育「えがおのまほう」【ミリマス】 (26)

育「うーん……」

なんだろ…… このふわふわしてる感じ……

あっ! わかった夢だ! 今わたし夢を見てるんだ!

えっと…… こーゆう夢の中で夢だー! ってわかるのなんて言うんだっけ…… 前に紗代子さんが言ってたけど……

なーんて、思ってると目の前に綺麗なお姉さんが現れた。 顔は見えないけど、スッゴく綺麗。

「こんばんは」

育「こ、こんばんは……」

「今日は貴女に素敵な贈り物があるの」

贈り物?

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「貴女、魔法って好き? 魔法使いになってみない?」

育「魔法少女なら大好きだよ! ……でもね魔法っていうのはアニメの中のもので、現実には無いんだよ」

「どうかしら? 私は魔法は実在すると思ってるわ」

うーん、このお姉さんもしかして百合子さんみたいな人なのかなー?

あ、でもここは夢の中だしもしかしたら本当に魔法が使えるのかも…… それなら

育「うんうん! わたし魔法使いになってみたい! 魔法使いになって、とっても可愛い服を着て、空を飛んで、みんなを笑顔にしてあげるの!」

「そんなに沢山の魔法は教えられないわ」

育「えー……」

「貴女に教える魔法は最後のひとつだけ、人を幸せに出来る素敵な魔法よ」

そう言うと、お姉さんはわたしのおでこにぴとって触れた。 そしたらわたしの体が少しあったかくなった…… 気がする。

育「えーっと……」

「貴女にあげたのは『えがおのまほう』これで貴女の周りの人たちを幸せにしてあげてね?」

育「うん! ありがとうお姉さん!」

「育ー! 朝よー!」


お母さんの声がする…… うーん、やっぱり夢かぁ……

今日の朝ご飯は大好きな卵焼き! やったー!

育「いただきまーす!」

お母さんの卵焼きってとってもおいしいの! フワフワしてて、甘くて、食べたら自然にほおが緩んじゃう。 まるで魔法みたいだなー……

育「あっ」

お母さん「どうしたの?」

育「ねぇ聞いて! わたし今日夢を見たの!」

お母さん「どんな夢?」

育「魔法を教えてもらって、魔法使いになる夢! えーっと、確か『えがおのまほう』!」

お母さん「ふふ、素敵な夢ね」

あー……

お母さんはちゃんと聞いてくれたけど、もしかしてこういう話って子どもっぽいかな…… 外じゃあんまりしないようにしよっと。

お母さん「でも、それなら育はずっと昔から魔法使いよ」

育「えっ、どうして?」

お母さん「育がね、笑ってくれるとわたしも嬉しいし笑顔になれるの。 純粋で可愛い育の笑顔がわたしとっても大好き」

育「お母さん……!」

育「わたしも! わたしもお母さんのこと大好き!」

お母さん「えへへ、ありがとう 育」

そう言ってお母さんはわたしの頭を撫でてくれた。 子どもっぽいけど、お母さんからされるのは好き…… 大好き。

そんな、最高の朝だったのに……

「おい! なんだよこれ!」

「えっ、何?」

わたしの暖かくて幸せな気分はクラスの男子にあっさり壊された。

原因は貸した消しゴムのカドを勝手に使ったことらしい。 そこから前にあーしたお前もこーしたで大喧嘩。

それを止めに行ったハナちゃんに暴力振るって、ハナちゃん泣いちゃったし、3時間目の気分は最悪……

育「はぁ…… わたしが本当に魔法使いならなぁ……」

わたしの魔法は『えがおのまほう』 喧嘩した男の子も、泣いちゃった女の子も、イヤな空気に沈んでるみんなもみんなみんな笑顔になるステキな魔法。

そうだなー、呪文は……

育「てぃんくるてぃんくる、キュアララぴっ」

なーんて、ね……

「フフフ……」

あれっ?

クラスのそこかしこから聞こえてくる笑い声

「「あ、あのさ! ごめん!」」

「えー! 二人喧嘩してたのに息ぴったりじゃーん」

「あははっほんとだ」

「こんなあっさり仲直り出来るなら最初から怒らなければよかった……」

「嫌な空気にしちゃってごめんな~」

あれ…… もしかしてわたし…… 本当に魔法を使えるようになっちゃった!?

放課後、わたしは魔法が本当に使えるのか、劇場の裏のチワワで試してみた。 多分笑ってた…… と思う。

それじゃあ次は……

育「桃子ちゃん!」

桃子「おはよ育、育はいつも元気だね」

いっつもおすまししてるわたしの親友の桃子ちゃん。 桃子ちゃんを笑わせてあげる!

育「ねぇ聞いて! わたし魔法が使えるようになったの!」

わたしが言った途端、桃子ちゃんは はぁ ってため息をついて

桃子「ねぇ育、育もあと2年くらいしたら中学生になるんだよ。 いつまでもそんな変なこと言ってたらお兄ちゃんみたいなダメな大人になっちゃうよ?」

呆れたような顔をしてる…… そんな顔してられるのも今のうちだもんねー!

