京太郎「これが今の俺に出来る最高の和了だ……!」 (332)

前書き

・京太郎SSです

・更新は不定期

以上の点が無理だという方はブラウザバック推奨

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――俺は周りに時々聞かれる事がある。

「お前は部活辛くないのか?」と。

辛くないって言ったら嘘になるのかもしれない。

高い実力を持つ女子達の中にただ一人いる男の初心者。
まともな練習相手にもならない、雑用だけが存在価値の状況を笑って受け入れられるほど俺は人間が出来てないから。

当然負ければ心がざわめいたりするし、情けないが悔しさに枕を濡らした事だってある。

だけど、それでも俺はきっと問いかけに笑ってこう答えるんだろう……

京太郎「辛いわけねえだろ。むしろ楽しんでるよ、麻雀を」

何回も何回も負けて、時々和了れるだけで大袈裟に喜んで、二位になれただけで飛び跳ねちゃうような仲間で先生で憧れで目標なあいつらとの部活。

昔なら卑屈になってたかもしれない、反発してたかもしれない、だけど今なら俺ははっきりこう言える。

――『麻雀って楽しいよね!』

咲、お前は正しいってな!




夏の気配が遠ざかり、入れ替わりに秋特有の気配が空気に混じり始める日々。

清澄高校麻雀部の部室で一人の少年が欠伸を噛み殺し、本を読みながら時折ペンを走らせていた。

「うーん……」

少年の名前は須賀京太郎。

清澄高校麻雀部六人……正確に言えばこの前引退した部長竹井久を抜いた五人の中で唯一の男子部員。

インターハイに出場する女子のためにあらゆる雑用を引き受け、料理まで作るようになった彼をクラスメイトはよく【清澄高校の裏方】だの【舞台を間違えた男】だの【ステルス京ちゃん】と呼んでいる。

なお最後のあだ名に関しては京太郎の中学からのクラスメイトである文学少女が

「京ちゃんって呼んでいいのは私だけなのに……」

と不機嫌になっていたりしたがそこは今回の話には関係ないので割愛。

京太郎「えーっと、この状況で捨てる牌は……」

こんな風に多分に皮肉も混じっているあだ名の数々を与えられている京太郎だが、本人は特に気にしていない。

理由は諸々あるがその中でも大きいのは、彼が軽そうな見た目に似合わず温厚な性格をしているという事と、彼はそれを当然の事として受け入れてるという二点だろう。

京太郎「よし、正解だ!これで和にもらったテスト初心者用は全部クリアしたぜ!」

そもそも彼は麻雀を始めて半年近くの初心者。

一方彼の部活の仲間達と来たら最低でも二、三年の経験がある経験者ばかり。

そんな環境で自分が一番弱いのは当たり前であり、あっさり追いつく事が出来るなんて考える事の方がみんなへの侮辱だと京太郎は本気で思っているのだ。

京太郎「あーっと、もうこんな時間か。勉強はこの辺にしてそろそろ牌譜整理でもするか」

無論京太郎だってただ置いていかれるつもりは毛頭ない。

彼の今の目標はインターハイを通してさらなる飛躍を遂げたみんなの練習相手くらいにはなる事。

ひたすらに自分が教えられる立場に甘んじるのを許容出来ない程には、京太郎にだってプライドはあるのだから。

咲「こんにちはー」

京太郎が牌譜整理を始めてから数分後、部室に来た宮永咲を出迎えたのは開けっ放しの窓から入り込む風とそれに揺られるカーテンだった。

咲「まだ誰も来てないんだ……じゃあ本でも読んで待ってようかな」

少しばかり周りを見回して部室に誰もいない事を確認した咲は、鞄を置くとまだ読んでいない本を探すため部室に置かれた本棚へと向かう。

咲「あれ?」

しかし本棚に向かう途中チラッとベランダを見た咲は、部室は誰もいなかったわけではなかったのだとようやく気付いた。

京太郎「……どうするか」

咲「京ちゃんだ、ベランダで何してるんだろう」

そこにいたのは中学からのクラスメイトであり、自分に再び麻雀を始めるきっかけをくれた男の子。

口にこそ恥ずかしくて出せないものの、咲が強く感謝している人の背中がそこにはあった。

京太郎「しかたないか……」

ベランダから下を見て何かしら悩んでいる様子の京太郎に何をしてるんだろうと咲が首を傾げたのと同時、京太郎がベランダを乗り越えそこにあるビーチチェアを素通りする姿が映った。

京太郎「……」

だんだん部室から姿が見えなくなっていく京太郎に咲が一抹の不安を覚えたのは文学少女な彼女が想像力を鍛えられすぎたせいか、はたまた虫の知らせか。

とにもかくにもこの時咲は……

咲(京ちゃん、まさか!?)

――途方もない勘違いをしていた。

京太郎「ちくしょう、ついてねえな……」

屋根の端に立ちながら京太郎は数分前に自分を襲った悲劇に頭を抱えていた。

勉強を終えてみんなが来る前に牌譜整理をしておこうと思い至ったまではよかったのだが、ファイルから牌譜を取り出した瞬間に突風が吹き京太郎の手から牌譜をさらっていってしまったのである。

もちろん京太郎もすぐに飛んだ牌譜を拾い集めたのだが、その中の一枚が窓から出ていって屋根の端に引っかかってしまって。

最初は旧校舎から出て落ちてくるのを待とうかとも考えたが、何回風に吹かれても動きもしない牌譜に自分が取りに行くしかないと決断したのが少し前。

というわけで現在京太郎は足を滑らせたりしないように慎重に屋根の端に向かっているのである。

京太郎「見事に引っかかってんな……っと」

こんな事なら風があるからって窓開けなきゃよかったな……と呟きながら京太郎は牌譜に手を伸ばす。

何回も手を伸ばしては届きそうで届かない状況に、微妙に顔をひきつらせながらも京太郎は諦めずに手を伸ばし……

京太郎「よし、取れ……」

咲「京ちゃん、だめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

牌譜を掴んだ瞬間、背中に強い衝撃を受けた。

京太郎「咲!?」

いきなりの襲撃に京太郎が何事かと後ろを見てみれば、そこにいたのは彼が常日頃ちんちくりんとからかっている少女の姿。

普段はよく転び、よく迷子になるおそらく京太郎が一番仲のいい女友達は、どこにこんな力があるのかと言いたくなるくらい京太郎の腰をガッシリと掴んでいる。

京太郎「ちょっ、危な……」

ここで思い出して欲しい……京太郎は牌譜を取るために腕を伸ばしていた状態だという事を。

加えて牌譜を取れた安堵から緊張を解いた彼の身体はこれ以上なく油断した状態だったのである。

そんなところに小柄とはいえ人間が突っ込んできて耐えられるわけがなく。

京太郎「ぐえっ!?」

――結果落ちないように身体を無理に捻り、バランスを崩した京太郎は屋根に思いっきり顔を打ちつけた。

咲「だめ、だめ、だめだよ京ちゃん!確かに京ちゃんが麻雀の腕がなかなか上達しないって悩んでたのは知ってたけど、何も死ぬことなんてないよ!早まらないで京ちゃん!」

腰にしがみついたまま泣き叫ぶ咲に京太郎は彼女がとんでもない勘違いをしているのだと察した。

察しはしたのだが……はっきり言って今はそれどころではない。

京太郎(いてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?)

京太郎は屋根に鼻と歯を強打した痛みに声無き悲鳴をあげていたのだから。

歯が取れなかったのは奇跡といってもいいかもしれないが、そんな喜びもすぐに痛みのせいで塗り潰される。

京太郎「……と、とりあえず落ち着け咲」

だが京太郎はそんな状態でも咲を宥めようと起き上がり声を出す。

咲がこんな事をしたのは勘違いしたとはいえ自分のためだし、自分の背中を濡らすものを止めたいと思ったから。

咲「落ち着いてなんていられ……ああっ、京ちゃん、鼻血出てるよ!?」

涙でグシャグシャになっていた咲は京太郎の顔を見るなり悲鳴をあげる。

そこでようやく京太郎は自分が鼻血を出して自分の学ランとシャツを真っ赤に染めていた事に気付いた。

京太郎(ぐあっ、マジかよ!?この前クリーニングから返ってきたばっかりだってのに!)

