図にディバイダーと定規を当て、鉛筆で印をつけた…

ガリバルディ「ええ」

提督「と言うことは、この辺りね……それと内容を英訳して「エメラルド」と「ティルピッツ」へ連絡。低出力でね」

ガリバルディ「了解」

…軽巡「エメラルド」司令官室…

グレイ提督「…1925時、本艦はシチリア島の南南西十五浬の地点に進出(proceed)せり……」伝統と格式を重んじる英海軍では、戦闘日誌に「行く(go)」や「前進(forward)」と言った安っぽい言葉は使わず、必ず「進出」と書く……金の万年筆でさらさらと走らせながら、古めかしい調子の文章を書いていくグレイ提督……

エメラルド「……失礼します、マイ・レディ」

グレイ提督「どうぞ?」

エメラルド「さきほど電文が入りました」

グレイ提督「ええ…それで?」

エメラルド「戦隊旗艦「ガリバルディ」からの翻訳文によると、船団が敵潜に発見されたそうです」

グレイ提督「なるほど……ご苦労様、下がってよろしい」

エメラルド「はい」

グレイ提督「…ふむ「船団より敵潜に発見さると入電…」と……どうやら舞台の幕開けですわね」

…2000時…

レジオナーリオ「敵潜、相対方位020度……距離約1000!」

コラッツィエーレ「こちらでも捉えた…こちらからは方位350、距離およそ900!」


…今でこそ優れた対潜能力をもつイタリア海軍だが「艦娘」たちは大戦当時の王国海軍が用いていた装備が反映されていて、測深兵器としては水中聴音機しか装備されていない…そしてアクティブ探知のアスディックやソーナーと違い、水中聴音機では敵潜のおおよその方位と距離に、かなり不正確な深度しかつかめない……そこで片方の艦は10ノット前後の低速で聴音を行い、もう片方の艦がその情報に従って攻撃にあたる…


レジオナーリオ「了解、では先にそちらが攻撃を」…艦橋を出て聴音室に入ると聴音機のヘッドフォンを片耳に当て、海流の音に交じってザワザワとざわめく敵潜のスクリュー音に耳を傾けた……

コラッツィエーレ「了解、攻撃に移る! 信管、深度50メートルに調定!」

レジオナーリオ「目標、方位そのまま…」

コラッツィエーレ「速度20ノットに増速、目標に接近する…爆雷投下、投下、投下!」

…敵潜に近づくと自分を巻き込まないよう一気に増速し、艦尾に設置された投下軌条からドラム缶型の爆雷を数発ほど転がり落とす……数秒すると白い水柱が噴き上がり、どーっと崩れ落ちる…

レジオーナリオ「こちらレジオナーリオ、しばらく聴音不能」

コラッツィエーレ「了解…一旦距離を取って、海中が静まったら再攻撃に移るわ!」

レジオナーリオ「了解」

…2015時…

レジオナーリオ「……敵潜を探知! 方位060、距離1100」

コラッツィエーレ「右に転舵して逃げ切るつもりらしいけど…そうはいかないから!」

レジオナーリオ「目標の推進音増大。全速で離脱を図る模様!」

コラッツィエーレ「そう思わせてこっちが真上まで来たら急減速して、爆雷を外させようって魂胆ね……見え透いてるわ」

レジオナーリオ「目標、針路変わらず…距離、600…400……接近」

コラッツィエーレ「爆雷投下!」爆雷が放り込まれると「ずぅーん…」と鈍い音がして、また間欠泉のような水柱が噴き上がる…

…2130時…

レジオナーリオ「……どうやら変温層か何かの下に入ったようだ…敵潜の推進音、はっきりせず」

コラッツィエーレ「了解…このあたりで変温層が生まれる海流となると、だいたい100メートルくらいに流れているはず……爆雷、深度をそれぞれ100メートル、150メートル、100メートルに調定!」海図に記されたおおよその海流を確認し、爆雷の信管を調定する…

レジオナーリオ「敵潜、方位045。距離…約1200」

コラッツィエーレ「そのままがっちり捉まえておいてちょうだいよ……両舷機全速、接近するわ!」

レジオナーリオ「敵潜、方位そのまま……距離、およそ600……200…接近!」

コラッツィエーレ「爆雷投下、投下!」

レジオナーリオ「聴音不能……っと、レジオナーリオよりコラッツィエーレ」

コラッツィエーレ「こちらコラッツィエーレ…どうしたの?」

レジオナーリオ「右舷二〇に油膜だ…距離、およそ300メートル」青い月明かりに照らされた海面に、一カ所だけぎらぎらした虹色がかった部分が見える…

コラッツィエーレ「ん、確かに油くさい臭いもするわね。撃沈したにしては少し油膜の量が少ないようだけれど…」

レジオナーリオ「もしかしたらタンクから少しだけ燃料を放出して、沈められたふりでやり過ごすつもりかもしれない…とはいえ、これだけ足止めしてやれば充分だろう……船団のこともあるし、こいつはこれで捨てていこう」

コラッツィエーレ「少し不満足だけれど仕方ないわね…了解」

レジオナーリオ「……さて、今から船団に追いつくには…25ノットで三時間といったところか」

コラッツィエーレ「高速のディアナが相手だと追いつくのも一苦労ね……それじゃあさっさと行きましょう」

レジオナーリオ「そうだな…それと無線を打とう「2130時…コラッツィエーレと協同し敵潜に爆雷攻撃を行い、少量の油膜を確認するも撃沈は確認できず……レジオナーリオ」と」

コラッツィエーレ「さ、それじゃあとっとと行きましょう」

………

…2200時・鎮守府…

アッチアイーオ「お疲れ様、みんな。食堂からコーヒーを持ってきたわよ」

セラ「ありがとうございます」

アヴォリオ(中型潜アッチアイーオ級「象牙」)「ありがとう」

アルジェント(アッチアイーオ級「銀」)「良いところで持ってきてくれたわね、アッチアイーオ」

アミラーリオ・ディ・サイント・ボン(大型潜「カーニ」級)「すまないね」

アッチアイーオ「いいのよ……それで、様子はどう?」平静を装ってはいるものの何だかんだと言って作戦室に顔を出し、そのつど船団と提督の指揮する間接護衛戦隊の様子を尋ねている…

アミラーリオ・サイント・ボン(大型潜「カーニ」級)「ええ…それが先ほど敵潜を撃退してから、あちらのものとおぼしき通信が急増していると空軍の空中警戒管制機から通報がありましたよ」

アッチアイーオ「船団が敵潜に見つかったならそうなるわよね…それ以外には?」

サイント・ボン「いや、今のところ他に動きは見られませんな」

アッチアイーオ「そう……ならいいわ」

サイント・ボン「うむ…提督も無事でおられるから、安心しなさい」イタリア王国海軍のきっての造船監であり、また「リッサ海戦」の惨敗で地に墜ちた王国海軍を復活させた名海相「サイント・ボン提督」の名をいただくだけあり、大人の余裕を持っている…

アッチアイーオ「べ、別に提督の事を聞きに来た訳じゃないわよ…///」

サイント・ボン「もちろん、分かっていますとも♪」

…2400時…

チェザーレ「…当直交替の時間だ……海相、ご苦労だったな」

サイント・ボン「いえいえ…後は頼みます」そう言うと気象課から連絡された気象通報やレーダー画面に写った輝点の情報などを引き継いだ…

ネレイーデ(中型潜シレーナ級)「エリトレアが夜食を作ってくれましたから、食堂で召し上がって下さい」

ガラテア(シレーナ級)「お疲れ様でしたね」

…それぞれギリシャ神話から名を取った海の精「ネレイーデ」の軽やかな身のこなしと、自分が彫り上げた彫像に恋をした「ピグマリオン伝説」の由来となった美しき大理石像「ガラテア」の息をのむような美しさは、深夜にも関わらず昼間と同じでまったく衰えていない…

アルジェント「それはありがたいですね……では、お先に失礼」

アヴォリオ「お休みなさい」

デルフィーノ「お休みなさいです♪」にっこり笑うと軽く手を振った

チェザーレ「…ではよろしく頼むぞ、諸君」

ネレイーデ「はい」

ガラテア「ええ」

チェザーレ「さて、と…どうやら深海連中の通信が賑やかになっているようだな」

デルフィーノ「……深海側は潜水艦を集結させるつもりなんでしょうか?」

チェザーレ「おそらくな……空が完全に明るくなるのが0750時頃であることを考えると、それまでは潜水艦で触接を保ちつつ雷撃の機会をうかがう…と言うのが定石であろう…」

…同じ頃・マルタ島の南南東十浬…

提督「…おはよう、ガリバルディ」

ガリバルディ「おはようには早過ぎるわ…少しは眠れた?」

提督「いえ、あんまり…」

ガリバルディ「ふふ……そうだと思ったわ」

提督「ええ…緊張しているせいかしら。どうにも寝付けなくて……」

ガリバルディ「無理もないわ……ま、トリポリに着いたらゆっくり寝る事ね」

提督「ええ、そうするわ…」

………


…0600時…

ガリバルディ「提督、船団を確認したわ」

提督「ええ、私も……それじゃあこのまま合流してもらえる?」

ガリバルディ「了解」

…すでに船団が発見された以上、もはや深海側の迎撃を受けることは間違いない…そうなると直衛の駆逐艦六隻では荷が重く、また、間接護衛戦隊が船団から離れておく必要もなくなるので、提督は戦隊をディアナたちに合流させた…

ガリバルディ「提督に宛てて「マエストラーレ」から信号…「戦隊の来着を歓迎。護衛は本隊のみでも充分なれど、共に航行できて嬉しい」とのこと」

提督「ふふっ、マエストラーレったら私たちの前で活躍できるのが嬉しいのね…♪」

ガリバルディ「かもね♪ それと、そろそろ夜間隊形から昼間隊形に変更するわ」

提督「そうね……辺りもほの明るくなってきたし、いいんじゃないかしら」

ガリバルディ「了解」


…次第に白々と明けてくる空を警戒して輪形陣に近い形を取る戦隊……外周には駆逐艦たちが遊弋し、内側に軽巡がくさび形を構成する……本来なら戦隊旗艦が押さえるべき「くさび」の頂点は旗艦ガリバルディではなく提督の信頼もあついライモンが占位し、かわりに対空能力に優れたガリバルディは北アフリカ沿岸から出撃して来るであろう深海側の敵機に備えて左舷側(南側)に位置し、バンデ・ネーレが右舷側を固める。そしてその三隻が構成する三角形で守られるようにして、ティルピッツとエメラルドが横陣を組み、さらにその二隻に挟まれるようにして、貴重な物資をいっぱいに積み込んだディアナがなめらかに航行している…


ガリバルディ「それにしても、戦隊旗艦がこの位置って言うのはね…なんだかライモンドに悪い気がして仕方ないわ」

提督「ええ……でも、貴女の方が対空能力に優れているから」

ガリバルディ「ま、赤の私が左で黒のバンデ・ネーレが右…ちょうど良いわよね」


…左派の革命家ガリバルディと、貴族の家系に生まれたが親を亡くしてローマ教皇に育てられ、傭兵隊長となった後に教皇が亡くなると、それを悼んで部隊を黒備えにしたという中世の人物「ジョヴァンニ・デッレ・バンデ・ネーレ(黒備えのジョヴァンニ)」…と、対照的な二人が左右に展開している…


提督「まさに「赤と黒」って言うわけね……別にそう思って決めたわけじゃないけど」

ガリバルディ「ふふ、てっきりそれが言いたいからこの布陣にしたのかと思っていたわ…♪」

提督「まさか…それはそうと、もうじきトラーパニからうちの航空隊が発進する頃ね」

ガリバルディ「それはありがたいわね……誤爆がなければもっとありがたいわ」艦首の甲板に描かれた紅白の防空識別帯を見てぼやいた…

提督「そんなことを言ったらアヴィエーレが怒るわよ…「うちの航空隊は敵味方の識別も出来ないような低い練度じゃないよ」って」

ガリバルディ「間違いないわね…今の話はアヴィエーレには内緒よ」

提督「ふふっ、了解…♪」

…0635時…

ガリバルディ「……それにしても、昨夜は夜っぴて敵さんの通信が賑やかだったわね」

提督「ディアナたちが発見されたから仕方ないわね」

ガリバルディ「はたして連中は何を繰り出して来るやら…まぁ何が出てこようと迎え撃ってやるつもりだけど、さすがに戦艦ともなるとちょっと荷が重いわ」

提督「そうねぇ…船団が見つかったのが昨夜の1900時ごろだったから、そこから出撃準備を整えて、缶の蒸気を上げて、それから最大戦速でこっちに向かったとして……深海側の「基地」がどこにあるかにもよるけれど、あちらの戦艦がこの船団を迎撃するのはちょっと難しいはずよ」

ガリバルディ「ならいいけど」

提督「それにシルテ湾にはデジエとアクスムがいるから、敵艦を発見したら無電を打ってくれるわ…場合によっては雷撃もね♪」

ガリバルディ「あの二人は大したものだものね」

提督「ええ」

………

…0710時…

提督「日が昇ってきたわね…」

…海と空をサフラン色に染めながら太陽が昇り、水平線上に広がる雲間から射す陽光が光の筋となって波に照り映える…

ガリバルディ「……綺麗だけど嫌な時間帯ね」そう言って双眼鏡を構え、太陽を背にして接近してくる敵機がいないか見張っている…

提督「ええ、いつも以上に警戒する必要があるわね」

ガリバルディ「そういうこと……で、うちの戦闘機はまだ来ないの?」

提督「そうね…トラーパニから出撃したのが0600前後だから、予定到着時刻は0730時ごろね」

ガリバルディ「それならあと数十分もないわね…」

提督「ええ」

ガリバルディ「ならその援護機が来たらシャワーでも浴びてくるといいわ」

提督「…もしかして汗臭いかしら?」

ガリバルディ「別にそういうわけじゃないけど……朝から浴びるシャワーなんていいものじゃない。それに、せっかく艦長浴室が使えるんだし」

提督「それもそうね。それじゃあもう少し日が高くなって、奇襲の危険が少なくなったら浴びさせてもらうわ」

ガリバルディ「ええ……」と、双眼鏡の倍率を上げて目をこらす…

提督「ガリバルディ?」

ガリバルディ「左舷に飛行機!」

提督「…っ、機種は!」

ガリバルディ「機種「サンダーランド」…敵機!」

提督「戦闘配置! 対空戦用意!」

ガリバルディ「了解!」…言うが早いがマストに信号旗を上げて合図の信号弾を打ち上げ、警報ベルのボタンを押し込むと艦内に甲高い音が鳴り響いた……

…一方・軽巡「エメラルド」艦橋…

エメラルド「紅茶のお代わりはいかがですか、提督?」

グレイ提督「ええ、頂きます…」白地に青で錨とロープが描かれた士官食堂用のティーカップに二杯目のダージリンを注いでもらい、朝焼けを眺めつつ優雅に口元に運ぶ…

エメラルド「……機影を視認、左舷約2ポイント!」(※ポイント(点。記号pt)…360度を32等分にしたもの。1ポイントは11,25度)

グレイ提督「種別は?」…グレイ提督にしては珍しく、少し慌てたように「かちゃり」と音立ててティーカップを海図台に置き、首から提げていた「バー・アンド・ストラウド」の双眼鏡を取り上げた…

エメラルド「機種、ショート「サンダーランド」大型飛行艇!」

グレイ提督「総員戦闘配置、対空戦に備えよ! ……確かに深海側のサンダーランドですわね。いつもだったら味方側の機種ですけれど…」

エメラルド「あの「フライング・ポーキュパイン」を撃墜するのはなかなか難儀ですね、マイ・レディ」

(※フライング・ポーキュパイン(flying porcupine)…「空飛ぶヤマアラシ」の意。頑丈で防御機銃の数も多かったサンダーランドに対して付けられた愛称)

グレイ提督「そうは言っても仕方ないでしょう……あちらとしては遠巻きにしてわたくしたちの位置を通報するつもりでしょうから、出来うることならば撃墜しなければなりません」

…軽巡「ガリバルディ」艦橋…

ガリバルディ「対空戦、準備完了!」

提督「了解」

…メインマストに掲げられた戦闘旗の鮮やかな緑・白・赤のトリコローリ(三色旗)が淡灰色の船体に映える……すでに152ミリ主砲の砲口栓は外され、100ミリ連装高角砲と37ミリブレダ連装機銃、13ミリ連装機銃から換装した20ミリ連装機銃にも影のような兵員たちが付いている…

提督「ガリバルディ、敵機の距離は?」

ガリバルディ「敵機、左舷およそ二〇、距離約10000メートル、高度2000……雲に隠れて接近したみたいね」

提督「ええ」

ガリバルディ「…まったく、空軍の警戒管制機(AWACS)は何をやってるのよ!」

提督「今さら言っても仕方ないわ…鎮守府に緊急電「YRYR…我、敵哨戒機に発見さる」と送って。もちろんうちの航空隊にも「至急支援されたし」とね」

ガリバルディ「了解!」

…同時刻・鎮守府…

ロレンツォ・マルチェロ(大型潜マルチェロ級)「こちらタラント第六、了解。情報に感謝する……アンジェロ、最新の気象通報が入ったぞ」

アンジェロ・エモ(マルチェロ級)「了解、お願いします」

マルチェロ「風は北西、風力3から4で、波は2から3メートル。雲量は4から5。気圧1018ヘクトパスカルでしばらく安定の模様」

エモ「はい」

エンリコ・ダンドロ(マルチェロ級)「ふー…貴官らはやることがあっていいな。本官は暇で仕方がない……」通信機のヘッドセットを耳に当てて机に肘をつき、パラパラと文庫本をめくっている……と、扉を開けてチェザーレが入ってきた…

チェザーレ「…おはよう、提督の諸君」いずれも中世ヴェネツィアの提督名から来ているマルチェロたちに向かって、軽く冗談めかした…

マルチェロ「おや、チェザーレ…今は貴官の当直ではないはずだが」

チェザーレ「なに、少し状況が気になったものだからな……異常はないか?」


…恋の駆け引きと戦争に関してはやたら勘が働くチェザーレ……何か気になる様子で立ったまま壁面のディスプレイに写っている地中海の沿岸図と、そこに反映されているレーダー範囲の円周や敵味方を示すコンタクトの輝点をじっと眺めている…


マルチェロ「今のところは特にないな。せいぜい最新の気象通報が届いたくらいで…」

エンリコ・ダンドロ(大型潜マルチェロ級)「……っ、船団より符号「YRYR」の緊急電!」

チェザーレ「…内容は?」すっと目を細めて背筋を伸ばし、無意識に軍団を率いるような堂々とした口調になる…

ダンドロ「いま読む…「プレイアディ船団旗艦「ガリバルディ」より鎮守府…我が船団は敵哨戒機に発見さる。位置AN335。現在対空戦を実施しつつあり」とのことだ!」

チェザーレ「何だと?」

…鎮守府のフェイズドアレイレーダーはさすがにそこまでの距離になるとカバーしきれず、マルタ島よりも南はパンテレリーア島にある海軍レーダー基地と、空軍のAWACS(警戒管制機)がそれぞれコンタクトを発見しだい連絡してくれる手はずになっていた…

マルチェロ「…まったく、これだから空軍の連中は……タラント第六よりピアット(皿)1へ、応答願う!」

AWACS「こちらピアット1、タラント第六どうぞ!」

マルチェロ「こちらタラント第六、ただいま本鎮守府の護送船団から敵哨戒機に発見されたとの報あり。そちらでは機影を確認していないのか、どうぞ?」

AWACS「こちらピアット1、現在こちらではコンタクトを確認できず……深海側の機影はエコー(反射)が小さいのでゴーストとして処理されやすく、そのためかと思われる…どうぞ」

マルチェロ「こちらタラント第六、了解した。通信終わり……あのろくでなしめ」

ダンドロ「空軍ときたらいつもああだ……今度会ったらビルジ(船底)に溜まった水で水割りをごちそうしてやる」

マルチェロ「全くだ…あとは提督が上手くやってくるのを祈るしかないな……」

…一方「ガリバルディ」艦橋…

ガリバルディ「左舷高角砲、発射用意よし!」

提督「よろしい。各艦は目標を照準次第、随意に発砲!」軍帽を脱いでヘルメットをかぶっている提督…

ガリバルディ「了解……左舷高角砲1番2番、フオーコ(撃て)!」

…ガリバルディに装備されている片舷二基の100ミリ連装高角砲が仰角を取ると「ド、ドンッ…!」と鈍い音を立てて、サンダーランド飛行艇に向け砲弾を放った…主砲の口径が120ミリとガリバルディたちの高角砲とさして変わらない駆逐艦はさておき、軽巡やティルピッツは対艦戦に備えて主砲弾を使うのを控えている…

ガリバルディ「仰角2度上げ、射距離400上げ…撃てっ!」悠々と飛んでいるように見えるサンダーランドの周囲には炸裂する高角砲の煙がパッパッと雲を作り、時折黒い煙の中に包まれたように見える…

提督「…」発砲するたび無意識に身体が小さくびくっと跳ねるが、それにも気づかず双眼鏡でサンダーランドの姿を追っている…

ガリバルディ「ちっ…提督、さっきから敵機の無電を確認してるわ!」

提督「ええ、そうでしょうね!」…と、気まぐれな一発が敵機のそばで炸裂したように見えた……

ガリバルディ「…命中!」

…いくら大柄で丈夫なサンダーランドといえども、高角砲の至近弾を浴びてはたまらない……後ろに煙の帯を引きながら、水平線上に固まっている雲の中に逃げ込んでいった…

提督「撃ち方止め! 各艦は砲弾の消費を報告し、引き続き警戒せよ……なかなかの射撃だったわよ、ガリバルディ」

………


…0815時・鎮守府…

マルチェロ「……む、出たな……タラント第六よりピアット1」友軍のレーダー情報を反映した大型ディスプレイに、いくつかの輝点が現れた…

AWACS「こちらピアット。タラント第六どうぞ?」

マルチェロ「こちらタラント第六。ピアット1へ…座標AN372のコンタクト、識別を」

AWACS「こちらピアット、座標AN372のコンタクト。方位145、速度およそ150ノット、高度約6000フィート……敵爆撃機と思われます」

マルチェロ「タラント第六了解。機種は識別出来るか…どうぞ?」

AWACS「こちらピアット、機種はおそらく「ブリストル・ブレニム」…機数はおそらく十数機程度です、どうぞ」

マルチェロ「了解、引き続き監視を頼む。交信終わり……エンリコ、船団に宛てて緊急電「敵爆撃機複数、方位145より速度約150ノットで接近中。機種はおそらくブレニム」とな!」

ダンドロ「了解!」

チェザーレ「…となると会敵までおよそ30分もないな」

マルチェロ「とはいえ現状ではうちの航空隊が上空に付いている……もてなしの準備は出来ておりますよ」

チェザーレ「うむ…」

…0845時…

提督「ガリバルディ、どう?」

ガリバルディ「いいえ…全く、こう言うときはぽんこつでもいいから対空レーダーが欲しくなるわ」

提督「そうね……ティルピッツの「ゼータクト」レーダーも対艦用だから空中目標ではあまり役に立たないし、せいぜい目を凝らしているしかないわね」

ガリバルディ「まぁ、アヴィエーレ自慢の戦闘機隊が上にいるだけマシってところね」

提督「ええ…」と、ライモンの艦橋からシュルシュルと信号弾が打ち上げられ、数枚の信号旗がマストに掲揚された…同時に近距離用の無線機から声が入る…

ライモン「こちらライモンド、左舷四〇に機影!」

ガリバルディ「時間通りに来たわね」

提督「対空戦用意! ライモン、機種は!」

ライモン「機種…ブレニムです!」

提督「了解、各艦は27ノットへ増速!」

ガリバルディ「護衛戦隊旗艦より各艦へ、何としてもディアナを守りきれ!」


…提督の足元でぐぐっと「ガリバルディ」の甲板が押し込まれたような感じがして、視界には各艦の艦首が「ざぁっ…」と白い波を切り裂く光景が広がる……同時に上空を遊弋していたマッキC202「フォルゴーレ」の編隊がエンジン音を響かせて敵機に向かう…


提督「上空の援護機が交戦に入るわ…各艦は友軍機を巻き込まないよう、距離1万メートルを目安に射撃開始」

ガリバルディ「提督、主砲の射撃は?」

提督「許可します」

ガリバルディ「了解、そう言うのを待ってたわ!」

…その間にも鎮守府のC202がブレニムの密集編隊に向かってダイブしていく…大戦当初にはなかなか優速で上部旋回銃座も備えている双発軽爆のブレニムではあるが、C202「フォルゴーレ」が相手ではどうにもならない……提督の双眼鏡には煙の尾を引いて撃墜される数機のブレニムが見えた…

ガリバルディ「敵機、距離2万を割ったわ」

提督「ええ…」

ガリバルディ「距離18000…」

提督「目標、先頭グループのブレニム」

ガリバルディ「14000…」

提督「友軍機が離れたわ……射撃用意」

ガリバルディ「用意よし」

提督「まだよ…まだよ……トーレ、ドゥーエ、ウーノ…撃ち方始め!」

ガリバルディ「前部主砲1番2番、撃てっ!」

ライモン「全主砲および高角砲、撃ち方始め!」152ミリ主砲が仰角を取ると「バウッ!」と吼えた…砲口からは分厚い黒煙が噴き出し、上空には炸裂した砲弾が黒雲を作る…

グレカーレ「ライモンドが撃った……よし、前部主砲!撃て!」

バンデ・ネーレ「……目標に照準…各砲、撃ち方始め!」

ガリバルディ「距離400上げ! 左舷高角砲、次弾装填急げ…ラピド(早く)!ラピド!ラピド!」

提督「目標、先頭のブレニム!」

ガリバルディ「了解、撃て!」

提督「敵機、爆撃コースに入るわ!」

ガリバルディ「ええ……今度は高い、200下げ! 撃て!」

提督「ガリバルディ、各艦に向けて「左舷一斉回頭用意」の信号旗を!」

ガリバルディ「了解! …左舷高角砲、撃て!」ド、ドン…ッ!

マエストラーレ「主砲、撃て!」パウッ!

ガリバルディ「敵機、距離7000!」

提督「高度はおおよそ3000メートル……このまま水平爆撃するつもりね…」

ガリバルディ「距離6000!」

リベッチオ「撃て、撃て、撃てっ!」

ガリバルディ「距離5000……敵機、針路を定針!」

提督「信号旗「各艦左舷一斉回頭!」を揚げ!」

ガリバルディ「…各艦より了解旗……降りたわ!」

提督「信号旗降ろせ! 取り舵一杯!」

ガリバルディ「取り舵、いっぱぁぁーい!」

提督「37ミリ高角機銃、撃ち方始め!」

ガリバルディ「了解、撃てっ!」

…甲板上の連装ブレダ37ミリ機銃が「バン、バン、バンッ!」と吼えたてて、6発入りの保弾板が次々と撃ち尽くされる…

コラッツィエーレ「敵機、爆弾を投下!」

ガリバルディ「そう来るだろうと思ったわ!」

提督「ええ……でも、そろそろ舵が効き始める頃よ!」


…提督がそういう間にも船体がぐーっと傾斜し、戦隊は後ろに美しい航跡を残して統制の取れた回頭をみせる……と、右舷側のたっぷり500メートルは離れた辺りに爆弾の水柱が林立した…


提督「…被害なし、ね」

ガリバルディ「ええ、それじゃあこっちの番よ…!」

シロッコ「37ミリ機銃、てーっ!」

レジオナーリオ「撃て、撃て、撃てっ!」

バンデ・ネーレ「……命中っ、敵機撃墜!」

提督「…そろそろ有効射程を出るわね……撃ち方止め!」

ガリバルディ「ふぅ、とりあえず二機はやったわ…なかなかいい滑り出しね」

提督「ええ…各艦は針路を元に戻し、弾薬の消費を報告、次の空襲に備えよ……すごく喉が渇いたわ」

ガリバルディ「そうね、それじゃあコーヒーでも淹れるとしましょう」

提督「ええ、今ならポット一杯分でも飲めそう…♪」そう言ってヘルメットを外し、汗ばんだ額を拭った…

………

…0915時…

ガリバルディ「提督、鎮守府から入電」

提督「内容は?」

ガリバルディ「AWACSからの連絡で「そちらに向け複数の機影が接近中。方位170、速度約150ノット、高度6000フィート…敵の爆撃隊と推定される。予想会敵時刻は0940時」だそうよ」

提督「第二波の攻撃隊ね…方位170ということは、相対方位で言うと……南南東から接近してくる形になるわ」

ガリバルディ「太陽を背にしての進入…典型的な攻撃パターンね」

提督「ええ……それにしてもタイミングが悪いわ。うちのC202は燃料切れで引き上げたばかりだし、次の援護機が来るまではしばらくかかるわ」

ガリバルディ「構わないわ、私たちで叩き落とせばいいじゃない」

提督「頼もしいわね。でも、私たちがこうやって空襲で足止めされている間にもあちらは艦隊を急行させているはずだから……」

ガリバルディ「…あんまり遊んでいるわけにはいかないってことね」

提督「ええ……各艦に情報を伝達、対空警戒を怠らないように」

ガリバルディ「了解」

…0935時…

ディアナ「…敵襲! 上空に敵機!」

提督「機種は!」

ライモン「左舷二〇! 機種、ブレニム!」

ガリバルディ「見えた、距離21000!」

提督「各艦へ。有効射程に入りしだい自由射撃!」

ガリバルディ「…了解、射撃開始!」バウッ…!

バンデ・ネーレ「…天にまします我らが主よ……フィレンツェのジョヴァンニ・ディ・メディチ、参る!」バウ…ッ!

ガリバルディ「左舷高角砲、撃てっ!」ド、ドン…ッ!

提督「敵機、爆撃コースに入ったわ…全艦一斉回頭、面舵一杯!」

ガリバルディ「了解、面舵いっぱぁい!」

…第二波のブレニムは直前で数機ずつに分かれて時間差攻撃をかけてきた……周囲に黒ずんだ水柱が噴き上がり、耳を聾する砲声に交じって37ミリと20ミリブレダ機銃の断続的な「バン、バン、バンッ!」という銃声が響く…

提督「ガリバルディ! 航過した敵機はもういいから、爆撃コースに入るブレニムを!」

ガリバルディ「分かってるわ! 3番4番主砲、撃て!」

…一方・軽巡「エメラルド」艦橋…

グレイ提督「どうにも腑に落ちませんわね…」

エメラルド「ポンポン砲、射撃を継続……何がでしょう?」

グレイ提督「この散発的な空襲が、ですわ…」

エメラルド「…本腰には見えないと言うことですか?」

グレイ提督「ええ…」と、急に水平線に目を凝らした…

エメラルド「……提督?」

グレイ提督「左舷真横に機影、距離およそ2マイル!」まるで海面をかすめるように接近してくる複葉機のシルエットがぽつぽつと見える…

エメラルド「雷撃機ですか」

グレイ提督「ええ。おおかたこんなことだろうと思いましたわ……エメラルド、戦隊旗艦に向け信号!」

…軽巡「ガリバルディ」艦橋…

提督「……敵機を視認、距離およそ2マイル…機種、ソードフィッシュ……ブレニムは陽動だったわけね」

ガリバルディ「バスタールド(くそったれ)、なかなか味なことをやってくれるじゃない!」

提督「ええ。ガリバルディ、主砲の目標をソードフィッシュに!」

…目が回るほど忙しい対空砲と比べて両用砲ではない主砲は対空戦で手持ち無沙汰になりがちだが、超低空で進入してくる雷撃機相手の射撃ならこなせる……それに長射程の主砲でソードフィッシュが接近するまでに少しでも数を目減りさせたいということもある…

ガリバルディ「了解!」

ティルピッツ「くっ、ソードフィッシュとは……」かつて姉であるビスマルクが撃沈される原因となった「因縁の相手」だけに、少し唇をかんだ…

ヴァイス提督「ティルピッツ、ソードフィッシュの方位と距離を!」

ティルピッツ「目標、左舷45度! およそ300ヘクトメートル!」ドイツらしい精密な10.5メートル測距儀が旋回し、水平線上をなめるように接近してくるソードフィッシュの古めかしい姿を捉えた…

(※ヘクトメートル…普通はあまり使われないが、第二次大戦時のドイツ主力艦では砲戦の際に用いられていたという。1ヘクトメートルは100メートル)

ヴァイス提督「よろしい。A砲塔およびB砲塔を指向、榴弾を装填!」

ティルピッツ「ヤヴォール! A(アントン)およびB(ベルタ)砲塔、目標をソードフィッシュに!」


…灰色の迷彩が施された前部の38センチ連装主砲「SKC/34」が重々しく…しかし意外と素早く旋回し、弾体重量800キロもの巨弾と薬莢(各国海軍の主力艦は金属の節約や装薬の調整がたやすいことから薬嚢を用いていたが、ドイツの主力艦は引火・誘爆の防止を意識したらしく伝統的に薬莢を用いていた)が装填される…


ヴァイス提督「目標を照準!」

ティルピッツ「照準よし!」

ヴァイス提督「よろしい……A砲塔およびB砲塔、よーい…フォイア(撃て)!」

ティルピッツ「撃て!」巨砲が咆えると「ガウ…ッ!」と天地も裂けるような轟音が鳴り響き、海面がブラストで白く波打った…

提督「……ティルピッツが撃ったわ!」

ガリバルディ「…さすがにあれだけの砲ともなるとものすごいわね!」

提督「ええ!」…編隊を組んでいるソードフィッシュの前方でどどっ…と巨大な水柱が上がり、まるでたじろいだかのように敵機がぐらついた……

ヴァイス提督「……目標2上げ、照準!」

ティルピッツ「ヤヴォール!」

ヴァイス提督「撃て!」

ガリバルディ「敵機、射程に入ったわ……前部主砲1番2番、撃て!」

ライモン「…撃て!」

バンデ・ネーレ「撃てっ!」


…距離が2万メートルを切った辺りでガリバルディ、ライモン、バンデ・ネーレの152ミリ主砲が火を噴く……わけてもガリバルディの新型主砲は個別俯仰ができ、散布界を広く取ることが出来る……じりじりと距離を詰めてくるソードフィッシュの周囲に次々と砲弾が炸裂し、黒雲と水柱が編隊を包み込む…


グレイ提督「……エメラルド、敵機の距離は?」

エメラルド「約18000ヤードです」

グレイ提督「そろそろこちらの主砲も有効射程ですわね……A砲塔、B砲塔の射撃用意」

エメラルド「A、B砲塔の射撃用意」

グレイ提督「目標、ソードフィッシュ……撃ち方始め!」

エメラルド「了解…撃て!」

…エメラルドの「6インチ(15.2センチ)MkⅫ」単装砲が旋回し火を噴いた……砲塔とは名ばかりで防楯だけの簡素な主砲ながら、7500トンあまりのエメラルドがそのスマートな細身の船体を30ノット近くの高速で疾駆させつつ射撃するさまは、まさに「軽巡」と呼ぶにふさわしい…

グレイ提督「4インチ高角砲も射程に入り次第撃ち方始め」

エメラルド「アイ・アイ・マイ・レディ」

マエストラーレ「…よーい、撃て!」

シロッコ「撃て!」

グレカーレ「撃てっ!」

リベッチオ「てーっ!」

レジオナーリオ「撃て、撃てっ!」

コラッツィエーレ「撃て!」

ガリバルディ「いよいよ近づいてきたわね……撃て!」駆逐艦の120ミリ主砲をはじめティルピッツの10.5センチ高角砲、ガリバルディたちの100ミリ高角砲、エメラルドの4インチ高角砲…そして距離が縮まるにつれて各艦の高角機銃も火蓋を切り、次第に一機、また一機とソードフィッシュが墜ちていく……

提督「ええ、射点に入られる前に一機残らず撃墜するわよ!」

ガリバルディ「了解!」

………

…1000時…

ガリバルディ「上空に残存敵機なし…どうにか退けたわね」

提督「ふぅ……」


…次第に強まる日差しを受けて暑くなってきた艦橋……周囲には硝煙の臭いが立ちこめていて髪は汗ばんでぺったりと張り付き、耳の中ではまだ砲声が反響している……かろうじて射点にたどり着いた数機のソードフィッシュから魚雷が投下されたものの幸いなことに命中弾はなく、戦隊は相変わらず白波を蹴立て、舵を原針路に戻しつつあった…


ガリバルディ「…何か命令は?」

提督「各艦は速やかに残弾と燃料を報告……それから現位置と、トリポリまでの最短ルート算出を急ぎましょう」

ガリバルディ「了解」

提督「……空襲のせいで二時間近くも回避行動を取っていたし、直線距離で言えば十数浬しか進めていないはずよ……これじゃあ足踏みしていたのと変わりないわ」

ガリバルディ「それが敵さんの狙いね」

提督「ええ…今この瞬間も、深海側の駆逐隊が急行してきているに違いないもの」

ガリバルディ「でしょうね……提督、各艦より報告」

提督「了解、読んでもらえる?」

ガリバルディ「ええ…ライモンド、バンデ・ネーレ、およびエメラルド、ティルピッツは燃料、残弾ともに余裕あり……特に主砲弾に関してはそれぞれまだ百発あまり残しているとのこと……ディアナも燃料に関しては充分残しているそうよ」

提督「よろしい」

ガリバルディ「戦果に関してはライモンドが三機、バンデ・ネーレが二機ないしは三機、エメラルドが二機、ティルピッツが三ないしは四機機撃墜を報告しているわ」

提督「なかなかの腕前ね…それぞれに宛てて私から「よくやった」と伝えて?」

ガリバルディ「了解…ところで私の戦果は聞かないつもり?」

提督「ごめんなさい、うっかりしていたわ……ガリバルディ、撃墜は?」

ガリバルディ「驚くなかれ……四機よ」

提督「まぁ、すごい…それじゃあ四回キスしてあげるわ♪」ちゅっ…♪

ガリバルディ「ふふ…っ♪」

提督「本当によくやったわね、ガリバルディ……ところで駆逐隊からの報告は?」

ガリバルディ「ええ、いま報告するわ」

提督「お願いね」

ガリバルディ「それじゃあ読むわよ……駆逐隊だけれど、マエストラーレ、シロッコ、リベッチオより「37ミリ機銃及ビ20ミリ機銃弾ノ消費ハナハダシク、残弾半数程度」とのこと…それからここまで27ノットを続けていて、おまけにさっきの対空戦闘で回避行動を取ったりなんだりしたから、駆逐艦はいずれも「我、燃料ノ残リ心モトナシ」だそうよ」

提督「むぅ……かといって洋上補給なんて悠長な事をやっているわけにはいかないわ」

ガリバルディ「…やっぱりトリポリまで突っ走るしかないんじゃない?」

提督「そうね…こんなこともあろうかと燃料は満載にしておいたのだけれど、どうしても……ね」

ガリバルディ「もとよりあの娘たちは燃料搭載量が少ないもの……言うなれば「胃が小さい」みたいなものよね…ケ・サラ(どうなるやら)」

提督「……そういえば歌にもあったわね」

ガリバルディ「そう?」

提督「ええ…」各艦からの報告を記した紙を確認しながら、つぶやくように歌い出した…


(※ケ・サラ(Che Sara)…1971年サン・レモ音楽祭で男女二人ずつの歌手グループ「リッキとボーヴェリ」と、プエルト・リコの著名な歌手「ホセ・フェリシアーノ」が歌って2位に入賞した曲で、タイトルは「どうなるだろう」の意……ドリス・デイの歌で有名な「ケ・セラ・セラ」(どうにかなる)とはタイトルが似ているが全くの別物…日本語訳もされた)


提督「♪~ファエゼ・ミオ、ケ・スタイ、スッラ・コリーナ…ディステーゾ、コメ・ウンベッキォ、アドルメンタート…」
(♪~私の故郷、お前は丘の上にある…眠れる老人のごとく横になって…)

提督「♪~…ラ・ノイア、イァバンドノ、イルニエンテ……ソン、ラ・トゥア、マラッティア…ファエゼ・ミオ、ティラスチォ、イォ・ヴァドヴィーア…」
(♪~…退屈、放縦、虚無……それがお前の病だ…故郷よ、私はお前を捨てて行ってしまうだろう…)

提督「♪~ケ・サラ、ケ・サラ、ケ・サラぁー……ケ・サラ、デ・ラミァヴィタ、キロッサあぁー…!」(※1)
(♪~どうなるだろう、どうなるだろう、どうなるだろう……私の人生はどうなるのだろう、誰が知っているのか…!)

提督「♪~ソ・ファルトゥット、オ・フォルセニェンテ…ダ・ドマーニ、スィ、ヴェデラ……エ・サラぁぁー、サラ・クェル、ケ・サラ…!」(※2)
(♪~私に全てすることが出来るか、それとも何も出来ないのか…明日になったら分かるだろう……そしてなるだろう、なるだろう、なるようになるだろう…!)

提督「♪~リャミツィ、ミエイ、ソン、クァスィ、トゥッティヴィア…エ・リアルトゥリ、パルティアンノ、ドゥポメぇ……」
(♪~私の友はほとんど皆行ってしまった…そしてまた他の人たちは私の後に発つだろう…)

提督「♪~ペ・カト、ペルチェ、スタヴォ・ベーネ、イローロ、コンパニーア……マ・トゥットパサ、トゥット・セネヴァ…」
(♪~残念だ、なぜなら私は彼らと共にいたかったから…だが全ては過ぎて、全ては去ってしまう…)

(※1)

提督「♪~コ・メ・ポルト、ラ・キターラ、エ・セ、ラ・ノッテ、ピアンジェロ、ウナ・ネミア、デ・ファエーゼ、スォネロ…」
(♪~私は一緒にギターを持って行き、もしも私が夜に泣けば、私は故郷の弔いを歌うだろう…)

提督「♪~アモーレ・ミオ、ティ・バッチォ、スラ・ボッカ…ケ・フラ・フォンテ、デル・ミーオ、プリモ・アモーレ…ティ・ド、ラプンタメント、コーメ・クァンド・ノン・ロソ…マ・ソ、ソルタント、ケ・リトォネロ…」
(♪~愛しい人よ、私は貴女の口にキスをする…それは私の初恋の泉だった…私はどのようにしてかいつか貴女に会うことを約束する、そして私はただ帰ってくるだろう…)

(※2)

………



…鎮守府・1030時…

チェザーレ「どうだ?」

バリラ(大型潜バリラ級)「…戦隊より電文「我、敵機の空襲を退け被害なし。目的地に続航す……なれど駆逐艦の燃料少なく、大規模な空襲に耐えることあたわず…戦隊司令」だそうです」

チェザーレ「むむ……やはり敵機の空襲を受けたのは大きかったな」

エットーレ・フィエラモスカ「…心配ですね」

チェザーレ「うむ、だからといって今さらどうこうでもあるまい……賽は投げられたのだ」

バリラ「ええ…」

チェザーレ「とにかく、これ以上戦隊が足止めされないよう上空援護をしっかりしてもらわねばな……アヴィエーレ、航空隊はどうなっているのだ?」

アヴィエーレ「うちのCR42九機がすでにトラーパニから発進、三十分後にはC202三機も出撃の予定…特にCR42は脚(航続距離)が長いから、提督たちの上空で一時間は滞空出来るはずだ」

ビスマルク「…こんな時にJG26のメッサーシュミット一個中隊が手に入るなら「デア・ディッケ」にだって頭を下げてやるのだが……」(※デア・ディッケ…口先ばかりの空軍長官ゲーリングにつけられたあだ名、ドイツ語で「デブ」の意)

チェザーレ「ないものをねだっても仕方あるまい……あるものでやりくりせねばな」

ドリア「そうですね、チェザーレの言うとおりです…♪」

チェザーレ「おや、ドリア……エプロン姿でどうしたのだ?」

ドリア「あぁ、この格好ですか…いえ、いまお昼の仕込みに入るところなのですが少し材料が足りなくて……」

デルフィーノ「多少材料が足りなくても、ドリアの作るお料理はとっても美味しいですから…大丈夫ですよ♪」

ドリア「あら、嬉しいお言葉…そう言っていただけるとやる気になりますね♪」

アッチアイーオ「だからってあんまり張り切りすぎないでちょうだいね……ごちそうはいいけれど、数日分の食材を一回で使われちゃここの予算がたまらないわ」

ドリア「…でも美味しい食事がなければ士気は高まりませんから」

アッチアイーオ「はぁ……提督とディアナが帰ってきたときになんて言えばいいのよ…」

ドリア「ふふふっ…それじゃあラザーニアの準備をしてきます♪」

ビスマルク「あれは一体何だったのだ…」

チェザーレ「ふぅむ……ドリアのあの余裕はさすがだ。だてに艦齢(とし)を食っているわけではないということであるな」

アヴィエーレ「そんなことを言ったら怒られるよ…」

チェザーレ「なに、チェザーレも歳で言えばほとんど変わらんのだ。多少は大目に……む」それまで静かに回っていたレーダー画面に、ぽつりと緑の点が浮かんだ…

フィエラモスカ「レーダーに感あり」

チェザーレ「…すぐ友軍の管制機に敵味方識別を依頼するのだ」

フィエラモスカ「ええ……タラント第六よりピアット1へ、座標AP332にレーダーコンタクト…識別を願います」

AWACS「……タラント第六へ、そちらのコンタクトは方位270、速度28ノット、数は四ないしは五……おそらく深海側の駆逐艦グループと思われます」

フィエラモスカ「了解」

チェザーレ「いよいよお出ましになったな……28ノットとなるとかなり本気のようだな」

アヴィエーレ「…確かに」

チェザーレ「……位置的にはデジエとアクスムが近い。迎え撃たせる必要があるな…」

デルフィーノ「はい、それがいいと思います…それとバリラ」

バリラ「ええ、デルフィーノ」

デルフィーノ「デジエたちとは別に、戦隊に宛てて警戒の電文を送って下さい」

バリラ「了解。文面は「広域レーダーに複数の感あり、貴戦隊を迎撃せんとする敵駆逐隊ならん…注意されたし」と…後は座標と速度、針路を加えて……これでいいかしら?」

デルフィーノ「はい、大丈夫です」

チェザーレ「いよいよルビコン川を渡る事になるようだ……皆、警戒を怠るなよ」

フィエラモスカ「はい」


…1040時・シルテ湾の沖合三十浬…

デジエ「……アフリカの匂いがする」

アクスム「ん、私もそう思った…♪」


…どこまでも濃く青い海に抜けるような鮮やかな空と白い綿雲、滑らかなレースのように流れていく艦首波と航跡、そして暖かな南風にかすかに混じる土の匂い……双眼鏡を手に水平線を警戒しつつも、砂漠の香りが二人にノスタルジーを感じさせる…


アクスム「熱いコーヒーと砂漠の香り……なんだか懐かしいね、デジエ」

デジエ「そうね、アクスム…」マグカップのコーヒーをふーふーと吹きつつ、アフリカ流に甘いなつめやしを口に放り込む…

アクスム「ね……ところで、提督たちは上手くいっていると思う?」

デジエ「ええ」

アクスム「…かなり空襲を受けたみたいだけれど」

デジエ「提督なら大丈夫よ……っと」下の無電室でモールス信号機がひとしきり騒ぐと、下士官が切り取ったばかりの通信紙を持ち、艦橋の士官に敬礼して通信紙を渡す「幻影」が見えた…

デジエ「……敵駆逐艦グループと思われるコンタクトは、現在28ノットにて戦隊を捕捉するべく急行中…デジエ、アクスムは直ちに以下の座標に進出し敵駆逐艦に対し触接を図り、また可能ならば雷撃を敢行し、敵駆逐艦による「プレイアディ」戦隊への接近および攻撃を妨害すべし…」

アクスム「久しぶりに一緒ね…デジエ」

デジエ「ん……私もアクスムがいると安心できるわ」

アクスム「ありがと…さ、急いで行かないと」

デジエ「…両舷機全速で針路を310に取れば、一時間くらいで接触出来るはず……アクスム!」

アクスム「了解…両舷機前進全速、針路310!」

………

…1128時…

アクスム「……右舷に煙!」

デジエ「…っ、急速潜航っ!」


…ざぁっと波をかぶりつつ前傾姿勢を取って潜航するデジエとアクスム……デジエは滑り降りるようにして司令塔の中に飛び込むと、しぶきをかぶりながら急いでハッチのハンドルを回して閉め、主機をディーゼルから電動機に切り替える…


デジエ「ディーゼル排気弁および各排気弁閉鎖、トリムタンク水平、潜舵もどせ……両舷電動機微速、潜望鏡深度へ」艦内は無音状態で、あちこちに張り巡らされたパイプからぽたぽたと雫が滴る音のほかは重く湿っぽい空気の中で静まりかえっている……潜っている間は姿を見ることはできないが、姉妹であり名コンビでもある二人には互いの動きが手に取るようによく分かっている…


アクスム「……右舷二〇に薄い煙とマストの影…情報にあった駆逐艦で間違いなさそうネ」

デジエ「…きっと今ごろアクスムも潜望鏡にかじりついているカシラ……両舷機半速、接近を試みる」気づいてはいないが、緊張と興奮からか訛りが出ている二人……


…1135時…

アクスム「…デジエならこのまま距離を詰めていくはずね……両舷機半速、針路320へ」

デジエ「……きっとアクスムは駆逐艦の頭を押さえられるように変針するはず…なら私はこのまま忍び寄って待ち伏せ攻撃をするだけね」

1140時…

アクスム「……敵は駆逐艦が五隻……どれも「G」級か「H」級みたいね。イギリスの駆逐艦と来たらどれもこれも似たり寄ったりだけど……」


…二人はそれぞれ潜望鏡が水面から高く出すぎないよう注意深く深度を微調整しながら、白波を蹴立てて接近してくる敵艦に目を凝らした……地中海迷彩のように見える様々な色合いの貝殻や海藻に包まれた深海側の駆逐艦たち…


デジエ「…速度はおよそ28ノット、単縦陣、ジグザク航行はなし……提督たちを捕捉するためにお急ぎなのね」

アクスム「…それにしても戦隊にはティルピッツまでいるって言うのに、たかだか駆逐艦五隻をぶつけるつもりって事は……」

デジエ「…どうやら取るものも取りあえず飛び出してきた……ってところね」

アクスム「……この速度じゃあアスディックは使えないから対潜警戒はないも同然…」

デジエ「…おまけにこっちはちょうどいい位置に着いている……」

アクスム「…とはいえ駆逐艦は機敏だし、速度も出しているから並の雷撃じゃあかすりもしない……だけど」

デジエ「……こっちにはアクスムがいるもの…♪」

アクスム「…こっちにはデジエがいるもの……♪」

…一方・軽巡「ガリバルディ」艦橋…

提督「面舵いっぱぁぁい!」

グレイ提督「ハード・ア・スターボード(面舵一杯)!」

ヴァイス提督「右舷回頭全速!」

ガリバルディ「ったく、次から次へと…撃て!」

ライモン「左舷高角砲、てーっ!」

バンデ・ネーレ「主よ…我らが口、汝が誉れをあらわさん……撃てっ!」

シロッコ「高角機銃、次弾を急げ!」鈍足ながらも果敢に突っ込んでくるソードフィッシュの編隊に向けて、砲身も焼けよとつるべ打ちする戦隊…

コラッツィエーレ「敵機、魚雷を投下!」

ガリバルディ「左舷四〇に雷跡!」

提督「取り舵一杯っ! 主砲、俯角一杯!海面に向けて撃て!」

ガリバルディ「了解!」バウッ!

ライモン「…敵魚雷、航走していません!」主砲の弾着が起こした猛烈な水柱と衝撃に巻き込まれ、誘爆を起こしたり繊細な機構に不具合を起こしたりして「走らなく」なった魚雷……

提督「…ふぅっ」いつの間にか止めていた息を吐き出すと、手の甲で額を拭った……

………

…1150時…

アクスム「ふふ、まるで練習みたいね……」


…少し風が出てきて、周囲の海面には白く「うさぎの足」(波頭)が立ち始めている…おかげで潜望鏡がしょっちゅう水面下に潜るが、べた凪の海に比べれば潜望鏡が見つかる危険は少ない…そして視界に映る深海側の駆逐艦は「プレイアディ」船団を阻止するべく、わき目もふらずに航行している…


デジエ「敵相対針路270度…速度は28ノット、距離3200……」

アクスム「敵針路180度……速度28ノット、距離3500メートル…」

デジエ「……前部魚雷1番から4番、深度3メートル、雷速30ノットに調定……扇状発射で行く」

アクスム「前部魚雷1番から4番…深度3、雷速30……」艦長帽を前後ろにかぶって潜望鏡の接眼レンズに目を押しつけ、ぶつぶつとつぶやくように魚雷の発射諸元を設定していく……それから計算盤に敵艦のコースや速度を入力すると、最適な発射距離や角度がはじき出される…

アクスム「…距離1500で発射ね……」

デジエ「距離1200、針路二〇で発射するわ……前部魚雷発射管に注水!」


…ごろごろと音がして発射管への注水が行われる……その間にも敵駆逐艦との距離は縮まり、やせた船体には不釣り合いな感じのする主砲の4.7インチ(12センチ)高角砲や魚雷発射管などの細部がくっきりと見えてくる…


アクスム「…距離2800…発射管に注水。前部発射管、前扉開け…!」

デジエ「距離2500……発射管前扉開け…」

アクスム「……距離2000」

デジエ「距離1700…」

アクスム「…距離1600……魚雷発射用意」

デジエ「……魚雷発射管1番から4番…用意……撃て!」

アクスム「…発射管1番から4番……よーい、てっ!」

デジエ「前部トリムタンクに注水!」…一本あたり一トン近くある魚雷を撃ち出すと同時に、前部トリムタンクへ発射した分の重量を一気に注水する……そうしないと撃ち出した魚雷の分だけ軽くなった船体が浮き上がり、悪くすると水面に浮上してしまう…

デジエ「…ちっ、気づかれた! 深度八十メートルまで急速潜航!」

アクスム「ふふ、さすが……でも…ね♪」


…デジエの放った魚雷が残す白い雷跡をめざとく見つけて、撃ってきた方向に向けて急回頭を図る「G」級と「H」級の駆逐艦……が、デジエとアクスムの名コンビはその戦術ならよく知っていた……


デジエ「……この蜘蛛の巣からは逃げられない…♪」デジエの放った魚雷をかわそうと左舷に急回頭する間にも、アクスムの撃った魚雷がちょうど交差するように航走してくる…

アクスム「…命中」ストップウォッチのタイマーを眺めていたが、予定より少し遅れて鈍い爆発音がした…

デジエ「ふふ、二発命中……一隻は撃沈の模様」…と、敵艦の沈んでいくきしみ音と別に、次第に近づいてくるスクリューの音が響いてくる……

アクスム「どうやらそれ相応の仕返しがやってくるみたいね……」

デジエ「……提督、敵艦の足止めはできたわ……後はそっちでどうにかやってちょうだい…ね?」

………



…1300時…

ガリバルディ「提督、少し遅くなったけど昼食にしましょう…飲み物も持ってきたわよ」

提督「ありがとう……けほっ、怒鳴りすぎて喉がカサカサ…」

ガリバルディ「普段から大声で号令をかけていない証拠ね…さ、飲んで♪」

提督「グラッツェ・ミーレ(本当にありがとう)……んくっ、んっ…」ほうろう引きの大きなマグカップに注がれた水を一息にあおった…

ガリバルディ「お盆は海図台の上に置くわよ…それと、提督」

提督「なぁに?」

ガリバルディ「……鉄兜、いつまでかぶっているつもりなの?」

提督「え? あ、あぁ…言われてみれば……///」少し恥ずかしげな表情を浮かべるとヘルメットを脱ぎ、手近な椅子の上に置いた…

ガリバルディ「ふふ…♪」

提督「もう、笑うことはないでしょう?」

ガリバルディ「だってねぇ…あれだけ堂々と指揮を執っておきながら、そんな士官候補生みたいなうっかりをするんだもの……くくっ♪」

提督「むぅ…」

ガリバルディ「ふふふ…むくれている顔も可愛いけれど、早く食べないとお昼が冷めるわよ?」

提督「はいはい……よくこの短時間でこれだけの献立が作れたわね?」

ガリバルディ「別にそうでもないわ、たいていは瓶詰めだの缶詰だのを開けただけだもの…」

提督「それにしたって大したものよ……はむっ…」


…お盆の上には大きな丸パンを薄くスライスしたところに瓶詰めのサルサ・ポモドーレ(トマトソース)を塗り、サラミとチーズ、瓶詰めの黒オリーヴを乗せたオープンサンドウィッチが二切れに冷たい玉ねぎのマリネ、それに缶詰のアンズがついている…


提督「んむ……ガリバルディ、貴女は食べないの?」

ガリバルディ「提督が済んだらね……それと鎮守府経由で電文が届いたわ」

提督「…あむっ、ん……読んでもらえる?」

ガリバルディ「ええ…「発、空軍AWACS……1030時頃発見せし敵駆逐艦グループのうち、二隻のコンタクトを喪失…おそらく撃沈されたものと推測される。残余の三隻は同海域にとどまり、対潜攻撃とおぼしき機動を実施しあり」だそうよ……どうやらデジエとアクスムがやってくれたようね」

提督「んむっ、ごくんっ……でも駆逐艦五隻に仕掛けるなんて分が悪すぎるわ。鎮守府が打った電文にも「可能ならば」雷撃を行い、敵艦の船団への攻撃および接近を妨害すべしってあるのに……そもそもあの二人には敵艦を監視して情報を送ってもらいたかっただけなのに、そんな無茶な真似をするなんて…」

ガリバルディ「まぁまぁ、きっとあの二人のことだから「行ける」と思って博打を打ったに違いないわ……それからリビアの港湾当局から入港許可と、予定時刻がいつ頃か聞いてきているわ」

提督「それはそうかもしれないけれど…それからリビア側には「予定到着時刻は1530時から1630時頃になる模様」と打電してもらえる?」

ガリバルディ「了解」

提督「お願いね……他には?」

ガリバルディ「ええ…鎮守府から次の上空援護は「1340頃にCR42の三機が到達の予定」だそうよ」

提督「よろしい」

ガリバルディ「それから各艦の状況だけれど……」

………

…1540時…

ガリバルディ「提督、間もなくトリポリに到着するわ」

提督「了解…長かったわね」

ガリバルディ「ふふ、まだ帰りもあるのよ?」

提督「聞いただけでげんなりするわ……各艦は単縦陣、速度10ノットまで落とせ」

ガリバルディ「了解」

提督「入港次第ディアナから物資を卸すことになるから、その間に各艦は燃料と弾薬の補給を行うことにします」

ガリバルディ「それが済むまでベッドはお預けってわけね…」

提督「そういうこと……もちろん私も同じだから、手早く済ませましょう…ね♪」

ガリバルディ「ええ♪」

このところあまり筆が進まず申し訳ないですが、おかげさまで無事です…皆さまはいかがお過ごしでしょうか?


…このところのコロナ騒ぎは我が国もそうですが、個人的にはイタリアの状態も心配です…何しろ大戦中でもなくならなかったパスタが品切れになってしまうくらいだそうですから…月並みですが早く終息してほしいものです

…同じ頃・鎮守府…

ウエビ・セベリ(中型潜アデュア級)「…」

フルット(中型潜フルット級)「どうですか、セベリ?」

セベリ「いいえ…なにも聞こえまセン」

フルット「……そうですか」

アッチアイーオ「何か聞こえたらすぐに言うのよ」

セベリ「もちろんです」

デルフィーノ「きっと駆逐艦から爆雷攻撃を受けているでしょうし、数時間はデジエとアクスムから返事がないのもうなずけますけど……」

アッチアイーオ「心配と言えば心配よね……とにかく、哨戒中の各艦には無電を聴取したら必ずこちらに向けて内容を転送するように指示しておいてちょうだい」

セベリ「了解です」

アッチアイーオ「……もう、駆逐艦グループ相手に雷撃をかますなんて…どうかしているわよ」あきれたような口調で言いながらも、心配そうな様子で口元に手を当てている…

………



…同時刻・シルテ湾沖の深度八十メートル付近…

デジエ「…取り舵二十、両舷電動機全速!」そう叫ぶ間にも「ゴゥン…ッ!」と爆雷の炸裂音が響く…

デジエ「これで二十二個め……下げ舵十度、深度百メートルへ!」海図台の上には紙と鉛筆があり、爆雷攻撃が止むまでの目安として投下された爆雷の数を線で引いている……


…デジエとアクスムがそれぞれ四発放った魚雷は少なくとも二隻の駆逐艦をしとめたものの、デジエはそれから数時間にわたって「お返し」とばかりに猛烈な爆雷攻撃を受け続けている……あちこちにある赤色電球は粉みじんに割れ、バルブやパイプの継ぎ目からはたびたび水が噴き出す…聴音兵の「幻影」は席に着き、敵側のアスディックに比べて情けないほど原始的な水中聴音機で敵艦の動きや周囲の状況を探ろうとヘッドフォンを耳に当てているが、そのはっきりした幻影はたびたび急いでヘッドフォンを外し、十数秒後には投下された爆雷が「ズシーン…!」と船体をめちゃくちゃに揺さぶる…


水兵の幻影「ディーゼル排気バルブから浸水!」

デジエ「ぐぅ…っ!」幻影の水兵や士官たちが動き回って浸水しているバルブやパイプのつなぎ目に駆け寄り、海水を浴びながらスパナでボルトを締め上げる様子が見える……が、その間にも「ピーン…ピーン……!」とアスディックのパルスが船体を叩く…

デジエ「両舷機半速、面舵二十!」

デジエ「…まだよ、まだ……」船内にもはっきりと聞こえるアスディックのパルス音に続き「シャッシャッシャッ……」というスクリュー音が、クレッシェンドで高まってくる……しばらくすると聴音機なしでも「ジャッジャッジャッジャッ…!」と頭上を行く駆逐艦の轟音がはっきり聞こえてきた…

デジエ「両舷機全速!取り舵一杯!」

デジエ「…うっ、く……両舷機半速、針路戻せぇ!」ズゥ…ン、ズズーン…ッ!

水兵の幻影「深々度用深度計パイプより浸水!」…ピン、ピン…ッ!

下士の幻影「左舷トリムタンク用海水弁より浸水!」

デジエ「五百リットル排水! 中央トリムタンク、ブロー!」ズーン……グワァァ…ン!ガァ…ン!

デジエ「……まだまだ!」すでに湿気と汗でびしゃびしゃのハンカチを引っかけてあるパイプから取ると、あごと胸の間に伝わった汗を拭った…

デジエ「もしアクスムも捕捉しているなら二対三……そうなれば手も足りナイはず」

デジエ「そもそも爆雷だってそんなに積んでいるわけじゃないもの…それに潜望鏡で見たときはヘッジホッグの投射器はなかっタし……」ズゥゥ…ンッ!

デジエ「ふぅ、今のは遠かったわ……」

デジエ「排水止め! …ポンプがごろごろ言っていたら敵はアスディックなしでも爆雷を投下できるし……」ピーン…ピィ…ン……

デジエ「…アクスム、貴女は大丈夫なの? 両舷電動機全速、面舵一杯!」ドゴォ…ンッ、ガァー…ン!

デジエ「う゛っ…!」

デジエ「くうっ、なかなかの大盤振る舞いね……きっと後で青あざになっているわ…」

………



そういえば、オリオンが蠍をけしかけられたのは動物を絶滅させかねない程の腕前を恐れられたパターンとか、
死因が、アポロンがアルテミスを騙して、オリオンを誤射させたパターンがあったりする

>>639 書き込みありがとうございます、ギリシャ神話にお詳しいのですね!

…色々あって入院することになり、ずいぶん長い間更新出来ずにおりました……が、無事に退院することが出来ましたので(まさかコロナ騒動がこんなになっているとは思いもよりませんでしたが…)今後も見ていただければ幸いです

…二時間後…

アクスム「…ぐぅっ!」ズシーン…!

下士の幻影「ディーゼル排気パイプ、損傷!」

水兵の幻影「コンプレッサーが台座から外れました!」

アクスム「取り舵一杯!深度百二十メートルまで潜航! …デジエ、貴女は無事でいてネ……う゛っ!」ズウゥ…ン!

下士の幻影「給気弁上部より浸水!」

電動機関兵の幻影「バッテリーの液漏れ発生!」

士官の幻影「石灰水で中和しろ、急げ!」

アクスム「…作業中断、両舷機微速!」ピーン…ピィー…ン……

アクスム「全員静粛に…物音を立てナイで」ピーン……ピーン……

アクスム「…」


…アクスムは結露したパイプに手をかけ、じっと上を見上げている……あちこちの配管や船殻からはぽたりぽたりと水滴がしたたり落ち、その間にも「シャッシャッシャッ…」と駆逐艦のスクリュー音が聞こえてくる…


アクスム「このまま無音潜航…」深度が深ければ深いほど、周囲の水圧に押さえつけられるため爆雷の衝撃波は減衰する…が、同時に艦の耐久力も試されることになる……アクスムが駆逐艦をまこうと様々な小細工や技を繰り出す間にも、ときおり船殻から「ミシッ…ギギ、ギィィ……」と不安になるような音が聞こえてくる…

アクスム「…」シャッシャッシャッ……

アクスム「……ふぅぅ、どうやらあきらめてくれたようネ」アスディックの響きとスクリュー音が次第に遠ざかっていき、完全に聞こえなくなると息を吐いた…

アクスム「各部の被害状況を知らせ、修理せよ…」アクスムがまとっている競泳水着風の「艤装」は汗で一回り濃い色のしみができている……アクスムは額から垂れる汗を手の甲で拭うと上からひっかけていた熱帯用シャツを脱ぎ、艦長帽と一緒に海図台の上へ放り出した…

アクスム「……それにしてもデジエは大丈夫カシラ…?」

………



…そのころ・トリポリ港外…

提督「両舷前進微速…針路そのまま」

ガリバルディ「了解」

提督「まだよ、まだ……もう少し…いいわ、両舷後進微速!」行き足をころすために後進をかけ、湾内のちょうどいい位置に近づいた…

提督「…投錨!」


…提督がそう言うとがらがらと錨鎖が滑り出し、錨が派手な水音を立てて水中に沈んでいく…そのうちに錨鎖が止まり、錨が底に着いたことを示した…一方、埠頭ではディアナが見事な腕前を見せ、タグボートなしでそのスマートな船体をぴったりと横付けさせた……また、ライモンやバンデ・ネーレ、エメラルドやティルピッツ、マエストラーレたちも問題なく投錨していく…


提督「ふぅ…」思わず安堵のため息をついた…と、ガリバルディが声をあげた

ガリバルディ「提督」

提督「なに?」

ガリバルディ「港湾当局から信号…何でも「貴船団の入港を確認、心より歓迎す…これより税関当局のランチ(快速艇)を送る」だそうよ」

提督「了解……準備しておいて良かったわ」

ガリバルディ「それでさっき着替えていたわけね?」

提督「ええ。やっぱりこう言うときは金モールがものを言うから…♪」


…そう言ってガリバルディに微笑した提督は、四列にわたる略綬が胸元を飾る濃紺のダブルのブレザーとスラックス姿の冬期正装で、長い髪は綺麗にシニヨンにして結い上げ、白軍帽を少し斜めにかぶっている…


ガリバルディ「まぁね…ランチが来たわよ」

………

ガリバルディ「どうやら乗艦してくるのはリビア海軍の将校と国連の関係者…それからあの金モールのベタベタは税関の『エライ人』ってところね」

提督「そのようね」

ガリバルディ「どうも長話になりそうだし、士官食堂にコーヒーを用意しておくわ」

提督「ええ、お願い」


…ガリバルディが手際よくコーヒーを淹れ、海軍らしい「錨とロープ」の柄が入ったコーヒーセットを用意して戻ってくるとちょうどランチが接舷し、舷側に張り出させたタラップを使って数人が乗艦してきた……最初の二人は浅黒い顔に口ひげをたくわえ、まるで元帥のような金モールと略綬で豪華に飾られたリビア軍の大佐と副官で、それに続く青ベレー帽の国連職員が男女一人ずつ、そしてやはり金モールの税関将校……リビア軍の将校はマストに少将旗と戦隊司令官旗を掲げている提督がまだ若い女性とあって、ひどく驚いたような顔をした…


リビア海軍大佐「ようこそトリポリへ、貴船団の到着を歓迎いたします…航海はつつがなく済みましたか?」アラビアの女性と違って提督とガリバルディはヴェールで髪や顔を覆っていないので少し気まずそうな様子で、かなり片言の英語であいさつした

提督「はい。おかげさまでさしたる被害もなく到着することができました」

大佐「なるほど、それは何よりでしたな」

提督「ええ…ところで、よろしければコーヒーでもいかがですか?」

大佐「結構ですな、いただきましょう」

提督「ではこちらへ…」

…士官食堂…

提督「…さ、どうぞ召し上がってください」

大佐「これはどうも」そう言うと大佐と副官はブラックのコーヒーに砂糖を山ほど入れてアラビア風にするとゆっくりとすすった…

国連職員「あぁ…とても美味しいコーヒーですね」一方の国連職員は甘ったるいほどに甘いアラビア流のコーヒーにげんなりしていたようで、ミルクを少しだけ入れたコーヒーに満足そうな声をあげた…

提督「ふふ、それは良かったです」

大佐「……ふぅ、ごちそうになりましたな…ところで提督」

提督「ええ」

大佐「貴官の戦隊に補給する燃料ですが……」


…ひとわたりコーヒーを飲み終えると各艦への補給やディアナが搭載してきた物資の積みおろしについての長ったらしいやりとりが始まった……幸いなことにどこの軍でも階級章の金線は効果があるもので、海軍大佐は少将の階級をつけている提督に対してこれといったけちをつけないでくれた……そこで提督は国連の二人に通訳を頼み、何かにつけて物資を出し渋ったりちょっとした賄賂を要求したり「ああでもないこうでもない」と余計な茶々を入れてくる税関当局をなだめすかし、どうにかこうにか手はずをまとめた…


提督「……では、そういうことで」

税関将校「分かりました」

提督「ふぅ……先ほどは翻訳していただきありがとうございました。アラビア語はあいさつぐらいしかできないものですから…」

国連職員「いえ、こちらこそ手際よく話をまとめていただいて助かりました」

提督「どういたしまして…♪」

国連職員「ところで提督…」

提督「なんでしょう?」

国連職員「その…提督や「艦娘」の皆さんのために、こちらにいる間の宿泊先としてホテルを用意したのですが……」

提督「ですが…?」

国連職員「政府高官の視察や何かが重なって部屋が取れなくて……提督は艦娘さんと「ふたりべや」でも大丈夫ですか?」

提督「ふふっ、構いませんよ…♪」そう言うと真面目そうな国連の女性職員に向けてにっこりした…

………


…同時刻・鎮守府…

サウロ「…ガリレオより通信「深海側の八千トン級独航船を魚雷二発で撃沈…ガリレオ」とのこと」

アッチアイーオ「了解。独航船をやるとは、さすがは「世紀の大天才」ね…」

(※独航船…船団を組まず単独で航行する輸送船のこと。たいていは船齢が若く高速の出る船なので、潜水艦で捕捉することは難しい)

ニコ「トリチェリより入電「座標AS342にて五百トン級の沿岸貨物船を視認、浮上砲撃にて撃沈…トリチェリ」だそうです」

アッチアイーオ「了解」

デルフィーノ「…交代しに来ましたよ、アッチアイーオ……状況はどうですか?」

アッチアイーオ「そうね、哨戒中の潜水艦から電文がいくつか…それとさっき空軍のAWACSから敵の位置情報が送られてきたわ」

デルフィーノ「そうですか」

アッチアイーオ「ええ…ま、とにかくちょっと休んで……」

サウロ「…プレイアディ船団より入電!」暗号文を解読器にかけると、平文に戻った電文が通信紙に印字されて出てくる…

アッチアイーオ「内容は!」

サウロ「今読みます…「プレイアディ船団より鎮守府へ…船団は無事トリポリに入港、各艦いずれも損害なし」だそうです!」サウロが読み終えないうちに室内の全員が「わぁっ…!」と歓声をあげた…

アッチアイーオ「静かに! …それで、デジエとアクスムは何も言って来てないの?」

サウロ「はい、それが…」

ニコ「待った、デジエより通信あり!」

デルフィーノ「駆逐艦に魚雷攻撃を仕掛けたそうですけど…二人は大丈夫でしょうか?」

ニコ「ふふ…それに関しては安心していいよ、デルフィーノ……通信内容だけれど「アクスムと協同で敵『H』級と思われる駆逐艦各一隻を撃沈。五時間に渡って爆雷攻撃を受け、両艦ともに各所に被害を受けるも航行に支障なし。トリポリに入港し補給と応急修理を行う……デジエ」だそうだ」

デルフィーノ「ふぅぅ、そうですか……それを聞いてほっとしましたぁ」

アッチアイーオ「…無茶をやった割には元気なようで結構だわ……どうやら馬鹿を守る守護聖人でもいたみたいね」口ではそう言いながらもどこかほっとした様子で、今度は歓声が上がっても止めなかった……

ニコ「エリトレアに、今夜の夕食は腕によりをかけてご馳走を作ってくれるよう頼まないと…ね♪」

デルフィーノ「そうですね♪」

…しばらくして・トリポリ…

ガリバルディ「…そういうわけで、デジエとアクスムはこっちに合流するそうよ」

提督「そうね、いい考えだわ……応急修理もせずにタラントまで戻るのは無理があるもの」

ガリバルディ「ええ」

提督「ところでガリバルディ、燃料と弾薬の補給は?」

ガリバルディ「今のところ燃料の補給は八割ほど……最近のC重油は質がよくて感心するわ」

提督「やっぱり当時の燃料とは違う?」

ガリバルディ「それはそうよ。おかげで当時より二ノットは早く出せるんじゃないかって思うくらい」

提督「ふふっ、それは何よりね♪」

ガリバルディ「で、弾薬の方は半分ほど積み込んだところ……リビアの港にしては手際が良くて助かるわ」

提督「さっき来たお偉方に渡したチョコレートと煙草のカートンが効いたのかしら?」いたずらっぽい笑みを浮かべると、ガリバルディにウィンクを投げた…

ガリバルディ「間違いないわね…ま、それで少しでも補給が早くなるならお世辞だって言うし袖の下だってばらまくわ♪」

提督「そういうこと…でもシャルロッテには内緒よ?」

ガリバルディ「分かってるわ。お堅いドイツの士官さんには納得できないでしょうからね…♪」そう言ってティルピッツの方をちらっと見た……

…ティルピッツ・艦橋…

ヴァイス提督「…くしっ!」

ティルピッツ「大丈夫ですか、司令?」

ヴァイス提督「ヤー、大丈夫だ……きっと誰かが噂でもしているに違いない」

………

…しばらくして・鎮守府の厨房…

エリトレア「はぁ…」

ヴィットリオ・ヴェネト「おや…ため息なんて吐いてどうしたんです、エリトレア?」

エリトレア「あ、ヴィットリオさん……いえ、この数日というもの厨房に立ちづめだったので、さすがに疲れちゃって…」

ヴェネト「なるほど、でしたら少し休んだらどうですか?」

エリトレア「それはそうなんですが、そろそろ夕食を作らないといけないので…食事当番のみんなもよく手伝ってくれるので助かってはいますけれど……ぉ」

ヴェネト「…エリトレアは食事の準備に取りかかるのが早いですものね」

エリトレア「はい。なにせ私はディアナと違って動きが遅いので、その分早く取りかからないといけないですからぁ…」

ヴェネト「うーん……でしたら今日だけ手抜きをしたらどうでしょうか?」

エリトレア「手抜きですかぁ……でもみんな美味しいものを食べたいと思うんですが、いいんでしょうか?」

ヴェネト「まぁまぁ、たまにはいいと思いますよ…いざとなったら私が矢面に立ってあげます」

エリトレア「んー…それもそうですね。なんだかヴィットリオにそう言ってもらえてほっとしました…っ♪」と、厨房に上機嫌なニコがやってきた…

ニコ「やあ、エリトレア」

エリトレア「はい♪」

ヴィットリオ「チャオ、ニコ」

ニコ「チャオ、ヴィットリオ……ところでエリトレア、今夜の献立は何かな?」

エリトレア「あ、夕食の献立ですか……今日は、えぇと…そのぉ……」

ヴェネト「…今日の夕食は私が中心にやる予定だから、エリトレアは何を作るか知らないの」

ニコ「へぇ、それは楽しみだねぇ♪」

ヴェネト「ええ、楽しみにしておいて…それからデュイリオとドリアを呼んできてもらえる?」

ニコ「了解、すぐ呼んでくるね」

ヴェネト「グラツィエ」

…数分後…

ドリア「…何かご用だそうですね、ヴィットリオ?」

デュイリオ「私でよければ手伝ってあげるわ…ね♪」肩にカラスを止まらせ、にっこりと甘い笑みを浮かべるデュイリオ…

ヴェネト「ええ、ぜひお二人の力をお借りしたいと思いまして……かくかくしかじか…」

デュイリオ「…なるほど」

ドリア「そういうことなら私に任せておいて下さいな、ヴィットリオ♪」

ヴェネト「ええ、アンドレアは美食家ですし頼りにしています……それで、何を作りましょう?」

ドリア「そうですねぇ…とりあえず「何を作るか」よりも、まずは貯蔵室や冷蔵庫に「何があるか」を確認してみましょうか」そう言うと壁にかけてある食材のリストを確認しはじめた…

ドリア「…中抜きの鶏に、牛のあばら肉……卵もいっぱいありますね…」

デュイリオ「ねぇドリア、そういえば……」

ドリア「なんです?」

デュイリオ「いえ、ふと思い出したのだけれど……そろそろ保管してあるラツィオーネ(軍用携行糧食)の保存期限がくるし、まずはあれを消費しないといけないんじゃないかしら?」

ドリア「あぁ、そういえばそうでした…提督も気にしていましたし、そろそろ食べないといけませんね」

デュイリオ「それじゃあ今夜はあれに手を加えて夕食にする?」

ドリア「そうですね……ちょっと難しいですが、やってみましょうか」

ヴェネト「それにしてもずいぶんありますね…っと!」

ドリア「それはもう、鎮守府の一週間分だもの……よいしょ」

デュイリオ「…そうね、わたくしのようなお婆ちゃんが運ぶには少し大変です♪」

ドリア「まぁ、デュイリオったら…ふふふっ♪」くすくすと笑いながら糧食の入っている段ボール箱を二つ重ねて持ち上げ、事もなげに厨房へ運び込む…

エリトレア「…ひぃ、ふぅ……やっぱりコラッザータ(戦艦・装甲艦)の皆さんは馬力が違いますね…っ!」

ヴェネト「さて、と…次は何をしますか?」

ドリア「そうですね、まずは中身を確認しましょう…」箱に印字されているセット名と内容物リストをしげしげと眺めた…

デュイリオ「…どう?」

ドリア「ええ、これなら献立に使えそうですよ…さ、開けましょう♪」

エリトレア「ふぅ、良かった……もしこれを戻すようなことになったらへこたれちゃいます」

デュイリオ「ふふ、その点は心配いらないわ。美食家のドリアに任せておけば何だって三つ星リストランテの味にしてくれるもの……ね、アンドレア♪」

ドリア「うふふっ、そんなに期待されると照れちゃいますね…♪」甘い笑みを浮かべると段ボールを開け、ダークグリーンのアルミ包装がされた軍用糧食のセットを取り出した…

ヴェネト「それじゃあ私が中身をより分けます。なにしろ色々入っていますからね」

デュイリオ「では私が野菜を刻んだりしますから、その間にエリトレアは缶を開けて下さいな…それなら座ってできますものね♪」豊かな髪をヘアゴムでまとめると、クリーム色をしたタートルネックの袖をまくり上げてエプロンをかけた…

エリトレア「ありがとうございます、デュイリオ」

デュイリオ「ふふ、構いませんよ…でも缶を開けるのがエリトレア一人では大変ですね……」

ロモロ「…エリトレア、今日の夕食はなぁに?」

レモ「レモは美味しいお肉が食べたいかも♪」

デュイリオ「あら、ちょうどいいところに可愛い狼さんが来てくれましたね……ふふ♪」

…数分後…

ドリア「これで人数分ですね……さてと、そちらはどうですか?」…空になった段ボール箱をつぶし、糧食を包装している厚手のアルミパウチをゴミ箱に放り込むとエプロンをつけ「戦闘準備」を整える……

エリトレア「はい、やっていますっ」側面が濃緑色で塗られ、黄色い字で内容物が記載されている糧食の缶詰を次々と開けては大きなボウルに放り込む…

ロモロ「うぇぇ、まだこんなにある…」

レモ「もぅ…いい加減飽きてきたよぉ……」キコキコと缶切りを動かしては文句をこぼすロモロとレモ…

ドリア「まぁまぁ……出来上がったら少し味見をさせてあげますから…ね♪」ぶつぶつとこぼしている二人をなだめつつ、手際よくニンニクと玉ねぎを刻みはじめた…


…本来なら夕食は軽めに済ませることが多いイタリアである……が、哨戒から帰投してすっかりカロリーを消費しきった潜水艦や、あちこち駆け回ってはすぐひもじくなってしまう駆逐艦、はたまたその豊満な身体に栄養を取らせるため三食をたっぷり取る戦艦や重巡に、なにかと忙しく空腹をかかえた軽巡たち……と、何だかんだでお腹を空かせた艦娘たちのために、鎮守府の食卓は三食ともにたっぷりとした食事が用意されている…


デュイリオ「それじゃあ私はトマトを切っておきますね」

ドリア「ええ、お願いします」


…ドリアは大きな平鍋にオリーヴオイルを入れ、ニンニクと玉ねぎを炒める……ニンニクがカリカリと音を立てて香りを立て始め、玉ねぎが透明になったところでみじん切りにしてもらったトマトを入れ、ほどよく形が崩れたところで糧食の缶詰に入っていた「牛のハンバーグステーキ」を放り込み、薄めのコンソメスープで煮込んでいく…


ドリア「ん、いい香りがしてきましたね…」どうしても缶詰の糧食は塩気が多くて風味が乏しいので、オールスパイスとオレガノ、ローズマリーを少々入れ、アクセントとしてほのかな渋みをつけるべく赤ワインを注ぎ入れる…

デュイリオ「ふふ、さすがはドリア……とっても美味しそうね♪」

ドリア「お褒めいただき光栄です、よかったら味見してみますか?」小さじでスープをすくうと「はい、あーん♪」と、デュイリオの口元に近づけた…

デュイリオ「まぁ、ふふっ…あーん♪」

ドリア「いかがです?」

デュイリオ「ええ、とっても美味しい…♪」小さく舌なめずりをすると、とろりと甘い視線を向ける…

ドリア「うふふっ……ドルチェは食後までとっておかないと駄目ですよ、デュイリオ♪」そう言って意味深な含み笑いを浮かべた……

デュイリオ「もう、アンドレアのいじわる……ん、ちゅっ♪」

ドリア「あんっ……デュイリオったら、今はまだ駄目ですって…ば♪」

デュイリオ「んふふっ、そんな堅いことを言わないで……ね?」後ろから抱きつくと、服の裾から手を入れてドリアのたわわな乳房をこね回す…

ドリア「いけません、まだ夕食の支度が済んでいないんですから……んちゅっ、ちゅ…っ♪」口ではそう言いつつもまんざらでもなさそうなドリアは、肩口にあごを乗せるようにして顔をのぞき込むデュイリオに対して、振り返るようにして甘いキスを交わした…

デュイリオ「あむっ、ちゅぅ…っ♪」

ドリア「ん、ちゅる……っ♪」

レモ「///」

ロモロ「……また始まった」

エリトレア「うわわ…っ///」

ヴェネト「あー…えーと、その……デュイリオたちはなにかと持て余し気味なものですから…///」

デュイリオ「ふふっ…人の逢瀬をそんなにまじまじと見ちゃダメですよ、ヴィットリオ♪」

ヴェネト「あ、いえ…決してそういうつもりでは///」

ドリア「ふふ、私は一向に構いませんよ……でも、早くしないと夕食に間に合わなくなってしまいますから」

デュイリオ「むぅ……それなら仕方がないですね」

エリトレア「え、えぇ…と……それじゃあ次は何をすればいいですか…?」

ドリア「そうですね、エリトレアは果物の缶詰を開けてガラス鉢に空けて下さい」

エリトレア「わ、分かりました…っ///」


…軍用糧食に入っている果物缶(今回はサイコロ状に切ってある洋梨のシロップ漬けだった)を開け、大きなガラスボウルに次々と投入する……そこに冷蔵庫から出してきた苺のリキュールを注いでマラスキーノチェリーを飾ると、それだけでおしゃれなフルーツポンチになった…


ドリア「さてと、残りの缶詰は何に使いましょうか……」ドリアが眺めている缶詰の軍用クラッカーはそれなりに美味しいが、わざわざそれだけで食べたいようなものでもない…

ヴェネト「…困りましたね」

ドリア「ええ……あ、いいことを思いつきました♪」軽く手を打つと冷蔵庫から生クリーム、牛乳、バター、それときのこを取り出した…

ドリア「……ロモロ、レモ、エリトレアはクラッカーを軽く砕いて下さい…あまり細かくなりすぎないようにお願いします」

三人「「了解」」

ドリア「デュイリオ、グラタン皿を出してくれますか?」

デュイリオ「仰せのままに…♪」

ドリア「ニコ、貴女はその間にチーズをおろしてもらえる?」

ニコ「了解、任せておいて」


…ドリアはそれぞれに役割を振り分けると、自身はベシャメルソースに取りかかった…バターを溶かしたフライパンにふるいで振るった小麦粉(薄力粉)を入れるとダマにならないよう、そして焦げ付かないよう素早く木べらでかき混ぜる……小麦粉とバターが溶け合ってほんのり黄色く色づいたところで少しずつ牛乳を注いで伸ばし、ある程度とろりとしたところでコンソメスープと生クリームとを注ぎ入れて煮詰め、最後に別のフライパンでバターソテーにしたきのこを加える……砕いたクラッカーを敷き詰めた皿に出来上がったソースとチーズをかけ、オーブンに入れてこんがりと焼き上げると充分立派なグラタンが出来上がった…


ニコ「うわぁ、美味しそうだねぇ…♪」

ドリア「ええ…きっと美味しいと思いますよ」

エリトレア「ドリアさんたちのおかげで本当に助かりました…」

ドリア「気にしないで下さいな、エリトレア……私もお料理ができて楽しかったですから♪」

デュイリオ「…あなたには後でクラッカーのおこぼれをあげますからね?」デュイリオのカラスは厨房のカウンターの片隅に置いた大ぶりな鳥かごに入ってもらっている……かごの隙間から指を入れて、カラスの首筋を撫でるデュイリオ…

カラス「カー…♪」デュイリオに撫でてもらって気持ちよさそうにしている…

ドリア「ルチア、あなたにはスープを取った後の鶏をあげますから……いい娘にしていらっしゃいね?」

ルチア「ワフ…ッ♪」こちらは食堂の片隅にあるお気に入りの場所で寝そべっていて、ドリアに声をかけられるとぱたぱたと尻尾を振った……

ニコ「…でも、提督やライモンドがいないから少し寂しそうだね……?」

ヴェネト「ええ、確かに……任務とはいえ提督には早く戻ってきて欲しいですね」

ルチア「フゥ…ン……」組んだ前脚の上にあごを乗せて、少しわびしげな様子のルチア…

………

…夕暮れ時・トリポリ…

ガリバルディ「提督、デジエとアクスムのトリポリ入港は今夜の2000時頃になる予定だそうよ……まぁ潜水艦の速度じゃそのくらいの時間になるのも無理ないわ」

提督「そうでしょうね…」そう言ってどこか安堵の表情を浮かべる提督…

ガリバルディ「……今のところ深海側の航空機から夜間攻撃を受けたっていう話は聞かないから、日没さえ迎えればまずは一安心…ってところかしら?」…提督の気持ちを読んで、軽くにやりと笑ってみせた……

提督「ええ、その通りよ」

ガリバルディ「…良かったわね、これで安心してホテルに泊まれるじゃない……ここまで来る間にはなにかと邪魔が入ったけれど、今夜こそお相手をしてくれるんでしょう?」提督を隔壁に押しつけると、あごにあてがった親指で「くいっ…」と顔を上向かせた…

提督「え、えぇ…と、その……気持ちは嬉しいけれど、まだ作戦が終わったわけじゃないし…///」

ガリバルディ「ふぅん…そうは言うけれど、私にはすっかりその気に見えるわよ?」

提督「だって、ガリバルディみたいな美人にそんな風に言われたら…ね///」

ガリバルディ「あら、てっきり提督のことだからライモンドばっかりで他の娘なんて眼中にないものとばっかり思っていたわ……それとも目移りしちゃうお年頃なのかしら?」

提督「…もう、ガリバルディってば……♪」

ガリバルディ「ふふふ…いずれにしてもホテルは二人部屋だっていうし、色々と楽しみね……さ、ランチにどうぞ?」ガリバルディは軽やかに舷側のタラップを降りると、先ほど下ろした搭載艇から手を差しだし、提督の手を取った…

提督「ありがとう」

………

…トリポリ市街・ホテル「キレナイカ」…


ガリバルディ「あら、なかなかいいホテルじゃない…♪」

バンデ・ネーレ「確かに」

ライモン「ええ、本当に…提督もそう思いませんか?」そう言ってさりげなく腕を絡めた…

提督「ふふっ、そうね♪」

ディアナ「あぁ、提督…お疲れ様でございます。それと道中の護衛に感謝いたします」疲れた様子もなく、銀の弓を背中に背負って近寄ってきたディアナ

提督「ディアナこそ……どう、ここまで航海してきて疲れたんじゃないかしら?」

ディアナ「よしなに…わたくしは大丈夫でございます」

リベッチオ「……ねぇ、夕食はいつ頃なの?」

マエストラーレ「さぁ…でもそんなに遅くはならないはずよ?」

提督「そうね、チェックインを済ませてお部屋に入ったらすぐ夕食にしましょう…特に貴女たちはずいぶん駆け回っていたからお腹が空いたでしょう?」

グレカーレ「まぁ、駆逐艦っていうのはそういうものだから…♪」

…しばらくして・ホテルの食堂…

提督「ん、美味しい…♪」

ガリバルディ「ええ、本当に……これならローマ辺りにある並の店よりもいいわ」

…提督たちはホテルの食堂で夕食を味わっている……戦前は長らくイタリアの植民地で戦後もなにかと影響を受けていたこともあって、他の北アフリカ諸国と違ってイタリア料理も交じっているリビア……そのおかげでローマやナポリの店にも負けない美味しいピッツァやパスタを食べることができる…敬虔なイスラム教の国ゆえ大っぴらにワインを飲むことはできないが、それも見えないようにすれば黙認してくれる気前の良さがある…

グレイ提督「まさに「異国の美味」というものですわね?」

ヴァイス提督「…リビアの料理は初めてですが、とても美味しいです」

リベッチオ「うん、美味しい…っ♪」

マエストラーレ「ほぉら、口についてるわよ……まったくもう♪」


…テーブルに並んでいるのは干しぶどうとアーモンドが入っているピラフのようなライスに、レモンと香辛料を利かせたピリッと辛い鶏のロースト…それに丸くて薄いナポリ風生地のピッツァ……飲み物は冷たいレモネードか小さな銀のカップに入ったとても甘いコーヒーで、それも料理とよく合っている…


提督「ふふ…こんなに美味しい料理が味わえるなら、リビア作戦も悪くないわね?」

オリアーニ「冗談でしょ、私は勘弁して欲しいわ…」

ジオベルティ「まったく……だいたい今回の作戦で一番緊張していたのは提督だったわよね」

提督「…そうだったかしら?」そう言ってとぼけてみせるとウィンクを投げた…

…2020時・トリポリ港…

デジエ「両舷機停止、もやい綱を!」

アクスム「…ふぅぅ、やっと着きましたね」


…明るく照らされどこかエキゾチックな雰囲気が漂うトリポリ港の埠頭に、灰色と灰緑色で迷彩を施した「デジエ」と「アクスム」がゆっくりと入港してくる……二人とも数時間にわたる爆雷攻撃を耐えてきたせいで目の下には濃いくまができ、羽織っている黒いレザーコートはオイルや海水のシミだらけ…おまけに頭の白い艦長帽は形が崩れてふにゃふにゃになっている……そして艦のほうも爆雷攻撃であちこちガタがきているらしく、ディーゼルの青っぽい排煙がもうもうと立ちのぼり、調子のおかしいコンプレッサーかなにかがガタゴトと不満げな音を立てている……埠頭には出迎えに来た提督とガリバルディが待っていて、二人が道板を降りて敬礼すると答礼し、それから親しげにあいさつした…


提督「お疲れ様、二人とも…♪」そう言うと頬に音高くキスをした…

アクスム「はい、中型潜デジエおよびアクスム……無事に到着いたしまシタ」

ガリバルディ「魅惑の町トリポリへようこそ…まったく、待ちくたびれたわよ♪」

デジエ「もう、ガリバルディってば…やっと着いたのにそれはナイでしょウ♪」ガリバルディの軽口に苦笑いするデジエ…

ガリバルディ「ほんの冗談よ……ま、無事でよかったわ」

提督「ええ、本当に……さ、おしゃべりは後にしてホテルへ行きましょう。何はさておきまずは汚れを落とさないと…ね♪」

デジエ「はい♪」


…しばらくして…

デジエ「ふー…やっと落ち着きました」シャワーで身体にまとわりついた汗とディーゼルの油煙とを流し、さっぱりした格好に着替えた二人はホテルの食堂で遅めの夕食をとった…

アクスム「本当に…お腹いっぱいです♪」

提督「それは良かったわ……あと、何か甘いものでも頼みましょうか?」


…デジエたちが夕食を食べている間「お相伴」とばかりにコーヒーとお菓子をつまんでいた提督……食堂のテーブルにはガリバルディやライモンを始めとする艦娘たちや、グレイ提督とヴァイス提督も集まってゆったりとくつろいでいる…


アクスム「はい、甘いもの欲しいデス♪」

リベッチオ「あ、それじゃあ私もっ!」

マエストラーレ「こぉら、みっともないから落ち着いていなさい……提督、良かったら私も甘いのが食べたいわ」

カルドゥッチ「なら私も頂戴しましょう…詩を練るには糖分を摂らなくてはいけないので」

提督「はいはい…♪」


…提督はどうにか片言のイタリア語がしゃべれるウェイターを相手にイタリア語と英語、それにメニューの指さしで注文をし、しばらくするとバラの香りと甘い匂いのする焼き菓子が皿に載ってやってきた…アラビア風にとても甘い菓子は生地にたっぷりの砂糖とローズウォーター(バラのエッセンス)を練り込んで焼き上げ、最後に細かいアーモンドの粉を振りかけたもので、一個で充分過ぎるほどのボリュームがある…


グレカーレ「わぁぁ…美味しそうなお菓子ですね、ライモンド♪」

ライモン「ええ、本当に……ひとつ取ってあげますね」

デジエ「あむ…あぁぁ、すっごく甘いけど美味しい……ほら、アクスムも…あーん♪」

アクスム「あーん……うん、甘いねぇ♪」

リベッチオ「甘いのはお菓子じゃなくてデジエとアクスムだよね♪」

提督「ふふ…っ♪」

ガリバルディ「くくっ……言い得て妙ね♪」

アクスム「……それじゃあ私からも…はい、あーん♪」

デジエ「あー……むっ♪」お菓子と一緒に指先まで甘噛みするデジエ…

アクスム「あんっ…もう、デジエってば♪」

………

…深夜・提督の客室…

提督「ふわぁ……あ」

ガリバルディ「おやまぁ、提督ってばそんな大あくびして……」

提督「ええ……無事に到着したのだと思ったらなんだかほっとして、急に眠くなって来ちゃったの…」

ガリバルディ「ふふ、分かるわ……それじゃあ私は提督の安眠を妨げないよう失礼するわね」

提督「え? でも二人部屋だから、貴女のベッドもここよ…?」

ガリバルディ「あぁ、いいの……私はカルドゥッチからお誘いを受けたから、そっちで寝るわ♪」

提督「…ここに来るまであんなに敵襲だのなんだのあったのに……みんな元気ねぇ」あきれ半分で苦笑いを浮かべながら両手を上に向けた…

ガリバルディ「やっぱり缶に火が入って硝煙の匂いを嗅ぐと身体が火照るのよ……提督も誰か好きな娘を呼んであげたら?」

提督「んー、さすがに眠いし今夜は遠慮しようかしら……ふぁ…ぁ」

ガリバルディ「あら珍しい、明日は雨かしら……それじゃあ、お休みなさい♪」

提督「ええ、お休みなさい」

………

…しばらくして…

提督「……ライモン?」客室のドアから聞こえてくる控え目なノックの音は、耳慣れたライモンの叩き方だった…

ライモン「はい、わたしです……お邪魔してもよろしいですか?」

提督「ええ、どうぞ♪」

ライモン「…失礼します、提督……///」少し上気してぽーっと赤みを帯びた頬に、ため息のような息づかい……

提督「いらっしゃい…こんな時間にどうしたの?」(どうやらガリバルディの言うとおりみたいね…)

ライモン「あ、いえ…その……はぁ…ぁ///」

提督「…いらっしゃい、ライモン♪」

ライモン「あぁ、提督…ん、んふっ…ちゅ……」

提督「ちゅむっ、ちゅぅ…♪」

ライモン「ふぁ…あ、んちゅっ……ぷは…ぁ///」

提督「ふふっ…これが欲しかったのね?」

ライモン「は、はい…///」

提督「ライモンは船団の中央でずっと頑張ってくれていたし、その分「ごほうび」をあげないといけないわよね……来て?」ベッドに仰向けになるとネグリジェの裾をたくし上げた…

ライモン「あぁ、提督…ていとく……っ♪」

提督「あ、あっ、ふぁぁぁ…んっ♪」

…一方…

デジエ「ちゅむっ、んちゅ……アクスム…アクスム…ぅ♪」じゅぷっ、ぐちゅっ、ぬちゅ…っ♪

アクスム「ん、ふ…デジエ……デジエぇ…♪」じゅぷじゅぷっ、ずちゅ…っ♪

デジエ「はぁ、はぁ、はぁっ…気持ひいぃ……腰が…とろけそウ…♪」

アクスム「わらひも…ぉ……デジエのゆび…ぃ、すっごくイイの…ぉ♪」

デジエ「…アクスム……」ちゅぷ、ちゅぅっ…♪

アクスム「デジエ…」むちゅぅ…れろっ、ちゅるぅ♪

デジエ「はぁ…あ、あ、あぁ……っ♪」がくがく…っ♪

アクスム「んあぁぁ……はふっ、あぁ…ん♪」とろっ……ぶしゃぁぁ…♪

デジエ「……ふふ、アクスムの蜜でこんなにべとべと…♪」指を広げると人差し指と中指の間にねっとりと糸が垂れた…

アクスム「デジエこそ、こんなになッテ……♪」愛液まみれのべとつく手でデジエの頬を撫でる…

デジエ「ふふ……♪」

アクスム「くすくす…っ♪」

…同じ頃・鎮守府…

グラニト(中型潜アッチアイーオ級「花崗岩・御影石」)「…ただいま戻りました」

アルジェント(アッチアイーオ級「銀」)「アルジェントおよびグラニト、深夜哨戒より帰投いたしました……いま帰りましたよ、アッチアイーオ」


…深夜哨戒を終えて鎮守府に戻ってきたアッチアイーオ級のグラニトとアルジェント……二人がまとっている「艤装」はそれぞれ黒御影のような美しい光沢のある黒と、液体金属を流したような銀色の肌に吸い付くようなボディスーツスタイルで、そのSF映画のような格好からは無駄のない身体のラインがくっきりと浮き上がっている…


アッチアイーオ「お帰りなさい、海況はどう?」

アルジェント「風は南東の風力2くらいで、波は2から2.5メートル…艦橋も波に叩かれたのですっかり濡れてしまいました」

グラニト「もう髪の毛が絞れそうなほどです」

アッチアイーオ「それじゃあまずはお風呂で塩気を流して、それから寝る前に食堂で加給食をつまんでくるといいわ……二人ともお疲れ様」

アルジェント「ええ、それでは…」

………

…大浴場…

グラニト「……ねぇ、アルジェント」

アルジェント「ええ、なぁに?」

グラニト「…ここで「艤装」を脱ぐのはおっくうですし、いっそお風呂の中で脱いでしまいませんか?」

アルジェント「確かに……それにこれも洗濯機にかけるとはいえ、ある程度は塩気を落としておきたいですものね」

…深夜の誰もいない大浴場……灯りが人気の無い周囲を明るく照らし、樋を伝って流れるお湯の音だけが響く中、二人は浴槽に身体を沈めた…

グラニト「あぁぁ……気持ちい…ぃ……」

アルジェント「ええ…身体が冷えていたからなおの事…」

グラニト「……ふぅ。大分暖まったことですし、そろそろ身体を洗いましょうよ」

アルジェント「そうね……んっ」一生懸命に脱ごうとするが、まるでのり付けしたかのようにぴっちりと吸い付いた「艤装」はなかなか脱げない……

グラニト「…ふっ、んぅっ!」みちっ、ぴち…っ…!

アルジェント「ん……くっ」ぎちっ…ぱちんっ!

グラニト「ふぅぅ……まったくこれを脱ぐのも一苦労ですね、アルジェント?」

アルジェント「…なら、着たまま洗ってしまいましょうか?」

グラニト「あぁ、それはいいかもしれないですね…それじゃあお互いに洗いっこしましょうよ」

アルジェント「ええ、いいですよ…♪」

グラニト「それじゃあ石けんを……海水がついているせいか泡立ちが悪いですね」ぬる…っ♪

アルジェント「まぁまぁ、そう言わずに……んっ///」

グラニト「アルジェント、私の方もお願いします」

アルジェント「ああ、そうでしたね……///」ぬりゅ…っ♪

グラニト「あっ…///」二人がお互いの艤装に石けんを擦りつけて手で洗っていくと、肩甲骨や脇腹を指先が滑るたびにぞくりとするような感覚が走る…

アルジェント「…あ、あっ……あ…♪」

グラニト「ふあぁ……あ、ん…っ♪」

アルジェント「んっ、ふ……んぁぁ…っ///」くちっ、ちゅぷ…っ♪

グラニト「あふっ…あ、あっ……ふあぁ…アルジェント……ぉ///」つぷ…にちゅっ♪


…石けんでぬめるボディスーツを洗っているうちに、妙な気分になってきた二人……お互いに向かい合ってそれぞれ相手の瞳を見つめ合いながら甘く物欲しげな声をあげ、形のいい乳房を撫で上げ、くっきりと食い込んでいる花芯の割れ目に指をあてがう…


アルジェント「はぁ、はぁ…はぁ……んっ///」

グラニト「んくぅぅ……ん、あ…っ///」

アルジェント「ねぇ、グラニト……ちゅむ、ちゅぅ……もっと…ね///」

グラニト「ん、ちゅるっ、ちゅぅ……アルジェントも…そうして…?」

アルジェント「ん、くっ……ふっ…ん……///」

グラニト「あむっ…ちゅ…む……ん、ふぅ……っ///」

アルジェント「…グラニトの…ふともも……もうこんなに…とろとろ……っ♪」

グラニト「ん、あふっ…そういうアルジェントこそ…すっかり……べとべと…です……♪」

アルジェント「……ふふっ…それじゃあこのまま…♪」

グラニト「ん…♪」


…カランの前に据えてある腰かけから下りて直接大浴場の床に座り込むと、そのまま寝転がって絡み合う……ねっとりとした蜜がまとっているボディースーツを滑らせ、ふとももが擦れあうたびに「にちゅっ…♪」と粘っこい水音を立てる……アルジェントのきらめく銀髪とグラニトの艶やかな黒髪が床に広がり、二人のつま先が交錯する…


グラニト「あ、あ、あっ…あぁ…ん……っ♪」じゅぷっ、くちゅっ…ぬちゅっ♪

アルジェント「ん、あふぅ…んぅぅ…っ♪」ぐちゅぐちゅっ、ずちゅ……っ♪

グラニト「ふあぁぁ…あぁ、あ……アルジェント…好き……ぃ♪」

アルジェント「グラニト……可愛いわ…んあぁぁ、あふ…っ♪」


…石けんの泡と愛蜜にまみれたまま秘所を重ね、ねっとりと舌をむさぼり合うような濃密な口づけを交わし、互いのべとつく指を「恋人つなぎ」にしている二人……甘い言葉をささやきながら耳たぶを甘噛みし、首筋に跡が残るようなキスをする…


アルジェント「……好き…私の愛おしいグラニト……ちゅぅ…っ♪」

グラニト「私も…アルジェントが姉妹で良かったです……///」

アルジェント「嬉しい…っ♪」くちゅくちゅっ、にちゅ……とろ…っ♪

グラニト「アルジェント……あ、あっ、ふあぁ…イくぅ……っ♪」ぬちゅっ、くちゅ……ぷしゃぁぁ…っ♪


…数十分後…

アルジェント「……グラニト…もっと愛し合っていたいわ…♪」

グラニト「ん…私も……♪」

アルジェント「んっ、ぷ……」グラニトとキスを交わしていたが、急に顔をしかめた…

グラニト「……アルジェント?」

アルジェント「…いいの、大丈夫……石けんの泡が口の中に入っただけだから…」

グラニト「くすくすっ…もう、びっくりした……てっきり私のキスが不味かったのかと思った…♪」

アルジェント「そんなことないわ……でも、そろそろ上がりましょう?」

グラニト「そうですね…」

アルジェント「ふふ……この続きはベッドでしましょう…♪」

グラニト「…はい♪」

………



…本当は予定していなかったのですが、書いているうちに流れでアルジェント×グラニトの百合になりました……

…それにしても九州は球磨があふれて大変ですね。たしか去年も大雨の被害がありましたし、できるだけ少ない被害であって欲しいと願うばかりです…また、その救援活動にあたる皆さまには頭が下がるばかりです……どうか無理をせずに活動してくださいね


……それからマカロニ・ウェスタンのテーマ音楽で有名な映画音楽の作曲家、エンニオ・モリコーネ氏が亡くなってしまったそうで……長寿ではありましたが、もっとずっと名曲を作り続けていて欲しかったですね…

…翌朝・0700時…

提督「おはよう、みんな…昨夜はよく休めた?」

ガリバルディ「そうね「休めたか」って聞かれると……あんまり休めていないかもしれないわ♪」隣に座っているカルドゥッチに向けてウィンクを投げた…

カルドゥッチ「けほっ…///」昨日は巻いていなかったスカーフを首筋に巻き、しきりにそれを気にしている…

デジエ「たしかニ…ね、アクスム♪」

アクスム「ええ…♪」

シロッコ「……ふふ、どうやら昨晩はどの部屋もみんな同じだったようね♪」

リベッチオ「くすくすっ…ね、お姉ちゃん♪」

マエストラーレ「…っ///」

提督「あらあら…♪」

ライモン「あー……と、とりあえず朝食にしませんか///」

提督「ふふっ、そうね…それじゃあメアリとシャルロッテを……」

グレイ提督「…あら、今朝は皆さまお早いですわね…グ・モーニン」

提督「あぁ、噂をすれば……おはようございます。メアリ、エメラルド」

グレイ提督「ええ、おはようございます」

エメラルド「おはようございます、カンピオーニ提督」

ヴァイス提督「グーテンモルゲン(おはようございます)」

提督「グーテンモルゲン、シャルロッテ…それにティルピッツも」

ティルピッツ「グーテンモルゲン……っぷ…」相変わらず色白なティルピッツは、北アフリカの陽光の下ではなおのこと病弱そうに見える…

提督「…ティルピッツ?」

ティルピッツ「ヤー、なんでもありません……うぷ…っ…」

ヴァイス提督「エントシュルディゲン(失礼)…少し部屋に忘れ物を……」

グレイ提督「…あらまぁ」その一言だけで軽く見下したような皮肉と多少の気づかいを見事に表現してみせた…

…洗面所…

ヴァイス提督「しっかりしないか、まったく!」

ティルピッツ「ヤー、アトミラール…うぇぇ……」

ヴァイス提督「……はぁ、昨夜の夕食で胃もたれを起こすなど…ほら、胃薬を飲め」口調こそ厳しいが、ちゃんと薬を持っているヴァイス提督…

ティルピッツ「ダンケシェーン……ごくんっ」

ヴァイス提督「やれやれ…車には酔う、飛行機は嫌い、胃は弱い……まったく、それでも連邦海軍を代表する「艦娘」か?」

ティルピッツ「そう言われても……昨夜の料理は美味しかったけれど、油がきつかったようで…」

ヴァイス提督「情けない…今朝はコーヒーと果物くらいにしておけ」

ティルピッツ「了解…」

………

ヴァイス提督「…失礼しました」

提督「ええ、構いませんよ……ティルピッツは大丈夫ですか?」他の皆に聞こえないようそっと耳打ちした…

ヴァイス提督「ええ、どうにか…」

提督「それなら良かったです」

ヴァイス提督「それにしても情けないさまをお目にかけてしまいました……」

提督「まぁまぁ…外国の料理は美味しくてもお腹に合わないことがありますもの、仕方ないですよ」

ヴァイス提督「は、そう言っていただけるとありがたい限りです……」

リベッチオ「提督っ、早く来ないと無くなっちゃうよっ!」

提督「はいはい…♪」

…ホテルの食堂…

ライモン「提督、これもよそいましょうか?」

提督「ええ、いただくわ♪」

ガリバルディ「ジョヴァンニ、メロンをもう一切れどう?」

バンデ・ネーレ「うん、もらうよ」

コラッツィエーレ「…あむっ、むしゃむしゃ…もぐ……」

レジオナーリオ「はぐっ…ん、これは美味いな……んむっ…」


…正体のよく分からないリビア料理を相手にしながら、朝からボリュームたっぷりのメニューを頼んだ艦娘たち……定番の甘ったるいコーヒーと、なかなか新鮮でみずみずしいスイカとメロンのスライス、羊肉を薄切りにしたケバブのような肉料理に、ぽってりした「フムス」(ひよこ豆のペースト)とそれにつけるピタパン…


グレイ提督「エメラルド、そのメロンをもう少しいただけます?」

エメラルド「はい」

提督「ライモン、このケバブみたいな料理なかなか美味しいわよ……取ってあげましょうか?」ちょっと脂っこいが香辛料が効いていて、なかなか美味な肉料理…

ライモン「そうですね、お願いします」

ヴァイス提督「……どうにも甘いな」

ティルピッツ「ヤー…別に甘いものは嫌いじゃないけれど、これは甘すぎる……」綺麗な銅のカップに注がれたシロップのように甘く、しかもヴェスヴィアスの火口のように熱いアラビアコーヒーを相手に微妙な顔をしている…

ライモン「確かに、とても甘いですね」

提督「…まるで恋人どうしみたいよね、ライモン?」

ライモン「も、もう…///」

ガリバルディ「確かに、お熱いところもそっくりね♪」

提督「ふふっ…♪」

マエストラーレ「…ほら、そんなに食べると輸送船みたいになっちゃうわよ?」

リベッチオ「大丈夫だよ、お姉ちゃん……この後ちゃんと「運動」するもんっ♪」

マエストラーレ「…もう、すぐそうやって減らず口を叩くんだからっ///」

オリアーニ「まぁまぁ、確かに帰りの航海だってあるんだし……マエストラーレ、そう言わないであげたら?」

マエストラーレ「えっ? あ、あぁ…そうね」

リベッチオ「くすくす……お姉ちゃんってば、いったいどんな「運動」を想像してたの?」

マエストラーレ「余計なお世話よ…いいから黙って食べてなさい///」

リベッチオ「はぁーい♪」

…今日はパリ祭(フランス革命記念日)ですね……世の中はコロナに大雨、イナゴの害と、まるで黙示録みたいになってきていますが、いい加減に終息してほしいものです


……それと強襲揚陸艦「ボノム・リシャール」の火災がニュースになっていましたね……実情を知らずに言うのはよろしくないですが、ちょっと最近の米軍はたるんでいる感じがします…

…0900時…

提督「それじゃあ今日は物資の積み卸しと、各艦の損傷箇所の修理が終わるまで自由行動とします…」

一同「「わー♪」」

提督「……といっても、国連の職員さんに引率してもらう形になるからほとんど団体行動なのは変わらないけれど、ね」

ガリバルディ「それでも陸(おか)はいいものよ……アラビアらしいエキゾチックで可愛い女の子がいるといいんだけど♪」

提督「あー…ガリバルディ、期待している所に水を差すようで悪いけれど……」

ガリバルディ「何かしら?」

提督「ここはイスラムの国でそういうことに関してはなにかとデリケートだから、地元の女の子に声をかけたり誘ったりするのはダメよ……いいわね?」

ガリバルディ「…」

提督「ガリバルディ、返事は?」

ガリバルディ「……オッベディスコ(従うわ)」

提督「よろしい」

ガリバルディ「提督…それじゃあ提督もそこらの素敵なお姉さんを口説いたりしちゃ駄目ってことね」

提督「…え?」

ガリバルディ「だってそうでしょう? 地元の女性に声をかけちゃいけないって言うのは、私も提督も同じよね?」

提督「えぇ、まぁ…」

ガリバルディ「……提督はそれを守れる自信があるの?」

提督「も、もちろん…私は提督としてみんなを指揮する立場ですもの、決まりがあるならそれを率先垂範するのがあるべき姿というものよ……」

ガリバルディ「ふぅん、そう…じゃあ地元のお姉さんに「良かったらお食事でもご一緒しませんか?」って声をかけられたら?」

提督「ええ、喜ん……いえ、もちろん丁重にお断りするわ」

リベッチオ「この調子じゃダメそうだねぇ♪」

カルドゥッチ「ふぅ…こうなったら提督が蝶のように綺麗な花を求めてふらふら飛んでいってしまわないよう、誰か付いていてあげたほうがいいね」

オリアーニ「まったくね」

バンデ・ネーレ「…と、なるとライモンド……君しかいないよね」

ライモン「えっ?」

提督「ふふっ、ライモンと一緒に街歩きなんて素敵ね……よかったらご一緒してもらえるかしら?」

ライモン「は、はい…っ///」

ガリバルディ「あーあ、二人ともお熱くって結構ね……ところでカルドゥッチ、良かったら私と…どう?」

カルドゥッチ「……まさか、あの偉大なガリバルディが昨夜だけでなく今日も私を選んでくれるとは…も、もちろんご一緒させてもらうよ///」

リベッチオ「お姉ちゃん、一緒に回ろう?」

マエストラーレ「ええ、そうさせてもらうわ…グレカーレ、貴女はどうする?」

グレカーレ「うん、私もお姉ちゃんたちと一緒に行くね」

マエストラーレ「そう?」

…同じ1964年の除籍でライモンと親しいグレカーレだが、ライモンの「恋人」である提督に気兼ねして一緒に行きたいのを我慢しているのではないか……そう思って気づかったマエストラーレ…

シロッコ「…大丈夫。きっと優しい提督のことだから、途中で代わってくれると思うわ」

グレカーレ「ありがとう、シロッコ///」

シロッコ「ふふ…お礼なんていらないわ。単に「歴史の立会人」である私の勘がそう告げているだけよ…♪」

提督「……ええ、私もライモンをひとりじめなんてしないから安心して?」

グレカーレ「///」

ライモン「良かったら後で一緒に市場(スーク)でも回りましょうね、グレカーレ」

グレカーレ「…うん♪」

…1000時・トリポリ市街…

提督「…ライモン、貴女にはこれなんて似合うんじゃないかしら」

ライモン「どれですか?」

提督「ほら、これ……アラビア風のスカーフだけれど、色味もシックでライモンの綺麗な髪にぴったりだと思うの」

ライモン「そ、そうでしょうか…///」

提督「ええ…せっかくの機会だし、お店の人に頼んで試させてもらったら?」

ライモン「分かりました、提督がそうおっしゃるのでしたら…」

提督「それじゃあ私が尋ねてみるわ……すみません♪」

………

シロッコ「…それにしても戦中のイメージでいたから驚いたわ」

マエストラーレ「街の様子?」

シロッコ「うん……トリポリと言えばいかにもキレナイカの植民地らしい別荘に柑橘を植えた果樹園、それから港って言う感じだったから…高い建物なんてなかったし」

グレカーレ「確かにそうかも…でもこの熱い風やほこりっぽい感じは変わらないね」

シロッコ「ふふ、私の風だもの」(※シロッコ…砂漠の熱い季節風)

マエストラーレ「そういえばそうよね……ところでせっかくトリポリに来たんだから、お土産にアクセサリーでも買わない?」そう言ってこまごました細工物を売っている工房をのぞき込んだ…

リベッチオ「それいいかも…どれにしよっか、お姉ちゃん♪」

………

レジオナーリオ「…しかしかつてのカルタゴの都市がここまで大きくなるとは……」

コラッツィエーレ「ローマ軍団の兵士としてはびっくりでしょうね」(※レジオナーリオ…ローマ軍団兵)

レジオナーリオ「むむむ……こんなに新鮮なイチジクが…」

(※大カトーの演説「このように新鮮なイチジクが持ってこられるほどの距離にカルタゴ(というローマにとっての脅威)がある…ゆえにカルタゴは滅びねばならない」)

コラッツィエーレ「…ねぇレジオナーリオ、どうせだからうちの姉妹たちに何か買っていってあげましょうよ」

レジオナーリオ「うん、そうだな……」

コラッツィエーレ「私たちのクラスは数が多いし、お財布ともよく相談しないとね?」

レジオナーリオ「…チェザーレには何をあげれば喜ぶだろうか…いつも髪を気にしているからスカーフがいいか……」

コラッツィエーレ「ちょっと!」

レジオナーリオ「ん、あぁ……どうした?」

コラッツィエーレ「あのね…貴女がチェザーレのことが大好きなのは知っているけど、自分の姉妹に買っていってあげるプレゼントなんだから、ちゃんと選ぶのを手伝って?」

レジオナーリオ「悪かったよ、済まない……」

コラッツィエーレ「ふぅ……分かったわ、まずはあの女たらしに買っていってあげる物を選びましょう?」

レジオナーリオ「あぁ…ありがとう、コラッツィエーレ!」

コラッツィエーレ「ノン・ファ・ニエンテ(いいのよ)…そんなにお礼を言うことなんてないわ、照れるじゃない///」

………

ガリバルディ「…それで、貴女はどこから来たの?」

観光客の女性「私はフランスからよ」

ガリバルディ「そう…フランスには美人が多いって言うけれど、あながち嘘じゃないみたいね……それとも貴女が特別なのかしら♪」

…喫茶店で小さなカップに入ったコーヒーをちびちびとすすりつつ、相手のほっそりした手に自分の手を重ねた……そして映画のようなキザなセリフでも、情熱的なガリバルディの手にかかるとどんな相手をも骨抜きにしてしまう必殺の口説き文句になってしまう…

女性「///」

ガリバルディ「ふふふ…♪」

………

…昼下がり…

提督「ふー、こうやって街をそぞろ歩きするのもなかなか楽しいわよね」道端のカフェで甘いコーヒーをすすりながらライモンに向けてにっこりした

ライモン「はい…特に提督と一緒ですからなおの事……///」

提督「あら、そう言ってもらえて嬉しいわ♪」

ライモン「///」

提督「ふふふっ……そういえば何人か姿が見えないわね?」

ライモン「え…あぁ、そう言われてみれば確かに……」

提督「まぁ時間になったらホテルまで戻ってくればいいし「艦娘」だからよっぽどの事がない限り大丈夫でしょうけれど…」

ライモン「そうですね」

提督「えぇと、いないのはデジエとアクスムに……ガリバルディとカルドゥッチもそうみたいね」

ライモン「…きっとガリバルディのことですから、カルドゥッチをどこかに連れ込んでいるに違いありませんね」

提督「ライモンも午後はグレカーレと一緒に楽しんでいらっしゃい♪」

ライモン「…はい///」

………

…夕方…

提督「さてと、みんな充分に羽を伸ばせたかしら?」

ライモン「はい」

デジエ「もちろん…ね、アクスム♪」

アクスム「うん♪」

ガリバルディ「ええ、楽しかったわ…♪」艶のある色っぽい表情を浮かべ、カルドゥッチに向けて意味深な笑みを向ける…

カルドゥッチ「///」

提督「結構。何しろ帰りもあるのだから、充分に鋭気を養っておかないと…ね♪」

マエストラーレ「鋭気を養うどころか、かえってくたびれたわ…」

シロッコ「ふふふ……♪」

リベッチオ「くすくすっ…お姉ちゃんってばだらしないねぇ♪」

マエストラーレ「誰のせいだと思っているのよ、まったく…グレカーレ、貴女はライモンドと有意義に過ごせた?」

グレカーレ「おかげさまで…ありがとう、お姉ちゃん」

マエストラーレ「いいのよ、貴女が幸せなら私も嬉しいわ……どこかの盛りが付いた妹たちはさておき」

リベッチオ「そうそう♪」

マエストラーレ「…」

グレカーレ「くすっ…♪」

提督「仲がいいようで何よりね……ディアナ、貴女はどうだった?」

ディアナ「よしなに…わたくしもスークを巡ったりして充分に楽しませていただきました」

提督「良かったわ…何しろ貴女がこの作戦で一番の立役者だもの」

ディアナ「ふふ、それは褒めすぎというものでございます」

提督「謙遜することはないわ……鎮守府に戻ったら今回の作戦手当で何を買うかとか、考える楽しみができるわね♪」

ディアナ「ええ…♪」

…翌朝・0800時…

国連職員「……今回は支援物資を迅速に輸送していただき、本当に助かりました。リビア政府からも感謝するとのことです」


…埠頭に整列した提督たちに対し、見送りに来た青いベレーの国連職員やリビア海軍の士官、政府のお偉方がそれぞれ感謝のメッセージを伝える……埠頭には「さぁっ…」と陸軟風が吹き、潮も引き始めて海に出るにはちょうどいい具合になりつつある…


提督「いえ、任務ですから……それに、この作戦がなければ貴女にも出会えなかったでしょうし…ね♪」握手を交わす瞬間を見計らって、そっとささやいた…

国連職員「そ、それは…///」

ライモン「……こほん!」

提督「まぁ、その…とにかく無事に物資が届けられて良かったです。我々はこれよりタラントに帰投します」

国連職員「はい……どうか無事な航海を」

提督「ふふ、ありがとうございます」

………



提督「両舷前進微速!」

ガリバルディ「了解」

提督「…針路そのまま、港外に出たら単横陣を組みます」

ガリバルディ「了解……で、どうだったの?」

提督「何が?」

ガリバルディ「ふふっ、しらばっくれても無駄よ…あの国連のお嬢さん、提督の事を見て頬を紅くしていたじゃない」

提督「ノーコメント」

ガリバルディ「知らないわよ……そうやってつまみ食いばっかりしていると、いつかライモンドに刺されるから…♪」

提督「ライモンはそんなことしませんー…それに、ライモンとは特別だもの♪」

ガリバルディ「まったくお熱いことで……」

提督「そんなことを言ったらガリバルディこそ……あの短い時間で一体どのくらいのお姉さんを口説いたの?」

ガリバルディ「ご想像にお任せするわ♪」

提督「ふふっ♪」

ガリバルディ「ふふふふっ…♪」



デジエ「…ようやく二人きりになれたわ……ね、アクスム♪」

アクスム「うん、そうね…デジエ♪」


…全速の水上航行でも14ノットそこそこと、戦隊の速度には到底ついて行けない潜水艦「デジエ」と「アクスム」は別行動で、静かな海面を二隻だけで滑るように進んでいく…髪にはトリポリで買ったお揃いの金のアクセサリーがついている…


デジエ「提督たちも好きだケレど、やっぱりアクスムと二人きりの方がいいの…」

アクスム「私も…///」

………


グレイ提督「……紅茶を淹れてもらえるかしら、エメラルド?」

エメラルド「分かりました…葉はどれにしますか」

グレイ提督「そうですわね……トワイニングのアールグレイがありますから、それを頂きましょう」

エメラルド「アイ・アイ・マイ・レディ」

グレイ提督「…それにしても往路の激しい空襲が嘘のようですわね……」いくら双眼鏡で探っても晴れ渡った空には機影一つ見えず、穏やかな地中海の波間に、はかなげでありながら恐ろしい白い雷跡が伸びる…と言うこともない…



ヴァイス提督「…ティルピッツ、引き続き右舷側の見張りを厳にせよ……それと、ゼータクト(レーダー)はどうか?」

ティルピッツ「ヤヴォール(了解)…ゼータクトは水上、空中ともに感なし」

ヴァイス提督「よろしい、ならコーヒーを持ってきてくれ…ティルピッツも一杯付き合わないか?」

ティルピッツ「ダンケシェーン、司令…いただきます」

ヴァイス提督「うむ……しかし今回の「知識交換プログラム」が完了した暁には、ビスマルクとティルピッツにも何か褒美をやらないとな…///」ティルピッツが艦橋から出て行くと、一人頬を赤らめてつぶやいた…



ガリバルディ「コーヒーを持ってきたわよ、提督……良かったらどう?」

提督「あら、ありがとう…ちょうど一杯欲しかったところよ♪」

ガリバルディ「潮風を浴びていると喉が渇くものね…」

提督「ええ……んぅ、美味しい♪」

ガリバルディ「それは良かったわね……鎮守府まではあと一日ってところだし、友軍の哨戒線までは数時間…そのあたりまでたどり着けば制空権もあるから、少しは頭の上を気にしなくて済みそうね」

提督「そうね…」ほうろう引きのマグカップを両手で包むようにして持ち、ミルク入りのコーヒーをすする…

ガリバルディ「……戻ったらうんとライモンドを抱いてあげなさいよ?」

提督「ええ、言われなくても…♪」

ガリバルディ「ふふ、余計なお世話だったかしら……」

………



…1335時・鎮守府…

デルフィーノ「…本当ですか、良かったです……」

サイント・ボン「間違いないとも、デルフィーノ君……たった今「プレイアディ船団護衛戦隊司令より鎮守府…ディアナおよび直接・間接護衛戦隊は友軍哨戒線の範囲内に入れり……上空援護のCR42戦闘機およびカントZ506水偵と合流」と電文が届いた…まずはこれで一安心だ」

デルフィーノ「ええ……やっと安心しましたよ…ぅ」

ガラテア「ふふ…デルフィーノ、貴女は本当に提督がたの事を心配しておりましたものね」息をのむような美しさのガラテアが優しく微笑む…

デルフィーノ「はい…///」

アルゴ「それにしても提督は勇敢だし…帰ってきたら私の上に乗せてあげなくちゃ♪」

…金羊毛を取りに行くギリシャ神話の冒険譚「アルゴー号の物語」からつけられた「アルゴ」は金羊毛を肩に羽織り、ユーノー(ヘーラー)から授けられた「予言の柏の枝」をかんざしのように差している…

アルゴナウタ「そのときは私も乗せてよね?」イタリア語で「イカの一種」とされるが、むしろギリシャ中の英雄豪傑が集まったアルゴーの乗員から「勇敢な者」を意味するアルゴナウタ……

アルゴ「ふふ…私なら「勇敢であること」さえ証明できれば何人来てくれたって構わないけど♪」

リボティ「くすくすっ……もしそうなったらデルフィーノなんて可愛いから大変なことになっちゃうわ♪」

デルフィーノ「えっ、まさか皆で私のことを……///」両の頬に手を当てて恥ずかしげな…それでいて嬉しそうな表情を浮かべるデルフィーノ……

トリケーコ「まぁ…とにかく良かったじゃない、デルフィーノ。提督が戻ってくるわよ」

デルフィーノ「はい…って、こうしてはいられません。さっそくお出迎えの準備をしないとですね♪」イルカの背のような濃灰色の髪をなびかせ、跳ねるような足取りで作戦室から出て行く…

トリケーコ「ああいうところがたまらないのよね…♪」デルフィーノとは姉妹艦にあたるトリケーコ(セイウチ)が、後ろ姿を見送ってからにんまりと笑みをうかべた……

………



…翌日・1020時…

アッチアイーオ「ぜんたぁーい、整列っ!」

デルフィーノ「海軍旗、捧げぇ!」


…イタリア海軍歌「ラ・リティラータ」(La Ritirata)のレコードがかけられ、カヴール、デュイリオ、ローマ、ヴェネトがそれぞれイタリア海軍旗、NATO旗、ホワイト・エンサイン(英海軍旗)、ドイツ連邦海軍旗を捧げ持つ中、戦隊はしずしずと沖合に艦を停泊させた……波に叩かれた喫水線の辺りや錨鎖でこすれた部分は塗装が剥がれて早くも赤錆が浮いているが、艦上はよく整えられ、淡灰色と濃い灰色の迷彩も凛とした美しさを際立たせている……そしてそれぞれの艦尾に掲げられたイタリア海軍旗の「トリコローリ」(三色旗)やエメラルドの「ホワイト・エンサイン」(英海軍旗)、ティルピッツの「ブンデスマリーネ」(連邦海軍)旗が白、黒、灰色ばかりの船体に鮮やかな色あいを添えている…


提督「…」

グレイ提督「…」

ヴァイス提督「…」

…鎮守府のモーターランチから降りて波止場に立って、鎮守府の艦娘たちに答礼する提督たち……晩秋の穏やかな日差しが明るく鎮守府を照らし、濃紺の制服に金モールと略綬がキラキラと映え、ディアナたち出撃組の艦娘たちもそれぞれの「艤装」をまとってきっちり整列している…

提督「秋期リビア方面輸送作戦むけ船団「プレイアディ」…ただいま帰投しました!」

アッチアイーオ「船団の帰投と任務の成功に、鎮守府一同よりお祝いを申し上げます!」代表として大きなカサブランカ(白百合)の花束を渡した…

提督「よろしい……休め」一斉に直立不動を解くと、態度こそ崩さずにいるものの笑顔を向けてくれる艦娘たち…

デルフィーノ「お帰りなさいっ、提督っ…♪」

提督「ええ……ただいま、みんな♪」堅苦しい式典向けの態度を崩すとパチリとウィンクを投げ、それからにっこりと微笑んだ……途端にきゃあきゃあと嬌声が響き渡り、一斉に抱きついてきたりキスしてきたりする艦娘たち……と、ちぎれそうなほど尻尾を振って提督の足元に駆け寄ってきたルチア…

カミチア・ネラ(ソルダティ級駆逐艦「黒シャツ隊員」)「ヴィンチェレ!(勝利!)、ヴィンチェレ!ヴィンチェレ!」

ルビノ(中型潜シレーナ級「ルビー」)「提督っ、おめでとう! んんーっ、ちゅぅっ…ぷはぁ♪」

アミラーリオ・カラッチォーロ(大型潜カーニ級)「作戦は大成功でしたな、提督……♪」

ルイージ・トレーリ(大型潜マルコーニ級)「おめでとうございます、提督♪」

ルチア「ワンワンッ!」

提督「ありがとう、みんな…これもみんなの努力があったからよ……ん、ちゅぅっ♪」花束を片手に抱いたまま次々と左右の頬……と、それに劣らずたくさん唇へのキスを受ける提督…きっちりかぶっていた軍帽はすっかりずれてしまい、頬のあちこちにルージュの跡がついている…

ペルラ(中型潜ペルラ級「真珠」)「提督にますますの健康と富、長寿がありますよう…ちゅっ♪」パールピンクとパールホワイトの交じったような艶やかな髪からは甘いいい匂いがして、透き通るような白い肌をした顔が左頬に近づいた…

トゥルケーゼ(ペルラ級「トルコ石」)「私からは繁栄と成功を! んちゅっ♪」トルコ石のような水色を帯びた髪に艶やかな水色の瞳がせまり、右頬に熱い唇が触れた…

提督「んっ…嬉しいわ、二人とも♪」

グラニト(アッチアイーオ級「花崗岩・御影石」)「…提督の功績は、私の心に彫り込まれました……ちゅっ♪」

提督「ふふふっ、ありがとう…♪」

クィーン・エリザベス「…見事でございます、エメラルド……そして提督、お帰りなさいませ」

グレイ提督「ふふ…お気遣いありがとう、エリザベス」

エメラルド「お褒めいただき光栄です」

ビスマルク「…提督、よく戻られた! 我が妹はよく戦ったか?」

ヴァイス提督「ヤー。おかげで私は無事で、作戦に寄与することも出来た」

ビスマルク「そうか……よくやったぞ、ティルピッツ! それでこそ「フォン・ティルピッツ提督」の名を受け継ぐ者だ!」

ティルピッツ「ダンケシェーン、姉上…そのように言われると気恥ずかしいですね///」

ビスマルク「何を恥ずかしがることがあるか、貴様の功績なのだぞ!」

ティルピッツ「///」

デルフィーノ「……そういうわけで、デジエとアクスムが戻ってくる明日以降にお祝いのパーティをします♪」

提督「ええ♪」

アッチアイーオ「今のうちに食べたいものがあったら言ってちょうだいね」

提督「了解♪」

ポーラ「美味しいお酒も用意してありますからねぇ~♪」

提督「ふふっ、楽しみにしているわ…♪」

………

…1400時…

グリエルモ・マルコーニ「ただいま、提督……グリエルモ・マルコーニ、帰投したよ」

提督「お帰りなさい…貴女が鎮守府からの通信を中継してくれたおかげで、交信がやりやすかったわ」

マルコーニ「…それはよかった……」そう言いながらさりげなく指先で「ツー・ツー・トン…」とリズミカルにふとももを叩いている…

提督「……ふふ「グラツィエ」…ね♪」

アントニオ・シエスタ「……アントニオ・シエスタ、ただいま帰投しました…ぁ」

提督「お疲れ様、シエスタ……ずいぶん眠そうね?」

シエスタ「はい…実は哨戒中に余裕があったら仮眠を取るつもりでいたのですが、そのたびに機影を見かけたり通信が入ったりで……」目の下に青黒いくまを作り、立ったまま船を漕ぎそうになっている…

提督「あらあら…それじゃあしばらく寝ていらっしゃい♪」

シエスタ「……では、お言葉に甘えて…ふわぁ……ぁ」

提督「マルコーニ、貴女は?」

マルコーニ「私はまだまだ元気だから…部屋に戻ったらハム(アマチュア無線家)の仲間と少し交信でもしようかと思っているよ……」

提督「そう…それじゃあまた後で♪」

マルコーニ「ああ…」

…1530時…

リットリオ「…リットリオ以下「スコルピオーネ」戦隊、ただいま帰投しました!」

提督「お帰りなさい、リットリオ……それにみんなも♪」

トレント「はい、こうして無事に帰投できました…」

トリエステ「…私たち、ちゃんとお役に立てたでしょうか?」

提督「ええ♪」

フォルゴーレ(フォルゴーレ級駆逐艦「稲妻」)「私たちも頑張ったわよ」

提督「ふふ、分かっているわ」

フルミーネ(フォルゴーレ級「電光・電撃」)「そ、まるで電光石火のように…ね」

ランポ(フォルゴーレ級「雷」)「私たちのこと、褒めてくれる?」

バレーノ(フォルゴーレ級「閃光」)「ね、提督?」

提督「もちろん……みんなお疲れ様♪」ちゅっ…♪

フルミーネ「ありがと、提督♪」

トレント「て…提督は私みたいな重巡のなり損ねにも優しくして下さって……少し恥ずかしいです///」

提督「もう、そういうこと言わない…トレントもトリエステも、私にとってはかけがえのない大事な一人よ」

トリエステ「///」

提督「…さぁさぁ、おしゃべりはそのくらいにして……お風呂で汗を流していらっしゃい」

リットリオ「はい……ふふふっ、それが済んだら数日ぶりにヴェネトたちと一緒に「仲良く」したいですね♪」

提督「…リットリオ」

リットリオ「はい、何でしょう?」

提督「……翌日に差し支えない程度にしてあげてね?」

リットリオ「はぁい、了解です♪」

アッチアイーオ「……あれは絶対分かってないわ」

提督「ふふふっ…そうね♪」

…1730時…

デジエ「…デジエ、帰投しました」

アクスム「同じくアクスム、帰投しました」

提督「二人ともお帰りなさい、無事で良かったわ…って、アクスムったら体中まっ黒けじゃない……一体どうしたの?」

…カーキ色の熱帯用シャツを着ているアクスムだが、そのシャツの胸元から左右の腕、頬からお腹からお構いなしにべったりと黒く汚れている…

アクスム「あー、これですか。実は帰投中にディーゼル主機の滑油パイプから油が漏れて…どうにか閉めたのですが、こんなになってしまいまシタ……」

提督「なるほどね…それじゃあ戦闘日誌の提出は後でいいから、服を洗濯機にかけてお風呂に入ってきなさい……命令よ♪」

アクスム「了解…デジエ、一緒に入りましょう?」

デジエ「ええ…♪」お互いに指を絡めた「恋人つなぎ」で大浴場に向かって歩いて行った…

………



…翌日…

提督「おー、よしよし……ルチアはいい子ねぇ…そーれっ♪」

ルチア「ワンッ♪」


…作戦のあいだ着ていたずっしりと重い制服からごくあっさりしたタートルネックセーターとスカートに着替え、大喜びで庭をはしゃぎ回っているルチア相手におもちゃを投げたり、抱きしめてあちこち撫で回したりしている提督……元気な駆逐艦や中型潜の数人も一緒になって駆け回り、カヴールたちはそれを食堂から眺めている…


カヴール「…ふふふ、提督ったらさっきからずっとあんな具合で……なんとも微笑ましいですね♪」

チェザーレ「まぁ、提督の気持ちは分からぬでもない……作戦は成功、援護部隊の「スコルピオーネ」戦隊もリットリオを始め何事もなく帰投し、哨戒にあたっていたマルコーニたちから、デジエとアクスムまで残らず無事とあれば浮かれた気分にもなる」

ドリア「ええ…それにしても、ああして無邪気にルチアとたわむれている提督を見ていると……」

チェザーレ「提督を見ると…なんだ?」

ドリア「……とても可愛くて、もう食べてしまいたいですね♪」おっとりした笑みを浮かべつつも、庭でルチアに振り回されている提督を見る目はとろりと妖しげな色を帯び、小さく舌なめずりをした……

カヴール「まぁまぁ…アンドレアったら本当に美食家なんですから♪」ころころと笑いながらも、やはり提督を見る目は色欲を帯びて爛々と輝いている…

チェザーレ「ふっ、やれやれ…どうやら二人ともまだまだ枯れてはいないようであるな」

カヴール「あら……ジュリオ、そういう貴女だって提督と一戦交えたいでしょう?」

チェザーレ「無論だ…あの優しい性格に甘い声、ふっくらした柔肌……口説きたくもなるというものだ」

カヴール「ふふっ…♪」

ドリア「うふふ…っ♪」

チェザーレ「ははははっ…♪」

サウロ「……カヴールたちは何の話をしているんでしょうね、とっても楽しそうです」

提督「そうね……ほぉら、もう一回投げてあげますからねぇ♪」

ルチア「ワフッ…♪」

フレッチア「私だって負けないわよ!」

提督「ふふふっ…もう、フレッチアったらルチアに張り合ってどうするのよ♪」

ライモン「…駆逐艦の娘はみんな元気一杯ですから」

提督「あら、ライモン……厨房でお昼の手伝いをしに行くんじゃなかったの?」

ライモン「ええ、それが「作戦成功お祝いパーティの準備を始めるからのぞいちゃダメですっ!」…とエリトレアに追い出されまして」

提督「なるほど…」

ライモン「コーヒーはもらえたので、しばらくこちらにいることにします」

提督「ええ、歓迎するわ……まぁ、偉い偉い♪」駆け込んでくるルチアを抱きとめ、そのまま一緒に芝生の上に転がった……チェックの暖色のスカートがめくれ上がり、黒いストッキングと対照的な白いふとももがあらわになる…

ライモン「…っ///」

………

…昼・食堂…

提督「…それじゃあ、そろそろ入りましょうか?」鎮守府の内輪のお祝いと言うことで、紺の正装ではなくすっきりした白いドレススタイルの提督…唇には艶のあるパールピンクのルージュを引き、胸元には控え目な銀のネックレスをつけている…

ライモン「はい」ライモンは淡いグレイの袖なしドレススタイルで、髪はリボンでまとめたオードリー・ヘップバーン風のアップにしている…

提督「手も繋ぐ?」

ライモン「ええ、提督がよろしければ…///」

提督「もちろん♪」

ガリバルディ「それじゃあ私たちも繋ぎましょうか…左手を貸してもらえるかしら、ジョヴァンニ?」メリハリの効いた身体に張り付くような真紅のドレスがなんとも艶やかなガリバルディ…

バンデ・ネーレ「はい」こちらはラメの入った黒一色のドレスと、首元を飾る金の小さな十字架がおしゃれなバンデ・ネーレ…

提督「ふふっ…それじゃあ、いざ♪」

一同「「わーっ!」」

提督「……まぁ、すごいわね♪」


…食堂のドアを開けてもらった途端に大歓声で迎えられた提督たち……普段は落ち着いた雰囲気の食堂は紙の花飾りや紅・白・緑のリボンでにぎにぎしく飾り立ててあり、演説台の後ろには「祝!作戦成功!」の垂れ幕が下がっている……厨房からはエリトリアたち十数人がおおわらわで作ったごちそうの香りが漂い、長テーブルにはレースのテーブルクロスが敷かれている。テーブルの中央には重巡「ポーラ」が吟味したスプマンテの大瓶がアイスバケットで冷やされて並んでいて、所々に花が活けてある…


アオスタ「みんな、静粛に……それでは最初に作戦の成功と艦隊の帰投を祝って乾杯したいと思います…提督、お願いします」なにかと委員長気質で司会役や進行係の好きな軽巡アオスタがマイクを取り上げ、提督に挨拶と乾杯の音頭を取るよう促した…

提督「ええ…あー、まずは何より誰も怪我をせず「プレイアディ」船団が帰投できたこと、そして無事に秋期作戦を成功させられたことを嬉しく思います……これもひとえに皆の活躍、特に物資輸送を担ったディアナ…」

ディアナ「よしなに」

提督「そして直衛のマエストラーレ級に、間接援護のガリバルディを始め護衛艦艇のみんな…」

マエストラーレ「あのくらい何てことないわ」

ガリバルディ「そう言ってくれて嬉しいわよ、提督♪」

提督「それから「スコルピオーネ」戦隊としていざというときの援護役を担ってくれたリットリオたち……」

リットリオ「グラツィエ♪」

提督「…そしてマルコーニを始め通信の中継と哨戒にあたってくれた潜水艦と、鎮守府を守っていてくれたみんな……そして随行して下さったグレイ提督とヴァイス提督…その全員に感謝しています」

グレイ提督「ふふ…お気になさらず」

提督「……それでは、作戦の成功を祝って乾杯したいと思います…乾杯!」

一同「「乾杯!」」

提督「…んくっ、んっ……」爽やかな味をした白のスプマンテ「アスティ」がしゅーっと泡を立てて喉をくだる…

提督「……ふぅ、とっても美味しい♪」

ポーラ「えへへぇ…何しろこう言うときのために買っておいたボトルですからぁ~♪」

提督「…嬉しいわ、ポーラ……値段は考えないことにするわね」

エリトレア「さぁさぁ提督、お料理がやって来ましたよ…好きなだけ取って下さいねっ♪」大きな盆を抱えてやって来たエリトレア…

提督「グラツィエ、エリトレア……さて、最初は何かしら…と♪」


…アンティパスト(前菜)として大皿に盛られてきたのは牛肉をハーブで巻いて楊枝に刺し軽く炙った「サルティン・ボッカ」(肉のロール巻き)と、玉ねぎの黒オリーヴのマリネ……バターとセージの香りも食欲をそそるサルティン・ボッカとさっぱりしたマリネをつまみつつ、上等なアスティを傾ける…


ライモン「とても美味しいですね♪」

エウジェニオ「そうね……みんな美味しそう…♪」

ライモン「…エウジェニオ?」

エウジェニオ「ふふふ、何でもないわ♪」

提督「…それにしてもよくこれだけのごちそうを作ったものね」

エリトレア「だって、せっかくのお祝いですから♪」

ガッビアーノ(ガッビアーノ級コルヴェット「カモメ」)「…私も手伝ったんだよ、提督」

チコーニャ(ガッビアーノ級「コウノトリ」)「お姉ちゃんはつまみ食いばっかりだったよね?」

ガッビアーノ「はて、そうだったかな…?」

提督「ふふふ、ガッビアーノは相変わらずみたいね♪」

ドリア「いつも通りにテーブルを囲んでごちそうをいただく…いいことですね」

提督「そうね……ドリア、もう一杯いかが?」

ドリア「そうですね、頂戴します」

アブルッツィ「さぁさぁ、次の料理がやって来たわよ! テーブルを空けて!」

提督「あら、アブルッツィ…お次は何かしら?」

アブルッツィ「ふふん、よくぞ尋ねてくれました…この時期だからキノコたっぷりのパスタにさせてもらったわ」

提督「なるほどね……あら、いい香り♪」

…保温容器に山と盛られたパスタはあちこちに様々なキノコがちりばめられ、上からパラリと緑のパセリが撒いてある……立ちのぼる湯気からはバターのいい香りがする…

アブルッツィ「私とアオスタで作ったのよ…さ、どんどん召し上がれ!」

提督「それじゃあ遠慮なく……ん♪」


…アブルッツィお手製のキノコのパスタはスライスしたマッシュルームやポルチーニ茸(ヤマドリタケ)をたっぷりのバターでソテーし、そこにアンチョビを加えてよくなじませて、最後に茹で上がったフェデリーニを加えてさっと和えたものだった……見た目はアンチョビとマッシュルームから出た汁気のせいで地味な薄茶色をしているが、口に含むとアンチョビのほどよい塩味とキノコの滋味豊かな風味が絶妙で、いくらでも食べられそうな味をしている…


アブルッツィ「どう?」

提督「美味しい……アンチョビの臭みも全然ないし、とっても美味しいわ♪」

アブルッツィ「良かった…ほらジュゼッペ、貴女も食べて?」

ガリバルディ「ええ、姉さんの手作りだものね…ローマ、取ってあげましょうか?」

ローマ「はい、お願いします……美味しいですね、アブルッツィ」

アブルッツィ「そうでしょう、自分でもうまくいったと思ってたのよ!」

フランチェスコ・クリスピ(セラ級駆逐艦)「ガリバルディ、私にも少しもらえますか?」

ガリバルディ「もちろん…私と貴女の仲じゃない♪」親しげなウィンクを送るとたっぷりとパスタを取り分けた…

(※クリスピ…ガリバルディのイタリア統一運動に賛同して「千人隊」のシチリア攻略前に同島へ潜入、情報収集を行った民衆派の活動家)

エリトレア「んー、美味しい……って、いけないいけないっ!」急に席を立つとあたふたと厨房へ駆け込んでいった…

提督「…エリトレアったら、どうしたのかしら?」

エリトレア「ふぅぅ、せっかく買ったのに危うく忘れる所でした……提督、良かったらパスタに少しかけませんか?」

提督「何かしら…チーズ?」

エリトレア「いえいえ、これですよ……じゃーん♪」後ろ手に持って隠していたスライサーと、白トリュフを見せた…

提督「わ、白トリュフ…高かったでしょうに」

エリトレア「だってせっかくのパーティですし、提督たちが無事だった事のお祝いなんですから……皆さんもかけますよねっ?」

ドリア「ええ、ぜひお願いします♪」

ザラ「いいわね…♪」

ゴフレド・マメリ(中型潜マメリ級)「私にもぜひお願いします…!」

ガリバルディ「良かったら私がかけてあげるわよ♪」(※マメリ…ガリバルディと共闘した愛国詩人)

マメリ「こ、光栄です///」

ポーラ「……提督ぅ、そろそろ次の一本を開けませんかぁ~?」

提督「そうねぇ、アスティも美味しかったけれどそろそろおしまいだし…せっかくだからもらおうかしら♪」

ポーラ「はぁい、了解で~す♪」厨房の方に立つと別のボトルを持って戻ってきた…

提督「それで、今度は何かしら?」

ポーラ「今お見せしますねぇ……じゃーん、これですよぅ~♪」

提督「なるほど…白の次は紅の「ランブルスコ」ね」

ポーラ「えへへぇ……ランブルスコの「アマービレ」(中甘口)です♪」

提督「いいわね…セッコ(辛口)だと少しきついし、かといって料理にドルチェ(甘口)は合わないものね」

ポーラ「そういうことですねぇ…♪」針金を外し、布巾でコルクを抑えつつ栓を抜いた…軽い「ポンッ!」という音と一緒にふっと白煙が上がる…

提督「ありがとう、ポーラ」

ポーラ「どういたしましてぇ~…姉様たちも一緒に飲みましょ~う♪」

ザラ「ええ、もらうわ」

フィウメ「ありがとう、ポーラ」

ゴリツィア「嬉しいです、ポーラお姉様」

ポーラ「…ほぉら、ボルツァーノもグラスを出して下さいっ♪」

ボルツァーノ「あ……どうもすみません、ポーラ」

ポーラ「もう…ボルツァーノは私たちの妹みたいなものなんですからぁ、他人行儀は無しですよ~♪」

ボルツァーノ「は、はい///」イタリアの重巡七隻のうち最後を飾る「ボルツァーノ」は単艦に終わり姉妹がいないが、ザラ級…特に「ポーラ」のデザインを基本形にして作られているため、ザラ級の四人からは妹のように可愛がられている…

提督「…メアリ、良かったらランブルスコも召し上がりませんか? 紅のスプマンテは結構珍しいと思いますけれど」

グレイ提督「そうですわね、では少し……なるほど、どちらかというと紅と言うより「いちご色」といった所でしょうか…綺麗な色合いですわ」

提督「味も美味しいですよ♪」

グレイ提督「そうですか、では……んくっ」

提督「いかがですか?」

グレイ提督「ええ…とてもフルーティですっきりしておりますわね」

提督「気に入っていただけたようで何よりです……シャルロッテもどうぞ♪」

ヴァイス提督「ダンケシェーン」

ローマ「……ところでそろそろ次の料理を持ってきますが…提督、まだ召し上がれますか?」

提督「ええ、大丈夫♪」

ローマ「それは何よりです」

バルトロメオ・コレオーニ(ジュッサーノ級軽巡)「ふふ、提督に限って食べ物と女の子を断るはずはないものね…♪」

提督「ふふふっ、まぁね…♪」

ジュッサーノ「そこは冗談にも否定するところでしょうに」

バンデ・ネーレ「まぁまぁ……それに向こうの暴食ぶりをみれば提督の「食べ過ぎ」なんて可愛いものさ♪」

ビスマルク「ティルピッツ、貴様のお祝いでもあるのだぞ……遠慮せずもっといっぱい食え!」ガツガツと料理を口に放り込みつつ、時々スプマンテをぐいぐいとあおる…

エメラルド「……まるで一週間も食事をしていなかったようですね♪」

エリザベス「まぁまぁ、ふふ…♪」

ビスマルク「んむ、むぐ…ごくんっ……美味いな、お代わりをもらおう!」

ヴァイス提督「…シャイス……あの意地汚い大食らいめ…///」

提督「まぁまぁ…きっとビスマルクもシャルロッテとティルピッツが無事で安心したんですよ♪」

ヴァイス提督「は、お気遣い痛み入ります……が、ビスマルクはいつもああなので…全く、あきれかえって物も言えない……///」

提督「ふふっ…食事が進むのは元気な証拠ですよ」

ガリバルディ「それにしてもあれはいささか元気すぎるけれど…ね♪」

…とりあえず今日はここで止めますが、しばらくはこのまままったりとパーティやらいちゃいちゃやらを書いていく予定です…


……十五日は敗戦の日でもあったわけですから「不謹慎だ」と言われるかもしれませんが、当時悲惨な目に遭った人や艦(フネ)たちの分までここのssでは楽しく過ごしてもらいたいですし、それもあってごちそうの場面を書くことにしました……美味しい物を存分に食べられるのは本当にありがたいことです…

それとそのうち「海自のカレー」のように、世界中の軍人さんたちが自国のレシピ自慢を競い合うような時代が来るといいですね…もっとも、それで言うとイギリスは予選落ちしそうですが…

ヴィットリオ・ヴェネト「パスタはもう一種類ありますから、どうぞたくさん召し上がって下さいね♪」

提督「ええ……美味しそうね」

ヴェネト「はい、美味しいと思いますよ♪」

アッチアイーオ(温)「…それじゃあ私がよそってあげるわね、提督……///」

提督「あら、ありがとう♪」

アッチアイーオ「い、いいのよ///」

提督「ふふっ……♪」


…縁にアンズの柄が描かれたジノリの取り皿にたっぷりと盛られたのは、筒状のパスタ「リガトーニ」をボローニャ風の挽肉ソースであるボロネーゼに和えたもので、肉の食感を残した粗挽きの牛挽肉と玉ねぎをよく炒め、そこにトマトペーストをなじませ、赤ワインを加えて煮込んだ汁気たっぷりのソースがリガトーニによく絡み、上からかけたパルメジァーノ・レッジァーノ・チーズともよく合う…


提督「んんぅ…美味しい♪」

デルフィーノ「そうですねっ、美味しいです…えへへっ♪」少し恥ずかしそうに頬を染めているが、くりっとした瞳を提督に向けると、濃灰色のワンピース越しに張りのある滑らかなふとももをぴったりとくっつけた…

アッチアイーオ「そうね……でも、提督が一緒だからもっと美味しいわ///」

提督「…あらあら、そんなことを言われたらすぐにでもドルチェ(デザート)にしたくなっちゃうわね♪」いたずらっぽい微笑みを浮かべて、アッチアイーオにウィンクを投げた…

アッチアイーオ「も、もうっ…ばか///」

デュイリオ「まぁまぁ…♪」

コルサーロ(ソルダティ級駆逐艦「アラビア海賊」)「あーあ、なんともお熱いこって…スクアーロ、注いでくれ」アラビア風のターバンに白い長衣、つま先のとがったきらびやかな靴を履いて、宝石を散りばめた三日月刀(シャムシール)を腰から提げている…

スクアーロ(中型潜スクアーロ級「サメ」)「いいとも……可愛い妹のデルフィーノも提督の横でご満悦のようだし、こっちはこっちで楽しむとしよう…♪」海のギャングだけに白い犬歯をきらりと光らせ、にやりと恐ろしげな笑みを浮かべる…

ムレーナ(中型潜フルット級「ウツボ」)「ふふ、それがいいだろうな……スパリーデ、何をそうおどおどしているんだ…?」優雅なフルットの妹だけあって、同じ「ギャング」でも粋なマフィアのような茶色のスーツとチョッキ、ネクタイのスリーピース姿で、上品かつすごみのあるムレーナ…

スパリーデ(フルット級「鯛」)「いえ、だってムレーナたちが……その…」肉食のスクアーロとムレーナに挟まれ、小さくなっているスパリーデ…銀色がかった桃色(鯛色?)の髪は綺麗にとかしてあり、ふわりとしたドレスもどことなく気品がある……

コルサーロ「つまりおっかないってことさ…だろ♪」

スパリーデ「いえ、そんなことは……///」

ムレーナ「大丈夫だ、スパリーデ…私がお前になにかすると思うか? 私とお前はソレッラ(姉妹)じゃないか」(※sorella…姉妹)

スパリーデ「そ、そうですよね…まさか自分の姉妹にそんなことをするはずがないですよね……」

ムレーナ「もちろんだ。安心するといい……しかしそれにしても、姉妹って言うのは可愛いものだ…そう、食べてしまいたいくらいに…な♪」さりげなく腰に手を回して、口の端ににんまりと笑みを浮かべた…

スパリーデ「ひっ……!」

ナルヴァーロ(スクアーロ級「イッカク」)「ムレーナ、そんなにスパリーデをおどかしてはだめですよ…自分の妹じゃありませんか」アイボリーホワイトのドレスに、イッカクの角を模した銀の飾りを額につけているナルヴァーロ…

ムレーナ「なに、ちょっとした冗談さ…」

スパリーデ「ナルヴァーロ…///」

ナルヴァーロ「……ところで、お魚の料理はまだでしょうか…早く食べたいものですね♪」

スパリーデ「ひぅ…っ!」

イリーデ(中型潜ペルラ級「伝令の神『イーリス』またはアヤメ」)「はいはい、ちょうど魚料理を持ってきましたよ…よいしょ♪」

ナルヴァーロ「あら、バッカラ(干し鱈)のお料理……私、大好きです♪」(※イッカクの好物はタラ類)

イリーデ「そうですよね……そう思って献立に付け加えたんです」

ナルヴァーロ「金曜日ではないですものね」(※イタリアやスペインではカトリックのしきたりで金曜日にタラの料理を食べることがある)

イリーデ「はい…今日はスペイン風にトマトと唐辛子で煮込んでみました、どうぞ食べてみて下さい♪」

…スペイン内乱時、秘密裏にフランコ側に供与されて「ゴンサレス・ロペス」と名乗っていたイリーデ……髪に飾ったアヤメ(アイリス)の飾りにも、スペイン国旗と同じ「赤・金・赤」のリボンがついていて、左右には大戦中に後付けされた有名な「マイアーレ」ことSLCの格納筒をそれぞれ二つつけている…

(※マイアーレ…人間魚雷。正確には「吸着機雷つき水中スクーター」で、磁気クランプで相手の船底に機雷をくっつけた後は分離した残りのスクーター部分で脱出できる)

ナルヴァーロ「ええ、それでは……んむ♪」

イリーデ「美味しいですか?」

ナルヴァーロ「はい、とっても…ちょっと辛くて、ワインが欲しくなりますね♪」

提督「うーん、どの料理も美味しいわ……それにこうやってみんなで食べるとなおのこと♪」

ライモン「そうですね」

ザラ「そうね。それに今日は哨戒もないし、みんなもくつろげるわね」

提督「ええ……何しろ秋期作戦を成功させたんですもの。今日くらいは休ませてもらったっていいはずでしょう?」

ドリア「それに作戦室の機械もほとんどが自動ですし……私が産まれたころとは隔世の感がありますね」

デュイリオ「まぁ…アンドレアってば、そんなことを言っていると歳がばれてしまいますよ?」

ドリア「あら、それを言うならデュイリオこそ…♪」

チェザーレ「ああ、よせよせ……老嬢どうしがお互いに艦齢(とし)の話をしてどうする、食事が不味くなるぞ」

カヴール「そうですよ、あまり気にしないことです。それに身体は若いんですから…ねっ♪」

提督「確かに、とても1915年生まれとは思えないわ……」ドレスの襟ぐりからのぞくたわわな乳房やむっちりとした豊満な身体を眺め、感心したように言った…

カヴール「…」

提督「…あっ、いえ……その…っ」

カヴール「構いませんよ、提督……その分の埋め合わせはしていただきますから♪」

チェザーレ「やれやれ…自分から導火線に火をつけに行くとはな……」

…和気あいあいと食事が進み、メインディッシュの肉料理がやって来た……中抜きの丸鶏は黒胡椒とローズマリーを効かせてローストし、季節のキノコが添えてある…鶏の中にはたっぷりとマッシュポテトが詰めてあり、香ばしい鶏の肉汁が染みこんでいる…

レモ「わぁ、美味しいねぇ…お姉ちゃんも、ほら♪」

ロモロ「ええ、とっても美味しい……やっぱり肉料理はこうやってかぶりついてこそね♪」白い牙…のような犬歯をむき出しにして、分厚い肉に食らいついている……

ルチア「ワフッ……♪」こちらは床に寝そべり、エリトレアが別に用意してくれた牛骨を前脚で押さえガリガリとかじっている…

提督「ふふ、まるでルチアが三匹いるみたいね…♪」ナイフやフォークを置いたまま、野生のおもむくままにかぶりついているロモロとレモを見て苦笑している…

アッチアイーオ「まったく、あれじゃあマナーもへったくれもないじゃない……」と、ドイツ艦の方に視線を動かした…

ビスマルク「はぐっ、むしゃ……ん、ぐぅ…っ!」切り分けてもらった腿肉の部分を手でつかみ、肉を食いちぎっているビスマルク…すで数本の骨が、薪のように皿の上に積まれている……

アッチアイーオ「…どうやら似たようなのがもう一人いたわ」

ティルピッツ「……姉上、姉上っ…」横のティルピッツが小さく脇腹をつついて注意を促しているが、ビスマルクはまるで気づいていない…

エリザベス「ふふ…「食事の様子をみれば人の育ちが分かる」とは、まさにこのことでございます♪」

グレイ提督「エリザベス、そのような事を申してはいけませんよ……ふふふ♪」

ヴァイス提督「///」

提督「……多少無作法だとしても、私としては美味しそうに食べてもらえて嬉しい限りです…それだけここの食事が気に入ってもらえたと言うことですから」

チェザーレ「いかにも……これがイギリスではそうもいくまい」

ドリア「うふふっ…♪」

グレイ提督「あらあら、これは手厳しいですわね…♪」

提督「ね、そうやってお互いに言い合っていては終わりがありませんよ……もう一杯いかがですか?」

グレイ提督「ええ、いただきますわ♪」

………



提督「ふー、お腹いっぱい…♪」

ライモン「たくさん召し上がっていましたものね」

提督「そうかもしれないわね……さ、ドルチェは何にしようかしら…と♪」

アッチアイーオ「あれだけ食べておいてドルチェまで食べるつもりなの? 後で体重計に乗って、どうなっていても知らないわよ?」

提督「せっかくのご馳走を我慢するくらいなら、体重計を見てため息をつく方がいいもの……あむっ…んむ♪」


…かりっと揚げた筒状の生地に甘く味付けしたリコッタチーズを詰め、マラスキーノチェリー、薄くスライスしたアーモンドを飾った「カンノーロ」を二つばかり取り、さらにチョコレートと砕いたクルミを卵と砂糖、バターを加えて練り上げて焼いた濃厚なチョコレートケーキのような「トルタ・カプレーゼ」を一切れ皿に加えた……とろけるような表情を浮かべて頬に手を当て、カンノーロを味わっている…


ガリバルディ「まったく、なんともいい笑顔で食べるじゃない……あんなに喜んでもらえるなら「作ったかいがある」ってものよね、エリトレア?」

エリトレア「はい、とっても嬉しいですっ♪」

フィウメ「……私たちもこうして姉妹揃ってワインが飲めるなんて幸せですね、ポーラ姉様」

ポーラ「えへへぇ、そうですねぇ~♪」

ゴリツィア「同感…ザラ姉もそう思うでしょう?」

ザラ「ええ」

ポーラ「それじゃあ~、もう一杯飲みましょ~う♪」

ザラ「ふふ…今日ぐらいはいいかもしれないわね」四姉妹…そして従妹のようなボルツァーノを入れた五人はチェザーレからプレゼントされた銀製のアンティークグラスにワインを注ぎ、軽く「コンッ…♪」とグラスをふれ合わせた…

ポーラ「ん~、美味しいですねぇ~…♪」

フィウメ「さすがポーラ姉様の見立てですね」

ザラ「確かにね」

………

…しばらくして…

提督「ふぅ、とっても満足したわ……♪」満足げな様子でワインをゆっくりとすすっている…

チェザーレ「うむ……しかし、何か余興が欲しいところだな」

アオスタ「そうですね…なら、どなたか歌でも歌ってくれませんか?」

カミチア・ネラ(ソルダティ級駆逐艦「黒シャツ隊員」)「歌、ね……なら私が一曲やるわ!」ほどよくワインが入ってご機嫌な様子のカミチア・ネラ…

提督「ふふっ、何を歌うのかしら……楽しみね♪」椅子に身体をあずけて、ゆったりとした姿勢を取った…

アオスタ「それで、カミチア・ネラ…曲目は何ですか?」レコードとCDのプレーヤーに近寄り、曲をセットしようとしている…

カミチア・ネラ「曲はね…フィアンメ・ネーレ(黒い炎)を頼むわ!」

提督「けほっ…!」

(※フィアンメ…本来は「炎」のことだが、イタリア陸軍の波形をした襟章を「フィアンメ」といい、兵科によって色分けされていた。そしてファシスタ党結成時の中核となった第一次大戦時のアルディーティ(突撃隊…コマンド部隊)が夜襲のため黒いシャツで、これが第二次大戦のファシスタ党部隊「黒シャツ隊」に引き継がれたことから制服や襟章などは黒を基調とし、のちにヒトラーもこれを真似て武装親衛隊(SS)を作った…曲のタイトルは「黒い襟章」とも)

フィリッポ・コリドーニ(中型潜ブラガディン級)「素晴らしい!」艦名がムッソリーニに近かったジャーナリストのコリドーニや、他の数人が喝采した…

カミチア・ネラ「♪~マンマ・ノン・ピァンジェレ、チェ・ラ・ヴァンザータ」
(♪~お母さん泣かないで、行かないといけないんだ)

カミチア・ネラ「♪~トゥオ・フィリオ・エ・フォルテ、ス・イン・アルト・イ・クォぉール!」
(♪~あなたの息子は強く、そしてたくましいから)

カミチア・ネラ「♪~アスゥイガ・イル・ピアント、ミーア・フィダンツァータぁぁ!」
(♪~愛しいフィアンセよ、君も涙を拭いてよ)

カミチア・ネラ「♪~ケ・ネッラサールト、スィ・ヴィンチェ、オ、スィ・ムォール!」
(♪~僕たちには栄光の勝利か、さもなければ死しかないんだ!)

