今から100年ほど前。
魔王城で勇者と大魔王が激突した。
「がんばえゆうしゃー!」
片や数千年を生き邪悪な魔力を操る大魔王。
片や神の加護を受けた帝国最強の勇者。
「ゆうしゃ格好いい、絶対勝つよゆうしゃ」
双方の力は凄まじく、魔王城は跡形もなく砕け散り。
周囲の地形を変えつつ、戦いは昼夜を超えて続いた。
「ごくりっ」
そして一週間後、勝負はついた。
「ゆうしゃが勝ったんだよね?知ってる!私しってる!」
その場に倒れているのは、大魔王だった。
「ほらほらほら!言った通り!ね!?ね!?」
勇者は剣を突き付け、大魔王に話しかけた。
「やった!やったゆうしゃの勝ち!くぅぅぅぅぅぅ!強いよねゆうしゃ!」
私の勝ちだ、大魔王、何か言い残す事はあるか。
「私ゆうしゃ好き!ほんと好き!文献とか全部読んでるから!」
大魔王は言った。
「いやっっっっっっっっっっっつほぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」
うるせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
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見習「先輩!こんな所に居たんですか!」
騎士「う、ううぅ……」
見習「もう皆さん、会議室に集まってますよ!何やってたんですか!」
騎士「い、いや、楽しみにしてた紙芝居見てたんだけど……」
見習「か、紙芝居?」
騎士「うん、毎週この広場で開催されてる、ゆうしゃの紙芝居……」
見習「……」
騎士「けど、声援送ってたら紙芝居のおじちゃんにうるさいって追い出された……」
見習「……」
騎士「ああ、どうしよう、1週見逃すと次回の話がわかんなくなるのに……」
騎士「来週までに再開催してくれないかなぁ……無理かなぁ、紙芝居のおじちゃん、もう歳だし……」
見習「……先輩、今日の会議の議題、知ってますよね」
騎士「うん、魔王の魔翌力が30年ぶりに計測されたから、どう対処するか決める会議だよね?」
見習「し、知ってるんだったらもっと危機感持って下さい!」
騎士「えー、けどさぁ、ゆうしゃじゃ無い私とかが頑張ってもー、仕方ないじゃなーい」
騎士「私より強い騎士は4人くらいいるんだからさぁ、その子達に任せようよぉ」
見習「いいから!早く!来てください!」
大魔王は言った。
「吾はここで潰える、だが吾の魔力が潰える事はない」
「消える事はないのだ」
「吾の魔力は大地や大気、大海原に沁み込み」
「数十年後には、複数の小さな塊となって具現化するだろう」
「吾の力を受け継ぐ、遺児達」
「大魔王の子」
「魔王となって」
「お前達を害するのだ」
「その頃には、勇者よ、お前は死んでいる」
「お前は戦う事は出来ない」
「人間の世界は、終わる」
「お前の今の働きは、全て無為と化すのだ」
それに対して、勇者はこう答えた。
「確かに私は、もう長く生きられない」
「それが神との契約なのだから」
「しかし、後世の人間達に、何かを残す事は出来る」
「私の戦い方を、私の武器を、私の魔法を」
「伝える事は出来る」
「私の力を受けついた者達は」
「きっと、人間の世界を、守り続ける」
「私は、そう信じる」
こうして、大魔王と勇者の戦いは終わった。
勇者は帝国に帰還し、戦い方や、武器や、魔法等、色々な物を残した。
そんな勇者の技術に支えられた帝国は、マジ最強。
周囲に共和国とか王国とかあるけど、マジ論外。
魔王城の跡地から魔力を汲み上げて商業利用してる国とか他に無いし。
マジ優秀で世界の覇権とか獲れるみたいな感じ。
だから、この紙芝居を見てる頭の良い帝国の子供達は国にいっぱい忠誠を誓って将来たくさん貢献しましょうね。
ゆうしゃとの約束だぞ!
