凛「錬金術士?」花陽「ハナヨのアトリエです!」 (55)


「えっと、確かこれをこうやって……」


「それから、こっちをほんの少しだけ……」


「混ぜながらこれを足していく……」


「よしっ、ここまでは順調!」


「次にうにを入れて、マジックグラスを、っと……」


「そしてここで一気に、まぜーるまぜーる……」


「…………」


「それから仕上げにハチミツを……」


「するとだんだんと真っ黒になって変なにおいがしてきて……」


「……ん?」


「真っ黒!? 変なにおい!?」


「どっ、どうしよう! えっとえっと、こんな時はえっとぉ……!」


「あっ! そうだ、とりあえず中和剤とかでなんとかして!」


「ならないよぉ~! どうしようどうしよう、もうどうにもなんないよぉ……!」







「ダレカタスケテェ~!」








ドカーーーーーン!

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バタンッ!


「大丈夫ですかっ! ハナヨ!」


ハナヨ「あうぅ……」


「まったく、またですか……」


ハナヨ「またやり直しになっちゃった……」


「まだ続けるつもりですか!? どうするんですかこの部屋!」


ハナヨ「えっと、どうしよう……」


「爆発してしまい散らかってその上煤だらけ、掃除するしかないでしょう」


ハナヨ「そっか」


「はぁ……」


ハナヨ「どうしたの?」


「掃除、できるんですか?」


ハナヨ「ちょっと、難しい、かも」


「代わりに、誰がするんですか?」


ハナヨ「ウミお姉ちゃん」


ウミ「掃除が済んだら、また、ですか?」


ハナヨ「お姉ちゃんが掃除してる間にまた材料集めてくるね!」


ウミ「…………」プルプル


ハナヨ「お姉ちゃん?」


ウミ「今日という今日は、絶対許しません!!」


ここは、アキハバラの南にある小さな村、オトノキザカ


私はウミお姉ちゃんと2人で、錬金術の為のアトリエがある家で暮らしています


申し遅れました、私はハナヨ・コイズミっていいます


みんなからはハナヨとかカヨちゃんなんて呼ばれています


お姉ちゃんの名前はウミ・ソノダ


苗字が違うのは、


「その名前の方がなんとなく良さそうやん、スピリチュアル的に」


って、占い師さんに言われたからだって……


私には夢があります


それは「立派な冒険者になる」こと


あっ、冒険者っていうのは……


まだ誰も知らない場所に行って調査したり、危険な魔物を対峙したりする職業です


その為に、“師匠”から教えてもらった錬金術の練習は毎日欠かしません


そして、いつか錬金術士としてみんなの役に立てる立派な冒険者になるんです!


