古びた日記1 :宝舟の月 1の日
とがり野の森を抜け、廃城を見つけた。
ひどい崩れようだ。どうやら、無人になってから何百年も経っているようだ。
この近くに こんな場所はなかったはずだが……。
雲が重く、何か空気がよそよそしい。
こんな夜は危険だ。今夜はここで過ごすことにしよう。
帰ったらきっと大目玉だ。
古びた日記2 :宝舟の月 2の日 晴れ
森に入り、来た道を戻ってみたが帰れない。
いつの間にかこの廃城にたどり着いてしまう。
おぞましいほどに星が綺麗だ。
玉座の地下に部屋を見つけた。
たくさんの傘と、開かない箱がある。
古びた日記3 :宝舟の月 3の日
やはり帰れない。
これはとがり野の神様がくださった試練なのだろう。
一安心だ。きっと師匠も許してくださる。げんこつをもらわずに済む。
幼馴染は、怒るだろうな。ここで見つけた傘でも持って帰ってやろう。
古びた日記4 :湿った肉がこびりついている
古びた日記5 :宝舟の月 4の日
ここには生き物がいない。けれどたくさんのものがある。
風と、水と、雲が、ゆったりとした時間のように流れて、
昼には太陽と、夜には月と星がある。
もう4日も何も食べていないのに、空腹を感じない。
草原に寝転び、ただ呼吸を繰り返すだけで、心が満たされる。
やはりここは、神々のおわすところなのだろうか。
静かで、とても賑やかだ。
こんなに孤独が安らかなのは、どうしてだろう。
誰か見ている。
※ 頭からっぽな、ほのぼのタイプのファンタジー会話劇。
幼女魔王Nの城 門前風見の原(仮)
ソヨ ソヨ ソヨ
魔ラジオ 『ザザ……こちら星天観測所……』
魔ラジオ 『遠い世界のお友だち、聞こえますか』
魔ラジオ 『こちら……ジジッ……』
記録魔 「……いかがでしょう」
猫耳蛇娘 「いかがでしょうって言われてものう」
記録魔 「風見の原……この草原にふさわしい名前ではありませんか」
猫耳蛇娘 「別にいちいち地名なんてつけんでも良いと思うんじゃけど」
猫耳蛇娘 「好きに呼べば良いんじゃね?」
猫耳蛇娘 「ゴクゴク……ぷはぁ」
記録魔 「駄目です。こういうところをきちんとしなくては」
記録魔 「そして真昼間からお酒を飲むのはやめなさい」
猫耳蛇娘 「そうじゃ、ワシも思いついた」
猫耳蛇娘 「酒飲みの草原」
猫耳蛇娘 「どうじゃ」
記録魔 「却下です」
猫耳蛇娘 「即答すんなや」
記録魔 「この私が関わる以上、ここには」
記録魔 「同盟の一員として恥ずかしくない程度の気品漂う世界になっていただきます」
記録魔 「いやさ、してみせます」
猫耳蛇娘 「まあ、頑張るが良いよ」
猫耳蛇娘 「ゴクゴクゴク……」
記録魔 「ですから……!!」
フヨヨヨヨ スイイイ
ドルンドルン パフ
トサ
ザ ザ ザ
箒少女 「ふいぃ。やっぱり空は気持ちが良いぜー」
記録魔 「ちょうど良いところに、箒少女さん」
箒少女 「あん?」
記録魔 「この草原の名前を考えました」
箒少女 「……? へえ?」
記録魔 「風見の原」
記録魔 「どうです。良い名前でしょう」
猫耳蛇娘 「ワシは酒飲みの草原で良いと思うがのう」
箒少女 「風見……酒飲み……」
箒少女 「はあ~あ……」
箒少女 「お前ら、センスねえなあ」
記録魔 「なっ……」
記録魔 「第三大世界同盟のエリートであるこの私が、徹夜で考えたのですよ!」
箒少女 「徹夜で何やってんだよ。あの変な日記を調べるんじゃなかったのかよ」
猫耳蛇娘 「ちょっと内容が怖くて読みきらんかったらしい」
記録魔 「ちちちち、違います! 途中から先を開けなくなってしまったのです!」
記録魔 「それに、名前をつけることはとても重要な仕事なのです」
記録魔 「名前をつけることによって、そのものの存在の意味が……」
猫耳蛇娘 「ワシらのセンスにけちをつけるならば、箒少女よ……」
猫耳蛇娘 「おぬしには期待して良いんじゃろうな?」
箒少女 「おいおい愚問だぜ酒飲み猫耳ちゃん」
箒少女 「配達ギルドの制服をクレイジーに着崩す、このオレのぶっ飛んだお洒落センスを見りゃ一目瞭然だろ?」
箒少女 「スルメガムを一枚噛んでいる間にすっげえの思いついちまうぜ」
猫耳蛇娘 「もう駄目な予感しかせんのじゃが」
ピリ スラ
アムン クチャ クチャ
箒少女 「さっき箒で空を飛んでたんだけどさあ」
箒少女 「やっぱりこの世界でひときわ目立つのは、あの空に浮かぶ超巨大な岩の卵みたいな、隣の世界だよな」
箒少女 「あれを活かさない手は無いぜ……」
クッチャクッチャクッチャ
猫耳蛇娘 「ぬおぉ……覚悟を超えてまっずいのう、スルメガム」
記録魔 「何でしょう。噛むたびに、鼻から胃の底を、重い吐き気が行き来するような……おえっぷ」
クチャ…… クチャ……
箒少女 「そういや、この草原には飛行船の発着場所もあるんだよなあ」
箒少女 「たくさんの世界へ開いている感じも取り入れたいところだぜ……」
クチャクチャクチャクチャ
箒少女 「うーん…………」
クチャクチャクチャ
箒少女 「…………!」
箒少女 「よっしゃ!」
箒少女 「今日の昼飯は、お肉をたっぷり使った海岸風山菜パスタにしようぜ!」
猫耳蛇娘 「何がよっしゃじゃよ。草原どこいったんじゃよ」
箒少女 「ウルトラ超でけえ岩が浮いてて超すげえ飛行船もばんばんくるすげえ草っぱらマジすげえ、で良いんじゃねえ?」
猫耳蛇娘 「ウルトラかっこ悪いし……」
記録魔 「フフン……どうせその程度だと思っていました」
記録魔 「やはり、私の考えた風見の原で決まりのようですね」
猫耳蛇娘 「それもどうかと思うがのう」
箒少女 「そもそもこういうのって、偉い奴抜きで決めるもんじゃ無いんじゃねえの?」
箒少女 「ここで暮らしちゃいるが、オレたちよそ者だぜ?」
記録魔 「その統治者が眠りこけているから、こうして私が動いているのです」
記録魔 「そして偉い者はちゃんといます」
記録魔 「私は第三大世界同盟の最優良公認ギルドの一員であるとともに」
記録魔 「盟主連を何人も輩出した盟立学院の、最優秀卒業生の証を持つ」
記録魔 「まさにエリート中のエリート、エリィート、ベストオブエリートオブエリートなのです」
記録魔 「ちなみに、これがその証」
エリートカード
箒少女 「おっ、何だそのカード。すごいキラキラしてるじゃん」
記録魔 「欲しいですか? あげません」
記録魔 「これは第三大世界同盟のエリートの中のエリートのみが持つことを許されるエリートの証」
記録魔 「持っているだけでたいていの魔物は言うことを聞き、毎ターンMP回復、疲労回復肩こり知らず」
記録魔 「投げつければ難敵一散の攻撃アイテムとなるばかりか、さらにさらに」
記録魔 「これを見せるだけで九つ星ホテルのスウィートを含めたいていの施設は顔パス、ケチで名高い樽小人の金融機関さえもわれ先にと融資を申し出……」
猫耳蛇娘 「どれどれ」
猫耳蛇娘 は エリートカードを かすめ取った!
記録魔 「ああっ!?」
猫耳蛇娘 「ほほーう、なかなか良い素材を使っとるのう」
猫耳蛇娘 「むっ、紙では無いな……」
箒少女 「記録魔って書いてある。肖像つきだ」
箒少女 「へえ、本当にエリートなんだな。子どもの妄想かと思ってた」
記録魔 「は、はやく返しなさい無礼者!」
猫耳蛇娘 「わかったわかった、焦るでないよ」
猫耳蛇娘 「ちょわっ」
猫耳蛇娘は エリートカードを 投げ捨てた!
エリートカードは 勢いを増して空へぐんぐん伸びていく! 新記録だ!
記録魔 「ぎゃあああーー!?」
※淫魔幼女のアイテムメモ
■エリートカード
第三大世界同盟の中で傑出した人物に与えられるお守り。
装備するとMP自然回復(大)、使用すれば攻撃アイテム(複数回使用可)の効果がある。
同盟の息がかかる世界で、その威光は所持者に様々な幸せをもたらす。
魔物を従える力を持つとも言われる。
かつて、繁殖期の群生マタンゴの巣に足を踏み入れてしまった猫耳族の雌が
襲いかかるマタンゴに対しこのカードをかかげたが、
後に捜索隊が見つけたのは、苗床として生かされる無残な彼女の姿だった。
同盟の威光も、それを理解する知能を持たないモンスターには意味が無かったのである。
猫耳蛇娘 「……うむ!」
記録魔 「ななななななななな」
記録魔 「なんてことを!!」
記録魔 「どうしてくれるんですか、なんてことを!」
猫耳蛇娘 「まあまあ、焦るでないよ」
猫耳蛇娘 「カードを投げ飛ばしたように見えるじゃろ?」
猫耳蛇娘 「残念! じつは、ちゃーんとこちらの手に……」
パ
猫耳蛇娘 「……まあ無いんじゃけどな」
記録魔 「取ってきなさい! 早く!」
猫耳蛇娘 「なぜじゃ」
記録魔 「!? なぜ!?」
記録魔 「あれがどれほど偉大なアイテムか、聞いていなかったのですか!」
記録魔 「エリートカード! あれ一つで、まさに魔王や勇者に匹敵する力を有するといっても過言ではないのですよ!」
猫耳蛇娘 「駄々っ子のようにわめき散らしおって……」
猫耳蛇娘 「愚か者」
記録魔 「!!!?」
猫耳蛇娘 「アイテムひとつないくらいで、おぬしは何もできんのかい」
猫耳蛇娘 「ならば、かつての岩のごとき精神を持ちし鋼鉄の勇者の言葉を、今こそおぬしに送ろう」
猫耳蛇娘 「コホン……」
猫耳蛇娘 「おれがこのアイテムを授かったから強くなったんじゃない」
猫耳蛇娘 「おれが強くなったから、このアイテムを貰えたのだ」
記録魔 「…………」
猫耳蛇娘 「……な?」
記録魔 「……はやく」
記録魔 「とって」
記録魔 「きなさい!!」
猫耳蛇娘 「かったい娘じゃのう」
記録魔 「人のものを盗んだあげく投げ捨てておいて」
記録魔 「さらに説教までしようとはどこまで恥知らずなんですか!」
ドルルンッ
箒少女 「おい、デコちび眼鏡天使」
記録魔 「デコ、なっ……!?」
箒少女 は 空飛ぶ箒を装備した!
箒少女 「そんな酔っ払いを相手にしてちゃあ日が暮れちまうぜ」
箒少女 「ほらよ、ケツに乗りな」
記録魔 「……けつ?」
箒少女 「オレの箒に乗せてやるってんだよ」
箒少女 「……大事な物を手に入れるなら、他人まかせじゃなく、自分で掴まねえと」
箒少女 「だろ?」
グッ
記録魔 「…………」
ドルルン ドルルン
空飛ぶ箒は うなるような重低音を響かせている……
記録魔 「……け、けっこうです」
記録魔 「私、蒸気じかけのものとは相性が……ぐえっ」
箒少女は 記録魔を 装備した!
記録魔 「ちょ、ちょっと、おろしなさい! 私は箒なんて……」
箒少女 「エリートだか何だか知らないけどさ、四六時中かたすぎんだよ」
箒少女 「だから、地名つけ遊びだとか眠いことやりだすんだ」
箒少女 「一発、空を箒でぶっ飛ばせば、憂鬱も国境も世間体も吹っ飛んじまうての」
記録魔 「い、意味が分かりませんが! ですから、おろしなさい、私はこの手の乗り物が……」
箒少女 「いくぜ!」
箒少女は 魔力を溜めた!
空飛ぶ箒の ロケットスタート!
記録魔 「きやあああーーっ!」
幼女魔王の城 中庭
物干し場
キヤアアアア
母性巫女 「あら、箒少女さんがまた飛んでる」
母性巫女 「箒がなおってうれしいのね……」
パサ ピ
パン パン
波魔法少女? 「未知の大世界接近による空気中の魔法の乱れは」
波魔法少女? 「猫耳蛇娘くんの結界のおかげでしっかり防げているようだ」
波魔法少女? 「彼女の働きはありがたいね。朝っぱらからの飲酒が帳消しになるくらいに」
母性巫女 「あはは……少し減らしてもらえるとありがたいんですけど」
波魔法少女? 「まあ、君の言うことなら聞くんじゃないかな」
波魔法少女? 「さて、今日も外の世界は大変になっているようだ」
魔動画 『……以上のギルド製のアイテムの使用には、十分注意を払うようにしてください』
魔動画 『続いて、第三大世界東大エリアの飛行船事情について』
魔動画 『現在、未知の大世界接近の影響により飛行船の運行が停止されているのは』
魔動画 『毒きのこの世界、中だるみの世界、隣の世界、桟橋の世界、虹と棘の世界……』
母性巫女 「魔動画? ……も、綺麗に映るようになりましたね」
波魔法少女? 「超濃度の魔素を利用し、非常に短い距離で情報を飛ばしているらしい」
波魔法少女? 「同盟中央からの情報は、遠ければ遠いほど遅れることになるのだろう」
波魔法少女? 「界域ごとの情報はそれぞれのハブ世界を中心に、同盟所属の周辺世界へ無差別に飛ばしているようだ」
母性巫女 「ハブ……」
波魔法少女? 「多くの他の世界と繋がりやすい世界のことを言う」
母性巫女 「飛行船の発着場が多くて、世界同士の交易の中心として多世界の種族が集まることが多い……」
波魔法少女? 「勉強は好きではないと言いながら、よく頑張っているようだ」
母性巫女 「ここに来て長いから……」
母性巫女 「でもやっぱり本だけだと、あんまり想像できませんけど」
波魔法少女? 「思い込みは控えるべきだが、想像は大事だよ」
波魔法少女? 「たしかに実際に見聞きすることが一番だとは思うがね」
波魔法少女? 「本から学ぶしかないことなど、この世にはいくらでもある。実際に目にして理解するのでは遅いときもある」
波魔法少女? 「実際に目にすることが間違っていることもある」
波魔法少女? 「さて、君はここに来て長いと言うが」
波魔法少女? 「ボクらは今日、何回朝ごはんを食べたのだろうね」
母性巫女 「?」
母性巫女 「あら、ふふふ。次のご飯、少し早めにしましょうか?」
波魔法少女? 「朝ごはんが足りなかったとか、お腹がすいたとかじゃない」
波魔法少女? 「そのままの意味さ」
母性巫女 「はあ……」
母性巫女 「…………」
母性巫女 「一回だと思いますけど」
波魔法少女? 「ふむ」
波魔法少女? 「……だろうね」
母性巫女 「?」
波魔法少女? 「ごめんよ、作業を中断させてしまったようだ」
波魔法少女? 「忘れて。洗濯物干しを続けてくれたまえ」
…………
パチ クンッ
パン パン
母性巫女 「……ふぅ」
波魔法少女? 「お疲れさま」
波魔法少女? 「水を用意したよ」
母性巫女 「ありがとうございます」
チチチ チュンチュン
ピピピピ
母性巫女 「……良い天気」
母性巫女 「大変なことが起きているとは思えない」
波魔法少女? 「うん、本当に」
ペラ ピラ
古びた日記
母性巫女 「その日記……」
波魔法少女? 「開けるページと開けないページがころころ変わってね」
波魔法少女? 「ときには、ほら」
血まみれのページ
母性巫女 「!」
波魔法少女? 「それが一旦閉じると、次には……開けると良いが」
パタム パカ
ふるびた日記2 :宝舟の月 2の日 晴れ
森に入り、来た道を戻ってみたが帰れない。
いつの間にかこの廃城にたどり着いてしまう。
おぞましいほどに星が綺麗だ。
玉座の地下に部屋を見つけた。
たくさんの傘と、開かない箱がある。
母性巫女 「読める……」
波魔法少女? 「ページ、つまり内容もその都度入れかわってね」
波魔法少女? 「解読は慎重にやっているよ」
波魔法少女? 「これは2ページ目かな。今のところ」
波魔法少女? 「内容から察するに、おそらくこの日記は」
波魔法少女? 「現在の統治者である幼女魔王Nの時代よりずっと昔、玉座に主がいない空白のころ」
波魔法少女? 「この世界に迷い込み帰る方法を失った、この世界の外側の誰かが」
波魔法少女? 「この世界で過ごした日々を綴ったものだろう」
波魔法少女? 「最後のページは確定できていないので、なぜこの日記だけが」
波魔法少女? 「この世界に存在する唯一の城の、玉座の間の地下にあったのかは分からないが」
母性巫女 「ずっと昔の……」
波魔法少女? 「さて、その頃に玉座は残っていたのか」
母性巫女 「世界の主を失うと、世界の玉座もまた失われる……でしたっけ」
波魔法少女? 「その通り。まれに残る物もあるが」
母性巫女 「あの」
波魔法少女? 「何かな」
母性巫女 「世界の統治者は、死ぬことはないと書かれてありました」
波魔法少女? 「魔王マニュアルにだね」
母性巫女 「死ぬことがないのに、統治者が変わるのは……」
波魔法少女? 「そうだね」
波魔法少女? 「何せ長い稼業だ。途中で飽きて放り出したり」
波魔法少女? 「ほかの世界に隷属したり、死んでしまったり」
母性巫女 「死ぬって……」
波魔法少女? 「死ぬというより、中和されるのだよ」
母性巫女 「中和?」
波魔法少女? 「世界の統治者は魔王とか勇者とか呼ばれることがある」
波魔法少女? 「これがどういうことか分かるかな」
母性巫女 「ええと……」
波魔法少女? 「ふふふ、宿題ということにしておこうか」
母性巫女 「あら、宿題ですか」
波魔法少女? 「気が向いたらで良いよ」
波魔法少女? 「君も、いまや途方もなく長い時間を生きる身だ」
波魔法少女? 「人間だったころと違ってね」
母性巫女 「人間だったころ」
母性巫女 「やっぱり、私はもう違うんですね……」
波魔法少女? 「身体的には、死ににくくなっただけでそんなに違いはないはずだよ」
波魔法少女? 「能力を鍛えることはできるし、衰えることもできる」
波魔法少女? 「ただし、それと同時に」
波魔法少女? 「君は彼女、幼女魔王が起きているときには、彼女の命がある限り彼女の言葉にのみ従う」
波魔法少女? 「自我のない魔王のしもべでもある」
母性巫女 「…………」
波魔法少女? 「面白いのは……失礼」
波魔法少女? 「興味深いのはそのことではなく」
波魔法少女? 「そんな状況におかれた君が、こうしてのんびりと日々を過ごしていることなんだけれどね」
母性巫女 「……おかしいでしょうか」
波魔法少女? 「自分を殺してさらに思い通りに操る術をかけた相手に対して」
波魔法少女? 「復讐しようとか逃げ出そうとかしないのは」
波魔法少女? 「特殊だと思うよ」
母性巫女 「やっぱろちゃんと、怒るべきでしょうか……」
母性巫女 「怒ってしまって、良いのでしょうか」
波魔法少女? 「……はて。不思議な疑問だ」
波魔法少女? 「感情そのものに良し悪しなんてあるものだろうか」
母性巫女 「…………」
波魔法少女? 「たびたび猫耳蛇娘くんが指摘する君の異常性は」
波魔法少女? 「そのあたりにあるのだろうね」
>>23 訂正ごめんなさい
母性巫女 「……おかしいでしょうか」
波魔法少女? 「自分を殺してさらに思い通りに操る術をかけた相手に対して」
波魔法少女? 「復讐しようとか逃げ出そうとかしないのは」
波魔法少女? 「特殊だと思うよ」
母性巫女 「やっぱりちゃんと、怒るべきでしょうか……」
母性巫女 「怒ってしまって、良いのでしょうか」
波魔法少女? 「……はて。不思議な疑問だ」
波魔法少女? 「感情そのものに良し悪しなんてあるものだろうか」
母性巫女 「…………」
波魔法少女? 「たびたび猫耳蛇娘くんが指摘する君の異常性は」
波魔法少女? 「そのあたりにあるのだろうね」
母性巫女 「そうですか」
波魔法少女? 「よく分からないといった顔だね」
母性巫女 「それは……」
波魔法少女? 「自分というのは見えにくいものだが」
波魔法少女? 「君は特にそのようだ」
母性巫女 「…………」
波魔法少女? 「君がそんな風に悩みを口にするのは初めてだ」
波魔法少女? 「ぜひ聞かせてくれないかな。話すことで楽になるかもしれないよ」
母性巫女 「ありがとうございます。でも……」
波魔法少女? 「話したまえ」
ソヨ ソヨ ソヨ
母性巫女 「…………」
母性巫女 「このお城に来てから」
母性巫女 「あの子に触ることが出来なくなって、今ではあの子の部屋に入ることも出来なくなって……」
波魔法少女? 「そうだったね」
母性巫女 「理由を考えたんです」
母性巫女 「儀式の後遺症とか、もしかしたらあの子が私を遠ざけているのかも、とか」
母性巫女 「一旦頭の中を整理しようと、私があの子のしもべになるまでのことを思い出してみたら」
母性巫女 「そうしたら、吐き気に襲われて、胸が苦しくて、余計に分からなくなって……」
波魔法少女? 「……それで?」
母性巫女 「もしかしたら私は、あの子のことを深く考えたくないんじゃないかと思ったんです」
波魔法少女? 「ふむ」
波魔法少女? 「どうしてだろうね」
母性巫女 「考えて……それで……」
母性巫女 「嫌いになってしまうのが怖くて……」
波魔法少女? 「嫌いになる、か」
波魔法少女? 「彼女が聞いたら失禁するね」
母性巫女 「あの、あの子には……」
波魔法少女? 「ああ、大丈夫。絶対に言わないよ」
母性巫女 「ありがとうございます」
波魔法少女? 「嫌いになるのが怖いとはね……」
波魔法少女? 「彼女のことを考えると、嫌いになってしまいそうなのかい」
母性巫女 「…………」
母性巫女 「どうなんでしょう……」
母性巫女 「あの子なりに悩んだことも、あのままでは私はどうしようもなかったことも」
母性巫女 「分かってはいるんです」
母性巫女 「でも、そのときのことを思い出すと……」
波魔法少女? 「彼女を許せない」
母性巫女 「…………」
母性巫女 「こんなこと初めてで……」
母性巫女 「年少組の子たちに胸をもみくちゃにされたときも」
母性巫女 「勇者一行の人たちに胸をもみくちゃにされても」
母性巫女 「こんなに苦しくなることは無かったのに……」
波魔法少女? 「一気に話の重さを捨ててきたね」
母性巫女 「怒っているんだと思います……」
母性巫女 「あの子のこと」
母性巫女 「あんなに可愛くて、さびしくて、まだ知らないことだらけの子なのに」
波魔法少女? 「彼女のことを怒っている……だけで終われない君のそういうところは、優しさなのだろうが」
波魔法少女? 「記録魔くんなどの目には、傲慢とか嫌味にうつるのかもしれないね」
波魔法少女? 「ボクから見ると、君は不自由そうな子だが」
母性巫女 「不自由……」
波魔法少女? 「今は眠りこけている、彼女よりもね」
波魔法少女? 「あの子に対して怒りの感情を抱くことが、悪いことのように考えているみたいだが」
波魔法少女? 「では君は、彼女に対して怒りを表したことは無いのかな」
母性巫女 「……あります」
波魔法少女? 「しかし、今回に限って、ひどく悩まされている?」
母性巫女 「はい……」
波魔法少女? 「たとえば、以前はどんなときに怒っていたのかな。彼女に対して」
母性巫女 「ええと……」
波魔法少女? 「彼女の名誉を傷つけない程度で話せるなら、それで構わないよ」
母性巫女 「はい」
母性巫女 「……お風呂上がりに、髪の毛も拭かずに部屋へ行こうとしたり」
母性巫女 「よく分からない雑草を食べようとしたり」
母性巫女 「トイレのあと、手を洗わずにお菓子を食べようとしたり」
母性巫女 「パンツもはかずに足をひろげて座ったり」
母性巫女 「魔動画で見た漫画の、ひどい言葉を真似したり」
母性巫女 「お菓子を食べたあと舐めた指で、髪の毛をなでつけたり」
母性巫女 「鼻水を服で拭いたり、トイレを流し忘れたり、歯磨きをしていないのにやったって言ったり……」
波魔法少女? 「名誉を粉砕しにかかっているが」
母性巫女 「お風呂に入るのも嫌がっていたんですよ、あの子……」
波魔法少女? 「手のかかる子なのだね」
波魔法少女? 「お風呂上りに髪の毛を拭かない彼女を怒ったとき」
波魔法少女? 「君は怒っていたのかい?」
母性巫女 「?」
母性巫女 「ええ、そう思います」
母性巫女 「……やっぱり、違うんでしょうか」
波魔法少女? 「やっぱり?」
母性巫女 「私、本当は怒っていなかったんでしょうか」
波魔法少女? 「……ほう」
母性巫女 「あの子に対して怒っている、この世界に来てからの自分が本当の自分のような」
母性巫女 「それまでの私が嘘で空っぽだったような」
母性巫女 「そんな気がするんです」
波魔法少女? 「それは怖ろしいことだ」
母性巫女 「笑うべきだから笑っていた。怒るべきだから怒っていた」
母性巫女 「戦うべきだから戦っていた」
母性巫女 「そう決められているからそうしていたような」
波魔法少女? 「それが嘘で空っぽだったと思うんだね」
母性巫女 「だって、今は胸がこんなにも重い」
ムニ フニョン
波魔法少女? 「……そりゃあ、重いだろうね」
母性巫女 「この重みが嘘とは思えなくて……」
タユン ユサ
波魔法少女? 「まあ、嘘ではないのだろうね」
母性巫女 「だったら」
母性巫女 「故郷であの子と暮らしていた私が嘘だったら」
母性巫女 「あの子に対して、なんて残酷なことをしていたの……」
波魔法少女? 「…………」
波魔法少女? 「なるほどね」
波魔法少女? 「主の意のままに動く空っぽの人形にされたかと思ったら」
波魔法少女? 「実はもとより空っぽだったなんて、むなしい話だ」
母性巫女 「…………」
波魔法少女? 「だが、君は確かに精神的にも肉体的にも、度を越して常軌を逸しているところがあるが」
波魔法少女? 「昔から空っぽだとは思えない」
母性巫女 「そうでしょうか」
母性巫女 (おかしいことはおかしいのね……)
波魔法少女? 「まあ、ボクはこの城で暮らす君しか知らないから、無責任には言えないが」
波魔法少女? 「なんというか、途切れていないように見える」
母性巫女 「途切れて……?」
波魔法少女? 「空っぽなのは、彼女なんだよ」
母性巫女 「……あの子」
波魔法少女? 「君の知る、そして知っていた幼女魔王Nは」
波魔法少女? 「ある人物の、わずかに残ったゴミのような部分を集めて作られた」
母性巫女 「え……?」
波魔法少女? 「話が逸れてしまうね」
波魔法少女? 「まあ、とにかく」
波魔法少女? 「今の君を認めることによって、昔の君が否定されるわけではないと思うよ」
母性巫女 (作られた? 波さんの独特の言い回しかしら)
母性巫女 「あの……」
波魔法少女? 「うん?」
母性巫女 「あの子が作られた……って」
波魔法少女? 「あれ、話さなかったっけ?」
波魔法少女? 「興味あるかい」
母性巫女 (なんか、わざとらしい……)
母性巫女 「ええと……はい」
波魔法少女? 「ふむ……」
波魔法少女? 「しかしこれは覚悟のいる話だ」
波魔法少女? 「もちろん、ぼくにもだが」
波魔法少女? 「何よりも君に」
母性巫女 「…………」
波魔法少女? 「心が揺らいでいる君に」
波魔法少女? 「話してしまってよいものか……」
母性巫女 「そんなに大きな、あの子についての秘密を」
母性巫女 「波さんは知っているんですね」
波魔法少女? 「知っている」
波魔法少女? 「一方で……」
母性巫女 「知らない?」
波魔法少女? 「その通り」
波魔法少女? 「ボクはそういう風にできている」
母性巫女 「はあ……」
波魔法少女? 「揺らいでいる、か。そうだね」
波魔法少女? 「……母性巫女くん」
母性巫女 「はい?」
波魔法少女? 「彼女のことを話す前に」
波魔法少女? 「今はまだぼやけている、君の、自身の心の動きに対して起こる恐怖の正体を探ってみないかい」
波魔法少女? 「なぜ君が、彼女を嫌いになることを怖ろしいと思うのか」
波魔法少女? 「または、思うような人物になってしまったのか」
母性巫女 「え……」
波魔法少女? 「それによって、もしかしたら君は、彼女を嫌うことを躊躇しなくなるかもしれない」
波魔法少女? 「もしくは……」
ユラ
母性巫女 「………っ」
母性巫女 (波さんの手のひらの上に、白んだ緑色の炎が浮かんでいる)
波魔法少女? 「晴れていると同時に、雨が降っている」
波魔法少女? 「好きであると同時に、嫌っている」
波魔法少女? 「かたくやわらかく、やわらかくかたく」
波魔法少女? 「ボクはぼくであり、ぼくはボクである」
波魔法少女? 「慣れていないが、これがボクの得意な魔法だ」
母性巫女 「あら、まあ、かわいい色」
パチパチパチ
波魔法少女? 「そういうのじゃないから」
波魔法少女? 「いきなり火を出す技を披露して拍手をもらおうというわけじゃない」
波魔法少女? 「ボクの魔法を使えば」
波魔法少女? 「君の過去と現在を交差させることができる」
波魔法少女? 「つまり君は、君自身の過去を見ることができる」
母性巫女 「そんなことが……」
波魔法少女? 「ボクを信じてもらうことになる」
波魔法少女? 「猫の耳くんは、絶対に拒否するだろう」
波魔法少女? 「どうだい。試してみるかい?」
ユラ ユラ
母性巫女 「…………」
ユラ ユラ
母性巫女 「……お願いします」
波魔法少女? 「良いのかい?」
波魔法少女? 「猫耳蛇娘の言う通り、ボクは」
波魔法少女? 「敵側の者かもしれないんだよ」
母性巫女 「私は、波さんのことを敵だなんて思いませんよ」
母性巫女 「あんなにおいしそうに、ご飯を食べてくれるんだもの」
波魔法少女? 「ふわふわとした理由だね」
母性巫女 「私なりに考えいるんですよ」
母性巫女 「それで駄目だったら、しかたありません」
波魔法少女? 「しかたないか、良いね」
波魔法少女? 「結果、幼女魔王Nが不幸になるとしても?」
母性巫女 「…………」
波魔法少女? 「ごめんよ、意地悪がすぎたね」
波魔法少女? 「では、疑問が多いであろうボクにおいしいご飯を提供してくれた君の」
波魔法少女? 「信頼にこたえよう」
波魔法少女? 「神様に対しても、ちいさな友人に対しても」
波魔法少女? 「頼みごとをするときに信を捧げるというのは、まあ必要な、儀式のようなものか」
波魔法少女? 「もちろんボクは神様なんてものではなく」
波魔法少女? 「向こう岸からの幽かな友人だが」
ユラ ユラ ユラ
波魔法少女? 「目をつむって」
母性巫女 「はい……」
波魔法少女? 「何か話すことがあれば、話して構わないよ」
波魔法少女? 「ただ、目は開けない方が良い」
波魔法少女? 「記憶というものは、まぶたの裏に焼きついているものだから」
母性巫女 「はい……」
波魔法少女? 「…………」
波魔法少女? 「では、始める」
………
ユラ ユラ ユラ
ウニョン ウニョニョニョニョ
母性巫女 「…………」
波魔法少女? 「…………」
ニョン ニョン ニョン ニョン
母性巫女 「………あ」
波魔法少女? 「え?」
母性巫女 「あの、波さんに言おうと思っていたんですけど」
波魔法少女? 「何かな」
母性巫女 「服、そろそろ洗いましょうか」
母性巫女 「すっと同じ物を着ているし……ほら、白いですし」
波魔法少女? 「……うん」
波魔法少女? 「うん。ボクの服はそういうのいらないやつだからね」
波魔法少女? 「大丈夫だ。汚れるとか、綺麗になるとか、そういうことのない物だから」
ユラ ユラ ユラ
母性巫女 「そうですか……?」
波魔法少女? 「うん、大丈夫だ。ありがとう」
波魔法少女? 「……ボクなどは君のそういうところを好ましく感じるけど」
波魔法少女? 「この先ながく、記録魔くんが君と打ち解けることが無いであろう予感がさらに強まるね」
波魔法少女? 「そうだ、ボクからも言っておくことがあった」
母性巫女 「はい」
波魔法少女? 「次の朝のデザートはあれが良いな」
波魔法少女? 「煮た生クリームみたいな、冷たくて甘いお菓子」
母性巫女 「あれですね」
母性巫女 「じゃあ、明日の朝はそれにしましょう」
母性巫女 「私が起きていたらですけど……」
波魔法少女? 「今日の朝かもしれない」
母性巫女 「?」
波魔法少女? 「最後の呪文詠唱に入る」
波魔法少女? 「君はこの呪文を最後まで聞くことなく、己の過去と交差することになるだろう」
波魔法少女? 「良い旅を」
キイイイイ
波魔法少女? 「……こるな、ふぁっつぇる、みらにうす」
波魔法少女? 「るい、ほいへんす、あいざっく……」
波魔法少女? 「ゴニョゴニョゴニョゴニョ……」
ニョン ニョン ニョン ニョン
ニョン ニョン ニョン……
母性巫女 「…………」
…………
……
土の牢獄
…………
母性巫女 「…………」
母性巫女 「……うーん」
モゾ モゾ
ムク
母性巫女 「…………」
母性巫女 「暗い。ここはいったい……」
キョロ キョロ
鉄格子
母性巫女 「……鉄格子。ここは牢屋なのかしら」
母性巫女 「波さんは過去の私と交差するって言っていたけれど……」
テク テク テク
ズボッ
母性巫女 「きゃっ!?」
母性巫女 (いきなり地面が……)
ボロ ボロ
ヒュウウウ
母性巫女 (抜けた……?)
母性巫女 「…………」
母性巫女 (壁も床も、天井も土でできているみたい)
母性巫女 (よく見ると、牢屋の中も外もボロボロ……)
バゴン
母性巫女 「鉄格子が崩れた……」
ボソ ボロロ
母性巫女 「…………」
母性巫女 (危ないけれど、少し歩いてみよう)
テク テク テク
母性巫女 「……他にも牢屋はあるみたいだけれど」
崩れた牢屋
潰れた牢屋
すてられた牢屋
母性巫女 「どこも崩れているみたい」
母性巫女 「当然、誰もいない」
テク テク テク
母性巫女 「……ん?」
黒花の仮面
母性巫女 (黒い花飾りの仮面が落ちている)
母性巫女 「…………」
ズル……
母性巫女 「……?」
母性巫女 「どこかから、引きずるような音が聞こえる……」
ズル ズル ズル
母性巫女 「…………」
母性巫女 「近づいてくる」
母性巫女 「私が歩いてきた方からだわ……」
ズル ズル ズル
??? 「…………」
ズル ズル
母性巫女 (人影)
母性巫女 (……じゃ無い。柱?)
