エレン「支配」 (25)

第104期訓練兵団解散式の一週間前

アルミン「あと一週間で解散式なのに、こんな大々的に訓練兵を集めるなんて、一体なんだろうね」

エレン「・・・さぁな。俺にはお前の名前をバカみたいな名前と称するスキンヘッドの教官の考えはわからない」

アルミン「あはは・・・それよりミカサは?」

エレン「・・・」

エレン「そう言えばいないな。あいつなら真っ先に駆けつけて来るのに」

アルミン「・・・・・・エレン?なぜ君は今、笑ってるの・・・?」

エレン「あ?笑ってなんか

キース「注目!!!!」

アルミン「教官だ」

エレン「・・・」

キース「来週貴様ら訓練兵は三つの兵団に別れる事になる。しかし、それを果たすことのできない者が一名いる。

この言葉の意味を理解できる者が何名いるかわからないが、よく聞け」

アルミン「(ミカサがいない事と関係があるのかな)」

エレン「・・・」

キース「今朝、ミカサ・アッカーマンの死体が馬小屋で発見された」

どよめく訓練所、僕はこの場にいないミカサとキース教官の言葉の意味が未だに合致しない。

ジャン「うそ・・・・・・だろ?」

ライナー「ミカ・・・・・・サが?」

エレン「・・・今、あのおっさん何つった?」

キース「静まれ!!!!貴様らが騒ぐのもわかる。だから今日は寮へ戻り、頭の整理を設け、二日後に、事件の詳細を発表する。

それと、現段階で判明している成績上位十名と、アルミン・アルレルトはこの場に残れ」

口々に心中を吐露しながら寮へ戻って行く訓練兵

エレン「・・・ぁ・・・ミカ・・・サ」ポロポロ

僕は隣にいるエレンの涙を見て、心にかかる霧が濃くなるのを直に感じる。




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教官室に集まったミカサを除く成績上位九名と僕はキース教官の後ろ姿を見て、その大きすぎる背中を目の当たりにする。