咲「は、はい、ティッシュ。京ちゃん、大丈夫?痛い?」

思わず恨み言を言いたくなった京太郎だが、心配そうにあたふたしている咲を見るとそれもどんどん萎んでいって。

結局京太郎に出来たのは大きくため息を吐く事と、咲から受け取ったティッシュを全て使って鼻に栓をする事だけだった。

咲「京ちゃん!なんでこんな事したの!いくら悩んでるからって自殺なんて……」

鼻血を止め、部室に戻った京太郎は涙目の咲に詰問されていた。

とはいえ京太郎からすれば咲の考えは見当違い以外の何物でもないわけで。

京太郎「だから落ち着けっての」

咲「あうっ!?」

これくらいは許されるだろうと京太郎は咲の頭に軽くチョップを落とす。

自分のために泣いてくれる事に関しては思うところがないわけではないが、勘違いされたままではまともに話も出来ない。

京太郎「いいか、まず俺は……」

だが咲が頭を抱えた隙に事情を説明しようとした京太郎の言葉は……大きな音を立てて開けられたドアに遮られた。


優希「今日も楽しく麻雀だじぇ!」

和「もうゆーきったら……」

まこ「おーう、咲と京太郎はもう来とったんか……って京太郎、あんたなんじゃその服についた血は!?」

久「鼻にティッシュ詰めてるけど……なに、どうしたの?」

ゾロゾロと入ってくるいつものメンバーに京太郎は服を何とかしないとまた勘違いされるんじゃないかと悟ったが時すでに遅し。

目ざとく京太郎の異変に気付いたまこと久の問いに京太郎がどう説明したものかと少し考えたその隙に

咲「あっ、みんな!ちょっと聞いてくださいよ、京ちゃんが……」

京太郎「ちょっ!?」

勘違いしたままの咲が勘違いしたままの話をみんなにしてしまったのだった……

今日はここまで

まだまだプロローグみたいなものなので麻雀をするまで後少しかかるかも……

とりあえずプロローグ終わりまで更新します

――

京太郎「……」

咲が多分に主観の混じった話をしてくれてから数分後、椅子に座りながら京太郎は目の前の惨状にどうしたものかと頭を抱えたくなった。

それだけ京太郎が自殺しようとしていたと誤った話を聞かされたみんなの反応が、予想以上に深刻だったのである。

久「まさか須賀君が飛び降りを図るなんて……」

まこ「そこまで思い詰めとったとは……気づいてやれんで本当にすまんかった!」

京太郎「いえ……」

チラッと先輩二人を見てみれば久は申し訳なさそうに、まこは心底悔しそうにという違いこそあるものの揃って沈痛な面もちを浮かべている。

必死に隠そうとはしているものの目は潤んでいて、ほんの少しきっかけがあれば泣き出してしまいそうな二人に京太郎は自分が悪いわけではないはずなのにいたたまれない気持ちになった。

優希「ひっく、ぐすっ……きょ、京太郎、私のせい?私がいつも負けた時馬鹿にしてたから……」

和「ゆーき……」

そんな状態で二人が泣かないのは間違いなく和に抱き締められながら号泣している優希がいるからだろう。

京太郎本人もまさかここまで泣かれるとは思っていなかったが、優希が嘘泣きが得意という話は聞いた事がないので間違いなく本心で泣いているのだろう……これまたいたたまれない、というかそもそも誤解なので見ていて辛くすらある。

咲「見てよ京ちゃん、みんな京ちゃんが死んじゃうなんて嫌だからこんなになってるんだよ?だから馬鹿な事を考えるのは……」

京太郎は胸の前で手を合わせて説得を繰り返しているこの状況を作り出した元凶を見やる。

自分のためにここまで言ってくれる事には正直嬉しい気持ちがないわけではなかったが……さすがにこれ以上誤解を解こうとしなければ自分が責められるのは間違いない。

京太郎「あの、とりあえず話を聞いてくれませんか……」

久「なに、須賀君……言いたい事があるなら恨み言でもなんでも……」

誤解を解くために口を開いた京太郎に久が勘違いしているが京太郎はそれを遮るようにして話を進める。

京太郎「えっと、ですね……大前提として、俺は死ぬ気なんかありませんよ?」

「……は?」

そう口にしたのは誰だったか、今となっては京太郎は全く覚えていない。

ただ確かなのは、自分がそう言った途端に場の空気が凍りついた事、そして……

久「……咲、これはどういう事かしら」

まこ「言っとくが、冗談では済まされんぞ……」

優希「咲ちゃん、嘘ついたのか……?」

和「咲さん、説明を求めます……」

咲「……え、えっと」

京太郎が事情を話していくにつれて自分が勘違いしていたと理解した咲が、みんなに睨まれて冷や汗をダラダラと流していた事だった。

咲「きょ、京ちゃん、助け……」

京太郎「知るか」

咲「京ちゃーん!?」

無論大した事がないとはいえ怪我をさせられた京太郎が咲を庇うわけがなく。

久「咲ぃー?」

まこ「咲!」

優希「咲ちゃん!」

和「咲さん!」

咲「ご、ごめんなさーい!!」

みんなの追求を受けた咲はただひたすらに謝る事しか出来ずにいたのだった……







――そしてこの時の事が自分の中の歯車を変えた事に京太郎はまだ気付いていなかった。






これにてプロローグ終了

一旦小休止して21:00から再開

ちなみに地の文は今回のプロローグとエピローグのみの予定なのであしからず

再開します

――翌日

久「いやあ、昨日は色々と大変だったわね」

まこ「結局全部咲の勘違いだったからのう」

優希「そういえば昨日打ってないじぇ」

和「それどころではありませんでしたからね」

咲「ううっ……」

京太郎「全く咲の奴は人の話を全然聞いてくれないしまいっちゃいましたよ」

咲「い、いや、でももしかしたらって可能性もあったし……」

京太郎「あのなあ、いくら麻雀で勝てないからってそんな馬鹿な事するわけないだろうが!お前ならそれくらいわかってると思ったんだけどな……」

咲「うっ……ご、ごめんなさい」

優希「もう、咲ちゃんと京太郎は人騒がせだじぇ!」

京太郎「俺もかよ!?」

和「でも勘違いでよかったです……」

久「いやー、私が買い出しを任せっきりにしてたからって焦っちゃったわ。まあ、勘違いだったならこれからも須賀君には買い出しを頑張ってもらって……」

まこ「あんたは少しは反省せんかい!」

京太郎「いやー、それにしても……」

まこ「んっ?」

京太郎「俺って意外に愛されてたんですね、あはは……」

優希「んなっ!?ちょ、調子に乗るなよ京太郎!」

京太郎「しかも誰かさんはすごく泣いてたもんなあ……」

優希「わ、忘れろバカ!」

京太郎「いやー、あれはなかなか忘れられないだろー」

優希「そのニヤニヤ笑いはやめろー!」

久「はいはい、じゃれ合いもそこまでにして部活始めましょう」

咲「ううう……」

まこ「叱った身としてはあんまり言えんが、咲もいつまでも落ち込んどってもしかたないぞ、切り替えんさい」

咲「は、はい……」

優希「京太郎、こうなったら麻雀で決着をつけるぞ、卓につけ!」

京太郎「はっ、望むところ!俺だって勉強してるんだ、簡単には負けないからな!」

――

京太郎「リーチ!」

優希「通らないな!ローン、倍満だじぇ、24000いただきー!」

京太郎「げえっ!?」

――

京太郎「……うっ」

京太郎(牌が一つも被ってないとか勘弁してくれよぉ!?)

――

京太郎「」

優希「ふふん、これくらいで勘弁してやるじぇ」

京太郎「ち、ちくしょう……容赦なく何回も何回もとばしやがって……」

久「全局ヤキトリか……これはまた酷いわね」

京太郎「ぐうっ……」ガクッ

まこ「うなだれてしもうた」

久「まあまあ、須賀君。こういうのはこんな日もあると思うしかないわよ」

京太郎「それもそうですね……よし、もう一回だ優希!」

優希「ふん、何回来ても返り討ちにしてやるじょ!」

咲「が、頑張って京ちゃん!」

京太郎「おう!」

京太郎(そうだよな、ただでさえやってる時間がみんなより短いんだし、気合い入れて頑張らないとな!)

――

優希「ツモ!」

和「ロン」

咲「カン!」

京太郎「点棒が、俺の点棒が羽生やして飛んでいく……」カタカタ

優希「京太郎も飛んだな!」

京太郎「ぐふっ……」

――須賀家

京太郎「くああ……今日は疲れたなあ」

京太郎「全局ヤキトリなんて久しぶりだったな……ここ最近は一、二回は和了れてたんだけど」

京太郎「一応牌譜は借りてきたけど……酷すぎるだろこれ」

京太郎(配牌は五向聴、ツモは裏目が当たり前、鳴いても対子や順子、暗刻が二、三出来ればいい方……酷いと対子三つくらいしか出来てない局もある)

京太郎「はあっ、さすがにちょっとヘコむなこれは……」

京太郎(やっぱり俺が練習相手になるにはまだまだ時間がかかりそうだな……)

京太郎「頑張らないとな……」

ザザッ!

京太郎「……んっ?」

京太郎(何だ、今の耳鳴り……それに急に眠く、なって……予想以上に疲れてたのか、俺……)

京太郎「とりあえず、寝よう……明日はもう少し運が良くなってますように、ってな……」


京太郎「グー……」

――翌日

京太郎「……はあ」

咲「京ちゃん、どうしたの?」

京太郎「いや、昨日結局一回も和了れなかったなあって思ってさ」

和「長くやっていればあんな日もありますよ。あまりひきずったらダメですよ?」

京太郎「ああわかってるよ、さすがにあれが続くなんてないだろうしな」

優希「ふっふっふっ、それはどうかな……今日も私が昨日みたいにボコボコにしてやる、座れ京太郎!」

京太郎「言ったなこのやろ、昨日みたいにはいかねえからな!」

――数分後

優希「ダブリーだじぇ!」タンッ!

