【ミリマス】765学園物語HED √SSL (707)
朝、目を覚ます
夢を見ていた
女の子と一緒に同じ夢を掴む夢
俺達はあの夢の向こうへ辿り着けたのだろうか
体を起こして伸びをする
そのまましばらくぼーっとしていると腹の虫が鳴った
普段は特に考えないのだが、何故か今日はだけは
うどんが食べたかった
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1493825363
志保「戸締まり、出来ました」
P「よし、行くか」
海美「ゴーゴー!」
従妹の北沢志保、幼なじみの高坂海美と一緒に家を出る
少し早めで、ゆったりとした朝だ
海美「しほりんとこうやって一緒に学園に行くってなんか新鮮!」
志保「そうですね、私もです」
楽しそうに話す2人を見ながら歩く
しばらく歩いているとどこかから声が聞こえてきた
「おはよう静香ちゃん!」
「おはよう未来」
「あれ?なんだか眠そう」
「ちょっと変わった夢を見たから寝不足なのよ」
「変わった夢?」
「ええ、変わってるけど…その夢は私に勇気をくれたの」
「なんか良くわかんないけど良かったね!」
「ええ、あの温もりがあれば私は頑張れる…そんな夢だったわ」
P「…」
海美「P、どうしたの?」
P「いや、何でも無い」
海美に呼ばれ意識を逸らす
聞き覚えのある、とても懐かしい気持ちになる声だった
誰の声だったかな…
海美達と通学を再開する
声はもう聞こえなかった
昼休み
冬馬「珍しいな、うどんなんてよ」
P「今日は妙に食いたくてな」
翔太「そういうときあるよね~」
海美「私にも一口ちょうだい!出来ればあーんして!」
P「阿呆」
冬馬、翔太、海美の三人と学食に来ていた
この三人とはクラスが離れてしまったので少し残念だ
「あ、海美ちゃん海美ちゃん」
海美「あ、美奈子先生!」
P「ん?」
今年のクラスメイト、佐竹美奈子さんが海美に近付いてきた
美奈子「今日ならうちが使えるけど、どうする?」
海美「うん!行く!」
美奈子「わかった、じゃあ待ってるね?」
海美「あ、そうだ、Pも連れて行って良い?」
美奈子「周防くんを?うん、私は構わないよ!」
海美「P!と言うわけだから!」
P「いやどういうわけだよ」
美奈子「実は海美ちゃん、うちで料理の練習してるの」
P「そうなのか」
海美「うん!」
美奈子「最近上手になってきたよね」
海美「たまに焦がさなくなったからね!」
P「ほう」
それは確かに凄い進歩だ
海美「と言うわけでPにも食べさせてあげたいから来て欲しいな~」
P「仕方ないな」
それくらいなら付き合ってやるか
美奈子「じゃあ今日の放課後、佐竹飯店で待ってるね?」
海美「うん」
佐竹さんはそういうと厨房へ戻っていった
翔太「海美ちゃん、料理出来たんだ」
冬馬「マジかよ…2年前までは炭の錬金術師だったのにすげぇな」
海美「私だって成長してるからね~」
海美が得意そうに胸を張る
P「何でも良いけど、そろそろ食わないと昼が終わるぞ」
冬馬「っとやべえな」
海美「いそご!」
騒がしい昼食を楽しんだ
放課後、俺達は約束通り佐竹飯店に来ていた
海美「美奈子先生!来たよ!」
P「お邪魔します」
美奈子「いらっしゃい海美ちゃん、周防くん」
制服の上からエプロンをつけた佐竹さんが出て来た
よく似合っている
海美「今日は何を作ろっかな~」
美奈子「ちょっと難しめのものでも良いかもしれないね」
一旦ここまで
美奈子「時間も時間だし、お菓子とかどうかな?」
海美「お菓子作り!女子力修行の基本だね!」
美奈子「うん、修行かどうかはわからないけどね」
海美「実は私マドレーヌ作ったことあるんだ~」
海美「Pにも食べて貰ったよね?」
P「あれマドレーヌだったのか」
何を作ったのか言わないし何をどうやったのかわからないが炭だったからわからなかったぞ
…全部食べたけど
美奈子「あはは…じゃあ準備しよっか」
海美「うん!」
美奈子「あ、周防くんは適当に寛いでて?」
P「ああ」
エプロンをつけている佐竹さんと海美を眺める
やはりエプロン女子は良い物だ
キッチンへ向かう2人を見送った後、俺はソファに座った
特に深く考えずに着いてきたがよく考えると知り合ったばかりの女子の家にあがってるんだよな…
そう考えるとあまり落ち着かない
P「けど…」
何だろう、懐かしい匂いがする気がする
昔、ずっと昔にもこんな匂いを感じたことがあったような…
なんだったかな
記憶を辿ってみるも思い当たらない
やがて頭痛がしたので考えるのをやめた
P「ん?」
ふとテレビの方を見ると写真が飾ってあった
そこには楽しそうに笑う男性と女性、そして小さな女の子が写っていた
小さい頃の佐竹さんだろうか
眩しい笑顔が可愛らしい
海美「P!出来たよ!」
P「もう出来たのか?」
海美「もうって一時間は経ってるけど」
P「なん…」
記憶を探ってる間にそんなに時間が経っていたとは
海美「さ、さ、食べて食べて!」
海美が皿をテーブルに置いた
P「お?ちゃんとマドレーヌの形してるじゃないか」
海美「でしょ!?ほめてほめて!」
P「味を見てからな」
P「佐竹さんは?」
海美「なんか作ってるみたいだよ?だから先に食べててって」
P「そっか…じゃあいただこうかな」
海美「うん!」
マドレーヌを一つ手に取る
海美「ちゃんとマドレーヌの味がするはずだよ!」
P「楽しみだ」
海美「…二つに一つは」
口に入れる直前に不吉なことを言われたが体の反応は止められず、マドレーヌを口に入れてしまう
P「…かふっ」
しょっぱくてぱさぱさしていて形容しがたい味が
P「…海美」
海美「な、何?」
P「…何入れた?」
海美「砂糖!」
P「嘘つけ!これ絶対塩入れただろ!」
海美「入れてない入れてない!…多分、きっと!」
P「はあ…」
海美「うーん、ちゃんと作ったのになー」
P「余計なアレンジ加えてないだろうな?」
海美「…」
P「…」
海美「…うん!」
P「はいダウト」
P「全く、最初は基本通りに作れば良いのに」
海美「だってPに美味しいって言って欲しかったし…」
P「…」
もう一つマドレーヌを口に入れる
こっちは普通にマドレーヌの味がした
P「…ん、美味い」
海美「ほんと!?」
P「ま、お前が作ったにしてはな」
海美「えへへ~♪」
嬉しそうにはにかむ海美
P「やれやれ」
なんだかんだで俺は海美に甘い気がする
美奈子「わっほ~い!お待たせしました~!」
佐竹さんが皿を持ってキッチンから出て来た
海美「あ、来た来た!」
佐竹さんが胡麻団子や大学芋の乗った皿をテーブルに置いた
P「美味しそうだな」
海美「美奈子先生のお菓子美味しいんだよ!」
P「俺も学食行くからな、知ってるよ」
…しかし
P「…相変わらず大きいな」
大学芋はともかく胡麻団子は明らかに大きい
美奈子「やっぱり食べて貰うなら大きい方が良いなって思うから」
一旦ここまで
√SSLは砂糖山盛り、ちょっぴり塩の予定
美奈子「さあさあ、2人とも遠慮せずに食べてね」
海美「いただきます!」
P「いただきます」
野球ボールサイズの胡麻団子を手に取る
P「あちち…」
美奈子「あ、出来たてだから気をつけて」
P「ああ」
海美「P、胡麻団子ふーふーして?」
P「自分でやれ」
熱い胡麻団子を一口囓る
香ばしい胡麻の香りに柔らかな団子、そして中のさらりとしたこしあんは何というか
P「…美味い」
それ以外の感想は出てこなかった
海美「うーん!やっぱり美奈子先生のお菓子美味しい!」
美奈子「ありがとう海美ちゃん、周防くんはどうですか?」
P「何というか、美味い以外の感想が出て来ない」
美奈子「ふふ、ありがとうございます」
P「普段は学食で佐竹さんが作ったものを食べることもあるけどそれとはまた違った美味さだ」
美奈子「学食はスピード優先だからどうしても省いちゃう工程とかあって」
美奈子「だから少し味が落ちちゃうんですよね…」
P「そうなのか」
美奈子「でもやっぱり美味しいって言って貰えると嬉しいなぁ」
海美「私も早くPから美味しいって言って貰いたい!」
P「ま、海美の方は期待せずに待ってるよ」
海美「むー」
美奈子「2人とも、本当に仲良いね」
美奈子「やっぱり付き合ってるから?」
P「ストップ」
美奈子「?」
P「佐竹さん、今なんて?」
美奈子「え?海美ちゃんと周防くんって付き合ってるんですよね?」
P「いや、海美「まだ」付き合ってないが…」
海美「い、いひゃいいひゃい」
美奈子「あ、そうだったんだすね、私てっきり…」
P「俺と海美はそういう関係じゃないよ、ただの幼なじみだ」
海美「うー…」
海美が隣で不満そうに唸る
一旦ここまで
そういや√Cはいつ頃再開とか考えてる?
>>36
気が向いた時としか言いようが
基本的にモチベ低下すると他に逃げる性格なので
ただエタらせる気は無いのでご安心を
美奈子「海美ちゃん、滅茶苦茶膨れてますけど…」
P「いつものこといつものこと」
海美「むー!」
美奈子「あはは…」
佐竹さんが苦笑いしていた
P「ご馳走でした」
海美「ご馳走さま!」
美奈子「お粗末さまでした」
P「いや、ほんと美味しかったよ」
美奈子「ふふ、喜んでくれて嬉しいです」
海美「美味しいもの食べた後は体動かしたくなるよね!」
P「ん、まあそうだな」
美奈子「」ピクッ
海美「じゃあ帰りは走って帰ろ!」
P「良いぞ、たまには」
美奈子「駄目です」
P「えっ」
美奈子「駄目ですよ食後の運動なんて」
P「さ、佐竹さん?」
美奈子「そんなことをしたらカロリーが逃げちゃいますからね」
P「カロリーが逃げる…?」
なんだろう、全く意味が分からない
美奈子「帰るときは歩いて帰る!そうしたらカロリーもほんの少ししか逃げませんから」
美奈子「それに食べてすぐ走っちゃったらお腹が痛くなっちゃいますからね!」
P「お、おう」
一旦ここまで
P「まあ腹が痛くなるのは困るし歩いて帰るとするか」
美奈子「うんうん!周防くんは痩せすぎな気がするからもうちょっとがっしりしてる方が良いと思う!」
P「痩せすぎか…?」
正直平均的なぐらいだと思うんだが
海美「あ、じゃあ私と一緒に鍛えようよ!そしたら私もPと一緒にいられるし、汗を流すのに一緒にお風呂入ったり出来るし!」
P「ないない」
P「ま、なんにせよそろそろ帰るぞ」
海美「うん!」
P「美味しかったよ佐竹さん、ご馳走さま」
美奈子「またいつでも来てくださいね!」
P「うん、機会があればまた」
佐竹さんに玄関まで見送られ、俺達は帰路に着いた
P「美味かった」
海美「私のマドレーヌは?」
P「…ま、良かったんじゃないか?」
海美「えへへ…」
嬉しそうにはにかむ海美の頭を撫でてやる
海美「私もっともっと上手になるから、期待しててね!」
P「そうだな、期待してるぞ」
海美「うん!」
海美と並んで二人で帰る
P「…」
しかし佐竹さんが言っていたようにもうちょっとがっしりしたほうが良いんだろうか?
良くわからないな
まあ筋肉があって困るわけじゃ無いし今日からトレーニングでもしてみるか
翌日の昼休み、学食から帰ってくると佐竹さんに声をかけられた
美奈子「あ、周防くんちょっと良いですか?」
P「ん?どうしたんだ、佐竹さん」
美奈子「海美ちゃんから聞いてるかも知れないんですけど今日うちで新作メニューのコンベみたいなことをやるんです」
P「へー…初耳だな」
美奈子「それで知り合いに声をかけてて、せっかくなので周防くんもと思いまして」
P「そういう事なら喜んで」
美奈子「ありがとうございます!あ、周防くんのお友達も誘ってくれるとありがたいです!」
P「わかった、人数とかは?」
美奈子「多い方が嬉しいですね、たくさんの人の意見が聞きたいですから」
P「了解」
そして放課後、みんなを連れて佐竹飯店へ向かう
恵美「やー楽しみだね」
エレナ「ミナコのご飯は美味しいからネ!」
琴葉「私も、楽しみ」
P「ああ」
冬馬「新作メニューか…量はともかく味は間違いないだろうな、量はともかく」
翔太「そうだね僕もそう思うよ、量はともかく」
海美「どんな料理だろうね、しほりん」
志保「さあ…ただもし兄さんのお口に合うなら必ずモノにします」
佐竹飯店の扉を開ける
P「お邪魔します」
美奈子「いらっしゃいませー!お待ちしてましたよ周防くんとお友達の皆さん!ささ、こっちの席にどうぞ」
P「どう座ろうかな」
冬馬「適当で良いんじゃねえの」
海美「じゃああまとうはあっち!」
冬馬「隅っこじゃねえか!」
翔太「適当で良いとか言うから…隅っこが嫌ならここでも良いよ」
そういって翔太が地面を指差した
冬馬「殺す」
翔太「じょ、冗談だから!」
海美「私はPの隣!」
恵美「あ、じゃあアタシもPの…」
志保「では私も兄さんの隣に座ります」
恵美「…」
エレナ「メグミ、次があるヨ!」
恵美「うん…」
琴葉「恵美はどうして落ち込んでるの?」
恵美「何でも無い…」
琴葉「???」
全員が席に着くと佐竹さんがお冷やを持ってきた
そして全員に配っていく
美奈子「すぐに出来ますから、待っててくださいね!」
お冷やを配った佐竹さんは厨房へ戻っていった
P「良い匂いだ」
冬馬「この匂いは…味噌か?味噌を使った料理みてえだな」
恵美「わかんの?」
P「なんだかんだで料理するからな、冬馬は」
冬馬「味噌…中華料理で味噌か…何が出てくるか楽しみだぜ」
匂いのせいで腹が減ってくる
楽しみで仕方ない
海美「お腹空いてきたね!」
P「ああ」
俺の隣で小さくお腹が鳴る音がする
そっちを見ると志保が顔を赤くしていた
P「楽しみだな、志保」
志保「そ、そうですね」
ちょっと早口に志保が言う
恥ずかしかったようだ
美奈子「お待たせしました!」
しばらく雑談をしていると佐竹さんが料理を持ってきた
これは…ラーメン?
冬馬「ほう…」
味噌ラーメンにネギ、ワンタンが乗っている、味噌ワンタン麺だろうか
P「味噌ワンタン麺?」
美奈子「はい、だけどワンタンが特殊なんです!」
P「特殊?」
美奈子「はい、実はこのワンタンの中身は北京ダックなんです」
冬馬「やっぱりか」
P「北京ダック?」
冬馬「北京ダックってのは餃子の皮に似た皮で味噌ダレ、ネギ、アヒルの肉を包んで食う料理だ」
P「へー、そんなのがあるのか」
恵美「あー、そう言えばベーミヤンにもあったっけ」
美奈子「その通り!これは北京ダックの皮よりも少し薄くして食べやすくしたものにアヒルの肉を細かく刻んだものを包んでワンタンにしました」
美奈子「味噌ダレはスープに、ネギは具にしてあります」
美奈子「このどんぶりそのものが北京ダックになっているんです」
美奈子「名付けて、北京ダックラーメン!」
P「まんまだ…」
一旦ここまで
翔太「とにかく食べてみようよ」
P「だな」
いただきます
まずはスープを飲む
エレナ「このスープ美味しいヨー」
琴葉「ネギもシャキシャキしていて気持ち良い」
冬馬「麺は見事な縮れ麺だな、スープによく絡んでて美味え」
美味い、本当に美味い
P「このワンタン、滅茶苦茶美味い…」
北京ダックは食べたことが無かったけど、こんなに美味しいとは
美奈子「北京ダックって実は結構お値段するんです」
そういって佐竹さんがメニューを見せる
P「確かに、高いな」
割といいお値段だ
美奈子「だからお手軽に北京ダックが楽しめたらって、そう思って作ったんです!」
佐竹さんがニコッと笑う
その笑顔はとても可愛らしくて
どこかで見たような、そんな感じがして
胸がギュッと締め付けられるような感覚がした
恵美「あー食べた食べた!」
琴葉「私も、ちょっと食べ過ぎちゃったかも」
エレナ「コトハ、珍しくいっぱい食べてたもんネ!」
琴葉「だ、だって美奈子ちゃんの料理美味しかったからつい」
美奈子「ありがとう琴葉ちゃん!」
冬馬「あー、腹一杯だ」
翔太「僕も」
P「量が普通だったのには驚いたけどな」
美奈子「周防くん」
P「ん?」
美奈子「どれが美味しかったですか?」
P「そうだな…餃子とか、どれも美味しかったけど…一番は北京ダックラーメンかな」
美奈子「それは、どうして?」
P「なんて言うか、一番気持ちがこもってる気がしたんだ」
P「食べてくれる人のためにって、そんな気持ちが」
P「だからどれか一つを選ぶなら、俺は北京ダックラーメンを選ぶかな」
佐竹さんは俺の言葉を聞いた後
美奈子「うん、わかりました!ありがとうございます、周防くん」
そう言った
琴葉「ごちそうさまでした、美奈子ちゃん」
美奈子「ううん、こちらこそ!色々聞けて良かったよ!」
琴葉「新メニューがちゃんとしたメニューになったら、また食べに来るから」
美奈子「ふふ、それなら次はすぐに来そうだね!」
琴葉「うん、楽しみにしてる」
恵美「じゃあ帰ろっか」
P「ああ」
俺達は店を出る
美奈子「またのご来店お待ちしてますね!」
冬馬「この後どっか行くか?」
恵美「んー、アタシはパス」
海美「私はPの家!Pの部屋!」
志保「駄目です」
海美「えー…」
翔太「何でも良いけど、今日課題出てるの忘れてない?」
恵美「さーてアタシはカラオケいこ」
エレナ「ワタシも行くヨー」
琴葉「二人とも、ちゃんと課題はやらないと」
騒がしい仲間連中を眺めながら歩いていく
そしてふと佐竹飯店の方を振り返ると
美奈子「…」
まだこっちを見ていた佐竹さんと目が合った
美奈子「…」
佐竹さんは俺に向かって笑顔で小さく手を振った
俺はその笑顔にドキッとしながらも、手を振りかえしたのだった
一旦ここまで
GWが近付いてきたある日のこと
俺はこのみ姉さんに呼び出されていた
P「は?」
このみ「だからゴールデンウィーク、私の代わりにボランティアに出て欲しいのよ」
P「なんで俺が」
このみ「暇そうだから」
P「失礼な、俺はこう見えてもゴールデンウィークは予定がぎっしりなんだ」
このみ「へー」
このみ姉さんがジト目で俺を見る
このみ「ま、予定があるなら仕方ないわね」
P「そうだ、仕方ないんだ」
このみ「ボランティアに出てくれたらいつもの倍くらいのお小遣いをと思ったけど、忙しいなら仕方ないわね」
P「任せてくれこのみ姉さん、きっちりボランティア活動してくるから」
予定なんて無かった
このみ「あんた、ほんと現金よね…」
何とでも言ってくれ
そしてあっという間にゴールデンウィークがやって来た
このみ「それじゃあお願いね」
P「任せてくれ」
このみ姉さんはゴールデンウィーク中は研修があるらしく、泊まりがけで言ってしまった
P「さてと」
となると我が家には志保と桃子しかいないわけだが…ゴールデンウィーク中毎日志保に作って貰うのも申し訳ない
それにこのみ姉さんは食費を置いて行ってくれたので佐竹飯店に行くのも良いかもしれない
P「ゴールデンウィーク、どう楽しむかな」
ゴールデンウィーク初日
この日は約束通りボランティアに出ることにした
P「志保、ほんとに良いのか?」
志保「はい、一人でいても退屈なので」
志保が退屈だからとボランティアに付き合ってくれることになった
せっかくだしこのみ姉さんから金を貰ったら志保に何か買ってあげよう
ボランティアは町の清掃だった
学生は小中高大で別れることになっており、志保とは離れ離れになってしまった
グループ訳を聞いた時の志保はとても落ち込んでいるように見えたが、大丈夫だろうか?
高等部グループの場所として指定された箇所向かい、掃除を開始する
…五分程箒を動かしたところで飽きてきた
一人でやる掃除は退屈だ
せめて誰か一人知り合いでもいればと思わずにはいられない
そんな時だった
「あれ、周防くん?」
誰かに声をかけられた
その声に振り向くと
美奈子「こんにちは!」
佐竹さんが立っていた
一旦ここまで
P「こんにちは、佐竹さんもボランティアに?」
美奈子「はい、町の人達にはいつもお世話になってますから」
美奈子「周防くんは今まで参加してましたっけ?」
P「いや、俺は今回代理で参加は初めてだよ」
美奈子「そうだったんですね」
美奈子「あ、それなら私と一緒にやりませんか?一人でやるより二人でやる方がきっと早く終わりますよ!」
P「じゃあご一緒しようかな」
佐竹さんと一緒に町を清掃する
もうずっと住んでいる町なのに、掃除をしているだけでなんだか新鮮だ
美奈子「袋いっぱいになっちゃいましたね」
P「そうだな」
ゴミは滅多に落ちてはいないが公園なので落ち葉が大量だ
それらをかき集めると簡単にいっぱいになる
美奈子「やっぱり二人でやると早いですね、普段よりも早く終わりそうです」
P「俺も、佐竹さんと話ながらだからかな、退屈しないで済んでるよ」
美奈子「周防くんは面白い人ですね!」
P「そう?」
美奈子「はい!昔近所に住んでいた男の子みたいです!」
P「俺、子供っぽい?」
美奈子「いえいえ、ただなんとなく雰囲気が似てるなと思って」
美奈子「あの子、元気にしてるかなぁ…」
佐竹さんが懐かしそうに目を細める
P「仲良かったんだ?」
美奈子「はい、でもかなり昔のことで私、その子の名前憶えてないんです」
美奈子「もし憶えてたら、叶えたい約束があるのにな…」
P「約束…か」
俺も昔海美と約束したっけ
美奈子「そろそろ戻りましょうか」
時計を見ると丁度昼時、終わるには良い時間だ
P「そうだな、もう昼時だし」
美奈子「あ、お昼はうちでどうですか?」
P「良いね、志保と一緒に行こうかな」
美奈子「お待ちしてますね!」
二人で並んで歩き出そうとしたときだった
佐竹さんの肩に、木の上から毛虫が落ちてきた
毛虫を見た瞬間、佐竹さんがさっと青ざめる
美奈子「む、虫!?」
佐竹さんが悲鳴を上げた
美奈子「す、周防くん!お願い、取ってぇ!」
佐竹さんが涙目で虫を指差した
P「わ、わかった」
俺は棘が刺さらないよう軍手をはめ、毛虫を掴んで草むらに放り投げた
P「よし、取れたよ」
美奈子「あ、ありがとうございます…」
涙目で俺を見上げる佐竹さんに思わずドキッとする
P「虫、苦手なんだ?」
美奈子「得意な人いませんよぉ…」
P「それもそうか」
佐竹さんが落ち着くのを待ってから再び歩き出す
佐竹さんは明らかにさっきよりも辺りを警戒していた
P「大丈夫、また落ちてきたら追い払うから」
美奈子「は、はい、お願いします」
結局最後まで虫が落ちてくることは無かった
美奈子「良かったぁ…」
ホッとしたように胸をなで下ろす佐竹さん
P「お疲れ様」
美奈子「あ、周防くんもお疲れ様です」
P「さっきも言った通り佐竹飯店で昼を食べるよ」
美奈子「わかりました!腕によりをかけて作りますからね」
P「楽しみだ」
志保に連絡を入れるとすぐに終わらせてきたので三人で佐竹飯店へ向かう
志保「兄さんと二人でこうして外食というのは新鮮です」
P「そうだな」
志保とメニューを見ながら雑談する
確かに志保とこうやって二人で何かするのは始めてかも知れない
志保「兄さんは何にしますか?」
P「俺は…そうだな」
メニューを見ているとふと目に止まったそれを指差す
P「…エビチリにしようかな」
何故かはわからないが、妙に心が惹かれる
志保「では私は…そうですね、小籠包定食にします」
P「それじゃあ決まりだな」
卓上のボタンを押す
ボタンには何故かMKボタン連打禁止と書いてあった
美奈子「はい!お待たせしました!」
P「小籠包定食と、エビチリ定食」
美奈子「…エビチリ」
P「?」
美奈子「エビチリは無料で並盛りか大盛りか選べますけど、どうしますか?」
P「あ、それなら大盛りで」
美奈子「はいかしこまりました!」
佐竹さんはエビチリ大盛りに対して何故か嬉しそうにしながら厨房へと入っていった
志保「佐竹先輩、嬉しそうでしたね」
P「志保にもそう見えた?」
志保「はい、もしかしたらエビチリが得意料理なのかもしれませんね」
P「それは楽しみだな」
志保「私も、少しいただいて良いですか?」
P「もちろん」
志保「ありがとうございます、兄さん」
美奈子「わっほーい!小籠包定食とエビチリ定食大盛り!お待たせしました!」
志保の前にコトッと音を立てて小籠包定食が置かれた後
俺の前にドンっと音を立ててエビチリ定食が置かれた
美奈子「大盛りはサービスで特盛りにしておきました!ゆっくりしていってくださいね!」
志保「…」
P「…」
佐竹さんが去った後、俺は静かに顔を伏せる
…油断した
しかしいつまでも目の前の現実から逃げるわけにはいかない
俺は覚悟を決めてエビチリに手をつけた
P「!美味い」
やはり美味い、けどそれだけじゃなくて
P「なんだろう、懐かしいような…」
昔食べた事がある味だ、だけどどこで?
