竜:ヤスの気持ちを想像することがカギになっているので、真相に辿り着いた方は女性が多い
ように感じました。うみねこは恋人を作ったことがない人には読めない作品なんですよ。
恋愛経験のない人が理解するのはつらい作品です。「恋愛が人の生き死にを司るほどの
動機になりうる」ということを、恋愛経験がない人に説明することはできないですよ。
きっと「よくある動機」程度にしか思われないので。
でも恋を経験して恋愛に苦しんだことがある人なら、恋愛によって世界がひっくり返る
くらい変化することが分かるはずです。「また会いに来るぜ」と言われたのに六年も
来てくれなかったら頭がおかしくなりますし、少しでも恋に苦しんだことがある人なら
「六年はきついね」と言ってくれると思います。逆にその苦しみが分からない人は、
ドラマチックなガジェットしか期待していないから「何歳の時に父さん母さんが惨殺
されて」みたいな壮絶な「お話」を待ってる。
K:私は自分の恋愛経験に重ねたりしつつ、ヤスの動機はすんなり受け止められました。
竜:本気で恋をして、上手くいったりいかなかったりするのも、大事な社会経験なんで
すよ。今の子って面白いから、「振られるのは怖い、痛い」と情報だけで知ったこ
とを元に「じゃあ恋をしなきゃ痛くも痒くもないじゃん」という不思議な理論を展
開している方が多いように感じています。
K:恋愛は十分、殺人の動機になるんですよね。
竜:それが分からない人は、恐らく『うみねこ』を理解できないと思います。
『うみねこ』は「一人の少女が恋と狂気であれだけの事件を妄想するに至るまでの物語」
なので、これをいくら描いても共感できない人には共感できないんですよ。
竜騎士07:今の主流のミステリーの方向は仕掛けをどんどん捻って捻って・・・・・・
っていうほうにばかり進んでいますからね。かつて誰もが期待した「孤島の洋館もの」っていう題材は
何十年も昔に閉ざされて以来、全く書かれてない時代だと思うんです。
――あ、小説の世界では決してそういうことではないんですよ。
日本では九〇年前後を中心に「新本格ミステリ」という古典回帰のムーヴメントがあって、
綾辻行人さんや有栖川有栖さんは初期に「孤島の洋館もの」を書かれていました。
綾辻さんには他ならね「館シリーズ」がありますしね。いや、ここが竜騎士さんのすごいところなんですよ。
あれだけのものを書いているんですから普通は読んでいるはずなんですよ。
傑作を読まずに傑作を書けてしまっているところがすごい!
竜騎士07:勉強不足ですみません。
竜騎士「なら、俺を納得させる推理をきかせてみやがれ。」
読者「いやだから散々推理したじゃん。○○が○○で……。」
竜騎士「ふうん。じゃあ、お前の中ではそうなんじゃないの?」
読者「は?馬鹿馬鹿しいわ。考えるだけ時間の無駄じゃん。」
竜騎士「……考えるだけ時間の無駄……? お前、……ミステリーを語って、その言葉を口にするのか……。」
竜騎士「……お前のような、……ミステリーをする気もねぇのに、ミステリーを語るやつがよ………、俺は一番気にいらねェんだよッ!!!」
竜騎士「ミステリーを語るならッ、思考で戦う姿勢を誇れッ!!」
読者「いやだから散々推理したじゃん。○○が○○で……。」
竜騎士「ふうん。じゃあ、お前の中ではそうなんじゃないの?」
読者「は?馬鹿馬鹿しいわ。考えるだけ時間の無駄じゃん。」
竜騎士「……考えるだけ時間の無駄……? お前、……ミステリーを語って、その言葉を口にするのか……。」
竜騎士「……お前のような、……ミステリーをする気もねぇのに、ミステリーを語るやつがよ………、俺は一番気にいらねェんだよッ!!!」
竜騎士「ミステリーを語るならッ、思考で戦う姿勢を誇れッ!!」
読者「じゃあどうすれば良いんだよ。」
竜騎士「思考停止ってことは、ミステリーであることを諦めたってことだぜ。ってことは……お前にとってはこのゲームはファンタジーってことだな。」
読者「いやだから散々推理したじゃん。○○が○○で……。」
竜騎士「ふうん。じゃあ、お前の中ではそうなんじゃないの?」
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