京太郎「相変わらず速いな……」

優希「東場の私は無敵だからな!一発……はならずだじぇ!」タンッ

和「ゆーき、もう少し落ち着いて打ってください……」

京太郎「……リーチ」

咲(京ちゃんも三巡目で聴牌か……うーん、まだカン出来ないしここはオリようかな……)



京太郎「あ、あれ?……あ、ああっ!?」

優希「のわっ!?ど、どうした京太郎?」

京太郎「……い、いや、なんでもない」

優希「なんだ、タコスを忘れたのかと思ったじぇ」

京太郎「いや、お前じゃないんだからそれだけはない」

優希「私がタコスを忘れるわけなかろう!」

京太郎「そっちじゃねえよ!」

咲(京ちゃん、もしかしてミスしちゃったのかな?えっと京ちゃんのリーチ時の捨て牌は5索か……)

京太郎「あっ、き、来たぜツモ!1000-2000!」

京太郎手牌

345m 34577p 13888s ツモ2s

咲「えっ」

優希「なっ、東一局で私じゃなくて京太郎がリーチ一発ツモだとぉ!?」

京太郎「へへっ、今日は調子がいいみたいだな……というか咲、いくら俺が一発ツモしたからってその驚きに満ちた顔は酷くないか?」

咲「えっ、あっ、ごめん……」

優希「だがしかし京太郎!偶然一回和了れたからって調子に乗るなよ!」

京太郎「これくらいで調子に乗るかっての、さて次だ次!」

――

京太郎「よ、よし、とりあえず二位にはつけた……ここから大逆転だ!」

咲「カン」

京太郎「あっ」

咲「嶺上ツモ、責任払いで6400だよ、京ちゃん」

京太郎「ラ、ラス転落……やられた!」

優希「きゃははは!あんなにかっこつけてそれじゃ話にならないじぇ!」

和「ゆーきも大差ない点数でしょう……」

優希「いやん、それは言わない約束だじぇ、のどちゃん」

咲「……」

咲(なにこれ、どういう事……おかしい、絶対何かが変だよ!?)

久「おはよー、早速打ってるみたいね、感心感心」

優希「おはようだじぇ、部長!」

京太郎「いいんですか、受験生なのにこっちに来てて」

久「大丈夫よ、勉強は家でちゃんとしてるから。それで調子はどう?」

和「今半荘一回終わったところです」

優希「京太郎が生意気にも東場の私を差し置いて和了ったんだじょ!」

京太郎「今日は運がよかったみたいでこのメンバー相手にオーラス前は二位だったんですよ」

和「最後は咲さんにまくられてましたけどね」

京太郎「それを言うなよ……」ガクッ

久「ふふ、やっぱり昨日みたいな絶不調は一時的なものだったのね」

京太郎「はは、そうみたいです」

咲「……部長」

久「なにかしら?」

咲「ちょっと見ててもらっていいですか?」

久「私は構わないけど、どうかしたの?」

咲「見てもらえればたぶん、わかります」

久「……わかったわ、それじゃあみんなもう一回やってもらえる?」

和「わかりました」

優希「はーい!」

京太郎「了解です」

――

優希「ツモ!6000オールだじぇ!」

京太郎「二巡目で親跳ねかよ!?」

優希「今度はさっきまでのようにはいかないじょ!さあ、一本場だ!」

京太郎「くうっ、なんとか流さないと……」タンッ

咲「……」タンッ

和「……」タンッ

優希「どんどんいくじぇー!リーチだ!」

久(二巡目でリーチ、やっぱり東場の優希は手作りが速いわね……他はまだ二向聴……須賀君の配牌がいいって事以外はいつもと変わらない気がするけど咲は何を見せたいのかしら)

――五巡目

京太郎手牌

123579m 123p 99s 白白 ツモ9s

久(須賀君が聴牌か……8萬はまだ誰も持ってないし河にもないから、いつもの須賀君ならここはチャンタを狙うために5萬を……)

京太郎「……リーチ」打9m

久「!?」

久(チャンタを消す9萬切りリーチ!?6萬は二枚切れなのにどうして!)

京太郎「あっ、また……!」

咲「京ちゃん?」

京太郎「……いや、なんでもない」スッ

京太郎手牌

12357m 123p 999s 白白 ツモ6m

久「うわっ……」

京太郎「よ、よっしゃ、ツモ!リーチ一発ツモ、1300-2600は1400-2700だ!」

優希「ぬあああ!また京太郎に流されたー!」

京太郎「どうだ優希!これが俺の実力だぜ!」

優希「ま、まだまだ勝負はこれからだ!早くサイコロを回せ京太郎!」

京太郎「はいはいっと」

久「……」

久(今のはなんだったの……まるで須賀君が次に6萬を引くってわかってたような……いえ、まだわからないわね。とりあえず終わりまで見てみましょう)

京太郎「ツモ!1000-2000!」

優希「ま、またぁ!?」

和「これで須賀君は四回目の和了ですか……どうやら今日は本当に調子がいいみたいですね」

京太郎「そうみたいだな……まあ、ドラは乗らないし他の役全然つかないからあんま稼げないけど」

和「ロン、9900です」

京太郎「おぉ……まくられたか」

久(調子がいい、ねぇ……三巡目から五巡目に必ず聴牌して、リーチしたら絶対に一発ツモなんて調子がいいって言葉で片づけていいものなのかしら……)

京太郎「ど、どうでした部長?」

久「須賀君、いくつか聞いていいかしら?」

京太郎「はい?」

久「あなた時々役を捨ててリーチしてた時があるけど何か考えがあってそうしてたの?」

京太郎「えーっと……すいません。なんとなく、です……」

久「なんとなく?」

京太郎「えぇ、違う待ちにするべきなのはわかってたんですけど、なぜか気付いたらいつもその待ちにしてて……やっぱりミスでしたよね?」

久「そう、なんとなく……須賀君」

京太郎「は、はい!」

久「これはまだ予想の段階だけど……もしかしたらあなたにもあるのかもしれないわよ」

京太郎「な、何がですか?」







久「さしずめ……咲や優希みたいな普通なら考えられない力、ってところかしらね」






今日はここまで

麻雀の描写はこれでいいのか悩ましいところです

それでは

描写は問題ないようで一安心

更新します

咲「……!」

優希「へっ?」

京太郎「マジ、ですか?」

和「そんなオカルトありえません」

久「まだはっきりとは言えないわ……でも少なくとも一回の半荘でリーチ一発を四回も叩き出すのは普通じゃない。咲、前の半荘で須賀君は何回和了った?」

咲「えっと、三回です」

久「その内和了役がリーチ一発だったのは?」

咲「……三回、です」

久「……これはいくらなんでもねぇ」

京太郎「俺が咲達みたいな、力を……?」

咲「京ちゃん……」

久「まあ、もう少しデータを取らないと何とも言えないけどね。とりあえず須賀君にはもう少し卓に入ってもらうから」

京太郎「わ、わかりました!」

久(さて、力に関してはほぼ間違いないとは思うけど。それにしても須賀君がリーチする時を覚えてないというのは気になるわね……)

――

京太郎「うーん……!」

咲「疲れちゃった?」

京太郎「こんなに続けて打ったのは初めてだからな……もしかしたら合宿の時より打ったんじゃないか?」

咲「京ちゃん終わるまでずっと打ってたからね。合宿の時は交代してやってたし」

京太郎「そりゃ疲れもするわな。でも力かー……」

咲「京ちゃんにもあったなんてね……部長、ずっと牌譜見ながら唸ってたよ」

京太郎「まだ実感湧かねえし、勝ててるわけでもないけどな……」

咲「それはきっと打ってれば慣れるよ!今日の対局だって京ちゃんヤキトリゼロだったし、和了も多かったじゃない!」

京太郎「まあ一位は一回もなかったけどな……なあ咲?」

咲「なあに?」

京太郎「これで、少しは俺もみんなの練習相手になれんのかな?」

咲「えっ?」

京太郎「やっぱり、練習してても初心者な俺が足を引っ張ってた気がしてたからさ……みんなに迷惑かけてたんじゃないかって思うんだよ」

咲「……」

京太郎「インターハイ中も自分なりに勉強はしてたけどまだまだみんなの背中は遥かに遠くで……そんな俺でもこれで少しは役に立てるのか?」

咲「……」

京太郎「……悪い、変な事言ったな。忘れてくれ」

咲「おかしいよ、そんなの」

京太郎「えっ?」

咲「役に立つってなに?京ちゃんは私達と同じ部員であってマネージャーとかじゃないんだよ?」

京太郎「いや、それはそうだけど……」

咲「いいんだよ、京ちゃんだってみんなに頼って。京ちゃんが支えてくれた分、みんな返してあげたいって思ってるんだから」

京太郎「……」

咲「京ちゃんが何かに目覚めたって言うなら私達がそれをものに出来るようにサポートするから……一緒に頑張ろう?」

京太郎「そっか……ありがとな、咲」

咲「ふふっ、どういたしまして」

京太郎「よし、じゃあ頑張るかー!」

咲「おー!」

昨日は寝落ちしてしまいました、すいません
とりあえず昨日の更新分まで更新します

――須賀家

京太郎「ふぅ、とりあえず部長に言われた通り自分でわかる限りまとめてみたけど……うーん、これでいいのか本当に?」

京太郎「まあ、部長に見せて確認すればいいか……それにしても今日は色々あったな」

京太郎「俺が咲達みたいな力を、か……確かに言われてみればこのリーチ一発率はおかしいよな。あのインターハイ見てたから感覚おかしくなってたのかね俺」

京太郎(部長が外から見て見ていて感じた感想によれば、俺のこの力は俺自身の配牌とツモ運を上昇させているらしい)

京太郎(そう言われてみれば確かに今日打った卓で配牌が四向聴以上はなかったし、無駄ツモだって一度もなかった)

京太郎(うまく使えば麻雀歴半年の俺でもそれなりに戦えるって言うんだからすごい話だ)

京太郎「だけどなんでいきなりこんな力が身についたんだろうな……」

京太郎(それにリーチをかける時、決まって俺はその瞬間を全く覚えていない……咲達はそんな様子もないしどういう事なんだ?)