全く思い出せない
P「…」
志保「兄さん?どうかしましたか?」
P「いや、なんでもない」
突然手が止まった俺を心配してか志保が声をかけてくる
…まあ、そのうち思い出すだろう
それよりも今はこっちに集中しないとな…
俺は山盛りのエビチリと格闘を開始するのだった
一旦ここまで
P「…」
最初は美味かった、絶品だった
山も崩れてきた、目に見えて減っている
しかし…
P「飽きてきた…」
ずっと同じ味だからか飽きてきた
最初こそ良いペースで進んだものの今はかなりペースダウンしている
P「…ふう」
思わず箸を置きそうになるがここで置いてしまうと間違いなくそのまま帰ってしまいそうなので箸を置くわけにはいかない
まだ満腹な訳じゃないので何かしら味に変化があればまだ食べられるのだが…
志保「…兄さん」
P「どうした?」
志保「ずっとエビチリだけだとお辛いと思うので、口直しに小籠包は如何でしょうか?」
P「良いのか?」
志保「はい」
P「ありがとう、それじゃあ一つ」
志保「あ、待ってください兄さん」
小籠包に箸を伸ばそうとした所、志保に制止される
志保「小籠包は熱いですから、ちゃんと冷まさないと火傷してしまいます」
P「ふむ」
志保「ですから」
志保が小籠包をレンゲに乗せ、息を吹きかける
志保「ど、どうぞ…あ、あーん」
顔を赤くしながらレンゲを差し出してくる志保
P「し、志保」
志保「さ、冷めすぎると美味しく無くなりますからなるべくは、早めにどうぞ」
P「わ、わかった」
志保が恥ずかしがっているので俺も恥ずかしくなってくる
しかし志保の好意を無碍にするのもあれなので俺はレンゲに食い付いた
志保「ど、どうですか?」
P「…うん、美味い」
熱いスープが美味くてたまらない
P「良い口直しになるな」
志保「それなら良かったです」
そういって志保が微笑む
志保「それで…兄さん、その」
志保「私も、エビチリを食べたくて」
P「ああ、そういうことなら好きに持って行って良いんだぞ?」
そういって志保の方に皿を押し出す
志保「…」
しかし志保は俺を見るだけで手をつけない
P「志保?」
志保「兄さん、私は兄さんにレンゲを差し出しました」
P「差し出されたな」
志保「なのでここは兄さんが私にあーんをするべきでは無いでしょうか」
P「そうかな?」
志保「そうです」
P「そうか」
志保「はい」
P「…」
志保が何を言っているのかわからない
だけどまあ、今日付き合ってくれているしそれくらいは構わないか
P「わかった、ほら志保、あーん」
エビチリを掴み、志保に差し出す
すると志保さん顔が赤みを増した
志保「そ、その、いざやると恥ずかしいですね」
P「なんだそりゃ」
恥ずかしがる志保が可愛らしくなり思わず笑ってしまう
志保「な、なんで笑うんですか!」
P「いや、志保が可愛いなと思ってさ」
志保「か、かわっ…もう、からかわないでください!」
照れ隠しか志保が箸に食い付いた
P「どうだ?」
志保「お、美味しいです」
P「そっか」
志保のおかげで最後まで美味しくエビチリを食べることが出来た
P「うぷっ」
志保「兄さん…大丈夫ですか?」
P「まあ、なんとかな…」
美味しく食べられたても苦しいことに変わりは無かった
一旦ここまで
誰の√書いてたんだっけな
美奈子「デザートにバケツプリンは如何ですか?エビチリのおまけで無料ですよ!」
P「無理です…」
水を入れすぎた水風船と同じ末路を辿るのが目に見えている
結局小さめの杏仁豆腐が運ばれてきたのでそれを食べる
美味いが苦しい
志保はというと
志保「♪」
デザートに御満悦だった
美奈子「お会計○○円になります!」
P「はい」
レジで会計を済ませる
P「美味しかったよ、ご馳走さま」
美奈子「ありがとうございます!お釣りは○○円ですね」
お釣りを渡されるときに手を握られドキッとする
美奈子「また…来てくださいね?」
P「あ、ああ…」
少しひんやりした手の感触にドキドキしながら、また来よう、そう思うのだった
美奈子「またのご来店お待ちしてます!」
周防くんと志保ちゃんが帰るのを見送る
…まさか今日会えるなんて思わなかった
しかもエビチリを頼んでくれて、しかも大盛りだった
憶えててくれたのかな?
もしかしたら偶然かも知れないけど、とても嬉しくなった
…お父さんに聞いたとき、本当に驚いた
周防くんと私と海美ちゃんが昔良く遊んでいたことに
なんで忘れてたんだろう
約束はしっかり憶えていたのに
私達の約束
いつかお腹いっぱい食べさせてあげるって、あの日約束した
でもそれはお店でお腹いっぱいにしたいわけじゃない
私が佐竹美奈子として作った料理で、二人にお腹いっぱいになってほしい
そしてまた、美味しいって言って欲しい
それが私が料理を作る理由だから
まだ手に周防くんの温もりが残っているような気がして、自分の手をキュッと握る
…またあの時みたいに三人で、一緒にいられたら良いな
そんなことを思いながら、私は厨房へ戻った
一旦ここまで
いつものようにGWの出来事募集
感謝感謝
P「…キャンプ?」
冬馬『おう』
GW二日目、俺はのんびりと眠っていたのだが冬馬からの電話で叩き起こされてしまった
P「お前去年は恵美にGWにキャンプ行くなんて自殺行為だとか言ってたじゃねーか」
冬馬『実は山場を見つけてよ』
P「山場?」
冬馬『山の中で海の幸が食えるって評判の山、知ってるか?』
P「ぷっぷか山だろ、知ってるよ」
冬馬『あそこ、キャンプを始めたらしい』
P「へえ?」
冬馬『しかも利用出来るのはこの町に住んでる人間だけらしいから混むこともねえだろ』
P「ま、それはそうかもな」
冬馬『と言うわけでキャンプ行こうぜ』
P「良いぞ、いつからだ?」
冬馬『そりゃ明日からだろ』
P「急だな…わかった、海美とか恵美に声掛けとく」
冬馬『おう、頼んだ』
P「と言うわけでキャンプに行くんだが」
海美「Pが行くから私も行く!一緒のテントで寝る!」
P「寝床は別々だバカタレ」
P「まあ誰か連れてきたい友達がいるなら連れてきても良いぞ」
海美「じゃあ響と貴音さんと美奈子先生に声掛けるね!」
P「ん、了解」
恵美達にも声をかけたところエレナと琴葉は用事があるらしく、来られないそうだ
恵美もあまり乗り気では無かったようだが、面子を伝えると急に行くと言い出した
海美か響と遊びたかったんだろうか?
志保は話をする前から何故かキャンプに行く準備が出来ていたので話は簡単に終わった
そして次の日
一旦ここまで
冬馬「ぷっぷか山に着いたぞ!」
翔太「(周りに誰もいない)」
P「翔太-、変な人がいるよー」
翔太「しっ、見ちゃいけません!」
冬馬「てめえら…」
海美「うーん!空気が気持ちいい!」
恵美「ウチらの町からも近いし最高だね」
響「ここならみんなとピクニックに来るのも悪くないね!」
貴音「響、ばーべきゅうはまだでしょうか」
美奈子「すぐ用意しますね!」
P「よーしじゃあ俺らはテント張るか?」
冬馬「ログハウス借りるってのも手だが」
翔太「ログハウスかー、それも良いね」
P「けど男子三人に対して女子6人だぞ?三つくらい借りることにならないか?」
海美「じゃあじゃあ私Pと寝る!」
P「馬鹿言うな、冬馬も翔太もいるだろ」
海美「うん、だから2人はテント!」
翔太「え、ひどくない?」
P「それなら男三人テントで女子がログハウス使えば良い」
海美「えー、Pと一緒が良い」
志保「海美さん、兄さんを困らせないでください」
海美「うー…」
P「とりあえずテント張ろうぜ」
響「道具借りてきたぞ!」
P「サンキュー響」
恵美「手伝ったげるね」
P「悪いな」
海美「私も!」
やはりみんなで組むと早い、一時間もせずにテントは組み上がった
志保「兄さん、ログハウスのレンタル、完了しました」
P「お、ありがとう志保」
志保「いえ…」
冬馬「よし、それじゃあテントも出来たことだし、お待ちかねの…」
翔太「バーベキューの準備するねー」
貴音「待っておりました!」
美奈子「もうすぐご飯も炊けますからね!」
冬馬「…」
P「ドンマイ、冬馬」
翔太「うーん美味しい!」
冬馬「まだまだあるからな」
恵美「あれ?Pの皿空っぽじゃん、ほら取ったげるから」
P「悪いな」
恵美「にゃはは、気にしない気にしない」
志保「…」
海美「しほりん、まだピーマン苦手?」
志保「…だって、苦いじゃないですか」
海美「お肉と一緒に食べたら大丈夫だよ!」
響「お、この肉良い感じに…」
貴音「…」ヒョイパク
響「ああー!貴音また取ったなぁ!?」
貴音「はて」
響「はてじゃないよ!さっきからなんで自分のところから取るんさー!」
貴音「響」
響「な、何」
貴音「この世は弱肉強食、弱きものは搾取されるのです」
響「ま、また取ったぁ!」
美奈子「大丈夫だよ響ちゃん!まだまだあるからね!」
響「うう…美奈子ぉ…」
P「佐竹さん」
美奈子「周防くん、どうしたんですか?あ、もしかして足りなかったですか?」
P「いや、佐竹さんずっと焼いてて食べてないみたいだからさ」
美奈子「大丈夫です!貴音さんも響ちゃんも美味しそうに食べてくれますから!」
響の皿は綺麗なままなんだが…まあいい
P「はい、これ」
佐竹さんに肉を掴んだ箸を差し出す
美奈子「これは…?」
P「佐竹さんにも食べて貰おうと思ってさ」
美奈子「えっ…」
佐竹さんの顔が少し赤くなった
美奈子「そ、それではいただきます」
佐竹さんが差し出された箸に食い付く
美奈子「う、うん、美味しいですね」
P「うん、それなら良かった」
P「ほら、次」
美奈子「あーん…」
海美「あまとうどいて、私が焼く」
冬馬「は?お前肉の焼き方…」
海美「いいからどいて!」
冬馬「は、はい!」
海美「私もPにあーんしてもらうから!」
山のようにあったバーベキューは八割が貴音の胃の中へ消えた
みんながそれぞれ満足した後、山を探索したり湖を見に行ってキャンプを満喫した
夕飯にカレーを食べた後、テントで虫の声を聞きながら寝袋に入って眠りにつく
そして夜中にふと、目が覚めた
P「…」
体を起こす
周囲に明かりは無く、真っ暗だ
携帯を手に取り手元を照らしながら俺はテントを出た
P「夜の山も良いな」
月と星の明かりだけが辺りを照らす
少し先に人がいた
P「こんばんは、佐竹さん」
美奈子「あ、周防くん」
P「何してるんだ?」
美奈子「星空を見上げてたんです、綺麗だなって」
美奈子「周防くんは?」
P「俺はちょっと目が覚めてさ」
美奈子「ふふ、私と一緒ですね」
俺達の住む町の星空とはまた違う空を見上げる
綺麗な星空だ、これだけでも来た価値がある
P「佐竹さんは今日、楽しかった?」
美奈子「はい!実は私、友達とキャンプって初めてで不安もあったんですけど、吹き飛んじゃいました!」
P「それなら良かった」
楽しんでくれているなら、それが一番だ
美奈子「またこうやってみんなで遊びたいですね…海美ちゃんとも、周防くんとも」
P「そうだな…」
隣で佐竹さんが震える
P「寒い?」
美奈子「あはは…流石にちょっと冷えてきますね」
P「まだ5月だし、風邪を引かないようにしないと」
美奈子「そうですね、じゃあ私はそろそろ戻りますね」
P「ああ、おやすみ、佐竹さん」
美奈子「お休みなさい、周防くん」
ログハウスに戻り、一息つく
…周防くん、やっぱり憶えてないみたい
でもまだ時間はあるし、ゆっくりと思い出して欲しい
そしてまたあの時みたいに三人で、遊びたい
私たちの約束のために
そんなことを考えていると、ふと誰かの気配を感じて顔を上げる
するとログハウスの中に管理人さんがいた
美奈子「え?管理人さん?」
さっきまで誰もいなかったのに…
それにどうしてログハウスに?
疑問ばかりが頭に浮かぶ
管理人さんが急にこちらを振り向き、私は思わずビクッとする
…目が、光ってる…?
管理人の目は妖しく黄色い光を発していた
管理人は私を見ると笑いながら
「みぃつけた♪」
一旦ここまで
その目に見入られた瞬間、全身を寒気が襲い、体が固まって動かなくなった
美奈子「!?」
管理人さんは笑いながら私に近付いてくる
美奈子「ひっ」
美奈子(だ、誰か助けて…!助けて…周防くん…!)
「…うふふ♪そっかぁ」
管理人さんが私に手を伸ばす
私はギュッと目を瞑った
…
美奈子「…?」
しかし何も起きない
私は恐る恐る目を開けると、そこには管理人さんの姿は無く、体も動くようになっていた
美奈子「さっきのは…?」
気のせい…だったのかな?
だけど微かな寒気が残っている
あれは何だったんだろう?
いくら考えても答えは出ない
こんな時は寝てしまおう
私は部屋に戻り、布団に入る
目を閉じるとすぐに眠気がやって来た
翌日
P「釣りだ」
冬馬「良し来た」
翔太「ここ海の魚も釣れるんだよねー」
志保「…聞き間違いでしょうか、今海の魚と聞こえた気が」
響「大丈夫だぞ志保、自分もそう聞こえた」
海美「ね、ね、釣った数で勝負しようよ!負けた方が勝った方の言うこと聞くの!」
P「別に良いけど、俺が勝ったら勝手に部屋に入るの禁止な」
海美「やっぱり争いは悲しみを生むだけだからやらない方が良いよね!」
貴音「わたくしは釣りが余り得意ではありませんので、見学いたします」
響「貴音ーなんで焚き火してんの?」
貴音「はて…」
恵美「釣りかー、アタシあんまりやった事無いんだよね」
志保「私もです」
海美「じゃあじゃあしほりんとめぐみーには私が教えてあげる!」
恵美「お、よろしくー!」
志保「ありがとうございます」
美奈子「ひいぃぃ」
P「あ、そうだった」
釣り餌となる虫に青ざめている佐竹さんに駆け寄る
P「佐竹さん大丈夫か?」
美奈子「うう…ルアーは無いんですか…?」
P「残念ながら」
佐竹さんの釣り竿にささっと釣り餌をつける
そのままキャスティングし、佐竹さんに手渡した
P「これなら大丈夫かな?」
美奈子「あ、ありがとうございます」
恐らく一人では出来ないであろう佐竹さんにつくことにした
P「佐竹さん、釣りは?」
美奈子「昔ちょっとだけ」
P「そっか、じゃあ釣ることに関しては大丈夫かな?」
美奈子「はい、リールもついてますし大丈夫だと思います!」
俺も佐竹さんの隣でキャスティングして、腰を下ろした
獲物がかかるまで、のんびりしよう
P「今日は良い天気だな」
美奈子「そうですね、雲も少なくて…」
風も気持ち良いし、とても快適だ
美奈子「あ、かかりました!」
P「お」
佐竹さんがリールを引き、魚を釣り上げる
俺は亜美を用意し、釣った魚を引き寄せた
P「これは…」
美奈子「鰺ですね」
P「鰺か」
鰺をクーラーボックスに入れて、佐竹さんの竿に餌を付けた
話しながら何匹か魚を釣った
時刻はもうすぐ昼だろうか
冬馬を餌に鮫を釣ろうとしている海美と翔太を眺めていると
美奈子「…」
俺の肩に佐竹さんの頭が乗せられた
P「佐竹さん?」
声をかけてみるが反応は無い
耳を澄ますと微かに寝息が聞こえてきた
P「…」
俺は佐竹さんを起こさないように体勢を整え、ゆっくり釣り竿を置いた
この気持ち良い気候なら眠たくなっても仕方ない
しかし…
眠っている佐竹さんから良い匂いがしてくる
これは結構辛いかもしれない
俺は佐竹さんの匂いを気にしないようにし、時間を潰した
結局佐竹さんが目を覚ましたのは一時間後のことだった
一旦ここまで
冬馬「楽しかったな」
翔太「だねー」
恵美「やー堪能した堪能した」
海美「しほりん、どうだった?」
志保「そうですね…楽しかった、です」
響「なんか散々な目にあってた気がするけど、自分も楽しかったさー!」
貴音「…」
響「貴音?」
貴音「ぷっぷか山…あそこには、何やら面妖な気配を感じました」
P「佐竹さんは、どうだった?」
美奈子「はい!すごく楽しかったですよ!」
美奈子「恵美ちゃんや海美ちゃんとも沢山お話して…」
美奈子「やっぱりみんなでお泊まりは良いですね!」
P「ああ」
朝までバカバカしい話をしているだけですごく満たされるし、やっぱり友達とどこかに泊まるのは楽しいものだ
美奈子「ただ…」
P「ただ?」
美奈子「管理人さん、少し変わってましたよね?」
P「ああ、確かに」
独特な雰囲気を持つ人だった
美奈子「なんというか、少し恐かったです」
P「恐い?」
美奈子「はい、うまくは言えないんですけど…」
確かに独特の雰囲気はあったがどちらかというとふわっとしてる美人さんだった気がするけど…
美奈子「まあ、私の気のせいかもしれません」
P「まあ人にも合う合わないはあるからもしかしたらたまたま合わない人だったのかもね」
美奈子「かも、しれませんね」
P「ま、なんにせよ楽しめたならよかった」
美奈子「はい、次の機会があればまた行きたいですね」
P「俺もだ」
美奈子「今度はカレーを作るのも良いかもしれませんね!」
P「佐竹さんのカレーか、絶対美味いな」
美奈子「ふふ、楽しみにしていてくださいね?」
P「ああ、次のキャンプが楽しみだ」
美奈子「私も、楽しみです」
今回のキャンプは良い思い出になった、佐竹さんとも仲良くなれた気がする
こうして俺達のGWは過ぎていった
美奈子「明日から学園かー」
GW最終日、カレンダーを見ながらそんなことを呟く
今年のGWはあっという間だったなぁ…
キャンプも楽しかったし
海美ちゃんや周防くんとお泊まりして
本当に楽しかった
美奈子「…」
不意にキャンプの時周防くんに食べさせて貰ったり、彼の肩に頭を預けて寝てしまったことを思い出して頬が熱くなる
周防くん…ずっと昔に一緒にいてくれた男の子
海美ちゃんと周防くんと私と三人で、いつも一緒にいて
だからお父さんの修行のために引っ越すときはとても悲しかった
でも周防くんが言ってくれた言葉が、一人になった私を支えてくれた
…ねえ周防くん
私はまだ約束果たしてないよ
いつか約束を果たせる日が来るのかな…
そんなことを考えていた時だった
「美奈子ちゃん」
美奈子「え?」
部屋の中から女の人の声が聞こえた
だけど部屋を見渡してみても誰も居ない
当然だ、今この部屋には私しかいないんだから
美奈子「空耳…?」
「約束…約束…ふふ♪」
空耳じゃない、やっぱり誰かがいる
美奈子「だ、誰かいるんですか!?」
声を上げてみるが、返事は無い
代わりに
美奈子「…歌?」
透き通るような綺麗な歌が聞こえてくる
その歌はすっと私の心に溶け込んでいくみたいな、そんな感覚があった
美奈子「綺麗な声…」
私は気が付くとその歌に聴き入ってしまっていた
そして再び声が聞こえた
「周防くん、約束…叶えたい?」
美奈子「周防くん…はい、叶えられるなら」
「じゃあ一緒に頑張ろうね、美奈子ちゃん」
囁くように紡がれる言葉に
私はただ頷いた
一旦ここまで
P「おはよう」
エレナ「おはようだヨ!」
GWが明けた登校日、休み明け特有の多少の怠さを感じながらも教室に入り、挨拶する
エレナ「GWはごめんネ-」
P「気にしなくて良いよ」
エレナ「お詫びにブラジルでキーホルダー買ってきたからお土産!」
P「サンキューエレナ」
サッカーボールのキーホルダーを貰った
美奈子「おはようございます、周防くん!」
P「うおっ!お、おはよう佐竹さん」
さっきまで誰もいなかった筈なのだがどこからともなく現れた佐竹さんに驚いてしまう
美奈子「GW、楽しかったですね!」
P「ああ、楽しかった」
美奈子「また、行きたいですね!」
P「そうだな…」
美奈子「それはさておき周防くん、一つお願いがあるんです」
P「お願い?」
美奈子「実はまた新メニューを作ることになって、試食してくれる人を探してるんです」
P「俺はそれを探す感じか」
美奈子「いえ、周防くんに試食して欲しくて」
P「俺に?」
美奈子「はい、駄目ですか?」
P「駄目じゃ無いけど…どうして俺に?」
貴音でも大丈夫だと思うけど…
美奈子「周防くんが一番美味しそうに食べてくれたから」
P「え?」
俺を見つめる佐竹さんの瞳には温度が無く、冷やっとするような眼だった
美奈子「私の中で一番信頼出来る周防くんにお願いしたくて」
P「あ、ああ…まあ構わないけど」
美奈子「ありがとうございます!それじゃあ放課後、お待ちしてますね!」
佐竹さんはいつもの笑顔を見せ、自分の席へ戻っていった
…さっきの眼は気のせいか?
「…」
昼休み、今日は学食の手伝いが無いので私は屋上に来ていた
美奈子「ねえぷっぷかさん、周防くん誘えたよ」
「そうだね、美奈子ちゃん頑張った!偉い偉い」
美奈子「誘った後、どうすれば良いのかな」
「美奈子ちゃんのお料理で周防くんを虜にしちゃおう?」
美奈子「出来るかな…」
「大丈夫、美奈子ちゃんなら出来るよ」
美奈子「…うん、頑張るね」
美奈子「周防くんを誘って、一緒にご飯を食べて」
美奈子「そのままずっと一緒が良いな…♪」
「美奈子ちゃんなら周防くんとずっと一緒にいられるよ」
美奈子「ぷっぷかさんがそう言うなら心強いです」
美奈子「じゃあ教室に戻りますね」
「うん、じゃあ私はしばらく学園をうろうろしてるね」
美奈子「はい」
放課後、靴を履き替えて帰ろうとした時だった
美奈子「周防くん」
P「うわぁ!」
急に後ろから声をかけられてビビってしまう
P「さ、佐竹さんか」
美奈子「一緒に行こう?」
一瞬で靴を履き替えた佐竹さんが俺に手を差し伸べる
俺は何かに誘われるように手を取ると、佐竹さんは俺の手を握った
美奈子「じゃあ、いきましょう」
新メニューの試食が理由だった筈なのだが、特に新メニューらしきものは出て来ず、チャーハンや餃子などが振る舞われた
やはりどれも美味い、そして多い
P「ふう…」
何とか食べきり、箸を置く
美奈子「良い食べっぷりでしたね!」
P「どうも」
美奈子「今日の料理、どうでしたか?」
P「ああ、美味しかったよ、流石は佐竹さん」
美奈子「ありがとうございます」
P「ところでこれ、新メニューは…」
美奈子「また試食、お願いしても良いですか?」
佐竹さんが笑顔で身を乗り出してくる
P「あ、ああ」
俺はその笑顔に気圧され、頷く事しか出来なかった
その後も佐竹さんに何度か誘われてお邪魔する
そのたびに佐竹さんは大量の料理を振る舞ってくれた
最近は誘われることに何の疑問も抱いていない
そんなある日のことだった
学園の下駄箱に一通の手紙が入っていた
差出人の名前は無く、ただ俺に宛てただけのシンプルなものだ
P「なんだ…?」
開封し、中身を確認すると
今日、オカ研へ来るべし-真壁瑞希-
と書かれていた
一旦ここまで
P「オカ研?」
まさかオカルト研究部のことか?噂に聞いたことはあるがまさか実在していたとは
P「真壁…瑞希」
この名前には見覚えがある
うちのクラスにいる女生徒だ
一度も話したことない筈なんだが…一体真壁さんが俺に何の用なのだろう
まあ、行ってみれば分かるか
放課後
美奈子「周防くん」
最近は気配を消して俺の後ろに立つ佐竹さんにも慣れてきたので驚くことも無くなった
P「どうした?」
美奈子「今日もね」
P「あーごめん、今日は用事があるんだ」
美奈子「…じゃあ私、待ってるね」
P「どのくらい時間かかるかわからないし大丈夫だよ、佐竹さんは先に帰ってて」
美奈子「…わかった、でも」
P「?」
美奈子「あんまり遅いと、迎えに来ちゃうかも」
佐竹さんと別れた俺は手紙に同封されていた地図を元にオカ研を探していた
P「この辺りの筈なんだが…」
地図に書かれた教室の前に辿り着くも特に部活動であることを示すものは何も無い
しかし地図は確かにこの教室を示している
P「…ここで良いのか?」
何にせよ確認しなくては始まらない俺は扉に手をかけ、スライドした
P「…」
扉を開けると暗幕に包まれた部屋が視界に入る
…ビンゴか
辺りを見渡すと如何にもな雰囲気の小物が沢山ある
どうやらここがオカ研で間違いないようだ
P「すいません、真壁さんいますか?」
声をかけてみるが返事はない
P「いないのかな?」
鍵をかけていないのは不用心だな
誰も居ないなら帰ろう、俺はそう考え踵を返そうとした時だった
「…お待ちしてました、周防さん」
女の子の声が聞こえてきた
P「真壁さん?」
瑞希「はい、私が真壁瑞希です…すみません、少し着替えをしていました」
P「あ、着替えてたのか」
迂闊に奥に行かなくてよかった
P「早速本題なんだけど」
瑞希「呼び出された件ですね」
P「ああ、なんでオカ研に呼ばれたのか分からないんだ」
瑞希「それを説明するには役者が足りません、もう少し待っていてくだい…すぐ来ます」
真壁さんの言葉のすぐ後に
「ご、ごめんなさい、お、遅くなっちゃって…」
P「君は…」
見覚えのある人物がオカ研へやってきた
一旦ここまで
P「可憐?」
可憐「あっ、Pさん、き、来てくれたんですね」
オカ研に来たのはかつての同僚で今のクラスメイト、篠宮可憐だった
俺がプロダクションを辞めて以来疎遠になっていたのだが…
P「どうして可憐が?」
可憐「そ、その…実は…」
瑞希「篠宮さんには霊感があります」
P「霊感って…幽霊とかが見えるっていう?」
可憐「は、はい、わ、私は見えるわけでは無いんですけど…に、匂いが…」
P「匂い?」
可憐「は、はい、幽霊の匂いがわ、わかるんです」
P「それは普通に凄いけど…一体俺と何の関係が?」
可憐「それは…その…」
瑞希「篠宮さんは周防さんから霊の匂いを感じたそうです」
P「えっ、俺なんかに取り憑かれてるの?」
可憐「い、いえ、匂いの元はPさんでは無いです」
瑞希「匂いの元となる霊は巧みに匂いを消しているようで、篠宮さんにも察知できないそうです………強敵」
P「ただ、俺からは霊の匂いがすると?」
可憐「はい…それも非常に強力な悪霊の匂いです」
P「悪霊か…」
なんかイマイチピンとこない
あまり現実味が無いからかな
ただ真壁さんや可憐が本気なのは伝わってくる
P「えーっと、結局俺はどうすれば良いんだ?」
瑞希「そうでした、では、本題に入ります」
瑞希「最近変わったことはありませんでしたか?」
P「変わったことか…」
記憶を辿ってみるが思い当たらないな
P「いや、特には」
瑞希「…そうですか」
可憐「な、何かあったら知らせてください」
可憐「その…と、とても恐い匂いがするので、心配です」
P「わかった、ちゃんと伝えるよ」
可憐「お願いします…」
瑞希「周防さん」
P「?」
瑞希「私の方でも色々と調査しますので」
P「ありがとう真壁さん」
瑞希「いえ…では周防さん、お気をつけて」
オカ研を出てスマホを確認する
そんなに時間は経っていないものの佐竹さんからの着信が37件あった
どうやら心配させてしまったらしい
P「早く行かないとな」
俺は靴を履き替えて佐竹飯店へ向かう
最近聞こえるあの歌…結構スキなんだよな
佐竹さをの料理と最近佐竹さんの家で聞こえる綺麗な歌に期待しながら、俺は歩いて行った
一旦ここまで
P「美味いなぁ」
美奈子「ふふ、嬉しいな♪」
やはり佐竹さんの作る料理は美味い
前も美味かったが今は魂を持って行かれそうなだ
…んぼ、わさんぼ…
P「今日も歌が聞こえるなぁ」
歌詞は良くわからないが、歌声自体はすっと耳に入ってきて心地良い
美奈子「歌…?」
P「ご馳走さま」
美奈子「お粗末さまでした」
P「今日も美味しい料理をありがとう、佐竹さん」
美奈子「どういたしまして、P…周防くん!今日もいっぱい食べましたね!」
P「ああ、佐竹さんのご飯は美味しすぎてついつい食べ過ぎちゃうな」
美奈子「そう言って貰えるとすっごく嬉しいです!えへへ…♪」
美奈子「周防くんも少しお肉がついてきたんじゃないですか?」
P「え?そうかな」
美奈子「はい!少しふっくらしてきた感じがします!」
P「ふむ…それはまずいな」
美奈子「…え?」
P「それなら少し節制しながら海美とトレーニングを…」
美奈子「駄目です!」
P「さ、佐竹さん!?」
佐竹さんが即座に距離を詰め、俺の肩を掴んだ
美奈子「無駄にカロリーを逃がす必要無いじゃないですか」
美奈子「周防くんは太っても格好いいですから、節制もトレーニングも必要ありません!」
P「だ、だけど太ると色々と不都合が」
美奈子「駄目ったら駄目です!カロリーを逃がすなんて到底許容出来ません!」
P「ええ…」
美奈子「あ、でも…逃げた分だけ…ううん、逃げた分以上にカロリーを摂れば、痩せませんよね?」
P「トレーニングの意味が全くないんだけど」
ふと佐竹さんの目を見ると
美奈子「…」
…瞳の色が黄色くなってる?