育「わたしは人を笑顔にしてあげられる魔法使いになったの!」

桃子「ふーん、それなら志保さんとか紬さんとか笑わせてあげたら?」

育「キュアララぴゅあきゅあ、ラララのぴっ」

あれ、呪文ってこんな感じだっけ?

桃子「えぇ~…… 育ってば何そのセンス」

桃子「ふっ、ふふっ…… あ、あれ…… 桃子なんでこんなに笑ってるんだろ……」

桃子「ちょ、ちょっと育! な、何したの? お、面白くって…… あははっ!」

ふふっ、やっぱり桃子ちゃんはおすまし顔より笑ってるのが可愛いな~

桃子「育…… もしかして本当に……」

落ち着いた桃子ちゃんの口にわたしは指を当てて しー をする。

育「それ以上は言っちゃダメだよ桃子ちゃん、この魔法が世間に広まっちゃったら悪いオトナに利用されちゃうからね」

桃子「……」

育「魔法使いなことは誰にもヒミツだよ。 環ちゃんにもプロデューサーさんにも」

桃子「こくこく」

なんて…… わたし今スッゴくアニメのキャラクターみたいじゃない!?

本当の本当に魔法使いになれるなんて、ありがとうお姉さん!

それからわたしは泣いてる人を見つけるたびにこの魔法を使って笑顔にしていった。

そしてこの魔法を使い続けてわかったのが、どうやら詠唱破棄しても魔法は使えるみたい。 楽しいからやるけど。

それともうひとつ、わたしはこの魔法の一番いい使い道を思い付いちゃった!

育「みんなー! 今日は会場のみーんなを笑顔にしちゃうよー!」

そう、それはライブ! ライブでこの魔法を使うとスッゴい盛り上がるの!

ライブでこれを使うのは何かズルしてるみたいだけど…… でもお客さんが盛り上がってるんだしいいよね!

育「世界を、笑顔にーっ!」


* * *


て、そこまでは良かったんだけど……

育「なんだか魔法使いって意外と楽しくないなぁ……」

だって可愛い衣装に変身出来るわけでもないし、空を飛んだり必殺技を出したりも出来ないんだよ?

それに魔法のことは結局桃子ちゃん以外に言ってないから、喧嘩してる人たちを仲直りさせてももちろん感謝なんてされないし。

育「はぁ……」

机に突っ伏してため息。 わたしに魔法かけてみようかな……

桃子「ねぇねぇ育!」

育「なぁに桃子ちゃん?」

桃子「これ見て! このシールすっごい可愛いよ! それにもこもこだし!」

そう言って桃子ちゃんが見せてきたのはパンケーキのシール。 もこもこを2,3回触ったらもう飽きちゃった。

育「うん、かわいーねー……」

桃子「もう、何でそんなに反応薄いの? 何処か調子悪いの?」

育「別にそんなこと無いよ。 シールで盛り上がるなんて桃子ちゃんは子どもだね~」

桃子「もー! なんでそんなこと言うの!? 育なんて知らないからっ!」

あ…… 桃子ちゃん怒っちゃった…… 後で魔法使お……

何か最近こんなことばっかり、何故か疲れることも多いし…… 楽しくないなぁ。


お姉さんは『人を幸せに出来る魔法』って言ってたけど、この魔法じゃわたしは幸せになれないのかな……

育「詠唱破棄」

俺「!!?!?!?」

ってなった

今日はライブの日 何だか調子悪いけど、お客さんみんなを笑顔にするために頑張らないと!

って意気込んでたのに……

「何すんだよ!」

劇場に向かう電車で喧嘩が始まっちゃった。 みんななんでこんなにイライラしてるんだろ…… 嫌になっちゃう。

まぁ魔法使ってあげるけどさ、アニメのヒロインも大変だよね、頑張ってもありがとうって言われないんだもん。

なんて心の中で少し文句を言いながら魔法を使った…… けど何も起こらなかった。

あれ? なんで? 魔法を使ったはずなのに笑顔にならない……? どうして……

う、うん。 きっと今はちゃんと詠唱しなかったから……ちゃんと呪文を唱えればきっと……

結局、わたしの魔法は成功しなくて、電車を降りる時までわたしは嫌な空気から逃げ出すことは出来なかった。

その後も道行く人、劇場の裏に居るチワワ、色んな相手に魔法を試してみたけど誰も笑ってくれなかった。

わたし…… 魔法が使えなくなっちゃった……!?

