【二次創作】本当は怖いコミケ童話 (7)
【二次創作】本当は怖いコミケ童話
Twitterで話題になった、おのでらさんのコミケ童話の二次創作です。
毒気味ですので閲覧注意でお願いします。
コミケ童話全集は最高ですので、未読の方は是非ご一読を。単行本出てます。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1514144102
【小説書きの炎上少女】
むかしむかし、雪の降りしきる冬コミの日。
みすぼらしいコスプレを着た小説同人書きの少女が、寒さにふるえながら一生懸命島の前を通る人によびかけていました。
「同人誌は、いかが。同人誌は、いかがですか。誰か、せめて手に取って見てってください」
でも、誰も立ち止まってくれません。みんな大概エロスな漫画同人誌を買いに来ているので、
小説オンリーの小説書きの同人誌は全く売れないのです。
「お願い、一冊でもいいんです。誰か、同人誌を買ってください」
今日のイベントではまだ、一冊も売れていません。
寒い冬コミを一人で参加している内に、心も体も寒くなり、小説書きの少女の指の先はぶどう色に変わっていきました。
しばらくすると、どこからか完売御礼の声がしてきました。
「ああ、凄い盛り上がり。あの人達は打ち上げで焼肉に行ったりするんだろうなぁ・・・お腹がすいたなあ・・・」
でも少女は、帰ろうとしません。
同人誌が一冊も売れないまま家に帰っても、家族にはバカにされるし、置く場所は無いし、何より泣いてしまいそうになるからです。
それどころか、
「もうそんな趣味辞めたら??」
と、ひどく醒めた目で馬鹿にされるのです。
少女は、せめて一冊売るまでは、帰りたくても帰れない状況に陥っていました。
とは言え、コミケも何時までもやっていません。
少女が一冊も売れないまま、閉会のアナウンスが流れてしまいました。
少女は売れ残りを家に送るお金も無いので、大量の在庫をカートに乗せ、重さを引き摺る様に家路につきました。
情けなさに涙が止まりません。
その涙の跡に年の瀬の冷たい風が吹き付け、じんじんと凍えそうです。
「そうだわ、同人誌を燃やしてて暖まろう、どうせ持って帰ってもバカにされるだけだし…」
少女はそう言って、人目の付かない公園の奥に行くと、一本のマッチを燃やして同人誌にすりつけました。
シュッ。
燃えていく同人誌の火は、その寒いストーリとは対照的にとても暖かでした。
少女はいつの間にか、勢いよく回る暖房の効いた自室ににすわっているような気さえしてきました。
「なんて、暖かいんだろう。・・・ああ、いい気持ち」
少女が手脚をのばして寛ごうとしたとたん、同人誌の火は消えて、暖かさもかき消すようになくなってしまいました。
少女はまた、同人誌を燃やしてみました。
あたりは、その同人誌の昏い内容とは正反対にぱあーっと明るくなり、
光が辺りをてらすと、またもやまるで部屋の中にいるような気持ちになりました。
そして、なんと部屋の中の机には、一人のめっちゃ好みのイケメンが座っていました。
不思議な事にイケメンは、素晴らしいスピードと腕前で、少女の小説に挿絵を描いてくれているのです。
「うわっ、上手ッ!!しかも私の好みドストライクなんですけど!!」
少女が感嘆の叫び声を挙げたその時、すうっと同人誌の火が消え、
イケメンも部屋も、挿絵の原稿もあっという間になくなってしまいました。
少女はがっかりして、自棄になりもう一度同人誌の在庫を大量に燃やし始めました。
すると、どうでしょう。
光の中に、ビッグサイトが浮かびあがっていました。
ビッグサイトには数え切れないくらい、たくさんの人が同人誌を買っています。
思わず少女が近づくと、さっきのイケメンが、