佐竹さんの瞳の色は黄色じゃなかった筈だ
…一体何故?
美奈子「周防くん?」
P「い、いや、何でも無い」
佐竹さんに声をかけられて思考が現実に引き戻される
瞳の色に気付いた途端、沢山の違和感を覚え始める
なんで俺はずっと佐竹さんの料理を食べていたのか
なんでずっと聞こえていた歌が聞こえなくなったのか
なんで佐竹さんの瞳が妖しく光っていたのか
…真壁さんに相談しないとな
P「…わかった、佐竹さんの言う通りにするよ」
美奈子「良かった、カロリーが逃がすなんてとんでもないことですから」
美奈子「これからもいっぱい作りますから、食べてくださいね!」
P「ああ」
美奈子「…ふう」
周防くんが帰った
今日も私の料理を美味しいって言いながら沢山食べてくれた
良い食べっぷりで本当に惚れ惚れする
…けど
美奈子「…太りたくないのかなぁ?」
もう少しふっくらしてる方がもっと格好いいのに
美奈子「ねえぷっぷかさん、周防くんはどう思ってるんだろうね?」
「周防くんはきっと口では嫌だって言いながらも美奈子ちゃんのためにふっくらしてくれるよ♪むしろしてくれないと私が困っちゃう」
美奈子「?ぷっぷかさんが困るの?」
「うん♪生気の無い人を連れて逝っても面白くないでしょ?」
美奈子「確かに…どうせ一緒にいるなら元気のある人の方が良いですよね」
「うんうん、だから美奈子ちゃん、頑張って周防くんをふっくらさせてね?」
美奈子「もちろんです!」
「楽しみだね!ふふ、ふふふふ♪」
翌日
P「さて、真壁さんは…」
早めに学園に行き、真壁を探そうと鞄を置くと
瑞希「お呼びでしょうか」
P「うおっ!?」
いきなり後ろから真壁さんに声をかけられた
P「ま、真壁さん、いつからそこに」
瑞希「周防さんが教室に入ってきたときには既に席にいましたが………ちょっとショックだぞ」
P「ご、ごめん影が薄いとかそういうのじゃなくてあまり話したことないから気付かなかったというか」
瑞希「なるほど、追い打ちをかけるのが趣味でしたか」
P「ほんとごめんなさい」
瑞希「それで、用件は…と聞きたかったのですが、その前に」
P「?」
瑞希「せい」
P「ごはぁ!?」
突然真壁さんの拳が俺の鳩尾に突き刺さった
一切の手加減無し、腰の入った見事な右ストレートだ
瑞希「…やはり…篠宮さん」
可憐「は、はい!」
いつの間にか教室に入ってきていた可憐が何やら網のようなものを俺の頭の上で振り回しているが
P「っ…!っ…!」
真壁さんのパンチによる深刻なダメージでそれどころではなかった
一旦ここまで
ぷっぷかさんはあまり引っ張らずにちゃちゃっとイチャラブに持っていきます
可憐「つ、捕まえました!」
瑞希「ありがとうございます、篠宮さん」
P「一体何だってんだ…うぷっ」
瑞希「失礼しました、周防さんから漏れ出ていた気配に気付いて咄嗟に動いてしまいました」
P「漏れ出ていた気配?」
瑞希「はい、昨日のお話しを覚えていますか?」
P「悪霊の話?」
瑞希「はい、周防さんからとても禍々しい気配を感じました」
瑞希「なので気配の濃いところに除霊パンチをしたところ、こんなものが」
そう言って真壁さんが俺に瓶に入った何かを見せる
P「これは?」
中には何やら和菓子のような何かが入っており、その周りには黒い靄が掛かっていた
瑞希「これは悪霊の依り代だと思います」
P「これが俺の中から?」
瑞希「正確には胃の中からです、随分と固まっていますので連れて逝かれる寸前だったみたいです……間一髪」
P「それって…」
瑞希「もう少し大きくなっていたら周防さんは死んでました」
P「…」
それは聞いた瞬間、冷や汗が流れた
P「けど俺ここ二年は和菓子なんか食べてないのに」
瑞希「この和菓子は依り代、悪霊が周防さんの食事に混ぜていた可能性もあります」
瑞希「心当たりはありませんか?」
P「心当たり…うーん…」
真壁さんに言われて記憶をひっくり返すが…
P「…いや、心当たりはないな」
瑞希「そうですか…」
P「っとそうだ、真壁さんに聞きたいことがあったんだ」
瑞希「はい、なんでしょうか」
P「人の瞳の色がいきなり変わることって有り得るんだろうか?」
瑞希「…光の反射ではなく、ですか?」
P「ああ、間違いなく色が変わってた」
瑞希「詳しく聞かせてください」
一旦ここまで
P「って事があったんだけど」
俺は真壁さんに昨日の出来事や時折佐竹さんの目が温度を失ったかのように冷たいものになることを話した
瑞希「…歌…黄色くなった瞳…これはもしや」
P「何か知ってるのか?」
瑞希「確証はありません、ですがもしかしたらというものはあります」
P「教えて欲しい」
瑞希「でしたら今日の放課後、再びオカ研の部室に来てください、それまでに色々と纏めておきます」
P「わかった、よろしく頼む」
瑞希「はい…篠宮さんも、お願いします」
可憐「は、はい」
教室に人が増え始めたので一旦話を打ち切る
真壁さんは自分の席に、可憐も自分のクラスに戻っていった
俺も自分の席に戻ろう
自分の席に戻りため息を吐く
俺の中にあんな和菓子のような何かがあったことも意味不明だが、佐竹さんの瞳がおかしくなっていたことも気になる
もしかしたら佐竹さんも何かに取り憑かれてるのだろうか
もしそうなら俺は…佐竹さんを助けたい
純粋に佐竹さんの笑顔が好きだ
佐竹さんといると心が暖かくなって、なんだか懐かしい気持ちになる
話すようになったのはつい最近なのに、ずっと昔から知っていたような、そんな気持ちに
とにかく、佐竹さんといるとなんというか、すごく落ち着く
俺は佐竹さんに笑っていて欲しい
だから
美奈子「周防くん」
頭上から聞こえてきた佐竹さんの声に顔を上げる
美奈子「今日も、来てくれますよね」
今みたいな温度を失った目ではなく
あの花が咲いたのような笑顔をもう一度見るために
俺はやれることをやる
放課後
佐竹さんには今日も少し用事があると伝え、先に帰ってもらった
真壁さんはどうやら部室に篭もりっぱなしのようで、朝のHR以降教室にはいなかった
俺はオカ研の部室の前に立ち、扉をノックする
瑞希「どうぞ」
P「失礼します」
部室の扉を開けて中に入ると
志保「兄さん?」
P「…志保?」
予想していなかった人物と出会した
P「志保、どうしてここに?」
志保「私は…その、と、友達の付き添いです、兄さんは?」
P「俺は真壁さんに用事があって」
「志保ちゃん、知ってる人?」
志保「ええ、世界一頼りになる私の自慢の従兄よ」
志保から多大な過大評価を受けて少し照れ臭くなる
可奈「初めまして志保ちゃんの従兄さん!私、志保ちゃんと同じクラスの矢吹可奈って言います!」
P「矢吹さんね、よろしく」
可奈「はい!志保ちゃんの~♪いとこい~とこいっぱいだ~♪」
元気な子だな
志保「可奈、歌うのは良いけど用件を忘れないで」
可奈「あ、そうだった…部長さん!お話を聞いてくれますか!?」
瑞希「はい」
可奈「ありがとうございます!…実は、近所に住んでいる私にとってお姉さんのような人が最近おかしくて…」
瑞希「おかしい…とは?」
可奈「前は凄く明るかったんですけど、最近は何だか無表情というか感情が見えなくて」
可奈「目も何だかただ見てるだけみたいな感じで感情が無くなっちゃったみたいな目なんです」
可奈「それだけだったら何か辛いことがあったのか?ってなるんですけど…一度だけ、目が黄色く光ってるのを見ちゃって」
P「!?」
一旦ここまで
瑞希「…」
可奈「私、その人が大好きなんです!だからなんとかしたいんです!」
瑞希「なるほど…」
P「志保が矢吹さんを連れてきたのか?」
志保「はい、目が光を放つなんて普通ではありません、きっとオカルトの類いだと思うのですが、どうでしょうか?」
真壁さんと矢吹さんの話を聞きながら志保に話しかける
P「そうだな…俺も似たようなことで相談に来てるから」
志保「兄さんも…ですか?」
P「ああ」
志保「オカルト現象が兄さんを悩ませて…?どんな現象か教えてください、元を絶ちに行きますから」
P「ああいや、オカルトかどうかはまだわからないからとりあえず落ち着こうか」
全身から殺気を滲ませる志保を宥める
瑞希「周防さん」
P「ん?」
矢吹さんと話していた真壁さんに急に声をかけられた
瑞希「矢吹さんの件と周防さんの件、どうやら同じ現象のようです」
P「つまり…?」
瑞希「同じ悪霊の仕業です」
P「悪霊か…」
瑞希「ただ…」
P「ただ?」
瑞希「この悪霊は極めて厄介な相手です……難敵だぞ」
瑞希「まずはこれを見てください」
P「これは?」
真壁さんから資料が渡される
瑞希「今回の原因の悪霊…ぷっぷかさんの資料です」
P「ぷっぷかさん?実在したのか」
ぷっぷかさん…ここ数年で台頭してきた学園の噂の一つだ
基本はこっくりさんと似たようなものだ
瑞希「はい、学園内に潜んでいたぷっぷかさんは回収した筈なのですが…」
P「ちょっと待ってくれ、ぷっぷかさんは複数いるのか?」
瑞希「はい、全部で7体存在します、そして7体のぷっぷかさんを集めると願いが叶うと言われています」
瑞希「もっとも、揃えた人はいないので真実は判りません」
P「なんだそりゃ」
瑞希「とにかく、相手がぷっぷかさんとなると相応の準備が必要になります」
瑞希「なので準備が整うまで、できる限り憑依者…と思われる佐竹さんとの接触は避けてください」
P「わかった」
瑞希「矢吹さんも」
可奈「は、はい!」
瑞希「今の佐竹さんは危険である可能性がありますので、あまり近付かないようにしてください……大事なことだぞ」
可奈「はい…」
矢吹さんの大事な人も佐竹さんだったのか
瑞希「私はしばらく準備をします、準備が済み次第連絡をしますので」
P「わかった、何か手伝えることはある?」
瑞希「そうですね…当日、何かをお願いするかもしれません」
P「わかった」
瑞希「では、必ず佐竹さんを救いましょう……ファイトだ瑞希」
真壁さんが奥に引っ込んだので部室を後にする
可奈「美奈子さん、大丈夫かな…?」
矢吹さんが不安そうに呟く
姉のような人と言っていたし俺にとっての歌織さんみたいな存在なのだろう
そんな人が悪霊に取り憑かれているかもしれないとなると不安になるのも仕方ない
P「矢吹さん」
可奈「はい…」
P「大丈夫だ、きっといつもの佐竹さんに戻ってくれるさ」
P「矢吹さんがそう信じれば必ず叶う、だから信じよう」
可奈「お従兄さん…はい!」
可奈「私、美奈子さんを信じます!そしてまた、美奈子さんのご飯をお腹いっぱい食べたいです!一緒に歌ったりしたいです!」
P「うん、その意気だ」
可奈「なんか~元気出たかな矢吹可奈~♪えへっ!」
矢吹さんが微妙に外れた音程で歌い出す
割と微笑ましい
P「さて、それじゃあ帰るとするか」
志保「はい、兄さん」
接触しないほうが良いらしいししばらくは行けないな
ならやることは帰ることぐらいだ
可奈「志保ちゃん!途中まで一緒に帰ろ!」
志保「別に良いけど抱き着かないで、私に抱き着いて良いのは兄さんだけだから」
P「いや抱き着かないから」
三人で話をしながら、俺達は帰宅した
美奈子「はあ…」
周防くんから今日は来られないというメールが来た
美奈子「いっぱい食べて欲しいのになぁ」
ぷっぷかさん「大丈夫だよ美奈子ちゃん!今日は運が悪かっただけ!」
ぷっぷかさん「明日は周防くんも来てくれるよ!」
美奈子「だと良いんですけど…」
一日会えないだけでこんなに胸が苦しいなんて
早く彼が私の料理で笑顔になってくれるところがみたい
ずっとずっと見たい、見ていたい
美奈子「ねえぷっぷかさん」
ぷっぷかさん「なぁに?」
美奈子「周防くんは私のこと、どう思ってるんでしょう」
ぷっぷかさん「んー、依り代から感じたものだけど周防くんは美奈子ちゃんのこと、好きだよ」
美奈子「…」
周防くんが私の事が好き…そう聞いてわずかに顔が赤くなる
でもまだ異性として好きだと本人から聞いたわけじゃ無い
友達として好きな可能性の方が高いのだから
それはそれで嬉しいけれど
いつからこんなに夢中になったんだろう
思い出したから?
それとも別の理由かな?
まあ理由なんて何でも良いよね
大事なのは今抱いている気持ちなんだから
美奈子「会いたいなぁ…」
思わず口から溢れた素直な気持ち
明日は会えるかな?
会えたら良いな
ぷっぷかさん「ふふ♪もうすぐもうすぐ♪」
一旦ここまで
翌日
美奈子「周防くん」
P「佐竹さん…」
美奈子「今日は、来てくれますよね」
P「その事なんだけどごめん、しばらくは忙しくて行けそうに無いんだ」
美奈子「…え?」
P「本当にごめん、落ち着いたらまた行くから」
そう言って俺は逃げるように佐竹さんから離れる
美奈子「…」
物陰に隠れて佐竹さんの様子を見ると
とても寂しそうな顔をしていた
美奈子「はあ…」
屋上の手すりにもたれ掛かってため息を吐く
美奈子「周防くん…しばらく来られないなんて」
ぷっぷかさん「…」
美奈子「ぷっぷかさん、私、何か嫌われるようなことしちゃったのかな」
ぷっぷかさん「…」
美奈子「ぷっぷかさん?」
ぷっぷかさん「あ、ごめん美奈子ちゃん、何かな?」
美奈子「私、周防くんに嫌われちゃったんでしょうか」
ぷっぷかさん「んー…そんなことないと思うけど…」
美奈子「嫌われてないなら、もっと行動に移した方が良いのかな」
でも行動に移すってどうすれば良いんだろう?
さ、さり気なく手を握ってみるとか?
ぷっぷかさん「んー…気付かれちゃったのかな?」
美奈子「?何がですか?」
ぷっぷかさん「ううんこっちの話!この際美奈子ちゃんだけでも連れて逝こうかな…?」
美奈子「?」
ぷっぷかさんは何か悩んでるみたいだけど、私は私で考えることが沢山ある
どうすれば周防くんともっと親密になれるかな?
それから数日が過ぎた
佐竹さんは昼食に誘ってくるようになったのだが、俺はこれも断った
正直とても魅力的でこんな状況でもなければ一も二も無く飛び付いていただろう
しかし今は我慢しなくてはならない
佐竹さんを助けるためにも、今は耐えなくては
P「はあ…」
瑞希「お疲れのようですね」
P「疲れてるというか…誘いを毎回断るのは心苦しい」
瑞希「それは周防さんが佐竹さんのことを好きだからでしょうか……ラブですか?」
P「ぶっ」
P「な、なんで知って…じゃなくて、なんでそう思うんだ?」
瑞希「目…でしょうか」
P「目?」
瑞希「はい、私は人並みに人間観察が出来ますから周防さんが佐竹さんに向ける目と他の人に向ける目の種類が違うのはわかります」
P「そんなに分かりやすいかな…俺」
瑞希「そうですね、気付く人は気付くかもしれません」
P「ぬう…因みに、佐竹さんは俺にどんな目を向けてるかわかったりする?」
瑞希「はい、基本的には憑かれた人特有の温度の無い目を向けていますが、時折熱を帯びた目をしています」
P「それって…」
瑞希「何かしらの気があるみたいですね……爆発しろ」
P「あ、ところで気になってたんだけど」
瑞希「はい」
P「オカ研って普段はどんな活動してるんだ?」
瑞希「普段ですか…それは学園の施設をハッキングしたり、ネットに風評被害をばらまいたりしています」
P「おい」
瑞希「冗談です、基本的には水晶を眺めたり、占いをしたりしています」
P「占い?」
瑞希「はい、金運を占ったり、仕事運を占ったり、株式市場を占ったり…後は恋占いもしています」
瑞希「因みに人気順は株式市場>金運>仕事運>恋占いです」
P「大丈夫かうちの学園」
今更なんだけど展開早すぎて違和感あったりしないだろうか
P「しかし恋占いか…」
瑞希「やってみますか?」
P「いや…けど男が恋占いっていうのもな…」
瑞希「男子生徒が一人で恋占いをしにくるのはそんなに珍しいことではありません」
P「そうなのか?」
瑞希「はい」
P「そうか…じゃあお願いしようかな」
瑞希「わかりました、では相手の名前をどうぞ」
P「…佐竹美奈子で」
瑞希「佐竹美奈子さんと周防Pさんの相性を占います」
真壁さんが水晶玉に手を翳すと、水晶の中に靄が掛かり渦を巻き始めた
P「すご…どうなってるんだこれ?」
瑞希「…なるほど」
P「何か分かったのか?」
瑞希「周防さんと佐竹さんの相性はとても良いようです、お互いがお互いを立てて尊敬し合う、理想の関係が築けると思います…しかし」
P「しかし?」
瑞希「二人の間には大きな山があります、佐竹さんはその山を気にしないようですが…周防さんには苦難が待ち受けているようです」
P「山…山かぁ…」
一体何の山だろう
瑞希「とにかく、相性は問題ありません、むしろとても良いと感じました」
P「それなら良かった」
瑞希「ただし、これらは佐竹さんからぷっぷかさんを引き剥がさなければ消えてしまいます」
P「ああ、わかってる、必ず助けてみせる」
瑞希「はい、頑張りましょう」
P「なあ、真壁さん」
瑞希「はい」
P「ありがとうな」
瑞希「お礼は、佐竹さんを助けてから聞きたいです」
P「そうだな…よし、頑張るとするか!」
瑞希「今日の夜には準備が整います、週が明け次第作戦を実行しましょう」
P「ああ」
週明けに備えて、気力を充実させないとな
美奈子「週末だし周防くんを誘ってみようかな…?でもまた用事とかがあったら…」
週末に差し掛かった放課後、私は周防くんを誘おうかどうか悩んでいた
ぷっぷかさん「潮時だね」
美奈子「?ぷっぷかさん、何か言いましたか?」
ぷっぷかさん「ううん、何も、それより美奈子ちゃん、ちょっと良い?」
美奈子「はい、何ですか?」
手招きするぷっぷかさんの元に行くと
ぷっぷかさん「~~♪」
ぷっぷかさんが急に歌い出した
美奈子「わあ、やっぱりぷっぷかさんの歌は歌声が綺麗…」
耳にすっと入ってきて、心に染み込むような…
美奈子「あ…れ…?」
なんだか…瞼が…重…く…
私の意識はここで途絶えた
ぷっぷかさん「ふふ♪美奈子ちゃん、そろそろ逝こっか♪」
美奈子「…はい」
夜、冬馬とネトゲで遊んでいると電話が鳴った
P「悪い、電話だ」
着信画面を見ると…
P「真壁さん?」
何か進展でもあったのだろうか
P「もしもし?」
瑞希『もしもし、周防さんですか?』
P「あ、ああ」
何やら焦っているのか、少し早口だ
瑞希『すぐに連絡がついて良かったです…やられました、緊急事態です』
P「何かあったのか?」
瑞希『ぷっぷかさんが動きました』
P「え?」
瑞希『ぷっぷかさんは佐竹さんを連れて逝くつもりです、篠宮さんの貼っていた結界に2人の反応がありましたから』
P「ば、場所は!?」
瑞希『765学園高等部3-B…』
瑞希『私たちの教室です』
P「はあ…はあ…佐竹さんは!?」
電話を受けて俺は家を飛びだすと、走って学園へと向かった
校門に到着すると真壁さんと可憐が既に到着していた
瑞希「まだ大丈夫です、教室の結界が足止めをしています」
可憐「で、でも、な、長くは保ちません…」
P「急ごう、手遅れになる前に」
瑞希「はい」
「待ってください!」
校内に足を進めようとしたとき、後ろから声をかけられた
P「…矢吹さん」
可奈「私も、連れて行ってください!」
P「危険だ、矢吹さんは家に…」
可奈「私だって美奈子さんを助けたいんです!」
P「…」
瑞希「わかりました、矢吹さん」
可奈「部長さん!ありがとうございます!」
P「良いのか、真壁さん?」
瑞希「大丈夫です、私がしっかり護りますから」
P「…真壁さんにばかり負担をかけるわけにはいかない、矢吹さんには俺がつくよ」
瑞希「ありがとうございます、では、お願いします」
P「矢吹さん」
可奈「はい!」
P「俺から離れないようにな」
可奈「はい!」
矢吹さんを連れて学内に侵入する
夜の学園は不気味で、ぷっぷかさん以外の何かも潜んでいそうな異様な雰囲気があった
しかし俺は冷静でいられた、何故なら
可奈「よよよ夜のが、がが学園ってぶっ不気味です!」
滅茶苦茶ビビっている子が傍に居たからだ
ガタッ
どこかで物音がすると
可奈「ひいっ!」
思いっきり腕が締め付けられる
この子、案外力が強い
あまり時間をかけると矢吹さんに腕をへし折られそうなので早足に教室に向かう
3-Bのある階層に辿り着くのと
可憐「け、結界が破られました!」
結界が破られたのは同時だった
P「急ごう!」
教室に向かい、扉を開ける
美奈子「…周防くん」
そこには俺の机を撫でる佐竹さんがいた
P「佐竹さん」
美奈子「「こんばんは、周防くん」」
佐竹さんの声が、不意に誰かの声と重なる
P「…あんたが」
俺にも、見える
佐竹さんの首に手を回し、肩から顔を覗かせて妖しく微笑む女の人が
ぷっぷかさん「初めまして周防くん、私ぷっぷかさん、今美奈子ちゃんの中にいるの」
P「佐竹さんの中に…?」
瑞希「同化して肉体を奪うつもりですね」
ぷっぷかさん「うん♪本当は周防くんの身体が欲しかったんだけど、依り代に気付いちゃったんだよね?」
P「依り代…あの和菓子のことか」
ぷっぷかさん「繋がりが断たれちゃったらもう連れて逝けないから周防くんは諦めて、美奈子ちゃんを連れて逝こうかなって♪」
P「佐竹さんを解放しろ!」
ぷっぷかさん「駄目だよ、美奈子ちゃんは私との約束を守れなかったんだから、お仕置きしないと」
P「約束…?」
ぷっぷかさん「うん♪美奈子ちゃんはね、絶対周防くんを手に入れるって約束したのに果たせなかったから」
ぷっぷかさん「だからお仕置き♪」
P「そんなお仕置きは無効だ!」
ぷっぷかさん「無効じゃないよ、だって美奈子ちゃんは周防くんを手に入れてないから」
P「いいや、無効だ、何故なら俺の心はもう、とっくに佐竹さんに奪われてるんだからな」
ぷっぷかさん「そっか、周防くんは美奈子ちゃんが好きなんだね」
P「そうだ」
ぷっぷかさん「でも残念、私は美奈子ちゃんを連れて逝くから、諦めて♪」
P「佐竹さんは約束を守ったはずだ!」
ぷっぷかさん「うん、周防くんが美奈子ちゃんのことが好きなら約束は守れてるね」
ぷっぷかさん「でも私は最初から約束を守る気が無かったから」
P「なっ…!お前…!」
ぷっぷかさん「ふふ、ふふふ♪」
ぷっぷかさんが頭を引っ込め、姿が見えなくなった
変わりに佐竹さんが顔を上げる
その瞳は黄色く光っていた
美奈子「「せっかくだしこの場に居るみんな、連れて逝っちゃお♪」」
佐竹さんが手を振ると
瑞希「伏せてください!」
椅子が飛んできた
P「あっぶねえ!?」
美奈子「「ほら、避けないと怪我しちゃうよ?」」
今度は二つ、椅子が飛んでくる
P「くっ!?」
可憐「か、可奈ちゃんと瑞希さんはこっちに!」
可憐が2人を避難させる
美奈子「「今度は机」」
P「ひいっ!?」
机が鼻先を掠って吹き飛ぶ
流石に今のは怖かった
美奈子「「ふふ、あはは♪どのくらい逃げられるかな?」」
P「っの野郎…!」
佐竹さんの身体で好き勝手やりやがって…!
