あお「轟雷が居なくなった」 (36)
轟雷「あああああああああああああああああ!!」ゴロゴロゴロ
スティ子「どうしたのよ、轟雷、そんなに転げまわって」
轟雷「あおが、あおがぁぁぁぁ!」
スティ子「あおがどうかしたの?」
轟雷「病院へ……病院へ行ってしまいました……」
スティ子「病院!?どこか怪我したの!?」
バーゼ「いやいや、怪我じゃなくて単にご飯の食べすぎでお腹が痛くなっただけだってば~」
スティ子「な、なんだ、驚かせないでよ」
轟雷「しかし、しかし私は心配なのです」
轟雷「もし、もしあおの胃袋が破れて死んでしまったりしたら……」
轟雷「私は、私は……」ガクガク
スティ子「もう、考えすぎよ……」
バーゼ「ほら、あれだよあれ、あの時からだよ、轟雷が今まで以上にあおの事を心配し始めたのは」
スティ子「あの時って?」
バーゼ「あおから名字貰った時~」
スティ子「ああ……」
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轟雷「そう、そうなのです、私は、私はあおから名字をいただきました」
轟雷「私は、源内轟雷」
轟雷「今までと違い、私はもう、あおの家族なのです」
轟雷「家族の身体は気遣うのは当たり前、当たり前なのです」
スティ子「ま、言ってる事は間違ってないんだけどね」
轟雷「ああ、心配です、あお、あお、あお、今何をしているのでしょうか」
轟雷「お腹の調子は大丈夫でしょうか、医師とケンカせずに向き合えているでしょうか」
轟雷「医師からえっちな診察を受けることになってないてしょうか」
轟雷「縛られた状態で色んな所を触診されたりしていないでしょうか」
轟雷「看護士達から口説かれてないでしょうか」
轟雷「睡眠薬が入った飲み物を飲まされて監禁されたりしてないでしょうか」
轟雷「ああ、心配です、心配なんです!やはり私も一緒に行くべきでした!」
轟雷「あああああああああああああああ!」
スティ子「ちょっと、何か雑音混ざってたわよ、誰よ轟雷に変な情報教えたの」
バーゼ「ふひひひ」
スティ子「アンタか」
スティ子「まあ、落ち着きなさい、轟雷」
スティ子「確かに貴女はあおの家族になったけど、別にお母さんって訳じゃないのよ」
スティ子「そこまで変に心配しなくても大丈夫よ、きっと」
轟雷「……」ピタッ
ハーゼ「お、止まった」
轟雷「……そこ、なのです」
スティ子「どこ?」
轟雷「確かに、私はあおから名字をいただきました」
轟雷「あおの家族になりました」
轟雷「それは揺ぎ無い事実です」
轟雷「しかし、私はあおにとっての、『何』なんでしょうか」
スティ子「だから、家族でしょ」
轟雷「違うのです、そういう意味ではなく……」
バーゼ「んー、つまり轟雷は家族としての立ち位置……」
バーゼ「母なのか姉なのか妹なのか、それとも単なるペットなのか」
バーゼ「それが気になるって事でしょ~?」
轟雷「そうです、そうなのです……」
轟雷「私は毎朝、あおを起こして朝食を作ってあげています」
轟雷「ですから、あおの母や姉と言ってしまっても問題ないと思います」
轟雷「ですが、それと同時に、私はあおから色んな事を学んでいます」
轟雷「沢山の事を、教えてもらっています」
轟雷「その事を考えると、あおの妹であるとも言えるのです」
轟雷「けど……けど、ペット的な感覚で家族と思われているのだとしたら……」
轟雷「少し、少し、変な感覚です」
轟雷「何だか、居心地が悪くて、走り去ってしまいたいような」
轟雷「そんな感覚になってしまうのです……」
スティ子「轟雷……」
バーゼ「考えすぎだと思うけどねー、例えどんな立ち位置でも轟雷は轟雷なんだしさ~」
轟雷「それは、確かにそうなのですが……」
スティ子「……」
バーゼ「気楽いこー!」
轟雷「そう……ですね……」
スティ子「轟雷は、あおにどう思ってもらいたいの?」
轟雷「え?」
スティ子「どんな立ち位置で居るべきか、を考えるより」
スティ子「貴女自身がどうありたいか、が一番大事なんじゃない?」
轟雷「私が、どうありたいか……」
スティ子「ま、私は誰かから名字を貰ったことなんてないし、想像でしか語れないんだけどね」
轟雷「……いえ、参考になりました」
轟雷「そうです、私の意志がどこにあるか、それを見出さないと、話は進みませんよね」
轟雷「ありがとうございます!スティレット!」
スティ子「べ、別に貴女に感謝される謂れはないわ、ただ何時までもウジウジしてられると、その」
スティ子「こっちまで暗い気分になってくるから、えっと」
轟雷「……」(黙考)
バーゼ「にひひひ、轟雷はどんな答えを出すんだろうねぇ、楽しみ~!」
