夜神粧裕「デスノート?」 (279)

粧裕ちゃんかわいい。
でもSS少ない。
だからカッとして書いた、反省もしない。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1511856709

粧裕(早く授業終わらないかなー?)

粧裕(あれ?)

粧裕(何だろ? 校庭に何か落ちてる)

粧裕(後で見てみよーっと)

ソレデハジュギョウヲオワリマース

粧裕(あ、授業終わった)

テクテクテク

粧裕「……」キョロキョロ

粧裕「黒いノート?」キョトン

粧裕「DEATH NOTE……です……のーと? ぎゃっ! 中にも英語だらけ……はうとぅーゆーず……あーん! 英語よめなーい!」

粧裕「こういうときは~~……お兄ちゃ~~~ん!!」タタタタッ

夜神家


粧裕「助けて、お兄ちゃーん!」

幸子「どうしたの粧裕?」

粧裕「あれ? お兄ちゃんは?」

幸子「もう塾に行ったわよ」

粧裕「げ! なんでー? いつもより早ーい」

幸子「参考書とかを買いたいって本屋に寄って行くって言ってたわよ」

粧裕「何それー。もー、お兄ちゃんは本当に優等生~~~!」

幸子「粧裕、あなたもライトを見習って……」

粧裕(げげっ! これ長くなるやつ!)

粧裕「はーい! 勉強しまーす!」タタタタ

幸子「あら? 聞き訳がいいのね」

粧裕の部屋


粧裕「むぅ、お兄ちゃんを頼れない」

粧裕「仕方無いけど頑張って翻訳してみよっかな」

ペラペラカキカキジュショデシラベチュウ

粧裕「えーっと、何々? デスノート? 直訳で死のノート……死?」

粧裕「……このノートに名前を書かれた人間は死ぬ?」

粧裕「……」

粧裕「書く人物の顔が頭に入っていないと効果はない。ゆえに同姓同名の人物に一遍に効果は得られない」

粧裕「名前の後に人間界単位で40秒以内に死因を書くとその通りになる」

粧裕「死因を書かなければ全てが心臓麻痺となる」

粧裕「死因を書くと更に6分40秒、詳しい死の状況を記載する時間が与えられる」

粧裕「ぷっ」

粧裕「きゃはは! ばっかみたい! なにこれー!」

粧裕「もー、調べて損した」

粧裕「テレビでも見よーっと」ポチ

『昨日新宿の繁華街で無差別に六人もの人を殺傷した通り魔は今もなお、幼児と保母八人を人質にこの保育園にたてこもっております』

粧裕「わっ、怖ー……」

『警視庁は犯人を音原田九郎 無職42歳と断定。音原田は一昨日……』

粧裕「……あっ、そうだ」

粧裕「こんな悪い人はー、こうだー!!」

『音原田九郎』

粧裕「はい、これでこの犯人は死んじゃって保育園の人達は助かるね。人助け人助けー♪」

粧裕「なーんちゃってー」

『あっ、人質が出て来きました』

粧裕「?」

『皆無事のようです、入れ替わるように警官隊が突入! 犯人逮捕か!?』

粧裕「え? 何?」

『あっ、もう出てきました!?』

『今情報が入りました!! 犯人は保育園内で死亡!! 犯人は死亡した模様です!!』

粧裕「へっ?」

『警官が射殺したのではないと強調しております。人質の証言では犯人は突然倒れたと……』

粧裕「…………え?」

粧裕(え? こ、このノート、嘘だよね?)

粧裕(あ、あたしが人を殺したなんて、嘘だよね?)

粧裕(そ、そうだよ、ぐ、偶然、絶対に偶然。そんな事ありえないよ)

粧裕(そう、偶然。偶然だよ、偶然……)

粧裕(……)

粧裕(偶然だって、証明しないと……)

粧裕(テレビ……悪い人、いない……)

粧裕(それなら……外に……)

ガチャットントントン

幸子「あら? 粧裕? どこかにいくの?」

粧裕「うっ!? う、うん、ちょ、ちょっと外に」

幸子「もう暗いんだから遠くまで行かないようにね」

粧裕「は、はーい」

繁華街


粧裕(わ、悪い人、死んでもいいような悪い人……)

粧裕(しょ、証明しないと、悪い人の名前を書き込んで、死なないって証明しないと……)

粧裕(早く、早く……あっ)

シブタク「俺、渋井丸拓男。略してシブタク。へへ、付き合ってよおねーさん」

女性「こ、困ります……」

シブタク「キャワイー!! 困った顔キャワイーーー!! さらっちゃいたくなってきたぜーーー!!」

女性「や、やめてっ! 誰か助けて!」

粧裕(あっ、悪い人だ……)

粧裕(顔も見える……あの人で証明、できる)

『渋井丸拓男 事故死』
『渋伊丸拓男 事故死』
『渋井丸拓夫 事故死』
『渋伊丸拓夫 事故死』

粧裕(お、お願い! 死なないで!)

粧裕(あっ、女の人が走って、あたしが名前を書いた人、追いかけて……)

ゴシャッ!!

粧裕「ひうっ!?」

『ば、バカヤロウ急に飛び出しやがっ……ひっ、ひええっ!!』

『キャーーーー!!』

『えっ、事故!?』

粧裕(……)タタタタッ

粧裕(はっ……はっ……)タタタタタ

粧裕「はぁっ! はぁっ!」タタタタタ

粧裕「ぜぇっ! はぁっ! うっ……」フラフラペタン

粧裕「こ、ここここ、これ、ほほほほ、本当、ほんとに、し、ししししし、死ん、死んじゃ……」

粧裕「うっ、うえぇぇぇぇっ、ひっく、ち、ちが、あたし、そんなつもりじゃ。ち、ちがうのぉ」

粧裕「お、おとうさ…………あっ、あぁっ…………」

粧裕(お、お父さんにバレたら……お父さんがあたしを捕まえるの?)

粧裕(警察官の子供が、殺人犯……お父さんも警察を辞めないといけなくなっちゃう?)

粧裕(そ、そうしたらお兄ちゃんももう警察官になれない……あ、あたしのせいで……)

粧裕(警察で一番偉い人になるはずのお兄ちゃんがあたしのせいで?)

粧裕(大好きなお父さんも、お母さんも、お兄ちゃんも、あたしのせいで世間から犯罪者の家族だって非難されちゃうの?)

粧裕(……だ、だめ)

粧裕(そ、それだけは、絶対に、だめ)

粧裕(だめ、だめ、だめだめだめだめだめ……)フラフラフラ

夜神家


粧裕「だめ……だめ……だめ……」ブツブツ

幸子「粧裕、おかえりなさい。あら? どうかしたの?」

粧裕「だめだから……ちがうから……」ブツブツフラフラ

幸子「ライトもお父さんももうすぐ帰ってくるからご飯はそれからよー」

粧裕「!?!?!?」ビクン

幸子「粧裕ー? 聞いてるのー?」

粧裕「お、おおお、おとう、おにい……や、やだ、ば、ばれちゃ……」バタンッ

幸子「……どうしたのかしら?」

粧裕の部屋


粧裕(あたしは人殺し? ちがう、あたしはノートに名前を書いただけ)

粧裕(でも、人が死んでる。違う、あれはただの偶然)

粧裕(二人目は偶然じゃないよね? 事故死って書いたよね? ううん、それも偶然)

粧裕(もし偶然じゃないとしても、悪い人だったししょうがないよね? 二人共死んでもいい人だったもんね?)

粧裕(そうなの? 本当にそうなの? そうじゃない。死んでもいい人なんていない)

粧裕(でも、それならどうするの? お兄ちゃんに相談するの? できない!! 絶対にできない!!)

粧裕(人を殺したなんて相談できない!! でもどうしよう? お父さんに? お母さんに? できないってばぁ!!)

二日目

粧裕(あれからみんな心配してあたしの様子を見に来てくれたけど誰にも顔を合わせてない)

粧裕(顔向けなんて出来ないよ。あたし殺人犯なんだよ?)

粧裕(もうやだ。何でこんな事になっちゃったの? やだよ、こんなのおかしいよ)

粧裕(誰か助けて。もう悪いことなんてしませんから、神様……助けてください)

三日目

粧裕(頭がボーっとする)

粧裕(なんだかよくわかんなくなってきちゃった)

粧裕(そもそもノートに書いただけで人って死ぬんだっけ?)

粧裕「あはっ、そんなわけないじゃん」

粧裕「そうだよ、そんなわけないって!」

粧裕「あははっ、そうだって! 死ぬわけないって! ばっかじゃないの?」

粧裕「こんなノートに名前書くだけで死ぬなんてありえないって! あははははっ!」

粧裕「殺人? あたしはそんな事できないでーす! 殺人犯はーそのテレビに映ってる人ーーー!!」

『生中継。強盗殺人犯逮捕! 中岡字松四郎。犯人は昨夜未明コンビニへ押し入り……』

粧裕「こんなノートインチキだってしょうめーい!! はいっ!」

『中岡字松四郎』

粧裕「38、39、40~~~はい! 証明完了~~~!!」

『こ、これはどうしたことでしょうか? 護送中の犯人が急に倒れましたよ!?』

粧裕「ん~?」

『どうやら犯人は護送中に死亡、死亡した模様です!』

粧裕「ぎゃっ! またまたまたぐうぜーん! きゃはははっ!」

粧裕「次次ぃ~!」

『放火魔現行犯逮捕。白身正亜希。犯人は現行犯で逮捕、現在は生中継で……』

粧裕「3度目の正直は終わっちゃったよ~~~?」

『白身正亜希』

粧裕「はーい! これでどーだ!!」

『おや? 現場で動きがあった模様です』

粧裕「おやおや~?」

『は、犯人が倒れていますね……えっ!? し、失礼いたしました。どうやら犯人は死亡したという情報が……』

粧裕「ぎゃーーーーー!! ぐっうぜーーーん!! あっはっはっはっはっはっは!!」

粧裕「もーーーうっ、次ーーー!!」

数時間後

粧裕「はっははっあははははっ、これで300人目ー!!」

粧裕「偶然が続きすぎるからすぐに死んだかわかんない人達まで書いちゃった!!」

粧裕「そーれーもー、世界中の凶悪犯罪者の名前っ!!」

粧裕「これでー、しんだらー、あたしはー、さーつじーんはーん……」

粧裕「あー……つかれた……」

粧裕「」バタン

四日目

粧裕「…………」

『世界中の刑務所で起きた謎の伝染病!? 連続獄中死!!』

粧裕「…………」

『世界中で相次いだ凶悪犯罪者の不審死、どう思いますか○○さん?』

粧裕「…………」

『現在分っているだけでも52人という話ですが、突然死亡したとの……』

粧裕「…………ごぽっ」

粧裕「うっげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」ゲロゲロゲロ

粧裕「げぽぽぽぽぽっ、ごぽぽぽっ、げほっ」ロロロロロロロ

粧裕「」バタン

五日目

粧裕「あっ、あーっ、あーーーーっ」

リューク「お、おい?」

粧裕「悪魔? それとも死神? ねぇどっち!?」

リューク「お、おう。俺、死神のリュークだけど」

粧裕「やっぱり!! はーいおっしまーい!! あたしおっしまーい!! きゃはははははは!!」

リューク(な、なんだこいつ?)

粧裕「あたしの魂もってくんでしょーーー? ねーーー? もってってよーーー! はーやーくーーー!」

リューク「あー……こりゃあれか。デスノート使って他人を殺した事実に耐えきれられなくなったってことか?」

粧裕「なにー? ねー死神さーん。はやくあたしを殺してよー。そうしないとあたしまた誰か殺しちゃーう」

リューク「普通の人間がデスノートを使うと恐怖や苦悩に囚われるというが……こいつは普通の人間だったってわけか」

リューク「つまらな……んん?」ノートカクニン

リューク「おおっ!? 何だこりゃ!? お前一体何人殺したんだ!?」

粧裕「んー? 304人だけどー?」

リューク「たった五日でここまで殺るとは……おまえ凄いな」

粧裕「もー、そんな事いいからはやくあたしを殺してよ。死神さんが殺さないとあたし何人殺すかわかんないよーーー」

リューク「ん? 俺はお前を殺したりしないぞ?」

粧裕「……え?」

リューク「俺はお前に何もしない」

粧裕「…………」

リューク「俺はそのノートの落とし主であり、そのノートが人間界の地に着いた時点でノートは人間のものになる。そして俺はノートの所有者に憑くだけだ」

粧裕「…………」

リューク「そのノートはもうお前の物で、俺はお前に憑く。ただそれだけの事だ」

粧裕「…………ころさないの?」

リューク「ああ」

粧裕「…………」

リューク「ん? 何やってんだ?」

『夜神粧』

リューク「お、お前何やってんだよ!?」

粧裕「死ぬ」

リューク「待て待て! そんなことしたら折角人間界に落とした……あぁ、まーいいか。ここならすぐ別の奴が見つけるだろ」

粧裕「」ピタリ

粧裕「どういうこと?」

リューク「うおっ!?」

粧裕「あたしが死んでもこのノートを持って帰らないの?」

リューク「ああ」

粧裕「なんで?」

リューク「そりゃ、俺は人間界に来る為にそのノートを落としたんだからな」

粧裕「意味が分からない。説明して」

リューク「お、おう。俺がそのノートを落とした理由は、退屈だったからだ」

粧裕「……たい、くつ?」

リューク「ああ、死神がこんな事を言うのもおかしいが、生きているって気がしなくてな……」

リューク「今の死神ってのは暇でね。昼寝してるか博打打ってるかだ」

リューク「死神が人間を殺すなんて普通のことだ。だからといって死神界の奴をノートで書いても死なない。退屈で退屈で……人間界にノートを落として人間に使わせるのを眺めるのが面白いと俺は踏んだ」

粧裕「……なに、それ」

リューク「と、いう訳だ。お前が使わないなら使わないでいい。ノートに自分の名前を書くのも自由だ。そうなったら俺は次に拾う奴に憑くだけだ」

粧裕「……つまりこういうこと? あたしはあなたの退屈しのぎの為に殺人犯になっちゃったっていうこと?」

リューク「使ったのはお前だろ?」

粧裕「ふっ、ふふ、ふはっ、あはっあは、あはははははははははははははははははっ!!」

リューク(!?)ビクッ

粧裕「死神さん死神さん。ちょっと聞いてもらえる?」

リューク「お、おう」

粧裕「あたしのお父さんは警察官なの。すっごく正義感が強くて悪いことは許せないお父さん。尊敬できてすごく頼りになる最高のお父さん。お母さんもそんなお父さんを信頼して警察官の妻という事に誇りを持っているお母さん。たまに厳しいけどどんなことも相談できるし大人になったらこんな女の人になりたいなって思ってるお母さん。そしてお兄ちゃんはほんとうにすごいお兄ちゃん。高校生なのにお父さんもお兄ちゃんのことを頼りにしていてお兄ちゃんのおかげで解決した事件もあるの。頭もよくってかっこよくってなんでもできてあたしにも優しくてほんとうにほんとうにほんとーーーーに自慢の最高のお兄ちゃん」

リューク(な、なげーな)

粧裕「でもあたしは殺人犯」

リューク(顔怖っ!!)

粧裕「どうしてなのかな? ううん分ってる。自分のした事を認めたくなくって現実逃避をして何人も何人も殺しちゃった最低最悪の殺人犯」

粧裕「それがあたし」

リューク(だから顔怖ぇーよ!?)

