【モバマス】ある雨の夜に (8)

Serendipity Parade!!!SSA公演お疲れ様でした。
幸運にも現地で両日見ることができましたが、しゅがはPとして未だ熱が冷めない状態です。

SSA公演で話題になった「TO D@NCE TO」を聞き、
浮かんできたストーリーを文章にしたいと思い、投稿させていただきます。
SS処女作ですので、拙い点、多少の独自設定がありますがご容赦ください。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1502812444

<Side K>
時刻は21時を少し回り、外はまだ雨が降り続いている。
事務所にはプロデューサーさんと私の二人だけしかいない。
最近はユニットでのライブが近いということで、レッスンが終わってから帰宅がてらみんなで夕食を取るのが日課のようになっていたが、今日は珍しくそれぞれ予定があり、早々に解散となった。

私はといえば、積み上がりかけていた学校の課題…と言ってもそこまで急ぐ必要もないのだけれど…を終わらせようと事務所に残って学業に励むことにした。
しばらくは他のアイドルたちも少し残っていたようだったが、気づいた頃にはちひろさんとプロデューサーさん、そして私だけになってしまっていた。
20時を過ぎた頃、ちひろさんの業務に片が付いたのか、PCをパタンと閉じ、帰り仕度を始めた。
帰り際、プロデューサーさんには「あまり根を詰めすぎないように」と、私には「あまり遅くならないうちに帰ってくださいね」と言い残し、私たち二人が残されたのだった。
私は課題を大方終わらせていたが、何となく一人で帰るのも気が乗らなかったため、プロデューサーさんの仕事が終わるのをさりげなく待つことに決めた。

21時を少し回った頃、プロデューサーさんが短い吐息の後にPCを閉じた。
「今日は雨だから、家まで送っていこうか」
これを狙っていたわけではないのだけれど、断る理由もないので頷く。
事務所の地下には駐車場があり、プロデューサーさんやプロダクションで働く人はいつもここに停めているようだ。
以前、別の部署の方の担当するアイドルがどうやったのか車に乗り込んで待っており、そのプロデューサーさんは肝を冷やしたなんて話も聞いたことがある。

プロデューサーさんの車はそんなに特徴もない普通車で、何度か乗る機会はあった。
だいたいユニットのメンバーと乗ることが多いので、こうして最初から二人きりというのは珍しい。
妹思いの彼女は以前、助手席に乗せてもらったの★なんて私たちに語っていたが、実は純情なあの娘のことだ、一人で舞い上がって大した話もしていないのだろう。

「ねえ 見て ほら 綺麗な月だね」
プロデューサーさんは車を発進させ、呟いた。
今日は朝からずっと雨が降り続いており、月なんて見えるはずもないのに。
私の住むプロダクションの寮は少し街からは離れているので、しばらく夜のハイウェイを走らせることになる。
プロデューサーさんの呟きには特に答えず黙ったまま、夜の街を眺めていた。
眠らない街とはよく言ったもので、両脇にはまだキラキラと輝くビルが沢山並んでいる。
宇宙ってこんな感じかしら…とポエムめいたことを考えてしまい、少し恥ずかしくなる。
この街が宇宙なら、私たちはさながら流れ星だろうか。
流れ星に乗って、私たちは宇宙を脱出した。

<Side S>
いつの間にか、眠ってしまっていたようだ。気づけば深夜である。
あたしはアイドル、なんてものになり、ユニットにも参加している。
ユニットのメンバーとは何となく気が合い、レッスンが終わった後には仲良くディナー、なんてこともする。
最近はライブが近いということもあり、その頻度も増えていたが、今日のレッスンはなかなかハードだったので少し横になりたいと思い、この後は予定があることにした。
偶然にも他のメンバーも今日は都合が悪いようで、すぐに解散となった。
終わった後は自宅には帰らず、あたしのラボへ向かった。

天才少女などと呼ばれ、海の外にいたことなんかもあったあたしだったが、どうにも飽きっぽい。
いまいちいろんなことにモチベーションも上がらなくなってきた頃、プロデューサーと出会い、面白そうだと思ってついていくうちに、気がつけばアイドルになっていた。

ただ、アイドルになるにあたって一つだけ条件を飲んでもらった。
事務所の中にあたし専用のラボを作る、ということだ。
ここにはお誂え向きに実験できそうな人間がたくさんいるし。…危ないことはしないけど。
別に隠しているわけでもないが、一応薬品なんかも多く置いてあるのでこの部屋のことはみんなには黙っている。
そのせいで、たまに夜中に変な音が聞こえるなんて怪談が生まれてたり。にゃはは。
家に帰るのが面倒な時や疲れた時にはだいたいこのラボに泊まるが、最近は家より入り浸っているような気もする。

