高垣楓の晴飲雨飲 その2 (89)

コメがうれしくて書いちゃった
前回にならって五編書いたら依頼だす

前作

高垣楓の晴飲雨飲
高垣楓の晴飲雨飲 - SSまとめ速報
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【サングリア】

高垣楓は、手慣れた様子でオレンジをカットする川島瑞樹の背中を見ていた。

本当は手伝いたかったのだが、

「私に出来ることがあれば何でも言ってください!」という申し出に対して、

「頑張ってじっとしていて頂戴」という答えが返ってきた。

時はさかのぼって1週間ほど前。

デルスールの件で本格的に

安ワインを開拓してみようと決意した楓は、

ネット通販で10本ほど赤ワインを購入した。

価格はどれも1000円前後。

当たりはいくつかあった。

『イエローテイル シラーズ』。

『コノスル ピノ・ノワール レゼルバ』。

『イゲルエラ』。

しかし安かろう悪かろうという格言も

あながち間違っている訳ではなく、

ハズレワインも何本かあった。

酒好きとは言えど不味いものを飲み続けるほど

楓は辛抱強くはないので、その有効利用について川島に助言を乞うた。

「『サングリア』にしましょう」

サングリアとは、フルーツを漬け込むことによって風味づけされた

フレーバードワインのことである。


川島流の材料は、ワイン一本(720ml/750ml)に対して

オレンジとリンゴを1個ずつ。

さらにオレンジジュース200ml。

それからガムシロップ2つと、シナモンスティックを1本。

パンチが欲しければ黒胡椒を粒のまま小さじ1弱。

オレンジは一口サイズにカットして、りんごはイチョウ切りにして漬け込む。

難しいことは何もないのだが、

ある時キッチンの惨状を目にした川島は、最大限の安全策を取ることにした。

「2日後くらいにできあがるから…また呼んで頂戴」

リンゴがワイン色に染まった時が飲み頃なのだという。

川島がいなくなった後、楓はさっと漬け込み用の瓶に近づいて、

味を確かめた。

現状ではまだ、水っぽくて酸っぱい何か。

これがどんな味になるんだろう。

楓はわくわくしながら、日が経つのを待った。

キレの良すぎるギャグで番組を凍りつかせた後、

楓は意気揚々と自室に戻った。

収録は夕方に終わり、ちょうど今は晩ごはんの時間。

白かったリンゴは、鮮やかな紫色になっている。

部屋中をきょろきょろ見回し、ついでに廊下に誰もいないことを確認した後、

楓はコップにサングリアを注いだ。

ふわあっとシナモンが香った後、みずみずしいシトラスが鼻をくすぐった。

ちょっぴり楓は不安になった。

フレーバーの強い酒は人を選ぶとよく聞く。

(“川島が1人で”)作ったサングリアの量はざっと3L。

酒が飲めるアイドルは多いが、消費しきれるかどうか…。

ええいままよと、楓は本日一杯目のサングリアを飲み干した。

彼女はしばらく目をしばたかせた後、ジョッキグラスに氷を入れて、

二杯目をなみなみと注いだ。

今度はゆっくりと口に含む。

意外なことに、はじめに出会うのはリンゴ。

シナモンやオレンジに比べて弱々しいと思われた彼女が、

真っ先に舌先に躍り出る。

楓は知らぬことだったが、川島が選んだのは青森産の『紅玉』。

太陽の血を浴びたかのような、名前の通り真紅の品種である。

生食での評価では『ふじ』に一歩譲るが、パイやジャムなどの加工においては

並び立つものがない。

サングリアの中にあっても良い仕事をしている。

間髪入れずに現れるのは、やはりオレンジ。

リンゴを押しのけようと、はちきれんばかりの主張をする。

だが不思議なことに、その自己表現は“甘み”となって口内をくすぐる。

「オレンジがアレンジ…ふふっ♪」

シナモンがやってきたのは、サングリアを飲み込む一歩手前。

香りをかいだ時の印象とは、まったくの逆さまだった。

けれども全体的に調和がとれていて、

そして、後味はさっぱりとしている。

飲みきれなかったワインは、何杯でも楽しめる美酒に化けた。

サングリアに満足した楓は、川島に電話をかけた。

「美味しかったです!!」

『美味し“かった”…?』

「あっ…」

『わかってたわ』

サングリア…
作中のレシピは作者の兄が考案したもの
「入れる材料少なくない?」と尋ねたら
「スペインで育ったものしか入れちゃいけない」と返された

ガムシロップとは一体

あれ、サングリアってセーフになったんだっけか?
……まあなんにしろバレなきゃ良いか。

>>14
酒税法は魔窟だぜえ…
作者も梅酒つくるときヒヤヒヤした

不安になって調べてみたが酒税法43条11項の規定に

『前各項の規定は、政令で定めるところにより、酒類の消費者が自ら消費するため酒類と他の物品(酒類を除く。)
 との混和をする場合(前項の規定に該当する場合を除く。)については、適用しない』