しかしこの状況、一体どうすれば…
このままではじり貧になってやられてしまう
そんな時、視界の端から影が飛びだし、佐竹さんに抱き着いた
可奈「美奈子さん!もうやめてよ!」
美奈子「「?」」
可奈「元の優しい美奈子さんに戻ってよぉ…また、一緒にご飯食べようよ…」
一瞬、ポルターガイストが止まった
P「今だ!」
俺はその隙を突き、佐竹さんに飛びかかった
美奈子「「あっ!?」」
P「佐竹さん!元に戻ってくれ!」
美奈子「「離して!」」
佐竹さんが暴れて手を振り回し、その爪が俺の顔を引っ掻く
そして手の動きに合わせるように、椅子が俺の背中を打ち付けた
P「~~!」
声にならない激痛が走るが、止まらない、止まれない
しかし佐竹さんは止まらない
P「くっ…!駄目なのか…!」
打開策がない
どうすれば…
瑞希「周防さん!佐竹さんに強い衝撃を与えてください!物理的でも精神的でも構いません!とにかく強い衝撃を!」
強い衝撃強い衝撃…物理的には論外だなら精神的に?精神的な衝撃は…
P「…!」
あった、精神的にも物理的にも強い衝撃を与える方法が
もう、これしかない
二回目の激痛が背中に走るが、俺は佐竹さんの目を真っ正面から見る
例え嫌われたって構わない
もうこれしか方法はないんだ
P「…っ、佐竹さん…いや、美奈子!」
P「俺は君が好きだ、君の笑顔が好きだ!ずっと一緒にいて、俺の隣で笑っていて欲しい!」
P「だから俺は君を助ける…必ず!」
P「後で絶対に責任を取るから…ごめん!」
そう言って俺は
美奈子の唇に自らの唇を重ねた
一旦ここまで
次回、ぷっぷかさん死す
ぷっぷかさん「きゃー♪」
美奈子「…?」
美奈子「…」
美奈子「!?す、周防くん!?」
P「!美奈子!元に戻ったのか!?」
美奈子「な、なななんでキキキキスを…キス…あう」
P「み、美奈子!?」
佐竹さんの体から急に力が抜け、倒れそうになったので咄嗟に支える
…どうやら意識を失ったらしい
ぷっぷかさん「きゃー♪きゃー♪」
さっきからぷっぷかさんが頬を抑えながらきゃーきゃー言っている
…うまく引き剥がせたようだ
P「真壁さん!」
瑞希「はい」
P「次はどうすれば良い!?」
瑞希「そのまま佐竹さんを抱き抱え、後頭部を椅子が掠めて震えている矢吹さんを回収して下がってください」
P「わかった!矢吹さん、手を」
可奈「こ、腰が抜けて」
P「仕方ない…よっと」
可奈「わわわっ!」
矢吹さんを肩に担ぎ、片手で佐竹さんを支えながら結界まで下がる
P「矢吹さん、怪我は無いか?」
可奈「ははははい!大丈夫です!」
P「なら良かった、真壁さん、次は?」
瑞希「もう大丈夫です、切り札が到着しましたから」
P「切り札?」
それは一体…
俺がその言葉を口にすることは無かった、何故なら
突然の破裂音と共に結界が破壊され、扉を開けて女性が入ってきたからだ
P「け、結界が!?」
「みぃつけた♪」
聞き覚えのある声が…むしろ絶賛対峙中の相手の声が、扉の方から聞こえてきた
扉を開けたのは、ぷっぷかさん…!?
そして未だきゃーきゃー言っているぷっぷかさん
…これは
ぷっぷかさんが…2人!?
P「…嘘だろ」
ぷっぷかさんが2人…絶望的過ぎる
一体どうすれば良いんだ
そんな俺の絶望を尻目に、2人目のぷっぷかさんがこちらに向かってくる
俺は三人を護るように前に出て、ぷっぷかさんと対峙する
P「三人に手は出させない」
「…?」
ぷっぷかさんは何を言われたのか分からないとでも言いたげに首をかしげた
「瑞希ちゃん、あれ?」
瑞希「はい、お願いします、北上さん」
麗花「うん、任せて!」
真壁さんが立ち上がり、何かをぷっぷかさんに投げた
ぷっぷかさん「けほっけほっ…くちゅん!」
すると突然ぷっぷかさんが咽せ、くしゃみをする
瑞希「今です」
麗花「はーい」
そしてその隙に新しいぷっぷかさんがむせたぷっぷかさんに近づき、タッチした
ぷっぷかさん「あらら」
そんな気の抜けるような声を出して
ぷっぷかさんは呆気なく新しいぷっぷかさんに取り込まれた
P「消えた…?」
麗花「美味しかったよ、ご馳走様!」
さらっと怖いことを言う新しいぷっぷかさん
…もう片方を取り込んだのならさらに強力になったんじゃ…
俺は更に警戒を強め、ぷっぷかさんから視線を逸らさずに距離を取る
しかしそんな俺とは逆に、真壁さんはぷっぷかさんに近付いていく
P「真壁さん危険だ!」
瑞希「北上さん、お疲れさまです、ありがとうございました」
麗花「ううん、私の方こそありがとう!」
…何やら和やかに談笑していた
P「えっと…?」
瑞希「紹介します、この方は北上麗花さんです」
麗花「北上麗花です!」
P「うん」
瑞希「…」
P「…」
瑞希「…」
P「終わり!?」
瑞希「ぷっぷかさんは北上さんから離れた生き霊が何かしらの原因で悪霊かしてしまったもので、私は北上さんと協力し、ぷっぷかさんを回収していました」
P「そうだったのか…でも生き霊って本人は昏睡状態になるんじゃ?」
瑞希「北上さんですから」
P「そ、そうか」
麗花「手伝ってくれてありがとう」
P「いえ…佐竹さ…友達のためだったので」
麗花「ふふ♪お礼のぎゅーっ!」
P「わっ!?」
北上さんに抱き着かれてドキッとする
仕方ないじゃないか美人なんだし
しかし柔らか
ベキベキベキ!
体中の骨が音を立ててへし折られている
やばい
P「」
瑞希「む…周防さんが気絶してしまいました」
麗花「あらら、どうしたんだろう?」
瑞希「さあ…」
P「し、死ぬかと思った」
瑞希「背中に椅子が直撃していましたから、思った以上にダメージが大きかったのかもしれませんね」
P「いやー全く別の要因だよ」
可奈「あ!美奈子さんが目を覚ましました!」
佐竹さんの様子を見ていた矢吹さんが声を上げる
P「!」
俺は佐竹さんの傍に駆け寄った
美奈子「ん…」
P「佐竹さん、大丈夫か?」
美奈子「あれ…私は、確か…」
可奈「美奈子さん!」
矢吹さんが佐竹さんに抱き着く
美奈子「きゃっ、可奈ちゃん…?」
可奈「良かったぁ…!」
美奈子「…心配かけてごめんね、可奈ちゃん」
佐竹さんが矢吹さんを抱き返し、頭を撫でる
俺には2人が本当の姉妹のように見えた
P「佐竹さん」
美奈子「あ…す、周防くん」
P「良かった、無事で」
美奈子「う、うん…ありがとう」
佐竹さんが顔を赤くして答える
…もしかして記憶があるのだろうか?
瑞希「…矢吹さん、美味しいお菓子を手に入れたので部室に来ませんか?」
可奈「え!美味しいお菓子ですか!?」
瑞希「はい」
可奈「行きます!」
瑞希「ではこちらに…北上さんも」
麗花「わーい♪お邪魔するね♪」
真壁さんが矢吹さんと北上さんを連れて教室を出て行った
P「その…佐竹さん」
美奈子「周防くん、その…少し、歩きませんか?」
P「…ああ」
佐竹さんと一緒に少し校内を歩いた後、一階の渡り廊下に出た
月のおかげで思っていたよりも明るく、佐竹さんの顔がよく見える
美奈子「!」
俺と目が合うと佐竹さんはさっと顔を伏せるが、耳の辺りが真っ赤だ
P「よ、夜風が気持ち良いな」
美奈子「う、うん」
P「…」
美奈子「…」
か、会話が続かない
こういう時は俺から言った方が良いんだろうか
しかし…
悩んだ末に俺がとった方法は
P「…そ、そろそろ戻ろうか」
ヘタレて逃げることだった
クイッと、袖が引かれる
P「佐竹さん…?」
美奈子「もう少しだけ、一緒にいてください」
P「…わかった」
そのまま2人で空を見上げる
この月が照らす静かな世界で、俺と佐竹さんしかいないんじゃないかと錯覚するほど俺達は静寂に包まれていた
P「…佐竹さん、さっきは…その」
美奈子「美奈子…」
P「え?」
美奈子「美奈子って呼んでくれないんですか…?」
P「あー…」
やっぱり記憶あるよな…
責任取るって言ったし
…俺自身も、そうしたい
P「…美奈子」
美奈子「は、はい」
P「多分記憶はあると思うんだけど、正気に戻ったみたいだから、もう一度言わせて欲しい」
P「俺は…美奈子、君が好きだ」
P「ゴールデンウィークが終わってから…いや、その前から気になっていた…」
P「美奈子といると心の底から安らげるんだ、美奈子の料理を食べると力が漲るんだ、美奈子の笑顔を見ると俺も笑顔になれるんだ、だから…」
P「俺の傍に居て欲しい」
一旦ここまで
夏休みの出来事募集
P「傍に居てくれるだけで、俺は…」
美奈子「…嫌です」
P「…えっ」
美奈子「傍に居るだけなんて、嫌です」
P「」
まさか拒絶されてしまうとは…
やはり無理矢理唇を奪ったせいで嫌われてしまったのか
覚悟していたとはいえ拒絶されたことにショックを受けていると
俺の右手が美奈子の両手に包まれた
P「美奈子…?」
美奈子「傍に居るだけなんて、嫌です」
もう一度同じ事を口にする
美奈子「私は、周防くんの身の回りの全部をお世話したいんです」
P「え?」
美奈子「食事も、身嗜みも、お部屋の掃除も、家事も、洗濯も、隅から隅まで全部私がやりたいんです」
P「それはちょっと…」
美奈子「駄目…ですか?」
P「全部はちょっと困るかなぁ」
美奈子「な、なんなら性欲の処理だって付けますよ!」
P「落ち着けぇ!」
いきなり何を言い出すんだこの子は
P「あのな、美奈子」
俺は美奈子の両肩に手を置くと、美奈子は顔を赤くする
P「お世話されるとか、そういうのじゃなくて俺は美奈子と対等でありたいんだ」
P「だからさ、一緒に歩こう」
P「同じ歩幅で、一緒に」
美奈子「周防くん…わかりました、でも、食事だけは譲りませんよ!」
美奈子「周防くんのお腹は、私がいっぱいにするんですから!」
P「は、はは…破裂しないように努力するよ」
ついでに太らないように常に身体を絞らないと…
美奈子「私達が付き合ったら、これからもっともっと驚くような事が起きるんでしょうね…」
美奈子「ビックリして丸くなった周防くんの瞳に、映るのがずっと私だったら良いなって思うんです」
美奈子「そしていつかは…」
美奈子「…」
P「美奈子?」
美奈子「周防くん、告白の返事ですけど…」
P「…ああ」
美奈子「佐竹美奈子、不束者ですが精一杯頑張ります!なので、これからもよろしくお願いしますね!」
そういって抱き着いてくる美奈子
P「おふっ」
美奈子の身体の柔らかさや大きな山が押し付けられる感触、そしてふわりと漂う美奈子の良い匂いにものすごくドキドキする
美奈子「周防くんの心臓、すっごくドキドキしてますね」
P「そりゃあ美奈子に抱き着かれたら誰だってドキドキするって」
美奈子「ふふ、安心してください、このドキドキは、世界でただ一人、周防くんだけのものですから」
P「…そうか、俺だけのドキドキか」
美奈子「はい、周防くんだけのドキドキです」
P「嬉しいな」
美奈子「私も、周防くんが喜んでくれて嬉しいです」
P「…俺も、美奈子をドキドキさせたい」
美奈子「じゃあぎゅっと抱き締めてください、私みたいに」
P「ん」
言われた通りに美奈子を抱き返す
P「どうだ?」
美奈子「すっごくドキドキします…ふふ、顔が赤くなっちゃいますね」
P「うーん、俺には美奈子のドキドキがわからないな」
美奈子「ふふ、じゃあこれは私が独り占めしちゃいますね」
P「ずるいぞ、美奈子」
美奈子「じゃあ、確かめてみますか?」
P「どうやって?」
美奈子「そ、その…触って」
P「……………………………」
P「い、良いのか?」
美奈子「は、はい、私がドキドキしてるって、知って欲しいです」
否応なしに視線が美奈子の大きな山に向く
P「…ゴクッ」
…いや、これはあくまでもドキドキを確かめるため…
かつて逮捕された偉い人も言っていた、俺は胸を触ったんじゃ無くてハートに触ったんだと
なら俺も、嫌らしい気持ちでは無くハートに触るために美奈子の胸を…
俺はゆっくりと美奈子の胸に手を伸ばす
美奈子の胸に手が触れる直前だった
瑞希「周防さん、佐竹さん」
P「」ビクゥ
美奈子「」ビクゥ
突然声をかけられて思わず身体が跳ねる
P「ま、真壁さん!?」
全く気配がしなかったぞ
瑞希「…すみません、驚かせてしまったようです」
P「い、いや、気にしないでくれ…何かあった?」
瑞希「いえ、ただもう良い時間なので」
P「え?もうそんな時間か」
瑞希「はい、もう間もなく補導タイムです」
P「補導はまずいな」
そうならないうちに帰るか
瑞希「矢吹さんも篠宮さんも帰る準備は出来ています」
P「わかった」
瑞希「では、校門で待っていますので」
P「すぐ行く」
美奈子「…」
P「美奈子、帰ろう」
一歩踏み出した瞬間だった
俺の左手に、美奈子の右手が触れた
美奈子「周防くん…手を、握りませんか?」
P「…ん、わかった」
美奈子の手を取り、歩き出す
美奈子の手はひんやりしていて、柔らかくて
なんだか幸せな気持ちになる
美奈子「さっきも思いましたけど、周防くんの手、大きいなぁ…」
P「そう?」
美奈子「うん、すごく頼りになって…安心します」
P「そう言って貰えるなら嬉しいよ」
美奈子「私の手、離さないでくださいね?」
P「もちろん」
やがて校門が見えてきた
遠目でもはっきりわかるくらいに矢吹さんが手を振っていた
美奈子「可奈ちゃん、元気だなぁ」
P「元気なのは良いことだ」
美奈子「周防くんも、これからは私が元気にしてあげますね!」
P「美奈子と一緒なら何時だって元気でいられるさ」
美奈子「ふふ、だったら嬉しいな」
P「さ、行くか」
美奈子「はい!」
美奈子と一緒に校門に駆けていく
みんなと合流し、美奈子、矢吹さんと一緒に帰り道を歩く
会話中の矢吹さんのリアクションを楽しみながら、俺達の夜は過ぎていった
一旦ここまで
次回、砂糖
可奈「あ、美奈子さん!」
美奈子「ただいま可奈ちゃん」
周防くんと別れたあと、明日は休みだからと久しぶりに可奈ちゃんが泊まりに来た
可奈「美奈子さんのお部屋、なんだか久しぶりかな~」
美奈子「そうだね、確かに久しぶりかも」
可奈「でもやっぱり美奈子さんの部屋好きです!なんだか良い匂いもしますし!」
美奈子「良い匂いか~」
自分じゃ良くわからないけど
可奈「でも良かった、美奈子さんが元に戻って」
美奈子「心配かけてごめんね、可奈ちゃん」
可奈「そんなことないです!周防先輩がすっごく頼りになって格好良かったですし!」
美奈子「そ、そっかな?」
可奈「はい!」
好きな人を褒められると私も嬉しくなっちゃう
可奈「美奈子さん、周防先輩と付き合うことになったんですよね?」
美奈子「う、うん」
可奈「美奈子さん、すごく嬉しそう」
美奈子「うん、やっぱり好きな人が出来ると嬉しい」
美奈子「可奈ちゃんにもいつかわかるよ」
可奈「好きな人か~…私にもそんな素敵な人、見つけられるかな?」
美奈子「ふふ、可奈ちゃんが見つけるか、見つけられるか、楽しみにしてるね?」
可奈「はい!可奈の素敵な人、絶対美奈子さんに紹介しますね!」
美奈子「うん!」
可奈「ところで美奈子さん」
美奈子「どうしたの?」
可奈「美奈子さんは周防先輩のこと、名前で呼ばないの?」
美奈子「え?」
可奈「周防先輩は美奈子さんのこと美奈子って呼んでたし、美奈子さんは呼ばないのかなー?って」
美奈子「…やっぱり、名前で呼んだ方が良いのかな?」
可奈「私はどっちが良いかは分かんないけど、美奈子さんはどうしたいの?」
美奈子「私は…うん、やっぱり名前で呼びたい…かな」
可奈「じゃあじゃあ名前で呼びましょう!」
美奈子「…うん、そうだね!名前で呼んでみる!」
周防くん…ううん、ぷ、Pくん
…よし、心の中なら呼べる
後は現実でも呼べるようにしなくちゃ
…明日、誘ってみようかな?
一旦ここまで
翌日
P「で?」
冬馬『だからよ、昨日の夜765学園ですげえことがあったらしくてよ』
冬馬『お前どうせ暇してるだろ?せっかくだから見に行ってみようぜ』
P「勝手に決め付けるなよ…つーかどこ情報だよそれ」
冬馬『ネットの学園掲示板だ』
P「あんなとこガセネタの宝庫じゃねえか」
冬馬『確かにそうかもしれねえがこの情報を乗せたのは「学園の手品師(将来性大)」さんだからな、信頼出来る』
P「長い名前だな…っとすまん電話だ」
冬馬『またかよ』
P「…」
電話をかけてきた相手の名前がディスプレイに表示される
その名前を見て、俺は自分の頬が緩むのが分かった
P「もしもし」
『もしもし、周防くんですか?』
P「ああ、俺だよ美奈子」
美奈子『おはようございます、周防くん』
P「ああ、おはよう美奈子」
美奈子『…えへへ… 』
P「はは…」
朝の挨拶をしただけなのに、それだけで心が温かくなって幸せな気分になる
P「何かあった?」
昨日の今日なので念の為確認する
美奈子『あ、体調は大丈夫です、後遺症とかもありません』
P「なら良かった」
美奈子『…あの、周防くん』
P「ん?」
美奈子『今日って何か予定があったりしますか?』
P「…それって」
美奈子『もし、予定が無いなら…その』
美奈子『私とお出かけしませんか?』
P「喜んで」
美奈子からのデートのお誘い、断る理由など無い
美奈子『ありがとうございます!待ち合わせはどうしましょうか?』
P「何処に行くかにもよるけど…俺が美奈子の家まで行くよ」
美奈子『わかりました!準備して待ってますね!』
美奈子との通話が切れる
俺はその後少しの間、ディスプレイを眺めていたのだった
P「というわけで予定が出来たから無理な」
冬馬『いや、説明放棄すんなよ』
P「出かける用事が出来た、悪いが他を当たってくれ」
冬馬『しゃあねえな…翔太と北斗でも誘うとするか…』
冬馬との通話を切り、俺はクローゼットをあける
P「…よし」
気合いを入れて準備しないとな
一旦ここまで
エミリーは一応構想だけはある程度
書くかどうかは未定
√SSL
√C(前スレ完了、後半予定)
この二つ
美奈子の家に到着した俺は、チャイムを鳴らす
するとすぐに返事があった
美奈子『はい佐竹です』
P「周防です」
美奈子『周防くん!すぐ行きますね!』
その言葉通り、美奈子は1分もしないうちに外に出て来た
美奈子「周防くん、お待たせしました」
P「いや、待ってないから大丈夫」
P「じゃあ行こうか」
美奈子「はい!あ、周防くん…手、繋いでも良いですか…?」
P「…うん、もちろん」
美奈子の手を握る
…柔らかくて温かな手だ
美奈子「えへへ…」
P「うん」
手を繋ぐだけですごく恥ずかしくなる
この先に進んだら恥ずかしさで死ぬんじゃなかろうか
美奈子「どこに行きますか?」
P「そうだな…これといったところは無いからゆっくり見て回ろうか?」
美奈子「あ、それなら街より商店街の方に行きませんか?」
P「良いね、そうしようか」
商店街に行くと美奈子が沢山の人に声をかけられた
どうやら商店街の人気者らしい
美奈子「もう!気が早いですよ!」
八百屋のおじさんにまるで夫婦のようだとからかわれた美奈子は顔を赤くしながらも満更でも無さそうだ
嬉しくなるな
美奈子「ほ、ほら周防くん、行きましょう」
美奈子に手を引かれて歩き出す
八百屋のおじさんは微笑ましいものを見るような表情で手を振っていた
一旦ここまで
P「美奈子、結構人気者なんだな」
美奈子「商店街のみんな、よくうちに食べに来てくれるんです」
美奈子「私、こう見えても佐竹飯店の美少女看板娘ですから!…なーんて」
P「ああ…俺はそんな人気者の美少女看板娘を彼女に出来て凄く幸せだよ」
美奈子「ちょ、じょ、冗談で言ったのに恥ずかしいですよ」
P「嘘は言ってないから良いじゃないか」
P「美奈子は佐竹飯店の看板娘だし美少女だ、これに異を唱える奴なんかいないって」
美奈子「う、うう…恥ずかしい…」
美奈子が赤くなった顔を隠す
そんな仕草もまた可愛いかった
その後、商店街で色々と買い物をする
といってもショッピングデートのようなお洒落なものではなく、主に食材などを見て回った
美奈子「ふむふむ、今日の野菜は中々…」
P「美奈子、次どうする?」
美奈子「そうですね…そろそろお昼時ですし、お昼ご飯にしましょうか」
P「了解」
美奈子「周防くん、何か食べたいものとかはありませんか?」
P「そうだな…それなら」
色々と浮かんでくるが…
P「…うん、美奈子が作った料理が食べたいかな」
美奈子「私の?」
P「ああ、美奈子の料理が食べたい」
美奈子「わっほーい!わっかりました!それなら腕によりをかけて作りますね!」
P「ああ、楽しみにしてる」
美奈子「じゃあ私の家に行きましょう!」
美奈子と手を繋ぎ、佐竹飯店に向かう
美奈子の料理…美味しいのは知っている
けど
関係の変わった今なら
きっともっと美味しいと思う
そんな想像をすると、腹が減るのを感じた
美奈子「どうぞ」
P「お邪魔します」
何度も通った美奈子の家
しかし今の関係になってからは初めて来る
…なんだか緊張するな
美奈子「準備しますから周防くんは寛いでいてくださいね」
P「手伝いは要らない?」
美奈子「お気持ちは嬉しいんですけど、私が一人で作りたいんです」
P「…わかった、待ってる」
美奈子「はい!期待しててくださいね!」
すぐに軽やかに包丁が具材を刻む心地良い音が聞こえてくる
俺の期待値は既に最上限だ
どんな料理が出て来るだろう
そんなことを考えていると
P「あ、これ」
初めて美奈子の家に来たときにも見た写真が目に入った
…小さい頃の美奈子も可愛らしいな
…俺や海美が小さい頃はどうだったかな
俺の小さい頃は…あれ?
小さい頃のことが思い出せない
…まあ良いか
忘れるくらいだし大したことないだろう
それよりも美奈子の料理だ
台所からは良い匂いがし始め、空腹を刺激する
…あれ、これ案外キツいんじゃ?
その後、料理が来るまで俺は空腹に耐え続けた
美奈子「お待たせしました!腕によりをかけた愛情たっぷりの特製エビチリです!」
P「おお…!」
目の前の皿には少なく見積もって10人前くらいのエビチリ
思ってたよりは少ないが足りるだろうか?
P「じゃあさっそく!いただきます!」
美奈子「召し上がれ」
エビチリを箸で掴み、口に運ぶ
仄かな酸味と辛みと甘みとエビのぷりっとした食感に思わず笑顔になる
しかしそれ以上に
P「…なんだろう、懐かしい味がする」
一旦ここまで
ついでに宣伝
765学園物語HED √MT 序章
https://t.co/KYhUFYz1es
どんだけ悪霊いるんだww
>>355
√RRRで羅刹を連れて逝こうとしたのは麗花さんじゃなくてぷっぷかさんの方だからね
ちなみにぷっぷかさん全7人を回収すると願いを1つぷっぷか的解釈をして叶えてくれるよ
昔何処かで食べた味に、より近い味
一体、一体どこで食べた?
美奈子「実はそれ、私が小さい頃にしていた味付けなんです」
P「小さい頃に?」
美奈子「はい!」
P「…」
もう一口食べて目を瞑る
すると少し頭が痛んだ
そして頭痛と共に、脳裏に浮かぶ光景
小さな女の子が二人と、同じくらいの男の子が料理を…
『おいしいよ!…子ちゃん!』
『うん!もっとたべたい!』
『わあ、うれしい!もっとつくるね!』
『あ、でもぼくはおなかいっぱ』
『男の子なんだからもっとたべられるよ!だいじょうぶ!カロリーはみかただっておかあさんが言ってたから!』
『でもほんとうにおなかいっぱ』
『なるほど、これがおかあさんの言ってたいやよいやよもすきのうちってやつだね!だいじょうぶ、わたしがたべさせてあげるね!』
『ごふっ』
…今のは
遥か昔の記憶…?
思い出せない俺が小さな頃の記憶だろうか
ならあそこにいたのは海美と、もう1人
テーブルの上にあった料理はエビチリだった
…まさか
P「美奈子」
美奈子「はい」
P「前に…ボランティアの時かな?昔仲が良かった子が二人がいるって言ってたよな」
美奈子「はい」
P「名前、わかるか?」
美奈子「…秘密、です」
P「そうか…」
半分答えたようなものだ
…俺は小さい頃に美奈子と会ってたのか
何故忘れていたのだろう
…いや、今となってはどうでも良いことか
大事なのは今、美奈子と一緒にいられること
昔どうだったかなんて関係無い
P「…うん、美味い、もっと食べたい」
美奈子「安心してください!お代わりはちゃーんと用意してありますから!」
P「はは、それはありがたい」
多分10人前じゃ足りないだろうし
P「さ、美奈子も食べよう」
美奈子「そうですね、じゃあ私も…いただきます」
この後お代わりもし、美奈子と楽しい昼食を過ごした
P「ふう…食った食った」
美奈子「良い食べっぷりでしたね!」
P「美奈子の料理は美味しいからな、つい食べてしまう」
美奈子「そう言って貰えると嬉しいです」
P「さて、腹ごなしに出掛けようか?」
美奈子「お出掛けも良いですけど、のんびりするのも良いですよ!」
美奈子「例えばほら…今私の膝は意味ありげに空いてたりしますし」
P「…」
一旦ここまで
P「えーっと」
美奈子が笑顔で自分の膝を叩いている
…そこに頭を乗せろと?
