【笑ゥせぇるすまん】ひふみ(ココロのスキマを……お埋めします?)【NEW GAME!】 (32)


喪黒「私の名は喪黒福造……人呼んで笑ゥせぇるすまん

ただのセールスマンじゃございません

私の取り扱う品物は心……人間のココロでございます

この世は老いも若きも男も女も、心の寂しい人ばかり

そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします

さて、今日のお客様は――」


〈 滝本ひふみ 20代 ゲーム制作会社勤務 〉


オ~ッホッホッホッホッホ……

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―会社―

ひふみ「……」カタカタ

はじめ「ていうわけでさ、もう昨日は散々だったよー」

ゆん「なんやそれ、自業自得やないん?」

青葉「はじめさん、もう子供じゃないんですから、もっとしっかりしないと」

はじめ「えー、それ青葉ちゃんが言う~? 私これでも先輩なんだからね!」

ゆん「あははっ、もうどっちが先輩か分からへんなぁ」

はじめ「ぐっ……そうだよね。青葉ちゃん、仕事頑張ってるし……私よりしっかりしてるかも」

青葉「そ、そんなことないですよ……私うかっりしてて失敗しちゃうことがよくありますし」

ゆん「ま、それも確かにそうやけど。まじめでちょっぴり天然なのが青葉ちゃんのええとこやで」

はじめ「そうそう!」

青葉「え、私って天然なんですか!?」

ひふみ(……青葉ちゃんはすごいな。入ってきてすぐに会社に融け込んで、誰とでも自然に会話できて)

ひふみ(私ももっと青葉ちゃんとおしゃべりしたいけど……自分からは言い出しづらいし)

ひふみ(青葉ちゃんも皆も優しいからよく声を掛けてくれるけど、それでも上手く喋れないし)

ひふみ(……今は仕事中だから、ちょっと静かにした方がいいよって注意した方がいいかも知れないけど……)

ひふみ(……言葉が口から出てこない)


ぱんぱんッ


コウ「おーい、ちょっとうるさいぞー君たち」

青葉「あ、八神さん」

コウ「一応仕事中なんだから、もうちょい私語は慎むように」

ゆん「すみませんでした、はじめが調子乗ってもうて」

はじめ「え、私!? あ、私だ……すみません八神さん」

コウ「ひふみんも、うるさかったらちゃんと注意してね」

ひふみ「! あ……うん……ご、ごめんね」

コウ「え、いやいや、ひふみんが謝らなくていいから」

青葉「すみません、ひふみ先輩。うるさくしてしまって」

ひふみ「え……あ、ううん……」

―路上―

ひふみ(今日は久々に定時で帰れたな)

ひふみ「はぁ……」

ひふみ(メッセやメールでコミュニケーションは取れるけれど……)

ひふみ(もうちょっと積極的に人と会話ができたらいいな……とは思う)

ひふみ(一人でお店に入った時とか……なかなか注文もできないし……)

ひふみ(少しでいいから……青葉ちゃんみたいになれたら。明るく自然におしゃべりできたら……)

ひふみ(……なんて、そんなに簡単なことじゃないよね)シャシャ

ひふみ(宗次郎はもともと喋れないから……こんなこと悩まないでいいし、ちょっぴり羨ましいかも)

喪黒「おや、可愛らしい画像ですなあ」

ひふみ「!!?」

喪黒「ハリネズミですかな? お宅で飼われていらっしゃるので?」

ひふみ(わ、私に声掛けてる? 全身黒づくめ……もしかして……不審者? えっと……まずは110番?)シャシャ

喪黒「ペットというものはいいですなあ。愛くるしい姿で飼い主の心を癒してくれる」

喪黒「彼らには人間が抱えるような悩みごとはあるんでしょうかねえ」

ひふみ(あ、この人も……動物のことが好きなんだ。じゃあ、悪い人じゃないのかも……)

ひふみ「宗次郎……」

喪黒「はい?」

ひふみ「あ、えと……名前。この子の……」

喪黒「ほう、宗次郎さん。よいお名前ですな。あなたはいつも、宗次郎さんに癒されておいでなんですね」

ひふみ「……」コクリ

喪黒「人は苦しいことや辛いこと、はたまた悩み事があるとき、ストレスを解消してくれる癒しを求めます。ペットは癒しの対象の一つなのでしょう」

喪黒「それでも、人の悩みに際限は有りません。たとえ宗次郎さんに癒されても、心の中にわだかまって解消されない――」

喪黒「そんな悩み、あなたにもおありなのではないですか?」

ひふみ(私の悩み……)