と書かれてた
ここの解釈が問題になるんだけど作者に法学の知識はない

きっと川島さんがスピリタスか何かで度数を調整してくれたんだろうそういう事にしておこう

ぶどうや米はダメだったり色々細かい部分があって悩むよね

なんかワイン中心になりそう

【マルベック】

スペインの首都、マドリード。

映画の最終撮影の打ち上げを終えた高垣楓は、束の間の自由を得た。

付き合いで他人の顔色を伺いながら飲む酒は美味しくなかった。

なので、これから飲み直すつもりである。


時刻は夜1時を回っているが、街はまだ活気に包まれている。

ネオン街のようなけばけばしい感じではなくて、健全で陽気な雰囲気。

ホテルのそばの地下鉄『Almagro』から、『Alonso Martinez』へ。

そこで乗り換え『Opera』、さらに乗り換え『Sol』で降りる。

迷路のような東京の鉄道網に慣れ切った楓には、難しいこともない。


Solには広場があって、いくつもの飲食店が並んでいる。

だが、楓はそれらには目もくれず路地に入っていた。

しばらく歩くと、牛肉の甘い脂の匂いがした。

楓の目の前にあるのは、

アルゼンチンステーキが食べられるというふれ込みの店。

打ち上げでは妙に気を遣われて、ささやかなハーブが乗った白身魚や、

サラダしか出されなかった。

それではいけない。

疲れ切った身体を癒してくれるのは肉と、なんといっても極上の酒である。


フランスやイタリアに押され気味ではあるが、

スペインもれっきとしたワインの一大産地。


楓は撮影中禁酒を命じられていたから、

今夜(すでに1日のはじまり)は目一杯楽しむつもりである。

意気揚々と、店内に乗り込む。
観光客に慣れているのだろう、赤ら顔をした中年の店主が、

さっと席まで案内してくれた。

楓はメニューからアルコールの欄を一目で見つけ出し、

リオハ産の赤ワインを注文しようとした。

しかし店員は「No」と言って、その下を指差した。

そこには『Malbec』と書かれていた。

読む限りではアルゼンチン産の赤ワインで、店主のおすすめであるらしい。

スペインワインは気にかかったが

聞いたことのない名であったし、

値段もたいして変わらなかったので、楓はそれにした。

ついでに看板メニューであるステーキも頼んだ。

グラスがすぐに運ばれてきて、目の前で注いでくれる。

色は赤というよりも、黒。

その見た目にたがわず濃厚な香りが、楓の顔をおおった。

店主がウィンクをして席から離れたのと同時に、彼女はグラスに飛びついた。

だが、肝心のワインはゆうっくりと口に含んだ。


意外なことに、タンニンの渋味は強くない。

代わりに葡萄の果実味が非常に濃い。

“重厚なフルーティさ”、そんな印象。

きっと、牛肉の味をよく引き立ててくる。

その予想は現実となった。

運ばれてきたステーキには、大きめの岩塩と胡椒がふりかかっていた。

こちらの方も酒に合う工夫がされているようだ。

すでに切り分けられているから、