母性巫女 (柱が動いている?)
ズル ズル ズル
??? 「…………」
棺ミミック 「…………」
棺ミミック が あらわれた!
母性巫女 「……小さな、棺」
母性巫女 (黒くて、子どもがやっと入れるくらいの小さな棺……)
棺ミミック 「…………」
ズル ズル ズル
母性巫女 (どんどん近づいてくる。どうしたら良いの)
母性巫女 (……あの棺、中に何か入っているのかしら)
タ タ タ タ
母性巫女 「!」
母性巫女 (逆の方向から足音が近づいてくる)
母性巫女 (こっちは走っているみたい)
ダ ダ ダ ダ
ズデン
母性巫女 「…………」
母性巫女 (……転んだ?)
ダ ダ ダ ダ ダ
??? 「はあっ、はあっ、はあっ……」
幼女魔王(妊娠) 「誰か、いるの!?」
幼女魔王(妊娠) が あらわれた!
母性巫女 「……!」
母性巫女 「N………!?」
幼女魔王(妊娠) 「えっ……」
幼女魔王(妊娠) 「誰、あなた。どこから来たの」
母性巫女 「え……」
ズル ズル ズル
棺ミミック 「…………」
幼女魔王(妊娠) 「……いけない!」
幼女魔王(妊娠) 「早くこっちに来て! あいつが来る前に!」
母性巫女 「あいつって……」
母性巫女 「あの棺?」
棺ミミック 「…………」
幼女魔王(妊娠) 「早く!」
幼女魔王(妊娠) 「そいつは死神よ!」
母性巫女 「死神?」
デ デ デ デ
棺ミミック 「…………」
おや? 棺ミミックの様子が……
棺ミミック 「…………」
ギギ ゴゴゴゴ……
母性巫女 「棺の蓋が開いていく」
幼女魔王(妊娠) 「まずい……!」
棺ミミック 「…………」
ジャキン ジャキン ジャキン
棺ミミック 「…………」
鎌棺ミミック 「グギギギ……」
おめでとう! 棺ミミックは 鎌棺ミミックに 進化してしまった!
母性巫女 (少し開いた棺から、たくさんの長柄の鎌が出てきた!)
幼女魔王(妊娠) 「早くこっちへ! 上に逃げるわよ!」
母性巫女 「でも…………」
幼女魔王(妊娠) 「もう!」
タ タ タ タ
ハシッ
母性巫女 「!!」
母性巫女 (Nに手を握られた)
母性巫女 「…………?」
母性巫女 「あれ、何とも無い……」
幼女魔王(妊娠) 「何してるの、早く走るわよ!」
母性巫女 「は、はい……」
タ タ タ タ タ
タ タ タ タ タ
幼女魔王(妊娠) 「私はTの字を持つ幼女魔王」
幼女魔王(妊娠) 「卵スライムの卵を産み付けられた幼女魔王」
幼女魔王T 「幼女魔王T」
幼女魔王T 「そしてここは、幼女魔王の塔」
幼女魔王T 「進むことのない、停滞と忘失が支配するところ」
タ タ タ タ タ
交差波動迷宮改
幼女魔王の塔 最下層上層
タ タ タ タ タ
母性巫女 (幼女魔王の塔……)
母性巫女 (私の過去との交差はどうなっているのかしら)
幼女魔王T 「はあっ、ひいっ、おえっ、ひいっ……」
母性巫女 「あの、N……T?」
幼女魔王T 「はあっ、はあっ……何」
母性巫女 「もうさっきの棺は見えません」
母性巫女 「つらそうですし、もう走らなくて良いんじゃありませんか」
幼女魔王T 「はあっ、はあっ……そうね」
幼女魔王T 「階段までもう少しだし……」
幼女魔王T 「ふひぃ……」
母性巫女 (丸くぱんぱんに膨らんだお腹)
母性巫女 「あの、そのお腹……」
幼女魔王T 「ああ、あなた、もしかして新しく生まれた子? そうよね、見たことないもの」
幼女魔王T 「……昔、卵スライムにお尻から卵を詰め込まれたことがあるのよ」
母性巫女 「え……」
母性巫女 (意味が分からない……)
母性巫女 (私の記憶と何の関係があるのかしら)
幼女魔王T 「私の紹介はこれで十分よね」
幼女魔王T 「それで、あなたはいったい何なの?」
母性巫女 「えっと」
幼女魔王T 「本当に新しく生まれた子?」
幼女魔王T 「私に比べて髪の毛は黒いし、背はだいぶ高いし、おっぱいは大きいし」
幼女魔王T 「もしかして、おっぱいに痺れ巨大蜂の卵と毒を詰め込まれたの?」
母性巫女 「いえ……」
母性巫女 (触れても大丈夫なこととか、気になることはあるけれど)
母性巫女 (とにかくこのN……Tは、私のことを知らないのね)
母性巫女 「私は、母性巫女です」
幼女魔王T 「ええっ!?」
ビクン
母性巫女 「!?」
幼女魔王T 「嘘……母性巫女!? い、いえ、まさか、そんなわけないわよね」
幼女魔王T 「ここに来られるはずが無いもの」
幼女魔王T 「でも、たしかにその姿は……」
ジロ ジロ
母性巫女 (本当に、どうなっているのかしら)
幼女魔王T 「黒い髪、おっぱい、優しい目、おっぱい、おっぱい……話に聞く母性巫女そのもの……」
幼女魔王T 「どうしてここに……」
母性巫女 「あの……」
幼女魔王T 「K!」
母性巫女 「えっ?」
幼女魔王T 「ここにいる以上、あなたはきっと幼女魔王よ」
幼女魔王T 「あなたは、幼女魔王K!」
母性巫女 「えー……?」
母性巫女 「あの、私は……」
幼女魔王T 「やめて!」
母性巫女 「!」
幼女魔王T 「私はあんまり難しいことを考えることがあんまり、あんまりなの! 私なんだから知ってるでしょ!」
幼女魔王T 「だからややこしいことになったら困るの」
幼女魔王T 「あなたは幼女魔王K!」
母性巫女 「ええ……」
母性巫女 (でもこの感じ、この子はNそのもの……のような気がする)
母性巫女 「じゃあ、分かりました。Kで良いですから」
幼女魔王T 「うん」
幼女魔王T 「それであなた、どうしてこんなところにいたの」
母性巫女 「こんなところって」
母性巫女 「ここはどんなところなんですか?」
母性巫女 「それにあの棺はいったい……」
幼女魔王T 「ここは塔の、捨てられた最下層の上層」
母性巫女 「捨てられた?」
幼女魔王T 「昔は使われていたのだけど」
幼女魔王T 「あの棺の死神がやってきて暴れまわるようになってから」
幼女魔王T 「誰も住めなくなってしまったの」
母性巫女 「はあ……」
母性巫女 「あの、そもそもこの塔はいったい、何のためにあるんですか」
幼女魔王T 「?」
幼女魔王T 「何のためも何も、これが無きゃ私は生きていけないじゃない」
幼女魔王T 「幼女魔王の塔は、幼女魔王の塔よ」
母性巫女 「うーん……」
幼女魔王T 「あなた、私の中でも相当アレなようね。良いわ、続きは上で話しましょう」
母性巫女 「上……」
幼女魔王T 「あの棺の死神は、ここより上の層には上がってこないの」
幼女魔王T 「今のところは、だけど」
ザ ザ ザ
母性巫女 「そうですか……」
母性巫女 (物騒なところなのね)
幼女魔王T 「急ぎましょう」
幼女魔王T 「そろそろ幼女魔王会議が始まるわ」
母性巫女 (幼女魔王会議……)
母性巫女 (私の過去とはいつ交差できるのかしら)
ザ ザ ザ
幼女魔王の塔 最下層上層
階段前
ザ ザ
幼女魔王T 「……うっ」
ドサ
母性巫女 「N!? どうしたんですか!」
幼女魔王T 「Tよ……」
幼女魔王T 「分かんない……お腹が……」
幼女魔王T 「ううっ!!」
ガク ガクン
母性巫女 (Nがお腹を押さえて苦しんでいる……)
母性巫女 (抱えていこう)
母性巫女 「N……」
幼女魔王T 「ひぎぃいっ!!!?」
ビクンッ
母性巫女 「!?」
幼女魔王T 「お、お腹……中で……」
幼女魔王T 「ほへひぇっ!?」
グニョン
ビクンッ
母性巫女 (ぱんぱんに膨らんだNのお腹が……)
幼女魔王T 「んぎゅっ……ふぎゅううううぅぅ……っ!?」
ボコン モコモコ
モ゛モ゛モ゛モ゛
グニョン グニョン グニョン
母性巫女 (別の生き物みたいに波うちだした!)
ドクン プチュヂュヂュ
ギュルルル ブキュ ブキュ
母性巫女 「Nのお腹から、変な音が……」
卵スライム(幼生)17の 出産液!
幼女魔王Tの胃袋で 媚薬効果のある液を 勢いよく撒き散らした!
幼女魔王T 「ふぅ゛ッッッ!?」
幼女魔王T 「……ンっひぇ!? ……ぉ、へっ……ほぉぇ………」
幼女魔王T 「んぉっ、ぉお……ぇええぇへぇへぇへへへ……」
ビクンッ ピクンッ ピクンッ
グニョグニョグニョグニョグニョ
母性巫女 (Nがヨダレを垂らして、力なく笑いだした)
母性巫女 (お腹は勢いを増して歪んでいく)
母性巫女 「N、N!」
幼女魔王T 「ひひぃぃ……おにゃかの壁……こひゅっ……、こひゅっひゃ嫌らぁ……」
幼女魔王T 「はっひぇえ………ひひぇええ……ひゃへ、ひゃへ、んへ、へ、ひぇ、んへえぇえええええッッ……ッッ」
ビグンッ
ビクビクビクビクビク
幼女魔王T 「ッッ! ~~~~~……ッ!」
幼女魔王T 「ッ! ッ! ッ!」
ビクンッ ビクンッ ビクンッ
母性巫女 「ぐったりしたまま、今度は痙攣……!」
幼女魔王T 「カヒュッ……!!」
幼女魔王T 「は……ぁ……」
ブヂュ
幼女魔王T 「ほぇ゛っ……」
プヂュゥウウウウ プヂュジュ ジュピュ
ギュルルルル
ゴニュニュニュ グニョングニョングニョン
幼女魔王T 「ひゃっへええ゛ええ゛え……まひゃ、まひゃあああ……」
幼女魔王T 「知らひゃ……こんにゃ……」
幼女魔王T 「ッ!! ~~~~~ッッッ!」
ビクンッ ビクンッ ビクンッ
母性巫女 「…………!」
スリュ
母性巫女の 脱がすこうげき!
幼女魔王Tのスパッツを はぎとった!
幼女魔王T 「はあきゅっ……ふひっ、ふひひぃい……」
母性巫女 「しかたありません。ここで出してください、お腹の中のもの!」
幼女魔王T 「はぴゅ? ひっひぇ……」
母性巫女 「このままだと苦しいままですよ。棺が来たら私が何とかします」
母性巫女 「だから……」
ス
幼女魔王T 「くっひゅ……ひぅ……ぅ……」
ニョゴゴ グニュ ニュ……
母性巫女 (手をそえたら、Nのお腹のうねりがおさまった)
母性巫女 「落ち着いて……怖くありませんから……」
幼女魔王T 「ふっ……ふっ……」
母性巫女 「力を抜いて………そう」
母性巫女 「少しずつ、焦らず、ゆっくりゆっくり、押し出していきましょうね……」
幼女魔王T 「うぅうぅ……」
ギュ
母性巫女 (私の手を握ってきた)
母性巫女 (……平気だわ。吐き気も眩暈もしない)
幼女魔王T 「あぅ……あぅ……」
母性巫女 (顔、涙と鼻水でぐしゃぐしゃ……)
母性巫女 「大丈夫。大丈夫ですからね」
母性巫女 「さあ……」
ボロッ
母性巫女 「!?」
幼女魔王T 「ぁ……」
母性巫女 (私の手を握るNの手が、乾いた土みたいに崩れた……)
母性巫女 「N……」
幼女魔王T 「……ぁ……ぁあ」
モギュギョギョ
幼女魔王T 「ふげぎゅっ!?」
幼女魔王T 「モギュゴッ……ろ゛ぇお゛お゛……」
ゴギュギュギュギュギュ
母性巫女 「!」
母性巫女 (上がってくる!?)
幼女魔王T 「おぇ゛っ……」
幼女魔王Tの 出産!
卵スライム(幼生)5~9 が現れた!
母性巫女 「ひっ……」
ズボッ
母性巫女 「!?」
母性巫女 (また地面が崩れる!)
母性巫女 (Nを連れて逃げないと……)
ボロロロ
幼女魔王T 「ぉ……ぉ……」
母性巫女 「……なんてこと」
母性巫女 (Nが、崩れていく)
幼女魔王T 「…………」
ボロ ボロ
幼女魔王T 「…………」
幼女魔王Tの上半身 「…………」
幼女魔王Tの塵 「…………」
ボロロ ボロ
バララ ヒュウウウ
バララ モク モク モク
母性巫女 「…………」
母性巫女 (Nが地面もろとも崩れ去った)
母性巫女 (あとには、底知れない大きな穴が空いているだけ)
母性巫女 (この場所に現実感は無いけれど、私の記憶と関係があるとも思えない)
母性巫女 (……崩れてしまったN。まさか本当のあの子じゃないわよね?)
ズズ……
母性巫女 「!」
母性巫女 「この音……」
ズル ズル ズル
鎌棺ミミック 「…………」
母性巫女 (棺……)
鎌棺ミミック 「…………」
母性巫女 (止まった。こっちの様子をうかがっているみたい)
母性巫女 (……穴を飛び越えてきたりするのかしら)
鎌棺ミミック 「…………」
ズル ズル ズル
母性巫女 「…………」
母性巫女 「引き返していく……」
ズル ズル ズル
ズ ズ
母性巫女 「……階段」
母性巫女 「のぼってみましょう」
幼女魔王の塔 下層階段
ザ ザ ザ ザ
母性巫女 (……狭い。これじゃあ、すれ違うのも大変そう)
母性巫女 (どこにも明かりは無いようだけど、わりと先の方まで見通せる)
母性巫女 (ずっと赤黄まだらの冷たい土だらけだけれど)
ザ ザ ザ
母性巫女 (あんな風にNと触れ合ったのはいつ以来かしら)
母性巫女 (ずいぶん前のことに感じる……)
……シュルルル
母性巫女 「!」
母性巫女 (どこかで壁を這うような音)
母性巫女 「…………」
シイン
母性巫女 「…………」
母性巫女 「……空耳かしら」
…………
ザ ザ ザ ザ
母性巫女 「…………」
母性巫女 (あれから、あやしい音は聞こえてこないけれど)
母性巫女 (どこまで続くのかしら、このゆるやかな上り階段)
ザ ザ ザ゙……
母性巫女 (過去の私との交差……過去の私と会える?)
母性巫女 (じゃあ、ここのどこかに過去の私がいるということ? Nは幼女魔王の塔とか言っていたけれど……)
母性巫女 (ここにいたのは変な棺とN、あとは不思議な仮面も落ちていたっけ)
母性巫女 (もしかして、下を探していたら色々見つかったのかもしれない)
母性巫女 (戻ってみるべきかしら……)
母性巫女 (あと少し歩いて何も見えてこなかったら、そうしてみましょうか)
母性巫女 (棺も、話の分かる棺かもしれないし)
ザ ザ ザ ザ
ザ ザ ザ
「…………おーい」
母性巫女 「え?」
クルリ
母性巫女 「…………」
母性巫女 (今、うしろから男の人の声、したわよね?)
ゆるやかな下り階段が 深い闇の中へ続いている……
母性巫女 「…………」
母性巫女 (かなり遠くからだったみたいだけど)
母性巫女 (途中に部屋のようなものはなかったし……)
母性巫女 (動く棺のいた牢獄みたいな場所から、誰かが上ってきている?)
「……おーい」
母性巫女 「…………」
母性巫女 (また……。空耳じゃないのね)
母性巫女 (……さっきより、近づいているみたい)
「……………おーい」
母性巫女 (遠ざかった……)
「………………おーい」
母性巫女 (どうしようかしら)
>>76
男の人の呼び声に……
1.こたえる
2.こたえない
2
「………おーい」
母性巫女 「…………」
母性巫女 (行ったり来たり、何かを探しているのかしら)
母性巫女 (答えてみましょう……)
キイン
母性巫女 (…………)
母性巫女 (そういえば、故郷の森で子守役をしていたとき……)
ポワ ポワ ポワ
過去
精霊の森 精霊騎士団本部
母性巫女(14) 『ひとりで部屋にいるときや、外に出ているとき』
母性巫女(14) 『知らない人……とくに、知らない男の人から声をかけられても』
母性巫女(14) 『すぐに返事をしたり、無闇に近づいたりしてはいけませんよ』
見習い幼女A 『どうしてでちゅか、ぼせーみこちぇんぱい』
母性巫女(14) 『悪い人だったら、悪いことをされてしまいます』
母性巫女(14) 『この森でも、あなたたちみたいにまだ小さくて可愛い女の子をさらおうとする人さらいが、何人か捕まっています』
母性巫女(14) 『とくに最近は魔王再臨の予言のせいか、外の国では悪い人たちも増えてきているそうですし……』
見習い幼女B 『母性巫女せんぱい、このまえ知らない男の人と話してたじゃん』
母性巫女(14) 『え?』
見習い幼女B 『オレ、見たもん。でっかいカゴを背負ったおっちゃんと、話してたの』
母性巫女(14) 『あ、あれは……』
見習い幼女C 『本当なの? 母性巫女せんぱい』
見習い幼女D 『私たちに言っていることと違うー』
母性巫女(14) 『あれは、旅の商人さんです。おいしい果物を安く売ってくれるというので、売ってもらったんです』
母性巫女(14) 『それに私はもう大人です。一人前の、精霊騎士団の戦士なんですよ』
見習い幼女G 『じゃあセンパイは、精霊酒を飲めるのかー?』
母性巫女(14) 『それは、まだ……お酒はまだ飲んじゃいけない歳だから……』
見習い幼女H 『じゃあせんぱいも子供じゃん。精霊酒は大人だけが飲めるんだぞ』
見習い幼女H 『母性巫女せんぱい嘘つきだあ。しかも知らない人と話すのは悪いって言ってるくせに話したから』
見習い幼女H 『嘘つきの極悪人じゃん!』
見習い幼女B 『うえーい、あくにーん』
見習い幼女C 『地獄に落ちろー』
見習い幼女たち 『嘘つきー』
ワア ワア
母性巫女(14) 『うう……』
見習い幼女E 『やめなさいよ、あんたたち!』
見習い幼女E 『母性巫女せんぱいはりっぱな大人よ!』
見習い幼女H 『なんだよー、分かるのかよー』
見習い幼女E 『分かるわよ』
見習い幼女E 『母性巫女せんぱい、ママよりおっぱい大きいもん!』
母性巫女 『え?』
見習い幼女B 『それが何だってんだよー。関係あんのかよコノヤロー』
見習い幼女E 『フフン……知ってる? 赤ちゃんはおっぱいで育てるのよ』
見習い幼女B 『えっ!?』
見習い幼女E 『大人の人は、おっぱいからミルクがでるの』
見習い幼女たち 『!?』
ザワ
見習い幼女E 『だから、いっぱいミルクの溜められるおっぱいを持っている母性巫女せんぱいは』
見習い幼女E 『すごく大人なのよ!』
見習い幼女たち 『……お、おおー』
母性巫女(14) 『あ、あの……』
見習い幼女N 『それは違うよ!』
見習い幼女E 『違わないわ!』
見習い幼女N 『じゃあ、謎の精霊戦士せんぱいはどうなのさ!』
見習い幼女N 『精霊酒も飲めて、何年も前から騎士団一の立派な戦士だけど』
見習い幼女N 『ボクたちと変わらない、摩擦ゼロの垂直おっぱいじゃないか!』
見習い幼女E 『!!』
見習い幼女H 『……そ』
見習い幼女H 『そーだそーだー! うちの母ちゃんもおっぱい小ちゃいぞー!』
ワア ワア
見習い幼女E 『う、うぅ……』
見習い幼女E 『うるさーい! せんぱいは立派な大人よ』
見習い幼女E 『私がそう言うんだから、そうなの!』
見習い幼女B 『うっせー、じこちゅーブスー!』
見習い幼女H 『精霊さまに呪われろー!』
見習い幼女E 『なんですってえ!』
ギャアギャア
ギャアギャア
母性巫女(14) 『あ、あの、みんな落ち着いて……』
見習い幼女H 『だいたいお前気持ちわるいんだよ、良い子ぶりやがってよー』
見習い幼女E 『あなたなんて、短足でデブの乱暴者のくせに!』
見習い幼女H 『はぁー!? 何言ってんのかわかんないんですけどー!?』
見習い幼女E 『おまけに顔中ぶつぶつのブス! ぶよぶよの背中はしみだらけで汚いし、私が男だったらあなたみたいなゴミ、吐き気がして話したくもない!』
母性巫女(14) 『人にそういう言葉つかっちゃだめですよぉ……』
見習い幼女E 『せんぱいが可愛いから、うらやましくていじわるしてるだけでしょ!』
見習い幼女E 『みんな、あんたのこと嫌いなのよ! すぐに暴力ふるう馬鹿だから、面倒くさいから言わないだけで!』
見習い幼女E 『あんたがいないところで、みんなあんたの悪口言ってるんだから! この嫌われ者の汚いゲロ豚!』
見習い幼女B 『それがどうしたってんだよー! 今は、みんながそいつをゲロ豚って呼んでんのは関係ないだろー!』
見習い幼女H 『!? ………ぎぃ』
見習い幼女H 『ぶきぃいいいいいあぎゃあばばばぼぁがあ゛~~~~!!』
ワアワア
母性巫女(14) 『うぅ……』
母性巫女(14) 『……や』
母性巫女(14) 『やめなさーい……!』
母性巫女の こうげき(弱)!
時空が歪む……!
見習い幼女たちのHP が 1 になった!
母性巫女(14) (かつてない手ごたえ。今の攻撃を磨いていけば、すごい技になるかもしれない)
母性巫女(14) 『コホン……とにかく、私は大人です。お酒を飲めない大人だっているんです』
見習い幼女たち 『はい、せんぱい』
母性巫女(14) 『そして、この前私とお話ししていたのは、悪くない旅の商人さんです』
母性巫女(14) 『それどころか、お金があまりなかった私に、おっぱいを揉ませたら珍しいおいしい果物を半額にしてくれると言ってくれた、善い商人さんなんです』
見習い幼女たち 『はい、せんぱい』
見習い幼女E 『……ん?』
母性巫女(14) 『だけど私も先輩として、みんなから勘違いされないように、これから気をつけます』
母性巫女(14) 『なので、みんなも知らない人、とくに知らない男の人と無闇にお話をしてはいけませんよ』
見習い幼女たち 『はい、せんぱい』
ポワ ポワ ポワ ポワ
母性巫女 (……いま思えば、善い商人じゃなかったのかもしれない)
母性巫女 (女の人は無闇に体を触らせないものだと知ったのは、魔王討伐隊に参加したときだったっけ)
母性巫女 (とにかく、あの男の人の声にこたえるのはやめましょう)
母性巫女 (……それにしても、懐かしいことを思い出しちゃったなあ)
母性巫女 (あ、もしかして、過去の私と交差するっていうのはこういうことなのかしら?)
母性巫女 (もう少し、波さんに詳しく尋ねておくべきだったかな……)
「……………………おーい」
母性巫女 「はーい?」
母性巫女 「……あ」
母性巫女 「しまった……」
……ドシン
母性巫女 (下の方から、何かが落ちる音がした……)
「………………おおーい!」
ドス ドス
ドス ドス ドス ドス
母性巫女 (上ってくる)
ドス ドス ドス ドス
ドスドスドスドス
「……………おおーい」
母性巫女 (速い。どうしよう、待ってみま……)
母性巫女 「ぅぷ……!?」
ガクン
母性巫女 (何これ……)
母性巫女 (ねばっこくて、怖い……お腹のそこが重たい……)
母性巫女 (声がこっちに向けられた途端……声で攻撃されてるみたい……)
「…………おおーい」
「………おおーいぃ……ひひひひ」
ドスドスドスドス
ドドドドドドドド
「…フヒッ、ハヒッ」
「……おおーい……クヒッ」
ハッ ハッ ハッ ハッ
フガ フガ フガ フガ
母性巫女 (粗い息遣い、足音、声……全部が怖い)
母性巫女 (駄目……逃げ……立てない。くらくらする、視界が揺れて……逃げなきゃ)
『キャハハハハハ……』
母性巫女 「!?」
ゾクン ヘタリ
母性巫女 (ああ、今度は、よく知ってる声……)
ドドドドド
「…おおーい」
母性巫女 (そうだ、この感じ……)
母性巫女 (絶対にこたえちゃ駄目だったのね……)
ドドドドドド
「おおーい」
スタ
??? が現れた!
??? 「まま……!」
母性巫女 「?」
母性巫女 (子供の声……)
??? 「ま……」
幼女魔王? 「間に合った!」
母性巫女 「……N」
幼女魔王? 「ち、違う、わたし……」
???2 「おしゃべりの暇は無いわよ、A!」
スタ
???2 が現れた!
???2 「美触手……」
幼女魔王?2 「キャアァァムヒア!」
母性巫女 「Nが二人……」
シュルルルル
美触手 「……クュルルルルッ」
母性巫女 「! これは……」
幼女魔王?2 「行け、美触手!」
幼女魔王?2 「あいつを追い返して!」
美触手 「クュルルォォーー!」
シュルルルル
母性巫女 (綺麗な生き物が、声が近づいてくる闇へ猛然と突っ込んでいった……)
シュルルルル
美触手の声 「クュルルルル……!」
「おおー……ブギィイイイイ!」
…………シイン
母性巫女 「…………」
母性巫女 (……闇の中で悲鳴が上がって、それきり静かになった)
幼女魔王? 「……だ」
幼女魔王A 「だいじょうぶ?」
母性巫女 「え? ええ」
母性巫女 「ありがとうございます」
ニコ
幼女魔王A 「……あ。うん……」
モジ モジ
ポッ
母性巫女 (なんだかこの子、いつものNよりさらに幼いような……)
幼女魔王?2 「……ったく。Tの様子を見に行った美触手が、変なのがいるって言うんで来てみたら」
幼女魔王?2 「なかなか、グッドタイミングだったみたいね」
母性巫女 (こっちのNは、少し頼もしい感じがする)
母性巫女 (……どうして帽子を被っているのかしら)
幼女魔王?2 「初めての子……よね? 今までとずいぶん違うのね」
幼女魔王M 「私は幼女魔王M。Mの字を持つ、モンスター使いの幼女魔王よ」
幼女魔王M 「そしてこっちは、幼女魔王A」
幼女魔王M 「Aの字を持つ、見ての通りの甘えん坊ね」
幼女魔王A 「あ……う……」
モジ モジ
幼女魔王A 「けが……無い?」
母性巫女 「はい」
母性巫女 「助けてくれて、ありがとうございます」
幼女魔王A 「わ、わたしなんて、何も……ないよ……」
幼女魔王A 「えへ、へ……」
モジ モジ
幼女魔王M 「へえ、Aがこんなに早く笑顔を見せるなんて珍しいね」
幼女魔王M 「あなた……は、きっと私なんでしょうけど、どの字を持っているの?」
母性巫女 「ええと……」
幼女魔王M 「……まさか、奴らの側じゃないでしょうね」
母性巫女 「奴ら?」
幼女魔王A 「棺の死神とか、今の、大きな悪魔とか、嫌われ者の毛玉とか……」
幼女魔王M 「…………」
母性巫女 「ち、違いますよ」
母性巫女 「……そうだ、K! K、かなあ……」
幼女魔王A 「K!?」
母性巫女 「あ、えっと……」
幼女魔王M 「いえ、ごめんなさい大声を出して。ちょっと驚いたものだから」
幼女魔王M 「K……Kね……」
母性巫女 「?」
幼女魔王M 「それで、何の幼女魔王でKなの?」
母性巫女 「え?」
幼女魔王M 「私はモンスターを使う幼女魔王でM」
幼女魔王M 「その子は甘えん坊の幼女魔王でA」
幼女魔王M 「あなたにもあるはずよ、私たちに無い字の由来が」
母性巫女 「ええーっと」
母性巫女 「きゅ、九官ちょ……」
幼女魔王A 「黒髪……」
母性巫女 「え……」
幼女魔王M 「なるほど」
幼女魔王M 「黒髪ね」
幼女魔王M 「たしかに私たちとの目だった違いはそこくらいのものよね」
ツル ペタン
母性巫女 「……はい」
プルン バイン
幼女魔王M 「それで、K」
幼女魔王M 「あなた、下から来たの?」
母性巫女 「ええ……」
幼女魔王M 「下で生まれたってこと?」
幼女魔王M 「もしかして、棺の死神の牢獄より下から……!?」
母性巫女 (死神の牢獄……)
母性巫女 「いえ」
母性巫女 「気づいたら下の牢屋の中にいました」
幼女魔王M 「そっか。まあ、そうよね」
幼女魔王M 「……あの、ところで、Tはどこ?」
母性巫女 「え……」
幼女魔王M 「卵スライムの卵を孕みし幼女魔王よ」
幼女魔王M 「お腹が大きいの」
幼女魔王M 「下から新しい子の気配がするって、出て行ったのよ」
幼女魔王M 「ほら、あの子生まれる系のことに敏感みたいで」
幼女魔王M 「会わなかった?」
母性巫女 「…………」
母性巫女 「会いました」
…………
…………
幼女魔王の塔 下層階段
ザ ザ ザ
母性巫女 (二人のNに、死神の牢獄でのことを話した……)
幼女魔王M 「そうか、とうとうTもいっちゃったのね」
幼女魔王A 「クスン……」
母性巫女 「ごめんなさい、何もできなくて」
幼女魔王M 「あやまること無いわよ」
幼女魔王M 「きっとあの子は幸せな方だと思うから」
母性巫女 「幸せ……?」
幼女魔王M 「でも困ったなあ」
幼女魔王M 「あの子、私たちの中でも頭が良い方だったから」
母性巫女 「……………」
ポワ ポワ ポワ
幼女魔王T 『私はあんまり難しいことを考えることがあんまり、あんまりなの!』
ポワ ポワ ポワ
母性巫女 「…………」
ザ ザ ザ ザ……
幼女魔王M 「もう少しで上に着くよ」
幼女魔王M 「詳しいことはそこで話そ」
母性巫女 「はい」
母性巫女 (上。幼女魔王の塔。増えていくN……)
母性巫女 (もしかして、ここはNの……)
幼女魔王A 「……あ、うあ」
母性巫女 「?」
母性巫女 「どうしました? N……A」
幼女魔王A 「あの、わたし、あのね……」
幼女魔王A 「上についたら、まま、上、あの、案内……する……したい……」
母性巫女 「あら」
キュン
母性巫女 「お願いします」
母性巫女 「いろんなところ、教えてくださいね」
幼女魔王A 「ぅ……うん!」
母性巫女は 幼女魔王Aの 手を握った!
幼女魔王A 「!!!」
幼女魔王A 「あぅ、あ……」
ポー……
幼女魔王M 「恥ずかしがりのAだけじゃ大変でしょ。私も付き合うからね」
テク テク
幼女魔王A 「あのね、あのね、私のお部屋を一番に見せてあげる」
幼女魔王A 「大事な人にしか見せてあげないの……」
母性巫女 「あら、ありがとうございます」
幼女魔王A 「えへへ……」
ギュ
幼女魔王M 「本当に珍しいね。Aがそこまで積極的になるなんて」
幼女魔王M 「だけど、城の案内はあとだね。先に幼女魔王会議があるから」
幼女魔王A 「あ……うん」
母性巫女 「幼女魔王会議」
幼女魔王M 「この塔が出来た頃から定期的にひらかれているという、大事な会議だよ」
幼女魔王M 「まあ、このところはずっと……」
??? 「……おおっと、そこの三人、そこで止まってもらおうか!」
母性巫女 「!」
???1 が現れた!
???2 が現れた!
???3 が現れた!
???たち 「ふっふっふ」
???たち 「ここから先、簡単には通さないぞ!」
母性巫女 (新しいNが三人、私たちをを通せんぼしている……)
幼女魔王M 「……あんたたち、またやってるのね」
幼女魔王M 「悪いけど、今は……」
???1 「私は幼女魔王F!」
幼女魔王F 「Fの字を持つ幼女魔王!」
幼女魔王F 「幼女魔王……フェニックス!」
ビシィ
母性巫女 (……ん?)
???2 「そして私は幼女魔王H!」
幼女魔王H 「Hの字を持つ幼女魔王!」
幼女魔王H 「幼女魔王……フェニックス!」
ビシィ
母性巫女 「えっ……」
???3 「最後に私は幼女魔王W!」
幼女魔王W 「Wの字を持つ幼女魔王!」
幼女魔王W 「幼女魔王……」
幼女魔王W 「フェニックス!!」
ズバアン
母性巫女 「…………」
幼女魔王W 「私たちフェニックス隊は塔の未来のために頑張っている、選ばれた者しか入れないすごい隊!」
幼女魔王H 「仲良しでコンビネーションがすごい!」
幼女魔王F 「でも頑張ってるからすごいお腹がすく!」
幼女魔王WHF 「ここを通りたかったら、何かお菓子をください!」
母性巫女 「お菓子……そういえば、箒少女から貰ったスルメガムがボケットに」
母性巫女 (……無い。お城にいたときの持ち物が無くなっている……?)
幼女魔王M 「K、相手しなくて良いよ」
幼女魔王M 「WHF、会議がもうすぐ始まるよ。あんたたちも出席者でしょ」
幼女魔王M 「さっさとそこをどいて……」
幼女魔王WHF 「うわーん、お菓子ちょうだい! お菓子ちょうだい!」
ジタバタ ジタバタ
母性巫女 (床を転がって駄々をこねだした)
母性巫女 (ああ、泣いてる、何とかしなきゃ)
キュン
母性巫女 「あの、よかったら……」
幼女魔王M 「仕方ないわね、あの手を使いましょう」
母性巫女 「?」
幼女魔王M 「あんたたち」
幼女魔王WHF 「お菓子ぃ、お菓子お菓子お菓子ぃ!」
ジタバタ ジタバタ
幼女魔王M 「……これから覇権を握ることになる魔法ゲーム器は何か、教えていただけるかしら」
幼女魔王WHF 「お菓……」
幼女魔王WHF 「……!!」
ピタ
母性巫女 (一瞬で泣き止んだ……!)
幼女魔王W 「ふっふっふ……」
幼女魔王H 「次世代の遊び道具を模索し続ける私たちフェニックス隊にとっては、その程度の問題……」
母性巫女 (そういう隊なのね……)
幼女魔王F 「オチャノコサイサイよ!」
母性巫女 (オチャノコ……?)