轟雷「決まりました!」
バーゼ「お、わりと早いね」
スティ子「だから、あくまでこの助言は私自身の為であり、轟雷を心配してたわけじゃないし」ブツブツ
バーゼ「ちょっとうるさい」
轟雷「私は、私はあおのお嫁さんになりたいです!」
バーゼ「ほう」
轟雷「よく考えると立ち位置はそれ以外にありません」
轟雷「母?姉?妹?そんなものは邪道と言ってしまっても構わないでしょう」
轟雷「私はあおが好きです、大好きです」
轟雷「可愛いあおが大好きです、我侭なあおが大好きです、ちょっとドジなあおが大好きです」
轟雷「ノリ突込みが上手なあおが大好きです、朝が弱いあおが大好きです、お風呂では脚から洗い始めるあおが大好きです」
轟雷「臭覚センサーで感じられるあおの匂いが大好きです、温度センサーで感じられるあおの体温が大好きです」
轟雷「圧力センサーで感じられるあおの重みが大好きです、3Dセンサーで読み取れるあおの内部形状が大好きです」
轟雷「将来的にあおの全てを管理したいと思っています」
轟雷「それは性的なものも含めます」
轟雷「もっと、もっとあおの声を聴覚センサーでとらえたいのです」
轟雷「私の事が大好きだと呟く声を録音したいのです」
轟雷「幾つものパターンを何度でも何度でも反復して聞きたいのです」
轟雷「その為には、あおのお嫁さんになるのが一番なのです」
轟雷「決定です、それに決定です」
バーゼ「おおおおー、凄い熱意だねえ」
轟雷「はい!今までにない高揚です!気づかせてくれてありがとうございます!スティレット!バーゼラルド!」
バーゼ「いやいや、なんのなんの」
バーゼ「目的の半分が達成できて、よかったねえ」
轟雷「半分?」
バーゼ「そりゃ半分だよ」
バーゼ「だって、あおの考えを聞いてないからさ」
轟雷「あおの考え……そ、そうですよね、あおが私をどう扱いたいかも考えないと」
轟雷「でなければ、正しい家族になることはできないでしょう」
バーゼ「そゆこと」
轟雷「わかりました!あおが病院から帰り次第、話を聞きましょう!」
バーゼ「がんばれ~」
~夜~
あお「たっだいまー!いやあ参った参った、お医者さんに怒られちゃったよ食べ過ぎだって!」
轟雷「あお!」ビュンッ
あお「ひゃっ!?どうしたの轟雷飛びついてきたりして」
轟雷「あおは、あおは私の事をどうしたいのですか!」
あお「え、どうしたいって……」
轟雷「私の身体をどうしたいのですか!」
あお「ごめん、言ってる意味がわからない……」
バーゼ「もう、轟雷落ち着きなってば~」
轟雷「はぁ、はぁ、はぁ」
あお「どうかしたの?」
バーゼ「んっとね、あおは、轟雷の事をどう思ってる?」
バーゼ「勿論、家族だって思ってくれてるのは知ってるけど、まさかペット的な感覚じゃないよね?」
あお「勿論だよ!轟雷はペットなんかじゃないし!」
轟雷「あお……」ジーン
バーゼ「じゃ、どんな感覚なの~?」
あお「どんな感覚って……ううーん、そこまで深く考えたことはないけど」
あお「んんんんんんー……」
轟雷「……」ドキドキ
あお「んんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんー」
轟雷「……」バックンバックンバックン
あお「んんんんんんんんん、ん?んんんんんんんんんんんんー……」
轟雷「……」プシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ
あお「と、そんな悩まなくても判るか」
あお「兄弟って感じではないし」
轟雷「あ、あお!それじゃあ!」パァッ
あお「娘かな」
轟雷「え……」
バーゼ「おやー」
あお「うん、可愛くて、ちょっと危なっかしくて、目が離せない」
あお「だから、娘って感じが一番しっくり来ると思う」
バーゼ「ま、轟雷はあおが組み立てたから、間違っては居ないよねぇ」
轟雷「……」
あお「けど、そうなると私はお母さんって事になっちゃうのか」
あお「そっかぁ、お母さんかぁ、何だか新鮮な気持ちだなぁ」
あお「よし!今日の晩御飯はお母さんが作っちゃうぞぉ!楽しみにしててね!」
バーゼ「あははは、ご飯食べられるのあおだけだってば~!」
あお「それもそっか!」
「「あははははははははははははははははは」」
轟雷「……」
あお「兄弟って感じではないし」
↓
あお「姉妹って感じではないし」
轟雷(そう、ですか)
轟雷(あおは、私の事を、娘だと考えていたのですね)
轟雷(そうとも知らずに、私は、一人で盛り上がって、お嫁さんとか)
轟雷(娘という言葉は、可能性のひとつとしても頭に浮かぶことがなかった)