京太郎「……考えてもわかんねえな。とりあえず今はこの力をうまく使えるように頑張ろう」







――須賀京太郎の能力に関してのメモ


・配牌は常に四向聴から二向聴、無駄ツモしないため三から五巡目に必ず聴牌する

・リーチをかけると次巡に一発で当たり牌をツモれる
・この時俺自身は自分がなにを捨てたかどんな待ちにしてるか覚えてない

・和了る時つく役はツモ、リーチ、一発だけ。他の役はつかないしドラも全く乗らない
・聴牌してる時他の役の可能性があっても俺は全部崩しているらしい

今のところ俺自身にわかるのはここまでである……






昨日はここまで更新する予定でした
また夜に今日の分を更新します
それでは

今日の分を更新します

――翌日

京太郎「部長、一応まとめてみました」

久「ありがとう。うーん……やっぱりリーチ時には意識がなくなっちゃうわけね?」

京太郎「はい、一瞬ですけど気付いた時には牌を捨ててリーチしてるんです」

久「ふむ……とりあえずその事に関しては様子を見ましょう。今日はいくつか試したい事があるから早速打ってみましょうか。私と後は……まこ、優希、お願い出来る?」

優希「了解だじぇ!」

まこ「おう、京太郎。昨日はわしがいない間に色々あったらしいのう」

京太郎「えぇ、まあ……自分でもイマイチ実感がわかないんですけど」

優希「私の得意な東場で和了っといてなにを言うか!今日は絶対に京太郎のペースにはさせてやらないからな!」グリグリ

京太郎「わかったから指でわき腹を突くな!」

久「咲と和は牌譜の方をお願いね。特に咲、須賀君の部分は念入りに、ね」

和「はい」

咲「わかりました!」

久「よし、始めましょう!」

優希「私の親だじぇ!サイコロ回れ!」

京太郎「今日はどうなるかね……」カチャ

咲(京ちゃんの配牌は……えっ!?)

京太郎配牌

11m 139p 11s 白白白 發發發


咲(す、四暗刻二向聴……!)

京太郎ツモ1m


咲(しかも第一ツモで最低でも三暗刻確定……もし本当に京ちゃんが能力で和了れる役がリーチ一発ツモしかないなら、ここからどう崩すんだろう?)

京太郎「俺の麻雀人生で見たこともない最高の配牌なのに……」ボソッ

咲(えっ?)

京太郎「……」打1m

咲(す、四暗刻捨てるツモ切りしちゃったよ京ちゃん……)

優希「リーチ!」

咲(も、もしかして……)

優希「一発ツモだじぇ!親満4000オールだ!」

京太郎「やっぱりこうなるのかよ……くうっ、持ってけ持ってけ!」

咲(京ちゃん、五巡以内にリーチ一発ツモのみの手だけで聴牌できない局はどんなにいい手でも和了れないの?)

京太郎「……気付きたくなかった、こんなの」

久「須賀君、何か新しく気付いたのね?」

京太郎「えぇ……正直凹みそうな新事実が」

久「わかったわ。終わったら教えて」

京太郎「はい……」

咲(京ちゃん……)

咲(それから京ちゃんは二回リーチ一発でツモ和了しました)

咲(だけど他のみんなの火力相手だと京ちゃんはどうしても稼ぎ負けてしまい……)

咲(そして京ちゃんが和了れない局はまるで京ちゃんを笑うかのように最低でも跳満確定ばかりの配牌で……)

咲(そして京ちゃんが三位のまま半荘はオーラスを迎えました……)

京太郎配牌

2477m 569p 3579s 北白 ドラ5s

咲(京ちゃんはドラ1タンヤオの四向聴だね……)

京太郎「まくるにはリーチ一発ツモだけじゃ足りない……なんとかしないと」

京太郎ツモ3m

打白

――二巡目

23477m 569p 3579s 北 ツモ3s

京太郎「……」打北

――三巡目

23477m 569p 33579s ツモ3s

京太郎「……」打9p

――四巡目

23477m 56p 333579s ツモ7p

京太郎(よし、聴牌!ここで、9索を捨ててリーチ、ツモ和了すれば、メンタンドラ1、に……な、る……)

京太郎「……」ガクッ

久(来た!もし私の予想が正しければここで……!)

京太郎「……リーチ」打5s



久「ポン!」



京太郎「……はっ!え、えっと待ちは……」

咲(京ちゃんダメ……それじゃ和了っても、トップには足りない……!)

京太郎「く、そっ……あれ?」

京太郎(なっ、なんで……)

京太郎ツモ3s

京太郎(当たり牌じゃないんだ……!?)

久「須賀君、気付いてないのかもしれないけど……あなたがリーチした瞬間、私が鳴いたのよ」

京太郎「あっ、本当だ……じゃあツモ切りするしか……」タンッ

久「それでね、須賀君……あなたには酷な話かもしれないけど」

京太郎「はい?」







久「ロン」

久手牌

555m 555p 3777s 555s

久「タンヤオ、三色、三暗刻、トイトイ……親跳18000よ」






京太郎「……えっ?」

まこ「京太郎、リーチ棒含めて-19000……あんたがラスじゃ」

京太郎「あっ、あぁ……ま、まいったなー!まさか当たり牌掴まされちゃうなんて……」

久「須賀君」

京太郎「本当に、運が悪かっ……」

久「須賀君!」

京太郎「……」

久「あなたには残酷な話かもしれない。だけど聞いて……」

京太郎「……い、いやです」

久「……」

京太郎「だって、だってそれを聞いたら……」

京太郎(聞いたら俺は……!)

久「須賀君、それでも聞きなさい。あなたは……」

京太郎(言うな、言うな言うな言うな言うな言うな言うな言うな言うな言うな言うな……部長、言わないでくださ――)







久「――リーチ後に鳴かれたら、必ず次のツモで誰かの当たり牌を掴まされるの」












――須賀京太郎の能力・新情報

・五巡目以内にリーチ一発ツモのみの聴牌が出来ないようなら、たとえそれが配牌で聴牌出来ても絶対に和了れない

・リーチ後に鳴かれた場合次のツモで必ず誰かの当たり牌を掴まされる






今日はここまで

ミスった……

すいません、ちょっと修正します

久(来た!もし私の予想が正しければここで……!)

京太郎「……リーチ」打5s



久「ポン!」



京太郎「……はっ!え、えっと待ちは……」

咲(京ちゃんダメ……それじゃ和了っても、トップには足りない……!)

京太郎「く、そっ……あれ?」

京太郎(なっ、なんで……)

京太郎ツモ7m

京太郎(当たり牌じゃないんだ……!?)

久「須賀君、気付いてないのかもしれないけど……あなたがリーチした瞬間、私が鳴いたのよ」

京太郎「あっ、本当だ……じゃあツモ切りするしか……」タンッ

久「それでね、須賀君……あなたには酷な話かもしれないけど」

京太郎「はい?」







久「ロン」

久手牌

5557m 555p 777s 555s

久「タンヤオ、三色、三暗刻、トイトイ……親跳18000よ」






間違った部分は修正版の方でお願いします
こういう事がないよう見直しに時間かけたんですが……すいませんでした

誤字と矛盾修正

>>75

×京太郎(部長が外から見て見ていて感じた感想によれば、俺のこの力は俺自身の配牌とツモ運を上昇させているらしい)
○京太郎(部長が外から見ていて感じた感想によれば、俺のこの力は俺自身の配牌とツモ運を上昇させているらしい)

>>76

×・配牌は常に四向聴から二向聴、無駄ツモしないため三から五巡目に必ず聴牌する
○・配牌は常に四向聴から二向聴以内、三から五巡目に必ず聴牌する

見直ししてるはずなのにどうもミスが多い……

今日の分を更新します

――須賀家

京太郎「……まいったな」

京太郎(結局、今日は俺の能力について色々試してはみたけど結果はいいものとは言えなかった……)

京太郎(まず俺が気付いた配牌時点で二向聴から四向聴以内じゃなかったらその局は絶対に和了れないという法則……)

京太郎(試しに一回だけ他のみんなが当たり牌を引いても和了らずに流局まで行ってみたが、ツモどころか捨て牌にすら俺の当たり牌は来なかった)

京太郎(次に、リーチした後に鳴かれたら他家の当たり牌を掴まされる……これは十回試して十回全部掴まされた時点で俺は考えるのをやめた)

京太郎(さらにその後新しい欠点が二つも見つかった……俺が和了れるのはツモだけでロンが全く出来ないって事、もう一つは俺自身が鳴く事が出来ないって事だ)

