最原「超高校級の膝枕」 (143)

赤松「おはよう、東条さん」

東条「おはよう、赤松さん。朝食の用意はもう出来てるわよ」

赤松「いつもありがとうね。……大変じゃない?毎日私達全員分の食事作るの」

東条「気にしないで。メイドとして当然の仕事よ」

最原「ふわぁ……おはよう、みんな」

赤松「あ、おはよう!最原くん」

入間「よーうダサい原!相変わらず寝ぼけた面してんな!夜ナニしてやがんだ?」

最原「な、何もしてないよ……。朝にちょっと弱いだけだ」

赤松「最原くんって朝のチャイムでいっつも起きてるんだっけ?確かに、もうちょっと早起きしたほうがいいんじゃない?」

最原「ははは……なるべく努力してみるよ」

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入間「よし、最原!今日も早速だが俺様の実験に付き合ってもらうぜ!」

最原「え、今から?」

入間「当たり前だろーが!善は急げってやつだ」

最原「僕、まだご飯食べてないんだけど……」

入間「チッ。しゃーねーな。研究室で俺様の手料理を食わせてやるよ!ありがたくていろんな液体が零れ落ちそうだろ?」

最原「入間さん、料理に変なもの入れようとするじゃないか」

入間「な!?い、入れねーよ!……今日は。……多分」

最原「……不安だなぁ。まぁ、約束だししょうがないか。じゃあ、みんな、また後でね」

赤松「あ、うん……行ってらっしゃい」

赤松「……」

東条「どうしたの?赤松さん。気になることでもあるのかしら」

赤松「あ、ううん!そういうのじゃないんだけど」

赤松「ただ……最近、あの二人仲がいいな、って」

東条(……それを気になってる、と言うのよ)

東条「確かに、最原くんが入間さんの実験に付き合わされるのはいつものことだけど――」

東条「最近は、頻度が多くなっているわね。心なしか、最原君も満更でもなさそうな気がするわ」

赤松「そう!そうなんだよ!いつもだったらもっと抵抗して、最終的に入間さんの泣き落としで渋々着いていってるのに」

東条「ええ。しかも今日に至っては私の用意した朝食すら摂らずに出かけていったわね」ゴゴゴ

赤松「と、東条さん……ちょっと、怒ってる……?」

東条「いいえ。悲しくないと言ったら嘘になるけれど。メイドの本質は滅私奉公」

東条「彼にとって、私の作った料理以上に優先すべきものがあった、ということよ。受け入れるしかないわ」

赤松「……うん。やっぱり、気になるよ。一体、入間さんの研究室で何をやってるのか」

東条「――だったら、見に行ってみればいいんじゃないかしら?」

赤松「……え?」

東条「今から、実際に見に行ってみればいいのよ。発明品の実験ならば、見られたところで何も問題はないでしょう」

東条「彼らが、やましいことをしているのでなければ、ね」

赤松「や、やましいことって……」


赤松(そんなことは絶対にしてない!……と信じたい)

赤松(けど、誰にでも優しい最原君の事だから。その優しさに付け込まれて、万が一って事も……)


赤松「――わかった。私、見に行ってみるよ!二人が一体どんな実験をしているのか、この目で確かめてくる!」

東条「そう、決心したのね」

赤松「あ、でもやっぱり一人だと心細いから……東条さんもついてきてくれない?」

東条「……それは依頼と受け取っていいのね?承知したわ」

今日は以上です

---

赤松「来てみたはいいけど……どうしよう、何も考えてなかったよ」

東条「堂々と正面から訪ねればいいのではないかしら?こちらにだってやましいことはないんだもの」

東条「『超高校級の発明家』の研究成果を見学させてもらいに来た、と言うだけならいくら入間さんでも無碍にはできないはずよ」

赤松「うーん……それもそうなんだけど」

赤松「……こっそり、覗いてみない?いや、別にやましい気持ちは一切ないんだけど」

東条「……それがあなたの依頼なら、私は何も言わないわ」

ギイイ

赤松(……最原くんは……どこだろう?)ヒソヒソ

東条(ソファーに寝そべってる人影が見えるわ。アレじゃないかしら。ここからだと詳細には見えないけど)ヒソヒソ

入間「どうだ最原!完璧な出来栄えだろ!」

最原「うん……これはもう完成品と言っていいんじゃないかな」


赤松(!最原君と入間さんが何か話してるよ)

東条(会話の内容から察するに、最原君が入間さんの発明品の評価をしているのかしら)

東条(どうやら、真っ当な実験だったようね。危惧していたような展開になっていなくて安心したんじゃない?)

赤松(べ、別に心配なんてしてなかったよ。本当に。けどまぁ、これでもう十分……)


最原「凄く……気持ちいいよ。いつまでもこうしていたいくらいだ」


赤松「」

東条(これは…)

入間「だろ?ま、この俺様が作ったんだから当然なんだけどよ!俺様TUEEEEEEEE!」

入間「まぁ、一応礼は言っておくぜ!後は微調整だけだから、もうそれ外していいぞ」


赤松(それ!?それって何!?)

東条(落ち着いて赤松さん。判断を下すのは早計よ)


最原「もう少しだけ……着けててもいいかな?凄く心地いいんだ……」


赤松「」

東条(……あんな恍惚とした最原くんの声、初めて聞くかもしれないわね)


入間「ヒャーッヒャッヒャ!これだから童貞のオネダリ原は!いいぜ、もうしばらくそれを堪能して――」


赤松「そ れ は 違 う よ !」バーン!


入間「ヒイイイイイイイイ!な、何だよぉ……いきなり入ってくるなり大声出しやがってぇ……」

最原「え!?今の声……もしかして赤松さん?」

赤松「ふたりとも、学園内で一体何やってるの!?ナニをナニに着けてる……って……?」

そこで私が目にしたものは
想像とは大きく異なるものだった。
ソファに寝そべる最原君は
目元まで覆う奇妙な被り物を頭に装着していた。

ヘルメットよりも一回りも二回りも大きいそれを見て
その用途を考える訳でもなく
『そんなものを着けたままじゃ、寝づらいんじゃないのかな?』
という感想が真っ先に浮かんでしまった。


東条「これがあなたの発明品かしら、入間さん?」

入間「あ、あぁ……というか何しに来たんだよお前ら」

東条「いいから答えてちょうだい。最原くんが被ってるこれは、一体何なの?」

入間「まぁ凡人にはパッと見ではわかんねーかもしれないから説明してやるぜ!穴という穴をよーくかっぽじって聞けよ!」


入間「これは――『耳掻きマシーン』だ!」


赤松「……耳掻き?」

以上です

最原「いやぁ、びっくりしたよ。いきなり赤松さんの大声が聞こえてくるんだもん」

赤松「びっくりさせちゃった?…ごめんね」

東条「それで、この『耳掻きマシーン』だったかしら?これがあなたが入間さんに頼まれた実験なの?」

最原「うん、そうだよ。名前を聞いてなんとなく想像がついてるかもしれないけど……これをつけると、自動で耳掻きをしてくれるんだ」

最原「適度な加減で、その人の耳の穴の形状に合った最適の方法でね」

入間「当然、それだけじゃねーぞ!最原みてーなモテない童貞男子を悦ばせる機能がワンサカついてるんだからよ!」

赤松「そ、それって……やっぱりいかがわしい……」

最原「ちょっと、誤解されるようなこと言っちゃだめだよ、入間さん!」

最原「せっかく、入間さんにしては素晴らしい発明品なのに」

東条「あら……あなたがそこまで言うなんて。ということは、それは真っ当な使用用途があるということかしら」

最原「うん。だから僕も入間さんに協力することにしたんだ」

最原「確かにこの装置は……耳掻きをするだけの機械じゃない。VRゴーグルとスピーカー、それにマッサージチェアについてるようなローラーなんかも内蔵されてて」

最原「これを装着した人が……まるで本当に『誰かに耳掻きをしてもらっている』かのように感じられるよう作ってあるんだよ」

入間「『没入感』や『臨場感』にこだわれって依頼だったからな。面倒だけどそこは当然クリアしたぜ」

東条「……成程ね。その形状、大きさについても納得できたわ」

東条(というか、さっきの会話だけなら……十分マッサージ機という発想もあった筈よね。赤松さん、早とちりし過ぎではないかしら?)

