ウェイバー「なんだよこいつ…」ガッシュ「ウヌ?」 (557)

Fate zeroと金色のガッシュのクロスです

Zeroはアニメしか見たことないにわかです…不快にさせるところもあるかもしれませんが、ご了承ください。

※ディルムッドは出ません。ファンには申し訳ないですが、理由はss内で説明します。

ガッシュは一応魔物との戦いが終わり王になった状態。

時系列云々は…ナオキです。

書き貯めはないので、更新は物凄く遅いです。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1512815298

ウェイバー「どういうことだよ!なんでこんな子供が…」

ガッシュ「…?」

ウェイバー「まさか僕の魔術師としての腕が…いいや!そんなことあるもんか!僕は聖杯に選ばれたマスターなんだぞ!?令呪だってここに…」

ガッシュ「おぬし、さっきから何を言っておるのだ?」

ウェイバー「お前のせいだよ!…お前、本当に僕のサーヴァントなのか?」

ガッシュ「サバ…?私は、サバよりはブリのほうが好きだのう」

ウェイバー「何を…ふざけるな…」

僕が気づいたときには遅かった。

そのサーヴァントが口から電撃を放っていたことを。

その攻撃が僕目掛けて飛んできていたことを。

そして、手に分厚い魔導書が現れ、赤い光を放っていたことを。

ウェイバー「なんでだよぉ…」

僕はその子供から繰り出された電撃を咄嗟に避け…ることもできず、まともに食らってしまった。

ガッシュ「…ハッ!おぬし、大丈夫か!?」

ウェイバー「大丈夫なわけあるか!いきなりマスターに目掛けて攻撃するやつがあるかー!」

ガッシュ「うぬう…なぜなのだ?杖を持っておらぬから、呪文を出せるはずが…」

そのサーヴァントは目の色を変えて、僕が持っている赤い本へ飛び付いた。

ガッシュ「おぬし、どこでこの本を手にいれた!?」

ウェイバー「うわっ!落ち着けよ!僕がお前を召喚した後、気づいたら手に持ってたんだよ!」

ガッシュ「馬鹿な…あり得ぬ。魔物との戦いはもう終わったはずでは…」

ウェイバー「…?」

ガッシュ「…おぬし、名はなんと言うのだ?」

ウェイバー「…ウェイバー、ウェイバー・ベルベット。お前のマスターだ!」

ガッシュ「ウヌ!私はガッシュ!ガッシュ・ベルなのだ!」

飯食ってきます

ウェイバー「…それで、ガッシュ?お前はどこの英霊なんだ?そして何のクラスなんだ?聖杯戦争の経験がない僕には、正直お前はただの子供にしか見えないんだけど…」

ガッシュ「クラス…学校のことかの?」

ウェイバー「は?…いや、サーヴァントのクラスだけど」

ガッシュ「ウヌ…それが、おぬしが言うことは、何となくは分かっておるのだが、自分が何のために召喚されたのかはよく分からないのだ」

ウェイバー「」

ガッシュ「というか何も分からないのだ…ここに来るときに頭を打ったのか…魔界の頃の記憶はあるのだが、それ以外に関しては全く覚えていないのだ」

ウェイバー(嘘だろ…もしかして大外れを引いたのか?いや待て、あの触媒は忌々しいケイネスの奴が用意した物だ…そんなはずは…)

ウェイバー「…って魔界?魔界ってなんだよ」

ガッシュ「ああ、忘れておったのだ。英霊…とはちょっと違うが、私は魔界の王様なのだ」

ウェイバー「へえ…魔界の王様…ってええええええ!?」

思わず頭を抱えてしまう。訳が分からない。そう言いたいのはこっちだった。

ガッシュ「ぬ?ウェイバー?どうしたのだ?」

もはやツッコミを入れる気力もない。僕はこの魔界の王様とやらと、どうやっていけばいいんだ…

 時計塔 

ケイネス「頼んでおいた聖遺物…どうやら無事に届いたようだな」

ソラウ「へえ…これがかの征服王の…」

ケイネス「ああ、これで私のサーヴァントを呼び寄せる」

ケイネス(管財課が私の生徒に大事な物を渡しておいたらしいが…まあいい。とやかく気にすることではない。何の問題もなく、私のもとに届いたのだから)

ケイネス「私の、エルメロイの戦いはここから始まる!魔術師として、存分に競い合おうではないか!聖杯に選ばれたマスター諸君!」

ソラウ「ええ、あなたは必ず勝つわ、ケイネス」

 マッケンジー宅

ウェイバー「…」

マーサ「美味しい?ガッシュちゃん」

ガッシュ「ウヌ!美味しいのだ!」

グレン「こらガッシュ、落ち着いて食べなさい。ほら、お茶だ」

ガッシュ「ウヌ!ありがとうなのだ!」



ウェイバー「なんで馴染んでるんだお前はー!」

どうやらお互い聖杯戦争については素人だった僕達は、一旦自分の拠点に戻ることにした。

そうだ、また暗示をかけないといけないな、と思っていたが杞憂に終わり、ひととおり二人に説明すると、ガッシュはすぐにおじいさんとおばあさんと仲良くなっていた。

僕が一生懸命かけた暗示よりも、ガッシュのコミュニケーション能力のほうが上なのか…と、少し劣等感を感じながらも、僕はこれならば心配はないかもしれないと考えていた。

自分たちが戦いに身を投じていることを棚にあげて。

 ウェイバーの部屋

ウェイバー「…随分と楽しそうだったな」

ガッシュ「ウヌ、グレン殿もマーサ殿もとても親切で優しい人だったのだ。私もお腹一杯で、しばらく動けないのだ…」

ウェイバー「食いすぎだ!」

ガッシュ「魔界ではこんな美味しい料理は食べれないからの…次は…そうだのう、やっぱりブリをそのまま食べたいのう」

ウェイバー「ブリ…ってのがお前の好物なのか?どこの料理だ?」

ガッシュ「ブリは魚なのだ。私の大好物なのだ!」

ウェイバー「魚をそのまま…ジャパンの食文化は理解不能だな」

ウェイバー「ってそんなことはどうでもいいんだよ!作戦会議だ!」

ガッシュ「作戦会議?」

ウェイバー「そうだ!僕が今使い魔を放って、辺りを調べてる。何か動きがあったらすぐにわかるようにな。動きがあったとき…その瞬間、聖杯戦争の幕は上がるのさ!」

ウェイバー「この戦いはお前とどれだけ力を合わせられるかが重要なんだ。だから、お前が今知ってることについて、全部教えてくれ」

ガッシュ「…どうしても、戦わなければならないのか?」

ウェイバー「そりゃあ、そのために僕は召喚したんだからな!」

ガッシュ「…ウヌ、分かったのだ」

ウェイバー「うんうん、素直でよろしい。…そうだ、まだパラメーターを見てなかったな。どれどれ…」

ガッシュ・ベル

筋力 E
耐久 D
敏捷 D
魔力 E
幸運 B
宝具 ?

ウェイバー「はああああ!?」

ガッシュ「ど、どうしたのだ?」

ウェイバー「いや…」

弱すぎる。あまりにも弱すぎる。英霊としてせめて基準のCぐらいはすべて超えてほしかった。なのになんだこれは。僕がマスターだからか?幸運ぐらいしかマシなところがない。

ウェイバー(…本当に外れを引いてしまったのか?)

ガッシュ「何を一人でぶつぶつ言っておるのだ?」

ウェイバー「…いや、こちらの話だ。じゃ、とりあえずお前の話を聞かせてくれ」

ガッシュ「ウヌ。信じられないと思うが、真剣に聞いてほしい」

風呂いってきます。
話の進みが遅くて申し訳ないです。

ガッシュ「私は魔界の王様…とはもう言ったな」

ウェイバー「聞いたよ。で、魔界ってのはなんなんだ?」

ガッシュ「文字通り人間界とは違う…たくさんの魔物がいる場所なのだ。そして魔界の王様を決めるために、100人の魔物の子は王の座を争った…その、おぬしが持っている本を使ってな」

ガッシュ「私はその戦いである人間の力を借り、結果勝利したはずなのだが…その記憶が全くないのだ。記憶のないおかげで、力もイマイチ出しきれていない気がするのう」

ウェイバー「なるほどな…」

ウェイバー(それであのステータスだったのか…安心し…てないからな!全然!)

ウェイバー「…続けてくれ」

ガッシュ「そう、ここからが大事なのだ。おぬしのその本は、術を唱えるためには必要不可欠なものなのだ。…試しに、その本にある文字を読んでみてくれぬか?」

早速この赤い本を開き文字をなぞる。自分が見たこともない言語ばかりだが、少しだけ読める部分があった。

ウェイバー「えっ…と…第一の…術。ザケル…」

口にした瞬間、ガッシュの口からまたあの電撃が放たれた。二度目であり、どこか胸騒ぎもしていたので、なんとか避けることはできた。…が、 

ウェイバー「ああっ!僕のお気に入りの本が!」

赤い本は無傷だが、本棚の本に火がついてしまった。幸い被害は二、三冊で済んだが…

ガッシュ「…ウヌ、そういうことなのだ」

とりあえず、思いっきり頭にチョップを喰らわせた。

ウェイバー「つまり、この本が魔術書みたいなもんか」

ガッシュ「…そうなるのう」

涙目でこっちを見てくる。子供だからって、英霊であり、そしてサーヴァントだ。そんな目をされても一切容赦する気はない。

ウェイバー「これがないとお前を生かすことはできないわけだ…」

ガッシュ「ウヌ、そしてもうひとつ大事なことがあるのだ」

ウェイバー「なんだ?」

ガッシュ「これはまだ分からないが、その本が燃やされたり、切り裂かれたりすると、恐らく私は魔界に帰るであろう」

ウェイバー「…は?」

またも衝撃的なカミングアウトだ。この英霊、本が無いと戦えないだけでなく、消滅してしまうのか。
ますます聖杯戦争を勝ち抜くには絶望的だ。

ガッシュ「私はそうなったことはないが、私のかすかな記憶では、そうなっておったはずだ」

ウェイバー「は…ははは…」

ガッシュ「…何を笑っておるのだ?そんなにおかしいことがあるのか?」

ウェイバー「笑うしかないんだよこの状況を!くそっ…なんでこんな目に…」

…そんな僕に、使い魔から連絡があった。アサシンがアーチャーによって倒されたというものだった。

ガッシュ「そうか…もう戦いは始まっておるのだな」

ウェイバー「ああそうだよ!僕達はどうしたらいいんだろうなまったく!」


ガッシュ「…また、辛い思いをせねばならんのだな、私は」


ウェイバー「…?何か言ったか?」

ガッシュ「なんでもないのだ!」

まだ戦ってもいないのですが、今日は恐らくここまでです。 更新しても1レスかな?
スピード遅くて申し訳ない…なるべく丁寧に書こうとして長くなってしまいました。

再開します
書くにあたって、やっぱり英霊共の口調を考えるのは難しいなあ…

 倉庫街

セイバー「ここに強いサーヴァントの気配を感じます。…! 下がって、アイリスフィール」

アイリ「ええ、分かったわ」

セイバー「姿を見せよ、その荒々しい魔力を、私が逃すと思っているのか!」

 「…ふん。マスターの命に従っておったが、仕方があるまい」

ライダー「余は征服王イスカンダル!貴様はどうやら剣の英霊らしいな!どうだ、我が軍門に下る気はないか!」

《ライダー貴様!敵を前にして真名を名乗ってどうするのだ!》

ライダー「まあそう言うなマスター。いずれはこの世界を征服する余だ、いつ名が知れようと変わらん」

《撤退だ!今すぐ撤退しろライダー!これはマスターとしての命令だ!》

ライダー「…騒がしいわ!黙って余の蹂躙するところを見とれい!」

アイリ(この英霊…真名を名乗った上にマスターと意志疎通がとれていないのかしら?)

アイリ「セイバー…」

セイバー「ええ、分かっています。今は一国の王ではなく騎士として、全力で貴女を守り通す」

ライダー「うむ。どうやらそちらの士気も上がっているようだな!よい、余も全力で貴様の剣と向き合おうではないか!」

《貴様…後で覚えておけ》

セイバー「…来い!征服王!」

切嗣「始まったか…」

舞弥「今確認できるのは、マダムとセイバー、そしてライダー…その他にも使い魔が…!…切嗣!」

切嗣「…何?アサシンめ…下らない三文芝居を打っていたようだな…」

舞弥「それと、ケイネスと思われる影も発見しました。どうします?」

切嗣(ケイネス・エルメロイ・アーチボルト…ここで潰しておくか?だが…アサシンの目もある)

切嗣「アサシンは僕達では対処できない。ここは一旦待機だ。しかしケイネスから目を離すな。隙があれば、いつでも始末する」

舞弥「了解」

切嗣「…」

切嗣「さて…お手並み拝見だ、かわいい騎士王さん?」

 埠頭

ガッシュ「これが…」

ウェイバー「英霊同士の戦い…」

使い魔を通して、僕たちはセイバーとライダーと思われる英霊のしのぎ合いを、お互いに畏敬を抱くほどに見いっていた。

ガッシュ「…どうするのだ、ウェイバー?私がこの場に入って、勝てると思っておるのか?」

ウェイバー「そんなわけ…いいやある!けど…その…」

正直、びびっていた。分かっていたことだが、あれはやはり人間ではない、次元が違う。

ウェイバー「よ、様子見だ!待機だ!ストップだ!僕たちが出る幕じゃない!」

ガッシュ「…うぬう、やはりおぬしには戦いは向いていないと思うのだ」

ウェイバー「うるさーい!僕はこの戦争で、僕がどれだけ優秀かを証明するんだ!そのためにはこれくらい…」

ガッシュ「…手が震えておるぞ」

ウェイバー「…! うるさい!」

口だけだ。実際僕は、遠目から戦いを覗き見ているだけにすぎない、臆病者なんだ。

ウェイバー「…よし!行くぞ、ガッシュ!」

ガッシュ「う、うぬ!?おぬし正気か!?」

ウェイバー「いいから行くぞ!」

ガッシュ「…私は止めたからの」

セイバー「はあっ!!」

不可視の剣がライダーに襲いかかる。しかしライダーも打ち合いに慣れてきたのか、なんとかいなす。

ライダー「がははは!気に入ったぞ小娘!貴様は必ず我が軍門に下らせる!」

セイバー「小娘だと!ふざけるな!私もブリテンの王だ!甘く見るな!」

ライダー「貴様が王だと?…これはまた随分と痛快な戯れ言を…」

セイバー「貴様!」

アイリ(セイバー…熱くなってる。いけない、フォローしないと…)

「まさか、我の他に王を名乗る不届きものがおったとはな…雑種」

ライダー「…うん?どうやら我らの戦いに引き寄せられて来たようだな、金ぴか」

アーチャー「口を慎め雑種。我の姿、貴様などが拝謁していいものではない」

アイリ「また英霊が増えた…」

ケイネス《…》

一旦ここまで
ギルとかイスカンダルとかどうやって喋らせたらいいか分からん…いや難しいなfateのキャラ動かそうとすると

アーチャー「よもや真の王たる我を差し置いて王を名乗るとは…その不敬、万死に値するぞ?」

ライダー「ほう…ならば真の王とやら。今ここで、王の矜持を見せてもらおうではないか」

セイバー「何…?ライダー、戦いはまだ終わっていないぞ!」

ライダー「まあ待てセイバー。金ぴかよ、貴様が王を名乗るならば、その力ここで存分にふるってみせよ」

アーチャー「思い上がるな雑種が。…身のほどの違いというものを、骨の髄まで分からせてやろうか!」

アーチャーは自分の背後に無数の武器を展開した。
見るものを圧巻させるほどの数、そして美しさは、正に真の王を名乗るに相応しいほどだ。

アイリ「そんな…まさか、これがあの英霊の宝具なの…!?」

セイバー「これは…アイリスフィール!私から決して離れないで!」

ライダー「ほほう…やるではないか。クラスはアーチャーといったところか…」

《…最後の忠告だ、ライダー。その場から撤退しろ。さもなくば、令呪を使うのも吝かではない》

ライダー「その忠告を聞かぬというのは、貴様が一番よく理解しておるだろう?マスター」

《…ふん》

アーチャー「ふはははは!どうだ、貴様ら凡百の英霊と、我との差は歴然!大人しくこの場から消えるが…」



「殺せ…バーサーカー」

「……」

バーサーカー「ーーーー!」

アーチャー「何!?」

その狂戦士は突如現れ、アーチャーに向かっていった。

アーチャー「狂犬が…我に楯突くなど、よほど死に急ぎたいらしいな!」

容赦なく宝具を浴びせる。しかしバーサーカーは狂化しているとも思えぬ剣さばきで、アーチャーの猛攻を耐えしのいでいた。

ライダー「見事…これほどの剣術を持つものが、まさかバーサーカーにおろうとはな…」

アイリ「何が起きているの…全く見えない…」

セイバー「…」

アーチャー「くっ…時臣め、ここで退けだと!?…仕方あるまい…その首、必ず我が…」

そう言い残すと、アーチャーは撤退した。

ライダー「ふむ…どうするセイバー?まだ続けるか?」

セイバー「…ライダー、あの英霊の様子が…」

「…th…」

バーサーカー「A…urrrrr!」

セイバー「ぐっ!?今度は私に…」

アイリ「セイバー!」

バーサーカー「urrrrrrrr!」

セイバー(何故だ…何故この英霊は私と互角に渡り合える…)

ライダー「…さて、どうしたものかのう」

ガッシュ「…」

ウェイバー「…」

ガッシュ「…のう、ウェイバーよ。さっきから何をしておるのだ?」

ウェイバー「え!?えっと…そうそう、他のサーヴァントが潰しあってから、僕たちは一気にそいつらを倒すんだよ!だから…まだ待機だ!」

ガッシュ「やはりおぬし…」

ガッシュ「…!危ない!」

ガッシュが咄嗟に僕を突き飛ばした。

ウェイバー「何すんだ…」

ガッシュ「敵がこちらを狙っておるのだ!ウェイバー、一度倉庫の中に隠れて…」

「遅い」

ガッシュ「ぬあーっ!」

ウェイバー「ガッシュ!」

「諜報活動に徹するとはいえ、貴様ら程度…我らが始末しても何の問題もあるまい」

ウェイバー「お前…アサシンか!」

アサシン「ふっ…今更気づくとは…貴様、聖杯戦争を侮りすぎではないか?」

ウェイバー「…上等だ!やってやるよ!アサシンなんか、表に出てきてしまえばこっちのもんさ!行くぞガッシュ!」

ガッシュ「う…うぬ!」

アサシン「ふふ…その首、いつまでついているかな?」

切嗣「驚いたな…まさかセイバーが、バーサーカーに押されているとは…」

舞弥「…切嗣、この倉庫を見張っていたアサシンが、何者かと戦闘を開始しました。他のマスターは、この場から退いた模様」

切嗣「そうか分かった…では、僕たちも撤退するとするか」

舞弥「よろしいのですか?」

切嗣「構わないよ。アイリはセイバーに任せておけば問題ない…僕はただ、次の標的を見定めにきただけだからね」

舞弥「…了解」

舞弥(アサシンと交戦していた者…あれはいったい…)

アサシン「ふっ…どうした、粋がっていたわりにその程度か?」

ウェイバー「うるさい!ガッシュ、ザケルだ!」

だがそれはもはや静電気ほどの電撃しかなく、アサシンは攻撃の手を休めることはない。

ウェイバー「なんでだよ…なんで…」

ガッシュ「うぬう、落ち着くのだウェイバー!おぬし、まだ心の力が十分たまっていないのだ!だから術が発動しても、相手にダメージを与えるほどではないのだ!」

アサシン「お話はもう十分か?」

ガッシュ「ぐあああ!」

ウェイバー「ガッシュ…」

アサシン「そろそろ終わらせるか…」

ウェイバー「や…やめろ…!」

ガッシュも僕ももう傷だらけだ。次の攻撃を受けたら、もう立ち上がれないかもしれない。ああ、意識も遠のいていく…そうだ、僕は何故こんなことを…

アサシン「さらばだ…」

ガッシュ「…ウェイバー!!!」

ウェイバー「!」

ガッシュ「おぬし、こんなところで終わってもいいのか!おぬしは言っておったではないか!自分は優秀であると!魔術師の血統など関係ない事を、周りの者に証明してやると!」

アサシン「…まだ、騒ぐ力が残っていたか…」

ガッシュ「私が証明してやる!おぬしは決して間違ってはない!今のおぬしに足りないもの、それは決して揺るぐことのない覚悟なのだ!」

ウェイバー「…!」

ガッシュ「だから立つのだ!立って覚悟を決めるのだ!私と、共に、戦い抜く覚悟を!」

ウェイバー「覚悟…それが、僕に足りなかったもの…」

赤い本が今までにないほどの光をあげる。それは僕の心の高まりを表しているようだった。

アサシン「ふん…貴様ら屑共に何が出来るというのだ!」

アサシンが僕に襲いかかってきた。だがもう怖くはない。僕にはもう、心強い仲間がいるのだから。

ウェイバー「行くぞガッシュ!第一の術…」

        
        「ザケル!」

今日は多分ここまでですかね…
一ヶ所に集まる人が多いから、動かすのも大変だあ…

バーサーカー「Aーーurrrr!」

セイバー「くっ……はっ!」

ライダー「どうしたセイバー?そんなものか?剣の英霊ともあろうものが、小賢しい狂戦士に遅れをとるとは…」

アイリ「…貴方は戦わないの?」

ライダー「余は見定めておるのだ!どちらが上かな…まあ、どちらとも我が軍勢に加わるに相応しい逸材ではあるが…」

ライダー(ケイネスめ…余への魔力供給を最低限に減らしておるな…全く、小賢しい抵抗よな)

バーサーカー「ーーー?」

セイバー(なんだ…急に動きを止めた…?)

バーサーカー「ーーー」  

バーサーカーは突然姿を消した。それは高速移動と呼べるものでもなく、その場にいるものはこう察した。

アイリ「セイバー…あのバーサーカー、恐らく令呪で…」

セイバー「ええ、間違いありません。マスターが何らかの危機に陥り、令呪で呼び出さざるをえなくなったのでしょう」

ライダー「ふん…今宵は随分とつまらん決着の着き方であったな」

セイバー「…待てライダー!」

ライダー「覚えておけセイバー。貴様ら全員余の軍勢に加えて見せよう」

そう言い放つと、ライダーは神威の車輪で帰っていった。

セイバー「おのれ…くっ!」

アイリ「セイバー!…不本意ですが、私たちも帰りましょう?」

セイバー「はい…」

 倉庫

ウェイバー「はあ…はあ…なんとか、撤退させれたようだな…」

ウェイバーとガッシュは、アサシンをどうにか退け、壁にもたれ掛かっていた。

ガッシュ「ウヌ…しかし、私もまだまだだのう。王になった今でも、術を撃つときは気絶してしまうとは…」

ウェイバー「そうだよ!それを早く言えよ!狙いが定まらないから、術が打てても明後日の方向に行ってたじゃんか!」

ガッシュ「うぬう…こればっかりはどうしようもないのだ…ウヌ?」

ウェイバー「どうした?」

ガッシュ「おなかが空いたのだ!」

ウェイバー「今かよ!ああもう…帰るぞ、ほら」

ゆっくり立ち上がり、ガッシュに手をさしのべる。

ガッシュ「ウヌ!マーサ殿のご飯が楽しみだのう…!」

ウェイバー「…ああ、そうだな」

能天気なこのサーヴァントに、少しは元気を貰えた気がした。しかし、その安息の時間も、一瞬で消え去った。

ウェイバー「ーーー! 嘘だろ…」

セイバー「アイリスフィール、治癒魔法を」

アイリ「ええ、分かってる」

セイバー達が、まだその場に残っていたのだから。

ウェイバー(どうする…!?いくら相手が手負いだといえども、こちらが戦えるわけがない!かといってやり過ごせるほど相手も甘くは…)

「おぬし、凄かったのう!」

セイバー「え?」

「私もあれほどの剣さばきは見たことがない!お願いだ、もう一度見せてはくれぬかの!?」

アイリ「ボウヤ…どなた?」

ウェイバー「…?……?………!」

ウェイバー「ちょっと待てガーーーッシュ!!…あっ」

セイバー「…」

アイリ「…」

ウェイバー(終わった…)

ガッシュ「ウヌ?どうしたのだ?ウェイバーよ」

ウェイバー「このバカーー!ああもう…ガッシュのバカ!アホ!ドジ!マヌケ!」

ガッシュ「うぬう!?な、何もそこまで言うことはないではないか!」

ウェイバー「黙れ黙れ黙れ!このチビ!」

ガッシュ「なっ…そんな…そこまで…そこまで言わずともよいではないか…」

アイリ(著しい語彙力の低下が見られるわね…)

アイリ「えっと…貴方達は?」

ガッシュ「ウヌ!私はガッシュ、ガッシュ・ベルなのだ!こっちは私のパートナーのウェイバーなのだ!」 

ウェイバー「」

セイバー「ほう…そちらが名乗りを上げたからには、こちらも返すのが礼儀というもの。私はセイバー、アルトリア・ペンドラゴン。此方は私のマスターのアイリスフィールです」

アイリ「」

ウェイバー「嘘だろお前…真名とか素性とか、普通隠すって僕言ったよな!」

アイリ「セイバーもよ!」

ガッシュ「うぬう…しかしウェイバー、挨拶の時には元気よく、はっきり自分の名前を言わないと、相手に失礼なのだ」

ウェイバー「それとこれとは話が別だー!」

アイリ「ウェイバー…?…!何処かで見た顔だと思ったわ!貴方、マスターの一人ね!」

ウェイバー「わわっ!?早速バレた!?」

アイリ「隙を見て、私たちを不意討ちしようとしたのね…許せないわ!」

ガッシュ「ま、待つのだ!そんなつもりではないのだ!」

アイリ「問答無用よ!GO!セイバー!」

セイバー「…アイリスフィール、少し待っていただきたい」

セイバー「その傷…他のサーヴァントと戦闘した故についたものだと推測するが…違いますか?」

ガッシュ「ウヌ、その通りなのだ!おぬしはやっぱりすごいのう!」

セイバー「そ、そうですか?…それで、お互いに傷ついている。今のこの状態、私もアイリスフィールの治療を受けなければ、まともには戦えない」

アイリ「セイバー…?」

セイバー「そこで提案だ、ここはお互いに退かないか?私の目では、貴殿方は不意討ちをするような悪い英霊には見えない。ならば今、ここで戦う理由はない。正々堂々と決着をつけようではないか」

ウェイバー「なっ…」

アイリ「セイバー…」

ガッシュ「ウヌ、わかったのだ!ではまた会える日を楽しみにしておくのだ!えっと…」

セイバー「セイバー…アルトリアでも構いませんよ」

ガッシュ「ウヌ!ではセイバー殿、また会おうぞ!」

セイバー「…ふふ、また会いましょう、ガッシュ」

ウェイバー「…ぶはー!」

ガッシュ「なんだ、緊張していたのか?ウェイバー」

ウェイバー「当たり前だ!下手したら殺されかけてたんだからな!」

ガッシュ「うぬう、しかしセイバーは悪い者には見えなかったのだ。だから私も安心して声をかけられたのだぞ?」

ウェイバー「…後半部分は絶対嘘だろそれ。…にしても、まさかセイバーがアーサー王だなんて…はあ、この先が思いやられるなあ…」

ガッシュ「…大丈夫なのだ。力を合わせて、私とウェイバーで、必ず聖杯を手に入れようぞ」

ウェイバー「…ああ」

アイリ「ぷはー!」

セイバー「…アイリスフィール、申し訳ありません。私の独断であのような事を…」

アイリ「ううん、いいの。…切嗣だったら有無を言わさずその場で殺していただろうけど…私は私。貴方もまた英霊なのだから、自分に絶対の自信を持っていて当然だもの」

セイバー「…そう言ってくれると有難いのですが…?アイリスフィール、何か音が鳴っていますよ?」

アイリ「えっと…ああこれね!切嗣がね、私に持たせてくれたの!これさえあれば何時でも切嗣と連絡がとれるからって…もしもし切嗣?」

切嗣《アイリ…落ち着いて聞いてくれ》

アイリ「どうかしたの?」

切嗣《僕たちはサーヴァントに襲撃され、そして舞弥を失ってしまった…相手は…》

アイリ「……!」

セイバー「アイリスフィール?如何なさいましたか?」

アイリ「セイバー…」

アイリ「ーーーー」

セイバー「…そんな馬鹿な!あり得ない!」

アイリ「ええ、私もそう思うわ。でも取り敢えずは切嗣と合流しないと…」

セイバー「……」

一旦ここまで
ここに来てキャスター組の存在を忘れてた…どうしよう…

 朝 マッケンジー宅

ウェイバー「ふぁ~…」

ガッシュ「カマキリジョー!頑張るのだ!うぬ、かっこいいのだカマキリジョー!」

ウェイバー「…朝からうるさいな、お前は」

グレン「おお、おはようウェイバー」

ガッシュ「うぬ?おはようなのだウェイバー!」

ウェイバー「…おじいさん、テレビ変えていい?」

ガッシュ「なっ…駄目なのだ!今いいところなのだ!勝つか負けるかの…」

   『ニュースをお伝えします。近日、冬木にスーパースター…』

ガッシュ「ぬああああ!ウェイバァァァァ!」

ウェイバー「ふん」

マーサ「…ウェイバーちゃん?ガッシュちゃんに優しくね?」

ウェイバー「してるさいつも…むしろ甘やかしすぎなぐらいだね!」

ガッシュ「うぬう、おぬしまださっきの事を怒っておるのか!?仕方ないではないか!おぬしの元気がなさそうだから、私が起こしてやったのだぞ!?」

ウェイバー「百歩譲って勝手に起こしたのは許すとして、なんで僕の部屋をぐちゃぐちゃにするんだよ!一応あれでもここは僕の工房なんだぞ!?魔術師は工房が命なんだ、むしろ怒らないほうがおかしいんだ!」

早口で捲し立てる。こうすればもはや反論の余地はあるまい。

ガッシュ「う、う、うう…」

ウェイバー「お、おい…何も泣くことはないだろ…?」

マーサ「駄目じゃないウェイバーちゃん!ガッシュちゃんを泣かせたら!」

ウェイバー「そ、そんな…ったくなんで僕が…」

   『次のニュースです』

   『昨夜未明、冬木でまたも殺人が…』

グレン「…またこのニュースか、物騒な世の中だな、ウェイバー」

ウェイバー「うん…」

どうやら、冬木に連続殺人犯がいるらしい。被害者を襲ったのはまた同じ手口らしいが…気になるところが一つある。

ウェイバー「…気をつけろよガッシュ。この連続殺人犯、子供をターゲットにしてるらしいからな」

ガッシュ「何!?許せぬのだ…子供を襲うなど…私がこらしめてやろうかの!」

ウェイバー「何馬鹿な事言ってんだお前。僕は被害に遭わないように気をつけろって言ってんの!…っておい!聞いてるのか!?」

ガッシュ「出かけてくるのだ!夕飯までには戻ってくるのだー!」

ガッシュが家を飛び出していった。これはまずい。非常にまずい。止めなければ、今すぐに!

ウェイバー「やっぱり話聞いてないじゃんかぁ!おい待てガッシュ!止まれー!」

マーサ「…あの子たち、朝から元気ねぇ」

 公園

ガッシュ「サークラちゃーん!いっしょに遊ぼうぞー!」

桜「あ、ガッシュ君…おはよう、今日も元気だね」

ガッシュ「ウヌ!毎日元気なのだ!」

桜「ふふ…今日は何して遊ぶ?」

ガッシュ「うぬう…そうだのう…バルカンは持ってきておるか?」

桜「はい隊長。バルカン4000、ここに見参!」

ガッシュ「ウヌ!では私のバルカンと勝負だ!チュドーン!バババババ!」

桜「えい、えい、やあ!」


ウェイバー「はあ…はあ…いたぞ!…あれ?誰かと遊んでるのか?」


ガッシュ「ウヌ、なかなかやるではないかバルカン4000、そしてサクラ!」

桜「いえいえ、隊長もさすが…」

「「ふふふ…」」

ウェイバー(何やってんだこいつら…)

桜「でもこれでとどめ…びしっ」

ガッシュ「ぬああ!負けたのだー!」

桜「ふふ…これで、私の五勝一敗だね」

ガッシュ「うぬう、サクラは強いのだ!でも次は絶対私が勝つのだ!」

桜「次も負けない…」

「…桜、何をしておる」

桜「!! お、お爺様…ごめんなさい、勝手に抜け出して…」

臓硯「ふむ…まあ良いわい。少しの休息ぐらい許す」

桜「あ、ありがとうございます…」

臓硯「では帰るぞ」

桜「はい…またね、ガッシュ君」

ガッシュ「ウヌ、またなのだサクラ!」

臓硯「…」

ウェイバー(なんだあのじいさん…痩せ細って気味が悪い)

臓硯「…ほう」

ウェイバー(こっち見てきた!?)