京太郎(不思議な事に俺の当たり牌や有効牌を相手が出してくれた事は一度もない……これは相手が清澄のみんなだからなのかもしれないけど)

京太郎(とにかく俺のこの力は打点は低い、和了は制限される、鳴かれたら振り込み確定、リーチの形すら自分の意志で選べないという四重苦を抱えてるわけだ)

京太郎「ははっ……ここまで来ると笑いしか出てこないな……」

京太郎(ひょんな事から手に入れた力だけど、これならいっそのこと何もなかった方が良かったんじゃ……)

京太郎「ダメだ、どうしても考えがマイナスになっちまう……あっ」

京太郎(そういえば、咲が前にネト麻した時牌が見えないとか言ってたような……)

京太郎「あの時は何言ってんだとしか思わなかったけど、もしかしたら!」

――

京太郎「……六巡目なのに、まだ俺は聴牌してない。それなのに他に和了られてるわけでもない」

京太郎「やっぱりそうか……ネト麻なら力に影響されない!俺の思うように、俺の意志で麻雀が打てるんだ!」

京太郎「どうしても力が出ちまう部内の麻雀だと自分の地力が上がらないからどうしたもんかと思ってたけど、ネト麻を使えば今までみたいに打てる!」

京太郎「ははっ、ドラが乗る!役もつく!平和だってタンヤオだってネト麻なら和了れるんだ!」

京太郎「よっしゃあ、まだまだやるぞー!」

――

京太郎手牌

123445679m 444p 6s ドラ9m

京太郎ツモ6s

京太郎(よし、頭が出来た!9萬がドラだからリーチをかければツモでもロンでも満貫!8萬は一枚切れだから一通のチャンスは十分あるはず……!)

京太郎「それじゃ、四萬切ってリーチっと……」

グラッ……

京太郎「……あ、れ?」

京太郎(視界が、歪んで……嘘だろ、これいつもの……ネト麻なら力の影響は受けない、はずなのに……)

京太郎「……」ガクッ



カチ、カチカチ……

京太郎「はっ!?ま、待ちは、待ちはどうなって……」






京太郎手牌

12344567m 444p 66s

打9m






京太郎「あ……」







京太郎ツモ牌8m






京太郎「は、はは……あはっ、ははははは……!」

京太郎(一発ツモとか……和了ってたら跳満だったじゃないかよ……)

――数巡後

京太郎ツモ牌4m

京太郎「500-1000……跳満12000がたったの2000……」

京太郎「傑作だ、ここまでだと笑う以外に選択肢ねえや……」

京太郎「確かに配牌とかツモには力は影響しなかった……だけどリーチかける時はネットじゃなくて俺の意識の問題だから影響されるってところか?」

京太郎「あはははははは……」

京太郎「……」

京太郎「ううあぁああああぁあああああ!!」

京太郎「はあ、はあ……ふざけんな、こんな、こんなのってねえだろ……?」

京太郎「俺が何したんだよ……俺、みんなと麻雀やって、負けても少しずつでいいから麻雀うまくなりたかっただけなのに……俺は、俺はぁ!!」

京太郎「ちくしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

――数日後

京太郎「……リーチ」

優希「ポ、ポン!」

京太郎「……誰か鳴きましたか?」

久「……えぇ、優希が鳴いたわ。見事にずらされたわね須賀君」

京太郎「そうですか、直前に部長も捨ててたから大丈夫だって思ったんですけどね……」

優希「え、えっと三巡目から五巡目に必ずリーチだから対策も取りやすいし、その……」

京太郎「いいんだよ優希、そんな畏まるな。鳴けば必ず直撃が取れるんだ、そりゃ俺だってそいつを狙うさ」タンッ

優希「あっ、うっ……ロ、ロン、7700だじぇ」

京太郎「ああ、ほら点棒……」

久「須賀君の打ち方は一度対策されたらもうボロボロになっちゃうわね……かといってリーチしたらもうどうしようもないし」

咲「リ、リーチせずにダマにすればいいんじゃないかな?それなら鳴かれて掴まされても直撃はされないし!」

京太郎「だけどそれだとドラも乗らないし役もつかないからツモのみになる……ただでさえ今でも火力不足なのにさらに下げたらもう戦いにならないんだ」

咲「……」

京太郎「それに疲れるんだよ……リーチが頭よぎらないようにするの。少しでも考えたらいつの間にかリーチしてるんだからな……」

咲「そ、そうか……ご、ごめんね京ちゃん、適当な事言っちゃって」

京太郎「いいよ、考えてくれるだけで俺は嬉しいからな……ありがとな咲」

咲「京ちゃん……」

まこ「じゃが現実問題として初見ならまだしもそれ以降はリーチをかけたら鳴かれて終わりじゃろうな。しかも誰かの当たり牌を掴まされるとなるとのう……」

久「うーん……どうしたものかしら」

京太郎「……俺、ちょっと飲み物買ってきます」

バタンッ……

咲「あっ、京ちゃん……」

久「1人にさせてあげなさい、咲。須賀君も須賀君なりに色々考えたいだろうし」

まこ「しかしどうしたもんかのう……今のままじゃと京太郎が新人戦で勝ち進むのはちと厳しいぞ?」

久「そうね……」

和「偶然の出来事について気をもんでもしょうがないと思うんですが」

優希「のどちゃんは相変わらずだじぇ……」

久(確かにこのままいっても須賀君は新人戦で勝ち残れない……だけど問題はそこじゃない)


――京太郎「……リーチ」

――京太郎「ツモです……」

――京太郎「……」ジャラッ


久(今の須賀君は、はたして麻雀を心から楽しめているのかしら……)

咲(京ちゃん、大丈夫かな……)

京太郎「……」フラフラ

京太郎(どうしてこんな事になったんだろうな……もう麻雀やってる意味すらわからなくなってきそうだ)

京太郎(ただ負けるだけなら頑張れた……だけどこんな、自分の意志を無視された麻雀なんか打たされたら……辛い、だけだろ)

京太郎(まさか好きなものでこんなに苦しまされるなんてな……部をやめればすむ話でもないし、俺はどうしたら……)

ズルッ!

京太郎「えっ……」

京太郎(あっ、やべえ……階段の途中で足滑らしちまった……ああもう、本当に最近はついてねえなあ……)


ゴロゴロゴロゴロ……!

ドサッ……

京太郎「いってえ……頭、打っちまった……足も挫いたか……はあ、もう嫌になるわマジで……」







ブツンッ……






今日はここまでで

今日の分を更新します

――数十分後・麻雀部部室

京太郎「……」

まこ「まさか階段から足を踏み外すとは……」

京太郎「すいません……考え事してたらつい」

久「でも大した怪我じゃなくてよかったわ……頭に大きなコブは出来ちゃってるけど」

咲「し、心配したんだよ!京ちゃんが遅いからって迎えに行ったらまさかあんな……」ウルウル

優希「さ、咲ちゃんの言う通りだじぇ!もしあのまま京太郎がって思ったら……この馬鹿!」ウルウル

和「ふ、2人共、須賀君だってわざと怪我をしたわけじゃないんですから……」

京太郎「……いや、俺がボーッとしてたのが悪いんだ。咲、優希、心配かけてごめんな」

咲「京ちゃん……」

優希「むうっ……」

京太郎「和と先輩達もすいませんでした」

久「別に謝らなくていいわ。考え事も何の事だかだいたい想像がつくし」

まこ「わしもじゃ。しかしこうして心配してくれるんがいるのも事実、あまり思い詰めるなよ京太郎」

京太郎「はい……」

久(これは重傷ね……まこ)

まこ(わかっとる)

まこ「とりあえず今日はここまでにしとくかの」

久「そうね、今日は解散しましょう。須賀君は保健室に行ったとはいえ、帰ったらちゃんとご両親に事情を説明して念のため病院にも行く事、いいわね?」

京太郎「わかりました……」

――翌日

京太郎「おはようございます」

咲「おはよう、京ちゃん。病院にはちゃんと行った?」

京太郎「ああ、やっぱり大した事ないってさ。全くこの前顔打ったばっかなのについてないよな……」

優希「麻雀で調子がいい分、普段の運が悪くなったんだな!」

和「そんなわけないでしょうゆーき……」

まこ「部活には来て大丈夫なんか?」

京太郎「激しい運動しなきゃ問題ないらしいです」

久「そう……まあ、とにかく今日も打ちながら話し合いしましょうか。席につきなさい須賀君、メンツは私、後はまこ、咲に入ってもらいましょう。和、優希、牌譜取りお願いね」

京太郎「はい」

優希「うぇぇ!?わ、私牌譜とか書けないんですけどぉ……」

和「私が教えますよゆーき」

久「須賀君、とりあえず色々考えてあなたが怪我してたら元も子もないわ。私達も一緒に頑張るからどんどん頼ってちょうだいね?」

京太郎「はい、ありがとうございます……」

京太郎手牌

234m 45569p 22666s

京太郎ツモ7p

京太郎(聴牌……普通ならタンヤオ付けるために9筒捨てる場面だけど……今まで通りならそろそろ意識飛んで勝手に9筒残しての8筒待ちになるんだろうな……)

京太郎「……」

咲「……」

久「……」

まこ「……」

京太郎「……」

京太郎(……あれ?意識が遠く、ならない?)