カミチア・ネラ「♪~アヴァンティ・アルディート! レ・フィアンメ・ネーレぇぇ!」
(♪~進め突撃兵!「黒い炎」よ!)

カミチア・ネラ「♪~コ・ソーメ・シンボロぉぉ、デッレ・トゥエ・シェーレ!」
(♪~それは君を表す象徴!)

カミチア・ネラ「♪~スカヴァルカ、イ・モンティ、ディヴォラ・イル・ピァーノぉぉ!」
(♪~山を越え、平野を進み!)

カミチア・ネラ「♪~プナァルフラ・イ・デンティ…レ・ボンベ・ア・マぁぁーノぉ!」
(♪~ナイフをくわえ、手榴弾を持って!)

コルサーロ「けっ、全く「愛国心」だのへったくれだのって……あたしは姉さんのこと好きだけど、こういう所だけは嫌いさね」

ゴフレド・マメリ「歌うのはいいんですが「フィアンメ・ネーレ」とはね……一体どういうつもりですかね?」

ガリバルディ「まったく、せっかくのワインが不味くなるわ」意気揚々と歌っているカミチア・ネラやコリドーニ、マルコーニ級の大型潜「ミケーレ・ビアンキ」たちとは対照的に、革命家のガリバルディやそれと共闘したマメリ、クリスピ……あるいは主義などには鼻もひっかけないアラビア海賊の「コルサーロ」あたりはまるで酸っぱくなったワインでも飲んでしまったかのような顔をしている……


カミチア・ネラ「♪~フィアンメ・ネーレ、アヴァングァルディア・ディ・モぉールテ!」
(♪~「黒い炎」それは死の尖兵!)

コリドーニ「♪~スィアム、ヴェッスィぃーロ、ディ・ロッテ、エディぃ・オロぉール!」
(♪~我らの戦いと誉(ほまれ)の証!)

ミケーレ・ビアンキ「♪~スィアモ、ロ・リィオぉール、ムタト・イン・コぉぉールテ!」
(♪~我らが誇りは皆同じ!)

ルイージ・カドルナ(カドルナ級軽巡)「♪~ペェル・ディフェンデェル、リターリアぁ・ロノぉール!」
(♪~イタリアの名誉を守らんとする!)

※(「♪~それは君の象徴…」以下くり返し)


ガリバルディ「…黒シャツの連中にばっかり歌わせているのはちょっと癪ね……私たちも一曲やるとしましょうか」

フランチェスコ・クリスピ「はい、ガリバルディ」

ゴフレド・マメリ「仰せのままに!」

ジョスエ・カルドゥッチ「ガリバルディ、ぜひ私も一緒に///」

ガリバルディ「もちろん……それじゃあそれぞれ歌と楽器を頼むわ」


カミチア・ネラ「♪~ウナ・ステぇーラ、スィ・グゥイダ、ラ・ソぉールテ!」
(♪~星が我らを運命へと導く!)

アルマンド・ディアス(カドルナ級軽巡)「♪~エ、スィ・アヴィンコン、トッレ・フィアンメ・ド・ノぉぉール!」
(♪~我らが名誉の三つの炎!)

コリドーニ「♪~トッレ・パロぉぉーレ、ディ・フェーデ、ディ・モぉールテ!」
(♪~信仰、運命、そして三つの言葉!)

カミチア・ネラたち「「♪~イル・プニャーレ、ラ・ボンバ、エディル・クォぉール!」」
(♪~「ナイフ」、「手榴弾」そして「心」!)

※~くり返し

………




提督「えーと、その……上手だったわよ、ネラ」

カミチア・ネラ「グラツィエ♪」

アオスタ「あー…えーと、誰か他に歌いたい曲があれば……」

ガリバルディ「あるわよ!」

アオスタ「了解です、ガリバルディ……何を歌いますか?」

ガリバルディ「大丈夫よアオスタ、レコードだのCDだのなんてかけなくってもいいわ…だってみんな歌えるもの♪」

カルドゥッチ「ええ、その通りです!」食堂の片隅にある共用の楽器置き場からアコーディオンを持ち出し、椅子に腰かけた…

アレッサンドロ・マラスピーナ「だね…♪」自室から私物のクラシックギターを持ってきて、弦を試すマラスピーナ……

アオスタ「そうですか、それじゃあ曲名をお願いします」

ガリバルディ「ええ…「ベラ・チャオ」よ♪」

(※「ベラ・チャオ(さらば恋人)」…作詞・作曲者は不詳だが、43年以降「南北内戦」状態にあったイタリアの対独レジスタンスグループの間で愛唱歌として親しまれてきた名曲。今でも多くのイタリア人に愛され、よく歌われている……日本でもかつて男声コーラスグループの「ダークダックス」によってカバーされたことがある)

一同「「わぁーっ!」」

ガリバルディ「…これなら提督も歌えるでしょう?」

提督「ええ、歌えるわ♪」

ガリバルディ「それじゃあ行くわよ……せーの!」

…マラスピーナのギターとカルドゥッチのアコーディオンに前奏を奏でてもらい、一斉に立ち上がって合唱を始めたガリバルディと多くの艦娘たち……提督もガリバルディが腰に手を回してきたので、肩を並べて目一杯歌った…


一同「♪~ウナ・マッティナ、ミ・ソナ・サァト…オ・ベラ・チャオ、ベラ・チャオ・ベラ・チャオ・チャオ・チャオ!」
(♪~ある朝、私は目を覚ました…チャオ(さらば)愛しい女性(ひと)よ、チャオ愛しい女性よ、愛しい女性よ、チャオ、チャオ、チャオ!)

一同「♪~ウナ・マッティナ、ミ・ソナ・サァト、イォ・トロヴァート・リィーンヴァッソぉール」
(♪~ある朝、私は目覚めて、そして侵略者を見たのだ)

一同「♪オ・パルティジァーノ、ポルタ・ミ、ヴィア…オ・ベラ・チャオ・ベラ・チャオ・ベラ・チャオ・チャオ・チャオ!」
(♪~パルチザンよ、どうか私を連れて行ってくれ…チャオ愛しい女性よ、チャオ愛しい女性よ、愛しい女性よ、チャオ、チャオ、チャオ!)

一同「♪~パルティジァーノ、ポルタ・ミ・ヴィア…ケ・ミ・セント・ディ・モぉリぃぃール」
(♪~パルチザンよ、私を連れて行ってくれ…私は死を覚悟したのだ)

一同「♪~エ・セ・イォ・ムォイォ、ダ・パルティジァーノ…オ・ベラ・チャオ・ベラ・チャオ、ベラ・チャオ・チャオ・チャオ!」
(♪~そしてもし、私がパルチザンとして死んだのなら…チャオ愛しい女性よ、チャオ愛しい女性よ、愛しい女性よ、チャオ・チャオ・チャオ!)

一同「♪~エ・セ・イォ・ムォイォ、ダ・パルティジァーノ…トゥ・ミ・デヴィ・セーペェリィぃぃール」
(♪~そしてもし、私がパルチザンとして死んだのなら…君は私のことを忘れてくれ)

一同「♪~エ・セッペリィぃーレ、ラ・スゥイ・モンターニャ…オ・ベラ・チャオ、ベラ・チャオ、ベラ・チャオ・チャオ・チャオ!」
(♪~そして山の頂上に埋めてくれ…チャオ愛しい女性よ、チャオ愛しい女性よ、愛しい女性よ、チャオ・チャオ・チャオ!)

一同「♪~エ・セッペリィーレ、ラ・スゥイ・モンターニャ、ソット・ロォンブラァ・ウン・ディ・ベル・フィオール」
(♪~そして山の頂上に埋めてくれ、美しい花の咲く下に)

一同「♪~トゥテッレ・ジェンティ、ケ・パッセラぁーノ…オ・ベラ・チャオ、ベラ・チャオ、ベラ・チャオ・チャオ・チャオ!」
(♪~そして通りがかる人は…チャオ愛しい女性よ、チャオ愛しい女性よ、愛しい女性よ、チャオ・チャオ・チャオ!)

一同「♪~トゥテッレ・ジェンティ、ケ・パッセラぁーノ…ミ・ディ・ラノ・ディ・ベル・フィオール」
(♪~そして通りかかる人は皆言うだろう…「なんて美しい花だろう!」と)

一同「♪~エ・クェスト・イル・フローレ、デル・パルティジァーノ…オ・ベラ・チャオ、ベラ・チャオ、ベラ・チャオ・チャオ・チャオ!」
(♪~その花はパルチザンの花だ…チャオ愛しい女性よ、チャオ愛しい女性よ、愛しい女性よ、チャオ・チャオ・チャオ!)

一同「♪~エ・クェスト・イル・フローレ、デル・パルティジァーノ、モルト・ペッラ・リィベぇぇルタ!」
(♪~その花は自由のために死んだパルチザンの花だ!)


………

提督「ふぅ…」歌い終わって汗を拭う提督…

ガリバルディ「…上手だったわよ、提督♪」

提督「ありがと」

ライモン「こうして「ベラ・チャオ」を歌ったのも久しぶりですが……良い曲ですね」

提督「そうね……ぐすっ…」

アッテンドーロ「ちょっと…どうしたのよ、提督」

提督「いえ、なんだか急に歌詞が沁みて…」

アッテンドーロ「それで涙ぐんじゃったわけ?」

提督「え、ええ…そんなのちょっとおかしいわよね……」無理に笑ってみせる提督…

ガリバルディ「別にいいじゃない、提督が豊かな感受性の持ち主って事だもの……ほら」目を潤ませている提督の頬に指を当て、一粒の涙をすくい上げた…

提督「グラツィエ、ガリバルディ…」

ガリバルディ「いいのよ…さ、せっかくの楽しいパーティなんだから、涙は拭いて楽しく飲みましょう♪」軽く唇にキスをすると、派手なウィンクを投げた…

提督「ええ…♪」

………

…しばらくして…

アゴスティーノ・バルバリゴ(大型潜マルチェロ級)「…エリトレア、ちょっといいかね?」中世ヴェネツィアの提督が由来のマルチェロたちは金モールや三角帽、腰のサーベルも堂々としていて、へたな提督たちよりもずっと存在感がある……と、バルバリゴが人差し指を「くいっ」と動かしてエリトレアを呼んだ……

エリトレア「はいっ、何でしょう?」

ロレンツォ・マルチェロ「なに、少しな……♪」ごにょごにょと何かを耳打ちするマルチェロ…

エリトレア「…なるほど」

マルチェロ「分かったかね、エリトレア?」

エリトレア「そうですね、何でそんなことを頼まれるのかよく分かりませんが……」

エンリコ・ダンドロ(マルチェロ級)「なーに、気にせずともすぐに分かるさ…♪」

エリトレア「そうですか……あのっ、皆さーん!」

チェザーレ「おや…どうしたのだ、エリトレア? 諸君、少し静かにしてもらえるか……エリトレアが何か言いたいようなのでな」チェザーレの貫禄とカリスマですぐおしゃべりの音量が小さくなる…

エリトレア「ありがとうございますっ、チェザーレ…」

チェザーレ「構わぬよ…それで、なにか言いたいことがあるのであろう?」

エリトレア「はい…えーと、ですねっ……済みませんがお皿を片付けてしまいたいので…ちょっと一旦お開きにしてもらえませんかぁ?」

リベッチオ「えー、今日は2000時くらいまでは食べたり飲んだりしようと思ってたのに」

提督「まぁまぁ…今日はごちそうだった分、洗わないといけないお皿がたくさんあるわけだし……それにエリトレアは作る方もしてくれたのだから、みんなも協力してあげないと」

マエストラーレ「そうよ。それにディアナやエリトレアには普段からお世話になっているんだから、少しでも負担を減らしてあげるようにしないといけないでしょ」

リベッチオ「むぅ…それはそうだよね」

提督「その代わり、お皿の片付けが済んだらバーカウンターは「終夜営業」を許可するわ♪」

ポーラ「えへへぇ、提督ってば優しいですねぇ~♪」

提督「まぁ、たまには…ね♪」

………

…しばらくして・提督私室…

提督「ふぅぅ…♪」お皿を片付けるのを手伝い、それからお風呂でさっぱりと汗を流してきた提督…バスローブで包まれた身体はほんのりと桜色を帯び、たっぷりのごちそうと一緒に味わった上等なスプマンテやワインのおかげでほどよく気持ちよくなっている……と、ノックの音が響いた…

マルチェロ「……提督、少しいいかね?」

提督「ええ、どうぞ?」

マルチェロ「失礼」マルチェロを始め数人が、リボンをかけた紙の箱を持っている…

提督「いらっしゃい……どうしたの、マルチェロ?」

マルチェロ「なぁに…実は作戦成功のお祝いと言うことで、本官を始め「ヴェネツィア派」の皆でちょっとした贈り物を用意したのだが……受け取ってもらえるかな?」

提督「まぁ、私に?」

ラッツァロ・モチェニーゴ「いやいや、提督だけではなく皆に用意したのだ…」

提督「えぇ? ここの全員分なんて買ったらお金が大変だったでしょうに」

モチェニーゴ「ふふふ、気にすることはないよ…皆にも「作戦成功の記念品を買う」ということで献金してもらったりしたのでね♪」

フランチェスコ・モロシーニ(マルチェロ級)「さよう…と言うわけで、ぜひ受け取ってもらえないだろうか?」

提督「ええ、ありがとう…嬉しいわ♪」板チョコより二回りほど大きい長方形の箱を受け取った…

マルチェロ「うむ……それとだ」

提督「なぁに?」

マルチェロ「本官たちが出て行ったらそれを開けてみて、その後よろしければ食堂までおいで願いたい…そしてだ、その際にはうんとおめかしをしていただければ幸いだ♪」

提督「ええ……そうするわね?」

マルチェロ「うむ、それではまた♪」

提督「……どういう意味かしら」腑に落ちない表情で箱を開ける提督…すると中には金とヴェルヴェット、それに羽根飾りのついた豪華な仮面が入っていた…

提督「あら、これってヴェネツィアのカーニバルで使う……しかもこんなに立派な…」

提督「…ふふ、きっとマルチェロたちは仮面舞踏会でもするつもりなのね……それじゃあうんとおしゃれをしてお邪魔しないと…ね♪」寝室に入ると、クローゼットをかき回しはじめた……

…しばらくして・食堂前…

マルチェロ「おお、提督…来てくれて本官は嬉しいぞ」扉の前に立って、海軍提督らしく後ろで腕を組んでいるマルチェロ…扉の向こうからは艦娘たちのきゃあきゃあいう嬌声と、音楽がわずかに聞こえてくる……


提督「ふふっ…だってせっかくのお誘いだもの、断るわけがないわ♪」パチリとウィンクを投げた…

…かなりの長身でむっちりと豊満な「ド級戦艦体型」の提督は身体の曲線を引き立てる艶やかな黒いドレススタイルで、金色がかった腰まで届く長い髪はゆるい縦ロールにして左側に垂らしている……唇には少し強い紅のルージュを引き、左手には仮面を持っている…

マルチェロ「ははは、嬉しいことを言ってくれる」

提督「まぁね…それじゃあ仮面をつけて、と♪」

マルチェロ「さ、どうぞ…♪」


…そう言って食堂の立派な扉を押さえて、中に入れてくれる……どういうわけか普段は大浴場の脱衣所にあるカゴが廊下に並んでいたり、提督を招き入れるときにマルチェロが小さくニヤリと笑みを浮かべたりしていたが、作戦成功のお祝い気分とほろ酔い状態が合わさってぼんやりしていた提督は気づかなかった…


提督「あら、ありがとう……って、ちょっと///」

モチェニーゴ「おや、主賓の登場だ♪」

アンジェロ・エモ「そうですね……よく来てくれました、提督///」

提督「何、一体どういう…えっ!?」

…食堂に入った瞬間驚きの声をあげた提督…もちろん辺りにいる艦娘たちはいずれも仮面をつけている……が、そのほとんどが仮面をのぞくとランジェリーくらいしか着ていない…

マルチェロ「ははははっ♪ 今夜はみんな仮面を付けているわけだから「誰なのか分からない」ってことでね、無礼講で行こうという訳さ♪」そう言いながらドレスを脱ぎ捨て、あっという間にブラとパンティだけになった……背丈は高校生ほどのマルチェロだが、大型潜らしいメリハリのある身体に桃色の下着が映える…

提督「いえ、無礼講って……若気の至りでたくさんバカなことをした士官宿舎時代の私だって、こんなことは滅多にしなかったわよ?」

モチェニーゴ「まぁまぁ、そう堅くならずに…さ、脱いだ脱いだ♪」


提督「もう、せっかく素敵なドレスを引っ張り出してきたって言うのに……あきれた♪」そう言いながらもいたずらっぽい笑みを浮かべ、ドレスを脱ぐ提督……以前ヴェネツィアのシモネッタ提督からプレゼントされた極薄の黒いランジェリーからは柔らかそうな乳房がのぞき、白いヒップが弾む…


コルサーロ「……ひゅう♪」アラビア風の豪華な腰巻きと胸当てだけで、腰に三日月刀を提げているコルサーロ…

アヴィエーレ「…おやおや、提督が立っている様はまるでウェーヌス(ヴィーナス)だね……天界じゃあ女神が一人足りないって騒ぎになっているんじゃないかな?」黒のブラとショーツに革の長靴、首にマフラーのアヴィエーレ…

提督「もう、相変わらず口が上手いんだから…って、まぁ♪」

デュイリオ「あらあら、提督もいらっしゃったのですね……うふふっ♪」口元を押さえてころころと笑っているデュイリオは白い薄手のおしゃれなレースの下着にストッキング、ガーターを付け、柔らかそうな巨乳を包む白いレースのブラからはたわわな乳房がこぼれ落ちそうになっている……

ドリア「ふふふっ…とってもよくお似合いですよ、提督♪」デュイリオの姉妹であるドリアは黒いバラ模様をあしらったビスチェと、かなり大胆に切り上がっているハイレグのパンティとストッキング、それに黒いエナメルハイヒールを身につけている…

ザフィーロ(中型潜シレーナ級「サファイア」)「ふふ、提督も来てくれたんですね…嬉しいです♪」

アメティスタ(シレーナ級「アメジスト」)「……下着姿を見られるのはちょっと恥ずかしいですけど///」

ルビノ(シレーナ級「ルビー」)「アメティスタってばいっつもこうなのよ…私は思う存分鑑賞して欲しいわ!」

スメラルド(シレーナ級「エメラルド」)「まぁまぁ、そこはそれぞれですよ…ね?」

シレーナ(シレーナ級「セイレーン」)「ラララ…さぁ、みんな私に宝石をちょうだい……ララ♪」


…それぞれの艦名である宝石にちなんだ色のランジェリーとアクセサリーを付けているザフィーロたちと、その姉であり歌で船乗りを惑わすというシレーナ…セイレーン(人魚)は宝石が好きと言うこともあって、シレーナは妹たちにアクセサリーを貸してもらい、ティアラにネックレスにイヤリング…と、すっかり飾り立てられている…


オンディーナ(シレーナ級「ウンディーネ」)「ふふっ、提督も来たのね…♪」金髪に水色の瞳で、いつも無邪気でいたずらっぽいオンディーナ(水の精)は、すっきりした水色の下着が無垢な印象を与える……

提督「ええ…こんなに楽しい事になっているって知ってたら、もっと早くに来たのに♪」

オンディーナ「大丈夫…まだまだ夜は長いもの♪」

提督「そうね……あら、いけない♪」

ドリア「うふふっ…もう提督ったら、どこに手を伸ばしておいでなのですか♪」

提督「ごめんなさい、ドリア……たまたま手が触れちゃって♪」

ドリア「もう…提督ったら♪」ぎゅむ…っ♪

提督「あんっ♪」

ドリア「あら、いけません……たまたま胸元に押しつけてしまいました♪」

提督「んむ……ぷはぁ♪」

提督「…それにしても、ここに憲兵隊がいなくて良かったわ♪」

デュイリオ「ええ、その通りですね…提督♪」提督を椅子に座らせると、立ったまま後ろから胸を押し当てた…たわわな乳房が提督の後頭部を枕のように包み込む……

提督「本当よ、まったく……とりあえず飲み物をもらおうかしら♪」

デュイリオ「うふふっ、分かりました…何をお召し上がりになります?」

提督「そうねぇ……なら「カルーア・ミルク」を頂ける?」

デュイリオ「はい♪ ポーラ、カルーア・ミルクをお願いできますか?」

ポーラ「カルーア・ミルクですね、りょ~うか~い…えへへぇ、提督は甘いのがお好きですものねぇ……♪」


…バーカウンターでは何か飲み物を注文されるたびに味見をしてすっかりご機嫌になっているポーラが、白いレース生地に紅いサイドリボンのついた下着姿でカクテルシェーカーを振っている……かしゃかしゃとシェーカーを振るたびに、形の良いおっぱいが「たゆんっ…♪」と弾むのを、ザラを始め数人がにんまりと笑みを浮かべながら眺めている…


ザラ「ねぇ、ポーラ♪」

ポーラ「はぁい、ザラ姉様…なんですかぁ~♪」

ザラ「…私にも一杯作ってくれる?」

ポーラ「もちろんですよぉ~…それじゃあ、何にしましょ~う?」

ザラ「そうねぇ……じゃあ「オーガズム」がいいわ♪」すっかりだらしない笑みを浮かべつつ、カウンター越しにポーラのハーフカップ(下半分を支える)ブラからのぞく胸を揉みしだいたり、アクセントの紅いリボンをもてあそんだりしている…

ポーラ「もう、ザラ姉様のえっち…♪」

(※オーガズム…いわゆる大人の「言葉遊びカクテル」の一つ。クリームにウィスキーとバニラ風味をくわえたリキュール「アイリッシュ・クリーム」にコーヒーリキュール、アーモンドリキュールの「アマレット」を加え、バニラアイスを入れてブレンダーにかける、甘くて冷たい飲み口の良いカクテル。レシピによってはアイリッシュ・クリーム、アマレット、コーヒーリキュールの1対1対1を注いでいくやり方もある)

ザラ「そんなことを言ったってポーラが悪いのよ……仮面を付けているからってそんな格好で誘惑するんだもの♪」もみ…っ♪

ポーラ「あんっ、もう…ザラ姉様が触るから、カクテルがこぼれちゃいましたぁ……早く拭いて下さい♪」

ザラ「ええ、そうさせてもらうわね……んちゅっ、ちゅるぅ…っ♪」そう言うと胸元に跳ねた「オーガズム」を舐めあげるザラ……

ポーラ「ふぁぁんっ、あふっ…あぁんっ、もう…ザラ姉様ってばぁ……えへへぇ♪」

リットリオ「あっ、ザラってばそんな美味しそうなカクテルを自分だけで独り占めして……ずるいですっ♪」ほとんど紐のような紅のパンティと、花模様のレースのおかげでかろうじて先端が見えない程度のきわどいブラ、それにふとももまである薄手の紅いストッキングとガーターベルト…顔には金色にトリコローリ(イタリアの三色)の羽根飾りをあしらった仮面を付けている…

ザラ「むちゅっ、んちゅ…れろっ……ポーラは私の妹だもの。リットリオだってヴェネトとローマがいるんだから、二人にしてもらえば良いじゃない♪」

リットリオ「なるほど、それもそうですね…ヴェーネトっ♪」

ヴェネト「はい、リットリオ♪」可愛らしい顔とは対照的な色っぽい身体に、黒のランジェリーとパンプスがよく似合う……

リットリオ「…えい♪」ぱしゃ…!

ヴェネト「ひゃっ、冷た…っ!」

リットリオ「ごめんなさい、ヴェネト……ちょっと手元が狂っちゃったの。いま綺麗にしてあげる♪」れろっ、ぴちゃ…♪

ヴェネト「あふぅっ、んぅ……あぁんっ♪」

リットリオ「ふふっ、美味しい…んちゅ、ちゅむ……っ♪」

提督「んふふっ…みんな仲睦まじくて結構ね♪」

エウジェニオ「……ええ、全く♪」

提督「あら、エウジェニオ……その様子だともうずいぶんと愉しんだのかしら?」

エウジェニオ「ふふ…まぁね♪」

提督「そう、それはなにより……」白い肌を際立たせる極薄の黒いランジェリーに包まれている、ほどよい大きさで張りのある乳房と細身の身体、すらりと伸びる脚…そのギリシャ彫刻のような整った身体をうっかり眺めてしまい、思わず生唾を飲んだ提督……

エウジェニオ「ふふ、提督もしたいのかしら…?」エウジェニオでよこしまな場面を想像したのを一瞬で見抜かれると、耳元で甘くささやかれた……提督に身体を寄せてしなだれかかると、指先でそっとふとももを撫であげる…

提督「あっ…ん♪」

エウジェニオ「ふふ…♪」

提督「あふっ……ん…っ♪」

エウジェニオ「提督ったらとっても可愛らしいわね。白くて柔らかくて…それに甘くて良い良い匂いがするわ♪」

提督「さっき香水を付けてきたから、きっとそれが……んんっ♪」

エウジェニオ「ふふふ……っと、私がいたらお邪魔ね。それじゃあまた後で♪」ちらりと横目で何かを確認するとふとももを撫で回すのを止めて軽く頬にキスをし、するりと離れた……

提督「あら、エウジェニオにしてはずいぶん唐突に……って、あらあら♪」

ライモン「あの……提督、よかったら隣に座ってもよろしいですか///」

提督「なるほど、そういうこと……ええ、もちろんよ♪」

ライモン「そ、それじゃあ失礼して…///」


…しなやかなバランスの良い身体にピュアホワイトのレース付き下着で、銀色の仮面を付けているライモン……ことさらに艶やかだったり際どい物ではないが、それもまた瀟洒(しょうしゃ)ですっきりしたライモンにふさわしい清潔感がある…


提督「ええ、どうぞ♪」

ライモン「ありがとうございます…それにしても二人きりの時ならいざ知らず、こうして皆がいるところで下着姿をさらすなんて……少し恥ずかしいですね///」とはいえワインが入っているおかげか、照れながらも少し楽しげにしている……

提督「ふふふっ…仮面を付けているのだから平気よ♪」

ライモン「ええ、それはそうなんですが…///」

提督「だいじょうぶだいじょうぶ……ん♪」ちゅぅ…っ♪

ライモン「んっ…んんぅ///」

提督「ほら、これで平気になったでしょう?」

ライモン「いえ、あの…むしろさっきよりも胸の鼓動が……でも、嬉しいです///」ちゅ…っ♪

提督「ん……ふふっ、ライモンったら♪」

ライモン「ふふ…♪」

リベッチオ「あー、提督も来たんだねぇ♪」

提督「ええ。リベッチオ、あなたも楽しんでいるかし……けほっ!」カクテルグラスに唇が触れたところで振り向き、リベッチオの格好を一瞥(いちべつ)するやいなやむせた…

リベッチオ「おかげさまでとっても楽しいよっ♪ 作戦も成功したし、今は解放感でいっぱい…ってとこ♪」


…金と紫のヴェルヴェットをあしらった仮面と、口ゴムの部分にトリコローリ(イタリアの三色旗)のリボンが通してある白い薄手のサイハイストッキング、それに黒のエナメルハイヒールをのぞけば、他には何も身につけていないリベッチオ……艶やかな褐色の肌に、小ぶりな胸、つるりとした秘部の割れ目、それにぷりっとした張りのあるヒップが惜しげもなくさらされている…


提督「そのようね♪」

リベッチオ「えへへっ、せっかくの「無礼講」だもんね…思い切り楽しんでおかないと♪」

提督「ええ…冷えて風邪を引かないようにね?」

リベッチオ「もう、大丈夫だよ……むしろ暑いくらいだもん、ほら♪」ぎゅっと抱きついてきたリベッチオ……夏の砂浜のような香ばしいほのかな匂いがふっと鼻腔をくすぐり、ぺたりとくっついた肌からじんわりと熱が伝わってくる……

提督「…」

リベッチオ「提督…?」

提督「…」

リベッチオ「ねぇ、提督ってば…どうしたの?」少し身体を離すと、提督の顔をじっとのぞき込んだ……

提督「あぁ、いえ……ふぅ、もうちょっとで危うくエレオノーラみたいなロリコンになるところだったわ」

リベッチオ「ふふ、提督ってば基本的には年上好きだもんね……あ、でもよく考えたら♪」

提督「ん、なぁに?」

リベッチオ「私たちの艦齢(とし)からいけば、みんな提督よりも年上じゃない?」

提督「確かに…」

リベッチオ「だったら別にロリコンじゃないよね……特にミラベロたちなんてあんなに子供っぽいのに、ドリアやデュイリオたちとほぼ同い年なんだから…」(※ミラベロ級…1916年~17年竣工)

提督「そう言われてみれば……」向こうのテーブルにいるミラベロたちを眺めた…

ミラベロ「…ねぇマルコーニ、何を飲んでいるの?」


…小ぶりな幼い姿に似つかわしくない、大人びた言動のせいで「耳年増」や「おませさん」な印象のミラベロと妹の「アウグスト・リボティ」…そしてミラベロの艦名は、第一次大戦前にイタリア王国海軍で初めてマルコーニ式無電を導入しようとテストした提督の名から付けられている……それもあってかしきりにマルコーニに身体を擦り付けたり、意味深な言葉をささやいたりしている……身につけているのは紅いサイドリボン付きの白い下着とニーハイソックス、黒エナメルの丸いつま先の靴で、リボティも似たような格好をしている…


マルコーニ「え、今飲んでるのは赤だけど……?」

ミラベロ「そう…良かったら私に一口ちょうだい?」

マルコーニ「ま、まぁ構わないけれど…///」

ミラベロ「ありがと…ふふ、美味しい♪」見せつけるようにグラスを傾け、一口すすると唇についた雫をゆっくりと舐め取った…

マルコーニ「…」真っ赤になって机をトン・ツーで叩き始めた…

ミラベロ「なぁに……「そんな見せつけるようにしないで」って? …ふふ、見せつけているのよ♪」

マルコーニ「もう、ミラベロってばいつもそうやって……///」

ミラベロ「だって…マルコーニってば初心で、すぐ口が利けなくなっちゃうんだもの♪」

マルコーニ「……わ、私だってひとかどの艦娘なんだから、そうやってからかうのは……って、ちょっと待って///」

ミラベロ「なぁに……マルコーニお姉ちゃん?」ぽんっ…とマルコーニと向かい合わせになるような形でふとももの上にまたがり、下から顔をのぞき込んだ…

マルコーニ「だ、だから…///」

ミラベロ「うん、ちゃんと聞いているから続けて……ね♪」小さな白い手を鎖骨の部分にあてがい、ゆっくりと胸元までなぞる…

マルコーニ「その、つまりね……そもそもミラベロの方が……はふっ…年上だけど…あっ……だから…って///」

ミラベロ「年上だから…?」

マルコーニ「やって良いことと……んぅ…悪いことっていうのものが…はぁ、ん……///」

ミラベロ「ごめんなさい、マルコーニお姉ちゃん……それじゃあちゃんとおわびするわ…ね♪」つぷっ…くちゅ♪

マルコーニ「あっ、ふ……んぅっ///」

ミラベロ「私ね、マルコーニが優しいからついやりすぎちゃうの……だから、今度からやり過ぎたときは教えて…ね?」くちゅくちゅ…っ♪

マルコーニ「い、今がまさに……あっ、あっ…あっ♪」

ミラベロ「なぁに、マルコーニ…言いたいことがあるならはっきり言って欲しいわ♪」

マルコーニ「…ん、んっ///」たまらずミラベロを抱き寄せ、肩甲骨の辺りに人差し指を這わせてモールスを叩き始めた…

ミラベロ「うんうん、そうなのね…分かったわ♪」ちゅくっ…♪

マルコーニ「あぁんっ……ち、違うってばぁ…っ♪」

ミラベロ「そうだったの? てっきり「もっとして」だと思ったの……♪」くすくすと笑いながら、割と大柄で遠泳選手のように引き締まった…それでいて豊かな乳房をしているマルコーニの身体にしがみつき、鼓動を聞くような格好で胸に頬を当てた…

マルコーニ「も、もう……そんな顔されたら怒るに怒れなくなっちゃう…///」

提督「……ああ言うのって反則だと思うわ」

リベッチオ「ね、サッカーで手を使うくらいずるいよね」

提督「確かに…でもああ見えて案外責められると可愛いかったりするのよね……ふふ、思い出すわ♪」

ライモン「…提督」

提督「え、ちょっと…そんなあきれたような顔しないで、ね?」

リベッチオ「もう、提督ってばイケナイんだ……♪」

提督「さぁ、何のことかしら……グラスも空になったし、もう一杯なにか頂くとしようかしら」

リベッチオ「あー、またそうやって♪」

提督「ふふっ…提督たるもの、ちゃんと引き際を心得ておかないと……ね♪」

リベッチオ「それに話をはぐらかす煙幕も、だね?」

提督「そういうこと♪」

…そういえば数日前に駆逐艦「蕨」の船体が発見されたとのことで、後味の悪い「美保関事件」で失われた彼女ですが、こうして見つけてもらえた事で少しでも供養になると良いですね…

…バーカウンター…

ポーラ「あ~、提督ぅ~……いらっしゃいませぇ~、何にしますかぁ~…?」

提督「そうねぇ、何にしようかしら……」

フィザリア(中型潜アルゴナウタ級「カツオノエボシ」)「……それじゃあ、私からのおごりで「チャイナ・ブルー」をお願いねぇ…♪」


…薄青の透き通ったベビードール一枚で、カツオノエボシの「浮き袋」を模した薄青色をしたガラスのティアラをつけ、同じくカツオノエボシの触手のような長い青みがかった髪を後ろに垂らしているフィザリア…見た目は綺麗で雰囲気は海面をたゆたうようにおっとりしているが、魚の名前が付いている相手となると次々に捕食している肉食系でもある……おまけにベッドでもりあがってくると、身体のあちこちに爪を立てて引っかき、毒クラゲらしいミミズ腫れをつける癖がある…


ポーラ「りょ~か~い……ひゃっ…く♪」半開きの笑ったような口元にとろんとした目つきで、ゆらゆらしながらカクテルシェーカーを振っている…

提督「…大丈夫?」

ザラ「一応は大丈夫よ…ポーラってばこう言う時になるとあきれるほど飲むけれど、不思議と酔い潰れたり戻したりはしないのよ。それに私たちもいるし…ね♪」

提督「そうね、それなら安心だわ♪」

ポーラ「だってぇ……せっかくのお酒を戻しちゃうなんてもったいですからぁ~……えへへぇ♪」

提督「とはいえ、あんまりザラたちに迷惑をかけないようにね?」

ポーラ「はぁ~い♪」

提督「ん…美味しいわ♪」

フィザリア「澄んだ青色がきれいねぇ…♪」

提督「ええ♪」

フィザリア「…ねぇ、提督…良かったらこのまま私と……」白いもっちりしたふとももに長い指を這わせ、ゆったりと身体を絡めてくる…

提督「あら、フィザリアったら……ふふふ♪」

ジャンティーナ(アルゴナウタ級「アサガオガイ」)「ふふ、こんなところにいたんですね……フィザリア♪」

…フィザリアの妹であり、同時にクラゲ類を食べるクラゲである「アサガオガイ」であることからフィザリアをはじめ、クラゲに関係する艦名を持つ娘たちを次々と獲物にしているジャンティーナ……アサガオガイの「浮き袋」である、カタツムリ型をした美しい紫の巻き貝を模した青紫の飾りを頭につけ、身体がはっきりと透けて見える青いシースルーの薄物を羽織っている…

フィザリア「ジャンティーナ…他のみんなはどうした…の……?」

ジャンティーナ「はい、さっきまで一緒に飲んでいたのですけれど……なんだか美味しそうだったので、食べちゃいました…ぁ♪」

ジャレア(アルゴナウタ級・クラゲの一種)「はひっ……はへっ…♪」

サルパ(アルゴナウタ級・クラゲの一種)「あへぇ…はへぇぇ……♪」テーブルに突っ伏してひくひくと身体をけいれんさせている…

フィザリア「…」

ジャンティーナ「……でも、もうちょっと食べたい気分なので…いただきます♪」ゆっくりと後ろから押し包むようにして抱きしめると、そのまま提督から引き剥がした…

フィザリア「え、ちょっ……と///」

ジャンティーナ「それでは提督…チャオ♪」

提督「チャオ♪」

フィウメ「……ジャンティーナたちはふわふわした見た目によりませんね」

提督「ね…って、またずいぶん向こうが騒がしいわね……」

ジュセッペ・フィンチ(大型潜カルヴィ級)「…ジァポーネではゲイシャが「女体盛り」などと言って、こうした際に果物やらお菓子やらを載せて興じることがあるのだ♪」イタリアの休戦に伴いドイツに接収されて日本への物資輸送用として改造されたが、使われる前に自沈したせいか、間違い日本知識をひけらかす癖がある…テーブルに寝転がって乳房やふとももにクリームを塗り、マラスキーノ・チェリーだのオレンジピールの砂糖漬けだのを載せている…

ルイージ・トレーリ(大型潜マルコーニ級)「はい、そういうこともありますね…♪」一方はるばるイタリアから日本の神戸にまで到着し、その間に伊・独・日と国旗を変える数奇な運命をたどった「ルイージ・トレーリ」…三カ国語を話し、物腰も丁寧と非の打ち所がない……が、酔っているらしくフィンチの悪ふざけに乗っている…

レモ「わぁ、美味しそう♪」

フィンチ「ははは、遠慮しないでいいぞ!」

トレーリ「それじゃあ私もいただきます…ね♪」

エリトレア「あむっ、ちゅっ…れろっ……もっとクリームが欲しいですねっ♪」

提督「…」何も言わずじっとフィンチたちの方を眺めている…

ライモン「て、提督……さすがにあれは止めさせますか? 提督は前にも「食べ物で遊んではいけない」とおっしゃっていましたし……///」

提督「……美味しそうなドルチェね♪」

ライモン「えっ…?」

提督「そうね、確かに「食べ物を粗末にいてはいけない」とは言ったわ。でもレモやトレーリたちはこぼしたり無駄にしたりしないでちゃんと食べているみたいだし……それに今日はお祝いだもの、少しくらい羽目を外したって構わないわ♪」

ライモン「そ、そうですか…」

エウジェニオ「おおかた提督自身もああいう遊びをした経験があるのよね…♪」

提督「…かもね♪」

グレイ提督「まぁまぁ……なかなか愉快な事になっておりますわね?」滑らかなシルクのスリップ(ロング丈のキャミソール)姿でどこからともなく現れると、提督から二つばかり離れたストゥール(腰かけ)に座ったグレイ提督……優雅な姿勢でちびちびとブランデーを舐めながら、グラスをもてあそんでいる……

提督「あら、メアリ…てっきりこういうパーティにはおいでにならないかと思っておりました」

グレイ提督「いえいえ。わたくしも一応「ザ・アンドリュース」(英国海軍)の一員ですから、時にはこうした「愉快なパーティ」も経験したことがありますわ……もっとも、ここのパーティほどではありませんでしたけれど♪」

提督「お褒めにあずかり恐縮です…良かったら楽しんでいって下さいね?」甘い笑みを浮かべると、わざとらしくウィンクを投げた…

グレイ提督「ええ、そうさせていただきますわ…♪」

…しばらくして…

トレーリ「…ちょっと中だるみになってきましたし、そろそろ出し物でもやりましょう……ルイージ・トレーリ、行きます♪」拍手喝采の中、ご機嫌なトレーリが一段高くなっている演説台に上がった…身体には大きなイタリア王国海軍旗を巻き付け、マントのように首もとで軽く結んでいる……

提督「あら…トレーリってば、何をするのかしら?」

トレーリ「それではルイージ・トレーリの「極東輸送航海」を始めますね…ぇ♪」CDプレーヤーから何やら妖しげなムード音楽が流れ始めると、自分の身体を抱きしめるようにして腕を回し、それからなまめかしい手つきで国旗の結び目をゆっくりとほどいていく……

マルコーニ「お、おぉ…ぅ!?」

ニコ「うわ…///」

…テーブルの一つ…

マルチェロ「おっ…見たまえ提督諸君。あれを見逃す手は無いぞ♪」

アミラーリオ・ディ・サイント・ボン(大型潜カーニ級)「ほほう…あれこそまさに曲線美の極致というものですね」

ベネデット・ブリン(大型潜ブリン級)「まさに「造船の美」ですな」

コマンダンテ・ファー・ディ・ブルーノ(大型潜カッペリーニ級)「目の保養になりますね…♪」

アミラーリオ・ミロ(カーニ級)「……いい眺めです♪」

トレーリ「…ふぅ、あっ…ん……♪」肩から胸元と、次第に肌があらわになっていく……

…バーカウンター…

提督「もう、トレーリってばどこであんなことを覚えたのかしら……うふふっ♪」

グレイ提督「なかなか刺激的な余興ですわね…♪」

トレーリ「はぁ……はふっ…ん……んぅぅ…♪」指先で身体をなぞるようにして、次第に国旗をはだけさせていくトレーリ…

提督「♪」氷が溶けるのも構わず、カクテルそっちのけでトレーリの整った身体をじっくりと眺めている……

トレーリ「……んぁ……はふっ…んぅぅっ♪」悩ましげな声をあげると「しゅるり…」とトリコローリの旗が床に落ちた…

アゴスティーノ・バルバリゴ(マルチェロ級)「おお…っ!?」

トレーリ「…はあんっ……ふあぁぁ…んっ♪」トリコローリの下にはいまだにヨーロッパ中でアレルギーを引き起こす「黒・白・赤」をした第三帝国の海軍旗をまとっていた…ように見えたがそれはあっという間に消え、最後は赤と白の旭日旗を脱ぎ捨てて、布一枚まとっていない胸元と秘部を押さえて、甘いあえぎ声を上げて床にへたり込んだ……

提督「ふふ、とっても良いものを見せてもらったけれど……おかげでカクテルがぬるくなっちゃったわ♪」

コマンダンテ・カッペリーニ(大型潜カッペリーニ級)「トレーリがそうなら、私も……♪」

ファー・ディ・ブルーノ「ふふ、期待していますよ…姉上♪」

カッペリーニ「トレーリ、今度は私が…ほら、エリトレアも来て♪」

エリトレア「はいっ…♪」やはり伊・独・日と掲げる国旗を変え、最後は「伊五〇三」として解体された「コマンダンテ・カッペリーニ」と、ボルネオまで進出し彼女たちを支えていたエリトレア……二人が絡み合いながらゆっくりとお互いを脱がせ合っていく…最後は口づけをしたところで、ちょうど音楽が終わった…

提督「うふふっ…とっても素敵な出し物だったわ♪」

………

…数分後…

ポーラ「提督、つぎは何にしますかぁ~?」

提督「そうね、それじゃあアマレットを……って、トレーリったら大丈夫かしら…?」

…テーブルの一つ…

ビスマルク「…ははは、なんともいい出し物だったぞ!」

トレーリ「ダンケシェーン、ビスマルク…♪」


…日本風の「キモノ」を羽織り、帯を締めずすっかりはだけさせているトレーリと、シンプルな黒の下着にワイシャツだけの姿でキルシュヴァッサー(チェリーブランデー)のグラスをあおっているビスマルク…


トレーリ「ところでビスマルク、ヴァイス提督とティルピッツさんはどうしました?」

ビスマルク「ああ、そのことか…全くふがいないことに、ティルピッツときたら「恥ずかしくてそんな格好なんて出来ない」と駄々をこねて、部屋にこもってしまったのだ……まったく」

トレーリ「そうでしたか」

ビスマルク「ヤー。それに付き合ってうちの提督も一旦戻ったが…果たしてもう一度ここに戻ってくるかは分からんな……まぁいい、飲もう!」ろれつの回らない舌でグラスにキルシュヴァッサーを注ぎ、焦点の合わない目でトレーリを見た…

トレーリ「プロージット(乾杯)♪」イタリア語はもちろん、ドイツ語と日本語も流暢なトレーリ…軽くグラスを触れさせると、きついキルシュヴァッサーを慎重に飲んだ…

ビスマルク「プロージット!」すっかりへべれけでグラスの半分はこぼしてしまったビスマルク……すでにワイシャツはびしょびしょで、下の黒いブラが透けて見える…

提督「…」

ヴァイス提督「エントシュルディゲン(失礼)……カンピオーニ提督」

提督「あら、シャルロッテ…水着ですか?」

ヴァイス提督「や、ヤー……さすがに下着というのは恥ずかしかったので///」無難な紺色のビキニスタイルで、仮面越しにもすっかり顔を赤らめているのがわかる…

提督「そうですか。まぁ無理にとは言いませんが、せっかく仮面をつけているのですし…たまには羽目を外してみてもいいと思いますけれど♪」

ヴァイス提督「い、いえ…///」

提督「……それに、シャルロッテの下着姿も見てみたかったですし♪」甘い笑みを浮かべると、艶っぽい声でささやいた…

ヴァイス提督「…っ///」

提督「ふふふっ……それで、どうしました?」

ヴァイス提督「はっ、そろそろビスマルクを連れ戻そうと思いまして……ビスマルク!」

ビスマルク「おぉ、来たかマイン・アトミラール(我が提督)…そうして立っているとまるでフライアのようだな!」


(※フライア…北欧神話の美と豊作の女神「フレイヤ」のドイツ語読み。美の女神だが勇敢な事も好み、地上に戦が起きるとワルキューレ(戦乙女)たちを率いて降りてきて「神々の黄昏(ラグナロク)」に備え、主神オーディンがヴァルハラへと連れて行く名誉ある戦死者たちから半分を自分の館「セスリムニル」へと連れて行くとされる。そこで戦士たちはラグナロクが来る時まで蜂蜜酒を飲み、ごちそうを食べて楽しく過ごすという……ドイツ語で婦人を意味する「フラウ」や英語の金曜日「フライデー」はフレイヤが語源。第二次大戦中のドイツ軍のレーダーにも「フライア」がある)


ヴァイス提督「誰がフライアだ! それに私がフライアなら、なおのこと貴様を連れて行く必要があるだろうが…ほら、立て!」

ビスマルク「待て待て、私は死んでなどいないぞ……それに蜂蜜酒は好きじゃない!」

ヴァイス提督「やかましい、この酔っ払いが…!」

ライモン「……連れて行かれましたね」

提督「そうね」

カヴール「ふふふっ…見ている分には面白かったのですが、残念ですね♪」

…深夜…

コルサーロ「ひっく…さすがのあたしも……もう飲めねぇ…や」

アスカーリ「んだ……えかく飲んだで…部屋がローリングしているように見えるだ……ひゃっく」

ジェンマ「……ぐぅ」

ナザリオ・サウロ「さすがに飲み疲れちゃいましたね……」

チェザーレ・バティスティ「…うん…パーティは楽しいけど、そろそろ寝たいかも……ふわぁ…ぁ」

アンフィトリテ(中型潜シレーナ級…ギリシャ神話の海神ポセイドンの妻)「ふふ…貴女もそろそろおねむの時間なのじゃない、トリトーネ?」

トリトーネ(中型潜フルット級…アンフィトリテの娘の一人。海の精「トリトン」)「はい、お母さ……いえ、アンフィトリテ///」

アンフィトリテ「お母さんでいいわよ……デルフィーノはどうする?」

デルフィーノ「そうですねぇ、だったら私もご一緒させて下さい……だいぶ眠くなってきちゃいましたから…ぁ」


…ポセイドンがアンフィトリテへ「求婚の印」として贈ったとされ、アンフィトリテを示す印となったデルフィーノ(イルカ)……後には行方不明になったアンフィトリテを見つけた功績により星座の「いるか座」になったとされることから、アンフィトリテとその娘トリトーネとは仲がいい…


アンフィトリテ「それじゃあ仲良く三人で…ね」

トリトーネ「デルフィーノは私とお母さんに挟まれたら眠れなくなりそうだけど……♪」

デルフィーノ「そ、そんなことないですよぅ…///」

トリトーネ「どうだか……それじゃあ提督、お休みなさい」

提督「ええ、お休みなさい♪」


…夕方から始まったパーティを目一杯楽しんでいた艦娘たちも、さすがに2400時を回った頃になると、小さな駆逐艦や中型潜たちを中心に眠い目をこすったりあくびをし始める様子が目立つようになり、三々五々と引き上げる娘たちも出はじめた……一方、遊び方を心得ている妙齢の貴婦人である戦艦組や、航続距離の長さには定評のある大型潜あたりはパーティの「第二部」を楽しんでいる…


カヴール「…もう残っているのは私のような老嬢ばかりのようですね♪」

ローマ「カヴール、その言い方は失礼ではありませんか?」

デュイリオ「そうですよ、カヴール……リットリオたちは別にしてあげませんと♪」

ローマ「いえ、そうではなく」

デュイリオ「あら、違いました?」

ローマ「ええ…だって、提督がおりますから」

カヴール「ふふ、そうでした…まだ提督がおりますものね♪」ぎゅむ…っ♪

提督「んふふっ、もう…♪」カヴールに抱きつかれた提督はにやけた笑みを浮かべながら、カヴールの柔らかいたわわな乳房をこね回した…

カヴール「あんっ♪」

エリザベス「……まさにバビロン(悪徳の都)もかくや、と言った具合にございますね」

グレイ提督「ふふ、彼女たちはかのローマ帝国の末裔ですもの……ですが「郷に入りては郷に従え」と申しますし…せっかくなのですからわたくしたちも愉しませていただきましょう」

エリザベス「仰せのままに…♪」古風なペチコートにキャミソール姿のクィーン・エリザベス…グレイ提督と身体を寄せあい、ゆっくりと唇を交わした…

グレイ提督「ん…」

エリザベス「んっ…む」

カヴール「あらあら、あのお二人が口づけを交わすような仲だったとは思いませんでした…♪」

提督「ふふっ…ああ見えてメアリは意外と優しい所があるのよ」

グレイ提督「ふぅ……フランチェスカ、「ああ見えて」は余計ですわ」

提督「あ、聞こえてしまいましたか……失礼しました♪」

グレイ提督「お分かり頂けたのならよろしいですわ」

提督「ふふっ♪」

グレイ提督「ふふふ…♪」

…しばらくして…

ポーラ「ザラ姉様ぁ…ポーラ、さすがにもう飲めませぇ……ん…♪」

ザラ「はいはい……それじゃあお風呂に入って、それから一緒のベッドで休みましょう?」

ポーラ「はい、せっかくの夜に独り寝じゃあさみしいですものねぇ……姉妹で仲良く「添い寝」しましょうねぇ…えへへぇ♪」意味深な言い方をすると甘ったるい含み笑いを浮かべた……

ザラ「…もう、そういうこと言わないでよ///」口ではそう言いながらも、酔って桃色を帯びたポーラの身体を見て小さく舌なめずりをするザラ…

ポーラ「えへへっ……それじゃあ提督、ポーラは一足先に休ませてもらいますねぇ~…♪」

提督「ええ、お休みなさい」

フィウメ「お休みなさい」

ゴリツィア「また明日、提督♪」

提督「お休みなさい……相変わらず仲むつまじいようで何よりね。もっとも、ザラたちのはちょっと激しいけれど…ふふっ♪」暇さえあれば身体を重ねているザラたちを思い出して、くすくすと笑った……と、ライモンが何か言いたそうにもじもじしている…

提督「どうしたの、ライモン?」

ライモン「えぇと…あの、提督……一つお願いがあるのですが」

提督「なぁに?」

ライモン「その、良かったら……わたしと一曲踊ってくれませんか///」

提督「私はだいぶお酒が入っているけれど……今から?」

ライモン「はい…この格好はともかくとして、やっぱり仮面といえば「仮面舞踏会」かな、と……だめでしょうか?」

提督「……いいえ、他ならぬライモンのお願いですもの…喜んで♪」

カヴール「…それでは私が何か曲をかけてあげますね……あ、これなんていいかもしれません」そう言うとプレーヤーにCDをセットした……

ライモン「それでは提督…どうか一曲お願いします///」

提督「ええ、こちらこそ♪」膝を曲げて優雅に一礼すると、差し出された手を取った…

ライモン「はい///」


…CDから流れてきた「妖艶なる絆の響き」のメロディーをお供に、二人はリズムを刻んでゆったりと踊った……お互いに下着だけの火照った身体が触れあい、熱っぽい吐息が首筋や胸元にかかる…ほっそりしたライモンの指先と提督のしなやかな指が絡み合い、提督の金色をした瞳が次第にとろりと艶めいた光を帯びてくる…


提督「……ライモン」

ライモン「提督…///」

提督「だめ…今だけは「提督」じゃなくて……名前で呼んで」

ライモン「…っ、恥ずかしいです///」

提督「ふふ、そういうところも可愛いわ…ライモン♪」

ライモン「フ、フランチェスカ……///」

提督「なぁに…?」

ライモン「……愛しています///」

提督「私もよ…愛しいライモン♪」……ちゅ…っ♪

ライモン「///」

………



…提督寝室…

ライモン「あ、あの…フランチェスカ///」

提督「なぁに、ライモン?」

ライモン「えぇと、その……服はここに置いてしまって構いませんか…?」律儀に服を畳み、椅子の上に置こうとしているライモン…仮面はすでに外されていて、桜色に染まった頬はワインとカクテルのためだけではないように見える……

提督「ふふっ、ライモンったら……顔が紅いわ♪」

ライモン「だ、だって……こうして一緒にいられるのは嬉しいですけれど…ベッドをご一緒するとなると、まだ少し恥ずかしいんです///」

提督「大丈夫よ、私だって恥ずかしいわ…」ライモンの手に自分の手を重ねると、そのままふくよかな胸に押し当てた…

ライモン「あっ…///」

提督「……ね?」

ライモン「はい……それに、とても張りがあって暖かいです…///」わずかに開いたライモンの手が、提督のもっちりした乳房をそっと揉んだ…

提督「ふふ、そう遠慮しないで…ね♪」ライモンの腰に手を回すと、そのまま一気にベッドにもつれ込んだ…

ライモン「きゃあっ…///」

提督「…まぁまぁ、そんな可愛い声をあげちゃって♪」

ライモン「だ、だって提督がいきなり…んむっ!?」

提督「…んちゅっ、ちゅむ……ちゅる…っ……んちゅ…♪」

ライモン「んんっ、んぅ…んぅぅ……っ///」

提督「ぷは…♪」

ライモン「い、いきなり何を…///」

提督「さっき言ったでしょう……今だけは「提督」じゃなくて「フランチェスカ」って呼んで…」緑がかった月明かりだけがぼんやりと部屋を照らす中、提督の金色の瞳がきらりとまたたく……

ライモン「そ、そうでした…でも、だからっていきなり……///」

提督「いいじゃない…せっかく二人きりなんだもの」

ライモン「……それもそうですね、じゃあ…今度はわたしから…」ん、ちゅっ…♪

提督「んむっ、ん……ふ…♪」

ライモン「…んっ……あむっ、ちゅぅ……///」

提督「ライモン…」提督の白くて柔らかな人差し指が優しく下腹部を撫でる…

ライモン「はい…///」

提督「ん、ちゅぅ…っ♪」舌を絡めてゆっくりと口づけをしながら、優しく抱き合う二人……次第にライモンの身体が提督の上に沈んで行き、提督の左手とライモンのほっそりした右手の指が互いに重なり合う…

ライモン「んんぅ、んぅ…っ……はぁ…あぁ……んぅ///」

提督「ん、んぅっ……♪」

ライモン「はぁ、あふっ、ふぅ……あっ、あっ…///」くちゅくちゅ…っ、ちゅぷっ♪

提督「あふっ、あっ、あぁん…っ♪」ぬちゅっ、ちゅく…っ♪

ライモン「い、いきますよ……フランカ///」

提督「ええ…ライモン♪」気恥ずかしそうにしながら指を花芯に滑り込ませるライモンと、甘いとろけるような笑みを浮かべながらライモンを愛撫する提督…

ライモン「…フランカのここ……とろりとしていて、とっても柔らかいです…///」くちゅ…ぬちゅり……とろ…っ♪

提督「ライモンの中も…暖かくて、指がとろけそうよ……♪」ぬちゅ…ちゅぷ、くちゅ……っ♪

ライモン「ふわぁ……あっ、あ……ぁっ、んあぁ…っ♪」

提督「んんぅ、あぁぁんっ…はぁんっ……♪」

………

…翌朝…

提督「……んんぅ…♪」

ライモン「…おはようございます……フランチェスカ///」


…肌触りのいいパイル地のタオルケットと、その上からほどよいぬくもりをもたらす布団……そして横向きに寝ている提督の身体にぴったりと寄り添っているすべすべしたライモンの身体……いつも高めに結っているポニーテールは解かれていて、落ち着いた色合いの金髪がふわりと肩にかかっている…


提督「おはよう……って、あんっ♪」

ライモン「…ん、ちゅっ///」

提督「ちょっと、ライモンってば……今朝はずいぶんと大胆ね…ん、あふっ♪」

ライモン「ええ、たまにはわたしも積極的になろうかと……だめでしょうか…///」少し恥ずかしげな表情を浮かべつつ、提督のたわわな乳房や柔らかい二の腕、むっちりとしたふとももに吸い付くようなキスをする…

提督「まさか……むしろ大歓迎よ♪」

ライモン「もう…っ///」

提督「ところで、せっかくライモンがキスしてくれているのだし……私もお礼をしないといけないわよね?」

ライモン「きゃあ…っ♪」

提督「それじゃあ、どこからキスしようかしら…と♪」

ライモン「…ふぁ///」

提督「……そんな声を出されたら、またしたくなっちゃうわよ…ライモン♪」

ライモン「ええ……その、わたしも…///」

提督「………」

ライモン「…フランチェスカ?」

提督「……ライモン、その誘い方を知っていて使ったのなら満点をあげるわ…抑えようとする気がなくなったもの♪」

ライモン「えっ、それって……あっ、ひゃぁん…っ♪」

提督「あぁんっ、もう…ライモンったら、そういう反応がたまらないのよ……んむっ、ちゅむ……っ♪」

ライモン「あふっ、ふわぁぁん…っ♪」

…しばらくして…

提督「ふぅぅ…とっても可愛かったわよ、ライモン♪」朝方はすでに薄ら寒いほどの時期だというのに全身汗ばみ、肩で息をしながらベッドに仰向けになった……ふとももは垂らした愛蜜でべとべとしていて、動くたびに「ぬちゅ…っ♪」と粘っこい音を立てる…

ライモン「……そういう提督こそ…でも、そろそろ起きないといけませんよ♪」

提督「あら…今朝はもう「フランチェスカ」って呼んでくれないの?」

ライモン「ええ、本当はわたしもそう呼んでいたいですけれど……」

提督「そうね…分かったわ、ライモン」

ライモン「はい」

提督「それじゃあまずは歯でも磨くとするわ……そうしたらちゃんと口にキスできるものね♪」いたずらっぽい口調でそう言うとベッドを出て、振り向きざまにウィンクを投げつつドアノブに手をかけた…

ライモン「なら、わたしはその間にコーヒーを用意して……」

ルイージ・トレーリ「…その必要はないですよ、ライモンド」

ライモン「きゃっ…///」慌てて布団で胸元を隠した…

提督「あら、トレーリ…おはよう♪」

トレーリ「ええ。おはようございます、提督……執務机の上には今朝の気象通報と新聞を置いておきましたし、コーヒーも食堂から持ってきました。どうぞ冷めないうちに召し上がって下さい」

提督「あら、わざわざ持ってきてくれたの?」

トレーリ「はい。私もさきほど目覚めのコーヒーを飲んでいて、ふと思いたったものですから……よかったらライモンドもどうぞ?」

ライモン「え、ええ…それじゃあそうさせてもらいますね///」

トレーリ「はい」

提督「わざわざありがとう、トレーリ」

トレーリ「いえいえ…それに昨夜のみんなを考えたら、デルフィーノとアッチアイーオもしばらく起きてこられないでしょうから……♪」

提督「ふふっ、確かに…♪」

…しばらくして・食堂…

提督「おはよう、ザラ」

ザラ「ええ…おはよう、提督……」

提督「…ずいぶんお疲れのようね?」

ザラ「まぁね……あと「空が黄色い」って言うけれど、あれは嘘ね…何しろ目の前は黄色じゃなくて桃色がかっているもの……喉はひりひりするし、頭も痛いわ…」

提督「そんなに激しかったのね?」

ザラ「ええ…昨日のアルコールが残っているのを別にすれば、腰が抜けるほど気持ち良かったわ……♪」充血した目をして深いくまも作っているが、口元に笑みを浮かべた…

ガリバルディ「あら、提督にザラ…おはよう♪」

提督「おはよう、ガリバルディ」

ザラ「ええ、おはよう……」

ガリバルディ「昨夜は楽しかったわね。私も久々に心ゆくまで愉しませてもらったわ♪」朝からご機嫌で肌の血色と張りもよく、あちこちにキスの跡をつけているガリバルディ…

ザラ「ガリバルディってば、どういう体力をしているのよ…私なんてもうふらふらなのに……」

ガリバルディ「ふふん、革命家っていうのは体力がないとね♪」

ザラ「まったく、貴女のその女たらしには付き合いきれないわ…」

エウジェニオ「……あら、昨日の今日だって言うのに…みんな結構早いのね?」

提督「あら、エウジェニオ。おはよう♪」

エウジェニオ「ええ、おはよう……んちゅっ、むちゅぅ…っ♪」

提督「ん、ふ……あふっ…んぅ♪」

エウジェニオ「ん…今朝の提督からはライモンドの味がするわね♪」

提督「ご名答。そういうエウジェニオからはいろんな味がするわ」

エウジェニオ「ふふ…どの娘も違う味がして、みんな美味しかったわよ♪」

提督「…分かるわ♪」

エウジェニオ「さてと…それじゃあもう一度ベッドに戻る前に、コーヒーでもいただくとしましょうか」そう言って濃いエスプレッソをすするエウジェニオ…

ザラ「ちょっと、まだするつもりなの? …もう太陽は出ているのよ?」

エウジェニオ「だって、明るいところで身体を重ねるのもまた格別だもの……せっかくだし、ザラもポーラたちと「朝寝」にいそしんでみたら?」

ザラ「冗談にならないわ…さっきようやくポーラが寝てくれたって言うところなのに……」

エウジェニオ「そう。なら私と一緒に、なんて……いかが?」白くてほっそりした手でザラの頬を下から撫で上げた…

ザラ「遠慮しておくわ」

エウジェニオ「ふふふっ、気が変わったら私の部屋までおいでなさいね……チャオ♪」

ザラ「……あきれた」

提督「ふふっ、エウジェニオらしいわ…♪」

ガリバルディ「そうね……さーて、私もコーヒーを飲んだらもうちょっと可愛い娘たちといちゃついてくるわ♪」

提督「ええ」

ガリバルディ「何かあったら呼んでちょうだいね…それじゃ♪」

ディアナ「……この様子では朝食抜きになる娘が多そうでございますね」

提督「あら、ディアナ」

ディアナ「おはようございます、提督…何か召し上がりますか?」

提督「ありがとう、でも気にしないで。ディアナは昨夜のごちそうを作るので大変だったのだから、今朝くらいはお休みしていいのよ?」

ディアナ「よしなに」

提督「それに、たまには私もお料理をしないと…腕がなまっちゃうもの」

ザラ「…提督は料理上手だし、そんなことはないと思うけれど」

提督「あら、ありがとう…嬉しいことを言ってくれるから、ザラにも何か作ってあげるわね♪」

…午前中…

提督「……それにしても、時が経つのは早いものですね」紅茶のカップを眺めつつ、しみじみとした口調で言った…

グレイ提督「と、申しますと?」

提督「いえ…今回の「交換プログラム」もあと数日でおしまいですし、そうなると……」

グレイ提督「…これ以上「嫌味で皮肉屋なイギリス貴族」の相手をしなくて済みますわね?」口角をかすかに上げると「ふふ…♪」と小さく笑ってみせる…

提督「そんな、滅相もない……確かにメアリは少し気位の高いところがありますけれど、何事もきちんとしていますし…それ以上に……とっても魅力的です///」

グレイ提督「あら、人を褒めるのがお上手ですわね……」

提督「……だって、嘘偽りのない気持ちですから♪」そう言うと、グレイ提督のほっそりした手を両手でそっと包んだ…

グレイ提督「まぁまぁ……そういう所が貴女らしいですわね、フランチェスカ?」さらりと手をほどくと、何事もなかったかのように紅茶をすする…

提督「…メアリのいじわる」

グレイ提督「ふふ……♪」

提督「ふふふっ……話は変わりますが、機会があったらぜひまたここに立ち寄って下さいね?」

グレイ提督「ええ、もちろんですわ…もっとも、ジブラルタルに戻り次第わたくしは北大西洋の護衛任務に駆り出される事になるでしょうから、ダッフルコートにくるまって身震いをしながら、暖かいここの波を懐かしく思うのがせいぜい…と言ったことになりそうですわね」

提督「英国海軍も大変ですね」

グレイ提督「いいえ、わたくしの苦労などあの娘たちに比べればさしたるものではありませんわ……とにかく、フランチェスカとここの艦娘の皆には良くして頂いて「エリザベス」「エメラルド」共々ありがたく思っております」

提督「いえいえ…」

グレイ提督「フランチェスカも「ザ・ガット(ジブラルタル)」までおいでになる機会がありましたら、ぜひわたくしの鎮守府においでなさいな……そのときはちゃんとした英国料理でおもてなしいたしますわ」

提督「あー、イギリス料理は…その……」

グレイ提督「ふふ、安心なさいな…よく冗談のタネにされていたような「不味いイギリス料理」というのは昔の話ですわ。最近は「ピカデリー・サーカス(ロンドンの繁華街)」にも美味しいお店が増えて、エジプト料理やパキスタン料理を食べた際も、なかなか美味しゅうございましたもの」

提督「……あの、イギリス料理のお話では?」

グレイ提督「まぁ、ご冗談を……エジプトやパキスタンはまだまだ「コモンウェルス(英連邦)」のようなものではありませんか♪」

提督「…」

グレイ提督「…それにヴァイス中佐には申し訳ありませんけれど、少なくともあの粗末なドイツ料理に比べれば……」そこまで言いかけたところでヴァイス提督が食堂に入ってきたのを見つけ、口をつぐんだ…

ヴァイス提督「おはようございます。カンピオーニ提督、グレイ提督……何のお話ですか?」

グレイ提督「モーニン……ええ、わたくしはちょうどフランチェスカにお礼と「機会があったらぜひジブラルタルにもおいで下さい」と言っていたところですわ♪」

ヴァイス提督「あぁ、なるほど…確かにカンピオーニ提督には大変豪華なもてなしをしていただき、感謝の言葉もないほどです。ヴィルヘルムスハーフェンにおいでになる機会がありましたら、ぜひ本官の鎮守府にもお立ち寄り下さい」

提督「ダンケシェーン、シャルロッテ…♪」

ヴァイス提督「ビッテシェーン……カンピオーニ提督///」

グレイ提督「まぁまぁ…ヴァイス提督は獰猛な狼のごとき「ビスマルク」と「ティルピッツ」をいともたやすく指揮しておられるのに、それがカンピオーニ提督のお礼一つで頬を染めてしまわれて……ふふ♪」

ヴァイス提督「いえ、それは……その…っ///」

提督「ふふっ…だってシャルロッテは花も恥じらうユングフラウ(若き乙女)ですもの♪」

ヴァイス提督「いえ、そんな…///」

グレイ提督「そうでしたわね…ふふ♪」

提督「うふふっ♪」

ヴァイス提督「///」

提督「ふふふっ…冗談ですよ、シャルロッテ。一緒に紅茶をどうですか?」

ヴァイス提督「はっ、いただきます…///」

…数日後…

アッチアイーオ「…提督、準備が整ったわよ」

提督「ええ、それじゃあ行きましょうか」

…鎮守府・庭…

提督「…それでは、これより「戦術・知識交換プログラム」の完了に伴い本鎮守府を離れられる、英国海軍地中海艦隊のメアリ・グレイ少将、ならびにドイツ連邦海軍のシャルロッテ・ヴァイス中佐の送別式を実施いたします」


…形ばかりの「送別式」とはいうものの、鎮守府の庭に立っている国旗掲揚柱にはイタリア海軍、英国海軍、ドイツ連邦海軍の旗がへんぽんと翻って秋の涼しい風にはためき、艦娘たちはそれぞれの正装をまとい、提督も濃紺と金モールの礼装姿で将官らしく決まっている…


デルフィーノ「では、本鎮守府の提督よりご挨拶を申し上げます…提督、どうぞ」

提督「ええ……まずはこの数ヶ月というもの、グレイ提督ならびにヴァイス司令には多くの面でご指導、ご鞭撻いただき、大変に感謝しております…イタリア海軍の一将官として、私はお二人から学んだ数々の知識をもってイオニア海…ひいては地中海の平和により一層寄与出来るよう努力していく所存です……」

提督「…お二人、そして随伴艦「クィーン・エリザベス」「エメラルド」「ビスマルク」「ティルピッツ」と過ごした時間はとても素晴らしいものでした……少々寂しくはなりますが、いつかまたこの美しい海のどこかでお会い出来ることを信じております」

アッチアイーオ「…それでは、英国海軍地中海艦隊メアリ・グレイ少将ならびにドイツ連邦海軍シャルロッテ・ヴァイス中佐からご挨拶をいただきます…グレイ提督、どうぞ」

グレイ提督「こほん……まずはカンピオーニ提督と艦娘の方々には大変よくしていただき、お礼の言葉もないほどです…改めて、英国海軍を代表して感謝を申し上げますわ」

提督「…いえ、こちらこそ有意義な時間を過ごさせていただきました」

グレイ提督「それはわたくしの方ですわ……カンピオーニ提督の作戦指揮、イタリア海軍の機動と戦術…なかなか興味深く、参考になるものも多うございました」

提督「グレイ提督にそう言っていただければ、この交換プログラムも成功ですね」

グレイ提督「ええ、もちろんですわ……そして今後も我が英国海軍と、イタリア海軍の友好が続きますことを願っております……楽しい時間を過ごさせていただいたこと、感謝しておりますわ…フランチェスカ」そう言って挨拶を終えると提督に近寄り、珍しいことに左右の頬へキスをした…

提督「…はい♪」

デルフィーノ「続いてヴァイス提督、どうぞ」

ヴァイス提督「ヤー。まずはカンピオーニ提督、並びに「タラント第六鎮守府」に所属する艦娘の方々には、本官および「ビスマルク」「ティルピッツ」を厚遇して下さり、誠に感謝しております…また、船団護衛とそれに伴う対空・対潜戦におけるイタリア海軍の戦術を学ぶ機会を得たことは、本官にとって大変有意義であり、かつ射撃管制や艦艇の機動におけるカンピオーニ提督の指揮は大いに学ぶべきものがありました……」

提督「ダンケシェーン」

ヴァイス提督「はっ……本官および「ビスマルク」「ティルピッツ」は今回の交換プログラムで得た経験を糧とし、今後もドイツ連邦海軍の戦力として任務を遂行し、その任を全うするべく努力するものです」

提督「ええ……ヴァイス提督ならきっと出来ますよ♪」ちゅっ…♪

ヴァイス提督「はっ、ありがとうございます…///」

提督「ふふっ、キスをすると紅くなるのは直らなかったわね……シャルロッテ♪」

ヴァイス提督「///」

グレイ提督「まぁ……ふふ♪」

アッチアイーオ「あー…以上で送別式を終わります。全体、敬礼っ!」

…翌日…

グレイ提督「…それにしても、ここでは「色々と」楽しく過ごさせていただきましたわ……♪」提督との様々な経験を思い出させる、少し見下したような微笑を浮かべた…

提督「もう、メアリってば…///」

グレイ提督「ふふ…♪」

提督「うふふっ♪」

ヴァイス提督「……本当にありがとうございました、カンピオーニ提督」

提督「いえいえ♪」

ヴァイス提督「これで「研究発表会」までの交通手段が車なら良かったのですが…」交換プログラムの締めくくりとしてローマで行う「研究発表会」へ向かうべく、支度を整えて正門で待っている提督たち……

提督「……ここからローマまで行くのに、ですか?」

ヴァイス提督「あぁ、いえ……何でもありません」と、苦り切った表情でちらりと後ろを見た…

ビスマルク「……シャイス、とっとと歩け…!」

ティルピッツ「嫌だぁぁ、どうせまた飛行機に乗せられるんだ……しかもマカロニのパイロットが曲芸飛行みたいな操縦をする軍の輸送機で…!」

ビスマルク「…えぇい、この……!」

提督「…なかなか大変ですね」

………

…しばらくして・グロッタリーエ空軍基地…

下士官「グロッタリーエに到着しましたよ、提督閣下…しかも記録を十分も更新しました!」ローマへと向かう輸送機が待っているグロッタリーエまで送ってくれた軍の「マセラッティ・クアトロポルテ」はエンジンがチリチリと音を立てている…

提督「でしょうね、とても早かったもの」

下士官「ええ、何しろお急ぎかと思いまして」

提督「ふふっ、グラツィエ」ほどなくしてグレイ提督たちを乗せた残り二台のマセラッティも基地のゲートをくぐってエプロン(駐機場)で停車した……と、下士官がドアを開けるか開けないかのうちによろよろと降りてきたティルピッツ……

ティルピッツ「…うぇ…っ……朝食べたものを吐きそうだ……」

ビスマルク「全くだらしない…そんなことで冬のビスケー湾や北海が乗り切れると思っているのか?」

ティルピッツ「いや…姉上の前だが、海は自分で舵を取れるし平気なのだ……だが、人が運転している乗り物となると…」

ビスマルク「あれこれと御託を並べるな! ……ほら、化粧室まで連れて行ってやる」

ティルピッツ「ダンケ……」

ヴァイス提督「…申し訳ありません、少しだけ時間を取らせて頂けますか」

提督「ええ、大丈夫ですよ♪」

チェザーレ「まぁ、致し方あるまい」

ガリバルディ「……あれだけの大戦艦にしてはちょっと「虚弱体質」ってところだけど♪」

提督「ガリバルディ」

ガリバルディ「失礼、口が滑ったわ」

グレイ提督「ふふ……それにしてもイタリア軍のドライバーは、どなたもまるでサー・スターリング・モスのようですわね」

(※スターリング・モス…1950~60年代に名を馳せた、イギリスの伝説的レーシング・ドライバー)

提督「そこはエンツォ・フェラーリでしょう、メアリ♪」

(※エンツォ・フェラーリ…言わずと知れた自動車メーカー「フェラーリ」の創業者にしてレーシング・ドライバー。第一次大戦のエース、フランチェスコ・バラッカの遺族から許可を得て譲り受けたという「カヴァッリーノ・ランパンテ(跳ねる馬)」のエンブレムが有名)

グレイ提督「ふふふ……あら、どうやらヴァイス中佐たちが戻ってきたようですわ」

ヴァイス提督「お待たせいたしました」

提督「いえ、とんでもない…さ、行きましょう♪」

ティルピッツ「飛行機は嫌だ、飛行機は嫌だぁぁ……」

提督「あー…ティルピッツは大丈夫?」

ビスマルク「なに、心配は無用だ」

提督「そう?」

ビスマルク「ああ……なぁ、ティルピッツ」

ティルピッツ「何ですか、姉上…っ!?」

ビスマルク「…この手に限る」首筋に一撃を叩き込むと、気絶したティルピッツに肩を貸して「ダッソー・ファルコン」のタラップを上った…

(※ダッソー・ファルコン…戦闘機の「ミラージュ」や「ラファール」で有名なフランスのダッソー社が製造している傑作ビジネスジェット機シリーズ。イタリア空軍のは三発エンジン仕様の「ファルコン50」)

提督「…」

…しばらくして・機内…

ティルピッツ「……うえぇ…気持ち悪い…」

ビスマルク「我慢しろ、ローマまでは数時間もかからん…それに酔い止めも飲んだのだから、気持ち悪いなどと言うのは気のせいだ」

ティルピッツ「そんなこと言ったって……」

ヴァイス提督「外でも見て気を紛らわせたらどうだ」

ティルピッツ「いや、外なんて見たら足がすくんでもっと気持ち悪くなる…」

ヴァイス提督「はぁ……なら少しでも良くなるように、具体的な対処法を考えろ。…水でも飲むか?」

ティルピッツ「いや、止めておく……飲み物を飲んだりしたら胸がムカムカするから…」

ヴァイス提督「ふぅ…全く、駄々っ子じゃあるまいにあれも駄目これも駄目と……」

ティルピッツ「だって……そもそも飛行機なんて揺れるし耳が詰まった感じになるし、足元は浮いている感じになるし…」

ヴァイス提督「言いたいことは分かるが、飛行機の方が圧倒的に速いのだから仕方ないだろう」

ティルピッツ「うぅぅ…」

提督「…あの、シャルロッテ」

ヴァイス提督「は、何でしょうか?」

提督「一つ私に考えがあるのですが……もしかしたら、ティルピッツの飛行機酔いが少しは収まるかもしれません」

ヴァイス提督「そうですか。本当なら私がどうにかせねばならないのですが、カンピオーニ提督に名案があるならば…ぜひ」

提督「ええ、それではティルピッツをこの席に座らせてあげて下さい」

ヴァイス提督「ヤヴォール……歩けるか、ティルピッツ?」

ティルピッツ「ヤ、ヤー…どうにか……」空いている席に移ると、へたり込むように座った…

提督「ふふっ、それでは…♪」むにゅ…♪

ティルピッツ「むぐ…っ!?」

ビスマルク「!?」

ヴァイス提督「な、何を…っ!」

提督「いえ、こうしてあげれば少しは安心できるかと思いまして……♪」ティルピッツの隣の席に座ると制服のダブルの上着を脱いでブラウスのボタンをいくつか外し、豊満で張りのある乳房の間にティルピッツの顔を埋めさせて「よしよし…♪」と頭を撫でた…

ヴァイス提督「いえ、しかし…!」

提督「まぁまぁ……気持ち悪いのは辛いでしょうし、私からしていることですから…ね?」

ヴァイス提督「いえ、それはそうかもしれませんが…」

チェザーレ「ふむ…提督の胸を顔を埋めるとはうらやましい限りだな」

ガリバルディ「……まったく、本当に可愛い女の子ときたら見境がないんだから♪」

提督「ふふっ、まぁね……それで、気分はいかが?」

ティルピッツ「その…少し楽になった気がする……///」

提督「良かった。落ち着いたら少し眠るといいわ♪」

ティルピッツ「ヤー…」

…数時間後・ローマ…

グレイ提督「ふぅ、到着しましたわね」

提督「ええ……ティルピッツ、気持ち悪いのは大丈夫?」

ティルピッツ「…その……いつもよりはマシだった///」結局フライトの間は提督に抱かれたままで過ごしたティルピッツ…普段は血色の良くない青白い顔をしているだけに、赤面しているのが余計に目立つ……

提督「それなら良かったわ♪」

チェザーレ「ついでに、提督のブラの跡も付いているぞ…♪」

ティルピッツ「え…っ!?」

チェザーレ「冗談だ……まぁ、せっかくローマに来たのに飛行機酔いでは名所旧蹟の見物も満足に出来ぬだろうからな…良かったではないか」

ティルピッツ「ダ、ダンケ…」

提督「…とはいえ明日は「知識交換プログラム」の研究報告会が入っているから、観光の時間は取れそうもないわね」

チェザーレ「そうか、それは残念なことだ…七つの丘がそびえるローマは、秋が一番いいと言うのにな」

提督「ええ……でも明日は姫にも会えるし、その点では嬉しいわ♪」

チェザーレ「ふふ、提督はそうだろうな」

………

…翌日・「研究発表会」会場…

提督「姫、会いたかったわ♪」

百合姫提督「あ、フランカ……元気?」

…金モールがきらきらと光り輝く各国の制服姿が入り交じっている会場で、百合姫提督を見つけると近寄っていった提督……声を聞いて振り向いた百合姫提督ははにかんだような控え目な笑みを浮かべ、胸の前で小さく手を振った…

提督「いいえ…姫がヴェネツィアに行ってからというもの、その優しい笑顔が見られなくて寂しかったわ……それこそ、もう何年も会えなかった気がするくらいに……」ちゅ…っ♪

百合姫提督「あ、だめ…こんなに人がいるところで……///」

シモネッタ提督「どうぞお構いなく♪」

グレイ提督「わたくしには何も見えませんわ」

ヴァイス提督「///」

提督「ん、ちゅぅ…っ♪」

百合姫提督「も、もう…フランカったら……///」

提督「ふふっ♪」

足柄「はぁぁ…どうやらカンピオーニ提督は斬られないと分からないらしいわよ、龍田?」

龍田「そのようねぇ……」

百合姫提督「だ、だめ……その…私が流されるのもいけないのだし、フランカだけを責められないわ…///」

足柄「大丈夫よ、分かってるわ」

龍田「ええ、半分は冗談よぉ…♪」

足柄「そうそう、ちょっとした冗談なんだから……半分?」

龍田「…ふふふ♪」

足柄「……提督。私はいいから、横鎮(横須賀鎮守府)に戻ったら龍田のことをうんと可愛がってあげなさいよ…さもないといつ闇討ちに遭うか分かったものじゃないわ」

百合姫提督「ええ…でも大丈夫。だって龍田は優しいもの……ね?」

龍田「あらぁ…ふふ♪」

足柄「…これを「優しい」って言っちゃうあたりが、うちの提督の度量の広さというか……これだから変なのばっかり配属されるのね」

提督「まぁまぁ…それもまた姫のいい所でしょう?」

足柄「ま、そうよね……って、前にもこんなやり取りをした気がするわ」

提督「それだけ姫の優しさは変わらない…っていうことね♪」

案内係「えー…そろそろ「研究発表会」の方に移りたいと思いますので、提督と随伴艦の皆さんはホールにお集まり下さい!」

提督「それじゃあ行きましょうか、姫…お手をどうぞ♪」

百合姫提督「…はい///」

………

提督「……以上をもってイオニア海管区「タラント第六鎮守府」からの発表を終わります」発表の順番が来ると、提督自身「なかなかよく出来た」と思っている労作のレポートを片手に発表へと臨み、質疑応答を終えて戻ってきた……

チェザーレ「…提督、ご苦労であったな」

提督「そうね、少し緊張したわ……鋭い質問もいくつかあったし」

百合姫提督「でも、とっても良くまとまっていたわ」

グレイ提督「それに、文章もなかなかお上手でしたわね」

提督「グラツィエ♪」

エクレール提督「……まぁ、口の上手い貴女らしいと言った所ですわ」

提督「あら、マリー…トゥーロンからわざわざ来たの?」

エクレール提督「ええ。いくらレポートの写しとこの「研究発表会」の映像が送られてくるとはいえ、その場でなければ質問は出来ませんもの」

提督「そう……てっきり私とキスしたくてわざわざ来たのかと思ったけれど♪」

エクレール提督「ば、馬鹿な事をいわないで下さいまし…っ///」

提督「ええ、ごめんなさい……それじゃあ、また後で…ね♪」小声で耳元にささやくと、軽く耳たぶを甘噛みした…

エクレール提督「///」

…翌日・フィウミチーノ空港…

提督「それにしても慌ただしい限りね…もっとゆっくり出来たら、ローマを案内してあげるのに」

百合姫提督「仕方ないわ…でもあの数ヶ月間、フランカと「タラント第六」で一緒に過ごせて……とても嬉しかった///」

提督「ふふっ、そう言ってもらえて光栄ね…♪」

百合姫提督「ええ…今度はフランカが日本に来られたらいいわね、そうすればいろんな名所を案内できるもの」

提督「そうね♪」

アナウンス「…アリタリア航空、成田行きの便は間もなく搭乗手続きを開始いたします!」

提督「姫、搭乗手続きが始まるわ」

百合姫提督「ええ…それにしても、時間っておかしなものね……ここに来るまではとっても長く感じたのに、フランカと別れるまではあっという間……」

提督「…きっと愛している女性(ひと)と一緒にいると、神さまが嫉妬して時の流れを早くしちゃうからだと思うわ♪」

百合姫提督「……フランカ」

提督「姫…」

百合姫提督「ん…///」

提督「ん、ちゅっ……ちゅむ…っ♪」

百合姫提督「ぷは…ぁ…」

提督「ふふ…こうやって毎日キスできたらいいのに♪」

百合姫提督「…私も……本当にそう思うわ…///」

提督「ふふっ、でもそうなったら止められなくなっちゃうから駄目ね……さ、忘れ物はない?」

百合姫提督「ええ、大丈夫」

提督「お土産は持った?」

百合姫提督「おかげさまでいっぱいあるわ…♪」

提督「よろしい……それじゃあもう一つ、私から個人的なお土産を…♪」そう言ってウィンクをすると、平たい箱を取り出した提督…

百合姫提督「えっ…!?」

提督「姫、貴女のために心を込めて選んだの……身に付けてくれたら嬉しいわ♪」

百合姫提督「そんな、私は何も用意していないのに…///」

提督「いいのよ、私にとっては姫と過ごせたことが最高の贈り物だもの……開けてみて?」

百合姫提督「ええ…///」箱の中にはヴェルヴェットが敷き詰められ、提督と百合姫提督がキスしている写真がセットされている楕円形のロケットと、それに合わせた銀のネックレスが入っている…

提督「…いつぞやコリドーニがこっそり写真を撮っていたから、貸してもらって宝石屋さんに頼んでおいたの」

百合姫提督「///」

提督「それと、私も同じものを作ってもらったから…これでいつでも会えるわね♪」よく見ると、首元に同じネックレスを付けている…

百合姫提督「もう、フランカったら…こんな素敵なプレゼントをこっそり準備しているなんて……///」

提督「奇襲攻撃は作戦の基本だもの…ね♪」

アリタリアのお姉さん「……受け付け時間はそろそろ締め切りですよ、お客様…どうかお急ぎ下さい!」

提督「ええ、ちょっと待ってて下さいね……んちゅっ♪」

百合姫提督「んっ♪」

提督「…姫とはまた会いたいから、アリヴェデルチ(さようなら)とは言わないわ…チャオ(またね)、私のお姫様♪」

百合姫提督「ええ…!」

提督「…」受付ゲートを通って飛行機に向かう百合姫提督の後ろ姿をじっと見送った…

お姉さん「……素敵な彼女さんですね?」

提督「ええ、私の愛しい人です♪」

お姉さん「きっとまた会えますよ……それと、その際はぜひアリタリア航空をお願いします♪」

提督「ふふふっ…ええ、そうします♪」

…しばらくして・11月初旬…


提督「……そういえばディアナのお誕生日ももうすぐだったわね…こうして一緒に祝えるなんて、とっても嬉しいわ」

ディアナ「そう言っていただき、わたくしも欣快とするところでございます」


…半年近くに及んだ「戦術研究・交換プログラム」も無事に終わり、またのんきな日々に戻っている鎮守府…食事の後片付けを終えたディアナと一緒に厨房のストゥール(腰かけ)に座ってコーヒーを飲みながら、おしゃべりに興じている提督…


提督「いいのよ…それで、お誕生日には何を買うか、もう決めているのかしら?」艦娘たちの誕生日ごとに何かしらのプレゼントを贈ったり、買いたい物のお金を出してあげたりしている提督……厨房の調理台に頬杖をついて、小首を傾げてディアナを見た…


ディアナ「はい。実は、わたくしも何か生き物を飼いたいと思っております……ルチアやデュイリオさんのカラスは可愛らしいですし、わたくしも部屋に何かペットがいれば…そう思った次第なのでございます」

提督「あら、いいわね…候補は決まっているの?」

ディアナ「ええ。実はある程度考えておりまして、せっかくですからわたくしと「縁の深い」生き物にしようかと…」

提督「……ちょっと待って」

ディアナ「何でございましょう?」

提督「あー…「ディアナと縁のある生き物」って聞いて一つ頭に浮かんできたのだけれど、私の考え違いだといけないから尋ねるわね……その…何を飼いたいのか教えてもらえるかしら?」

ディアナ「はい、これなのですが…♪」インターネット上から探してプリントアウトしたらしい写真には、ちょっとしたオマール海老(伊勢海老)ほどもありそうな黒いサソリが尾を振り上げている姿が写っている…

提督「…っ、さすがにここで蠍は……」

ディアナ「駄目でしょうか? …この種類は見た目こそ大きいですけれど、そこまで強い毒はないのですが……」

提督「いえ……それはそうかもしれないけれど、さすがに皆も怖がるだろうし…」

ディアナ「提督は蠍がお嫌いですか?」

提督「いえ、別に嫌いって言うほどではないけれど……でも「ここで飼う」と言われると、ちょっと…ね」

ディアナ「…そうですか、致し方ありませんね……ならば別のものにいたしましょう」

提督「そうね、そうしてもらえると助かるわ…それで、他の候補には何があるのかしら?」

ディアナ「ええ、実を申しますともう一つ……」

………



…数日後・タラント市街…

提督「…ディアナ、そろそろタラントに着くわよ」深青色に塗られた「ランチア・フラミニア」の助手席にディアナを乗せ、鎮守府から快調に飛ばしてきた提督…

ディアナ「はい」

提督「それにしても、ディアナが車を欲しがるとは思っていなかったわ…♪」

…回想…

提督「……ディアナはお誕生日に車が欲しいの?」

ディアナ「はい。こうして厨房に立ってお料理をしていると、近くの町まで買い物へ出かける機会も多いものですから…ベスパでは雨の日や荷物が多い時には困りますし、かといって鎮守府のイヴェコ四輪トラックでは大仰ですので……わたくしも荷物が載せられるような一台が欲しいと思っていたのでございます」

提督「そうねぇ…別にガレージに空きはあるし、ディアナは免許も持っているから構わないけれど……でも、必要なら私がフラミニアを出してあげるわよ?」

ディアナ「ええ、ですがリットリオが「チンクエチェント」(二代目フィアット500)に乗っているのを見ると楽しそうで……わたくし、少々うらやましくなってしまったのでございます///」

提督「なるほど…了解、それならどこかでタラントの自動車屋さんにでも行ってみましょうか」

ディアナ「ええ、ぜひとも…♪」

………

…中古自動車販売店…

提督「さぁ、着いたわよ」

ディアナ「はい」

おっちゃん「お、海軍さん…久しぶりだねぇ!」

提督「どうも♪」


…提督が車を停めた中古自動車の店は小さい事務所とガレージ、それからレストア中の廃物寸前のものから新車と変わらないような綺麗な状態の物まで十数台の自動車が並べられた屋外スペースで出来ていて、オイルだらけのつなぎで手を拭いながらオーナーのおっちゃんが出てきた……事務所には数十年前のレースクィーンたちが写っているポスターや自動車メーカー、そしてカロッツェリア(※車体架装業者…コーチビルダー)のロゴマークがあちこちに貼ってある…


おっちゃん「…それで、今日は「フラミニア」のメンテかい? まぁいいや、ちょっと待ってな……エミーリア、お客さんだぞ!」

女性の声「えぇ? …ったく、ひとがエンジンをバラしてるって言うのに……いま行くからちょっと待ってて!」

…ガレージから出てきたのはやはりオイルだらけの作業つなぎを着た女性で、手袋を脱いで胸ポケットに押し込みながらやって来た…髪は短く切ってあるが癖っ毛らしく、かぶり直した「フィアット・ラリー」の野球帽からあちこちに跳ねて飛び出している…

提督「チャオ、エミーリア♪」

女性「あぁ、海軍さん……今日はどうしたの? ランチアのパーツがイカれちゃった?」

提督「いいえ。今日は「彼女」のお買い物♪」

女性「へぇ、なるほど……オイルまみれのさえないメカニックの前に素敵な彼女を連れてきた、ってわけね?」

提督「あぁ、そう言う意味じゃなくて…あくまでも女性の人称代名詞として「彼女」っていうことよ」

女性「冗談よ、分かってるわ……それで、貴女が今日のお客さんね?」

ディアナ「初めてお目にかかります…わたくし「ディアナ」と申します」

女性「エミーリアよ。ここのガレージでうちの親父と一緒に車をいじくってるの…よろしくね?」

ディアナ「よろしくお願い申し上げます」

エミーリア「これはまた、ずいぶんご丁寧に……とにかく、好みの一台が見つかるよう手伝わせてもらうわ♪」

ディアナ「よしなに」

………

…しばらくして…

ディアナ「……ずいぶんと色々な種類があるのですね…わたくし、目移りしてしまいそうです」

エミーリア「まぁ、半分は趣味みたいなもんだからね…それじゃあこの「チンクエチェント」なんてどう? ありきたりかもしれないけど、荷物をのっけてもよく走るし、小回りが利くから狭い道でも使いやすいし……それに値段もお手頃よ?」

ディアナ「ええ……ですが「フィアット500」は鎮守府ですでに持っている方がおりまして…」

エミーリア「あぁ、なるほど…ま、せっかくなら違うのにしたいわよね」

ディアナ「はい」

エミーリア「ならこの「アルファロメオ・スパイダー」は? 小柄だけど加速はいいし、ハンドリングもキレがあるから今どきのスポーツクーペにも負けないわよ?」

ディアナ「なるほど、とても綺麗な車ですが…できればお買い物をして荷物を載せられるような車を買いたいので」

エミーリア「なぁんだ、それならそうと言ってくれればいいのに……そういうことなら、こっちにいいのがあるわ♪」

ディアナ「…この車、ですか?」

エミーリア「ええ「ランチア・デルタ・HFインテグラーレ」よ……ラリーでもぶっちぎりで速かったし、コーナーも抜群だった傑作よ。しかも四駆だから道路が悪くてもへっちゃらだし、ハッチバックだから後ろに荷物を載せることも出来るわ……どう?」

ディアナ「なるほど、なかなか良さそうですね…お値段はおいくらになるでしょうか?」

エミーリア「そうねぇ、この「デルタ」は人気もあるし……ま、このくらいかな?」つなぎのポケットから電卓を出すと手早くはじいた…

ディアナ「あら…その値段では少々折り合いませんね…提督もいくらか出してくれるとおっしゃって下さいますが、予算的には……万リラ程度で抑えたいと思っておりますので」

エミーリア「うーん、その値段でとなると……じゃあ、これならどう?」そう言うと、満月のような綺麗な淡いクリーム色に塗られた一台を指し示した…

ディアナ「まぁ……何とも可愛らしいデザインでございますね」

エミーリア「気に入った? これはね「フィアット850」のベルリーナ(セダン)タイプよ」

ディアナ「なるほど……おや?」周囲を見て回ったが、フロントグリルを眺めて軽く首を傾げた…

エミーリア「どうかした?」

ディアナ「はい…この車はエンブレムがフィアットの物では無いようですね、絵柄は蠍に見えますが…」黄色とオレンジ色で斜めに塗り分けられた盾の中に、図案化された黒い蠍が入っている…

エミーリア「そうなのよ、実はね……」

提督「…どう、ディアナ? 気に入った一台はあった?」ガレージのオーナーであるおっちゃんとランチアの部品についてやりとりしていたが、必要な話は済んだらしく、ディアナのもとにやって来た…

ディアナ「はい、提督。この車にしようかと思っているのですが…」

提督「あら、フィアット850ね。見た目も可愛らしいし、大きさも手頃だしいいじゃない……って、ちょっと待って?」にこにこと微笑していたが、車体を見て何か腑に落ちないような表情を浮かべ、それからフロントの蠍のエンブレムを見て驚きの表情を浮かべた…

提督「……もしかして、これってただのフィアット850じゃなくて「フィアット850アバルト」なの?」

(※アバルト…イタリアの自動車カスタムメーカー。フィアット500を始めとする各種の自動車をレース仕様に改造して多くの成績を残し、エンブレムの「スコルピオーネ」ともども有名)

エミーリア「ふふーん、さすが海軍さん……その通り♪」ニヤリと笑うと、後部のエンジンカバーを開けた…

提督「うわ…!」

エミーリア「どうよ? 一見するとただの850に見えるけど、エンジンから足回りから、中身はまるっきりの別物…これならオートストラーダ(高速道路)で生意気な顔をしている今どきのルノーだのアウディだのにも負けないわ♪」

提督「驚いたわね…ちなみにおいくら?」

エミーリア「そうねぇ……万リラって話をしてたんだけど」

提督「え、この850アバルトが…!?」

エミーリア「そこはワケありでね……実は前の持ち主がこれで事故ってて「不愉快だから」って手放したってシロモノなの。もちろんフレームは問題ないし、各部もこっちでしっかり直してあるんだけど、どうも売れなくってねぇ…と言うわけで、現金の一括払い……それと整備をうちでしてくれるって言うなら、この値段でいいわ♪」

提督「…いいのね?」

エミーリア「もちいいわ…買う?」

提督「ディアナの気に入ったならね……どうかしら?」

ディアナ「そうですね、お話を聞く限りではかなりの掘り出し物のようですし…わたくしも気に入りましたので、これにしようかと存じます♪」

エミーリア「決まりね!」

提督「それじゃあ私が……万リラは出してあげるわ。それにしてもこの値段で「850アバルト」が買えるなんて良かったわね」

ディアナ「ええ。提督もよろしければ後で試してみて下さいませ」

提督「ありがとう♪」

…それから事務所で契約書類を始め、車検証だの何だのとこまごました書類にサインを書き込んだディアナと提督…

エミーリア「…はい、それじゃあ晴れてあの850はあなたの物よ……よくしてやってね♪」

ディアナ「ええ、ぜひともそうさせていただきます」

エミーリア「良かった…それじゃあお役所の手続きがあるから、12日までにはそっちの鎮守府にお届けするわ」

提督「あら、12日といえばちょうどディアナのお誕生日ね♪」

ディアナ「さようにございますね」

エミーリア「ホント? それならなおの事よかったわ…お父さん、聞いた?」

おっちゃん「おうよ……良かったなお嬢ちゃん。ちょっとばかし型は古いが、いい車だぜ?」

ディアナ「はい…♪」

提督「それじゃあ、当日はよろしくお願いします」

おっちゃん「ああ、まかしときな!」

ディアナ「よしなに」

………

…11月12日・午前…

提督「さて、と…それじゃあディアナのために、腕によりをかけてごちそうを作るとしましょうか♪」タートルネックセーターの袖をまくりエプロンを着けると、ヘアゴムで髪を束ねた……

ドリア「はい…♪」

エリトレア「お任せ下さいっ♪」

アブルッツィ「ええ、任せておいて」

ルイージ・トレーリ「和食ならいくらか心得がありますから、お手伝いしますね」

提督「ふふ、みんな頼もしいわ…それじゃあ基本はここに貼ってある献立通りに行きましょう…もし材料が足りなかったり時間が足りなかったりしたら、そのときは臨機応変に……ね?」

四人「「了解」」


…誕生日というよりは、いわば「成人式」のような就役日(ディアナの進水自体は5月25日)だと言うのに、いつものように厨房で料理を作ろうとするディアナをなかば無理矢理に追い出し、提督の指揮の下でごちそうの準備に取りかかる…


提督「セコンド・ピアットは予定通りローストのチキンにしましょう……シンプルにローズマリーとオリーヴオイル、塩胡椒でいいわよね」

(※セコンド・ピアット…食前酒、「アンティパスト(前菜)」、「プリモ・ピアット(第一皿…パスタ・スープ類)」に続く「第二皿」と呼ばれるメインディッシュのこと)

アブルッツィ「それと提督のおばさまが送ってきてくれたイノシシ肉ね……ドングリだの松の実だのを一杯食べた秋のイノシシだから脂も乗ってるし、赤味もすごく美味しそうよ!」ひと抱えはありそうな大きなイノシシのもも肉とあばら肉を取り出し、まな板の上にドシンと置いた…

提督「シルヴィアおばさまは猟の名人だもの♪」

アブルッツィ「みたいね……うーん、ここはやっぱり炭火でこんがりと…いや、赤ワインと玉ねぎでじっくり煮込んだのも捨てがたいか…むむむ……」

提督「んー…チキンはローストだから、イノシシは煮込みにしたらどうかしら……残ったらボロネーゼ風にして、明日のパスタにしてあげる♪」

アブルッツィ「そうね、それがいいかも……あぁ、考えただけでお腹が空いてくるわ!」

提督「ふふっ、私も…♪」

トレーリ「ふふ、提督は食いしん坊さんですものね……それでは、私は「茶碗蒸し」を作ろうかと思います。ジァポーネで食べる、甘くないプリンのような蒸し物ですよ」

提督「なるほど…」

エリトレア「じゃあ私は東南アジア風のサラダでも…そういえばボルネオのときも一緒でしたね、トレーリ?」

トレーリ「はい。他にカッペリーニたちもいて……懐かしいです」技術・貴重物資交換のために日本へと派遣されたトレーリたち数隻の大型潜水艦と、その支援にあたったエリトレア…

エリトレア「…こうしてまたトレーリたちに会えて嬉しいですっ♪」

トレーリ「私もです、エリトレア」

提督「良かったわね、二人とも……ところでエリトレア、お湯が噴きこぼれそうだけれど?」

エリトレア「うわわっ…!」

提督「ふふ…♪」

………


…昼頃…

提督「…えー、それではディアナの就役記念日を祝って……乾杯♪」

一同「「乾杯っ♪」」

ディアナ「ありがとうございます…このように盛大なお祝いを開いていただいて、言葉もございません」チェザーレから借りた真っ白なトーガに身を包んで銀の弓を背負ったディアナは、まさに月の女神のように見える……乾杯の音頭を受けたディアナは弓と矢筒をかたわらに置くと、優雅に一礼した…

エリトレア「まぁまぁ…そう固くならずに、遠慮しないでいっぱい食べて下さいねっ♪」

ディアナ「ふふ、エリトレアがそう言って下さるのですから…遠慮せずいただくことと致しましょう」

………



提督「…ディアナ、もう少しパスタを取ってあげましょうか?」

ディアナ「ありがとうございます」

ポーラ「良かったらキアンティをもう一杯いかがですかぁ~♪」

ディアナ「よしなに…♪」

アブルッツィ「いっぱい作ったから、遠慮しないでどんどん食べてよ?」

ディアナ「ええ」


…歯切れのいいきゅうりのような食感をした青パパイヤと蒸した鶏の胸肉を細く切って和え、軽く魚醤で味付けをして砕いたピーナツを散らしたエリトレアの「東南アジア風サラダ」に始まり、春に続いて秋に旬を迎えるアサリで仕上げた「スパゲッティ・アッレ・ボンゴレ」に、提督の実家から送られてきた猪肉の味わい深い煮込み……飲み物にはイタリア赤ワインの王様「バローロ」と、銘柄こそないがポーラが選んだすっきりした地元の白ワイン、それにキアンティやシェリーが何本か待機している…


提督「んー…料理もよければワインも素晴らしいわ」

エリトレア「頑張って作ったぶん、美味しさもひとしおですねっ♪」

提督「ええ」

ペルラ(中型潜ペルラ級「真珠」)「ところで、今日のドルチェは何かしら…♪」

アメティスタ(中型潜シレーナ級「アメジスト」)「何でしょうね…私も楽しみです」

ヴォルフラミオ(中型潜アッチアイーオ級「タングステン」)「……甘い物はそこまで好きじゃない」

プラティノ(アッチアイーオ級「プラチナ」)「ヴォルフラミオってば、いつもそうやってドイツ人みたいなことを言うんだから……もっと人生を情熱的に楽しみなさいよ♪」白金のような輝く白い歯を見せて笑いかける…

ヴォルフラミオ「そう言う性分なんだ、仕方ないだろう」ヴォルフラミオ(元は「狼の泡」の意)はドイツ語が語源と言うこともあるためか、狼のような雰囲気でタングステンらしい冷徹な印象を与える……

アクスム「ヴォルフラミオはいつもこうでしたよ……ね、デジエ?」

デジエ「そうね、アクスム…♪」

アッチアイーオ「ちょっと、食事中にいちゃつくのは止めなさいよ!」

アルゴ(中型潜アルゴ級)「いいじゃない、二人は「私に乗る権利がある」くらいの立派な英雄だもの♪」ギリシャ神話のイアーソーンが「金羊毛」を求めて作った伝説の船「アルゴー号」にちなんでいるアルゴ……そのせいか、勇敢だったり戦績を残している娘にはとことん甘い…

アッチアイーオ「ほんとにもう…!」

ナウティロ(中型潜フルット級「オウムガイ」)「まぁまぁ、いいじゃないですか…♪」オウム貝の殻のように紅白で房になっている髪を垂らしている…

アラジ(中型潜アデュア級)「ナウティロの言う通りね。怒ってばかりだと疲れちゃうわよ?」

シーレ(アデュア級)「そうそう♪」

トリチェリ(大型潜ブリン級)「たまにはゆったりした気分でワインを味わって、のんびりして下さい……ね?」

アッチアイーオ「分かった、分かったわよ…あなたたちに言われたら何にも言えないわ」


…有名な「マイアーレ(豚)」ことSLC(人間魚雷)を搭載してアレクサンドリア港に侵入、戦艦「クィーン・エリザベス」「ヴァリアント」を大破着底、駆逐艦「ジャーヴィス」を損傷させた殊勲艦「シーレ」と、55回もの出撃を行い無事に戦後を迎えた強運の「アラジ」、そして紅海で対潜グループ相手に浮上砲戦を強いられるも駆逐艦とスループ各一隻を返り討ちにし、最後は総員退艦の上で自沈した「トリチェリ」と、そうそうたる功績の持ち主がアッチアイーオをなだめる…


アラジ「よろしい」

提督「…それじゃあそろそろドルチェを持ってきましょうか……ね?」

エリトレア「はいっ♪」

…厨房から提督とエリトレアが持ってきた大きなお盆には、イタリアの秋を代表する栗を使った「モンテ・ビアンコ」がぎっしりと並べてある…

(※モンブラン…元はフランスではなくイタリアの郷土菓子。日本で見られる「モンブラン」はアレンジされたもので、元祖イタリアのものはモンブランの山並みを表したきつい三角錐型に整えたマロンクリームに白い粉砂糖を振りかけるスタイル)

ディアナ「まぁ…♪」

ドリア「美味しそうですね♪」

ヴォルフラミオ「…」

プラティノ「…ヴォルフラミオはいらないそうだから、私がもらっておくわね♪」

ヴォルフラミオ「いや、別に食べないとは言ってないだろう……///」

近くの数人「「あはははっ♪」」

ヴォルフラミオ「///」

………

…食後…

提督「ふぅ…美味しかったのはいいけれど、思っていたより食べちゃったわね……」

アッチアイーオ「いっつもそんなこと言ってるじゃない、少しは加減したらどうなの?」

提督「…言ってくれるわね」

デルフィーノ「まぁまぁ…食べた分だけちゃんと運動すれば大丈夫ですよぅ」

ドリア「うふふっ、提督はそれが出来ないからお悩みなのですよ…デルフィーノ♪」

提督「むぅぅ…」

エリトレア「……それじゃあ、身近な所から始めてみたらどうでしょうかっ♪」

提督「あら、エリトレア…えぇと、その「身近な所」ってどういう意味かしら?」

エリトレア「はいっ、そのことですが…家事は意外と身体を使いますし、腹筋や腕立て伏せみたいにだらだら汗を流して……と言うわけでもありませんから、こまめに身体を動かすにはいいと思うのですが…どうでしょうか、提督っ♪」

提督「なるほど、なかなかいい考えかもしれないわね…♪」

エリトレア「そうですか…では洗い物もいっぱいありますし、まずはお皿洗いなんてどうですかっ?」

提督「……本当はそれが狙いね?」

エリトレア「あらら、バレちゃいましたか…」

提督「もう…そんな手を使わなくたって、必要なら手伝ってあげるわよ♪」ウィンクをすると椅子から立ち上がり、タートルネックの袖をまくり上げた…

エリトレア「ありがとうございますっ♪」

ディアナ「あ、でしたらわたくしも…」

提督「いいのよ、ディアナは今日の主役なんだから…ゆっくりしていて?」さっと立ち上がろうとするディアナを軽く押さえてにっこりした…

ディアナ「恐れ入ります…」

提督「さぁ、それじゃあ頑張りましょうか♪」

エリトレア「はいっ♪」

…数十分後…

提督「ふー…やっと終わったわね」

エリトレア「今日は特にお皿が多かったので、大変でしたねっ」数人が当番として手伝ってくれたとはいえ、かなりの作業だった後片付け……にも関わらず、いつも通りの屈託ない笑顔を見せるエリトレア…

提督「まぁ、美味しいごちそうを食べるためにはやむを得ないわね…」

アッチアイーオ「提督、門の所に訪問者よ……誰だか知らないけれど、つなぎを着た女の子が古めかしいトレーラーで来てるわ」

提督「トレーラー…? あぁ、はいはい」

アッチアイーオ「入れていいのね?」

提督「ええ、いいわ……ディアナ、来たわよ♪」

ディアナ「あら…♪」

…鎮守府・管理棟前…

エミーリア「はーい、海軍さん…ご注文の品のお届けに上がったわよ♪」つなぎ姿のエミーリアは、戦前のモデルと思われる骨董品のトレーラートラックから「よっ…!」と飛び降り、後ろの道板を下ろした…

提督「まぁ、これはまたずいぶんと……戦前のOM?」(※オフィシーネ・メカニケ…戦前~1970年代に「イヴェコ」へ統合されるまで長くトラック等を作っていた自動車メーカー)

エミーリア「そ、ひいお祖父ちゃんの代からずーっとうちで使ってるトレーラーなの…もちろんパワーステアリングとかエアコンなんてないし、ウィンカーだって「窓から腕を振る」スタイルだけど、これだけ古いと逆に目立つから、結構いい広告になるのよ?」

提督「確かにそうでしょうね…」

エミーリア「…それじゃあ降ろすからね」フィアットの運転席に乗り込むと、ゆっくりバックさせてトレーラーから降ろした…

ディアナ「ありがとうございます」

エミーリア「いいのよ、あなたの就役記念日なんでしょ? おめでとう!」そう言うとつなぎのポケットに隠していたクラッカーを取り出して「パンッ!」と鳴らした…

ディアナ「まぁ…♪」

エミーリア「それじゃあ、これからもうちのガレージをよろしくね!」

ディアナ「こちらこそ」

提督「…良かったわね、ディアナ♪」

ディアナ「はい」

…数日後・提督私室…

提督「うーん…」

アッチアイーオ(常温)「提督、一体どうしたのよ? 冬物の服を見ながら考え込んじゃって」

提督「いえ、それがね…ここに着任した時は春だったから、冬物を箱に詰めて来たのだけれど…その時に整理を兼ねてハンガーを捨てたりあげちゃったりしたものだから……こうして冬物を出したら本数が足りなくなっちゃって…」ロングコートにマフラー、厚手のセーターやカーディガンといった冬物を広げて、少し困り顔の提督……

アッチアイーオ「だったら誰かから借りればいいじゃない…エウジェニオあたりならお洒落にもうるさいし、ハンガーの数本くらい持っているんじゃないの?」

提督「まぁ、今だけならそれでもいいのだけれど……でも、これから冬の間ずーっと借りっぱなし…っていう訳にもいかないじゃない?」

アッチアイーオ「まぁ、そうよね…じゃあ買いに行けば?」

提督「んー……そうね、そうするわ。 それじゃあアッチアイーオ、一緒に行かない?」

アッチアイーオ「私はいいわ…その分、秘書艦として留守はしておいてあげるから」

提督「そう…それじゃあ留守はよろしくね♪」ちゅっ…♪

アッチアイーオ(温)「も、もうっ…いきなりしないでって言ってるでしょ///」

提督「ふふっ……それじゃあ何かお土産を買ってきてあげるから…ね♪」

アッチアイーオ「い、いらないわよ! …提督がキスしてくれれば……それでいいし…///」

提督「ふふふっ、了解♪」

…玄関…

ディアナ「あら、提督…お出かけですか?」

提督「ええ。ちょっと「近くの町」まで買い物に行こうと思って……ディアナは?」

ディアナ「まぁ、奇遇でございますね…実はわたくしも、ちょうどお買い物に行こうと思って準備を整えた所でして…それに、せっかく自動車も買ったわけですし、少々試し乗りも兼ねて……と言うわけでございます」そう言うと、少し照れたような笑みを浮かべた…

提督「なるほど、いいじゃない♪」

ディアナ「はい……あ、一つ良い考えを思いついたのですが」

提督「いい考え?」

ディアナ「ええ…よろしければ、提督もわたくしのフィアットにお乗りになっては?」

提督「ディアナ、そう言ってくれるのは嬉しいけれど……始めて同乗するのが私でいいの?」

ディアナ「もちろんでございます…いかがでございましょう?」

提督「そうね……ディアナが乗せてくれるなら、喜んで♪」

ディアナ「では、決まりでございますね」

…数分後…

提督「……さてと、それじゃあ留守はよろしくね?」

デルフィーノの声「了解です、気をつけて行ってきて下さいねぇ♪」提督はインターホンのカメラ越しに当番のデルフィーノに手を振りつつ正門を開け、門を出た所でデルフィーノにロックを操作してもらうと、ちゃんと施錠されたことを確認した…

提督「これでよし…と♪」

ディアナ「…では、よしなに参りましょう♪」ブォ…ン、ブロロロ…ッ!

提督「…っ!?」

…提督がドアを閉めてシートベルトを締めたことを確認すると、ディアナは一気にフィアットのアクセルを吹かした……手早くギアをトップに入れると、十秒もしないうちに速度計の針が百キロを越えた…

提督「ね、ねぇ…ディアナ」

ディアナ「はい、何でございましょう」

提督「いえ、その……少し飛ばしすぎじゃないかしら?」

…外見こそノーマルの物とあまり変わらない、ディアナの小さな「フィアット850」ではあるが、中身は「アバルト」仕様で手を加えてあるので、ものすごいスピードで海沿いの道路を疾走する……もちろん提督も自分の「ランチア・フラミニア」でなら100キロなど何と言うこともないのだが、大柄ですわりのいいランチアに比べて小さいフィアット850だけに身体の振られ方や車体の傾きが激しく、同時に自分で運転していない分だけ他の事に意識が向き、より速度が出ているように感じる…

ディアナ「…そうでしょうか?」

提督「ええ……120キロは出ているわよ」

ディアナ「さようにございますね」にこにこしながらハンドルをさばきつつ、一流ドライバー並にコーナーをクリアしていく……

提督「…」(「高速スループ」だけあって、ディアナは車に乗るとスピードが抑えられないタイプなのかしら…?)

ディアナ「ふふふ、運転というのは楽しいものでございますね…♪」

提督「え、えぇ……そうね」

…数時間後…

リットリオ「あ、お帰りなさいっ♪」提督が帰ってくると、玄関先で待っていたリットリオが飛びついてきた……割と長身の提督よりもさらに頭一つ分は大きいリットリオに抱きつかれて、ちょうど胸の間に顔が埋まった……

提督「んむっ……///」

リットリオ「ふふふっ、提督が帰ってくるのを待っていたんですよっ…♪」

提督「んんぅ、むふぅ……ぷはぁ♪ …もう、リットリオってば♪」

リットリオ「えへへっ…それで、ディアナとのドライブはどうでした?」

提督「あー……次回からは遠慮させてもらいたいわね」

リットリオ「え? でもディアナは運転が上手だって話でしたよ?」

提督「ええ、確かに上手ではあるわよ……でもスピードが…」

リットリオ「なるほど、そういうことですか」

提督「ええ…普通なら十分や十五分はかかるっていう道のりを半分くらいに縮めるんだもの……ちょっと冷や汗が出たわ」

リットリオ「それは大変でしたねぇ……私がヴィットリオやローマとお出かけするときは、そこまで出しませんから♪」

提督「それがいいわ…」

リットリオ「…あ、そういえば」

提督「なぁに?」

リットリオ「この間「近くの町」にお買い物に行ったとき、ちょっと変わった人を見かけたんですよ♪」

提督「変わった人?」

リットリオ「はい…町のカフェでコーヒーを飲んでいた時なんですが、クリーム色のチンクエチェント(フィアット500)に乗った人が通りかかって……」

………

…しばらく前…

リットリオ「はー…お買い物、楽しかったですねぇ♪」

ヴィットリオ・ヴェネト「そうですね、姉さま……でも、少し喉が渇きました」

ローマ「なら、カフェで休憩でもしていきませんか?」

リットリオ「はーい、それじゃあそうしましょう♪」ちょうど道端のカフェを見つけると真っ赤なフィアット500を多少ぎこちなく停めた…

…数分後…

ローマ「…リットリオ姉様、口の端にクリームが付いていますよ?」

リットリオ「本当? …それじゃあローマ、取って♪」テーブル越しに顔を近づける…

ローマ「も、もう……仕方ないですね…あむっ///」

ヴィットリオ・ヴェネト「ふふ、リットリオ姉さまってば…」と、不意にテーブルに男が近寄ってきた…

男「やぁ、お嬢さん方…♪」

…リットリオたちに声をかけてきた愉快そうな顔をしたいがぐり頭の男は赤いジャケットに青いワイシャツ、黄色のネクタイ…と、ど派手な格好をしていて、そばにはカスタードクリームのような色をしたチンクエチェントが停まっている……車体には帽子を目深にかぶった立派なあごひげの男がもたれかかり、吸いさしの煙草をくわえている…

リットリオ「はい、何でしょう?」

派手な男「いやぁ、ちょーっと火を貸してもらえたら……と思ったんだけどなぁ♪」ちょっと軽い三枚目といった口調で、派手なウィンクを投げて来た…が、それほど悪い人間には見えない…

ローマ「済みません、あいにく煙草はたしなまないもので」

派手な男「あらぁ~、それはごめんなさいねぇ……ところでそこのチンクエチェント、あれは君の車?」

リットリオ「はい、そうですよ」

派手な男「そっか…大事にしてるねぇ」

リットリオ「ええ、もちろんです♪」

ひげの男「……おい、いつまで油を売っているつもりだよ?」

派手な男「そう言うなよ……それじゃあお嬢さん方、チャオ♪」そう言うとクリーム色のチンクエチェントに飛び乗り走り去っていった…

ヴェネト「なんだか面白い感じの人でしたねぇ♪」

ローマ「そうね、ちょっと軽い感じだけれど……」ローマがそう言いかけた時、イタリア財務警察のパトカーが数台、甲高いサイレンを鳴らして青い回転灯を回しながらカフェの前を通過していった……

リットリオ「そうですね…さ、コーヒーは飲み終わりました?」

久しぶりにその1から読み直してたけどグレイ提督がだんだん金髪ギブソンタックの某妖怪紅茶格言ババアの声でされるようになってしまった...

>>701 振り返ってみるとあちこちに誤記や設定の矛盾があって恥ずかしい限りですが、読み返して感想まで下さる方がいて嬉しい限りです……最近色々と忙しく、更新が滞りがちなので、そうして読み返しながらお待ちいただければ幸いです


…あの髪型は「ギブソンタック」と言うのですね、知らなかったのでためになりました……それと「妖怪紅茶格言ババア」呼ばわりなどすると、家にパンジャンドラムが放り込まれたり、チャーチル歩兵直協戦車のゲテモノ派生型が突っ込んで来たりするかもしれませんよ…くわばらくわばら


……この後は「横須賀第二鎮守府」に戻った百合姫提督の様子でも書こうかと思っていますが、帝国海軍の艦にはなかなかエピソードも多いので、資料を読みつつどの艦をキャラクターとして使うか思案中です…個人的には松型駆逐艦や、普段はなかなか目立たない補助艦艇、護衛艦艇を中心に出して行きたい所存です……もし出して欲しい艦があれば、いつでもリクエストを下さいね

リットリオ「…と言うわけで、なんだか面白そうな人でした♪」

提督「なるほどね……うーん……」

リットリオ「どうしました、提督?」

提督「いえ…その特徴をした男の人、どこかで見かけたことがある気がするのだけれど……あ!」こめかみに手を当てて考えていたが、ふいにすっとんきょうな声をあげた…

リットリオ「思い出しましたか?」

提督「ええ、まだ私がパリ駐在の海軍武官付連絡将校だったころよ…まだ駆け出しの中尉で、マリーとも知り合って間もない頃ね♪」

リットリオ「そのお話、ぜひ聞きたいです♪」

提督「それじゃあ立ち話もなんだし、食堂で話すとしましょうか♪」

…食堂…

提督「さてと…」何だかんだで非番の艦娘たちが良く集まってお茶とお菓子を楽しんだり、おしゃべりに興じている食堂……提督が座ると面白い話でも聞こうと、三々五々と集まってくる…

ライモン「あ、提督……お帰りなさい」さきほどまで当直で作戦室に詰めていたライモン……ずっとレーダー画面を見ていたせいか、しきりにまばたきしている…

提督「ええ、ただいま…はい、お土産♪」町の小さな菓子店で買ってきた、クッキーの小袋を渡した…

ライモン「ありがとうございます」

提督「ノン・ファ・ニエンテ(いいのよ)…大丈夫、みんなにも買ってきたわよ♪」


…小脇に抱えていた大きな紙袋をがさごそと開けて、チョコレートやアーモンド入りのクッキー、小さなピスタチオ入りケーキを取り出して大皿に並べる提督……ほとんどは買ったものだが、お菓子屋の主人であるほっそりしたおじさんと、その奥さんである愛想のいいおばさんは「お得意様」である鎮守府に、欠けたり割れたりした焼菓子や、少し崩れたムースやら飾りのサクランボが取れたカンノーロやらををたくさんおまけしてくれた…


カルロ・ミラベロ「ふふ、ありがとう…でも、私はもっと甘いものが食べたいの♪」

アウグスト・リボティ「そう…舐めるとあまーい蜜がいっぱい滴ってくるような……ね?」ねちっこい妖しい手つきで提督にまとわりつく二人…

提督「ふふっ、それは夜のお愉しみに取っておきましょうね……♪」

エリトレア「はいはーい、みなさーん♪ お茶を淹れましたから、飲みたい方は自分で注いで下さいねっ♪」

提督「ふふ、ちょうどタイミングね…それじゃあ……」

ライモン「提督のはわたしが持ってきますから、どうぞ座っていて下さい」

提督「あら、ありがとう……ちゅっ♪」

ライモン「も、もうっ…///」

提督「…さてと、リットリオたちが会ったっていう男の人だけれど……」みんなにリットリオの話のあらましを伝えると、紅茶を一口すすってから続けた…

………

…十年ほど前・パリ…

カンピオーニ中尉(提督)「ふぅ……まったく」

エクレール中尉(エクレール提督)「…そういうこともありますわ」

提督「そうは言ってもね……「ブリエンヌ館」(フランス防衛省…パリ七区)に行けば書類を渡す相手がいるって言われたのに、行き違いで「オテル(ホテル)・ドゥ・ラ・マリーヌ」(フランス海軍参謀本部…パリ八区)に行かなきゃいけないなんて…まったく」


エクレール提督「まぁ、でも良いではありませんの…パリ七区に八区と言えば「オテル・ドゥ・ザンヴァリッド(アンヴァリッド…廃兵院。古くは傷病兵の施設だった。軍事博物館(ミュゼー・ドゥ・ラルメー)が併設されており、ナポレオン・ボナパルトの棺もある)」に「コンコルド広場」「オルセー美術館」「グラン・パレ(パリ万博会場で現在は展示場兼美術館)」…他にもあまたの名所旧跡のある世界遺産ですもの。書類を渡し終えたら、わたくしが案内して差し上げますわ♪」


…セーヌ川を挟んで向かい合わせの位置にあり、どちらも高級商業地区と官庁街であるパリ七区と八区……ルノーやシトロエンが行き交う橋の歩道を連れだって歩きながら、自慢げに言うエクレール提督…


提督「世界遺産だって言うのならローマだってそうよ……それにプロヴァンス娘の貴女にパリの案内が出来るのかしら♪」

エクレール提督「この、言わせておけば…!」

提督「ふふっ、冗談よ」

エクレール提督「…世の中には言って良いことと悪いことと言うものがありますわ」

提督「悪かったわ……代わりに今夜はたくさん愛してあげるから…ね?」

エクレール提督「こ、こんな所でそういうことを言うものではありませんわ…っ///」

提督「ふふっ、それじゃあカフェでお茶でもごちそうしてあげる…♪」

提督「……これだけ種類があると目移りしそうね…マリーはどれにするの?」

エクレール提督「そうですわね…わたくしはクレープにいたしますわ」

提督「そう、それじゃあ私はエクレール(エクレア)にするわ♪」にっこりと微笑み、それからさりげなくウィンクを投げた…

エクレール提督「…ま、また貴女はそうやって……///」

提督「あら、いけない?」

エクレール提督「い、いけない事はありませんわ……奇をてらったところがないだけに、最もパティシエの腕前が試されるお菓子ですもの///」

提督「ふふっ…そうよね♪」

エクレール提督「…え、ええ///」

…数分後…

提督「あら、美味しい…中のクリームも甘すぎなくて、ちょうどいいわ」

エクレール提督「それはなによりですわ…まぁパリには美食という美食が集まっておりますもの♪」

提督「ええ…少なくともカトリーナ・ディ・メディチが教えてからはね」

(※カトリーナ・ディ・メディチ…フィレンツェの名門メディチ家の出身で、フランス国王アンリ二世の王妃。フランス名はカトリーヌ・ド・メディシス。政略結婚でフランスに嫁がされ、その際にイタリアのすぐれた文化が多くフランスに持ち込まれた)

エクレール提督「また貴女はそうやって…!」

提督「まぁまぁ…そうやってイライラしているとお肌に悪いわよ?」

エクレール提督「そうなったのは一体誰のせいだと…」

提督「さぁ?」

エクレール提督「…まったく///」

提督「ふふふっ…♪」提督が笑っていると、そばの席に二人の男が座った……片方は派手な赤いジャケットに黄色のワイシャツ、青いネクタイで、もう一人は目深にかぶった帽子にものすごいあごひげで、ひしゃげた吸いさしの煙草をくわえている…

ひげの男「…やれやれ、本当にあの女の言うことを信じるつもりなのか?」

派手な男「ああそうさ……それに今回のヤマはどデカいぜぇ♪」

ひげの男「あきれかえって物も言えねぇな…だいたい「とっつぁん」が目の色を変えて追っかけて来てるって言うのによ」

派手な男「うひひ、とっつぁんは熱心だからねぇ……っと、いけねぇ」そう言うと不意に提督たちの方に声をかけてきた…

派手な男「エクスキューゼ・モア(失礼)…お嬢さん方、ちょーっとその新聞を見せて欲しいんだけどなぁ?」エクレール提督が買って持っていた「ル・モンド」を指し示した…

エクレール提督「まぁ、別に構いませんけれど…いきなりなんですの?」

提督「まぁまぁ……さ、どうぞ?」

派手な男「メルスィ♪」

…軽く礼を述べて「ル・モンド」を受け取ると、二人は紙面を広げて顔を隠すように読み始めた……と、男が新聞を広げるか広げないかのうちに、ふにゃふにゃの茶色いトレンチコートに帽子の男が通りかかった…どうやら日本人らしいコートの男は、雰囲気いい態度といい、どこからどう見ても刑事にしか見えない…

刑事「くそぉ…奴め、逃げ足だけは天下一品だ……!」肩を怒らせ、どたどたと足音も荒く通りを走っていった…

派手な男「……ぬひひ♪」

ひげの男「ははははっ…♪」

派手な男「うひひひ……っと、新聞をどうも♪」

エクレール提督「ええ…」何が何やらといった表情で、細い眉をひそめているエクレール提督……

派手な男「…それじゃあ行くかい?」

ひげの男「おう、そうだな」

…二人の男は勘定をテーブルに置くと、ひょいと横の小路を曲がった……そしてエンジンをかける音が聞こえると、目の覚めるような黄色の「メルツェデス・ベンツSSK」に乗って出てきた…

提督「すごいわね…あれ、メルツェデスのSSKよ」

エクレール提督「確かにクラシックな車のようですけれど……そんなにすごい車なんですの?」

提督「ええ、世界に数百台とない名車よ…立派な車ですね」

派手な男「いやぁ、どうも……とにかく、さっきはありがとさん♪」邪気のないウィンクを投げると、エンジン音を響かせて走り去っていった…

エクレール提督「なんだか知りませんが、変わった方でしたわ……」そう言って丸められた「ル・モンド」を開くと、中に一輪のバラが仕込まれていた…

エクレール提督「まぁ…驚きましたわね」

提督「…なかなかお洒落なことをするわね、私も見習おうかしら♪」

アバルトの850ベルリーナとはまたオシャレなイタリア車を... アバルトは元のフィアットの可愛さを残したままレーシーに仕上がってるので私も大好きです。私の愛車のアバルト1000もよく走る、よく曲がる、よく壊れるの3拍子ですが手を掛ければかけるほど愛情と愛着が沸きとても可愛いです。

>>705 まずはコメントありがとうございます、それにしてもアバルト1000に乗っておられるなんてお洒落ですね!


当初はセイチェント(フィアット600)やフィアット127、あるいはいっそスポーティでとても格好いい「ランチア・アウレリア・スパイダー」にしようかとも考えていましたが、ディアナがお買い物にも使えて、なおかつスピードの出る一台を選ぶなら……と考えて850にしてみました。小さい丸っこい見た目でよく走る、イタリアの街角に似合いの一台といったイメージですね


…イタリア車というと、一時期は工員がライン上の車でお昼を食べたり休憩したりして「弁当がオマケについてくる」なんて言われたこともあったそうですが……メンテナンスフリーといった感じの日本車と違って「自分でメンテナンス出来る人が手をかけて楽しむ」イメージがありますね

………



提督「…って言うことがあったから、たぶん同じ人じゃないかしら?」

リットリオ「きっとそうですね♪」

提督「ね……って、あら」首から提げている携帯電話が「ヴーッ、ヴーッ…!」とうなりだした……

ライモン「電話ですね…どなたでしょうか?」

提督「えぇと…あ、姫からだわ♪」嬉しそうにいそいそと電話を取る提督…

提督「…もしもし、姫?」

百合姫提督の声「ええ、フランカ……電話をするのが遅くなっちゃってごめんなさい、本当は成田に着いたらすぐに連絡したかったのだけれど…この数日はちょっとバタバタしていたものだから……それにこっちが忙しくない時間にかけようとすると、そっちは時差で夜中になっちゃうし…ごめんなさいね?」

提督「ノン・ファ・ニエンテ(いいのよ)…それより、姫の声が聞けて嬉しいわ……まるで天上の音楽みたいね♪」

百合姫提督「も、もう…またそうやって……///」

提督「ふふふっ…ところで、そっちはどう?」

百合姫提督「そうね。みんながよく留守をしていてくれたおかげで、問題はあまりなかったわ」

提督「それはなによりね…良かったら横須賀に戻ったときの話を聞かせてくれる?」

百合姫提督「ええ、でも長話になってしまいそうだけれど……大丈夫?」

提督「構わないわ…姫の方こそ国際電話でしょう? 主計部か何かに「通話料が高い」とか何とか、ねちねち言われたりしない?」

百合姫提督「そうねぇ、それは一応大丈夫だと思うわ……」

提督「そう、それなら安心ね♪ それじゃあ、そっちの話を聞かせて?」

百合姫提督「ええ、今話すわね……」


…数日前・成田空港第一ターミナル…


足柄「ふぅぅ…やっと着いたわね」

百合姫提督「疲れた?」

足柄「まさか……もっとも、まだ飛行機の旅は慣れないわね」

龍田「そうねぇ…お日様が後から着いてきたりとか、夕焼けからお昼になったりとか……」

足柄「ね……面白いから見ていたかったんだけど、カーテンを閉めるように言われちゃって残念だったわ」

百合姫提督「確かに国際線の飛行機じゃないと出来ない体験だけれど、あれを見ていると時差ボケがひどくなるから……仕方ないわ」

足柄「そうらしいわね……それに機内食もなかなかだったわよ。とはいえ、タラントの食事に比べれば「月とすっぽん」ってところだけど…」

百合姫提督「ふふ、無理を言っちゃだめよ…何しろエコノミーだもの」

…今回の「交換プログラム」には百合姫提督の他に「横鎮(横須賀鎮守府)」からもう一人、そして「呉鎮(呉鎮守府)」「佐鎮(佐世保鎮守府)」「舞鎮(舞鶴鎮守府)」から二人ずつの都合八人と、その随行の艦娘たちがイタリアやイギリス、フランスへと派遣されていた……となると、ファーストクラスはおろかビジネスクラスでも予算がかかりすぎる……結局、エコノミークラスで少々疲れる飛行機の旅をすることになった百合姫提督たち…

足柄「まぁそうよね……いいわ、戻ったら好きなだけ寝ればいいんだものね」

百合姫提督「そういうこと……さ、行きましょうか」…PKO参加の部隊や国際貢献活動からの帰還と違って、大仰な「帰国式」だの「旗を振ってのお出迎え」だのといった物もないので、入国審査を済ませた後はむしろ気楽な気分で電車に乗り込んだ……

…電車内…

龍田「…ところで、提督」

百合姫提督「なぁに?」

龍田「結局鎮守府には列車で戻るの?」

百合姫提督「あぁ、そのことね……実はね、横須賀線だと遠回りになるから千葉港までうちの「十七メートル内火艇」が迎えに来てくれるって」

(※十七米内火艇…戦艦・一等巡洋艦(重巡)クラス搭載のモーターランチ。軽快で後部に甲板室を設けている事から「長官艇」としてもよく用いられた。速度およそ十五ノット)

足柄「それはありがたいわね」

百合姫提督「そうね…♪」

…千葉駅…

百合姫提督「さてと、ようやく着いたわね」

足柄「着いちゃったわねぇ……それにしても、どうして今の日本はコンクリートとガラスの建物ばっかりで、しかも統一感がなくってごちゃごちゃしているのかしらね」駅のホームからを見える街の様子を眺めてため息をついた…

龍田「そうねぇ…それでいてお店はみんな似たようなチェーン店ばっかりだものね」

足柄「まったくよ…そりゃ向こうにもゴミが散らかっている場所だってあったし、スプレーの落書きがひどい場所なんかもあったわよ? でもこうやって戻ってきてあっちに比べると、どこの駅前もそっけないコンクリートとガラスのビルばっかりで嫌になるわ……我が国だって大正年間にはもっとこう…レンガと装飾のあるハイカラな建物があったじゃない」

百合姫提督「そうね、私もそんな時代を見てみたかったわ…確かにイタリアはすぐ水道が詰まったり、アパートには階段しかない…なんて不便なところもあったけれど……でも「ただ古い」だけじゃなくて、歴史を大事にした綺麗な建物が多かったわね」

足柄「ほんと、そういうところなのよね」

百合姫提督「そうね…」

龍田「……それはそうとして、千葉港まではどうやって行くのかしら?」

百合姫提督「あぁ、それならモノレールがあるから…それで行きましょう」

足柄「へぇ、モノレールってあのぶら下がったりまたがったりしてるやつでしょ?」

百合姫提督「ええ、そうよ」

足柄「私はまだ乗ったことないわ…面白そうね♪」

百合姫提督「ふふ、気に入ってくれるといいのだけれど……と、その前に」

足柄「なに?」

百合姫提督「せっかくだからここでお弁当でも買っていきましょうか……港に内火艇が来るまでもうしばらくかかるし」

龍田「それがいいわねぇ」

足柄「いいわね、もうお昼に近いし……言われてみればお腹も減ったわ」

百合姫提督「それじゃあ決まりね…♪」

…千葉都市モノレール…

足柄「うわ、思ってたよりもつなぎ目のところでガタガタ揺れるのね……しかも結構加速するし、ぶら下がってるから変な気分」

百合姫提督「…驚いた?」

足柄「そりゃあ私がフネの形で「産まれた」頃にはなかったもの…まぁ路面電車の方がロマンがあると思うけれど、眺めはこっちの方がいいわね」

百合姫提督「そうね…ちなみにここのモノレールは世界で一番長い「懸垂式」のモノレールなんですって」

足柄「へぇ、そうなの」

…しばらくして・千葉港…

足柄「……あぁ、いい風…青くって穏やかな地中海も良かったけど、やっぱりこっちの海の方が落ち着くわねぇ」

龍田「そうねぇ、風の匂いも波の音も……全てが懐かしいわぁ」

百合姫提督「ふふ…それじゃあ懐かしい海を見ながらお昼にしましょうか」


…港を望む「千葉ポートタワー」とその周辺に広がる公園……薫る海風を受け、周囲に広がる東京湾と沿岸の工業地帯を眺めるベンチに腰をかけた……百合姫提督が袋から取り出したのは千葉駅の名物「はまぐり飯」の駅弁で、大きな瀬戸物で出来たハマグリ型の入れ物を開けると、中には醤油で炊き込んだご飯に甘辛いハマグリのむき身が散りばめられたものが入っている…

(※はまぐり弁当…以前は千葉駅にある「万葉軒」の名物だったが、外房線・内房線を使った観光客が減ったためか今では販売されていない)


足柄「あら、美味しそうじゃない」

百合姫提督「それと、ついでにこれも…はい♪」串に刺して焼き、甘辛く味付けした焼き鳥のような「はまぐり串」を差し出した…

龍田「ふぅ……洋食も悪くはなかったけれど、やっぱりご飯と醤油の味は落ち着くわねぇ」

足柄「そう? 私はイタリヤ料理だって好きだけれど?」神戸生まれのハイカラさんで「スピットヘッド観艦式」への参加と欧州歴訪経験もある足柄らしく、少々得意げに言った…

龍田「相変わらずバタ臭いことを言っているわねぇ…」(※バタ臭い…バターの匂いをさせていることから転じて「ヨーロッパ風」あるいは「欧州かぶれ」のこと)

足柄「バタ臭いとは失礼ね」

百合姫提督「ふふふ、まぁまぁ……♪」

…数十分後…

足柄「あれ、うちの内火艇じゃない?」

龍田「間違いないわねぇ……」

百合姫提督「そう、それじゃあ行きましょうか…♪」

…いつもは東京湾クルーズの遊覧船が舫って(もやって)いる客船用の桟橋に近寄ってきた十七メートル内火艇は、桟橋の近くまで来ると逆進をかけて行き脚を止め、ピタリと桟橋に寄せた……そこからさっと降りて提督たちに敬礼する、きりりとした雰囲気の艦娘…

百合姫提督「ご苦労様……わざわざ迎えに来てくれて、どうもありがとう」答礼をすると手を下ろし、それからやさしい微笑を浮かべた…

長身の艦娘「構いません、提督……私が一番にお迎えできて嬉しい限りです♪」

龍田「…相変わらず眩しいわねぇ」

足柄「ええ……まるで帝劇か宝塚のスタアみたいよね」

艦娘「ふっ、そう言われると照れるね……お帰り、足柄、龍田…イタリーは楽しかったかな?」

足柄「相変わらずいいところだったわよ…長門」順番に内火艇へと乗り込みながら返事をした…

長門(長門型戦艦一番艦)「それは何よりだね、まぁつもる話は後で聞くとしようか……さぁ、どうぞお乗りください、提督」内火艇から渡された道板を歩く百合姫提督にさっと手を差しだし、きりりとした凜々しい表情を向けた…

百合姫提督「ええ、ありがとう…///」

…東京湾…

足柄「あー、あれは「高栄丸」ね……また機雷敷設に行くのかしら、ご苦労なことね」元は貨物船ながら帝国海軍へと徴用され「特設敷設船」として機雷敷設を行っていた功労船…同時に無事に大戦を生き延びて長く活躍した幸運船でもある「高栄丸」がゆっくりと出港していく……

龍田「本当にねぇ…」

百合姫提督「……ところで長門、鎮守府はどう?」

長門「ほとんど問題ありません、提督…私と「比叡」のどちらが提督を迎えに行くかで少し押し問答がありましたが……」

百合姫提督「もう、長門ってば……」

長門「申し訳ありません…何しろ比叡が「お召し艦ならば私です」というので「いや…提督は司令官なのだから、そこは『連合艦隊旗艦』の私が行くべきでしょう?」と言ったら、最後は折れてくれました……しかしそのままでは面子が立たないだろうと思ったので、鎮守府での帰還式は比叡に任せました」

百合姫提督「そう、鎮守府での暮らしはお互い譲り合って…ね?」

長門「はい、心得ております」

百合姫提督「よろしい…♪」

足柄「…それで、鎮守府の様子はどう?」

長門「ふふ、そこは相変わらずと言った所かな……」

龍田「天龍姉さんはどうかしら?」

長門「相変わらずの暴れ者で困った限りさ…」そう言いながら龍田の頬に手を当てて、じっと目を見る…

龍田「…ちょっとぉ、止めてくれるかしらぁ?」

長門「おっと、済まないね…♪」

足柄「全く、このやり取りがあると帰ってきた気分になるわね……」

長門「ふふ、足柄もご苦労様……久しぶり会えて嬉しいよ」

足柄「…ちょっ、いいから止めてよ!」

長門「ああ、悪かったね…そうそう、妙高たちも元気で、足柄に会えるのを楽しみにしているよ」

足柄「それならよかったわ」


…読んで下さっている皆様、メリークリスマス……どうか楽しいクリスマスを送れますように…

…きっとクリスマスは可愛い女の子が彼女さんとチャイナドレスでデートしたり、命感じたりするのでしょうね……ちなみに>1は25日のディナーにローストチキンを焼く予定です…

…横須賀第二鎮守府…

長門「そろそろ到着の頃合いだな…」

足柄「……はぁ、早く畳で休みたいわ」

長門「そうだろうね…さ、提督も準備のほどを……♪」

百合姫提督「え、ええ……ありがとう///」

龍田「そういうことをさらっとするんだものねぇ…」

…百合姫提督の預かる「横須賀第二鎮守府」は湾内の拡大された軍港エリアの一画にあり、沖には猿島、東側には記念館「三笠」の姿が見える……周囲の海面には通船や曳船が行き交い、何隻も停泊している各種の艦艇がかつての横須賀を想起させる…

百合姫提督「……帰ってきたわね」

足柄「そうね…ま、比叡が帰還式の音頭を取るってことはかしこまった制式の式があるんだろうから…しゃっきりしてよ?」

百合姫提督「ええ…♪」

長門「機関後進微速…機関停止!」


…将旗を掲げた内火艇が埠頭に着くと、陸(おか)にいた一人がもやい綱をクリートに結ぶ…道板が渡され、龍田、足柄、長門……そして百合姫提督が降りた所でさっと旭日旗と将旗が翻り、整列していた艦娘たちが一斉に敬礼する…同時にスピーカーから「君が代」と、続けて「軍艦」(軍艦マーチ)が流れる…


比叡(金剛型戦艦二番艦)「鎮守府司令官、帰投されました! …提督、どうぞご挨拶を」

百合姫提督「ええ…」ご丁寧にも倉庫から持ち出して来たらしいレッドカーペットを歩くと用意されているマイクスタンドの前に立ち、大小様々な姿をしている艦娘たちをさっと見渡した…

百合姫提督「……今回は「交換プログラム」によるイタリアへの派遣により、大いに研鑽を積み、また見聞を広めることが出来ました……その間、鎮守府の留守をよく守ってくれてありがとう」そう言って軽く頭を下げる…

百合姫提督「こうして無事に帰投することができ…そして皆が健勝であることをこの目で見ることが出来るのは大変に喜ばしいことです」

百合姫提督「……さて、明日からはまた本官が執務を行いますが、欧州で得た経験を持ってして…労苦を惜しまず、より一層この鎮守府の運営に励みたいと思う所存です。ぜひ、皆も協力を願います」挨拶が終わったことを示すべく、マイクスタンドから一歩下がる…

比叡「全体、敬礼っ! 解散っ!」

百合姫提督「……式の進行、ご苦労様」

比叡「いえ、こうした式はきちんと行わないといけませんから……ですが、ありがとうございます」

百合姫提督「どういたしまして。ところで……」そう言いかけたところで次々と艦娘たちが押し寄せ、たちまち取り囲まれた百合姫提督たち…

金剛「お帰りなさぁい……提督♪」

伊勢「提督の帰投を心よりお待ちしておりました」

飛龍「お帰りなさい、提督…みんな待ちくたびれていましたよ!」

妙高「足柄、お帰りなさい……会いたかったわよ」

足柄「ええ、私も…」

那智「足柄、戻ってきてくれて嬉しいわ…後で囲碁でも一局指しましょうか」

足柄「私は囲碁なんかよりチェスの方がいいわ……ハイカラだし」

羽黒「ふふ、まーた足柄の「ハイカラ病」が始まったわ…♪」

天龍「……お帰り、龍田」

龍田「ええ、ただいま」

電「提督、お帰りなさ…!」

百合姫提督「ただいま、いな……痛っ!」

電「あいたた……ぁ!」百合姫提督に挨拶をしようと「ととと…っ!」駆け寄ってきた電だったが、百合姫提督が振り向いた途端頭をぶつけた…

比叡「まったくもう、なにをやっているんです…っとと」ずっしりと重くかさばる赤い絨毯をきちんと丸めて片付けようとした比叡だったが、思わずたたらを踏む…

雪風「大丈夫ですか、比叡…よかったら私が代わりますよ」

比叡「大丈夫よ、大丈夫……雪風は身なりもちゃんとしていて偉いわね」

雪風「あ、ありがとうございます…///」

松「お帰りなさい、提督!」

竹「会いたかったわ!」

梅「うむ、待ちくたびれたぞえ」

百合姫提督「ありがとう、みんな……さぁ、立ち話もなんだから休憩室にでも行きましょう」

…休憩室…

百合姫提督「畳の部屋で緑茶とお茶請け……ふふ、何だかんだで落ち着くわ…♪」

龍田「何より靴を脱いでいられるのはありがたいわねぇ……スリッパや室内履きだとしても、室内で履物を履いていないといけないって言うのは落ち着かなかったものねぇ」

足柄「まぁ、気持ちは分かるわ……龍田、お煎餅を取ってちょうだい」

龍田「はいはい、どうぞ…♪」

百合姫提督「今日のお茶請けは「三原堂」の塩せんべいね……私は好きよ、これ」餅米の粒を残して薄く焼いてある塩せんべいは、独特のばりばりとした食感と香ばしい風味がしてとても美味しい……

足柄「でも何枚もないわね……もらっちゃっていいかしら?」

妙高「もちろんいいわ、だって海外派遣の間はお煎餅なんて食べられなかったでしょう?」

足柄「まぁね……最も、イタリヤじゃあ「カンノーリ」とか「ビスコッティ」みたいにハイカラで素敵なお菓子をうんと食べてきたけれど♪」

羽黒「じゃあいらない?」

足柄「まさか…せっかくなんだもの、いらないって事にはならないわよ」

妙高「そういうところは相変わらずね…♪」

扶桑「あらら……出遅れちゃいましたね。塩せんべいはもうおしまいですか?」

雪風「あ、ごめんなさい…最後の一枚は私が……半分食べます?」

扶桑「ありがとう、それじゃあ半分だけ……」

雪風「はい、おすそ分けです」

百合姫提督「……塩せんべいは無くなっちゃったけれど、他にも色々あるから…何か食べる?」

扶桑「そうですね…何がありますか?」

百合姫提督「えぇと…普通の厚焼き煎餅に「チーズアーモンド」と「柿の種」…それからこれは「七福神あられ」ね……」

赤城「あ、それは私が注文しておいたものです……良かったら皆さんもどうぞ」


…群馬の隠れた(?)お土産である「七福神あられ」…昔懐かしい感じがする四角い缶には、個包装されているあられがざらざらと入っている…一口大の軽い食感をした薄焼きあられはコミカルな七福神のイラストの描いてある袋に一枚ずつ入っていて、恵比寿様の「えび」や福禄寿の「しそ」…はたまた弁財天の「バター」や毘沙門天の「カレー」といった洋風な味もある…


榛名「…存外美味しいですよね、これ」赤城山、妙義山と並ぶ「上毛三山」の一つである榛名山が名前の由来だけに、群馬名物には目がない…

百合姫提督「それから甘いのは「ルマンド」に「バームロール」と……」

大淀「あ、そういえばそのお菓子は「新発田鎮」の提督からいただきました……提督がお戻りにならないうちに開けてしまうのもいかがかとは思いましたが、置いておいて悪くしてしまうといけないと思ったので…///」

(※お菓子メーカーの「ブルボン」や柿の種の「亀田製菓」はいずれも越後(新潟)にある。また山本五十六長官も同じく新潟の出身なので、艦隊と縁があるとも言える…?)