幼女魔王W 「これから覇権を握る魔法ゲーム器、そう、それは……!」
幼女魔王H 「ニンシンドーsbitchよ!」
幼女魔王F 「ペニーステーション4よ!」
幼女魔王W 「セイガサカーンよ!」
母性巫女 「…………?」
幼女魔王H 「ちょっと、何でそうなるのよ。sbitchしかありえないでしょう!」
幼女魔王H 「ペニステなんて見栄えばかりにこだわって中身すっかすかのゲームしか無いじゃない!」
幼女魔王H 「sbitchは携帯魔法ゲーム器としての運用も可能なのよ!」
幼女魔王H 「乙女ゲーと劣化美少女ゲーまみれのペニーステーションバイタと合わせてかかってきても、sbitchの足元にも及ばないわ」
幼女魔王F 「何を言っているの! 次世代の遊び道具を追求する私たちが推すにふさわしいのはペニステよ!」
幼女魔王F 「sbitchの性能では次世代の領域であるVR機能に対応できるとは思えない!」
幼女魔王F 「そして面白いゲームだってたくさん出ているわ! SO5とかFF15とかFF15とかFF15とか!」
幼女魔王F 「たしかにヘボゲーもたまにあるけれど、それはつまり、それだけたくさんのゲームが出ているということ!」
幼女魔王F 「玉石混交は覇権の器ゆえのこと!」
幼女魔王W 「いいえ待って、XXXboxやANARIboxを語らずしてどうするというの!」
ガミガミ ギャーギャー
母性巫女 「何の話をしているのか全然分からない……」
幼女魔王A 「あのね、私、分かるよ。聞きたい?」
母性巫女 「あら、それじゃあゆっくりしているときに教えてもらえますか?」
幼女魔王A 「うん……! えへへ」
幼女魔王M 「さあ、今のうちに行きましょう」
母性巫女 「え、でも……三人がせっかく答えを……」
幼女魔王M 「大丈夫よ」
幼女魔王M 「答えなんて何もない質問なのだから」
母性巫女 「そうなんですか?」
幼女魔王M 「ここはもう、ずっとそういうところ。ここにあるどんな問題にも、答えなんて無い」
幼女魔王M 「誰も答えてくれやしない。誰も答えられやしない」
母性巫女 「……?」
幼女魔王M 「すぐに分かるわ」
幼女魔王M 「……WHF、あんたたち、会議が始まる頃にはちゃんと来なさいよね」
幼女魔王WHF 「ギャーギャー、ワーワー」
幼女魔王M 「……フン」
幼女魔王M 「行くわよ、A、K」
テク テク テク
母性巫女 「あ、ちょっと……」
幼女魔王A 「まま、行こう」
母性巫女 「……は、はい」
テク テク テク テク
………
幼女魔王の塔 円形広間
ザ ザ ザ ザ
コツ コツ コツ
母性巫女 「ここは……お城の広間?」
母性巫女 (Nの城とはつくりが全然違う)
母性巫女 (暗い無骨な石畳。広くて寒々しい)
幼女魔王A 「まま、上を見ちゃいけないの」
幼女魔王A 「天井に張り付いた逆さまお化けが、暗闇を吐きながら、誰かと目が合うのをじっと待っているのよ」
母性巫女 「あら」
幼女魔王M 「ただの思い込み。逆さまお化けなんていないの」
幼女魔王M 「高すぎて天井が見えないだけ」
母性巫女 「あら?」
幼女魔王A 「……い、いるもん。本当だもん」
幼女魔王M 「はいはい」
幼女魔王M 「早くKに教えてあげなさい。ここは何?」
幼女魔王A 「う、うん」
幼女魔王A 「ここはね、ええとね、広間なの」
幼女魔王A 「ここから廊下がいっぱいあってね、みんなの部屋に繋がっててね、みんなでお菓子を食べたりね、お話ししたりね、遊んだりね、ええとね……」
母性巫女 「はい。はい……」
コツ コツ コツ
??? 「あら、珍しいわね」
幼女魔王C 「M、A、あなたたちが一番だなんて」
幼女魔王C があらわれた!
母性巫女 (また新しいN……)
母性巫女 (Aと同じくらい小さいけれど、どこか落ち着いている)
幼女魔王C 「……?」
幼女魔王C 「ずいぶん大きい子がいるわね」
幼女魔王C 「そうは見えないけれど、新しい私たちなのかしら?」
幼女魔王M 「さすがC、その通りだよ」
幼女魔王M 「この子は幼女魔王K」
母性巫女 「ええと、よろしく、お願いします……」
幼女魔王C 「……!」
幼女魔王C 「そんなはずは……」
母性巫女 (Kではまずいことでもあるのかしら)
母性巫女 (というか私、幼女魔王Kじゃ無いし……)
幼女魔王M 「そう思うのも分かるけれど……どうしてそう思うのかはよく分からないけれど」
幼女魔王M 「問題は無いはずだよ」
幼女魔王C 「……そうね。よく考えてみれば、そういえばKはずっと空いていたわね」
幼女魔王C 「でも……いいえ、きっと気のせいね」
幼女魔王C 「よろしくお願いするわ、K」
幼女魔王C 「私は幼女魔王C。クールな幼女魔王よ」
母性巫女 「はい。よろしくお願いします……」
幼女魔王C 「本当に珍しい子ね」
幼女魔王C 「髪が黒いのなんて、今までいたかしら」
幼女魔王M 「私が知っている限りでは、ないね」
幼女魔王M 「Rあたりなら分かるかもしれないけれど、まだ病気中だっけ」
幼女魔王C 「ええ、日に日に弱っていくわ。次はあの子なのかもしれないわね」
幼女魔王M 「そう。寂しくなるね……」
母性巫女 「R……?」
幼女魔王A 「料理が得意な幼女魔王」
幼女魔王A 「ずっと前からここに住んでいるの。でも、最近調子が悪いみたい」
母性巫女 「そうなんですか。ありがとうございます、A」
幼女魔王A 「ど、どういたしまして」
幼女魔王A 「えへへ……」
幼女魔王C 「Tの姿が見えないのだけど」
幼女魔王C 「今日の幼女魔王会議について、少し話しておきたかったのに」
幼女魔王M 「ああ……あの子はいったよ」
幼女魔王C 「!」
幼女魔王C 「……そう、分からないものね。予兆はなかったと思ってた」
幼女魔王C 「私が気づけなかっただけかしら」
幼女魔王M 「私も分からなかった」
幼女魔王M 「新しい子の気配を感じるって私に言って、下へ行ったんだ」
幼女魔王M 「そして、それっきり」
幼女魔王M 「最期はこのKが立ち会ったんだよ」
幼女魔王C 「そう。あなたが……」
母性巫女 「はい」
幼女魔王C 「それは幸せなことね」
母性巫女 「幸せ……」
幼女魔王C 「誰にも知られずに生まれること」
幼女魔王C 「誰にも知られずに生きること」
幼女魔王C 「誰にも知られずに死んでいくこと」
幼女魔王C 「そんなの、とても悲しいじゃない」
幼女魔王C 「そう、いったのね、T」
幼女魔王C 「……Tが感じた新しい子は、では、あなただったのかしら」
母性巫女 「それは……たぶん」
幼女魔王C 「まあ、生まれたてで分かるはず無いわよね。ごめんなさい」
幼女魔王C 「でも運が良かったわね。下はとても危険な場所なのよ」
幼女魔王C 「生まれてすぐにいってしまうということにも、なりかねなかった」
母性巫女 (……小さな棺、不気味な男の人の声)
母性巫女 (MとAが来てくれなかったら、私、あの声の主に……)
母性巫女 「うっ……」
ゾクン ガク
幼女魔王A 「まま……!」
幼女魔王M 「危ないところだったんだよ」
幼女魔王M 「あの声に捕まりかけていたんだ」
幼女魔王M 「あと少し声との距離が近かったら、連れていかれていたかもしれない」
幼女魔王C 「そうだったの……」
幼女魔王C 「ごめんなさい。そんなつもりは無かったけれど、とても恐ろしいことを思い出させてしまって」
母性巫女 「大丈夫です……」
幼女魔王C 「……ねえ、K」
幼女魔王C 「もしかしてだけど、あなたは」
幼女魔王C 「知らない私、ではないの?」
母性巫女 「知らない……?」
幼女魔王C 「本当ならこの塔にいない私」
幼女魔王C 「生まれるはずのなかった私」
母性巫女 (生まれるはずのなかった?)
幼女魔王A 「…………」
幼女魔王M 「そうか。たしかに、そう言われるとそう見えなくもないかな」
母性巫女 「…………」
母性巫女 (幼女魔王の塔……何人ものN……ワタシたち……知らないワタシ……)
幼女魔王A 「まま……」
母性巫女 (甘えん坊)
幼女魔王M 「だとしたら、私たちが普段いかないような場所にいたのも納得できる」
母性巫女 (モンスターを操る)
母性巫女 (WHFは、おもちゃで遊ぶのが好き……)
母性巫女 (やっぱり、この塔は……)
グチョ ヌジュジュ ヌップヌップ
ドプドプドプ
母性巫女 「!?」
母性巫女 (嫌な音が広間に鳴り響いた)
幼女魔王C 「……予鈴ね」
幼女魔王C 「続きは後にしましょう」
幼女魔王C 「K、これから幼女魔王会議が始まるわ」
幼女魔王C 「あなたも参加してちょうだい」
母性巫女 「はい」
母性巫女 (会議……)
ゾロゾロゾロ
ガヤガヤガヤ
幼女魔王たち 「おはよう」
幼女魔王たち 「こんにちは」
幼女魔王たち 「こんばんは」
幼女魔王たち が現れた!
幼女魔王D 「今日もクソみたいな一日になりそうね」
幼女魔王E 「さっさと終わらせましょう。はやくお風呂場での石鹸遊びに戻りたいわ」
幼女魔王P 「私も、孵化マラソンに戻りたい」
幼女魔王L 「今日のおやつは何かしら。Lサイズのパフェ? すごく大きなLサイズのパフェ?」
ザワ ザワ
幼女魔王G 「こんにちは、C。さすが、早いね」
幼女魔王G 「連続一番乗り記録は更新中というわけだ」
幼女魔王C 「おはよう、G。今日で途切れたわ、四番目」
幼女魔王G 「驚いた。変なことでも起きるんじゃないか」
幼女魔王G 「たとえば黒髪で背の高い私が現れるとか」
母性巫女 「…………」
母性巫女 (この子……)
幼女魔王C 「それだけじゃないわ」
幼女魔王C 「Tがいってしまった」
幼女魔王G 「おや……」
幼女魔王G 「それではいよいよ袋小路」
幼女魔王C 「いつものことよ」
幼女魔王C 「M、お願い」
幼女魔王M 「ええ」
幼女魔王M 「……死の……先を往く者たちよ!」
ボワン
イボ触手 「プチュプチュ」
ドリル触手 「ドルル」
ヒトデ触手 「チュパチュパ」
鎧触手 「メガメガ」
触手たち が現れた!
触手たち は なれた手つきで作業を始めた!
なんと! 広間に不細工な円卓が現れた!
幼女魔王M 「魂の束縛は潰えた。この場に……」
幼女魔王C 「ご苦労様、ありがとう」
幼女魔王C 「それでは私たち、席について」
幼女魔王たち 「はーい」
テク テク テク
ストン ストン ストン
母性巫女 (床に座った……椅子は無いのね……)
幼女魔王A 「まま、こっち、お隣……」
母性巫女 「あら、はいはい」
テク テク ストン
幼女魔王C 「今日はこれで……」
トタタタタタタ
幼女魔王W 「うおおおお」
幼女魔王H 「間に合ったあ」
幼女魔王F 「セーフ、セーフ!」
ストン ストン ストン
幼女魔王C 「……全員かしら」
幼女魔王C 「では、私たち、幼女魔王会議を始めましょう」
幼女魔王の塔 円形広間
いびつな円卓
幼女魔王J 「モグモグ……やっぱり味は落ちてるわね」
幼女魔王R 「お料理担当だったRがいないと、こうなるわよね」
モシャ モシャ
幼女魔王W 「結局あれよね、花札よね」
幼女魔王H 「突き詰めていくとそうなるわよね」
幼女魔王F 「流行って回帰するのよね」
ペチャクチャ
幼女魔王I 「ハア、ハア……ああ、素敵な気持ち悪さ」
幼女魔王I 「この口でヌチョヌチョいじめられちゃったらどうしよう……」
ヒトデ触手 「チュパチュパ」
ウニョウニョ
幼女魔王G 「Oは欠席か」
幼女魔王C 「男のミルクを見つけるまで帰って来ないと言って出て行ったきりだけど」
幼女魔王M 「いま思えば、止めるべきだったのかもしれないね」
ペチャクチャ
幼女魔王A 「まま、私のお菓子、一緒に食べよ……」
母性巫女 「あら、ありがとうございます」
母性巫女 「じゃあ私のお菓子も一緒に食べましょうね」
キャッキャッ ウフフ
ペチャ クチャ
ダラダラ ダラダラ ダラダラ ダラダラ
幼女魔王C 「……待って」
幼女魔王C 「これ、たぶん会議じゃないわ」
幼女魔王C 「やり直しましょう」
幼女魔王たち 「賛成」
ピタ
幼女魔王C 「……コホン」
幼女魔王C 「では、会議を始めましょう」
幼女魔王たち 「はーい」
…… …… ……
幼女魔王S 「ふうん、今日は焼き菓子なのね……」
幼女魔王J 「モグモグ……」
※
淫魔幼女のアイテムメモ
■プレミアムステップアップサイコロ
ノーマルサイコロに比べ、三連続で同じ目の出る確率が1%も高いサイコロ。
一個につき白貨6000枚。一度使うと消滅する。
購入するたびに、緑の薬と赤の薬を8個ずつ貰えるぞ。
幼女魔王C 「ふむ……どうしてかしらね、同じことの繰り返しになってしまう」
幼女魔王C 「何がいけないというのかしら」
幼女魔王M 「頭脳派のTが欠けたのは痛いね」
幼女魔王G 「嘆いてもいられない。残った私たちで頑張ろう」
幼女魔王C 「そうね」
幼女魔王C 「そうだわ、今日は新しい私がいるのよ」
幼女魔王C 「なので、自己紹介から始めましょう」
幼女魔王M 「……うん、斬新な切り口なんじゃない?」
幼女魔王G 「さすがの発想力だね」
幼女魔王C 「では、Aから順番にお願い」
幼女魔王A 「ふぇっ……!?」
幼女魔王A 「あ、あの、あの……あの……あの……」
幼女魔王たち 「…………」
幼女魔王A 「ま、まま……」
母性巫女 「大丈夫、大丈夫ですよ」
幼女魔王A 「……幼、幼女魔王A」
幼女魔王A 「Aの、甘えん坊の、幼女魔王……」
幼女魔王A 「です」
幼女魔王C 「幼女魔王C。Cの字を……次からここは省略で良いかしら、クールな幼女魔王よ」
幼女魔王D 「幼女魔王D。だんご虫の幼女魔王」
幼女魔王E 「幼女魔王E。エロスの幼女魔王」
幼女魔王F 「フェニックス!」
幼女魔王G 「幼女魔王G。ゲーム大好きの幼女魔王だ」
幼女魔王H 「フェニックス!」
幼女魔王I 「幼女魔王I。いじめられたい幼女魔王」
幼女魔王J 「幼女魔王J。上下貫通されたい幼女魔王」
幼女魔王C 「Kは最後でお願いね。お願い、L」
幼女魔王L 「K……!?」
幼女魔王L 「……コホン」
幼女魔王L 「L。Lサイズのパフェを友だちと食べたい幼女魔王」
幼女魔王M 「M。モンスターを使う幼女魔王」
幼女魔王P 「プニマン……プニットマンスター大好き。Pよ」
母性巫女 (プニマン……?)
幼女魔王S 「S。処女だけど寂しいから人型のしもべを手に入れて甘えたい幼女魔王」
幼女魔王W 「そしてフェニックス!」
幼女魔王C 「ありがとう、私たち」
幼女魔王C 「では、K」
母性巫女 「はい」
母性巫女 (ええと……)
母性巫女 「幼女魔王K……です。黒い髪の幼女魔王」
母性巫女 「かなあー……」
幼女魔王たち 「K……!?」
幼女魔王S 「……って、よく考えたらKで驚くことなんて無いわよねえ?」
幼女魔王D 「どうして反応しちゃったのかしらねえ?」
ザワ ザワ
母性巫女 「…………」
幼女魔王G 「うーん……Kか」
幼女魔王C 「やはり引っかかるのかしら、G」
幼女魔王G 「君もそのようだね」
幼女魔王G 「何と言うか、Kがどうこうではなくて」
幼女魔王G 「それ以前に、根本的に私たちと違う存在というような気がしてね」
幼女魔王G 「そう、あれだよ……」
幼女魔王M 「知らない私?」
幼女魔王G 「それだ」
??? 「つまり、オレの側の存在ということか?」
??? が現れた!
幼女魔王たち 「!!!!」
幼女魔王J 「夜の腐婦……」
幼女魔王L 「星を見る風婦……」
幼女魔王C 「……!」
幼女魔王C 「驚いた、Y。あなたの方から降りてくるなんて」
??? 「胸がざわついて、静かに星も見れなくてね」
??? 「こんばんは……K? だっけ」
幼女魔王Y 「オレは幼女魔王Y」
幼女魔王Y 「夜の湖畔に淀む風であり、幼女魔王でないものだ」
母性巫女 「は、はあ……」
幼女魔王Y 「魔道の流線、無情の風、黒い花飾り、オレのことは何と呼んでも構わない」
幼女魔王Y 「オレは何者でもないのだから」
幼女魔王Y 「だが、ここの子らとは違う岸に立つことを示すため」
夜の風 「夜の風とでも名乗ろうか」
母性巫女 (この子……人……見た目はNだけど、まったく別のものみたい)
母性巫女 (あっ、髪から覗く耳がロバの耳のよう……)
幼女魔王C 「Y………ウッフ……コホンッ………夜の風」
幼女魔王C 「あなたも会議に参加してくれるのかしら」
幼女魔王Y 「鐘は鳴ったのだろ」
幼女魔王Y 「それに、この会議に意味が無いことは、お前たちも知っているはずじゃないか」
幼女魔王Y 「最も重要な一人を欠いてしまっていては」
幼女魔王C 「重要な一人」
幼女魔王C 「Nのことかしら」
幼女魔王H 「そういえばそうね」
幼女魔王F 「Nがいなければ、会議がどうなろうと何にもならないわよね」
母性巫女 (N……)
幼女魔王W 「何か良い案があるっていうの、夜のフェニックス」
幼女魔王Y 「さあ? オレはそこのKに用があってきただけさ」
夜のフェニックス 「夜の風とよべ」
夜の風 「それだけは何か嫌だ」
幼女魔王C 「……たとえ意味が無いとしても」
幼女魔王C 「いつか意味が出てくるときのために、これは続けておかなくてはいけない気がするの」
夜の風 「そうか、好きにするべきさ。この塔についての権利はお前のものなのだから」
夜の風 「さて、オレにはせいぜい見守ってやることしかできないが、では、一つ余計なお世話をしてやろう」
夜の風 「会議とやらが終わったら、K、オレの部屋においで」
夜の風 「幼女魔王の塔について話したいことがある」
夜の風 「知らない者同士で」
母性巫女 「知らない者……」
幼女魔王C 「やっぱりこの子は、あなたと同じ側なの?」
夜の風 「オレにお前の答えを求めるな」
幼女魔王C 「…………」
幼女魔王A 「………だ」
幼女魔王A 「駄目!」
幼女魔王M 「A」
幼女魔王A 「会議が終わったら、ままは私と一緒。私が、塔を案内するの」
夜の風 「そうかい」
夜の風 「だったら、一番にオレの部屋へ案内すると良い」
幼女魔王A 「……!」
幼女魔王A 「で、でも、道が分からない……」
幼女魔王G 「君たちの部屋への道は崩れて、私たちでは通れないんだ」
夜の風 「……どうにかすれば良い」
夜の風 「できなかったらそれで良い」
幼女魔王A 「…………」
夜の風 「お前たちが望むかどうかだ」
夜の風 「好きにすれば良いさ」
キイイイ
母性巫女 (! ……魔法?)
キイイイ ニョンニョンニョン
夜の風 「じゃあな。願わくば、またあとで」
ニョンニョンニョン
バシュン
母性巫女 「消えた……」
シイン
母性巫女 「…………」
幼女魔王M 「……さすが、知らない私」
幼女魔王M 「何を言っているかさっぱり分からなかった」
幼女魔王C 「そうね」
幼女魔王C 「……会議に戻りましょう」
幼女魔王G 「何を話そうか」
幼女魔王L 「何でも良いわ。みんなでLサイズのパフェを食べながら話しましょう」
幼女魔王P 「……早くプニマンに戻れるなら、どうでも良い」
幼女魔王C 「まずは、Tのことかしら」
幼女魔王W 「Tがどうしたって言うの?」
幼女魔王W 「そう言えば、姿が見えないけれど」
幼女魔王C 「M」
幼女魔王M 「いってしまった」
幼女魔王M 「立ち会ったのが、このKなの」
幼女魔王M 「ね?」
母性巫女 「はい……」
幼女魔王P 「! ……ふうん」
幼女魔王S 「私より後に生まれたくせに……複雑だわ」
幼女魔王S 「逝き遅れること、これで何人目かしら」
幼女魔王G 「前向きにとらえよう。いくことが不幸なわけじゃ無い」
>>137
Rが出席してる件について
幼女魔王G 「それで、Kのことだ」
幼女魔王C 「そうね」
幼女魔王C 「あら……G、あなた」
幼女魔王G 「何だい?」
幼女魔王C 「いえ、些細なことなのだけれど、あなたって、物を食べるときはいつも左手を使ってなかった?」
幼女魔王C 「今は右手で食べている」
幼女魔王G 「そうだったかな?」
幼女魔王G 「まあ、本当に些細なことさ。LボタンとRボタンを間違えることもある」
幼女魔王G 「なあ、P?」
幼女魔王P 「ゲーム大好きとしてありえないんですけど」
幼女魔王G 「やれやれ、君はいつも通りだね」
幼女魔王C 「コホン……さて、新しい私である、Kのことだけれど」
幼女魔王W 「私じゃ無いって、夜のフェニックスが言っていたわね」
幼女魔王H 「幼女魔王じゃない幼女魔王K……つまり」
幼女魔王F 「偽者か!」
幼女魔王C 「偽者では無いわ」
幼女魔王C 「知らない私よ」
幼女魔王W 「知らない私って何だろう。忘れた」
幼女魔王H 「知らない私が幼女魔王K?」
幼女魔王H 「それって、つまり」
幼女魔王F 「偽者か!」
幼女魔王C 「違うわ」
幼女魔王W 「じゃあ本物なのね。本物の幼女魔王K」
幼女魔王H 「本物の幼女魔王Kが偽者じゃ無い知らない私?」
幼女魔王F 「じゃあどっちが本物なのよ」
幼女魔王C 「…………」
幼女魔王C 「どっちなのかしら」
幼女魔王たち 「うーん……?」
母性巫女 (これが、幼女魔王会議……)
母性巫女 「あのう、すみません……」
幼女魔王G 「何だい」
母性巫女 「はい。実は、幼女魔王KというのはTにつけてもらった名前で」
母性巫女 「私は……」
幼女魔王H 「偽者か!?」
母性巫女 「いえ……あ、そうですね、ええと、もともと幼女魔王Kではなくて」
母性巫女 「母性巫女という名前で……」
幼女魔王たち 「!!!」
幼女魔王たち 「!!!!!!」
ザワッ
母性巫女 「ひっ……!?」
母性巫女 (一斉に身を乗り出してきた!)
幼女魔王たち 「…………ゴクリ」
母性巫女 「ご、ごめんなさい、言い出せなくて……」
幼女魔王たち 「…………」
母性巫女 (みんな同じ表情で、目だけを爛々と光らせたまま動かない)
幼女魔王A 「………わ」
幼女魔王A 「私の!」
ダキッ
母性巫女 「A?」
母性巫女 (腕にしがみついてきた……)
幼女魔王A 「私のままだもん、私が最初に見つけたんだもん!」
幼女魔王S 「ずるい! 母性巫女は私の……私たちのものでしょ!」
幼女魔王I 「そうよ、あなただけがお尻ペンペンしてもらえるなんてずるい!」
幼女魔王P 「消えなさいよ、あなたたち!」
幼女魔王P 「ねえ母性巫女、私しか持ってない伝説のプニマンをあげるわ。私の母性巫女になってくれたら、どんなプニマンでもあげる」
ギャア ギャア
母性巫女 「あ、あの……」
幼女魔王M 「お、落ち着きなよ!」
幼女魔王C 「ええ、そうねっ……母性巫女がここに居るなんて、ありえないはず……!」
幼女魔王G 「ううむ。彼女が知らない私なのだとしたら、ありえないことも無いのでは?」
幼女魔王C 「でも、母性巫女よ……そんなこと……」
幼女魔王H 「じゃあ、偽者か!」
幼女魔王C 「……そ」
幼女魔王C 「そうよ! きっと、そう。偽者に違いない」
幼女魔王C 「彼女はKで、母性巫女では無い……そう、きっと、ええ、そう……」
幼女魔王W 「だとしたら、知らない私で幼女魔王Kなの?」
幼女魔王F 「母性巫女じゃ無くて幼女魔王Kで、でも本物は知らない私で幼女魔王Kじゃ無い?」
幼女魔王たち 「…………」
幼女魔王たち 「……うーん?」
母性巫女 (……もう一度、母性巫女だと名乗りたいけれど)
母性巫女 (同じことの繰り返しになりそうで言えない)
母性巫女 (どうしよう)
幼女魔王C 「……そうだわ」
幼女魔王C 「Nよ」
幼女魔王C 「Nなら全部分かるはず」
幼女魔王G 「たしかに。彼女に聞けばすべて分かるはずだ」
母性巫女 (N……)
幼女魔王M 「でも、無理な話だよ。あの子はもうずっとこの会議に姿を見せていない」
幼女魔王M 「議長のくせに」
幼女魔王M 「どうして彼女がNなのか、私たちに忘れられてしまうほどに」
幼女魔王W 「Nって何の幼女魔王だったっけ」
幼女魔王I 「なめこ」
幼女魔王D 「なめくじ」
幼女魔王S 「にしんの缶詰」
幼女魔王L 「にゅるっと出てくる歯磨き粉」
幼女魔王H 「ふぇにっくす」
幼女魔王J 「ねいきっど」
幼女魔王C 「どれも違っていそうね」
幼女魔王C 「ニューだったかしら」
幼女魔王G 「眠り姫では?」
幼女魔王M 「ほらね、みんな分からない」
幼女魔王C 「というか、会議の場以外でも、もうずっと彼女の姿を見ていない気がするわ」
幼女魔王C 「Nはどこにいるのかしら」
幼女魔王E 「浴場では見ていないわ」
幼女魔王P 「知らない」
幼女魔王F 「N……そうか、偽者か!」
幼女魔王L 「その話題はひとつ前に終わっているのよ、F」
幼女魔王G 「そうか。このところ会議がまったくまとまらなかったのは、彼女がいないからか」
幼女魔王M 「正直まとめきれていた気もしないけど、やはり居ないとまずいのよ」
幼女魔王C 「Nを探すべきとういうことかしら」
幼女魔王C 「Nを探しましょう」
幼女魔王たち 「賛成」
母性巫女 (Nがいない……)
母性巫女 (みんなが言っているNは、私の知っているNのことなのかしら)
幼女魔王C 「会議が終わったら、Nを探しに行くのはどうかしら」
幼女魔王G 「それなら、いくつかの班に分けた方が良いんじゃないかな」
幼女魔王たち 「賛成」
幼女魔王M 「美触手にも手伝ってもらうことにするわ」
幼女魔王A 「……ままと一緒に遊ぶって約束したのに」
母性巫女 (塔の案内がいつの間にか遊びになっている……)
幼女魔王C 「では班を決めて、準備をしてから第一次N探し隊の活動を開始します」
…………
母性巫女 (幼女魔王会議が終わった……)
幼女魔王W 「フェニックス!」
幼女魔王H 「フェニックス!」
幼女魔王F 「フェニックス!」
幼女魔王E 「石鹸が一番よ。ここに押し当ててをニュルニュルニュルって前後に動かすと、脳みそがバターみたいにとろけちゃう」
幼女魔王J 「上下貫通よ。全身を一本の触手に支配されている感じはきっと終わらない多幸感よ」
幼女魔王I 「無理矢理よ、無理矢理いろんなことを身体にされるのが最高なの」
幼女魔王C 「合わせて、新しい道も見つかると良いわね」
幼女魔王G 「YやXのような、知らない私がいる可能性はまだまだあるからね」
ガヤガヤ
幼女魔王A 「まま、一緒だね……」
母性巫女 「はい。よろしくお願いします」
幼女魔王A 「うん」
幼女魔王A 「えへへ、ままと二人っきり……」
幼女魔王M 「三人よ、三人」
幼女魔王C 「みんな、班に分かれたわね」
幼女魔王C 「塔を歩くときの注意はおぼえているかしら」
幼女魔王たち 「ここより下の階には行かないこと」
幼女魔王たち 「三つの怖いものを見かけたら一生懸命逃げること」
幼女魔王M 「……この塔には、恐ろしい三匹のモンスターがいるの」
幼女魔王M 「K、階段であなたが襲われそうになったのもそれよ」
母性巫女 「あの男の人の声ですね」
幼女魔王M 「下層をうろうろしながら、ずっと私たちに呼びかけるの」
幼女魔王M 「静かな日には、この広間まで聞こえてくることもあるわ」
幼女魔王M 「でも絶対に答えては駄目。分かるでしょ?」
母性巫女 「ええ……」
幼女魔王M 「あとは鎌の生えた棺と、大きな毛玉」
幼女魔王M 「鎌の生えた棺も下層にしかいないから、まず見かけることは無いと思うわ」
幼女魔王M 「下層で鎌を振り回して物を壊していたり、下層のさらに下を探索しようとした別の私が襲われそうになったこともあるらしいから」
幼女魔王M 「もしも出会ったら逃げるべきね」
母性巫女 「はい」
母性巫女 (崩れた牢で見た、あの小さな棺ね)
幼女魔王M 「大きな毛玉は……ときどきここにも出てくる」
幼女魔王M 「ふわふわ浮きながら笑っているだけで何もしてこないし、放っておけばいつの間にかいなくなるけど」
幼女魔王M 「見るとすごく嫌な気分になるのよ。どんなお菓子の味も分からなくなるくらい」
母性巫女 「そんなものがいるんですね。ありがとうございます」
幼女魔王A 「! ………」
幼女魔王A 「私だって、説明できるのに……」
幼女魔王M 「ごめん、ごめん」
幼女魔王M 「でもAは説明してる途中で自分で怖くなって泣いちゃうでしょ」
幼女魔王A 「うぅうー」
母性巫女 「あはは、大丈夫、大丈夫……」
ナデ ナデ
幼女魔王C 「説明は済んだかしら、M」
幼女魔王M 「うん」
幼女魔王C 「何か珍しいアイテムを見つけたら、ネコババせずに一度はみんなに見せること」
幼女魔王C 「新しい部屋や道を見つけたら地図に記録して、みんなにしらせること」
幼女魔王C 「新しい私や知らない私を見つけたら、やっぱりみんなにしらせること」
幼女魔王C 「Nがいない分、情報を積極的に分かちあいましょう」
幼女魔王C 「疲れたらちゃんと休むこと」
幼女魔王C 「それでは、第一次N探し隊」
幼女魔王C 「活動開始」
…………
幼女魔王の塔 めちゃくちゃな廊下
コツ コツ コツ
母性巫女 (広間をあとにして、Nを探し始めたけれど)
母性巫女 (曲がりくねった石畳の廊下が上に下に入り組んで、どこをどう歩いているか分からない)
幼女魔王M 「……おっと」
床 が崩れて 通れない……
母性巫女 (大きな穴)
母性巫女 (下には何もない。真っ暗……)
幼女魔王M 「ここ、通れなくなってるね。前に来たときは大丈夫だったのに」
幼女魔王M 「地図に記録しよう。A」
幼女魔王A 「うん……」
幼女魔王A 「んしょ、んしょ……」
カキ カキ
母性巫女 (頑張って地図に書きこんでいる)
母性巫女 (ペンの持ち方が危なっかしい……)
幼女魔王A 「まま、きれいな円になってる?」
母性巫女 「え゛っ!?」
母性巫女 「……ちょ、ちょーっとぐにゃっとなっているけれど、一生懸命の可愛い円ですよ」
幼女魔王A 「えへへ……」
幼女魔王M 「甘やかしすぎ。出来損ないのへろへろな四角じゃない」
幼女魔王M 「きれいな円を書きたかったら、まだまだ練習が必要」
幼女魔王A 「うぅうー……!」
母性巫女 「今度、今度いっしょに練習しましょうね」
母性巫女 「Mをびっくりさせるくらいきれいな円を書きましょう」
幼女魔王A 「………一緒」
母性巫女 「ええ、一緒」
ナデ ナデ
幼女魔王A 「……えへへへ」
母性巫女 (なでるとトロリとした顔で笑うのは、Nそっくり)
幼女魔王M 「こんなことは珍しくないんだけど」
幼女魔王M 「最近は多すぎるね。地図を新しくしなきゃ、書き込みだらけで見にくいったらないよ」
母性巫女 「Nを見なくなったことと関係があるんでしょうか」
幼女魔王M 「言い切れないけど、そうだとは思う」
幼女魔王M 「今、この塔で一番大事な役割を果たしているのはあの子だから」
母性巫女 「大事な役割」
母性巫女 (幼女魔王の塔で、一番大事な役割を果たすのがN……)
母性巫女 (この塔はやっぱり……)
幼女魔王M 「まあ、果たせていないわよね」
幼女魔王M 「前の子はよくやっていたみたいだけど……」
母性巫女 「前の子?」
幼女魔王M 「この塔が一度滅ぶ前に、今のNと同じ役割についていた子」
母性巫女 「この塔が、一度滅んだ……」
幼女魔王M 「あなたが居たっていう地下が、その名残よ」
母性巫女 「あのぼろぼろの地下牢ですね」
幼女魔王M 「その下に、私たちの知らない層が眠っているというわ」
幼女魔王M 「もう誰もおぼえていないけれど、かつて私たちは、そこで暮らしていた」
幼女魔王M 「かつてそれこそが、幼女魔王の塔だった」
幼女魔王M 「おぼえていないはずなのに、みんな不思議と分かっている」
母性巫女 (一度滅んだ塔……)
幼女魔王M 「私たちが暮らすこの上層は、塔が一度滅んだあとにできたもの」
母性巫女 「いったい何が起きたんでしょう」
幼女魔王M 「分からない」
幼女魔王M 「あの牢より下へ行ってみれば手がかりがあるかもしれないけれど」
幼女魔王M 「危険すぎてできていない」
幼女魔王M 「棺に声……もしかしたらもっと怖いものがいるかもしれないし」
幼女魔王A 「…………」
母性巫女 (知らないけれど、分かっている……)
母性巫女 (幼女魔王の塔、下、今は上に住んでいる……下……過去……?)
