旅の陽炎型 (65)
陽炎から秋雲まで。
陽炎型姉妹実装17人分。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1492966259
【 陽炎 】
『 札幌の時計台は立派じゃない 』
楽しげに「まっぷる」を読む雪風に、真実を告げられないままでいる。
『 高知のはりまや橋は立派じゃない 』
喜々として「るるぶ」に付箋を貼る時津風に、未だ言えないままでいる。
駄目なお姉ちゃんを、許してほしい。
陽炎はまだまだ未熟です。
黒潮「陽炎」
不知火「陽炎」
陽炎「無理!絶対無理!断固無理!」
黒潮「だって言わんと」
不知火「悲しい思いをするのは雪風達です」
陽炎「だから無理!長崎の時だって、大変な騒ぎになったじゃない!」
時雨「今、誰かオランダ坂の悪口を言ったかい?」ガラッ
陽炎「カステラ大好き」
不知火「皿うどん最高です」
黒潮「長崎ホンマええとこやわー」
時雨「夜景もとても綺麗なんだよ」ニッコリ
【 不知火 】
不知火「修学旅行……ですか」
陽炎「そう。行き先の要望も、ある程度は聞いてくれるみたい」
黒潮「どこでもええの?そら太っ腹やなー」
陽炎「流石に海外とかは無理よ」
親潮「どこでもいいと言われると、逆に迷ってしまいますね」
不知火「なら、北海道はどうでしょう。定番ですけど人気の観光地ですし」
黒潮「北海道ええなー」
不知火「食べ物も美味しいものばかりです」
陽炎「カニ、ホタテ、サーモン、イクラ」
不知火「アスパラ、じゃがいも、とうもろこし」
黒潮「ええなー」
親潮「いいですね」
陽炎「観光は何があったっけ?」
雪風「時計台です!」
陽炎「えっ」
雪風「札幌の時計台が有名です」
時津風「時計台?」
雪風「本にも三大名所って書いてあります!」
舞風「そんなにスゴイの?」
時津風「東京タワーとどっちがスゴイの」
谷風「ばっきゃろー!そんなの東京タワーに決まってらぁ!」
雪風「違います!時計台です!三大名所ですから!」
谷風「ぐぬぬ……」
舞風「わー、時計台すごーい」
時津風「時計台見たーい!札幌行きたーい!」
天津風「あ、あのね?雪風」
雪風「北海度はでっかいどー!です」
時津風「でっかいどー!ほっかいどー!」
陽炎「北海道は却下ね」ヒソヒソ
不知火「はい。夢を壊しては駄目です」ボソボソ
親潮「ま、まあ北海道は候補として、他の県も考えてみましょう」
【 黒潮 】
黒潮「大阪にしよ、大阪。ええ所やでー」
時津風「大阪?」
黒潮「そや、日本三景やでー」
雪風「日本三景って何ですか」
黒潮「日本の素晴らしい景色、ベスト3や」
時津風「何それすごーい」
黒潮「大阪城、道頓堀、通天閣」
黒潮「全部大阪や」
時津風「全部なの?すごーい!」
黒潮「せやろー」
浦風「こらこら、嘘教えちゃいけんで」
浦風「本当は宮島、ズムスタ、原爆ドームじゃけん」
雪風「宮島って聞いた事あります!」
浦風「そうじゃろー」
浦風「鹿もおるんで」
時津風「鹿ぁ!?」
浦風「撫でてもええんで」
舞風「触れるの!?」
時津風「ペットなの?飼ってるの」
浦風「ほうで、すごいじゃろ」
雪風「すごーい!広島行きたーい」
陽炎「いや雪風、アンタ広島育ちでしょ……」
【 親潮 】
親潮「大阪や広島だと、旅行じゃなくて里帰りになっちゃいますね」
浜風「出来れば他の所に行きたいです」
不知火「それだと京都や神奈川も除外ですか」
天津風「私は別にいいけど……」
親潮「いい所なんですけどね、京都。落ち着いた雰囲気ですし」
初風「まあ、情緒はあるわね」
浜風「舞妓さんとか見てみたいです」
天津風「着物綺麗でしょうね」
親潮「最近は着付けのサービスもあるみたいです」
浦風「着物ええよねぇ」
浜風「着てみたいです」
陽炎「あー…アンタ達は花魁になるから駄目」
雪風「花魁って何ですか」
陽炎「淫乱の仲間よ」
雪風「淫乱って?」
陽炎「えっちな子の事」
雪風「野分?」
野分「ぶふおぉっ!?」
野分「なっ、何ですかそれはっ!?」
野分「野分は違います!えっちではありません!」
雪風「えー?でも、こないだお風呂で……」
野分「ふおおおおーっ!?」ガシッ!