ハナヨ「はぁ……」


ハナヨ「とりあえず広場に出て来たけど、お姉ちゃん機嫌悪いし家には戻れないよ……」


ハナヨ「そうだ、村の外に出て錬金術の材料取ってこよう!」


「あれ、かよちん!」


ハナヨ「リンちゃん!」


リン「こんなとこで何やってるの? もしかして、またウミちゃんに怒られちゃったり?」


ハナヨ「うん、調合してたら爆発しちゃって……」


リン「またー? かよちんはおっちょこちょいだにゃー」


ハナヨ「うぅ、ちゃんとレシピ通りに調合したのに……」


リン「レシピって、お師匠さんから貰った?」


ハナヨ「そうなの! “師匠”から貰ったレシピを見て、毎日練習してるんだ!」


リン「へー! さすがかよちん! 頑張り屋さん!」


ハナヨ「えへへ…… そうだ、それでね、村の外まで出かけて錬金術の材料でも取りに行こうかなって、だから」


リン「それならリンも連れてってほしいにゃ!」


ハナヨ「うん、もちろん、心強い!」




カランコローン


ハナヨ「こんにちは、ニコちゃん」


リン「こんにちはー!」


ニコ「どうしたの、ハナヨ、リン」


ハナヨ「これからリンちゃんと二人で村の外の森で錬金術の材料を取りに行くの」


ニコ「へえ、気を付けなさいよ。村の近くとはいえ、魔物は出るんだから」


リン「その時はリンがかよちんを守るから安心だよ!」


ニコ「どうかしらね。それで? 何か用事?」


ハナヨ「え?」


ニコ「アトリエの方から爆発音も聞こえたし、ウミに叱られて、自棄酒でもあおりに来たの?」


ハナヨ「違います! まだ未成年なんですから……」


ニコ「それじゃ、それこそ何の用よ」


ハナヨ「えっと、何となく立ち寄っただけで……」


ニコ「何となく立ち寄っただけって…… こっちは暇じゃないんだけど?」


リン「お客さん全然いないのに?」


ニコ「うるさいわね! これからちょっと他の仕事も始めようと思ってね、その準備をしてたの」


ハナヨ「酒場、やめちゃうの?」


ニコ「やめないわよ、酒場と一緒にやるつもりだから」


リン「それじゃどんな仕事なの?」


ニコ「うーん、アンタ達には関係ないし…… あ、ハナヨには力借りることになるかもしれないわね」


ハナヨ「えっ、私?」


リン「リンはリンはー?」


ニコ「まあ、依頼の内容によっては頼むかもね」


リン「依頼?」


ニコ「まあ、詳しいことは準備が済んでから話すわ。明日、もう一度来てくれる?」


ハナヨ「明日? うん、大丈夫だよ」


ニコ「よろしく頼むわ。さて、それじゃ急いで準備しなきゃね……」




ハナヨ「それにしても、私に頼むなんて、どんなお仕事なんだろう……」


リン「かよちんは錬金術師さんだから、きっとすーっごいお仕事だよ!」


ハナヨ「そ、そんなぁ~!」


リン「大丈夫大丈夫、かよちんならきっと上手くいくよ!」


ハナヨ「それじゃ、どこに行こうかな」


リン「ニューズの林にしようよ! 木の実とか草とか、たくさん採れるよ!」


ハナヨ「えっ、ミューズ?」




 ~ニューズの林~


リン「さあ、モンスター倒しまくるにゃー!」


ハナヨ「えぇ~!?」


リン「リンの修行にもなるし、材料も落としてくれるし、一石二鳥にゃ!」


ハナヨ「うぅ、不安だよ……」


リン「よーし、どっからでもかかってこーい!」


ハナヨ「わ、私戦うのとか苦手だから…… 待ってよリンちゃーん!」



ハナヨ「って、ぴゃぁー!」


リン「どうしたのかよちん! あぁー! 出たにゃたるリス!」


たるリス「……!」


たるリス、アキハバラ全域に生息するモンスターの一種
丸っこいリスのような見た目をしており、なぜか樽を持っており、それを投げつけて攻撃してくる


ハナヨ「た、たる投げてきたぁー!」


リン「任せるにゃ!」ガシッ


ハナヨに向かって投げられた樽をリンが身体を張って受け止める
結構痛そう……


ハナヨ「ありがとう、リンちゃん、大丈夫?」


リン「へーきへーき! さあ、それより反撃にゃ! いっくにゃー!!」


リンは腰に差している剣でたるリスに斬りかかる


たるリス「~~~!」


リン「効いてる効いてる! かよちんも続けて!」


ハナヨ「わ、わかった! ……うぅ~、えいっ!」


ぽこっ、と気の抜けた音がしそうな動きでハナヨは杖でたるリスを殴りつける
見た目に似合わず接近戦だ


リン「よーっし、トドメにゃ!」


たるリス「~~~!!」


ハナヨ「はーっ、はーっ…… げほげほっ」


リン「かよちん大丈夫!?」


ハナヨ「な、なんとか…… ごめんね、やっぱり私戦うの苦手で…… リンちゃんは全然平気そう」


リン「うん! 毎日鍛えてるからね! これくらい楽勝だにゃ!」


ハナヨ「すごいなぁ」


リン「なんたってリンは、この国一番の冒険者になるんだもん!」


ハナヨ「わ、私だって立派な冒険者になるよ!」


リン「その意気にゃ! それじゃ、今日の目標はあと百匹倒すことに決定! やるよー!」


ハナヨ「百匹!? 無理ムリ、私の方が先に倒れちゃうよ……」


リン「大丈夫、その時はリンがおんぶして連れて帰ってあげるから! それじゃ行こっ!」


ハナヨ「あぁ、待ってよリンちゃーん!」


ハナヨ「……でも、やっぱりそれくらいやらなきゃ冒険者にはなれないのかな……」



リン「よーっし、次はあっちの方に行ってみるにゃ!」


ハナヨ「ダメだよリンちゃん」


リン「どうして?」


ハナヨ「ほら、これ」


看板『この先非常に危険。冒険者の人以外は立ち入り禁止』


リン「そっか、冒険者にならないとあまり遠くまで出歩けないんだよね」


ハナヨ「残念だけど、強いモンスターがいるかもしれないし、やめとこう?」


リン「うん、分かった! でも、冒険者になったら調べに行こうね、かよちん!」


ハナヨ「うん!」


 ~オトノキザカ村~


リン「よし、今日の特訓終了!」


ハナヨ「つかれたぁ……」


リン「大丈夫、かよちん? リン、ついはしゃいじゃって連れまわしすぎちゃったよね」


ハナヨ「ううん、大丈夫だよ」


リン「ほんと?」


ハナヨ「うん。でも材料もたくさん採れたし、しばらくは外に出るの、やめとこうかな……」


リン「ゆっくり休んでね! それで、また外に出かけるときは着いて行ってかよちんを護衛してあげるね!」


ハナヨ「ありがとう、リンちゃん」


リン「えへへっ! それじゃ、またね!」


ハナヨ「うん、またねリンちゃん!」


ハナヨ「……はぁ」


ハナヨ(冒険者かぁ…… 私もなりたいけど、リンちゃんみたいに体力ないし、頭もそんなに……)


ハナヨ(冒険者になれたら、もっといろんな材料を見つけて、いろんなものを作って、それで……)