幼女魔王M 「少し前、下の方で大きな音が上がったわ。何かが決定的に崩れるような」
幼女魔王M 「私より長く塔で暮らしていた子も多かったはずだけれど、いつの間にかいなくなった」
幼女魔王M 「もし下の層で何かを見つけようとするなら、時間はあまり残されていないのかもしれない」
母性巫女 「……あの」
母性巫女 「以前にNの役割にいた子は、どこに行ったんでしょう」
幼女魔王M 「……さあ」
幼女魔王M 「新しい子たちは会ったことないし」
幼女魔王M 「私は当時を知っているから会ったこともあるはずだけれど、何も思い出せない」
幼女魔王A 「…………」
幼女魔王M 「Nのいた幼女魔王会議でも、よく議題に上がっていたわ」
幼女魔王M 「下層について」
幼女魔王M 「探索すべきだと言う子たちと、そうすべきでないと言う子たち」
幼女魔王M 「真っ二つに分かれて言い合って、いつも結局まとまらないままうやむやになった」
母性巫女 「……Nはどっちだったんでしょうか」
幼女魔王M 「いつもどっちつかずよ」
幼女魔王M 「あの子が一声上げたら、それで決まるのに」
母性巫女 「やっぱり……」
母性巫女 (怖がりなあの子らしい)
母性巫女 (私を……あんなことにした時には、勇気を振り絞ったのかしら)
幼女魔王A 「…………」
幼女魔王A 「ずるい」
幼女魔王M・母性巫女 「?」
母性巫女 「A?」
幼女魔王A 「Mばっかり、ままとお話ししてる」
幼女魔王A 「私が案内するのに。私のままなのに」
幼女魔王M 「私たちだよ」
幼女魔王M 「私たちのK。そしてAは、私たちのA」
幼女魔王A 「…………うぅう」
幼女魔王A 「ままぁ……」
ダキ
母性巫女 「あらあら……」
ナデ ナデ
母性巫女 (こんなに素直に甘えてくることは、Nは無かったっけ)
母性巫女 (いつも申し訳なさそうにして……)
母性巫女 (あれ、後になるとこんな感じだったかしら)
幼女魔王M 「私の姿でそんなことして」
幼女魔王M 「Cあたりが見たら呆れ返るなんてもんじゃないね」
母性巫女 (眠っているNに近づくこともできなくなっていたのが嘘みたい)
ナデ ナデ
幼女魔王A 「えへへ……」
幼女魔王M 「さあ、もたもたしてないで、先へ行くよ」
母性巫女 「あ、はい」
幼女魔王A 「うぅう……」
ギュウ
母性巫女 (小さな手で服を掴んでくる)
母性巫女 「行きましょう、A」
幼女魔王A 「……やだ」
幼女魔王M 「A、わがままがすぎるよ」
幼女魔王A 「やだもん。……もう歩けないんだもん。ままとこうしてるんだもん」
幼女魔王M 「A!!」
幼女魔王A 「ぃうっ……」
幼女魔王A 「……グスッ……うぅうう゛ー」
母性巫女 「じゃあ、歩けるようになるまで、おんぶして行きましょうか」
幼女魔王M 「K、駄目だよ」
幼女魔王M 「それじゃあ、いつまでもAは甘えん坊の私のままだ」
母性巫女 「良いじゃないですか、甘えん坊でも」
幼女魔王M 「駄目だよ。甘えん坊なんて」
幼女魔王M 「そんなんだから……」
ヒラ ヒラ ヒラ
母性巫女 「?」
ヒラ ヒラ ヒラ
枯葉
母性巫女 「塔の中なのに、枯葉が舞い落ちてくる」
幼女魔王M 「……何てこと」
幼女魔王M 「いつの間にここに」
母性巫女 「ここに何かあるんですか?」
幼女魔王M 「この先に、Yの部屋があるのよ」
幼女魔王M 「そう、夜の……フフッ……風の」
幼女魔王A 「プフッ……」
母性巫女 「会議の場に突然現れた、あの人の」
幼女魔王M 「そんなつもりは無かったんだよ」
幼女魔王M 「まずはNの部屋へ向かおうとしていたのに」
幼女魔王A 「まま……」
夜の風の声 『思ったより早かったじゃないか』
母性巫女 「!」
母性巫女 「声が響く……」
夜の風の声 『よくできたね、A。ちゃんと迷わずにKを案内してきた』
幼女魔王A 「……ち、違う、私は」
ヒラ ヒラ ヒラ ヒラ
カサ パサ ファサ
母性巫女 (枯葉が積もっていく……)
幼女魔王M 「あいつ、何かしたのね。私たちをここに誘導したのよ」
幼女魔王M 「知らない私は、私たちの知らないことができるから厄介」
夜の風の声 『K、いるね。ここから先はお前一人でおいで』
カササ パサ カサ
母性巫女 (行かないといけない気がする)
幼女魔王M 「K」
幼女魔王A 「まま……」
ギュ
母性巫女 (小さな手……)
母性巫女 「ごめんなさい。ちょっと行ってみます」
母性巫女 「探しているものの手がかりが見つかるかもしれないし」
幼女魔王M 「しかたない。じゃあ、私も……」
幼女魔王A 「だめ!」
幼女魔王M 「A……」
幼女魔王A 「……A、向こうに行っちゃ駄目……」
幼女魔王M 「A?」
幼女魔王A 「ままも……」
ギュウ
母性巫女 「…………」
母性巫女 「ちゃんと、帰ってきますから」
幼女魔王A 「…………」
母性巫女 「ね?」
幼女魔王A 「…………」
幼女魔王A 「……うん」
幼女魔王M 「じゃあ、行こうか」
母性巫女 「良いんでしょうか。一人で来るように言われたのに」
幼女魔王M 「大丈夫だよ。私にできないことができても、どうせ私だし」
幼女魔王M 「Aは残るんだね?」
幼女魔王A 「……だめ」
幼女魔王A 「私たちは、みんな駄目」
幼女魔王M 「うん?」
夜の風の声 『Aの言う通り、お前たちは来ないように』
夜の風の声 『オレにはちゃんと見えているのだからね』
幼女魔王M 「ちぇっ、いやな奴」
母性巫女 「あの、Aのこと、よろしくお願いします」
幼女魔王M 「うん。何かされそうになったらすぐに引き返してきなよ」
母性巫女 「ええ……」
ザ ザ ザ
枯葉の廊下
ペシ カシャ ガシャ
母性巫女 (枯葉だらけ)
母性巫女 (私の故郷では見ない形の葉だわ)
パキ パパキ ザ ザ
母性巫女 (本当に枯葉だらけ。床も見えない)
母性巫女 「…………」
母性巫女 「夜の風……さん?」
夜の風の声 『何だ? 部屋まであと少しだよ』
母性巫女 「あの、少し掃除してからでも良いでしょうか」
夜の風の声 『掃除?』
母性巫女 「廊下に枯葉が積もっているなんて、歩きにくいでしょうし」
夜の風の声 『必要ない。早くおいで』
母性巫女 「あら、大丈夫ですよ、お掃除好きですから」
夜の風の声 『遠慮して言ってんじゃないよ』
夜の風の声 『そこはそれで良いんだよ』
夜の風の声 『そういうものなんだよ』
母性巫女 「はあ……」
ザ ザ ザ
母性巫女 「…………」
夜の風の声 『…………』
母性巫女 「……でも、このまま積もっていくと」
母性巫女 「廊下が枯葉で詰まってしまうわ」
母性巫女 「たいへん。やっぱり、掃除しましょう」
夜の風の声 『…………』
母性巫女 「ね?」
夜の風の声 『はよ来い』
夜の風の声 『一定量以上は積もらないような仕組みなんだよ』
夜の風の声 『魔法でそういう風にしてんだよ』
夜の風の声 『そういう演出なんだよ』
母性巫女 「そうなんですか?」
母性巫女 「そういうことなら……」
ザ ザ ザ
ペシ ペペキ
母性巫女 (踏んだときのこの感触)
母性巫女 (本物の枯葉よね)
母性巫女 「………あの」
母性巫女 「演出って、いったい」
夜の風の声 『いい加減にしろよ。勘弁しろよ』
夜の風の声 『はやく来いよ』
ザ ザ ザ
母性巫女 「…………」
母性巫女 (城のみんなは、ちゃんとご飯食べているのかしら)
母性巫女 (記録魔、泣かされていないかしら)
母性巫女 (猫耳蛇娘も箒少女も、元気だけどやりすぎるところがあるから……)
母性巫女 (波魔法少女も、しっかりしているけれどそういうのはじっと見守る人だし)
母性巫女 (書き置きくらい残しておくべき……って)
母性巫女 (故郷の森じゃなくて、城のことばかり思い出している……)
ザ ザ ザ
母性巫女 「……あら?」
壁
母性巫女 「行き止まり……?」
ザ ザ
母性巫女 「どうしま……」
ズボ
母性巫女 「しょお゛っ!?」
なんと 落とし穴だ!
ヒュルルル
夜の風の声 『あっはは! 引っかかった引っかかっ……』
母性巫女 の 空中多段跳び!
落とし穴 を 無効化した!
母性巫女 「ふう、危なかった」
母性巫女 「とっさに空中でジャンプしていなかったら落ちていたところだった……」
落とし穴
母性巫女 「深い穴……。どこまでも続いていそう」
母性巫女 「塔の所々にあったものと同じようなものなのかしら」
母性巫女 「夜の風さん。やっぱり危ないので、掃除してから……」
夜の風の声 『…………』
母性巫女 「夜の風さん……?」
夜の風の声 『……ふっ、ふふん』
夜の風の声 『何を言っている。入り口はそこさ』
母性巫女 「ええっ!?」
夜の風の声 『さっさと降りておいで』
母性巫女 「降りるって、こんな深い穴……」
夜の風の声 『飛び降りたら良いのさ』
母性巫女 「と、飛び降りるって……」
夜の風の声 『心配するな。オレは風だぜ?』
夜の風の声 『ふんわり受け止めてやることくらい……』
母性巫女 の 空中多段跳び!
母性巫女 「少しずつ高さを落としながら、空中でジャンプを繰り返せば……」
母性巫女 「うん、いけそう……」
トイーン トイーン トイーン
トイーン……
トイーン トイーン……
母性巫女 (真っ暗……)
母性巫女 「……あ」
ポワ
母性巫女 (下の方に、ぽつんと明かりが……)
トイーン トイーン
トイーン……
幼女魔王の塔
隠された客室Y
……トイーン トイーン
スタ
テク テク テク
母性巫女 (……ここは、どこかの部屋?)
母性巫女 (穴の底というより、森の中にあるみたいだわ)
??? 「…………」
母性巫女 (窓辺に誰かいる)
母性巫女 (窓の外は、星空……)
??? 「…………」
生き人形 「…………」
母性巫女 (髪の長い……女の子?)
母性巫女 (揺れる夜の湖面みたいな髪の色)
母性巫女 (塔にいる子たちとは全然違う姿)
母性巫女 「あの……」
生き人形 「…………」
プイッ
母性巫女 「あ……」
母性巫女 (近づこうとしたら、そっぽ向かれた)
母性巫女 (拗ねているみたい)
生き人形 「…………」
ポソポソポソ
母性巫女 (何か話しているみたいだけれど、聞こえない)
母性巫女 「……もしかして、夜の風さん?」
生き人形 「………!」
母性巫女 「……?」
母性巫女 (固まった?)
生き人形 「~~~~……っ」
カアアア
母性巫女 (あっという間に顔が真っ赤に!)
母性巫女 (どうしよう)
母性巫女 (とりあえず抱きしめてみようか……)
生き人形 「…………」
ピョン タ タ タ タ
母性巫女 (逃げ出した)
母性巫女 「あ、待っ……」
生き人形 「…………」
タ タ タ タ
母性巫女 「……わっ」
母性巫女 (女の子の逃げた先の壁に……)
骨の仮面
美少年の仮面
黒花の仮面
馬の仮面
美女の仮面
正体の仮面
姫の仮面
魔王の仮面
妖精の仮面
角の仮面
母性巫女 (たくさんの仮面がかかっている)
生き人形 「…………」
生き人形 の 風乗り!
ふわりと浮いた!
ヒョイ スチャ
生き人形 は 黒花の仮面 を装備した!
生き人形 「…………」
母性巫女 (黒い花飾りをつけた仮面)
母性巫女 (まるで生きているみたい)
生き人形 「…………」
ギュ
母性巫女 (骨の仮面を抱きしめている)
生き人形 「…………あなた」
生き人形 「嫌い」
母性巫女 「えっ!」
母性巫女 (呼びつけられて、いきなり嫌われるなんて)
母性巫女 「あの……」
生き人形 「…………」
プイ
母性巫女 (すごく嫌われている)
母性巫女 (ここまで嫌われるほどのことをしちゃったのかしら……)
母性巫女 「あの、私、何か……」
生き人形 「…………」
ツーン
母性巫女 「……ご」
母性巫女 「ごめんなさい?」
生き人形 「…………」
生き人形 「……ハァ」
生き人形 「ようこそ。ここは塔の客室」
生き人形 「私は幼女魔王Y」
生き人形 「幼女魔王の中の、幼女魔王でない者」
母性巫女 (何かを諦められた)
生き人形 「あなたが幼女魔王会議の場で見た私は、私の仮面のひとつ」
幼女魔王Y 「あなたの前にいる私もまた、仮面にすぎない」
幼女魔王Y 「私には名前も、正体もない」
幼女魔王Y 「なぜなら私でさえも知らないから」
幼女魔王Y 「それは、どうでも良い話」
幼女魔王Y 「大事なことは、私が、本来ならばこの塔にいるはずがないということ」
幼女魔王Y 「ここが、客室であるということ」
母性巫女 (客室……本来ならいない……)
幼女魔王Y 「どのように大事かを感じるには」
幼女魔王Y 「ここが何であるのかを知らなければならない」
幼女魔王Y 「幼女魔王の塔とはすなわち何か」
母性巫女 「…………」
母性巫女 (たくさんのあの子がいる、あの子の名前の塔)
母性巫女 (分からないけど、まるで)
母性巫女 「あの子そのもの……?」
幼女魔王Y 「幼女魔王そのもの」
幼女魔王Y 「その通り」
幼女魔王Y 「ここは幼女魔王という個人」
幼女魔王Y 「幼女魔王という、ひとつの世界」
母性巫女 「世界……」
幼女魔王Y 「個と個の境界線」
幼女魔王Y 「世界と世界の境界線」
幼女魔王Y 「個は、ひとつの世界そのもの」
母性巫女 「……ここは、あの子の中なんでしょうか?」
幼女魔王Y 「知らない」
プイ
母性巫女 「えー……」
幼女魔王Y 「幼女魔王という存在であることは間違いない」
幼女魔王Y 「中にいるのかは知らない」
幼女魔王Y 「あなたが幼女魔王を抱き上げることと、ここにこうしていることは」
幼女魔王Y 「あまり違いが無いことなのかもしれない」
母性巫女 「…………?」
母性巫女 「…………」
母性巫女 「とにかく、ここはあの子そのものなんですね」
幼女魔王Y 「…………それで良い」
幼女魔王Y 「それが分かれば、この塔について気づくこともある」
母性巫女 「…………」
母性巫女 (……入り組んだ回廊、ところどころに空いた穴)
母性巫女 (たくさんのあの子。出席者はあの子だらけなのに、まとまらない会議)
母性巫女 (いなくなった子。崩れ落ちた子……)
母性巫女 (地下牢……棺、男の人の声、あの笑い声……)
幼女魔王Y 「ここにある物すべてが、幼女魔王という存在に不可欠のもの」
幼女魔王Y 「というよりも、ここにある物によって、幼女魔王という存在は組みあがっている」
母性巫女 「は、はあ……」
幼女魔王Y 「塔という入れ物と、その中でうごめく幼女魔王たち」
幼女魔王Y 「そのうごめくものたちの中で異質なもの」
幼女魔王Y 「私と、私と同じように客室にいる者たち、そしてあなた」
母性巫女 「異質……」
幼女魔王Y 「幼女魔王の中で、幼女魔王になりきれないもの」
幼女魔王Y 「幼女魔王が客として扱わざるを得ないもの」
母性巫女 「うーん……?」
幼女魔王Y 「あなたは、幼女魔王では無いでしょう?」
母性巫女 「はい……」
幼女魔王Y 「それを自覚できるのに、ここにいる」
幼女魔王Y 「それは、ここではとても不自然なことなのよ」
幼女魔王Y 「まるまる幼女魔王という存在であるべきなのに、そうでない」
幼女魔王Y 「この塔に私やあなたがいる限り、幼女魔王は、幼女魔王でありながらそうでないことになる」
幼女魔王Y 「自分でありながら自分でない」
幼女魔王Y 「それがどれほど大きな負担になるか、あなたは想像できる?」
母性巫女 「それは、いいえ……」
幼女魔王Y 「なのに幼女魔王の塔にはいくつも客室がある」
幼女魔王Y 「幼女魔王という存在は、いくつかの異なる存在を抱えながら」
幼女魔王Y 「幼女魔王という存在であり続けている」
母性巫女 (あの子であり続けている……)
母性巫女 「そうでしょうか。塔はぼろぼろだし、あの子と会ったとき、とても問題が無いようには見えませんでした」
幼女魔王Y 「これでも、ましになった方なのよ」
母性巫女 「え……」
幼女魔王Y 「私がここに来たとき、すでに広場より下は誰も住めないところになっていたけれど」
幼女魔王Y 「上もまた、塔と呼べるようなものではなかった」
幼女魔王Y 「壁は穴の方が大きくて、つくりかけのようでもあったし、なおしかけのようでもあった」
幼女魔王Y 「幼女魔王たちは眠っているのか死んでいるのか分からないくらい、とにかくあまり動くことが無かった」
母性巫女 (一度滅んだ塔……)
幼女魔王Y 「けれど、日に日に壁の穴は小さくなり、それにつれて幼女魔王たちの動く時間が増えていった」
幼女魔王Y 「そして誰が何をしたのかも分からないままに、ここは幼女魔王の塔と呼べるまでになった」
幼女魔王Y 「自分というものは、周囲によって形づくられる部分もあるけれど」
幼女魔王Y 「幼女魔王の場合、それがほとんどだった」
幼女魔王Y 「自分で形づくる部分が、まったく無かったと言っても過言では無いと思う」
幼女魔王Y 「誰かから無理矢理、幼女魔王という形にさせられている」
幼女魔王Y 「そんな印象を受けた」
母性巫女 「誰かから……」
幼女魔王Y 「それは正しいことだったのかもしれない」
幼女魔王Y 「あのままでは、今もここは瓦礫の山だったかもしれないし」
幼女魔王Y 「もしかしたら、もっとひどいことになっていたかもしれない」
母性巫女 「いったい、あの子に何が……」
幼女魔王Y 「さあ?」
幼女魔王Y 「ただ、このところ崩れだした今の塔でも」
幼女魔王Y 「あの頃よりは遥かにましということは確かよ」
母性巫女 「……あなたは、この塔についてどれくらい知っているんですか」
幼女魔王Y 「知らない」
プイ
母性巫女 (かわいい)
幼女魔王Y 「この塔の全容が分からないから、私がどれくらい知っているかも分からない」
幼女魔王Y 「ただ、思うこと、考えることはやめていない……」
ギュ……
母性巫女 (骨の仮面……大事なものなのかしら)
幼女魔王Y 「私からこぼれた私がここにいる意味」
幼女魔王Y 「幼女魔王という存在」
幼女魔王Y 「思って、考えて、確かめながら、ここでじっとしている」
母性巫女 「じっと……」
幼女魔王Y 「私は、あくまで客」
幼女魔王Y 「この塔の主人は、幼女魔王」
幼女魔王Y 「塔の主人が私のもてなし方を決めるまで、無闇に出歩くことはしない」
幼女魔王Y 「もてなしを待って、もうずい分たつけれど」
母性巫女 「……会議に現れたのは?」
幼女魔王Y 「あなたがいたから」
母性巫女 「私が?」
幼女魔王Y 「私と同じだから」
幼女魔王Y 「そして、私と違うから」
幼女魔王Y 「あなたは、私とは違う方法でここに来た」
幼女魔王Y 「とても危険なことだと思ったから」
母性巫女 「危険……」
幼女魔王Y 「そんな気がしただけ」
幼女魔王Y 「あなたがこの塔そのものを、崩してしまいそうな」
母性巫女 「私、そんなつもりありませんよ」
幼女魔王Y 「だから、危険だと思ったのよ」
幼女魔王Y 「そのつもりが無くても、そうしてしまう」
幼女魔王Y 「これほど厄介なことは無い」
母性巫女 「でも、私は……あ」
母性巫女 (そのつもりが無くても、そうしてしまう)
母性巫女 (この子に嫌われるつもりがないのに、嫌われてしまった)
母性巫女 (記録魔にも、そんなつもり無いのに嫌われた……)
母性巫女 (……もしかして、私ってすごく悪い人なのかしら)
幼女魔王Y 「自覚はあるようね」
幼女魔王Y 「ここは幼女魔王そのもの」
幼女魔王Y 「何が、彼女に深刻な変化をもたらすか分からない」
幼女魔王Y 「いつの間にか、幼女魔王の塔があなたの塔とか私の塔になってしまっているかもしれない」
幼女魔王Y 「本当なら、塔の幼女魔王たちとはなるべく接触しない方が良いのだけれど」
母性巫女 「気をつけます……」
母性巫女 「あの、もしかして、この塔の床が崩れだしたのは、私がここに来て、あの子たちと会ったからでしょうか」
幼女魔王Y 「関係ないとは言えないけれど」
幼女魔王Y 「崩れだしたのは、あなたの来るずっと前からよ」
幼女魔王Y 「瓦礫の山が塔になった頃から」
幼女魔王Y 「幼女魔王たちは活発に動くようになり、幼女魔王の塔、幼女魔王そのものは」
幼女魔王Y 「個としての存在を確立できるようになった」
幼女魔王Y 「地下の棺が確認されたのもその頃」
幼女魔王Y 「しかし、やがて幼女魔王たちは、塔に疑問を持つようになった」
幼女魔王Y 「自分たちの名を冠する塔が、自分たちの知らない間に造られたことに、初めて違和感をおぼえた」
幼女魔王Y 「彼女たちは会議を重ねたが、結局どうすることもできなかった」
幼女魔王Y 「塔の造り方など分からないし、崩すわけにもいかない」
幼女魔王Y 「地下に巣食う棺を越えることもできない」
母性巫女 「あの棺は、何なんでしょう」
母性巫女 「あれも、あの子なんでしょうか」
幼女魔王Y 「知らない」
母性巫女 「あの子たちは、三つの怖いものに数えていましたけど……」
幼女魔王Y 「怖いもの」
幼女魔王Y 「幼女魔王の恐怖」
幼女魔王Y 「得体の知れないもの」
幼女魔王Y 「未知のものほど恐ろしい」
母性巫女 「未知……知らない」
幼女魔王Y 「あれもまた、私やあなたと同じ、客」
幼女魔王Y 「幼女魔王がもてなすことのできない、招かざる客」
母性巫女 「あれが、私たちと同じ……」
幼女魔王Y 「男の声と毛玉は、新しい」
幼女魔王Y 「二つとも、ほぼ同じころに現れた」
幼女魔王Y 「そして、幼女魔王Kがいなくなったのは、そのころ」
母性巫女 「K……本物の?」
幼女魔王Y 「そう。幼女魔王Kは、あなたではない」
幼女魔王Y 「Kは、最も短命だった」
幼女魔王Y 「彼女が生まれたすぐあとに男の声が生まれ」
幼女魔王Y 「彼女が消えたすぐあとに毛玉が生まれた」
幼女魔王Y 「不思議なことに、幼女魔王たちはそのことを、Kという存在そのものを忘れている」
母性巫女 「…………」
幼女魔王Y 「なのに彼女があなたに幼女魔王Kという名前をつけたのは」
幼女魔王Y 「あなたにその面影を求めたからなのか」
母性巫女 「私に?」
幼女魔王Y 「幼女魔王Kに心当たりは?」
母性巫女 「いえ、全く……」
幼女魔王Y 「Kのいるわずかの間、塔には幸せがあった」
幼女魔王Y 「失くしたことを忘れなくてはならないほど」
幼女魔王Y 「彼女にとって、それは大きな幸せだった」
幼女魔王Y 「では、彼女にとっての大きな不幸せとは何か」
母性巫女 「…………」
母性巫女 「ひとりぼっち」
幼女魔王Y 「孤独」
幼女魔王Y 「彼女が知ることのできる、未知とは違う恐怖」
幼女魔王Y 「塔がKを失くしたとき」
幼女魔王Y 「塔の何かが変わった」
幼女魔王Y 「何か大きなものが目覚め、いなくなった」
母性巫女 「何か?」
幼女魔王Y 「そう、何か」
幼女魔王Y 「塔の地下深くに眠っていた、何か」
幼女魔王Y 「私は塔に来て少し後から、それを感じていた」
幼女魔王Y 「たぶん、幼女魔王たちは、塔のできる前から感じていたのだと思う」
幼女魔王Y 「感じて、おそれていたのだと思う」
母性巫女 「その何かって、何なんでしょう」
幼女魔王Y 「知らない」
幼女魔王Y 「けれど、想像することはできる」
母性巫女 「はあ……」
幼女魔王Y 「…………」
母性巫女 「…………」
母性巫女 (考えろということかしら)
幼女魔王Y 「……想像することはできる」
母性巫女 「……聞かせてもらえますか?」
幼女魔王Y 「塔の地下深く」
幼女魔王Y 「棺のいる地下牢より、もっと深いところにいた何か」
幼女魔王Y 「それこそが、幼女魔王」
幼女魔王Y 「真の彼女」
母性巫女 「え……」
母性巫女 (一度滅んだ塔……じゃあ、滅ぶ前の……?)
幼女魔王Y 「幼女魔王たちがそれをおそれていたのは」
幼女魔王Y 「それが本物だから」
幼女魔王Y 「自分たちが、偽物だから」
母性巫女 「あの子が、にせもの……」
幼女魔王Y 「あのとき失ったのは、塔の本当の主」
幼女魔王Y 「つまり失われたのは、この塔の方」
幼女魔王Y 「この塔は抜け殻」
母性巫女 「抜け殻……」
幼女魔王Y 「なぜ、何かはこの塔を取り戻すのではなく捨てたのか」
幼女魔王Y 「それは知らない」
幼女魔王Y 「あるいは、誰かによって連れ去られたのかもしれない」
幼女魔王Y 「とにかく、この塔は抜け殻となり」
幼女魔王Y 「そして、完全に個となるために動き始めることとなった」
母性巫女 「完全に……?」
幼女魔王Y 「抜け殻のまま、朽ちていくことができなかった」
幼女魔王Y 「なぜか?」
幼女魔王Y 「滅んだ塔の上、誰かによって造られた仮初の塔」
幼女魔王Y 「ここがなぜ、今も存在し続けられるのか」
幼女魔王Y 「理由は知らない」
幼女魔王Y 「真の主を失くしてもこの塔が崩壊しなかったのは」
幼女魔王Y 「私がここに来た理由と関係があるのかもしれない」
幼女魔王Y 「この塔を造ったものが関係しているのかもしれない」
幼女魔王Y 「彼女が強い存在だったから? 誰かと出会ったから?」
幼女魔王Y 「それとも一度魂の入った人形は」
幼女魔王Y 「生きていると言って良いの……?」
ギュ……
骨の仮面
母性巫女 「…………」
母性巫女 (そうだ。出会ったころのあの子は……)
幼女魔王Y 「崩壊を始めたのは、あなたの来る少し前」
幼女魔王Y 「Nが姿を消してから」
母性巫女 (N……)
母性巫女 「じゃあ、やっぱり、Nを見つけ出さなくちゃいけないということでしょうか」
幼女魔王Y 「どうかしら」
母性巫女 「会議をまとめていたのはNだと言っていました」
母性巫女 「あの子がいなくなって、塔が崩れだしたなら、そういうことじゃないんでしょうか」
幼女魔王Y 「……知らない」
幼女魔王Y 「幼女魔王Nとは何か」
幼女魔王Y 「それを、彼女たちは知らない」
幼女魔王Y 「あなたの来るずっと前に、塔は崩れだしていた」
幼女魔王Y 「あなたの来る少し前に、塔は崩れだしていた」
母性巫女 (……ん?)
幼女魔王Y 「この違いに、彼女たちは気づかない」
幼女魔王Y 「塔は、常に崩壊と再生を繰り返すもの」
幼女魔王Y 「常にどこかが崩れ、直し、少しずつ姿を変えていく」
幼女魔王Y 「Nが姿を消して始まった致命的な崩壊と、常にある崩壊の違いに気づけない」
母性巫女 「……つまり、やっぱりNを見つけないと」
幼女魔王Y 「だから、いけない」
母性巫女 「え……」
幼女魔王Y 「どちらの崩壊も、あなたがここに来たから起きているわけではない」
幼女魔王Y 「ならば、なおすのは彼女たちにやらせるべき」
幼女魔王Y 「そしてあなたは幼女魔王Nを探してはいけない」
幼女魔王Y 「見つけるのは、幼女魔王たちでなくてはならない」
母性巫女 「でも……」
幼女魔王Y 「でも?」
母性巫女 「放っておくなんて、そんなこと、できません」
幼女魔王Y 「できないといけない。ここはそういう場所」
幼女魔王Y 「もし、あなたが彼女たちと一緒に幼女魔王Nを探し続ければ」
幼女魔王Y 「幼女魔王という存在が大きく歪んでしまうかもしれない」
母性巫女 「そんなこと……やってみないと」
幼女魔王Y 「あなたが彼女を抱きかかえることと、ここにこうしていることは変わらないかもしれないと言ったでしょう」
幼女魔王Y 「ここでは、あなたの常識は通じないの」
幼女魔王Y 「助けるつもりが、傷つけることになりかねない」
母性巫女 「このまま塔が崩れていったら、どうなるんですか」
幼女魔王Y 「塔は滅ぶ」
幼女魔王Y 「つまり、幼女魔王という存在が崩壊する」
母性巫女 「だったら、私やあなたもNを探した方が……」
幼女魔王Y 「いけないと言っている」
幼女魔王Y 「これは幼女魔王自身の問題」
幼女魔王Y 「結果がどうなろうとも、私たちは見守らなければならない」
母性巫女 「そんな……」
幼女魔王Y 「見守ってあげるのも、優しさ」
母性巫女 「でも、それであの子が取り返しのつかない大きな傷を負ってしまったら」
幼女魔王Y 「それは、仕方ないことよ」
幼女魔王Y 「彼女がその程度でしかなかったということよ」
幼女魔王Y 「生きていくだけの力が無かったということ」
母性巫女 「仕方ない……?」
幼女魔王Y 「そう、切ない言い方だけれど、仕方な……」
母性巫女 「仕方ないで済ませられるわけ、ありません」
母性巫女 「だって、だってあの子は」
母性巫女 (あんなにか弱くて、心がやわらかくて……)
幼女魔王Y 「彼女が、何だというの。……あなたは、幼女魔王の何なの」
母性巫女 「私は……」
母性巫女 「私は……」
幼女魔王Y 「なぜ、あなたはここに来たの」
母性巫女 「なぜ……」
母性巫女 (波魔法少女の力を借りて、私の過去と交差するために……)
母性巫女 (それが理由だったはずだけれど)
母性巫女 (じゃあ、どうしてこの塔に来たの……?)
幼女魔王Y 「自分という存在について答えられない」
幼女魔王Y 「なのに、他の存在のために何かをしてやろうというの」
母性巫女 「そんなつもりは……」
幼女魔王Y 「そうしようとしていたじゃない」
母性巫女 「…………」
幼女魔王Y 「彼女たちとともに探し物をするべきではないの」
幼女魔王Y 「あなたはあなた。幼女魔王ではないし、幼女魔王にはなれない」
幼女魔王Y 「この塔にいるのなら、手を差し伸べるのではなく、見守りなさい」
母性巫女 「…………」
母性巫女 「あの子が崩れていくのを、黙って見ているなんて」
母性巫女 「そんなの、耐えられません……」
幼女魔王Y 「…………」
幼女魔王Y 「……分からずや」
カタ カタタタ……
母性巫女 「……!」
壁の仮面たち が あやしげに震えだした……
幼女魔王Y 「だったら、ずっと、この部屋にいなさい」
フワリ
母性巫女 (浮いた……)
幼女魔王Y 「すべてが落ち着くまで」
フワ フワ
キイイイ
幼女魔王Yの姿が かわっていく!
幼女魔王Y 「私は血のひとしずく。私からはがされた仮面」
幼女魔王Y 「無限の顔を持つ湖のエルフォ、そのひとかけら」
幼女魔王Y 「けれど心はかけらにして、私そのもの」
幼女魔王Y 「私は百の顔を持つ、心ある魔力」
百面エルフ 「幼女魔王のもてなしを待つ一人、腐敗の力の主」
百面エルフ が 現れた!
仮面の群れ が 現れた!
カタ カタタタ
骨の仮面
母性巫女 (Yの抱いていた仮面が……)
骨仮面の剣士 「…………」
母性巫女 (人の姿に……)
骨仮面の剣士 が 現れた!
※
淫魔幼女の攻略メモ
■異界の仮面
種族 : 魔法
落とすもの : 仮面のかけら(1/4)
ひみつの蜜(1/512)
通常攻撃と低威力の攻撃魔法を使ってくる。
能力は低いものの、一緒に現れるボスの回復魔法が厄介なので
必ず一度の攻撃で倒してしまいたいところ。
ボスへの範囲攻撃に巻き込んでしまうのも有効だ。
■百面エルフ(ボス)
種族 : ??? / エルフ
半減 : 火・水・土・腐敗・魔法
無効 : 死・状態異常
吸収 : 風・闇
弱点 : 性・無・武器
特殊体質 : 血の呪い・魔法の化身・一途
落とす物 : エルフ草(1/1)
東王の紋章(1/4)
葉巻のレシピ(1/8)
流体の杖(1/32)
ひみつの肖像画(1/4096)
ターン開始ごとに、「腐敗の風」でこちら側の全ユニットの能力を大幅に低下させてくる。
二回行動と高威力の範囲攻撃魔法を持っているが、味方の強化や回復を優先するため、
こちらに攻撃してくることはほとんど無い。
一緒に現れる骨仮面を先に倒すと防御力が0になるが、「腐敗の風」が自分以外の全ユニットに大ダメージをあたえる
「魔王の風」に変化し、攻撃魔法を連発するようになってしまうので注意。
ときどき骨仮面の剣士を攻撃するが、理由は不明。
■骨仮面の剣士(ボス)
種族 : ???/人間?