久「どうしたの須賀君?」

京太郎「い、いえ……リーチです」

京太郎打9p

まこ(来たか……んっ?なんじゃ、なんか違和感があるのう)

久(ちょっと待って……今、須賀君がリーチ時に受け答えをしなかった?)

咲(な、なんだろう。昨日までなんとなく感じてた京ちゃんに和了られちゃうって感覚がないよ……)

優希(あ、あれ?京太郎の待ちがおかしいような……)

和(ふむ、あの手牌なら当然この待ちにするでしょうね……)

京太郎「……あれ?」

咲「どうしたの京ちゃん?」

京太郎「い、いや、なんでもない……」タンッ

久(一発ツモじゃない!?)

まこ「あっ、それロンじゃ京太郎。3900」

京太郎「あっ、はい」

まこ「それにしてもどうしたんじゃ、あんたがリーチかけて鳴かれてもいないのに一発じゃないとは」

京太郎「……それもそうなんですけど」

久「けど?」

京太郎「なんか、リーチする時意識が飛ばなかったんですよ……今までは少しでも意識したらいつの間にかリーチしてたのに」

咲「それってまさか……」

久「……とりあえず続けましょう」

――

京太郎「……!」

京太郎(なんで、なんでだ?今までは遅くても五巡目には聴牌出来てたのに、なんで十巡目の今でも俺は二向聴なんだ……?)

京太郎「……」タンッ

咲「ロン!8000だよ京ちゃん」

京太郎「あ、ああ……」

――

久「テンパイ」

咲「テンパイです」

まこ「テンパイじゃ」

京太郎「……ノーテン、です」

――

京太郎「リ、リーチ」

京太郎(オーラスまで来てヤキトリか……意識も飛ばない、リーチしても一発じゃない……まるで、まるでこれは!)

まこ「ツモ!3000、6000じゃ!」

京太郎(少し前までの俺に戻った、力がなくなったみたいじゃないか!)パァァ

和(ヤキトリなのになんで須賀君はあんなに嬉しそうなんでしょうか……)

――

京太郎「……」プルプル

咲「きょ、京ちゃん大丈夫?」

優希「結局数回やって全部ヤキトリかー。まるで昔の京太郎に戻ったみたいだじょ」

京太郎「……まるで、じゃない」

優希「へっ?」

京太郎「完全に、消えちまったんだよ……もう俺は、あの時みたいにリーチ一発で和了れない」

京太郎(だけどその代わり俺は、また俺の麻雀が……出来るんだ!)

久「須賀君……」

京太郎「はは、すいません。もう悩む事もなくなったみたいです」

京太郎(でもあの力が消えた瞬間ヤキトリか……結局俺、地力は全く上がってやしなかったって事だよな)

京太郎「それはさすがにメゲるわ……」ガクッ

まこ「京太郎、何を考えてるかは想像がつくがそう気を落とすな。あれはあんたの可能性を狭めて縛り付けとった。今日だっていきなり消えたショックで思うような打ち方が出来んかっただけじゃ」

京太郎「そう、ですね……そう思う事にします」

和「元々あんな偶然がずっと続くわけなかったんです。須賀君が気を落とす必要なんてありません」

京太郎「ああ、サンキューな。そう言ってくれると助かるわ」

和「私は事実を言ったまでなんですが……」

京太郎「……あ、あの!」

久「どうしたの?」

京太郎「ちょ、ちょっとベランダ行ってきていいですか?」

まこ「別に構わんが……」

京太郎「じゃあちょっと……」スタスタ

優希「京太郎、さっきからソワソワしてたけどどうしたんだ?」

咲「えっと、多分……」







京太郎「いやったああああああああああああっ!!」






咲「叫びたいくらい、嬉しいんだよ京ちゃん……」

――須賀家

京太郎「ふふっ、ふふふふふ……!」

京太郎「リーチ!リーチリーチリーチ!」

京太郎「ツモ!よっしゃ、満貫!一気にトップだ!」

京太郎「最近ネト麻もリーチしないように意識してやってて楽しめなかったからなー……やっぱり変な事考えずにやるのが一番だ」

カピー「キュー」トコトコ

京太郎「おぉ、カピー。よしよし、こっち来い……今日の俺は機嫌がいいからいつもより可愛がってあげるぞー」ナデナデ

カピー「キュー」スリスリ

京太郎「へへっ……」

ザザッ!

京太郎「……うん?」

京太郎(耳鳴りか……それに眠くなってきたな……ちょっとはしゃぎすぎたか……)

京太郎「ごめんなカピー、俺ちょっと眠くなってきたから遊ぶのはまた明日……」

カピー「キュー!キュー!」

京太郎「はは、大丈夫だよ、ちゃんと約束は守るからさ、おやすみ……」

京太郎(あ、れ……ちょっと待て……確か、前にもこんな事あっ――)

ドサッ……

カピー「キュー……」

今日はここまで

霞「咲の魅力はキャラクターの多さなの」

霞「様々な人が、色々なキャラクターを好きになっているわ」

霞「それを欲望のために汚すような行為は、当然反感を買うことになるのよ」

小蒔「じゃあ、こんなしょうもないSSのために永水女子を使ってファンの感情を汚していいんですか!?」


霞「そう。ちょうど今これを見ている永水女子が好きなお方は、相当な不快感を感じているでしょうね」

霞「それと同じ感情を京太郎スレで感じる方が多くいるということを知って欲しいのよ」

初美「ふんふむ」

今日の分を更新します

――翌日

京太郎「おはようございまーす!」

和「おはようごさいます、須賀君」

まこ「おう、おはよう。今日は随分と元気じゃのう京太郎」

京太郎「いやー、昨日ネト麻で調子がよかったんですよ。久しぶりに思いっきり自分の麻雀が打てて最高の気分です」

優希「よかったな京太郎、だがしかーし!たとえネト麻で調子がよかろうとまだまだここで勝つには力不足だじぇ!」

京太郎「それはどうかな?昨日はヤキトリだったけど今日の俺は一味違うぜ優希!」

久「そうね、なんだか須賀君、今日は本当にツキがよさそうだし。もしかしたら今日辺りトップ取れちゃうかもしれないわよ?」

京太郎「マ、マジっすか!?うおお、なんかそう言われると燃えてきたー!」

咲「ふふっ、頑張って京ちゃん!」

京太郎「おうともよ!」

久「じゃあ今日は一年生でやってみましょうか。私とまこは見てるから思う存分やりなさい須賀君」

京太郎「わかりました!」

――

京太郎「……」タンッ

咲(今日は京ちゃん、全くリーチしない……やっぱり京ちゃんからあの力は消えちゃったんだね。あの時の京ちゃん、麻雀楽しくなさそうだったからよかった……)


六巡目
京太郎手牌

66m 233889p 112s 北北


京太郎(うーん……気合い入れたはいいけどやっぱりみんなが相手だとなかなか上手くいかないな。まあ、もうあの力に苦しまされる事もないしじっくり行きますか)

優希「むむむ……」打6m

京太郎(うっ、6萬出ちまった……こりゃ三暗刻は難しいか?しゃーない、無駄に鳴くのもあれだし七対子に切り替え――)







京太郎「……」ガクッ






優希「へっ?」

久「なっ……」

まこ「これは!?」

咲「……!」

和(須賀君、また……本当に怪我は大丈夫なんでしょうか?)

京太郎「……ポン」

優希「じょ!?」

京太郎「……あ、あれ?俺今何を……」

咲(今のって京ちゃんから……だけど、京ちゃんにはもうあの力はないはずじゃ……!)打1s

京太郎「……ポン」

咲「っ!」

京太郎「くっ、また……な、なにがどうなって……」

まこ「なんという、事じゃ……」

久「まさかこんな……」

和「……」打8p

京太郎「く、そっ……ポン!」

和「はい」

京太郎(くそっ、三回目は最初みたいに意識は飛ばなくなったけど、ここまで来たらもうこれで突っ張るしかないじゃねえか……!)