野分「ゆ、雪風!間宮さんに行きましょう!アイス!アイス奢ってあげます!」
雪風「アイス?」
野分「大至急行きましょう!超特急で行きましょう!」
時津風「時津風も!時津風も!」ピョンピョン!
【 初風 】
初風「他の子達はどうなってるの」
陽炎「んー…白露型は九州希望だったかな」
陽炎「吹雪型は東北に行きたいみたいね」
初風「東北?地味じゃない」
天津風「観光とかあまりなさそうね」
陽炎「観光しないんだって」
初風「え?」
陽炎「各地の芋煮会をひたすら回るみたいよ」
初風「何それ」
親潮「地方によって味が違うみたいですね」
天津風「でも全部芋なんでしょ」
親潮「勿論ですよ」
嵐「あ、叢雲だ。こっち見てる」
萩風「何だか寂しそうな顔をしてるね」
叢雲「……」
むらくも が あらわれた
むらくも は さびしそうな かおをしている
むらくも は なかまに なりたそうに こちらをみている!
なかま に してあげますか?
→はい
いいえ
ふぶき が あらわれた
しらゆき が あらわれた
みゆき が あらわれた
吹雪「叢雲ちゃん!ほら早く行くよ」
白雪「宿の空きやバスの時間も調べないと」
深雪「予算の計算もあるし大変だぜ!」
むらくも は つれさられてしまった
【 雪風 】
不知火「京都はちょっと難しいかと」
陽炎「私達はいいけど、雪風達が退屈で もたないわ」
黒潮「神社仏閣だらけやしなー」
天津風「じゃあ、いっそディズニーランドとかは。一日中遊べるわよ」
雪風「東京行ってみたいです」
初風「ディズニーは東京じゃないわよ」
雪風「えっ」
時津風「えっ」
雪風「いや、だって東京ディズニーランド」
初風「ああ、あれ嘘だから。本当は千葉」
時津風「千葉ぁ!?」
雪風「東京なのに?」
初風「東京なのに」
雪風「千葉ってどこですか」
時津風「東京じゃなきゃヤダー」
雪風「どうして千葉って言わないんですか」
天津風「それは……やっぱりイメージじゃないかしら」
時津風「千葉じゃ駄目なの」
天津風「駄目じゃないけど東京と比べるとどうしてもねぇ……」
初風「あ、でも千葉にもいい所あるわよ」
初風「落花生が名物なの」
雪風「落花生っ!?」ガタッ!
初風「アンタ好きでしょ」
雪風「ば、バタピーは、バタピーもありますか」
初風「落花生があるんだから、そりゃあるでしょ」
天津風「バタピーも柿ピーも何でもあるわよ」
雪風「……」クラクラ
雪風「千葉がいいです、千葉にしましょう、千葉に行きたいです雪風は譲りません」
天津風「ちょっと落ち着きなさい」
嵐「あ、赤城さんと加賀さんだ」
萩風「こんにちは」
赤城「こんにちは」
加賀「ちょっと聞いてみるのだけど」
萩風「あ、はい」
加賀「そのディズニーとやらに、美味しいものはありますか」
萩風「美味しいものですか」
赤城「お酒とかご飯です」
嵐「いや、遊園地なんで多分そういうのは……」
加賀「では、仮にお土産を買ってくるとしたら」
嵐「お土産ですか、そりゃ魔法の国だから」
萩風「ネズミの帽子とかクマのぬいぐるみとか……」
赤城「……」
加賀「……」
萩風「すっごい遠い目してるね」
嵐「ロングブレスみたいなため息だね」
萩風「人ってあんなに落胆出来るものなんだね」
嵐「あ、陽炎呼ばれた」
萩風「呼ばれたね」
萩風「赤城さん達、何か言ってるね」
嵐「切々と語ってるな」
萩風「赤城さんちょっと涙目なんだけど」
嵐「加賀さんジェスチャー入れだしたよ」
萩風「渾身の説得交渉だね」
嵐「あ、陽炎帰ってきた」
萩風「帰ってきたね」
陽炎「ディズニー、中止!」デデーン!