無効 : 死・状態異常
特殊体質 : 天恵・殺人狂・ハルピュイアの加護・黒花の騎士
西姫の紋章(1/4)
黒い首巻き(1/16)
勇者ごろしの剣(1/64)
えびドリアのレシピ(1/512)
属性半減や吸収を持たないが、防御力と回避力が高く、HPは百面エルフの三倍もある。
百面エルフが優先的に強化する対象となっており、このマップ最大の敵として立ちはだかる。
攻撃のクリティカル率が高く、さらに特殊体質によりこちらの耐性が実質無効化されてしまうため、
思わぬ大ダメージに気をつけよう。厄介なカウンターと三回行動を持っているので、攻撃を受ける回数を減らすため
なるべく離れて戦うと良いだろう。
百面エルフを先に倒すと瞬時にHPが全回復し、クリティカル率と攻撃力が大きく上昇、
行動回数も五回が増え、強力な全範囲攻撃を連発してくる。
こちらを先に倒して同じターンに百面のエルフへ総攻撃をかけるか、二体とも同時に倒してしまいたい。
…………
ラスボスを凌ぐ終盤屈指の強敵が、二体も出現するこのマップ。
出撃可能ユニットは母性巫女のみ。
彼女の出撃するマップで苦戦することは無かったはずだが、このマップでは油断するとあっという間に敗北してしまうかもしれない。
強化魔法や、直前に習得した、行動回数をランダムに増やす「多段跳び」を駆使して辛抱強く戦おう。
特殊体質「母乳」をおぼえておくと、回復の手段が増えてぐっと戦闘が楽になるぞ。
実はこれまでの行動によって、戦闘そのものを回避することができる。
しかしその場合「ひみつの肖像画」は絶対に手に入らなくなるので注意。
<お詫び>
>>219 にて 誤りがありました。
正)
※
淫魔幼女の攻略メモ
■異界の仮面
種族 : 魔法
落とすもの : 仮面のかけら(1/4)
ひみつの蜜(1/512)
通常攻撃と低威力の攻撃魔法を使ってくる。
能力は低いものの、一緒に現れるボスの回復魔法が厄介なので
必ず一度の攻撃で倒してしまいたいところ。
ボスへの範囲攻撃に巻き込んでしまうのも有効だ。
■百面エルフ(ボス)
種族 : ??? / エルフ
半減 : 火・水・土・腐敗・魔法
無効 : 死・状態異常
吸収 : 風・闇
弱点 : 性・無・武器
特殊体質 : 血の呪い・魔法の化身・一途
落とす物 : エルフ草(1/1)
東王の紋章(1/4)
葉巻のレシピ(1/8)
流体の杖(1/32)
ひみつの肖像画(1/8192)
ターン開始ごとに、「腐敗の風」でこちら側の全ユニットの能力を大幅に低下させてくる。
二回行動と高威力の範囲攻撃魔法を持っているが、味方の強化や回復を優先するため、
こちらに攻撃してくることはほとんど無い。
一緒に現れる骨仮面を先に倒すと防御力が0になるが、「腐敗の風」が自分以外の全ユニットに大ダメージをあたえる
「無情の風」に変化し、攻撃魔法を連発するようになってしまうので注意。
ときどき骨仮面の剣士を攻撃するが、理由は不明。
■骨仮面の剣士(ボス)
種族 : ???/人間?
無効 : 死・状態異常
特殊体質 : 天恵・殺人狂・ハルピュイアの加護・黒花の騎士
西姫の紋章(1/4)
黒い首巻き(1/16)
勇者ごろしの剣(1/64)
えびドリアのレシピ(1/512)
属性半減や吸収を持たないが、防御力と回避力が高く、HPは百面エルフの三倍もある。
百面エルフが優先的に強化する対象となっており、このマップ最大の敵として立ちはだかる。
攻撃のクリティカル率が高く、さらに特殊体質によりこちらの耐性が実質無効化されてしまうため、
思わぬ大ダメージに気をつけよう。厄介なカウンターと三回行動を持っているので、攻撃を受ける回数を減らすため
なるべく離れて戦うと良いだろう。
百面エルフを先に倒すと瞬時にHPが全回復し、クリティカル率と攻撃力が大きく上昇、
行動回数が八回に増え、強力な全範囲攻撃を連発してくる。
こちらを先に倒して同じターンに百面エルフへ総攻撃をかけるか、二体とも同時に倒してしまいたい。
…………
ラスボスを凌ぐ終盤屈指の強敵が、二体も出現するこのマップ。
出撃可能ユニットは母性巫女のみ。
これまで彼女の出撃する戦闘で苦戦することは無かったはずだが、このマップでは油断するとあっという間に敗北してしまうかもしれない。
強化魔法や、直前に習得した、行動回数をランダムに増やす「多段跳び」を駆使して辛抱強く戦おう。
特殊体質「母乳」をおぼえておくと、回復の手段が増えてぐっと楽になるぞ。
実はこれまでの行動によって、戦闘そのものを回避することができる。
しかしその場合「ひみつの肖像画」は絶対に手に入らなくなるので注意。
仮面の群れ 「…………」
フヨ フヨ フヨ
百面エルフ 「…………」
フワン フワン
骨仮面の剣士 「…………」
母性巫女 「…………」
母性巫女 「あの子たちのところへ帰ります」
百面エルフ 「どうぞ、ご勝手に」
百面エルフ 「私を越えて行けるのなら……」
ヒュオオオ
百面エルフの 腐敗の風!
母性巫女は 笑いをこらえた!
母性巫女の全能力が がくっと下がった!
母性巫女 「………っ」
母性巫女 (身体の力が抜けていく)
母性巫女 (……頑張らなきゃ)
母性巫女は 頑張った!
母性巫女の全能力が ぐーんと上がった!
なんと 母性巫女のバストサイズが 少し上がった!
母性巫女 (……よし)
母性巫女 (何か変なことが起きた気がするけど)
母性巫女 (よし)
仮面の群れ 「…………」
ヒュン ヒュン ヒュン
母性巫女 (仮面がすごい勢いでこちらにやってくる)
母性巫女 「えいっ!」
母性巫女の 攻撃!
急所に あたった!
仮面の群れ に 7000の ダメージ!
パリン パリン パリン
母性巫女 (良かった。脆い……)
母性巫女 「!」
骨仮面の剣士 「…………」
母性巫女 (いつの間に……)
骨仮面の剣士 「……!」
ヒュオン
骨仮面の剣士 の 不意打ち攻撃!
冷徹な斬撃が おそいかかる!
母性巫女 「うっ……!」
ピョン
母性巫女の 多段跳び!
そこそこできた!
行動回数が 三回増えた!
母性巫女 (かわせた……危なかっ……)
骨仮面の剣士 「…………」
タンッ ヒュオ
母性巫女 「え……」
母性巫女 (速っ……)
骨仮面の剣士 「……!」
ザン
母性巫女 「きゃっ……!」
ヒラリ スパッ
スタ
母性巫女 (……何とかかわせた)
母性巫女 (でも、服が……)
ハラリ
母性巫女 (やだ、下着が見えちゃう。恥ずかしい)
母性巫女 (服の面積が小さくて下着もつけなかったら、こんなに恥ずかしくないのに……)
母性巫女 (あっ……いけない、戦いの途中でこんなこと考えちゃ……!)
骨仮面の剣士 「…………!」
母性巫女 (距離をとったのに、もう目の前に……!)
母性巫女 (こうなったら、ドラゴンの足を全部骨折させちゃうキックを使うしか……)
百面エルフの 魔法攻撃!
謎の一撃が おそいかかる!
骨仮面の剣士に 700の ダメージ!
骨仮面の剣士 「!?」
母性巫女 「!?」
骨仮面の剣士 「!?」
骨仮面の剣士は 混乱している!
百面エルフ 「…………」
プイ
母性巫女 (何が起きたの)
母性巫女 (同士討ち……?)
骨仮面の剣士 「…………」
骨仮面の剣士 「…………」
バッ
母性巫女 「!!」
母性巫女 (片手を突き出してきた)
母性巫女 (魔法……!?)
骨仮面の剣士 「…………」
母性巫女 「…………?」
母性巫女 (動かない?)
骨仮面の剣士 「…………」
骨仮面の剣士 は 一時停戦を 申し出ている!
母性巫女 (……もしかして、ちょっと待ってってこと?)
母性巫女 「ど、どうぞ?」
骨仮面の剣士 「…………」
ペコリ
スタスタスタ
母性巫女 (仮面の女の子の方へ歩いていく……)
スタスタスタ
骨仮面の剣士 「…………」
百面エルフ 「…………」
プイ
骨仮面の剣士 「…………」
百面エルフ 「…………」
ツーン
母性巫女 (何かもめているみたい)
母性巫女 (今のうちに、服をどうにかしよう)
母性巫女 (まずは下着をとって……)
ガサ ゴソ
ポヨン
母性巫女 は ぺたんこブラを 外した
母性巫女 (胸元の破れた服は……そうだわ、後ろ前にしちゃおう)
母性巫女 (下着はポケットに入れて……)
ガサ ゴ……
キイイイ
母性巫女 「……?」
母性巫女 (熱い? ポケットの中……)
ガサ ゴソ
釜のかけら が 輝いている……
母性巫女 「……これは」
母性巫女 (たしか、いつだったか青白い顔のメイドの人に貰った、釜のかけら)
母性巫女 (すっかり忘れてた……)
釜のかけらは 母性巫女を 持ち主と 認めた!
釜のかけらは 世界を越える力を 帯びた!
キイン キイン キイン
母性巫女 (小さなかけらから、不思議な力を感じる)
母性巫女 (軽いのにとても重たくて、やわらかくて、あたたかい……)
母性巫女 (メイドの人は、世界を越えることが出来ると言っていたっけ)
母性巫女 (どうして今、光りだしたんだろう)
母性巫女 (……服を後ろ前に着たから?)
キイン キイン
釜のかけらが 母性巫女の記憶を 読み取った!
釜のかけらが いくつかの行き場所を 示す……
▼幼女魔王の塔
幼女魔王の城
精霊の森
死神の裏道
淫獣霊の胎
母性巫女 (ここから抜け出せる?)
幼女魔王の塔
キイン キイン
母性巫女 (釜のかけらを使えば、違う世界へ行けるなら)
母性巫女 (どこへ行こう……)
母性巫女 (お城に戻る?)
母性巫女 (戻る……? 私の戻る場所は……)
キイン キイン
母性巫女 (…………ああ)
母性巫女 (そうだ、あの子たちと約束していたんだった)
母性巫女 (まずは、そこへ行かなくちゃ……)
キイン キイン
パキンッ
母性巫女 「!」
母性巫女 (何か割れる音……)
ピシ ピシ ピシ
母性巫女 (目の前……何も無いところにヒビが走っていく)
バリン
越界の門が 開いた!
母性巫女 「目の前の空気が割れた…………?」
母性巫女 (ここに飛び込めということ?)
ヨン ヨン ヨン ヨン
母性巫女 (毒々しい暗い光が混ざり合っているけど)
母性巫女 (大丈夫かしら。病気になったりしないのかしら……)
百面のエルフ 「行かせない……!」
キイイイ
骨仮面の剣士 「…………!」
タンッ……
母性巫女 (仮面の二人に気づかれた!)
母性巫女 (今まで気づかなかったんだ……)
母性巫女 「……ええいっ」
ピョン
母性巫女は 世界を渡った!
ヨン ヨン ヨン ヨン……
ヨン ヨン ヨン ヨン
ポイッ
ドサ
母性巫女 「ぁんッ……」
母性巫女 「うーん……」
母性巫女 (尻餅ついちゃった)
母性巫女 (飛び込まない方が良かったのかしら)
キイン キイン
ピシ ピシ ピシ
越界の門は 閉じてしまった……
母性巫女 「ここは……」
幼女魔王の塔
母性巫女 「戻れたみたいね……」
母性巫女 (世界を渡るって、変な感じ)
母性巫女 (馬車や船での移動とは全然違う)
母性巫女 (何と言うか、剥がれるような……)
シイン
母性巫女 (……ここは塔のどのあたりなのかしら)
母性巫女 (AとMの近くに出られていたら良いけれど……)
……ザザア ン ザザア ン
母性巫女 「……波の音?」
ザザア
ザザア
母性巫女 (近くに海があるのかしら)
母性巫女 (気持ちの良い音。何だか、眠たくなってくる……)
母性巫女 (…………)
ザザア ン
ザザア ン
…………
…………
チュブ ブジュルル
母性巫女 「…………!」
母性巫女 (……私、眠っていた?)
異形の大男 「フーッ、フーッ……」
チウ チウ
母性巫女 「……ッ、あ、う……」
ビクン
母性巫女 (そうだ、階段で男の人の呼び声に答えて)
母性巫女 (そうしたら身体の力が抜けて、動けなくなって)
異形の大男 「ひひっ……ひひひ……」
ハミュ カジカジカジ
母性巫女 「ひぅっ……ひっ、ぃん……」
母性巫女 (かけ上がってきた、大猿と人間が混ざったようなモンスターに捕まったんだ……)
異形の大男 「カハァ」
ベロン レロレロレロ
モニュ モニュ モニュ
母性巫女 「ひゃっ」
母性巫女 「ゃめ……ぁっ……ぁ、あっ……!」
母性巫女 (私、よだれ垂らしてる。拭かなきゃ……)
母性巫女 (……すごいにおい。嫌なのに、頭がポーッと気持ちよくてくらくらして、どうにかなりそう……)
母性巫女 (ここはどこなの。どこに連れ込まれたの。暗い)
母性巫女 (そういえば捕まる前、女の子の声が聞こえたけど)
母性巫女 (もしかしたら、あのとき返事するのがもう少し遅かったら、今頃……)
グニィイイ
母性巫女 「ぃひいぃ!?」
ビクン ビクン
異形の大男 「フフヒッ……お前、乳牛……」
異形の大男 「毎日、交尾と乳搾り、いっぱいしつけてやる……」
モニュ モニュ モニュ
チウウウウ
母性巫女 「は、ぁは……ぃ、ぃや、あ……」
ザザア ン
ザザア ン
ザザア ン
幼女魔王A 「……まま!」
母性巫女 「………っ」
母性巫女 「え……?」
幼女魔王A 「どうしたの、まま」
母性巫女 「あれ……今、私……」
母性巫女 (Yの誘いを素通りして、しばらく塔の調査を続けたあと、広間に帰って……)
幼女魔王A 「……まま?」
母性巫女 (晩御飯を終えて、Aを寝かしつけるために絵本を読むところ……よね?)
母性巫女 「あ、ごめんなさい」
幼女魔王A 「グール×ハンターは嫌? 別のご本にする?」
母性巫女 「い、いえ。じゃあ読みましょうね」
母性巫女 「コホン……」
母性巫女 「大地を踏みしめて……」
ザザア ン ザザア ン
ザザア ン ザザア ン
母性巫女 「…………!」
母性巫女 「あれ? ここは……」
幼女魔王の塔 地下牢
母性巫女 「釜のかけらが光って、客室から脱出して」
母性巫女 「塔の廊下に戻ったはずだけど」
母性巫女 「地下牢……?」
シイン
母性巫女 「地下牢よね。私が最初に来た」
母性巫女 「……何だか、綺麗になっているような」
頑丈な牢屋
母性巫女 「ついさっき完成したみたい。来たときは荒れ放題だったのに」
カツ カツ カツ
母性巫女 「ええと、階段はあっちだったっけ……」
ズズ……
母性巫女 「…………」
母性巫女 (かたいものを引きずる音)
母性巫女 (あの棺かしら……)
ズズ ズズズ
母性巫女 (近づいてくる。逃げなきゃ)
ズズ カツン ズズズ カツン
母性巫女 「……?」
母性巫女 (引きずる音だけじゃない。足音も聞こえる)
母性巫女 (棺じゃない?)
母性巫女 (どうしよう。留まって確かめてみるべきかしら)
ズズ ズズズ
母性巫女 (どこかに隠れる場所……)
グ
鍵が かかっている……
母性巫女 (格子扉はびくともしない)
???の声 「良いのかい?」
???の声 「これで君は、未来の殆どを失うのだよ」
母性巫女 (声が響く)
母性巫女 (子供の声みたい。子供が棺をひいている……?)
ズズ ズズズ
???の声 「考えられないよ」
???の声 「未来とはつまり、この先ずっとだ」
???の声 「こんなことのために、君はこの先ずっと、誰かの思惑通りに動かなくちゃいけないんだ……」
母性巫女 (……声が遠ざかる)
カツン カツン カツン
ズ ズ ズ
母性巫女 (足音は近づいてくる)
母性巫女 (あ、隠れる場所探さなきゃ……)
サアア
母性巫女 (あら………)
母性巫女 (霧が立ちこめてきた?)
母性巫女 (塔の中なのに、霧)
母性巫女 (毒の霧……ではないみたい)
カツン カツン カツン
ズ ズ ズ
人影1 「…………」
人影2 「…………」
母性巫女 (霧の中に人影)
母性巫女 (片方は子供みたい)
人影2 「かわろうか?」
母性巫女 (男の人の声。階段で聞いた声じゃ無い)
人影1 「……これは、おれの仕事だ」
ズ ズ ズ
母性巫女 (女の子の声。さっき響いた声では無いみたいだけど)
母性巫女 (聞き覚えがある気がする……)
母性巫女 (何とか、見えないかしら……)
人影2 「何でも背負い込みたがるね」
人影2 「そのあたり、君は子供だな」
母性巫女 (帽子を被っているみたい……)
人影1 「うるさい……」
母性巫女 (子供の方は、何だかもっさりしてよく分からない)
母性巫女 (でも、なんとなく見たことある感じ……)
人影1 「嫌味を言うために、わざわざ着いてきたのか」
人影2 「そんなわけないだろう」
人影2 「子供一人をこんな場所に行かせられるか」
人影1 「おれ一人でじゅうぶんだ」
人影2 「そうは思えんね」
人影2 「現にお前は、あそこにいる女性に気がついていない」
母性巫女 「……!」
人影2 「やあ! 黒い髪のお嬢さん。黒い瞳が神秘的だね」
人影2 「こんなところでどうしたのかな」
母性巫女 (見えている?)
母性巫女 「…………」
バフ
母性巫女 「!!」
人影2 「散歩の途中で迷い込んだのかな」
詐欺商人 「黒髪のお嬢さん」
詐欺商人が あらわれた!
母性巫女 (足音も聞こえなかった……)
詐欺商人 「まあ、迷い込めるような場所じゃない」
詐欺商人 「となると……敵か味方か」
詐欺商人 「敵はいなくなったはずだが、さて?」
母性巫女 「……あの」
人影1 「魔法少女か?」
ズ ズ ズ
母性巫女 「え?」
人影1 「貴様は魔法少女かと聞いている」
母性巫女 (魔法少女……)
詐欺商人 「違うと答えなさい」
母性巫女 「え……はあ」
母性巫女 (本当に違うんだけど……)
母性巫女 「ええと……」
母性巫女 「違いまあす!」
マアス マアス マアス……
母性巫女 「…………」
人影1 「……では何だ」
母性巫女 「何って……」
詐欺商人 「……やめろ、棺持ち!」
ゾゾゾゾゾゾゾ
母性巫女 「!!」
奇襲!
謎の攻撃が襲いかかる!
詐欺商人 「ええい……!」
詐欺商人の ???攻撃……
母性巫女 「っ……」
タン
母性巫女の 多段跳び!
謎の攻撃を かわした!
多段跳びのレベルが 上がった!
詐欺商人 「おおっ」
母性巫女 (何? 不吉な影が床を這ってきた……)
母性巫女 (敵……?)
チラ
詐欺商人 「失礼、手違いだ。あなたのような美女に見つめられるのは嬉しいが、そんな目をしないでいただきたい」
詐欺商人 「……おい、何てことするんだ。このお嬢さんじゃなければ、死んでいたぞ!」
ズ ズ ズ ズ
人影1 「……かまわない」
淫魔幼女 「敵か味方か分からないなら、殺してから確認すれば良い」
淫魔幼女 「敵でも味方でも」
淫魔幼女 「この場所にいる者が、危険でないわけがない」
淫魔幼女 「今生きていられる者が、危険でないわけがない」
母性巫女 (この子、あのとき故郷の森にいた……!)
母性巫女 「!!」
棺
母性巫女 「棺……」
母性巫女 (この子がひいている棺)
母性巫女 (牢屋で暴れていた棺と同じ)
母性巫女 (……ような気がする)
母性巫女 (いいえ、それよりも……)
詐欺商人 「だからと言って、質問ふっかけといていきなり攻撃はないでしょうが」
淫魔幼女 「奴らは問いかけもなく襲ってくる……」
淫魔幼女 「!!」
母性巫女 「…………」
淫魔幼女 「……魔王姫様」
詐欺商人 「どうした、棺持ち?」
母性巫女 「…………」
ツカ ツカ ツカ
淫魔幼女 「なぜ……いや、いても不思議は……」
母性巫女の お母さんチョップ こうげき!
ドゴオォオオオン
淫魔幼女 「なぶぅ!?」
淫魔幼女のHPが 1 になった!
ォオオオ……
淫魔幼女 「…………」
詐欺商人 「おいおい……」
母性巫女 「……いきなり」
母性巫女 「あんなことしちゃ駄目でしょう!」
淫魔幼女 「…………」
母性巫女 「死んじゃったら、どうするんですか」
母性巫女 「子供だからって、ごめんなさいじゃすまないことなんですからね!」
淫魔幼女 「……敵だ」
淫魔幼女 「こいつは敵だ……!」
詐欺商人 「落ち着け。彼女の言うとおり、非はお前にある」
詐欺商人 「そしてよく見ろ。彼女は魔法少女ギルドの者でもなければ、お姫様でもない」
淫魔幼女 「…………」
淫魔幼女 「貴様は誰だ。なぜここにいる」
母性巫女 (……森で見たときよりも、険しい顔をしている)
母性巫女 「私は母性巫女です」
母性巫女 「ここに来たのは……」
母性巫女 (どう言ったら良いんだろう……)
淫魔幼女 「言えないのか?」
詐欺商人 「待て待て、ちゃんと名乗ってくれた」
詐欺商人 「彼女らとは違うだろう」
淫魔幼女 「偽名ということもある」
詐欺商人 「彼女らは名を偽らないものだろう?」
淫魔幼女 「お前の知っているのとは違うのだ、奴らは」
淫魔幼女 「それよりもここに来た理由だ」
詐欺商人 「たしかに、それは知りたいね」
詐欺商人 「ここは散歩の途中で迷い込むようなところじゃ無い」
母性巫女 「ええと……」
…………
詐欺商人 「……自分の過去と交差しようとして、ね」
詐欺商人 「じゃあ、どうしてここにいるんだ」
母性巫女 「さあ、それが私にもよく分からなくて」
詐欺商人 「失敗ってことか? しかし何者なんだ、君をここへ送りこんだ奴は」
詐欺商人 「時間と空間をどうにかしようなんて」
詐欺商人 「世界を渡るどころの話じゃ無いぞ」
母性巫女 (そうなんだ……)
母性巫女 「ごめんなさい。それも、よく分からなくて……」
淫魔幼女 「隠すとためにならんぞ。その無駄に膨らんだ乳を道具入れにしてやろうか」
母性巫女 「もう、そんな言い方しちゃ駄目ですよ」
詐欺商人 「……まさか」
詐欺商人 「ここが君の過去なんてことは無いよな」
母性巫女 「まさか……」
母性巫女 「あ、でも」
母性巫女 「ここが何なのか分からない以上、関係ないとも言えないのかしら……?」
詐欺商人 「……はっはっは。なんとも、本当に迷子のようなお嬢さんだな」
母性巫女 「あはは、ええ、本当に……」
母性巫女 (この人、どこかで会ったような気がする)
淫魔幼女 「…………」
淫魔幼女 「黒い髪……黒い瞳……」
淫魔幼女 「魔王姫さまとの関係は」
母性巫女 (魔王姫……サンマ?)
母性巫女 (外套に口を埋めて話しているから、ちょっと聞き取りにくい)
母性巫女 (口元を隠したい事情があるのかしら。それとなく注意してみるべきかしら)
詐欺商人 「たまたまそうと言うだけで、似ても似つかないだろう」
詐欺商人 「おれはあまり会うことは無かったが、すぐに分かるぞ」
淫魔幼女 「ここでは姿など、意味が無い」
詐欺商人 「まあ、たしかに」
母性巫女 「……あの」
母性巫女 「いろいろ事情が分からないんですが」
母性巫女 「あなたたちは……?」
詐欺商人 「ああ、失礼。名前しか名乗っていなかったな」
詐欺商人 「おれたちは……」
淫魔幼女 「…………」
詐欺商人 「言って構わんね?」
淫魔幼女 「…………」
プイ
母性巫女 (可愛い)
詐欺商人 「さて、どう話そうかな」
詐欺商人 「世界を渡ることについては、分かっているんだったな」
母性巫女 「ええ」
母性巫女 「知ったのは、最近で、分からないことも多いんですけど」
詐欺商人 「じゅうぶんだ」
詐欺商人 「では、ここがある人物そのものの別のかたちだということは?」
母性巫女 「別のかたち……」
母性巫女 「ここがN……幼女魔王の塔で」
母性巫女 「彼女という存在そのもの? ということを何となく聞いたような……」
詐欺商人 「!!」
淫魔幼女 「!!」
淫魔幼女 「貴様、その名をどこで知った……!」
ゾゾゾゾゾゾゾゾゾ
淫魔幼女は 力を ためている……
母性巫女 「えっ……」
淫魔幼女 「答えかたによっては命は……」
淫魔幼女のHPが 1 に なった!
淫魔幼女 「無ぶぅ!?」
淫魔幼女 「…………」
母性巫女 「そういうことしちゃ駄目って言ったでしょう」
淫魔幼女 「…………」
母性巫女 「……もう。次やったら、お尻ぺんぺんですからね」
淫魔幼女 「おし……」
淫魔幼女 「…………」
プイ
詐欺商人 「いやー……滅茶苦茶なお嬢さんだ」
詐欺商人 「魔王級の化物と渡り合うこいつを一発で黙らせるとは」
詐欺商人 「まさか、深い方の人なのかな」
母性巫女 「不快砲?」
詐欺商人 「これも知らないか……」
詐欺商人 「で」
詐欺商人 「なぜここの名前を知っているのかな?」
母性巫女 「…………っ」
母性巫女 (この人……)
詐欺商人 「答えかたによっては……」
詐欺商人は 耳かきを 装備した!
詐欺商人 「こいつの威力を味わうことになるぜ?」
母性巫女 「……はい?」
詐欺商人 「その名前は限られた者しか知らないはずだ」
詐欺商人 「君は、あの戦いの中にいたのか? おれの記憶には無いが」
母性巫女 「戦い?」
詐欺商人 「金狐の城にいたのかと聞いているんだ」
母性巫女 「金狐の城……?」
母性巫女 「ごめんなさい、何のことだかさっぱり」
詐欺商人 「では、なぜ知っているのかな」
詐欺商人 「ここの名前を」
母性巫女 「なぜって……」
母性巫女 「N……幼女魔王本人から聞きました」
淫魔幼女 「ばかな……」
詐欺商人 「…………」
詐欺商人 「嘘では無いのだな?」
母性巫女 「ええ」
詐欺商人 「……君、故郷の世界はおぼえているのかな」
母性巫女 「いま暮らしている世界なら分かりますけど」
母性巫女 「故郷については、あまり……」
母性巫女 「暮らしていたのは、世界がたくさんあることとか、世界を渡ることとか、知る前だったので」
詐欺商人 「紋章については知っているかな」
母性巫女 「少し……」
母性巫女 「身分証になる……とか」
詐欺商人 「自分の紋章については?」
母性巫女 「いえ……まだ……」
詐欺商人 「ふむ」
詐欺商人 「手のひらを見せていただいても?」
母性巫女 「はあ……」
ス
詐欺商人 「うかつなお嬢さんだ」
詐欺商人 「男に手のひらを見せるとは」
ニギ
母性巫女 「……っ」
母性巫女 (手を握られた。反応できなかった……)
詐欺商人 「あれだけの力を持っていたら、そうもなるか」
詐欺商人 「だが男には気をつけるべきだ」
詐欺商人 「失礼、もう良いぞ」
母性巫女 「……はい」
詐欺商人 「ほら、君の紋章だ」
白蝶貝の紋章
ヒイン ヒイイン
母性巫女 (詐欺商人の手の上に、光が浮いている)
詐欺商人 「ちなみに、複製でない紋章を他人の手に握られるのは」
詐欺商人 「命を握られることに等しい」
母性巫女 「えっ」
詐欺商人 「一般にギルドなどに提示する紋章は、専用のコインなどに焼き付けた複製のわけだが」
詐欺商人 「これは複製か本物か、どちらだと思う?」
母性巫女 「…………」
母性巫女 (紋章って、複製なんてできるんだ……あんなに簡単に?)
詐欺商人 「これからは気をつけろということだな」
詐欺商人 「下品な者に紋章を握られたらそれこそ悲惨だぞ」
詐欺商人 「……見えない精霊の世界……座標は……」
淫魔幼女 「第三大世界だ。外れあたりか……?」
母性巫女 (この人たちは、色んなことを、私よりずっと深く知っているのね)
母性巫女 (……なんだか、裸を見られているみたいで恥ずかしい)
母性巫女 (紋章を見られるというのは、そういうことなのかしら)
淫魔幼女 「その紋章をよこせ」
淫魔幼女 「そいつを使ってそいつを生き餌にして希少人飼い花釣りに使う」
詐欺商人 「はいよ……」
詐欺商人 「ありがとう、返すぞ」
ヒイイ
母性巫女 「ぁ……」
ピクンッ
母性巫女 (紋章が、胸の中に……)
詐欺商人 「答えは本物だ」
詐欺商人 「複製はいただいたけどな」
白蝶貝の紙
母性巫女 「あの……」
詐欺商人 「大丈夫、悪用はしない」
詐欺商人 「こう見えて良心的な商人で通っている」
母性巫女 「商人……ですか」
淫魔幼女 「おかげで職業レベルは低いままだがな」
詐欺商人 「はっはっは」
母性巫女 「……あの」
詐欺商人 「本当に、あの戦いとは関係なかったようだが」
詐欺商人 「では、君がここの名前を聞いたのは、どこかな」
母性巫女 「故郷ですけど」
詐欺商人 「そのときの状況を、教えてもらえるかな」
母性巫女 「ええ……」
母性巫女 「森を歩いていたら、あの子が倒れていて……」
詐欺商人 「倒れていた?」
母性巫女 「はい」
母性巫女 「それで、家に連れて帰って」
母性巫女 「……名前を教えてもらったのは、あの子が目を覚ましてからしばらくしてからでした」
淫魔幼女 「ありえない」
母性巫女 「本当のことです」
淫魔幼女 「!」
ササ
淫魔幼女の 守りをかためている!
母性巫女 「……な、何もしませんよ」
詐欺商人 「彼女が目を覚ました……?」
母性巫女 「……おかしいことですか?」
詐欺商人 「ああ」
詐欺商人 「起きているわけは無いし、出歩くこともできないはずだ」
母性巫女 「え……」
詐欺商人 「ほかにも、何か彼女について教えてもらえないか」
母性巫女 「ええと……」
詐欺商人 「何でもいい」
母性巫女 「……肉より野菜が好きです。とくに、スープとかグラタンとか」
母性巫女 「お風呂はあんまり好きじゃないみたいでしたけど、自分から入るようになりました」
母性巫女 「眠っているとき、毛布にもぐりこんで指をくわえるくせがあって……」
母性巫女 「あ、あと、魔動画の漫画を見るのが好きみたいです」
母性巫女 「それから……」
詐欺商人 「……あ、ありがとう。いったん、そこまでで大丈夫だ」
淫魔幼女 「…………」
淫魔幼女 「誰の話をしているのだ、貴様は」
淫魔幼女 「胸に脳みそを吸われて馬鹿になったのか」
母性巫女 「もう、またそんな言い方して」
淫魔幼女 「!」
ササ
淫魔幼女の守りが さらにかたまった!
母性巫女 (警戒されている)
母性巫女 「あの、大丈夫ですよ。怖くないですよ」
母性巫女 「さっきは危ないことをしたから怒っただけで……」
淫魔幼女 「怖い? ……おれをなめるな」
母性巫女 「は、はあ……」
詐欺商人 「ううむ……」
詐欺商人 「彼女の下位……外見の特徴を教えてもらえないか」
母性巫女 「色白で、髪がピンク色で、背はこのくらい……」
母性巫女 「ツリ目のような少しタレ目で、瞳もピンク色」
母性巫女 「眉はハの字で、優しいような自信ないような、口は小さめ……」
詐欺商人 「……こんな顔かな? 彼女の似顔絵だが」
魔法の似顔絵S
母性巫女 「いえ……まったく」
詐欺商人 「おっと、失礼、間違えた」
詐欺商人 「こっちだ」
魔法の似顔絵N
母性巫女 「あ、そっくり」
母性巫女 「もう少し、髪は伸びていますけど」
詐欺商人 「なるほど……」
詐欺商人 「……本当のことを言っている」
詐欺商人 「本当に、姫を知っている……」
淫魔幼女 「そんなはずは無い」
詐欺商人 「そうだとも。だが現に、彼女が語るのは、まさにそのものじゃないか」
淫魔幼女 「どこが」
詐欺商人 「外見の話だ」
詐欺商人 「姫の新しい名前も知っている」
母性巫女 (姫……)
淫魔幼女 「……何が起きている」
詐欺商人 「さて、な」
淫魔幼女 「これも呪いのせいなのか」
詐欺商人 「その可能性はある」
詐欺商人 「……お嬢さん」
母性巫女 「はい」
詐欺商人 「君は、幼女魔王の味方かい?」
母性巫女 「…………」
母性巫女 「……あなたたちは、ここで何をしているんですか」
詐欺商人 「それを教えたら、答えてくれるのかな」
母性巫女 「…………」
母性巫女 「味方です」
母性巫女 「味方だと、思っていました」
母性巫女 「けれど、あの子のこと、知らないことばかりで……」
淫魔幼女 「…………」
詐欺商人 「知らない?」
詐欺商人 「君は、おれたちの知らないあの子を知っているようだが」
母性巫女 「知らないんです」
母性巫女 「あの子が来る前のことも、一緒に暮らしていたときも……」
淫魔幼女 「暮らしていた……?」
母性巫女 「それで良いと思っていました」
母性巫女 「でも……」
詐欺商人 「知りたいかい?」
詐欺商人 「知ると、どうにかなるとでも?」
母性巫女 「…………」
母性巫女 (本当。知って、どうするの)
母性巫女 (何のために……)
詐欺商人 「敵になる、とか?」
母性巫女 「…………」
母性巫女 「……あなたは、知っているんですか」
母性巫女 「あの子のこと」
詐欺商人 「ああ」
詐欺商人 「と、言いたいところだがね」
母性巫女 「…………」
詐欺商人 「知らんことだらけなのだよ」
詐欺商人 「だからこうしてここを探検し……」
詐欺商人 「何が起きたのか、だいぶ分かってきたつもりになっているわけだが」
母性巫女 (探検……)
母性巫女 「もしかして、地下から?」
詐欺商人 「地下……?」
母性巫女 「ここより下から、来たんですか?」
詐欺商人 「ここより上があるような言い方じゃないか」
母性巫女 「? ええ……」
詐欺商人 「本当に言っているのか?」
母性巫女 「はい」
淫魔幼女 「ここより上がある……?」
淫魔幼女 「何を言っている」
淫魔幼女 「何があるというんだ」
母性巫女 「ええと、ここをずっと行ったところに長い階段があって」
母性巫女 「のぼりきると、広間になっていて」
母性巫女 「そこからさらにいくつかののぼり廊下が……」
詐欺商人 「…………」
淫魔幼女 「…………」
母性巫女 (変なものを見るような目……)
母性巫女 「……あの、本当ですよ?」
…………
…………
カツン カツン カツン
カツン
母性巫女 (階段のあるところまで、二人を案内することにした)
母性巫女 (けれど……)
母性巫女 「……そんな」
壁
母性巫女 「行き止まり?」
詐欺商人 「……ここに、あったのか」
母性巫女 「はい」
母性巫女 「まだらな色の土の階段が、ずっと伸びて……」
詐欺商人 「そこには……のぼった先の、広間には何があった?」
母性巫女 「あったというか」
母性巫女 「たくさんの、あの子がいました」
淫魔幼女 「…………」
淫魔幼女 「何なんだ、貴様は」
母性巫女 「え……」
淫魔幼女 「とぼけた顔をして」
淫魔幼女 「何をどこまで知っている」
母性巫女 「私は……」
淫魔幼女 「何をしに来ている……!」
ゾ ゾ ゾ ゾ
詐欺商人 「棺持ち」
詐欺商人 「本当に彼女は何も知らないのかもしれない」
淫魔幼女 「ではなぜ、この女は知っている」
淫魔幼女 「おれたちの……」
詐欺商人 「見てきたからだとしたら」
母性巫女 「?」
母性巫女 (この人たち、さっきから変に通じ合って、何を話しているかよく分からない)
淫魔幼女 「見てきた?」
詐欺商人 「お嬢さん」
母性巫女 「あ、はい」
詐欺商人 「ここは、地下なんだな」
母性巫女 「はい」
詐欺商人 「ここは塔の最上階だ」
母性巫女 「え……?」
詐欺商人 「無いはずなんだ。ここより上なんて」
母性巫女 「でも、本当に……」
詐欺商人 「この塔の階層とは、時間だ」
母性巫女 「時間?」
母性巫女 「この塔は、あの子そのものでは無いんですか」
詐欺商人 「そうだ」
詐欺商人 「幼女魔王という世界そのものだ」
母性巫女 「世界……?」
詐欺商人 「彼女個人をひとつの世界としてとらえた姿のひとつが」
詐欺商人 「この塔だ」
母性巫女 「あの子が、世界……?」
詐欺商人 「大きな世界の中で、小さな世界が行き交う」
詐欺商人 「小さな世界の中で、様々な存在が行き交う」
詐欺商人 「その存在ひとつひとつを、世界に見立てるんだ」
詐欺商人 「想像できるかな?」
母性巫女 (できない)
母性巫女 「な、なんとなく」
母性巫女 「できるかなあ……?」
淫魔幼女 「……国の中にも、たくさんの村がある」
淫魔幼女 「村にはたくさんの村人がいる」
淫魔幼女 「では村人の中にも、たくさんの何かがあっても不思議ではない」
淫魔幼女 「国、村、村人、何か……呼び方の違うそれらを、世界ということにする」
母性巫女 (分かった気がするような気がしないような気がするけど)
母性巫女 (とりあえず……)
母性巫女 「ありがとうございます!」
スッ
淫魔幼女 「……!」
母性巫女の なでなで!