今日のなかなかハードなレッスンを終えたあたしは、少し身体を休めたかったのでラボに戻って横になる。
すぐに寝入っていたようで、気がつくと真夜中だった。
さすが売れっ子アイドルを多く擁するプロダクションということでセキュリティもしっかりしている。
最後の人が帰ってしまうと防犯装置が作動するため、こうなると翌朝誰か来るまでラボから出られない。
まあいいか、と思って少し前から手がけている研究…の続きを行うことにした。

作っているのは、今度のライブで使おうと思っている香水である。
危ないものは使ってないけど、神経に作用していつもよりいいパフォーマンスができるようになる、と思う。
みんなには当日まで内緒だし、この効果のことも話す気もない。
My secret eau de toilette…なんて。

ふと、自分が一日の大半をアイドルとしてのあたしのことだったり、ユニットメンバーのことを考えて過ごしていることに気づいてなんだか可笑しくなってしまった。
今までのあたしだったらこうしてみんなのために…なんてことはしなかっただろう。
外の雨音だけが響くラボの中、かつてのあたしに呟いた。
「もう戻れない。ごめんね。」

<Side M>
「おねーちゃんおっそーい!!!」
30分程遅れて待ち合わせ場所のカフェに着くと、待ちくたびれた様子の妹君がむくれていた。
一言謝ってから、お詫びに好きなデザート何でも奢るよと言うと、さっきまでの不機嫌は何処へやら。
瞬時にメニューを開いてあれがいいかこれがいいかなんて悩み始めた…現金なやつめ。
まあ、そんなところもかわいいアタシの大事な妹なんだけど。

今日は妹の所属する凸凹ユニットのメンバーへの誕生日プレゼントを選ぶため、アタシの意見も聞きたいとかなんとかで前々からデートの約束となっていた。
そんな大事なデートの約束に何故遅れてしまったかと言うと、アタシはアタシで所属するユニットのライブが近く、毎日念入りにレッスンを行っている。
ある程度終わりの時間は決まっているものの、いろんな確認なんかをしていたらいつの間にか約束の時間が迫っていたので慌てて出てきたというわけだ。
今日はあいにくの雨ということもあり、移動にも少し時間がかかってしまった。

近頃はこうしてレッスンを終えた後、ユニットのメンバーと一緒にファミレスなんかへ行き、他愛もないことをだらだらお喋りするのも恒例になっているが、今日はこの後どうするのかも聞かないまま飛び出してきた。
あの後四人でどっか行ったかな、なんて考えると少し寂しいけどそこは仕方ない。
最愛の妹君とのデートを堪能することに決めた。

誕生日プレゼントはわりとすんなりと決まった。あの娘へのプレゼントって考えるとアタシの主観が入りすぎちゃって怒られたりもしたけど、結局は妹が自分で決めた。
サプライズなんかの企画についても楽しそうに話してくれて、喜んでもらえる姿が見えてくるようだった。
もう一人のメンバーと一緒にはぴはぴ☆な飾り付けするとか、主役に用意した衣装なんかも聞いちゃって。
きっとかわいいだろうなあ、写真撮ってくれないかななんて思ったけどここはグッと抑える。姉の威厳。

そんなこんなでデートを楽しみ、帰宅する。
予定が詰まっていたせいで忘れていたが、今日のレッスンはなかなかハードだったのだ。
家に着くとどっと疲れが押し寄せてきたので、早々にお風呂を済ませ自室でベッドに転がる。
隣の部屋で妹がアタシの曲を歌っているのがぼんやりと聞こえてきて。次第に意識がふわふわとしてくる。

夢の中か現実か、アタシはプロデューサーの車の助手席に座っている。
なんか聞いたことあるような話…この前二人きりで車に乗ってた時の…夢?
あの時実際は緊張しちゃって大したことも話せなかったんだけど、ユニットのメンバーには格好つけてあることないこと言っちゃったりしてるんだよね…多分バレてないと思うけど。
女の子たちの憧れであるカリスマギャルのアタシがそんなんじゃダメでしょって思うからつい格好つけちゃう。

でも夢の中でくらいいいよね。
夢の中のアタシは、誰よりも純粋で純情な女の子。
本当のアタシを見てね、とか思ったりしても。

一旦ここまでとなります。
「TO D@NCE TO」の並びでここまではすぐ思いついたのですが、このユニットはもちろんあと二人います。
そのストーリーも書きたいのですが全然思いつかないので、夏恋ととんでいっちゃいたいのから案が出れば書きたいと思います。。

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