ミリマス、横山奈緒と松田亜利沙のSSです。
百合的描写、口調違い、独自設定等含まれる可能性があります。
苦手な方はご遠慮くださいませ。
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《松田亜利沙の回想 #B54461の想い》
ありさは自分で言うのもなんですけど、昔から変わった子でした。
ありとあらゆるアイドルちゃんのことをチェックしてやるー、って意気込んで、お金も時間も可能な限りつぎ込んでいました。
だから自然と、学校の友達とは疎遠になっていったんです。
そもそも、友達と呼べるような相手が最初からいたかどうかさえ、よく覚えていません。
男性アイドルに興味がまるでなかったのも原因かもしれません。
クラスの中で、あの俳優さんがイケメンだとか、あのアイドルに壁ドンされたいだとか、そんな会話がされているのは聞こえていましたけど、ありさはどうしても興味が持てませんでした。
そんなことよりもアイドルちゃんが歌って踊るステージの煌きや、ファンに向ける弾けるような笑顔のことを考える方が、ありさにとっては何百倍も有意義でしたし、ドキドキしたんです。
でも周りから見れば、そんなありさは変人なわけで。
最初は話しかけてくれても、ありさのアイドルちゃん好きの度合いを知って距離を置くようになる人もいっぱいいました。
まあありさにはアイドルちゃんがいればいいので、そういうのは気にしてませんでしたけどね。
それから紆余曲折あって、ありさ自身がアイドルちゃんになることになりました。
プロデューサーさんからスカウトを受けた形とはいえ、一応の歌やダンスのオーディションを受けて、晴れて合格したその日。
今後のことについての説明をうけるために、事務所のソファに座ってプロデューサーさんを待っていたありさに声を掛けてきたのが、奈緒ちゃんでした。
「初めましてやんな?」
関西弁のイントネーションでそう声を掛けてきた奈緒ちゃんは、持ち前のキラキラした笑顔で自己紹介をしてくれて、ありさもいつも以上にハイテンションで自己紹介をし返したのを覚えています。
元気系サイドテール、方言アイドル、関西人らしいノリのよさ。これは来る! とかなんとか、とにかくアイドルちゃんを愛する一人の人間として、奈緒ちゃんに光るものを感じたありさは、気づけばこれからのアイドル界の展望だとか、現代のアイドル文化で求められているものだとか、普段は人に話すことのないディープな話をしていました。
冷静さを取り戻すにつれて、後悔と諦めがありさの中に満ちていくのがわかります。
どうしてここまで濃い話をしちゃったんだろう、同じ事務所なのに初日から引かれちゃう、って。
でもそんなありさを待ち受けていたのは、ようやく戻ってきたプロデューサーさんと、さっきまで以上にキラキラした目でありさを見つめる奈緒ちゃんでした。
「亜利沙ってすごいんやな! そんないろんなことに詳しくてファンの気持ちもわかってるアイドルなんて最強やん!」
それは、ありさの人生の中で初めて、同年代の人にありさの好きなものを全面肯定された瞬間でした。
ありさの親はこの趣味に関しては否定寄りの黙認状態でしたし、学校の同級生は言わずもがな。交流のあったアイドルファン仲間もちょっと引き気味の人が多かったんですよね。
直前にプロデューサーさんという理解者もできましたけど、ありさにとっては、奈緒ちゃんに肯定されたことの方が嬉しかったんです。
それは初めて、友達と呼べるかもしれない人ができたからなんだと、思っていました。
でも。
「これはうかうかしてられへんなー……なぁなぁプロデューサーさん、明日から朝のレッスン増やしてくれません? 遅刻せんように、モーニングコールもセットで!」
そんなことを言いながらプロデューサーさんに向ける奈緒ちゃんの笑顔は、それまでありさと話していたときの笑顔とは違うように見えました。
男性と女性、同年代と年上、仲間とプロデューサー。相手が違えば雰囲気も変わるのは当たり前なんですけど、そんなことも一瞬わからなくなるくらいに、ありさは冷静じゃなくなっていました。
アイドルちゃんのステージを見ている時のものとも違うそのドキドキが恋なんだって。
アイドルちゃんの限定グッズを買い逃したときのものとも違うその喪失感が嫉妬なんだって。