百合姫提督「ええ、分かっています……どうぞ、遠慮しないで?」

間宮「…皆さん、お茶のお代わりを淹れてきましたよ」

百合姫提督「あら、ありがとう……間宮も座って?」

間宮「ありがとうございます…それでは♪」

百合姫提督「……それで、留守中は何もなかった?」

大淀「そうですね…だいたいはいつも通りです」

百合姫提督「だいたいは…?」

大淀「はい。ですが何人かは…その…少々……」

百合姫提督「…その話は後で執務室に戻ってから聞くことにしましょう……留守中の執務、お疲れ様」言いづらそうに口ごもった大淀の様子と、艦娘たちのいつもの調子からだいたいの予想がついた百合姫提督……

大淀「いえ、そんな…///」

百合姫提督「みんなもよく協力してくれたみたいで嬉しいわ…改めてお礼を言わせてもらいます……」

百合姫提督「……どうもありがとう、みんな」背筋を伸ばして姿勢を正すと、丁寧に頭を下げた…

………


…しばらくして・執務室…

百合姫提督「…それで?」

大淀「は…みんなの陰口を言うようで、あまりいい気分ではありませんが……」

百合姫提督「もし問題が起きそうなら何か起きる前に収めなればいけないし、みんなが鎮守府で気持ちよく過ごせるために聞くだけだから……必要以上に口外もしません」

大淀「言われてみればそうでした。提督に限って軽々しくしゃべったりはしないですよね……」そこまで言いかけたところでふと口をつぐむと机の上のメモ帳を取って何か書き、それを百合姫提督に渡すと閉まっている扉の方を向いた…

百合姫提督「…」(「誰かが扉の外で聞き耳を立てています。忍び寄って取り押さえるので、何か話していてください」…ね)

大淀「……と言うわけでして、提督はどうお思いになられますか?」

百合姫提督「そうね…にわかには信じがたいことだけれど、そういうことがあったなら考え直さないといけないかもしれないわね……」

大淀「提督もそう思いますよね……そこにいるのは誰かっ!」

間宮「…っ!」

大淀「間宮?」

百合姫提督「……間宮、そんなところで一体どうしたの?」

間宮「えぇーと、その…実は、提督に何かお飲み物でもお持ちしようかと……」

大淀「…お茶ならもうありますが?」

間宮「あー、それはそうですが……そうそう、お茶請けに間宮特製の羊羹でもお持ちしましょうか…甘くって美味しいですよ♪」

大淀「…」

百合姫提督「…」

間宮「…」

百合姫提督「……間宮」

間宮「はい、提督」

百合姫提督「…本当は何をしていたの?」

間宮「……すみません。どうにも二人のお話が気になったものですから、少々聞き耳を…」

(※間宮には高性能の通信機器が装備されており、米軍の通信を探知・傍受するなど「情報収集艦」としての機能も有していた)

大淀「はぁ、まったく……どうしますか、提督?」

百合姫提督「そうねぇ…間宮」

間宮「は、はい…」

百合姫提督「…今から食堂に行って、私と大淀に羊羹を切ってきてもらえる?」

間宮「は、はい…すぐに行って参ります!」

大淀「……よろしいのですか?」

百合姫提督「ええ…間宮は速度が出ないから、行って帰ってくるまでにはしばらくかかるでしょう」(※間宮…最高速度14ノット)

大淀「なるほど」

百合姫提督「さぁ、それじゃあ今度こそ聞かせてもらえるわね?」

大淀「はい、まずは……」

………

…数ヶ月前…

蒼龍「…提督がいないと寂しいわ」

飛龍「確かに…それに出撃もなくて、身体もなまっている感じ……」

龍驤「…それじゃあ一つ気晴らしに「演習」でもしますか」

鳳翔「あぁ、演習ですか…いいですね♪」

…しばらくして…

摂津(標的艦)「な、なぁ……うちのこと呼んだ…?」

鳳翔「はい、呼びましたよ…♪」

飛龍「呼んだよ……摂津おばあちゃん♪」

赤城「……ふふ、かつての戦艦がおどおどして……たまりませんね♪」

加賀「うんと逃げ回って、私たちを愉しませてくださいね……それと、貴女たちも♪」爛々とした目をして、ぺろりと舌なめずりする空母たち…

波勝(標的艦)「くふふっ…空母のお姉ちゃんたちってば、まーた私たちで「演習」したいんだ……本当にスキモノなんだから♪」

矢風(標的艦)「わ、私は……ほ、ほら、摂津が相手してくれるからいいでしょ?」

…稽古室に呼び出されたのはかつての戦艦、ワシントン条約の制限で「陸奥」建造の代償として標的艦にされた旧戦艦「摂津」と、その無線操縦を行う旧駆逐艦「矢風」…そしてより高速で駆逐艦に似た形状をした標的艦の「波勝(はかち)」…

摂津「あ、あんまり痛いのは堪忍してな…?」

龍驤「…っ///」

鳳翔「……もう、そんなことを言われると…♪」

飛龍「余計にたまらなくなっちゃう……♪」

摂津「…ひっ///」立派な身体をしている摂津だが、妙に嗜虐心をくすぐるオーラを放っている…

赤城「そう怖がらずに…さぁ、頭にこれを♪」


…そう言うと煙突から艦内に演習弾の弾片が飛び込まないようにする、そろばん玉のような形をしたファンネルキャップ(煙突カバー)…のようなかぶり物を身に付けさせた…


波勝「それじゃあ私も…と♪」小さい「波勝」は船体の上に隙間を空けて設けられた装甲に加え、上空から見た時のシルエットを大きくする「幕的(まくてき)」という折りたたみの布がついている……それを広げると、まるで演歌歌手が派手なパフォーマンスをしているように見える…

矢風「私は大丈夫だよね……」それでも一応かぶり物と、摂津を「操る」リモコンを手にしている…

飛龍「それじゃあ始めようか……そーら、捕まえちゃうぞ!」

摂津「いややぁ…止めて、堪忍して…ぇ///」

鳳翔「あぁ、その表情っ……ほぉら、そんな鈍足では逃げ切れませんよぉ♪」

矢風「ほら、もっと捕まらないように頑張ってよ……早く、取り舵いっぱーい!」着物の裾やたわわな胸元をはだけさせ、よろよろと逃げ回る摂津……そしてそれを「操り」ながら、自分は巻き込まれないようにしている矢風…

摂津「は、はひっ…♪」

波勝「加賀さんこちら、てーの鳴る方へ……っと♪」一方、赤城、加賀、蒼龍、飛龍の四人を相手に幕的をひらひらとひらめかせ、ちょこまかと動き回る波勝……

加賀「ふふ、捕まえたらうんとお仕置きです…逃がしませんよ♪」

波勝「ひゃあ…っ///」

赤城「ほぉーら、つーかまえーた……この、このっ♪」パシッ、ピシャン…ッ♪

波勝「あひっ、ひゃあんっ…♪」

鳳翔・龍驤「「捕まえた♪」」

摂津「なぁ龍驤、鳳翔……お願いやから堪忍してぇなぁ…♪」

鳳翔「あら、戦艦は艦砲にも耐えられるはずでしょう……こんな…三号演習爆弾程度では……効かないんじゃありませんか?」バチンッ、ピシン…ッ♪

…鳳翔と龍驤は大柄でぽっちゃりした摂津を捕まえると四つん這いにさせて着物の裾をめくると、代わる代わるむっちりしたお尻へと平手を加える…

摂津「あぁん……っ///」

龍驤「いいよ、たまらない……はい、鳳翔の番♪」バチンッ、ビシッ…♪

鳳翔「はいっ……あぁ、かつての戦艦をこんな風に踏みつけにしていると思うと……ぞくぞくしてきます…っ♪」ぐりぐり…っ♪

摂津「はぁぁん…っ♪」足袋を履いた鳳翔に頭を踏みつけられ、また龍驤にお尻を叩かれながら畳の上で喘いでいる摂津……

赤城「ふぅぅ、ふぅ…っ♪」ぬちゅっ、ぬる…っ♪

加賀「あぁ……んくっ♪」くちゅっ…ぬちゅっ♪

波勝「はひぃ、あひぃぃっ……♪」じゅぷじゅぷっ……とぽ…っ♪

飛龍「んっ、んんぅぅっ……はぁ、はぁ…でも、まだ終わりじゃないでしょ……攻撃するなら徹底的に叩かないと、ね♪」

蒼龍「ん、飛龍の言うとおり…♪」

波勝「あへぇぇ……ぜぇぇ、はぁ……♪」

飛龍「あー、でも波勝はすっかりイっちゃって息切れか……なら♪」じゅるっ…と舌なめずりをして「矢風」を見た…

矢風「えっ、ちょっと待って……ほ、ほら…私は摂津の操作をするだけで「実艦的」じゃ……」

赤城「…それは以前の話ですよ…ね♪」

加賀「ふふ、貴女だってちゃんと「実艦的」改装を受けているでしょう……大丈夫、耐えられる程度にしてあげるから…♪」

矢風「いや、でもほら……」

鳳翔「……ふふ、摂津はあっさり捕捉できてしまって少々物足りないですから♪」

龍驤「そういうこと…もう息も上がってるし♪」

摂津「はへぇ…はひぃぃ……♪」鳳翔たちがほどよく手心を加えたビンタの跡が残る大きなヒップをさらし、唾液と愛蜜にまみれた状態で畳に崩れ落ちている……

飛龍「と言うわけで…第二次攻撃の要ありと認めます♪」

赤城「そうですね、普段ならもう満足なのですが……」

加賀「今日は少し物足りないので……賛成です♪」

矢風「…ひっ!」

鳳翔「怖がらなくても大丈夫ですよ、ちゃんと手加減してあげますから…ね♪」腰が引けている矢風をねっとりとした目つきで、舐め回すように眺めた…

飛龍「そぉら、お姉ちゃんたちに捕まらないように逃げ回ってごらん…♪」

蒼龍「捕まったら食べられちゃうぞ…ぉ♪」

矢風「わ、私までさせられるなんて聞いてない……いやぁぁ…っ///」

………

大淀「…とまぁ、出撃がなく身体をもてあましていた空母勢はこのような具合でして」

百合姫提督「……そ、そう///」

大淀「それから……」

百合姫提督「まだあるの…?」

大淀「ええ、もっともこちらは違う方に……」

………



…別の日…

大淀「はぁ、書類仕事をするといつもこうなんですから…」紙に付いていた手の小指側の部分がすっかり黒くなってしまい、それを洗いに来た大淀…

大淀「お腹も減ったことですし、間宮のお昼が楽しみですね……あら?」洗面台で手を洗っている一人の艦娘…

電「あ、大淀さん」

大淀「どうしたの、電……もうお昼ですよ? 手を洗うのはいいけれど、早く行かないと」

電「はい。でもおかしいんです、いくら洗っても汚れが落ちなくて……石鹸が悪いんでしょうか?」

大淀「え…?」

電「ほら、私の手……赤茶けた染みが見えますよね…?」そういって差し出した両手は白く綺麗で、汚れ一つ付いていない…

大淀「…」

電「そういえばこの間、執務室にお邪魔したとき提督がいらっしゃらなくて…どうしてかなって思ったら……提督のお名前は「深雪」なんですよね……だから私の代わりにいなくなっちゃったんでしょうか?」

大淀「い、電……」

…時が経つのは早いもので、今年もあと数時間となりましたね。このssを読んで下さった方、感想を下さった方…なかなか進まない中お付き合い下さり、どうもありがとうございます。


…色々と大変な一年でしたし、来年はもっといい年になるといいですね……新年の投下では縁起をかついで「松」型駆逐艦の「松」「竹」「梅」でも登場させようかと思っております…

明けましておめでとうございます……今年も初日の出をちゃんと拝むことが出来て感無量でした…


…今年は牛歩の歩みで、遅くとも一歩ずつ投下していけるよう頑張ります…

大淀「さすがにあの時は背筋に冷たいものが走りましたよ…」

百合姫提督「そうでしょうね。ちなみに、どう対処したの…?」

大淀「それなんですが……提督のお部屋に連れて行って布団の残り香を嗅がせたらすぐに収まりました」

百合姫提督「そう…電には後でうんとわがままを言わせてあげるとしましょう……」

大淀「それがいいかもしれませんね……っと、もうこんな時間ですか。提督、帰ってくる間の道中で食事をしている時間もあまり無かったでしょうし、間宮に言って軽く作らせておきましたが…?」

百合姫提督「あら、本当に…?」

大淀「はい、きっと鰹節の香りが懐かしいだろうと思いまして……いかがいたしますか?」

百合姫提督「そうね、途中でお弁当はいただいたけれど…せっかく作ってくれたのだから、いただきます」

大淀「了解」

間宮「失礼します、提督。羊羹をお持ちしました…♪」

百合姫提督「あら、ありがとう…せっかく持ってきてくれたところ申し訳ないけれど、羊羹は食堂でご飯をいただいてから頂戴します」

間宮「そうですか」

百合姫提督「ええ…わざわざご苦労様」ちゅっ…♪

間宮「!?」

大淀「て、提督…っ!?」

百合姫提督「…っ、ごめんなさい……向こうでは頬に口づけするのが挨拶のようなものだったから…///」

間宮「いえ、あの……わ、私は別に構いませんので……」

大淀「…驚きましたね」

百合姫提督「///」

…廊下…

大淀「……留守中にあったことは日誌に付けてありますので、後で確認いただければと思います」

百合姫提督「はい」

間宮「///」

百合姫提督「間宮…?」

間宮「は、はい…っ!」

百合姫提督「その……さっきは驚かせてしまってごめんなさいね?」

間宮「いえ、そのことでしたら全然…でも、不意打ちだったものですから///」

百合姫提督「ええ、私もなかば無意識にしていたから……///」

大淀「やれやれ、提督があちらでどんなことをなさっていたのか気になる所ですね…」

…食堂…

足柄「待ってたわよ、提督」

龍田「遅かったじゃない」

百合姫提督「ええ、少し報告を聞いていたものだから……いい香りがするわね」

間宮「はい。提督は洋行帰りですし和食が食べたいかと思いまして…何品か用意させていただきました」

長門「それにしても提督がお帰りになると鎮守府に花が咲いたようですね……さ、お手を取らせていただきます♪」椅子を引くと、百合姫提督の手を取って席に座らせる…

百合姫提督「…何もそんなにしてくれなくたって///」

長門「ふふ、そうおっしゃらず…」

足柄「それで、献立は何かしら?」

間宮「はい。献立ですが、海風が冷たかったでしょうから温かいものにしようと思いまして…ちょうど頂き物の山菜も残っておりましたので、山菜そばにいたしました……杵埼たちも運ぶのを手伝って下さい」

杵埼(給糧艦「杵埼」型)「はい、間宮さん」

早崎(杵埼型)「私も手伝います♪」

白崎(杵埼型)「私もっ」

荒崎(杵埼型)「すぐ行くよ!」

野埼(給糧艦「野埼」型・単艦)「私も運びますね♪」

剣埼(給油艦「剣埼」型・単艦)「分かりました、それじゃあ私も…って、わわっ!」

…小学生も低学年くらいに見える小さな給糧艦の「杵埼」たちに交じって料理を運ぶ小柄な給油艦の「剣埼(初代)」は妙に足元がおぼつかず、お盆を持ってふらふらしていたが、机まできた所でよろめいてこぼしそうになる……

足柄「ちょっと…!」

吹雪「うわ…っ!」

大淀「あ、危ない…っ!」

百合姫提督「きゃ…っ!」よけようと慌てて席から立ち上がる百合姫提督と艦娘たち……

剣埼「提督、ごめんなさい……」どうにかこぼさずに盆を置くことは出来たが、すっかりしょげている剣埼…

百合姫提督「いいのよ…それより怪我はない?」

剣埼「だ、大丈夫です……」

百合姫提督「それなら良かった……今度は運ぶ量をもっと少なくした方がいいかもしれないわ」

剣埼「はい、今度からはそうします」

百合姫提督「ええ」

間宮「…お蕎麦も無事で良かったですね」

百合姫提督「そうね……あら、美味しそう」


…蕎麦どんぶりで湯気を立てている山菜入りの蕎麦は出汁を宗田節と利尻昆布、いりこでしっかりと取り、つゆを関東風の濃口に仕上げてある……蕎麦はつゆの濃い味わいに合わせて白く細い更科(さらしな)ではなく殻ごと挽いてある田舎蕎麦を使い、上には醤油で煮付けにした数種類の山菜と、まだからりとしている天かす(揚げ玉)が載せてある…


間宮「どうぞ召し上がれ」

百合姫提督「ええ…では、いただきます」

…つゆをひと口飲むと、続けて蕎麦をたぐる…多少幅のある田舎蕎麦はするりとすするより、口の中で軽く噛む方が、香ばしい蕎麦の風味がより引き立って美味しい感じがする…

百合姫提督「…はぁぁ」何口かすすると、満足げにため息をついた…

間宮「美味しいですか?」

百合姫提督「ええ…とっても」

間宮「良かったです……みんな提督がいらっしゃらなくて寂しく思っておりました」

梅(「松」(丁)型駆逐艦)「うむ…それだけに提督が戻ってきてくれて喜ばしいの。まさに「盆と正月がいっぺんに来た」というものじゃな♪」

百合姫提督「ふふ、嬉しいお言葉…」

間宮「ええ……さ、早くしないと蕎麦が伸びてしまいますよ?」

百合姫提督「はいはい…♪」

足柄「…あー、美味しいわね」

間宮「他にも色々ありますから、たくさん召し上がって下さいね♪」

…どんぶりの隣には長方形の皿が置いてあり、三角型の大きな混ぜご飯のおにぎりが二つ載せてある。百合姫提督が手に取って一口頬張ってみると、醤油と砂糖、それにみりんで味付けしたらしい甘塩っぱいおかかと、細かく刻んだ昆布の佃煮の味がした…

百合姫提督「これも美味しい…もしかしてお出汁を取った後の昆布と鰹節?」

間宮「ええ、そうです……皆さんの分を作るとかなりの量が出ますし、それをただ捨ててしまうのはもったいないですからね」

百合姫提督「そうね…味付けもちょうどいいわ」

間宮「そう言ってもらえて何よりです。あとはたくあんとぬか漬けに…食後には白玉のお汁粉も用意してあります」

百合姫提督「それは楽しみね…♪」

…しばらくして・執務室…

百合姫提督「ふぅ、ちょっと食べ過ぎちゃったわ……」

長門「結構なことではありませんか…それに、そういう所も可愛いですよ」

百合姫提督「///」

大淀「長門は相変わらずですね……ところで提督、留守中のことでいくつかご報告が」

百合姫提督「なにかしら?」

大淀「はっ、提督のイタリア訪問中にお中元ですとか贈り物を頂戴しまして…一応私からお礼の手紙を書いておきましたが、改めて提督からもお礼をお願いしたいので…」

百合姫提督「なるほど、分かりました……名前は控えてある?」

大淀「もちろんです」

百合姫提督「助かるわ…それじゃあまずは電話でお礼を伝えて、お返しはまた改めて送ることにしましょう……最初は誰から?」

大淀「えー…まずは「市川・梨香子(いちかわ・りかこ)」中佐ですね。いつものようにご実家から梨をたくさん送って下さいました」

百合姫提督「相変わらず梨香子は親切ね……とりあえず電話をかけていきましょう」受話器を取り上げると、ダイヤルを回した…

…千葉県・館山…

女性「はい、もしもし…こちら「海上自衛隊横須賀鎮守府付属・館山基地分遣隊」です」

百合姫提督「もしもし「横須賀第二鎮守府」の百合野ですけれど……市川中佐はいらっしゃいますか?」

女性「あ、深雪ぃ……久しぶり♪」

百合姫提督「…あら、もしかして梨香子?」

市川中佐「もしかしなくてもよ……急に電話なんてどうしたの?」

百合姫提督「ええ、うちの大淀から聞いたのだけれど…今年もご実家から梨を送ってくれたそうだから、まずはお礼の電話をしようと思って……」

市川中佐「あー、あれね…いいのいいの、気にしないで? …どうせ「送った」っていっても、形が悪くて売れないのばっかりだから、むしろ食べてくれて助かるわ」

百合姫提督「いえ、そんな…」

市川中佐「本当にいいのよ…なにしろ夏頃になって実家に戻ると箱詰めや直売所を手伝わされるし、選別ではじかれた梨ばっかり食べさせられるしで……そうやって喜んでくれる人がいて嬉しいわ」

百合姫提督「いえいえ、こちらこそもらってばっかりで……今度うちでお手伝い出来る事があったら遠慮無く言ってね?」

市川中佐「ええ、わざわざどうも♪」

百合姫提督「はい、それじゃあまた…」

大淀「…次は伊豆大島分遣駆逐隊の司令、本八幡・由紀(もとやわた・ゆき)中佐ですね」

百合姫提督「はい」

…伊豆大島…

綺麗な黒髪の女性「はい、こちら大島分遣隊の本八幡です」

百合姫提督「もしもし、こちら「横二」の百合野です……久しぶりね、由紀」

本八幡中佐「あら、あらあら…深雪、いつ戻ってきたの?」

百合姫提督「ちょうど今日戻ってきたわ……ただいま」

本八幡中佐「お帰りなさい。それで、帰国早々に私に電話をくれるなんて…そっちで何かあったの?」

百合姫提督「いいえ……ただ、鎮守府にあててお中元を送ってくれたそうだから、まずは取り急ぎお礼の電話を…と思って」

本八幡中佐「これはどうもご丁寧に…せっかく伊豆大島の分遣隊司令だから、地元特産「大島椿」の髪油にしてみたけれど……毎日使ってたおかげで私の髪はつやつやになったけれど、そっちの娘たちは気に入ってくれたかしら?」

百合姫提督「ええ、とっても気に入ってくれたみたい…♪」横でうなずいている大淀を見ながら返事をした…

本八幡中佐「なら良かった……その様子だと、他にもあちこちに電話をしなきゃいけないんじゃない? お時間を取らせたら悪いから、失礼させてもらうわね」

百合姫提督「ごめんなさい、お気遣いいただいちゃって……それじゃあ、今度は時間があるときにゆっくりお話しましょうね」

本八幡中佐「ええ、またね」


いつも楽しみにしています

>>721 ありがとうございます。しばらくは百合姫提督と艦娘たちの日常をお送りするつもりですので、よろしかったら見ていって下さい。

…すでにお気づきかと思いますが「市川」と「本八幡」は総武線が千葉県に入ってすぐの駅名から順に取っています…ついでに色々調べてみましたが、結構特産品や名所旧跡があったので、そのうちに取り入れてみる予定です。



他にも各鎮守府の提督として名字に地名を入れたキャラクターを出してみようかと思っておりますが、もし都道府県のリクエストがあれば、その都道府県にある市町村や駅名などから名前を出そうかな……とも思っております

百合姫提督「ええ、またね……大淀、次は誰に電話をすればいいのかしら?」

大淀「えー、次はですね…中山翔子(なかやま・しょうこ)少佐にお願いします」

百合姫提督「…あぁ「下総中山」の」

大淀「そういえば、提督」

百合姫提督「ええ、なにかしら…?」

大淀「いえ、中山少佐のそのあだ名は幾度か耳にしましたが……どうして「下総中山」なんです?」

百合姫提督「あぁ、そのこと?」

大淀「はい」

百合姫提督「いえ、実はね……ふふ♪」口元に手を当てて、くすくすと笑いはじめた百合姫提督…

大淀「…何がおかしいんです?」

百合姫提督「実はね、私と翔子は同期なんだけれど……中山っていう名字は同期に数人はいたし、彼女は始め鎮守府じゃなくって「下総基地」の航空隊の方にいたものだから…」

大淀「それで「下総中山」ですか」

百合姫提督「ええ…誰かが駅の名前とかけて付けたあだ名なのだけれど、便利だからすっかり浸透しちゃって……」

大淀「…なるほど」

百合姫提督「ええ……それじゃあ電話するわね…♪」

………



…翌日…

百合姫提督「……鎮守府のみんなで飲み会?」

大淀「はい。提督も無事に帰国された訳ですし、横須賀のお店数軒を借りてお祝いでもしようと…いかがでしょうか?」

百合姫提督「そうねぇ、とりあえず明後日は市ヶ谷(防衛省)で帰還式と研究成果の報告会があるから……それより後の日付なら大丈夫よ」

大淀「了解」

百合姫提督「それより予算は大丈夫? …いくら出せばいいかしら?」財布を取り出してお札を渡そうとする百合姫提督…

大淀「いえいえ、とんでもない……みんなのお給料から出しあいましたので、提督はお金の心配をしなくても大丈夫ですよ」

百合姫提督「そう…なんだかごめんなさいね?」

大淀「お気になさらず。みんな提督が帰ってきて嬉しく思っておりますから……♪」

百合姫提督「ありがとう…///」

大淀「はい」

…数日後・市ヶ谷…

百合姫提督「…横須賀第二鎮守府の百合野です。ただいま到着いたしました」

防衛省幹部「あぁ、ご苦労様です……どうぞ会議室へ」

百合姫提督「はい」

…会議室には旭日旗が飾られ「交換プログラム」に参加した数名の提督たちと広報課のカメラマン、そして海幕(海上幕僚監部)のエライ人も幾人かやって来た……挨拶に始まり、短くまとめたプログラムの成果発表、そして提督たちに対するねぎらいの言葉……と、式次第に則って滞りなく行われる…

百合姫提督「…以上で、本官の発表を終わります」

進行役「では、最後にご挨拶をいただきます…」

海幕のエライ人「うむ……各提督それぞれよく研究し報告書にまとめられていたと思います…今回の経験を糧にして、これからも海上における安全保障と国際貢献のために尽くしてくれることを願っています…以上!」

………



…数日後・横須賀市街の居酒屋…

大淀「……えー、では提督の帰還と欧州歴訪の完了を祝って…乾杯!」

一同「「乾杯!」」

提督「…ありがとう、みんな」

長門「なに、礼を言うには及びません……みんな、注文は?」

陸奥「じゃあ…きゅうりの浅漬け」

明石「たこぶつお願いします」

雪風「私は冷奴(ひややっこ)がいいです…♪」

比叡「焼き鳥盛り合わせを頼みます…軟骨と皮、ハツ(心臓)は塩、他はタレで」

霧島「それならだし巻き卵で」

長門「分かった……提督、提督は何にします?」

百合姫提督「私はみんなが頼んだ分から一口ずついただくわ……ほら、他の娘たちのいるお店も回らないといけないし」

…百合姫提督の鎮守府は「連合艦隊勢揃い」とまでは行かないが、大小取り混ぜて二百人近くもの艦娘たちがいる大所帯なので、たいてい一軒の店では入りきらない……そのため、いくつかの店で数十人分の席を取り、お互いに入れ替わり立ち替わりしながら宴席を張り、百合姫提督も中座してはそれぞれの店を行ったり来たりする…というのがいつものやり方になっていた…

長門「それもそうですね……あと鯨の刺身を」

百合姫提督「んくっ…こくんっ……」百合姫提督はビールがあまり得意でないのと(たいていは酒豪の)艦娘たちが善意からお酌をしてくれたり杯を勧めてきたりすることを踏まえて、長門が手際よく人数分注文した「キリン」の生を少しずつ飲む……

霧島「あー……美味しい」

店員「…お待たせしました、冷奴ときゅうりの浅漬け、それと鯨の刺身にたこぶつですね」

長門「来たか…それじゃあいただこう」からし醤油で赤身の濃い鯨をつまんだ……

明石「…本当にあのときは、鯨なんて見るのも嫌だったくらいよく献立に出ましたよね」

長門「確かに……でも私は好きだが?」(※長門…今の山口県にあたり、鯨の水揚げを行う漁港もあった)

明石「それもまぁ人それぞれですね……あむっ」たこのぶつ切りを威勢良く口に放り込む…

比叡「明石、箸の持ち方が良くありませんよ」

明石「了解……全く比叡ときたらお召し艦だったからって、小姑みたいに行儀作法をねちねちと…」

比叡「…何か言いましたか?」

明石「いいえ、なーんでも……ま、もうちょっとしたら別の店の方に行って、そこで駆逐艦の二、三人でも引っかけて…ふふっ♪」

百合姫提督「…」

長門「…それにしても今回はいい店が取れてよかったですね……あのときの居酒屋みたいな店だったら、軽巡たちがまた暴れたに違いないですから」

百合姫提督「ええ、そうね…」

霧島「本当に水雷戦隊は気が荒いんだから…」

長門「ふっ、君も人のことは言えないんじゃないかな?」

霧島「私の場合は別です……店員さん「白霧島」と氷を下さい」

百合姫提督「あと、白和えをお願いします」

店員「はい」

………

…別の店…

利根「…おっ、提督じゃない! さ、座って座って!」

百合姫提督「ありがとう」

球磨(二等巡洋艦「球磨」型)「夜風に吹かれて冷えたでしょ? ま、とりあえず一杯ってところで……!」

百合姫提督「え、ええ…いただきます」とくとくとくっ…と小気味いい音を立てて注がれた燗酒の「八海山」を控え目に含んだ……

足柄「それとこれ、食べさしで悪いけど……ねぇ、提督にそっちのもつ煮をよそってあげて」

松風(神風型駆逐艦)「了解…七味はいります?」

百合姫提督「ええ」

足柄「なんでも食べたいものを頼んでよ?」

百合姫提督「ありがとう」

木曾(球磨型)「あぁ……沁みるねぇ」

妙高「…そういえばさっき利根たちの話になってたわよ」

利根「へぇ、どんな?」

妙高「例の居酒屋で暴れた話…」

利根「あぁ、あれか……そんなこと言ったって、あれは向こうの言い方が悪いってもんよ」

………



…数年前・居酒屋にて…

川内(二等巡洋艦「川内」型)「…それじゃあ作戦成功を祝って!」

神通(川内型)「乾杯!」

利根「乾杯!」

暁「乾杯!」

雷「乾杯…っ!」

天龍「んっ、んっ、んんぅ……くぅーっ!」

川内「さすがは「暴れ天龍」…いい飲みっぷりね!」

天龍「なんだよそれ……さ、もう一杯!」

龍田「はいはい、手酌は良くないから私が注いであげる♪」

天龍「おっ、悪い…♪」

店員「すいません「お通し」お持ちしました」

暁「あ、はーい……って、何これ?」解凍ものにしても粗末な枝豆が数個ばかり小鉢に入っている……

店員「いや、お通しですけど……うちではお酒を注文するときに「お通し」も頼む形になってるんで…」

(※お通し…地域によっては「突き出し」とも。少なくとも江戸時代には余り物や半端な量だけしかない料理を店に「お通し」した際に出すこと、あるいは「突き出す」程度のひと品といった意味合いで、その「残り物」の善し悪しで店の技量が分かるとされていた。元来は店の「心意気」であって金を取るような物ではなく、客もちゃんと料理を頼み「お通し」だけで酒を飲むなどといった野暮はしないのがしきたりであったが、今では「席料」がわりとしてお通しでお金を取る店も多い)

川内「…は?」

神通「今なんて言った…?」

店員「いえ、ですから…」

利根「なぁお兄さん、ちょいと待ちなよ……お通しを「頼む」ってことは金を取るってぇのかい?」日本三大暴れ川の長男「板東太郎」の異名を持つ利根だけに、江戸っ子のようなべらんめえが出始める…

店員「はい、そういうことになってます」

利根「……ここにそんなこと書いてあるか?」メニューをめくって指差した…

店員「いや、書いてはないんですけど……そう言う仕組みなんで…」

利根「あぁ、悪かった。兄さんに言ったって仕方がねぇや……ちょいと店長さんでも何でもいいから、上の人を呼んできてくんなよ」

店員「は、はい…」

白雪「雷たちは先行して居酒屋に入っているはずですから、着いたらすぐに何か飲めますね」

百合姫提督「そうね…あ、あったわ。確か利根たちが言っていたのはこのお店だったはず……一体どうしたのかしら」居酒屋の前には交番のスクーターが二台ばかり止まっている…

初雪「酔客でも騒いだんじゃないでしょうか……それより外は蒸し暑いですし、早く入りましょう♪」

百合姫提督「ええ…」チェーン居酒屋の自動ドアが開き、のれんをくぐった……

…数分前…

利根「……んだとぉ、頼んでもねえ物に金を払えってぇのか!?」

店長「ですから、この「お通し」はお酒とセットになって注文される仕組みなんですよ…」

利根「そんなこたぁ献立表のどこにも書いてねえじゃねぇか!」

店長「いや、書いてないですけどうちの店の決まりになっていて…」

利根「知ってて頼んだってぇならこっちも悪いが、書いてねぇんじゃこちとらぁ知りようもねえじゃねえか!」

店長「いえ、でもお客さん…」

天龍「なぁ、このままじゃあ埒があかないから出よう……な?」

川内「全く、楽しく飲むべき酒がこれじゃあやりきれないわ…利根、その辺で止めておいたら?」

利根「待てよ川内、こんなのおかしいだろう……!?」

龍田「もういいから……さぁ、もう帰るからお勘定を持ってきて?」

店長「えーと、それでしたら冷酒一合が六本に瓶ビールが三本、それとセットのお通しで…」

天龍「おいおい、待てよ……こっちがその「お通し」を食べたって言うんならちゃんと払うけど、食べてないんだぞ?」

店長「いえ、でもお客さんは注文していますから支払っていただかないと……」

天龍「…なんだとぉ!?」

木曾「貴様ぁ!」

………

巡査「…つまり「頼んでもいないし食べてもいない物にお金を払う必要」はない、ってことでいいですか?」

利根「その通り、さっすが話が早ぇや…!」

巡査B「……それじゃあセットになっているので、お酒を頼んだ以上は支払ってもらいたいと」

店長「そうなんですよ」

百合姫提督「…あの、済みません」

巡査「はい、なんですか?」

百合姫提督「その……なにかトラブルでも…?」

木曾「あっ…!」たちまち姿勢を正して直立する艦娘たち…

百合姫提督「よろしい、休め」

巡査「……この人は君たちのお知り合い?」

木曾「知り合いも何も…うちの提督だよ」

百合姫提督「ねぇ木曾、何があったの?」

木曾「ああ、それがかくかくしかじか……」

百合姫提督「なるほど……それで巡査さん、こういった場合はどうしたらいいですか?」

巡査「そうですね…別に店員を殴ったとかそういうことではないですから、誰かが飲食の料金を払えばいいんですが……」

百合姫提督「そうですか、分かりました…では私が払いますので、それで大丈夫ですか?」

店長「はい、払ってくれれば何も問題はないので…」

利根「ちょいと待った!別にこっちは飲み食いして金を払わねえってんじゃあねえんだ……勝手に注文したことにして金を取ろうってぇ、そのしみったれた了見が気に入らねぇってんだ!」

百合姫提督「……利根」

利根「う…分かったよ、提督に迷惑がかかっちゃあいけねえ……」

………

神通「あったあった…♪」

木曾「ああ、あったねぇ……全く利根は暴れ者なんだから♪」

利根「へっ、あちこちで暴れてきたお前さんたちに言われたかぁねえや…兄さん、この「鰺のなめろう」を三つばかし頼むよ♪」

店員「はーい!」

妙高「全く……提督もこんなのばっかりで頭が痛いわね?」

百合姫提督「ふふ、利根たちは威勢がいいのが取り柄だもの…それに私はそういうのが苦手だから、少しうらやましいわ……」

足柄「やれやれ…「あばたもえくぼ」とはよく言ったものね」

羽黒「提督の変わり者ぶりには感心するわ」

扶桑「ええ、全くです……何しろ他の鎮守府で持て余されていた私たちを受け入れてしまうほどですもの」

山城「…どうして「出来損ない」呼ばわりされていた私たちを引き取る気になったんですか?」

百合姫提督「そうね…あの時は……」

…数年前・市ヶ谷…

提督「百合野くん、百合野くん…ちょっと相談事なんだが……今いいかな?」

百合姫提督「はい、なんでしょう…?」

…市ヶ谷(防衛省)での「深海棲艦対策検討会」を終えて書類をまとめていると、中将の階級章を付けた一人の提督に手招きされた…

提督「いや、実はな……うちの鎮守府にもそろそろ「大和」と「武蔵」が欲しくて条件を揃えた所なんだが、今期の建造枠では足りなくってね…良かったらうちの鎮守府の艦娘数人と「交換」ってことで、しばらく建造枠を貸してくれないかな…?」

百合姫提督「交換…ですか?」

提督「ああ……いやもちろん「無理に」とは言わないし、建造枠のトン数もこっちの分が溜まったら返す。それに何か百合野くんが手を回して欲しいことやなんかがあったら、できるだけ手助けするが…どうかな?」

百合姫提督「そうですね……ええ、構いませんよ」

提督「本当かい! いやぁ、君に相談して正解だったなぁ……他の提督たちにも当たってみたんだが、なかなか「大和」と「武蔵」が建造出来るほど枠を残している提督はいなくってね……恩に着るよ」

百合姫提督「いえいえ…」

提督「それじゃあうちから「放出」できる艦娘のリストを後で送るから、好きな娘を選んで教えてくれ」

百合姫提督「はい」

………



扶桑「それで選んだのが私と山城、それと「知床」型給油艦の五人を合わせて七人……どう見ても割のいい交換じゃありませんよ?」

山城「ええ…何せ私たちは落ちこぼれの「カテゴリーF」ですから」

百合姫提督「……確かにそういう意見もあるかもしれないわ…でもね」ちびりと日本酒を飲むとコトリとおちょこを置いた…

百合姫提督「私は背伸びをしてまで「大和型」を持とうとは思わないの…確かに「世紀の大戦艦」ではあるし、当時の技術の粋を集めた大艦巨砲主義の究極ともいえる二隻であるのは間違いないわ……でも運用するとなれば鎮守府の設備や使いどころを考えるにも苦労するし、水中防御や隔壁配置の脆弱性から言っても「世界で最も優れた戦艦」とは必ずしも言い切れない……それならむしろ伊勢型とも合わせやすいあなたたちを選ぶわ」

扶桑「…」

百合姫提督「…それと「大和と武蔵を持っている」っていう満足のためだけに、艦隊運用に必要なフネをおざなりにするようなことはしたくないから……」

山城「提督…」

百合姫提督「……あと、私みたいな若輩者が大和型を持っていたら、先輩にあたる提督方に対して「生意気」だものね?」急に流れた真面目な雰囲気を和らげるように、わざと冗談めかした…

足柄「違いないわね…♪」

百合姫提督「ね? …あ、そこにあるお豆腐の田楽を取ってくれる?」

木曾「はい、どうぞ…めっぽう美味いですよ、これ」厚手に切った木綿豆腐に酸味の利いた赤出汁の味噌を塗り、その上にぱらりと白胡麻を散らしたものと葉山椒を載せたものの二種類を炭火で香ばしく炙ってある…

足柄「本当に木曾ときたら、赤出汁ならなんでも美味いっていうんだから……この美濃の田舎娘は」

木曾「余計なお世話だっての…そもそも赤出汁の方がぼんやりした白味噌より美味いだろ?」

百合姫提督「まるで織田信長ね……あ、でも本当に美味しい♪」

木曾「ほら…♪」

店員「山菜のお煮しめです」

龍田「あ、はーい…神通、那珂、お煮しめはどうですか?」

…鉢に盛られた山菜の煮しめは醤油と酒、砂糖、みりんで味を付けてあり、細くて歯切れのいい「姫竹(※「地竹」あるいは「根曲がり竹」とも)」に味の良く染みた椎茸、それにぜんまいやわらびが入っている…

那珂「ちびちび飲むにはいいかもね……少しちょうだい?」

神通「それなら私も」

龍田「はいはい…さ、どうぞ?」

那珂「いや、ありがと…って」

神通「うっ…!」

龍田「どうかしたの……あっ」

神通「や、やっぱりいらないかな……」山菜を小鉢に取り分けてもらったが、その中に入っているわらびを見て苦い表情を浮かべた神通…

百合姫提督「……神通、良かったら私が」

神通「すみません、提督…」

百合姫提督「大丈夫、気にしないで?」

…数十分後・三軒目の店…

足柄「うー…ちょっと飲んでは別の店に向かって、そこでまた少し飲んで……まるでハシゴ酒じゃない。こんな飲み方をしていたら酔いが早く回りそうよ……」

百合姫提督「仕方ないわ、みんなの所にちゃんと顔を出してあげないといけないし……」

足柄「相変わらず律儀なことで…それで、今度の店は……」

百合姫提督「…確かここじゃないかしら?」

足柄「…中華料理「定遠」……ええ、ここで合ってるわ」

…店内…

鵜来(海防艦「鵜来」型)「…あっ、提督!」

新南(鵜来型)「いらっしゃい♪」

松輪(海防艦「択捉」型)「待ちくたびれましたよ…ささ、どうぞ上座に♪」

百合姫提督「ええ、ありがとう…」

日振(海防艦「日振」型)「食べ放題飲み放題ですからね、たくさん食べないと損ですよ?」

四阪(日振型)「ここの中華は美味しいですよ……私が保証するアル♪」戦後は中華民国(国府軍)に引き渡され「恵安」となり、中共の手に落ちた後も長らく奉公した功労艦の四阪……

百合姫提督「ふふ、四阪(しさか)が言うなら間違いないわね……みんなこそちゃんと食べてる?」

第一号(海防艦「第一号」(丙)型)「はい、たくさんいただいてます…」

第二号(海防艦「第二号」(丁)型)「こんなに食べられるなんて良い時代ですね……司令」


…大戦も末期に急遽大量生産された「第一号」(丙型)および「第二号」(丁型)型海防艦は「鵜来(うくる)型」(甲型)海防艦をさらに簡略、小型化した戦時急造の海防艦で「痩せ馬」の目立つフネであったが、それを反映してか(鎮守府ではちゃんと食べさせているにもかかわらず)みんなあばら骨が浮き出て見えるようなやつれた子供のような姿をしていて、その哀れを誘う様子を見るたびに、百合姫提督としては贅沢をさせてあげたくなる…

(※痩せ馬…造船時において外板に使う鋼材の厚みや品質を落とした時に起きる現象で、外板がへこんで船の肋材の部分だけが浮き上がって見える状態。粗製濫造、劣悪な造船の代名詞)


百合姫提督「え、ええ…いっぱい食べてね……」多くは不遇な生涯を送った海防艦たちのいじらしい様子を見て、かすかに目をうるませる百合姫提督…

鵜来「本当ですね……あ「薩摩白波」お代わりで」(※鵜来…戦後は海上保安庁の巡視船「さつま」となり、1965年(昭和四十年)まで長く艦齢を重ね無事退役)

新南「古滷肉(くーろーよー…酢豚)をお願いします!」大陸に進出して以来、帝国海軍の献立にも取り入れられた中華料理…その中でもおなじみだった「古滷肉」を頼む鵜来型の「新南(しんなん)」…

竹生(鵜来型)「春巻きを六皿お願いです」

杉(松型駆逐艦…戦後国府海軍「恵陽」)「麻婆豆腐を…大皿だし三つでいい?」

梨(松型)「ん、いいんじゃない?」

杉「じゃあ三つで…それと五目焼きそばが二つと、小籠包と海老焼売を蒸籠で三つずつ……それと東坡肉(角煮)を四皿…」

店員のお姉さん「はい♪ …一杯食べてくれテ、私たちも嬉しいネ!」注文を取ると奥の厨房に向かって声を張り上げ、早口の広東語で注文を伝えた…

…しばらくは百合姫提督と艦娘たちの飲み会の場面をお送りする予定で、登場した艦娘たちについては後で紹介を書きたいと思っております…


…相変わらず新型コロナの拡大が叫ばれている中で「大学共通入試テスト」に挑んだ受験生の皆さんや、雪の多い地域に住んでいる皆様は何かと大変なことと思いますが、このssで気分転換になれば幸いです…

鵜来「あ、これも美味しい……ほら、提督も今のうちにいっぱい食べてください」一段に小籠包が五つ入っている丸い蒸籠を渡す…

杉「麻婆豆腐もよそってあげますね」

梨(「松」型駆逐艦)「どうぞ、春巻と海老焼売ですよ♪」

四阪「棒々鶏も取ってあげます」

百合姫提督「い、一旦そのくらいで……いただきます…」

…小籠包を小ぶりのれんげに移して、箸で少し皮を切る……ふわりと生姜の香る熱い肉汁をすすると、それから小籠包そのものを口に運ぶ…

百合姫提督「あ、あふっ…!」

足柄「あー、もう提督ったら…よく冷ましてから食べないと……」

百合姫提督「え、ええ……でも美味しい…」舌先が火傷するかと思うような熱い小籠包に涙目を浮かべ、ふーふーと慌てて息を吹きかける…

初雪「それじゃあ私は春巻を…ふわ、おいひい……♪」

白雪「ん、本当に美味しいです…」

…皿に数本ずつ盛られている春巻を取り、まずはそのまま食べる二人……からりと揚がった皮目が「ぱりっ…」といい音を立てて、中にたっぷり詰まっている餡がこぼれそうになる……餡はひき肉と刻んだ春雨、きくらげと細切りの筍で、オイスターソースと醤油の風味が効いた香ばしい味が付いている……それから残りの部分に辛子醤油を付けて口に運ぶ…

四阪「小姐、很好吃(お姉さん、美味しいよ)!」通りかかったお姉さんに向かって声をかける…

お姉さん「謝謝(ありがと)!」

足柄「それじゃあ私も…と♪」

…大皿から取り分けた「五目焼きそば」は塩味風のあんかけがたっぷりかかっていて、色鮮やかなむき身の海老、細かな切り込みの入れてあるイカ、きくらげ、フクロタケや短冊切りの筍…それにさっと油通しをしているおかげで、シャキシャキしていながら火の通っている白菜と人参などがたっぷり入っている…

足柄「……美味しいわね、これ」

第六十七号(第一号型)「これも美味しいですよ、提督?」

百合姫提督「ええ……私より、六十七号こそちゃんと食べてる?」

第六十七号「はい、いっぱい食べてます♪」

…醤油に八角や紹興酒を加えた甘辛い味で豚の三枚肉をとろとろになるまで煮込み、それをさらに蒸して仕上げた「東坡肉」……北宋時代の詩人であった蘇東坡が左遷先で考案したという一品は手間がかかるが大変に美味で、赤みを帯びた艶のあるタレが肉とよく合う…

百合姫提督「あ、これも美味しい…」

初雪「提督、これも美味しいですよ……はい♪」

百合姫提督「ありがとう、初雪」

初雪「いいんですよ、みゆ……提督///」

百合姫提督「ふふ…初雪がよければ「深雪」でもいいわ……♪」

白雪「…だって、吹雪お姉ちゃん?」

吹雪「い、いえ…さすがに提督のことを名前で呼び捨てにするのは……」

百合姫提督「そう……でもあんまり堅苦しいのは抜きにしましょう、ね?」

吹雪「え、ええ…」

足柄「そうよ、軽巡たちなんて羽目を外しすぎてひっくり返りそうだったんだから」

吹雪「あー……」

百合姫提督「まぁまぁ。人様に迷惑をかけるようなことをしない限りは、少しくらい羽目を外しても……ね?」

白雪「そうですね…特に比叡さんはああですから、提督の留守中は息苦しくって……」

吹雪「ちょっと、白雪…!」

白雪「…っ!」

百合姫提督「大丈夫、比叡には言わないであげるから…♪」

足柄「ま、余計な口は利かないで黙って食べておくことね……もしどこかでこの話が漏れたら、あの調子でねちねちやられるわよ?」

白雪「…気をつけます」

………

…数時間後…

百合姫提督「ふぅ…すっかり食べ過ぎちゃった……」

足柄「そうねぇ、それに飲み過ぎもしたし…最後のお銚子は止めておけばよかったわね」

百合姫提督「まぁまぁ…いつも鎮守府で過ごしているんだもの、たまには酒量を過ごしたっていいわ……♪」ぎゅっ…♪

足柄「///」

…多少酔っているらしく、少し紅潮した頬をした百合姫提督はいつもより積極的な様子で、足柄の腕に軽くしがみついた……もちろん足柄もまんざらではないが、腕に抱きつかれて赤くなっている…

大淀「あぁ、提督もいらっしゃいましたか」

百合姫提督「ええ…この後はカラオケに行くんでしょう?」

大淀「はい。ああいう施設は「この姿」になるまでは知らなかったので、目新しくて面白いですね……それに「中央」や「どぶ板通り」もずいぶんと変わったものです」

(※「中央」「どぶ板通り」…いずれも横須賀の繁華街。戦前は横須賀鎮守府の門前で栄え、今でも海自や米軍、観光客向けの店で賑わっている。また「どぶ板通り」は戦前に海軍工廠から鉄板を分けてもらってどぶ川の上に渡し、その上に店を連ねたからと言われる)

百合姫提督「そうね……それで、みんなも行くのかしら?」

大淀「何人かの当直艦と眠気がこらえきれない数人は先行して帰りましたが、おおかたは行くそうですよ」

百合姫提督「了解」

龍田「……あらあら、足柄ったら提督に抱きつかれて…うらやましいわねぇ♪」

足柄「からかわないでちょうだい、提督も少し「きこしめしてる」から支えてるだけよ…ところで川内はどこ?」

扶桑「それがさっきはぐれてしまって……磯波も一緒だったはずなのですが」

山城「まったく、図体の割には手のかかる子供なんだから……戻ってきたらうんとしごいてやらないといけないわね…ぇ♪」白地に紅と黒で彩った般若と髑髏の着物をまとい、ぎらりと八重歯をのぞかせる「鬼」の山城…

初雪「確かに旗艦がいないのでは……」

白雪「…困っちゃいますよね、お姉ちゃん?」

吹雪「え、ええ? まぁ、そういうことになるのかも知れないけど…」

叢雲「まぁ、風の向くまま気の向くまま…月に叢雲、花に雨……まこと世の中は変わりやすい…」

百合姫提督「とりあえず、しばらくの間ここで待っていてあげましょう?」

…数分後…

川内「……お、遅くなりました」

磯波「済みません…」

百合姫提督「大丈夫…それよりも二人が迷子にならなくてよかったわ」

川内「は、それが鳳翔さんが探しに来てくれまして……面目次第もありません」

鳳翔「ふふ、迷子の扱いには慣れていますから…それに少しだけとはいえ「水雷戦隊旗艦」というのも面白いものでしたよ♪」

金剛「おやおや、川内も鳳翔の前では赤子同然ですねぇ…♪」

川内「///」

百合姫提督「まぁまぁ……無事に揃ったわけだし、お店に行きましょうか」

…カラオケ店…

大淀「…予約しておいた「横二」鎮守府ですけれど」

店員「あぁ、はい…えーと、大部屋が全部と手前の個室が十部屋、それにドリンクの飲み放題ですね」

大淀「そうです」

店員「…それでは、これが端末とマイクですね……どうぞごゆっくり!」

大淀「はい、それじゃあ分散してそれぞれの部屋に入って下さい」

一同「「了解」」

百合姫提督「…それじゃあ、私は大淀たちと一緒でいいかしら?」

大淀「そうですね、それじゃあまずは私たちと……♪」

百合姫提督「えーと…それで、まずは誰から歌うの?」

球磨「んじゃあこっ球磨が「一番槍」行くと……ぬしらも一緒っ歌ば歌うとばい!」

(※…>1は方言のない地域の人間なので出てくる方言は正しくありませんが、あくまでも雰囲気としてお読み下さい)

多摩「あぁ、球磨ってば酒が入るとまた球磨弁に戻っちゃうんだから…ったく分かりづらい!」

木曾「まぁまぁ…こっちも訛りくらい出るこたぁーあーから」

多摩「だぁぁ、もう…っ!」

百合姫提督「はいはい、それじゃあマイクをどうぞ……」

多摩「それじゃあ「妖怪人間」の替え歌で「水雷戦隊の歌」…行きます!」


三人「♪~闇にかーくれて生きる、おれたちゃ水雷戦隊なのさ」

三人「♪~敵に姿を見せられぬ、ブリキのようなこの船体(からだ)」(早く二水戦になりたい!)

三人「♪~くらいさーだめを、ふきとばせ!」(※以下くり返し)

球磨「球磨!」

多摩「多摩!」

木曾「木曾!」

三人「♪~水雷戦隊!」

…そのまま二番、三番と続ける三人……本来は「北上」と「大井」も姉妹艦であり仲が悪い訳でもないが、二人は別の部屋に入っている…

三人「♪~月に涙を流す、おれたちゃ水雷戦隊なのさ」

三人「♪~悪を懲らして人の世に、生きる望みに燃えている」

(※くり返し)

三人「♪~星に願いをかける、おれたちゃ水雷戦隊なのさ」

三人「♪~正義のために戦って、いつかは生まれ変わるんだ」

(※くり返し)

百合姫提督「うん、上手だったわ……次はだあれ?」

白雪「…でしたら提督、一緒に歌いませんか?」透き通るような白い肌にほっそりと涼しげな顔立ちの「白雪」が百合姫提督を誘った…

百合姫提督「ええ、それじゃあ……」

白雪「えーと、じゃあこの曲を……吹雪お姉ちゃんに捧げます♪」くすくす笑いながらマイクを取り、ついでに初雪にも渡した…

吹雪「?」

白雪「曲は…「氷の世界」です」

百合姫提督「あぁ、なるほど……」

白雪「♪~窓の外ではリンゴ売り、声を枯らしてリンゴ売り…!」

百合姫提督「♪~きっと誰かがふざけて、リンゴ売りの真似をしているだけなんだろう…」

初雪「♪~僕のテレビは寒さで、画期的な色になり」

白雪「♪~とても醜いあの子を、ぐっと魅力的な子にしてすぐ消えた…」

百合姫提督「♪~今年の寒さは、記録的なもの」

初雪「♪~凍えてしまうよ、あぁ…!」

白雪「♪~まいにーち、吹雪、吹雪…氷の世界ぃぃ…!」

吹雪「も、もう…そういうことね///」

一同「「あはははっ♪」」

百合姫提督「…ふぅ、それじゃあ私は他の部屋にも顔を出してきますから……みんなはそのまま楽しんで♪」

…別の個室…

百合姫提督「…どう、みんな?」

天龍「おう、提督……おかげさまで楽しくやらせてもらってるよ!」

百合姫提督「そう、よかった」

天龍「まぁまぁ、立ち話ってこともないだろ…ほら」席を詰めるとソファーの座面を「ぽんぽん…っ」と叩いた…

百合姫提督「ええ、それじゃあ……」

天龍「いいってことよ」

龍田「ふふ、来てくれて嬉しいわ」

百合姫提督「いえいえ…♪」

伊勢「龍田、貴女の番じゃない?」

龍田「あら、ご丁寧にどうも……では、わたくし「龍田」が一曲歌います…♪」提督に向けて軽く一礼するとマイクを取りあげる…

天龍「龍田か…「よっ、待ってました!」とは言いにくいな……」

龍田「ふーん、一体どういう意味かしら…ぁ?」立ち上がっていたが腰をかがめ、天龍のあごを指先で撫でた……

天龍「いや、龍田の歌は怖いんだよ……」

百合姫提督「まぁまぁ、天龍…別に龍田だって怖がらせるためにやっているわけじゃないはずだもの……」

天龍「いや、それは分かってるんだけどさ…で、何を歌うんだい? まぁ、なんか明るいのがいいな!」

龍田「……えぇ、ではこの曲を「龍田の夢は夜ひらく」です…♪」演歌ではなく怨みを込めた「怨歌」と称される名曲にのせ、歌い始める…

天龍「これだよ……」

龍田「♪~紅く咲くのは、けしの花…白く咲くのは百合の花」

龍田「♪~どう咲きゃいいのさ、この私……夢は夜ひらく…」

龍田「♪~(昭和)十六、十七、十八と…私の人生、暗かった……過去がどんなに暗くとも、夢は夜ひらく…」

龍田「♪~昨日「蕨」に「四十三」…明日は「疾風」と「如月」と……」

(※「龍田」は戦前の演習で「第四十三号潜水艦」と衝突・沈没させ、「美保関事件」では演習の防御側として夜襲を迎え撃つため探照灯を照射、これを避けようとした「神通」が回頭し「蕨」沈没の原因となった。「疾風」「如月」は大戦初期ウェーク島攻略時に撃沈された)

天龍「なぁ提督…」

百合姫提督「なぁに、天龍?」

天龍「いや、龍田が歌い終わったら一曲やってくれないか……これじゃあ盛り下がっちまうよ」

百合姫提督「分かったわ…」

龍田「……ありがとうございました」

百合姫提督「上手だったわ、龍田……それじゃあせっかくだから私も…♪」

龍田「それじゃあマイクをどうぞ」

伊勢「曲は何にします?」

百合姫提督「あんまり上手じゃないから、ちょっと恥ずかしいけれど……誰か一緒に歌ってくれる?」

天龍「もちろん」

松「じゃあ私も♪」

梅「うむ、わらわも付き合うぞえ♪」

梨「はい」

百合姫提督「ありがとう、それじゃあ……」

………

…次の投下は(多分)木曜の深夜になるかと思います…このところなにかと忙しく、かといって休日に出かけるのもはばかられて息苦しい感じですが、そのぶん頑張って書き続けていこうと思います……ちなみに出てくる曲は懐かしの昭和歌謡から名曲と思われるものを多めにしております


…そういえば今年は百数十年ぶりに今日が節分だそうですね……ぜひ豆を撒いたりヒイラギを飾ったりしましょう

…しばらくして…

比叡「提督、ぜひもう一曲お願いします♪」

百合姫提督「…分かったわ、それじゃあ……「初恋」で」

天龍「おっ、提督の十八番じゃないか!」

夕立「待ってましたっ!」

百合姫提督「もう…そんなに言われたら恥ずかしいわ……///」


百合姫提督「♪~五月雨は、緑色……かーなしくさせたよ、一人の午後は…」

百合姫提督「♪~恋をして、淋しくて…とーどかぬ想いを、暖めていたぁぁ……」

百合姫提督「♪~「好きだよ」と言えずに初恋は……振り子細工のこころ…ぉ」

百合姫提督「♪~放課後の校庭を走る君がいた…遠くで僕はいつでも君を探していた……」

百合姫提督「♪~浅い夢だからぁ…胸を離れない……」


梨「提督の声、やっぱり沁みるわ…」

梅「確かに綺麗じゃのう……」

百合姫提督「も、もういいでしょ……ほら、次は誰の番?」

…しばらくして・また別の個室…

百合姫提督「……ごめんなさい、遅くなっちゃって」

赤城「あぁ、提督……良く来て下さいました」

加賀「謝る事なんてありませんから…どうぞかけて下さい♪」

百合姫提督「ありがとう」

飛龍「ここは空母ばっかりだから蒸し暑いかもね?」

鳳翔「まぁ、ふふ…♪」

赤城「その話は言いっこなしですよ」

蒼龍「曲は?」

赤城「そうですね…さっきまで演歌でしたから、この辺りで趣向を変えて……ね、加賀?」

加賀「はい、一緒にね…♪」


…曲の前奏に合わせて「ピピピピピ…」と電子音が流れると、二人して背中合わせに立った…


赤城・加賀「♪~I just feel 『rhythm emotion』……この胸の鼓動は…」

赤城・加賀「♪~あなたへとつづーいてーる…so far away…!」

赤城「♪~…もう、傷ついてもいい 瞳をそらさずに……熱く、激しく生きていたい…!」

加賀「♪~あーきーらめーなーい強さを…くーれーる、あなただから抱きしめたい…!」

赤城・加賀「♪~I just feel 『rhythm emotion』」

赤城「♪~過ちも痛みも…あーざやかーな、一瞬の、光へとみちーびーいて!」

赤城・加賀「♪~I just feel 『rhythm emotion』」

加賀「♪~この胸の鼓動は、あなたへとつーづいてーる、so far away…!」

百合姫提督「二人とも、とっても格好いい…」二人が歌い終わったのを見て拍手をしている百合姫提督…

赤城「ありがとうございます…♪」

加賀「…ゼロ、教えてくれ……私はあと何機のグラマンとカーチスを殺せばいい…?」

百合姫提督「……加賀?」

飛龍「…くすくすっ♪」

龍驤「くくっ…♪」

Wのあの効果音付きは、最後の数回だけだったとは思えないほどの印象がありましたね…



…それにしても「そうりゅう」の事故はかなりひどいものですね…


…もちろん詳しい原因は各種の審判や調査を待つ必要がありますが「航路逸脱があった」とか「フルノを作動させていなかった」とか「ワッチがちゃんとしていなかった」といった言い訳も立つ水上艦と民間船の事故ならばともかく、聴音もバッフルクリアーもせずにただ浮上し、おまけにセイルのアンテナを損傷させたので乗員の携帯で陸と連絡を取ったというのでは……



こう言うときはたいてい、部外者側に何か原因の一部でもを押しつけられないかやっきになって、それから不運な当直など「誰か」が責任を負わされる…そして「監視をちゃんと行う」のような分かりきったことを小難しく書いたマニュアルを作るよう言われる、というパターンが出来上がっていますから……そして責任者は「あぁ、あの人はね……」と毒にも薬にもならない場所に転属させられて、腫れ物に触るような扱いを受ける……と



…「そうりゅう」型そのものは「世〇の艦船」のそうりゅう型潜水艦とAIPについての特集で詳しく書かれており、なかなか優れた潜水艦である印象を受けましたが……

…本当は今日投下するつもりだったのですが、地震もありましたし明日以降に持ち越します……住んでいる地域は揺れこそしたものの、棚の小物が少々落ちた程度で済みましたが……皆様の住んでいる場所でも被害が少なかったことを願っております…


……落ち着いたらまた投下します

…数十分後…

龍驤「♪~きさまとお~れ~と~はぁぁ、同期のさ~く~らぁぁ! お~なじ兵学校のぉ、にぃぃわぁぁにぃ咲ぁぁくぅ~!」

鳳翔「♪~ちぃぃにくわぁぁけたぁぁる、仲でぇぇはな~い~がぁぁ…!」

二人「♪~な~ぜか気がおぉぉてぇぇ、わぁぁかれらぁぁれぬぅぅ…!」(※「同期の桜」二番)

…酔うとたいていの(特に戦前から戦況の良かった大戦序盤を経験している)艦娘たちは当時流行していた軍歌のメドレーというのがお決まりになっていて、鎮守府のそばにあるカラオケ店の履歴には「軍隊小唄」や「月月火水木金金」のような歌が入っている……そしてかなり酒が回っている鳳翔と龍驤もそのタイプで、肩を組みながら「同期の桜」を熱唱している…

百合姫提督「……ぐすっ…」

鳳翔「あぁ、目一杯歌っていい心持ちです……って、提督…っ!?」

百合姫提督「だめ、歌詞が……泣けて…あのね、絶対に……ぐすんっ…私はみんなのことを無駄死なんてさせない……無茶な作戦で「散る」なんてさせないから…!」

赤城「あらら……さ、ちり紙をどうぞ」

百合姫提督「あ、ありがとう…」

…さらに数分後…

鳳翔「……それにしても少々歌いすぎたせいか、喉が渇きましたね」

百合姫提督「…ドリンクバーはセットに入っているし、何か取ってくる…烏龍茶でいい?」

鳳翔「そんな滅相もない!提督に飲み物を取ってきていただくなんて……」そう言いながらマイクを握っていない数人をちらりと見た…

赤城「あー…なら私が……」

加賀「そ、そうですね…ここは若輩者である私たちが…」

飛龍「いえ、だったら我々の方が後輩なので……!」

蒼龍「そ、そうですよ…!」鳳翔の視線を受けて、一斉に立ち上がろうとする「後輩」たち……

龍驤「え、飲み物を持ってきてくれるって? …なんだか悪いねぇ」

鳳翔「おや、わざわざ済みません……でも、せっかくそう言ってくれるなら…お言葉に甘えさせてもらいましょうか♪」

百合姫提督「鳳翔、龍驤。いくら自分たちが年上で先輩だからって、赤城たちをあごで使うようなことはしない」ソファーでくつろいだ姿勢を取っていたが、急に背筋を伸ばすとピシリと言った…

鳳翔「……それを言われますと」

龍驤「確かに提督のおっしゃるとおりです…」

百合姫提督「あのね、飲み物が欲しいなら素直にお願いすること……それから不公平にならないように順番で行きなさい。いい?」

鳳翔「はい」

百合姫提督「……よろしい、それじゃあ私は他の部屋も回ってきます♪」

…いくらか酩酊しているらしい百合姫提督はいつもより感情の表し方がはっきりさせていて、それもころころと変わる……ついさっきまで鳳翔たちを叱っていたかと思いきや、素直に反省した様子を見せると途端に笑顔になった…

飛龍「提督、大丈夫ですか…?」

百合姫提督「ええ、大丈夫大丈夫…お気持ちだけいただいておきます♪」

…別の個室…

百合姫提督「みんな、お待たせ♪」

択捉「提督っ、連絡してくれたら迎えに行ったのに…!」

百合姫提督「いいのいいの……ここ、座っていい?」

択捉「はい、もちろんですよ♪」

日振(「甲(日振)」型海防艦)「…えー、それじゃあ次は私たちが歌います」

佐渡(「甲(択捉)」型海防艦)「この曲を大好きなお姉ちゃんたちに捧げます……たとえ三人生まれたときは違っても、最期はみんな一緒だからね…お姉ちゃん?」

松輪(「甲(択捉)」型海防艦)「き、気持ちは嬉しいけど……」

百合姫提督「わー…♪」胸の前で小さく拍手する百合姫提督…

日振「♪~かーわいいいふりしてわりと、やるもんだねと」

佐渡「♪~言われ続けたあのこ~ろ、生きるのが辛かった」

日振「♪~行ったり来たりすれ違い、あなたと私の恋…」

二人「♪~いつかどこかで結ばれるって、ことは永遠(とわ)の夢…」

日振「♪~あーおーく、広いこのそーらー…」

佐渡「♪~誰のものでもなーいわー」

二人「♪~かーぜに、ひとひらの雲…流してなーがーされてーぇ…」

二人「♪~わたしまーつーわ、いつまでも待つわ」

二人「♪~たとえあなたが振り向いてくれなくても」

二人「♪~まーつわー(待つわ)…いつまでもまーつーわ」

二人「♪~他の誰かにあなたが振られる日まーで…」

第二十二号「本当に仲がいいね、松輪?」

松輪「むむ…嬉しいような嬉しくないような……」

第百二号哨戒艇(単艦)「そういうことは言わないの、大事な姉妹でしょ?」

松輪「まあね……」

百合姫提督「ねぇねぇ択捉、何か頼まない…?」

択捉「いいけど、お財布は大丈夫?」

百合姫提督「ええ大丈夫、そのためにちゃんとお金も下ろしてきたの……みんなも好きな物を頼んでね?」

日振「やった♪ それじゃあ私はパンケーキにする♪」

佐渡「じゃあアイスでも頼もうかな…お姉ちゃんにも一口分けてあげるからね」

日振「ありがと……提督は何にしますか?」

百合姫提督「私はイチゴパフェにするわ…お酒を飲んだ後はパフェを食べるって、北海道へ出張したときに教わったの♪」

択捉「ああ、そういえば聞いたことがあるかも…」

百合姫提督「そうそう「すすきの」でごちそうになったときも最後はみんなでパフェを食べて……懐かしいわ」

竹生(鵜来型)「提督も意外とあちこちで遊んでるよね」

百合姫提督「んー…と言うよりは、各地に出張で行くとたいてい地元の提督さんや幹部の人から「本日はお疲れ様でした…どうですか、少し?」って飲みに誘われるから…むげに断るのも悪いし……」

新南(鵜来型)「提督も私と同じであちこち行ってるもんねぇ…」

(※新南…戦後は海上保安庁の巡視船「つがる」となり皆既日食の観測などを行い、さらに海保退役後はボルネオ石油開発公団の宿泊船として用いられ、1971年(昭和46年)に解体と、長く数奇な運命をたどった)

百合姫提督「ええ、おかげで全国の繁華街は一通り巡ったと思うわ…すすきのに国分町、京都の先斗町(ぼんとちょう)に大阪の道頓堀、十三(じゅうそう)……神戸の「南京町」(中華街)や名古屋の栄…福岡の「親不孝通り」(天神)に中州……あと、沖縄の「国際通り」とかも」指折り数えてみる百合姫提督…

日振「へぇ、ずいぶん遊んでるんだ?」

百合姫提督「ううん、私はあくまでもお招きに預かっただけ……たいていはお店まで連れて行ってもらうから、道もよく知らないの」

第一号「そうなの」

百合姫提督「ええ…それより注文は決まった?」

択捉「決まったわ」

百合姫提督「それじゃあ電話を…と♪」

………

…数分後…

店員「ご注文は以上ですか?」

百合姫提督「はい、ご苦労様です……さ、遠慮せずに召し上がれ…♪」

日振「じゃあいただきます…♪」

百合姫提督「私もパフェが溶けないうちに……」

第二十二号「美味しいですか?」

百合姫提督「ええ、ひんやりしていて美味しい……はい、みんなにもおすそ分け…♪」柄の長いパフェスプーンでイチゴパフェをしゃくっては、順繰りに味見させる百合姫提督…

鵜来「ふわぁ、甘くて美味しいですねぇ…」

竹生「んー…♪」

百合姫提督「ね、火照った身体が涼しくなる感じがするわ…」

新南「提督にしてはいっぱい飲んでましたからね……さっきも中華を食べながら「杏露酒」とか「サンザシ酒」とか、けっこう色んなお酒を飲んでましたもんね?」

百合姫提督「そうなの。なんだか見慣れないお酒も多かったから味見してみたくて……」

第一号「提督のそういう所も可愛いです…♪」

百合姫提督「ふふ、ありがとう……それじゃあお礼にもう一口あげます…はい「あーん」して……♪」

第一号「あーん……ん、冷たっ」

第二号「分かる分かる、いっぺんに食べると「キーン」ってなるよね」

百合姫提督「あれはねぇ「アイスクリーム頭痛」って言うらしいわね…大丈夫?」

第一号「ん、平気」

百合姫提督「良かった……んぅぅ♪」満足げにパフェを食べ進めた百合姫提督……

…数十分後…

百合姫提督「みんな、忘れ物はなぁ…い?」

択捉「ちゃんと確認したから平気。それより提督こそ大丈夫?」

百合姫提督「ありがとう、大丈夫……っ」

松輪「あぁもう、全然大丈夫じゃないですよ……さ、つかまって下さい」

百合姫提督「本当に大丈夫だから…それに提督として松輪たちに迷惑をかけるような事はしませんし、こうしてちゃんと歩けます……っとと」

日振「もう、大人しい顔して頑固なんですから…」

百合姫提督「…それよりみんなも帰り支度をして、もう一度忘れ物がないか確認すること…あぁ、それと個別で頼んだものの支払いは私が済ませてきますから…みんなはお店の邪魔にならないように外で待っていてね……」

第六十七号「提督、一人では足元がおぼつかないですから……私が随伴します」

百合姫提督「いいからいいから、支払いなんて私に任せて…」

足柄「……またずいぶんとへべれけじゃない…提督にしては珍しいわね」

鵜来「あぁ、足柄さん」

足柄「なぁに、提督ったらあなたたちの言うことを聞かないでいるわけ?」

日振「えぇまぁ……私たちに「支払いは私が済ませるから先にお店を出ていなさい」の一点張りで」

足柄「変に律儀だものねぇ、うちの提督は……さ、それじゃあ私が肩を支えてあげるから」

百合姫提督「大丈夫よ足柄、ちゃんとお財布はこうしてあるから…ほら」

足柄「別に財布の中身を心配しているんじゃないの……いいから一緒に行くわよ?」

百合姫提督「りょうかぁ…い♪」

足柄「どうも済まなかったわね、提督をあなたたち「ちびっ子」組に任せちゃって」

第一号「むぅっ…私たちに「菊の御紋」がないからって「ちびっ子」言うな!」

(※海防艦…当初は帝国海軍における狭義の「軍艦」に含まれていたが、途中で類別が「特務艦艇」へと変更され、またほぼ全ての海防艦が1943~45年に就役したため「軍艦」にのみ施される艦首の「菊の御紋章」の飾りはない)

足柄「あぁ、悪かったわ。別に他意があって言ったわけじゃないの」

第一号「ならいいけど…小さいからって役立たずってわけじゃないんだから」

足柄「知ってるわよ…さ、帰りましょう?」

百合姫提督「…♪」

足柄「あら、ずいぶんとご機嫌ね?」

百合姫提督「だって、久しぶりにみんなとお酒を飲んで……それに…こうして足柄と一緒だから…///」足柄と手をつなぎ、肩に頭をもたせかけている…

足柄「///」

間宮「あらまぁ。ずいぶんと仲がいいじゃあありませんか、足柄……もしかしてイタリヤでお二人の仲を進展させるような事でもあったんですか?」

足柄「よ、余計なお世話よ…///」

吹雪「もう…いいじゃないですか、提督に頼られて」

白雪「本当ですよ、私たちだってしたいくらいなのに」

初雪「足柄ばっかりずるいです…」

百合姫提督「あぁ、みんなごめんなさい……それじゃあ交代…っ♪」

吹雪「はい、じゃあ支えますよ…っ!」

白雪「右手は私が」

初雪「じゃあ左は私ですね」

百合姫提督「まぁ、みんな手が冷たいけれど…大丈夫?」

白雪「いつものことじゃないですか、大丈夫ですよ」

初雪「それより提督こそずいぶん火照ってますね……溶けちゃいそうです」

百合姫提督「まぁ、ふふ…雪のみんなが溶けたら雨になっちゃうわね……♪」

摂津「そないなことより、はよ渡らんと信号が変わってまう…!」

百合姫提督「それじゃあ最大戦速で渡らないと……さぁみんな、急いで急いで♪」

吹雪「わわっ、酔ってるのに走っちゃ転んじゃいますよ…!」

第一号「ま、待って…ふぅ、ふぅ……そんなに早くされると追いつけない…」

間宮「ええ、私も……はぁ、はぁ…走るのが…遅いものですから……」

潮(「吹雪」型駆逐艦)「本当に前進しているのか後退しているのか……ほら、手を出して…」

間宮「…ふぅ、ふぅぅ……ええ…助かります……」

…鎮守府…

百合姫提督「はい、ただいまー…♪」

足柄「はいはい……いいからまずはお風呂にでも入って、歯を磨いたらとっとと寝床につきなさいよ…明日があるんだから」

百合姫提督「そうしま……ふわぁ…」

雪風「ふふ、提督もかなりおねむみたいですね…♪」

比叡「さ、どうぞお風呂に……みんなは提督が入浴を済まされた後ですからね」

吹雪「了解」

百合姫提督「あぁ、今のは取り消し…私が出るのを待っていたら遅くなるから……「入浴許す」をかけますから、みんなで入っちゃいましょう…♪」

比叡「しかしそれでは艦隊の規律が…」

長門「まぁまぁ、提督がそう言っているのだから……ね?」

比叡「確かにそうですが……」

金剛「そういうことよ…それとも比叡は提督の命令が聞けないの……んん?」生っ白い指をくねらせると、ねっとりした手つきで比叡の頬を撫で上げる「蛇」の金剛…

比叡「そ、そういうことではありません!」

百合姫提督「はい、それじゃあ行きましょう…♪」

…浴場…

百合姫提督「ふぅ……このお風呂に入ると「帰ってきた」っていう気分がするわね…」

足柄「ええ。タラントのお風呂は少し贅沢すぎたものね……このぐらいの方が気楽でいいわ」

…壁沿いに並んだカランが十数個と、色あせたタイル張りの真四角な浴槽……風呂自体にはかろうじて追い炊きや保温の機能がついているが、それ以上でもそれ以下でもない「横須賀第二」鎮守府の浴場……まるでさびれた温泉旅館をほうふつとさせる浴室ではあるが、艦娘たちにとっては「真水とお湯が自由に使える」というだけでも充分に贅沢だというので、文句が出ることはあまりない……手桶で一つ二つとかけ湯をすると、ほどのいい熱さのお湯にほっそりした身体を沈める百合姫提督…

吹雪「提督」

白雪「…隣、よろしいですか?」

百合姫提督「ええ、どうぞ……」

速吸「では私も…♪」

足柄「ちょっとちょっと、何もみんなして提督の周りに集まることはないでしょう……せせこましいったらありゃしないわ」

比叡「そうです。だいたいちゃんとかけ湯はしましたか?」

明石「…うわ、まーた比叡のガミガミが始まった……」

比叡「何かいいました?」

明石「なーんにも…ね、間宮♪」

間宮「はい…♪」お互いに顔を見合わせ、いたずらっ子のような笑みを浮かべる二人…

比叡「……まぁいいでしょう。それから流しは交代で使って、一人で長く使わないこと」

百合姫提督「はーい…♪」

比叡「あっ、いえ……決して提督に申し上げたわけではありませんので」

百合姫提督「ううん、ちゃんと私も守らないと不公平になるもの……そろそろ身体を洗いましょうか」

雪風「あっ、私が支えます…!」

百合姫提督「あぁ、私は大丈夫だから……ゆっくり浸かっていて?」

電「それに私がいますから…提督、お手をどうぞ♪」

百合姫提督「ありがとう…」

…カランの前に座ると少々ぼんやりした様子で石鹸を泡立て、身体を洗い始めた百合姫提督……長い黒髪は紺ですすきの模様が染め抜いてある手拭いでまとめてあり、酔いと入浴で火照ったうなじが桜色を帯びている…

足柄「…」

松「…」

明石「ごくり……」

百合姫提督「……ふぅ、それじゃあ今度は頭を…と」手拭いをほどくとしっとりとした「烏の濡れ羽色」の髪が滝のように背中へと流れた…

羽黒「提督の髪は相変わらず綺麗ですね……しっとりしていて艶があって…」

百合姫提督「あら、それを言うなら羽黒だってこんなにすべすべ…それに那智も、本当に「那智黒」の名前にぴったりな黒髪で……」羽黒の髪を手のひらですくい上げると優しく撫で、それから碁石で有名な「那智黒」を連想させる、那智の艶やかな黒髪にそっと指を沈めると手櫛で梳いた…

羽黒「///」

那智「…て、提督///」

長門「ふふ、提督はだいぶ聞こし召していらっしゃるようですね……あんまり長くいるとのぼせてしまいますから、頭を洗ったらお上がりになったほうがよろしいですよ」

百合姫提督「ええ、そうさせてもらいます…長門は優しいわ……♪」

長門「い、いえ…別にそういうつもりではないであります///」

明石「…んふふっ♪」

長門「な、何…?」

明石「いいえ……でもいつも帝劇のスタアみたいに凜々しい長門が長州弁で「デアリマス」なんて言うものだから……おかしくって♪」

梅「くくくっ、確かにのう…♪」

長門「…っ///」

百合姫提督「明石、人の訛りを笑ったりするんじゃありません……」

明石「はい、提督」

百合姫提督「よろしい…♪」

…寝室…

百合姫提督「よいしょ…あ、誰かお布団を干しておいてくれたのね……」


…百合姫提督が普段過ごしている執務室の隅っこには床の間のように一段高くなった三畳ほどの場所があり、その茶室のようなスペースには畳が敷かれ「仮眠用」の布団一式も用意してある…誰か親切な艦娘が準備してくれたのか、すでに敷き布団と枕は整えてあり、足元に三つ折りになっている掛け布団を広げるとふわりと軽い手触りがした…


百合姫提督「暖かい…これならよく眠れそう……」タラントとヴェネツィアではゆったりと過ごせたものの、最後の数日はローマへの移動、それから幾日もせずに帰国…と気ぜわしかったので、畳から漂う「藺草(いぐさ)」の青い香りを嗅いでほっとした…

百合姫提督「お休みなさい……」

…枕に頭を乗せると掛け布団を身体に掛け、ほっと息を吐いた…掛け布団は表に桃色で桜を散らし、裏地は「花色木綿」というつゆくさのような落ち着いた青色に染めてある布団で、折り返しについているラベルの部分には「横須賀第二・備品(三)」などとマジックで書きこんである…

百合姫提督「すぅ……」

………



…しばらくして…

百合姫提督「…すぅ……すぅ……」

?「ふふ、よくお休みで…♪」

百合姫提督「……すぅ…」

?「いやはや、提督は寝顔も可愛らしいですねぇ……では、ちょっと失礼して……♪」布団を少し持ち上げると、浴衣姿で眠っている百合姫提督の隣に身体を滑り込ませようとする…

百合姫提督「ん…ぅ…?」

…よく眠っていたが、不意に布団の隙間から冷えた夜風が流れ込んできて目が覚めてしまった百合姫提督…と、百合姫提督の寝ている布団に潜り込もうとかがみ込んでいる黒い影が視界に入った…

百合姫提督「……誰?」

?「おや、起こしてしまいましたか……そのつもりはなかったんですが…」

百合姫提督「明石…?」

明石「はい、その明石ですよ…♪」

百合姫提督「ふわ…ぁ…こんな時間に一体どうしたの?何かあった…?」時計へ目をやると、すでに明け方近い…

明石「ええまぁ……久々に提督がお帰りですから、少々「お相手」でもしていただこうか…と♪」百合姫提督の隣に這いずりこむと、ねっとりした手つきで鎖骨の部分を撫でる明石……だいぶ酔っているのか髪は乱れ、ろれつも少し回らない…

百合姫提督「え、それって……」

明石「ふふふ…イタリーでは足柄と龍田が提督を独り占めだったんですし、今夜くらい私がいい思いをしたってバチは当たりませんよね……さ、どうか身を任せて……」蛸が獲物に巻き付くような様子で脚を絡めると、右手で浴衣の襟元をゆっくりと開いていく……

百合姫提督「…あ、あっ///」

明石「いいんですよ、恥ずかしがらないで……提督を始め、みんなの身体に関しては隅々まで知っているんですから…♪」

百合姫提督「そういうことは言わないで…」

明石「それじゃあ提督が私のことを黙らせて下さいよ……ね?」

百合姫提督「わ、分かりました……///」ちゅ…♪

明石「んふふふぅ、そんな口づけじゃダメですよぉ…と♪」

百合姫提督「んむぅ…っ!?」

明石「ちゅる、むちゅっ、ちゅぷぅ…っ……♪」

百合姫提督「んっ…んんぅっ///」

明石「ちゅぷっ、むちゅ…ぴちゅっ……ぷはぁ♪」

百合姫提督「も、もう……///」

明石「ふふふ、今夜はもう寝かせませんからね♪」

百合姫提督「それは困るわ、明日の執務に差し障るから……」

明石「大丈夫ですって、大淀もいるんですから…♪」

百合姫提督「あっ、待って……きゃあっ!?」

………

…しばし間が開いてしまいましたが、ここで艦娘の紹介を一つ…


駆逐艦「松」型

基準排水量は1260トン前後で、速力は約27ノット。甲(陽炎型・夕雲型)乙(秋月型)丙(島風)に続く「丁」型と称され、前期型と後期型によって「松」および「橘(たちばな)」型に分ける事ができるが、帝国海軍ではひとくくりに扱っていた。

武装は単装12.7センチ40口径高角砲(前部)と同じく連装高角砲(後部)各一基、3連装25ミリ機銃四基、単装25ミリ機銃八基(艦によってはさらに増備したものもある)九二式4連装61センチ魚雷発射管一基。九四式爆雷投射器二基など。


「特」型を始め、戦前に設計された駆逐艦はカタログスペックを重視するあまりデザインを凝りすぎ、量産向きでなかったことから損失に対して補充が追いつかなくなり、また必要とされていた対空・対潜戦にも不向きだったため、帝国海軍が改㊄計画において「量産に向いた駆逐艦」として要求した実戦向きの駆逐艦。
とにかく生産性の向上を図ったが、生産しやすい優れた小型の高出力機関がなかったため速度は27ノットで忍び、しなやかで美しいダブルカーブ船首や各部の曲線はできる限り廃し、代わりに戦訓を受けて増備した多数の25ミリ対空機銃と、Yの字型をした「九四式爆雷投射器」及び艦尾舷側に爆雷投下軌条を設け、ラッパ型の22号電探や対潜用の探信儀など水測兵器も設けた。とはいえ設計時に「魚雷を持たないのは駆逐艦ではない」と押し切られる形で魚雷発射管を設けたあたりは、バックレイ級などを「護衛駆逐艦」と割り切って雷装を廃した米英と、あくまでも「簡易型の駆逐艦」とした帝国海軍の差が出ている。

完成直後は特型などに比べて簡素な作りで、また艦名を「松」「桃」「桑」「桐」など花木から付けたため一部に「雑木林」などと揶揄する声もあったというが、実際には「こだわり抜いた」設計であったはずの特型にも劣らない優れた凌波性、また特型とは比較にならないほど優れた対潜・対空能力を持ち、機関も分散配置するなどして生存性も高い優秀艦だった。
惜しいことに完成が大戦末期だったことから多くの戦果を上げることは出来なかったが、中の何隻かは国府(中華民国)海軍に賠償として渡され長く奉公し、また「梨」は「わかば」として海上自衛隊の草創期を支え、1962年(昭和37年)に起きた三宅島の噴火時には、避難民を乗せるなどして戦後も活躍した。

百合姫提督の艦娘「松」型はいずれも艦名となった花や木をモチーフにしたかんざしや髪飾りを付けている。戦前組の一部からは「駆逐艦もどき」などとからかわれることもあるが、実力は充分で百合姫提督の信頼も厚い。




海防艦「択捉(えとろふ)」型

1941年(昭和16年)に設計された海防艦。基準排水量870トン。速度19.7ノット。
武装は単装12センチ45口径砲三基、25ミリ連装機銃二基、九四式爆雷投射器および三型爆雷装填台(九五式爆雷36発)、九三式聴音機および九三式探信儀。
(後に機銃、爆雷を増備。二二号電探を追加。また九三式探信儀を三式探信儀に換装している)


開戦以前は短期決戦を考えていた海軍が予定していなかった南方進出と戦争の長期化に伴い、急遽護衛艦艇が必要となったことから大慌てで整備することになった海防艦で、北方警備用の占守(しむしゅ)型の設計を転用した。

そのため「設計の見直しや簡素化が不十分」で建造に時間がかかり、またモデルとなった占守型が「北方の漁場を維持する」目的で建造されていたため対空・対潜能力が低く、南方用だというのに北方向けの補助機関を付けているなど目的に合っていなかった。
海防艦としては不十分な性能とされたが、1943~44年(昭和18~19年)の完成時には米潜の攻撃が猛烈になってきていたためすぐ実戦投入され、14隻のうち半分の七隻が撃沈されている。

特に悲劇的なのは空母「大鷹」給油艦「速吸」を含む重要船団「ヒ71船団」を壊滅させた敵潜を撃沈するはずの「松輪」「佐渡」および日振型の「日振」が、米潜一の殊勲艦として知られる米潜ガトー級の「ハーダー(ボラ類の総称)」および「ハッド(カラフトマス)」の待ち伏せにあって揃って撃沈されたことで、これは当時の帝国海軍の探信儀・聴音機の性能が悪く、ハーダーとハッドの存在に気づいていなかったことによる。

(また「敵潜の攻撃があった方に急回頭し突撃をかけ爆雷を投射する」という戦法が米軍に知り尽くされていて返り討ちにあった海防艦も多いが、これも探信儀の性能が悪く失探してしまうことが多かったため、がむしゃらに魚雷発射点に急行せざるを得なかったことによる)



艦娘「択捉」は小さい身体に不釣り合いな12センチ砲を積み、乏しい爆雷と機銃で船団護衛を頑張るけなげな艦娘。もっとも百合姫提督による効果的な対潜戦指導もあってそこそこの戦果を上げている。




海防艦「日振(ひぶり)」型

基準排水量940トン。速度19.5ノット。
武装は12センチ45口径単装高角砲(前部)と12センチ45口径連装高角砲(後部)各一基。25ミリ3連装機銃二基、九四式爆雷投射器および三型爆雷装填台それぞれ二基、爆雷投下軌条二基、九五式爆雷120個、九三式水中聴音機、九三式水中探信儀。単艦式大掃海具。
(後に二二号電探の追加および機銃、爆雷の増備、爆雷投射器および装填台を一基追加、九三式水中探信儀を三式水中探信儀に換装)

戦況に合っていない「占守」「択捉」型と、それに続く中途半端な性能だった「御蔵(みくら)」型を見直し、船体の簡易化を進めて量産性を高めた「鵜来」型の船体に御蔵型の兵装を備えた、いわば両者の中間にあたるタイプ。

抜群の量産性を持っていた「鵜来」型の設計だけあって、一隻当たり四ヶ月という(当時の日本としては)早さで建造できたが、対潜戦には必要のない「掃海具」(機雷原へ侵入した時、艦尾からおもりを付けた長いワイヤーを曳航し、係維機雷なら海底と機雷を留めているワイヤーを切って機雷を浮き上がらせ、磁気機雷なら磁石棒を鈴なりにくっつけて反応・爆破させるもの)を用兵側に要求されたため爆雷投射器や装填台が減らされ、結果としてどっちつかずな性能になってしまった。

ネームシップ「日振」が「松輪」「佐渡」とともに撃沈された悲劇もあったが「生名(いくな)」が海上保安庁の巡視船「おじか」に、また「四阪(しさか)」が国府(中華民国)「恵安(Huian…フゥイアン)」となり、さらに中共に渡るなどして長く戦後も奉公した。

海防艦「鵜来(うくる)」型

基準排水量940トン。速度19.5ノット。二十隻(うち敗戦までに完成・就役できたものは九隻前後)。

武装は12センチ45口径単装(前部)および連装(後部)高角砲各一基。3連装25ミリ機銃二基、九四式爆雷投射器二基、三式爆雷投射器16基、爆雷投下軌条二基、九五式爆雷120個、22号電探、九三式水中聴音機、九三式水中探信儀それぞれ一基。
(後に3連装25ミリ機銃を五基に増備、および爆雷を二式爆雷120個に積み替え、九三式水中探信儀を三式水中探信儀二基に変更など)


1943年(昭和18年)から敗戦までに九隻が建造された海防艦。これまでの中途半端な海防艦と違い、爆雷庫から「電動式揚爆雷筒」という世界的にも珍しい送り出し機構で爆雷を次々と甲板に送り出し、上がってきた爆雷を十八基もの投射器で投射するという対潜火力に優れた海防艦。
船体構造も生産性に優れていたが、主機の「艦本式二二号一〇型」ディーゼルエンジンが潜水艦用に回されてしまったため、思っていたほど建造できなかった。完成した二十隻のうち四隻は戦没したが、ネームシップの「鵜来」が巡視船「さつま」、「竹生(ちくぶ)」が「あつみ」、また「志賀」が海上保安大学校の練習船「こじま」になるなど、何隻かは戦後も活躍した。


特に「新南(しんなん)」数奇な運命をたどったことで知られ、引き揚げ船として各地の将兵を内地へ連れて帰った後に、巡視船「つがる」として活動する中ベトナムに派遣され、日本としては初めて海外で皆既日食の観察を行うなど1966年(昭和41年)まで長く活躍し、最後はボルネオ石油開発公団の宿泊船として活動し、1971年(昭和46年)に解体された。


艦娘「鵜来」型は身体こそ小さく速度もそこまで出ないが、爆雷投射器を多数備え、高角機銃も増備されていろことから船団護衛、対潜攻撃に関しては抜群で、その実力はあなどりがたい。鵜来は巡視船「さつま」となったことからサツマイモが好きで、好きな酒は焼酎「薩摩白波」という酒豪。新南は「つがる」になったことからリンゴ好き。




海防艦「第一号(丙)」型(計画132隻。うち完成53隻、戦没26隻)

基準排水量745トン。速力16.5ノット(主機「艦本式二三号乙八」型ディーゼル)
武装は12センチ45口径単装高角砲二基、3連装25ミリ機銃二基、三式爆雷投射器12基および爆雷投下軌条一基、九五式爆雷120個、22号電探、九三式水中探信儀、九三式水中聴音機。
(後に機銃の増備および二式爆雷への積み替え、八センチ潜水艦威嚇用「音響弾」迫撃砲一基、探信儀を「三式水中探信儀」二基へ換装など)


米潜および航空機による船団への被害が甚大になっていることをうけ、「鵜来」型に続けて建造された小型の海防艦で、同時に建造された「第二号」型とは主機が異なるだけで設計、能力ともにほぼ同じ。
その特徴は何と言っても鵜来型をさらに簡易・小型化したような設計で、船体外板も品質を落とし、煙突も鉄板を貼り合わせるだけで済むよう(上から見て)六角形にするなど「戦時急造」の目的にあった設計でまとめたことから極めて量産性に優れ、1943~44年の護衛艦艇不足の時期にタイミング良く就役することが出来た。


ただ、海防艦にも搭載できるような小型・高性能かつ生産性の高い主機がなかったことから出力の低い主機で我慢することになり、速度面では海防艦で一番遅いフネとなってしまった。そのため高速の船団に対する護衛では貨物船についていくのがやっと、また戦局が悪化している中で戦力不足だったために、訓練も武装の増備もままならないまますぐ実戦投入され「第一号」から「第二十五号」までの最初の十三隻が全て戦没するなど厳しい戦いを強いられた。

艦名はいずれも奇数の番号で、戦後は数隻が国府海軍に引き渡され、さらに中共に鹵獲されて長く使われた艦もあった。


艦娘「第一号」型は小学生にも見える小さい身体で、船体の「痩せ馬」(※やせうま…品質の悪い鋼材を使うと起きる。外板の肋材と接合している部分以外がへこんでしまい「あばら骨が浮き上がって見える」状態のこと)が目立つ急造艦だったためか、肋骨が浮き出て見えるなど哀れをさそうような外見をしていて、百合姫提督も何かと美味しいものをごちそうしたりと気にかけている。

また「第一号」は国民からの献金を募って建造された「報国第一号海防艦」として(検閲だらけの当時の新聞ではめずらしく)進水が報じられたことから、出撃時は「報国」の鉢巻きを締めている。




海防艦「第二号(丁)」型(計画143隻。うち完成63隻、戦没25隻)

基準排水量740トン。速度17.5ノット(主機「艦本式甲二五」型オール・ギヤード・タービン)
武装は「第一号」型海防艦とほぼ同じ。

「第一号」型と異なり、主機に戦標船(※戦時標準型貨物船…戦時下に建造された簡易型貨物船)用の蒸気タービン主機を転用したタイプで、燃費効率が悪く「第一号」型の航続距離6500浬に対して、14ノットで4500浬しか航行できなかった。このため当初は内地からスマトラまでの航行がせいぜいということになり問題視されたが、皮肉なことその頃には南太平洋の各拠点を失っており、実用上で不便は生じなかった。

第一号型と同じく簡易設計で量産性に優れ、小型ながら対潜能力に関してはそれまでの海防艦より優れていたところもあった。とはいえ1944~45年になってからは潜水艦よりも制空権を失ったことによる空襲が激増しており、機銃を増備したものの対抗することができず多くが沈められた。


艦名はいずれも偶数の番号で、「第一号」型と同じく一部が戦後賠償として国府(中華民国)に引き渡され、その後鹵獲されるなどして中共に渡るなどした。

百合姫提督の艦娘「第二号」型は第一号型とそっくりで見分けもほとんどつかず、やはりどこかすすけているような印象を受ける。



哨戒艇「第百二号」

基準排水量1270トン。速度26ノット。
武装は単装八センチ40口径高角砲二基、あとは(詳細不明ながら)連装および単装25ミリ機銃数基に九四式爆雷投射器一基、一三式および二二号電探に九三式水中聴音機および九三式水中探信儀。


帝国海軍で(おそらく)一、二を争う数奇な運命をたどった哨戒艇で、元はフィリピンを根拠地としていた米海軍アジア方面艦隊の「クレムソン」級駆逐艦の「スチュアート」(DD-224)だったもの。ちなみに「クレムソン」級は七隻を「ホンダポイント事件」で座礁・喪失するなど事故が多かった。
(※ホンダポイント事件…1923年。夜間に高速航行演習を行っていたが推測航法にズレが生じ、また注意をうながした無電局からの位置情報を司令が「(まだ黎明期の技術だった)無電ビーコンなどアテにならない」と無視した結果、駆逐隊まるごとが座礁・転覆した大事故。死者は少なかったがヒューマン・エラーの例としても有名)


当時の米海軍としても太平洋、大西洋の二正面作戦は戦力的には難しく、そのため太平洋ではフィリピンの失陥を前提に「いい気になって日本軍が手を伸ばしすぎるまで引き寄せてから叩く」という考えがあったことから、アジア艦隊には旧型艦が多く回されており、スチュアートも1920年に就役した「フォア・スタッカー(四本煙突)」型と呼ばれた旧式駆逐艦の一隻だった。


スチュアートはバリ島沖の海戦で「朝潮」型四隻に砲撃され12.7センチ砲弾を被弾しスラバヤの浮きドックで補修中に、固定の仕方が悪く転覆し浮きドックごと沈没。日本軍が迫っていた事もあり自爆措置を施した。が、完全に破壊するまでには至らず、スラバヤの工作部でかなり大規模な改装を受けて哨戒艇「百二(一〇二)号」として再就役した。

特徴的な四本煙突は一、二番をつなげて三本煙突にし、25ミリ機銃や爆雷投射器と投下軌条、探信儀などを搭載し哨戒にあたり、それを見た米潜から「わが軍の四本煙突型駆逐艦にそっくりなフネが日本海軍にいる」「四本煙突型駆逐艦に攻撃を受けた」との報告が続き米海軍を困惑させ、一部では尾ひれがついて「日本側が欺瞞戦術として「四本煙突」型そっくりなフネを建造した」とまで言われた。


戦歴では「松輪」「佐渡」「日振」を沈めた殊勲の米潜「ハーダー」を海防艦「第二二号」と協同撃沈したことが有名で、よる年波で故障も多かった割には敗戦時まで無事に過ごし、戦後アメリカに帰還し「おてんば娘の帰還」などと新聞にも書き立てられ歓迎された。その後は航空機のロケット弾攻撃の標的として破壊処分されたが、日米双方の旗の下に長く活躍したフネだった。


百合姫提督の「第百二号」はあちこちいじくり回された結果アメリカンな部分をかなり失っているが、見た目は金髪に青い目をしている。またもとの「四本煙突」型に似ているためやせっぽちで、ちょくちょく故障している。




給糧艦「杵埼(きねさき)」型。四隻

基準排水量910トン。速力15ノット。武装は艦首楼上の砲座に設けられた8センチ40口径「三年式」単装高角砲一基および後部の13ミリ「九三式」連装機銃一基。搭載物資、生鮮品約84トン(杵埼は82トン)および真水約71トン。

本来は日華事変に応じて活動していた支那方面艦隊支援のため計画された二隻の給糧艦のうち、640トンの小型タイプだった「野埼(のさき)」と比較のため建造された拡大版の1000トンクラスの給糧艦で、当初は雑役船扱いだったことから野埼の「雑役船第四〇〇七号」と同じように「雑役船第四〇〇六号」と船名もなかったが、その後「南進(なんしん)」さらに「杵埼」と改名され、小型の野埼よりも補給能力に優れ使い勝手が良かったことから、姉妹艦となる「早埼(はやさき)」「白埼(しらさき)」「荒埼(あらさき)」の三隻が追加建造された。


外見はただの「船首・船橋楼型」構造をした一本煙突型の貨物船だが、冷凍能力があったことから漁場で買い上げた魚を直接冷凍し艦隊へ送り届ける事ができるなど補給面ではそれなりに活躍し、また1945年(昭和20年)に奄美で戦没したネームシップ「杵埼」以外は無事に敗戦を迎え、復員輸送を終えた後は「早埼」「白埼」がそれぞれ賠償艦としてソ連、中国へ引き渡し「荒崎」は当時の農林省水産講習所の練習船「海鷹丸」となり、解役後さらに船会社に払い下げられ転々としたのち、最後は1967年(昭和42年)フィリピンに売り渡されるなど長命だった。


艦娘「杵埼」型は小学生のような外見をしていて、普段は間宮の手伝いをして料理を運んだり材料を取ってきたりとまめまめしく活動しているが、場合によっては艦隊への補給に出撃することもある。魚の目利きと買い出しに関してはなかなかで、市場や魚屋ではかなり顔が利く。


哨戒艇「第百二号」

基準排水量1270トン。速度26ノット。
武装は単装八センチ40口径高角砲二基、あとは(詳細不明ながら)連装および単装25ミリ機銃数基に九四式爆雷投射器一基、一三式および二二号電探に九三式水中聴音機および九三式水中探信儀。


帝国海軍で(おそらく)一、二を争う数奇な運命をたどった哨戒艇で、元はフィリピンを根拠地としていた米海軍アジア方面艦隊の「クレムソン」級駆逐艦の「スチュアート」(DD-224)だったもの。ちなみに「クレムソン」級は「ホンダポイント事件」で一気に七隻を座礁・喪失するなど事故が多かった。
(※ホンダポイント事件…1923年。夜間に高速航行演習を行っていたが推測航法にズレが生じ、また注意をうながした無電局からの位置情報を司令が「(まだ黎明期の技術だった)無電ビーコンなどアテにならない」と無視した結果、駆逐隊まるごとが座礁・転覆した大事故。死者は少なかったがヒューマン・エラーの例としても有名)


当時の米海軍としても太平洋、大西洋の二正面作戦は戦力的には難しく、そのため太平洋ではフィリピンの失陥を前提に「いい気になって日本軍が手を伸ばしすぎるまで引き寄せて叩く」という考えがあったことから、アジア艦隊には旧型艦が多く回されており、スチュアートも1920年に就役した「フォア・スタッカー(四本煙突)」型と呼ばれた旧式駆逐艦の一隻だった。


スチュアートはバリ島沖の海戦で「朝潮」型四隻に砲撃され12.7センチ砲弾を被弾し、スラバヤの浮きドックで補修中に固定の仕方が悪く、転覆し浮きドックごと沈没。日本軍が迫っていた事もあり自爆措置を施した。が、完全に破壊するまでには至らず、スラバヤの工作部でかなり大規模な改装を受けて哨戒艇「百二(一〇二)号」として再就役した。

特徴的な四本煙突は一、二番をつなげて三本煙突にし、25ミリ機銃や爆雷投射器と投下軌条、探信儀などを搭載し哨戒にあたり、それを見た米潜から「わが軍の四本煙突型駆逐艦にそっくりなフネが日本海軍にいる」「四本煙突型駆逐艦に攻撃を受けた」との報告が続き米海軍を困惑させ、一部では尾ひれがついて「日本側が欺瞞戦術として「四本煙突」型そっくりなフネを建造した」とまで言われた。


戦歴では「松輪」「佐渡」「日振」を沈めた殊勲の米潜「ハーダー」を海防艦「第二二号」と協同撃沈したことが有名で、よる年波で故障も多かった割には敗戦時まで無事に過ごし、戦後アメリカに帰還し「おてんば娘の帰還」などと新聞にも書き立てられ歓迎された。その後は航空機のロケット弾攻撃の標的として破壊処分されたが、日米双方の旗の下に長く活躍したフネだった。


百合姫提督の「第百二号」はあちこちいじくり回された結果アメリカンな部分をかなり失っているが、見た目は金髪に青い目をしている。またもとの「四本煙突」型に似ているためやせっぽちで、ちょくちょく故障している。




給糧艦「杵埼(きねさき)」型。四隻

基準排水量910トン。速力15ノット。武装は艦首楼上の砲座に設けられた8センチ40口径「三年式」単装高角砲一基および後部の13ミリ「九三式」連装機銃一基。搭載物資、生鮮品約84トン(杵埼は82トン)および真水約71トン。

本来は日華事変に応じて活動していた支那方面艦隊支援のため計画された二隻の給糧艦のうち、640トンの小型タイプだった「野埼(のさき)」と比較のため建造された拡大版の1000トンクラスの給糧艦で、当初は雑役船扱いだったことから野埼の「雑役船第四〇〇七号」と同じように「雑役船第四〇〇六号」と船名もなかったが、その後「南進(なんしん)」さらに「杵埼」と改名され、小型の野埼よりも手頃で使い勝手が良かったことから姉妹艦となる「早埼(はやさき)」「白埼(しらさき)」「荒埼(あらさき)」の三隻が追加建造された。


外見はただの「船首・船橋楼型」構造をした一本煙突型の貨物船だが、冷凍能力があったことから漁場で買い上げた魚を直接冷凍し艦隊へと送り届ける事ができるなど補給面ではそれなりに活躍し、また1945年(昭和20年)に奄美で戦没したネームシップ「杵埼」以外は無事に敗戦を迎え、復員輸送を終えた後は「早埼」「白埼」がそれぞれ賠償艦としてソ連、中国へ引き渡し「荒崎」は当時の農林省水産講習所の練習船「海鷹丸」となり、解役後さらに船会社に払い下げられ転々としたのち、最後は1967年(昭和42年)フィリピンに売り渡されるなど長命だった。


艦娘「杵埼」型は小学生のような外見をしていて、普段は間宮の手伝いをして料理を運んだり材料を取ってきたりとまめまめしく活動しているが、場合によっては艦隊への補給に出撃することもある。魚に関してはかなりの目利きで、市場や魚屋にも顔が利く。

給油艦「剣埼(つるぎさき)」(初代)

基準排水量1970トン。速力11ノット。武装8センチ40口径「安(アームストロング)式」単装砲二基。搭載物資石油1100トン。


そもそもは1917年(大正6年)就役の給油艦で、このころ多くの軍艦が用いる燃料が石炭から重油へと代わってきたことから、港内での給油用として建造されたもの。
さしたる性能も必要ないフネ(またちょうどいい大きさのディーゼル主機がなかった)ということで練習も兼ねて、当時新型だった「浦風」型駆逐艦用のディーゼル主機二基を搭載するなど新機軸を盛り込んだ…が、第一次大戦中だったことから(当時敵国であった)ドイツ製の部品である「流体継手(フルカン継手)」が入手できなかったことをはじめ、まだまだ珍しかったディーゼル機関に馴染みがなかったこともあって多くの問題が発生した。
そのため当初は呉~佐世保あるいは呉~横須賀の航海でほぼ毎回のように機関が故障するなどトラブル続きで、呉軍港では「剣埼」の入港時に全艦艇に対して(衝突回避のため)「機関点火」が要請されるといった有名なエピソードもあった。

その後は水産庁の漁業取締船「快鳳丸」となったが、1945(昭和20)年には護衛艦艇不足から「特設砲艦」の扱いで戦場へと駆り出され、北海道の日高沖で米潜に撃沈されている。

(※フルカン継手…無段変速機の一。オイルで満たした筒の中に「機関側」と「軸側」それぞれに繋がっている水車のような機構を仕込んである変速機。機関の動力を受けた機関側の水車が回り、それがオイルに水流を生んで軸側の水車を回すことで滑らかに変速できる)


艦娘「剣埼」は一見すると小柄な女の子だが、艦齢を考えると大変な「お年寄り」で、また補給には「知床」型をはじめ大型艦がいることからほとんど作戦には投入されない。それでは申し訳ないと食堂の手伝いや何かをしてくれることもあるが、しょっちゅう転びそうになったり物を落としそうになったりしているので、「剣埼」が動くとなると百合姫提督を始め全員が様子を見ながらヒヤヒヤしている。




標的艦「摂津(せっつ)」

排水量20650トン。速度18ノット。武装なし。
標的艦としての防弾能力は17000~22000メートルからの「20センチ演習砲弾」および4000メートルからの「三番(30キロ)演習爆弾」に耐える程度。

元は日本が初めて国産に成功した弩級艦である「河内(かわち)」型戦艦の二番艦で、1912年(明治45年)に就役した戦艦。ネームシップの河内は弾薬の爆発事故で失われたが、摂津はその後も長く大正天皇・皇后のお召し艦になるなど威容を誇っていた。しかし1923年(大正12年)ワシントン軍縮条約によって「陸奥」を建造する代わりに兵装を撤去し標的艦とすることで同意したことから類別が変更となった。


当初は後方に板状の的を曳航するなどした「操作側」だったが、1931年(昭和6年)にはドイツ製遠隔操作装置を元に日本で製造した遠隔操縦装置を搭載し、それ以降は元駆逐艦の「矢風」からリモコン操作を行い、演習弾を浴びても損傷しないよう防弾鋼板を装着した「実艦的」として用いられた。この際攻撃側は「摂津」に命中させるよう、また回避側は攻撃回避の訓練ができるようになっていた。
特に爆撃訓練の時は(演習砲弾よりは小さく安全な演習爆弾のため)回避側が実際に「摂津」の防御区画に乗り組み、直接回避行動の訓練を行っていた。
外見では煙突の口から弾片が飛び込まないように設けられたそろばん玉のような「ファンネルキャップ」(煙突カバー)が特徴的で、長く連合艦隊の訓練の相手を務めてきた「摂津」だったが、最後は1945年7月の呉軍港空襲を受けて大破着底し、そのまま敗戦を迎えた。


艦娘「摂津」は大柄で、お召し艦だったこともあり上品な関西弁をしゃべるが、標的艦という性質のせいか妙にいじめたくなるようなオーラをまとっている。演習となると頭にファンネルキャップを模した笠をかぶり「矢風」の指示のままに逃げ回るが、鈍足のためすぐ捕捉されてはひいひい言わされている。




標的艦「矢風(やかぜ)」

排水量1321トン。速度24ノット。武装は5センチ「山内式」単装砲一基、25ミリ九六式単装機銃四基、爆雷八個。
防弾能力は「1キロ演習爆弾」に耐える程度。

もとは「峯風」型の駆逐艦だったが、1937年(昭和12年)以降無線操縦装置を設けて「摂津」の無線操縦にあたっていた。しかし開戦以降、鈍足の摂津一隻では海軍航空隊の訓練には足りないことから「矢風」自身も防弾板を装備して南方へ進出し、現地で「実艦的」として訓練の相手を務めるようになった。敗戦時は修理もままならず中破着底状態で横須賀にあり、戦後解体された。

艦娘「矢風」は演習となるとリモコンを手に摂津を操りいいように使っている生意気な小娘だが、たいてい摂津に飽きた空母勢の「次の目標」にされては追い回されている。




標的艦「波勝(はかち)」

排水量1641トン。速度19ノット。武装は13ミリ九三式連装機銃二基。
防弾能力は高度4000メートルからの「一番(10キロ)」演習爆弾に耐える程度。

「摂津」第二次改装の結果、標的艦を有人操作して行う爆撃訓練は有効だということは分かったが、摂津では海軍航空隊の練習相手としては速度が遅く、また旋回性が不満足だったため、1941年(昭和16年)に計画されて1943年(昭和18年)に就役した標的艦。
特徴的なのは艦の左右に張り出す折りたたみ式の幕を使った「幕的」で、これを使うことで上空からのシルエットを駆逐艦程度から重巡程度まで大きく見せることができるというもの。また最初から標的艦として考えられていたため船体と主甲板の間にすきまを開けて、甲板の損傷が船体にまで及ばないようにしてあるのが特徴。
大戦中は南方に進出して機動部隊の相手を行い、無事に大戦を生き延びて復員輸送を行ったのち解体された。


艦娘「波勝」は中学生程度に見える艦娘で、演習となるとムササビか派手なパフォーマンスをする歌手のように袖の幕を広げ、空母たちの相手を務める。

というわけで、帝国海軍の補助艦艇を中心に紹介してみました……たいては小さいフネですけれども「縁の下の力持ち」として艦隊を支えた功労艦たちですね。


それと、ここ数週間はF-4EJ「ファントム」や「YS-11」の退役、それにイージス艦「はぐろ」の就役などニュースが多かったですね。もっとも、好みで言えばステルス性を重視してのっぺりしたデザインになっている最近の軍艦よりも、戦中の艦艇の方が国ごとの個性があって好きですが…。


あと、749と750で連投になってしまいましたので、どうぞ片方は読み飛ばして下さい。



百合姫提督「…と言うことがあって」

提督「ふふ、姫もなかなか大変なようで…でも、慕われているようで何よりね♪」

百合姫提督「ええ。でも艦隊を指揮する上で「艦娘」の娘たちと親しくなりすぎるのもいけないような気がして……その距離感が難しいわ」

提督「気持ちは分かるわ…そういう面では、私は自分のことを「提督にふさわしくない」と思っているもの」

百合姫提督「貴女が?」

提督「ええ。必要とあれば敵に撃沈されることを承知で艦娘を送り込まなければならない……私にはそんな命令を下して、その罪の十字架を背負える自信なんてないもの」

百合姫提督「でも、タラントでの指揮ぶりは見事だったし、そんな風には見えなかったけれど……」

提督「それはそうよ…まがりなりにも「提督」としてベタベタ金モールを付けている以上、まさか艦娘たちの前で真っ青になってガタガタ震えているわけにもいかないでしょう? とはいえ作戦を考えているときは寝付けなくなるし、お腹も痛くなったし……生理のひどいときを思い出したわ」

百合姫提督「フランカも悩んでいるのね…」

提督「もちろん…もっとも、そうやって「うちの娘たちが怪我をしないように」って頭をひねって考えるから、いい作戦が出来上がるのかもね♪」

百合姫提督「そうかもしれないわ」

提督「ね……それでいくと、姫は立派な提督よ♪」

百合姫提督「もう、やめてよ……///」

提督「別に冗談や酔狂で言っているわけじゃないわ…あまりジァポーネの提督に詳しいわけじゃないけれど、姫なら「イソロク・ヤマモト」とだっていい勝負だと思うわよ?」

百合姫提督「もう、私なんか山本長官の足元にも及ばないわ……もっとも、彼の名言は飾ってあるけれど」

提督「名言?」

百合姫提督「ええ。前にも言ったかもしれないけれど有名な言葉で「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、誉めてやらねば人は動かじ」っていう…本当は続きもあるけれど、その部分が一番知られていて……私もその通りだと思うから、執務室の額に入れて飾ってあるわ」

提督「いい言葉ね…ちなみにそういうことなら私も良く実行しているわ」

百合姫提督「本当に?」

提督「ええ…提督として本当にやるべき事は率先して「やってみせ」て、反対にどうでもいいことの時はそれ相応の態度を取るわけ……ふふっ♪」

百合姫提督「何がおかしいの?」

提督「いえ、ね…例えばスーペルマリーナ(海軍最高司令部)発で「鎮守府の規律を守り、綱紀粛正に努めるべし」みたいなしょうもないお達しが回ってきたとするでしょう?」くすくす笑いの発作を起こしながら続けた…

百合姫提督「ええ…それで?」

提督「前にそういうのが来たときにはね……」

………

…数ヶ月前…

アッチアイーオ「提督、ローマのスーペルマリーナから文書が届いているわ」

提督「スーペルマリーナから?」

アッチアイーオ「ええ」

提督「こんな時期にスーペルマリーナからだなんて……何かしら?」

アッチアイーオ「さぁ…とにかく開けてみたらいいんじゃない?」

提督「そうね……って、これだけ?」

アッチアイーオ「何だったの?」

提督「これよ」イタリア海軍の紋章が印刷されている封筒から数枚の紙を取り出してひらひらと振り、それから執務机の上を滑らせて渡した…

アッチアイーオ「前文…はいいとして……「各提督および所属の『艦娘』は鎮守府内における規律向上と整理整頓に努めるべし…」って、なによこれ?」

提督「季節になるとよく来るお説教のお手紙よ…要は「ブーツをピカピカに磨き上げておくこと」の海軍版ね」

アッチアイーオ「はぁぁ…しょうもないわね。この書類を印刷する予算があるんだったら、あのかみ合わせが悪いモンキーレンチでも買い直してくれればいいのに」

提督「ええ、まったく…とはいえ「提督は各鎮守府所属の『艦娘』たちにも周知徹底するべくこれを通達すべし」とあるから、後でみんなに読み上げないとね」

アッチアイーオ「あーあ、ばかばかしい…」

…数時間後・食事時…

提督「…はーい、注目」

チェザーレ「おや、どうかしたのか……諸君、静かに」

ライモン「なんでしょう…?」

ムツィオ「さぁね。でも作戦の話はもう済んでるし……提督もあんまり話す気があるようにも見えないから、大した通達じゃないんじゃない?」

ライモン「でも提督のお話ですから、ちゃんと聞かないと」

エウジェニオ「相変わらず律儀ね、ライモンドは…もっとも、愛しい提督さんのお話だものね♪」

ライモン「///」

提督「あー…だいぶ静かになったわね。それじゃあ通達します」通達の紙を手に立つと、横に座っているデルフィーノがくりっとした目で見上げてくる……提督が横目でちらりと見おろしながら小さくウィンクをすると、はにかんだような微笑みを浮かべてにっこりした…

提督「…ローマのスーペルマリーナから届いた通達ですが「各鎮守府の提督および艦娘は規律の向上、及び整備整頓に努めるべし」とのことです」さしたる内容でもない「通達」に、艦娘たちのため息と小声のおしゃべりが交じる……

提督「えー、と言うことですから…」片手で書類を持って続けながらもう片方の手をデルフィーノの頭に伸ばし、濃い灰色の髪を指でくしけずったりはね上げたりしている提督…

デルフィーノ「…んっ///」

提督「……従って全員よくこの通達に従い、規律の向上に努めるよう…」声だけは真面目な調子で訓示しつつも、瞳をきらめかせ、口元にはいたずらっぽい笑みを浮かべている…

デルフィーノ「…あっ…あふぅ///」

提督「…各自がより一層規律正しく健全な生活を送るようにすることで……」そう言いながら左手を伸ばし、デルフィーノの引き締まった乳房を優しくこねくり回している…

デルフィーノ「ふわぁぁ…あふっ///」

提督「……私も提督として模範を示すべく、この通達にあるよう「規律正しく」生活し、スーペルマリーナの求める理想の提督たるべく…」もにゅ…むにっ♪

デルフィーノ「はふぅ、はぁ……んぅぅ///」とろけた表情を浮かべ、我慢しきれなくなったようにほっそりした指を灰色のプリーツスカートの中へと滑らせていくデルフィーノ…

提督「……では、訓示を終わります…以上♪」

…最後は艦娘たちに露骨にウィンクを投げると席に着き、そのままデルフィーノを抱き寄せる提督…色欲旺盛で「一人遊び」も好きなデルフィーノ(イルカ)は恥ずかしさと快感から顔を火照らせ、花芯に沈めた人差し指から「くちゅ…っ♪」と水音が響かないようそっと動かしている…

ガリバルディ「はいはい、オッベディスコ(従う)、オッベディスコ……ね♪」左右の艦娘の肩に腕を回し、ぐっと引き寄せた…

チロ・メノッティ「そうですね///」

エンリコ・タッツォーリ「はい…///」

…リソルジメント(イタリア統一)における殉教者で、ガリバルディが息子の名前にも付けた「チロ(チーロ)・メノッティ」と、同じくオーストリアからの独立運動を行い処刑された「ベルフィオーレの殉教者」の一人である神父「エンリコ・タッツォーリ」は、女たらしのガリバルディに抱き寄せられて真っ赤になっている……

エウジェニオ「ふふ…っ、姉さん……♪」

アオスタ「ち、ちょっと…だめ…///」

エウジェニオ「いいじゃない…相変わらずお堅いんだから……もっとも「お堅い」のはここもかしら?」もみっ…♪

アオスタ「あっ、やめ……っ///」

提督「んちゅっ、ちゅっ…♪」

デルフィーノ「はぁっ、はぁぁ…っ///」

アッチアイーオ(温)「て、提督……デルフィーノだけじゃなくて、私も構ってほしいわ…///」

提督「ふふ、ごめんなさい…不公平なのはいけないわよね♪」

アッチアイーオ「んふぅ……あむっ、ちゅぅ…♪」

デュイリオ「あらあら」

カヴール「ふふ、みんな若いですね…♪」

チェザーレ「カヴールにしてはずいぶんと枯れたことを……チェザーレはまだまだ現役のつもりだが?」

リットリオ「あんまり無理しちゃだめですよ、チェザーレ?」

チェザーレ「ほほう、いうではないか…後で音を上げるなよ、リットリオ?」

リットリオ「ふふふっ、負けませんよ…♪」

………

提督「…っていう具合に「行動」で示すことにしているわ♪」

百合姫提督「もう、フランカってば…♪」そう言うと苦笑しながら「またね」と通話を終えた…

…別の日…

提督「ふぅ……やっと書類の処理が終わったわね…」

デルフィーノ「たくさんあって疲れちゃいました」

提督「手伝わせてしまってごめんなさいね、二人とも」

アッチアイーオ「いいのよ。それが秘書艦の任務なんだから」

提督「そう言ってもらえると助かるわ……んー♪」差し戻しを受けた書類の処理を終えると、椅子に座ったまま大きく伸びをした…

デルフィーノ「次は何をしますか、提督?」

提督「そうねぇ…この時間だから鎮守府の中を回って……」

アッチアイーオ「それから提督は体育館で運動ね」

提督「えー…?」

アッチアイーオ「まったく「えー?」じゃないでしょうが…食べた分だけカロリーを消費しないと、そのうち服が着られなくなるわよ」

提督「それはそうだけれど…」

アッチアイーオ「なら早く支度をしなさいよ……ちゃんと運動したら私がご褒美を上げるから…///」

提督「…あら、それは信じていいのかしら?」

アッチアイーオ「もうっ、私が提督に嘘なんてつくわけないでしょう……///」

デルフィーノ「えへへっ、アッチアイーオったら耳が真っ赤です♪」

アッチアイーオ「うるさいわね…!」

提督「ほーら、喧嘩はしないの……それじゃあ着替えてくるから、少し待っていてね?」

アッチアイーオ・デルフィーノ「「了解」」



…体育館…

チェザーレ「おや、提督…見回りか?」

提督「いいえ、二人にせっつかれて少し運動を…ね」

バンデ・ネーレ「へぇぇ、提督が運動……明日は雨かな?」

提督「おっしゃってくれるわね…そういうバンデ・ネーレは?」

バンデ・ネーレ「ボクかい?ボクはチェザーレと剣の練習を♪」

(※「ジョバンニ・デレ・バンデ・ネーレ(黒装束のジョバンニ)」ことジョバンニ・ディ・メディチは剣術の達人であり勇猛果敢、その上で当時の(教養のある)傭兵隊長の中でも特に優れた人格者だったことから名高く、これだけの傭兵隊長は二度と現れないだろうということで「最後のコンドッティエーリ(傭兵隊長)」と呼ばれた)

チェザーレ「うむ。十五世紀の剣術というのもまた興味深いのでな…この前は「フィオール・ディ・バッターリア」を借りたのだが、面白く読ませてもらった」

(※「フィオール・ディ・バッターリア(fior di battaglia)」…「戦いの花」というタイトルが付けられた十五世紀の剣術指南書で、当時「剣術の達人」として広く知られていたジョバンニ・デレ・バンデ・ネーレに取材してまとめられたもの。ルネサンス期以降に銃器が発達して廃れてしまった実戦型の剣術を後世に伝えた有名な本で、ヨーロッパの武術研究家や歴史家はこれを元にして当時の剣術を復活・研究させている)

提督「確かにバンデ・ネーレの剣術は大したものだものね。私なんかじゃあ手も足も出ないわ…」フェンシングを始め伝統的に剣術が強いイタリアにあっては、あまり上手とはいえない腕前の提督…

バンデ・ネーレ「そんなに誉められると少し恥ずかしいね……でも、提督にそう言ってもらえて嬉しいよ」

チェザーレ「そうだな…では、参ろうか。お手柔らかに頼むぞ♪」顔を防ぐための面をつけ、刃の付いていない…しかし古代ローマのグラディウス(ローマ式幅広の剣)を再現した練習用の剣を取った…

バンデ・ネーレ「こちらこそ。英雄チェザーレと剣を交えられて光栄だよ…審判は提督たちにお願いしようか♪」こちらは左肩に黒マントを羽織り、細身の長剣を提げている…

チェザーレ「うむ、それがよいであろうな……構わぬかな?」

提督「ええ♪」

アッチアイーオ「言っておくけれど、二人の練習が終わったらちゃんと運動するのよ?」

提督「…んー?」

デルフィーノ「くすくすっ…提督ってば二人の試合の審判をしてごまかすつもりだったんですね♪」

提督「そんなことはないわよ、ちゃんと二人の試合が終わったら運動するつもりだったわ」

アッチアイーオ「どうだか…」

提督「本当よ……だって運動したらアッチアイーオの「ご褒美」があるんだもの…ね?」アッチアイーオの耳に口元を寄せ、甘い声でささやいた…

アッチアイーオ「っ、いいから始めるわよ…///」

提督「そうね。それじゃあ……始めっ!」

チェザーレ「では、ジュリオ・チェザーレ…参るぞ!」グラディウスを抜き放ち、振りかぶった…

バンデ・ネーレ「フィレンツェのジョヴァンニ・ディ・メディチ……主の名にかけて、正々堂々とお相手します!」

…バンデ・ネーレが左肩からかけているマントは、果たし合いの多かった中世において衣服として…そしてとっさの時の盾代わりとして有効活用されてきた……左腕でマントをぐるぐると回しながら、ずっしりしたウールの生地でチェザーレの剣を巻きとめようとする…

チェザーレ「…ふんっ!」

バンデ・ネーレ「…っ!」マントで剣身を受けたが、そのまま勢いで押し切られて防具を着けた腕に「ばしっ!」と一撃を浴びた…

提督「判定っ!」さっとチェザーレ側の旗を上げ、また旗を降ろして「始め!」をかける提督……

チェザーレ「どうしたというのだ、バンデ・ネーレ……臆せずにかかってくるがよかろう!」

バンデ・ネーレ「くぅっ…さすがチェザーレ、重いし早い……けれどね!」

チェザーレ「むっ…!」

…フランス系の剣術をベースに様式化されたフェンシングと違い、より実戦的な円形のコートでお互いに回りながら隙を見計らっている二人……と、バンデ・ネーレが飛び出して一気に突いた…

提督「判定っ!」

チェザーレ「ふむ、さすが「最後のコンドッティエーリ」であるな……しかし、実戦ではそうはいかぬぞ…!」真紅のマントをはためかせて間合いに詰め寄ると、剣を叩き落としつつ鳩尾に蹴りを入れ、よろめいたところで首筋に剣を突きつけた…

提督「判定!」

デルフィーノ「チェザーレさんはさすがです」

チェザーレ「…バンデ・ネーレ、平気か?」

バンデ・ネーレ「ボクは平気だよ……さすがにチェザーレは違うね♪」

エットーレ・フィエラモスカ(大型潜・単艦)「実力者同士の試合はわくわくしますね…私も騎士の血がうずいてきてしまいそうです♪」

アルベルト・ディ・ジュッサーノ(軽巡ジュッサーノ級)「確かに。私も久しぶりにやってみようかしら……バルトロメオ?」

…神聖ローマ帝国の皇帝として名高いかの「バルバロッサ(赤ひげ)」ことフリードリッヒ一世の侵略に対し、チャリオットとそれを援護する「死の中隊」を編成して戦い、ついにミラノを守り切り撃退したロンバルディアの伝説的英雄、アルベルト・ディ・ジュッサーノ…

バルトロメオ・コレオーニ(ジュッサーノ級)「ああ、いいよ……私も姉さんと剣の練習をするのは久しぶりだ」

…こちらは中世ヴェネツィアの「ドゥーチェ(統領)」で、当時のライバルであったミラノの女公「ビアンカ・マリア・ヴィスコンティ」を暗殺させたという人物…

ジュッサーノ「お互い軍艦としてみれば姉妹。とは言えヴィスコンティ家にあんなことをした以上、容赦はできないわよ…?」お互い権謀術数が渦巻き、戦争も相次いでいた中世イタリアの都市国家…その歴史もあってか、地域が絡むと一気にやり取りが熱を帯びてくる……

コレオーニ「そういうのはお互い様さ、姉さん…行くよ!」

アッチアイーオ「さ、せっかくだから提督もやったらどう?」

提督「いえ、どちらかというと剣術はあんまり……それにあのすごい立ち回りを見た後だと、なおのこと…ね」

アッチアイーオ「…私だって剣は得意じゃないもの。お互い様よ」

提督「そうね、アッチアイーオがそこまでいうなら……それじゃあまず防具を着けないと…」手足や胴体、それに頭と顔を守る「面」を付けて、剣を提げた…

デルフィーノ「提督、アッチアイーオ、準備はいいですかぁ?」

アッチアイーオ「いいわよ……ま、もし提督が勝ったら舌を入れてキスしてあげたっていいわ」

提督「舌を入れるキス……デルフィーノ、今のちゃんと聞いたわね?」

デルフィーノ「はい…アッチアイーオ、そんなことを言って大丈夫ですか?」

アッチアイーオ「自信がなかったらそんなこと言わないわよ……さぁ、審判をお願い!」

提督「デルフィーノ、いつも気を回してくれるのは嬉しいけれど、こと審判に関しては私が提督だからってえこひいきしちゃ駄目よ…もちろん、アッチアイーオにもね?」

デルフィーノ「はい、大丈夫です……始めっ♪」

アッチアイーオ「…」長剣をだらりとさせ、下から切り上げる体勢を作る…

提督「…」一方、長身の提督は懐に飛び込まれないよう間合いを広くし、剣を両手で握って肩で担ぐように構える「乙女の構え(posta di donna la soprana)」を取った…

ライモン「提督とアッチアイーオ…どっちにも頑張って欲しいですね」

グレカーレ「うーん……動きの速さはアッチアイーオ、間合いでは提督が有利ですね」

提督「…」

アッチアイーオ「…」

…数分後…

デルフィーノ「勝負あり!」

アッチアイーオ「はぁ…はぁ…」

提督「ぜぇ……はぁ……」

アッチアイーオ「…いったいどういうわけよ!?」お互いに息を切らしながら握手をし、面を外した途端に怒鳴った…

提督「ふぅ、ふぅぅ……なにが?」

アッチアイーオ「あんなに運動が苦手なくせして、どうしてこういう時だけ勝てるのかって聞いてるの!」

提督「そうねぇ…愛の力かしら♪」

ライモン「確かに、提督の剣術がお世辞にも優れているとは言えませんが……」

グレカーレ「…女の子といちゃつけるとなると急に強くなるものねぇ」

アッチアイーオ「聞いてあきれるわ……」

提督「ふふっ…それよりお約束のキスはいつしてくれるの?」

アッチアイーオ「だぁぁ、もう! こんな皆が見ているまえでするわけないでしょうが!」

提督「あら、残念…まぁ、とりあえず運動もできたし、後は食堂でお茶でも……」

バンデ・ネーレ「…ねぇ提督、せっかく防具を着けたのに一回の手合わせで「はい、おしまい」じゃあ物足りないんじゃないかな?」

チェザーレ「うむ。チェザーレも提督とお手合わせ願いたいとかねがね思っていたのでな」

ガリバルディ「そうよね、せっかくだもの……♪」

提督「え、ちょっと…」

デルフィーノ「そうですねぇ。提督も運動のために来たんですから、もう何人かと練習したらいいかもしれないです」

提督「…デルフィーノ、覚えていなさいよ…後でとっておきの恐怖映画祭りにしてあげるから……」

バンデ・ネーレ「まぁまぁ…さ、面を付けて」

提督「うぅぅ…午後の執務もあるのだから、ほどほどにお願いね」

バンデ・ネーレ「ふふ、ボクだってそこまで意地悪じゃないよ……♪」

ガリバルディ「…でも、こっちが勝ったらご褒美が欲しいわよね」

提督「ご褒美ねぇ……ん、ご褒美?」(もし私が負けたところでキスすればいいだけとなれば、別に負けても損はない…?)

バンデ・ネーレ「いいかな?」

提督「そうねぇ…分かったわ♪」

チェザーレ「どうやら乗り気になってくれたようであるな…バンデ・ネーレ、先に手合わせしてよいぞ」

バンデ・ネーレ「じゃあボクがお先に…♪」右手に長剣、左手に短剣を構えると一礼した…

提督「マン・ゴーシュね……」

(※マン・ゴーシュ…左手に短剣を持つ二刀流スタイル。短剣の鍔(つば)に金属の籠目飾りがあり、そこに相手の剣身を絡ませて動きを止めたり、ナックルのように柄に指を通しているレイピア等では剣身ごとねじって相手の手指を折ったりする)

デルフィーノ「それでは…始め!」

バンデ・ネーレ「はぁ…っ!」

提督「やぁっ…!」

………



…数十分後・執務室…

提督「はぁぁ…疲れた……」

デルフィーノ「バンデ・ネーレさんたちにずいぶんしごかれていましたですね」

提督「ええ、あんなに剣術をやらされたのなんて士官学校の授業以来よ……あいたた…」

デルフィーノ「まだ痛みます?」

提督「ええ。防具越しだったのにまだ打たれた所がじんじんするわ…」慎重に椅子へと腰かけたが、うずくような痛みが伝わって顔をしかめた…

デルフィーノ「あらら…」

…チェザーレの「ローマ軍団式」実戦的剣術に始まり、バンデ・ネーレの巧みな剣さばき…あるいは真っ直ぐ立って腕を前に突き出し、剣を伸ばすようにして正面に構え、相手を中心に円を描くようなステップを踏みつつ剣を振るう「最強の剣術」ことスペイン流剣術を使いこなしてくる「アレッサンドロ・マラスピーナ」や「イリデ」などにみっちりしごかれた提督…

(※アレッサンドロ・マラスピーナ…大型潜マルコーニ級。艦名はイタリア出身で、スペイン海軍の士官としてガラパゴス諸島等の探検を行った航海者から)

(※イリデ…中型潜ペルラ(真珠)級。艦名は伝令の女神「イーリス」またはイーリスのシンボルである花で、これは英語で言う「アイリス」つまりアヤメ類。スペイン内乱時はフランコ側を支援するべく他のイタリア潜数隻とともにナショナリスタ側に貸与され、スペイン潜「ゴンサレス・ロペス」として極秘裏に参戦している)


提督「何しろこんな具合だもの…もう執務なんて出来そうにないから、しばらくお茶を飲みながら休憩するわ」

デルフィーノ「分かりました、それじゃあお茶の用意をしますね」

提督「ええ、お願いするわ。それとアッチアイーオもそろそろ来るでしょうから、三人分用意してくれる?」

デルフィーノ「もちろんです♪」

提督「あと、まだ汗が抜けないから…しばらく執務室の扉も開けておいて」

デルフィーノ「はい♪」

…廊下…

アッチアイーオ「それにしても、提督ってばみんなの前であんなことを言わなくたって……」提督のささやく歯の浮くような文句と甘い声を思い出しながら、恥ずかしさを追い払うように頭を振った……

アッチアイーオ(温)「…舌を絡めるような……提督の、キス……///」いくどか交わしたことのある柔らかな口づけを思い出し、思わず唇を指でなぞった……

アッチアイーオ「……それにベッドへ入るといつもぎゅって抱きしめてくれて…暖かくて柔らかくて…甘い良い匂いがして……///」

アッチアイーオ「って、もう…なにを考えているのよ……デルフィーノじゃあるまいし…///」

アッチアイーオ「…ん、執務室の扉が開けっぱなしじゃない……まったく提督ったら、ドアを閉めるのもおっくうなほどくたびれちゃったとでも言うのかし……ら?」開いている執務室のドア越しに、提督とデルフィーノの会話が漏れてくる…

提督「……は甘い方が好きだものね。デルフィーノだってそうでしょう?」

デルフィーノ「そうですね、まるで口の中に余韻が残るような感じがするので♪」

アッチアイーオ「…ちょっと、あの二人ときたら…なんでドアを開け放しにしてキスの話なんてしているのよ///」

提督「…ふふ、きっとデルフィーノのことだからそう言うと思ったわ。ところで、アッチアイーオのカップだけれど……少し小さくないかしら?」

デルフィーノ「……もう少し大きい方がいいですか?」

提督「ええ、やっぱりその方がいいと思うの…何しろ「大は小を兼ねる」って言うものね♪」

デルフィーノ「それもそうですねぇ…」

提督「手触りはすべすべしていて抜群にいいだけに、ちょっと惜しいわよね」

デルフィーノ「そうですねぇ。形も丸っこくて可愛らしいですし、もうちょっと大きければ抜群なんでしょうが……」

提督「それでいけばデルフィーノのは大きさもちょうどいいし、形も綺麗よね」

デルフィーノ「私は提督のもいいと思います♪」

提督「そうね。私も形や大きさ、それに色合いも気に入っているの。特に長丁場の時には重宝しているわ……ただ少し重たいのが欠点ね…」

アッチアイーオ「…さっきから黙って聞いていれば好き放題言ってくれちゃって……デルフィーノ、提督!私の乳房が大きかろうが小さかろうが余計なお世話よ!」

提督「まぁまぁ落ち着いて…どうしたのアッチアイーオ、そんなに血相を変えて?」

デルフィーノ「そうですよぉ、何を怒っているんです?」

アッチアイーオ「怒るに決まっているでしょうが、ドアを開けっぱなしにしたままで人のカップがどうのこうの…っ!?」テーブルの上に並べられているのは菓子皿と三つのコーヒーカップで、アッチアイーオのものだけ一回り小さい…

デルフィーノ「アッチアイーオ?」

アッチアイーオ「な、何でもないの……ちょっと勘違いしただけだから///」

提督「……ちなみに私はアッチアイーオのおっぱいも引き締まっていて好きだから、心配要らないわ♪」

アッチアイーオ「…っ///」

…その晩…

提督「ふー…」

アッチアイーオ「お疲れ様、これでようやっと文書の処理が済んだわね」

提督「ええ…それにしても管区司令部ときたら、ああだこうだと理屈をつけては「差し戻し」をかけてくれちゃって……」

デルフィーノ「そうですねぇ…こうやって見ただけでも「摘要が違います」「日付は決済日と同じにして下さい」「物品購入の予算申請時は見積書、契約書、納品書のコピー、またはデータを添付して下さい」……他にもいろいろありますねぇ」

提督「あののどかな「近くの町」にあるお店で何か買ったとして、見積書だの契約書だのを作ってくれなんて言ったらお店の人がびっくりしちゃうわよ。ちゃんと領収書は添付してあるのだから、文句を言わずに交付してくれればいいものを……きっと管区司令部に私の事が嫌いな人がいるに違いないわね」

アッチアイーオ「提督のことだから、思い当たる節でもあるんでしょう?」

提督「いいえ♪」

デルフィーノ「くすくすっ…提督ってば自信満々です♪」

提督「だって、ねぇ……少ないとは言え、イオニア海管区司令部にだって仲良しの数人くらいはいるし…」

アッチアイーオ「ふぅん…提督の「知り合い」ねぇ」

デルフィーノ「なんだかいやらしい感じです///」

提督「もう、私にも普通の知り合いくらいいるのよ? …まぁ、たまたま仲が良くなって関係が進展しちゃう事もあるけれど……」

アッチアイーオ「だと思ったわよ…」

提督「まぁまぁ…とにかく書類の整理は終わったのだから、二人とも戻っていいわ。お疲れ様」

デルフィーノ「はい、それじゃあお休みなさい♪」

提督「ええ、お休みなさい…」

アッチアイーオ「……ねぇ、提督」

提督「なぁに?」

アッチアイーオ「昼間「もし私に勝ったらキスしてあげる」って言ったわよ……ね///」

提督「ええ」

アッチアイーオ「その…してあげるから……///」

提督「分かったわ…アッチアイーオはベッドがいい?」

アッチアイーオ「あ、当たり前でしょうが…!」

提督「分かったわ。それじゃあ……」ひとまとめに束ねていた髪をほどくと寝室へと入り、着ていた栗色のタートルネックとベージュのスラックスをしゅるりと脱いでいく…

アッチアイーオ「///」

提督「ほら、来て……?」下着姿でベッドに腰かけると、迎え入れるように両腕を広げた…

アッチアイーオ「え、ええ…///」提督の柔らかくしっとりした唇に、アッチアイーオの唇が触れる……

提督「ん…♪」

アッチアイーオ「ん、ふ……んむ…っ///」ぎこちなく舌を絡め、いくらかぎくしゃくした様子で提督の乳房に手を伸ばす…

提督「……無理しなくていいから、アッチアイーオの好きなようにして?」

アッチアイーオ「わ、分かってるわよ……ん、ちゅぅ…ちゅっ…///」

提督「ん、んちゅ……んぅぅ♪」

…アッチアイーオを抱き寄せるようにしながら、自分からベッドに寝転がる提督……左手はアッチアイーオの青みがかった艶やかな黒髪を撫で、右手でしなやかな背中を優しく抱きしめた…

アッチアイーオ(熱)「んんぅぅ、あふぅ、あふっ……あむっ、ちゅぅ…っ♪」

提督「んっ、ちゅむ…ちゅうっ……ふぅ…んっ♪」次第にキスが熱を帯び、黒い瞳に爛々と情欲の炎をたぎらせ始めたアッチアイーオに刺激される形で、提督も金色の瞳を輝かせ、アッチアイーオを抱き寄せる…

アッチアイーオ「はぁぁ…ぅ…ん♪ んあぁぁ…っ♪」

提督「んぅぅ…ふあぁ…んっ♪」

アッチアイーオ「ていとく…ていとくっ……あ、あっ、ふぁあぁぁ……っ♪」

提督「アッチアイーオ……んんぅっ、あっ、あんっ…はぁぁぁ…んっ♪」

………

…ここ数日不具合(?)で入れなかったのですが、どうやら直ったようですね……とりあえず次の投下は週末にでも…


…あと、数日前イタリアの歌手「ミルバ」が亡くなりましたね……「ミーナ」「イヴァ・ザニッキ」と並ぶ女性カンタウトーレ(カンツォーネ歌手)として60年代ごろから一世を風靡した方で、オペラ並みのパワフルな歌唱力をもつ驚くような声量の持ち主でした…

…とある日…

提督「おはよう、デルフィーノ」

デルフィーノ「おはようございます、提督…目覚めのカフェラテをどうぞ。ミルクはぬるめで砂糖ひとさじです♪」

提督「グラツィエ……ずいぶんと天気が悪いわね。気象通報は?」

デルフィーノ「はい、ここに持ってきてあります」

提督「ありがとう…どれどれ……」まだ起き抜けで歯を磨いただけの提督はナイトガウン姿のまま執務室の椅子に座ると、コーヒーカップ片手に気象通報のプリントアウトを読んだ……

提督「……イオニア海に低気圧が接近、現在中心気圧980ヘクトパスカルでなお発達中。風は南西風、風力4から5…波高2メートルから4メートル…海況は今後さらに悪化する見込み。イオニア海並びにティレニア海南部に波浪注意報および航行注意情報……」そこまで読み通すと後ろを向き、執務室の窓から空を見上げた…

提督「……確かにこれは時化そうね」

デルフィーノ「はい…黎明哨戒から戻ってきたレオーネたちも「今日はひどくガブった」と言っていました」

提督「そうでしょうね……とりあえず駆逐艦は今日の出撃を取りやめ、哨戒は潜水艦の娘に任せましょう」

デルフィーノ「分かりました。それじゃあ私が伝えてきますか?」

提督「いいえ。代わりに出撃してもらう娘には苦労をかけるのだから、私が直接伝えることにするわ」

デルフィーノ「了解♪」

提督「アッチアイーオは作戦室?」

デルフィーノ「そうです」

提督「それじゃあ後で立ち寄ってあげないとね……」

…数十分後・待機室…

提督「おはよう、みんな……こんなお天気の時に出撃をお願いして悪いわね」

オタリア「仕方ないですよ。このうねりの中で駆逐艦を出撃させたって哨戒になりませんもの…私たち大型潜にお任せ下さい」

ガリレオ・ガリレイ「そういうことね」

コマンダンテ・カッペリーニ「それに提督がお天気を悪くしたわけじゃないんですから…謝らないで下さい♪」

トリチェリ(Ⅱ)「その通りです……あ、前の哨戒組が戻ってきたみたいですね」

アクィローネ(「北風」)「…まったく、今日のお天気ときたらばっかじゃないかしら……ひどい時化になってきたわね」

トゥルビーネ(「旋風」)「頭からつま先までびしょ濡れだものね。あぁ、提督…おはようございます」

提督「ええ、おはよう…この天気の中ご苦労様。きっと冷えたでしょうし、お風呂に入っていらっしゃいな」

…身体のあちこちからポタポタと雫を垂らし、濡れた髪を額に張り付かせた姿で敬礼するトゥルビーネたちに答礼すると、慈しむような表情を浮かべてねぎらった…

ニコロソ・ダ・レッコ(ニコ)「ああ、そうさせてもらうよ……もっとも、ドック脇のシャワーで潮気は軽く落としてきたけれどね」

提督「時化の具合はどう?」

アントニオ・ピガフェッタ「そうですね…これからもっと荒れてくる気がします」

提督「やっぱり……分かったわ、ありがとう」と、提督の足元にルチアがやって来て身体を擦り付けた……

ルチア「ワフッ…♪」

提督「あら、ルチア…でもこのお天気だから、お散歩はちょっと無理ね……ブラシをかけてあげるから、それで我慢して?」

ルチア「クゥーン……」

…午前中…

提督「んー、いよいよ雨脚が強くなってきたわね……みんな、お部屋や廊下の窓はちゃんと閉めた?」

ライモン「はい、ちゃんと閉めてきました」

提督「よろしい♪ アッチアイーオ、新しい気象通報は?」

アッチアイーオ「ええ、さっき来たわよ…1000時の気象通報によると「低気圧は進路を南東に変えアルジェリア沖を進みつつあり、本日1600時にはマルタ、ケルケナー諸島間を通過する見通し。北アフリカ沿岸、特にリビア・エジプト沖は荒天が予想される」だそうよ」

提督「了解…こんな時に作戦がなくて良かったわ」

レモ「でもこのお天気じゃあ外にも行けないし…レモたいくつー……」

アラジ「同感…うぅ、早く身体を動かしたい……」(※アラジ…中型潜アデュア級。大戦中の出撃55回を数えた「イタリア潜でもっとも作戦行動した艦」かつ、終戦まで無事に生き残った幸運の持ち主)

ドリア「アラジたちは元気で何よりですね」

カヴール「ふふふっ、本当に…若いというのはいいことです」

提督「もう、二人ともお婆ちゃんじゃないんだから……」

ドリア「あら、提督…♪」

カヴール「何かおっしゃいましたか……?」

デュイリオ「うふふっ、提督は冗談がお上手でいらっしゃいます…♪」

提督「あー……いえ、何でもないわ」

チェザーレ「…やれやれ、これだけ若返っているのだから艦齢の事を気にすることもあるまいに……それはそうと、確かに少し退屈ではあるな」

ロモロ「提督、なにか映画とかないの?」

提督「うーん、こんな天気にふさわしい映画ねぇ…」

スクアーロ「…なら「パーフェクト・ストーム」なんてどう?」

提督「時化の時に時化の映画を見てどうするのよ……」

スクアーロ「気に入らない? だったら代わりにいい暇つぶしの方法でも教えてもらいたいわ」

提督「もう、分かったわよ…そうね、それじゃあみんなで順繰りにお話でもしましょう」

デルフィーノ「わぁ、提督のお話ですか。ぜひ聞きたいです……でも怖いのはだめですよ?」

提督「ええ、分かっているわ…そうね、どちらかと言えば「怖い話」ではなくて「不思議な話」かしらね…」

提督「これはジェーン…前に「交換プログラム」でここへ来たミッチャー提督ね…から聞いた話なのだけれど……」

…数年前・ノーフォーク沖…

ミッチャー提督「…ふう、今回のUボート狩もどうにかうまくいったわね……ナイスハントだったわよ」

エンタープライズ「センキュー、マーム……うちの飛行隊がスコアを稼いだのはいいけど、ノーフォークが恋しいわ」

ミッチャー提督「そうね、まぁもうちょっとの辛抱だから…そろそろチェサピーク湾に入る頃だし、そうしたらハンプトン・ローズやニューポート・ニューズだってすぐ見えてくるわ」

エンタープライズ「ホーム・スウィート・ホーム(懐かしの我が家)ね」

ミッチャー提督「そういうこと……そうだ、戻ったらシーフードレストランでソフトシェルクラブでも食べに行くとしようか」

エンタープライズ「サウンズ・グッド(いいわね)♪」

…凪の海を航行するミッチャー提督の空母機動部隊は、北大西洋での深海棲艦「Uボート」のハントを終え、チェサピーク湾に入ろうとしていた…

ミッチャー提督「ん…ヘイ、ワッツ・ザッ(あれはなに)? 方位グリーン(右舷)10、前方500ヤード……海面のところ」

エンタープライズ「確かに白波が立ってるわね…サメ?」

ミッチャー提督「いや、サメだったらあんなにくねくね動かないから……」

…双眼鏡の視界には白波を蹴立てて浮かんだり潜ったりしている何かのシルエットが収まっている…黒褐色の艶のある様子はカワウソかアシカのようでもあるが、それにしては馬のような頭とぎざぎざの背びれがあり、動きもちがう…

エンタープライズ「ミネアポリスと駆逐艦たちからも見えるって言ってきてるわ…ねぇマーム、もしかしてあれって……」

ミッチャー提督「ええ…きっと「チェッシー」じゃないかしら」

エンタープライズ「ワーオ♪ 噂には聞いたことあるけどお目にかかるのは初めて…!」

ミッチャー提督「私もよ……っと、潜っちゃったわ」

エンタープライズ「もう?できればもっと見たかったわね……」

提督「…とまぁ、そういった話を聞いたことがあるわ」

スクアーロ「チェッシー?」

提督「ええ、チェサピーク湾にいるっていう未確認生物ね……名前は「ネッシー」をもじって付けられたそうよ」

デルフィーノ「不思議なお話ですね…他にはありますか?」

提督「そうねぇ、それじゃあ今度はジュリアが数年前に経験した「スリル満点」のお話を……」

ライモン「提督、その前にお茶をどうぞ…お話をしていると喉が渇きますから」

提督「あら、ありがとう…」紅茶をひとすすりすると話を始めた…

…数年前・地中海上空…

P-3副操縦士(コ・パイロット)「機長、ウェイポイントに到着。針路120度に旋回します」

アントネッリ中佐「了解、針路120。ルイージ、MAD(磁気探知機)に感は?」

レーダー員「MAD、レーダー共に感なし…静かなもんです」

アントネッリ中佐「了解……それじゃあコーヒーでももらおうか。トーニ、ギャレー(簡易厨房)から持ってきてもらえるかな?」

機上整備員「了解。ただし、味の保証はしませんよ?」

アントネッリ「なに、構わないさ…それとミルクを少し」

副操縦士「後でおれのも持ってきてくれよ…おれのは砂糖も入れてな」

機上整備員「分かってますよ、大尉は甘党ですからね」

副操縦士「そりゃあ…隊長が横に座っている中でずっと飛ばしてみろ。緊張して変な汗が出る」

アントネッリ「おや、私が横に座っているだけで緊張するようじゃ検定には合格させてやれないな」

副操縦士「こりゃあ手厳しい…」

アントネッリ「当然さ。深海お化けの潜水艦が対空機銃を撃ち上げて来ることだってあるんだ…隣に飛行隊長が座っているくらいでおたおたしているようじゃあダメだろう。違うかな?」

副操縦士「おっしゃるとおりです…精進しますよ」

アントネッリ「よろしい、向上心がある……一点追加だ♪」

機上整備員「お待たせしました、隊長」

アントネッリ「ん、ありがとう……飲み終えたら操縦を代わろう」

副操縦士「お願いします」

…と、急に操縦席のディスプレイに赤い警報ランプが灯ると、それまで「ビィィ…ン」と単調な音を立てていたターボプロップエンジンの一基が火を噴いた…

アントネッリ「右翼、四番エンジンから出火」

副操縦士「四番エンジンを停止、プロペラをフルフェザーにします!」ピッチ角を変更しエンジンを停止させている間にも、次々と警報が点灯し、機の自動音声やアラーム音が鳴り響く…

アントネッリ「よーし、操縦を交代だ…トーニ、席に着いてくれ」

機上整備員「了解!」

アントネッリ「よし、それじゃあ基地に連絡しよう…緊急事態を宣言」

副操縦士「スクォーク7700(トランスポンダ・緊急時コード)?」

アントネッリ「そうだ…第三エンジンは?」

副操縦士「第三エンジン出力低下、燃料ポンプに異常」

アントネッリ「……左翼のエンジンは?」

副操縦士「現状では問題なし」

アントネッリ「よし…なら針路を変えてトラーパニに戻ろう」

副操縦士「了解」

アントネッリ「…しかし、この機が双発の「アトランティック」じゃなくてよかったな」(※ブレゲー・アトランティク…フランス・ブレゲー社製の対潜哨戒機。イタリア海軍でも主力の対潜哨戒機として運用されていたが「ATR-72・ASW」に交替されつつある)

副操縦士「やれやれ「深海棲艦の脅威に対抗するため」P-3Cを貸与してくれたアメリカさんには感謝ですね……」

アントネッリ「まったくだな……コントロール、こちら「アルチェーレ(射手座)2」…第四エンジンから出火、第三エンジン出力低下。現在高度3000フィート、針路120、速度260ノット。緊急事態を宣言する」

戦術管制「こちらコントロール。アルチェーレ、何か支援できることはあるか…どうぞ?」

アントネッリ「アルチェーレよりコントロール、針路290への変針を要請」

戦術管制「こちらコントロール、針路290への変針を許可する…他には?」

アントネッリ「こちらアルチェーレ、今のところ飛行は安定しているが、エンジン二基で飛行しているため上昇は難しい…こちらの航路から他機をどけてもらえると助かる。それから燃料を積み過ぎているので空中投棄の許可願う…なお第四エンジンはすでに停止、鎮火を確認しているので投棄に際し引火の危険性は少ないものと思われる。どうぞ」

戦術管制「…アルチェーレ、こちらコントロール。燃料投棄を許可」

アントネッリ「了解…それからトラーパニ以外に着陸することも検討しているが、着陸可能な代替飛行場があれば教えて欲しい。どうぞ」

戦術管制「了解、少し待て……」

副操縦士「…今ごろ向こうじゃあ大騒ぎでしょうね」

アントネッリ「そうだろうな…」

戦術管制「アルチェーレ2,こちらコントロール…着陸可能な飛行場はパレルモ、シニョネッラ、コーミゾ、それとカターニアだ」

アントネッリ「了解、これから検討する……君ならどこがいいと思う、アドリアーノ?」

副操縦士「そうですね…まずパレルモはあり得ません。パレルモまで飛ぶんだったらトラーパニに降りたってほとんど距離は変わりませんよ」

アントネッリ「それから?」

副操縦士「コーミゾは距離的にはいいですし、滑走路も一本だけとはいえ2500メートルありますが…今日の風向きではアプローチするのに不向きです」

アントネッリ「よし…じゃあカターニアは?」

副操縦士「カターニアも滑走路はたっぷり2500ありますし、滑走路も08と26の二本がありますが…この時期のカターニアじゃあ旅客機がうようよいますから、それをどかしてもらってアプローチするとなったら時間がかかります」

アントネッリ「それじゃあシニョレッラだったら?」

副操縦士「そうですね、シニョネッラなら「第41ストルモ・アンティソマージビリ(対潜航空団)」の連中と米軍が展開している軍用飛行場ですから、管制も手慣れていますし備えもばっちりあります。滑走路も充分ですし、距離的にもトラーパニに飛ぶより断然近いです」

アントネッリ「満点の回答だな…それじゃあシニョネッラに向かい、いざというときはカターニアへ降りるとしよう」

副操縦士「了解」

アントネッリ「…こちらアルチェーレ。コントロール、聞こえるか?」

戦術管制「こちらコントロール、聞こえている。 アルチェーレ、候補地は決まったか? どうぞ」

アントネッリ「こちらアルチェーレ、候補はシニョネッラ海軍航空基地、もしシニョネッラの受け入れが難しいようならカターニアに着陸したい。どうぞ」

戦術管制「了解、シニョネッラだな…すぐ問い合わせるのでそのまま飛行を続けてくれ」

アントネッリ「了解」

…数分後…

戦術管制「アルチェーレ、シニョネッラはそちらの受け入れが可能だ…また、訓練飛行中の空軍機をチェイス(随伴)機としてそちらに向かわせた。機種はMB-339で、合流予定時刻は十分後。そちらから見て四時方向から接近の予定」

(※アエルマッキ・MBー339…イタリア空軍の高等ジェット練習・軽攻撃機。イギリスの「BAeホーク」などと同じように小型かつ軽快で、イタリア空軍アクロバット・チーム「フレッチェ・トリコローリ」の機体としても用いられている)

アントネッリ「了解」

…十分後…

空軍機「こちら「ジェメリ(双子座)01」…アルチェーレ1、聞こえるか?」

アントネッリ「アルチェーレ1よりジェメリ01へ、感度明瞭…来てくれて感謝するよ」

空軍機「なに、そちらがお困りだって聞いたものでね……このままシニョネッラまで送っていく予定だが、何かご注文は?」

アントネッリ「ご丁寧にどうも…それじゃあ機体右側および下面を見てもらって、オイル漏れや損傷がないか確認して欲しい。どうぞ」

空軍機「了解。お安いご用だ……あー、目視ではオイル漏れおよび損傷は見られない。どうぞ」

アントネッリ「了解、それじゃあこれから減速して着陸態勢を取ってみるので、脚およびフラップが正常に作動するか確認して欲しい…どうぞ」

空軍機「了解。やってくれ」

アントネッリ「よーし…それじゃあ着陸態勢だ、準備はいいか?」

副操縦士「もちろんです」

アントネッリ「よろしい……フラップ!」

副操縦士「ダウン!」

アントネッリ「ランディングギア(降着脚)!」

副操縦士「スリー・グリーン(異常なし)!」

アントネッリ「なるほど、計器は「異常なし」って言っているようだな……ジェメリ、どうだ?」

空軍機「こちらから見る限り異常はない、大丈夫だ」

アントネッリ「作動液漏れも?」

空軍機「見えないな」

アントネッリ「分かった、ありがとう」

空軍機「どういたしまして…そちらが降りるまでお見送りしていくよ」

アントネッリ「それはどうも」

戦術管制「アルチェーレ、こちらコントロール…そちらは間もなくこちらのコントロールを離れ、シニョネッラのタワー(管制塔)が最終誘導を行う」

アントネッリ「了解。コントロール、ここまでの支援に感謝する」

戦術管制「こちらコントロール、礼はちゃんと降りてからにしてくれ」

アントネッリ「了解だ…シニョネッラ・タワー、こちらアルチェーレ1。 間もなくアプローチに入る」

基地管制塔「了解、こちらタワー。アルチェーレ、そちらを確認。高度5000からランウェイ27にアプローチせよ。風は230度から0.3メートル」

アントネッリ「アルチェーレ了解。ランウェイ27にアプローチする……」

副操縦士「機長、また問題発生です。ILS(計器着陸システム)受信機が消えました、反応ありません!」

アントネッリ「…シニョネッラ・タワー、本機のILS受信機が故障、計器進入できなくなった。VFR(目視飛行)で着陸したい」

管制塔「了解、VFRでのランディングを許可」

副操縦士「くそ、このじゃじゃ馬め……えぇい、直りやがらないか」スイッチを切ったり入れたりしている副操縦士…

機上整備士「軽く引っぱたいたら直るかもしれませんよ?」

アントネッリ「…やれやれ、前に私は「飛行機は女性だ」って言ったはずだぞ。せっかく金の翼(ウィングマーク…パイロット徽章)を付けていても、それじゃあモテないな」

副操縦士「そんなこと言ったって…ILSがダウンしたとなると、グライドスロープに乗せるのも手動って事になりますよ? それでなくてもエンジンが「双発半」ってところなのに……」

アントネッリ「なに、こんなのは自転車と同じさ。一度飛ばしたら、身体が覚えているよ……タワー、こちらアルチェーレ。着陸進入灯を確認した」

管制塔「こちらタワー、了解。 そちらの降下角は3度。進入角適正、グライドスロープに乗っている…そのままアプローチせよ」

アントネッリ「了解……少し出力を高めにして着陸するぞ」

副操縦士「了解」

…次第に迫ってくる灰色の滑走路と、次第に緊張の度合いを高めている操縦室や基地の雰囲気とは反対に、穏やかでのんびりした様子の日差しと地中海……すでに滑走路の両脇と誘導路上には消防車や救急車が待機している…