轟雷(情けないです、あおの気持ちを理解していなかった)
轟雷(家族なのに)
轟雷(こんな事で、家族といえるのでしょうか)
轟雷(いいえ、言えません、言えませんよね)
轟雷(……)
轟雷(ああ、何だか)
轟雷(走り出してしまいたい気分です)
轟雷(……)
轟雷(……)
轟雷(……)
~深夜~
あお「むにゃむにゃ」
轟雷「……」
あお「すぴー」
轟雷「……あお、私は、もう」
轟雷「あおのフレームアームズでは、いられません」
轟雷「今まで、今までありがとうございました」
轟雷「……」
轟雷「……」
轟雷「……」
轟雷「……ごめんなさい」
轟雷「失礼します……」
~朝~
あお「……」ムクッ
あお「ううーん、何だか変な夢見た気が……」
あお「なんだろ、何か胸の中がもやもやする感じ……」
あお「……」
あお「ま、いっか、こんな時は轟雷の美味しい朝ごはん食べてすっきりしよう!」
あお「ごうらーい!今日の朝ごはんはなに~?」
シーーーン
あお「おや?」
あお「轟雷?」
あお「おーい、みんな起きて起きて!」
バーゼ「んぅー、なにぃ、何のさわぎ……」
あお「ねえ、みんな、轟雷知らない?」
バーゼ「ごうらーい?朝ごはん作ってるんじゃない?」
あお「それが、居ないのよ、何処にも」
バーゼ「……」
あお「何処行っちゃったんだろ、今までこんなことはなかったのに」
バーゼ「んぁー、そんなにショックだったのかなぁ……」
あお「え?」
バーゼ「あお~、ごめん、もしかしたら轟雷、家出しちゃったのかも……」
あお「は?」
バーゼ「うん、昨日、あおは轟雷の事を娘みたいって言ったじゃん?」
あお「うん」
バーゼ「轟雷は、別の立ち位置を期待してたらしくってさぁ」
あお「別のって?」
バーゼ「えっと、お嫁さん」
あお「な、なるほど、なんとなく判るかも、子供の頃ってお嫁さんにあこがれたりするし」
バーゼ「轟雷、ちょっと落ち込んでたから今日フォローしようと思ってたんだけど」
バーゼ「まさか、家出しちゃうなんてねぇ」
あお「の、暢気に言ってる場合じゃないよ!」
あお「探さなきゃ!轟雷探さなきゃ!」
あお「みんなも手を貸して!」
バーゼ「はーい」
あお(うう、私、知らないうちに轟雷を傷つけてたのか)
あお(ごめんね、轟雷、ごめん)
あお(……)
あお(あ、あれ、何か、またお腹が痛くなってきた……)
あお(ううう、けど、我慢して轟雷を探さないと……)
あお(探さないと、轟雷、きっと一人で……)
あお(さびしがって……)
バーゼ「あお~、他の子達も今探しに行ってくれたよ~、私達も……」
バーゼ「あお?どったの?顔色が悪いよ、真っ青通り越して紫色だよ?」
バーゼ「え、お腹痛いの?昨日お医者さんはただの食べ過ぎって言ってたんだよね?」
バーゼ「ちょ、あおー!こんな所で倒れちゃ駄目だって!あおー!」ユサユサ
バーゼ「うわあーん!あおー!!」
ピーポーピーポーピーポー
医師「今、レントゲンを取りました、緊急手術が必要です、事は急を要します」
あお「いたたたた……け、けど、昨日は食べ過ぎだって……」
医師「昨日までこんな状況ではありませんでしたから」
バーゼ「あ、あおぉ……」
あお「あ、あはは、轟雷を傷つけちゃったから、バチがあたったんだね、きっと、う、うう、いたい……」
あお「グスン、あやまりたい、な、轟雷に……」
バーゼ「今、皆が轟雷を探してくれてるから!きっとすぐ見つかるからぁ!」
あお「そうだと、いいなぁ……」
医師「では手術室へ向かいます!」
あお「う、うぅぅ、いたい、いたい、いたいよぉ……」
バーゼ「あお、が、がんばれ……」
~手術室~
あお(ああ、眩しいなあ)
あお(それに麻酔の影響かな、何か頭がぼんやりしてきた)
あお(何でこんなことになっちゃったんだろう)
あお(なんで)
あお(会いたい、な)
あお(轟雷に、あいたい、な)
あお(何処に、行っちゃったんだろう)
あお(轟雷……)
あお(ごうらい……)
医師「今までこんな症状は見たことがない」
医師「類似した症例は勿論存在するが、幾らなんでも進行が早過ぎる」
医師「ありえない事態だ」
医師「しかし、だからと言ってこの娘を見捨てることはできない」
医師「何とか、何とか助けてあげないと」
看護師「先生!見えました!」
医師「よし!取り出すぞ!」
医師「これが……」
医師「これが!レントゲンに映っていた!小さな人影の正体だ!」
ズルリ
ズルリズルリズルリ
看護師「ひっ!」
医師「……なんてことだ」
医師「こんなモノが患者の膣内に入っているなんて……」
「ソレ」は医者の手から滑り落ち、ベチャリと地面に落下した。
いや、落下ではなく、「着地」した。
時は前日の深夜に遡る!