淫魔幼女の 回避!
ああっ 失敗!
淫魔幼女は なでなでされた!
詐欺商人 「君のいた世界では、時間の流れを見ることはできるか?」
母性巫女 「…………」
母性巫女 「小じわ?」
淫魔幼女 「なんかこいつ馬鹿だな」
詐欺商人 「この世界では、いろいろと勝手が違う」
詐欺商人 「大世界とか小さな世界とかいったものとは、そもそも違う場所にある」
母性巫女 「……あの子を抱き上げることと、ここにこうしているのは」
母性巫女 「変わらないことなのかもしれない……」
詐欺商人 「ほう?」
母性巫女 「よく分からないけれど、そう聞きました」
詐欺商人 「まあ、そういうことだ」
詐欺商人 「おれたちが当たり前に行うことが」
詐欺商人 「おれたちが知る結果をもたらすとは限らない場所だ」
詐欺商人 「ここでは、時間は階層という形をとる」
母性巫女 「階層……」
詐欺商人 「塔は上へ伸びていく」
詐欺商人 「つまり地下とは過去を意味し」
詐欺商人 「最上階は今を意味する」
母性巫女 「……じゃあ」
詐欺商人 「それより上から来たのだとすれば」
詐欺商人 「君は未来から来たことになる」
母性巫女 「未来……!?」
淫魔幼女 「……何が起きるか分からん場所とは言え」
淫魔幼女 「それは……」
詐欺商人 「過去へ歩いて行ける世界だ」
詐欺商人 「ありえないとは言えないのでは?」
淫魔幼女 「…………」
淫魔幼女 「膨大な魔力と知識を贄とする術、それに匹敵する何か……」
淫魔幼女 「もしくは……」
耳かき
棺
淫魔幼女 「…………」
淫魔幼女 「に類するアイテムを使わない限り、できることではないぞ」
詐欺商人 「世界は広く深いのだ」
詐欺商人 「おれたちの知らんお手軽な何かがあるかもしれんぞ?」
詐欺商人 「今だって、ある世界では他の世界を認識すらできないのに」
詐欺商人 「別のある世界では、誰もが飛行船で他の世界へ気軽に旅行できている」
詐欺商人 「おれたちが色々なものを犠牲にして得られるものが」
詐欺商人 「ある世界では、誰でも簡単に買える馴染みの菓子のようなものかもしれない」
淫魔幼女 「…………」
チラ
母性巫女 「……?」
ニコリ
淫魔幼女 「……平和ボケのアホ女にしか見えん」
母性巫女 「んまっ……」
淫魔幼女 「企む脳みそも無いだろう」
淫魔幼女 「馬鹿力だけだ。陰謀を警戒することもないか……」
母性巫女 (この子ったらどうしてこんなに乱暴な言い方をするのかしら)
母性巫女 (そういうお年頃なのかしら……)
母性巫女 「まったく……」
ダキ
淫魔幼女 「!?」
母性巫女 「どうしてそんなひどい言い方ばっかりするんですか」
淫魔幼女 「貴様……!!」
母性巫女 「それに、ずっとしかめっ面で……」
ナデ ナデ
淫魔幼女 「!!」
母性巫女 「せっかくこんなに可愛いんですから……」
母性巫女 「たまには笑ったほうが良いですよ」
ナデ ナデ
淫魔幼女 「やめろ……」
淫魔幼女 「やめろ貴様……やめろ!」
淫魔幼女 「やめろ!」
母性巫女 「はいはい」
母性巫女 「でもあんまりひどいと、今度は頬っぺたすりすりですからね」
淫魔幼女 「…………」
淫魔幼女 「……フン」
母性巫女 (お尻ぺんぺんよりも、そっちの方が効果あることもあるのよね)
詐欺商人 「はっはっは……」
詐欺商人 「よし……」
詐欺商人 「確かめてみるか」
母性巫女 「?」
淫魔幼女 「何をするつもりだ」
詐欺商人 「近々やろうとしていたことだよ」
詐欺商人 「……っと」
詐欺商人の 紋章パンチ!
バコン
母性巫女 (壁を砕いた……!)
ガラガラガラ
詐欺商人 「さて……と」
淫魔幼女 「…………」
母性巫女 (牢屋の壁の向こうに……)
土壁
詐欺商人 「……ふむ、まだら色だな」
詐欺商人 「これで、お嬢さんの言っていることの信憑性が上がったな」
淫魔幼女 「…………」
母性巫女 「この土の色……」
母性巫女 「そうだわ、やっぱり、ここに階段が」
詐欺商人 「これから出来るんだ」
母性巫女 「え……」
詐欺商人 「ありがとう。君のおかげで、かなり早く進められそうだ」
母性巫女 「あなたたちは、何を……」
母性巫女 「しているんですか?」
母性巫女 「何をしようとしているんですか?」
母性巫女 「……あなたたちは、あの子の味方なんですか?」
詐欺商人 「そういえば」
詐欺商人 「おれがした同じ質問に対する君の、最終的な答えは曖昧なままだったな」
母性巫女 「…………」
詐欺商人 「…………」
詐欺商人 「……味方だ」
詐欺商人 「味方だと、信じたい」
母性巫女 「信じたい?」
詐欺商人 「その人のためだと思ってしたことが、その人を苦しめることだってある」
詐欺商人 「おれたちのやろうとしていることが、彼女にとって良い結果につながるとは限らない」
詐欺商人 「とくに、今いるのはこんな世界だ」
淫魔幼女 「…………」
母性巫女 (その人のためを思ってやったことが、違う結果に……)
母性巫女 (Nが私をしもべにしたことも……)
詐欺商人 「君の知るあの子は、幸せなのか?」
母性巫女 「え……」
詐欺商人 「すまない。忘れてくれ」
詐欺商人 「君の来し方がおれの言ったとおりなら、聞くべきではないのだろう」
母性巫女 「…………」
詐欺商人 「……思ったよりやわらかい土だな」
淫魔幼女 「これなら、探索に割く時間も多く取れそうか……」
詐欺商人 「この土はあの子の……耳垢だったりしてな」
淫魔幼女 「姫を侮辱するな」
詐欺商人 「おや、もう違うのだろ?」
淫魔幼女 「まだだ。完全にそうなったわけではない」
淫魔幼女 「だから、おれたちがここにいるのだ」
詐欺商人 「やれやれ、剣で戦うよりもかなり頑張らなくてはな」
詐欺商人 「……彼女に、おれたちのことをもう少し話しても?」
淫魔幼女 「…………」
母性巫女 (私は、あの子の……)
母性巫女 「……あの」
詐欺商人 「うん?」
母性巫女 「私の答え、なんですけど……」
…………
……
幼女魔王の塔 最上階?
…………
母性巫女 「……塔を捨てる?」
詐欺商人 「ああ」
母性巫女 「それは、あの子の過去を捨てるということじゃ……」
詐欺商人 「そうなるな」
母性巫女 「そんな、あっさり」
詐欺商人 「まあ待て。まったくその通りというわけでもないんだ」
詐欺商人 「まず、君の知るあの子と、おれの言うあの子は、おそらく違う存在だ」
母性巫女 「………?」
母性巫女 「まあ、こんなときに。ウフフ……」
詐欺商人 「待て待て、小粋なジョークとかそんなんじゃ無い」
淫魔幼女 「やはりこの女」
淫魔幼女 「馬鹿だな」
詐欺商人 「というか、意味が分からない話をとりあえず冗談として片付けようとしなかったか?」
母性巫女 「い、いえ、そんな……」
母性巫女 「それで、あの子があの子じゃ無いというのは……?」
詐欺商人 「どう説明したものかな……」
詐欺商人 「この塔は、一度滅んでしまったんだ」
母性巫女 「滅んだ……」
母性巫女 (仮面の人も、そう言っていた)
詐欺商人 「つまりあの子は、一度死んでしまったということだ」
母性巫女 「死……」
詐欺商人 「身体は何とか助かったが、心は駄目だった」
詐欺商人 「念入りに破られた紙のように粉々だ」
母性巫女 「そんな」
母性巫女 「いったいあの子に何が……」
詐欺商人 「それは……」
淫魔幼女 「……呪いだ」
淫魔幼女 「つま先から頭頂まで細かく刻み込むように、数々のおぞましい呪いを受けた」
淫魔幼女 「心が、それに耐えきれなかったのだろう」
母性巫女 「おぞましい呪い」
母性巫女 (私も、故郷の世界に居た頃、胸から変な音がする呪いをかけられていたっけ)
母性巫女 (あの呪いのせいで、魔王を倒して以降、森で孤独に暮らすことに……)
詐欺商人 「おれたちは何度もこの塔に潜り、あの子の心の欠片を探し集め」
詐欺商人 「修復を試みたが……」
詐欺商人 「どうも元通りにはならんらしい」
母性巫女 (心を、修復?)
淫魔幼女 「同じ材料を使っているのに、同じ物をつくることはできなかった」
詐欺商人 「そうなるとは思っていたがな」
詐欺商人 「精神的な蘇生は、物理的な蘇生よりも難しい」
詐欺商人 「何とか、こんな塔としておれたちの領域に引きずり落としても」
詐欺商人 「もとのあの子とは似ても似つかない形の心しか作れなかった」
詐欺商人 「それに合わせて、姿も多少変わってしまったのは誤算だったが」
母性巫女 「……どうして、あの子がそんな目に」
淫魔幼女 「…………」
詐欺商人 「悪いがそれは、教えることはできないな」
母性巫女 「…………」
母性巫女 「教えることのできない、そんな大きなことなんですか」
詐欺商人 「……君の知るあの子が体験したことじゃなくて」
詐欺商人 「壊れる前のあの子が体験したことだからさ」
淫魔幼女 「まったく別の存在なのだ」
淫魔幼女 「ひとつの塔ではあるが、ここより下と、ここより上は」
母性巫女 「別……」
詐欺商人 「ろうそくに火を灯したとして」
詐欺商人 「火の一瞬一瞬の形は違うだろう」
母性巫女 「え、ええ……はあ」
詐欺商人 「心とは、その人の内側だけで作られるわけではないのだろう」
詐欺商人 「外から様々な影響を受けながら、ゆらめく火のように刻一刻と形をかえていく」
詐欺商人 「……おれたちにできたのは、ただ火を灯すことだけだったのだ」
詐欺商人 「もととまったく同じようにゆらめきかたをする火を作ることはできなかった」
詐欺商人 「あの子の心を元に戻せなかったのはそういうことなのだと、おれは捉えている」
>>284 訂正ごめんなさい
淫魔幼女 「まったく別の存在なのだ」
淫魔幼女 「ひとつの塔ではあるが、ここより下と、ここより上は」
母性巫女 「別……」
詐欺商人 「ろうそくに火を灯したとして」
詐欺商人 「火の一瞬一瞬の形は違うだろう」
母性巫女 「え、ええ……はあ」
詐欺商人 「心とは、その人の内側だけで作られるわけではないのだろう」
詐欺商人 「外から様々な影響を受けながら、ゆらめく火のように刻一刻と形をかえていく」
詐欺商人 「……おれたちは倒れて火の消えたろうそくを立たせ、再び火を灯すことはできたが」
詐欺商人 「それだけだった」
詐欺商人 「以前とまったく同じゆらめきかたをする火を作らなければならなかったのに、できなかった」
詐欺商人 「ろうの雫を同じように垂らすこともできなかった」
詐欺商人 「あの子の心を元に戻せなかったのはそういうことなのだと、おれは捉えている」
母性巫女 「はあ……なるほど」
淫魔幼女 「一度焼き上げたクッキーが粉々に砕けたとして」
淫魔幼女 「それを使って、元と全く同じクッキーを作ろうとしたら難しいだろう」
母性巫女 「なるほど」
母性巫女 「焼きあがったあとだと、ほとんど無理でしょうね」
淫魔幼女 「感謝しろ」
淫魔幼女 「菓子の焼き方しか興味ないようなおめでたい馬鹿女にも分かるように説明してやった……」
母性巫女 「えいっ」
ギュ ムニュ
スリスリ
淫魔幼女 「ぅ、ぐ……がぁああ……」
詐欺商人 「お前も学習しなさいよ」
母性巫女 「次はチューしちゃいますからね」
スリ スリ
淫魔幼女 「ぬぐぅ、う……この……おれが……」
詐欺商人 「お嬢さん、そんなにくっつくと危ないぞ」
詐欺商人 「そう見えても、今のところ心は立派な男だ」
母性巫女 「え?」
詐欺商人 「冗談だ」
淫魔幼女 「本当だ」
淫魔幼女 「馴れ馴れしくするな乳の化物」
淫魔幼女 「お前みたいな無知で独善的な馬鹿は一番嫌いな種類の存在だ」
母性巫女 「もう、意地悪な言い方ばっかりして」
ナデ ナデ
淫魔幼女 「やめろぶち殺すぞ貴様やめろ薬漬けで淫獣の胎にぶち込むぞ雌豚牛めがやめろ」
ナデ ナデ
詐欺商人 「まったく、羨ましいことだな相棒」
詐欺商人 「お前の商売については話さないでおいてやるよ」
淫魔幼女 「ふざけるな、何とかしろぽんこつ詐欺師めが」
母性巫女 「髪がぼさぼさになっているじゃないですか。。ちゃんと梳かしていますか」
淫魔幼女 「うるさい。気安く触るな」
淫魔幼女 「おろせ」
ナデ ナデ
詐欺商人 「」
>>294
無かったことに
母性巫女 「髪がぼさぼさになっていますよ。ちゃんととかさなくちゃ」
淫魔幼女 「うるさい。気安く触るな」
淫魔幼女 「膝からおろせ」
母性巫女 「あっ、ここ、小さな石が絡んでる」
母性巫女 「もう、いったん髪留めとっちゃいましょうか」
淫魔幼女 「ふざけるな、やめろ」
ナデ ナデ クシ クシ
母性巫女 「……ここに階段をつくったら、あの子が私の知るあの子になるのだとしたら」
母性巫女 「じゃあ、私の知らない、過去のあの子は完全に消えてしまうんですか」
詐欺商人 「いくらか、名残のようなものは残るだろう」
詐欺商人 「技能や体質とか、な」
淫魔幼女 「それではいけない」
淫魔幼女 「完全に消してしまうべきだ。何千年かかろうとも」
詐欺商人 「そこは納得したはずだろう」
詐欺商人 「完全には無理だ」
詐欺商人 「彼女とならなくとも、もとが彼女である以上、彼女の面影は残ってしまう」
淫魔幼女 「…………」
詐欺商人 「あの子が差し入れてくれる料理が好きだったのだろ」
詐欺商人 「もしかしたら、彼女の料理の記憶が新しい彼女にも残っているかもしれないぞ」
淫魔幼女 「…………」
淫魔幼女 「それ以上に残酷なことは無い」
母性巫女 「元に戻すことは、本当にできないんですか?」
詐欺商人 「今のおれたちはその術を知らない」
母性巫女 「そうですか……」
母性巫女 「私の知らないあの子」
母性巫女 「よく知らないけれど、よく知らないまま消えてしまうのは、悲しいです」
母性巫女 「少しでも残るなら、良いんじゃありませんか」
淫魔幼女 「愚かな考えだ」
淫魔幼女 「それは残された者の慰みにすぎない」
淫魔幼女 「身におぼえの無い、そのうえ虫食い穴だらけの過去を押し付けられたら、どうだ」
淫魔幼女 「砂漠でオアシスの蜃気楼を追い続ける並に気が狂いそうな、歯がゆい喪失感を」
淫魔幼女 「ずっと抱えながら生きることになるのだぞ」
母性巫女 (妙な説得力がある)
母性巫女 「ごめんなさい」
ナデ ナデ
淫魔幼女 「やめろなでるな」
詐欺商人 「まあ、新しく生まれる者にとっての足かせにもなりかねん」
詐欺商人 「無理に過去を押し付けることも無いだろう」
母性巫女 「寂しいような気もしますけど……」
詐欺商人 「しかたのないことなのさ」
母性巫女 「しかたないですか……」
母性巫女 (……やっぱり気になる)
母性巫女 (いったいあの子に何があったのかしら)
母性巫女 (私も生まれ変わったようなものだけれど、過去に暮らしていた世界のことを思い出すことはできる)
母性巫女 (他の世界のことなんて考えもしなかった私が見てきたもので)
母性巫女 (自信を持っておぼえているとは言えないけれど……思い出が嫌だとは思わない)
母性巫女 (……あの子にとっては違うのかしら)
母性巫女 (あの子にとって思い出は、嫌なものなのかしら)
詐欺商人 「」
>>299 なかったことに2
母性巫女 「しかたないですか……」
母性巫女 (……気になる。いったいあの子に何があったんだろう)
母性巫女 (私も生まれ変わったようなものだけれど、過去に暮らしていた世界のことを思い出すことはできる)
母性巫女 (他の世界のことなんて考えもしなかった頃の私が見てきたもので)
母性巫女 (自信を持っておぼえているとは言えないけれど……思い出が嫌だとは思わない)
母性巫女 (……あの子にとって思い出は、嫌なものなのかしら)
母性巫女 (もっと、ちゃんとあの子と、そのあたりのことを話しておくべきだったのかしら)
詐欺商人 「納得いかないかな」
母性巫女 「ええ」
母性巫女 「……あ、いえ、その」
詐欺商人 「おれたちも納得しているわけじゃない」
詐欺商人 「傷を癒すのではなく、傷を負ったことを忘れさせるだけ」
詐欺商人 「おれたちのやろうとしていることは、そういうことだ」
詐欺商人 「彼女が彼女自身の傷跡に気づかないことが、彼女の災いとなるかもしれない」
淫魔幼女 「それでも、やらねばならない」
淫魔幼女 「姫は死んだのだ」
淫魔幼女 「死者は完全に死者とならなければならない」
淫魔幼女 「姫の全てを棺におさめ、姫の死を完遂するのだ」
母性巫女 (棺……)
詐欺商人 「それがお前の、棺持ちとしての矜持というやつかい」
淫魔幼女 「…………」
淫魔幼女 「分からない」
母性巫女 「…………」
……ナデ
淫魔幼女 「なでるな」
詐欺商人 「過去のある者なら、一つや二つ、あるだろう」
詐欺商人 「できれば思い出したくない、思い出すだけで苦しくなる、そんな思い出が」
詐欺商人 「後悔と羞恥が放たれた猟犬のように追いかけてくる、そんな思い出が」
母性巫女 (……森で、毛むくじゃらのモンスターに……)
母性巫女 「あ、あります……ウプ」
フラ
淫魔幼女 「………!」
詐欺商人 「大丈夫か」
母性巫女 「は、はい……」
詐欺商人 「よほど辛いことがあったのかな」
母性巫女 「そうですね……」
淫魔幼女 「…………」
淫魔幼女 「ふん。脳みそ乳化女でも、あるものはあるのか」
母性巫女 「…………」
ダキ
淫魔幼女 「うぐおああああ゛……」
詐欺商人 「そういう思い出は悪いものでは無い」
詐欺商人 「後悔は、自分を律するのに役立つ。次の失敗を防ぐ助けになる」
詐欺商人 「予防薬のようなものかな」
母性巫女 「予防薬……」
詐欺商人 「ああ。おっ、予防薬といえば」
詐欺商人 「最近、毒の予防薬と麻痺の予防薬が手に入ったんだ」
母性巫女 「……はい?」
詐欺商人 「おひとつ、どうかな」
詐欺商人 「聖職者や施設の無い地での冒険やダンジョン探索などで役に立つぞ」
母性巫女 「それが、あの子とどう関係……」
淫魔幼女 「……おまえ商売の腕は相変わらず絶望的だな」
詐欺商人 「このタイミングは違ったか……」
詐欺商人 「コホンッ。しかし、少量で薬であっても、多量では毒となることもある」
詐欺商人 「新しく生まれる彼女にとって、古い彼女の思い出は、きっと毒となる」
詐欺商人 「おれたちはそう考えている」
母性巫女 (あの子はひどい呪いを受けたという……)
母性巫女 (ひどい呪いを受けるようなことを、あの子はしたということ?)
詐欺商人 「この塔は彼女そのものだ」
詐欺商人 「ここで彼女の過去を語りすぎるのは、彼女の中に過去を残すことにならないとも限らない」
詐欺商人 「というわけで、あまり彼女の過去は語りたくないんだ」
淫魔幼女 「せっかく、ここまで片付けたのだからな」
棺
母性巫女 (棺。私が未来? ……の塔に来たときに襲ってきたものに似ている)
淫魔幼女 「…………」
母性巫女 (淫魔幼女……あの子のことを姫って呼んでいた。姫は死んだ……死者は死者になる……片付けた……)
母性巫女 「その棺……あの子の思い出が入っているんでしょうか」
淫魔幼女 「…………!」
淫魔幼女 「……そうだ」
淫魔幼女 「ありし日の姫を完全に消し去ることで」
淫魔幼女 「ようやくこの塔……幼女魔王という存在は始まることが出来る」
淫魔幼女 「ゼロに足りぬものがゼロになる」
淫魔幼女 「姫にまっとうな死を。幼女魔王の中に二度と蘇らぬよう、安らかにお休みになられるよう」
淫魔幼女 「そのためならば何でもしよう。それだけが、おれの……」
母性巫女 「…………」
母性巫女 (声からも表情からも心の中は読めないけれど、とても辛そう)
ナデ ナデ
淫魔幼女 「…………」
詐欺商人 「淫魔幼女」
淫魔幼女 「……? どうした?」
詐欺商人 「……いや」
淫魔幼女 「時間がない」
淫魔幼女 「こんな無駄話をしている暇なんて、本当は無い」
淫魔幼女 「さっさと階段を作るぞ。そして新たな塔を始める」
淫魔幼女 「ここを出てからも、やることはたくさんあるんだ」
詐欺商人 「…………」
詐欺商人 「お前はそれで良いんだな」
淫魔幼女 「それが良い」
詐欺商人 「お前と彼女の思い出が、彼女の中から永遠に失われることになるんだぞ」
詐欺商人 「そしてお前の中にだけ残るんだ」
淫魔幼女 「おれと姫の思い出だ。おれと幼女魔王の思い出ではない」
淫魔幼女 「だから、良い」
母性巫女 「……あの子の過去を全部消して、どうするつもりですか」
淫魔幼女 「……その心配は必要ない」
淫魔幼女 「そのときには、おれは幼女魔王の前から消えている」
母性巫女 「えっ……」
母性巫女 「あの子のことを放り出すんですか?」
詐欺商人 「いや……」
淫魔幼女 「…………」
淫魔幼女 「巣立ちが出来る程度になるまで多少の世話は焼こう」
淫魔幼女 「だが、いずれ完全に消える」
淫魔幼女 「あの狐耳、くその魔法少女ども、姫に関わるものを、道連れにしてでも……」
母性巫女 (どうして、こんなに頑ななのかしら)
詐欺商人 「そこまでする必要があるかね」
詐欺商人 「彼女とお前との新たな関係を、消えずに築いていけば良いじゃないか」
淫魔幼女 「…………」
詐欺商人 「それはお前にとって残酷なことなのかな」
淫魔幼女 「…………」
詐欺商人 「……まあ良いさ」
詐欺商人 「だったらおれは、お前が躓いたときのための杖でも用意しよう」
淫魔幼女 「……何をするつもりだ」
詐欺商人 「ちょっとしたズルの試みさ」
詐欺商人 「ここに、ある紋章がある」
白蝶貝の紋章(複製)
母性巫女 「私の……」
詐欺商人 「ここより先の時間で幼女魔王と関わりがあるらしい、お嬢さんの紋章」
詐欺商人 「読み解けば、かなり役に立つんじゃないか」
淫魔幼女 「そういうのは良くないと言わなかったか」
詐欺商人 「言ったかな」
淫魔幼女 「……少なくとも、ここでやるべきでは無い」
母性巫女 (先の時間……本当に私は、過去に来てしまったのかしら)
母性巫女 (波魔法少女は私の過去と交差させてくれると言ったけれど)
母性巫女 (Nの過去と交差することになるなんて)
母性巫女 (……あれ、私って、ちゃんともとの時間に戻れるのかしら?)
母性巫女 (お城への戻り方は……)
釜のかけら
母性巫女 (これを使えば良いのかしら)
母性巫女 (いえ、お城に戻れたとしても、もとの時間には戻れないんじゃないの……?)
母性巫女 (もとの……)
母性巫女 (……あれ?)
母性巫女 「あ!」
詐欺商人・淫魔幼女 「?」
詐欺商人 「どうした」
母性巫女 「真の、幼女魔王……」
淫魔幼女 「?」
母性巫女 「私がどのくらい先の時間から来たか分からないけれど」
母性巫女 「もしかしたら、塔が滅ぶ前のあの子が、まだちゃんと生きているかも……」
淫魔幼女 「……!!!」
詐欺商人 「どういう……いや、聞かない方が」
淫魔幼女 「どういうことだ……!」
母性巫女 「塔で聞いたんです」
母性巫女 「あるとき、この層よりももっと深いところで、大きなものがいなくなるのを感じたって……」
母性巫女 「新しい塔にいてそれを感じたとしたら、過去……ええと、今この時も……」
詐欺商人 「……探しつくしたはずだが」
淫魔幼女 「……まだ、残っている」
母性巫女 「だから、消してしまうなんて……」
淫魔幼女 「棺におさめるべき、姫の残骸が!」
母性巫女 「え」
淫魔幼女 「言え……! どこだ、どこにいるどこだ」
母性巫女 「い、いえ、だから、消すなんて……」
母性巫女 (……あ)
母性巫女 (幼女魔王Y……仮面の女の子が言っていたじゃない)
母性巫女 (あの子じゃないものが、この塔をどうこうしようとするのはいけないって)
母性巫女 「そうだ、駄目ですよ!」
母性巫女の お母さんチョップ!
淫魔幼女のHPが 1 になった!
詐欺商人は ひらりと かわした!
淫魔幼女 「ぬぐうっ!?」
詐欺商人 「いきなりどうしたってんだ」
母性巫女 「ここはあの子の塔」
母性巫女 「私たちのような外から来た人が勝手にしすぎると、あの子の存在を歪めてしまうかもしれない」
母性巫女 「あの子の塔のことはあの子たち自身に任せて、どんな結果になるとしても見守るべき」
母性巫女 「ということを聞いていて……」
詐欺商人 「……そうか。まあ、そうなんだろうが」
淫魔幼女 「誰だ、そんな余計なことを言った馬鹿は……!」
母性巫女 「N……塔にいる幼女魔王たちはその人のことを、知らない私と呼んでいました」
詐欺商人 「知らない私。知らない自分、か」
ザア……ン
母性巫女 「……?」
キョロ キョロ
詐欺商人 「今度は何だ」
母性巫女 「今、波のような音が……」
詐欺商人 「波?」
母性巫女 「ええ」
ザザア
ザザア ン
母性巫女 「また……」
詐欺商人 「……いや、おれには聞こえない」
詐欺商人 「淫魔幼女」
淫魔幼女 「……幼女魔王が知らない幼女魔王」
淫魔幼女 「そうか、その手が……」
詐欺商人 「それどころじゃ無い、か」
ザア ザアン
ザザア
母性巫女 「……あ」
母性巫女 (眠たくなってきた)
ザザアアア
詐欺商人 「なあ、その波の音はどこから……」
詐欺商人は 話しかけた
しかし そこには 誰も いない……
詐欺商人 「……あれ?」
ザア ン
淫魔幼女 「何をボーッとしている」
詐欺商人 「……いや」
詐欺商人 「ここに、誰かいなかったか」
淫魔幼女 「…………」
淫魔幼女 「かわいそうに。帽子の被りっぱなしで、脳みそがはげたのだな」
詐欺商人 「……ふむ」
淫魔幼女 「早くするぞ。やることはたくさんある」
淫魔幼女 「この塔でも、まだやっておかねばならんことがある気がする」
詐欺商人 「もう姫の欠片はあらかた回収しただろうに。お前も頑なだね……」
詐欺商人 「ん?」
白蝶貝の紋章(複製)
詐欺商人 「はて、これは……?」
……………
ザザア ン
??? 「……ま」
??? 「まま!」
母性巫女 「!」
母性巫女 「…………?」
キョロ キョロ
母性巫女 「えっと」
母性巫女 (Yの部屋に招かれて、そこで釜のかけらを使って世界を渡ったら、過去の塔にいて)
母性巫女 (そこで二人組と会って話をしていたら、波の音が聞こえて……)
幼女魔王M 「びっくりしたよ。あっちの方に行ったと思っていたら、全然逆の方にいるんだもの」
幼女魔王A 「まま、大丈夫、まま」
母性巫女 「A、M……」
母性巫女 「はい、大丈夫ですよ」
母性巫女 (戻ってきた?)
母性巫女 「あの、私がYの部屋に呼ばれて、どのくらい経ったんでしょう」
幼女魔王M 「あんまり経ってないよ」
幼女魔王M 「Aのまだが無いし」
母性巫女 「え?」
幼女魔王M 「Aは黙って待つのが苦手なんだ」
幼女魔王M 「待てなくなったら、まだ、まだ? ってぐずるんだ」
幼女魔王A 「そんなことないもん」
幼女魔王A 「ないからね?」
母性巫女 「はいはい」
ナデ ナデ
幼女魔王M 「どうだった? 何か変なことされなかった?」
母性巫女 「ええ。変なことはありましたけど」
母性巫女 「それに、大事な話を聞きました」
幼女魔王M 「大事な話?」
母性巫女 (話してしまって良いのかしら)
母性巫女 「その……」
母性巫女 「私はやっぱり、Yと同じ知らない私……みたいです」
幼女魔王A 「!」
幼女魔王M 「……そんな気はしてたけど、そうなんだ」
幼女魔王A 「駄目え!!」
ダキ
母性巫女 「わっ……」
幼女魔王A 「一緒だもん! ままは知らない私じゃ無いもん!」
母性巫女 「A……」
ナデ ナデ
幼女魔王M 「A、事実とちゃんと向き合おうとしないと」
幼女魔王A 「嘘だもん! Yが嘘を言ったんだもん、ままが嘘を言ってるんだもん!」
幼女魔王A 「ままはままだもん!知らない私じゃないもん!」
幼女魔王A 「ずっと一緒だもん! 約束したんだもん!」
母性巫女 (したかしら?)