粧裕「いいよ。使ってあげる、これ」

リューク「お?」

粧裕「最低最悪の殺人犯になったけど、そんな最悪の人間にしか出来ないことがあるって思いついたんだ」

リューク「それって何だ?」

粧裕「このノートで世の中を変える」

リューク「?」

粧裕「1日、たった1日であたしの殺した凶悪犯罪者のことが話題になっている。もしもこれがずっと続いたらどうなると思う?」

リューク「どうなるんだ?」

粧裕「犯罪者が皆心臓麻痺で死んでいく。どんな人でも「悪人が誰かに消されている」って事に気がつく。そうなったら誰も悪いことが出来なくなる」

リューク「ほぉ」

粧裕「毒を以て毒を制する。あたしに出来ることなんてもうこれしかない」

リューク「お前どれだけ殺すつもりだよ?」

粧裕「うるさい」

リューク「まあ、使うんだったらいいけどよ」

月の部屋


月「はぁ……」

月(粧裕が部屋に閉じこもってもう五日)

月(一体どうしたって言うんだ? 今までこんな事など一度も無かった)

月(粧裕に聞こうとしても、放っておいての一点張り。この二日は急に笑い声を上げるなど精神状態がおかしくなっている行動を取り始めている)

月(まさかとは思うが粧裕が学校でいじめられている可能性も考えてこの数日で粧裕の中学を調べたが、粧裕のクラスの子は粧裕を心配していた。怪しいところなど何も無かった)

月(何が原因だ? 家族間は良好だ。学校の悩みでもない。……まさか男か!? い、いや、それも無い。粧裕が誰かと付き合うなんてすぐ分かることだ。それなら何だ? 一体何が原因で……)

月(……今までは時間が解決するだろうと、粧裕が自分から出てくるのを待とうと考えていたが、これ以上は無理だ。悪い方向へと向かっていっている)

月(多少強引になるが粧裕が部屋のドアを開けるまで呼び続ける。ドアを開けたら粧裕を連れ出して僕の部屋で何があったのかを聞き出す)

月(僕の行動で更に状況が悪くなるかもしれない……いや、粧裕は僕のことを信頼してくれている。その僕が心から粧裕の事を考えての行動だと伝われば粧裕も僕にだけ悩みを打ち明けてくれるはずだ)

月(よし……行くぞ)ガタッ トントントン

月「粧裕、僕だ」コンコン

月「このままでいいから少しだけ……え?」ガチャッ

月(この数日がなんだったのかと思うほどあっけなく開いたそのドア)

月(真っ暗な粧裕の部屋に廊下からの明りが差し込んで五日ぶりに見る粧裕の姿がそこにあった)

月「さ、粧裕?」

月(自分の目を疑った)

月(ボサボサになった髪で目元が全く見えない。口元には嘔吐物がこびりついていて服も自分の嘔吐物に塗れている。そして粧裕が生み出す雰囲気というものは負のオーラをこれでもかと含まれるものだった)

粧裕「お兄ちゃん」

月「あ、ああ」

月(しかしそれも全て粧裕が顔を上げた途端消えうせたのだ)

粧裕「ごめんっ! 何だかちょー具合悪くって今までぴくりとも動けなかったの!」

月(いつもの表情だ。頬はこけて目も焦点があってはいないが、表情だけはいつもの表情だった)

粧裕「お父さんもお母さんも心配してるでしょ? 早く謝んないといけないよー」

月(それが僕に更なる不安を抱かせた。だけどそれを問いただす前に粧裕はおぼつかない足取りで歩いていく)

月「お、おい、そんなフラフラで階段を下りようとするな。危ないだろ!」

粧裕「平気平気」

月「そんな訳あるか!」

月(そうやって粧裕を抱きかかえようとしたのだが)

粧裕「触んないで!!」

月「っ!?」

粧裕「あっ……よ、汚れるから! あたし、今げーげーでばっちいから!」

月(粧裕は僕を力なく突き飛ばした。その力は到底僕をたじろかせるようなものではなかったのに、僕は粧裕からの拒絶を受けてその場に立ち尽くしてしまう)

月(そのまま粧裕はふらふらと階段を下りて、階下から父さんと母さんの驚きとも安心ともとれる声が聞こえ僕もやっと足を動かすことが出来た)

月(不安はあった。だけど、数日するとその不安も殆ど無くなっていた)

月(粧裕が元に戻ったからだ。この数日が一体なんだったのかというほど粧裕はいつも通りの姿に戻ってくれたのだ)

月(いくつかの疑問はあった。しかし粧裕が元に戻ってくれたというだけで僕は安心してしまったんだ)

粧裕の部屋


粧裕(あの日からあたしは凶悪犯をこのノートで殺し続けている)

粧裕(もう1週間。最初にあったノートに書き込むことで人の命を奪うという恐怖感や罪悪感はもうない)

粧裕(我ながら信じられない。いや、もしかしたらあたしは元々こういう人間だったのかもしれない)

リューク「粧裕ー、リンゴくれー」

粧裕(あれから死神には様々なことを聞いた)

粧裕(ノートのルール。死神について。人間界と死神界のこと)

粧裕(ノートの所有権を放棄することによって記憶を失うことが出来ると聞いたときは心が揺らいだ)

粧裕(だけどすぐにその誘惑を断ち切った)

粧裕(所有権を放棄したらこの死神は別の人間にこのノートを渡す。そしてこの死神は次の人間がノートを使った後にいけしゃあしゃあと現れるのだろう)

粧裕(あたしが放棄することによって別の人がこんな苦しみを味わう。もしそれがお兄ちゃんだったら? お父さんだったら? お母さんだったら?……ありえない)

粧裕(もう使ってしまったあたしが持ち続けないといけない。そして使い続けないといけない)

粧裕(何度か話をしてわかってしまった。この死神は人間がノートを使って死神には考え付かないような事を見たがっている。それが自分の意にそぐわないこと……退屈なことだと判断した場合、この死神は所有者も簡単に殺すのだろう)

粧裕(普通にノートを使うだけではいけない。それが分った時、あたしは自分が最初に思いついたことに対して、運がよかったと心底思った)

リューク「それでお前ってノートを使って世の中を変えるって言ってたけど今はどんな感じなんだ?」

粧裕(来た)カチャカチャ

リューク「ん? 救世主キラ伝説? なんだこりゃ?」

粧裕「あたしの事」

リューク「ほぉ」

粧裕「言ったよね? 犯罪者が心臓麻痺で死んでいけばどんな人でも悪人が誰かに消されてることに気がつくって」

リューク「ああ」

粧裕「これがそう。キラ……殺し屋から名前を取っているらしいけど、あたしはもう世界的に「キラ」になってる。もう「キラ」で検索するだけでこの手のページがごまんとあるの」

粧裕「みんなもう気付いてる、わかってる。悪人が誰かに消されてるって」

粧裕「たったの1週間でこれ。これから世の中は変わっていくよ」

リューク「そーなのか?」

粧裕「そう。これは始まり」

粧裕「誰だって死ぬのは嫌。だけど悪いことをしたら確実に殺されるのが分ってしまう世の中に変わる。そうしたらどうなると思う?」

リューク「悪いことをしなくなる? のか?」

粧裕「そう。その意識が芽生える。悪いことをしたら駄目だっていう意識が。誰の心に芽生えるの。恐怖心としてね」

粧裕「目に見える恐怖って人の行動を束縛するの。誰もが悪いことをする前に躊躇するようになる。悪いことができなくなる」

リューク「そんなもんなのか?」

粧裕「まあ、それでも人って言うのはふとした拍子に、感情が思い通りに行かなくて衝動的に犯罪を犯してしまう。でもその頻度は絶対的に少なくなるのは間違いないの」

粧裕「まずはそうなるように世の中の意識を変えていく。ううん、世の中は変わっていく」

粧裕「その次は……」ザザッ

リューク「ん? 何か始まったぞ?」

『番組の途中ですがICPOからの全世界同時特別生中継を行います。日本語同時通訳はヨシオ・アンダーソン』

『私は全世界の警察を動かせる唯一の人間、リンド・L・テイラー。通称「L」です』

粧裕「……何? L?」

『相次ぐ犯罪者を狙った連続殺人。これは絶対に許してはならない史上最大の凶悪犯罪です』

『よって私はこの犯罪の首謀者、俗に言われている「キラ」を必ず捕まえます』

リューク「必ず捕まえるってよ。くくっ」

粧裕「……」

『キラ。お前がどのような考えでこのような事をしているのか大体想像はつく。しかし、お前のしている事は……』

『悪だ!!』

粧裕「あたしが、悪…………」

リューク「お? どうした? こいつ殺すの?」

粧裕「…………そんな事分かってる」

リューク「あん?」

粧裕「……」プチッ

リューク「おい、あいつ殺さねーの?」

粧裕「殺さないよ」

リューク「何で? お前を捕まえるとか言ってたぞ?」

粧裕「あの人は全世界の警察を動かせるような人みたいだし、あたしを捕まえようと動いてる人なんて正義の人に決まってるでしょ。そんな人は殺す必要なんて無い」

粧裕「それにあたしを捕まえるなんて誰にもできやしない」

粧裕「このデスノートをおさえない限り証拠なんて何も残らない。あたしを捕まえるなんて絶対に不可能なの」

リューク「それもそうだな」

粧裕「あたしは坦々と悪人を殺していく。それだけだよ」

リューク「なんだよ、面白い事になると思ったんだけどな」

粧裕「……面白い事なんてすぐ起きない。リンゴでも食べながらあたしのすることを見てて。いつか面白いものを見せてあげるから」ポイッ

リューク「ウホッ、リンゴ!」

Lの部屋


L(あの生中継から1週間。結局リンド・L・テイラーは今もなお生存している)

L(関東から順に人口の多い地域に生中継を行なったが、何の反応も無い……)

L(この一連の事件の最初の犠牲者は新宿の通り魔だと考えてキラを炙り出してみようと思ったのだが、キラは動かず、か)

L(あれほどキラを挑発してもキラはテイラーを殺さなかった。私の予想では高い確率でテイラーは何らかの形で死亡するものだと考えていたのだが……)

L(テイラーが今も生存しているという事はやはり、テイラーがテレビでもネットでも報道されていない犯罪者。テイラーを犯罪者だとキラは認識できなかった……そう考えるのが自然)

L(となるとキラは犯罪者以外は殺さない……いやそう考えるのは早計だが……)

L(……キラの人物像、修正を加えなければならないな)

L(そして、次の一手……この犯罪者たちの死因、凶悪犯で今だ死亡していない人間たち……これらの事を全て考えて…………)

粧裕の部屋


粧裕「ふぅ……」

リューク「今日はノート使わねーの?」

粧裕「まあね」

リューク「何かのんびりしてるな。世界中の警察が動き出したってのに余裕じゃないか」

粧裕「言ったでしょ。警察が動いても証拠が出ないって」

リューク「楽観的だな」

粧裕「そんな事はないよ。いつだって気を張ってる」

コンコン

粧裕「っ!」

月「粧裕、少しいいか?」

粧裕「……お兄ちゃん? どうしたの?」ガチャ

月「いや、そのな」

粧裕「?」

月「最近お前の宿題を見ていないと思って、勉強のほうは大丈夫か? 良かったら見てやるけど」

粧裕「……」

粧裕(お兄ちゃん……あたしが部屋に閉じこもった時から、ちょくちょく理由をつけてあたしの事を気にしてくれる)

粧裕(とても嬉しい……お兄ちゃんのおかげであたしは正気を保っていられるのかも……)

粧裕「え! いいのー!? それじゃ、お願い! 数学の二次関数が難しいのー」

月「ああ、お安いご用さ」

粧裕「えへへー」

リューク「気を付けろよ、粧裕……」

粧裕「?」

リューク「今、机の中にあるデスノート。触られたら触った人間は俺の姿が見える」

粧裕「!!」ピクッ

粧裕(そういう大切な事を今頃……この死神は……)

月「どうかしたか? 粧裕」

粧裕「お兄ちゃんの部屋いこーよ」

月「え?」

粧裕「あたしの部屋よりお兄ちゃんの部屋で勉強した方が頭良くなる気がするのー! ほらほら早くー!」

月「お、おいおい、押すなよ。わかったって」

リューク「おー、行動が早いな」

粧裕(せっかくお兄ちゃんとの時間なのにこの死神のせいで……)

粧裕(駄目……平常心、平常心……)

約1時間後

月「凄いじゃないか。前に見た時よりも問題を理解出来てる。というか全部合ってるぞ」

粧裕「えっへへー! あたしも努力してるのです!」

月「それなら次の問題を……」

『あなた、おかえりなさーい』

粧裕「あ、お父さん帰ってきたみたいだね」

月「っと、それじゃもう夕飯か」

粧裕「ご飯の後次の問題お願いしまーす!」ガチャ タタタタ

月「ああ、わかったよ」カチャ トントントン

粧裕「お父さん、お帰りなさーい」

月「おかえりなさい」

総一郎「ああ、ただいま」

夜神家ダイニング


月「父さん、粧裕が最近勉強を頑張ってるんだ」

粧裕「ぎゃっ! いきなりどーしたのお兄ちゃん!?」

月「さっきの問題、あれは普段から努力していなければ出来ないほどの問題だったからね。隠れて努力してる粧裕の事を父さんや母さんにも知ってもらいたくてね」

総一郎「そうなのか?」

幸子「あらあら? ライトに頑張ってるなんて言わせるなんて凄いじゃない」

粧裕「んもー! やめてよ、はずかしーよ!」

月「ははは、父さんも粧裕を褒めてやってよ」

総一郎「ああ、そうだな……偉いぞ粧裕……」

幸子「あなた?」

月「……」

粧裕「お父さん? 何だか疲れてる?」

総一郎「っ! いや、少し考え事をだな」

月「食事中まで考え込むようならそれはもう重症だよ。今回の事件のこと?」

総一郎「……まあ、そうだな。雲をつかむ様な事件だ」

月「犯罪者を狙った連続殺人事件……キラ、か」

粧裕「……」

総一郎「ああ……犯人の目星も浮かび上がらない。現状分っている情報では死亡推定時刻から犯人は学生じゃないかと言われているが……」

粧裕「……」

幸子「お父さん、食事のときにそういう話は」

総一郎「まあいいじゃないか。前にライトの意見で進展した事件もあったこともある」

リューク「学生ね。くくっ」

月「学生……か。学生って言うのは僕が考えている犯人像の一つだね」

幸子「もう、ライトまで」

総一郎「ライトはどんな犯人像を描いているんだ?」

幸子「ああもう。粧裕、こうなったらどうしようもないわ。ご飯を食べて早めに片付けちゃいなさい」

粧裕「んー、わかったー」

幸子「本当に二人共どうしようもないんだから……」

月「犯人は、単独犯であり裕福な子供」

粧裕「……」

月「そして恐らくは念じるだけで人を殺せるような能力を手にしてしまった子供」

粧裕「!」

総一郎「……ライトにしては珍しいじゃないか。そんな突拍子の無いことを」

月「いいや、これはもう間違いない。心臓麻痺で凶悪犯のみが殺されている。それも世界各地で同じように。そして日本で殺された被害者と同時刻に別の国で殺されている。こんな芸当をやってのけることなんてもう普通の殺人事件じゃない」

総一郎「……続けてくれ」

月「最初は組織立っての犯行かとも考えたが、こんな事をやってのける組織なんてかなり大掛かりで大人数の組織になる。そして、そんな組織なら手がかりの一つくらい絶対に出てくる。だけどそれもない」

月「犯人の証拠一つも見つけられない。現場にも何も残っていないし、手がかり一つ現れない。何故? それは犯人が犯行時に現場にいないから。そんな事どうやって? と、言う形で可能性をどんどん潰していったら、自分でも信じられないがそういう結論にたどり着いたんだよ」

総一郎「そうか……」

粧裕「……」

リューク「あってるな」

月「そしてそんな能力を人間が手に入れたとすれば……犯罪者を減らしていくと共にそれを見せしめにして世の中を良くしようなんて考えるのは、せいぜい小学生高学年から高校生くらいまでだ」

粧裕「……」

リューク「あってるぞ」

月「幼い子供ならそんな能力使えないか、自分の周りの嫌いな人間を殺してしまうくらいだろう……」

月「逆に成人以上の大人なら自分の幸せのためだけに使う。出世やお金のためだ。その能力を利用すれば大金持ちになる方法なんていくらでも考えられる」

月「犯人は純粋な子供。犯罪者だけを殺していることからも自分の確たる正義感も持っている。何不自由なく暮していて急に人を殺せてしまう能力を手に入れてしまった裕福な子供。自分専用の携帯、パソコン、テレビも持っている中学生が一番妥当かな」

粧裕「…………」

リューク「おい、お前の兄貴、お前の部屋覗いてんじゃねーの?」

粧裕(黙れ死神……お兄ちゃんがそんな事をする訳ない……もしお兄ちゃんがあたしがキラだって知ってたら……)

月「あくまでこれは現段階でのプロファイリングでこれからの捜査状況でいくらでも変わってくる。僕が今言えるのはこれ位までかな」

総一郎「……お前にはいつも驚かされてばかりだな」

月「?」

総一郎「今お前が話した内容と同じような話を捜査本部の一番お偉い人が言っていた。そのお偉いさんが言うには……」

月「待って父さん。それは僕にも話していい内容なの?」

総一郎「!!……すまない、やはり疲れているようだ……今の話は忘れてくれ」

月「わかったよ。粧裕……お前も今の話は友達とかに言ったら駄目だぞ」

粧裕「へ? 何の話だっけ?」

月「……しっかりしてきたなと思ったらぼーっとして。ああ、テレビ見てたのか?」

粧裕「お父さんとお兄ちゃんが何か難しいこと話してるからテレビに集中してたの! もうテレビの音量上げてもいいの?」

月「ほら」リモコンワタシ

粧裕「ありがとーお兄ちゃん!」トトトトト ソファーニポフン

月「父さんも疲れてるんだ、片づけ位やっておくから早く休んでくれよ」

総一郎「……ああ、すまないな」

粧裕「あっ、早樹! 新曲だしたんだー! きゃーーーーカッコイイーーー!!」

粧裕(お父さん……あんなに疲れて……これも、あたしのせい……)

粧裕(ごめん……でも……もう止める事なんてできない……)

粧裕(そしてお兄ちゃん……)

粧裕(やっぱり、お兄ちゃんは凄いね……このままだとあたしのやってることばれちゃうかも……)

粧裕(……いやだ!! そんなの絶対嫌!! お兄ちゃんにあたしが人殺しだ何てばれるのは絶対に嫌だ!!)