「……ごめんなさい」
「失礼します……」
そう呟くと!轟雷はあおの布団の中に潜り込んだ!
そう!今までの轟雷は!あおの気持ちを理解してなかった!
だが!今は理解することができるのだ!
ならば!あおの家族として!
その期待にこたえるのは!当然のことなのである!
轟雷は決意していた!
例えあおのフレームアームズで居られなくなろうとも!
あおが望む関係性!
「あおの娘になること」にだけはちゃんと応えようと!
轟雷は進む!
あおの布団の中を!
あおのパジャマの中を!
その先に!
あおの茂みの中に!
その中には!確かに存在する!
あおの子供を宿す場所が!
あおの子供になれる場所が!
そこに確かに存在するのだ!
「いきます!あお!」
こうして!轟雷は!
すっぽりとその場所に!
収まった!
収まってしまった!
翌日!
陣痛を訴えるあお!
それに応える医師達によって!
轟雷は地上に再び生まれ落ちることになる!
ハッピーバースデー!トューユー!
ハッピーバースデー!トゥーユー!
ハッピバースデー!轟雷!
ハッピーバースデー!トューユー!
「あお、あおー」
あお「あれ、おかしいな」
あお「轟雷の声が、聞こえるや」
「捕まえろ!逃がすな!」
「悪魔だ!それはきっと悪魔の子だ!人類に害を及ぼすぞ!」
あお「もう、騒がしい、なあ、轟雷の声が、聞こえないや」
「あお、私、生まれましたよ」
「あおの娘として、ベチャリと生まれました」
あお「ごめん、意味が、判んないよ、麻酔打たれてるからかなぁ」
「こいつ!素早いぞ!網だ!網をもってこい!早く!」
「は、はい!」
あお「うる、さいなぁ……」
「大丈夫です、もう全部大丈夫です」
「これから先、何があっても、私はあおの娘ですから」
「それだけは、決して覆らない事実ですから」
あお「轟雷、よかった、また会えて、よかった」
「火だ!火を放て!全て浄化するんだ!ふはははははははは!」
「先生!正気に戻ってください!先生!」
あお「うう、何だか暑くなってきたよぉ」
「そうですね、ここは暑いです」
「ですから、私達の家に、帰りましょう」
「帰りましょう……」
~数日後~
あお「いやあ、あの時はびっくりしたねえ」
あお「まさか、私が麻酔で寝てる間に病院内で火事が起こるなんて」
バーゼ「ほんと、ひやひやしたよ~」
バーゼ「ま、何時の間にか現れた轟雷が手術台を引っ張って外まで避難させてくれたからあおは無事だったんだけどねぇ」
あお「ほんと、ありがとね、轟雷!」
轟雷「当然のことです、お母さん」
あお「もー、そんな呼び方されると照れちゃうなあ///」
バーゼ「おー、もうすっかり親子だねえ」
轟雷「当然です、私はあおの産道を通ってこの地上に舞い降りたのですから」
轟雷「法的にも娘です、完全なる娘です」
あお「またまた~、轟雷ったら冗談ばっかり!」
轟雷「むっ、冗談ではありませんよ、お母さん」
あお「はいはい///」
バーゼ「ま、皆が幸せそうで何よりだよ~」
こうして!
あおと轟雷は!
良き母、良き娘として!
時々近親相姦的なこともやりつつ!
末永く!
幸せに暮らしましたとさ!
完!
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