「何をしてるんだい? 待ってたんだよ、さぁ」
と、少女の腕を取り、シャッター前のスペースに連れて行きました。
そこには自分の大好きなカップリングのコスプレをしたイケメンとショタの売り子が、スペースの後ろに山と
積まれた少女の書いた小説本を、大行列の参加者に次々と販売しているのが見えました。
ぱあーっとあたりが明るくなり、その光の中でみんなが少女にがほほえんでいました。
「ああ、なんて幸せなんだろう。私が見たかった、私がやりたかった同人活動が今、此処に有るんだ……」
少女はそうブツブツ呟きながら、残っていた同人誌を一冊、また一冊と、どんどん燃やし続けました。
そうしていると、夢にまで見た自作完売の声が上がり、感極まった少女は涙を流し、イケメン達は、
そんな少女をそっとやさしく抱きあげてくれました。
「わあーっ…、みんなの体、とっても暖かいナリィ……」
やがて少女のサークルは光に包まれて、煙と共に空高くのぼっていきました。
そして新年の朝、少女はほほえみながら凍死寸前で公園で寝転んでいる所を発見されて叩き起こされました。
なんと、少女が無計画に燃やした同人誌が公園の木々に燃え移り、大火事になっていたのです。
風向きが良かったのと、寝転んでいたので煙を吸わなかったことが幸いして、少女は命こそ助かりましたが、
正月早々、警察、消防、学校、家族にぺしゃんこになるまで怒られて、同人活動を厳禁されてしまいました。
それどころかどこから手に入れたのか、一冊も売れてない筈の同人誌の中身までネットで晒され、
祭りとしてネットの方も炎上してしまいました。
少女の顔がマッチの炎の様に真っ赤になったのは言うまでもありません。
少女はそれ以来、もう二度と同人活動に手を染める事は無かったそうです。
おしまい
【みにくい男の娘】
むかしむかし、あるところに、巨大な同人誌即売会の隣の会場でコスプレイベントがやっていました。
そのコスイベで、一人の男子コスプレイヤーが、
戦国時代の武将をモチーフにしたアクションゲームのキャラのコスプレ合わせに参加をしていました。。
参加者の男子はみな堂々とした身体で、とてもキャラに合っていて、周りの女子コスプレイヤーからもキャーキャー言われて、
写真撮影も囲みになっています。
ですが、その合わせの中で、その男子コスプレイヤーだけ、なかなか声が掛けられません。
しばらくたって、やっと声を掛けられたのは、合わせのメンバーからの、
「邪魔だからだどっかに行ってくれ」の一言でした。
そうです。
男子コスプレイヤーはヒョロヒョロのガリガリで、どんな男性コスプレをしても似合わず、
どこのコスプレ合わせへ行ってもいじめられ、のけ者にされ、かげ口をたたかれていたのです。
それを何度も繰り返されたみにくいヒョロガリ男子コスプレイヤーは、流石にいたたまれなくなって、
みんなの前から逃げ出して、家に引きこもってしまいました。
ヒョロガリコスプレイヤーは日のあたらない部屋に籠り、ネットだけを生きがいにして生活し、
眠り、起きればまたネットに、と、現実から逃げ続けました。
そして季節はいつの間にか、夏コミになりました。
そんなある日、ヒョロガリコスプレイヤーは夏コミににも行かず、家でネットをしていると、
これまで見たこともないような、美しいものを目にしました。
それは、あるまとめサイトに掲載された、有名女子コスプレイヤーの艦これコスプレでした。
長くしなやかな脚をのばし、まぶしいばかりの白い衣装を着て、クオリティの高い艤装を装着しています。
ヒョロガリコスプレイヤーははあっけにとられて、その美しいコスプレイヤーがポーズを取っているのを
食い入る様に見ていました。
「こんな素敵なコスプレイヤーになれたら、どんなにか幸せだろう??
