スライム「勇者様と魔王様」 (4)
僕の話を聞いてほしい。
僕の大好きだった2人についての話を聞いてほしい。
2人は属した周囲の環境こそ違えど、似た者同士だった。とても聡明で、とても強くて、そして悲しいほどに優しい存在だったんだ。
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先代の魔王様がまだ現役だった頃、僕は魔王様のための愛玩用の魔物としてこの世に生を受けた。
魔王様は魔界の有力貴族の生まれだったから、小さい頃から大人達の社交場へと足を運ぶ事はあっても、同世代の友人は殆どいなかったみたいだ。僕が生まれる前は、随分と寂しい子供時代を送っていたらしい。
僕たちスライム族は魔法で生み出すことが容易い魔物。魔王様を不憫に思った館の執事さんが寂しさを埋めようと、魔王様の友達になれるような魔物として僕を作ってくれた。
僕が生まれて初めて目を開けた時、魔王様は僕の置かれた机にかじりつく様にして僕を見つめていた。その時はすぐ目の前に顔があったものだから、僕もビックリしちゃって少し後ずさってしまった。
生成される段階で、僕は色々な知識を持つ様に調整されていたから、この目の前にいる人が仕えるべき人なのだって認識はできていたけど、やっぱり少し怖かった。
何も言えずに後ずさってプルプル震えているだけの僕に魔王様もはじめは驚いた様だったけど、すぐに屈託のない笑みを浮かべて、はじめまして、って声をかけてくれた。その嫌味のない笑顔、とても澄んだ目、優しい声が、僕の不安をすっかり消し飛ばしてしまっていた。
魔王様は小さい頃から聡明で、優しい人だった。
スライム族は原始の魔物に近く、言葉も喋れないような固体が多い。そういった背景もあって、あの頃はペットとしてスライムを飼うのがブームとなってたから、ご多聞に漏れず、僕もペットとして見込まれて作り出されたんだろう。
だけど魔王様は決してペットとして僕を見なかった。大切な友達として扱ってくれた。執事さんが拘ってくれたお陰で、僕は高い知能を有していたから、魔王様が対等な立場で接してくれるのはとても嬉しかった。
遊ぶ時も必ず僕に、何して遊びたい?って聞いてから遊び始めるのが常だった。だけど段々と僕は気を遣ってくれる事に申し訳なさを感じるようになった。僕には魔王様みたいな手足が無いし、体も未熟だったから、外で駆けっこや鬼ごっこが出来ない。出来ることと言ったらお喋りをするか、家の中で一緒に本を読む事くらい。自分が情けなくて仕方なかった。
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