粧裕(ばれないようにしないと。お父さんもお母さんもお兄ちゃんにもばれないように、騙し続けないと。その為にやれることを、どんなことでもやれるようにならないと……)

粧裕(自分一人の力で何でも……やってみせる)

今日はこれくらいで。
また続き書いてきます。

粧裕の部屋


リューク「おいおい、お前もしかして実の兄貴に捕まるんじゃねーの?」

粧裕「少し黙って」

リューク「でもよー、アイツなんか半端ねーぞ? バレる前にデスノートに書いて……」

粧裕「黙れって言ってんでしょ!?」

リューク(怖っ!?)ビクッ

粧裕「ふーーっ! ふーっ! ふぅ……ふぅ」

粧裕「あたしが家族をデスノートに書き込むなんて天地が逆さまになってもありえないこと。冗談でも、二度と、そんな事言わないで」

リューク「お、おう」

粧裕「言ったらもうリンゴあげないから」

リューク「!? そ、それは困る!! 絶対に言わない!!」

粧裕「分ればいいの」

粧裕「……でも、学生か。死亡時間から……そういう事も考えておかないと……」

リューク「時間なんてデスノートに書いてばらばらにできるだろ」

粧裕「できるね」ノートトリダシ

リューク「お、さっそくやるのか?」

粧裕「やらないよ」

リューク「ん? なんで? 死ぬ時間からお前のことばれるんじゃねーの?」

粧裕「バレるわけないでしょ。学生なんて世界中にどれだけいると思ってるの? あたしは変わらずに凶悪犯を殺し続けるの。世の中が変わり始めるまで坦々と毎日変わることなく」

リューク「その世の中が変わり始めるってどーいうことだよ?」

粧裕「聞いたら楽しみなくなっちゃうよ?」

リューク「くっ、それは困るな……楽しみにしておくとするか」

粧裕「そうだね、それまでは……ほらっ」ポイッ

リューク「ウホッ」キャッチ

粧裕「リンゴを食べることを楽しみに毎日すごせばいいでしょ」

リューク「お前、俺の事わかってるじゃないか」シャリシャリ

粧裕(このまま凶悪犯を殺し続けていって、世界中の犯罪が少なくなっていけば)

粧裕(もしかしたら、本当にもしかしたらだけど……あたしのやっていることが、犯罪の抑止力になるって認められて……)

粧裕(警察に認めてもらえれば……あたしは、お父さんやお兄ちゃんと一緒に世界を守ることができる……)

粧裕(お父さんやお兄ちゃんは表から……あたしは裏から……表と裏で世界をより良く犯罪の無い素晴らしい世界にできる……かもしれない……)

粧裕(……分ってる。そんな可能性なんて、無いに等しいって)

粧裕(……でも、今のあたしが、殺人鬼になってしまったあたしが持てる希望なんて……)

粧裕(それくらいしか……)

Lの部屋


L(キラは何も変わらない)

L(どこからか分らないが犯罪者を殺し続けている)

L(何一つ変わらず日々が過ぎていく)

L(正体も何も分らない、殺人の方法も不明、現状何も分らない)

L(しかし一つだけはっきりしたことはある)

L(キラが殺していない犯罪者。いや、キラが殺せない犯罪者が存在することを)

L(キラの殺人対象になっており、まだ殺されていない犯罪者の共通点は3通り)

L(一つ、公になっていない犯罪者。警察などが極秘で捕まえた犯罪者など、メディアには名前も顔も公表されていない)

L(二つ、公になっているが名前が間違っていたり通名の犯罪者)

L(三つ、名前は本名であるが、顔が写真や映像で存在しない犯罪者)

L(これらのことから判断できるのは……キラの殺人方法には顔と名前が必要。どちらがかけても駄目、両方必要。さらにキラ自身はこの情報を自分自身で気付いていない可能性が高い。もしくは低い確率になるが、気がついてはいるが問題ないと判断している)

L(さらには警察が極秘で逮捕した犯罪者などは誰も死んでいないことから警察関係の情報は漏れてはいない。……楽観的な思考かもしれないが、今のキラの人物像を考慮すれば……漏れてはいない……そうなれば日本警察捜査本部もICPOも問題なく動かせる)

L(この二つ……いや、キラの最初の殺人が新宿の通り魔殺人事件の犯人だと推測して、三つ……)

L(……いける)

L(キラ、おまえを追い詰めることが出来るかもしれない)

凶悪犯連続殺人特別捜査本部


総一郎「今日の捜査報告はこんなところです……L」

L「お疲れ様です。それでは注文を何件かお願いしたいのですがよろしいでしょうか?」

総一郎「はい、どのような用件でしょうか」

L「報道班へマスコミと連携してやっていただきたいことがあります。一つは関東地区から犯罪者の報道をある程度操作していただきたい。内容としましては、二人、もしくは四人の凶悪犯罪者の名前を偽名にし、顔写真映像を入れ替えて報道していただきたいのです」

総一郎「それは……AとBいう犯罪者がいた場合、両方偽名にして報道し、AにはBの顔写真映像、BにはAの顔写真映像を映す、という事ですか?」

L「ええ、その認識であっています。それをこのような形で報道していただきたい。関東地区で報道した場合は他の地区では犯罪者の名前もは本名、顔も入れ替えていない本来の報道を流す。それを同じように関東、中部、関西と1日おきに流していってください」

総一郎「……それは一体?」

L「次に、報道操作した地区で、凶悪犯が死ななかった場合、翌日から数日……いえ、3日ですね。3日間、報道操作をせずに凶悪犯の情報を報道してください」

L「そして、3日、凶悪犯の死亡状況を確認し、毎日凶悪犯が死亡するようでしたら報道操作です。また凶悪犯の情報を替えて報道。死ななかったら次は2日報道操作せず……と、言った形で間隔を狭めていき、最終的には毎日報道操作、操作せずと交互に繰り返していきます」

L「キラが現状、報道される凶悪犯を坦々と殺している、毎日変わらず日課のように行なっている……そんな状況で今私が言った事を試すと面白いことがおきるかもしれません」

総一郎「……L、今の発言は不謹慎と思いますが」

L「ああ、すみません。発言を取り消します。他の各国でも念の為同じ事をやってみますが、本命は日本です。これが成功すれば……キラの居場所をかなり限定できる範囲まで突き止めることが出来るかもしれません」

『!!』ざわっ…ざわっ…

総一郎「ほ、本当ですか!?」

L「はい。またこれは時間との勝負と考えていますので出来れば今日から行ないたいのですが、間に合いますかね?」

総一郎「報道班、どうだ?」

刑事「大丈夫です! やれます!」

総一郎「そうか……L」

L「はい。協力に感謝します」

L(さぁ、どうなる?)

2週間後

凶悪犯連続殺人特別捜査本部


総一郎「え、L!」

L「予想通りです。キラはどうやら自分の能力の上に胡坐をかいているようですね」

総一郎「ここまで来れば我々でも分かります。キラは日本の関東地区にいるんですね」

L「はい。間違いありません」

総一郎「貴方の指示された報道操作を行なって初日、関東地区で凶悪犯が殺されませんでした」

L「ですが、次の日から3日、報道操作を行なわなかった場合は凶悪犯は例外なく死亡した」

総一郎「また報道操作を行なって凶悪犯は殺されず、報道操作を行なわなかった場合は殺されている……」

L「今は毎日交互に報道操作、操作せずと繰り返したら……凶悪犯がまるでスイッチのように操作日は死亡せず非操作日は死亡するようになりました。間違いありません、キラは日本の関東地区に潜伏しています」

『ざわっ……ざわっ……』

L「では、次はもう少し限定していきましょう。まずは東京都、神奈川、千葉と同じように……」

総一郎「待ってください! L、これは……キラの殺人には名前と顔が必要、そういう事になるのですね!?」

L「はい、ご覧の通りです」

総一郎「それならばもう完全に報道規制を行い、今後は一切犯罪者の氏名や映像を表に出さない方向にしていけば……」

L「…………それはやめましょう」

総一郎「何故ですか!? そうすれば人命が!!」

L「ネット、ありますよね。インターネット」

総一郎「え? ええ」

L「恐らく無法状態になります。キラに殺してほしい犯罪者が氾濫する無法地帯に。今でさえそういった兆候はあります、キラに対して殺人依頼を行なうような馬鹿の集団が見受けられるのです。まあ、そういったものはそちらの情報班が逐一チェックされていると思いますので言わずとも分るとは思いますが……」

L「報道を完全規制した場合、そういった類のものが爆発的に増えると予想できます。それも警察庁の情報班が処理しきれないほどに。そうして、キラもその真否が分らぬネットの海に紛れ込んでくる可能性が高い」

L「そうなった時にキラが一人でもその情報を鵜呑みにして殺したとしましょう。するともう悲惨なことになります。報道規制がされているので犯罪者を裁けないキラはネットの情報で極悪犯罪者を殺していきます。少しでもプログラムに長けた人間ならキラの目に付くようなサイトや情報を作り出す。手が付けられません、キラは馬鹿に言いように使われて無差別殺人犯になります」

総一郎「そ、それは仮定の話でしょう」

L「はい、そうです。ですが、可能性は高いと思いますよ。キラは恐らくそこまで頭が回らない。報道規制がされたらネットに、何て楽なほう楽なほうに流れていく可能性もありますね」

L「そういった不確定要素かつ、危険要素が高い未来を検討するより、今この瞬間に全力を尽くしませんか? キラの逮捕がもう目前の今に」

総一郎「!!」

L「キラは我々が殺しに必要な条件に気付いてることを知らない。この報道操作は今後も有効という事です。それならば恐らく2ヶ月以内にはキラの潜伏する市または区まで限定できるかもしれません」

総一郎「で、ですがそのためには今のやり方を続けて……」

L「そうですね。犯罪者は相当数犠牲になるでしょう」

総一郎「それならば!」

L「ですが、キラを捕まえなければ被害は続きます。現状この作戦を続ければキラにたどり着くのです。キラが気付いていない今しか行なえない作戦です。報道規制をした場合こちらからキラにお前の殺しには顔と名前が必要だと言ってしまう様なものです。そうするとあまり頭の回らないキラでも対策するかもしれません。その時点でキラはまた実体の無い状態に戻ってしまいます」

総一郎「くっ……」

L「2ヶ月です。地区を絞り込んでしまえば次のステップに移行できます。その場合は情報規制も視野に入ってきます。いかがでしょうか?」

総一郎「…………」

刑事「あ、あのー?」

L「はい、どうされましたか。ええと、松田刑事」

松田「その、キラがこちらの状況を把握した上で操作をかく乱する為に今の状況を作り出しているという可能性は?」

L「それは捜査本部の情報がダダ漏れで、尚且つキラは我々の作戦を理解したうえで犯罪者の生死を調整している、そういう事ですか?」

松田「あ、えーっと、その」

L「その様な状況を仮定すれば相当やりやすくなりますね。捜査本部に関係する人間がキラなのですから。ですが、捜査状況が漏れているという事はありえませんのでご安心ください」

L「またキラが、殺しの条件を知られている事を利用して捜査状況をかく乱するという愉快犯的な行動はまずしないでしょう」

松田「そ、そうなんですか?」

L「やるならもうやってます。私がキラを挑発したあの生中継の時に。キラは犯罪者を殺すことに対してそういった意思の感じる何かを行なっていません。坦々と犯罪者を殺す、まるで作業を行なっているようで、それだけが不気味なところだと私は感じていますね」

松田「あ、その、すいませんでした」

L「いえ、貴重な意見、参考になります」

L「夜神局長、他に意見など何かありますか?」

総一郎「いえ……」

L「それは私の案を通していただけると考えてよろしいですかね?」

総一郎「……はい」

L「ありがとうございます。では本日も同じように報道操作をお願いします。徐々に地域を限定していきますので逐一指示します。報道班の皆さんは大変かと思いますがもうひと踏ん張りお願いします」

L(さあ、キラ、お前の影が見えてきたぞ)

以上です。
また続きを書いてきます。

粧裕の部屋


粧裕「今日はこれくらいかな」

リューク「ククククククククククククッ」

粧裕(……? この違和感、最近良くあるけど……)

粧裕「……リューク、最近あたしがノートを使うとき良く笑ってるよね?」

リューク「まあな」

粧裕「何がそんなにおかしいの?」

リューク「いや」

粧裕「……いやって何? 何かあるでしょ?」

リューク「別に何も、ククククククククッ」

粧裕(こいつ……)

粧裕「」カタッ

リューク「お? どーした?」

粧裕「」ガチャッ タタタタタ

リューク「部屋飛び出して行って、戻ってき……おっ!!」

粧裕「リンゴ食べる?」

リューク「食う!」

粧裕「それじゃ、何がおかしいのか教えて。教えてくれないとリンゴあげない」

リューク「お、おい!! そりゃ卑怯だろ!?」

粧裕「いるの? いらないの? いらないならあたしが食べちゃおっと」シャリッ

リューク「あ、あー! 待て、待て! い、言うから食うな!!」

粧裕「はい、それじゃ、なにがそんなにおかしいの? 最近笑うときの「ク」が多すぎ」ポイッ

リューク「ホッ」リンゴキャッチ

リューク「いやな、最近お前が見てるテレビで変な事が起きててな」シャリシャリ

粧裕「変なこと?」

リューク「ああ、犯罪者の名前が間違えて放送されてる」

粧裕「……間違って?」

リューク「そうだ」

粧裕「……いつから?」

リューク「2週間くらい前かな?」

粧裕「…………それって、あたしがデスノートに名前を書いた犯罪者も含まれてる?」

リューク「ああ、お前はそいつらをデスノートに書いてたぞ」

粧裕「…………名前は違うから死んでないよね? その犯罪者」

リューク「死んでないな」

粧裕「…………」バンッ!!!!