時津風「えーっ!?何でー?」
陽炎「遊びに行くんじゃないのよ、修学旅行なんだからね」
雪風「えー、そんなー」
【 天津風 】
天津風「お酒やご飯なら新潟でしょ。多分どっちも日本一よ」
天津風「日本海に近いから海鮮も美味しい筈だし」
黒潮「新潟かー」
初風「でも田舎なんでしょ?何もなさそう」
天津風「冬だとすごく雪が降るわよ」
天津風「たくさん積もるみたいだし、雪合戦し放題よ」
雪風「雪合戦!」
天津風「そり遊びも出来るわよ」
時津風「そり!」
天津風「かまくらでお汁粉や甘酒なんかも」
雪風「かまくら!楽しそう!」
時津風「新潟いいかも!」
陽炎「あと、運が良かったらナマハゲに会えるかも」
不知火「えっ?ナマハゲって新潟でしたっけ」
陽炎「あれ?違ったかしら」
雪風「ナマハゲって何ですか」
陽炎「鬼よ、鬼。すっごく怖いんだから」
陽炎「悪い子を懲らしめに来るの」
時津風「神通?」
雪風「神通さんなの?」
陽炎「神通さんじゃないわよ」
不知火「そこまで怖くありません」
初風「旅先であんなのに襲われたら全滅するわよ」
雪風「そっかー」
時津風「だよねー」
天津風「ちなみにナマハゲがいるのは秋田ね」
親潮「美人ときりたんぽが名物です」
【 時津風 】
初風「四国なんてどうかしら。意外と穴場じゃない」
舞風「四国?」
時津風「四国なら高知がいいよ!」
雪風「何かあるの」
時津風「はりまや橋だよ!すっごく有名なんだよ」
野分「そうなんですか」
時津風「本にも載ってるよ、ほら見て」
野分「ずいぶん立派な橋ですね」
舞風「日本三大名所らしいよ」
野分「レインボーブリッジとどっちがスゴイでしょう」
谷風「そんなのレインボーブリッジに決まってらぁ!」
時津風「違うよ!はりまや橋だよ!だって三大名所だよ!」
野分「おおー」
舞風「はりまや橋すごーい」
雪風「高知行ってみたいです!」
谷風「ぐぬぬ……」
黒潮「えっと……」
親潮「四国は却下ですね」ヒソヒソ
不知火「時津風の悲しむ顔は見たくありません」ボソボソ
陽炎「あと、四国はうどんがすごいらしいわよ」
萩風「讃岐だっけ、一時期流行ったよね」
陽炎「確か三大うどんの一つよ」
嵐「へー」
不知火「あと二つはどこですか」
陽炎「さあ」
嵐「知らないのかよ」
陽炎「うどんなんて分かんないわよ」
親潮「でも讃岐は本当に有名らしいですよ」
萩風「そうなの」
親潮「お店もたくさんあって、地元では毎日食べる人もいるくらい」
嵐「えー?」
陽炎「いくら美味しくても毎日は食べられないわよ」
浦風「えっ」
黒潮「余裕やん」
足柄「呼んだ?」ガラッ
天津風「姉さんどっから来たのよ」
陽炎「アンタ達はちょっと特別だから」
黒潮「四国ってアレやろ?蛇口からうどんだしが出てくるって」
親潮「あー、聞いた事ありますね」
陽炎「オレンジジュースもよ」
嵐「そんなバカな」
親潮「いえ、本当みたいですよ」
萩風「えー?」
谷風「違えーよ!出るのはポンジュースだよ」
嵐「ポン?」
萩風「ポンって何ですか」
谷風「……」
谷風「……そりゃおめぇ、ポンだよ」
嵐「だからポンって何さ!」
初風「四国って魔境ね」
天津風「侮れないわね」
【 浦風 】
浦風「うどんよりお好みがええよ」
不知火「お好み焼きですか」
陽炎「いつも食べてるじゃない」
浦風「本場のはまた違うんよ」
浦風「お好み村いうて、店が百軒くらいあるんじゃけぇ」
陽炎「そんなに!?」
不知火「四国も相当ですけど広島も大概ですね」