――数巡後

京太郎「ロンだ……!トイトイのみ、2000!」

優希「うう……」

久「須賀君……」

京太郎「……」

京太郎(消えてなんか、いなかった)

京太郎(形を変えただけで、あの力はまだ俺の中にいた)

京太郎(なんでこうなったのかなんてわからない。だけど一つだけ言えるのは……)

京太郎「また、俺は振り回されるのかよ……?」

咲「京ちゃん……」





京太郎(俺がまた自分で考えてする麻雀を出来なくなったって事だけだった)

――

京太郎「ロン、トイトイのみ2600……!」

まこ「リーチの次は鳴きときたか……」

久「……」

久(須賀君が和了る時は全部三回鳴いての対対和のみ……時々赤ドラが一枚絡みはするけど打点はやっぱり高くない。しかもこれは……)

京太郎「……」タンッ

和「ロンです、11600」

京太郎「うあっ……」

咲「……」

優希「……」

京太郎「あはは……今日は調子がいい気がしたんですけどね」

まこ「京太郎、あんた……」

京太郎「あっ!そ、そういえば俺今日予定があるんで早く帰らないといけなかったんだ……すいません、今日は早退させてもらいますね」

久「……無理はしないようにね」

まこ「また明日な」

京太郎「はい、また明日……」スタスタ

久「……まこ。須賀君の今の対局の牌譜見せてくれる?」

まこ「……ほれ」

久「……」

和「どうしたんですか、部長」

久「ちょっとね……」

久(全局配牌の時点で常に五つ対子が出来てる状態……だけどどんな動かし方をしても絶対に三元牌や風牌は三つ揃わないし、何より……)

久「……」

久(和了る時リーチ一発が八割から九割だったここ数日間の牌譜とは似ても似つかないわね。しかもただでさえ、制限が酷すぎたこの数日間だって須賀君があんなに落ち込んでたのに……)

久「なんで彼ばかりこんな力を手にするのかしらね……」

咲「部長、やっぱり……」

優希「えっ、えっ、どういう事なんだ?」

まこ「わからんか優希、今の対局京太郎が和了った局を思い返してみんさい」

優希「え、えーっと確か最初和了った局は京太郎が私と咲ちゃん、のどちゃんから一回ずつポンして私が振り込んだじょ」

和「二回目は咲さんからゆーき、私の順番で須賀君が一回ずつポン。その後私が振り込みました」

咲「最後の三回目は……和ちゃん、優希ちゃん、私の順に京ちゃんがポンして……優希ちゃんが振り込んでたね」

久「……振り返ってみて気付かない?」

優希「えっと……もしかして」







優希「京太郎、相手全員から一回ずつ鳴かないと和了れないとか……」

和「そういえば今気付いたんですが、須賀君全部ツモ切りしてませんでしたか?」

咲「それと、京ちゃん全部ロンで和了ってますよね……」

まこ「そう……予測したくもないがおそらく京太郎は――」












久「須賀君、ツモで有効牌を持ってこれなくなってるわ」












――須賀京太郎の発展した能力についてのメモ

・相手全員から一回ずつ、三回のポンをする事により対対和を相手から直撃で取る事が出来る

・配牌時点で五つの対子が出来ているがツモで有効牌が来ることはないため七対子や三暗刻は作れない

・三元牌、自風、場風牌は雀頭には出来るが三枚揃うことはない

・配牌時点で中張牌、ヤオ九牌が混ざるのでタンヤオ、混老頭は複合しない

・相手の内誰か一人でも鳴く事が出来ない局は絶対に和了れない

・時折赤ドラが一枚だけ乗る事がある






今日はここまで

竜華「せやね」

淡「言えてるー」

姫子「」ビビクン

今日の分を更新します

――須賀家

京太郎「……」カチカチ

ツモ、4000オールデス

京太郎「……」カチカチ

京太郎(俺はどうしたらいいんだろうな……前に比べたらネト麻は順子中心にすれば意識飛ばないからやりやすくなったけどリアルでの対局はきっとまた……)

京太郎「俺、このまま麻雀続けていていいのか……?」

カピー「キュー」

京太郎「カピー……そういえば昨日遊んでやる約束したな……一回休憩するか」

カピー「キュー」スリスリ

京太郎「なあ、カピー……俺、麻雀続けていられる自信なくなってきちまったよ」

カピー「キュー?」

京太郎「別にさ、力にビビってるとかそういうんじゃないんだ。ただ……このままじゃ俺、麻雀部のみんなに迷惑かけるだけな気がしてさ……」

カピー「キュー……」

京太郎「みんなが色々考えてくれてるのに当の俺は何も対処法が思いつかない……実際に対局してもまるで他の誰かが打った状況を俺がやったみたいに言われてる気さえするんだよ」

カピー「キュー」

京太郎「咲や部長は俺も部員だからみんなに頼っていいって言ってくれたけど、本当にそれに甘えていいのか?」

京太郎「最近はずっと俺が卓に入ってるし……何がどうなってるかもわからない俺の力をどうにかするために、みんなを振り回し続けていいのか?」

京太郎「正直、もうわかんねえよ……」

カピー「キュー……」

京太郎「……はは、ごめんなカピー。遊んでやるつもりが愚痴こぼしちまった」

カピー「キュー」スリスリ

京太郎「慰めてくれるのか?いい子だな、お前は」ナデナデ

カピー「キュー♪」

京太郎「……カピーに愚痴言ったら少し楽になった気がするよ。こんな事みんなには言えないからな」

カピー「キュー」

京太郎「ああ、もう少し頑張ってみるよ。このまま逃げてたって何もいい事ないもんな!」

カピー「キュー!」

京太郎「よし、明日も頑張るとするか!」



京太郎(だけどもし、みんなが迷惑に感じてるってなったら俺は――)

――翌日

京太郎「こんにちはー」

久「須賀君、来てくれたのね……正直来ないことも覚悟してたんだけど」

京太郎「そりゃそうですよ。俺だって今の状況何とかしたいですからね」

まこ「無理はせんでええんよ?」

京太郎「大丈夫です、このくらいで凹んでたら一緒に頑張ってくれてるみんなに申し訳が立ちませんし」

優希「京太郎……え、えっとタコス食うか?」

京太郎「おう、サンキュー、くれるならもらっとくわ」バクッ

優希「……って三つ全部食べるなー!」

京太郎「えっ、全部くれるんじゃないの?」

優希「一個だけに決まってるだろー!」

京太郎「わりいわりい、今度作ってくるから許してくれ」

優希「よし、許す!」

京太郎「それでいいのかよ!」

和「須賀君」

京太郎「あっ、和」

和「私は力とかそういったオカルトは全く信じていません。須賀君の身に起きている事も偶然の産物だと思っています」

京太郎「おう……」

和「ですが、もしもそれによって須賀君が麻雀に悪感情を抱いてしまうのなら……とても悲しいです」

京太郎「和……」

和「何か私に出来る事があるなら言ってくださいね?須賀君も清澄高校麻雀部の仲間なんですから」

京太郎「ああ、ありがとうな!」

咲「京ちゃん」

京太郎「咲、これからも色々面倒かけると思うけどよろしく頼むな」

咲「ううん……私は面倒なんて思ってないから」

京太郎「……ありがとう」

咲「うん……」

久「よし、それじゃあ今日も須賀君を中心に打ちましょうか」

京太郎「みんな……よろしくお願いします!」

――数十分後

京太郎「……ポン」

まこ「持ってかれたか……」

京太郎「……ポン」

和「……」

咲(これで京ちゃんは二回鳴いた……そしてたぶん次に京ちゃんが鳴きたいのはこれだから……)タンッ

京太郎「……」タンッ

咲「カン!」

京太郎「うおっ……」

咲「嶺上ツモ、8000の責任払いです」

京太郎「直取りされたか……これで間違いないですね」

久「前が前だから予想はしていたけど……まさか本当に鳴けない相手がいるとそこに振り込むなんてね」

まこ「毎回二回までは順調に鳴いとるんじゃがな……三回目からは鳴けるか鳴けないか6対4の割合ってところかの」

久「須賀君が鳴いた相手はその局和了る事は出来ない……とも言えるわね」

久(つまり須賀君は鳴く事で相手の和了を封じてる?確か全国で戦った相手にも和了を封じる人がいたけど……似たような力って事なのかしら?)

京太郎「ロン!トイトイ赤、6400!」

咲「はい」

久「ふむ……直撃する相手はランダムみたいね」

まこ「確かに鳴かれた順番は多々あれど、そこに法則はなさそうじゃな……」

久(須賀君の意識が飛ぶのが二回目の鳴きまでってところも気になるわね……なにこれ、三回目からは自分でやれって事?)

京太郎「……」ガクッ

久(そもそも意識が飛ぶ理由が理解できないのよね……永水女子の神代さんは神様を降ろしていたらしいけど、須賀君はあくまで一般人……まさか神代さんと同じ事をしてるわけではないでしょう)

優希「ロン!12000だじぇ!」

京太郎「やられたー!」

久(また鳴いてない優希から須賀君が直撃を受けたか……あら?よくよく考えてみればこれって……)