リューク「うおっ!? ど、どうした、いきなり机叩いて?」

粧裕「……どうしてわかったの?……そっか、名前が間違って発表されている犯罪者とかいるかも……それに顔の公表されてない凶悪犯も殺せてない……そこからばれた……だとしたら……」

リューク「おーい、粧裕?」シャリシャリ

粧裕「あたしは最近ほとんど凶悪犯の情報をテレビで得てた……犯罪者の名前が違って放送されていたなら犯罪者は死んでいない…………意図的に行なわれていたら……2週間…………」

リューク「どうしたー?」ゴクン

粧裕「リューク。何で気付いてたのに言わなかったの?」

リューク「あ? 名前が間違ってた事か?」

粧裕「そう」

リューク「そりゃ、何か変なことしてんなーって面白かったし、おまえも気付かずにそいつらの名前を書いてるのが面白くてな」

粧裕「……」ビキィッ

粧裕(怒るなあたし……冷静に、冷静に……)

粧裕「ふぅぅぅぅ……次は教えて」

リューク「あん?」

粧裕「偽名になってる犯罪者、教えて」

リューク「えー面倒くせーよ」

粧裕「……そう、ならもうリンゴあげない」

リューク「ち、ちょっと待ってくれ!? 何でだよ!?」

粧裕「だってそうでしょ? あたしは善意でリュークにリンゴをあげてる。面倒くさくてもリュークが頼むからあげてるの。それなのにリュークはあたしが頼んでも面倒くさいってあたしの頼みを聞いてくれない。ならあたしもリュークの頼みなんか聞かない」

リューク「ま、待て待て待て! それは困る!」

粧裕「なら分かるでしょ? 自分がどうすればいいのか」

リューク「わ、分かった。だけど偽名になってるかどうかだけで名前は教えれないぞ! 名前も知りたかったら目の取引だ!」

粧裕「……目?」

リューク「ああ、死神の目の取引だ!」

粧裕「何それ? 知らないんだけど」

リューク「あれ? 言ってなかったっけ?」

粧裕「教えて」

リューク「あーそうだな、多分言ってねーな。えーっと死神の目ってのは人間の顔を見るとそいつの名前と寿命が顔の上に見えるんだ」

粧裕「!」

リューク「だから俺には人間の名前が偽名でもわかる」

粧裕「……便利な目だね。それで取引って?」

リューク「ノートを拾った人間にだけ死神の目の取引が出来て、取引をするとそいつの目を死神の目にしてやることが出来る」

粧裕「!!」

リューク「寿命の半分を頂くがな」

粧裕「…………寿命の半分」

リューク「どうするよ? 死神の目にすればもう偽名かどうかなんて気にしないで済むぞ」

粧裕「……」

リューク「……」

粧裕「今は、いらない」

リューク「ほう」

粧裕「必要になったら言うから準備はしておいて」

リューク「ククッ、大丈夫だ。いつだって出来る。コンタクトを入れ替えるのと変わらない数秒だ」

粧裕「……それじゃ、約束を守ってもらうから、今から見る犯罪者達が偽名かどうかだけ教えて」

リューク「ん? ああ。わかったけど、テレビは何で犯罪者を偽名で放送したんだ?」

粧裕「あたしの居場所を突き止めるためだろうね」

リューク「あん? そーなのか?」

粧裕「うん。多分もうあたしが名前と顔が分らないと殺せないってこともばれてる。それを逆手に取られたって感じ。多分テレビで放送する地域とかを区切って偽名の凶悪犯が死なない地域を絞り込んで行ってるんだろうね。このまま気がつかなかったら危なかったかも」

リューク「ん? 犯罪者が死ななかったらおまえの居場所わかんの?」

粧裕「わかるの。でももう気がついたからこれ以上は分からないよ」

リューク「ふーん。何か余裕だな? おまえの居場所ばれたんじゃないの?」

粧裕「こんな短期間で分からないって。これが半年とか1年とかなら違ってたと思うけど、多分よくてあたしが東京にいるって気づいたくらいじゃない? もうこれからは偽名の凶悪犯なんてノートに書かないからどうしようもないと思うよ」

リューク「ほー」

粧裕「……でも、少し気をつけないと。まさかあたしの殺し方を見てこんな手を打ってくるなんて……」

粧裕(しばらくはテレビの凶悪犯を殺すにも気をつけて色んなところから凶悪犯の情報を得ないと)

粧裕(だけど、この手口……何ていうか、犯罪者使って実験しているようで…………その犯罪者を殺しているあたしが言えた事じゃないか……)

粧裕(マスコミとか警察も協力してるだろうし、これを行なわせたのって……あのLって人だろうな……)

粧裕(あたしのことを悪だって言って……それは間違ってないけど……犯罪者を実験台にするのは、正義なのかな?)

粧裕(……駄目、警察やああいう人は世界にとって必要な人達)

粧裕(……凶悪犯みたいな死んでもいい人間とは違う)

粧裕(……殺してもいいのは犯罪者だけ)

粧裕(殺すのは犯罪者、死んでもいい人間は、悪人だけ……)

Lの部屋


L(キラの殺し方が変わった)

L(テレビだけじゃなく、様々な情報媒体からランダムに犯罪者が殺され始めた)

L(情報操作に気付いた? それとも偶然?)

L(恐らく気づかれている。明らかに今までの殺し方ではない。殺し方が完全に変わった)

L(何故気付いた。犯罪者が偽名だという事がわかるようになった? この可能性が一番高いが……もう一つ)

L(捜査本部かマスコミ関係者の情報を知る手段を手に入れた? 可能性は低い、だが……)

L(低い可能性を0%にしておくか……)

L「ワタリ、私だ」

ワタリ「はい、L。何か?」

L「警察の目の届かないところに行きFBI長官につないでくれ」

ワタリ「わかりました」

長官「……L、極秘で日本警察内部を調査してもらいたいとは?」

L「非常に低い確率ですが、キラがいる可能性があります」

長官「低い確率とは……一体どれくらいの?」

L「ほぼ0です」

長官「それは、調査しても無駄足になるのでは……」

L「なる可能性は高いです」

長官「我々も中々忙しいのですが……」

L「アメリカの犯罪者でキラに殺されたと思われる者は327名。全世界でダントツです。このまま野放しにしておいていいのでしょうか? この調査でキラが発見できればキラを見つけることもできないと信用が落ちているFBIには追い風となるのでは?」

長官「…………わ、わかりました、やりましょう」

L「ありがとうございます。それでは、日本警察内部、特にキラ事件に関わっている者と今回の情報操作に関わったマスコミ関係者、その身辺を徹底的に調べてください」

長官「わかりました。それでは……」

L(これで捜査本部の情報が漏れていないと証明できれば、キラは偽名を看破する能力を身につけたことになる)

L(人を念じただけで殺せて、その条件は名前と顔。そして偽名も見破ることが出来る……)

L(能力が増えた……そして今後もまだ能力が増える可能性もある……)

L(厄介な事になってきたが……手元にある情報を組み立てて策を考えるしかないな……)

また書いてきます。

粧裕外出中


リューク「粧裕、ちょっといいか?」

粧裕「……外ではあんまり話しかけないでって言ったよね? あたしの声はリュークと違って人に聞えるの」

リューク「いや、だからこそ今話しておきたい」

粧裕「?」

リューク「俺は粧裕が嫌いじゃない……いや、むしろリンゴを良くくれるから好きだ」

粧裕「……何? 急に……」

リューク「これはお前がいつも俺にリンゴをくれている礼でもあるが、俺自身が気持ち悪いから言うのが本音でもある」

粧裕「……まわりくどいんだけど」

リューク「俺はいつも粧裕の後ろにいるからすぐにわかったんだが……」

リューク「目障りなんだよ。この二日間……」

リューク「ずっと、粧裕をつけている人間がいる」

粧裕「!?」ビクッ

リューク「そいつに俺は見えてないがいつも見られてる気分だ」

粧裕(つけている!? あたしを!? そんな馬鹿な!? どうして!? ばれたの!?)

粧裕(お、落ち着いて……そんなわけがない、証拠も何も無いのにどうしてあたしがキラだってばれるの? キラとしてあたしをつけているんじゃない……ということは……)

粧裕(ストーカー……)

リューク「お? 殺る時の目してるじゃないか。ノートも持ってるしすぐ殺るのか?」

粧裕「……馬鹿、あたしにはまだ顔も名前もわからないんだよ? 殺そうにも殺せないし、凶悪犯かどうかもわからないのに殺せるわけないでしょ」

リューク「目の取引をすれば……」

粧裕「やらないって。ちょっと考えさせて」

翌日


リューク「今日もいるぞ」

粧裕「……そいつは学校にいる間もずっとあたしを見てた?」

リューク「ああ」

粧裕「……気持ち悪い、本当に殺したほうがいいかも……」

粧裕「……」

粧裕「リューク、あたしをつけている奴ってあたしの家までつけてくる感じ?」

リューク「いや、いつもお前が家に着く前には消えてるな」

粧裕「……ふーん」

粧裕「……リューク、少し協力してくれない?」

リューク「あん? そいつの名前とかは教えれないぞ?」

粧裕「掟なんでしょ? そこまで期待して無いよ。リュークにはそいつを見続けてもらいたいの」

リューク「俺がお前をつけてる奴を見るのか?」

粧裕「うん。それでそいつがあたしをつけるのをやめるその瞬間を教えて」

リューク「? 別にいいけど。何するんだ?」

粧裕「ストーカーってさ、自分がストーカーされる立場になるって考えないんじゃない?」

リューク「ほぉ」

粧裕「明日は休日。朝から出かけて、昼に家に戻るフリをして、そいつがあたしのストーキングを止めた瞬間逆につけてやる。そいつの家とかわかれば後は簡単。名前とかもわかるし、調べて悪質な犯罪者だったら殺せばいい」

リューク「ストーカーのストーカー。面白そうだな」

粧裕「あたしは尾行なんて初めてなんだから、ストーカーの様子をよく見ておいてね。うまくいったらちゃんとリンゴをあげるから」

リューク「その言葉を待っていた」

翌日は休日


リューク「おい粧裕。ストーカーが帰ってくぞ」

粧裕「……ありがと。それじゃ、尾行開始だね」

コソコソ ビコウチュウ

粧裕「……家じゃなくて、ホテル?」

リューク「でけー建物だな。これあいつの家?」

粧裕「そんなわけないでしょ。……でも、予定外、どうしよう」

リューク「どうすんだ? もう止めるか?」

粧裕「ううん、もう少し調べる」コソコソ ホテルシンニュウ

リューク「お、エレベーターに乗った」

粧裕「……22階」エレベーターテイシカイカクニン

リューク「お、直接行くのか?」

粧裕「まずは21階にね」

リューク「あん? 22階じゃねーの?」

粧裕「1階下でいいんだよ」チーン 21カイトウチャク

リューク「着いたけどどうすんだ?」

粧裕「やるのはリューク。上の階の部屋覗いてきてストーカーの部屋教えてよ。壁すり抜けられたよね?」

リューク「ああ?」

粧裕「名前は教えれなくても、部屋を教えるくらい出来るよね?」

リューク「そういうことかよ……仕方ねえなぁ……帰ったらすぐリンゴだぞ?」

粧裕「3個あげるよ」

リューク「よっしゃ!!」ビューーーン

数分後

リューク「見つけたぞー。2212号室だった」

粧裕「ありがと。さてと、次は……フロントにでも行ってみようかな」

リューク「?」

フロントマデイッチョクセン

粧裕「無理そう……」

リューク「さっきからどうしたんだよ?」

粧裕「ホテルとかってフロントで個人情報を書いてチェックインするんだけど……そういう書類見えそうにないし、名前を知るのは無理か……」

リューク「ほー……お、おい! 粧裕! 隠れろ!」

粧裕「?」

リューク「ストーカーがエレベーターからこっちに向かってる!」

粧裕「!?」

『仕事から戻ったと思ったらすぐこれか』

『あら? 私のお父さんに会いに行く事をこれ呼ばわり?』

『いじめないでくれよ。今はどういう挨拶をすれば君のお父さんの好感度があがるのか考えているんだよ』

『ふふふ』

粧裕(も、物陰に……)

リューク「……気付かれなかったみたいだな」

粧裕「ふぅ……」

リューク「ククッ、冷や汗かいたんじゃないのか?」

粧裕「かなりね」コソコソ

リューク「お? 追うのか?」

粧裕「あっちは歩いてどこかに行くみたいだから。……でも、なんだかあの人あたしのストーカーじゃないような気がしてきた」

リューク「そうなのか?」

粧裕「うん。凄いきれいな人と親しげに歩いてて、多分恋人だと思う。あんな女の人がいるならストーカーなんてやらないと思うし。何よりもあの人カッコイイ」

リューク「外見かよ」

粧裕「なんだか殺す気が失せちゃった。あと少しだけつけてみて遅くならないうちに帰るよ」

リューク「なんだよ無駄足かよ。でもまあストーカーごっこ中々面白かったぜ」

粧裕(……でも本当にあの人なんなんだろ?)

粧裕(ストーカーに見えないし……そういう人ほど本当に危ない人とかだったり?)

粧裕(そうはみえないけどなぁ……あっ)

リューク「今度は家に入ってったぞ」

粧裕「うん」

粧裕(表札は……南空)

粧裕(あ、誰か出てきた。ストーカー?が愛想笑いをしながらおじさんに頭を下げてる。綺麗な女の人が出てきたおじさんになにかを言って……)

『ナオミ、お前もこんな優男じゃなくてだな……』

粧裕「なおみ? あの女の人の名前? あのおじさんはあの家の人みたいだから……あの家はあの女の人の家? だとしたら……あの人は南空なおみさん……」

粧裕「……少し調べてみよう」

今日のところはこのへんで。

1ヵ月後 Lの部屋


ワタリ「L、FBI長官より連絡です」

L「繋いでくれ」

ピポパポ

長官「L……日本に派遣した捜査員から連絡が入りました」

L「結果は?」

長官「日本警察、マスコミ関係者の身辺調査の結果、怪しい者はいませんでした」

L「……調査開始から1ヶ月。かなり早いペースで調べていただいたようですが、見落としや抜けなどの可能性は?」

長官「日本警察捜査本部の情報を得られたものが141人、マスコミ関係者に関しては警察からの依頼という事で情報を知るものは更に少なく71人。計212人を40名の捜査官を使い調査した。各捜査員も私が優秀な人材のみを選別した。見落としも抜けもないでしょう」

L「……」

長官「L、私はあなたからの依頼という事で動かせる範囲の捜査員を調査にまわした。当初は12人だったが、かなり無理をして28人も増員して調査を行った、その調査に対し疑念の言葉を懸けられるのは……」

L「いえ、FBIの捜査力を疑っているわけではありません。元々この調査でキラが見つかる可能性はほぼ0と言ったように警察関係者の中にキラはいなかった、その確証がほしかったのです」

長官「確証ですか」

L「はい。これで次の段階に進めます」

長官「……それはこの調査とは別に依頼があった、顔も名前も割れていない犯罪者をピックアップしてもらいたいと言われていたことに関係が?」

L「そうです」

長官「……何を行なおうとしているのかはわかりませんが、今後の捜査においてもFBIは協力を惜しみません。それでは……」ピッ

L「ありがとうございます」

L(警察関係者、マスコミ関係者はシロか……)

L(そうなるとやはりキラは情報操作に気がつく何かを手に入れた)

L(あれから引き続き偽名の犯罪者をメディアに流しているが、偽名の犯罪者は殺されずに本名、顔が一致している犯罪者のみを殺していることからも……偽名を看破する何らかの力を手に入れたということか)

L(顔を公開しても偽名の犯罪者は死んでいないことから、名前その物を見破れるわけではない……しかし偽名が分る……情報が漏れていないことから考えても……顔と名前が一致していない場合、何らかの区別ができる力、か……?)