臓硯「ふむ…見たところ…貴様があやつのマスターのようじゃな」

ウェイバー「な、何!?」

臓硯「心配するな、手を出すつもりはない。ただ一応、儂も忠告しておこうかの」

ウェイバー「何を…」

臓硯「あのサーヴァント、貴様が手を負えるような代物ではない。早急に手放すことを薦めるぞ。クックックッ…ではの。」

桜「…」

ウェイバー「……」

手に負える代物ではない?どういう事だ…

ウェイバー「……」

ガッシュ「…ウェイバー」

ウェイバー「うわあ!お、脅かすなよ!」

ガッシュ「おぬし、いつからそこにいたのだ?覗き見とは、あまりいいものではないぞ?」

ウェイバー「なっ…お前が心配で仕方ないから、必死についてきたんだろうが!」

ガッシュ「うぬ…そうか。すまんの心配かけて」

ウェイバー「うっ…」

素直に謝られると逆に困る。こういうところが子供らしいというかなんというか。

ガッシュ「では別の公園に遊びにいってくるのだ!」

ウェイバー「待てこらぁ!」

ガッシュ「リンという子と遊んでくるのだー!ご飯の時間には戻ってくるのだー!」

マスターの注意を無視したバカを、またも全速力で追いかける。だが悲しいことに、いくら子供とはいえサーヴァントに勝てるはずもなく、その姿を見失っていた。

ウェイバー「ぜい…はあ…わき腹が痛い…」

ウェイバー「ああもう…なんでサーヴァントと追いかけっこしてるんだ僕はー!」

 公園

凛「あ!こんにちは、ガッシュ!約束どおり来てくれたのね!」

ガッシュ「ウヌ!前の約束どおり、いっしょにこの街を探検しようぞ!」

凛「お父様とお母様には内緒で来ちゃったんだから…ちゃんとエスコートしてよ?ガッシュ」

ガッシュ「うぬ?エスコート?よく分からないけど、頑張るのだ!では出発なのだー!」

凛「うん!」



ウェイバー「ひっ…ふっ…どこ…ガッシュ…」

綺礼「…というわけで、連続殺人及び連続誘拐事件の真相は、恐らくキャスターとそのマスターが握っていると思われます」

時臣「なるほど…この冬木でそのような不祥事を野放しにしておくのは、遠坂として許すわけにもいかないな」

璃正「…では」

時臣「ええ。聖杯戦争を一時中止し、まずはキャスター及びそのマスター討伐を、各マスターに命じよう」

綺礼「なるほど…」

時臣「報酬は令呪一画とする。こうすれば、慎重なマスターも重い腰を上げるだろう。しかし、その令呪は我々が頂く。遠坂が、確実な勝利を手にするために」

璃正「確かに…アサシンが確認した、クラス不明の謎のサーヴァント…更には厄介なバーサーカー…どうやらこの聖杯戦争、一筋縄ではいきそうもないですしな…」

綺礼「前者は心配するほどではないでしょう。そのサーヴァントのマスターはせいぜい二流魔術師。問題はありません。今我々が危惧すべきなのは、バーサーカーのほうではないかと」

時臣「ふむ…そうか、ありがとう綺礼。しかし私が最も危惧しているのは謎のサーヴァントでも、況してや、バーサーカーでもない」

時臣「英雄王の機嫌だよ」

 綺礼の部屋

綺礼「…」

「随分と顔が沈んでいるな、綺礼よ」

綺礼「…アーチャーか」

アーチャー「聖職者のくせして悩める子羊のような顔をしおって…貴様が気にしていたあのマスター…衛宮切嗣のことを考えていたのか?」

綺礼「…まさか、私が考えていたのは別のことだ」

アーチャー「ほう…話してみるがよい」

綺礼「…これはまだ時臣師にも話してはおらんが…各々のマスターを偵察に向かわせたアサシン共が、軒並み倒されていてな。その数が少々無視できないほどでな」

アーチャー「…それで?よもやそれで終わりではあるまい」

綺礼「アサシンが言うには、どうやらーーー」

アーチャー「…なるほどな、それはまた、珍妙な話よな」

綺礼「私もまだこの件に確信が持てていない。よって師に報告するまでもないと思っていたのだが…」

アーチャー「…ふん、まあ良いわ。それより綺礼よ、まだすべてのサーヴァントとマスターの素性が知れておらんのか?」

綺礼「正体不明のサーヴァントについては現在調査中だ。何せ、アサシンの半数が偵察に行って返り討ちにあっている。本来の目的も達成していないのに、これ以上不用意に犠牲の数を出すわけにもいかんからな」

アーチャー「…そうか」

アーチャー(言峰…綺礼。はたして我の見立てどおりの男か…今しばらくは泳がせておいてやる)

今日はここまでです。
そろそろ話を動かせるかな…?

 商店街

ウェイバー「…これだけ休めば、ちょっとは落ち着いたな…」

ウェイバー「でもまだ見つからないなんて…まあいざとなったら令呪使えば大丈夫か…」

半分投げやりな気持ちで近くの本屋に立ち寄る。本棚に陳列された分厚い辞書を見たとき、自分の赤い本の事をふと思い出した。

ウェイバー(そういえばこの本の力…心の力…だったか?魔力の消費がほとんどないなんて、ずいぶん燃費がいいんだな…)

ウェイバー「ま、逆に言えばこれがなかったらあいつは何もできないも同然なんだけどな!はははははは…」

「何をぶつぶつ言っておるのだ、坊主よ」

ウェイバー「…え?」

あの夜セイバー達と出くわした時のような、血の気が引く感覚だった。野太い声の主は、そのセイバーと戦闘していた大男、ライダーだったのだから。

ウェイバー「…お、お前!ライダー!」

ライダー「…む?…貴様、何故その名を…」

ウェイバー「あっ!」

終わった。今度こそ終わった。我ながら情けない。ガッシュに注意しろといった自分は、眼前のサーヴァントに何一つ抵抗する手段がない。

ライダー「…まあよいわ、今はいささか興が乗らん。見逃してや…いや、待てよ…」

僕が手に持っていた本を凝視した後、ライダーは僕を、まるで叱られた猫がされるようにして掴んだ。

ウェイバー「は、放せよこの筋肉ダルマ!」

ライダー「丁度よいわ。付き合え、坊主」

ウェイバー「な、なんだよ!何が目的だ!?」

ライダー「まあそう邪険にするな。殺さぬ代わりに、黙って余に付き合えばよいのだ」

ウェイバー「くっ…」

凛「♪♪」

ガッシュ「リン…エスコートしろと言ったわりには、ずいぶんと歩いていくのだな」

凛「えっ…それは…いいでしょ!いいから黙ってついてくるの!約束でしょ!?私とあなたの!」

ガッシュ「う、うぬ。別によいのだが…」

ガッシュ「行きたいところがあるなら、最初から行きたいと言えばよいではないか?」

凛「うるさいわね!いいから私についてくる!」

ガッシュ「うぬう…」(立場逆転なのだ…)

 アインツベルン城

アイリ「…それで、これからどうするの切嗣?」

切嗣「ああ…これから作戦を立てていく上で、僕の右腕だった舞弥を失ったのは痛い。だが…失ったものはもう取り返せない、先のことを考えなければいけないが…」

セイバー「…切嗣、貴方が言っていたサーヴァントの情報は真なのですか?」

切嗣「…事実だ。使い魔も記録している」

セイバー「そうですか…」

アイリ(切嗣…かなり疲弊している。あれほど毛嫌いしていた英雄の意見を聞くなんて…)

セイバー「しかし信じられません。そのようなことが起きるとは…」

切嗣「ああ…信じられないが、もはやこうとしか考えられない。もう一度確認しておこうか」

切嗣「僕らが確認していたキャスターはマスター共々自滅。そして新たなサーヴァントとして別のキャスターが生まれ、僕らに攻撃した…」

アイリ「そしてその新しいキャスターのマスターは、今までバーサーカーのマスターと思われた…」

   「間桐雁夜」

キャスター?「ふふふ…」

キャスター?「感謝しますよ聖杯とやら。まさかこのようなチャンスが私に巡ってくるとは…」

キャスター?「…いいでしょう。それが世界の望みというのなら、喜んでそれを受け入れましょう…」

キャスター?「ふふふ…ハッハッハッハッハッハ!」

ここまでだ!すまん明日朝早いし、眠いからもうねる!

ウェイバー「……」

ライダー「…何をふて腐れておるのだ、坊主」

ウェイバー「あまりにも予想外だったからな!お前みたいなゴリラがどんな要求してくるかと思ったら、まさか僕がサーヴァントの財布とはな!」

ライダーの両手には世界地図や大量の世界史についての書誌、さらにはゲームまであった。

ウェイバー「…僕が必死に貯めてた貯金が…」

ライダー「今この場で殺されないだけ有り難いと思うがいい!だがこれには感謝しているぞ坊主!わはははは!」

ウェイバー「ちぇっ…にしてもライダー?」

ライダー「む、なんだ?」

ウェイバー「いや…お前は、そんなにこの世界に興味があるのか?」

ライダー「おうともさ。聖杯がこの世界の知識とやらをちと知ったが…いやなに、余の目指した最果ての海が、よもやこのようなちっぽけな物とは思いもせんかったわい」

ウェイバー「…お前は聖杯が手に入ったら、世界征服でも望むのか?」

ライダー「いいや!…余が望むのは受肉だ!受肉しこの大地を思うがままに蹂躙する!それが征服王、イスカンダルの第二の生の在り方よ!」

ウェイバー「…」

開いた口が塞がらなかった。この英霊、聖杯を自分の望みを叶えるためでなく、あくまで手段としか考えていなかったとは。

ウェイバー「…随分と立派だな、征服王様は」

ライダー「そういう貴様こそどうなのだ。貴様の望みはなんだ?」

ウェイバー「僕は…」

ウェイバー「…お前に比べたら大したこと無いさ」

そう呟くと、ライダーはまた大声で笑った。

ライダー「何も余のような大望を言えとはいっておらんではないか。そう憶さず言ってみよ」

ウェイバー「…認めさせたいんだよ」

ウェイバー「世の中に!この僕の努力と才能の成果が何をもたらすか!血統だけで優劣を決める魔術師共に!!…どうだ、満足かライダー!」

自分でも思ってもみなかったほどの声で叫んだ。しかしライダーは眉ひとつ動かさず、うむ、と頷いた。

ライダー「貴様の望みは確かにつまらんものだ。…だがまあ、貴様らしいと言えばそうであるのかもしれんなぁ」

ウェイバー「なっ…どういうことだよ!」

ライダー「おのれの沽券を示したいならば、我武者羅に足掻いてみろ。さすれば、何か見えてくるかもしれんな」

ウェイバー「見えてくるだって…?」

ライダー「それでもまあ、余のマスターに遠く及ばぬその力で、よくほざいたと称賛してやろう。…次会うときは敵同士だ、容赦はせんぞ?」

ウェイバー「…当たり前だ!お前なんか、ちっとも怖くなんかないからな!」

ライダー「抜かせ。…そういえば貴様のサーヴァントはどこだ?霊体化させ近くに侍らせてもおらんが…貴様、本当にマスターか?」

ウェイバー「…あ」

ウェイバー「こんなことしてる場合じゃなかったー!じゃあなライダー!次会うときは覚えてろよー!」

ライダー「ふん」

捨て台詞を吐くと、僕はまた走り出した。

ライダー「…行ったか。あやつ…ウェイバーだったか。どうやら余も酔狂だったようだな」

 遠坂邸

凛「…ここよ」

ガッシュ「うぬう…大きな屋敷なのだ…」

凛「すごいでしょ!ここにはお父様と…一応綺礼も居るわね。それでねガッシュ、お父様の都合で、私お父様と離ればなれになっちゃって…でも…」

ガッシュ「ウヌ、父上殿に会いたかったのだな?」

凛「…うん。ごめんねガッシュ?こんなことに付き合わせちゃって」

ガッシュ「いいや、そんなことはないのだ!自分の父上に会いたいのは当たり前のことではないか!」

凛「ガッシュ…」

ガッシュ「おぬしの気持ち、私には、その気持ちが痛いほど分かるのだ」

ガッシュ(きっと居たはずなのだ…この世界にも、私の友が。私の父上や母上のような人が。今は記憶の奥底に埋もれてわからぬが…)

凛「? どうしたのガッシュ?」

ガッシュ「う、うぬ!なんでもないのだ!さ、行こうぞ!」

凛「うん!」



アサシン「…」

ここまで。あまり更新できずすまない…
大まかな構想は決まっているのですが、いざ書こうとすると自分の文才がなさすぎて辛い…
今回のライダーパート微妙すぎるわ(自己評価)

すみません今日も更新できません…
期待してる方本当に申し訳ないです。少しずつですが、必ず完結させるので、どうかよろしくお願いいたします。

再開します

アサシン「マスター…」

綺礼「どうしたアサシン…何?」

時臣「どうやら侵入者のようだね。魔術結界が発動している」

綺礼「それが…ここに来たのはどうやらご息女と…」

璃生「なんと、葵君の目を盗んで、この地に来てしまったのか!」

綺礼「それだけではありません、師よ…」

時臣「ほう?…それは、思ってもみない好機だ。…綺礼よ、この事は英雄王には…」

「我に…なんだ?時臣」

時臣「英雄王!」

アーチャー「そう爪弾きせずともよかろう?…何か不都合でもあるのか?」

時臣「いえ…滅相もございません!」

綺礼「…」

ガッシュ「なんだか、体がムズムズするのだ…」

凛「そう?私はなんともないけど…」

ガッシュ「うぬ…誰かに見られているような…」

「その悪寒は当たっているぞ?少年」

凛「げっ…まさかあんたがお出迎えとはね」

綺礼「まあそういうな、凛。私としては今すぐ君をこの危険な地から遠ざけたいところだが…時臣師が呼んでいる、早く上がりなさい」

凛「…言われなくたって、私はそのつもりなんだから!…って綺礼、あなたガッシュを知ってるの?」

綺礼「少し縁があってな。さあ…ガッシュ君、こちらに」

ガッシュ「うぬう、私はおぬしの事は知らないのだ!」

綺礼「いいから早く来い」

ガッシュ「ぬ、なああああ!リン!助けてくれなのだー!」

凛「…ご愁傷さま」

ガッシュ「リーーーーーーーーン!」

綺礼「…連れてきてやったぞ」

アーチャー「ふん…こいつがお前の言っていたサーヴァントか」

ガッシュ「ぬ!?おぬしもサーヴァントなのか!?」

アーチャー「軽々しく口を開くな雑種。子供とはいえ無礼は許さぬぞ?」

ガッシュ「雑種ではない!私はガッシュ、ガッシュ・ベルなのだ!」

綺礼「な…」

アーチャー「…くく、はははははははは!まさかそちらから真名を名乗ろうとは!だがそれも、子供であるがゆえの純真さともいえよう」

ガッシュ「では、おぬしもセイバーと同じサーヴァント…つまりは英雄なのだな」

アーチャー「然り。我を知らぬとは並の英霊ならばこの場で八つ裂きにしていたが…子供ならば致し方あるまい。我こそが英雄の頂点に立つ王…英雄王、ギルガメッシュ王よ」

ガッシュ「…うぬ…」

綺礼「…?」

ガッシュ「カッコいいのだー!ギルガメッシュ、おぬしは本当にカッコいいのう!」

アーチャー「む?…ふははははははは!そうか、分かっておるではないかガッシュよ!そうら、見るがいい!貴様ら雑種では到底目にもかかれない宝物の原点だ!」

ガッシュ「ぬおおおおお!すごいのだ!」

綺礼(…馬鹿か、こいつらは)

綺礼「…英雄王、そこまでにしておけ」

アーチャー「…む、我としたことが…少々舞い上がってしまったようだ」

ガッシュ「ウヌ?もう終わりなのか?」

アーチャー「そう落ち込むな、ガッシュよ!貴様ならばまた何時でも謁見してよい、我が許す!」

ガッシュ「本当か!?ありがとうなのだ、ギルガメッシュ!」

アーチャー「…それでだガッシュよ。…貴様、何者だ?」

ガッシュ「!?」

綺礼(ようやく本題に入ったか…)

アーチャー「我の目を誤魔化せると思うなよ?貴様から、微かに異質な魔力を感じる…貴様自身と、その装束からな」

ガッシュ「……」

アーチャー「さあ話せ、ガッシュよ。今の我は気分がいい…先程と違い、多少の無礼は許してやるぞ?」

綺礼(このような者を英霊として呼び出された理由…必ず、何かあるに違いあるまい)

ガッシュ「私は…」

ガッシュ「…だめだ、話せないのだ」

綺礼「何?」

ガッシュ「今の私に、おぬしらに話せることはないのだ。…すまぬ」

アーチャー「…そうか」

ギルガメッシュが綺礼に合図すると、意識を失い、アサシンに拘束されているウェイバーが姿を表した。

ガッシュ「ウェイバー!…おぬしら、何を…」

綺礼「どのようなイレギュラーな英霊であろうと、その弱点はマスターだからな…」

アサシンの短刀が、ウェイバーの首に迫る。

ガッシュ「止めるのだ!ウェイバーを離せ!」

アサシン「貴様に選択権はない」

アーチャー「さあ、我を苛立たせるなよ?ガッシュ」

ガッシュ「…私は、記憶喪失で…」

アーチャー「…それで?それだけか?」

ガッシュ「だから、自分のことも良く分かっておらぬのだ!分かっておるのは自分が魔界の王様だということと、この聖杯戦争についてのことだけなのだ!」

アサシン「…」

それが答えか?と、少し血が出る程度に、ウェイバーの肌を傷つける。

綺礼「ならば問おう。貴様のクラスはなんだ?召喚されている以上、それは理解しているはずだ」

ガッシュ「うぬ…それも…」

アーチャー「もう良い」

綺礼「アーチャー…」

アーチャー「…ガッシュよ、貴様のマスターが持っていたこの本、そして貴様自身…やはりこの世界のものではあるまい?」

ガッシュ「…その通りなのだ」

アーチャー「やはりか…では魔界とはなんだ?冥界の類いの物か?」

ガッシュ「うぬう…魔界はそれとはまた違う物だ。私のような魔物が、たくさん暮らしておる」

綺礼(魔物だと…!?)

アーチャー「…ふん、そうか。おいアサシン、そこな雑種から手を引け」

アサシン「何?何故貴様に命令されなければならない…こちらは、こいつにやられている者も」

アーチャー「たわけ!貴様の下らん事情など聞いておらぬわ!」

綺礼「…アサシン」

アサシン「ちっ…」

痺れを切らした英霊王の一喝により、ウェイバーはアサシンの手から解放された。

ガッシュ「ウェイバー!無事か!?」

ウェイバー「…うう…」

ガッシュ「良かったのだ…」

時臣「英雄王!いったい何をお考えなのですか!」

アーチャー「慎め時臣。王の御前であるぞ?」

時臣「はっ!…しかし、何故あのサーヴァントを仕留めなかったのですか!?綺礼がマスターまで連れてきたというのに…」

アーチャー「あやつらが我の目にかなった。其だけにすぎん」

時臣「そのようなことが…」

綺礼「…師よ、まだ奴らにアサシンを付けております。どうかご安心を」

時臣「…ああ、すまないね」

アーチャー(ガッシュ…我の宝物庫にない宝物…精々、我を興じさせよ)

綺礼(英雄王…貴様、何を考えている?)

ガッシュ「大丈夫かの?ウェイバー」

ウェイバー「ああ…まだちょっと頭がくらくらするな…」

ガッシュ「ウヌ、…すまぬ、私のせいなのだ。おぬしの忠告を聞かなかったから、巻き込んでしまった」

ウェイバー「…いいよ、むしろお前が居なかったら、今ごろ僕は殺されてた。…凄いなお前は」

ガッシュ「? 何がなのだ?」

ウェイバー「…」

『己の沽券を示したいならば、足掻いてみろ。さすれば、何か見えてくるかもしれんな』

ウェイバー「…僕は、お前に頼ってばっかだな」

ガッシュ「うぬ?何と言ったのだ?聞こえなかったのだ」

ウェイバー「…なんでもない!さ、帰るぞガッシュ」

ガッシュ「ウヌ!今日のご飯も楽しみなのだ!」

一旦ここまで
時臣ってこれでいいのか…?

 ケイネスホテル

ライダー「おう、只今戻ったぞ!」

ケイネス「よくもおめおめと…貴様、今まで我々の拠点に戻らず、一体何処で何をしていた!それ相応の罰を受ける覚悟は…その袋は何だ?」

ライダー「これか?ほれ」

ケイネス「…呆れて物も言えんな」

ソラウ「ま、まあケイネス。聖杯戦争はこれからでしょう?そう気を落とさずに…」

ケイネス「ソラウ…全く君だけだよ、私の事を分かってくれるのは…」

ライダー「だがマスターよ、余もひとつ言いたいことがあってな。…貴様、余への魔力供給をもはや微弱に等しいほどしかしておらぬな?」

ケイネス「…何のことかね?」

ライダー「惚けるなよ。貴様程度の小物がやりそうなことを、余が見抜けぬと思っていたのか?」

ソラウ「やめなさいライダー!」

ケイネス「知らんな…だがライダー、所詮私の使い魔に過ぎない貴様が、私を小物呼ばわりとは…どうやら貴様は忠誠心というものが欠如しているようだな」

ライダー「慎重になるのも良いが、貴様はそれを通り越して臆病だ、と言ったのだ」

ケイネス「何…?」

ソラウ「む~…もう私知らない!下のケーキバイキングに行ってくるから!」

ケイネス「なっ…待ってくれソラウ!ちっ…」

ライダー「ふん…いざとなれば令呪で呼べ。余はこの空間は窮屈でたまらん」

ケイネス「…勝手にしろ」

ライダー「…少し走れば、頭も冷えたか」

ライダーは自分のマスターについて考えていた。自分への魔力供給は十分と言えるものではなく、現界することすら自前の魔力で補っていた。

マスターに忠実ではない自分への下らない仕打ちか、と放っておいたが最早無視できるものではなくケイネスに問い質したのだが、その返答は虚偽の物とは思えなかった。

ライダー(ならば何故…まさかあやつ、一人で聖杯戦争を勝ち抜く気であったか?だがそのような危うい道を、あの男は選ぶだろうか)

「…答えは得ましたか、ライダー」

ライダー「!!」

ライダー「…貴様は…ふはははは!なるほどそういうことか…一気に謎が解けたわい!」

「…何やら上機嫌のようだ…眉間の皺もなくなって…では心置き無くやれそうです。では、ライダー?」

「さようなら」

「ーーーーー!」


 アインツベルン城

切嗣「…さて、そろそろ行くか」

アイリ「ええ。…っ…!」

切嗣「アイリ!」

アイリ「…どうやら、またサーヴァントが脱落したようね」

切嗣「そうか…恐らくあのキャスターか?」

アイリ「さあ…そこまでは…でも切嗣、気負いすぎないで。舞弥さんの為にも、この戦いは勝たなくちゃ行けないけど…貴方は貴方のままで…」

切嗣「分かっているよ。さ、君はここに…」

イリヤ「あ、キリツグ!うそ、もういっちゃうのー!?」

切嗣「ごめんなイリヤ、僕もまだ忙しくてね…」

イリヤ「むー…せっかくかえってきたとおもったのにまたいっちゃうなんてー…」

アイリ「イリヤ、お父さんを困らせたらダメよ?」

イリヤ「はーい…じゃ、キリツグまたね!胡桃探し、次は絶対私が勝つんだから!」

切嗣「ああ…行ってくるよ、イリヤ」

セイバー「仕度はできましたか?」

切嗣「…」

セイバー(また口きいてくれなくなりましたね…)

 冬木

切嗣(舞弥という助手が居なくなった今…頼れる手駒はセイバーだけ…か。…うん?)

切嗣「これは…」

セイバー「如何しました切嗣?」

切嗣「…」

セイバー「…」

アイリ「…はあ…どうしたの、切嗣?」

切嗣「教会からだ。これより聖杯戦争を一時中断し、我々の総力を尽くして、キャスターを討伐する…功績を成した者には報酬として令呪一画…とね」

切嗣「だがここにあるキャスターは、恐らくあのキャスターの事ではない」

アイリ「貴方の言う、新しいキャスターの事ね?」

切嗣「そうだ。僕達を襲ったあのキャスター…そしてバーサーカーのマスターだった間桐雁夜。この二つが鍵を握っているが…」

アイリ「そのバーサーカーも、間桐雁夜の姿も見当たらない…」

セイバー「ではやはり、その行方不明のマスターから探したほうが良いのではありませんか?」

アイリ「…そうね、早くしないと、他の人に先越されちゃうものね」

切嗣(おかしい…何故雁夜が、あのキャスターを使役している?そしてバーサーカーをどうしたというんだ…)

ここまで

 マッケンジー宅

ウェイバー「……」

ガッシュ「ウェイバー、何をやっておるのだ?」

ウェイバー「ちょっと調べものをな…出たか!」

すぐに地図を取りだし、赤丸でポイントをチェックする。

ウェイバー「…うん、間違いない、ここだな」

数あるポイントから、一番核心的な物を絞り出す。

ガッシュ「ウヌ?何が分かったのだ?私には分からないのだ…」

ウェイバー「僕がマークしたのはキャスターの居場所さ…ほら、最近の連続誘拐事件があったろ?その周辺の水質を調べたら一発だったってわけ!」

ガッシュ「おお…やるではないかウェイバー!」

ウェイバー「…こんなの、魔術と呼べるか怪しいものなんだけどな…」

ウェイバー(僕がこいつの為に出来ること…それはサポートだ。なら、せめてどんなやり方でも力にならないとな)

ウェイバー「よし!じゃ、早速明日の朝出発するぞ!僕たちでキャスター討伐して、他のマスターに勝つんだ!」

ガッシュ「ウヌ、頑張ろうぞ!」

 地下道

ウェイバー「あれ…?この辺だと思ったんだけど…」

ガッシュ「うぬう、おぬしの見立てが外れたのではないか?」

ウェイバー「そんな…収穫なしかよ~…」

そこには何もなかった。魔術師の工房と呼べるものはなく、不自然なほどに跡形もなかった。…しかし、その痕は完全には消せていなかった。

ウェイバー「! これは…おい、見ろよガッシュ」

ガッシュ「ウヌ?」

ウェイバー「僅かに血痕が残ってる。やれやれ…消したはいいけど、やり方がちょっと杜撰だったみたいだな」

ウェイバー「多分やったのはキャスター以外のやつだけど…自分の工房がないキャスターなんて、僕に言わせれば…」

ガッシュ「! この気配…!ウェイバー!」

「…気づかれたか。よく鼻が利く…まるで野生の獣だな」

ウェイバー「アサシン…まだ僕たちを付け狙っていたのか!」

アサシン「同胞の雪辱…果たさせてもらうぞ!」

ガッシュ「来るぞ!」

ウェイバー「ああ!リベンジマッチだ!前の僕たちと違うところ…あいつに見せてやろうぜ!」

ガッシュ「うぬ!負けないのだ!」

ウェイバー『いいかガッシュ?お前の攻撃は三騎士はともかく、その他のサーヴァントにはなんとか通じるはずだ。で、問題は…』

ガッシュ『呪文が当たらないことであるな?』

ウェイバー『ああ…お前の術は口から発射されるから融通が効かないからな。だから僕が考えたのは…これだ』

微弱な魔力を光に変え、手から放出する。

ウェイバー『これを目印にするんだ。勿論、相手のいる方向にお前が向いていなかったら意味がないからな。…ほら、よーく光の形を見てみろ?』

ガッシュ『…おおお!ブリなのだー!あれは間違いなくブリなのだー!』

ウェイバー『お前があれだけ好き好き言ってたからな…これでやる気が出たか?』

ガッシュ『うぬ!…ほおお…!すごいのだ!泳いでおるのだー!』

ウェイバー『…ったく…』

子供だな、と言いかける。しかし今は、ガッシュのその顔に、素直に満たされていた。

ウェイバー『気づいたらこの本、読める所増えてたし…これ、どういう仕組みなんだろうな。ま、使える術が増えたってことでいいか』

アサシン「確実に殺してやろう…ふっ!」

ウェイバー(向かってくる…この距離ならザケルで十分だけど…)

ウェイバー「…よし!実践訓練だ!ガッシュ!」

ガッシュ「うぬ!」

ウェイバー「第二の術…ラシルド!」

ウェイバー(唱えたぞ!さあどうなる!?)

呪文の力で、突如ガッシュの前方に巨大な盾が現れた。

アサシン「何!?ぐっ…」

ガッシュの実力を舐めていたのか、正面突破しようとしたアサシンを、ラシルドが行く手を阻む。

ウェイバー「防御呪文か…!これなら使いやすそうだ!」

アサシン「ちっ…それがどうしたぁ!」

しかし、その壁は何秒と持たず破られてしまった。

ウェイバー「嘘だろ!?アサシンに破られるとか…いいや、落ち込んでる暇はない!次はこれだ!」

ウェイバー「第三の術!ジケルド!」

ガッシュ「」

ウェイバー(よし!狙い通り!…っておい)

アサシン「…何?」

遅い。ガッシュから放たれたそれは、自分でも視認できるほどの遅さの球体だった。

アサシン「…相手を舐めていたのは、どうやら貴様らのほうらしいな…」

当然のようにアサシンは呪文を避け、ガッシュたちに襲いかかる。

ウェイバー「くううう…!なんなんだよこの呪文どもは!ガッシュ!僕にどうしろってんだよ!」

ガッシュ「う、うぬ!?今言われても…ぬわあ!」

ウェイバー「頼むから僕をがっかりさせないでくれよ!…うわあ!」

ガッシュ「ナアア!避けるのだウェイバー!」

ウェイバー「ヌオオオオオ!ちくしょおおおお!」

アサシン「ふざけて…いるのか貴様らぁぁ!」

ウェイバー「残念ながら大真面目だぁぁぁ!」

アサシン「なら逃げるなぁ!」

ガッシュ「ウヌウ!どうすれば…」

ウェイバー(いや待てよ…もしかしたらあの術、僕が見落としているだけで、まだ別の効果が…)

ウェイバー「もう一発だ!ジケルド!」

アサシン「!? しまっ!」

ウェイバー「当たった!これでどうなる…」

アサシン「…何も起きないぞ」

ウェイバー「オオオオオオ!」

ガッシュ「落ち着くのだウェイバー!ここは普通に戦うのだ!一度退かせた相手、負けるはずがない!」

ウェイバー「ぐっ…そうだな!行くぞガッシュ!」

アサシン「一度…だと?貴様…白々しい事を…」

ウェイバー「え?」

アサシン「貴様らは絶対に許さぬ!我ら影の群れ、死力を尽くして貴様らをなぶり殺してやる!」

ウェイバー「本気か…!いいかガッシュ!今使える術は実質二つだが、攻撃呪文は一つだけだ!その一発に全ての力を込める!」

ガッシュ「うぬ!」

アサシン「まずはその、忌々しいサーヴァントからだ!」

アサシンは影より何体もの暗殺者を呼び出した。

ウェイバー「な…アサシンはこんなにいたのか!?じゃあこいつらはアーチャーに殺されたアサシンや、倉庫であったアサシンとは別の…」

アサシン「今更気づいても遅い…これを言うのも二度目になる」

アサシン「さあ、音もたてずとは言うまい!じっくり苦しみ、辱しめ、そして息の根を止めてやる!」

ウェイバー「駄目だ…的が絞れない!」

アサシン「無駄だ…」

ガッシュ「ぬっ…ぬわあああ!」

ウェイバー「ガッシュ!くっ…何も出来ないのか!」

赤い本に恨みをぶつける。しかし何も状況が変わることはない。

ウェイバー「くそっ…僕のせいで…またガッシュが傷ついて…」

ガッシュ「む…まだまだぁ!」

『死に物狂いで足掻け。貴様に出来ることは、最早それのみであろう?』

ウェイバー「…! 諦めるな、考えろ!僕に出来るのはそれだけ…」

アサシン「…こうもあっさりだと虚しいものだな。貴様、その程度ではなかろう?」

ガッシュ「ぐぬ…何を言っておるのだ?」

アサシン「まだ惚けるか…ならば貴様を拷問にかけてでも…」

ウェイバー「…!ガッシュ、こっちだ!」

ガッシュ「ぬおお!?」

満身創痍のガッシュを強引に引っ張り出す。上手くいくか分からないが、もうこれしか手はない。

アサシン「ふっ…我らに敏捷性で勝てると思うのか!?」

ウェイバー「ぐあああ!」

地面に転がされる。だがすぐに立ち上がる。諦めたらそこで終わりだ。

ウェイバー「う…うおおおおお!」

ガッシュ「ウ…ウェイバー…」

ウェイバー(なんだよ…そんな悲しい顔すんなよ…僕はまだ、諦めてなんかないぞ!)