~会議室~
見習「す、すみません!遅れました!」
騎士「すみませぇん……」
白騎士「ああ、2人とも不在だったんだ」
黒騎士「存在感ないから、気づかなかったよ、ねぇ、白騎士」
白騎士「ほんと、そうだよね、黒騎士」
黒騎士「途中から参加しても仕方ないだろうし」
白騎士「もう帰ったら?帰っちゃえば?」
黒騎士「クスクスクスクスクスクス」
白騎士「クスクスクスクスクスクス」
見習(うわあ、厄介な人達に絡まれたよぉ)
見習(帝国騎士団の知恵袋)
見習(魔力と知識の権化、順列3位と4位)
見習(黒と白の双子の姉妹)
金騎士「2人とも、五月蠅い、会議の席だぞ」
黒騎士「はーい」
白騎士「はーい」
金騎士「これで全員揃ったな、では会議を続ける」
金騎士「銀騎士、資料を」
銀騎士「……」
金騎士「銀騎士」
銀騎士「……あ、はい」
見習(銀騎士さん、相変わらずマイペースだなぁ)
見習(順列1位の金騎士さんと僅差で順列争いしてるようには見えないよ)
金騎士「100年前の戦いで、大魔王は討伐された」
金騎士「世界中で発生していた異常気象も沈静化し、世界は平穏を取り戻した」
金騎士「だが、大魔王は言葉を残した、呪いの言葉を」
金騎士「自らの遺物が、数十年後に魔王と化し、人類を襲うだろうと」
金騎士「そして、その言葉は現実だった」
金騎士「大魔王が滅び、勇者が死んで暫くして」
金騎士「人類世界に再び脅威が訪れた」
金騎士「……魔王だ」
金騎士「世界の各所に、魔王が現れたのだ」
金騎士「共和国に、空の魔王が」
金騎士「王国に、海の魔王が」
金騎士「そして、我らが帝国には……地の魔王が」
金騎士「それぞれ現れた」
金騎士「当時の国々は団結し、再び力を尽くし戦い、それらを撃退した」
金騎士「そう、撃退しただけ、なのだ」
金騎士「連中は、まだ生きている」
金騎士「数十年の周期で、我ら人類世界に侵攻してくる」
金騎士「……そして、つい先日」
金騎士「我ら、帝国の地下で、地の魔王の魔力反応が確認された」
白騎士「そうそう、私達がちゃーんと確認したからね」
黒騎士「間違いない間違いない間違いなーい」
白騎士「確かに地の魔王は地下に居るよ」
黒騎士「帝都の近くにある、旧魔王城」
白騎士「魔力を吸い上げる為の、パイプのさらに下の方」
黒騎士「きっと力を貯めてるね」
白騎士「きっと隠れてるつもりなんだね」
黒騎士「きっとそろそろ出てくるね」
白騎士「きっともうすぐ出てくるね」
黒騎士「クスクスクスクスクスクス」
白騎士「クスクスクスクスクスクス」
見習「先輩、あの2人何で笑ってるんでしょ」
騎士「んぁー、多分、魔法で思いっきり戦えるのが楽しみなんだと思うよ」
騎士「あの2人、魔法だけなら帝国最強だからねえ」
騎士「剣術とかだと、順列6位の見習ちゃんより弱いだろうけど」
騎士「あーあー、会議早くおわんないかなぁ」グデー
見習「先輩、ちゃんと会議の内容聞いてください、あとで怒られるの私なんですから!」
騎士「いいっていいって、どうせ私は後詰とか、後方支援とか、そういうのに任命されるんだからさぁ」
見習「けど、後方支援もちゃんとした任務です!」
騎士「適当でいいってば、地の魔王だって、過去に2回撃退してんでしょ?」
見習「は、はい、確か30年前と、60年くらい前に……」
騎士「なら大丈夫だって、今回も普通に何とかなるよ、1人くらいサボってても」
見習「……」ハァ
騎士「会議終わったら、何しよっかなぁ、久しぶりに死霊術師ちゃんとこでも、遊びに行こうかなぁ」
金騎士「では続いて、勇者が遺した武器の使用者を決定する」
白騎士「わーい、遺物遺物ー」
黒騎士「調べたーい、触りたーい」
騎士「……ゆうしゃ、の残した、ぶき?」ピクッ
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