陽炎「そんなにあってどうすんのよ」
陽炎「美味しい所が一軒あればいいじゃない」
浦風「どこも旨いんじゃ」
浦風「一軒一軒、微妙に味が違うんじゃけぇ」
萩風「私はそばの方がいいな。ヘルシーだし」
嵐「そばってどこが有名だっけ」
萩風「うーん、信州とかかな」
嵐「信州ってどこ」
萩風「長野とかあの辺」
初風「あ!長野っていえば軽井沢があるじゃない」
雪風「軽井沢?」
初風「すっごくいい所みたいよ。静かだし綺麗だし」
時津風「そうなの」
天津風「お金持ちの別荘なんかがある所よ」
天津風「多分、白い馬とかいるわ」
雪風「馬?乗れるの」
天津風「乗馬も出来るんじゃないかしら」
時津風「乗りたーい!」
嵐「あ、赤城さんと加賀さんだ」
萩風「こんにちは」
赤城「こんにちは」
加賀「ちょっと聞いてみるのだけど」
萩風「はい」
加賀「その軽井沢とやらに、美味しいものはありますか」
萩風「美味しいものですか」
赤城「お酒とかご飯です」
嵐「いや、避暑地なんで多分そういうのは……」
加賀「では、仮にお土産を買ってくるとしたら」
嵐「お土産ですか、そりゃ森の中ですから」
萩風「どんぐりのネックレスとかクマのぬいぐるみとか……」
赤城「……」
加賀「……」
萩風「すっごい遠い目してるね」
嵐「ロングブレスみたいなため息だね」
萩風「人ってあんなに落胆出来るものなんだね」
嵐「あ、陽炎呼ばれた」
萩風「呼ばれたね」
萩風「赤城さん達、何か言ってるね」
嵐「切々と語ってるな」
萩風「赤城さんちょっと涙目なんだけど」
嵐「加賀さんホワイトボード持ってきたよ」
萩風「渾身の説得交渉だね」
嵐「あ、陽炎帰ってきた」
萩風「帰ってきたね」
陽炎「軽井沢、中止!」デデーン!
時津風「えー!?何でー?」
陽炎「癒やされに行くんじゃないのよ、修学旅行なんだからね」
雪風「えー、そんなー」
【 磯風 】
陽炎「磯風、アンタはどこか行きたい所ないの」
磯風「む、特に思い付かないな」
磯風「皆の行きたい所で構わないぞ」
陽炎「ホント、欲がないわね」
磯風「外の世界にあまり詳しくないしな」
陽炎「じゃあ美味しい物が食べたいとか、景色のいい所とかでいいわよ」
磯風「ふむ」
磯風「なら、珍しい物が食べてみたいかな」
磯風「せっかく知らない場所に行くなら、そこにしかないものを食べてみたい」
磯風「料理の勉強になる」
浦風「……」
浜風「……」
浦風「何この優等生」ヒソヒソ
浜風「模範的な回答ですね」ボソボソ
浜風「こんなに真面目で熱心なのに、どうして出来に反映されないんでしょうか」
浦風「多分アレじゃ、呪いとかそういう類じゃ」
浜風「何ですか、その地味な呪いは」
浦風「黒魔術的な」
浜風「毒使いですね」
浦風「強そうじゃ」
浜風「強そうですね」
浜風「沖縄なんてどうでしょう」
浦風「毒ゆえに」
浜風「ハブとかマングースとか」
浦風「あれ?毒持ってるのどっちだっけ」
浜風「えっ、ハブ……ですよね確か」
浦風「まあ、沖縄なら珍しい料理もたくさんあるな」
浜風「こちらとは違った食文化らしいです」
浦風「確か、豚肉をよぉけ食べるんよね」
浜風「色々ありますよ」
浜風「ソーキそば、足てびち、チャンプルー……」
浦風「甘味もちょっと変わっとるよね」
浜風「お菓子ならサーターアンダーギーとか、ちんすこう」
秋雲「え?何」
浜風「ちんすこう」
秋雲「ちんすこう」ニヤニヤ
浜風「……」
秋雲「ちんK」
陽炎「……」バシーッ!!