ハナヨ「“師匠”を探しに行けるんだけど……」


今日はここまで

ミミ・ウリエ・フォン・シュヴァルツラングちゃんprpr




ハナヨ「ただいまー」


ウミ「おかえりなさい、ハナヨ」


ハナヨ「あっ、お姉ちゃん……」


ウミ「もう、こんな遅い時間まで何してたんですか」


ハナヨ「えっと、リンちゃんと村の外の林に錬金術の材料を採りに……」


ウミ「ふーん、そうですか。私に散々な部屋の掃除をさせている間に……」


ハナヨ「ご、ごめんなさい! やっぱり、怒ってるよね……」


ウミ「ええ、怒っています」


ハナヨ「うぅ……」


ウミ「そうです、私は怒っています。……せっかく作った夕飯が冷めちゃったからです」


ハナヨ「お姉ちゃん!」


ウミ「今日はお魚のパイです」


ハナヨ「やったー!」


ウミ「お腹、減ったでしょう。沢山食べてくださいね」


ハナヨ「うん、ありがとう、お姉ちゃん!」



ハナヨ「よーし! 昨日採ってきた材料を使って調合してみよう!」


ハナヨ「まずはマジックグラスを入れて……」


ハナヨ「次にマンドラゴラの根をちぎって……」


ハナヨ「最後に水を注いで混ぜれば……」


ハナヨ「やった! ヒーリングサルヴのかんせーい!」


ウミ「よかった、今日は失敗しなかったみたいですね」


ハナヨ「わわぁ! お姉ちゃん、見てたの?」


ウミ「ええ、爆発しそうになったら急いで止めようと思って」


ハナヨ「私だって、そんな毎日失敗したりしないよ? “師匠”に教わった通り、レシピ通りにやってるし……」


ウミ「教わった通りですか、昨日もそんなこと言ってたと思いますけど……」



ハナヨ『んしょ、んしょ…… こんな、感じ、ですか?』


???『うん、ばっちり! あとはそのまま、まぜーてまぜーてかき混ぜ続けて……」


ハナヨ『こ、こうですか? まぜーてまぜーて……』


???『あああ、違う違う! それじゃあまぜてーまぜてー……だよ! もっとこう、まぜーてまぜーて……』


ハナヨ『は、はい! えっと、まぜーてまぜーて……』


???『そうそうそんな感じ! 次はその、青っぽい草! それをぱらぱらーって入れて?』


ハナヨ『青っぽい…… これですか? ぱらぱらー……』


???『上手上手! ハナヨちゃんすごいよ! 天才だよ!』


ハナヨ『そ、そうですか? えへへ……』


???『あ、まだ油断しちゃだめだよ? もうすぐぼんっ!ってなるから、それまでまぜまぜし続けて?』


ハナヨ『は、はい!』


ぼんっ!