赤松「うーん……でもそれって、個人で楽しむ以外にどんな用途があるの?」

最原「そうだな……赤松さんは、ターミナルケアって言葉聞いたことあるかな?」

赤松「それって……余命僅かな人に行うっていう……」

最原「そう、終末期医療っていう言葉でも表現されているもののことだね」

最原「病気の治療・改善を目的としたものではなく……死を受け入れた人たちのために精神的、肉体的な苦痛を伴わない治療や看護を最期まで行うことだ」

最原「勿論、家族や友人、恋人がいる人なんかは問題ないんだ。見守ってくれる人がいるってだけでも心強いからね」

最原「ただ、難病を抱えた人の中には……家族とすら禄に会えないような人もいる。特別な病棟内でしか生きていけなくて……そこで死ぬしかない人たちがね」

赤松「……」

最原「生まれたときから病院内での生活を余儀なくされ、友人や知人を作る機会にも恵まれず、孤独に生涯を終えてしまう……」

最原「そういう人たちの孤独や不安を取り除くためのセラピーの一つとして、考案されたのがこの耳掻きマシーンなんだ」

入間「病院でやってもらう耳掻きだの清拭だのってのは、すんげー事務的だからな!俺様も経験があるぜ」

最原「病気のせいで実際に人と触れ合うのが難しい……そんな人達のために、擬似的にでも人の温もりや優しさを感じて欲しい――」

最原「そんな思いが、この機械には詰まってるんだよ」

東条「成る程……それならアニマルセラピーとも差別化できるわね。アレルギーや衛生的な問題で、動物を持ち込めないところも多いでしょうし」

赤松「――凄いよ、入間さん!あなたのこと見直したよ!これ全部、入間さんが考えたんでしょ?」

入間「ああ?んなわけねーだろ。俺様は医療機関に依頼されただけだ。活動資金の援助と引き替えにな」

赤松「……」

入間「それに最原は何か立派なこと語ってたけどよ……これ、割高だけど個人向けとしても流通させるって話だったからな」

入間「さっき俺様が言ったみたいに、モテねー寂しい童貞野郎が、自分を慰めるのにも使えるって訳だ!ヒャーッヒャッヒャッ!」

東条「……そういえば、さっきから話が見えないわね。具体的には、どう『誰かに耳掻きをしてもらっている』ように感じるのかしら」

入間「ああ、そこもダサい原がボカしてたからな。女に飢えた童貞野郎がどんな妄想するか考えりゃあ少しは予想もつくだろ」

最原「べ、別にボカしてたわけじゃ……」

入間「『美少女に』!『甘い言葉を囁かれながら』!『膝枕の上で』!『耳掻きしてもらう』!に決まってんだろうが!」

赤松「!?」

以上です。

東条「――そうよね。最原くんも男の子ですものね」

最原「ちょっと!?東条さん勝手に納得しないで!」

赤松「……最原くん。私、偏見とかないから。むしろ、最原くんもそういうのに興味あるんだってわかって安心したよ」

最原「赤松さんまで!?あーもう入間さんが変なこと言うから……」

入間「ああん?全部事実じゃねーか!」

最原「確かにそうだからややこしいんだけど……こうなったら」

最原「赤松さん……君もこれを体験してくれないかな?」

赤松「えっ……?」

最原「百聞は一見に如かずだよ。そうすれば、赤松さんにもこれがどういうものなのかわかってもらえると思うんだ」

赤松「う、うん……」

最原くん、それってセクハラ寸前じゃない?
私相手だから良いものの、そんなものを女の子に使わせようとするなんて……
最原くんのちょっと強引な一面が見れて、嬉しいような複雑なような

そんなことを思いながら機械を頭から装着した私の目の前には
想像以上の光景が広がっていた。

『あら?あなたは女の子なんですね。はじめまして』

赤松「……え?」

『ここはあなたと私だけの癒やしの空間です。ゆっくり楽しんでくださいね』

まさか――
この人って――

赤松「超高校級のアイドル……『舞園さやか』さん!?」


舞園?『私の事、知ってるんですね。嬉しいです』

舞園?『せっかくですし、耳掻き、していきますか?膝枕しますから、遠慮せず頭を乗せてくださいね』ポンポン

赤松「は、はい……」ドキドキ

---

最原「驚いたでしょ、赤松さん。別に隠していたわけじゃないんだけど」

最原「実はこのプロジェクトに参加している超高校級の生徒は、入間さんだけじゃないだ」

最原「耳掻きを行ってくれるモデルに選出されたのは、『超高級のアイドル』舞園さやかさん」

最原「人気、知名度……そして、その独特の癒やしのボイス。納得の人選だと思うよ」

最原「で、赤松さんも実際体験したと思うけど……VR空間内では録音された舞園さんの音声をただ流すだけじゃないんだ」

赤松「うん、普通に会話が成立してびっくりしたよ……」

最原「この機械には人工知能、『アルターエゴ』が積んであるんだよ。『超高級のプログラマー』、不二咲千尋さんの作成のね」

最原(ちなみにアルターエゴの癒やしを与えるセリフのチョイスは『超高校級の同人作家』がやったらしいけど……まぁこれはいいかな)

赤松「ゴメンね、最原くん。変なこと考えちゃって。確かに、これはすごい発明だよ!」

赤松「本当に舞園さんがすぐ傍にいるかのように感じたし、耳掻き中も本当に膝枕されてるみたいだった」

赤松「ただ形があるだけじゃなく、人の体温というか、温かみやぬくもりまで感じたよ!」

赤松(……スカートの中は真っ暗だった。流石にそういうところはプロテクトかかってるんだね)

赤松「で、やっぱり声がいいよね!あの声で耳元で囁かれると本当に心地よくて、私ウトウトしちゃったよ」

最原「うん、わかってもらえて本当に良かったよ」

東条「『美少女に』『甘い言葉を囁かれながら』『膝枕の上で』『耳掻きしてもらう』……確かに嘘は言っていないわね」

入間「つーか、なんでそんなに鈍くさい原が偉そーにしてんだよ!作ったのは俺様だぞ!」

赤松「あ、うん。凄いよ、入間さん!あの膝枕の感触も、ただクッションや枕を仕込んだだけじゃ再現できないもんね」

東条「そういえば、膝枕の部分も舞園さんを再現したものなのかしら」

入間「いいや、そこまでのデータは貰えなかったぜ。ったく、アイドルなんてみんな糞ビッチのくせにお高く留まりやがって……」

入間「しょうがねぇから、俺様自身の膝枕を反映させたんだ。ま、美少女すぎる天才発明家の入間美兎の膝枕なら、全国の童貞野郎も泣いて喜ぶだろうけどな!」

赤松(……あの心地いい膝枕の感触、入間さんのだったんだ。ちょっと複雑かも……)


入間「全く、大変だったぜ。実際に最原に膝枕してデータ取ったりよお」

赤松「!?」

以上です

最原「入間さん!さっきから余計なこと言い過ぎだよ!」

入間「なんだ?いっちょ前に恥ずかしがってんじゃねーよ!あの時は傑作だったな~。顔真っ赤にして全身カチンコチンにしててよ!童貞丸出しだったぜ!」

最原「な!?そ、そういう入間さんだって、顔真っ赤にして震えてたじゃないか!おかげで頭がずり落ちそうになったよ!」

入間「ばっ!?ふ、震えてねーし!こっちはアレだぞ!?モテまくりヤリまくりだぞ!?」

赤松「……」

東条(……本人たちは口論してるつもりなんでしょうけど)

東条(自分たちの言動を客観的に見れているのかしら?)

東条(健全な男女が、互いに恥じらいながらも膝枕を受け入れる――)

東条(傍から見れば、それは甘酸っぱい青春の一幕以外の何物でもないわ)

東条(人によっては、惚気と受け取るかもしれないわね)

東条(そして、そんなやり取りを、好意を抱いている男子の目の前でされた日には――)チラッ

赤松「……」

東条(……まぁ、こんな顔にもなるわよね)

最原「ま、まぁ……こんな感じで制作を進めてきたわけだけど、もうほぼ完成に近い状態に仕上がっているんだよ」

最原「あとは実際に臨床実験を重ねて……赤松さん、大丈夫?何か険しい顔してるけど」

赤松「へ!?あ、うん……大丈夫……かな……?」

最原「ああ、もしかしてこのマシーンのせいで具合が悪くなっちゃったのかな?そうするとまだ課題が残ってるってことか……」

赤松「あ、いや……違うの。気にしないで」

入間「そんなわけねぇだろ!この天才入間様の発明だぞ!欠陥なんてあるわけねーだろーが!」

入間「マシーンのデザイン、装着感、『膝枕の心地よさ』、耳掻きの気持ちよさ、全てにおいてパーフェクトだっ!」

赤松(……『膝枕の心地よさ』?――これだ!)



赤松「それは違うよ!」

入間「ヒッ!な、何だよぉ急に大声出して……」

赤松「入間さん、『膝枕の心地よさ』もパーフェクトだって今言ったよね?」

入間「え?そ、それがどうしたんだよ……」

赤松「それはおかしいよ!だってこの機械は入間さんの膝枕のデータしか入ってないんだよね?」

赤松「それなら、パーフェクトを名乗るのはちょっと気が早いんじゃない?だって、この広い世界、入間さん以上の膝枕の持ち主がいるかも知れないでしょ!?」

東条「確かに……標本の数が多けば多いほど、データというのは信用できる物」

東条「複数人の中から最も理想の膝枕を選んだ、というのならまだしも……自分自身のサンプルだけで完璧を名乗るのは横暴な気がするわね」

入間「そ、それはそうかも知れないけどよ……」

最原(僕は別に入間さんの膝枕でも不足はないと思うんだけど……って口にするのは控えた方がよさそうだね)