ウェイバー「心配なんかするなよ!僕たちは勝つ…必ず勝つんだ!」

ガッシュ「! ウヌ!」

ウェイバー「はあ…はあ…」 

アサシン「くっ…無意味な抵抗を…」

ウェイバー「それは…どうかな!ガッシュ、構えろ!」

ガッシュ「ウヌ!」

ウェイバー「ラシルド!」

アサシン「なっ…」

アサシン(この狭い空間では、盾の役目は果たせずとも、足止めにはなるということか…)

アサシン「だが数秒に過ぎぬ!貴様も理解した上でて…」

ウェイバー「ああそうさ!持つのはほんの僅かな数秒!だがその数秒が、お前の命運を分けるのさ!」

ウェイバー「…足下をよーく見てみやがれ!」

アサシン「何…?…!」

アサシンの足下は、一面水浸しになっていた。

ウェイバー「水質を研究したときに、ここが一番水辺に近いって分かってたんだよ!」

アサシン「なっ…それで貴様は…」

ウェイバー「今更気づいても遅い…ってな!」

ウェイバー「ザケル!!!」

アサシン「ぐっ…あああああ!」

アサシン「馬鹿な…」

ウェイバー「敗因は分かってるだろ?僕たちを舐めすぎたことと…」

アサシン「ふん…それは問題外の事だ。だが腑に落ちぬ!貴様の力はこのようなものではないはずだ!」

ウェイバー「何だって?…さっきから気になってたんだけど、お前の言ってることがどうも噛み合わないんだが…ガッシュに何かあるのか?」

アサシン「ガッシュ…?いいや違う!違うぞ!あれだけの仕打ちをしておいて、我らが忘れるわけがなかろう!」

ウェイバー「…お前、僕がいないところでなにしたんだよ」

ガッシュ「ウヌ…?私がおぬしに会ったのはあの倉庫の時だけのはずだがのう…」

アサシン「まだしらを切るか!マスターやアーチャーには気づかれなかっただろうが、我らにそう易々とまかり通ると思うな!」

ウェイバー「おい…お前一体何と勘違いを…」

アサシン「忘れぬぞ…貴様は我らが必ずこの手で殺す…」



アサシン「雷帝ゼオン!」


ガッシュ「…な…」

ウェイバー「に…?」

そう言い残すと、アサシンは姿を消した。


…僕らはまだ気づいていなかった。僕らの他にも、魔界から襲来してきたものが、既にこの聖杯戦争を壊そうとしていたことを。

そしてこれをきっかけに、さらに苦しい戦いが始まろうとしていたことを。

いったんここまでです。
うん…これちゃんと風呂敷畳めるか心配だな…まあ頑張ります。

 マッケンジー宅

グレン「おお、お帰りウェイバー、ガッシュ」

ウェイバー「ただいま」

ガッシュ「…うぬ」

ウェイバー「…」

マーサ「どうしたのガッシュちゃん?どこか具合でも悪いの?」

ガッシュ「ぬ…そ、そういうわけではないのだ!大丈夫なのだ!」

ウェイバー「…」

戦いが終わってから、ガッシュはずっとこんな調子だった。なにも言わず一人で考え込んでいるのなら僕に話してほしいんだけど…やはりあのゼオンという名を聞いてから様子がおかしい。

ガッシュ「…ウェイバー、話があるのだ」

ウェイバー「…ああ」

ウェイバー「おじいさんおばあさん、悪いけど今日は一緒にご飯食べれないや」

マーサ「あらそうなの?でも、お腹が空いたらいつでも言ってね。用意するから」

ガッシュ「ウヌ、ありがとうなのだ」

グレン「……」

 ウェイバーの部屋

ウェイバー「よし、今すぐ話せ」

ガッシュ「うぬ!?おぬし、もう少し気遣いというものが…」

ウェイバー「そうも言ってられないだろ?さ、早く」

こういうときはいつもと同じ調子のほうがいいだろう。相手を心配させるよりか、こちらのほうがいくらか話しやすいはずだ。

ガッシュ「…ゼオンというのは、私にそっくりな兄の名前なのだ。魔界におった時は、厳しくも心優しき兄だったはず…なのだが」

ガッシュ「うぬう、やはり思い出せないのだ。どうやらここに来てから少しずつ、私の記憶も甦って来るだろうと思っておったが…すまぬ、役に立てそうもないのう」

ウェイバー「そうか…でも、お前の双子の兄がこの戦争に参加してるってことは間違いないわけだ」

ガッシュ「うぬ…あり得ぬがそうなのであろう」

ウェイバー(あのアサシンが言うには、そのゼオンってやつが何体ものアサシンを倒していったらしいけど…情報が少なすぎるしなぁ)

ウェイバー「兎に角、お前には悪いけど、今はキャスター討伐のほうが優先だ。他に比べて僕たちは、少しでも勝つ可能性を上げないとな」

ガッシュ「分かっておる。だが…もし私がゼオンと戦うことになれば…」

ウェイバー「ま、その時はその時だ。考えても仕方ないだろ?」

ガッシュ「ウヌ…」

ウェイバー(気になったのはそれだけじゃない…地下道での証拠隠滅…あれは一体誰がやったんだ?まるで辺り一面を焼き払ったかのような手口…そして工房への未練のなさ。まさかキャスターはもう…)

 遠坂邸 地下

綺礼「アサシン…貴様らが、どれだけの失態を犯したか理解しているか?」

アサシン「…反論の余地もありませぬ。完全に我らの独断で、戦力を消耗してしまい…」

綺礼「貴様の目的はあくまで諜報、そして師に確実な勝利を与えるものだと、その胸に刻んでいたと思っていたが…あまり失望させるな」

アサシン「はっ!このアサシン、必ずや名誉を挽回してみせましょう」

綺礼「…もうよい、下がれ」

アサシン「…」

アーチャー「…なにやら、またぞろ貴様を悩ませる事が生じたようだなあ綺礼」

綺礼「貴様は随分と気分が良さそうだな、アーチャー」

アーチャー「ふん…時臣め、やはりつまらぬ男よ。我の機嫌を取ろうとしていたが…下らん。奴にも、もう少し諧謔を弄する所があれば、我は退屈せずに済むのだがな」

綺礼「…それは、魔術師としてではなく、人としてということか?」

アーチャー「ふっ…そうとも言えなくもないが…まあ、あながち間違ってはおらぬか。臣下としては結構だが、奴には我を従えるだけの度量は持ち合わせてはおらぬ」

綺礼「人類最古の王がこうも傲慢とは…私には信じられんな」

アーチャー「ふっ…慢心と言え、綺礼よ。ガッシュもそうだが…我は、貴様にも期待しておるのだぞ?我を興じさせる器かどうか、我の目に狂いはない」

綺礼「…ほざけ」

 間桐邸

切嗣「…よし、結界は解除した。アイリ、君はここで待機しておいてくれ」

アイリ「…ええ、足手まといにはならないわ」

セイバー「切嗣、貴方の予想が当たっているならば、ここに間桐雁夜がいるはずだが、何を仕掛けてくるか分かりません。準備はよろしいですか?」

切嗣(…言われるまでもない。僕が案じているのは、復讐ということを頭の片隅から消せていないことだけだ)

切嗣「行くぞ」

セイバー「はい」

アイリ(切嗣…この争いが始まってから、私に見せたこともない冷徹な顔をするようになった。…まるで心は鉄のよう)



臓硯「…どうやら、招かれざる客人のようじゃな」

切嗣「…吐け。間桐雁夜はどこだ?」

鶴野「ひっ!し、知らない!止めてくれ!」

切嗣「……」

こめかみにキャリコを押し付ける。次はないと、その頭に言い聞かせるような仕草だった。

鶴野「ほ、本当なんだ!信じてくれよ!」

切嗣「ちっ…」

セイバー「切嗣!この館にはおぞましい数の蟲がいます!得るものがないなら、即刻ここからの退避を考えるべきかと!」

切嗣(そう言えばマキリについて何も話してなかったな…)

セイバー「…それと、蟲蔵の中に一人の娘が…」

切嗣「…」

セイバー「切嗣!聞いているのですか!」

切嗣「…」

セイバー「~~!」


「そこまでじゃ、魔術師殺し」

切嗣「! 漸くお出ましか…」

臓硯「クックッ…貴様もよくここに行き着いた誉めてやろう。だがの、儂の計画と貴様の思い描いていたものとはちいと違う」

切嗣「何…?」

臓硯「もてなす代わりじゃ…一つ教えてやろう。あの英雄ならざるもの…ガッシュといったか。奴には気をつけたほうがよい」

セイバー「…貴様、ガッシュのことを知っているのか?」

臓硯「さあの。年寄りの戯言、聞き流してもいっこうに構いはせん」

切嗣「間桐臓硯…お前は何を企んでいる?」

臓硯「…そも儂は、雁夜がこの聖杯戦争を勝ち抜けるとはつゆにも思っておらんかった。…だが事情が変わってな」

臓硯「まあ、何であれ、雁夜はここにはおらぬ。用がすんだなら消えるがよい」

セイバー「…あの少女をどうする気だ」

臓硯「それは貴様らの知ったことではあるまいて」

切嗣「…そうか」

有無を言わず臓硯の頭を撃ち抜く。しかし手応えはない。

切嗣(感触はない…か)

「…もうひとつ忠告しておこうかの」

何処からともなく蟲が集まり、臓硯の姿になった。

臓硯「この聖杯戦争は普通ではない…貴様の考えている恒常の常々が通じると思わんことだ」

切嗣「……」

ここまで
てか今気づいたけど一週間以上だらだらss書いてたのか…
でもこのまま構想通りいくとまだ長くなると思いますね。お付き合いしてくれたら嬉しいです。

怯えろブスはベクターボールだろ!いい加減にしろ!

アイリ「切嗣!…その様子じゃ、当てが外れたようね」

切嗣「ああ…だが、確かな収穫はあった」

切嗣「間桐臓硯、そして間桐雁夜…この二人は、あのキャスターに何らかの形で関与しているとね」 

アイリ「そう…セイバーは気づいた?」 

セイバー「…まあ、多少は」

セイバー(直感に過ぎませんが)

切嗣「しかし、その行方は皆目検討もつかない。とりあえずはキャスターを追うことは変わらないが…さて、どうしたものかな」

アイリ「…」

セイバー「マスター、アイリスフィールの容態も芳しくありません。あまり深追いせず退くべきかと…」

アイリ「問題ないわよセイバー!今もこうやって貴女の全て遠き理想郷のおかげで…」

切嗣「無理はいけないよアイリ。…そうだな、ここは撤退するか」

アイリ「…ごめんなさい、二人とも」

セイバー「…切嗣、私も貴方に相談したいことがあります。貴方はガッシュ、という英霊を存じていますか?」

アイリ「私も気になってたの。とても英雄とは呼べない、小さな子供で…マスターは赤い本を持ってたわね。…切嗣は知らない?」

切嗣「いや、分からないな」

切嗣(臓硯の言っていた奴か…今回の聖杯戦争はイレギュラー、あの英雄ならざるものには気をつけろ…か)

切嗣「だが僕らの標的であることに変わりはない。相手が誰であろうと、僕がやることは同じだ」

切嗣「早々から舞弥を失ったが、キャスター討伐には差し支えはない。僕たちは依然として、間桐雁夜並びに他のマスターを倒す」

セイバー「…心得ています」

セイバー(衛宮切嗣…この男は何も感じていないのか?…いや、それがこの男の決意だというのか?)

セイバー(そしてガッシュ…貴方は一体何者なんだ)

切嗣「…セイバーも気づいていただろうが」

セイバー「! な、なんでしょうかマスター」

切嗣「上手く誤魔化したつもりか知らないが…あの館には、まだ何か別の魔力が確認できた。恐らくそれがキャスターだ」

アイリ「あ!だからキャスターと関係があるって言ってたのね!」

切嗣「だが、元々搦め手を得意にするキャスターだ。いくらセイバーとはいえ、手の内が分からないまま戦うにはリスクが高すぎる」

セイバー「私は別に遅れをとるようなことは…」

アイリ「もしも、ってことがあるでしょセイバー?」

アイリ(舞弥さんを殺した張本人がそこにいたのに、心を殺して今の状況を優先したんですもの。私たちが非難する資格はないわ)

セイバー「…き、切嗣。一応聞いておきますが、貴方は私の実力を信用しているのですか?」

切嗣「…今は体制を建て直すほうが優先だ。さ、帰ろうアイリ」

アイリ「え、ええ…」

セイバー「答えてください!」

切嗣「…勿論だ、僕の駒としては申し分ない」

セイバー「切嗣…」

キャスター「…行きましたか」

臓硯「貴様の粗末な霊体化では、正体は気づかれておるだろうな」

キャスター「ええ…しかし我々の計画には何の影響もないでしょう?」

臓硯「…まあよい。悲願を達成するためには貴様の力が必要であるからな」

キャスター「そう謙遜せず…あなたの助力にも感謝していますよゾウケン?おかげで、この戦いでは本来の私以上の力が発揮できる」

キャスター「あの時の誓い通り…必ず、あなたに聖杯を与えましょう」

臓硯「なればこそ、尚更次の一手を確実にな」

キャスター「ふふ…全て掌の上だと分かっているくせに…まあ、よいでしょう」


キャスター「ケイネス・エルメロイ・アーチボルト…さて、いよいよ第二段階へと進みましょうか」

 マッケンジー宅

ガッシュ「…」

ウェイバー「なーに朝からテレビとにらめっこしてんだよ」

ガッシュ「ぬ?おはようなのだウェイバー」

ガッシュ「いやの、おぬしがニュースを見たいといっておるからずっとかけておるのだが…私にはイマイチ…」

 《…とあり、警察はさらに犯行の手が…》

ウェイバー「…!これって…」

ガッシュ「どうしたのだウェイバー?」

ウェイバー「明らかに違う…今までのやつはどこか犯行を楽しんでる節があったけど…これは、前の犯人の殺しかたをなぞろうとしているだけなんだよ」

ガッシュ「な…全然分からぬ…」

ウェイバー「そりゃあ、一般人には分からないだろうさ。ってか分かってたまるかっての!」

ウェイバー「…とにかく、決まりだな」

ガッシュ「ウヌ?何がだ?」

ウェイバー「キャスターは既に倒されてる…僕たちは、見えない敵にとらわれてるってことだ」

ガッシュ「!!」

ウェイバー「はあ…教会側はこのこと知ってるのか?じゃないと、このキャスター討伐の命令、永遠に終わらないぞ…」

ガッシュ「うぬう…」

ここまで
風邪引いたかも…また更新遅くなるかも…死ぬかも…

ウェイバー「…仕方ないなぁ、この僕自ら教えにいってやるか!」

ガッシュ「ウヌ、嘘はよくないからな!」

ウェイバー「別に嘘ついてるわけじゃないし!…それから、特訓もしないとな!アサシンなんかにてこずってたら、この先が思いやられるからな」

ガッシュ「特訓…なんだか懐かしい気分なのだ」

ウェイバー「そうか?僕なんか魔術の研究で、研鑽の毎日だったぞ?」

ガッシュ「ウヌウ、そうでは…」

ウェイバー「よし、飯食べたら出掛けるぞ」

ガッシュ「…分かったのだ」

ウェイバー「…?」

マーサ「何、またどこか出掛けるの二人とも?最近物騒だから…子供だけで出歩くのも危ないと思うけど」

ウェイバー「おばあさん、一緒にしないでよ!いい?僕はこいつの保護者だ!だから問題なし!安心してよ、僕ももう大人なんだし…」

ガッシュ「おぬしは大人と言えるほどには見えぬが…」

ウェイバー「…あのな、こう見えても僕もうすぐ二十歳だからな」

ガッシュ「な!?…本当か?」

ウェイバー「くっ、僕も気にしてるんだからな!くそっ、せめて後もう少し背が高ければ…」

ガッシュ「ウヌウ…信じられぬ」

ウェイバー「…こんにゃろ~…」

ガッシュ「ハハハ!くすぐったいのだウェイバー!オホホ!オホホホホホ!」

ウェイバー「どうだー、思い知ったか!」

ガッシュ「ヌハハハハハ!」

マーサ「あらあら、元気ねぇ」

ウェイバー「ハハハハハ!…はっ!?…そうだ、だから今日も遅く…」

グレン「ちょいと待てウェイバー」

ウェイバー「おじいさん…どうしたのさ?」

グレン「お前さんに話があってな…なに、すぐに終わる」

ウェイバー「…分かった。大人しく待ってろよガッシュ」

ガッシュ「ウヌ」

グレン「じゃ、悪いけど二人だけにさせてくれ」

グレン「………」

ガッシュ「……!」

ガッシュ(グレン殿、とても恐い顔をしていたのだ…)

ウェイバー(まさか暗示が解けたのか?参ったな…またいちからかけ直さないと…)

ウェイバー「で?話ってなに?」

グレン「…お前さん、ガッシュが来てからずっと帰りが遅いな」

ウェイバー「…それで?いいじゃん、別におじいさんたちに迷惑かけてないし」

グレン「気づいてないと思っておったか?最近お前さんらが傷だらけのまま家に帰ってきたことを」

ウェイバー「…!!」

ウェイバー「…やっぱり、暗示が不十分だったか」

グレン「暗示?ああ、それで家に入り込んでおったのか」

ウェイバー「…僕たちを追い出す?」

グレン「まさか!むしろその逆じゃ。お前さんらにはずっとここにいてほしいぐらいだよ」

ウェイバー「え?」

グレン「お前さんらが来てから、妻の様子も驚くほど明るくなった…それこそ、光が訪れたかのようにな」

ウェイバー「…」

グレン「正直、お前さんらが何をしておるかはさっぱり分からん。ただ、ワシが言いたいのは…」

グレン「暗示とやらはもう要らん。ここはもうお前さんらの家じゃ、家族じゃ。だから、何時だってここに戻ってこい!ワシらは待っておるからな!」

ウェイバー「!」

予想外の答えだった。また暗示をかけようか、新しい寝床を探そうか、と覚悟していた僕を、おじいさんは迎え入れると言ってくれた。

本当の人の暖かさというものを、僕ははじめて知ったかもしれない。

ウェイバー「ありがとう…ありがとうおじいさん」

グレン「…うん、いってらっしゃいウェイバー」

ウェイバー「うん、行ってきます!」

ガッシュ「…話は終わったかの?」

ウェイバー「ガッシュ!お前な、大人しくしてろって…」

ガッシュ「ウヌ?おぬしなぜ泣いておる?」

ウェイバー「な、泣いてなんかない!ほら、行くぞガッシュ!」

ガッシュ「ヌオオ!ムリヤリ鞄に入れないでほしいのだー!」

マーサ「行くのね、いってらっしゃい」

グレン「ガッシュ、ウェイバーを頼んだぞ」

ガッシュ「いってきますなのだー!」

ウェイバー「…はは」

たまには、こういうのもありかな。

 教会

ウェイバー「…着いたぞガッシュ、辺りはどうだ?」

ガッシュ「うぬ、今日はアサシンもいないようなのだ」

ウェイバー「オッケー。ま、さすがにここで殺しあうことなんかないか…」

「あら?貴方達は…」

ウェイバー「…うわ、マジかよ」

ガッシュ「! セイバー!」

セイバー「おや、ガッシュではありませんか。元気そうで何より」  

アイリ「教会に何しにきたのかしら?もしかして、自分のサーヴァントを手放したいとか?」

ウェイバー「んなわけあるかー!僕たちは…」

ウェイバー(…待てよ、この情報を売るって手もあるな…セイバーを味方につければこちらの)

ガッシュ「実はの、おぬしらが気付かない間に、キャスターはもう敗退しておったのだ!ウェイバーがぜーんぶ突き止めたのだ!」

 「「!!」」

ウェイバー「…台無しだバカヤロー」

アイリ「セイバー、この子達やはり…」

セイバー「ええ。…ガッシュとそのマスター、話がある。忍びないですが、付き合って貰います」

ウェイバー「なんだって…?」

ガッシュ「ウヌ?」

ウェイバー「…つまり、アンタたちもルートは違うけどたどり着いたってわけか」

アイリ「正規のキャスターはもういない。そして裏で暗躍しているマスター、さらには姿が全く確認できないサーヴァントもいて…」

ウェイバー(ゼオンのことじゃなさそうだな…ガッシュにそっくりらしいし、姿が視認できないなんてことはないだろ)

セイバー「それとガッシュ。貴方についても聞きたいことがある。貴方は何者だ?そしてどこの英雄なのです?」

ガッシュ「ヌ…すまぬ、答えることは出来ないのだ。私は記憶がない。おぬしに話せるような事は何もないのだ」

アイリ「…何らかの不手際で、記憶の一部が飛んじゃったのかしら」

ウェイバー「なんだよ!僕のせいだって言いたいのか!?」

セイバー「違うのですか?考えられるほぼ全ての要因は、貴方から生じると思うのですが…」

ウェイバー「なっ…」
 
アイリ「セイバー、直球すぎ」


「…何だ、騒がしいな」

璃正「何故ここに屯している?今はキャスター討伐を最優先にと伝えたはずだが…」

アイリ「神父、その件について報告が」

璃正「何?」



璃正「成る程。では既にキャスターはマスター共々倒されたと」

アイリ「ええ。間違いありません」

璃正「ではこの命も取り下げねばな…令呪の件だが、それならば致し方あるまい。報酬は誰にも与えることはできんな」

ガッシュ「ウヌ?そうなのか?」

ウェイバー「ちぇっ…だから独り占めしたかったんだよな~…」

璃正「御苦労様。それでは、これからの健闘を祈っている」

セイバー「言われずとも、そのつもりです」

ウェイバー「…はぁ」

ウェイバー「なんだか損した気分だ…」

ガッシュ「ヌウ…」

アイリ「まあまあ、このままじゃらちが明かなかったから…貴方もそう思ったんでしょう?」  

ウェイバー「む…それはそうだが…アンタはいいのかよアインツベルン?」

セイバー「アイリスフィールは貴方と違って潔白な方だ。好機を逃したと、その様な浅ましい考えはしていない」

アイリ「ふふ…買いかぶりすぎよ」

ウェイバー「理不尽だぁ…」

ガッシュ「ウェイバー…ちょっと」

ウェイバー「ん?なんだよ」

ガッシュ「もしかしたらゼオンについて知ってるかもしれぬ…何か聞いたほうが良いのではないか?」

ウェイバー「いや、あいつらはシロだね。それに、ここまでギブアンドテイクできてる。ここでギブされたら何をテイクする羽目になるか…」

ガッシュ「ウヌ…」


セイバー「それでは、次こそは誉れある戦いを…」

ガッシュ「ウヌ!またなのだ!」

アイリ「あの子、自分の立場分かってるのかしら…」

ウェイバー「何で楽しそうにしてるんだお前は!」

ガッシュ「ウヌ?また会えることに変わりはないのだ!」

ウェイバー「…お前、段々緊張感ってものが無くなってないか?」



切嗣「お疲れさま…表向きのマスターとはいえ、手間をかけさせたね」

アイリ「ううん…でもあの子、やっぱり不思議な子…まるで敵意を感じないもの」

切嗣「…油断はいけない。あんな子供でも英霊、牙を隠し持っているにちがいない」

セイバー「…確かに、底知れない何かは、あのガッシュからは感じました」 

セイバー(直感に過ぎませんが)

切嗣「直に他のマスターにもこの情報は広まる…その時が勝負だ」

切嗣「僕たちの今の標的…それは…」

キャスター「ケイネス・エルメロイ・アーチボルト…貴方には私と協力してもらいますよ」

ケイネス「なっ…貴様、私の魔術工房をいとも容易く破ったというのか…」  

キャスター「貴方に拒否権は存在しない…さあ、交渉を始めましょうか」

キャスター「逆らえばどうなるか…流石の貴方もお分かりでしょう?」

ソラウ「…ケイ…ネス…ごめんなさい…」

ケイネス「……」

璃正「…との事」

時臣「策は失敗に終わったか…しかし綺礼、アサシンで確認することは出来なかったのかね?」

綺礼「…そうですね、あのサーヴァント周辺には、あまり注意を向けていなかったもので」

時臣「そうか…君らしくもない」

璃正「気を抜くな、ということだ綺礼」

アーチャー「であれば、どうする時臣。貴様の采配によっては、我が動くのもやぶさかではない」

時臣「…王よ、今度こそは私に…」

綺礼「…」

アーチャー「…何処へ行く?」

綺礼「邪魔者の始末…なに、アサシンが役に立ちそうもないのでな。師の手を煩わせるまでもあるまい」

アーチャー「ふん…貴様の建前というのはそれか?」

綺礼「何を言っている…」

アーチャー「貴様は気づいていたのだろう?隠密行動程度しか得手のないアサシンだ、消えたサーヴァントの行方は把握しているはずであろう?それであえて時臣には告げなかった」

綺礼「…それは貴様の憶測にすぎん」

アーチャー「やはり自ずから気づかせるのが良いか?…綺礼よ、貴様のその奥底に眠っているもの…其が何か、戦いでその霧を払うがいい」

綺礼「…言われるまでもない」

綺礼(衛宮切嗣…貴様は何を得たのか、その答えを私はどこまでも追い続けよう)

ここまで
全く戦わせられずすまぬ…すまぬのだ

うわ恥ずかしい
日本語がくそだからこんなミスするんですね
ギブアンドテイクの所は脳内補完してくれるとありがたいです

雁夜「……」

綺礼「見つけたぞ、間桐雁夜」

雁夜「…あ…?」

綺礼「バーサーカーの行方…そしてあの夜の行動…お前には問わねばならない事が多々ある。こちらに来て貰うぞ」

雁夜「…う……」

綺礼「……?」

雁夜「あ…ウウウウウ…!」

綺礼「な…」

それは綺礼が感じたことのない魔力、この世の物質では形容しがたいモノだった。間桐雁夜だったモノは、人とは呼べない蟲の様な姿へと変化を遂げた。

綺礼「…ふん!」

容赦なく何度も拳を叩き込む。しかし雁夜だったモノはその度に周りの蟲から元の姿を形成した。

綺礼(思った以上にしぶとい…時臣師なら灰塵としていたところだろうが…)

綺礼「ちっ…アサシン!」

アサシン「はっ!」

綺礼「手を貸してもらうぞ。貴様らならあの程度、造作もあるまい?」

アサシン「承知。我らの力を今一度見直してもらう絶好の機会、逃しはしませぬ」

雁夜「アアアアアアアア!」

時臣「ならば………では?」

アーチャー「却下だ」

時臣「…英雄王、なぜ私の策に賛同なさらないのですか!」

アーチャー「時臣…貴様は退屈な男よな、そのような策を労して、結果無駄になったではないか」

時臣「な…これは我々が勝ち抜くためには必須の…」

アーチャー「そこがつまらんと言っておるのだ!我の力を侮りすぎだ貴様は!その不敬は見のがせるものではないぞ!」

時臣「くっ…出すぎた真似を…どうか慈悲を…英雄王」

時臣(確かにアーチャーは最強と言っても過言ではない…だが慢心故に奇策に出られると敗北する可能性も出てくる…いかん、常に優雅たれ、だ)

アーチャー「我は貴様の臣下の礼は受け取ろう…だがそれは別の事だ!次我を愚弄するような素振りを見せれば、分かっておるだろうな!」

時臣「……」

アーチャー「時間の浪費だ…我は下々の様子を見てくるとしよう」

時臣(何故だ…何故思惑通りにいかない…)



???「…目的は…あれ、を…」

キャスター「ええ、そうですよ。さあ、貴方の心の赴くままに」

???「……」

 廃工場

ウェイバー「じゃ、始めるぞ!」

ガッシュ「ウヌ!」

アサシンとの戦闘後、使える呪文もかなり増えた。これからに向けての修行として、適当に目印をつけて、そこに術を放つ。それを日々のトレーニングとした。

ウェイバー「第五の術…ザケルガ!」

ガッシュ「」

ウェイバー「これも電撃か…でもザケルとは少し形状が違うみたいだな」

ガッシュ「どうであったか?」

ウェイバー「まあ悪くない。なら次は…ラウザルク!」

ガッシュ「ぬ…ヌオオオオオ!体が強くなった気がするのだー!」

ウェイバー「肉体強化か…しかも気を失わないときた!よしよし、いいぞ!」

ウェイバー「よーし、このまま新呪文三連発だ!ザグルゼム!」

ガッシュ「」

ウェイバー「お…電気の塊…ジケルドとは違うタイプか。でもなんか勢いないなぁ…」

用意した的には当たったが、ザケルほどの威力は無かった。

ウェイバー「ハズレ呪文か?…いや、また僕が見過ごしているだけかも…」

ウェイバー「ええーい、物は試しだ!ザケル!ザケルガ!ザグルゼム!ラシルドジケルドラウザルクゥ!」

ガッシュ「ウェイバー!そんなに唱えたら…」

「「ウワアアアアアアアア!」」

その後ガッシュ達は、初日から貴重な修行場所を失ってしまった事を死ぬほど後悔した。

ここまで
病み上がりきーつい

一応把握しているつもりです
術特訓のシーンはラウザルク発動→解除してからザグルゼムということで

ウェイバー「痛っ…あーくそ!やりすぎだ!」

ガッシュ「…大丈夫かの?」

ウェイバー「最悪だ!新しい呪文のせいで、僕の体はボロボロだ!…まあ、少し調子に乗ったとは思うけどさ」

ガッシュ「ウヌウ…新しい呪文の力も分かったからよいではないか!」

ウェイバー「ああ…でもお前、自分が使ってた術の能力まで忘れてしまったとはな。お前の魔界の記憶ってのはどこまで残ってるわけ?」

ガッシュ「私が思い出せるのは魔界の王だったこと、一度人間界に来て戦ったことがあること、他の魔物のことぐらいかの。だがここに召喚されてから、魔界の記憶も薄れてきおる…」

ウェイバー「はあ!?それを早く言え!…だから段々性格が子供っぽくなって…」

ガッシュ「ウヌ?これは元からなのだ」

ウェイバー「…さいですか」

ウェイバー「もう記憶が戻るのは諦めたほうが良さそうだな…」

ガッシュ「ウヌ!?それは困るのだ!」

ウェイバー「お前がいつ人間界で戦ったか分かるなら何か資料が残ってるかもしれないけど…ここ最近雷の災害とか起きてないしな…」

ガッシュ「ウヌ…しかし私は確かにこの世界で」

ガッシュ(いや…ここが別の世界というのもあり得るのだ。そういえばカマキリジョーの姿もちょっとしぶくなっていたような…)

ウェイバー「しっかしそれにしても、人間でお前と上手くやれる奴なんて、よっぽど頭が良いか、相当なバカなんだろうな」

ガッシュ「ウェイバーはどっちなのだ?」

ウェイバー「前者だ!…疲れたな今日も…」

ガッシュ「ウヌ!今日もご飯が楽しみなのだ!」

ウェイバー「お前そればっかかよ!」

雁夜「ぐ…あ……」

アサシン「他愛なし…」

綺礼「よくやったアサシン。見事だったぞ?」

アサシン「光栄です…しかしマスター、何故この者を?」

綺礼「お前も見ていただろう?あの夜の出来事を」

アサシン「はい…ですが、マスターがこの件は内密にと申しつけられましたので」

綺礼「ああ。幻惑の類いではないかと、私も目を疑ったからな」

雁夜「あ…う…あ…」

綺礼「だが、何か聞き出せる様子ではあるまい。始末しろアサシン」

アサシン「宜しいのですか?」

綺礼「構わんさ。別段、我々の脅威に成りうるとは思えん」

綺礼(衛宮切嗣への手がかりにはならなかったか…)

アサシン「では…」

「それは困りますね」

綺礼「!!」

アサシン「貴様…!」

キャスター「フフ…」

キャスター「ここでに見殺しにしたら、ゾウケンとの関係も気まずくなります…それにカリヤにもまだ踊ってもらわないと」

綺礼「丁度いい…貴様に問い質すとしよう!」

キャスター「図に乗るなよゴミが。…さあ来い、こいつらを倒せ!」

ゼオン「……!」

アサシン「なっ…いいだろう!おあつらえ向きな戦いだ、此方も全力でいかせてもらおうではないか!」

アサシンが影より何体もの姿を現す。だがキャスターとゼオンは、静かにその様子を見ていた。

綺礼「では此方も全力でいかせてもらうぞ、悪魔のサーヴァント」

キャスター「フフフ…それが私の通り名ですか?見ればわかるでしょう、私はキャスターですよ」

綺礼「聖杯戦争でのキャスターは既に脱落した!貴様がキャスターだとは断じて認めん!」

キャスター「貴方の目に見える物は紛れもない真実だ、それを証明する必要などはないですが…」

キャスター「ここで消えろ!クソ神父!」

???「ーーー!」

綺礼「な…」

キャスター「もう終いですか、つまらないですねぇ」

綺礼「…く」

アサシン「う…あ…」

ゼオン「……」

キャスター「では、これで終わりにしましょうか。…やれ」

ゼオンがアサシン共々手を下すその時、周りの空気が変わった。

綺礼(なっ…どうなっている?あのサーヴァントやはり…)

ゼオン「……!」

キャスター「誰だろうと、雷帝に逆らうことはできない…」

アサシン(馬鹿な…我らがたった一人の童子に…)

綺礼「…っ、令呪をもって…」



「ーーー風よ、荒れ狂え!」

セイバー「風王…鉄槌!」

キャスター「なんだと!?どうしてセイバーがここに…」

キャスター「ぐうううう!!」

綺礼「か…セイバー…だと?」

セイバー「…!貴方はガッシュ!!何故貴方が…」

ゼオン「……」

セイバー「…いや、違うな。誰だ、貴様は」

ゼオン「…ア…」

セイバー「……?」

キャスター「…!不味い、撤退だ!おい、呪文だ!早くしろ!」

???「ーーーーーー!」

キャスターは魔術で砂埃を巻き上げ、視界が良くなるころには消えていた。

セイバー「おのれ…小癪な!」

綺礼「……」

アサシン「…マスター、我らも撤退を」

綺礼(衛宮切嗣への繋がり…それを易々と逃すわけには…)

アサシン「マスター?」

セイバー「貴殿達も、ここで消えてもらおうか」

綺礼「やはり、そうなるか」

セイバー「まさかあの者のように逃げれるとは思っていまい」

アサシン「侮るなよ…我らとてサーヴァント、貴様に一矢報いるぐらいは…」

綺礼(…背に腹は代えられん)

綺礼「令呪をもって命ず。アサシンよ、死力を尽くしてこの場を切り抜けよ」

アサシン「マスター!…承知致しました。このアサシン、必ずやその命を遂げてみせましょう」

セイバー「…そちらも相応の覚悟は出来ているようだな。分かりました、騎士として貴方に向かい合おう」

綺礼「……」

綺礼(念には念を入れておくとするか…)

切嗣(…始まったか。あのキャスターには使い魔をつけたが…いつバレてもおかしくない。当分は奴と、あの子供の英霊を…)

切嗣(…全く、聖杯とやらも、どうしてあんな子供を戦場に駆り出すのか。理解に苦しむな)

切嗣(…さて、余計な思考は捨てるか。今の状況のみを思索する。まずセイバーが競り負ける可能性は微塵もない。…が、言峰綺礼…奴が危険要素だ。いい機会だ、ここで始末する…)

ケイネス「見つけたぞ、衛宮切嗣」

切嗣「何!?」

ケイネス「如何にしてここにいると分かったか…とでも言いたげだな。まあ答える義理はないが」

切嗣「…」


即座にコンテンダーを取り出す。切嗣の辺り一帯は結界を張っているとはいえ、数秒もすればケイネスの領域と変わるだろう。相手より先にこの起源弾で勝負をつけるというのが、今考えうる戦略であった。


ケイネス「いざ尋常に…とは言うまい。悪いが死んでもらおうか、魔術師殺し」

切嗣(起源弾を打ち込む…その一点に集中する…)

キャスター「ちっ…全く不愉快だ!セイバーが乱入してくるなんて予想できるかよ!」

キャスター「…落ち着け。あくまで第一目標は達成したのですから、焦ることはない」

キャスター「既に計画は始まっている。私がしくじらないようにするだけ…」

雁夜「…あ…う…あ…」

キャスター「安心しなさいカリヤ…貴方の望みも満たされるでしょう。そう…私に従ってさえいればね」

雁夜「…お…い…ふ……」

キャスター「フフフ…ハハハハハハ!」

ここまで
ちなみにクリスマスは何もありませんでした…(自分語り)
さすがにssも年越すのはいやだなあ、終わらせたいなあ

アサシン「はあっ!」

暗殺者らしからぬ真っ向勝負を選んだアサシンは、令呪による力か、セイバーを押していた。

セイバー「ふっ!…アサシンにしては悪くない。やはり令呪のブーストのおかげでしょうか?」

アサシン「ほざけ!」

綺礼(端から見ればアサシンが優勢だが…最優のサーヴァント、隙がない)

セイバー「甘い!数だけで私に敵うと思うな!」

アサシン「く…」

綺礼(アサシンには荷が重いか…別に期待はしていなかったが、ここでサーヴァントを失うというのは愚の骨頂だ。後々の戦いにも支障が出てくる)

綺礼「…仕方あるまい。重ねて令呪をもって命ずる!アサシン!」

綺礼「この場を切り抜けられぬならば、全力でセイバーより撤退しろ!無論私を連れてだ!」

アサシン「…御意!」

セイバー「逃がすか!」

綺礼「はっ!」

セイバー「なっ…眩し…」

綺礼「魔術の初歩だが…役に立ったか」

セイバー「ぐぅ…ま、待て!」

綺礼(また不用意にアサシンの数を減らしたか…師に何と言うか…)

アイリ「セイバー…」

セイバー「アイリスフィール!出てはいけないとあれほど…」

アイリ「私だけじっとしているなんて出来ないわ…それにほら、私も貴女がいないと何もできないの」

セイバー「む…」

アイリ「状況はあまり良いとは言えないわね…キャスターにも言峰綺礼にも逃げられてしまった」

セイバー「申し訳ありません。私が不甲斐ないからこのような事態を…」

アイリ「当分の標的はあのキャスターと間桐って決まったけど…ねえセイバー、切嗣から何も連絡がないの。貴方は知らない?」

セイバー「いえ、私も何も…まさか、敵マスターからの襲撃を受けたのでは!?」

アイリ「それは無いわ。私もここ一帯に結界を張って警戒していたもの」

セイバー「しかし貴方は疲弊している、隙をついて気づかれずに結界を破る事も可能なのでは…」

アイリ「それほどの魔術師が…あっ…」

セイバー「アイリスフィール!…ここで待っていてください!」

アイリ「…ええ…」

セイバー「切嗣…!頼む、間に合え…!」

切嗣「か…は…」

ケイネス「どうした?自慢の名が泣くぞ?魔術師殺しが」

切嗣(何故だ…確かに撃ち込んだはず…)

ケイネス「何やら奇っ怪な銃弾を持ち合わせているようだな…以前の私ならば窮地に陥っていたかもしれんが、今の私に通じると思うなよ!」

ケイネス「Scalp!」

切嗣「ーtime alterー」

切嗣「ーdouble accelー」

ケイネス「それは見飽きたぞ!」

ケイネス(奴の魔術は体内に固有結界を生み出し、身体能力を底上げする…速さで勝てないならば質と量で圧倒するのみ)

ケイネス「ire:sanctio!」

ケイネス「そこだ!」

切嗣「ーtime alterー」

切嗣「ーtriple accelー」

ケイネス「なっ!?まだ速度を上げるというのか!」

切嗣「…チェックメイトだ」

完全に後ろをとり、コンテンダーに装填した起源弾を放つ。その弾丸は、即座に魔術礼装に身を包んだケイネスに確かに命中した。

ケイネス「…ぐっ…やるじゃあないか。一度でなく二度までも、この私に傷をつけるとは…」  

切嗣「…化物か、お前は」

切嗣(よりによって対魔術師用の装備が、生粋の魔術師に歯も立たないとは…かくなる上は…)

まだ三画ある令呪に目を向ける。だがそれは奥の手、しかもマスターを相手に使いたくはない、そしてなにより英雄などに助けを求めるものかという奥底の思いが、それを使うのを邪魔した。

「ほう?雑種の戯れにしては面白いではないか」

ケイネス「貴様は…あの時の」

切嗣(アーチャーだと…?やれやれ、随分と向こうに戦況が傾いてきたな…)

アーチャー「特に貴様だ。…その魔力、何処より手に入れた?」

ケイネス「……」

アーチャー「どうした?発言を許すと言っておるのだ、下郎」

ケイネス「英雄王…貴様に用はない!消えろ!」

アーチャー「王を前にしてその振舞い…疾く失せよ、不敬であろう!」

切嗣「これは…奴の宝具!」
 
憤慨したアーチャーは、王の財宝で二人共々葬ろうとしていた。

切嗣「ぐっ…」

切嗣(固有時制御の反動が…ここまでなのか、僕は)


セイバー「……マスターー!」

切嗣「な…」

セイバー「並々ならぬ魔力から、ここに来ることが出来ました。マスター、下がって!」

切嗣「…ちっ」

セイバー(舌打ちしましたか今…?)