ナイフをちまちまと使うストレスがない。

一切れをまず、そのまま味わった。

楓は目を見開いた。

塩気よりも牛肉の旨味の方が、ずっと強い。

半分を一気に食べたあと、彼女ははっとした。

ワインの印象が吹き飛んでしまうほどに美味しい。

「素敵なステーキ…」

脂身も少ないので舌の塩梅も悪くならない。

今度はワインを少し飲んだあと、肉を一切れ噛んでみた。

濃厚な肉汁がワインととろけあって、えもいわれぬ風味。

アルコールはまだ回っていないが、楓はこのペアユニットに酔いしれていた。

成熟した色気のあるパッション。

美城なら誰だろう…頭の片隅でそんなことを考えながら、

彼女はまたワインを含んだ。

その一口がわりに大きく、グラスは空になった。

「おかわり…」

楓がグラスを指さすと、店主は苦笑いをしながら

今度はボトルを丸ごと彼女に差し出した。

それが店で最後のマルベックであった。

マルベック…葡萄の品種。

なぜワインの名前が分からなかったのかというと、旅行中の作者の語学力のせい
しかも現在店は閉業

ふんだりけったりである

アルゼンチン牛は近年飼料の高脂肪化で
脂っこくなりつつあるのも残念

【スリーブリッジズ 貴腐ワイン】

辛口、重口の酒に比べて、極甘口のデザートワインは数が少ない。

気の利いたイタリアンやフレンチレストランなどに言ったとしても、

お目にかかれるかどうか。

自分で意識して飲もうと思わない限りは、一生出会わないかもしれない。

楓は、黄金色に輝く375mlのワイン瓶に目を細めた。

“貴腐ワイン”なるものが最近にわかに流行り始めていて、それに釣られて

通販サイトの購入確定ボタンを押したのがつい先日。

今の気持ちは期待と不安が半々といったところ。

量が量であるので、口に合わずともなんとか飲みきれるが、

酒飲みゆえの逡巡が頭を悩ませる。

まずいまずいと言いながら瓶を空けるのは気が進まない。

楓にとって甘口、それも極甘口のワインは初めてである。

川島瑞樹や片桐早苗に尋ねてみたが、彼女達も経験ははないという。

とはいえ飲まずには始まらない、と楓はキャップをひねった。

甘口のワインは一般的に軽くて飲みやすいという評価が多いが、

開封後彼女の鼻をついたのは、重厚な蜂蜜だった。

おっかなびっくりで、ワイングラスに注ぐ。

より濃密な香りが立ちこめる。

「ワインがこわいん…」

そんなことをつぶやきながら、まず一口。

予想通り甘い。

しかし、“たるく”ない。

存外に爽やかさすら感じられる。すうっと飲み干せる。

つまみは…と考えてから、楓はかぶりを振った。

ビーフジャーキーの歯ごたえのある塩気も、ビターチョコレートのほろ苦さも、

ナッツの香ばしさとも、相入れない。

このワインは孤高だ。

けれども、孤独ではない。

今まさに、それを楽しむ人がいるのだから。


楓は駆け出しの頃に抱えていた、凄絶な感覚を思い出した。

自分の周りすべてが、番組スタッフやプロデューサーさえも敵に見えて、