赤松「そうだよ!せめて何人かに膝枕をしてもらって、その中から一番理想の膝枕を選んで貰う必要があるんだよ!」

赤松「……ただ、まぁ?入間さんも今更そんな大掛かりなことは出来ないだろうし……せめてここにいる私と東条さんで……最原くんに」ゴニョゴニョ

入間「……よし。そこまで言うなら俺様も覚悟決めたぜ」

赤松「え?」

入間「東条!今から女子全員をここに集めてこい!」

東条「それが私への依頼ね?承知したわ」シュバッ

赤松「!?」

最原「……じゃあ、僕はこれで」ガシッ

入間「逃げよーとしてんじゃねぇよ最原!お前には判定役になってもらうからな」

赤松「判定役……ってことはやっぱり……」

入間「決まってんだろ!女子全員に膝枕させて、一番理想の膝枕を最原に選ばせるんだよ!」

以上です

---

春川「――で、そんなことのために呼び出されたわけ?帰っていい?」

茶柱「ひ、膝枕とは……いくら最原さんとは言え、男死に膝枕なんてありえません!」

夢野「んあ。同性同士で膝枕するほうが何かと問題ある気がするがのう」

白銀「膝枕って、地味に萌えるシチュエーションだよね~。実際はどうだか知らないけど、すっごく充実感を得られそうだよね!」

アンジー「にゃはは。終一は幸せ者だって神様も言ってるよ~」

春川「その幸せ者は今あんな姿なんだけど……それでいいの?」


怪訝そうな顔を浮かべる春川さん。
無理もない。だって今最原くんは――
アイマスクで目隠しをされた上、手錠で後ろ手に拘束されているのだ


最原(……面倒なことになってしまった……)

赤松「……ここまでやる必要ないんじゃない?入間さん」

入間「純粋に膝枕の感触だけで選ばせるんだから、余計な情報は必要ねーだろ」

春川「確かに、誰に膝枕されてるのか分かってたら……赤松が選ばれそうだしね」

赤松「ちょ、ちょっと!?なんでそこで――」

最原「な、なんでそこで赤松さんの名前が出てくるの!?そんなことはないよ!」


――被せて否定されてしまった。
確かに言うとおりなんだけどさ、そこまで必死になって否定することもないんじゃない?


東条「手錠の拘束は、女子への配慮として着けさせて貰ったわ。最原くんが『そんなこと』するつもりはないって信じてはいるけど……」

東条「こうでもしないと納得してくれない人もいるかもしれないし、念のためね」

夢野「多分、お主のことじゃぞ、転子。東条もああ言っておるが、どうじゃ?」

茶柱「う、うーん……そこまで厳重に対処してくれるなら協力できないこともないですが……そのマシーンのコンセプト自体は素晴らしいと思いますし」

アンジー「アンジーは勿論協力するよ~。終一を骨抜きにしろって神様も言ってるし」

春川「いや、アンタ話聞いてた?誰に膝枕されたかはわからなくするって言ってたんだけど」

白銀「じゃあ、最原くんはどうやって一番の膝枕を選ぶの?番号順とか?」

入間「ああ、それでいいだろ。順番はこっちで適当に決めるから、最原は何番目の膝枕が一番良かったか発表しろよ!」

最原「うん、わかったよ……」

赤松「……」


みんなそれぞれ違った魅力を持つ、超高校級の女子たち。
そんなみんなが、最原くんに膝枕をするのを眺めなきゃいけないのは
正直――あんまりいい気分はしない。

勿論、私にだって必ず順番が回ってくるわけだけど
その時だって、最原くんは私だって気づいてくれない
膝枕の一つ、言ってみればデータ、サンプルの一つとして処理されてしまう。

――うん。白銀さんが言ってたみたいに
膝枕自体は萌えるシチュエーションではあるんだけど
……なんだか複雑な気分だよ

東条「……ごめんなさいね、赤松さん」

赤松「え!?な、何が?」

東条「入間さんの依頼とはいえ、女子全員を最原くんの膝枕検証に巻き込んでしまったわ。内心、いい気分はしないでしょう?」

赤松「べ、別に……私はそういうのじゃ……」

東条「しかも、誰の膝枕かすらわからないというオマケ付きで、ね。もしかしたら、誰の膝枕が一番だったのか――その結果すらも彼本人には伝えられないかもしれないわね」

赤松「……」

東条「――でも、安心して頂戴、赤松さん。まだ手はあるの」

赤松「え?……手、って……」

東条「彼の持つ『超高校級の才能』――それを刺激してあげればいいのよ」

以上です

入間「お前たちは声出すんじゃねーぞ!誰の膝枕かわかっちまうからな!」

入間「さて、順番は適当に……」

東条(ちょっといいかしら、入間さん)ヒソヒソ

入間「ひっ!なんだよ耳元で……声出すなって言っただろぉ……」

東条(順番なんだけど……私がトップバッターを努めても良いかしら?みんなやっぱりどこか気恥ずかしさを感じているようだし)ヒソヒソ

入間(まぁ、順番なんて適当に決めるつもりだったし……好きにしろよ)ヒソヒソ

東条(ありがとう、助かるわ)ヒソヒソ

東条さんは、一体何を考えているんだろう?
最原くんの『超高校級の才能』を刺激するって言ってたけど……
うーん、とりあえず様子を見てみようかな?

そんなことを考えているうちに
どうやら検証実験が始まろうとしているようだ
東条さんがソファに腰掛け、
入間さんが最原くんの頭を東条さんの太もも辺りまで誘導している。
最原くんは目隠しされた上手錠で拘束されているため
ちゃんとした膝枕の形になるまでなかなか苦労しているようだ。


入間「もうちょい右……馬鹿!俺様から見て右だ!よし、そこだ!頭を下ろせ」


こうして、膝枕検証実験はスタートした。
優雅に上品に佇む東条さん
そしてその膝枕で為す術なく寝かされている最原くん
まな板の上の鯉という表現がぴったり合いそうだ。
――うん。やっぱりこうしてみると、浪漫のかけらもないシュールな光景だね。

~~~

最原(……確かに、体温の温かみは感じる。枕やクッションじゃこうは行かないだろうね。だけど――)


こんな状態では――感動も何もないな
結局のところ、膝枕の心地よさっていうのは
肉体的なものではなく精神的なものによるんだろうね
『女の子に膝枕されている』ってところが一番のポイントなんだ。
だからこそ耳掻きマシーンにだって、舞園さやかさんモデルのグラフィックを用意しているわけだし。

――こんな風に、誰に膝枕されてるかも分からない状態で
頭に伝わる感触だけで一番を選べって言われてもなぁ

別に、今体験しているこの膝枕の主に不満があるわけじゃない。
けど正直な話――膝枕って人によってそうそう違いがあるものでもないんじゃないかな?
だから、一体こんな実験に一体何の意味が――


そこまで考えたとき
頭に膝枕とは違う、別の感触が伝わってきたのを感じた。


最原(……頭を……撫でられてる……?)

~~~

赤松(ちょ、ちょっと、入間さん!アレ、いいの!?)ヒソヒソ

入間(ヒッ!お、俺様に言うなよぉ……)ヒソヒソ

赤松(……じゃ、じゃあ、私の番が回ってきたとき……私もアレ、やってもいい?)ヒソヒソ

入間(好きにしろよ……)ヒソヒソ


東条さんが、自分の膝枕で寝かされている最原くんの頭を撫でている。
優しく、丁寧に。見ているだけでも心地よさが伝わって来るかのようだ。
メイドとしての奉仕の精神がそうさせたのか、それとも

赤松(アレがさっき言ってた……『刺激』、なのかな?)

~~~

突如、頭を撫でられて驚いた。
しかし、その動作はとても丁寧で、心地よかった。
普通の状況でこれをされたなら、できるだけ長い時間この至福の時を過ごしたいと考えたかもしれない。

だが、この時の僕の頭の中は、
ある一つの『発見』に支配されていた。

最原(……素手、じゃない――?)


――指先まで覆われた布
それは即ち……『手袋』だ
そしてさっきの頭の撫で方から感じた『奉仕』の心――
――そうか!
すべてが繋がったよ
該当する人物は、一人しかいない!


最原(……君なんだね?『超高校級のメイド』――『東条斬美』さん!)

以上です

~~~~

赤松「……あれ?」

春川「ちょっと赤松……声出すとマズイんじゃないの?」ヒソヒソ

赤松「あ、うん……そうなんだけど」ヒソヒソ

春川「何か気になることでもあった?」ヒソヒソ

赤松「えっとね……私、ずっと最原君の顔を観察してたんだけどさ」ヒソヒソ

赤松「最初は困ったような、不安そうな表情浮かべてたんだけど……」ヒソヒソ

赤松「途中で急に、事件を調査してるときみたいな引き締まったかっこいい表情になって……」ヒソヒソ

赤松「その後、今度は顔赤くして、照れたような恥ずかしいような表情に変わったんだよね」ヒソヒソ

春川(……ずっと顔を見てただの、かっこいいだの……自覚なしにサラッと言っちゃう辺り重症だね。もうさっさと付き合っちゃえばいいのに)

赤松(……もしかして、最原君……東条さんに膝枕されてるんだって気付いたのかな?)

~~~~

赤松「……あれ?」

春川「ちょっと赤松……声出すとマズイんじゃないの?」ヒソヒソ

赤松「あ、うん……そうなんだけど」ヒソヒソ

春川「何か気になることでもあった?」ヒソヒソ

赤松「えっとね……私、ずっと最原君の顔を観察してたんだけどさ」ヒソヒソ

赤松「最初は困ったような、不安そうな表情浮かべてたんだけど……」ヒソヒソ

赤松「途中で急に、事件を調査してるときみたいな引き締まったかっこいい表情になって……」ヒソヒソ

赤松「その後、今度は顔赤くして、照れたような恥ずかしいような表情に変わったんだよね」ヒソヒソ

春川(……ずっと顔を見てただの、かっこいいだの……自覚なしにサラッと言っちゃう辺り重症だね。もうさっさと付き合っちゃえばいいのに)

赤松(……もしかして、最原君……東条さんに膝枕されてるんだって気付いたのかな?)