アーチャー「セイバーか、あの時以来だな」

セイバー「勝負だ!アーチャー!」

アーチャー「ふん、それも良いが、今はこの阿呆を消すほうが先決だ。貴様は後回しだセイバー」

セイバー「何…?…あれは確か、ライダーのマスターではないですか?どうして彼がここにいるのですか切嗣」

切嗣「…」

セイバー「聞こえているはずです!答えなさい切嗣!」

切嗣「…よく喋るな。英雄様はさっさと戦って、己の血を相手の血で洗ったらどうだ?」

セイバー「貴様、私を愚弄するか!」

切嗣「どうだか。さあ、アーチャーの攻撃が来るぞ」

セイバー「…っ…」

アーチャー「貴様らには見せるのも惜しい至高の物だ…心して味わい、そして我を散り様で興じさせよ」

ケイネス「ここで倒れるわけにはいかない…誇りのために、そしてなによりソラウのためにな!」

ケイネス「Fervor,mei Sanguis」

切嗣「馬鹿な、あの宝具とまともにやり合う気か!?」

セイバー「耐えられる訳がない…自殺行為だ!」

ケイネス「舐めるなよ、ロードの名は伊達ではない…」

ケイネス(そしてこの力があれば…)

アーチャー「ふはははは!自ら道化となるか!」

ケイネスの礼装の外観が、今までよりどす黒い姿へと変わる。もはや影のようにも見える水銀は、月の光でどうにか視認できるほどだった。

切嗣「あの形態は…あれが奴の本気か?」

アーチャー「ならば潔く散れ、雑種!」

アーチャーの倉より、宝具が打ち出される。しかしケイネスは、その魔術礼装で防御体制をとるだけであった。

ケイネス「…受けてたとう、金色のサーヴァント。私の全身全霊を持ってな!」

ここまで
切嗣ちょっと優しすぎたかな?

セイバー「くっ…おおおおお!」

セイバーの意地で、英雄王の宝具を耐えしのぐ。しかし驚くべきなのは、人間でありながら王の財宝であっても敗れないケイネスの礼装の力だった。

切嗣「ありえない…人間がサーヴァントの攻撃を受けきれるだと!?」

ケイネス「…負けて…たまるものか!」

アーチャー「ふはは、魅せるではないか!」

ケイネス「…ぐおおお…!」

アーチャー「だがこれで終幕だ!」

アーチャーの背後に、さらに大量の武具が展開される。

セイバー「まだ余力を残していたというのか!?切嗣!指示を!」

切嗣「…奴の魔力源に秘密があるのか?」

セイバー「切嗣…!!」

アーチャー「ふはははははは!有象無象の雑種共、ここで朽ち果てるがよい!」

ケイネス「…令呪をもって…」 

 時臣邸

綺礼「…只今、戻りました」

時臣「遅かったね、綺礼」

綺礼「師よ、伝えなければならないことが…」

時臣「すべて把握しているよ」

綺礼「…っ、弁明の余地もありません」

時臣「ふっ…アサシンが何体敗れようが構わないし、許しを請う必要はない」

時臣「計画に余計なことはしてくれたがね」

綺礼「……」

綺礼(この妙な違和感は何だというのだ…?私は確かに時臣師と対話を…)

時臣「だがもういい…なぜなら」

時臣「君たちはここで終わりだからな」

綺礼「……!?」

アサシン「…謀ったか、キャスター!」

時臣「ふふ…くくく…」

キャスター「そういえばカリヤ…貴方に大事な事を伝え忘れていましたね」

雁夜「う…」

キャスター「遠坂時臣は私が始末しました。…これで、貴方の復讐は完了ですね」

雁夜「…あ?お…お…?」

キャスター「よかったですねぇ、今の貴方じゃあ手も足も出ない相手を、私が直々に手を下したのですから」

雁夜「お…」

キャスター「…これじゃあ会話にならねぇな、一方的な独り言に近い」

キャスター「まあいい…ほら、もうすぐ着きますよカリヤ」

キャスター「貴方でも…いいや、貴方にしかできない仕事だ」

キャスター(時臣には暗示をかけた…もう目覚めているはずだ…!そうなれば…フフフ、すべて私の計画通りだ!)

キャスターの目線の先には、マッケンジーの家が建っていた。

キャスター「さあ…ガッシュ、オマエの安息の場所を消し去ってやる」

時臣「く…ははは…」

アサシンと共に時臣を正気に戻そうと試みた綺礼だが、強敵との連戦に加え、時臣の力は圧倒的であった。

綺礼(強い…いや、それは分かりきっていた事だが…それでも尚、私の上を行くというのか!)

アサシン「マスター、このままでは…」

時臣「逃げ切れると思ったのか!」

綺礼「がああああ!」

時臣は、リミッターが外れたようにありったけの宝石魔術で綺礼達を燃やし尽くそうとした。

マスターの危機から、アサシンが時臣に襲いかかる。

アサシン「おおお!」

時臣「…他愛なし、といったところか、な!」

アサシン「がっ…」

冷静に対応し、反撃する。サーヴァントであろうと本気の時臣には敵わないと錯覚させるほど、今の時臣は彼らと互角以上に戦っていた。

時臣「はははは!優雅な結末など要らん!滅びろ!滅びろぉ!」 

綺礼「貴様…やはり師では…」

《そこまでです、時臣》

《貴方の役目はクズをいたぶる事ではないでしょう?》

時臣「はっ!申し訳ありません、ロードよ」

綺礼「ロード…?アーチボルトとは別の…?」

アサシン「恐らくあのキャスターでは…」

《分かれば良いのですよ。さあ、頼みますよ時臣》

時臣「仰せのままに!」

綺礼「何をするつもりだ!」

時臣「なぁに、自分のサーヴァントに命令を下すだけだよ!」

綺礼「ギルガメッシュに…?」


アサシン(この魔力…キャスター以外にもどこかで…)

ここまで
短いな

アーチャー「ふははははは!」

アーチャーが数多の宝具をケイネスに向けて放出する。ギルガメッシュを含め、ここにいる誰もが、アーチャーの勝利を確信するほかなかった。

《英雄王…令呪をもって奉る…》

アーチャー「…時臣?貴様の出る幕では…」

《我らが命に従う忠実な僕となれ…!》

アーチャー「な…貴様…!ふん、その程度、我がはね除けてくれるわ!」

ケイネス「くっ…令呪をもって…何だ?何を狼狽えている?」

《重ねて令呪をもって奉る》

《我らが王…ロードの傀儡となれ!》

《さらに重ねて…》

《続けて…》

アーチャー「おのれ貴様、我を正気でなくする気か…!?ぐ…頭が…!」

セイバー「アーチャーの様子がおかしい…」

切嗣「攻撃を止めただけじゃない…奴は何に苦しんでいる?」

アーチャー「おのれ…雑種の分際で…貴様、どこでそれだけの令呪を…!ぐッ…あああああ!おのれおのれおのれおのれ!」

アーチャー「セイバーよ…悪いが貴様との決着はつけれそうもない!…雑種に従うぐらいならここで我は…」

《令呪をもって奉る。傀儡よ、自害は禁ず》

アーチャー「おの…れ…」

アーチャー「……」

切嗣(殺気が完全に消えた…?助かったと思っていいのか…?今、一体何が起こったというんだ…)

時臣「ふふ…どうだ英雄王!貴様となれど、令呪には逆らえなかったようだな!滑稽きわまりない!はははははは!」

綺礼「…あれほどの令呪をどこから…まさか」

時臣「そのまさかだよ綺礼。…心配ない、命までは奪っていない。長い付き合いだからね。しかし令呪を強制的に剥ぎ取った上にあの老体…もう長くはないだろう」

綺礼「やはり貴方はもう…私の知っている遠坂時臣ではないようだな」

綺礼「…殺す…確実に殺してやる…!」

師である時臣の裏切り。綺礼にとってそれはあまりにも衝撃的な出来事であったが、その事実よりも敬愛する父親を痛めつけられた怒りが上回っていた。

アサシン「マスター…」

綺礼「うああああ!」

ただ目の前の敵を殺す。綺礼の中の理性はもはやそれのみしか残っていなかった。

時臣「青二才が…」

眼前の仇敵に拳を繰り出す。だが、一時の感情により実力を越えたとしても、現実はそう甘くない。綺礼の渾身の一発も、時臣の魔術の前には無力に等しかった。

時臣「君の力じゃ、私に土をつけることなんかできはしない」

綺礼「…くそっ!くそぉっ!」

アサシン「…これしか手はありませんね」

アサシン「マスター…令呪を私に」

綺礼「何…?」

アサシン「倒すまではいかずとも、時間を稼ぐ事は可能です」

影より残り少ないアサシンを呼び出す。何十もの数存在した人格の残りは、今は十人ほどしかいなかった。

アサシン「これより我らの総力を尽くして貴方を守り、ここから逃がします。…どうか、ご武運を」

綺礼「待てアサシン!それではお前が…」

アサシン「構いませぬ。もとよりサーヴァントとして呼ばれた身…覚悟は出来ております。それに、今までの失態を取り返さねばなりません」

綺礼「アサシン…」

アサシン「さあ、どうかこのアサシンに、最後の晴れ舞台を!」

綺礼「…分かった。それがお前…いやお前達の覚悟ならば、それに答えよう」

綺礼「…令呪をもって命ずる」

綺礼「アサシンよ…たとえその身が果てても、私と共に最後まで戦い抜け!負けることは許さぬ!」

アサシン「御意。…貴方のような主をもてて良かった。これで我らは遺憾なく命を全うできる」

綺礼「…っ…!必ず私のもとに戻ってこい!いいな!」

時臣「なっ…待て!君を逃がすわけには…」

アサシン「行かせん」

時臣「ちっ…屑サーヴァントが。貧弱な身をすり寄せあって私に歯向かうか。全く、見るに耐えんな」

アサシン「…最後に残す言葉はあるか?」

時臣「何?貴様まさか、私に勝つ可能性が、万のひとつでもあると考えているのか?」

アサシン「確かにこの身はサーヴァントという枠組みでは強いとは言えん。だが貴様が相手ならば話は別だ。…先程までの我らと思うなよ?」

時臣「令呪を使いきってなお、サーヴァント一人も倒せない貴様に何を言われようが…」

アサシン「そうだな…お喋りもここまでだ。では殺すとしよう」

時臣「ほざ……ガッ!?」

アサシンは鮮やかな手際で、時臣の首を切り落とした。その一連の動作は、相手が切られたことに気づかないほどの美しい手捌きであった。

アサシン「隙がありすぎだ…余裕をもってだか知らないが、戦いの間に悠長にもほどがあろうよ」

時臣「馬鹿…な…」

アサシン「他愛なし。…マスター、今貴方のもとへ」

時臣「…甘いのはそちらのようだな」

アサシン「え…?…ぐはっ!?」

一瞬だった。理解できない。思考が止まる。

確かに殺した。そう確信し、一瞬でも油断した。その隙を時臣はついてきた。

アサシン「な…ぜ…?」

時臣の首は切り落とされている。しかし発せられた言葉とは別に、その身体は魔術を唱えていたのだ。

時臣「…私の勝ちだ!」

アサシン「何がだ…貴様はもうじき死に絶える。精々痛み分けといったところだろう」

時臣「私の役目はこれで終わりだからな。邪魔なアサシンは排除でき、サーヴァント共も我々の手の中…ロードもさぞお喜びになる」

アサシン「貴様ら…何を企んで…!」

時臣「さらばだ…名も無き暗殺者」

アサシン「…逝ったか。我らも…マスターの元に戻らなくては…戻らなくて…は…」

綺礼「……!アサシン…!…考えてもどうしようもない!」

綺礼「ここか…?」

璃正「……」

綺礼「父上!父上!」

璃正「…綺…礼…か」

綺礼「父上!今治療を…」

璃正「…いらん。…それより、よく聞け…我が息子よ」

綺礼「…なんでしょう」

璃正「令呪のストックは時臣君の偽者に奪われたが…万が一の為に、さらに予備を用意しておいた。何しろ、お前にしか分からない詠唱であったからな」

綺礼「…これを、私に?」

璃正「私無き今、お前が、新たな監督役だ。そしてマスター全員に伝えよ」

璃正「今、聖杯を奪い合っている場合ではない。聖杯戦争を完全に停止し、これより全力で、あやつらの手から聖杯を守り抜け、とな。…ごほっ!…以上だ」

綺礼「…我々で聖杯を守る。あの者たちより…」

璃正「お前ならば、きっと出来る。お前は正しい心を持つ者だ。お前ならば…かなら…ず…」

綺礼「……」

綺礼(また、大切な人を失った。だがあの時の…妻の時に感じたモノとは違う…これは…この気持ちは…?)

 マッケンジー宅

ウェイバー「ああー!?ガッシュ、お前食い過ぎだ!」

ガッシュ「ウヌ!?みんなの分であったか!?ぜんぶ食べてしまったのだー!」

グレン「はは、食べ盛りか。いいじゃないか、なあばあさん」

マーサ「ええ、いっぱい食べなさい二人とも」

ガッシュ「ありがとうなのだー!」

ウェイバー「ガッシュには甘いんだよなあ…まあいいか。…うん、旨い。ガッシュ、それもらうぞ」

ガッシュ「ナアア!自分の分があるではないか!」

ウェイバー「僕だっておなかすいてんだよ!」

マーサ「こらこら、落ち着いて食べなさい」

グレン「ははははは」



キャスター「…さあ、始めましょうか。呪文を唱えなさい」

???「ーーー!」

ここまで

ガッシュ「ウヌ…?ウェイバー」

ガッシュが突然箸を止める。何か異変を感じたのだろうか。

ウェイバー「どうしたガッシュ…まさか敵か!?」

ガッシュ「わからぬ。わからぬが、嫌な予感がするのだ…」

マーサ「敵って…嫌ねえ、物騒な」

ウェイバー「まずいな…ふざけてる場合じゃ…!」

本を持ち、外に飛び出す。しかし、その判断は遅かった。

???「ーーー!」

ウェイバー「あ…」

マッケンジーの家に、魔術…いや呪文が放たれた。幸い、もしくはわざとなのか庭に命中したので夫婦に被害はなかった。

ウェイバー「…宣戦布告ってことか?やってやろうじゃないか!行くぞガッシュ!」

ガッシュ「ウヌ!!」

ウェイバー「そこの奴!戦ってやるからこっちに…」

キャスター「さて…上手く誘き寄せましたね。奴らを狙う必要はない。私たちは奴らを絶望させに来たのですから」

???「ーーーーーー!」

ウェイバー「おい…どこ狙って…」

ガッシュ「ウェイバー!!ラウザルクなのだ!!」

ウェイバー「あ…ああ、ラウザルク!」

ガッシュ「オオオオオオ!」

キャスター「ほお…」

ガッシュ「ウッ…ヌアアアアアアア!」

ガッシュたちが眼中にないようにマッケンジー宅を狙う攻撃は、ガッシュの体をはった防御でなんとか防がれた。

ウェイバー「ガッシュ!」

キャスター「貴方が本の持ち主ですか…」

ウェイバー「なっ…」

ウェイバー(いつの間に背後に…)

キャスター「そんなものなら…どうやら警戒しなくて良さそうだ。どうです?本をこちらに渡してくれるなら、貴方を見逃してあげてもいいですが」

ウェイバー「じょーだん!こっちがお前を倒してやるよ!ガッシュ!」

キャスター「ふ…ガッシュなら今の攻撃を受けて…」

「ヌオオオオオ!」

ガッシュ「ウヌア!!」

キャスター「な…ぐほぉっ!」

気を抜いていたキャスターに、ガッシュの全力の頭突きが決まった。

ウェイバー「これで決めてやる!ザケルガ!」

ガッシュ「」

キャスター「クソが…舐めんじゃねえぞ!おい、呪文だぁ!」

???「ーーーーー!」

ウェイバーに対抗し、キャスターも速さを重視した呪文で、術同士を相殺する。

ウェイバー「呪文!?ってことは、まさかお前がゼオン…?」

キャスター「いいや違いますよ。私の名はロ…」

ガッシュ「…ゾフィス?」

ガッシュ「ゾフィス…お主がなぜ…」

キャスター「驚きました…まさかその記憶が残っているとは…」

ゾフィス「そうです…私の名はゾフィス。いや、この世界ではロードで通しましょうかね?」

ガッシュ「お主も魔界からこちらに来たということなのか!?」

ゾフィス「ええまあ…しかし厄介なことになりましたね。これではサプライズもできそうもない…」

ウェイバー「おい!ゾフィスとやら!なんでおじいさんとおばあさんに攻撃しようとした!相手は僕たちのはずじゃないか!」

ゾフィス「フフ…そんなこと決まってるじゃないですか」

ゾフィス「テメェらの絶望した顔が見たかったからだよ!」

ウェイバー「な…」

ゾフィス「ガッシュ…テメエやブラゴのせいで、オレがどれだけ惨めな思いで過ごしていたか…テメエには分からねえだろうさ」

ゾフィス「これはテメエに対するのオレの復讐でもある!思う存分叩き潰してから、魔界に帰してやるよ!」

ゾフィス「いくら王様になったからって、本来の力を出せないテメエと、本来の力以上を出せるオレとじゃあただの弱いものいじめになるだろうがな!」

???「ギガノ・ラドム!」

ウェイバー「早い…ラシルド!」

ゾフィス「そんなもんで防げるかよ!」

ゾフィスの呪文はあっさりと盾を貫通し、ウェイバーたちを攻撃する。

ウェイバー「そんな…うわあああ!」

ガッシュ「ウェイバー!ぐぬう…やめるのだゾフィス!」

ゾフィス「まだだ…いたぶっていたぶっていたぶって!オレの受けた屈辱はこんなもんじゃねえぞ!」

???「ディガン・テオラドム!」

ガッシュ「や…やらせぬ…」

ウェイバー「く…ラシルド!」

ゾフィス「無駄だ!」

「「グアアアアアアア!」」

ガッシュ「ヌ…ア…」

ウェイバー「次元が…違いすぎる…!」

ゾフィス「おや…存外つまらないものですね。やはり私の予想していたよりも、貴方たちは弱すぎたのでしょうか」

ゾフィス「フフ…もう終わらせるとしましょうか」

ウェイバー「ヤバイ…呪文…何か使える呪文を…」

ガッシュ「ゾフィス…私がお主に一体何をしたというのだ!私は分からぬ!悪いことをしたなら謝るのだ!だからもうやめてくれ!」

ゾフィス「…そうですね。それでは…私の奴隷、もとい実験材料になるというのなら、あの本の持ち主は傷つけないでやってもいいでしょう」

ウェイバー「ふざけんな!そんなことさせるかよ!」

ガッシュ「ウェイバー…」

ゾフィス「…交渉決裂と。じゃあ木っ端微塵に消し去ってやるよ!」

???「ディオガ・テオラドム!」

ウェイバー(考えろ…この状況を打開する策を…)

何を出すか考えると同時に、全力で本に心の力を溜める。そしてウェイバーが読めなかったページに、新たな呪文が浮かび出した。

ウェイバー(これは…今の今まで読めなかった呪文…バオウ・ザケルガか!やってやるよ…ここで勝つために、こいつに全てを託す!)

ウェイバー「おおおおおお!」

ゾフィス「…!なんだ、あの光は…!」

ガッシュ「今まで見たことないほどに…」

ウェイバー「行くぞ!ガーーーッシュ!!!」

ゾフィス「チッ…悪足掻きしやがって!これで終わりだぁ!」

ウェイバー「バオウ!!!」

視界を覆いつくすようなゾフィスの術が、ガッシュたちに向かってくる。しかしウェイバーは、逃げずに、これに迎え撃とうとしていた。

ガッシュ「お主…!ウヌ!やってやるのだ!!」

ゾフィス「消え失せろ!!」

ウェイバー「ザケルガァァァァァ!」


〔バオオオオオオオオオオオオオ!〕

ガッシュから出された雷竜は、けたたましい叫び声と共に、爆炎にも怯まず立ち向かった。

ゾフィス「く…バオウだと!?だが…グオオオオ!」

ゾフィスも跳ね返してやろうと力を込める。力の差は歴然。ならば勝てない道理などない。

ウェイバー「おおおおおお!」

ゾフィス「グッ…アアアアアア!」

ウェイバーの思いとゾフィスの執念はぶつかり合い、結果お互いの呪文は相殺しあった。

ゾフィス「ハァ…ハァ…」

ウェイバー「…そんな…」

ゾフィス「手間をかけさせやがって…貴方のソレがまだ完全なモノでなくて助かりましたよ。どうやら、私の勝ちのようだ」

ウェイバー「…僕を殺すのか」

ゾフィス「パートナーのゴミなどに用はありませんが…驚きました。貴方は戦略で相手と戦う部類と思っていましたからね」

ウェイバー「…普段ならそうしてただろうけどな」

ウェイバー(ほんと…なにやってんだ僕は)

ゾフィス「では、死になさい」

ガッシュ「………」

ウェイバー(ガッシュ…悪い…僕は…)


「AAAALaLaLaLaLaie!!」

空から雷が落ちてきたかのように、その王は現れ、ゾフィスに牙をむいた。

ゾフィス「なっ…お前、まだ息があったのか!」

ライダー「詰めが甘いのだ貴様は!」

ゾフィス「確実に仕留めきれていないとは感じていたが…まさかそれほどまで持ち直すとは、な!」

ウェイバー「ラ…イダー…?」

ライダー「おお坊主。時はそれほど過ぎておらんが何故か久しい気分だな。貴様の戦いぶりは少しだが見ておった。…うむ、悪くなかったぞ」

ウェイバー「な…に言ってんだよこのヤロ…」

ライダー「…坊主、そこの子童を連れて逃げよ。余はそう長く持たん」

ウェイバー「お前ならあれぐらい余裕で…」

ライダー「いいからはよう行かんか!」

ウェイバー「うっ…ライダー!」

ライダー「なんだ!」

ウェイバー「一応言ってやる…ありがとな!!」

ライダー「おうとも!さあ行け!!」

ボロボロの体でガッシュをおぶって、その場から急いで逃げる。あの男がそう長くないといったならば、本当なのだろう。

ゾフィス「……」

ライダー「追わんのか?執念深そうな貴様が」

ゾフィス「…どれだけオレの計画の邪魔をすれば気がすむんだテメエ!」

ライダー「がはははは!貴様の計画とやらは知るよしもないが…我がマスターに対する侮辱、そしてなにより我ら英霊そのものを辱しめる行為…余が許さぬと思え!!」

ライダー「さあ集え我が同胞達よ!」

ライダー「王の軍勢!!」

辺りがライダーの固有結界に包まれていく。

ゾフィス「フ…いい機会だ。こちらも本気でいかせてもらうとしましょうか…」

ゾフィス「来い!!我が傀儡よ!」

ゼオン「……」

ライダー「貴様…」

ゾフィス「そして…もう一人…」

アーチャー「……」

ケイネス(動きを止めた…)

切嗣「…よし。セイバー、奴を殺せ」

セイバー「…なりません!正気を失った敵を討つなど…」

切嗣「お前の目は節穴か?アレを倒す時は正に今しかない」

セイバー「しかし…!」

切嗣「騎士道精神とやらは聞きたくもない。…セイバー。君は聖杯と、戦場で何の役にも立たない騎士道、どちらを選ぶ?」

セイバー「…ッ!どこまで私たち英霊を…」

アーチャー「……!」

「「「!!」」」

切嗣「何をしてくる…」

ケイネス「来るか…!」

アーチャー「……」

セイバー「なっ!?」

警戒していたアーチャーはその場から消えさった。まるであの夜のバーサーカーのように。

セイバー「アーチャーのマスターでしょうか?」

切嗣「…恐らくな」

ケイネス「ちっ…どうなっているんだ全く!」

切嗣「……」

切嗣(まさか…これもあのキャスターの仕業か…?)

ゾフィス「叩き潰してやりなさい!」

ゾフィスはまたもその魔方陣から何者かを召喚した。

ライダー「貴様…やりおったな」

アーチャー「……」

ライダー「手に落ちたか…アーチャー」

ゾフィス「ハハハハハハ!これでテメエも終わりだ!」

ライダー「…どうやら、本当にそうなりそうだわい」

ライダー「だが…いざ征かん!彼方にこそ栄えあり!!今、余の前に立ちはだかる最強の敵を、見事打ち崩し勝鬨をあげようぞ!」

「然り!」「然り!」

ライダー「AAAALaLaLaLaLaie!!」

ゾフィス「愚かな。さあ、やりなさいアーチャー」

アーチャー「……」

王の財宝をライダー目掛けて放つ。その宝具の輝きは、たとえどこであろうと失うことはなかった。

ライダー「蹂躙せよ!!」

ウェイバー「…ライダー…」

よろめきながらついさっきまで戦っていた場所を振り返る。

ウェイバー「帰る…んだ…僕たちの居場所に…帰…」

意識が遠のく。呪文により、体力を全部もっていかれたようだ。

ウェイバー「ちく…しょ…」

限界で倒れかかっていたその時、僕を誰かが支えてくれた。

綺礼「…」

ウェイバー「あんた…は…」

綺礼「……」

ここまで

すみません今日は更新できそうにないです。

本当にいまさらなのですが、この話は元祖zeroとは分岐したルートです。(なんで偉そうな言い方してんだお前は)
なので、多少のキャラ設定崩壊(セイバーと会話する切嗣、言峰綺麗など)があるので不快になるかもしれませんが、ご了承下さい。

ssもどうやら来年を迎えざるをえなくなりそうなので、どうか温かい目で見守ってくれるとありがたいです。

再開します

ケイネス「…さて、ならばこちらも仕切り直しといこうかね?」

切嗣「おいおい、こちらにはサーヴァントがいるんだぞ?いくら優秀なロードといっても、英雄様を前にしたらたかが知れるってもんだ」

ケイネス「君達も先程の攻防を見ていたであろう?今の私には生半可な力では通用しないと理解した上でその発言を述べるというのなら…私は貴様を嘲笑するぞ、衛宮切嗣」

切嗣(これでは駄目か…)

セイバー「侮るなよ下郎!私を誰だと心得るか!セイバー、ブリテンの…」

切嗣「口を開くな」

セイバー「……」

切嗣(ケイネスが言っていることも事実だ…一対一では勝ち目がなかった僕は戦力外として、アーチャーの宝具を耐えしのぐあの礼装…)

切嗣(たとえ杞憂であろうと、万が一があってはならない。僕はどんな手を使おうと聖杯を手にしなければならないんだ…!)

切嗣「…ならば、これしかないな」

切嗣の手が赤く光りだす。行使することを渋っていた三画ある令呪を、彼は今使おうとしていた。

セイバー「切嗣!令呪に頼らずとも私は…!」

切嗣「…我が傀儡、セイバーよ。衛宮切嗣が令呪をもって…」

ケイネス「やらせるものか!Scalp!」

切嗣「…!」

ケイネス「…!!何だ…?」

月霊髄液が切嗣を切り裂こうとするその時、マスター二人の動きが止まった。

切嗣「…どうやら、ここまでのようだな」

ケイネス「命拾いしたな、魔術師殺し」

捨て台詞を吐くと、ケイネスはその場から立ち去った。

セイバー「切嗣…一体何が…」

切嗣「異常事態だ。事が重大なものだったから、戦闘している場合でないと互いに判断し、休戦した。以上だ」

セイバー「ちゃんと説明してください!」

切嗣「…監督役、言峰璃正が、あのキャスターに殺された。これより聖杯戦争を完全停止、新キャスター討伐を僕達マスターに命じる…とね」

セイバー「そんな…では聖杯はどうなる!」

切嗣「キャスターを倒せば、また通常の聖杯戦争は続行されるとある。その点は問題ないが…」

切嗣(あの男が何故…何を考えている…?)