秋雲「痛ぁーっ!?何でぶつの!」
陽炎「アンタはちょっと不純なのよ」
秋雲「「何がだよ!何も言ってないよ!」
陽炎「いいから、ちょっとエロから離れなさい」
【 浜風 】
浜風「でも沖縄だと、遊びがマリンスポーツばかりになりますね」
陽炎「そりゃ南国だしね」
浜風「海は正直見飽きたというか……」
陽炎「可愛い水着を着たり、砂浜で遊んだりとかさ」
浜風「出来れば山や高原に行ってみたいです」
陽炎「じゃあ内陸県にしてみる」
雪風「内陸県って何ですか」
陽炎「海に面してない県よ。八つあるわ」
陽炎「群馬、岐阜、栃木……」
舞風「知らない所ばっかり」
陽炎「まあ艦娘には馴染みが無いわよね」
陽炎「でも、ここってすごいのよ」
陽炎「滋賀の琵琶湖に山梨の富士山、長野の千曲川(信濃川)」
陽炎「このへんなんて全部日本一よ」
陽炎「他にも世界遺産レベルがゴロゴロあるわ」
野分「そうなんですか」
陽炎「奈良東大寺に、栃木の東照宮でしょ」
陽炎「岐阜の白川郷、群馬の富岡製糸工場」
時津風「ふえ~、すごーい」
野分「どこも立派ですね」
雪風「埼玉は?」
陽炎「えっ」
雪風「埼玉は何があるの」
陽炎「埼玉は……うん、まあ、そうね」
不知火「雪風、あまり陽炎を困らせてはいけませんよ」
雪風「えー、だってー」
不知火「埼玉はサッカーが盛んみたいですよ」ウィーアーレッズ!
親潮「そうそう、確か二つもチームがあるんです」オーアルディージャ!
雪風「二つも?埼玉すごい!」
浦風「野球もあるんで」ホエロライオンズ!
時津風「野球?」
浦風「スタジアムも立派なんじゃけぇ、すごい楽しいんで」
黒潮「賑やかやしな、美味しいものも沢山あるで」
雪風「お祭り?」
黒潮「そやでー、毎日がカーニバルやでー」
雪風「楽しそう!」
舞風「でもルールが分かんないよ」
野分「それは困りましたね」
親潮「綺麗な景色や歴史的な建物とか」
親潮「どこも素晴らしいんですけど、全部大人向けというか……」
陽炎「あー、うん」
野分「舞風達が楽しめません」
陽炎「まあ、子供にはちょっと退屈かもね」
【 谷風 】
谷風「じゃあもう、東京でいいじゃんかよー」
天津風「だからディズニーは駄目だって」
谷風「ディズニー以外にも楽しい所たくさんあるって」
初風「例えば?」
谷風「浅草とか両国とかさー」
陽炎「酷い選択肢ね」
不知火「全く興味を惹かれません」
谷風「何でだよ!」
谷風「食べ物だって美味しいものばかりだよ」
初風「例えば?」
谷風「もんじゃ焼きとか、雷おこしとか」
黒潮「微妙や」
親潮「微妙ですね」
谷風「コロッケそばなんて、たまらない旨さだよ」
浦風「コロッケそば?」
舞風「何それ」
初風「聞いた事ないわね」
谷風「かあーっ、みんな物を知らねえなあ!」
天津風「谷風、あなた疲れているのよ」
谷風「うあうあー!美味いんだって、マジで!」
陽炎「蕎麦にはエビ天よ」
野分「コロッケなんて、衣がべちゃべちゃになりそうです」
谷風「かき揚げだってそうじゃんか」
嵐「かき揚げは後のせサクサクだから」
谷風「コロッケだってそうだよ!」
黒潮「ないわー」
磯風「食べ物で遊んでは駄目だぞ」
親潮「そうですよ。蕎麦の神様に謝りなさい」
谷風「うおー!涼風ー!早く来てくれー!」