美奈子「さあ周防くん」
P「じゃ、じゃあお邪魔します」
美奈子の膝に頭を乗せる
こ、これが膝枕か…!
あまりの柔らかさに思わず驚愕した
美奈子「す、周防くん?目が見開いてますけど」
P「い、いや、ちょっとな」
改めて見上げると中々に中々な光景だ
じっと見ていると胸の間を通して美奈子と目が合った
美奈子「も、もう、どこ見てるんですか?」
P「いや、だってさ」
こんな立派なものが目の前にあったら見てしまうに決まってる
だって男の子だもの
美奈子「えっちな目になってますよ?」
P「許して欲しいかな…」
美奈子「でもちょっと嬉しいです」
P「嬉しい?」
美奈子「はい、だって私をえっちな目で見るって事は私は周防くんにとって性的魅力を感じる女の子って事ですよね?」
美奈子「好きな人にそう想って貰えるとやっぱり嬉しいです」
P「そっか…」
美奈子「…いつかは」
P「ん?」
美奈子「いつかはキスしたり、それ以上のこともやったりするんですよね」
P「いつかは…な」
P「でも別に急ぐ必要は無い」
P「俺達は俺達のペースで進もう」
一旦ここまで
ついでにアンケート
プロデュース()量は少、並、大のどれが良い?
貴様達そんなに腹一杯になりたいか!
…良かろう、胸焼けの薬を用意しておくが良い
とりあえず今日は無しで
美奈子「そうですね!フードファイターは自分のペースが大事だってハンター錠二も言ってました!」
P「誰だよ…」
そんな風に他愛ない話をしながら、穏やかな時間は過ぎていった
P「美奈子、足は大丈夫か?」
美奈子「あ、はい、大丈夫ですよ」
なんだかんだ結構な時間膝枕してもらったので少し心配になる
美奈子「むしろ周防くんの頭が離れて少し寂しいですね」
P「うーん後ろ髪引かれることを」
美奈子「周防くん、夕飯はどうしますか?」
P「そうだな…このみ姉さんか志保が何か作ってるかも知れないし、家で食べるかな…」
美奈子「一応確認取った方が良いですよ」
P「そうだな」
俺はスマホを取り出し、家に電話をかけた
志保『はい、周防です』
P「もしもし、志保か?」
志保『はい、あなたの志保です』
P「今日の夕飯とかって何か考えてる?」
志保『いえ、まだお買い物をしていませんし特には…何か希望があるならそれを作りますが』
P「買い物は今から?」
志保『はい、夕方にはセールがあるのでその時にしようかと』
P「了解、なら帰ったら…」
美奈子「周防くん、周防くん」
P「どうした、美奈子?」
電話の途中、美奈子が俺の肩を叩いた
志保『…兄さん、誰か他の女と一緒にいるんですか?』
美奈子「夕飯の件なんですけど」
P「ああ、まだ用意が無いみたいだから帰ってから一緒に買い物でも行こうかなって」
美奈子「だったら私に良い考えがあります」
P「良い考え?」
美奈子「私が周防くんの家に夕飯を作りに行きます!」
一旦ここまで
P「ただいま」
志保「兄さん、お帰りなさい」
美奈子の提案を受け、俺は美奈子を連れて家に戻る
玄関を開けると志保が1秒も経たずに出迎えに来た
美奈子「お邪魔します」
志保「………兄さん、何故佐竹飯店の店員さんがここに?」
P「あれ、キャンプの時自己紹介しなかったっけ?」
志保「記憶にはありませんが…」
美奈子「佐竹美奈子です!えーっと、志保ちゃん…だったよね?」
志保「はい、北沢志保です」
美奈子「良かった、志保ちゃん、これからよろしくね」
志保「これから…?一体どういう…」
P「言ってなかったんだけど実は俺は美奈子と付き合う事になったんだ」
志保「……………………………すいません兄さん、良く聞こえなかったのでもう一度お願いします」
P「美奈子と付き合う事になったんだ」
志保「」
P「…志保?」
志保「ぐ…う…そ、そうですか…おめ、でとう…ございます…兄さん」
P「…?」
志保「…美奈子さん」
美奈子「?」
志保「美奈子さんは、兄さんを…幸せにしてくれますか?」
美奈子「志保ちゃん…うん、もちろんだよ!」
志保「…それなら、安心です」
志保「美奈子さん、兄さんを…よろしくお願いします」
美奈子「うん、任せて、志保ちゃん」
P「な、なんか恥ずかしいぞ」
志保「それでは美奈子さん、リビングに案内します」
美奈子「ありがとう志保ちゃん」
リビングに入ると桃子が煎餅を咥えながらアニメを見ていた
桃子「おにいふぁんおふぁえり」
P「食いながら喋らない」
桃子「…?お兄ちゃん、その人は?」
美奈子「佐竹美奈子です!桃子ちゃん…ですよね?周防くんから聞いてます、よろしくお願いしますね!」
桃子「佐竹…?佐竹飯店の人?」
P「ああ」
桃子「ふーん…で、なんでそんな人が家に?」
P「そりゃ俺が美奈子と付き合ってるからだよ」
桃子「ふーん、お兄ちゃんが付きあ…はあ!?」
P「うおっ」
桃子「ちょっとお兄ちゃんどういうこと!?」
P「いや、どういうことも何も言葉通りの意味だが」
桃子「お兄ちゃんに恋人が…絶対海美さんか恵美さんだと思ってたのに…」
美奈子「え、えーっと…桃子ちゃん?」
桃子「…まあ、お兄ちゃんが選んだ人なら間違いないとは思うけど」
桃子「それはそれとして、なんで急に連れてきたの?」
P「実は今日の夕飯、美奈子が作ってくれるんだ」
桃子「それって桃子達の分も?」
美奈子「もちろん!皆の分、ちゃんと作るから!」
桃子「ふーん…佐竹飯店のご飯は美味しいし、桃子、楽しみにしてるね」
P「おお…桃子が素直だ」
桃子「お兄ちゃん、臑を蹴飛ばすよ」
P「勘弁」
美奈子「それじゃあ台所、お借りしますね!」
桃子「あ、美奈子さん、もうすぐお姉ちゃん帰ってくるし料理は5人分で」
美奈子「わかりました!よーし、腕によりをかけないと」
美奈子がエプロンを着け、気合いを入れて調理を開始する
このみ姉さんや桃子が美奈子の料理をどう評するか…気になるな
一旦ここまで
このみ「ただいま」
P「お帰り、このみ姉さん」
莉緒「お邪魔しまーす」
P「莉緒さん?」
このみ「明日は二人揃って休みだから宅飲みすることにしたのよ」
P「なるほど」
このみ「…あら、すごく良い匂い、今日の夕飯は何?」
P「見てからのお楽しみだよ」
このみ「あら自信満々…それじゃあ楽しみにしてるわよ」
そういって莉緒さんと一緒に部屋に戻るこのみ姉さん
莉緒さん共々是非夕飯を楽しんで貰おう
美奈子「こんばんはこのみ先生!莉緒先生!お邪魔してます!」
このみ「美奈子ちゃん?なんでうちに?」
P「それはちゃんと説明するからまずは座ってくれよ」
このみ「え、ええ…」
莉緒「美奈子ちゃんが作ったの!」
美奈子「はい!腕によりをかけました!」
莉緒「やだ!そんなの絶対美味しいじゃない!このみ姉さん、早く食べましょ!」
みんなが席に着いたので俺も席に着く
このみ「…あー、Pの隣に座る美奈子ちゃんで大体察したけど」
このみ「ちゃんとPの口から聞かせてちょうだい?」
P「ああ」
俺は一度深呼吸をし、このみ姉さんをまっすぐに見据える
P「俺、美奈子と付き合う事にしたんだ」
美奈子「はい、周防くんとお付き合いさせていただいてます」
このみ「…一番大切なことを聞くけど、二人とも遊びじゃなくて真剣に交際するのよね?」
美奈子「はい」
P「もちろん」
このみ「そう、それなら私からは何も言わないわ」
このみ「美奈子ちゃん、Pをよろしくね」
美奈子「はい!」
このみ「しかしアレね、これで私もお義姉さんになるわけね…」
このみ「このみお義姉さん…うん、悪くないわね!それにお義母さんも義理の娘が増えたら喜ぶだろうし」
このみ「P、美奈子ちゃんを絶対に逃がしちゃ駄目よ!」
P「わかってるよ」
美奈子「周防くん、許可も降りましたし子供は何人が良いですか?」
P「美奈子は落ち着こうか」
P「話は終わり、冷めないうちに食べよう」
このみ「そうね、せっかくの料理を冷ましちゃもったいないもの」
莉緒「私もうお腹が空きすぎて」
P「それじゃあ」
いただきます!
このみ「!美味しい!」
莉緒「流石は美奈子ちゃんね!」
美奈子「ありがとうございます!」
志保「…」
このみ「志保さん、好き嫌いは駄目だよ」
志保「わかってはいるんだけど、やっぱりピーマンは苦いから…」
美奈子「志保ちゃん、私を信じてピーマン、試してみて」
志保「…わかりました」
志保「…!美味しい…」
美奈子「良かった!前バーベキューの時に志保ちゃんはピーマンが苦手だって言ってたからピーマンが苦手な人のためにちょっと工夫したの」
志保「…私のために?」
美奈子「うん!料理はね、食べてくれる人のことを思って作るの」
美奈子「料理に必要なものは道具に素材、技術だけど一番大切なのはね、愛情なんだよ!」
美奈子「料理は愛情、私はこの言葉をずっと信じてるんだ」
志保「…私、もっと料理の腕を磨きたいです」
志保「私にも色々教えてくれますか?…美奈子ね、義姉さん」
美奈子「うん!」
P「桃子も教えて貰ったらどうだ?」
桃子「別に、桃子が料理覚えても出番無いし」
桃子「ま、いつか桃子がお嫁にでも行くときに教えて貰おうかな」
P「そっか」
莉緒「うーん、お酒と料理が美味しい」
このみ「ほんと、お酒が進むわー」
美奈子「おかわりもありますから、どんどん食べてくださいね!」
このみ「うぃーっく…」
莉緒「…すかー」
P「知ってた」
俺の目の前には酔い潰れた大人(笑)が二人、テーブルに突っ伏していた
P「とりあえず莉緒さんはその辺に転がしとくとして」
俺は莉緒さんを引き摺り、ソファの辺りに転がす
P「このみ姉さん、持ち上げるぞ」
その後、このみ姉さんを肩に担いだ
P「時間も時間だしこのみ姉さんを部屋に転がしたら送っていくよ」
美奈子「ありがとうございます、周防くん」
このみ「んー…美奈子ちゃん帰るの?」
美奈子「はい、もうすっかり遅くなっちゃいましたから」
このみ「それなら…泊まっていったら?」
美奈子「え?」
P「は?」
このみ「もう遅いし、そうしましょうそうしましょう」
このみ「部屋はPの部屋が空いてるから」
P「ちょっと待て酔っ払い」
このみ「お布団なら呼びがあるからPはそれで寝なさい」
P「待てって言ってるんだが」
このみ「ふああ…」
P「あ、おいこら」
言うだけ言って落ちる酔っ払い
P「ったく…美奈子、酔っ払いの言うことは真に受けなくて…」
美奈子「うん、今日はお友達の家に泊まるから、うん、お休みなさい」
P「…」
美奈子「お邪魔します」
P「どうぞ」
結局美奈子は俺の部屋に泊まることになった
志保「兄さん、これ、お布団です」
P「ああ、ありがとう志保」
志保「いえ」
志保は布団を敷くとそそくさと部屋を出ていった
P「と、とりあえず座りなよ」
美奈子「は、はい」
P「…」
美奈子「…」
…自分の部屋なのに彼女がいるだけでこんなに変わるとは
一旦ここまで
緊張が高まり、どうにかなりそうになっていたところで
桃子「お兄ちゃん、入るよ」
桃子が部屋に入ってきた
P「入ってから言うんじゃない」
桃子「美奈子さん、お風呂が沸いたから一番最初に入って欲しいんだけど」
美奈子「私が?良いの?」
桃子「お客さんだし、流石に誰かが入った後のお風呂になんて入れられないよ」
美奈子「莉緒先生は?」
桃子「残り湯で十分」
美奈子「じゃあそれなら…お風呂、いただきます」
桃子「明日はお休みだし、ゆっくりつかってても良いから」
美奈子「うん、ありがとう桃子ちゃん」
桃子「ところで美奈子さん、着替えはあるの?」
美奈子「着替え…あっ」
桃子「志保さんの服借りる?」
美奈子「うーん…それは志保ちゃんに悪いし…」
桃子「美奈子さんが着られそうな服…桃子やお姉ちゃんの服が入るわけないし」
P「色々小さいからな」
桃子「ふんっ!」
P「あだっ!」
桃子が投げた踏み台が顔面を直撃した
美奈子「私、このままでも構わないけど…」
桃子「駄目だよ、せっかくの可愛い服がしわになっちゃうよ」
桃子「お兄ちゃんとのデートのために気合い入れてコーディネートしたんでしょ?大切にしなきゃ」
美奈子「う、うん」
P「でも志保の服も他二人の服も駄目ならどうするんだ?取りに戻るか?」
P「まさか俺の服を着せる訳にはいかないし」
桃子「お兄ちゃんの服か…桃子達の服よりはよっぽど現実的だけど」
P「正気か?男の服なんて」
美奈子「私は周防くんの服で良いですよ!」
P「…マジ?」
美奈子「はい!」
桃子「お兄ちゃん、確か予備のジャージがあったでしょ」
P「ジャージってお前…」
美奈子「周防くん!私、ジャージで良いですよ!」
P「ええ…」
桃子「はい決まり、美奈子さんが良いって言ってるんだからジャージ用意して」
P「わかったよ…」
タンスからジャージを引っ張りだし、美奈子に渡す
P「小さかったら遠慮なく言ってくれ」
美奈子「ありがとうございます、周防くん!」
桃子「それじゃあ、お風呂上がったら教えてね」
一旦ここまで
前の閉まりきらないジャージをどう思う?
…なんだこれ
俺は今、自分の部屋で美奈子が風呂から上がるのを待っている
何だろう、このシチュエーション、凄く落ち着かない
俺は緊張を紛らわせるために冬馬に電話をかけた
冬馬『もしもし』
P「もしもし、鬼ヶ島か?」
冬馬『誰が鬼ヶ島だ!』
P「わかってる、あまとうだよな」
冬馬『そうそう、あまと…ぶっ飛ばすぞ』
P「冗談だよ」
冬馬『で、何の用だ?』
とりあえず冬馬にジャブをかまして満足した俺は、冬馬に相談を持ち掛けた
P「実はさ」
冬馬『おう』
P「大変なんだよ」
冬馬『おう』
P「すげえ大変なんだよ」
冬馬『そうか』
P「どれくらい大変かっていうとだな」
冬馬『大変なのはわかったからさっさと本題に入りやがれ!』
P「わかった、実はな」
冬馬『おう』
P「彼女が今、俺の家で風呂に入ってる」
冬馬『へえ、彼女がお前の家で風呂をね…………はあ!?』
P「うおっ」
冬馬がいきなり耳元で叫んだ
冬馬『おまっ…どんなうらやま…じゃなくてどんなシチュエーションだよそれ!?』
P「いやー俺にも分からん」
冬馬『…相手は誰だ?高坂か?それとも所か?』
P「ん?なんでそこで海美と恵美が出て来るんだ?」
冬馬『…違うみてえだな、じゃあ誰だ?田中か?島原か?それとも四条か?』
P「美奈子だ」
冬馬『美奈子…美奈子…ってまさか佐竹か』
P「おう、佐竹美奈子だ」
冬馬『ダイエットくらいなら付き合ってやるし最悪骨は拾ってやるよ』
P「不吉なこと言うなよ、美奈子は可愛いんだぞ」
冬馬『惚気か、惚気を聞かせるためにわざわざ電話したのか』
P「そういうわけではあるけど」
冬馬『あるのかよ…いやまあ聞いてやるけどよ、所と高坂には絶対この話するなよ』
P「別にしないけど、何でだ?」
冬馬『自業自得とは言え知り合いが血の海に沈むのは気分悪いからな』
P「???」
冬馬『分からねえなら良い、とにかく言うなよ』
P「おう」
冬馬『で、きっかけは何だったんだ?』
P「きっかけか、きっかけは…」
美奈子「周防くん、お風呂あがりました、次は周防くんに入って欲しいって桃子ちゃんが」
P「あ、美奈子あがったから切るわ、話はまた学園で、じゃあな」
冬馬『は?ちょ、待ておま』
プツッ
P「…」
美奈子「周防くん?」
風呂からあがった美奈子は普段後ろで縛っている髪を下ろしており、まだ乾ききっていないのか僅かに湿っている
ジャージから微かに見える肌や頬は上気しており、とてつもない色香を放っていた
そして着ている服だが、俺のジャージだから少しブカブカしているようで、袖や裾が余っていた
しかし胸元は大きさが足りなかったようで、上がりきっていないジッパーと押し上げられた胸がとてつもない破壊力を生み出していた
P「美奈子…その、すごく色っぽい」
思わず嘘偽りない言葉が口から出て来る
美奈子「あ、ありがとうございます」
それを聞いた美奈子は風呂上がりの赤みとはまた別種の赤みで、頬を染めていた
周防くんがお風呂に行った
私は周防くんのベッドに寝転がり、寝返りを打つ
…何だか不思議な感じ
好きな人の家で、好きな人の服を着ながら、好きな人のベッドに寝転がってる
…まるで私の全身を周防くんが包み込んでいるみたいだ
美奈子「…」クンクン
ジャージの袖口の匂いを嗅いでみる
…よくわからないけど、これが周防くんの匂いなのかな?
美奈子「…」
すぐ傍にあった枕を抱き寄せ、抱き締める
美奈子「…」クン
そのまま枕に顔を埋めてグリグリする
特に意味は無いけど、なんとなくそうしたかった
枕に顔を埋めていると顔と一緒に身体の奥が熱くなってくる
どうも私は自分が抑えきれないくらい周防くんが好きなようだ
…今日、誘ったらどうなるかな
付き合ってすぐなのに、はしたないと思われないだろうか?
でもあの日の夜抱き締めてくれたあの暖かさを、もう一度感じたい
…熱いなぁ
P「ただいま」
美奈子「おかえりなさい」
風呂から上がり部屋に戻ると美奈子が枕を抱き締めながらベッドに座っていた
美奈子「あれ…?周防くん、こうやって見たらあまり体型変わりませんね」
P「そうかな?」
美奈子「うーん…もっと増やさないと駄目かな…?」
P「はは…」
流石にあれ以上増えたら少し苦しいな
P「…ん、もうこんな時間か」
美奈子と話をしていると、あっという間に時間が過ぎていた
最初は緊張していたものの話しているうちにどこかに消え、今は緊張は微塵もない
P「そろそろ電気消そうか?」
美奈子「そうですね、休みの日だからって夜更かししちゃうと身体に悪いですから」
P「じゃあ、電気消すぞ」
美奈子「はい」
電気が消え、暗くなる部屋
俺は布団に寝転がり、目を瞑る
P「…」
美奈子「周防くん」
P「ん?」
美奈子「隣、行っても良いですか?」
P「えっ」
P「美奈子…」
美奈子「周防くん、すごく近いですね」
P「美奈子が抱き着いてるからな」
俺の左側に寝転がった美奈子は、腕を絡ませ抱き着いていた
…腕が胸に挟まれてやばい
あと良い匂いもする
やばい
美奈子「…周防くん、ちょっとこっちを向いてください」
P「ん、わかった」
美奈子の方に身体を向けると
美奈子「…ん」
俺の唇は美奈子の唇に塞がれていた
P「美奈子…」
美奈子「キス、したくなっちゃったから」
P「すごくドキドキした」
美奈子「私も、今すごくドキドキしてます」
P「どのくらい?」
美奈子「…触って、確かめてみますか?」
美奈子「私、全身がドキドキしてて熱いんです」
P「…良いのか?」
あの時は邪魔が入った
だけど今は…絶対に邪魔は入らない
美奈子「周防くん…」
P「わかった、じゃあ…確かめるよ」
美奈子を触診した
一旦ここまで
あくまで触診、触っただけ
美奈子「ど、どうでした?」
P「…すごくドキドキしてた」
美奈子の深い谷間に手を触れた俺は、ただ正直に感じたことを伝える
美奈子「ずっとドキドキしてて、少し苦しい…でも、嫌じゃない」
そういって美奈子が俺の腕に頭を押し付ける
美奈子「…むしろ、幸せです」
P「美奈子…」
美奈子「…そろそろ寝ましょうか!」
P「ああ」
寝る、と言いながらも更に身体を寄せてくる美奈子
P「…美奈子、寝るんじゃないのか?」
美奈子「もちろん寝ますよ?このまま」
ぎゅっと腕を抱き締めて微笑む美奈子
P「…」
…俺、寝れるかな
翌日
妙な寝苦しさを感じて目を覚ますと美奈子が俺を抱き枕にしていた
流石の恵体に寝起きだから元気なエクスカリバーが違う意味で元気になりそうだ
P「…」
思っているよりもガッチリホールドされていて身動きの取れない俺は、起きるのを諦めもう一度目を瞑る
俺の理性、いつまで保つだろう
このみ「頭痛いわ…」
莉緒「頭痛が痛い…」
桃子「こうなるって分かってるなら潰れるまで呑まなきゃ良いのに」
莉緒「桃子ちゃん…大人の女にはね、潰れるまで呑まなきゃいけない時があるのよ」
桃子「無いと思うよ」
美奈子「はい、お水をどうぞ」
このみ「ありがとう美奈子ちゃん…手慣れてるわね」
美奈子「佐竹飯店でも酔い潰れるお客さんとかがたまにいますから、何だかんだで慣れちゃいました」
このみ「この気遣い…ほんと、我が家の嫁に欲しいわ」
志保「美奈子さん、これで良いですか」
美奈子「うん!流石だね、志保ちゃん」
志保「…美奈子さんの教え方が上手だからです」
美奈子「ううん、志保ちゃんが美味しく作ろうって気持ちを込めて作ってるからだよ」
志保「…ありがとうございます」
P「確かに、美味そうだな」
志保「期待していてください、必ず兄さんのお口に合うものを作り上げますから」
P「ああ、期待してる」
一旦ここまで
どう海美を絡ませるか悩む
志保「お待たせしました」
このみ「お粥ね」
美奈子「二日酔いの時は胃が荒れていますから、胃に優しいものにしました!」
莉緒「いただきます…あら、すっごく美味しい」
このみ「食欲が無くてもするっと入るわ」
美奈子「お粥には胃を慣らす効果もありますし、胃が動き出したらちゃんとした固形物も用意してありますからいつでも言ってくださいね!」
莉緒「凄いわ、なんだか調子が良くなってきた気がする!これでもっと呑めるわね!」
志保「中華粥にそんな効果は無いので気のせいだと思いますけど」
P「うん、お粥食べるのは久しぶりだけど美味いな」
志保「お口に合ったようで、良かったです」
P「ああ、ありがとう志保」
思わず志保の頭を撫でる
志保「に、兄さん、恥ずかしいです」
P「っとごめん、嫌だったか?」
志保「嫌では無いですむしろ嬉しいですでも恥ずかしいので二人きりの時に希望します」
P「お、おう」
早口でまくし立てる志保に少し気圧されるが、嫌では無いようだ
美奈子「周防くん!」
P「うおっ、ど、どうした美奈子?」
急に声を上げた美奈子に少し驚く
美奈子「私も志保ちゃんと一緒にお粥を作りました」
P「ああ」
美奈子「何か忘れてませんか?」
P「何か?」
美奈子「はい、志保ちゃんにはしたのに、私にはしてくれないんですか?」
P「???」
志保にして美奈子にしていないことってなんだ…?
桃子「お兄ちゃん」
P「ぬぐっ!?」
桃子に脇腹を突かれ、変な声が出た
桃子「ここ」
桃子の方を見ると頭を指差している
P「頭…?あっ」
桃子「はあ…」
P「美奈子」
美奈子「はい!」
P「ありがとう、美味かった」
志保にしたのと同じように、美奈子の頭を撫でる
美奈子「えへへ…」
美奈子「なんだかすごく嬉しくなっちゃったので抱き着いちゃいますね!」
P「そうか、じゃあ俺も抱き返さないとな」
抱き着いてきた美奈子を抱き返す
…柔らかくて暖かい
ずっとこうしていたくなる
このみ「あー、胸焼けしてきたわ」
莉緒「志保ちゃん、お粥お代わり!…志保ちゃん?」
桃子「志保さんなら血の涙を流しながら気絶してるから桃子が入れてあげる」
そのまま人目を気にせずしばらくいちゃいちゃした
一旦ここまで
納得はしてもダメージは受ける沢志保
食後にココナッツミルクのデザートを食べた俺達は部屋に戻っていた
ベッドにもたれ掛かるように座り、美奈子は俺の肩に頭を乗せている
P「あ、そうだ」
美奈子「?」
P「美奈子、前に格ゲーが好きみたいなこと言ってたよな?」
美奈子「あ、はい、覚えててくれたんですか?」
P「まあな、実はついこの間新しい格ゲーを買ってさ、せっかくだから一緒にやらないか?」
美奈子「良いですね!なんていうゲームですか?」
俺はそれに答えず、Switchの電源を入れた
それから一時間ほどして
Excellent!
