都合の良い話 (10)
短いです。
インターネットが普及してから長い月日が経った頃、ある男は今日もコンピュータを使って仕事仲間と連絡を取り合っていた。
「全く便利な世の中になったものだな」
男がそう書き込みをいれるとすぐに返事が返ってくる。
「なぁにこんなもの昔からあったじゃないか」
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確かに昔からあったものだがやはり年月が経つと便利になる。男は考えた後返事を送った。
「いやこうも便利な世の中すぎると昔が懐かしいと感じてしまってね」
返事が届く。
「旧時代の人間の生き残りが最近減って来ているらしいな」
男はこの返事に驚きを隠せなかった。なぜなら男は仕事仲間に自分が旧時代の人間である事を一度も行ったことがないからだ。
「なぜ俺が旧時代の人間だと知っている。」
「最近は便利な世の中になって全ての行政や事務処理なんかもこのインターネットがないと何もできない」
「だとしても何故わかる」
確かに世の中は殆どインターネットがないとやっていけない。全人類が管理されていると行っても過言ではない。
司法や国会、警察やその他の仕事もコンピュータを巧みに使い仕事をこなしている。
「私は旧時代の技術に興味があって。昨日も今日も旧時代の研究に没頭しているんだよ」
今の時代の人間は赤ん坊の頃にその個人の長所だけを伸ばす手術を受けている。
そうした新時代の人間は皆、頭が旧時代の人間を凌ぐ、赤ん坊の頃にはこうしたこの時代の常識を理解しそれぞれがそれを口に出すこともない。
「意味は無いが興味はある。なんと言ったって我々を作り出したのも旧時代の人間だしな。どういう過程で我々が生まれたのか気になるのだよ」
「理由なんて単純さ。人類は飛躍的に進化したかったが限界を感じた。それを次の世代が超えてくれるのを信じて我々より遥かに進化した人類を作ったのだよ。」
「私は新時代の人間が飛躍的に進化したとは思っていないよ。なんと言っても旧時代の人間の様な感情の多様性みたいな物が欠けているらしいしな。」
「話は聞いた事があるな。私達旧時代の人間が導き出した結果が感情を抑制して単純な労働力の確保に当たったというのは」
そう旧時代の人間が思いたった決断は人間の感情を捨てて労働力を決定的に増やす事だった。最初は性欲がなくなっていった一部の人間が決めた勝手によってだ。その結果、人類は減少の一途を辿っているらしい。
「だから私は旧時代の人間の様な感情が欲しいのだよ。でも私達にはわからない事がある」
「君達にわからない事なんて殆どないだろう。私達より遥かに上の存在なのだから」
そう新時代の人間は私達より知識があるはずなのだ。
「旧時代の人間達は何故今この時代に残っているんだ?物理的にありえないだろう?」
確かに疑問に思うだろうな私達は何年生きているのか自分でもわからない
「いまや人類のマイノリティスペースいわゆる個人の個人たる部分もコンピュータを通じてインターネットで管理されているのは君達は当然の如く知っているだろう?」
「当然だこの世界の常識だろうそんなのは」
「それは何だ?私達は旧時代の上を往く存在なのだろう?」
「今にわかるさ」
その返事を確認した男の仕事仲間はその瞬間その者ではなくなった。
「久しぶりの身体だな。何年ぶりかわからない。最近旧時代の人間がバンクから消えているのも久しぶりに身体に入りたかったからだろうな」
旧時代の人間の一部が新時代の人間に教えてはならないものには3つある旧時代の人間がデータの一部に過ぎないことと、そのデータの消し方、人間の身体の入り方である。
「しかし、この時代の人類は美形だなこれも人類の選別の結果か」
「久しぶりの身体だ派手に遊ぼう」
「やはり新時代の人間に性欲を消した私達はやはり優秀だな」
「私達にはまだ残っているのだから」
性欲が消えた人類の登場によって性関連の裁判は行われなくなったのだ
そうして男は人類の繁栄の一端を担うべく街に消えた。
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