~~~~

最原(うぅ……東条さんに膝枕されてるって意識すると、やっぱりちょっと恥ずかしいね)

最原(おまけに、今その様子を女子全員に見られちゃってるわけだし……)

最原(――うん。もう十分堪能させてもらったよね。頭まで撫でて貰ったんだ。これ以上を望むのは贅沢だよ)


最原「入間さん!そろそろ、次の人に交代して貰っていいかな?大体感触は掴めたよ」

入間「ん?そうだな……と、じゃなくて……お前は、次のやつと交代だ」

入間「オラッ!起きろ最原」グイッ

最原「手錠の拘束はせめて前でやってくれないかな……後ろ手だと起きるのも大変だよ」

入間「うるせー文句言うな!こうやって俺様直々に起こしてやってんだからありがたく思えよな」

春川「次は私がやるよ。面倒そうなことは早く終わらせたいし」ヒソヒソ

入間「よし、行け!最原は合図だしたら寝転がれ!」

赤松(次は春川さんか……先越されちゃったなぁ)

東条「あなたはトリでいいのではないかしら、赤松さん」

赤松「あ、東条さん。お疲れ様。さっき言ってた刺激って、やっぱり頭撫でたことかな?」

東条「ええ。アレだけのヒントを与えれば、超高校級の探偵である最原君なら気づけるはずよ」

赤松「うん。表情がコロコロ変わって、分かりやすかったよ……」

東条「つまり、赤松さん。あなたが膝枕してあげる時にも、何か最原くんにアピールすればいいのよ」

赤松「あ、アピールって……そ、そんなの、私は別に……」

東条「あなたに膝枕してもらっているとわかれば、最原くんもきっと喜ぶわよ」

赤松「ちょっ、もう!そ、そんなことないよ……!」

入間「あの……声……」

~~~~

最原(赤松さんの声……)

最原(つまり、これから体験する膝枕の持ち主は、入間さん、東条さんと赤松さんを除いた5人の内の誰か)

最原(どんな小さな手がかりでもいいから、見つけてみよう)

入間「よし、最原、頭を下ろせ!」

最原「……」ゴロン

最原(……!これは……)

最原(布が薄い!かなり生々しく太ももの感触が伝わってくる……!)

最原(!?薄いどころじゃない!これ、生足も当たってないか…!?)

最原(スカート、じゃないのか……?けど、女子はみんなスカートを着ているような……)

最原(……いや、待てよ)

最原(スカートを穿いていないわけじゃなく……太ももにかからないくらい、『スカートが短い』のか?)


――ならば今感じている、この『布』の感触は一体何だ?
『肌に直接身につける』、そして『太ももの近くまで覆っている』
つまりは――『ニーソックス』のような装備品だと考えれば辻褄が合う。
――スカート自体には太ももを覆うくらいの長さは無い。
割りとミニスカート気味なんだろう。
そしてニーソックス、とくれば――


最原(……君しかいない!『超高校級の保育士』――『春川魔姫』さん!)

以上です
ミスって同じ内容2回投下しちゃいました

~~~~


赤松(……!?まただ。あのキリッとした顔……誰に膝枕されたのか推理したんだね!)

東条(どうやら、私の目論見は上手くいったようね……今のところは)

赤松(あ、また顔真っ赤にしてる。……わかってるよね、最原君?春川さんには百田くんがいるんだからね……?)


~~~~


最原(うぅ……東条さんの時と比べて、体温や感触がもっと詳細に伝わってくる……)

最原(まぁ、一部素肌に直に触れてるから当然ではあるんだけど。……それにしても参ったな)

最原(あんまりすぐに交代してもらっても不審がられちゃうかもしれないし)

最原(そうだな、あと十秒くらいしたら……!?)プニプニ

最原(な、なんだ?反対側の頬に、何かされてる…!?)

~~~~


春川(最原は誰に膝枕されてるかわからないって話だし)

春川(ま、これくらいのイタズラしても問題ないよね)ツンツン

春川(あ、顔真っ赤になってる。頬突いてるだけなのに、可愛いやつだね)

春川(……なんだか面白くなってきたかも。ふふふ)ツンツンツンツン


~~~~


赤松(春川さん!?春川さんまでそんな……!あ、最原君の顔が更に真っ赤に!)

赤松(……私も、アレやるからね!)

東条(気づかれていないと思っての行動でしょうけど……これは予想外だったわね。おそらく、最原君も驚いているんじゃないかしら)

~~~~

最原(多分指で頬を突っつかれているだけだろう。そんな大げさなことじゃない)

最原(けど……あのクールな春川さんが、そんな子供っぽいイタズラをしてくるなんて)

最原(な、なんかよくわからないけど……心に来るものがある)ドキドキ

最原(……も、もうこれ以上はいいだろう。何となくだけど、百田くんに悪い気もするし……)

最原「い、入間さん!次の人に交代してもらってもいいかな!?」

入間「んー?何焦ってんだ、お前?まぁいいけどよ」

入間「よし、どんどんいくぞ!次は……お前でいいか」

以上です

なんでたまにトリ外れるんだろう……

~~~~

赤松(春川さん……思わぬ伏兵だったね)

赤松(……今思うと、よくあんな短いスカートで膝枕しようと思ったね。案外、そういうところ無頓着なのかも?)

赤松(百田くんが相手だったら、春川さんももっと意識したりするのかな?)


東条(――どうやら、次の『彼女』は……赤松さんが心配するような展開にはならなそうね)


入間「よーし、最原!そのまま寝ろ!」

~~~~

最原(さて……次は誰が膝枕してくれるのやら)

最原(こういう誰も不幸にしない推理なら、ちょっと楽しくなってきたか……も……?)ボスン

最原(……なんだ、コレ?)

最原(厚手の……『毛布』でも膝に敷いているのかな?)

~~~~

赤松(……)

東条(アレじゃ、膝枕の感触も何も感じられないわね。少し固めのクッションみたいなものだわ)ヒソヒソ

赤松(うん……何となく予想はできてたけど、対応が極端だよね……)ヒソヒソ

~~~~

頭に伝わる感触は、厚手の布地。
膝枕されているはずなのに、微塵もそれを感じさせない。
膝枕の感触など絶対味あわせてなるものか、という
拒絶にも似た強い意志を感じる。

――だからこそ、わかりやすい。

最原(真冬でもないのに、こんな分厚い毛布を敷いて膝枕をしているのは、直接自分の体に接触されるのを嫌がったため)

最原(君が言うところの、『男死』にね)

最原(……そうだろう?『超高校級の合気道家』――『茶柱転子』さん!)

~~~~

茶柱(いくら最原さんとは言え……男死に膝枕など死んでもゴメンです!)

茶柱(――ですが、今回に限っては正当な理由があるようなので、特別に許可してあげましょう)

茶柱(ただし!転子の膝枕はそう安くありません!男死相手なら毛布越しで十分です!)

茶柱(……ついでに、日頃の感謝やら夢野さんと仲良さそうにしてる恨みやら色々込めてイタズラさせていただきましょう。バレなきゃ問題ありませんからね!)グイグイ

~~~~

最原(……うーん。これじゃ、評価のしようもないというか。どうしようかな)

最原(とりあえずもう少し様子を……!?)グイグイ

最原(髪の毛を……引っ張られてる!?い、イタタタ……)

最原(……アレ?痛くない。どうやら、加減して軽く引っ張ってくれてるみたいだ)

最原(……案外、人に髪の毛触ってもらうのって……気持ちいいんだな……)

以上です

~~~~

赤松(最原君、髪の毛引っ張られてるのに何かリラックスした表情してる……)

赤松(薄々気づいてはいたけど……や、やっぱり…そっちの気があるんじゃ……)

赤松(うーん……私はどういうアプローチで行ったらいいかわからなくなってきたよ)


入間「こんなもんでいいだろ。ドM原!次だ次!」

最原「な!?だ、誰がドMだよ!変なこと言わないでよ入間さん!」

入間「ひいい!そ、そこまで怒鳴ることないだろぉ……」

東条(図星だったのかしら)

入間「……ほら、ちゃっちゃと交代しろよ。よし、行け!最原」

最原(……)ゴロン

最原(……!これは……!)

最原(――低い!頭の位置が!今までの中で一番……圧倒的に!)

???(……)プルプル

最原(……しかも震えてる。きっと重いんだろうね……)

最原(――しかし、これは推理するまでもないかな)

最原(そう、これらは全て……体型に関わる問題だから)


最原(――つまりは、君だ!『超高校級のマジシャン』……『夢野秘密子』さん!)

~~~~

夢野(んおおおおおおお……!)プルプル

夢野(お、重い……男子の頭というのはここまでずっしりくるものなのか……!)プルプル

夢野(だがウチは……ウチはまだやれるぞ……!)プルプル

夢野(ウチも転子達のように……最原に魔法を使ってイタズラをお見舞いするんじゃあ……!)プルプル

~~~~

最原(……これはちょっと可哀想かな。まだ早い気もするけど……どいてあげようか)

最原「入間さん!もう大丈夫だよ。次の人に変わってもらっていいかな?」

入間「ん?随分はえーな。まぁいいけどよ。そら起こすぞ」グイ

夢野(……んあー……)

赤松(うん……これはしょうがないよね。夢野さん、膝枕どころじゃない表情してたし)

東条(目隠しと手錠での拘束を受けた男子に幼児体型の女の子が膝枕……かなり危ない絵面ね)

茶柱(おのれ男死……!夢野さんを苦しめるとは!……転子は最原さんほど重くないからセーフですよね?膝枕してもらえますよね?)

短いですが以上です

~~~~

最原(さて……残るはあと3人か)

最原(アンジーさん、白銀さん、そして……赤松さん)

最原(この中で一番分かりやすいのはアンジーさんかな。一番露出が多いし……茶柱さんと違って毛布を使うようなタイプでもなさそうだ)

最原(膝枕をして、素肌が触れるようならアンジーさんで確定でいいだろう)

最原(……いや、待てよ。赤松さんも結構スカートが短い。座ったら太ももが露出するはずだ)

最原(そうなると案外判断に困るかもな……逆に言えば長めのスカートを穿いている白銀さんの方が分かりやすい…?)