一瞬でありさの中に灯ったその感情は、きっと決して叶わないものなんだって。
張り裂けそうな胸の痛みと共に、そのことに気づいた時にはもう、プロデューサーさんから今後の説明が始まろうとしていました。
《横山奈緒の回想 #788BC5の想い》
亜利沙の第一印象は、とにかくすごい、やったのを覚えてる。
お互いの自己紹介が終わって色々話してたら、亜利沙のアイドルトークが始まって。私の頭ではその話を全部理解するのは無理やったけど、すごいことを言ってるってことはわかった。
私だってアイドル目指すくらいやから、好きなアイドルもいるし、ステージを見に行ったこともある。
けど亜利沙はそれを全部ファンの目線で楽しむだけやなく、なんでこのアイドルのステージは楽しいんか、なんでこのアイドルは売れてるんか、まで考えてた。
パソコン使っていろんなデータを集めて、ファンの人達が今どういうもんを求めてるのか、まで分析してた。
ハイテンションで、自分の好きなものをキラキラした目で語る亜利沙はほんまに楽しそうで、その気持ちが伝わってくるから私も話してて楽しかったわ。
でも、こんなすごい子が仲間になってくれるんやったら百人力やなー、って思う反面、負けてられへん、って思ったんや。
私だってトップアイドル目指してるんやから亜利沙に追い抜かれるわけにはいかへんし、何よりほんのちょっとやけど先輩として、お手本にならなあかんしな。
てことで、次の日からレッスン増やしてもらおうと思ったんやけど、さすがにプロデューサーさんに却下されたんを覚えてる。
とはいえその次の週には本当に増えてた辺り、さすがプロデューサーさんやけどな。
それからは亜利沙となかようすることが増えた。
私も亜利沙も元気系やから気が合うんやろな。甘いもの食べに行ったり、私の家でたこ焼き焼いたり……あ、雨の日に亜利沙がサイドテールにしてて私とお揃いやったこともあったなぁ。
親友、って言えるくらいには、なかようしてたと思う。
そんな亜利沙への印象が変わったんは、たまたま事務所で一人留守番みたいになったときのこと。
ふとプロデューサーさんの机の上を見たら、色んな人の写真が置いてあったんや。多分、チェックの途中で用事ができたんやと思う。
その中にはもちろん私の写真もあって、亜利沙の写真もあった。けど、その亜利沙の表情は私も初めて見る表情やった。
ほんのり頬を染めて微笑むその笑顔は、いつもの元気いっぱいな亜利沙の表情とは全然違っていて、亜利沙ってこんな表情もできたんやな、って最初に素直に思ったんを覚えてる。
それから、まるで恋する乙女みたいやな、なんて思ったところで、ふと思ったんや。
亜利沙のこの笑顔は、プロデューサーさんに向けられてるものなんやないか、って。
思い返せば、アイドルになった今でも色んな情報をチェックして分析を続けている亜利沙は、プロデューサーさんと話す機会が多い。
時には今後のプロデュース方針やったり、ライブのセトリやったり、そんなことまで話してることもある。
そんなときの亜利沙は、自分の知識が役立つのが嬉しいのか、満面の笑顔で、心から楽しそうに見えた。
プロデューサーさんもあれで結構な仕事バカやから、アイドルバカ同士お似合いやなー。
なんてぼんやり思ってたんやけど、その写真を机に戻して、ソファに座って、それでもなんかモヤモヤした気持ちが晴れへんことに気づいた。
自分で思うより、私もプロデューサーさんのこと好きやったんやな、って思った。
このモヤモヤは、プロデューサーさんを取られたような気持ちなんや、って思ったからや。
でも、亜利沙以外の、例えば美奈子とかがプロデューサーさんのことが好きだったら、って考えても、今ほどモヤモヤはしない気がした。
なんなら、実は裏ではもうプロデューサーさんと美奈子が付き合ってます、なんて想像をしても、素直に祝福できる気がした。
まあその場合は、プロデューサーさんの胃袋と体型を最初に心配せなあかんけども。
ようわからん気持ちを抱えたままもう一度プロデューサーさんの机に行って、亜利沙の写真を手に取った。
今までなかようしてきた亜利沙とは違う亜利沙の一面。あれで不器用な性格なのは知ってたから、これは演技じゃなくて、多分本当に誰かのことを考えてるんやろなぁ、とは確信できた。
