北の果てで (95)
※注意※
このSSは艦隊これくしょん二次創作です。
キャラ崩壊や拙い表現力等があります。
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雪が降る北方で、ひっそりと佇む建物。本国から遠く離れたそれはほとんどの者が知らず、知っていても誰も近づかない。骨まで凍りそうな極寒のこんな辺境の地に飛ばされた青年が一人、送る用の船は、青年を下ろすとすぐに離れていった。
「うぅ…クソ寒い…」
とにかくこの風邪と雪から解放されるために建物に向かう。灯りは一切ついておらず、人の気配は全くしない。一応、扉をノックし誰かいるかを確かめる。すると、中から足音がこちらに近づいてきて扉を開けた。
「…どちら様かな」
「私は…」
中から出てきたのは少し青が混ざった白髪の少女、帽子に星のマークと錨の様なマークがある。蒼い目でこちらの姿をみると、何かを察したのかこちらが言い終わる前に建物の中に入るように促してきた。
「言わなくて良いよ、中に入って」
「ああ、ありがとう」
さっきの吹雪よりはましだが、建物の中もかなり寒い。底冷えするような寒さに、顔を歪めるが前を歩いている少女は平然として歩いている。
「な、なぁ」
「何かな?」
「暖房はつけないのか?これじゃあ、外も中も変わらないぐらい寒いんだが…」
「…執務室に暖房がある。それまでは我慢してほしい」
「ああ…」
寒さで倒れてしまいそうだ、せめてもう一枚上着を着てくれば良かったと今さら思っても時すでに遅し。執務室が近いことを祈ろう。
2度階段を登り、廊下を歩く。途中、窓から外をみたが、吹雪で外が全く見えない。まるで、檻に閉じ込められているみたいだ。
「ここだよ、どうぞ」
キィと油の切れた音を立て、ゆっくりと扉が開けられた。意外と中は綺麗に掃除されていて整っている。
「ふぅ…」
暖炉に火がついていて、窓には結露ができている。コートを脱いで、荷物を机に置く。暖炉に近付き手をかざして暖をとる。
「さて、それじゃあ自己紹介していいかい?」
「ん?ああ、寒さのせいで忘れてた」
その華奢な体に似合わない敬礼をすると、名前を言い始めた。
「私は元ソ連艦『Верный』。よろしく司令官」
「君はソ連艦だったのか」
「そうだよ、元は違う国の艦だったらしいけどね」
「覚えてないのか?」
「思い出そうとしても靄みたいなのがあって思い出せないんだ」
「それにしても幌筵は寒い、君はそんな格好で寒くないのか?」
「あれぐらいなら大丈夫さ」
スマホの充電がないので一旦ここまで
執務室へ向かっている最中、渡り廊下を渡りきった時のことだった。廊下の向こう側でВерныйの姿が見えた。Верныйは既に部屋に戻って眠っているはず、なぜあそこに居るのだろうか。
「提督、あの娘はここの艦娘?」
「ああ、だが先に部屋に戻って寝たはずだが…」
呼びかけようとしたとき、フラッと進路を変えて姿が見えなくなった。
「見えなくなっちゃったね」
「まぁ、眼が覚めてトイレでも行ってたんだろう。…トイレの場所を聞くの忘れてたな。朝一に聞かなければ」
Верныйの事は気がかりだが、今は執務室へ向かおう。いい加減、私自身も眠たくなってきた。相変わらず外の吹雪は止まず、窓に雪がへばりついている
。
「時雨、だったか。村雨って娘を知ってるか?」
「もちろん、村雨は三番艦で僕の妹に当たるよ」
村雨の方が妹…パッと見では村雨の方が姉に見えるのだが…
「提督、今失礼なこと考えたね?」
「い、いやそんなことはないぞ」
この娘はエスパーか何かか?