最原(だけど……赤松さんにしても、素足のまま膝枕って言うのは抵抗があるかもしれない。毛布とまで行かなくても、何か膝にかぶせる可能性は十分ある)

最原(つまりは……今考えてもしょうがない、ってことか。とりあえずは様子を見よう)

???(……)ボスン

最原(……座ったみたいだな)

入間「そろそろ慣れただろ?お前も。そのまま横になれ!」

最原(こんなことに慣れたくはなかったよ……)


入間「え!?お前、何やって……!?」


最原(……?どうしたんだ、入間さん?一体何を……)スッ

最原(……!素足!つまりこれは……)

最原(アンジーさんか赤松さん!この二人のうちのどっちかだ!)

最原(他に手がかりはないか……!?)ファサッ

最原(な、なんだ……!?顔の上に、布を被せられた!?)

???(……)スッ

最原(!?)ビクッ

最原(うなじを……指でなぞってる……!)

???(……)スッスッ

最原(や、やめて…!動かさないで)ビクビク

最原(!?襟から手が侵入して……背中の方まで……!)

最原(ちょっと、これはやりすぎじゃ……!)ビクビクビク


茶柱「ちょっ、ちょっと!?最原さんさっきから何動いてるんですか!セクハラですよセクハラ!」

入間「だから喋るなって言ってんだろぉ!」


最原(そ、そんなこと言われても……)

最原(これは絶対に赤松さんじゃない!こんな大胆なことをするのは、おそらくアンジーさん……くぅ!)ビクンビクン

最原(おそらく、上から何か被せて、みんなには見えないようにして僕にイタズラを……!)


最原(……『何か』?一体何を被せたって言うんだ?)

以上です

~~~~

入間「……お前たちはお前たちで何やってんだ?」

東条(こうでもしないと、彼女、声を出してしまいそうだったから……メイドとして対処させて貰ったわ)ヒソヒソ

赤松(~~~~!)ジタバタ

春川(……流石にアレは驚くよね。無理もないと思うよ)

茶柱「ぐ、ぐぬぬ……最原さん!反対側を向いたら絶交ですからね!ついでにネオ合気道の餌食になってもらいますから!」

夢野(どうせ目隠ししとるんだから関係ないじゃろ)

夢野(……それにしても意外じゃったの。あんな大胆なことをするのはアンジーくらいのものだと思ったんじゃが)

~~~~

最原(一体何なんだ?さっきから周りのこの反応は……っ)ビクッ

最原(僕の頭を覆っているこの『布』……こいつの正体に関わってくるのか?)

最原(かかっている範囲は僕の肩辺りまで。そして異様に軽い。毛布やタオルケットの類じゃなさそうだ)

最原(アンジーさんがいつも羽織っているコート……?いや、何か脱いだ素振りは無かった。衣擦れの音もしなかったし……)

最原(――『最初からそこにあった物』?もしくは――『最初から身につけていた物』……?)

最原(そしてさっきの茶柱さんと入間さんの反応……)

最原(……!?もしかして、これって……)

最原(――『スカート』、なのか!?)

???(……)スーッ

最原(くっ……だとしたら、僕のさっきの推理はまるっきり外れ……真逆だったんだ!)ビクン

最原(犯人は、僕の頭……もとい、自分の太ももまで覆うくらいの長いスカートの持ち主)

最原(残った3人の中で、条件に当てはまるのは1人しかいない!)


最原(――君の仕業だな!『超高校級のコスプレイヤー』……『白銀つむぎ』さん!)

~~~~

白銀(ふっふっふ~。最原君も、まさか地味な私がこんな大胆なことするなんて夢にも思って無いだろうな~)スーッ

白銀(女の子のスカートの中に頭突っ込んじゃうなんて……最原君はポケモンマスターでも目指してるのかなぁ?)ツツツツ

白銀(とはいっても、最原君は今何が何やらさっぱりな状況だよね。だからこそ私もこんなことやっちゃってるわけだけど)

白銀(――最原君はさ、ムッツリスケベだけどクラスメイト全員に平等で優しくて……私みたいな地味な女子の事も気にかけてくれる)

白銀(だけど、それで皆を勘違いさせるのは良くないな~。ちゃんと態度をハッキリさせないと、行き着く先は鮮血の結末だよ?)ツーッ

白銀(だから、戒めも兼ねて思いっきりイタズラしちゃいました!まぁほとんど私の憂さ晴らしのためなんだけどね)

白銀(……ここで目隠しをとったら、どんな反応してくれるんだろ。地味に気になっちゃうよ)

白銀(でも、やめておこうかな。最原君の目を汚しちゃうといけないからね)ツツー

以上です

~~~~

最原(なんてことだ……。周りから見たら、僕は今……スカートの中に頭を突っ込んでいる、ただの……どうしようもない変態じゃないか!)

最原(赤松さんの前でそんな姿をこれ以上晒せない!今すぐ起き上がらないと!)

最原「入間さ、んンンン~!?」ゾクゾク

茶柱「な、なんて声出してるんですか最原さん!ついに本性を表しましたね!」

入間「ど、童貞がいっちょ前にヨガり声上げてんじゃねーよ!」

最原(さ、最悪のタイミングで……!)

白銀(~~~~♪)ツー

最原「も、もうわかったから!次の人に交代して!」

入間「今の声といい、その慌て様といい……お前、さっきから何してんだ?」

茶柱「最原さん……転子は失望しました。今後は転子と夢野さんの半径500m以内には入らないでくださいね!」

夢野「ウチを巻き込むのはやめい」

最原(ひ、ひどい言われようだ……)

赤松「……入間さん、起こさないの?だったら私が起こすけど」ボソッ

入間「ひっ!耳元で喋るなよぉ……!わかったよ起こせばいいんだろ起こせば……」グイッ

最原「わぶっ」ファサッ

白銀(わっ。最原くんってば大胆~。顔でスカートめくっちゃうなんて!)

春川「白銀……アンタちょっと攻め過ぎじゃないの?最原戸惑ってたよ」ヒソヒソ

白銀「うーん。確かに地味にちょっとやり過ぎちゃったかも。まぁ、最原君は誰がやったかわからないんだから、たまにはこういうのも悪くないよね」ヒソヒソ

春川「……忠告はしたよ。私は、怒った赤松とか見たくないからね」ヒソヒソ

赤松「……」

白銀(……穏やかな心の持ち主が激しい怒りによって覚醒したような威圧感を感じるよ)

白銀(けど、その威圧感の対象は最原君みたいだし……セーフ!だよね?)

赤松(白銀さんがスカートをめくったときは、一瞬何が起きたのか理解できなかった)

赤松(そこに最原君が寝転がって、スカートを頭から被せられた時……白銀さんのやろうとしたことがようやく理解できた)

赤松(東条さんに口元を塞がれていなかったら、間違いなく声を出してたよ)


赤松(――白銀さんはやり過ぎだよ!一応ここは学園内なんだから、過激なのはご法度でしょ!)

赤松(それに最原君……!あの反応は何!?君は何が起きているのかを推理できたはずだよね?白銀さんのスカートの中を堪能してたの!?)

赤松(後で絶対に問い詰めるんだから!……でもその前に)


赤松(私の番になったら、どんな方法で最原君にアピールすればいいんだろう……?)

赤松(白銀さんのせいで、かなりハードル上がっちゃったよ……)

以上です

入間「さて、次は……」


入間さんが言い終わる前に、一人の人物がさっと動き出した
――ここまでずっと沈黙を貫いてきた、アンジーさんだ
……入間さんの言いつけを守っていたというよりは、
ずっと神様にお祈りを捧げていた――そっちのほうが近いかもしれない
いつも通りの明るい笑顔を浮かべ、最原君の待つソファへと歩み始めた
一方の最原君は不安げな表情だ。

――かく言う私も不安でしょうがない。
なにせ……相手はアンジーさんなんだから。


東条(……ついに動くのね、彼女が)

春川(さっきまでの瞑想は、今この瞬間に全神経を注ぐためだったみたいだね。……正直何やらかすか不安だけど)

夢野(気力十分、と言った感じじゃのう。さっきまでは怖いくらいに静かじゃったからな)

茶柱(本来であれば、女子が下劣な最原さんの元へと向かうのは止めるべきだとは思うのですが……。アンジーさん相手だと、何故か最原さんに同情してしまいそうになります)

白銀(え、何このラスボス登場みたいな雰囲気。私も結構頑張ったんだけどなぁ……はぁ)

赤松(最原君……負けちゃダメだよ?)

~~~~

最原(……残るは赤松さん、アンジーさんの2人)

最原(つまり、今回の膝枕が誰かを当てることができれば……消去法で最後の1人は確定する)

最原(実質、これが最後のトライになる)

最原(そして、怖いのはアンジーさんだ。何をしてくるかわからない。下手したら白銀さん以上の過激なことをしてくる可能性も……)

最原(べ、別に期待しているわけじゃないぞ。それに皆だって見てるんだ)

最原(僕自身の名誉のためにも、これ以上の醜態は晒せない!速攻で膝枕の持ち主を推理して、全てを終わらせるんだ!)