P「」
美奈子「わっほーい!またまた私の勝ちですね!」
P「こ、こんなはずでは…!」
冬馬との対戦なら一度たりとも負けたことは無いのに…
P「まさか一度も勝てないとは…」
美奈子「なんだかんだで慣れてますから!」
P「いやー強かった」
美奈子「でも投げ技が気持ち良いですね、これ」
P「色々モーションあるからな」
美奈子「でも、2D格闘ゲームのシンプルな投げもやっぱり良い物ですよ!」
P「ああそれはわかる、派手なのも良いけどシンプルなのも良いよな」
美奈子「はい!」
P「さて、次はPS4でも…っと」
立ち上がろうとした時、自分の足に躓き、バランスを崩す
P「うわったった!」
美奈子「きゃっ!」
体勢が立て直せなかった俺はそのまま美奈子の方へ倒れ込んだ
P「ご、ごめん、大丈夫か?」
美奈子「は、はい…でも」
P「どこか打った?」
美奈子「いえ、ただ…周防くんがすごく近いなって思って…」
P「…」
傍から見るとまるで美奈子を押し倒しているように見える
まあ実際に押し倒しているわけだが
しかしそんなことを言われるともっと近づきたくなるのが男の性
P「…美奈子」
俺は更に少し、美奈子に顔を近付ける
顔の赤くなった美奈子は、そのまま目を閉じた
だから俺は、美奈子の唇に触れようと顔を近付けたところで
海美「P!お休みだから遊ぼ!」
俺の部屋に窓から闖入者が現れた
バッと起き上がり互いに何でも無かった振りをする俺と美奈子
P「よ、よう、海美」
海美「あれ?美奈子先生、なんでPの部屋に?」
美奈子「じ、実は…」
P「俺達、付き合ってるんだ」
海美「…え?」
海美が俺と美奈子をそれぞれ指差した後、両手でハートの形を作り、首をかしげる
俺はそのジェスチャーを見て、頷いた
海美「そ、そんな…」
海美が衝撃を受けたような顔で後退る
美奈子「海美ちゃん…その」
海美「ううう~~~~!!」
海美が胸の前で握り拳を作り、何か言いたげに上下に動かす
そしてそれが止まって
海美「美奈子先生…」
美奈子「な、何?」
海美「Pを…Pをよろしくね」
美奈子「海美ちゃん…うん」
海美「うわあぁぁぁぁん!!」
美奈子「海美ちゃん…」
海美が美奈子にしがみついて泣き出した
美奈子はそんな海美を抱き締めて、泣き止むまで頭を撫でていた
海美「ぐす…ぐす…」
P「ほら、鼻かめ」
海美「うん…」
P「…海美、俺のことが本当に好きだったんだな」
海美「うん…あの日からずっと好きだった」
P「俺はずっと幼なじみとしての好きだと思ってた…ごめんな、気付いてやれなくて」
海美「ううん、Pが鈍感なのは知ってたから、気にしないで」
P「…悪いな」
海美「そんな鈍感が好きになったんだから、美奈子先生の事、ずっと好きでいてね」
P「勿論だ」
海美「…うん」
海美が納得したように頷く
海美「美奈子先生」
美奈子「何?」
海美「Pって鈍感だからやきもきするかもだけど、良い人だから!」
海美「だから、美奈子先生もPのこと、ずっと好きでいてあげてね」
美奈子「うん!」
海美「良かった…」
また涙が滲み始めた海美だったが、ごしごしと目を擦って涙を払うと立ち上がった
海美「二人とも!」
そして強がりな笑顔を見せながらも
海美「おめでとう!」
そう、祝福してくれた
一旦ここまで
乙
ところで今更だけど一つ聞いていい?
>>362
これって「美奈子が出した料理を、海美がPの口に押し込むか何かしてとどめ刺した」って理解で間違いない?
>>459
美奈子が押し込んだようにも、海美が押し込んだようにも
どちらともとれるように暈かしてある
>>460
なるほど
ついでにもう一つ聞いてもいい?
Pの記憶がないってことは、もしかして美奈子との出来事は志保が言うところの「失った2年間」と同じ時期?
>>461
一応時期はずれてる
美奈子との関係が6~7歳、志保の時は7~9歳
もっともその場その場で書いてるから多少の矛盾はあるけど
>>462
志保よりもうちょっと前だったか。じゃあ美奈子のことを忘れてたのは、志保の忘れてたのと別の原因、というかただ覚えてなかっただけなのかな?
Pが昔のこと思い出そうとして頭痛起こしてたのが√LRに似てたから、事故で志保の記憶と一緒に美奈子の記憶も忘れてしまったのかな、思ったんだが。
って、また質問ぽくなってるな。すでに2つも答えてくれてるから「ありがとう」と言いたいところだが、こんな文になってしまって済まない。細かいところまで気になるのが俺の悪い癖なんだ。
美奈子「ありがとう、海美ちゃん」
P「ありがとうな、海美」
海美「…うう~」
P「ああもう、ほら、泣くなって」
海美「だって~」
やっぱり俺は海美の涙は苦手だ
どうしてもたじろいでしまう
その後、少しだけ泣いた海美は顔を上げ、赤くなった目で俺を見る
海美「絶対後悔させるから!」
P「えっ」
さっき祝ってくれたのに一体何があったのか
>>464
『完全に記憶を無くした』2年間より前のことは覚えてはいても完全じゃないし失った記憶よりも昔のことを思い出すから脳に負担が掛かって頭痛が起きる
海美「あ、言い間違えた」
海美「えっとね、私頑張ってもっともっと魅力的な女の子になるから」
海美「あの時私に告白していればって後悔させちゃうくらい、女子力上げるから!」
P「…そっか」
海美の頭に手を乗せる
P「そうなること、期待してる」
海美「うん!」
海美「…美奈子先生」
美奈子「うん」
海美「さっきはおめでとうって言ったけど、うかうかしてると私がPを横取りしちゃうから!」
美奈子「そ、それは駄目!絶対駄目!」
海美「じゃあ、私は帰るね」
P「ん、遊んでいかなくて良いのか?」
海美「流石の私でも付き合いたての二人の邪魔はしたくないから」
P「…そっか、ありがとうな」
海美「ある程度落ち着いたら、また遊びに来て良い?」
P「ああ」
海美「ありがと!その時は美奈子先生も一緒に遊ぼ!」
美奈子「うん!」
海美「じゃあ…またね!」
P「ああ、またな」
眠い一旦ここまで
ちなみに√HW含めて全ての√で海美は諦めてなかったりする
海美が部屋に戻った後、美奈子が俺の肩に頭を寄せる
美奈子「…私、海美ちゃんが周防くんの事が好きだって知ってたのに…酷いことしちゃったかな」
P「美奈子のせいじゃない」
P「友達の好きな人を自分も好きになってしまうなんてのはある話だ」
P「だけどそれで自分の気持ちを隠して、その好きな人が誰かと付き合うことになったらきっとずっと後悔すると思う」
P「だからそういう時は自分に素直にならないと」
美奈子「周防くん…そうですね、私も、後悔したくなかったから」
P「ああ、その方が良い…海美も、悩まれるよりは気にしないでって言うと思うから」
美奈子「…はい!」
その後、少しだけいちゃいちゃしていると気が付くとすっかり暗くなっていた
P「送っていくよ」
美奈子「ありがとうございます」
暗い夜道を二人で歩く
もうすぐ夏になる季節、そろそろ夜も暑くなってくるだろう
美奈子「周防くん、夏休みは予定とかありますか?」
P「予定?いや、特には無いかな」
美奈子「それなら、私と泊まりで遊びに行きませんか?」
P「泊まりで?」
美奈子「はい!実はお父さんが修行に使っていた場所があるんです」
美奈子「基本は自給自足の場所なんですけど川や露天風呂もあってすごく良いところですよ!…虫が多いことだけは欠点ですけど」
P「話を聞いてるとすごく良さそうだな…よし、じゃあ夏休みはそこに行こう」
美奈子「やった!周防くんと一緒なら絶対楽しいと思います!思い出、いっぱい作りましょうね!」
P「ああ」
P「もう着いちゃったな」
美奈子「はい…」
佐竹飯店まで大体徒歩30分
しかし美奈子と話ながら歩いていたからか、5分くらいしか経っていないような気がする
P「…」
繋いだ手を離すのが惜しい
明日も学園で会えるのに
美奈子「…」
美奈子も同じなのか、手を離そうとはしなかった
しかしいつまでもこうしているわけにはいかない
名残惜しいが俺は手を離した
美奈子「あっ…」
P「…それじゃあ美奈子、また明日」
美奈子「はい…また明日」
P「…」
美奈子「…」
また明日と言いつつもお互いに動く気配が全くない
…どうしたもんか
そう考えていると
美奈子「周防くん」
P「ん?」
美奈子「…ん」
頬に柔らかな感触があった
美奈子「お、お休みなさい!」
顔を赤くした美奈子が家に駆け込む
俺はそれを見送った後、頬を擦り、にやけながら帰路に着いた
…誰ともすれ違わなくて良かった
一旦ここまで
二人きりの田舎性活、何が起こるやら
それから少しして、765学園は海水浴の日を迎えた
765学園では毎年一回、近所の砂浜を貸し切って学園全体での海水浴を実施している
この時持ってくる水着は特に指定されておらず、学園指定のセーラー水着でも自前の水着でも構わない
もっとも毎年何人かは過激な水着を持ってくる人がいて、問題になっているそうだ
例えば莉緒さんとか
そんなこんなで海に来た俺は
美奈子「うーん良い天気ですね!」
美奈子の水着姿に心を奪われていた
P「俺は周防P、美奈子の水着に心奪われた男だ」
美奈子「周防くん、何か言いました?」
P「いや、何でもない」
と言いつつも美奈子の水着姿をジッと見る
スラッと伸びた手足
美しい身体のライン
胸部に搭載された凶悪なまでの質量兵器
全てが輝いていて
P「ふー…」
俺はただただ感謝の気持ちを込めて拝むしかなかった
美奈子「す、周防くん、何だか全てを悟った仙人みたいになってますけど」
P「気にしないでくれ」
美奈子「は、はあ…ってそれよりも周防くん」
P「どうした?」
美奈子「せっかく海に来たんですから、目一杯遊びましょうよ!」
美奈子「いっぱい遊んでから食べるご飯はきっといつもより美味しいですよ!」
P「良し、楽しみだ」
一旦ここまで
美奈子+海のシチュが海の家しか思い付かない自分が情けない
美奈子と砂浜を駆ける
美奈子と水を掛け合う
また美奈子と砂浜を駆ける
昼に超特盛焼きそばを食べる
5kg程度しか無かったので少し物足りなかったが、味は最高だった
P「美味かった、ご馳走様」
美奈子「お粗末さまでした」
海の家と厨房を借りていた美奈子が戻ってくる
P「この後どうする?」
美奈子「食べてすぐ運動するとお腹が痛くなっちゃいますから、少しゆっくりしましょう」
P「わかった」
P「しかしあれだな」
美奈子「?」
P「美奈子の水着、よく似合っててすごく可愛い」
美奈子「ありがとうございます!えへへ…実は新しく買ってきたんです」
P「そうなのか」
美奈子「はい!」
P「うん、良い物が見られて、それだけでも今日来た甲斐がある」
眼福だ
もう数日休みくたまさい
美奈子「周防くんの水着も、格好いいですよ!」
P「ありがとう」
美奈子といちゃいちゃしながら過ごす
海に入らなくても、こうしているだけで十分楽しい
二人で海を眺めていると、響とエレナが蟹を乱獲していた
P「蟹か…」
美奈子「蟹といえば、9月からうちの店で上海蟹を仕入れるんです」
P「上海蟹?」
美奈子「はい!すごく美味しい蟹です!」
美奈子「だから周防くん、うちや周防くんの家で一緒に食べませんか?」
P「喜んで」
上海蟹か…楽しみだ
その後も美奈子と引っ付いたまま、一度も海に入ること無く海水浴は終わった
朝、のそっとベッドから起き上がる
時刻は大体5時、今日から夏休みなので普段なら昼まで寝ているところだが…
ここで時は数日前に遡る
数日前、学食にて
恵美「そういやPと美奈子は夏休みどうすんの?」
P「夏休みか…一応美奈子と泊まりで出かける以外は予定は無いかな」
恵美「泊まり…ね」
エレナ「メグミ…」
美奈子「私も、特に予定は無いかな」
冬馬「泊まりがけの旅行か、けっ、リア充は羨ましいぜ」
P「羅刹はなんであんな荒れてるんだ?」
翔太「最近Pくんに構って貰えなくて拗ねてるんだよ」
P「なるほど」
P「冬馬」
冬馬「なんだよ」
P「夏休みの課題、お前さえよければ一緒にやろうぜ」
冬馬「!し、仕方ねえな、どうしてもって言うなら一緒にやってやるぜ」
P「おう、頼む」
翔太(ちょろ)
恵美(あまとうちょろいな~、アタシもだけど)
エレナ(アマトウちょろいネ~)
美奈子「じゃあ先に課題を終わらせちゃいましょう!」
恵美「あー、待った待った」
P「?」
恵美「美奈子、旅行は行くつもりだったの?」
美奈子「一応夏休みが入ってすぐのつもりでしたけど…」
恵美「ならその予定通り進めなって」
美奈子「え?でも」
恵美「課題なんかいつでも出来るからさ、ウチらに合わせたら滞在期間の予定とかも変わっちゃうかもしれないし」
恵美「だから自分達の予定を優先させること、わかった?」
美奈子「恵美ちゃん…うん、わかった」
恵美「良し、じゃあ美奈子とPが帰ってきたら適当に集まって課題やろっか」
エレナ「わかったヨー」
翔太「おっけー」
冬馬「早く帰って来いよな」
P「気が向いたらな」
美奈子「あ、早く食べないとお昼休み終わっちゃいますよ!」
P「っと」
その言葉に昼食を掻き込む
さっと食べ終えた俺達は、それぞれの教室へ戻った
その途中で
美奈子「周防くん」
P「ん?」
美奈子「お泊まり、もう夏休みの初日から行っちゃいましょう」
P「ん、わかった」
そして今に至る
一旦ここまで
P「そろそろ準備するか…」
まだ眠い頭を振りながら、俺は着替え始めた
美奈子「周防くん!」
約束の時間の10分前、待ち合わせのバス停に美奈子がやってきた
美奈子「ごめんなさい、待たせちゃいましたか?」
P「いや、俺も来たばかりだから大丈夫だ」
美奈子「それなら良かった…」
P「ここからどのくらい掛かるんだっけ?」
美奈子「色々と乗り継いで大体3時間くらいですね」
P「3時間か」
美奈子「途中の景色も良いので、楽しいですよ!」
P「楽しみだ」
バスに乗り、電車に乗り、再びバスに乗る
変わる景色を美奈子と一緒に楽しみながら、俺達は目的地へと向かう
P「良い景色だ」
綺麗な川や青々とした山
何故こういう山の景色は人の心を穏やかにするのだろう
美奈子「ここの川で取れる鮎は絶品なんですよ」
P「鮎か」
鮎は美味い魚だ
それが絶品となると腹が空いてくるのも当然というもの
…早く色々と食べたいな
美奈子「着きました!」
P「うーん、空気が美味い」
バスから降りた俺はその場で深呼吸をする
澄んだ空気を胸一杯に吸い込み、吐き出した
美奈子「実はですね、ここは水がすごく美味しいんです」
P「水が?」
美奈子「はい、佐竹飯店で使う水は毎日ここの水を送って貰ってるんです」
P「へー」
そんなに美味しいのか
美奈子「さ、行きましょう周防くん」
美奈子が自然に手を握ってくる
P「ああ」
俺はそんな美奈子の手を握り返し、歩き出した
少し歩くと、目的地にはすぐに到着した
俺達を待っていたおばあさんと一言二言話す
どうやらこのおばあさんは俺達が泊まる場所の管理人らしい
美奈子が管理人と会話をしているのを尻目に、俺は村を見渡していた
田んぼや畑があり、そこで作業をしている人達がいる
少し向こうには川もあり、きっとあそこで鮎が悠々と泳いでいるんだろう
すごくのどかで、穏やかなところだ
美奈子「さ、周防くん、入りましょう」
P「ん」
管理人との話が終わったのか、美奈子が声をかけてくる
俺は美奈子と一緒に、家の中に入った
家の中はひんやりとしており、暑くて茹だりそうな外とは大違いだ
P「結構ひんやりしてるんだな」
美奈子「木造家屋ですから」
快適で過ごしやすそうだ
美奈子「さてと」
荷物を置いた美奈子が、鞄からエプロンを取り出す
美奈子「周防くんも長旅でお腹が空いてますよね?だから今からご飯を食べましょう!」
P「確かに、腹ペコだ」
昼には時間まだ早いが、この時間ならまだまだ朝食の時間だ
朝食は食ってなかったから尚更だ
美奈子「それじゃあ準備しますね!」
P「手伝うよ」
美奈子と一緒に朝食の準備をし、美味い朝食を楽しんだ
一旦ここまで
朝食の後、二人で釣りの準備をする
P「すごいつりざおだな、これ」
美奈子「その釣り竿、噂では龍すら釣れるそうです」
P「龍ね…」
龍のようにでかい魚ということだろうか
美奈子「お弁当よし、釣り具よし、水筒よし」
美奈子が指を差しながら持ち物を確認している
美奈子「準備完了です!それじゃあ周防くん、行きましょう!」
P「ああ」
少し歩くと、川が見えてくる
バスから見たときも思ったが、綺麗な川だ
適当な位置にクーラーボックスを置く
美奈子はその周辺にブルーシートを敷き、日光避けのパラソルを立てた
そしてクーラーボックスの中からスイカを取り出すと、川に沈める
美奈子「お昼ご飯の後に一緒に食べましょう」
P「ああ」
俺は釣り竿を調整し、美奈子に渡した
美奈子「それ!」
二人分の浮きが川に浮かぶ
さあ、どれだけ釣れるかな
P「夕飯には困らないな」
美奈子「ですね」
また釣れた魚をクーラーボックスに放り込む
入れ食いだった
面白いくらい釣れる
P「いや-大漁大漁」
美奈子「私、こんなに釣れたのは初めてかも」
クーラーボックスを所狭しと泳ぐ魚を見ながら美奈子がそう言った
P「そろそろ昼にする?」
美奈子「そうですね、良い時間ですし」
P「ふう…食った食った」
クーラーボックスに入っていた魚の半分を食べ、一息つく
やはり釣りたての魚をその場で塩焼きにして食べるのは最高だ
量も中々に満足出来る量だったし
この数ヶ月で以前とは比べものにならないくらいの量が食べられるようになった
これも美奈子のおかげかな
美奈子「周防くん、デザートに西瓜はいかがですか?」
P「食べよう」
西瓜くらいならまだ3玉はいける
P「良い場所だな」
二玉目の西瓜を食べながら、美奈子に本心を伝える
P「穏やかで、なんて言うのかな…すごく落ち着く場所だ」
良く若い人達が老後は田舎に住みたいっていう気持ちが分かった気がする
P「俺も年を取ったらこういうところで余生を送りたいな」
美奈子「そうですね…子供にお店を託して、二人でのんびり過ごして」
P「たまにやってくる孫にお小遣いあげてさ、みんなで飯食って」
美奈子「花火をしたり、今日みたいに釣りをしたり、お店のために新鮮な肉や野菜を届けたり」
P「きっと、何だかんだで忙しくしてるんだろうな、未来の俺達も」
美奈子「…周防くん、ちょっとこっちを向いてくれませんか?」
P「ん?」
美奈子に言われた通り美奈子の方を向くと
美奈子「…ん」
俺の唇に、美奈子の唇が重ねられた
P「…美奈子」
美奈子「えへへ…♪周防くんとの未来を想像したら、すごくキスしたくなっちゃいました」
P「…俺もだ」
美奈子「んっ」
今度は俺の方からキスをする
美奈子「お返しです」
P「こっちも反撃だ」
俺達は周りを一切気にせず、キスをし合った
気が付いたときには日が沈みかけていた
一旦ここまで
P「良い湯だ」
夕飯を食べた後、風呂に入る
かなり大きな檜風呂で、まるで温泉みたいだ
天窓からは星も見えており、露天風呂に入っているような気分になる
美奈子「周防くん、湯加減はどうですか?」
脱衣所の向こうから美奈子が声をかけてきた
P「最高の湯加減だ、極楽だよ」
美奈子「それなら良かったです」
曇りガラスの向こうに美奈子のシルエットが見える
何か作業をしているようだが洗濯だろうか?
そう思い意識を逸らした瞬間
美奈子「お邪魔しますね!」
ガラッと音を立てて美奈子が浴場に入ってきた
P「えっ」
バスタオルを巻いた美奈子が浴場に現れ、一瞬呆けるが…
P「み、美奈子!?」
すぐに焦りに変わった
な、なんでいきなり入ってきたんだ!?
さっと身体を流した美奈子は浴槽に入り、腰を下ろす
美奈子「はい周防くん、よく冷えた麦茶をどうぞ」
P「あ、ああ、ありがとう」
美奈子からコップを受け取り、飲む
キンキンに冷えていて美味い
美奈子「本当に、良いお湯ですね」
美奈子が空を見上げながらそう呟く
俺は美奈子の身体に視線を奪われてそれどころではないが
美奈子「…周防くんの視線、感じます」
P「あ、ご、ごめん」
美奈子「周防くんに見られてすっごくドキドキして…身体が熱くなっちゃいます」
P「美奈子…」
美奈子「ねえ、周防くん…ううん、Pくん」
美奈子が俺を下の名前で呼ぶ
美奈子「私、Pくんが好きです、大好きです」
美奈子「ずっと一緒にいたいって思ってます、だから」
美奈子「今日、一緒に寝てくれませんか…?」
P「…ああ、もちろんだ」
美奈子「な、なんだか緊張しますね」
P「あ、ああ…」
風呂からあがった俺達は並んで敷いた布団の上に座り、顔を伏せていた
これから美奈子と、そういうことをする
もちろん俺は初めてだし美奈子もきっとそうだと思う
だからこそ余計に緊張する
美奈子「で、電気消しますね」
美奈子が紐を引き、照明が落ちる
暗くなった部屋を、豆球の光だけが辺りを照らす
P「…」
部屋が暗くなったからか、少しだけ落ち着くことが出来た
P「美奈子」
美奈子の手を握ると、握り返される
美奈子「私、やっぱりちょっとだけ怖いですけど…」
美奈子「この温かさがあれば安心できます」
美奈子「だからPくん、私の手、離さないでくださいね?」
P「ああ、もちろん」
美奈子「良かった」
そう言って微笑んだ美奈子とキスをし、抱き締め合う
そして
美奈子のスペシャルフルコォスを隅々まで、心行くまで堪能した
一旦ここまで
P「ん…?」
美奈子と繋がり、心も体も満たされた俺はふと違和感を覚えて目を覚ました
美奈子「あっ、起こしちゃいましたか?」
P「美奈子…?」
美奈子が微笑みながら俺の頬を突いていた
美奈子「Pくんの寝顔が可愛らしかったのでついいたずらしたくなっちゃいました」
P「可愛らしいか…」
可愛いと言われてもあまり嬉しくない
美奈子「昨日は凄く…その…えへへ」
照れながらはにかむ美奈子
凄く可愛らしい
美奈子「昨日お腹一杯になって、改めて思ったんです」
美奈子「お腹が一杯になるって幸せだなぁって」
P「そうだな…満たされた感ってやっぱり重要だよ」
美奈子「だから私は、Pくんをずっとずっとお腹一杯にしたいって思ってます」
P「美奈子…」
美奈子「でも今は」
美奈子がしなだれかかってくる
美奈子「また、私をお腹一杯にして欲しいなって」
そう言いながらキスをしてくる美奈子に俺は
おかわりをした
P「もうこんな時間か…」
美奈子との田舎暮らしはあっという間だった
一緒に熟れたトマトをもいだり交わったり花火をしたり交わったりハイキングしたり交わったり…
無駄な時間なんか一切無く、最後まで満たされた最高の時間だった
しかし時間は有限なもので、俺達は家に帰る準備をしていた
P「もう少しいたかったな」
美奈子「私も…P君と一緒にいた時間が楽しすぎて帰りたくないなぁ…」
…いかんいかん、最後の最後で楽しかった時間にケチをつける訳にはいかない
切り替えないと
P「…でもさ美奈子、考えを変えてみないか?」
美奈子「考えを変える?」
P「ああ」
P「もっといたいのに残念じゃなくて、次来るときが楽しみって考えよう」
美奈子「次に来るときが楽しみ…」
P「そう、それなら悲しくないし早く来年になれ!って思えるだろ?」
P「1度に全部やる必要はないんだ、俺達にはまだまだ時間があるんだから」
美奈子「…そうですね、うじうじするより前向きに考える方が楽しいですよね!」
P「ああ、だから帰ろう美奈子」
P「また来年、ここで楽しい思い出を作るために」
美奈子「はい!」
美奈子と手を繋ぎ、数日世話になった場所を出て、振り返る
…来年も、再来年もその先も
またここで思い出を作れたら良いな
そんなことを思いながら、俺達は町に帰った
田舎から帰ってきた数日後
冬馬「勉強しろオラァ!」
冬馬の叫びがリビングに響き渡った
P「なんだよいきなり」
冬馬「いきなりじゃねえよ!今日何のために集まったか言ってみろ!」
P「そりゃお前、勉強会のためだろ」
冬馬「ああそうだ、勉強会のためだ、で、この状況はなんだ?」
冬馬がリビングの一角を指差す
恵美「アタシは仲間を裏切らないよ、つまりアタシに裏切られるって事は仲間じゃ無いって事」
志保「恵美さん、あそこに増資すればたんまりと資産を奪えますよ」
翔太「げ、外道!」
海美「ちょっと待ってめぐみー!私次の目1しか出ないのにそこに増資しないで!」
美奈子「大丈夫だよ海美ちゃん!私達なら巻き返せる!」
琴葉「エレナ、恵美のエリアの株は?」
エレナ「もちろん確保してあるヨー」
発売されたばかりの某蹴落としすごろくゲームで遊んでいる課題手付かず組(一部を除く)がいた
P「楽しそうだよな」
冬馬「そうだな、俺もやりた…ってそうじゃねえ!勉強しろよ!」
P「良いじゃないか息抜きくらい」
冬馬「この勉強会を始めて何時間経ったか言ってみろ」
P「30分だが」
冬馬「息抜き早すぎんだろ!というか所や翔太は課題のノートすら最初から出してねえじゃねえか!」
今の状況になんだかんだで真面目な冬馬は頭を抱えていた
一旦ここまで
長く期間空けちまって申し訳ないね
P「まあ良いじゃないか、夏休みはまだまだ始まったばかりなんだし」
冬馬「それはそうだけどよ」
P「俺達も何かして遊ぼうぜ」
冬馬「ならこいつで勝負するか」
P「良いぜ、ちょうど新しいデッキ組んだところだ」
冬馬「へっ、んなもん叩きのめしてやるぜ」
結局勉強そっちのけでカードファイトを始める俺達
勉強会に集まった筈の俺達は、誰一人として課題に手をつけなかった
昼を少し回った頃
冬馬「そろそろ腹が減ってきたな…」
デッキをカットしていた冬馬がポツッと呟いた
その呟きは小さなもので、殆ど独り言のようなものだったのだが
美奈子「天ヶ瀬君がお腹が空いたみたいですしそろそろお昼にしましょうか!」
美奈子にはバッチリ聞こえたようだ
冬馬「昼か、なら俺がつく」
美奈子「天ヶ瀬君は座っててください!私が皆の分ちゃんと用意しますから!」
そう言って胸ポケットからエプロンを取り出した美奈子は、さっとエプロンを身に着けて台所へと向かった
恵美「美奈子-、アタシも手伝うよ」
美奈子「ありがとうございます恵美ちゃん!」
冬馬「なあ、P」
P「ん?」
美奈子と恵美のエプロン姿を眺めていると冬馬が声をかけてきた
冬馬「佐竹が昼飯作るのは良いんだがよ、量は大丈夫なのか?」
P「量?ああ、(美奈子や俺にとって)普通の量だから大丈夫だよ」
冬馬「そうか、それなら一安心だな」
一旦ここまで
なんとぉ!食欲の秋キャンペーン開催中です!