L(情報が少なすぎるな。しかしキラの力が増えたという事は確実。こうなると今後も何らかの能力が増えていく可能性は高い……そう、例えば偽名を見破るだけではなくて本名が分るようになる……もしくはどこに隠れていようが顔も名前も分らなくても殺してしまうことが出来る……といった力も手に入れてしまうかもしれない……)

L(今判明しているキラの力を顔と名前が分っている人間を殺すことが出来、尚且つその人間が偽名だった場合、それを看破することができる力として……キラが日本の関東地区に潜伏しているならば……)

L(同じような手を何度も使うのは気に入らないが、更にキラの居場所を限定する事はできるだろう……だが……)

L(日本警察の捜査本部の指揮を取る夜神局長)

L(警察官らしい真っ直ぐな正義感を持っている彼は次の私の策にもまた反対してくるだろう……)

L(彼が私に難色を示すとなると、警察内部でも私に対する心情は悪いものへと変わり今後の捜査でもそれが浮き彫りになってくるだろう……)

L(キラの動き方から見ても、日本警察の協力は必要不可欠……どうするべきか……)

凶悪犯連続殺人特別捜査本部


総一郎「L……捜査状況を報告する前に少しいいでしょうか」

L「はい。どうされましたか?」

総一郎「この1ヶ月でこの捜査本部から10名近く部署異動の希望を願うものが出てきています」

L「! それは……」

総一郎「最初に3名、このまま捜査を続けキラを追い詰めた場合、顔と名前が分る身分証明書を所持する我々はいつキラに殺されるか分らないと言い、辞表と共に部署異動を願うものが現れて以来、それに続くように何人も同じ理由で部署異動を希望しています」

L「そうですか、その方々への対応はどうされたのですか?」

総一郎「……彼らの希望通り別部署に異動させました。事後報告となり申し訳ないのですが……」

L「いえ、夜神局長の対応は間違っていません。超能力で人を殺せるような得体の知れない犯罪者を追っているのです、警察官といえど恐怖に負けてしまう方々を責める謂れはありません」

L「これからの捜査が進めばさらにキラへ近づいていきます。今後もこの事件から降りると言った方々は夜神局長の判断で外すなりの対処をお願いします」

総一郎「……わかりました」

L「では、捜査段階を次のステップに進めたいと思いますのですが、よろしいでしょうか?」

総一郎「次のステップですか……?」

L「はい。キラが関東圏内に潜んでいる事は判明しましたので更なる絞込みを行なっていきます」

総一郎「!」

L「具体的に言いますと、様々な情報媒体に私の用意した顔も名前も割れていない犯罪者の情報を各地域ごとにテレビ、新聞、週刊誌等に載せていきます」

L「全ての犯罪者情報がどの情報媒体から発信したのか、日にち、時間、場所それを全て管理し、死亡していく犯罪者情報と照らし合わせていきます。死亡する犯罪者はネットにもどこにも情報が漏れていない犯罪者ですので、犯罪者情報が開示されてすぐに死亡した場合、その地区にキラがいる可能性が高い。それを繰り返してキラの居場所を絞り込んでいきます」

総一郎「顔も名前も割れていない……そんな犯罪者はそう多くは……」

L「ICPOの協力は取り次いであります。またFBIやCIA、各国捜査機関からも協力していただいています。数百人単位で犯罪者をストックできました」

総一郎「そ、そうですか……いえ、待ってください! L!」

L「どうされましたか?」

総一郎「前回もそうでしたが、あなたのやり方は人の命をまるでゲームの駒のように扱っているように見えます! 犯罪者といえど人の命なのですよ?」

L「わかっています。ですが現状キラについて分っていることが少なすぎて手の打ちようも同じように少ない。闇雲に捜査をしていても絶対にキラにたどり着くことは出来ない。そのあたりは私よりも夜神局長が理解されていると思いますが……」

総一郎「そ、それは理解しています……」

L「私のやり方は確かに夜神局長や捜査本部の方々にとって眉をひそめるようなやり方だという事は承知しています。ですがキラの情報を一つでも多く手に入れねば行なえるやり方が限られてしまう。納得していただけないかもしれませんが、キラの情報が増えていけば私もこのようなやり方ではなく捜査本部の皆さんにも納得していただけるやり方でキラを追い詰めたいと思っています。ですので今、この状況では、私のやり方に協力いただくようお願いできないでしょうか」

総一郎「…………わかりました」

L「ありがとうございます」

粧裕の部屋


リューク「なあ、粧裕」

粧裕「どうしたのリューク?」

リューク「結構前にお前に付きまとっていたストーカー、あいつ結局なんだったんだ?」

粧裕「わかんないよ……あの人と一緒にいた南空ナオミさんって人を調べたけど、特に何も出てこなかったし」

リューク「お前がストーカーのストーカーをした次の日にはいなくなっていたもんな」

粧裕「リュークの勘違いだったんじゃないの?」

リューク「あー? 確かにお前に付きまとってたように見えたんだけどなー?」

粧裕「あれから姿を見てないんでしょ? だったら勘違いだよ」

リューク「そうなのか? まあそうなんだろうな」

粧裕「そんな昔の話は置いておいて……」

リューク「お? どーした?」

ガチャッ、テクテクテク

粧裕「お兄ちゃーん!」ガチャッ ライトノヘヤニシンニュウ

月「どうした粧裕?」

粧裕「どうしたじゃないでしょ! 今日センター試験でしょ? 何でまだ家にいるの? 遅刻じゃないの?」

月「ああ、大丈夫さ。今家を出ても試験会場に着くのは30分も前になるからね」

粧裕「……30分って結構ギリギリでしょ?」

月「3分前に入ろうと思っているから大丈夫さ」

粧裕「す、すごい余裕だね」

月「まあね」

粧裕「さすがはお兄ちゃん……って、電車が遅れたりするかもしれないでしょ! もう出発しないと駄目だよ!」ライトノテヲツカミ

月「っと……おいおい、大丈夫だって」

粧裕「大丈夫じゃありませんー。とっとと家でて試験会場に向かう!」

月「わかったわかった……しかし最近、粧裕は母さんに似てきたな」

粧裕「そう?」

月「そうさ、前までは本当に子供って感じだったけど、ここ最近ずいぶんしっかりしてきた」

粧裕「……」

月「勉強も頑張っているし、母さんの手伝いも言われなくてもやってる。こうやって僕の心配までするようになって本当に昔の粧裕とは違って……」

粧裕「……あたしを褒める前にお兄ちゃんはさっさと試験会場に行ってくださーい。おかーさーん! お兄ちゃんでかけるってー!」

幸子「あら、まだ出かけてなかったの!?」

粧裕「お兄ちゃん、会場に3分前に入ろうとしてたんだって」

幸子「ちょ、ちょっとライト! 電車とか遅れたらどうするの!? 遅刻なんてしちゃったら……」

月「はいはい、わかってるよ。粧裕からもう注意されたから大丈夫、余裕を持って行くから」

幸子「本当にこの子ったら……しっかりね!」

粧裕「お兄ちゃん、頑張ってねーーー!」

月「まだただのセンター試験なのに大げさだな……行ってきます」

粧裕(それから数ヶ月、あたしはキラとしての裏の顔を誰にもばれずに犯罪者殺しを続けた)

粧裕(だけど、この春、お兄ちゃんが大学生になって、あたしが中学3年になってすぐにある事件が起きた)

粧裕の部屋


粧裕「…………何、これ?」テレビギョウシチュウ

粧裕「キラからのメッセージ……? 4本の……ビデオ?」

リューク「お前こんなことやってたっけ?」

粧裕「やってないよ! 一体何なのこれは!?」

『つまり私達はキラの人質であると共に報道人の使命を受けこの報道をするものであり、決して嘘や興味本位でこのテープを放映するものではないという事をご理解ください』

『四日前、当番組ディレクターに送られてきた4本のテープそれは間違いなくキラから送られてきたものでした』

『1本目のテープには先日逮捕された町葉青一・青次両容疑者の死亡日時予告が入っていました。そしてその予告通り昨日19時にこの二人が心臓麻痺で亡くなったのです』

粧裕「……あたしじゃない、そんな人達書いていない」

リューク「ククッ、面白い事になってきたじゃねーか」

『こんな事はキラにしかできない。これはキラから送られてきたものだと私達は判断しました』

『そしてキラは今日の午後5時59分ちょうどからこの二本目のビデオを放映する様、指示しているのです』

『我々もまだ見ておりませんが、テレビを御覧の皆様にまたキラだと証明する予告殺人と世界の人々に向けてのメッセージが入っているとのことです』

粧裕「予告して心臓麻痺……まさか」

『では5時59分です。御覧下さい』

『私はキラです』

粧裕「!!」

リューク「ウホッ」

『このビデオが4月18日午後5時59分ちょうどに流されれば、今は午後5時59分38・39・40秒……』

『チャンネルを太陽テレビに替えてください。メインキャスターの日々間数彦氏が6時丁度に心臓麻痺で死にます』

粧裕「……」ピッ キリカエ

リューク「おー、死んでるな」

粧裕「……」ピッ チャンネルモドシ

『日々間氏はキラを悪だと主張し報道し続けてきました。その報いです』

粧裕「リューク…………これは一体どういうこと?」ギロリ

リューク「お、おう、睨むな」

粧裕「明らかにデスノートでしょ!? 他にもノートを落としていたって事!?」

リューク「い、いや違うぞ。俺じゃない、多分別の死神だ」

粧裕「別!? そんなの……」

『一人では確実な証明になりません。もう一人犠牲になってもらいます』

粧裕「!!」

『ターゲットは……私を悪とし好き勝手に自分の理論を垂れ流していた愚かな探偵』



『リンド・L・テイラー……探偵Lに死の裁きを与えます』

また書いてきます。

凶悪犯連続殺人特別捜査本部


L「リンド・L・テイラーが死亡しました」

刑事「リンド・L・テイラーって確かLではなくて死刑囚の男だったよな?」

刑事「あ、ああ。Lがキラを挑発するときにいつもLの代わりに顔を出していた男だ……」

刑事「そ、その男が死んだって……」

総一郎「そ、それではこれは本当にキラが!?」

L「……キラ、なのか? テイラーは死んだ……しかし私は生きて……いや、それよりも世界の人々に向けてメッセージを流すと言っていたな……」

L「この放送、止めさせないとまずい事になる」

総一郎「!」

松田「さくらTVへ電話を……だ、駄目だ、局のどこにかけても電話中……」

刑事「局内の知り合いの携帯は……くっ、電源が入っていない!」

刑事「くそっ! 俺が直接局に行って止めさせてやる!」

松田「宇生田さん!」

『探偵Lは私を捕まえると明言し、私を悪と決め付け私の行動を否定し挑発行為とも取れる報道を繰り返しました』

『警察関係の方々からL死亡の発表が近日中にあるでしょう。私は私を捕まえようと行動する人間や私を否定する人間を許しません』

L(……こいつ)

ざわ…… ざわ……

刑事「お、おい。捕まえようとする人間も殺すって……」

刑事「だ、大丈夫だ。Lの指示でもう俺達は名前が偽名の警察手帳を持っている」

刑事「そ、そうだ。キラの殺人に必要なものは顔と名前、名前さえ分らなければ……」

『ですが私は決して警察を敵だと考えていません。味方だと考えています。……私を捕まえようとしない限りは』

『私の理想は世界の警察と共に悪の存在できない世界を作り上げること。警察が私に協力してくれればできるのです、心の優しい人間を主とした世界を作り出すことが』

L「……」

刑事「ひ、人を殺しておいて作り上げる世界が何だって言うんだ!?」

刑事「ああ! こんな詭弁聞きたくも無い!」

L「……夜神局長、さくらTVにコンタクトはまだ取れませんか?」

総一郎「駄目です! もう意図的に外部からの連絡を遮っているとしか!」

L「……では他の放送局にすぐにでも依頼をかけてください。内容は探偵Lが世界の人間に向けて発するメッセージ……そんなところでしょうか。私が出演しキラに私はまだ生きているという事を理解させます」

総一郎「なっ!?」

L「無論顔は隠して出演します。テイラーが死亡したことからも、キラ……いえ、このキラは自分にたてつくものを殺します……このキラの次の行動は恐らく警察を脅して協力させる、警察庁長官の命や海外の警察幹部の命を盾に協力させようとしてくるものだと思います」

L「その前に私がまだ生存していることを明かし、キラの注意を私に引く。キラの行動は4本のテープに録画されているでしょうから、すでに録画をしている以上これからの行動が変わることはない……ですが私が生きていると言う計算外がおきたとき、このキラが送ったという残り2本のテープは無意味なものに変わる可能性があります。そうなれば更にキラは動かざるをえなくなる」

L「今放映されている分のテープの影響も、私が出演することによって世間への影響をかなり小さくすることが出来るでしょう……!!」

『番組を変更し、さくらTV前からの生中継をお送りすることにいたします』

『今、さくらTV前で倒れた人物がいるとの情報が入りました!』

刑事「!! 宇生田!?」

刑事「お、おい!? どうなってるんだ!? 宇生田さんも偽造手帳を持っていたよな!?」

刑事「た、倒れて……殺されたのか?」

刑事「く、くっそ~~~! キラか!?」

総一郎「ま、待つんだ。全員落ち着くんだ!」

L「はい。皆さん冷静になってください。……相沢刑事も待機をお願いします。今、何の準備もせずにさくらTVへ行くと殺されます」

相沢「え、L! 何を言っているんだ!? 宇生田が殺されたんだ! このまま指をくわえて見ていろって言うのか!?」

L「冷静になってくださいと言っています。宇生田刑事がキラにやられたとしたらあそこに行けば同じ目に遭います。……可能性としてキラの力が増えた……か、このキラには顔だけでも殺せるのかも知れません」

L「そして、宇生田刑事は他局にさくらTV前が映される前に殺された。つまりキラはあのテレビ局内、もしくは局に入るものを監視できる所に居る……それか自分で監視カメラをつけて映像を見ているのかもしれません」

相沢「キラがあの周辺に居ると思うなら余計行くべきじゃないか!!」

L「ですから、冷静になってください。のこのこ出て行けば殺されるのです。行くのならば相応の準備を行なってからです」

相沢「!!」

L「夜神局長、護送車数台とさくらTVへ向かう警官隊には絶対に姿、特に顔が見えないように特殊加工のヘルメットを支給して現場へ急行させてください」

総一郎「分りました! 各員、それぞれの班に分れ準備を行なう! 緊急だ!」

L「報道班の皆さん、他局への根回し如何でしょうか?」

報道班「NHNと交渉が済みました! 回線廻せます!」

L「ありがとうございます」

粧裕の部屋


テレビスマホドウジシチョウチュウ

粧裕「何、これ……一体どうなって……」

リューク「クククッ」

粧裕「コメンテーターの人、探偵の人、スーツを着た人、警察の人二人……計5人も殺されて……」

リューク(5人もって、お前は今日どれだけ殺したんだよ?)