足柄「あの子なかなか見込みがあるわ」
天津風「姉さん、どっから来たのよ」
足柄「今度、ウチに連れてらっしゃい」
天津風「コロッケだからね?乗ってるのカツじゃないわよ」
足柄「あなたもうかうかしてられないわよ」
天津風「本当に話を聞かないわね」
【 野分 】
涼風「呼んだ?」ヒョコ
野分「あ、涼風」
嵐「ちょっと聞いてくれよ。谷風がおかしな事言って大変なんだよ」
谷風「てやんでい!おかしくねーや!」
涼風「いやいや、こっちも大変なんだよ」
舞風「何?どうしたの」
涼風「旅行の行き先でさぁ、大揉めなんだよ」
舞風「白露型はどこになったの」
涼風「白露がさぁ、富士山がいいって言い出してな」
初風「あー……一番馬鹿」
涼風「そうなんだよ。絶対日本一になるって聞かなくてさぁ」
野分「登山ですか」
嵐「そりゃ無理だって」
野分「ですよね」
嵐「訓練もしてないのに登山とか。しかも富士山だなんて無謀だよ」
不知火「ですが、気持ちは分かります」
不知火「日本人ですから。富士山はやはり特別です」
野分「登るのは無理にしても、一度は行ってみたい場所ではありますね」
陽炎「うーん、まあ世界遺産だしね」
時津風「富士山ってどこだっけー」
黒潮「静岡やな」
初風「静岡って、何かある?」
陽炎「ガンプラの工場があるわね。日本最大の」
初風(どうでもいい)
天津風(心底どうでもいい)
涼風「そういや夕張姉ちゃんが行ってたな」
萩風「静岡に?」
涼風「ガノタの聖地って言ってた」
舞風「意味がわからないよ」
嵐「あと、ほら、静岡ってさ、メロンが」
萩風「あー名産だよね。クラウンだっけ」
嵐「ライバル心がさ、こうメラメラと」
萩風「夕張なだけに」
秋雲「それから、キャプ翼の舞台だよ」
初風「どうでもいい」
不知火「どうでもいいです」
天津風「心底どうでもいいわね」
秋雲「何でだよっ!?BLの教科書だよ!聖典だよ!全ての始まりだよ!」
雪風「びーえるって何ですか」
陽炎「雪風は知らなくていいのよ」ニッコリ
【 嵐 】
嵐「えっと、和歌山はどうかな」
舞風「和歌山?」
雪風「和歌山ってどこですか」
時津風「何かあるの」
嵐「いや、何もないけどパンダがいるんだよ、あそこ」
雪風「パンダぁ!?」ガタッ!
時津風「え、何?パンダいるの」
舞風「パンダって上野じゃないの」
嵐「あんまり知られてないけど、何故かいるんだよね」
嵐「しかもたくさん」
雪風「ほわっ!?」
時津風「パンダ!パンダ!和歌山行きたい!」
陽炎「すごい食いつきね」
不知火「パンダですからね、仕方ありません」
萩風「和歌山だったら、すぐ近くの神戸の方が」
舞風「神戸」
萩風「神戸の方がおしゃれだよ」
雪風「でも、パンダ……」
萩風「神戸にもパンダいるよ」
時津風「!」ガタッ!
舞風「神戸にもパンダいるの?」
萩風「コアラもいるよ」
雪風「!!!」ガタガタガタッ!
時津風「!!!」ガタガタガタッ!
陽炎「え?何、ちょっと神戸すご過ぎない」
不知火「両方いるのは日本で神戸だけらしいです」
陽炎「はー…」
萩風「街はおしゃれだし、観光も盛り沢山。名物もいっぱい」
黒潮「甲子園も近くやでー」
雪風「神戸スゴイ!」
時津風「神戸行きたい!」
赤城「お土産は……」
萩風「神戸牛」
加賀「!!!」ガタッ!