ここまで
再開します
執務室の前につくと、時雨が服を引っ張ってくる。何事かと思い振り向くと、少しかしこまった様子でこちらを見つめていた。
「その、提督…僕あんまり他の娘と話すのが得意じゃないんだ。良かったら慣れるまで助けてくれると嬉しいんだけど…」
「安心しろ、今この幌筵には私とВерныйしか居ない。大きさの割りに寂しい白地だよ」
「ふふっ、提督は面白いね」
「あ、あんまり面白い事言ったつもりは無いんだがなぁ…」
時雨のことが良く分からないと思うのは私だけだろうか。だが、これでこの泊地へ3人になった。確かに少ないがそれでもまだマシだ。執務室の扉を開けて暖かい天国へ入る。
「ふぅ、流石に執務室は暖かいな。時雨、名簿に君の名前を追加する。何か名前の他に記入して欲しいことは?」
「そうだね、1つだけ『ム望造建艦妹姉』とでも書いといてよ」
「…直接言わない辺りいやらしいな」
「僕は他人に自分の気持ちを伝えるのも苦手なんだ♪」
「そうか、なら名簿に『ズラカベルス話会』とでも書いとくとしよう」
「…提督もいやらしいじゃないか」
「お互いにな」
名簿に時雨の名前と詳細を書いていく。もちろん、先程の『ム望造建艦妹姉』もだ。もし姉妹艦が4、5人集まったら消しておこう。
「それで時雨、今の時刻を見て欲しい」
「えっと…午前2時だね。もう良い子は寝てる時間だ」
「そうだ、そして私たちは悪い子になってしまうな。それにこれ以上起きていると、昼夜逆転した生活を送ることになる。廊下を通った時に分かっただろうが、ここは吹雪で全く外の様子が分からない。せめて時計だけでも昼夜に従いたい」
「その時計が正確だと良いね」
「安心しろ、ちゃんと来る前に合わせてきた。滅多なことがない限りずれないぞ」
「なら嬉しい限りさ」
暖炉の火を消し、懐中電灯を取り出して部屋の明かりを消す。そういえば寝床を作っていなかった、どこかの空き部屋で一晩を過ごすとしよう。
「提督、今日は僕と一緒に寝ないかい?」
「何を言い出すんだいきなり」
「冗談だよ、もうちょっと照れてくれたって良いじゃないか」
「すまんが、そういうのは幼馴染で間に合っている」
「あーあ、つまんないや…」
時雨という娘がどういう娘なのか更に分からなくなってきた。とにかく今日は隣で一夜を過ごそう。
ここまで
「2人共、今戻ったぞー」
ココアを両手で持ち、扉を開けてもらい中に入る。さっきと変わらず暖炉のまで座っているが、Верныйが何故か自分のマフラーを首に巻いていた。グルグルと巻かれているマフラーは鼻までを隠すほどまで盛り上がっている。
「Admiral!Thank You!」
こちらに気づくと近付いてくると、まるでひったくるようにコップを取っていく。扉を閉め、暖炉を見るといつの間にか時雨がコートを羽織っていた。正直なところ、体温が低いこちらへ譲ってほしかったが、少女から大人が防寒具を奪うなどただの大人げないやつだ。そうだ、忘れないうちにプリンツを名簿に追加しておこう。
「プリンツ、ちょっとこっちに来てくれ」
「んん?どうしたの~?」
「名簿にプリンツの事を書いておきたくてな」
「OK!」
引き出しから名簿を取り出す。分厚さの割には最初の1ページ目以外白紙のほぼ真っ白な名簿、これがほとんどの埋まるほどの大所帯だと大変そうだが楽しそうだ。
「さてまず名前だが…プリンツ・ユージンって英語でどう書くんだ?」
「えっとね~ 『Prinz Eugen』…ってあれ?」
「ん?どうした?」
「…ううん、何でもないよー!ほら、『Prinz Eugen』。書いてみて!」
「よし…『Prinz Eugen』だな?」
「YES!次いってみよー!」
書かれた通りに名簿に書き写すと、見た目の特徴等を書いていく。何の問題もなく埋めていったが、今の願いを聞くと、悩み込んでしまった。
「うーん…」
「願い無いのか?最悪おもちゃが欲しいとかでもいいぞ?」
「ううん、そうじゃなくて…誰かに会いたいんだけど全然思い出せないなぁーって」
「なるほど、それなら思い出せてからにしよう。さて、こんなもんだな」
名簿をとじ、引き出しにしまうと狙っいたかのように電話な鳴り響く。
「すまん、ちょっと静かにしていてくれ」
「はい、こちら幌筵泊地」
『何度もすまんな、私だ』
「いえ、大丈夫です。それで、なにかご用で?」
『実はな、そっちで引き取って欲しい艦娘が3人ほど居てな』
「こちらでですか?」
『あぁ、『長門』『酒匂』『雪風』なんだが…』
「ちょ、ちょっと待ってください!流石にそれはダメですよ!こんな辺境の地に建造ならまだしもそちらから戦艦を寄越すなんて」
あまりのことにビックリした。長門と言えば、あのビックセブンと呼ばれた艦娘のはず。このような鎮守府に連れてくるのはもったいないはず。
「いや、問題が起きてな…」
「問題?いったいどのような?」
『最近、何かに怯えるように部屋に引きこもってしまって出てこないんだ。『酒匂』と『雪風』も同じような状態でな。何とか同室の艦娘に会話はしてもらっているが、あの状態でこの鎮守府に置いておくわけにもいかなくてな。どうだ?引き取ってくれるか?』
「と言われましても…こっちは戦艦の出撃なんて出来ませんよ?」
『構わない、ストレス発散という名目でそちらに行かせる。リンガでも良かったんだが、大規模作戦前線基地になることが決定してな』
「そうですか、分かりました。こちらは部屋の掃除をして準備をしています」
『頼んだぞ』
向こうから通信を切られるのを待ち、それに合わせてこちらも受話器を戻す。
「司令官、どうしたんだい?」
「艦娘が3人、こちらへ来ることになってな」
「名前は?」
「『長門』『酒匂』『雪風』だ」
「長門!?酒匂!?Really!?」
「お、おう。突然どうした?」
プリンツが机を乗り出して聞いてくる。どこかでの知り合いだろうか?
「酒匂に長門かぁ…久しぶりだなぁ…」
「とにかく、これから部屋の掃除をする。3人だから1つの部屋の掃除で十分か」
「Admiral!長門と酒匂は私の部屋が良い!」
「そうか、ならプリンツと長門と酒匂は同室と」
「提督、雪風は僕と同じ部屋で良いかな?」
「良いぞ、なら2つの部屋の掃除だな。さっさと済ませるぞ、終わらせるなら早い方がいい」
ここまで、いやークリスマスやること何も無いですね…
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