粧裕「一体何を考えて……!?」

『番組の途中失礼します。この放送を見ている日本の皆様、そしてキラ……』

リューク「あん? なんか始まったぞ?」

『私はLです』

粧裕「え!? さっき殺されたはずの探偵の!?」

『キラ……おまえは先ほど私を殺したと宣言していたが、残念ながら私は生きている』

粧裕「な、何?」

リューク「おー?」

『不思議に思っているか? そうだろう、お前は私を確実に殺したと思っているはずだ。お前の殺しの能力も確実に発動している、しかしそれは私ではない』

『お前が殺した男は、リンド・L・テイラー、テレビやネットでは報道されていない警察が極秘に捕まえた犯罪者であり死刑となる予定だった男だ』

粧裕「!」

リューク「ん? つーことはなんだ? 身代わりってやつか?」

『だがLという私は実在する』

粧裕「……この人」

『さあ! 私を殺してみろ!!』

『どうした!? できないのか!? そうだろうな、お前の能力では私は殺せない、それは分っていた』

リューク「ほほー」

『そしてもう一つ……あえてお前の事をこう言おう』

『キラの犯行を模倣する模倣班……第二のキラ!』

粧裕「っ!?」

リューク「おお!?」

『そしてキラにも告げる。今回罪も無い人々が死んだ最大の原因は……お前だ!』

粧裕「……」

リューク「ククッ、だってよ」

『キラ、第二のキラ、お前達は殺人犯であり、許すことの出来ない……悪だ!!』

粧裕「……」ギリッ

リューク「お、どうした?」

粧裕「あの探偵さんの言葉を借りて、第二のキラって呼ぶけど……第二のキラを何としてでも見つけ出してやる……」

リューク「おー、気合入ってるな」

粧裕「……」

粧裕(気合? そんなのじゃない)

粧裕(どう見てもデスノートの犯行、そしてあの探偵が言うように第二のキラの犠牲者はあたしのせいで生まれたようなもの……)

粧裕(何としてでも見つけ出さないといけない……そして第二のキラの真意も聞き出さなければならない……)

粧裕(第二のキラも……あたしと同じようにノートを使ってしまってもう後戻りが出来なくなっているのか……)

粧裕(この死神のように人間に使わせるためだけに落としたものを拾って使ってしまった……ある意味犠牲者なのか……)

粧裕(はっきりさせないといけない。このノートの所有者として……そして、キラとしてこのノートを使っている者として……)

粧裕(絶対にあたしが第二のキラを見つけ出す)

さくらTV近くの建物


???「うっわー、すっごくでっかい車が何台も来たよ、レム」

レム「そろそろここも離れたほうがいいんじゃないのか?」

???「そうだね。でもあのLってのムカツク~~~いっつもいっつもキラのこと悪者扱いして!」

レム「まさか偽者だとは思わなかったな」

???「それ! あいつズルいよ! 顔出しといて実は死刑囚でしたーってズルもズル! わかるわけないじゃん!」

???「もー、面倒くさいけど、今回送ったテープは無しにして、明日またあのLってのを殺すためのテープを送りなおさないといけないなー」

レム「ミサ……お前本当にわかってるのか? 捕まるかもしれないし、何よりキラという人間に殺されるんじゃないのか?」

ミサ「大丈夫だよ。捕まらないように気をつけてるしー、キラはきっと純粋な子には優しいし、いざとなったら目を持ってるミサのほうが強いもん」

レム「そうか……」

ミサ「待っててねー、キラはミサが見つけてあげるんだから!」

Lの部屋


L(今回の犯行は、恐らく今まで犯罪者を殺していたキラとは別の人間の犯行……)

L(しかも今回の犯人は顔だけで殺せる可能性が高い……)

L(確証は得ていないが、さくらTVより回収したテープを確認すれば今回の犯人がキラと同一人物かそうでないかは分るだろう)

L(絞込みを行なっていたキラの居場所も東京都内と判明し、更に今回のこの第二のキラの行動)

L(今まで不動だったキラも、今回は何らかの行動を起こす可能性は高い)

L(キラが行動を起こさないにせよ、私のテレビ出演で第二のキラは私を殺そうと何らかの行動を起こすだろう)

L(第二のキラの行動……何もせずとも動くこいつをどれだけ動かすことが出来るか……)

L「鍵は第二のキラ、か」

月の部屋


月「……」

月「ついに、犯罪者以外の犠牲者が……」

月「しかも都内で……」

月「僕の行動できる範囲内で……」

月「…………」

月「キラ事件……」

月「捜査本部の情報があれば……」

月「…………」

また書いてきますよー。

粧裕の部屋

メッセージ放映翌日 早朝4時


粧裕「……」コソコソ

リューク「こんな時間にどこ行くんだよ?」

粧裕「……」クチモトニユビオサエ

リューク「はいよ。黙って着いて行くとするか」

粧裕「……」コソコソコソ カチャ

家から離れた森林公園


粧裕「入り口から真っ直ぐ歩いて、突き当たる大きな木の下……このあたりでいいかな……人気もない……よし」

リューク「おーい、何してんだよ?」

粧裕「結構賭けになるけど、第二のキラに向けてあたしもメッセージを送るの」

リューク「あ? お前もテレビに出るのか?」

粧裕「違う、リュークに聞いたノートの効力と使い方……色々考えてみたけど一番手っ取り早くてあたしに最もたどり着きにくいって思えるメッセージの出し方を考えたんだ」ガリガリガリ

リューク「地面に何書いてんだ?」

粧裕「第二のキラに送るメッセージ」ガリガリガリ

リューク「???」

粧裕「よし、できた」ガリッ

リューク「何々?『私はキラです。昨日さくらTVで放映されたビデオの主とは違い、本物のキラです。私と同じ能力を手に入れてしまった第二のキラに告げます。もう能力を使うのは止めてください。これ以上貴方が死すべき人間以外を殺すようなら、私も貴方を殺さざるを得なくなる。同じ能力を手に入れてしまった貴方を出来れば殺したくない。私の願いを聞き入れていただけることを祈っています』……何だこりゃ?」

粧裕「見ての通りだよ。多分このままだと第二のキラは次々に凶悪犯以外の死ぬべき基準を超えてない人達も殺していくだろうから、それだけは止めたい」

リューク「ほー、でもこんな場所に書いてどうすんだよ? 第二のキラがここに来るのか?」

粧裕「ううん、ここに来るのは…………ノートに書き込む凶悪犯」ペラ カキカキカキスラスラスラ

リューク「お? あー、なるほど……『恐田奇一郎 心臓麻痺 4月19日午前6時00分 東京都○○区○丁目○○公園正面入り口から入り真っ直ぐ直進し突き当たりの大きな木の根元に書かれている土文字を確認し、土文字を覚えたら自分が行なえる最大限、身元が分らないように各テレビ局に10通ずつ土文字と同じ文の手紙を作成後投函し、100通投函完了後1000歩歩いて死亡』 犯罪者を使ってメッセージを送るわけか」

粧裕「うん。1人だけじゃなくて10人くらい同じ様に操る予定。10分おきでこのメッセージを見るように設定してみて、最後の一人にはこのメッセージを消して立ち去るって追加する。土に書いた文字だから証拠も出てこないし、手紙自体はあたしが出すわけじゃないから絶対にあたしまでたどり着けない」

リューク「ククッ、なるほどな……だけど手紙を送るだけでお前からのメッセージだってテレビ局の人間は信じるのか?」

粧裕「信じないでいたずらだって判断されるかもしれないけど……あのテレビ局なら絶対にこの手紙を見たら放送するだろうね」

リューク「あのテレビ局?」

粧裕「さくらTV」

リューク「ああ、昨日やってたところか!」

粧裕「さくらTVはキラ関係なら何だって放送しているから、この手紙もまず間違いなく放送されるはず。差出人が分らない手紙が沢山届いて、全部同じ内容、それがキラからのメッセージ、絶対に放送すると思うよ。早ければ今日の夜にでも」

リューク「ああ、沢山書かせて送るってそういう事か」

粧裕「沢山書かせるのはそれだけじゃないよ。警察の目を誤魔化すためでもあるんだ」

リューク「あ?」

粧裕「第二のキラ、テレビ局にテープを送ってるでしょ? あたしと同じような方法で絶対にばれない方法を使ってるならいいけど、もしそうじゃない場合、ビデオテープっていうとんでもない物的証拠が警察の手に渡ってる……」

リューク「ビデオテープくらいで……」

粧裕「くらいじゃないよ。日本警察は本当にすごいんだから、何も対策してなかったらあっという間に第二のキラは捕まる。絶対に。だから少しでもその確率を下げる為にあたしも沢山の物的証拠をわざと警察に見つかるようにする。……絶対にあたしにたどり着けない物的証拠を大量にね」

リューク「ククッ、お前みたいなやつを何ていうんだっけ? 石橋を叩いて渡るやつだっけ?」

粧裕「あたしは自分で作った橋じゃないと信頼できない……ううん、これからはちょっとのミスが命取りになるんだから……本当に慎重に行かないと」

リューク「ククククッ、面白くなってきたな」

粧裕「……後は、ノートの効果がうまく発揮されれば……」



ミサの部屋


ミサ「うっそー!」

レム「どうした?」

ミサ「ミサがキラに送るメッセージ作る前にキラが返事をくれた!」

レム「……もうデスノートを使うなと言っているな」

ミサ「ミサも返事返さないと! さーっ、ビデオとテープを用意してー♪」

レム「……」

ミサ「何て返事しよっかな~~~~」

また書いてきます!

粧裕の部屋

3日後


テレビシチョウチュウ

粧裕「…………」

『キラさん。お返事ありがとうございます』

『私はキラさんの言うとおりにします』

粧裕「……よかった」

リューク「なんだよ、あっさりだな」

粧裕「……」

リューク「お、おい、睨むなよ」

粧裕「……でもこれで心配していた事は一つ減っ……」

『私はキラさんに会いたい』

リューク「おっ?」

粧裕「……え?」

『キラさんは目を持っていないと思いますが、私はキラさんを殺したりはしません。安心してください』

リューク「こんな事言ってるぞー?」

粧裕「な、何で世間に流れるメッセージに死神の目の事を……」

『何か警察の人にはわからない会う方法を考えてください』

『会ったときはお互いの死神を見せ合えば確認できます』

ガタン!

リューク「いきなり立ち上がってどうした?」

粧裕「こ、こいつ、馬鹿じゃないの?」

リューク「いきなりだな」

粧裕「目のこともそうだし、死神の存在までバラすなんて……」

リューク「おー、そういえばテレビに放送されたってことは死神の存在が世界中に知れ渡ったってことか?」

粧裕「そうだよ! 一体何を考えてるの!? この馬鹿は!?」

リューク「お、おい、そんなに怒るなよ」

粧裕「ふーーっ!! ふぅっ……ふぅぅぅ……駄目、怒っては駄目。まずはこの状況を何とかすることを考えないと……」

リューク(こいつ、怒るとやっぱ顔こえーな)

粧裕「……死神と目の存在が警察にバレてしまった……大丈夫、実際に捕まらない限りは死神も目の情報の真相を知ることなんて警察には出来ない……これは問題ない……でも……問題なのは……こいつがこれからさらに重要な事をバラしてしまう可能性……」

粧裕「…………そう、ノートの存在をバラす可能性」

リューク「どうしたブツブツと?」

粧裕「……駄目だ。やっぱりこいつ、早くなんとかしないと……」

リューク「おーい、粧裕ー?」

粧裕「…………リューク」

リューク「お? どうした?」

粧裕「……あたしのお願い。聞いてくれる?」

リューク「なんだよ? お願いって?」

粧裕「この第二のキラを……見つけてきて」

リューク「はぁ!?」

粧裕「死神ならノートの持ってる人間とか分かるでしょ? それか別の死神だっけ? その死神に連絡を取って第二のキラの正体をあたしに教えて。もちろん名前は言えないのは分ってるから名前はいいから特長とか……」

リューク「ちょ、ちょっと待て!」

粧裕「……何?」

リューク「そんな面倒くせぇこと俺は絶対にお断りだ!」

粧裕「はぁ?」ギロリ

リューク「そ、そんなに睨むなって! この世界に人間がどれだけいるかお前もわかってるだろ!? その人間を一人一人見て来いってお前は言ってるんだぞ!?」

粧裕「……第二のキラに憑いてる死神に連絡すればいいじゃない」

リューク「死神はお前ら人間みたいに携帯電話なんか持ってないんだよ! 連絡を取るには一度死神界に戻って死神の窓から人間界を見渡してだな」

粧裕「じゃあ、戻って見てきてよ」

リューク「死神にも色々掟があるんだよ! そう簡単に戻れねーよ!」

粧裕「…………ちっ」

リューク(し、舌打ちかよ。だ、だいぶきてるなこりゃ……)

粧裕「……一番手っ取り早い方法は無理……やっぱりあたしが第二のキラとコンタクトを取り続けて……駄目、これ以上テレビを使ったやり取りだと、第二のキラが更に情報を漏らす可能性が高い……次でテレビを使ったやり取りは最後にするつもりで……」

サユジュッコウチュウ

1時間後

粧裕「リューク」

リューク「お? どうした、何か思いついたのか?」

粧裕「うん。一つだけ思いついた。次のテレビに流すメッセージを最後に第二のキラを見つけ出す方法」

リューク「ほー。どうするんだ?」

粧裕「……まずは次のテレビに流すメッセージ内容を言うね」

粧裕『まずは能力の使用を封印していただきありがとうございます。そして、私と会いたいという貴方の願い承りました。ですが直接お会いする前にお互いの死神を先に会わせる形を取りたいと考えています。今月22日青山に貴方の死神を使いに出してください。私も死神を向かわせます。そしてテレビでやり取りをするのはこれで最後にしてください。このメッセージに対する返信も結構です』

粧裕「このメッセージをこの前と同じ方法でテレビ局に送る」

リューク「お、おい! ちょっと待てよ!」

粧裕「……何?」

リューク「死神を先に会わせるって、俺がやるのか?」

粧裕「そう。協力して」

リューク「いやいやいや、協力ってなーお前……」

粧裕「リュークが第二のキラの死神に話してほしい内容は1つだけ。あたしと第二のキラが直接会う日程と場所を伝えるだけ、第二のキラの正体も探らなくてもいい、メッセージを伝えてくるだけ。最初のお願いに比べたらすごく簡単でしょ?」

リューク「お、おう……そうだな」

粧裕「なら決定ね。22日は明後日だからそれまでに直接会う場所も考えないと……」

リューク「何か俺、いい様に使われてね?」

粧裕「ああ、そうだ。リュークが前から気にしていた高級リンゴ、今度取り寄せるね」

リューク「何!?」

粧裕「たまには手に入らないような高級リンゴ食べてみたいでしょ?」

リューク「こ、高級リンゴって、あの見た目からしてジューシーな奴か?」

粧裕「そうそう。普通のリンゴの5倍はするよ。値段」

リューク「じゃ、じゃあ、うまさも5倍か?」

粧裕「かもね」

リューク「うおおおおおおお!!」

粧裕(……これでこの死神は問題なくあたしの計画通りに動くだろう。だけど、第二のキラ……)

粧裕(……第二のキラはあたしの事を殺すことも考えていないって言ってるけど……そんな事信用できるわけが無い)

粧裕(……だけど直接会って第二のキラの真意を確かめる……これは絶対にしなければならないこと……)

粧裕(……顔を見せずに直接会って、第二のキラと話をする……難しいけどやるしかない……)

粧裕(……さらに直接会う場所。絶対に人のいない場所……そんな所なんて存在しない……どこにするか……)

ミサの部屋


サユノメッセージホウソウチュウ

ミサ「キラからのメッセージだ!」

レム「会ってくれるが、先に死神同士を会わせるか」

ミサ「22日って明日じゃん! やっばー準備できてないんだけど!」

レム「ミサ?」

ミサ「確かここに前の撮影で使った……あったー!」

レム「なにをしているんだ?」

ミサ「え? 明日青山に行くようの変装グッズを準備してるんだよ?」

レム「……キラは先に死神を向かわせると言っているが」

ミサ「ならキラの死神に会っても失礼じゃないように変装にも気合を入れておかないとね」

レム「いや、キラは恐らく普通の人間には見えない死神をメッセンジャーとして使おうと考えているんじゃないか? ミサが行かなくても私だけ行けば……」

ミサ「そんなのだめだめ! もしかしたらキラも直接来てくれるかもしれないでしょ? そうしたらキラもミサがいなくてガッカリしちゃうかもしれないし絶対に行かないと!」

レム「……そうか」

ミサ「さー、気合をいれないとねー!!」

22日 青山


ミサ「……なにこれ」

レム「暴動というやつか?」

『キラ様ーーー!!!! お姿を現してください!!!!』

『キラ様は死神だったのだ!! キラ様がついに降臨されるときがきたのだ!!』

『下がれ下がれ!! これ以上暴れると公務執行妨害で逮捕するぞ!!』

ミサ「……あちこちでなんかキラのプラカード持った人達と顔隠した警官が衝突してる」

レム「なあミサ、本当にここでキラを探そうと言うのか?」

ミサ「……う~ん、どうしよ」

レム「やはり私が……!!」

ミサ「? どしたのレム?」

レム「……キラの死神だ」

ミサ「ええ!? どこどこ!?」

レム「静かに、騒ぐなミサ」

ミサ「あっ…………で、どこにいるの?」

レム「……わかった」

ミサ「……ねー、レムー?」

レム「ミサ、帰るぞ」

ミサ「……もー! なんなのよー! ミサには見えないんだけどー!?」

レム「キラの持つノートに触れなければミサにはキラの死神は見えない。それにもうキラの死神は帰っていったよ」

ミサ「……え、もう帰っちゃったの?」

レム「ああ、キラがミサと会いたいという事と、その会う場所だけを話してさっさと帰っていったよ」

ミサ「……!! 会えるんだ!で、場所はどこなの?」

レム「28日、午後1時、横浜の大黒埠頭にある倉庫、YB倉庫という場所だ」

ミサ「…………」

レム「やはりキラは直接出向いては来なかったな」

ミサ「…………」

レム「? ミサ?」

ミサ「……」トテトテトテ

レム「ミサ? どこに行くんだ?」

ミサが歩いていった先、青山の喧騒を通りの隅で観察している美青年がいた。

ミサ「あのっ」

「?」

ミサ「彼女にしてください」

「…………は?」

レム「お、おい、ミサ?」

ミサ「一目惚れしました! ミサを彼女にしてください!」

「ちょ、ちょっと待って。君は一体何を言ってるんだ?」

レム「そ、そうだぞミサ。一体何を言ってるんだ?」

ミサ「だーかーらー! 一目惚れ! ミサ、こんな気持ち始めて! やがみつき君! ミサを彼女にしてください! お願いします!!」

月「つ、つきって、僕は確かに月って書くけどライトって……何故僕の名前を?」

ミサ「彼女にしてくれるって言ってくれるまでこの手を離さないんだからー!!」

月「な、何なんだこの子は?」

ゴタゴタとしてしばらく死んでました。
生き返ったのでまた投下していきます。
また書いてきますー。

粧裕の部屋


リューク「ただいまー」

粧裕「おかえり、どうだった? 第二のキラの死神にちゃんと伝えてきた?」

リューク「んー、伝えたは伝えたが……」

粧裕「?」

リューク「第二のキラとやらも一緒に来てたぞ?」

ガターン!!!!

