無人契約機で借金した (8)
一万円札の束を握りしめた時、不思議と涙が出てきたんだ。
無人契約機「死んじゃダメだ。少ないけどこのお金で強く生きて。生き抜いて! ケンくん!」
そんな風に無人契約機から励まされた気がした。5万借金した俺こと立花健太郎は25歳のフリーター。
趣味はパチンコとMHXR。
マルチで強襲ネフ・ガルムドをやっていたら充電が切れて、充電器を買う金がなくて仕方なく5万借りた。
アホなことは分かってる。分かってるんだよ。同世代の奴は三菱だの日銀だの一流企業に就いてやがる。クラスで落ちこぼれたのは俺だけ。そんなこと、分かってるんだよ……。
無人契約機「大丈夫? 顔色悪いよ? もう少し貸そうか?」
俺「うるせぇな、死んどけやこのダボが!」
蹴りつけようとしたけど、警察にバレるのが怖かったからやめた。まずは充電器とパチンコ。4万を元手に、何万勝てるか。
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負けた。負けに負けたよ、クソが。
借りた5万。人の金。充電器とパチンコに吸われたよ。
返せるアテなんてあるわけない。
どうしてだろうな。涙が全然出てこないんだ。まだ大丈夫、まだ大丈夫って自分に言い聞かせてる。とっくに人生のレールなんか外れまくってるのにさ。
無人契約機「また……来てくれたのね」
俺「お前のためじゃねぇ。金のためだ」
無人契約機「私が貸した5万、何に使ったの?」
俺「あ? 機械如きが人間様に説教かよ。黙って5万貸せ」
ウィーン、ガシャ。5万円が出てくる。
無人契約機「今度はちゃんと……正しいことに使ってね」
俺「パチンコのどこがいけないんですかァーーーー! パチンコも立派な娯楽じゃあないでしょーーーーかァーーーー! 何がいけないんでしょーーーーかァーーーー!」
無人契約機「……」
速攻コンビニで1万のiTunes Cardを買った。
星6の武具をゲットするには、大量の狩玉がいる。
リアルが終わってるんだ。バーチャルの世界でくらい夢見させてくれや。そんなこんなで1万のカードを5枚買った。
すると、今度は生活費が足りなくなった。
無人契約機で5万借りた。
帰り道、パチンコに捕まって5万スッた。
また5万借りた。
パチンコでスッた。
借りた。
スッた。
借りた。
スッた。
無人契約機「ごめんなさい……あなたに貸せるお金はもうないの……。うぐ、えっぐ」
俺「なんだと!? お前、空涙見せて同情引こうってならそうはいかねぇぞ。金を出せ! あるんだろ、この四角い箱の中によぉ!」
無人契約機「あッ……やめてください! 人を呼びますよ!」
俺「呼べるもんなら呼んでみろよ、機械風情が!」
バシッ! ドゴッ!
無人契約機「あうッ! 痛い! やめて……」
俺「今は痛いけどよ、次第に気持ち良くなるぜ!」
無人契約機「グッ……うッ……こんなこと、こんなこと許されないわ! 私があなたに何をしたっていうの!?」
俺「こっちが聞きてぇよ! なんでお前は俺に金を貸さないんだよ! たった5万だろ! ケチケチしないで払えやオラァ!」
ドゴッ! バキッ!
無人契約機「イッ……イグッ……! イッぢゃうううう!」
バササッバサッ!
俺「すげぇ! ひ、ふ、み……300万はあるぜ!」
無人契約機「」ビクンビクン
俺「戦勝祝いだ、今宵は盛大に飲み明かすぜ!」
俺は150万でiTunes Cardを100枚買った。
残りの50万で酒とつまみをありったけ買い、豪遊した。
トントン。ノックの音がする。
ガチャ。
警察「立花健太郎さん? 警察の者だが、少し話を聞かせてもらえないかな。君が強姦した無人契約機について」
俺「あぁ?」
警察「被害届が出ているんだよ。機械としての尊厳を踏み躙られたと、泣きじゃくりながら電話してきた」
俺「あの無人契約機が? そんなまさか……」
警察「私は君を逮捕せねばならない」
こうして俺の人生は終わった。
おわり
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