ひどく息苦しかった。

ファンの1人1人が見せる笑顔が嬉しくて、なんとか頑張れた。

ほろりと、瞳に涙が浮かんだ。


「罪なひと…」

楓は、そっとボトルの表面を撫でた。

スリーブリッジズ 貴腐ワイン…

貴腐ワインの中ではかなり安い…らしい
かなりの甘口なので食前食中には向かない

デザート感覚でゆったりたのしむワイン

今日はもう一話書き込む

【イエローテイル シラーズ】

ニューワールド(新世界)。

なんとも心踊る響きか。

ワインにおいては、南北アメリカやオセアニア等、

比較的新しく生産をはじめた国々を指す。

楓の自宅に先ほど届いたワインの群れは、価格帯にして1000円前後。

大半がニューワールドのものである。

どこから手をつけましょうか…。

楓は瞳をきょろきょろさせて、それぞれのラベルを見つめた。

南米ワインはコノスルをよく飲んでいたから、大体の勝手が分かっている。

初手で合衆国に飛びつくのは何だか恐れ多い。

しばらく考えていると、パッションのある色彩のカンガルー

(正確にはワラビーという動物らしい)が目に入った。

『イエローテイル シラーズ』。

ネットでも注目を浴びていたワインだ。

君に決めた!

楓はボトルを抱いて、ぴょんぴょん跳ねながらキッチンへ向かった。

家事についてはだらしない彼女であるが、酒器の手入れは行き届いている。

一点の曇りもない、きゅっと腰回りがくびれたグラスに、ワインを注ぐ。

この時点で楓は、おやと思った。

シラーズ(シラー)のワインはコノスルで体験済みであったが、香りがちがう。

穏やかだ。

口に含んで見ると、やはり味も異なっている。

くっきりとしたチリワインに比べると、たおやかで繊細。

それでいて印象が薄いということはなく、タンニンの渋みは心地よい。

酒にはそれぞれふさわしい料理があるというが、

このワインはきっとこってりとした肉料理にも、淡白な魚料理にも合う。

もちろん、つまみにも。


楓は、実家の和歌山から送られてきた梅干しを冷蔵庫から出した。

ひとつ食べて見ると、顔をきゅっとすぼめるほど酸っぱい。

そこにすかさずイエローテイル。

梅干しの強烈な酸味をワインがまろやかに中和して、心地よく舌を刺激する。

最近会ってない…。

楓はふと、両親のことを想った。

トップアイドルとしての活動は

片っ端からカレンダーを塗りつぶすに等しい。

気の置けない友人がいて、ファンが多いといっても家族は特別な存在。

しばらく物思いにふけった後、

楓は、どれもう一個と梅干し手を伸ばそうとした。

そこで電話が鳴った。


急いで手を洗って受話器を取ると、相手は片桐早苗だった。

「どうかしましたか?」

『私がどうっていうより、楓ちゃんが心配でTELしたのよ』

「心配?」

『来週健康診断あるから』

さあっと楓の顔が青ざめた。

『とりあえず量は少なくして、つまみも考えて…・

 特に“お酒と梅干し”とか、絶対にやらないでね!
 