喪黒「おありなんですね」

ひふみ「………………」

喪黒「どうです? あなたのお悩み、ワタシにお聞かせ願えませんか」

ひふみ「え……?」

喪黒「内に秘めているばかりではよろしくない。打ち明けてしまえば、気持ちも晴れて心穏やかになります」

ひふみ「で、でも……」

喪黒「必ず、あなたのためになりますよ」

ひふみ(私のために……)

喪黒「立ち話も難ですから、どこか座る席があるといいですねぇ。さあ、どうぞ。こちらへ」

ひふみ「あ……ちょっと」

ひふみ(断り切れない……)

――BAR・魔の巣――


マスター「……」キュッキュッ


ひふみ「……ふぅ」コトリ

喪黒「ほう、お国は新潟ですか。滝本さんはお酒、お強いので?」

ひふみ「それほどでも……。ゆっくり飲むの……好きだから」

喪黒「ホホ、お酒はほどよく飲めば良薬……最近のお若い方はあまりお酒を嗜まれないそうですが、このほどほどにほてった気分が何とも心地よい限り」ゴクゴク

ひふみ「そう……ですね」

ひふみ(このひと、見た目はちょっと怪しいおじさんだけど……やっぱりいいひとみたい)

ひふみ(少し……緊張も解けてきた)

ひふみ「あ、あの……」

喪黒「はい、何でしょう」

ひふみ「私の悩み……」

喪黒「ええ。何なりと、お聞かせ下さい」

ひふみ「えっと……その」

喪黒「もし言いにくいのであれば、あなたの伝えやすい方法でお伝えください。例えば、スマートフォンで文字を起こして、私に見せてくだされば、それでも結構です」

ひふみ「……そうします」

シャッシャッシャッシャッ

喪黒「ほほう、ふむ……なるほど。口下手で話すのが苦手なので、もっと自然に会話ができるようになりたい……ということですか」

ひふみ「全然……しゃべれないわけじゃないですけど」

ひふみ「もうちょっとだけ……はきはきしゃべれるようになったら」

ひふみ「青葉ちゃ……後輩との会話も弾んでもっと楽しいだろうな」

ひふみ「と思って……」

喪黒「なるほど、よぉく分かりました。あなたのお悩み、解決できるかも知れません」

ひふみ「え……?」

喪黒「たいへん申し遅れました。ワタクシ、こういう者です」スッ

ひふみ(名刺……。喪黒……福造?)

ひふみ(ココロのスキマを……お埋めします?)

喪黒「ワタシはひとが心に抱くさまざまな悩みを解決し、ココロのスキマをお埋めすることを生業としています」

喪黒「滝本さん、あなたにはこちらの品をお渡ししましょう」

ひふみ「え、これ……口紅?」

喪黒「毎朝、この口紅を塗れば、あなたは自分の思う通りに言いたいことを口に出して言えるようになります」

喪黒「騙されたと思って、是非お試しください。効果はてきめんですよ」

ひふみ(口紅を塗っただけで……そんなに話せるようになるのかな)

ひふみ(このひと……セールスマンだよね? 怪しいもの売りつけて……後で高いお金を取るつもりなんじゃ)

ひふみ「これ……お金は?」

喪黒「お金? いえいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足していただければ、なによりの報酬でございます」