ナデ ナデ
幼女魔王M 「本当なんだね?」
母性巫女 「はい」
母性巫女 「あの……Yは、この塔のことを心配していたと思います」
幼女魔王M 「へえ」
幼女魔王A 「ままぁ……グスンッ……ままぁ……!」
エグ エグ
母性巫女 「あらあら、そんなに泣いて」
母性巫女 「知らない私だって、こうして一緒なんですから、大丈夫ですからね」
ナデ ナデ
幼女魔王M 「さて、どうだろね……」
……………
幼女魔王の塔 円形広間
いびつな円卓
母性巫女 (塔の探索を終えて、また皆で集まった)
母性巫女 (誰も、Nの部屋は見つけられなかったみたい)
幼女魔王C 「……本当に?」
母性巫女 「私はYと同じ、幼女魔王ではない存在だと」
母性巫女 「そう言われました」
母性巫女 「私も、そう思います。私は幼女魔王ではありません」
幼女魔王たち 「……!」
ザワザワザワ
幼女魔王W 「偽者か……!」
幼女魔王I 「知らない私なんだから、偽者とは違うんじゃない?」
幼女魔王L 「そもそも知らない私って何なの?」
ザワザワ
幼女魔王C 「あの人、もったいぶっていたくせに……」
幼女魔王C 「あなたが知らない私だから教えたのかしら」
母性巫女 「ええ、たぶん……」
母性巫女 「そして、この塔は幼女魔王の塔だから、私があまり出しゃばるべきでないとも言われました」
母性巫女 「幼女魔王という存在を歪めてしまうかもしれないから」
幼女魔王G 「歪めてしまう、か」
幼女魔王C 「たしかに、私たちの塔のことは私たちでなんとかするべき」
幼女魔王C 「知らない私に頼りすぎるのは良くないと思う」
幼女魔王J 「じゃあどうするの。他の知らない私みたいに、Kには隠れてもらう?」
幼女魔王A 「……うぅぅううーーーー!」
ガシ
母性巫女 「A……っ」
幼女魔王M 「また抱きついた! この甘えんぼう!」
幼女魔王M 「会議のときくらい、甘えるのをやめなさい!」
幼女魔王A 「やだあ!」
幼女魔王A 「やだやだ、やだあ!」
幼女魔王A 「ままだもん! ままは一緒にいるんだもん!」
幼女魔王A 「隠れないもん、どこにもいかないもん!」
母性巫女 「A……」
幼女魔王M 「この、離れなさい!」
幼女魔王M 「いつまでもそんなんだから、この塔も……!」
グイッ グイッ グイッ
幼女魔王A 「!! やだああああ゛あ゛!」
幼女魔王A 「ま゛ま゛っ! ま゛ま゛! ま゛ま゛ぁ!」
幼女魔王A 「うわああーーーん!!」
幼女魔王C 「A、取り乱しすぎよ」
幼女魔王M 「鼻水まで垂らして! いい加減にしな、A!」
幼女魔王A 「いやああああああ!」
幼女魔王A 「やだやだやだやだあああああ! やあああああ゛あ゛あ゛!」
幼女魔王A 「うええええーーーーん!」
幼女魔王G 「あ、はは……相変わらずすごい泣き声だ……っ」
母性巫女 「A……」
ダキ ギュウ
幼女魔王A 「! ……ヒック……ウグッ、エグッ……」
幼女魔王A 「ううぅううーーーー……」
母性巫女 「大丈夫、大丈夫ですよ……」
ポム ポム……
母性巫女 (小さな背中……)
母性巫女 (Nも、強く抱きしめたら壊れてしまいそうだったっけ)
幼女魔王A 「ウッ、ク……うぅ」
幼女魔王A 「うえええ……、ままぁ……」
母性巫女 「離れませんから。ちゃんと一緒にいますから」
母性巫女 「大丈夫、大丈夫……」
ポム ポム ポム
幼女魔王A 「……ぅ、ぅう……」
ギュウウ
母性巫女 「大丈夫……」
母性巫女 (一緒にいるって、思わず言ってしまった……)
幼女魔王A 「………うぅ、グスッ、ぅぶうぅ」
母性巫女 (ああ、そうか)
母性巫女 (私は、きっと……)
幼女魔王A 「グスン……グスン……」
母性巫女 (静かになった。私の胸に顔をうずめて……)
ナデ ナデ
幼女魔王M 「ちぇっ、見てるこっちが恥ずかしい」
幼女魔王G 「しかし、K。君は実際どうするんだい」
母性巫女 「え……」
幼女魔王G 「君が知らない私だとして」
幼女魔王G 「それでも私たちと一緒にいてくれるのかい」
母性巫女 (私の過去との交差はまだだし、お城にも戻らなきゃいけないんだけど)
幼女魔王A 「…………」
母性巫女 (こんな状態で、放っておけない)
母性巫女 「そのつもりです」
母性巫女 (本当に良いのかしら。きっと駄目なのよね……)
幼女魔王M 「駄目だよ」
幼女魔王G 「M」
幼女魔王M 「だって、そうしたらAはずっとこんな調子だよ」
幼女魔王M 「甘えっぱなしで、塔のことを何一つやらなくなる」
母性巫女 「やります」
幼女魔王M 「!?」
母性巫女 「Aは頑張ります」
母性巫女 「いっぱい甘えたら、いっぱい頑張ります」
母性巫女 「ね?」
幼女魔王A 「……ぅう……」
コクン
母性巫女 「ほら」
幼女魔王M 「そんなの……そんな」
幼女魔王M 「駄目だ!」
幼女魔王M 「だったら、A、あんたの口で言わなきゃ! 頑張るって」
幼女魔王M 「知らない私にしがみついてないで、ちゃんと立って!」
グイ
幼女魔王A 「うぅ゛~!」
母性巫女 「ちょっ、ちょっと……乱暴に引き剥がそうとしちゃいけませんよ……!」
グイ グイ タユユン
幼女魔王M 「A! 幼女魔王A! 私! 知らない私じゃなくて、あんたの口で、頑張るって言うんだ!」
幼女魔王M 「じゃないと……そうやって、おばけが怖くて枕に顔を埋める弱虫みたいにしていたら」
幼女魔王M 「きっとすぐにつまずいて、駄目になるんだ!」
幼女魔王C 「M……」
幼女魔王M 「私たちは……私は、私ひとりで立てなきゃいけないんだ!」
幼女魔王M 「だから……!」
幼女魔王G 「落ち着くんだ、M」
幼女魔王M 「落ち着くってのは何さ!」
幼女魔王M 「怠けること? 先送りにすること!?」
幼女魔王C 「M」
幼女魔王C 「あなたも私も、じゃあ何をすれば私が、この幼女魔王の塔がきちんとするのか、分かっていないのではないの」
幼女魔王M 「……そうだよ」
幼女魔王M 「でも……!」
幼女魔王C 「M、今日はおかしいわ」
幼女魔王C 「いつにも増して、Aに厳しい」
幼女魔王M 「……いつもこうだよ」
幼女魔王M 「変なのはAさ。Kが……知らない私が来てから……」
幼女魔王E 「ああ。Kにずっとべったりかも」
幼女魔王E 「いつもは、Mに引っ張りまわされない限りボーッとしてるのに」
幼女魔王E 「ね、P」
幼女魔王P 「興味ない」
幼女魔王I 「知らない私の影響ってやつ?」
幼女魔王G 「ふむ…………」
幼女魔王C 「Nを見つけたら何か良い方へ向かう手がかりが見つかるかもしれないと思ったけれど」
幼女魔王C 「他にも問題は多いようね」
幼女魔王G 「Tを失ったのは痛手だね」
幼女魔王F 「こうなったら、やっつけるか! 覚悟しろにせもの!」
母性巫女 「え……」
幼女魔王C 「落ち着いて、F。にせものじゃなくて、知らない私よ」
幼女魔王C 「けれど……」
ジーッ
母性巫女 「……?」
母性巫女 (じっと見つめてくる)
幼女魔王C 「母性巫女……いえ。でも……」
ザ ストン
母性巫女 「あら」
母性巫女 (座って、身体をくっつけてきた)
幼女魔王たち 「!」
幼女魔王C 「…………」
母性巫女 (こうして見ると、この子もやっぱり幼女魔王そのもの)
母性巫女 「…………」
ソ
幼女魔王C 「私は大丈夫。あなたはAを抱きしめたままで良いわ」
母性巫女 「あ、はい……」
幼女魔王D 「初めて見た。Cが誰かによりかかるなんて」
幼女魔王L 「これも、知らない私のせい?」
ヒソ ヒソ
幼女魔王C 「…………」
幼女魔王C 「なぜかしら」
幼女魔王C 「新しくて、懐かしい」
幼女魔王C 「とても安らかな、この気持ちを知っていた気がする」
幼女魔王C 「塔が崩れるずっと前、私がうまれるもっと前」
幼女魔王C 「……星くずの揺りかご……まだかたちになっていない、命の波だったころから……」
幼女魔王H 「大丈夫? 言葉が例の夜のあの人(笑)みたいになってるけど」
幼女魔王W 「これも知らない私の影響?」
母性巫女 「…………」
幼女魔王C 「Aも、同じ気持ち?」
幼女魔王C 「この気持ちの来るところ、知ってる?」
幼女魔王A 「…………」
幼女魔王A 「……ままが、ままだから」
幼女魔王C 「そう……」
幼女魔王C 「あなたは知っているのね。私よりも」
幼女魔王C 「……ぱぱでも、こんな気持ちになるの?」
幼女魔王A 「………ううん」
幼女魔王C 「………そう」
幼女魔王A 「私も、ぱぱ、知らない」
幼女魔王A 「ままのことしか……ううん、本当は、ままのことも」
幼女魔王A 「でも……」
幼女魔王C 「そうなのね」
母性巫女 (ぱぱ、ままって、この子の本当の両親のことかしら)
母性巫女 (……あれ? Nは魔王ってことは、じゃあ……)
母性巫女 (魔物? 見た目は私とほとんど変わらないけれど)
母性巫女 (ああ、私の故郷の世界でも、私たちとほとんど見た目が同じ魔物もいたっけ)
母性巫女 (そういえば魔物と人間の境目って、正直よく分かっていなかったなあ)
母性巫女 (動物と魔物の境目も……)
幼女魔王M 「何してるんだよ、C……あんたまで、Aの甘えんぼがうつったの」
幼女魔王C 「分からない」
幼女魔王C 「けれど、この感じは、とても大事なもののような気がするの」
幼女魔王M 「何が! 知らない私に甘えることが?」
幼女魔王C 「いいえ」
幼女魔王C 「いえ、そうなのかもしれない」
幼女魔王C 「とにかく、この安らぎは大事なものだと思う」
幼女魔王M 「でもそれをくれているのは、知らない私なんだよ! 私じゃない、知らない私の!」
幼女魔王M 「だったら、それを大事にしちゃうってことは……!」
幼女魔王C 「待って。実際に体験しないと、この気持ちは分からないと思う」
幼女魔王G 「…………」
幼女魔王S 「わ、私も、Cみたいにしてみたい……」
幼女魔王P 「……別に、気が向いたら、私もやっても……」
幼女魔王M 「み、みんな」
幼女魔王C 「……K、良いかしら」
母性巫女 「え、ええ、それは、はい」
幼女魔王A 「……っ。ままは、私の……」
幼女魔王C 「A、あなたはそこにいれば良いわ」
幼女魔王C 「じゃあ、みんな、興味のある人は私みたいにしてみて」
…………
……
幼女魔王S 「あ、あのあの、ナデナデも……」
母性巫女 「うふふ、はいはい」
ナデナデ
幼女魔王S 「でへへへ……」
幼女魔王A 「むー……」
幼女魔王A 「まま、私も、私も……!」
母性巫女 「はいはい」
ナデ ナデ
幼女魔王W 「ふぇにっくすだ!」
幼女魔王H 「ふぇにっくすだった!」
幼女魔王P 「まあ、悪くは、無いのかなってくらいだけど……もう一回やってみれば、ちゃんと分かるかも……」
幼女魔王L 「何だか、まだフワフワしてる。すごくウキウキして、だけど落ち着く感じ……」
幼女魔王C 「みんなも何か感じているみたいね」
幼女魔王C 「次はG、どう?」
幼女魔王G 「私は、Mのあとで良いよ」
幼女魔王M 「いらない」
幼女魔王M 「私は、しない。興味ないならしなくて良いんでしょ。G、やれば良いよ」
幼女魔王G 「では、私もしない」
幼女魔王C 「G?」
幼女魔王G 「興味が無いわけじゃないさ。君たちの、Kに関する決断を否定することもしない」
幼女魔王C 「そう。強制はしないけれど……」
………
幼女魔王の塔 ???の部屋
ギイイ
モワ モワ
母性巫女 「ケホッ……」
幼女魔王G 「ずっと使っていなかったとはいえ……」
幼女魔王G 「ほこりがすごいのはまだしも、ひどく荒れているな」
幼女魔王G 「まあ、部屋自体はしっかり無事だからマシか」
母性巫女 「ええ、お掃除すればきっと大丈夫」
幼女魔王M 「…………」
幼女魔王G 「すまないね。用意できるのがこの部屋くらいで」
幼女魔王G 「ほかの部屋は壊れ放題、私たちの部屋にいてもらうとしても、きっと君の取り合いで喧嘩になるだろう」
幼女魔王G 「それにやはり、一緒にいるとは言っても、君が知らない私である以上……」
幼女魔王G 「君を私たちとして扱うべきではないと思うから」
母性巫女 (もう何年も使われていないみたい)
母性巫女 (大きなベッドも丸いテーブルも、部屋の中のものはみんな色あせている)
母性巫女 (誰の部屋だったのかしら。何となく、大人っぽい部屋……)
幼女魔王M 「…………」
母性巫女 (MとGが案内してくれたけれど、M、ずっと難しい顔をしている)
幼女魔王G 「何か足りない物があったら遠慮せず言ってくれ」
幼女魔王G 「可能な限り応えられるようにするよ」
母性巫女 「ええ、ありがとうございます」
母性巫女 (Gは落ち着いている……というか、大人びているのね)
幼女魔王M 「私に言って」
幼女魔王M 「他の子には頼まない方が良い。きっと張り切りすぎて無理をするから」
母性巫女 「あら……」
母性巫女 「ありがとうございます、M」
幼女魔王M 「……お礼なんて、いらない」
プイ
母性巫女 (目を合わせてくれない……)
母性巫女 「あの……」
幼女魔王M 「ごめん、見回りの時間、忘れてた」
幼女魔王M 「先に戻るよ。G、あとはお願い」
スタ スタ スタ
母性巫女 「あっ……」
母性巫女 (……行っちゃった)
幼女魔王G 「やれやれ、真面目だなあ。私らしくもない」
幼女魔王G 「仕方ない。ここからは私だけで案内させてもらうよ」
幼女魔王G 「と言っても、もうとくに必要無いんだけどね」
母性巫女 「あ、はい」
母性巫女 「…………」
幼女魔王G 「Mのことが気になる?」
母性巫女 「何かあの子を遠ざけるようなことをしてしまったとしたら」
母性巫女 「それが分からなくて……」
幼女魔王G 「彼女はあれが普通だよ」
幼女魔王G 「君を避けているとしても、それは君のせいじゃないと思うよ」
幼女魔王G 「うまくは言えないけど、それが彼女なんだ」
…………
幼女魔王の塔 ???の部屋
パタパタパタ
サ サ サ
キュ キュ キュ
母性巫女 「……よいしょ」
母性巫女 (思ったより早く、部屋を綺麗にできそう)
母性巫女 (家具もそのまま使えそうだけど……)
黒い編みカゴ
桃色の毛糸玉
編みかけの手袋
母性巫女 (テーブルの上にあったカゴ。中には編みかけの手袋が出てきた)
母性巫女 (ここを使っていた人のものかしら)
母性巫女 (……あの子の髪の毛と同じ色の毛糸。これだけ、ほこりひとつ付いていない)
揺りかご
額縁
母性巫女 (他にも、気になるものがちらほら……)
>>341訂正ごめんなさい
…………
幼女魔王の塔 ???の部屋
パタパタパタ
サ サ サ
キュ キュ キュ
母性巫女 「……よいしょ」
母性巫女 (思ったより早く、部屋を綺麗にできそう)
母性巫女 (家具もそのまま使えそうだけど……)
黒い編みカゴ
桃色の毛糸玉
編みかけの手袋
母性巫女 (テーブルの上にあったカゴ。中には編みかけの手袋が入っていた)
母性巫女 (ここを使っていた人が編んでいたのかしら)
母性巫女 (……Nの髪と同じ色の毛糸。これだけ、ほこりひとつ付いていない。不思議)
揺りかご
額縁
魔王の指輪
枝
母性巫女 (他にも、気になるものがちらほら……)
母性巫女 (この部屋、本当に私が使って良いのかしら)
母性巫女 (Gが広場へ戻る前に、聞いておくんだった……)
コツン
母性巫女 「……?」
母性巫女 (物音。入り口の方から)
母性巫女 (Gが戻ってきた……?)
クルリ
??? 「!」
幼女魔王A 「ぇーと……」
ササッ
幼女魔王Aは 扉の裏に 隠れた!
母性巫女 「A……」
母性巫女 「A」
幼女魔王A 「…………」
ソ
幼女魔王A が 現れた!
幼女魔王A 「……まま」
母性巫女 「どうしたんですか」
幼女魔王A 「あ……う」
モジモジ
母性巫女 「……?」
母性巫女 「とりあえず、入ってきませんか?」
幼女魔王A 「………!」
幼女魔王A 「うん……!」
トコトコトコ
トコトコトコ
幼女魔王A 「…………」
ダキ
母性巫女 「あららら」
幼女魔王A 「………えへへ」
母性巫女 「ここまで一人で来たんですか?」
ナデ ナデ
幼女魔王A 「うん」
母性巫女 「迷わずによく来れましたね」
母性巫女 「危ないものも出てくるかもしれないのに……」
幼女魔王A 「あう……」
母性巫女 「怒ってるんじゃありませんからね」
ナデ ナデ
幼女魔王A 「……えへへ」
ギュ
幼女魔王A 「お手伝い、しに来たの」
母性巫女 「あら、ありがとうございます」
母性巫女 (お手伝いしてもらうのは良い……のかしら?)
母性巫女 「みんなには、このこと言ってきたんですか?」
幼女魔王A 「え」
ドキッ
幼女魔王A 「……う、うん」
幼女魔王A 「してきた、よ……」
母性巫女 「あら、ドキッとしましたね」
幼女魔王A 「うん……う、ううん、してないよ」
幼女魔王A 「話したよ」
幼女魔王A 「本当だよ」
母性巫女 「話しておかないと、みんな心配しますよ」
幼女魔王A 「話したもん」
母性巫女 「あらあら」
ナデナデ
幼女魔王A 「…………」
ギュ タジ タジ
母性巫女 (この様子じゃ、たぶん話してきていないわよね……)
母性巫女 (大事なことだけど、この子に必要なのは嘘が駄目だとかじゃなくて)
母性巫女 (まずは無条件に信じてもらうことのような気がする)
母性巫女 (うーん……)
母性巫女 「……とりあえず、私の方からもみんなに話した方が良いかしら」
幼女魔王A 「い、いいよ、必要ないよ、私がちゃんと話したよ」
母性巫女 「でも、連絡はこまめにしておいた方が良いですし」
母性巫女 「ちゃんとこっちに着きましたよって、しらせないと」
幼女魔王A 「うぅ~……」
母性巫女 「いやですか?」
幼女魔王A 「……やだ」
母性巫女 「あら」
母性巫女 「どうして」
幼女魔王A 「うぅ~……」
母性巫女 「あらあら」
ナデナデ
幼女魔王A 「あぅう……むぅ~」
ギュ
母性巫女 (気長に取り組みましょう)
母性巫女 (……って、そんな時間あるのかしら)
コツン
母性巫女 「?」
母性巫女 「また、入り口の方から……」
??? 「…………」
幼女魔王S 「はぅあっ」
コソコソ ゴン
幼女魔王S 「ぎゃんっ」
幼女魔王Sは 逃げ出した!
しかし 扉に頭をぶつけてしまった!
幼女魔王S 「えーん」
母性巫女 「あらあら……」
テクテク
母性巫女 (この子は……S、よね)
母性巫女 「大丈夫ですか」
ソ
幼女魔王S 「ふおあっ」
ビクッ
母性巫女 「……ごめんなさい。痛かったですか」
幼女魔王S 「い、いいえっ!」
幼女魔王S 「い、いいの!?」
母性巫女 「え?」
幼女魔王S 「さわっちゃって、いいの!?」
幼女魔王S 「わ、私、処女ですけど!」
母性巫女 「はあ……」
幼女魔王S 「私、貧乳ですけど……!」
母性巫女 「さっきはくっついてたでしょう。大丈夫、大丈夫ですよ」
母性巫女 (うちどころが悪かったのかしら)
幼女魔王A 「むぅ~……」
母性巫女 「Sは、どうしてここに?」
幼女魔王S 「え゛っ、来ない方が良かったかしら!?」
母性巫女 「いえいえ、そんなことありませんよ」
母性巫女 「何か用事があるのかなって」
幼女魔王S 「おて、お手伝いしようかなって」
幼女魔王S 「お部屋、散らかってるかもしれないから……迷惑かもしれないけど……」
母性巫女 「あら。迷惑だなんて、そんなことありませんよ」
母性巫女 「ありがとうございます」
幼女魔王S 「わひっ……!?」
幼女魔王S 「……あ、うん」
幼女魔王S 「い、いえ。ええ、うん、私は魔王だから、そのくらいはしてあげるわ……!」
母性巫女 「あはは……」
ナデナデ
幼女魔王S 「ぉ、おへぇ……」
ジィン
幼女魔王A 「むぅ~……」
母性巫女 「Sはみんなに、ここに来ること言ってきましたか?」
幼女魔王S 「えっ!?」
幼女魔王S 「……ご、ごめん、なさい」
母性巫女 「言ってないんですか?」
幼女魔王S 「ひっ」
ビクッ
母性巫女 「あっ、怒っているわけじゃありませんからね……」
ナデナデ
幼女魔王S 「……ふわぁ」
幼女魔王A 「……まま!」
母性巫女 「はい」
幼女魔王A 「お部屋、はやくお掃除しよう!」
幼女魔王A 「私、一番手伝えるよ!」
母性巫女 「あら、頼もしい」
母性巫女 「でもその前に、やっぱり、二人がここにいることをみんなに言った方が……」
コツン コト
母性巫女 「あら、また……」
??? 「何やってんのよ」
幼女魔王P 「私が先に来たのよ」
??? 「じゃあこんなところでコソコソしてないで」
幼女魔王I 「さっさと入ってよ」
…………
パタパタ ドタバタ
幼女魔王S 「……あんぎゃあ、目が、目があぁあああ!」
母性巫女 「目を触らないで。ちょっと見せてください。埃かしら……」
幼女魔王A 「むう!」
幼女魔王A 「まま! 椅子、こっちに動かしたよ。次はなにするの?」
母性巫女 「ありがとうございます。えっと……」
幼女魔王S 「うぐおぁ……ふぎぁえおぅ……!」
母性巫女 「あっ、ちょっと待ってください」
母性巫女 「はい、痛いでしょうけど、ちょっとまばたきしてみてください……」
母性巫女A 「むうー!!」
幼女魔王I 「ちょっと、ちゃんとそっち側持ってよ」
幼女魔王P 「今、厳選中だから」
ピコピコ
幼女魔王I 「あんた何しに来たのよ……」
>>360 ミスごめんなさい
…………
パタパタ ドタバタ
幼女魔王S 「……あんぎゃあ、目が、目があぁあああ!」
母性巫女 「目を触らないで。ちょっと見せてください。埃かしら……」
幼女魔王A 「むう!」
幼女魔王A 「まま! 椅子、こっちに動かしたよ。次はなにするの?」
母性巫女 「ありがとうございます。えっと……」
幼女魔王S 「うぐおぁ……ふぎぁえおぅ……!」
母性巫女 「あっ、ちょっと待ってください」
母性巫女 「はい、痛いでしょうけど、ちょっとまばたきしてみてください……」
幼女魔王A 「むうー!!」
幼女魔王I 「ちょっと、ちゃんとそっち側持ってよ」
幼女魔王P 「今、厳選中だから」
ピコピコ
幼女魔王I 「あんた何しに来たのよ……」
幼女魔王S 「……まだひりひりするけど、取れたかも」
母性巫女 「良かっ……」
グイ
幼女魔王A 「まま! 早く、こっち!」
母性巫女 「はいはい、うふふ……」
幼女魔王I 「ねえ、これ、こっちで良かった?」
幼女魔王I 「違ってたらおしおきしても良いよ」
母性巫女 「はい。ありがとうございます」
母性巫女 「手伝ってもらえて、すごく助かりますよ」
幼女魔王P 「……別に、好きで手伝いに来たわけじゃないけど」
ポッ
幼女魔王I 「だからあんたは何しに来たのよ」
母性巫女 「あはは……」
母性巫女 (結局、部屋の片付けを手伝ってもらった)
母性巫女 (この塔で私がこの子たちに関わるのは良くないことかもしれないけれど……)
幼女魔王S 「ごめんなさい、何度もバケツひっくり返しちゃって」
幼女魔王I 「私も、絨毯燃やしちゃって……」
幼女魔王P 「お皿割っちゃって……」
幼女魔王A 「わ、私は何もしてないよ、本当だよ」
破れたページ
母性巫女 「大丈夫、大丈夫ですよ」
ピカピカ
母性巫女 「おかげで部屋も綺麗になりました」
幼女魔王I 「こんなに速く掃除が終わるなんて、びっくり」
幼女魔王S 「私も、やればできるもんね……じゃなくて、と、当然のことだけどね」
幼女魔王P 「…………」
ピコピコピコ
幼女魔王S 「ちょっとP、何勝手にソファでくつろいでんのよ」
幼女魔王P 「ここだと集中できそうだから」
幼女魔王I 「まったく、この子はいっつもこうね」
母性巫女 (掃除が終わって、何だかみんな自信がついた……かも?)
母性巫女 (掃除を手伝ってもらったのは良いことだったのかしら)
母性巫女 (……お礼にお菓子と飲み物でも出せたら良いのだけど)
幼女魔王A 「まま、まま、まま」
ギュ
母性巫女 「はいはい」
母性巫女 (この子とは、気がついたら手を繋いでいる気がする)
幼女魔王A 「ごみ、どうするの?」
ゴミ袋×3
母性巫女 「けっこう出ましたね」
幼女魔王A 「私が三つとも縛ったんだよ!」
母性巫女 「ありがとうございます」
ナデ ナデ
幼女魔王A 「えへへ……」
母性巫女 「うーん……この塔にあるもの、私が勝手にゴミにしちゃって良いのかしら」
幼女魔王I 「大丈夫だよ」
幼女魔王S 「私たちから見てもただのゴミだよ」
幼女魔王S 「捨てちゃおう」
母性巫女 「そうですか……そうですね!」
幼女魔王I 「私が持つ」
幼女魔王S 「私が」
幼女魔王P 「…………」
ピコピコ
幼女魔王S 「あ、ずるい! ゲームしながらもう一つ持ってる!」
幼女魔王I 「しかも一番軽そう。楽して褒められる気ね!」
幼女魔王A 「だめ、私が三つとも全部持つの! 返して!」
幼女魔王P 「無理、いま手を離せないから。それにあんたが三つとも持つなんて出来るわけないし」
幼女魔王I 「そうよ、A。あんた一番力無いじゃないの」
幼女魔王S 「だいたい、あんたばっかりKと仲良くしてずるいわよ。処女のくせに!」
幼女魔王A 「いいんだもん。ままは私のだもん!」
幼女魔王A 「約束したもん!」
幼女魔王S 「出た、Aの約束したもんが!」
ギャアギャア
母性巫女 「み、みんなで持っていきましょうね」
母性巫女 (この塔にゴミを捨てるとこなんてあるのかしら)
…………
幼女魔王の塔 穴だらけの廊下
母性巫女 「これは……」
幼女魔王A 「ゴミは、だいたいここの穴に捨ててる」
幼女魔王S 「ときどき落ちそうになるよね」
母性巫女 「えぇ……」
幼女魔王A 「んしょっ……じゃあ、捨てる、よっ」
ヨロ
母性巫女 (うわあ、危なっかしい!)
母性巫女 「ま、待ってください、A」
母性巫女 「私がやりますから……!」
幼女魔王A 「だ、大丈夫だもん」
母性巫女 「じゃあ、一緒! 一緒に捨てましょう」
母性巫女 「ね?」
幼女魔王A 「一緒……」
母性巫女 「ええ、一緒……」
母性巫女 (あれ、手助けしない方がこの子のためなのかしら)
母性巫女 (でも危ないし……)
幼女魔王A 「でも、一人で捨てた方が……」
幼女魔王A 「いっぱいナデナデしてもらえる」
ヨロ ヨロ
母性巫女 「あああ、一人で捨てなくてもいっぱいナデナデしますから」
母性巫女 「ね、ね?」
幼女魔王A 「……ほんと?」
母性巫女 「本当。だから無理して危ないことしなくても大丈夫ですよ」
幼女魔王A 「……えへへ。じゃあ、一緒に捨てる」
幼女魔王S・I・P 「いいなあ……」
幼女魔王P 「……わ、私は別に興味ないけど」
母性巫女 「じゃあ私がゴミ袋を持ちますから……」
母性巫女 「Aは私の服を掴んでいてください」
幼女魔王A 「うん!」
幼女魔王S 「それ何か意味あるの?」
母性巫女 「せーの……」
母性巫女 「あら?」
幼女魔王A 「?」
母性巫女 (穴の向こうに、誰かいる)
??? 「…………」
フラ フラ
母性巫女 「あれは……」
??? 「…………」
幼女魔王R 「…………」
フラ フラ
幼女魔王I 「Rだわ」
幼女魔王S 「どうしてあんなところに。穴を飛び越えたの?」
幼女魔王P 「まさか。私たちの誰一人、ここの穴を飛び越えられない」
母性巫女 (R、たしか料理が得意な……)
幼女魔王I 「ふらふらしてる。危ないわ、落ちちゃう」
母性巫女 「こっちに連れてきます」
幼女魔王S 「ええっ、どうやって?」
母性巫女 「.穴を飛び越えて向こうまで行って、あの子を抱えて戻ってきます」
幼女魔王I 「危ないわ。穴だらけだし、どこが崩れるか分からないし、私が縦に十人寝そべっても足りない穴があるし」
幼女魔王I 「落ちてしまうとどうなるか分からな」
母性巫女 「えいっ」
母性巫女のジャンプ!
ピョーーーン
スタ
母性巫女 「大丈夫ですか」
幼女魔王R 「あう……」
母性巫女 (朦朧としている。……熱がある)
母性巫女 「いま向こうへ連れていきますからね」
母性巫女 「よいしょ」
ダキ
幼女魔王R 「ふあ……」
幼女魔王R 「おかあさんの、におい……」
母性巫女 「力を抜いて……そう。じっとしていてくださいね」
母性巫女 (この子を抱えて穴を飛び越える。負担がかからないように気をつけて……)
幼女魔王I 「危ないわ! 穴だらけだし、どこが崩れるか分からないし、私が縦に十人寝そべっても足りない穴があるし!」
幼女魔王I 「落ちてしまうとどうなるか分からな」
母性巫女 「やあっ」
母性巫女の小ジャンプ!
ピョーー
幼女魔王S 「あ、さっきより小さいジャンプ」
幼女魔王S 「それでも余裕っぽい!」
幼女魔王I 「これが知らない私の力!」
幼女魔王S 「あっ!!」
幼女魔王A 「えーん」
ズルル
幼女魔王S 「ああっ、Aが穴に落ちかけている!」
幼女魔王I 「着地してから助けたら間に合わない感じ!」
幼女魔王I 「大ピンチ!」
母性巫女 「はあっ」
母性巫女の多段飛び
トトト
ダキ
ピョイーン
幼女魔王S 「あっ、空中を歩くように跳んでAを助けて空中でジャンプして戻ってきた」
幼女魔王S 「すげえ!!」
母性巫女 「ふう」
幼女魔王A 「グスン、グスン……まま、ままぁ」
母性巫女 「よしよし」
ナデ ナデ
母性巫女 「間に合って良かった」
母性巫女 「いったい何がどうなって、あんなことに……」
幼女魔王S 「R、大丈夫?」
幼女魔王R 「うあ……」
幼女魔王I 「朦朧としてる。こんな状態で、どうしてあんなとこにいたのかしら」
母性巫女 「早くどこかで休ませないと」
母性巫女 「Rの部屋はどこでしょう?」
幼女魔王Iは 上を 指差した!
幼女魔王Sは 左を 指差した!
幼女魔王Pは 右を 指差した!
幼女魔王Aは 泣いている!
母性巫女 「仕方ありません。私が使わせてもらう部屋に運びます!」
…………
…………
母性巫女の部屋
母性巫女 「…………」
幼女魔王R 「……ぅう」
幼女魔王R 「? あれ、私……」
母性巫女 「気がつきましたか?」
幼女魔王R 「……あなたは、だあれ?」
母性巫女 「私は、えっと……」
母性巫女 (どう言えば良いのかしら)
母性巫女 「最近この塔に来た、母性巫女です」
幼女魔王R 「……! そう、新しい、私……?」
母性巫女 (あんまり私のことを話しすぎても、今は混乱するだけかもしれない)
母性巫女 「ここは私が使わせてもらっている部屋です」
母性巫女 「あなたが穴だらけの廊下にいたところを見つけて、他のあなたたちと私で、ここに連れてきました」
母性巫女 「おぼえていますか?」
幼女魔王R 「穴だらけの廊下……?」
幼女魔王R 「私、気分が悪くて、部屋で寝ていたのに」
幼女魔王R 「そんなところにいたの?」
母性巫女 「やっぱり、意識はなかったんですね」
幼女魔王R 「うん……」
母性巫女 「熱は大丈夫ですか。頭のタオル、かえましょうね」
幼女魔王A 「まま、はい」
濡れタオル
母性巫女 「あら」
幼女魔王A 「私が絞ったんだよ、ぎゅーってね」
幼女魔王A 「水、冷たかったけど、頑張ったの」
母性巫女 「ありがとうございます、A」
母性巫女 「さあ、タオルかえますからね……」
パタ ペタ
幼女魔王R 「……気持ちいい」
母性巫女 「良かった」
ナデ ナデ
幼女魔王R 「ん……んふふ……」
幼女魔王A 「……むぅ」
母性巫女 「Aが絞ってくれたおかげですね」
幼女魔王A 「えっ」
幼女魔王A 「う、うん」
母性巫女 「今、IとSがみんなに報せに行っています」
母性巫女 「あなたのこと、会議でも心配していましたよ」
幼女魔王R 「みんなが……」
母性巫女 「はい」
幼女魔王P 「私はどうでも良いけどね」
ピコピコ
母性巫女 「んもう」
幼女魔王P 「でも、良かったんじゃない。穴に落ちなくて」
幼女魔王P 「Rがいないとお菓子が食べられないって、みんな言ってたし」
幼女魔王R 「おかし……」
幼女魔王R 「私、料理が得意な幼女魔王なのよね……」
幼女魔王P 「今さら何言ってんの」
母性巫女 「病気と聞いていますけど」
母性巫女 「どうですか、今と前で、変わったところはありませんか?」
幼女魔王R 「……分かんない」
幼女魔王R 「でも、ちょっとずつ、悪くなってる気がする」
母性巫女 「そうですか……」
母性巫女 「熱の他に、何かきついところはありますか?」
幼女魔王R 「……うーん」
母性巫女 「無理に考えなくて良いですからね」
母性巫女 (日に日に悪くなってると聞いたけど、話はできるみたい)
母性巫女 (意識が無くても出歩く体力はあるみたいだし、顔色も悪くはない)
母性巫女 (ちゃんと休めばきっと治せるわ)
幼女魔王R 「……あなたは、知らない私?」
母性巫女 「え?」
母性巫女 「はい、たぶん……」
幼女魔王R 「そうだと思った」
幼女魔王R 「髪は黒くてサラサラだし、背も高いもの」
母性巫女 「そうですね……」
幼女魔王R 「私は?」
母性巫女 「え?」
幼女魔王R 「髪はピンク色でピョンピョンしてるし、背も低いし、痩せっぽちだけど」
幼女魔王R 「私は私? それとも、知らない私?」
母性巫女 「あなたは、Rじゃないんですか?」
幼女魔王R 「……Rよ」
幼女魔王R 「でも私、本当にそうなのか、分かんない」
母性巫女 「分かんない?」
幼女魔王R 「分かんないの」
幼女魔王R 「分かんなくて、分かんなくて……うーん、うーん」
母性巫女 「料理が得意なRじゃないんですか?」
幼女魔王R 「そうよ。私、料理は得意」
幼女魔王R 「料理が得意な、幼女魔王R」
幼女魔王R 「でも、でも、でも、分かんない」
幼女魔王R 「私は私? 知らない私?」
幼女魔王R 「私、私、私……」
幼女魔王R 「ううん、分かんないの、あのね、そうじゃなくてね、あのね……っ」
幼女魔王R 「ううん、うーん、んーん……」
母性巫女 「R」
ギュ
幼女魔王R 「……!」
幼女魔王R 「手……」
母性巫女 「大丈夫」
母性巫女 「大丈夫ですよ」
幼女魔王R 「……でも、私、私……」
母性巫女 「大丈夫、どんなあなたでも、あなたですからね」
幼女魔王R 「私、どんな私でも……どんな」
母性巫女 「分からないのも、あなた」
母性巫女 「料理が得意なのも、あなた」
幼女魔王A 「…………」
幼女魔王R 「でも私、料理が得意な私なの」
幼女魔王R 「私は幼女魔王Rで、Rは料理が得意なの」
幼女魔王R 「どうして?」
幼女魔王R? 「どうして私は、料理が得意なの?」
母性巫女 「R……」
ズシン
母性巫女 「?」
母性巫女 (今、揺れ……)
ユッサユッサユッサユッサ
母性巫女 「きゃあ!?」
幼女魔王たち 「ひゃあ!?」
※
隠し実績!