~~~~

アンジーさんは、ソファの前まで来ると
最原くんの顔を一瞥し、そして……

赤松(!?)

羽織っていたコートを脱ぎ捨て、ソファの背にかけた。
――ただでさえ露出の多いアンジーさんなのに、
コートを脱ぎ捨てたらそれはただの水着姿でしかない。
超高校級の発明家の研究室に明らかにそぐわないその姿は
周囲に異様な雰囲気を醸し出していた。

夢野(んおお。臨戦態勢じゃな)

東条「……無いとは思うけれど。もしも彼女が最原君に度を超えたアプローチをするようだったら……全力で止めるわよ。校内の風紀に関わるわ」ヒソヒソ

春川「なんか、立場が逆だよね。最原がそういうことしないようにってことで手錠付けたのにさ。ま、流石に見てられないような状況になったら私も協力するよ」ヒソヒソ

赤松(あ、アンジーさん……皆の見てる前で、変なことはしないでね……?)


皆が不安そうに見つめる中、アンジーさんはソファに腰掛けた


入間「それじゃ、早速――」

そして、入間さんの発言を遮るようにして――
最原くんの頭に手を添え、自ら膝枕へと誘った。

~~~~

ファサッ

最原(……!衣擦れの、音……)

最原(つまりは、何かを『脱いだ』ってことか……?)

最原(アンジーさんのコート……いや、赤松さんがリュックを降ろした、ってこともあるか)

最原(断言は出来ない。だけど……)

最原(この感じは……身につけていた服を脱いだ、と考えるのが自然だ)

最原(後は、何か……)ピトッ

最原(!顔に、手が……)

――いきなり、顔を触られた。
膝枕前からこれってのは初めてのパターンだな……
どうやら、このまま膝枕まで誘導されるみたいだ。

これは、入間さんじゃない。
入間さんは起こすときは手伝ってくれるけど、寝転がるときは言葉で誘導するだけだからね。
自ら膝枕を受け入れる、今までにないほどの『積極性』
そして『脱いだ服』

それらが示す人物、それは――


最原(――これが答えだ!『超高校級の美術部』……『夜長アンジー』さん!)

~~~~

アンジーさんの太ももに、最原くんの頭が導かれた――
と思った次の瞬間

最原「入間さん!もうわかったよ!」

最原君がそんな突拍子も無いことを言い出した。
……え?だって、今始まったばっかりだよね?
頭が太ももに触れるか否かって時に出た発言だし
ちょっと信じられないかな。
周りの皆も困惑気味だ。
……あ、さすがのアンジーさんもびっくりしてるみたい。

入間「……は?え、ちょっ……ええ?」

最原「もう、大丈夫だから。起こしてもらっていいかな?」

入間「ま、まぁ、お前がわかったって言うならそれでいいんだけどよ……」グイ

アンジー「あっ……」

春川「……なにこれ。最原の奴何考えてんの?」ヒソヒソ

東条(……もしかしたら。……少し、マズイことになったわね)

入間「えっと、じゃあ次だな……」

赤松(……!遂に、私の順番が……!ど、どうしよう。アンジーさんの番が思ったよりも早く終わっちゃったから、心の準備が……)ドキドキ


最原「いや、それは……必要ない」


入間「…は?」

赤松「え?」

春川「は?」

茶柱「はい?」

夢野「んあ?」

アンジー「……」

東条「ああ……」

赤松「ひ、必要ないって……ど、どういうこと!?最原君!」

春川「赤松、声出てる出てる。いや、確かに意味不明だけど」


入間「必要ないって、お前それはどういう……」

最原「だって、最後の証拠を見つけるまでもなく……」


最原「――全員分、どれが誰の膝枕かを……導くことができたからね」


入間「……えーっと、それは……」


最原「1人目、東条さん!2人目、春川さん!3人目、茶柱さん!」


入間「さ、最原……?」


最原「4人目、夢野さん!5人目、白銀さん!6人目、アンジーさん!」

最原「よって……消去法で最後の1人は赤松さん!」


赤松「しょ、消去法!?」ガーン


最原「――これが僕の答えだ!」

以上です

シーン

最原(……あれ?皆の反応が薄い……?)

最原「もしかして、間違っちゃってたかな……?」

茶柱「えっと、その……順番自体は合ってますけど……」

夢野「……んあー。色々と、間違っておるぞ……最原よ」

入間「最原、オメー……この検証実験の趣旨忘れてんじゃねぇだろうな?」

最原「……えっ?」

春川「……女子の中で、『一番理想の膝枕を決める』――これがこの実験の目的だったはずだよね?」

最原「……?」

最原「……」

最原「……!?」

最原(し、しまった……!なんでそれを忘れるんだ、僕は!?)

最原(いつの間にか、『誰の膝枕を推理する』こと……そっちにばかり気を取られるようになってしまっていた……!)


東条(……無理もないわ。目隠しと手錠での拘束という特殊な状況。それに加えて、段々とエスカレートするイタズラによって……頭が混乱してしまったのね)

東条(――そもそも、事の発端は私の行動から。どうやら、彼の超高校級の才能を刺激しすぎてしまったようね……)

東条(責任の一端は私にある。……いえ、彼を刺激しすぎた他の女子にも問題はあるわね。だから彼を責めることは出来ないわ)

東条(……ただし、それは――あの二人には当てはまらない)


赤松「……」

アンジー「……」


東条(……ごめんなさいね、最原君。ここから先はあなたと彼女たちの問題よ)


最原(これは、マズイぞ……!目隠しのせいで皆がどんな表情かは読めないけど……間違いなく場の雰囲気は最悪だ)

最原(しかも、正直な話……後半の人達に関しては、膝枕の感触すらろくに覚えていない!)

最原(……だからといって、正直に話して笑い話に……なんてことが許される状況でもなさそうだ)

最原(この苦境を乗り切るために……『嘘』をついてでも流れを変えないと!)


最原「あ、ああ。勿論、そっちも忘れてないさ」

入間「……それ、本当か?だってお前、さっき」

最原「ああ!勿論本当だよ!」

入間「ひぃ!」ビクッ

最原「『誰の膝枕かの推理』は、あくまでついでなんだ。主目的である【『理想の膝枕の選定』もちゃんと行ったよ】!」



赤松「そ れ は 違 う よ !」

以上です

最原「!」ビクッ

入間「ひいい!今度はお前かよ……」ビクビク

赤松「……最原君はさ、エスパーか何かなのかな?」

最原「えーっと、どういうことかな……?」

赤松「最原君は、どうして……『まだ膝枕してない人にまで評価を下せるの?』」

最原「!?」

赤松「私はまだ、最原君に膝枕をしたことは無い。だから最原君も評価なんて出来っこない!」

赤松「つまりさっきの証言は――最原君の『嘘』!なんだよ!」

白銀「あ、それ私の台詞……」

最原(くっ……流石は赤松さん。一筋縄ではいかない。だけど僕だって、このまま退くわけには行かないんだ!)

最原「ご、ゴメン赤松さん。確かに、赤松さんの膝枕はまだだったみたいだね」

赤松「あれ?やけにあっさり認めたね……?」


最原「けど、これも……【目隠しという異常な状況のせいで、きちんと人数を把握できてなかったからなんだ】。僕としては、てっきりもう全員分検証が終わったものだと――」



アンジー「それも――終一のウソ、だよね?」

最原「!?」ビクッ

最原(この感じ……普段朗らかなアンジーさんがたまに見せる一面……!)


夢野「あ、アンジーあの表情は久々に見たのう……。やっぱり怒ってるんじゃろうか」

茶柱「ひょっとしたら、悲しんでるのかもしれませんよ……アンジーさんの喜怒哀楽ってわかりにくいですし……」


最原「アンジーさん、ウソっていうのは……?」

アンジー「だってだってー。終一、さっき言ってたよね?『全員分、誰がどの膝枕かわかった』って」

最原「!」

赤松「あ!うん、確かに言ってたよ!その後丁寧に全員の名前も挙げてた!」

アンジー「それってつまりー、ちゃんと膝枕をした人の数を把握してた、ってことでしょ?」

アンジー「――だからこそ、『消去法』で……残ったのが楓だってわかったんだよね?」

最原「うぅ……!」

アンジー「それにそれにー、例え人数把握できなかったのが本当だったとして――」

アンジー「――たった一瞬の膝枕で判断されるほど、アンジーの膝枕は良くなかったの?」

最原「あ、いや……」

赤松「それに賛成だよ!」 同意!