 それがもとで亡くなった武将がいて…って聞いてるー?』

21世紀、アイドル戦国時代。

「いーじーじゃない健康維持…はあ…」

楓の戦いはまだ始まったばかりである。

イエローテイル・シラーズ…
オーストラリアワインの筆頭といってもいい
だいたいどこのスーパーにも売ってる

土壌とか環境のせいか、同じ葡萄の品種でも口当たりがちがう
南米ワインが濃すぎるという方はお試しあれ

ワイン苦手だけど色々試したくなった

>>50
渋いのとかアルコール臭がきついなら
白ワインの『おたる ナイアガラ』
赤ワインの『五一わいん コンコード』
がおすすめ

楽しんで酒飲むのが一番だから、無理して買うこともないけどね

>>51
渋いの苦手だから試してみる。感謝

日本にもワイナリーは多いから
日本食に合うワインとして、結構軽めの赤ワインとか白ワインが結構つくられてる

でも薄くはなくて味がしっかりある
苦手な人は信州よりも青森・北海道から国産ワインをお試しあれ

甘口のワインといえばドイツも有名
『シュヴァルツカッツ』(黒猫がラベルに描かれている)がよく売られてるけど
作者としては『マドンナ』の方がおすすめ

黒猫の方は若干酸っぱい

貴腐ワイン最初に飲んだ時は上品でいて濃厚な甘みにびっくりしたわ

時間できたからかきこみする
日本酒と梅酒の二本立て

【純米酒 浦霞】

和歌山の近くには、京都と兵庫がある。

いずれも日本酒の一大産地である。

なので、ようやく飲酒が許される年齢になった当時の楓にとって、

酒といえば日本酒という印象があった。

大人になって様々な酒をゆったり楽しむ余裕は生まれたが、

それでも日本酒のこととなると近畿に目が行きがち。

「“さけ”てはいけない…」

ある時、それではいけないと楓は勝手に決心し

米どころが数多い東北にスポットライトを向けることにした。

いざ探してみると有力株はいくつもある。

青森の『田酒』。

秋田の『新政』

山形の『十四代』。

けれどもいっとう楓の注意を引き付けたのは、

宮城の『浦霞』であった。

近畿に瀬戸内があるように、東北にも豊かな漁場がある。

浦霞は、きっと魚(肴)に合う酒に間違いない。

そんな風に考えて、楓は“いそいそ”と通販サイトの暖簾をくぐった。

近所の酒屋に飛び込みたいのが本心であるが、

そんな簡単なことがなんとも、ままならない身である…。

浪浪でありつつも、どこか力強い字体の名前。

ラベルをしげしげと見つめながら、楓はうんうんと頷いた。

すでに一仕事やり遂げた気分である。

そして、仕事のあとには一杯やるのが彼女のワイフ“ワーク”。

彼女はキャップを、熟練の手つきで捻った。

そこからコップに注ぐまでの動作の速さは、さながら達人の居合のようだった。

とくとくと、瓶の中で空気と液体がせめぎ合う音。

量を忘れて注ぎ続けたくなる。

楓は健全な大人の理性で、瓶の口を上げた。

ちなみに現在の時刻は、午前の10時である。

まずは香りをたしかめる。

ふっと、大袈裟でない香り。

軽く口に含む。

しばらく舌で楽しむ。

辛すぎもなく、甘ったるくもない。

それでいて米の風味がしっかりしている。

喉越しは軽くあとにもたれない。

予想した通り、食事によく合う日本酒である。

というよりむしろ、食欲を刺激してくる。

まだ朝食の満足感がかすかに残っていたが、楓はサバの缶詰を開けた。

箸で身をほぐして、一口。

魚缶は保存のために味が濃いめに作られることが多いが、

『いなば さば味噌煮』はちょうどいいしょっぱさ。

浦霞を飲む。

「魚心あれば水心…」

楓は呟いた。

辛口の酒は食事の味を飛ばしてしまうことがあるが、

この酒はそうではない。

出会った喜びを分かち合っている。

それでいて、口の中がしっかり改まるのだから不思議である。

大きめの二口目のサバが、また美味い。

こくがあって、茶漬けの具にしてもよいだろう。

楓の肩は震えた。

しかし、さすがに白飯を炊くのは我慢した。

アイドルとしての矜持である。

その代わり、一気にコップを空にして二杯目を注いだ。

彼女の様子を、川島瑞樹と片桐早苗が見たら、

きっと苦笑いすることであろう。

純米酒 浦霞
…辛口はやだ。薄いのもやだという作者のワガママに答えてくれた日本酒
 さっぱりした味だが、まろやかなこくがある

 ワインとウィスキとビールと梅酒が製造販売禁止なったら、作者はこれと『出羽桜』を飲む

【臥竜梅 『梅酒』】

