【ガルパン】アンチョビ・ウォー (12)
戦車道は何かと金がかかる。金持ちスポーツだ、と誰かが言っていたがまさにその通りだと思う。
長く続けるには金か或いは類稀なる才能がいる。中3の春、私はそれに気付いてしまった。
下手ではなかった、と思う。どちらかといえば……いやかなり良い線はいっていたんじゃないか。うん。
ただ金が積まれる程では無い……という事ぐらいは私でも分かる。なまじ腕があったから、そういう金が積まれる奴等との差ははっきりと分かってしまった。
かくして、私の戦車道は15歳で幕を閉じた。
ーーはずだった。
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「おーい安斎」
安斎「…………」
「安斎ってば」
安斎「……あ、なんだ。お前か」
「お前とはなんだよ。人が呼んでるのにさ」
安斎「……ごめんちょっとぼっとしてた」
「お腹空いてんの? 干し芋食べる?」
安斎「いらない」
安斎「……で、なんだよ」
「あー、えっとなんか先生が呼んでたよ。進路についてだってさ」
安斎「進路……」
安斎「…………」
「はー、落ち込むなとは言わないけどさ、もうちょっとシャキッとしなよシャキッと」
安斎「………うん」
「ほら早く行ってきな」
安斎「……うん」
「大丈夫かぁー?」
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安斎「……戦車道の特待……生……? わ、私がですか?」
「ああ、アンツィオ高校という所から連絡があってね」
安斎「アンツィオ高校……」
「戦車道の試合で君を見たらしくてね、是非とも来て欲しいと」
安斎「…………」
安斎「……考えさせて下さい」
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安斎「………」
安斎「……特待生か」
「何たそがれてんのさ」
安斎「むぐっ?! な、なんだよ!」
「いや口が開いてたから干し芋入れたくなってさ」
安斎「や、やめろよもう……」モグモグ
「……で、どうすんのさ特待生」
安斎「な、なんでもう知ってるんだ」
「さぁね~」
安斎「……分からない」
「なんでさ~学費免除に寮費免除でしょ。更には戦車道の予算にも力を入れるって話じゃん」
安斎「お前は…アンツィオ高校の名を戦車道してて聞いた事はあるか?」
「……んーん」
安斎「戦車道では無名校さ。もう何年も前に廃部になったらしいよ」
安斎「大方、今の戦車道ブームで上から何か言われたんだろう。アンツィオも戦車道に力を入れろと」
「だろうね~」
安斎「だが、無名校じゃ有名な選手は来るはずもない」
安斎「そこで私に目を付けたんだろう。強豪に呼ばれる訳ではなく、自費で戦車道を続けるのは困難であろう私に」
「…………」
安斎「だけど、高校の戦車道はそんな急造の戦車道じゃ勝てない……」
安斎「いや、勝てないように出来てる……か」
「……そんなん分かんないじゃん。公式戦はフラッグでしょ?」
安斎「それでも勝つのは難しい……中学で戦車道で勝つのには何が必要かは思い知った」
安斎「正直わたしは戦車道が分からなくなった……自分の戦車道が」
「………」
「……でもさ、私は続けた方が良いと思うよ」
安斎「え?」
「私はきっと……いや、安斎なら必ずアンツィオでも上手くやれると思うよ」
安斎「な、何を根拠に」
「多分言っても分かんないと思うよ~。でも、絶対続けてれば自分の戦車道に気付けるはずだよ」
「残念だけど、あたしは一緒にやれないけどさ~あはは」
安斎「………」
「続けなよ、安斎 」
安斎「私は……」
「きっと大丈夫さーー」
私はアンツィオに入学した。
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