リューク「うおっ!?」

粧裕「…………どういうこと?」

リューク「い、いや、どういうことって言われても」

粧裕「……死神と一緒に第二のキラもいたんだよね?」

リューク「ああ」

粧裕「このテレビ中継でもやってて、カメラとかに映る可能性もあって、警察も沢山配置されてる青山にいたんだよね?」

リューク「いたな」

粧裕「…………」

リューク「…………」

粧裕「何考えてんのよっっっ!!!!」ツクエバーン!!

リューク「うおっ!? びっくりした!!」

粧裕「何なの!? 馬鹿なの!? 人が死神だけ向かわせろって言ってんのに何でノコノコと自分も姿を現してんの!? 何を考えてんのよっっっ!!!!」イスケリガーン!!

リューク「お、おい、粧裕」

粧裕「あんたが捕まったらノートの存在もバレるって言うのに何で軽率な行動を取り続けるの!? あたしがどれだけ考えてんのか分ってんの!? 警察を甘く見ないでっていってんでしょ!? 信じらんない!!!!」シャーペンブンナゲ パキン!!

リューク(こ、こりゃ、過去最大級だぞ、顔もとんでもねーことになってんぞ……)

粧裕「リューーーク!!!!」

リューク「は、はい」

粧裕「その馬鹿の名前を教えて!!!!」

リューク「い、いや、死神は人間の名前を教える事はできないぞ」

粧裕「あああああもう!! どいつもこいつも!!」

リューク「お、落ち着けよ、な?」

粧裕「あたしは落ち着いてる!! 黙れ死神!!」

リューク「は、はい」


サユノアタマフットーシテカラ10フンゴ

リューク「……」

粧裕「」ガタッ

リューク「お?」

粧裕「何か飲み物……」ガチャ、パタパタパタ

リューク(あー怖えーなー)

ゲンカン ガチャッ


月「ただいま…………はぁ」

粧裕「あ……おかえり、お兄ちゃん」

月「あぁ……粧裕か、どこかに出かけるのか?」

粧裕「ううん、喉乾いたから何か飲もうと思ったんだけど……お兄ちゃん、何か疲れてる?」パタパタ

月「はは……ちょっと変な子に絡まれて、クタクタだよもう……」スタスタ

粧裕「変な子って……はい、お茶でいい?」

月「ああ、ありがとう。……ふぅ、本当に変な子さ、いきなり彼女にしてくださいって言ってきて、断ってもしつこく付きまとわれてさ」

粧裕「ぶふっ!! お兄ちゃん彼女できたのーーー!?」

月「いや、断ったって。そもそも初対面の子を彼女にしようなんて思わないよ」

粧裕「へ? 初対面? それなのに彼女にしてって言われたの?」

月「ああ」

粧裕「……それって相手の女の子はお兄ちゃんのことをずっと片思いで面と向かって話す勇気も無くて、いざ一大決心をして告白をしたってやつじゃないの?」

月「いや、それはない」

粧裕「だ、断言したね」

月「そういう子じゃなかったからな……なんというか、本能に従って行動するような子……そんな感じかな」

粧裕「ふーん。で、その子、可愛かった?」

月「……なんだよニヤニヤして」

粧裕「えー? だってさー、お兄ちゃんカッコいいのに女の子と付き合ってますーとかそういう話しないじゃん。もしかしてお兄ちゃんもその子にまんざらでもなかったり?」

月「……やめてくれよ、ああいうタイプは苦手なんだよ」

粧裕「あらら、その様子だとほんとに何にもなかったんだねー」

月「あるわけないだろ」

粧裕「つまんなーい。せっかくお兄ちゃんの恋バナ聞けると思ったのになー」

月「やめてくれよ……もう……」

粧裕「ごめんごめん! じゃ、あたし部屋にもどるねー!」パタタタタタ

月「はぁ……粧裕にまで振り回されて……何て日だよ」

粧裕の部屋


粧裕「ふー、お兄ちゃんのおかげでイライラがどこかにいっちゃった」

リューク「やっぱりぶちきれてた自覚あったんじゃねーか」

粧裕「まぁね」

リューク「しかしお前があそこまで怒るなんて、そんなに第二のキラの行動はまずかったのか?」

粧裕「まずいどころじゃないって……せっかく第二のキラを警察の目から反らすためにもワザと青山にキラの使いである死神を向かわせるって公表したのに、何で第二のキラは自分から危険なところに足を踏み入れようとするのかな……」

リューク「警察の目から反らす?」

粧裕「死神が普通の人間に見えない事はあたしたちしか知らない情報、それを知らない警察は青山に死神というキラの使いを見つける為に人員を裂かなければならなくなる。人員が足りなくなれば第二のキラが残した物的証拠の調査が遅れる。その間に第二のキラと接触して色んなことを問いただそうと思ったんだけど……」

リューク「ほー」

粧裕「でも、第二のキラはあたしの考えが及ばないくらいの行動を平気で取ってきた。下手したらテレビ局に送ったビデオとかも何の細工もしないで送っているのかもしれない。そうなったらもう警察は第二のキラの目星もつけていてもおかしくない……」

リューク「おいおい、考えすぎじゃねーか?」

粧裕「すぎじゃない。十分に可能性はあることだよ……こうなったらリュークに見つけてもらったあの倉庫で直接会うのもやめておいたほうがいいのかも……」

リューク「やめるのか? もう伝えちまった後だけど?」

粧裕「第二のキラがすでに警察にマークされていたら完全にアウト。第二のキラと会う事はあたしの破滅も意味することになる。……だけど会わないという選択を取ってしまっても、第二のキラはテレビにまたビデオを送りつけて、今度こそノートの情報とかをバラしてしまうかもしれない……」

リューク「ノートの存在くらいバレてもいいじゃねーか」

粧裕「……ふぅ、ごめん、また少し頭に血が上ってきたから喋らないでくれるかな?」

リューク「お、おう」

粧裕「本当にどうしよう、八方塞になっちゃったかも……」

粧裕「何かいい方法……」

粧裕「う~ん……」

夜神家キッチン 晩御飯


粧裕(結局いい方法が思いつかない……)モグモグ

月「ご馳走様」

粧裕「相変わらず食べるの早いねー」

月「そうか?」アトカタズケ

幸子「粧裕も早く食べちゃいなさい」

粧裕「はーい」

モグモグゴクン
ソファーニポフン

粧裕(でも、本当にどうする……第二のキラの馬鹿さ加減はもう数段階下方修正したほうがよさそう……だけどそうなると直接会うなんて不可能……警察にマークされている人間にあたしだけ警察にも気付かれずに接触して話をする……不可能)

粧裕(……直接会う事はせずにこちらから一方的に連絡をして、電話か何かで話をする……それで第二のキラの真意を確かめる……これなら出来ないこともない……これがベストかな……)

粧裕(そうなると、28日の直接会う話は白紙に戻して……こっちのプランを優先することを……)

ピンポーン

幸子「あら? お父さんかしら?」

粧裕「今日お父さん帰ってくるんだっけ?」

幸子「聞いてないわ……帰ってくるなら電話してって言ったのに」

粧裕「見てくるねー」パタパタパタ

ゲンカン ガチャ

粧裕(お父さんだと思って、あたしは玄関の扉を開いた)

粧裕(だけどそこにいたのは、お父さんじゃなくって)

ミサ「こんばんは。私、弥海砂と申します。ライトさんにお会い……する…………えっ?」

粧裕「えっ……お兄ちゃんですか?」

ミサ「えー、うっそ……でもでも。やっぱりそうだよね」サユヲギョウシ

粧裕「あの? どうしたんですか?」

リューク「おいおい……」

粧裕(リューク?)

ミサ「信じらんなーい……まさかキラがこんなに可愛い女の子だったなんて」

粧裕「!?!?!?!?!?」ビクーーーン

ミサ「お会いできて、ミサすっごく嬉しいです。キラ様♪」ニッコリ

粧裕「な……なん……で? あたし……を……」

粧裕(あたしをキラだと言った女の子は、本当に無邪気な笑顔で笑っていた)

また書いてきま!

粧裕「……何が……どうして……」

ミサ「あっ、そうだ」ガサゴソ

ミサ「はいっ、これ触って」

粧裕(言われるがままあたしは女の子が取り出したノートに手を触れてようやく茫然自失の状態から立ち直った)

粧裕「っ! しに………………」

粧裕(こいつが第二のキラ!!)

ミサ「見えた? これがミサのしに……もがもがもが」サユ ミサノクチヲテデオサエ

粧裕「あの、あたしの部屋に来てください」

ミサ「ぷはっ、え? 部屋にいれてくれるの?」

粧裕「早くして」

ミサ「やった! キラ……もがもが」

粧裕「黙って」

ミサ「」コクコク

ゲンカン ガチャ

幸子「粧裕、お父さん……あら?」

粧裕(……まずい)

粧裕「あ、お母さん。友達が来たから少し部屋で話するね」

幸子「お、お友達?」

ミサ「おじゃまします」ペコリ

幸子「あ、ええ。いらっしゃい」

粧裕「お茶も何もいらないから。こっち、ついてきて」パタパタパタ

ミサ「あっ、はい」トトトトト

幸子「……は、派手な子ねぇ」

粧裕の部屋

ドア ガチャッ カギ カチン

粧裕「そこ、座って」

ミサ「あっ、ありがとう」

粧裕(……なにをしているのあたしは?……こいつは第二のキラに間違いない……警察にマークされているかもしれないこの女をよりにもよってあたしの部屋に入れてしまった……ううん、そんな事よりもどうしてこいつはあたしがキラだって気付いたの?……まさかこいつもあたしのことを探っていて、あたしがこいつを見つけるより早くあたしを見つけた?……違う、こいつはお兄ちゃんに会いに来たって言っていた……お兄ちゃんと第二のキラが? どんな関係なの? お兄ちゃんは知っているの? こいつが第二のキラだっていう事を? いや……お兄ちゃんが知るわけが無い……お兄ちゃんが知っていたらお兄ちゃんはお父さんに協力を取り次いでこいつを逮捕しているはず……だったらこいつはまだお兄ちゃんにも警察にも正体がバレていない?……いや、これは全部あたしの憶測……何一つ確証が得れていない……何もわからない今、もうこうやってこの第二のキラと接触している以上、あたしのやるべき事は……)

粧裕「何故、わかったの?」

ミサ「!」

粧裕「あたしはあたしに繋がるような証拠は一切残さなかった。なのにどうやってあたしがキラだってわかったの?」

ミサ「あ、やっぱり目の取引してないんだね」

粧裕「……目?」

ミサ「死神の目を持つと人間の寿命と名前を見る事ができるんだけど、ノートを持ってる人間の寿命だけは見えないんだよ」

粧裕「…………リューク」ギロリ

リューク「いや……そこまで詳しく知らなかったし」

粧裕(信じられない……こんな重要な情報を知らなかったで済ませようとして……この死神は……)

ミサ「でもホント凄い偶然! ライトに会いにきたはずなのにまさかキラに出会えるなんてね! キラはライトの妹さんなのかな?」

粧裕「……そのキラってやめて。あたしは夜神粧裕。あなたは?」

ミサ「ミサは弥海砂だよ」

粧裕(無警戒に名前を言った……やっぱりこの女は危機感が全然無い……この様子だと……いや、それを考えるのは後、まずはこの女とお兄ちゃんの関係を知る)

粧裕「アマネミサさん、あなたはお兄ちゃんと一体どんな関係?」

ミサ「ミサはライトの彼女だよ」

粧裕「っ!?」ガタン!!

ミサ「なーんてね♪ ほんとは彼女予定です。ライトとは今日会ったばかりだし、まだライトはミサを彼女だって認めてくれてないの」

粧裕(今日? 何を言って……!! お兄ちゃんがさっき言っていた変な子ってこの女のこと!?)

粧裕「……お兄ちゃんに近づいた理由は?」

ミサ「え? 一目惚れ」

粧裕(頭が痛い……何なのこの女……)

粧裕「真面目に答えて」

ミサ「真面目に答えてるよ?」

粧裕(……この女、あたしをおちょくっているの?)

粧裕「……それならこういう事? 街で一目惚れしたお兄ちゃんにしつこく付きまとって、あげくお兄ちゃんに会いに家にまで押しかけて、そこで偶然にもあたしを見つけた。そしてあなたは死神の目を持っていたから、あたしの事をキラだと気付いた……」

ミサ「うんうん、そうそう!」

粧裕「そんなわけないでしょ……ふざけないで」

ミサ「? ミサはふざけてなんて無いよ?」

粧裕「……嘘をつくにしてももっとマトモな嘘をついて、あなたの目的は何? 本当はどこであたしの事を知ったの? 嘘はつかないで、真実のみを話して」

ミサ「ミサ、嘘なんてついてないのに」

粧裕(この女……)

レム「この娘の言っている事は全て事実だ。おまえを見つけたのも全て偶然だ」

粧裕(この女の死神……)

粧裕「信じられない、そんな偶然ありえない」

レム「おまえが信じようが信じまいがこうやってミサはおまえと出会っている。それが全てだ」

粧裕「……わかった、それならもうそれでいい」

粧裕(真実を言う気はさらさらない……もしくは本当に偶然、か)

粧裕(……これ以上聞いても明確な回答は出さないだろうし、次はこの女が何の為にあたしに接触してきたのかを……)

粧裕「あなたの目的は何なんですか?」

ミサ「え? 目的?」

粧裕「そう。なんであんな方法であたしを探したの」

ミサ「えっとー、お礼を言いたかったからかな」

粧裕「お礼?」

ミサ「うん。……ミサのお父さんとお母さんを殺した犯人を裁いてくれたお礼」

粧裕「……」

ミサ「あのね、ミサの両親は丁度1年前にミサの目の前で強盗に殺されちゃったの。ミサは強盗の顔も覚えてたし、その強盗もすぐ捕まって、ミサは強盗を死刑にしてって警察の人に言ったんだよ? だけど警察の人は裁判を待てって言ってきて……」

ミサ「裁判が始まったら証拠が不十分って凄い時間がかかって……そのうちに冤罪の見方もでてきたって大人の人に言われて……ミサ、難しい事はわからなかったけど、相手の弁護士がやり手とかどうとか言ってて……ミサは何でミサのお父さんとお母さんを殺した犯人がすぐに死刑にならないのってずっと言い続けたのに誰もミサの言葉を聞いてくれなくて……」

ミサ「お父さんやお母さんを殺した犯人を絶対に許せなかったし殺してやりたいって考えた……でもそんなことはいけない事だしどうしたらいいのかわからなくなっていたとき、その犯人を裁いてくれたのがキラだったの」

ミサ「嬉しかった……周りの人達なんてもう誰も信じれなかった時、キラだけがミサを見てくれていたんだって。ミサの願いを叶えてくれた絶対的な存在……神様。それがミサにとってのキラ」

ミサ「だから……ありがとう、粧裕ちゃん……ミサのお父さんとお母さんのカタキを取ってくれて本当にありがとう」サユヲダキシメ ギュッ

粧裕「…………」

粧裕(お礼を言う……? そんな事のためだけにこの女は何人も殺して……?)