梅酒と言っても、漬け込みの酒によって風味は千差万別。

大手は醸造アルコールやブランデーを用いるが、

酒蔵によっては日本酒や焼酎、変わったところではウィスキーを使うこともある。

色々試してみれば梅酒=甘くて飲みやすくて度数が低い、

というイメージは粉々に打ち砕かれるだろう。

高垣楓は、その“色々”の中から日本酒に目をつけた。

『ナトゥラーレ』で米焼酎については見当がついていて、

ウィスキーは梅の風味を消してしまうのではないかと、やや不安だったためである。

故郷の酒蔵がすぐさま思い浮かんだが、

勝手がわかっている場所から、わざわざ取り寄せるのは何だかつまらない。

楓の舌は冒険を求めているのだ。

少し込み入って調べると、清水の酒蔵が出てきた。

兵庫や京都、新潟ほどではないが、静岡も日本酒の産地として有名である。

“吟醸王国”と称されるほどで、楓自身も何本か経験があった。

大半は辛口、しかしコクのある淡麗。

そういう印象であった。

果たして梅とのコラボレーションは如何。

楓の目の前には、小柄でありつつも毅然とした様子の瓶がある。

臥竜梅の『梅酒』。

なんだか生意気…。

楓は瓶にデコピンをかまして、

しばらく悶絶した後、瓶を開けた。

氷の入ってないロックグラスに、半分ほど。

深呼吸。

ほんのり梅の香りが心地よい。

甘すぎるということもなさそうだ。

グラスの縁にくちびるをつけて、酒をちょっぴり舌にのせる。

楓は驚いた。なんと、切れ味がある。

氷を投入し、もう一口。

刃が研ぎ澄まされている。

『ナトゥラーレ』には米焼酎が使われていたが、それよりも味わいは鮮明である。

甘みの方は予想通りおさえめ。

食中に応える、上等な梅酒。

無論つまみとの相性もよいのだろうが、楓は一対一で向き合いたくなった。

グラスを飲み干す。

夏の夜にふさわしい、華やかさと爽やかさ。

さながら晴れの浴衣を着た大和撫子…梅酒界のアイドルである。

二杯目の梅酒をつがずに、楓はほーっとボトルを見つめた。

アルコールは回っていなかったが、顔が赤くなる。

彼女にとって500ml瓶は軽い。

今飲みきってしまうのは寂しく、この日は一杯にとどめた。

1週間後、キレッキレのオヤジギャクで番組を斬った楓は、

とぼとぼと自室に戻った。

お酒が飲みたい。

しかし強い酒に打ちのめされたい気分ではない。

楓は、もっとも度数の低いものを探した。

ビールはちょうど切らしていた。

代わりに冷蔵庫では、「どうしたの?」という顔つきで梅酒が佇んでいた。

今日は優しくして…と楓はボトルを抱き上げた。

グラスを洗う気力がないので、紙コップに注ぐ。

まず一杯目。

彼女は、またこの酒に驚かされた。

風味が穏やかに、やわらかくなっている。

身体中にゆったりと沁みいるよう。

初めて会った時の印象とは、またちがって良い。

楓は羨ましく思った。


第一印象の美しさで、楓のファンになる人は多い。

けれども大半の人間は、発見よりも答え合わせを望むものだ。

楓の、オヤジギャグ好きという個性を受け止めてくれる者は、

なかなかいない。

まして、大酒飲みと知られたら…。

いけないいけない、と首を振って、

楓は意識を梅酒に集中させた。

「梅酒はうめーなあ…」

けれども、その頰には涙が伝っていた。

臥竜梅 『梅酒』
…度数は9~12度。加糖が抑えめなのか、一口目は舌にぴりっとくる
 それがちょっと苦手だという人は、少し置いておくと味がおだやかになるのでお試しあれ

 臥竜梅は日本酒も美味しいのでおすすめ

依頼出してきます

六編になっとう
まあいいか

次はエロSSと間違われませんように…

作者さんの飲んだワインはもしかすると”ドメーヌ・ブスケ マルベック”かも。

>>82
ありがとうございます!
調べてみます

\(^o^)/
http://elephant.2chblog.jp/archives/52204196.html#comments

コメント欄...

続編を何卒...

>>85
まあ、コメントがあるたびトップページに表示されるようになるから…うん

鶯屋の黒牛梅酒が取り上げられてないのは片手落ちでは無いか?

気にしない気にしない
http://morikinoko.com/archives/52088896.html

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