【ラブライブ!】善子「憧れの人」 (10)
6月。
梅雨の季節。
毎年この季節になると憂鬱になる。
空が雲で覆われてたら私の心まで暗雲に覆われてしまったように感じるじゃない。
昔から、運は悪かった。
よくつまづいて転ぶし、懸賞や福引で一番下の賞以外当たったことないし…
それこそ大事な時には毎回のように雨が降る。
だからせめて、普通の日くらい曇りのない笑顔で笑って欲しかった。
それなのに6月の空は毎年嫌な事があったかのように涙を落とすの。
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「はぁ…やっぱりついてないわね……」
それは最近続く曇った空からポツポツと降り始める水滴。
丁度うっかり折りたたみの傘を忘れてきた日だった。
「これはやはりこのヨハネが堕天使からの祝福を受けている所為…仕方の無いことですね。」
お決まりのポーズを決める。
いつからだったか。
自分は堕天の女神、そういう風に考え始めたのは。
キャラを作っていて痛い?中二病?
ならどうすればいいの?生まれ持ったこの運の悪さは神さまから嫌われてるんだって、絶望でもすればいいのかしら。
…おっと、このまま物思いに耽ってたら雨に濡れちゃうわね。
そう思って近くにあった本屋の入り口で雨宿りをする。
雨足は徐々に勢いを増し、私が帰るのを邪魔するばかり。
「あ~、降ってきちゃってるじゃない。…全くついてないわねぇ…」
と、そこに本屋から出て来た人が。
彼女もきっと傘を持って来てなくて、本屋で読書をしていたら雨に降られてたのかしら。
と思って声のする方向を見てみると、
少し幼さの残るあどけない顔に大きい瞳。
まっすぐで傷一つないツヤのある黒のロングヘア。
最近の流行を取り入れた落ち着いた雰囲気のコーディネート。
100人が見て100人が認める美女……美少女…?
可愛さと綺麗さを兼ね備えた美しさだった。
私がその女の人に見蕩れていると、彼女の方から近づいてきた。
「ふふっ…。ねぇもしかして、アナタも傘がなくて困ってたんでしょ。」
「えっ…あ、はい。そうですけど…」
「やっぱりね!いかにもついてないなって顔、してたわよ。」
そんな顔、してただろうか?と思って自分のほっぺをグニグニと確認してみる。
「私ね、職業柄人の表情を見抜くの得意なの。…どう?どうせあなたも雨が上がるまで暇でしょ?よかったらそこの喫茶店で飲み物でも飲んでいかない?」
…むむむ、迷う。知らない人について行っちゃいけないなんてことは幼稚園児ですら知ってることよ。
ましてやこんな急だなんて…
でもなんだか私の直感がこの人は悪い人じゃない、それに美人だしって告げていた。
私の中のヨハネも美人には弱いのね。
喫茶店に入るとその人はブラックコーヒーを頼んで、私に「好きなものを頼みなさい。遠慮しなくてもいいわよ、私、それなりにお金あるから」と言ってくれた。
厚意に甘えてレモンティーとケーキを2つ頼むと、「おぉ…意外とホントに遠慮しないのね…。最近の子は肝が据わってるというか…ここまで着いてくるだけでも度胸いるだろうに。」
と、感心していた。
「コホン、初めまして、ね。私結構偶然って大事にしてるの。偶然が重なって奇跡が起きるってね。」
「アナタ、名前はなんて言うの?」
「……津島…ヨハネ。」
するとぽかんとした顔で彼女は、
「え、ヨハネっていう名前なの?…これって最近流行りのキラキラネームってやつかしら。ご両親はどんな思いでその名前をつけたのよ…いやでも本人はこの名前気に入ってるかも知れないし…」
とブツブツうるさいので
「善子!…津島善子。」
とついつい言ってしまう。
「善子ね、分かったわ。よろしくね。」
さっきまでヨハネという名前だと信じきっていた筈なのに急に善子って訂正しても全然驚いていない彼女を不思議に思っていると彼女は
「だからさっき人の表情を見抜くの得意って言ったでしょ。嘘をついてるのなんてバレバレだっての。」
と、イタズラな笑顔を浮かべてそう言った。
「私の事ばっか話してないで、そっちの事もきかせ…」
私が言葉を最後まで言い切る前に、頼んでいた品物が運ばれてきた。
彼女は頼んだブラックコーヒーを飲みながら
「あ、私の名前?…うわ苦、カッコつけて頼んでみたはいいけどこれ飲めないわ…」
あ、この人割とダメな大人だ。と、思うと同時に
「私の名前は矢澤にこ。よろしくね、善子」
彼女はそう名乗った。
とりあえず書き溜めていた分だけ投下させて頂きます。
続きは不定期になってしまうと思いますが短編で終わる予定なのでお付き合い頂けると幸いです。
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