ハナヨ『ひゃぁっ! あ…… で、できた?』


???『うん、成功だよ! おめでとう! やったね!』


ハナヨ『ほんとうにできたんですか? 私が! 錬金術を!』


???『できたよ! 本当にできたんだよ! うんうん、良かった良かった、頑張った甲斐があったよ!』


???『今までいろんな子に教えてきたけど、ハナヨちゃんが初めてだよ! こんなに上手くいったの! ハナヨちゃん、天才だよっ!』


ハナヨ『そ、そんなぁ! 師匠の教え方上手でしたし、そのおかげですよ』


???『へっ? 今、何て……?」


ハナヨ『えっ? だから、師匠の教え方、上手でしたし』


???『わわ、私が…… 師匠! ねえ、ハナヨちゃん!!』


ハナヨ『は、はいっ!』


???『もう一度! もう一度言ってみて!』


ホノカ『ちゃんと、ちゃんとホノカ師匠って言ってみて!』


ハナヨ『えっ、は、はい、ホノカ、師匠……?』


ホノカ『いい、いいよ……! それじゃ次はね、もっとふわぁーっとした感じで言ってみて! ほのかししょー、って!』


ハナヨ『ほ、ほのかししょー』


ホノカ『あー、もうかわいい! ハナヨちゃん大好きだよっ!』


ハナヨ『わ! ちょ、抱き着かないでくださいー!』



ウミ「横で聞いてて、私にはさっぱりでしたが」


ハナヨ「わ、私には分かりやすかったよ?」


ウミ「それにしても、変わった師匠?でしたね」


ハナヨ「うん、それは否定、出来ないけど……」


ウミ「いろんな人に錬金術を教えてるって言ってましたけど、今はもう、さっぱり便りも無いですし……」


ハナヨ「師匠……」




ハナヨ「たーる!」





ハナヨ「そうだ、ニコちゃんに今日来てくれって呼ばれてたんだった」




 ~バー・ヤザワ~


ハナヨ「ニコちゃん、こんにちは」


ニコ「あ、来たわね。適当に座ってちょうだい」


ハナヨ「ありがとう。それであの、私に頼みたいことって?」


ニコ「ええ、今から説明するわ。前々から考えてたことではあるんだけどね」


ニコ「今日から新しい仕事を始めることにしたのよ」


ニコ「今の仕事だけじゃ、とても食っていけないからね……」


リン「お客さん、全然いないもんね!」


ニコ「うるさいわね! そう何度もはっきり言わないでくれる!?」


リン「あはは!」


ニコ「まあ良いわ。それで、その新しい仕事なんだけど」


ニコ「ユーティーからの依頼をまわしてもらうことにしたの」


ハナヨ「ユーティーからの、依頼?」


ニコ「ええ、ユーティー。ユーティー・エックスでは住民の依頼を国がまとめてね」


ニコ「それを冒険者や融資の人間に斡旋するシステムがあるの」


ニコ「そういった以来の一部を、この村にまわしてもらうことになったってわけ」


ニコ「ユーティーでは手に入りにくい物でも、こういう田舎の村では容易に手に入るってこともあるみたいだし」


ハナヨ「はぁ…… それは分かったけど、何でその話を私に?」


ニコ「そりゃ、あんたにその仕事をやってもらいたいからよ。この村には冒険者もほとんどいないしね」


リン「リンがいるじゃん!」


ニコ「じゃあ東の海に棲むっていう海竜でも退治しに行ってくれる?」


リン「そ、それは無理だにゃ……」


ニコ「とにかく、頼んだわよハナヨ。難しい依頼は最初から私の方から断っておくし」


ニコ「なによりあんたは錬金術士でしょう? 冒険者じゃ手に入れられないものでも作れるじゃない」


ハナヨ「でも、まだ修行中の半人前だから……」


ニコ「そう難しく考えなくていいのよ。何も全部の仕事をやってほしいってわけじゃないんだから」


ニコ「あんたができるものだけをやってくれればいいの」


ハナヨ「私のできるものだけ…… 分かった、頑張ってみる!」


ニコ「良い返事ね。それじゃ、これからは時々店に顔を出してちょうだい。依頼は不定期で入ってくるから」


ニコ「それとリン、ハナヨのことサポートしてあげなさいよ」


リン「うん、もちろん!」


ニコ「ハナヨを守ってあげられるのは、あんただけなんだからね」


リン「えへへ! 任せるにゃ!」


ニコ「そのうちあんたにも個人的に仕事まわしてあげるわ、それまではハナヨの護衛よ」


リン「分かった!」



リン「それで、どんな依頼を受けたの?」


ハナヨ「えっと、『マジックグラスを二個集めてほしい』『中和剤を二個作ってほしい』だって」


リン「マジックグラスって、村の西側の平原にあったはずだよ!」


リン「中和剤ってのは……」


ハナヨ「中和剤は私の錬金術で作れる物だよ。それじゃ、まずはマジックグラスから、かなぁ」


リン「それじゃ、出発にゃー!」




 ~西方の平原~


ハナヨ「わぁ、綺麗な草原。お花も咲いてるね」


リン「風が気持ちいいにゃぁ……」


ハナヨ「ふわぁ、なんだか眠くなっちゃうよ……」


リン「リンもぉ……」


ハナヨ「…………」


リン「…………」


2人「……zzZ」


???「……!」



どかっ!


ハナヨ「ぴゃぁー! なっ、なに!?」


青ぷに「…………!」


青ぷに。名前の通りぷにぷにしたモンスター。初心者冒険者でも簡単に倒せるくらい弱い。
緑色をした緑ぷにや、動物の耳のようなものが付いた耳ぷになんてものもいるらしい。


ハナヨ「も、モンスター! ちょっと、リンちゃん! モンスターだよ!」


リン「にゃぁ…… まだ眠いにゃぁ……」


ハナヨ「リンちゃーん!」


青ぷに「……っ! っ!!」


ハナヨ「ぴゃぁー! こ、転がってきたよぉー!!」


青ぷに「っ! っ!」


ハナヨ「ダレカタスケテ~!」


 どてっ!


ハナヨ「あいたた…… って、うわぁ! 逃げられないよぉ~!」


ハナヨ「いやぁー! 来ないでー!」ブンブンブンブン


 ぽかっ!