粧裕「お礼なんていい。後、最後の質問」

ミサ「最後? それじゃ、その質問が終わったらミサからいろんなこと聞いちゃおうかな~?」

粧裕「あなたはデスノートを使ってしまったことをどう思っているの?」

ミサ「え? どうって?」

粧裕「あなたは人を殺した。それに対して思うことはないの?」

ミサ「えー……殺したって言っても悪い人だよ? 悪い人達は死んでトーゼンだって思うし」

粧裕「……あなたは警察官やニュースキャスターも殺してる。それに対して思うことはないの?」

ミサ「うっ……だ、だって、しょうがなかったでしょ? 警察の人が来てビデオの放送邪魔されちゃったら嫌だし、あのニュースキャスターなんてキラの悪口ばっかり言ってた人だよ? 別に死んじゃってもいいじゃん!」

粧裕「…………それなら、ノートを使ってしまったことに対して悩んだり苦しんだりしなかったの?」

ミサ「そ、それは、ちょっとは悩んだよ? でも、ミサはキラに会いたいって思ってたし……キラに会うにはノートを使ってミサの存在に気付いてもらうしかないって思ったから。それでお礼を言いたいって思って……」

粧裕「………………」

粧裕(あぁ……そういうこと)

粧裕(この女は……どうしようもなく馬鹿で……子供なんだ)

粧裕(自分のした事も碌に理解できない馬鹿な子供。だから簡単にあんな恐ろしいノートを使って平気でいることが出来る)

粧裕(馬鹿な子供がデスノートを手に入れて……先にデスノートを手にしていた馬鹿なあたしの真似をした。ただそれだけのこと……)

ミサ「それで粧裕ちゃんの話は終わりかな? それならミサも粧裕ちゃんにいろんなこと聞きたいんだけど~♪」

粧裕(……そう、馬鹿な人殺しの真似をした馬鹿がただの人殺しになった……たったそれだけのこと……)

ミサ「あ、聞きたいことって言うよりお願いかな! ミサも粧裕ちゃんと一緒によりよい世界を作っていくお手伝いをしたいなーって」

粧裕(……そしてこの女は自分の行いを正しいものだって思っている。だからこんな事も簡単に言える)

ミサ「ミサが粧裕ちゃんの目になれば今まで裁けなかった悪い人達も裁くことが出来るんだよ! 粧裕ちゃんもミサの目をほしいって思うよね? ね?」

粧裕(人を殺すことなんて悪以外の何者でもないのに……まるで正義の味方みたいに考えているんだろうね……)

粧裕(この女にはデスノートを使ってしまったことに恐れも後悔も何も無い……)

粧裕(……わかった。もう、いいや)

粧裕(…………殺そう)

粧裕(この女は無差別殺人犯と変わらない……)

ミサ「粧裕ちゃん? ねー、どうしたのー?」

粧裕「いえ」

粧裕(でも、どうやって殺す? この女は第二のキラ……この女のことだ、テレビ局に送ったビデオにも何の細工もしていないか、していてもすぐに警察にバレるような細工程度だろう……警察はこの女を第二のキラと断定するのも時間の問題……)

粧裕(あのビデオがテレビ放送されてから5日……警察はどこまで捜査の手を進めている? この女を第二のキラと断定するまでどれくらいの時間がかかる? いや、すでに第二のキラと断定されていたら……)

粧裕(……断定されていた場合、殺すのはまずい。警察がこの女を第二のキラと断定して逮捕に踏み切っていない理由は……第二のキラを泳がせてキラの尻尾をつかむことしか考えられない)

粧裕(あたしとこうやって会った後、この女が死ねば警察はこの女と接触した人間を疑う……第二のキラを殺した犯人、キラとして)

粧裕(…………となると、すぐには殺さずに、この女が逮捕されるまで待つ。この女が第二のキラとして逮捕された時点で殺せば、警察はキラが誰かなんて結び付けられなくなる)

粧裕(……捕まるまで待って、それから殺す。それがベスト)

粧裕(なら、後はあたしのやるべき事は)

粧裕「あの、ミサさん」

ミサ「うん、何何?」

粧裕「ミサさんの提案なんですけど、あたしはこれからも一人でやっていこうと考えていますんで遠慮しておきます」

ミサ「ええーっ!?」

粧裕「ミサさんのお気持ちは伝わりました。あたしにお礼を言うためにここまでしてくれてあたしもとても嬉しく思っています。こうやってミサさんと会えたことでこれからもあたしは頑張っていけると思います」

ミサ「ほんと!?」

粧裕「はい。なので、ミサさんはもうノートの所有権も手放して元の生活に戻ってください」

ミサ「えっ」

レム「!」

粧裕「ミサさんの目的はあたしに会ってお礼をいう事ですよね? それが叶った今、もうノートを使う必要なんて無いですよね?」

ミサ「う、うん、そうだけどー……」

粧裕「なら、ノートを渡してもらえますか? それで所有権を放棄してください」

ミサ「えー、でも、所有権を放棄したらデスノートに関する記憶も無くなっちゃうんだよね? せっかくこうやって粧裕ちゃんと会えたのに忘れるのはなー……」

粧裕「……あたしはミサさんのノートをミサさんだと思って使って行こうと思います。ミサさんが忘れてもあたしはミサさんの事を忘れませんよ」

ミサ「そう? そっかー、うーん、でもなー」

粧裕(……さっさとしろ……手間を取らせるな)

ミサ「せっかくレムからもらったノートで、ミサを助ける為に死んじゃったジェラスのノートだもん、簡単に決めちゃうのもなー……」

粧裕「……ジェラス?」

ミサ「あ、そうだよ。このノートの持ち主って死神のジェラスだったよね、レム」

レム「ああ」

粧裕「!!」

粧裕(待って……今、こいつ、何て言った?)

粧裕「……待って。今、死神が死んだって言った?」

ミサ「え? そうだよ」

粧裕「……死神って、死ぬの?」

ミサ「あー、やっぱり知らないよね? 死神の殺し方! ミサが教えてあげようか?」

粧裕「うん、教えて」

ミサ「えっとね、例えば、このレムがミサのことを好きで好きでどーしようもなくなっちゃって。そんなときに、ミサが誰かに殺されそうになったとします」

ミサ「そのミサを殺そうとしている人をレムが殺しちゃうと、レムは死んじゃうの。ねー、そうだよね、レム」

レム「ああ」

粧裕「……もう少し分りやすく言って」

ミサ「えー、分りやすく言ったのに。レムー、分りにくかったかな?」

レム「……つまり、死神は特定の人間の寿命を伸ばすような行為をしてはならないという事だ。死神は人間の寿命をいただくために存在している。それを破るという事は死神失格、死神は死ぬ」

粧裕「…………」

リューク「ほー、しかしそんなことする死神が存在するとは思えないけどな」

レム「いたんだよ、この娘を助けた死神がな」

リューク「信じらんねー」

粧裕(死神が死ぬ?)

粧裕(あたしを退屈しのぎという理由でこの地獄に引きずり込んだこの死神も死ぬ?)



粧裕(いや……殺せる?)


また書いてきますよー

粧裕「……他に死神が死ぬ方法ってあるの?」

ミサ「え? どうなんだろ? 知ってるー? レム?」

レム「……人間の寿命を奪わずに寿命で死ぬ場合もあるな」

リューク「ああ、そいつは見たことあるな。ダラダラと何百年も人間の寿命を奪わずにいて死んだ死神」

粧裕「……他は?」

レム「死神の死ぬ方法を聞いて何になる?」

粧裕(この死神……)

粧裕「……興味があるから」

レム「死神を殺そうとでも考えているのか?」

リューク「ウホッ」

粧裕(くっ……)

レム「諦めることだな、人間が死神を殺すことなどできやしない。ミサに好意を抱いたジェラスのような特例が無い限りな」

粧裕(これ以上聞くのはまずい……だけど、死神も死ぬというこの情報……)

粧裕(これから何気なく怪しまれないように聞いていく……そしていつか……)

粧裕(あたしをこんな目にあわせたこの死神を殺してやる)

抜けてたの投下。
またきまーす

Lの部屋


ワタリ「L、日本警察、夜神局長から通信です」

L「繋いでくれ」

ピーガチャッ

総一郎「……L、捜査本部の状況をお伝えします」

L「はい。お願いします」

総一郎「部署移動を希望したものは全て希望部署に配置換えを行ないました……結果、捜査本部に残ったのは4人です……」

L「……4人も残ってくださいましたか」

総一郎「ええ……」

L「第二のキラ。奴は自身を追うものも排除する。警察官であろうと、なんだろうと、果てはキラを批判しただけの人間ですらも。完全な無差別殺人犯です」

総一郎「それだけならばまだ捜査員の士気は保っていました、皆己の正義を信じ、悪に屈しない心を奮い立たせ恐怖に立ち向かっていました……」

L「ですが、すぐに発覚した新たなキラの力、人間を操ることが出来る力」

総一郎「はい。キラからと思わしき手紙……全ての手紙に付着した指紋が手紙を投函した日に死亡した犯罪者のものと一致しました。そしてその全ての手紙の筆跡も犯罪者の筆跡……」

L「殺された犯罪者の姿が防犯カメラに映っていましたが、明らかに挙動がおかしかった。もしもキラに脅されて手紙を書いたならば恐怖の表情を浮かべていてもおかしくない。しかし、犯罪者はその様な様子も見せず死亡している。恐らくはキラの新たな力として人間の行動を操ることが可能だと判断できます」

L「同様の力を第二のキラが持っている場合、もしかすると明日には隣の人間が自分を殺すキラの刺客に変わってしまうかもしれない」

総一郎「皆の士気は見る見る下がりました……」

L「無理もありません、昨日まで肩を並べて戦っていた仲間が自分を殺す敵に変わる……想像したくもないですね」

総一郎「……そして最後のキラのメッセージ」

L「キラは第二のキラとの接触を受け入れた。無差別殺人犯であるはずの第二のキラを」

総一郎「……メッセージの内容から、キラは第二のキラに仲間意識を持っているのでは? という憶測が飛び交い、キラが一時的に第二のキラの行動を止めてもそのうちキラも第二のキラと同じようになるのでは……という考えが生まれた時点で、捜査本部は崩壊しました……」

L「キラも第二のキラのように……そうですね、可能性はありえるかもしれませんね」

総一郎「…………L。これからの捜査……貴方はどうされるのでしょうか」

L「私はこれまで通り、貴方方日本警察とキラを追っていくつもりです」

総一郎「! わ、我々はすでに4人しかキラを追うものはいないと言ったのですよ!?」

L「4人もいるじゃないですか。しかもその4人は命を懸けてキラを追うと覚悟した方々。人数の大小は関係ありません、強い正義感を持ち悪と戦うと決意された方々を私は信用し共に戦えることを嬉しく思います」

総一郎「……そうですか……ですが、L」

L「その方々は私を信用していない。そうですね?」

総一郎「!! は、はい」

L「4名……今まで捜査本部の面々を見てきた私の推測では、まず相沢刑事。彼が私を信用していないと仰いましたか?」

総一郎「! そ、そうです」

L「それに便乗する形で、伊出刑事。彼も私の事を信用していないと言っているでしょう」

総一郎「そ、その通りです」

L「彼らはキラを命懸けで追う覚悟をした。が、私の事は信用できない、今後は私と共に捜査をすることに難色を示し、もし私が彼らの前に姿を現せば彼らも私を信用し協力する。そんなところですかね?」

総一郎「は、はい。その通りです……」

L「では、今から夜神局長も含め、相沢刑事、伊出刑事……後は恐らく、模木刑事と松田刑事ですかね。各自バラバラに帝東ホテルのロビーまで来てください。ロビーにはワタリを向かわせておきます」

総一郎「そ、それはL! 貴方は我々と顔を合わせるという事ですか!?」

L「はい」

総一郎「わ、分かりました。それでは、他の4人にも伝え、帝東ホテルに向かいます」

L「お待ちしております」

ピーガチャ

ワタリ「L……よろしいのですか?」

L「ああ、彼らはキラではない。そして今後はどうしても命を掛けて行動できる人間が必要になってくる」

ワタリ「そうですか……しかし貴方がLとして人前に姿を現すこととなるとは……」

L「……全ては私がキラを格下だと判断して招いた結果だ。キラは自分と同等、それ以上の相手だと認識を改める。その決意表明だ」

ワタリ「そこまでの相手だという事ですか……」

L「見ての通りだ。私はキラの正体を暴くことも出来ず何ヶ月もキラにいいようにやられ、挙句の果てには捜査本部は崩壊、キラは私など眼中にも無く、第二のキラを探すために動き出した。奴を捕らえるには私も命を懸けなければならない」

ワタリ「……本音は違うだろう?」

L「……バレてたか」

ワタリ「お前はただキラに見向きもされない事に腹を立てているだけだ」

L「その通りだよ」

ワタリ「昔から誰よりも負けず嫌いで、そんなお前が追っている獲物が追う側の自分に見向きもせず、横から出てきた獲物ともいえない雑魚に関心を向けている」

L「ああ、本当に腹立たしい」

ワタリ「……今回は本当の命懸けの舞台だ、お前のその性格が命取りになる可能性もあるぞ」

L「ふっ、わかっているだろう?」

ワタリ「……ええ、そうですね」

L「ならば頼んだ。もう間もなく彼らがロビーにつく時間だ」

ワタリ「はい、わかりました。L」

ピーガチャッ

L(……この5日間、キラは今までの立ち位置を逆転させるがごとく派手に動き始めた)

L(精々キラが動くにしても必要最小限、もしくは不動のまま動かないと考えていたが……現実は新たな自分の能力を晒すどころか、目、死神といった奴等だけが分る言葉を使い堂々とメディアを使ってやり取りを行なっている)

L(そこまで第二のキラに関心を抱くか。そこまで私は眼中にないというのか)

L(いいだろう。それならばどんな手を使ってでも私に関心を抱かせてやろう)

L(私に関心を向けさせ、私と戦うように仕向けさせ、その上でおまえを完膚なきまでに負かし逮捕する)

L(キラ、待っていろ。おまえを必ず振り向かせて見せる)

またきますよー!

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2020年03月01日 (日) 15:07:48   ID: 7bYNs1xy

続きが気になる。楽しみです。この主人公のサユが気に入った。

2 :  SS好きの774さん   2020年03月15日 (日) 16:59:45   ID: UyeG-qF7

サユとメロの関係もどうなるか楽しみにしてます。

3 :  SS好きの774さん   2023年06月10日 (土) 23:26:41   ID: S:AevPQm

面白くて一気読みしてしまいました!
これから粧裕ちゃんの展開がどうなるか楽しみです!

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