サシャ「なぜ、私は涙が流れないのでしょう?私は・・・仲間が死んでも涙を流せない程に

コニー「黙れ。お前だけじゃねえよ。巨人に喰われたのを見たわけでもねぇし、よりによってあのミカサだ。死んだなんて、未だに思えねぇよ」

サシャ「ジャンは、あんなに泣いているのに」

ジャン「なんだって・・・巨人以前に人が殺されてんだよ!!」グスッエッグ

アニ「・・・・・・」

ベルトルト「・・・まさかね」

ライナー「・・・あぁ」

マルコ「・・・おそらく、教官はミカサが殺されたと見ているんだろうね。それで

ジャン「なんでお前はそんなに冷静なんだよ!!!ミカサが死んだんだぞ!!!」

マルコ「ここで冷静にならなきゃ誰が冷静になるんだよ!!!君だけが悲しいわけじゃないんだぞ!!!」

ジャン「ぁ・・・・・・」

エレン「・・・・・・こんな時まで突っかかってくんなよ」

その時ジャンが見たエレンの姿は、くしゃくしゃな髪の毛に虚ろな目、そして、何か心の奥に感情を秘めた物を感じたと言う。

コニー「でも、なんで成績上位十名とアルミンが呼ばれてんだ?」

エレン「九名だろ・・・・・・多分、教官は訓練兵の中に犯人がいると睨んでる。でも、あのミカサだ。ミカサを[ピーーー]なんて出来っこない。

でも、俺ら成績上位なら、不意打ちでもすれば可能性はある。あー、言いたい事がまとまんねぇ、アルミン」

アルミン「エレンの言いたい事はこう言う事だろう?訓練兵の中で最もミカサを殺せる可能性の高い、ミカサに近いとでも言うべきかな。

それが君達九人だ。

僕が呼ばれた理由は、そうだな。自分で言うのは何だけど、座学一位の僕は犯人を捜す、と言うことかな?」

エレン「何れにせよ、訓練兵の中から容疑者を絞る前に、比較的交流のある成績上位の人から話を聞くのも悪いことじゃない。一石二鳥ってやつだ」

コニー「・・・エレンって頭良かったっけ?」ガチャ

扉が開くと、そこにはキース教官と憲兵2名に調査兵団のハンジ・ゾエ分隊長がいた。

アルミン「失礼ですが、そちらにいらっしゃるのはハンジ分隊長ですよね?なぜ調査兵団の方が此処へ?」

ハンジ「あぁ、私、頭良いからね。たまに内地で起こる殺人事件とか手伝ったりしてるんだ。アルミン・アルレルト訓練兵、話は聞いてるよ?君の考えを聞かせてもらいたい」

アルミン「・・・今の段階で、ですか?」

ハンジ「今の段階で、少ない情報で、だよ」

アルミン「・・・わかりました。まず、昨日の時点で、ミカサとは、寝る前まで話をしていました。

ミカサの死体が発見されたのは、今朝と言っていましたね。

つまり、僕の知る限りで死亡時刻は、就寝前の午後10時から今朝、今朝を指すのは、教官が訓練兵を集める前、と言うことになりますから、午前8時以前、つまり、死亡時刻は午後10時から午前8時の間になります。

ここに、最後にミカサを確認したであろうミカサと同じ部屋の女子が確認した時刻から午前8時までがミカサの死亡時刻となり・・・・・・ま・・・す」ポロポロ

ハンジ「・・・辛かったね、ありがとう。今、アルミンが言った通り、私は殺人事件だと睨んでる。

そして、犯人はこの中にいると言うことも。

まず、凶器だけど、ミカサの頭部に鋭利な刃物でえぐられた跡が二箇所」

ジャン「ぅっ・・・ぐ」オエッ

エレン「・・・」

エレンの握られた拳からは血が数的垂れていた。部屋にはエレンの奥歯が砕かれる音が響く。

ハンジ「それに、腹部には同じ刃物と思われる刺し傷が15箇所見られた。これはもう、憎悪に近いものを感じる」

ライナー「許せねぇ」

アニ「・・・」

ハンジ「まぁ、凶器はブレードだよ。その傷跡に、一切躊躇がない。これは、快楽殺人者かミカサに相当恨みがあるようだね」

コニー「ミカサは、無口で無愛想だけど、人に恨みを買うようなやつじゃないってのは、俺たちが一番知ってます」


殺す。

本当だ。ありがとうございます

憲兵「失礼します」コンコン

ハンジ「来たか」

憲兵「」ゴニョゴニョ

新たに入って来た憲兵がハンジさんに耳元で何かを伝えている。

ハンジ「今、ミカサの死亡時刻が判明した。死亡時刻は、血液の固まり具合と傷跡から見て、午前1時58分だそうだ。

今から、個人で事情聴取を行う。アルミン以外は部屋へ戻っていてくれ。ではまず、ミカサと親しいエレン、君からだ」

取調室

アルミン「エレン、遅いですね」

ハンジ「そうだね」

アルミン「・・・」

アルミン「分隊長は、なぜ僕を疑わないのでしょう?ミカサとは超大型巨人が出現する前から交流があります。だから疑わないのでしたら、エレンを容疑者に入れるのはおかしい」

ハンジ「身体能力的に無理でしょ。ミカサには刺し傷しかなかった。君はあんなにわかりやすい殺し方はしないだろ?」

アルミン「・・・ですが

エレン「失礼します」ガチャ

ハンジ「よく来たね。それでは事情聴取を始める。・・・アルミン、話はまた後で」

アルミン「・・・はい」

ハンジ「エレン、まず君には犯行時刻、つまり、午前2時ごろ、君は何をしていたかな?」

エレン「・・・夜中目が覚め、喉が渇いていたので水を飲もうと食堂へ行き、確認したのが一時でした。それから、目が冴えてしまったので、自主練をしていました。寝たのは午前3時程度だったかと」