切嗣「とりあえずは向こうの決定に従う。…アイリが心配だ、戻るとしよう」

セイバー「はい…」

セイバー「…」

ゾフィス「無様ですね、虫けらが」

ライダー「…自分の力ではないくせ、口だけはいっぱしときたか」

ゾフィス「貴方こそ、ずいぶんとしぶとい…降伏すれば楽になるというのに」

猛攻もむなしく固有結界…王の軍勢は解けてしまった。荒野を駆け抜けた愛馬は消え去り、ライダーはゾフィスに足蹴にされていた。

ゾフィス「テメエさえいなけりゃガッシュも始末できたってのに…!」

???「ラドム!」

ライダー「ぐあああ!」

ゾフィス「ハハハハ!いい気味だ!」

アーチャー「……」

ゼオン「……」

ゾフィス「私のパートナーも貴方になにか言いたげでしたが…まあいい。さあ、貴方も楽にしてあげましょう」

ライダー「…まさか貴様、余を…」

ゾフィス「ええ、勿論…ではいきますよ」

ライダー「…ッ…」

ライダー(ふん…今まで生きておったが、よもや余が征服されることがあろうとは…)

ライダー(すまんなケイネス…余は貴様と相容れることはなかった…いや、あの男とも酒を酌み交わせば、少しばかりは理解しあえたのであろうか…)

ライダー(もう力も出せぬか…奴め、反逆させぬように少しずつ力を抜いておる…)

意識だけでなく、記憶、感情までもが薄れていく。抵抗させないために、ゾフィスは用心深く、入念に手を打っていたのだ。

ライダー(そういえば…ウェイバー…あやつ、あの時と違い、なかなかよい目付きをしておったな…あやつがマスターならば…余も…)

ライダー(…ああ…)

ライダー(余の野望、ここで潰えるか…)

ライダー(……)



ゾフィス「フハハハハハ!これで私の勝利は確実だ!そして私の復讐も果たすことができる…」

ゾフィス「では…駆逐していくとしましょうか」

???「…」

『……!』

『…ウヌ!…』

ウェイバー『なんだこれ…夢でもみてんのか僕は』

『どれだけ…変え…と思ってる…!』

『ガッシュ…お…は…!』

ウェイバー『誰だ…?顔に靄がかかってて、よく分かんない…』

『こんな……しなくて…のかな』

『その…は…オレ…やる!教えてやる!なんとか…やる!』

ウェイバー『これが…ガッシュが言ってた…?でも記憶がないせいか?全然見えない』

『ガッシュ!』

『ガッシュ…』

『メ…』

ウェイバー『分かんないけど…なんだか温かい…これが、ガッシュの友達…?』

ガッシュ『やさしい…王…様…』

ウェイバー『やさしい王様…それがガッシュの…』

ウェイバー『…』

ここまで

おまたせしました
再開します

 教会

ウェイバー「…んん……」

ガッシュ「…ヌ…」

綺礼「…二人とも、まだ目覚めそうにないか」

父との約束を果たすため、綺礼は満身創痍のウェイバー達を教会に匿っていた。

綺礼「起きるまでに、残りのマスターにも伝えておかねばな」

《マスター並びにサーヴァントに告げる。監督役、言峰璃正は殺され、私へと監督役は受け継がれた。これより聖杯戦争を一時停止させ、キャスター討伐を本格的に開始する。聖杯の有無は保証しよう。もし参加しなければその時点で失格とする》

綺礼「これで良し、と」

綺礼「衛宮切嗣…いや、今はあの悪を倒すことが先決だ」

ウェイバー「…ぐう……あああ…」

綺礼「お前達にも手を貸してもらう。…問いはまたその後でだな」

アイリ「…そう。それは…良かったのかしら。私には分からないけど」

セイバー「アイリスフィール…もう限界でしょう。後はわた…我々に任せてください」

アイリ「…ええ、そうね。じゃあ切嗣、少し話があるの。その後でセイバーもね」

切嗣「!…ああ、分かったよ」

アイリ「…」

セイバー「…?何か?」

アイリ「い、いえ何でも…」

切嗣「行こうアイリ」

セイバー(直感で何か隠していると感じたのですが…一体なんなのでしょうか)

ウェイバー『しかしすごいなこの夢は…』

『鉄の……無敵…』

『ベリー…!ブルァァ!』

『ピッポッパ…』

ウェイバー『あいつ…ろくなこと覚えてないじゃないか。そりゃ言えないわな…』

ウェイバー(しかし魔物と戦った記憶はないけど、その魔物の最後なんかは残ってるのか…それは辛いかもな)

ウェイバー(だからゾフィスの時も謝ろうと…でもあれ絶対クソ野郎だと思うんだけど…)

『NO!ウンコティンティン!!』

ウェイバー『だからなんでこんなとこ鮮明に覚えてんだよ!』

 間桐邸

臓硯「カカ…上手くいったようじゃなあゾフィスや」

ゾフィス「ええ…完璧、パーフェクトですよ」

???「……」

臓硯「ではそろそろ…頃合いか?」

ゾフィス「計画は上々…そうですね、三日後には全てが終わっていることでしょう」

アーチャー「……」

ライダー「……」

臓硯「それより貴様、其奴を如何に処分する気じゃ?」

ゼオン「……」

ゾフィス「コレはもう役に立ちそうもないですしね…最後に盛大にネタばらしでもしますよ」

臓硯「ククク、まだ何か企んでおったか」

ゾフィス「フフ…大したことではありませんよ。お気になさらず」

雁夜「…オオ……」

ゾフィス(これ以上念を入れる必要もない…彼は護りで使わせてもらいましょう)

 衛宮邸

アイリ「切嗣…これを」

自分の身体から全て遠き理想郷を抜き出す。

切嗣「…いいのかい?」

アイリ「貴方が持っていたほうが貴方のためになるわ。私はもう…大丈夫だから」

切嗣「…そうか」

アイリから未だ輝きを放つ全て遠き理想郷を、自分の体内に取り込む。

切嗣「…」

アイリ「切嗣…約束して。私がいなくなってもあの子は…イリヤは…」

切嗣「ああ…そのために僕は…」

アイリ「貴方はいつも無理する人だから…頼んだわよ…」

切嗣「…ああ、ああ分かっているとも」

アイリ「それじゃあ、セイバーを…」

切嗣「…」

セイバー「アイリスフィール、話とは…」

アイリ「…セイバー?切嗣とは上手くやれていないみたいだけど」

セイバー「…っ…それは」

アイリ「切嗣は、貴女の事は理解しているわ。理解しているからこそ、貴女のような人が英霊として戦わされる事実が気に入らないだけなの」

セイバー「しかしあの者は私を…英雄そのものを侮辱している。私のマスターがあれでは、とても友好関係を築けるなど…」

セイバー(私の気持ちなど何も汲み取ってはくれない…サーヴァントなのに、私は切嗣が分からない)

セイバー「なのに何故貴女は…」

アイリ「…そうかもね。セイバーのことそんな風に言えないかも。私だって、切嗣のことぜーんぶは知らないし」

セイバー「え…?」

アイリ「…戦いの事だったら、きっと舞弥さんのほうが詳しいわ。私も嫉妬しちゃうわよ?妻の私が知らない切嗣を知ってるなんて」

セイバー「…アイリスフィールにも、彼の知らない一面があったのですか」

アイリ「それはそうよ!切嗣は私に外の世界を教えてくれた。聞かせてくれた。見せてくれた。とても嬉しかったわ!私の知らない世界がいーっぱいあって、こーんなに沢山のものが溢れているなんて!」

アイリ「…でもね、切嗣の理想だけは…どうしても分からなかったの」

アイリ「切嗣の理想は…空っぽの私にはとても…」

セイバー「理想…」

アイリ「だからこそあの人は、奇跡に…聖杯に頼ろうとしたの。私がまだ見ていない、この世界の地獄を終わらせるために…人間を救うために」

アイリ「私も力になりたかったけど、この有り様じゃあね…」

床に寝そべっていたアイリが起き上がってセイバーの手を握ろうとするが、力は全く入っていなかった。

アイリ「私も舞弥さんもいない今、頼れるのは貴女しかいない。あの人は不安なの。支えてくれる人がいなくなるから…だから今は駄目でも少し…ほんの少しでいいから、切嗣の事を…うっ…」

セイバー「アイリスフィール!横になっていたほうが…」

アイリ「…セイバー」

力なく、セイバーの手を包む。アイリの手は冷えきってまるで氷のようだった。

アイリ「…お願いね?」

セイバー「…私は…」

セイバーが返答に悩んでいる中、外側から勢い良く襖が開けられた。

そこには心配になりアイリの様子を見に来た切嗣がいた。切嗣はその表情を察して彼女に駆け寄った。

切嗣「アイリ!」

アイリ「切嗣…」

切嗣「アイリ…やはり僕の…」

涙目にも見えるその男の頬を、軽く撫でる。

アイリ「大丈夫だから…安心して?」

切嗣「…よかった。本当に…」

セイバー「…」

アイリ「後の事は貴方達に懸かっているわ。切嗣…そしてセイバー?よろしくね?」

切嗣「ああ…」

セイバー「…ええ」

セイバー(衛宮切嗣…貴方は一体何を見ている?何故そのように生きている?私には理解できない…)

切嗣「さて、作戦をたてる前に…手始めに教会に行く」

セイバー「教会…ですか?」

切嗣「恐らくそこに全ての答えがあるはずだ」

セイバー「…」

セイバー(この男を見定めるにはやはりもっと近くにいないと駄目なのか…?)

切嗣「…どうしてジリジリ近づいて来ているんだお前は。そんなに僕を殺したいのか?」

セイバー「…はっ!そ、そんなつもりは毛頭ありません!私は…えっと」

切嗣「アイリに何を吹き込まれたかは知らないが…英霊と仲良くする気などない。ましてや騎士王様なら尚更にね」

セイバー「む…!」

切嗣「…いいか、僕は戦いはあくまでも手段としてしか考えていない。それをお前達英雄共は、血みどろのいくさぶりを、嬉々として後生にまで崇め奉る。同じ人種とは到底思えないね」

切嗣「僕とお前は理解しあえない…それは君が一番理解しているだろう、セイバー」

セイバー「それでも貴方は…」

切嗣「お前は僕の気持ちなんか考えなくてもいい。だからお前も、もう余計なことは考えるな」

切嗣「もう一度言ってやる…君は僕のサーヴァント…駒だ。その名に恥じることなく、僕のために上手く立ち回ってくれ」

セイバー「…っ~!!」

セイバー「いい加減にし…!」

切嗣「僕は明日に備えて睡眠をとる。…無駄に魔力を使うなよ?」

切嗣はセイバーと目を合わせることもなく、自分の部屋に戻った。

セイバー「…怒る気力すら失せました」

セイバー「アイリスフィール…私のマスターは…」

切嗣《よし、一緒に戦おう!セイバー!》

切嗣《よく頑張ったな!すごいぞセイバー!》

セイバー「うう…私は…」

セイバー「…なんて言ってる暇もありません。休息をとらねば…」

セイバー(ですが、本当に私が切嗣を支えてあげられるのでしょうか。まったく、一国の王でもありながら、私はなんという…)

ここまで
セイバーがキャラ違うって言われても仕方ないなこれ

 教会

ガッシュ「ヌ…」

ガッシュ「…ここは…どこなのだ」

「ようやく目覚めたか」

ガッシュ「お…お主は…!」

綺礼『いいから来い』

ガッシュ『ヌァァァァ!!』

ガッシュ「あ…あ…あ……」

綺礼「そう怯えるな。危害を加える気はない」

ガッシュ「ウヌ…そうか。…ウェイバー!ウェイバーは…!」

ウェイバー「…うう……」

綺礼「安心しろ。一応だが治療を施しておいた」

ガッシュ「ホッ…それで、なんでお主が…」

綺礼「…お前達にはまだ伝えていなかったか」

ガッシュ「ウヌ…なるほどのう」

綺礼「力を貸してもらう。マスターが二流のお前が、こちらの戦力になるかどうかは分からんが…それよりも、お前に尋ねたいことがあってな」

ガッシュ「ウヌ?」

綺礼「お前に瓜二つの、あの白い奴の事だ」

ガッシュ「…ゼオンのことかの?」

綺礼「ゼオン…それが奴の名前か」

ガッシュ「ゼオンは私の兄なのだ。それで…」

綺礼「重要なのはそこではない」

ガッシュ「ヌ?では何を話せば…」

綺礼「私がお前に聞きたいことは山ほどあるが…何故お前やお前の兄…あの自称キャスターが、この戦いに参加しているのか。お前達は英霊ではないのか。そして…」

綺礼は、ウェイバーが抱えて放さない赤色の魔本を指さした。

綺礼「この本のことだ」

ガッシュ「ウヌ…」

綺礼「見たところ、私が解読できる言語ではない…これはなんだ?」

ガッシュ「…それは…」

ガッシュ(言っていいものなのかの…しかし、この者がまだ本当にいいやつだと決めつけるのはよくないのだ…)

ガッシュ「…」

綺礼「これも答えられない…それほどまで隠す事なのかね?」

ガッシュ「私はお主のことをまだ信用してはおらぬ。ウェイバーの事は感謝しているが、あの時の事は忘れてはおらぬぞ」

綺礼「…記憶喪失のわりには物覚えがいいらしいな。分かった、非礼を詫びよう、ガッシュ・ベル。そしてそのマスターよ」

ガッシュ「ウヌ!」

綺礼(ちょろいな)

ここまで
なーんか微妙っすねすみません

ガッシュ「この本は、魔物の力を引き出す本なのだ。これがあれば、術を唱えることができる」

綺礼「ほぉ…だが術とやらを唱えるためには…」

ガッシュ「ウヌ。ウェイバーでなければダメ…」

綺礼は強引にウェイバーから本を奪い取り、近くにあった蝋燭に火をつけ、本に近づけた。

綺礼「では本が消えればどうなる?」

ガッシュ「ナアアア!やめるのだー!!」

本を燃やされないように綺礼に飛び込む。その様子を見て綺礼はひとつ確信し、不敵な笑みを浮かべる。

綺礼「どうやらこの本が弱点のようだな」

ガッシュ「…ハッ!しまったのだー!!すまないのだウェイバー…」

ウェイバー《バカバカバカ!!ガッシュの大バカ!!僕たちの秘密をばらすなんて、どうしてくれんのさ!明日からご飯抜きだからな!》

ガッシュ「よよ…およよ……」

綺礼(泣くまでは予想していなかったな…)

綺礼「号泣中に悪いが、本についての質問はこれからだ。…いや、むしろこちらのほうが本題だな」

ガッシュ「ウッ…なんなのだ…」

綺礼「私が出会ったゼオンとやら…そしてあのキャスターを名乗る者…双方とも、私が対面していたその場に、本人は本を持ち合わせていなかった。…言い換えると」

綺礼「本の持ち主などその場にはいなかった。ということだ」

ガッシュ「ウヌ!?そんなはずはないのだ!本がなければ呪文を唱える方法はない!きっとどこかにいたはずなのだ!」

綺礼「アサシンが見つけられないのなら、我々に見つけることはほぼ不可能だが…ああ、あの自称キャスターは、何か魔術の一種を発していたな」

ガッシュ「それは…ラドム、という言葉ではないか?」

綺礼「…把握していたのか。そうだ、確かそのような言葉を口に出していた。とするならば、あの場には本の持ち主がいたというのか?」

ガッシュ「ウヌ。多分そうなのだ。しかしゼオンの本の持ち主は…」

綺礼「あの場にいた敵はキャスターと間桐雁夜…だが、魔術書などは手にしていない」

ガッシュ「誰かが本を持っていることには間違いないのだがのう…」

ガッシュ・綺礼「……」

ガッシュ「ヌ…ヌオオ……」

綺礼「…お前の足りない頭をフル回転させても、この件については無意味なようだ」

ガッシュ「わ…私だって、頑張って考えたのだぞ!?お主、もう少し優しく言ってくれてもよいではないか…」

綺礼「生憎、こういう性分なのだよ、ガッシュ君」

ガッシュ「…お主は好きになれないのだ」

綺礼「そうか、それは残念だ。では次の質問を…」


「うう…ここは…?」

綺礼「間が悪い奴だ…もう一人のほうも目覚めたらしいな」

ガッシュ「!!」

ウェイバー「っ…体いってー…」

ガッシュ「体は大丈夫かの!?」

ウェイバー「あ…ガッシュ。うん…まだ痛むけど…」

綺礼「応急処置はしておいたからな。後一日ほど休めば、完全に回復するだろう」

ウェイバー「! あんた…僕を助けてくれたのか」

綺礼「ああ。礼には及ばない。これもすべて私に協力してもらうためだ」

ウェイバー「なんだと?」

綺礼「そこのに聞けばよい」

ガッシュ「ウヌ。えーっとだの…その…」

綺礼「…また言わなければならないのか。…はぁ」

ガッシュ「な!?そんな目で見なくてもよいではないか…お主、やはり冷たいのう…私は…私は…」

ウェイバー「ガッシュ…」

綺礼「…ということだ。理解できたかな?ガッシュ君」

ガッシュ「ヌ…バカにするな!!私だってのう…」

綺礼「分かった分かった。もう罵倒する気も失せた。うんざりだ」

綺礼「とはいえ、今言った事は事実だ。そして私たちで、そのゾフィスとやらを倒す」

ウェイバー「へえ…あんたも本気なんだな」

綺礼「無論だ。此方も甚大な被害を被った。ただで済ませるつもりはない」

綺礼(父上…時臣師…そして…)

ガッシュ「私は…」

ウェイバー「ガッシュ、お前の考えていることはなんとなく想像できる…けどな」

ウェイバー「お前も言ってたよな。これからは戦う覚悟が必要だって」

ガッシュ「確かにそうだが…」

ウェイバー「…僕はもう、答えは出てる。お前はどうするんだ?ガッシュ」

綺礼「…」

ガッシュ「私は…私はあの者が許せぬ。グレン殿やマーサ殿を傷つけようとした。ウェイバーを傷つけた。大勢の人を傷つけた」

ガッシュ「だが私は…またあのような…辛い思いなどしたくない!王様になったのに…私が、友達を、自分の…」

『世界を…守って…』

『また…明日』

『ヨポポイ!』

ガッシュ「私は…!」

『魔界に…がいてくれたら…』

ウェイバー「やさしい王様…じゃなかったのかよ」

ガッシュ「!!」

ウェイバー「…夢だったけどさ、お前の記憶が僕の中に流れてきたんだよ。辛いだろうさ、自分の友達と戦うなんて。でも…」

ウェイバー「夢の中でのお前は、どんな相手にだって戦ってきてた。どんなにでかくても、どんなに強くても。…お前は、お前のパートナーだったやつと一緒に、どんな壁も乗り越えてきた。違うか?」

ガッシュ「ウヌ…」

ウェイバー「お前には、数えきれないほど助けられた…今度は、僕の番だ」

ウェイバー「ガッシュ…お前が悩んでいるなら、僕が助けてやる!僕が教えてやる!僕がなんとかしてやるから…!」

ウェイバー「僕と…一緒に戦ってくれ…!」

ガッシュ「ウェイバー…」

綺礼(たった少しの間に…人をここまで変化させるか。お前は…いや、お前達は、共に高め合い強くなれる友だということか)

綺礼(ふっ…らしくもない考えだな、まったく)

ここまで
いや難しい…
心を操るクソ野郎と言わせようと思ったけど、おもいっきり自分のために他人に暗示かけてたからな~ウェイバー

お待たせしました
再開します

ウェイバー「ガッシュ…お前の答えを聞かせてくれ」

ガッシュ「…ウヌ!決まっておるではないか!私はお主のパートナーだ!最後まで、一緒に戦おうぞ!」

ウェイバー「…ありがとな」

ガッシュ「な!?」

ウェイバー「…んだよその反応は」

ガッシュ「まさかウェイバーにありがとうと言われるなど…」

ウェイバー「うっさいなーもう!僕だってその…感謝しているつったろ」

照れ隠しにガッシュの頭を小突くと、調子が戻った気がした。十中八九、今の僕の顔は真っ赤だろう。

綺礼「では、決まりだな」

ウェイバー「ああ…あんたに協力してやるよ」

綺礼「ふむ…やはりお前達を選んで正解だった。他のマスターは一筋縄でいくような面子ではなかったからな。正直助かっている」

ウェイバー「一言余計だよな…それで?協力するとは言ったが、何か策はあるのか?」

綺礼「…」

ガッシュ「ウヌウ、ないのか?」

綺礼「…」

ウェイバー「その様子じゃ…」

綺礼「…ふっ」

ウェイバー「笑ってごまかすなー!」

綺礼「私だけで勝てるとは微塵も思っていない。お前達の助力はありがたい…が、残りのマスターの力も借りたい」

ウェイバー「なら、そのマスター達は…」

綺礼「教会の指令に素直に従うかは分からん…魔術師というやつは、どいつもこいつもひねくれているのが多いからな…」

ガッシュ「お主は人のことは言えぬのでは…」

綺礼「ん?なんだね?もう一度言ってくれ」

ガッシュ「ヒッ!?およ…およよ…」

ウェイバー「びびるなよ…」

綺礼「とにかく、今のお前達には休息が必要だ。少し休め。私も…疲れ…」

二人は気づかなかったが、綺礼の心身は限界を迎えていた。淡々と状況を説明していた神父は、電池が切れたようにその場に倒れこんだ。

ウェイバー「お、おい!」

綺礼「……」

ガッシュ「…心配いらぬ。寝ておるのだ」

ウェイバー「…なんだ。じゃあ僕も眠る…」

ガッシュ「私も…」

そして二人も眠りについた。ガッシュ達の長い一日は、一先ず幕を下ろした。

 (ウ…バー …ウイバー…! ウェバー!) 

「ウェイバー!!!!!」

ウェイバー「うわあああああ!?」

朝…というには少し早く空もまだ暗い。普段なら寝ている時間…だったが、ウェイバーはこのパートナーによって飛び起きた。

ガッシュ「ヌ?目覚めたか!おはようなのだ!」 

ウェイバー「お前かよ…驚かせ…」

ガッシュ「寝ている場合などではないのだ!私たち以外のマスターが来たのだ!さあ急ぐのだ!」

ウェイバー「何だって!?それはどこに…」

「お前の後ろにだ」

最悪の目覚めだった。朧気な頭が一瞬で覚醒する。経験したことはあるはずもないがはっきりと分かる。自分の頭には、銃口が突きつけられていた。

「油断しているにも程があるな。安全地帯が何時危険地帯に変わるかなんて、お前達は更々考えていないらしい」

ガッシュ「ウェイバーをバカにするな!」

ウェイバー「…おいガッシュよ、なぜお前はこの状況でそんな口を利けるんだ」

「…お前も、よくこの場面で発言できるものだな」

殺気を感じた。いつか殺されるかもしれないと覚悟はしていたが、どうやらこの戦争の認識を改めたほうがいいようだ。

ウェイバー「…僕を脅迫してどうするつもりだ」

「脅迫?ふっ…生ぬるいな。寝ぼけているのか?僕はお前を殺す。そして聖杯を手にいれる。そう、それだけだ。その為に僕は…」

「どれだけの犠牲も厭わない」

その男が引き金を引こうとしている事は顔が見えずとも感じ取れた。今から起ころうとすることに耐えきれず、目をつぶる。

ガッシュ「やめろ!!」

「終わりだ」



「切嗣ーーーーーーー!!!!!」

ガッシュ「お、お主は…」

ウェイバー「セイバー!」

「ちっ…ここまで早く勘づかれるとはな」

セイバー「計画の二時間前に事を進めようとするとは…おかげで急いで走ってきたんですよ私は!」

「別に同じ時間に出発するとは一言も口にしていないが?」

セイバー「また屁理屈を…それより切嗣、銃を下ろしなさい」

切嗣「サーヴァントの命令に従うつもりはない…僕はこいつらを始末する」

セイバー「もし私の前でそのような行動をとるならば、私が貴方を切りましょう」

切嗣「何を言い出すかと思えば…君は勝ちたくないのか?」

セイバー「この誉れある戦いの中で、汚れた勝利など言語道断だ!」

切嗣「まったく…英雄様の悪い癖だな。手段を選ばないのが戦争だろう。お前のそれは、戦友とやらを擁護する詭弁にすぎない」

セイバー「貴様…!今ここで叩き斬ってやろうか!」

「そこまでにしてもらおうか、衛宮切嗣。そしてそのサーヴァント」

綺礼「おはよう諸君。監督役の言峰綺礼だ」

ガッシュ「オオ!助かったのだ!」

切嗣「…!」

ウェイバー「なんかすっきりした顔しやがって…」

ウェイバー(それに少し笑ってないか…?)

綺礼「ここに来てくれたということはすなわち、我らに協力してくれるという…」「勘違いするな」

切嗣「僕はお前…言峰綺礼から、話を聞き出しにきた」

セイバー「…」

綺礼「話?伝達ならば済ませたが…」

切嗣「とぼけなくていい。お前はアサシンを通じて知っているはずだ、あの夜の出来事を」

ウェイバー(あの夜…?)

綺礼「…いいだろう。他でもない衛宮切嗣からの頼みだ。私の知る限りの事象を語ってやる」

綺礼「さあ、銃を下ろしてもらおうか。ソレも、一応仲間なのでな」

ガッシュ「一応ではないのだー!!私たちは…」

ウェイバー(僕の知らない裏側の話…聞く価値はありそうだ)

綺礼「お前達は奥にこい。今からする話はここにいる全員に聞いてもらおう」

ここまで
休み長かったわりに短くてすいません。

再開します

ウェイバー達は決して広いとはいえない部屋に案内され、それぞれ用意されていた椅子に腰掛けた。

ガッシュ「おのれキレイめ…私をバカにしておるな…」

ウェイバー「バカなのは事実だろ」

ガッシュ「グヌ…」 

綺礼「さて…これからどうする?衛宮切嗣」

切嗣「お前、頭は大丈夫か?僕はあの時の話をしろと…」

綺礼「まあそう急かすな…話すにあたって条件がある。そうだな…二つだ」

切嗣「条件だと…?」

綺礼「ああ。まさか無償でこの情報が手に入れられるとでも?」

セイバー「サーヴァントを失った貴様が、これ以上何を望むというのだ」

ウェイバー「おい…」

綺礼「私が出す条件…まずひとつは、我々に協力することだ」

切嗣「…」

綺礼「そしてもうひとつは…」

綺礼「貴様が聖杯に託す願望…今ここで、教えてもらおう」

切嗣「!…どういうつもりだ」

綺礼「興味本意だ」

切嗣「下らない…僕の願いを聞いて、お前に得があるとは思えない」

ウェイバー「そうだよ言峰。そんなこと知って一体なんになるのさ」

綺礼「人の願望だからではない。衛宮切嗣…お前の願望だからこそだ」

切嗣「…?」

切嗣(やはり危険な奴だ…こいつが今何を考えているか、僕には理解できないよ)

ウェイバー「おいおい…誰だって聞かれたくないことのひとつやふたつはあるもんだろ?…なあセイバー」

セイバー「話しましょう切嗣」

ウェイバー「え?」

セイバー「今すぐに。話しましょう切嗣」

ガッシュ「ナ…止めぬのかセイバー…」

セイバー(これが切嗣を知れる最後の機会かもしれない…!) 

切嗣「…はぁ」

切嗣「僕の願いは…人類の闘争の抑止…いわば、この世界全体の救済…といったところかな」

切嗣「僕は人類全体を救う…そのためになんだってしてきたつもりさ。でもそれじゃあ足りない…足りないんだよ」

綺礼「人類の救済…?ふっ、笑わせるな。貴様が目指していたものは、そのような世迷い事だと?嘲るなよ衛宮切嗣!」

綺礼「闘争を止めるだと!?人間の本質こそが闘争にあることがなぜ分からん!?貴様の願いは無意味なものだ!そんなものなのか!私の追い求めた貴様は…!」

ウェイバー「落ち着けよ言峰…でも、そうだな…その願いは…」

切嗣「そうだ。この願いは奇跡にも等しい。だがその奇跡すら叶える器こそ聖杯。だから僕はどんな犠牲を払おうと、聖杯を手にいれる…」

切嗣「この醜い争いの…終わらぬ連鎖を終わらせるためにな」

セイバー「……それが、貴方の理想ですか」

切嗣「…お前達のような奴等が…いや、いい」

切嗣「満足か?言峰綺礼。こちらは不愉快極まりない、さっさと話を聞いてここから立ち去りたいんだが…」

綺礼「…ふざけるな…ぐっ…」

切嗣「聞いちゃあいないか…」

切嗣「…時間の無駄だったか。失礼する」

ガッシュ「…お主…」

切嗣「…?なんだ、何か用か」

ガッシュ「ウヌ…お主、すごいではないか!お主が聖杯にお願いするのは良いことだ!見直したぞ!」

切嗣「な…?」

ガッシュ「ケンカは良くないのだ。止めなきゃいけないというのも分かる。ウヌ、やっぱりお主はいいヤツなのだ!そうだの…お主がなりたいのは…えっと…」


ガッシュ「正義の味方なのだな!」


切嗣「ーーー!」

《ケリィはさ、どんな大人になりたいの?》

《僕はね…》

切嗣「…」

さっきまで平静を保っていた男は、血相を変えてガッシュに向かってきた。

ウェイバー「…おい。地雷踏んだんじゃ…」

ガッシュ「ウヌ?間違ってはおら…ヌオオ!?」

その男はガッシュのマントを掴み、子供に向けていいとは思えない視線を、目の前のガッシュに向けていた。

切嗣「…もう少し話しをしてやる」

切嗣「正義の味方なんてのは、そんな甘い考えでなれるもんじゃない…!常に多数のために少数を切り捨てる、そんなエゴイストの塊だ…」

ガッシュ「ウ、ウヌ?しかしだの…」

切嗣「お前はまだ、この世界がとっくの昔に狂っている事に気づいちゃいない…だから正義を軽々しく口に出せるんだ…!」

切嗣「いいか!正義の味方ってのは…!」

《見ていてくれたかい…シャーレイ》

《ふざけるな……ふざけるなッ! 馬鹿野郎ッ!!》

怒りで我を忘れ、殴りかかろうとしていた切嗣の拳を、セイバーが抑える。

セイバー「切嗣…もういいでしょう」

切嗣「…っ!僕としたことが…」

ウェイバー「…」

ガッシュ「…すまなかったのだ。私が悪かった。お主の気持ちを考えずに…」

セイバー「ガッシュ…」

綺礼「…ふん、くだらない結末だ」

綺礼「どうやら、お前に期待した私が愚かだったらしい。私はまだ答えを得ることはできないのか…」

切嗣「それは良かったな。…それで、条件は達成したが?」

綺礼「いいや、まだだ。…お前達は、我々に協力してくれるのか?」

切嗣「…」

セイバー「私は…構いませんが」

切嗣「そうか。じゃあセイバーはそちらにくれてやる。さあ話せ」

セイバー「!?」

ウェイバー「アンタ…自分のサーヴァントを…」

切嗣「本人の了承を得てるんだ。僕が指図できる立場じゃない」

セイバー「…」

切嗣(…?いつもなら反論してくるが…)

綺礼「では、お前はどうする。お前が単独行動したところで、なす事はたかが知れているだろう」

切嗣「さあね。…これから考えるさ」

ガッシュ「…キリツグとやら」

ガッシュ「一つ聞きたい。そこまで正義の味方にこだわるのなら、どうして正義の味方を否定するのだ?」

切嗣「それは…そうだ、一つ質問する。これに答えられるなら質問の答えを教えてやってもいい」

ガッシュ「ウヌ!どんとこい!」

切嗣「自分の大切な人…家族やガールフレンドの命と、この世界全ての命…どちらか一方を救った場合、一方は死ぬ。さあ、お前はどちらを選ぶ?」

ウェイバー「な!?メチャクチャだろそんなの!!」

切嗣「僕ならば答えは一瞬で出せる。…が、お前はどうだ?」

ガッシュ「ウ、それは…」

ガッシュ「ヌウウ……」
 
切嗣「もういい。…もしまた出会うことがあれば、お前の出した答えを聞いてやる」

切嗣「言峰。契約成立だ。これだけ待たされたんだ、それなりの内容でないと、僕はお前を殺す」

綺礼「正義の味方を論じておいてそれか…無益な殺生はよせ」

切嗣「聖職者かお前は…」

セイバー「き、切嗣!私は!」

切嗣「…」

セイバー「マスター!!!」

ウェイバー「…ドンマイ」

ここまで

すみません今日は無理です
不定期すぎてがっかりさせて本当申し訳ないです

綺礼「では、どこから話そうか…」

ウェイバー「あの夜ってのはいつの話だ?」

綺礼「そこのセイバーや、ライダー、アーチャー、バーサーカーがしのぎを削った…大々的に聖杯戦争が始まった夜の時だ」

ガッシュ「ウヌ、私たちもいたのだ!」

ウェイバー「言わんでいいわ!」

切嗣「…問題は一度決着がついた後の事だ。お前は全貌を知っているんだろう、言峰綺礼」

綺礼「全てを認知しているわけではない。…が、私含め、その場にいたアサシンも目を疑った出来事はあった」

綺礼「お前達が聞いても信じられないと思うが…」

セイバー「…一体、何なのですか」

綺礼「ふん…まず念頭に置いてほしいのは、キャスターゾフィスは、完全な英霊ではない。いや、奴は英霊などではないという方が的を得ているか」

ウェイバー「?…それのどこが変なんだよ」

綺礼「…驚くべきなのは奴の召喚方法だ」

綺礼「…」

ーーーーーーーーーーーーーー


雁夜『ふっ…ははははは!あのサーヴァント、逃げやがった!見たか時臣!…かはっ!』

雁夜『…くそっ、バーサーカー…もういいってのに…ごほっ!やめ…』

目的を成し遂げ気分が良かった雁夜だったが、アーチャーに次ぎ、セイバーとの戦闘による魔力供給で苦しんでいた。

雁夜『ぐっ…』

『グ…』

雁夜『…?…なんだこの声…』

少しでも体を楽にしようとした雁夜に、呻き声が耳に入ってきた。

雁夜『野良犬か…?いや…』

『ウウウ…』

雁夜『まさか…敵…!』

その気配は背後から近づいてきた。野良犬なんかじゃない。あってほしくない予想は、的中してしまった。

『ガァァァァ!!』

雁夜『…敵ならしょうがない!バーサーカー!来い!』

自分の危機のため、サーヴァントを令呪で呼び出す。ここで死ぬわけにはいかない。

バーサーカー『uuu…』

雁夜『けほっ…頼んだ…バーサーカー…』

『アアアア!!』

アサシン(…なんだ、あれは…)

アイリ『消えた!?』

セイバー『…令呪か』

ライダー『ふむ…』

ーーーーーーーーーーーーーー

拠点に戻っていた切嗣達を襲ったのは、キャスターとそのマスターだった。キャスターとはいえサーヴァント、人間が勝てるはずもなく、マスターが素人だといえ相手にすらならなかった。

キャスター?『……』

舞弥『う…あ…』

切嗣『舞弥!!』

舞弥『切嗣…生きて…』

キャスター?『…まずは一人…』

切嗣『…くそっ!』

龍之介?『…旦那…みんな殺しちまおうぜ』

キャスター?『ええ龍之介…このまま…』

『『全員を』』

切嗣『!?何を…している…!?』

『『ハハハハハハハハハ!!』』

出会って間もないが、立ち振舞いから精神異常者だとは理解していた。…しかし、彼らは想像をはるか越えた行動に出た。

『『ギャハハハハハハハハハ!!』』

彼らは味方同士で殺し合いを始めたのだ。相手の姿が血で見えなくなるまで、互いを傷つけ、切り裂き、引き裂く。先程まで車が通っていた車道は、おぞましい惨状に変わっていた。

切嗣『これは…どういう…』

もう切嗣など眼中にない。彼らはただ血だけを求めていた。

『『ハハハ…ハハ…』』

目を背けていた切嗣がもとの場所を見ると、一人の死体が転がっていた。吐き気に襲われるが、心を落ち着かせようとする。

切嗣『…なんだったんだ奴らは』

『楽しんでいただけましたか?』

切嗣『!? 誰だ!』

『…これは挨拶が遅れました』

ゾフィス『私はキャスター…この者とは違い、正々堂々と聖杯を争う一人…お見知りおきを、衛宮切嗣』

切嗣『キャスターだと!?キャスターならもう…』

ゾフィス『いいえ、私こそが真のキャスター…さあ、戦いを始めましょうか?』

切嗣『…!』

ここまで

考えた結果、あまり使いたくないのですが戦闘で擬音を使わせていただきます。私の語彙力不足のせいです。申し訳ない。

バーサーカー『ーーーーー!』

『ウウウウ!!』ドゴッ

バーサーカー『…a……』ガクッ

雁夜『そんな…バーサーカーが手も足も出ないなんて…』

アサシン(あの強さ…やはりサーヴァントなのか。しかし、それならば我等が見過ごすなど…)

雁夜『…重ねて…令呪だ…!バーサーカー!!!』

バーサーカー『ーーーーーー!!!』ダッ

『グッ!ゥゥアァ!』ガキィン

令呪によりバーサーカーの魔力は増幅したが、それでもやっと、まともに渡り合えるようになった程度だった。

バーサーカー『uuu……!』グラッ

『…ァァ!!!』ドスッ

雁夜『あ…』

アサシン(…決まったな)

…結果は、火を見るよりも明らかだった。

バーサーカー『Aーー』ドサッ

雁夜『あ…ああ…』

『……』ガシッ

サーヴァントらしきモノは、雁夜とバーサーカーを掴むと、任務を終えたと言わんばかりに撤退する。

雁夜『え!?は…放せ…うわっ!』

『…』ヒュッ

アサシン『!? 何処へ向かうつもりだ!』

アサシンも行方を追うが、どうにか見失わないようにするのが限界だった。

アサシン『…速いな…だが、二人とも痛手を負っているのは確か…仕留めるならば今だ』

アサシン(妄想幻像!)