青ぷに「っ! …………」


ハナヨ「いやぁー! いやぁー! ……って、あれ?」


青ぷに「…………」


ハナヨ「もしかして、倒した? 倒せた!?」


リン「ふわぁ~、もしかしてリン、寝てた……」


ハナヨ「リンちゃーん! やったよ~!」


リン「どうしたの、かよちん?」


ハナヨ「ぷに! ぷにをね、倒したんだよ!」


リン「えぇー!! かよちん一人で!?」


ハナヨ「うん、杖でね! ぽかってやったらね、倒せたの!」


リン「すごいにゃー! さすがかよちんだにゃー!」


ハナヨ「えへへ、これで立派な冒険者に少し近づいたかな……」


リン「あれ、ぷにが何か落としてったみたい」


ハナヨ「えっ? あっ、これ、ぷにぷに玉だ」


リン「ぷにぷに玉?」


ハナヨ「うん、錬金術の材料になるんだ、持って帰っちゃお!」


リン「でもそれ……」


ハナヨ「うん……」


リン「なんか、動いてる……」


ハナヨ「生きてる、よね……」


リン「…………」


ハナヨ「…………」


リン「マジックグラス、さがそっか」


ハナヨ「うん……」



ハナヨ「マジックグラスも見つかったし、村に戻ろうかな」


リン「ねえねえかよちん、今お金いくらくらい持ってる?」


ハナヨ「お金? そんなに持ってないけど、なんでいきなり?」


リン「そっか…… なんとかして二人で、十万コール貯められないかな?」


ハナヨ「じゅ、じゅうまん!? 無理だよ、そんな大金! 何に使うの?」


リン「ユーティーに行こうよ。冒険者の免許貰うために」


ハナヨ「ユーティーに行くのって、そんなにお金かかるの?」


リン「うん、ほら、ニコちゃんの妹二人が馬車、やってるでしょ?」


ハナヨ「ココロちゃんと、ココアちゃんだね」


リン「それでね、ニコちゃんに聞いてみたら、馬車の料金は十万よ、って」


ハナヨ「そうなんだ…… あれ? 私も一緒に行くの? 良いの?」


リン「もちろん! だって、リン、かよちんと一緒に冒険者になりたいんだもん!」


リン「それに、かよちんだって冒険者になりたいんでしょ?」


ハナヨ「それはまあ、そうだけど…… でもそんな免許なんて私がもらえるのかな」


ハナヨ「って、あれ? そういえば私、リンちゃんに冒険者になりたいなんて言ったことあったっけ?」


リン「無いよ。でも、リンが冒険者の話するとすっごくうずうずした顔してるんだもん、聞かなくても分かるよ!」


ハナヨ「うずうず、してるんだ……」


リン「でも、そっか…… かよちんもお金持ってないかぁ…… どうやってお金貯めれば良いんだろう」


ハナヨ「まさかリンちゃんにバレバレだったなんて……」


ハナヨ「一度、お姉ちゃんに相談してみようかな」



ハナヨ「ただいまー」


ウミ「あ、お帰りなさい。夕ご飯、もう少し待ってください」


ハナヨ「う、うん……」


ウミ「どうしたの? 珍しくおとなしいではありませんか」


ハナヨ「え? ベ、別にどうもしないよ?」


ウミ「嘘ですね。ハナヨがおとなしいのは、リンちゃんと喧嘩した後か、何かおねだりしたいときって決まってますから」


ハナヨ「そ、そんなこと、ないよ……?」


ウミ「言いたいことがあるなら、言ってください」


ハナヨ「言っても、怒らない?」


ウミ「怒ったりしませんよ。よっぽどひどいことじゃなければ、ですが」


ハナヨ「う…… じゃあとりあえず言うけど…… あのね、もしも……もしもだよ?」


ハナヨ「私が、冒険者になりたいって」


ウミ「ダメです!」


ハナヨ「…………」


ウミ「…………」


ハナヨ「ぅ、ご、ごめんなさい! あの、もしも、もしも、の話、だから……」


ウミ「もしもでもなんでもダメです! 何をバカなことを言ってるんですか!?」


ハナヨ「バ、バカって…… 確かに私はおっちょこちょいで、要領も悪いけど……」


ウミ「そうです。だから貴女に冒険者なんて絶対に無理です」


ハナヨ「ぜ、絶対に無理なんて……」


ウミ「だってそうでしょう!? アトリエの掃除も、料理も、何も一人ではできないのですから!」


ウミ「そんなダメダメなところが可愛いのですが…… とにかく、無理なものは無理です!」


ハナヨ「そ、そこまで言わなくても……! 私にも、できること、ある……はず」


ウミ「なんですか? 爆発だらけの錬金術とでも言うつもりですか?」


ハナヨ「そう! 錬金術だよ! たまに爆発しちゃうかもしれないけど、これから上手くなる!」


ハナヨ「錬金術上手くなって、そして……」


ハナヨ「“立派な冒険者”になるの!」


ウミ「……っ!」







『私ね、“立派な冒険者”になるの』







ウミ「や、やめてください! ハナヨまでコトリのように…… そうなったら、私……」


ハナヨ「コトリ……? コトリって、誰?」


ウミ「……ハナヨには関係ありません」


ハナヨ「どうして!? だって、そのコトリって人のせいでお姉ちゃん私が冒険者になるのダメって言ってるんでしょ!?」


ウミ「だって、冒険者になったから、コトリは…… もう……」


ハナヨ「分かった、じゃあ私冒険者になってその、コトリって人探してくる」


ウミ「何をバカなこと!」


ハナヨ「それなら良いでしょ!」


ウミ「無理です! あなたはコトリのこと、覚えてさえいないのでしょう? それに、コトリはあの時……」


ウミ「とにかく、ダメなものはダメです!」


ハナヨ「お姉ちゃんの分からず屋! 大っ嫌い!」


ウミ「ハナヨ!」


 ばたんっ!