副操縦士「……高度300フィート」

アントネッリ「よし、出力を絞る……ようそろー…」

副操縦士「高度100…50…30……」

アントネッリ「よーし…まだだ、まだ……着陸!」最後に軽くふわっと迎え角を取ると、主脚が軽く「ドンッ…」と滑走路に触れた…

副操縦士「ブレーキ!」

…停止したエンジンがある中でプロペラピッチを変更してリバーサーを使うと、出力の差で機首が振れ地上偏向してしまう可能性があるので、リバーサーはかけない……滑走路の先を見据えつつブレーキペダルをいっぱいに踏むアントネッリ……すると、まるで停止する気がないようにぐんぐん滑走を続けていたオライオンが次第に速度を落とし、滑走路の半分を過ぎた辺りでしずしずと止まった…

副操縦士「と、止まった……」

アントネッリ「…ふぅ♪」

機上整備士「はぁ……寿命が縮まるかと思いました」

アントネッリ「そうか? …で、午後のフライトはどうする?」

副操縦士「勘弁して下さいよ…!」

………

アヴィエーレ「……それで、結局原因は何だったんだい?」

提督「聞くところによると燃料に不純物が混じっていたとかなんとか…あの時はまだまだマルタ辺りにも深海棲艦が出ていたから、あちこちの航空基地は突貫工事で増設していたし、そのせいだったみたい……とにかくその件でジュリアは「非常時に冷静かつ的確に行動した」ということで功労賞をもらったのよね」

アヴィエーレ「へぇ…それにしてもずいぶん細かい部分まで知っているんだね、提督?」

提督「えぇ、何しろジュリアがベッドの中で「ちょっと寝物語にお話ししようか…」って話してくれたから」

ドリア「まぁ、ふふふっ♪」

ガリバルディ「提督らしいわね……♪」わざと大仰にウィンクを投げるガリバルディ…

提督「あら、でも仲のいい士官同士でそういう話は結構するものよ……失敗しそうになった話とか、ちょっとしたおふざけの話とか…」

エウジェニオ「失敗談ねぇ……提督は何かある?」

提督「私? それはもう失敗だらけよ…もっとも、背筋が凍るほどのものはあまりないから、そういう面ではツイているのかもしれないけれど」

ライモン「提督は失敗だらけなんかじゃありませんよ。運がいいことは本当ですけれど」

提督「そうね、ライモンを始めみんなに出会えたんだもの…確かに運がいいわ♪」

ライモン「///」

カヴール「提督のお話は面白いですね、他にも合ったら拝聴したいですね。 …どのみちこのお天気では鎮守府の中で缶詰でしょうし」

提督「そうねぇ……」

カヴール「例えばトゥーロンのエクレール提督とはどのような…?」

提督「さてはカヴールったら……最初からその話が聞きたかったんでしょう」

カヴール「はて、何のことでしょうか…私には分かりかねます♪」

提督「もう……まぁいいわ、それじゃああの「パリジェンヌを気取ったプロヴァンスの田舎娘さん」の話をするとしましょうか♪」

………

…しばらくして…

提督「ふぅ……クロワッサンと揚げタマネギの話だけでこんなに盛り上がるとは思わなかったわ」

カヴール「面白いお話を拝聴させていただきました…♪」

提督「それなら良かったわ…ところで、誰かそろそろ変わってくれないかしら? 私はトークショーの司会者じゃないのよ?」

デュイリオ「そうですね、でしたらわたくしが一つ昔話をするといたしましょう。 神様は人間を救いたいと……」

オタリア「……大型潜水艦オタリア以下四隻、鎮守府近海の哨戒から帰投いたしました!」

提督「あぁ、お帰りなさい。みんなお疲れ様…って、びしょびしょじゃない……!」

カッペリーニ「まぁまぁ、潜水艦なんていつもこんなものですよ…それにひどいときは潜航していましたから」

提督「それにしたって……ほら、ほっぺただってこんなに冷たい…」

カッペリーニ「あ…っ///」

提督「いまは簡単な報告だけでいいから、とにかく暖まっていらっしゃい…それとお昼にはスープを作ってあげるわね♪」

トリチェリ「ありがとうございます…ではお風呂に行ってきます」

提督「ええ。お湯は好きなだけ使えるのだから、ゆっくりしてくるといいわ」

ガリレイ「なんとも素晴らしいことね…それでは、ガリレオ入浴してきます♪」

提督「ええ、行ってらっしゃい……それじゃあその間に作っておくとしましょう」

エリトレア「はいっ、今日は茸入りのクリームスープにでもしましょう♪」

提督「いいわね…♪」

………

…午後・待機室…

ライモン「雨、止まないですね…」

提督「そうね…それどころか、気象通報によるとこれからが一番ひどくなるみたい。雷も鳴っているし……」南から吹き付ける風にあおられて窓ガラスに「ざぁっ…!」と打ち付ける激しい雨と、ゴロゴロと地底から響くような遠雷の音が聞こえている…

ルチア「クゥン、ヒュゥ……ン」

提督「あぁ、ルチアったら可哀想に…怖いわよねぇ。よしよし、大丈夫大丈夫……」ルチア用の古毛布を取ってきてフードのようにかぶせ、横に座り込んで頭を撫でてあげる提督……と、壁の電話が鳴った…

ライモン「はい、こちら待機室…アオスタさんですか、どうしました? …了解、提督に伝えますね」

提督「……何かあった?」

ライモン「はい。作戦室のアオスタさんによると、民間船の救難信号をいくつかキャッチしたそうです。 もっとも、いずれもわたしたちの管区ではなく、すでに対応する管区が受信確認しているそうですから……」

提督「…救援に駆り出されることはなさそうね」

ライモン「はい」

提督「どのみちこの天気で民間船の救助となると、駆逐艦では危険すぎるわ…最低でも軽巡クラスは必要になるわね」

(※イタリア王国海軍の軍艦、特に駆逐艦はサイズの割に兵装が過大で、また高速を求めたために安定が悪かった…実際マエストラーレ級「シロッコ」等は荒天下で転覆している)

ライモン「必要となればいつでもおっしゃって下さい。いつでも出られますから」

提督「ありがとう、でもその必要はないはずよ……とはいえ、これじゃあやることもないわね」

ライモン「そうですね…」

提督「仕方ないから部屋の片付けでもするわ…」

ライモン「それはいい考えですね♪」

…執務室…

提督「……ところで、フォルゴーレたちはちゃんと戻ったの?」

ライモン「はい、フレッチアがうんと雷を落としていました」

提督「ならいいけれど…元気なのは結構だけれど、この嵐の中で庭に出てはしゃぎ回るのはちょっとね……」

ライモン「まぁ、彼女たちはみんな「嵐の申し子」みたいなものですから……フレッチア自身も口では「あの大馬鹿たちを連れ戻してくるわ」と言いながら、実際の所は楽しげでしたから…」

(※フレッチア級・フォルゴーレ級…ほぼ同型の駆逐艦グループで、艦名はいずれも「雷」「稲妻」「閃光」「電光」など、雷や放電現象に由来する)

提督「やれやれね。さてと、それじゃあ棚の整理でもするとしましょうか…」私用の本棚から次々とファイルや雑多な資料、書籍を取り出しては執務机やその前に据えてある(普段は秘書艦の娘たちが使う)応接テーブル、椅子の上などに並べていく……

デルフィーノ「失礼します……あ、私も手伝います♪」

提督「あら、ありがとう…でも、スクアーロたちと一緒じゃなくていいの?」

デルフィーノ「はい。だって私は秘書艦ですから……それにスクアーロお姉ちゃんってば、私が怖がるのを知っていて恐怖映画を見せようとするんですよ?」

提督「もう、スクアーロったら意地悪ね…それじゃあ一緒にお片付けを手伝ってもらえる?」

デルフィーノ「はいっ♪」

提督「グラツィエ…それじゃあ本はこっち、資料はこっち……これはいらないパンフレットだからゴミ箱に…と」

ライモン「提督、これはどうしましょうか?」

提督「それは要るわ…とりあえず判断に困るようなものはそっちの「保留」の方に置いておいて?」

ライモン「分かりました」

デルフィーノ「提督、しおりが出てきました」

提督「あぁ、そんなところにあったのね……この間から見つからなくって探していたの」

デルフィーノ「見つかって良かったですね…って、写真もありましたよ♪」

…一冊の本の間からひらひらと舞い落ちた写真を拾い上げたデルフィーノ…写真はどこかの公園の噴水の前で、提督を中心にして十人ほどが笑みを浮かべている…

提督「どれ? あぁ、それならここに赴任する前ローマで撮った写真ね。そのとき集まることが出来た仲のいい知り合いと出かけたときに撮ったの」

ライモン「…この写真に写っている全員が、ですか?」

提督「えぇ、まぁ…ローマにいたときはちょっと「親しい間柄」になっている知り合いが多かったものだから///」

ライモン「………」

デルフィーノ「…でも意外ですねぇ」

提督「何が?」

デルフィーノ「だって提督のことですから、きっと目も覚めるような美人さんばかりとお付き合いしているものとばかり思ったんですよぅ」

提督「あぁ、そういうこと……」

デルフィーノ「はい」

提督「…確かに私の知り合いには顔だけ見ると「美人」に含まれない人も多いかもしれないわね…でもね、彼女たちにはそれぞれ素敵ないいところがあって、私はそれが好きでお付き合いしていたの♪」

………

…一年前・ローマ…

カンピオーニ大佐(提督)「うーん…いい気持ち♪」

栗色の髪をした士官「そうねぇ……ここから眺めている分にはローマもいいものね」

ぽっちゃりした士官「確かに。ローマは観光ならいいけれど、実際に過ごすとなるとねぇ…」

細身の美人士官「言えてるわ…物価も高ければ渋滞もひどいし、おまけにほこりっぽいんだもの……嫌になっちゃうわよね、フランカ?」

提督「ええ、まったく♪」


…ローマを望む郊外の丘で寝転んだり座ったりしている提督たち…そして提督の左側にはくっきりした目鼻立ちの美人が座って提督の髪を指先でもてあそび、右隣にはそれと対照的な、黒と白の地味な服を着たやせこけた女性が座っている……そのやせっぽちの士官は野暮ったくカットした黒髪と大きなレンズの丸眼鏡のせいで、まるでティム・バートンが描くキャラクターか何かのように見える…


美人士官「それにしても昨日はあんなに冷え込んだのにね…洗濯屋さんから冬物のコートを慌てて取ってきたのが馬鹿みたいだわ」

やせっぽちの士官「仕方ないわ。秋の天気は我が国の首相と同じくらい変わりやすいのよ…」

一同「「くすくすっ…♪」」

提督「…ふふっ、相変わらず冗談が上手なんだから♪」

やせっぽちの士官「ありがと、フランチェスカ……」

…昼時…

提督「はい、どうぞ。あり合わせの材料を挟んだだけだけれど、結構上手く出来たと思うから、良かったら食べてみて?」

…細いバゲット風のパンに、薄切り牛肉やアーティチョークのピクルス、あるいはマリナーラソースやガーリック風味のオリーヴ、白身魚のフライなどを挟んで、それを柳のバスケットに入れて持ってきた提督…

勝ち気そうな士官「へぇ、それじゃあお一つ…」

美人士官「では私も遠慮せずにいただくわ。 …ん、ボーノ(おいしい)…さすがはフランカね♪」それぞれサンドウィッチを手に取り、色づいた木々の葉や古代ローマの遺跡を眺めながら頬張った…

提督「ふふ、ありがと♪」

栗色髪の士官「本当に料理が上手よねぇ……っと、いけない!」うっかりマリナーラをスカートにこぼしてしまい、慌ててハンカチを取り出しこすろうとした…

ぽっちゃりした士官「あぁ、だめ! こすったら染みついちゃうわよ…ちょっと貸して?」自分のハンカチを二つに折ると、片側を手元の「ペレグリーノ」(無糖の瓶入り炭酸水)で湿らせ、こぼれた部分にあてがって挟むようにすると、上から湿った方で「とんとんとん…っ」と叩いた…

ぽっちゃり士官「こうすれば……ほぉら♪」しばらく叩いてハンカチをどけると、クリーム色のスカートの染みがほとんど見えなくなっていた…

栗色髪の士官「まぁ、ありがとう♪」

ぽっちゃり士官「ノン・ファ・ニエンテ(いいのよ)…こういうのだけは得意なんだから、任せてよ♪」

………



提督「…とまあ、みんなそれぞれいいところがあって……この頬杖をついている女性(ひと)は話が上手だからお店でおまけしてもらえたり」

デルフィーノ「それじゃあこのお姉さんは?」

提督「あぁ、アデーレね…彼女は記憶力が抜群で、どんなにくだらない事でも聞けばだいたい覚えているの……ローマでは借りていた部屋の鍵を無くしたときに見つけてくれたことがあるわ」

ライモン「みなさん色んな特技をお持ちなんですね……」

提督「もちろん得意なことのある女性もいたけれど、それよりもまず「一緒にいて気持ちのいい女性」かどうかね…だから顔は美人でも性格の悪い人とはあんまり付き合わなかったわ。反対に心根のいい女性とは、容姿とか関係なしによくお付き合いしたものよ♪」そう言うとちょっといやらしい笑みを浮かべ、わざとらしくウィンクしてみせた…

デルフィーノ「……提督ってばえっちです///」

提督「そうね…毎日お盛んな貴女ほどじゃないけれど♪」

デルフィーノ「///」

提督「それで、その後は私の部屋に行こうって話になって……」

…夕刻・提督が借りているアパートの部屋…

提督「…ちょっとここで待っててね、部屋を片付けてくるから」キーリングを取り出して鍵を開けると、笑みを浮かべて手で押しとどめるようなジェスチャーをした…

美人士官「ふふ、そう焦らなくたっていいわよ……ちゃんと待っていてあげるわ♪」

やせっぽちの士官「そうそう。フランカが「一人遊び」で使った玩具をしまう間くらい待っていてあげるもの……」

提督「もう。私は基本的に道具を使わない主義よ…忘れた?」

やせっぽちの士官「そう言えばそうだったわね…」

ぽっちゃり士官「ほら、いいから早く片付けてきなさいよ♪」

提督「あぁ、そうだったわね……」いそいそと部屋に入ると、クッションの形を整えると洗濯物を浴室のカゴに放り込んで目隠しのタオルをかぶせ、それから部屋の上空に向けて軽く香水を吹いた……

…数分後…

提督「ふぅ、お待たせ…」

美人士官「待つって言うほど待ってないわ……もう入ってもいいのね?」

提督「ええ、どうぞ♪」

栗色髪の士官「それじゃあお邪魔します…なんだ、きちんとしているじゃない♪」

提督「表向きだけはね……さ、どうぞかけて? それと椅子が足りないから、ベッドに腰かけてくれて構わないわ」

美人士官「それじゃあ私はベッドでいいわ…どうぞ皆は椅子を使って?」

やせっぽちの士官「それはご親切に……でも私は身体が骨張っているから、椅子だと腰が痛くなるの。だからベッドにするわ」

ぽっちゃり士官「反対に私はご覧の通りでしょ? 椅子なんかに座った日には椅子が壊れるか、肘掛けの間に挟まって抜けられなくなっちゃうのがオチね……と言うわけでベッドに座らせてもらうわよ、フランカ♪」ぽっちゃりとした丸っこい顔にえくぼを浮かべ、ベッドに腰かけた…

提督「ねえ、何も皆してベッドに座ることはないじゃない……これから夕食にするけれど、飲み物は何がいい? あるのは白、赤、カンパリ、アプリコットリキュールがほんの一口、まだ開けてないグラッパが一瓶…あとはミネラルウォーターに炭酸水、紅茶、コーヒー……冷蔵庫にオレンジとレモンがあるから、絞ればオレンジジュースとレモネードもできるわ」

やせっぽちの士官「それじゃあ赤ワイン…」

勝ち気そうな士官「私も赤で」

美人士官「私はカンパリソーダを♪」

ぽっちゃり士官「白があるなら白をもらうわね」

栗色髪の士官「じゃあカンパリオレンジにしてくれる?」

提督「了解、それじゃあ今から何か作るわね…と言っても残り物か、すぐ作れるものばかりだけれど♪」

…提督は部屋を片付けるついでに、お出かけの時に着ていた栗色のタートルネックを着心地のいいロングワンピースに着替えていたが、その上にエプロンをつけた……それぞれにグラスを渡すと、少し手狭な台所に戻って忙しく立ち回り始める…

ぽっちゃり士官「良かったら何か手伝おうか?」

提督「そうねぇ、それじゃあそこにフォークとナイフ、スプーンがあるから並べておいてもらって……とりあえずはそれくらいかしら」

ぽっちゃり士官「ん、分かった♪」肉付きのいいおばさん体型ではあるが、動きはバレリーナのように軽やかでテキパキしている…

提督「…それからおつまみ代わりにアンティパスト(前菜)をどうぞ♪」冷蔵庫に残っていたルッコラやトマトを適当に切ったりちぎったりして器に盛り、残っていた瓶詰めのオリーヴと固ゆでの卵をスライスして散らした…

美人士官「ねぇフランカ、夕食はまだ待てるから一緒に座りましょう……ね?」

やせっぽちの士官「…と、狼が舌なめずりをしながらいいました」

ぽっちゃり士官「ぷっ…♪」

勝ち気な士官「あっははは…傑作♪」

美人士官「もう……そんなつもりじゃないわよ?」

提督「ふふっ、もうちょっとだけ待っててね…はい、お待たせ♪」自分のグラスを持ってくると椅子に腰かけてフォークを手に取った…

栗色髪の士官「それじゃあいただきますか……」

提督「ええ、召し上がれ♪」

………

美人士官「相変わらず料理が上手ね、フランカ」

提督「グラツィエ♪」

ぽっちゃり士官「本当にね……このパスタも本当に美味しいわ。こんなに美味しい料理をごちそうになったら食べ過ぎちゃって、ますます太っちゃうわよ♪」そう言うと肌つやのいい頬にえくぼを浮かべ、派手なウィンクを投げてみせた…

提督「ふふーん♪ …実はね、そのレシピは私が母親に教わった「とっておき」の一つなの」

勝ち気そうな士官「へぇ……つまりフランカは今日の夕食が「とっておき」だと思ってるわけか」

提督「さぁ、どうかしら?」ワイングラスを軽く揺さぶりつつ、意味深な笑みを浮かべる提督…

美人士官「そうね、少なくとも私は期待……しているわよ?」

提督「ふふっ、もう…貴女にそんなことを言われたら、みんな胸が高鳴っちゃうわよ?」

美人士官「さぁ……それは私との関係にもよるんじゃないかしら」テーブル越しに腕を伸ばし、人差し指と中指で提督の首筋を軽く撫でた…

提督「…んっ///」

やせっぽちの士官「……食事中はお行儀良くって聞いたことがない?」

美人士官「あら、妬いちゃったかしら…フランカ、もう一杯ワインをいただくわね♪」

栗色髪の士官「明日は勤務じゃないの?」

美人士官「ふふふ、明日は休み……それに車も駐車場に停めてあるし」

栗色髪の士官「さすがに作戦課ともなると手際がいいわね…」

美人士官「そういうこと……ところで貴女は?」

栗色髪の士官「私も明日はお休みよ。何しろ土曜日だもの♪」

勝ち気そうな士官「あーあ、佐官クラスにもなるとお休みが多くて結構ですね…私みたいな中尉クラスは「貧乏暇なし」ってやつなのに」

やせっぽちの士官「……それは貴女が魚市場の人間みたいに喧嘩っ早いせいね。仕方ないわ」

栗色髪の士官「ふふっ…♪」

勝ち気そうな士官「ふんっ、言ってくれるよ…まるで新月の晩みたいに暗いくせしてさ♪」口ではそう言いつつも、大きく腕を広げておどけた態度を取っている…

提督「さぁさぁ、言い合いはそこまで……ドルチェ(デザート)を持ってくるわね♪」

勝ち気そうな士官「いいね。それじゃあ私はそれをいただいて帰るとするかな…もし停めておいたヴェスパがコソ泥に盗まれていなきゃね」

やせっぽちの士官「あら、ヴェスパ(スズメバチ)がヴェスパに乗るとは驚きね……フランチェスカ、私もドルチェをいただいたらお暇するわ」

提督「分かったわ。二人とも気をつけて帰ってね?」

やせっぽちの士官「ええ、でも彼女がいるから大丈夫。向こう見ずで見境なしにかんしゃく玉を破裂させるのが悪い癖だけれど…」

勝ち気そうな士官「人を鉄砲玉みたいに言うな!」

やせっぽちの士官「ごめんなさい…確かに貴女は鉄砲玉じゃないわ。 …鉄砲玉なら雷管を叩かないかぎり飛び出さないもの」

勝ち気そうな士官「このっ、口先だけは上手な……フランカ、とっととドルチェを持ってきてよ! この女と来たら食べ物か飲み物が口の中に入っていない限り、この世の終わりまでずーっと皮肉を言い続けるつもりなんだから!」

提督「ふふふっ…了解♪」

…食後…

美人士官「さ、いらっしゃい…♪」

提督「ええ…って、私のベッドよ?」ワイングラスを片手にしたままベッドに腰かけ、相手の肩にもたれかかっている…

美人士官「ふふふ、そうだったわ…」

提督「……ねぇ、アウローラ///」

美人士官「どうしたの、フランカ?」

提督「ん…♪」

美人士官「ん……ちゅっ♪」

提督「ん、んっ、んっ……んんぅ、ちゅっ、ちゅぅぅ…っ♪」

美人士官「んっ、んむっ、ちゅっ……♪」

………

提督「あっ、ふあぁ……あふっ♪」

美人士官「ん、んっ…んんっ♪」

…腕を伸ばして飲み干したワイングラスをベッド脇の小机に置くと、そのまま指と脚を絡め合い、長いキスをする……白くほっそりした美人士官と、ほのかにクリーム色を帯びた豊満な提督は好対照で、揺らぐ炎のようにベッドの上で脚が交差する…

美人士官「フランカ……フランカ…っ♪」

提督「アウローラ…はむっ、ちゅぅ……っ♪」

美人士官「ふぅっ、んんぅ…っ、はう…っ……♪」

提督「……指、入れるわね♪」ちゅぷ…♪

美人士官「ふぁぁぁっ、あっ、あっ、ああぁ…っ!」

提督「んふふっ、アウローラったらそんな大声を出して……他の部屋に聞こえちゃうわ」

美人士官「だって、フランカの指がっ……んあぁぁっ♪」

提督「ふふふ、アウローラったら相変わらずここが感じやすいのね…それじゃあもう一本……と♪」くちゅり…っ♪

美人士官「あぁぁぁんっ♪ フランカ、フランカぁぁ…っ♪」提督の綺麗な人差し指につづいて、中指が花芯に滑り込む……そのまま第二関節までするりと入れて優しく指を動かすと、がくがくと腰が跳ねた…

提督「私はここよ……んっ♪」身体は重なり合ったまま顔だけ少し離すと、提督のずっしりとした髪の房が胸元にこぼれる…それからまた顔を近寄せていき、舐め取るように唇を交わす…

美人士官「はぁ、はぁ、はぁ…っ♪」厚手のストッキングと黒の下着をずりおろしてはいるが、粘っこい蜜がまとわりついて染みを作り、提督が指を動かすたびに湿っぽい音が響く…

提督「……それじゃあ、行くわね」

…金色をした提督の瞳が熱っぽい輝きを帯び、頬や胸元に赤みが差す……脚を曲げ伸ばししたり身体をくねらせたりしてランジェリーを脱ぎ、それをベッドの足元に放り出すと、ゆっくりと身体を重ねていった…

美人士官「はぁぁぁ…んっ///」

提督「んんぅ…♪」

栗色髪「……あんなの見せられたら、こっちまで変な気分になるわよね///」

ぽっちゃり「…じゃあ、私たちもする?」

栗色髪「え、ええ……///」

ぽっちゃり「分かった…それじゃあ最初はキスから♪」

栗色髪「んっ…はむっ、んちゅっ、ちゅぅ…っ、んふぅ……っ♪」食卓の椅子に腰かけた栗色髪の士官と向かい合わせになるようにして、ぽっちゃりした方がまたがった…

ぽっちゃり「大丈夫? 潰れてない?」

栗色髪「だ、大丈夫だから……来て…ぇ///」

ぽっちゃり「了解…椅子が壊れないといいけど♪」ぐちゅぐちゅ、にちゅ…っ♪

栗色髪「んふぅ、んんぅ、んむぅぅ…っ!」

…数十分後…

栗色髪「ぷはぁっ…! はぁ、はぁ…んはぁぁ……///」

美人士官「はふっ、はひぃ……っ♪」

ぽっちゃり「はぁぁ、こんなの久しぶりに味わったわ…でも、まだ身体がうずくのよね♪」

提督「あら、奇遇ね……私ももっと甘い声を聞きたい気分なの♪」

ぽっちゃり「そう…それじゃあ、と……♪」椅子を降りると提督と美人士官が寝転がっているベッドへとにじり寄り、提督を押し包むようにのしかかった……たぽたぽと揺れる胸とお腹の肉が提督の肌にぺたりと吸い付き、甘い蜂蜜めいた匂いと汗ばんでしっとりした肌触り、それに身体の熱が伝わってくる…

提督「んんっ、暖かくて……それに柔らかい♪」

ぽっちゃり「お布団にちょうどいい?」

提督「ええ…こんな布団があったら一日中ベッドから出ないわ♪」

ぽっちゃり「一日中はさておき……一晩中なら出来るわよ♪」赤ちゃんのような丸っこい可愛らしい手で、提督の秘部をなぞった…

提督「あん…っ♪」提督もお返しとばかりに、ぽよぽよと柔らかい乳房を「ぎゅむっ♪」と揉みしだいた…

ぽっちゃり「あうんっ……このぉっ♪」

提督「ふふっ…んぅっ、あんっ…ふあぁあぁんっ♪」

………

…翌朝…

ぽっちゃり「おはよう、フランカ……おはようってば♪」

提督「おは…ふあぁぁ……///」あくびをもらし、口元に手を当てた…

ぽっちゃり「ふふ、寝起きの顔も可愛いわよ……目は覚めた?」

提督「ふわ…ええ、まぁどうにか……」

…寝ぼけまなこのまま洗面台に向かうと水道をひねる……水道の調子はいつも通りイマイチで、蛇口をひねるとゴロゴロと音を立て、水が間欠泉のように勢いよく出たり弱まったりする……提督は眉をひそめ、古代ローマの水道に比べてこれでは「さして進歩がない」どころか退化していると思いながら顔をゆすいで歯を磨き、うがいをした…

ぽっちゃり「はい、コーヒー…それと、勝手だけれどシャワーを使わせてもらったわ」

提督「ええ、どうぞ遠慮なく……タオルの場所は分かった?」

ぽっちゃり「もちろん♪ 勝手知ったる他人の家…ってね♪」

提督「なら良かったわ……そうそう、帰る時になったら教えて? せっかくだし送るわ」ベッドに腰かけるとコーヒーのマグを受け取る…

ぽっちゃり「ありがとう…でもまずはフランカがスッキリしてからね♪」

提督「そうね。…あ、朝食はどうする? パンとカフェオレくらいで良ければ用意するけれど」

ぽっちゃり「お気遣いどうもね…でも大丈夫、帰ってから食べたっていいし、トラットリア(軽食堂)に寄ったっていいんだから」

提督「分かったわ」

美人士官「うぅ…ん♪ こんな朝早くからどうしたのよ……?」

ぽっちゃり「あら、眠り姫のお目覚めね……ついでにこっちも起こしてあげるとしますか♪」

栗色髪「ん、んふぅ……あぁ、おはよ…///」

ぽっちゃり「おはよう♪ ほら、フランカが送ってくれるっていうから、着替えちゃいましょう」

栗色髪「あぁ、はいはい…あれ、ブラはどこに脱いだっけ」

美人士官「これじゃない?」

栗色髪「ああ、それ……ねぇ、アウローラ。これ、貴女のストッキングじゃない?」

美人士官「あら、ありがとう…フランカ、良かったら貸してあげましょうか?」

提督「あら、それってどういう意味かしら?」

美人士官「ふふふっ、分かっているくせに…♪」

…しばらくして…

大家のおばさん「あら海軍さん、おはよう。今日はお休み?」

提督「おはようございます、おばさん…ええ、お休みです♪」

大家「それは良かったわね……そうそう、後でおかずをおすそ分けしてあげるわね」

提督「ふふ、嬉しいです。おばさんのお料理は美味しいですから♪」

大家「ありがとね、そう言ってくれるとこっちも張り合いがあっていいわ……ところで、昨夜は楽しかった?」ひそひそ話をするような様子で口元に手の甲を寄せると、邪気のないウィンクを投げた…

提督「もう、おばさんってば……♪」

大家「冗談よ。それにしても今まで色んな士官さんに部屋を貸してきたけれど、貴女は一番いい店子だわよ」

提督「グラツィエ……それではちょっと彼女たちを送ってきますので」中庭の一部を使った駐車スペースに停めさせてもらっている「ランチア・フラミニア」に乗り込もうとした…

大家「ええ「彼女たち」をね♪」

提督「もう、そっちの「彼女」じゃありませんって…♪」

………



提督「……今思えば我ながら「奔放な生活」だったとは思うけれど、何だかんだで結構楽しかったわね」

デルフィーノ「それを聞くと、提督がここに飛ばされたのも仕方ない気がしますねぇ」

ライモン「でも、そのおかげでわたしは提督と出会えたわけですけれど…///」

提督「そうね…おかげで私もライモンたちに出会えたんだもの。幸運に感謝しなくちゃ♪」

ライモン「そうですね///」

…夕食後・バーカウンター…

ニュース番組「……低気圧は勢力を弱めつつありますが、依然として海上は風力4~6程度の風が吹き荒れ、波浪注意報も発令されています。また、リビア沖で数隻の貨物船から救難信号が発信され、現在海軍と沿岸警備隊が救助にあたっているとのことです…」

ガリバルディ「…この時化の中で難航だなんて、聞くだけでもいただけないわ」

提督「そうね…気象通報によると、この低気圧もあと数時間で通り過ぎるっていう話だけれど……」

ザラ「嵐が無事に過ぎ去って、こっちにまで救援要請が回ってこないで済めばいいわね」

提督「そうねぇ…ポーラ、もう一杯だけ注いでもらえる?」

ポーラ「はぁ~い♪」

フィウメ「それにしても、時化というとポーラ姉さまの件を思い出しますね」

ザラ「ああ、アレね……おかげでしばらくは鎮守府のワインセラーが一杯だったもの、貴女には感謝してるわ」

ポーラ「えへへぇ、それほどでも…♪」

提督「…というと?」

ゴリツィア「ああ、そう言えばあの時はまだ提督の着任前でしたね……」

………

…提督の着任以前・とある悪天候の日…

ポーラ「こんな天気に出撃もないですよねぇ……」白く逆巻く波頭と灰色がかった海面を艦橋から見下ろし、身体の水平を保ちながらコーヒーをすすっている…

ポーラ「…戦隊旗艦より各艦へ、大丈夫ですかぁ? 減速が必要なら言って下さいねぇ?」

ジュッサーノ「こちらジュッサーノ、滅茶苦茶がぶっている以外は大丈夫です。ただ、この状況ですから一番砲塔は使用不能です」

バルビアーノ「バルビアーノ、同じく……」

カドルナ「駆逐隊を連れてこなくて良かったわね…この時化ぶりじゃあひっくり返っちゃうでしょうし」

ディアス「同感…軽巡の私たちでさえこの有様なんですから」

ポーラ「それでも戦果があれば良かったのに、空振りですものねぇ…とにかく帰ったら暖かいお風呂ですねぇ♪」ギリシャ海軍からの「敵艦複数見ユ」の通報を受け、低気圧の隙間を縫ってどうにか出撃したものの、誤報と分かりげんなりしているポーラたち…

ジュッサーノ「賛成、ところで……」

ポーラ「ん? ジュッサーノ、ちょ~っと待って下さいねぇ……」艦の無線に鎮守府からの通信が入ってきた…

ポーラ「えぇ、と……鎮守府より「…そちらの位置から針路275度、距離およそ30浬の地点で貨物船「ワン・スイ・グランド」号より救難信号。可能ならば救援されたし…」ですかぁ…」

…その当時はまだ予備扱いで、司令官となる提督が着任していない鎮守府の「艦娘担当官」としては、任意とは言え管区司令部の要請はなかなか断りにくい…

カドルナ「……距離的には行けなくはないですが、これからさらに時化るそうですよ?」

ポーラ「ん~…とはいえ見捨てるわけにも行きませんねぇ……とりあえず行ってみましょ~う」

ジュッサーノ「了解」

…一時間半ほどして…

ジュッサーノ「…これは大変ね」

ポーラ「そうですねぇ……」

…ポーラたちが双眼鏡を向ける先では、船体をグレイに塗った一万トンクラスの貨物船が難航していて、貨物甲板の40フィートコンテナ数個が荷崩れを起こしかけて傾いている……そのコンテナは濃いブルーの地に「WAN SUI」と白フチ付きのロゴが入っていて、他の文字が青文字なのに対して「A」と「U」だけが赤文字になっている…

ポーラ「こちらイタリア共和国海軍、重巡「ポーラ」より貨物船「ワン・スイ・グランド」へ、聞こえますか? 状況を教えて下さい、どうぞ?」

貨物船「こちら「ワン・スイ・グランド」聞こえます…本船は二時間ほど前に三角波を受けてコンテナが荷崩れを起こし、同時に機関の一基が損傷、浪に対して船首を保つのがやっとの状態です…どうぞ」

ポーラ「了解、今から救援を行います…」

ジュッサーノ「ポーラ、気象通報ではこれからますます時化るって……!」

ポーラ「分かってます…ここは私が曳航を試みてみますからぁ、ジュッサーノたちは安全のために先に戻って下さいねぇ」

ディアス「冗談でしょう? いくらポーラが重巡だからって、一隻だけで貨物船を港まで曳航するなんて無理です」

ポーラ「ポーラはぁ~「港まで」曳航するなんて言ってませんよぉ…このまま嵐が収まるまで、曳航状態で一緒にいてあげるつもりですから♪」

カドルナ「そんなのだめです、敵潜のいい的にされます!」

ポーラ「こんな時化の最中に魚雷を撃てる潜水艦なんていませんよぉ……それに「誰かが助けに来てくれる」ってとっても嬉しいことだって、ポーラはよ~く知っていますから…ね?」

ジュッサーノ「…分かりました」

…十数分後…

ポーラ「ポーラより「ワン・スイ・グランド」へ、これより曳索を投げます…どうぞ」

貨物船「了解、受け入れ準備完了…投げて下さい!」

ポーラ「それでは、トーレ、ドゥーエ、ウーノ……それっ!」


…ポーラは浪に振り回される貨物船と衝突しないよう絶妙な位置に艦を寄せ、後甲板の旗竿の辺りから小アンカーの重りをつけたロープを投げ縄のように振り回してから放った……ロープには丈夫な鋼鉄製ワイヤーが繋がれていて、がちゃんと派手な音を立てて船首甲板に落ちたアンカー付きロープを目立つ黄色の防水外套を着込んだ貨物船の乗員たちが、つるつると滑る甲板上で悪戦苦闘しながらもどうにか受け取ってたぐり寄せ、ワイヤーを結びつける…白い波飛沫で時々船員の姿が隠れる中で数分ばかり待っていると、無事に曳索を結びつけたらしく船員が手を振った…


貨物船「こちら「ワン・スイ・グランド」…無事に曳索を結びつけました、どうぞ!」

ポーラ「こちらポーラ、了解…それではこのまま「ヒーブ・ツー」しましょ~う」

(※ヒーブ・ツー(heave to)…日本語では「踟躊(ちちゅう)」という。帆船時代からある荒天下での操船法で、最低舵効速力を維持したまま波に二十度ほどの角度を保つやり方)

貨物船「了解、感謝します!」

ポーラ「沿岸警備隊の救難ヘリももうじきやって来ますから、それまで頑張って下さいねぇ?」

貨物船「こちら「ワン・スイ・グランド」了解」時折船体に叩きつける波音が鉄鍋を叩くように「がぁぁ…ん!」と響き、喫水線下の赤く塗られたバルバス・バウが水面に露呈してはまた海面下に突っ込み、そのたびに派手な波飛沫が揚がる…

ポーラ「うーん、あとはこのまま時化が収まってくれるのを待つばかりですねぇ…」

………



ザラ「……それから救難ヘリが来て乗組員を助けた後も、ポーラは数時間貨物船を曳航したままでその海域に留まったのよ」

フィウメ「それから曳船がやって来て曳航を代わったんですが、後でその事を聞いた海運会社の社長さんが「無事に船とクルーを救ってくれたお礼に、何でも好きなものを寄付したい」って言って…」

ゴリツィア「それでポーラは「それじゃ~あ、鎮守府の食卓を豊かにするためにワインを寄付してくれませんか~?」って…」

ポーラ「そうなんですよぉ……でもポーラはぁ、せいぜい数ケースだろうと思っていたんですけれどぉ、届いてみたらなかなかのワインがここのセラー一杯になるくらいあって…えへへぇ♪」

ザラ「なんでも向こうのエライ人いわく「船員と船を救ってもらったお礼がワインなら安いものだ」だって……額が額だけに、海軍最高司令部にはああだこうだ言われたけれど「艦娘」個人への寄付は認められているからって押し通したのよ」

提督「なるほど……でも確か前に聞いたときは「とある社長さんが乗っているクルーズ船を救助した」って言っていたような…」

フィウメ「くすくすっ。まぁ、このエピソードは話すたびに設定が変わるんですよ…特にお酒を飲んでいる時は♪」

提督「それじゃあきっとすごい尾ひれが付いているに違いないわね……まぁ、よくあることだけれど♪」

ザラ「ふふふっ♪」

ポーラ「えへへぇ…♪」

提督「面白い話を聞かせてもらったわね……それじゃあ、お休み」

ザラ「お休みなさい」

…翌日…

提督「さてと…それじゃあ、あの嵐でここの庭先がどうなったか確認しないと。それに海面の流木なんかは回収しないと出撃に差し障るし……」

アッチアイーオ「ええ…とにかくあの様子じゃあ無茶苦茶になっているに違いないわ」

提督「そうね、まずは様子を確かめて…それから片付けが必要なら皆にも手伝ってもらいましょう」

…軍用ブーツに濃緑色の作業つなぎを着て、胸ポケットにセーム革の手袋を押し込んだ「作業スタイル」の提督……アッチアイーオも青みがかった黒色のウェットスーツ風の「艤装」をまとい、足元を丈夫な革長靴で固めている…

デルフィーノ「私も手伝いますよ、提督っ」イルカらしい濃灰色と淡灰色のツートンカラーでまとめられたボディスーツを着て、しなやかで長い濃灰色の髪をポニーテールに結い上げている…

提督「ええ。頼りにしているわよ、二人とも♪」

デルフィーノ「はいっ♪」

アッチアイーオ「ええ、任せておきなさい」

…鎮守府・庭…

アッチアイーオ「……だいぶ荒れたみたいね」

提督「そうねぇ、これでもここは波が穏やかな場所なわけだし…そう考えると昨日の時化は相当だったのね」


…鎮守府が面している海は数キロほど離れた西側の岬と、鎮守府のレーダーが据えてある東側の小さな岬に挟まれた緩やかな三日月型の湾になっていて、内湾ほどとは言わないまでも波穏やかなはずだった……が、浜や西側の波止場周りにはかなりの漂着物が流れ着き、あるいは波打ち際に漂って寄せ波に洗われている…


デルフィーノ「とにかくこれじゃあ浜辺でのんびりも出来ないです」

提督「その通りね…アッチアイーオ、手が空いている娘がいたら呼んできてもらえる? それと来る時は「必ず丈夫な手袋と靴で来ること」って」

アッチアイーオ「了解」青みがかった艶のある黒髪をなびかせて駆けだしていった…

提督「さぁて、それじゃあ出来るものから片付けていきましょうか♪」

デルフィーノ「はい♪」

…数分後…

ドリア「あらまぁ、これはまたずいぶんと色々なものが打ち寄せられたものですね?」

デュイリオ「全くですねぇ…庭の花木もずいぶんと風に痛めつけられたようですし」

カラス「アー…」


…肩に革の当てが付いているベージュ色のセーターを着て、そこにペットのカラスを止まらせているデュイリオ……一応脚には紐が付けられているが、デュイリオのカラスは賢いため、飼い主であるデュイリオの頬に顔を寄せたり羽ばたいてみたりする程度で大人しくしている…


アラジ「さぁ、どんどん片付けちゃおうよ♪」中型潜アデュア級の「アラジ」は出撃55回とイタリア潜一の出撃数を誇ることからとても活発で、数分とてじっとしてはいられないほどの性格をしている……提督たちの傍に駆け寄ってくると、さっそく流れ着いた流木を動かそうとしたり漁網の切れ端を引き上げたりしている…

シーレ「そうね、とっとと片付けないと」


…吸着機雷を敵艦船の船底に取り付ける水中工作用スクーター「人間魚雷」こと「SLC(マイアーレ)」を使ったコマンド作戦で幾度も大戦果を挙げたアデュア級の殊勲艦「シーレ」…そのシーレが同じくSLC搭載潜となっていたアデュア級の「ゴンダル」やペルラ(真珠)級中型潜の「イリデ(虹・アヤメ)」「アンブラ(琥珀)」たちと一緒にやって来て、さっそく腰の左右と背中側に付けたSLC格納筒…のような形をした小物入れからペンチやら大ぶりのカッターナイフやらを取り出した…


ライモン「提督、遅くなりました…!」

提督「あら、ライモン……さっきまで当直だったでしょうに、休まなくていいの?」

ライモン「はい。なにしろレーダー画面の写っているディスプレイをずっと見ていた後ですから…外で身体を動かしたい気分なんです」

提督「ありがとう、一緒に頑張りましょうか……それじゃあこれからモーターランチを出して波止場周りの漂流物を回収する班と、砂浜と庭を片付ける班に分かれることにします。 …海岸の班は、足元に尖ったものが落ちていないか気をつけて作業するように!」

………

…しばらくして…

提督「ふぅぅ……これでどうにか出撃が出来るようになったわね」


…提督を始め数人は鎮守府のモーターランチとカッターに分乗して、流木や旗付きのブイ、ゴミと海藻が絡まった漁網、空の発泡スチロール容器やポリタンク、古い浮き輪と言ったものをしゃくいあげては波止場に積みあげた……そうして二時間近く経ち、もはや腕を伸ばすのも、たも網を繰り出すのもおっくうに感じるようになった頃、ようやく鎮守府のドックに続く海面が綺麗になった…


ガッビアーノ「きっと漂うものはいつかどこかに流れ着く、そういう運命(さだめ)なのだろうね……」小さい身体にしては妙に世捨て人のような雰囲気をかもし出しているガッビアーノ(カモメ)級コルヴェットの「ガッビアーノ」が、黄色い目を遠くに向けて言った…

チコーニャ「ふぃー、疲れましたねぇ…提督、良かったらチョコレートでもどうですか?」一方で姉妹艦のチコーニャ(コウノトリ)はよく柳のカゴにお菓子や何かを入れて、みんなに持ってきてあげている事が多い…

提督「気持ちは嬉しいわ。 でも、全部終わってからにしましょうね」

チコーニャ「分かりました」

提督「よろしい。それじゃあ分別の方も頑張りましょう♪」流木などの自然物とブイやポリ容器といった人工物は分別して、後で軍のトラックが回収しにくるまでゴミ置き場に置いておく…

チコーニャ「了解です」

………

…しばらくして・食堂…

提督「それにしても、あの流木は結構な量よね……一回で回収しきれるかしら?」

カヴール「ああ、そのことでしたらご心配には及びませんよ」

提督「?」

ディアナ「……ここに漂着したもののうち、プラスチック容器のような人工物は軍のトラックに回収してもらいますが、流木はよく乾かして冬場の暖炉や、外にある直火用グリルの焚き付けに使うのでございます」

提督「そう言えばここには暖炉があったわね…」

…食堂の北側の壁にはレンガ造りの暖炉がしつらえられていて良い雰囲気をかもし出していたが、春に着任した提督はまだ火が燃えている様子を見たことがない…

ドリア「ええ。秋から冬にかけてはそこで焼き栗をしたり…あるいはアルミホイルに包んだジャガイモを灰に埋めておいて焼きジャガイモにしたりもできますよ♪」

提督「あら素敵…♪」

ライモン「それに実際問題として、どうしても冬場は冷えますから…ここはいいところですが、唯一暖房の効きに関してはあまり良くありませんので」

提督「うーん……まぁこれだけの歴史的建物となると、そのあたりはどうしてもね…」


…鎮守府の暖房は各部屋にグリルのような「ラジエーター」の付いているセントラルヒーティング式であることだけは知っていたが、実際のところはまだ経験のない提督……とはいえライモンの意見にうなずいている艦娘たちを見れば、おおよその想像はついた…


チェザーレ「うむ。 ここの暖房は古代ローマと同じ方式でな、裏手に湧いている例の温泉から冷める前の湯や蒸気から暖気を取って循環させているのだ……おかげでいくら動かしておこうが一チェンテージモもかからぬ」

(※チェンテージモ…リラの下にある通貨単位で、日本で言う「銭」にあたる。複数形はチェンテージミ)

提督「言われてみれば施設の書類にそうあったわね…」

ドリア「ただ、ここの源泉は割とぬるいものですから、その熱だけではそこまで暖かくないのが欠点でして……私のような老嬢には堪えます」そう冗談めかすと、口元に手を当ててころころと笑った…

提督「またまた…こんなに張りのあるお婆ちゃんがいてたまるものですか♪」つん…っ♪

ドリア「あんっ…もう提督ったら、おいたが過ぎますよ?」

提督「ふふ、ごめんなさい…♪」

アッチアイーオ「でも、冬場の事を考えるともう少し暖かい寝具が欲しいところね……今度布団でも買おうかしら」

提督「あら、私と一緒に寝るのじゃだめ?」

アッチアイーオ「な、なに言ってるのよ…///」

デュイリオ「そうですよ、提督…それじゃあわたくしがお邪魔できないではありませんか♪」

提督「ふふっ、それもそうね…♪」

アッチアイーオ「はいはい、色ボケ同士で仲良くやってちょうだい…」

デュイリオ「あら、色ボケだなんて……わたくしは単に身体を持て余しているだ…け♪」

アッチアイーオ「だーかーら、そういうのが色ボケだって言ってるのよ!」

デュイリオ「あらあら、アッチアイーオったら怒っても可愛いですわね…♪」大柄なデュイリオはアッチアイーオを抱きしめ、胸元に顔を埋めさせて頭を撫でた…

提督「それにしても秋、ねぇ……美味しいものが増える時季よね」

ドリア「そうですね」

提督「…シルヴィアおばさまは、今年も「あれ」を送ってきてくれるかしら……」

ライモン「提督「あれ」ってなんですか?」

提督「え、あぁ…いいのいいの、気にしないで」

ライモン「はい、提督がそうおっしゃるのなら……」

提督「ええ……みんなのことを考えて、今年は多めに送ってくれるよう頼んでおいた方がいいわね…」

ライモン「?」

…昼下がり…

提督「さてと、それじゃあシルヴィアおばさまに電話しておこうかしら……」携帯電話を取りだして実家の番号をダイヤルすると、耳元に「ルルルル…ッ」と呼び出し音が響く…

…同時刻・クラウディアの寝室…

シルヴィア「ん、あむっ…ん、ふ……♪」

クラウディア「あ……んぅっ……んちゅっ…♪」


…窓から爽やかな秋風がさあっと室内を通り抜けていく中、ベッドで甘い接吻を交わしているクラウディアとシルヴィア……クラウディアは白くて豊かな身体に良く似合う、黒いレースに紅の花模様をあしらった下着姿で、表から帰ってきたばかりのように見えるシルヴィアは、クリーム色のタートルネックセーターと茶色のズボンで、刈り取った雑草と土の匂いをさせている…


クラウディア「ちゅ、あむっ……ん、電話?」

シルヴィア「ぷは…そうみたいね。私が出るわ……」

クラウディア「いいじゃない、電話なんて放っておけば…ね?」一階の廊下で鳴り響いている電話に出ようとベッドから降りたシルヴィアの後ろから腰にしがみつき、甘えたような声をあげる…

シルヴィア「私だってそうしたいけど、何度もかかって来る方が興ざめでしょう……すぐ済ませてくるから」

クラウディア「もう、分かったわよ…それと戻ってくるときには、ちゃんと着替えてきてね?」

シルヴィア「いきなり「キスしたい」って言ってベッドに連れ込んだのは貴女でしょうが…」かすかな苦笑いを浮かべつつ一階に降りると、受話器を取った……

シルヴィア「もしもし、カンピオーニですが……あぁ、フランカ。 相変わらず元気そうね…」壁に斜めにもたれかかるようにして、提督の声を聞く…

シルヴィア「そう、それはよかったわ…それで、どうしたの? …え、ああ……もちろん今年も送るつもりよ。 ええ「艦娘」の娘たちがたくさんいるのは分かっているから、今年は多めにしてあげるわ……」

クラウディアの声「……シルヴィア、いったい誰だったの?」

シルヴィア「フランカよ、クラウディア。 …ええ、クラウディアも相変わらずよ……いま降りてきたわ」

クラウディア「ねぇシルヴィア、フランカからの電話ですって?」下着の上にあっさりしたガウンだけ羽織って、いそいそと階段を降りてきた……

シルヴィア「ええ、可愛いフランカからよ……いま代わるわ」

クラウディア「…チャオ、フランカ♪ ええ、私よ…元気にしているかしら? そう、良かったわね……鎮守府の娘たちも変わりはない?」胸元に手を当てて弾む呼吸を落ち着かせながら、提督と話をするクラウディア……

クラウディア「ああ、そうなのね。良かったわ……そうそう、そう言えばこの間ミラノでファッションショーがあって、いくつか試供品をもらったから、そっちに送るわね…鎮守府の娘たちもお洒落がしたいでしょうし。 それと去年のモードだけれど、秋冬物の服なんかもついでにね♪」

クラウディア「え…いいのいいの♪ 艦娘の娘たちはきっといつもは灰色ばっかりでしょうから、たまにはお洒落を楽しませてあげて?」

クラウディア「ええ、貴女もね……それじゃあシルヴィアに代わるわ♪」電話越しにキスの音を送ると、シルヴィアに受話器を渡した…

シルヴィア「それじゃあそういうわけで、今度の週末には送れると思うから…ええ、またね」さっぱりした言い方ながら、愛情を込めて通話を終えた…

クラウディア「相変わらずそうで何よりね♪」

シルヴィア「そうね……それと、今年は「あれ」を多めに送って欲しいって」

クラウディア「あら、いいじゃない…我が家の秋の風物詩だものね♪」

シルヴィア「ええ……」そう言うとクラウディアの腰に手を回しつつ、親指であごを持ち上げて顔を軽く上向かせる…

クラウディア「あ…っ///」土と草の素朴な匂いに交じって、ふっと爽やかな香水の香りが鼻腔をくすぐった…

シルヴィア「……続きをしましょうか」

クラウディア「…ん♪」

シルヴィア「それじゃあベッドに行くとしましょう……せーの!」かけ声をかけると反動を付け、ひょいとクラウディアを抱きかかえた…

クラウディア「ひゃあん…っ♪」

シルヴィア「ちょっと、そんなに暴れないで……落っことしちゃう」

クラウディア「ええ、分かったわ…///」そのままシルヴィアのうなじに手を回し、下からシルヴィアの整った顔を見つめる…

シルヴィア「……よろしい」ぷるっとしたクラウディアの唇に口づけすると、足元を確かめながら階段を上っていった……

…数日後…

提督「ふわぁぁ…いいお天気……」

…執務室で雑多な書類を片付けると軽く伸びをして、窓際に歩み寄って外を眺めた提督……冷涼な秋風が鎮守府を吹き抜け、暖かい日差しとほどよく交じりあう…海は波もなく穏やかで、真夏のような目に痛いほどの輝きはないが、きらきらときらめいている……と、デルフィーノが入口から顔を出した…

デルフィーノ「提督、正門に宅配業者の方が来ましたよ」

提督「了解…今行くわ」

デルフィーノ「はい」

…鎮守府・正門…

提督「どうもご苦労様です」

宅配業者「どうも…えーと、荷物はこれですね。あて名に間違いがないようでしたら、ここにサインをお願いします」

提督「あて名は…大丈夫ですね。はい、どうぞ」

宅配業者「ありがとうございました♪」帽子に手を当てて軽く会釈をするとイヴェコのトラックに乗り込み、正門前の広い部分でUターンさせて走り去った…

提督「さてさて、この大きな箱は冷蔵品みたいね…と言うことは……♪」冷蔵扱いになっているのは人の一人くらいは簡単に入りそうな大きな木箱で、差出人が実家の「シルヴィアおばさま」になっているのを見て笑みを浮かべた…

ガリレオ「あら、ずいぶんと嬉しそうね?」当直にあたっていたガリレオと、その弟子であるトリチェリが台車を用意する…

提督「ふふーん…まぁね♪」

トリチェリ「何が届いたんですか、提督?」

提督「すぐに教えてあげるわ……さ、運びましょうか」他にも鎮守府のみんなが頼んだものなどを積んで、ゴロゴロと台車を押していく提督たち…そしてルチアも尻尾を振りながら横についてくる…

…食堂の外…

提督「さてと、それじゃあこれを運び入れないとね……いい?」

トリチェリ「もちろんです♪」

ガリレオ「当然♪」

ディアナ「こちらも受け取りの準備は整っておりますよ」庭へと出るドアを兼ねた食堂の大きな窓を開け放っている…

提督「それじゃあ行くわよ、せーの…っ!」いそいそと箱に近づくと膝を屈め、力を込めて持ち上げようとする提督……が、重い箱はびくともしそうにない…

ガリレオ「もう、提督ったら珍しくせっかちじゃない……ほら、私とトリチェリで運んであげるから♪」

トリチェリ「そうですよ…さ、先生♪」

ガリレオ「ええ、そっちは頼むわね…そーれっ♪」大きくかさばるので二人がかりで持ち上げているが、いともたやすく箱を運び入れた…

提督「はぁ、ふぅ……さすが艦娘ね…私なんて腕が抜けそうだったのに……」

ディアナ「…ところで、こんなに大きな箱ですが…中身はいったい何でしょうか?」

デルフィーノ「私も気になります♪」

提督「ふふーん、よくぞ聞いてくれました……デルフィーノ、ルチアを抑えておいてね♪」そう言うと木箱のふたにバールを差し込み「えい!」とこじ開けた…

ガリレオ「これはこれは……すごいわね♪」

トリチェリ「わぁ…♪」

ディアナ「まぁ…」

デルフィーノ「もう、早く私にも教えて下さいよぅ♪」首輪に付けているリード(綱)をつかんでルチアを押さえながら、首を伸ばして箱の中身を見ようとするデルフィーノ…

ルチア「ワフッ、ワンワンッ…!」一方デルフィーノに押さえられているものの、尻尾を振りながら箱に近づこうとするルチア…

提督「…ふふ。毎年秋になるとおばさまが送ってくれるのだけれど、今年から鎮守府に着任したわけだから「みんなの分も送って欲しい」って頼んでおいたの♪」

デルフィーノ「ですから何をです?」

提督「それはね…じゃーん♪」箱の中から取りだしたのは大きな肉の塊で、濃い赤身と外側の白い脂身が綺麗に分かれている……

ロモロ「お肉ね!」

レモ「わぁ…美味しそう♪」くつろいでいた「ロモロ」と「レモ」も目を輝かせてやって来た…

提督「毎年秋になると、おばさまは散弾銃を持ってイノシシ猟をするのだけれど…そのお肉ね」ビニールがかけてあるイノシシの腿肉を、軽く平手で叩いた…

ディアナ「それにしても相当な量でございますね……おおよそ一頭分くらいでしょうか?」

提督「そのくらいはあるはずだから、しばらくはうんと楽しめるわよ。 …もちろんルチア、あなたもね♪」

ルチア「ワンッ!」

…翌日・厨房…

提督「さて、それじゃあどう調理しようかしら?」

ディアナ「部位によって調理法を変えるのがよろしいかと存じますが……それと、今日はどの部分を使うことに致しましょうか?」

提督「そうねぇ…やっぱりあばら肉か腿肉かしら。 固い部分は今日からゆっくり煮込んで、明日以降に食べればいいし、レバーなんかは香味野菜と一緒に調理して、レバーペーストにすればパンのお供に出来るものね」

エリトレア「それはいい考えですねぇ♪」

提督「でしょう? …と言うわけで、まずは「ローストで香ばしく」なんてどうかしら?」

ディアナ「それはよろしゅうございますね…♪」

提督「良かった♪ そうと決まれば、必要なものを用意しないと……」

ディアナ「何を用意すればよろしいでしょうか?」

提督「シンプルなローストとなれば、まずはいい塩だけれど…確か岩塩があったはずよね?」

ディアナ「はい、ございます」

提督「なら塩は大丈夫ね……ローズマリーとオレガノは?」

ディアナ「乾燥ものが少々」

提督「それで充分よ…黒胡椒」

エリトレア「ありますよ♪」胡椒は粒のものを買い、必要な分だけ食料庫から取り出してきては、そのつどオリーヴの木で出来たペッパーミルで挽くようにしている…

提督「ニンニク」

エリトレア「それもあります」

提督「よろしい。あとは付け合わせに茸のソテーでも添えれば充分素敵なご馳走になるけれど……在庫はあったかしら?」

ディアナ「いえ、茸は数日前に使い切ってしまいましたので…」

提督「そう言えばそうだったわね……」

リットリオ「だったら私が買いに行きますよ…提督っ♪」ひょいと顔をのぞかせたリットリオは可愛らしい秋めいた色あいのスカーフとブラウス、それにひらりと広がった朽葉色のスカートをまとい、ウェーブがかかった髪を後頭部で巻き髪スタイルにしている…

提督「リットリオが買ってきてくれるなら助かるわ……ちょっと待ってて」

…そう言うと鉛筆を取り、厨房に置いてある「メモ用紙」(たいていは期限切れの回覧文書や前日の天気予報をプリントアウトした紙、広告の裏紙などを適当な大きさに切りそろえたもの)にさらさらと買い物のリストを書いた…

提督「…それじゃあお願いね。お金は後で渡すわ」

リットリオ「はいっ♪ ヴェネト、ローマ、良かったら一緒にお買い物に行きませんか?」

ヴェネト「わぁ、嬉しいです♪」

ローマ「私もいいんですか、リットリオお姉様?」

リットリオ「もちろんですよ、だって二人とも私の妹ですし…♪」パチリとウィンクをすると「チンクエチェント(二代目・フィアット500)」のキーが付いているキーリングを人差し指に引っかけてくるくると回した…

提督「気をつけて行ってらっしゃいね?」

リットリオ「もう、大丈夫ですよ…それじゃあ行ってきます♪」二人の妹を連れて真っ赤なフィアットに乗ると、ギアレバーの隣にあるチンクエチェント独特の「エンジン始動レバー」を引いてエンジンを回し、空冷エンジン独特のバタバタいう音を残し「近くの町」に向けて車を走らせていった…

提督「それじゃあこちらはその間に、下ごしらえと行きましょうか…!」服の袖をまくるとよく研がれた大ぶりの包丁を持ち、大きなあばら肉を解体するべく構えた…

ディアナ「では、僭越ながらわたくしも手伝わせていただきます」

エリトレア「私もですよっ」

提督「それじゃあ左右を押さえておいてね……ふんっ!」包丁の背に片手をあてがいつつあばら肉の骨と骨の間に刃を入れると、ぐっと引き切っていく…良く研いでいる包丁だけあってすっと刃が入っていくが、さすがに野山を駆けまわっていた猪の肉だけあって、いつもよりは力がいる…

エリトレア「わぁ、さすが提督…見事に切れましたねっ♪」

提督「ふふーん…これでもおばさまに多少は教わったんだもの、これくらいは出来ないとね。 …さ、それじゃあ味を付けていきましょうか♪」

ディアナ「よしなに…♪」専用のヤスリで岩塩を削り、胡椒はペッパーミルで粗挽きにする…それにオレガノ、ローズマリーを合わせたものを手に取り、ひんやりと冷たい肉の表面にすり込んでいく…

提督「これが意外と重労働なのよね……ふぅ」大きな肉の塊を相手に、少々汗ばんでいる提督…一つ息をつくと、肉の脂や塩のついていない腕の真ん中辺りで額を拭った……

…翌日・厨房…

提督「さて、それじゃあどう調理しようかしら?」

ディアナ「部位によって調理法を変えるのがよろしいかと存じますが……それと、今日はどの部分を使うことに致しましょうか?」

提督「そうねぇ…やっぱりあばら肉か腿肉かしら。 固い部分は今日からゆっくり煮込んで、明日以降に食べればいいし、レバーなんかは香味野菜と一緒に調理して、レバーペーストにすればパンのお供に出来るものね」

エリトレア「それはいい考えですねぇ♪」

提督「でしょう? …と言うわけで、まずは「ローストで香ばしく」なんてどうかしら?」

ディアナ「それはよろしゅうございますね…♪」

提督「良かった♪ そうと決まれば、必要なものを用意しないと……」

ディアナ「何を用意すればよろしいでしょうか?」

提督「シンプルなローストとなれば、まずはいい塩だけれど…確か岩塩があったはずよね?」

ディアナ「はい、ございます」

提督「なら塩は大丈夫ね……ローズマリーとオレガノは?」

ディアナ「乾燥ものが少々」

提督「それで充分よ…黒胡椒」

エリトレア「ありますよ♪」胡椒は粒のものを買い、必要な分だけ食料庫から取り出してきては、そのつどオリーヴの木で出来たペッパーミルで挽くようにしている…

提督「ニンニク」

エリトレア「それもあります」

提督「よろしい。あとは付け合わせに茸のソテーでも添えれば充分素敵なご馳走になるけれど……在庫はあったかしら?」

ディアナ「いえ、茸は数日前に使い切ってしまいましたので…」

提督「そう言えばそうだったわね……」

リットリオ「だったら私が買いに行きますよ…提督っ♪」ひょいと顔をのぞかせたリットリオは可愛らしい秋めいた色あいのスカーフとブラウス、それにひらりと広がった朽葉色のスカートをまとい、ウェーブがかかった髪を後頭部で巻き髪スタイルにしている…

提督「リットリオが買ってきてくれるなら助かるわ……ちょっと待ってて」

…そう言うと鉛筆を取り、厨房に置いてある「メモ用紙」(たいていは期限切れの回覧文書や前日の天気予報をプリントアウトした紙、広告の裏紙などを適当な大きさに切りそろえたもの)にさらさらと買い物のリストを書いた…

提督「…それじゃあお願いね。お金は後で渡すわ」

リットリオ「はいっ♪ ヴェネト、ローマ、良かったら一緒にお買い物に行きませんか?」

ヴェネト「わぁ、嬉しいです♪」

ローマ「私もいいんですか、リットリオお姉様?」

リットリオ「もちろんですよ、だって二人とも私の妹ですし…♪」パチリとウィンクをすると「チンクエチェント(二代目・フィアット500)」のキーが付いているキーリングを人差し指に引っかけてくるくると回した…

提督「気をつけて行ってらっしゃいね?」

リットリオ「もう、大丈夫ですよ…それじゃあ行ってきます♪」二人の妹を連れて真っ赤なフィアットに乗ると、ギアレバーの隣にあるチンクエチェント独特の「エンジン始動レバー」を引いてエンジンを回し、空冷エンジン独特のバタバタいう音を残し「近くの町」に向けて車を走らせていった…

提督「それじゃあこちらはその間に、下ごしらえと行きましょうか…!」服の袖をまくるとよく研がれた大ぶりの包丁を持ち、大きなあばら肉を解体するべく構えた…

ディアナ「では、僭越ながらわたくしも手伝わせていただきます」

エリトレア「私もですよっ」

提督「それじゃあ左右を押さえておいてね……ふんっ!」包丁の背に片手をあてがい、あばら肉の骨と骨の間に刃を入れると引き切っていく…よく手入れされている包丁だけあってすんなりと刃が入っていくが、さすがに野山を駆けまわっていた猪の肉だけあって、普段よりは力がいる…

エリトレア「わぁ、さすが提督…見事に切れましたねっ♪」

提督「ふふーん…これでもおばさまに多少は教わったんだもの、これくらいは出来ないとね。 …さ、それじゃあ味を付けていきましょうか♪」

ディアナ「よしなに…♪」専用のヤスリで岩塩を削り、胡椒はペッパーミルで粗挽きにする…それにオレガノ、ローズマリーを合わせたものを手に取り、ひんやりと冷たい肉の表面にすり込んでいく…

提督「これが意外と重労働なのよね……ふぅ」大きな肉の塊を相手に、少々汗ばんでいる提督…一つ息をつくと、肉の脂や塩のついていない腕の真ん中辺りで額を拭った……

…その頃・近くの町…

ヴェネト「ふぅ…着きましたね」

ローマ「リットリオ姉様、車の鍵はかけましたか?」

リットリオ「もちろんですよ、ローマ。それじゃあお使いを済ませちゃいましょう♪」

…長身を押し込んでいた小さなフィアット500から出ると、身体をほぐすように伸びをしたリットリオたち……鎮守府から二十分ほどの小さな町は相変わらずのどかで、古くから続いている個人商店や露天が並ぶ小さな市場では馴染みの客と交わす愛想のいい会話や元気な売り声が飛び交っている…

鮮魚店のおっちゃん「おっ、海軍さん! どうだい、タコ買っていかないか!新鮮だよ!」鍋を置いて蛸を茹でている鮮魚店のおっちゃんは茹でる前のタコを一匹つかみ、持ち上げてみせた…

リットリオ「そうですねぇ、おいくらですか?」

おっちゃん「海軍さんにはいつもうんと買ってもらってるからな、安くしとくよ! 一匹あたりこれぐらいでどうだい?」指で「手やり」を出して値段を示す…

リットリオ「うーん、もうちょっとですね♪ その代わり五匹は買いますよ?」

おっちゃん「かーっ、海軍さんは商売が上手いや…分かった、持ってきな! それと鱗だのなんだのがきれいな服に付いちまうといけねえから、もちっと離れておいた方がいいぜ……っと、ほい!」手早く油紙の袋に包むとリットリオに渡した…

リットリオ「ふふっ、ありがとうございます♪」

おっちゃん「毎度っ!」

野菜売りのおばちゃん「海軍さん、良かったらうちでも買っていってよ!」

ヴェネト「そうですね、それじゃあその黄色いズッキーニを……ええ、500グラムでいいですよ♪」

おばちゃん「毎度どうもね…それと、これはおまけ」

ヴェネト「わぁ、ありがとうございます♪」

ローマ「……お姉様方、本命をお忘れではありませんか?」

リットリオ「大丈夫ですよ、ローマ……さ、茸を買わないとですね♪」

茸取りのじいさん「いらっしゃい、今年も茸の季節になったよ! 今だけだからね、買っていっておくれ!」


…時季と言うこともあって、露天のいくつかでは山から採ってきた茸が並んでいる……イタリア人が大好きで希少なポルチーニが一箱に白トリュフがいくつか、そしてついでといった具合に自家栽培のものらしいマッシュルームがたっぷりひと山……他にもオレンジ色をした柄の細いものや、茶色のずんぐりしたもの、傘がひらひらしているものなど、見慣れたものから馴染みの薄いものまで数種類が並んでいる…


リットリオ「あっ、ありましたね…おじいさん、そのポルチーニを五百グラムと、マッシュルームもくださいな」

じいさん「ほいきた! ポルチーニは裏のひだに砂だのホコリだのが付いているからまずは軽く洗って、それからフリッタータ(フライ)か……バターで焼いても美味しいぞ!」浅い木箱に山積みにされた茸をつかみ取ると、手際よく重さを量って袋に詰める…

リットリオ「考えただけで美味しそうです♪」

じいさん「当たり前さ、この時期だけのご馳走だからね!」白髪をオールバックにしているじいさんはリットリオたちにむけて明るくウィンクを投げ「おまけだ♪」とマッシュルームをひとつかみ多く入れてくれた…

リットリオ「グラツィエ♪」

じいさん「おうさ。今月の末頃までは採れると思うから、また来ておくれよ!」

リットリオ「はい♪」

屋台のおじさん「アランチーニ、アランチーニはいかが? 揚げたてで美味しいよ!」

(※アランチーニ…「小さいオレンジ」の意。トマトソースが入った丸型のライスコロッケ)

リットリオ「わぁ、本当に揚げたてですね…せっかくですから一つ食べていきましょう。私がおごりますよ♪」

ヴェネト「嬉しいです♪」

ローマ「いえ、そんな姉様に…」慌てて小銭入れを出そうとするローマ…

リットリオ「ノン・ファ・ニエンテ(構いませんよ)…おじさん、三つ下さいな♪」

おじさん「毎度っ、熱いから気をつけて食べてね!」野球ボール大のアランチーニをトングでつかむと、紙に挟んで手渡してくれる…

リットリオ「ありがとうございます…さ、食べましょう♪」買い物を詰めた大きめの袋を肩にかけ、湯気の立つアランチーニを頬張る…

ヴェネト「はふっ…あつ……///」

ローマ「ほわ…っ……おいひいれふね…」

リットリオ「ふふ、良かったです…それじゃあこれを食べ終わったら、もうちょっとだけ見て回ってから帰りましょう♪」

ヴェネト「はい…♪」

ローマ「了解……あつつ…!」

リットリオ「ふふ、それじゃあ私も…はむっ、ふあ……///」熱いアランチーニをまた一口かじると、空気を取り込むように口をぱくぱくさせた…

…一時間後…

リットリオ「ただいま戻りました♪」

提督「お帰りなさい。買い物は楽しかった?」

リットリオ「はい♪」

ヴェネト「ええ、とても楽しかったです」

ローマ「私は買うべきものも買ったのですし、昼食の支度が遅れてはいけないですから早く戻ろうと言ったのですが……」

提督「いいのよ、十分間に合ったから…それじゃあ食材を受け取るわね」

リットリオ「はい、これが茸と…」

提督「ポルチーニとマッシュルームね…それもこんなに♪」

ヴェネト「…それから茹でダコをいくつか」

ディアナ「それはレモンを搾っていただくとしましょう」

ローマ「他にも青物を少々買ってきました」

提督「いいわね、それじゃあ肉を焼くとしましょうか……せっかくだし表で直火を使って、ね♪」

リットリオ「いいですねぇ♪」

…厨房の外…

提督「さーて、それじゃあローストしていきましょう」

エリトレア「はいっ♪」

…厨房の外にはレンガで作られた手頃な炉があり、直火でちょっとした焼き物が出来るようになっている…煙の臭いが染みついてもいいよう、よれたTシャツと作業用のズボンに着替えている提督は、マッチを擦ると古新聞に火をつけて小枝の下に押し込み、それから流れ着いた流木や木切れをよく乾かして薪としたものをくべ始めた……しばらくは木切れのはぜる地味な音が散発的にしているだけだったが、そのうちに火が舌を出して威勢良く燃え始める…

提督「ん、火はいい具合になったみたいね…ディアナ、エリトレア。お願いね?」

ディアナ「よしなに」

エリトレア「了解しましたっ♪」

…岩塩にローズマリー、オレガノ、それに胡椒といったスパイスをすり込んだ猪のあばら肉を網の上に並べる……そして付け合わせのポルチーニをバターソテーにするべく、いそいそと厨房に戻っていくディアナ…

ルチア「フゥ…ン♪」

提督「ルチア、ここは火があって危ないから離れていなさいね?」じゅうじゅうと脂が滴り、燃える薪に落ちてはパッと煙を上げる……吹き付けてきて目に沁みる煙と熱気を手で払いつつ、時々トングで肉を持ち上げて焼き具合を確かめる提督…

ディアナ「添え物の方は出来ましたので、わたくしもお手伝いいたします」

提督「ええ、ありがとう…火の前にいるものだから、もう熱くて熱くて……ちょっと冷たいものでも飲んでくるわ」

…しばらくして…

提督「…もういいかしらね♪」程よく火が通ったであろうあばら肉を、ディアナとエリトレアが持っている大皿に載せていく……ふちの方はまだぷちぷちと脂が跳ね、香草の香りを含んだ美味しそうな匂いを立てている…

提督「さてと…それじゃあ私もすぐ着替えてくるから、みんなが食卓に着いたら始めましょう♪」

ディアナ「よしなに…♪」

…昼食…

提督「それじゃあそろそろお待ちかねの肉料理と参りましょうか♪」食前酒の間から漂っていたいい香りに気もそぞろな艦娘たちに微笑みかけると厨房に入っていき、エプロンを着けて戻ってきた…両手でつかんで持ってきた大皿には、ポルチーニのソテーを添えた猪のあばら肉がきちんと並んでいる…

デルフィーノ「わぁぁ、ご馳走ですね…♪」

トレーリ「…いただきます♪」

ドリア「それでは、私も早速…♪」

アブルッツィ「どれどれ…」中央に置かれた大皿から銘々に取り分けると、早速賞味する艦娘たち…

提督「それで、お味はいかが?」

アブルッツィ「ええ、美味しいですよ!」

提督「よかった…」そう言って食堂を見渡す提督…


…白いテーブルクロスをかけた長テーブルに並んでいる艦娘たちが談笑しながらワインを傾け、料理を賞味している…とはいえ食べ方はそれぞれで、上品にナイフとフォークを使いこなす娘から、海賊まがいの食べ方でがっついている娘もいる…


ドリア「美味しいですね、ガリバルディ?」

ガリバルディ「ええ。ドングリを食べて脂が乗った秋のイノシシに勝る物はないわね……そうでしょう、メノッティ?」

チロ・メノッティ「いかにも、ガリバルディの言うとおりです」

カヴール「チェザーレ、もう一切れいかが?」

チェザーレ「いただこう…デュイリオ、そなたは?」

デュイリオ「ご心配なく、わたくしなら勝手に取らせていただきますから♪」グラスの赤ワインを傾け、上機嫌で笑い声を上げるデュイリオ…

チェザーレ「そうか…では、ロモロ、レモ、そなたらはどうだ……?」

ロモロ「はぐっ、あぐっ…むしゃ…」

レモ「んぐっ、むしゃっ……」歯をむき出しにして、骨付きの肉にかぶりつくロモロとレモ…

チェザーレ「おやおや。あの二人の食べ方ときたら、まるで狼のようではないか」

提督「狼と言うより「我が子を喰らうサトゥルヌス」みたいね…」

ライモン「美味しいのはいいことですが…あんなに勢いよく食べて、喉に詰まらせたりしないでしょうか」

チェザーレ「まぁ、その心配はあるまい…ライモンド、もう一杯どうだ?」

ライモン「ありがとうございます」

チェザーレ「うむ」

スクアーロ(中型潜スクアーロ級「サメ」)「……ふふ…魚もいいけど、こういう血のしたたるような肉もいいわよね♪」

レオーネ(駆逐艦レオーネ級「雄ライオン」)「んぐぅ…んっ!」

パンテーラ(レオーネ級「ヒョウ」)「はむっ、むしゃ……」

ティグレ(レオーネ級「トラ」)「あぐっ、もぐ…」骨から肉を噛みちぎりむさぼっている肉食獣の艦娘たち…

カラビニエーレ(ソルダティ級「カラビニエーリ隊員」)「ああもう、まったく行儀の悪い…!」

アオスタ「全くです、野蛮人でもあるまいし…提督からもなにか言って下さいませんか」

提督「まぁまぁ。美味しいって喜んでくれているわけだし、たまには…ね?」

アオスタ「提督がそうおっしゃるのでしたら……」

提督「ええ、今だけは目をつぶってあげて? とはいえあんまり勢いよく食べてお腹に差し障りがあるといけないから……ロモロ、レモ、せっかくおばさまが送ってきてくれたお肉なんだから、もう少し味わって食べて欲しいわね?」

ロモロ「…ん、言われてみれば……」

レモ「はーい」

提督「よろしい♪」

ディアナ「それにまだドルチェも控えておりますから、お腹を空けておきませんと食べられませんよ?」

フルット「それで、今日のドルチェは何でしょうか…ディアナ?」

ディアナ「今日は栗のケーキです、何しろ時季ですから」

提督「秋と言えば栗だものね。 焼き栗なんかはローマでも秋になると売っていて…一袋買って、午後の勤務の時にみんなで分けたりもしたわ」

ローマ「あれを食べると「秋が来た」という気分になりますね」

提督「ええ。こっちではあまり見かけないから、懐かしいわね……」


…食後…

ライモン「そう言えば、提督のご実家から届いた箱がもう一つありましたが…あれは?」

デルフィーノ「お肉の方は冷蔵で届きましたけれど、あっちの箱は冷蔵でもなかったですし…中身は何ですか?」

提督「ああ、あれの中身は……知らない方がいいわ♪」

デルフィーノ「え?」

提督「冗談よ…テーブルを片付けたら持ってきましょう」

…数分後…

アッチアイーオ「持ってきたわよ、提督……大きさの割には軽いわね」

提督「そうでしょうね…それじゃあ開けるとしましょうか、よいしょ……♪」そう言って箱のテープをナイフで切るとふたを開けた…

ライモン「わ、洋服ですか?」

デルフィーノ「しかもこんなにたくさん…!」

提督「ええ♪ お母様がみんなのためにって、この間のミラノコレクションのときに秋冬物を見繕ってきたそうよ…果たして何が入っているのかしら」

…大きな段ボール箱にはまだビニールでくるまれているまっさらなものから、昨シーズンのデザインだったり、数が揃わないなどで持て余されていたらしい衣類などが詰め込まれていた……とはいえ元はファッションデザイナーのクラウディアだけあって、使い勝手の良さそうないいものを上手く選んである…

ガリバルディ「私はこれがいいわ」

エウジェニオ「それじゃあ私はこれを♪」

アヴィエーレ「ふむ、私はこれにしたいところだね…」

アンジェロ・エモ「わ、わ、どれにしようか迷ってしまいます…♪」

提督「はい、ちょっと待って…!」服を取り出してはきゃあきゃあと歓声を上げながら品定めをする艦娘たちに待ったをかけた…

オンディーナ「どうしたんです、提督?」

提督「今から話すわ…あのね、お母様はたくさん服を送ってきてはくれたけれど全員分って言うわけには行かなかったでしょうし、みんなの好みもあるから、数が足りないこともあると思うの……それに哨戒の娘たちが帰ってこないうちに選んでしまうのはよろくしないでしょう?」

ライモン「そうですね」

提督「と言うわけで、選ぶのは哨戒の娘たちが帰ってきてから…それと、もし欲しいものが誰かとかぶったら当事者同士で相談して決めるかくじを引くこと…そのときは私か秘書艦の二人、あるいは自分のクラス以外からネームシップの娘を呼んできて、きちんとやり取りを見ていてもらうこと…いいわね?」

一同「「了解」」

提督「それから、倉庫にもうちの分として管区司令部から送られてきた秋冬物の服があるから…それもそのとき一緒に確認しましょう♪」

デルフィーノ「それじゃあ、後で出してこないとですね♪」

提督「ええ。もっとも管区司令部から送られてくるのは財務警察が押収品を競売にかけて、応札のなかった物だから……あんまり期待は出来ないかもしれないわね」

チェザーレ「分からぬぞ、もしかしたら意外な掘り出し物があるやもしれぬ」

提督「そうだといいわね…とはいえ、そこの鎮守府では誰も欲しがらない物を「そちらではどうですか?」って送りあったりするのだけれど、気付いたらいつか自分の所から送った物が巡り巡って戻ってきた……なんて言うこともあるくらいだから」そう言うと肩をすくめて苦笑いを浮かべた…

シーレ「まるで渦みたいね」

ヴォルティーチェ(フルット級「渦動」)「呼んだ?」

シーレ「呼んでない」

ゴルゴ(フルット級「渦」)「それじゃあ私?」

シーレ「だから呼んでないわよ!」

アッチアイーオ「ぷっ…くくっ♪」

ライモン「くすくす…っ♪」

デルフィーノ「あはははっ♪」

提督「ふふっ…♪」

シーレ「まったくもう…♪」

…午後・提督私室…

提督「それはそうと…せっかくの機会だから、私も服を秋冬物と入れ替えるとしましょう」執務机で書類を整理していたが、ある程度片付いたところで「思いたったが吉日」とばかりに立ち上がると、私室のクローゼットを開けた…

デルフィーノ「私も手伝います♪」

提督「ええ、ありがとう…それじゃあ夏物は洗濯屋さんに出すから、とりあえずこっちに…それから衣装箱を開けて、と……」樟脳(虫除け)の入っている衣装箱を開けると、ハンガーに掛けたり畳んだりし始める…

アッチアイーオ「結構色々持ってるのね」

提督「ええ、お母様がシーズンごとに何着かは送ってくれるから…んー、これはもう着られないのよね……」身体が成長したことと好みが変わったことで、着られなくなったり着るつもりがなくなったりした服を取りのけていく…

デルフィーノ「わ、これなんか可愛いです♪」

提督「そうねぇ、でも私にはちょっと可愛すぎるから……後でほしい娘がいたらあげることにしましょう」

アッチアイーオ「提督、これはハンガーに掛ければいいかしら?」

提督「ええ、お願い」

アッチアイーオ「ふぅん、あんまり服には詳しくないけれど…これって結構いいコートなんじゃない?」取り出した黒いベルテッドのトレンチコートをしげしげと眺めた…

提督「そうね、それは少尉任官のときにお母様とおばさまがプレゼントしてくれた物だけれど…十数万リラくらいはしたはずよ」

デルフィーノ「わ、ずいぶん高いですね」

提督「ええ。なんでもお母様いわく「コートやジャケットはいいものを買いなさい、それと色は地味にすること…真っ赤なコートなんて買ったら、目立つから着回しできないわよ?」って……だから私も黒と灰色、それと白に近いベージュの一着ずつにしたわ」そう言って衣装箱からダブルの灰色コートと、ベージュのラップコートを取り出してみせた…

アッチアイーオ「そういうものなのね…エウジェニオやなんかはお洒落だしそういうのに詳しそうだけど、私にはよく分からないわ」

提督「まぁまぁ、お洒落なんてしたくなった時にすればいいのよ♪」

…そう言いながら厚手のスカートやふんわりとしたカシミアのセーター、それに黒革の手袋やニーハイのヒールつきブーツなどを取り出していく提督…革手袋やブーツは去年のシーズン終わりにきちんと湿気を除き、表面も皮革用クリームで磨いておいたおかげでどこも悪くなっていない…

デルフィーノ「提督、これはどこに置きましょうか?」くるぶしに金色のバックルがついたショートブーツを持って聞いた…

提督「あぁ、そのブーツね…実はそれ、ローマにいたときに「ちょっとつま先が細いけれどお洒落だし…」って買ってみたけれど、やっぱり履いていると足が痛くって……」

デルフィーノ「じゃあこっちですね?」

提督「ええ」

デルフィーノ「分かりました♪」

提督「こうしてみると私も買ってないようでいて、ずいぶん衣装持ちだったのね…」腕を組んで「むぅ…」とうなった……

アッチアイーオ「ま、提督の場合はお母様がデザイナーなんだし…無理もないんじゃない?」

提督「それもそうね……さーて、それじゃあ洗える物は今のうちに洗濯機にかけておきましょうか♪」

アッチアイーオ「私も運ぶわ」

提督「ええ、ありがとう…それじゃあデルフィーノ、私とアッチアイーオは洗濯をかけに行ってくるから、その間に皆に譲る方の服はまとめておいてもらえるかしら?」

デルフィーノ「はい」

提督「それじゃあお願いね♪」提督とアッチアイーオは普通に洗える種類の衣服を両手に抱え、部屋を出て行った…

デルフィーノ「…さぁ、それじゃあ残りを片付けるとしましょう。これはこっちで……」

デルフィーノ「ふ~ふ~ん…ふふ~ん……♪」一人で軽くハミングをしながら、てきぱきと片付けていく…

デルフィーノ「次はさっきのブーツですけれど……ちょっと履いてみたいですね///」軽く足を入れてみると、デルフィーノの足は小さいので難なく履ける…そのままとんとんっ、とつま先を軽く床に打ち付け、足の据わりを整える……

デルフィーノ「あ…これ、結構いいかもです♪」姿見の前に行くと足元をしげしげと眺めてみる…金のバックルのついた黒革のショートブーツが足元をきっちりと締めている…

デルフィーノ「っと、遊んでいないで片付けないとですね…よいしょ……」そう独りごちてブーツを脱いで手に提げると、ふと顔に近づけた…

デルフィーノ「……なんだか独特の匂いがします///」なめし革の強い匂いとほんのり残った蒸れた匂い、それにかすかな土の匂いが混じって、妙にデルフィーノを引きつける…

デルフィーノ「すう…んはぁぁ……///」今度は酸素マスクのように鼻をあてがい、深々と匂いを吸い込んだ……

デルフィーノ「んんぅ…はぁぁ……んっ、んぅ…ぅ♪」右手でブーツを持ったまま、左手をスカートの中に滑り込ませる…

デルフィーノ「すぅぅ……はぁ…んぅぅ…はぁ…///」くちゅ…くちゅっ♪

デルフィーノ「ふあぁぁ…たまらないです…ぅ///」ぺたりと床にへたり込むと、とろんとした表情を浮かべて秘所をかき回し続けた…

………

…夕食後…

提督「さてと、それじゃあみんなお待ちかねのようだから始めましょうか」

シロッコ「待ってました♪」

提督「はいはい…まずはテーブルの上に並べていくから、欲しいものがあったら目安を付けておくこと」小山のように積み上げられた服を全員で並べ、番号を書いた紙を添える…

アオスタ「並べ終わりました」

提督「そうみたいね……それじゃあ後は一から順番にやっていきましょうか」オークションスタイルで順繰りに服や小物を提示していき、欲しい娘たちには手を上げてもらう…

提督「まずはこのスカートからね……色はお洒落なグレイだし生地もなかなかいいけれど、デザインはちょっと古いかもしれないわ…誰か欲しい人?」秋には良さそうな、厚手の生地で出来た膝丈のスカート…

カヴール「はい、わたくしが」

ザラ「私も」

提督「あら、いきなりかぶったわ……それじゃあ後でお互い話し合って決めてちょうだいね?」

カヴール「はい」

ザラ「私もあれは欲しいから…譲らないわよ、カヴール♪」

カヴール「ええ♪」

提督「次は……ウールのダッフルコートね。ウールだから結構ずっしりしているけれど、デザインはいいし…袖に色落ちこそあるけれど、哨戒の時なんかにはいいんじゃないかしら」

アミラーリオ・ディ・サイント・ボン「では本官が」

アミラーリオ・ミロ「私も欲しいです」

バリラ「私もよ。哨戒の時に使っているコートがだいぶよれてきちゃったし…」

提督「あらら、ずいぶん競合しちゃったわね」

アオスタ「大型潜の娘たちの身体に合うサイズとなると、意外とないものですから」

提督「言われてみればそうね……女性用の大きいサイズだと余っちゃうし、かといって若い娘向けのファッションでもないものね」

アッチアイーオ「なまじ大きい身体だと、そこが悩みどころよね」

提督「ええ……それじゃあ次は…黒革のスキニーね。サイスがタイトだから、選ぶなら気をつけてね」

バンデ・ネーレ「それはボクがもらうよ。サイズも見ておいたけれどちょうどだったからね」

提督「そう、誰か他に欲しい娘は?」

バンデ・ネーレ「…どうやらいないみたいだね」

提督「みたいね。それじゃあバンデ・ネーレ、これは貴女のものよ」

バンデ・ネーレ「よし…♪」

提督「それから次はセーターね……色は微妙だけれど、まぁ普段使いにする分には悪くないと思うわ。誰か欲しい人?」

提督「誰もいない? …それじゃあこれは他の鎮守府へ送る分に回すわ」

提督「それからこれは……」

…しばらくして…

カヴール「では、今度何かの形でお返ししますから」

ザラ「いいのよ、私には少し大きすぎたし……貴女が使ってちょうだい」

カヴール「ええ、ありがとうございます♪」

提督「…それじゃあフレッチアがこっち、フォルゴーレがこっちのにしたら?」

フォルゴーレ「そうね、私はそれでいいけれど…そっちはどう?」

フレッチア「ええ、いいわよ」

アッチアイーオ「そろそろ片付くわね」

提督「そうね…でもみんな喧嘩もなしに融通しあってくれるから助かるわ」

アッチアイーオ「そりゃあ子供じゃないんだから」

レモ「ま、見た目は中学生くらいだけどね♪」

アッチアイーオ「余計なお世話よ…!」

提督「ふふっ…♪」

…夜…

提督「えーと、それじゃあこれが哨戒組の娘たちが希望していた分……と」

…近海哨戒に出ている艦娘たちには出撃前にどれが欲しいか見定めておいてもらい、代わりに提督が「応札」する形で参加していた…そして競合する娘が少なかったおかげで、出撃組にはおおかた希望通りの物が手に入っている…

アッチアイーオ「これなら、あの娘たちも納得じゃない?」

提督「そうね…それにしてもみんな楽しそう」

…すっかりはしゃいでいる駆逐艦や中型潜の娘たちや、姿見の前で服をあてがっては組み合わせを考えるのに余念が無い軽巡や重巡たち…そしてまだまだはしゃぎたい盛りのリットリオたちを除いて、いずれも大人の余裕をのぞかせてコーディネートの助言をしてあげる戦艦勢…

デルフィーノ「やっぱりみんなお洒落はしたいですから」

提督「それもそうよね♪」

デルフィーノ「はい♪」

提督「さてと…それじゃあ二人も色々楽しみたいでしょうし、後は自由にしていていいわ。 お疲れ様」

アッチアイーオ「了解」

デルフィーノ「分かりました」

…中型潜「スクアーロ」級の部屋…

デルフィーノ「ただいまです」

ナルヴァーロ(イッカク)「お帰りなさい…秘書艦の業務はもう良いの?」

デルフィーノ「はい、提督が「どうせ明日以降でもいい書類ばかりだし、今日は選んだ服を試してみたいでしょうから」っておっしゃって切り上げてくれました♪」

トリケーコ(セイウチ)「それは良かったわね」

デルフィーノ「はい♪」

スクアーロ(サメ)「…あら、デルフィーノ……夕食後の執務はなし?」

デルフィーノ「はい、提督が切り上げてくれました♪」

スクアーロ「それは良かったわね…ところで、これはどう?」よく見ると黒革のショートブーツを履いているスクアーロ…きゅっと引き締まったふくらはぎへの曲線と、くるぶしについた金のバックルが足元を引き締めている……

デルフィーノ「あ、それ…」

スクアーロ「そう。さっき競り落としたの…サイズもちょうど良いし、デザインもお洒落だから気に入ったわ」

デルフィーノ「そ、そうですね…///」(まさかさっきあのブーツを使っていやらしいことをしたなんて言えないです…)

ナルヴァーロ「…どうかしたの、デルフィーノ?」

デルフィーノ「いえ、なんでもないです…!」

トリケーコ「おおかたそのブーツを履いたスクアーロ姉さんに踏まれるところでも想像していたのね…♪」

デルフィーノ「ち、違います…っ///」

スクアーロ「いいのよ、して欲しいならそう言って……だってデルフィーノはいやらしいことが大好きだもの…ね?」そう言うと、白く輝く尖った歯で首元を甘噛みした…

デルフィーノ「ふぁぁ…っ、お姉ひゃ…ん///」

スクアーロ「それにしても、本当にこのまま食いちぎりたくなるような柔肌ね…ふふ♪」

デルフィーノ「あふっ…もう、だめですよ……ぉ///」

トリケーコ「ふふっ、デルフィーノってば全然嫌がっているように聞こえないんだから…♪」

ナルヴァーロ「全くね…いやらしくて可愛い♪」

スクアーロ「今夜はじっくり味わってあげようかしら。 …ね、デルフィーノ?」

デルフィーノ「も、もう…お姉ちゃんってばぁ……///」

…とある日…

アッチアイーオ「おはよう、提督」

提督「ええ。おはよう、アッチアイーオ…ん♪」文書便の束を両手で抱えて持ってきたアッチアイーオを執務室に迎え入れると、左右の頬に挨拶の口づけをした…

アッチアイーオ「え、ええ……文書便を持ってきたわよ///」

提督「ありがとう、机の上に置いてもらえる?」

アッチアイーオ「分かったわ…そう言えば提督宛にずいぶん分厚い封筒が届いてるけど」

提督「本当ね、いったい何かしら……あぁ♪」A4サイズの分厚い書籍が楽々と収まりそうな大きい公用封筒に書かれた宛名を見て、得心がいったような声をあげた…

アッチアイーオ「何だか分かった?」

提督「えぇ、これは「交換プログラム」の結果をまとめた報告書よ…各鎮守府の提督たちが提出したレポートをまとめたものね」

…ペーパーナイフで封を切り、中から綺麗に製本されたカタログのような冊子を取り出した……表紙は艶のある紙に単縦陣を組むイタリア海軍艦艇が写っていて、タイトルには「戦術知識交換プログラム報告書」と麗々しく記されている…

アッチアイーオ「提督のもあるの?」

提督「もちろん。最も私の報告書だけじゃなくて、全部の報告書をコピーして見られるようにしておくわ……せっかくだからちょっと読んでみようかしら」目次を見て興味を引いたページをめくる…

提督「…これはルクレツィアの報告書ね「エーゲ海管区・レロス島第十二鎮守府。艇隊司令・ルクレツィア・カサルディ中佐」と……」

アッチアイーオ「カサルディ中佐…あの小柄でさっぱりした感じの人ね」

提督「そうそう…えーと、表題は「エーゲ海における「深海棲艦」船団に対する夜襲についての報告」と…今でこそいくらか静かになったけれど、エーゲ海と言ったら一時は深海棲艦がうようよしていた激戦地だもの……あのMS(※Moto Silurante…魚雷艇)やMAS(※Motoscafi anti sommergibili…直訳すると「対潜機動艇」だが、実際は高速魚雷艇)の娘たちにしたって、なりは小さいけれど、相当暴れていたって聞くわ」

アッチアイーオ「らしいわね」

提督「ええ「…日の2300時、月明を背にした敵船団に対し、島陰を利して隠密接近を図る。夜霧がかかっていたため接近は容易であったが、航跡が白く目立つためごく低速で射点に着く…」魚雷艇の戦いでは鉄則ね」

アッチアイーオ「ま、私たち潜水艦も似たような物だけれど…あっちは潜れない代わりに四十ノットは出せるし、こっちは潜れるけど水中じゃあ七ノットがせいぜい……どっちがいいかは「神のみぞ知る」って所ね」

提督「ええ。続きを読むわよ…「護衛は「ハント」級護衛駆逐艦一隻および「花(フラワー)」級コルヴェット二隻で、護衛駆逐艦が一キロほど先行し、コルヴェットが左右およそ500メートルに展開、およそ八ノットで航行」…目に見えるようね……」

………

…エーゲ海・とある夏の夜…

カサルディ中佐「…いい? 魚雷を発射したら一気に増速、尻に帆かけて逃げ出すわよ」

MS16「分かってるわ、司令」

カサルディ中佐「よし…22も分かってるはずだけど……」夜霧で霞む先をにらみ、僚艇であるMS22を見つけようとする…

MS16「大丈夫、22とは息ぴったりだもん♪」

カサルディ中佐「そうだったね……魚雷は深度三メートル、速度四〇ノットに調整。目標、中央の輸送船タイプ」

MS16「調整よし」

カサルディ中佐「機銃と爆雷は?」

MS16「ブレダ二十ミリは榴弾を装填、8ミリ機銃は通常弾。爆雷は零深度に調定済み…あっちの足元に転がしたらきっと大騒ぎになるよね♪」

カサルディ中佐「ふっ、違いないね……発煙浮標」

MS16「いつでも落とせるよ♪」

カサルディ中佐「よし、それじゃあ一暴れ行きますか…魚雷一番、二番、てーっ!」

MS16「魚雷一番、二番、発射!」発射管から450ミリ魚雷が滑り出してバシャンと水中に飛び込むと、そのまま霧の向こうにぼうっと見える黒いシルエットに向けて航走する…

カサルディ中佐「…気付かれた! 機関全速、取り舵一杯!」深海側も白く伸びる雷跡を目ざとく見つけ、たちまち探照灯が海面を払い、照明弾が打ち上げられる…

MS16「命中! …いいけどにぎやかになってきたね、司令!」

…船団の中ほどにいた3000トンクラスの輸送船に魚雷が命中し、火柱が高々と上がる…しかし同時に深海側のエリコン機銃やポンポン砲がうなり、ヒュンヒュンと空を切る曳光弾の赤い尾と、左右の海面に水飛沫をあげながら着弾する機銃掃射が迫る…小さい身体で舵輪を回しながら、猛烈な速度で離脱を図るMS16…

カサルディ中佐「ちっ、冗談にもならないわ…ハント級が追ってくる!」護衛駆逐艦が急回頭して、離脱にかかっているMS艇に追いすがってくる…

MS16「それじゃあ爆雷があるから落っことしてあげよっか!」追ってくる敵艦の目の前で炸裂するよう零深度に調定にしてある爆雷を艇の後部から転がし、同時に敵艦が爆雷を避けようと回頭したところで座礁することをもくろみ、島の間の浅海をすり抜ける…

カサルディ中佐「……あ、奴さんあきらめたみたいね」どうやら浅瀬の砕け波に気付いたらしく、追撃をあきらめて戻っていく深海棲艦の「ハント」級…

MS16「ふふーん、私もやるでしょ…司令♪」小さい身体で伸びをして、唇にキスをした…

カサルディ中佐「ええ、最高だったわよ……スリル満点でね♪」鉄兜を脱ぐと煤と硝煙と汗にまみれた額を拭い、歯を見せて笑いかけた…

………

済みません、書き間違いがありましたので訂正しておきます。

MAS艇は小型なので450ミリ型の魚雷ですが「MS.Ⅰ」型艇は1941年ごろにユーゴスラビアから鹵獲したドイツ製「Sボート」を参考にしたので、搭載魚雷は533ミリでした…失礼しました。

提督「…で、結果として「3000トン級一隻大破、また僚艇MS22の雷撃により1500トン級一隻撃沈…」と…ここからは夜間の水雷戦に関する戦術論ね」専門的な部分は後でしっかり読み込むこととして、ぱたりとページを閉じた…

アッチアイーオ「ふーん、一回の出撃で一隻撃沈と一隻大破……まぁなかなかね」

提督「あら、アッチアイーオったら妬いてるの?」

アッチアイーオ「なんでこの私が他所の艦娘が挙げた戦績をうらやましがる必要があるのよ、馬鹿馬鹿しい…ところで、それも司令部からの書類じゃないの?」

提督「どれどれ…あ、これね」管区司令部発の封筒を引っ張り出し、封を切る…

アッチアイーオ「で、内容はなんなの?」

提督「今読むわ……あぁ♪」

アッチアイーオ「なんだか嬉しそうね、昇給の通達か何か?」

提督「いいえ、これが届いたの……冬期休暇の申請書類♪」申請手続きの要項が書かれた書類を指でつまんで、お見送りのハンカチのようにひらひらと振って見せた…

アッチアイーオ「あぁ、もうそんな時期ね…」

提督「ええ。ここに着任してから毎日充実はしているし満足もしているけれど…夏の休暇は色々あって結局忙しかったし、クリスマスは実家でのんびりしたいわ」

アッチアイーオ「そうね、それもいいんじゃない? ところで……」

提督「…もしアッチアイーオが良ければ、私と一緒に冬期休暇を過ごさない?」

アッチアイーオ「…っ///」

提督「言いにくそうにしているから、てっきりそういうことなのかと思ったけれど…違った?」

アッチアイーオ「ち、違わないわよ…っ///」

提督「ふふ、良かった……みんなの分の申請書も入っているから、後でちゃんと渡さないと」

アッチアイーオ「そうね」

提督「ええ…って、もうこんな時間。 …今さら書類の処理を始めても中途半端になっちゃうでしょうし、いっそ先に申請書を配っちゃいましょうか♪」

アッチアイーオ「私はいいけど…午後の執務が大変になるんじゃない?」

提督「いざとなったら貴女がいるから大丈夫♪」

アッチアイーオ「もう、調子がいいんだから…///」

…数分後・中型潜「ペルラ」級の部屋…

提督「…失礼、ちょっといいかしら?」

ペルラ「どうぞ?」

提督「チャオ、ペルラ…みんなも♪」

ベリロ(ペルラ級「ベリル(緑柱石)」)「ごきげんよう、提督…どうかしましたか?」

提督「ええ、実はこれが届いたから渡しておこうと思って……♪」

ディアスプロ(ペルラ級「ジャスパー(碧玉)」)「あ、冬期休暇の申請書ですね」

提督「そう。国内なら大丈夫だけれど、どこか海外に行きたいようなら管区司令部が渡航していいか審査するから…少し早めに出した方がいいわ」

トゥルケーゼ(ペルラ級「トルコ石」)「…非友好国や紛争中の国もありますからね」

提督「そういうこと。まぁたいていの西ヨーロッパ諸国と、アドリア海を挟んだ「お向かい」のアルバニアやクロアチアとかなら大丈夫でしょうけれど…ところで、そのネックレス……」

…それぞれ宝石や貴石を艦名に持ち、由来となった宝石のアクセサリーをたくさん持っているため、まるで宝飾品店の店先のようにきらびやかなペルラ級の部屋…今もお互いにネックレスや指環、ティアラを交換して試していたようだが、提督はペルラたちのネックレスを見て、妙な表情を浮かべている…

ペルラ「とても綺麗でしょう、提督?」白い真珠のネックレスを首にかけている…

提督「そうねぇ…とても艶のあるいい真珠だし、ペルラに似合っていて素敵だけれど……少し長くないかしら?」提督が持っている40センチや45センチのネックレスに比べると少々長く、胸の谷間に届こうとしている…

ペルラ「ええ、でもこれでいいんです♪」にっこりと微笑むと綺麗な白い歯がのぞく…

提督「…と言うと?」

ペルラ「ちょうど53.3センチあるんです」

提督「あ、533ミリ魚雷と合わせてあるわけね♪」

ペルラ「はい」

提督「なるほど……それじゃあ休暇申請の方はよろしくね?」

ペルラ「了解♪」

…お茶の時間・食堂…

カヴール「…クリスマス休暇の申請書ですか」

ライモン「早いものですね、提督?」

提督「本当にねぇ……でもローマにいたときの気ぜわしい感じとは違って、一日が鮮やかに彩られている気分よ♪」

アッテンドーロ「へぇ、提督ったら詩人ね……」

ルイージ・セッテンブリーニ(中型潜セッテンブリーニ級)「提督は文学も良くたしなまれておりますからね」(※セッテンブリーニ…リソルジメント(イタリア統一運動)に参加した愛国詩人)

ゴフレド・マメリ(中型潜マメリ(マメーリ)級)「図書室でもよく会うものね」

(※マメリ…同じく愛国詩人でガリバルディの側近として共闘。現在のイタリア共和国国歌「フラテッロ・ディターリア(イタリアの兄弟)」を作詞したことから、この曲を「インノ・ディ・マメーリ(マメーリの賛歌)」とも呼ぶ)

ジョスエ・カルドゥッチ(駆逐艦オリアーニ級)「確かに提督は読書家です」(※カルドゥッチ…同じくノーベル文学賞の詩人で愛国者)

提督「もう…文学者の皆に言われるとくすぐったいわ♪」

ガリレイ「…あら、みんな楽しそうね」

トリチェリ「なんのお話をしていたんですか?」

提督「あら、みんな……今はちょうど「冬期休暇の申請書が来た」って言う話をしていたのよ。 みんなの部屋にも届けたから、早めに記入して提出してね?」

…提督たちがのんびり会話をしていると、鎮守府の科学者や天文学者、物理学者の名を持つ潜水艦の娘たちがぞろぞろと入ってきた…そしていずれも中世の学者たちが科学とともにたしなんでいたためか「錬金術士」の格好をしていて、可愛らしいケープや帽子をまとっている…

トリチェリ「はい♪」

アルキメーデ「それなら早めに記入しないといけませんね」

提督「ええ…ところでなんだかいい匂いがするわね?」

ダ・ヴィンチ「ふふーん、提督ったら……せっかく驚かそうと思っていたのに♪」今日はピンク色の帽子に同系統の色合いでまとめた短いケープと上着、それに膝丈のプリーツスカートで、脚は飾りのついた茶革のニーハイブーツでまとめている…

提督「?」

ダ・ヴィンチ「じゃーん…♪」後ろ手に隠していた皿を前に回して披露する…

提督「あら、美味しそうなパイ…厨房で作ったの?」

ダ・ヴィンチ「いいえ、ちょっと錬金釜でね♪」

提督「へぇぇ、錬金術でパイを…ねぇ。 …まぁ錬金術かどうかはさておき、美味しそうに出来ているわね」

ダ・ヴィンチ「良かったら味見する?」

提督「ええ、せっかくだから…それと良かったら、みんなにも一切れずつ分けてあげて?」

ダ・ヴィンチ「もちろん…♪」ナイフを入れると「さくっ」と良い音を立て、焼けたパイ皮とバターの香ばしい香りと、中に詰めたリンゴの甘い芳香が立ちのぼった…

提督「あら、いい香り……いただきます」フォークで小さく切ると口に運んだ…パイ皮は軽くさっくりとした歯ごたえで、中のリンゴは食べにくくならないようプレザーヴ(少し形を残したジャム)スタイル、そしてシナモンは利かせずさっぱりした味わいに仕上げてある…

ドリア「…あら、本当に美味しいですよ」

セッテンブリーニ「レオナルドは万能の天才ですね♪」

ダ・ヴィンチ「…提督はどう?」

提督「ええ、とっても美味しい。 私はシナモンが多いタイプのアップルパイは苦手だから、こういう味だと嬉しいわ♪」

ダ・ヴィンチ「良かった……おかげでちゃんと提督に食べさせることが出来たし♪」

提督「え、それってどういう…っ!?」不意に脳の血管に「どくん…っ!」と拍動が響いた…

ライモン「うっ…!?」

ドリア「あ、頭が……」

ダ・ヴィンチ「…その様子だと上手くいったみたいね♪」

提督「ダ・ヴィンチ、このパイに一体なにを……」

ダ・ヴィンチ「実はねぇ…そのパイは「一時的に性格を変えちゃうパイ」なの♪」

カルドゥッチ「なんでそんなものを食べさせたんですか…」

ダ・ヴィンチ「いや、それが作ってみたら普通に出来ちゃったものだから試してみたくて♪」

ガリレイ「あれ、普通のパイじゃなかったの…?」

トリチェリ「てっきり私もただ錬金術でパイを作ったものと……」

セッテンブリーニ「そんなことはどうでもいいから…提督、大丈夫ですか?」まだパイに手を付けていなかったセッテンブリーニが提督を揺さぶる…

提督「…」

ダ・ヴィンチ「…提督?」

提督「……ふぅーん。ダ・ヴィンチは普段の私じゃあ満足出来なかったわけ」ゆらりと椅子から立ち上がった提督は、金色の瞳に妖しげな光をたたえている…

ダ・ヴィンチ「いえ、別にそういう意味では…」

提督「じゃあどういうつもりでこんなことをしたの…ねぇ?」あごに親指をあてがい、ぐいと顔を上げさせる…

ダ・ヴィンチ「えぇと、だから面白いかと……」

提督「そう、じゃあ私も面白ければダ・ヴィンチに何をしてもいいわよね…ぇ♪」

ダ・ヴィンチ「え、えっ……///」

提督「どうしたの、だって面白ければ何をしてもいいんでしょう? 少なくとも、私は面白いわよ…♪」ダ・ヴィンチの腰に手を回してぐっと引き寄せ、さげすむような視線を投げかける…

ダ・ヴィンチ「あう…///」

提督「ふふっ、おどおどしちゃって可愛いじゃない…♪」んちゅ、むちゅ…じゅるうぅっ♪

ダ・ヴィンチ「んふっ、んんぅぅ…っ///」

提督「んちゅ、ちゅぷ……ちゅるっ、ぢゅむ…じゅるぅっ♪」

ダ・ヴィンチ「んっ、ふぅぅん…っ///」

提督「ちゅむぅっ……ぷは♪」

ダ・ヴィンチ「…はひぃ///」

提督「あら、もう終わり……?」口元から垂れた唾液を手の甲で拭うとゆっくり視線を動かし、食堂にいる娘たちを品定めするようにねっとりと眺めた…

トリチェリ「うわ、提督の目が据わっていますよ…先生、どうするんですか?」

ガリレイ「と、とにかく効果が抜けるまで待つしかないでしょう…ドリアたちは?」

トリチェリ「そう言えばライモンドとムツィオも食べていましたね…」恐る恐る視線を向ける…

ドリア「わー、このパイおいしー♪ ドリアこれ大好きですぅ♪」普段はおっとりした妙齢の女性であるドリアがぶりっ子の小娘のように高っ調子の声をだしている…

トリチェリ「…」

ガリレイ「1916年生まれの淑女がやってると痛々しい事おびただしいわね……ライモンドたちの方はどうなったの?」

ライモン「…ムツィオはいちいちわたしと提督の仲に口を挟みすぎです!」

アッテンドーロ「だって、私…お姉ちゃんの恋が成就してほしいから良かれと思って……」

ライモン「余計なお世話です! わたしは提督と愛を交わした仲だし、一昨日の晩だって三時間も情を交わしましたっ!」いつもは律儀で奥ゆかしいライモンがちゃきちゃきのナポリっ娘のようなべらんめえでまくし立て、さばさばした性格のムツィオは歯切れが悪い…

ガリレイ「…それはそれは♪」

トリチェリ「先生、今のは聞かなかったことにしてあげないと……きっとライモンド、後で真っ赤になっちゃいますよ」

ライモン「だいたい提督だって提督です! いっつも可愛い女の子とみれば見境なしに口説いて回って…ちょっと、聞いてますか!」

提督「どうしたのよ、ライモン…へぇ、眉をつり上げて怒ってみせて……嫉妬だなんて可愛いじゃない、その怒り顔がめろめろにとろけきるまで抱きたくなるわ…♪」身体を寄せると頬に手を添え、もう片方の手をスカートの中に滑り込ませる…

ライモン「言いましたね、今日はわたしの指で腰が抜けるまでイかせてあげますから!」

提督「あら、ライモンにそんなことが出来るのかしら……いつも鳴かされてばっかりのライモンに♪」長テーブルに上半身を押し倒す形で抱き合い、お互い主導権を争うように唇をむさぼり、乳房をこねくり回し、秘部に滑り込ませた指をくちゅくちゅと動かす…

トリチェリ「…あの、先生」

ガリレイ「はい、トリチェリ」

トリチェリ「提督とライモンドですが……性格こそ変わっていますが、やっていることはいつもとそう変わらないのでは?」

ガリレイ「え、なに…耳が悪くてよく聞こえなかったわ」

トリチェリ「…」

トリチェリ「と、とにかく早く何とかしませんと…!」慌てて食堂の壁掛け電話に駆け寄り、内線を回してラッパ型の送話器にとりついた…

…執務室…

アッチアイーオ「ふぅ、そろそろ私もお茶を飲みに行こうかしら……」と、内線が「リリリンッ…!」と鳴り響いた…

アッチアイーオ「内線?一体何かしら? …はい、こちら執務室」

トリチェリ「もしもし、こちら食堂です……執務室聞こえますか!」

アッチアイーオ「ええ、聞こえるわよ。 一体どうしたって言うのよ、トリチェリ…そんなに慌てふためいた声を出して?」

トリチェリ「アッチアイーオですか? 食堂でトラブルなんです、至急来て下さい!」

アッチアイーオ「トラブル?」

トリチェリ「はい、提督がダ・ヴィンチの作ったパイを食べたら性格があべこべになってしまって……とにかく手の付けようがないんです」

アッチアイーオ「またあのイカれた天才が何かやらかしたのね…了解、すぐ行くわ」

トリチェリ「はい、お願いしま……」そこまで聞こえた所で唐突に通話が切れた…

アッチアイーオ「トリチェリ?ちょっと、どうしたのよ?」再三話しかけてみるが、応答がない…

アッチアイーオ「……とにかく提督がおかしくなってるって言うんなら、平手打ちでもなんでもして正気に戻してあげるのが秘書艦の務めってものよね…!」

…食堂…

トリチェリ「はい、お願いします…!」そう言いかけた所で後ろから甘い吐息が吹きかけられたかと思うと、突然送話器のフックを押され電話を切られた…

提督「せっかく私が近くにいるのに、他の誰かとおしゃべりなんてしないで欲しいわねぇ……」

トリチェリ「えぇと、提督…とにかく落ち着いて下さい」

提督「あら、私は落ち着いているわよ…トリチェリ♪」トリチェリを壁に押しつけて頭のすぐ脇に手をつき、同時に膝の間に脚を割り込ませる提督……紅いルージュを引いた唇がゆっくりと、しかし着実に迫る…

トリチェリ「ん、ふ……///」

提督「んむ、ちゅっ、じゅるっ……ちゅるぅっ…」

トリチェリ「んんぅ…ん、あふっ……んん…っ///」

提督「ぷは…♪ 美味しかったわよ、トリチェリ。 それじゃあ皆の様子も見てくるけど……戻ってきたら、もっと素敵な事をしてあげるから…ここでいい娘にしていなさい♪」

トリチェリ「ふぁ…い///」

…廊下…

提督「あら、アッチアイーオ…♪」

アッチアイーオ「提督、食堂で一体何をやらかしたの…返事いかんでは提督と言えども引っぱたくわよ?」

提督「あら、怖い顔……でもね」普段の柔和な笑みとは違うサディスティックな欲望をどろりとにじませた表情を浮かべ、じりじりと距離を詰めてくる…

アッチアイーオ「ちょっと、それ以上近づかないで…っ///」

提督「…アッチアイーオ、貴女に私の事をぶったり出来ないのは分かっているの」

アッチアイーオ「……っ///」両の手首をつかまれ、口づけされるアッチアイーオ…相変わらず上手なことは上手だが、いつもの提督とは真逆の、相手を考えない自分本位のわがままなキスが続く……

提督「ふふ……脅しをかけるなら、もっと真実味のある嘘をつかないとだめよ…♪」

アッチアイーオ「もう知らない……どうとでも好きにすればいいでしょ…///」

提督「そうね、鋼鉄も熱すれば柔らかくなるというし……すぐとろっとろにして私好みの鋳型に流し込んであげるわ」んちゅっ、ちゅむ……♪

アッチアイーオ「んっ、んちゅ、ちゅぷ……んっ、あぁぁ…っ///」

提督「アッチアイーオったら、もうイっちゃったのね…♪」軽蔑をにじませたような声で耳元にささやく…

アッチアイーオ「ええ、そうよ……だって…提督とするのがたまらなく好きなんだものっ///」

提督「よく言えたわね……それじゃあご褒美にもう一回してあげる…♪」ちゅぷっ、くちゅっ……♪

アッチアイーオ「あっ、あっ、あぁぁぁ…っ♪」そのまま提督の身体にしがみつき、人差し指と中指でゆっくりと膣内をかき回されながら果てた…

………

…数分後…

提督「…スクアーロ、貴女は噛みつく悦びなら知っているでしょうけれど、たまには……噛みつかれる悦びを味わってみない?」かぷっ…♪

スクアーロ「んっ…んぁぁ♪」

提督「ふふふ……お腹が白くてとってもきれいね♪」ちゅ、ちゅ…っ♪

スクアーロ「提督ぅ…んっ///」

提督「ふーっ…可愛かったわよ、スクアーロ♪」

スクアーロ「ふあぁ…っ……///」しゃがんだ提督に脇腹を甘噛みされ愛撫され、最後はおへその辺りに息を吹きかけられると力が抜けたようにくずおれた…

提督「さーて、スクアーロ(サメ)のおつぎはデルフィーノ(イルカ)にしようかしら…♪」

デルフィーノ「あっ、あっ…あふっ……んっ♪」くちゅくちゅっ、ちゅぷっ…ぐちゅっ♪

提督「あら、デルフィーノってば私が「してもいい」とも言わないのに…どうして一人で勝手に始めているの?」

デルフィーノ「らって…ぇ♪」

提督「……あら、言い訳をするつもり? そんな悪い娘にはお仕置きが必要よね…ぇ♪」

…廊下で出くわすなり提督に責めまくられてイかされた姉スクアーロの様子を見て、これからされることを考えて欲情がおさまらないデルフィーノ…何もしないうちから内股になり、とろけた顔で膣内をかきまわしている…

提督「まったく、可愛い顔をしておきながら……そこで仰向けになりなさい」

デルフィーノ「ふあ…ぁ♪」

提督「…さあ、どうすればいいと思う? 頭のいい貴女なら分かるわよね?」ヒールを脱ぐと、黒いストッキングで包まれたつま先を顔の前に突き出した…

デルフィーノ「ふぁい……んちゅっ、れろっ……ぴちゃ…♪」片手で秘部をかき回しながらもう片方の手で提督の足を握ると、恍惚の表情を浮かべて一心に舐め始めた……

提督「ふぅん、デルフィーノはそうするべきだと思ったのね……もういいわ」

デルフィーノ「あ…」

提督「まだ舐めたいの? 相変わらずどうしようもないほどの発情期ね……安心なさい、まだ終わらせないから…♪」デルフィーノを軽蔑したような視線で見下ろすと、舐め回されてじっとりと濡れたつま先を濡れそぼったデルフィーノの花芯にあてがった…

デルフィーノ「ふあぁぁ…っ、ていとく…気持ひいいれす……っ♪」ぷしゃぁ…ぁっ♪

提督「全く、廊下の真ん中で愛液を滴らせながらよがって…デルフィーノ、どういうつもりなの?」

デルフィーノ「らってぇ…ていとくの足が……あそこを…ぐりぐりって……気持ひぃ…んぁぁぁっ♪」

提督「そう、それは良かったわ……ねっ♪」そう言って足をどけると、踏み換える形でヒールのかかとをデルフィーノの割れ目に押し込んだ…

デルフィーノ「んあぁぁぁ…っ♪」

提督「…それじゃあ、後はきちんと片付けておきなさい」

デルフィーノ「りょうかい…れふ……んくぅ…っ♪」

…作戦室…

アオスタ「はい、こちら作戦室……え、何ですか? 提督が?」内線を取るなりまくし立てられたらしく、しばらく耳を傾けているアオスタ…しかし話の内容が腑に落ちないらしく、眉をひそめてけげんな表情を浮かべている……

アオスタ「……一体どういう事ですか…とにかく分かりました、秘書艦の二人は? …連絡がつかない? 了解、ならばこちらから指示を出します…とにかく館内放送をかけますから」

トレント「…どうしたんですか?」

アオスタ「ええ…実は食堂から連絡があって、ダ・ヴィンチのせいで提督の性格があべこべになって大変だって……」

トレント「あべこべ…ですか?」

アオスタ「聞いた限りではとにかくわがままで自分本位、相手のことを考えないでキスしたり、それ以上も……とにかく襲われた娘が出て大変だって連絡があったわ///」

ザラ「なんだ……確かにスタイルはあべこべだけど、やっている事はいつもと同じじゃない」

アオスタ「冗談を言っている場合じゃないでしょう…とにかく提督と接触しないよう館内放送をかけます」

トレント「了解…それとここの鍵もかけます」

アオスタ「そうね」

館内放送「全艦娘に告ぐ!全艦娘に告ぐ! 現在、提督は正常な状態になく、鎮守府司令官としての職務遂行に問題があります…同時に、提督との接触は性的に非常な危険を伴いますから、全艦娘は居室ないしは手近な室内へと退避し施錠を行い、もし提督が解錠を指示、懇願、命令しても開けないよう伝達します!これは演習ではありません!繰り返します……」

提督「ふーん、館内放送とは思い切ったわね…♪」

…船渠…

ニコ(ニコロソ・ダ・レッコ)「ふー、疲れた」

ニコロ・ツェーノ「練習も楽じゃないからね…」

館内放送「…繰り返します…提督は現在……」

レオーネ・パンカルド「待って、館内放送が……」

ニコ「…館内放送? 一体何だろう?」

チェザーレ・バティスティ「さぁ…音量を上げないと聞き取れないかも……」

ニコ「弱装薬とは言え、砲撃練習の後だからね……」壁のスピーカーに手を伸ばしかけたところで、入口に立っている提督の姿を認めた…

提督「…」

ニコ「あぁ、提督…ニコロソ・ダ・レッコ以下駆逐艦四隻、ただいま練習より帰投しました!」

提督「ええ、ご苦労様……さぞ汗をかいたでしょうね…ぇ♪」そう言いながら後ろ手に船渠入口のドアを閉めた…

ニコ「はい……あの、提督?」

提督「…脱いで」

ニコ「えっ?」

提督「脱いでと言ったの…聞こえない?」

ニコ「いえ…」

提督「…それじゃあ四人とも並んで、気を付け」

四人「「…」」キャミソールやショーツとブラなど、それぞれ下着姿で並んだ四人…

提督「ふーん……」閲兵するかのように両手を後ろ手に組み、舐め回すような視線でニコたち四人を眺める…

ツェーノ「…」

提督「…れろっ」

ツェーノ「…っ///」

提督「しょっぱいわね……んちゅぅ…ぅ♪」ツェーノの鎖骨周りに吸い付くようなキスをすると、今度はバティスティの耳を舐め回した…

バティスティ「ふあぁ…っ///」

提督「バティスティ「気をつけ」は?」

バティスティ「はっ…///」

提督「よろしい……ちゅるっ、ちゅぷ…♪」隣に移ると直立不動の姿勢を取っているパンカルドの前で身体を屈めてお腹に口づけをし、脇腹に沿って舌で舐めあげる…

パンカルド「はひっ…///」

提督「いつ私が「休め」なんて言った…気を付け♪」

パンカルド「は、はい…っ///」

提督「パンカルド、貴女の「気を付け」はそういう姿勢なの?」前から手を回してきゅっと引き締まったヒップを撫でながら、蔑むような声でささやく…

パンカルド「い、いえ…!」

提督「そうよね……それじゃあもう一度、気を付け」

パンカルド「はい…っ///」

提督「結構…それじゃあ最後は……んむっ、ちゅる……じゅるっ、ちゅぷ…っ♪」ニコをレンガ敷きの床に押し倒して、白いショーツを引き下ろして指を秘部に滑り込ませると同時に、一方的なキスを浴びせかけた…

ニコ「ん、んんぅ…あふっ、んちゅ……んぅぅ…っ♪」

提督「ふう……よろしい、解散」しばらくニコをむさぼっていたが満足したと見えて、唐突に立ち上がると命令口調で言った…

ニコ「はへぇ…///」

ツェーノ「ニコ、大丈夫…!?」

ニコ「ふわぁ…ぁ///」

…数分後…

アオスタ「それで、提督の現在位置は?」

トレント「…分かりません」

アオスタ「困ったわね…とにかく外に出ていた娘たちはモーターランチで海上に退避してもらったし、鎮守府の中にいるみんなには鍵のかかる部屋に籠城してもらったから、あとはパイの効果が切れるのを待てば良いのかもしれないけれど……被害が出ては困るわ」

ザラ「とはいえ私たちは艦娘なんだから、いざとなったら提督一人を抑え込むことくらいはできるんじゃない?」

アオスタ「そうかしら…タガが外れた提督を相手にするとなったら、一筋縄で行くとは思えないけれど……」

トレント「…確かに」

ザラ「……それもそうね」

…一方…

館内放送「…全艦娘に告ぐ!全艦娘に告ぐ!……」

アレッサンドロ「…ふふーん♪」

セルペンテ「ふぅ…ん♪」

ガリバルディ「へぇ…「性的に危険な」状態の提督、ねぇ♪」

エウジェニオ「…面白そう♪」

デュイリオ「あらあら…♪」

メドゥーサ「それはぜひとも愉しませてもらわない…と♪」

…それぞれの居室にスピーカーを通して流れてきた館内放送を聞くと読書や爪の手入れを終わらせ、他の艦娘たちとは逆に笑みを浮かべたり舌なめずりをしながら部屋を出る数人の艦娘たち…

…数分後…

提督「あーあ、誰もいないしつまらないわね。せっかくみんなを「教育」してあげようと思ったのに……♪」冷たく歪んだ欲望をたたえた瞳で辺りを見回しながら、鎮守府を歩き回る提督…

提督「せっかく私が部屋をノックしても誰も出てきてくれないし…いっそのこと「司令官命令」って言って無理にでもドアを開けさせて……」両手を後ろ手に組んだまま、つまらなそうに廊下を歩く提督…

アレッサンドロ「…その必要はないよ、提督♪」むにゅ…♪

提督「その声はアレッサンドロね……いきなりどこを触っているの?」乳房を持ち上げるように下から回されたアレッサンドロの手を取ると、ダンスを踊るようにくるりと回って向かい合った…

アレッサンドロ「それはもう、この豊かなふくらみ…さ……」浮いた台詞が出かかった所で提督に見据えられると、いつもの暖かな雰囲気とは違うサディスティックな瞳の色に身体が固まった…

提督「ねぇアレッサンドロ、外に出ちゃいけないってアオスタが放送していたでしょう…聞こえなかったの?」

アレッサンドロ「いや、聞こえてはいたけれどね…提督も一人じゃあ寂しいだろうと思ってさ……///」

提督「そう……でももし私が敵だったら、貴女はどうなるかしら…♪」そのまま数歩ばかり歩を進め、アレッサンドロを壁に押しつける…

アレッサンドロ「いや、でも提督は敵じゃないから……んっ///」

提督「それで…?」片手をアレッサンドロの服の中に入れてふっくらした胸をまさぐり、耳元にささやきかけつつ吐息を吹きかける…

アレッサンドロ「んくっ……んっ、あ…///」提督のもう片方の手が花芯に伸び、綺麗な指がするりと入ってくる…

提督「さぁ、アレッサンドロはこの状況からどうやって離脱するつもり……ほら、早く抜け出さないと…♪」くちゅ、くちゅ…っ♪

アレッサンドロ「んあっ、あふっ……あ、あ…っ♪」

提督「ほらほら、時間が経てば経つほど不利になるわよ…?」膝の辺りまで下着を引き下ろし、わざと粘っこい水音が響くように指を動かす…

アレッサンドロ「ふあぁ…提督っ、いいよ……いい…っ♪」くちゅ、とろ…っ♪

提督「そんな簡単にイっちゃったらつまらないわ……ほら、綺麗にして」とろりと糸を引いた右手を口元に突き出した…

アレッサンドロ「ふぁ…い///」膝の力が抜けてがくがくと震えるなか、提督が手を引っこめるまで人差し指と中指を丁寧に舐めあげた…

提督「後は好きなだけ自分でするといいわ……それじゃあ」

アレッサンドロ「りょ、了解…っ///」ぺたりと床に座り込み、トロけた表情で指を秘部に這わせる……

………



…さらに十数分後…

セルペンテ「提督、海蛇(セルペンテ)に締め付けられたら逃れられないわよ…っ♪」

提督「そうね…でも、逃げる必要なんてあるのかしら……んちゅっ、ちゅっ、ちゅるっ、じゅるぅ…っ♪」

セルペンテ「ん、んぐぅ…っ!? ……あひっ、い゛…っ///」ぷしゃぁぁ…♪



メドゥーサ「私の眼を見て、提督……ほぅら、もう動けないでしょう?」見たものを石化させるというメドゥーサだけに、瞳で相手を見据えると身体をしびれたように動かなくさせることが出来る…

提督「ふふ…たとえ貴女がメドゥーサだとしても、私からすればただのかわいい娘に過ぎないわ……♪」金色の瞳がカエルをにらむ蛇のようにメドゥーサをねめつけ、舌が滑り込んでくる…

メドゥーサ「う、嘘でしょ……あ、あっ…んんぅ///」

提督「残念だったわねぇ…ゴーゴンの三姉妹の中で末っ子の貴女だけは人間に倒せるのよ? ……あるいは、私がステンノかエウリュアレーなのかもしれないけれ…ど♪」

(※ステンノ、エウリュアレー…ギリシャ神話に出てくるゴーゴン三姉妹の長女と次女。メドゥーサは髪の毛が蛇だが、上の二人は髪の毛が龍で不死身のため、ペルセウスにも退治は出来なかった。ゴーゴンにされてしまった理由は諸説あるが、月と守護の女神アテネに対し美しい髪を自慢して憎まれたためだとも言われる。一説にはアテナの機嫌を損ねた末っ子メドゥーサをかばったために二人も妖怪にされてしまったという)

メドゥーサ「は…はひっ……///」



デュイリオ「うふふっ…ここは通しませんよ、提督♪」豊満な身体で包み込むようにぎゅっと抱きしめ、胸元に顔を埋めさせる…

提督「そう……でも、貴女に私が止められるかしら…旧型の貴女に?」ちゅっ、ちゅるっ…むちゅっ…じゅるるぅぅっ、ちゅぱ…♪

デュイリオ「あんっ、あっ……あふっ…んぅ♪」

…執務室の前…

ガリバルディ「ねぇ、提督……執務室に入る前に…私に抱かれて、熱き血潮をたぎらせてみない?」

提督「ええ……もし私を熱くさせられるものならね」

ガリバルディ「言ったわね…革命家は恋愛も熱いのよ♪」

提督「んふっ、んちゅる……ぢゅるぅぅ…っ、れろっ…ちゅぷ……っ、んちゅ…♪」

ガリバルディ「ふ、んふっ…あむっ、ちゅるぅ…っ、ちゅ、ちゅ…っ…ちゅるっ、ちゅぅぅ…っ///」

提督「…ぷは」

ガリバルディ「はー、はー…っ///」

提督「もう終わり? …気が済んだのならここを通しなさい、ガリバルディ」

ガリバルディ「…オッベディスコ(従う)」

…執務室…

提督「ふぅぅ…」

エウジェニオ「……ずいぶんお疲れのようね、提督」

提督「エウジェニオ、執務室に何かご用?」

エウジェニオ「ええ……その綺麗な顔を間近で見たくて…♪」するりと後ろに回り込むと肩に手を回し、耳元でささやいた…

提督「今日はみんながそう言ってすり寄ってくるわ……」

エウジェニオ「安心して、私で最後よ…♪」ちゅっ、ちゅ…っ♪

提督「ん、あ……っ///」

エウジェニオ「みんな貴女の事が分かってないのよね……力づくでどうこうしようとしたってどうにもならないの…に♪」ちゅ…っ♪

提督「んふっ、あむ…っ♪」

エウジェニオ「…こういう時は純粋で優しい口づけから始めないと……ちゅ、ちゅ…っ♪」数分ばかりついばむようなキスをしていると、次第に提督の瞳に光が戻ってきた……

提督「んちゅ……エ、エウジェニオ…ちょっと待って///」

エウジェニオ「あら、どうやら元に戻ったみたいね……でも駄目、しばらくは私と付き合ってもらうわよ♪」

提督「ええ……あっ、あん…ああぁんっ♪」

…数時間後…

提督「ふぅ…はぁ……んっ♪」

エウジェニオ「ふふふ、可愛かったわよ…提督♪」ベッド脇の小机に畳んでおいた服を手際よく着ると「それじゃあね♪」と小さく手を振り、ウィンクを投げて出て行った…

提督「あ、んんぅ…またね……エウジェニオ…」

提督「はぅん…っ……とっれも、気持ひ…よかった…ぁ///」身体のあちこちにじんわりと残るエウジェニオの指先の余韻を感じながら、ベッドで仰向けになっている提督……

提督「……せっかくだから…もう、ちょっとだけ…♪」くちゅ…っ♪

………

…翌日・会議室…

提督「さてと…ダ・ヴィンチ、何か申し開きしたいことは?」

ダ・ヴィンチ「反省はしているけれど、後悔はしていないわ…だって試したかったんだもの」

提督「そう……では、みんなの意見は?」

カヴール「普段でしたらちょっとしたいたずらとして口頭での注意で良かったのでしょうが、提督が執務できないような状態だったことを考えますと……何かしらの罰直は必要かと」

ザラ「そうね、アオスタが提督の「指揮不適格」を宣言して鎮守府の指揮系統を維持したから良かったようなものの…まかり間違えば大変な事になっていたかもしれないわ」

アオスタ「そうですね、それにあの時は秘書艦の二人まで所在不明…実際は行動不能の状態だったと聞いています」

マエストラーレ「そうね……とりあえず何かしらの罰は必要じゃない?」

ベネデット・ブリン「本官もそれには同意する」

フルット「心苦しい限りですが、ちょっと度を過ぎておりましたからね」

提督「分かったわ…それじゃあみんなはどの程度の罰にすればいいと思う?」

カヴール「ことさらに悪気があったわけではないですし、一日だけ外出禁止と言うのはいかがでしょうか」

ザラ「そうね…トイレ掃除一週間でいいんじゃない?」

アオスタ「数日間は休憩中のトランプやゲームを禁止ですね」

提督「なるほど、よく分かったわ…でも「外出禁止」と言ってもそう出かけるわけじゃないから効果がないし、当直や見張りは大事な事だから、罰でいやいややるべきじゃないわ。それに私も私自身と秘書艦が両方ともどうにかなってしまった時の事を考えていなかったわけだし、その点では良い薬になったから……」

ブリン「ではどうなさいますか?」

提督「ええ、実は一つ考えがあって……」

………

トリチェリ「…それでこうなったのですか」

ダ・ヴィンチ「ええ……」

提督「ふふっ…これなら迷惑をこうむったみんなも文句はないでしょうし、下手な罰直よりも効果的じゃないかしら?」

…廊下の掲示板には提督がサインを入れた張り紙が画鋲で留められ「罰直…レオナルド・ダ・ヴィンチ。期間…本日0001時から2359時まで。内容…全員が依頼する雑用全般」とある…

ダ・ヴィンチ「全くね…みんなまるで私の事を馬車馬のごとくこき使うんだもの」

チェザーレ「レオナルド、済まぬがコーヒーを持ってきてくれぬか…少し熱くして、スプーマ(泡)は多め、砂糖はひとさじで頼むぞ」

ダ・ヴィンチ「はいはい…」

ディアナ「それが終わったら、お皿洗いを手伝って下さいな」

ダ・ヴィンチ「分かってます」

マエストラーレ「それが済んだらこっちもお願いね」

ダ・ヴィンチ「ああもう…こうなると知ってたらもっと色々しておけば良かったわ!」

提督「もしそうしていたらこんなものじゃあ済まなかったでしょうね…終わったら私にもコーヒーのお代わりをちょうだいね」

ダ・ヴィンチ「むぅ…!」

ルチア「…ワフッ!」

ダ・ヴィンチ「もう、ルチアまで!?」

………

…とある日・執務室…

提督「それじゃあ今日も執務のお手伝いをよろしくね…アッチアイーオ、デルフィーノ♪」

デルフィーノ「はい、提督♪」

アッチアイーオ「ええ…しかしこのところ提督を始め、みんな妙に浮かれているわね」

提督「だってあとひと月もすればクリスマスじゃない…しかもうちの鎮守府は本来しなくて済んだはずの秋期作戦を失敗したよその鎮守府に代わって実施したから、冬期作戦への参加はなし……つまりみんなが押しつけ合うクリスマス前後の作戦はお休みできるから、問題なく休暇が取れるはずなのよ♪」

アッチアイーオ「なるほどね」

提督「あら、アッチアイーオはクリスマス休暇が嬉しくないの?」

アッチアイーオ「そりゃあ嬉しくないわけじゃないけど…」

デルフィーノ「アッチアイーオは寒くなると性格まで冷たくなっちゃうんですよ…何しろアッチアイーオ(鋼鉄)ですから」

提督「そう言えばそうだったわね……まぁ、私も休暇の申請書は出しておいたし、管区司令部の審査も無事に通るはずだから…もし予定がないようなら、一緒に私の実家で過ごさない?」

アッチアイーオ「…そうね、考えておくわ」

提督「ええ♪」

ライモン「提督、文書便が届きましたよ」

提督「グラツィエ、ライモン…ライモンもまた私の実家に来る?」

ライモン「え、えぇと……」

提督「返事はまだ良いわ…あくまでも「冬期休暇のプランの一つとして考えておいて?」ってことよ♪」

ライモン「はい///」

提督「…それと、十二月のあいだは鎮守府にも飾りを施したりご馳走を作ったりして、クリスマスらしい雰囲気を作りたいわね……入り用なのはクリスマスツリーと…飾りなんかは倉庫にあるのかしら?」

デルフィーノ「さぁ…どうなんでしょう?」

アッチアイーオ「調べてみないと分からないわね……それより、その書類って管区司令部からの書類なんじゃない?」届いた文書便をより分けながら、山の中に入っているお役所風の封筒を指差した…

提督「ええ、きっと休暇申請が通ったに違いないわね…♪」

…白い封筒に青色の錨とロープ、それにイタリア海軍の三色旗があしらわれた封筒を取り上げると、ペーパーナイフで封を切った…それから封筒の中に指を入れて一枚の便せんを引っ張り出したが、腑に落ちない様子で封筒の中をのぞき込む…

デルフィーノ「どうかしましたか?」

提督「ええ、休暇申請の許可書にしては封入物が少なくて……」

アッチアイーオ「それじゃあ何か別の書類なんでしょ…とりあえず読んでみたらいいじゃない」

提督「それもそうね…」さっと文面を読み通すと表情を曇らせ、もう一度内容を読み返した…

アッチアイーオ「で、どうだったの?」

提督「ええ、それが「ご都合がよろしければ下記の日時に管区司令部へおいで下さるよう申し上げます」って……体裁は丁寧だけれど、実際は出頭要請みたいなものね」

デルフィーノ「一体なんでしょう…提督は何か管区司令部に呼び出されるような事をした心当たりはありますか?」

提督「いいえ…とにかく明後日の十時には管区司令部へ行かないといけないわ」

デルフィーノ「送迎の車は来るんでしょうか?」

提督「まさか…最近は深海棲艦相手の臨時昇進や任官が多いから、二つ星(少将)とはいえ片田舎の提督なんかに運転手つきの車なんて回してはくれないわよ。 それに車を走らせるのは好きだから、自分で運転していくわ」

デルフィーノ「分かりました」

提督「それにしても一体何の用なのかしらね…」

アッチアイーオ「おおかた以前別れた前の恋人が管区司令部にいて、復縁を迫るために理由を付けて召喚状を書いたんでしょ」

提督「んー、それはないわね」

アッチアイーオ「即答ね…本当にそう言い切れる?」

提督「ええ、だって修羅場は作らないようにしてきたもの♪」

アッチアイーオ「どうだか…」

…二日後…

提督「それじゃあ何かあったら遠慮しないで携帯に連絡してちょうだい」

デルフィーノ「はい、行ってらっしゃいです」

ライモン「お気を付けて」

提督「ええ…戻りの時間は分からないけれど、帰る前には電話するから」

アッチアイーオ「せめて夕食の時間に間に合うといいわね」

提督「いくら管区司令部がお役所仕事だからって、そんなに時間はかからないはずよ…じゃあ、行ってくるわ♪」ランチアの運転席から身体を乗り出し、ライモンの頬にキスをした…

ライモン「…っ///」

提督「留守番はよろしくね♪」

…提督は脱いだ制帽と書類のファイルを助手席に置くと濃青色に塗られている「ランチア・フラミニア」のアクセルを踏んだ……提督のランチアは4ドア・ベルリーナ仕様で割と大柄な車体ではあるが、重心のバランスが取れているランチアは反応もよく、カーブが多い海岸沿いの地方国道でも綺麗にコーナーをクリアしていく…

提督「ふーん…ふふーん……♪」どこかで耳にしたうろ覚えのメロディーをハミングしながら、悠然とハンドルを操る…速度計の針はだいたい100キロを示し、青みの薄くなってきた空にぽつぽつと点在する雲が晩秋のイタリアらしい風景を彩る…

提督「……さすがに風が冷たいわね」

…せっかくのすがすがしい空気を入れないのはもったいないと思いヒーターは入れず窓を開けていたが、さすがに高速で吹き込んでくる風は頬に冷たく、窓からびゅうびゅうと吹き込んでくる勢いに書類が飛ばされそうになったので、あきらめて速度を落として運転席の窓を閉め、それからハンドルを握り直してもう一度アクセルを踏み込んだ…

………

…一時間後・タラント市街「イオニア海管区司令部」の待合室…

提督「…」

提督「…ふぅ」


…提督は小さくため息をつくと、ちらりと腕時計をのぞいた……一応は鎮守府を預かる司令官の少将と言うことで、革ソファーの応接セットがしつられられているそれなりの待合室に通されたが、数十分たっても呼び出しはこない……白地に青色で錨とロープがあしらわれた陶磁器のカップにはコーヒーが入っているが、どうやらかなり長い間コーヒーポットで保温されていたらしく煮出したような味がする…おまけに時間を持て余しているからと言って、そうそうお代わりばかりしていても仕方がない…


少尉「お待たせいたしました、少将閣下…本官が管区司令官の部屋へご案内しますので、どうぞこちらへ」

提督「ええ、ありがとう…てっきり忘れ去られてしまったのかと思っていたわ」

少尉「いえ、そんな……」

提督「ふふっ、冗談よ…♪」

…管区司令部・司令官室…

少尉「失礼いたします。 タラント第六鎮守府のカンピオーニ司令官を案内して参りました」

中将「ああ、ご苦労…下がってよろしい」

少尉「はっ」

提督「お早うございます、司令官」

中将「おはよう、カンピオーニ君……急に呼び出した上に送迎の車も用意させなくて済まなかったね」敬礼を交わすと、司令官は向かいの席に座るようすすめた…

提督「いえ、そのようなお手数を取らせてしまっては申し訳ありませんから……」

中将「君がそう言ってくれて助かるよ、何しろ最近はみんなして運転手付きでの送迎をしてもらえるものと思っているらしくてな…」

提督「お察しします」

中将「ああ…ところで君の鎮守府だけれども、なかなか良くやってくれているな。 夏期作戦に続いて、例の降って湧いたような秋期作戦まで成功させてくれて、こちらとしても非常に感謝している」

提督「お褒め頂き恐縮です……」

…同じ管区に所属する他の鎮守府が失敗した作戦のやり直し…要は「尻拭い」だった秋期作戦を提督がこなしたことで、自身の成績にも汚点が付かずに済み、ほっとしている様子の管区司令官…とはいえ二ヶ月近くも前の作戦成功を褒めるために提督を呼ぶはずもなく、むしろ苦い薬を包む甘い糖衣のようなものを感じさせた…

中将「うむ……ところでカンピオーニ君」

提督「はい」

中将「君の冬期休暇の事についてなんだがね……」

提督「はい」

中将「……申し訳ないのだが、その前に君に出張をお願いしたいのだ」

提督「出張ですか…ちなみに行き先はどこでしょうか?」

中将「ヘルシンキ……フィンランドだ」

提督「フィンランド、ですか?」

中将「うむ…実は十二月の中頃にノルウェー、スウェーデン、フィンランドのスカンジナビア三国を中心として、デンマークやポーランドといった「NATO北欧連合軍」に属する欧州諸国や準加盟国も招いて深海棲艦対策の情報交換を目的とした会議を行うのだが、そこに我々イタリア海軍がオブザーバーとして招かれていて……」

提督「あの、口を挟むようで申し訳ありませんが…フィンランド湾やバレンツ海を受け持つスカンジナビアの深海棲艦対策会議に、地中海の我々が参加するのですか?」


…ノルウェー沖の北海からグリーンランド、アイスランド、イギリスを結ぶ「GIUKライン」を中心に受け持つNATOの北部方面に対し、NATO南欧連合軍に属し地中海を中心に活動しているイタリア海軍ではまるで縁もゆかりもない…面食らった提督は思わず聞き返した…


中将「うむ、その事だが理由があってな……実はその会議にロシア海軍からも将官が参加するそうなのだ」

提督「ロシア海軍ですか、それはまた…会議場が戦場になりかねませんね……」

中将「それだ…スカンジナビア三国とロシアの仲は険悪だから、そこにオブザーバーとして北欧と縁遠い我々イタリア海軍が入れば、少しは場の空気も和らげられようということで招待されたのだろう。つまりは緩衝材の役割だな」

提督「なるほど……ですが、なぜ私に?」

中将「うむ…まず、その会議は数カ国が参加する国際的なものである以上はそれなりの規模があるから、そこらの少佐や中佐では役不足だ。少なくとも将官でなくてはいかん…そして君がその候補に選ばれたと言うわけだ」

提督「確かに国際的な会議ともなれば将官の出席が必要だという点は私も理解できます…しかし私はフィンランド語もロシア語も出来ません。海軍には私より適任な将官がたくさんいると思いますが……」

中将「そのことだが、今度の件は私が言い出したことではなくてな……海軍情報部から候補の一人として君をご指名なのだ」

提督「私をですか…?」

中将「うむ…幸い君の鎮守府は冬期作戦への参加もないし、もし君の都合さえ良くて承諾してくれると言うのなら、私としても助かるのだが……ともかく詳しいことは情報部から派遣されてきた大尉がいるから、参加するかしないかを決める前に状況説明してもらってはどうだろう?」

提督「そうですね、お気遣い感謝します」

中将「なに、構わんよ……情報部の大尉を呼んでくれたまえ」


…管区司令官が一人の少尉に呼んでくるよう言いつけて一分もしないうちに、少尉に案内されて一人の女性士官が入って来た…士官はあっさりとしたセミロングの髪に鋭さを秘めているような引き締まった顔立ちで、かちりとかかとを合わせて敬礼した…


女性士官「失礼いたします…海軍情報部、ミカエラ・フェリーチェ大尉です」

中将「ああ、よく来てくれた……彼女がカンピオーニ少将だ」

フェリーチェ大尉「はっ、よろしくお願いします。少将閣下」

提督「え、ええ……」

中将「では詳細はフェリーチェ大尉から…少尉、お二人を別室に案内してあげてくれ」

少尉「はい…どうぞ、こちらです」

…別室…

提督「…」

フェリーチェ大尉「どうもご苦労様、必要になったら呼びますから…それまでは下がっていて下さい」

少尉「はっ、では失礼します…」

フェリーチェ大尉「…」

…フェリーチェ大尉は廊下に出てドアのプレートを「使用中」に変えると戻ってきて、後ろ手に鍵をかけた…

提督「…」

フェリーチェ大尉「これでよし、と…久しぶり、フランカ♪」つかつかと近寄ってくると提督の左右の頬に軽くキスをし、それから唇に濃厚な口づけを一つ見舞った…

提督「ぷは……もうミカエラったら、今回のは貴女の計略ね?」

フェリーチェ大尉「かもね……とにかくこの話が来たときにすぐ貴女の顔が浮かんで、調べたらタラントにいるっていうから…勝手ながら候補に入れさせてもらったわ」

提督「もう、クリスマス前に出張を組むなんて意地悪ね……断らせてもらおうかしら」

フェリーチェ大尉「まぁそう言わないで、今から説明するから…」

提督「説明されても納得しないかもしれないわよ♪」

フェリーチェ大尉「それならそれで仕方ないわ……でも、フランカなら分かってくれると思っているから」

…考えを見通せない瞳と、情報部らしいどことなく冷めた無表情の「仮面」の下から、少しだけ微笑がのぞいた…

提督「いいわ、それじゃあ聞いてあげる」

フェリーチェ大尉「ありがとう…今回の会議にはスカンジナビア三国、デンマーク、ポーランド、ロシアが参加する予定になっているの」

提督「司令官もそう言っていたわね」

フェリーチェ大尉「ええ、何しろ私がそう説明したから……ともかく、各国も深海棲艦対策を担当する提督たちや佐官級を送り込んでくる。その中で折衝やもめ事の仲裁に入る事を考えると肩章に「二つ星」くらい付いていればニラミもきくでしょうし、箔が付くっていうのは分かるでしょう」

提督「ええ、でもそれだったら私じゃなくてもいいわよね」

フェリーチェ大尉「そこで二つ目の理由よ……」

提督「…それで、その二つ目の理由っていうのは何かしら?」

フェリーチェ大尉「それは簡単…貴女がビアンで女たらしだから」

提督「けほっ…!」

…コーヒーカップを手にさらりと言ってのけるフェリーチェと、唐突な一言に思わずむせる提督…

フェリーチェ大尉「大丈夫…?」

提督「ええ、どうにか……いきなり面と向かってそんなことを言われるとは思わなかったけれど」

フェリーチェ大尉「そうね、少し言葉が足らなかったわ…正確に言うと、私が知っている海軍士官の中でも貴女はかなり相手の感情や機微を推し量ることができるタイプなの……そういった能力はビアンに多いらしいけれど、私が知っている限り貴女にはその能力がある」

提督「それで?」

フェリーチェ大尉「簡単よ…私が影のようについて回るから貴女は各国の士官と会話をして、どんな時に表情が変化したか後で教えてくれればいい」

提督「まるで操り人形ね…他には?」

フェリーチェ大尉「……早めのクリスマス旅行のつもりで、一緒に北欧旅行なんてどうかしら」

提督「もう…やっぱり個人的理由じゃない♪」

フェリーチェ大尉「ふふ……情報部にいて便利なことはね、一介の大尉風情でも驚くほど融通が利かせられることにあるのよ…例えば、鎮守府の将官を出張を兼ねた旅行に誘ったりね」

提督「まったく……それにしても確かに久しぶりね。ローマ以来?」

フェリーチェ大尉「ええ…それにその時の事もあって、貴女を選ぼうと思っていたの」

提督「もう、はた迷惑な話ね…」

フェリーチェ大尉「貴女が誰とでも仲良くするからいけないのよ、フランカ」

提督「そのことに関しては反省しているわよ」

フェリーチェ大尉「どうかしらね……それで、行くかどうかは決まった?」

提督「そうね、少し考えさせてもらえるかしら……」

フェリーチェ大尉「もちろん構わないわ、あくまでも今回の出張に関しては情報部からの「要請」であって、参加するかしないかはフランカ次第だから……考えを決めるまでに三十秒待ってあげる」

提督「え、ちょっと…いくら何でも三十秒は……」

フェリーチェ大尉「貴女は提督でしょう、三十秒も悩んでいたら艦が座礁するわよ?」

提督「ああもう、分かったわよ…行くわ」

フェリーチェ大尉「そう、分かった……それではカンピオーニ少将、ご協力に感謝いたします」

提督「むぅ…」

フェリーチェ大尉「…それじゃあこの資料を渡しておくから、当日までに良く読み込んでおいて」大きい茶封筒を手渡してきた…

提督「ええ」

フェリーチェ大尉「あとは管区司令官にお礼を言って…その後でお昼でも食べに行きましょう」

提督「はぁ……まったくミカエラにはかなわないわ」

フェリーチェ大尉「女たらしのフランカに言われるなんて光栄ね…♪」

…午後・鎮守府…

ライモン「それじゃあクリスマス休暇は頂けないんですか?」

提督「いいえ、そう言うわけじゃないけれど…日数が少し減らされちゃったのと、日付を後ろに繰り下げられる形になるってこと…大丈夫、クリスマスの週はちゃんと休めるわ」

ライモン「それなら良かったです…♪」

提督「ええ。まさかその前に出張をねじ込まれるとは思わなかったけれど…もっとも、ミカエラにはお世話になったこともあるから文句も言えないわ……」

エウジェニオ「ふぅん、提督がお世話に…せっかくだから聞かせて欲しいわ」

提督「別にいいわよ…ミカエラと初めて知り合ったのは私が大尉の時で、ちょうどそのときは借りていた部屋に誰も同居していなかったから、しばらくは一緒に過ごしていたりしたのだけれど……」

デルフィーノ「破局しちゃったんですか?」

提督「破局って言うか自然解消ね…二人でいるときはお互いに仲良しだったのだけれど、私は「家にいるときは一緒に夕食を囲みたいし、できるだけ職務は持ち帰りたくない」っていう考えで……その点ミカエラは情報部だから時間は不規則だし、いつ帰ってくるかも分からなかったりして…ちょっとぎくしゃくしちゃったのよね」

エウジェニオ「そういう考えの違いって響くわよね…」

提督「ええ…ある時は「今から帰るわ」って電話をくれたのに、待てど暮らせど帰って来なくて…心配になって電話をしても私用の携帯電話は繋がらないし…すっかり冷めてしまった料理とむなしくカチコチ鳴っている時計を相手に一人ぽつんと夕食を済ませて、冷たいベッドに潜り込んで……結局翌日まで帰って来なかったわ」

ライモン「…それはちょっとさみしいですし、心配になってしまいますよね」

提督「まぁね…別に結婚しているわけでもないし、お互い海軍士官として仕方のない状況があるっていうのも分かるから、とやかくは言わなかったけれど……」

ガリバルディ「そしていつしか冷め切ったコーヒーみたいな関係になっちゃったのね」

提督「うーん「冷め切った」とまではいかないかもしれないわ……お互いに一緒にいれば素敵な時間を過ごせるし、私もミカエラも二人でいたいと思っていたから…ただ、ミカエラの勤務が都合でより一層不規則になって、私も私でそれなりに忙しかったから……」

エウジェニオ「あるわよね、そういうの……でも「お世話になった」っていうのは?」

提督「ええ、それなのだけれど…あれは私が大佐になるかならないかくらいの時で、ローマのスーペルマリーナ(海軍最高司令部)勤めになっていた頃のことよ……」

…数年前・ローマ…

カンピオーニ中佐(提督)「…今日の夕食は何にしようかしら…と♪」

…中佐の肩章もすっかり馴染んでいる提督は勤務終わりに夕食の材料を買い、紺の制服姿で茶色の紙袋を抱えていた…懸案だったとある書類が予想より簡単に片付いてご機嫌の提督は、特に何かを考えるでもなく歩いていた……と、借りている部屋の近くまで来たとき、脇道から一人の女性が出てきた…

黒髪の女性「…あっ!」

提督「きゃ…っ!?」

…お互いに避ける間もあればこそ、かわすことも出来ずに突き当たってしまった提督と黒髪の女性……提督の持っていた紙袋から数個のトマトと玉ねぎが転がり出し、歩道の石畳に転がった…

黒髪「あぁ、ごめんなさい…!」

提督「いえ、私は大丈夫ですから……それより貴女は?」

黒髪「私も大丈夫よ…いけない、貴女のお買い物をダメにしてしまったわ」転がった野菜を拾い集めてくれたが、歩道に落ちたトマトは潰れてしまっている…

提督「いいですよ、トマトの二つや三つくらい…」

黒髪「申し訳ないわね……」そう言っている女性の黒いハイブーツに、跳ねたトマトの果肉と汁が付いてしまっている…

提督「いいえ…それより、ブーツのつま先にトマトの汁が……」

黒髪「このくらい構わないわ…近くの水道で洗えばいいんだから」

提督「いえ、それじゃあせっかくの革が痛んでしまいます……私の部屋は近くですし、ブーツを拭くための雑巾もありますから」

…提督はぶつかってしまった事で少し慌てていたために最初こそ気がつかなかったが、よく見ると相手はセミロングの黒髪にすっきりとした目鼻立ちで、美人とまでは言わなくともローマやミラノにいそうな、きりりとした「大人の女性」タイプだった…

黒髪「そう? それならお言葉に甘えさせていただくわ…」

提督「はい…♪」

提督「…はい、これで綺麗に拭き取れましたよ」

黒髪「ありがとう、お嬢さん…それじゃあ今度お茶でもご馳走するわ」

提督「いえ、そんな…」

黒髪「あんまり遠慮しないで? 別に高い店に誘おうっていうのでもないの。ちょっと街角のカフェでコーヒーでも一緒に…ってだけよ」

提督「ええ、それでしたら……///」数日後に道端のカフェでコーヒーを飲むことにした二人…

黒髪「良かった。それじゃあまた……っと、まだ名前も聞いてなかったわね」

提督「あ、そう言えばそうでした…フランチェスカです、フランチェスカ・カンピオーニ」

黒髪「フランチェスカね……私はマリア・ヴィットーリア・ステファネッリ」

提督「初めまして、マリア」

マリア「ええ、初めまして…フランチェスカ」さばさばした都会人らしく、左右の頬にキスをするときも形ばかり軽く頬を当てるだけで済ませたマリア……羽織っている黒い毛皮のコートの裾をさっとひるがえすと、足音も軽やかに出て行った…

………

エウジェニオ「…それじゃあまずはお茶の約束をしたわけね……それで?」

提督「ええ、それで数日後に……」

………



マリア「待たせたわね、フランチェスカ…行きましょうか」提督の下宿先の前まで迎えに来たマリアは毛皮のコートにブラウス、ひざ丈のタイトスカート、黒ストッキングにハイヒールの姿で、手にはハンドバッグを提げている…

提督「はい」勤務終わりの提督も制服ではなく私服姿で、クリーム色のコートにふわっとしたカシミアセーター、秋らしい色合いのフレアースカートとニーハイブーツでまとめている…

…道端のカフェ…

マリア「…フランチェスカは何にする? 私は「カフェ・コレット・アッラ・サンブーカ」にしようかと思ってるけど」

(※カフェ・コレット・アッラ・サンブーカ…エスプレッソにリキュールの「サンブーカ」をたらしたもの)

提督「そうですね、それじゃあ私もそれで」

マリア「そう…カフェ・コレット・アッラ・サンブーカを二つ」

…カフェ・コレットの甘くて苦い一杯をお供に、しばしたわいのない話をした提督とマリア…日が落ちるにつれて周囲の街灯が点き、せわしないローマなりに夕食へ出かける人の姿や食前酒をかたむけつつ人たちの笑いさざめく声が増えてきた…一見すると都会風の素っ気ない感じのするマリアではあったが、話してみると意外と話しやすい女性である事が分かり、気付けば色々な事を話していた提督……少ししゃべり過ぎてしまったかと、慌ててあたりさわりのない話題に転じようとした…

提督「……ところでマリア」

マリア「私の事なら「ミミ」でいいわよ、フランチェスカ」(※ミミ…イタリア語圏で「マリア」に付けられるあだ名)