アサシン(有利とはいえ油断はしない。ここで倒す。そのためだけに、我等の半数でかかる)

アサシン『…行くぞ!』ブワァ

『……!』

アサシン『獲った…!』シュン

全方位より数を使って強襲する。逃げ場などはない。

アサシン『もらっ…』

『ウウ…アアアア!!』ビリビリ

雑魚は目障りだというような咆哮をあげ、ついに隠された姿を顕にした。

アサシン『…!その装い…貴様…何故だ!?』

『…ァ!』バリバリ

アサシンは動揺を抑えきれない。正体不明だったサーヴァントの正体は、ほんの少し前に自分達と戦った者と姿が瓜二つだったからだ。

切嗣『…く…この…』ボロ

ゾフィス『フッ…殺し屋のくせして、非情になりきれてないですねェ!』

切嗣『…お前は!自分のやっていることを何とも思わないのか!』

ゾフィス『つまらない事を聞きますね…決まっているじゃあありませんか。これは戦争なのでしょう?勝つためにどんな駒を使おうと自由…たとえ』

ゾフィス『その命が果てた者でも』

舞弥?『……』カチャ

切嗣『舞弥…!』

ゾフィス『フフ…邪魔ならば殺せばいい。一度死んでいるのだから躊躇うことはないでしょう?』

切嗣(…僕は勝つ。勝って聖杯を手に入れる!だから僕は…!)

切嗣(そうだ…所詮舞弥は僕の道具にすぎない。僕のモノを僕がどうしようと…!)

舞弥『…き…りつぐ…』

切嗣『!!』

舞弥『やめ…て…』

切嗣『…ッ!』ビクッ

切嗣は迷いから引き金を引けなかった。そして舞弥は迷いもなく、切嗣を持っていた銃で強打する。

切嗣『ぐっ…』

ゾフィス『ハハハハハッ!人の心があるからこそ、人一人殺せない!面白い!最高の見世物だ!』

切嗣『貴様ァ!!』

ゾフィス『…なんです?文句があるなら、その女を撃ち殺してしまえばいいではないですか。まさか出来ないとは言わないでしょう…フフ…』

切嗣『…』カチャ

舞弥『…切…嗣』

ゾフィス『さあ…さあ!』

切嗣『…うわあああああ!!』

ーーーーーーーーーーーー

ハサンs『…』ドサッ

『カ……』

雁夜『…倒しやがった…何十体もいたアサシンを…一瞬で…』

アサシン『…はぁ…はぁ…』

雁夜『! まだ残っていたのか!けど…』

『ググァ……』

アサシン『…!』ゾクッ

アサシン『…撤退だ。この事は、必ず綺礼様に伝えねばなるまい』ダッ

『…ガ!』

アサシンを始末するために後を追おうとするが、そこでゾフィスから指令が来た。

ゾフィス(そこまでです。早く来なさい)

アサシン『……』

衛宮切嗣は、殺すという選択を選んだ。放心状態より意識が戻ると、切嗣の目には、血だらけの相棒が転がっていた。

切嗣『……』ポトッ

ゾフィス『…おや、どうしました?』

切嗣『…う…ああ…』ポロ

ゾフィス『もしや…泣いているのですか?…貴方、思っていたよりつまらなくない人かもしれませんね』

ゾフィス『どうです?私の下僕になれば、貴方の願いを聞き入れても…』

切嗣『あ…あああ…』ガバッ

舞弥『……』

ゾフィス『…チッ』

ゾフィス『ナァ、衛宮切嗣。これだけは忘れるなよ』

ゾフィス『そいつを殺したのはお前だ。私でも、あのキャスターでもない。お前が、そいつを殺したんだよォ!!ハハハハハハ!』

切嗣『!!』

ゾフィス『では挨拶も済ませたことですし…サヨウナラ』

切嗣『違う…キャスターが殺した…でも、最後は…』

『やめて…』

切嗣『僕が…殺した…殺したんだ…!うわああああああ!!!』


ゾフィス『フッ…人間とは…脆いものですね』

ここまで

あれ?おかしいな、だんだん虚淵モドキみたいな感じに…

少年はゾフィスの命令に従い、アサシンを無視して一直線にある場所に向かっていった。

『…ゥゥ…』ピョン
 
雁夜『…こいつ、どこ向かってるんだ?』

バーサーカー『…r……』

ゾフィス《そろそろですね…》

『…』

雁夜(にしてもなんで俺達を殺さないんだ…?俺はともかく、せめてサーヴァントだけでも倒すべきだ。いや、死にたくはないけども)

『…ガウ!』ビュン

雁夜『うおっ!…この身体でそのスピードアップは…ぐほっ!』

ゾフィス《そうです…ここですよ…》

叫び、涙も枯れ、目も虚ろになっていた切嗣を、ゾフィスは手を下さずじっと見つめていた。

切嗣『…僕を殺さないのか』

ゾフィス『ええ…止めにしましょう。丁度いいので、これからショーの第二幕を始めることにしました』

切嗣『! まだ何かするつもりか!下衆が!』

ゾフィス『フフ…まあ楽しみにしていてください』

『アアアアアアア!!!』

切嗣『…!?なんだこの音は…』

ゾフィス『おや、到着したようですね。…では、また後ほど』フワァ

切嗣『待て!』

ゾフィス『貴方こそ、そこで待っていてくれればいいんですよ』

ゾフィスは切嗣を置いて、その音がする方に飛んでいった。

切嗣『…』

『…ゥゥ…』

ゾフィス『ほう…ちゃんと働けるようだ。ご苦労』

雁夜『おい!なんなんだお前は!…ぐほっ!』

ゾフィス『…どうやら、本当にゾウケンから知らされていないようですね』

雁夜『臓硯だと?』

ゾフィス『まあいいでしょう。やはり貴方は、計画の駒にすらなれないクズだということか』

雁夜『計画…?』

ゾフィス『ええ。貴方は、私のマスターになるんですよ』

雁夜『え?』

ゾフィス『そう…貴方は…私の…』キィン

雁夜にゾフィスが得意とする暗示をかける。心が弱い雁夜は、抵抗すらできなかった。

雁夜『俺は…お前の…』

雁夜『…』

ゾフィス『フ…そして…こいつも…』

バーサーカー『A…r…』

アサシン(…ここか)

アサシンはマスターへの報告用とは別で、念のために一人だけを追跡に向かわせていた。

アサシン(あれは…?)

ゾフィス『ーーーー』

アサシン(また素性の分からん奴…なにかしら、この件には裏があるようだな)

雁夜『ーーー』

アサシン(…間桐雁夜!…そして、あの者…!)

『……』

アサシン(…これは、もしや『殺しなさい』

アサシン『!!馬鹿な…気づかれ…!』

ゾフィス『…雷帝ゼオン!』

ゼオン『……!!』ビシュン

驚くべき反応速度でアサシンに接近した。距離を詰められたならば、気配遮断も意味をなさない。

アサシン『速…』

ゼオン『…』バキッ

アサシン『ぐっ!』

容赦ない一撃が顔に食らわされた。仮面に皹が入るような痛みがアサシンを襲う。

アサシン『…あっ…』

ゾフィス『…』ニィ

ゼオン『…アア!!』ドガァ

アサシン『ぐああああ!!』

身体が地面に叩きつけられる。今度は全身に痛みが流れる。それでも休む隙もなく、ゼオンに追撃される。

ゼオン『……』ガッ

アサシン『…ここまで…か…』

ゼオン『…』ブォン

しかし殺すのではなく、ゼオンはゾフィスの方へアサシンを投げ出した。

アサシン『うっ!』

ゾフィス『…ありがとうゼオン。一応試しておきたいとは思っていたのですよ』

アサシン『…か…』

ゾフィス『始めましょうか』

ゾフィス『これより私は…サーヴァントになる』

ここまで

もしかすると前半書いてた部分と今の内容が矛盾するかも…できるだけは合わせる

再開します

ゾフィス『ハッ!』

アサシン『…カハッ!?』ドクン

アサシン(力が…吸いとられ…アレ……)

アサシン『…ク…ァ…』シュイン

ゾフィス『…力がみなぎる…』

ゾフィス『アハ…無事、完了しましたね』

ゾフィス『ではゼオンも…』

ゼオン『!!』

バーサーカー『urrrrrrrr…!』シュイン

ゼオン『ガァァァ!!…ガ…』ガタガタ

ゼオン『……』

雁夜『…』

ゾフィス『さ…行きましょうか。私の人形達』

切嗣『…僕は…』

ゾフィス『…お待たせしました』
 
切嗣『!!』

ゾフィス『いやァ、まさか素直に待っているとは。益々面白いですね貴方』

切嗣『お前…そいつは…』

ゾフィス『ええ、紹介しておきましょう。私のマスターのカリヤです』

雁夜『そう…だ。俺が…マスター』

切嗣『…なら、バーサーカーはどうした?』

ゾフィス『倒しましたよ。だから、こうやってここにいるんじゃあないですか』

切嗣『バーサーカーを倒した…!?』

《…それ以上口を滑らすでない、ゾフィス》

ゾフィス《…分かっていますよ》

ゾフィス『…残念ですがサービスはここまでです。ではまた、ごきげんよう』

切嗣『お前は…お前は、一体何を企んでいる!』

ゾフィス『言ったでしょう、私は聖杯を勝ち取るためにここにいると』

切嗣『ふざけるな!』

ゾフィス『冗談じゃないですよ?そろそろしつこいですね、貴方。ここで殺さないだけいいと思えよゴミが!』

ゾフィス『おっといけない…楽しみにしていますよ、衛宮切嗣?』フワァ

雁夜『…』

切嗣『…』ギリッ

アサシン『…と』

綺礼『馬鹿な…!そのようなことがあり得るのか!?』

アサシン『ですが、事実証明されています。我等の一人を犠牲にして…』

アサシン『奴はただの魔術師から…』


アサシン『サーヴァントへと変貌しました』

ーーーーーーーーーーーーーー

切嗣「サーヴァントに変貌しただと…?」

ウェイバー「じゃあ、ゾフィスは何者なんだよ!?」

綺礼「ああ。奴は人間ではない。尚且つ、聖杯に選ばれたサーヴァント全てはアサシンが確認済みだった。恐らく、サーヴァントとして乱入した上で、この聖杯戦争を乗っとるつもりだろう」

ウェイバー「そんな真似できるのかよ!」

切嗣「…無理だろうな、一人では」

ガッシュ「キリツグ、心当たりがあるのか?」

切嗣「気安く呼ばないでくれ。…言峰、間桐雁夜は確かにゾフィスのマスターなのか?」

綺礼「何を言うかと思えば。他でもない、貴様がそう言ったではないか」

切嗣「なら、目星はついた。僕の目指すべき標的はやはり…」

切嗣「間桐臓硯だ」

言峰「!」

ウェイバー「…誰だ?」ボソボソ

言峰「聖杯戦争の御三家のひとつ、マキリの別名…というべきかな」ボソボソ

ウェイバー「なるほど…」ボソボソ

切嗣「…聖杯戦争のシステムを作り上げた御三家は、アインツベルン、遠坂、マキリ。もちろんそれぞれに役割があったが…マキリが提供したのは」

切嗣「英霊…もとい、サーヴァントの召喚と、それを御するための令呪だ」

セイバー「私たちを…」

言峰「奴等ならば令呪を悪用し、最悪令呪を作り出すことも可能かもしれん」

ガッシュ「ゾフィスが…」

切嗣「なにより決定的なのは、奴があの屋敷に姿を隠していた事だ」

言峰「ほう…」

ガッシュ「では、そのゾウケンを倒せばいいのだな!」

切嗣「まあ、そうなるな。…だが、決着は僕一人でつける」

ガッシュ「ヌ!?」

ガッシュ「水くさいぞキリツグ!私達みんなで戦えばよいではないか!」

切嗣「奴は…奴等は僕の獲物だ。必ず僕の手で殺す」

綺礼「そうでたか…お前だけで勝てる可能性はゼロに近い。協力しないメリットがないだろう?」

切嗣「これは僕の戦いだ!誰にも邪魔はさせない…!誰にも…」

切嗣はセイバーに目を向けながらそう断言した。それは、ここにいる誰よりも、セイバーに伝えたかった言葉だからだ。

ウェイバー「無茶言うなよ!このままみすみす戦力を失わなくても…」

セイバー「…切嗣」

ウェイバー「セイバー!お前もなんとか…」

セイバー「すみません…皆、少し席を外していただけませんか?」

ガッシュ「セイバー…?」

切嗣「…」

ウェイバー「じゃあ…」ガタッ

セイバー「ええ。お気遣い感謝します」

言峰(…説得するつもりか?あの男を)

ガッシュ「ウヌ…心配なのだ…」

ウェイバー「こら、行くぞ」ガシッ

ーーーーーーー


切嗣「…何のつもりだ?」

セイバー「切嗣…前から貴方と語り合いたいと」

切嗣「僕はお前と話す事などない」

セイバー「そうはいかない。私は、アイリスフィールから貴方の事を任されていますから」

セイバー「切嗣…貴方が一人で戦う必要はない。私はサーヴァント、常に貴方と共にある、仲間ではありませんか!」

切嗣「お前と肩を並べて戦う?…ふっ、笑わせるなよセイバー。…君と僕が釣り合うとでも?騎士王様と、しがない暗殺者の僕が?」

セイバー「…何故貴方は、そうやって罵言で逃げるのですか。私が…英雄が憎いのは、痛いほどに伝わりました。しかしこのままでは…」

切嗣「戦い抜けない。なぜならそれは、僕が弱いからだ。とでも言いたいのか?だから、黙って自分に頼っていればそれでいいと?」

セイバー「…違っ…」

切嗣「君の言葉など僕には届かない。…もう僕につきまとうな、使い魔」

セイバー「…!」

ガッシュ「大丈夫かの…大丈夫かの…」ウロウロ

ウェイバー「だー!大人しくしてろっての!」

ガッシュ「ウェイバー!!お主は気にならぬのか!?」

ウェイバー「うるさいなーもう!こういうのは、僕達が横やりいれるとこじゃないんだよ!」

綺礼「私も同意だ。…あの男が応じるとは思えんがな」

ウェイバー「…うん」

ガッシュ「とにかく、私達は待つしかないのだな」

ーーーーーーー

セイバー「切嗣!貴方という人は…!」

切嗣「黙れ」

セイバー「っいい加減にしなさい!私は…」

切嗣「僕の前から消え失せろ。…いや、いっそのことここで自害させるか?」  

セイバー「ッ!!」ブルブル

セイバー「ーーーここまでだ」

セイバーは剣を切嗣に向けた。だが切嗣は、全く抵抗しない。

セイバー「口が過ぎるぞ下郎!今まで耐えてきたが、この無礼、もはや看過できるものではない!」

切嗣「言葉で勝てないなら実力行使。野蛮な奴だ」

セイバー「まだ言うか!」

切嗣「なら…殺せばいい。そう生きてきたんだろう!気に入らない奴、邪魔な奴、目障りな奴、全て殺してきてお前は王になったんだろうが!」

セイバー「…くっ!」

切嗣「今だってそうさ。自分の事を棚にあげておいて…お前は独善的な奴だ。まさに、王の器に相応しい人間ってか?」

セイバー「私は切嗣のために、私なりに切嗣を理解しようと…!」

切嗣「ほらそこだ。自分のためにこのわからず屋のマスターを理解してやろう、アイリの頼みだから仕方がない。そういうプライドがみえみえなんだよお前は」

セイバー「私はそんなつもりじゃ…」

切嗣「別に構わないさ。前にも言ったはずだ。僕達が分かり合える事はないんだよ」

セイバー「…それでも」

セイバー「それでも、私は貴方のサーヴァントだ!貴方のために戦う剣だ!貴方のために聖杯を勝ち取る!だから、だから…」

切嗣「やっぱりそうだ。セイバー、お前は…」



切嗣「人の心が分かっていないんだな」

セイバー「!!」

切嗣「君は…僕に召喚されるべきじゃなかった」

セイバー「…」

切嗣「話は終わりだ。たとえ一人でも…僕が、掴みとってみせる…」バタン

セイバー「…あ…」

セイバー「…」

ここまで

再開します

再開します

連投してた…スマソ

口論を終えた切嗣が部屋から現れると、外で待機していたガッシュ達は一目散に切嗣に駆け寄った。

ガッシュ「キリツグ!お主は…」タタッ

切嗣「…」ギロッ

ガッシュ「ヌ…」

綺礼「…行くのか?」

切嗣「セイバーはお前達に預ける。好きに使え」

ウェイバー「おい!あんたはそれでいいのかよ!」

切嗣「何が不満だ?お前達には利益しかないだろう」

ウェイバー「お前にはセイバーの気持ちってのが…」

ウェイバーが話していると、セイバーも扉から静かに出てきた。

セイバー「…いいのです」

ガッシュ「セイバー…」

切嗣「本人もこう言っている。…じゃあこれからは僕の好きにやらせてもらう」スタスタ 

綺礼(結局のところ、この男の心を動かすことは無理か…)

セイバー「…」

綺礼「…行ったか。やれやれ…ただでさえ互角には程遠いというのに…」

ウェイバー「セイバー。お前の説得じゃダメ…」

セイバー「…」

ガッシュ「ウェイバー…今はそっとしておいたほうが…」ヒソヒソ

ウェイバー「だな…」ヒソヒソ

綺礼「いささか不本意だが…奴はいなかったものとして、足掻くしかあるまい」

ガッシュ「…ウェイバー!!!」

ウェイバー「うわ!?なんだよいきなり!」

ガッシュ「特訓なのだ!」

ウェイバー「はぁ!?」

ガッシュ「悩んでいるなら、体を動かすのが一番なのだ!」

ウェイバー「…おお!そうだそうだ!決戦の時に術を使いこなせないんじゃ話にならないからな!」

ガッシュ「よーしやるのだ!ヌオオオオオ!!」ダダダ

ウェイバー「オオオオオオ!!」ダダダ

綺礼「あいつら…万全な状態になるまで休めと…」

セイバー「…」ジー

綺礼「ん?…気にかかるならばお前も混ざってくればいい」

セイバー「…いえ…私は見ているだけで…」

セイバー「今の私には…あの二人は眩しすぎる」

綺礼「そうか…」

ウェイバー「ザケル!!」

ガッシュ「」

ガッシュ達のやることは変わらない。ただ自分の呪文の力、心の力を高めようと、何度も術を唱えていた。

ウェイバー「よし!調子いいぞガッシュ!どんどんいくぞォ!」

ガッシュ「オオ!」

セイバー「…」ウズウズ

ウェイバー「ーーー!」

ガッシュ「」

ウェイバー「…くそっ!なんか違うんだよな…」

ガッシュ「ウヌ…」

セイバー「…ガッシュ…そこは……」ボソボソ

綺礼「…お前も」

セイバー「いけません!」

綺礼(強情な奴だ…)

セイバー「…」

ガッシュ「ハァ…ハァ…」

ウェイバー「…今日は、こんなもんか。もう終わりに…」チラッ

セイバー「…」ソワソワ

ウェイバー「…はぁ」

ガッシュ「ウヌ?」チラッ

ウェイバー「セイバー!」

セイバー「! な、なんでしょう!」ピョコン

ウェイバー「このままの僕たちじゃ限界があるからさ…稽古、つけてくれないか?」

セイバー「…!!」

ウェイバー「言峰は…そういうのするタイプじゃないだろ?」

綺礼「…ふっ。そうだな。強くなるならば、サーヴァントに戦いの極意を授かるほうが身のためだろう」

ガッシュ「賛成なのだ!」

セイバー「…ええ、そこまで言うなら仕方ありませんね!いいでしょう!私の誇りにかけて、貴方達を一人前にしてあげます!」パァァ

ウェイバー(ほっ…少しは元気でたみたいだな)

セイバー「私の修行は甘くないですよ?覚悟なさい二人とも!」

ウェイバー「…臨むところだ!」

再開します

セイバー「どうしました!早く立ちなさい!」

ガッシュ「…ウヌ!」スクッ

ウェイバー「し…死ぬ…」グテー

セイバー「鍛え方が足りません。まだまだですね、ウェイバー」

ウェイバー「僕だけかよ…」

ガッシュ「頑張るのだウェイバー!」

ウェイバー「お前はいつも元気だな!」

セイバー「それは…いえ、すみません。英霊と比較するのは筋違いでした。貴方もただの魔術師にしては、動ける部類に入らないともいえないでしょう」

ウェイバー「嬉しいような悲しいような…」

セイバー「…では、次は…」

ウェイバー「まだやんのかよ~…」

ウェイバー(今ここに、誰も止める奴がいないんだよな…この猪突猛進コンビを)


綺礼『悪いが私も暇ではないのでな…少し抜けさせてもらう。安心しろ、すぐ戻るさ。だからそれまで…』

綺礼『セイバーは頼んだぞ』ニヤァ

ウェイバー(ああ…言峰…覚えてろ…)

ゾフィス「ふぅ…」

ケイネス「…ゾフィス」

ゾフィス「おやケイネス…どうかしま…」

ふと後ろを振り向くと、臨戦態勢に入ったケイネスが立ち塞がっていた。

臓硯「ククク…つくづく貴様は人望がないのうゾフィス」

ゾフィス「…どういうつもりですか?」

ケイネス「貴様を殺せば、ソラウは解放される…!」

ケイネス「Fervor,mei Sanguis…!」

ゾフィス「私に歯向かうのですか…やれやれ」

ゾフィス「誰が力を与えてやったと思ってんだテメェはよォ!!」

???「テオラドム!」

ケイネス「…この程度が通じるとでも?」

ゾフィス「調子に乗らないでください」パチン

ケイネス「…!?ぐっ…あ…!あああああ!」

ゾフィスの合図から、ケイネスを防御していた水銀は剥がれ落ち、暴走を始めた。

ゾフィス「その力のリソースは私…私の匙加減で、いくらでも貴方の魔力は操作できる」

ゾフィス「…ゆっくり壊してやるよ…」

ケイネス「…!」

綺礼「…驚いたな。まだ続けていたのか」

セイバー「貴方が戻る数分前には、もう終わっていました」

ガッシュ「」

ウェイバー「…」

綺礼「…死んだか」

ウェイバー「生きとるわ!」

綺礼「そうか」

綺礼(ウェイバー・ベルベットはともかく、あのガッシュが…余程しごかれたらしいな)

セイバー「…何故笑みを浮かべている?」

綺礼「…なんでもない。それより、私達も遂に動く時が来た」

セイバー「!! いよいよですね…」

綺礼「…が、その前にガッシュを起こしてやらねばな」

セイバー「…はい」

綺礼「まず…奴等がやろうとしている計画のおおよそは掴めた」

綺礼「恐らくだが…奴等は聖杯を使って、この世界を滅ぼすつもりだ」

ウェイバー「何だって!?」

綺礼「あくまで予想にすぎん。…だが現在、この冬木の霊脈には奴が溜め込んだであろう並々ではない魔力がある。聖杯を使ってそれを放出させれば…」

ガッシュ「ウヌ…」

セイバー「…」

綺礼「しかし、これほどまでのエネルギーをたとえサーヴァントだとしても生み出せるとは考えられん。必ず裏があるはずだ」

綺礼「それに…」

セイバー「…? なんですか?」

綺礼「いや…気にするな。どうでもよいことだ」

綺礼「とにもかくにも、今の私達はそれを阻止するほかない。…とりあえず」チラッ

「「「??」」」

綺礼「ここから出ていけ」

「「「!?」」」

 マッケンジー宅

ウェイバー「…」

セイバー「美味です!」

マーサ「そう!よかった、どんどん食べてね!」

セイバー「ええ!」モキュモキュ

ガッシュ「…よく食べるのう」パクパク

グレン「やるなあウェイバー!こんな美人を連れてくるなんて」

ウェイバー「ちっがーう!そんなんじゃなーい!」

セイバー「うるひゃいですよ、ウェイバー。ひょくじひゅうでひゅから、ひひんとまなーをまもって…」モキュ

ウェイバー「まず咀嚼し終わってから喋れよ!汚いぞセイバー!」

セイバー「ひょんな…うっ!」

ガッシュ「どうしたのだ!?」

セイバー「のど…つまっ…」ブルブル  

ウェイバー「バカヤロー!」トントン

セイバー「む…ありがとうございます、ウェイバー」ゴックン

ウェイバー「…こいつ呼ぶんじゃなかったな…」ヒソヒソ

ガッシュ「そ、そんなことは…ない…のだ…」ヒソヒソ

セイバー「すみません、おかわりを!!」

ウェイバー「おおい!!」

セイバー「ご馳走さまでした。実に美味しかったです、是非またよろしくお願いします」キラキラ

マーサ「いい…食べっぷりだったわね…」

ウェイバー「遠慮しないで言ってやっていいよおばあさん。お前は食いすぎだってな」 

ガッシュ「た、たくさん食べるのはよいことなのだ!」

ウェイバー「人間限度を知らないとこうなるんだなってのが、こいつを見て分かったよ」

セイバー「む…貴方こそ、あれよりも食事を摂ったほうがいい。だから背も伸びず、貧相な体型に…」

ウェイバー「…体型に関しては人の事言えないだろ」

セイバー「…ほう?もう一度言ってみなさい!」

ウェイバー「なんだよ!ほんとのことだろ!?」

ガッシュ「ナアア!やめるのだ!!」

グレン「うんうん…仲もいいようだな」

「「仲よくない!!」」

教会を拠点にしてこれから戦おうと思った矢先、三人は突然言峰綺礼から追い出された。

ウェイバー達はマッケンジー宅に戻ろうとしたが、マスターに相手すらしてもらえないセイバーをこのまま見捨てる事もできず、了承を得て、一日のみマッケンジー宅に居候していた。

短い期間でどうにか作戦を立てよう、鍛練しようと心身をフル回転した三人は、気づけば夜を迎えていた。

ウェイバー「疲れたし…ちょっと早いけど寝るか」フワァ

ウェイバー「ガッシュ~…」ガチャ

ガッシュ「…」スピー

ウェイバー「もう寝てら…」

セイバー「おや、寝ていなかったのですね」

ウェイバー「うぉぉ!?…ああ、そういやいたんだったな」

部屋に戻ると、ガッシュは眠りについていたが、セイバーは窓から空を眺めていた。

マーサ『せっかくなんだし、一緒の部屋でいいわよね?』

ウェイバー『よくなーい!』

グレン『照れんでよかろう』ケラケラ

ウェイバー『て、照れてないわ!別にいいよ!同じ部屋でも!!』

マーサ『そう!』ニコニコ


ウェイバー「ったく…」ボリボリ

セイバー「…あの」

ウェイバー「ん?」

セイバー「本当に、ありがとうございます。敵でもある私を、このように迎えてくれて」 

ウェイバー「…んだよ急に」

セイバー「これまで感謝の言葉を述べていなかったので…」

ウェイバー「…そうか。それもそうだな」

セイバー「はい。…では、お休みなさい」

一言御礼を言うと、セイバーは再び視線を外に戻した。かという自分は布団に倒れこんだが、どうしてもセイバーが気になったので、起き上がって尋ねてみる。

ウェイバー「…お前は眠らないのか?」

セイバー「…サーヴァントに睡眠は必要ありません。なにより、今ここに敵が攻めてこないとも言いきれないでしょう」

ウェイバー「けど…そう気を張りつめてもしょうがないと思うけど?」

セイバー「しかしですね…」

ウェイバー「…はぁ」

仕方ない。こいつを納得させることはできない。なら…

ウェイバー「…」ドシッ

セイバー「どうしました?」

ウェイバー「お前が退屈しないように、僕がお前の話し相手になってやるよ」

セイバー「…?休息をとるべきでは?」

ウェイバー「そんなの僕の勝手だろ?…それに僕も気になってたんだ、お前の事と…あのマスターの事。聞くなら今だって思ってな」

セイバー「…そう…ですか。…貴方が眠くなるまでならば…」

セイバー「それと…私も、貴方とガッシュの話を聴きたい」

ウェイバー「ああ…いいよ」



ーーーーーーーーーーーー

セイバー「…です」

ウェイバー「へえ…まさかそんな奴とは思いもしなかったな。…だからアインツベルンじゃなくて、あいつ自ら出てきたってわけか」

ウェイバー「それにしても壮絶な戦いをしてたんだな…お前達は。んでお前はマスターに同情して、つい出すぎた真似をしてしまったわけか?」

セイバー「…」

ウェイバー「でもなー…どうにかしてやりたいけど、僕がでしゃばる所でもないし…」

ウェイバー「…散々罵倒されたお前がマスターを見捨ててないのも、何か理由があるんだろ?」

セイバー「…泣いていた」

ウェイバー「え?」

セイバー「切嗣は…泣いていた。私には涙を見せる事などありませんでしたが…少しだけ見せた…あの切嗣の顔は、冷酷な暗殺者などではない、愛する人への涙を流しているようにしか感じませんでした」

ウェイバー「…」

セイバー「勿論、そうではないとは理解しています。しかし、あの時の顔を見てから…」


アイリ『…お願いね?』

切嗣『よかった…本当に』


セイバー「…私は…」

セイバー「分からない。どちらが本当の衛宮切嗣なのか。自分がやっていることは間違いなのか。彼の心が…私には全く…」

切嗣『お前は…人の心が分かっていないんだな』

セイバー「情けない。民を救うどころか、人一人の気持ちも汲み取れない。やはり私は、王の器ではないのでしょうね」

ウェイバー「聖杯の望みはそういうわけか…」

セイバー「…私のせいで、国が滅びたも同然です。叶うならば、王の選定のやり直しを…」

セイバー「…ああ、申し訳ない。私情を挟みすぎてしまいました。私の話は終わりです」

ウェイバー「…王の器、ね」

ウェイバー「あー…セイバー。今度は僕の番だけど、まずはじめにいいか?」

セイバー「なんでしょう?」

ウェイバー「ガッシュもな…一応、王様なんだ」

セイバー「なんと!一体どこの王なのですか?」

ウェイバー「それは…えっと…」

セイバー「何故勿体ぶる!ここまで来たならば教えてくれても…」

ウェイバー「…冗談じゃないからな?」

ウェイバー「魔界だ」

セイバー「…は?」

ウェイバー「魔界だ」

セイバー「…は??」

いったんここまで

セイバー「マカイ?…私は、そのような国も文明も耳にしたことはありませんが…」

ウェイバー「うーん…魔界…そうだなあ、人間じゃなくて、魔物…?がいる場所っていうか…とにかく、あいつはそこの王様らしい」

セイバー「魔物…?ガッシュは聖杯によって呼び出された、全うな英霊ではないのですか?」

ウェイバー「いや…呼び出したのは確かに僕なんだけど…ちょっと待ってろ」ガサゴソ

ウェイバー「…あった。ほら、見てみろ」ポイ

ウェイバーが取り出したのは、ガッシュの服の色にそっくりな、青い布の切れ端だった。

セイバー「これは?」

ウェイバー「ガッシュを召喚した時の触媒だ」

セイバー「…この布でですか?」

ウェイバー「アーチ…ちょびっとだけ優秀な魔術師が用意した逸品を拝借してきたんだけど…で、やってみたらガッシュが召喚できたってわけ」

セイバー「くすねてきたということですか…」ジトー

ウェイバー「そんな目で見ないでくれ…」

ウェイバー「話を戻そう。ガッシュは記憶がないってのは、お前も聞いただろ?でも、完全に記憶がない訳じゃない」

ウェイバー「あいつは王になるために戦ってきた。百人もの魔物の中で、たった一人しかなれない王様になるためにな」

セイバー「その…魔物同士で争って、王を決めていたと?」

ウェイバー「ひどい話さ。あんな子供を人間界に解き放って、仲間と戦わせるなんて。僕みたいな人間の力を借りるとはいえ、ほんと何考えてんだか」

セイバー「…年端もいかない子らをそのように扱うのは、憤りを感じます。しかし話が唐突すぎて、全ては噛み砕けていない。気の毒だ、というのが率直な感想ではあります」

ウェイバー「ま、そうだよな。僕も詳しくは知らないけど…」

セイバー「ですが、周りを蹴落としてまで王として君臨する。それはもはや暴君とも違わない。…私に言わせればその思想は、国の在り方にも、王道にも反している」

セイバー「はっきり言って今、ガッシュを哀れむと同時にガッシュに失望もしました」

ウェイバー「…なんか勘違いしてないか?」

ウェイバー「自分のために仲間を見捨てるなんて、ガッシュがそんな事するような奴に見えるのかよ」

ウェイバー「…一回だけ、ガッシュの記憶が僕に流れてきた。その時見えたんだ」

ウェイバー「確かにあいつは、王様を目指して戦ってた。でもそれは、自分のためなんかじゃない。あいつがなりたい王様ってのは…」

『魔界にやさしい王様がいてくれたら…こんな…つらい戦いはしなくてよかったのかな…?』

『ウヌ、ウヌ!そのとおりだ!』

ウェイバー「…やさしい王様だ」

セイバー「やさしい…王様?」

ウェイバー「うまく言えないけど…誰も傷つかないような世界のために、あいつは頑張ってたんだ。だから僕は…」

セイバー「誰も傷つかない…?そんなものは無理だ。何かの犠牲なしには国は成り立たない!」

セイバー「国のため、国を背負うのが正しき王の姿だ!たとえ苦渋の決断を迫られようと、王は耐えしのぎ、常に民のためにあらなければならない!やさしい王様など…そんな絵空事など通じない!」

ウェイバー「っおまえ…」


ガッシュ「…そんなことはない!!」

ウェイバー「ガッシュ…悪い、起こしちゃったか」

ガッシュ「ウヌ…よいのだ。それよりも…セイバー、どうしてやさしい王様が、いてはいけないように言うのだ?」

セイバー「…それは、優しさだけでは王として不充分だからです。国を束ね、統治するためには、優しさだけでは民も離れていくでしょう」

ガッシュ「………」

ガッシュ「なるほどのう」

ウェイバー「はあ!?納得すんのかよ!?」

ガッシュ「…正直私は、王としての在り方などはよく分からないのだ…」

ガッシュ「ウヌ、やさしいだけではダメなのだ…」

ウェイバー(おいおい、ズバッと言ってくれる流れだっただろ…)