赤松「最原君、アンジーさんの膝枕はほんの一瞬で切り上げたよね?それって……膝枕される前に、誰が次の担当者か『推理』したからでしょ?」

赤松「その時点で、最原君はアンジーさんの膝枕を受け入れるつもりが無かったってことだよ!これもさっきの発言と矛盾してる!」

アンジー「つまり終一は、この場を取り繕うために――『嘘』をついた、ってことだよね?」

最原「……あ、あの……その……」


赤松・アンジー「「これが<私達/アンジー達>の答え<だ/だよー>!!」


最原「いや、違っ……」

最原(くっ……僕が嘘をついているかどうかで、議論が真っ二つに割れてしまった)


最原「――割れた?議論が……真っ二つに?」


赤松「割れてないよね?」

最原「はい」

以上です

最原「途中から目的がすげ替わってました……ごめんなさい……」

赤松「……もう!最初っから素直にそう言ってくれればよかったのに」


そう言って赤松さんは、(おそらく)握りこぶしを作って
コツン、と軽く僕の頭に当てた。
よかった、そこまで深刻に怒ってるわけじゃなさそうだ。
……まぁ、よく考えたら当たり前な気もするけど


赤松「最原君は、わざとあんな意地悪なことするような人じゃないなんて、わかりきってるもん。ちょっと混乱しちゃっただけだよね?」

最原「うん、本当にごめんね、赤松さん」

赤松「ううん、こっちこそゴメンね。さっきは私も冷静じゃなかったみたい……」


茶柱「ん?よく考えたら、今回は最原さんは別に何も悪いことしてないんじゃないですか?存在そのものが罪な男死であるという点を除けばですが……」

夢野「まぁ、最原は自身の自由を失っておったからのう。自分から何かするなんてことがそもそも不可能だったんじゃ」

白銀「と、というかさ……最原君、私がやったってこと全部分かってたんだね……。どうしよう、地味に……というかかなり恥ずかしいよ……」カアア

入間「スカートたくし上げて膝枕とか、とんだ痴女眼鏡だったな!欲求不満も大概にしろよ!ヒャーッヒャッヒャ!」

白銀「うう……追い打ちはやめて欲しいなぁ……」

春川「それは自業自得な面もあるでしょ。……まぁ、私がやったイタズラも……今思うと子供っぽくて、ちょっと恥ずかしい……かも」

茶柱「むっ……!前言を撤回します。女子に恥をかかせた最原さんは罰を受けるべきです!然るべきところに訴えさせてもらうので覚悟してくださいね!」

最原「ははは……キーボ君みたいなことを言うんだね茶柱さん……」

夢野「最原がいらんことを言ったせいじゃぞ。ウチだって、ウチだって恥ずかしい思いを……!」

最原「夢野さんは何もしてなかったよね?」

夢野「んあー……」

東条「それで、結局検証実験はどうなるのかしら?」

入間「あ?そうだな……まだ赤松が残ってるっちゃ残ってるんだが……続ける必要あるか?」

赤松「あるよ!ここまで来たら、最後までやり通すべきだよ!」

春川「もう、最原は誰から膝枕されるか分かってるわけだけど……それでもやる意味あるの?」

東条「私はそれでも構わないと思うわ。皆もわかったともうけど、最原君の洞察力は一級品よ。たとえ相手が誰であろうが、冷静に判断してくれるはずよ」

最原「(それは正直自信無いけど……)あのさ、もし続けるなら、目隠しだけでもとってくれないかな?もう必要ないと思うんだ」

赤松「う~ん……それは……。――やっぱり駄目!私も、意識したらちょっと恥ずかしくなってきちゃったし……私の膝枕が終わるまで、そのままで!」

最原(まだしばらくは拘束されたままか……早く開放されたいな……)

赤松「あ、そうだ。アンジーさんも、そんな感じで良い?」

アンジー「えー?どうして?」

赤松「え?だってアンジーさんの膝枕ってすぐに終わっちゃったし、最原君も判断できてないみたいだから……アンジーさんももう一回――」

アンジー「ん~。そもそもさ……」


アンジー「アンジーは終一を許したなんて、一言も言ってないよね~?」

最原「えっ」

以上です。
次で多分終わります。

赤松「あ、アンジーさん!?許すも何も……最原君は何も――」

アンジー「楓はさ、まだ膝枕する前だったから良かったのかもねー。でもさ……」

アンジー「アンジーはねー、終一に膝枕していっぱい癒やしてあげようと思ったのに……終一ってばすぐに起き上がっちゃったよね?」

アンジー「なんだか、嫌われちゃったのかな?って思って……いっぱい悲しかったよ」


そんなことを、普段と変わらない変わらない様子で語るアンジーさん。
だけど――きっと、本心は今語った通りなんだと思う。
1秒も最原君と触れなかった私と違って、アンジーさんは一応ではあるが膝枕をしている。
だからこそ、早々に切り上げられてしまったことが残念だったんだね。
もちろん、最原君がアンジーさんを避けていたわけじゃない。
色々事情があったんだよ。――主に白銀さんのせいで。

東条(なまじ膝枕の体を成していた分、『最原君に拒絶された』という思いが強まってしまったのね。無理もない話だわ。でも……)

東条「それは違うわ、アンジーさん。最原君が膝枕を即終わらせたのは、白銀さんのイタズラがトラウマになっていたせいよ。決してあなたを嫌っていたわけではないわ」

夢野「スカートの中では、ウチらの想像もつかん痴態が繰り広げられていたんじゃな」

茶柱「ぐぬぬ……女子の擁護をしたいところですが……最原さんは手錠で自由を奪われていた上に、目隠しまでされていたのでは……いや、口を使えば犯行は可能……?」

赤松「白銀さん、ちょっと後で何やったのか教えてね。あと最原君もね」

白銀「わ、私が悪かったからぁ……ごめんなさい!もう許してよぉ!」

春川「……まぁ、最原も色々と事情があったみたいだし……アンタも許してあげたら?」

アンジー「えー、駄目だよー!今更膝枕したところで、つむぎほど色々出来なそうだしー……」

アンジー「――だからね、もっと良いこと思いついたよ」

赤松「えっ……?良いこと、って……」

最原(僕にとっては良いことじゃないんだろうなぁ……)

アンジー「モノクマ―!モノクマ、いるー?」

春川「……モノクマ?こんなところで呼び出したって、アイツが来るわけが」

モノクマ「はいはーい!お呼びとあらば即・参・上!学園のアイドル、モノクマですよ~。うぷぷぷぷ」

春川「うわ、本当に来た!アンタ、一応学園長じゃなかったっけ?……学園長って、本当は暇なの?」

モノクマ「失敬な!僕はいつだって忙しいの!その忙しい合間を縫ってオマエラに会いに来たんだから、もっと感謝しろよ!」

夢野「別に会いたくはなかったんじゃが……」

茶柱「同感です」

モノクマ「うぅ、グスン……ひどいなぁ。……で、一体僕に何の様かなー?今ヒマだから話し聞いてあげるよ!」

入間「やっぱり暇なんじゃねーか!」

アンジー「実はねー、かくかくしかじかでー」

モノクマ「これきよしおしお、と。成程ね~。最原君、やってしまいましたなぁ」

赤松「えっと……モノクマにさっきのことを話すのが、アンジーさんの言ってた『良いこと』?」

東条(いえ、おそらく違うわね……もっと厄介な予感がするわ)

アンジー「ううん?違うよ?モノクマにはね、そんな乙女心を弄んだ終一に――」

アンジー「――神った『オシオキ』を考えて欲しいんだー」

赤松「え、ええ!?お、お仕置き!?」

茶柱「そ、それはやり過ぎではないですか?いくらなんでも、命を奪うのはかわいそうだと思うのですが……」

最原「ちょっ!?茶柱さんの中では、お仕置きイコール死刑なの!?」

茶柱「男死に対するお仕置きならば妥当では?」

アンジー「あ、勿論……痛かったり辛かったりー、終一が悲しんだりするようなのは無しだよ?」

アンジー「むしろ、もっとアンジーと終一が仲良くなれるような、神ったやつがいいな」

モノクマ「うぷぷぷぷ!そういうことなら、お任せあれ!というか、もう考えてあるんだよね」

白銀「ええ!?いつの間に……」

モノクマ「だって、ここで起きたことは全部、監視カメラで見てたからね」

入間「はぁ!?お前、人の研究室にそんなもの付けてたのかよ!?」

モノクマ「あのさぁ、入間サン……一応この研究室って、才囚学園の中でもトップクラスに予算を注ぎ込んでるわけ」

モノクマ「機密情報だって多いし……それを問題児であるキミに預けるわけだから、当然それくらいの対応するに決まってるでしょ!」

東条「……一概に抗議もできないのが辛いところね」

赤松「うん……納得の理由だったよ」

入間「じゃ、じゃあ……俺様が研究室内でやってたあんなことやこんなことも、全部見られてたっていうのか!?」

入間「そ、そんなぁ……あっ、それもなんか良いかもっ……」

モノクマ「話戻していい?じゃあ、早速だけど最原君へのオシオキを発表したいと思いまーす!」


思わぬ乱入者、思わぬ展開により
若干混乱しかけた頭も、徐々に冷静さを取り戻してきた。
その場にいた皆(入間さんを除く)が固唾を呑んで見守る中
最原君への『オシオキ』が言い渡されようとしていた