ウミ「……私だって、言いたくて言ってるわけじゃないんです」


ウミ「いつぶりでしょう、姉妹喧嘩なんてしたの……」


ウミ「ハナヨももう、大きくなったのですかね」



 翌朝


ハナヨ「お姉ちゃん、まだ怒ってるかなぁ……」


ハナヨ「でもでも! 昨日のは、半分はお姉ちゃんが悪いと思う!」


ハナヨ「残りの半分は、私が悪かったけど……」


ハナヨ「それにしても、コトリって誰なんだろう……」


ハナヨ「ううん、それは今は関係ない! ちゃんと謝らなきゃ!」




ハナヨ「お、おはよう、お姉ちゃん」


ウミ「…………」


ハナヨ「あ、あの…… お姉ちゃん? えっと、昨日は、その……」


ウミ「あっ、はい、その、昨日は、私も……」


ハナヨ「だから、ご、ごめんなさい!」


ウミ「そんな謝らないでください! 私の方が大人げなかったんです! すみません……」


ハナヨ「そ、そんなぁ! 頭を上げてよ!」


ウミ「いえ! 上げられません!」


ハナヨ「いいよ~! 全然、そんな、私気にしてないし!」


ウミ「ハナヨが気にしなくても私が気にします!」


ハナヨ「うぅ、そんなぁ……」


ウミ「…………」


ハナヨ「…………」




ウミ「ふふっ……」


ハナヨ「ぷぷっ……」


二人「あはははははは!」


ウミ「不思議ですね、昨晩あんなに喧嘩してたというのに」


ハナヨ「変だね、あははっ!」


ウミ「ふふふっ、ホントですね」


ハナヨ「もう、怒ってない?」


ウミ「どうでしょう、大嫌いと言われましたからね」


ハナヨ「大嫌いじゃないよぉ! 大好きだよ!」


ウミ「ええ、私もです、ハナヨ」


ハナヨ「ねえ、今日もお魚のパイが食べたいな!」


ウミ「ええ、良いですよ」


ハナヨ「また、お部屋の掃除手伝ってくれる?」


ウミ「手伝うというより、全て私がやってますけどね」


ハナヨ「冒険者になっても良い?」


ウミ「それはダメです」


ハナヨ「どうして!」


ウミ「ダメなものはダメです。さあ、この話はもうおしまいにしましょう」


ウミ「また冒険者になりたいだなんて言ったら、もう…… 一生口きいてあげません」


 ばたんっ!


ハナヨ「お姉ちゃん!」


ハナヨ「仲直りできたと思ったのに……」


ハナヨ「良いもん、リンちゃんと二人で勝手に冒険者になるもん!」

今日はここまで

トトリのアトリエをベースに少しずつ設定を変えたり、
泣く泣くキャラクターを削除したりしてます。

ミミ・ウリエ・フォン・シュヴァルツラングちゃんprpr



ハナヨ「依頼の種類はアイテムを集めてくるものと、調合して届けるもの、それからモンスターをやっつけるものがあるみたい」


リン「それならモンスターをやっつけるのが良いと思うにゃ!」


ハナヨ「えー」


リン「依頼も達成できるし、訓練にもなるし、一石二鳥だよ!」


ハナヨ「でも、大変そう……」


リン「これなんてどう? 青ぷにを4体、だって。これなら簡単だと思う!」


ハナヨ「私は、こっちの調合の方がいいかなぁ。楽しそうだし」


リン「でも、モンスターやっつける依頼の方が報酬は多いみたいだよ?」


ハナヨ「ほんとだ。そっちの方が20コールくらい高いんだ……」


リン「なんとか10万コール集めて、ユーティーに行って冒険者になるんだよ!」


ニコ「じゃあもう両方やりなさいよ」


ハナヨ「そっか」


リン「なるほど!」




 ~ハナヨのアトリエ~



ハナヨ「それじゃ、中和剤を作ろうと思います!」


リン「リン、隣で見てても良い?」


ハナヨ「うん、もちろん!」


リン「ウミちゃんも近くで見たらいいのに」


ウミ「私はここで結構です」


リン「ふーん、まあいいや」


ハナヨ「えっと、中和剤は、確か……」


リン「それは?」


ハナヨ「これ? 師匠から貰った錬金術のレシピ帳だよ。これにいろんなレシピが載ってるんだ」


リン「へー! リンには何が何だか分かんないや」


ハナヨ「まだ、簡単なものしか作れないんだけどね」


リン「これからもっと上手になっていけば良いにゃ」


ハナヨ「うんっ、ありがとう、リンちゃん!」



リン「それで、中和剤ってのは、どうやって作るの?」


ハナヨ「うん、えっと、材料は…… 何でもいいみたい」


リン「なんでもいいの?」


ハナヨ「うん……」


リン「じゃあ、この間かよちんが倒して手に入れたぷにぷに玉でも作れるの?」


ハナヨ「うん、出来るはず」


リン「じゃあじゃあ、西方の平原で拾った星テントウとかも入れてみよーよ!」


ハナヨ「うわぁ……」


リン「ていうかさ、何でも良いなら、井戸から汲み上げた水でも良いの?」


ハナヨ「大丈夫だよ」


リン「タダで手に入れた材料で作って……」


ハナヨ「報酬貰っちゃえば……」


リン・ハナヨ「…………」


ハナヨ「とりあえず、安らぎの花、入れとくね……」


リン「うん……」



 ~西方の平原~


リン「よーっし、青ぷに倒しまくるにゃー!」


ハナヨ「……リンちゃん」


リン「ん? どうしたの?」


ハナヨ「お金、頑張って貯めようね」


リン「いきなりどうしたの?」


ハナヨ「絶対冒険者になろうね!」


リン「う、うん!」


ハナヨ「お姉ちゃんなんて知らないもん!」


リン「もしかして、喧嘩でもしたの?」


ハナヨ「うん、少し前に」


リン「そ、そうだったんだ……」


ハナヨ「だからね、調合するときも離れて見ててねって言ったの!」


リン(とりあえず一緒にいてもらうんだ……)