提督「それなら私も「フランカ」って呼んで下さい」

ミミ「いいわよ、フランカ」

提督「えーと、その…もうそろそろ夕食の時間ですけれど、どうします?」

ミミ「そうね、私は家に帰って食べるつもりだけれど……帰りに出来合いのラザニアでも買っていくわ」

提督「…お料理はしないんですか?」

ミミ「ええ、料理って面倒だし苦手なのよ…」肩をすくめてみせるミミ…

提督「あの…それじゃあ一緒にどこかで食べて行きませんか?」

ミミ「そうね、たまにはそれも悪くないわね……フランカ、どこかお勧めの店はある?」

提督「ええ、この近くにいいトラットリア(軽食屋)があります」

ミミ「それならそこにしようかしら…」

提督「はい…♪」

提督「それからミミとの交際関係が始まったのだけれど……」

ライモン「…それがどうして提督がミカエラさんのお世話になる原因に?」

提督「ええ、今から話すわ…」

提督「……それから数回お茶を飲んだりご飯を食べに行ったりしているうちに、私が部屋に招いて夕食を作ってあげたりするようになって、いつしかそのまま一緒に暮らすようになったの…一見するとつんとすました感じの人だったけれど、私が作った夕食を「美味しい」って言って食べてくれるし、聞かれたくないことを無理に聞くようなこともしない…最初はとっても過ごしやすい相手だなと思っていたのだけれど……」

エウジェニオ「けれど?」

提督「…そのうちにどこか引っかかる感じがしてきたのよね」

カヴール「と、言いますと?」

提督「ええ…例えば私がキスをすると気持ちよさそうにしてくれるし、ベッドでもリードして欲しい時は包み込んでくれて、私がリードしたい時は受け入れて最後まで付き合ってくれる……でも、どこかよそよそしいというか…私に合わせすぎている感じがしたの」

アッチアイーオ「それはまた良く出来た相手だけれど……でも、そういう人だっているんじゃない?」

提督「私も最初はそう思ったわ…けれど、なんて言うのかしら…好きでしている感じではないけれど、上手に好きなふりをしているというか…ファッションレズだとか、無理に恋人に合わせているだとかっていう感じじゃなくて…もっと「目的のために教わった技能を使いこなしている」っていう感じがして……」

デルフィーノ「それは提督に合わせてくれていたのでは?」

提督「ええ、それだけなら私もそう思ったわ…でも、他にも気になることがあって……」

チェザーレ「ほうほう」

提督「ミミが私の部屋で一緒に過ごすようになってからというもの、お料理を教えて欲しいって言うからいくつか教えてあげて…本人も色々と勉強しては振る舞ってくれたのだけれど……あるときスパゲッティ・ボロネーゼを作ってくれたの」

………

ミミ「できたわよ、フランカ……味の保証はしないけれど、食べてみて」

提督「ええ…それじゃあ♪」くるりと巻いてパスタを口に運ぶ…

ミミ「お味はいかが」

提督「ええ、美味しい…赤ワインに良く合う味ね。 ほら、ミミもどうぞ…あーん♪」

ミミ「ん……確かに、我ながらなかなか上手く出来たわ」

提督「ふふっ、このまま頑張れば一流料理人も遠くないわね…♪」

………



アッチアイーオ「別にいいじゃない」

提督「ええ、料理を始めたばかりにしてはなかなか上手で美味しかったわ…でも、少し味の雰囲気が違ったのよ」

デルフィーノ「どういうことです?」

提督「ええ、実は食べたときかすかにサワークリームみたいな風味があって……もちろん隠し味にそういうのを入れる人がいないとは言えないけれど、ローマ生まれのローマ育ちが作る味にしては妙な違和感を覚えて……」

アッチアイーオ「たったそれだけで?」

提督「いえ、もちろんそれまでの事もあってどこか腑に落ちない気がしていたというか…で、その当時「海軍情報部」の中尉だったミカエラに相談しようと思ったの……」

…とある日…

提督「…ミカエラ、忙しいのに呼び出したりしてごめんなさいね」

フェリーチェ中尉「いいえ、気にしないで…それで、急にコーヒーに誘ったりしてどうしたの?」

提督「ええ。実は最近同棲するようになった彼女のことなのだけれど、少し気になることがあって……」

フェリーチェ中尉「浮気の相談や尾行のお願いなら探偵事務所にどうぞ?」

提督「ううん、そうじゃなくて…」かくかくしかじかと事情を説明する提督…

フェリーチェ中尉「…なるほど」

提督「で、もしかしてもしかしたらだけれど…彼女、イタリア人じゃないのかもしれないと思ったの……私の考え過ぎならいいのだけれど、ミカエラはどう思う?」

フェリーチェ中尉「そうねぇ、まぁ考えすぎだと思うわ」

提督「そう、ミカエラがそう言うのなら……」

フェリーチェ中尉「ええ、ところで…」フェリーチェはふと話題を転じ、そのままたわいない会話をして過ごした…

エウジェニオ「それで?」

提督「それから数ヶ月は何もなかったわ…でもある日、いきなりスーペルマリーナ(海軍最高司令部)の中にあるカフェテリアに呼び出されて……」

………

…とある日…

フェリーチェ中尉「フランカ、この後の予定は?」

提督「私なら1700時にここを出て部屋に帰るわ……どうかした?」

フェリーチェ中尉「ええ…悪いんだけれど、1900時頃までは部屋に戻らない方がいいと思うの」

提督「……分かったわ」

フェリーチェ中尉「理解が早くて助かるわ…それじゃあ、私は少し急用があるから」

…海軍情報部のフェリーチェがわざわざ提督を呼び出し、さもばったり出会ったかのような顔をしてそれだけを告げる…その時点でことさらに鋭くなくても何かあることに気付く…

デルフィーノ「それって…」

提督「ええ…ミカエラは私の相談を聞き流すフリをして、それから内密に調べを進めていたのね……ミミはロシアのスパイで、NATO関係の資料を入手するべく私に接近してきた事が分かったわ」

ライモン「それで、ですか…」

提督「ええ……私は部屋に機密資料を持ち帰ったりなんてしていなかったけれど、それでも本来なら閑職に飛ばされておしまいだったはず……それが昇進の上に「栄転」させてもらえたのは、裏でミカエラが何か手回ししてくれたからに違いないわ…」

………



…海軍情報部…

情報部少佐「……確かにカンピオーニ中佐は軍の資料を持ち帰っていませんでしたが、しかしどのような情報が漏れたか分かったものではありません。今後、彼女は機密情報にタッチできないような部局に転属させて、そのまま軍歴(キャリア)を終わらせるべきです」

情報部長「ふむ…」

少佐「それに、彼女は今までも士官として不適切で破廉恥と思われる振る舞いが多かったと聞き及んでおります…ですから向こうもそれにつけ込んでハニートラップをしかけてきたわけです。自分でまいた種なのですから、きっちり中佐自身に責任を取ってもらうべきでしょう」

情報部長「なるほど…分かった、下がってよろしい」

…かなりの剣幕でまくし立てていた防諜課の少佐を退出させると、フェリーチェの方を向いた…

情報部長「……さて、彼はああ言っていたが…実際に今回の白星を挙げたのは君だ。 …君はどう思うね、遠慮せずに述べてくれ」

フェリーチェ中尉「は…そもそもあの女性がスパイかもしれないということに気付いたのはカンピオーニ中佐自身です。彼女が不審に思って相談してこなければ我々も当該人物をマークすることはなかったでしょうし、そうすればスパイの存在に気付かなかったかもしれません」

情報部長「なるほど、一理あるな」

フェリーチェ中尉「それに、彼女の能力をどこかの古びた施設の館長かなにかで埋もれさせてしまうのはもったいないかと思います……スーペルマリーナにおけるNATO海軍戦略以外の分野でも重要な職務はいくつもあります。とりあえずは彼女の上官である提督に相談の上、そうした職務に転補させる方が海軍のためにもなるかと」

情報部長「ふむ、それは悪くないね…それにスパイ事件だなんだとあちこちの耳目を集めないでも済む」

フェリーチェ中尉「はい……それに彼女の交友関係に対して「不適切で破廉恥」という意見でしたが、きっとあれはモテない士官のひがみかと」

情報部長「ははははっ、そうかもしれんな…よし、では早速あの「老大将」に相談して、彼女を落ち着かせる事の出来る任地を見つけてもらおうじゃないか」

フェリーチェ中尉「はっ、それが一番よろしいかと」

………


提督「…提督として着任することになった事を伝えても「おめでとう」としか言わなかったけれど、間違いなくミカエラは関係していたはず……それだけに私としてもミカエラの頼みは断りづらいの…もちろん、友人でもあるし」

ガリバルディ「わかるわ。女同士の友情っていうのは宝石箱の中でもつれちゃった数本の金のネックレスみたいなものよ……ほどくのは難しいけれど、かといって価値があるから切るわけにもいかない…ってね♪」

提督「その通りね…」

アッチアイーオ「それじゃあ出張の件は」

提督「断らないつもりよ…仕方ないわ、寒さに震えながら本場のサンタクロースでも見てくるとしましょう」

ライモン「それじゃあ暖かいコートを忘れないようにしてくださいね」

提督「ええ、ありがとう♪」

…午後…

提督「それはそうと、ミカエラから「事前に確認しておくように」って何だか分厚い封筒をもらったことだし……中の資料はちゃんと読んでおかないとね」

ライモン「一体なんの資料なんでしょう?」

提督「まだ開けてみたわけじゃないから分からないけれど、多分北大西洋やバルト海、北海の状況に関するNATOの資料だと思うわ……」

アッチアイーオ「国際会議ともなればそうでしょうね」

デルフィーノ「だったらちゃんと読んでおかないといけませんね、提督?」

提督「ええ、これでも資料は真面目に読み込む方よ…♪」

…そう言いながら分厚い封筒を開けると中に手を入れて冊子を取り出し、途端に苦笑を浮かべる提督…

ライモン「…それで、中身は何でした?」

提督「これよ……まったくミカエラったら♪」中に入っていたカラフルな冊子を手に取り、ライモンたちに見せた…

ライモン「えーと…「会話で覚えるらくらくフィンランド語入門」に……」

アッチアイーオ「もう一冊は「フィンランドの楽しみ方…ヘルシンキ」…どうみても観光向けのガイドブックじゃない」

提督「もちろん軍の資料も入ってはいたわ……楽しい事はご褒美に取っておくとして、まずはこっちからね」

…数時間後…

提督「ふー…さすがに目が疲れたわ」

デルフィーノ「大丈夫ですか、提督?」

…当直の都合で席を外すことになったライモンに代わって色々と手伝ってくれ、秘書艦の務めをきちんと果たしてくれたデルフィーノとアッチアイーオ…

提督「ええ。少しくたびれたけれど、だいたいの所は読み終わったから……コーヒーでも淹れましょう」

デルフィーノ「コーヒーは私がやります、提督はどうぞ座っていて下さい」

提督「ありがとう、それじゃあミルクと砂糖を多めでお願い」

アッチアイーオ「ねぇ、提督」

提督「なぁに、アッチアイーオ?」

アッチアイーオ「……少し肩でも揉んであげましょうか」

提督「それは嬉しいけれど……どうかしたの?」

アッチアイーオ「いいえ…ただ、提督が真面目にやっていたから……///」

提督「まぁ、嬉しいお言葉……それじゃあお願いするわね」

…椅子の背もたれに身体を預け、ほっそりした…しかし力のあるアッチアイーオの手が肩を揉むのに身を任せた…

アッチアイーオ「どう、痛くない?」

提督「ええ、気持ちいいわよ……それにアッチアイーオに揉んでもらえるなんて嬉しい」

アッチアイーオ「そ、そう…///」

提督「あぁ、いいわね……肩のこわばりがほぐれていく気がするわ…」

アッチアイーオ「なら良かったわ……ねぇ、どこか揉んで欲しい所はある?」

提督「そうねぇ、それじゃあ胸でも揉んでもらおうかしら♪」

アッチアイーオ「ば、ばか…っ///」

提督「いけない?」

アッチアイーオ「い、いけないに決まってるでしょうが……隣の部屋にはデルフィーノだっているのよ?」

提督「そんなこと言わないで…ね?」肩を揉んでいたアッチアイーオの手に自分の手を重ねて優しく包み、そのまま胸元へといざなってゆく…

デルフィーノ「…提督、コーヒーが入りましたよぉ♪」

アッチアイーオ「っ///」真っ赤になって手を引き抜き、ぷいとそっぽを向いた…

提督「ありがとう、デルフィーノ」

デルフィーノ「いいえ、お気になさらずですよ♪」

提督「ありがとう…ふふ♪」顔を紅くしているアッチアイーオに向けて、パチリとウィンクを投げてみせた…

…夕食時…

提督「……それにしてもなかなか難しいわね」

ドリア「何がです?」

提督「フィンランドの言葉よ……もちろん会議そのものは同時翻訳がつくし、交流の時は英語でいいにしても、せめて挨拶くらいはフィン語で出来ないと……もっとも、フィンランドはスウェーデン系も多いからスウェーデン語でもいいそうだけれど……」

ライモン「やっぱりその国の言葉で話せた方がいいですものね」

提督「ええ。それとロシア語も冷戦の頃と違って士官学校の必修じゃあなくなっていたから、そっちも勉強しないと……」

チェザーレ「ふむ、ロシア語ならチェザーレが受け持つといたそう」

アオスタ「私もロシア語なら出来ますよ」(※チェザーレ、アオスタは戦後賠償でソ連に渡っている)

提督「助かるわ……私が知っているロシア語なんてせいぜい「ウォッカ」と「ピロシキ」くらいなものだから」

アオスタ「ご安心下さい、提督……一週間もしないうちにきっちり話せるようにしてあげますから」

提督「どうやらスパルタ教育になりそうね……」

エウジェニオ「あとは無料動画サイトでフィン語のニュースとかを流しておけばいいんじゃない?」

提督「動画サイト……YuriTube(ユリチューブ)みたいな?」

エウジェニオ「そうそう……提督はああいうのに疎いからよく知らないでしょうけれど、色々と便利よ♪」

提督「なるほどね、エウジェニオがそういうのに詳しくて助かるわ」

エウジェニオ「お褒めにあずかり恐縮だわ」

ディアナ「いっそのこと、お料理も北欧週間といたしましょうか♪」

提督「北欧週間ねぇ……そういわれてもどんな名物料理があるのかピンとこないわね……」手元のガイド本をパラパラとめくる……

提督「えーと、フィンランドの名物料理は……どうやらココット(キャセロール)が多いみたいね」

(※キャセロール…具材を入れた平鍋、グラタン皿でつくる煮込み料理の総称)

ドリア「あまり美食で有名な国ではないようですね……」

提督「まぁ、厳しい気候の中でつつましく暮らしている人たちだもの、無理もないわ……誰でもいいけれど、他にスカンジナビアの事で知っている事はあるかしら?」

ディアナ「そうですね……わたくしは戦中MAS艇の母艦でもあったので覚えておりますが、確か「第12MAS隊」と豆潜水艦がラドガ湖に派遣されておりませんでしたか?」

提督「そう言えばそうだったわね。 目立たない戦いではあったけれど、船団を攻撃したりソ連の潜水艦を叩いたり、なかなかに活躍したと聞いているわ……後は確か、戦前にノルウェーかスウェーデンに駆逐艦を売却したことがあったような……」

セラ「はい、スウェーデンに私たちの姉妹が渡っていますよ」

提督「そう、セラ級だったのね……まぁ詳しいところは後で調べるとして、まずはご飯にしましょう♪」

…数日後…

アオスタ「なかなかにロシア語が上達しましたね、提督」

提督「スパスィーバ(ありがとう)、タヴァリシチ(同志)アオスタ♪」

アオスタ「もう……やめて下さい、提督」

提督「ふふ、冗談よ……ロシア語はいいとして、フィン語の方は似たような言葉がないから覚えるのが大変ね」

アオスタ「そうですね」

提督「発音そのものは「aa」や「kk」みたいに音を重ねることが多いようだけれど、これはどうにかなるから……あとは語彙を増やしたいところね」

アオスタ「確かに色々な事が言えれば便利ですし……」

提督「ええ。それに妖精みたいなフィンランドの美人とお話する機会もあるかもしれないもの♪」

アオスタ「まったくもう……」

エウジェニオ「いいじゃない姉さん。美人を口説くなんて理由があれば、勉強する意欲だって出るわ……ね♪」

提督「ええ♪」

>>808 間違えました…正しくは「『第12MAS隊』がフィンランドに、豆潜水艦が黒海に派遣された」ですね……別の話とごっちゃにしてしまいました

ちなみにフィンランドに派遣された「第12MAS」隊はレニングラード封鎖に参加し砲艦や貨物船を撃沈、黒海ではMAS艇数隻、および貨物列車で沿岸まで陸送された豆潜水艦がソ連の潜水艦を撃沈するなどちょっとだけ戦果を挙げています

…数日後・提督私室…

提督「まずはパスポートに、お金、トラベラーズチェック(旅行小切手)……携帯電話の充電器と、電圧が違うから向こうのコンセントにさせる変換用のタップ……それからコートと毛皮の帽子、私服が数日分。下着やタイツや多めに詰めて……と」


…トランクのふたを開け、ベッドやテーブルの上に服や旅行に必要な小物を並べている提督……かたわらにはかいがいしく支度を手伝ってくれるライモンと妹のムツィオ・アッテンドーロ、そして隣の執務室で書類仕事を片付けながら、時折様子をのぞきにくる秘書艦のデルフィーノとアッチアイーオ、それから暇な鎮守府の艦娘たちも手伝い半分、野次馬半分でかわりばんこにやってくる…


ライモン「……できるだけ暖かい服を持って行って下さいね?」

提督「ええ、もちろん……それから食品保存袋(ジップロック)が何枚かいるわね」

ライモン「それなら厨房にありますが……一体何にお使いになるんですか?」

提督「そうねぇ、例えば着替えの靴下や下着なんかを詰めたりとか、何か液体のものや散らばって困るものをトランクに入れるときとか……あると何かと役に立つわ。 練習航海のときも持っていて重宝したもの」

ライモン「言われてみれば便利そうですね」

提督「ええ、それに大きめの衣類圧縮袋もいくつか持っているから、それも入れておくわ。 できるだけ荷物はコンパクトにして、その分お土産を詰めてこられるようにね」

オンディーナ(水の精「ウンディーネ」)「……ふふ、素敵なお土産を期待してるわ♪」

提督「ええ♪ あとはもらった語学ガイドと参考資料、ラップトップのパソコンに筆記用具……それから化粧品にちょっとしたお薬、それと生理用品のポーチも入れていかないと。そういうものは規格が違ったりして身体に合わなかったりするから……」

ライモン「なるほど」

提督「うーん、とりあえずこんなものかしら……意外と小さくまとまったわね」トランクのふたを閉めてみて、一人で納得したようにうなずいている……

ライモン「基本的に服は制服でいいから簡単ですね」

提督「ええ……とはいえ礼装と一般用制服の両方を持って行かないといけないし、特に礼装は金モールなんかが付いているからトランクに押し込むことも出来ないって考えると、結構面倒ね」黒いガーメントバッグ(持ち運び用スーツバッグ)をトランクの上に載せ、手のひらを上に向けて肩をすくめた……

アッテンドーロ「そうね」

提督「後は出発の前日にナポリでミカエラと合流、それから空軍の連絡機でローマに出て……ローマではいくつか指示を受けてから、フィウミチーノ空港(ローマ)で飛行機に乗って、数カ所を経由してヘルシンキに行くことになっているから……」

ライモン「なるほど……それにしてもナポリですか、懐かしいです」

提督「開戦当時は第二巡洋艦戦隊の所属だったものね」

ライモン「はい、コレオーニが一緒でした」

提督「そうだったわね……ねえライモン、それじゃあナポリまで一緒に行く? 有給休暇を使うことになっちゃうけれど……」

ライモン「え、でもご迷惑じゃあありませんか?」

提督「まさか。 一人でいるより、誰かが隣にいる方がおしゃべりが出来て楽しいもの……それがライモンならなおさら嬉しいわ」

ライモン「……そ、それじゃあ///」

提督「そう、良かった……ムツィオ、貴女もどう?」

アッテンドーロ「姉さんだけじゃなくて私まで一緒に鎮守府を留守にしちゃったら、編成が回せなくなるんじゃない?」

提督「どっちみち姉妹の片方が欠けたら、セットにしている戦隊のバランスが崩れるのは同じだもの……それに駆逐隊の戦隊旗艦ならジュッサーノたちに十分任せておけるし」

アッテンドーロ「でも、私が横にいると姉さんをせっついちゃう気がするわ」

ライモン「もう、ムツィオってば」

提督「大丈夫、ムツィオがやきもきする前にベッドに引きずり込むって約束するから♪」

ライモン「提督まで……///」

アッテンドーロ「それなら安心ね……いいわ」

提督「決まりね。 ついでに本場のマルゲリータでも食べて、しばらくはおあずけになる国の味を舌に覚えさせておくことにするわ」

アッテンドーロ「ナポリならいい店を知ってるから任せておいてちょうだい♪」

提督「……それはそうと、出張の前にクリスマスの準備をしないといけないわね」

アッテンドーロ「とはいえ潜水艦の娘たちは後からここに来たからクリスマスの手順はちんぷんかんぷんだし、私たちがどうにかしないといけないわね」

提督「それは私も同じよ……これまではどんな感じだったの?」

アッテンドーロ「そうねぇ……良く考えたらさしたる事はしてなかったわね。提督が着任するまでここにいたのは司令官じゃなくて「担当官」だったから、何かする権限も予算もあまりなかったし……せいぜい賛美歌のレコードを流して、お菓子を焼く程度だったわね」

提督「うーん、それじゃああんまりにも素っ気なさ過ぎるわね……町でもみの木を買ってきて飾りをつけて、それからクリスマスの前後はごちそうを作って……」

アッテンドーロ「まぁそんなところじゃない?」

提督「あと、当日は近くの町の神父様にお願いしてミサを執り行ってもらいましょうか」

ライモン「妥当なところだと思います」

提督「そういってもらえて良かったわ。あと、ご馳走に関しては私に任せておいて♪」

…翌日・倉庫…

提督「……ここにあるのよね?」

ドリア「はい、そのはずなんですが……見つかりませんか?」

提督「ええ、どうにも見当たらないの……」

…ホコリっぽい倉庫に入って箱をどかしたり棚から下ろしたりしてあちこちかき回しながら、クリスマス用の飾り物が入った箱を探している提督……後ろからは最古参の一人として鎮守府を見守り切り盛りしてきたドリアがのぞき込んでいる…

ドリア「おかしいですね……この辺りにあったように記憶していますが」むにっ…♪

提督「そう……ドリアが言うなら間違いないわよね♪」ドリアが提督の後ろから身を乗り出して棚の上を確認すると、そのはずみでずっしりと重く張りのある乳房が背中に押しつけられた……

ドリア「ええ、確かここに……あ、見つけました♪」むにゅ…っ♪

提督「あら、本当に?」

ドリア「はい……ほら、この箱です♪」棚に両腕を伸ばして箱を下ろそうとして、ますます提督に身体を押しつけるドリア……

提督「…ふふっ♪」さわ…っ♪

ドリア「あんっ……もう、提督ったら♪」

提督「ごめんなさい。でも、さっきからドリアの胸が背中に当たって……つい、ね♪」手を後ろに回してドリアのヒップを撫でると、口の端にえくぼを見せていたずらっぽく微笑んだ……

ドリア「もう、いけませんね……箱を落としたらどうするんです?」

提督「ドリアなら落とさないって信じているわ♪」

ドリア「まったく、お上手なんですから……よいしょ」箱を床に下ろしたが、そのまま提督を棚に押しつける姿勢のまま動こうとしない……

提督「ねえドリア、箱は見つかったんだから早く出ましょうよ?」

ドリア「まあ、提督ったらちっともそんなつもりではないくせに……ん、ちゅっ♪」

提督「ちゅ……あ、んぅ……っ♪」


…金属の星や木でできたリンゴの飾り物が入った箱を床に置いたまま、次第にむさぼるようなキスを交わし始める提督とドリア……長身の提督よりさらに一回り大きいドリアは、向かい合わせになった提督の腰に腕を回しぐっと引き寄せると、顔を胸の谷間に挟みこんであご先を指で軽く上向かせ、上から押さえ込むように口づけを見舞った……


提督「ん、んはぁ……ちゅっ……じゅるっ、ちゅぷ……ぷは……ぁ♪」


…ドリアの熱く優しいキスにとろりと甘い表情を浮かべ、夢見心地の様子で舌を絡める提督……すでにひざは力を失い、両手をドリアの首筋に回し、豊満な身体にしがみつくようにして唇を重ねている……タイトスカートの裾からのぞく黒いタイツにつつまれたふとももはスプーンを入れたフォンダンショコラのようにとろりと愛蜜があふれて沁みを作り、ぎゅっとドリアの腰を挟んでいる…


ドリア「もう、いけませんね……倉庫でこんなことをするなんて♪」くちゅくちゅっ、ぐちゅ……っ♪

提督「だって、ドリアが誘惑してくるんだもの……ふあぁぁ、あふっ、あぁ……んっ♪」じゅぷじゅぷっ、にちゅ……っ♪

ドリア「まぁ、ふふっ……私のせいですか?」

提督「そうよ、可愛くて優しいドリアがいけないんだから……ね、もっと♪」

ドリア「仕方ありませんね……あんまり遅いと皆が気にしてしまいますから、あと一回だけですよ?」

提督「もう、ドリアのいじわる……んちゅぅ、ちゅぷ……♪」

ドリア「んちゅ、ちゅる……っ♪」

…しばらくして・食堂…

ディアナ「あら、提督……昼食はまだ出来ておりませんが?」

提督「お昼を食べに来たわけじゃないわ、クリスマスに入り用なものを出してきたの♪」

…上に軽く積もっていたホコリを拭き取って食堂に持ってきたのはクリスマス飾りが入っている箱で、艦娘のドリアが大きい方を抱え、提督が小さい方を持っている……たかだが箱を出してきただけにしては妙に息を弾ませている提督と、後ろに付き従いながら艶やかな笑みを浮かべているドリアを見て、ディアナは事情を悟ったような表情を浮かべた…

ディアナ「ああ、なるほど……」

提督「そろそろ待降節も来るわけだし「いよいよクリスマス」っていう気分になってくるものね」

(※待降節…たいこうせつ。ラテン語から「アドベント」とも。クリスマスのおおよそ四週間前を指す。ここからいよいよクリスマスモードになり、寝かせた状態に置いた緑葉のリースや燭台に立てた四本のろうそくを週末ごとに一本ずつ点けていくなどの風習がある)

ディアナ「それもそうですね……ではわたくしもパネットーネなど作ると致しましょうか」

(※パネットーネ…ドライフルーツが入ったパウンドケーキ的な焼き菓子。キログラム単位で作りクリスマスまで長く楽しむ。北イタリア・ミラノの銘菓)

アッテンドーロ「いいじゃない、私も食べたいし手伝うわよ」ミラノ・スフォルツァ家の源流である傭兵隊長「ムツィオ・アッテンドーロ」を由来に持つだけに、ミラノと聞くと食いつきがいい…

提督「それがいいわね。ディアナは大変だけれどいくつか焼いてもらって、好きなようにつまんでいいことにしましょう……それとも手間がかかって大変でしょうから、買ってくる?」

ディアナ「皆さんに手伝っていただければ大丈夫かと……エリトレアもおりますし」

提督「そう、良かった♪」

ディアナ「では、どうせですからパンドーロも作りましょう」

提督「材料は同じようなものだものね」

(※パンドーロ…「パン・デ・オーロ」(黄金のパン)を意味するヴェローナの銘菓。卵や牛乳をふんだんに使い焼き上げたパネットーネの元祖のような菓子で、上から見ると角の多い星形をしている)

エリトレア「それじゃあパンドーロは私が作りますね」

提督「ええ、それからクリスマスツリーにするもみの木を買ってこないと……私のランチアにはさすがに載らないから、鎮守府のトラックを出すしかないわね」

ディアナ「わたくしのフィアット・アバルト850には載せられませんか?」

提督「うーん……ツリーの大きさにもよるけれど、さすがに厳しいんじゃあないかしら」

ディアナ「それは残念です、せっかくあの850を走らせるいい機会だと思ったのですが」

提督「それなら一緒に行きましょう? 町でお買い物をしたい娘もいるでしょうし、ディアナが車を出してあげればみんな喜ぶわ」

ディアナ「さようですか、でしたらそういたしましょう」嬉しそうな様子でいそいそと車の準備をしに行くディアナ……

アッテンドーロ「……ディアナの車に乗りたがる娘がいるかどうかは別として、ね」

提督「あら、ディアナの運転はとても上手よ……ただ、乗り心地がいいかは別だけれど」

…数十分後・近くの町…

ディアナ「あら……」

フルット「クリスマスの装飾が何とも華やかですね」

リットリオ「わぁぁ、すごく綺麗です♪」

提督「そうね……そのうち交代で皆も連れてきてあげましょう」


…小さな町の中央広場にはさまざまな飾りと電飾が施されたツリーが堂々と立っていて、古式ゆかしい町の建物も窓や壁に飾り布を垂らしたり、リースをつけたりしている……町の通りの左右にはクリスマス関係の商品を扱う露店がいくつも出ていて、のんびり買い物を楽しむ老夫婦からはしゃぎ回る子供まで、老若男女を問わず多くの人々が楽しげに歩いている…


オンディーナ「ここのお店にクリスマスの飾り物がありますよ、提督っ……♪」

シレーナ「ラララ……ララ……露店ならここにもあるわよ……♪」

リットリオ「提督ぅ、早く行きましょうよぉ♪」

提督「あぁ、はいはい……そんなに引っ張らなくたってお店は逃げたりしないわよ」子供のようにはしゃぎ回るリットリオたちを見て笑いながらついていく提督……鎮守府で飾るのに頃合いなもみの木を探しつつ、木箱に入った小さな球形の飾り玉や木で出来たリンゴの飾り、小さいキャンドルなどをのぞいて回る…

ディアナ「まるで母娘のようでございますね」

アッテンドーロ「ふふ、同感……♪」

提督「……それじゃあこの金と銀の飾り玉をそれぞれ一袋ずつ」

リットリオ「この木彫りのリンゴを二ダースほど下さいな♪」

オンディーナ「綺麗なガラス細工ですね、これをお願いします…♪」

ディアナ「まぁ、可愛らしいろうそくの飾り物でございますね……おいくらですか?」

…本命のもみの木にある程度目星を付けた提督たちは通りをそぞろ歩きしながら、着々と買い物袋の中身を増やしていく……華やかなリボンや飾り物、商店から流れてくる賛美歌やクリスマスソングを聞きながら歩いていると、不思議と財布の紐も緩くなってくる…

提督「うーん、けっこう買ったわね……これならツリーも充分に飾ることが出来そう」

ディアナ「飾り物もだいぶ痛んだり煤けてきたりしておりましたから、良い機会でございますね」

アッテンドーロ「ずいぶんと散財したものね、これだけあれば充分でしょう」

リットリオ「それじゃあそろそろ本命のもみの木を買わないと……ですね♪」

提督「ええ……買ったら皆も手伝ってちょうだいね? 私だけじゃあとってもじゃないけれど車まで運べないもの」

フルット「もちろんですとも……♪」

…広場の露店…

提督「それじゃあこれでいいかしら?」

ディアナ「よろしいかと思います」


…広場にいるツリー売りの露店商はもみの木を何本も並べていて、辺りには爽やかな匂いが立ちこめている……事前に天井の高さを測ってメモ帳に書き留めておいた提督は、候補として手頃な数本を選び出した……が、リットリオを始め数人は大きなツリーに心引かれ、どうも得心がいかない様子でいる……そうなると露店商のおじさんも好機とみて「せっかくのクリスマスなんだから」とか「一年に一回なんだし買っていきなよ」などと景気の良いことを言って、しきりに買わせようとする…


リットリオ「……ねぇ提督、どうせですからもっと大きいのにしませんか?」

フルット「ですがリットリオ、天井の高さを考えたらこの程度でないとつかえてしまいますよ」

リットリオ「それもそうですが……でもせっかくのツリーですし、六メートルものの方が見栄えもしますし形も整ってますよ?」

提督「リットリオの言うことももっともだけれど、大きくても四メートル以内じゃないと食堂の天井につかえちゃうから……ね?」

リットリオ「でもお値段だってそう変わりませんし……」

提督「まぁまぁ……このもみの木だってたくさんある中で見ているから小さく見えるけれど、持って帰って据え付けたら結構な大きさに見えるはずよ?」

リットリオ「むぅ……」

アッテンドーロ「だいたい天井につかえるようじゃあ間抜けも良いところじゃない。 値段だって単価でいけば……リラしか変わらないわよ」計算高いミラノ人らしく、さっと暗算してみせた…

リットリオ「言われてみればそれもそうですね……」口ではそう言っているものの、まだ未練がましい表情で堂々としたツリーを眺めている……

提督「ふぅ……分かった分かった。 そっちの大きい方も買うことにしましょう」

リットリオ「えっ、本当ですかっ?」

アッテンドーロ「ちょっと!」

提督「……ただし、リットリオも半分出すのよ? いい?」

リットリオ「はいっ♪」

提督「よろしい……それじゃあこの三メートル半のを一本と、それからこの六メートルものを一本」

露店商「毎度あり! お嬢さん方、どうか良いクリスマスを!」

リットリオ「はいっ♪」

提督「さぁリットリオ、それじゃあ運ぶのを手伝ってちょうだい」

リットリオ「もちろんです♪」そう言うとちょっとした街灯ほどの高さがあるツリーをひょいと持ち上げ、切り口を固定している四角い鉢を支えてプレゼントのように抱えた…

提督「それじゃあもみの木はトラックに積むから……リットリオ、帰りは助手席に座る?」

リットリオ「いえ、せっかくのツリーですから横に座って押さえておきます♪」

提督「ふふっ、了解……それじゃあ、はい。 ……そのまま荷台に座ったら服が汚れちゃうから、これを敷いて座るといいわ」ランチアのトランクを開けてメンテの時に敷く古毛布を取り出した

リットリオ「えへへっ、ありがとうございます♪」

アッテンドーロ「……まったく、大きいなりをしておきながらまるで子供なんだから♪」ご機嫌でトラックの荷台に乗り込むリットリオを見ながら、微笑ましいのとあきれたのが混じったような苦笑を浮かべた…

提督「そこがまた可愛い所なのよ♪」そう言ってアッテンドーロにウィンクを投げた…

…鎮守府までの帰り道…

提督「うーん、それにしてもよく飛ばすわねぇ……」


…先頭をぶっちぎりで走っていくディアナのフィアット850を見て感心したように言った提督……どちらかと言えば運転の得意な提督から見てもディアナの運転は段違いで、コーナーのクリアはまるでラリーでもしているように見える……海沿いの地方道路を感心するような勢いで飛ばしていくさまは、普段のしとやかで落ち着いた「月の女神」ディアナではなく、弓を持って野山を駆け巡る「狩猟の女神」ディアナを表しているようにも見える…


アッテンドーロ「あの調子じゃあ無茶苦茶に揺られてるわね、きっと……フルットたちが吐かなきゃいいけど」

提督「そうね」

…先頭を行くディアナのフィアットに続く提督のランチア・フラミニア…そしてその後ろに続くのが鎮守府に配備されている旧式なイヴェコのトラックで、荷台には幌が張ってあり、車体の後端からはクリスマスツリーが突き出している…

トゥルビーネ「提督たちは心配し過ぎよ、あの程度で吐いてたんじゃあ沖に出られないでしょ?」

提督「まぁね、でも船酔いと車酔いは違うから……実際にフリゲートの艦長で一人いたもの。ブリッジまで波がかぶりそうな時化の海でも平然とコーヒーをすすっていられるのに、ローマのタクシーで真っ青になっていた人が」

シロッコ「それはローマのタクシーだからじゃないかな?」

提督「まぁね…っと、パトカーだわ。 みんなシートベルトはしているわよね?」

…スタイリッシュな黒と紅に塗り分けられたカラビニエーリのフィアット・プントが鎮守府のトラックと併走し始めると、回転灯を回して停止をうながした…

提督「あら、こっちじゃないみたい……でも私が応対したほうがいいわね」車道の端にランチアを停めると後続車を確認し、それからドアを開けてパトカーの方へと向かった…

提督「……ボンジョルノ、シニョーレ(ミスター)……どうかしましたか?」

カラビニエーリ隊員「ボンジョルノ……ああ、海軍さんですか」

…脇に寄せて停めたイヴェコの運転席から降りてきた「ソルダティ(兵士)」級駆逐艦の「ヴェリーテ(軽歩兵)」と、近寄ってきた提督を交互に眺めるカラビニエーリの隊員…

提督「ええ……どうぞ、身分証です」

カラビニエーリB「はい、どうも」

…有事となれば「第四の軍隊」として治安維持や海外派遣も行うが、同時に警察とカバーし合うように田舎での警察活動も請け負っているカラビニエーリ(軍警察)…もっとも中央の精鋭部隊と違って、地方にいるカラビニエーリは割とのんきで気さくな雰囲気を漂わせている…

提督「それで、うちの娘たちがなにか……?」

カラビニエーリ「ああ、いや。 ただちょっとばかりツリーの先端が大きく荷台からはみ出していたもんで……基地で飾るんですか?」

提督「ええ、そうです」

カラビニエーリB「そりゃあいいですね。とはいえやはり少し気になりますが……」鎮守府の艦娘たちの何人かが持っている、運転できる場所や速度が限定される制限付き免許のような海軍の「許可証」を確認しながらあごをかいた……

提督「それでしたら一応監視役も乗せてありますから……ね、リットリオ?」

リットリオ「はい♪」提督の声に応えて、荷台からひょっこりと顔を出して笑顔を浮かべるリットリオ…

カラビニエーリ「ああ、後ろに乗ってたんですね……それならばっちりですよ。 やあお嬢さん♪」

リットリオ「チャオ♪」

提督「では、大丈夫ですか?」

カラビニエーリ「ええ、問題ありません……お嬢ちゃん、ご協力ありがとう」ヴェリーテに許可証を返すとおどけたように敬礼し、フィアットに乗り込んだ…

ヴェリーテ「いいえ」

提督「パトロールご苦労様です」

カラビニエーリB「これはどうも……あぁ、そうそう」

提督「何でしょう?」

カラビニエーリB「良いクリスマスを♪」

提督「グラツィエ♪」

…しばらくして・鎮守府…

カヴール「……それであんなに大きなツリーを買ってきたのですか」

リットリオ「はい♪」

ドリア「確かに立派ですけれど、あれだけのツリーともなるとお値段が張ったでしょう?」

リットリオ「ええ、でも提督が半分出してくれましたから♪」

アオスタ「リットリオったら仕方ないですね……提督にまでお金を出させるだなんて」

リットリオ「でも、せっかくのクリスマスですし……」

アオスタ「そうやって無駄遣いをするのは良くないですよ」

リットリオ「むぅ、アオスタってばそういうことを言うんですか」

アオスタ「だってそうじゃありませんか」

提督「まぁまぁ、アオスタ。 確かに一年に一回のことだから……それにあれを見ると、ね?」

…リットリオは鎮守府に戻ってくるなりいそいそとツリーを下ろして、食堂のフランス窓から見える位置に堂々と立てた……早速ツリーに群がって、きゃあきゃあと歓声を上げながら飾り付けに興じる艦娘たち……すでにツリーのあちこちには星形や球形のオーナメント(飾り物)がぶら下がり、どこかから引っ張り出してきたらしい電飾も巻き付けられている…

アオスタ「……それもそうですね、皆があんなに喜んでいるのにお説教もないものですね」生真面目な委員長気質の軽巡アオスタはふっと肩の力を抜いて、提督に向かって苦笑した…

提督「そういうこと♪ さぁリットリオ、トップの星を飾ってきて♪」

リットリオ「はいっ♪」

…リットリオがツリーのてっぺんに飾る銀の星を持っていそいそと駆け寄ると、たちまち駆逐艦たちや潜水艦の娘たちに取り囲まれて歓声を浴びせられ、うんともてはやされている……同時に、何やら楽しげな様子であることを察したルチアもみんなの足元で尻尾を振って駆け回っている…

カヴール「……何とも楽しげではありませんか♪」

提督「そうね、小さいのだけじゃなくて大きいのも買ってよかったわ♪」

ドリア「そうですね……それでは飾り付けは元気な駆逐艦や潜水艦の娘たちに任せて、私たちは中に入って温かいワインでもいただくとしましょう♪」

提督「ええ」

…食堂…

提督「まぁ……私たちが出かけている間にここまでやってくれたの?」

デュイリオ「はい♪」


…パチパチと木切れがはぜ、楽しげに火の踊る暖炉が食堂を心地よく暖め、テーブルには新しいテーブルクロスが掛けられている……テーブルの上にはいくつか燭台が置かれ、綺麗に焼き上がったパンドーロやパネットーネは大皿に載せられ、誰でも好きなようにつまみ食いが出来るよう、切り分け用のナイフや小皿と一緒に置いてある……提督たちが買ってきた小さい方のクリスマスツリーにも早速飾り付けが始まっていて、金色や銀色をした玉や木彫りのリンゴ、リボンをかけた箱の形をした飾り物などがあちこちに吊り下げられていく…


ペルラ(「真珠」)「提督、お帰りなさい」

トゥルケーゼ(「トルコ石」)「みんな提督のお帰りを待ってましたよ……♪」

ルビノ(「ルビー」)「お帰りなさいっ……はむっ、んっ、ちゅぅ……っ♪」

提督「んむっ、ぷは……もう、ルビノったら積極的なんだから♪ ただいま、みんな」

ドリア「ツリーの飾り付けはいかがですか?」

スメラルド(「エメラルド」)「見ての通り順調です」

ペルラ「スメラルドの言うとおりです……ご覧になってみて、どうでしょうか?」

提督「そうね、とっても綺麗できらきらしていて……って、ちょっと」

オニーチェ(「オニキス」)「どうかしたの?」

提督「いえ、だって……これって貴女たちが持っているネックレスとかじゃない」室内の灯りを受けて輝いているモールや飾りをよく見ると、ペルラたちが持っている装身具のいくつかが交じっている……

ペルラ「どうですか、とても綺麗でしょう?」

提督「いえ、確かに綺麗だけれど……」

アルジェント(「銀」)「ふふ、せっかくのクリスマスですから……ここにはアクセサリーをくすねるような手癖の悪い娘もいませんし」

デュイリオ「あら、それはどうでしょう……わたくしはコルウス(カラス)の使い手ですし、カラスは光り物が好き……もしかして、そーっと持って行ってしまうかもしれませんよ……ね♪」肩に止まらせているペットのカラスの喉を軽くかいてあげるデュイリオ…

カラス「アー」

シレーナ(「セイレーン」)「ララ、ラ……ふふ、私も宝石は好き……♪」

提督「もう、せっかく信用してくれているんだからそういうことは言わないの♪」

…今年も残すところ数時間となりましたね。このssを読んで下さった皆様に感謝します…


しかし年末近くにも護衛艦「みくま」進水や長きに渡り活躍した「せとゆき」の退役など、新たに生まれる艦がいれば花道を去る艦もあって色々ありましたね……来年も七つの海が穏やかで、海に関わる方々が良い風と波に恵まれますように

遅くなりましたが明けましておめでとうございます、本年もぼちぼち書いていきたいと思います


…そして何故か三日の夜にイタリア・ドイツ・日本と所属を変えるという数奇な運命をたどった大型潜水艦「コマンダンテ・カッペリーニ」を題材にしたドラマが放送されるようで、イタリア王国海軍のファンとしては楽しみです

…出張当日・朝…

提督「忘れ物はない? ライモン、ムツィオ」

アッテンドーロ「ないわよ」

ライモン「準備はととのっています」

提督「そう、じゃあ乗って?」

デュイリオ「行ってらっしゃいまし、提督」

提督「ええ、艦隊旗艦として留守は任せたわ」ランチアの運転席から顔を出し、デュイリオの頬に軽くキスをする……

デュイリオ「はい、わたくしとアオスタで切り盛りさせていただきます♪」

提督「お願いするわ……アッチアイーオ、デルフィーノ。よく二人を補佐してあげてね?」

アッチアイーオ「もちろんよ」

デルフィーノ「分かっています」

エウジェニオ「それじゃあ行ってらっしゃい、提督……ライモンド、遠慮しないで好きなことをおねだりするのよ?」

ライモン「もう、エウジェニオってば……分かっていますから///」

アッテンドーロ「姉さんの尻押しはちゃんと私がやるから大丈夫よ」

エウジェニオ「ふふっ、確かにムツィオがいるなら大丈夫よね……それじゃあ行ってらっしゃい♪」

ライモン「ええ、行ってきます」

…グロッタリーエ空軍基地…

提督「では、お願いね」

…愛車の「ランチア・フラミニア」を数日とは言え置き去りにするのは忍びなかったがやむなく基地の駐車スペースに預け、それから本部施設で係の士官に搭乗のための「予約票」を渡した…

空軍士官「お任せ下さい……搭乗するのは閣下と随行する艦娘が二人ですね」

提督「ええ」

士官「確認しました……他に手荷物は?」

提督「今持っているもので全部よ」中くらいのスーツケース一つに礼装の入ったガーメントバッグ(旅行用スーツ袋)を指し示す…

士官「分かりました、それは部下に運ばせます……伍長!」


…少尉は下士官を呼んで提督たちの持ち物を機に積み込むよう指示した……エプロンに駐機しているのはエンテ翼(先尾翼)に、推進式(プロペラが後ろに付いている)双発エンジンと未来的なデザインをしたピアッジォP180「アヴァンティ」で、機付整備員とパイロットが最終チェックを行っている…


操縦士「では、この機でナポリまでお送りいたします……とはいえ通常の輸送型ですからさしたるおもてなしは出来ませんが」

提督「大丈夫よ、大尉。お気遣いなく」シートにゆったりと腰かけ、ベルトをしめた……

…数時間後・ナポリ…

アッテンドーロ「うーん、この喧噪にごちゃついた町並み……ナポリ、懐かしいわね」

提督「そうね」


…賑やかでちょっとごみごみした港町でありながら、明るい陽光と家並みのせいか、どこか親しげな雰囲気のナポリ市街……沖には観光名所のカプリ島を望み、山側にはかの高名なヴェスヴィアス(ヴェスヴィオ火山)がそびえている……提督は停泊中の米第六艦隊の艦艇を横目に見ながら、つい短艇の吊り方や整頓の様子を確かめてしまう…


アッテンドーロ「……そういえば提督はナポリにもいたことがあるのよね?」

提督「ええ、そこでジェーン(ミッチャー提督)と出会ったの……泊まるところがないっていうから下宿に泊めてあげたのがきっかけでね」

………


…数年前…


米海軍の女性士官「ホーリィ、シッ……こういう時に限ってこうなんだから、タイミングが悪いったらありゃしない」米海軍中佐の制服を着ている一人の女性が舌打ちしながら米兵相手のホテルから出てきた……

女性士官「ふぅ、参ったわね……」ぼやいている女性はボリュームのある身体をしていて、つやつやした褐色の肌が制服からはち切れそうになっている……と、制服姿の提督を見るとガイドブック片手に歩み寄ってきた……

女性士官「あー……キューズミー、キャニュウスピーキン、イングリッシュ?(ちょっと失礼、英語は話せる?)」

カンピオーニ少佐(提督)「ええ、ある程度なら……メイ・アイ・ヘルプ・ユー?(何かお手伝いしましょうか?)」


女性士官「そうね、ぜひその「ヘルプ」をお願いするわ……あのね、この辺りでどっか泊まれそうなホテルかなにかないかしら? 実はホテルの予約がしてあったはずなのに部屋が取れてなくってね……別のホテルもいくつかあたってみたんだけど、事もあろうに「アイク(CVN69・原子力空母「ドワイト・D・アイゼンハワー」)」の入港とかぶっちゃって……どこもいっぱいだって言うのよ」


提督「なるほど、それは大変ですね。 でもホテルと言っても、ここから歩いて行ける距離となると……タクシーを使っても今は観光シーズンですし、空母の入港も重なっていますから、悪くすると(ナポリ湾の対岸にある)ポッツォーリの辺りまで満員かもしれませんよ」

女性士官「オーケイ、それじゃあ基地に戻って内部の宿舎に一晩泊まるわ。消灯時刻はうるさいし、夕食に出るのったら出来損ないの「SOS」だけだろうけど……ま、少なくともベッドだけはあるわけだし……呼び止めて悪かったわね、えーと……」

(※shit on a single…トーストのクリームソース和え。南北戦争の頃にはレシピが生まれていたらしいが、今ひとつな味と鳥の糞に見える見た目の悪さから「屋根の上の糞」という不名誉なあだ名が付いている)

提督「フランチェスカ・カンピオーニ少佐です」

ミッチャー中佐「私はジェーン・ミッチャー中佐。ジェーンでいいわ……とにかくありがとね、カンピオーニ少佐」

提督「私もフランチェスカでいいですよ、ジェーン」

ミッチャー提督「オーケイ、フランチェスカ……それじゃあ私は基地に戻ってシケた晩飯を食べることにするわ……はるばるナポリまで来てキャンベルスープの缶詰か、それとも「テレビ・ディナー(冷凍食品)」か……とにかくアンクル・サム(合衆国)印のヤツをね♪」ニヤリと笑って、大げさに肩をすくめて見せた

提督「あの……もし良かったら、玉ねぎのマリネとスパゲッティ・アッラ・プッタネスカ、それに冷えた赤ワイン、ドルチェに甘いジェラートなんて言うのはいかがですか?」

ミッチャー提督「すごく美味しそうに聞こえるわね……フランチェスカ、それはあなたのフラット(住居)で、ってこと?」

提督「ええ。せっかくナポリに来たのですし……ナポリ料理とまでは言わなくても、イタリア料理を食べないなんてもったいないですから」

ミッチャー提督「そう……まぁせっかくそう言ってくれるのなら、お邪魔しようかしら」

提督「ええ、ぜひ…♪」

…提督の下宿先…

提督「どうぞ、ちょっと手狭ですけれど」

ミッチャー提督「ノー・プロブレム……駆逐艦のバンク(寝台)に比べたらヒルトンのスイートルームみたいよ」

提督「どうします、先にお風呂にしますか? それとも夕食を?」

ミッチャー提督「そうね……それならシャワーをもらおうかしら。何しろ陸(おか)に上がってからというもの「ハリウッドシャワー(使い放題のシャワー)」が楽しみだったのにロクな浴室と出会ってなくってね♪」

提督「分かりました。それじゃあその間にテーブルを整えておきますから、どうぞシャワーを浴びてきて下さい……それから体拭きのタオルと……私の予備ですけれど、着られますか?」白いパイル(タオル)地のバスローブを取り出して渡した…

ミッチャー提督「サンクス♪ ちょいとキツめだけど着られるわ……フランチェスカが水道代で目を回さない程度にたっぷり使わせてもらうわね」

提督「ふふっ、遠慮せずにどうぞごゆっくり♪」

…十分ほどして…

ミッチャー提督「ふー…さっぱりしたわ。本当にありがとね……っと」

提督「さ、どうぞ座って下さい♪」

…制服を脱いでシンプルなワンピース姿に着替え、その上からエプロンを着けている提督……部屋の灯りは少し暗めにしてあり、テーブルには赤ワインの瓶と皿が並び、ゆらゆらと炎が揺らめくキャンドルが一本立てられている…

ミッチャー提督「……ワーオ、まるで素敵なレストランみたいじゃない♪」

提督「いえ……だってせっかくですから、お洒落な方がいいかと思って///」

ミッチャー提督「いいじゃない、これなら干からびたパンとチーズだって美味しく頂けそうよ♪」

提督「きっと干からびたパンよりは美味しいと思います……どうぞ、ボン・アペティート(召し上がれ)♪」

アッテンドーロ「……そうやって引っ張り込んだわけね」

提督「あら「引っ張り込んだ」なんて人聞きが悪いわね……本当に親切でごちそうしてあげたかっただけよ?」

アッテンドーロ「どうだか……♪」

提督「もう……それより二人とも、ここからだとヴェスヴィアスが綺麗に見えるわ♪」

アッテンドーロ「あら、はぐらかしたわね……それにしてもヴェスヴィアスも相変わらずだこと。 ……開戦前までは登山電車があったけれど、今はないのよね」

提督「ええ、今は道路も出来たから車でも頂上近くまで行けるし……残っているのは「フニクリ・フニクラ」の歌だけね」


(※フニクリ・フニクラ…1880年(明治13年)ヴェスヴィアスに観光登山電車(フニコラーレ…「フニクリ・フニクラ」はその愛称)が作られたが、あまりの急勾配に恐れをなした観光客が乗ろうとせず売り上げが振るわないので、イギリスにある世界最古の旅行会社「トーマス・クック旅行社」がテコ入れのため、ナポリの新聞記者「ジュセッペ・トゥルコ」に作詞、ロンドン音大の教授として勤めていたナポリ出身の「ルイージ・デンツァ」に作曲を依頼。出来上がったこのCMソングは大ヒットし、無事に登山電車も人気となった……1944年、連合軍の管理下にあった登山電車そのものはヴェスヴィアス噴火のため閉鎖されたが、歌そのものは今も残っている。日本語訳では「♪~登山電車ができたので、誰でも、登れる」といかにも登山電車の歌になっているが、原語(ナポリ語)では火山の炎と恋模様をからめたラブソングなのがイタリアらしい)


ライモン「フニクリ・フニクラですか……ムツィオは覚えてる?」

アッテンドーロ「ええ、もちろん♪」すっと息を吸い込むと高らかに歌い始めた……


アッテンドーロ「♪~アイセーラ、ナンニネ、メ・ネ・サリェッテ。 トゥ・サーレ、アディオ」

(♪~お嬢さん、今宵ぼくは登るんだ。どこだか貴女はわかるかい?)

アッテンドーロ「♪~アドォ、トゥ・コーレ、ンガラァト、チィウ、ディスピェット。 ファルメ、ン・ポ」

(♪~そこはもう恩知らずの心がぼくをじらさないところ)

アッテンドーロ「♪~アドォ、ロ・フォーコ、コ・セ、マ・シ・フゥイエ。 テ・ラッサ・スタ」

(♪~そこには火が燃えているが(嫉妬の炎ではないから)貴女を放っておける場所)

アッテンドーロ「♪~エ・ヌン、テ・コォーレ、アプリィエッソ、ヌン・テ・ストゥルィェ。 スロ・ア・グラダ」

(♪~貴女を追ったり(恋で)苦しめずに、ただ見つめていられる場所)

アッテンドーロ「♪~ヤンモ!ヤンモ!ンコッパ、ヤンモ・ヤ!」
(♪~行こう!行こう! 上へと行こう!)

アッテンドーロ「♪~フニクリ・フニクラ、フニクリ・フニクラぁぁ!」
(♪~フニクリ・フニクラ…)

アッテンドーロ「♪ンコッパ、ヤンモ・ヤ! フニクリ・フニクラ!」
(♪~上に行こう! フニクリ・フニクラ!)


提督「あら、お上手♪」

アッテンドーロ「そりゃあね……まぁ、テアトロ・アッラ・スカラ(ミラノ・スカラ座)でプリマ・ドンナをやれるとは言わないけれど♪」

提督「ふふっ……ところで二人とも、そろそろお昼にしましょう? ミカエラも待っているだろうし、ピッツェリーア(ピッツァ店)辺りで手早く…ね?」

アッテンドーロ「そうね、でもせっかくだから地元の名店でマルゲリータを食べなくちゃ……ほら、ついてきて?」

…怪しい裏通り…

提督「……ここ?」

アッテンドーロ「そうよ。 お世辞にも品のいい場所とは言いがたいけれど、この路地の奥にある店で出すマルゲリータは絶品なんだから」

提督「そうなのね……それで、ピストルは準備しておいた方がいいかしら?」

ライモン「大丈夫ですよ、提督。 わたしとムツィオが付いていますから」

アッテンドーロ「そうそう……あとは大金を見せびらかしたりしなければ大丈夫」

提督「……そういうことにしておくわ」

アッテンドーロ「さ、早く済ませないといけないんでしょ?」

提督「ええ」

…坂の多い港町ナポリの裏通りをすいすいと歩いて行くアッテンドーロとそれに従って付いていく提督、そして提督の横に付いているライモン……路地の道端には壊れた木箱や野菜くずが放り出してあり、お世辞にも柄がいいとは言えない…

アッテンドーロ「ほら、ここよ」

提督「……どうやら間違いないみたいね」

…案内された先には薄汚れた黄色の壁をした一軒の小さな店があり、年季の入った小さな木の吊り看板には「ピッツェリーア」の文字が彫り込まれている…

アッテンドーロ「チャオ、三人よ」

提督「ごめんください……」

オヤジ「へい、らっしゃい! 注文は!」

…アッテンドーロの後に付き店内へと入った提督とライモン……店の中は全体的に古く薄汚い感じではあるが、テーブルだけは長い年月にわたってずっと拭かれているのか、表面に艶が出てすっかり飴色になっている……威勢のいい店主は丸顔であごに無精ひげをはやし、汚れきったエプロンに台拭きを挟みこんでいる…

アッテンドーロ「それぞれにピッツァ・マルゲリータよ」

オヤジ「あいよ! 飲み物は?」

アッテンドーロ「ロッソ(赤)をもらうわ」

オヤジ「ほいさ……士官さん、そっちは?」

提督「それじゃあ同じものを」

オヤジ「そっちのお嬢ちゃんは?」

ライモン「わたしも同じでいいです」

オヤジ「よしきた! ほらおっかあ、聞いただろ!」

おかみさん「ガタガタ言わなくたって聞こえてるよ、あたしにだって耳があるんだからね!」

オヤジ「そうかい! おれはてっきりこの間「オレキエッテ」と一緒に料理しちまったと思ってたぜ!」

(※オレキエッテ…「耳」を意味する丸っこいパスタ。タラント近郊では「小石」を意味する「チァンカレーレ」とも)

…勢いのいい店主とおかみさんのやり取りに、数人の客はげらげら笑っている……そのうちの三人は顔なじみらしい爺さんたちで、後は白粉をベタベタと塗った娼婦の「お姉さま」方……彼女たちもきっと数十年前は王室ヨットのようにスマートで綺麗だったのだろうが、すっかり沿岸回りの老朽貨物船のような体型になっていて、サビの上にペイントを塗りたくっているあたりもよく似ている…

おかみさん「はい、お待たせ!」編んだ柳のカゴにすっぽりと収まっている丸っこい瓶から、グラスにごぼごぼとワインを注いだ……

オヤジ「おう、とっととしねえか! せっかくのピッツァが冷めっちまうだろうが!」

おかみさん「分かってるよぅ! それにもし冷めたらヴェスーヴィオ(ヴェスヴィアス)にでも突っ込めばいいじゃないか!」

…下町のナポリ人らしく元気にまくし立てながら、さっとピッツァ・マルゲリータの皿を提督たちの前に並べたおかみさん……縁のある丸くて薄い生地にさっとサルサ・ポモドーロ(トマトソース)を塗り、モッツァレラ・チーズとバジリコを散らしてある…

提督「グラツィエ」

おかみさん「はいよ! 冷めないうちに食べな!」

提督「ええ……あむっ」

…パリッとして少し焦げのある香ばしい「耳」の部分と、さっくりとした生地の部分……そこに酸味のあるポモドーロと、ふつふつたぎっているモッツァレラの脂っ気、そしてそれをすっきりと打ち消すバジリコの爽やかな風味……一人に一枚を供するナポリピッツァで、差し渡したっぷり二十四センチはありそうな一枚が来て、提督は少し持て余してしまうかと思ったが、口当たりが軽いので美味しく食べられる…

………



アッテンドーロ「……ね、美味しかったでしょ?」

提督「はぁ、確かに美味しかったわね……あんなに美味しいピッツァ・マルゲリータを食べたのは初めてかもしれないわ」

アッテンドーロ「でしょう?」

提督「ええ、これで心おきなく出張に出かけられるわ♪」

アッテンドーロ「良かったわね……それじゃあ私と姉さんはこれで♪」

提督「楽しんでいらっしゃいね」

ライモン「提督も楽しんで来て下さいね」

提督「ありがとう、ライモン」

…ナポリ基地「南部ティレニア海」管区司令部…

フェリーチェ大尉「来てくれて嬉しいわ、フランカ……それで、この後のスケジュールだけれど」手際よくラップトップコンピューターとメモを用意し、説明に入る…

提督「ええ」

フェリーチェ大尉「まずはローマのスーペルマリーナでいくつか資料を受け取り、それからアリタリアの便でスキポール空港(アムステルダム)に。スキポールにはハーグのオランダ海軍参謀部から士官が来ているから、その士官に二つほど資料を渡す」

提督「それから?」

フェリーチェ大尉「次にスカンジナビア航空の飛行機でオスロに飛んで、私はあちらの情報部と少し情報交換をするわ……それが済んだらノルウェーの海軍士官に基地を案内してもらって、フリゲートや艦娘たちを紹介してもらう予定になっているわ」

提督「ノルウェーのフリゲート……フリチョフ・ナンセン級ね」

フェリーチェ大尉「ええ。それからもう一度スカンジナビアの便に乗ってストックホルムに行って一泊、翌日の夕方にはフィンエアーの飛行機でヘルシンキ入り……細かい時間のスケジュールはこの紙に書いてあるわ。いくつかはぶいてある部分もあるけれど、そこは気にしないで?」

提督「分かっているわ。 それにしても結構なスケジュールね……色々見てみたい名所もあるのに、全然見られそうにないわ」


…公務である事は提督にも分かっているが、ヘルシンキ入りするの前のたった一日か二日の間にオランダ、ノルウェー、スウェーデンと駆け抜けるスケジュールを見て、さすがに愚痴が出る…


フェリーチェ大尉「そこは勘弁してちょうだい、フランカ。 やっぱり将官が行くと金モールの威光が働くから、先方が無理解な部類でも話を通しやすくなるのよ……それだけに普段は許可が下りにくい所へも訪問の予定を詰めこませてもらったから、どうしてもね」

提督「ええ、分かっているわ。でもせっかくのフィンランド湾だし、ストックホルムからヘルシンキは流氷クルーズの船で行きたかったなぁ……って」

フェリーチェ大尉「悪いわね、観光旅行って訳じゃないから時間がかかる船便は「うん」って言ってもらえないのよ……いつかみたいに火山が噴火して航空便が軒並み欠航にでもなれば別だけれど。代わりにストックホルムで一泊させてもらえるから、ちょっとだけ観光が出来るわ」

提督「わざわざ掛け合ってくれたのね、ありがとう……ストックホルムは「北欧のヴェネツィア」っていうくらいだし、一度見てみたかったの」

フェリーチェ大尉「いいのよ、私だってたまには観光くらいしたいし……官費とあればなおの事ね」ふっと浮かべた笑みを見ると、提督はフェリーチェとしばし同棲していた時を思い起こした…

提督「そうね……せっかく機会を得られたのだから、出来るだけ楽しまないと♪」

フェリーチェ大尉「だからって羽目は外さないようにね」

提督「分かっているわ♪」

…午後・カポーディキーノ空軍基地…

フェリーチェ大尉「それじゃあ、準備はいいわね? パスポートと航空券は持ってる?」

提督「ええ♪」

フェリーチェ大尉「よろしい」

…荷物検査のエリアへ提督を連れて行くと、空軍の係官にパッと何かを提示して見せた…

係官「あっ……確かにうかがっております」

フェリーチェ大尉「結構」係官がチェーンで塞いでいる通り道を開けて、二人をさっと通してくれる……

提督「……」

…官民共用のカポーディキーノ基地で空軍の「ガルフストリーム」哨戒・連絡機に乗り込み、次々と離着陸するカラフルな旅客機を眺めつつ離陸を待った…

提督「ふー……空港の手続きっていうのはせわしなくって気疲れがするわね」

フェリーチェ大尉「たかが国内でそんなことを言っているようじゃ、途中でへたばっちゃうかもしれないわね」

………

…数時間後・ローマ…

フェリーチェ大尉「それじゃあ今夜はここで一泊するから……明日は0800時にはスーペルマリーナで資料を受け取り、その脚でフィウミチーノ空港に向かうわ。駆け足の行動になるから早めに寝ることね」

提督「ええ、そうするわ……」

…そう言ってビジネスホテルらしいシングルベッドに潜り込むと、軽くため息をついた…

フェリーチェ大尉「あ、そうそう」

提督「なぁに?」

フェリーチェ大尉「お休み……♪」提督の唇にさっとキスをすると、隣のベッドに潜り込んで卓上スタンドの灯りを消した……

提督「///」


…翌朝・フィウミチーノ空港…

出国カウンター職員「ご連絡は承っております、どうぞお通りください」

フェリーチェ大尉「グラツィエ」

提督「……ねぇミカエラ、手荷物検査も搭乗手続きもなしってどうなっているの?」エアバスの座席に腰かけて、シートベルトを締めながら小声で尋ねた……

フェリーチェ「そう、もう言ってもいいわね……私は表向き「オブザーバーとして会議に出席するイタリア海軍将官に随行する士官」って事になっているけれど、ハーグで渡す資料はNATOの「機密」扱いだから、実際は情報部のアタッシェ(伝達吏)扱いなの……まぁていの良いカモフラージュね」

提督「あぁ、それで……」

フェリーチェ「そういうこと……フランカがおしゃべりするとは思わないけれど、知らなければ顔にも出ないし口が滑ることもないもの。とにかくスキポールでオランダ海軍の士官に資料を渡せば、重荷はなくなるから安心して」


…アムステルダム・スキポール空港…

オランダ海軍士官「連絡は受け取っております。では資料を……」

フェリーチェ「お願いします」

オランダ士官「確かに……どうもありがとうございました」

フェリーチェ「いいえ、どうもご苦労様でした」トランジット(乗り換え)エリアにやって来たオランダ海軍士官が身分証を見せて資料を受け取り、軽く会釈すると立ち去った……

提督「……あれだけ?」

フェリーチェ「ええ、あれだけよ……あとはあの士官がハーグにあるオランダ海軍の参謀本部まで運ぶ手はずになっているの。これで最初の用は済んだから、今度はSAS(スカンジナビア航空)の飛行機に乗ってオスロ入りね」

提督「そう……ところでお昼は?」

フェリーチェ「どのみち短時間だし、エコノミーの機内食を食べるよりもオスロでの昼食に期待しましょう。 今のうちにお腹を減らしておけば、より美味しく感じられるでしょうし」

提督「空腹は最良のソースってわけね……」


…オスロ…

ノルウェー海軍士官「ようこそおいで下さいました。ノルウェー海軍のビョルゲン・クリステンセン少佐です」

提督「初めまして、少佐……イタリア海軍のフランチェスカ・カンピオーニ少将です。こちらはミカエラ・フェリーチェ大尉」

クリステンセン少佐「初めまして、カンピオーニ少将、フェリーチェ大尉……ノルウェーは初めてですか?」

提督「ええ」

クリステンセン「そうですか。時間があればたくさん案内したい場所があるのですが、残念ですね」

…堂々とした体格に金髪、青い目、あごにそって生えたひげ……と、北欧神話の神トールやエッダ(伝承物語)に出てくる英雄ベーオウルフ、あるいはヴァイキングをほうふつとさせる偉丈夫のクリステンセン少佐は数多くの冒険家と探検家を生み出してきたノルウェー人らしい立派な顔立ちをしている……敬礼のを済ませてから握手を交わすと、そのゴツゴツとした力強い大きな手に驚かされる…

提督「お気遣いありがとうございます、少佐」

クリステンセン「いえ……では早速ですが行きましょう。フェリーチェ大尉は情報部の人間が迎えに来ていますから、その間カンピオーニ少将には大戦中ドイツ艦隊の侵攻を迎え撃った海岸要塞の遺構を案内します……それからベルゲンの「ハーコンスヴァーン海軍基地」に向かい、見学の方をなさって下さい」

提督「分かりました。ところで「要塞」というと……オスロの戦いでブリュッヒャーを沈めた「オスカシボルグ要塞」ですか」

クリステンセン「そうです、よくご存じで」

提督「ええ、ノルウェー軍の奮戦ぶりについては私も以前から尊敬の念を抱いておりましたから……と言いたいところですが、お恥ずかしながら細かいところは映画で知ったのです」はにかんだような笑みを浮かべる提督……

クリステンセン「なるほど……とはいえわざわざ「予習」までして下さったようで嬉しいですね。ところで昼食はお済みですか?」

提督「いえ、それがまだでして」

クリステンセン「そうですか、ではベルゲンへ向かう前に昼食をお召し上がりいただくとしましょう……お客様のために素晴らしい鮭の燻製を用意してありますよ」

提督「まぁ、それは楽しみです♪」

SS速報避難所
https://jbbs.shitaraba.net/internet/20196/

>>824 教えて下さってありがとうございます。

……とはいえさして更新がはかどるわけでもないのでしばらくはここで投下していき、そのうちにそちらへ移ることも考えて行きたいと思います。


それにしてもウクライナはどうなるのか……日本から心配してもどうこうなるわけでもありませんが、せめて気持ちだけでも応援してあげたいですね。

…数時間後・ハーコンスヴァーン海軍基地…

基地司令「ようこそハーコンスヴァーン海軍基地へ」


…曇り空の下に広がるベルゲン沖の海は冬の北欧らしく荒々しく冷たい灰色に白い波頭を散らしていて、切り立った崖やフィヨルドが天候とも戦わなければならないスカンジナビアの荒々しい自然の雰囲気を感じさせる……基地には小型ながらイージス・システムを備え「ミニ・イージス艦」とあだ名されるノルウェー海軍の「フリチョフ・ナンセン」級フリゲートや、まるで陸戦兵器のようにグレイとグリーン系の色でスプリッター迷彩を施した「シェル(盾)」級ミサイル艇が数隻停泊していて、隣接する区域には艦娘たちの居住施設がある…


提督「とても大きな基地ですね……それに崖の中にドックがあったりと、実に興味深いです」

基地司令「そうでしょうね。我が国が地政学的の観点から、かなり独特な兵器体系を構築してきていることは自認しております」

…映画館やジムといった各種の娯楽施設まで備えた、まるで一つの町のような基地を案内してくれているのは基地司令の大佐で、ダンディな金褐色の口ひげを生やしている…

提督「いえ、国情に合った見事なものだと思います……それにノルウェーの「コングスベルグ」といえばペンギン・ミサイルを初め有名ですし、ぜひ色々と勉強させていただきたいと思っております」

(※コングスベルグ…ノルウェーの総合軍需メーカー。IR(赤外線)誘導の短距離対艦ミサイル「ペンギン」はベストセラーSSM(対艦ミサイル)で、発展型の「NSM」は「JSM」としてF-35戦闘機の兵装としても採用された)

基地司令「恐縮です……まぁ陸軍にはかの有名な名誉連隊長「ニルス・オーラヴ」がおりますが、その分我々海軍にはペンギン・ミサイルがありますからね……ところで昼食がまだでしょう? どうぞ食堂の方へ」


(※ニルス・オーラヴ准将…イギリス、スコットランド動物園にいるキングペンギン。現在は「三世」で階級はノルウェー近衛部隊の准将。1961年、各国軍隊の音楽隊によるイベント「ロイヤル・エディンバラ・ミリタリー・タトゥー」でノルウェー軍の中尉が交流を持ち、そののち隊のマスコットとして認めてもらうよう働きかけたもの。当初は上等兵だったが昇進を重ね、代替わりを続けながらとうとう准将となった。名前は当時の国王オーラヴ五世にあやかったもの)


提督「これはどうも、わざわざありがとうございます」オスロでも軽い昼食を食べてはいたものの、むげにもてなしを断るのも悪いのでそっと制服のベルトを緩めながらついていく……


…基地の食堂では艦娘担当の中佐一人と艦娘二人が提督たちを出迎えてくれた……白いテーブルクロスをかけた長テーブルには、さまざまな取り合わせの具材を載せたノルウェー式オープンサンドウィッチ「スモーブロー」や綺麗なスモークド・サーモンの皿が並んでいる…

艦娘担当官「では、こちらの艦娘たちを紹介いたします……「スレイプニール」級駆逐艦の「スレイプニール」と「オーディン」です」

艦娘「スレイプニール級駆逐艦、スレイプニールです」

…神話と同じく脚が八本あるかどうかはテーブルクロスに隠れていて見えないが、たてがみのような銀髪にしっかりした表情は水雷艇クラスの小さな駆逐艦とは思えないほど大人びている…

艦娘「同じくスレイプニール級、オーディンです」

…こちらも北欧神話の主神オーディンと同じく片目がないかどうかは顔にかかっている髪で定かではないが、やはり神話にあやかっているのか、左右の耳にはオーディンへと世界中の情報を伝えるカラス「フギン(思考)」と「ムニン(記憶)」をあしらったイヤリングをし、足元をそっとのぞくと狼の「ゲリ」と「フレキ」(二匹とも「貪欲」「大食らい」といった意味)をモチーフにしたアンクレット(脚飾り)を付けている…

提督「初めまして」

基地司令「……さぁどうぞ、遠慮せずに召し上がって下さい」

提督「では、いただきます」具をこぼさないよう、お上品にスモーブローを口に運ぶ提督……北欧風の薄くしっかりとした固めのパンに、それぞれ塩漬けニシンや味の濃いハム、酸味の利いたピクルスなどが載せてある……

基地司令「いかがですかな?」

提督「ええ、とてもおいしいです……ニシンというのはピクルスとも合うものですね」

艦娘担当官「お気に召していただいたようで何よりです」

提督「ええ。それにこの燻製サーモンも絶品ですし」ほどよく脂が乗っていてしっとりしているサーモンに、さっぱりしたサワークリームが添えてある……

基地司令「それはよかった……深海棲艦が出現した当初は出漁も出来ず、養殖場も被害を受けたりしたものですからね。 当時はしばらくサーモンとお別れでしたよ」

提督「そうでしょうね……イタリアでも海産物の価格が跳ね上がって大変でしたから」

オーディン「あの時はゲリとフレキの食べものに苦労しました」

提督「ふふ、何しろ名前からが「貪欲」ですものね♪」

オーディン「……北欧神話をご存じですか」

提督「ええ、一応は……きっと貴女はミーミルの泉の一口と引き換えに、片目をあげてしまったのね」

オーディン「その代わり世界で一番賢くなったので……」そう言いながらスモーブローを食べているが、片目のせいで目算を誤ってしまうのか、ちょくちょく足元の「ゲリ」と「フレキ」のあたりにこぼしている……

スレイプニール「……」

オーディン「何か?」

スレイプニール「いいえ、私はオーディンの馬ですから」

オーディン「ならよし……それにしてもハチミツ酒(ミード)が飲みたいものだ」

基地司令「こらこら、昼からはいかんぞ」真面目そうな表情をふっと崩すと、軽く叱りつけた……

提督「ふふっ……♪」

提督「……ところでここの戦隊司令はどちらに?」


…食後のコーヒーをカップに注いでもらい、灰色の海を眺めながら担当官に聞いた……当然ながら各国で「艦娘」の運用制度は異なるので、ノルウェーの担当官がどういう立ち位置にあるのかは少し分かりにくかったが、どうやら艦隊の運用に当たる「提督」とは別に、艦娘たちのメンタルや広報活動を受け持つ、マネージャー兼カウンセラーのような扱いであるらしい…


基地司令「いやはや申し訳ない。 本当ならばここの戦隊司令も少将をお出迎えする予定だったのですが、哨戒中に潜水艦らしきコンタクトを発見しまして……先ほど帰投したので、すぐこちらに参ります」

提督「ああ、そういうことでしたか。では「どうぞ焦らずにおいで下さい」とお伝え願えれば……」そう言いかけたところで一人の少尉が入って来て、基地司令になにか耳打ちした……

海軍士官「……」

基地司令「ん、そうか。では格好を整えたらすぐ来るようにと……戦隊司令ですがもうすぐ来ますので、どうぞコーヒーのお代わりでも」

提督「そうですか、では半分ほど……」

…数分後…

海軍士官「遅くなりました。ノルウェー海軍のビョルン・ダニエルソン中佐です……少将どの、はるばるイタリアからようこそお越し下さいました」

提督「初めまして、ダニエルソン中佐。イタリア海軍のフランチェスカ・カンピオーニ少将です。お会い出来て光栄です」

…急いで正装に着替えてきたらしい中佐は荒波などものともしないようながっしりした体型をしていて、まるでファンタジーに出てくるドワーフのような金茶色のヒゲが顔の下半分を覆うほどにたっぷりと生えている……声は低いが良く通り、そのゴツゴツした手はコーヒーカップが小さく見える…

スレイプニール「お帰りなさい、司令」

オーディン「帰投を待っていました」

ダニエルソン中佐「ああ……ちゃんといい子にしてたか?」

スレイプニール「もちろんです」

ダニエルソン中佐「よし、偉いぞ」そう言うと大きな手で頭を撫でた……お客様である提督の前だからか遠慮しているように見えるが、普段は親子のように仲良くしているらしいことがうかがえる……

基地司令「それじゃあダニエルソン中佐……そろそろ少将に我々の活動を説明するから、君も同席して実際にはどんな様子だとかを解説してもらいたい」

ダニエルソン中佐「了解」

…しばらくして…

基地司令「いかがでしたか?」

提督「ええ、とても参考になりました」

…ノルウェー海軍製作のごく短い映画と、直近の活動中に撮影した写真を使ったプレゼンテーションを見せてもらい、それから様々な説明を受けた提督……手持ちのノートには聞き留めた大事な単語や肝心な所を要約した短文があれこれと書き込まれ、そこからあちこちに矢印が飛び出して他の単語や言い換えとつながっている…


ダニエルソン中佐「残念な事に我々ノルウェーの艦娘はあまり数が多くないうえ、大型艦がほとんどおりませんから、沿岸防衛が主任務となっております。夏場は夏場でユンカースJu-88やハインケルHe-111による空襲がありますし、冬場はひどく時化るので、活動が難しいという面では苦労します……それに最近は見かけなくなりましたが、一時期は重巡クラスの深海棲艦も確認されていたので、必要なときはシェットランド諸島に展開している英海軍と協力しています」

提督「なるほど」

ダニエルソン中佐「オスロからノルウェー南端のクリスチャンサンはスウェーデン、デンマーク、ドイツ海軍と協力しつつスカゲラク海峡とカテガット海峡の安全を確保してバルト海への入り口を維持し、ここベルゲンを始めとした西海岸のノルウェー海沿いには、スタヴァンゲル、オーレスンド、トロンヘイム、ナムソス等に鎮守府があってロフォーテン諸島やノール岬への海路を確保しています……そしてナルヴィクから北、トロムセの鎮守府から先のヴァランゲル半島、ノール岬(ノールカップ)を経由し、ロシアのムルマンスク港へと向かうバレンツ海の極北航路を維持するのは主にキルケネスの鎮守府となっています」


(※スカゲラク海峡、カテガット海峡…スカンジナビア半島とデンマークのあるユーラン半島に挟まれた海峡で、スウェーデン東岸やフィンランド南部、ポーランド北部やバルト三国に面しているバルト海やフィンランド湾へ入るための出入り口にあたる要衝。いわば北欧のジブラルタルかダーダネルス海峡といった場所)


提督「なるほど……それにしても長い半島西側は制海権を維持するのが大変ですね」

ダニエルソン中佐「その通りです。南部はデンマークやスウェーデンの海軍に任せておけますが、西にはアイスランドしかありませんからね……そのため我々ノルウェー海軍は西岸の基地に多く展開しているのです」

提督「良く理解できました、ありがとうございます」

ダニエルソン中佐「いえ、何かの参考になれば嬉しいですよ……そういえばオスロからは列車で?」

提督「いえ、飛行機でした」

ダニエルソン中佐「それは残念です。何しろ「ベルゲン鉄道」と言えばすばらしい景色で有名な観光列車ですから、ぜひ乗ってほしかったですね」

提督「私も時間さえあればそうしたかったのですが、なにぶん出張ですから……」

ダニエルソン中佐「どうやら小うるさくてけちな主計部というのはどこの海軍も変わらないようですね」

提督「ふふ、同感です♪」

提督「……ところでダニエルソン中佐はどうして海軍に?」

…海軍士官がお互いに出会うと、話は自然と今まで航海した海や港で出会った興味深いものや珍しいもの、変わったこと……そして(当人が話してくれるようなら)海軍に入った理由もよく話題になる…

ダニエルソン「私ですか……私はうちが代々クジラ取りの漁師でしてね」

提督「クジラですか」

ダニエルソン「ええ。ノルウェーじゃ伝統的に食べていたんですが、昨今は保護団体からの風当たりが強いもんですからね……それに深海棲艦のこともあってクジラ漁が立ち行かなくなったので、サーモンやカニ漁に切り替えようとしたんですが、それもダメでしてね……結局、海のことならどうにかなるだろうと海軍予備士官に志願したんです」

提督「そうだったんですね」

ダニエルソン「ええ……カンピオーニ少将はクジラを食べたことがありますか?」

提督「いいえ、一度も」

ダニエルソン「……少将もやはりクジラは保護するべき生き物で、猟の対象にするべきではないとお考えで?」

提督「どうでしょうか……同族の哺乳類を食べていると嫌悪感を抱く人がいることは知っていますが、それでいけば牛や豚も食べられませんし……実家では時々、猟で仕留めたイノシシやウサギ、シカを食べていましたから……絶滅危惧種なのに見境なく乱獲するとか、あるいは遊び半分に殺すのでなければそういう文化があっても良いと思いますよ」

ダニエルソン「そう言ってくれると嬉しいですね。ノルウェーでもいまやクジラを食べる人はごく少なくなってきてしまいましたから……たいていは日本に輸出されるんですよ」

提督「なるほど」

ダニエルソン「これが昔持っていたうちの船です」

…ダニエルソンは胸ポケットから軍隊手帳を取り出すと、折り返しの透明窓の所に挟んでいる写真を見せてくれた……ふちが少しよれている年季の入った写真には、北欧らしいずんぐりむっくりとした寸詰まりの船体に、やたら乾舷の高い船首をもった一隻の漁船が写っている……舷側は鮮やかな赤色で、埠頭に横付けした船の前でダニエルソンとその家族と思われる数人が笑顔で収まっている……

提督「素敵な写真ですね」

ダニエルソン「いや、どうも……」ぼりぼりと頭をかきながら、少し恥ずかしげに照れ笑いを浮かべた……

提督「……ところでダニエルソン中佐、ノルウェー海軍も深海棲艦が出現してからは「提督」として任官する士官が多いのでしょうか?」

ダニエルソン「ええ、多いですね……私のような予備士官を始め、他兵種からの転属や若手士官の起用、士官学校の拡充も続いていますよ」

基地司令「とはいえ、どうしても他兵種からの転属組は「艦娘」の運用となると難しい所がありましてね……何しろレーダーやミサイルに慣れている今どきの士官に、大戦中の兵器について学び直してもらうのでは時間がかかりすぎますから」

提督「そうですね」

基地司令「それに「艦娘」たちは戦う軍艦としての存在であると同時に、一人の女の子でもありますし……その心のケアや体調管理には気を遣っています」

提督「たしかに、専門のカウンセラーや医療施設、ジムや温水プール、美容室……艦娘たちの福利厚生にとても気を配っている印象を受けました」

基地司令「ええ……我々は彼女たちに高いパフォーマンスを発揮、維持してもらうためにはそういった施設が必要だと考えていますし、同時に「深海棲艦」による制海権の喪失や、それをイージス艦や戦闘機といった既存の兵器で奪い返すコストを考えれば、それだけしても充分にお釣りが来ると考えております」

提督「同感です」

ダニエルソン「それに、彼女たちはみな良い娘ばかりです……そりゃあ時には叱りつける事もありますが、よく頑張ってくれていますよ」

提督「ふふ、それは私の所でも同じです……♪」お互いに提督として理解し合い、話が盛り上がってきた所でそっとフェリーチェが耳打ちした……

フェリーチェ「フランカ、そろそろ空港に行かないと……」

提督「ええ……色々なお話を聞くことが出来てとても有意義な時間でしたが、そろそろ空港に向かわないとならないので……本当はもっとお話をしたいのですが」

ダニエルソン「それは残念です……カンピオーニ少将は例のヘルシンキで行う会議に出席なさるのですね?」

提督「ええ」

ダニエルソン「そうでしたか……私は参加しませんが、ノルウェー海軍からは別の士官が出席する予定ですから、カンピオーニ少将のことをお伝えしておきます」

提督「ありがとうございます」

基地司令「では、送迎車を玄関に回しておきましたので……有意義な時間を過ごしていただけたようなら本官としても幸いです」

提督「ええ、大変に学ぶところがありました……大佐の心のこもったもてなしについては、ノルウェー海軍本部にも御礼を伝えておきます」

基地司令「いや、これはどうも……では、また機会がありましたらぜひ当基地へいらしてください」

スレイプニール「では、いつかまた来て下さいね。カンピオーニ少将……ちゅっ♪」敬礼を交わした後、つま先立ちをすると頬に口づけをした……

提督「あら……♪」

…司令部の入り口で基地司令とダニエルソン、それに「スレイプニール」を始めとする艦娘たちが見送ってくれる中、いそいそと車に乗り込んだ…

フェリーチェ「……どうやら良い思い出ができたようね」

提督「そうね……♪」

…ストックホルム…

提督「うーん、やっと着いたわね……肩と腰がすっかりこわばっちゃった」

フェリーチェ「慣れてないでしょうし無理もないわ……でも、情報部だったら一泊で五カ国を巡ったりなんていう弾丸旅行みたいな出張もよくあるのよ?」

提督「頭が下がるわ……でも、今夜はちゃんとしたホテルに泊まれるのよね?」

フェリーチェ「ええ」

提督「助かったわ」

…空港ビル…

美人の女性士官「……ようこそストックホルムへ。お二人を案内することになりました、スウェーデン王国海軍のイングリッド・ラーセン大佐です」

…アーランダ国際空港のターミナル5で二人を出迎えてくれたのは、大佐の制服もビシッと決まっている海軍士官で、きりりとした典型的な北欧美人といった顔立ちもあいまって、銀幕を彩った往年の名女優「グレタ・ガルボ」を彷彿とさせる……

提督「初めまして、ラーセン大佐……「タラント第六鎮守府」司令のフランチェスカ・カンピオーニ少将です(それにしても目が覚めるような美人ね……)」敬礼を交わし、握手をしながらごくりと生唾を飲み込む……

フェリーチェ「ミカエラ・フェリーチェ大尉です」

ラーセン大佐「スウェーデン訪問を歓迎します。少将閣下、それと大尉……ここからストックホルムのホテルまでは私が車でお送りします。 ところで、お二人はこれまでストックホルムにおいでになったことは?」

提督「いえ、まだです」

ラーセン「そうですか、では「ガムラスターン(旧市街)」や王宮での衛兵交代は見たことがないわけですね?」

提督「ええ」

ラーセン「分かりました。せっかくストックホルムに来たのですから、ぜひご覧になってもらいたいですね……衛兵交代は正午ですから、明日ご案内しましょう」

提督「ありがとうございます」

ラーセン「いいえ。さぁ、どうぞ乗って下さい……ちょっと狭いかもしれませんが」駐車しているのは丸みを帯びた流線型で構成された2ドアの自動車で、銀色の塗装が空力を意識した滑らかで美しいラインを際立たせている……

提督「サーブですか、今どき珍しいですね……」


(※サーブ…1937年に国営の航空機メーカーとして設立された。「SAAB」は「スヴェンスカ・アエロプラン・AB(スウェーデン航空機製造会社)」の頭文字から。小国でありながら高い技術力をもち、戦中にエンテ翼、双ブーム、推進式エンジンという独特なデザインを持つJ21を完成させるなど意欲的な機種を次々と開発。戦後も50年代には米ソよりも早くダブルデルタ翼を採用したJ35「ドラケン(ドラゴン)」やJマルチロール機として好調なJAS39「グリペン(グリフォン)」を送り出すなど、優れた設計と高い技術力を誇る。一時期は航空機設計の技術を応用して自動車分野にも参入し、技術力に裏打ちされた優れた自動車をリリースしていた)


ラーセン「ええ、サーブ96です。父の代から乗っていて愛着があるものですから……年代物ですし運転には少し慣れが必要ですが、よく走りますよ」

提督「それでは……よいしょ、と」助手席の椅子を前のめりに倒してもらい、そこから後席に潜り込む……大柄な車ではないので少しせせこましいが、それでもそこまで居心地が悪くないのはシートやルーフ(屋根)のデザインがよく出来ているからだろうと提督は思った……

フェリーチェ「じゃあ私は助手席で」

ラーセン「ええ。それでは行きましょう」

…ストックホルム市街への道…

提督「……それにしても、コンパクトなのによく走りますね」

ラーセン「そうですね……乗り心地はいかがですか?」

…アンダーパワー気味のエンジンしか積んでいないため加速はそれなりだが、空力設計が上手いからかコーナーではかなり機敏なサーブ96……提督も車の運転は得意な方なのでしげしげと観察していたが、ラリーカーとして活躍するだけのことはあると思わせる…

提督「そうですね、かなり面白いです」

ラーセン「ちゃんとした自動車でお迎えできなくて済みません……本当は運転手付きの黒塗りでお出迎えする予定だったのですが、たまたま黒塗りの使用日時がかぶってしまいまして」

提督「構いませんよ。それにこちらの方がスウェーデンの自動車らしくて楽しいです」

ラーセン「そう言ってもらえると助かります」

提督「いえいえ」

ラーセン「……ストックホルムに着きましたら市街の案内や通訳は私が行いますので、必要な事があればどうぞご遠慮なく」

提督「ありがとうございます」

ラーセン「いいえ」

ラーセン「ところで、スウェーデンで何かご存じのことはありますか?」

提督「そうですね……スウェーデンと言うと、サーブの戦闘機に「ヴィズヴィ」級フリゲート、Strv.103(Sタンク)のように、ユニークで優秀な兵器を持っているイメージですね……他に知っている事と言えば、恥ずかしながらグレタ・ガルボやイングリッド・バーグマンのような綺麗な女優が多いことと、警察小説の「刑事マルティン・ベック」シリーズ……そうそう「ニルスの不思議な旅」も子供の頃に読んだことがあります」


…提督は自分でも知識が偏っていることに苦笑いをしながら、運転席でハンドルをさばいているラーセンにそういった…


ラーセン「なるほど、「ニルスの不思議な旅」ですか。 あれは子供のためにスウェーデンの地理と歴史を楽しく学べるよう書かれた児童文学ですから、あれを読めばスウェーデンの大まかなところが理解できますよ……あとでゆかりの場所もご案内しましょう」


(※ニルスの不思議な旅……セルマ・ラーゲルレーヴの児童文学。動物をいじめていたり親の言いつけを守らない悪童ニルスが妖精をいじめたために小さくされてしまい、ガンの群れについて行こうとして飛び立った家のがちょうを捕まえようとして飛び立ってしまい、そこから渡りの中で様々な経験をして成長するお話。スウェーデンの地理や歴史を物語として楽しみながら学べるようになっている)


ラーセン「……それにしても時間の都合でカールスクルーナに寄れないのは残念ですね。私の鎮守府もカールスクルーナにあるので、ぜひご覧になって欲しかったのですが」


(※カールスクルーナ…スウェーデン南部に位置する軍港都市で世界遺産。冷戦中の1981年、ソ連の「ウィスキー」級潜水艦が座礁した「ウィスキー・オン・ザ・ロック」事件が起きた場所でもある。「ニルスのふしぎな旅」ではカール十一世のブロンズ像と、カールスクルーナ提督教会にある有名な老人型の寄付箱「ローゼンボム」の像が出てくる)


提督「ラーセン大佐はカールスクルーナ鎮守府の司令なのですね」

ラーセン「ええ……生まれたのは南部のマルメですが。 マルメはストックホルムよりも暖かですし、住んでいる人も穏やかな良いところですよ。それにコクムスの造船所もあります」

(※コクムス……スウェーデンの造船会社。1840年からあって、所有していたガントリークレーンはマルメの名物だった。潜水艦の建造にたけており「ゴトラント」級を始めとするAIP(非大気依存)システム搭載の通常動力潜水艦では高いノウハウを持つ。海自の「そうりゅう」型にも技術が導入されている)

提督「そうですね」

ラーセン「ええ。夏場は避暑を兼ねて多島海にある小島の別荘に行って、日光浴をしたり冷たいアクヴァヴィットを飲みながらのんびりしたりして時間を過ごすんです」

提督「自分の島があるなんて素敵ですね♪」

ラーセン「まぁ、スウェーデンは島が多いですから……それと先ほどからのお話を伺っている限りでは少将は映画がお好きなようですが、それで言うとマルメはアニタ・エクバーグの出身地でもありますよ」

提督「やっぱりスウェーデンはきれいな人が多いんですね。ラーセン大佐もとてもきれいな方ですし……それもぎらぎらした太陽ではなくて、静寂の中で輝きを放つ月のようです」

ラーセン「お上手ですね……何かお飲み物でもごちそうした方がよろしいですか?」

提督「いいえ、むしろ私からごちそうさせて下さい♪」

フェリーチェ「カンピオーニ少将」ラーセンに色目を使い始めた提督をたしなめるように、事務的な声を出した……

提督「あー、こほん……そう、映画は好きですよ」

ラーセン「そうですか。他にもスウェーデンと言えばイングマール・ベルイマン監督や俳優のマックス・フォン・シドー……イタリアと言えば「ヴェニスに死す」に出演した美少年タジオを演じたビョルン・アンドレセンもスウェーデン人ですよ」

提督「ルキノ・ヴィスコンティの映画ですね……幼い頃に見た時は分かりませんでしたが、ある程度大人になってから見ると感情や描写の奥深さに驚かされます」

ラーセン「そうですね、中年の作曲家が名前も知らない美少年に心を奪われてしまう……それだけで済ませることのできない人間の心や、美しいものに心惹かれる感情の機微というのでしょうか……」

提督「ええ。それにヴィスコンティ自身も美少年が好きだったようですから、一層リアリティがありますね」

ラーセン「たしかにその話は聞いたことがあります……そろそろホテルに着きますよ」

…ストックホルム市街は古き良き石造りの建物も多いが、同時にガラスとコンクリートで出来た現代的なビルディングも数多く立ち並んでいる……どちらにもいい点はあるのかもしれないが、淡い黄色や落ち着いた白色の壁の古い建物の方が好ましく思えた…

提督「きれいな街ですね」

ラーセン「ありがとうございます……ですが、私からすると堅苦しくてよそよそしい感じがしますね。もっとも、それは私がストックホルムの人間でないせいかもしれませんが」

提督「いえ、その気持ちはよく分かります。イタリアでもローマはせわしなくて慌ただしい感じですから……どこでも首都というのはそういうものなのかもしれませんね」

ラーセン「かもしれません……さぁ、着きましたよ」

…翌日…

ラーセン「さてと、手荷物は大丈夫ですか?」

提督「ええ」

ラーセン「分かりました、それでは行きましょう……王宮周辺は車が乗り入れられないので近くで車を停めて、あとは歩きです」

…ガムラスターン(旧市街)と王宮は、ストックホルム市街の周辺に広がる多島海の一つ「スターズホルメン島」に集中している……周囲はクリスマス前とあってバザールが開かれていたりと賑やかで、灰色の冬の空を押し戻そうとしているかのように、あちこちに鮮やかな青と黄色のスウェーデン国旗が翻っている……ラーセンは旧市街の入り口でサーブを停めると、提督とフェリーチェを案内して旧市街を連れ立って歩いた…

…ストックホルム宮殿前…

提督「あ、始まったわ……」

…王宮前の広場で行われる衛兵交代式を見学する提督一行……青を基調にした凜々しい礼装姿のスウェーデン近衛兵達が、白馬にまたがり石畳の広場で見事な行進を披露する……およそ半時間あまりにわたる式典を見終えると、周囲の観光客と同じように惜しみない拍手を送った…

…しばらくして…

ラーセン「……いかがでしたか?」

提督「とても素晴らしかったです、まるで物語に出てくる騎士達のようですね」

ラーセン「気に入ってもらえて何よりです……失礼、少々よろしいですか」

…新市街に戻ってくる途中で広告のついた青色のトラックを見かけると、いささか唐突に車を停めたラーセン大佐…

提督「どうかしましたか?」

ラーセン「いえ……つかぬ事をお尋ねしますが、少将はアイスクリームがお好きですか?」

提督「ええ、どちらかと言えば好きな方ですよ」

ラーセン「そうですか、それはよかった……では行きましょう!」

提督「ラーセン大佐?」

ラーセン「ああ、そういえば少将はご存じないですね……あの車は「ヘムグラス(Hemglass)」のアイスクリーム販売車ですよ」

…妙にのんきなオルゴールのようなメロディを響かせながら道端に停まった青色のトラック……と、たちまちあどけない子供たちから、ネクタイを締めた生真面目そうな会社員、杖をついたお年寄りまで、ありとあらゆる年齢層の人がトラックの周りに集まってくる……どちらかと言えば落ち着いていてあたふたすることの少ないスウェーデン人が、我先にとトラックの周りに集まってくるのに何とも言えない違和感を覚えた提督…

提督「えーと……」

ラーセン「あぁ、スウェーデン語で書かれているからどれがどの味が分かりませんか? 英語でよろしければ翻訳しますよ?」言うよりも早く自分のアイスクリームを注文しているラーセン……

提督「そうではなくて……」

ラーセン「では何か……もしかしてお好みの味がありませんか?」

提督「いえ、そういうわけでも……」

フェリーチェ「……噂は本当だったようね」提督の横に立っているフェリーチェが小声でつぶやいた

提督「どういう事?」

フェリーチェ「あぁ……北欧やロシアの人間はアイスクリームが大好きだって話よ。空気が乾燥しているから、飲み物よりも時間をかけて舐めることが出来るアイスクリームが好まれる……って」

提督「そういうこと……それにしてもこの気温でアイスクリームね。まぁいい経験かもしれないわ」財布からアストリッド・リンドグレーンが描かれた20クローナ札を取り出すと、ラーセンに通訳を頼んでアイスを買おうとする……

(※アストリッド・リンドグレーン……「長くつ下のピッピ」の作者。それ以前の20クローナ札は「ニルスの不思議な旅」と作者のラーゲルレーヴだった)

ラーセン「あの、カンピオーニ少将……」

提督「何でしょう、ラーセン大佐」

ラーセン「いえ……スウェーデンのたいていのお店では現金が通じないので。電子マネーかカードの類はお持ちですか?」

提督「あぁ、そういえばそうでしたね……逆にイタリアでは現金以外は信用されないものですから、つい♪」額に手を当てて少しおどけたような身振りをすると、改めて財布からプリペイドカードを取り出した……

…数分後…

提督「……ミカエラは何味にしたの?」

フェリーチェ「普通のバニラ味ね、フランカは?」

提督「キイチゴ味ね……普通のイチゴよりも甘酸っぱいわ」

ラーセン「無事に買えたようで何よりです……出遅れるとすぐなくなってしまいますから」

提督「ふふ……スウェーデンの方はアイスクリームが好きなんですね」整っていて「格調高い」とも言えそうな顔立ちのラーセンが、子供のようにアイスクリームをなめている姿を見ると、何となくおかしさがこみ上げてくる……

ラーセン「ええ、子供の頃から家にはアイスクリームがたくさんありましたよ……どうかしましたか?」

提督「いえ、何でもありません♪」ある意味で面白い体験が出来たと、気温がひとケタの寒空の下で暖かいコートにくるまってアイスをなめた……

…しばらくして…

ラーセン「カンピオーニ少将、フェリーチェ大尉。よろしかったら「フィーカ」をご一緒しませんか?」

提督「フィーカ……たしかコーヒー休憩のことでしたっけ」

ラーセン「ええ、よくご存じですね……いかがですか?」

提督「そうですね、ぜひ♪」

…前日にスウェーデン入りしたばかりだと言うのに、すでにコーヒーを飲み続けている気がしている提督……フィンランド人の次にコーヒーを消費し、EU(欧州連合)平均の倍はコーヒーを飲んでいるとされるスウェーデンだけあって「フィーカ(コーヒー休憩)」というと、もはや息をするのと変わらないほど生活に染みついている…

…カフェ…

ラーセン「カンピオーニ少将、マザリン・ケーキをどうぞ」

提督「ありがとうございます」

…濃く淹れた苦くて熱いコーヒーにたっぷりと牛乳を入れたミルクコーヒーに、小さいタルトのような台にアーモンドのペーストを詰めて、上から粉砂糖でコーティングした甘い「マザリン・ケーキ」を添えた提督……フェリーチェもマザリン・ケーキを取り、ラーセンはしばし考えてスイートロールを取った……カフェとペストリーを売る菓子店を兼ねている「コンディトリー」は、ガラス張りの陳列棚に甘い菓子がいくつも並び、コーヒーの香ばしい香りが漂っている…

ラーセン「ええ……ふぅ、やはりこれがないと落ち着きません」きりりとした表情を少しゆるめて、満足げなため息をついたラーセン……

提督「スウェーデンの方はコーヒーがお好きですね」

ラーセン「そうですね。同じように牛乳も好きですが……ところで昨夜の夕食はいかがでした?」

提督「ええ、美味しかったですよ」

ラーセン「それは何よりです」

…前夜・レストラン…

提督「……わざわざありがとうございます」

ラーセン「いえ、どのみち私も夕食を取りに出かけようと思っていたところでしたから」


…提督たちをホテルに送ってくれた後で「夕食でもいかがですか」と誘いに来てくれたラーセン……提督としては美しいラーセンにそう言われて一瞬わくわくしたが、ラーセンとしては他意はなく、単に外国の将官に気を遣ってそう言ってくれたのだと思い、少しがっかりすると同時に、その気配りを嬉しく感じた……制服から私服に着替えてきたラーセンは淡いグレーのスカートとクリーム色のセーター、それとライトグレイのコートに合わせて、袖口に白い毛皮の縁取りを施したライトグレイの手袋をしていて、脱いだコートと手袋は横に置いてある…


提督「そうだとしても、わざわざ誘って下さるなんて嬉しいです♪」


…いかにもスウェーデンらしいゆでジャガイモとベリーソース添えのミートボールを食べながら、にっこりと微笑みかけた提督……ストックホルムのぴりっと冷たい寒さに対抗して、黒いウサギの毛皮帽に黒革の手袋、それに暖かなクリーム色のラップコートで、下にはふんわりした淡い桃色のセーターとひざ丈のスカートをまとい、ストッキングに黒革のニーハイブーツで足元を固めている……フェリーチェは黒のハイネックセーターに控え目な金のネックレス、割とぴっちりした地味なスラックスを合わせていて、カブのピューレをそえた小ぶりなヒレステーキを味わっている…


フェリーチェ「私もスウェーデン語はおぼつかないので、助かりました」

ラーセン「いえ、どうぞお気になさらず……後でクリスマス前のマーケットも寄ってみましょう」

………



提督「……それにしても、うちの艦娘たちも、スウェーデン海軍の「プシランデル」級や「ロムルス」級に会えれば良かったのですが」

ラーセン「そういえば、もともとそちらの艦(フネ)でしたね」

提督「ええ。プシランデル級がもとのセラ級駆逐艦、ロムルス級がスピカ級の水雷艇です……あとは戦後の「トレ・クロノール」級軽巡もアンサルド社のデザインですし、親近感があります」

ラーセン「当時、ソ連やドイツに備えるために艦艇を整備していた我が国にとってみれば、必要な性能があって固いことを言わずに売却してくれるイタリア艦は貴重な戦力でしたからね……何しろ軍艦を建造すると言っても、造船所には限りがありますから」

提督「それに、長い半島と陸地に囲まれた穏やかな海という部分でもイタリアに似ていますし、スペックや性格の部分でも扱いやすかったのではないかと思います」

ラーセン「おっしゃるとおりです……それに数隻とは言え、独ソ両方から中立を守るという意味ではいい時期に艦隊へ編入することが出来ました」

提督「スウェーデンの中立維持は今も昔もなかなか舵取りが難しいですね」

ラーセン「ええ。とはいえ、バルト海の深海棲艦も活動がかなり下火になりましたから……失礼」

提督「……そういえば、スウェーデンの人って歯磨きの後にうがいをしないわよね」化粧室に向かったラーセンの後ろ姿を見送りながら、ふと気になったことを口に出した……

フェリーチェ「ええ……なんでもフッ素の成分をうがいで流してしまわないためだそうだけど。キシリトールガムがやたら多いのもそのためだって聞いたわ」

提督「なるほどね……理屈は分かるけれど、私は遠慮しておくとするわ」

………

…そういえば4月26日は「海上自衛隊の日」で、海自の創設70周年でしたね。近年ますます世界の情勢が混迷を深める中、活躍している海自の皆さまには頭が下がります……平和で海難事故もなく、金曜カレーの味を競うような穏やかな日々が続けば良いのですが…

…それにしても旧帝国海軍の駆逐艦や海防艦、米軍のお下がりといった寄せ集めの艦艇群だった当時に比べ立派な護衛艦を持つようになって、本当に隔世の感がありますね…

…艦娘紹介(スウェーデン)…


ゴトラント…航空巡洋艦。単艦

世界的にも珍しい航空巡洋艦(水上機運用巡洋艦)。平甲板で構成された船体と、前部主砲として「ボフォース・M/30」152ミリ連装砲、および艦橋両舷のケースメイトに同単装砲一基ずつを備え、後部甲板には75ミリ60口径連装高角砲、および中央部両舷に同単装高角砲、また533ミリ魚雷発射管や機銃少々を装備した。

巡洋艦としては低速で、あくまで武装を強化した水上機母艦といった立ち位置ではあるが、アイデア自体はフランスや日本に影響を与え、「リシュリュー」級戦艦や「利根」型一等巡洋艦の設計、また「最上」型二等巡洋艦などの「航空巡洋艦」化につながったとも言える。

後に搭載機の「ホーカー・オスプレイ」(1928年初飛行の複葉軽爆「ホーカー・ハート」の艦載型)が旧式となり、戦時下にあってカタパルトの変更や代替機の調達がかなわなかったことから、ボフォース製の大傑作である40ミリ60口径「ボフォース・m/36」高角機銃を後甲板に増備し防空巡洋艦となった。
大戦中、スウェーデンは武装中立を維持したので戦績という戦績はないが、ドイツ・ソ連の双方にニラミを利かせ、またドイツ戦艦「ビスマルク」の出撃時にはこれを発見、イギリスに通報することで撃沈の端緒を作っている。艦名はスウェーデンの「ゴトラント島」から。


艦娘「ゴトラント」は軽巡と言いつつも小柄で、火力、防御、速力いずれもそこまで高い能力があるわけではないが、当時のスウェーデン王国海軍でほぼ唯一の巡洋艦ということで頑張っている。「ゴトラント」の名前に影響を受けてか、南部スウェーデン人らしく気さくで人のいい性格をしている。


……

トレ・クロノール級軽巡…二隻。

イタリア艦「R・モンテクッコリ」級や「アブルッツィ」級など、デザイン的に優れていた「コンドッティエーリ(傭兵隊長)」型軽巡の設計案を売り込まれたスウェーデンが、これをベースに設計した新型軽巡。

武装は全てスウェーデンのボフォース製に換装されており、特に当時としては先進的な自動装填機能、仰角70度まで指向できる152ミリ高角砲を主砲とし、同時に高角機銃として高性能を誇るボフォース製「m36・40ミリ60口径」機銃を装備して対空戦に備え、専用の高角砲を持たない所に特徴がある。
一番艦の「トレ・クロノール(三つの王冠)」は43年に進水、就役は戦後の47年。64年には除籍されたが、同じく戦後に就役した二番艦「イェータ・レヨン(黄金の獅子)」はスウェーデン海軍除籍後チリに売却され「アルミランテ・ラトーレ」として1984年に除籍されるまで長く活躍した。
艦名の「トレ・クロノール」「イェータ・レヨン」はいずれもスウェーデン王家の紋章から。


大戦には間に合わなかったことから活躍の機会もなかった「トレ・クロノール」級だが、艦娘として活躍の機会が得られたことから張り切っている。スウェーデン王室のシンボルを冠しているだけに高貴な印象を与えるが、国民とも積極的に関わり合うスウェーデン王室を体現してか、意外と気さくで付き合いやすい。服はスウェーデンらしい青地に黄色のワンポイントが入ったお洒落な礼装。

……

プシランデル級駆逐艦…イタリア海軍の「セラ」級駆逐艦のうち二隻を購入したもので、砲や機銃はスウェーデン軍に合わせてボフォース製のものに換装され、450ミリ魚雷も53.3センチ魚雷に換装された。


塗装もスウェーデン独自の灰色と白にグリーン系の三色で構成された迷彩を施し、イメージがかなり変わっている。

元の「セラ」級は小柄な船体に過剰とも言うべき兵装を搭載していたが、波穏やかなバルト海ではそこまでの影響がなく、航続距離(アシ)の短さも防衛を主とするスウェーデンでは欠点とならず、沿岸防衛や哨戒に活躍した。


服は迷彩服のような色味で、小さいが何でもそれなりにこなせる器用なところがある。

…フィンランド・ヘルシンキ空港…

提督「はー、ここがヘルシンキ……って、寒いわね」

フェリーチェ「無理もないわ。気温を見てみなさいよ」それぞれ現地時間とロンドン時間を表示している二つの時計や各種施設の案内が書かれている大きな案内板……そしてそれに付いているデジタル温度計を軽く指し示した……

提督「うわ、外は氷点下なのね……道理で」

フェリーチェ「暖かいコートで正解ね」

提督「ええ……それにひきかえフィンランドの人ときたら、寒くないのかしら」


…暖房の効いていたフィンエアーのサーブ機から降りてきた提督とフェリーチェは当直(ワッチ)にも使える厚いダブルの軍用コートをきっちり着込んでいたが、それでもなお沁みこんで来るフィンランドの冷気に軽く身震いした……にもかかわらず辺りを行き交うフィンランド人はさして寒そうな様子もなく、一応コートや毛皮の帽子は身に付けているが、当たり前のように歩き回っている…


フェリーチェ「きっと慣れっこなんでしょう」

提督「そのようね……それで、お迎えの士官さんはどこかしら……?」

フェリーチェ「……ゲートの所に二人いるわ、きっとあれがそうでしょう」そう言っている間にも丁寧な雰囲気のフィンランド海軍の士官が歩み寄ってきて、ぴしりと敬礼した……

フィンランド軍士官「お待ちしておりました。ようこそフィンランドへ……本官がお二人を送迎することになっております。どうぞこちらへ」

提督「感謝します」

士官「お荷物は下士官に運ばせますので、どうぞお楽に」

提督「ありがとうございます」スーツケースを運んでくれる下士官にも礼を言うと、メルセデスの後部座席に腰を下ろした……


…所帯が小さいフィンランド軍は、陸・海・空・それぞれの司令官を少将が務めていることもあり、「はるばるイタリアからやって来た将官」という立場である提督に対して、わざわざ前部のフェンダー部分に軍のペナントを立てた立派なメルセデスのSクラス乗用車と随伴車が一台ついた車列で迎えに来てくれていた……ぜいたく自体は嫌いではないが、仰々しいのが苦手な提督としては別にタクシーでも構わなかったが、車内が暖かく乗り心地がいいのはありがたかった…


フィンランド軍士官「それでは、本官がヘルシンキのホテルまでお送りいたしますので」

提督「お願いします」

…滑らかに走り出したメルセデスのシートに深々と腰かけ、窓からの景色を眺めつつフェリーチェに話しかけた…

提督「それにしても北欧は色が少ない感じね。 白と灰色と針葉樹の緑……建物に赤や黄色を使いたくなる気分も分かるわ」

フェリーチェ「同感」

提督「フィンランド海軍の艦娘たちと会う機会はあるかしら? スウェーデンの娘たちとは会えなかったし」

フェリーチェ「それなら会議には随伴として来ているはずだから、きっと会えるわ」

提督「そう、良かった♪」

フェリーチェ「ええ……ところでストックホルムで買い込んでいたクリスマス飾りは鎮守府へのお土産?」

提督「そうよ。スーツケースには着替えくらいしか入っていないし、いざとなったら宅配便で送っちゃえばいいものね」

フェリーチェ「なるほど、フランカも色々と考えてきたのね」

提督「ええ、ミカエラほど旅慣れてはいないけれど……♪」

フェリーチェ「何事にも初めてはあるものよ。 それと、会議の出席者だけれど……」さっと資料を取り出すと、手早くブリーフィングを行った……

提督「ええ」

…数分後…

フェリーチェ「……ざっとこんなところね」

提督「よく分かったわ」

フィンランド軍士官「……少将閣下、もうそろそろホテルに到着します」

提督「ええ、ありがとう」

士官「ホテルではこちらの代表である鎮守府司令官がお二人を出迎える手はずになっております……わが軍のおおよその態勢や状況はその士官からお聞きいただければと存じます」

提督「分かりました、ありがとう」

…ヘルシンキ・ホテルのラウンジ…

色白の女性士官「ようこそ「森と湖の国」フィンランドへ、お会い出来て光栄です……クリスティーナ・ニッカネン少佐です」

提督「フランチェスカ・カンピオーニ少将です。こちらこそ、暖かいもてなしに感謝しております」敬礼を交わすと、軽く握手をした……

ニッカネン少佐「我々フィンランド人は「ペルソナ・ノン・グラータ」(好ましからざる人物)でもない限り、いつでも旅人を歓迎しますよ。 イタリアの方にこの寒さはこたえたと思いますが……コーヒーでもいかがですか?」

提督「ええ、いただきます」

…コーヒー好きのフィンランド人らしく、早速コーヒーを注文したニッカネン……運ばれてきた銀色のポットからカップにコーヒーが注がれるのを見ながらも、ついニッカネンを観察してしまう…

提督「……」

ニッカネン「どうかなさいましたか?」

提督「あぁ、いえ……」


…ニッカネンは色白で、淡い琥珀色の髪に色素の薄いブルーの瞳をしていて、髪を頭に巻き付けるように結っている……すでに結氷期で艦娘側も深海側もお互い活動が低調な東部バルト海とはいえ、フィンランド海軍の持つ戦力はごく小さく、哨戒や指定海域での機雷敷設、あるいはフィンランド湾を封鎖しようと深海側が敷設する機雷の掃海と忙しいらしい……カップを持つ指は多少骨張った感じではあるが白くすんなりとしていて、帰投してから急いで金モールと略綬付きのきれいな制服に着替えてきたらしく、髪にほのかな潮の匂いが残っている……また、それがどんな香水よりもニッカネンのすっきりした美しさを引き出している…


ニッカネン「それにしても少将がいらっしゃるとは思いませんでした……フィンランドは初めてですか?」

提督「ええ。北欧自体が初めてなので、何もかもが目新しくて興味深いです」

ニッカネン「そうですか……少将は何かご趣味を?」

提督「ええ。映画や絵画の鑑賞、読書など一通りは……それに射撃も少し」親指と人差し指で小さなすきまを作り「ほんのたしなむ程度に」と身振りをつけた提督……

ニッカネン「射撃ですか、それなら私もたしなんでいます……時期になると鹿撃ちや鴨猟をやりに田舎の方へ出かけますよ。猟のシーズンならご一緒出来たのですが」

提督「まぁまぁ、休暇で来たわけではありませんから……少し残念ですけれど」

ニッカネン「他にフィンランドでご存じのことは?」

提督「そうですね……」

提督「やはりフィンランドと言えばマンネルヘイム将軍と「冬戦争」ですね……それに子供の頃に読んだ「ムーミン」や、船舶用ディーゼルのヴァルティラ……電子機器のノキアにアパレルのマリメッコ、銃火器のヴァルメ……」

ニッカネン「なるほど」

提督「それから作曲家のシベリウスに建築家のアルヴァ・アールト、ライコネンのような有名レーサーたちに、パーヴォ・ヌルミを始めとする陸上競技の「空飛ぶフィンランド人」や、クロスカントリースキーといったスキースポーツの選手……そうそう、実家にはイッタラのグラスもいくつかありますよ」

ニッカネン「これはこれは……私がイタリアについて知っている事よりも多いですね」

提督「そうですか? ふふっ♪」眉を持ち上げて驚いた様子のニッカネンを見て、思わず笑みを浮かべた提督……

ニッカネン「ええ。それと、この後の予定ですが……会議は翌日から始まる予定ですから、それまでの間に基地の艦娘たちを紹介する機会や、ヘルシンキ市内をご案内する時間も持てると思います。「スオメンリンナ要塞」(世界遺産)の見学や、市街の散策もできるかと思います」

提督「まぁ、それは嬉しいです」

フェリーチェ「ニッカネン少佐、お気遣いありがとうございます」

ニッカネン「いいえ。大尉もぜひ楽しんで下さいね」

フェリーチェ「そうさせていただきます」

ニッカネン「ええ、ですがその前に当地の情勢について軽く説明を……」

提督「ええ、ぜひお願いします」

…無愛想というわけではないが、あまりおしゃべりではないニッカネンが慎重に口を開く……提督もノートとペンを取り出し、あらためて椅子に座り直す…

ニッカネン「我々フィンランド海軍ですが……現在はフィンランド湾口を押さえるハンコ半島を拠点に、深海側の活動を抑え込んでいるというのが現状です」横に置いてあった書類鞄から様々な書き込みが加えられた地図を取り出し、ディバイダーと定規を当てて説明に入った……

提督「なるほど」

ニッカネン「フィンランド湾の最奥はクロンシュタットやサンクトペテルブルクといったロシアの都市があり、同地には黒海艦隊(バルチック艦隊)の基地があります」

…深海棲艦という「人類共通の脅威」を前にしてある程度協力関係にあるとは言え、過去にフィンランドへとしてきた仕打ちを考えるとお世辞にも「味方」とは言いにくいロシア海軍の事だけあって歯切れが悪い…

提督「ええ」提督も察して、そこは軽く相づちを打つだけでとどめた……

ニッカネン「……基本的に我々はフィンランド湾から深海棲艦がバルト海へ進出するのを抑え、同時にこちらの活動が制限されないよう、ハンコ半島や周辺海域を封鎖されないよう機雷の掃海に当たっています」

提督「なるほど」

ニッカネン「とはいえ冬期はフィンランド湾が結氷し、日照時間も短くなるので活動は低調になります」

提督「そのようですね」冬とは言えまだ日差しのある南イタリアのタラントに比べて薄く弱々しく、それすらもすぐに沈んでしまう北欧の太陽を経験している最中なので気持ちがこもる……

ニッカネン「ええ」

いよいよ「リムパック2022」が開催されましたが、現役の方はぜひ事故のないよう気を付けて下さい……世界がきな臭くなっている中での演習ですから緊張も増していると思いますが。


それと一つ間違いの部分を……サンクトペテルブルクはバルチック艦隊の根拠地ですから当然ながら黒海艦隊ではなくバルト海艦隊ですね。

また、この後ロシア連邦海軍のキャラクターを登場させるつもりでいます。ウクライナのことがあるのでどうかとは思ったのですが、登場させること自体はウクライナ以前に考えていたので……あくまでもテンプレートな冷血ロシア人キャラという事で、特段の意図を持っているつもりはありません。

…しばらくして…

ニッカネン「それではそろそろキルッコヌンミの鎮守府を案内しましょう」


…ホテルのラウンジで美味しいコーヒーをお供に情勢説明を受けた提督とフェリーチェ……カップの濃いコーヒーを飲み終えると、ニッカネンが切り出した…


提督「楽しみです」椅子から立ち上がると制服を軽くはたき、さっと身体を見回してお菓子の食べこぼしやコーヒーの染みがないか確かめる……

…ホテルの玄関先…

ニッカネン「では、おいてきた車を取ってきます……本官が先行しますから、どうぞ後からいらっしゃって下さい」

提督「ええ、お願いします」提督とフェリーチェが送迎用のメルセデスに乗り込んでいると、ニッカネンが自分の車を運転してきた……

フェリーチェ「あれじゃない? ……またずいぶんと年季が入っていそうな車ね」

提督「フィンランドの人は物持ちがいいって言うけれど、本当みたいね」


…黒塗りの後部座席におさまり待っていた二人の横を、ニッカネンが乗った車がすり抜けて前に出た……彼女が乗っているのはその真四角なデザインと、外見のイメージを裏切らない頑丈さで一世を風靡したスウェーデンの「ボルボ240」ステーションワゴンだったが、かなり使い込まれているらしく見た目はずいぶんとくたびれている……ニッカネンのボルボが走り出すと、後ろに付くようにしてメルセデスが滑らかに走り出す…

………



…ヘルシンキ郊外・キルッコヌンミ鎮守府…

ニッカネン「お疲れさまでした、少将。 ここが私の所属する「キルッコヌンミ鎮守府」です」

提督「なるほど、見事に整えられていますね」


…ゲートで守衛に敬礼され、提督たちのメルセデスは本部庁舎前にしずしずと滑り込んだ……先行したニッカネンは車を置いてきて、庁舎の入口で改めて敬礼し、握手を交わす……庁舎前の国旗掲揚柱にはフィンランド海軍旗、それにイタリア海軍旗が掲げられ、海から吹いてくるかすかな……しかしぴりっと冷たい微風に揺れている……ニッカネンの左右にはフィンランド国旗の白と爽やかな青色を基調にした服をまとった艦娘たちと、主計や軍医といった内勤の将校が並び、フィンランド海軍公報のカメラマンが左右に動き回り、しきりにフラッシュを焚いている…


ニッカネン「それでは鎮守府をご案内します」簡単な式典を済ませると、ニッカネンが並んでいる艦娘たちを紹介してくれた……

ニッカネン「彼女たちが鎮守府の海防戦艦、イルマリネン級の「イルマリネン(鍛冶の匠)」と「ヴァイナモイネン(老賢者)」です」

イルマリネン「初めまして、少将」

ヴァイナモイネン「フィンランドへようこそじゃ、少将」


…イルマリネンとヴァイナモイネンは二人とも背は低く、イルマリネンはどこかおっちょこちょいな印象を、反対にヴァイナモイネンからは知恵や深い叡智といった雰囲気を感じる……お互いに性格は正反対のようだが、仲がいい様子はちょっとしたやり取りや雰囲気から伝わってきて、何とも微笑ましい…


提督「ええ、ありがとう。 可愛らしい娘たちですね」艦娘たちと軽く握手を交わしにっこりと微笑み、それから港内に停泊している「イルマリネン」級をじっくり観察した提督……


…灰色と灰緑色、それに白という冬のフィンランドにふさわしい迷彩塗装を施した海防戦艦が穏やかな湾内で揺れている……幅広でずんぐりした砲艦のような船体と、それとは不釣り合いなほど巨大に見える前後一基ずつの連装254ミリ主砲、そして中央部に高々とそびえるマストと各所に詰め込まれた高角砲や高角機銃という船型はかなり風変わりで、陸上兵器のような迷彩ということもあって独特な雰囲気をかもしだしている…


ニッカネン「……見た目こそ小さいですが、強力なモニター(装甲砲艦)や防空砲台としてフィンランドの沿岸部を守っている、わが海軍の主力艦です」

提督「そうですね……艦名は叙事詩「カレワラ」の人物でしたか」

ニッカネン「ええ、その通りです。イルマリネンは鍛冶の匠で、ヴァイナモイネンは白髪、白髯(白ひげ)の賢者と言われております」

イルマリネン「そうそう、年寄りのくせに若い娘に求婚してフラれたんだもんね」

ヴァイナモイネン「やかましい、後から来て横取りしおって」

ニッカネン「こう見えても仲はいいのです……さ、少将に艦を案内してあげなさい」

ヴァイナモイネン「では、この賢者ヴァイナモイネンが……」白髪をさっとなびかせ、提督を案内しようとする……

イルマリネン「年寄りの冷や水はやめなって、私が案内するからさ」

ヴァイナモイネン「こら、そう年寄り扱いするでない!」

…海防戦艦「イルマリネン」艦上…

イルマリネン「ここが艦橋です」

提督「なるほど……ふむふむ」

ニッカネン「……いかがですか?」

提督「ええ、とてもきちんと整備されていますね……見事なものです」


…舷梯(タラップ)を上り、ニッカネン少佐とイルマリネン、ヴァイナモイネンの解説を受けながら艦内を軽く一回りした提督……真鍮や銅で出来ている金具はきれいに磨き上げられ、甲板や調度品の木材は艶やかで、塵のひとつ、汚れの一点もない……だがそれより提督の気を引いたのはきちんと前後の水平を保って繋止されているカッター(ボート)や、急な対空戦になっても即応できるよう満杯にしてあるボフォース40ミリ高角機銃の弾薬箱、とっさの時に凍り付いていて使えないことのないよう防寒用の布でくるまれている消火ポンプと消火用ホースなど、あちこちを磨き立てることよりも、いつでも戦闘に入れるよう準備が整っている事に感心した…


ニッカネン「少将にそう言っていただけると嬉しいかぎりです……イルマリネンも少将にお礼を申し上げなさい」

イルマリネン「ありがとうございます、少将」

提督「いいえ♪」

………



提督「貴重な時間に感謝します、少佐……フィンランド海軍の海防戦艦をつぶさに観察する機会はそうありませんから、いい経験が出来ました」

ニッカネン「そうおっしゃっていただけるとこちらも案内したかいがあります……この後は司令部でわが海軍の短い紹介映像と、最近の作戦行動を簡単にまとめた資料を用意してありますので、そちらをご覧になっていただければと思っております」

提督「ありがとうございます……と、あれは……」


…空冷エンジン独特の乾いた音を響かせて、曇り空をブリュースター・B239「バッファロー」戦闘機が飛び去っていく……どこかユーモラスでもあるずんぐりした機体は黄色く塗ったエンジンカウリング以外は濃淡二色の緑色で迷彩が施されていて、その飛行する姿はエンジン音といいシルエットといい、どことなくクマバチを思わせる…


ニッカネン「わが軍の「ブルーステル(ブリュースター)」です……よほどの悪天候でなければ、ああしてフィンランド湾や沿岸部の哨戒に当たっています」

…太平洋では日本の「零戦」や「隼」といった格闘戦の得意な機体にいいように落とされ、評価の低い「バッファロー」だが、機体の頑丈さを活かしたフィンランド人の運用の上手さとソ連空軍の練度の低さから「冬戦争」では大いに活躍し、一部のフィンランド軍操縦士からは「空の真珠」とまで言われている……そのままフィンランド湾の沖に向かって飛行していったバッファローを見送ると、ニッカネンの案内を受けて基地施設に入った…


…司令部…

ニッカネン「どうぞおかけになって下さい」

提督「ええ」

…なまじ将官が座らないでいると室内の全員が座ることをためらってしまうので、勧められたら遠慮せず、すぐ腰かけることにしている提督……司令部施設のブリーフィングルームか会議室と思われる部屋にはプレゼンテーションの準備が整っていて、暖房も入っていて暖かい…

ニッカネン「では、始めさせていただきます……」カーテンを引くと十五分あまりの短い広報用映画と、作戦行動中に撮ったと思われる映像がいくつか、そしてフィンランドの艦娘たちが基地でのんびりしたりにぎやかにしたりしている「日常のひとこま」といった映像も合わせて流れた……

提督「……」メモ帳を机の上に置き、機雷掃海や対空戦の場面では真剣に、にぎやかな場面では微笑みを浮かべて映画を見た……

ニッカネン「……以上です」

提督「ありがとうございます、掃海の場面や対空戦の部分は非常に参考になりました……どの娘も手際が良くて、動きが身についていますね」

ニッカネン「そうかもしれません。 このあたりではこちらも深海側も勢力が小さく、お互いに決め手を欠くところがありますから」

提督「そこで機雷の敷設ということになる……と言うわけですね」

ニッカネン「その通りです。何しろ水路や湾口を塞いでしまえば相手は何もできなくなりますから……敵味方の本拠地が近いこともあって、機雷の敷設は結氷する冬期を除いていつでも行われております」

提督「なるほど、とてもためになりました……」そう言ってメモ帳を閉じ、礼を言おうとしたところでフェリーチェの携帯電話が震えだした……

フェリーチェ「……っ、失礼。 どうも急ぎの用件のようでして……」ちらっと発信者の番号を見ると、ニッカネンにわびて部屋を出る……

ニッカネン「構いませんよ、大尉……では少将、もう一杯コーヒーでも」

提督「ええ」

…しばらくして…

提督「……フィンランドと言えばやはり「ムーミン」とトーベ・ヤンソンでしょうか。彼女は同性のパートナーと仲むつまじくしていたとか。ムーミンに出てくる「おしゃまさん」はトーベ・ヤンソンのパートナーがモデルだと聞いたことがあります」

…フェリーチェが戻るまでの間、時間つぶしのおしゃべりを続けている提督とニッカネン……そこでフィンランドの有名人という話題から「ムーミン」で有名な女流作家のトーベ・ヤンソンの話になり、そこで何の気なしに同性のパートナーがいたことにも触れた提督……

ニッカネン「トゥーティッキ(おしゃまさん)ですね、確かにそう言われています……ですがフィンランドはその点立ち遅れていましたから、もったいないことに彼女の活躍は長い間認められずにいました。 今でこそそうした権利も認められるようになってきましたが、我が国では長らく同性愛は病気扱いでしたので」イタリア人の提督なら手を上に向け派手に肩をすくめるような態度で、小さく肩をすくめたニッカネン……

提督「そうだったのですか、もったいないことですね」

ニッカネン「ええ」そう言って簡単に相づちをうったニッカネンだったが、提督に向けた視線がほんの少し長かった……

提督「……?(気のせいかしら)」

提督「……それにしても暗くなるのが早いですね」

ニッカネン「北欧の冬はいつもこうです……まぁ、慣れているとは言え少し嫌になりますね。 早く夏になって日光浴か、さもなければイナリ湖あたりの森でシカ猟でもしたいところです」


…イタリアならまだまだ午後の日差しが暖かく辺りを照らしているはずの時間だというのに、すでに辺りは夕闇に覆われ始め、埠頭の周囲を飛び回っていた白いカモメたちも家路についている…


提督「ああ、そういえばニッカネン少佐は猟をなさるそうですね」

ニッカネン「ええ、カンピオーニ少将も銃猟をたしなんでいるとおっしゃっておられましたが……」

提督「はい、子供の頃から家族に教わりまして……もっとも、任官してからはすっかりごぶさたですが♪」苦笑しながら肩を大きくすくめた

ニッカネン「海軍士官ですし無理もありません……獲物は何を?」

提督「そうですね、場合にもよりますが散弾銃でカモ撃ちをしたり、実家にいたときはコムーネ(自治体)からの駆除依頼を受けてイノシシ撃ちをしたりしていました」

ニッカネン「いいですね……銃は何を?」

提督「そうですね、私はフランキかベネリの12ゲージ(番)や20ゲージが多いですね、ニッカネン少佐は?」

ニッカネン「私は……」

フェリーチェ「失礼、遅くなりました」

ニッカネン「大丈夫ですよ、大尉……用事は無事に済みましたか?」

フェリーチェ「ええ。ご迷惑をおかけしました」

ニッカネン「いいえ……それではそろそろホテルの方に戻りましょう」

………

提督「ニッカネン少佐、せっかくですしもう少し少佐のお話を伺いたいですね」

ニッカネン「それは光栄です……とはいえ明日からは会議が始まってしまいますし、そうなるとなかなか時間も取れないかと……」

提督「そうですね……もし少佐がよろしければ、ホテルまで少佐の車に乗せていただいてもよろしいでしょうか?」

ニッカネン「え? しかし私の車はあのメルセデスと違って乗り心地もあまり良くないですから……」

提督「確かにご迷惑かもしれませんけれど、せっかくですし少佐のボルボ240にも乗ってみたいです……ダメでしょうか?」

ニッカネン「それは……まぁいいでしょう。上からはカンピオーニ少将とフェリーチェ大尉のためにできるだけ便宜を図るよう指示されておりますから……ただ、できればご内聞にお願いします」

提督「ええ、もちろんです♪」

ニッカネン「送迎車の運転手には私から話をしておきましょう」

提督「すみません、ワガママを言ってしまって」

ニッカネン「その程度ならワガママの内には入りませんよ」そう言うとかすかに微笑を浮かべた……

提督「それじゃあ私はミカエラに説明しないと……フェリーチェ大尉」

フェリーチェ「は、何でしょうか」

提督「私はニッカネン少佐と話したい事がありますので、ホテルまでニッカネン少佐の車に乗ります……黒塗りの後部座席に一人だなんて寂しいでしょうけれど、ホテルに戻ったらその分の埋め合わせはするから……我慢してね?」まるで命令を伝えるかのような堅苦しいはっきりした口調で呼びかけると、口調を変えてこっそり耳打ちした……

フェリーチェ「了解しました、少将……まったく、貴女はすぐそうやって女と一緒になりたがるんだから」

提督「ごめんなさいね♪」見送りのため整列している将校や艦娘たちから見えないよう、こっそりとフェリーチェに小さなウィンクを投げた……

フェリーチェ「いいのよ」

ニッカネン「お待たせしました……さあ、どうぞ」

提督「ありがとうございます♪」助手席に乗せてもらい、まるでエアロックのような重くずっしりしたドアを閉める……途端に外部の音がシャットアウトされて、低いエンジン音だけが深い火山の鳴動か何かのようにお腹の底に伝わってくる……

ニッカネン「それでは出しますよ……ベルトは締めましたか」

提督「ええ♪」

ニッカネン「では行きましょう」

…まるで子供のようにわくわくしながら、ニッカネンの運転を楽しむ提督……名ドライバーを数多輩出しているフィンランド人だけあって、ニッカネンの運転は相当上手で、重さのあるボルボをキレのある挙動で走らせる…

提督「……少佐は運転がお上手ですね」道路の前方を見据えて巧みにボルボをコントロールするニッカネンのきりりとした横顔に、つい見惚れてしまう……

ニッカネン「そうですか?」

提督「ええ♪」

…ホテル前…

ニッカネン「着きましたよ、少将」

提督「ありがとうございます、少佐……とても楽しいドライブでした♪」

ニッカネン「それはどうも……///」

提督「ええ、それでは明日の会議で」フェリーチェを乗せたメルセデスを待つ間に、肉が薄くひんやりとした……しかしすべすべしたニッカネンの頬へ挨拶のキスを済ませると、色白のニッカネンが少し頬を赤らめた気がした……

フェリーチェ「お待たせしました……ニッカネン少佐、本日は鎮守府の案内をありがとうございました」

ニッカネン「いえ。 ではまた明日」

フェリーチェ「はい」

…ホテルの部屋…

提督「ふー……到着して挨拶をするだけかと思っていたけれど、意外と盛りだくさんだったわね」

フェリーチェ「そうかもしれないわ……ところで、夕食の前に明日からの会議に備えてちょっと状況説明をしておきたいのだけど」

提督「分かったわ」礼服がシワにならないようきちんとハンガーに掛けるとブラウスのボタンをいくつか外して胸元をゆるめ、肩を回したり首を傾けたりして凝りをほぐしつつ、ベッドに腰かけた……

フェリーチェ「聞く気になってくれて助かるわ」

提督「まぁ、明日からの会議でどんな人が来るかくらいは知っておかないといけないでしょうし……どうぞ始めてちょうだい?」

フェリーチェ「ええ。明日からの会議だけれど、参加国は主催役のフィンランドを始め、スカンジナビアのノルウェー、スウェーデン……フィンランドからは陸・海・空軍や参謀本部の士官が数人、ノルウェー、スウェーデンからは佐官が何人か……スウェーデンからはこの前会ったラーセン大佐がメンバーに入っているわ」

提督「あぁ、あの気品がある美人の……♪」

フェリーチェ「今のは聞かなかったことにしておくわ……それからポーランド海軍からも佐官が何人か。 グディニヤやグダニスクみたいなバルト海に面した港湾もあるから深海棲艦対策には熱心で、フィンランドとも協同しているわ」

提督「ええ」

フェリーチェ「それから、問題のロシア軍将官ね……階級は少将で副官が一人。今回の件でわざわざモスクワから派遣されるほどの優秀な将官で、頭の切れるタイプだと思われるから注意して。 うかつなことを言うと言質を取られるから、うっかりしたことは言わないように」

提督「そうね……なんだか聞いているだけで、氷みたいに冷たい目をしてニコリともしない顔が目に浮かぶわ」

フェリーチェ「そう思っておけば問題ないはずよ。とにかくこちらとしてはオブザーバーとして、スカンジナビア側とロシア側がいがみ合わないよう上手く取り持ってあげれば良いだけだから……くれぐれも「ソ・フィン戦争」の火を付けることがないように」

提督「ええ。 それにしてもロシアの将官ね……士官学校の教官や先輩方はまだソ連が仮想敵だった頃だから詳しいけれど、私はもうその世代じゃないし……それに今までロシア軍の将官なんて会ったこともないから、どんな人なのかちょっと興味があるわ」

フェリーチェ「いいけど、例え美人だったとしても口説いたりはしないでちょうだい」

提督「……ということは女性なの?」

フェリーチェ「ええ……頼むから国際問題のタネを作るような真似はしないでよ」

…その頃・バルト海上空…

女性士官「……あと十五分程度でヘルシンキです、少将」

女性将官「ダー(ああ)……カサトノヴァ少佐、準備は整っているな?」灰皿に煙草を押しつけて消すと、副官の少佐に尋ねた……

少佐「はい」

少将「よろしい」


…独特なエンジン音とゆっくりと回転しているように見える二重反転プロペラが特徴的なツポレフTuー95「ベア」戦略爆撃機の高官輸送型……未だに世界で最高速かつ長大な航続距離を持つターボプロップ機の座席にロシア海軍の黒っぽい冬用制服を着た将官が腰かけ、向かいに副官の少佐が座っている…


少佐「……少将、フィンランドの戦闘機です」エスコート(護衛)というよりは警戒しているかのように、五時方向と七時方向(斜め後ろ)に占位したフィンランド空軍のFー18C「ホーネット」…

少将「結構、時間通りだな……」

少佐「ダー」

少将「それと今回の会議だが、よく目と耳を澄ませておけ」

少佐「はっ」

………

…翌日…

提督「どう、大丈夫かしら?」

フェリーチェ「ええ。金モールもよじれてはいないし、略綬もきちんとしているわ」

提督「なら大丈夫ね」

…紺色のきちんとした軍装に肩章の仰々しい金モールと、一列ごとの幅はまだ短いものの何だかんだで三列にわたっている略綬、ピシッとしたタイトスカートと黒ストッキングに、磨きあげておいた革靴……腰には礼装用の短剣を吊るし、髪は結い上げ、タイをきちんと締めた…

フェリーチェ「ええ、なかなか凜々しく見えるわ」

提督「ありがと♪」ちゅっと音をさせて、軽く唇にキスをする……

フェリーチェ「やめて、口紅の色が移るから……」

提督「分かったわ♪ ……さ、気合いを入れていかないとね」姿見の前でもう一度格好を見直すと部屋のロックをかけ、フェリーチェとロビーへ降りた……

…午前・会議場…

ニッカネン「お早うございます、カンピオーニ少将。フェリーチェ大尉も」

提督「ええ。 おはようございます、少佐」

フェリーチェ「おはようございます」

ニッカネン「各国の将校もおおかたやって来ましたし、会場も開いていますから……席におかけになってはいかがでしょう?」

提督「ありがとう、そうさせてもらいます」


…会議場はフィンランド国防省が用意した施設の一室で、かなり広々とした室内のスクリーンを取り囲んで「コ」の字型にテーブルと椅子が並べられ、席にはそれぞれの名前を記したネームプレートが英語と出身国の母語で併記されている……席には控え目な花とミネラルウォーターのボトル二本とグラスが置いてあり、提督とフェリーチェは自分の場所を確認すると、それからあちこち立ち歩いて各国の士官たちと顔を合わせ、軽く挨拶をかわした…


フィンランド軍士官「……それでは、そろそろ時間となりましたので……皆様、どうぞお席の方へ」ガヤガヤとざわめきが聞こえ、椅子を引く音や咳払いが一通り収まると、司会を務めるフィンランド軍参謀本部の士官が開式の辞を述べる……

フィンランド士官「……では早速ですが、近年のバルト海における「深海棲艦」の動静について、ニッカネン少佐から」

ニッカネン「各国の将官、また士官の方々……紹介にあずかりました、クリスティーナ・ニッカネン少佐です……」

提督「……」

フェリーチェ「……」提督はペンを持ってメモ帳を広げ、フェリーチェはラップトップのコンピュータを開いている……

ニッカネン「……冬季になりますとバルト海の結氷により、いわゆる深海棲艦の活動は低調となることは周知の事実かと思われます。しかしながら、フィンランド湾およびバルト海東部では深海側による機雷の敷設により、艦艇の行動に不自由を生じており……」

提督「……なるほどね」

ニッカネン「……これにより、ポーランド、バルト三国(エストニア、ラトヴィア、リトアニア)、ロシア、ドイツの一部で海運や漁業に影響が生じております。このことは沿岸各国において大変重大な……」スクリーンにコンピュータの図表データを表示し、簡潔な説明を終えて着席したニッカネン……

フィンランド士官「ありがとうございます、少佐。では続いて……」


…ニッカネンに続いて各国の士官がそれぞれの国の立場から状況の説明を行う……とはいえ、各国ごとにそれぞれの思惑と利害関係があるので、そう簡単には「足並み揃えて」といった具合にはなってくれない……結局、二時間近くかかったそれぞれの状況説明の後、今度は「艦娘」の運用や担当範囲、あるいは各国海軍の連携について、どこで折り合いを付けるかの長い長い話し合いが始まった…


ノルウェー軍士官「……バルト海に関しては、分担は各国のEEZ(排他的経済水域)を目安にすべきだと考えますが」

ニッカネン「それではこちらの負担が少し大きすぎるように思います……わが軍がバルト海東部から出現する深海棲艦を抑えているのは事実ですから、ぜひ各国の協力もお願いしたいところですね」

ポーランド海軍士官「同感です。バルト海東部で深海棲艦を跳梁跋扈させることは、ひいてはバルト海全体の制海権を失うことにつながる」

ラーセン「スウェーデン海軍のラーセンです。今のご意見には賛同いたします。 しかし本官は同時に、バルト海東部での活動にもっとも適しているのがフィンランド、ポーランド海軍である事も間違いないと思いますが」


…結局のところ、各国いずれも深海棲艦対策で負担を担ったり割りを食ったりするのは避けたい上、自国の艦娘たちが怪我をしたり、あるいはもっと悪いことが起きたりという事態は避けたい……そういった面で、各国いずれもできるだけ艦娘たちを出撃させたくないのが実情だった……かといって、手の内が読めない……しかもバルト海沿岸に対する領土的野心を捨ててはいないロシア海軍バルチック(バルト海)艦隊の手を借りることもしたくはない…


ロシア海軍代表「……」むっつりと黙りこくっているロシア海軍の数人は、黒っぽい制服もあいまって異彩を放っている……その中には女性の将官も一人いて、冷たい目で会議場内を眺めている……

提督「……」

フェリーチェ「……」しばらくけりは付きそうにないと、会話を黙って聞いている提督とフェリーチェ……少し効き過ぎな暖房のせいで喉は渇き、きちんとした正装のせいでひどく暑苦しい……

提督「……しばらくは様子見で行くわ。みんな疲れた頃合いになったら折衷案でも出してみるわね」

フェリーチェ「任せるわ」

…またしばらくして…

ニッカネン「……では、スウェーデン海軍としては「艦娘」の派遣には応じられないと言うことでよろしいですか?」

ラーセン「……本官個人としてはそちらと協力すべきであるというのは理解しているのですが、残念ながらわがスウェーデン海軍もそこまでの規模を有しているわけではありませんので……ただ、先ほど申上げたように哨戒機による支援は政府の方でも確約しておりますので、実行が可能です」


…きりりとした美しい顔に疲れも見せず、淡々と意見を述べるラーセン大佐……とはいえ、どちらかと言えばフィンランドを「緩衝地帯」として扱って、自国の中立を崩さないよう慎重に振る舞ってきたスウェーデン政府の指示もあるのか、ニッカネンの欲しい……ひいてはフィンランド海軍が聞きたい「艦娘」の派遣や協同での哨戒といった言葉は出てこない…


ニッカネン「なるほど……それからポーランド海軍ですが、バルト海北部の哨戒に協力することは難しいと」

ポーランド海軍士官「残念ながら。 我々ポーランド海軍の「艦娘」たちは自由ポーランド軍当時の艦艇……つまりほとんどはイギリスから貸与・提供された旧型駆逐艦であり、かつグダニスクを始め、我が国の港湾都市と海路を維持するために戦力を割かなければならないので、そこまでの支援は難しいと思われます……その分、わがポーランド海軍としてはバルト海南部における航路の維持と海上交通のために尽力しております」


…きちんとした黒いダブルの上着に金ボタンと金モールが映えて、いかにも海軍士官らしいポーランド軍の代表たち……何人かは綺麗に切り整えた口ひげを生やしていて、風格がある……が、やはり上層部の指示か、フィンランド側に対しては煮え切らない態度を取っている…


提督「……まさに「会議は踊る」ね」横に控えているフェリーチェにこっそりささやいた……

フェリーチェ「そうね……まぁ、どこの海軍も自分から大変な哨戒や掃海を請け負いたくはないもの」

ニッカネン「ラーセン大佐、スウェーデン海軍は海防戦艦を基幹に駆逐隊、小艦艇群を有しておりますが……海面の氷が溶ける夏の時期だけでも良いのです、そちらの艦娘たちと共同作戦を行うことは叶いませんか?」

ラーセン「無論、そういった打診があれば検討の上で派遣することもあり得るでしょう。とはいえ先のことはまだ分かりかねます。 その時期になったらまた改めてお国の政府からストックホルムに打診していただければ、具体的な回答が出来るものと思います」

ニッカネン「なるほど、では現状では何も確約は出来ないと?」

ラーセン「先の情勢が予見出来ない以上、本官としてはそう回答するしかありません……」

ニッカネン「……」

…各国の代表から「支援したいのはやまやまなのですが……」と、気持ちばかりで実行はさっぱりという支援案を聞かされ、とうとう黙りこくって四杯目のコーヒーをすすりはじめたニッカネン……ざわつきばかりで誰も意見を言おうとしない中、提督が切り出した…

提督「……すみません、少々発言をよろしいですか?」

司会「え、ああ……どうぞ」

提督「ありがとうございます……イタリア海軍からオブザーバーとして派遣されましたカンピオーニです」長らくだらだらと続いていた会議の間、メモをとりながら温めていた意見を述べる……

提督「えー、まずはノルウェー海軍のヨハンセン大佐……大佐は先ほど「駆逐隊をバルト海東部まで派遣するのは難しい」とおっしゃっておりましたね」

ノルウェー海軍代表「ええ。 ノルウェー西岸に深海棲艦が出没する可能性がある以上、遠くフィンランド湾にまで艦娘を派遣してしまっては、強力な敵艦の出現があった際これを呼び戻しても間に合わない危険がありますので」

提督「確かに……では、スウェーデン南部ではいかがですか?」

ノルウェー士官「スウェーデン南部、ですか?」

提督「ええ。 例えばカールスクルーナの沖合といった所ですが」

ノルウェー士官「そうですね、それなら……いやしかし、大ベルト海峡の航行に時間がかかる可能性がありますから……」

提督「アムンセンやナンセンを先輩に持つノルウェー海軍の皆さんが、まさか海峡ひとつにそこまでの苦労はなさらないでしょう?」ノルウェーが生んだ偉大な航海者や冒険家を引き合いに出して冗談めかすと、少し笑い声が聞こえた……

ノルウェー士官「それは、まぁ……」

提督「では、ラーセン大佐」

ラーセン「何でしょうか、カンピオーニ少将」

提督「ええ……お国の南部方面に展開する駆逐隊は、基地であるカールスクルーナを中心に、オーランド諸島からエストニア沖、スウェーデン南端のマルメを結ぶ三角形を哨戒しているという認識でよろしいですか?」

ラーセン「おおよそその認識で合っています」

提督「では、例えばマルメからカールスクルーナまでのエリアをノルウェー海軍と協同で哨戒することは可能ですか?」

ラーセン「不可能ではありませんね、すでに演習などで実績があります」

提督「分かりました……では、その分艦娘の行動エリアを北部に移して……例えば哨戒線をエストニア、タリンの沖辺りまで北上させることは出来ますか?」

ラーセン「……ええ、不可能ではありません」しばし熟考してから、ゆっくりと言った……

提督「では、こうしたらいかがでしょう……バルト海の入り口、カテガット海峡はノルウェー海軍、デンマーク海軍にお任せする……そうすればスウェーデン海軍のうち、イェーテボリに配属されている艦娘たちは手すきになります。 それをカールスクルーナに移せば、フィンランドを支援する戦隊を派遣する余裕が出るのではありませんか?」いわば「玉突き式」に、各国がそれぞれ隣国を支援する形を提案した提督……

提督「それに移動するのは艦娘たちだけで、フリゲートや潜水艦といった通常戦力を移動させるわけではありませんから、費用もそこまでかからないと思いますが」ついでに海軍の悩みのタネである「予算」を盾にされないよう、先手を打って言い添えた……

ノルウェー士官「ううむ……」

ラーセン「なるほど」

ニッカネン「……」

提督「それはそうと、少し休憩にしませんか? さすがに皆さん疲れが見えますし……いかがでしょう?」

司会「そうですね、では一時休憩とします」

ラーセン「カンピオーニ少将、先ほどはお見事でした」

提督「いえいえ、何かたたき台がないことには永遠に話が進まないでしょうし……それにオブザーバーの私なら、多少勝手なことを言ってもあとに響くことはないでしょうから♪」

ニッカネン「違いありませんね」

…会議室から出て別室で休憩をとる各国の代表たち……室内ではポットのコーヒーと軽食が供され、それぞれ立ったり座ったりしながら二ヶ国間で話を詰めたり、あるいは頭に栄養を送るため、小さくカットされているサンドウィッチをつまんだりしている……提督は消しゴムほどの大きさをした可愛らしいサンドウィッチを三つばかりつまみ、砂糖とミルクを入れたコーヒーをとり、それからスウェーデン海軍のラーセンとフィンランド海軍のニッカネンに合流した…

提督「それに、スカンジナヴィアの三国は関係がとてもいいようですから……我々イタリアが沿岸の防衛をフランスに任せるというのよりは現実味がありますよ♪」冗談めかして小さくウィンクを投げた……

ラーセン「ふふ、確かに……♪」

提督「……ところでロシア海軍の代表ですが……まだこれと言った発言がありませんね?」

ラーセン「ええ。ポーランド海軍の提案に反対意見を述べた以外には」

提督「どういうつもりなのでしょう? それにバルチック艦隊の大佐が、しきりに横の将官を気にしているようでしたが……」

ニッカネン「あの冷ややかな表情をした少将でしょう?」

提督「ええ……いったい誰なんです?」ロシア海軍代表は談話室でも一か所に固まり、あたかも鉄のカーテンを引いたままに見える……その中心にいる押し出しの強そうな赤ら顔の大佐はバルチック艦隊代表を務めているが、その大佐はハンカチで額を拭いながら、しきりに後ろの少将を気にしている……

ニッカネン「あの将官ですが、今回の会議に合わせてモスクワから派遣されてきた少将です」

ラーセン「おそらくはお目付役といったところでしょうね……ソ連時代ならさしずめ「政治将校」といった役どころでしょう」

提督「なるほど、それは難物ですね」

ラーセン「ええ……それにロシアが会議に絡んでくるとなると、途端に話がこじれてしまいますから」

ニッカネン「同感です。 彼らは何かにつけて、こちらが賛成だというと「ニェット(ノー)」だと言いますからね」

提督「じゃあ会議がまとまった頃になって壊してくる可能性も……?」

ラーセン「ないとは言えないでしょうね」

提督「困りましたね……それで、ロシア海軍は具体的に何を引き出したいのでしょう?」そう問いかけると顔を見合わせたラーセンとニッカネン……

ラーセン「……それは何とも言いがたいところですね」

ニッカネン「具体的なところはあまりはっきりしていないようにも感じられます……しいて言うなら、フィンランド湾における主導権は握りたいが、かといって声高に主張して自国の艦娘を使うことになってしまったら、それはそれでフィンランドをはじめ沿岸各国の得になるので面白くない……といった具合でしょう」

提督「うーん……そうなると駆け引きが面倒になってきますね」

ニッカネン「ええ……なにしろ向こうは我々が深海側との戦闘で疲弊するのを見ていればいいわけですから」

提督「しかし、ロシアもフィンランド湾が深海棲艦に閉塞されれば困る事になるのでは?」

ラーセン「確かに困らないとはいいませんが……あちらは貧乏にも抑圧にも慣れていますし、国土が大きいだけ体力がありますから」

ニッカネン「フィンランド湾やバルト海で深海棲艦が跋扈するような事態が続けば、海運においては相対的にこちらの方が大きなダメージを受けることになりますので」

提督「では、ロシア海軍に協力を願うほかはない……と?」

ニッカネン「そうならざるを得ないでしょう……もっとも、先ほど少将が切り出した「たたき台」のおかげで、ロシア海軍抜きでもバルト海における協力態勢がまとまりそうになっていますから、このまま合意する方向で持って行けば向こうがあわて出す可能性もあります」

ラーセン「あとはポーランドやバルト三国に協力を取り付けるだけですが、そこはどうにかなるでしょう」

提督「……そうですか、なら会議もどうにか無事に済みそうですね」

ニッカネン「そう願いたいものです……いい加減この暖房で蒸れた室内からおさらばして、サウナにでも行きたいところです」

提督「あー、フィンランド式サウナですね。 聞いたことはあります」

ニッカネン「……こちらへ来てから、まだ経験していらっしゃらないのですか?」どちらかというと感情表現の小さなニッカネンが珍しく驚いたような顔をした……

提督「ええ。ヘルシンキに来てからまだ二日あまりですし、その機会がなくて……」

ニッカネン「わかりました……会議が終わったら、どこかでご案内しましょう」

ラーセン「フィンランドの方はサウナがお好きですものね……そろそろ休憩も終わりのようですし、参りましょうか」

提督「ええ」提督たちが歩き出すと、あちこちで耳をそばだててきたらしいフェリーチェが戻ってきて、さりげなく提督の脇についた……

フェリーチェ「……どうだった?」

提督「そうね……ニッカネン少佐とラーセン大佐はロシア抜きで話をまとめようとすることで、向こうを慌てさせたいみたい」

フェリーチェ「なるほど、いい形になってきたわね……フランチェスカ、さっきの貴女の意見でノルウェーも渋々ながらバルト海に駆逐隊を出す考えに傾き始めているわ。 これならスカンジナヴィア三国とポーランド、バルト三国の間で合意が得られるかもしれない……そうなればロシアの提督たちはは立つ瀬がなくなって、慌てて参加する方向に舵を切るかもしれないわ」

提督「ふう、助かったわ……てっきりこのまま会議室で雪解けの季節まで缶詰かと思っていたところよ」

フェリーチェ「金モールをつけた少将なのにだらしないわね……大尉の私だって一日や二日の雪隠詰めくらい耐えられるのに」

提督「ふふ、ミカエラにはかなわないわ……♪」

…夜…

司会「えー……では、今日の会議はここで一旦中断し、続きは明日の0940時から行います。お疲れさまでした」司会が閉会の挨拶をすると、あちこちでガタガタと椅子を引く音がして、席を立った海軍士官や将官たち……

提督「……ふー、疲れた」会議場の玄関ホールでホテルまで送ってくれる黒塗りの到着を待ちながら、くたびれた様子で長いため息をついた……

フェリーチェ「お疲れさま、フランチェスカ」

提督「ええ……だらだらと続くばかりの会議って嫌いだわ」

フェリーチェ「そんなものが好きな人間なんていないでしょうよ」

提督「確かにね……それにしても、まるで味のないガムを噛み続けているようだったわ」

フェリーチェ「同感ね」


…昼下がりから再び始まった会議ではスカンジナヴィア三国が妥協点を見つけてお互いに歩み寄りはじめた矢先に、今度はロシア海軍の代表がああだこうだと口を挟みだし、それに対してポーランドやバルト三国が反発して、いつ果てるとも分からない不毛な堂々巡りを始めていた……提督も円満に会議がまとまるよう尽力したが、責任も権限もないオブザーバー、しかもバルト海沿岸諸国とは馴染みの薄いイタリア海軍代表という立場では、いまいち各国の代表たちに響かない…


提督「とにかく、ホテルに戻ったら美味しいものでも食べて……それからベッドでぐっすりしたいわ」

フェリーチェ「良い考えね……ほら、車が来たわよ」

…数十分後・ホテル…

提督「あー……これでやっとくつろげるわ」制服をハンガーにかけるとブラウスやタイツを脱ぎ捨てながら、ベッドに腰かけた……

フェリーチェ「服は脱いだようだし、シャワーをお先にどうぞ?」

提督「ミカエラが先でいいわよ?」

フェリーチェ「こういうのは提督が先って決まっているものよ……それに、私は今日のやり取りで気になった部分をまとめておくつもりだから」

提督「そう……じゃあお先に入らせていただくわ」

…ホテルの清潔な……しかし鎮守府の豪奢な大浴場とは比較にならないほどせせこましい浴室でシャワーを浴び、脚の収まらないバスタブに身体を沈めた提督……足裏やふくらはぎは座りっぱなしだったせいでこわばり、心なしかいつもよりむくんでいる気がする…

提督「ふぅ……きっと鎮守府のみんなは夕食を済ませたころね。お風呂から出たら電話でもしてみようかしら」

…数分後…

提督「ミカエラ、出たわよ」ホテルに備え付けの、ふかふかした着心地の良いバスローブをまとい、メイクも落としてさっぱりした提督……

フェリーチェ「そう、なら私も入ってくるわ」

提督「ええ……それと、お湯の栓をひねるときは注意したほうがいいわよ。急に熱くなるから」

フェリーチェ「ありがとう、気を付けるわ」

提督「さて、それじゃあ……と」ペットボトルのミネラルウォーターを三分の一ばかり飲み干すと、ベッドサイドの小机に置いておいた携帯電話を取り、電話帳から鎮守府を選んで電話をかけた……