喪黒「ワタシはただ、それだけなのですよ。必要なければ廃棄していただいて結構です。選択権はあなたにございます」

ひふみ「……」

喪黒「ただし、一つだけ忠告しておきます」

喪黒「一度使いだしたら、その後も毎朝、必ずこの口紅を塗るようにしてください。よろしいですね。約束ですよ」

【翌日】

――滝本宅――


宗次郎「……」モゾモゾ

ひふみ「それじゃ、宗次郎。行ってくるね」


ひふみ「あ……」

ひふみ「昨日貰った口紅……確か化粧台のところに置いて……あった」

ひふみ「……」

ひふみ「本当に話せるようになるなんて思えないけど……」

ひふみ「ちょっとしたおまじないだと思えば……」

ひふみ「使って……みようかな」

――会社――

青葉「ふぁ~あ。今日も一日がんばるぞ……」


ひふみ「青葉ちゃんっ、おはよう!φ(゚ω^* )♪」

青葉「へ、ひふみ先輩!? お、おはようございます」

ひふみ「どうしたの~? びっくりしちゃって?」

青葉「え、いや……だって」

ひふみ「あれ、青葉ちゃん。ちょっと目元にクマがあるよ? 大丈夫、ちゃんと寝てる?」

青葉「あ、いえ。昨日も帰りが遅くなって……ちょっと寝不足気味で」

ひふみ「しっかり寝ないとお肌にもよくないよ。仕事が忙しかったら私も手伝うから、何でも声かけてね!」

青葉「あ、はい。ありがとうございます……」

ひふみ「今日も一日、みんなでがんばろうねっo(`・∀・´)○ダァー!」

――――――
――


コウ「う”~~~~ん、これは今日中に終わらせないとな。今夜も泊まるか」

りん「ちょっとコウちゃん、三日も続けて泊まりはダメよ。しっかり帰って体を休めないと」

ひふみ「そうだよコウちゃん!(`・д・´)」

コウ「え、ひふみん……?」

ひふみ「仕事を頑張るのもいいけど、ちょっとやり過ぎだと思うな」

ひふみ「ゲーム制作はチームプレイなんだから、もっと私たちに頼れるところがあったらどんどん言ってね!」

ひふみ「コウちゃんがリーダーなんだから、コウちゃんがいつも元気じゃないと私たちも心配だよー(o´・c_・`o)」

コウ「う、うん……ありがと」

ひふみ「それから、会社で下着で寝るのはあんまりよくないと思うよ~! 風邪とか引かないように気をつけてね!」

コウ「あ、うん……」

ひふみ「それじゃ、また明日! お疲れさまでした~バィビィー☆(´ゝ∀・`)ノシ」

コウ「おぅ、お疲れ……」

りん「お疲れ様……」

――滝本宅――


ひふみ「うふふふ」

宗次郎「……?」

ひふみ「凄い。言いたいことが何でも言えて気持ち良かったな」

ひふみ「青葉ちゃんともいっぱいお話できたし。とっても楽しかった」

ひふみ「この口紅のおかげなんだよね。明日からも塗るのを忘れないようにしなきゃ」

ひふみ「ありがとう、喪黒さん」

【数日後】

――会社・トイレ――


ひふみ「~~♪」

ひふみ(ふふ、今日もばっちり)


「青葉もそう思う?」
「そうですね、最近のひふみ先輩って」


ひふみ「!」

ひふみ(青葉ちゃんとコウちゃん? 外の廊下で……私の話をしてる?)



「ちょっと変わったっていうか。前より明るくなった感じで、それはいいと思うんですけど……」
「何か、急に変わったって感じだよね。メールでの口調がそのまま出てるっていうか」
「あ、分かります! それと、ちょっと言いすぎっていいますか……それ言っちゃうかな~ってことがちょくちょくあって……」
「うん、だよね。何だかこっちが接しづらいんだよなあ、極端すぎて」
「はい。ひふみ先輩なのに何だかひふみ先輩らしくなくて……ちょっと怖いです。こんなこと言っちゃって……すみません、悪口言うつもりじゃないんですけど」
「ま、ひふみんの前では言わないようにね。ひふみん何かあったんかなー。ぷぷ、もしかしたら……」
「もしかしたら、何ですか?」


ひふみ「あ……あ……」ガクガク

――滝本宅――




『ひふみ先輩なのに何だかひふみ先輩らしくなくて……ちょっと怖いです』




ひふみ「どうしよう……宗次郎」

宗次郎「……?」

ひふみ「私……青葉ちゃんに嫌われちゃったのかも」

ひふみ「せっかく言いたいことが言えるようになったのに……これじゃ……」

ひふみ「私らしさ……。やっぱりみんなは元のままの私の方がいいのかな」

ひふみ「口紅……」チラ

ひふみ(口紅を使ったら、効果が表れていたんだよね。だったら明日の朝、口紅を塗らなければ……)




『一度使いだしたら、その後も毎朝、必ずこの口紅を塗るようにしてください。よろしいですね。約束ですよ』




ひふみ(喪黒さんはああ言ってたけど……)

ひふみ(青葉ちゃんに……嫌われるくらいなら……!)