母性巫女の乳揺れ1000回 達成!
天使の触手下着(上)を 手に入れた!
母性巫女 (地震!?)
母性巫女 「皆、テーブルの下へ……!」
ガシ
幼女魔王A 「ううぅー! まま、ままぁ!」
ギュウウウ
母性巫女 「……!」
母性巫女 「危ないので口を閉じて、私にしっかりつかまってるんですよ……」
幼女魔王A 「はぶぅ」
母性巫女 (Pは……?)
幼女魔王P 「……! ………!」
母性巫女 (テーブルの下に入っている)
母性巫女 「R……」
幼女魔王R 「私、私……」
母性巫女 「…………」
母性巫女の かばう!
幼女魔王Rは かばわれた!
幼女魔王Aは かばわれた!
ユサユサユサ
ゴゴゴゴゴゴ
…………
ゴゴゴゴ
ユッサ ユッサ
…………
母性巫女 「……止まった?」
幼女魔王A 「フーッ、フーッ、フーッ……!」
ギュウウ
母性巫女 (すごい呼吸の乱れ)
母性巫女 「怪我がなくて良かった……」
ナデ ナデ
幼女魔王A 「…………」
ガタ ガタ ブル ブル
母性巫女 (身体が震えてる。怖かったのね)
幼女魔王R 「…………」
母性巫女 (Rも無事)
母性巫女 「P?」
幼女魔王P 「……ああああああああ゛!」
母性巫女 「!?」
幼女魔王P 「せっかく出たのに、やっと出たのに! クソ地震のせいで! クソ甘ゆるゆるボタンのせいで!」
幼女魔王P 「うおぁあぁあ゛ぁあ゛~~~~ぁ゛!?!?!?」
ピコピコピコピコ
母性巫女 (よく分からないけど大丈夫みたい)
…………
幼女魔王P 「終わった……何もかも……もう、死なせて……」
母性巫女 「はいはい、ちゃんと手を繋いでいるんですよ」
母性巫女 (さて、どうしよう。外へ避難……って、部屋を出ても塔の中だし……)
幼女魔王R 「…………」
母性巫女 (他の子たちの様子が心配だけど、Rから離れるわけにも……)
??? 「……おお~い」
母性巫女 「!!」
幼女魔王A・P 「ひっ……」
母性巫女 (階段で聞いた声……)
??? 「…………おおーい」
??? 「…………おおーい」
母性巫女 (この声に答えては駄目……)
幼女魔王A 「だ、駄目だよ、まま、ぜ、絶対、駄目……!」
幼女魔王P 「答えなかったら、こ、怖くないから……!」
ガタガタガタ
母性巫女 「はい。はい……っ」
ギュウ
???「……おおーい」
母性巫女 「…………」
母性巫女 (ずっと下の方から聞こえてくる、かすかな声なのに、強い存在感)
母性巫女 (得体の知れない影が、暗いところでおどろおどろしく蠢く様子が、嫌でも頭に浮かんでくる)
母性巫女 (考えたくなくても逃げられない。気持ち悪い……怖い……吐き気が……)
??? 「……おおーい」
幼女魔王P 「…………」
幼女魔王A 「…………まま」
母性巫女 「……っ」
母性巫女 「……大丈夫。大丈夫ですよ……」
ギュ
幼女魔王A 「……うん」
母性巫女 (この子たちを守らなきゃ……)
??? 「…………おおーい」
??? 「…………おおーい……」
ガチャ キイイ バタン
母性巫女 「!!」
幼女魔王AP 「ひっ!」
??? 「……よかった」
幼女魔王G 「みんな無事だね」
幼女魔王G が あらわれた
母性巫女 「あ、ええと……」
幼女魔王G 「Gだ。SとIから話は聞いた」
幼女魔王G 「だが、今はこの声だ」
??? 「…………おおーい」
幼女魔王G 「絶対に、答えてはいけないよ」
母性巫女 「は、はい」
幼女魔王G 「AとP、Rのことも守ってくれていたんだね、ありがとう」
幼女魔王G 「君もこんなに震えているのに」
母性巫女 「いえ……」
母性巫女 「Gは大丈夫なんですか。こんな恐ろしい声を聞いて」
幼女魔王G 「心配いらない」
幼女魔王G 「私は、この声を聞いても平気でいられる」
幼女魔王G 「他の私たちは、皆そういう風になってしまうが」
幼女魔王AP 「ガタガタガタ……」
??? 「………おおーい」
母性巫女 (どうして、あんな恐ろしいものがここにいるのかしら)
母性巫女 (ここがNそのものなら、どうして……)
幼女魔王G 「……いつもよりしつこいな。それに近い」
母性巫女 「え」
幼女魔王G 「これまでも、あの声がこうやって流れてくることはあったんだが」
幼女魔王G 「今回はどうも妙だ」
母性巫女 「……さっきの地震と関係があるのかしら」
幼女魔王G 「かもしれない」
幼女魔王A 「の……のぼってくるの? あれが」
母性巫女 「え?」
幼女魔王A 「くるんだ……あ、あれが、地震のせいで、私たちの場所を見つけて、のぼって」
幼女魔王P 「や、やめてよ! そんなこと言うの!」
幼女魔王A 「くる……き、来ちゃう、逃げても逃げても、上まで……!」
幼女魔王G 「落ち着くんだ、A。あれは来ないよ」
幼女魔王G 「答えなければ、ぜったいに大丈夫だ」
母性巫女 「A……」
幼女魔王A 「来る、ひっく、来る、く……うああ……うあああああん!」
母性巫女 「大丈夫、大丈夫……っ」
母性巫女 (……ああ、手が震えてしまう)
幼女魔王A 「う、うぅうう!まま、まま、まま、やだよ、怖いよ、怖いよ、怖いよう!」
幼女魔王P 「グスッ、う、うぅ……」
母性巫女 (……駄目だわ。私が怖がっていたら、この子たちを安心させられるわけない)
母性巫女 「…………」
ナデ ナデ
幼女魔王A 「う、うぅ、うあああ、うああああん……」
母性巫女 「……大丈夫」
ギュウ
幼女魔王A・P 「うう、ううぅ……」
母性巫女 「怖くても大丈夫。だから、いっぱい泣きなさい」
母性巫女 (……不思議。こんなに小さな子たちを抱きしめているだけで、震えがおさまっていく)
幼女魔王A 「まま……」
デロー
母性巫女 「心配いりませんからね……あら」
母性巫女 (顔を上げたAの鼻から、鼻水が糸を引いてる)
幼女魔王A 「あう。服、汚してごめんなさい」
母性巫女 「うふふ、大丈夫……ですけど、何か拭くもの拭くもの……」
幼女魔王G 「どうぞ」
金の刺繍のハンカチ
母性巫女 「あら、こんな綺麗なハンカチ……」
幼女魔王G 「構わないさ。私のものを拭くんだから」
母性巫女 「そうですか……?」
幼女魔王A 「ふが……あう゛」
母性巫女 「ありがとうございます、G」
母性巫女 「さあ、A、お鼻かみましょうね」
幼女魔王A 「うじゅうう」
チーン
母性巫女 「大丈夫、大丈夫」
ナデ ナデ
幼女魔王A 「ううう」
幼女魔王P 「母性巫女……」
母性巫女 「大丈夫ですよ、大丈夫。私が」
母性巫女 「私がちゃんと、ついていますからね」
ギュッ
幼女魔王R 「……あったかい」
幼女魔王G 「…………」
ドダダダダ キイィ バタン
幼女魔王A・P 「ひっ!?」
??? 「フェニックス!!」
幼女魔王WHF 「緊急事態だ!」
幼女魔王G 「どうしたんだい、偽フェニックス隊」
幼女魔王H 「偽者だって!?」
幼女魔王F 「どこだ!?」
幼女魔法W 「違う、緊急事態だ!」
幼女魔王H・F 「そうだ!」
幼女魔王G 「私が広間を離れてから起きた、地震のことかな」
幼女魔王W 「ああ! さっきの地震のせいで」
幼女魔王W 「広間がまるごと消えうせた!!」
幼女魔王G 「なっ……」
母性巫女 「丸ごと!?」
幼女魔王W 「丸ごと、すっかりだ!」
母性巫女 「みんなはどうなったんですか!?」
ダダダダダダ
ガチャ キイィ バタム
幼女魔王A・P 「ひっ」
??? 「直近の会議に出席した私たちは」
幼女魔王C 「みんな無事……! だけど……」
幼女魔王G 「C……」
ゾロゾロゾロゾロ
幼女魔王S 「死ぬかと思った!」
幼女魔王L 「死ぬところだった!」
幼女魔王たち 「大変だった!」
幼女魔王C 「Gが広間を出たあと、やっぱりみんなもここに」
幼女魔王C 「母性巫女の部屋に行くことになって……」
幼女魔王G 「それで、広間を消した地震に巻き込まれなかったんだね」
幼女魔王C 「ええ。だけどすぐに……」
??? 「……おおーい」
幼女魔王たち 「ひいっ…!」
ガタガタガタ
幼女魔王C 「うぅ……っ」
幼女魔王C 「あの声が、どんどんのぼってきて、それで……!」
母性巫女 (広間までのぼってこなかった声が)
母性巫女 (広間が消えたから、のぼってきた……?)
幼女魔王G 「……Mの姿が見えない。あの子はどこだい」
幼女魔王C 「行ってしまった……!」
幼女魔王G 「まさか……」
幼女魔王C 「逃げろって言ったのに」
幼女魔王C 「あの私だけが、あの声に向かって行っちゃった!」
母性巫女 「M……!」
幼女魔王C 「ごめんなさい……取り乱したわ」
幼女魔王C 「あの声がのぼってきて、私たちみんな走れなくなってしまったの」
幼女魔王C 「それで、あの声を遠ざける美触手を操れるMが」
幼女魔王C 「私たちが逃げる時間を稼ぐために戦うって……」
母性巫女 「………」
幼女魔王A 「……まま? なんで立つの? 私から離れるの?」
母性巫女 「みんなと一緒に、少しだけ、ここで待っててくださいね、A」
幼女魔王G 「…………」
幼女魔王C 「まさか、K……母性巫女」
母性巫女 「あの子のところに行ってきます」
幼女魔王A 「……や、やだ! ちゃんとついててくれるっていったのに!」
母性巫女 「はい。だから、頑張って戦うあなたに、ちゃんとついててあげなくちゃ」
幼女魔王A 「…………!」
幼女魔王G 「私も行こう」
母性巫女 「G……」
幼女魔王G 「私はあの声が平気だし」
幼女魔王G 「君よりもあの声との付き合いは多少長いからね」
幼女魔王A 「…………うぅう」
母性巫女 「A、お留守番が終わったら、夜はくっついて寝ましょうね」
幼女魔王A 「……おっぱいも」
母性巫女 「うん?」
幼女魔王A 「おっぱいも飲む」
母性巫女 「え゛っ……」
幼女魔王の塔 ぐちゃぐちゃな階段
??? 「……おーい」
幼女魔王M 「……美触手!」
美触手 「クュルルル」
美触手の こうげき!
???の声が のぼってくる……
??? 「おおーい、ふひひ……おおーい……」
幼女魔王M 「……! なんで、いつもは悲鳴をあげて逃げてくのに!」
??? 「ぐひ、ぐひ……おおーい」
幼女魔王M 「のぼって来るな! 帰れ! 帰れ!」
美触手の こうげき!
美触手の こうげき!
美触手の こうげき!
???「うひひひひ、おおーい、ひひひ……」
幼女魔王M 「私が守るんだ」
幼女魔王M 「私が私を守らなきゃ!」
美触手の こうげき!
美触手の こうげき!
美触手の こうげき!
???の声が のぼってくる
あたりに いやなにおいが 漂う……
美触手の こうげき!
??? 「おおーい……」
幼女魔王M 「私が私を守れなきゃ」
幼女魔王M 「私は私になれないんだ!」
美触手の こうげき!
美触手の こうげき!
いやなにおいが 幼女魔王Mをおそう
幼女魔王Mは 発情Lv.1に なった!
美触手の こうげき!
???の声が のぼってくる……
幼女魔王M 「私が、私が……!」
美触手の こうげき!
美触手の こうげき!
幼女魔王M は指示に集中できない!
美触手の こうげき!
いやなにおいが 強くなっていく……
幼女魔王Mは 発情レベルが ぐーんと上がった!
幼女魔王Mは 混乱Lv.1に なった!
幼女魔王M 「わ、私……私……?」
美触手の こうげき!
幼女魔王Mは 指示に集中できない!
???の声が のぼってくる……
幼女魔王Mは 指示に集中できない!
???の声が のぼってくる……
いやなにおいが 強くなっていく……
幼女魔王M 「私……」
??? 「おおーい……」
幼女魔王Mは 指示に集中できない!
???の声が のぼってくる……
???の声が のぼってくる……
美触手の こうげき!
いやなにおいが つよくなっていく……
???の声が のぼってくる……
??? 「おおーい……いひひひ」
??? 「ぐふひひ、おおーい……」
幼女魔王M 「私……美触手で……」
??? 「おおーい」
??? 「おおーい」
??? 「おおーい」
幼女魔王M 「私……私は私、で……」
幼女魔王M 「私、私……」
???の声が のぼってくる……
いやなにおいが 強くなっていく……
幼女魔王Mの 発情レベルが ぐーんと上がった!
幼女魔王Mは 恐怖Lv.3になった!
???の声が のぼってくる……
幼女魔王M 「私……なんで」
幼女魔王M 「美触手を操れるの……?」
???の声が のぼってくる……
???の声が のぼってくる……
幼女魔王Mの おもらし!
いやなにおいが 弱くなっていく……
???の声が のぼってくる……
??? 「おおーい、おおーい、おおーい」
??? 「ぐひひひひ」
いやなにおいが 強くなっていく……
いやなにおいが 強くなっていく……
幼女魔王M 「私……私は、なに……」
幼女魔王M 「私はわたしで、知らない私……私……」
???の声が のぼってくる……
???の声が のぼってくる……
??? 「ぐひひひひひ」
??? 「ぐひゅ、ぐひゅ、フシュー……」
??? 「ぐひひ」
??? 「ぐひひひひひ」
??? 「ぐひひひひひひひひ………」
??? 「おおーい」
??? 「おおーーい」
幼女魔王M 「…………」
幼女魔王M 「…………」
幼女魔王M 「……はぁい」
いやなにおいが 強くなっていく……
???の声が のぼってくる……
??? 「ぐひ、ぐひ、ぐひひひ」
幼女魔王M 「…………わたし」
??? 「ふひ、ひひ、おれの、お嫁さん」
幼女魔王M 「お嫁さん……わたし、お嫁さん」
??? 「奴隷、道具、おもちゃ」
幼女魔王M 「わたし、奴隷……おもちゃ……」
??? 「ひひひひ、ひひひ……」
幼女魔王M 「……わたし」
……ダダダダダ
ダダダダダ
バシュン
??? 「ぎゃっ!?」
母性巫女 「大丈夫ですか、M!」
母性巫女の お母さん炎ビーム!
母性巫女が 現れた!
???の声が 遠ざかる!
タタタタタ
幼女魔王G 「今、なにかすごいものが出なかったかい?」
幼女魔王Gが 現れた!
母性巫女 「M、M、大丈夫ですか!?」
幼女魔王M 「わたし、わたし……M?」
幼女魔王G 「どうやらひどく混乱しているようだ」
幼女魔王G 「自分のことも分からないくらいに」
母性巫女 「M、M……?」
幼女魔王M 「……まま」
母性巫女 「はい、はい、助けにきましたよ」
幼女魔王M 「わたし……わたし……」
幼女魔王M 「ドM?」
母性巫女 「ああ、すごく混乱してる!」
幼女魔王M 「わたし……私は……あへ……」
母性巫女 「ああ、こんなになるまで頑張って……」
母性巫女 「……ぅう!?」
クラッ
母性巫女 (すごいにおい……)
幼女魔王G 「声と同じ、いやな毒だ」
幼女魔王G 「母性巫女、私のハンカチで口を覆って」
母性巫女 「は、はい」
母性巫女は ハンカチを 装備した
母性巫女 「濡れてる……」
幼女魔王G 「Aの鼻水だね」
母性巫女 (布一枚あてただけなのに、においが弱くなった……)
幼女魔王M 「わたし、まま、まま、わたし……」
母性巫女 「大丈夫、大丈夫ですからね、M」
母性巫女 「……早く連れて戻らないと」
幼女魔王G 「頼むよ」
母性巫女 「G……?」
??? 「……おおーい」
母性巫女 「!」
母性巫女 「また、のぼってくる……!」
幼女魔王G 「広間が消えた影響だろうね」
幼女魔王G 「あれはもう、この塔のどこまでも行けるのかもしれない」
母性巫女 「そんな。それじゃあ……」
幼女魔王G 「そうだ」
幼女魔王G 「もはやあれはやってしまうしかない」
幼女魔王G 「この塔のために、殺してしまうしかない」
幼女魔王G 「遅くまで起きていると目玉取りおばけが来る」
幼女魔王G 「お臍を出して寝るとお臍にムカデの卵を産み付けられる」
幼女魔王G 「怖いものというのは、ときに成長のためには必要なものなんだ」
幼女魔王G 「だがもうあれは違う。客としてのルールを破った」
幼女魔王G 「あんなものはここにあってはならない」
母性巫女 「……あなたは」
幼女魔王G 「行きなさい。その子と安全な場所へ」
母性巫女 「駄目ですよ。それならあなたも一緒です」
幼女魔王G 「大丈夫」
幼女魔王G 「ここにいるべきだったのはMじゃなく、私だったんだ」
??? 「おおーい」
??? 「おおーい」
??? 「おおーい!」
幼女魔王G 「あれの声もにおいも、私を屈服させることはできない」
幼女魔王G 「なぜなら私は、そういうものだからだ」
母性巫女 「G……」
幼女魔王G 「幼女魔王G。ゲームが大好きな幼女魔王。けれど私は」
幼女魔王G 「たいしてゲームが好きじゃない」
母性巫女 「え……」
幼女魔王G 「LだとかRだとかボタンの名前をいちいち覚える気になれないし」
幼女魔王G 「とくにあのグリグリ動く棒みたいなやつの存在が許せない」
幼女魔王G 「停止した状態から前に走るように倒しても、ちょっと際どい足場に立った画面内のキャラが」
幼女魔王G 「ちょっと別方向に進んでから指示した方向へ走りだすから、落ちちゃって」
幼女魔王G 「そんなことばっかりで本当に嫌になる」
母性巫女 「ちょっとよく分かりませんけど……」
幼女魔王G 「私は違う幼女魔王Gだ」
幼女魔王G 「幼女魔王を守る幼女魔王」
幼女魔王G 「ガーディアンの幼女魔王なんだ」
母性巫女 「カーディガン……」
???2の声 『キャハハハハハハハハハ』
母性巫女 「!?」
母性巫女 「うっぷ……この、声!」
???2 『キャハハハハハハハハ!』
毛玉触手『キャハハハハハハハハ!』
毛玉触手が 現れた!
母性巫女 「……!!」
母性巫女 「あ、うあ……!」
母性巫女の 淫らな記憶が 甦る!
母性巫女は すくみあがった!
幼女魔王G 「来たか……!」
??? 「おおおーい」
??? 「おおお゛ーい゛!!!」
???の声が のぼってくる……
幼女魔王G 「黙れ!」
幼女魔王Gの 雄たけび!
???の声を かきけした!
幼女魔王G 「母性巫女、行きなさい!」
母性巫女 「うぐぐ……」
幼女魔王M 「……ごめんなさい、ごめんなさい」
幼女魔王M 「ごめんなさい、……ちゃん、ごめんなさい……」
ガタガタ ブルブル
母性巫女 「M……」
母性巫女 (……頑張らなきゃ!)
母性巫女は 頑張った!
母性巫女は 勇気が湧いた!
母性巫女の 淫らな記憶が 吹き飛んだ!
幼女魔王M 「ごめんなさいごめんなさい……ごめんなさい…」
母性巫女 「M……」
母性巫女 (早く上へ。でも……)
毛玉触手 『キャハハハハハハ!』
ゴオオオ
母性巫女 (! 来る……っ)
毛玉触手の 浮遊たいあたり!
??? 「おおー……ぎいぃ!」
???に 5のダメージ!
母性巫女 「……え?」
母性巫女 (毛玉触手が、声に向かって突っ込んでいった?)
母性巫女 (声がどんどん遠ざかっていく……)
幼女魔王G 「母性巫女、Mとみんなを頼んだよ!」
ダダダダ
母性巫女 「ああっ、G、待って……!」
ゴゴゴゴ
母性巫女 「!?」
ガララララララ
母性巫女 「わわわ……っ」
母性巫女 (Gと私の間の床と天井が、一緒に崩れだした)
ガララララ
ゴゴゴ
モクモクモク
母性巫女 「…………G」
母性巫女 (道が完全に塞がってしまった)
幼女魔王M 「……ぅ、うぅ」
母性巫女 (戻るしかない……)
幼女魔王の塔 母性巫女の部屋
ガチャ
キイイ パタム
幼女魔王A 「まま!」
幼女魔王たち 「母性巫女!」
母性巫女 「ただいま戻りました」
幼女魔王A 「お、おかえりなさい……!」
トテテテテ
幼女魔王A 「……あ」
幼女魔王M 「…………」
母性巫女 「……A、Mを寝かせるの、手伝ってくれますか」
幼女魔王A 「う、うん。Rの隣でいい?」
母性巫女 「お願いします」
幼女魔王C 「Mは、大丈夫なの? 生きているの?」
母性巫女 「C。弱っているけど、はい」
幼女魔王C 「そう……」
幼女魔王C 「良かった……!」
幼女魔王F 「フェニックスだ!」
幼女魔王H 「フェニックス!」
幼女魔王C 「…………」
幼女魔王C 「それで、Gはどこ?」
母性巫女 「それが……」
カチ コチ カチ コチ
ポーン
幼女魔王I 「それでそれで、どうだったの? あの声」
幼女魔王I 「Mの体のすみずみまで、いじめてくれたの?」
幼女魔王J 「貫通された? Mのお尻から口までズリズリされた?」
幼女魔王E 「石鹸は? 石鹸は使われた?」
幼女魔王M 「うっさい……ぶっとばすわよアンタら……」
キャッ キャッ
幼女魔王C 「……そうなのね。Gが、あの声を」
母性巫女 「はい」
母性巫女 「……ごめんなさい」
幼女魔王C 「いいえ。帰ってきてくれてありがとう」
幼女魔王C 「きっとGの言うとおり」
幼女魔王C 「あの声は、あのままだったらきっと、ここまでやって来た」
幼女魔王C 「やっつけなきゃいけなかった」
幼女魔王C 「できれば私たちの、誰かが……」
幼女魔王L 「やっつけられたの?」
幼女魔王S 「声は聞こえなくなったけど」
幼女魔王C 「…………」
母性巫女 (Gのこと、あの毛玉のこと)
母性巫女 (なんて話したら良いのかしら)
幼女魔王S 「ううむ、ただのゲーム大好きな私が」
幼女魔王S 「道連れにしたくらいであの声をやっつけられるものか」
幼女魔王D 「でも、あの私って、あの声を聞いても平気だったよね」
母性巫女 「……あの。Gのことなんですけど」
幼女魔王C 「なあに」
母性巫女 「ゲームが大好きなG……じゃ無かったみたいです」
幼女魔王L 「えっ!?」
幼女魔王H 「フェニックス!?」
幼女魔王F 「偽者か!?」
母性巫女 「あ、いえ。ちゃんと本物? だったみたいですけど」
幼女魔王C 「…………」
幼女魔王C 「あの私は何の私だったか、母性巫女は教えてもらったの?」
母性巫女 「はい」
母性巫女 「幼女魔王を守る幼女魔王」
母性巫女 「…………」
母性巫女 「……カーディガン」
母性巫女 「だそうです……」
幼女魔王たち 「…………」
幼女魔王たち 「カーディガン……」
幼女魔王L 「カーディガン……」
幼女魔王P 「ゲームが好きじゃないのは何となく感じてたけど。どうでもいいから黙ってたけど……」
幼女魔王S 「たしかに、どこかあたたかい感じのする私だったわ」
幼女魔王D 「肌寒い朝夕も、冬の寒さも、さりげなく暖めてくれるような」
幼女魔王W 「そんなフェニックスだったわね……」
母性巫女 「…………」
幼女魔王C 「……ありがとう」
幼女魔王C 「幼女魔王G」
幼女魔王たち 「私たちの、カーディガン……」
ガチャ キイイ
パタム
幼女魔王G 「…………」
幼女魔王G 「ガーディアンだね」
幼女魔王たち・母性巫女 「!?」
幼女魔王C 「G……!」
幼女魔王G 「ただいま、C。Mは……無事なようだね」
幼女魔王M 「無事じゃないわよ……全身重いし」
幼女魔王M 「さっきから私が私の不幸にたかってくるし……」
幼女魔王I 「ペンペン」
幼女魔王J 「ズリズリ」
幼女魔王E 「ヌルヌル」
幼女魔王G 「Mをありがとう母性巫女」
幼女魔王G 「私はガーディアンだけど」
母性巫女 「ご、ごめんなさい」
母性巫女 「良かった、本当に……無事だったんですね」
母性巫女 「階段が崩れてしまって、もう駄目かと……」
幼女魔王G 「ああ、私も覚悟していたよ」
幼女魔王G 「けれど、幸運ってあるんだね」
幼女魔王C 「いろいろ聞きたいことがあるけど」
幼女魔王C 「どうしよう。何から聞けば良いのかしら」
幼女魔王G 「ああ。私も話さなくてはならないことがあるけれど」
幼女魔王G 「ゆっくり、順をおわずに話すとしよう」
幼女魔王G 「とにかくもう、怖い声が聞こえてくることは、なくなったのだから」
幼女魔王S 「なくなった?」
幼女魔王C 「それって……」
幼女魔王G 「いってしまったよ、あの声は」
幼女魔王G 「私たちの行くところのどことも違う場所に」
幼女魔王たち 「…………!」
幼女魔王A 「……あの怖い声、もう聞こえないの?」
幼女魔王G 「ああ。もっと怖いものが」
幼女魔王G 「ぜんぶ食べてしまったからね」
幼女魔王S 「ももも、もっと怖いもの!?」
幼女魔王G 「ああ……」
キャハハハハハハ
幼女魔王たち 「!?」
母性巫女 「……!」
毛玉触手 『キャハハハハハ』
毛玉触手が 現れた!
幼女魔王P 「ひっ……!!」
幼女魔王W 「おのれ出たな! いくぞフェニックス隊!」
幼女魔王L 「わああ、戦いを挑まないで! じっとしてて!」
幼女魔王A 「ま、まま……!」
ギュウゥ
母性巫女 「大丈夫、大丈夫ですからね……」
母性巫女 (あれ……私、何だか少し、あの毛玉触手の笑い声が平気になってる?)
幼女魔王C 「ええ、こちらから何もしなければ、何もしてこないわ」
幼女魔王C 「ただ怖いだけ」
幼女魔王J 「あいかわらず怖い……けど、あのぶっとい触手……グヘヘ」
毛玉触手 『キャハハハハハ』
幼女魔王A 「あれがもっと怖いもの?」
幼女魔王G 「ううん。あれは、待っているだけだ」
幼女魔王C 「待っている?」
幼女魔王L 「誰を?」
幼女魔王G 「……私たちかな」
幼女魔王S 「?」
幼女魔王C 「……そう」
毛玉触手 『キャハハハハハ……』
幼女魔王A 「……じゃあ、もっと怖いものって……ううぅ」
母性巫女 「よしよし、大丈夫大丈夫」
母性巫女 (広間からずっと下の、あの棺……)
幼女魔王G 「そう、大丈夫だよ、A」
幼女魔王G 「怖くて大丈夫だ」
幼女魔王G 「この塔にある怖いものは、本当は」
幼女魔王G 「私たちのために、怖いのだから」
幼女魔王A 「……?」
……
…………
幼女魔王の塔 厨房
カチャカチャ コトコト
クツクツクツ
母性巫女 (私に分けてくれた部屋のすぐ近くが台所だったなんて)
母性巫女 (広間はなくなってしまったけど、よかった)
母性巫女 (……ここで何かを食べるって、現実にはどういうことなのかしら)
幼女魔王A 「まま…おひげとるの、終わった……」
細長い野菜
母性巫女 「ありがとうございます」
母性巫女 「うん、とっても丁寧」
幼女魔王A 「えへへ……いっぱい、やりなおしたから」
幼女魔王A 「ほかに、何かする?」
母性巫女 「うーん、そうですね」
母性巫女 「どうしましょう、R?」
幼女魔王R 「……もうすぐお鍋持って行かなきゃだから、Aは、食べるところの様子を見てほしい」
幼女魔王R 「食器。持って行ったり、お片づけとか……ちゃんと、できてるか……」
幼女魔王R 「お願い、します……」
母性巫女 (なんだか、ぎこちない……)
幼女魔王A 「う、うん……じゃあ、いってくる」
コトコト
幼女魔王R 「あとは、これだけ……」
母性巫女 「はい」
母性巫女 「……体の具合、つらいところりませんか?」
幼女魔王R 「うん……大丈夫」
母性巫女 「Rのおかげで、おいしいお鍋になりそうですね」
処女風魚介野菜鍋
幼女魔王R 「……う、うん」
幼女魔王R 「でも、私、やっぱり」
幼女魔王R 「いいのかな……私」
母性巫女 「R?」
幼女魔王R 「だって……ぜったい見たことないお野菜も」
幼女魔王R 「食べたことないお魚も……」
幼女魔王R 「どうやったらおいしくできるか、切り方とか……知ってて」
幼女魔王R 「お鍋料理のしかた、覚えた記憶、ぜんぜん、ないのに」
母性巫女 「はい……」
幼女魔王R 「だから、どうやってお料理おぼえたか、分からないから……」
幼女魔王R 「これから、どうやって新しいお料理おぼえたら良いか、分からないから」
幼女魔王R 「ううん、きっと、私、料理をおぼえたくない。新しいことおぼえるの眩暈がする」
幼女魔王R 「できるから、だからやってるけどっ、でも私っ、今たまたま上手なだけでっ……」
幼女魔王R 「だって、私、こんな、だめな、私……」
母性巫女 「はい…うん……」
幼女魔王R 「私、本当は何もできないの、なまけものなの」
幼女魔王R 「なのに、こんな、知らないお料理なんて知ってて」
幼女魔王R 「何もできないから、がんばらなきゃいけないのに……!」
幼女魔王R 「やだ、やだ、怖くて、何もできない、違う」
幼女魔王R 「分かってるの、何かしなきゃいけないのに」
幼女魔王R 「分かってるのに……! うぅ、うぅ……!」
母性巫女 「R」
ダキ
幼女魔王R 「あううぅ、ううぅう!」
母性巫女 「いいこ、いいこ……」
ナデ ナデ
幼女魔王R 「違うの、私、ちがうの」
幼女魔王R 「悪くて、悪い……」
母性巫女 「はい」
母性巫女 「Rは悪い子」
ナデ ナデ
幼女魔王R 「すごく悪くて、ここにいちゃいけなくて……」
幼女魔王R 「やだ、やだ、やだ……」
母性巫女 「悪い子、とても悪い子」
ナデ ナデ
母性巫女 「悪くて、悪くて」
母性巫女 「だいじな、悪い子……」
ナデ ナデ……
幼女魔王の塔 母性巫女の部屋
ガヤガヤ
幼女魔王W 「ここをフェニックス席とする!」
幼女魔王P 「ちょっともう! そこ座られると邪魔!」
幼女魔王P 「寝そべってプニマンできなくなる!」
幼女魔王L 「久しぶりのRの料理、楽しみ」
幼女魔王S 「調子悪そうだったのに、大丈夫かな」
幼女魔王S 「というか……」
毛玉触手 『キャハハハハ』
幼女魔王S 「……ずっとここにいるのかな」
ワイワイ ガタガタ
幼女魔王C 「……どうして本当の名前、隠していたの」
幼女魔王G 「うーん、うまく言えないけど、私だから分かるんじゃないかな」
幼女魔王M 「……私たちは甘えんぼうで怠けんぼう」
幼女魔王M 「Gがいれば安心だって分かったら」
幼女魔王M 「ぜったい、他の私たちはどんどん駄目になってく」
幼女魔王C 「……きっと、そうだけど」
カチャ キイイ ハタム
トコトコトコ
幼女魔王A 「……あ、あの」
幼女魔王A 「もうすぐ、お鍋、くるよ……」
幼女魔王A 「から、えっと……お部屋の、食べるところの準備、みんなで……」
…………
グツグツグツ
ガヤガヤ ワイワイ
幼女魔王C 「どうして広間がなくなってしまったのかしら」
幼女魔王M 「なくなったものは、しょうがないでしょ」
幼女魔王M 「それより、これから幼女魔王会議をする場所をどうするの」
幼女魔王G 「広間ほどでなくても、せめてここくらいの広さがある場所かな」
母性巫女 「ここで良いと思いますよ」
母性巫女 「はい、M。あーん」
幼女魔王M 「……あ、あーん」
幼女魔王M 「ハフッ……うん、おいしい」
幼女魔王R 「……ありがとう」
幼女魔王C 「素直ね、M」
幼女魔王M 「……仕方ないでしょ」
幼女魔王A 「うぅ、ずるい、ずるい」
幼女魔王A 「まま、私も、あーん、私も」
母性巫女 「はい。あーん」
幼女魔王A 「あーん。えへへ」
母性巫女 「うふふふ。自分でもしっかり食べるんですよ」
毛玉触手 『キャハハハハハ』
幼女魔王C 「では、あれは味方のようなものって考えて良いの?」
幼女魔王G 「私たちではなく、のぼってくる声だけに対して攻撃していたからね」
幼女魔王G 「何と言うか、頼もしい怒りのようなものも感じた気がするし」
幼女魔王C 「……とても、信じられない話ね」
毛玉触手 『キャハハハハ』
幼女魔王F 「フェニックスなのか?」
幼女魔王H 「追加フェニックスなのか!?」
母性巫女 「私にも、あれが、のぼってくる声を攻撃しているように見えました」
母性巫女 (少し平気になったけど、あの毛玉のモンスターの笑い声を聞いたらまだ少しお腹の底がキュンとする……)
幼女魔王C 「……ふうむ」
幼女魔王G 「声がいってしまうのを見届けて、私が帰ってくることができたのも」
幼女魔王G 「浮遊移動するあれに、どうにか掴まることができたからだ」
幼女魔王M 「あれを乗り物にしたの? あんまりやりたくない」
幼女魔王G 「意外と良い乗り心地だったよ」
幼女魔王G 「それに発見もあった。あれに掴まって帰る途中で」
幼女魔王G 「広間からのどの廊下とも繋がっていない部屋などを」
幼女魔王G 「いくつも見かけた」
幼女魔王C 「空中を浮かないと行けないような場所があるってこと?」
幼女魔王G 「ああ」
幼女魔王C 「……まだまだ分からないことだらけなのね、この塔も」
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