萩風「明石焼き、そばめし、ローストビーフ丼……」
萩風「神戸プリン、ゴーフル、チーズケーキ……」
赤城「……!」キラキラ
加賀「……!」キラキラ
嵐「ガッツポーズ出ました」
萩風「ダブルピース出ました」
嵐「陽炎呼ばれた」
萩風「呼ばれたね」
嵐「陽炎、メッチャ褒められてる」
萩風「すごく頭撫でられてるね」
嵐「赤城さん笑顔が満開だね」
萩風「加賀さん花束持ってきたよ」
嵐「あ、陽炎帰ってきた」
萩風「あー、これは神戸かなー」
陽炎「神戸、決定!」パンパカパーン!
浦風「おお」
磯風「おおーっ」
雪風「やったー!」
時津風「パンダー!コアラー!」
浜風「異人館楽しみです」
親潮「有馬温泉もいいですよね」
陽炎「観光、温泉、ショッピング。全員の要望を完全網羅よ」
黒潮「ホンマ完璧やな」
不知火「問題ありません」
陽炎「じゃあ陽炎型の総意として、神戸を推薦してくるわ」
初風「……」
初風「……」
初風(神戸って、思いっきり私の地元なんだけど……)
初風「……」チラ
雪風「パンダ!コアラ!」キャッキャッ
時津風「うれしい、うれしい♪」キャンキャン
初風「……」
初風「……まあ、いっか」
【 萩風 】
萩風「あ、そういえば名古屋は?」
嵐「名古屋かぁ」
萩風「あそこも大都会だよね」
嵐「まあな、日本の三大都市だよ」
萩風「確か美味しいものが沢山あったような」
赤城「!?」ガタッ!
嵐「そうなの」
萩風「結構有名だよ」
萩風「味噌カツ、きしめん、エビフライ……」
加賀「ッ!!」ガタガタッ!
萩風「どて煮、手羽先、ひつまぶし……」
赤城「!!!」ガタガタッ!
萩風「天むす、小倉トーストに味噌煮込みうどん」
赤城「~~ッ!?」グラグラ
加賀「~~ッ!?」グラグラ
野分「揺れてますね」
舞風「揺れまくりだね」
嵐「でも、観光ないじゃん」
萩風「名古屋城は?鯱だよ」
嵐「うーん、城かぁ……」
萩風「あ、東山動植物園あるよ。すごく広いんだって」
雪風「パンダいる?」
萩風「パンダはいないみたいね」
時津風「ダメじゃん!」
萩風「でもコアラがいるよ」
雪風「コアラ!」
萩風「あと、ドアラもいるよ」
時津風「ドアラ?」
雪風「ドアラって何ですか」
萩風「コアラの青いやつ」
時津風「青いのっ!?コアラが?」
浦風「あー、あいつか」
雪風「浦風知ってるの」
浦風「テレビでよー観るわ」
雪風「テレビに出てるの!?」
時津風「すごいよ!有名なんだね!」
浦風「あー、でも可愛くはないで」
雪風「え?」
浦風「むしろキモい」
時津風「えっ?」
浦風「いや、あいつな、むっちゃ速いんや。動きが」
雪風「速いの?」
浦風「たまに跳ぶし」
時津風「跳ぶ!?」
雪風「……」
時津風「……」
嵐「名古屋はいいかな」
萩風「うん、名古屋いらないね」
【 舞風 】
野分「舞風も神戸でいいですか」
舞風「うんっ、楽しみだね」
舞風「でも……」
野分「?」
舞風「ホントはね、もっと行きたい場所があるんだ」
野分「えっ」
舞風「あっ、今じゃないよ。いつか、いつかね」
野分「えっと、それは……」
舞風「舞風ね、いつか武道館に行きたい」
野分「武道館?」
舞風「那珂ちゃんとね、いつも話してるんだ」
舞風「いつか絶対行こうねって、絶対あのステージに立とうねって」
舞風「思いっきり歌って、思いっきり踊るんだ」
野分「それは素敵な夢ですね」
舞風「いつか行けるかな」
野分「大丈夫ですよ。舞風ならきっと行けます」
舞風「野分もだよ!」
野分「え」
舞風「野分も一緒にあのステージに立つんだからね」