ひふみ「この口紅は、捨てよう」

ぐしゃっ

【翌日】

――会社――


ひふみ「……お疲れ様です」スタスタ


青葉「お疲れ様です」

はじめ「お疲れ様でーす」

ゆん「お疲れ様です」



コウ「ひふみん、もとに戻ったみたいだね」

青葉「あ、八神さん」

はじめ「今日は昨日までのノリと全然違って驚いちゃいましたよ」

ゆん「うちもやわー」

青葉「ですね。でも何だかほっとしました」

はじめ「何で急にあんなにお喋りになっちゃったんでしょう?」

コウ「んー。やっぱ、アレかな?」

はじめ「あれ?」

青葉「変なモノでも食べちゃったんでしょうか?」

ゆん「いやいや、そんな子どもやあらへんし」



ひふみ(よかった……)コソ

――滝本宅前――


ひふみ(これでまた、いつも通り、毎日出勤できる)

ひふみ(喋るのが苦手でも……みんな、いろいろ助けてくれるし)

ひふみ(これも……私らしさなんだ。自分らしさを無理に変えようとしなくていいって気づけて良かった)

ひふみ「ただいま、宗次郎」ガチャリ


ギィィ


喪黒「おかえりなさい、滝本さん」

ひふみ「……ひッ……!?」

ひふみ「も……喪黒さん……?」

ひふみ「どうして……私の家の中に」

喪黒「宗次郎さんに一度会ってみたかったので。いやはや、喋らないペットは静かで可愛らしいものです」

喪黒「ところで滝本さん」ズイ

ひふみ「ひっ……」

喪黒「約束しましたよね? 一度、口紅を使ったら毎朝欠かさず塗るようにと」

ひふみ「あ、あの……」

ひふみ「試してみて……やっぱり自分はもとの方がいいみたいだって……思い直して」

喪黒「あなたは自分の願望を叶えるためにあの口紅に手を出した。今さら思い直してももう遅いんですよ」

ひふみ「そんな……」





喪黒「m9( ゚Д゚)ドーーーーン!!!!」




ひふみ「~~~~~~~~~!!?」

【翌日】

――滝本宅――


ひふみ(……朝)

ひふみ(はあ、そろそろ起きて、朝食の準備をしないと)

ひふみ(あれ、そういえば昨日……何があったんだっけ?)

ひふみ(家に帰ったら……確か)

ひふみ(……あれ?)

ひふみ(あ、あれ……?)


――洗面所――


ひふみ(な・・・・・・・・?)

ひふみ(なに・・・・・これ・・・・・・・・・・!?)

――会社――


コウ「え、ひふみんが出勤してない?」

りん「そうなのよ。連絡もないし、電話を掛けても繋がらないの」

はじめ「ひふみ先輩が無断欠勤なんて珍しいですね」

ゆん「何かあったんやろか」

コウ「ちょっと、ひふみんちに様子見に行ってくるよ」

青葉「八神さん、私も行きます!」

――滝本宅――


コウ「おーい! ひふみん!」ドンドン

青葉「家にはいないんでしょうか?」

コウ「いや、急病で倒れてるって可能性も……」ガチャ

青葉「あ……」

コウ「開いてる……」


ギィィィ


青葉「靴はありますね」

コウ「おーい、ひふみん、入るぞー!」

青葉「失礼します。ひふみ先輩、いるなら返事してくださーい!」


シ―――――――ン

――部屋――


ひふみ「……」(((( ;゚ ゚)))ガクガクブルブル


青葉「ひふみ先輩!!」

コウ「おい、どうしたひふみん! 部屋の隅でうずくまって!」

青葉「マスクして……何か病気なんですね!?」

ひふみ「……」ブンブン

コウ「じゃあどうしたんだ! どっか痛いのか!?」

ひふみ「……」ブンブン

青葉「ひふみ先輩、何とか言ってください!」

コウ「あーもう、マスク取るよ!」バッ

青葉「……え」

コウ「……な、なにこれ」

青葉「口が……ひふみ先輩の口が……」

コウ「…………………ない」




ひふみ「~~~~~~~~~~~~~~!!」





喪黒「口があるから口下手だの喋りすぎだのと次々悩みが出てくるのです」

喪黒「口がなくなってしまった滝本さんは、もう話すことに悩まなくて済んで良かったですねえ」

喪黒「何事も、悩みの種は根こそぎ取ってしまうのが一番の解決方法、というところでしょうか」

喪黒「オ~ッホッホッホッホッホッホ……」


                                          【了】

2期はじまるし何か投下しようと思って
試しに笑ゥせぇるすまんとコラボってみた

こう書いて何だが、ひふみんが初対面の喪黒さん相手に実際こんなに喋れるかどうか……
でも会話しないと話が進まないし……
失礼しました

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