いや、普通のコスプレイヤー仲間にさえ入れないくせに、そんな事を考えてどうするんだ」
そしてヒョロガリコスプレイヤーはなおも引きこもります。
やがて冬が来て、冬コミの季節がやってきました。
ヒョロガリコスプレイヤーはまだ引きこもってましたが、憧れの女子コスプレイヤーが
新作のコスプレ集を出すと聞き、居ても立っても居られなくなり、冬コミへと出かけていきました。
やがて、列の順番が来てコスプレ集を購入する番になりました。
女子コスプレイヤーは気さくに話しかけてくれ、どこで自分に興味を持ったか、などを聞いてきてくれました。
しばらく人と話してなかったヒョロガリコスプレイヤーは思わず饒舌になり、自分の過去について掻い摘んで語り、
そのきっかけで女子コスプレイヤーに憧れた事を語りました。
黙って話を聞いていた女子コスプレイヤーはヒョロガリコスプレイヤーの事をジロジロとみるなり、
一つの袋を手渡し、着て来るように命じました。
着てくれないともう一生ウチに近寄っちゃダメ、と言い残して。
困惑して男子更衣室に移動したヒョロガリコスプレイヤーは中身を見て驚愕しました。
なんと中身は露出度が激しいことで有名な艦娘、島風のコスプレ衣装とウィッグだったのです。
キモオタ男子のヒョロガリコスプレイヤーがこんな物を着て会場を歩いたら、
幾らコミケ会場でもツイッターなどに曝されることは間違いありません。
ヒョロガリコスプレイヤーは目の前が真っ暗になりました。
しかし、せっかく女子コスプレイヤーのコスプレ集という希望を見つけ、それを諦めきれないヒョロガリコスプレイヤーは、
しぶしぶその衣装を身につけて、指定通りに女子コスプレイヤーが待つコスプレ広場へと駆けて行きました。
その姿を振り返る人が多いのは気のせいでは無いでしょう。
(嗚呼・・・、ボクは今、よっぽどみっともない恰好をしているのだ……)
恥ずかしくて消えてしまいたくなりながら、ヒョロガリコスプレイヤーは、コスプレ広場へとたどり着きました。
そして、女子コスプレイヤーを探していたその時、コスプレ広場にいたコスプレイヤーたちが、
いっせいに近づいてきたのです。
「ああ、みにくいぼくを、追い出しにきたんだ。……ぼくは社会的に殺されるんだ・・・」
「・・・でも、かまわない。
みんなからひどい目にあうより、あの美しいコスプレイヤーさん達に言われた方が、いくらかましだかしれない」
そう思ったヒョロガリコスプレイヤーは覚悟を決めて、集団の方に歩いていきました。
しかしそうではありませんでした。
女子コスプレイヤーたちはヒョロガリコスプレイヤーの周りに集まると、やさしく頭をで撫でてくれたのです。
そして艦娘コスプレの一人が、言いました。
「はじめまして、かわいい新人さん」
「えっ? 新人さん? かわいい? ぼくが?」
ビックリしたヒョロガリコスプレイヤーは、ふと女子コスプレイヤーが手にした鏡を見ると、
そこにうつっていたのは、もうキモいヒョロガリ男子ではありません。
まっ白に光りかがやく際どい衣装を身につけた、美しい島風君だったのです。
長年引きこもってる間に、女の子の衣装が着れるほど痩せ、日に当たらない生活は女子が羨むほどの肌の白さを
手に入れていたのです。
「今日は島風が、一番可愛いな」「ああ、チンコに来るよな」
島風が男と知ってか知らずか、周りのカメコの反応も最高潮です。
(ああ…ボクが褒めたたえられてる……、褒められるって…、写真を取られるって…何て気持ちいいんだろう!!)
こうして女装コスプレに目覚めてしまった元ヒョロガリコスプレイヤーは、
その後も際どい衣装を着て、メス顔を晒し続ける事になるのですが、本人はとてもとても幸せそうでしたとさ。
おしまい
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