ハンジ「それを証明する物、もしくは人物は?」

エレン「午前1時33分、時計を見てすぐに自主練をしていたであろうライナーとすれ違いましたが、犯行時刻でのアリバイはありません」

ハンジ「食堂は寮から少し離れてるもんね。目が冴えるのもわかるよ。今年は調査兵団志願者が多いからね。自主練かぁ。真面目だね」

アルミン「(エレンの演説が効いたからなぁ)」

ハンジ「まぁ、君は最初からあまり疑ってはいないけどね。ありがとう。次ライナーを読んで来てくれるかな?」

エレン「わかりました」

ライナー「失礼します」ガチャ

ハンジ「入っていいよー」

ハンジ「では事情聴取を始めるよ」

ライナー「はい、俺は就寝時から四時間ほど自主練をしていました。その日は特に訓練が厳しかったようですが、俺は何文、怪我の療養期間だったもので、体が鈍ってしまうと思い、自主練していました」

ハンジ「誰かとすれ違ったのかはないかな?」

ライナー「はい、確か一時すぎだったか、よく見ていませんでしたが、食堂でエレンとすれ違いました。少し立ち話をしましたが、一緒に訓練をしようとは思いませんでしたね」

ハンジ「つまり、就寝時の22時から4時間、犯行時刻に眠りについたと」

ライナー「はい」

ハンジ「それを証明するものは?」

ライナー「エレンとすれ違ったっきりは」

ハンジ「ありがとう。では次にベルトルトを読んで来てくれるかな?」

ライナー「わかりました」



ハンジ「食堂から馬小屋まで歩いて1時間、走って40分程度、ライナーは時刻を正確には覚えていなかったようだけど、エレンは時刻をしっかり確認していた。

つまり、必然的にエレンとライナーは馬小屋まで走っても犯行時刻に間に合わない」

アルミン「ええ。ですがーー

ベルトルト「失礼します」ガチャ

ハンジ「うん、じゃあ早速だけど事情聴取を始めるーー

それからハンジさんはベルトルトを始め、コニー、ジャン、マルコ、アニ、サシャ、クリスタに事情聴取を行うも、皆口々に~その日の訓練が厳しく~と並べ、寝ていたと証言した。