久「まこ、最近の須賀君の対局の牌譜ってどこにあるかしら?」

まこ「そこの棚に分けてあるが……どうかしたんか?」

久「ちょっと気になる事があってね……まこは対局を見ててちょうだい」

京太郎「お疲れ様でしたー……」

まこ「二位と三位が二回ずつか……あんだけ場を荒らしておいて一位になれんっちゅうのもおかしな話じゃのう」

京太郎「直撃してもそれ以上持ってかれますからね……」

咲「京ちゃん、和了る時の打点が低いもんね」

優希「だったら親番でひたすら和了ればいいんだじょ!」

京太郎「そりゃ連荘が相当続くならいけるのかもしれないけどなあ……このメンバーだとそれもなかなか……あれ、そういえば部長は?」

和「ベランダで須賀君の対局の牌譜をずっと見てますよ」

咲「な、何かわかったのかな?」

まこ「気になる事があるとは言っとったが……」

バタンッ

久「……」

まこ「おぉ部長、ちょうど今あんたの話をしとったところじゃ。それで何かわかったんか?」

久「……糸口になるかはわからないけど、一つわかった事があるわ」

京太郎「っ!?」

優希「さすが部長だじぇ!それで何がわかったんだ!?」

久「……」

和「部長?」

久「おかしいとは思ってたけど、まさかこんな……」ブツブツ

咲「ど、どうしたんですか?」

久「……ねぇ、みんなはおかしいとは思わなかったかしら」

まこ「何をじゃ」

久「須賀君の力はデメリットが非常に多い……最初の頃はリーチをかけた後鳴かれたらその人に振り込んでたわよね?」

咲「は、はい」

久「そして今は三回目鳴けなかった相手に振り込む……」

京太郎「た、確かにそうですけどそれがいったい……」

久「……おかしいじゃない」

和「……ああっ!」

久「和は気付いたみたいね」

和「確かにおかしいです……」

優希「ど、どういう事だ、のどちゃん?私全然わからないじぇ!」

和「考えてみてください……なぜ須賀君が一定の状況下にある時、それに対応している人も必ず聴牌してるんですか?」

咲「あっ……そういえば京ちゃんの力がリーチ一発だった時、京ちゃんは鳴かれたら必ず直後にロンされてたね……」

まこ「……まさか」

久「えぇ、私もそう思って確かめてみたわ。ここ最近の須賀君の対局……【須賀君の相手の状況】をね」

京太郎「相手の状況……?」

久「そう、そして他の牌譜と比べて確信した」







久「――須賀君が入った卓、全員聴牌になるまでの速度が異常なレベルで跳ね上がってるわ」






今日はここまで

今日の分を更新します

京太郎「聴牌速度が上がってる、ですか」

久「須賀君の力に当てられたのかわからないけど、須賀君が入った卓は平均して五巡目から遅くても七巡目には聴牌……力がリーチ一発の頃は早い時には三巡目で全員一向聴か聴牌なんて場面もあったわ」

和「東場のゆーきとほとんど同じくらいですか……」

優希「むう、でも東一局の私に比べたら微妙に遅いじぇ」

まこ「毎回あんなスピードでやられてたまるかい……」

咲「だけどどうしてそんな事が……」

久「残念だけどそこまではわからないわね。そもそもなぜ須賀君が今の力を持つに至ったのかさえ私達は知らないんだから……だけど数日前の須賀君と今の須賀君で共通してる聴牌速度の上昇というポイントは見逃せないと私は思ってるわ」

京太郎「……」

京太郎(共通する聴牌速度の上昇か……まさか俺の力の根本って……)

咲「京ちゃん?どうしたの、顔色悪いよ?」

京太郎「いや……」

まこ「京太郎も混乱しとるんじゃろう。とりあえず今日の京太郎の力に関する話はここまでにしとくべきじゃろうな」

久「そうね、根を詰めすぎてもよくないし……今日はもう通常練習に切り替えましょうか」

京太郎「あっ、俺ならまだ……」

和「ダメですよ須賀君。病院の検査で問題ないという診断結果が出たとはいえ、須賀君は怪我をしているんですから無理は禁物です」

優希「焦ってもろくな結果は産まれないじぇ、とりあえず休憩しておけ!というわけで休憩ついでにタコスを……」

和「ゆーき?」

優希「じょ、冗談だじぇ……」

久「とりあえず須賀君は色々思うところもあるでしょうし休んでおきなさい。なんならベッドで寝ておく?」

京太郎「いえ、大丈夫です。とりあえず外に出てきますね……」

ガチャッ、バタンッ

久「……やっぱりまいってるわね」

優希「縛りプレイの上に相手の強化なんて私だったら嫌になるじぇ」

まこ「そうじゃなあ……せめて全体的じゃのうて京太郎が自分で選んで特定の相手にだけ使える言うんなら色々使い道もあるんじゃが」

和「そんなオカルトありえません。この平均聴牌速度も牌の偏りで説明できない話ではありませんよ」

久「和は本当にブレないわねぇ……」

咲「……」

咲(京ちゃん、あんなに顔色悪かったの本当にそれだけなのかな……)

久「さてと、じゃあ咲達も練習するわよ。新人戦が控えてるのは須賀君だけじゃないんだからね」

優希「今からなら三回は半荘出来るじぇ!」

和「いえ、出来ても二回が限度だと思いますが……」

まこ「優希、それ京太郎が入っとる卓の時間で計算しとるじゃろ……」

優希「……あれー?」

――

京太郎「ふう……」

京太郎(聴牌速度の上昇……つまりそれだけ一半荘が早く終わるって事だよな)

京太郎(そして俺がみんなの練習相手になるために経験が不足してるのは俺が一番よくわかってる)

京太郎(つまり、この力の根本にある俺の気持ちは……)

京太郎「さっさと終わらせて、場数を踏もうって事なのか……?」

京太郎「……いや、まだそうと決まったわけじゃない」

京太郎「そんな自分勝手な理由でみんなのペースを崩すような真似……本末転倒じゃないか」

京太郎「とにかく聴牌速度の上昇については後回しだ……俺はもう一つの共通点、意識が飛ぶ事について考えよう……」

――数日後

京太郎「うーん……」ペラッ

京太郎(やっぱり麻雀してる時限定で意識が飛び飛びになる話なんてどこにも載ってないなあ……一応麻雀のオカルトに関しての雑誌も読んではみたけどデマばっかりだな)

京太郎「確か女子のインターハイには意識が飛ぶっていうか打ちながら寝てる巫女さんがいるって優希が言ってたけど……」

京太郎「巫女って事は鹿児島の永水女子か……長野県内の高校ならともかく鹿児島まではさすがに部長もコネはないよなあ」

京太郎「どうしたもんか……」

咲「あっ、京ちゃん!」

京太郎「んっ、咲か」

咲「京ちゃんが図書室にいるなんて珍しいね。文字読むだけで眠くなるとか言ってたのに」

京太郎「俺なりにこの力について調べてみようと思ってよ。特に意識が飛ぶってのはよくわからないしな」

咲「京ちゃんも頑張ってるんだね……あっ、隣座っていい?」

京太郎「おう」

咲「それで何かわかった?」

京太郎「ぶっちゃけると手詰まりだよ。なんせ俺の力がどうやって生まれたのか自分でもわかってないんだからな」

咲「やっぱりそう上手くはいかないよね……私の家族麻雀みたいにきっかけがあればわかりやすいんだけど」

京太郎「きっかけ、か」

京太郎(やっぱりきっかけは俺の考えてる通りなのか?だとしたら俺……)

咲「あっ」

京太郎「どうした?」

咲「この本ケースと中身が違う……」

京太郎「あらら、それは災難だったな」

咲「もう、借り物なんだから本はちゃんと扱ってほしいよ……ちょっと行ってくるね」

京太郎「さすが文学少女だな……さてと、俺も怒られない内に読んだ本戻しておきますか」

ガタッ

京太郎「んっ?」

ガタガタッ!

京太郎「うおっ、地震か!?」

京太郎(しかも結構デカいぞこれ!?)

咲「きゃうっ!?」

京太郎「咲!?」

咲「いたた……きょ、京ちゃあん……」

京太郎「転んじまったのか……待ってろ、今こっちに……」







グラッ……






京太郎「!?」

咲「えっ……」

京太郎(咲が転んだちょうどその場所に向かって、本棚が倒れてきたその時、俺は周りの全部が遅くなった気がした)

京太郎「さ……」

京太郎(気付いたら俺は走り出していた……間に合うか間に合わないかなんて考えもしなかった)

咲「京ちゃ……」

京太郎(ただ俺は、目の前で涙を浮かべるあいつを助けたい一心だった)

京太郎「咲ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」







ドンッ!

バタンッ……!!






咲「……あ」

京太郎「……」

咲「きょ、京ちゃん……?」

京太郎「大丈夫か、咲……」

咲「わ、私は大丈夫……それより京ちゃんが!」

京太郎「ならよかったわ……」

咲「よくないよぉ!!」

京太郎「なんでだよ……」

咲「だって京ちゃん、下半身が本棚の下敷きに……!」

京太郎「ああ、確かに脚がすっげえ痛いわ……まあ、最近は怪我ばっかりしてたから特に問題ないって……」

京太郎(……あっ)

――京太郎(いてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?)

――京太郎「いってえ……頭、打っちまった……足も挫いたか……はあ、もう嫌になるわマジで……」

――京太郎「全くこの前顔打ったばっかなのについてないよな……」

京太郎(ああ、あったわ……もう一つ共通点……俺、力を手に入れる前怪我ばっかしてたんだ……)

京太郎「そういえば、あのデマばっかりのオカルト系雑誌にあったっけな……【生死の境をさまよって一巡先を読む力を手に入れた雀士】の話……」

咲「京ちゃん、何言って……」

京太郎(全く……俺の力の根本についての悩みはなんだったんだよ……本当に、馬鹿、みてえ……)

京太郎「……」ガクッ

咲「……京ちゃん?」

京太郎「……」

咲「京ちゃん、京ちゃん!やだ、目を開けてよ、京ちゃん!!」







咲「京ちゃあああああああああん!!」






京太郎(咲が俺の名前を呼んでいる……意識が薄れていく中俺は……)






ブツンッ……






京太郎(どこかで聞いた音を聞いた気がした――)

今日はここまで

おはようございます
ちょっとお知らせがあって急遽書かせていただきます
この先の展開を書くにあたりとても修正しきれない致命的なミスが見つかりました
なので一回このスレをHTML依頼して改めてスレを立て直したいと思います
完結までの大まかな道のりは出来ているので未完にだけはしません

それでは依頼してきます
読んでいた方は本当にすいませんでした

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