セイバー「呆れました。そのような腑抜けた心構えでは、今はよくてもこの先…」

ガッシュ「…でもきっと、私が道を間違えても、みんなが助けてくれるのだ」

ウェイバー「!」

ガッシュ「一人で何でもやることは難しい。だから友達や、先生や、家族が、その一人に手を差し伸べてくれる」

ガッシュ「みんながいればなんだってできるのだ!どんな強い敵がいても、力を合わせて倒せるのだ!」

セイバー「…根拠はどこに?」

ガッシュ「二人とも、私の友達だからだ!」

セイバー「! 私が、友達…?」

セイバー「ガッシュ…気持ちは嬉しいですが、友達というのは少し…」

ガッシュ「ちがうのか!?」

セイバー「う…」

ガッシュ「悲しいのう…友達になれたと思ったのにのう…」

セイバー「…!そうか…その王の選別の時に、貴方の友は…」

ガッシュ「私は人間界での戦いの記憶は戻ってはいない。しかし、出会った魔物の友達の名は全て覚えておる!…戦った後の、記憶も…」

セイバー「その友人は、今は…もういないのですね。…いえ、不躾な問いですね。忘れてください」

ガッシュ「ウヌ?今でもみんな私の友達なのだ」

セイバー「は?」

ガッシュ「いろいろあったけどみんな、私の友達なのだ」

セイバー「…」

ウェイバー「…ぷっ、アハハハハ!」

ガッシュ「な、なにがおかしいのだ!」

ウェイバー「いやー…まさかセイバーを黙らせるなんて…見ろよあの顔、ポカーンてしてるぞ、ポカーンて!アハハハハハハ!」

セイバー「笑うなぁ!」ブォン

ウェイバー「うわぁ!」


ーーーーーーーーー

セイバー「すまないガッシュ、止めなければこの家ごとウェイバーを粉砕するところでした」

ガッシュ「ハァ…ウヌウ……」

ウェイバー「…くあー…そうだ、僕眠いんだった。寝よー…」

セイバー「なっ!逃げるな!」

ウェイバー「僕の負けだよ…おやすみー」

セイバー「むぅ…」

ガッシュ「…なんだか眠れないのう」

セイバー「…私たちのせいですね」

ガッシュ「ウヌ…セイバー?」

セイバー「なんでしょう?ガッシュ」

ガッシュ「さっきの話の続きなのだがの…」

ガッシュ「私が王様になれたのは、私一人の力ではない。私に協力してくれたみんなのおかげなのだ」

セイバー「それは…察していました。貴方が友を大事にする理由は、きっとそこからなのでしょう?」

ガッシュ「ウヌ。それで、お主の聖杯へのお願いなのだが…王のせんていのやり直しとはなんなのだ?」

セイバー「言葉通りです。至らない王のおかげで国は終わりの一途を辿った。許されるのならば、私などではない、真に相応しい王を選ぶために…」

ガッシュ「…やり直すとは、今までのすべてをなかったことにするのか?」 

セイバー「ええ。構いませんよ、それが民にとって最も…」

ガッシュ「それは、本当に正しいことなのかの?」

セイバー「…何?」

ガッシュ「お主のことを否定したくはないが…お主の全てを消してしまうことが、よいことだとはとても思えぬ!」

ガッシュ「私だって、はじめからみんなと仲がよかったのではない。それどころか…友もあまりいなかったのだ。それでも正面からぶつかりあって話し合えば、分かり合えるはずなのだ。…だから、お主に言いたいのは…」

ガッシュ「お主は過去や今にとらわれず、お主の本当にやりたいことをやればいいのだ!間違ってもいい!自分にウソをつくな!」

セイバー「…!」

ガッシュ「…ハッ!すまぬセイバー!つい…」

セイバー「…いえ…」

《うるさいぞー!》

ガッシュ「ア!も、もう寝ようぞ!セイバーも寝るのだ!ホラホラホラ!」バババ

セイバー「あ、ちょっ…」

ガッシュ「おやすみなさいなのだー!」シュバッ

セイバー「ガッシュ…」

セイバー「…おやすみなさい。ありがとう、やさしい王様」

ガッシュ「…ウヌ!」


ウェイバー(…よかったな…)


セイバー(私がやりたいことをやればいい…ですか)

聖杯を手にして、失われた祖国を救済する。その望みを叶えるために私は希望にすがって、衛宮切嗣のサーヴァントとして召喚された。


全てを失ってから、ようやく後悔した。私が王でなければきっとこうならなかった。

《王は人の心が分からない》

かつてある騎士がそう言い残し、私から立ち去った。

民のために、国のために、小さな村を焼き払った私へ。生まれながらに故郷を失った者への思いなど捨て置いた私へ。国の繁栄のために犠牲を厭わない私から、或いは感じ取ったのだろう。

信頼していた円卓も、皹が入れば瞬く間に崩壊した。友である湖の騎士の行いを、私は咎めなかった。…今になれば、彼のためにも裁くべきだったのだろうかとも惟う。

人としての願いなどそこにはなかった。ただ完璧な王として振る舞えば、皆は着いてきてくれる。それのみを信じて、私は……

《セイバー》



ーーー私は…

多分ここまで
説教くさくなってしまったな…

再開します

ケイネス「かはっ…」ドサッ

ゾフィス「…六時間三十八秒。やれやれ…才能だけは伊達ではありませんね」

臓硯「…いつまで油を売っておるんじゃ貴様、はようせんか」

ゾフィス「そう焦らずとも、もうすぐですよゾウケン…」

ゾフィス「貴方への恩は忘れていない、心配無用です。それに正直…」

アーチャー「…」

ライダー「…」

ゼオン「…」

ゾフィス「負ける気がしなくて…フフフ」

ゾフィス「おっと失礼。どうかしたのか、というのが筋ですね」

臓硯「ふん…些か不愉快な事があってな。少し外していた隙にあの魔術師殺し、儂の館に手をだしおった」

ゾフィス「へぇ…それはそれは…しかし、もう思い入れはないのでしょう?」

臓硯「…そうじゃな」

 朝

ガッシュ「おはようなのだー!」

ウェイバー「おはよう。あの後、少しは眠れたか?」

ガッシュ「ヌ…よ、よふかしはしておらぬぞ!」

ウェイバー「ハハ…ん?」

ウェイバーが目をやると、セイバーは、一人物思いにふけっていた。

ウェイバー(まだ悩んでんのかな…でも声かけないわけにもいかないし…)

ウェイバー「…おはよ」ポン

セイバー「ひゃっ!あ…お、おはようございます、ウェイバー!」

ウェイバー「そんなに驚くことないだろ…」

セイバー「明るくなるまで少し瞑想していたもので…ね、寝ていたわけではありませんよ!」

ウェイバー「誰もそんなこと言ってないっての。逆にずっと神経尖らしてるほうが体に悪いぞ」

セイバー「む…そうとも…いわない…こともないですが」

ウェイバー「とにかく!準備したら教会に行くぞ!言峰が待ってるからな」

ガッシュ「ウヌ!」

ウェイバー「じゃ、まず朝ごはんを…」


マーサ「ウェイバーちゃん!ガッシュちゃん!お客さんよー!」


ウェイバー「…調子狂うな。誰だよこんな時間に…はーい、今行く!」スタスタ

セイバー「…!」

ちょっと待て、なんやねんその六時間三十八秒て。
おかしいやろ三十八秒は!
三十八分に直しておいてください…

セイバー「ウェイバー!これは罠では…」

ウェイバー「うるさいな…頭痛くなるから騒がないでくれよ」

セイバー「」

目を擦り、小言から耳を塞ぎながら玄関に赴く。しかし待っていたのは思いもよらない人だった。

ウェイバー「はいはい…あれ?君は…」  

桜「…」

ウェイバー(…ガッシュ目当てかな。てかそれよりも聞きたい事が)

桜「…あの、ガッシュ君、いますか?」
 
ウェイバー「あーいるいる、いるけど…」

ウェイバー「えっと…なんでこの家の場所が分かったのかな…?」

桜「…それは…」

桜「…」

ウェイバー「…」

ウェイバー(黙っちゃったよ…)

セイバー(ガッシュを呼んできましょう)

ウェイバー「…」

桜「…」

「「………」」

ウェイバー(辛い…この空間がとてつもなく…)

「サクラ!」

桜「! ガッシュ君!」トテトテ

ウェイバー(おお…一目散に…)

ガッシュ「どうしたのだ?なんでここに来たのだ?」
 
桜「…教会のおじさんが、ここならガッシュ君がいるって…」

ウェイバー「ことみねぇぇ…!僕たちの後つけてたのか…」

ウェイバー「で、ここに来たのはガッシュに会いたかったからか。でもなんで教会に行くんだよ?用事なんかないだろ、君みたいな子供に」

桜「…」プイッ

ウェイバー「このガキ…」

セイバー「よしなさい、みっともない」

ウェイバー「うぐ…」

ガッシュ「…話してくれるかの?」

桜「…」コクッ

ウェイバー「…」イラァ

桜「昨日の夜…」

ーーーーーーーーー

間桐の虫蔵で、少女は一人鍛練と称された見るにも耐えない虐待をいつもより長い時間受けていた。

しばらくすると、こつ、こつと足音が聞こえてきた。

桜(だれかきた…?)

桜『…おじいさま?』

切嗣『ッ…予想以上に惨いな』

桜『おじさん…だれ?』

切嗣『…セイバーの言っていたのはこの子か』

切嗣『痛かったろう…安心しろ。今すぐここから出してやる』

桜『え?でも…』

切嗣『…間桐め…幼い少女を虫漬けとは…』グッ

桜(どうして…どうしてこのひとはおこっているんだろう…)

切嗣『早くしろ』

桜は言われるがままに、男の手を掴むしかなかった。

切嗣『いいか…君はこれから、この地図にある教会に行きなさい。きっと君を保護してくれる』

桜『ほご…?』

切嗣『君には悪いが…今からこの建物ごと、忌々しい虫共を焼き払う』

桜『そ、そんなことしたらおじいさまが…』

切嗣『…君が気にすることじゃあない。さ、行きなさい』

桜『おうち、なくなっちゃうの…?』

切嗣『…』

桜『…どうして…』

切嗣『…さあ、どうしてだろうな。…おじさんが、悪者だからかな』

桜『…』

切嗣『…なら、悪者らしく振る舞うとしよう…』カチャ

切嗣『まだ生きていたいなら、ここから消えろ』

桜『! や、やだ…こわいよ…!』ダッ

切嗣『…はは…』



切嗣『…いいんだ。これが、僕の正義だ』


男は、静かに館に火を放った。

教会

桜『…ここかな』

桜『人が…いない…どうしよう、私…道に迷っちゃったのかな…』

綺礼『…こんな時間に何か用かね?薄幸な少女よ』

桜『!!』

綺礼(この娘、見覚えがあるような…ないような…)

桜(うわあ…すっごくおおきい…)

桜『え、えっと…教会に、ほご?してもらいにきました』

綺礼『…こちらも忙しいというのに…』ボソッ

桜『え?』

綺礼『…何故だ、何故私の仕事が増えている?私は一体何のために、騒々しいあいつらを帰らせたのだ…』

綺礼『ぐ…仕方あるまい。ここは教会側として、責任を持たねばならぬ所だ』

桜『あ、あの…』

綺礼『何かね?…そういえば、君の名は…』

桜『さくら…間桐、桜です』

綺礼『…成程』

綺礼(私が監督役とはいえ、ここにこの娘を置いておくのは危険にも程がある…)

桜『…こわいよ』

綺礼(しかし野放しには…)

桜『…ガッシュ君…』

綺礼『!!!! い、今なんと、言ったのかな』

桜『!? ガッシュ…君って…』

綺礼『そうか…ふふ、どうやら天は君に味方してくれているようだ』

綺礼『喜べ少女よ。君の望みはようやく叶う』

桜『…?』

ーーーーーーーーーーーー

桜「それで…き、きちゃった」

セイバー「…」

ガッシュ「…」

ウェイバー「…」

ここまで
ss見返してみたけどガッシュかfateか片方しか知らない人には意味わからん上にくそつまらんなこれ

クロス…というか、こんな長いss書いたの初めてで不安で…そう言ってくれるなら嬉しいです
再開します

セイバー「…弱りましたね」ヒソヒソ

ウェイバー「どうしようもないんだけど…」ヒソヒソ

ガッシュ「…サクラ!」

桜「な、なにかな」

ガッシュ「これから私たちは大事な用があるのだ。私もお主と遊びたいのだがその…今は…」

桜「で、でも、帰ってくるんでしょ?このままだと私…」オロオロ

ガッシュ「サ、サクラ?」

桜「っ…だれもっ…わたしとっ…ひっく…」

ガッシュ「ヌワアアア!泣くな、泣くのではない!どどどどどうすればよいのだウェイバー!!」

桜「わたし…ぐすっ…もうっ…だれも…」

ガッシュ「ヌオオオオ!!」

ウェイバー「おい落ち着け!ああああもおおお!とうすりゃいいんだよぉぉ…!」ジタバタ

セイバー「貴方も落ち着きなさい」ピシッ

ウェイバー「あいてっ」

セイバー「…サクラ、といいましたね」

桜「…?」

セイバー「ガッシュは、貴方の事を大事に思っています。しかし今は此方が手一杯なのです。ですから、ほんの少しだけ、ガッシュを貸していただけませんか」

桜「え…でも、かえって…くるんだよね?」

ガッシュ「ウ…それは…」

桜「…」

ガッシュ「…ウヌ!任せるのだ!帰ってきたら、また私と、たくさん遊ぼうぞ!」

桜「…!うん!やくそくね!」

ガッシュ「ウヌ!やくそくなのだ!」

ウェイバー(…軽はずみに約束していいものか…いいや、軽はずみなんかじゃないよな)

ウェイバー「よし分かった!じゃあサクラ、君は家で預からせてもらうよ。おじいさんとおばあさんは優しいから、きっと歓迎してくれるはずさ」

桜「はい…ガッシュ君、私ずっとまってるからね」

ガッシュ「ウ、ウヌ!」ゾッ

セイバー「?」

ガッシュ「で、ではウェイバー!セイバー!早く出発しようぞ!」

ウェイバー「お、おう…」

桜「…ずうっと、まってるから」

ガッシュ「ヒイッ!?」

ウェイバー「どうしたんだよ、急にビビりだして」

ガッシュ「…何故だか分からぬが、あのようなタイプの子は苦手なのだ…」

《ガッシュちゃーん!》

ガッシュ「ウッ!…寒気が…」

セイバー「…しかし、切嗣は間桐との戦いの後、何処へ向かったのでしょうか」

ウェイバー「さあなぁ…サーヴァントのお前がここにいるってことは、まだ脱落はしてないんだろうけど…」

セイバー「…」


セイバー『…虫蔵の中に一人の娘が!』

切嗣『…』

セイバー『切嗣…!』

セイバー(切嗣…覚えていてくれたのですね)

ウェイバー「…着いたぞ」

教会

ウェイバー「言峰!いるんだろ!出てこい!」


綺礼「…やぁ諸君。羽休めにはなったかね?」

ウェイバー「とぼけんなよお前!僕たちの根城をあっさりばらしやがって…」

綺礼「私はガッシュに会いたい彼女の意思を尊重したまでだ。お前にとやかく言われる筋合いはない」

ウェイバー「めちゃくちゃだな…」

綺礼「痴話話もここまでにしよう。お前たち、覚悟はできたか?無事生き延びるか…あるいは、死ぬか」

ウェイバー「…ああ」

セイバー「はい」

ガッシュ「ウェイバーは私が守るのだ!」

綺礼「…ならばもう止めはしない」

綺礼「これが…最後の決戦だ」

「「「オオ!」」」

いったんここまで
やっと終盤入る…

 [建設中 冬木市民会館]

臓硯「…来たか」

「やはり、ここにいるのは奴ではなくマキリか…」

「…あたかも読みが外れたみたいな言い方だな。分かってたくせに。ま、どっちにしろやることは変わんないけど!」

「ウヌ!その通りだ!」

綺礼「必ず阻止する…貴様らの隠謀を」

ガッシュ「絶対に、この世界を終わらせぬ!」

ウェイバー「覚悟しやがれ!」

臓硯「なんじゃ…随分と甘く見ているようじゃが…勘違いするでないぞ?」

臓硯「此方は手を緩めたわけではない。この戦力で十二分と判断したからじゃ」


ゼオン「…」


ガッシュ「ゼオン!」

ウェイバー「! マジかよ…」


雁夜「ゥウアゥ…!!」


綺礼「ちっ…害虫が」


臓硯「カカカ…」


綺礼(…セイバー…そして、衛宮切嗣。聖杯の命運はお前たちに託す。負けてくれるなよ…)

 [柳洞寺 大聖杯前]

ゾフィス「おや…貴方でしたか」

セイバー「キャスター!貴様に聖杯は渡さない!」

ゾフィス「…フッ。戦力差が認識できていないようですねェ…」

アーチャー「…」

ライダー「…」

セイバー「…!?アーチャー!ライダーまで!これは…」

アーチャー「…」ブワァ

セイバーが狼狽する間を逃さず、王の財宝を振りかざす。セイバーはアーチャーの容赦のない攻撃をいなし、ようやっと目が覚めた。

セイバー「…そうでした。今の貴様はキャスターの操り人形。私が、その呪縛から解き放ちましょう」


ゾフィス「チッ…余裕ありそうじゃないですか。なら…」クイッ


ライダー「…集え我が同胞」

セイバー「ライダー…!」

ゾフィス「ハハハ!!さあ、オレに面白いモンを見せてくれよ、最優のサーヴァントさんヨォ!」


ライダー「王の軍勢」


アーチャー「王の財宝」

世界がライダーの固有結界に包まれていく。誇り高き王達は、主の敵を排除するために、セイバーに立ち塞がった。

セイバー「ッ…!!」


ゾフィス「さて、オレは高みの見物…」


切嗣「…」

ゾフィス「性懲りもなく…仕方ない。ネズミ退治といきましょうか」

ガッシュ「ヌアア!」

ウェイバー「ガッシュ!」

ゼオン「…」

ガッシュ「強い…」

ウェイバー「ああ…本無しでこれかよ…」

ウェイバー「くそっ、ザケルガ!」

臓硯「無駄じゃて」

ゼオン「…」バシュ

あらゆるガッシュの攻撃は、すべてあのマントで弾かれてしまう。本の有無に関わらず、埋めることのできない力の差が、ガッシュとゼオンにはあった。

ガッシュ「ヌ…」グラッ

ゼオン「…ッ」シュン

ガッシュ「なっ…」

体勢を崩した先に、すかさず瞬間移動に近い速さで接近し、肉弾戦でガッシュを追い詰めていく。

ゼオン「ウアアア!」ドゴッ

ガッシュ「グアアアア!」

ウェイバー「呪文が間に合わない…!」

臓硯「ゼオンの元々の身体能力にサーヴァントの力が加わっておる。貴様などにかなう相手ではない」

ウェイバー「そんな…でも!」

ウェイバー(それがどうした!その力の差をどうにかするのがパートナーの僕の役目だろうが!考えろ…考えろ!)

ガッシュ「ゼオン…お主は強いのだ。だが私も負けるわけにはいかぬのだ!ゼオンに勝って、私は世界を守る!」

ゼオン「…」


臓硯「…問題はあちらじゃな」

雁夜「ガ…」ドサッ

綺礼「…口ほどにもない。そうは思わんかね、間桐臓硯」

臓硯「クク…いやはや、このようなこともあるもんじゃな…儂の見立てでは、五分五分であったが…」

臓硯「…ではの、神父。貴様と戦う気はない」

綺礼「…待て」

綺礼「答えろ。貴様の本当の目的はなんだ?」

臓硯「ほぉ…?」

綺礼「根源に至る…時臣師、および魔術師の切望する願望だ。貴様も例外ではないはずだ、吸血鬼。しかし世界を滅亡させようとするなど、真逆の発想のはずだ」

綺礼「何故貴様があのゾフィスに協力する?貴様は一体何を企んでいる」

臓硯「…カカカ…全く、貴様は興味深い。儂やゾフィスが貴様を気にかけるのも道理よな」

綺礼「なんだと?」

臓硯「答えを求めるならば、我らの影を追い続けるがいい」

「貴様には、その資格がある…」ヒュオオ

綺礼「! 消えたか…」

綺礼「…いかん。ガッシュらの援護に行かねば…」

綺礼「答え…か」

セイバー「はっ…やああ!」ガキィン

アーチャー「…よく耐える…」

ライダー「…まだだ。行け、益荒男共」

「「「おおおおおお!!」」」

セイバー「…くっ」

セイバー「ーーーーーー風王鉄槌!!」

「「「うわあああああ!」」」

セイバー「ぐっ…これはもはや、擬似英霊を相手にしているようなものだ…」

向かってくる敵を薙ぎ払うが、セイバーはなかなかに苦戦していた。

アーチャー「凡百の兵であれ、至高の財の支援があれば格段に力を増す…」

ライダーが呼び寄せた精鋭はアーチャーの宝物庫から力を借り受け、セイバー一人では手に負えない強さとなっていた。本来の英雄王ならば到底有り得ない行為であるが、互いの意識がないが故に、その行為を可能とした。

ライダー「まさに、無敵の軍勢よな」

「「「「「ウオオオオ!!」」」」」


セイバー「まだ聖剣は使えない…せめて、微量でも魔翌力が賄えれば…」

セイバー「切嗣…!」

いったんここまで

再開します

ゼオン「…ウウ…!」

ウェイバー(落ち着け…今使える呪文は七つ…単体で効かなくても、組み合わせ次第でどうとでもなる!)

ウェイバー「ガッシュ!僕のそばに来い!」

ガッシュ「それではお主が…。ウェイバー!来るぞ!」

ウェイバー(一か八かだ…あいつを引き付けて…)

すかさず距離を詰めてくる。頭では分かっていたが、速さは人間のソレではない。

ゼオン「グオォァ!」ブンッ

ウェイバー「…今だ!ガッシュ!こっち向け!」

ガッシュ「ウ、ウヌ!?」クルッ

ウェイバー(こんだけ近いんだ…頼む、当たってくれ…!)

ウェイバー「ザグルゼム!」

ガッシュ「」ボッ

ゼオン「グッ!?」バリバリ

至近距離でのザグルゼムは、マントで防げず見事ゼオンに命中した。

ウェイバー「よっし!これでバオウを使えば…あれ?」

ゼオン「…」

ゼオン「…ハァッ!」バチバチ

ゼオンは帯電していたザグルゼムごと、体から電気を放電した。そのおかげで、ゼオンが受けたダメージは消え去った。

ウェイバー「うわああっ!?そんなのアリかよ!」

ガッシュ「…さすがなのだ…!」

ウェイバー「感心してる場合か!マント抜きでも電撃効かないとか、マジで話になんないじゃんか!」

ガッシュ「いや、あれはたぶん電撃が効かないのではなく…」

ゼオン「…」キッ

ウェイバー「どうしたらいいんだ…ラウザルクかけても殴り合いじゃ勝てないし…ザケルもザケルガも通用しないし…」

ゼオン「…カッ!」バキッ

ウェイバー「ごほっ…うあああああ!!」

ガッシュ「ウェイバー!や、やめるのだゼオン…!」ガシッ

ゼオン「…?…ッ!!」ブオッ

ガッシュ「ヌウウ…や、め、ろ…!」ギュウウ

ガッシュ(私のせいなのだ…ゼオンが戦わされているのも、ウェイバーが傷ついているのも!私が止める!止めねばならぬのだ!!)


ガッシュ「ヌオオオオオオ!」


ゼオン「チッ……グオオオオオオ!!」


ウェイバー「…ガッ…シュ…」

ガッシュ「グ…!おさえ、きれぬ…!」

ゼオン「…クク」

ガッシュ「ヌ!?…ゼオン…?」

「そこまでだ」ヒュン

ゼオン「…!」ヒラッ

ガッシュ「キレイ!」

綺礼「避けたか…まあいい、本命はお前ではない」

駆けつけた綺礼は、挨拶がわりに黒鍵をゼオンに投げつけたが、容易くかわされる。しかし、彼の狙いはゼオンを仕留める事ではなかった。

ウェイバー「…げほっ…お前…あいつは…」

綺礼「話は後だ。掴まれ、ここは退く」

ウェイバー「な…に…?」

綺礼「勝ち目のない勝負はするな。私達の役目は、霊脈の悪用を阻止する事だ。ゼオンもあのまま暴走させていたほうが、我々にとって都合がいい」

ガッシュ「ゼオンを見捨てるというのか!?」

綺礼「見捨てる…?お前が奴と如何なる関係があろうが、私にとってあれは敵だ!どうなろうがかまうものか!」

ガッシュ「ウ…」

ウェイバー「…倒す」

綺礼「何?」

ウェイバー「言峰…少しでいい。僕を治療しろ」

綺礼「正気か?傷を癒せば、お前は奴に勝てるとでも言うのか?」

ウェイバー「…策は閃いた。だが確率を上げるために、お前にも協力してもらう」

綺礼「何故だ…そこまで奴を倒す事にこだわる理由はなんだ!」

ウェイバー「それは…」

ウェイバー「ーーーーーー」

綺礼「………」

ウェイバー「な、なんだよ…!」

綺礼「…馬鹿馬鹿しい」

ウェイバー「なっ…」

綺礼「まったく…怒りを通り越すとはこういった気分か。その先に待つ感情は肩透かしなものだったが…いいだろう、手を貸してやる」

ウェイバー「!」

綺礼「…始めるぞ」

ウェイバー「ああ!」

ゼオン「…」

綺礼「ふん…」

ガッシュ「キレイ?」

綺礼「気にするな。今、私は極度の自己嫌悪に陥っているだけだ」

ガッシュ「じこけんお?」

綺礼「…」


ウェイバー『ガッシュにラウザルクを唱える。それで、僕の準備が整うまで、ガッシュと時間稼ぎしててくれ』

綺礼『…それだけか?』

ウェイバー『それだけって…そうだよ、それだけで十分だよ。あ、あとこれが重要なんだけど…』

綺礼『なんだ?』

ウェイバー『できれば意識してやってほしいんだけど…』

綺礼『?』


綺礼「はたして上手くいくか。しくじってくれるなよ…」

ガッシュ「キレイ…覚悟はよいか?」

綺礼「ふっ…とうの昔にできているとも」

ゼオン「ウアア…!!」

ウェイバー「…」コォォ

ガッシュ「オオオ!!」バッ

ゼオン「!」

綺礼「はっ!」ヒュンヒュン

ガッシュがゼオンに突撃する。ゼオンはなんなく受け止め反撃するが、綺礼は多くの黒鍵でガッシュの援護へ徹底した。

ゼオン「アア!」バキィ

《まだやっていたのですか…》

ゼオン「!?」

綺礼「いまひとつか…ならば!」

マントとゼオンの力で弾かれたが、さらに黒鍵を取り出し、四方に投げつける。

綺礼「逃げ場はない…!」

《そろそろケリつけてこい》

ゼオン「…!」ガタガタ

ウェイバー「…?どうしたんだあいつ…」

ゼオン「…ギャッ!」ザシュ

ガッシュ「当たったのだ!」

綺礼「待て、様子がおかしい…」

ゼオン「…u…」

綺礼「!?」

ガッシュ「な!?」

ゼオン「■■■■ーー!!」ゴォォ

ウェイバー「に…?」

ゼオン「■■■■■■■ーーー!!」

ゼオンの身体は、まるでバーサーカーの鎧のように影に包まれていく。そして変化を遂げたゼオンは、まるであの夜の狂戦士のような叫び声をあげた。

《クク…ハハハ!!》

ゼオン?「■■■■■ーー!!」ドゴォ

ガッシュ「グアアア!!」

綺礼「これは狂化…!?奴はバーサーカーのクラス能力まで持ち合わせていたのか…!」

綺礼「…はあっ!」ヒュン

ゼオン?「■■■ーー」パシッ

綺礼「まさか…」

ゼオン?「■■■ーー!!」ビュン

バーサーカーは自分に向けられた黒鍵を掴み、宝具として投げ返した。

綺礼「ぐっ!これは…あのバーサーカーの技…!」

ガッシュ「ク…まだ…ァ!」ガクッ

綺礼「ウェイバー・ベルベット!ガッシュも限界だ!もう持ちこたえることはできんぞ!」

ウェイバー「…」コォォ

綺礼「貴様…!このままでは全員死ぬぞ!」

ウェイバー「これなら…むしろ好都合だ!言峰!お前のありったけの武器、あいつにぶつけてやれ!」

綺礼「なんだと!?」

ウェイバー「ガーーーッシュ!!いくぞォォ!!」

ガッシュ「ウ…ヌ!!」

ウェイバー「ここが勝負所だ…くだらないミスすんなよ、僕…!」

ゼオン?「■■■■■■ーーーー!!」

綺礼「…任せたぞ!!」ヒュンヒュンヒュン

ゼオン?「■■■ーー?」

ウェイバー「落ち着け……よし!ガッシュ!あの武器から目を離すな!」

ガッシュ「ウヌ!」

ウェイバー「ザグルゼム!」

ガッシュ「」ボッ

ウェイバー「…」

ーーーーーーーー

セイバー『よいですか二人とも』

ウェイバー『なんだよ、また説教か?』

セイバー『違います!先程の魔術ですが…使い方がなっていない。ウェイバー、貴方はあの魔術の効力は存じていないのですか?』

ウェイバー『あれは…色々試してみたけど、いまいちな…』  

ガッシュ『ウヌ…』

セイバー『はぁ…あの魔術はおそらく…』



ウェイバー『へぇ…凄いな…そういうの分かるのかお前』

セイバー『ええ…まあ、私にはソレは通じませんが』

ウェイバー『なんでだ?』

セイバー『私の剣はこの通り、風を纏っていますから。ですが、その魔術にも使い道はあるはずだ。そうでしょう?ウェイバー』

ウェイバー『…うん。試す価値はありそうだ!やるぞ、ガッシュ!』

ガッシュ『ウヌ!』

ーーーーーーーー


ウェイバー「全弾当てれば…合格か?セイバーさん!」

ウェイバーの狙い通り、ザグルゼムは黒鍵に当たり、黒鍵は電気を帯びた。


綺礼「黒鍵が…だが、強化したところで奴には…」

ウェイバー「ここからだ!」

ウェイバー「ザグルゼム!ザグルゼム!」ビッ

ガッシュ「」

綺礼「な…何処に撃っている!」
 

ウェイバーの唱えた呪文はゼオンとは明後日の方向の、落ちていた黒鍵に浴びせられた。


ゼオン?「■■■ーーーーーー!!!」バッ

そのゼオンも黒鍵を防いだ後、自分を抑えるのに必死で、攻撃を中断し身を守る事を優先した。

ゼオン?「■■ーー!!」ブルブル

ウェイバー「チャンスだ!よし!飛び込めガッシュ!」

ガッシュ「ウヌアアアア!!」

ウェイバー(ザケルもザケルガも効かない相手には、どうしようもないと思い込んでた。それじゃ甘いよな…どんな呪文でも使いこなしてこそ、ガッシュのパートナーだ!)