…鎮守府…

デュイリオ「あら、電話でございますね……はい、こちらタラント第六鎮守府」

提督「もしもし、デュイリオ?」

デュイリオ「まぁまぁ、提督♪ お声が聞けて嬉しいです」

提督「私も貴女の声が聞けて嬉しいわ、デュイリオ。 今日はもう用事もないし、時間があるから電話をしたのだけれど……みんなはどう、元気でいるかしら?」

デュイリオ「あぁ、提督。 それがもうこちらは大騒動でして、すぐにでも鎮守府に戻ってきていただかないと……」

提督「えっ!?」

デュイリオ「そうなんです……ライモンドは提督がいらっしゃらないからとふくれ面、ポーラはキアンティの飲み過ぎですっかりへべれけ、チェザーレは近くの街で人妻と火遊びをして警察沙汰になる始末……シロッコは階段で転んでひっくり返り、ディアナは皿を割り、ルチアは一晩中鳴き続け……ふふっ♪」真面目な口調で言っていたが、我慢しきれなくなったのか含み笑いをもらしたデュイリオ……

提督「もう……からかわないでよ、一瞬本当に何かあったのかと思ったじゃない」

デュイリオ「くすくすっ♪ 申し訳ありません。提督とお話が出来て嬉しかったものですから、つい……こちらは万事順調ですよ♪」と、電話口の向こうからルチアの吠える声が聞こえてくる……

提督「良かったわ……でも、それにしてはルチアが騒いでいるわね? どうしたの?」

デュイリオ「ああ、ちょうどディアナが明日の夕食に出す牛すじ肉のシチューを作ろうと下ごしらえをしているものですから」

提督「それで大騒ぎをしているのね……♪」

デュイリオ「ええ……ところで提督、せっかくですからここにいる娘たちと順繰りにお話でもなさってはいかがでしょう?」

提督「そうね……いない娘たちには申し訳ないけれど、そうさせてもらうわ♪」そう言って、何人かの艦娘たちとたわいもない会話をする提督……

フェリーチェ「出たわよ……っと、楽しいお話の最中だったようね」

提督「ええ……♪」近況や来たるクリスマスの話をしつつ、フェリーチェに向けてウィンクを投げた……

…翌朝…

提督「ふわぁ……おはよう、ミカエラ」

フェリーチェ「おはよう、フランチェスカ……コーヒーはミルク入りの方が好きだったわね」

提督「ありがと、覚えていてくれたのね……♪」ベッドで半身を起こし、コーヒーのマグを受け取る……室内はセントラルヒーティングで暖かいが、片手で毛布を引っ張り上げて胸元を隠した……

フェリーチェ「今日の日程は覚えている?」

提督「ええ、大丈夫よ」砂糖少しとミルクの入ったコーヒーをひとすすりしてほっと小さく息をつくと、くしゃくしゃになった髪を軽く手で梳いた……

フェリーチェ「なら結構……新聞は?」

提督「気にはなるけど、あいにくフィン語もスウェーデン語も読めないわよ?」

フェリーチェ「まさか、私が貴女にフィン語の新聞なんて勧めるわけがないでしょう。記事の少ない海外向けだけど一応「レプブリカ」よ」

提督「そう、それじゃあ後で読むわ」

…ベッドから降りるとバスローブを羽織って浴室に行き、歯を磨いて顔を洗い、それからシャワーを浴びてさっぱりした…

提督「……改めておはよう、ミカエラ♪」軽く頬にキスをする提督……

フェリーチェ「ええ、おはよう。 いいけど、早く髪を乾かさないと時間に間に合わなくなるわよ」報告書か資料か、ラップトップを立ち上げて手早くキーを叩きながら、提督のあいさつに軽く答えた……

提督「それもそうね」

…タオルで髪を包んで乾かしつつ海外版の「レプブリカ」紙にざっと目を通し、読み終わったところで化粧台の前に座り髪を整え始める……肌に当たる櫛の感触を楽しみながら長い髪をくしけずり、冷風から温風へと切り替えながらドライヤーをあてる……髪がある程度まとまったところで軍帽に合うような形に結い始め、ピンを差して形をまとめた…

提督「うん、いい感じ……♪」少しもつれているこめかみの辺りを直し、鏡に向かって微笑んでみたり真面目な表情を浮かべてみたりする……

フェリーチェ「そろそろ終わらせないと、朝食を食べ損ねるわよ」

提督「はいはい」

…手際よくルームサービスを頼んでおいてくれたフェリーチェに感謝しつつ、バスローブ姿で朝食をしたためる提督……向かいにはフェリーチェが座り、ライ麦パンとコケモモのジャム、しっかりした味わいのチーズといった朝食を淡々と食べる…

提督「それにしても……」

フェリーチェ「ん?」

提督「フィンランドの食事は……何というか、ずいぶんと素朴な感じね」ジャムを付けたライ麦パンをよく噛んで飲み込むと、少し考えてから言葉を選んだ……

フェリーチェ「厳しい土地だもの、仕方ないわ……ま、今回の会議が上手くまとまればパーティがあるし、そうしたらきっと美味しいものだって出るわ。ごちそうのためにも頑張ってちょうだい」

提督「ええ、そうさせてもらうわ」

…会議場…

ニッカネン「おはようございます、少将。フェリーチェ大尉も」

提督「ええ、おはようございます……ぴりっとした空気のおかげで目が覚めますね」

ニッカネン「田舎に行けば森の香りとしっとりした朝霧でもっと空気を楽しめるのですが、贅沢は言えませんね……昨夜はよくお休みになれましたか」

提督「ええ、おかげさまで……おはようございます、ラーセン大佐」まだ日の出を迎えたかどうかもあやふやな冬のフィンランドの朝だというのに眠そうな様子一つ見せず、きちんと折り目正しい様子のラーセン……

ラーセン「おはようございます」

ニッカネン「それでは、会議場に入りましょうか」

…午前中…

司会「……では、この件に関しては賛成多数で可決とします。次の議題ですが……」

提督「……昨日に比べればずいぶんと話が早くまとまってくれそうね。筋肉痛のカタツムリから、短距離走者のカタツムリくらいにはなったんじゃないかしら?」

フェリーチェ「昨日のやり取りで互いの立場が明らかになったからでしょうね。お互いに制服組同士、小難しい外交に関しては政府に任せて、身内でどうにか出来る範囲のことだけ折り合いを付ければいい」

提督「ええ……この調子なら、カチコチの雪だるまになる前に帰国できそうね♪」口元を手で隠し、小声でフェリーチェに耳打ちした……

フェリーチェ「どうかしら。あちらがそれで納得してくれればいいんだけど……」向かいのテーブルから冷たい目で会場を見わたしているロシア海軍の女性少将をちらっと眺めた……

ロシア海軍将官「……」

………

ニッカネン「その意見には納得できかねます、マリノフスキー大佐」

ロシア海軍大佐「どう思われようとご自由だが、我々はそう決定している……少佐」赤ら顔の大佐は規模の小さいフィンランド軍「少佐」が他国なら大佐クラスに相当するにもかかわらず、下の階級だと言わんばかりの態度を取っている……

提督「また始まったわね……」


…右耳には単調な声で話す同時通訳のヘッドホンを当て、もう片方の耳で生の声に含まれている調子や強弱を聞き、相手の出方を確かめようとする提督……手元の手帳には交渉材料に使えそうな単語がいくつか書き散らしてあり、隣のフェリーチェはメモ帳とラップトップを使い分け、さらに目線は相手の口元や視線を捉えている…


フェリーチェ「バルト海艦隊の代表はモスクワから来たお目付役の前で強気な態度を取って「いいところ」を見せたいのよ」

提督「きっとそうね……ねぇミカエラ、そろそろニッカネン少佐の援護射撃をしてあげようかしら?」

フェリーチェ「待って、ラーセン大佐が動くわ……」

ラーセン「失礼、発言をよろしいですか?」

司会「ラーセン大佐、どうぞ」

ラーセン「どうも……失礼ながらマリノフスキー大佐、貴国のバルト海艦隊に所属する「艦娘」たちだけでバルト海全域をカバーするのは物理的に不可能かと思いますが」

大佐「ニェット(いや)、本官はそう思わない」

ラーセン「そうでしょうか? ですがそちらの艦隊に所属している「艦娘」を海域に展開させると、哨戒可能な範囲は周囲……浬、対してフィンランド湾の面積はこれだけあります……明らかに足りないように思えますが?」

大佐「……」

ミカエラ「……フランチェスカ」

提督「ええ。 マリノフスキー大佐、私からも一つ……」

…午後…

司会「では、以上でバルト海「深海棲艦」対策会議を終了いたします。皆様、お疲れさまでした」

提督「ふー……どうにかまとまってくれてよかったわ」

フェリーチェ「お互いに妥協出来そうなところまで持って行けてよかったわ……ロシア側もこっちの意見を押し切るほどの力はないし、どこかで折れるとは思っていたけど」

提督「ミカエラの読み通りね……」と、資料を小脇に抱えたニッカネンが近寄ってきた……

ニッカネン「お疲れさまでした、カンピオーニ少将、フェリーチェ大尉」

提督「いえいえ、少佐こそ……途中、なかなか話が決まらなくて大変でしたね」

ニッカネン「いえ、沿岸諸国の会議ではこのくらいよくありますから……ところで少将」

提督「はい、なんでしょう?」

ニッカネン「この後、なにかご用事は?」

提督「いえ、せいぜいホテルに戻って夕食を食べるくらいです」

ニッカネン「そうですか……ところでこの前お話ししたサウナですが……もしご都合がよろしければ、これから一緒にいかがですか?」

提督「ええ。 せっかくの機会ですから、ぜひお願いします♪」

ニッカネン「それはよかった……フェリーチェ大尉は?」

フェリーチェ「いえ、私は片付けなければならない資料があるので明日にでも……申し訳ありません」

ニッカネン「おや、それは残念です……では少将、後でそちらのホテルまでお迎えにあがります。1600時頃でよろしいでしょうか」

提督「ええ。 何か必要なものはありますか?」

ニッカネン「そうですね、同性とはいえ身体を見られるのが気になるようでしたら水着が必要ですが、他のものはタオルを始め、たいていの浴場でレンタルがありますので」

提督「分かりました、それじゃあ楽しみに待っていますね」

ニッカネン「はい、それでは……」

提督「もう、ミカエラったら……私のために遠慮しなくたってよかったのに♪」

フェリーチェ「よく言うわ。 とにかく、サウナにもフィンランド美人にものぼせないようにすることね」そう言うとあきれたように小さく肩をすくめた……

…夕方・ホテルのロビー…

ニッカネン「お待たせしました」

提督「いいえ、私もちょうど支度を終えて降りてきたところです……明るい黄色がよく似合っていらっしゃいますね♪」

…北欧の冬は昼が短く、1600時ともなればすでに周囲は暗くなっている……私服に着替えた提督がホテルのロビーで待っていると、ニッカネンがやってきた……着ている服は特にお金をかけているいう風でもなく、むしろごくあっさりとしたファストファッションのものらしいが、白い肌に似合う明るい黄色のセーターと淡いベージュのコート、明るいグレイのスラックスでスマートにまとめている…

ニッカネン「ありがとうございます、アドミラル・カンピオーニ」

提督「ふふっ……もう制服を脱いでいるのに「アドミラル」もないでしょう。 フランチェスカか、さもなければ「フランカ」で構いませんよ?」

ニッカネン「ではそうさせていただきます、フランチェスカ……」

提督「ええ。ところで私も「クリスティーナ」と名前で呼ばせてもらってもいいですか?」

ニッカネン「はい、もちろんです……それでは参りましょう」提督をボルボの助手席に乗せると自分は運転席に乗り込んだ……

…公共サウナ…

ニッカネン「さぁ、着きました……車を駐車場に停めてきますから、どうぞ先に降りて下さい」

提督「ええ」

…そもそも「サウナ」という言葉自体がフィン語であり、人口よりもサウナの方が多いと言われるほどサウナ文化の盛んなフィンランド……当然ヘルシンキ市街にも公共サウナを始め、リゾート用の高級な場所から親しみやすい大衆向けの浴場までさまざまなサウナ施設が点在している……ニッカネンが提督を連れてきたのは比較的新しい感じのする施設で、受付で貴重品を預けると、二人は暖房の効いた清潔感のある更衣室で服を脱いだ……提督のバラ模様をあしらった黒いブラとパンティが淡いクリーム色の肌を引き立たせ、服を脱ごうと身動きするたびに豊かな乳房が「たゆんっ……♪」と弾む…

ニッカネン「……」

提督「どうかしましたか?」ニッカネンの控え目な視線に気付いた提督が、小首を傾げて問いかけた……

ニッカネン「ああ、いえ……///」

提督「ご覧になりたければ遠慮せずにどうぞ? 運動不足なもので、少し肉付きが良すぎるところもありますが……それでもよろしければ♪」冗談交じりに軽く笑みを浮かべ、ウィンクを投げる…

ニッカネン「いえ、そういうつもりでは……中に入りましょう///」

…サウナ内…

提督「あ……とてもいい針葉樹の香りがします」

ニッカネン「そうでしょう」

…おそらく杉材で作られたと思われるほの明るい室内にはやはり木で出来たベンチがあり、中央には枠で囲われて、黒っぽい石が積み上げられている……提督は「サウナ」と聞いて真夏の機関室のような状態を想像し身構えていたが、室内の温度はずっと穏やかで「熱い」というほどでもなく、ほっと安堵してニッカネンの隣に腰を下ろした…

ニッカネン「……サウナは初めてだそうですから、私が「ロウリュ」を行いますね」

提督「ええ」

…手桶に水を汲むと、中央で熱を放っている石にそれをかけたニッカネン……しゅうしゅうと音を立てて水蒸気が立ちこめると、次第に室内が蒸れた感じになってくる…

ニッカネン「こうして蒸気を立てて、ほどよく汗をかくようにします」

提督「なるほど……」

…とつとつと静かに話すニッカネンの、陶器のように白い肌に赤みが差してくるのを見ていると、提督自身も身体から汗が浮いてくるのを感じた……汗が出てくるのと同時に身体がじんわりと熱を帯び、真っ白なタオルがしっとりと湿り気を帯びてくる…

ニッカネン「……それでは、そろそろヴィヒタを使いましょう」

提督「ヴィヒタ?」

ニッカネン「これです」まるで瞑想にふけるように蒸気の中でしばし沈黙していたニッカネンだったが、つと席を立つと、片隅に置いてあった細い白樺の枝を取り上げた…

提督「あ、なんだか聞いたことがあるような気がします……それで軽く叩くのでしたね?」

ニッカネン「そうです、よくご存じで……どうぞ、背中を向けて下さい」

提督「どうかお手柔らかにお願いします♪」

ニッカネン「ええ、大丈夫です」

…冗談交じりに言った提督に対して、生真面目に答えるニッカネン……提督が背中を向けると、ニッカネンがほどよい勢いで白樺の枝を振るった……枝を振るたびに残っている白樺の葉から雫が飛び散り、ふわりと新鮮な木の葉の香りが漂う…

ニッカネン「痛くはないですか」

提督「ええ、心地よい程度です」

ニッカネン「そうですか……では、そろそろ交代をお願いします」

提督「初めてですから、もし加減を誤っていたらおっしゃって下さいね」そう言うとヴィヒタを手に取って、ニッカネンのしみひとつない白い背中にそっと枝を振るう…

ニッカネン「もう少し強くても大丈夫ですよ」

提督「そうですか……では」

…ニッカネンの身体はやせていて、うっすらとシルエットが浮かぶ鎖骨まわりや肉の薄い脇腹は、まるで提督が持っている白樺の枝のように細くしなやかに見える……ヴィヒタで背中や肩甲骨の辺りを軽く叩くと血流が良くなった部分がほのかに赤みを増し、白かった肌が桃色を帯びてくる…

ニッカネン「……そのくらいで結構です」

提督「分かりました」

ニッカネン「それでは、水浴に行きましょう」

…冷水浴の浴室…

ニッカネン「いきなり入ると冷たくて心臓に悪いですから、足先からそっと入って下さいね」

提督「ええ」

…サウナを出た隣にある大きなバスタブには水が満たされていて、そこにそっと身体を沈めていく……冷水といってもおそらくは常温の水で、ことさらに冷やしてあるというわけでもないのだろうが、じんわりと汗が滴るほど熱を帯びた身体にはまるで氷水のように感じられる…

提督「っ……冷たいですね」

ニッカネン「そうかもしれません。ですがこれで身体を冷まし、同時にすっきりさせることが出来るので、サウナでは外すことの出来ない手順なんですよ」そろりそろりと入っていく提督とは対照的に、躊躇なく身体をひたしていく……

提督「少なくとも流氷の浮いている海に飛び込んだりする必要はないようですね……助かりました」肩の下まで冷水に浸かると浴槽がかき回されて冷感が増すことがないよう、できるだけ身動きしないようにしながら冗談めかした……

ニッカネン「ああいうのはことさらに……えーと……そう、チャレンジ精神が旺盛な人がやるものですから」

提督「そうだろうと思いました……」

…二度目のサウナ…

ニッカネン「……ところでキルッコヌンミ鎮守府にご案内した際、フランチェスカも銃猟をすると言っていましたが、そのお話をもっと聞きたいですね」

提督「猟の話ですか、いいですよ」冷水浴を終えてサウナに戻ると、蒸気の中で好みの銃や獲物の話をする提督とニッカネン……

提督「……そういえば、クリスティーナはどんな銃が好みですか?」

ニッカネン「私ですか? そうですね、私は値段と性能が折り合えば充分なので、あまり特定のモデルにこだわった事はありませんが……今のところ、中古の垂直二連が一丁と「ブローニング・オート5」を持っています」

(※ブローニング・オート5…天才的銃器設計者「ジョン・M・ブローニング」による、世界で初めて成功を収めた大ベストセラーのセミオートマティック・ショットガン。原型は1898年(明治31年)と古いが基礎設計が優れており、ベルギーFNやレミントンを始め、日本を含めた世界中で長く生産された)

提督「オート5はいい銃ですね……普段は鹿撃ちだそうですね?」

ニッカネン「そうです。普段は鹿と、それから鴨のような野鳥類ですね。他にはトナカイ撃ちも数回ほど……あと一頭だけ、クマも経験があります」

提督「なるほど……私は大きくてもせいぜいイノシシ程度ですね。実家では食べるために撃ったり、地元のコムーネ(自治体)から駆除依頼が来たりしていましたので」

ニッカネン「あれはあれで危険だと聞いていますが」

提督「ええ。イノシシはああ見えて意外と素早いですし、雄の牙で太ももを突き上げられたら命に関わりますので……撃ちに行くのは秋が多くて冬場の繁殖期には基本やりませんでしたが、その時期は雄雌ともに気が立っているので特に危険ですね」

ニッカネン「なるほど」

…提督はどちらかというとニッカネンを「寡黙で人付き合いが好きではないタイプ」だと思っていたが、サウナの蒸気の中でぽつぽつと……しかしあまり途切れる事なく会話に興じるニッカネンを見るかぎり、別にそういうこともないらしい……隣に座って小さな身振りを交え、シカ撃ちの話やフィンランドの森の話をするたびに汗の玉が滑らかな白い肌を下っていき、小ぶりで形のいい乳房の谷間や、金色の野原のような脚の間に流れていく…

提督「……」サウナの蒸気に交じってニッカネンの爽やかな汗の香りと、発散される体温が隣に腰かけている提督に伝わってくる……

ニッカネン「それで、去年のシーズンでは二頭を……フランチェスカ?」

提督「ああ、はい……聞いていますよ。それで、撃った二頭は雄でした?雌でした?」

ニッカネン「一頭は雄で、もう一頭は雌でした……そろそろ上がった方が良さそうですね」

提督「ごめんなさい、もっと聞いていたかったのですが……」

ニッカネン「いえ、いいんですよ……またお話しする機会もあるでしょうから///」

提督「ぜひその機会が欲しいものですね……っとと♪」サウナでたっぷり蒸されたおかげですっかり身体がふわふわしている提督……立ち上がってよろめいてしまい、その拍子にニッカネンの身体につかまった……

ニッカネン「あっ……大丈夫ですか///」

提督「大丈夫です……ちょっと勢いよく立ち上がり過ぎました」しっとりと濡れたニッカネンの肩に手をかけ、少し見おろすような形で顔を近づけている……

ニッカネン「転ばなくて何よりでした……さあ、出ましょう///」そっと提督の手を肩からどけると、転ばないようにと軽く腕をつかんでくれる……

提督「ええ、そうしましょう♪」

ニッカネン「ところで、フランチェスカ……ホテルに戻る前にクリスマス市でも見ていきませんか? 今日は時間もありますし」

提督「そうですか、それではぜひ♪」

…ヘルシンキ市街・クリスマス市…

提督「ふふ……♪」

ニッカネン「何かおかしかったですか?」

提督「いいえ♪ こうして楽しげなクリスマス市を見ていると、それだけでこちらも気分がうきうきしてきますね」

ニッカネン「そうですね」

…ニッカネンと連れだって、時代を感じさせるヘルシンキ市街の綺麗な建物とその前に開いているクリスマス用品のマーケットを見て回る提督……繊細なガラス細工やオルゴール、クリスマスツリーにぶら下げるオーナメント(飾り物)の数々……街頭や店先の灯りに照り映えて、キラキラと光り輝く光景はどこか幻想的で美しく、にぎわう街の喧騒さえもどこか美しく聞こえる…

提督「クリスティーナ、お店の人に「これを一袋下さい」と言ってもらえますか?」フィンランド国旗を彷彿とさせる、綺麗な青と白の二種類が入っている玉飾りの袋を指さした……

ニッカネン「ええ、分かりました」

…ゆったりとした歩調で通りを歩きながら時折足を止め、鎮守府へのお土産としてクリスマスツリーに吊るすオーナメントや綺麗な細工物を見繕う提督……フィン語でのやり取りはニッカネンにお願いして、着々と買い物の量を増やしていく…

ニッカネン「フランチェスカ、荷物の量は大丈夫ですか?」

提督「ええ。トランクは結構空きがありますし、もし入りきらないとしても追加の手荷物料金くらい払いますよ……それとお店の人に「どうか良いクリスマスを」と伝えてもらえますか?」ニッカネンに向けて微笑を浮かべつつ、お店の人から商品の袋を受け取った…

ニッカネン「伝えましたよ……フランチェスカ「貴女にもよいクリスマスを」だそうです」

提督「グラツィエ♪」

…辺りにはオルガン音楽やクリスマスを題材にしたポピュラー音楽が流され、コートの合わせや靴底から伝わってくる冷たい夜気も、サウナのおかげか、さもなければ暖かな気分のために心なしか柔らかく感じられる…

ニッカネン「フランチェスカ、少し身体が冷えてきたのではありませんか? ……良かったらコーヒーハウスにでも寄っていきましょうか?」

提督「ええ」

…コーヒーハウス…

提督「ふぅ……身体の中から暖まりますね」

ニッカネン「美味しいですか?」

提督「ええ、とても。フィンランドの方はみんなコーヒーを淹れるのが上手ですね」

ニッカネン「まあフィン人の「みんな」と言うこともないでしょうが……それに、コーヒーを淹れるならやはり森の中、焚き火を使って銅のポットを使うのが一番です」

提督「素敵ですね。 静まりかえった森の中、二人きりで焚き火のはぜる音を聞きながらコーヒーを沸かす……なんて」テーブルの上に置かれたニッカネンの手にそっと自分の手を重ねる……

ニッカネン「え、ええ……///」かすかに頬を赤らめて、乗せられた手から自分の手を引き抜くかそのままにしておくかためらっているニッカネン……

提督「……さてと、そろそろホテルに戻りましょうか」

ニッカネン「そ、そうですね……///」

…ホテル前…

ニッカネン「サウナはいかがでした、フランチェスカ?」

提督「ええ、とても気持ちが良かったですし、機会があったらまた行きたいものですね。 それに買い物も楽しめました」買い込んだ飾り物の袋や箱を積み重ね、その下に腕を回して支えている提督…

ニッカネン「それは何よりです。 それでは、明日の夕食会でまた」

提督「ええ、また明日……っと、ちょっと待って?」ホテルの前まで送ってきてくれたニッカネンがボルボに乗り込もうとするところを呼び止めた…

ニッカネン「何か?」

提督「ええ……ちゅっ♪」

ニッカネン「……あっ///」

提督「今日はとても楽しかったわ、クリスティーナ……チャオ♪」ニッカネンのひんやりした頬に軽くキスをすると、軽くウィンクを投げた……

ニッカネン「そ、そうですか……喜んでいただけたようでなによりです///」提督の唇が触れた部分に手を当てると、何を言うか迷っているように口ごもり、ようやくそれだけ言って車に乗り込んだ……

提督「ふふ……っ♪」いつもよりぎくしゃくした運転で走り去るボルボを見送ると、含み笑いをしながらホテルの入り口をくぐった……

………

…翌日・夕食会…

ニッカネン「さぁ、どうぞお入り下さい」

提督「素敵な会場ですね……♪」


…礼装に身を包んだニッカネンに案内されてやって来たパーティ会場はきれいにしつらえられており、床の一部には赤と緑でパッチワーク風の模様に仕上げたフィンランドの伝統織物「ルイユ織り」の絨毯が敷かれ、テーブルには色とりどりの花が飾ってある……それも参加各国をもてなす意味を込めてそれぞれの花瓶に各国の国旗と同じ色が使われていて、カーネーションやカラー、バラに百合、かすみ草といった花をバランスよく組み合わせて、イタリアのトリコローリ(三色旗)の色である緑・白・赤をはじめ、ポーランドの白と赤、スウェーデンの青と黄色、ノルウェーの赤、青、白といった具合に仕上げてある……


ニッカネン「どうしても冬は色がなくて殺風景に感じますから、こうやって花があるのはいいものです」

提督「同感です……」提督はニッカネンと話しながら、テーブルのそばで立っている各国士官の一団に近づいた……

ニッカネン「それでは、改めて紹介しましょう。こちらはウーシマー旅団のミカ・カンキネン大尉」がっしりした体格をした沿岸防衛旅団の大尉は鍛え上げた肉体のために礼服が窮屈そうで、頬の肉が付いているところに赤みが差している様子はどことなくサンタクロースを思い起こさせる……

カンキネン「初めまして」

ニッカネン「こちらは空軍のラウリ・キルピ大尉」

キルピ「お目にかかれて光栄です、アドミラル・カンピオーニ」

提督「こちらこそ……大尉はどんな機種を操縦なさっているのですか?」

キルピ「たいていは「サーブ・ドラケン」です。私も機体も退役するはずだったのですが、深海棲艦のことがあってまだ引退できずにいましてね」戦闘機の操縦士としてはかなり高齢に見えるキルピ大尉はいかにもパイロットらしく、細身の顔とほとんど同じくらいあるがっちりした首をしているが、一度笑うと目尻や口元に笑いじわができて親しげな表情になる……

提督「なるほど」

ニッカネン「こちらはポーランド海軍のヴァシェフスキ中佐」

ヴァシェフスキ「スタニスワフ・ヴァシェフスキです。どうぞお見知りおきを」

提督「フランチェスカ・カンピオーニです……ポーランド軍の勇敢さについてはよく聞き及んでおります。イタリア人として、お国のドンブロフスキがイタリアで軍団を編成した歴史があるというのは光栄なことです」

(※ヤン・ドンブロフスキ……ナポレオンの下、イタリアで亡命ポーランド人たちを募った「ポーランド軍団」を編成し、ロシア・オーストリア・プロイセンなどに分割されたポーランドを復活させるために戦った。ポーランド国歌「ドンブロフスキのマズルカ」はその際にポーランド軍団の兵士たちが歌った愛唱歌を元にしている)」

ヴァシェフスキ「これはまた、我が国の歴史をご存じで……どうもありがとうございます」風格のあるヴァシェフスキの顔がぱっとほころんだ……

ニッカネン「では、自己紹介も済んだことですし……乾杯にお付き合いいただけますか、少将?」

提督「ええ、喜んで」

ニッカネン「良かった……フィンランドのウォッカは最高ですよ、ぜひ賞味してみて下さい」

提督「そうですか、でしたら」澄み切った液体がなみなみと満たされている小さいグラスを取った……

ニッカネン「では、音頭は私が……キピス(乾杯)!」

一同「「キピス」」

…ウォッカを始め、度数の強い酒を恐る恐る飲もうとするとかえって飲みにくいので、覚悟を決めて一気にあおった提督……いいウォッカだというニッカネンの言葉通り、カッと熱い感覚が喉を流れ落ちるが口当たりは水のようで、当たりの強さやえぐみはまったくない…

ニッカネン「いかがですか」

提督「ええ……とってもいいウォッカですね」つばを飲み込み、一呼吸してから答えた……

キルピ「それでも慣れていないと飲みにくいでしょう……キャビアを一緒に食べるといいですよ」小さじで皿にキャビアをよそってくれたキルピ大尉

提督「ありがとうございます」

…度数こそきついが口に入れた瞬間は甘いウォッカと塩っぱいキャビアは確かによく合い、食べた後にかすかに残るキャビアの海くささのようなものを、ウォッカがきれいに落としてくれる…

提督「……なるほど、これはいい組み合わせですね」

ニッカネン「そうでしょう……ところでこれはどうですか? トナカイの燻製ですよ」

提督「これがそうですか、初めて食べます……」赤身が濃くて鹿肉に似ているトナカイ肉の燻製は噛みごたえがあって、あごはくたびれるが、噛めば噛むだけ旨みが沁みだしてくる……

ニッカネン「いかがですか?」

提督「これは……例えば暖炉か何かのそばに腰かけて、じっくり噛みしめて食べる……そうした食べ方が合いそうですね」

カンキネン「おや、なかなか通な意見ですね」

提督「それはどうも……もちろんパルマの生ハムも美味しいですが、このトナカイ肉とは風味や歯ごたえが全く違いますし、同じ物差しでどちらが美味しいとか優れているとか、そういった比較をすることはできませんね……少なくとも、私は美味しいと思いますよ?」

ニッカネン「そう言ってもらえると嬉しいですね」提督の言った言葉に含まれた意味を理解して、ニッカネンをはじめフィンランド軍の士官たちは軒並み苦笑いした……

ヴァシェフスキ「では、今度は私からも乾杯を……カンピオーニ少将、お願いできますかな?」

提督「ええ、分かりました」

…しばらくして…

提督「この鴨肉もとても美味しいです……肉が柔らかくて、脂の甘味がじんわりと染み出すようで……」

ニッカネン「鴨肉ならシャンパンの方が良いでしょう、お取りしますよ」

提督「グラツィエ♪」


…会場で各国士官たちと会話をする間もニッカネンが隣に付いてくれ、並んでいる料理や酒を勧めてくれる……鴨のローストにシャンパン、キャセロール(グラタン皿料理)にフィンランドウォッカ、ノルウェーから空輸されてきたサーモンに、海老を使ったグリル……提督以外にも食欲旺盛な士官は多くいて、食器やグラスの触れあう音もにぎやかにパーティが進み、幾人かは頬の血色が良くなっているが、それは暖かな空調のためだけではないように見える……提督はニッカネンのガイドのおかげで料理と酒の美味しい組み合わせを堪能しながら、打ち解けた様子の士官たちと面白おかしく脚色した過去の失敗談やちょっとした冗談を交わした…


キルピ「……ところでアドミラル・カンピオーニ、実は「ドラケン」というとちょっとした小話がありましてね」一杯機嫌で愉快そうなキルピ大尉が切り出した……

提督「と、いいますと?」

キルピ「ええ……戦闘機に限らず飛行機は着陸に際して、滑走路への進入前に脚(降着装置)を下ろし、前後共に下りたことを示す表示を確認して「スリー・グリーン」と管制官にコールするんですが……」

提督「ええ、聞いたことがあります」

キルピ「そうですか……いや、ドラケンはご存じの通りダブルデルタ翼で、離着陸時の機首上げ角度が強いもんですから、いわゆる「尻餅」をつかないよう胴体後部にもう一つ尾輪が付いているんですよ」

提督「なるほど……?」

キルピ「ですから、管制官から「スリー・グリーンを確認せよ」と言われた時にわざと「フォー・グリーン」と返して面食らわせてやることがありましてね……♪」

提督「くすくすっ……そういうことですか♪」

ヴァシェフスキ「……ところでカンピオーニ少将、ポーランドへ旅行したことはありますか?」

提督「いえ、残念ながら機会がなかったものですから」

ヴァシェフスキ「それはもったいない……ワルシャワ、クラクフ、どこも歴史があって良い街ですよ」

提督「そうですね、かの有名な「ワルシャワ・マーメイド」の像も見てみたいですし」

(※ワルシャワ・マーメイド……自身を捕らえた悪徳商人から助けてくれたワルシャワの人たちへの恩返しとして、剣と盾を持ってワルシャワを守護する約束をした人魚。ワルシャワの誇りと名誉のシンボル)

ヴァシェフスキ「ああ、あれはぜひ見てほしいですね。ショパンやマリー・キュリーといった偉人もおりますし……カンピオーニ少将はSF小説を読まれますか?」

提督「学生時代に好きでよく読んでいました……ポーランドと言えば「ソラリス」のスタスワフ・レムですね?」

ヴァシェフスキ「その通りですとも。他にも「無敵(砂漠の惑星)」や「星からの帰還」といった真面目な作品から「宇宙創生期ロボットの旅」のような皮肉の効いたユーモアSFまで……あの複雑なポーランド語の味わいが翻訳では出せないのが残念です」

提督「同感ですね。映画にしろ書籍にしろ、翻訳ではどうしても思っている事を伝えきれないのが残念です……こうしてお話ししている時も、失礼な言い方に感じられてしまったらごめんなさい」

ヴァシェフスキ「いえいえ、私の英語よりはずっとお上手だ……シャンパンはいかがですか?」

提督「ええ、では……♪」

…またしばらくして…

カンキネン「カンピオーニ少将、もう一杯いかがですか?」

提督「いえ、もうこのくらいにしておきます……お酒が入るとおしゃべり機関銃どころか、「おしゃべりCIWS」になると言われておりますから♪」

(※CIWS…「近接迎撃兵装システム」の略。アメリカの二十ミリ「バルカン・ファランクス」やイタリアの四十ミリ「ダルド」、オランダの三十ミリ「ゴールキーパー」等が有名。シーウィズ)

カンキネン「ははは、そいつは大変ですね」

キルピ「それにしてももう数日早ければ、独立記念日に間に合ったのですが……当日はパレードや何かがあって、白と青の旗が家々に翻って、それはそれは美しいものですよ」

提督「私も話には聞いていたので見逃すことになって残念です……この予定を組んだ上層部が恨めしいですね」

カンキネン「まぁ、いつかまたお出でになる機会もありますよ……キピス!」

提督「キピス♪」

フェリーチェ「……だいぶ打ち解けてきたようね?」提督が歓談している間に会場を歩き回って会話に加わり、またさりげなくあちこちの会話に聞き耳を立てていたらしいフェリーチェ……

提督「ええ、おかげさまで」

フェリーチェ「それと今さらだけれど、あまり食べ過ぎないようにね?」

…提督の皿に盛られているマッシュド・ポテトと濃厚なクリームで和えたミートボール料理をちらりと見て、冗談半分に釘を刺した…

提督「ええ。それよりも飲み過ぎの方が問題ね……」

フェリーチェ「頼むからああいう風にはならないでよ?」

…フェリーチェがちらりと目線で指し示した先では、ロシア海軍バルト海艦隊の士官たちが「タダ酒」ということでいい気になってウォッカやウィスキーをがぶ飲みしていて、会議の代表を務めていた大佐クラスの士官を始め、たいていが鼻の頭や頬を真っ赤にしながら大声のロシア語でしゃべっている…

提督「ならないわよ……まあ、ミカエラにとってはああいう相手の方が都合が良いんじゃないかしら?」

フェリーチェ「そうね。でもそれは私だけじゃなくてどこも同じよ……」付き合いがあった提督だけが分かるような微妙な身振りで何人かの士官を指し示した……

物静かなフィンランド軍士官「……」

気配の薄いスウェーデン軍士官「……」

提督「なるほど……」と、台に乗っているグラスを取りにロシア海軍の女性将官が近寄ってきた……

ロシア女性将官「失礼、そのシャンパンを取ってもらえまいか」

提督「ええ、どうぞ」


…フェリーチェ言うところの「モスクワからのお目付役」らしいロシア海軍の女性将官は少将の階級章を付け、胸元に並んでいる略綬の他にも、いくつかのメダルが留められている……瞳は冷厳な印象を与える淡い青灰色で、まるで妖精のような美しいプラチナブロンドの髪をしている……その横に影のように付いている女性の大尉は後ろでまとめた金髪に淡いブルーの瞳で、きっちりとした態度はいかにも優秀な副官タイプに見える…


ロシア女性将官「スパシーバ(ありがとう)」

ニッカネン「しかし、なんというか……あの人はまるで冬のヴァンターヨキ川よりも愛想がないですね」さっと歩み去った女性将官を見送りつつ、つぶやくように言った……

提督「言い得て妙ですね。もっとも、冬のヴァンターヨキ川がどのような様子かは知りませんが」

カンキネン「いや、ありゃあどちらかというと「メルケ」だな……ニコリともしやしない」

(※モラン…ムーミンシリーズに登場する、冬を具現化したような女の妖怪。 黒いローブを引きずったような姿で、座った跡は霜が降りてしまう。フィン語のメルケは「お化け・幽霊」の意味)

キルピ「全く、東から来るもので歓迎できるものといえばお日様だけだからな」

…そろそろ酔いが回ってきて、次第に打ち解けた……場合によっては隠していた本音の部分が顔をのぞかせ始めた各国の士官たち……特に北欧諸国やポーランドの代表は、お世辞にもロシアと友好関係にあるとは言いにくく、ウォッカやシャンパン、アクヴァヴィットのグラスを重ねたこともあって、勢い舌鋒も鋭くなる…

フィンランド士官「……いや、ようこそフィンランドへお出で下さいました。ヘルシンキに足を踏み入れたロシアの士官は捕虜を除けば少将が初めてですな」

ロシア女性将官「……」

フィンランド士官B「良かったらサルミアッキでもいかがですか、美味しいですよ?」

(※サルミアッキ…リコリス飴。北欧ではよく食べられるが外国人には「塩味のゴム」など散々な評価で、かなりクセのある味だという)

スウェーデン海軍士官「何か飲み物はいかがですか? せっかくですから「ウィスキー・オン・ザ・ロック」でも?」冷戦時代の事件をあてこすって、ウィスキー・オン・ザ・ロックを勧めるスウェーデンの海軍士官……

ロシア女性将官「スパシーバ(ありがとう)……ウォッカを頂戴する」皮肉などまったく意に介さない様子で冷たく相手を見据えると、露が降りるような冷たいウォッカのグラスを受け取る……

…時間が過ぎてたびたびグラスが干されるうちに真面目で感情表現の控え目なフィンランド軍の士官たちもかなり陽気な雰囲気になってきて、中の数人がヴァイオリンやアコーディオンを用意し始めた…

フィンランド軍士官「……さて、何か演奏しましょうか。聞きたい曲があったら遠慮なくどうぞ?」アコーディオンを首から提げると、鍵盤を軽く試した……

ニッカネン「カンピオーニ少将、せっかくですから何かリクエストなさってみては?」

提督「それもそうですね……あいにくフィンランドの曲はあまり知らないのですが「サッキヤルヴェン・ポルカ」でしたか、それなら題名くらいは聞いたことがあり……」言いかけたところで隣にいたフェリーチェが小さく、しかし思い切りふとももをつねった……

提督「痛っ……ミカエラ、どうしたの?」

フェリーチェ「フランチェスカ、何を考えてるの! ……「サッキヤルヴェン・ポルカ」はロシアに奪われたカレリアを懐かしむ歌なのよ?」小声で提督を叱りつける……

提督「あっ……しまったわ」

フィンランド士官「さすがはアドミラル・カンピオーニ……ではリクエストにお応えして「サッキヤルヴェン・ポルッカ」!」


…提督は慌てて別な曲を頼もうとしたが時すでに遅く、アコーディオンを持った士官が曲を弾き始めると、たちまち勢いづいたフィンランド軍の士官たちがグラスを片手に声を張り上げた…

フィンランド軍士官たち「「♪~オン・カウイナ・ムイストナ・カレヤラ・マー、ムッター・ヴィエラカ・スォイメサ・スォイナッター」」
(♪~美しき思い出の地カレリアよ、今も心に沸き上がる)

士官たち「「♪~クン・スォッタヤン・スォルミスタ・クーラッサー、サッキヤルヴェン・ポルッカ!」」
(♪~奏者が奏でるサッキヤルヴェン(サッキヤルヴィの)ポルッカ!)

士官たち「「♪~セ・ポルッカ・ター・ミエネッタ・ミエレン・トゥオ、ヤ・セ・ウオトゥオ・カイプタ・リンタン・トゥオ」」
(♪~ポルッカが過去を呼び起こし、胸に追憶が去来する)

士官たち「「♪~ヘイ・ソイタッハー・ハイタッリン・ソイダ・スオ、サッキヤルヴェン・ポルッカ!」」
(♪~アコーディオンを奏でれば、サッキヤルヴェン・ポルッカ!)

士官たち「「♪~ヌオレン・ヤ・ヴァンハセ・タンセン・ヴィエ、エイ・セレ・ポルカラ・ヴィエター・リィエ!」」
(♪~老いも若きも踊り出す、ポルッカに勝るものはなし!)

士官たち「「♪~セ・カンサー・オン・ヴァイッカ・ミエロン・ティエ、サッキヤルヴェン・ポルッカ!」
(♪~さすらう身となっても(故郷を失ったとしても)歌はある、サッキヤルヴェン・ポルッカ!)

士官たち「「♪~スィナア・オン・リプラトゥス・ライネッテン、スィンナア・オン・フゥオユンター・ホンキエン」」
(湖には波が立ち、松の梢はざわめいて)

士官たち「「♪~カレヤラ・スォイ・カッキ・ティエター・セン、サッキヤルヴェン・ポルッカ!」」
(カレリアの誰もが歌詞を知る、サッキヤルヴェン・ポルッカ!)

士官たち「「♪~トゥレ・トゥレ・トゥットネ、カンサネ・タンサネ・クォ・ポルカネ・ヘルカセ・ヘルカンター」」
(♪~娘さんよ私と踊ろう、優しきポルッカの響きに乗って)

士官たち「「♪~ホイ・ヘポ・スルコヤ、ハンマスタ・プルコン・スィーラナ・イーメスィティ・スーレミ・パー」」
(♪~馬は歯ぎしりしているが、頭が大きい(賢い)のだから勝手にやらせておこうじゃないか)

士官たち「「♪~トゥレ・トゥレ・トゥットネ、カンサネ・タンサネ・メーレア・リェームヤ・スヴィネン・サー!」」
(♪~娘さんよ私と踊ろう、優しきポルッカの音色が響く!)

士官たち「「♪~サッキヤルヴェセ・メルター・オン・ポィス、ムッタ・ヤイ・トキ・センターン・ポルッカ!」」
(♪~サッキヤルヴィは失われてもポルッカの音色は残ったのだから!)


ロシア海軍士官「……諸君、我々も一曲歌おうじゃないか!」

…ウォッカで顔を赤くしたロシア軍の少佐が塩辛い声でそう言って、空のグラスを片手に指揮者のように腕を振ると、フィンランド軍士官たちの歌声をかき消そうと、ソ連時代から続く海軍の軍歌「艦隊への道(タローガ・ナ・フロート)」を合唱し始める…

フェリーチェ「フランチェスカ、どうするつもり?」

提督「困ったことになったわね。まるで「カサブランカ」の場面みたい……あ、そうだわ」互いの声が砲弾のように飛び交う中、ふと思いたってラーセン大佐のそばに行き、ひそひそと耳打ちする提督……

ラーセン「……分かりました、やってみましょう」

…フィンランド軍士官とロシア海軍士官がお互いに歌声を張り上げて相手をやり込めようとしている中、ラーセンがスウェーデン軍の士官たちに小声で何事か指示した……ラーセンが提督のリクエストを伝えると、若手士官の何人かは提督に向かって「了解した」というように軽くうなずいたり小さく親指を立てたりした…

提督「あー、よろしければもう一曲構いませんか?」

…サッキヤルヴェン・ポルッカの合唱が終わったところでニッカネンに近寄ると、さりげなく尋ねた…

ニッカネン「もちろんです……皆さん、アドミラル・カンピオーニからもう一曲リクエストがあるそうですよ? それで、曲は何を?」

提督「ええ……良く考えたら明日は聖ルチアの日ですし「サンタ・ルチア」をお願いします♪」

フェリーチェ「……なるほどね」


ニッカネン「それではアドミラル・カンピオーニのリクエストで「サンタ・ルチア」です」


…ニッカネンがさっと助け船を出してアコーディオン係の士官に合図をすると、士官はナポリ民謡「サンタ・ルチア」を演奏し始めた……ナポリに勤務していた事もある提督にはお馴染みの……また冬の寒さと暗さに耐えるスカンジナヴィアの人々にとっては(旧暦にあたるユリウス暦では)これから夜が一日ずつ短くなっていくという嬉しい「聖ルチアの日」を祝う歌としてよく耳に馴染んでいる「サンタ・ルチア」…


提督「♪~スル・マーレ・ルチィカ、ラストゥーロ・ダルジェント……」
(♪~海の上、星は銀に輝き……)

…提督が本来の歌詞で歌い出す暇もあらばこそ、あっという間にスウェーデンやフィンランドで付けられた冬の終わりを喜ぶ歌詞が大合唱になって
覆い被さってくる…

提督「ふぅ……」

フェリーチェ「……どうにかなったわね」

提督「ええ。私が撒いた種だもの、少しはどうにかしないと……でしょう?」

…さっきまでのロシア軍士官に対する険悪な雰囲気はどこへやら、フィンランド軍やスウェーデン軍の士官たちが聖歌隊の子供のような熱心さで歌を歌っている…

ラーセン「……これで大丈夫でしたか、カンピオーニ少将?」

提督「ええ、おかげで助かりました……♪」

ニッカネン「ラーセン大佐、私からもご協力に感謝します」

ラーセン「とんでもない……あのままロシア側といがみ合いにならなくて幸いでした」

ニッカネン「そうですね」

提督「本当に申し訳ありません……」

ニッカネン「いいえ……その代わりと言ってはなんですが、もう一杯お付き合いいただけると嬉しいのですが」

提督「え、ええ……」


…提督としてはそれまでも何回か乾杯に付き合っていたので、出来ることなら勘弁してもらいたいところだったが、フォローしてもらった手前むげに断るのも具合が悪い……それならせめてアルコール度数の低いカクテルでもと思って酒類のテーブルを眺めたが、残念な事に並べられているのはウォッカにアクヴァヴィット、ウィスキーとブランデーと、度数の高い酒のグラスばかりが並んでいる……仕方なしにテーブルの中では一番軽いシャンパンのグラスを取り、ニッカネンの掲げたウォッカのグラスと軽く触れあわせた…


ニッカネン「キピス」

提督「キピス♪」

………



…しばらくして…

フェリーチェ「大丈夫、フランチェスカ?」

提督「ええ、思っていたよりも量を過ごしてしまったけれど……まだローリング(横揺れ)は起こしていないわ♪」

…立食ながら種類も量もたっぷりあった北欧料理と、それに合う度数の高いお酒ですっかり身体が火照っている提督……いつもより冗談が増え、頬紅(チーク)なしでもほんのりと色づいた頬が艶めいている…

フェリーチェ「なら良かったわ。ホテルに戻ったら酔い覚ましにシャワーでも浴びて、ゆっくり休むことね……どうかした?」酔いが回っているだけではない、提督のご機嫌な様子に気付いた……

提督「ちょっと……ね♪」

フェリーチェ「なに?」

提督「ふふふ……あのね、さっきニッカネン少佐と「キピス」をしたでしょう?」

フェリーチェ「それは見てたわ。そのあと二人して話し込んでいたようだったけれど」

提督「そうなの……それで、ニッカネン少佐が「よろしければ、後で部屋に来ませんか」って♪」

フェリーチェ「つまり、貴女の「Lバンドレーダー」に引っかかったってわけね」

提督「なぁに、それ? 私は捜索用レーダーなんて積んでないわよ?」

フェリーチェ「あら、意外ね。貴女ときたらいつでも色んな女性と付き合っているものだから、てっきりそういう女性を見つけるためのレズ(L)バンドレーダーを搭載しているんだと思ってたわ」

提督「くすくすっ……そういうことね♪ とにかく、今夜はニッカネン少佐の所に泊まるわ」

フェリーチェ「はいはい。くれぐれも粗相をしないようにね」

提督「もちろん♪」

ニッカネン「お待たせしました。それでは行きましょう」

提督「ええ♪」

…黒塗りでホテルまで送迎される各国士官を見送ってからタクシーを呼び止めたニッカネン……運転手に場所を告げてしばらく走ると、ヘルシンキ市内にある五階建てアパートの前でタクシーが停まった…

………



…ニッカネンの住居…

ニッカネン「さ、どうぞどうぞあがって下さい」

提督「お邪魔します」


…ニッカネンがヘルシンキに借りている住居(フラット)は部屋に備え付けのものらしいシンプルかつ実用的な家具でまとめられていて、持ち込んだものは室内の隅に置かれているショットガン用のガンロッカーと卓上の写真立て、それに白いエナメル塗装が施された金属製の本棚に並んでいる本といった程度らしい……清潔感はあってきれいにまとまってもいるが、全体的には鎮守府のそばに構えた独身士官用の宿舎と同じような「仮住まい」という雰囲気で、家具や調度もフィンランド人らしく無駄がなく簡素な感じがする…


ニッカネン「殺風景な部屋でしょう? 実家には色々と家具もあるのですが、転属のことを考えると身軽でいたいものですから」提督の視線に気付いたのか「言い訳がましく聞こえるかもしれないが」というニュアンスを込めて、あっさりした調度について弁明した……

提督「分かります。むしろ私は余計なものを増やしすぎて引っ越しの時に後悔することになったほうなので、うらやましいです」

ニッカネン「そうですか? ああ、どうぞかけて下さい。いま飲み物を持ってきます……ウォッカのジュース割りでかまいませんか? 実家で採ったコケモモのジュースがまだあるのですが」ベッド脇の椅子を勧めると、提督に尋ねたニッカネン……

提督「自家製のコケモモジュースなんて素敵ですね、ぜひそれでお願いします♪」

ニッカネン「分かりました」

…台所から戻ってきたニッカネンはフィンランドではお馴染みのウォッカ「コスケンコルヴァ」と、コルクで栓をしてある貯蔵用の瓶を持ってきた…

ニッカネン「ウォッカはどのくらいにします?」

提督「それじゃあ少な目でお願いします……ええ、そのくらいで」

…それぞれのグラスにウォッカを注ぐと、そこにコケモモのジュースを加えるニッカネン……クランベリーの親戚であるコケモモのジュースはザクロのように透き通った赤色をしている…

ニッカネン「はい……では、キピス」

提督「キピス」

…冷えたグラスを手に取って何口か飲んでみる提督……甘酸っぱいコケモモジュースのさっぱりした飲み口のおかげで案外飲みやすく、暖房やお酒で火照った身体にきりりと冷たい飲み物が心地よい…

提督「こくんっ……甘酸っぱくて美味しいです」

ニッカネン「それは良かったです」

提督「ええ。それにこうやって照明にかざして見ると、ルビーみたいで綺麗ね♪」控え目な光を投げかけている照明にグラスを掲げて、液体を透かしてみる提督……

ニッカネン「アドミラル・カンピオーニは詩人ですね」

提督「ふふっ……堅苦しい表敬訪問ではないのだから、気軽に「フランチェスカ」って呼んでほしいわ♪」

ニッカネン「あ、では私のことも「クリスティーナ」と……」

提督「ええ、そうします……クリスティーナ♪」少し首を傾げ、甘い声で呼びかける……

ニッカネン「はい……少し、恥ずかしいですね///」

提督「そうかしら?」

…しばらくして…

ニッカネン「フランチェスカは聞いたことがあるでしょうか……長く続く暗鬱な冬の夜を過ごしているとフィンランド人はいくつかの種類に分かれると言います」

提督「というと?」

ニッカネン「ええ。イヨッパラリ(大酒飲み)か、その反対に禁欲主義者……さもなければメタルバンドを組むようになると♪」

提督「まぁ、ふふっ♪」

…提督がほどよく相づちを打ったり笑ったりしているためか、さもなければ提督よりかなり早いペースでグラスを干している「ウォッカのコケモモジュース割り」のおかげか、少しぎこちない感じはあるものの、ちょっとした冗談まで言うようになったニッカネン…

ニッカネン「あ、いつの間にかずいぶん遅い時間になってしまいました……こうして話をしながら飲むというのも良いものですね」

提督「そう……ね♪」身体を乗り出し、ニッカネンの頬をそっと左手で撫でる……

ニッカネン「あ……///」

提督「あら、ごめんなさいね……つい」

…口調もそれまでより親しげにして距離を近づけつつも、頬を撫でた手はうっかりだったかのようにすぐ引っ込めた…

ニッカネン「いえ……それにしても、フランチェスカの手はとても綺麗ですね」

提督「お褒めにあずかり恐縮ね。 これでも士官学校や若手士官のころはロープに海水、挙げ句の果てには機械油と「働き者の手」だったけれど、最近はそういうこととはすっかり縁遠くなったものだから……」名ばかりの提督としてのんきに過ごしていることを示す綺麗な手をしていることに苦笑する提督……

ニッカネン「いえ、分かります……それに爪も艶やかですね。クリアのマニキュアですか?」

提督「いいえ、爪やすりだけよ? 以前ガラスの爪ヤスリを買ってからというもの、爪だけはつるつるのぴかぴかで……自分でもちょっと気に入っているの♪」綺麗に切り整えられ、照明の光を鏡のように反射している形の良い爪……

ニッカネン「やすりだけですか? そうは思えないほどですね」

提督「そう言ってもらえると手入れをしたかいがあるわ」

ニッカネン「ええ。なにしろ私の爪はお世辞にも艶があるとは言いがたいので……」確かにニッカネンの爪は短く切り整えられてはいるものの、表面にはかすかに縦溝が入っていて、少し固くなっている……

提督「まぁまぁ、それなら今度爪やすりを贈るわ。クリスマスも近いし、せっかくこうやって知り合う事が出来たのだものね……でも、私は貴女のほっそりした手が好きよ?」


…そう言ってニッカネンの細く、少し骨ばった手に指を絡めた提督……さっきまでは遠慮がちに手をほどいていたニッカネンも今は繋いだ指を離そうとせず、提督が金色の瞳でじっと見つめると、恥ずかしさと困惑が混じり合ったような様子で視線をそらす…


提督「……クリスティーナ」

ニッカネン「なんでしょうか、フランチェスカ……」

提督「私ね、貴女に恋をしたみたい……帰国するまでの短い間だけれど、貴女のことを好きになってもいいかしら?」

ニッカネン「……私だってそのつもりでした……でなければ、こうして部屋に呼んだりはしません///」

提督「嬉しい……」ちゅっ…♪

ニッカネン「ん……///」

…立ち上がると小さなテーブルを回り込み、座っているニッカネンの右手を両手で包み込んだまま、見おろすようにして優しく口づけする提督……柔らかで、それでいて張りのある提督の唇が、ニッカネンの薄い唇にそっと重なる…

提督「……ん、んっ♪」

ニッカネン「あ……んんっ、ちゅ……あふっ///」

提督「んちゅ、ちゅ……っ♪」甘酸っぱいコケモモジュースの後味が唾液に混じり、離した唇から細い銀の糸が一筋伸びた……

ニッカネン「……フランチェスカ///」


…ニッカネンも立ち上がると提督の手を引き、片隅にあるシングルベッドに導いた……清潔感のあるベッドは折り目もぴしっとしている洗い立てのシーツと暖かそうな羽毛布団、それと真ん中をへこませて両脇をふくらませた枕とクッションがいくつか並べてある……二人は金モールや略綬の付いた礼装の上着を脱いで椅子に置くと、ベッドに潜り込んだ…


提督「クリスティーナ♪」

ニッカネン「フランチェスカ……///」


…ニッカネンが「フランチェスカ」と言うと、フィン語独特の母音を重ねたような響きが交じり、多くの恋人、あるいは「親しい友人」たちからたびたび名前をささやかれてきた提督の耳に、北欧の魅力的な雰囲気をともなって心地よく聞こえる…


提督「んっ、んんぅ……はむっ、ちゅ……ぅっ♪」

ニッカネン「あふっ、んっ……ふぁ……あふ……っ///」

提督「……それにしても、クリスティーナったら表情を隠すのが上手ね? こうしてお部屋に招いてくれたりサウナに誘ってくれたりしなかったら、クリスティーナが「そう」なのかどうか迷っていたところよ?」二人して息継ぎをすると、いたずらっぽく笑いながらニッカネンを眺めた……

ニッカネン「それは私の言うべき言葉です。フランチェスカの態度はアプローチなのか、それともただ親しげなだけなのか……ずいぶん考えさせられていたんですからね……///」

提督「あら、私は伝わっているとばかり思っていたわ♪」

ニッカネン「私の方では、イタリア人はみんなそうなのだと思っていましたから……」

提督「心外ね……ちゅっ、ちゅるっ……んちゅ……っ♪」

ニッカネン「んっ、れろっ……ちゅむ……っ///」

提督「……あむっ、ちゅぅ……っ、ちゅ……♪」

ニッカネン「はふっ、ふぁ……んちゅ……っ///」

…そっと花びらに触れるような控え目な口づけから、次第にじっくりと甘いキスへ変わっていく二人……口中でお互いの舌が絡み合い、コケモモの甘酸っぱい残り香とウォッカの火照りが提督をくらくらさせる…

提督「んんぅ、ちゅるっ……じゅるぅぅ……っ♪」

ニッカネン「ん、んっ、んん……っ///」

提督「ちゅむっ、ちゅる……んちゅ、ちゅぅぅ……っ♪」

ニッカネン「んくっ……ふ……んん……っ///」

提督「ちゅむ、ちゅるぅ……っ……ぷはぁ♪」

ニッカネン「ぷはっ……はぁ、はぁ、はぁ……っ///」

…ニッカネンの口中を舌でなぞり、ついばみ、吸い上げるようにして息が切れるまでキスを交わした提督……さすがに息苦しくなって口を離すと、プールから上がってきたかのように大きく息を吸い込んだ……同じようにニッカネンもすっかり息を切らし、大きく胸を上下させている…

ニッカネン「……はぁ、はぁ……こんなに……長いキスは……はぁ、ふぅ……初めてです……///」

提督「長さよりも、クリスティーナが気持ち良かったのなら嬉しいわ……?」

ニッカネン「ええ……気持ち……よかったです///」

提督「よかった……でも、まだまだこれからよ♪」

…室内をほんのりと照らす程度まで光量を下げてある照明の中で、ニッカネンと向かい合って互いの着衣を脱がしていく……互いに礼装の下に着ていたワイシャツを脱がせあうと、ニッカネンは提督の肌を引き立てる黒レースの薔薇模様が入ったランジェリー、提督はニッカネンが身に付けているすっきりしたライトグレイの下着に手を伸ばした…

提督「綺麗よ、クリスティーナ……♪」

ニッカネン「……こんな風に見つめられる機会はあまりなかったので、少し恥ずかしいですね///」

提督「そう? 白くて形も整っていて、とっても素敵よ?」

ニッカネン「それを言ったらフランチェスカの乳房の方が、大きくて丸みを帯びていて綺麗です……張りもありますし……」

…そう言いながら提督のブラジャーを外そうとするが、ホックに苦戦気味のニッカネン……自分のブラなら何となく手が馴染んでいるが、相手の脇から背中へと腕を回して、見ないでホックを外すのは意外と難しい……そんなニッカネンの様子を見た提督は、口の端にえくぼを浮かべて微笑むと、ニッカネンの右手を取ってブラの下へと滑り込ませた…

提督「外さなくたっていいわ……ね?」

ニッカネン「あっ///」

提督「ほら、遠慮しないで……?」

ニッカネン「わ……柔らかいのにずっしりしていて……///」もみっ、ふにゅ……♪

提督「クリスティーナのはしっかりしていて引き締まっているわね♪」むにゅ…っ♪

ニッカネン「なんとも言いようのない柔らかさです……それに肌ももっちりしていて、吸い付くようですね……///」ニッカネンのひんやりした指がブラの下に這い込み、提督の乳房を遠慮がちに揉んでいく……

提督「ふふふっ、もっと思いっきりどうぞ……♪」

ニッカネン「わっ……///」たゆんっ♪

…提督はずっしりした胸の谷間にニッカネンの顔を埋めさせた……どうにか右手だけでブラのホックを外すと後ろ手に放り出し、左手でニッカネンの後頭部を優しく撫でながら胸に押しつけ、さらにはむっちりした太ももでニッカネンのきゃしゃな腰を挟みこむ…

提督「クリスティーナ……れろっ♪」

ニッカネン「んぅっ///」

…ニッカネンの耳元で名前をささやき、それから吸い付くように耳を舐めてから「ふーっ」と息を吹きかける……ニッカネンはぞくぞくするような刺激に思わず身震いしながらも提督の谷間を舐めたり、細い指で張りのあるヒップを撫でたりし始めた…

提督「れろっ、ちゅる……ぴちゃ♪」ニッカネンの肉の薄い鎖骨まわりに舌を這わせ、次第に頭を胸元へと動かしていく……

ニッカネン「ぷは……ぁ♪」提督の胸の谷間から顔を上げると、すっかり上気した表情で息継ぎをする……

提督「うふふっ……気に入った?」

ニッカネン「はい、こんなのは初めてですが……癖になりそうです///」まだまだ恥ずかしげにしているが視線は提督のずっしりした乳房や甘い表情にくぎ付けで、表情の乏しい顔にも少し甘ったるいものが交じり始めた……

提督「よかった♪」そう言うといたずらっぽい笑みを浮かべ、ニッカネンの控え目な乳房に舌を這わせた……

ニッカネン「あ、あ、あっ……///」

提督「んふふっ、ちゅぅ……ぅっ♪」乳房を優しく舐めたり先端に吸い付いたりしながら、両手でニッカネンの背中や脇腹を優しく愛撫する……

ニッカネン「あふっ、ふぁ……あっ、あ……///」

提督「ふふふ……っ♪」提督の金色をした瞳にとろりとみだらな光がきらめき、綺麗な指が徐々に下半身へと下っていく……

提督「んちゅ、ちゅ……っ♪」

ニッカネン「ん、ん、んんっ……///」くちゅくちゅっ……ちゅぷっ♪

…舌を絡めてゆっくりとキスをしながら、ニッカネンの秘部にするりと指を滑り込ませる提督……始めは驚いたように小さく引きつったニッカネンの身体だったが、しばらく動かさずにいると次第に緊張がほぐれてきた……提督はそれを確かめてから、暖かく濡れた花芯を優しくかき回した…

提督「れろっ、ちゅく……ちゅぱ……っ♪」

ニッカネン「んぁぁ……あ、あ、あっ///」

提督「ふふ……そんなに悦んでもらえると張り合いがあるわね♪」くちゅくちゅっ、にちゅっ……ちゅぷっ♪

ニッカネン「あぁぁ…っ/// あ、あ……っ///」

提督「……ねぇ、クリスティーナ?」

ニッカネン「ふぁ、ふぁい……///」

提督「私にも……お願い♪」ちゅく……っ♪

…提督はニッカネンの白くひんやりした手に自分の手を重ね、そのまま下腹部へと指を導いた……粘っこい水音がしてニッカネンの指が膣内へと入ってくると、熱を帯びた花芯に冷たい指と第二関節の固い感触が伝わってくる…

ニッカネン「あ…フランチェスカのここ……暖かい……///」くちゅ……っ♪

提督「クリスティーナ……んっ♪」

ニッカネン「ど、どうでしょう……か///」

提督「ふふふっ……そんなに遠慮がちにしなくても大丈夫よ♪」耳元でささやきながらニッカネンのぎこちない指を誘導する……

…しばらくして・深夜…

ニッカネン「んあぁっ、あっ、ふあぁぁ……っ///」

提督「んんんっ、あ、あっ……♪」

ニッカネン「はひっ、ひぅっ、はっ、はぁ……っ♪」とろっ、にちゅ…♪

提督「クリスティーナ……イって良いのよ♪」くちゅくちゅっ……ちゅぷっ♪

ニッカネン「ふあぁぁ……っ♪」とろっ……ぷしゃぁ……っ♪

提督「んんんっ、あ、あっ……んぅぅっ♪」くちゅっ、とぽ……っ♪

…ニッカネンが打ち上げられた魚のようにびくびくと跳ねてとろりと愛蜜をこぼし、その勢いで提督の花芯をかき回していた二本の指が奥を激しくえぐった……ニッカネンを抱きとめるようにしながらも、思わず甘い嬌声をあげる提督…

ニッカネン「はぁ、はぁ……///」

提督「ん、ちゅっ……れろっ♪」口の端から垂れた唾液をすくい上げるように舐めた……

…さらに数時間後…

ニッカネン「ふあぁぁっ、あんっ、ああ……っ///」

提督「あんっ、あふ……っ、はひっ……んあぁぁっ♪」

…ニッカネンの指遣いはまだぎこちないものの、逆にその初々しさと骨ばった感触が新鮮な提督……暖房が効いた暖かい部屋とはいえ、掛けてあった布団をはねのけてしっとりと汗ばんだ身体を重ね、互いに蜜の糸を引いた指をゆっくりと引き抜くとべとべとになった手をヒップに這わせ、濡れた花芯を重ね合わせた…

ニッカネン「はひっ、あふっ、ああぁ……っ♪」くちゅ…ぬちゅっ♪

提督「んっ、ん……あふっ…あぁん……っ♪」にちゅっ、くちゅ……♪

ニッカネン「はひっ、ひぅ……はっ、はっ……ふあぁぁっ♪」

提督「あっ、ふあぁ……あん……っ♪」

…夜明け前…

ニッカネン「はぁ……///」

提督「ふふ……♪」

…冬の北欧は夜明けが遅く、カーテンの外もまだ真っ暗闇ではあるが、ベッド脇の時計で光る夜光文字はすでに0500時近くを指している……提督はニッカネンを優しく愛撫しながら、ベッドの上で甘い余韻に浸っている……一方のニッカネンはくたびれきった様子だが、提督の肩に手を当て、甘えるように身体を寄せている…

ニッカネン「……せっかくですし、コーヒーでも淹れましょうか」

提督「いいわね……ついでにシャワーでも浴びたいわ♪」

ニッカネン「そうですね。このまま今日の会議に出るわけには行かないですし……///」

提督「ふふっ……こんな風にふとももまでべとべとにして会議に出たら私たちのお付き合いがバレちゃうものね? それともいっそのことそうしちゃおうかしら♪」冗談めかしてウィンクを投げる……

ニッカネン「もう、フランチェスカ……///」

提督「冗談よ♪」ちゅっ……♪

…0600時ごろ…

フェリーチェ「……お帰りなさい、フランチェスカ。どうやら二日酔いの薬は飲み忘れなかったようね」

提督「おはよう、ミカエラ……ええ、ちゃんと水も飲んだし、シャワーも浴びてきたわ」

フェリーチェ「そう、ならいいわ。昨日は事前の予想よりも話が上手くまとまったから今日の会議は午後から……それもあんまり議題がないし、寝ぼけていてもどうにかなるとは思っていたけれど……その調子なら大丈夫そうね」

提督「そこまで考えていたの?」

フェリーチェ「一応はね……はい、コーヒーと新聞」

…イタリアと違ってエスプレッソやカフェ・ラテといった多彩な飲み方はないが、ルームサービスが持ってきたポットのコーヒーはフィンランド人秘伝のレシピでもあるのか不思議とおいしい……砂糖少しとミルクを入れてカップを両手で包み込むようにしながら、ゆっくりすする提督…

提督「グラツィエ」コーヒーで身体が暖まると、今度は新聞に取りかかった…

フェリーチェ「……うーん」

提督「どうかしたの?」

フェリーチェ「ああ、いえ……なんでもないわ」ラップトップコンピュータを開いて難しい顔をしているフェリーチェ……

提督「そう?」

フェリーチェ「ええ。今日の会議でどんな話題が出て、どういう風に返せばいいか……その想定問答を考えているだけよ」

提督「そうね……昨日だけでよーく分かったけれど、スカンジナヴィア三国や東欧諸国とロシアの険悪さはなかなか解消できないものね」

フェリーチェ「たとえ「深海棲艦」なんていう共通の問題があってもね……まあ、そのことで頭を悩ませるのは私の仕事。フランチェスカはうまく双方の間を取り持ってくれればいいわ……貴女の「華麗な女性関係」から考えても修羅場には慣れているでしょうし、ね」

提督「まさか。私はそういうのが苦手だから修羅場は作らないようにしてきたのよ?」

フェリーチェ「そうかしら。確か六年前の七月、日曜日だったわね……貴女がとある測量部の大尉と昼からいちゃついているところに、前夜に忘れ物をした通信隊の少佐が戻ってきたことがあったはずよ? その時は修羅場じゃなかったのかしら?」

提督「……何で知ってるの」

フェリーチェ「海軍情報部大尉ともなると、いろんな噂が耳に入るのよ」

提督「あー……でも結局はそのあと三人で「仲直り」したし、どうにかなったわよ?」

フェリーチェ「……とにかく、貴女は釜が沸き立ちそうになった時の「差し水」になってくれればそれでいいわ」

提督「大変そうだけれど、まぁやってみるわね……数字や資料の援護射撃はお願いするわ、ミカエラ」

フェリーチェ「ええ」

………



…お昼前…

提督「……そうえいば、今日は聖ルチア祭ね。うちの鎮守府で飼っている犬は「ルチア」っていう名前だから、名前の聖人の日でお祝いをしているはずよ」

フェリーチェ「ルチアね、良い名前じゃない」

提督「ええ。真っ白な大型の雑種犬で賢いし可愛いの……せっかくだから鎮守府に電話でもしてみようかしら♪」

フェリーチェ「それがいいわ。それに公務での出張だから、国際電話の通話料は官費よ?」

提督「もう、たかだか電話の一本でそこまで言わないわよ……官費を申請したらしたで、どうせ書類を山ほど書かなきゃいけなくなるでしょうし、その方が面倒だわ」そう言うと手のひらを上に向け、肩をすくめる……

フェリーチェ「よく分かっているじゃない。 それじゃあ邪魔しないよう、私は隣にいるわ」

提督「お気遣いありがと、ミカエラ……でも聞かれても困るような話題はないし、一緒にいてくれてもいいのに?」

フェリーチェ「そういうのは余人を交えず、身内同士で話す方が楽しいものよ……電話が終わったら言ってちょうだい」

提督「そうするわ」


…同じ頃・鎮守府…

ルチア「ワンワンッ!」

リベッチオ「ほーら、追いついてごらん!」

…冬の風にも負けず、鎮守府の庭を駆け回っているルチアと「リベッチオ」を始めとする活発な駆逐艦たち……そこへアッチアイーオがやって来て呼びかけた…

アッチアイーオ「リベッチオ。そろそろ準備に入るから、ルチアとじゃれるのはおしまいにしなさいよ」

リベッチオ「えー? ルチアだってもっと遊びたいよね?」

ルチア「ハッハッハッ……♪」

アッチアイーオ「もう、どっちが犬だか分かりゃしないわね……」

………

…しばらくして・大浴場…

チェザーレ「よーし、それでは諸君にも手伝ってもらわねばな」

ニコ(ニコロソ・ダ・レッコ)「分かってるよ」

チェザーレ「結構……さぁルチア、こちらに来なさい」

ルチア「ワフッ」

…急に飛び出したり危ない物に触れたりしないようにと「待て」や「お座り」程度はきちんとできるようしつけられているルチアではあるが、さっきまで庭を駆け回り、古いロープの切れ端を骨のような形に結んだおもちゃを振り回していた興奮冷めやらない状態ではなかなか落ち着かない……首輪にリードを付けて馬を抑えるように「どうどう」と軽く引くと、ようやく跳ね回るのを止めて「ハッハッハッ……」と舌を出して床に伏せた…

チェザーレ「やれやれ、またずいぶんと泥だらけであるな……ごちそうを食べる前にきっちり綺麗にせねばな」

ルチア「ワンッ……!」

チェザーレ「よーしよし、いい娘だ……お前は風呂が好きなようで助かるぞ」浴用に使っているトーガをまとい、こだわりのある髪もアップにまとめて態勢を整えているチェザーレ……

カヴール「ふふ、そうねぇ♪」

…大浴場の片隅にある流し場の一つを使って、ルチアを洗うチェザーレたち……土ぼこりをかぶって薄い砂色になっているルチアの身体へぬるま湯にしたシャワーをかけ、それから赤ちゃん用の低刺激シャンプーを泡立てて塗りつける…

アッチアイーオ「まるで大きなデコレーションケーキね」

チェザーレ「全くだ……顔は嫌だろうからな、濡れタオルで拭いてやってくれぬか」胴を抱えるようにしながらゴシゴシと洗っていく……

アッチアイーオ「了解」

ルチア「ワフッ、フガ……ッ」すっと伸びたマズル(鼻)にタオルがあてがわれ顔や耳を拭かれている間、くしゃみが出そうになった人のような声を出すルチア……

ニコ「もう少しだからね、そのまま……そのまま……」

アッチアイーオ「……チェザーレ、もういいんじゃない?」

チェザーレ「待て待て、ここの毛がまだ整っておらぬから……」髪の手入れにはうるさいチェザーレだけあって、洗い残しやシャンプーの泡を流しそこねた部分がないか念入りに確かめる……

カヴール「もういいでしょう? ジューリオ?」

チェザーレ「ふむ、まだ少し気になるが……まぁよかろう」

ルチア「ワン、ワンッ!」手を離すと飛び出して行きそうなルチアをしっかりと押さえ、大浴場の入り口に待ち構えていた数人が専用の古タオルで包み込んで拭き始める……

ルチア「ワフ……ッ」

…ドライヤーの音があまり好きではないルチアのために、わしゃわしゃとタオルでよく拭いてやり、ついでにブラッシングもしてあげるチェザーレたち……ルチア自身がバタバタと身体を揺すって残った雫を振り払っている間にも純白の毛が撫でつけられ、次第に乾いてふんわりとした具合になってくる…

………



…しばらくして…

ムツィオ「ずいぶんと綺麗になったわね」

カヴール「そうですね」

チェザーレ「これならば充分であろう……さ、参ろうか」

ルチア「ワフッ♪」

…食堂…

トレント「あ、来た来た」

アッチアイーオ「待ちくたびれたわよ」

チェザーレ「うむ、あい済まぬ。だが毛並みを整えてやる必要があったものでな……」

…シャンプーが終わったのを確認してから食堂へ向かったアッチアイーオだったが、髪にうるさいチェザーレがルチアのブラッシングに時間をかけたので愚痴をこぼした……

デルフィーノ「アッチアイーオ、そう言わないであげよう?」

アッチアイーオ「それもそうね。 じゃあアトロポ、お願い」

アトロポ「ええ……さぁさぁ、主賓にはこれをつけてあげないと♪」

…糸や針の扱いが上手いアトロポ(アトロポス)が端切れで作った赤い前掛けをルチアの首に回し、後ろで軽く結んだ……ルチアも気になる様子で匂いを嗅いだり舌を伸ばしてみたりはするが、嫌がる様子はない…

アッチアイーオ「さてと、それじゃあ聖ルチア祭のお祝いを始めましょう……乾杯!」

一同「「乾杯」」

ディアナ「ルチア。今日はあなたが主賓ですし、ごちそうもうんとありますからね」

ルチア「ワンッ!」

…食堂の長テーブルを囲んだ一同には牛もも肉のロースト、それに保存用しておいた乾燥トマトに残る風味が夏を思い起こさせる「パスタ・アラビアータ」それにクリスマスまでの一ヶ月間、自由に食べられるようにとたくさん焼いてある「パン・ドーロ(黄金のパン)」や果物入りドライケーキの類…飲み物は温めた果汁入りのグリューワインやミルクと砂糖入りのブランデー、サンブーカ(リキュール入りコーヒー)といった、身体の内側から暖まるような飲み物が並ぶ…

ジャンティーナ「美味しいですね……ぇ♪」

フルット「同感です」

ディアナ「はい、あなたの分ですよ。召し上がれ♪」

…主賓のルチアには味付けなしの牛すじ肉と、小腸のようなもつの部分をニンジンやジャガイモと一緒に煮込んだものや、肉の切れ端の部分を焼いたステーキ、また同じように切れ端の部分や古くなってしまったモッツァレラやカチョ・カバッロ、あるいはゴルゴンゾーラ・チーズを載せて焼いた小ぶりなピッツァをえさ皿に載せて仰々しく出した……ディアナが皿を置くまでの間、ルチアはよだれを垂らして尻尾を振っていたが「よし」の声を聞くやいなや勢いよくがっつき始めた…

ドリア「まぁまぁ、そんなに勢いよく食べて……」上品に料理を味わいながら「まるで普段は食べさせていないみたいですね」と、思わず苦笑するアンドレア・ドリア……

レモ「これ……美味しい……っ」

ロモロ「はぐっ、むしゃ……ね、とっても美味しい……ごくんっ」

アッチアイーオ「相変わらず食べ方が汚いんだから……ほら、ソースが付いてる」

レモ「ん、ありがと」

アッチアイーオ「当然でしょ? 提督が留守の間は私がしっかりしていなきゃいけないんだから」

チェザーレ「はは、アッチアイーオも貫禄が付いてきたようであるな」

アッチアイーオ「そりゃあ、提督がいないんだもの……///」

エウジェニオ「まあ、いつもはあんなにつっけんどんなのに照れちゃって……可愛い♪」

アッチアイーオ「う……うるさいわねっ、黙って食べてなさいよ///」

エウジェニオ「ふふふっ、そうさせてもらうわ♪ ジュゼッペ、もう一杯注いでくれる?」

ガリバルディ「ああ。しかし色白なところに赤みが差して、とても魅力的だ……食後に頂きたくなるね♪」

エウジェニオ「まぁ、ふふ……っ♪」

バリラ「さぁさぁ、食べたいものがあったらよそってあげますからね?」

フィザレア「ありがとう、マンマ(お母さん)」

バリラ「もう、私はお母さんじゃあありませんよ」旧式の大型潜「バリラ」級はほとんどが戦時中に解役されて燃料タンクとなっていたためか、潜水艦隊のいいお母さん役を担っている……

アルキメーデ「マンマ、こっちにもお代わりをもらえる?」

バリラ「もう……はいはい♪」

…食後…

ポーラ「ザラ姉様ぁ、もう一杯注いで下さい♪」

ザラ「はい……それじゃあポーラ、私にも何かカクテルを作ってくれる?」

ポーラ「はぁ~い♪」

…親しげに暖炉の火が燃える食堂で聖ルチアのお祝いを済ませると「主賓」のルチアは満足して暖炉の前に敷かれた絨毯の上に寝そべり、当直のない艦娘たちは食後のドルチェやコーヒー、あるいは軽いカクテルをお供に楽しいおしゃべりを始めた…

カヴール「ポーラ、私にも何か作ってくださいな。さっぱりしたのが飲みたいですね」

ポーラ「いいですよぉ~」

…ザラに代わってバーカウンターの内側に入るとリキュールの棚を眺め、それからグラスとシェーカーを取ったポーラ……それから規則正しい音を響かせるとグラスに綺麗な紅色をしたカクテルを注いだ…

ポーラ「どうぞ「シー・ブリーズ(海の微風)」のシェイクです♪」

カヴール「まぁ、ルビー色の綺麗なカクテルですね」

ポーラ「召し上がれ~♪」

カヴール「あら、爽やかで美味しい……暖炉の火で火照っていたところですから、ちょうどいいですね♪」ウォッカとクランベリージュース、グレープフルーツジュースのさっぱりしたカクテルを味わいながら、片手で小さく扇ぐ真似をしてみせた……

ザラ「こっちのも美味しいわよ、ポーラ」

…乾杯の時に開けたスプマンテのお余りと、イチゴのピューレを合わせてフルートグラス(丈の長いシャンパングラス)にそっと注ぎ込む「ロッシーニ」を味わっている……と、食堂の壁掛け電話が「ジリリリン……ッ!」と鳴り始めた…

ザラ「こういう満ち足りて動きたくない時に限って電話って鳴るのよね……もしもし?」

提督の声「プロント(もしもし)、ザラ? 私だけれど聞こえるかしら?」

ザラ「あぁ、提督……どうかしたの?」

提督「いえ、ちょっと時間があるから皆はどうしているかしらと思って……それに今日は聖ルチア祭の日でしょう? ルチアは元気?」

ザラ「ええ。ディアナの作ったごちそうを食べて、今はご機嫌で暖炉の前に寝そべっているわ……提督は?」

提督「おかげさまで会議はどうにかなりそうよ。てっきり白髪のお婆さんになるまで帰れないと思っていたのだけれど……」

ザラ「そうならなくて良かったわね」

提督「ええ。ところで、良かったら皆の様子を動画にでも撮って送ってもらえないかしら? ミカエラに言わせると、鎮守府のビデオカメラで撮影して、コンピュータにデータを送ればメールに添付できるそうだから」

ザラ「いいけど、私はあんまりそういうのは得意じゃないから……天才のレオナルドにでもやらせてみましょうか」

提督「そうね」

ザラ「分かったわ、それじゃあ電話は他の皆に代わってもらって……レオナルドは?」

ガリレオ・ガリレイ「ダ・ヴィンチなら自室に戻っているはずよ」

ザラ「分かったわ、それじゃあ呼んでくるわ……ライモンド、愛しの提督から電話よ。 良かったら代わってちょうだい?」

ライモン「……そういうのはやめてください///」

ザラ「悪かったわ、とにかく代わってちょうだいよ……他にも話したい娘はいるんだから、独り占めしないようにね♪」グラスの残りをぐっと空けると、ラッパ型の受話器を押しつけた……

ライモン「も、もう……代わりました、わたしです///」

提督「あら、ライモン♪ ご機嫌いかが?」

ライモン「はい、わたしは元気ですよ。 提督はいかがですか?」

提督「そうねぇ……礼装は堅苦しくて居心地が悪いし、会議の後の立食パーティでは乾杯続きで飲み過ぎるし、空気が乾いているから喉はひりひりするし、隣にライモンもいないし……ヘルシンキは素敵な街だけれど、今は早く帰りたいわ」

ライモン「ふふっ、もう……♪」

提督「ふふふっ……まぁ、あと数日もしないうちに帰国できるし、そのあとはクリスマス休暇が待っていると思えば何てこともないわね♪」

ライモン「その意気ですよ、提督♪」

提督「ええ。お土産もたっぷり買って帰るつもりだから、それだけは期待しておいてくれていいわ」

ライモン「はい。 でも、一番のお土産は提督が元気に帰ってきてくれることです///」

提督「まぁ、ふふ……ライモンも最近は上手になったわね♪」

ライモン「……独り占めは良くないですし、他の人に代わりますね///」

提督「ええ、それじゃあね……♪」

…しばらくして…

提督「……ええ、帰ったらうんと甘やかしてあげるわね♪」

提督「もう、そんなにつれないことを言わないの……それじゃあね、アッチアイーオ……チャオ♪」

フェリーチェ「……そろそろいいかしら?」

提督「ええ。声も聞けたし、鎮守府のコンピュータを使って映像も送ってもらったわ……みんな楽しそうで良かったわ」

フェリーチェ「良かったわね……さ、そろそろ支度をしないと」

提督「ええ、あとは上着を着れば準備完了よ♪」

フェリーチェ「結構」

………



…会議場…

ニッカネン「あ、カンピオーニ少将、フェリーチェ大尉……どうぞこちらへ」

提督「ええ♪」

フェリーチェ「グラツィエ……それと私からもお礼を。少佐の提供してくれた資料のおかげで作業がはかどりました」

ニッカネン「こちらこそ……こちらも懸案の課題が片付きそうですし、ほっとしています」

…会議の場に集まっている各国士官たちも、議題がある程度片付いたことから「雪解け」とまでは行かないがいくらか和やかな様子で、初日ほどのピリピリした雰囲気はなくなっている……もっとも、何人かはフィンランドの強いお酒が効いてしまったのか、げんなりした様子で椅子に座り込んでいる……その点、提督とフェリーチェは「オブザーバー」ということで、0940時から始まった会議は昼休憩の後まで出なくてもいいよう取り計らってもらっていた…

ニッカネン「では、どうぞお席へ」

提督「ええ……っと、失礼しました」

…提督が席に着こうと会議場を歩いていると、横合いから出てきたロシア海軍の女性将官とぶつかりそうになった……長身の提督とも遜色がないロシアの少将だが、提督のきらきらした金色の瞳とは対照的にその瞳は冷え切った薄いブルーグレイで、寒々しい極北の冬を思わせる…

ロシア女性将官「いや、大丈夫だ」

提督「それなら良かったです、あー……」

ニッカネン「……アドミラル・カンピオーニ、こちらはロシア連邦海軍のクズネツォワ少将。クズネツォワ少将、こちらはイタリア共和国海軍のカンピオーニ少将」

ロシア女性将官「初めまして、アドミラル・カンピオーニ」

提督「こちらこそ。アドミラル・クズネツォワ」儀礼的な握手を交わしたが、クズネツォワの考えが読めない瞳に困惑気味な提督……

クズネツォワ「ああ……では失礼」

提督「……」

…提督はクズネツォワが立ち去ると、握手を交わした手をしげしげと眺めた……まるで何かを隠すように軽く触れあわせるだけの握手だったが、その手は骨ばっていて力強く、何か冷たい気迫のようなものが伝わってきた気がした…

ニッカネン「……どうかしましたか?」

提督「ああ、いえ……なんでもありません」

ニッカネン「そうですか?」

提督「ええ」

ニッカネン「フランチェスカ……彼女のことを考えているのなら、気を付けた方が良いですよ? あまり詳しいことは言えませんが、色々と暗い噂も多いですから……」誰にも聞こえないよう、提督の耳元に唇を寄せてささやいた……

提督「あら、私だってそう誰でも見境なしに抱くわけじゃないわ……クリスティーナ」ニッカネンがしたように耳元へ顔を寄せ、いたずらっぽくささやいた……

ニッカネン「///」

提督「……でも、ご忠告ありがとう」

ニッカネン「いえ……///」

提督「うふふっ、それじゃあ本日もよろしくお願いします♪」

ニッカネン「え、ええ……」

フェリーチェ「……」数歩離れた場所に立って、我関せずと言った表情をしている……

司会「では、皆様も席に着かれたようですので会議を再開いたしたいと思います」

提督「……昨日よりは人が増えたわね」

フェリーチェ「今日の会議は昨日まとまった内容の説明も兼ねているから、地元のフィンランド国防省を始め各国の大使館からもお役人が来ているわ……ニッカネン少佐の隣に座っているのがフィンランド国防省で外務の調整を行う担当課長、その隣がフィンランド外務省のお役人。それからロシアも大使館から何人か来ているわね……」


…提督もこれまでに何回か舌を巻いた経験があるが、フェリーチェはその任務上から何人もの顔と特徴を覚えていて、その情報を小声で教えてくれる…


フェリーチェ「あの恰幅の良い丸顔はロシア大使館付きの海軍武官をやっているニコノフ大佐だけれど、あれはウォッカ浸りでただのお飾りだから気にしないで良いわ……それよりも後ろの席に腰かけている眼鏡、あれがくせ者のヴァシリーエフ少佐だから注意するようにね。聞いていないふりをして耳をそばだてているから、彼の近くではうっかりしたことをいわないように」

提督「ええ」

フェリーチェ「フランチェスカは聞き分けが良いから助かるわ」

提督「ふふっ、ありがとう♪」口元を手で隠し、耳元でささやいた……

司会「それでは、ニッカネン少佐から説明を……」

…休憩時間…

提督「ふぅ、これでだいたいの説明は終わったわね」

フェリーチェ「そうね……フランチェスカ、貴女にお客様よ」

提督「え?」

ニッカネン「カンピオーニ少将、フェリーチェ大尉……お二人ともお疲れさまでした」

提督「いえ、とんでもない。ニッカネン少佐こそあれこれ質問されて大変でしたね」

ニッカネン「まあ、いつものことですから……少将も経験があるのでは?」

提督「ええ、ローマのスーペルマリーナ(海軍最高司令部)にいた頃はしばしばでした♪」

ニッカネン「そうでしょうね……♪」

…どの国でもあまり変わらない、役人や「エライ人」へ説明する時に経験する苦労のあれこれに共感して、思わず苦笑いを浮かべる提督とニッカネン……と、そこへロシア海軍のクズネツォワ少将が副官の女性士官を連れて近寄ってきた…

クズネツォワ「……役人への説明は疲れるものだな」

提督「そうですね」

ニッカネン「……失礼、私は国防省の役人に渡さなければならない書類があるので……それではまた明日。カンピオーニ少将、クズネツォワ少将」

提督「はい、また明日」

クズネツォワ「ダスヴィダーニャ(さようなら)」

…ニッカネンが立ち去るのを見送ると、クズネツォワが提督の方を向いて視線を合わせてきた…

提督「……どうかされましたか?」

クズネツォワ「いや。単にコーヒーを取りに来ただけだ……」

提督「ああ……はい、どうぞ♪」コーヒーのポットやちょっとした菓子が置いてあるテーブルのすぐ脇に立っていたので、コーヒーカップを渡した……

クズネツォワ「スパシーバ(ありがとう)」

提督「どういたしまして……クズネツォワ少将、そちらの方は?」

クズネツォワ「ああ、彼女か……私の副官をしている、マリア・エカテリーナ・カサトノヴァ少佐だ」

カサトノヴァ「……どうぞお見知りおきを、カンピオーニ少将」

提督「こちらこそ♪」

…端正な顔立ちに淡いブルーの瞳、冬の陽光のような淡い金髪が合わさって、目立たずきっちりと職務をこなす、いかにも副官らしい副官といった雰囲気のカサトノヴァ……その綺麗な顔立ちもぱっと見ただけではそこまでの印象を残さないが、どうやらあえてそうなるようにメイクや物腰に注意しているらしい……ロシア海軍の黒い制服に身を包み、今日は三つ編みを後頭部に流したハーフアップにしている…

クズネツォワ「ところでカンピオーニ少将、さっきの会議で貴官が言っていた……」

提督「ああ、そのことですか。それなら……」

…コーヒーカップを手にクズネツォワの投げかける質問へ応じる提督と、お互い一歩下がった位置からその様子を黙って見ているフェリーチェとカサトノヴァ…

提督「……ということだと思います」相手が相手だけにしゃべっても大丈夫な情報だけを口にするよう、言葉や内容に注意しながら話す提督……

クズネツォワ「ふむ、なるほど……よく分かった。 では、また後で」

提督「ふぅぅ……」

フェリーチェ「まさか向こうから近づいて来るとはね……それにしてもフランチェスカ、さっきの受け答えは上出来だったわ」

提督「グラツィエ♪」少しおどけた態度で一礼した……

…夕食会…

ニッカネン「……カンピオーニ少将。会議も無事にまとまったことですし、もう一杯いかがですか?」

提督「ええ。これで明日と明後日の予備日がお休みになるわけですし、それなら多少は過ごしても大丈夫でしょうね……いただきます♪」

ニッカネン「良かった……では、キピス♪」

提督「キピス♪」

…先日の立食パーティはお互いに海軍の「同業者」ということで開かれた内輪のものだったが、この日の夕食会はフィンランドの関連省庁や関係国の大使館員などもいることから一回りぜいたくなものになっていて、美味しいものに目がない提督は太ももが圧迫している礼装のことを気にしながらも、シェフが取り分けてくれる料理のコーナーを前にしてどれを味わうか目移りしていた……幸いにしてニッカネンがあれこれとお勧めのフィンランド料理を教えてくれ、同時にシャンパンやよく冷えたウォッカのグラスも取ってくれる…

ニッカネン「……んくっ」

提督「んっ……」

クズネツォワ「失礼する……おや、アドミラル・カンピオーニ」

提督「ああ、クズネツォワ少将……もしよろしければ、私たちと乾杯しませんか?」ウォッカのグラスを取りに来たクズネツォワに対して何も言わないのも失礼にあたるかと、形ばかり申し出てみる……

クズネツォワ「君たちと? ……そうだな、いいだろう」

提督「……えっ?」

クズネツォワ「何かおかしいか? そちらが誘ったのだと思ったが」

…そもそも長身の提督と並んでも遜色がないほどの身長があるクズネツォワだが、優しげな提督と違って冷厳とした雰囲気をまとっていることもあって、隠しきれない威圧感のようなものがにじみ出ている…

提督「ああ、いえ……では、私が音頭を取りましょうか」

クズネツォワ「そうだな、お願いしよう」

提督「分かりました、それでは……ザ・ズダローヴィエ(健康を祝して)」事前に詰め込んできたロシア語の引き出しから、慌てて乾杯の言葉を引っ張り出した……

クズネツォワ「ザ・ズダローヴィエ!」

ニッカネン「……キピス」

提督「ごくん……っ」思っていたよりも素直に乾杯に応じてきたクズネツォワの意図を考えるあまり、ウォッカの味も分からないままにグラスを干した提督……

クズネツォワ「スパシーバ。ありがとう……アドミラル・カンピオーニはロシア語もできるのか」

提督「いえ、一夜漬けですからほとんど出来ませんよ」思わず苦笑いをしてしまう提督……

クズネツォワ「いや、私はイタリア語などまるで出来ないからな……大したものだ」

提督「恐縮です」

クズネツォワ「なに……ところで向こうにあるピローグ(東欧風パイ)はもう食べたか?」

提督「いえ、まだです」

クズネツォワ「それは良くないな……では一緒に来るといい」ニッカネンから横取りする形で提督の手を取り、別のテーブルへと引っ張っていくクズネツォワ……

提督「あの、クズネツォワ少将……」

クズネツォワ「なにか?」

提督「いえ、私は手を引いていただかなくても大丈夫ですから……」

クズネツォワ「これは失礼した」硬く力強い手を離すとピローグの皿を取って提督に渡した……

提督「では、いただきます……あむっ」

…ずっしりと盛り上がった円盤をケーキのようにカットしてあるピローグはさっくりとしたパイ生地にキノコやタマネギ、ジャガイモなどを詰めてあって、サワークリームやコンソメといった味で仕上げてある……パーティ向けと言うにはすこしボリュームがあるが、オードブルの盛り合わせのようなメニューが並ぶことが多い会場で、終わってから空腹を抱えたままでいることが多かった提督からするとこうした料理はありがたい…

クズネツォワ「それからこれも……シャンパンと一緒にやるといいだろう」

提督「スパシーバ」黒キャビアを小さじでつまみつつ、シャンパンを少しずつ口に含む……

クズネツォワ「どうだ?」

提督「ええ、美味しいです」

クズネツォワ「そうか……」

提督「……あの、クズネツォワ少将?」

クズネツォワ「ユーリアと呼んでくれて結構だ、アドミラル・カンピオーニ」

提督「では、私のこともフランチェスカで構いませんよ……ユーリア」

クズネツォワ「ダー、分かった……フランチェスカ」

提督「ええ」

…パーティを終えて・ホテル…

フェリーチェ「……それじゃあクズネツォワ少将からの夕食のお誘いに応じたわけ?」

提督「ええ。明日の夜に夕食でもいかがですか……って言うから」

フェリーチェ「はぁ、目を離すとすぐにこれなんだから……ロシア海軍の将官と二人っきりで夕食だなんて、後で情報部から何を聞かれるか分かったものじゃないわよ?」

提督「だからってむげに断るのも失礼でしょう?」

フェリーチェ「もう、仕方ないわね……もし事情聴取を受けるような事があったら私に言いなさいよ?」

提督「ええ、ミカエラには感謝しているわ♪」鎮守府の豪華な大浴場とは比ぶべくもないが、ともかく堅苦しい礼装を脱いでホコリを落とし、さっぱりした気分で髪をくしけずりながら、フェリーチェに軽くキスをした……

フェリーチェ「本当に貴女と来たら……ん、ちゅ♪」

提督「ふふっ、こうしていると同棲していた時の事を思い出すわね?」

フェリーチェ「まぁね……フランチェスカはたいていエプロン姿で、ワインとパスタを用意して待っていてくれたわね」

提督「ええ。それでミカエラはたいてい難しい顔をして帰ってきて……でも私の料理を美味しいって喜んでくれたわよね♪」

フェリーチェ「事実だもの。まったく、海軍司令部に入っている食堂もあれくらい美味しい料理を出してくれればいいんだけど」

提督「もう、電子レンジで温めたような出来合いの料理と比較しないで欲しいわ」

フェリーチェ「それもそうね……じゃあ、明日は気を付けて行ってくる事ね」

提督「ええ、迂闊な事を言わないよう気を付けます♪」

…翌日・夕刻…

提督「さてと、髪をとかしたら着替えて……あのクリーム色のセーターで良いわよね」

フェリーチェ「なに、せっかく持ってきたのにカクテルドレスは着ていかないの?」

提督「ええ、クズネツォワ少将いわく「あくまでも会議中のことに関して質問があるだけで、夕食を済ませたらすぐ終わるので普段通りの格好で結構だ」って……」

…提督はフェリーチェに「クズネツォワ少将ったら、まるで絵に描いたように無機質な人みたいね」と肩をすくめ、それでも黒いシルクにレースで薔薇模様をあしらったミラノ製の上等なランジェリーを身に付け、鏡の前でためつすがめつしながらルージュを引き、白粉をはたいてメイクを仕上げている……

フェリーチェ「そう……」

提督「なぁに? 私がマタ=ハリかボンドガールの真似をして情報を引き出せるように、色っぽいカクテルドレスの方がよかった?」冗談めかして、腰に手を当てた色っぽい姿勢を取ってみせる……

フェリーチェ「そうじゃないわ。ただ、私が用意したものを考えるとドレスの方がいいかと思って……」

提督「用意した、って……何を?」

フェリーチェ「これよ……貴女に似合うと思ったから用意したの。良かったら付けてみて?」

…そう言って黒いヴェルヴェットのアクセサリーケースを取り出すと、蓋を開けて提督に差し出した……中には直径十ミリくらいの大きさをした、真珠のイヤリングが対になって収まっている…

提督「あら、素敵なイヤリング……でも残念ね。私、イヤリングの穴を開けたことはないのよ?」

フェリーチェ「もちろんそのくらいは知っているわ。 だからイヤーカフみたいに耳たぶへ挟むタイプにしておいたの……いい?」

提督「ええ」化粧台の前で座りなおすと豊かな髪をかき上げ、フェリーチェがイヤリングを付けやすいようにした……

フェリーチェ「そのままよ、まだ動かないで……どう? 本物じゃなくてイミテーション(模造)の真珠だけど、なかなかいいんじゃないかしら」

提督「そうね、大粒だけれど自己主張し過ぎない程度で……ちょうどいいわ」鏡の前で左右に首を動かし、耳たぶの下で揺れる模造真珠のイヤリングを確かめる……

フェリーチェ「気に入ってもらえたようで良かった。ネックレスは持っているでしょう?」

提督「ええ、銀のネックレスがあるわ」

フェリーチェ「なら首もとは心配ないわね……ふむ、なかなかいいじゃない」

提督「そう?」

フェリーチェ「ええ、決まっているわ」

提督「ミカエラがそう言ってくれるなら成功ね……っと、いけない。もうそろそろ迎えの車が来る時間だわ」身支度を済ませ、ノートや筆記具を入れた小ぶりな黒革のバッグを肩に掛けると、忘れ物がないかさっと見わたした……

フェリーチェ「それじゃあ舞踏会へ行ってらっしゃい、チェネレントラ(シンデレラ)」

提督「ええ、行ってきます♪」

フェリーチェ「気を付けてね」

…ホテル前…

カサトノヴァ「お待ちしておりました、アドミラル・カンピオーニ」

提督「あら、カサトノヴァ少佐……貴女が運転を?」

カサトノヴァ「ダー。どうぞお乗りください」

提督「スパシーバ」

…カサトノヴァがロシア大使館ナンバーのついた黒い「メルセデス・S600」のドアを開け、後部座席に座るよううながした……私服に着替えているカサトノヴァだったが、上着の裾が持ち上がった瞬間、提督の目にちらりとマカロフ・ピストルのホルスターが見えた…

提督「……」

カサトノヴァ「……シートベルトはよろしいですか」

提督「ええ」

カサトノヴァ「結構です。では車を出します」

………



…ヘルシンキ市内・高級ロシア料理店…

クズネツォワ「こんばんは、アドミラル・カンピオーニ」

提督「どうも……」

…レストランは暗めの照明と観葉植物でそれぞれのテーブルが隠されたようになっているが、さらに奥の半個室でクズネツォワが待っていた……カサトノヴァに案内されてやって来たテーブルにはぼんやりと残照のような色の光を投げるランプとヴィンテージワインの瓶が置かれていて、提督が腰かけると、クズネツォワが早速グラスにワインを注いだ……

クズネツォワ「ご苦労だった、下がってよろしい」

カサトノヴァ「ダー」

クズネツォワ「……さてと、まずは良く来てくれた」

提督「ええ、聞きたいことがあるという事でしたから……」

クズネツォワ「そうだな。だがまずは一杯付き合ってくれ……ザ・ズダローヴィエ(健康を祝して)」

提督「ザ・ズダローヴィエ」底が読めない相手だけに、控え目にワインを含む提督……

クズネツォワ「聞きたいこともあるが、まずは食べてからにしよう……夕食はまだだろう?」

提督「はい、まだです」

クズネツォワ「結構。勝手に料理を頼んでおいたが、構わないな?」

提督「え、ええ……」

…黒いタートルネックにチャコールグレイのダブルのブレザーを羽織り、提督が食べている様子をじっと観察しているクズネツォワ……彼女自身はときたま精密な動きでナイフを動かし、視線を提督に向けたまま料理を口に運んでいる…

提督「……それで、クズネツォワ少将」

クズネツォワ「ユーリアで結構だ、アドミラル・カンピオーニ」

提督「そうですか、では……ユーリア」

クズネツォワ「何だ?」

提督「いえ、その……私に聞きたいことがあるということでしたが」

クズネツォワ「ダー、その通りだ。 だがさっきも言ったとおり、まずは食べてからにしよう」

提督「そうですね……」

…普段は縁のないお高いレストランにありがちな、大きくて真っ白な皿にソースで点々と色を垂らして縁取りをした料理を口に運ぶ……サーモンの桃色が上品なムースにサワークリームとビーツのコントラストも鮮やかなボルシチ……スメタナ(クリーム)やキャビアを添えた温かいブリヌイ(そば粉のクレープ)に、器の大きさに対して驚くほどボリュームのある濃厚なクリームシチュー……途中で赤ワインのボトルが空になるとクズネツォワはウォッカを頼み、小さいショットグラスを軽く持ち上げると一気に飲み干した…

提督「乾杯」濃厚な味付けの多い料理と、度数は高くても水のように余計な味のないウォッカはなかなか相性が良い……

クズネツォワ「どうだ?」

提督「ええ、美味しいです」少しだけ緊張をほぐしてゆったりと腰かけた提督……

クズネツォワ「ハラショー(結構だ)」

…食後…

提督「ふー、大変美味しかったです」

クズネツォワ「結構」

…デザートに出されたのは初雪のように粉砂糖がかかったふんわりした揚げパンケーキ「スィールニキ」と、色鮮やかなイチゴの「ヴァレーニエ(シロップ煮)」を添えたもので、サモワール(沸かし器)で淹れた紅茶と一緒に甘い味を楽しみながら、提督は案外くつろいだ気分になっていた…

クズネツォワ「さて……そろそろ食べ終わったかな?」ヴァレーニエを小さじですくって肴にしながら紅茶をすすっていたが、提督がデザートを食べて紅茶を飲み終えたのを見ると、かちゃりとカップを置いて尋ねた……

提督「はい」

クズネツォワ「よろしい……では行こう」

提督「あの、尋ねたいことがあるというお話でしたが……?」

クズネツォワ「アドミラル・カンピオーニ……まさか夕食を済ませたばかりで堅苦しい話もあるまい?」

提督「え、ええ……」

…会計…

クズネツォワ「会計を頼む」

提督「……あ、私の分は払います」さっさと入り口で会計を済ませようとするクズネツォワを引き止めて、あわてて長財布を取り出す提督……

クズネツォワ「待て、私が君を呼んで夕食に付き合わせたのだぞ? 野暮なことを言うな」

提督「いえ……これでも私の立場上、酒食のもてなしを受けてはならないことになっていますから」

クズネツォワ「だが今は軍服を着ていないだろう。任務外で個人と個人が出会って一緒に食事をしただけにすぎない……まとめて頼む」

提督「お気持ちは嬉しいですけれど、そういうわけにはいきません」さすがに「ロシア海軍の将官に夕食をごちそうになって情報部の取り調べ対象になりたくはないので……」とは言えないので、一般論を武器に丁寧な態度で食い下がる提督……

クズネツォワ「もういい、分かったわかった……別会計にしてくれ」

提督「スパシーバ。 あ、領収書をお願いします」

…ローマやパリの偉そうなビストロやリストランテと同じようにゼロが一桁多い金額を見て、美味しい食事とデザートで得たご機嫌な気分も少し色あせてしまったが、領収書をもらって少し安心した提督……コートや革手袋、毛皮帽を受け取るときっちり身に付けて、クズネツォワと一緒に店を出た……店の入り口ではカサトノヴァ少佐がメルセデスで待っていて、さっとドアを開けた…

クズネツォワ「……ご苦労、マリア・エカテリーナ」

カサトノヴァ「はっ……どうぞお乗りください、アドミラル・カンピオーニ」

提督「ええ、ありがとう」

…ヘルシンキ中心街・高級ホテル…

カサトノヴァ「……着きました、少将」

クズネツォワ「ああ、ご苦労だった。大使館に車を戻したら帰ってよろしい」

カサトノヴァ「はい」

提督「えっ……?」

クズネツォワ「何かおかしいか、アドミラル・カンピオーニ? これから部屋で話をするというのに、少佐をいつまでも待たせたままにしておくわけにもいかないだろう」

提督「いえ、それはそうですが……」

クズネツォワ「ならどうしてそんなに驚いたような声を出したのだ? 別に人跡未踏の地ではないのだ、帰る時になったらタクシーでも呼べばいい」

提督「ええ、そうします」

クズネツォワ「さ、いつまでも外にいては冷えてしまう……中に入ろう」

…スイートルーム…

クズネツォワ「さて、では話をする前に……何か飲み物がなくてはな」ルームサービスで氷の詰まったアイスペールを持ってこさせると、ロングコートのどこかからとり出した「ストリーチナヤ」ウォッカの瓶を突っ込み、グラスを二つ置いた……

クズネツォワ「これでよし。さて、それでだが……」

提督「ええ……」

…飲み過ぎないよう注意はしていたものの、すでにいくらか酔いが回ってふわふわした気分になり始めている提督……それとは対照的にクズネツォワは顔色一つ変わっておらず、テーブルに会議の資料や地図を広げると、単刀直入な言葉遣いで疑問点やあいまいな部分を問い詰める……提督も余計な事は言わないようにと気を付けながら説明するが、士官学校で口頭試問を行う教官のような勢いで矢継ぎ早に質問を浴びせられると、ついぽろりと本音がこぼれたり、うっかり感想を述べてしまったりする…

クズネツォワ「……ふむ、なるほど」

提督「もう大丈夫ですか?」尋問のようなやり取りが済んで、思わず肩の力を抜いた提督……

クズネツォワ「ダー、納得がいった……感謝する」そう言って二つのグラスにウォッカを満たすと、片方を提督に握らせた……

提督「お役に立てて良かったです……」

…しばらくして…

提督「それでは、私はこの辺で……」

…まるで流氷のように冷たい「ストリーチナヤ」をグラスに注がれ、クズネツォワの冷たい瞳に見据えられていることもあって、二杯ほどウォッカを喉に流し込んだ提督……ちらりとクロノグラフ(腕時計)を見ると、立ち上がって辞去しようとした…

クズネツォワ「おや、もうそんな時間か……とはいえ帰るには少々遅い時刻だ。 幸い、寝室にはベッドが二つあるし、今夜はここに泊まっていったらどうだ?」

提督「ご厚意はありがたいですが……明日もあることですし、タクシーでも呼んで帰ることにします」

クズネツォワ「そうか。 だがここはモスクワやニューヨークのような大都会ではないのだ。当たり前のフィンランド人ならきっとベッドに潜り込んでいるか、さもなければコスケンコルヴァでもがぶ飲みしている時間だろう。タクシーなどいるはずもない」

提督「それは……」

クズネツォワ「どのみちストリーチナヤがまだ残っている……せっかくだ、もう少し付き合ってくれ」

提督「……分かりました」そういうと、また腰を下ろした提督……

…またしばらくして…

提督「……しかし、先ほどからうかがっていると、お国の「艦娘」の扱いはずいぶんと……その……冷たいように感じます」

クズネツォワ「ふむ。ならば、アドミラル・カンピオーニはいわゆる「艦娘」をどうすればいいと思っているのだ?」

提督「私ですか……私は、もしできることなら艦娘たちを戦わせたくはありません」

クズネツォワ「……申し訳ないが、そこが西側諸君の甘いところだ」表情の読めない冷たい瞳が提督を真っ直ぐ見つめ、冷淡な口調で言い放った……

提督「と、いいますと?」

クズネツォワ「深海側と対話ができるというのならさておき、あの連中には話など通じない……それに部下である艦娘たちを愛玩動物か何かのように可愛がっていては、かえって判断を曇らせ、戦闘の帰趨に影響を与えかねない」

クズネツォワ「ましてや軍隊は戦うための組織であって、不合理な命令であっても従わなければならない理不尽なところだ。 私とて戦うために必要な資材や戦意を高めるための休養といったものを惜しむものではないが、貴女方のいう「鎮守府」とやらは、まるで特権階級(ノメンクラツーラ)の別荘(ダーチャ)だ」

提督「……私たちの鎮守府が特権階級のダーチャなら、お国の鎮守府はシベリアのラーゲリ(強制収容所)ですね」酷薄なまでに冷淡なクズネツォワへの反発と酔った勢いもあって、つい言い返してしまう提督……

クズネツォワ「ふ……ははははっ! やはり君は面白いな、タヴァリーシチ(同志)カンピオーニ、そうやって面と向かって口答えをされたのは久しぶりだ」

提督「恐縮です」

クズネツォワ「ああ……だがな、少将。 君の豊かな人間性を否定するわけではないが、戦闘時に余計な感傷は不要だ」

提督「ええ、それは私も分かっているつもりです。ですが、艦娘の娘たちとは日頃から生活を共にしている仲です。そう簡単に割り切れるものでもありません」

クズネツォワ「君のような女性からすればそうだろうな」

提督「ええ、そもそも私は軍人向きではありませんし……よくいう「祖国のために殉ずるは甘美にして名誉なこと」という言葉は嫌いです」

クズネツォワ「ホラティウスか……まぁそうだろうな」

(※ホラティウス……クィントゥス・ホラティウス・フラックス。古代ローマの詩人「dulce et decorum est pro patria mori」はホラティウスの格言の一つ)

提督「ええ。 貴女からすれば甘いとは思いますけれど」

クズネツォワ「ダー、その通りだ。艦隊を率いる将官としては甘いし、考え方も青い……だが、たまには違う考え方の人間がいてもいい」提督の目には、冷たく刻み込まれたクズネツォワの額の縦じわが少しだけほぐれたように見えた……

提督「ありがとうございます……それで、クズネツォワ少将は?」

クズネツォワ「私が何か?」

提督「少将の行動原理です」

クズネツォワ「ああ、そういうことか……簡単だよ。「撃たれる前に撃て」これだけだ」

提督「ふふっ、なるほど。それなら私も同じです」

クズネツォワ「そうは思えないがな」

提督「いいえ……確かに私は深海側と交渉で解決できるならそうしたいと思っています。 しかしその機会がないのなら、私としては鎮守府の可愛い娘たちのために「やられないためにやっつけろ」と言うでしょう」

クズネツォワ「……なるほど、どうやら同じ結論にたどり着いたようだな?」

提督「ええ、意外ですが」

クズネツォワ「私も意外だよ……もっとも、君の考えを理解できないこともない。なにしろ私は平和主義者だからな」

提督「あー……聞き違いでしょうか?」

クズネツォワ「いや、私が「平和主義者」といったのは聞き違いではないよ……考えてもみるがいい」

提督「何をです?」

クズネツォワ「冷戦時代のことだ。もっとも、君の世代ではもう知らないか?」

提督「そうですね、私が生まれたか生まれないかのころにソ連は無くなっていましたから」

クズネツォワ「そういうことを言われると自分が年寄りになった気がするな……それはそうと、強力で圧倒的なソ連軍があったとき人はソ連を恐れ、また憎みこそすれ、刃向かおうという者はそういなかった。例えそれが誰かの犠牲によって立っているとしても、少なくとも多数の人間にとって平和な時代であったこともまた事実ではないか?」

提督「……つまり「ゆえにカルタゴは残さねばならない」ということですか」


(※ゆえにカルタゴは……古代ローマの政治家「大カトー」が北アフリカ沿岸にありローマにとって身近な脅威であったカルタゴに対し「……ゆえにカルタゴは滅ぼさねばならない」と演説をしめくくるのに対して、政敵であったスキピオ・ナシカは仮想敵がなくなると軍備がおろそかになったり緊張感がなくなることでローマが衰退するとして「……ゆえにカルタゴは残さねばならない」と演説したという)


クズネツォワ「いかにも……米ソ冷戦が終わって「悪の帝国」がなくなったとき、世界は指針を失って混迷の時代を迎えた。 一つくらい持病を持っていた方が健康に気を使うようになるのと同じで、世界には強大な敵役が必要なのだ」

提督「それがロシアだと……?」

クズネツォワ「いかにも。望むかどうかは関わりなく、ロシアというのはそういう役割を担っているのだ」ウォッカのグラスを一息に干すと、かすかに皮肉っぽい表情を浮かべた……

提督「そうですか?」

クズネツォワ「ああ。それに我が国がソ連時代から軍拡に努めてきたのは、全てアメリカからソ連を防衛するためにすぎない……実際問題として、アメリカが我が国の裏庭である東欧諸国に優れたミサイルを配備しておきながら、我が国がアメリカの裏庭であるキューバや中南米にミサイルを配備してはいけないというのは不公平というものではないか?」

提督「……納得は出来ませんが、そういう意見もあるでしょうね」

クズネツォワ「そうとも。それに当時のソ連海軍が保有していた艦艇も航空機も、全てアメリカの原潜や空母打撃群、爆撃機に対抗するためのものでしかない……」

提督「なるほど」

クズネツォワ「それにだ、たいていの軍人は戦争など欲しない。それがいかに悲惨なものかよく知っているからだ……クレムリンの政治屋どもがどう思っているかは知らないが、少なくとも私は平和であって悪いことはないと思っているよ」

提督「そうですね。私が言うのもおかしな話ですが、軍人が「本業」に精を出すようになったらおしまいですから」

クズネツォワ「そういうことだ……さ、もう一杯飲もう」表情はまるで変わらないが、どうやらご機嫌な様子のクズネツォワ……提督のと自分の、二つのグラスのギリギリまでウォッカを注いだ……

提督「……いただきます」

…どの世界でも「部外者」の同国人よりも「同業者」の外国人の方が考えを理解しやすいし付き合いやすいというのはありがちな話で、提督とクズネツォワも何だかんだとウォッカのグラスをやりとりする程度には打ち解け始めていた……

クズネツォワ「……」

提督「……どうかしましたか?」

クズネツォワ「ニェット(いいや)……だが……ふむ、なるほどな」もう一杯ウォッカを飲み干すと、なにやら納得した様子のクズネツォワ……

提督「?」

クズネツォワ「なに、こっちの話だ……いいか?」上着の内ポケットから煙草の箱を取り出すと、提督に尋ねた……

提督「ええ、どうぞ……ずいぶん気になる言い方ですね」提督は煙草が好きではないので、失礼にならない程度で少し椅子を下げた……

クズネツォワ「そうか?」

提督「ええ。特にそんな風に気を持たされたらなおのこと♪」

クズネツォワ「かもな……」

提督「はぐらかすのがお上手ですね、ユーリア♪」

…机の上の灰皿を引き寄せて煙草に火をつけ「ふーっ……」と紫煙をくゆらせるクズネツォワに対して、ちょっと小首をかしげて頬杖をつき、ウォッカでぽーっと火照った顔にいたずらっぽい微笑をうかべる提督…

クズネツォワ「……まあ、せっかくの機会だ」

提督「と、いいますと?」

クズネツォワ「なに、すぐに分かる……」そういうと吸いさしの煙草を灰皿に押しつけて消した……

提督「……ユーリア?」

クズネツォワ「何を戸惑っているのだ? 君だって子供ではないのだから、ここまで来たらどういう意味かくらいは分かるだろう?」

…立ち上がると提督の手に自分の手を重ね、ぐっと上半身を屈めるようにして提督の瞳をのぞき込んだ……冷たく骨っぽい、逆らいがたい力を秘めた手が提督の手首をつかみ、椅子から立ち上がらせる……反対の腕を提督の腰に回すと、そのままベッドルームとおぼしきドアへと提督を連れて行くクズネツォワ…

提督「ユーリア……///」ふんわりしたセーターの生地越しにクズネツォワの固く引き締まった身体が感じられ、煙草の香りが混じったビターな吐息がふっと耳元に吹きつけられる……

クズネツォワ「ああ」

提督「……いいのですか?」

クズネツォワ「駄目だったらこんな真似はしない」

…ベッドルーム…

クズネツォワ「……さて、それではもっと個人的な話をする前に……カンピオーニ提督、少しよろしいか?」

提督「ええ、何でしょう?」

クズネツォワ「失礼」提督が付けているイヤリングを外すと、ナイトテーブルにあった水差しの中に放り込もうとする……

提督「あっ、何を……」

クズネツォワ「申し訳ないな。 だが、盗聴されるのは趣味ではない」

提督「えっ?」

クズネツォワ「おや、気が付かなかったか? では後でご友人に聞いてみるといい……悪いがこんな小細工に気付かない私ではない」

…イヤリングの人工真珠に爪をかけると、パカッと真珠が二つに割れ、中にボタン電池程度の小さな機械が収まっている……クズネツォワは機械に唇を近づけてそう言うと、改めてぽちゃんとイヤリングを放り込んだ…

クズネツォワ「さて……一つ始末したとはいえ、おおかたこの部屋そのものにもフィンランド側が仕掛けた盗聴器が山とあるはずだ」

提督「そうでしょうか?」

クズネツォワ「ダー(ああ)。 もっとも、探して見つかるような幼稚な場所にありはしないだろう……驚きはしないがね。 公的なレセプションに出席したロシア海軍の将官が宿泊する部屋に盗聴器の一つもないとしたら、その方が驚きだ」

提督「そういうものですか……私には縁のない世界です」

クズネツォワ「そうだろう、だから君のご友人も盗聴器を仕込む気になったのだ……自分の持ち物に盗聴器を仕掛けられていることを知らない人間なら、不自然な挙動をすることもないからな。とはいえフィンランド人にただ盗み聞きされるのも芸がない……」

…そう言うとどこからか文庫本くらいの大きさをした、テルミンと音叉のあいのこのような器具を取りだしてナイトテーブルに置き、側面のスイッチを入れた……途端に「ぶぅん……」と、遠くでクマンバチが飛んでいるような振動音が低く鳴り始める…

提督「それは?」

クズネツォワ「ノイズメーカーだよ……低周波を始めとした音波を発してガラス窓や壁に反響させ、室内の声が捉えにくくなる。これで多少は私的なおしゃべりもできるわけだ」

提督「……」

クズネツォワ「どうした? 遠慮せずに座るといい」

…重そうなコートと地味なチャコールグレイのブレザーを脱いでベッド脇の椅子にかけると、化粧っ気のない地味な黒いタートルネック姿になったクズネツォワ……将官というよりは競泳選手のような引き締まった身体と冷徹な表情を浮かべた苦みばしった顔に、可愛らしさのかけらもないモノトーンの服が良く似合う……そのままベッドに腰かけると掛け布団を軽く叩き、隣に腰かけるよううながした…

提督「ユーリア、もしかして私がどういう人間かご存じの上でやっているでしょう?」

クズネツォワ「だとしたらどうなのだ?」

提督「……こうします」

…そういうとかたわらに腰かけ、顔を向けさせてキスをした……冷たく煙ったい煙草の香りとウォッカの味が少し残っている薄い唇に提督の柔らかなみずみずしい唇が触れる…

提督「ん、ちゅ……っ♪」

クズネツォワ「……んっ」

提督「ぷは……///」

クズネツォワ「ふ、なるほどな……くくくっ♪」

提督「何がおかしいのです?」

クズネツォワ「いや。まったく面白い女性だよ、君は……」

…そういうなり提督をベッドに押し倒し、あご先に指をあてがうと上向かせると唇を押しつけた……片腕で提督の手をつかみ、上から覆い被さって身体を押さえ込むようにして長々と口づけをする…

提督「ん、んんっ……んぅ///」

クズネツォワ「ん……ふっ……んむっ……」

提督「ぷはっ……はぁ、はぁ……っ///」息切れを起こすかと思うくらい長々と続けられた口づけに、呼吸を荒くする提督……

クズネツォワ「……それで、もうおしまいか?」

提督「いいえ……これからです♪」ちゅ……っ♪

クズネツォワ「んん……ちゅ…る……」

提督「ん…ふ……ちゅぅ……♪」

クズネツォワ「んむ……っ、んぅ……」

提督「はぁ、はぁ……あむっ、ちゅるっ……ん……ぅ♪」


…肺に深く吸い込んだ空気と鼻呼吸で、唇を離すこともなく長々と接吻を交わす提督……最初はクズネツォワの唇を優しくついばみ、次第にじっくりとむさぼるようなキスに変えていく……舌先を唇のすき間に滑り込ませるとクズネツォワの舌に絡みつかせ、かすかに甘いウォッカの後味と煙草の冷たく煙ったい香りが残る口中をねちっこくねぶっていく…


クズネツォワ「ん、んっ……んぅっ……」

提督「ん、はむっ……れろっ、ちゅぅ……っ♪」

クズネツォワ「……っ、はぁ」

提督「ユーリア……貴女が誘ったんですからね?」

クズネツォワ「ダー、分かっている……どうして、なかなか大したものじゃないか」

提督「ふふふっ、まだこれからです……♪」

クズネツォワ「ほう、それはそれは」

提督「むぅ……そうやって涼しい顔でいられるのも今のうちですからね?」


…クズネツォワが着ているセーターの裾から手を入れ、固く引き締まった猟犬のような脇腹をそっと愛撫し、同時に親指をかけてセーターをずりあげていく……次第にあらわになっていく引き締まった腹部にはうっすらとだが腹筋の割れ目が浮かび、それがナイトスタンドの明かりを受けて砂丘のように陰影を強めている…


提督「すごい筋肉ですね……私なんてどう頑張ってもこんな風にはなれそうもありません」

クズネツォワ「いや、簡単なものさ。毎日百回単位で腕立て伏せや腹筋をすればいいだけだ」

提督「それが出来そうにありませんから……」苦笑いをしながら揉みほぐすようにしてお腹を撫で、次第に乳房の方へと指先を進めていく……

クズネツォワ「かもな……」


…提督の手と呼応するようにクズネツォワも提督のセーターを徐々に脱がしていき、その冷たい目が提督の柔らかな曲線を帯びた身体のラインをじっくりと眺め回す…


提督「……ね、ユーリアと比べたら私なんてクジラみたいなものでしょう?」

クズネツォワ「ああ……だが、抱くにはこの方がいいな」ぎゅむっ……♪

提督「きゃあっ♪」

クズネツォワ「ふむ……柔らかいが張りと弾力もあっていい揉み心地だ」

提督「そんな淡々と言われても……あんっ♪」

クズネツォワ「なにしろ誰かとベッドを共にすることはあまりないからな……こういうのはなかなか新鮮だ」淡々と言いながら提督の豊満な胸をこね回す……

提督「もうっ、ユーリアがそうなら私も……っ♪」

クズネツォワ「私の胸では揉むほどもあるまい」

提督「それならそれで他にやりようはありますから……それに、結構ありますよ? ちゅっ♪」

…提督はクズネツォワの硬く引き締まった乳房に唇を這わせ、薄い小豆色をした先端に優しく吸い付き甘噛みした……ぎゅっと抱きしめたクズネツォワの身体は骨ばっているが筋肉質で引き締まった弾力があり、鍛えているためか提督が身動きをしたり舌で舐めあげても小揺るぎすらしない…

クズネツォワ「そうか、なにぶん比較対象が少ないものだからな……しかし君の身体は柔らかいな。肌もきめ細かくて手に吸い付くようだ」

提督「ふふっ、くすぐったいです……♪」

クズネツォワ「ああ、済まないな……ふむ」提督のスカートに手を伸ばすと少々ぎこちない手つきでずりおろし、黒タイツに包まれたヒップを撫でた……

提督「もう、ユーリアったらせっかちですね♪」

クズネツォワ「ウスカレーニエ(加速化)というやつだ」(※ウスカレーニエ…ゴルバチョフ時代の経済発展加速化プラン)

提督「……ウスカレーニエ?」

クズネツォワ「ふ、分からないならそれでいい……♪」

提督「ん……あふっ♪」

クズネツォワ「ん…ちゅる……っ」

提督「ふぁ……あ、あっ……ん、ふっ♪」


…舌を絡めたキスを続けるうちに口中の唾液は水気が減って粘っこくなっていき、もどかしいような息継ぎをするたびに湿っぽい音を立て、朝露に濡れた蜘蛛糸のように銀色の糸を引く……クズネツォワの手がいささか強引に提督の下着を引き下ろし、むっちりした太ももから柔らかそうな下腹部があらわになる…


クズネツォワ「それでは……」ぐり……っ♪

提督「んっ……ユーリア、いきなり指を入れるなんて乱暴ですよ……」


…痛さに飛び上がるほどではなかったが、いずれも絶妙な愛技の持ち主でじっくり丁寧に気持ちを高めるのが上手だったローマやミラノの「恋人」たちや、技巧はそれほどでもないにしろ提督に対する「好き」の気持ちがこもっている愛しい艦娘たちと違って、いささか唐突かつ粗削りな手つきで指をねじ込まれ、少し涙目になる提督…


クズネツォワ「そうか、それは済まなかった……しばらくそのままにしておけばいいのか?」困惑さと意外さがない交ぜになったような表情を浮かべ、提督の花芯に挿し入れた指をどうすればいいか持て余し気味にしている……

提督「ええ、しばらくはそのままで……ところで、もしかしてカサトノヴァ少佐相手にもこんな風に?」

クズネツォワ「ああ。少なくともマリア・エカテリーナとするときはな」

提督「まったく……こんなやり方じゃあカサトノヴァ少佐が可哀想ですよ?」

クズネツォワ「考え方の相違だな。私がマリア・エカテリーナを抱くときは何も考えず思考をまとめたい時だけだ……それ以上でもそれ以下でもない。 彼女は余計な事を言わずに寝ていてくれればそれでいいし、こちらに余計な気づかいや、どうやって彼女を悦ばせるかと言ったことを考えさせるようなら欲しくない」

提督「だからってあんまりですよ、それだったら玩具でも変わりないでしょうに」

クズネツォワ「ニェット(いいや)。マリア・エカテリーナはそのへんをよくわきまえてくれているからな」

提督「もう、ユーリアったら勝手なんですから」

クズネツォワ「これでも何かと考えることが多いのでな……いいか?」

提督「ええ、少しは落ち着いてきましたから……///」

クズネツォワ「そうか、だが少し控え目にしなければいけないようだな……」ぐちゅ、にちゅ……っ♪

提督「ん、んっ……」

クズネツォワ「大丈夫か?」

提督「ええ、さっきよりは……あ、もっとゆっくり……」

クズネツォワ「なるほど……こうか?」ちゅくっ、くちゅり……♪

提督「はい、ですがまだ強すぎます……あ、あっ///」

クズネツォワ「ふむ、目の前にいる女性の事だけを考えてするのもそれはそれで新鮮だな……ここか?」くちゅくちゅ……じゅぷっ♪

提督「あ、あっ……そこ、気持ちいい…っ///」

クズネツォワ「こっちは?」

提督「ふあぁ……あふっ、はぁ……んっ♪」

クズネツォワ「ここが感じやすいようだな……んちゅっ♪」提督に覆い被さりながら豊かな乳房に吸い付いたクズネツォワ……

提督「ふあぁ、もう……あっ、あぁぁんっ♪」


…空いている手で乳房にクズネツォワの頭を押しつけると、ぎゅっと脚を締め付けてクズネツォワの身体を挟みこむ提督……まだクズネツォワの手つきはぎこちなく洗練されていない感じも残るが、身体が火照ってくるにつれて提督自身みだらな気持ちになってきて、クズネツォワらしい冷たさと煙草の香りが混じった髪の匂いを吸い込むと、秘部がとろりと濡れてきた…


クズネツォワ「ん、ぴちゃ……れろっ、ちゅ……」ぐちゅっ、ぬちゅ……っ♪

提督「あ、あ、あっ……あんっ、んふふっ♪」ときおり妙な舌遣いをされ、気持ちよさよりもくすぐったさに笑いが漏れる……

クズネツォワ「……私のやり方はおかしいか?」

提督「いえ、そうではなくてくすぐったくて……ふぁぁ、あふっ……あっ、んんぅ……っ♪」

クズネツォワ「そうか」ぐちゅぐちゅ……ずぷっ♪

提督「ふあぁ……ぁっ♪」とぽっ、とろ……っ♪

クズネツォワ「……どうだ、少しは良かったか?」

提督「そんなことを聞くのは無粋ですよ、ユーリア……それに」

クズネツォワ「それに?」

提督「……今度は私の番ですから♪」金色の瞳にとろりと甘いみだらな光を浮かべ、クズネツォワに身体を絡ませた……

クズネツォワ「ん、んっ……」

提督「ユーリア、そんなに身構えないで……もっと肩の力を抜いてください」

クズネツォワ「ダー。しかし身構えているつもりはないのだがな……」

提督「そうですか? それじゃあ私がユーリアの気持ちをほぐしてあげます♪」

…提督はしっとりとした柔肌をクズネツォワの引き締まった裸身にぺたりと合わせて、綺麗に整えられた左手の中指と薬指をやんわりと彼女の花芯へと滑り込ませていく……ベッドを共にしているのにどこか隔たりを感じるクズネツォワの冷たい手に右手を絡ませて「恋人つなぎ」にすると、優しく唇を触れあわせながらしばらくそのままついばむようなキスを続け、冷たい手がほのかに温もりを帯びるまで恋人つなぎを続けた…

クズネツォワ「……こういうのは初めてだな」

提督「言わなくっていいです……いまは私のこと以外は考えて欲しくないので」ちゅ……っ♪

クズネツォワ「分かった」

提督「はい……♪」

…しばし幼い子供のように無垢な口づけを続けていたが、次第にねっとりと甘ったるいキスへと変化させていく提督……クズネツォワの固く引き締まった胸にはたわわな乳房を押しつけて弾力のある柔肌の中に埋めさせ、ゆったりと動かし始めた左手の指は優しく、しかし執拗に膣内をかき回していく…

クズネツォワ「……んっ、ふ///」

提督「んちゅっ、ちゅる……っ♪」

クズネツォワ「あ……ふ、んむ……っ///」

提督「ユーリア、こっちの方がいいですか……?」

クズネツォワ「好きにしろ。私はどっちでも構わない」

提督「あら、つれないお返事……そういうことなら、うんとさせてもらいますから♪」じゅぷ、ぐちゅっ……くちゅっ、にちゅ……っ♪

クズネツォワ「ああ……ん、んんっ///」

提督「ふふっ♪ ユーリアのここ、ずいぶん濡れてきましたね♪」ぬちゅ、ぐちゅり……じゅぷっ♪

クズネツォワ「そうだな……んん゛ん゛っ///」

提督「うふふっ、ちゃんとそうやってトロけたお顔もできるんですね……可愛いですよ♪」じゅぷっ、ぬちゅり……ぐちゅぐちゅっ♪

クズネツォワ「あ、あ゛っ……はぁぁ……ぁっ♪」

提督「んぅ、そろそろ体勢を変えますね……はひっ、あ……あふっ♪」

…粘っこい水音をさせて指を引き抜くと粘土をこねるような手つきで下腹部を愛撫し、それから身体を起こすとクズネツォワの太ももを両手で押し開くようにして開脚させ、自分の花芯とクズネツォワの花芯を重ね合わせた……すでにとろりと濡れている提督の秘部が意外なほどに熱を帯びたクズネツォワの秘所と触れあうと、しびれるような甘い感覚が背筋を伝わっていくように走り、思わず甘ったるい嬌声が漏れる…

クズネツォワ「はぁ……あぁ、んんうっ///」

提督「あっ、はぁっ、はぁ……はひっ……ふわぁぁぁ……っ♪」

クズネツォワ「あ゛っ、はぁぁっ……ん゛あ゛あ゛ぁぁ………っ♪」

…提督の甘い声と共鳴するようにクズネツォワの吼えるような声が響く……クズネツォワの競泳選手のような脚が提督の腰に絡みつき、まるで腰骨が折れそうな強さでぎゅっと締め付けてくる……お互い身体を離そうにもいやでも伝わってくる脳をとろけさせるような快感に呑まれて、身体を引き離す事もできない……提督は甘ったるい声を響かせながらも、クズネツォワの無表情の仮面がいくらかなりとも崩れて喘いでいるさまに気づいて嬉しさと同時に、普通なら敵うはずもないクズネツォワのような鍛え上げられた相手を思い通りにしている事実に、みだらでわがままな嗜虐心をくすぐられた…

提督「んふふ……っ♪」ぐちゅっ、にちゅ……っ♪

クズネツォワ「お゛っ……あ゛ぁ゛ぁぁっ♪」

提督「あっ、ユーリア……激しっ……ふわぁぁぁ……っ♪」

クズネツォワ「あぁぁっ、はぁっ……♪」

提督「ふあぁぁっ、そんなに締め付けられたら……あっ、あぁぁっ♪」

…提督は目の焦点が合わなくなり、暖かくぬめる下腹部からの止めどない熱と快感の波動に身体をのけぞらせて嬌声をあげる……一方のクズネツォワもがくがくと太ももをひくつかせ、がくりと首を上向かせて腹筋をけいれんさせている…

クズネツォワ「ああぁぁ……っ♪」

提督「あぁぁん……っ♪」

…互いに終わりが見えないまま、愛撫したり甘噛みをしたり跡の残るようなキスをしたりしつつ、秘所を重ね合わせる二人……全身はじっとりと汗ばみ、重ね合わせている身体がぺっとりと吸い付き、時にはぬるりと滑る……そのまま何時間たったのかも分からないまま、最後は崩れるようにして愛蜜まみれのベッドシーツに倒れ込んだ…

クズネツォワ「ふー……」

提督「はぁ、はぁ、はぁ……ぁ♪」

クズネツォワ「……ふふ」

提督「何かおかしいですか?」

クズネツォワ「いや、なに……まさか一回りも年下の小娘にここまでいいようにされるとは思っていなかったからな。私もまだまだということか」

提督「えーと……お褒めにあずかり恐縮です///」

クズネツォワ「ふ……まったく面白い女だよ、君は」

提督「……」

クズネツォワ「ふー……何か気になることでも?」

…裸のまま起き上がるとベッドサイドの小机に置いてあった煙草の箱を引き寄せ、一本取り出して火を付けたクズネツォワ……提督が少し意外そうな表情でその様子を見ていると、視線が気になったのか問いかけてきた…

提督「いえ、そこまでのことでは……」

クズネツォワ「構わないから話してみるがいい」

提督「そうですか、本当に大したことではないのですが……ユーリアは左利きですか?」

クズネツォワ「どうしてそう思う」

提督「いえ、だって煙草をそうやって左手で持っているものですから……」

クズネツォワ「ふ……なかなか観察眼が鋭いな」そう言って親指と人差し指の間に挟んだ煙草をもうひと吸いすると、ふーっと長い息を吐いた……

提督「そうですか?」

クズネツォワ「ああ……私は職業上、右手を常に空けておくよう訓練されてきたからな。そのせいで煙草を左手で吸う癖がついてしまった……」

提督「でも、ユーリアのお仕事は海軍軍人でしょう? そこまで徹底して右手を空けておくような訓練を受けるものでしょうか?」

クズネツォワ「海軍軍人か、確かにな」

提督「……そういえば、クズネツォワ提督はどうして海軍に?」

…あまり根掘り葉掘り聞くようなことでもないらしいと気付いて、とっさに話題を転じた提督……胸元に布団を引き寄せ、枕を背中にあてがってベッドのヘッドボードを椅子の背のようにして座った…

クズネツォワ「そうだな……おそらくは私のバーブシュカ(祖母)の影響だろうな」提督に煙を吹き付けないようもうひと吸いすると、ゆっくりした口調で言った……

提督「バーブシュカ……たしかお祖母さんのことでしたね?」

クズネツォワ「ダー……私の祖母ナターシャ(ナターリアの通称)は政治将校として大祖国戦争(独ソ戦)を戦い抜いた女性でな。ブーツも汚さずに安全な後方からスローガンをわめいていた連中と違って常に兵と共に銃を取り、後に「赤いジャンヌ・ダルク」などとまつりあげられたほどの人物だったのだ」

提督「立派なお祖母様だったのですね」

クズネツォワ「少なくとも私はそう思っている……せっかくだ、祖母から聞いた話でもしてあげよう」そう言うと昔話を語るように淡々と話し始めた……



クズネツォワ「……今は昔、大祖国戦争(独ソ戦)の頃の話だ。 私の祖母は当時ではまだ珍しい高等教育を受けていたので軍で庶務であったり読み書きといった兵への教育を行っていてな。組織に献身的だったことと「大粛正」後の士官不足と言うこともあって大尉に昇格していたのだが……1941年6月22日、状況が変わった」

提督「独ソ戦の開戦、ですか」

クズネツォワ「ああ。祖母は大祖国戦争開戦の一報をラジオで聞いたそうだ……」

………

…1941年…

ソ連軍士官「同志政治将校、今の放送をお聞きになりましたか!」

ナターリア(ナターシャ)・クズネツォワ大尉「聞いた……司令部からの命令は?」

士官「はっ! 命令ですが「全部隊は直ちに鉄道駅に集結、急ぎ祖国防衛のために進発せよ!」とのことです!」

ナターシャ「よろしい、ではそのように計らえ……私も駅へ行く」

…駅…

ナターシャ「同志諸君! 邪悪なファシスト共の魔の手から我らの祖国(ロージナ)を、父を、母を、兄弟姉妹を守るのだ!」

…ぴしっとしたカーキ色の軍服にトカレフ「TT33」ピストルのホルスターを吊るし、メガホンの筒を手に声を張り上げ、客車・貨車を問わずに次々と列車に乗り込む将兵たちを激励するナターシャ……プラットホームではやはり軍服を着た軍楽隊のオーケストラが勇ましい軍歌を演奏し、その重厚なメロディと地元合唱団の声が響き渡るなか、兵たちを乗せた列車が重そうに発車していく……

ナターシャ「さあ、列車に乗り込め! 祖国は同志諸君を必要としている!」



クズネツォワ「しかし、粛正に次ぐ粛正で思考力のある有能な士官を失っていて、かつ奇襲を受けたソ連軍はドイツ軍の「電撃戦」に後退を余儀なくされた……そして数週間後、祖母はレニングラードにいた」

提督「……レニングラード、ですか」

クズネツォワ「そう……九百日も包囲されたレニングラードだ。だが私の祖母は運が良かった」

提督「と、いいますと?」

クズネツォワ「召喚命令だよ。 レニングラード防衛戦の実情が分からないモスクワのスタフカ(STAVKA…赤軍最高会議)に直接報告に行けと命令を受けたのだ……私の祖母はラドガ湖を使って包囲直前のレニングラードから脱出できた人間の一人だ」

提督「なんと、まぁ……」

クズネツォワ「その時の話は祖母からいくつか聞いたよ……いよいよレニングラードも包囲され始めた、とある曇りの日だったそうだ……」

…レニングラード…

ソ連軍士官「……同志政治将校、民間人がやって来て同志政治将校に会わせて欲しいと言っているのですが」

ナターシャ「民間人?」

…包囲されつつある市街の命運を暗示するような曇り空のレニングラードには次第に近づいて来るドイツ軍の砲声が遠雷のように響き、街には工場から続々と吐き出される対戦車砲や対戦車ライフル、果ては火炎瓶からあり合わせの即製兵器までが配備され、目抜き通りのあちこちにはバリケードが並べられている…

士官「ダー……忙しい最中だからと言ったのですが」

ナターシャ「それほどまでに私に会いたいとは、よほど重大な事なのだろう……まだ船団は出ないはずだ。 通してやれ、アントーン・イリイッチ」

士官「はっ」

…部下に連れてこられた民間人はやせていて、おびえたような態度をしている……身体にあまり合っていない茶系の背広の胸元には民間人に授与される文化系の勲章をいくつか付けていて、司令部入り口の衛兵や士官たちから門前払いをされなかったのはそのおかげらしい…

ナターシャ「さて。私に用があるそうだが、同志……」

民間人「ニコライ・シモノフです……同志政治将校」軍における恐怖政治の執行者として民間人にも知れ渡っている「政治将校」に対し帽子を脱ぎ、おずおずと手を伸ばして握手する民間人……

ナターシャ「ナターリア・ニコラーエヴナ・クズネツォワ大尉だ、同志シモノフ。 それで、用件とは?」

民間人「はい、実は……」

ナターシャ「……なるほど、市内にある美術館の収蔵品を退避させると」

民間人「ええ……もちろん、開戦してからエルミタージュ美術館を始め、名のある美術品の疎開は続けておりましたが、それでも市内の美術館にはまだたくさんの貴重な品々が残っているのです……同志政治将校、どうか美術品を運び出してもらえないでしょうか?」

…ナターシャのところにやって来た民間人は市内にある美術館の館長で、そこはエルミタージュほど高名でもなければ大きくもなかったが、ナターシャ自身も何回か見学したことのある場所だった……困ったように手をこすり合わせながら、館長はナターシャに懇願した…

ナターシャ「なるほど……話は理解した。 だが、ここを出て行くラドガ湖艦隊の艦艇は軒並み避難民や負傷者で舷側すれすれまで満載だ。 運び出してくれと言われても、そう簡単にはいかない」

館長「むろんそのことは承知しています、同志たちの生命はどんな美術品よりも尊いものです……ですが、このまま人民の宝を戦災にさらしておくなど……」

ナターシャ「ああ、分かった……はしけでも伝馬船でも良いというなら、どうにか用立ててみよう。ただ、ファシスト共の爆撃を受けるかもしれないが……それでも構わないのだな、同志?」

館長「はい、このまま戦火にさらすよりは少しでも可能性のある方に賭けようと思います、同志政治将校」

ナターシャ「いいだろう。では今からラドガ湖艦隊の司令部に掛け合ってみよう、一緒に来てくれ」

…ラドガ湖艦隊司令部…

ソ連海軍士官「……送り出した輸送船の十隻のうち五隻は沈められるような状況で、美術品なんぞに構っている余裕があると思っているのかね、同志政治将校?」

ナターシャ「無論そのことは承知しています。だが美術館の品々も貴重な人民の宝であることを忘れないでいただきたい。ファシストの畜生共にむざむざ破壊されるのを見ているわけにも行きますまい……同志少佐?」政治将校という存在の恐ろしさをにじませるように、階級が上の相手に対してかすかな非難の響きを込める……

海軍士官「……だが、すでに船団の出港準備は整っている。 今から積み込むのでは間に合わない」

ナターシャ「なら次の便で構いません……構わないな? 同志シモノフ?」

館長「ええ、とにかくここから運び出すことさえ出来れば……」

ナターシャ「なら決まりだ。 次の便に載せる美術品を運び出し、埠頭まで持ってくるとしよう……積み込みはこちらで行います。それならばそちらの将兵を使うこともない……よろしいですか、同志少佐?」

海軍士官「ああ、分かった……ただし、どんな事情であれ出港に間に合わなければ置いていく。よろしいな? 同志政治将校」

ナターシャ「結構です、同志少佐。 協力に感謝します。上層部にも同志少佐の「国家の至宝を守ろうとする懸命な判断と献身的な行為」を報告しておきます……では急いで美術館に向かうとしよう、同志」

…十数分後・レニングラード防衛司令部…

士官「同志政治将校!? 先ほどの船団でレニングラードを離れられたのでは!?」

ナターシャ「そうする予定だったが事情が変わったのだ。 急ぎトラック二台と一個分隊を用意しろ」

士官「トラック二台に一個分隊ですか? ……了解、同志政治将校」困惑してすっとんきょうな声を上げたが、じろっとにらみつけられると慌てて敬礼をし、トラックを探しに駆けだしていった……

…数分後…

士官「トラック二台と一個分隊の用意完了です、同志政治将校!」

ナターシャ「結構、良くやった……それでは美術館まで行こう、同志シモノフ」

…しばらくして・市内の美術館…

ナターシャ「これで全部か? 同志?」木箱に梱包されたり筒状の入れ物に収められたりしている様々な美術品をトラックの荷台に詰め込ませると、館長に尋ねた……

館長「はい、最も貴重な物はこれだけです……出来れば全部運び出したいところですが……」

ナターシャ「それは諦めてもらうほかはあるまいな……さぁ、出発しろ!」

提督「……そんな体験をなさったのですか」

クズネツォワ「ダー……途中でファシストの空襲にも遭ったそうだ」

………



…ラドガ湖…

ナターシャ「……船長、護衛との会同は?」

…ナターシャは戦傷者や難民たちが舷側すれすれまで詰め込まれたおんぼろ砲艦や小型貨物船で編成された船団の一隻に乗り込むと、彼方に霞むレニングラードを見送りながら煙草を吹かしていた……港を出てしばらくすると船員がやって来て、案内されるがままに人混みをかき分け船橋に行くと、もじゃもじゃのあごひげを生やした船長にさっそく尋ねた…

船長「さぁ、ワシには何とも……出港前に聞いた話じゃ空軍が顔を見せてくれるって話ですがね、同志」

ナターシャ「そうか」

…そうは言っても空軍も海軍航空隊も緒戦の奇襲で甚大な被害を受けている以上、まともな援護など期待できない事くらい誰にでも分かりきっていた……それでも、ポリカルポフ戦闘機の一機でもいてくれれば心強い事は確かで、ナターシャは期待するようにちらりと上空へ目をやった…

船長「へぇ。まぁ大したもてなしもできやせんが、どうか少しでも居心地良くしておくんなさい」

ナターシャ「スパシーバ。とにかく頼むぞ」

…ちっぽけな船橋から甲板を見おろすと、美術館の館長から預かった美術品が収まっている船倉ハッチには防水布がかけられ、その防水布の上にも鈴なりに人が座り込んでいる……左右を進む船舶も同じように甲板上に負傷兵や避難民たちが座り込み、何人かの兵士が少しでも気が紛れるようにと、持ち込んだアコーディオンやバラライカを弾いている……と、どこからか蜂の羽音のような単調なエンジン音が聞こえてきた……

ナターシャ「……敵機! 上空にシュトゥーカ!」

…雲間から黒いシルエットが現われ、途端に反転するようにして船団へ向けて急降下をかけてきた……

ソ連兵「敵襲!」

ソ連下士官「アゴン(撃て)、撃てっ!」

…どんな勇敢な兵士でさえも恐怖に耳を塞ぎたくなるという、ユンカースJu-87「シュトゥーカ」が急降下してくるときの甲高い音が鳴り響き、その恐怖に抗うかのようにピストルから短機関銃、重機関銃、即席の砲座に据え付けられた高角砲まで、ありとあらゆる兵器が撃ち上げられる…

船員「爆弾が来ます!」

…通り過ぎる急行列車のような音を立ててシュトゥーカが上空を通過し、同時にすさまじい轟音と水柱を噴き上げ着弾する爆弾……凍るように冷たい飛沫が軍服を濡らし、頭から水が滴る……と、横を進んでいた小型貨物船が黒煙をあげて停止し、別れを告げるような哀れな汽笛の音を響かせながらゆっくりと傾いていく…

ソ連兵B「……可哀想に」

…沈んでいく友軍を助けてやりたいのは誰も同じだが、舷側すれすれまで人と荷物を積み込んでいる船団の船に他の誰かを助ける余裕はない……それでも近くの数隻が減速して幸運な最寄りの十数人を拾い上げ、護衛の老朽掃海艇も無電で救援を要請し、もしかしたらやってくるかもしれない友軍艦艇に浮かんでいる同志たちのことを託した…

下士官「敵機!雲の切れ目から来ます!」

ナターシャ「操縦席を狙って撃て!」

…一機目の投下した爆煙が収まらないうちに二機目が急降下をはじめ、船団めがけて突っ込んでくる……これを迎え撃つ船団では銃座に装備された古めかしい、しかし頼りになる水冷のマキシム機銃が吼えたて、兵士の「モシン・ナガン」小銃やトカレフ・ピストルまで、雑多な銃器が上空のシュトゥーカを狙って弾幕を張る…

ソ連兵C「やった……やった!」

…弾幕のうちの気まぐれな数発が当たったらしくシュトゥーカのエンジンが白煙を吐き、投下した爆弾は輸送船の脇で水柱を上げただけに留まった……シュトゥーカはぐっと機首を上げると、そのまま低く垂れ込めた雲に逃げ込んだ…

船長「やれやれ……」

ナターシャ「ふぅ……どうにかなったな、船長」

………

提督「……大変な経験でしたね」

クズネツォワ「ダー……だが、祖母の経験はそこで終わらなかった」

…一本の煙草を吸い終えると最後の煙を空中に吐き出し、紫煙が空調装置に吸い込まれていく様子をじっと眺めた……煙が完全に吸い込まれるのを見届けると、話の続きを始めた…

提督「まだ他にも経験したのですか」

クズネツォワ「ああ。モスクワで戦況を報告した祖母はしばらくスタフカと前線を行ったり来たりして連絡将校じみた事をしていたそうだが、あるとき能力を買われて次の戦場で兵の督戦と前線の維持を命令されたのだ……場所は42年の冬、スターリングラードだ」

提督「スターリングラード……!」

クズネツォワ「そうだ」

…1942年・スターリングラード…

ナターシャ「……同志諸君、一歩も退くな!ヴォルガ河の後ろに前線はない!」

…腰ベルトのトカレフ・ピストルと柄付き手榴弾、そして肩から「バラライカ」ことPPSh41短機関銃を提げ、防寒用の長い外套を羽織って渡船場の渡り船から降りてくる将兵に声を張り上げるナターシャ……軍の政治将校ならピカピカでもおかしくない制服やブーツは泥とほこりにまみれ、顔も土ぼこりや汚れですっかり黒ずんでいる…

ナターシャ「一人でも多くファシストを撃て! 諸君の家族や故郷のために!」

…ヴォルガ河の渡船を使って次々と送り込まれる兵士たちの群れに向かって、声を張り上げ督戦するナターリア……強大なドイツ軍に対して二人に一人しか支給されない小銃や乏しい弾薬を補うのは、これだけはどうにか毎日欠かさず支給されるウォッカとボルシチ、それに生存本能に根ざした獣のようながむしゃらさだけだった…

ナターシャ「たとえ死ぬとしても、決して無駄死にはするな! 一人でも多くの敵を道連れにせよ!」

…たいていの政治将校が暖房の効いた地下壕でぬくぬくと過ごし、ビラを刷っては口先ばかりの宣伝をひねくり回している間、ナターリアは地面を這いずり埃と垢にまみれ、後方から来る弾薬や、はるばるアメリカから運ばれてくる缶詰といった物資を背嚢に詰め込み、がれきと廃墟の中に陣取る兵士たちへと配って回り、また時には兵士と一緒になって敵の攻撃を撃退したりもした…


…とある防衛拠点…

ナターシャ「……あの建物から敵を叩き出せ!敵の銃撃が収まる瞬間を待って突入する!」

下士官「了解!」

ナターシャ「いいか、私が援護してやるから心配するな。屋内に突入したらひと部屋ごとに手榴弾を放り込め……今だ!」

下士官「よし、突っ込め!」

兵士たち「「ウラー!」」

…ナターリアはドラム型弾倉のPPsh-41短機関銃「バラライカ」を、ドイツ兵の陣取るアパート二階の部屋に向けてバリバリと浴びせる……窓の下までたどり着いた兵士たちが手榴弾や梱包爆薬を投げ込むと爆煙が噴き出し、がれきやセメントの破片がバラバラと飛び散る……そのまま崩れた階段の残骸を使って屋内へと突入する兵士たち…

…数分後…

ナターシャ「……よくやったな、伍長」

下士官「ありがとうございます、同志政治将校」

ナターシャ「礼などいい……諸君も良くやった。これで隣の拠点とも連絡がつくようになるだろう」おそらく今のスターリングラードでは一番のごちそうに数えられるであろう、アメリカ製コーンビーフの缶詰を背嚢から取り出して分隊の兵士に配った……

………



クズネツォワ「そうして一進一退、拠点を奪っては取り返し……祖母はドイツ第六軍が降伏するまで市街を駆け回っては兵を励まし、敵を撃ち、重傷の兵には優しい言葉をかけてやったのだ……いまのヴォルゴグラード(スターリングラード)、ママイェフの丘にある『母なる祖国』像はロシアの大地を表す女神であると同時に、スターリングラードを始め各地で戦った女性の将兵たちや、苦しい戦時下の生活に耐え抜いた女性たちの象徴でもあると祖母は言っていたよ」

提督「あの剣を持った巨大な像のことですね……」

クズネツォワ「ダー……祖母はその後前進を続ける軍と共にベルリンまで戦い続けた。しかし祖母は厳格な人間だったのでな、よく言われるように「略奪した腕時計を両腕にびっしりはめている」ようなこともなかった。家にあったのは当時の捕虜から取り上げたルガー・ピストルくらいなものだった」

提督「すごいお話ですね……まるで歴史書の登場人物のような……」

クズネツォワ「ダー。バーブシュカは戦後もしばらくは将校として務めていたが退役して、私が子供の頃にはすっかり白髪になっていたが……それでも頭は切れるし身体も動くし、かくしゃくとしたものだったよ……その祖母に言われたのだ「泥まみれで埋め草にされる陸軍の兵隊と違って、少なくとも海軍なら乗り物がある」とな」

提督「なるほど、それで海軍に……」

クズネツォワ「ああ、子供のころから聞かされていれば自然とそう思うようになる……あと、祖母いわく「色んな経験をしたが、自慢できるのはムラヴィンスキー指揮のレニングラード交響楽団が演奏するショスタコーヴィチを生で聞けたこと」だとよく言っていたよ」

提督「確かに、それはなかなか機会があるものではないですものね……ところで」

クズネツォワ「なんだ?」

提督「あー、その……ユーリアは音楽を聞きますか?」

クズネツォワ「無論だ。音楽は時に心を駆り立て、時に心を落ち着かせる……モスクワ・ボリショイ劇場の券は年間パスで買っている」

提督「なかなかお好きなんですね」

クズネツォワ「ああ……それでフランチェスカ、君はどうだ?」

提督「私はそんなに裕福ではありませんから……数回だけミラノ・スカラ座に行った事はあります。それに音楽は好きですよ」

クズネツォワ「そうか、例えば誰の曲が好きだ?」

提督「いつもは60~70年代のカンツォーネを流しているので、クラシックはあまり……でも、母の影響でヴィヴァルディやロッシーニ、ヴェルディ……あとはラヴェルやチャイコフスキー、ビゼーも時々聞きます。もっとも、私の場合は気分に合わせて聞いているだけですので、難しい考証や解説はできませんが……」

クズネツォワ「いや。気分に合わせて難しいことを考えずに聞く、それでいいのではないか? あくまで感性の問題だからな。演奏のテクニックで悩むのは楽士と指揮者だけで充分だろう」抑揚がない感情の薄い声だが、どうやら冗談めかしているらしい……

提督「ユーリアも冗談を言うのですね?」

クズネツォワ「ああ、私にだってユーモアのセンスくらいはある……皮肉というのは言われる側も意味を理解していないと皮肉にならんからな。作品に込めた意図が分からなければ、風刺作家をルビヤンカ監獄に放り込めないだろう?」

提督「なるほど……」実際にそういうことをしそうなクズネツォワだけに、提督も素直に笑えない……

クズネツォワ「例えば、そうだな……フランチェスカ、ちょうどこの窓から広場のクリスマスツリーが見えるが、君はサンタクロースのことを信じているか?」窓の外には控え目だが綺麗に飾りつけられた大きなモミの木がそびえていて、街灯の光を受けて静かに輝いている……

提督「サンタクロースですか?」

クズネツォワ「ダー」

提督「そうですね……うちでは子供の頃から好きなものは買ってもらえましたし、私もあんまり欲しがりな子供ではなかったそうなのでそこまでは……親もそういう存在がいることは教えてくれましたが」

クズネツォワ「そうか……実はな、サンタクロースというのはソ連の具現化だと言ったら、どうだ?」ごくかすかではあるが、笑顔のような表情を浮かべてみせるクズネツォワ……

提督「えっ?」

クズネツォワ「考えてもみたまえ……赤色というのはソヴィエトの象徴である色だろう?」

提督「ええ、そうですね」

クズネツォワ「そしてその「赤い」服を着たヒゲのおじさんが、良い子にしていれば「みんなに」「無料で」「公平に」プレゼントを配る……どうだ、誰かを思い出さないか? アメリカ資本主義の代表のような、あの有名なコーラ会社が広告のためにサンタクロースを赤色にしたというのに、その実態はまるでソ連を具現化しているようなものなのだ」