育「ど、どうしよう……」

最近はいつもライブの時に魔法を使ってお客さんを楽しませていたけど、魔法を使わなかったら……

魔法を覚える前にわたしどうやってライブをしていたんだろ、お客さん盛り上がってくれるのかな……

不安は次から次へと出てくる。 そこでわたしは初めて気付いた。 わたしは魔法に『使われてた』んだって

衣装に着替えて舞台に出る前、わたしは緊張で立ち上がれなくなっちゃった。

桃子「そっか…… 育の魔法なくなっちゃったんだ」

育「うん…… わたしあれが無かったらきっと上手くライブ出来ないと思う……」

エレナ「うーん……」

エレナ「そうなのかナー?」

美也「わたしは魔法なんて無くても大丈夫だと思いますよ~」

育「でも……」

桃子「桃子はダメだと思うな」

育「も、桃子ちゃん……?」

桃子ちゃんは立ち上がって、わたしのほっぺたを握って……

育「いひゃいいひゃい、にゃにするのももこひゃん……」

桃子「今の育じゃダメだって言ってるの! だから桃子が育の目を覚まさせてあげる!」

育「えぇ?」

美也「?」

桃子「育は魔法を無くしてなんていない、ただ使い方を忘れてるだけ、いい?」

育「わ、わかんないよ~」

桃子「こうしたら思い出すでしょ~」

育「ふぉっぺにあほついちゃうよ~」

桃子「本当にわからないの? もう、育ってば本当に何もわからないんだから」

エレナ「フーン…… ワタシはモモコの言いたいことわかったヨ」

美也「うーん、わたしもなんとなくわかりました~」

えー…… わかんないわかんないよ~ どういうこと~? もっとわかやすく言ってよ桃子ちゃーん……

桃子「それじゃあ時間も無いし、何も知らない育のために桃子が誰でも使える、人を幸せにする魔法のことを教えてあげる」

エレナ「それはね、自分が笑うことだヨっ」

そう言ってエレナさんは思いっきりニコって笑った。 エレナさんの笑顔はいっつもキラキラしてて、わたしの落ち込んだ気持ちも少し浮かんだ気がする……

育「あっ」

桃子「ちょっとエレナさん! 桃子のセリフ取らないでよ…… まぁいいけど」

桃子「これで気付いた? 誰かを笑顔にするためにはまず自分が笑顔にならないといけないんだよ」

育「自分が笑顔……」

桃子「最近の育全然笑ってなかったでしょ?」

確かに……

桃子「い、育の笑った顔…… す、すっごく可愛いんだから、ちゃんと笑顔で居てよね……」

育「桃子ちゃん…… !」

エレナ「エヘヘ~」

美也「ふむふむ~」

桃子「って! なんでエレナさんと美也さんも笑ってるの!」

エレナ「モモコも笑ってた方が可愛いヨー」

美也「仲良しなのはいいことですね~」

桃子「もーっ!」

育「エレナさん、美也さん、そして桃子ちゃん、ありがとう! わたしめいいっぱい笑って、お客さんもみんな笑顔にしてみせるね!」

エレナ「頑張るのは」

美也「わたし達もですよ~」

桃子「それじゃ、いこっ!」

ステージに立って、イントロが流れてくる。

この曲、きっと今のわたしにぴったり! 歌ってるだけで勇気が沸いて、笑顔になれるもん!

桃子「君の笑顔、とても素敵! 自信を持って!」

桃子ちゃんがにっこり笑ってくれる。 桃子ちゃんの笑顔を見たらわたしも笑顔で返す。

育「君の笑顔、大好きだよ! 輝いてる」

お客さんの顔もしっかり見える。 みんな笑ってくれてる。 うん、大丈夫!

「「世界にひとつの、宝物だね」」

育「お母さんお母さーん!」

お母さん「どうしたの? 今日のライブ楽しかった?」

育「えっ! 何でわかったの!?」

お母さん「ふふっ、育の顔を見たらわかるわよ」

お母さん「最近の育、全然笑ってなかったから少し心配だったの、何か辛いことあったんじゃないかって」

お母さん「でもその様子だと大丈夫そうね」

そっか…… お母さんも心配させちゃってたんだ……

育「安心して! わたし、本当の『まほう』を覚えたから!」

お母さん「そう…… 良かった」

わたしが笑うと、お母さんも笑ってくれる。 きっとこれが人を幸せにする、本当の『えがおのまほう』なんだよね!


おわり

コメントくれた人、読んでくれた人ありがとうございました。

笑顔の宝物だっけ?これを育で書いてくれたこと嬉しいわ
乙です

>>1
中谷育(10)Vi/Pr
http://i.imgur.com/wf7EBcs.jpg
http://i.imgur.com/AUrY813.jpg

>>7
周防桃子(11)Vi/Fa
http://i.imgur.com/9ljd6Vu.jpg
http://i.imgur.com/yNTOiXo.jpg

>>17
宮尾美也(17)Vi/An
http://i.imgur.com/vGEecVI.jpg
http://i.imgur.com/roD1T7G.jpg

島原エレナ(17)Da/An
http://i.imgur.com/hKXMgKT.jpg
http://i.imgur.com/PlGk6kr.jpg

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