野分「いや、野分はちょっと……」
舞風「ダメダメ、約束だからね。舞風と野分は、ずーっとずーっと一緒だよ」
野分「あ、ははは……」
初風「ようやく決まったわね」
萩風「旅行楽しみだね」
浜風「早く行きたいです」
磯風「いつ出発するんだ」
陽炎「まだ決まりじゃないわよ」
雪風「えっ」
陽炎「他の子達と意見の調整しなくちゃ」
不知火「長女会議ですか」
陽炎「そ。各型の代表で話し合いね」
時津風「違う所になるかもしれないの?」
陽炎「一応神戸で申請してみるけど、兼ね合いもあるからね」
陽炎「吹雪達は絶対東北を推してくるだろうし」
舞風「えー?」
雪風「神戸がいいー」
時津風「パンダ見たいー」
陽炎「話し合い次第ね。どうなるかは正直分からないわ」
黒潮「でもまあ、正直行き先なんてどこでもなー」
親潮「みんなが一緒ならどこでも楽しいですよ」
嵐「まあな」
谷風「そりゃそうだ」
陽炎「どこになるかは、決まってからのお楽しみよ」
天津風「どこになるかしら」
浦風「どこになるかのぉー」
野分「楽しみですね」
秋雲「楽しみだねー」
◇
陽炎「……さて、と」
陽炎「……時雨は」
不知火「壁際からずっとこちらを見ています。ハイライトはオフです」
陽炎「得物は」
黒潮「釘バットが二本。グリップには赤テープやな」
陽炎「……」
不知火「……」
黒潮「……」
陽炎「長崎とかいいんじゃないかしら。カステラ美味しいし」
不知火「皿うどんもたまらない美味しさです」
黒潮「長崎行ってみたいわー」
時雨「なになに?長崎に興味があるのかい」ニッコリ
【 秋雲 】
たくさんのお土産を抱え部屋に戻ると、姉達がガタガタと震えていた。
『 佐世保の時雨は鬼の化身 』と、怯えながら呟いている。
へし折れた釘バットが二本転がっていたが、見なかった事にする。
デパートで買ってきた全国菓子物産展の袋を見せると動き出した。
煎餅を持ったまま奈良に行き、凄烈な勢いで鹿の群れに襲われた舞風の気持ちを、少しだけ理解する。
オイテケー オイテケー タルトオイテケー
オイテケー ワタシロイズー ズルイワタシモー
こんな状況でも、小豆ういろうは人気がない。
陽炎「しかし、時雨にも参ったわね」 京都生八つ橋
不知火「あんなに郷土愛が強かったとは」 仙台萩の月
黒潮「でもまあ、長崎ならええんちゃう」 山梨信玄餅
親潮「そうですね。食べ物も美味しいですし」 奈良吉野葛餅
初風「観光も色々出来そうね」 愛媛一六タルト
雪風「長崎でくまモンに会える?」 千葉落花生
天津風「くまモンは熊本よ」 北海道ロイズ生チョコ
時津風「くまモンいないの?」 岩手かもめの玉子
浦風「代わりにながモンがおるで」 広島生もみじ
磯風「長崎だからながモンか」 東京レイズンウイッチ
浜風「甘いものが好きそうですね」 鹿児島かすたどん
谷風「ながモン強くてカッコイイ!」 浅草雷おこし
野分「それにしても物産展とはいいものですね」 愛知ゆかり
嵐「全国のお菓子がいっぺんに買えるもんな」 福岡めんべい
萩風「こうしてみると、有名な銘菓はほとんどあるね」 群馬グーテデロワ
舞風「そういえば長崎のカステラは買わなかったんだね」 神戸プリン
秋雲「いやだって、カステラなんてどこでも売ってるっしょー」 名古屋ういろう
全員「だよねー。アーッハッハッハ」
時雨「今、誰か何か言ったかい?」ガラッ
以上です。
読んでくれた人ありがとう。
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