提督「……考えてもみませんでした」

クズネツォワ「ふふ、そうだろうとも」提督の乳房を軽くいじりながら皮肉な表情を浮かべた……

提督「ええ……ところでユーリアのお祖母様は軍の政治将校だったわけですが、お母様はどんな方なのですか?」

クズネツォワ「私の母か? もう辞めてしまったが、母はソ連時代には科学者だった」

提督「なるほど、科学者ですか……しかし、科学の発達というのは目覚ましいものがありますね。近頃は「iPS細胞」というもので、同性間でも子供が出来るようになるとか」

クズネツォワ「ダー。ヤポーンスキ(日本人)の学者が発明したと言うアレだな……もっとも、あれならソ連が数十年は前に開発していたよ」

提督「まぁ♪ くすくすっ、ふふふ……っ♪」

クズネツォワ「おかしいか?」

提督「ええ、だって……ふふ、うふふっ……「それは我がソヴィエトが数十年前に発明していた」はよく聞くジョークですから……ふふふふっ♪」

クズネツォワ「面白がってくれて光栄だが、同志カンピオーニ……現に私がそうなのだ」

提督「うふふふっ……えっ?」

クズネツォワ「年齢のわりに耳が遠いようだな」

提督「あ、いえ……言葉は聞き取れましたが……でも……」

クズネツォワ「にわかには信じがたいか?」

提督「え、ええ……」思いがけない話に困惑して、うまい返事ができない……

クズネツォワ「ま、仕方のない事だな……だが、君も私のミドルネームには気付いていただろう?」

提督「ええ、確かロシアの人はミドルネームに父の名がつくのでしたね……」

クズネツォワ「そうだ。それが私の場合は「両母」の片方、つまり「父親の側」にあたる母の名になっているわけだ」

提督「あー……それは養子ですとか、そういう……?」

クズネツォワ「ニェット(いいや)……私は「ソ連版iPS細胞」の実験で生まれたいわゆる「試験管ベビー」というやつなのだ」

提督「……」

クズネツォワ「どうせだからな、寝物語(ピロートーク)に話すとしよう……」

…箱から煙草を抜き出すと火をつけ、布団をかぶって上半身を起こしている提督の裸身を眺めながらゆっくりと話し始めた……フィンランドの長い長い夜はまだ明ける様子もなく、閉じた窓越しに街灯の明かりと、時折聞こえる車の音や人の声がかすかに室内へと入ってくる…

クズネツォワ「かつてソ連は『大祖国戦争』で多くの人間を徴兵したり動員したりして、そのうちの多くを失った」

提督「ええ……」

クズネツォワ「戦後になってモスクワの首脳部はこう考えた……「大祖国戦争で我々がかろうじて勝利できたのは兵隊の数が多かったからだ。つまり戦争を戦うには人口が多い国が有利だ。それに大祖国戦争で多くの人間を失ったぶん、次代の兵士や学者や労働者になる子供たちもたくさん必要だ」……とね」

提督「……」

クズネツォワ「しかし、いざ戦争ともなれば男は軒並み駆り出されることになるし、そもそも戦後すぐのソ連では男性の数がかなり減っていた……そこで首脳部は「戦場に行くことの少ない女同士で子供を作ることは出来ないか?」と考えたのだ」

提督「当時のソ連にそんな計画が……?」

クズネツォワ「ダー……詳細はもはや闇の中になってしまったが、基本的にはそういった経緯でフルシチョフのころに研究が開始されたらしい。そして何十年もかかってソ連崩壊の直前、ようやく実用化の目途がついた」

提督「……ええ」

クズネツォワ「そこで研究所としては誰か被験者を探さなくてはならない……とはいえ大祖国戦争を知る世代も減り、当初の目標だった「生産性のある人口の増加」も人海戦術に頼る時代が過ぎていたことから推進する理由が失われていたし、ソ連末期ということで人材を集める資金もなかった。そこで私の「片方の」母、科学者のユーリアが当時親しくしていたバレエダンサーのマリアを口説いて被験体になってもらったのだ」

提督「実験の被験体だなんて、よく了承してもらえましたね?」

クズネツォワ「ああ……当時のソ連では同性愛は違法だったが、ユーリアとマリアはお互いに愛しあっていたからな。マリアが被験体になることで当局に同性同士での「恋愛」や「結婚」を黙認してもらったらしい……」

…1980年代・とある研究所…

研究者「主任、これを……とうとう成功しましたよ!」

ユーリア・クズネツォワ(クズネツォワの母)「ハラショー、実に見事なものだ……皆もよくやってくれた」

…胸元のネームプレートに白衣姿で、鉄縁眼鏡をかけた研究主任のユーリアの元へと集まってくる研究者や技師たち……ラットに犬、そしてとうとうサルでの実験に成功し、みんな科学者らしく冷静さを装いながらも沸き立っている…

研究者B「これで所長にもいい報告が出来ますね」

研究者C「次はいよいよ人体での治験ですか……とはいえここの研究所で被験者を募るのは……」何十年と結果を残せずにいて今ではすっかり後回しにされている研究に、人を募るための予算が回してもらえるはずもない……

ユーリア「そのことだが、治験に応じてくれそうな人間に心当たりがある。所長の許可と被験者の承諾を取るあいだ、諸君は作業を続けてくれ」

…数日後の夜・モスクワ市街…

ユーリア「……遅くなって済まなかった、マリア・ニコラーエヴナ。冷えてしまっただろう?」クレムリンのタマネギ型ドームが建物の狭間から見える橋のたもとで一人待っていたマリアに、自分の不格好な……しかしとりあえずは暖かい厚手のウールコートを羽織らせるユーリア……

マリア「いいのよ、ユーリア……一緒に歩きましょう///」

…バレエダンサーらしい華奢でほっそりとした身体に、青色の涼しげな目元と金色の髪をしたマリア……その柔らかなソプラノで教養のある話をするさまは、さながら乙女の理想像のように見える……薬品で荒れた手に、まるで技術レポートでも読み上げているかのように聞こえる素っ気ない自分の話し方と比較して、なんと対照的なのだろうとユーリアは考えた…

ユーリア「ああ……」

マリア「……それで、話って?」

ユーリア「そのことだが、とりあえず座って話そう」川を望む道端のベンチを見つけた二人……

マリア「さ、座ったわ……話してくれる?」

ユーリア「ああ、そうだな……」

マリア「……言いにくいこと?」下からのぞき込むようにして顔を近づけるマリア……

ユーリア「いや、そういうわけじゃないが……」

マリア「そう……じゃあ話してくれるまで静かに待っているわね」

ユーリア「……」

マリア「……」

ユーリア「……その、マリア」

マリア「なぁに?」

ユーリア「実は、君に頼みたい事がある……」

マリア「頼みたい事?」

ユーリア「ああ。科学の進歩のためにも、君に協力してもらえたらと思っているのだが……」詩的な言い回しや心をとろかすような表現どころか、堅苦しい言い訳しか出てこない自分のセンスに内心でげんなりしながらも切り出した……

マリア「協力というのはお注射でも打つの? それとも何かのお薬でも飲めばいいのかしら?」

ユーリア「それなのだが……手術を伴う可能性がある時間のかかる大がかりな話で、おまけに君の身体にも大きく影響することになる……そして間違いなくバレエダンサーを続けることは不可能になるだろう」

マリア「……ずいぶんと危険な実験のようね? 貴女がそんな実験を行っているのかと考えると心配になるわ」

ユーリア「いや、私は危険でも何でもないんだ……」

マリア「それじゃあ、一体どういう実験なの? それに私でなければならないって……ロケットで宇宙へ行って、そこで『白鳥の湖』のオディールでも踊るのかしら?」

ユーリア「そうじゃないが……実は、私との子供を作って欲しいんだ///」

マリア「えっ?」

ユーリア「その……私の勘違いでないとしたら、君は私に好意を持ってくれているようだし……つまり……///」

マリア「えーと、それって体外受精かなにかの実験っていうこと?」

ユーリア「似ているがそうじゃない。実は……女同士で子供を作る実験なんだ……その、私は君のことが好きだし……実験のためとはいえ、二人の子供ができたらと……///」

マリア「貴女との子供? ……嬉しい、そういうことなら喜んで協力させていただくわ♪」警官に見とがめられないよう、コートの襟を立てて唇にキスをした……

ユーリア「……ありがとう、マリア///」

………

提督「そして産まれたのが……」

クズネツォワ「ダー。この私だ……もっとも、私が生まれてすぐに「予算の削減」で実験は中止。それから十年もしないうちにソ連が崩壊して、研究所も実験のレポートも失われてしまったから、今では証明のしようもないがな」肩をすくめてみせた……

提督「そうだったのですか……それで、ご両親は?」

クズネツォワ「今でもモスクワで仲むつまじくやっているよ。マリアの方はサワークリームとマヨネーズ、それにウォッカのせいで太り気味だが……どうだ、寝る前のおとぎ話にはちょうどよかっただろう?」

提督「寝物語どころか、あまりのことにすっかり目が覚めてしまいました」

クズネツォワ「ふふ、まあそうだろうな……吸うか?」

提督「いえ」

クズネツォワ「……では私の方は勝手にやらせてもらうよ」

提督「ええ」

クズネツォワ「済まんな」

提督「……ところで」

クズネツォワ「ん?」

提督「お祖母様の薫陶を受けて軍に入ろうと思ったのは分かりました、でもどうして海軍だったのですか? お祖母様は陸軍配属の政治将校だったのでしょう?」

クズネツォワ「ああ、それもバーブシュカに吹き込まれてだ……」薄い唇に皮肉めいた苦笑いを浮かべて、煙草の煙を吐き出した……

提督「?」

クズネツォワ「さっき話したように私の祖母は大祖国戦争を戦い抜いたが、幼い頃の私をひざに乗せてよく言っていたよ『入るなら海軍に入りなさい』とな……海軍なら歩かされることも、機銃の弾幕に向かって突撃させられることもまずない。行軍に付いていけなくなって置きざりにされたあげく、パルチザンに処刑されることもない」

提督「まぁ、それはそうですが……」

クズネツォワ「それに、海軍こそは世界の覇権を決める力だ……近代以降、戦争に勝った『大国』で海軍が弱小だった国はない」

提督「それは確かですね」

クズネツォワ「ダー。 それに私の祖母は当時の陸軍元帥だの大将だのをよく知っていたからな……ヴォロシーロフにブジョンヌイといった人物たちだが、祖母いわく『馬鹿ばっかりだった』そうだ。 まぁどこにも馬鹿はいるものだが、祖母からすれば海軍は少なくとも陸軍よりマシに見えたのだろう」

提督「なるほど」

クズネツォワ「さて、おしゃべりはこのくらいでいいだろう……時間になったら起こすから、少し寝たらどうだ?」

提督「お気持ちは嬉しいですが、ユーリア……どうせあと数時間でおいとまするつもりですし、街の夜景も見ていたいですから」布団を裸身に巻きつけると、街の景色が見えるように身体を動かした……

クズネツォワ「そうか、なら好きにすればいい」

提督「……ユーリア」冷徹な色をたたえた瞳に、街のクリスマスツリーを彩る電飾や灯りが映って銀河のようにきらめいている……吸い込まれるように顔を近づけ、煙たい味のする唇にそっとキスをした……

クズネツォワ「ん……あれだけして、まだ物足りなかったか?」

提督「いいえ……でもそうやって遠くを眺めているユーリアは、唇を触れあわせておかないとどこか遠くへ行ってしまうような気がして……」

クズネツォワ「ふ、なんともロマンティックなことだな……ローマにいた頃は、そうやってミミ・ステファネッリを口説いていたのだろう?」

提督「!?」情報流出こそなかったとはいえ、ロシアの女スパイに言い寄られた数年前の事件をいきなり持ち出されてびっくりする……

クズネツォワ「驚いたようだな……なに、君と彼女のあれこれは私もよく知っている」

提督「ユーリア、もしかして……?」

クズネツォワ「いいや、その件は私じゃない。ただモスクワのファイルに君の名前があったものでな……なに、心配はいらない」

提督「どこかの情報機関のファイルに自分の名前があるのに、なにが心配いらないんです?」

クズネツォワ「簡単なことだ。君は『女たらしで軍人らしい命令遵守の意識や厳格さにも欠けるが、性格は意外と几帳面であることから有用な情報源たり得ず、かえって工作員の偽装を見抜いたために情報収集活動は失敗した。今後の工作は検挙のリスクが大きいため破棄する』とあったよ……性格診断も含めて、きわめて同感だ」

提督「もう……ちっとも嬉しくありませんよ」

クズネツォワ「そうか? ところでフランチェスカ、君はどうやって彼女の偽装を見破ったのだ?」

提督「ミミのことですか? それなら隠し味にサワークリームを入れるのが東欧風だったので……」

クズネツォワ「ふむ、なるほどな」

提督「……ところで、彼女は無事なんですか?」

クズネツォワ「無事だよ。君に化けの皮を剥がされたおかげでキャリアは棒に振ってしまったが、モスクワで文書読解をはじめとした内勤をしているそうだ」

提督「良かったです」

クズネツォワ「まさか自分のところに送り込まれた工作員の心配をする人間がいるとはな……実に面白い女だよ、君は♪」

…朝…

提督「送って下さってありがとうございます、ユーリア」

クズネツォワ「ああ。ではな」

提督「はい……カサトノヴァ少佐も」

カサトノヴァ「いえ。それでは」

…黒いメルセデスが走り去るのを見送ると、ホテルに入った提督……エレベーターで泊まっているフロアまで上がると、あくびをしながら部屋のドアをノックする…

フェリーチェ「はい、どなた?」

提督「ミカエラ、私よ……いま戻ったわ」

フェリーチェ「今開けるわ、ちょっと待ってて……」ドアチェーンや鍵を開ける音に続いてドアが開き、フェリーチェが顔を出した……

提督「ただいま、ミカエラ……♪」

フェリーチェ「んっ……お帰りなさい」

提督「ええ。 さ、部屋に入れてくれる?」

フェリーチェ「ええ」

…数分後…

提督「ふー……」

フェリーチェ「さっぱりした? はい、お水」

提督「ありがと」

…昨日着ていたお出かけ用の服を脱いでシャワーを浴び、メイクも落としてさっぱりした気分でベッドに腰かけると、ミネラルウォーターのグラスを受け取った…

フェリーチェ「……結局一晩中帰って来なかったわね」

提督「ええ、クズネツォワ少将が帰してくれなくて……それよりミカエラ、あのイヤリングに仕込んだ盗聴器はいったいなぁに?」威厳のないバスローブ姿ではあるが立ち上がると腰に両手を当て、フェリーチェを問いただした……

フェリーチェ「ああ、あれね……クズネツォワの個人情報を少しでも聞き出せればと思って仕込んだんだけど、やっぱり彼女は一筋縄じゃいかなかったわね」

提督「もう。 貴女は情報部だし、私も多少の事なら協力してあげたっていいとは思っていたけれど……それにしたって何も知らない私をダシにして情報収集なんて人が悪いんじゃない?」

フェリーチェ「あー、事前に教えなかったことは謝るわ。 でも「私をダシにして」に関しては、むしろ「貴女だからこそ」だったのよ」

提督「どういう意味?」

フェリーチェ「本当なら言うわけにはいかないんだけど、貴女も関係者みたいなものだから特別に教えてあげるわ……ま、かけて?」

提督「ええ」

フェリーチェ「情報部としてはね、前々から彼女に目を付けてはいたのよ……冷厳で無慈悲、システマみたいな軍用格闘技に小火器、ヘリや飛行機の操縦も出来て、ロシア語に英語、フランス語もばっちり」

提督「確かにフランス語は上手だったわ」

フェリーチェ「でしょうね……しかしクズネツォワ少将は表向きこそ「海軍少将」とはいいながらも何をしているのかはっきりしないし、あちらの部内で粛正なんかに携わっていたなんていう後ろ暗い噂もあって、こっちとしては彼女の性格や任務に関わる情報なら何でもいいから引き出したかったの」

提督「つまり狼の前に肉の塊をぶら下げてみたわけね」

フェリーチェ「ありていに言えばね。でも、危険性に関しては部内でも十分検討したし考慮されていたのよ。仮にもお互い海軍少将で、プライベートな会話をするだけ……それを盗聴しようとしたからっていちいち相手の首をへし折ったりしていたらかえって大問題になるし、あちらも貴女が「仕込み」であることは分かっていたはずよ……だからこそあのイヤリングに気付いたわけだし」

提督「むぅ……でも、そうは言っても少しくらいは信用して欲しかったわ」

フェリーチェ「それに関しては本当に謝るわ……でも貴女は素直だから、イヤリングの盗聴器を隠しおおせるような腹芸はできないし、ましてや相手はその道のプロだもの、素人芝居で取り繕ったってすぐ見抜いたに違いないの……結局のところ、知らないでいるのが一番良かったのよ」

提督「なるほどね、納得は出来ないけれど理解はしたわ……それにしても、ユーリアってそんなに危険な相手だったの?」会話を思い返してみても色々と常人と違うところはあるが、ユーモアのセンスもあれば人並みに笑うことも出来る彼女が冷酷で無慈悲な人間だとは思いにくい……

フェリーチェ「どうかしらね。危険だって確証が掴めているようならそもそも調べたりはしないし、何より貴女みたいな大事な女(ひと)を送り込むような真似なんてしないわよ」

提督「まぁ、お上手だこと」

フェリーチェ「ま、少なくともクズネツォワ少将に関して言えば「限りなく黒に近いグレイ」ってところね……海軍に所属している形をとって、GRUに籍を置いていないスパイの親玉だとにらんでいるの」

(※GRU…ゲー・エル・ウー。軍の諜報・防諜を担う情報機関。ソ連軍参謀本部情報総局)

提督「GRUって、こっちでいう「AISE」……改編前の「SISMI」みたいな組織でしょう?」

(※SISMI…「Servizio per le Informazioni e la Sicurezza Militare」の略。軍事保安庁。防諜担当のSISDEと対になる情報機関だった)

フェリーチェ「おおかた合ってるわ。まぁ、規模もやり口もAISEよりは数段格上だけれど」

提督「それにしてもソ連の方がなくなってGRUが残るだなんて、当のロシア人だって思いもしなかったでしょうね」

(※GRUはソ連崩壊後も「ロシア連邦軍参謀本部情報総局」として名前を変え、ほぼ組織を残している)

フェリーチェ「どこでも組織なんていうのはそういうものよ。そしてその血脈を受け継いでいるのがクズネツォワ少将ってわけ」

提督「なるほどね……ところでさっき「後ろ暗い噂」って言っていたけれど、本当にそんな噂があるの?」

フェリーチェ「断定できるようなものは何も……もっとも、ロシアの情報機関は国内での暗殺をいうほどこっそりはやらないけれど」

提督「どうして?」

フェリーチェ「理由は簡単。バレなければそれで結構だけれど、バレたらバレたで「政府に逆らうとこういう目に遭うぞ」って脅しに使えるのよ。むしろわざとバレるようにやる場合さえあるわ」

提督「……」

フェリーチェ「それで、彼女が関わっていると思われるケースはというと……」

提督「なんだか聞かない方が良さそうな気がしてきたわ」

フェリーチェ「ご冗談、彼女とベッドを共にしてきた勇気があるんだから大丈夫よ……最初が軍内部でクーデターを画策したと思われる陸軍高級将校の不審な事故死」

提督「事故死?」

フェリーチェ「ええ。入浴中、バスタブに落ちたドライヤーで感電」

提督「それなら普通にあってもおかしくはなさそうだけれど?」

フェリーチェ「それだけならね。ただ、その高級将校はガラス玉そこのけのつるつる頭なのよ……ドライヤーで胸毛でも乾かしていたっていうのなら話は別だけれど」

提督「なるほど……」

フェリーチェ「それから兵器の横流しをしていたとある補給所長。公的な記録によると「ウォッカの飲み過ぎで吐瀉物を喉に詰まらせ」となっているんだけれど、調べたところによれば、その汚職軍人はアルコールが飲めるほうじゃなかったのよ」

提督「ロシアにもお酒が飲めない人がいるのね」フェリーチェから明かされた情報の多さに戸惑い、とんちんかんな感想を漏らす提督……

フェリーチェ「そりゃあいるわよ……他に関与が疑われているものが二、三件あるけれど確証はなし。ただいずれも軍内部の粛清に限られているわ」

提督「だからってちっとも安全になった気がしないのは私だけ?」

フェリーチェ「大丈夫よ。こういう探り合いはお互いにやっていることだから……なんなら経歴をファックスで送るように頼んだっていいくらいよ」

提督「私には縁のない世界だわ」

フェリーチェ「貴女は素直過ぎるもの……とにかくお疲れさま。刺激的な一晩だったでしょう?」

提督「刺激的すぎてくたびれちゃったわ……少し眠るけれど、支度をする時間になったら起こしてね?」

フェリーチェ「ええ……私は報告を書き上げちゃうから、その間ゆっくり寝てて」

…コンピュータを立ち上げ、カタカタと文書を打ち始めるフェリーチェ……普段は好ましく感じている、個人的にされた話やプライベートに関わることを胸の内にしまっておける提督の義理堅さを厄介に思いながらも、会話の間に忍ばせていた質問や裏を取りたい事項で分かった部分をまとめていく…

提督「すぅ……すぅ……」

フェリーチェ「ふふ、子供みたいなあどけない寝顔をしちゃって……♪」

…まだ曙光がおとずれない窓を眺めやりながら文書を叩き、出来上がった文書はロックと暗号化を行ってUSBメモリに保存し、ラップトップから外すとドッグタグ(認識票)のように首からかけた……それも懇談会に出る前には大使館で本国に送信してもらい、メモリ自体は消去してもらう…

フェリーチェ「……これでよし、と」

………



…数時間後…

フェリーチェ「フランチェスカ、そろそろお目覚めの時間よ」

提督「んんぅ……おはよう、ミカエラ♪」

フェリーチェ「ええ、おはよう……もっとも、もう「おはよう」の時間でもないけど」

提督「懇親会まであとどのくらい?」

フェリーチェ「二時間はあるわ。それだけあれば十分に支度できるでしょ」

提督「ええ。こればっかりは士官学校の教育に感謝しないと♪」

フェリーチェ「言えてるわ」

…午前中…

ニッカネン「カンピオーニ少将にフェリーチェ大尉、ご機嫌いかがですか」

提督「ええ、おかげさまで元気です」

フェリーチェ「私もです……会議が無事に終わってよかったですね」

ニッカネン「それもお二人がオブザーバーとして参加くれたおかげです。今日はもう話し合うこともありませんし、細かい手続きは事務方のほうで詰めてくれる手はずになっておりますから、お二人の行きたいところがあればご案内しますよ」

提督「それは楽しみですね……フェリーチェ大尉、貴女は?」

フェリーチェ「はっ、私は……」

クズネツォワ「おや、カンピオーニ少将にフェリーチェ大尉」

提督「あら、クズネツォワ少将」

クズネツォワ「おはよう……いや、もう「こんにちは」だな」

提督「そうですね、この時期のフィンランドは昼間が短いので分からなくなりそうですが」

クズネツォワ「イタリア人の君からすればそうかもしれないな」

提督「ええ……ところで、何か私に用がおありでしょうか?」

クズネツォワ「ダー。君は昨晩、私の部屋に忘れ物をして行っただろう。それを返しに来たのだ……ほら」そういって盗聴器入りの真珠のイヤリングを取り出し、提督の手に載せた……

ニッカネン「カンピオーニ少将? 昨夜はクズネツォワ少将の宿泊しているホテルで一晩お過ごしになったのですか……?」

提督「あー……それは、その……会議の内容について少々質問があるからと……で、夕食をご一緒したのですが遅くなってしまったので、そのまま……///」

ニッカネン「……そうですか、なるほど」頬を紅くしてしどろもどろな返事をする提督に醒めた視線を向けるニッカネン……

クズネツォワ「とにかく、これはお返しする……ああ、それとフェリーチェ大尉」

フェリーチェ「何でしょうか」

クズネツォワ「いや、聞くところによるとこのイヤリングは君からカンピオーニ少将への個人的なプレゼントだそうだな……実に素敵な品物だ」

フェリーチェ「恐縮です」

クズネツォワ「いや、なに……ところで一体どこに行けばこういったものが手に入るのか、非常に興味があるのだが」

フェリーチェ「そうですか? てっきりモスクワにもこうした品物を扱う店は数多くあると思っておりましたが」

クズネツォワ「ふむ、そうだな……とにかく、今後はこういったことがないようにした方がいいだろう」

フェリーチェ「そうですね。アクセサリーを置き忘れたり、うっかり水の中に落としたりしないよう気を付けたほうがいいでしょうね」

クズネツォワ「そうだな……では失礼する」

フェリーチェ「……ふー」

提督「ミカエラ、あれって……」

フェリーチェ「ええ、クギを刺しにきたの……さすがに正面切って顔を合わせると肝が冷えるわ」

ニッカネン「クズネツォワ少将は一筋縄で行くような人物ではないと噂に聞きます。十分ご存じのこととは思いますが……」

フェリーチェ「ええ、ありがとうございます。ですがいつかは誰かが「猫の首に鈴」をつけなければなりませんから」

提督「あれはどちらかと言えば猫と言うよりはアムールトラだけれど……」

フェリーチェ「それでも貴女からすれば「ネコ」なのは同じ……でしょ?」

提督「ノーコメント」

ニッカネン「カンピオーニ少将? まさかとは思いますが……」

提督「……クリスティーナ。制服を着ていない時の私の行動についてはしゃべらない自由もあるはずよね?」

ニッカネン「ええ、もちろん」

提督「ならそういうことで……ね?」

ニッカネン「分かりました……話を戻しますが、市街散策などいかがでしょうか」

提督「ええ、ぜひ……せっかくクリスティーナが誘ってくれたんですもの♪」後半は耳元に口を寄せて、甘い声でささやいた……

ニッカネン「……はい///」

…軍事博物館…

ニッカネン「……軍人としては光栄ですが、せっかくの自由時間に訪問するのがこのようなお堅い施設で良いのですか?」

提督「ええ。ヘルシンキ旧市街も素敵だけれど、初日にある程度は回ることが出来たから……それに、色々と用意してくれているのでしょう?」

ニッカネン「それはもう……といっても、実銃の試射くらいしか出来ませんが」

提督「それだけ体験できれば充分よ♪」

フェリーチェ「何しろフランチェスカは射撃が趣味だから……普段は大きい音が嫌いなくせにね」

提督「だって、自分が撃っている間は気にならないもの♪ よいしょ……っと」

…制服を汚さないようにと用意してもらったフィンランド軍の野戦服に着替えると、博物館の館長を兼ねている予備役少佐の解説を聞きながら、戦中・戦後のフィンランド軍が使ってきた多種多様な兵器を観察して回る……冬戦争や継続戦争で改造をくり返しながら戦力として役立ててきたそれらの兵器は、提督にとってなじみ深いイタリアの兵器を始めドイツ、スウェーデン、あるいはイギリス、フランス、はたまたポーランドといったものから、ある意味では主力とも言える鹵獲品のソ連製までさまざまで、どれもよくレストアされ、きちんと管理されている…

ニッカネン「これは対戦車砲の牽引などで活躍したソ連製のT-20「コムソモーレツ」小型トラクターです」

提督「可愛らしいトラクターね。マリー……フランス海軍の友人の鎮守府にあった「ルノーUE」やイギリスの「ブレンガン・キャリア(ユニバーサル・キャリア)」、あるいはイタリアのL3「カーロ・ヴェローチェ」を思い出します」

ニッカネン「そうですね。性格としては「カーデン・ロイド」豆戦車から発展した一連のシリーズによく似ています……」と、館長が何やらニッカネンに話しかけた……

ニッカネン「カンピオーニ提督……いま館長が「せっかくですから屋外射撃場までこれに試乗していきませんか?」と申しておりますが」

提督「よろしいのですか? では、お言葉に甘えて♪」

…屋外射撃場…

提督「あいたた……お尻が痛くなっちゃったわ。それにエンジン音も結構大きかったし」

…提督たちは「コムソモーレツ」の後部にある開放型の木製シートに腰かけて屋外射撃場までやって来たが、足回りはごくあっさりした構造なので地面の起伏に合わせてガタンゴトンと派手に揺れ、エンジンの排気がもうもうと立ちこめた……よいしょと脇に降りても、まだ身体の中に振動が残っている気がする…

フェリーチェ「乗ってみたいと言ったのは貴女でしょうが」

提督「まぁね……こういうのもいい経験よね♪」

ニッカネン「あまり乗り心地がいいとは言えなかったと思いますが……大丈夫でしたか」

提督「ええ、大丈夫よ」

ニッカネン「それなら良かったです……では、こちらがカンピオーニ提督に体験していただく銃です」屋外射撃場の台の上には、現用のものからクラシカルなものまで、数種類の軍用銃が並べてある……

提督「こんなにたくさん用意して下さって、ありがとうございます」英語とつたないフィン語のちゃんぽんで、博物館の職員にお礼を言う提督……

館長「いえ、興味を持っていただいて嬉しいですよ……どうぞ一通り試してみて下さい」他のレンジには現役下士官らしい数人が入っていて、集中した様子で爽やかな森の中にある的に向けて射撃練習をしている……提督は耳当てを受け取ると館長から一通りの操作手順を聞いて、一挺を手に取った……

ニッカネン「それは「スオミ・KP31」短機関銃です。ソ連の「バラライカ」ことPPSh-41短機関銃に似ていますが、登場したのは1931年ですから、こちらの方が先ですね」

提督「なるほど……すごくずっしりしていますね」木製ストックにドラムマガジンのついたクラシックな造りの短機関銃は「ベレッタM12S」や「フランキLF57」といった短機関銃どころか、提督が士官学校で扱ったことのある「ベレッタBM59」自動小銃と比べても重く、がっちりしている……手に軍用の防寒ミトンをはめて耳当てを付けると、射撃場の的に向かって銃を構える……

館長「では、いつでもどうぞ」

提督「ええ……撃ちます」

…射撃時にボルトと連動しないよう独立している槓桿(コッキングハンドル)を引いて初弾を送り込むと、引き金を引く……途端に銃口から「バリバリッ……!」と威勢良く9×19ミリの銃弾が撃ち出され、硝煙が立ちこめる……弾倉を含めた銃の自重がたっぷり7キログラム近いこともあって跳ね上がりはほとんどなく、腕が抜けそうなほどの自重を除けば素直によく当たる…

提督「なるほど……重い分だけ跳ね上がりが少ないですね」

ニッカネン「その通りです。それに本来この銃は短機関銃というよりは、スキー部隊が奇襲の際に使う「9ミリ口径の軽機関銃」といった扱いでしたから……とのことです」

提督「そう考えると納得ですね……それから、これは「ヴァルメRk62」ですか」

ニッカネン「ええ、フィンランド軍の現用自動小銃です。操作系はAK……つまりカラシニコフ突撃銃と同じです」

提督「なるほど、海軍士官学校では東側の銃器を扱う事がないので興味深いです」

…ある程度聞きかじりの耳学問でカラシニコフの操作手順は知っていたが、実際に手に取るとフィンランド軍が信頼するその頑強さがよくわかる……その上でヴァルメ62にはフィンランドらしい実用性に優れたアレンジが加わっていて、とても頼もしい一挺に仕上がっている…

館長「どうぞ、ご自由に撃ってみて下さい」

提督「……撃ちます!」ダダッ、ダダッ、ダダッ!

ニッカネン「いかがですか」

提督「そうですね、思っていたよりはマイルドでしたが……何しろ最近撃った銃と言えばショットガンかピストルがせいぜいだったので、少し苦戦しました」弾倉を抜いて薬室の弾をはじき出すと、苦笑いを浮かべて台に置いた……

ニッカネン「少将はそうおっしゃいますが、館長は「大変お上手だ」と言っていますよ」

提督「ふふ、そう言われるとお世辞でも嬉しいですね……せっかくですから残りの銃も試させて下さい♪」すっかり乗り気になっている提督と、熱心に話を聞き感想を述べてくれる提督に嬉しくなって、あれもこれもとコレクションを持ち出してきた館長……

フェリーチェ「やれやれ、これは長くなりそうね……」

ニッカネン「でも、喜んでもらえたようで良かったです」

フェリーチェ「……まるでクリスマスプレゼントをもらった子供みたいにね」

…昼食後…

提督「はぁ……美味しい」

ニッカネン「……午前中は射撃を楽しんでもらえたようで何よりです」

提督「ええ、おかげでとても貴重な経験が出来たわ♪」ヘルシンキ市内の老舗レストランで昼食をとり、食後のコーヒーを楽しんでいる提督たち……

フェリーチェ「博物館の館長とずいぶん小火器談義に花を咲かせていたものね……」

提督「だって、なかなかフィンランドの銃を手にする機会なんてないもの……クリスティーナには苦労をかけたわ」

ニッカネン「いえ、そんな……///」

フェリーチェ「こほん……ところでニッカネン少佐」提督がニッカネンに対してテーブル越しに微笑みを向けているのをみて、横合いから声をかけた……

ニッカネン「あぁ……はい、なんでしょう」

フェリーチェ「午後のスケジュールですが、このまま旧市街の散策と言うことでよろしいでしょうか」

ニッカネン「はい、そのつもりです」

フェリーチェ「分かりました」

提督「なぁに? もしかしてまた用事?」

フェリーチェ「いいえ。済ませるべきものはすっかり済ませたわ」

提督「なら心おきなく街歩きが楽しめるわね?」

フェリーチェ「美人を見るとすぐフラフラとどこかに行ってしまう、どこかの誰かさんのお守りさえなければね」

提督「誰の事かしら?」

フェリーチェ「その大きな胸に手を当てて考えてみることね」

提督「……私の胸がどのくらい大きいか、ミカエラはよくご存じだものね♪」フェリーチェの耳元に顔を寄せ、いたずらっぽくささやいた……

フェリーチェ「まったく、相変わらずよく口が回ること……」

…数分後…

ニッカネン「あの、カンピオーニ提督。一つお願いがあるのですが……」コーヒーも飲み終わりかけたころ、ニッカネンが遠慮がちに切り出した……

提督「ええ、どうぞ?」

ニッカネン「申し訳ありません……その、硬貨を貸していただけませんか?」

提督「硬貨ですか? 少し待って下さいね……」制服のポケットに入れてある革の小銭入れを取り出すと、中をかき回した……

提督「はい、ありましたよ」五ユーロ硬貨を取り出すと、包み込むような手つきでニッカネンの手のひらに載せる……

ニッカネン「ありがとうございます」

提督「いつでもどうぞ……でも、どうして硬貨を?」

ニッカネン「えぇと……実はその、これを///」いま提督が渡したばかりの硬貨を添えて、小ぶりな長方形の包みを手渡す……

提督「あら、そんな……わざわざプレゼントを?」

ニッカネン「ええ……せっかく出会えたのですし、もらっていただけると嬉しいです///」

提督「ありがとう、クリスティーナ……開けてもいいかしら?」

ニッカネン「どうぞ、ぜひそうしてください」

提督「何かしら……まぁ♪」

…包み紙をめくってニスを塗った飾り気のない、しかし丁寧に作られた箱を開けると、中には一振りのフィンランド・ナイフが収まっていた……フィン語で「プーッコ」と呼ばれる、つばのないシンプルな片刃のナイフは峰の方に向けて刃が反っている……柄はしっかりした角製で、刃渡りはだいたい十センチあまり……握ると角製の柄が持つ表面のでこぼこが滑り止めの役目を果たしていて、刃と柄のバランスもちょうどいい…

ニッカネン「その、どうでしょうか……///」

提督「ええ、とっても嬉しい……それに、フィンランドでナイフを贈られるのはとっても名誉な事だって聞いたことがあるわ」

ニッカネン「ご存じでしたか」

提督「ええ」

ニッカネン「……その、最初は別のものにしようかとも思ったのですが……私は化粧品や服など詳しくないですし……それならいっそ実用として使えるものの方が良いかと思いまして、それで……柄は私が仕留めたトナカイの角を使っています///」

提督「そんなにしてくれて嬉しいわ、クリスティーナ……それで硬貨が必要だったのね♪」

ニッカネン「ええ、昔からあるしきたりですので」

提督「ありがとう、大事に使わせてもらうわ」

…出張最終日…

フェリーチェ「今日で帰国だけど、出張はどうだった?」

提督「そうねぇ。短かったようで長かったような、長かったようで短かったような……とにかく今は鎮守府に戻って、ベッドでゆっくりしたいわ」

フェリーチェ「ふっ……相変わらずね、そういうとこ」

提督「仕方ないじゃない、そういうふうに出来ているのよ」

フェリーチェ「買い物は済んだ? 荷物は詰めた?」

提督「ええ。鎮守府に戻ってすぐ渡したいお土産はトランクに詰め込んで、あとのものは航空便で送るわ」

フェリーチェ「ま、そうなるでしょうね……そろそろ時間よ、行きましょう」

…ヘルシンキ空港・第二ターミナル…

ニッカネン「……それでは、よい空の旅を」

提督「お見送りありがとう、クリスティーナ……クリスマスにはメッセージを送るわ♪」親しみを込めて腰に腕を回し、唇に優しくキスをした……

ニッカネン「はい、楽しみにしています……///」

フェリーチェ「カンピオーニ少将」まるで生ゴミに呼びかけるような口調で声をかける……

提督「あら、何かしら?」

フェリーチェ「そろそろチェックインの時間です」

提督「まぁ……クリスティーナ、せっかく仲良くなれたのに離ればなれになるのは辛いことだけれど、寒い冬もいつか終わって春が来るように、私たちもきっとまた逢えるときがくるわ」

ニッカネン「ええ、そうですね……」

提督「それに別れは辛いけれど、淋しくはないわ……だってクリスティーナ、私には貴女がくれたプーッコ(フィンランドナイフ)があるもの。猟で使うたびに、刃を研ぐたびにきっと貴女の事を思い出すわ」

ニッカネン「そうあってくれれば嬉しいです」

提督「ええ、もちろん。それから、今度は貴女がイタリアへいらっしゃいな……ローマの遺跡や美術館、博物館に美味しいもの……案内したいところがたくさんあるわ♪」

ニッカネン「機会が出来たら、ぜひそうします」

提督「それじゃあ、その時を楽しみにしているわね♪」もう一度ほっそりした身体を抱きしめ、唇に音立てて口づけする提督……

女性グラウンドパーサー「あの、お客様……」ブロンドの髪をしたフィンエアーのグラウンドパーサーが声のかけどころに困りつつ、フェリーチェにそっと呼びかける……

フェリーチェ「ああ、すぐに連れて行きますから……フランチェスカ」

提督「それじゃあまた会いましょうね、クリスティーナ……チャオ♪」最後に少し気取って飛びきりのウィンクと、人差し指と中指での投げキッスを送ってゲートをくぐった……

ニッカネン「……チャオ、フランチェスカ///」

…ローマ・フィウミチーノ空港…

提督「うーん……懐かしのローマ、この空気や喧騒さえも懐かしい気がするわ」

フェリーチェ「たった数日の出張でそれじゃあ困るわね……それととりあえずはここでお別れ。私は情報部に寄って成果の引き渡しと任務報告(デブリーフィング)を済ませなきゃいけないから」

提督「今から?」

フェリーチェ「ええ、そうよ」

提督「もうクリスマスも近いのに?」

フェリーチェ「情報部にはクリスマスも週末もないの」

提督「……私にはついて行けそうにないわ」そう言うと驚いたような表情をつくり、大きく肩をすくめてみせた……

フェリーチェ「ついて来いなんて言った覚えはないわよ……はいこれ、グロッタリーエ空軍基地までの搭乗許可書」

提督「グラツィエ、ミカエラ」

フェリーチェ「いいのよ……それと明後日にはタラントの管区司令部で貴女への聞き取りを行う予定だから、今のうちに想定問答でも考えておく事ね」

提督「考えただけでげんなりするわ……」

フェリーチェ「バカ言わないでよ。本当なら貴女にもこのままスーペルマリーナ(海軍総司令部)までついてきてもらって、情報部の担当者から半日はあれこれ聞かれるはずなんだから……これでもずいぶんと大甘なのよ?」

提督「それもそうよね、まさか官費で北欧旅行を楽しませてくれるはずはないし……貴女が手心を加えてくれたのよね、ありがと」

フェリーチェ「ノン・ファ・ニエンテ(いいのよ)……これもしばらく同棲していたよしみと、私からのささやかなクリスマス・プレゼントってことで」

提督「嬉しいわ……それじゃあ、またね♪」

フェリーチェ「ええ」

…しばらくして・提督執務室…

デルフィーノ「はい、こちらタラント第六鎮守府です」

提督「チャオ、デルフィーノ♪ 私だけれど、聞こえる?」

デルフィーノ「提督っ♪ もうイタリアですか?」

…提督の留守中、交代で執務室に詰めていた艦娘たち……電話が鳴った時にいたのは現「秘書艦」の片方である中型潜「デルフィーノ」で、イルカの艦名に似つかわしい濃灰色のピッタリとしたセーターと白いスラックスのツートンで、受話器越しに聞こえる提督の甘い声を聞くと喜びのあまり腰を浮かせた…

提督「ええ、いまフィウミチーノから電話をかけてるの。順調に行けば……そうね、1600時ころにも帰れると思うわ」

デルフィーノ「わぁぁ、嬉しいですっ♪ なにか用意しておきましょうか?」

提督「そうねぇ……とりあえずはふかふかのベッドとたっぷりの夕食、それに温かいお風呂かしらね」

デルフィーノ「はい、全部用意をしているところですよ」

提督「グラツィエ、みんな気が利くわね。それじゃあ……」

デルフィーノ「?」

提督「……早く貴女の可愛い顔が見たいわ♪」

デルフィーノ「あぅ、提督……っ///」

提督「ふふっ♪ それじゃあできるだけ早く帰るようにするから……飛行機の時間が近いから、またね?」

デルフィーノ「はい……っ///」ガチャリと受話器を置くと、赤くなった頬に手を当てた……

アッチアイーオ「……電話が鳴ってたみたいだけど、提督から?」ともに秘書艦を務めている中型潜「アッチアイーオ」が、帰りに備えてベッドを整えていた提督寝室から顔を出す……

デルフィーノ「そう、提督から……///」

アッチアイーオ「それで? 思わずあなたが濡らしちゃうような口説き文句以外に何か言ってた?」

デルフィーノ「は、恥ずかしいからやめてよぉ……///」

アッチアイーオ「周知の事実を今さら隠し立てしたって無駄なのよ……いいから「なにが欲しい」とか「なにがしたい」とか、あったでしょ?」

デルフィーノ「それなら「夕食とお風呂、それにベッドの用意をしておいて」って」

アッチアイーオ「ならどれも準備万端ね……いつ頃戻るって?」

デルフィーノ「1600時には戻れると思うって」

アッチアイーオ「そ、ならみんなにもそう言っておかないと……」

…夕方…

提督「……すっかり遅くなっちゃったわね」

…グロッタリーエ空軍基地の駐車スペースに預けておいた「ランチア・フラミニア」を受け取ると、受付の下士官に「早めのクリスマスプレゼントよ」と、ヘルシンキで買ったチョコレートの大袋を渡してきた提督……と、そこまでは良かったが、道中でちょっとした渋滞に巻き込まれてしまい、抜け出して鎮守府への道を飛ばしている間にも、日がどんどん傾いていく…

提督「焦らない焦らない……せっかちは事故のもと」そう自分に言い聞かせながらも足は自然とアクセルを踏みこみ、大柄だが走りのいいランチアはカーブの多い海沿いの道をクリアしていく……

提督「…」ちらりとメーターに目をやり、少し速度を落とした提督……それでもランチアの走りを信頼して、時速80キロは充分に出している……

…夕暮れ時・鎮守府…

提督「はぁ、急いでは来たけれど一時間は遅くなっちゃったわ……」暗証番号を打ち込んで正面ゲートを開け、鎮守府の本棟にゆるゆるとランチアを進ませる……と、本棟の前に集まっている艦娘たちの姿が見えた……

艦娘たち「「お帰りなさい、提督!」」

提督「ただいま、みんな……寒いのに表で待っていてくれたの?」

リットリオ「当たり前じゃないですか♪」

カヴール「皆、提督のお帰りを首を長くして待っておりましたよ……長旅お疲れさまでした」

アッチアイーオ「それにしても、遅れるなら遅れるって連絡しなさいよ……心配したんだから///」

ルチア「ワンワンッ!」

提督「ごめんなさいね、道路で渋滞につかまっちゃって……」

ライモン「……お帰りなさい、提督。 わたし、提督が帰ってくるのを待っていました///」恥ずかしげに提督の頬へ軽いキスをしたライモン……

提督「ええ、ただいま……♪」

マエストラーレ「提督、提督っ♪」

オリアーニ「なんだか久しぶりな感じ……ね、キスして?」

ルビノ「早く提督の熱い唇をちょうだい……っ♪」

提督「もう、焦らなくたって私はいなくなったりしないわよ?」そう言いながらも、挨拶代わりにキスをして回る提督……

カラビニエーリ「こら、そんなにまとわりつかれたら提督が歩きにくいでしょうが」

提督「いいのいいの、むしろ出張から帰ってきただけなのにこんなに歓迎してくれて嬉しいくらい……カラビニエーリもいらっしゃい♪」

カラビニエーリ「そ、それじゃあお言葉に甘えて……///」

リットリオ「提督っ、私もいいですか♪」

提督「もちろん♪」

…年相応の女の子のようにきゃあきゃあと笑いさざめきながら、鎮守府のこまごました出来事や面白かった出来事を一斉に話す艦娘たち……提督は辺りに笑顔を振りまきながら相づちを打っていたが、玄関ホールまで入った所で軽く手を鳴らした…

提督「はいはい、そう一斉に話されたら何が何やら分からなくなっちゃうわ。 それに荷物も降ろしたいし、続きは夕食の後にでもゆっくりと……ね?」

カヴール「そうですね、暖炉の前でゆっくりワインでもいただきながら……ということにいたしましょう♪」

ライモン「では、荷物はわたしが……」

提督「ありがとう、ライモン」

デルフィーノ「お部屋の用意は済ませてありますよ」

提督「助かるわ。 正直、ちょっと疲れちゃったもの。お風呂をいただいてさっぱりしたら夕食にするわ……みんなはもう夕食を済ませたの?」

ドリア「いいえ。みんな「提督が帰ってくるまで待とう」と……保温容器に入れてありますから、まだ熱いままですよ」

提督「そんな、わざわざ待たなくても良かったのに……それじゃあお風呂でほこりを流してくるから、もう少しだけ待っていてちょうだいね?」

…大浴場…

提督「はぁぁ……♪」

…古代ローマ風の豪奢な浴槽に「ちゃぽん……」とつま先から脚を入れ、それから滑り込ませるようにして身体をお湯に沈めた提督……鎮守府の温泉は裏手に湧いている源泉の具合によって泉質が多少変化するが、今日はほのかな緑白色をしていて、誰かにそっと抱きしめられた時のようにじんわりと温かい…

アッチアイーオ「……提督、せっかくだから洗ってあげましょうか?」

…暖かければ暖かいほど柔らかくなり、冷えるとツンとした態度、さらに寒くなるとすっかり心がもろくなってしまうアッチアイーオ(鋼鉄)……今は結い上げた髪にタオルを巻いた姿で提督の横に腰かけ、ガンブルーを思わせる艶やかな黒い瞳をちらちらと提督の裸身に走らせている…

提督「そうねぇ、それじゃあお願いしようかしら……」

アッチアイーオ「分かったわ、それじゃあ私が流してあげる♪」

…浴槽から出てカランの前に座った提督の後ろに回るとご機嫌な様子でシャンプーを取り、提督の髪を洗い始めた……ほっそりした、しかし意外なほど力のある指が心地よく頭皮を撫で、提督の腰まである長い髪をていねいに梳いていく……お湯を含んでずっしりとした髪に甘いシャンプーの香りが絡みつき、アッチアイーオの指が滑っていくたびに心地よい刺激が伝わってくる…

アッチアイーオ「それじゃあ、流すわよ……熱くない?」

提督「いいえ、ちょうどいい具合よ……こんなに気持ち良いと眠くなってきちゃうわね」

アッチアイーオ「だからってここで寝ないでよ?」

提督「ええ、そうするわ」

アッチアイーオ「はい、おしまい……次は身体を洗ってあげる///」

提督「それじゃあ前は出来るから、背中をお願いしようかしら」タオルで頭をまとめ上げると、豊かな胸からほどよくくびれたウエスト、そしてむっちりしたヒップへと続く白く滑らかな背中があらわになる……

アッチアイーオ「え、ええ……///」何度かベッドを共にしたことがあるとはいえ、明るい大浴場でしげしげと眺めるのは少々気恥ずかしい……

提督「アッチアイーオ?」

アッチアイーオ「ううん、何でもないわ……」スポンジでもこもことせっけんを泡立てると、ふわっと花束のような甘い香りが立ちのぼった…肩甲骨から下へ向かって、柔和なラインを持った提督の背中にスポンジを走らせると、まるで愛撫しているような気分になってくる……

提督「あ…そこ、気持ちいい……んっ♪」

アッチアイーオ「そ、そう?」提督が発する甘い声にドキリとして、返事がついうわずってしまう……

提督「……ねえ、アッチアイーオ♪」

アッチアイーオ「な、なに?」

提督「なんだか億劫になっちゃったから、前もお願いできるかしら……♪」鏡越しにアッチアイーオの表情を見ると、提督の金色の瞳にいたずらっぽい…そしてどこか甘くいやらしい光を宿すと、からかうような…あるいは誘うような声を出した……

アッチアイーオ「べ、別にいいけど……?」

提督「ならお願いするわ、戻ってくるときに急いだりして結構汗ばんじゃったから……丹念にお願いね♪」

アッチアイーオ「……っ///」

…しばらくして・食堂…

アラジ「……ずいぶん遅かったね?」

アッチアイーオ「///」

提督「そうね、なにしろ髪が長いものだから♪」

…まだ余韻を残しているようなアッチアイーオが顔を赤くしてそっぽを向いたのに対して、にこやかに微笑みながらさらりと言い逃れをする提督……もちろん察しのいい一部の艦娘たちにそんなありきたりな嘘が通用するわけもないが、恥ずかしげなアッチアイーオのためについた言い訳であることを分かってほしいという含みを持たせた…

ドリア「そうですね、チェザーレも髪を乾かすとなると大騒ぎですし♪」口元を手で押さえてころころと笑いながら、髪にうるさいチェザーレを引き合いに出してからかった……

チェザーレ「む、それは致し方あるまいが……」

ディアナ「さあさあ、提督もお腹を透かしていらっしゃるのですから……まずは夕食にいたしましょう」

リベッチオ「賛成っ♪」

提督「そうね、お風呂に入ってさっぱりしたらお腹が空いてきたわ♪」

…すっかりクリスマスムードの食堂で楽しげにしている艦娘たちを眺めつつ、定位置に腰かけた提督……最初は遠慮していたが周囲にやいのやいの言われて横に座ったライモンが、グラスに白ワインを注いでくれる…

カヴール「では改めて……お帰りなさいませ、提督♪」

提督「ええ♪」

…ディアナは旅の疲れで食欲が出ないだろうと気を利かせてくれていて、テーブルには家庭的なミネストローネ、それと作り置きの野菜マリネや牛の生ハムスライスといった、さっぱり食べられるものが並んでいる…

ディアナ「いかがでございましょう?」

提督「ええ、とっても美味しいわ……♪」すっきりと飲み口のいいシチリアの白ワインをお供に、暖炉の火がかもし出す暖かな雰囲気の中で艦娘たちとゆったり食事をとる……

ライモン「もう少しいかがですか、提督?」

提督「ありがとう。ライモン、ところでワインをもう少しいかが?」

ライモン「ええ、それじゃあ半分ほど……///」

…食後…

提督「ふー、美味しかったわ……ディアナ、お皿洗いを手伝いましょうか?」

ディアナ「お帰りになったばかりの提督にそのようなお願いはいたしません……それより、あの娘たちに土産話でもしてあげて下さいませ」

提督「分かったわ。それじゃあお皿洗いは後にして、ディアナもいらっしゃいな♪」

ディアナ「まぁ……では、よしなに」

…暖炉のそばに引き寄せた椅子や暖炉の前に敷いてある大ぶりの絨毯には艦娘たちと、鎮守府の皆に可愛がられている純白の雑種犬「ルチア」が三々五々と集まり、椅子に座って火を眺めていたり、あるいは直接絨毯に座ったり寝そべったりしている……中の何人かはクリスマスシーズンということでつまみ食い自由にしてある「パンドーロ(黄金のパン)」といった伝統焼き菓子をつまんだり、果物やスパイスの入ったホットワインやキアンティを垂らしたコーヒーで暖まっている…

提督「よしよし♪」ルチアのふんわりと長い毛をブラシでくしけずりつつ、ときおり耳のあたりや尻尾の付け根をかいてあげる提督……

ルチア「ワフッ……♪」

デュイリオ「うふふっ♪ ルチアも提督がお戻りになって、安心したようですね♪」

…おっとりした妙齢のお姉さまである「カイオ・デュイリオ」は自分のペットであるカラスを肩に止まらせつつ揺り椅子に腰かけ、紅に金糸で模様をあしらった豪奢なガウン姿でちびちびとブランデーを舐めている……時折かたわらに置いてある小皿からクルミを取るとカラスに食べさせて、それから頭を撫でたり、羽根を整えてあげたりしている…

カラス「カー」丸い利口そうな目をくるくると動かし、それからデュイリオの頬にちょんと身体を寄せると頬ずりのような動きをした……

デュイリオ「まぁまぁ……それじゃあもう少しだけあげましょうね♪」

カルロ・ミラベロ「それで、提督のお眼鏡にかなうような綺麗なお姉さんはいた?」絨毯に寝そべり頬杖をついて、脚をぱたぱたと動かしている……

提督「もう、別に北欧へ遊びに行ったわけじゃないのよ?」

エウジェニオ「あら、そうなの? でも、出会いの一つや二つはあったでしょう?」

提督「それは、まあ……なかったとは言わないけれど♪」

ガリバルディ「やっぱりね……それで?」

提督「そうねぇ。例えばスウェーデンのラーセンっていう大佐なんかはとっても綺麗な人で……まるでグレタ・ガルボみたいで、惚れ惚れするような美しさだったわ♪」

エウジェニオ「そう。ところで提督が大事そうに部屋へ持って行った贈り物のナイフ……あれの送り主のフィンランド人とはずいぶん仲良くなったみたいだけれど、その話はしないの?」

提督「……どうしてあの贈り物がナイフだって分かったの」

エウジェニオ「ふふ、私の目をごまかそうとしてもそうは行かないわ♪ まず、あの箱の様子だと中身は長細いものでしょうし、かといってペンにしては大きすぎる……これといったロゴやブランド名もないから、送り主の手作りかそれに近い素朴な何か……で、今回の出張先はフィンランドでしょ」

提督「え、ええ……」

エウジェニオ「フィンランドと言えばフィンランド・ナイフ(プーッコ)が有名だし、あの飾り気のなさはスウェーデン人よりは質素倹約を重んじるフィンランド人からのプレゼントにふさわしい……ってところね。どう?」

提督「……エウジェニオにはかなわないわね」

…その晩・提督寝室…

提督「ねぇライモン、一緒に入る?」

…ワインやカクテルといったお酒、それに暖炉の火ですっかり暖まった提督がぽおっと赤みを帯びた顔に柔和な笑みを浮かべつつ、布団を持ち上げすき間を作った…

ライモン「あ、いえ……わたしは自分の部屋で休みますから///」

提督「……いいの?」

ライモン「そんな誘い方……ずるいです///」くるぶしまである純白のネグリジェをするりと脱ぐと、滑るようにベッドへ入ってきた……

提督「ふふ、いらっしゃい♪」

ライモン「提督……///」

提督「ライモン……こうやって名前を呼ぶのも久しぶりな気がするわ♪」

ライモン「わたしも……待ち遠しかったです///」

提督「嬉しい……んっ♪」

ライモン「ん……ふ///」

提督「ちゅっ……んちゅ…ちゅる……っ♪」

ライモン「ん、んぅ……ちゅぱ///」

提督「ぷは……ライモン、貴女の好きなようにしていいのよ?」

ライモン「そ、そうですか……それじゃあ///」

…提督の両肩に手を置き、ずっしりした乳房に顔を埋めるようにしてぎゅっと身体を寄せるライモン……提督の谷間にライモンの暖かい吐息が微風となって吹きつけ、しっとりしたライモンの白い肌が提督の柔肌と吸い付くように重なり合う…

提督「よしよし……♪」

ライモン「あ……っ///」

…明るい、しかしけばけばしくはないライモンの金髪をくしけずるように撫でる提督……ベッドの白いシーツには提督の長い金色がかった髪がウェディングドレスの裾のように広がり、その上で抱き合っている二人はまるでひまわり畑で寝転んでいるように見える…

提督「……来て?」

ライモン「はい……///」ちゅぷ……っ♪

提督「んっ……ふふっ♪ ちゃんと、私の気持ちいいところ……」

ライモン「忘れるわけがありません……だって、フランチェスカ……貴女が教えてくれたんですから///」

提督「そうね。それじゃあ私も、ライモンが教えてくれたところ……♪」くちゅ……っ♪

ライモン「あ、あ、あ……っ///」

提督「ふふ、可愛い声……もっと聞かせて?」ぬりゅっ、くちゅ……り♪

ライモン「ふぁぁ……あっ、ん……あぁ……んっ///」

提督「……ほら、好きにしていいのよ?」

ライモン「だったら……手を止めてください……っ///」

提督「ふふ、仕方ないじゃない。いつも可愛いライモンがそういうトロけた表情をするの……ベッドの中でしか見られない特別な顔で好きなんだもの♪」

ライモン「……も、もうっ///」顔を真っ赤にしたライモンが照れ隠しに怒ったような表情を浮かべ、提督の濡れた花芯に中指と薬指を滑り込ませた……

提督「ひゃぁん…っ♪」

ライモン「貴女は、いつもそうやって優しくて甘い言葉をかけてくれるから……だから……っ///」じゅぷっ、ぐちゅぐちゅ……っ♪

提督「あっ、あっ、あぁぁ……んっ♪」

ライモン「だから、わたしだけじゃなくてみんなが貴女の事を好きになって……ずるい女性(ひと)です……っ///」くにっ、こりっ……ちゅぷ……っ♪

提督「あぁぁぁん……っ♪」長い余韻を残しつつ、甘くねだるような声で絶頂した提督……嬌声をあげながらも片手はライモンの滑らかなほっそりした腰に回され、もう片方の手はライモンのとろりと濡れた秘所にあてがわれ、中にぬるりと滑り込んでいる指が粘っこい水音を響かせながらなめらかに動く……

ライモン「あぁぁんっ……フランチェスカ……ぁ///」

提督「ねえ、ライモン……」太ももを重ね合わせて「ぬちゅっ、くちゅっ……♪」とみだらな水音を響かせながら、耳元でささやいた……

ライモン「なんですか、フランチェスカ……?」

提督「ええ、貴女にちょっと早めの……クリスマスプレゼント♪」ぐりっ、ぷちゅ……っ♪

ライモン「あ、あぁぁぁぁ……っ♪」

提督「……うふふっ、しばらくご無沙汰だったぶん……今夜は好きなだけしていいから、ね?」

…翌朝…

デルフィーノ「おはようございます、提督」

提督「おはよう、デルフィーノ。 ちょっとだけ声を落としてもらえるかしら……ね?」ベッドのふくらみを指し示して、パチリとウィンクをした……

デルフィーノ「……あ、はいっ///」

提督「ふふ、ありがと♪」デルフィーノの頬におはようのキスをするとガウンを羽織り、浴室へ行って洗面台で顔を洗い、それからきっちりと歯を磨く……北欧出張の際に現地で買った、キシリトール入りだという歯磨き粉をさっそく使ってみる……

提督「……なるほど、確かにスッキリした感じはあるかもしれないわね」

…歯みがきと洗顔を終えて部屋に戻ると、デルフィーノがせわしなく動きながら朝刊と目覚めのコーヒーを用意してくれていた…

デルフィーノ「朝のコーヒーと新聞です、提督。 お留守の時の分もとってありますから、読みたかったら後で読めますよ」

提督「グラツィエ……ん、いい香り」

デルフィーノ「今日のコーヒーはゴンダールが淹れたエチオピアです」

提督「ゴンダールだものね……美味しいわ」(※ゴンダール…当時の「イタリア領東アフリカ」(エチオピア)にある都市。世界遺産にもなった建築などで知られる)

デルフィーノ「それでは、また朝食の時に……///」

提督「ええ♪」窓を細めに開き、冷たいが清らかな冬の海風を少しだけ部屋に入れながらガウンにくるまり湯気の立つコーヒーを楽しむ提督……朝刊の「レプブリカ」を読んでいると、ライモンが目をこすりながら出てきた……

提督「おはよう、ライモン」

ライモン「おはようございます……朝のコーヒーはわたしが支度をしたかったのですが、寝過ごしてしまいました……」

提督「いいのよ……昨夜聞かせてくれた甘い声だけでお釣りがくるわ♪」コーヒーカップ片手にからかうような口調で言った……

ライモン「も、もう///」

提督「今日は何の予定もないし、荷物の整理が済んだらのんびりさせてもらうわ……それとライモンには、留守中にあった話でも聞かせてもらおうかしら」

ライモン「はい♪」

…朝食後・食堂…

提督「……それじゃあみんなに早めのクリスマスプレゼント♪」

…朝食を済ませてゆったりとした空気が流れている中、提督がトランク一杯買ってきた北欧三カ国のお土産を渡し始めた……当直や哨戒のために出撃している艦娘をのぞいた手すきの娘たちが食堂に集まり、それぞれ提督がふさわしいと思ったものや、本人が欲しがっていたものを受け取っている…

リベッチオ「提督、さっそく開けていい?」

提督「もちろん、貴女のために買ってきたのだから……喜んでもらえるとうれしいわ♪」

リベッチオ「何かなぁ……わぁ、素敵なマフラー♪」包みから出てきたのは長いふんわりしたクリーム色のマフラーで、褐色の肌と良く似合う……

提督「この間、出撃の時に首元が寒いって言っていたから……どう?」

リベッチオ「うん、うんっ♪ とっても暖かいよっ……ありがと♪」

提督「みんなにもそれぞれあるから……はい♪」いくら四姉妹とはいえ、いつも十把一絡げにしたようなお揃いばかりではつまらないだろうと、それぞれの好みに合わせて違う色や柄のマフラーを選んできた提督……

マエストラーレ「とっても嬉しいよ、提督♪」

提督「そう言ってもらえて良かったわ……でも、それならお礼のキスくらい欲しいわね♪」

マエストラーレ「ん、まかせて♪ んちゅ、ちゅる……っ♪」冗談めかした提督に対して、マエストラーレがくっつくように身体を寄せるとつま先立ちをし、提督の両頬を手で押さえると舌を滑り込ませた……夏の香りを残したような褐色の肌が近寄り、あどけなさの残る……しかし熱っぽいキスを浴びせてくる…

提督「んぅぅ……ぷは♪」

マエストラーレ「これで満足?」

提督「ええ♪ それにこれ以上したくても、ここでするわけにはいかないものね?」

リベッチオ「くすくすっ……提督がしたいならここでしたっていいよ?」ぱっちりとした目をくるくると動かしつつ斜め下から見上げるような、挑発的かつませた態度をとってみせる……

提督「ふふっ、リベッチオったら♪」

ライモン「……提督」

提督「あぁ、はいはい。 えぇと、これは……ディアナ」

ディアナ「まぁ、わたくしにもプレゼントを?」

提督「もちろん……貴女にはこれを」小ぶりな箱に入っていたのは三日月をあしらった銀のキーホルダーと、真珠をあしらった銀の髪留め……

ディアナ「あら、こんなに素敵なものを……」

提督「ほら、貴女がいつも使っているフィアット850……あれのキーには何も付いていなかったから、もし良かったらと思って」

ディアナ「とても嬉しいです、提督……♪」

…しばらくして…

提督「これでみんな配り終わったかしらね」

リットリオ「こんなにいいものをもらえて私は幸せですっ♪」

バリラ「ええ、本当に……お礼に提督の事をぎゅーってしてあげます♪」旧型の潜水艦ゆえに出撃の機会は少ないが、そのぶん鎮守府の潜水隊にとってのよきお母さんでもあるバリラ級のネームシップ「バリラ」が、その母性を存分に発揮して提督を抱きしめる……

提督「あんっ……♪」たわわな胸元に顔を埋めて、ミルクのような甘い匂いを吸い込みながら甘い表情を浮かべている提督……

デュイリオ「あらあら、でしたらわたくしも……♪」むぎゅ……っ♪

ドリア「それなら私もお邪魔させてもらいましょう♪」むにゅっ♪

提督「ふふっ、そんなに胸元に押しつけられたら窒息しちゃうわ……でもきっと、世界で一番幸せな窒息ね♪」三方から囲まれるようにして抱きしめられ、ご満悦の提督……

ライモン「……はぁ」

アッテンドーロ「やれやれ、姉さんったら……確かに提督はなかなかの美人だし性格も優しいけど、私にはあの女たらしのどこがいいのかいまだに分からないわ」

ライモン「仕方ないでしょう……だって一目見てからずっと好きなんだもの///」

アッテンドーロ「それはまたずいぶんと一途なことで……」

提督「んむ、んふぅ……ぷはぁ♪」

…提督もかなり長身な方だったが、それよりもさらに頭ひとつ分は大きい、優雅でおっとりした感じのするドリアやデュイリオといった「妙齢の」ド級戦艦であるお姉さま方、そしてはつらつとして可愛らしい表情と、それに似合わぬほどの高身長でメリハリのある身体をしたリットリオ級の娘たち……そんな艦娘たちに抱きつかれて、提督はまるで新婚かなにかのように抱きついてみたり軽い口づけを交わしたりといちゃついている…

アッテンドーロ「……ふぅ、仕方ないわね」

ライモン「何が……って、きゃっ!?」アッテンドーロに突き飛ばされるようにして、提督たちの間に飛び込んだライモン……

提督「あら、ライモン……ごめんなさいね? 貴女を仲間はずれにしちゃって」

ドリア「ふふっ、ライモンドも遠慮しないで……さあ、お姉さんの胸の中にいらっしゃい♪」

デュイリオ「くすくすっ、ドリアはライモンドの「お姉さん」にしてはずいぶんと艦齢(とし)の差があるようだけれど?」

ドリア「……ふふっ、それを言ったらデュイリオだってそうでしょう?」

デュイリオ「あら、なかなかお上手だこと♪」

提督「もう、こんなに瑞々しい身体なんだからお互いそういうことは言わないの……ね?」パチリとウィンクをすると、二人のたわわな乳房を下から支えるようにして軽く揺すった……

デュイリオ「あんっ……もう提督ったら♪」

ドリア「いたずらなお手々ですね♪」

カヴール「ふふ、ライモンドも遠慮しないでいいのよ?」

ライモン「///」自分の手にカヴールの白くて柔らかい手が重ねられると、そのままずっしりとした乳房に誘導されて真っ赤になる……

提督「ふふっ、ライモンはいつでも初々しくて可愛いわ♪」

エウジェニオ「同感ね……これじゃあ提督がいたずらしたくなっちゃうのも無理ないわ」

ガリバルディ「そうね、実に可愛いわ♪」

…暖炉脇の敷物に座って、提督が「誰でも自由に取っていいように」と置いたお土産のチョコレートをつまみつつ、泡立つスプマンテを傾けていたエウジェニオとガリバルディ……艦隊一の技巧派で相手をとろかすような女たらしであるエウジェニオと、それとは対照的に革命家らしく情熱的で、燃え上がるような女たらしのガリバルディ……その二人が「コンドッティエーリ(傭兵隊長)」型軽巡の先輩、あるいは従姉とでもいえる関係にあるライモンを眺めて舌なめずりをした…

提督「うふふっ、二人もそう思う?」

エウジェニオ「ええ……とっても美味しそう♪」

ガリバルディ「焼け付くような愛の炎を起こしてみたいわ♪」

ライモン「も、もう……みんなしてわたしの事をからかうんですから///」

提督「だってライモンが可愛いんだもの♪」

ガリバルディ「言えてるわ」

エウジェニオ「ええ……ところでジュゼッペ、お一つどうぞ♪」チョコレートを一つくわえると口を近づけた……

ガリバルディ「グラツィエ……ねえエウジェニオ、少し喉が乾かない?」

エウジェニオ「そうね、ちょっと暖炉で火照っているし……♪」

ガリバルディ「だと思ったわ……んくっ♪」スプマンテを口に含むと、しなだれかかるエウジェニオに口移しで飲ませた……

エウジェニオ「ふふ、美味し……♪」

提督「まぁ、ふふっ……二人は本当に絵になるわね」

ライモン「///」

…翌日…

提督「さてと、昨日はゆっくり休めたのだから……今日は書類を片付けないと」

デルフィーノ「私もお手伝いしますよ、提督」

アッチアイーオ「遠慮しないで任せておきなさい」

カヴール「事務書類の処理は得意ですから、任せて下さいな♪」

ライモン「及ばずながら、わたしもお手伝いします」

提督「みんな、ありがとう……それじゃあ手早く片付けましょうか」

…提督の執務机の上「未決」の箱に積み上がっているのは出張の間にも日々溜まっていたとおぼしき書類の山……内容を読んだ上でファイルするだけのものや、提督の手を借りずとも処理できそうなものは秘書艦のデルフィーノとアッチアイーオを始め、書類仕事の得意な艦娘たちがある程度は片付けてくれていたが、それでもひとつの鎮守府に届く書類となると相当なものがある…

提督「請求書、納品書、領収書……通達に納品書、また領収書……」

カヴール「では納品書の確認は私が」

提督「ええ」

アッチアイーオ「ファイルに綴じるのは私がやるわ」

提督「お願いね」

デルフィーノ「領収書の値段があっているかどうかの計算は私がやりますねっ」

提督「助かるわ、デルフィーノは計算が得意だものね♪」

ライモン「えぇと、それじゃあわたしは……」

提督「ライモンは私の隣で、書いたものに誤りがないか確認してくれる? 重要な役目だからぜひ貴女に頼みたいわ」

ライモン「はい///」

カヴール「まぁまぁ、提督ったら公私混同ですね♪」

提督「司令官特権よ♪ ……ん、この場合はどの予算で執行すればいいのかしら?」

…納品書に書いてある品目や値段があっているかどうか、決済の日付が正しいかどうか、用途別に付いている予算から正しい要目を選んでいるかどうか……ラップトップコンピュータの画面と送られてきた書類を突き合わせながら一つひとつ確かめていく…

提督「えぇと、この場合は諸雑費からの支出で……」

…ピンクや黄色の付せんだらけになっている「支出処理マニュアル」をめくりながら、ときおりこめかみに手を当てて眉をしかめ、カタカタとキーボードに入力しながら、思い出したようにコーヒーカップに手を伸ばす……

…しばらくして…

デュイリオ「……みんなお疲れでしょう、しばらくわたくしが代わりますよ♪」

ペルラ(ペルラ級潜水艦「真珠」)「アッチアイーオ、交代しましょう」

ベリロ(ペルラ級「緑柱石」)「デルフィーノも少し休んできたらどうですか?」

デルフィーノ「え、でも私とアッチアイーオは秘書艦ですし……」

提督「いいのよ、少し休憩していらっしゃい……ライモン、貴女も」

ライモン「いえ、もう少しですから」

提督「相変わらず律儀ね……分かったわ、それじゃあその書類が終わったら三十分は休憩してくること。いいわね?」

ライモン「はい」

提督「よろしい。 えぇと、次の書類は……あー、クリスマス休暇関係ね。これだけはどうにか終わらせないと、私をふくめてみんなの休暇が取れなくなっちゃうわ……」

…提督は何本か持っている万年筆のうち、鎮守府に「栄転」することになった際に仲良しの数人がお金を出し合ってくれたプレゼントの万年筆を選んで紙面に滑らせた……軸は海のような濃い青色で、要所を締める金の部品がしゃれている万年筆は、提督の名前が筆記体で彫り込んである……見た目だけでなく書き味も極上の万年筆は持っているだけで文豪や名士の仲間入りした気分になれるので、なんとなく書類も手際よく片付けられる気がする…

提督「えーと……休暇開始予定日…期間……非常時連絡先……海外旅行をする場合は目的地……」

…海軍士官である提督、それに艦娘たちは休暇の際に海外旅行をしたい場合は軍に申請しなければならない……むろん、非友好国や危険がありそうな国への旅行は認められず、安全と思われる国であってもかなり細かいチェックをうける……艦娘たちの何人かはフランスやスペイン、あるいはアドリア海を挟んで向かい側のアルバニアといった国に旅行したいと申請していたので、まずは提督がサインを入れ、その上で管区司令部へと回す…

提督「ふー、これで休暇の申請書類は終わったわね。あとは期日までに郵送するか直接提出すれば完了……と」

ペルラ「お疲れさまです、提督」

提督「ふふ、自分の休暇がフイにならないために頑張っただけよ♪」ペルラの真珠色をした艶やかな瞳、それに珠を転がすような美しい声で言われるとくすぐったい気分になり、照れ隠しに冗談めかした……

デュイリオ「ふふっ、いずれにせよあともう少しですから……頑張りましょう、ね?」

提督「ええ♪」

…翌朝…

ライモン「おはようございます、提督……今日はタラントの管区司令部までお出かけだそうですね」

提督「ええ。北欧出張の時に話をした例のロシア軍将官について情報部の聞き取り調査があるの。ついでにみんなのクリスマス休暇の申請書を提出してくるわ」きちんと冬用の制服に身を包み、片手には金属のアタッシュケースをぶら下げている……

ライモン「気を付けて行ってきて下さいね?」

提督「ありがとう……どう、一緒に行く?」ランチアのキーをつまんでゆらゆらさせつつ尋ねた……

ライモン「あの、提督と一緒に行きたいのはやまやまですが、今日は午後直が入っていますから」

提督「そうだったわね……ライモンの当直時間を忘れちゃうなんてうっかりしていたわ。時差ボケかしら?」

ライモン「そんな、でも誘ってくれて嬉しかったです///」

提督「そう言ってもらえて光栄だわ……それじゃあ他の誰かを誘うことにするけれど、何か欲しいものはある? タラントで買えるものなら買ってくるわよ?」

ライモン「いいえ、大丈夫です」

提督「そう? 遠慮しないでもっとねだってくれたっていいのに……まぁいいわ、留守のあいだは鎮守府をドリアに任せるけれど、何かあったらかまわず連絡を頂戴ね?」

ライモン「はい」

提督「いい返事ね、それじゃあ行ってきます♪」

ライモン「はい、行ってらっしゃい」

…玄関…

提督「さてと、用意はいい?」

エウジェニオ「ええ」

サイント・ボン「本官の準備は出来ておりますよ」

ニコロソ・ダ・レッコ(ニコ)「いつでもいいよ、提督」

…鎮守府に配備されている一台ずつの三トン軍用トラックとベスパ、それにリットリオのフィアット500(チンクエチェント)とディアナのフィアット850だけでは「近くの町」ならともかく、全員が好きな時にタラントへ出かけるという訳にはいかないので、提督は公務でタラントへ出かけるようなときは、できるだけ艦娘たちを連れて行くようにしていた…

提督「よろしい、それじゃあ行きましょう♪」

…地方道路…

エウジェニオ「……いい風ね、少し冷たいけれど」

提督「ええ」

…提督は車内にヒーターをいれつつも、張り詰めたような冬の冷たい風を感じられるよう少しだけ窓を開けて、「ランチア・フラミニア」を走らせていく……助手席にはエウジェニオ、後部座席には大型潜の「アミラーリオ・ディ・サイント・ボン」と駆逐艦の「ニコロソ・ダ・レッコ」が座っている…

サイント・ボン「では、タラントに着きましたら本官たちは市街で買い物などしておりますので」

提督「それがいいわ。お昼になったら管区司令部の前で合流しましょう……もし聴取が長引いたりするようだったら連絡するわね」

エウジェニオ「ふふ……♪」

提督「何かおかしいかしら?」

エウジェニオ「ええ、それはもう……だってこともあろうにロシア軍の美人将官と寝たって言うんだもの、貴女の女好きも大したものね」

提督「だって……///」

エウジェニオ「なぁに?」そう言いながら提督の太ももをさりげなく撫で回しはじめた……

提督「エウジェニオ、運転中は止めてちょうだい……いくら美女と一緒でも、まだ崖下にダイブする気は無いわ」

エウジェニオ「ふ、冗談でしょう? 貴女なら目をつぶっていても、キスしながらでも運転できるでしょうに」

提督「ごあいにくさま、私はフェラーリでもなければヌヴォラーリでもないの。それにせっかくのキスを「ながら」でしたくはないもの」

エウジェニオ「ふふ、そういう真面目なところが好きなのよ……いいわ、きちんと座っていてあげる♪」

…エウジェニオは無造作に散らしたようなセミロングの髪型で、黒いレザージャケットにヴィヴィッドな色味の紅のタートルネックセーター、きゅっと引き締まったヒップから伸びる長い脚は黒の乗馬ズボンとひざ丈まである黒革のヒールつきブーツで固め、片耳にだけ付けたイヤリング……と、どう見てもビアンの格好いいお姉さんといった服装に身を固めている…

提督「グラツィエ。帰ったらごほうびをあげるわ」

エウジェニオ「期待しているわよ♪」

提督「ええ。って、そんなことを言っていたらもうここまで……相変わらずにぎやかね」タラント市街が近づくと、艦娘の「具現化」させた往時の海軍艦艇が出撃していき、漁船や沿岸航路の貨物船、それに定期航路の客船といった民間の船舶が行き交い、上空ではイオニア海を哨戒するカントZ506水偵やフィアットCR42戦闘機がエンジン音も高らかに飛んでいく…

ニコ「それに市街もすっかりクリスマスだ」

提督「そうね、みんなへのお土産にクリスマス菓子でも買って帰りましょうか」

サイント・ボン「それはよろしいですね」

…管区司令部…

提督「おはよう」

受付の下士官「おはようございます、少将……数日前もいらっしゃったのに、また呼び出しとは大変ですね」

提督「本当にね……そうそう、ちょっと早いけれどクリスマスプレゼントをどうぞ。当直のみんなに分けてあげて?」フィンランドの免税店で仕入れてきたチョコレートやキャンディが詰め合わせになった大袋を受付の伍長に渡す……

受付「わざわざありがとうございます」

提督「ノン・ファ・ニエンテ(いいのよ)……よいクリスマスをね」

受付「は、ありがとうございます。少将も良いクリスマスを」

提督「グラツィエ♪」

…事務方…

提督「おはよう、大尉……申請書類の提出に来たのだけれど、今いいかしら?」

事務方の士官「おはようございます、カンピオーニ少将。申請書ですね、どうぞ」

提督「ありがとう。それじゃあ私と鎮守府の娘たちの分のクリスマス休暇申請書、手続きをお願いするわ」厚手の本くらいはありそうな申請書類の束をカウンターにどさりと載せる……

士官「確かに受け取りました、処理しておきます」

提督「助かるわ。それと、良かったらこれ。クリスマスも近いし……ね?」茶目っ気のある表情を浮かべつつ、またまた菓子の大袋を手渡した……

士官「は、いつもありがとうございます……」後ろでデスクを並べ、書類の処理に当たっている数人からもさりげない感謝のジェスチャーや小さな会釈が向けられる……

提督「ええ。さ、法務や内務のお堅い士官に見つかってガミガミ言われないうちに……♪」

士官「分かっております。少将も良いクリスマスを♪」

提督「ええ♪」

…会議室…

提督「さて、いよいよ次が本命ね……」別に悪さをしたわけではないが、情報部によるデブリーフィング(任務報告)とあって、ひとつ深呼吸して身構える……

案内の下士官「……カンピオーニ少将がおいでになりました」

フェリーチェ「どうぞ……あぁ、少将。よく来てくださいました」よそよそしい態度を演技しているのはフェリーチェで、すでに卓上には提督のレポートとラップトップコンピュータ、メモ帳に録音用のボイスレコーダーなどが並べられている……

提督「ええ……」

フェリーチェ「ご苦労様でした、二等兵曹。下がってよろしい」

下士官「は、失礼します」

フェリーチェ「……さてと、それじゃあ貴女の女遊びについてじっくり問いただすとしましょうか♪」

提督「もう「情報部の聞き取り調査」だなんて言うから、てっきり無表情な士官が二、三人で絞り上げてくるのかとばかり思っていたわ♪」

フェリーチェ「そうしたいのは山々だったけれどね「私が一番うまく情報を引き出せますから」って上にかけ合ったのよ……たまたま任務の都合でイオニア海管区に来る用事もあったし……ね♪」

提督「嬉しいけれど、貴女が聞き出すのだから隠し事は出来そうにないわね……」

フェリーチェ「よく分かってるわね……録音するタイミングになったらそう言うから、とりあえずはクズネツォワ少将について知っていることと分かったことをあらいざらい話してもらうわよ」

提督「ええ……」

フェリーチェ「録音開始……聴取担当者、海軍情報部、ミカエラ・フェリーチェ大尉。対象者、フランチェスカ・カンピオーニ少将……」レコーダーに音声を吹き込むと、テーブルの中央に置いた……

フェリーチェ「では少将にお尋ねします。フィンランドにおける深海棲艦対策の会議において面識を持った、ロシア連邦海軍のユーリア・クズネツォワ少将についてですが、貴官は会議の場、またそれに関連する場所においてどのような会話をなさいましたか?」

提督「はい。基本はごくありふれた会話でしたが、北欧における深海棲艦対策に関してロシア海軍がどう行動するつもりか、出来る限り聞き出そうとしました」

フェリーチェ「なるほど……それで、クズネツォワ少将から何らかの回答を引き出せましたか?」

提督「いいえ。書面によりこちら側に明示された方針以上のものはなにも」

フェリーチェ「口は固かったということですか?」

提督「ええ、相当に」

フェリーチェ「なるほど……」そこでレコーダーのスイッチを「一時停止」にいれた……

フェリーチェ「……なら、ベッドの上では?」

提督「けほっ……!」

フェリーチェ「お願いよ、フランチェスカ。私が貴女にボンドガールの真似事みたいな事までさせて知りたかったことなのよ……あの無表情な「インペラトリーツァ(女帝)」のことならなんでもいいわ、身体に刺青や傷があるとか、えっちするときの好みのやり方とか……録音はしないし、貴女から仕入れた情報だって事も上には伝えない……ミカエラ・フェリーチェとして約束するわ」

提督「……誰にも口外しない?」

フェリーチェ「ええ、情報源は秘匿する」

提督「そう……ミカエラ、貴女の事を信じるわ」

フェリーチェ「ありがとう、フランチェスカ」

提督「いまさらお礼なんていらないわ……それで、どんなことを聞きたいの?」

フェリーチェ「とにかくクズネツォワについて気付いたこと、あるいは彼女が話したこと……些細な事でもちょっとした癖や習慣のことでも構わないわ」

提督「そうね、それじゃあ……クズネツォワ少将だけれど、とにかく煙草をよく吸うわ」

フェリーチェ「銘柄は?」

提督「そう言われても私は吸わないし、ましてやロシアの煙草だったから銘柄までは……でも確か、箱にソリの絵が描いてあったわ」

フェリーチェ「それなら『トロイカ』ね……」

提督「それから吸うときは左手の親指と人差し指でつまむように煙草を持っていたわ。なんでも「そう教え込まれた」みたいなことを自嘲するように言っていたけれど……」

フェリーチェ「なるほど、彼女ならそうでしょうね」

提督「それから、ライターにこだわりがあるようには見えなかったわ。ホテルのブックマッチを使っていたりもしたから」

フェリーチェ「ふっ……さすがの観察眼ね、フランチェスカ。身の回りのものにこだわりがないというのはこっちの調査でも推測されていたけれど、これで改めて裏付けが取れたわ」

提督「そう、良かったわ」

フェリーチェ「ええ。 ほかに特徴的な言動は?」

提督「えぇ…と、まずは一緒に夕食を食べて……」当日の経緯を順繰りに思い出していく提督……

フェリーチェ「お酒は?」

提督「ウォッカやシャンパンを飲んではいたわ。でも顔色は全然変わらないし、口調もまるでしらふのまま」

フェリーチェ「相当に強いみたいだから無理もないわ……続けて?」

提督「それから彼女の泊まっているホテルまで車に乗せてもらって……そうそう、副官のカサトノヴァ少佐はピストルを隠していたわ」

フェリーチェ「マカロフ?」

提督「たぶん……腰のバックサイド・ホルスターに入っているのがちらっと見えただけだから断言はできないけれど」

フェリーチェ「いいえ、十分な情報よ……それで?」

提督「えぇと、それから……」

………



提督「ん……///」

クズネツォワ「……どうだ?」

提督「あっ、あふ……っ///」

クズネツォワ「柔らかくて初々しい……まるでマツユキソウのようだな」

提督「あっ、ふ……あんっ……「森は生きている」ですか」

(※マツユキソウ…待雪草。英名スノードロップ。春を告げる白い可憐な花で、ロシア文学「森は生きている」で、わがままなお姫様が真冬にも関わらずマツユキソウを見たいと言ったことから、主人公の少女が意地悪な継母にマツユキソウを探してこいと真冬の森へと追いやられる)

クズネツォワ「マルシャークを読んだことがあるのか」

提督「ええ……」

…提督がまだ余韻に浸っているなか、クズネツォワはてきぱきと着替えていく……と、スラックスのベルトにホルスターを通し、無骨さと優雅さの同居したような「トカレフTT-33」ピストルを小机から出して突っ込んだ……

提督「ユーリア、そのピストルは……」

クズネツォワ「トカレフだが」

提督「いえ、トカレフなのは分かりますが……いつも手元に?」

クズネツォワ「ダー。祖母がくれたものなのだが、他のものはともかく、これだけは手放したことがない」

提督「……大事なものなのですね」

クズネツォワ「お守りの十字架や幸運の「うさぎの脚」よりは役に立つからな」そっけない言い方の中に、少しだけ冗談めかした声が混じった……

………

フェリーチェ「……お祖母さんの持っていたトカレフだなんて、ああ見えてセンチメンタルなところがあるのね」

提督「ええ。もちろん部品は取り替えたりしているとは言っていたけれど」

フェリーチェ「お飾りの銃を持っているようなタイプではないものね」

提督「そう思うわ。それと二人きりになると…たいていは皮肉なブラックユーモアだったけれど…意外と冗談も言うし、少なくとも無感情なロボットみたいではなかったわ」

フェリーチェ「なるほどね……続けて?」メモすら取らずに、手を組んで話を聞いている……

提督「それから……ねぇ、本当に言わないとダメなの?」

フェリーチェ「言える範囲でいいわよ……例えば傷だとか刺青はあった?」

提督「いいえ、少なくとも見た限りでは綺麗だったわ」

フェリーチェ「ふぅん?」

提督「ミカエラも気になった? 私も「ロシアの将校」っていうと刺青を入れているようなイメージがあったから聞いてみたの」

フェリーチェ「それで?」

提督「ええ、クズネツォワ少将が言うにはね……」

………

提督「……ユーリアの肌は綺麗ですね」

クズネツォワ「そうか?」

提督「ええ……きめ細やかで、透き通るように白くて……」

…互いに身体を重ね合ったあと、クズネツォワの裸身を優しく愛撫する提督……乳液や保湿クリームといった肌の手入れとはまるで縁がないようだが、鞭のようなしなやかな筋肉を包む肌はあくまで白く、提督と交わした愛の交歓のおかげでぽーっと赤みが差している…

クズネツォワ「ふむ、そうか……」

提督「はい。 それに、刺青は入れていないのですね」

クズネツォワ「刺青?」

提督「その……勝手なイメージですが、ロシアの将校というと腕やお腹にすごい刺青を彫っているものとばかり……」

クズネツォワ「映画などに出てくる兵隊崩れのマフィアが入れているような、おどろおどろしい髑髏だのコウモリが羽を広げているようなやつか?」

提督「えぇ、まぁ……お恥ずかしながら、その程度のイメージしかなくって///」

クズネツォワ「ふ……まあ分からんでもない、空挺の連中や何かはよくドッグタグ(認識票)代わりに刺青を入れたりするし、ロシアンマフィアはハッタリのためだったり、組の構成員であることの証明で刺青を入れていたりするからな」

提督「ええ、そういうイメージです……」

クズネツォワ「まあ知らん人間からしたらそうだろう……だがな」

提督「?」

クズネツォワ「スパイにしろなんにしろ「本物」はそんなもの入れないのだ……特徴的な刺青なんていうのは、それだけで身元を割られる元だからな」

提督「なるほど……」

クズネツォワ「ああ。期待を裏切って申し訳ないがな、西側の映画や何かでみる「刺青を入れたイワンのスパイ」なんていうのは絵空事だよ」

提督「そうなのですね……では、私がユーリアの真っ白なキャンバスに絵を描くことにします♪」そう言いながら鎖骨に吸い付くようなキスをした……

………

提督「……と、そんな風に言っていたわ」

フェリーチェ「やっぱりね……おかげでいい情報がとれたわ」

提督「約束は覚えているわよね?」

フェリーチェ「当然。貴女から聞いたなんておくびにも出さないわ……あとはもう一度レコーダーを回してありきたりな質問をするから、それなりに答えてくれればいいわ。お疲れさま」

提督「どういたしまして」

…再びICレコーダーを回していくつかの質問をぶつけると、事務的な口調で「以上で聴取を終わります」と締めくくった……それからポットのコーヒーを注ぐと、しばし軍で親しい間柄にある知り合いたちの近況を話題にして話の花を咲かせた…

フェリーチェ「いけない、もうこんな時間……悪いけど、ローマに戻って報告書を上げないといけないの。それじゃあ、良いクリスマスをね?」

提督「相変わらず忙しいのね。 ミカエラもいいクリスマスを♪」

フェリーチェ「ええ、ありがと……それじゃあね」そういって提督の唇に「ちゅっ♪」と音を立てて唇を重ねた……

提督「ええ♪」

…数日後…

提督「さてと、今日の書類はこれでおしまい……と♪」

ドリア「ずいぶんとご機嫌ですね?」

提督「ええ。みんなと過ごすのも楽しいけれど、やっぱりクリスマス休暇があと数日で始まると思うとね……ドリアはクリスマス休暇が嬉しくない?」

ドリア「いいえ、私のようなおばあちゃんでもクリスマス休暇は嬉しいですよ……ですが、休暇中はこうして提督と過ごすことができないと思うと、一抹の寂しさを覚えます」

提督「あら、そんな風に思っていてくれていたなんて光栄だわ///」満面の笑みを浮かべて「ちゅっ♪」と音高く頬にキスをした……

ドリア「まあ、提督ったら♪」

提督「ふふっ、遠慮せずにうんと甘えていいのよ……さ、いらっしゃい♪」両腕を広げて小首を傾げた……

ドリア「……それなら、少しだけ///」

提督「ええ♪」

…執務机の椅子で向かい合うようにして抱き合った提督とドリア……提督は胸元にドリアの顔を埋めさせ「地中海の黒い狼」などと言われたアンドレア・ドリアをほうふつとさせる艶やかな黒髪に顔を押しつけ、深く息を吸った……花の香りのシャンプーと少し残った重油と海の匂い、それにドリア本人の頭皮からかすかに立ちのぼる、ほのかに甘いような匂いが混じり合う……

ドリア「……提督は甘くていい匂いがしますね♪」

提督「お世辞を言っても休暇は増えないわよ?」

ドリア「お世辞ではないですよ……それと、こんなに暖かくて柔らかい♪」ふにっ♪

提督「くすくすっ……もう、ドリアったら意外とおてんばなのね♪」

…口ではそう言いながらも、提督は自分の太ももにまたがるようにして座っているドリアのスカートをずり上げた……黒いストッキングに包まれたむっちりした太ももがあらわになり、提督の太ももと触れあった…

ドリア「あん……っ♪」くちゅ……っ♪

提督「ふふ、ドリアったら積極的ね……そんなにしたかった?」

ドリア「……もう、そんなことを言うのは野暮というものですよ♪」ふんわりしたカシミアのセーターをたくし上げると、黒い花柄のブラに支えられたずっしりとした乳房へと提督の手をいざなった……

提督「なら、失言のお詫びをしないと……ね♪」提督も制服の上着を脱ぐと執務机の上に放りだし、ブラウスの胸元を大きく開いた……ドリアとさして遜色がないほどたわわな自身の胸へと彼女の手を誘導し、同時に片方の手を背中に回すとブラのホックを外そうとした……

提督「ん……くっ……」

ドリア「ふふふっ、それではまるでヨガの姿勢ですね……私が外してあげます♪」象牙色の地に、淡いパステルカラーの桃色や黄色の花々が咲いている提督のブラをパチリと外すと、丁寧に執務机の上に置いた……

提督「ドリア……触って♪」

ドリア「あら、提督は触られるだけで良いのですか?」ころころと笑いながら、わざといじわるな事を言うドリア……

提督「もう……どうすればいいか分かっているくせに///」

ドリア「うふふっ、そうですね……それでは♪」もにゅ…っ♪

提督「あっ、ん……♪」お返しとばかり、ドリアの豊満な胸に指を埋めてゆったりとこね回す……

ドリア「んふふっ、くすぐったいです……ところで、こちらが少し手持ち無沙汰ですね♪」

提督「そう、ね……あぁん……っ♪」椅子から転げ落ちそうになりながら互いのランジェリーをずり下ろし、暖かな下腹部を触れあわせた……

ドリア「まぁまぁ……提督ったらこんなに熱くして、おまけにすっかりとろとろです♪」ぐちゅっ、にちゅ…♪

提督「あら、それを言うならドリアだってこんな風にいやらしい音をさせているじゃない♪」じゅぷっ、くちゅ……っ♪

ドリア「では引き分けということで……ん、あっ♪」

提督「ええ……あっ、あふっ♪」

………



ドリア「……それにしても愛を交わしている最中に見つかってしまったときは気まずかったですね♪」

提督「よく言うわ、デルフィーノが入って来てからも平気で私のことをイかせ続けたくせに♪」

ドリア「まあ。それを言うなら提督だって、ちっとも嫌がらなかったではありませんか」

提督「だって……デルフィーノに見られながらドリアに中をかき回されるの、腰が抜けるほど気持ち良かったんだもの♪」

ドリア「それは私もです、おかげですっかり下着を濡らしてしまいました♪」

提督「それじゃあクリスマス休暇が終わったら、また……ね?」

ドリア「ふふ、約束ですよ?」

提督「ええ♪」

…鎮守府・正門…

提督「それじゃあ気を付けて行ってらっしゃい……良いクリスマスを♪」

ウエビ・セベリ「では、行ってきマス」

ゴンダール「エリトリア土産に何か珍しいものでも買ってきますネ♪」

…クリスマス休暇の申請に許可が届き、トランクやスーツケースを手に次々と休暇に入る艦娘たち……提督自身の休暇もあと数日という中で、楽しみを待ちきれない様子の艦娘たちに手を振り、頬にキスをして見送っている……深海棲艦の蠢動(しゅんどう)具合や社会情勢のこともあって、なかなか許可の下りなかったキレナイカ(リビア)やAOI組はようやく降りた許可に安堵して、提督がタラントまでの便として管区司令部に手配してもらったミニバスに乗り込んでいく…

(※AOI…当時「イタリア領東アフリカ(Africa Orientale Italiana)」と呼ばれた地域。現在のエチオピアやエリトリア)

提督「そういえばペルラもきょう発つのね」

ペルラ「はい、私はマダガスカルのあたりまで行ってきます」

…淡い真珠色の涼やかな目元をした中型潜「ペルラ(真珠)」は、すっきりしたシルエットをしたパールホワイトのトレンチコートに、淡いフラミンゴのようなピンク色が控え目にフェミニンな雰囲気を主張しているひざ丈のフレアースカート、それに提督の母親であるクラウディアが送ってくれた衣類の山から選んだ象牙色のショートブーツと白ストッキング、首元には粒選りのピンクパールのネックレスをつけている…

提督「貴女はアトランティスを探しに行くのよね♪」

ペルラ「はい」

(※ペルラ…当時インド洋を中心にマダガスカル沖などで暴れ回っていたドイツの仮装巡洋艦「アトランティス」への補給と捕虜の受け取りのため会同したことがある)

下士官「さぁさぁお嬢さん方、そろそろバスを出しますよ! パスポートにヴィザ、手荷物にお財布はちゃんとお持ちですか!」ミニバスでの送迎を請け負ってくれたのはお堅い管区司令部には珍しい陽気な下士官で、観光ガイドの物真似をして艦娘たちを笑わせている……

アシアンギ「忘れ物はないデス」

提督「それじゃあ行ってらっしゃい♪ …では、うちの娘たちをよろしくお願いするわ、三等兵曹。あなたも良いクリスマスを」

下士官「はい、お任せください」

…数日後・朝…

提督「いよいよ私も今日から休暇ね……クリスマス中はよろしくお願いするわ」いよいよ休暇初日の朝を迎え、いそいそと支度を済ませる提督……

チェザーレ「うむ、留守中はこのチェザーレに任せておけ」

提督「ええ。艦隊総旗艦の役は名将チェザーレ、貴女にこそふさわしいわ」

ドリア「あら、実際に旗艦だった私ではなく?」

デュイリオ「そうですよ、わたくしだって艦隊総旗艦だったのですから……」

提督「貴女たちも、よ……良くチェザーレを支えてあげてね?」

カヴール「いささか髪にうるさい妹ではありますけれど……ね♪」

チェザーレ「むむ、髪のことは関係あるまい」

ライモン「……提督、くれぐれもお気をつけて」

提督「ありがとう……貴女もね、ライモン」

アッテンドーロ「姉さんには私がいるから平気よ。 提督こそ、美人だからって知らないお姉さんにノコノコついて行っちゃ駄目よ?」

提督「私だって子供じゃないんだから知らない美人について行くことなんてしないわ……ついて行くのは知り合ってからよ♪」提督の冗談に艦娘たちの笑いが起きる……

ドリア「皆さん楽しそうですが、くれぐれも気を付けて行ってらっしゃいね」

提督「ええ、ドリアたちもゆっくり骨休めをしてちょうだい」

ドリア「はい、留守はお任せを」

提督「任せたわ……それにしても本当にいいの?」

ドリア「ええ、構いませんよ。夏はうんと旅行をさせていただきましたし、クリスマスはここでのんびり過ごす方が気が楽です……リットリオたちが戻ってきたら、入れ替わりで小旅行にでも行ってくることにしますから♪」

提督「それじゃあクリスマスプレゼントでも送ってあげるわ、一番欲しいものをクリスマスカードに書いて送ってちょうだい?」

ドリア「ふふふ……一番欲しいものを書いて送ったら、提督はとんぼ返りすることになってしまいます♪」

提督「あら、嬉しいお言葉……それならいっそ絨毯にくるまれて来た方がいいかしら?」

ドリア「それならジュリオが喜ぶでしょうね」

(※絨毯にくるまれて……クレオパトラ7世の伝説。秘密裏にカエサルに会うべく、クレオパトラが贈り物の絨毯に隠れて来たという)

提督「リットリオ、貴女も気を付けるのよ? 特にこの時期のオートストラーダ(高速道路)は飛ばしている車も多いから……」

リットリオ「大丈夫ですよっ、私だってちゃんと運転はできますから♪」艶のある真っ赤な「フィアット500(二代)」に妹の「ヴィットリオ・ヴェネト」「ローマ」とぎゅう詰めになって乗り込む……手を振りながら正門を出て、ぎくしゃくとしたギアチェンジをしながら走って行った……

提督「やれやれね……♪」

提督「ディアナにも苦労をかけるわね」

ディアナ「いいえ、年が明けたら自動車旅行にでも行くつもりですので……それにせっかくのクリスマスですから、大いに腕を振るってご馳走を作ってあげませんと」

提督「むぅ……帰省は嬉しいけれど、ディアナのご馳走を食べ損ねるのは残念だわ」

ディアナ「まぁ、お上手でございますこと♪」

提督「本当のことよ」

ルチア「クゥ…ン」

提督「ルチア、貴女もね……戻ったらうんとお散歩に付き合ってあげるわ♪」

ルチア「ワンッ!」提督の言葉を聞いて、ぱたぱたと尻尾を振った……

ディアナ「では、行ってらっしゃいまし」

提督「ええ♪」

…艦娘たちが「家族水入らずのクリスマスを邪魔しないよう」にと提督に遠慮した面もあるかもしれないが、彼女たちもそれぞれ姉妹や仲良しの娘と一緒の旅行を計画していたり、はたまた鎮守府でのんびり過ごすつもりでいて、結果として提督は一人で気軽な帰省というかたちになっていた……ランチアに乗り込むと、冬の低い日差しで目がくらまないようサングラスをかけ、鎮守府の正門を出た…

提督「♪~ふーん、ふーふーん……」艶のある深青色のランチアはきらりと日差しを反射して、右手に冬のイオニア海を見ながら海沿いの地方道路を走っていく……

………



提督「ふぅ……オートストラーダに入ったし、これで速度も出せるわね」

…眺望は素晴らしいがカーブが多く、片側一車線しかない地方道路から片側三車線の立派なオートストラーダ(高速道路)に入った提督……道路は大都市である北部のローマやトリノを離れ、バーリを始めとする暖かなアドリア海沿いにある南部の観光地でクリスマス休暇を過ごそうとする人たちで南へ向かう車線こそ混み合っていたが、ありがたいことに提督が向かう北部への道路はあまり混雑していなかった……それでも物流を支える大きなイヴェコの長距離トラックや、追い越し車線でいらだたしげなエンジン音を残して飛ばしていくフェラーリやメルセデスがいて、提督は気を付けて運転していた…

提督「……あらまぁ」

…この時期になると、ポルストラーダ(※ポリツィア・ストラダーレ…交通警察)も速度を出すことそのものにはある程度目をつぶってくれるが、無理な追い越しをかけたり傍若無人な運転をしている車がいると、途端にサイレンを鳴らして猛禽のように飛びかかっていく……提督が運転している前でも一台のメルセデス63AMGが白と青のランボルギーニ・ガヤルドのパトカーに誘導され、路肩で違反切符をきられていた…

提督「クリスマスだからって交通ルールが変わるわけじゃないし、私も気を付けないと……」

…しばらくして・休憩所…

提督「……もしもし、お母様?」

クラウディア「まぁ、可愛いフランカ……休暇は今日からだったわよね、いまどのあたり?」

提督「もう、子供じゃないんだから「可愛いフランカ」は止めてよ……いま14号線の休憩所で、もうそろそろ16号線に乗り換えるところ」

クラウディア「じゃああと四時間もしないくらいかしら?」

提督「そうね」

クラウディア「分かったわ、いっぱい美味しいものを用意しておくから楽しみにしていてね?」

提督「ありがとう……でも前にも言ったとおり、今回は夏の休暇と違って私一人だからほどほどにね」

クラウディア「ええ、残念だわ。夏の時はライモンドちゃんたちも喜んでくれたし、今回もうちに来る娘がいたらうんとご馳走を振る舞ってあげようと思っていたのに……そうそう、シルヴィアも会いたがっているわよ♪」

提督「私もよ、それでシルヴィアおばさまは?」

クラウディア「ジュリエッタの整備をしに町へ行っているわ……とにかく、気を付けて帰ってくるのよ?」

提督「ええ、そうするわ……それじゃあ、チャオ♪」携帯電話越しにキスの音を送ると休憩所の喫茶店で買い込んだコーヒーを飲み干し、肩を回して伸びをすると、あらためて車に戻った……

…オートストラーダの制限速度はいちおう130キロから150キロまでということになってはいるが、高速道路の常で真面目に守っているドライバーはほとんどいない……提督も「ランチア・フラミニア」の安定感に任せて140キロで路面を走らせているが、追い越し車線ではまるでジェット機のように飛ばしている車が次々と視界から遠ざかっていく…

………

…昼下がり…

提督「ふぅ、やっとここまできたわね」

提督「燃料もまだあるし、このまま行けば1500時には家に着きそうね……」

提督「……って、私ったら♪」つい「午後三時」のことを軍隊式に「1500時」と考えてしまい、一人で苦笑いをした……

提督「アンナじゃないけれど、このままじゃあ腕と膝を伸ばして行進しかねないわ……♪」

…小さいころからの幼馴染みで、提督の「許嫁」を自称しているアンナいわく「早く私と結婚して退役しなさい、そうじゃないとそのうちに腕と脚を伸ばして行進するようになりかねないわ」とのことで、それを思い出して思わず微笑んだ…

提督「まぁ、もしアンナも帰省しているようなら、クリスマスの間くらいはわがままに付き合ってあげても良いかもしれないわね……♪」そう独りごちた途端、腰に手を当て、提督に向かって身勝手かつわがままな……それでいて可愛らしい「お願い」をするアンナの姿が目に浮かんだ……

提督「……ふふっ♪」

………

…カンパーニア州・提督の地元…

提督「……やっぱり故郷はいいわね」

…街角のクリスマス装飾や家々に暖かな懐かしさを覚えながら左右に視線を向けつつ、故郷の狭い石畳の道路に合わせてゆっくりとランチアを走らせる……街の道路をのろのろと抜けると、海沿いのちょっとした丘の上に建つ提督の実家が見えてきた…

提督「ふぅ、やっと着いた……♪」

…家の門を開けるとランチアを庭の小道に進ませ、車庫に停める提督……車を降りてエンジンの冷めるチリチリいう音を聞きながら伸びをしていると、玄関を開けて母親のクラウディアが小走りでやって来た…

クラウディア「お帰りなさい、フランカ♪」そのまま提督に駆け寄ると左右の頬にキスをして、その上で暖かで柔らかい唇をたっぷりと重ねた……

提督「ぷは……ただいま、お母様♪」

クラウディア「ええ♪ さ、外は冷えるから中に入りましょう? 暖炉の火も燃えているし、暖かいコーヒーにパンドーロもあるわよ♪」

提督「ありがと、お母様」

クラウディア「いいのよ……あら、ちょうどシルヴィアも帰ってきたわ♪」

…提督の実家に向けて続くなだらかな上り坂を、艶やかな赤に塗られた「アルファロメオ・ジュリエッタ」スパイダーが走ってきた……オープンカーのジュリエッタ・スパイダーは冬なので屋根に幌を張っているが、その小粋な姿は変わらない……提督のフラミニアの隣にジュリエッタを入れると、軽やかな足取りでシルヴィアが降りてきた…

シルヴィア「ただいま……それとフランチェスカ、お帰り」

提督「ただいま、シルヴィアおばさま♪」シルヴィアに近寄ると左右の頬にキスをし、それからぎゅっと抱きしめる……

シルヴィア「ん……っと、フランカってばまた大きくなったみたいね」提督に抱き寄せられ、かるくたたらを踏んだシルヴィア……

提督「もう……高校生じゃないんだからいまさら背なんて伸びたりしないわ♪」

シルヴィア「どうかしらね……」

クラウディア「さぁさぁ、早く手を洗って……積もる話は部屋でお茶を飲みながらしましょう♪」

…居間…

提督「あぁ、やっぱりうちはいいわ♪」手洗いとうがい、それにメイク落としも済ませると、冬用のふんわりした部屋着とスリッパに着替えて居間の定位置に落ち着いた……

クラウディア「実家って言うのはそういうものなのよ……さ、クリスマスのお菓子を召し上がれ♪」

提督「ありがと、お母様♪」長らく愛用しているカップに注がれた甘いミルクコーヒーとクリスマスシーズンに食べる特別なお菓子である「パンドーロ」をつまみ、パチパチとはぜる暖炉を眺める提督……

シルヴィア「……今はこうして何でもないようなふりをしているけれどね、クラウディアと来たら一昨日くらいからフランカが帰ってくるのをずーっと待ちわびていて、今朝もフランカの部屋を掃除したり、ごちそうの支度をしたりでちっとも落ち着かなかったのよ」

クラウディア「もう、それは言わない約束でしょう///」

シルヴィア「言わなくたって分かることだもの……そうでしょ、フランカ?」

提督「ええ、でも嬉しいわ♪」

クラウディア「……もう、二人して私の事をからかって♪」

シルヴィア「からかってはいないわよ……」ちゅっ♪

クラウディア「ん、あっ……もう、フランカの前なのよ?」

提督「どうぞおかまいなく♪」

シルヴィア「理解力のある娘で良かったわ……ん、ちゅっ♪」

クラウディア「ん、あふっ……せっかく淹れたコーヒーが冷めちゃうわ」

シルヴィア「冷めたって良いわ……」

クラウディア「もう、そういうことをいうなら……ん、ちゅる……っ♪」

シルヴィア「ふふ、ようやくいつも通りのクラウディアになった……んっ、ちゅむ……んちゅ♪」

提督「私が言うのもどうかと思うけれど、お母様とおばさまは相変わらずね……倦怠期なんてあったのかしら?」

シルヴィア「無くはなかったわよ、程度が軽かっただけでね」

クラウディア「まぁ、シルヴィアってばそうやってごまかすんだから……私、あの時期はずいぶんこたえたのよ?」

シルヴィア「かもしれないわ、二日も口を利かなかったのは後にも先にもあの時くらいだったもの」

提督「……それだけ?」

クラウディア「もう「それだけ」ってことはないでしょう? 冷え込んだ関係の二人が一つ屋根の下で過ごす二日は長いものよ?」

提督「あー……まぁ、お母様たちの仲を考えるとそれだけでも記録破りだけれど……」

シルヴィア「まぁ、結局は仲直りできたんだから良しとしないと……ね」

クラウディア「ええ♪」

提督「あんまり仲良くいちゃついていると他人は胸焼けするってよく分かったわ……私も気を付けないと」

クラウディア「ということはフランカも鎮守府でライモンちゃんたちとずいぶんいちゃいちゃしているってことね?」

提督「まぁ、ありていに言えばね」

シルヴィア「確かに気立てが良くて可愛い娘だったわね」

クラウディア「もう、シルヴィアってばすぐそうやって女の子に色目を使うんだから」

シルヴィア「別に色目は使ってないわ……それに、浮気で言えばクラウディアだって相当なものだったと思うけれどね」

クラウディア「むぅ……」

提督「お母様が浮気?」

シルヴィア「そう。もっとも、私は気にしなかったけれどね」

クラウディア「お互い、女の子と遊ぶ時はちゃんと相手にも「ただのお遊びで、本気じゃない関係でいいなら」って伝えることって決まりにしていたから、あんまりこじれたことはなかったわね」

提督「……私もそうしておくべきだったわ」

シルヴィア「ということは、フランカに熱を上げている女の子がいるわけね……となるとアンナかな?」

提督「ええ……物の道理が分からない子供の頃にした「約束」を持ち出して結婚しろ、って言われてもね……」

クラウディア「アンナちゃんは勝気だけれど良い子だもの、結婚すればいいじゃない♪」

シルヴィア「そうね。ちょっと短気な所はあるけれど決断力はあるし、若いのに国際弁護士だなんて大した娘だと思うわ」

提督「ちょっと、お母様とおばさままで……まさかアンナに丸め込まれたわけじゃないわよね?」

シルヴィア「人にどうこう言われて意見を変えるような親じゃないってことは、フランカが一番よく知っているはずよ」

提督「ええ、それはもう……でも、だとしたら余計に困るわ」

クラウディア「ふふふっ、フランカも色んな可愛い娘を連れてきたものね……もし目移りしちゃうようなら、一人くらい手伝ってあげるわ♪」

シルヴィア「一人で済むとは思えないわね」

提督「あぁ、もう……この話はおしまい。シルヴィアおばさま、あとで銃のメンテナンスを手伝って?」

シルヴィア「ええ」

提督「それから、おばさまがクリスマスのご馳走に食べられるよう鎮守府へ猟の獲物を送ってくれるって話をしたら、みんな喜んでいたわ」

シルヴィア「そう、良かった。何しろ今年は夏からずっとイノシシが多かったものだから、コムーネの駆除依頼も多くてね……私とクラウディアだけじゃとうてい食べきれないし、肉屋のアルベルトに売りにいっても良かったんだけど、それよりは鎮守府の娘たちに送ってあげた方が喜ばれるでしょうし」

提督「ええ、とっても……この秋はイノシシだけ?」

シルヴィア「でもないわ。野ガモもいくらか撃ったし、ウズラもいくらか……あと、農家のエミーリオに頼まれて、ウサギも何羽か」

クラウディア「……そういえば、あのフランスの女の子はウサギのパイ皮包みが好きだったわね」

提督「マリーのこと?」

クラウディア「ええ♪ あの娘ったら顔立ちが整っていて、いかにもフランス人らしいコケティッシュなファッションが似合っていたわよね♪ 黒のミニドレスとか、薄い藤色のプルオーヴァーなんてすごく素敵で……♪」

提督「確かに」

クラウディア「フランカもそう思うわよね。 それで、せっかくだからフェンディのミニドレスでもあげようと思ったのだけれど、あの子ったら「マダム、お気持ちは嬉しいのですけれど……わたくし、ファッションはフランスのものしか身に付けないつもりですの」って♪」

提督「あー……マリーならそういうことを言うわ」

クラウディア「そうなの、だから代わりにイヴ・サンローランのクリーム色をしたトレンチコートをあげたのだけれど……すらっとしていて良く似合っていたわ♪」

提督「でしょうね。マリーったらいっつも「体型を維持する」とかいって、ヨガだかピラティスだか……そんなようなことをしていたもの」

クラウディア「ヨガ、ね……最近ふとももやヒップが気になるし、私も始めてみようかしら?」

シルヴィア「その必要はないんじゃない」

クラウディア「あら、どうして?」

シルヴィア「第一に、そのくらいむっちりしている方が私の好みだから」

クラウディア「もう、シルヴィアったら……で、第二の理由は?」

シルヴィア「ベッドの上で一晩過ごせば、ヨガなんかよりもずっといい運動になるから……♪」そう言うと身体を抱き寄せ、甘噛みしつつ鎖骨にキスをした……

クラウディア「あんっ♪」

提督「……帰って来ない方が良かったかしら」

…夜…

提督「あぁ、美味しかった……お母さまの手料理に勝るものはないわ♪」

クラウディア「ふふっ、鎮守府であれだけ美味しい料理を食べているフランカにそう言ってもらえると、私も作ったかいがあるわ♪」

シルヴィア「フランカの言うとおり、クラウディアの料理ほど美味しいものはないから仕方ないわ……基地祭でご馳走になったディアナの料理も見事なものだったけれど、やっぱり「家の味」が一番いいもの」

クラウディア「もう、二人してそんなに私の事をおだてて……パンドーロをもう一切れ切ってあげましょうか?」

シルヴィア「私はもう満腹……フランカは?」

提督「うーん、もう少し食べたい気分だけれど……太ももが気になるから明日にするわ」

クラウディア「そう? じゃあ器にはフタをしておくから、いつでも食べてね?」

提督「ありがと、お母さま……それじゃあお風呂に入ってくるわね♪」

…実家の懐かしい……しかし鎮守府の豪華な大浴場に比べるとあまりにもつつましやかな浴槽に身体を押し込むと、肌にたっぷりの湯気を吸い込ませようとするかのようにシャワーの栓をひねり、日頃「節水」の二文字に追い回されている海軍軍人にとっての罪深い楽しみである際限なしのシャワーに身体をあずけた…

提督「ふー……♪」ふかふかのバスローブと頭にタオルを巻いた格好で歯を磨き、それから洗面台で髪にドライヤーをあてる……

シルヴィア「さっぱりした?」

提督「ええ、とっても♪」

シルヴィア「それは良かったわ」少し古びてはいるが暖かそうな栗色のパジャマ姿で、ゆっくり本のページをめくっている……

クラウディア「お部屋の布団は冬物にしておいたから、暖かく眠れるわよ♪」クラウディアは身動きするたびにパールピンクとアイボリーに変化して見えるシルク生地のネグリジェ姿で、その上からライトグレイのガウンを羽織っている……

提督「それじゃあゆっくりベッドの中で寝転がることにするわ……お休みなさい♪」クラウディアとシルヴィア、双方の唇にお休みのキスをして、お返しに二人からも口づけをもらって自室へと入った……

提督「寝るのには少し早いし、読書でもするとしましょうか……」

…ベッド脇のスタンドを点けると本棚から文庫本を取り出してベッドにもぐり込み、ラジオ局の放送にチャンネルを合わせると、うるさくない程度に音をしぼった……

ラジオ「RAI(イタリア国営放送)ラジオが……時をお伝えします。続けて各地の天気ですが……」

提督「ふわぁ……」

…次第に暖まってくるふわふわの布団と、ほどよく薄暗くしてあるスタンドの明かり、それにラジオの音に混じって寝室に届く波の音……ベッドこそ少し小さいが、懐かしい居心地の良さがある自分の部屋でゆったりと本のページをめくっていると、次第にまぶたが下がってきた……提督は本にしおりを挟むと卓上に置き、スタンドの明かりを消すと、そのまま小さな寝息を立てはじめた…

………

…翌朝…

提督「うぅ……ん♪」時計を気にせずあれこれ考える必要もないままに、ベッドの中でもぞもぞと身体を動かしながら、裸身をくすぐる布団の感触を楽しんでいる……

シルヴィア「……フランカ、もう起きてる?」

提督「ええ、目は覚ましているわ……」

シルヴィア「ならいいわ。朝食が冷める前に来るようにね」

提督「はぁーい」眠気の混じったあくびとも返事ともつかないような声をあげると、名残惜しげにベッドを出て、すぐ足元に並んでいるスリッパに足を入れ、それから椅子の背に引っかけてあるガウンに袖を通した……

…しばらくして…

クラウディア「おはよう、フランカ♪」

提督「おはよう、お母さま♪」

…歯を磨いて冷たい水で顔を洗うと、すっかり眠気が覚めた提督……居間の暖炉は残っていた昨夜のおき火にシルヴィアが焚き付けを足してあり、火勢こそ強くはないが心地よく火が燃えている……テーブルにはまだ十分に温かいコーヒーのポットと温めたミルク、暖炉のそばで温めたおかげで外皮がパリパリとして、中心の白いふわふわした部分にバターが溶けて染みこんでいるパン、夏の間にクラウディアが作ったお手製のイチゴジャムと、さっぱりしたミルクのような口当たりのリコッタチーズ…

クラウディア「よく眠れたようね」

提督「ええ、一晩中ぐっすり……♪」

シルヴィア「新聞はここに置いておくから、読みたかったらどうぞ」

提督「……ありがとう、おばさま」長い脚を暖炉の心地よい熱で温めながら、目をつぶって苦くて甘いミルクコーヒーをゆっくり味わう……

シルヴィア「このジャム、甘さもちょうどいいわ」

クラウディア「そう、良かった。甘過ぎると貴女の好みじゃなくなるし、かといって砂糖が少なすぎるとカビが生えるから……フランカはどう?」

提督「そうね、私もちょうどいいと思うわ……おばさま、リコッタの鉢をこっちに回してくれる?」

シルヴィア「ええ」

クラウディア「ふふ、いいものね……家族そろって食卓を囲むのは♪」

………

…午前中…

クラウディア「そういえばフランカ、クリスマスカードは書いた?」

提督「ええ。海軍関係の知り合いにはタラントの管区司令部で軍事郵便にして投函してきたわ……軍事郵便だから相手の所属と名前さえ分かっていればどこにでも届くし、軍の知り合い以外に出す分もついでに書いて、タラント市内の郵便ポストに投函しておいたわ」

クラウディア「そう、なら大丈夫ね」

提督「ええ。お母さまは?」

クラウディア「私は親戚だとか、付き合いのあったデザイナーやモデルの知り合いくらいかしら」

提督「つまり例年通りたくさんっていうことね」

クラウディア「そうでもないわ。私は半ば引退しているようなものだから、最近はそれなりに親しい人としかクリスマスカードのやり取りはしないし……」

シルヴィア「よく言うわ……この間「書き終わったクリスマスカードを投函したい」って言うから郵便局まで車を出したけれど、たっぷり五十枚はあったでしょう」

クラウディア「そうは言うけれど、あれでも現役の頃よりは減っているのは貴女が一番よく知っているじゃない」

シルヴィア「まぁね」

クラウディア「でしょう? それからフランカのクリスマスプレゼントはそこにちゃーんと用意してあるから、当日は楽しみにしていてちょうだいね♪」

シルヴィア「私からも用意してあるからね」そういって軽く頭を動かしてみせた先、可愛らしいクリスマスツリーの下には確かに「フランカへ」とカードのついた包みが二つおいてある……

提督「いつもありがと。お母さま、おばさま」

クラウディア「どういたしまして……ところでフランカ、あなたは鎮守府の女の子たちにプレゼントを用意してあげたの?」

提督「ええ、もちろん。 おかげで冬の賞与があらかた吹き飛んだわ……」艦娘たちの喜ぶ表情を想像し、それから通帳から引き出した額のことを考えて、思わず苦笑いを浮かべる提督……

シルヴィア「フランカは良い子だね」

クラウディア「ええ、だって私たちの娘だもの♪」

提督「もう、やめてよ……///」

シルヴィア「それにしてもあれだけの娘たちにプレゼントを買ったのなら、相当な大荷物になったんじゃない?」

提督「ええ、まるで絵本の泥棒みたいに袋を担いで鎮守府へ運び込んだわ」

…さかのぼって…

提督「ただいまー……ふぅ、ふ……ぅ」

デルフィーノ「お帰りなさい、提督……って、その荷物は一体なんですか?」

提督「それもちろん、みんなへのクリスマスプレゼントよ……これでもまだ半分で、残りは車の中にあるの」

デルフィーノ「じゃあ私も手伝いますっ」

提督「いいのいいの……私がみんなに買ってきたプレゼントだもの、最後まで私が運ばないとね」

ルチア「ワンワンッ♪」帰ってきた提督を見て、じゃれつきたそうに尻尾を振って足元を駆け回っている……

提督「あぁ、ルチア。お散歩は後で連れて行ってあげるから、今は大人しくしていてちょうだいね……お座り」

ルチア「ワフッ…♪」きちんとお座りをして、床の大理石を尻尾でぱたぱたと掃いている……

…廊下…

提督「ふぅ……ひぃ……みんな、ちょっと道を空けて」

トリチェリ「すごい大荷物ですね」

エウジェニオ「まるで夜逃げでもするみたいじゃない?」

提督「言ってくれるわね……よいしょ」執務室の前にたどり着くと、大きな袋をそーっと下ろした……

エウジェニオ「……これからプレゼントにつけるカードを書くのね?」

提督「ご名答……エウジェニオ、貴女は?」

エウジェニオ「私はもう済ませちゃったわ……提督もそういう時は化粧品とか下着みたいに軽いものを選ぶほうが楽よ?」

提督「それは私も知っているけれど、みんなの好みを考えたらそうも言っていられなくて」

エウジェニオ「ふふ、一人ひとりに合わせて好きそうなものを選んでプレゼントするなんて提督らしいわね……大抵の鎮守府じゃあ出来合いになっているお菓子の詰め合わせが良いところだって聞くわよ?」

提督「そうできないのが私の指揮官としての悪いところよ……貴女たちが可愛いから、つい恋人同士みたいな気分になって甘やかしちゃう♪」

エウジェニオ「恋多き女性だものね?」

提督「それは貴女もでしょ、エウジェニオ♪」

…しばらくして・食堂…

提督「よいしょ……うんしょ……」

エウジェニオ「ほら、提督が通るから道を空けなさい」

ニコ「ずいぶんな大荷物だねぇ」

トレント「て、手伝いましょうか?」

提督「いいのよ、もう降ろすから……ふぅ」

レモ「くすくすっ、提督ってばまるで泥棒さんみたーい♪ それで、何が入ってるのぉ?」

提督「それはもちろん……♪」

レモ「……もしかして、クリスマスプレゼントっ?」

提督「ご名答。くれぐれも当日までは開けないように♪」

…クリスマスツリーの根もとに次々とラッピングの施された箱や包みを並べ、積み上げていく提督……個々のプレゼントには表書きに艦娘それぞれの名前を書き込んだ提督からのクリスマスカードが貼りつけてあり、それらを並べている間にも噂を聞きつけ、艦娘たちが入れ替わり立ち替わりでのぞきにくる…

エリトレア「わぁ、すごいたくさんのプレゼントです」

フルット「普段からよい暮らしをさせてもらっておりますのに、さらに散財をしていただいて……感謝しております」

提督「いいのよ、お世話になっているのはむしろ私の方だもの……♪」

アブルッツィ「それにしてもまぁ大変な量ね……」

提督「まぁね……それとクリスマス休暇に入っちゃう娘には先に渡すから、当日になったら開けてちょうだいね♪ セベリ、貴女もそうだったわよね……少し気が早いけれど、はい」

ウエビ・セベリ「わ、嬉しイです」

提督「そう言ってくれると用意したかいがあるわ♪」そう言って、クリスマス休暇で鎮守府を離れる予定の艦娘たちにプレゼントを渡す……

………



シルヴィア「いいことをしたわね。彼女たちだって欲しいものが色々あるでしょうし」

提督「ええ、そう思ってさりげなく聞き出したり、遠回しに尋ねてみたり……大変だったわ」

クラウディア「そうね……ところでフランカ、あの超ミニスカートのサンタ服は着たの? けっこう可愛かったけれど」

提督「けほっ! もうお母さまったら、何を言い出すかと思ったら……そもそもどうしてあの格好の事を知っているの?」

クラウディア「だって、前にうちに泊まりに来たお友達の方が教えてくれたもの」

提督「もう、いったい誰よ……そういう余計な事を吹き込んで……///」

…転属や航海の都合で「根無し草」的な暮らしになる事の多い海軍士官の常で、温かい家庭的な雰囲気というものに憧れがある……そのせいか、お互いに機会があれば家に泊めてあげたり、食事を振る舞ってあげることも少なくない……提督の実家はガエタの近郊とは言うものの田舎にあって交通の便もひどく悪いが、それでも仲良しになった何人かは週末や短い休暇を使って泊まりに来たことがある…

クラウディア「さぁ、誰かしら♪」

提督「もう……」

シルヴィア「ふふ……そういえばフランカ、クリスマス休暇はいつまで?」

提督「えーと、クリスマスを挟んでの二週間と年始からの三日間ね……どうして?」

シルヴィア「いえ、せっかくの機会だからどこかスキーにでも行こうかと思って……モンテ・チェルヴィーノ(マッターホルン)のふもと辺りなんてどうかしら」

提督「チェルヴィニアとか?」

(※モンテ・チェルヴィーノ…マッターホルンのイタリア名で「鹿の角」の意。第二次大戦時に「白い悪魔」とも称されたイタリア山岳部隊「モンテ・チェルヴィーノ」大隊の名前の由来でもある。チェルヴィニアはそのふもとにある村で有名なリゾート地)

シルヴィア「ええ。もっともああいう有名どころは外して、もっと小さなコムーネにある静かなホテルにでも泊まって過ごすの」

提督「うーん、アイデアは素敵だけれど休暇の日数を考えると……ね」

シルヴィア「ちょっとせわしないわよね、フランカが子供の頃はあちこちよく行ったものだけれど」

提督「でも嬉しいわ、おばさまが誘ってくれて……♪」

シルヴィア「当然でしょう? 貴女は私にとって最愛の女性の娘であり、可愛い宝物だもの」ふっと口元に小さな微笑を浮かべ、さらりと言った……

提督「……おばさまにそういう風に言われるとすごくドキドキするわ///」

クラウディア「そうよね、私まで胸がときめいたわ♪」

シルヴィア「さすがに二人同時に相手をするのは勘弁して欲しいわ……どっちも可愛いけれどね」

クラウディア「ふふ、それじゃあ今夜は私♪」

…翌日…

シルヴィア「おはよう、フランカ……少しいいかしら」

提督「なぁに、おばさま?」

…鎮守府では朝から新聞やニュース、気象通報に目を通し耳を傾けていたが、休暇に入ってからはテレビやラジオのニュースも最低限で済ませ、一日中ふにゃふにゃのセーターやナイトガウン姿で庭いじりをしてみたり、文庫本をめくっていた提督……士官学校で身体にしみついた習慣が抜けないもので寝具だけはきちんと畳んでおいたが、この日ものんびり温かいカフェラテをすすり、ほかほかしたパンを口に運んでいた……と、シルヴィアが声をかけてきた…

シルヴィア「いえ、せっかくの機会だから射撃にでも行こうかと思って……行く?」

提督「ええ、久しぶりだし……ちょっと待ってて、すぐ食べ終わるわ」残ったパンを口に放り込むとカフェラテで流し込み、食器を洗いにせかせかと台所へ歩いて行く……

シルヴィア「ゆっくりでいいわよ、私だって支度はまだなんだから」

提督「だって、せっかくの機会だもの……できるだけ長く一緒にいたいわ」

クラウディア「そうね、昨晩は私が独り占めしちゃったから……今日はフランカの番♪ お弁当、いま用意してあげるわね」

提督「グラツィエ、クラウディアお母さま……大好きよ♪」

クラウディア「はいはい♪」

…しばらくして…

提督「用意できたわ、おばさま」

シルヴィア「私もよ……ところでフランチェスカ、鎮守府ではずいぶん美味しいものを食べているみたいね」

提督「むぅぅ……これでも腹筋や腕立て伏せをしてみたり、チェザーレやバンデ・ネーレに剣術の稽古を付けてもらったりして気を付けてはいたのよ?」

…提督はクリーム色のセーターに茶色のラム革ベストと黒い牛革の手袋、鎮守府ではほとんど出番のない軍用の迷彩ズボンを着て、背中にはクラウディアの用意してくれた弁当や水筒の入っている小ぶりなリュックサックを背負っている……腰のベルトには散弾銃の弾薬ケースやこまごましたものの入った小ぶりなポーチを通し、ズボンの裾を黒革のひざ丈ブーツに突っ込んであるが、鎮守府での食生活がたたってかズボンのヒップからふとももは少しきゅうくつで、ベストの胸回りも少しきつい…

シルヴィア「ま、デスクワークが多いでしょうし仕方ないわね」

…そう言って肩をすくめたシルヴィアは着古した白いプルオーヴァーと、自分で射止めてなめした鹿革をクラウディアに縫製してもらった愛用の茶色いベスト、黒い乗馬ズボンとふくらはぎ丈の黒革ブーツ姿で、肩からは昔の山賊のように弾薬ベルトをかけ、獲物をさばくためのがっしりした「フォックスナイヴス」のナイフをブーツに突っ込んである…

提督「ええ、書類の海で泳げそうなほどよ」

シルヴィア「それじゃあせいぜい野山を歩き回って新鮮な空気を味わうとしましょう……お昼になったらクラウディアのお弁当を食べて、夕方になったら戻る」

提督「とっても健康的ね」久々に持つベネリの散弾銃を手に持ち、重さを確かめるようにして握り直す……

シルヴィア「そういうこと」フランキの散弾銃を肩にかけ、裏庭の門を開けると雑木林の間に入っていった……

…二時間後…

提督「ふぅ……」

シルヴィア「だいぶくたびれたみたいね……少し休憩にする?」

提督「そうする……まったく、身体がなまっているって実感したわ……」手頃な倒木に腰を下ろすと暴発させないよう散弾銃を置いて、肩を回し、脚を伸ばした……

シルヴィア「そうみたいね」午前中だけで茂みから飛び出してきたつがいのキジに、素早い野ウサギを一羽、それに四羽ほどの野鴨を仕留めて腰にぶら下げている……

提督「ええ……そんなに歩いたわけでもないのに、こんなに息切れするなんてね……」射撃の腕自体は衰えていないはずだったが肩で息をしていたせいか、それまでなら難なく撃ち落としていたはずの野鴨の群れに逃げられ、二羽ばかりが残念そうにぶら下がっている……

シルヴィア「まあ、こっちにいる間だけでも身体がなまらない程度に運動すればいいわ……ちょっと早いけどお昼にして、それからもう少し歩いて帰りましょう」

提督「そうね……」

…暖かな日差しを受けた森の空き地でお弁当の包みを開く提督とシルヴィア……中身はもちもちしたフォカッチャに乾燥トマトや黒オリーヴ、少し塩っぱいハムなどを挟んだサンドウィッチと、アーモンドと干しぶどうを練り込んだ味の濃いチーズ、小瓶に入ったアーティーチョークのピクルス……冬枯れた広葉樹の枝やいつでも青々としたカサマツの間を風がさわさわと吹き抜けて、硝煙と汗にまみれた肌を冷やしていく…

シルヴィア「……いい風」

提督「ええ」

シルヴィア「ねえ、フランチェスカ……」散弾銃を置くと提督の隣に座り直した……

提督「なぁに、おばさま?」

シルヴィア「……久しぶりに……する?」じっと見つめてくる瞳に、汗と硝煙と皮革の野性的な匂い、そこに爽やかな松葉の混じった香ばしいような香り……

提督「ええ……///」

シルヴィア「ん……♪」

提督「あ、んぅ……あふっ///」

シルヴィア「フランカとこうするのも久しぶりね……んむ、ちゅ……っ」

提督「ええ、だってシルヴィアおばさまは私が初めて好きになって、初めて愛することを教えてくれた女性(ひと)だもの……」

シルヴィア「……あの時は私もずいぶん悩んでからクラウディアに相談したものだけれど、まさかあんなにあっさり許すとは思わなかったわ」

提督「そうね、お母さまが心の広い人で良かったと思うわ……ん、ちゅ♪」

シルヴィア「ふふ……私もクラウディアのそういう所が好きで結婚したのよ」

提督「おばさまの気持ち、分かるわ……んんっ、あぅ……ふあぁ……っ///」

…日差しの差し込む小さな森の空き地で生えている木に背中を預け、脚の間に割って入るシルヴィアの膝や、ぐっと迫ってくる顔と吐息を感じている……きゅっと引き締まった乳房がセーター越しに触れ、ベルトを緩めてズボンの中に入ってきたシルヴィアのひんやりした指が熱を帯びた提督の秘部に触れる…

提督「ん、あっ……あぁ……ん///」

シルヴィア「フランカ……愛おしい私の娘♪」

提督「シルヴィアおばさま……ぁ///」

シルヴィア「……ここ、好きだったわね」ちゅく……っ♪

提督「ええ、そう……ふぁぁ……っ♪」

…木立の間に響く野鳥の鳴き声や、地面から立ちのぼってくる枯葉と土の乾いた匂いを感じながら、下腹部のじんわりととろけるような感覚に甘い声を漏らす…

シルヴィア「良かった。忘れていないものね……」ごつごつした樹皮に提督を押しつけるようにしながら身体をくっつけるとズボンのベルトを緩め、ウエストのすき間から提督の手をいざなって自分の花芯へと導いた……

提督「シルヴィアおばさまのここ……濡れていて……温かい……♪」

シルヴィア「フランカのキスが上手だからよ」

提督「嬉しい……ん、ちゅぅ……ちゅる……っ///」

シルヴィア「フランカ……♪」

提督「あ、あっ……シルヴィアおばさま……ぁ///」とろ……っ♪

シルヴィア「ん……♪」最後に愛のこもった優しいキスを唇にすると、濡れていない方の手で短めにしている髪を軽くかき上げた……

提督「はぁ、はぁ、はぁ……ぁ///」

…木の幹に背中をあずけたまま、ずるずるとくずれ落ちそうになる提督……気だるげな心地よさと、もっとシルヴィアと愛し合いたいという甘ったるい欲望で目がかすみ、敏感になった乳房の先端やとろりと濡れた花芯に下着の布地が触れるたびに静電気のようなピリッとした刺激が伝わってくる…

シルヴィア「そろそろ日が傾いてくるし、戻りましょう」

提督「ええ、シルヴィアおばさま……///」服の乱れを直して立ち上がったが、じんわりと濡れて冷たくなり始めた下着がはり付いてくる気色の悪い肌心地と、下腹部からの甘い余韻が合わさって微妙な内股になっている……

シルヴィア「ふふ……その調子じゃあ日暮れまでにうちに戻れるかどうか分からないわね」

提督「も、もう……おばさまったら笑わないで///」

シルヴィア「悪かったわ……足元のおぼつかないフランカも可愛いわよ♪」どちらかと言えばクールなシルヴィアにしては珍しく、どこか色っぽい笑みを浮かべながら見せつけるようにして右手を開き、中指と薬指の間に引いた粘っこい糸を舐めあげた……

提督「……っ///」

………

…夕方…

提督「お母さま、いま戻ったわ」

シルヴィア「ただいま、クラウディア」

クラウディア「あら、お帰りなさい♪ 獲物はあった?」

シルヴィア「悪くはなかったわ。血抜きは済ませてあるから、羽根をむしったり皮を剥くのは後でするとしましょう」

クラウディア「ええ、お願いね……あら」シルヴィアとキスをすると、少し問いかけるような表情を浮かべた……

シルヴィア「どうかした?」

クラウディア「……フランカの味がするわ」

提督「……っ!」

シルヴィア「さすが、鋭いわね」

クラウディア「自分の結婚相手と娘の味くらい分かるわ……それで、どうだった?」笑みを浮かべ、上目遣い気味にしながらいたずらっぽく問いかけた……

シルヴィア「とっても可愛かったわ、貴女の娘だけあって……ね♪」

クラウディア「まぁ、ふふっ……♪」

提督「///」

クラウディア「あらあら、フランカったら恥ずかしがっちゃって……シルヴィアは素敵だもの、我慢なんてできないわよね?」

シルヴィア「まったく、自分の娘に惚気てどうするの」

クラウディア「いいじゃない、貴女は私の自慢の女性(ひと)だもの……さ、夕食の前にほこりを洗い流していらっしゃいね♪」

…クリスマス数日前…

提督「お母さまたちとクリスマスを過ごすのも久しぶりね」

クラウディア「そうねぇ……フランカが海軍に入ってからはなかなか会う機会もなかったものね」

提督「これでもクリスマスに休暇が取れるよう毎年頑張ってはいたのだけれど……なかなかそうも言っていられなくて」

シルヴィア「でもフランカは毎年クリスマスカードを書いてくれていたから、クリスマス・イヴになるといつも二人で読んだものよ」

提督「私もお母さまとおばさまのカード、欠かさず読んでいたわ……それにお菓子やプレゼントも贈ってくれたわよね」

クラウディア「ええ、一緒にいられないぶん贈り物くらいはしないと♪」

提督「お母さまたちの気持ちが伝わってくるようで嬉しかったわ。お菓子なんかは士官宿舎で集まって持ち寄りのクリスマスパーティなんかしたときに、ずいぶん好評だったし」

クラウディア「そう言ってもらえると作ったかいがあるわ」

提督「何しろみんな甘いものが好きだから……」と、提督の携帯電話がぶるぶると震えだした……

シルヴィア「電話みたいね」

提督「ええ。緊急呼び出しの番号なら着信音も鳴るようにしてあるから、たぶんそこまでの用事じゃないはずだけれど……あ」

クラウディア「知り合いの女の子?」

提督「ええ、ジュリアだわ。P-3C哨戒機の飛行隊長をしている……もしもし?」

…シチリア島・カターニア…

アントネッリ中佐「やぁフランチェスカ、ご機嫌にしているかな?」

…イタリア海軍航空隊・カターニア航空基地の外、モトグッツィの大型バイクのかたわらで電話越しに提督の柔らかな声に耳を傾けているアントネッリ……黒革のライダースジャケットに筋肉質な脚線美を余すところなく引き出しているぴっちりしたレザージーンズ、オートバイ用のがっちりしたブーツで、黒に近いボルドー色のルージュを引き、冬の低い日差しで目がくらまないように濃いサングラスをかけている…

提督「ええ、おかげさまで……ジュリア、貴女は?」

アントネッリ「ご機嫌さ、ありがとう」

提督「クリスマス休暇は取れた?」

アントネッリ「ああ、今日からね……正確に言えば今からかな。今日の明け方から太陽と一緒に哨戒飛行を済ませてきたところさ。他の連中はフライトスーツを脱ぐなり街に飛び出していったよ……酒を飲んでしまえば緊急呼集がかかっても飛ばなくて済むからね」

提督「なるほどね♪ それで、何事もなかった?」

アントネッリ「ああ、深海のお化けたちもクリスマスはお休みらしい」

提督「それは良かったわ」

アントネッリ「まぁね……私の方は機付整備員たちをねぎらって、それからさっきまで基地司令がよこすしょうもない書類にサインをしていたんだが……今は晴れて自由の身さ。年内は実家かい?」

提督「ええ、その予定よ……もし良かったら泊まりに来る?」

アントネッリ「いいや、せっかくの家族水入らずの時間に割って入るほど無粋じゃないつもりだよ……年が明けたら鎮守府の方にお邪魔するさ」

提督「あら、そう? ジュリアが来てくれたらお母さまもおばさまも喜んでくれると思うけれど……」

アントネッリ「なに、その気持ちだけで嬉しいよ……可愛いフランチェスカ♪」

提督「もう、相変わらず上手なんだから♪」

アントネッリ「事実なんだから仕方ないさ」

提督「今までどれだけの相手にそう言ってきたの?」

アントネッリ「君ほどの美人には一度も」

提督「ジュリアってば……口説いた相手全員にそう言っているんでしょう?」

アントネッリ「いいや? 私が本気で口説くのはフランチェスカ、君と……それからあの青い空だけさ」

提督「まぁ、今どきメロドラマでもそんな台詞は言わないわよ?」そう言いつつも、携帯電話の耳元へささやくように話しかけるアントネッリの声に、思わずどきっとする提督……

アントネッリ「そうかもしれないね……ふふ、とにかくよいクリスマスを」

提督「ええ……ジュリア、貴女もね」

アントネッリ「ああ、ありがとう……チャオ♪」電話越しに投げキッスの音を送ると、通話を終えた……

提督「もう、ジュリアってば……ただ「良いクリスマスを」って言えばいいだけなのに///」

シルヴィア「……この調子だとこれから数日はフランカの携帯電話が鳴りっぱなしね」

提督「それだけは勘弁してほしいわ」想像して思わず苦笑いを浮かべた……

…12月23日…

提督「いよいよ明日からクリスマスね」

(※カトリックの国は教会暦で24日の晩からがクリスマス。クリスマス・イヴは「クリスマスの晩」であって「前夜」ということではない)

クラウディア「そうね……さぁ二人とも、一緒にツリーの飾り付けをしましょう?」

提督「はーい」

シルヴィア「ええ、いま行くわ」

…ここ何年か提督抜きの二人きりでクリスマスを過ごしてきたクラウディアとシルヴィアだったが、今年はひさびさに家族揃ってのクリスマスということで、居間のツリーはしきたりにのっとり、今日まで飾り付けを仕上げないまま立ててあった……暖炉のなごやかな火を見ながら穏やかに、しかし和気あいあいと母娘で飾りつけに興じる提督たち…

提督「……やっぱりうちで過ごすクリスマスっていいものね♪」

クラウディア「そうでしょう。それから明日はちゃんとお魚料理、明後日はアヒルや鴨のごちそうが控えているから期待していてね♪」

シルヴィア「しかもクラウディアが料理するんだもの……考えただけで涎が出るわね、フランカ?」

提督「ええ♪ あ、その飾りはこっちにちょうだい?」

…クラウディアとシルヴィアが年ごとに、また色々な記念に少しずつ買い足していった思い入れのあるオーナメントや飾り物でにぎにぎしく装飾されていくクリスマスツリー……木の葉が揺れ動くたびに青々とした針葉樹の香りがふっと鼻腔をくすぐり、金銀の玉飾りやリンゴを模した木の飾り物、雪の結晶や小さな銀の星が取り付けられてゆくうちに、ツリーが華やかさを増していく…

クラウディア「どう? お星様は傾いてない?」つま先立ちをして人の背よりも高いツリーのてっぺんに銀の星の飾りを載せると、少し下がってシルヴィアに尋ねた……

シルヴィア「大丈夫、真っ直ぐよ」

クラウディア「そう、それじゃあ完成♪」

提督「……本当に、いつ見ても綺麗ね」

クラウディア「ええ、シルヴィアほどじゃないけれど♪ ……それに、こうして祝えるのがなによりね」

提督「そうね」

シルヴィア「それじゃあ賛美歌のレコードでもかけて……二人とも、ヴィン・ブリュレーでも飲む?」

(※ヴィン・ブリュレー…温めた赤ワインに香辛料や柑橘の風味を利かせたもの。グリューワイン)

クラウディア「ええ、いただくわ♪」

提督「私も」

シルヴィア「分かった」

…暖炉の片隅に鍋を置くと赤ワインを注ぎ、砂糖の代わりに地元の農家から分けてもらった蜂蜜を垂らし、ショウガやシナモン、それにオレンジとレモンのピール(皮)を加えて軽く温める……鍋でワインがふつふつと言い始めたところで鍋を火から遠ざけると、めいめいのカップにワインを注いだ…

クラウディア「ん……美味しい♪」

シルヴィア「クラウディアは甘めが好きだから、蜂蜜を多めにしたの……フランカはどう?」

提督「ええ、ちょうどいいわ」

シルヴィア「それなら良かった……ん///」

クラウディア「ちゅっ……どう、美味しい?」

シルヴィア「ええ、とっても甘かったわ」

提督「そうね……お母さまたちがいちゃつく分、蜂蜜はもっと少なくて良かったわ」

クラウディア「もう、フランカってば自分の母親に嫉妬しちゃって……んーっ♪」

提督「ん、んぅ……っ///」

クラウディア「これで機嫌を直してくれる?」

提督「機嫌を直すもなにも……実の母親にキスされたからってどうこうしないわよ///」

クラウディア「あら、残念♪」

シルヴィア「……クラウディア」

クラウディア「なぁに?」

シルヴィア「ん……んちゅっ、ちゅぅ……ちゅる……っ、ちゅ……っ♪」

クラウディア「あっ……ふ……んぅ♪」

シルヴィア「ぷは……フランカは可愛いけれど、せっかくのキスを上書きされたくはなかったから」

クラウディア「……まぁ///」

提督「……やっぱり蜂蜜はいらなかったわ」

…12月24日・午前…

提督「おはよう、お母さま、おばさま……いよいよクリスマスね」

クラウディア「ええ、今夜は一緒に教会へ行きましょうね♪」

提督「こっちでクリスマスミサに参加するのも久しぶりね……」

…そう言って提督がのんきにコーヒーをすすっていると、庭の門に付いている呼び鈴が鳴っている音が聞こえてきた…

クラウディア「……きっと郵便局のペリーニさんね」

シルヴィア「さすがね……貴女の言うとおり、郵便配達のペリーニだったわ。それを取って頂戴?」椅子から立ち上がり居間の窓から庭先の門を眺めて言った……

クラウディア「ええ♪」この町の郵便配達やパトロールの巡査、消防署員といった人たちに挨拶として渡すため、クラウディアが毎年のように作っているクリスマスカード付きの菓子の小袋を一つ手渡した……

提督「ペリーニさん、まだ配達をしているのね」

クラウディア「ええ。本当ならくせっ毛のアルベルトが継ぐはずだったのだけれど、田舎は嫌だってナポリに出て行っちゃったものだから」

提督「ナポリねぇ……食べ物は美味しいけれど、地区によってはずいぶん柄の悪い人間もいる街よ?」

クラウディア「そうは言っても、都会にあこがれるものなのよ」

提督「かもね」そう言って肩をすくめた提督……と、シルヴィアが戻ってきて束ねた郵便物と小包の山を机に置いた……

シルヴィア「郵便配達の人がクリスマスカードを届けてくれたわよ……フランチェスカ、貴女宛のもずいぶんあるわ」

提督「あら、本当?」

クラウディア「せっかくだし誰から来たのか読んでみたら?」

提督「そうね、他にやることがあるわけじゃないし……えぇーと」

…士官学校で知り合い、いまではそれぞれの任地に散らばっている仲の良い同期を始め、提督と「親しい」間柄にあった女友達やまだ文通の続いている「お姉様」たち、それにフランスのトゥーロンからカードを送ってきたエクレール提督を始め、各国海軍にいる提督の知り合いや友人たち…

提督「さてと、一体誰から来ているかしら……まずはトゥーロンのマリーに、イギリスからはメアリ、アメリカからはノーフォークのジェーン……あ、姫もわざわざ横須賀からカードを送ってきてくれたのね」

クラウディア「ジェーンって言うのは、写真で見せてくれた褐色のグラマーさん?」

提督「ええ、口は悪いけれど米大西洋艦隊ではピカイチの提督ね」

シルヴィア「姫っていうのは、夏期休暇の時の日本酒をプレゼントしてくれた日本の提督さんでしょう?」

提督「ええ。横須賀の百合野准将……長い黒髪がきれいな奥ゆかしい女性よ。提督としても艦隊運用が上手だし、ぜひまた会いたいわ」

クラウディア「他にもあちこちからたくさん届いているわね……フランカは可愛いから♪」

提督「もう、照れるからよして……たいていはもう送ってあると思うけれど、カードを出していない人がいたら書いてあげないと」

シルヴィア「良かったわね、読む楽しみが出来て……それとクラウディア、フランカだけじゃなくて貴女にもずいぶん来ているのよ?」

クラウディア「あら、本当に……お義理のカードはもうお断りしているのだけれど、それでもずいぶんあるものね」

シルヴィア「デザイナーをしていたときの貴女は顔が広かったものね」

クラウディア「そうは言ってもファッション業界なんて次々と新顔が出てくるし、私みたいに引退してのんびりしている人間なんてすぐ忘れられちゃうわ」

シルヴィア「この量を見る限り、そうでもないみたいだけれどね」

クラウディア「んー……まぁ、まだ時々は私にデザインを見て欲しがる人なんかもいるし、多少はね?」

提督「お母さまってば、せっかくお呼びがかかるんだもの……もう一度デザイナーとして復帰すればいいのに」

クラウディア「いいの。こういうのは形だけ言っておくお世辞みたいなものなんだから、本気にしたらバカにされちゃうわ……それにここでシルヴィアと愛し合っている方が性に合っているもの♪」

シルヴィア「ミラノのファッションにとっては大きな損失ね」

クラウディア「貴女がいないミラノよりは、貴女のいるここがいいわ♪」

シルヴィア「嬉しいことを言ってくれるわね……でも、このまえ身に付けていたミラノの素敵なランジェリーは捨てがたいわ」

クラウディア「もう……♪」

提督「あー……私はお母さまたちのお邪魔をしないよう、部屋でクリスマスカードを読んでいることにするわ」

クラウディア「ふふ……ありがと、フランカ♪」提督が二階へと上がって行くなり、シルヴィアに抱きついた……

シルヴィア「ちょっと、クラウディアってば……ミサの時間まで半日はたっぷりあるんだから、そう焦らなくたっていいでしょうに」

クラウディア「むしろ、たった半日しかないのよ? お夕飯の支度もしないといけないし……」

シルヴィア「それじゃあ夕飯の支度をしながらすればいいわ……こんな風に♪」よく台所でするように、後ろからぎゅっと抱きしめた……

クラウディア「あんっ♪」

…しばらくして…

クラウディア「それじゃあ晩のミサの前に食事にしましょう……さ、二人ともかけて?」

提督「ええ」

シルヴィア「座ったわよ」

クラウディア「よろしい、それじゃあ食前のお祈りを……」

…シルヴィアもクラウディアも形ばかりのカトリックであまりやかましいことは言わないが、食べ物への感謝をこめて食前の祈りをささげ、提督も二人に合わせて祈りの言葉を唱え、十字を切った…

シルヴィア「……そして素晴らしい食事を作るクラウディアにも」祈りのおまけにそう付け加えたシルヴィア

クラウディア「もう、シルヴィアったら……それじゃあ召し上がれ♪」

…イタリアではクリスマスの晩は肉食を断って魚料理を主菜におくことから、食卓には魚料理が並んでいる……前菜のマリネに続いて、クラウディアがアサリのうまみが沁みだした「スパゲッティ・アッレ・ヴォンゴレ」(ボンゴレ・ビアンコ)を取り分ける…

クラウディア「どう、フランカ?」

提督「ん……美味しいわ♪」

…どんな魔法を使っているのか、シンプルなヴォンゴレのパスタにもかかわらず、提督が作るものよりも美味しい……アサリから出た旨味のある塩気と、白ワインからくるごくかすかな爽やかな酸味……それにあとを引くニンニクの風味…

クラウディア「そう、良かったわ♪」

シルヴィア「本当に美味しいわよ……ワインも進むわ♪」

クラウディア「ミサに行くのだからあんまり飲み過ぎないのよ?」

シルヴィア「ええ、そうするわ」

クラウディア「ふふっ……それじゃあ次のお料理を取ってくるわ♪」

…軽やかな足取りで戻ってきたクラウディアが卓上に置いたのは、メインディッシュにあたる「セコンド・ピアット(第二皿)」の料理で、クリスマスの魚料理ということで、シチリアと向かい合うイタリア半島のつま先、レッジョ・ディ・カラーブリアの名物料理「ストッコ・アッラ・マルモレーゼ(マルモラ風の干し鱈)」がほかほかと湯気を立てている…

シルヴィア「いい匂いね」

クラウディア「うふふっ、今年はフランカが帰ってくるって言うから少し高いバッカラ(干し鱈)を買っておいたの」

提督「二日前から水に漬けて、半日おきにその水を替えて……お母さま、大変だったでしょう?」

クラウディア「いいのよ、久しぶりに家族みんなで過ごすクリスマスなんだもの♪」

…浅鍋でソフリット(野菜のみじん切りやハーブをラードで炒めたもの)を作ったところに皮を剥いたトマトを加えて煮詰めながら塩を振り、くし形に切ったジャガイモやオリーヴ、バッカラを加え、コトコトと煮込む…

提督「ん、はふっ……うーん、いい味♪ トマトの甘酸っぱいところにソフリットの風味とオリーヴの渋み、絶妙な塩気……私も何回か作ったことがあるけれど、やっぱりお母さまにはかなわないわ♪」お手上げとばかりに両方の手のひらを上に向けた……

クラウディア「ふふっ、私だってただ長い間台所に立っているわけじゃないのよ♪」

シルヴィア「そうみたいね……それにフランチェスカもいるから、今年のはことさらに美味しいわ」

提督「私もお母さまたちと一緒に食べることができて嬉しい……♪」

………



提督「……あぁ、美味しかったわ♪」

クラウディア「いっぱい食べた?」

提督「ええ、食べ過ぎちゃったくらい……あんまり家の料理が美味しいのも考え物ね?」そういうと、冗談めかしてお腹の肉をつまむ真似をする……

クラウディア「ふふ、貴女くらいの歳ごろは食べ過ぎるくらいでちょうどいいのよ♪」

提督「もう、お母さまったら……私だってもう子供じゃないんだから、そんなに食べさせなくったっていいの」

シルヴィア「それでもフランチェスカはまだ若いからいいわ……私なんかは気を付けないと、あっという間に樽みたいな体型になってしまいそうね」

クラウディア「あら、私は貴女が樽みたいな体型だって構わないわよ?」

シルヴィア「勘弁してちょうだい……そうならないためにも、皿を片付けて運動するとしましょう」

提督「それなら私も手伝うわ。食後のパンドーロを食べた分、カロリーを消費しないと♪」

クラウディア「まぁ、二人ともありがとう♪」

………

…夜…

クラウディア「それじゃあ、ミサに行く準備はできた?」

…そういって玄関先で二人に声をかける……クリスマスミサと言ってもある程度シックな装いであれば問題ないので、クラウディアはクリーム色のベルト付きトレンチコートに、淡いレモン色のふわふわしたセーターと白のスラックス、頭にはメルトン(厚手のフェルトのような布)の白いベレー帽をかぶって、首元にアクセントとして花柄プリントが施されたスカーフを巻いている…

シルヴィア「済んでるわ」

…シルヴィアは黒いダブルのステンカラーコートにパールグレイのピッタリしたタートルネックセーター、細身の黒いスラックス……それに差し色としてワイン色のマフラーを巻き、足元をヒール付きショートブーツで固めている…

提督「私も」

…提督は北欧への出張でもお世話になった黒のラップコートと淡いあんず色のセーター、それに百合の花のように広がるシルエットが綺麗な白いスカートで、黒タイツと茶革のミドル丈のブーツを履いた…

クラウディア「鍵は私がかけるわね」二人が玄関を出ると鍵をかけ、それからシルヴィアの腕につかまって歩き出した……

シルヴィア「そうしがみつかないで、歩きにくいわ」

クラウディア「恥ずかしい?」

シルヴィア「それは別に……ただ、そこまで身体を寄せられるとね」

クラウディア「そう、残念♪」おどけた口調でそういうと少しだけ身体を離し、代わりにシルヴィアの指に自分の指を絡めた……

シルヴィア「そのくらいならいいわ」

クラウディア「フランカ、あなたには反対側を貸してあげる♪」

提督「ありがと、お母さま……それじゃあ遠慮なく♪」そういうとわざとスキップのような子供じみた動きで横に並び、黒革の手袋につつまれた細い、しかし意外と力強いシルヴィアの手をつかんだ……

シルヴィア「まさに両手に花、ね」

…街の教会…

アンナ「……フランカ!」

…家から歩いて十分あまり、クラウディアたちに続いて街の中心広場に建っている教会へと入ろうとしたとき、不意に後ろから声をかけられた提督……聞き馴染みのある声を耳にして振り向いた矢先、幼馴染みのアンナが飛び込むようにして抱きついてきた…

提督「アンナ、帰ってきていたのね?」一瞬たたらを踏みそうになったが航海で鍛えられたバランス感覚でどうにか姿勢を保ち、アンナを受けとめながらたずねた……

アンナ「そりゃあクリスマスだもの……ベルギーとルクセンブルクでそれぞれ一件ずつ税法絡みの訴訟があったんだけど、とっととけりを付けて戻ってきたの」提督の左右の頬にキスを済ませると、肩をすくめていった……