この顔、私に見せてくれたらいいのに。
次の瞬間、まるで流れ星が降るかのように、そんな気持ちが私の心にストンと落ちた。
取られたような気持ちになっていたのは、プロデューサーさんを、じゃなくて、プロデューサーさんに、だったということ。
少しの間だけ、その想いを素直に自覚できへんかった。
けど、買出しから小鳥さんが帰ってきた頃には、私は亜利沙のことが好きなんや、って正直に思えるようになっていた。
同時に、写真の中で柔らかく笑う亜利沙の表情が、まるでナイフのように私の胸をチクチクと刺すようになっていた。
何もかもが欲しい、とさえ思うような恋心なのに決して叶うことはない。
失恋ソング、上手く歌えるようになるかもしれんなぁ。なんて、少しだけ現実逃避したのは内緒や。
《とある夜の星 #55254Bのすれ違い》
松田亜利沙と横山奈緒、二人の想いはすれ違う。
二人ともがお互いへの想いを自覚しても尚、もしくは自覚しているからこそ、二人は変わらずに親友として過ごし続ける。
しかし、だからといって心の奥へしまいこんだ想いが消えてしまうわけではない。
諦めきれないまま、時間と共にどこかへと霧散してしまうような想いならば、むしろ楽だったのかもしれない。
しかし彼女達の想いはそうではない。じくじくとした鈍い痛みと共に、心の中で燻り続ける。
皮肉にもその痛みこそが、それが本当に恋なのだという証拠なのだから。
「……あ。あの星、奈緒ちゃんみたいですね」
劇場の屋上。既に今日の講演も終わり、ステージの高翌揚感を冷まそうと上ってきた亜利沙が夜空を見上げれば、満天とはいかないまでも大小さまざまに煌く星空。
なにげなく見上げたその星の羅列が彼女には、今日は劇場にいない想い人のサイドテールに重なる。
サイドテールから辿ってみれば、あれが瞳で、あれは喉だろうか、とプラネタリウムのように想い人を空に投影していく。
「あの星、亜利沙みたいやなぁ」
所変わって事務所の屋上。テレビ番組の収録が終わって事務所に戻ってきた奈緒がふと屋上で夜空を見上げれば、都会の煌々とした明かりにも負けず輝く星空。
半分無意識に劇場の方角の空を見上げれば、今頃はまだ劇場にいるだろう想い人のツインテールのような星の羅列。
ツインテールから辿っていけば、あれは瞳で、あれが唇やろか、と星図盤の絵のように想い人の姿を空に描いていく。
同じ空を見上げているはずなのに、同じ星を見ているはずなのに。
二人が描く星座は間違いなく、お互いの笑顔だというのに。
この星々のように、人間の尺度においては永遠ともいえる美しい輝きのまま、二人の想いは秘められる。
二人の想いの形だけが、人知れず夜に飾られるだけだ。
しかしこの時だけは、二人の思いは重なり合っていた。
それは悲恋には付き物のフレーズ。しかし、二人にとっては唯一無二の、恋と痛みを乗せたフレーズ。
『せめてあの人が見上げた空に描いて』
以上です。
途中酉付け忘れ失礼しました。
タイトルの通り、二人の曲をモチーフにしてみました。
この二人にあの曲を歌わせるあたりが、すごいなぁ、と思うのですよ。(小並感)
サブタイトルの数字とアルファベットはカラーコードなんですけど、サイトによって二つ混ぜた結果が違ったので独断で決めました。
ともあれ、ご読了いただきありがとうございました。
気づいた点など批評くだされば幸いです。
すれ違いのこういう雰囲気いいね
乙です
>>2
松田亜利沙(16) Vo/Pr
http://i.imgur.com/N7EyoGm.jpg
http://i.imgur.com/kfIu9dN.jpg
>>3
横山奈緒(17) Da/Pr
http://i.imgur.com/tojq7WL.jpg
http://i.imgur.com/Nh7PoEx.jpg
「夜に輝く星座のように」
http://youtu.be/pS4VahfOIN0?t=117
そういえばそういうコードだったっけ?
http://i.imgur.com/fsYfzcH.png
#55254Bは紫っぽい色だね
http://www.color-hex.com/color/55254b
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