リン「まあいいや。それで、かよちんはお金を稼ぐアテとかはあるの?」


ハナヨ「え? うーん、とりあえずニコちゃんのところの依頼で……」


リン「でもニコちゃん全然お金くれないよ」


ハナヨ「だよね……」


リン「うーん、でもなんとかして貯めないとなぁ。来月までに」


ハナヨ「……来月?」


リン「うん。次に馬車を出すのが来月なんだって。言ってなかったっけ?」


ハナヨ「聞いてないよ! そんな…… えっと、来月ダメだったら、次はいつなの?」


リン「気が向いたらって言ってた。来月逃したらいつになるか分かんないんだよね」


ハナヨ「そ、そうなんだ…… えー、来月までに、十万……?」


リン「ま、最初から諦めてちゃだめだよね! やるだけやってみよ!」


ハナヨ「う、うん…… でも、はっきり言って自信ないよ……」


???「そこで悪だくみをしてるのは、だーれーだー……」



ハナヨ「え……? ぴゃあああああああ!? な、なな、なにぃ~!!?」


リン「で、でかいにゃ…… 来ないで! かよちんに近づいちゃだめだよ!!」


声のする方へ振り返ると、そこには大きな赤いトカゲのようなモンスターがいた。


???「くっくっく…… 悪いことしてる子はた―べちゃーうぞー」


リン「かよちん、逃げるよっ!」


ハナヨ「む、無理…… 腰が抜けちゃって……」


???「まずは…… おいしそうな女の子の方からだあああ!」


ハナヨ「ダ、ダレカタスケテ~!」


リン「やめるにゃ! かよちんには手出させないから!」


ハナヨ「ぴゃぁ……」


???「……なーんちゃって。えへへー、私だよ、ハナヨちゃんっ!」


ハナヨ「へっ……? あ、あああああ! し、師匠!」


ホノカ「久しぶり、ハナヨちゃん! ごめんねー、脅かしすぎちゃった?」


ハナヨ「驚いたってもんじゃなかったですよ……」


ホノカ「えへへ、ごめんごめん…… それにしても君、カッコよかったね! 怖かっただろうに、ハナヨちゃんの前に立ってさぁ」


リン「えっと、師匠? ってことは、ホノカ、さん?」


ホノカ「そうだよ、あ、ちょっと待ってね。この大きいの抱えたままじゃ喋りにくいから……」


ホノカ「よいしょっと。……改めまして、私が、アキハバラ一の錬金術士と名高い、ホノカ・コーサカです!」


ハナヨ「そのモンスター、師匠が倒したんですか?」


ホノカ「うん! 倒したって言うか、爆弾でどかーん! いやぁ、折角可愛い可愛い弟子に久々に会いに行くんだし、お土産があった方が良いかなぁって」


ハナヨ「いらないですよ~」


ホノカ「え~、そんなぁ! せっかく持ってきたのに!」


リン「モンスターの死体貰って喜ぶ人なんていないにゃ」


ホノカ「じゃあウミちゃんにあげよっと」


ハナヨ「お姉ちゃん、今、機嫌があまり……」




ホノカ「それで? こんなとこで二人でこそこそと、何やってたの?」


ハナヨ「秘密、です」


ホノカ「え~、私だけ仲間はずれなんてひど~い」


ハナヨ「お姉ちゃんに知られたら、困るので」


ホノカ「へぇ、ウミちゃんに隠し事ねぇ…… 何だか面白そうだけど、今回はおとなしく引き下がってあげます!」


ハナヨ「ありがとうございます、ホノカ師匠」


ホノカ「うんっ! それじゃ、私はオトノキザカに行くよ! またね、ハナヨちゃん!」


ハナヨ「はい、また」


リン「……。なんだか、騒がしい人だにゃ」


ホノカ「ああっ! キミ!!」


リン「うわぁ! び、びっくりした……」


ホノカ「名前は?」


リン「あ、えっと、リン・ホシゾラです」


ホノカ「リンちゃんだね! ありがとう!」


ホノカ「それじゃ、今度こそバイバイ! リンちゃん、ハナヨちゃんをよろしくねー!!」


リン「……ほんとに騒がしい人だにゃ」



リン「ところで、さっきのホノカさん、錬金術士なんだよね?」


ハナヨ「そうだよ。私が小さい頃にね、家の前で行き倒れてたのが出会いなんだ」


リン「ショッキングな出会いだね」


ハナヨ「それで、お姉ちゃんと一緒に助けてあげて、ごはんをあげたら元気になって」


ハナヨ「『ありがとう! 二人は命の恩人だよっ! お礼にイイもの見せてあげる!』って言って、錬金術を見せてくれたの」


ハナヨ「そしたら、私、すっごく興味が湧いちゃって。教えてもらうようになったの」


リン「へー、そうなんだ!」


ハナヨ「でも、ある日突然いなくなっちゃって……」


ハナヨ「いつも旅をしてるらしいから、きっと、また旅に出てたんだろうなぁ」


ハナヨ「でも、良かった…… ちゃんと私のこと、覚えてくれてた……」


リン「旅をしてるってことは、もしかして冒険者免許、持ってるの?」


ハナヨ「どうかな…… そういう難しいことは苦手そうだけど……」


リン「村に帰った時にさ、聞いてみようよ! もしかしたら何か力になってくれるかも!」



 ~オトノキザカ村~


ハナヨ(ふぅ、青ぷにをやっつけて、って依頼もなんとか達成できた……)


ハナヨ(リンちゃんが張り切りすぎちゃって予定より多く倒しちゃったけど、おかげで報酬も豪華だったし、良かったなぁ)


ハナヨ「ただいまー」


ウミ「おかえりなさい。今日は早かったのですね」


ハナヨ(あっ、お姉ちゃん、機嫌治ってるかも!)