提督「相変わらずね」

アンナ「それはこっちのセリフよ。帰ってくるんだったらそう言いなさいよ……てっきりクリスマスもタラントで缶詰にされているものだとばっかり思ってたわ」

提督「さすがに海軍だってクリスマスくらいは休ませてくれるわよ」

アンナ「そう。それじゃあフランカ……明後日にでもうちにこない?」

提督「えっ、でも……」いくら幼馴染み…アンナに言わせると「許嫁」とはいえ、家族水入らずで過ごすのが当然のクリスマス前後に家への招待を受けるのは…と、遠慮する言葉が出かかった提督……

アンナ「大丈夫よ。うちは広いし、フランカとの関係だって許してくれてるのは知ってるでしょ? おまけにパパもママも明日にはシチリア旅行に出かけるから、邪魔する人なんていないのよ?」まるで提督の言わんとすることを先読みしたように言葉を続けた……

提督「それはそうかもしれないけれど……」

アンナ「ふぅ……あのね、フランカ。 私、このあいだミラノに行ってきたの」

提督「あら、素敵。スカラ座でオペラでも見てきたの?」

アンナ「もう、フランカってばとぼけちゃって……つまり、ブティックで買い物をしてきたって言ってるの……ね、どんなのを買ったか見たいでしょ?」下からのぞき込むようにして、じらすような口調で言った……

提督「……っ///」

アンナ「何を照れてるのよ、これまでだってさんざん見ているくせに……♪」

提督「いえ、だって……///」

アンナ「まったく、相変わらず初心なフリをしてくれちゃって……そういうところが可愛いのよね♪」

提督「もう、からかわないでよ……」

アンナ「からかうくらいで許してあげているんだから感謝しなさい?」

提督「……ええ、そこは感謝しているわ」

アンナ「当然でしょう? 私は度量の広い女なのよ」

提督「度量の広い人間は自分でそういうことを言わないと思うの……」

アンナ「いいから。 ねぇ、せっかくだから一緒に入りましょうよ……今度白いドレスで一緒に入るときの予行練習ね♪」

提督「……」

…教会…

アンナ父「おやフランチェスカちゃん、クリスマスおめでとう。こっちに帰ってくるのは久しぶりじゃないか。 うちのアンナも何かといえば君の話でね……積もる話もあるだろうし、良かったら今度うちにおいで?」

アンナ母「ええ、本当に……貴女なら大歓迎よ♪」

提督「ありがとうございます」

アンナ「もうっ! パパもママも、余計な事は言わなくてもいいの!」

…こぢんまりとした……しかし由緒ある教会には続々と町の人がやってくる……おおよそ定位置が決まっているベンチに皆が腰かけていく中で、提督はアンナの両親と言葉を交わした……仕立てのいい茶色のスーツに暗紅色をした楕円の宝石をあしらったループタイを身に付け、相変わらずのしゃがれ声で髪の毛をぺったりと後ろに撫でつけたアンナの父と、高そうなプッチの黒いドレスとストッキング、首元に大粒の真珠のネックレスと、ぽっちゃりと丸っこい指にダイアモンド付きの豪華な指輪をし、会うたびにふくよかさが増しているアンナの母……それにアンナの父が経営している『貿易会社』の一癖ありそうな若い衆が二、三人…

アンナ父「何が「余計な事」なものだね、アンナ」

アンナ母「そうよ、フランチェスカちゃんは本当に良い子なんだから」

提督「これは、ご丁寧にどうも……そろそろ席に着かないといけませんので……」

アンナ父「それもそうだ、あんまりおしゃべりをしていては神父様に叱り飛ばされてしまうな」

アンナ「……まったく。とにかく貴女のことなら大歓迎だから、必ず来なさいよね♪」軽く手を振ると、両親と一緒に定位置のベンチに腰かけた……

提督「え、ええ……」

…ミサ…

神父「天にまします我らの主よ……」

…提督が子供の頃からずっと町の教会でミサを執り行っている神父がクリスマスミサのお祈りを続け、式次第に合わせて祈りの言葉を唱えたり十字を切ったりする会衆…

神父「……アーメン」

………



…ミサの後…

クラウディア「ふぅ……教会って底冷えするわね、足先が冷たくなっちゃったわ」

シルヴィア「神父は寒くないんでしょうよ。帰ったらまた暖炉の火をおこして、それからグラッパを垂らした熱いコーヒーでも飲みましょう」

提督「賛成」

クラウディア「それに、お菓子も好きなだけ食べていいわよ」

提督「まぁすごい、まるでクリスマスみたい♪」冗談めかしてわざと驚いてみせる……

クラウディア「そのクリスマスよ」

シルヴィア「ふふ……♪」

…教会前の広場では飾り立てられたツリーを見ながら気の合う仲間同士でおしゃべりに興じる人たちや、久々に顔を合わせて口づけを交わす恋人たち、あるいはお菓子をもらってご機嫌な子供たちなどが笑いさんざめき、小さな町にもにぎわいが戻ってきたような感がある…

アンナ「フランカ♪」

提督「あら、アンナ……お父様たちとはもういいの?」

アンナ「ええ、どうせうちに帰ったらずーっと「誰がどうした」とか「どこどこの娘が結婚した」だのって噂話を聞かされるんだから……それよりも貴女と一緒にいられる時間を有効活用しないと……ね♪」提督よりも小柄なアンナだが、腰に手を回すと勢いよく身体を抱き寄せた……

提督「もう///」

クラウディア「まぁ、ふふっ……アンナちゃんってば♪」

シルヴィア「相変わらずみたいね」

アンナ「あ、これはお義母さまにおばさま……お久しぶりです」

クラウディア「ええ、久しぶりね♪」

シルヴィア「そういえばこの間「お土産に」ってくれたワイン、とても良かったわ」

アンナ「お気になさらず。お義母さまとおばさまは私の母も同じですから♪」

提督「なんだか着実に外堀を埋められている気がする……」

シルヴィア「……それで、こっちにはいつ頃まで?」

アンナ「年明けの三日にはスイスへ飛ばなければいけないので、二日までです」

クラウディア「それじゃあ、良かったらフランカとも過ごしてあげて?」

アンナ「ええ、もちろんです♪」

提督「……」

…12月25日…

提督「ふ~ふふ~ん~…♪」

クラウディア「あら、フランカったらご機嫌ね♪」

提督「そりゃあクリスマスだもの……お母さまとおばさまもそうでしょう?」

クラウディア「そうね。もっとも、シルヴィアがいるならいつだって嬉しいけれど♪」

シルヴィア「はいはい……」

…クリスマスの朝はひんやりと寒かったが、日が昇るにつれて次第に明るい光が降り注ぎ、庭から望めるティレニア海の波もきらきらと輝いている……提督たちは暖炉の前で温かいコーヒーをゆっくり飲み、クラウディアがかけたクリスマスソングのCDを聞きつつ、届いたクリスマスカードのメッセージを読んでいる…

クラウディア「あら、もうこんな時間……そろそろローストの準備に取りかからないと」

提督「なら私も手伝うわ」

クラウディア「ありがとう、フランカ。でもクリスマスなんだから座っていていいのよ……今日は私が腕によりをかけて作るから、美味しく食べてくれればそれで十分♪」そう言って座っている提督の前髪をかきあげて額にキスすると、エプロンをつけて台所に入っていった……

提督「……お母さまったら張り切っちゃって。あの調子じゃあ一個分隊でも食べきれないくらい作っちゃいそうね」

シルヴィア「久しぶりにフランカと過ごせるクリスマスだもの、クラウディアだって嬉しいのよ」

提督「そうね、私だっておばさまたちと過ごせて嬉しいわ」

シルヴィア「ありがとう……ところで、クリスマスカードについていたプレゼントはどうだった?」

提督「ええ、それならいろんな物が届いたわ。香水や日持ちのするお菓子、それから小さなアクセサリーや小物とか……」

………



提督「さてと、誰から何が届いたのかしら……♪」淡い桃色のバスローブ姿で脚をぶらぶらさせながら、クリスマスカードの差出人を見ては文面を読み、それから小包や箱を開けていく……

提督「まずは……エレオノーラからね♪」

…北アドリア海管区の「ヴェネツィア第三鎮守府」でコルヴェットや駆潜艇といった小艦艇を中心とした戦隊を編制し、掃海や船団護衛、対潜掃討を行っているシモネッタ大佐……提督とは士官学校の同期で、優秀な成績とたおやかで優しい立ち居振る舞いのおかげでそうは見えないが、実際は重度のロリコンをこじらせていて、鎮守府では艦娘たちが慕ってくれるのをいいことにただれた生活を送っている…

提督「えーと、なになに……「フランカ、クリスマスおめでとう♪ 私はヴェネツィアでうちの娘たちと楽しく過ごしています。また機会があったら遊びに行きます……それからプレゼントですが、貴女に似合うと思うので、良かったらぜひ使って?」相変わらず小さい娘たちといちゃいちゃしているのね……そろそろ憲兵に逮捕されるんじゃないかしら……」眉をひそめてから、プレゼントの包みを開けた……

提督「あら、新色の口紅……さすがエレオノーラね、色の趣味がいいわ♪」ラメの入った明るいイタリアンレッドの口紅は、これからやってくる春にふさわしい……

提督「それじゃあお次は……と」

提督「あ、これはルクレツィアのね」

…シモネッタ提督と同じく士官学校の同期で、今でも仲の良いカサルディ中佐……小柄でカラッとした気持ちの良い性格をしていて、エーゲ海でMAS(機動駆潜艇)やMS(魚雷艇)の艦娘たちを率いて暴れ回っている…

提督「さてと……「フランカ、クリスマスおめでとう! 私はがさつだし何を贈ればいいか分からなかったから、とりあえずフランカの好きそうな物にしてみたわ。それじゃあね、チャオ!」ふふっ、相変わらずね♪」

提督「それで、ルクレツィアは何を贈ってくれたのかしら……と」

提督「あら……ルクレツィアってば、なかなかいいセンスよ?」出てきたのはクレタ文明のモザイク画風に描かれたイルカや魚をあしらったスカーフで、クリーム色の地に青やオレンジの柄が映える……

提督「こういうしゃれたスカーフは私よりもシルヴィアおばさまみたいな格好いいタイプの人に似合いそうだけれど……でも嬉しいわ♪」

提督「それからナタリアのプレゼントは、と……」

…クリスマスカードに書かれた近況やあいさつを読んでは知り合いや(少なくない)恋人たちとのあれこれを思い出し、それからさまざまなプレゼントを開けては楽しんだ…

………

シルヴィア「そう、良かったわね」

提督「ええ。もっともまだいくつも残っているし、お休みの間にちょっとずつ開けていくつもり……そう思って今もいくつか持ってきたの」

シルヴィア「それじゃあ開けてみたら?」

提督「そうするわ、あんまり変な物は入っていないでしょうし……って///」そう言いながらローマの海軍司令部で知り合いだったお姉様からの小包を開けると、黒の透けるようなベビードールが出てきた……

シルヴィア「……確かにただの下着であって「変なもの」ではなかったわね」

提督「その、えぇーと……」

シルヴィア「大丈夫よ。フランカだっていい大人なんだからそういうものを着たっていい」

提督「あー……まぁ、そうね」

シルヴィア「ええ、たまにはそういう遊び心があってもいいと思うわ……今度クラウディアにもそういうものを着てもらおうかしら」

提督「おばさま?」

シルヴィア「いいえ、なんでもないわ」

…お昼時…

クラウディア「さぁさぁ二人とも座って? スプマンテのボトルは用意した?」

シルヴィア「ええ」

提督「準備出来ているわ、お母さま」

クラウディア「よろしい、それじゃあ……乾杯♪」

…エプロンを外してクラウディアが席に着くと、シルヴィアがスプマンテのコルクを布で押さえつつ「ポンッ!」と控え目な音をさせて栓を抜いた……シューッと軽やかな音を立ててフルートグラスに注がれると、三人で軽くグラスを合わせて喉を湿した…

クラウディア「フランカ、いっぱい食べるのよ?」

提督「ぜい肉にならない程度でね」

シルヴィア「今日くらいはそのことは考えなくても良いんじゃないかしら」

提督「それもそうなのだけれど、美味しいものを前にするたびにその言い訳を使っている気がして……」

クラウディア「そう、それじゃあこのガチョウはいらない?」

提督「いいえ、ぜひ食べたいわ」

クラウディア「まぁ、ふふっ……♪」

シルヴィア「クラウディアの料理を前に我慢なんて出来ない相談だもの……私が切りましょうか?」

クラウディア「ええ、お願い♪」

…ローズマリーやオレガノ、ニンニク、粒の黒コショウと粗塩を擦り込み、中にみじん切りの野菜を詰め込んでじっくりとローストしたガチョウ……シルヴィアが大ぶりのナイフで手際よく切り分け、美味しい脚の部分を提督とクラウディアに取り分ける…

クラウディア「もう、だめよ? 脚は貴女とフランカで食べるのよ」

シルヴィア「そういうわけにはいかないわね。切り分けているのは私なんだから言うことを聞いてもらわないと……それに他の部位も肉厚で美味しそうじゃない」

提督「それならお母さまとおばさまが脚を取ればいいわ。ごちそうは他にも色々あるんだし、私は胸肉だって好きよ?」

クラウディア「もう、仕方ないわね……それじゃあシルヴィア、半分こしましょう?」

シルヴィア「それなら文句ないわ。これを料理した貴女がこの美味しそうな部分を食べられないなんて、そんな不公平があったらいけないもの」

クラウディア「ふふ、相変わらず優しいのね……♪」

提督「それなら私からもお母さまたちに分けてあげるわ」

クラウディア「いいのよ。いくつになってもフランカは私たちの娘なのだから、遠慮せずにいっぱい食べなさい……それにどうしても腿が食べたければ、もう一羽むこうに焼いたのがあるんだから♪」いたずらっぽい笑みを浮かべると、軽くウィンクをした……

シルヴィア「なんだ、それならそうと言えばいいのに……」

提督「ふふっ、本当にね♪」

………

…同じ頃・鎮守府…

ドリア「それではクリスマスの晩餐をいただくことにしましょう……主の恵みと料理を手伝ってくれたみんな、そしてこんなに立派な猟鳥を贈ってくれた提督と提督のお母様方に……乾杯♪」

一同「「乾杯」」

…しゅわしゅわときめ細やかな泡を立て、燭台の灯りや暖炉の炎に照り映える金色の「フランチャコルタ」や鮮やかな紅の「ランブルスコ」、さっぱりとした白ワイン、あるいは深いルビー色に輝く赤ワインのグラスを掲げ、乾杯する一同……それが済むと食欲旺盛な駆逐艦や潜水艦の娘たちは早速ディアナたちに料理を取り分けてもらう…

リベッチオ「ふー、ふー…はふっ、あちち……っ!」

カヴール「あらあら、よく冷ましてから食べないと舌を火傷しますよ?」

…アンティパスト(前菜)のガランティーヌ(タンや肉のゼリー寄せ)やサラミの盛り合わせに続くプリモ・ピアット(第一皿…一つ目のメインディッシュ)は温かいコンソメスープにラヴィオリを浮かせたもので、ラヴィオリの中にはトリコローリに合わせてそれぞれホウレンソウ、リコッタチーズ、トマトペーストなどを詰め込んである…

レモ「それじゃあこっちも食べるね♪」

スメラルド「オンディーナ、私にも取り分けてもらえますか?」

オンディーナ「ええ、どうぞ」

…コース料理の花形(プリマ・ドンナ)であるセコンド・ピアット(第二皿)は提督の実家からシルヴィアが送ってきた鴨やアヒル、ガチョウ、それにたっぷり脂が乗った鶏を始め、濃い赤身が食べたい娘たちには赤ワインソースの鹿肉、野趣あふれる肉が食べたい娘たちにはドングリを食べてほどよく脂が乗ったイノシシ肉のあばら肉が香草を効かせたローストで饗されている…

ディアナ「遠慮せずいっぱい召し上がれ?」

…まだ表面がぷちぷちと音を立て、きつね色の皮目がパリッと焼けている鶏やガチョウ……かかっているソースも肉に合わせて爽やかなオレンジソースやドライトマトで作った甘酸っぱいトマトソース、瓶に詰めて保存してあった濃緑色のペスト・ジェノヴェーゼ(バジルペースト)と、いく種類も取りそろえてあり、めいめいが好きな味や肉を選べるようにしてある…

コルサーロ「こいつは美味い……最高だよ♪」

カラビニエーレ「……相変わらずお行儀が悪いんだから、まったく」肩をすくめて……ただ、いつものようなお説教はせず口のまわりについた鳥の油をぬぐってあげる……

チェザーレ「ははは、元気で何よりだ♪」

チェザーレ「……それにしても済まぬな、ディアナ」

ディアナ「と、申しますと?」

チェザーレ「この立派な正餐のことだ」長テーブルの上に並んでいる皿の数々を指し示した……

ディアナ「いいえ、わたくしも皆に喜んで頂きたかったので」

チェザーレ「さようか。提督に代わって礼を言うぞ」

ドリア「……チェザーレ、ディアナ、もう一杯いかがですか?」

ディアナ「ええ、ではもう少しだけ」

チェザーレ「もらおう、リットリオたちはおらぬのだからな……その分を開けても文句は言うまい」

ポーラ「そうですよぉ、クリスマス休暇を先に取っちゃった娘たちや提督の分まで開けちゃいましょ~う♪」

ザラ「もう、相変わらずなんだから……フランチャコルタ?」

ポーラ「そうですよぉ……以前、提督に見せたら「私の月給の三分の一くらいする……」って言ってましたねぇ~♪」

…暖炉の火とアルコールで赤みを帯びた頬を火照らせ、ころころと笑いながら値の張るスプマンテを遠慮なく開けるポーラ……しゅわしゅわと軽い音をさせながらグラスに液体が注がれ、注ぎ分けたグラスを持ち上げて乾杯する…

リベッチオ「ねぇねぇディアナぁ……お酒もいいけど、そろそろケーキを切らない?」ディアナのかたわらにやって来て、おねだりをするようにしながら軽く袖口を引っ張った……

マエストラーレ「まったくもう、リベッチオってばせっかちなんだから。ディアナだってお酒は飲みたいし、まだ食事も済んでいないのよ? もう少し我慢しなさい」

リベッチオ「えー?」

ディアナ「ふふ……リベッチオ、もう少しだけ待って下さいましね? そうしたらケーキを出しますから」

リベッチオ「ホント?」

ディアナ「ええ、本当です」

リベッチオ「やったぁ♪ ね、そろそろケーキだって♪」

マエストラーレ「はいはい……♪」

…普段から駆逐艦「マエストラーレ」級の長姉として奔放な妹の手本となるべく、また準同型の「オリアーニ」級の先輩としてもお姉ちゃんらしく振る舞っているマエストラーレだが、嬉しさが顔に出るのは隠しきれない…

アルフレド・オリアーニ「ふふ……マエストラーレったら、こんな時くらいは子供みたいに振る舞ったっていいのに」

マエストラーレ「な、何言ってるのよ……///」

カルロ・ミラベロ「くすくすっ、私たちからしたらみんなお子ちゃまみたいなものなのにね?」

アウグスト・リボティ「ね♪」駆逐艦では艦隊最高齢の小さな「ミラベロ」級駆逐艦、幼い外見に似合わないおませなミラベロとリボティがくすくすと笑った……

ディアナ「ふぅ……さて、それではそろそろケーキを持って参りましょうね」上品に口のまわりを拭うと立ち上がり、厨房へと入っていった……

ピエトロ・ミッカ「それでは私も手伝いましょう」大型潜水艦のミッカを始め、敷設や輸送に縁があった何人かが手伝おうとついていく……

ディアナ「まぁ、それではよしなに♪」

…待つほどでもないうち、ディアナたちがケーキの載った大皿や盆を捧げて戻ってくると、たちまち大食堂に娘たちの黄色い歓声が沸き上がる……同時に誰かが「きよしこの夜」のレコードをかけ、どこからともなく合唱が始まった…

ディアナ「さ、お待たせしてしまいましたね……食べたいものを切り分けますから、どうぞお皿を回して下さいな」

…ディアナが愛車の「フィアット・アバルト850」を飛ばして、鎮守府のお馴染みになっている近くの町のケーキ屋さんで買ってきた大きなスポンジケーキを始め、ディアナやドリアが腕によりをかけて作った、イタリアのクリスマス菓子として定番のパンドーロやパネットーネ、あるいは上から白い粉砂糖をふるったチョコレートケーキや、砂糖漬けの果物もカラフルなタルトと、目移りしそうなほど並べられた…

グラウコ「うーん、どれも美味しそうで決められそうにないです……」

オタリア「本当ですね……迷ってしまいます」

カヴール「ふふ、それじゃあ私が取ってあげましょう♪ ……それにしてもディアナ、ずいぶんたくさん焼いたのですね?」

ディアナ「ええ。何しろクリスマス休暇に入った娘が多かったものですから、注文しておいた卵が余ってしまって……傷ませてしまうまえに使い切ってしまおうと思いまして」

リベッチオ「それでこんなにケーキが食べられるならゴキゲンだよ♪ ね、お姉ちゃん?」皿にケーキを盛り合わせにしてもらうと、脚をぶらぶらさせながらケーキをぱくついている……

マエストラーレ「だからってあんまり食べ過ぎないの」

シロッコ「ふふ、今日くらいはいいじゃないか」

トリチェリ「……はい、先生もどうぞ? あーん♪」

ガリレオ・ガリレイ「うぷっ……もう、鼻の頭にまでクリームを食べさせることはないでしょ♪」

…艦娘たちはそれぞれケーキを食べたり、お酒のグラスをかたむけたり、クリスマスソングを歌ったりしている……暖炉の前に敷かれた絨毯の上ではルチアが骨をかじりながら寝そべり、何人かがブラシで毛並みをくしけずったり撫でたりしながら遊んでやっている…

ドリア「いいクリスマスですね、デュイリオ」

デュイリオ「あら、まだまだクリスマスは長いのよ……アンドレア♪」

…食後…

カヴール「さて、食卓は片付きましたね?」

ガリバルディ「ええ、大丈夫よ」

レモ「今度はなぁに?」

ドリア「あちこちからクリスマスカードが届いておりますから、せっかくですし読み上げようかと」

ガリバルディ「いいわね、どうせ時間もあることだし」

デルフィーノ「そうですね。それにしてもそれぞれ個性があって面白いです♪」デルフィーノは鎮守府に届けられたメッセージカードの山をより分けながらしきりにうなずいている……

カヴール「それでは読みましょうか……♪」おっとりとした貴婦人のような様子で暖炉の前の椅子に腰かけると「鎮守府宛」になっているクリスマスカードの中から、企業の広告や管区司令部からのカードを除いた何枚か手に取った……

エウジェニオ「誰から?」

カヴール「最初は……あら、イギリスのグレイ提督ですね」

…提督の実家とは別に、鎮守府にも送られてきた提督たちからのクリスマスカード……これにもそれぞれの性格や色が出ていて、イギリスの貴族令嬢であるグレイ提督は上品なハロッズ(百貨店)のカードに綺麗な筆記体で「Merry Christmas」とつづってあるのに対し、アメリカのミッチャー提督はコミック風のサンタクロースが描かれたカードに大きな文字で「Merry X‘mas」と、いかにもアメリカらしい書き方をしている…

ガラテア「それで、レディ・グレイは何とおっしゃっています?」美しいガラテアが、カヴールの後ろから乳白色の美しい腕を首元に優しく回す……

カヴール「ええ、今読みますね……「タラント第六鎮守府の皆様、メリークリスマス。このカードを書いている間、あの明るいイオニア海の海原を思い出しました。どうか七つの海が平和でありますよう、そして貴女方が良いクリスマスを過ごせますように」……だそうです」

ネレイーデ「ふふ、あの人は相変わらずですね……♪」

ドリア「それでは次は私が読みましょうか……「メリークリスマス、ガールズ。ノーフォークは北風が寒くって最悪で、サンディエゴやマイアミ、あるいはそっちのナポリみたいな港が恋しいわ。ステイツからプレゼントを贈ったから、喜んでもらえたら嬉しいわ」だそうですよ」

セッテンブリーニ「ミッチャー提督も相変わらずね、プレゼントはきっとダサいセーターと野球帽、七面鳥のローストにチューインガムで間違いないわ」

ドリア「まぁ、ふふっ……♪」

カヴール「それから次のカードは……エクレール提督ですね。フランス語ですから、私が読みましょう」

ダルド(駆逐艦フレッチア級)「ヴァイス提督からのカードは私が読めるわ」

アントニオ・ピガフェッタ(駆逐艦ナヴィガトリ級)「ドイツ語なら私も読めるけどね……途中で代わろう」

ルイージ・トレーリ(大型潜マルコーニ級)「では、百合姫提督のカードは私が読みますね」

…フランスのエクレール提督は香水つきのカードに長々とメッセージを書き、ドイツのヴァイス提督は堅苦しいまでにきちんとした内容を罫線でも引いてあるかのような具合で真っ直ぐに書きつづり、百合姫提督は和紙を使ったはがき大のカードに丸みを帯びた丁寧な筆文字でメッセージを書き留めている…

カヴール「あらまぁ、くすくすっ……♪」

チェザーレ「なにかおかしい事でも書いてあったのか?」

カヴール「ええ、ふふっ♪ エクレール提督ったらエスカルゴの前菜から始まるクリスマスの正餐ですとか、お国自慢を長々と書き連ねてあるものですから……♪」

エウジェニオ「エスカルゴってカタツムリのことでしょ……それがごちそうの前菜なの? カエルやカタツムリを食べるフランス人には困ったものね」

カヴール「まぁまぁ、あれもバター焼きにすれば案外良いものですよ?」

ダルド「そろそろいい? それじゃあこっちも読むわよ……「クリスマス、そして新年おめでとう。レープクーヒェン(ドイツのクリスマスに欠かせないショウガクッキー)を送ったので、ぜひご賞味いただきたい」だそうよ」

ピガフェッタ「レープクーヒェンか……地味な菓子だが嫌いじゃないよ」

トレーリ「それでは次は百合野提督のカードですね、読みますよ……「タラント第六鎮守府の皆様、メリークリスマス。クリスマスカードを送る風習がないものですから、何を書けばいいかずいぶん悩みました。ともあれタラント第六のみんなが良いクリスマスと新年を過ごせるよう、心から願っております。またいつか訪問できる機会を楽しみにしています」とのことです」

カヴール「ふふ、いかにも日本人らしい奥ゆかしい文面ですね」

チェザーレ「むしろ彼女の人柄であろうな……それぞれプレゼントも付いてきたようであるから、少々早いが開けてしまおうか」

(※イタリアではプレゼントを開けるのはイエス・キリストが生まれたとされる1月6日の公現祭(こうげんさい)の日。プレゼントは東方の三賢人の誘いを断り、結果キリストの誕生に立ち会えなかったことを後悔し続けているとされる魔女「ベファーナ」が持ってくるとされている)

フルミーネ「やった♪」

カヴール「まぁ、少し早い気もしますが……クリスマスですからね、提督方の贈り物に限ってはいいということにしましょう♪」

…チェザーレやカヴールたち、留守を預かる「大人組」の許しを得て、クリスマスのメッセージカードに添えて送られてきた包みを喜び勇んで開ける駆逐艦や潜水艦の艦娘たち……娘たちによって人柄がでるのか開け方もさまざまで、待ちきれない様子で嬉しそうに包み紙を破る娘から、ある程度落ち着いてリボンをほどく娘までさまざまだった…

フレッチア「すんすん……匂いからするとショウガクッキーね」

ピガフェッタ「レープクーヒェン、ドイツのクリスマス菓子では定番のやつさ」

コマンダンテ・カッペリーニ「百合野提督の贈り物は……化粧品と手拭いですね」

…日頃から潮風に吹かれ波飛沫を受けている艦娘たちにと、日本メーカーの乳液や保湿クリームといった化粧品の詰め合わせと、銀座の中心地、歌舞伎座のそばにある老舗で売っている、色も柄もさまざまな手拭いがたくさん入っている……かさばらずにお洒落なものをという、百合姫提督らしい気づかいが見て取れる…

トレーリ「柄のいくつか「鎌○ぬ(構わぬ)」と言葉遊びになっていたり「後ろに下がることがない」蜻蛉(とんぼ)の柄みたいに、戦場での縁起を担いでいたりするんですよ」

デュイリオ「まぁまぁ、それは素敵ですね♪」

…しばらくして・中型潜「スクアーロ」級の部屋…

スクアーロ「ふぅ、たっぷりのご馳走に上等な酒……最高だったな」

トリケーコ「そんな風にすぐ横になると消化に悪いですよ?」

スクアーロ「今日はクリスマスなんだ、そう言うなよ」

デルフィーノ「スクアーロはクリスマスでなくたってそうじゃないですか」

スクアーロ「お、言ったな? そういう生意気を言うと……こうだぞ♪」ベッドから飛び起きるとデルフィーノの肩口を甘噛みし、ついでに脇腹をくすぐる……

デルフィーノ「ひゃあぁ、やめて下さい……っ///」ばたばたと暴れ回るデルフィーノ……

ナルヴァーロ「ほら、じゃれ合うのもほどほどにしなさい……私たちはバンディエラの部屋に遊びに行ってくるわ♪」そう言ってナルヴァーロ(イッカク)とトリケーコ(セイウチ)は出ていった……

デルフィーノ「はぁ、はぁ、はぁ……///」

スクアーロ「どうだ、姉に逆らうとどうなるか分かったか?」スクアーロ(サメ)の名にふさわしい、白くギラギラした犬歯をのぞかせてにんまりと笑ってみせる……

デルフィーノ「もう、分かりましたよぉ……」

スクアーロ「よーし、ならいい……しかしジァポーネの提督もマメだねぇ」

…鎮守府の艦娘全員に行き渡るほどの化粧品や、和紙の包み紙さえお洒落な和風の小物が詰め込まれた百合姫提督の贈り物……スクアーロは早速包み紙を開けて、中に入っていた「資生堂」の乳液をしげしげと眺めた…

デルフィーノ「そうですねぇ」

スクアーロ「ああ……ところでデルフィーノ」

デルフィーノ「なんです?」

スクアーロ「せっかくだしちょっと塗ってくれるか、肌がガサガサなんだ」

デルフィーノ「はい、いいですよ」

スクアーロ「悪いな」

…スクアーロは自分なりに「海のギャング」らしくということでクリスマスパーティの正餐に着ていた、グレイで黒リボンの付いているボルサリーノ(ソフト帽)と、サメの背中のような濃い灰色のスーツとジレ(ベスト)、パールグレイのネクタイとワイシャツを次々に脱いでいく……着る物をすっかりハンガーに掛けてしまうとベッドにうつ伏せになり、デルフィーノに乳液の瓶を渡した…

スクアーロ「どうだ?」

デルフィーノ「たしかにずいぶん荒れてます。もしかして食生活とかが乱れているんじゃないですか?」

スクアーロ「みんな同じものを食っているのにそんな訳があるか……まぁいい、塗ってくれ」

デルフィーノ「もう、人遣いが荒いんですから……」よいしょとスクアーロの背中にまたがって甘い香りの乳液をとろりと背中に垂らすと、すんなりした手で塗り込んでいく……

スクアーロ「お、なかなか気持ちいいな……♪」

デルフィーノ「それなら良かったです。せっかくだからこっちもやってあげますね?」スクアーロのサメ肌へ馴染ませるように肩甲骨、背中、脇腹、腰の辺りへと器用な手つきで滑らせていく……

スクアーロ「あぁ、いいな……うん、上手じゃないか……♪」

デルフィーノ「あの……スクアーロ///」スクアーロにまたがり、その白い裸身を見ながら揉みほぐすように乳液を塗り込んでいるうちに、ごちそうとお酒で火照った身体が甘くうずき始める……

スクアーロ「ん?」

デルフィーノ「……そのぉ、ついでだから脚もマッサージしましょうか///」

スクアーロ「どういう風の吹き回しか知らないが、せっかくそう言ってくれたんだ……ぜひやってくれ」

デルフィーノ「はぁい……♪」スクアーロのきゅっと張りつめたようなヒップからしなやかな太ももに手を這わす……

スクアーロ「おい、それじゃあ手つきが違うだろう……この万年発情期が♪」

デルフィーノ「だ、だってぇ///」

スクアーロ「ったく、仕方のない妹だな……ほら♪」ごろりと寝返りを打つと自分の手にも乳液を取り、デルフィーノのフリル付きワンピースの下へ手を入れ、片手でくびれた腰から太ももの付け根、もう片方の手で形の良い乳房を愛撫する……

デルフィーノ「はぁ、あぁんっ……はひゅっ、はひっ♪」数分もしないうちに可愛らしいくりくりした瞳は焦点を失い、半開きの小さな口から甘えたような吐息が漏れる……我慢しきれないと言うように片手はとろりと濡れた秘部へ伸び、もう片方の手はワンピースの裾をたくし上げている……

スクアーロ「ふふ、可愛い表情で喘ぐじゃないか……♪」

デルフィーノ「らって、らって……ぇ♪」ろれつも回らないままに嬌声を上げ、くちゅくちゅと指を動かしながらふとももに蜜を垂らし、スクアーロの上でひくひくと跳ねる……

スクアーロ「ここなんかも好きだったろ?」ちゅぷ……っ♪

デルフィーノ「ふわぁぁぁ、そこ……そこれす……ぅ///」

スクアーロ「ふふ、今日は午後いっぱいしてやるからな……覚悟しておけよ?」

デルフィーノ「はぁ……い♪」

…一方・提督の実家にて…

提督「ふわ……ぁ」

…午後の日だまりを浴びながら猫のように伸びをすると、ベッドに寝転がり文庫本をめくり始めた……と、ベッド脇のテーブルにある携帯電話が震えだし、提督は本を閉じるとせかせかと携帯に手を伸ばした…

提督「……もしもし?」

ミッチャー提督「ハーイ、フランチェスカ。いま大丈夫?」

提督「あら、ジェーン♪ ええ、大丈夫よ。貴女の声が聞けて嬉しいわ♪」

…電話口の向こうから聞こえてきたキレの良いアメリカ英語の主は、かつて提督と付き合いがあったアメリカ大西洋艦隊のジェーン・ミッチャー提督……グラマーで褐色の肌、黄色の1971年型「バラクーダ」を乗り回し、コルトM1911「ガバメント」のカスタムピストルで射撃にいそしみ、アメリカ人らしいスタンドプレーと多彩な悪口、それにタフさと知性を兼ね備えた実力派の提督で、穏和な提督とは正反対に近い勇猛果敢なタイプだが、映画という共通の趣味もあってか意外なほど仲が良い…

ミッチャー提督「そいつはこっちも同じよ……ところで一つ貴女に言いたいことがあるんだけど」

提督「……ええ、どうぞ?」思い詰めたような声の響きに思わず姿勢を正し、何を言われても驚かないように身構えた……

ミッチャー提督「それじゃあ言わせてもらうわ……メリークリスマス♪」

提督「もう、ジェーンったら……真剣な口調で言うから何かあったのかと思ったじゃない」身構えていたぶん拍子抜けで、笑い出しながらベッドの上にひっくり返った……

ミッチャー提督「あははっ、ソーリィ♪ なにせこっちはターキーを食ってクリスマスポンチを飲んで、すっかりご機嫌だからね、ちょっと驚かせてみようかと思ってさ……今はガールズたちにクリスマス映画を見せてるとこ」確かに電話口ごしに映画のものらしい音声や曲が聞こえてくる……

提督「いいわね。それで、映画は何を流しているの?」

ミッチャー提督「心暖まるクリスマス映画の定番よ「ホワイト・クリスマス」に……」

提督「ビング・クロスビーの? 曲も名曲で、映画自体も素敵よね」

ミッチャー提督「でしょう? あとは1947年版の「三十四丁目の奇蹟」と「素晴らしき哉、人生!」、それから「スクルージ」ね」

提督「スクルージだけはイギリス映画ね?」

ミッチャー提督「そ、ハリウッドにも「クリスマス・キャロル」を映画にした作品はいっぱいあるけど、私の中じゃこれが一番イメージにピッタリだから。1935年の映画だけど、時代がかった感じが逆に文学作品っぽくていいわ」

提督「そうねぇ。それにどの映画もみんな心暖まる映画で、クリスマスにふさわしいと思うわ」

ミッチャー提督「でしょ? なにしろ任務に次ぐ任務じゃあ気持ちがすさんでくるし、うちのガールズにもクリスマスくらいは幸せな気持ちでにこにこ笑っていてもらいたいからね。テーブルにはキャンディとチョコレート、デコレーションケーキにローストターキー、頭にはパーティ帽……ヤドリギの下ならキス御免で、ベッドに吊るした靴下の中やツリーの前にはリボンのかかったプレゼント……これならハッピーな気分になれるってものよ」

提督「いい考えね♪」

ミッチャー提督「サンクス、そっちは何してるの?」

提督「今は実家でベッドに転がって読書中……海軍士官になるまでは考えもしなかったけれど、何も考えずにベッドでごろごろできるのって最高の娯楽ね」

ミッチャー提督「しかもクリスマスのごちそうとワインを腹いっぱい詰め込んでから、でしょ? たしかに最高だけど、ずっとそんなことをしていたら、また太ももにぜい肉が付くわよ?」電話越しにクスクスと笑っているのが聞こえる……

提督「ええ、でもクリスマス休暇の間はそれも考えないことにしているの♪」

ミッチャー提督「スラックスがキツくなっても知らないわよ?」

提督「その時はスカートにするわ……それでジェーン、貴女自身のご予定は?」冗談めかしてたずねる提督……

ミッチャー提督「ごあいにくさま、フランチェスカと違ってサッパリよ」

提督「あら、意外……ジェーンなら一人で「ダイナ・ショア・ウィークエンド」を開催出来るほどだと思っていたわ」

(※ダイナ・ショア・ウィークエンド…往年の名女性歌手ダイナ・ショアがゴルフ・コンペを開いた際、クラブハウスに女性たちが集まったことに由来するという全米最大のビアン・イベント。カリフォルニア州パームスプリングスで開催される)

ミッチャー提督「そうだねぇ……私だってアレサ・フランクリンみたいに歌って、フレッド・アステアのように華麗に踊れて、おまけにハンフリー・ボガードみたいに気の利いた台詞が言えれば良かったんだけど、残念ながらそうはいかないもんでさ♪」

提督「ふふ……それを言ったら私だってオードリー・ヘップバーンみたいな顔が欲しかったわ♪」

ミッチャー提督「お互いないものねだりってわけね……でもフランチェスカは綺麗だと思うわよ。脚はまるでシルヴァーナ・マンガーノかジェーン・フォンダかってところだし、胸だって全盛期のころのジーナ・ロロブリジーダみたいで……それでいて顔は柔和で優しげ。パーフェクトじゃない」

提督「あら、ずいぶん褒めてくれるのね……おだてても何も出ないわよ?」

ミッチャー提督「そいつは残念」

提督「くすくすっ……相変わらずみたいね♪」

ミッチャー提督「まぁ、ノット・バッド(悪くはない)ってところよ。どいつもこいつも責任逃れしようとのらくらしているし、何をするにも申請書類をレーニア山くらい積み上げないと許可されないけど」

提督「ふふっ、お役所仕事はどこも同じね」

ミッチャー提督「そういうこと……ともかく、クリスマスカードとプレゼントをありがとね。うちのガールズも喜んでたわよ」

提督「それなら良かったわ。それから貴女のカードもこっちに届いたわ……またこっちにくる機会があったら教えてね? うんと歓迎するわ♪」

ミッチャー提督「サンクス、いいクリスマスをね♪」

提督「ジェーン、貴女もね」

…一方・クリスマスのトゥーロン第七鎮守府…

リシュリュー「提督、午後の郵便でまたクリスマスカードが届いておりますよ」

エクレール提督「メルスィ、リシュリュー。ちなみに誰からかしら?」

リシュリュー「読み上げて差し上げましょうか?」

エクレール提督「ウィ、お願い」姿見の前で顔を左右に向けてみたり制服の裾を伸ばしてみたりと、艦娘たちを前に行うクリスマスのあいさつに備えて身支度に余念がない……

ジャンヌ・ダルク「モン・コマンダン(私の司令官)、ぜひ私にもお手伝いさせてください」

エクレール提督「そうね、それではリシュリューと半分ずつ分け合って読み上げてもらおうかしら……構わないわね?」

リシュリュー「無論ですとも……ではこちらの束を」枢機卿のような緋色の生地をした厚手の衣をまとい、丁寧だが表情の読めないリシュリュー……

ジャンヌ・ダルク「ええ、お任せを!」裾に金百合の縫い取りが施された白い清楚なワンピースとふわっとした上着を羽織っている……

エクレール提督「ではリシュリュー、貴女の束からお願いするわ」

リシュリュー「では僭越ながらわたくしめが……まずはパリの海軍省から」

エクレール提督「形式的なものね、後で構いません」

リシュリュー「さようで……地中海艦隊司令部」

エクレール提督「それも後で結構ですわ」

リシュリュー「イギリス地中海艦隊のメアリ・グレイ少将」

エクレール提督「わざわざクリスマスカードを送ってくるだなんて、おおかた皮肉でも書き連ねてきたのでしょうね」

リシュリュー「でしょうな……ドイツ連邦海軍のヴァイス中佐」

エクレール提督「そう」

ジャンヌ・ダルク「では続けて私が……マリアンヌ・サヴォワ少佐」

エクレール提督「ああ、マリアンヌね。パリで一緒だったわ」

ジャンヌ・ダルク「ジュヌヴィエーヴ・フォルバン少佐」

エクレール提督「彼女ならカサブランカですわね。ジャンヌ、続けてもらえる?」

ジャンヌ・ダルク「はい、次は……イタリア海軍、フランチェスカ・カンピオーニ少将」

エクレール提督「フランチェスカから!? ……まぁ、わたくしからもカードを送ったのですし当然ですわね///」

ジャンヌ・ダルク「そうですね」

リシュリュー「おほん……他のカードは後回しにしてもよろしいような物ばかりかと存じますし、司令官も食堂でのあいさつの前にいささか公務が残っておりましょう……私どもは失礼させていただきますゆえ、何かご用の向きがございましたらまた……」

エクレール提督「え、ええ……そうですわね。つまらない書類仕事が少しだけ残っておりますし、二人はそれまで食堂でくつろいでいて構いませんわ」

ジャンヌ・ダルク「あの、モン・コマンダン? よろしければ私もお手伝いを……」

リシュリュー「……ジャンヌ」小さいが含みのある声でたしなめる……

ジャンヌ・ダルク「あっ……いえ、なんでもありません。失礼します///」

エクレール提督「え、ええ……///」

…二人が下がると提督からのクリスマスカードをしげしげと眺め、それから丹念に文を読んだ……提督の柔らかな筆跡で書かれている筆記体のフランス語を読み、二つほどあった小さな文法の誤りを見つけると眉をひそめ肩をすくめたが、読み終えると頬を赤らめてもう一度読み返した…

エクレール提督「それにしてもフランチェスカときたら……本当にこういう事を恥ずかしげもなく書くのですから///」

…提督からのクリスマスカードには「クリスマスおめでとう」の下に添えて「クリスマスには会えないので、私からの愛をプレゼントに込めて送ります……可愛いマリーへ。フランチェスカ」とあり、ほのかに甘い香りのする香水が吹き付けてある…

エクレール提督「……まったく、もう///」時間をかけて「シェルブールの雨傘」のカトリーヌ・ドヌーヴ風にセットした髪を指先でいじりつつ、口元に笑みを浮かべるとカードを読み直し、それからカードにキスをすると引き出しの大事な場所にしまい込んだ……

エクレール提督「さて……わたくしも食堂へ行くとしましょう」

エクレール提督「フランチェスカ、貴女も良いクリスマスを……♪」一人でつぶやくように言うと、足取りも軽く執務室を出て行った……

………

…同じ頃・ジブラルタル…

クィーン・エリザベス「メリークリスマス、マイ・レディ」

グレイ提督「メリークリスマス」

…地中海の出入口である要衝ジブラルタルの鎮守府もクリスマスの時期ばかりはお祭りムードが漂っていて、蓄音機にはクリスマス音楽や「遥かなるティペラリー(ティペラリー・ソング)」といった愛唱歌がかかっている…

グレイ提督「ふふ、それにしてもみな楽しげで……」

クィーン・エリザベス「ええ、にぎやかで何よりでございますね」

…食堂のテーブルにはクリスマス・プディングと一緒に大きなパンチボウルが鎮座していて、駆逐艦を始めまだまだ「遊びたい盛り」の艦娘たちがやって来てはラム酒いりのポンチをレードル(おたま)でカップに注いでは、にぎやかに飲んだりはしゃいだりしている……一方、クィーン・エリザベスを始めとする年かさの娘たちはある程度落ち着いていて、グレイ提督のそばでゆっくりとウィスキーやブランデーをかたむけている…

エメラルド「提督、よろしければお代わりでも?」

グレイ提督「そうですわね……ではグレンフィディックをストレートで」

エメラルド「はい」

ヌビアン(トライバル級駆逐艦・二代)「提督、プレゼントを開けてもいいデスカ?」

グレイ提督「ええ。貴女たちへのプレゼントなのですから、好きな時に開けて構いませんよ」

ヌビアン「じゃあさっそく……わ、手袋デス」プレゼントの包み紙を待ちきれないというように破くと、中からしっとりした手ざわりの手袋が出てきた……

…ヌビア人(いまのスーダンや南部エジプトにいたナイル川流域の原住民)を艦名に持つ「ヌビアン」は黒褐色の肌に金のネックレスが良く似合っていて、グレイ提督がロンドンのホワイトホール(海軍省)に寄った際に「ハロッズ」で注文しておいた暖かな青灰色の手袋をはめて喜んでいる…

グレイ提督「地中海とはいえ冬は寒いし、貴女はことのほか寒がりですものね」

ヌビアン「アリガトウ、マイ・レディ♪」

グレイ提督「いいえ、構いませんわ」椅子に腰かけ、いつも通りの表情でちびりちびりとウィスキーを傾けているが、その口元には小さな笑みが浮かんでいる……

ジャヴェリン(J級駆逐艦「投げ槍」)「私のはハンカチだ…!」

グレイ提督「前に使っていたのはずいぶんとすり切れていたでしょう? 良かったらお使いなさいな」

ジャヴェリン「はい、大切にします♪」

…普段は落ち着いた雰囲気で、エリザベス女王陛下とネルソン提督の肖像画が見おろしている食堂も、今日ばかりは紙テープやリボンでにぎにぎしく飾りつけられ、演壇の周囲ではクリスマス恒例のくじ引きが行われている…

ジャーヴィス(J級駆逐艦・嚮導型)「やった、当たったぁ!」

ジャッカル(J級駆逐艦)「まーたジャーヴィーが一等を持って行っちゃったのか……私はいっつも残飯あさりだよ」

クィーン・エリザベス「相変わらずジャーヴィスは幸運の持ち主でございますね」

グレイ提督「さすがは「ラッキー・ジャーヴィス」ですわね」

(※ジャーヴィスは地中海を中心に活動し被害も多かったが、不思議と戦死者の出ない幸運艦「ラッキー・ジャーヴィス」として有名だった)

エメラルド「同感です……ところで提督」

グレイ提督「ええ、何かしら?」

エメラルド「イタリアのカンピオーニ提督にもプレゼントを贈っていらっしゃったようですが」

グレイ提督「ええ。彼女には「フォートナム&メイソン」のダージリン、セカンド・フラッシュ(二番茶)を一箱……トワイニングも普段の紅茶としては充分だけれど、たまには本物を味わってみるべきですものね」

エメラルド「なるほど」

グレイ提督「タラントからはクリスマスに合わせて素敵なイタリア食品とワインの詰め合わせを贈ってもらったことですし、そのくらいのお返しはしておかないと失礼と言うものですから」

クィーン・エリザベス「それに、個人的なプレゼントも届いていたようでございますね」

グレイ提督「ええ、リチャード・ジノリの素敵なティーカップを……色も鮮やかで、午後のお茶の時間が楽しみになりますわね」

エメラルド「ああ、あのアンズ柄の」

グレイ提督「いつものウェッジウッドも良いものだけれど、違う茶器を使うのも目先が変わって楽しいというものですわ」

クィーン・エリザベス「さようでございますね」

グレイ提督「ええ……なにはともあれ良いクリスマスですわね。誰も欠けることがなく、にぎやかで……ふふ♪」

エメラルド「まったくです」

グレイ提督「エメラルド、貴女も好きな飲み物を取っていらっしゃいな。今宵ばかりは多少酔ってもとがめ立てしたりはしませんよ?」

エメラルド「いえ、充分いただきましたから……今は提督のお側にいたいです///」

グレイ提督「まぁ……ふふっ♪」

…一方・横須賀…

百合姫提督「それじゃあ皆、メリークリスマス♪」

一同「「メリークリスマス」」

…横須賀の鎮守府では百合姫提督が艦娘たちにごちそうを食べさせるためのいい口実として形ばかりのクリスマスパーティーを開いていた……食堂のテーブルには艦隊の胃袋を支えて来た給糧艦「間宮」「伊良湖」を始め、動きが危なっかしいことで何かと話題になる給油艦の「剣埼(初代)」や大型給油艦の「速吸」、給炭艦「襟裳」といった面々が当番の艦娘たちと奮闘して作り上げたご馳走が並び、正装の百合姫提督を上座に全員がずらりと並び、グラスを持ち上げて乾杯した…

大淀「提督、お注ぎしますね」

百合姫提督「ありがとう、大淀」

妙高「提督、よろしければこの「フーカデンビーフ」をお取りしましょう」ゆで卵を埋め込んだミートローフ「フーカデンビーフ」を切り分けてくれる……

百合姫提督「それじゃあ一切れいただきます」

四阪「提督、こっちも美味しいアルヨ!」海防艦「四阪」は大戦を生き抜き中華民国の賠償艦、その後投降して中共に渡り「恵安」として長く艦籍にあった功労艦であり、今は綺麗なチャイナドレスとウェーブのかかった髪で「李香蘭」風にしている……

百合姫提督「ええ、ありがとう。四阪はもう取った?」

四阪「はい、もうたくさんとったアル!」

百合姫提督「それならいいわ。みんなもお腹を壊さない程度にいっぱい食べてね?」

…百合姫提督は普段から艦娘たちが暮らしやすいようにと心を砕き、特に食べ物に関しては窮屈なことがないよう、たびたび鎮守府の食卓料に自分のポケットマネーをつぎ込んでいた……そのおかげもあって、いつもやつれているように見える「第一号(丙型)」「第二号(丁型)」といった海防艦の娘たちも以前よりはずっと血色が良い…

足柄「提督。せっかくだし一杯注がせて?」

…フーカデンビーフにローストチキン、それに艦娘たちにとってはなじみ深い料理であるコロッケや、士官食堂でしかお目にかかれないあこがれの献立でもあるチキンライスを包み込むタイプのオムライスといった洋食に合わせて、テーブルには清酒だけではなく紅白それぞれのワインも並んでいる……洋行帰りのハイカラが自慢の足柄だけに、ボトルを手に百合姫提督にもワインを勧めた…

百合姫提督「ありがとう」

足柄「どういたしまして。代わりに私のをお願いしていい?」

百合姫提督「ええ、手酌はお行儀が良くないものね……はい、どうぞ」

足柄「ありがとう。ところで……」

百合姫提督「なぁに?」

足柄「今年の忘年会だけど、手はずはもう決まってる?」

百合姫提督「あぁ、そのこと……一応いつもの料亭に席は取っておいたのだけれど……」

足柄「どうかしたの?」

百合姫提督「いえ。もっと気さくな飲み屋さんとかの方が良かったかしら、って……ちなみに足柄は何が食べたい? 天ぷらとか?」

足柄「そうねぇ……やっぱり年末と言えばすき焼きじゃない?」

百合姫提督「すき焼きね、それならお願いできるわ」

足柄「そんなに心配しなくたって大丈夫よ。どうせ飲んだくれてきたら味なんか分からないんだし、水雷戦隊の駆逐や軽巡だのは味より量なんだから」

百合姫提督「もう、そんな身も蓋もない……♪」思わず苦笑いを浮かべる百合姫提督……

足柄「事実は事実よ。現にほら、あの様子を見てご覧なさいな」

初雪「わぁ、美味しいです♪」

白雪「本当に……もぐもぐ……それに量もたくさんあって……」

雷「間宮さん、とっても美味しいです!」

間宮「そう言ってもらえると私も頑張ったかいがあります」

百合姫提督「ふふ、良かった……あの娘たちがお腹いっぱい食べている姿を見ると嬉しくなるわ」

足柄「ふ、まったく面倒見が良いというか世話好きというか……」

百合姫提督「いつも頑張っているんだもの。私だって普段から「提督」だなんて言っている以上、そのくらいはしてあげないと……ね?」

妙高「とはいえそれが実行できる提督は少ないですし、本当に提督には感謝してもしきれません」

赤城「その通りです……良かったら私からも一献///」群馬の地酒「赤城山」の一升瓶を持ってかたわらにやって来た……

百合姫提督「あら、赤城……だいぶ回っているようだけれど平気?」

赤城「平気です、後はお風呂に入って寝てしまえばいいですから……ひっく♪」

百合姫提督「くれぐれもお風呂で溺れないようにね?」

赤城「はい……ひゃっく♪」

百合姫提督「もう、赤城ったらそんな足元がおぼつかないほど飲んで……立てる?」

赤城「立てますよ、子供じゃないんですから……っとと」

百合姫提督「大丈夫?」倒れそうになる大柄な赤城を懸命に抱きとめる……

赤城「ええ……すん、すんっ」

百合姫提督「ごめんなさい、もしかして汗臭かった? ……温かい部屋で食べたり飲んだりしたものだからちょっと汗ばんでいるし」

赤城「いえ、そうではなく……いつもの香水とは匂いが違いますね」

百合姫提督「あ……そ、そうね///」

足柄「そういえば今日のは甘っぽい花の香りよね……ねぇ、もしかして」

百合姫提督「///」

足柄「ふぅん、なるほどね♪」

…普段はグリーンティー(緑茶)や柚子のような、どちらかというと中性的でさっぱりした和風のパルファム(香水)を使うことの多い百合姫提督……だが、頬を赤らめた百合姫提督のうなじから立ちのぼるのはフローラルブーケ系の甘く華やかな香りで、それを指摘されると恥ずかしげに小さくうつむいた…

龍田「提督もなかなか捨てておけないわねぇ?」

百合姫提督「も、もう……これはフランチェスカからのクリスマスプレゼントだったから、少し付けてみただけで……///」

足柄「まぁそういうことにしておいてあげるわよ……そうよね、間宮?」

間宮「ええ♪ 提督が一生懸命読んでおられたタラントの提督さんからのお手紙に「クリスマスの時は私も同じ香水を付けるから、香りだけでも一緒にいましょう?」と書いてあったなんて、たとえ風の噂で耳にしたとしても言うわけにはいきませんから♪」

百合姫提督「ま、間宮っ///」

間宮「あ、いけません……ついうっかり♪」帝国海軍の給糧艦であり、また強力な通信設備と傍受機能を持っていた「間宮」は艦隊の金棒引きとして、鎮守府の噂という噂を知り尽くしている……

妙高「はぁ、お熱いお熱い……♪」わざとらしく手で顔を扇いでみせる……

金剛「……それでいえば、長門だってそういうのはたくさんあるでしょう?」

長門「まぁ、少しは……♪」

…戦前にはその特徴的な煙突のシルエットから広く国民に知れ渡り、ある種のアイドルとして名高かった戦艦「長門」……その性質を受け継いでいるのか、長身の古風な美人でさながら「帝劇のスタア」といった容姿の長門には、鎮守府祭や広報活動で知ったという人たちからたびたびファンレターが届いたり、上陸休暇中にツーショットやサインをせがまれたりする…

利根「へぇ、あれが少しだってぇのかい! この間の入湯上陸で一緒に陸に上がったけど、まるで「煙管の雨が降る」ってぇやつだったじゃあねぇか!」

(※煙管の雨が降る…江戸時代、花魁が好みの相手にひと吸いしたあとの煙管を渡すことに由来。要は吸い口ごしの間接キスをねだるというしゃれたアプローチで、それが複数の相手から行われることから。歌舞伎「助六」でお馴染みのモテ表現)

長門「あの時はたまたまよ、たまたま」

足柄「モテる女はたいていそういうことをいうのよ……ね、提督♪」

百合姫提督「私は別にモテるとかそういうのは……///」

龍田「そうねぇ、でもタラントでは向こうの提督さんとずいぶん仲良くしていたわよねぇ?」

百合姫提督「いえ……だって、それは……えーと、そういえば忘年会のことだけれど……///」

羽黒「あらまぁ、艦隊運動の時のキレの良さはどこへやら……さぁさ、提督の苦しい話題の転換に敬意を表して聞いてあげるとしましょうよ」

百合姫提督「もう、みんなしてそうやって……///」

足柄「いつも通り「マウンテン」か「チェリー」か……それとも「マミー(ミイラ)」あたり?」

(※帝国海軍士官の間ではスラングとして単語を英語にもじり「パイン」(料亭『小松』)や「グッド」(料亭『吉川』)などの言い換えが流行っていた)

百合姫提督「えぇと、今年は「山科」と「小桜」は別の鎮守府が押さえているそうなので、27日に「木乃伊」で行うことになりました」

初雪「……それにしても「木乃伊」って変な店名ですよね」

百合姫提督「ええ、なんでも店のご主人がそれらしい店名にしようと思って「木乃伊(きのい)」としたら、後で「ミイラ」って読み方があったことを知ったそうよ」

足柄「ずいぶん変な店名だと思ってたけれど、そんな理由だったのね……ま、あそこは手ごろな割に料理もお酒もいいし」

百合姫提督「ええ、それに店のご主人も何かと良くしてくれるから……」

足柄「それじゃあそういうわけで……それじゃあ時間も遅いし、一旦おつもりにしましょうか」

百合姫提督「そうね。それじゃあ一度お開きにして……まだ飲み足りない娘はもう少し飲んでも良いけれど、明日に響くことがないように」

仁淀「後は私が管理しておきます」

百合姫提督「お願いね。私はお風呂をいただいてから休みますから、何かあったら構わずに連絡してください」

………

…翌日…

足柄「……なぁに、また飲み会なの? 忘年会の季節とはいえ、このところ三日にあげず飲み会ね」

百合姫提督「ええ。今日は横鎮の提督を始め横空(横須賀航空隊)の司令官とかみんなが集まる忘年会だし、私だけ欠席するわけにも行かないから……」

足柄「まぁいいけど、飲み過ぎないようにしなさいよ? 帰りは無理して歩こうとしないで、ちゃんとタクシーを拾うのよ?」

百合姫提督「そうするわ」

梅「良ければわらわが付いて行こうか?」

百合姫提督「お気遣いありがとう、でも大丈夫よ……場所と時間、それに電話番号はここに書いておいたから、何かあったら連絡してちょうだいね?」はぎ取り式のメモ帳に書き付けて手渡す…

大淀「では、お気を付けて」

百合姫提督「ええ、行ってきます」

…横須賀市内・料亭「美月(みつき)」…

百合姫提督「遅くなりました」

横鎮先任提督「おお、百合野くん……なに、全然遅くないよ。どこでも好きな場所にかけてくれ」

横鎮後任提督「百合野准将、どうぞ上座に」

…横須賀第一鎮守府を預かる中年の先任提督に始まり、末席の年若い佐官クラスまでさまざまな男女十人前後が座敷に集っている……百合姫提督の後からも何人かやって来ては席についた…

先任提督「さてと、百合野君はビールでいいかな?」

百合姫提督「ええ、はい」

先任提督「じゃあ注いであげよう……みんな飲み物は行き届いたね?」生ビールと(下戸の提督は)烏龍茶のグラスが行き渡ったか確認する……

百合姫提督「ええ、大丈夫です」

先任提督「よろしい……それじゃあ今年もご苦労様、乾杯」

一同「「乾杯」」

先任提督「さぁさぁ、遠慮しないでつついてくれ……田中君、お造りや天ぷらも遠慮しないでいいんだぞ?」

若手提督「は、ありがとうございます」

先任提督「百合野君。きみも遠慮しないで、食べたいものがあったらドンドン頼んでくれよ?」

百合姫提督「ええ、いただきます」

…お造りの鯛にわさびを乗せ、ちょんとつつくように小皿の醤油を付けて口に運ぶ……薄いがもっちりした鯛の食感と濃い口醤油の深みのある味わい……それにチューブのではない「本物の」わさびならではつんとした、しかし爽やかな香気が鼻を抜ける…

短髪の女性提督「良かったらいくつかお取りしましょうか?」

百合姫提督「ええ、ありがとう」

…お造りの他にも懐紙を敷いた粋なカゴに、からりと揚がった春菊、レンコン、さつまいものような冬野菜、それに車エビ、太刀魚などの天ぷらが盛り合わせてある……手元には塩だけでなく温かい天つゆの小鉢も置いてあり、それぞれ好きな方で食べられるようになっている…

短髪「はい、どうぞ……ところでこの間は燃料を融通して下さってありがとうございました」

百合姫提督「いいえ、うちの方の割り当て分にまだ余裕があっただけだから」

先任提督「いやいや、あの時は本当に助かったよ。本当なら「横一」である僕の方から佐藤君の鎮守府に融通してあげないといけない所だったんだけどもね、あいにくジャワ島方面までうちの娘たちを動かしている最中だったもんだから……とかく戦艦ってのは燃料を食うしねぇ」

百合姫提督「そうですね」

先任提督「燃料廠にそういって追加を出してもらうとなったら恐ろしく面倒な手続きが必要になるし、最終的には艦隊司令部のお歴々も市ヶ谷に出向いて説明しなきゃいけなくなる所だったから……いやぁ、あれには本当に感謝だよ」

百合姫提督「そんなに感謝されるとかえって気恥ずかしいです……」

短髪「いえ、おかげで大規模対潜掃討も無事に済みましたから……私になにかお返しできる機会があったら何なりとおっしゃって下さい///」

百合姫提督「ええ、ありがとう……///」お酒も回って紅潮した頬をした女性提督から熱い視線を向けられ、はにかんだように答えた……

先任提督「とにかく君が横須賀にいてくれてありがたいよ。さすが井ノ上校長の愛弟子だね♪」

百合姫提督「もう、またそれですか。その話は誰かが広めたまったくの作り話なんですよ……本当に広まって欲しくない話ばかり勝手に広まるんですから///」

短髪「でも、その事なら私も聞いたことがあります。江田島では井ノ上成美(いのうえ・なるみ)校長の愛弟子だったとか……」

百合姫提督「だからそれは誰かが言いふらした噂で……」

後任提督「そうそう、僕も聞いた覚えがあるよ。「横二」の百合野提督は井ノ上校長の愛弟子で「智」の百合野って呼ばれているって」

百合姫提督「ですから……私は山本五十六元帥の遠戚でもありませんし、江田島で特別扱いされたこともありません。漕艇訓練では皆さんと同じように手にマメを作りましたし、チェスト(衣服箱)の中身をひっくり返された事だってあります」

横空司令「まぁまぁ、そうムキにならなくても……それより鍋が来たようですよ」

先任提督「おっ、来たか♪」

後任提督「やっぱり冬は鍋物に限りますね」

若手提督「なに鍋が来るか楽しみです♪」

先任提督「ふふん、今回はアンコウ鍋だぞ……あれは深海魚だから「深海棲艦」を食ってやろうってわけでね♪ さ、遠慮しないで手を出してくれ……司令、そちらにもひとつ」

横空司令「や、これはどうも」

短髪「百合野准将、よそいましょうか?」

百合姫提督「そうですね、せっかくですから……ふー、ふー……」

…ぷるぷると柔らかな皮とほろりとした身、それにクリームのように濃厚な肝が上品な醤油味の汁に溶け込み、旬のみずみずしい白菜や桜に切ったにんじん、豆腐やシイタケなどにも沁みわたっている…

百合姫提督「ふあ…はふっ……おいひい……」

先任提督「うーん、美味い……日本酒と一緒に食うアンコウ鍋は最高だね」

横空司令「アンコウなんて霞ヶ浦空にいたとき以来ですよ……あー、沁みる」

百合姫提督「……よそってあげましょうか?」下手に座っている若手提督の呑水(とんすい)が空になっているのを見て、とりわけ用の菜箸に手を伸ばす……

若手提督「いや、百合野准将によそっていただくだなんてめっそうもない……///」

先任提督「田中君、そう遠慮するな。君だって横鎮の一員なんだからね」

短髪「そうそう。それにあんまり遠慮するのも考え物よ?」

若手提督「は、それでは……///」

先任提督「ははは、そんな緊張しなくても大丈夫だよ♪ 海幕の偉いさんと飯を食っているわけじゃないんだ、酒の方だって気楽に飲って(やって)くれ……そうは言っても付き合い酒だからやりにくいだろうが、私はもうちょっとしたら引き上げるから」

若手提督「あ、いえ……別にそういう意味では……」

先任提督「分かってる分かってる。たんに私が年で、あんまり深酒をすると明日に響くから引き上げるだけさ……そういう点では米内さんは大変な人だよ」

百合姫提督「米内さんというと……海幕の米内・政子(よねうち・まさこ)大将ですか」

先任提督「そう、その米内さんだ。まぁあの人の飲むことといったら、まるでうわばみ(大蛇)か酒呑童子だよ。それでいて顔色ひとつ変えやしないんだから……飲み比べをしかけた若い連中がへべれけになってひっくり返っている中で、平然と飲みつづけていたって言うからね」

百合姫提督「噂には聞いたことがありますが、お酒の席ではご一緒したことがありませんので」

先任提督「周囲は何やかやと言うけれど、器のでっかい立派な人だよ……ただ、性格は井ノ上さんと正反対だな」

百合姫提督「井ノ上校長はストイックな方ですからね」

短髪「ええ。でも課業終わりの静まりかえった海辺でそっとヴァイオリンを弾いている井ノ上校長は素敵でした……」

先任提督「何しろあの人は数学や語学だけじゃなくて楽器も得意だからね、あれでみんなやられるんだ。もっとも、井ノ上さん自身は堅い人だからちっとも浮いた話はないそうだが……ま、米内さんが明るくて豪華な牡丹の花だとすると、井ノ上さんはつつましやかな一人静(ひとりしずか)ってところだね」

百合姫提督「分かります」

先任提督「……ところで百合野君、君の方はどうなんだ?」

百合姫提督「え、私ですか?」

先任提督「ああ。君だって女性士官のファンが一杯いるじゃないか」

百合姫提督「いえ、別にそういうつもりではありませんから……///」

短髪「でも百合野准将の食事会といえば有名ですし、佐鎮の早蕨少佐や館山分遣駆逐隊の市川中佐、それから松本中佐みたいに女性だけしかメンバーに入れないって聞いたことがありますが」

百合姫提督「あ、あれはお互いに仲良しの同期で「連絡を絶やさないようにしよう」ってお茶や食事の機会を設けているだけで……///」

短髪「そうなんですか? 私てっきり……」

百合姫提督「私だって一応は提督です……そんな公私混同はしません」

先任提督「うむ、実にいいことだ。それでいうと提督の中には艦娘たちと安易に「仲良く」なりすぎる者もいるが、私としてはどうかと思うね」

短髪「ごほっ……!」

百合姫提督「……そうですね、肝に銘じておきます」自分から積極的にアプローチしたわけではないとはいえ、思い当たる節は多々あるだけに気まずい……

先任提督「アンコウだけに……かな? ははは♪」

短髪「あは、は……」

百合姫提督「……」

…忘年会当日・朝…

足柄「……おはよう、提督」

百合姫提督「ええ、おはよう」

龍田「あらぁ、少し顔色が青いわねぇ……今日はうちの忘年会だけれど、昨日の今日で大丈夫?」

百合姫提督「ええ、昨夜はお酒の量も控え目にしておいたし、解散した後にちゃんと肝臓ドリンクも飲んでおいたから……でもちょっとだけ頭が重い感じ」少し眉をひそめ、こめかみにほっそりした手を当てた……

間宮「酔い覚ましにしじみのおみおつけを用意しておきましたが、よろしければ召し上がりますか?」

百合姫提督「ええ、いただきます……気づかってくれてありがとう、間宮」

間宮「いえ、たまたま市場で安く仕入れてきたものですから」そう言いつつもさりげなく気づかってくれる間宮の心遣いが温かい……

百合姫提督「それではいただきます」

…もう年末ということもあって、少し早いが実質仕事納めの状態になっている鎮守府……そのため、どうしても欠かせない当直や当番を除く全員が揃っていて、百合姫提督のあいさつのが済むとにぎやかな、しかしどこかゆったりした雰囲気の食事が始まった…

青葉「今夜は忘年会ですね、楽しみです♪」

百合姫提督「そういってもらえると方々に予約の電話をかけたかいがあるわ」

…朝食は麦の混じっていない「銀飯」と生卵、脂がのった鮭の塩焼きに、間宮たち給糧艦の娘たちが漬け樽いっぱいに用意し、ほどよく漬かって酸味が出始めている白菜の塩漬け、そして赤味噌を利かせたしじみの味噌汁……長机のあちこちにはほうじ茶のやかんが置かれ、食後のおやつとしてカゴに盛られた温州みかんが積まれている…

鵜来「ずずっ……あー、沁みる……」

百合姫提督「そうね……ふぅ」温かい味噌汁をすすると、脈打つような鈍い頭痛が治まるような気がする……

足柄「朝食が済んだらお風呂に浸かってきたら? そうすればすっきりするんじゃないかしら」

百合姫提督「いえ、軽くとはいえお化粧もしちゃったし、それにさすがに朝からお風呂だなんて贅沢すぎるから……」

足柄「いいじゃない。だいたいタラントのカンピオーニ提督のところなんて、温泉を引いた古代ローマの宮殿みたいな大浴場がいつでも入り放題だったじゃない。アレに比べればうちの浴場なんてささやかなものよ」

百合姫提督「さすがにあれと比較するのは……」カララの大理石や御影石をふんだんにあしらい、ランの花や観葉植物の植え込みまであるタラント第六鎮守府の豪華な大浴場を引き合いに出され、思わず苦笑いする百合姫提督……

龍田「確かにすごい大浴場だったわねぇ、お湯は少しぬるめだったけれど」

足柄「とにかく、今夜の忘年会までに気分を一新しておいてくれればいいのよ」

百合姫提督「頑張ります」

間宮「それではおみおつけのお代わりを召し上がっていただくということで……よそいましょうか?」

百合姫提督「ええ、それじゃあもう一杯……」

………



…夕方・横須賀市街の料亭「木乃伊」…

百合姫提督「ちゃんと全員いるかしら」

大淀「はい、全員います」

百合姫提督「なら良かったわ。さすがにこれだけいると、私も把握出来ないことがあるから……」

…陽が落ちるのも早い冬の夕暮れ、ぽつぽつと明かりが灯り始めた横須賀の街……その喧騒から少し外れた一角にある料亭「木乃伊(きのい)」……百合姫提督と「横須賀第二」鎮守府の艦娘たちにとってはお馴染みの料亭で、店先には小ぎれいに整えられた竹藪や石灯籠のある前庭があって、小粋な入口の小さな行灯に「料亭・木乃伊」とある…

仲居さん「いらっしゃいませ、お席はこちらに用意してあります」

長門「提督、では私と一緒に♪」

比叡「いえ、ここはお召し艦である私と……どうぞお手を♪」

金剛「あらぁ、年長者を差し置いて何をしているのかしら。提督は私と一緒に行くわよねぇ♪」

足柄「はいはいはい、いつものお店なんだから案内なんていらないでしょ……さ、行きましょう?」

百合姫提督「あ、ありがとう……」

足柄「いいのよ、いちいちこの調子じゃあ埒があかないわ」

電「……それにしてもここに来るのは夏にやった暑気払いの宴会以来ですね……っとと」

百合姫提督「あいた……っ!」

電「あいたぁ……済みません、提督。お怪我はなかったですか?」

百合姫提督「ええ、大丈夫……」

足柄「はぁ……提督と電ときたら、本当によくぶつかるんだから。今日は隣同士で座らないことね」

…大部屋…

大淀「えー……それでは提督、乾杯の音頭をお願いします」

百合姫提督「はい」

…襖を開けて一続きにした畳敷きの大部屋で、床柱を背にした百合姫提督が立ち上がると左から右へと視線を動かしていく……勢揃いしている指揮下の娘たちは屈託のない表情で、それぞれビールグラスや熱燗のお猪口を手にしていて、せっかちな何人かは料理やお酒が待ちきれない様子でいる…

百合姫提督「えー、本当だったらなにか立派な演説をするべきなのかもしれないけれど、私がしなくてもきっと市ヶ谷のエライ人が年末の挨拶で私の分までしてくれるでしょうし……」そう言うとあちこちからくすくす笑いが漏れる……

百合姫提督「……とりあえず私から言いたいことがあるとすれば「みんな今年もよく頑張ってくれました」ということです」

百合姫提督「特に今年は夏の間「交換プログラム」で私が欧州に長期派遣されていた中で留守を預かってよくやってくれて……おかげで無事にプログラムも終え、こうしてみんなと一緒にいることができます。本当に感謝しています」

百合姫提督「……それでは、本年もお疲れさまでした。乾杯」

一同「「乾杯!」」

…席に着くとビールを数口すすって、それから「いただきます」をして箸をとる……卓の中央にはすき焼き鍋、そしてその隣には綺麗に盛り付けられた牛肉と野菜の皿が鎮座していて、その周囲を取り囲むように箸休めの小鉢や一品料理が並んでいる…

足柄「さ、まずは一献」

百合姫提督「ありがとう」

足柄「ところで年末年始はどうするの?」

百合姫提督「三が日は実家に帰って、あとは香取神社か鹿島神宮に参詣しようかと思っているわ」

(※香取神社・鹿島神宮…どちらも武を司る神として知られる)

足柄「いいわね……そろそろ煮えたみたいだし、取ってあげるわ」きれいにサシの入った霜降りの牛肉がほどよく煮えた頃合いを見計らい、菜箸で器によそった……

百合姫提督「ありがとう」

足柄「いいのよ。それに早くしないとあいつらに全部食べられちゃうし……」ちらりと視界を右の方に向けた……

青葉「……うーん、美味しい♪」

夕凪「これは私の分ですからね?」

天龍「分かってるよ、そんなけちくさい真似なんてしないって」

衣笠「そうそう、夕凪の分まで盗らないから」

青葉「きっと信用されていないんですね」

加古「あはははっ♪」

衣笠「もう、全然おかしくないし……!」

足柄「……ほらご覧なさい。あいつらさっきからバクバク口に放り込んでるわよ」

百合姫提督「大丈夫、足りなくなったら追加で頼めばいいから。そう思ってカードも入れてきたし」

足柄「提督も向こう見ずね……冬の賞与が全部消し飛ぶわよ?」

百合姫提督「いいの、せっかくの忘年会だもの……それより足柄も食べないと、お肉が煮えすぎて固くなっちゃうわ」

足柄「おっと、それもそうね」溶き卵に浸けて柔らかい牛肉を口に運ぶ……

足柄「はふ、ふぁ……良い肉ね、これ……」

百合姫提督「ね、さすがに銘柄牛だけあって……葱もそろそろ頃合いだけれど、食べる?」

足柄「ええ、もらうわ……熱っ! この葱のやつ「鉄砲」だったわ」

(※鉄砲…煮えた葱の外側が柔らかく、中がまだしっかりしている状態。噛むと中の部分が飛び出してくる事から。さらに煮えて箸で掴むとたわむようになると「への字」と呼ばれる)

百合姫提督「大丈夫?」

足柄「平気よ、葱鉄砲の一つや二つ……あー、美味しい♪」

百合姫提督「それじゃあ私はちょっとみんなとお話してくるから」

足柄「ええ、でも見計らってちゃんと食べなきゃだめよ?」

百合姫提督「そうするわ♪」

百合姫提督「……どう、おいしい?」

鵜来「はい、まるで舌の上でとろけるようで……♪」

第一号海防艦「本当に美味しいです」

百合姫提督「良かった、お腹いっぱい食べてね」

第一号「ありがとうございます」

新南(鵜来型)「……ところで提督の対潜法は面白いですね」

百合姫提督「そう?」

新南「はい、これまではあんなにしつこく反復して攻撃したことなんてなかったので」

三宅(御蔵型)「そうですね、一回の対潜戦で爆雷を四十発も五十発も投射するなんてしたことありませんでした」

百合姫提督「ああ、そのことね……私も対潜学校に行ったわけじゃないけれど、大戦時の帝国海軍は基本的に爆雷の投射数と攻撃回数が少なかったから、多くの米潜が逃げ切ってしまったという記録があって、その資料を反映して私なりに対潜戦のやり方を研究してみたの」

…海防艦たちの側へやってきて終始和やかな笑みを浮かべていた百合姫提督だったが、対潜戦の話になると気付かぬうちに背筋を伸ばして真面目な表情になる……ビールと日本酒の入っている桜色の頬が熱心な説明でさらに赤みを増し、近くにあった空の小鉢や箸を借りて話しているうちに、近くの海防艦や掃海艇、駆潜艇の娘たちも集まりだす…

松輪(択捉型)「それにしても提督の対潜法は独特です。例の「十文字花射法」ですか、数字の8を縦横に重ねたように航行しながら爆雷を投射したり、探信儀や聴音機みたいな水測兵器を多用したり……」

百合姫提督「うーん、あの戦法はあくまでもひとつのやり方にすぎないけれど、あの形なら僚艦が旋回、探知している間も中心に来た一隻が必ず爆雷を投射できるから、それだけ切れ目のない攻撃ができるの。私は対潜戦の心構えを「カメのように忍耐強く、マムシのように執念深く」だと思っているから……」

日振(日振型)「見張投射ばっかりだった当時に比べると全然違いますね、覚えるまでは苦労しました」

百合姫提督「そうかもしれないわ。でも、潜望鏡や雷跡を見かけたら急回頭して突っ込んでいく……この戦術は知られすぎているし、むしろ敵潜の返り討ちに遭うことの方が多かったから、基本的にやらないことにしているの」

第六十七号海防艦(「第一号(丙)」型海防艦)「なるほど」

百合姫提督「あら、いけないいけない……堅い話はこのくらいにして、忘年会なんだからもっとくつろいで? お肉の追加も頼みましょうか?」

竹生(鵜来型)「はい♪」

百合姫提督「ふふ、了解……仲居さんがきたらお願いしておくわ♪」

第三号海防艦(第一号型)「やったぁ♪」

第八号海防艦(「第二号(丁)型」海防艦)「あ、それじゃあこっちも」

第二十一号駆潜艇(「第十三号」型駆潜艇)「提督、私たちもおかわり欲しいです!」

百合姫提督「はいはい♪」

足柄「……まったく「士官とはオレもオレもと言う人種なり」ってやつね」

高雄「同感ですね。それとついでにこちらにも」

足柄「……」

百合姫提督「すみません、それじゃあこっちとむこう……それからあの娘たちにもお肉の追加を。それからお銚子のお代わりと……鵜来は焼酎の方がいいかしら?」

鵜来「はい、薩摩白波のお湯割りで」

百合姫提督「ではそれでお願いします」

仲居さん「はい♪」

…しばらくして…

明石「そーれ、捕まえたぁ……っと♪」

初雪「もう、放して下さいっ!」

吹雪「ひゃあっ、明石ってば! どこを触っているんですかっ……///」

明石「そりゃあ船体に異常がないか隅から隅まで調べないと……お、このバルジはちょうど手のひらに収まる大きさで♪」

百合姫提督「明石、いい加減に放してあげなさい?」

明石「むむ、提督が検査修理を認めないなら仕方ないですね。ほら、放してあげますよー……っと」

間宮「……それでですね、長門ったら普段は帝劇の女優さんのように見えますけれど長州訛りが抜けないものですから、この間もうっかり「であります」だなんて陸さんみたいな話し方を……♪」

長門「間宮、どこからその話を……!」

間宮「ふふっ、どこからでしょうねぇ……♪」

百合姫提督「くすくす……っ♪」

………

…さらにしばらくして…

青葉「ほぉら、撮りますよぉ? もっと近づいて、笑って笑って♪」

百合姫提督「はいはい♪」

龍田「青葉はすぐ写真を撮りたがるのよねぇ」

青葉「いいじゃありませんか、いつも上手に撮れているんですから」

利根「おう、確かに毎回いい具合に写ってらぁな……ひっく、どうだもう一杯♪」

天龍「いただきます!」

木曾「私も!」

利根「おっ、さすがに水雷戦隊は威勢がいいや! 気に入った、さぁ飲め飲め!」

…そう言って注いだのは利根川の流れる房総の名酒「仁勇(じんゆう)」で、威勢のいいべらんめえ口調な利根とは似合わないすっきりとした飲み口のいい酒で、勧められた百合姫提督もついついペース良くお猪口を空けてしまっていた…

木曾「はー、美味いっ!」

利根「おう、遠慮せずもう一杯やれ♪ 利根の川風ぇ~、たもとに入れて……月に棹差す高瀬舟……っと♪」

(※利根の川風…江戸時代にブームになった中国古典「水滸伝」を日本に置き換えて大流行した、読本「天保水滸伝」の台詞。浪曲などでもお馴染み)

百合姫提督「ねぇ、足柄……もう少し、側に寄ってもいいかしら///」

足柄「そ、そりゃあ別に構わないけど……///」

矢風(標的艦)「あーっ、提督と足柄ってば二人でいちゃいちゃしてるぅ♪ 初々しくって可愛いんだ♪」

足柄「あのね、そういうのを余計なお世話って言うの……よ!」二人を茶化してくる矢風に、力加減をした上でポカリと一つ拳固を食らわせる足柄……

矢風「あいたぁ!」

摂津(標的艦)「んもう、矢風はすぐそないなちょっかいを出して……」

矢風「ふぅーん、摂津ってばそういう事を言うんだ……それじゃあ今度、赤城や加賀の練習相手をお願いしちゃおうかなぁ?」

摂津「それはあかんって、うちじゃあ反応がトロい言うてすーぐ好き放題されてまうし……///」

加賀「別に矢風でもそんなにすばしっこくはないですけれど……ね♪」後ろから忍び寄ると、矢風の小さい身体をつかまえて脇腹や足裏をくすぐった……

矢風「ひゃあっ!? あひゃひゃ、くすぐった……あはははっ♪」逃れようと身をよじらせ、脚をばたばたさせる矢風……

百合姫提督「あらまぁ、矢風ったらすぐ捕捉されちゃって……これじゃあ練習にならないわね、加賀?」

加賀「はい、ちっとも苦労しないですね……うりうり♪」

矢風「ひゃあぁっ、そこはダメだってぇ///」

…無礼講の宴席でお酒が回って陽気かつ親しげになると同時に、かなり騒がしくなってきた艦娘たち……肩を組んで戦前・戦後の歌謡曲を歌う娘もいれば旺盛な食欲のおもむくままに飲みかつ食べる娘もいて、中にはすっかり酩酊している娘やうつらうつらしている娘もいる…

百合姫提督「ん……ふわぁ……」

足柄「あら、提督はそろそろおねむかしら?」

百合姫提督「あぁいえ、大丈夫。 お部屋は暖かいしお腹もいっぱいで、少しあくびがでちゃっただけ……」そう言っている間にもあくびがこみ上げ、手の甲で口元を隠した……

足柄「大丈夫じゃなさそうね……飲みたい連中には二次会にでも行ってもらうとして、一旦おつもりにしましょうよ」

百合姫提督「そうね、みんなひとわたり食べたり飲んだりしたみたいだし……そうしてもいい頃合いかしら」

料亭の女将さん「……失礼いたします」

足柄「ほら、ちょうど良いところに女将さんも来たわよ」

百合姫提督「これは女将さん、お忙しいでしょうにわざわざすみません……それに大人数で騒がしくしてしまって……」

女将「いえいえ。こちらこそ鎮守府さんには折々の宴席をうちで設けていただいておりますのに、すっかり挨拶が遅れてしまって」料亭の女将さんはほっそり気味のしっとりした美人さんで、所作も丁寧で着物の襟もきちんと抜けていて、身ごなしの一つ一つが小粋な雰囲気をかもし出している……

百合姫提督「とんでもないです……少し早いかもしれませんが、また来年もよろしくお願いします」

女将「これはご丁寧にありがとう存じます……こちらこそ、今後ともぜひご贔屓に♪」

百合姫提督「騒がしい娘たちですしなにかとご迷惑かと思いますが、もし構わなければまた新年会でも……それと」そろそろおつもりにしますというように小さくうなずいた……

女将「はい、そのように……それではどうか、良いお年を」畳に揃えた指先をつけて丁寧に一礼すると、ふっと大人の色香が漂うような視線を向けた……

百合姫提督「よいお年を///」

………

…夜・横須賀市街…

足柄「うぅ、寒っ……流石に夜風がこたえるわね。提督は寒くない?」

百合姫提督「大丈夫よ、ありがとう♪」

…夜風に吹かれながら歩く百合姫提督たち……どちらかと言えば小柄な百合姫提督は足柄に身体を寄せると、お酒で赤らんだ頬をそっと肩に乗せてにっこりする…

足柄「ならいいけど……帰りにコンビニでも寄っていきましょうか///」

百合姫提督「ええ、せっかくだから甘い物でも買っていきましょう」

利根「それじゃああたしらはここで……せっかく陸に上がったんだから、もう一軒行ってくらぁ♪」

足柄「いいけど飲み過ぎて警察のお世話になったりするんじゃないわよ?」

天龍「任しとけ!」

足柄「……やれやれ、あの暴れ川連中ときたら。よその鎮守府の娘と喧嘩とかしなきゃいいけど」

百合姫提督「そうねぇ、でも年末くらいは羽を伸ばして好きなようにして欲しいし……」

足柄「警察署のトラ箱に入ったり、内務の連中から監察を食らわない程度にならね……コンビニならこっちのほうが早道だったわよね」

百合姫提督「ええ」

…古くからの軍港の街である横須賀、その中でも特ににぎやかな繁華街は「海軍さん」のころから変わらない「鎮守府さん」相手のさまざまな商売で繁盛していて、ネオン輝く夜の街角はしばしの楽しみを求めて財布と欲望をふくらませている艦娘や鎮守府関係者たちを誘蛾灯のように誘っている……そんな繁華街を抜け、近道しようと角を曲がった百合姫提督と足柄だったが、通りの建物はいずれも玄関先に「ご休憩○○時間~円から」といった値段表を載せ、洋館風の装飾がどこか後ろめたい雰囲気をしたピンクや紫の明かりで彩られている…

足柄「っ、そういえばこのあたりはそういう通りだったわね///」

百合姫提督「言われてみれば……」

足柄「べ……別に私はそういうつもりじゃないわよ///」

百合姫提督「ええ、分かっているから……///」

…立ち並ぶホテルにはときおり連れだって入っていく人たちと、そこに混じってちらほらと艦娘たちの姿も見える……今しも百合姫提督たちの目の前で、冬空の下で寒くないのか心配になるような短いスカートの女性を連れた艦娘がするりと建物へと入っていこうとする…

艦娘「……あれ、もしかして横二の百合野提督ですか?」ホテルへ入ろうとした女性連れの艦娘が百合姫提督に気付き、驚いたような声をあげた……

百合姫提督「っ!」

艦娘「やっぱり! 私、横須賀第三の明石です♪ トラックの時はうちの駆逐艦を曳航して連れてきてもらったのに、お礼もまともにしないで済みませんでした♪」

百合姫提督「いえいえ、お互い持ちつ持たれつですから……」

明石(横三)「とんでもない。「横二」さんにはもうお世話になりっぱなしで♪」

足柄「……こんなところでする話じゃないでしょうが」小声で文句を言う足柄……

明石(横三)「それにしても百合野提督とこんな所で出会うなんて珍しいですねぇ♪ ……そうそう、もし使うならここと向こうのホテルはいい感じですよ♪」

百合姫提督「え、ええ……お気遣いありがとう///」

足柄「ねぇ、お連れのお姉さんが寒そうだし早く入ってあげたら?」

明石(横三)「いけないいけない、すっかり忘れてた……もっとも、今は寒くてもすぐ溶接作業そこのけに暑くなるんですけど♪ ……とにかく良いお年を♪」

百合姫提督「……良いお年を」

足柄「はいはい……ったく、べろんべろんに酔ってたわね……」

百合姫提督「そうね……」

足柄「……ねぇ、提督」

百合姫提督「ん?」

足柄「あー、その……ちょっと歩き疲れちゃったんだけど、どこかで脚を伸ばせないかしら///」

百合姫提督「そう、ね……私も酔いが回ってきたみたいで、ちょっとふらふらするし……どこかホテルでも探しましょうか///」

足柄「わ、分かったわ……どこにする?」

百合姫提督「そうね、それじゃあ向こうのホテルに……///」

………

…ラブホテル…

足柄「……最近のこういうホテルって受付がいないのよね」

百合姫提督「そうね、パネルを押せば良いようになっているから……このお部屋でいい?」

足柄「ええ……いいけど、提督もこういうの案外手慣れているのね」

百合姫提督「そうね、同期の集まりとかで終電を逃したときに入ったりしたこともあったから……///」

足柄「まぁいいわ、とにかく部屋に入りましょうよ」

…客室…

足柄「……あら、意外ときれいじゃない」

百合姫提督「そうね、ちょっとしたホテルよりもずっと豪華な感じ」

足柄「ね? ベッドも大きいし、調度だってしゃれてるわ」小粋なショートブーツを脱ぐとベッドに座り、お酒のせいか少しむくんでいるふくらはぎをさすった……

百合姫提督「ええ……ところで足柄///」

足柄「なに?」

百合姫提督「……その、ちょっと汗を流してこようと思うのだけれど///」

足柄「あ、あぁ……まぁずいぶん飲んで身体も火照っただろうし、良いんじゃないかしら///」

百合姫提督「え、ええ……じゃあ、お先に良いかしら///」

足柄「べ、別にいいわよ?」

百合姫提督「そう、それじゃあお先に……///」

…浴室…

百合姫提督「ふぅ……」

…やたら大きくて飾り立てられた浴室の中、流れるシャワーに身を任せる百合姫提督……乾かすのが大変なので艶やかな長い黒髪はまとめ上げ、お湯がかからないよう気を付けながら背中や胸元を湯に打たせる…

百合姫提督「良く考えたら、今まで足柄とホテルに来ることなんてあまりなかったかもしれないわ……」

百合姫提督「……どうしよう、なんだか恥ずかしくなってきちゃったわ///」自分の身体を見おろし、それから湯気に曇る大きな楕円型の鏡を手のひらで拭うと、ほのかに赤面した自分の顔がじっと見つめかえしている……

百合姫提督「ううん……私から誘ったようなものなんだから、しっかり足柄をリードしてあげなくちゃ」

…寝室…

百合姫提督「で、出たわよ……?」

足柄「そう、じゃあ私もちょっと汗を流してくるわ」

百合姫提督「……明かりをいじってみたりした方がいいのかしら」手持ち無沙汰を紛らわすためにいくつもあるスイッチを押して何がどうなるか試していると、不意に室内用プラネタリウムが点灯して、天井に天の川が投影されはじめた……

百合姫提督「これはこれで綺麗かもしれないわ……」

足柄「出たわよ……って、何これ?」

百合姫提督「それが、電灯をいじっているうちにプラネタリウムのスイッチを入れちゃったみたいなの」

足柄「何やってるのよ……でもまぁ、これはこれでなかなか綺麗じゃない? シャワーを浴びてさっぱりもしたし……///」バスローブ姿の足柄が大きな円形のベッドにひざから乗り、ベッドの上でちょこんと正座している百合姫提督ににじり寄るように近づいてきた……

百合姫提督「足柄……///」

足柄「提督……いえ、今だけは下の名前で呼ばせてもらうわよ。……深雪///」

百合姫提督「あ……///」唇に触れると思った足柄のキスが首筋に走り、足柄の黒髪から漂う甘い椿油の香りが鼻腔をくすぐる……

足柄「外泊届、出してあるわよね?」

百合姫提督「ええ、もしかしたら遅くなるかもしれないと思って……///」

足柄「じゃあ心配することは何もないわね……ん、んっ///」

百合姫提督「あ、足柄……っ///」しなやかでなめらか、それでいで頼もしい足柄の肩にぎゅっと腕を回し、その肌の熱を感じている……

足柄「……深雪、言っておくけど……もう我慢出来ないわよ」バスローブの帯を解いて、小ぶりで形のよい百合姫提督の乳房に指を走らせた……

百合姫提督「ええ……♪」

………

…翌朝…

百合姫提督「……うぅん、もうこんな時間」

足柄「すぅ、すぅ……」百合姫提督の上になかば覆い被さるようにして寝息を立てている足柄……羽織っていたバスローブはベッドの下に投げ出され、黒漆のように艶やかな髪は白いシーツの上に流れている……

百合姫提督「ねぇ足柄、起きて?」

足柄「う、うぅん……」

百合姫提督「足柄ってば、そろそろ起きないと」

…ゆさゆさと身体を揺さぶるたびにしっとりと昨夜の汗を残した肌が触れ、形の良い足柄の乳房が柔らかく弾む……百合姫提督に揺り起こされて、嫌々ながらも足柄が目を開けると、引かれたカーテンの向こうはまだ曙光も差していないらしくうすぼんやりと暗く、ベッドに備え付けられているデジタル時計は0600時をまわったあたりを示している…

足柄「ん……そんなの延長すればいいじゃない」

百合姫提督「そうも言っていられないでしょう、鎮守府にも戻らないといけないし……」

足柄「大淀あたりにそう言っておけば執務くらい代わりにやってくれるわよ……それよりもう一回♪」

…目が覚めるにつれ、あらためて自分の下で横たわっている百合姫提督への愛欲を感じ始めた足柄……ぐっと百合姫提督をベッドに押しつけると、吸い付くような肌に舌を這わせつつ花芯の方へと二本の指を滑らせる…

百合姫提督「だ、だめよ……いくらなんでも仕事納めの日に私がいないわけにはいかないもの///」恥ずかしげに顔をそむけ「名残惜しそうに」といってもいいくらいの弱々しさで足柄を押しのけようとする……

足柄「もう、仕方ないわね……」昨夜の火照りを残した艶っぽい表情を浮かべ、髪をかき上げながらしぶしぶ身体を起こす……

百合姫提督「ありがとう、足柄……それとチェックアウトの前にシャワーを浴びないと……」なかば乾いた唾液や愛蜜でべたべたになった身体をどうにかしようと、ベッドから脚をおろしてスリッパをつっかけた……

足柄「だったら私も一緒に入るわ。一人で浴びたら水がもったないし、時間もそんなにないんでしょう?」

百合姫提督「……それもそうね」

…浴室…

百合姫提督「ひゃあっ、あんっ……だめぇ……っ♪」

足柄「何がダメなのよ、そんな甘ったるい声を出しておきながら♪」

百合姫提督「だって……もう一回している時間なんてないもの……あふっ、んん……っ///」

足柄「あぁもう、深雪ってばそんな風に身をよじってくれちゃって……もう、最っ……高♪」シャワーの湯気に包まれ、腕の中でもがく百合姫提督をつかまえてしなやかな肌の感触を楽しむ足柄……

百合姫提督「足柄、お願いだから……このままだと本当に遅れちゃう……///」

足柄「……だったらすぐイカせてあげるわよ♪」後ろから抱きとめるようにして腕を伸ばすと、百合姫提督の秘部にするりと右手の中指と薬指を滑り込ませる……

百合姫提督「あ、あっ、あぁぁぁ……っ♪」

…しばらくして…

百合姫提督「もう、早くしないと朝礼に間に合わないわ……足柄があんなふうに「もう一戦」「もう一戦」って止めないから///」

足柄「仕方ないじゃない、深雪があんまりにも可愛いんだもの」

百合姫提督「……そんなの言い訳にならないわ///」恥ずかしげにうつむいた……

足柄「あぁ、もう……! そういう所がたまらないって言ってるの♪」

百合姫提督「こうなったらタクシーをつかまえましょう///」朝帰りをする人たちを乗せようと流しているタクシーに手を振った……

タクシー運転手「おはようございます、どちらまでやりましょう?」

百合姫提督「横須賀第二鎮守府の正門までお願いします」

運転手「ああ、横二さんですか……昨夜も何人か「横二」の女の子が乗りましたけど、同じような年格好の女の子じゃあ考えられないような所で乗ったり降りたりするもんですから、乗せる側としてはちょっとビックリしますよ」朝まだきの空いている道路を走らせながら、苦笑いする運転手……

百合姫提督「ええ、そうですね……」

…しばらくして・鎮守府…

百合姫提督「おはようございます」

一同「「おはようございます」」

百合姫提督「えー、本日で年内の業務は終了となり、明日からは年末年始のお休みとなります。旅行や外出は楽しみでしょうが、くれぐれも体調には気をつけてください……」

…艦娘たちはいずれも神妙な表情で朝礼を聞いていたが何人かはずいぶんと甘い一晩を過ごしていたらしく、寝不足がうかがえる目をしていたり、甘ったるい白粉の残り香を漂わせている…

百合姫提督「……それでは、良いお年を♪」

一同「「良いお年を!」」

………

…その日の午後…

足柄「それじゃあ気を付けて帰るのよ」

百合姫提督「ありがとう。足柄たちは旅行だそうね?」

足柄「ええ、姉さんたちと那智勝浦に行こうって予約しておいたの。値段は割高だけど、仕方ないわ」

百合姫提督「そうねぇ、年末年始はどうしても混み合うものね……それじゃあ楽しんできてね?」

妙高「ええ、もちろん♪」

羽黒「はい!」

那智「もちろんです」

足柄「そうするわ」

熊野「私と鈴谷も妙高たちと一緒に行くんですよ」

百合姫提督「那智と言えば熊野権現さまだものね……最上は東北に行くそうだから、お互いにお土産を買ってきてあげたら良いかもしれないわね」

熊野「そうですね。それにしても姉様ときたら、飛び出しかねないくらい張り切っていました……」最上型でも「最上」「三隈」と改修が施された「鈴谷」「熊野」は姉妹ながら、少しぎくしゃくすることもあったりする……

百合姫提督「……お互い仲良くね?」

熊野「それはもちろんです、それに提督は分け隔てのない人ですから」

百合姫提督「そう言ってくれて嬉しいわ、ありがとう」

…濃緑色のマツダ・ロードスターに帰省のためのこまごました荷物を積みながら、休暇に出かける艦娘たちとあいさつを交わす百合姫提督……温泉旅行や名だたる神社への初詣など、年末年始の休暇を有効活用するべく喜びいさんで出かけていく艦娘たち…

百合姫提督「ふぅ……これでよし」

松「……準備が出来たようですね」

竹「気を付けて行ってらっしゃいまし」

梅「よい年の瀬をな。それからこれはわれら姉妹からの手土産じゃ♪」車のダッシュボードに置けるような小さな松飾りを手渡した……

百合姫提督「まぁ、ありがとう……いつ作ったの?」

竹「非直の時間や夜の自由時間を使って作りました、どうぞ良いお年を」

百合姫提督「三人とも、ありがとう♪」

…帰省の道すがら…

百合姫提督「……それにしても、うちの鎮守府は本当に良い娘たちばかりね」

百合姫提督「どの娘もよく馴染んでくれているし、お互いによく助け合って……年始のお休みが明けて鎮守府に戻る時は、お土産でも持って行ってあげようかしら」

百合姫提督「時には横着をしたり困った娘もいるけれど、それだって可愛い程度だし……」

…普段過ごしている鎮守府で運転するものといえば業務車の「日産・AD」バン程度で、帰省を除くとなかなか運転する事のないロードスターの軽やかなレスポンスに新鮮な驚きを覚えつつ、年末の混み合った高速を走らせていく…

百合姫提督「それにしても実家に帰るのも久しぶりね。もしおせちの準備や買い出しが済んでいないようなら手伝わないと……」

………



…関東・百合姫提督の実家…

百合姫提督「……ただいま♪」

百合姫提督の母「まぁ、お帰りなさい♪ あなた、深雪が帰ってきましたよ」

百合姫提督の父「お帰り。お休みが取れて良かったね……道路はずいぶん混んでただろう」

百合姫提督「ただいま。そうね、年末だからかせわしない運転の人も多くて、ちょっと疲れちゃった」

…玄関先に飾ってある門松や松飾り、それに物心ついた頃から見なれている干支の置物を見て、あらためて実家に戻ってきた気分になってきた百合姫提督……すでに大掃除は済んでいるらしく、フローリングの床は艶が出ていて、家全体がこざっぱりした雰囲気を漂わせている…

父「だろうね」

母「手を洗ったら着替えてゆっくりしなさいね。それが済んだらお父さんたちにも顔を合わせてあげなさい、きっと喜ぶわ」

百合姫提督「ええ、そうする」

………

…しばらくして・和室…

母「深雪、お茶を淹れるけれど飲む?」

百合姫提督「うん、ちょうど欲しかったところ」

…和室の掘りこたつに下半身を入れ、背もたれ付きの座椅子でのんびりとくつろいでいる百合姫提督……帰省の途上で着ていたコートやセーター、スラックスは脱ぎ、白地に紅白の椿をあしらった浴衣というスタイルでゆったりと庭を眺めている……こたつの上にはカゴに載せたお煎餅やおかき、味の良い宇和島のミカンがいくつか入っている…

母「よいしょ……はい、どうぞ」

百合姫提督「ありがとう……お父さんは?」

母「お友達とお酒を飲みに行ったわ。もっとも「年の瀬だからあんまり遅くならないようにする」って言っていたわ」

百合姫提督「そうね、それがいいわ」

…視線の先にある庭先の鳥のエサ台には古釘が打ち込んであり、そこに突き刺した痛みかけのリンゴをヒヨドリがついばみ、しゃもじや炊飯釜についていた米粒やパンくずを載せた皿にはスズメやムクドリがむらがっている……時折いらだったヒヨドリが灰色の羽を震わせ、ヒーヒーと甲高い鳴き声をあげてスズメを追い散らし、またリンゴをついばむ…

百合姫提督「あぁ、こうやっていると年末っていう気分になるわ」

母「良かったわ。ずうっと忙しかったものね」

百合姫提督「そうね、今年は盛りだくさんだったから……でもおかげでイタリアにも行けたし、そういう面では楽しかったわ。ところで年末年始の支度は?」

母「もうだいたいは済んでいるわ。大掃除もしたし、あとは買いだしくらいかしらね」

百合姫提督「だったら車を出すから、明日にでも一緒に行かない?」

母「この時期のデパートは混むわよ?」

百合姫提督「早めに行って帰ってくればきっと大丈夫、お買い物のメモはある?」

母「ええ。とは言っても毎年同じだからそんなに悩まないけれど……ちょっと待っててね」台所から長いリストが書き込まれたメモ用紙を持ってくる……

母「足りないものや思いついたものがあったら言ってね……紅白かまぼこ、栗きんとん、かずのこ、伊達巻、田作り、コハダの粟漬け、黒豆、ちょろぎ……」

百合姫提督「お煮しめはいつも通り?」

母「ええ、うちで作るから大丈夫。おもちも知り合いから分けてもらうから……海老、くわいの煮しめ……あと、あなたが帰ってきたからサラミとか洋風のオードブルでも買い足しておきましょうね」

百合姫提督「そうね、毎年何だかんだでつまんでいるし」

母「……と、リストはこんな感じ」

百合姫提督「うん、全部あると思うわ」そう言っていると、お風呂が沸いたことを知らせるメロディと音声が鳴った……

母「お風呂が沸いたみたいだし、入って来たら?」

百合姫提督「それじゃあ先に入らせていただきます」

母「ゆったり浸かっていらっしゃいね」

百合姫提督「はーい♪」

…脱衣所で帯を解き、大人しめな下着を洗濯ネットに入れてから洗濯機に投入する……クリーム色の内装でまとめられた浴室は午後の日差しを受けて照明を点ける必要もないほど明るく、ふたを取ってかけ湯をすると、広い湯船に足先からゆっくりと浸かった…

百合姫提督「はぁ……ぁ♪」ちゃぷん……と胸まで浸ると身体をじんわりと暖かい湯が包み、思わず満足げなため息が出る……

百合姫提督「あぁ……♪」

…そこそこの大きさがあり丁寧に掃除しているとは言え、年季が入っていてどこか潮っ気も感じる鎮守府のお風呂と違い、入れ替えたばかりのさら湯に満たされたピカピカの浴槽で時間も気にせずお湯に浸かっていられる贅沢は帰省している間しか味わえない……艶やかな黒髪ときめ細やかな白い肌を丁寧に洗い流すと、湯船に入り直して心ゆくまで入浴を楽しんだ…

………



百合姫提督「お風呂上がりました」

母「どう?家のお風呂は気持ち良かったでしょう」

百合姫提督「ええ、とっても」火照った身体を冷ますべく、冷蔵庫の冷たいほうじ茶で喉をうるおす……

母「もう少ししたらお父さんも帰ってくるって」

百合姫提督「まだ1800時にもなっていないのに……もしかして昼のお酒だから効いたのかしら」

母「かもね……今日は冷えるから温かいけんちん汁と、それから豚の角煮。昨日から煮込んでおいたからすごく柔らかいわよ。良かったら先に食べる?」

百合姫提督「ううん、お父さんが帰ってくるまで待つわ」

母「そう、分かった」

百合姫提督「今日はお父さんがお出かけだから、明日はお父さんに留守番をしてもらって……買い出しの帰りにどこかでご飯でも食べよう?」

母「ふふ、そうね♪」

…翌日…

百合姫提督「それじゃあ行ってきます」

母「留守をお願いしますね」

父「ああ、気を付けていっておいで」

百合姫提督「はい」

…百貨店…

百合姫提督「わ……すごい混雑」

母「だから言ったでしょう? 買い物だけなら私一人でもできるし、なにも一緒に来なくても良かったのに……」

百合姫提督「買い物はお母さんだけで出来たとしても、荷物持ちがいれば楽だろうから」

母「それはそうね、大いに期待しているわ」

…実家から車を走らせ小一時間、県下の中核都市にある百貨店の入館待ちの行列に並ぶ百合姫提督と母……店頭には門松や年末年始の営業日を知らせるポスター、福袋商戦の広告でにぎにぎしく飾り立てられ、寒空の下で百貨店の開館を待つ人たちで人いきれがしそうなほどになっている…

店員「お待たせいたしました、開館でございます! どうぞ列の順番にお進みください!」

百合姫提督「良かった、オープンしたみたい」

母「年末年始はデパ地下だけ開店が早いのよ……そろそろ順番ね」

百合姫提督「お買い物のリストはあるし、お母さんが疲れちゃう前に済ませようね」

母「そうね」

…デパ地下…

百合姫提督「えーと、黒豆……黒豆……」金箔が入っていたりいなかったり、はたまたたくさん入っているのや少量サイズなど種類もさまざまなおせち関連の食品……母親に買い物カートを預け、人混みをすり抜けつつリストに並んだ商品を手に取っていく……

母「あった?」

百合姫提督「うん、あんまり大きくないパックでいいでしょ?」

母「そうね、そこまで黒豆ばっかり食べるわけじゃないから……あと、伊達巻きは少し高い方にしましょうか」

百合姫提督「分かった」

…館内の買い物客の数が増えるに従って混雑が増し、それと同時に空気もむっと淀んでいる感じがする……特に太平洋の爽やかな潮風に慣れきっている百合姫提督にとって人いきれの館内はこたえるものがあり、外套のボタンを外してラベンダー色をした薄手のセーターとスラックスの動きやすい姿で歩き回っている…

母「……次は肉類ね。ハムとか鴨のローストとか、いくつかあれば困らないものね。あとおつまみにチーズやサラミも」

百合姫提督「じゃあ向こうのお店ね」輸入食品や瓶詰めなどを扱っているお店に立ち寄り、クラッカーに合わせるレバーパテやコショウをまぶした鴨のロースト、カマンベールチーズ、それに夏のイタリア訪問を思い起こさせるサラミやオリーヴの瓶詰めなどをカゴに入れる……

母「こんなところね……それじゃあお会計をしましょう」

百合姫提督「私が出そうか?」

母「いいのいいの、お祖父ちゃんが「深雪が食べたいだろうから色々買ってやれ」ってお金を出してくれたから」

百合姫提督「もう……育ち盛りの中学生や高校生じゃないんだから……」思わず苦笑いを浮かべる百合姫提督……

………

…中華料理店…

百合姫提督「買いだしお疲れさまでした」

母「ええ、お疲れさま♪」

…烏龍茶のグラスを軽く合わせて、年末年始の「食料調達」で流した汗をねぎらう二人……店頭の年季の入った額に彫り込まれた筆文字にも貫禄のある中華料理店は全国レベルとは言わないまでも県下では有名な老舗で、年の瀬らしい慌ただしさの中にあっても落ち着いた雰囲気をかもしだしている…

店員「お待たせいたしました」上品な白い器に盛られた名物の上海焼きそばと、蒸籠に入って湯気を立てている大ぶりな焼売が卓に並ぶ……

百合姫提督「相変わらず美味しそう……いただきます」

母「いただきます」もう一つの名物であるタンメンを丁寧にすする……途中で注文したものを分け合ったりしつつ、ゆっくり昼食を楽しむ……

百合姫提督「……ふふ」

母「どうかした?」デザートの杏仁豆腐をすくいながら首を傾げた……

百合姫提督「ううん。ただ、こうしているといつも通りの年末みたいな気分だから、なんだかホッとしちゃって……」

母「良かったわね。年末年始はうんとのんびりしなさいよ」

百合姫提督「ええ♪」

…翌日…

百合姫提督「……良い気持ち」

母「横須賀では本当に忙しかったみたいね。少しやせたように見えるわ」

百合姫提督「そんなことはないと思うけれど……昨日お風呂の後で体重計に乗ったけれど、ほとんど変わっていなかったから」

母「そう? でも顔が細くなった気がするし、お祖父ちゃんから「もっと食べなさい」って言われるわね」

百合姫提督「もう言われたわ。相変わらず……」

母「ふふ「天ぷらかウナギか、それともすき焼きがいいか」……って?」

百合姫提督「ええ」

…母親と差し向かいでこたつに入り、浴衣にどてらのくつろぎ姿でぼーっとしている百合姫提督……テーブルの天板代わりになっているこたつ板には読みさしの文庫本がしおりを挟んで置いてあり、手の届く位置にはテレビのリモコンや読み終えた新聞、頂き物のクッキーが並べてある……と、居間の壁を飾る数枚の額縁の中に、目新しいものがあることに気がついた…

百合姫提督「あそこにあんな額縁あったかしら……」

母「ああ、あれね♪ 夏の時にあなたがイタリアから絵はがきを送ってくれたでしょう? 素敵だったから飾ってあるの」

…夏の「戦術交換プログラム」でイタリア海軍の公報施設を訪れた際にPX(酒保)で見かけた絵はがきを買い求め、実家に宛てて投函しておいた百合姫提督……絵はがきには紺碧の海に白いを広げ帆走する練習帆船「アメリゴ・ヴェスプッチ」の美しい姿が収められていて、百合姫提督が子供の頃にとった賞状や記念写真、それに風景画の間で明るい地中海の息吹を感じさせる…

百合姫提督「気に入ってくれて良かったわ。練習航海中で実物を見られなかったのは残念だったけれど」

母「まぁ、そのうちに見る機会も出来るわよ」

百合姫提督「そうね」

母「ええ。さぁ、そろそろお煮しめの準備に取りかからないと……!」

百合姫提督「私も手伝うわ」

母「いいのよ、私がやるから座ってなさい♪」

百合姫提督「でもお父さんはお祖父ちゃんのところで大掃除、お母さんはおせちの準備をしているのに私だけ座っているのも……」

母「分かったわ、それならちょっとだけ手伝ってもらおうかしら」

百合姫提督「ええ」

…台所…

母「深雪、お醤油を取ってくれる?」

百合姫提督「はい」

母「ん……このくらいかしら」

百合姫提督「ええ、もうちょっとみりんをいれても良いかもしれないけれど……」

母「じゃあそうしましょうか」

…母娘水入らずで台所に立ち、お煮しめの味付けを決めている二人……百合姫提督は浴衣のままだが袖口が邪魔にならないようたすき掛けにして、小皿で味を見ている…

母「それにしてもますます手際が良くなったわね」

百合姫提督「鎮守府にいると間宮とか伊良湖みたいな料理上手が多いし、手伝うことも結構あって……」

母「結構なことじゃない♪」

百合姫提督「ええ。何しろぬか漬けの漬け方からフランス料理までみっちり仕込まれたから」

母「それじゃあそのうちに作ってもらおうかしら」

百合姫提督「そうね、三が日が過ぎておせちに飽きたらその時にでも」

母「期待しているわね……いけないいけない、もう少し火を落とさないと……」落とし蓋をした雪平鍋ではコトコトと音を立ててお煮しめが煮えている……

百合姫提督「わ、美味しそう」

母「もう……あなたくらいの年頃なら、お煮しめなんかよりもまだまだすき焼きでしょうに♪」

百合姫提督「そうかもしれないけれど、すき焼きは鎮守府でもやったから……まだお肉の脂が残っているような気がするもの」

母「まぁまぁ。同じすき焼きでも、うちで年越し番組を見ながら食べるすき焼きは格別よ?」

百合姫提督「ええ。毎年の恒例行事だし、楽しみにしているわ」

………

…大晦日…

百合姫提督「白菜は切っておいたわ」

母「ありがとう」

父「食器も並べておいたよ」

母「ありがとう、家事の出来る家族がいると楽が出来て助かるわ」

父「威張って「できる」って言うほどじゃないけどね。それじゃあ父さんたちを呼んでくるよ」

母「お願いするわ」

…普段は敷地内の二軒の家でそれぞれ別に暮している百合姫提督の一家と父親の両親……とはいえ年末年始のすき焼きやおせちを別に用意するのも大変と、この時ばかりは一緒のテーブルを囲んでいる…

百合姫提督「……いい匂い」

母「そうでしょう、あなたが帰ってくるっていうからお父さんも奮発していいお肉を買っていたもの……ほら」

…すき焼き鍋で軽く煮た立たせている割り下が甘塩っぱい匂いを漂わせ、バットや皿にはみずみずしい白菜や人参、しらたきに焼き豆腐、それに斜め切りにした長ねぎが盛り上げてある……百合姫提督の母が包みを開けると、サシの入った牛肉がきちんと折り重ねて入っている…

百合姫提督「こんなにたくさん買ってきたの?」

母「いいのよ、余っても明日以降に食べればいいもの」

父「……いま伝えてきたよ。もう来るってさ」

母「それじゃあそろそろ始める?」

父「そうだね、じゃあカセットコンロを持って行くよ」

…食卓の中央に堂々と鎮座するすき焼き鍋……カセットコンロの青い火が軽く揺らめくたびに鍋からいい香りの湯気が立ちのぼる……と、そこに祖父と祖母が入って来た…

祖父「おお、いい匂いだな!」

祖母「本当にね……いつもご苦労さま。本当なら私たちは別で済ませてしまえばいいのに、わざわざ呼んでくれて」

母「いいえ、せっかくの年末ですから」

祖母「そう言ってくれるからいつも甘えちゃって、申し訳ないわねぇ」

母「まあまあ、それよりどうぞ座ってください……さ、深雪も座って」

祖父「それから乾杯するんだから何か飲みなさい。ジュースがいいか、それともサイダーか!」

百合姫提督「うん、ありがとう……それじゃあジュースにします」いつまでたっても子供扱いの祖父に苦笑いをしながら、リンゴジュースを注いでもらう……

父「みんな準備はいいね? それじゃあ今年もお疲れさま、乾杯♪」

百合姫提督「はい、乾杯」

…百合野家の慣例でテレビは昭和歌謡や演歌の年末特番にチャンネルが合わせてあり、百合姫提督は知らない昭和世代の……しかし今どきのポップスよりもずっとよく知っている名曲の数々が流れている……時折お気に入りの曲が流れると少し視線を向けて一緒に口ずさんでみたり耳を傾けたりしながら、すき焼きに箸を付ける…

祖父「ほら、もっと食べなさい!」

百合姫提督「ありがとう、でもよそったのがまだ残っているから」

祖父「そうか? とにかくしっかり食べるんだぞ!」

百合姫提督「はい」

…家族水入らずの気楽な食卓で柔らかい牛肉に舌鼓を打ちながらも、カセットコンロの熱と暖房で少し暑いくらいの室内に火照りを覚えた百合姫提督……祖父母が寒くない程度に後ろの窓を開けると、すうっと外の寒気が入り込んでくる……冷たいが爽やかな冬の空気が首筋をくすぐると、少しほっとした…

百合姫提督「ふう……」

母「お肉がもう一切れ煮えたけれど、食べる? 白菜もそろそろ食べ頃だけれど」

百合姫提督「ありがとう、それじゃあいただきます」

父「いい肉だろう? 本当はもっとずっと高いんだけれど、少し色が悪いのと、形に不揃いな部分があるからって割安にしてもらったんだ」

百合姫提督「味は全然変わらないのに」

父「でもご贈答用にはならないからね……おかげでいいお肉が食べられるわけだ」

母「そうね」

百合姫提督「ええ……でもいいお肉じゃなくても、うちで食べるすき焼きが一番美味しい」

母「良かったわ♪」

父「父さんたちはそんなに食べないし、遠慮しないで好きなだけ食べていいからね」

………

…百合姫提督の年越し風景ですが日本の円満な家族団らんを書きたくなったもので、カンピオーニ家の年末年始に戻るまでもう少し続ける予定です…



…ところで今月はイタリアから軽空母「カヴール」と護衛のフリゲート「アルピーニ」が来航したかと思うと、入れ替わるように世界一周航海中の「アメリゴ・ヴェスプッチ」が日本を訪問するなどイタリア海軍が話題を賑わせていましたね。
幸い予約が取れたので「ヴェスプッチ」の乗船体験をさせていただきましたが、好天に映える磨き上げられた木部とニスの香り、つたない英語やイタリア語で話しかけてもにこやかに応じてくれる、白と紺の制服も凜々しい士官さんや士官候補生の方々や、警備に立ついかついながらも愛想のいい「サン・マルコ」海兵旅団の海兵さんと、とてもいい体験が出来ました。


会場の「東京国際クルーズターミナル」には海軍関係者を始め、外交関係の方やイタリアメディアも来ていて大変に盛り上がっていましたし、やはりこうした交流は国際親善に大いに役立つのだと実感した次第です。



一方、海上自衛隊は不祥事問題での大量処分で抵抗できる状態にないところへ持ってきて降って湧いたような組織改編の話が出てきましたが、どうか荒波に揉まれても良き伝統は残していって欲しいものですね……

…しばらくして…

百合姫提督「ふぅ……」首筋にうっすらと浮いた汗を手拭いで拭う……

父「お腹いっぱいかい?」

百合姫提督「ううん、まだもう少し入りそう」

父「ならよそってあげよう。お祖父ちゃんたちはもう寝に行っちゃったし、いま煮えているお肉は硬くならないうちに食べちゃおう」

百合姫提督「そうね」

父「よし。それじゃあ母さん、菜箸を取ってくれるかい」

母「はい……あ、少しテレビの音を上げるわね」年末特番の歌番組から、百合姫提督の母が好きな「みずいろの雨」が流れている……

父「ああ。それから深雪、せっかくだしお父さんと一杯飲もう」

百合姫提督「うん、それじゃあ……いただきます」

…冷酒の「八海山」を小ぶりなグラスに注いでもらって口に含むと、きりりとした辛みにすっきりとした水のような飲み口が濃くて甘いすき焼きの味付けと肉の脂でべたついた口中をさあっと洗い流してくれる…

百合姫提督「美味しい……」

父「そうだろう? 「八海山」は燗酒で飲むのもいいけれど、冷やでも美味しいんだ……もうちょっと飲むかい?」

百合姫提督「それじゃあ、もう半分くらい」

父「分かった……っとと、すき焼きが煮詰まってきちゃったな」ぐつぐつと煮えているすき焼きに薄割り下を足して沸き立っているのを落ち着かせる……

母「あ、ごめんなさい」

父「大丈夫だよ」

………

母「いっぱい食べた?」

百合姫提督「ええ、もうお腹いっぱい……」

父「そうか、良かった。たくさん買ったかいがあるよ……それから、このよく煮えた焼き豆腐は明日のお酒のお供にしよう」

母「それじゃあ取っておくわね」

父「ああ……さ、年越しそばまではまだ時間もあるし、片付けを手伝うよ」

百合姫提督「ううん、それは私が」

父「いいんだよ、久しぶりのわが家なんだからゆっくりして」

百合姫提督「でもお父さんとお母さんが動いているのに自分だけ座っていると落ち着かなくって……」

母「それじゃあおせちを詰めるのを手伝ってくれる? それならそう大変でもないし、その間にお皿は私が片付けておくから」

百合姫提督「ええ、分かった」

…普段はしまい込んである黒漆の重箱を広げると、それぞれに色味や順番を考えておせち料理を詰めていく……かまぼこは紅白それぞれが順番に並び、黒豆の上には色鮮やかなちょろぎ……厚手に切った伊達巻きに栗きんとん、そしてお煮しめや田作り、コハダの粟漬けといった、地味ながらないと落ち着かない名脇役たち…

母「そうそう、そんな感じ」

百合姫提督「鎮守府でもおせちは食べるし、いつの間にか覚えちゃった……こっちはいつも通りハム?」漆の重箱の隣に出してある樹脂製の小ぶりな重箱はタッパーのような樹脂の中蓋つきで、おせちの時はハムやチーズ、テリーヌのような洋風のオードブルやチャーシューといった肉類が入る……

母「ええ。あなたの好きな物を好きなだけ詰めていいわよ……もちろんつまみ食いもしていいわ♪」

百合姫提督「いい加減、子供じゃないんだけれど……」

母「まぁそう言わずに♪」

百合姫提督「もう……」苦笑いしながらも、母親が切りだしたチャーシューの端っこをつまんだ……

母「ふふ♪ お蕎麦のお出汁はもう引いてあるし、年越し蕎麦まではゆっくりしていてね」

百合姫提督「はい」

………

…年の瀬…

父「それじゃあそろそろお蕎麦を茹でようか。お祖父ちゃんたちは座椅子でウトウトしていたけれど、しきたりだから起こしてきたよ……葱でも刻もうか?」

母「私がやるから大丈夫よ。お義父さんたちもお腹いっぱいでしょうけれど、形だけでも食べてもらうとしましょう」

父「そうだね、僕もそんなにはいらないから」

母「そう。深雪、あなたは?」

百合姫提督「私もお腹いっぱいだから少しでいいわ。それとお箸と出汁の徳利は出しておいたから」

母「ええ、ありがとう」

…年末特番もそろそろ大詰めといった頃合いになってきたところで、年越し蕎麦の準備に取りかかる百合姫提督たち……天つゆこそ市販の濃縮つゆで済ませているが、出汁はふわりと香る鰹節と日高昆布で取ってあり、薬味の小皿には刻んだ葱と細切りにした海苔を添え、台所には井筒の型をした蕎麦用のざるも用意してある…

祖父「そろそろ年越し蕎麦の時間だそうだな、いつの間にかうつらうつらしていて気付かなかったぞ!」

祖母「私はそんなに要りませんから、ほんのおしるしだけね」

母「はい……それから熱いのと冷たいの、どちらにします?」

祖父「それならざるで頼むぞ!」

父「父さん、冷たい蕎麦をたぐってお腹が冷えないかい?」

祖父「少しだけにしておくから平気だ!それより深雪の分を先に茹でてやりなさい、こんな遅くまで起きていて小腹が空いたろう!」

百合姫提督「うん、ありがとう」

祖父「お腹が空くのはいいことだぞ!それに育ち盛りが蕎麦だけじゃ足りないだろうから、かき揚げかなにか付けてやりなさい」

百合姫提督「それならさっき色々つまんだりしたから大丈夫」

祖父「そうか?蕎麦だけでいいのか?」

百合姫提督「ええ、大丈夫……お祖母ちゃんは熱いお蕎麦、それとも冷たいお蕎麦?」

祖母「私は温かいのにしますよ」

百合姫提督「はい」

…母が蕎麦を茹でるかたわらで、天つゆを温める百合姫提督……祖父が音量を上げたテレビからは、年末番組のフィナーレを飾る司会のあいさつや華やかな歌手たちのにこやかな表情が映っている…

母「さあ、茹だったわ」もうもうと湯気を立てる蕎麦をざるでしゃくいあげると、さっと冷水で締める……

百合姫提督「それじゃあ私が……お父さんはどうする?」

父「かけ蕎麦にすると手間がかかるだろうから、冷たいのでいいよ。この部屋は暖房も効いているし」

百合姫提督「分かった。お母さんは?」

母「それじゃあ私もざる蕎麦にしようかしら。冷たいのは私が準備するから、お祖母ちゃんの分だけお願いね」

百合姫提督「はい」

…手がかじかむような冷水で締めた蕎麦のうちから祖母の分をつかみ取り、温めたつゆの中でさっと泳がせる……お湯に通して軽く温めておいた丼に蕎麦を盛ると、軽く沸かした熱いつゆをかけてさっと出す…

百合姫提督「お待ちどおさま」

祖母「はい、どうもありがとうね」

父「それじゃあ改めて……良いお年を」

百合姫提督「良いお年を」手を合わせると箸を取り上げ、ざるに形良く盛った蕎麦をすくうと「つつぅ…っ」とたぐる……出汁の利いたつゆの絡んだ冷たい蕎麦が心地よく喉を流れ、ふっと鼻腔に蕎麦の風味と鰹出汁の香ばしい香りが抜ける……

祖父「うむ、美味い!」ざるの蕎麦に軽く七味唐辛子を振って、そば猪口のつゆに半分も浸けず、小気味よくすする……

父「ああ、美味しいね」

…百合姫提督たちがそばをたぐり終えたころ、ちょうど年越しの様子を伝える番組が始まった……アナウンサーは生真面目な声で、悲喜こもごもの一年を振り返りつつ、にぎやかに……あるいはしめやかに年越しを迎えた各地の様子を除夜の鐘とともに伝えていき、時計の針が零時を回った…

アナウンサー「皆さま、明けましておめでとうございます!」

父「はい、明けましておめでとうございます」改まって一礼した……

母「明けましておめでとうございます」

百合姫提督「明けましておめでとうございます」

祖父「うむ、明けましておめでとう!」

祖母「明けましておめでとう……本年も良い年になりますように」

………

…元日・明け方…

百合姫提督「お天道様、本年もよろしくお願いいたします……」除夜の鐘を聞いたあとで仮眠を取った百合姫提督は、家のベランダに出て白い息を吐きながら、次第に空を黄色く染めながら昇る初日の出を拝んだ……

父「ふわぁ……早いね、初日の出は見られたかい?」

百合姫提督「うん、とっても綺麗だったわ」

父「良かったね。それと初詣に行く前にもう一度お風呂に浸かって、身体を清めて来た方が良いね」

百合姫提督「はい」

…朝…

母「……準備できた?」

百合姫提督「ええ、大丈夫」

父「そうか、それじゃあそろそろ行こうか……お祖父ちゃんたちは後で行くそうだから、僕たちだけで先に初詣を済ませてこよう。戻ったらお雑煮とおせちを食べようね」

母「そうね。それから深雪、あなたが去年のお札と破魔矢を持って行ってちょうだいね?」

…白地に金糸で縁取られた紅の扇と緑の松という縁起のいい絵柄をあしらった正月小袖に袖を通し、久しぶりの下駄で玄関に出る百合姫提督……本来なら一月の寒い時期とは言え、百合姫提督の実家は温暖な地域にあり、小春日和とでもいいたくなるような優しい日差しが柔らかく降り注いでいる……片手にはお焚き上げに持って行く神社の破魔矢とお札を持ち、手首にひもを通した巾着には財布を始め、こまごましたものが入っている…

百合姫提督「はい」

………

百合姫提督「明けましておめでとうございます」

見知らぬ人「あ、どうも……明けましておめでとうございます」

…神社への道すがら、すれ違う見知らぬ人たちとも出来るだけ「明けましておめでとう」の挨拶か会釈を交わす百合姫提督の一家……元日と言うこともあって車通りも少ない神社への道は初詣に向かう人や初詣から戻る人がちらほらと行き交い、近所の老夫婦や帰省してきたらしい若い家族連れ、友達同士でお詣りに向かう学生など、普段なら接点のない人たちが同じ目的のために歩いている…

…神社…

父「よーし、それじゃあ写真を一枚撮ろうね」

母「はいはい」

百合姫提督「ええ」

氏子のおじさん「おっ、百合野さんとこの若旦那じゃないか……や、明けましておめでとう!」

父「ああ、これはこれは……どうも、明けましておめでとうございます」

おじさん「なんだ、記念写真かい? それならおれが撮ってやるからよ、若旦那も奥さんお嬢さんと一緒に写りなよ」

父「いいですか? 忙しいでしょうにすみません……」

おじさん「いいんだよ、せっかくのお正月なんだからさ……いいかい、撮るよ? そら、笑って笑って!」

父「いや、どうもお手数をおかけしました」

おじさん「なぁに、気にするなって。それより深雪ちゃんも大きくなったねぇ。ついこの間までちっちゃい女の子だとばっかり思っていたのに……しかも今じゃあ提督さんなんだって?」神社の法被を羽織っている氏子のおじさんは早くも一杯きこしめした様子で頬が赤い……

百合姫提督「ええ、一応は……」

おじさん「謙遜するこたぁないよ!小さいころから深雪ちゃんは礼儀正しかったし、おれは「きっと偉い人になる」ってずーっと言ってたんだ!」

百合姫提督「それは、その……ありがとうございます///」

おじさん「おう!境内で甘酒とか御神酒を配ってるから、ぜひ寄って挨拶して行ってくれよ。酒屋のじいさんとか勝ちゃんとか、みんな深雪ちゃんのことを孫みたいに思っていやがるからな、顔出したら喜ぶぜ」

百合姫提督「分かりました、お詣りが済んだら挨拶していきます」

おじさん「あいよ、それじゃあいいお正月をな!」

…境内…

百合姫提督「……」

…お焚き上げをしている氏子のおじさんにお札や破魔矢のお焚き上げをお願いし、それから手水鉢で手を清めて口をすすぎ、賽銭箱にお賽銭を入れると鈴を鳴らし、手を合わせて柏手を打つ……

父「……これでよし」

母「そうね、お焚き上げも済んだし……今年のお札を買わないと」女子高生のアルバイト巫女さんが詰めている社務所で家内安全のお札と破魔矢を買うと「はい、どうもありがとう」と一礼した……

父「それじゃあ甘酒でもいただいてから帰ろうか?」

百合姫提督「うん、そうする」

………

…しばらくして…

父「それじゃああらためて、明けましておめでとう」朱漆のお屠蘇セットに金箔入りの祝い酒を用意し、めいめいの杯に順番に注ぐ……

祖父「うむ、注いでくれ!」

祖母「私は一口でいいですからね」

父「分かっているよ、母さん……さ、二人も杯を出して」

母「私もほんのお義理でね。深雪はお酒が飲めないわけじゃないんだから、好きに注いでもらいなさい」

百合姫提督「まぁ、でもこれは形のものだから……お父さんのは私が注ぐね?」

父「お、ありがとう……それじゃあ、今年も良い年でありますように」

…金箔の入った祝い酒を干すと、お雑煮の入った椀に手を付ける……すまし汁に鶏肉少々と青菜、白地に「寿」の文字が入ったなるとに角餅、三つ葉の浮いた関東風のお雑煮で、喉を湿しお腹が温まる…

父「父さん、母さん、喉に詰まらせないように気を付けて食べてよ?」

祖父「言われんでも分かってる! それからな、深雪は伊達巻きが好きだったろう。わしの分はいらないからその分取ってやりなさい!」

父「大丈夫だよ、たくさんあるんだから」

祖父「そうか? ああ、それとな……ほれ、これで好きなものでも買いなさい!」のしが付いていて「お年玉」と書かれているポチ袋を押しつけるように渡す……

百合姫提督「いい加減お年玉をもらうような年でもないんだけれど……」

父「まあまあ。父さんにしてみればいつまでたっても可愛い孫娘なんだから「ありがとう」って言ってもらっておくといいよ」

祖父「あー、あとはどこだったかな……おお、あったあった。ほれ、お前にもやるから!」百合姫提督の父にもポチ袋を握らせる……

父「父さん、僕だってもうもらう年じゃないよ?」

祖父「いいからもらいなさい。それから……と、ほれ!」百合姫提督の母にもお年玉を渡す……

母「……私までもらっちゃっていいの?」

祖母「いいのよ。いつも本当に良くしてくれて、この人も「本当にいいお嫁さんが来てくれた」ってずうっと言っているくらいなんだから」

母「いえ、そんな……///」

父「まあ、父さんはあげるのが好きだしもらっておこうよ……ありがとね、父さん」

祖父「なに、気にするな!」

祖母「それじゃあおせちをいただこうかしら?」

百合姫提督「それじゃあ私が取ってあげるから……なにがいい、お祖母ちゃん?」

祖母「そうね、それじゃあまんべんなく一口ずつ……あ、でも田作りは固くて歯ぐきに刺さるから、ほんの少しにしてもらおうかしら」

百合姫提督「はい」

…祖母におせちを取ってあげている間に、母が自分の祝い皿におせちを盛り合わせる……伊達巻、きんとん、ニシンの昆布巻き、黒豆とちょろぎ、それに紅白のかまぼこ…

百合姫提督「……いただきます」子供の頃はそこまで好きでもなかったおせち料理だが、ある程度「大人になった」という事なのか、祝い箸で口に運ぶと、意外と奥深い味付けや素材の良さに気付かされる……

百合姫提督「あ、美味しい……」

…艶々とした黒豆はしっとりと甘く煮えていて、かまぼこもグチを使ったいい品物らしく味わいや歯ごたえが段違いに良い……ふんわりした伊達巻は子供にとっては面白くないおせち料理の中にあって珍しい人気者であるが、こうして口に入れるとただ甘いだけでなく、すり身の味の深さが活かされていることに気付く…

母「それからこれも取ってあげるわね……はい♪」

百合姫提督「うん、ありがとう」酢だこや松前漬けなどの縁起物をひとわたり食べると、今度は焼豚や鴨の燻製といった献立が収まっているお重のふたをとった……

父「もう一切れ取ってあげようか」

母「こっちの鴨を食べる?」

祖父「ああ、その焼豚な、深雪にもう何枚か取ってあげなさい。わしはそっちのニシン巻きを食べるから」

祖母「松前漬けはスルメが固くってどうも……黒豆をもう少しもらうことにしましょう」

…居間の棚に設けられたスペースに敷かれている赤毛氈と、その上に鎮座している干支の置物や飾り羽子板、テレビ台の前に置かれた鏡餅が正月を彩り、少し弱々しいが新年をことほぐお日様が優しく食膳を照らす……ゆるゆると食べたいものをつつきながら日本酒や梅酒を飲んでいると、門の郵便受けでカタンと音がして、郵便局のバイクが走って行く音がした…

母「あら、年賀状が届いたみたいね」

百合姫提督「それじゃあ私が取ってくるわ」正月小袖で卓上を払ったり汚したりしないよう気を付けて椅子を引くと、年の初めにふさわしい清らかな空気を味わいつつ年賀状を取りに出た……

……

百合姫提督「はい、年賀状」

父「それじゃあついでにより分けてくれるかい?」

百合姫提督「分かった……えーと、まずはお父さん宛、これはお母さんの、次が私の……」

…机の端にスペースを作ると太いゴムバンドで束ねられている年賀状の束をほどき、カードの手札を配るようにより分けていく……郵便局からのご挨拶や広告を別にして分けながら、差出人を確かめていく百合姫提督とその家族…

百合姫提督「えーと、次はお父さん宛で……高田さんという人から」

父「あー、タカちゃんか……相変わらず元気にしているみたいだなぁ」

百合姫提督「……次は高崎……下の名前が「たけお」さん?」

父「うわ、武雄さんか……最近ご無沙汰だったから出してないよ」

百合姫提督「次はお母さん、島村さんから」

母「ああ、桜さんね♪」

…積み上がっている年賀状は達筆な筆文字のもの、近況報告の写真を印刷したもの、白地の年賀状にあり合わせのペンで「明けましておめでとう」だけの気楽なものなどさまざまで、差出人の名前も普段から親しい人や近ごろは疎遠になっている人、懐かしく思う人や「どうせ送ってこない」とたかをくくって出さずにいたのに唐突に年賀状を送ってきて慌てさせる人など、こちらも十人十色といった趣がある…

百合姫提督「さてと、私には誰から届いているかしら……ちゃんとお返事を出さないといけないし……」艦娘たちを預かる鎮守府司令官の准将ともなれば、公私問わずさまざまな相手から年賀状が送られてくる……百合姫提督は食卓のテーブルから隣の和室に場所を移し、改めて年賀状を読み始めた……

百合姫提督「……えーと、由紀にはもう出してある……美保にも出した……」

…公務上の付き合いで礼を欠かすことの出来ない相手と、百合姫提督が親しくしている友人・知人たちはリストアップしてあり、届いた年賀状と見比べて確認していく……差出人は海自の知り合いをはじめ、市ヶ谷のお役人のような「エライ人」、そして懐かしい学生時代の友人たち……たいていは都合が合わずに会う機会がめっきり減ってしまったが、中には帰省のたびに顔を合わせ、旧交を温めている親友や可愛がってくれる先輩、慕ってくれる後輩もいる…

百合姫提督「ふふ、春子ったら相変わらず元気いっぱいね……悠も相変わらずのようだし……」

百合姫提督「みんな元気そうで良かった。それじゃあ今度は国際郵便を確認しないと……」

…知り合いたちの近況を読んで微笑ましい気分になっていた百合姫提督だったが、何通か交じっている国際郵便を確認することにした……外国海軍の来訪やレセプションで親しくなった海軍士官の中には、手間はかかるが趣があると手紙を送ってくれる人もいる…

百合姫提督「アメリカのミッチャー提督……わざわざ手紙を送ってくれるなんて、マメな人なのね」

…基地のPXで買ったと思われる新年おめでとうの絵はがきには「ビッグE」こと空母エンタープライズが白波を蹴立てている堂々とした姿が印刷されていて、そこに黒いマジックペンで「A HAPPY NEW YEAR!」と書いてある…

百合姫提督「効率的なミッチャー提督のことだから、てっきり電子メールで送ってくるとばかり思っていたわ……お返事は「富嶽三十六景」の絵はがきにでもしたら喜んでもらえるかしら……」

百合姫提督「それからこれは、フランスのエクレール提督ね……」

…オディロン・ルドンの名画「グラン・ブーケ」をあしらった絵はがきに、筆致も美しい花文字でフランス語の新年のあいさつがつづられている……近づけるとふっとニナリッチの名高い香水「レール・デュ・タン」が香るところも万事フランス流にこだわり、パリジェンヌを気取っているエクレール提督らしい…

百合姫提督「やっぱりエクレール提督の人柄が出ている感じがするわ……♪」

百合姫提督「それから次は……あ、フランチェスカからだわ……///」提督からの絵はがきを手に取ると、少し頬を赤らめつつ文面に目を通す……

…提督からの絵はがきは抜けるように青いイオニア海と白い砂浜を写した風景写真のもので、そこに練習を重ねたらしい「あけましておめでとうございます」のひらがながつづられている……字そのものは丁寧で柔らかい感じだが、慣れない平仮名には苦戦したようで「あけましてお『ぬ』でとうございます」と書いてあるようにも見える…

百合姫提督「フランチェスカったら平仮名を教えてあげたのに、また「め」と「ぬ」があいまいになって……♪」

百合姫提督「あ、下にも何か書いてある……」大きめに書かれた平仮名の下にはイタリア語に英語を添えた文章がつづってある……

百合姫提督「……えーと「ごくありふれたイオニア海の写真だけれど、私にとっては姫と過ごした特別な場所。今年が貴女にとって良い年でありますよう……愛を込めて。フランチェスカ」って……///」

百合姫提督「も、もう……フランチェスカったら///」

………



…さかのぼって・年の瀬のイタリアにて…

提督「……おはよう、お母さま♪」

クラウディア「ええ、おはよう……ちゅっ♪」

シルヴィア「おはよう」

提督「おはよう、シルヴィアおばさま……それにしても早いものね、もう何日もしないうちに新年が来るなんて」

クラウディア「そうね、シルヴィアが隣にいると毎日が幸せだから一年があっという間♪」

シルヴィア「私もよ、クラウディア」

クラウディア「まぁ、嬉しい♪」

提督「朝からごちそうさま……ところで年始だけれど、私はアンナに色々と付き合わされることになるかもしれないわ」

クラウディア「ふふ……いいわよ、お泊まりでもなんでもしていらっしゃい♪」

シルヴィア「そうね。フランカも子供じゃないんだから、どこまでしていいかはわきまえているでしょう」

提督「私がわきまえていてもアンナがわきまえているかは怪しいところね……」

クラウディア「まぁまぁ、ふふっ……ところでフランカ、少し頼まれ事をしてくれないかしら?」

提督「どうしたの、お母さま?」

クラウディア「ええ、ちょっとルチアーノさんのカフェに行ってコーヒー豆を買ってきてくれないかしら? 買っておいた分がそろそろおしまいになりそうなのに気付かなくって……年末年始は店もお休みでしょうし、今のうちに買っておかないと」

提督「いいわよ。どうせ暇だし、ついでにコーヒーでも飲んでくるわ」

クラウディア「そうね、それならお菓子も食べていらっしゃい♪」

提督「ええ、それじゃあ行ってきます」軽いクリーム色のセーターと履き心地の良い茶色のズボン、脱ぎ履きのしやすいスエード生地のスリッポンと気軽な格好で家を出た……

…小さな町…

提督「チャオ、ルチアーノおじさん」

カフェのマスター「フランカ!戻って来たっていうのに顔を出してくれないから、てっきりミラノ辺りの生意気なカフェにあてられてうちみたいな田舎のカフェはゴメンだってお高くとまっているのかと思ったよ!」

提督「まさか。ミラノやローマでカフェなんて入ったらあまりの値段に目が回るわ……カフェ・コレットを甘めに。それからコーヒー豆をひと袋」

マスター「はいよ。それにしてもずいぶん大人になって……ついこの間までカスティリオーネさんとこのお嬢様と手をつないでいたあのお嬢ちゃんがね……」

提督「もう、おじさんったら何年も前の事を……」提督は苦笑いしつつ、運ばれてきた甘く熱いコーヒーを口に含んだ……

提督「……相変わらず美味しいわ」

マスター「そりゃあそうさ。こんな顔馴染みだらけの小さい町で少しでもマズいコーヒーなんて出してみろ。あっという間に評判が広まって客が来なくなっちまう……ヘタな都会よりも気が抜けないよ」

提督「そのセリフも相変わらずね。おばさんは元気?」

マスター「買い物に行ったきり帰ってきやしないよ。どうせ八百屋のばあさんとくっちゃべってるんだろうさ……年の瀬だからとっとと売りだめの勘定を済ませたいっていうのに」

提督「それじゃあおばさんを見かけたらそう言っておくわ」

マスター「ああ、もし見かけたら「ロバみたいにちんたらしてるな」って伝えておいてくれ……それじゃあ、どうぞごゆっくり♪」

…年の瀬の冷たいがすっきりした風に髪をなぶらせながら甘く濃いコーヒーとカンノーリを楽しんでいると、知り合いと言うほどでもないが顔を知っている地元の女の子が近寄ってきた……その女の子は夏期休暇の時にもちらっと見かけたが、その時に比べると半年あまりでずいぶん成長しているように見える…

女の子「……チャオ、お姉さん」

提督「チャオ、クリスマスおめでとう。どうかした?」

女の子「ええ、ちょっと相談したいことがあって……ここ、座ってもいい?」

提督「どうぞ」

女の子「ありがと」

提督「良かったら一ついかが?」菓子皿のカンノーリをすすめる……

女の子「ありがと、いただくわ」

提督「……それで、私に相談事ってなにかしら?」女の子が話しやすくなるよう頬杖をつき、姿勢を下げて目線を合わせる……

女の子「うん……あのね、お姉さんがカスティリオーネのお姉さんと婚約しているって聞いたから相談したいんだけど……」

提督「けほっ……!」思わずカンノーリのかけらでむせた……

女の子「違うの? うちのお母さんがそう言ってたから……」

提督「そう、ね……婚約とまではいかないけれど、幼馴染みの仲良しではあると思うわ……それで?」

女の子「……あのね、女の人どうしで好きになるってどういうことか教えて欲しくて///」

提督「誰か気になる人がいるのね?」

女の子「うん///」

提督「なるほど……その子とは仲が良いの?」

女の子「と、思う……この間、キスされたし///」

提督「ほっぺに?」

女の子「ううん……唇だった///」

提督「そう、なるほど……」ごくりとコーヒーを飲むと、カップを置いて視線を合わせた……

提督「キスされて気持ち良かったのなら……あるいは少なくとも嫌じゃないのなら「その子のことが好き」でいいと思うわ」

女の子「……お姉さんも気持ち良かった?」

提督「そうね。少なくとも今までずっとアンナと「仲良し」でいるくらいには……ね♪」そう言うと唇に指を当て「この事は他の人には秘密よ?」と共犯者めいたウィンクを投げた……

…帰宅後…

提督「ということがあって……」

クラウディア「あら、そんな大事なことを私たちに話しちゃっていいものかしら?」

提督「もちろん了承を得ているわ「私のお母さまとおばさまにも話してみていいかしら?」って。なんでもベルリーニさんの娘なんだって言っていたけれど、お母さまたちは知っている?」

シルヴィア「ああ、ベルリーニのね……なるほど」

クラウディア「あぁ、あの子ね……ええ、顔は知っているわ」

提督「まるで知らない訳じゃないみたいだけれど、何かあったの? 私とアンナのことも多少知っているようだったし……いくら小さな町だからって、私との関係を知っている人間はそういないと思うのだけれど……」

シルヴィア「確かに」

提督「それじゃあどういうわけで、いままで話したこともないような女の子までが私のことを知っているの? 別に隠し立てするようなことじゃないとは言え、アンナとの付き合いがゴシップ記事みたいな扱いになるのは嫌だわ」

クラウディア「えーと、ね……そのことだけれど、多分アンナちゃんからだと思うわ」

提督「どういうこと?」

シルヴィア「ベルリーニの家はカネッリのお隣でおかみさん同士はよくおしゃべりしているけれど、そのカネッリのおかみさんがカスティリオーネ家の家政婦として雇われているからね……おおかたアンナの両親がしゃべっているのを小耳に挟んだんでしょう」

クラウディア「あるいはフランカが煮え切らないものだから、アンナちゃんが広めて回っているのかもしれないわよ?」

提督「アンナに限ってそれはないわね。色々と欠点はあるけれど、二人の思い出をよその人にしゃべって回るような事はしないわ」

シルヴィア「信頼しているのね」

提督「ええ。許嫁どうこうはさておき、一番の幼馴染みであることは揺らがないわ」

クラウディア「もう、フランカったら……そこまで信頼しているならアンナちゃんと結婚すればいいじゃない。向こうもやきもきしているし、私だって二人のためにウェディングドレスを仕立ててあげたいんだから♪」

提督「勘弁してほしいわ……アンナと一緒にいたら一日中ずっと引きずり回されて、休む暇もなくなっちゃう」苦笑いをしながら肩をすくめた……

シルヴィア「ま、帰省のたびに結婚だの縁談だのの話をするなんていうのは年寄りの田舎者がすることだし、もうやめにするわ」

提督「そうしてくれると助かるわ。あんまりその話題ばかりだと、せっかくの夕食が喉を通らなくなっちゃうもの」

クラウディア「そうね、せっかく作ったご馳走なんだもの。残さず食べてもらいたいわ?」

シルヴィア「残して年越しの時に食べたっていいじゃない」

クラウディア「年越しの時はまたご馳走を作るもの、残り物で済ませたりはしないわよ」

シルヴィア「フランカ、これは服がきつくなる心配をしておいた方が良さそうね」

提督「同感」

…夕食後…

シルヴィア「ふー、案の定だったわね……お腹がはち切れそう」

提督「同じく……」

クラウディア「いっぱい食べてくれて嬉しいわ♪ ドルチェはもう少し後にしましょうね」

シルヴィア「それがいいわ……それにしても、あと二日もしないうちに新年ね」

提督「そうね、何だかんだで今年もいい年だったわ」

クラウディア「私はシルヴィアと結婚してから毎年ずうっと良い年を過ごしているわ♪」

シルヴィア「私もよ」

提督「ふふ、このやり取りも例年通りね♪」

シルヴィア「言わなくても伝わるけれど、言った方がもっと伝わるもの」

クラウディア「そういうこと♪」

提督「ふふ、お母さまたちらしいわ♪」

シルヴィア「そうね」

クラウディア「ええ♪」テーブル越しにお互いの指を絡め合って、見つめ合う二人……

提督「私は邪魔になりそうだから、しばらくお暇させてもらうわ……ドルチェを出す時になったら教えてね?」

クラウディア「ええ、そうするわ……♪」

…大晦日…

シルヴィア「……何か手伝いましょうか?」

クラウディア「ノン・ファ・ニエンテ(いいのよ)、座っていて? 笑顔で私の料理を「美味しい」って食べてくれればそれで十分♪」

提督「お母さまの料理が美味しくなかった事なんてないわ」

クラウディア「まぁ、嬉しい♪ フランカの分は多めにしておいてあげるわね♪」

…エプロン姿で楽しげに台所を行き来するクラウディア……庭はすっかり冬枯れの様子で、数本の常緑樹が緑を残している以外はすっかり黄色っぽい土と枯れ草ばかりだが、暖炉で踊る火も楽しげなカンピオーニ家の食卓は色とりどりの野菜を使った前菜や、一月六日の「公現祭」まで飾られているクリスマスツリーの飾りで華やかに彩られている…

シルヴィア「それじゃあその間にワインでも取ってこようかしらね」

提督「私が行きましょうか?」

シルヴィア「フランカはいいのよ。その代わりにクラウディアが手伝って欲しいって言ったらよろしくね」

提督「ええ」

…そう言い置いて立ち上がり、家の奥にある小さな貯蔵室にしまってあるワインを取りに行ったシルヴィア……普段はあまり化粧っ気がないが、今日は指の結婚指輪に加えて、クラウディアとお揃いのネックレスを首にかけている…

クラウディア「さぁ、出来たわ……シルヴィアは?」

提督「ワインを取りに行ったわ」

クラウディア「それじゃあ戻るまで待ちましょう」

シルヴィア「待たなくてもいいわ……♪」ワインの瓶を片手に後ろから忍び寄るよると、首筋にキスをした……

クラウディア「あん……っ///」

シルヴィア「それじゃあ乾杯しましょう」白地に文字だけがあしらわれた地味なラベルのワインを机に置くと、コルクを抜いて染みこんだ香りを確かめ、それからグラスに注ぐ……

クラウディア「今日のワインは?」

シルヴィア「せっかくの年越しだから、記念のワインから一本開けたわ」

提督「いいの、おばさま?」

シルヴィア「ええ。お互い百歳まで生きても良いように、新婚の時にいいワインをあれこれ買いだめしたから……もし私とクラウディアで飲みきれなかったらフランカが相続してちょうだい。その頃にはヴィンテージものになっているでしょうし、お金に換えたって良いわ」そう言って提督に見せたラベルにはクラウディアとシルヴィアが結婚した年が書かれている……

クラウディア「もう、せっかくの年の瀬なのにムードがないんだから」

シルヴィア「悪かったわ……さ、機嫌を直して乾杯しましょう」

クラウディア「ええ♪」

シルヴィア「それじゃあ、来年も良い年になりますように……愛しているわ、クラウディア」

クラウディア「私もよ……ずっと貴女が好き♪」

提督「これからも末永くお幸せに」

クラウディア「ええ、ありがとう♪」

シルヴィア「フランカもね……乾杯♪」

提督「ええ」クルミや樫の樽のような風味を持った濃い赤ワインは食前酒にするには少し風味が強いが、じっくりと味わうにふさわしい良いワインだった……

クラウディア「さ、お料理が冷めちゃうわ……よそってあげるから、どうぞ召し上がれ♪」

…クリスマスと違って年越しにそこまでの重きを置かないイタリアとはいえ、やはりカレンダーが改まるというのは祝う価値がある……クラウディアもクリスマス料理と違って、肩の凝らない……しかしカンピオーニ家の味として受け継いできた料理をぎっしりと並べている…

提督「相変わらず美味しい……それにしてもここ数日ご馳走ずくめなのに、お母さまってばよく献立が続くわね」

クラウディア「ふふっ、私だって勉強しているのよ? 我が家に代々続く秘伝のレシピだけじゃなくて、旅先で食べた美味しい料理を再現してみたり」

シルヴィア「おかげで体重が増えること増えること……」

クラウディア「あら、それじゃあ決まり切った献立にしましょうか?」

シルヴィア「それは勘弁ね……もっとも、クラウディアがいるなら固くなったパンと水だけでもいいわ」

クラウディア「もう、シルヴィアったらお上手なんだから……ひゃんっ///」

提督「この調子なら新年も相変わらずの一年になりそうね」

シルヴィア「それでいいのよ……さ、新年に乾杯」

クラウディア「ええ、乾杯♪」

提督「乾杯♪」

…新年・朝…

提督「新年おめでとう、お母さま、おばさま♪」

クラウディア「ええ、新年おめでとう♪」

シルヴィア「新年おめでとう……フランカも一杯いかが?」

提督「おばさまったら、朝からスプマンテ?」

シルヴィア「せっかくの新年だもの、いつもとは違うことをしようと思ってね」

クラウディア「シルヴィアったら朝からお風呂に入って、スプマンテを開けてごきげんなの…///」そう言って手のひらを上に向けているクラウディアの首筋には吸い付かれたような桃色の痕が残っている……

提督「いつも通りなのはお母さまとえっちしたことくらいね」

シルヴィア「まぁね……朝日を浴びながらクラウディアを抱くのは格別だったわ」

クラウディア「もう、シルヴィアったら……♪」

提督「新年早々ごちそうさま……お母さまたちがこの調子じゃあ、私も一杯もらわないとやっていられそうにないわ」グラスを出して飲み口の良いスプマンテ「モスカート・ダスティ」を注ぐ……

シルヴィア「こうやって朝日に透かすと綺麗でしょう?」

提督「そうね。明けの海原に潮風、森のざわめきに金色に抜けるような朝焼け、グラスにはひんやりしたモスカート・ダスティ……ぜいたくの極みね」

クラウディア「それから私たちのキスも付けてあげる♪」ちゅっ♪

シルヴィア「私たちの可愛いフランカに……♪」ちゅ……♪

提督「それじゃあ私からも……♪」ちゅ……っ♪

クラウディア「ふふ、ありがとう……フランカもアンナちゃんといずれこういうやり取りをするようになるのね♪」

提督「ちょっと、お母さま……!」

クラウディア「あら、でも年の瀬にアンナちゃんのお家へ出かけたときはまんざらでもなさそうだったわよ?」

提督「べ、別にそこまでじゃないわ……アンナとは幼馴染みだけれど、いつも私の事を振り回すし……///」そう言いながらも、アンナと過ごした年末を思い出して頬を赤らめた……

…数日前…

提督「……チャオ、アンナ」

アンナ「おはよう、フランカ……さ、乗って♪」銀色のマセラッティ3500GTでカンピオーニ家の門の前までやってきたアンナ……その目はサングラスで隠れているが、濃いさくらんぼ色のルージュを引いた唇は口角があがっていて、少しえくぼも出来ている……

提督「ええ」

…提督はクリーム色のメルトンのコートに、長身に映えるヴィヴィッドな色合いのローズピンクのリブ編みセーター、キャラメル色のフレアスカートに黒のストッキング、頭には少しフェミニンな要素を狙いすぎた感があるように思えたが、白ウサギのようにふわふわしたバスコ(ベレー帽)をかぶり、黒革のニーハイブーツで足元を固め、手にはハンドバッグを持っている……軽く吹いてきた「サンタ・マリア・ノヴェッラ」の甘く華やかなバラの香水は、提督の気に入っている香りで、身じろぎするたびにふっとかすかに立ちのぼる…

アンナ「フランカったら良く似合ってるわ、私のためにお洒落してくれたのね?」

提督「えぇ、まぁ……そういうアンナだってとっても綺麗よ♪」

アンナ「そりゃあせっかく許嫁と過ごせるんだもの、ぼろを着てくるわけには行かないわ……ん♪」

…そう言って両手で提督の頬を挟みこむと、身体を寄せて唇を重ねるアンナ……熱っぽいキスにふさわしいプラダの香水が鼻腔を満たし、甘いバニラとムスクの香りで頭がくらくらするような気がした…

提督「ち、ちょっと……うちの門の前でなんて、いくらなんでもせっかちすぎるわ……///」

アンナ「このくらい挨拶みたいなものよ……だいたいろくに会う機会も作らないで私の事を焦らしているのは貴女なんだから……んふっ、んぅ……っ♪」

提督「んぅぅ、ん……♪」

アンナ「ぷは……はぁ、はぁ……はぁ……っ///」自分から唇を重ねておきながら、提督にキスを返されただけで肩で息をしている……

提督「こういうのも久しぶりね……アンナ♪」

アンナ「え、ええ……言っておくけれど、今日はずうっと私のわがままに付き合ってもらうわよ?」

提督「……はたして身が持つかしら?」

アンナ「そんなことを言って、情けないわね」

提督「ふふっ♪ 私が、じゃなくて……貴女が、よ?」ちゅ……っ♪

アンナ「んっ……もう、いいから車を出すわよ/// 早くしないと一日が終わっちゃう」照れ隠しのようにアクセルを踏み込み、土ぼこりを後ろに引きながらマセラッティを加速させた……

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2018年01月13日 (土) 12:17:04   ID: PCQnzDHg

海将補は准将じゃなくて少将なんだけどな

2 :  SS好きの774さん   2018年11月19日 (月) 19:17:20   ID: SbY-jdsM

読む気無くすようなグダグダ長文

3 :  SS好きの774さん   2021年05月29日 (土) 01:03:50   ID: S:5WbkvS

艦これの百合好きにロクな奴がいない

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