モノクマ「――内容は、ズバリ!『逆膝枕』!」

以上です
思ったより長くなったので次で終わりにします。

赤松「ぎゃ、逆膝枕、って……?」

春川「要は……最原がアンジーに膝枕する、ってこと?」

夢野「なんじゃ、思ったよりは軽いお仕置きじゃのう」

茶柱「流石にそれは甘すぎるのでは?女子に膝枕するなんて、むしろご褒美じゃないですか!」

最原「茶柱さんは誰の味方なの!?」

茶柱「私にそれを言わせるつもりですか?」

最原「ああ、まぁ、うん。そうだよね……」

モノクマ「うぷぷ……オマエラわかってないね~」

モノクマ「健全な男子にとって、女子を膝枕するってことがどれだけ大事か、考えてご覧よ」

モノクマ「だって自分の下半身に、女の子の顔が近づくわけだからね!下手したら男のロマン砲が暴発するかもしれないし、たまったもんじゃないと思うよ!」

モノクマ「あ、手錠と目隠しはそのままでね。そんな自由の効かない状況で、最原クンは不安と期待でワックワクのドッキドキってわけさ!」

赤松「お、男のロマン砲、って……」カアア

最原「ちょ、ちょっと!勝手に人の気持を捏造するなよ!大体、何の権限があってお前が僕のオシオキを決めるんだ!」

モノクマ「んー?じゃあ本校みたいに、『学級裁判』でも開いてみる?生徒間の問題は生徒間で解決するっていうのも、学園長としては素晴らしい考えだと思うよ」

モノクマ「ただし!そうなったら他のクラスメート全員に今日のことを説明しないといけないよね!それは避けた方がいいんじゃないのかな~?うぷぷぷぷぷ」

最原「うぅ……」

東条「王馬君辺りに知られたら、更に面倒なことになりそうね」

白銀「私が言うのも何だけど、受け入れたほうがいいんじゃないかなぁ?」

夢野「確かに白銀にとってはその方がいいじゃろうな。お主がやった行いも皆に知れ渡ってしまうからのう」

白銀「そ、そういうのじゃないってば!」

春川「私としても……あんまり他の奴に話すのは気が進まないかな」

赤松(百田くんはそんなこと気にしないと思うけどね。ただ……)

モノクマ「で?どうなのよ最原クン?」

最原「……わかった。オシオキを受け入れるよ」

アンジー「うんうん。終一ならそう言ってくれると思ったよー」

赤松(……やっぱり、そうなっちゃうよね。最原君は優しいもんね。嫌がってる人がいるなら、自分の都合を優先するはずないし)



アンジー「――で、モノクマ?それだけじゃないんでしょ?」

赤松「え?」

最原「えっ」

モノクマ「あれれー?アンジーさんにはバレちゃってたかー」

アンジー「だって、転子が言ってたみたいに……それだけだと、軽すぎるよね?」

アンジー「アンジーが受けた悲しみは、そんなものじゃ癒やされないかなー」

モノクマ「うぷぷぷぷ。それじゃあご要望にお答えして、追加条件を発表したいと思いまーす!」

モノクマ「最原君クンは、目隠し・手錠に加えて……パンツ一丁で膝枕してもらうよ!」

最原「!?」

赤松「!?」


モノクマ「男女、拘束、膝枕。何も起きない筈がなく……」

モノクマ「あ、今の『起きない』って、ダブルミーニングになってたんだけど、気付いてくれたかな?」

モノクマ「うぷぷぷぷ……気をつけた方がいいよ、最原クン。パンツ一枚の状態じゃ、ズボンのシワってことで誤魔化せないからね!」

最原「ちょ、ちょっと……待ってよ!流石に、それは!」

モノクマ「んー?パンツ一枚じゃ恥ずかしい?しょうがないな。じゃあ上半身はそのままでいいよ」

モノクマ「ただし!下半身はパンツ以外の着用は認めないからね!」

最原「そ、そんな……」

アンジー「にゃはは、神ってるね~!」

モノクマ「そうそう、女子の方も、パンツを脱がせるのは禁止だからね!ボクはほんのり甘酸っぱいのは大好物だけど、ストレートなのはアウトだよ!当然だよね?ここ教育機関だもん!」

モノクマ「そういうわけだから、注意してね。赤松さん、アンジーさん」

アンジー「うん、わかったよ~」

赤松「え、ええ!?なんでそこで私の名前出すの!?」

モノクマ「え?だってこれは君たち2人への贖罪のために行うオシオキなんだよ?当然、膝枕の対象には赤松さんも含まれてるよ」

モノクマ「ふー疲れた疲れた。じゃあそういうわけだから……後はヨロシクね!ルールを守って楽しくオシオキ!」


そう言い残して、モノクマは嵐のように消え去ってしまった。
アンジーさんとまだトリップしてる入間さんを除いて
その場にいる全員が呆然としていた。
突然のことでまだ頭が追いついてないけど――
こ、これって……私も、オシオキに参加しないといけないってことなの?
ちょっとこれは、いきなりすぎるというか……


赤松「と、というか……私は別に贖罪なんか望んで無いし……最原君を困らせるぐらいなら――」


オシオキなんか参加しない、と言いかけた私を止めたのは
意外な人物だった。

東条「いいえ、赤松さん。あなたもちゃんと参加するべきよ」

赤松「へ!?と、東条さん、何言って――」

東条「――彼女を1人で好きにさせたら、今度こそ何をするかわからないわよ」ボソッ

赤松「あっ……」

東条「さっきはある意味お預けを食らってしまったようなもの。そのフラストレーションをこのオシオキで発散しようとしてるのかもしれないわ」

東条「だから、あなたが見張っておくべきよ。何か間違いが起きないように」

赤松「……」

東条(とは言っても、本当に一線を越えようとしたら流石にモノクマが止めるでしょうけどね。監視カメラもあることだし)

東条(このオシオキは、あなたにとっても自分の気持に素直になるチャンスじゃないかしら。頑張ってね、赤松さん)

赤松「……わかったよ。私も、このオシオキに――」

最原「ちょ、誰!?何してるの!?」

アンジー「じっとしててよ終一。すぐ済むから」

赤松「って、何してるのアンジーさん!?」

アンジー「んー?だって、終一は手錠付けられてるから……自分でズボン脱げないでしょ?だからアンジーが手伝ってあげてるんだよ」

赤松「そ、それはそうだけど……」

入間「……アレ?モノクマのやついつの間に消えたんだ?」

赤松「あー!もう!皆、解散だよ!アンジーさんと私以外、女子は出ていってね!」

入間「ええ!?ここ、俺様の研究室なのに!?」

赤松「ゴメン!けど、最原君の名誉に関わるから!ほら、早く早く!」

夢野「赤松にしては強引じゃのう。まぁ、無理もないか」

茶柱「あ、あの、最原さん。あまり気にしないでくださいね。今更かもしれませんが、最原さんが悪い人じゃないってことは、転子たちもよくわかってますから……それでは!」

白銀「うぅ……本当にごめんね最原君!後この事はどうか内密に!」

春川「結局、膝枕検証実験もうやむやになったね。時間無駄にした気分だよ」

東条「そう思うのも無理はないけれど、一番の被害者は最原君よ。私も、後でフォローしてあげなければね。――メイドとして」

入間「よくわかんねーけど……結局、俺様を超える膝枕は存在しなかったってことだな!ヒャーッヒャッヒャッ!」


バタン

こうして、超高校級の発明家の研究室の中には
私とアンジーさん……それに、目隠しされた状態で手錠で拘束され
更には下半身は下着以外何も身に着けておらず
不安げな表情でソファーに座っている最原君の3人のみが残された
――明らかにおかしいよね、この状況
ど、どうしよう。顔が異常に熱いよ……


アンジー「――終一。怖がらなくていいよ?」ボソッ

最原「!?」ビクッ

アンジー「アンジーは、終一の嫌がることなんてしないから。むしろ逆」

アンジー「終一が悦んでくれること、嬉しいと思ってくれることを沢山してあげる」

アンジー「だから、いっぱい、いーっぱい……ドロドロに神っちゃおうね……?」

最原「う、うぅ……」

……ちょっと目を離した隙に、アンジーさんが最原君の耳元で何か囁いてる
なんか、最原君も顔真っ赤にしてるし……

――私だって、最原君に伝えたい事は、いっぱいあるんだから


アンジー「そうだ、楓ー。この膝枕も、さっきみたいに終一に当てて貰おうよ」

赤松「……え?」

アンジー「アンジーたちで終一にアピールしてー、今どっちを膝枕してるか『推理』してもらうんだよ。神ってるでしょ?」

最原「い、いや……僕はもうそんなこと」

赤松「……わかった。そうしようよ」

最原「……えぇ!?あ、赤松さん!?」

――宣戦布告ってわけじゃないけど。
私もアンジーさんに負けてられない。
口に出さなきゃ、伝えられないことだってあるもんね。
だから私も座ってる最原君に近づいて
アンジーさんと同じように、耳元で囁いてみた。

赤松「あ、あのね……最原君。今、最原君が目隠ししてくれててよかったよ……私、今顔真っ赤になってるだろうから……」ボソッ

最原「う、うん……」

アンジー「おー。楓もやる気満々だねー!」


赤松「私もさ、その……頑張るから。私だってわかってもらえるよう、いっぱいアピールするから」

赤松「アンジーさんと同じくらい……ううん、アンジーさんに負けないくらい、沢山、アピールするから」


赤松「――だから、私に、気付いてね?」



赤松「……信じてるからね?『超高校級の探偵』――『最原終一』君?」



終里

赤松と最原がイチャイチャしてるSSが意外と少なかったので自分で書きました。
これで完結です。
お付き合い頂きありがとうございました。

関係があるかもしれないSS
・舞園「超高校級の耳かきボイス」
・苗木「超高校級のセクハラ裁判」

html化依頼出してきます

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