綺礼「無駄だ…攻撃は通らない!」



ウェイバー「ーーージケルド!!」

ガッシュ「」バシュウ

ゼオン「■■■■ーー!!」ボンッ

ゼオン?「■■■ーー?」

綺礼「…?今、何を…」

ガッシュ「ウェイバー…この術は…!」

ウェイバー「ああ…」



ウェイバー『なんなんだよこの呪文どもは!ガッシュ!僕にどうしろってんだよ!』

ガッシュ『ウヌ…そう言われても…』


ウェイバー「さあ…始まるぞ」

ゼオン?「■■■ーーーー!!」カタカタ

ジケルドに着弾したバーサーカーは周りの金属を吸い寄せる。その中には、黒鍵も含まれていた。

綺礼「…まるで電磁石だな」

ゼオン「■■■■■ーー!!」

抵抗していたが、辺りの金属によって身動きが取れなくなっていった。もちろん、ザグルゼムで力を増している。

ウェイバー「マントで守ってた電撃も、こうなったら防げないだろ!」

ガッシュ「これで…」

ウェイバー「連鎖のラインは整ったァ!」

ウェイバー「大技決めてやる…」


ウェイバー「ーーーーーーバオウ」

ウェイバー「ザケルガアアアアアア!!!!」

《バオオオオオオオオオ!!!!》

すまん、キリ悪いけどここまで

雷竜はザグルゼムを帯電していた黒鍵を喰らう。更に大きくなり、今まで圧倒されていたバーサーカーを飲み込んでいく。

ゼオン?「■■■■ーー!」ググ…

ウェイバー「いけえええええええ!」

《バオオオオオオオオオ!!》

綺礼「なんという力…これが本当の奴の…」

初めて唱えた時や、修行の時とは違う。本人は気づいていないが、ウェイバーの心の力が底をつきかけていたからこそ、バオウは最大の力を扱える。

ゼオン?「■■■■■■ーーーー」パキ

《バオオオオオオオオオオオオオ!!!》

ゼオン?「■■ーー」パキ

ガッシュ「」

ゼオン「…ここまで…か」

バーサーカーの鎧が剥がれ、砕け散る。

ウェイバー「…っ…やった…のか…?」


ーーーー決着は着いた。

ゼオン「…」ガクッ

ウェイバー「終わった…」ヘタ

ガッシュ「ゼオン!ゼオーーーン!」ダッ

ゼオン「ガッ…シュ…」

ガッシュ「ゼオン!大丈夫かの!?」

ゼオン「…問題ない。心配かけたな、ガッシュ」

ガッシュ「私などよいのだ!それよりゼオンが!」

ゼオン「クク…情けないもんだ…オレとしたことが、まさかあんな野郎に操られてしまうとはな。無様なところを晒しちまった」

綺礼「会話が成立している…自我を取り戻したか、白いガッシュは」

ウェイバー「ああ…バーサーカーになった時はどうしようかと思ったよ…」

ウェイバー「…そうだ。ゼオン、お前に聞きたいことが…」

ゼオン「断る」

ウェイバー「なっ…」

ゼオン「生憎、オレにはもう時間がない。詳しく話してやりたいがそうもいかん。だから優先事項から先に行かせてもらうぜ」

ゼオン「ガッシュ…お前の記憶を戻してやる」

ガッシュ「!!」

ウェイバー「!!」

綺礼「…待て」

いったんここまで

綺礼「記憶を戻すだと?ついさっきまで敵同士だった貴様を信用しろというのか?」

ガッシュ「キレイ、ゼオンは…」

綺礼「お前達をここで失う訳にはいかんと言った筈だが?」

ガッシュ「…」

ゼオン「信じられないというならそれでもいい。ただこのままでは、オレに勝てたとはいえその先の戦いでお前達が敗北するのも必至だ」

ウェイバー「…」

ガッシュ「…」コクン

ウェイバー「…やってくれ。頼む」

綺礼「…馬鹿共が」

綺礼「下らん馴れ合いにこれ以上付き合ってられん。先に行かせてもらおう」

ウェイバー「お、おい!ガッシュ!そこでちょっと待ってろ!」

ガッシュ「わかったのだ!」

ゼオン「…仕方ない、か」

ーーーーーーーーー


ゼオン「…すまなかったな」パァァ

ガッシュ「ウヌ?」

ゼオン「オレが操られていた時だが…自我がない状態でも、かすかに意識は残っていたんだ」

ガッシュ「ウヌ…」(よくわからぬ…)

ゼオン「お前とぶつかり合った時、オレはお前達を試していた。記憶を失ったお前の力もだが、何よりも…あのパートナーの事だ」

ガッシュ「!」

ゼオン「一時はどうなることかと思ったがな。あいつやデュフォー程ではないが、悪くない。…あくまでお前との相性の話だが」

ガッシュ「ウヌ!私たちは強いのだ!」

ゼオン「フッ、あいつに言ったら嫉妬するかもしれんな。…どうだ、そろそろ記憶が戻り始めたんじゃないか?」

《ガッシュ…》

《ガッシュ…》

ガッシュ「…!頭に…流れ込んでくるのだ…」

綺礼「…」スタスタ

ウェイバー「ハァ…待ってくれよ!」

綺礼「勝手にしろ。もうお前達を戦力とみなしていない」

ウェイバー「…そんな意地張らなくてもいいだろ」

綺礼「お前は奴に毒されすぎだ!その場に流され正しい判断が出来ない奴とは私は…何だ、それは」

ウェイバー「…本が…!」

ウェイバー「やった…呪文が増えてる!しかも一個じゃない!」

綺礼「な…」

ウェイバー「これでもっと強くなれる…ゼオンのおかげだな!」

綺礼「チッ…戻るぞ。先は長い」

ウェイバー「! ああ!」

ゼオン「…戻ってきたか」パァァ

綺礼「…」

ウェイバー「見ろガッシュ!呪文が増えてるぞ!」

ガッシュ「ほんとうかの!?ありがとうなのだゼオン!」

ゼオン「感謝される謂れはない。これはお前本来の力だからな」

ゼオン「さて、仕上げといこうか。力を取り戻したなら後は大部分の記憶を…」

≪そこまでです≫

ゼオン「!」ビリッ

ゼオン「…ガッシュ、悪いがここまでだ」

ガッシュ「ヌ!?なぜ…」

ゼオン「…負けるなよ」

ゼオン「グッ…カハッ」

ゼオン「」プツン

ゼオン「…ここからは貴方が踏み入ってはならない記憶だからですよ」

「「「!!」」」

綺礼「その口調…貴様…!」

ゼオン「たどり着きたければ、オレの下まで来い。…最も、手遅れになるのがオチだろうがな!フハハハハハ!」シュウン

ウェイバー「…消えた」

ガッシュ「ゼオン…ゼオーーーーーン!!」

ガッシュ「クソォッ!」

綺礼「消滅寸前の間際で乗っ取られたか…」

ウェイバー「あいつも限界だったってことだ。それでもあいつは…」

綺礼「我々には悔いている時間はない。行くぞ、奴等が待つ場所へ。決着を着ける」

ウェイバー「ああ」

ガッシュ「オオ!!」

ここまで…かな?

切嗣「ふぅ…」

切嗣(命からがら逃げ回っていたが、そろそろ厳しいか)

切嗣(奴の注意が散漫になっていた時に試してみたが…アレには微弱だが効いているらしい。上手く行けば僕の思惑通りに…)

切嗣「!!」

ゾフィス「しぶといんだよ!クタバレェ!」

???「ギガノ・ラドム!」

切嗣「出し惜しみなしだ…」

切嗣「ーtime alterー」

切嗣「ーsquare accelー」ビュオン

ゾフィス「ッーー!ちょこまかと…!ふざけんじゃねーーグッ…ガァァァ!!」

切嗣(まただ…奴も様子がおかしい…)

ゾフィス「…やめろ…やめろォォ!!!私が…オレが…私がオレじゃなくなる!」

切嗣「何?」

ゾフィス「ウウ…!よせぇ!」ブンブン

切嗣「…逃げるなら、今のうちだな」

ゾフィス「カッ…」ブルブル

久しぶりに…
再開します

セイバー「ク…」バタッ

アーチャー「つまらん…ここで散るか、セイバー」

ライダー「貴様がちと張り切りすぎだからかのう」

アーチャー「ふん…だが見ろライダー、最優と謳われたセイバーも我にかかれば一人の女子よ」

ライダー「貴様だけの手柄ではなかろう?」

アーチャー「ハッ…この我と今ここで肩を並べているつもりなら、それは勘違い甚だしいぞ、雑種ごときが!」

ライダー「むぅ…つれないやつよなぁ…」

セイバー(切嗣…ガッシュ…申し訳ない、私はもう…)

ライダー「まあよいわ…片付けるとするかのう!」

アーチャー「…」ブォン

セイバー「…来る…立たなくては…」

アーチャー「王の…」

「テオザケル!」

「「「!」」」

ライダー「おおっ!?なんだこりゃあ…」バチッ

アーチャー「…貴様は…」

ガッシュ「ハァ…ハァ…」

ウェイバー「ゴホッ…ケホッ…間に合った…」

セイバー「ガッシュ…それにウェイバー。無事だったのですね。」

ガッシュ「…」

ウェイバー「…」

セイバー「…?」

ウェイバー(思わず呪文打ってしまった…攻撃を阻止できたからいいものの…)

ガッシュ(心の力はもう余裕がないのだ…ウヌウ)

アーチャー「…なんと。どこぞの馬の骨と思えばガッシュではないか」

ライダー「おお、坊主ではないか!まさかこんなところで相見えることになろうとは!」

「「ん?」」

ウェイバー「おいおい分が悪すぎんだろこれ…」

ガッシュ「ギルガメッシュ…!それと、ライダー…かの?」

セイバー「…どうやら二人とも、彼らに縁があるようですね」

ライダー「なんだ英雄王、坊主と顔見知りか?」

アーチャー「たわけ、凡夫に興味はない。それよりライダー、ガッシュは我のモノだ。手出しは許さんぞ」

ライダー「んん?…そうか、では余が坊主を貰うとしよう」

ウェイバー「待て待て待てーい!何を勝手に決めてやがりますかー!!」

ライダー「不満か?」

ウェイバー「当たり前だッ!」

アーチャー「さてガッシュ、貴様がどれ程成長したか…我自ら試してやろう」

ガッシュ「ウ、ウヌ…どうなって…ウェイバー、あの者達はゾフィスに操られているのではないのか?」

アーチャー「奴も所詮二流よ、数多の令呪で我を縛ろうと、我を手懐ける事など出来る筈もない」

ライダー「誓約もあり反逆も出来んが、こうやって戦う事は自由ではある」

ウェイバー「…それでも僕達の前に立ちふさがるってのか」

ライダー「応。武こそ今の余が生きるという証」

アーチャー「ふはっ!そう深く考えるな、暇潰しにすぎん」

ガッシュ「ヌウウ…そんな理由で…」

セイバー「…完全に蚊帳の外ですね、私」

セイバー「…そういえば言峰は?」

ウェイバー「ああ、あいつなら多分…」

ここまで?

柳洞寺

綺礼「…」

綺礼「…いい加減姿を見せたらどうだ!」ヒュオッ

臓硯「クク…」

臓硯「焦っておるのう…貴様らが何をしようとも刻々と時は流れ行くだけ…そのまま身を任せたらどうじゃ?」

綺礼「私は貴様と談笑しに来たのではない。教えてもらうぞ、答えとやらを」

臓硯「…いいじゃろう教えてやろう。では最後に一つ。貴様はほんにこれが悪だと思っておるか?貴様はこれを否定する資格はあるのか?」

綺礼「…貴様らのやろうとする行為は、恥ずべき行為、正義ではない」

臓硯「そこまでして曲げるか、歪みきった己の真実を」

綺礼「何…」

臓硯「貴様自身が拒むなら、嫌がおうにもその気にさせてやるわ」

臓硯「…そうじゃのう、まずは…ゾフィスの事からか」

綺礼「…」

臓硯「奴は…この世界に迷い、そして聖杯の影響から完璧に悪に染まった哀れな奴よ」

綺礼「哀れ…?」

臓硯「奴をこの世界で暗躍するよう仕向けたのは…他でもない儂じゃ」

綺礼「な…」

臓硯「ゾフィスは英雄でもなんでもない。本来ならばここに来れる訳がない。じゃが今回の聖杯戦争、あるイレギュラーが発生したのう?」

綺礼「…ガッシュか」

臓硯「何の名誉も誇りもない童が、触媒によってサーヴァントとして召喚された。あってはならん。あってはならんからその事象を消し去る。そのために呼び出されたのが…」

綺礼「! ゾフィス…なのか?」

臓硯「さあの。聖杯の意向など知る由もない。ただ、ゾフィスはこう言っていたというだけじゃ」

綺礼「結局、口から出たのはその信じがたい出鱈目か。何が答えだ、時間稼ぎのつもりか?」

臓硯「虚言と宣うなら確かめるといい。まあ奴ももう虫の息じゃろうが」

綺礼「まさか…」

臓硯「時間稼ぎ…満更外れでもないのう。儂も奴の体内に仕込んでおいた蟲が産声を上げるのを楽しみに待っておったからな」

綺礼「やはり貴様ら、協力する気など微塵もなかったか!」

臓硯「言峰綺礼…いずれ必ず後悔しよう。その選択をな」ヒュオン


綺礼「消えた…不味い、マキリの思い通りにはさせんぞ!」

ここまで?

再開します

セイバー「なるほど、切嗣を…」

ウェイバー「よく分からないけど、言峰はあいつに並々ならぬ思い入れがあるんだろ。それに、僕達と一緒にいたくないんだろうな」

ガッシュ「だが、キリツグがいるならセイバーも全力を出せるのだ!キレイも頑張っておるのだ!」

ウェイバー「…」

セイバー「…貴方達が援護に来てくれたのは心強い。ですが、あまり言いたくはありませんが…」

セイバー「貴方達はもう魔力が…」

ガッシュ「ヌウ…」

ウェイバー「…気合いでどうにかなる相手じゃない、よな。正直、勝ち目は…」チラッ

アーチャー「退けライダー!ガッシュは渡さんと二度も言わせるな!」

ライダー「だがあの坊主と戦うとなれば必然、金髪小僧もセットであろうが。貴様がうっかり奴を殺すなど何らあり得ぬことではない。つまり英雄王、ここは貴様が退くのが最善の手だぞ」

アーチャー「我を誰だと心得るか!この世の理は我の理、我を二の次にすらなど天地が三回転しても…」

ライダー「喧しい!ええい!お互い退かぬならば、永遠に決まらんぞ!」

アーチャー「雑種ごときがこの我に意見するな!」

ライダー「ここまでくると億劫になるのぉ…」

セイバー(談笑している…)

ウェイバー「…なんとかなるか?」

ガッシュ「ウェイバー、迷っている時間はないのだ。私は大丈夫。呪文が使えなくなっても、あやつらと戦おうぞ」

セイバー「二人がかりで向かってこないだけ好都合ですが、手強い相手です。そう躍起になっては敗北の瞬間が早まるのみだ」

ガッシュ「しかしだの…」

ウェイバー「こうなったら…」

ウェイバー「おいお前たち!」

ライダー「ん?」

ウェイバー「僕達はお前たちと戦えるだけの力はあるが、もう魔力がない!」

セイバー「!?」

ウェイバー「もし今すぐに僕達の魔力を回復させられるのなら、ここでお前たちと戦ってやるよ!」

ライダー「ほほう?」

アーチャー「…」

二人の目が変わった。いがみ合っていた英雄は気を静め、思案に耽っている。

ウェイバー(どうだ…)

先に沈黙を破ったのはアーチャーだった。

大変お待たせいたしました。(待ってない?)
再開します
一応全部読み返してみたのですが、これからの展開で辻褄合わないこともあると思います。
ssなので、そこは見逃してくださるとありがたいです…

アーチャー「自分とサーヴァントの魔力の管理も出来ん阿呆がマスターとは…」

アーチャー「あまり我に恥をかかせるな…ガッシュ」

ガッシュ「ナ…」

ウェイバー「ひぃっ!?駄目か、駄目なのか!さっきまでの雰囲気でいけると思ったのに…!」

セイバー「むしろ何故押し通せると思ったのですか!」

ライダー「…おう、待たぬか金ぴか」

アーチャー「失せろ、雑種が!」

ライダー「まあまあ…少しぐらい聞いてやれ。こちらとしても、このまま奴の都合通りに進められるのもつまらんではないか」

ライダー「おい坊主!その本を使うには、確か心の力ってもんがいるんだったな!」

ウェイバー「へ?あ、ああ…」

ライダー「ならば、話は早い。出番だぞ、英雄王…」

アーチャー「何…?」

切嗣「さて、全て遠き理想郷がある今、多少の無茶は出来る」

僕の標的、ソラウ・ヌァザレ・ソフィアリ…恐らく彼女が奴のマスターだ。

マスターを除き、聖杯戦争を間近で体感していてかつ、未だ脱落してないであろう人物…

奴等が裏で繋がっていたなら、ケイネスの異常なまでのパワーアップにも説明がつく。

大方、協力して聖杯戦争を勝ち抜こうと考えていたのだろうが…そこを利用されたか。

いや、それは違うか。舞弥の時と同様に、彼女を洗脳していたのだろう…

やはり厄介だな…キャスター、そして間桐臓硯…

先程の間合いでは殺すのは不可能だった。…が、距離を取って狙撃すれば問題はない。

まずは、ここから離れて…

「衛宮切嗣!」

切嗣「っ、お前は…」

綺礼「見つけたぞ…」

切嗣「お前に構っている暇はない…」

綺礼「マキリだ、マキリを止めねば…」

切嗣「マキリ…?何を言っている、奴は…」

綺礼「マキリは、蟲の力でゾフィスを操ろうとしている…!」

切嗣「…ふっ…奴等も一枚岩ではなかったわけか」

切嗣「それで?僕には関係ない」

綺礼「なっ…」

切嗣「僕の目的はキャスターを倒し、聖杯を手に入れることだ。臓硯がどうなろうが、知ったことじゃない」

綺礼「貴様…まだ復讐にとらわれているのか!」

切嗣「違う! 僕は…」

綺礼「…細かい話は後だ、此方に来い!でなければ、監督権限を行使して、貴様が勝とうが聖杯は渡さんぞ!」

切嗣「それはお前が生き延びた場合の話だろ…」

切嗣(仕方ない、着いていってやるか…行く先にゾフィスがいると言うのなら、逃す理由もない)

ちょっと休憩…

なんかこういう細かいのより、大筋バーン!のほうがいい気がしてきたな…

今さらこんなの見てもつまんないだろうな…

再開します

ウェイバー「なんだ…これ…」


セイバー「我々は急がないといけないというのに、このような足止めを食らうとは…」

ガッシュ「ウヌ…おいし…おそろしい罠なのだ…」

ウェイバー「おい…本当にそう思うなら…」


ウェイバー「食べるのやめろお前らぁぁぁ!!!」


ライダーがアーチャーに目配せしてからコンマ数秒、奴等は驚くべき行動に出てきた。

その様子をライダーは待ってましたと言わんばかりに、アーチャーの宝物庫の酒や食べ物を奪い、酒盛りを始めた。

それを見ていたセイバーとガッシュは巻き込まれ…いや、自分から飛び込んだような…

ライダー「何を怒っとるのだ?良いではないか。余も一度は貴様らと酒を酌み交わしてみたかったのだ、丁度良い機会だろう?」

アーチャー「貴様が生前やっていたような、下賤な集まりと一緒にするな」

ライダー「…酒が入ればもうちっとは素直になるかのう…」

アーチャー「まあよいわ。よし、酒の肴は…ガッシュ、貴様だ」

ガッシュ「ウヌ?さかな?ブリがいいのだ!」

アーチャー「またか…では、世界最古のブリを貴様に見せてやろう!」

ウェイバー「世界最古のブリってなんだよ、聞いたことないぞそんなの!んで、セイバーはとりあえず手を止めろ!」

セイバー「落ち着きなさい。いえ、ウェイバー?私としても体力の回復はしておき……美味!」

ウェイバー「話してる途中に食うな…!いいのかセイバー!これもう、相手に降伏してるようなもんだぞ!?誇りはどうした、王の誇りは!」

アーチャー「黙れ雑種!我とガッシュの会話に雑音を挟むな!」

ライダー「がはは、諦めろ!今の貴様に賛同するものはおらんようだからな!」

ウェイバー「むちゃくちゃだぁ…」

つまらないと連呼して、申し訳ないです…
自分の作品に自信がなく、つい保険をかけていました…
楽しみにしてる方に本当に失礼でした。
以後発言には気をつけます。

ゾフィス「…クソクソ、クソッ!身体が熱い…溶けちまう…」

ゾフィス「私が…オレが…復讐するんだ、あいつらに…」

ゾフィス「オレの計画を狂わせた、あいつらを…」

「…もう十分じゃて」

ゾフィス「! ゾウケン…?まだ表には出ないと思っていたのですが…」

臓硯「案ずるな…貴様にうってつけの舞台は残っておる」

ゾフィス「意味がわかんねえ…ちゃんと説明しろ!」

臓硯「フン…貴様は…どちらだ?」

ゾフィス「は…?私は…オレ…?」

臓硯「ククク…ここまで堕ちるとは…やはり貴様は面白い…」

臓硯「いいかゾフィス…これより儂が、貴様のマスターとなる…」

ゾフィス「…本を…ソラウはどうしたのです!」

臓硯「さして興味もないじゃろう?過去の主の末路など」

ゾフィス「末路…?ゾウケン、まさかソラウを…」


ゾフィス「…チッ、オレに言わずに勝手な真似しやがって…」


ゾフィス「何故ですゾウケン、私と貴方の約束は…」


ゾフィス「格別だろうと取って置いたのにナァ」


臓硯「…そちらが出てきたか。ゾフィス…いや」

臓硯「この世全ての悪…」



臓硯「アンリマユ…と呼ぶべきか」

いったんここまで

再開します

ウェイバー「はは…」

ライダー「坊主、どうした?」

ウェイバー「こうなったらあいつらにザグルゼムぶっぱなして…」

ライダー「水を差すつもりか?やめておけ。セイバーがこのざまだというのに、貴様のサーヴァントがこの状況をひっくり返せると思うか?」

セイバー「ごちそうさ…けぷっ」

ウェイバー「なあ、一回ぶん殴っていいか?」

セイバー「ふぅ…ご安心を。食事は腹八分までと決めていますから」

ウェイバー「腹八分まで食おうとした精神はどうなんだよ…!」

ライダー「貴様も楽にしたらいい。リラックスだ、リラックス。ほら飲め!」

ウェイバー「誰が飲むかよ!!…あっちはあっちで盛り上がってるし…」

アーチャー「ほう…王を決める儀…」

ガッシュ「ウヌ。私は人間のパートナーと共に、その戦いに勝ち残って王になったのだ」

アーチャー「その選ばれた100人とやらの中からか…なるほど、そういうことか?クク…ハハハ…」

ガッシュ「な、何がおかしいのだ?」

アーチャー「いや、合点がいった。しかし…全く。貴様らの終焉がどのようなものか…またひとつ楽しみが増えたな」

ガッシュ「ヌ…?わからぬ…説明してほしいのだ、ギルガメッシュ」

アーチャー「甘えるな。貴様が真実を知れば、我の楽しみがなくなる」

ガッシュ「…」

アーチャー「もし奴があれに手を出せば…おっと、ここまでにしておかねばな」

アーチャー「あくまで運命を選ぶのは貴様だ、ガッシュ」スクッ

ガッシュ「あ、待つのだ…」


アーチャー「我…見……け……」


ガッシュ「…ギルガメッシュ…どういうことなのだ…?」

ライダー「しかしまあ、見違えたぞ坊主。でかくなったもんだ」

ウェイバー「でかいやつにでかいって言われて喜ぶかよ…」

ライダー「その面構え…もはや別人だな。余に怯える素振りも見せんようにもなった」

ウェイバー「別にびびってねーし!」

セイバー「お二人は一度出会っていたのですか?」

ライダー「うん?まあな」

ウェイバー(ナチュラルに話に入ってきたな…)

セイバー「よく殺されませんでしたね、ウェイバー」

ウェイバー「うるさいな!重々承知してるよ、命拾いしてるのは!」

セイバー「む、貴方は本当に運が良いと褒めようと思ったのですが」

ライダー「…なあ、覚えておるか坊主?あの時の…「頃合いだ、ライダー」

ウェイバー「え?なんて?」

ライダー「アーチャー…ふん、せっかちな奴だ」

アーチャー「茶番はここまでだぞ…貴様ももう良いだろう」

ライダー「そうだのう…では始めるか…坊主」

ウェイバー「…!」

綺礼「…ひどい物音だ」

思わず足を止める。全速力で走れないほど大地が揺さぶられている。

普通なら地震と思うだろうが、事情が分かればこの地鳴りは自然が起こしたものではないと感じ取れる。

切嗣「これだけ音がデカければ、お前の道案内はいらないな」

その二人は避難するどころか、どんどん震源に近づいていく。自分が憎んでいる標的はそこにいると確信しているからだ。

綺礼「セイバーは、どうだ?」

切嗣に訊ねる。

ガッシュの力が不安定な今、此方の最高戦力のセイバーの安否で勝敗はほぼ決まる。そう綺礼は考え、それが肌で感じられるのは切嗣だけだ。

切嗣「…僕には詳細までは分からないが、多分無事だ。ここに令呪が残っている」

綺礼「…そうか」

不安ではあるが戦える状態ならなんだっていい。それに私を含め令呪のブーストがあれば、アーチャークラスの英霊にも渡り合える。

綺礼(まだ勝機はある…問題は、ゾフィスをどう対処するかだな。だが、まずはその作戦の前提として…)

綺礼「急ぐぞ!」

切嗣「…」

ウェイバー「テオザケル!」

アーチャー「効くわけなかろう、たわけ!」

ガッシュ「強い…」

アーチャー「フハハハハ!!未だ底が見えない我に驚嘆するか、ガッシュ!」

ウェイバー「くっそ…」

ウェイバーは目の前の強敵よりも、相棒の力を司る魔本に対して苦戦していた。

新しい呪文が増えたことで、戦力がアップしたのは事実だ。
とはいえ、術の効果も心の力をどれだけ消費するかも使ってみなければ分からない。
三つ目や七つ目の術のように一目で分かる能力でないかもしれないし、何よりぶっつけ本番で試せる相手じゃない。

けれど知るばかりの最大呪文、バオウを放てばどうなるかは予想がついている。

だから同系統の新呪文で様子を見るしかないのだ。

ウェイバー(隙がない…ザグルゼムもジケルドも当てられる気がしない…)

ウェイバー(最後の呪文になるほど威力が上がると仮定するなら…ジオウ・レンズ・ザケルガ。これに勝負をかけてみるか…?)

ウェイバー(とりあえず心の力を溜めないとどうにも…)

セイバー「やああっ!」

ウェイバー(そうだ!セイバーがいた!あいつなら…)

アーチャー「フッ…ここで息を吹き返すかセイバー!いいぞ、もっとだ!」

セイバー「アーチャー、私の全てを貴方にぶつけよう!何せ、一宿一飯の恩義だ!」

ウェイバー(それは意味が違うと思う)

アーチャー「しかしライダー、悠々と見物とは…まさか…貴様…」

ライダー「…」

ゾフィス「さて…そろそろやるか、ゾウケン」

臓硯「ああ…全ては計画通りに」

そう言いほくそ笑む老人のしわがれた手には、最強の力を手に入れたと言わんばかりの光を放つ赤紫色の魔本があった。

ここまで
ちょっとだれてるしテンポが悪いなあ

再開します
誰も見てないだろうけどいい加減終わらせないと…

ライダー「いざ…」

ついにライダーが重い腰を上げ、ライダーのサーヴァントたる由縁である神威の車輪を召喚した。

ウェイバー「ヤバい…いや、無理だろこれ…アーチャーだけで手一杯なのに…!」

ライダー「ぐっ…」

ウェイバー「…え?」

だが畏れていた戦車は、有象無象を蹴散らすどころか前進する素振りも見せない。何よりライダー自身に、その覇気を感じられなかった。

ガッシュ「ウェイバー!」

何故?

そんな疑問を抱え悩む時間すら与えられることはないと、ガッシュの声で思い出される。

ウェイバー「! ラッ、ラシルド!」

セイバーを相手にしている片手間のアーチャーにすら軽く遊ばれている力量差では、よそ見は一瞬でも命取りだ。

アーチャー「ふははははは!!」

ウェイバー「しまっ…」

攻撃から身を護る盾は、今の状況では最善手には違いない。けれど、無力だった。

「「グワアアア!!」」

セイバー「ガッシュ!ウェイバー!」

アーチャー「まだまだ!まだ終わらぬぞ、ガッシュ!」

セイバー「貴様、何処を見ている!相手は私だ!」

アーチャー「チッ…貴様に用はない。王の御前で喚くな、雑種」

ガッシュから目を離したアーチャーがセイバーに目をくれた時には、セイバーの視界は宝具で埋め尽くされていた。

セイバー「しまっ、間に合わな…」


「令呪を持って、我がサーヴァントに命ずる」


「その剣で、立ち塞がる敵を討て」


セイバー「はっ…これは!…オオッ!!」

令呪で強化されたセイバーは本来の魔力を解放し、王の財宝を全て吹き飛ばした。

アーチャー「なっ…」

「無事か。セイバー、ガッシュ」

ガッシュ「お主は…お主らは…」

綺礼「遅くなったな」

切嗣「…また、面倒なことになりそうだな」

セイバー「切嗣…」

少しの間だけ彼と合っていた目をそらす。

あのやり取りからセイバーは、どんな顔をして切嗣と会えば良いか分からなかった。

そんなセイバーを見て切嗣もため息をつき、セイバーに呟いた。

切嗣「…ああ、確かに。最悪の状況だな」

セイバー「…?」

切嗣「あんな啖呵を切っておいて、どうやらお前を頼るしかないらしい」

セイバー「!」

切嗣「精々上手くやってくれよ、僕の剣として」

セイバー「了解しました、マスター!」



綺礼「相当なダメージを受けたらしいな…立てるか?立てないなら、端で縮こまっていろ。下手に動かれても足手まといだからな」

ウェイバー「…お前の罵倒が一番心に来る」

綺礼「フッ、事実だろう」

ウェイバー「おま…この本にはな!心の力が重要なんだぞ!なんでメンタル削ってくるんだよ!」

綺礼「静かにしろ、治療が長引く」

ウェイバー「…」ムスー

ガッシュ「キレイ…その、キリツグは…」

綺礼「…何にせよ、ここで意地を張るような愚かな人間ではないだろう。拘っている物を捨てられたかどうかは知らんが」

ガッシュ「コダワリ?」

綺礼「ああ、奴がもし…「久しぶりだな、綺礼!」

アーチャー「ふはははは!!やはり、我の目に狂いはなかった!ここまで生き残れるとは思ってはなかったぞ、綺礼。誉めて遣わそう!」

綺礼「光栄です、英雄王。では、剣をお納めくださいませぬか?」

アーチャー「断る!」

ガッシュ「ウヌウ!?」

綺礼「やれやれ…ところで、ウェイバー・ベルベット」

ウェイバー「なんだよ?」

綺礼「あれは、何かね?」

ライダー「…」

いったんここまで

ウェイバー「あれ…って、ライダーか」

綺礼「何故奴は戦わない?」

ウェイバー「…」

珍しくウェイバーと綺礼の意見が一致した。

誰が見ても不自然な様なのはすぐに分かる。ここでライダーが戦場を荒らし回るのは容易な筈だ。

いつ動いてもおかしくないが、何故か動く気配がない。

何か考えがあるのかもしれない。
それとも、自分で手を下す必要などないと侮っているのかもしれない。

これら全て憶測の域から出ていない。

だが、目の前の一人に全員が手を焼いているこの状況で、ライダーに出てこられたらなす術がない。

ウェイバー「…あいつに戦う気がないなら、むしろ好都合だ。アーチャーに集中できるからな」

ウェイバー(倒せなくても、せめて隙を作るぐらいの力を…)

かろうじて残っていた心の力も魔力も全て、本に注ぐ。
ゼオンを倒したこの力なら、流石のアーチャーも崩れるだろう。

セイバーなら、その隙を狙って斬り倒す。

その手助けが出来ればいい。

ウェイバー「…兎に角、回復してくれればどうにかなると思う。急いでくれ」

正直言ってライダーの対処法はさっぱりだが、今はこれしかない。やるしかないんだ。

綺礼「随分言うようになったな、三流魔術師風情が」

ウェイバー「何だとォ!?」

綺礼「粋がるのはいいが…いや、その様子なら何かしらの策は講じているようだな」

ウェイバー「え?あ、まあ…一応」

綺礼「そうか、頼りにはしているぞ。お前達ならセイバーのサポート程度にはなれる」

ウェイバー「…は?何だよ急に…励ましてるつもりか?」

綺礼「不服かね?」

ウェイバー「別に!そういうとこ…ほんっっとムカつく!!言われなくてもやってやるっての!!」

ウェイバー「ガッシュ!準備しとけよ!」

ガッシュ「ヌ、ヌゥ…」

綺礼(ちょろいな)

ガッシュ「!」

ガッシュ「ウェイバー、キレイ!いがみ合っている場合ではないのだ!あれを…」

ウェイバー「…セイバーか…」

綺礼「…」

セイバー「やああっ!」

令呪によって魔力を回復したセイバーは、ガッシュに代わってアーチャーと応戦していた。

アーチャー「ハッ!どうした、それでは我には届か…」

セイバー「ここだッ!」

アーチャーから放たれた宝具にタイミングを合わせ、風で跳ね返す。

カウンターを防ぐために盾を王の財宝から取り出す。持ち主に逆らう武具は全て防いだが、

セイバー「ハッ!」

宝具を囮にしたセイバーの一閃には間に合わなかった。

アーチャー「ほう…悪くない…」

セイバー「そんなワンパターンな攻撃を防げないとでも思ったか?私を侮るな、アーチャー!」

アーチャー「フッ、ここに来て一段と鋭さが増すか…だが!」

アーチャー「その剣を包み隠したまま、我を倒せると思うなよ!」

アーチャーは不可視の剣の間合いを完璧に把握し、宝具の波状攻撃を仕掛ける。

アーチャー「思い上がるな、セイバー!さあ、さらけ出せ!聖剣を!」

セイバー「ぐっ…」

切嗣(あれほどまでの攻防…流石、トップレベルのサーヴァント共だ…)

切嗣(剣の技量は間違いなくセイバーが上、だが向こうにあるのはセイバーを上回る宝具…こちらが不利なのは火を見るより明らか)

切嗣(ライダーが控えているのを考えて、魔翌力の消費は抑えておきたかったが…)

切嗣(短期決戦どころか、これではやがて…)

切嗣「チッ…不味いな」

遠距離から宝具を射出していたアーチャーの手が止まった。

アーチャー「やれやれ…」

地面に刺さっていた自分の宝具を引き抜き、セイバーに近づき鍔迫り合いを演じる。

セイバー「な、何のつもり…」

セイバー(受けきれない…)

セイバー「うああっ!」

アーチャーは宝具を宝物庫に戻し、フラフラと体勢を崩したセイバーを見下す。

アーチャー「ほら見ろ、この程度ですら捌けぬではないか。最優のサーヴァントが聞いて呆れる」

セイバー「くっ…」

接近戦が得手ではないアーチャーに押し負け、見下ろされる。

これはセイバーにとって屈辱でしかなかった。


アーチャー「あまり我を幻滅させるな」


回復はしたが、セイバーの魔力は無限ではない。

風を放出するにも一定期間のインターバルが存在し、常には使えない。

そして何より強敵との連戦による疲労が体に刻み込まれている。


セイバー「…!」

セイバーは既に、限界に達していた。

ーーーーーーーーーーー


ウェイバー「セイバーが…」

ガッシュ「ヌウ…ウェイバーはここにいるのだ。私が助けに…」

綺礼「駄目だ。お前達には限界まで耐えてもらう」

ガッシュ「セイバーがやられてしまうのだ!今がその時ではないのか!?」

ガッシュ「キレイ、これを黙って見ていろと…ムグッ!」

綺礼「そうだ、黙って見ていろ」

ガッシュ「~~!」

綺礼「ウェイバー・ベルベット。分かっているな?」

ウェイバー「…」

ーーーーーーーーーーー

一旦ここまで
中途半端だなぁ

アーチャー「無様よなぁ、その剣よりも生き恥を晒すことを選ぶか」

アーチャー「貴様のような者が王になり、束ねられた国の民が憐れで仕方ない」

セイバー「…っ、黙れ!」

セイバー(いけない、熱くなっては…アーチャーがここで私に切り札を切らせるつもりなのは分かっている…)

セイバー(今は、耐えるしか…)


アーチャー「敵を前にしてただ滅びを待つ…ブリテンと同じ、いやそれ以下の結末だ」


アーチャー「貴様らの持つ騎士の誇りとやらも安くなったものよ」

セイバー「貴様ッ!私だけならいい!だが…ブリテンを…騎士の誇りを…侮辱することは許さない!」

アーチャー「許さない?フハッ、ならばどうする!貴様の中ではもう答えは出ている筈だ!」

アーチャー「貴様はただ望めばよい!愉しめばよいのだ!我との戯れを!」

セイバー「…」

セイバー(私の全魔力をかけた、約束された勝利の剣での一撃なら、アーチャーを倒せるかもしれない…)

セイバー(いいや、必ず倒す!魔力を出しきれば必ず…!)

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