ハナヨ「あっ、今日ね、ホノカさんに会ったの! 久しぶりだし突然だったからびっくりしちゃった」


ウミ「はい、さっきまで家にいましたよ」


ウミ「まったく、いきなり大きいトカゲが入ってきたときは何事かと思いました……」


ハナヨ「あはは、あのまま来たんだ……」


ウミ「で、一人でずーっと喋り続けて帰っていきました。おかげで家事はできないわ、おやつのクッキー食べつくすわで、本当にもう……」


ウミ「あれで私より年上だというのですから、信じられません」


ハナヨ「文句言ってるのに、嬉しそう。そういえば昔、ホノカさんが家にいたころ『お姉ちゃんが出来たみたいで嬉しい』って言ってたもんね」


ウミ「い、いつの話をしているのですか! 今日だって、あの人の冒険の話を延々聞かされて、私は退屈だったのですから」


ウミ「あ、ハナヨはホノカの話なんて聞いてはダメですよ」


ウミ「冒険者なんて、危なくて怖くて、いいことなんて一つもない仕事なんですから!」


ウミ「ホノカは錬金術も上手ですし、何とかなってますけど、普通の女の子では……」


ハナヨ「もう、私だって錬金術できるのに…… それよりごはん!白いご飯が恋しくて仕方ないよ!」


ウミ「はい。もうすぐできますから、先にスプーンとフォークだけ準備しておいてくれますか?」


ハナヨ「うん!」


ハナヨ(……うん。やっぱりホノカさんにいろいろ聞いてみよっと)




ハナヨ「あっ、いたいた。ホノカさーん」


ホノカ「あっ、ハナヨちゃん! ふふふ、そろそろ来る頃だと思ってたよ……」


ハナヨ「え? なんで分かったんですか? 私が来るって」


ホノカ「さっきね、ウミちゃんがね。『多分ハナヨが行くと思いますが、余計なことは言わないでくださいね、絶対ですよ!?』って」


ホノカ「わざわざ釘差しに来たんだー」


ハナヨ「お姉ちゃんが? そんなー……」


ホノカ「妹の考えてることなんてお見通しってことだね。大体事情は聞かせてもらったけど、つまんないことで喧嘩はダメだよー」


ハナヨ「つまんなくないです! 私、本気で冒険者になりたいんです!」


ホノカ「ウミちゃんにも言われたと思うけど、言うほどカッコいい仕事じゃないと思うよ? 冒険者なんて」


ホノカ「外に出ればモンスターに襲われるし、依頼をこなさなきゃお金はもらえないし」


ホノカ「それより錬金術だよ! どう? 修行、さぼってないぃ?」


ハナヨ「さぼってませんよ、ちゃんと毎日調合して、ときどき、たまーに爆発させて、お姉ちゃんに掃除してもらって…… うぅ……」



ハナヨ「そんなことより、今は冒険者のお話です。ホノカさんって、冒険者免許持ってるんですか?」


ホノカ「冒険者免許? うん、持ってるよ! ほらっ!」


ハナヨ「わぁー! いいなぁ……」


ホノカ「ふっふーん、いいでしょー、かっこいいでしょー!」


ハナヨ「はい…… でも、ホノカさんはどうして冒険者もやってるんですか? 錬金術士だけじゃなくて」


ホノカ「うーん、そうだなぁ…… これが無いと行けない場所があるから、かなぁ。洞窟の奥とか、深い森の中とか、錬金術に使える材料がたっくさん採れるからねっ!」


ホノカ「まあいいや。……ハナヨちゃんは、どうしても、冒険者になりたいの?」


ハナヨ「うん、なりたい」


ホノカ「本気?」


ハナヨ「ほんきのほんきです! すーーーっごく本気です!」


ホノカ「うん、そっか……」


ハナヨ「ホノカさんも、やっぱり反対ですか?」


ホノカ「ううん、むしろ大賛成だよっ! いいよ、私も協力してあげるよ!」


ハナヨ「え? 協力って…… いいの!?」


ホノカ「うん! と言っても、大したことはできないけどね、えへへ……」


ホノカ「そうだなぁ、ハナヨちゃんが村の外に出かけるときに一緒に着いて行ってあげる!」


ホノカ「とりあえず、それくらいしかできないけど…… どうかな?」


ハナヨ「それくらいだなんて、すごく嬉しいです! やっぱり、リンちゃんと二人じゃまだちょっと不安だったし……」


ハナヨ「あ、でもいいんですか? お姉ちゃんに余計なこと言うなって言われてるのに……」


ホノカ「言うなとは言われたけど、するなとは言われてないし?」


ホノカ「だから、それ以上のことはできないけど」


ホノカ「だから、ウミちゃんを説得したり、お金貯めたりってのは自分で、だよ」


ハナヨ「うん、ありがとう! ホノカ師匠!」


今日はここまで。

まだチュートリアル……
ミミちゃん、もとい???ちゃんを早く出したい。

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