その後琴葉が調理の手伝いに向かった
海美も手伝いたがっていたのだが、流石にキッチンが狭く、皿出しに回ったようだ
翔太「お昼ご飯、楽しみだねー」
P「美奈子の料理は美味いぞ-、世界一だ」
冬馬「俺の料理とどっちが美味い?」
P「言うまでもなく美奈子に決まってるだろ、ThePurgeのスキル、フィフスドライブ」
冬馬「げっ…ノーガード」
P「ファーストチェック、クリティカル、セカンド、クリティカル、サード、ドロー」
ドライブチェック中にエレナの声が掛かる
エレナ「ご飯出来たヨー」
冬馬「よっし運ぶのに邪魔だからファイトは中断な!片付けようぜ!」
P「あっ、てめ!」
冬馬の姑息な手でファイトは強制的にせ引き分けになってしまったが、海美達が皿を運び始めたのでカードを片付けて手伝いに行く
冬馬「…おい、P」
山盛り炒飯で顔の隠れている冬馬が声をかけてきた
炒飯が重いのか、手がプルプルと震えている
P「なんだ?」
冬馬「お前普通の量だから安心しろって言ったよな?」
P「言ったな」
冬馬「で、なんだよこれは」
P「普通の量だろ」
冬馬「そうか…これが普通か…」
P「普通だろ」
翔太「Pくん、完全に洗脳されちゃったんだね…」
洗脳とは失礼な奴だ
恵美「まー今日は人数多いし量があるにこしたことはないから良いじゃん」
冬馬「それはそうかもしれねえけどよ…」
P「恵美、それ重いだろ、俺に任せてくれ」
恵美「だいじょーぶだいじょーぶ、このくらいなら全然平気…ぃ!?」
そう言った直後にバランスを崩す恵美
P「恵美!」
片手で皿を受け止め、もう片方の手で恵美を抱き止める
P「言わんこっちゃない」
恵美「あ、ありがと…」
P「俺が持って行くから、恵美は他のを頼む」
恵美「う、うん…」
恵美から皿を受け取り、テーブルまで運ぶ
P「…?」
何だろう、チリチリするような視線を感じる
視線の出所を確かめるために辺りを見渡してみるが…
誰かが俺を見ているわけでも無い
…気のせいか
テーブルに料理を並べ終え、席に着く
冬馬「美味そうだな…量はともかく」
翔太「ほんと、美味しそうだよね…量はともかく」
海美「はやく食べようよ!」
P「そうだな」
美奈子「それじゃあ皆さん!たんと召し上がれ!」
海美「いただきます!」
みんな思い思いに食べたいものに箸を伸ばす
俺は何から食べようかな
そう頭を悩ませていると
P「?」
またチリチリするような視線を感じた
今度ははっきりと感じる
視線の主は…
美奈子「…」
ニコニコしながら俺を見ている美奈子だった
しかし何故だろう、すごく良い笑顔のはずなのに凄まじいプレッシャーを感じる
…もしかして、怒ってる?
もし怒っているなら理由がわからない
何でだ?
美奈子のプレッシャーを受けながら昼を食べる
結局食べ終わるまで、美奈子が怒っている理由がわからなかった
冬馬「結局一日遊んでるだけだったな…」
P「そんな日もあるさ」
昼食後も遊び倒して日も沈んだ頃、お開きとなった
翔太「じゃあ僕たちは帰るね」
P「おう、またな」
恵美「ウチらも帰るね」
P「送っていかなくて大丈夫か?」
恵美「へーきへーき」
エレナ「Pはワタシ達よりも、ミナコをちゃーんと送ってあげなきゃだヨー」
P「それはもちろん」
恵美「にゃはは、送り狼になっちゃ駄目だよ?」
P「…おう」
琴葉「送り狼って?」
P「えっ」
恵美「んじゃまたねー」
エレナ「バイバーイ!」
琴葉「ねえ恵美、送り狼って?」
みんなを見送った後、美奈子と帰り道を歩く
美奈子「…」
P「…」
しかし会話は無く、二人の間には重い空気が流れていた
結局家に着くまで会話は無く、美奈子と分かれる時間になった
P「それじゃあ美奈子、また」
重苦しい空気が嫌だったのですぐに立ち去ろうとしたのだが
美奈子「…」
美奈子に後ろから抱きしめられた
P「美奈子…?」
美奈子「Pくん、今日恵美ちゃんを抱き締めてました」
P「あれは…」
助けるためだったから仕方ない、そう言おうと思ったのだが、口には出せなかった
美奈子「分かってるんです、あれは恵美ちゃんを助けるためだから仕方ないって」
美奈子「逆に助けてなかったらあそこで怒ってましたから」
美奈子「でも、頭で理解していても心はそんな簡単じゃなかったんです」
美奈子「恵美ちゃんを抱き止めたのを見たときすごくもやもやして…」
美奈子「私以外の女の子に触れて欲しくないって、思っちゃった…」
P「美奈子…」
振り返って美奈子を抱き締める
P「ごめんな、嫌な思いをさせて」
美奈子「ううん、謝るのは私の方ですから」
美奈子「でも、もっともっと強く抱き締めて欲しいです」
P「ああ」
美奈子の希望通りに強く、包み込むように抱き締める
美奈子「Pくん」
美奈子がキスを求める
俺はそれに応えるようにキスをする
美奈子「…今日は、両親が泊まりがけで出掛けてるんです、だから」
P「…じゃあ」
美奈子「はい、今日は…朝まで一緒にいたいな」
P「…俺もだ」
美奈子に手を引かれて家に入り…
夜の運動会おかわりもあるよ!を堪能した
一旦ここまで
何もしなかった勉強会からしばらくして、再度集まり課題を終わらせた俺達は今、夏祭りに来ていた
冬馬「屋台ってのは良いもんだ」
P「ああ」
屋台の食べ物ってどうしてこう美味いのだろう
恵美「やー、つい買いすぎちゃうし食べ過ぎちゃうね」
美奈子「恵美ちゃん、食べ過ぎちゃうのは悪いことじゃないよ!だって美味しいものを求めるのは人の本能なんだから」
美奈子「だからもっと食べよう!まだこんなにあるから!」
恵美「それ全部…?いやいやいや」
美奈子が恵美に屋台の食べ物を勧めている
しかしあの程度で腹の足しになるのだろうか
冬馬「相変わらずスゲえ量だ」
P「そうかの?」
冬馬「そうだよ」
P「そうか…俺にはあれで腹の足しになるとは思えないな」
冬馬「…そうか」
翔太「なんでも良いけど、置いてかれちゃうよ」
P「おっと」
粗方屋台を回り終えた俺達は、花火のために移動を開始する
美奈子「ここは?」
P「我が家の花火スポットだよ」
P「家の母親がそれはもう大層な面倒臭がりでな、花火のために人ごみに飲まれるのは嫌だからって言って土地を買ったんだ」
美奈子「す、凄いですね……でも、Pくんのお母様か…いつか、お会いしたいですね」
P「そうだな…いつこっちに帰ってくるかはわからないけど、その時は是非会ってやって欲しい」
P「まあ母さんは美奈子みたいな子は基本的に大好きだから、すぐに気に入ってくれるさ」
P「基本的に単純な人だから美奈子の手料理でも食べさせたら簡単だ」
美奈子「ふふ、その時はお母様に最高の料理を振る舞いますね」
P「ああ」
そうこうしているうちに花火が上がる
美奈子「わあ…!ここ、とても良く見えますね!」
P「だろ?だから毎年花火はここで見るんだ」
美奈子「綺麗…」
P「…来年も、ここで一緒に花火を見よう」
P「再来年も、そのまた次も、一緒にここで」
美奈子「Pくん…」
P「約束だ」
美奈子「!…はい!約束ですよ!」
美奈子と約束を交わす
昔交わした約束はもう思い出せないけど
…今度は絶対に忘れはしない
この約束は、絶対に果たすんだ
肩を抱くと、美奈子は頭を預けてくる
二人で見上げる花火は、今まで見てきた花火の中でも最高に輝いていた
一旦ここまで
夏休みも終わりが近付いてきたある日のこと
P「…」
ベッドでスマホを弄っていた俺は
美奈子「Pくん!大変です!」
P「おわぁ!?」
突然部屋に飛び込んできた美奈子に不意を突かれ、ベッドから転げ落ちた
P「な、なんだ!?…美奈子?」
美奈子「Pくんこれ!これを見てください!」
そう言ってチラシを俺に見せる美奈子
P「何々…?商店街大食い大会…?」
美奈子「はい!今年からやるようになったみたいで、景品も出るみたいです!」
P「大食い大会か、面白そうだな」
美奈子「ですよね!それでですね、私は是非Pくんに参加して欲しいなって思って」
P「美奈子がそれを望むなら出るよ、格好いいところ見せましょう」
美奈子「なら今日から特訓しましょう!」
P「特訓?」
美奈子「はい、大食い大会はただ食べられるだけでは勝てません」
美奈子「適切な胃拡張、食べる際の工夫、食べ方を極めてこそちゃんとしたフードファイターになれるんです」
P「いや、フードファイターになる気は無いが」
美奈子「なので私と一緒に特訓して、必ず勝ちましょう!」
P「…そうだな、出る以上は負ける気は無い、必ず勝ってみせる」
一旦ここまで
次回、765学園物語 √FF
美奈子「まずはPくんが今どれだけ食べられるか確認しましょう」
美奈子「最大許容量を把握して、それから調整のメニューを考えます」
P「わかった」
美奈子「ではまずは焼きそばです、丁度一皿1kgあります」
美奈子「これを食べてみてください」
P「いただきます」
俺は小盛りの焼きそばに手をつけた
P「ごちそうさま」
美奈子「流石Pくん、1kgは余裕ですね」
P「まあな」
このくらいなら後6皿くらい追加しても問題は無い
美奈子「では次は焼き飯を1kgです」
P「了解」
美奈子「苦しくなってきたら言ってくださいね?」
P「ああ」
俺は小盛りの焼き飯に手をつけた
765学園物語SE √Xmas
RRR
海美「P!メリークリスマス!クリスマスだよ、クリスマス!」
P「そうだな…今日一日、一緒に過ごそうな」
海美「今日だけじゃなくて、これからもずっとだよ!」
P「海美…ああ、その通りだ」
海美「ほら、ケーキ焼いたから皆で食べよっ!」
P「海美はほんと料理が上手くなったな、楽しみだ」
海美「皆でケーキ食べて、パーティーして」
P「その後は?」
海美「もちろんプレゼントをあげる!期待しててねっ!」
FW
恵美「クリスマスだね」
P「クリスマスだな」
恵美「雪降ってるね」
P「雪降ってるな」
恵美「寒いね」
P「寒いな」
恵美「でもさ、くっついてたら暖かいね」
P「恵美の熱、全身で感じられるよ」
恵美「アタシも」
P「…なあ、恵美」
恵美「うん、良いよ」
HW
琴葉「クリスマス…聖なる夜」
琴葉「いつもPくんと一緒にいるけれど、やっぱり何だか特別な感じがする」
P「年に一度のイベントだからな」
琴葉「でもね、Pくん」
琴葉「私にとってPくんといる毎日は一日一日が特別な日なの」
琴葉「だからこれからも私に、特別な日をくれますか?」
P「ああ、もちろんだ」
P「俺も、琴葉と過ごす毎日は凄く特別だと思ってる」
P「だからこれからも、ずっと特別な日にしよう」
琴葉「…はい!」
BMC
翼「クリスマスですよ!」
P「クリスマスだな」
翼「チキン食べ放題!」
P「ちゃんと買ってあるぞ」
翼「わあい!P先輩大好き!」
P「ケーキも買ってきた」
翼「ねえねえP先輩」
P「ん?」
翼「わたしも、P先輩にプレゼント用意したんですよ?」
翼「なんだと思いますか?」
P「なんだろ…?気になるな」
翼「えへへ、きっと驚きますよ」
P「楽しみだ」
翼「それじゃあ早く帰ってパーティーしましょー!」
PN
P「ジュリア、今日はクリスマスだぞ」
ジュリア「そうだな、それで?」
P「今日は恋人同士が仲良くする日なんだ」
ジュリア「そうだな、それで?」
P「だから仲良くしよう!」
ジュリア「わかったから近付いてくるなバカP!」
P「仲良く…してくれないのか?」
ジュリア「だってその…恥ずかしいだろ」
P「ジュリア-!」
ジュリア「こ、このバカー!」
LR
P「良い物あったか?」
志保「はい、これならりっくんも喜んでくれると思います」
P「楽しみだな」
志保「はい」
P「ま、それはそれとしてだ、はいこれ」
志保「…これは…?」
P「サンタからのクリスマスプレゼント、かな」
志保「猫のペンダント…」
P「きっと志保に似合うと思う」
志保「ありがとう兄さん…一生の、宝物にします」
P「さ、帰ろう志保」
志保「はい!」
PG
静香「寒いですね…」
P「雪も降ってきたからな~」
静香「でも、繋いだ手は温かいです」
P「もうちょっとくっつくか?」
静香「そうですね…では、お言葉に甘えます」
P「こうやって、静香とクリスマスを過ごせて良かった」
静香「私も、あなたとクリスマスを過ごせることが嬉しいです」
静香「…もう少しこうやっていたいけど」
静香「志保から3秒おきに早く帰ってこいと催促されているので、一度帰りましょう」
P「そうだな…」
静香「Pさん」
P「ん?」
静香「大好きですよ」
TP
百合子「今日はクリスマス、イエス・キリストの生誕祭ですね!」
百合子「仏教が主流の日本でキリストの生誕祭がこんなにも人気があるのは不思議ですよね」
P「やっぱりみんな好きな人といちゃいちゃしたいんだよ」
百合子「私達みたいに…ですか?」
P「そうそう」
百合子「ふふ、昔はクリスマスなんか中止すれば良いのにって思ってましたけど、今はクリスマスはなくてはならない行事になっちゃぃました」
百合子「だってずっとこうやって先輩に甘えられますから」
P「百合子…」
百合子「ところで先輩、クリスマスは別名性なる夜ですよね」
百合子「今日は私の家が空いてますので、サンタさんが来てくれるのを、待ってますねったら」
P「…百合子はいやらしいなぁ、ま、俺もサンタにプレゼントをお願いしておこうかな」
P「一番大切な女の子と過ごす、クリスマスプレゼントを」
一旦ここまで
天津飯、エビチリ、回鍋肉をそれぞれ2kgずつ食べ、青椒肉絲を半分程食べた辺りだろうか
P「…」
俺は満腹感を覚え、少し箸が止まった
一度箸を置き、水で口直ししようとしたところで
美奈子「ストップです」
美奈子からストップがかかった
美奈子「Pくん、今満腹感を覚えましたよね」
P「すごいな…なんで分かったんだ?」
美奈子「表情です」
P「表情?」
美奈子「はい、Pくんは考えていることが割と顔に出てわかりやすいというのもありますけど、苦しさが顔に出ていました」
P「マジか」
美奈子「はい、プロのフードファイターはそれで相手の状態を察知して戦意を削ぐためにスパートをかけたりします」
美奈子「もちろんブラフとしても使えますけど…Pくんは正直ですから」
P「ブラフには使えそうに無いって事か」
美奈子「あ、でも私は正直で誠実なPくんが大好きですよ!」
P「ありがとう美奈子、俺も美奈子が大好きだ」
一旦ここまで
今年は後半かなりサボり気味だったので来年はそうならないように努力します
良いお年を
姫始めは修学旅行までお待ちを
とりあえず一旦これをどうぞ
765学園物語 √U10p 序1
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=9105481
美奈子「えへへ…♪とにかくですね、Pくんのその素直なところはすごく素敵で大好きなんですけど、フードファイトではそれが命取りになってしまう場合もあります」
美奈子「ただ、ポーカーフェイスは一朝一夕で身に付く物でもありません」
美奈子「だから別の手段として圧倒的な力でライバルをねじふせて、二度と立ち上がれないぐらいやっつけるという手もあります」
P「なるほど…」
個人的にはポーカーフェイスを取得するよりもパワーでねじ伏せる方が良いな
P「なら俺は対戦相手を正面からねじ伏せるやり方で行こうと思う」
美奈子「わかりました!なら特訓メニューは単純明快」
美奈子「ただひたすらに限界まで詰め込みましょう!」
P「よし、優勝目指してやってやるさ」
美奈子「では早速特訓を…と言いたいところですけど8kg食べた後ですし、流石に無理をして身体や胃を壊してしまっては意味がないので今日はやめておきましょう」
P「そう?」
美奈子「はい、その代わり」
美奈子が俺の後ろから手を回して抱き着いてくる
美奈子「今日はイチャイチャしましょう」
P「うーん素晴らしいご褒美だ」
思う存分イチャイチャし、料理以外も堪能した翌日
美奈子「おはようございますPくん!昨日は沢山運動してカロリーを消費しちゃいましたから今日もたっぷり補給しましょうね!」
P「ああ、カロリーは味方だからな、摂れば摂るほど力になる」
美奈子「今日からは大会に向けて食べ方を特訓していきましょう!」
P「食べ方の特訓?大食いに食べ方で差が出たりするのか?」
美奈子「それはもちろん、食べ方で結構な差が出ますよ」
美奈子「必要な量だけ口に運ぶ…常に自分のペースを保つ事が大切です」
美奈子「これは短時間で数をこなさなくてはならない早食い、制限時間内で限界まで食べる大食い、どちらにも必要です」
P「早食いとかって掻っ込むイメージがあるけど、あれは駄目なのか?」
美奈子「二杯三杯くらいの早食いなら有効かもしれませんけど、基本的に掻き込む食べ方は食べ物と一緒に大量の空気を口内に入れることになります」
美奈子「大量に空気を入れると必然的に口の中が乾き、それを補うために水分を必要とします」
美奈子「水分の摂取は大食いの天敵です、胃の中の食べ物によってわずかな水分ですら嵩増しされますから」
P「なるほど、水のがぶ飲みは危険か」
美奈子「はい、だから水分補給は最小限にしないといけません」
美奈子「常に適量を自分のペースで、これが鉄則です!」
美奈子「まずは自分のペースを作るところから始めましょう!」
P「了解だ」
美奈子「ではまずは大食いから練習しましょう!早食いの練習は後回しです!」
一旦ここまで
今日で765学園は二周年、三年目は一年目と同じくらいになれるようペース上げていきます
美奈子「まずは自分の口に入る分だけ口に運び、良く噛みます」
美奈子「良く噛むのは唾液分泌を促して通りを良くするためです」
P「…」もぐもぐ
美奈子「良いペースですね!そのペースを保ちながら終盤まで粘ります!」
P「…」ずるずる
美奈子「終盤になってくると流石にお腹が辛くなってくると思います」
美奈子「でもそこが正念場です、苦しさを顔に出さず、相手を観察する…そして隙を見てスパートをかける、これが鉄則です」
美奈子「だけどPくんの場合はポーカーフェイスをしないので残り時間を見て、自分がスパートをかけたいタイミングで仕掛けるやり方になります」
美奈子「自分の状態を常に把握して力の限り戦う…これがPくんの戦い方です」
P「なるほど」
とりあえず用意された料理3kgを完食する
P「要は、好きに戦えって事だな」
美奈子「ぶっちゃけそうですね」
マイペースに、やりたいようにやる
簡単そうだが案外難しいんだよな
だけど
P「やってやるさ」
勝負に負けるのは好きじゃない、出るからには勝ちに行く
美奈子「はい!頑張りましょう!」
この日は食べ方を研究しながら、限界まで詰め込んだ
特訓を始めてから数日が経った
志保「兄さん、最近よく噛んで食べるようになりましたね」
P「そうか?」
志保「はい、良いことだと思います」
桃子「何お兄ちゃん、急に健康にでも目覚めたの」
P「いや、実は特訓してるんだ」
志保「特訓?」
桃子「何お兄ちゃん特訓って、何かと戦うの?」
P「自分自身の限界と…かな」
桃子「中二病なら育だけで間に合ってるから」
P「中二病じゃないって、実は商店街の方で大食い大会をやるらしくてさ」
志保「大食い大会…確かに商店街で買い物をしている時にそんなチラシを貰いました」
P「ここ数日胃袋の限界まで詰め込んだり食べるペースの配分とかの特訓をしていてな、それで良く噛むになったんだ」
桃子「大食い大会ね…美奈子さんと付き合ってるからかなりの量食べられると思うけど、お兄ちゃんどれくらい食べられるの?」
P「ちょっと前までは大体7kgくらいだったけど、特訓を始めてから10kgくらいは食えるようになったぞ」
桃子「ごめん想像より遙かに上だった…ていうかそんなに食べてるのに太らないとか怖いよお兄ちゃん」
P「いやー俺も不思議だ」
一旦ここまで
志保「でも兄さん、筋肉も最近増してますよね」
P「お、よく俺が筋トレしてるって分かったな」
志保「はい、だって兄さんの筋肉量が上昇していましたから」
桃子「見た目は変わんないように見えるけど」
志保「私は見ただけで兄さんの身長体重その他諸々が分かるから」
桃子「凄いけど怖いって」
桃子「それはそれとして、よく美奈子さんが筋トレなんか許してくれたね」
P「うーん、なんか太ってると胃が広がらないらしくてさ」
P「だから大食い大会が終わるまでは俺を太らせる気は無いらしい」
P「大会が終わったらじっくりとって言ってたな」
桃子「ふーん」
志保「まあ、兄さんは夜の運動量が凄いみたいですし相応にカロリーは消費できてるんじゃないでしょうか」
P「は、はは…」
桃子「…ふんっ!」
P「いってぇ!」
足の甲に桃子の踵が突き刺さった
P「さて、胃の調整をするか…」
朝食を終えた後、俺は大量の水を用意して飲み始める
桃子「凄い量だね」
P「水での調整は普通にやるよりキツい分効果は高いんだ」
P「予選が三日後にあるからな、少しでも勝つ確率を上げていかないと」
桃子「ふーん…」
志保「兄さん、お水のストックは追加しておきましたから」
P「お、サンキュー志保」
志保「頑張ってくださいね、応援しますから」
P「おう」
水を飲む
何も考えずに、ただひたすらに
確かに辛い特訓だ
しかしこれも勝つため
勝って美奈子と喜びを分かち合うため
だから俺は耐える
この手に勝利を掴むために
P「ごふっ」
口に入りきらなかった水を吹き出した際に前に座っていた桃子の顔に掛かり、急所を蹴られた俺は悶えながら轟沈した
一旦ここまで
そーろそろ終わりに近付いてきた
その後も調整を重ね、とうとう予選の日を迎えた
P「結構多いな」
いつも人で賑わっている商店街だが、今日はいつもより更に活気に溢れている
やはり面白そうな見世物があるからだろうか
P「美奈子はっと…」
美奈子「Pくん!こっちです!」
辺りを見渡していると手を振っている美奈子を見つけた
美奈子「おはようございます、Pくん」
P「おはよう美奈子」
美奈子「それでは早速受付を済ませちゃいましょう!」
P「ああ」
受付を済ませ、会場に入る
P「市民体育館を使うんだな」
美奈子「他に会場に使えそうなところもないですしね」
P「商店街だしな」
市民体育館と言っても結構広い、しかしモニターも設置されているので観客も満足するだろう
P「予選の料理は不明か…」
美奈子「全部対戦時に発表されるみたいです」
P「ぶっつけ本番だな」
美奈子「でもPくんなら大丈夫!絶対勝てます!」
P「任せろ」
しばらくいちゃついていたが、もうそろそろ開場の時間だ
P「それじゃあ美奈子、俺は…行くよ」
美奈子「はい、いってらっしゃい、Pくん」
美奈子に背を向けて歩き出す
ここから先は戦場だ
だけど一人じゃ無い
みんなとの絆パワーで必ず勝ち残ってみせる
開会式が終わり、渡されたゼッケンを着用する
…52番か
番号に割り振られたテーブルに向かうと、相手は既に来ていた
…角刈りで大柄な男だ、胴着を着ているので柔道部か何かだろうか?
腕組みをして俺を見ている
そしてその後ろには取り巻きらしき男達がいた
何やら言っているようで、その内容は俺にも聞こえていた
オイオイオイ
死んだわアイツ
これは楽勝だわ
P「…」
とりあえず
目の前の相手をねじ伏せて黙らせてやろう
一旦ここまで
勝負食が俺達の前に運ばれてくる
これは…
P「うどんか」
わかめとかまぼこのうどんだった
まつり「参加者のみなさん、はいほー!」
はいほー!
まつり「うーん良いお返事なのです!今日の大食い大会予選はこの徳川まつりがルールを説明するので、よーく聞いて欲しいのです!ね?」
ほ!
まつり「ルールは至極単純!制限時間内にどれだけ食べられるかを競うのです!」
まつり「なので皆さんには食べて食べて食べ尽くして欲しいのですー!」
まつり「ちなみに、食べた数が同数の場合はどちらかがギブアップするまで食べ続けるサドンデスがあるのです」
まつり「きっちり白黒つけるので安心して食べて大丈夫なのです-!」
まつり「ルール説明は以上!では参加者のみなさん、頑張るのですよ!姫も応援しているのですー!」
まつり先輩はそういうとマイクを持ったまま、壇上の椅子に座った
まつり「それでは、姫が試合開始の宣言をするのです!」
まつり先輩が大きく息を吸い…
まつり「試合、開始なのです!」
放たれた言葉と共に、俺はうどんに飛び付いた
P「!美味い」
一口啜ったうどんはとても美味しくて
なんだか懐かしい味がした
…このうどんなら、勝てる!
柔道部(仮)は既に一杯目を完食し、二杯目に手をつけていた
どうやら先行逃げ切りのようだ
P「…」
しかし俺はそれに焦ること無く、うどんを食べる
…うん、美味い
まつり「おおー、みんなすごいのです!」
まつり「姫はとてもか弱いのでみなさんの真似はとても出来そうに無いのですけど」
まつり「ふんわりふわふわで甘ーいマシュマロでならもしかしたらみなさんに勝てるかもしれないのです」
まつり「まあでも流石にそんなものが有るはずがないので姫は大人しく見学を…ほ?…ある?」
まつり「……………」
制限時間が半分を切った
現在の差は相手が7杯、俺が12杯だ
前半飛ばしすぎた相手はよく噛まずに飲み込んでいたため、あっという間に消化が追い付かない麺が胃を圧迫して満腹になったようだ
俺はと言うと
P「おかわり」
13杯目に突入した
この勝負、俺の勝ちだ
結局相手は最後まで動けず、俺は一回戦を余裕で勝ち上がった
肩を落とす柔道部(負)の取り巻き達はと言うと
オイオイオイ
負けたわ先輩
対戦相手、素晴らしいと言うほかないですね
と柔道部(負)を慰めていた
負けた選手が退出し、勝った選手達が集められる
まつり「素晴らしいうっぷ、試合だったのです…」
何やら調子が悪そうなまつり先輩
まつり「に、二回戦はトーナメント形式なのです」
トーナメント形式か…
まつり「さ、早速二回戦のトーナメント表を発表するのです」
まつり「トーナメントは、食べた数で抽選………さ、されたのです」
まつり「では、発表なのです!」
モニターに名前と食べた数が表示されていく
俺の名前が表示され、対戦相手も表示された
俺の相手は…伊集院北斗?