ハンジ「君も昨日は寝ていたのかい?アルミン」

アルミン「はい、僕は標準より体力が満たないので、今も筋肉痛です。昨日は休んでいました」

ハンジ「そうか・・・成績上位陣から目星を外すべきか・・・いや」

ハンジ「やっぱり成績上位者に絞るべきだろうね」

アルミン「・・・そうですね」

ハンジ「私はね、この事件を解散式までには解決したいと思う。協力してくれるね?」

アルミン「・・・はい」

ハンジ「・・・」

ハンジ「じゃあアルミンももう戻っていいよ」

アルミン「わかりました」



ハンジ「さーて。早速犯人を絞るかな」



翌日

アルミン「・・・・・・犯人は、エレンだと思います」

ハンジ「・・・そうか」

アルミン「はい。エレンは、日常からミカサには世話を焼かれていました。それは周りの人間から保護者と言われるまであります。

しかもミカサは強い。力があります。そう言われても仕方ないでしょう。ですが、それは見ていてあまり気持ちのいいものではありません。

エレンはかなり女子人気が高く、それに加えミカサの保護者のような行為は少々度が過ぎていると思われます」

ハンジ「と言うと?」

アルミン「それは、その、エレンの口にパンくずが付いていて、それを直接舐めとったり」

ハンジ「それは・・・見ていて不愉快かもしれないね」

アルミン「他にもエレンが話しかけた女子が怪我をする噂が広まり、それはミカサの仕業でした」

ハンジ「・・・・・・」

アルミン「しかしそれだと、距離を置くなどの対処をすればいい、ですが」

ハンジ「・・・続けて」

アルミン「僕は見てしまいました。ミカサの






アルミン「エレンへの異常なまでの、憎悪にも近い愛を」




アルミン「見たと言うより感じた、と言った方が正しいでしょうか」

アルミン「ある日、あれはひどかったですね」



ミカサ「エレン、口にパンくずが付いてる」ペロ

エレン「・・・いい加減にしろよお前」

ミカサ「エレン、スープを飲まなければ」クチモトヘモッテイク

エレン「・・・」ベチャ

ミカサ「ほら、食べないと」ベチャベチャ

エレン「・・・」ポタポタ

ミカサ「エレン、口を開けて」ベチャベチャ

エレン「・・・」ポタポタ

ミカサ「エレン、口を開けなきゃだめでしょ?」ベチャベチャ 

エレン「・・・」ポタポタ

ミカサ「エレン」ベチャベチャ

エレン「・・・」ポタポタ



アルミン「そして、ミカサはスープでびしょびしょのエレンと空のスープの皿を見てこう言ったんです」






ミカサ・アルミン「どう?美味しかった?」







アルミン「と」

ハンジ「・・・・・・」

アルミン「・・・意味、わかります?」

ハンジ「ホラーだね」

ハンジ「つまり、ミカサはエレンの事を自らの依存対象としか見ていない、と言う事だね」

アルミン「・・・はい。殺意を抱いてもおかしくないと」

ハンジ「あとはライナーだね」

アルミン「エレンのアリバイであるライナーとの接触、ですね」

ハンジ「それはライナーがエレンと共犯であれば問題ない」

アルミン「ライナーが共犯であれば、食堂で話していたと言うアリバイが崩れますからね」


アルミン「ライナーは、正義を体現した様な性格をしています。頼れる兄貴分の様な」

アルミン「だからこそ、エレンを放っておけなかったのでしょう」



その事をエレンとライナーに聞くと、あっさりと犯行を認めた。

ライナーによると、エレンが馬小屋へ向かうのを見つけ、跡をつけると、ミカサを一心不乱にブレードで指しているところを見たと言う。

ライナーはその光景にエレンを咎めるか協力するか葛藤し、ライナーはエレンに付いた。

エレンはライナーの事件関与を一向に認めなかったが、殺害についてはミカサを殺したのは自分だ、と言う供述をした。

アルミン「エレン・・・」

エレン「悪いなアルミン。でも俺は、一切ミカサを殺した事を後悔はしていないぞ!こんなに愉快な気分は巨人が来る前以来だ!」

アルミン「それでも、僕は君の親友だ。ちゃんと罪を償って、外の世界を見て回ろう。ミカサの分も」

エレン「・・・ミカサの分も世界を見る?なんだよそれ、それじゃまるで、この世界にミカサがいた方がいいみたいじゃないか!あんなやつこの世にいちゃいけないんだよ!あいつの性格はいずれ人類に影響を及ぼす!それだけあいつは強い!だから俺は、人の皮を被った化け物を駆逐したんだよアルミン!あいつは世界にいちゃいけない、巨人と同類のクズなんだよ!自己満足で依存するただのゴミだ!取り憑かれた身にもなれってんだよ!見たろ!あの時、俺にスープを飲ませようとする化け物の姿を!狂ってんだよあいつは!なぁ、アルミン!」

アルミン「それでも、どんな理由があっても、人を殺しちゃいけない」

エレン「だからあいつは人間じゃねえんだって!アルミン!」


僕は振り返らず、営倉を後にした。

ハンジ「しかし、エレンって座学の成績は悪いのによくこんな計画を考えたね」

アルミン「・・・エレンの“演説”で訓練兵を鼓舞し、自主練を促す、そして自主練が流行るようになりそこに厳しい訓練が行われるタイミングを図って、人がいない夜に犯行を決行する」

ハンジ「計画性だけで言えば完璧だね。証拠もない中、正直エレン達さえ認めなければ、営倉送りにする事すらなかっただろうに」

アルミン「エレンにとって、ミカサを[ピーーー]事自体が目的で、それ以外どうでもよかったんじゃないでしょうか。巨人すらも」

ハンジ「・・・そうだね」

こうして、事件は幕を閉じる。しかし、この事件で104期の訓練兵はエレンを咎めるものは少なかった。

この事件は町でも大々的に公表された。名前は明かされなかったものの、事件、動機まで明確に表示されていた。これは異例だった。

壁内での殺人で世間はどよめいたが、それも第五十七回壁外調査によってかき消されることになる。でも、僕はこの事件を一生忘れない。忘れちゃいけないと思う。

エレン、解散式の一週間前の朝、君はなぜ笑い、君はなぜ、泣いたんだい?

エレン「ありがとな、ミカサ。殺されてくれて」



終わり

衝撃作ですねこれ。

でも面白い

衝撃やな

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