「チャオ☆君が周防君かな?」
P「あなたが伊集院さんですか?」
北斗「ああ、俺が伊集院北斗だ、君のことは冬馬から良く聞いてるよ」
P「え?」
北斗「俺とアイツは家が近所でね、幼なじみというやつかな」
P「そうなんですか」
北斗「お互い、頑張ろうな」
P「こちらこそ」
伊集院さんと握手を交わす
…なるほど、強敵になりそうだ
伊集院さんと握手を交わしている内に、最後のカードが表示されていた
そして食べた数が表示された瞬間、会場が騒がしくなる
モブ 25杯
VS
四条貴音 139杯
P「た、貴音!?」
モニターに表示されたのは知り合いの名前
そして食べた数は
北斗「139杯…はは、とんだエンジェルちゃんだ…」
俺の隣で、伊集院さんが引いていた
…勝ち進めば、決勝で貴音と戦うことになりそうだ
一旦ここまで
貴音「お久しぶりですね、あなた様」
P「貴音…」
見間違えようのない銀の髪を靡かせながら、貴音がこっちにやって来た
P「本当に久しぶりだ…GW以来かな」
貴音「はい、そのくらいになるかと」
P「まさか貴音が大食い大会に参加しているなんて思いも…いや、普通に分かりきってたか」
貴音「私はあなた様が参加している事に驚きました」
貴音「まさかあなた様にこのような秘められた力が有ったとは…この私の目を持ってしても見抜けませんでした」
貴音「これも、佐竹美奈子との交際によるものでしょうか」
P「そうだな…美奈子のおかげだ」
P「だからこそ貴音、俺は勝つ」
P「勝って美奈子と喜びを分かち合う」
貴音に宣戦布告をする
宣戦布告を受けた貴音は嬉しそうに
貴音「…ふふ、あなた様と戦えるのを楽しみにしています」
そう言って立ち去った
P「…伊集院さん、貴方にも負けませんから」
北斗「良いね、でも俺だって簡単に負ける気は無いよ」
全ての対戦カードが発表されたところで、今日は解散となった
美奈子「Pくん、お疲れさまでした!」
志保「流石です兄さん」
P「ありがとう」
応援に来ていた美奈子と志保、海美がやって来る
海美「今日の晩御飯うどんが良い!」
志保「では、私が打ちます」
P「あれ、志保うどん打てるのか?」
志保「以前うどんを打つ夢を見たので、打てると思います」
P「そ、そうか」
一旦ここまで
P「それじゃあ、今日は帰るか」
志保「はい、兄さん」
海美「帰ったら運動しよう!」
美奈子「海美ちゃん、お願いするね」
海美「うん!任せて!」
P「美奈子はどうする?」
美奈子「一緒にいたいのは山々なんですけど、この後大会の打ち合わせがあるんです」
美奈子「なのでごめんなさい!夕方までかかっちゃいそうです」
P「なら仕方ないか…じゃあ終わる頃に迎えに来るよ」
美奈子「良いんですか?」
P「俺が一緒にいたいから」
美奈子「Pくん…ありがとう」
帰宅後、海美と汗を流して身体を整える
今日はキツい戦いでは無かったが、この先は恐らく簡単に勝てはしないだろう
万全の状態で挑まないとな
運動を終え、シャワーを浴び終わる頃にはちょうど夕方近くになっていた
さっと着替え、もう一度商店街へと向かう
昼にも来た大会会場の入り口で少し待っていると
美奈子「Pくん!」
美奈子が会場から出て来た
P「お疲れ様美奈子」
美奈子「Pくんの方こそ、今日はお疲れ様でした」
美奈子「とても良い食べっぷりでしたよ!」
P「はは、貴音の食べた量に比べたら全然だよ」
美奈子「そんなことないです!凄く格好良かった」
P「ありがとう」
手を繋ぎ、商店街を歩く
美奈子「ねえPくん、このままちょっとだけ、デートしませんか?」
P「もちろん、俺はそのつもり出来たから」
美奈子「えへへ…じゃあ公園に行きましょう」
公園に到着した
夕暮れの中子供達が遊んでいたり、仲の良さそうな老夫婦が並んでベンチに座ったりしている
せっかくなので俺達もベンチに座ることにした
美奈子「Pくん、改めて今日はお疲れ様でした」
P「今日勝てたのは美奈子の特訓のおかげだよ」
美奈子「違います、Pくんが頑張ったからです」
P「いやいや、美奈子のおかげだ」
美奈子「いいえ、Pくんの頑張りです」
P「…はは」
美奈子「ふふっ」
何故か可笑しくなってお互い笑いあう
P「ならお互い頑張りましたで良いかな」
美奈子「そうですね、その方が良いです」
そう良いながら肩に頭を乗せる美奈子
俺はそんな美奈子の肩を抱く
美奈子「二回戦…一週間後ですね」
P「ああ」
学園が始まる二日前だ
美奈子「必ず勝って、夏休みの思い出にしちゃいましょう」
P「任せろ、最高の思い出にしてみせるさ」
美奈子「んっ」
それを聞いた美奈子が不意にキスをしてくる
P「…」
美奈子「はっ…んっ」
何度も何度もキスを繰り返す
P「美奈子…」
美奈子「世界一頼りになる人にそんな事を言って貰えたら、最高に高まっちゃいますよ」
胸に顔を埋めながらそう呟く美奈子
美奈子「…ねえPくん」
P「…どうした?」
美奈子「人目のつかないところに…行きましょう」
茂みでおしべとめしべをくっつけた
一旦ここまで
P「ただいま」
美奈子「お邪魔します」
桃子「お帰り二人とも…帰りにデートするのは良いけど、遅くなるならちゃんと連絡してよね」
P「ああ、ごめんごめん」
美奈子「ごめんね、桃子ちゃん」
桃子「桃子は別に良いけど、志保さんなんかずっとそわそわしてて落ち着かないんだから」
P「ん、わかった、気を付けるよ」
志保「お帰りなさい兄さん、美奈子さん、最高のうどん生地を用意しました」
美奈子「うわぁ…!志保ちゃん、凄く良い出来だね、これ」
志保「すぐ夕飯にしましょう、少し待っていてください」
P「楽しみだ」
志保がうどんを茹でるのを眺めながら、今日の試合の反省会をする
P「今日の試合、食べる量をセーブしながらやってみたけどあまりやらない方が良いな、あれ」
美奈子「そうですね、何度か手を止めてましたよね?」
P「ああ、食べた量が少なかったとはいえやっぱり時間を置くと胃の中で膨れて満腹感が襲ってくる」
P「しかもただでさえ水を吸って膨れやすいうどんだったからな…」
美奈子「ペース配分はともかく、やっぱり詰め込めるだけ詰め込んだ方が良さそうですね」
P「二回戦の相手…伊集院さんは俺と同じだけ食べたんだっけ」
美奈子「はい、確か同数だった筈ですよ」
P「伊集院さんはどんな食べ方だったか見てたりした?」
美奈子「それが…その…」
P「?」
美奈子「実は私、ずっとPくんを見てて…他の人のことは全く見てなかったんです」
美奈子「だから伊集院さんのことは全然わからなくて…」
P「そ、そっか」
なんか嬉しい
一旦ここまで
P「…ま、ちょっと話しただけだけど伊集院さんなら卑怯なことはしてこないだろうし、正々堂々と正面突破で行くとするかな」
美奈子「ですね!Pくんらしくて良いと思いますよ!」
P「明日から特訓再開だな」
美奈子「はい!明日からはPくんのために特訓用の料理、頑張って作りますからね!」
志保「私も、お手伝いしますから」
出来上がったうどんを運びながら、志保も手伝いを申し出る
P「ありがとう美奈子、志保、頑張るからな」
P「よしそれじゃあ、志保が打ってくれたうどんを食べようか」
うどんを啜っているときに、ふと疑問が湧いたのでそのことを口に出す
P「…そう言えば、麺類の大食いの場合って注意点とかあるのか?」
美奈子「麺類ですか?」
P「ああ、例えば素麺なんかだと割と小食な人でも3把くらいなら軽く食べられたりするだろ?」
桃子「確かに、テレビとかならラーメンの大食いとかやってるときあるね」
志保「同じクラスのうどんも、うどん5玉くらいなら誰にだって食べられるとかほざいていた記憶があります」
美奈子「確かに麺類はスルッと入っていきます、でも実はそれが一番のくせ者なんです」
P「というと?」
美奈子「麺類はその性質上本来のキャパシティを超えて胃に溜まります、なのでふとした拍子に胃の中の麺を脳が認識すると一気に満腹になってしまうんです」
美奈子「また、麺類はどうしても食べる速度が早めになりがちで、気が付くとペースが崩れていて立て直せないということも良くあります」
美奈子「なのでやはり大切なのは自分のペースを信じること…それがもっとも大切ですね」
美奈子「他にはラーメンや温かいお蕎麦、おうどんならペースを保ちつつも麺が伸びないように食べるくらいでしょうか」
美奈子「伸びた麺の不味さは想像以上ですから」
P「なるほどな」
今日の相手はそのセオリーをすべて無視してドカ食いしたから自滅したわけだ
…俺も気を付けないとな
気が付くとうどんは食べ終わっていたので、軽くストレッチをして腹を慣らしておく
こういった細かな気配りも大食いにおいては重要なファクターになる
美奈子「それじゃあ、私は今日は帰りますね」
P「あ、送っていくよ」
美奈子を送っていく帰り道
P「大会っていつまでやるんだっけ?」
美奈子「文化祭に差し掛かるくらいですね」
P「10月くらいまでやるのか?結構長いんだな…」
美奈子「私もそう思います」
まあ調整期間が長いなら万全の状態にしやすくはあるが
P「優勝、したいな…」
美奈子「Pくんなら出来ますよ、絶対」
美奈子「だって私の好きな人なんですから」
P「その気持ちだけで百万人力だ」
美奈子からの激励を受け、気合いが入る
美奈子「…あっ、もう着いちゃった…」
気が付くと美奈子の家の前まで来ていた
楽しい時間はあっという間に過ぎていってしまう
P「…美奈子」
美奈子「Pくん…」
離れるのが名残惜しい
帰るのを惜しんでいると
美奈子「んっ」
突然美奈子がキスをしてくる
P「美奈子」
美奈子「Pくん、今日は頑張ったのでご褒美のキスです、それから…」
更にもう一度、美奈子からのキス
美奈子「勝利へのキス、です…えへへ」
P「今ならどんな相手だって倒せそうだ」
美奈子「ふふ、頑張ろうね」
P「ああ」
美奈子が家に入って行くのを見届けてから、帰路に着く
星空を眺めながら俺が思ったのはただ一つ
絶対優勝してみせる
待ってろよ貴音、絶対に、俺が倒してやるからな
一旦ここまで
夏休みが明け、久しぶりに学園へと登校する
冬馬「よう」
翔太「おはよー」
P「おはよう翔太、棚橋」
冬馬「誰だよ!?」
毎度毎度律儀に突っ込んでくれる冬馬に学園が始まったことを実感しつつ、三人で教室を目指す
冬馬「そういやお前、佐竹と付き合いだしたから太るかと思ったが…全然そんなことはねえな」
翔太「僕も、夏休み明けたらすごいことになってると思ってたよ」
P「別に普通の量しか食べてないんだから太る要素なんかねーよ」
冬馬「それはお前らにとっての普通の量だろ…」
P「いや、マジで世間一般で言う普通の量だよ」
翔太「ほんとに?」
P「疑り深い奴らだな…美奈子の作る朝飯を食べたことが無いからそう言えるんだ」
冬馬「いや、だってよ…」
翔太「ねえ?」
P「どのみち今は大食い大会中なんだ、太るのはNGなんだよ」
冬馬「大食い大会って商店街でやってる奴か?」
P「ああ、俺の次の相手はお前の知り合いの伊集院北斗さんだ」
冬馬「北斗も出てんのかよ」
P「知らなかったのか?」
冬馬「まあな…けど北斗か…あいつ大食い出来たんだな」
翔太「僕も知らなかったなー」
P「まあ会場で少し話した程度だけど凄く良い人だな、伊集院さん」
冬馬「まあな、俺も翔太もなんだかんだで世話になってるし」
冬馬「…ま、北斗と当たるってんなら次の試合は見に行くぜ」
翔太「大食いってあんまり興味無かったけど、二人が戦うなら僕も見に行くよ」
P「おう、待ってるぜ」
冬馬、翔太と教室の前で別れて俺は自分の教室へと向かう
美奈子「おはようございます、Pくん!」
P「おはよう、美奈子」
大切な人が、俺を出迎えてくれる
また今日から、騒がしい学園生活の始まりだ
一旦ここまで
受け攻め最新版
無印
海美 攻め
恵美 受け
琴葉 攻め
翼 攻め
ジュリア 受け
HED
志保 両
百合子 受け
静香 受け
美奈子 攻め
このみ 両
朋花 受け
エレナ 攻め
BND
紬 受け
歌織 攻め
仮組
杏奈 攻め
未来 両
久しぶりの学園はHRと集会のみで終了した
なので俺と美奈子は特訓のため、佐竹飯店へと移動したのだが…
P「…なんで恵美達が居るんだ?」
恵美「や、海美からPと美奈子が面白い事してるって聞いたからさ~ちょっと冷やかしにね~」
P「冷やかしかい」
エレナ「なーんてメグミは言ってるけど、本当はPの事が気になってるだけだヨー」
恵美「え、エレナっ!!」
エレナ「きゃ~♪」
顔を赤くして立ち上がる恵美と楽しそうに逃げるエレナ
相変わらず賑やかな奴らだ
冬馬「ま、今日は午前中だけだったしちょうど腹も減る頃だしな」
翔太「佐竹飯店なら美味しいお昼が食べられるしね~」
琴葉「表には定休日って書いてたけどみんな普通にPくんに着いて入っていったから一緒に入っちゃったんだけど…迷惑だった、かな?」
P「いや迷惑では無いよ、なあ美奈子?」
美奈子「はい!むしろ腕の振るい甲斐がありますね!」
P「だから琴葉、気にしないでくれ」
琴葉「ありがとうPくん、美奈子ちゃん」
海美「お腹空いた~」
恵美「もうすぐ出て来るんだから我慢しなって」
エレナ「め、めふみ、ほっへたちひれるヨ~」
桃子「恵美さん、エレナさん、さっきから騒がしいよ、ちょっと静かにしてて」
琴葉「ここはこの問題を応用するの」
志保「…ありがとうございます、琴葉さん」
冬馬「昨日RGサザビー買ったんだけどよ」
翔太「冬馬くんまたプラモ買ったの?」
P「よく飾るスペースあるな」
皆が自由にリラックスしていると
美奈子「お待たせしました!佐竹飯店スペシャルランチでーす!」
美奈子が料理を持って現れた
P「っと、手伝うよ」
美奈子「ありがとうございます、Pくん」
いくつかの料理を受け取ってテーブルに配っていく
冬馬「何かよ、お前らそうやってると夫婦みたいだな」
P「ふ、夫婦?」
美奈子「や、やだもう尼崎君ったら、少し気が早いですよ」
冬馬の言葉に顔を赤くして満更でも無さそうな反応をする美奈子
その反応を見て俺も少し顔が赤くなる
冬馬「…からかうだけのつもりだったのにマジな反応が返ってきて困惑してるんだが」
翔太「バカップルにそんなからかいしてもそりゃそうでしょ」
冬馬「ま、まあ結婚式には呼んでくれよ」
P「おう、友人代表としてスピーチ頼むぞ」
冬馬「…へっ」
翔太「うわちょっろ」
恵美「結婚かー、アタシもいつか誰かと結婚すんのかなー」
琴葉「恵美ならきっといい人が見つかると思うわ」
恵美「…そだね」
エレナ「…」
海美「…」
志保「…」
桃子「はあ…」
翔太「冬馬くん、女性陣がお通夜ムードなんだけどどうすんのさ」
冬馬「こんなになるなんて思わなかったんだよ!」
目の前で冬馬と翔太が何やらヒソヒソ話をしている
また何かイタズラでもするつもりだろうか?
P「何の話だ?」
冬馬「いや…何でもねえ」
P「?」
冬馬「と、とにかく食べようぜ」
「いただきます」
強引に話を打ち切った冬馬の合図で皆が食べ出す
…うん、やっぱり美奈子の作るエビチリは絶品だな
恵美「あれ、そういやPの料理の量普通だね」
P「そりゃあな」
翔太「もっと山盛りみたいになってるかと思ってたよ」
P「大会のルールがおかわり式だからな、まあわんこそばみたいなもんだ」
エレナ「へー、大食いにもルールがあるんだネ」
一旦ここまで
P「それはもちろん、ルール無用だと文字通り何でもありになっちまうからな」
美奈子「勝敗をちゃんと判定するためにルールがあるんだよ」
恵美「へえー」
冬馬「…ここに来るまでにちょいと調べてみたんだが大食い大会を荒らす裏ファイターの組織があるらしい」
海美「裏ファイター?」
冬馬「ああ、何でも反則ギリギリの戦い方をして勝つ卑怯な連中だとか」
翔太「冬馬くん漫画の読み過ぎじゃない?」
美奈子「いや、天ヶ瀬くんの言ってる事は本当なんです」
翔太「えっ」
美奈子「確かに謎の組織っていうのは違いますけど、卑怯な手を使って大食いに勝とうとする集団があるのは事実なんです」
冬馬「マジで漫画みたいな話だけどな」
恵美「P…ってか、今やってる大会は大丈夫なの?」
P「一応美奈子が調べてもらったらしいけど、それらしい奴は居なかったらしいから大丈夫だ」
P「ま、例え裏ファイターが相手でも俺と美奈子なら勝てるけどな」
美奈子「Pくん…えへへ」
恵美「そっか、それなら良かった良かった」
美奈子「さ、さあさあ、ご飯が冷めちゃいますから食べちゃってくださいね!」
美奈子「おかわりもありますから!」
照れた美奈子が話を打ち切って食べることを進める
それを合図にみんなも食事を再開し
楽しい昼食となった
そしてそれから数日後
P「胃の調子は良い、少し食べ物を入れたから拡張も問題なし、行けるな」
腹具合が万全なことを確認した俺は二回戦の会場へと足を進めた
…必ず勝つ
決意を胸に扉を開け、指定された場所へと向かう
北斗「チャオ☆来たね」
P「伊集院さん、正々堂々戦いましょう」
北斗「もちろんだ、その上で勝たせて貰うよ」
伊集院さんと握手を交わし、俺達は席に着いた
茜「はいはいはーい!出演NG出しちゃったまつりちゃんに代わって今回はこの可愛い茜ちゃんが司会をやっちゃうよ-!」
茜「みんなー!茜ちゃん可愛いよねー?」
…
茜「…あれ?ねえ茜ちゃんは可愛…おーっと色々と言いたいことはあるけど巻きの指示が出たから巻いていっちゃうよ!」
茜「今回の勝負食は…これ!じゃーん!素敵なステーキ!」
モニターに肉厚のステーキが映し出される
茜「美味しそうだね、茜ちゃんも食べたい!」
茜「それじゃあみんなのテーブルに運んでいくよ!ヒアウィゴー!」
茜の言葉と共にステーキが運ばれてくる
鉄板に乗せられた肉はじゅうじゅう音を立てており、否が応でも味への期待値が上昇していく
北斗「これは…美味そうだ」
P「ですね、早く食べたい」
茜「ステーキは行き渡ったかな!?それじゃあ行くよ!デュエル開始ぃぃぃぃ!」
茜の合図と共に、ステーキを食べやすいようにナイフで一口サイズに切っていく
ステーキの大食いの際に最もネックとなるのは肉を咀嚼することだ
先に食べた方が勝つ早食いならともかく、長期戦になる時間制限戦では必ず顎の疲れが響いてくる
なので一口サイズに切り、噛むサイズを小さくさせることで顎への負担を軽減させることが勝利への一歩となる
ちらりと伊集院さんの方を見ると
北斗「…」
向こうも肉を一口サイズに切っていた
…どうやらガチンコ勝負になりそうだ
ある程度切った時点で一度ナイフを置く
…ステーキで一番美味いのはやっぱり焼きたて
肉は切っていると次第に冷めてくる
つまり一番美味いタイミングを逃してしまう
だから俺は
P「あむ」
一番美味い状態の肉を食べる
P「!?」
噛むと広がる肉の味に思わず目を見開く
口の中に広がる肉汁
噛み締めるほどに味が深くなる赤身
ぷりぷりなのに全くクドくない脂身
どれもが一級品の味わいだ
食べたことはないが超高級ステーキのような味な気がする
一旦ここまで
P「美味い…!」
時間制限があるのが悔やまれるくらいに美味い肉
しかしいつまでも味わっていると間違いなく負けてしまう
なので俺は再びナイフを手に、肉を切り始めた
P「…」
ちらりと伊集院さんの方を見る
伊集院さんは既に肉を切り終え、1/3ほど食べ進めていた
P「っ」
これは急がないと突き放されるな
手早く肉を切り終え、食べ進める
一口サイズよりも更に小さく切った肉は簡単に噛み切れ、するっと入っていく
肉を小さくしたのにはもちろん理由がある
肉を噛むという行為はなんだかんだで顎への負担が大きいため、小さめに切り噛む回数を減らすことで負担を軽減するためだ
その甲斐もあり、5分もする頃には伊集院さんに追い付き…
北斗・P「おかわり!」
俺達は同時に声を上げた
二枚目の途中で手が止まる
…味が飽きてきた
流石にいくら美味い肉でもずっと食べ続けていると味が飽きてくる
最も、そのために調味料が用意されているので有効活用させてもらおう
P「おろしソースを」
大根おろしのソースを注文し、肉にかけて食べる
…うん、味が変わって更に食べられそうだ
北斗「…ふっ」
そんな俺を見て、伊集院さんが微かに笑った気がした
北斗「周防くん、確かに味を変えるのは良い戦法だ、しかし君は致命的なミスをした」
P「致命的なミス…?」
北斗「冷たい大根おろしのソースは肉から急激に熱を奪う、つまり早く食べないと…」
北斗「固く冷たい肉を食べることになるんだよ」
P「っ!?」
咄嗟に肉を見る
確かに指摘通り、先程まで出ていた湯気がほとんど出なくなっていた
P「くっ!?」
急いで肉を食べるが少し固い
北斗「そして、急いで食べようとすると自分のペースを崩すことになる」
北斗「だから致命的なミスなのさ」
P「っ…」
完全にミスった
だがまだ負けたわけじゃない、最後まで足掻いてみせる
しかし頭では分かっていても、心は焦りを感じて身体を勝手に動かす
P(落ち着け…!落ち着け…!)
勝手に速まるペースに、更に焦りが生まれる
P「…!」
速まったペースに、ふとあることを思い出した
それは競争や対戦で、一気に差を縮められた時の焦りの感情
今俺と伊集院さんの差は着実に開きつつある
向こうも勝利を確信しているだろう
…なら、限界の限界まで力を振り絞ってペースを上げてみるしかない
このまま何もせずに負けるよりも、最後まで足掻いてみせる
P「…うおおおお!」
テクニックも何も無い、ただひたすらに肉を切り口へと運ぶ
北斗「勝てないと分かり、自棄になったのかな?そんな食べ方ではすぐに止まってしまうよ」
P「はああああ!」
伊集院の言葉に耳を貸さず、ただひたすらに肉を食べる
…不思議な気分だ
疲れも何も感じない
ただあるのは、目の前にある肉への食欲だけだ
志保「…美奈子さん、兄さんは…」
海美「ずっと食べ続けてる…でも」
美奈子「Pくん…」
ペースを上げてどのくらい経ったのだろう
視界に入った伊集院さんは苦しそうな表情で汗を浮かべていた
…ラストスパートだ
北斗「っ!?」
食べて食べて食べて、そろそろ味も分からなくなった頃
それは突然来た
P「…」
まず腕が止まり、続いて口も開かなくなる
意志に反して、身体が食べることを拒否していた
P「…っ」
そして感じる満腹感…いや、もはや破裂しそうな痛みがあった
P「はあ…はあ…」
俺は完全に動きが止まった
一方伊集院さんは未だ食べ続けている
…ここまでか
一旦ここまで
その後も俺は手すら動かせないまま、ただただ伊集院さんが食べ進めるのを見ていることしか出来ず…
茜「はいはいはい試合終了の時間だよ!」
俺の負けが決まった
P「………っ」
北斗「…もし」
北斗「もしほんの少しでも君につられて自分のペースを崩していたら、俺は負けていたと思う」
伊集院さんの言葉に思わず顔を上げる
北斗「こんなにも本気になったのはいつ以来かな」
北斗「君と戦えて本当によかったよ」
そう言って伊集院さんは俺に手を差し伸べてきた
俺は少し躊躇った後
P「俺も、伊集院さんと戦えてよかったです」
伊集院さんの手を取った
北斗「俺のことは北斗で良いよ、敬語も必要ない」
P「え?でも年上ですし」
北斗「冬馬も俺のことは呼び捨てだしため口だからさ、そっちのほうが気楽なんだ」
P「…ああ、わかったよ、北斗」
北斗「ありがとうPくん」
俺が北斗を名前で呼ぶと、北斗も俺を名前で呼んだ
北斗と別れた俺は控室に戻る
海美「P!」
志保「兄さん…」
控室には海美と志保がいて、俺を出迎えた
そして
美奈子「Pくん、お疲れ様でした」
美奈子も来てくれていた
P「ごめん、勝てなかった」
美奈子「ううん、たとえ負けても、Pくん凄くかっこよかったよ」
P「ありがとう、美奈子」
貴音「あなた様、お疲れ様でした」
P「貴音」
俺たちのところに貴音がやってくる
P「悪い、約束は果たせなかったよ」
貴音「勝負は時の運とも言います、どんなに努力しようとも負けてしまうこともあるでしょう」
貴音「あなた様の努力は見ていて分かりました、ですから私はあなた様の健闘を讃えます」
P「ん…ありがとうな貴音」
貴音「お気になさらず…あなた様の仇は私が取りましょう」
P「お、お手柔らかにな」
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